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第3回 ホームレスの自立支援方策に関する研究会(議事要旨)

1 日 時 平成11年9月22日(水) 14:00〜16:00
2 場 所 厚生省特別第2会議室
3 出席者 (敬称略、五十音順)
阿部志郎、岩田正美、上久保忠、竹村毅、長谷川匡俊、森田洋司、吉村靫生
4 議事概要
(1)第2回(平成11年8月19日(木))研究会の議事要旨を確認
(2)ホームレス問題の背景及び要因等について説明(岩田委員より)
(3)諸外国のホームレス事情について説明
・イギリス、アメリカについて(岩田委員より)
・フランスについて (広島女子大学 都留民子助教授より)

(4)発言要旨

発言1

○ ホームレス問題は、今日的問題というよりはむしろ貧困という歴史的な問題として存在していたが、それが日本やあるいは欧米ではもう少し早い時期から新しい形で大変問題となっている。

発言2

○ 東京のホームレスの状況は、現在のところは、50歳代の単身男性が中心で、土木建設産業の労働者の失業によるものが直接の要因となって急増している。
 しかし、経営者・自営業層の倒産、借金問題やアルコール依存症を抱えた方々、精神障害者、軽度の知的障害者の方々も含まれている。
 また、新宿における特徴として、サービス業の店員や事務職などに就いていた人々や若年層が、新しいタイプのホームレスとして出現している。
○ ホームレスの中には、病院、福祉施設、刑務所などからの退所後、定住先を持てず、路上に出ることも少なくなく、また、一旦は福祉的な措置を受けても再び路上に戻るという例もある。
○ 女性や家族のホームレスは、路上ではあまり見かけないが、施設レベルで見ると若干増えつつあり、家賃の滞納による立ち退き、夫等の暴力からの逃避等が住居を失う原因となっている。
発言3
○ ホームレス問題の要因として、直接的には「3つの喪失」とそこに介在する様々な「失敗」があると考える。
 「3つの喪失」とは、(1)仕事の喪失(安定職にあったものが倒産等により失職するあるいは日雇い・住み込み等不安定職の失職の2タイプがある)、(2)家族の喪失(離婚、実家とのトラブル、虐待、家出等)、(3)住居・住所の喪失(家賃滞納、倒産・借金による追い立て、住み込み先の喪失等)である。
 また、介在する「失敗」としては、アルコール問題、病気や怪我(労災)、犯罪を起こし刑期を終了しても社会に受け入れてもらえない、大きな借金を抱えてしまった、などが挙げられる。

発言4

○ ホームレス問題の背景として、雇用構造の変化が挙げられる。常用労働者の終身雇用体制そのものが揺らぎ、従前の安定職の喪失から不安定職へといったクッションが小さくなっているように思う。
 また、離婚の増加や晩婚化、貧困層における家族関係のゆるみなどの家族関係の変化、さらにはアルコールやクレジット破産など新しい社会問題との関連がある。

発言5

○ イギリスでは1970年代頃からホームレスという言葉が使われ、アメリカでも70年代後半から80年代にかけてホームレス人口が増加したが、その内容は時代背景を受けて変化している。
 近年、イギリスでは家庭の崩壊との関係でティーンエイジャーのホームレスが大きな問題となっている。

発言6

○ イギリス、アメリカにおけるホームレス問題は、複合原因説がどちらの国でも大体合意を得ている。日本と異なるのは、若年層が増えていること、ホームレス法のような法的な根拠を持っていることが挙げられる。また、イギリスでは、住宅問題としてホームレスが捉えられている。

発言7

○ イギリスでは、住宅法の中で、占有権のある住居を持っていない状態にある世帯のメンバー、家があっても何らかの事情で立ち入れない、また、住むことが許されない車両や船に住んでいる人々をホームレスと定義している。更に、28日以内にホームレスになる可能性のある者も含まれる。
○ ホームレスの認定数は、1991年がピークで約14万5千人(イングランドのみ)、1995年では約12万1千人とやや減少している。
発言8
○ イギリスの地方政府は、住宅法によって、ホームレスに対するアドバイスや情報を無料で提供するとともに、妊婦、障害者、老人等優先的ニードを持つ人々に対して、家賃手当と実際に住居を得るための援助を行う義務を負っている(援助義務期間は最低2年・延長可)。
 しかし、2年の義務期間を過ぎても、住宅が不足しているために恒久的な住宅に移れず、ホステル等の臨時施設に住んだり、路上に出るなどの問題があり、住宅の確保と保健・福祉サービス、就労援助などとの連携が必要となっている。一方、ティーンエイジャーのホームレスが増大し、雇用、就業訓練、ドラッグ等の問題がクローズアップされている。
○ イギリス政府の首都ロンドンを中心としたホームレス対策は、(1)環境・交通・地域省が責任省となり、住宅、保健、雇用などを含めたサービスを受けられるよう、戦略全体を調整する責任を持つ、(2)これを監督するための内閣委員会を設立し、年1度の報告義務を設ける、(3)全体目標として2002年までに数を2/3まで減らす、(4)予防のために、刑務所・保護観察サービスの改善、退役軍人へのサービスの改善等を行う、(5)雇用への援助を集中的に行うなどが強調されている。

発言9

○ アメリカでは、1987年にスチュワート・マッキーニ法が作られ、連邦政府が法的根拠とホームレスの定義をしている。
 そのホームレスの定義は、夜間に定まった住居がない者、シェルターや福祉ホテル等一時的宿所に泊まっている者としている
○ マッキーニ法では、ホームレスに対するプログラムを策定し、それに補助金を出す仕組みとなっており、社会とホームレスとの相互責任、つまり社会はホームレスを支援しホームレスは地域社会に貢献するという相互責任原則を非常に強く打ち出している。
○ アメリカの各州、各市における取り組みは多様でばらつきが多く、また、州と市の関係の難しさも言われている。
 また、ニューヨークは公的セクター中心、ロサンゼルスは民間主導と言われているが、実際はニューヨークを含め民間団体の果たす役割が大きい。

発言10

○ アメリカでは、ティーンエイジャーの家出がホームレスにつながるケースが多く、日本でも、高校生の中途退学者の増加や高卒就職率の低下、家庭の養育機能の変化、ドラッグ等の問題を背景に、潜在的予備軍と見ていい状況がかなりある。

発言11

○ フランスでは、個人的住宅から排除された者、ホテル居住者、不良住宅居住者を狭い意味でのホームレスとし、くわえて住宅最低限基準に満たない住宅の居宅者なども、住宅問題を抱えた人々として施策の対象とされている。数としては、ホームレスが20〜40万人、住宅最低限基準に満たない住宅の居住者が200万人で合計220〜240万人と言われている。
 しかし、宿泊所が大変普及をしており、長期の野宿をしている人はほとんどいない。

○ フランスのホームレスで宿泊施設を転々とする者の中に中高年齢者はほとんどいない。その数が最も多く、状況が厳しいのは25歳未満の単身青年である。その理由としては、生活扶助(RMI)は25歳未満では受給できないこと、16〜25歳未満の失業率が26%と非常に高い状況にあること、また成人年齢に達すれば親から自立するのが常であるため家族関係での障害が発生することなどが挙げられる。

発言12

○ フランスでは、貧困者だけの制度をつくることは隔離につながるということで、ホームレス対策についても単独法ではなく、住宅対策、失業対策、生活扶助等の一般施策においてホームレスの人たちを組み込んでいく形で進められている。

○ 1998年7月に、この10年間の貧困対策等でうちたてられた諸権利を確実にするために「反排除基本法」が制定された。その中で画期的なのは、各省庁に横断的に施策の責任を負う部局を設置し、目標を立ていつまでにどれだけの問題を解決するかを明確にしたことが挙げられる。
 具体的には、25歳未満の失業者に対し、トラス(TRACE)という国庫補助雇用を新しく設置し、ソーシャルワーカーが福祉領域に限らず、雇用政策、住宅政策にも入り込んで援助を行い雇用につないでいくこととしている。

発言13

○ ホームレスに対する宿泊所は普及しているが、社会住宅が不足しているため、25歳未満の失業者については、社会住宅への入居が進まない状況である。そこで、住宅政策として、民間空き家への課税を実行し、それを誘導手段として賃貸住宅を増加させること等を行っている。

発言14

○ フランスでは、高度成長期においても民間アソシエーション(貧困援助団体)が地道に活動し、それがホームレス対策の起源となっている。

5 第5回・第6回の日程調整

 第5回 11月16日(火) 午後2時〜4時
 第6回 12月16日(木) 午後2時〜4時

6 配付資料

(1)ホームレス問題の要因と背景 〜東京の現在の状況からの考察〜
 イギリス・アメリカにみるホームレス対策の現状
(2)フランスの「ホームレス」問題


問い合わせ先
厚生省社会・援護局地域福祉課
担当 難波、奥出(内線2855)
電話 [現在ご利用いただけません](代 表)
   03-3591-9862(夜間直通)


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