99/10/25 第16回厚生科学審議会研究企画部会議事録 第16回厚生科学審議会研究企画部会議事次第 1.日  時:平成11年10月25日 (月) 14:00〜16:00 2.場 所:各省庁共用会議室 第944号室(通商産業省 別館9階) 3.出席委員:矢崎義雄部会長       (委員:五十音順:敬称略)   柴田鐵治 竹田美文 寺尾允男 寺田雅昭       (専門委員:五十音順:敬称略)   菊地眞 高久史麿 東條毅 中村隆一 埜中征哉          眞崎知生 柳澤信夫 4.議  事:(1)ヒトゲノム多様性解析プロジェクト実施方針について        (2)国立試験研究機関及び国立医療機関と一体化した研究機関の評価         について        (3)平成11年度厚生科学研究費補助金公募研究課題の採択について        (4)その他 5.配付資料:1−1) バイオテクノロジー産業の創造に向けた基本戦略 (概要)          2) 健康で安心できる豊かな高齢化社会の実現        厚生省におけるミレニアム・プロジェクトの基本的な考え方)           3) ミレニアム・プロジェクト (新しい千年紀プロジェクト) の基本 的な枠組みと構築方針について (平成11年10月19日内閣総理大臣 決定)(抜粋)          4) 平成12年度厚生省所管研究における生命倫理問題への対応        2−1) 厚生科学研究に係る評価の実施方針に関する指針について          2) 機関評価結果について (厚生科学課所管分・政策医療課所管分)        3−1) 平成11年度厚生科学研究費補助金研究課題の申請・採択結果一覧           2) 平成12年度厚生省科学技術関係予算案の概要  4   WHO憲章における「健康」の定義の改正案について           (第52回WHO総会の結果) ○事務局  それでは、定刻になりましたので、第16回厚生科学審議会研究企画部会を開催させて いただきたいと思います。 まず最初に、科学技術担当審議官に8月末の人事異動で就任しました堺の方から御挨 拶申し上げます。 ○堺科学技術担当審議官  8月末に科学技術担当審議官を拝命いたしました堺でございます。 まず初めに、委員各位におかれましては、御多用中にもかかわりませず、厚生科学審 議会研究企画部会における諸般の審議に御参画いただきまして、厚く御礼申し上げる次 第でございます。 既に御案内のとおり、近年の科学技術の進歩によりまして、厚生行政におきましても 画期的進歩をもたらし得るような先端科学技術も生み出されております。特に、本日、 御報告申し上げますバイオテクノロジー分野における研究開発につきましては、その進 歩は誠に目覚ましいものがございまして、その成果が産業創造につながることから、バ イオテクノロジーに関する省庁が共同でその推進を図ることとしているところでござい ます。厚生省といたしましては、社会的、倫理的問題に配慮しながら、特にヒトの遺伝 子の機能を解明する研究を推進し、がん、痴呆、糖尿病、高血圧症等の生活習慣病など 高齢者の主要な疾病の成因を解明し、革新的な治療法・創薬の開発に結びつけてまいり たいというふうに考えておる次第でございます。 また、この5月には、当審議会より「21世紀に向けた今後の厚生科学研究のあり方に ついて」と題する答申をいただいたところでございます。いただいた御提言を踏まえま して、厚生科学の推進に努めてまいりたいというふうに考えております。 また、政府全体といたしましては、平成13年1月から実施される省庁再編に向けて、 細部を現在進めているところでございまして、特に国政上重要な分野である科学技術に つきましては、総合科学技術会議という組織が新設されることとされている訳でござい ます。このように、今日、科学技術研究の成果というものは、国民の健康あるいは福祉 の増進に多大な貢献が期待される訳でございます。引き続き、諸般の問題につきまして 幅広い視点からの御審議を賜りたいというふうに思っておりますので、どうぞよろしく お願い申し上げます。 ○事務局  次に、6月2日付で委員の交代がございましたので、御報告させていただきます。  退任されました委員は、国立精神・神経センター名誉総長の杉田秀夫委員、早稲田大 学理工学部教授の土屋喜一委員、国立相模原病院名誉院長の宮本昭正委員、国立国際医 療福祉大学大学院長の初山泰弘委員、元国立感染症研究所長の山崎修道委員でございま す。  次に、新しく就任された委員もございますので、全委員を御紹介させていただきま す。部会長の左手の方向から御紹介申し上げます。まず最初が、防衛医科大学教授の菊 地眞委員でございます。次が、株式会社朝日カルチャーセンター社長の柴田鐵治委員、 自治医科大学学長の高久史麿委員、国立感染症研究所長の竹田美文委員、国立医薬品食 品衛生研究所の寺尾允男委員、国立がんセンター総長の寺田雅昭委員、国立病院東京医 療センター院長の東條毅委員、国立身体障害者国立身体障害者リハビリテーションセン ター総長の中村隆一委員、国立精神・神経センター院長の埜中征哉委員、国立循環器病 センター研究所長の眞崎知生委員、国立療養所中部病院長の柳澤信夫委員、部会長は国 立国際医療センター病院長の矢崎義雄委員でございます。  なお、本日、黒川清委員、大石道夫委員及び眞柄泰基委員は御欠席の御連絡をいただ いております。  次に、厚生省で人事異動がございまして、先ほど御挨拶申し上げました科学技術担当 審議官の堺でございます。同じく厚生科学課長に就任いたしました岩尾でございます。 あわせまして、事務局においても異動がございましたが、私、研究企画官の中垣でござ います。よろしくお願いいたします。  では、最初に、本日の配付資料について御確認させていただきます前に一言お断り申 し上げますが、堺審議官が所用のため退席させていただくことをお許し願いたいと思い ます。                 (堺審議官退席) ○事務局  (資料の説明と確認)  それでは、審議に入らせていただきたいと思いますが、部会長、よろしくお願いいた します。 ○矢崎部会長  本日は、御多用のところ、厚生科学審議会研究企画部会にお集まりいただきましてあ りがとうございました。  5月に「厚生科学の今後のあり方」の答申を出させていただいた後の初めての会でご ざいます。その節には多くの方々に御支援いただきまして、ありがとうございました。  先ほど新しく就任された堺審議官が御挨拶されましたけれども、新しく厚生科学課長 に就任された岩尾課長、何か一言、抱負なり今後の方針などございましたら宜しく願い します。 ○大臣官房厚生科学課 岩尾課長  それでは、せっかくの機会ですので、一言二言という訳でもないんですが。科学技術 は、私の今までやってきた仕事は、どちらかというと、研究費の配分ですとか、そうい うことで、先生方には日頃からお世話になっております。古巣でもございますが、また こういう仕事のお世話をさせていただくということで、出来るだけ先生方の意を体して 厚生科学の推進に努めてまいりたいと思います。ひとつよろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。それでは、審議に入らせていただきます。  まず、議題 (1)「ヒトゲノム多様性解析プロジェクト実施方針について」、事務局か ら説明をお願いします。 ○事務局 それでは、資料1に基づきまして御説明を申し上げます。  この「ヒトゲノム多様性解析プロジェクト」と申しますのは、いわゆるミレニアム・ プロジェクトの1つとして政府全体として検討が進められつつあるものでございます。 経緯を織り交ぜて、資料に基づいて御説明申し上げます。  まず、資料1の1)でございますが、「バイオテクノロジー産業の創造に向けた基本 戦略 (概要) 」というものでございます。これは、本年の7月に取りまとめられました 科学技術庁長官、文部大臣、厚生大臣、農林水産大臣、通商産業大臣の5閣僚でまとめ られました基本戦略でございまして、概ね5年程度を見越した基本的な戦略という性格 のものでございます。  2番を見ていただきますと、「産業化の加速的促進のための具体的施策」ということ になっておりまして、産業化を加速的に促進するというところにこの戦略の目的がござ います。この中で特に厚生省に関係いたします分野といたしましては、 (1)の(1)の3番 目の○にございます疾患関連遺伝子に関わる部分並びにその次にございます薬剤反応性 に関わる部分、この2つが厚生省に特に関わる分野ではなかろうかというふうに考えて おります。 次に、資料1の2)でございますが、「健康で安心できる、豊かな高齢化社会の実」 という表題の資料でございますけれども、これは本年の9月に取りまとめました文書で ございまして、「厚生省におけるミレニアム・プロジェクトの基本的な考え方」という 性格の文書でございます。ミレニアム・プロジェクトの中には、情報化でありますとか 環境と並んで、高齢化への対応というのが1つの柱、すなわちこの3つが3本の柱とい うことになっておりますけれども、その中で高齢化への対応というのが今回の厚生省と してのミレニアム・プロジェクトに対する基本的な枠組みでございます。  1番といたしまして「高齢化社会における老後の健康不安の解消」というのがござい ますし、また、2番として「がん、痴呆、寝たきり等の克服をめざして」ということで 掲げておりますけれども、特に主な疾患として考えられますのは、1の (2)にございま す、がん、痴呆、寝たきり、ぜんそくなどの病気や、それによる生活の質の低下に対す る不安、に対する対応というふうに考えておりますし、「寝たきり」という言葉から連 想されますのは、2ぺージの (3)「寝たきり対策」のところにございますが、「寝たき り」というのは骨粗しょう症等による骨折、脳卒中などが主な原因であるということか ら考えて、脳卒中でありますとか、あるいは寝たきりの高齢者の介護を困難にしており ます床ずれ、骨折の治療等々、再生医療も含めて考えていきたいというふうに考えてお ります。 それをどのような形でやるかというのが3番に書かれておる訳でございますが、3の (1) をご覧いただきますと、これらの病気に対する予防、診断、治療法の開発のため、 遺伝子にさかのぼった研究を進めていく。特に国としては、民間で出来ない分野をやっ ていき、更に、それが民間による画期的な新薬や診断・治療装置の開発を促すというと ころに今回のプロジェクトの目的があるということを記載しておる訳でございます。  4ぺージでございますが、今回のプロジェクトということを考えた際に、主な疾患と なります、がん、高血圧等循環器疾患、糖尿病、アルツハイマー、免疫アレルギー性疾 患という5つについて、克服すべき目標とその成果ということで、とりあえずの目標と その成果をここにまとめさせていただいておる訳でございます。これは、あくまで参考 となっておりますように、今後また検討が必要になろうというふうに考えておりますが とりあえずの目標とその成果と考えられるものを挙げております。  次が、資料1の3)でございますが、これが10月19日に内閣総理大臣決定として公表 されました「ミレニアム・プロジェクト (新しい千年紀プロジェクト) の基本的枠組み と構築方針」について示した文書でございます。この抜粋を本日はお配りしておる訳で ございますが、Iの5行目のところを見ていただきますと、情報化、高齢化、環境対応、 この3つの分野ということで、まず分野を規定しております。更に手法といたしまして は、産学官の共同プロジェクトを構築するということがこの中でうたわれておりますし 今後、年末までの間に、内閣官房内閣内政審議室の取りまとめの下に、関係各省庁が連 携体制を構築し、民間部門の参画を求めていくという基本的な考え方がここに述べられ ております。  2ぺージが、具体的に高齢化という枠の中で厚生省に関わる部分でございますが、こ の高齢化というのは、 (1)をご覧いただきますと、ヒトゲノムの問題とイネゲノムの問 題が2つ述べられております。また、枠囲みでくくられているところでございますが、 2004年度という5年後をまず目標にする。疾患といたしましては、痴呆、がん、糖尿病 高血圧等の高齢者の主要な疾患の遺伝子の解明に基づくオーダーメイド医療、画期的な 新薬の開発、再生医療の実現という、高齢者の主要な疾患を目標にすること。更に、そ れによってオーダーメイド医療、あるいは画期的な新薬、再生医療の実現ということを 述べております。  具体的なプロジェクトといたしましては、ヒトゲノム分野のところを見ていただきま すと、今申し上げた疾患の遺伝子情報等の解明及びヒトゲノムの多様性解明。あるい は、それらの遺伝子情報を利用した新薬、診断・治療法の確立など実用化に向けた技術 開発。細胞機能の解明・利用のための研究・技術開発。バイオインフォマティックスの ことが述べられておりますし、プロジェクトの構築方針といたしましては、東京大学医 科学研究所等を中心にして、さまざまな研究者が共同する集中的な研究開発体制。ばら ばらにやるのではなくて、集中的にやろうというような内閣総理大臣の御方針がここで 述べられております。また、倫理面に配慮すること、安全性を確保すること、官民の役 割分担に配意する、この3つについての配慮が最後に述べられておる訳でございます。  したがいまして、今後、ミレニアム・プロジェクトにつきましては、内閣総理大臣の 下にございます内閣官房内閣内政審議室を中心に検討が進められていくものというふう に考えておりますが、その準備作業といたしまして、最後に見ていただきました倫理面 への配慮というのが挙げられておることから、厚生省といたしましては、資料1の4) でございますが、「遺伝子解析における疾病対策・創薬等に関する研究」を進めていく 上で必要な生命倫理問題への対応を図りたいということを考えておりまして、まず第1 に、厚生科学研究費補助金を用いた研究班を設置するということを決めたところでござ います。  具体的に申し上げますと、主任研究者に国立がんセンター中央病院長の垣添先生に御 就任いただいて、「3.検討課題」でございますが、例えばインフォームド・コンセン トの問題、あるいは試料の保管・廃棄、あるいは情報の保管、その無名性の確保等々に ついて検討を進めていっていただきたいというふうに考えておりますし、具体的には、 2ぺージに「検討委員会名簿」となっておりますけれども、検討委員会を設けて検討を 進めていただく。雨宮委員以下、山口先生まで、生命倫理畑の先生方、あるいは国立試 験研究所、あるいは大学の関係の方々に入っていただいて、検討委員会を設けて検討を 進めていただく。また、具体的な作業を行うのは作業委員会を設けるということで、こ れは、国立がんセンター研究所の副所長でございます山口先生を中心に作業委員会を設 けていただいて進めていくという方針でございます。  この検討委員会自体は来月上旬に開催したいというふうに考えておりますが、この研 究班というのは、あくまで今後、厚生省としての生命倫理問題への対応を決めていく上 での、いわばたたき台をつくっていただくのがこの研究班の役割というふうに考えてお りまして、1ぺージの「5.その他」(2)でございますが、この研究班の成果は厚生科学 審議会に御報告し、厚生科学審議会の中で更なる御検討をいただく。また、必要がござ いますれば、一般からの意見聴取などの手続きも行った上で、厚生科学審議会で御議論 をいただいて、その厚生科学審議会の御議論を踏まえた形で厚生省としての方針を決定 していきたいというふうに考えておりますので、今後とも御審議、御検討のほど、よろ しくお願い申し上げたいと考えております。  以上でございます。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。ただいま5省庁共同作業の「バイオテクノロジー産 業の創造に向けた基本戦略」と「厚生省におけるミレニアム・プロジェクトの基本的な 考え方」について、更には、生命倫理問題への対応について説明いただきました。今日 は第1回の部会ですので御自由に御意見を述べていただきたいと思います。基本戦略と しては、前回、「厚生科学の今後のあり方」で今後ウエートを置くべきポイントを幾つ か述べ、1つは、基盤的な研究の推進は勿論ですけれども、2番目には、トランスレイ ショナルなリサーチが重要であると。これは、厚生省のミレニアム・プロジェクトの基 本的な考え方にずいぶん沿うような視点が取れ入れられているのではないかと思いま す。3番目の、いわゆるEBMのもとになるエビデンスの構築、これは情報化も重要な ファクターですので、それも十分取り入れられている。それから、最後は、「地域環境 の中の厚生科学のあり方」ということを提言したと思いますが、環境問題その他もこの 中に入っているので、厚生科学として重点的なテーマというものが一応挙げられており ます。 委員の皆様方で、もし御意見あるいはコメントがございましたら、ぜひお伺いしたいと 思いますので、よろしくお願いいたします。 ○高久委員  資料1の1)の「バイオテクノロジー産業の創造に向けた基本戦略」の中で、2の (1)「産業創造のための基盤整備」ということで、先ほど事務局から御説明がありまし て、特にこの中の3番目と4番目の疾患関連遺伝子の多様性解析、それから薬剤反応性 に関連する遺伝子研究の推進云々とあります。特に3番目のことに関しては、疾患に関 連するシナップスの問題が非常に重要な問題だと思います。この検索は臨床的なデータ とサンプルの解析という、その2つがきっちりしていませんと、サンプルの解析だけで は有用なデータが得られないと思いますので、ぜひ厚生省が中心になって疾患関連遺伝 子の多様性の解析、データベース化の推進を促進していただきたい。よろしくお願いし ます。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。全く高久委員のおっしゃるとおりで、恐らく遺伝子 関係のデータベースはある程度出来ておりますので、これから構築しなければならない のは、その解釈のもとになる臨床データをいかにベース化するかということでありま す。我が国におきましては、個々の患者さんのデータの取り扱い方について、まだ十分 に議論が進んでいないところがあります。例えば患者登録の研究の推進などは我が国で はなかなか出来ない状態にありますので、臨床データをきっちり集める仕組みを何か考 えないといけないと思いますので、それは倫理面、あるいは法制面からぜひ対応を私ど もも考えていきたいというふうに思います。大変重要な、問題も大きなところがあるの ではないかと思います。  その他、いかがでしょうか。 ○菊地委員  防衛医科大学の菊地でございます。今回からこの委員ということで仰せつかりました けれども、たまたま私、ちょうど2週間前に、これは厚生省の会議でございますけれど も、今日は場所が通商産業省ということで、通商産業省のミッションでアメリカに2週 間ほど行っておりました。その団長を仰せつかったものですから申し上げるのでござい ますけれども、通商産業省のミッションで、特に米国におけるいわゆるバイオテクノロ ジーの医療技術への応用ということで、2週間で14施設、政府機関からベンチャーまで 回ってまいりました。 そのときの印象で、ある意味で強くカルチャーショックを受けて帰ってきた訳ですけ れども、本日、こういうような基本戦略で、これから日本もバイオテクノロジーを産業 として捉えていくと。今、高久委員からも、医療における倫理面の問題、あるいは臨床 データとの突き合わせという非常に重要な問題の御指摘がありましたけれども、私は医 療工学という立場で、ものをつくるといいますか、技術をつくるという立場でこの方面 をやっておりますけれども、アメリカの場合に、今、ゲノムの解析という、これはボス トンのホワイトヘッド研究所なども今回行ってまいりましたし、NIHも行ってまいり ました。また、NIHの中では、今、既にシナップスの話が出ましたけれども、解析を しただけではだめだということで、解析の後、どういう疾患との結びつけをするかとい うことで本格的に作業に入っているという印象を強く受けた訳であります。  また、産業的な動きという意味では、例のDNAのチップであるとか、あるいはDN Aのマイクロアナライザーのようなことがベンチャーを中心に非常に進んでおりました し、また、この中で再生医療の問題、セル、あるいはティッシュエンジニアリングとい うところでありますけれども、アメリカの現状としては、完全に産業的な企業ベースで いっている。その関連では、NIHあるいはFDAの倫理問題、規制の問題の担当者と も会談をいたしましたけれども、まだまだアメリカとしても、どういった形でFDAが この問題を処理するかということの結論は出ていないようでありますけれども、既に産 業界が非常にアクティブであるということから、そういったことに強い関心を持ってい るという気がいたしました。  それで、全体の印象として、アメリカが3年から5年ぐらい先をいっているなという 感じがいたしましたものですから、これは厚生省の方の基本的な戦略でございますか ら、臨床医学との関連ということもありますけれども、1つ、この中に産業面でのミレ ニアム・プロジェクトという御指摘もございましたので、アメリカとどういった形で国 際水平分業をやっていくかというようなことも考えながらやりませんと、全く同じ路線 を後追いするというのでは少し問題があるのかなという気がいたしましたので発言させ ていただきました。  以上でございます。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。その他にいかがでしょうか。 ○寺田委員  先ほどから話がありましたように、高久委員が言われた、いわゆる臨床データという のは非常に大事だと思うのですが、今までゲノムとか、いわゆる生命科学を大きく言い ますと、そういうのはどうしても健康科学とか、実際の国民の生活に結びつかない感じ があったんですけど、これが1つのきっかけになって、国民に役に立つものであるとい うふうな方向に持っていきたいと思っております。  それからもう1つ、そこで一番大事なのは、今、部会長がおっしゃいましたように、 これから医療情報というのは開示の方向に向かっている訳ですね。一方、遺伝子を極端 な例といたしますプライバシーの問題。広がる方向と隠す方向と両方いくのを、どうい うふうに社会的なコンセンサスを持ちながらやっていくかということで、厚生省の厚生 科学として、ゲノムの研究だけにとどまらず、国民と接点を持ってやるという立場に立 つ大変大事な問題であるというふうな認識を持っております。  それから、先ほどおっしゃいましたアメリカのFDA、NIH、これは3年、4年じ ゃなくて、実際には10年は遅れているというふうな認識を持っておりますし、ご存じの ように、FDAもNIHもアメリカの厚生省ですね。デパートメント・オブ・ヘルス・ アンド・ヒューマンサービスで、厚生省の国立のそういう機関が倫理の問題とか、そう いうことをやっているということで、ぜひこういう厚生科学審議会のところへ持ってき て、国民のコンセンサスを得ながら、非常に大事な問題であります倫理について、これ はいいだろう、あるいは、ここはちゃんと守らないといけないとか、そういうガイドラ インをここがつくるのがいいんじゃないかというふうに考えております。技術的なこと は大体出来るということですけれども。 それからもう1つ、日本の臨床医学といいますのは、私、アメリカに比べまして大変 良いと思っているんです。臨床のデータも、国が狭いせいか、いろいろな問題で、アメ リカでは、アメリカではというような“ではの神”的な発言をされる方が臨床の先生で たくさんいらっしゃいますけれども、逆に日本はデータはずいぶんきちんと揃っており まして、それをうまいことどういうふうに利用していくかということは、これからだん だん問題になっていくんじゃないか。逆にアメリカの方は、米国のことばかり言っても しようがないですけれども、健康保険のHMOの問題とか、これからだんだん厳しい状 態が続いていくのではないかというふうに私は考えております。  以上です。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。その他どうぞ。 ○柴田委員  今の寺田委員の話に付け加えて、さっき高久委員のおっしゃったこととも関連してい ると思うのですが、これから多分、厚生省が取り組むいろいろな問題というのは、すべ て公開性とプライバシーという、一見、二律背反のように見える2つの問題をどう克服 するかという点が最大の課題になると思うんです。多分、臓器移植だろうと体外受精だ ろうが、みんなその2つの原理といいましょうか、プリンシプルを同時に満たしていか なければいけないと思うんです。だから、この問題はものすごく大切で、そこを乗り切 る方法を切り開かない限り道は開けてこない、すべてに関わる基本的な命題だろうとい うことが1点。ですから、そこに相当な力を注ぐべきだと思うんです。  それともう1点、情報公開の問題の中では、ヒトゲノムに関しては、いわゆる企業 化、産業化ということから、多分、企業秘密という問題が出てくると思います。ヒトゲ ノムに関して特許の申請がものすごい勢いで進んでいるという情報が大変気にかかるん です。だから、そういう企業化、産業化に対して、公開の原理をどういうふうに確保す るかという問題を並行的に研究すると同時に、ここは現実の問題として各企業などを納 得させていかなければいけないだろうと思うので、そういう方面にもぜひ力を尽くして いただきたい。そうでないと、片やプライバシー問題から、片や企業秘密から全体の公 開性が二重三重に薄れてくると、恐らく進歩が止まってきてしまうんじゃないかという 気がしますので、その点の指摘がもう1点です。  更にもう1点、その中で倫理の問題が非常に大切になってくるんですけれども、今回 の倫理の問題の検討委員会の名簿を見ておりまして、14人の方々は大変立派な方々ばか りで、その点は何の異論もないんですが、ちょっと医学・医療に偏り過ぎていないかな と思います。少なくとも、肩書きだけから見ますと14人中12人が医学関係で、法律関係 の方が2人。それで、いわゆる一般の人といいましょうか、もう少し違うアプローチで この問題を考える人を混ぜる方がいいのではないかなという気がしたということです。 これは、厚生科学審議会全体の討議を経てということですし、その間にもまだ一般の人 たちの意見を聞く道を開くという先ほどの課長の話もありましたので、そういう形で補 完していただければ、そのことを念頭に置いていただければ、それで結構です。  それからもう1つ。厚生科学審議会先端医療技術評価部会の方で、今、生殖補助医療 技術に関する専門委員会と出生前診断に関する専門委員会、2つの専門委員会が動いて いる訳ですね。この専門委員会が、一部見解などを出しましたけれども、これからどう いうガイドラインをつくるかという問題が、多分、厚生省の倫理問題の非常に大きな柱 になるのだと思うんです。だから、その辺オーバーラップしてくる部分があるのではな いかという気がします。その辺を全体としてはどういうふうに考えておられるのか。こ こはむしろ質問の形で事務局にでもお答えいただけたらと思います。  以上です。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。今の御質問、いかがでしょうか。 ○事務局  御指摘の先端医療技術部会で議論が進んでおります点との整合性の確保の問題であり ますとか、あるいは、どちらを先に進める、どこにネックの問題があるというのは、柴 田委員、御指摘のとおり、連携を保たねばならないというふうに考えておりますし、今 回のいわゆるゲノムプロジェクトに関係します生命倫理の問題というのも、先端医療技 術部会での御議論を踏まえて、そこで既に検討されているものの成果を反映し、また、 ネックを解決するという形で進めていこうというふうに考えております。 ○柴田委員  こちらの方に3月という目標が出ておりましたね。その辺の時間的な整合性はどうで しょうか。 ○事務局  ゲノムプロジェクト自体、すなわちミレニアム・プロジェクトというのは来年度から 始めるということになっておりますので、少なくとも来年度、研究に着手する部分、そ こにまつわる問題というのは、出来れば今年度中に解決をしたいというふうに考えてい ます。例えば資料1の4)で申し上げますと、「3.検討課題」(5)をご覧いただきます と、「生体試料、遺伝情報及び解析結果の譲渡方法(研究者間)」というふうに書かれ ておりますが、当然、民間へどのような形で出していくかという問題もある訳でござい ますけれども、研究着手の時点ではその問題は少し後でいいだろうと。ただ、少なくと も、先に着手する段階の議論というのは出来れば今年度中にめどをつけて、来年度から のプロジェクト実施に支障がないようにしたいというふうに考えております。 ○矢崎部会長  よろしいでしょうか。 ○柴田委員  分かりました。結構ですが、この問題は出来るだけ急いだ方がいいという感じがある んです。他の生殖医療その他も、世の中の動きが早いといいますか、特にアメリカの動 きが大変早くて、いろいろな報道が次から次と入ってくる中で、日本は一体どうするん だと、国民のガイドラインへの期待感といいましょうか、あるいは焦燥感といいましょ うか、そういうものが非常に膨らんでいると思いますので、調整と整合性と同時に、基 本的には検討結果を急ぐということも要望の1つとして挙げたいと思います。よろしく お願いします。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。研究班の成果その他について、恐らく柴田委員が御 指摘の、生殖医療の今までの検討と同じように、高久委員が部会長の先端医療技術評価 部会で実際には検討されていくことになるかと思いますので、またその節には柴田委 員、よろしくお願いいたします。 ○柳澤委員  資料1の2)の「厚生省におけるミレニアム・プロジェクトの基本的な考え方」につ いて少し意見を申し上げたいと思います。中部病院の柳澤でございますが、先ほどから 話題になっておりますような、バイオテクノロジーにおける我が国の遅れというのが、 将来いろいろな問題を引き起こすだろうということで、そちらの方に対して多くの研究 費、あるいはマンパワーを注ぐということは大変適切なことであろうというふうに考え ますが、ミレニアム・プロジェクトとして厚生省が高齢化社会というものを取り上げ て、そこでこの資料の一番後ろの4ページにありますような、「病気ごとに克服すべき 目標とその成果」に端的にあらわれておりますけれども、高齢者における疾患につい て、個々の原因遺伝子、あるいは病理発生に関わる遺伝子などを解明して、そして適切 な治療法を開発するということであります。これは1つの非常に基本的な方向ではあり ますけれども、現実に今、世界的に高齢者の健康を考えていくときに、何が一番問題に なっているかというと、高齢者が実際に社会参加出来る機会をどうやってつくるか。そ して、病気をもった高齢者がある程度のADLの低下のもとに積極的な活動をしていく ような状況をどうやってつくるか。そのための高齢者の精神的な支えをどういうふうに して社会としてつくっていくかというような点が非常に問題になっておりまして、我が 国においても、これらは大変重要な問題だろうというふうにいろいろなところで指摘さ れていると思います。  特に、ミレニアム・プロジェクトに関しまして、堺屋長官が追加されたという、高齢 者のための社会参加の条件をどうやって作っていくのかということについての調査をス タートするというのもその一環だろうと思いますし、それから、私、たまたま先頃行わ れました九州・沖縄サミットのための総理大臣との懇談会に出席をして、そこでの全体 を調整する外務審議官の出されたテーマは、高齢者の心の問題をどうやってサミットで 取り上げていくかということでありました。この問題は、遺伝子、それからまた、病因 解明という非常に大事な、厚生省として明確に目標を立てることが出来るバイオロジカ ルな研究テーマとは少し変わった、むしろ通商産業省とか、あるいは他の省庁との関係 を必要とする社会づくりの問題、制度の問題に関わることでありますけれども、その中 で生活習慣病の問題であるとか、あるいは高齢者の身体機能の特性であるとか、あるい は精神機能の特性といった医学的な側面を明らかにして、将来の方向を実際に我が国で 決めていくところに厚生省として必要な点をアピールして役割を果していくというのは 非常に大事なことだろうと思います。  そういう点を、ぜひミレニアム・プロジェクトの基本的な考え方として、4番に挙が っているものに加えて、高齢者一般の病気をもったときの脆弱性、精神的な弱さ、鬱状 態、そういったものをどうやって克服していくのかということについての社会学的ある いは神経・心理学的など様々な面での研究も重要であるということを申し上げておきた いと思います。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。 ○寺尾委員  資料1の1)ですけれども、これは「バイオテクノロジー産業の創造に向けた基本戦 略」ということでありまして、いろいろ書かれているのですけれども、いろいろな研究 を進めていくということで、これはこれでいいと思うんですけれども、これを社会にど うやって生かしていくかということになりますと余りはっきり分からないですね。例え ば、厚生省の研究から出てきた成果をどうやって社会に生かしていくかというのがよく 分かりません。それで、資料1の3)を見ますと、これから内閣官房内閣内政審議室で そういうところははっきりした体制をつくっていくのかどうかというところをちょっと お聞きしたいです。これを見ますと、「関係各省庁が更に強固な連携体制を構築し、民 間部門の参画を求めて」云々と書いてございますけれども、これがどういうタイプのも のかというのがよく理解出来ないということと、資料1の1)2ページ目の真ん中辺に 「技術の移転に資する制度の整備」というのがございまして、これですと「大学教官等 の民間企業役員の兼業」しか書いてございませんので、そこら辺のところをどういうふ うにお考えになっているのか、どなたかお分かりになりましたら教えていただきたいん ですけれども。 ○岩尾課長  ミレニアム・プロジェクト自体は、そこにありますように、2004年までに何らかの結 論を出そうということで別枠で予算も付けて、国を挙げてやっていこうということで、 私どももバイオについては5省庁が緊密な連絡をとってということになっています。そ のまとめをどうやっていくかということが年末までにというふうに書いてある訳ですが 事前に各省庁からバイオ関係の予算のヒアリング、あるいは計画のヒアリングを内閣官 房内閣内政審議室で行ったところ、要するに、例えば通商産業省にしても、科学技術庁 にしても、資料1にあるような、5年間で基盤整備といいますか、cDNAクローンの 構造解析を目的としています。それで、「知的基盤の充実とネットワーク化の推進」と いうことになりますので、ネットワーク化が出来るような機関を整備して、建物が出来 て、2004年に発足すればそれで良しとする訳ですが、厚生省の仕事というのは、そうい うものが出来上がった後、要するに、それを使って病気を治してもらわなければいけな い訳ですね。ですから、最初に言われたのは、他省庁は例えば機械をつくるとか、何か そういうシステムをつくるということで見える結果は出るけれども、厚生省は、5年た って、その病気を本当に治すような薬が出来るとか、何か出来るんですかということは 私もずいぶん強く聞かれました。  しかし、テーマが高齢化ということと、革新的な医療も含めて、ゲノムを解明して何 の役に立てるかといえば、病気を治してもらわなければいけない訳ですから、我々も他 省庁の結果が出てから5年後にスタートしますという訳にはいかない訳で、そういう意 味では、出てきた成果をもとに、まさに他省庁とよく連携をとりながら、出た成果を利 用しながら医療現場に応用していく、あるいは医療現場のデータをもとに様々な方法を 考えていくというやり方をとるということで、4ページに、荒唐無稽かもしれません が、このぐらいのことはやっていきましょうという決意表明ということで付けている訳 です。勿論、厚生省だけで一からスタート出来るとは思っていない訳で、基礎的・基盤 的な部分というのは、他省庁のまさに出てきている成果を次々に我々としては利用して いかざるを得ないでしょう。また、利用しない限り、5年という限られた枠の中でゲノ ムをやっていくということは大変難しいというふうに思っています。そういう意味で、 省庁間の連絡ということに今度のプロジェクトでは非常に重きを置いているということ でございます。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。一応目標を定めて、研究成果を社会といいますか、 医療に適用させるということでは、出た結果を社会に還元するという意味では、厚生省 のこのようなプロジェクトがキーになるのではないかというふうに理解されますし、他 の省庁もこれに賛同して、ぜひ協力いただきたいということになるのではないかと思い ます。  柳澤委員の言われた社会医学的あるいは予防医学的な視点の研究というのは、これか ら極めて重要になると思いますけれども、今の5年程度を見越した戦略で得たデータ を、恐らくこれは予防医学あるいは社会医学によく反映し得るデータが集まるのではな いかと思いますので、そういうふうに理解していただければ大変ありがたいと思いま す。 ○柳澤委員  おっしゃるとおりだと思います。先ほど岩尾課長もおっしゃられましたように、どう やって厚生省がそれを利用していくか、あるいは厚生省が他省庁、大学などに対して提 言していくのかということが恐らく非常に大事なことだと思うんです。そういう中で、 私は高齢化ということにちょっとこだわったものですから先ほどのような発言をしたの ですけれども、そういう最終的なゴールに向けては非常に多面的なアプローチと努力が 必要だということを強調しました。そのベースとして2004年までのミレニアム・プロジ ェクトが先ほど申されたような形で進められるということに対しては、私は勿論異論は ございません。是非その成果を現実の高齢化社会の活性化のために使えるようにしたい と思いますし、それは私たちの領域の責任だろうというふうに思います。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございました。よろしいでしょうか。 これは、次期研究プロジェクトがいよいよ始まるということでありますけれども、第 1回の部会ということで、委員の皆様方の忌憚のない御意見を伺い、また次回、あるい は、それまでにもし委員皆様方に御意見がありますれば、どうぞ事務局の方にファック スなり、Eメールで御連絡をいただければ大変ありがたいと思いますので、よろしくお 願いいたします。  それでは、本日の2番目の議題の機関評価結果について、事務局から御説明いただけ ますでしょうか。 ○事務局  それでは、資料2に基づきまして御説明を申し上げたいと思います。  まず、資料2の1)でございますが、「厚生科学研究に係る評価の実施方法に関する 指針について」というタイトルのペーパーでございますが、ここで全体的な背景、ある いは、今回なぜ御報告を申し上げているのかというのを御説明をしていきたいと思いま す。 まず、1の「背景」のところでございますけれども、平成9年に内閣総理大臣決定と いたしまして、「国の研究開発全般に共通する評価の実施方法の在り方についての大綱 的指針」というのが設けられております。これを受けまして、厚生科学研究に係る評価 につきまして、この審議会に諮問をし、その答申を9年12月にいただいたところでござ います。この答申に基づきまして、厚生省といたしまして指針を設けたのが10年の1月 でございます。したがいまして、この指針に基づいて、厚生省の傘下にございます7つ の国立試験研究機関並びに7つのいわゆるナショナルセンター、あるいは国立小児病 院、国立療養所中部病院に附属いたします研究所、合計14の研究所がこの機関評価の対 象ということになっている訳でございます。  その指針の概要でございますが、(1)から(3)までの3つからなっておりまして、1つ には、外部評価の実施ということで、評価を実施する主体、あるいは実施される主体、 原則としてこれらに属さない者による評価を行うということが1つ。2番目には、評価 結果の公開ということで、本日、資料としてお示しいたしております資料2の2)、す なわち各研究機関におきます評価結果というのも勿論公表されるものでございます。3 番目が、その評価結果を研究開発資源の配分へ適切な反映を図るという3つの3本柱と している訳でございます。具体的にその評価の頻度でございますけれども、指針におき ましては、3年に1回を目安として全体の評価を行うということでまとめられておりま して、そのため、あるいは私どもの指示が行き届かなかったためという2つの点がある 訳でございますが、今回の報告の中でも一部の機関は全体報告しておりますし、一部の 機関は一部の部局についての評価結果というのが報告されてきております。  また、その内容につきましても、何しろ10年1月の指針に基づきまして、10年度の評 価というのが初めてのものでありますので、精粗が各研究所間において見られるんだろ うというふうに考えておりますけれども、何分にもこの審議会で諮問・答申をし、御議 論いただいたという観点から、その評価のやり方につきましても、審議会のお考えとす り合わない点があるとか、あるいは先ほど申し上げましたように、精粗まちまちの点が あるとか、率直な御議論を賜りたく、本日、御報告させていただくものでございます。 また、今回、評価を報告していない機関というのが、国立身体障害者リハビリテーシ ョンセンター、国立循環器病センター、及び国立療養所中部病院長寿医療研究セン ター、この3つにつきましては、次回以降また報告をしたいというふうに考えておりま す。  具体的には資料2の2)でございますけれども、簡単に御説明申し上げますと、まず 最初が国立社会保障・人口問題研究所でございまして、この2−2というところに評価 委員会の委員の名簿が掲げられております。2ページをご覧いただきますと、対象とな ったのがこの場合には2つの研究部であるということが述べられております。3ページ 目の一番上でございますが、 3.1.1というところで調査・研究の実施状況と成果という のがまとめられておりまして、基本的には妥当という評価が下されたということが述べ られております。 分厚うございますので、各研究機関を簡単に御説明申し上げますが、5ページをご覧 いただきますと、国立医療・病院管理研究所がございまして、同じくちょうど真ん中あ たりに 2.2として評価委員の名簿がございますし、この場合には、一番下でございます が、医療経済研究部が評価の対象であるということが述べられております。その結果に つきましては、6ページの 3.1.1というところに掲げられておりますが、行政上、重要 な問題に取り組んでおることが述べられておりますし、また、 3.2の研究開発分野・課 題の選定というところを見てみますと、研究対象の拡大を図る必要があるのではないか というような御指摘もいただいておるということでございます。 次が9ページでございますが、9ページは国立公衆衛生院でございまして、その評価 委員名簿は2−2にございますし、2−3におきまして、国立公衆衛生院については機 関全体を評価をしたということ、8年の1月から10年の12月までの活動全体を評価をし たということが述べられております。10ページを見ていただきますと、10ページの一番 上でございますが、実施時期11年3月31日のところを見てみますと、院の活動を3系統 に区分をして議論をしていったということが述べられております。3系統というのは、 政策情報系、実験科学系、環境・衛生工学部というこの3つに分けて議論をしたという ことが述べられております。また、その結果につきましては、3−1−1に述べられて おりますけれども、研究成果がどのように行政に生かされているか更に明確にするよ う、あるいは総合的視点に立ったプロジェクト的な取り組みであるとか、あるいは論文 の公表等を一層増やすようというような評価があったということでございます。  急ぎ足で恐縮でございますが、14ページをご覧いただきますと、国立感染症研究所の 評価結果が14ページから挙げられております。この評価委員会は2−2に挙げられたメ ンバーでございます。15ページをご覧いただきますと、2−3のところに評価対象が機 関の一部として免疫部から遺伝子資源室まで、4つの部と2室が今回の対象ということ になっております。 3.1.1をご覧いただきますと、各部あるいは室ごとに述べられてお りますけれども、免疫部から今ご覧いただきました遺伝子解析室まで、それぞれの部あ るいは室ごとに評価の概要がそれぞれ述べられております。この場合には、研究機関全 体ではございませんが、各部・室ごとにかなり詳細に述べられている訳でございます。  20ページが国立健康・栄養研究所でございますけれども、これも同様に2−2に評価 委員会の名簿がございますし、2−3をご覧いただきますと、この研究所におきまして は、3つの部を対象に評価を行ったということが述べられております。21ページの 3.1.1にその評価結果の概要がまとめられておりますが、業務の一部に他の研究部との 重複が見受けられる、あるいは、そのために関係部門の調整が必要であるというような ことが述べられております。ただ、総体的に見ると、満足出来るような状態ではなかろ うかというふうに述べられております。  23ページが国立医薬品食品衛生研究所でございますが、これも同様に2−2に評価委 員会の名簿がございますとともに、2−3を見ていただきますと、5つの部を対象に、 平成7年度から8年度の活動を評価をしたということが述べられております。その結果 は、24ページに各部ごとに述べられておりますけれども、箇条書きスタイルで、それぞ れの部、それぞれの問題点について述べられております。 以上が国立試験研究機関の関係でございますが、国立病院部所管のナショナルセン ター等の研究所につきまして、国立病院部政策医療課の方から御説明申し上げます。 ○国立病院部政策医療課 それでは、引続きまして国立病院部関係について御報告いたします。 やはり同じく資料2の2)でございますが、国立病院部所管分ということでまとめて ございます。先ほどちょっと御報告がございましたけれども、国立病院部関係は6施設 で7研究所、研究センターを含めまして7つございますが、国立循環器病センターの研 究所と国立療養所中部病院長寿医療研究センターにつきましては、評価委員会を近々開 催する予定、あるいは準備中でございまして、今回の御報告からは除かせていただいて おります。  早速でございますが、この報告書の1ページでございますけれども、最初は国立がん センター研究所でございます。評価委員会の委員名簿が1ページの下のところにござい ます。7名ということでございますが、今年度からはまた新たに委員を委嘱し直して改 組したということでございます。2ページでございますが、機関全体の評価を行ってお ります。その評価結果でございますが、 3.1.1にございますように、国立唯一のがん研 究機関として、がん克服のために果たすべき役割から見て、全体的に適切な研究が実施 されているという評価でございますし、また、多くの優れた成果があり、世界的に見て 高い水準にあるということになっております。更に、近年は、遺伝子細胞レベルでの発 がん機構等の基礎的研究を中心にして高いレベルの研究が推進されているという評価に なっております。3ページに、 3.2のところで研究開発分野等のことがございますが、 がん克服という1つの目標に集中しているということで、多角的な研究を実施してい る。本機関としてふさわしいものである。したがって、適切なものだという御評価をい ただいております。  それから、次が6ページでございますが、国立精神・神経センターの神経研究所でご ざいます。これは、6ページの下のところに評価委員の名簿がございますが、7ページ にもお2人載っておりますけれども、全部で10名の評価委員で、評価対象は機関全体で ございます。7ページの真ん中あたりの 3.1.1をご覧いただきますと、精神、神経、筋 疾患、発達障害、それから基盤研究の各領域で質・量ともに高い水準の研究を行ってい るということで、優れていると評価が出来るということでございます。また、今後の向 上策としては、更に独創性の高い研究を推進することが考えられるという御指摘もいた だいております。また、一番下の 3.2のところでございますが、研究分野・課題の選定 状況としては、全般にわたって網羅をしておりまして、役割を果している。今後の向上 策等としては、研究グループ間でのばらつきを是正するというようなことが指摘されて おります。 それから、次は11ページでございます。同じく国立精神・神経センターでございます が、精神保健研究所でございます。11ページの下に委員の名簿がございますが、10名の 委員でございます。12ページになりますけれども、評価対象としては機関全体でござい ます。それから、評価結果ですが、部局によってテーマですとか体制の違いが見られる けれども、国際的なレベルにある研究も多いということ。それから、限られた人員です とか、施設・設備という限られた条件の下で全般的に優れた業績を上げているというこ とでございまして、更に精度の高い疫学等の調査を行うということが期待されるという ことでございます。また、研究分野・課題の選定につきましては、課題分野が明確で評 価が出来る。また、多面的な研究が行われているので課題選定は適切だということでご ざいます。向上策としては、ストレス性疾患を含むメンタルヘルスに係る課題を特定し ていく必要があるという御指摘をいただいております。 次が15ページでございまして、国立国際医療センター研究所でございます。15ページ の下に評価委員の名簿がございまして、7名からなっております。16ページでございま すが、評価対象としては機関全体となっております。評価結果ですけれども、16ページ の下の 3. 1.1 にございますが、研究所の3つの研究課題がございますけれども、1つ 目の途上国で蔓延している疫病の制御のための基礎的・臨床的研究というものが一番多 く、かつ成果が上がっているという評価でございますし、社会科学的要因の解析研究に つきましては、まだ欧米諸国と肩を並べるには時間が必要だということですけれども、 体制としては十分整っていて、これからの成果が期待出来るということでございます。 また、3つ目の国際医療協力に必要な高度先進医療の研究ということにつきましては、 いろいろな方法はあるとは思いますけれども、途上国で将来必要となる現在の日本の最 先端の研究を、人材育成とともに進めていくという観点からすれば、途上国の若い研究 者をもっと受け入れてもよいのではないかという御指摘をいただいております。ただ、 (2)、 (3)にございますように、研究スタッフが少なく、設立から5年間という比較的短 い期間ですけれども、活発に活動し、また、本来の使命を果たしつつあるという御評価 をいただいております。それから、17ページの 3.2、研究開発分野等の選定についてで ございますけれども、ここでは御指摘をいただいておりますのは、基礎医学的、基礎生 物学的な研究については、研究所としての大まかな方針を出した方がいいのではない か。あるいは、 (2)では独自性を明確にしておく必要があるのではないかというような 御指摘をいただいております。 それから、最後が20ページの国立小児病院小児医療研究センターでございまして、20 ページから21ページの上にかけまして、委員が14名記載されております。こちらの方 は、評価対象が8部15室のうちセンター長と4部8室を対象にして評価をしておりま す。評価の結果ですけれども、研究部ごとに詳細に書いてございますが、21ページの下 のところでは、免疫アレルギー研究部が国際的にも研究レベルが高くて、特に優れてい るという評価でございます。それから、次の感染症研究部も着実に成果を上げていて、 やはり特に優れている。それから、実験外科生体工学研究部も、臨床的に重要な課題に 果敢に取り組んでいて、少し長い目で成果を見る必要があるということでありますけれ ども、研究活力が高く、特に優れているという御評価でございます。その他、小児薬理 研究部については優れている、共同利用室については良好というような評価になってお ります。 以上でございます。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございました。たくさんの資料で把握するのがなかなか困難かと存 じますが、今の説明に基づいて何か御意見、あるいはコメントがありましたらいただき たいと思います。よろしくお願いいたします。 ○高久委員 国立試験研究所の外部評価をきっちりされるということは非常にいいことだと思いま す。しかしせっかく外部評価とうたっているのに、これを見ますと、内部の方が加わっ ている評価委員会と外部の方だけの評価委員会がありますね。今後は外部の方だけでさ れた方が社会的な評価も高くなるのではないかと思います。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございました。実際、私ちょっと拝見して、評価委員の構成そのも のと、内容についても統一が十分とれていないところもありまして、今後の大きな課題 だと思います。近々、もう少し評価そのもののあり方を御議論いただいて、委員会の構 成からもう一度検討して、また評価をさせていただきたいと思います。  事務局から説明をよろしくお願いします。 ○事務局 最初に御報告申し上げましたように、この評価指針というのは、平成9年に厚生科学 審議会で御議論を賜ったものをもとに指針が出来ております。指針の中で、今、高久委 員の方から御指摘いただきました評価委員会の委員構成におきましては、基本的に外部 の人にする。必要に応じて、当該研究機関に所属する者を委員にすることが出来るとい うふうになっておりまして、では、「必要に応じて」というのはどういう必要があった のかというのを詳細に説明していただくことがそれこそ必要になるだろうと考えており ますけれども、今の御指摘を受けまして、事務局といたしましては、各研究機関の方 へ、この指針の徹底、あるいはその根拠を求めていきたいと思っております。よろしく お願いいたします。 ○矢崎部会長  その他いかがでしょうか。 ○寺田委員  今まで機関評価をしてきた立場で、国立がんセンターの研究所で、もう私はする立場 ではなくなったんですけれども、平成6年に研究所長になった途端にこういう会をやり まして、このときに外部の方だけにするかどうかというのはちょっと考えたんです。今 から考えますと、その後そういう指針も出ましたので、その時点で研究所の外ではあり ますけれども、センターとして、総長である方は中であるということで、やはりはずし た方がよかったかなとも思っています。それよりも、これは平成6年から今まで毎年5 回、全部の評価会議をやっていたのですが、それは非常に大変で、労力は使うし、17部 ございますから、終わる頃には頭がもうろうとしてきて、委員の人もお年を召されてい るしということで、やはり指針にありますように、3年に1回ぐらいが一番いいのでは ないかということですね。ですから、ここには正式には書いてありませんけれども、自 分のところのことだけ言って恐れ入りますが、他の国立研究機関も全部同じだと思いま すけれども、外国人などがセミナーで来たときは、必ず2つか3つ部を回ってもらっ て、書類でそこを評価して帰ってもらうということも非常に有効だったというふうに考 えております。  以上でございます。 ○寺尾委員  国立医薬品食品衛生研究所ですけれども、今、内部の人間が評価委員会に入っている ということで、私どもの方も外部の人と内部の人間が一緒になっているんですけれど も、意見が言えるのは外部の人間しか言えないということになっております。では、な ぜ内部の人間がそこにいるんだということになるのですけれども、それは、外部の方か らいろいろな質問が出たときに、説明をする係といいましょうか、そういうような立場 なんです。ですから、私どもの研究所に対していろいろな評価意見がありますけれど も、これはすべて外部の人の評価意見というふうになっております。ですから、全部外 部の人だけでやるのか、あるいは内部の人間も少し入れるけれども、私どもの機関のよ うに意見は言う権利がないとか、いろいろなやり方があると思うんですけれども、それ はこれからお決めいただければよろしいかと思います。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。評価の客観性・公平性を保つには、やはり外部の方 に委嘱されて、そして研究所側がそこに情報を開示するというスキームの方が分かりや すいかもしれないですね。  その他いかがでしょうか。 ○柴田委員  外部評価は必要ですし、これは大変結構ですけど、労力がものすごく大変だと思うん です。きちんとやればやるほど大変だと思うんです。それで、3年に1回というのはち ょっときついのではないかと私は思うんですけれども、5年に1回ぐらいにしてもいい のではないかとさえ思うんです。むしろ短くして軽く流すよりは、きちんとした評価を して間隔をあける方が効果があるのではないかというふうに私は思うので、これは全く の参考の御意見としてそう思います。本当に大変な作業だろうというふうに思いますの で。 ○矢崎部会長  その評価に大変エネルギーを費やすということで、機関全体の評価にもずいぶんエネ ルギーが注がれると思います。機能評価というのは、国立試験研究所の機能評価という よりは、そのデータをもとにして施設長のリーダーシップを発揮していただく、評価で すから、そういう意味でも中に入られていない方がいいのではないか。その結果をもっ て施設を改善していただく1つの根拠になればというメリットもあるのではないかとい うことです。  ともかく、この作業は大変な労力を使いますので、寺田委員そして柴田委員がおっし ゃられたように、少し間隔を置いてやるのであれば、外国の方まで含めてしっかりやる という、インターナショナルな視点からでも評価していただくというのがふさわしいの ではないかと思います。これにつきましても、今後この部会で検討していきたいと思い ますので、委員の皆様方、また何かお考えがあれば御意見をお寄せていただければ大変 ありがたく存じます。よろしくお願い申し上げます。  それでは、議題の3番目であります「平成11年度の厚生科学研究費補助金公募研究課 題の採択について」、事務局から説明願います。 ○事務局 それでは、資料3の1)に基づきまして御説明を申し上げたいと思います。 3の1)の一覧表が11年度の厚生科学研究費補助金の申請とその採択の結果の一覧を まとめたものでございまして、ここにございますとおり、一番多く申請がございました のが長寿科学総合研究の 233件。また、 100件を超えているというところから申し上げ ますと、特定疾患対策研究が 166件、生活安全総合研究が 155件、健康科学総合研究が 151件、医療技術評価総合研究が 129件というふうに、全体では 1,587件、 354億 5,500 万円の申請があり、そのうち 904件、 187億 8,400万円の採択がなされたものでござい ます。 また、資料3の2)でございますが、これが平成12年度の予算要求を9月1日の時点 で概算要求しております科学技術関係の一覧表でございまして、大きく分けて一般会計 分と国立病院特会分と産業特別会計分の3つに分かれますけれども、一般会計を見てい ただきますと、11年度予算で申し上げますと、科学技術振興費が 807億円を 864億 5,000万円という形で 7.1%増で要求をしております。中身を見ていただきます と、厚生科学研究費でございますけれども、 269億 8,000万円が 294億 2,200万円とい うことで、特にここに挙げておる分野が増減がある分野でございますが、1番の行政政 策研究、2番の総合的プロジェクト、3番の先端的厚生科学研究分野で、(1)と(2)並び に4の(1)に*が打たれておりますけれども、一番下の注)でございますが、*という のは、先ほど一番最初に申し上げましたミレニアム・プロジェクト関係の特別枠でござ います。それを示しております。また、その他といたしましては、これも*でございま すが、医薬品機構を通じた、いわゆるゲノム研究に関する出資金を 104億 9,100万円要 求させていただいております。 また、国立病院特会分といたしましては、いわゆるナショナルセンター、あるいは、 がん研究助成金、国立病院治療研究費などがここに挙げられておりますように 4.9%増 で要求しておりますし、また、産業特別会計については前年度と同様でございます。 以上、御報告させていただきます。ありがとうございました。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございました。これは、先ほどのミレニアム・プロジェクトの予算 もこの中に組み込まれているという御説明でございますが、いかがでしょうか。よろし いでしょうか。これを見ますと、予算の研究費の飛躍的な増額になっております。これ は概算要求の概要でございますね。実際は難しいんでしょうけれども、何かありますで しょうか。 ○事務局 そのとおりでございまして、先ほど議題の1番のところで御説明申し上げましたとお り、内閣総理大臣の決定が出て、年末までにいろいろな調整が行われていく、その途上 でございまして、資料3の2)にございますミレニアム・プロジェクトとして 161億 5,600万円要求したというのは、あくまで本年9月の段階でございますし、私ど もが聞いておるところによりますと、この特別枠には相当多くの要求が各省庁からなさ れたと聞いておりますので、今後、内閣官房内閣内政審議室、あるいは総理を中心に調 整が図られるものだろうというふうに考えております。あくまでこれは要求段階のもの でございまして、これがつくというものではございませんので、その点、御承知おき願 いたいと思います。 ○矢崎部会長  先ほど菊地委員が通商産業省のミッションのチーフで行かれたということですけれど も、先ほどの話のように、研究の成果をいかに社会に還元するかという視点からは、や はり厚生省の切り口からの研究が一番重要ではないかと思います。産業育成の視点は勿 論のことですけれども、ぜひそういう方面からもサポートしていただければ大変ありが たいと思います。これは岩尾課長さんの双肩にかかっているんでしょうか。 ○岩尾課長  大体、各省庁の要求は枠の3倍あります。ですから、いろいろなところへ説明に行っ た折に、あそこよりもうちの方がいいですよというジャブはみんな出し合っているので すが、最後はどうなるかというのは12月まで決着がつかないだろうと思っています。た だ、我々は、先ほども言いましたように、ミレニアムの趣旨は何かというと、役に立つ ことをやっていこうという訳で、それを利用して初めて役に立つというようなものにし ていかなければならない。それは、折に触れて内閣官房内閣内政審議室にも申し上げて おりますし、そういう意味で役に立つような研究を、それは別に何も厚生省ばかりとい うつもりはございません。文部省もよくやっているし、科学技術庁もよくやっておられ るし、通商産業省も分かっておられる。だから、各省庁一緒になってやっていきましょ うということを言っている訳で、そういう中で、厚生省としては、ご存じのように、疾 病オリエンテッドのものというのは私どもが一番豊富に持っている。それは、国立精神 神経センターであれば筋ジストロフィーのセルなりデータはすべてお持ちだし、国立療 養所中部病院でしたらアルツハイマー病のものをしっかりお持ちだし、国立がんセン ターは今まで遺伝子を山ほど解析しているし、国立循環器病センターも心臓のものを持 っておられるから、そういうものを利用して、なるべく国立試験研究所を中心にやって いくのがよろしいんじゃないかという説明を私どもはしておる訳です。だから、双肩に はかかっておりますが、私はやっておるつもりなので、結果として、けしからんと言わ れないように、いまのうちに言っておきます。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございます。委員の皆様方はいろいろ御意見を述べる機会が何回か おありかと思います。健康というのは、すべての国民一人ひとりに関わる問題でありま すので、そういう意味では大変重要なポイントではないかと思いますので、ぜひミレニ アム・プロジェクトにおける健康あるいは疾病の問題についてサポートする機会があり ましたら、委員の皆様方、今後ともよろしくサポートをお願いしたいと存じます。 それでは、岩尾課長に更なるエールを送りまして、次の議題に移らさせていただきま す。議題の (4)「その他」でございますけれども、報告事項として、第14回研究企画部 会が本年の4月12日に開催されました。その時に多くの委員の方々から熱心な御意見を いただきましたWHO憲章における、いわゆる「健康」の定義に関する改正案につい て、その後、一体あれはどうなったんだということを報告していただきたいと思います ので、よろしくお願いいたします。 ○大臣官房国際課 磯部課長  官房の国際課長でございます。今、部会長からお話のとおり、4月に御議論いただき ました結果を御報告したいと存じますが、お手元の資料4は、「総会」の定義を誤った ために不正確な記述になっておりますので、後日差し替えさせていただくことといたし まして、この場では私の口頭報告をもって報告とさせていただきたいと存じます。  まず、この問題につきましては、御承知のとおり、「スピリチュアル」と「ダイナミ ック」を入れるという議論でございました。これにつきましては、本年の5月17日から 25日までスイス・ジュネーブにおいて開催されましたWHO総会のコミッティBという ところで実は審議をされております。WHOの議事進行といたしましては、総会の全体 会合というものとコミッティA、コミッティB等の委員会に分かれて議論することもご ざいまして、コミッティBというのは法律あるいは行政的な事柄を検討する場でござい ます。そこで確かに議論をされまして、その結果、バーレーン、リビア等、数か国から この憲章の改正について審議すべきだという議論も出ましたが、ドイツ、中国等、また 数国は現行の憲章は適切に機能しているといった理由を述べまして、結局はコンセンサ スで「健康」の定義に係る前文の改正案を含め、その他の改正案についても一括して、 これをこれ以上審議をするのをやめて、今後は事務局のレビューのもとに置くという結 論が出されまして、そのコミッティBの結果を総会の全体会合に報告をして、それが了 承されたというのが正確な記述でございます。この文章は、その意味でやや正確さを欠 いておりますので、後日訂正させていただきたいと存じます。  以上でございます。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。そうしますと、一応、前文の改正案というのは当分 はペンディングというふうに理解してよろしいでしょうか。 ○磯部課長  はい。 ○矢崎部会長  その議論については、ここでは行う必要は当分ないということでしょうか。 ○磯部課長  はい。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。せっかく何回か委員の方々に御議論いただきました けれども、ただいまの報告のように、そもそもの改正案が総会で議決されなかったとい うことですので、当分様子を見るということにしたいというふうに思います。柴田委 員、何かコメントございますでしょうか。 ○柴田委員  なかなか分かりにくい話だったんですけれども、反対という意見がよく分からないん です。入れろという意見に対して、今、機能しているからいいじゃないかという意見と いうのはどういうことだったんでしょうか。もし反対の意見の中身があれば、教えてい ただければと思います。 ○磯部課長  まさに今、機能しているからいいじゃないかということですが、更に、前文の規定に ついて、どうしても今やらなくてはいけないものではないのではないかという意見。そ れと、今までにも実は改正が議決されて、それは3分の2のメンバー国の批准を待たな いと改正案が現実化しない訳ですが、従前改正されて、まだ現実化されていないものも あるといったような状況でまた新たにこうした改正をするのはいかがかといった意見が 出されたというふうに承知しております。 ○柴田委員  そうすると、他にも改正する点があって、1か所やるならば、他のところをどうする んだという話になってしまうから、一括してやめておこうという感じですか。 ○磯部課長  今申し上げたのは、もっと前の総会で決議を出したけれども、まだ3分の2の批准を 受けていないといったものもあるという趣旨でございます。この改正自身は、御議論い ただいたのは前文のところだけだったかもしれませんが、それ以外にも幾つか箇所がご ざいまして、それらも一括してペンディングにされたということでございます。 ○矢崎部会長  よろしいでしょうか。  それでは、本日御議論いただくための用意しました議題は以上でございます。  その他ございますでしょうか。 ○岩尾課長  当審議会で5月に「21世紀に向けた今後の厚生科学の研究のあり方」というのをいた だきました。それで、その中でちょっと引っかかっているというか、最初の今日の話題 にも出たのですが、1 つは、研究を進める上での倫理の問題ということで、これはこう いう形で研究班を起こさせていただきましたということを御報告しました。 もう1つ残っていたのは、研究を進めるに当たって、どうしても私たちは個人情報を 集めることになりますから、個人情報の保護ということと個人情報の開示ということを どう考えるかというのが、たしか報告書の中でも「研究を推進するに当たって」という ことで留意点に出ていたかと思っております。それで、ご存じのように、個人情報保護 のあり方について内閣官房内閣内政審議室で議論が始まっておりまして、将来の法制化 を含めて、今、国全体で検討が進められているところでございますけれども、厚生省、 つまり医療情報を含めてになりますが、どうしようかということで研究班を立ち上げて 動いたということがございますので、そのことの窓口になっております統計情報部の瀬 上室長から報告させてください。 ○大臣官房統計情報部保健社会統計課保健統計室 瀬上室長 ただいま御紹介がありました案件につきまして、御報告を申し上げたいと存じます。  5月の「今後の厚生科学研究のあり方」の中で、個人情報の保護の問題と利用につい て、例として、がん登録などの疫学的・公衆衛生学的な視点からの問題についての、法 制面も含めた考え方について今後検討すべきであるという御指摘を得たところでござい ます。私どものところで、今年度の統計情報高度利用総合研究の中の1つの課題とし て、この問題について今年度から検討を始めさせていただいております。現在、諸外国 の制度面における文献的な探索をしておりまして、一部の国に対して研究者を派遣する などして、こうした問題に関する制度の成立と、その背景にある各種要因についての検 討をしているところでございます。  御案内のとおり、欧州連合における指令が95年に出されまして、個人情報の保護と情 報の自由な流通に関する個人の保護という46号指令が出ているところがございますが、 それが、まさに先ほどもお話しになりました、こうした極めてセンシティブなものに関 してのプライバシーの保護と利活用という2つの側面を調整する1つの指令になってお りまして、すでに昨年までに欧州連合加盟15か国のうち13か国で、その指令に準拠した 形での新しい法律が出来ているところでございます。2か国については、既にある法律 がその指令の内容を十分に満たしているということです。この指令の中に、EU加盟国 以外の第三国条項というのがございまして、それに書いてございますのが、EU指令と 同等の個人情報保護の規定を有する国でなければ、EU加盟諸国からの個人情報のデー タ流出をしてはならない、こういうことになっているところでございます。  これに鋭敏に反応したのがアメリカでございまして、既に調査を終えておりますが、 一番問題になったのがヒトゲノムに関する医療情報、この臨床情報が現在、米国は自分 のところでも患者登録などの仕組みを持っておりますが、かなりの部分を英国のNHS のもとの医療情報、それもアイデンティファイフルな情報を購入するという形で研究者 が手に入れて、そのもとで検討しているところでございます。それに合わせて、更に今 年はアイスランドから、より明確に個人が特定出来る情報で、ヒトゲノム情報を目的と した個人情報を購入するということが起こり、各国のいろいろな意味での関心を引き起 こしたところであります。  こうしたことから、米国では、この8月に新しい法制度を立ち上げるということを予 定していたところですが、こうした問題を議会で十分にクリアすることが出来ずに、議 会の独自の活動としての法律案を提案することが出来ずに、時限立法で既にありました 先行する法律が8月に切れておりまして、現在は医療に関する個人情報に関しては全く 無秩序な状態になっているところでございます。そして、この問題に関して、先行する 法律では、議会が法律を8月24日までに提案出来ない場合には、厚生長官が代わりに法 案を提出するということになっておりまして、現在、その素案が公開されておりまし て、今後、その素案がほとんど通る方向で法制化されるのではないかと思います。中身 は、ゲノムの問題も含めた個人情報について、原則的にはインフォームド・コンセント をとりながらも、しかし、最終的な発表の形態が統計的な表現で終わるものについて は、しっかりした審査を受けたものに関してはインフォームド・コンセントの対象にし ないという、そういう趣旨の法律新法が検討されている段階であります。 以上、私どもの研究で入手しております現在までの情報について簡単に御報告いたし ます。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございました。情報の開示とプライバシーの保護については、各国 がそれぞれの視点で検討しておられる。しかし、これからはグローバリゼーションとい いますか、インターナショナルなハーモナイゼーションで、我が国も我が国の立場であ る程度主張なり、あるいは実態を整えていかなければいけないのではないかというふう に思います。今の御報告に基づいて、また、これについては検討をもう少し具体的に進 めていかなければならない。しかも、これは我々だけの議論ではなくて、法制面の環境 の整備という面もあるので、やはり厚生省全体としてもこれに取り組んでいかなければ ならない課題ではないかと思います。委員の皆様方、何か御意見ございますでしょう か。この件については、「厚生科学の今後のあり方」で何回か議論を進めてきましたけ れども、そこをテークノートするということで、具体的な方針についてはそこでは議論 されませんでした。これは、具体的に何か特別に委員会をつくるなり、行動を開始する に当たっての組織なり基盤をつくっていくという、そういうお考えはおありでしょう か。 ○岩尾課長 倫理と同じように、研究班をスタートさせております。私、細かいことは分かりませ んが、いずれにしても彼のところの研究班でまとめているので、多分、報告が来年の3 月までに出ると思いますので、またその時には当部会に提供していただくということに したいと思っております。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。その他に何かございませんでしょうか。よろしいで しょうか。  それでは、本日は、新しい委員の方々も加わっていただきました第1回目の部会にな りました。一応議論が尽きたと思いますので、先ほど申し上げましたように、個々の議 題について御意見、あるいは本日、意見を御提出出来なかったということがございます れば、事務局の方に御連絡いただければと思います。  それでは、最後に事務局から何か連絡事項その他ございますでしょうか。 ○事務局  次回の日程でございますけれども、後日部会長とよく相談をして、委員皆様のご都合 をお伺いして決めさせていただきます。よろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長  それでは、本日の部会はこれで終了させていただきます。御多用のところ、御参加い ただきまして、どうもありがとうございました。 (了) 問い合わせ先 厚生省大臣官房厚生科学課 担 当 新木(内線3806) 電 話 (代表)03-3503-1711 (直通)03-3595-2171