99/09/14 第21回疾病対策部会臓器移植専門委員会議事録     第21回 公衆衛生審議会疾病対策部会 臓器移植専門委員会           日時   平成11年9月14日                9:00〜11:10           場所   国立感染症研究所                2階会議室 出席者 (○:委員長 敬称略)   浅野 健一  井形 昭弘   板倉  宏   大島 伸一  大塚 敏文   菊地 耕三  桐野 高明  ○黒川  清   小泉  明  小柳  仁  竹内 一夫  谷川 久一   野本 亀久雄  藤村 重文  眞鍋 禮三   矢崎 義雄  貫井 英明(参考人) 1.開 会 2.議 題   (1)第3例目に係る脳死判定等の評価に関する報告書について      (2)第三者検証機関の設置について      (3)「法的脳死判定マニュアル」について      (4)臓器移植法の運用指針(ガイドライン)等の改正について      (5)海外から提供された腎臓の利用について      (6)その他 〇事務局  定刻になりましたので只今より第21回公衆衛生審議会疾病対策部会臓器移植専門委員 会を開催いたします。まだ2〜3人の委員の先生がお見えではございませんが、始めさ せていただきます。  はじめに本日の委員の出席の状況でございます。大久保委員、田中委員、町野委員、 山谷委員からご欠席との連絡を頂いております。なお、小柳委員におかれましては学会 がこの後続いているということで途中退席をなさる予定になっておりますので、ご報告 をさせていただきます。  本日はまだお見えではございませが、後ほどご説明いただきます「法的脳死判定マニ ュアル」を取りまとめられました、脳死判定手順に関する研究班班長の貫井先生にご出 席いただくことを予定しておりますが、30分ほど遅れるという連絡をいただいておりま す。  あと私ども7月31日付けで人事異動がございまして、保健医療局長、企画課長、エイ ズ疾病対策課長が替わっております。保健医療局長篠崎でございますが、公務で海外出 張中ですので、本来でありますと本日ご挨拶を申し上げるところでございますが、やむ を得ず欠席ということをご報告をいたします。  課長の紹介をさせていただきたいと思います。企画課長の松永でございます。エイズ 疾病対策課長の麦谷でございます。よろしくお願いいたします。  続きまして資料の確認をさせていただきます。お手元に配付してございます。頭に議 事次第ということで議題がございます。本日議題はその他を含めまして6点予定をして ございます。続きまして資料一覧がございます。  資料 1   「第3例目の脳死での臓器提供に関する医学的評価について」報告書 (案)ということで目次に続きまして15ページございます。  資料 2   脳死下での臓器提供に係る第三者検証機関について(事務局案)これ は3ページございます。  資料 3   法的脳死判定マニュアル(厚生省厚生科学研究費特別研究事業「脳死 判定手順に関する研究班」平成11年度報告書)これは左右になっておりまして、これは 本の形でございますが56ページまでページ番号が振ってあります。  資料 4   臓器移植法の運用指針(ガイドライン)等の改正について、というこ とでございますが、参考を含めまして4ページでございます。  資料 5   海外から提供された腎臓の利用について、ということで5ページです  資料 6   臓器移植の透明性確保と臓器提供者等のプライバシー保護の両立につ いて、です。参考1と参考2がついてございますが5ページございます  参考資料1・2・3と1枚ずつ添付しております。  それから本日委員から提出されました資料がございます。浅野委員から4ページの資 料が提出されております。本日ご欠席ということで大久保委員からの意見ということで 2ページの資料が提出されております。資料は以上でございます。途中不備等がござい ましたらお申しつけいただきたいと思います。では黒川委員長よろしくお願いします。 〇黒川委員長  おはようございます。しばらくぶりですが、専門委員会を開催させていただきます。 お忙しいところありがとうございます。  では議題の1です。「第3例目に係わる脳死判定等の評価に関する報告書」でござい ます。一応この案のドラフトについてはお手元にあらかじめ配付されていたと思います が、これについてまず先生方のご意見をいただきたいと思います。脳死判定ということ で医学的評価に関する作業班、竹内先生の下で非常に精力的に検証していただきまし て、7月と8月に行っていただいたわけですが、2回の作業班を経て、報告書がまとめ られてお送りさせていただきました。  竹内先生からご報告をいただきますが、第3例目の事例では、法的脳死判定の方法に ついて竹内基準の中で具体的にはっきりと書いてない部分があるかなということで、後 でマニュアルのところでも出てまいりますが、こういうことでございますので、それを 含んだ上で、それはその後の話ですが、この報告書について、竹内先生からまずご報告 いただきまして、ご意見を伺いたいと思います。竹内先生よろしくお願いします。 〇竹内委員  では3例目の検証結果について作業班の報告を申し上げます。お手元の資料をご覧い ただきいたのですが、症例は20歳代の男性でして、外傷による脳損傷の患者さんであり ます。研究班では3回の検討を行って報告書をまとめておりますが、そのときに、参考 にしました資料は、診療録、CT写真、脳波記録、及び聴性脳幹誘発反応の記録であり まして、担当医にも来ていただいていろいろ伺うことができました。  これは第一例目第二例目と同じような作業でございます。受傷後約50分で病院に到着 しておりますけれども、到着したときには、昏睡状態、両側の瞳孔は散大、対光反射は 消失ということで、救急外来で救命救急処置を行っておりますが、50分後に画像診断を しております。その時の写真及び引き続いてとりました写真をまとめてここで見ていた だきます。 (スライド)  全身を打っておりますが、主な損傷は頭部に限られておったわけであります。頭部の 複雑骨折でしかも骨折が大変広い範囲で粉砕骨折といってもいいかと思います。ここに 前から後ろにかけて、これは正中線ですが、正中線の離開もありますし、約7ミリぐら いの骨端間隙がある骨折線がはっきり認められる。それ以外にも骨折線があるはずです が、よく映っておりません。CTによって前頭洞から入ったであろう空気が脳の中に入 っておりますので、頭蓋底骨折もあったということでありまして、後に問題になります 鎚体骨の骨折もそういうときにはよくあるので、その可能性も考えられたわけです。こ れが頭蓋単純撮影の前後像であります。  第二に撮りましたCT写真のスライスを幾つかお目にかけます。ここが脳下垂体の部 分です。頭蓋底、ここに黒く映っておりますのがエアーです。恐らくこの上の前頭洞、 これが鼻の奥のところですが、この辺との交通ができて空気が入ったんだろうと思いま す。それから脳幹を取り巻くくも膜下腔に軽い出血がありまして、そのくも膜下腔の存 在がわからなくなっております。脳全体が受傷後それほど時間が立っておりませんが、 び慢性に腫脹している状態がみられます。これは顔面の皮膚の下にできた皮下血腫であ ります。  このスライスよりもうちょっと上の方で、これは松果体の石灰化像で、ほぼ正中線に あります。ここに右側の前頭葉の硬膜下血腫がある程度広がっております。反対側にも ありますが、それほど厚いものでない。脳腫脹が非常に強いので、あまり左右への偏位 はないんです。少しエアーが入っております。  これはさらに翌日ということは受傷後9時間ぐらいですが、今のエアーが抜けており ますが、松果体、それから脳室系が非常にぼやけてしまって映っておりません。び慢性 の脳腫脹の状態で我々はブレインタンポナーデという言葉も使っております。更に頭皮 下の血腫、頭皮の腫脹も残っておりまして、ここも打っております。ですから頭部はか なりいろいろ打っているらしいということがわかるわけです。  さらに1日たった受傷後3日目の朝のCTです。同じ所見で、血腫は非常によく吸収 されてきておりましてあまり存在しなくなってきております。しかし脳腫脹は更に進ん でおりまして、しかも、脳幹周辺その他もタイトにくも膜下腔が消えてしまうほどの腫 脹が見られております。このような画像診断を見ておいていただきたいと思います。ス ライド結構です。  それで、こういうような救急室におけるいろいろな処置、ことに2度目のCTを取り ましたときに呼吸が完全に停止して血圧がすとんと下がったということで、全身状態が 大変悪くなりました。したがいましてこの症例に対して、頭蓋内圧測定のためにセン サーを取り付ける予定でありましたが、それすらできないということで、そのような積 極的な処置がキャンセルされております。  保存的治療に終始したということは、作業班としてはやむを得なかったと考えまし た。さらに、ICUに入りましてから呼吸管理、循環管理、水分電解質管理、脳神経系 の検査及び治療というようなことに関して、大変精力的にいろいろ工夫して努力してお られますが、特にそのことに関しての問題点は認められなかったということでありま す。残念ながら脳浮腫、脳腫脹が急速に進行しておりますので、予後は非常に良くない であろうということであります。  肝心の脳死判定に関しましては、臨床的な脳死診断及び法的脳死診断が2回行われて おりまして、それらの診断内容に関しては、一つの点を除き問題はなかったと判定され ます。ことに脳波の記録などは、割合に良質であったということがありますので、かな り信頼のおけるデータであろうと判定されております。  ただ、前にも新聞などで報道されたことでありますが、前庭機能検査、これは脳幹反 射検査の一つとして行われるわけでありますが、前庭機能検査は3回行われておりまし て、それのいずれもがエアー・カロリック・テストという方法で行われております。こ れは冷たい空気を耳に入れる。これは水を入れる代わりに冷たい空気を送り込むので、 耳鼻科などで臨床的にしばしば使われているようなことでありますが、脳死の診断にも これが使われた。  この病院では50°Cの温かい空気、及び24°Cの冷たい空気で、いずれも反応がない ということで前庭機能喪失という判断をしておりますが、実際には我々が要求しており ます前庭機能消失確認のためには、約4°Cの氷水をもって前庭刺激をしてほしいとい うことでありまして、その点が問題になったわけであります。  ただ病院側の説明もいろいろ聞きまして、病院側としては既に厚生省の方から出され ております、脳死判定のガイドラインによりまして、脳死に関する研究班の最初の報告 に記載されております冷水刺激あるいは次の補遺に示されております氷水刺激というよ うなことに関して、正しい理解がされておらなかった。日本平衡神経学会で出しており ますマニュアルを見ましても、冷水刺激というのは20°Cの冷たい水による刺激であ る、更に温度刺激においては冷水・温水の刺激をするが、これは体温+−7°Cという 温度の冷水・温水である。ただ前庭機能が廃絶しているような状態での確認のために は、アイスウォターを使うというようなことがマニュアルに示されておりますが、この 日本語の冷水というのが、必ずしも温度を正しく示されてなかったということで、現場 における受け取り方の混乱があったのはやむを得なかったのではないかということで す。作業班としては、この約4°Cの冷たい空気による刺激によって前庭反射がでなか ったということで、一応脳幹反射の一つである前庭反射の消失と判断したわけでありま す。  この点の混乱は大変残念でありましたが、それ以外に関しましては特に問題はないで あろうということで、私ども作業班としましては、最終的にこの第3例目の救急治療及 び集中治療、さらに脳死判定に関して特に問題はないという判断をして報告書を出した わけであります。以上でございます。 〇黒川委員長  どうもありがとうございました。ところどころ今までも報道その他であったところで すが、このような報告について是非ご意見を伺いたいのですがいかがでございましょう か。これは資料4の話ですが、ちょっと見ていただきたいと思います。一番最後のペー ジです。参考というのがあります。ここに運用に関する指針(ガイドライン)というの があります。それによると、ガイドラインには昭和60年の研究報告書では確かに冷水 50cc以上注入と書いてあるのです。冷水というのはどれくらいかということで、体温が 37°Cだとかなり冷たいと感じるのであれば20何度でも冷たいと感じるわけです。  その後の補遺というのがここに書いてあります。平成3年には外耳道に氷水50cc以上 と書き直してあるんです。そのところが上のガイドラインでは昭和60年報告書及び平成 3年の補遺による脳死判定基準に準拠して行うと書いてあるところに、混乱が生じたと いうことであります。  何かございませんでしょうか、頭部外傷はかなり酷い頭部外傷で循環器系も血圧が急 激に下がったりして、かなり急速に全身状態が悪化して循環器系もありましたし、CT でも脳浮腫はかなり激しいしということでマネージメントとしては適切であったという ご判定をいただいております。唯一氷水というところと冷水というところが、ちょっと ディスクレパンシーがありまして、これはこの後お願いする指針をはっきりさせるとい う一つの元になっているわけです。 〇桐野委員  特にありませんが、竹内基準は非常に厳格にするという趣旨でありまして、通常の臨 床で使われる判定では十分ではなかった可能性があるという意味で、書かれておりま す。 〇浅野委員  1例目のときは、脳波の記録がここで示されたと思うのですが、2例目以降ないと思 うのです。なぜないのかということです。それから脳死判定をしたお医者さんの名前を 1例目では発表しなくて、それ以降も発表されてないのですが、判定医の名前は公表す べきだと思いますが、その点についてです。 〇山本補佐  2例目につきましては脳波・CTともご家族の承諾が得られませんでした。今回も脳 波についてご家族の承諾を得られておりません。脳死判定医につきましては1例目は、 まだ病院に対していろいろな抗議やいろいろなクレーム等が続いておりまして、もうち ょっと差し控えたいというとこで、伏せておりますが、2例目につきましては慶応大学 の方が脳死判定医を公表しております。3例目の方も古川の記者会見の方で公表されて いるということでございます。 〇黒川委員長  脳波については浅野委員の意見もあるのは最もだと思いますが、ここで書いてあるデ ィスクリプションとしては高感度においても環境雑音が極めて少なくて判読しやすい、 ということからいうと、そういう記載があれば十分かも知れませんね。そういう判断で 恐らく出されなかったのではないかと思います。  特にございませんようでしたら、今回はあらかじめこの資料を送っていただいたのは 非常に良かったと思いますが、できるだけ事務局の方もあらかじめ送っていただいて、 それを持ってきていただくということで再確認するとことで出来るだけ頑張ってもらい たいと思ってますので、そのようにさせていただきたいと思います。できるだけ努力を していただきたいということでございます。  よろしければ後でいろいろなガイドライン、指針はもう少し整合性をきちんとしまし て、幾つも今まで出ておりますから、こういうことは起こりやすいので、これについて は前々から課題でございました。そういうわけですので第3例目の臓器提供に関する医 学的な評価ということについてはご承認いただいたということで、了承していただいた という扱いにさせていただきたいと思います。よろしいでしょうか。ありがとうござい ました。  では前々からこれも議論になっているところですが、脳死下での臓器提供に係る第三 者の検証機関についてということです。いろいろなご意見をいただいたところでありま す。これにつきましては前回までの議論がかなりありましたので、さらにご検討いただ くということですが、まず事務局案として前回までの議論を整理して出していただいて おりますので、これについて事務局から説明お願いします。 〇朝浦室長  では資料2に基づきましてご説明させていただきます。第三者検証機関の設置運営に つきましては、ここ数回の専門委員会の場でご検討いただいております。そういった議 論を踏まえて事務局案として提示を改めてさせていただきたいと思います。  まず第三者検証を行う理由についてでございます。現行の臓器移植法におきましては 各臓器提供事例について、その適切性を担保するための検証手続きについては、特別に 規定をされておりません。しかしながら、これまで行われた数例の脳死下での臓器提供 事例を踏まえて、臓器提供に関し、その手続きが適正に行われるかどうかという点につ いて、第三者の立場から検証を行い、その結果を国民に公表することは、特に臓器移植 に係る国民の信頼を確保し、その定着を図る上で非常に重要であると考えておりまし て、本委員会におきましても、その旨のご指摘を多数いただいているところでありま す。  したがいまして、既に第4例目までの分につきましては現行の本専門委員会に設置さ れた作業班におきまして検証作業を行っておりまして、本日第3例目の脳死判定等の医 学的作業を含めてあっせん面についても検証作業が行われておりますが、今後、脳死移 植につきましても少なくとも臓器移植が一般の医療として国民の間に定着するまでの 間、これまで行われてきている臓器移植ネットワークの内部の中央評価委員会の各当事 者の内部検証に加えて、何らかの形で当事者の臓器提供施設、臓器移植ネットワークか ら離れた第三者の立場での検証が行われるべきであると考えております。  第三者検証機関が審議する事項でございますけど、これにつきましても議論いただい ておりますが、 (1)が臓器提供者に対する救命治療の状況が適切であったかどうかとい うこと。 (2)が臓器提供者に対する臨床的脳死診断及び法的脳死判定の状況が適正に行 われたのかどうかということ。 (3)が臓器移植ネットワークが行ったあっせん業務の状 況を点検して、それが適切であったかどうかということについての検証を行っていただ きたいと思っております。  機関の構成員としては構成員はおおむね10名程度としまして、事例によりまして参考 人をお呼びしてお話を伺うという形にしたい。構成員の案としましては脳死判定の専門 家、救急治療の専門家、移植医療の専門家、法律専門家、移植希望患者の立場を代弁で きる方、臨床心理の専門家、生命倫理に造詣の深い学識経験者、というようなことを考 えております。  そこで、救命治療及び脳死判定に係る部分の検証につきましては、これまでご意見頂 いておりますけど、同機関の下に別途設置する医療専門家からなる作業班、これまでの スキームで申しますと、竹内先生が班長をしていただいている脳死判定等に関する医学 的評価に関する作業班のようなものを、この検証機関の下に作りまして、そこでまず検 討を行っていただいて、その上で同作業班の検討結果を元に、全体会合で最終的な検 討、検証作業を行い、その上で結果を公表するという形で進めたらどうかと考えており ます。  日本臓器移植ネットワークの行ったあっせん業務につきましてはこれまで数例行いま した作業班の検討状況を見ますと、ポイントは大体わかってきておりまして、後ほどご 説明しますが、点検項目というものをある程度事前にもっておれば、この全体会合の中 で十分検証可能ではないかというふうに考えております。  それで上記構成員が関係する臓器提供施設等が審議の対象となる場合には、当該構成 員はその審議には加わらないという形でございます。  4番目の審議方法でございます。審議を行う上で必要な参考人に加えて審議される対 象の臓器提供施設及びネットワークから、適宜参考人を招聘したい。  次に招聘等により情報提供を当事者から求めることにつきましては、あくまで任意で 設置するものですし、強制力はないということで当面はあくまで任意とするということ でございます。  会議は原則として非公開としますけれども、審議状況及び結果報告書については公表 をする。結果報告書の公表の際には必ず臓器提供者のご家族の了承を得るものとする、 同機関の設立後すみやかに検証を行う際のチェック項目について、あらかじめ検討して 公表したいと考えております。  5番目の第三者検証機関の運営につきましてです。中間報告におきまして第三者検証 機関は病院側、あっせん機関、行政側等から完全に中立な専門家で構成されるべきであ るという意見をいただいておりますが、構成員の守秘義務に関する問題とか、あるいは 事務作業の負担の問題、財政基盤等の諸々の問題がございますが、当分の間は事務局を 厚生省とする暫定的な機関として設置運営を行わざるを得ないのではないか、行うのが 現実的ではないかと考えております。  具体的な機関の形態としてはこれまでのご議論の中では、本専門委員会を検証機関の 場にするという案と、厚生大臣の私的諮問機関として、別途、本委員会とは別に機関を 作って大臣より任命された委員により審議を行う、という二つの案があったわけでござ いますが、私どもとしては本専門委員会が行う本来的な業務は、制度的な臓器移植全般 にわたる制度的な面、運営の面が重要であろうということで、また検証作業をこの専門 委員会の場に合わせて設置しますと、そういった本来業務に支障がでるというふうに考 えていまして、検証機関は検証機関として別途設置して、その場でそれぞれのケースご とに検証を行っていくのが適切ではないかと考えております。  この点につきましては、本日欠席をされておりますが、大久保委員からも同趣旨の意 見を頂戴しているところでございます。  委員の選定におきましては、本委員会における議論を踏まえて、厚生省において行っ ていくということでございます。以上簡単でございますがこれまでの議論を踏まえて事 務局案として提示させていただきたいと思います。 〇黒川委員長  ありがとうございました。これについては何回かいろいろなご意見を伺ったところで ございますので、大体このようなことろでまとめていただいておりますが、さらにご議 論をいただきたいと思います。どちらかの方にまだかなり体制が動いているわけではご ざいませんし、極めてオープンだと思います。どうぞよろしくお願いします。 〇板倉委員  基本的にはこういうことでいいと思います。この報告書の公表の際には必ず臓器提供 者の家族の了承を得るものとする。これはもし了承をしないことについて、客観的にそ ういう理由がないというときであっても、家族の了承がなければ絶対に公表しないとい う意味なのかどうかということです。 〇朝浦室長  これまでの検証作業の公表の際も、ご家族のご了承というものを求めてきましたし、 それが通常はご家族からはご了承いただけると考えておりまして、具体的に個人のプラ イバシーに関わる部分というのが入ってまいりますので、そこのところはご了承をいた だかないと公表できない部分が出てくるのではないかと考えております。 〇板倉委員  いやプライバシーに関わる部分は公表できないというのは当然ですが、プライバシー とは関係のない医事情報についても、臓器の提供者の家族の了承がなければ公表しない ということなんでしょうか。 〇朝浦室長  具体的にどういった報告書になるかということと絡んでくると思いますので一般論と して申し上げることはなかなか難しいんですが、また後ほどご説明したいと思っていた のですが、検証作業の結果につきましてケース毎に判断して、ご家族の了承がなくて も、当然公表するべきであると判断されるものについては、公表をするということにな ろうかと思っております。 〇板倉委員  この必ずという表現、了承は得るようにするということであって、了承が得られない 場合も、全て絶対に公表しないということではない、というふうに理解していいんです ね。それなら結構です。 〇黒川委員長  この間もそれについてちょっとそういう議論で似たようなことが、他のラインで出で いたような気がしますが、この位置づけはまた先生方にご意見を伺うとして、この報告 はこの委員会に上がってくるわけですよね。第三者機関として、こうでしたよという話 がここに来るわけですね。ここが了承するとかしないの問題ではないのですがね。この 委員会そのものは公開されてますから、そういう意味の公表はちょっと違う意味かなと 思っているのです。この公表というのは一体どういうふうなスタイルを考えているのか しら。  厚生省記者クラブという話ですか。ここの場合もある意味では公表になるのではない かと思うのですが、そうであれば家族の了承は得るにしても、もうちょっとそれほどス トリクトではない意味なのかなと思うのです。 〇山本補佐  非常に抽象的ですが、例えは臨床の方の脳死判定が適切であったか、それから臨床の 治療は適切であったかという検証をしますと、どしても患者さんの身体状態とか治療状 況というものの、かなりの詳細な個別のデータになってまいりますので、そこについて は了承を得るように努力しておりますが、例えばネットワークが行ったレシピエント選 択が適切であったかどうかみたいなものは、非常にシステマチックにやってますから、 そこは家族の問題よりもシステムの問題ですので、そこは可能ではないかと思います。  ただ同意を得るときにどういう家族に同意を得て、どういう話し合いをしたのかとい うところは、かなり家族関係が赤裸々に出てまいりますので、そういう問題はやはり家 族に承諾を得るという意味では、先ほど主張申し上げましたように、絶対オールオアナ ッシングではなく、個別に判断しております。  ただ本人の個別事例に深く関与した問題を見ていかないと、きちんとした検証ができ ないというのも現実でございますので、その辺を加味してご承諾を得るべきところは得 ていくというふうに理解しております。 〇黒川委員長  確かにこの間もあったように、家族の同意を得るというときに、2年も会ったことが ない遠いおじさんが突然入ってきて、反対といったようなことというような話があるの かも知れないから、その辺は一々書くような筋のものかどうかという話もありますね。  だからこれがいろいろなことを隠す体質の引き金になりはしないかという話はどうな のかな。最近は警察の問題もあるようですがね。 〇小柳委員  公表・公開という言葉に行政上は何か区分があるんでしょうか。黒川先生がおっしゃ ったことは非常に大事です。と申しますのはこの専門委員会は最初から公開でやってお りまして、メディアの方の目に触れて、資料も手渡されていて、ある程度知的なスク リーニングを経て、あまり変な報道はされてない、かなり数字としては際どい数字もあ ると思うのですが、ある程度非常に良い報道はされていると思うのです。これも公開あ るいは公表であるかという話ですね。 〇黒川委員長  これは板倉先生ですね。公開と公表は違うかも知れないな。 〇浅野委員  開示と公表は違うのではないですか。この委員会は公表ですよね。 〇黒川委員長  公表ですかね。そうかな。 〇浅野委員  これは公開で行われているわけですから、基本的に公表ではないですか。だって新聞 記者の方はみな聞いていてね。 〇黒川委員長  いやだけど公表しているわけではないですね。 〇浅野委員  公開ですね。だから開示というのは分類すれば4つあると思うのです。つまり強制的 に発表させるというものと、任意でやるというもの、この委員会は一番強いオープンさ が最も要求されていると思うのです。それで作業班でいろいろやっておられて、そこで 脳波を見ているというのは、そこで開示されているのだと思うのです。部分的に制限し た上でね。つまり国民みなが見られるわけではないが、ある部分の人達に見てもらうと いうことについて了解されていて、そのことが家族の同意というときにも混乱してい る。  特に朝日新聞なんかは、開示=公表なんです。マスメディアに見せろということが国 民に見せるということなんだというふうに、そこを分けていません。これは日本のプラ イバシーの最も専門家である堀部政男先生が、「月刊民法」に、私は今日の後ろに書い てますが、そこに開示と公表は違うということをきちんと分析されてまして、厚生省の 方もそれを読まれたらいいと思います。  家族が一番心配しているのはマスメディアに流れることなんです。お父さんの肝臓は こういう肝臓であったということを、一部流れたので心配されていると思うのです。現 在恐らくこの5例目がないということも、多いに関係あると思います。私の学生たちに 聞いても、同意しますと書くカードに、マスメディアに発表することを一切禁止します ということを書きたいという学生がいます。それはなぜかというと、竹内先生に見ても らうのはいいが、テレビや新聞に出るのは嫌だということです。そこを分けないと家族 が同意するということは、つまり厚生記者会で発表するということについて、どこまで 発表するかということについて同意を得たいということであると思うのです。厚生省の 方もね。  そこがぐちゃぐちゃになっていて議論されているので、今日の議論もそのようになっ てしまうのではないでしょうか  つまりこの委員会も別に中継されているわけではないから、つまり記者の人がこれは プライバシーに触れるからやめようとか、今までもこの3例目についても、ほとんどの メディアはどういう形で病院に運ばれたのかということは書いてない。そういうことは 書いてほしくないといっているから書いてないわけで、それは尊重されているわけで す。そこはメディアの人達の良識というか、それはきちんとやられていると思います。  だからここで公表はされているが、国民が皆知っているわけではない、しかしイン ターネットで開いていけば読みたい人は読める。ですからキオスクで買ったり、あるい は自宅でテレビを見ているときにワンワン流れてくるようなマスメディアの公表はいや だという人が多い。しかし全ていやだという人も最終的にいるかも知れない。そのこと も厚生省の方は考えておられて、この前のような議論になったと思うので、それを一緒 にして全部駄目だというのはね。朝日新聞は社説でこの委員会で決めたことを撤回しろ といっております。それから大阪で見た朝日新聞の記事では、添田さんという記者が ね、書いてますが、この委員会でこのプライバシーの情報開示について、活発な議論が 行われていないと書いてあるのですが、添田さんがいう活発な議論というのはどういう 議論なのか、私は結構活発にいって、皆さんからも活発に違う意見が出て活発にやって いるので、朝日新聞には訂正してもらいたいということで、昨日適正の申し入れをしま した。  ですから家族の範囲ということと、どういう開示なのかということについて今後つめ た方がいいんじゃないでしょうか。 〇黒川委員長  だから質問は、公表の際はというのは人によって多分受け取り方が違うから、この委 員会には出てくると思うのですが、その委員会の中で家族の同意についてどうのこうの という話はある程度スクリーニングされてここに出てきて、少し質疑応答がたぶんあっ て、こちらもそこまで言ってくれという話には多分ならない。それは公表にならないの かも知れない。だからそちらで書いた、公表の際には、というのはどういう事を公表の 際と考えているのか人によって違うから、一応ディファインしておいた方がいいのでは ないかという意見ではないかと思います。その他に何かございますでしょうか。今すぐ に返事をしてといってもこれはちょっと無理かも知れません。 〇大島委員  この問題は、どこで線を引くのかというのは基本的にはできないことであると思って いるのです。というのは家族を取り巻く世界というのは、非常に個人的な夫婦であると か本当に家族の世界から、それを取り巻く親戚とか、あるいは村の社会から、もっと広 がってそれこそメディアにのらないと分からない社会とか一杯あると思うのです。とこ ろが個人を特定しないという、特定しないというのは、メディアに乗ったときに、北海 道の人が九州の人を見て、特定できないという意味と、これは北海道の人が見ても個人 が特定されてないから全然わからないわけですよね。ところがある村社会とかあるいは 親戚から、あんなことまでメディアに報告するのかという話が出てしまえば、その社会 の中では特定されるわけです。  ですからこの議論はどこで線を引くのかというのは不可能なので、どうしてもファ ジーな部分がでてきます。従って、原則的に個人を特定しない、個人を特定しないとい うことは、世の中全般の常識的な水準で特定しないということをきちんとしておいて、 その範囲できちんと公表する。ただし、それぞれの事情によって全部違いますから、先 ほど出てきたような難しい問題に対しては、きちんとご家族の了解を得るということを 付記しておく、それくらいが適当ではないかと思います。 〇黒川委員長  その意味では公表というのは厚生省が記者クラブで記者会見をするような場合という 感じにとっておけばいいのかなという気はしないでもないです。そうすると必ずという わけではないが、臓器提供者の家族の了承を得るということですね。  こういう話が全部細かいことが、これはどうだ、あれはどうだといって書くからおか しくなるのであって、そこのところは良識はなにかというと、良識というのは時代によ って変わるかも知れないが、そこでいろいろなフィードバックがあって、形成されてく るのではないかという気がするのです。何かその他にありますか。 〇浅野委員  医療情報というか患者になるということはプライバシーの最たるもので、どこの病院 で治療を受けるとかですね。ですから大島先生が言われたことと私は同じ意見です。基 本的には市民がきめることであると思います。これは開示してほしくないとかね。公表 してほしくないとかね。それを最大限全ての関係者が尊重する、特にマスメディアの人 達にそれを尊重してもらいたいということであると思います。 〇黒川委員長  そうすると軸のところは、ここのところを“必ず”とかにしなくてもいいのではない かということと、公表というのはどうするのかということをまたはっきりここでディフ ァインするような性質のものでもないのではないかと思います。  こういう (4)のような文章としては基本的には了承ということでよろしいかと思いま す。もう一つは基本的にこういう第三者機関を作っていただいて、厚生大臣の直轄にし て、そこでいろいろ検証して、かなりそこにはコンフィデンシャリティはキープされて いる。だけどその報告を、いま竹内先生に報告していただいているような格好でここに 上がってきてということかな、そこをスクリーニングしてここに報告していただいて、 ここの業務は確かに全部のチェックをしているわけではなくて、むしろネットワークと か移植全体のことについてのいろいろな審議をしていただきたいということの方が、恐 らく生産性はいいのではないかという趣旨であると思います。  今までの皆さんのご意見それからいろいろな外からの話を聞いているところでは、第 三者機関によっての検証というのが望ましいという全体の動きではないかと思います。 〇井形委員  原則賛成でありますからこの通りで結構でありますが、ただ、細かいことで恐縮です が結論が微妙に違う可能性があるんです。そのときの調整をどうされるのかなというこ とがちょっと気になります。これは黒川先生がこの会に報告されるといいましたが、そ れは事後報告されるのか、了承を得る報告をするのか、それから裁判なんかでも同じよ うにこういうことの事実誤認があるとか、そういうことがこういうことが行われると、 これは完全に独立した機関で結論を公表しますから、この委員会の意見と違うこともあ り得るわけですね。  したがって、少なくとも黒川先生くらいは委員に入っていただいておいて、情報の十 分な検討をしたというイメージだけは持ってもらいたいと思いますね。どうでしょう か。 〇朝浦室長  第三者検証機関は、独立した機関ですので、その構成員の方々がそれぞれの見識のも とにご議論いただいて、機関としての判断を下されるわけです。この専門委員会とは別 の機関である、場合によっては第三者検証機関の報告をこちらの専門委員会の方にご報 告をするということも当然あるわけです。この委員会の場で、かりにもしあるケースに ついて議論があったときに、検証機関とこの専門委員会の場の議論が違っても、それは それぞれの機関の責任で判断されるのであって、当然あり得ることで、意見が一致しな ければならないということにはならないと思っております。 〇黒川委員長  私もいまの事務局の基本的な考えでいいのではないかと思います。両方が対立するわ けではないのですが、全く別のボディーでどういうふうになっているのかというのが望 ましいのではないかと思います。そこでいろいろな疑問が出てくるとか、いろいろな話 があった場合にはどなるかということですが、いろいろなケースが想定はされますが、 そういうのが司法の場でどうなるのか、事例を重ねていくのかとか、いろいろなケース が考えられるわけで、いろいろな予測をしてそこまで決めるのはなかなか難しいだろう というのが私の感じです。  よろしければ、このような検証機関で行っていくという方向でいいですか。 〇浅野委員  先ほど朝浦室長が途中で後でいいますと言ったのですが、公表の場合、家族の同意が 必要かどうかという議論を前回の厚生省の案を委員会で了承した、その際にいろいろな 議論があって、これは次の日の新聞を見ると夕刊から朝刊にかけて、一斉にまた家族の 同意ということが情報を非公開にするというような議論があって、宮下厚生大臣が、数 人の記者の質問に答えていろいろ説明されているわけです。そのことをこの場できちん としてもらわないと国民はわけがわからないと思います。  朝日新聞を読んでいたり、フジテレビを見ている人は、皆、厚生省は酷いところであ る、あの委員会は一体なんだと思っていると思うので、私はこの委員会の委員として、 議事録を見てもらえばわかりますが、しかし議事録を国民が皆読むわけではないので、 そこのところはきちんと家族のことは、原則としてという言葉を入れたとね。  それから今回の表現も僕はそれに合わせるべきだと思います。そのときの厚生大臣が 説明したり、その後おそらく厚生省の中でも議論されたでしょうから、あそこでいった 原則的という意味、それから同意という意味、家族の範囲について、ここで統一した言 葉にした方がいいんじゃないか。今回は、必ず得るものとする、というのは前のものと 大分違うので、同じようにした方がいいのではないか。あるいはそれは前回と同じとす るでもいいのですが。  もう一つです。2ページに専門家の10人というのがありますが、ぜひマスコミュニ ケーションでもメディアでもいいのですが、言葉はジャーナリズムでもいいのですが、 大久保委員のご意見にもありますように、どうしてもこれはマスメディアに発表される というか、マスメディアに報道されるということを関係者の方は非常に考えているわけ ですから、それについて1人委員が入った方がいいのではないか。柳田邦男参考人の意 見の中には書面で出た意見の中には、メディア論の専門家という形で入っていたと思い ますので、そこのところは強く主張したいです。それと同時に前からいってますが、こ の間の議論、情報開示とプライバシーについて議論してきた委員会として、日本新聞協 会とか民間放送連盟、NHKに対して、マスメディア全体の最低限の統一できるガイド ラインというものを作ってほしい。その協議の上で、この検証機関の開示公開の範囲と いうものをやっていくということを本委員会として申し入れるという希望があります。 その上で私は了承したいと思います。 〇黒川委員長  他の委員のご意見はどうでしょうか。前回の話と軸、今度の場合の公表の際には必ず という話が出てきて、この間は基本的にというふうになってますから、その辺は整合性 があった方が望ましい部分があるかも知れません。がちょっと時点が違うとも思いま す。 〇浅野委員  しかしこれははっきりしないと、今日の夕刊で出ると思います。出たら困るのではっ きり朝浦さんに説明していただきたいと思います。 〇朝浦室長  それでは議事が前後するのですが資料6を見ていただきたいと思います。臓器移植の 透明性確保と臓器提供者等のプライバシー保護の両立について、というペーパーを出さ せていただいております。  この点につきましては前回の本委員会の場で資料6の参考に後ろの2枚のペーパーを ご説明をしてご議論いただいております。一番最後の5ページのところの3でございま す。家族から開示されては困るといった事項としては、中間報告では原則として開示し ないことについては本委員会の場で合意が見られている、臓器提供の事実を含めてご家 族が開示を承諾しなかった場合の対応としては、臓器提供の手続き自体を行うものの、 コーディネーターが臓器提供についての説明をする際には、事実関係、医学情報等が開 示されること、及びその項目を説明して、十分に納得をしていただくよう努力するもの とし、その上でなおご家族が承諾されない場合には、1)の考え方にしたがって基本的に 開示を行わないこととなってもやむを得ないものと考える。というものを出させていた だいております。ここで基本的にという言葉を残すのか残さないのかというような議論 がありまして、そういう議論を踏まえて、厚生大臣のほうから、専門委員会が終わった 翌日だったと思いますが、記者会見の場で、厚生省の考えを改めてご説明したところで ございます。  その考え方をまとめましたのが資料6の1ページ目のところでございます。これまで の経緯を含めて、再度ご説明します。  今年2月に脳死移植法施行後初の脳死下での臓器提供が行われて以降、臓器移植の透 明性の確保と、臓器提供者等のプライバシーの保護の両立を図ることが極めて重要な課 題となってきている。厚生省としてもこれまで臓器提供事例におきまして、移植医療の 透明性の確保の観点から臓器提供者の家族に対しまして、事実関係及び医学情報が開示 されることを十分納得していただくよう努力してきたところであり、これまでの事例に 基づいて参考1のとおり、基本的に開示されるべき事項としてご家族にお示しする事項 について定めております。  参考1は、第3例目の脳死下での臓器提供に係る情報の取扱について、厚生省と臓器 移植ネットワークが取りまとめをして、ご家族にご説明をして、この考え方にご納得い ただける部分については、第2回目の脳死判定後に公表するという形で進めさせていた だいているところです。  これらの状況を踏まえて、前回臓器移植専門委員会において、そのように努力しても なお情報公開についてご家族の了承がどうしても得られない場合についての対応方針を 先ほど申しまして、お示しをしたところでございます。  前回、厚生省が示した方針は、臓器提供者のご家族に対し、事実関係及び医学情報が 開示されることを十分に納得していただけるよう努力しても、なお情報公開についてご 家族の承諾がどうしても得られない場合、恐らくこういったケースというのは、これま でのケースからしますと、例外中の例外と私どもも考えておりますが、それにこのよう な場合には情報開示について、臓器提供者及びご家族のプライバシーの保護を原則とす るという基本的なスタンスを示したものでございます。  今後の厚生省の方針でございますが、厚生省としては、移植医療の透明性の確保の重 要性についても十分認識しておりまして、前回の臓器移植専門委員会におけるご議論を 踏まえて、ご家族の承諾を得ないまま、情報開示を行うことが可能な場合があるかどう か、またはご家族に情報開示の重要性についてより深くご理解いただくために、どのよ うな方策があるかどうか等について、今後、起きるであろう個別事例に則して、検討し ていきたいと考えております。以上でございます。 〇黒川委員長  いかがでございましょうか。そういうことになるんじゃないかな。要するに一つ一つ の事例でこういうことだとどうだという話をしていると、進まないわけだし、そこまで 予想して書くとますます分厚くなるかなという気はしないでもないので、板倉先生のご 意見はいかがでしょうか。法律家としてですね。何でも法律でがんじがらめにしても仕 方ないのですがね。 〇板倉委員  基本的にはこういうことだと思いますが、個別事例に則して検討していくということ は、もちろん、これは場合によってはご家族の同意が得られない場合があっても公開は するということだと、絶対に公開しないことだと具合が悪いと思うから、そういう含み であるということであればわかるのです。 〇黒川委員長  だからこの間私もいったのは、少なくともここの委員会には出てくるわけだから、と いうわけで、全く起こったことさえも何もないという話になるということはまずない、 という話をさせていただいたんです。だから公表の意味にもよるのですがね。 〇板倉委員  そうですね。脳死判定をしたということ自体も公表しないとか、そういうことではな いんだろうと思うのです。そうだと非常に問題だと思います。 〇黒川委員長  かなりそういうのがエクストリームなことを考えておかないといけないのでしょうか ね。 〇板倉委員  しないと言い切ってしまうと、第三者がマスコミの方などが見たら、そういうふうに 受け取る可能性がかなりありますから、そこのところはそうではないということを入れ ておくべきだと思います。 〇朝浦室長  恐らく臓器提供なり脳死判定そのものを、公表してほしくないという方はほとんど考 えられないと思うのですが、仮にそういうケースがあったとしても、厚生省の我々とし ては、そういう事実そのものがあった場合には、やはりあったということが当然公表と いう言葉がいいのかどうかわかりませんが、発表するということになろうかと思いま す。 〇黒川委員長  しかし意思表示カードにサインして、家族も同意しているのに、そういうことまでに なるというのは実際にいろいろなシチュエーションを考えるのは構わないが、あまりリ アリティはないのではないかな。実際にあった場合にはどういう動きがあるという話は 多分あると思うのですが。 〇野本委員  対策本部におりますと、そういう要請に近いことがこの間あったのです。これはご遺 体が全部お家に帰ってからでないと、あらゆる情報を提供するなということがあったの ですが、それもよくお願いして、出来るかぎり情報を開示させてほしいという話し合い を、私の方からも、それから厚生省からも行きましたら、それはよく分かってくれたの です。  要は、ご家族などはメディアの情報が本当の覗き趣味的な話で出てくるのではないか という気持ちかあるから怖がったのであって、実際はそうではなく、出てきた情報は全 部国民が一人一人自分が判断するための材料に使われているというのが現状で、それは 間違いないことなので、そこのところをお願いすると、私は突破できると思いますし、 自分が対策本部をやっている限り、このようなケースはあり得ないし、ここまでいって どうやっても一切のことを闇に葬ってくれというのであれば、対策本部長としてはそこ でストップですね。ネットワークの動きはね。ネットワークとしては対応しませんと答 えざるを得ないと思います。  それはしかしそういうことではご本人の意思も家族のご意思も尊重しなければいけな いわけですから、これはそういうことになれば、私も厚生省のしかるべき人も、現場に いって直接お願いして、現場でお願いして、少しでも最低の皆が不安がらないで情報だ けは出させていただく、そういうところまではやらないといけないと考えております。  本部におっただけで話し合いをして、うまくいきませんからごめんなさいというつも りは厚生省にもないでしょうし、私もそういう気持ちはありません。  だからそういうことはとことんやった上でどうなるかということになったら、最後の 最後のところはネットワークの対策本部長の決断にまかせる。駄目なら駄目というこも ありうるということだけ、むしろ認めていただいたほうがいいと思います。あり得ない ように努力します。それが言える唯一のことです。 〇黒川委員長  いま野本先生がおっしゃったように現場の話と、リアルタイムの問題と、そういう話 のいろいろお願いしているという場合が、いろいろな意味での拒否反応を示しているの は、マスメディアの覗き趣味のようなものがあって、それは浅野先生が何回も言われま すが、しかしそれはこちらがどうしてくれとか、どうすべきだという筋合いのものでは ないわけで、それはどういうふうに進化していくのかという様子を見るより仕方ないの ではないかと思います。それを全て予測して、ああしろこうしろといっているような委 員会でもない。 〇矢崎委員  今の議論は資料2の第三者機関での結果についての議論であって、プライバシー保護 とはちょっと違うのではないかと思うのです。それで今の資料2の議論については、こ れは医学的判断で下した結果と、法的社会的な判断で下した結果についてのことですの で、その結果については公表することであって、患者さんのプライバシーに関係する部 分はあまりないのではないかというふうに思うのです。  ですから今個人のプライバシーに関しては資料6の情報開示、これは情報開示はカル テの開示についてもちょっと誤解があるのですが、カルテをそのまま公表するのではな くて、カルテの情報は患者さんに戻すという意味です。その意味で、この資料2の結果 の公表については、先ほども議論がありましたように、この委員会の判定と医学的な判 定と、第三者検証機関の判定と、ある程度食い違うことはあり得る、その時はそれは公 表しましょうということだと思うのです。 〇黒川委員長  実はそうです。この資料6は実は前回議論したところの話で、第三者機関のこととち ょっと関係ない話であったのですが、似たような共通のものがあるから、浅野委員と板 倉委員のお話を伺いました。 〇浅野委員  多いに関係あると思います。第三者検証機関を作って、5例目以降はこの委員会では 作業班はないわけでしょう。 〇黒川委員長  いや同じ作業班をやるのは向こうで考えてくれると思います。 〇浅野委員  しかしそれはまだ公表されていません。 〇黒川委員長  どういうシステムでやるのかということを、ここが検討して公表する必要はないと思 います。だって、厚生省大臣の下に直轄するというのに、どうしろかとかああしろとこ こが言うわけではなく、向こうがやってきたことについて、こちらが言うことがあるか も知れませんがね。そのあり方についてこちらが口出しをするのもね。 〇浅野委員  そのあり方をここで決めるわけでしょ。 〇黒川委員長  いや決めるんじゃないと思います。こちらと独立しているのに、こちらがああしろと かこうしろというのは僕は行き過ぎではないかと思います。 〇浅野委員  それは今日それを承認してほしいということで、事務局案が出でいるわけではないの でしょうか。 〇黒川委員長  第三者機関を作るが、その第三者機関の運営の仕方とか、そこまではこちらでしなく てもいいんじゃないかと思います。それはどうですか。 〇朝浦室長  第三者検証機関については、この専門委員会での議論を踏まえて、厚生省の下に設置 をしたいという考え方をお示ししているわけですが、現在、お示ししている文書、骨格 の部分についてご意見をいただければ、それを踏まえて厚生省のほうで、それを十分尊 重して運営していきたいと思っております。 〇浅野委員  それは意見を出すということですね。私はいま矢崎委員が言われたこととは違う意見 です。これは多いにどういう形で、つまり第三者機関の会議は非公開ですから、国民が 知ることができるのは、この報告書しかないわけですから、その報告書がどういう形 で、家族の同意との関係について、議論をしておかないといけないと思うので、資料6 のほうも一緒に説明していただいたほうがいいのではないかといった意味で、別にこれ は無意味な患者のプライバシーに関係ないということでは絶対にないと思います。  私はリアルタイムで脳死のプロセスが行われている過程、そこにおける家族の同意と いうことと、それが終わったあとに検証していくときの家族の同意は違うと思うので す。今国民の多くが心配しているのは、実際に脳死の判定などが行われているときに、 共同通信などは第1回脳死判定から報道すると決めておりますから報道されるわけで す。そのことについて同意したくないといっている人がいる。それは多くの人がいると 思います。  それから東京都立の病院ではお見送りの後に公表するということを決めました。厚生 省の開示の基準と基準が違うわけです。  その意味で私はどっちかというと見送りまで待つというのが人間的なやり方ではない かと思っております。  その意味でその段階までは情報を公開しないでほしいという患者の声は当然であると 思います。それが厚生省の基準と違うから、臓器提供はもうやめたほうがいいというの はおかしいと思います。少なくとも臓器は提供したいという国民の声に対して、マスメ ディアにどうしても発表したいから、少なくともこれとこれは発表したいから、それが 嫌だというのなら、判定はしないというようなことを、もしそういうことがあるとすれ ば、そういう論調がメディアの中にはあるので、つまり中島みちさんとか柳田邦男さん は朝日新聞の取材に対してそのようにいっております。家族が同意しない場合には臓器 提供をやめたほうがいいと言っているわけです。  その意味で一切家族が同意しないなら、脳死の臓器移植の手続きそのものを止めた方 がいいというのは私は非常に危険であると思うのです。 〇黒川委員長  それは一つの意見であって、皆さんそう思っている人は少ないんじゃないんですか。 〇浅野委員  それに対して議論しておくことは重要だと思います。私は分けるべきだと思うので す。プロセスが進んでいる間の公表の問題と、終わった後の検証に対して家族に協力し てもらう、この後者に対しては家族の人はほとんど反対しないのではないかと思ってま す。ところが、第2回の脳死判定確定後には公表すると厚生省がいろいろと発表の基準 がありますが、それについてはそこまで発表してほしくないという人かいろいろなケー スで出てくる可能性は多いにあるわけです。それに対してその場合にはそのプロセスを 中止するというのはおかしいと思います。 〇黒川委員長  浅野先生、時間の話をここでしているわけではなく、一切後からも公表しないといっ ているわけではなく、先生のいっている通りです。それはリアルタイムではやらないと いうのはかなりのコンセンサスがあるが、しかし絶対にそれが一つの答えしかないとい っているわけでもないわけです。先生の意見は意見として尊重しますが、それだけが答 えであると私には思えない。中島さんの意見も一つの意見、先生の意見も一つの意見と 皆さん思っていると思っているので、厚生省のこの案はリアルタイムの話をしているわ けではなく、検証の場でも一切なにもないといっているわけではないんじゃないかな。  もしそれが疑問があれば、はっきりとそこは一言書いておけばいいという話ですね。 これは板倉先生に伺ったほうがいいかな。 〇野本委員  今の話のようにある時間ポイントを厚生省が決めて、そのときに全てを設定して公開 してもらうようにせよというのであれば、私は対策本部長を降ります、そういうことは できません。それはあくまで家族と話し合って皆が納得できるポイントで、ただ全ての 情報を出さないでくれという話のときは、これは後のマイナスのほうが怖いから、そう いうことがないように努力をするわけで、それ以外に例えばお家に帰ってからの公表に してくれということで、それが強いご意見なら、それができるようにちゃんとメディア の人とも相談 しないといけないのではないでしょうか。  私は、厚生省もどこのポイントでせよとはいってないと思うのです。それをせよとい うのであれば、実際にネットワークはできませんね。 〇黒川委員長  だから浅野委員がおっしゃるように、そこまでここで全部決めるかという話をしてい るわけではないと思います。 〇浅野委員  厚生省は情報開示のタイミングを決めてます。 〇黒川委員長  事務局どうですか。でもこの公表というのはさっきいっているように、公表とは一体 何なのかという話に返ってしまうんじゃないですか。 〇浅野委員  第2回目の脳死判定が終わった段階です。 〇黒川委員長  その公表だけの話をしているじゃないとおもうけど。 〇浅野委員  そこが最初に国民に知らせる公表なんです。それについてはいろいろな議論の組み立 てがあるんじゃないでしょうか。 〇黒川委員長  それについては嫌だといっている場合には、一切しないと言っているんじゃないんじ ゃないの、それはどうなの。 〇浅野委員  そういう人が3例目4例目にあったわけです。 〇黒川委員長  公表というのは、この間いったのはこの委員会での検証については発表があるからと いう話をしているわけで、もしそうであれば浅野先生のいっていることと、他の委員が 考えていることとかなり違うかも知れないから、そこは明らかにしておいた方がいいか も知れない。あまりこれで議論が延びると困るので、浅野先生の意見としてはそれを伺 いますが、中島さんの意見も中島さんの意見として言っているだけの話だと思います。 〇浅野委員  家族が同意しない場合には一切発表してほしくないというのはかなり現実的に想定で きることだと思います。 〇黒川委員長  いつという話をしているわけではないんですよ。 〇浅野委員  だから、そこはきちんとしないといけないのではないでしょうかと言っているわけで す。 〇黒川委員長  もし気になるのであればそこだけどうぞ。 〇山本補佐  議論が交錯しておりますが、まず1点目、浅野委員が最初におっしゃった家族は一切 の情報開示に同意しなくて、臓器提供したいといった場合にどうするのかという議論は もう中間報告の中で整理されています。ここの委員会では家族の情報開示に対する同意 と、臓器提供の同意は別で、それは家族が情報開示したくないといっても、臓器提供の 意思があれば、臓器提供をするのだというのが多数の意見であったということは中間報 告で整理されているかと存じます。  厚生省の今の方針としては、2回目の脳死判定後に、例えばこういう項目を公表した らいいかということで、今までの事例を含めて整理してきましたが、現実的には2回目 の脳死判定後にはこの項目しか嫌だとか、もうちょっと後にしてほしいということもご ざいますし、もうずーと長い時間を掛けて、コーディネーターを介して家族と相対し て、法的脳死判定が終わったあと、もしくはお見送りの後、もしくは初七日が終わった 後も含めまして長い一連の作業班の過程の中でもご家族とコンタクトをとって、どうい う情報をご提示いただいて、我々はどれだけ社会に還元できるのかということをやって おりますので、そういう方からいうと、2回目の脳死判定の1点限りに限って情報開示 をするとかしないとかという問題ではなく、全体を通して、家族からの同意・ご理解を 得られるか、情報開示をどうするべきかという視点でこの資料をまとめたつもりでござ います。 〇黒川委員  これはだから議事録に残るわけですから、この解釈については、それがはっきりして いればいいんじゃないかと思います。これの文書そのものに書かなくても議事録に残っ ていて、そういう視点で皆は思っているということであればよろしいと思います。皆さ んのご意見はいかがですか。これも未来永劫変わらないわけではないでから、そういう ことはまずないと皆さんは思っているということだと思います。それは今いったメディ アの発表のタイミングとは別の問題であるということを、いまはっきりさせたので、そ れは議事録に残しておくということでお願いしたいと思います。  第三者検証機関の構成について認めていただいたということになるのかな、そうだと 思うのですが、委員その他についての構成、その他いろいろ考えていただいて、それに ついてはこちらに連絡を、こういうふうになりますというとこで、こちらのインプット は今までのことがありますから入れさせていただいて、委員についていろいろ出てきた ものについてのコメント、いろいろとフィードバックをしながらよりいいシステムを作 っていけるのではないかと思います。  これの委員会の第三者検証機関の運営の仕方、それは事務局もいろいろ経験があるだ ろうし、私どももいろいろ経験がある、今までのことから学んだことをいかにうまく組 み入れていくのかということが一番大事なわけで、そういうことをしながら検証機関を 健全に育てながら、こちらにもいろいろフィードバックしていただくという格好がいい のではないか。それについてもまたお互いに検証しながらやっていくというプロセスが 大事なのではないかと思います。よろしいでしょうか。 〇浅野委員  私はこれを了承するということであれば私は了承できません。理由は今まで申し上げ た通りです。今の山本さんの説明にしてもよくわからないのは、そうはいっても、ここ に資料もありますが、第2回脳死判定の後に記者会見して発表する、野本先生はそうい うことは決まってないと言われましたが、はっきり決まっていて、ですからもっと後で 発表したいといった場合に、説得したわけです。そのことも記録されております。  その意味で、今のところ5例目6例目以降は、そういう厚生記者会への発表といいま すか、こういうことがあったという公的な発表というものが、その時点で行われるわけ です。その内容も決まっている。  それに対して、家族はそれが嫌だということはいつでも起こりうるわけです。5例目 6例目でね。そのことについてあまり想定する必要はないのではないかといわれても、 私はちょっと納得できません。  大久保委員がこの構成員のメンバーの半数以上を非医療関係者にするべきだという意 見が出ておりますが、私はそのことをはっきりさせてもらいたいと思います。半数とい うか表現はともかくとしてマジョリティをお医者さん関係者だけで占めないようにする ということは非常に大事ではないかと思います。  それから当面は厚生省が事務局をやるといっておりますが、その当面というのは一体 どれくらいで、当面ということはつまり本来はもっと違う姿がいいのではないかという ことが行間に読み取れるのですが、ではそれに対してどういうふうに展望していくのか ということも私がこの委員会で何度も議論してきましたが、厚生省とか委員を誰が選ぶ とか、内容についても、中立的公正な人達がそこにも入っていく運営委員会的なものを 作るべきだと思います。  マスメディアのことはマスメディアがやるのだからこちらがいっても仕方ないという のは、絶対におかしい。マスメディアというのはひとつの社会の中で社会的役割を果し ているわけですから、実際これまでの議論でもマスメディアの取材、報道だけではなく 取材についても、家族が困っているという状況があるわけです。そのことが情報の開示 を狭めているわけです。何も厚生省が情報の開示を狭めているわけではなく、家族がメ ディアに出ることを恐れて、情報開示を狭めてほしいということを厚生省に依頼してい るということだと思うのです。  そのことについてマスメディアの人達に対して委員会としても、きちんと意見を申し 入れないと、報道の自由、取材の自由だから、それらはかれらがやるのだということで は、この問題は済まないと思います。5例目以降は思いますので、そこのところに対し てきちんと委員会として対応しないのであれば、私はこれは承認できません。 〇黒川委員長  それは先生のご意見です。他の先生方いかがでしょうか。 〇大島委員  この委員会でやろうとしていることは、基本的には社会の平均的なというかマジョリ ティがどの辺のところを求めているのかということだろうと思うのです。私が自分の常 識感覚がどの辺にあるのか、移植医ですからいつも異常な人間であると指摘されてきて いる立場なので、私の常識感覚がちょっとずれているのかれ知れないのですが、少なく とも今議論されていることは、例外的な議論ばかりが出ていて、非常に極端な言い方を するかもしれませんが、あるドナーの家族はリアルタイムで始めから全部報道してく れ、皆、中に入っても構わないから全部報道してくれという方がもし出てきたらどうす るのか。それはそれでいいと思うのです。  もしそういう提供者が出てきた場合には、何でもかんでも全部いってほしい、外に出 してほしい、テレビも入ってほしい、新聞も全部書いてほしいというようなことをもし 言われた家族がいたとしたら、それは別に規制にしたがってやる必要はないわけです。  だからどの辺が平均値なのか、どの辺が一体マジョリティなのかというところで、収 めようというか、その辺で考えようというのがこの委員会だと思います。  その意味で、厚生省から出てきている案というのはおかしな話ではないと思います。 この議論のプロセスの中で、非常に平均値的なところで出できているのではないかとい う理解をしているのです。 〇黒川委員長  多分この委員会も委員がどんどん変わっていくと、また話が変わっていくこともある わけです。そういうものが、ある程度、皆意見が同じではないというところが健全では ないかと思います。 〇大島委員  そうですね。例えばここで公開されている資料も、細かいことを言えば、これはメデ ィアの方は皆参加されているわけですから、これを全部書いてもいいわけです。新聞に 事細かくね。これも全部書いたらある部分で非常にご家族から、何だという話が出てく るような話は一杯あると思うのです。それが出てこないということは、ある意味では一 番最初の脳死移植のあの報道、2例目3例目4例目というプロセスの中で、学習効果と いうとあれですが、紆余曲折しながら段々平均的なところに近づいているのではないか という感じがするのです。 〇黒川委員長  浅野先生のご意見ももちろん一つの意見として尊重したいと思いますが、メディアに ついても私は最初からいっているのですが、これだけ公開されて聞いているわけですか ら、メディアの対応については、こちらがああしろこうしろというのではなく、お願い はしているのだが、そうしないから怪しからんという性質でもないし、だからどうしょ うというのはちょっとまずいのではないかと私は思っているのです。これは浅野先生と ちょっと違うかも知れないが、先生のご意見も皆さんも事務局も尊重して、これについ ての第三者機関の人、もちろん大久保さんのコメントもあるわけですから、そういうの は当然考えはするが、そのようにするという約束は誰もできないのではないか。 〇大塚委員  現場ですとここの委員の先生方の考えかたが諸々違う以上に、ご家族の考え方は全く 違うのです。先ほどおっしゃったように、全部公開してくれという方もいらっしゃる し、全く公開は嫌だという方もいらっしゃるわけです。  ですからいつの時点で公開するということは決められないと私は思うのです。これも 第2回目の法的脳死判定終了後と厚生省はいっておりますが、その終了した時点で公表 するという意味ではないのです。ご遺体が自宅に帰ってからかも知れないし、臓器移植 が終わってからかも知れない。そういうことをいっているのであって、要するに2回目 の脳死判定をする前には困るということを言ったのだと僕は理解しております。 〇黒川委員長  だからこれが4例ですが、これが10例になり50例になり100 例になると、また対応が 変わってくるのではないかという気はします。だからあまりがっちりがちがちと決める というのは、ちょっとまずいのではないか。そのたびに変わる可能性があるので、皆さ んのご意見はあると思いますが、委員の先生方のマジョリティというかコンセンサスと いうか、全員が一致するわけではないのですが、原則として基本的に云々という、厚生 省の資料の6の一番最後のページもそうですが、全くなにも喋らないという話ではな く、1にあるようなことについて開示項目を基本とするという話と、第三者検討機関を 作って、それをどう運営していくのかというのは、十分に皆さんの意見を考えてやって いただくということでよろしいのではないでしょうか。  それによって出てきたものについて、いろいろなフィードバック、それから国民から の声、それから報道機関の放送、いろいろな話でそれが段々落ちついた格好になってい くと思います。 〇野本委員  ポイントだけです。2回目の脳死判定以後としているのは、2回目の判定より前は法 的に生きているのです。だからそれはいろいろな情報その他は扱えないということで す。オフィシャルな立場でね。だから脳死判定以後、2回目の脳死判定ではじめて死と いうことですし、臓器提供ということに直結するわけです。それより前は情報を出すと か出さないというのは、あくまでご家族の100 %のものであって、我々が関与するべき ことではない。だから我々としては2回目と線を引いたのは、大塚先生がおっしゃった ように非常に明確な意味があっての2回目という意味合いです。そこだけご理解くださ い。 〇黒川委員長  それについては違った意見もいろいろ書かれていることは承知した上で、そういって いるわけです。そういうことでお願いできればと思います。 〇浅野委員  議事録に私が残してほしいのは、いま別にタイミングが決まってないという意見を言 われてましたが、資料6の参考1で、いま野本先生が言われたように第2回の脳死判定 終了後ということになってます。それから開示の内容も決まっていて、そのことについ てその時点での開示は困るという人が多いに出る可能性があるので、それに対応するべ きであるということをいっているだけです。 〇黒川委員長  申し訳ございませんが、私の不始末ですが、臓器提供に結びつかなかった東海地方の 提供施設での脳死判定が行われた事例についてということで、これについても検証機関 でやっていただくということになりますね。 〇朝浦室長  新しく設置する予定の第三者検証機関において、お願いできればと思っております。 〇黒川委員長  ではそういうことでお願いしたいと思います。よろしいでしょうか、ありがとうござ います。  それで法的脳死判定マニュアルということが前々から出ておりまして、これについて は小泉委員会あるいは竹内委員会からの報告を受けまして、これの整備ということが大 分問題になっております。そこでガイドラインに基づいた竹内基準及び補遺、先ほども ご説明しましたが、それに準拠するということでしたが、現場から参照するべき資料が 多くて、大変に複雑だという指摘もあるので、貫井先生の下に厚生科学の研究事業とい うものが行われまして、法的脳死判定マニュアルというのを作成していただきましたの で、貫井先生きょうは大変お忙しいところありがとうございます。貫井先生からご報告 いただきたいと思います。 〇貫井先生  いま黒川先生がおっしゃいましたように現場ではいろいろな混乱が起こっております ので、臓器に関する法律、あるいはその施行規則あるいはガイドラインと呼ばれる指針 を含めて、竹内先生がお作りになった竹内基準とその補遺を総合して、臓器移植を前提 とした法的脳死の手順を整理して明確にした、というこのがこのお手元にあります法的 脳死判定マニュアルでございます。  この法的脳死判定マニュアルは3章からなっております。第1章は法的脳死判定の際 に守るべき事項を簡単に項目別に述べてございます。第2章は実施マニュアルでござい まして、これは実際の観察方法あるいは判定方法を非常に具体的に述べている章であり ます。第3章は法的な手順に関しての手続きと、それ以外の文献あるいは参考となる資 料が載せてございます。そういう構成でまず出来上がっているということをご理解いた だきたいと思います。  実際にはじめにという項がございまして、それから目次がございます。法的脳死判定 の際に守るべき事項、第1章の2ページから個々の事項に関しまして、多少問題のある ところ、あるいはご関心のあるだろうと思うところを、ちょっと時間がございませんの で、選んでご説明したいと思います。  2ページの脳死と判定するための必須条件というところからはじまりますが、ここで は4番目「脳死と判定するための必須項目の検査結果が全て判定基準と一致しているこ と」というのを明記してございます。これは今まではっきりしてございませんので、後 ほどこれに関するのが実施マニュアルの中に出てきますが、これを明記しました。この ページに関してましては、あとは前提条件、除外例、生命徴候の確認、等々に関しては ほとんど指針あるいは施行規則に書いてあることでございます。右側の除外例の15歳未 満あるいは知的障害者等の下に注というのがございます。これも実際には法的には除外 例には入っておりませんが、脳死判定の際に、例えば脳幹反応の検査ができない、ある いは無呼吸テストができない、これが予想される場合には脳死判定を見合わせるという 条項がここに入っております。このページが大体そういうところがポイントでございま す。  次のページにいきます。次のページはほとんど目新しいことはございません。ただ10 番目の脳死判定の順序という一番最後に、次のページに6ページにかかりますが、ここ で深昏睡の確認、以下6・7・8とございます。瞳孔散大、脳幹反射消失の確認、平坦 脳波の確認、この3つはどんな順序でやってもよろしいというのがはっきりと書いたこ とでございます。脳波を先にやった脳幹反射を後にやったというのは、ほとんど臨床的 に問題はございません。  自発呼吸の消失これは必ず最後、脳死判定の最後にやるということもここで明記して ございます。  第1章は大体そういうところであります。  第2章にいきます。第2章の最初の書面の確認、前提条件の確認、これは8・9ペー ジになりますが、これに関してはほとんど問題はないというか、今までのとおりでござ ます。  除外例というのが10・11ページにございます。ここでは第1章で示した急性薬物中 毒、これを多少具体的に記述した。それから中枢神経作用薬に関しても多少ここに説明 がございます。もう一度脳幹反射、無呼吸のテストが不可能な場合は、当面、脳死判定 を見合わせるという注もここに付いてございます。  次のページです。生命徴候の確認、これは全く問題はないというか、指針に書かれた とおりであります。  深昏睡の確認、これも実際には確認法、判定法、注意が書いてございますが、あまり 問題は起きないであろうと思います。ここは竹内先生の作られた竹内基準、あるいはそ の補遺から多少説明を加えております。自発運動、脊髄反射との区別とか、そういうこ とを具体的に書いてあるということであります。  それから16・17ページです。16ページの瞳孔散大、固定の確認、これも実際には今ま でやられていることであります。  脳幹反射消失の確認、これに関しましても、今までの基準に準拠して統合したわけで すが、非常に具体的にまずどんなものを用意したらいいのかということが書いてござい ますが、その下のごく最近問題になりましたが、眼球や角膜、あるいは鼓膜の損傷があ る場合に、脳死判定ができない、中止するということは、これは第1章で全ての必須項 目の結果が一致しなければ脳死判定はしないというのが書いてございますが、それを受 けて、一応現時点では一側の眼球・角膜及び鼓膜の損傷がある場合には脳死判定をしな いということがここに書いてございます。  ただ、いろいろな医学的な治験あるいは補助検査法の進歩があって、これが確実にこ れ以外の方法で脳幹反射の消失が確認できれば、脳幹機能の廃絶が確認できればまたそ れなりに改善していく。この点に関しては今議論が起こっておりますので、検討すると いう項目が18ページの注のところに書いてございます。  対光反射、角膜反射、毛様脊髄反射、眼球頭反射、これに関してはほとんど具体的に 問題はございませんが、前庭反射に関しまして、先ほどいろいろな問題が出てまいりま したので、脳死の場合の刺激は強い刺激でないといけないということではっきりと氷水 と書いてございます。それと備考のところに、問題となりましたエアー・カロリック・ テストのことも書いてございます。咽頭反射、咳の反射これは別に竹内基準に準拠して 書いてございますので問題はなかろうかと思います。  平坦脳波の確認、これに関しましても、脳波筋電図学会の基準をもとにして書いてご ざいます。ただいろいろと図を入れたり、モンタージュの例を入れたりして、できるだ けわかりやすくとなっております。  27ページです。脳波というのは測定するのが非常に大変でございますのでアーチファ クトを除く具体的な方法をこの中に入れて、専門家と相談しまして、何ページかにわた って、こういうことをやったらアーチファクトが除けるという方法例を挿入してござい ます。それが34ページまで続きましす。  35ページからは無呼吸テストでございます。これに関しましては最初の竹内基準です と10分間、その後時間を外して、PaCO2 の濃度が問題であるという方向になってお りまして、このマニュアルでも、人工呼吸器を外す時間は関係ない、あまり気にしなく てもいい、PaCO2 が60mmHg以上であればよろしいというような方針でここに出て おります。  第2章、ざっとですが内容に関しましては、終わりでございます。  第3章に関しましては、これは脳死判定実施の手順書ということで、指針あるいは施 行細則に基づいて全て脚注でこういうことをやらないといけませんよというのを、経時 的な形で書いてございますので、これを順番に追っていけば法的な手続きはできる、そ れ以外はいろいろな脳死判定の承諾書とか臓器提供の承諾書とかというのは、後に付い ておりますし、フローチャート、参考文献というふうに付いております。一応この1冊 を持っておいていただきますと、臓器移植を前提とした法的脳死判定がほぼ間違いなく できるだろう。特に第1章はそういう意味のチェックリストとしても使えるだろうとい うふうに、そういう目的をもって作りました。以上でございます。 〇黒川委員長  ありがとうございました。大変詳細な検討と分かりやすくまとめられて、昭和60年、 平成3年の脳死のガイドラインいろいろなものについての研究班の成果を、もう一回ま とめて、分かりやすくしていただいたわけです。これについてご意見はございますか。 竹内先生もこの委員として参加されておられます。 〇井形委員  私は藤田保健衛生大学の近くにいるものですから、当日、神野先生にお会いしていろ いなご意見をお聞きしました。先ほどの18ページですが、「補助検査等により脳幹反射 の消失が確認できるか否かは今後別途検討されるべきである。」ということは、これは 是非急いでいただきたと思います。というのは現実にここには書いてありませんが、例 えば脳が外傷ですっ飛んだときの脳波とか、これは明らかに脳波をとる必要がない状態 であっても、脳波が取れないと駄目ということになりますので、この当たりは、神野先 生の代弁でもありますが、ぜひ厚生省でも急いでいただきたいです。 〇黒川委員長  確かにそうですね。中耳炎の既往があるとか、さっきのケースももしかしたら内耳の 方も事によったら壊れているかも知れないという可能性はすごくあるわけで、その辺の 検証というかデータを、ある程度検討していただいてやるというのはすごく大事だと思 いますね。今回は両側とちゃんと書いてありますから、それはそれでよろしいかと思い ます。 〇大島委員  私も愛知県なので、その件に関して一言いっておきたいという感じがするのです。保 健衛生大学の神野教授のところは、ずーと臓器提供に非常に協力していただいていると いうか、法案ができるまではきちんと心臓死でということを、もう随分昔から徹底的に それはきちんと守られて、法律ができてから脳死ということで、その法律に従ってやる ということをきちんと遵守されてきた。しかも、私は脳外科のことについてはよく分か りませんが、少なくとも専門医としても非常に能力の高い方であると私は思っておりま す。  そういうところであのような結果になったというのは、これはひとつの大きな流れで すので、それはやむを得ないということはよく理解できるのですが、あの結果として、 出てきた議論が、例えば義眼の人は臓器を提供する権利がないのかというような、笑え ない、本当にブラックユーモアのような話まで大まじめに議論に出てきているというこ とを、きちんと理解していただいて対応していただきたいと思います。 〇黒川委員長  ありがとうございました。その他にございませんか。 〇竹内委員  いま仰った通りの疑義があるのですが、古典的な死の判定の3徴候というのがあるこ とはご承知の通りです。これだって瞳孔散大というのが3徴候の1つに入っていて、瞳 孔が元々判定できないような人では、心臓死の判定ができないかというと、そうではな いわけです。これは医師1人の死亡診断書によって死亡が確認されているわけです。し たがってそれと同じ感覚でいえば、保健衛生大学の主張のようなことになるわけです。 それとはちょっと事情が違うのだということを、朝浦室長からでも言っていただいた方 がよろしいのかなと思うのです。 〇朝浦室長  法的な脳死判定については臓器移植法の制定の過程で、いまいろいろなご議論があっ て、そういった見解を踏まえて厚生省としてもその判定については慎重を期していくと いうことで、ずーと臓器移植法が施行された後も、我々の厚生省の公的な判断としてと ってきたわけです。  今回の判断もその延長線上にあったということになろうかと思います。ただ結果的に こういった脳死判定の中止という事態になったわけですが、これはこれとしてこれまで の判断の延長ということでご理解いただきたいと思います。今後、こういった問題をど のように考えていくのかということは、また新しい課題として我々としても受け止め て、先生方のご意見あるいは医療界のご意見を踏まえて、今後検討していく必要がある のではないかと思っております。 〇黒川委員長  それはこのように書いてあるので準拠するということですので、それの次の検証とい うことをしてまた出してくるというのは、当然のプロセスとして現在は必要と思いま す。 〇眞鍋委員  今いわれましたが、結局角膜移植のレシピエントに載っている人の希望としまして、 私は角膜をいただくのだから是非心臓とか腎臓とか他の臓器を出したいといって、臓器 移植に登録している人が沢山いらっしゃいます。しかし角膜が濁っていて瞳孔反応が見 えないのは全部資格がないとすると、そういう人の気持ちがちょっと生かされないので はないかと思います。 〇黒川委員長  それはだから文書だけではなくて、そこについている医学的な検討を入れた上で、そ ういうふうにするというプロセスが必要ではないかというのが恐らく事務局でもそうだ し、恐らくそういうプロセスは必要だと思います。それはできるだけ早く検討してもら いたいというのがここの意見ではないでしょうか。  その他にございませんか。ではよろしければ、これは現在の時点では両方の整合性、 いろいろな問題がなくて、いま一番ニードが高いところですから、これについてはお認 めいただきますが、例えばこれはもうプリントしてしまって印刷しているわけではない でしょう。例えば3ページを見ていただくと、右下です。Vの脳死は判定するための必須 項目というのはページにわたってしまっているわけです。それで5ページの右下のXで、 脳死判定の順序、こういうのは次のページの左上からずーと出すべきで、例えば8ペー ジとか9ページはちゃんと上から出るようにしてあるわけです。下にスペースを空けて ね。どうしてこういう配慮をしないのか、できたらそうしてください。一番大事なとこ ろは同じところに流れるように、見出しにしてくれたほうがいい、ちょっとした配慮で はないのかなと思います。 〇桐野委員  細かい文言のことについてはここで検討するのでしょうか。ちょこちょこしたことで すが、これを見せていただいたこともあるのですが、例えば20ページの一番下です。両 側外耳道への刺激で、眼球偏位が認められない時のみ前庭反射ないと判定すると書いて あるのですが、これは両側を同時にやるような誤解を受けるので、他のところはみな両 側外耳道への刺激においてもとか、刺激とも認められないという表現をしてあるので す。そういう細かいところは大事な文書なので、本当はもう無理なんですか。 〇黒川委員長  この委員会で全部を逐次やるわけにはいかないので、多分きょう読んでそしていって ください。てにをはいろいろあると思います。貫井先生も皆がいま当たり前と思ってい ることが全く違う人が読むと違いが明らかなことがありますのでね。まだ二日くらいい いですか。 〇山本補佐  かなり厳しいタイトなスケジュールで、ほぼ印刷屋さんに回るとこですが。 〇黒川委員長  終わったらすぐに電話してね、少しずらすからとね。ずらしてさっきいったような項 目だてがちゃんと上に出るとか、てにをはは次の版ですぐに直せるけどね。何部頼んだ んですか。 〇山本補佐  かなり多い数です。これは無料で差し上げる分ですが、書店で販売する分もあります ので。 〇黒川委員長  では次です。よろしいでしょうか。これはできるだけ早く配りたいというのは勿論で すので、何らかの方法でお願いします。  次に海外から提供された腎臓の利用についてという議題ですが、これは前からありま して海外から提供された腎臓の移植への利用については、以前あるんです。このネット ワークができたときに、ネットワークを介して一元的にあっせんする、それまではそう ではなかったわけですが、それはそのように書いてあるのですが、実際に受入れに係る 具体的なルールはまだ決まってませんということでご検討いただきたいということで、 まず事務局から資料の説明お願いします。 〇朝浦室長  その前にガイドラインの改正について、脳死判定マニュアルと関連しますので、ご説 明させていただきたいと思います。資料4でございます。  これまでガイドラインにおきまして、竹内基準に準拠するという記載がございまし た。資料4の2ページでございます。 (1)のところをご覧いただきたいと思います。脳 死判定の検査の方法については厚生科学研究費特別研究事業脳死に関する研究班昭和60 年度報告書、これはいわゆる竹内基準といわれるものですが、及び平成3年2月に公表 された厚生省脳死に関する研究班による脳死判定基準の補遺、これは竹内基準の補遺と 呼ばれるものですが、これに準拠して行うことという規定がガイドラインでございまし た。  これが二つあるということでわかりにくいという面もありますので、今回新しくマニ ュアルを作っていただきましたので、今後はガイドライン上は法的脳死判定マニュアル に準拠して行うということにいたしたいということでございます。  ガイドラインを幾つか検討すべき項目ということで、これまでの脳死移植の中で出て きてまいりました論点が幾つかございます。それが2ページ目の下から出ております。 一つは第1回目の脳死判定と第2回目の脳死判定の間が6時間ということが書かれてお ります。これは臓器移植法施行規則上は6時間以上となっておりますが、ガイドライン の議論のときに、相続の問題とかいろいろありまして6時間ということで原則としまし て、医学的な理由がある場合には6時間以上でもいいという書き方をしているのです が、第1例目の経験からすると、必ずしも医学的な理由だけではなく、6時間が延びる 可能性があるということで、ガイドラインの書きぶりが果してこれでいいのかどうかと いうのは、今後検討をする必要があるのではないかと思っております。  それから、3ページ目のガイドラインの第11−1でございます。膜については従来ど おりアイバンクを通じて角膜移植を行うものとするという規定がなされておりますが、 海外から提供された角膜についてもアイバンクを通じてあっせんすべきという趣旨なの か、または一般的に角膜移植についてアイバンクを通じて行うことを定めたのか、この 辺は不明確だということです。  現在、眼球アイバンク作業班をこの委員会の下に作っていただいて、輸入角膜の問題 についても議論をしようということになっておりますので、そういう議論とも関連する わけですが、このガイドラインの考え方を整理する必要があるのではないかと思ってお ります。  3ページ目の参考で書きましたのは、現在、臓器提供施設におきましては脳死判定医 をあらかじめ倫理委員会等で選定していただくことになっているのですが、その選定さ れるものが当該施設に所属している者でなければならないのかどうか、他の施設の方を 脳死判定医として選定していいのかどうかという疑義がよく寄せられているわけです。 私どもとしては臓器提供施設としての要件である適切な脳死判定を行う体制があること 、という当面当該施設に所属する医師が脳死判定を行うことを前提としていると考えて おりまして、当該施設に所属してない医師を脳死判定医として選定することはできない と考えております。この機会にその方針を申し上げたいと思います。  その他の改正です。脳死判定の証明書、脳死判定の記録書についてもこれまで書式例 を室長内かんという形でお示ししているわけですが、脳死判定マニュアルについて、先 ほどもご説明がありましたが、一番最後のほうについている脳死判定の際の書式例も、 改めたほうが適切な部分がございますので、この部分についても、合わせて室長内かん という形で改めて通知をさせていただければと思っております。  海外の腎臓の利用につきましては資料5でございます。 〇黒川委員長  ちょっと待って、これのガイドライン、この貫井先生のものもそうですが、まだ検討 すべき事項は幾つかここに書いてあるようなものがあるので、そういうことで当面はこ のようにさせていただきたいということですね。 〇朝浦室長  当面は脳死判定の基準を取り合えず、そこだけは改正をさせていただきたいと思って おりまして、残りのものについては、恐らく他にも検討すべき事項はあると思います が、こういった今ご紹介したものも含めて、今後この専門委員会で検討いただければと 思っております。 〇黒川委員長  これについてぜひ目を通していただいて、こういうことがまだあるという話を認識し ておいていただいて、今のところはマニュアルの配付ということで、これはまだペンデ ィングということで、こういうように今はさせていただきますが、結論を出したわけで はない部分が幾つもありますので、これについては是非考えていただきたいと思いま す。では次お願いします。 〇朝浦室長  海外からの腎臓の利用でございます。これにつきましては、既にガイドライン上、海 外から提供された臓器については臓器移植ネットワークを介して一元的に行うという方 針が決まっております。具体的な方法についてまだ十分議論されておりませんでした。 実は、8月25日に厚生省の方に南カリフォルニアのあっせん機関から、米国でレシピエ ントのいない腎臓が出まして、日本に提供できないだろうかという問い合わせがござい ました。  その際に、厚生省の方としては具体的な手続きができていないということで見送った という経緯がございます。今後、こういった手続きを十分検討した上で、この海外から 提供される腎臓の利用についても検討していく必要があるのではないかと事務局では考 えておりまして、2ページ目にありますように、その具体的な検討を行う作業班をこの 専門委員会の下に設けさせていただいて、具体的な検討を行っていきたいと考えており ますので、よろしくお願いします。 〇黒川委員長  これについてはいかがでございましょうか。皆さんご存じだと思いますが、移植が非 常に少なかった時代、1980年代ですが、アメリカの方で向こうで使えない腎臓、あるい はもうちょっと積極的にかなり質のよい腎臓を使えませんかということをやって、83年 ぐらいまでに、結構な数、そう大きな数ではないのですが、そういう腎臓が来たのです が、一時中断されていて、1986年くらいからまたそういうのがあったのですが、現在ア メリカでは、腎臓が年間1万くらい、透析患者が30万人、心臓その他を入れて、大体 先々週のUNOSの統計だと大体2万の移植が年間で行われています。そのうち1980年 代は1万ぐらいで1万人ぐらいの人の希望者だったので、大体マッチしていたのです が、今は希望者は6万人でどんどん増えています。そこでミスマッチがかなり起こって きているわけです。  そうなると向こうからしてもいいよという話は、かなり80年代の後半から減っており まして、向こうで使えないというか、使いたくないというわけではないのですが、向こ うで使えなかったのをいかがですかという話になると、いろいろな問題があるというこ とで、それをちょっと十分に過去の実績と経過、それと時間が運ぶのにかかりますか ら、その辺を含めて少し検討していただく、それでネットワークでどうするのかという 話を、ここでちょっと検討していただきたいです。大島先生の方でやっていただければ と思いますが、よろしいでしょうか。 〇井形委員  これはこれで異存はございませんが、在日米軍から脳死患者が出たときの取扱は決め てあるのでしたか。 〇朝浦室長  在日米軍から出た腎臓の問題については、専門委員会の場でかつて議論をしていただ いて、できるのではないかという意見と、執行はされてないが適応されるので、必ずし も米国本土で提供されたものとは取扱が違うのではないかという議論がございます。そ の辺についても整理させていただきたいと思います。 〇黒川委員長  実際にあったのは国内のドナーカードがなかったという事例が確かあったわけです。 〇井形委員  アメリカのお医者さんの脳死判定基準が違いますからね。 〇黒川委員長  その辺をどうするかという話で、ちょっと詰めましたが、一つはカードがなかったの で駄目だったということで説明していただいたということです。それについてもまだ委 員会があるよね。ネットワークの国際委員会でやるか、また別にここで使って結構で す。 〇朝浦室長  専門委員会の場でもう一度議論を整理させていただきたいと思います。 〇黒川委員長  ではその他ということになります、事務局からお願いします。 〇朝浦室長  時間が過ぎましたが簡単にご説明させていただきます。参考資料の1は先般の脳死下 での臓器提供が中止されたことについての説明を書いておりますので、後ほどご覧いた だきたいと思います。  参考資料の2です。臓器提供施設に係る関係者会議でございます。脳死判定をはじめ としていろいろな脳死移植に係る問題点が出てまいりまして、今回法的脳死判定マニュ アルもできましたことから、臓器提供施設を中心とした関係者にお集まりいただいて、 具体的に手順、それから脳死判定の手順についてご説明する機会を設けたいと思ってお ります。10月1日から、基本的にはブロック別に分けまして、逐次ご説明を行っていき たいと考えております。  最後です。参考資料の3でございます。検証作業のこの委員会の検証作業の中間報告 は6月末にいただいておりますが、その後の議論を踏まえて、最終的な報告書をとりま とめていく必要があるだろうと考えております。大体ここに書いておりますように、こ れまでの議論を踏まえて臓器移植透明性の確保とプライバシーの両立の問題、第三者検 証機関について、それ以外のその他について、それから第3例目、4例目の作業班の報 告書を中心に取りまとめをさせていただきたい。具体的な中身については後ほどまたご 検討いただければと思っております。以上でございます。 〇黒川委員長  参考資料2はこのような手続きについて、特に提供施設というか、救命救急センター その他についての説明会を行いたいということで、大変によろしいことではないかと思 います。もう一つは検証作業の最終報告、この案は是非委員の方にあらかじめ送ってお いてください。そのようにがんばりましょう。でないと折角読んでいただくのにここだ と時間が十分にないということがあります。  委員の提出資料、浅野委員からのがあります。先ほどの大久保委員と浅野委員のが二 つありまして、大久保委員のは先ほどの第三者検証機関についていろいろご意見をいた だいておりまして、それも参考にさせていただきますが、浅野委員はいろいろマスコミ 論ということでジャーナリズム論でいろいろ書いておられまして、月刊誌にもいまのと ころ毎月のように書いておられて、私もいただいて読んでおりますが、そういうことで 浅野委員のご意見もいただいております。その他については浅野委員の書かれた記事、 報告については、記事を配付したいというものがございますし、その他いろいろな参考 になることもありますが、これについては、これは浅野委員が皆さんへの資料というこ とでご意見をいただいているので、今度事務局の方で参考資料ということで配付させて いただきました。先生が書かれたことを事務局経由でやるよりは、恐らく先生が配られ るのが一番いいプロセスだと思いますので、そのようにされていただきたいと思いま す。  その他に何かございますが、ではよろしければ次回ということで、本日予定された議 題、いろいろと大事な問題がありまして、十分にされたかどうかということになると 100 %というわけにはまいらない気もしますが、本日の専門委員会を終わらせていただ きます。ありがとうございました。                                    −終了− 問い合わせ先  厚生省保健医療局エイズ疾病対策課臓器移植対策室    担 当  山本(内2361)、木村(内2364)    電 話 (代)03−3503−1711