99/09/27 第20回厚生科学審議会先端医療技術評価部会議事録 第20回厚生科学審議会先端医療技術評価部会議事録 1.日 時:平成11年9月27日(月) 14:00 〜 16:00 2.場 所:中央合同庁舎第5号館 共用第9会議室 3.出席委員:高久史麿部会長        (委員:五十音順:敬称略)         軽部征夫 木村利人 柴田鐵治 寺田雅昭 (専門委員:五十音順:敬称略)         雨宮 浩 入村達郎 小澤えい二郎 金城清子          廣井正彦 松田一郎 4.議  事:(1) 岡山大学医学部附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画         (前立腺がん)について        (2)東京医科大学病院の遺伝子治療臨床研究実施計画         (肺がん) について               (2)その他 5.配付資料:1-1 岡山大学医学部附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画申請書及び            概要書        1-2 岡山大学医学部附属病院の遺伝子治療臨床研究のための説明と           同意文書        2-1 東京医科大学病院の遺伝子治療臨床研究実施計画申請書及び概要書        2-2 東京医科大学病院の遺伝子治療臨床研究のための説明と同意文書        3  がん遺伝子治療臨床研究作業委員会(第7回)・遺伝子治療臨床           研究(がん)審査ワーキンググループ(第9回)の概要について           がん遺伝子治療臨床研究作業委員会(第8回)・遺伝子治療臨床           研究(がん)審査ワーキンググループ(第10回)の概要について ○事務局  定刻であり、かつ、委員の先生方がすべてお揃いでございますので、第20回厚生科学 審議会先端医療技術評価部会を開始いたしたいと思います。  なお、委員のうち加藤委員、曽野委員、竹田委員からは、やむをえぬ事情により御欠 席の旨、あらかじめ連絡をいただいております。 また、先般、厚生省の幹部の人事異動がございまして、この審議会を担当いたします 幹部にも異動がございましたので、議事に先立ちまして御報告させていただきたいと思 います。まず、科学技術担当審議官に就任いたしました堺審議官でございます。また、 事務局を総括します厚生科学課長に就任いたしました岩尾でございます。また、その下 で事務局を担当させていただきます方にも異動がございまして、企画法令を担当いたし ます課長補佐の宮本でございます。また、研究技術等を企画総括いたします同じく課長 補佐の新木でございます。以上、異動がございました。どうかよろしくお願い申し上げ ます。 それでは、続きまして、配布資料の確認をさせていただきます。 (以下、資料の説明と確認)  それでは、部会長、議事の進行をよろしくお願いいたします。 ○高久部会長  第20回の厚生科学審議会先端医療技術評価部会を始めさせていただきます。まず、新 しく審議官になられた堺審議官から御挨拶をよろしくお願いします。 ○堺審議官  8月31日付で科学技術担当審議官を拝命いたしました堺でございます。 初めに、委員各位におかれましては、御多用中にもかかわりませず、厚生科学審議会 先端医療技術評価部会における諸般の審議に御参画いただきまして、厚く御礼申し上げ る次第でございます。 既に御案内のとおり、近年の科学技術の進歩によりまして、厚生行政におきましても 画期的進歩をもたらし得るような先端科学技術も生み出されております。特に、昨今は バイオテクノロジー分野における研究開発の進歩は誠に目覚ましいものがある訳でござ います。その成果が産業創造につながることから、バイオテクノロジーに関係する省庁 と共同でその推進を図ることとしております。厚生省といたしましては、社会的、倫理 的問題に配慮しながら、特にヒトの遺伝子の機能を解明する研究を推進し、がん、糖尿 病、高血圧等の生活習慣病を含む多くの疾病の成因を解明し、革新的な治療法・創薬の 開発に結びつけてまいりたいというふうに考えております。 本日、御審議いただく遺伝子治療臨床研究につきましては、ヒトの遺伝子に手を加え る試みであることから、社会的、倫理的に見て妥当な研究であるかどうかの確認をお願 いしているところでございます。 当部会では、これまで遺伝子治療臨床研究のほか、昨今、社会問題化しております生 殖医療技術と、その社会的受容に関する評価などにつきましても、精力的に御議論いた だいていると伺っております。今後とも引き続き幅広い観点からの御審議をいただきた いというふうに存じておりますので、どうかよろしくお願い申し上げます。 ○高久部会長 どうもありがとうございました。よろしくお願いします。 本日、厚生大臣から厚生科学審議会に諮問がありまして、厚生科学審議会会長からこ の部会に付議されました岡山大学医学部附属病院長から提出されております「前立腺癌 に対するHerpes Simplex Virus-thymidine kinase 遺伝子発現アデノウイルスベクター 及びガンシクロビルを用いた遺伝子治療臨床研究」の実施計画の資料がお手元にありま す。この計画につきまして、この部会で御審議をいただくことになっています。まず、 事務局の方から、岡山大学から出ております前立腺がんに対する遺伝子治療の概要につ いて説明をよろしくお願いします。 ○事務局 それでは、事務局の方から、資料1、特に資料1−1に基づきまして御説明申し上げ ます。  本計画については、9月16日に岡山大学医学部附属病院から厚生大臣に申請が行われ たものでございます。 資料1−1を1枚めくっていただきまして、そこから1ページ目ということになりま すが、1ページ目は申請書の写しでございます。実施施設につきましては、岡山大学医 学部附属病院。代表者として、荒田病院長からの申請でございます。遺伝子治療臨床研 究の課題は「前立腺癌に対するHerpes Simplex Virus-thymidine kinase 遺伝子発現ア デノウイルスベクター及びガンシクロビルを用いた遺伝子治療臨床研究」でございま す。総括責任者につきましては、医学部泌尿器科学講座教授の公文先生でございます。  ページをめくっていただきまして、2ぺージ目から3ページ目が総括責任者以外の研 究者の概要でございまして、特に3ページ目をめくっていただきますと、米国のベイ ラー医科大学からの指導・協力を得るという記載になっているものでございます。  その下の欄にいきまして、審査委員会の結論、計画の承認の理由等につきまして別紙 となっているものでございまして、この内容につきましては、本資料についての最終の 9ページ目に添付されてございます。1枚紙のものでございます。  それでは、計画の概要について説明いたします。本資料をもう1ページめくっていた だきまして、4ページ目に「研究の目的」が記載されているものでございます。本遺伝 子治療臨床研究は、内分泌療法を行っているにもかかわらず、がんが進行しつつある前 立腺がんの患者さんであって、臨床的に遠隔転移を認めない人を対象に、まず単独で単 純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ遺伝子を発現させるアデノウイルスベクターを 腫瘍内に直接投与するものでございます。その後、ガンシクロビルというウイルス感染 症に効果のある薬剤の全身投与を行うものであり、研究の目的としては、ここの欄に書 いてございますが、安全性の検討を主たる目的とするが、併せて効果についても知見を 得るというものでございます。また、この研究につきましては、この欄の中ほどから下 の方にございますが、米国ベイラー医科大学で実施されたプロトコール及びその結果を 参考に行われるものでございます。研究に使用するベクターについては、米国ベイラー 医科大学で作製され、直接供給されるものでございまして、メーカー等が作製するもの ではございません。  続きまして、その次の欄の「対象患者及びその選定理由」です。先ほどの繰り返しに なる部分がございますが、内分泌療法の経過中に、腫瘍マーカーである前立腺特異抗原 を用いた生化学診断において、内分泌療法抵抗性局所再燃前立腺がんと診断され、かつ 臨床的に遠隔転移を認めない患者さんを対象とするということでございます。その選定 の理由といたしましては、この欄の真ん中から下以降にいくつかの理由が書いてござい ますが、要約すると、前立腺がんで亡くなられる方々は年々増加しており、このような 患者さんに対して、安全で有効な、これだという治療法はまだ確立されておらず、新し い治療法の出現が待ち望まれているということで、この研究を計画したというような内 容になっているものでございます。  5ぺージ目に移りまして、「遺伝子の種類及びその導入方法」の欄に記載されていま すが、導入するのは単純ヘルペスウイルスというウイルスが持っているチミジンキナー ゼという酵素をつくる遺伝子を、ヒトアデノウイルス5型というベクターに組み込んで 腫瘍内に直接投与するというものでございます。この場合、アデノウイルスベクターは 投与された体内で増えることが出来ないように、上から5行目ぐらいにございますが、 増殖に関係する部分でございますE1という領域を除いてあるものでございます。また この仕組みといたしましては、チミジンキナーゼという酵素をつくる遺伝子ががん細胞 に導入されることによって、本来、がん細胞に活性を持たないガンシクロビルをその後 に作用させた場合、細胞内でチミジンキナーゼによるガンシクロビルが別の物質に変化 し、これが細胞を死に至らしめるというものでございます。  続きまして、「これまでの研究成果」の欄に移ります。これまでの研究成果につきま しては、5ぺージ下から6ぺージに記載されております。これまでの成果といたしまし ては、ヒト及びマウスの前立腺がん培養細胞を用いた試験とか、マウスを用いた実験動 物で腫瘍抑制効果などが認められたと記載されてございます。  また、6ぺージ目の方には、同じ遺伝子ベクターを用いた第I相の臨床研究が米国で実 施されており、その結果の概要が示されているものでございます。それによりますと、 6ぺージ目の上から3行目、4行目にございますが、今回と同じようなアデノウイルス ベクター投与による有害事象に関するデータが蓄積されてきており、臨床効果の評価に ついても詳細な解析が進んできているというような状況でございまして、少し条件が違 いますが、これまで18例の前立腺がんの患者さんに対して投与が行われて、1例の患者 さんを除いては、投与による大きな障害、副作用、有害事象等は特段起こらなかったと されているものでございます。  続きまして、その次の「安全性についての評価」の欄に移ります。このベクターにつ いては、現行の米国の基準に従って、原材料からその製造工程に至るまで一貫した品質 管理のもとに製造される旨が記載されているものでございます。最終製品についても、 FDA基準に従った安全性項目のすべてがベイラー医科大学等で確認されているもので ございまして、このものを用いて日本でも研究を進めるというような流れになるもので ございます。  続きまして、「遺伝子治療臨床研究の実施が可能であると判断する理由」につきまし ては、6ぺージ目下から7ぺージ目にございます。特に、岡山大学医学部附属病院に係 る部分といたしましては、7ぺージ目の上から3行目以降に記載があるものでございま す。岡山大学医学部附属病院においては、前立腺がん等の治療に関する基礎的・臨床的 研究をこれまで積極的に実施しており、米国ベイラー医科大学での実施の類似の研究に 参画した研究者がいること。また、既に肺がんに対する遺伝子治療臨床研究を開始して おり、ベクターの取り扱い場所、研究を実際に行う場所やその設備が既に整備されてい ること他を挙げているものでございます。  続きまして、研究の実施計画につきましてもう少し説明いたしますと、本研究につき ましては、第I/II相試験として実施するものでございます。ベクターの投与される量は 3つのレベルで行われる予定でございます。各々のレベルにつきましては、3人ずつ行 われ、一番下の投与量から順々に行われるもので、3人について有害事象が発生しなけ れば随時用量レベルを増加するという計画を立てているものでございます。勿論、被験 者に対しては、文書に基づいた説明を実施し、十分理解を得た上で同意書に署名をした 人とするということがこの部分に記載されているものでございます。また、遺伝子のア デノウイルスベクターを投与した後のガンシクロビルの投与につきましては、1日2回 で14日間を予定しているものでございます。予定症例数につきましては、計画どおり進 めば合計で12例、各用量レベルでの副作用の出現の有無によっては最大18例を予定して いるというのが7ぺージ目の下から3行目、4行目のところに記載しているものでござ います。  もう1ぺージめくっていただきまして、8ぺージ目の上の欄、1)、2)、3)とご ざいますが、この部分が米国での臨床研究と、今回、日本で行われる研究との相違して いる部分でございます。  そのほか備考欄を見ていただきますと、被験者につきましては、その申し出により同 意を撤回し、本臨床研究への参加をいつでも中止することが出来る旨が記載されていま す。また、この計画については、その科学的・倫理的妥当性について、大学の遺伝子治 療臨床研究審査委員会で、平成11年2月10日から平成11年7月14日の5ヵ月にわたり審 査を行ったことが記載されているものでございます。  資料1−1につきまして説明は以上でございまして、もう一つ、本研究に関しまして 資料1−2というものがございます。  資料1−2につきましては、当初、岡山大学医学部から提出があったものを本部会に 提出させていただいているものでございまして、研究のための説明と同意書という内容 でございまして、先ほど概要を資料1−1で説明したものにつきまして、より分かり易 く記載されているものでございます。説明ということではございませんが、「はじめ に」に、どういう目的で行われるかとか、条件につきまして簡単に説明がされているも のでございます。  ぺージをめくっていただきまして、2ぺージ目につきましては、「遺伝子治療臨床研 究について」ということで、患者さんの今の状態について、こういうふうな内容を説明 する。また、状況はどういうことになっているかということを記載しているものでござ います。  3ぺージ目にいきまして、遺伝子治療の臨床研究の今回の仕組みについて書いてある ものでございまして、先ほど申しましたように、図1に示してございますように、まず は単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ遺伝子を導入しまして、その後にガンシク ロビルというものを点滴注射するというものでございます。  4ぺージ目にいきますと、ウイルスのベクターのシステムの説明ということでござい まして、先ほど説明しましたように、E1というものを取り除いてあるものでございま す。この絵ではE1の部分と導入するチミジンキナーゼ遺伝子が交換しているようにな っていますが、実際にはそういう内容ではございません。  5ぺージ目は、ガンシクロビルという薬剤について説明をしているものでございま す。ガンシクロビルというものが今回導入しました遺伝子によって別の物質に変わると いうことでございまして、その別の物質が抗腫瘍効果を有するということが記載されて いるものでございます。  6ぺージ目にいきまして、「臨床研究の進め方」ということで、中の図3を見ていた だきますと、これが最も適当に進んだ場合の12例という流れでございます。3投与群の 間の関係といたしましては、それぞれ10倍量ずつの関係があるものでございます。  7ぺージ目以下につきましては、判定基準や、事後どのような対応をとるかについて 書いているものでございます。  9ぺージ目にいきますと、先ほどの米国ベイラー医科大学の方で先行している研究の 状況について簡単に書かれているものでございます。  10ぺージ目につきましては、治療に関わる諸経費その他につきまして内容が記載され ているものでございます。 11ぺージ目、12ぺージ目につきましては、調査研究の同意書の様式でございます。 説明については以上でございます。 ○高久部会長 どうもありがとうございました。岡山大学医学部附属病院から出ています臨床研究の 実施計画につきましては、従来のように、今後、この部会の下に作業委員会をつくらせ ていただいて、その委員会で主として科学的な側面について論点を整理していただくこ とになっています。その前に、この部会として、岡山大学医学部附属病院から出ていま す遺伝子治療に関しまして、社会的な面、あるいは倫理的な側面から御審議いただきた いと思います。この実施計画書並びに同意説明書等について、御意見がおありでしたら どうぞ御遠慮なくよろしくお願いします。 ○松田委員 この研究の一番最初のところを見ますと、資料1−1の4ぺージ目ですが、「a)安全 性の検討」というのがトップに挙がっていますね。2番目に「b)治療効果の観察」とな っていて、この主たる目的は安全性の検討であるということがどこかにうたってあった と思います。そのように考えて資料1−2の患者に対する説明の方を見ますと、2ぺー ジ目の上から2行目ですが、いきなり「期待される効果」というのが先に出てきて、 「安全性」は2番目になっていますね。読んでいると、患者さんの方にはいかにも「期 待される効果」の方が強い印象が出てきていて、「安全性」というのがその次にあるよ うな印象を受けるのですが、やはりこれも資料1−1に書いてあるとおり、これは非常 に大事な仕事ですので、特に安全性を考えて今やろうとしている訳ですから、「安全 性」という言葉をはっきり患者さんの方の文書にも第1に挙げた方がいいのではないか と思います。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。そのとおりだと思いますので、岡山大学医学部附属 病院の方にお伝えしたいと思います。ほかにどなたか。 ○松田委員  もう1つ。資料1−2の9ぺージ目ですけれども、「12. 患者さんの権利と義務につ いて」というのが書いてありますね。読んでみても患者さんの義務というのは全然分か らないし、どういう義務を患者さんに課すつもりなのか。私は、この言葉は要らなくて 「患者さんの権利について」だけでいいのではないかというふうに思って読んだんで す。実は、前に熊本大学でも、出来ませんでしたけれども、あのときかなり議論があり まして、「義務」という言葉も1回出たんですけれども、一体何が義務なんだろうかと いうことでディスカッションして、結局、外した経過があります。私としては、「義 務」というのはちょっと強過ぎるのではないかと思いますけれども、ほかにどなたか御 意見があれば。 ○高久部会長  強いて言えば、治療を受けたならば、終了した後も経過観察のために定期的に受診し てもらいたいということが義務になりますね。 ○松田委員  そうなんです。だけど、それを義務とまで言えるかどうかですね。 ○高久部会長 何か御意見ありますか。患者さんの権利とお願いですかね。 ○松田委員  そうなんです。「義務」というのは、レスポンシビリティーが余りにも強いのではな いか。英語ならデューティーとか、レスポンスとか、いろいろ言葉がありますので使い 分け出来るでしょうけど、日本語は適当な言葉が余りないですね。言葉を選んでいただ いた方がよいのではないかと思います。それだけです。 ○高久部会長 そうですね。 ○雨宮委員  先ほど部会長から御説明があったのですが、科学的なところはこれからやるんです か。 ○高久部会長 ええ。これから作業委員会で審議します。がんの遺伝子治療臨床研究作業委員会があ りますが、泌尿器科の分野の方が作業委員に入っておられません。寺田委員、確か入っ ていなかったですね。 ○寺田委員  入っていないです。 ○高久部会長 このプロトコールの審査には、泌尿器科の方が入っていただかなければならないので 恐らく一部委員の組み替えになると思います。寺田委員にお聞きしますが、アメリカで は内分泌療法はやらないのですか。 ○寺田委員  やると思います。 ○高久部会長 それでこのプロトコールがよく岡山大学のIRBを通りましたね。 ○松田委員  代替療法のところも気になりましたけれども、専門ではないので、先生が科学的なと ころはこれから部会でやるとおっしゃっていましたので、そこは避けました。 ○高久部会長 ほかにどなたかいかがでしょうか。 ○柴田委員  資料1−1の8ぺージの最後のところに、岡山大学医学部附属病院遺伝子治療臨床研 究審査委員会で審査は終わっているとございますが、全く参考まででいいんですけれど も、もしこの審査委員会の人的構成が分かったらお知らせください。別に誰だというこ とは要らないですけど、つまり、どんな人が集まっていて、何人ぐらいいるのかという のが分かればちょっと教えていただければと思います。 ○高久部会長 事務局で分かりますか。 ○事務局  今、手元にはリストがないのではないかと思いますが、一応、厚生省、文部省で示し ました基準では、構成にあたっては、内部の委員のみならず、外部の委員も含めてとい うこと。それから、基礎及び臨床医学の専門家のみならず、患者さんの権利に関わりま す法律とか倫理の方々も含めて構成するようにとお願いをして、それに準じて構成いた だいているかと思います。これは、もし手元にありましたら後ほど御報告させていただ きますし、もしなければ、また資料の提出の中で各委員に御報告させていただければと 思います。 ○高久部会長 施設内のIRBの委員の名簿をこれからは出してもらった方がいいですね。IRBで 承認するということが第1段階ですから、どういう委員が審査したかということを1枚 のメンバーリストでいいと思いますので。 ○木村委員  同じ岡山大学医学部附属病院で、この前は肺がんで、今度は泌尿器科ですね。肺がん の方の書類は説明と同意書の方には、GCPに沿ってちゃんと健康被害補償に関わる補 償の内容の追加の記載があるのですが、これはそれがないですね。やはり健康被害補償 に関わる補償内容の追加が必要ではないかと思うのですが、どこかにありますでしょう か。同じ岡山大学医学部附属病院ですので、外科の方では補償があって、泌尿器科の方 では補償がないというのはちょっとおかしいんじゃないかと思うんです。  それから、第1外科の方は、説明と同意書の中には、考えられる可能性のある副作用 については大変詳しく50項目挙げて、腹痛、貧血、食欲不振、不安、無力症、胸痛、寒 気、便秘とかいろいろ書いてあるのですが、実際にこちらの方を見ますと、割と副作用 がないという印象を持たざるを得ない。例えば発熱と痛みの腫れ程度で、しかも、それ はどうということはないということが書いてありますが、外国での状況を含めて、片方 の外科の方では非常に用心深く、注意深く、例えば頻尿とか嘔吐とか、大変丁寧に、あ る意味では患者さんに詳しい情報を出している訳ですけれども、こちらは割にさらりと 書いてあって、いずれも可逆的で、正常値にすぐさま回復するという非常にポジティブ な書き方になっているんですけれども、果して本当にそうなのかどうかということをお 伺いしたいのですが、そのデータはどうなんでしょうか。 ○事務局 本日の資料は概要と患者さんへの説明と同意文書だけでございますので、このもとに なりました岡山大学医学部の学内委員会で利用されました99年の公表文書、あるいはベ イラー医科大学における各種の基礎データについては添付しておりませんので、木村先 生が御指摘のとおり、よく分からないじゃないかということだろうと思います。ただ、 ここに挙げられておりますのは、ベイラー医科大学の公表文献をベースにして、そこで 挙げられたものを例示していると思いますし、また、岡山大学医学部附属病院の肺がん の場合の併用療法の薬剤等の違いなども影響しているのではないかと思いますが、いず れにしましても、既に御指摘いただいております諸点と併せまして、作業委員会で詳細 な論点整理をする過程と並行しまして、患者さんへの説明と同意文書等の見直しも岡山 大学の方で実施していただくようにお願いしたいと思います。 ○高久部会長 副作用に関しては作業委員会で審査出来ますが、補償の件は作業委員会では出来ない と思いますよ。 ○木村委員 これは、ナショナルレビューというか、要するに、岡山大学の外科と泌尿器科の問題 だけじゃなくて、後ほど出てきます東京医科大学とか、あるいは現在、東京大学医科学 研究所とか、いろいろなところに全部関連してくるものですので、統一的に考えていか なければいけないと思うのですが、例えば岡山大学医学部附属病院の肺がんの場合の変 更内容の変更理由というのがあるんですけれども、それによりますと、「治験の実施に 際してGCPを厳格に適用して考えると、因果関係が必ずしも明確ではなく、発生件数 も極めて少ないものであっても、因果関係が否定出来ない症状であれば、1例のみに認 められた症状も含めてすべて示した方がよい」というふうに当部会が言って、そして岡 山大学医学部附属病院が変更して詳しく書いてきた訳ですね。ですから、余りさらりと 書かれると、本当かなという気がする訳で、整合性、統一性という観点から、今後いろ いろな形で副作用その他の問題というのは大きな問題になってくるかと思いますので、 ぜひ統一的な記載をしますように、いわば変更をお願いするという形に出来ればと思い ます。 ○高久部会長  資料1−2の9ぺージに「通院や入院、社会的問題などによる臨床研究期間中の減収 や不快感などの精神的または肉体的な不利益に対する補償をすることは出来ません。」 と書いてありますね。岡山大学の外科の治療研究の場合には、メーカーの治験として治 療していますから、補償はメーカーが補償するのですが、この泌尿器科、治療研究は大 学としてやっているので、患者さんの具合が悪くなったら責任をもって治療をするけれ ども、その事に対する補償には、お金の出場所がないということですね。外科の場合と は違う筈です。 ○木村委員  そうすると、それは患者の方から見ると外科でやってもらいたくなってしまいます ね。 ○高久部会長  スポンサーがついているか、ついていないかの相違で、この場合にはこういうふうに 書かざるを得ないでしょうね。この点についてコンセントを得ておかないと後で困ると いうことになります。スポンサーがついている場合には問題がないのですが。その点が 違うと思います。ほかに何かございますか。 ○雨宮委員  いまの補償の件ですが、大学でやる場合、確かにスポンサーがいないと補償出来ない ということがあって、ここにも書いてあるのですが、実際には、そんなことはないと思 いますが、何か起こったときに、起こった患者さん、あるいはその家族が裁判にもって いくということも考えられますね。それはそれで結構であるというふうに考えていくの でしょうか。そこら辺がちょっと心配になります。 ○高久部会長  ベイラー医科大学で2年間ぐらいやっています。それから、このパターンは他の遺伝 子治療でもよく使われています。今まで使われているベクターはレトロウイルスが多い のですが、チミジンキナーゼとガンシクロビルという組み合わせそのものはずいぶん前 から行われています。今迄裁判になるような重篤な副作用は起こっていませんが、生身 の患者さんが相手ですから何が起こるか分かりません。裁判になる可能性が全くない訳 ではないと思います。 ○木村委員  資料1−2の10ぺージに今、雨宮委員の言われたようなことが書いてありまして、上 から2行目のところですけれども、「臨床研究の参加に同意されても、医療訴訟を提起 されることや人権が制約されることはありません」とはっきり書いてありますね。ただ この文章が「医療訴訟を提起されること」というのは、患者に対する尊敬語なのか、 我々が(提訴)されるという意味なのか、ちょっと不明なんです。文法的に言うと、 「医療訴訟をすることや患者の権利が制約されることはありません」という言葉ではな いかと思うんです。これは、たしか以前、審議の中でどこかのが出てきましたときに、 一応、病院の中の補償のシステムに入っているような形の記載をしたのがございました けれども、あれは財団法人癌研究会癌研究所附属病院ですよね。 ○寺田委員  財団法人癌研究会癌研究所附属病院だろうと思います。 ○木村委員  ですから、今後、一切責任を負わないというのではなくて、何かそういう形での医療 訴訟被害の補償を前提にした、アメリカなどではNIHの研究費を通じてやっているも のですからはっきりと書いてあるんですけど、日本の場合、それは一切ないということ ではないというふうに確か前課長が言っておられたような気がするのですが、そこら辺 のところをきちんとしませんと、こういう先端医療技術の非常に意欲的な展開が患者に 不安を与えることになってしまって、まさかの場合には補償があるという方がよりベ ターではないかというふうに思うんです。そこら辺のところは、全然補償がないという 訳ではないというふうにお伺いしましたが、どうなんでしょうか。 ○高久部会長  その事は、遺伝子治療だけじゃなくて、臨床研究全体に言えることではないかと思い ます。その議論はここでは余りなされなかったと思います。寺田委員の国立がんセン ターは臨床研究をたくさんやっておられますが、どうですか。 ○寺田委員  企業がイニシアティブをとっている、いわゆる治験は多くやっています。しかし、研 究者がイニシアティブをとる場合は必ずそこが問題になります。余り数も多くありませ んが必ずそこが問題になりますがはっきりした答えがありません。 ○高久部会長  新しい手術法でも当然問題になる訳ですね。それから、新しい治療法の組み合わせと か、そういうときに必ず問題になりますね。  ほかにどなたか。それでは、先ほども申し上げましたように、今後、がん遺伝子治療 臨床研究作業委員会で先ほど御指摘のありましたインフォームド・コンセントの部分も 含めて検討していただきます。その結果をみてまた御議論をお願いしたいと思います。  それでは、作業部会について説明していただけますか。 ○事務局  現在、がんに関します作業委員会を、寺田先生を座長のもとに、文部省と共同事務局 で開催しておりまして、御指摘のとおり、泌尿器部門の専門家は現在の構成メンバーに おりませんので、座長並びに部会長と御相談した上、適切な専門家を補った形で至急専 門委員会を構成し、この案件について科学的な論点整理を進めていただきたいと事務局 では考えております。 ○高久部会長  それでは、次に、別の遺伝子治療研究の課題で、厚生大臣から同じく厚生科学審議会 に諮問がありまして、審議会会長からこの部会に付議されました東京医科大学の病院長 から提出されています「非小細胞肺癌に対する正常型 p53遺伝子発現アデノウイルスベ クター及びシスプラチン(CDDP)を用いた遺伝子治療臨床研究」の実施計画につい て、今後の取り扱いを含めて当部会としての御審議をいただくことになっています。事 務局の方から、東京医科大学病院の遺伝子治療臨床計画の実施計画書及び概要書につい て説明していただけますか。 ○事務局  それでは、事務局の方から、資料2−1、資料2−2に基づきまして御説明申し上げ ます。  まず、特に資料2−1に基づきまして御説明申し上げます。本計画につきましては、 1枚目を開けていただきますと、1ぺージ目に、9月17日に東京医科大学病院から厚生 大臣に申請が行われたものでございます。実施施設につきましては、東京医科大学病 院。代表者といたしましては、伊東病院長からの申請であり、遺伝子治療臨床研究の課 題につきましては、「非小細胞肺癌に対する正常型 p53遺伝子発現アデノウイルスベク ター及びシスプラチン(CDDP)を用いた遺伝子治療臨床研究」でございます。総括 責任者につきましては、外科学第一講座教授の加藤治文先生でございます。  続きまして、2ぺージ目に移りまして、2ぺージ目から3ぺージ目が総括責任者以外 の研究者の概要でございまして、特に3ぺージ目をご覧いただきますと、岡山大学医学 部附属病院や、また、当該ベクターを供給されるアールピーアールジェンセル社からの 指導・協力を得るという記載になっているものでございます。  審査委員会の結論につきましては、計画の承認理由につきましては別紙となってござ いまして、本資料におきましても、最終ぺージでございます6ぺージに添付されている ものでございます。  3ぺージ目に戻りまして、「研究の目的」等が記載されておりまして、本遺伝子治療 臨床研究の目的は、 p53遺伝子に突然変異や欠失などの異常を有する根治的切除不能な 原発性あるいは再発性の非小細胞肺癌症例に対して、正常型の p53遺伝子発現アデノウ イルスベクターを局所投与し、また、シスプラチンの全身投与を行った場合の安全性を 観察し、最大耐量を決定すること、併せて治療効果も検討するというものでございま す。  また、本研究につきましては、3ぺージ目の中ほどから下の方にございますが、テキ サス大学 M.Dアンダーソンがんセンターの遺伝子治療臨床研究プロトコールに準じて行 うものでございまして、既に申請され、実施して差し支えないと本部会でも結論を出し ました岡山大学医学部附属病院と同一のプロトコールで実施するものでございます。そ して現在、当部会の下に設置されております作業委員会で審議中でございます東京慈恵 会医科大学附属病院、東北大学加齢医学研究所附属病院と4施設で研究を進めるもので ございます。  なお、繰り返しになりますが、正常型 p53遺伝子発現アデノウイルスベクターにつき ましては、米国の会社より共同開発会社であるアールピーアールジェンセル株式会社を 通じて供給を受けるものでございまして、いわゆる治験により行われるものでございま す。  このように研究を行うことが当部会において認められ、既に開始をしている岡山大学 医学部附属病院と同一のプロトコールで実施するということでございますので、当該概 要書等につきましては、基本的に同じような記載にするように事務局から事前に助言を 行っているものでございますので、以下は特に記載が相違している箇所を中心に説明を したいと思います。  まず、3ぺージ目の下の「対象疾患及びその選定理由」の項では、肺がんによる死亡 者数の最新のデータであります1997年のデータが示されているものでございまして、基 本的に増加を続けているという傾向に変わりがあるものではないというような状況でご ざいます。  続いて4ぺージ目にいきまして、「遺伝子の種類及びその導入方法」の欄に移りたい と思います。この内容につきましては、岡山大学のそれと同様でございます。  続きましては、その下の「これまでの研究成果」の欄に移りたいと思います。この欄 につきましては、下の方になりますが、米国での同様のウイルスベクター投与による安 全性検討による第I相試験が岡山大学の検討のときには実施中であった訳ですが、現在は 終了し、解析中である。現在までのところ、高い確率をもって発生する重篤な副作用は 認められていないとの記載に変わっているものでございます。  なお、「安全性についての評価」については、特に記載は変わっていないというもの でございます。  続きまして、5ぺージ目の真ん中の欄でございますが、「遺伝子治療臨床研究の実施 が可能であると判断される理由」に移りたいと思います。当該施設が p53遺伝子の変異 や欠失を検出するシステムを確立していること。担当医師は、当該研究関係の臨床手技 にも習熟していること他を当該施設は挙げているものでございます。  5ぺージ目下から6ぺージ目の「実施計画」につきましては、岡山大学のそれと同様 でございますので省略させていただきますが、基本的には4施設で24例、岡山大学の方 で行う予定であった24例を対象に行うということでございます。  そのほか、6ぺージの「備考」欄には、被験者は、その申し出により同意を撤回し、 本臨床研究への参加をいつでも中止することが出来る旨が記載されております。また、 この研究につきましては、その科学的・倫理的妥当性について、大学の遺伝子治療臨床 研究審査委員会で審議を行ったことが示されてございます。  あと、資料2−2につきましては、当初提出があったものを本部会に提出させていた だいているものでございますが、4施設で今後進めていくということでございまして、 基本的には、外国での同様な研究の追加情報他が追加されている以外は、岡山大学と基 本的に同一の内容のものが出てきているものでございます。  最後に、今回、東京医科大学病院の申請につきましては、既に確認されている岡山大 学医学部附属病院と同一プロトコールで実施することから、同様の位置づけで現在、作 業委員会の方で審議中の東京慈恵会医科大学附属病院、東北病院加齢医学研究所附属病 院の実施計画の検討の中で、科学的側面の論点整理のための検討を効率的・円滑に進め るための方法等について意見交換を行っているということを併せて御報告申し上げま す。  説明については以上でございます。 ○高久部会長 どうもありがとうございました。東京医科大学病院から出ています遺伝子治療臨床研 究について、計画並びに説明は、数字的な点が少し違いますが、内容は岡山大学と同一 のものというふうに考えています。 ○木村委員  東京医科大学の方は、岡山大学の第一外科の方に沿って大変きちんとまとめられてい るという印象を持ちました。特に9ぺージのところに「安全性と副作用について」とい うことで、その下の5行に大変詳しく書いてございますし、先ほどの岡山大学の泌尿器 科の方は、外国の事例と関連する形で副作用が書いてありますね。これは、やはり安全 性と副作用ということでまとめて書いた方がいいのではないかと思います。  それから、11ぺージでございますけれども、先ほど部会長からお話がございましたよ うに、「治験担当医師の賠償責任を含めた保険による補償」というのは、恐らく試薬と いいますか、薬品の提供者側との関連でそうなっているかと思いますが、そういうこと がきちんとここに書いてございます。それから、「外国での状況」ということで、副作 用や安全性とは別に書いてある。これは大変よく出来ているのではないかと思います。 それから、松田委員が報告されましたように、12のところで「臨床試験に参加する患 者さんの権利と義務について」ということで、これは「義務」というのは必要ではない んじゃないかと私も思いますものですから、それでいいのではないかと思います。それ から、プライバシーの保護ということも含めまして、基本的には統一的な整合性という 点では了承出来る内容になっているのではないかという印象を持ちました。 ○高久部会長 今までは権利と義務の両方が書かれていましたね。幾つも審査をしてきましたが、私 はよく覚えていません。 ○事務局 多分、米国での患者さんへの説明と同意の文書を横文字から縦書きに直してきた経緯 を考えますと、恐らくそのまま「権利と義務」と書いたのではないかというふうに思わ れます。ただ、内容的に言いますと、患者さんの権利のことを中心に記述しているとい うこともありますので、今後のこういった資料作成の相談に対する事務局としての対応 も含めまして、出来るだけ内容に沿った、また、本日の御議論等を踏まえたものにして いただくように事務局としては考えてまいりたいと思います。 ○高久部会長 今、作業委員会で検討している分についても、その点は少し直した方が良いですね。 ○木村委員  9ぺージのアデノウイルスの説明のところで、システィックファィブローシスとの関 係で、ベクターを肺の中に散布するから肺炎が起こる可能性がありますと書いてあるの ですが、本臨床試験はそうじゃないというんですけれども、これは読み違えると、文章 のつながりが、ここでなぜシスティックファィブローシスのことを言わなくてはいけな いのか。多分、アデノウイルスの説明で、これはそうじゃないから大丈夫ですよと言い たいと思うのですが、文章のつくり方が必然性が本当にあるのかどうか、そんな感じが したんです。本臨床試験ではこれをがん部に注射するということを前に持ってきません と、この文章では、いかにも気管支炎や肺炎が起こる可能性もあるかのように判断しか ねないですね。それはないということを言いたいと思うのですけれども、文章のつくり 方を考えていただきませんと誤解を招くと思います。これはシスティックファィブロー シスじゃない訳ですから。 ○高久部会長  今迄の遺伝子治療臨床研究でベクターに関連した副作用として一番問題になったのが システィックファィブローシスの患者さんにアデノウイルスベクターを使ったときに肺 炎が起きた事でした。その事が、今の遺伝子治療臨床研究の中で明らかになった唯一の 重症の副作用なものですから、それで注意して書いたのだろうと思います。 ○松田委員  日本には患者さんがいませんから。システィックファィブローシスはいませんから、 これはなくてもいいのかもしれません。 ○高久部会長  これも、アメリカの文章を訳したのでしょうね。岡山大学医学部附属病院のとおりに なっていると思います。 ○寺田委員  調整会議の性格づけをはっきりしておくことが必要だと思うんです。これは単なる話 し合いの会なのか。多施設研究でこのような第I期、第II期を行うのは普通ではないと思 います。調整会議をやるという理由はよく分かりますし、これからこういうのがずいぶ ん増えてくると思うんですけれども、これは単なる話し合いなのか、どういう調整をす るのか。それから、調整会議の議長は岡山大学なのか。そういうところがはっきりしな いですね。これは事務局の方から4つの機関に言っていただければいいんじゃないかと いうのが1つ。  それからもう1つ、この前は時間がなかったので聞かなかったのですが、24症例が必 要だという根拠は、どうして24なのかよく分からなくて、岡山大学で現在進行中のもの があったら、ここに入れるべきだと思うんです。 ○高久部会長 がん遺伝子治療臨床研究作業委員会が先週の金曜日に開かれました。その中で岡山大 学と東京慈恵会医科大学と東北大学加齢医学研究所の3カ所で同じプロトコールの遺伝 子治療臨床研究をする。東京医科大学が入ると4つになりますが、調整会議を開いて、 同じプロトコールで実施するという説明がありました。そのときに議論になったのは、 新しいGCPでは多施設の場合、調整委員が必要である、恐らく岡山大学の田中教授が 調整委員になられ、各施設の治験の責任者が集まる。ですから、調整会議よりは責任者 会議だと思います。田中先生が調整委員になられて4施設の治験の責任者に集まってい ただいて、同じプロトコールでやるようにコーディネートする必要がある。普通の治験 のパターンだと思います。 ○寺田委員  おっしゃるとおりで、本当にそうでいいのでしょうか。 ○事務局  今お話しいただいたとおりでありまして、現段階で、東京医科大学のものまで含めま して4施設で、多施設同一プロトコールによる治験を実施したいというのがスポンサー 側の意向でございます。ただし、現段階では、岡山大学の分だけが厚生大臣、文部大臣 から了解の意見表明がされて進行中でありまして、残り3施設につきましてはまだそれ が出ていないということで、まだ薬事法に基づきます治験の関係の手続きが行われてい ないということもありまして、きちんとした形になっていない。当然、薬事法に基づく 治験の手続きをとる過程で、今、寺田委員から御指摘、あるいは部会長からお話のあり ましたような適切な形態に改めるというものになろうかと思います。現在、4施設の間 の非公式な協議の段階では、部会長からお話がありましたとおり、岡山大学が委員長を 務めるということ。それから、4施設がこれに参加をするということ。これは治験のプ ロトコールに沿って進めていくということは合意されているところというふうにスポン サーになるアールピーアールジェンセル社からは聞いております。 ○柴田委員  今のことに関係あるのか、あるいは、ちょっと聞き落としたのかもしれませんけれど も、資料2−2の10ぺージの下から6行目のところに「あなたの病状については、担当 医師以外に、委員が監視する仕組みになっていますので審査委員会の指導により治療が 中止される場合もあります。」という言葉があるのですが、この委員というのは、これ を審議した病院の審査委員会の委員と同じなのかどうか。同じだとすれば、そういう委 員が治療の過程を、事前審査だけじゃなくて、いわば病状を見て立ち会うような格好に なっているのかどうか。その辺の仕組みを教えていただければと思います。 ○高久部会長  今までも各施設のIRBの委員がフォローアップをしていました。東京大学医科学研 究所でもIRBがずっとフォローアップをして、続けるかどうかなどを判断しています ので、この表現にもありますように、担当の医師がやりたいと言っても、IRBの方で ノーと言う可能性がない訳ではないという事が含まれていると思います。 ○柴田委員  それは大変結構だと思いますけれども、その場合、どのぐらい報告をしていくという ような義務付けがなされているのかどうか、その辺はどうでしょうか。 ○高久部会長  東京大学医科学研究所の場合には、数ヵ月に1回位だったのではないかと思いますが 正確に知りません。 ○柴田委員  予想外のことが起こったら必ず報告するとか、そういうようなことがあればいいとは 思うんですけれども。 ○高久部会長  当然そうです。IRBにかけていますので、当然、総括責任者と施設のIRBの委員 長の両方の責任になります。その点はかなり神経質にやっているのではないかと思いま す。 ○木村委員  アールピーアールジェンセル社は何回も名前が出てきたのですが、 Introgen Therape uticsというのは、この分野では御専門の方々は当然よく知っている企業体であると思う のですが、東京医科大学のケースで初めて出てきたのですけれども、具体的にどういう 企業体なのかご存じでしょうか。 ○事務局  このベクターの供給に関しましては、実はアールピーアールジェンセル社が複数の治 験に出てまいります。それで、実際には、いわゆるベンチャー的なところが実務を担当 しております関係上、アールピーアールジェンセル社の孫会社のような形になろうかと 思います。今回のところでは、出来るだけ丁寧にということもありまして表示で出てき たということで、実は同じアールピーアールジェンセル社が供給するものでございます が、既にここで御議論いただいた千葉大学医学部附属病院の食道がんの場合、同じアー ルピーアールジェンセル社でも、岡山大学医学部附属病院のものとベクターを供給する ファクトリー、プラントが違うといったような状況がありまして、そういう意味では、 どこでということを明示いただいたというものでございます。 ○高久部会長  アールピーアールジェンセル社の子会社ですね。もともとアールピーアールジェンセ ル社は、ロールプランローラン社とジェンセル社が一緒になってできた。その下の子会 社ですからややこしくなっています。  他にどなたか。これも、現在、慈恵会医科大学、東北大学の方から出ています申請を 審査しています同じ作業委員会で東京医科大学のプロトコールを審査することになると 思います。その結果については、また当部会で皆様方に御報告して御意見をお伺いした いと思いますので、そのときにはよろしくお願いします。他にありますか。 ○事務局  今の件につきましては、御指示のように作業委員会の方に持ち込みたいと思います。  それで、資料3でございますが、当部会の下に設けられましたがん遺伝子治療臨床研 究作業委員会、現在、がんの関係の遺伝子治療臨床研究計画の複数について論点整理を 進めていただいております。前回の当部会以降、2回、がん遺伝子治療臨床研究作業委 員会もしくは文部省の方でいいますとワーキンググループが開かれております。概要に つきましては資料3に簡略にまとめておりますが、7月23日に第9回のワーキンググ ループ、厚生省の方でいきますと第7回がん遺伝子治療臨床研究作業委員会を開催いた しました。ここでは、名古屋大学医学部附属病院の悪性グリオーマに対する遺伝子治療 臨床研究計画と、今話題に出ました東京慈恵会医科大学、東北大学加齢医学研究所附属 病院の肺がんに関する遺伝子治療臨床研究計画について付議があった旨、御説明をいた しまして、各作業委員会の委員の分担についてお決めいただいております。各分担につ きましては、記述がございますが、この分担に応じまして論点の整理を主体的に取り組 んでいただくということでございます。  また、東京大学医科学研究所附属病院の肝がんに対する遺伝子治療臨床研究でござい ますけれども、これにつきまして、がん遺伝子治療臨床研究作業委員会としての質問を しておりました点について回答が出てまいりましたので、その可否について論議をいた しております。これについて、意見書としてもう一度お尋ねをする必要が出来たという ことで、その取りまとめを進めておるところでございます。  2枚めくっていただきまして、9月24日、先週の金曜日でございますが、第8回のが ん遺伝子治療臨床研究作業委員会、文部省側でいきますと第10回のワーキンググループ を開催いたしております。ここでは、以前から御議論がありました財団法人癌研究会附 属病院の遺伝子治療臨床研究、これは乳がんに対する遺伝子治療臨床研究計画でござい ますが、再度これに対する質問をしました点についての回答が提出されまして、併せて 総括医師の方から口頭での御説明も承ったということで、がん遺伝子治療臨床研究作業 委員会としてはほぼ議論が尽くされたということで、現在、がん遺伝子治療臨床研究作 業委員会座長のところで意見を取りまとめるべく準備を進めております。取りまとめが 完了いたしましたならば、この部会の方に論点整理結果として上げてまいりたいという ふうに考えております。  また、東京慈恵会医科大学、東北大学加齢医学研究所につきましては、そのプロト コールのベースになっております岡山大学のものとの連携、それから先ほど部会長から 御指摘のありました調整委員会の位置付け、それから、当初、岡山大学の案件を論議し ました際に、今まで未了でありました米国での第I相試験の状況等について、東京医科大 学を含めました4大学の調整委員会のメンバーであります東京慈恵会医科大学の衛藤先 生からその状況について御報告をいただき、論議をしていただいた。これにつきまして も、ほぼ論議を取りまとめられる段階に至ったのではないかということで、これも可能 であれば取りまとめの上、上げてまいりたいというふうに考えております。ただ、本日 4番目の施設であります東京医科大学の案件ががん遺伝子治療臨床研究作業委員会に付 議されましたので、それを含めて整理を進めてまいれればありがたいと思っておりま す。  また、名古屋大学医学部附属病院の脳腫瘍の遺伝子治療臨床研究につきましては、前 回、分担を決め作業を進めていたところでございますが、その際に、委員から提出され ましたかなり膨大な60項目ほどの質問につきまして回答書の提出があり、また、総括責 任者の方の出席のもとに口頭での御説明がありました。これについては、非常に膨大な 点から、引き続きがん遺伝子治療臨床研究作業委員会において検討を進めるということ になっております。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。今説明があったとおりですが、名古屋大学の場合、 名古屋大学医学部でベクターも自分達で造ることを行っております。その点今までと違 っています。名古屋大学の方はがん遺伝子治療臨床研究作業委員会で少し時間がかかる のではないかと思います。寺田委員、何かコメントがありますか。 ○寺田委員 部会長が言われたとおりであります。それからもう1つ、財団法人癌研究会癌研究所 附属病院の方でこのことに関する新しいペーパーが3つ続けて出まして、安全性に関す る点がずいぶんはっきりしてきたということで、一応論議は尽くしたという形で、今、 事務局が言われたとおりでありますが、これも安全性を考慮してずいぶん時間がかかっ たということであります。 ○高久部会長  ありがとうございました。これはつけ足しですが、ここで御承認いただいた岡山大学 の肺がんに対する遺伝子治療に関しましては、先日の日本遺伝子治療学会で症例の経過 報告がありました。寺田委員はお聞きになりましたか。 ○寺田委員  聞いていません。 ○高久部会長  私も聞いていないのですが、2例の報告があり、気管支鏡で見た範囲では、腫瘍が縮 小して、患者さんの状態も非常に改善したということが報告されました。学会に出席さ れた方々の間で話題になったということを申し上げます。 ○木村委員  そういう学会で報告されたものは、何に掲載されますか。 ○高久部会長  学会の抄録集に載っています。 ○木村委員  出来ましたら、そういうもののコピーがありますと、私どもが学会へ行った訳ではご ざいませんけれども、遺伝子治療というのは今まで成功例が極めて少ない訳です。AD A欠損症でやや成果があったかなという程度で、いろいろ試みられてはいるけれども、 ほとんど成果が上がっていないというのが世界的な一種の反省期にある理由の1つです ので、そういう成果が上がったということになりますと、これは大変意味のあることだ と思いますものですから、もしそのコピーをいただければというふうに思います。 ○高久部会長  抄録に治療の結果まで載っているかどうか。抄録を出す時期と学会で発表する時期と がズレるものですから、どこまで載っているかどうか分かりませんが、結果が載ってい るようでしたら皆さん方にお配りしたいと思います。正式な論文としては出ていないで すかね。 ○事務局  今、部会長からお示しのとおりで、まだペーパーになっていないということで事務局 の方も準備いたしませんでした。実は、岡山大学の方から今日のこの部会の開催直前に 電話が入りまして、3例目の患者さんについても既に投与に入っていたところですが、 3例目の患者さんはかなり病期が進んでおられたということがあって、実は先週末の土 曜日にお亡くなりになったと。ただ、遺族の方の御了解もいただきまして病理解剖等も 至急行って、その結果からしますと、通常の腫瘍の進行に伴う死亡ということで、詳細 については、先ほど出ました学内の倫理委員会といいますか、審査委員会等の意見を聞 いた上で報告にまとめたいということでございますが、いわゆる投与に伴う副作用とか 事故による死亡ではないけれども、死亡例であるので報告をするということですので、 この件の報告に合わせてまして、今御指摘のような先行する2例の状況等、公表の文献 等があれば、併せて提出いただくようにお願いをしてみたいと思います。 ○高久部会長  そういうふうにしたいと思います。アメリカの M.Dアンダーソン病院でも、局所的に はp53遺伝子を投与する前に比べて腫瘍が小さくなったという事が確か「Nature Medic ine」に報告されています。ただ、この遺伝子治療は局所療法ですし、患者さんも病気が 進行した方が多いものですから、最終的には亡くなったというのがほとんどだと思いま す。岡山大学の場合に、特記すべきことは、癌のために閉塞している部分が通るように なったので、以前あった肺炎などがよくなり熱が下がったとか、患者さんの自覚症状が 非常によくなったという点が今までの報告になかった点です。 ○木村委員  その点でもちょっとお伺いしたいのですが、いつか部会長の御発言の中に、必ずしも 致死性ではないけれどもということで、手の末端部の血管が縮小されるような病気がご ざいましたね。アメリカの一部では、それこそ今言われたような局所的な改善が見られ たというような報告があったように思うのですけれども、あれは学名は何という病気で ございましたか。 ○高久部会長  末梢性の動脈の閉塞です。血管の増殖因子であるVEGF(バスキュラー・エンドセ レア・グロス・ファクター)の遺伝子を含んだベクターを初めは血管の中に入れていた のですが、最近、非常に話題になっていますのは、VEGFのプラスミドをそのまま筋 肉の中に注射すると血管が非常に増えてきて動脈閉塞のための症状がよくなったという ことがアメリカから報告された事です。致死性でない病気、特に血管障害に対する遺伝 子治療が最近話題にはなっています。 ○寺田委員  そういうDNAを直接打っても効くということは、ウイルスとか、そういうものに組 み込まなくてもよくなってきますから、安全性の面ではずいぶん楽になります。そうな ると増殖因子の遺伝子類はずいぶん使われるのではないか。それから、心臓欠陥とか心 筋梗塞とか、そういうものに使おうかというのも随分表に出てくると思います。 ○高久部会長  DNAそのものを打つ治療法が遺伝子治療としてこの委員会で取り上げるのかという 事も、いづれ議論していただかなければならない。DNAワクチンなどもこれからどん どん出てきますが、それはどうなるのか。事務局の方で検討していただきたいと思いま す。 ○寺田委員  それからもう1つ、アデノウイルスで肺がんの場合に、アデノウイルスそのものをコ ントロールでここではやっておりませんけれども、間に p53などを入れずに、アデノウ イルスを打つだけで縮小したということもあるんです。ですから、確かに縮小効果はあ るけれども、それが p53によるのかどうかはわからないということです。 ○高久部会長 確かに、そういう仕事がありますね。 それでは、次に事務局の方から、ヒト胚性幹(ES)細胞の取り扱いに関する最近の 動向を説明していただけますか。 ○事務局  お手元の参考資料1をご覧いただければと存じます。  ヒト胚性幹細胞の研究につきまして、科学技術庁が事務局を務めております科学技術 会議に生命倫理委員会が設置されております。現在、座長は科学技術会議の委員であり ます井村前京都大学総長でございますが、こちらにおきまして、ヒト胚性幹細胞に関す る研究についての現在の枠組みということで、9月6日の会合で配られた資料でござい ます。  そこにありますとおり、大学等におけるヒト胚性幹細胞に関する研究については、平 成10年12月25日、文部省学術国際局研究助成課長名の通知が出されまして、一定の手続 きを経るようにというようなことが示されております。大学等以外の国の研究機関につ いては、このような通知は特段出されていないということでございますが、参考といた しまして、ヒトのクローン研究については、平成9年3月21日に科学技術会議政策委員 会におきまして、資料1の7ぺージでございますが、ヒトのクローン研究に関する考え 方について、当面、そのような研究を差し控えることを期待するという形の態度表明が されているところでございます。  このような状況を受けまして、生命倫理委員会では、民間を含めて、大学等を除けば 具体的な歯止めがない状況ではなかろうかという考え方にたちまして、当面想定される 研究提案のうち、ヒト胚性幹細胞を用いることだけ、新たにつくり出すのではなくて、 既に出来上がっているものを使うといったようなものについて一番ありそうではないか と。それから、新たにヒト胚性幹細胞をつくり出すという研究も当然出てくるのではな いかという2つを想定しまして、2ぺージの3.(1)にありますとおり、何らかの一定の 歯止めが要るのではないかということ。それから、ヒト胚性幹細胞について、何らかの 第三者的な仕組みによってこれの実施を認める。いわば一定のルールづくり、そして、 それが行われるまで、生命倫理委員会が何らかの役割を果たすべきではないかといった 点で自由な意見交換がされたところでございます。次回また引き続き議論が進んでいく かと思われますけれども、国の中心となります科学技術委員会におきまして、このよう な論議が進んでいるということで、御参考までに資料として配付させていただきまし た。 ○高久部会長 どうもありがとうございました。参考資料1につきまして、何か御質問、御意見がお ありでしょうか。 ○木村委員  今、事務局から御報告いただきまして、内容的にその方向づけが分かった訳ですが、 委員長が井村元京都大学総長ということですが、そのほかの委員につきましては、事務 局側ではその構成について、例えばES細胞の専門家のみならず、どういう方々がおら れるかということについての資料はお持ちでございましょうか。 ○事務局  このメンバー構成につきましては、科学技術庁科学技術会議のホームぺージを通じて 公表されておりますが、今、先生が御指摘のような、生物学系の専門家のみならず、い わゆる倫理関係の方々、あるいは法律関係の方々も含めて、広い構成をとっていただい ているという状況で、もし何でしたら後ほど先生のお手元に一覧表を届けさせていただ きたいと思います。かなり広いメンバーで論議をされているということもありまして、 かなり時間をかけて論議を進めていただいている状況でございます。  なお、この会議そのものは科学技術会議でございますので、科学技術庁と文部省とが 共同で事務局を務めているところでございます。 ○高久部会長  生命倫理委員会は井村先生が座長でその下に。 ○事務局  岡田善雄先生がその下の小委員会ということで、ワーキンググループ的な取り組みを 進めていただいております。 ○柴田委員  科学技術会議でやっていることは前から知っているんですけど、これで見ますと、大 学関係の研究機関だけにある種の規制がかかっている訳ですね。その他の国の研究所も 民間も今のところは何もないという報告ですけれども、この後はどうなるのでしょう。 一応、科学技術会議の生命倫理委員会でガイドラインというような格好で全体を規制す るような枠組みがつくられるのか。それとも、このまま当分、大学だけに限られていく のかどうかについて質問します。 ○高久部会長  大学の場合、参考資料1の参考1にありますように、文部省から昨年の12月25日に通 知が出ております。柴田委員がおっしゃったように、これですと大学だけが拘束される ものですから、科学技術会議の中の生命倫理委員会の下にヒト胚研究小委員会がつくら れて、その小委員会の報告として今月6日に大学と民間のすべての研究機関に、それに は医療機関も入ると思いますが、既に出来ているES細胞を使う研究に関しては、この 小委員会のような構成の委員会で審査をして、オーケーならばゴーサインを出そうとい うことが議論されました。それから、新たに日本人のES細胞をつくることに関しては 小委員会の結論が出るまでは当分の間やらないようにというモラトリアムの意見が出さ れました。ですから、文中の全部の関係する機関に適用されるのが9月6日の小委員会 の報告(事務局案)になると思います。 ○柴田委員  では、網は一応かぶせられるということですね。 ○高久部会長  はい。 ○柴田委員  ただ、個別審査をする機構といいますか、仕組みはまだ出来ていない訳ですね。 ○高久部会長  まだ出来ていないと思います。9月6日にそういう機構をつくるようにというのが出 ただけだと思います。 ○柴田委員  そうすると、当然、その仕組みがすぐつくられると思うのですけれども、それはどこ へどういうふうに出来る可能性があるのでしょうか。 ○事務局  事務局の説明が足りず、申し訳ありませんでした。文部省につきましては、そこの通 知にありますとおり、当面、学術審議会のバイオサイエンス部会の専門委員会がこれを 担当するということで、現在、遺伝子治療等を担当しておりますのと同じ仕組みで受け とめるということで、むしろ先端的な学問分野を担当する大学を指導・監督いたします 文部省としては、受け皿をきちんと用意をしたという状況でございます。  それ以外の省庁につきましては、科学技術庁の方が現在、いざとなれば生命倫理委員 会がということではあるかと思うのですが、より適切な場の設定ということを生命倫理 委員会としては事務局に考慮を呼びかけているところです。具体的にどのような形にす るべきかということも含めまして、まだ生命倫理委員会においても最終的な結論、ある いは科学技術会議としての決定が出ているものではございません。ただ、何かを禁止し ようということではなくて、むしろきちんとしたルールをはっきりさせて、適正なルー ルを早く示すべきだというのが生命倫理委員会の方の御意見ではないかと受けとめてい るところでございます。 ○文部省担当官  文部省でございます。今、厚生省がおっしゃったとおりでございまして、ヒトの胚性 幹細胞に関する研究については、平成10年の12月25日に通知しておりますが、現在のと ころ具体的には申請なり御相談というものは預かっていないものでございます。そのよ うな御相談、または書類等の申請についての御相談があった場合には、本委員会も綿密 な連携をとっておりますが、この件につきましても、科学技術会議と文部省の学術審議 会と綿密な連携を、また、必要に応じて厚生省とも連携をとりたいと思っております。 ○柴田委員 そうすると、新しい枠組みが近々出てくるということではないということですか。 ○高久部会長 参考資料1を見ますと、2ぺージ目の下に「ヒト胚性幹細胞に関して、早期に取り組 むべき研究について、公的な第三者機関が個別の研究計画を倫理面から」云々と書いて ありますが、公的な第三者機関ということになっているだけでして、具体的にどこがど のようにつくるのかということはまだ決まっていない。科技庁の方で検討していると思 います。 ○木村委員  これは大変スピードが速くて、アメリカの研究者がES細胞の作製に成功したのが去 年の11月で、それからすごいスピードでいっている訳で、厚生省、文部省としても、い わば国際的な動向についての資料を収集しているかと思いますが、その点につきまして も、どこかの国が突出してということではなくて、アメリカでは9月の中旬にやや前向 きのガイドラインをつくろうということで大きなステップが1つ出来た訳でございます けれども、出来ましたら、そういう資料も関連する資料として審議のときの参考になる ようなものを今後お付け加えいただければ大変ありがたいと思います。 ○高久部会長  そうですね。アメリカの情報はよく入ってくるのですが、ヨーロッパの情報が余り入 ってこないですね。  それでは、次にもう一つ、お手元の参考資料2「平成12年度厚生省科学技術関係予算 概算要求の概要」と、「ミレニアム・プロジェクト関係」の資料を事務局から説明いた だけますか。 ○事務局 お手元の資料をお開きいただきたいと思います。これは、実は今の参考資料1とも関 係してまいりますが、平成12年度の厚生省の科学技術関係予算の概算要求というものが 先般公表されております。この中では、そこの欄外の注)にありますとおり、「情報通 信、科学技術、環境等経済新生特別枠」(ミレニアム・プロジェクト)というふうに題 しました 162億円ほどの要求が含まれているところでございます。これは、総理大臣の 主導によりまして、各複数の省庁にまたがり、かつ、そこにありますとおり、経済新生 に結びつくようなもの、かつ、21世紀の始まりを控えて、我が国が21世紀において確固 たる経済的・科学的基盤を形成するといったプロジェクトを少数に絞って実行したいと いうようなことが示されまして、それに絡んで、実はこの部会でも御報告しております が、バイオテクノロジー関連の5省庁が、バイオテクノロジー関連産業新生ということ で、1月に大臣の申し合わせ、7月に具体的な計画の作成ということをいたしましたが これに関連いたしましたものとして、ぺージをめくっていただきますと、厚生省ではミ レニアム・プロジェクト関係(遺伝子解析による疾病対策・創薬等推進事業) 162億円 というものの提案をいたしております。 これは、本日、堺審議官からの御挨拶にもありましたとおり、ヒトの遺伝情報の解析 というものがいろいろ進んでまいりますことによって、がん、糖尿病、高血圧等、解明 あるいは解決が非常に困難であった疾病について、何らかの全く新しい糸口が開かれて くるのではないか。また、疾病等の治療におきまして、それぞれの個人のいわゆる体質 等、差異に合わせたテーラーメイド、あるいはオーダーメイドと言われますような医療 によって、苦痛が少なく、効力の目ざましい医療というものの可能性が開かれてくるの ではないか、こういうことが期待されております。 また、ゲノム情報の解析を通じまして、1つの胚細胞がどうしてこのような複雑な人 間一個体にまで分化して出来上がっていくのか。この情報解明によりまして、再生医療 例えば肝臓の機能が失われた場合に、1個の幹細胞、あるいはそのもとの胚細胞から肝 臓そのものを再生するような技術。あるいは、その前段階といたしまして、損傷した皮 膚であるとか骨、軟骨、筋肉といったものの再生。あるいは、現在失われてしまうとな かなか回復が困難な神経線維の修復といったことが、こういったゲノムの機能解析によ りまして再生医療として登場してくるのではないか。こういう期待が非常に大きいとい うことで、そういったゲノムの解明とその応用ということで、現在、5省庁挙げて取り 組みを進めております。  また、もう1つ、バイオテクノロジーの応用では、植物等を中心といたしました各種 の食料生産の分野、あるいは環境修復の分野でも期待が寄せられておりますが、特に食 品の分野につきましては、新しい技術によってつくられた、いわゆる遺伝子組み換え作 物を食物とすることについて、なかなか理解が得られない。あるいは、理解を得ようと する努力がうまくかみ合っていないといった点で、厚生省としては、安全性の確保の観 点から適正な安全評価をとことん進めるとともに、その有用な活用、例えばアレルゲン フリーといったような新しい形質を備えた、より安全かつ有用な作物の導入といったこ とも含めて、バイオテクノロジー応用食品の分野を推進していく可能性についても検討 を進めたいということで、2ぺージにありますような3本の柱を現在提案しておるとこ ろでございます。  勿論、ミレニアム全体につきまして、各省庁からいろいろ提案が出ておりまして、こ れがそのまま実るかどうかまだ予断を許さない状況でございますが、こういった課題を 進めていくにあたっては、先ほども御指摘が出ておりましたような生命倫理に関わるよ うな課題についても、個人のプライバシーを含め、いろいろとあらかじめ考慮していか なければいけない観点が多いかと思います。本日の部会の審議では用意しておりません が、先ほど木村委員から御指摘のあったような内外の状況を含めまして、こういった検 討を進める上での御議論についても、ぜひ当部会で御議論いただくような準備を進めて まいりたいと考えております。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。 ○木村委員  事務局の方から御説明いただきまして、ありがとうございました。先日新聞を見まし たら、宮下厚生大臣が閣議で発言をされて、特にヒトゲノムについて発言されたという のを3行ぐらい読んだような気がするのですが、内外の方の内ですけれども、具体的に どういうことを言われたかということは私どもは一切分からないのですが、情報をお持 ちでしょうか。 ○事務局  時期的なことを考えますと、6月末の頃の閣議におきまして、産業再生計画の具体化 を進めているといった案件のときに、実は1月にバイオテクノロジー産業関係5大臣で 申し合わせをした、これに基づく具体的な計画を近々出す予定だと。その中には、バイ オテクノロジー、特に生命科学の振興といったことが含まれる、ゲノムということも大 きな案件である、こういう趣旨の御発言をされておりますので、恐らくそれが引用され たのではないかと思います。閣議発言ですので、これは私どもの手元にありませんので 該当するものをきちんと取り寄せましてお届けするようにいたしたいと思います。 ○金城委員  いろいろ予算がつく可能性があるということで、そういう科学技術的な発展もすごく 大切ですけれども、それの社会的・倫理的影響についても、私は、日本の場合、研究が なかなか進まないのではないかと思うんです。アメリカなどですと、技術の発展に対し て一定の予算がついたものに対して、一定の割合で社会的影響とか、倫理問題について の研究にも予算が出されるような仕組みになっているようでございます。日本について は、その点どういうふうになっているのでしょうか。 ○事務局  先生方も御承知のとおり、例えばELSI5%といったような条項が米国等では明示的に 示されておりまして非常に積極的ですが、残念ながら、厚生省を含めまして、国として それだけの明確な法的制約の形で設けられてはおりません。ただ、厚生省を含めまして 各省庁とも、いわゆる科学技術の発展に際しましては配慮すべき条項が多々あるという ことで、特にヒトゲノム遺伝子治療臨床研究分野等では、一昨年からELSIに関連する項 目について公募課題に掲げて応募いただくような工夫を始めてきておりますし、長寿医 療等でも同じような分野を掲げて、特に厚生省としては、こういった分野は他の省庁で は取り上げにくいものであるとすれば、私どものところが公募研究で拾っていきたいと いうか、あるいは、こういった私どもの仕組みを利用していただきたいということで、 順次採択していくような工夫をしたいと思っております。 ○金城委員  では、現実に幾つか採用されて、それが技術の発展に対しての予算の何%ぐらいにな るかというような数字は出ていますか。 ○事務局  平成11年度の採択状況がインターネット上で公表してあるかと思いますが、ヒトゲノ ム遺伝子治療臨床研究分野では全部で80題ほど採択している中で、2題ほどがその分野 に区分出来るのではないかと思っております。また、信州大学の遺伝子相談の分野とか 早稲田大学等の先生方からも応募いただいたり、ということもございましたが、ただ、 残念ながら、厚生省ということで、法人文系の先生方にまだまだ私どもの制度のPRが 足りないようで、応募自体はそれほど大きい数ではございません。 ○軽部委員  ミレニアムは、たしか高齢化対策と環境か何かが中心ですよね。このタイトルからい くと、そこら辺をうまく説明するのが難しいんじゃないかというのが1つ。  もう一つは、官邸で実際に総理自身が判定するというのは科学的な根拠がない訳です から。あれは、総額はたしか 5,000億円でしたね。そこら辺をどう絞り込んでいくのか わかったらちょっと教えてほしいんです。 ○事務局 まず前段でございますが、ミレニアムということのきっかけになりましたのが経団連 の方からの提言と、首相が競争力をつける上でということでの案件でございます。経団 連の方からの提案の中で、我が国が21世紀に向かって抱える大きな課題の1つが高齢化 ということ。それから、環境問題、情報化ということで、この3つが例示で掲げられて おります。ただし、具体的な提案として経団連の方がホームページ等で公開しておりま す高齢化の中身は、実はバイオテクノロジー関係が過半を占めるような状況になってお ります。すなわち、高齢化に伴って、人々の悩みとなり、不安のもとになるものは何か といいますと、自分の健康、家族の健康という問題、あるいは疾病等を未然に防ぐよう な手だての問題であるという観点から、バイオテクノロジーに対する期待が非常に高 い。かつ、それを推進していくことが必要だということでまとめられているところで、 私どもも実は高齢化対応ということでバイオ関連の要求をまとめて出しております。  それから、全部で 2,500億円の割り当てをしたいということで、その倍の 5,000億円 が各省庁からの要望枠ということで示されておりまして、各省庁から倍以上の要求が出 ている状況です。これらについて、当然、関連するもの、それから具体的なミレニアム としての妥当性等を首相が全部見ている訳にいきませんので、内政審議室というところ がございますが、こちらに直接そこで採用された、あるいは各省庁から出向している多 数の幹部職員がおりまして、こちらで各省から所定の様式で資料の提出を受け、ヒアリ ングを続けながら絞り込みを続けている。一方、大蔵省といたしましても、各省庁の予 算の要求を聞く中で、これは単独の要求なのか、それとも省庁連携によるものか。ある いは、そういった特別枠に類するものか。こういったことも大蔵省としてのヒアリング をし、内政審と大蔵省ともそれなりの折衝をしという形で、やはり首相が最終的に「お れはこれを気に入った」と言ってもらえるような原案づくりに一生懸命励んでいるとこ ろかと思います。 ○高久部会長 いろいろ御議論があると思いますが、ミレニアムについてはこれぐらいで終わりたい と思います。 これで本日の予定の議事は終わりました。事務局から次回の開催についてお願いしま す。 ○事務局 次回会合の日程につきましては、各先生方の御予定をお伺いし調整した上で、部会長 等と御相談し御案内させていただきたいと思っております。 ○高久部会長 これで先端医療技術評価部会を終わらせていただきます。どうもありがとうございま した。 <了> 問い合わせ先 厚生省大臣官房厚生科学課 担 当 宮本(内線3804) 電 話 (代表)03-3503-1711 (直通)03-3595-2171