第4回 ホームレスの自立支援方策に関する研究会(議事要旨)
1 日 時 |
平成11年10月20日(水) 14:00〜16:00 |
2 場 所 |
厚生省特別第1会議室 |
3 出席者 |
(敬称略、五十音順)
阿部志郎、岩田正美、上久保忠、竹村毅、長谷川匡俊、森田洋司、吉村靫生 |
4 議事概要 |
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- (1)第3回(平成11年9月22日(水))研究会の議事要旨を確認
(2)ホームレスの自立を支援する事業の概況及び処遇上の問題等について説明
(東京都及び横浜市より)
(3)ホームレスを支援する民間団体の活動状況について説明
(特定非営利活動法人釜ヶ崎支援機構 山田實副理事長より)
(4)発言要旨
発言1
- ○ 東京都では、昨年2月に発生した新宿駅西口広場火災に伴い、罹災した路上生活者を対象に暫定的な自立支援センターを設置し、路上生活者に対する生活相談、職業相談等を行う自立支援事業を実施した(6ヶ月間)。
センター利用者は135名(平均年齢54.7歳)で、そのうち42名が就労による自立を図り、就労した者の職種は清掃関係が約半数でその他警備、土木建築関係等である。また、就労した者は路上生活期間が6ヶ月未満と比較的短い者がほとんどである。
発言2
- ○ 自立支援事業を効果的に行うには、就労先の確保等出口の問題が重要となるが、暫定実施の結果を見ると、就労先が限定される等就労機会が少なく、特に高年齢層の者にとっては就労機会の拡大が必要である。
発言3
- ○ 事業に携わった関係職員の意見を統合すると、センターの利用当初は就労意欲を見せるものの、生活実態等を見る限り働く意欲が感じられない者も少なくなく、また、前職にこだわって新しい仕事を探そうとしない者も少なからずいた。
このため、過去に厳しい生活をしてきた路上生活者の心を開いて話ができる環境づくりと必要な相談援助ができる有能(経験豊富)な人材の確保が大きな課題である。
発言4
- ○ 自立支援事業では全ての者が仕事を見つけることは困難と思われるが、入所期間が満了となった際の未就労者については、生活保護等の既存施策との関連も含めて、福祉事務所等との連携を図る必要がある。
発言5
- ○ 東京都及び23区では、冬期の一定期間、都内2カ所で冬期臨時宿泊事業を共同で実施している。事業内容としては、利用期間は原則2週間で、主として健康の回復、結核検診及び職安との連携による職業相談等を行っている。
この事業では、1期間に延べ1千人を超える者(10年度実入所者1,119人)が利用しており、そのうち要生活保護が約3割、期間満了による利用者が約6割、就労による自立は21名となっており、当面の路上生活者の困窮状態の解消に一定の役割を果たしているが、就労による自立ということについては利用期間2週間では困難な面が多い。
発言6
- ○ 横浜市では、屋外生活者を一時的に宿泊所に入所させ、生活援助等を通じて自立促進を図ることを目的に緊急一時宿泊事業(社会福祉法人に業務委託)を実施している。事業内容としては、利用期間は原則14日間で、健康診断、就労、断酒活動等の指導等を行っている。更に、アルコール関連の入所者については、利用期間を3ヶ月以内に延長し、依存症の克服等試行的な取り組みを行っている。
この事業では、年間延べ2,500人あまりの者が利用しており、退所後の状況については、簡易宿泊所等居住先が確保できたケースが2割弱、入院が1割強、就労による自立が1割弱、その他入所期間の満了、自主退所等となっている。
発言7
- ○ 事業運営面では、利用期間が14日間と短く、就労機会が十分でない現状では就労による自立までの処遇ができず、利用期間が3ヶ月あるいは6ヶ月は必要であると考える。
また、利用対象者として、女性の屋外生活者への対応も考える必要がある。
発言8
- ○ 事業を効果的に進める上で、指導員職員の資質に左右されることが多く、有能(経験豊富)な人材の確保と職員の研修等により資質の向上に努める必要がある。
また、就労先の確保、住居の確保等出口の問題が重要であるが、特に中高年を対象とした労働市場の開拓は考えられないだろうか。
発言9
- ○ 街頭相談体制を確立し、関係職員が居場所を巡回して各種相談に応じ、屋外生活者との距離を縮める必要があり、また、自立支援センターへの入所を勧める努力をする必要がある。その結果として、定住型の屋外生活者の発生を防止することができ、長期間の屋外生活をするケースを減少させることになると考える。
発言10
- ○ 大阪釜ヶ崎地域は、業者によっては労働環境が良くなく、結果として野宿をしたりあるいはアルコールに浸らざるを得なくなる現状があり、これらを改善するために活動を行ってきた。
- ○ 去る9月30日に特定非営利活動法人釜ヶ崎支援機構が設立され、野宿生活者への食の提供、宿所提供、相談、調査研究及び広報啓発等の事業を行うこととしている。
発言11
- ○ 釜ヶ崎の高齢者は、社会保障の恩恵にあずかることができる人は少なく、高齢になっても働かないと食事をとることもできず、支援する側も当初は生活保護の受給を前提に話を進めていた。
しかし、社会的な問題はあるにせよ野宿者自身にも問題はあるだろうということで、ただ困ったから生活保護というのではなく、とにかく働いて食事をとるのが一番だろうということで、就労対策の充実を支援活動の主眼に置いている。
発言12
- ○ 生活保護が適用されても、自分自身の生きがいもなく、一体自分がどういう存在なのか分からない、このままの生活でいいのかとまじめに考える者もいて野宿生活に戻る者も多い。
生活保護費の支給だけではなく、日常的な生活の中での生きがいなどをどのように持たせていくかを考える必要があると思う。
発言13
- ○ 現在小屋がけやテントで生活している者は、24時間利用できる施設を整備しなければ小屋がけ等から移動しないであろう。彼らは段ボールを集めたり、アルミ缶を集めたりして一生懸命自分自身で生活している者なので、そういう状況も含めて考えないと、自立支援事業には乗ってこないと思う。
5 配布資料
- (1)ホームレスの自立支援方策に関する研究会資料(東京都)
(2)横浜市における緊急一時宿泊事業の現状
(3)ホームレスの自立支援方策に関する研究会提出資料(釜ヶ崎支援機構)
問い合わせ先
厚生省社会・援護局地域福祉課
担当 難波、奥出(内線2855)
電話 [現在ご利用いただけません](代表)
03-3595-2615(直通)