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医療保険福祉審議会 第19回運営部会議事要旨


1.日時及び場所
平成11年10月19日(火)16:00〜18:00
厚生省特別第1会議室

2.出席した委員等
塩野谷、蒲生、見坊、下村、中西、村上、青柳、喜多、成瀬、野中、水野、山崎の各委員
舩橋参考人

3.議題

(1) 平成12年度予算概算要求について(追加説明)
(2) 平成10年度の政府管掌健康保険収支決算について
(3) その他

4.審議の概要

1)はじめに事務局より、議題「平成12年度予算概算要求について」に関する資料の説明があり、その後、発言及び質疑応答が行われたが、その概要は以下の通りである。

(青柳委員)

○ 資料062の2ページの対象者数、利用希望充足率は、平成12年から平成14年までの3年間の平均値なのか。
○ 今後、この対象者数と利用規模充足率は、年度末の予算編成までに変更があり得るのか。
○ 資料063の3ページの、平成9年度決算の数字と、政管健保の事業年報の数値が合わない。不足額の950億は事業年報の中の数値としてはどこに出ているのか。後日でよいので教えていただきたい。
○ 資料062の5ページの、政管健保の老人保健拠出金額2兆2千億は、どう計算したのか。後日でよいので、どういう元データを用いて、介護保険への医療費部分のシフトをどう考慮して出されたのか教えていただきたい。

(事務局 神田介護保険制度施行準備室次長)

○ 平成12年度の在宅の要介護者数などについては、3年間の平均ではなく、平成12年度単年度の、市町村で見込んでいただいた数字の積み上げ値である。
○ 利用規模、充足率について、今後変更があり得るかどうかということについては、この数字は市町村での調査や事業者からのヒアリングに基づいて全国的に積み上げている数値なので、若干の変動はあり得るかもしれないが、大きく変動することはないのではないかと考えている。
○ 充足率の32.73%というのは単年度の数字であり、平成12年度、平成13年度、平成14年度で少しずつこの率は上昇している。

(村上委員)

○ 平成10年度より平成11年度の失業率が相当上がっていることから考えると、保険料収入はおそらくマイナスになる可能性が高いのではないかと思うが、平成11年度の3千億ちょっとの赤字の予定の基礎計算データをお聞かせ願いたい。

(事務局 榮畑社会保険庁運営部保険管理課長)

○ 収入が平成10年度より1,300億ぐらい増え、一方、支出は4,400億ぐらい増えると見ており、その差が、若干端数の関係で合わないが、3,057億、約3,100億の赤字になると見ている。支出の一番大きな伸びは老健拠出金が2,800億ぐらい増えるというように見ている。

(村上委員)

○ 平成10年度決算から見ると、収入が1,300億は到底伸びず、むしろマイナスになる可能性が高いと思いますが、そのかわり、保険給付費がある程度減るということで、この見通しは変えなくていいという考え方に立っているのか。

(事務局 榮畑社会保険庁運営部保険管理課長)

○ 平成11年度の収支をここで3千億の赤字と出させていただきましたのは、当面の状況からそうさせていただいたところであり、その後の決算なりを考え合わせて、数字は当然タイムリーに変えていくべきものと思っている。

(村上委員)

○ 平成11年度は既に半分過ぎているのだから、ある程度の数字は出てきているはずである。その傾向からいったらどうなるのか。平成11年度の見通しをまず言ってもらわないと、今後変わってくるぞ、という答えだけでは次に話を進められない。
(事務局 榮畑社会保険庁運営部保険管理課長)
○ 直近のベースで見ると、平成11年度は400億から500億ぐらい悪くなるのではないかと見ている。

(村上委員)

○ いわゆる現役世代で、どれぐらいの被保険者が組合健保から政管へ、また政管から国保へ移動したか、ということについての統計の数字を教えていただきたい。

(事務局 渡邉保険局国民健康保険課長)

○ 政管から組合へ、組合から国保へ、あるいは組合から直接国保へといった被保険者の詳しい動きについては、こちらでも完全に把握はできない。いわゆる老人保健対象の加入者の方や退職者医療対象の加入者の方を除いた一般被保険者については、例えば、平成10年3月の市町村国保において2,636万人ぐらいと見ており、1年前と比べると、約40万人程度増えていると見ている。平成10年度全体の経過、あるいは平成11年度に入ってからの全体の展望については、精査途上である。

(村上委員)

○ その40万人の増加の中で、無業者の人数の統計はないのか。

(事務局 渡邉保険局国民健康保険課長)

○ そうした数字の変動に着目した統計はなかなか難しいのではないかと思っている。市町村国保全体の加入者のうち無業者は何パーセントかというような詳しい分析については、まだ、全体を通じたものとしては平成9年度の実態調査ベースのものしか持ち合わせていない。

(村上委員)

○ 後でよいので、前の分でも、参考にしたいので教えていただきたい。

(下村委員)

○ 資料063の1ページで、政管の収支に承継財産が含まれていると書いてあるが、これはどうやって計算したのか。

(事務局 榮畑社会保険庁運営部保険管理課長)

11健保組合があるので、債権、債務をそれぞれ出して、健保組合ごとに債権、債務の差し引き計算をした形である。

(下村委員)

○ 例えば、ある月で健保組合が解散すると、その時点では支払基金に対する未払いがあることになるが、その債務はどうなるのか。

(事務局 榮畑社会保険庁運営部保険管理課長)

○ 解散時点で残されている債務はそのまま引き継ぐことになる。

(下村委員)

○ 老健拠出金については2年後に計算するので、実際は組合員が増えたら、増えた分で2年後の清算をやることになるが、それについては計算していないのか。

(事務局 榮畑社会保険庁運営部保険管理課長)

○ これから発生するものということでそれは入っていない。

(下村委員)

○ 組合健保の解散によって政管健保に被保険者が移動すれば、拠出金の清算額は吸収された人数分だけ増えることになる。
○ 介護保険制度費用総額の4兆3千億の内訳についていろいろうかがっているが、まだ完全によくわかったとは言えない状態である。今日出ている数字については、その積算についてはここでやると大変なので、別途伺って問題があれば、ここであらためて問題にするという、従来どおりの方針で対処させていただきたい。

(喜多委員)

○ 資料063の3ページで、被保険者の218,643人が減ったということについて、この表の担当者の方のご意見をうかがいたい。

(事務局 榮畑社会保険庁運営部保険管理課長)

○ 政管健保の被保険者数は、制度の中にある時点で何人おられて、それがある時点で何人になりました、ということを比べただけであって、その方がどこに行かれたというところまでは把握していないところである。そういう点では、厳密に218,643人がどこに行かれたかというのは把握していないが、ただ、現下の経済情勢などを考えますと、一般的に、政管から国保に行かれた方が多いのではないかと想像しているところである。

(喜多委員)

○ 保険料の収入が増えているというのは、保険料を上げたためであり、給付が減ったというのは、21万何千人が減ったということが主体ではないか。

(事務局 榮畑社会保険庁運営部保険管理課長)

○ 前者は基本的におっしゃるとおりですが、後者については、むしろ、平成9年の制度改正の効果で減っているというふうに見ている。

(喜多委員)

○ 給付費が減っているにもかかわらず、資料062の5ページを見ると、平成12年度の数字では歳出の総額が減っていない。ということは、介護保険が実施されれば医療費は減るという説明は間違いだったのか。

(事務局 榮畑社会保険庁運営部保険管理課長)

○ 平成12年度の概算要求の時には、新制度のほうに行く拠出金を3千億ほど見込んでおり、その分が減ってもなおかつ歳出が12年度概算要求で7兆2,700億になるということで、介護保険によって3千億は減るというふうに見込んでおります。

(喜多委員)

○ 3千億円減るのか。

(事務局 榮畑社会保険庁運営部保険管理課長)

○ 介護保険がない時と比べて3千億減るというふうに見ている。

(喜多委員)

○ その数字はどこで見たらいいのか。

(事務局 榮畑社会保険庁運営部保険管理課長)

○ それは、この資料にはございません。

(喜多委員)

○ そうであるならば、この資料だけで解釈をすれば、介護保険制度の導入によって医療費が減ったということは言えないのではないか。

(事務局 柴田保険局企画課長)

○ この資料の見方ですけども、介護保険の関係を抜いた形で試算をしているということである。

(喜多委員)

○ 資料062の1ページに、平成12年度概算要求ベースの収入が載っており、国が25%で9,500億と載っているけれども、実際には25%全てもらえないところがたくさんある。従って、この数値については再三訂正を申し入れており、法律で決まっているからしかたがないという回答であるが、厚生省はいまでもこれを変更する気持ちがないのか。

(事務局 神田介護保険制度施行準備室次長)

○ 法律上、20%が定率負担、5%が調整交付金と決まっており、この部分を変えるについて法律改正がいるということですので、実質的に今この制度を組みかえることは難しいと思っている。ただ、保険者の方々に対する財政支援ということについては、いま与党でも協議されておりますので、それを踏まえて対応していく必要があるというふうに考えている。

(喜多委員)

○ 国の25%がもらえなければ、必然的に保険料17%と書いてあるのはプラスアルファされることになり、こちらの計算では340円保険料が高くなる。国が制度を決めて調整交付金で助けなければならないというところにそれを回すということは理解ができるが、その財源を保険料で故なく取られるということについて、私はいままで異論を申し上げてきたわけだが、これは全然変える気はないのか。

(下村委員)

○ 法律は変えられないから、というご発言について、厚生大臣は低所得者の負担は3%にするという発言をしているけれども、それについてはどうなのか。

(事務局 大塚老人保健福祉局長)

○ 個々の保険者と、マクロで全国を一本の保険者で見た違いのご指摘であり、そのご指摘はおっしゃるとおりである。
○ 国の負担については法律上の制度として固まっているので、今後大きな見直しという時まで全くあり得ないということは申し上げられないにしても、来年4月実施を控えた制度の施行としては、現行の法律に基づいて実施をせざるを得ないと思っている。一方、新しい制度が始まって、保険料の負担が新たに生ずるということも事実であるので、それに対してなんらかの財政措置ができないだろうかということについては、既に各市町村からの強いご要望として私ども承っておりますし、与党でのご議論にも入っている。与党における協議を注視しながら、私どもでできる作業はいたしたい。しかし、いまの時点で具体的にどうかと言われますと、具体的な内容を申し上げる段階には至ってはいないということである。
○ 大臣の発言については、大臣としての現状の認識に関連して新聞報道でございましたような気持ちを述べられたことは事実であるが、これも最終的には与党のご議論の中で結論をいただくのと同時に、その具体的な仕組み、施行法などについていま固まった考え方があるわけではない。今後の調整によるということになっている。

(野中委員)

○ 被保険者の国保への移動は、国保保険者にとって大変な負担になる。国保制度では、政管健保とは違って、前年度の所得に対する課税をしなければならないという問題がある。そうすると、現時点で所得がない人であっても、その人の前年度の所得による計算で、課税なり保険料を貰わなければならないということになり、保険料の収納ができないという問題が生じてくる。そういった意味からも、国保に移管された人の人数について、調査してもらいたい。
○ 国の負担割合の25%という数字が出されることは、法律上やむを得ないとしても、但書きがなぜできないのか。基本は20%が交付され、5%は調整費でするということを、市町村の一般の人たちが見ても理解のできるような形で示してもらいたい。また、保険料の17%も、それに調整交付金の5%による影響があるんだということを示すべきである。市町村がとまどわないように、これからの資料等については、そういう面も配慮していただきたい。
○ 介護保険制度の来年4月からの施行に当たっては、一定の負担は負担でしっかり求める制度にしてもらいたい。政治のパフォーマンスで税でやるということになって、保険料を凍結して3年先か5年先にまた保険料を貰います、ということになったら、その被害は一番市町村が受けなければならないことになる。だから、保険料に助成なり、補助制度をされることはやぶさかでないけれども、いったん保険という制度が確立されたら、その保険で最初から金額の大小にかかわらず出発をするというのが基本でなくてはならない。
○ 厚生省の見解と、新聞やテレビで報道される政治のパフォーマンスとの間には大きな差があるので、ここで厚生省の方の信念をうかがいたい。

(事務局 大塚老人保健福祉局長)

○ 介護保険制度については、予定通り来年の4月1日から実施したいと考えており、また、そのために必要な努力はいかようにもいたしたい。与党の議論については、さまざまな議論はあるけれども、来年4月1日に介護保険制度を実施するという基本においては、認識の一致はいただいているという受け止め方をしている。
○ 現在、実施のためにまだ問題はないか、あるとすればどういう手が打てるのか、といった議論をいただいていると認識している。その具体的方法や手段については、まだ明らかになるというところまで至っていないが、各市町村が混乱なく制度の実施を迎えることができるように、できる限りの努力は引き続きいたしたいと考えている。

(村上委員)

○ 医療保険費の伸び率を年率4%程度と見ているが、医療費の伸びは国民所得の伸びの範囲内に抑えるという内閣の方針はどうなったのか。また、現実的には5%台半ばの伸びを示しているが、現実との乖離はどうするつもりなのか。

(事務局 柴田保険局企画課長)

○ 医療費の伸びを国民所得の範囲内に収めるということについては、現在の経済状況が、近年にないよくない状況である一方で、医療費の予算というのは、必要な額というものを確保しなければいけないということで、このような形になっている。内閣の方針との関係については、単年度で見るということではなくて、その目標というのは少し長く、中期的に見るということなのではないかと考えている。

(村上委員)

○ 単年度ではなく、平成15年度まで医療費の伸びを4%で見ているのではないか。

(事務局 柴田保険局企画課長)

○ 現実問題として、医療費の伸びを半分であるとか3分の1に抑えるというのは難しい。推計をする時に現実的にできないような推計はしにくいということもあって、医療費の伸びを年間4%で据え置いて推計をしている。

(下村委員)

○ 医療費の伸び率4%は仕方がないから、保険料は当然それに見合うだけ取っていく、という議論には納得できない。医療費の伸びを抑えるためにはどうすればいいかという議論もせずに、これは仕方がないので保険料を上げる、という議論はおかしい。
○ 介護保険については、法律で決まってるから変えられない、という一方で、患者の負担や介護対象から外れる人への対応など、法律に書いてあることと違う議論もしているのは、一体どういうことなのか。
○ 与党三党の合意では、介護については10月中を目途にしてその円滑な施行のために予算措置を含めて対策を決める、というようなことが書いてるが、円滑な施行のためには、医療保険の保険料の問題が当然出てくるはずである。上限の問題については、10月末までには答えが出るのか。10月末に介護保険の円滑の施行のための答えを出すというのであれば、保険料の問題も含め、医療保険制度改革についても答えを出していただきたい。
○ 介護納付金については、支払基金からの調査があって、納付金額に過大、過小ということがあれば11月5日までに申請せよということであるが、これだけ被保険者の制度間での移動がある中で、それはおかしいのではないか。被保険者が移動した結果、実際にはいない被保険者を計算して介護納付金をかけられても困る。
○ 医療保険料率の上限の問題を解決せずに、法律で決まっているからということで、平成10年度の被保険者数をもとにした介護納付金を取りますよ、という調査をされても困る。介護納付金を乗せれば、健保組合の4割は上限を超えてしまうという現状がある。上限を超えてしまう分についてはどうするつもりなのか。

(事務局 井口老人保健福祉局企画課長)

○ 円滑化のための具体的方策については、議論の緒についたばかりであり、具体的な内容についてはこれから三党で論議いただくと理解している。その際には、これまでの議論も十分踏まえた上で、10月中には与党にとりまとめをしていただけるのではないかと考えている。

(下村委員)

○ 厚生省として、10月中に答えを出してくれと三党に対して要望していると理解していいのか。

(事務局 井口老人保健福祉局企画課長)

○ 10月中にとりまとめを目指すというのは三党での合意であるので、当然そういう方向で三党の中でご協議をいただけると考えている。

(下村委員)

○ 厚生省の職員は、資料の提供や制度の説明などで議員に会う機会があるはずで、そこで10月中に決めてくださいと言うべきではないのか。

(事務局 井口老人保健福祉局企画課長)

○ 事務的な事情については三党関係者も含めて説明申し上げ、それを踏まえての三党合意だと理解している。

(下村委員)

○ 現状を見ると10月中にまとめるのは難しいように見えるが、実態としてはどうなのか。

(事務局 大塚老人保健福祉局長)

○ 介護制度に関する与党における協議については、私どもも、市町村の事務の逆算からするとギリギリでも10月中にまとめなければ間に合わない、ということを事務的には繰り返し説明しており、それぞれの与党の関係者にスケジュールという意味ではご了解、ご認識いただいているものと思っている。従って、時間は限られているけれども、10月中に結論を得るよう十分期待をし、またお願いも引き続き申し上げるつもりである。

(下村委員)

○ 三党の合意文書には、「その際、税、社会保険料全体としての家計負担への影響に配慮する」、とあり、当然、医療保険の中での介護保険料と医療保険との関係については10月中に結論が出てこないと、介護保険の安定的な施行は難しいと思う。
○ これだけ期限が迫っているのであるから、厚生省も政府側としてもっと動くべきである。しかし、今日のこの資料では、目指す方向性も明らかでなく、意欲が感じられない。

(喜多委員)

○ 早く決めてもらわないと、一番迷惑するのは市町村と国民である。市町村は条例を改正する必要があり、PR期間を考えれば遅くても12月議会で議決をして制度を決めて、そして市町村民の方々にPRをしないと円滑な実施はできない。だから、円滑な実施をしようと思えば、担当の一番よくわかっている方が、政府三党の方々にきちんと説明する必要があり、そうでなければ、結局国民が困ることになる。このことをよく認識していただきたい。

(塩野谷部会長)

○ 時間がないので、次に、医療制度抜本改革についての基本的な考え方、という自民党の文章について、ご意見をうかがいたい。

(見坊委員)

○ 介護保険制度については、高齢者は次第に実感を持って受けとめているが、負担増ということについては非常に厳しい受けとめ方をしている。
○ 高齢者は約8割以上、外来あるいは入院ということで医療保険の適用を受けており、介護保険以上に老人医療のあり方については重大な関心を寄せている。
○ 高齢者の受診率は若年者に比べて高く、この率は諸外国と比べても高すぎるのではないか、という報道がなされているが、この点について、厚生省としてはどのように認識しているのか。
○ 高齢者の患者負担のあり方として、自己負担の上限定額を設けて、おおむね1割を越えない負担とする、ということの読み方について、大方の報道から推測すると、定率制1割、と読むのが妥当なように認識されるが、そういう理解でよいのか。
○ 高齢者医療制度のあり方について、審議会の企画部会においては、2案か3案併記した形で結論を見たわけであるが、一体どういう結論として理解したらよいのか。
○ 医療制度抜本改革の基本的考え方の6ページの4.老人医療費を支える仕組みのあり方について、「広く国民の納得のいく、安定したものにすることをめざし検討する」とあるが、これは平成12年度は一応検討段階ということか。

(事務局 井口老人保健福祉局企画課長)

○ 老人医療費が相対的に日本は高いのかどうかについては、老人の方々の医療費が一般の方に比べて約5倍というのは、この数字が概ね3〜4倍という諸外国と比べても、やはり高めではないかと理解している。
○ 今年8月の高齢者医療制度に関する意見書の中では、2、3案というよりも、4案併記という形で取りまとめていただいた。大きく分けると、負担のあり方、保険者のあり方等についてご議論いただいたけれども、最後まで歩み寄りができず、併記ということになり、その事情を踏まえた上で政府としての具体的な案を考えろというのが、最終的なご意見であったと承っている。従って、高齢者医療制度のあり方については抜本改革の大きな柱であることは変わりなく、一歩一歩、できるものから問題に着手したいと考えている。
○ 医療制度抜本改革の基本的考え方については、党のほうでご論議をいただいた結果のとりまとめであるけれども、私どもの方向とこの中身が違っているわけではなく、制度企画部会での議論をも反映したものになっていると認識している。ただ、具体論については、なかなか難しい問題があり、最大限の努力をいたしたいということである。

(村上委員)

○ 薬価に関しては、若干具体的な方向性が見えるものの、他の項目については、ほとんど検討とか見直すという記述であり、全く抜本改革になっていない。
○ 1ページの4番目の○で、4つの課題について「平成12年度よりの改革をめざして検討を進める」という話になっているが、厚生省としては、この自民党の案について、どのように受けとめ、また、自民党の方からはどのような指示が出ているのか。

(事務局 柴田保険局企画課長)

○ 医療費の伸び率4%については、抜本改革の影響は考慮されておらず、足下の医療費がそのまま伸びていったと仮定して算出したものである。
○ 10月13日に自民党の合同会議が開かれて、医療制度抜本改革の基本的考え方が決まった後、これに基づいて、党と平行する形で厚生省も検討せよとの指示を受けている。
○ 抜本改革の中で、当部会、あるいは制度企画部会にご相談しなければいけないものについては、指摘されている事項についてあらかじめ検討の切り口というものを示して、ご議論いただきたいと考えている。
○ 自民党の方も、内閣改造によって人事もはっきりしていないので、新しい体制が出来次第、速やかに相談をしつつ、平成12年度よりの改革をめざして、平成12年度に乗るものについては乗せていくということで従来からの方針で取り組みたいと思っている。
○ 高齢者の患者負担については、「老人医療の自己負担は上限定額を設けおおむね1割を超えない負担とする」という、これ以上でも以下でもないことしか現在のところは言えず、最終的にどういう形にするのか、どういう水準にするのかということについては、今後詰めていくものと認識している。

(村上委員)

○ 足下の状況を見て医療費の伸びを4%としているというのは嘘ではないか。現状では5%台半ば伸びているわけであり、ご訂正を願いたい。
○ 自民党からの話は分かったが、公明党と自由党との関係はどうなっているのか。

(事務局 畑保険局調査課長)

○ 医療費の伸びについて、確かに、平成10年度の後半は5%を超えているけれども、平成10年度の後半は受診率が高く出ており、その影響でやや数字が高めに出ていたのではないかと考えている。平成11年度の4月〜6月については、稼働日数の調整をすると3%台の後半であるので、平成11年度の自然体の伸びはやや低めの水準であるという印象を持っている。医療費というのは変動する要素もあり予想は難しいが、現在の認識としては4%前後、もしくはやや高めの場合は4%半ば程度と見ている。
(事務局 柴田保険局企画課長)
○ 新体制ができた時に相談する事項の一つとして、与党は現在三党体制になっているので、三党体制でどのように検討を進めていくかということも相談したいと考えている。

(村上委員)

○ 自民党案で検討を進めていいという合意は三党でできているのか。

(事務局 柴田保険局企画課長)

○ 自民党の案については、公明党、あるいは自由党、それぞれご意見をお持ちだと思うけれども、それはこれからの三党の協議体制という中でご議論いただくものではないかと思っている。

(下村委員)

○ 三党との関係は当然あると思うが、政府側としてはいろいろな可能性を考慮して具体案を検討すべきではないか。
○ 本当にこれだけの保険料引き上げを強行したいのか、また、したいとすればそれは可能なのか。もし、できないとしたら政管健保は1年で破綻するような状態にある。
○ 現行制度においては、国保の家族や現役側は自己負担3割プラス薬剤費を現実に負担しているのであるから、老人も1割程度の自己負担は必要ではないか。介護保険との整合性を考えれば、医療保険における老人の一部負担も一割にならなければおかしいのではないか。

(成瀬委員)

○ 医療費の伸びが国民所得の伸びの範囲内であれば、制度として長持ちできるということであるが、そうであるならば、医療費の伸びを国民所得の伸びの範囲内に抑えた場合、一体どういうことになるのか、ということを示してもらわなければ、判断ができない。現在出てきている資料だけでは、定性的なものだけで定量的なものがないので、議論をしようにも具体的な議論ができない。

(事務局 柴田保険局企画課長)

一定の前提をおいて計算するというのは可能であるが、現在の非常に厳しい経済状況を鑑みると、医療費の伸びをそれに合わせて試算をしても、具体的にどうやって実現していくかということになれば、悲観的に考えざるを得ないのではないか。

(村上委員)

○ 現在の経済状況の中では難しいということであるが、医療費の伸びはここしばらくの間、国民所得の伸びの範囲内に収まってきておらず、であるからこそ抜本改革の必要性が叫ばれているのである。そのことはしっかりと確認しておきたい。

(水野委員)

○ 25年間審議会の委員をやってきたが、昔はもっと役所が積極的に案を出していたのに、バブルが崩壊する前後からちょっと雰囲気が変わってきた。介護保険の施行を4月に控えて、今、役所がどういうスタンスをとるかという根本的な姿勢が問われているのではないかと思う。かつてのように、役所が案を出して、役所先導でやっていたということが、日本的であったのかどうかは別にして、行政の進め方として正しかったのではなかったかと思う。だから、関係者が納得するような案を、役所でがんばって作ってもらいたい。
○ 抜本改革については、3年なら3年を区切って、絶対にこういうものをやる、という出し方もあるのではないか。
○ 政治の世界では負担を先送りしがちであるが、後代負担をあまりすべきではない。役所も、審議会も考えて、抜本改革の案を出して、それで自民党と勝負するぐらいの気概を持って対処していく必要がある。

(野中委員)

○ 今日自民党の案が示されたが、それに対する厚生省の案を出して、それについてこの場で議論をするというのが筋ではないか。
○ 現行制度では、保険料に格差がありすぎる。医療制度の抜本改革ということであれば、保険料についても改革の一つとして検討すべきではないか。
○ 若人は所得に応じた保険料を支払っているのに、老人については高い所得があっても被扶養者として保険料を払っていない方もいる。所得に応じた保険料を設定して、高額所得者についてはそれなりの負担を求めるようなことを制度化していくべきである。国民健康保険における資産等を含めた高齢者の保険料負担の現実と、扶養家族となっている給与所得者の家族の数を明確にしてほしい。このような実態を明らかにすることも医療保険の抜本改革になくてはならない要素だと思う。

(見坊委員)

○ 私どもの意見は、国民健康保険の被保険者の声が一番強く反映しており、過疎地を含んだ地域の高齢者の声が一番強く反映されている。
○ 高齢者の自己負担については、1割負担を飲めば、老人医療が安泰とは言い切れないところに問題がある。2割の負担をしても結構という高齢者もいる一方で、5%でも負担が困難でありながら病気を持つ高齢者もいる。そういった実態を十分に認識する必要がある。

(塩野谷部会長)

○ 自民党の文書については、事務局の方からこの審議会で今後の論点を仕分けして示すということであるが、その際、単にこの問題はここの部会で扱う、という仕分けではなくて、介護保険の施行を間近に控え、また予算が決まろうとしている時に、あらゆる要素をどういうふうに議論したならば、全体像が落ち着くかということを含めて議論をうまく整理して出していただきたい。

(事務局 柴田保険局企画課長)

○ 自民党から示されている事項については、政府と与党と一体で取り組むということになっており、具体的な制度化についても、この審議会であらかじめいろいろとご議論をいただければと思っている。そのための項目の整理をして、それをお示ししたい。その際には、部会長からご指示のあった全体との関連についても、できるだけ皆様方にご説明を申し上げたい。

(下村委員)

○ 問題点というのは、本当はもうはっきりしているのではないか。本当にこの審議会で議論をして何か答えを出して、それを生かしていこうというつもりがあるのならきちんとやってほしい。そうでないのなら、もうやめてほしい。

(塩野谷部会長)

○ 今の発言は、問題点の整理仕分けではなくて、年末に向けての政策決定の問題をどういうふうに議論してほしいかということを示してほしい、ということを言ったわけで、おっしゃるとおりである。
○ それでは時間になったので、本日はこれで終わりとする。次回の日程については、改めてご連絡申し上げることとする。

問い合わせ先 保険局企画課 北波(内線3228)


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