99/08/12 第20回疾病対策部会臓器移植専門委員会議事録    第20回公衆衛生審議会疾病対策部会臓器移植専門委員会            日時   平成11年8月12日(木)                 13:00〜15:20            場所   虎の門パストラル                5階「菊の間」 出席者 (○:委員長 敬称略)  浅野 健一  井形 昭弘  板倉  宏  大久保 通方  大島 伸一  大塚 敏文  菊地 耕三  桐野 高明 ○黒川  清  小泉  明  小柳  仁  竹内 一夫  田中 紘一  野本 亀久雄 町野  朔  山谷 えり子 1.開 会 2.議 題   (1)第3例目及び第4例に係る日本臓器移植ネットワークのあっせん業務        に係る検証に関する作業班の報告について      (2)脳死下での臓器提供に係る第三者検証機関について      (3)臓器移植の透明性確保と臓器提供者等のプライバシー保護の関係に         ついて      (4)臓器提供意思表示カードの様式について      (5)その他 〇事務局  定刻になりましたので第20回公衆衛生審議会疾病対策部会臓器移植専門委員会を開催 いたします。本日の委員の出席の状況でございます。谷川委員・藤村委員・眞鍋委員・ 矢崎委員からご欠席の連絡をいただいております。なお井形委員がまだお見えになって ませんが、連絡を特にいただいておりませんので、間もなく到着なさると思います。  資料等の確認をさせていただきます。まず議事次第でございます。議題といたしまし て本日は議題4つで、5番目にその他を予定しております。  2枚ほどめくっていただきまして本日の資料一覧というものがございます。  資料1   日本臓器移植ネットワークのあっせん業務に係る検証に関する作業班報        告書。第3例及び第4例に関するものでございます。13ページです。  資料2   脳死下での臓器提供に係る第三者検証機関について。事務局案ですが3        ページございます。  資料3   臓器移植の透明性確保と臓器提供者等のプライバシー保護の関係につい        て。これも事務局案でございますが4ページです。  資料4   臓器提供意思表示カードの様式について、4ページです。  参考資料1 都道府県コーディネーターの実態調査について調査結果6ページです。  以上が本日の会議資料でございます。  なお、新聞記事ですが1枚追加で配らせていただいておりますのでよろしくお願いし ます。資料等よろしいでしょうか。では黒川委員長よろしくお願いします。 〇黒川委員長  お暑いところ、先生方の中にはお休みという人もいるのではないかと思います。休み が全然取れないという人も多いわけでして、きょうもよろしくお願いします。  あれから4例まで脳死の移植が行われたわけですが、その後、情報もあまり出ている 気配もありませんが、これについてはまた皆さんそれぞれどうなっているのかというこ ともあるかも知れません。  議題に入ります。きょうは議題を5つ用意しておりますのでご意見をいただきたいと 思います。まず従来お願いしていたところですが、第3例、第4例については日本臓器 移植ネットワークのあっせん業務に係る検証というのがあるわけで、これについては小 泉先生に委員長をしていただきまして、あっせん業務についての作業班の報告ができて まいりましたので、これについてご報告を受けたいと思います。それについてまた皆さ んのご意見を伺うわけです。  6月13日〜14日にかけまして、宮城県の古川市立病院で臓器の提供があったというの が第3例目です。6月23日〜24日にわたりまして、千里の救命救急センターで臓器の提 供かあったということを思い出されると思いますが、これについて2つ、ネットワーク のあっせん業務に係る検証の作業班の報告ということをまとめていただきまして、きょ う小泉先生からご報告をお願いするということになってます。小泉先生よろしくお願い します。 〇小泉委員  第3回と第4回の日本臓器移植ネットワークあっせん業務に係る作業班報告をいたし ます。評価に係る作業班報告をいたします。前々回のこの臓器移植専門委員会の第18回 で第1例目と第2例目と同様に、我々の作業班が第3例目と第4例目のあっせん業務評 価を行うという合意がされましたことに基づきまして、これまでに作業班として2回の 会合を開き検討を加えました。  第1回は4月26日19時から21時、第2回は同じく29日14時から17時でございます。今 申し上げました検討に基づきまして、今般、第3例目及び第4例目に係る検証報告の章 をとりまとめました。ここで本日の委員会にご報告いたします。  お手元の報告書でございます。資料1です。報告書の構成は第3例目、第4例目に係 る臓器あっせんの経過について、事実関係をまとめた後に、両方の二つの例に係る本作 業班としての見解を一つにまとめてお示ししております。  第3例及び第4例についての作業班としての見解でございます。まず全般的には第3 例目及び4例目のネットワークのあっせん業務は適正に行われており、またコーディ ネーターの活動内容の質が経験を重ねるごとに向上していることが評価できます。  具体的には幾つかの項目にわけました。  (1) 初動体制について、これは報告書の6ページになっています。ネットワークの初 動体制、ブロックセンターのコーディネーターと都道府県コーディネーター間の役割分 担等の観点からは、適切なコーディネーションが行われておりますが、第3例目につい ては多臓器移植の経験のあるコーディネーターが臓器提供施設に到着するまでに5時間 を要しておりまして、そのような時間を短縮するという観点からも、今後、経験のある コーディネーターのより一層の育成を図り、各ブロックセンターに配置する必要があ る。これが作業班の結論であります。 (2) 患者のご家族への説明でございます。同じく6ページです。  1つ目の○では、第3例目及び第4例目ともに、意思表示カードの確認、ご家族への 説明等の手続きについては適切に行われておりました。またコーディネーターの説明の 後、ご家族が十分に考える時間をおいた上で承諾書に署名捺印をいただいている点も適 切でありました。  3つ目の○です。第3例目の事例は、警察による実況検分を行う必要がありましたが 警察への連絡等には問題はありませんでした。  4つ目の○です。第3例目・第4例目ともに結果的に移植に用いることができなっか た臓器がありましたが、臓器が移植に用いることができない可能性のあることも含めて コーディネーターはご家族に十分説明し、ご家族の同意の上で手続きを行ったという点 が評価できます。  (3) ドナーの医学的検査及びレシピエントの選択についてです。7ページです。  1つ目の○です。第3例目及び第4例目において、ドナーの適応を判断するために実 施した検査内容及びその結果の評価は妥当でありました。  3つ目の○です。第3例目の臓器提供において、急遽、血清を移植実施予定施設に搬 送する必要が生じました。今後、臓器提供時に備えたHLA検査及び感染症検査の実施 体制を改善する必要があります。  4つ目及び5つ目の○です。レシピエントの選択は第3例第4例目とも適切に行われ たと判断されます。また第3例目に検討されました分割肝移植につきましては、結果と して見送られましたが、既に実施基準も策定されており、今後その実施についての障害 はないと考えられます。  (4) 搬送についてです。7ページです。第3例目、第4例目共に臓器搬送については 適正に行われました。  (5) その他です。  1つ目の○です。ご家族が希望した場合に、脳死判定に立ち会うことは、ご家族が脳 死の理解のためにあるいは納得されるための一助に成りうると考えるというコーディ ネーターの発言が作業班の会議の中でありました。  2つ目の○です。4例目の事例においては、第2回目の法的脳死判定後、急速に血圧 低下をきたし、循環動態が不安定になりましたため、緊急に摘出する必要が生じました が、提供施設から近距離にある移植実施可能施設からの肝臓摘出チームの派遣、あるい は心臓摘出チームへ摘出手術への応援を依頼したということの判断は妥当と思われ ます。  2.臓器あっせん全般に係る指摘事項です。7ページの下です。  1つ目の○です。そこに記しましたことは、具体的事例に則した指摘に加えまして、 今後、司法解剖を行う必要がある事例が生じた場合には、一部臓器を除いて、臓器提供 が行えなくなるため、患者のご家族への説明の内容等についてどのような対応が適切か を検討する必要があるという意見が作業班の会議で出されました。  2つ目の○です。コーディネーターが脳死判定及び臓器提供に係る承諾を得る「遺 族」あるいは「家族」の範囲については、臓器の移植に関する法律の運用に関する指針 (ガイドライン)の規定に加えてより詳細なルールが必要であるという意見がございま した。  ここにもありますように8ページの上からですが、家族の範囲についてはガイドライ ンに規定されているところであるが、個別事例におけるその具体的範囲また喪主または 祭祀主宰者となるべき者において、「遺族」(又は「家族」)の総意をどのようにとり まとめるべきなのか、コーディネーターはそのとりまとめにどのように関与するか等の 具体的な点についての明確な基準がないということの問題提起もございました。  次に結果的に移植に結びつかなかった場合の費用をだれが負担するのかを検討する必 要があるという意見がでまして、いろいろ意見交換をしました。  3.おわりに、でございます。  我々の作業班としましては、個別事例の評価としては、コーディネーターの活動内容 の質が経験を重ねるごとに向上していることを評価します。また同じく我々の作業班と しては、むしろ日本臓器移植ネットワークのあり方そのものに係る課題を強く認識して おりまして、ネットワークの体制改善あるいは構造改革を行う必要があるということを 前回に重ねて再び強く提言したのがこの報告書であります。以上であります。 〇黒川委員長  ありがとうございました。このような報告をいただきまして、同じコーディネーター が係わっておりましたので、最初の2例の経験がかなり生かされていて、その判断その 実際の進行がスムーズに行われたというジェネラルな評価をいただいているわけですが その他に幾つかの問題点もまた指摘されております。この報告書について皆様のご意見 をいただきたいと思います。  実際に、幾つかの問題があると思うのです。3例目は宮城県でしたので脳死臓器移植 ですと、どうしても関東あるいは近畿のコーディネーターが行くということで時間がか かるということはかなりあるということはあります。その地域のコーディネーターと一 緒にするにしても、この体制をするにしても、それに時間がかかって5時間を要したと いう話があります。  家族との関係その他の実際の手続きのスムーズさについては、かなりスムーズになっ てきたということがあり、こういう実体験が多くなるということは非常に大事なことだ と思うのです。  それからご家族にも考える時間を十分に差し上げていたようだということで、この辺 についても対応する側のコーディネーター側も提供施設側もそうだと思うのですが、一 般に落ちついてやれる状況になってきているということであります。  3例目が交通事故であったということなので検視の問題があって、警察と司法解剖に ついてのいろいろな話し合いがありまして、これが7ページ目にあります。こういうと きにどうするのかという判断は、結構難しい事例になりうるという気がします。この辺 についてもちょっとご意見をいただきたいと思います。  事務局にお願いしたいのは、この報告ができてきて、一応委員の方にはあらかじめ送 っておくとかしないと、ここで見て言えと言われてもなかなか難しいのではないかと思 います。二日前でもいいですがね。渡さないから持ってきてくださいといってもいいで すよね。ここで見るのは、ちょっと難しいのではないでしょうか。 〇浅野委員  その点に関してですが、私などが資料をもってくると、いきなり持ってこられても困 るというふうに厚生省の方は言われるのす。ですからそれだったら、ここにコピー機な どを置いてもらって私が印刷すればいいのですが、今委員長の意見に賛成です。無理だ と思います。しかも医学的なことは私などはよくわかりませんので、いきなり承認して くださいと言われても、ちょっと待ってくれというしかないと思います。緊急に作られ る場合にはしかたないと思うのですが、前もって報告が出ているような場合には、3〜 4日前に出していただくのは賛成です。 〇黒川委員長  その他に先生が参考になるのではないかという資料をあらかじめ送っていただければ け、それは構わないと思います。事務局でわたし宛でも結構です。それを渡すかどうか という判断は、オートマティックに全部出るかどうかはわかりませんが、それを送って いただければ判断できると思います。 〇小泉委員  今回は日付からいうと余裕があったように見えますが、かなり限られております。一 端原案を作成して、それを作業班のメンバーに送ってフィードバックして、それをまと めて再度最終的なものをやるというようなことをやったために、もう一つは報告書とい うスタイルに少しこだわりすぎて、推敲の余地があるようなものは、なるべく十分にと いうようなことしたことも時間がかかった一つです。  完成品でなくても、大体こういう骨子であるとか、あるいはこういう資料が参考にな るとか、そういうものを前もって送られた方が意味があると思います。 〇黒川委員長  検証ですから、先生の方でいつまでに出来るかにもよるわけです。例えば大変な作業 であると思うのです。例えば竹内先生の方の提供施設側の話もまだ出てこないわけで す。いつまでに出してくださいと言っているわけではありませんし、皆さんはフルタイ ムで他のお仕事もしているので、これをやるときの資料として出来て来た場合には、こ れは読んでおいてもらった方がいいという判断で、そちらで送っていただいたらいいわ けです。それで先生をプッシュしているわけではありません。  7ページの下から2つ目の○です。3例目の事例では警察による実況検分が行われ た。司法解剖は行われないという判断をこれは警察の側でするわけですが、しかし今 後、司法解剖を行う必要が生じた場合には、一部臓器を除いて臓器の提供が行われない 可能性はあるわけですね。患者さんのご家族への説明の内容、レシピエントの選択及び 移植施設への連絡をおこなう時期について、どうしたらいいのかという話も含めて、ど うしたらいいのかということです。  具体的にはあるところで患者さんが出て、事故らしいということがはっきりしていれ ば、その検分で、こういうふうに警察が入ってきて、これはしなくてもよさそうだとい う判断がかなり事前に行われていれば、患者さんの治療に勿論全力を尽くして、患者さ んが回復すればそれはそれでよし、ダウンヒルになった場合には、心臓停止で亡くなっ た場合には司法解剖をしますという話は、ある時期で多分決断されているかもしれない し、あるいは場合によっては急に亡くなってしまって、これはわからなから司法解剖し ましょうということで死後に行われる場合もないわけではないので、そうすると具体的 にはどこでの司法解剖の決断です。するかどかという状況から、いつそういう判断がで きるのかというのは、なかなか難しいと思うのです。  現場のコーディネーターもそうだと思うのです。そういうプロセスがありながら、向 こうの決断は、病状とか経過を見ながら決断する場合もないわけではないので、事故現 場の検証をやっているうちに、臓器提供の話がある程度出てくると、実際には手続きに したがって、今のところは司法解剖をする必要はないと言われていても、脳死の判定を する、1回目の脳死の判定をする。6時間以上してから2回目の脳死判定をしたといっ たところで、死亡の宣言が一応脳死を前提とした法律による死亡になるのです。  そこで司法解剖しますというときにどうなるのかというときに、どうなるのかという 話です。そうしたら臓器の提供が行われなくなってしまうかも知れませんね。あるいは 一部の臓器、は検証の対象になるかも知れない。その時に法律的にはどうなるのでしょ うか。全然臓器の提供がされなくなる可能性は無きにしも非ずですね。  その時に、臓器の提供を前提にした脳死は死になるのかというか、司法解剖はあくま でも心臓停止ですから、その後を待って、2つの死が出るのかという話もあり得るので す。町野先生どうですか。 〇阿萬補佐  ではこの関係につきましてご説明申し上げます。まずは司法解剖を行うかどうかの前 の検視や実況見分などの手続きにつきましては、一応、司法解剖以外の検視や実況見分 全体を検視等という形で括っているのですが、それにつきましては、まず実際の提供施 設におきまして、主治医の方などが、ドナーに成りうる患者さんがいる場合に、その患 者さんが内因性の疾患であるということを、確実に診断されている以外の場合で、ひょ っとすると実況見分などが必要になるかも知れないということがある場合には、警察に 連絡してくださいということになっております。  それで後は病院なりコーディネーターと警察の方が連絡をしまして、基本的には脳死 判定が行われた後に、直ちに実況見分なり検視を行うということです。  基本的には実況見分の結果やまたはその前に判明しておりました事実などで、司法解 剖が行われるということが決断された場合には、これは捜査機関の方としましては、心 臓停止以後に、司法解剖を行うということになっておりますので、そういうことで司法 解剖が行われるということになりますと、基本的には通常は眼球を摘出することが出来 るのみで、あとは個別の事例によりましては他の臓器ができる可能性があるかも知れま せんが、基本的には阻血許容時間の短いような臓器ですとかはほぼ摘出できない可能性 のほうが高くなる、ですからそのような制度的な枠組みにつきましても、事前に必要に 応じて、ご家族に説明するという形が一般的にいいますと必要になるかなというところ でございます。 〇町野委員  結局法律では死体に関する捜査の終了までは、とにかく臓器の提供はできないという ことになっている。この捜査の中には検視も入りますし、ここで実況見分という言葉が 使われておりますが、実況見分ということは犯罪捜査機関の中の言葉ですが、これも捜 査のうちの一部ですから、死体についての捜査が継続している間はできない。  問題は脳死の後で、心停止前には司法解剖というのができないということになってい るんですが、これは別に法律に書いてあるわけではなくガイドラインではそのようにな っていて、あとは警察との打合せではそうなっているということです。ですからこれが 法律上の必然的な要請なのかというのは私にはちょっとわからない。もしかしたら検討 する必要があるのかも知れないし、駄目なのかも知れない。ちょっとその辺はわからな いです。  あと死亡の時期がいつになるのかということです。結局は死体検案書等に書く死の時 点かいつになるのかということについては、この場合、今のような司法解剖が行われた ときについて、どうなるのかということについては、一応ガイドラインで何か書いてな かったでしょうか。 〇阿萬補佐  一応、臓器提供をすることを前提として脳死判定が行われた場合には、その脳死判定 が終了した時点で法的に死亡ということになりまして、その後、何らかの理由で臓器提 供が行われなかったとしても、死亡時刻は脳死の時期にするということで、そういう扱 いにガイドラインなり通知の上ではなっております。 〇黒川委員長  これは実際にこういうケースがどのくらいあるのか、実際のケースによってはケー ス・バイ・ケースの問題があって、多分一番極端なことでは臓器移植の前提で、それま では検視もいらなそうな状況で脳死の判定をして、死亡の時刻も記録して、その後で実 はこういうことがあって、これは検視が必要だと言われたときにどうなるのかというこ ともあり得るのです。  皆さんはお医者さんの場合にはこういう経験があるのではないかと思います。私も実 は救急を扱っているときに、昔あったのです。患者さんが亡くなって病理解剖しますよ ね。病理解剖をしてみたら、実はこれは事故だったかも知れないということが見つかる ということも無きにしも非ずです。そのときに臓器が使えればいいんですが、使えない 場合もあり得るので、そこまで全ての極めて稀な事例も予測して検討するのも変な話で すね。それで町野先生に、この臓器移植を前提とした脳死で、その後で検視が必要とい われたらどうなるのかということが無きにしも非ずですね。先生がおっしゃったように ね。  こういうのはどうしたらいいのでしょうか、何かありますか。患者さんの家族、特に 遺族には事故らしいというのがはっきりしている場合には、そういうことはある程度は 説明はしうるけどね。直ぐには結論は出ないかも知れませんが、事務的な問題、法律的 な問題、いろいろな話はガイドラインのときにも議論はしておりますが、実際にこうい う第3例目が出ると、警察の方にそれはいらないということいつ言えるのか、向こうの 判断もなかなか難しいと思うのです。現場の話と実際に時間がどんどん過ぎていくので 難しいことは沢山あると思います。  そういう問題があるということを皆さんにちょっと考えていただきたいということで あります。 〇浅野委員  3例目の議論の前提として、委員長は救急病院に運ばれた理由を言われたのですが、 私も物を書くときに困るのは、ドナーの家族の方かどうも病院に運ばれたことの理由に ついて、開示して欲しくないというか、公表してほしくないといっていると聞いたので す。するとこの委員会は公開ですから、報道との問題もいろいろあるのですが、そのこ とについて日時とか新聞社の名前とか放送局の名前をだしてしまうと、既に一部のメデ ィアは報道してますが、この委員会で今後の提供施設の検証も含めてどのようにして表 現していったらいいのかということを教えていただき、皆で合意した方がいいのではな いかと思ったのですがいかがでしょうか。 〇黒川委員長  これについては事務局はかなり苦心されたところではないかと思うのですが、コメン トありますか。 〇朝浦室長  3例目の事例につきましては、提供施設に入院された原因につきまして、具体的なも のについては控えてほしいという強い希望がございます。ご家族の方からですが、そう いうことで、これまでも我々としても公表をするベースにつきましては、警察庁とも充 分協議しながら、充分配慮してきたつもりでございます。この委員会におきましても公 開ということもございますので、先生方にも充分ご配慮いただければと思っておりま す。 〇黒川委員長  6ページの下から3つ目の○ですが、かなり公的なイベントなのかも知れないが、ど こまで発表していいのかというのは家族の意思が非常に大事だと思うのです。  もう一つです。これは一部マスコミがご家族の自宅に訪問し、個別取材を行いという のがありまして、これは状況からいっていろいろな状況があると思うが、これから関与 しているパーティが考えないといけないと思います。 〇浅野委員  この委員会で議論するのと、また今はインターネットでこの議事録が公開されてます よね。ですから、委員会での表現と、インターネットで開示するときのダブルスタン ダードでいいのか、それとも一本化なのかということもあると思うのですが、その辺は いかがでしょうか。17回とか18回の委員会で既に言及されています。 〇朝浦室長  3例目につきましては、警察による実況見分が行われたという点につきましては、ご 了解を取れておりますが、それ以上の事実関係についてはご家族の希望で、これまでの ところでは公表してないという取扱いをさせていただいております。 〇黒川委員長  では次から何かいってはいけないということもあるのですね。気をつけろということ ですね。 〇浅野委員  警察により実況見分が行われたという表現はいいが、それ以外は駄目ということです ね。控えてほしいということですね。わかりました。 〇黒川委員長  6ページの上から4つ目の○です。コーディネーターがそこに到着するのに5時間か かった。だから経験と実際にそれができるコーディネーターは、実際の事例が多くなっ てくれば、それぞれのブロックのコーディネーターで対応するということは可能になっ てくるのでしょうが、これは前々からこの委員会でもいっているように、全国のブロッ クセンターに多臓器移植に対応できるコーディネーターを育成・確保していく必要があ る。それはそうですね。これも財源と、どうそれを充実していくのかという話ですね。 後で統計の結果をお見せしますが、そういうことがあるということであります。  司法解剖の話は、事務局でも、警察その他もあるから少し詰めて、実際のいろいろな 事例で、あまり考えても仕方ないが、両方の整合性が極めてなさそうな状況、事故とい うのはある程度の確率であるわけですから、その辺をどうするのかということを検討し ていただいた方がいいのではないかと思います。  8ページの一番上です。これは前々のガイドラインのときからいっているのですが、 脳死判定及び臓器提供に係る承諾を得る「遺族」というのがありますね。「家族」の範 囲はなんだというのもガイドラインのときにも出たわけですが、これをどうするのか、 問題はないのか、実際にはコーディネーターが現場でやられますので、ガイドラインに は書いてあっても家族によっていろいろと違うというのは常にあるわけですね。コーデ ィネーターが一番ですね。ここで話している我々は、テーブルの上に座って話をしてい るのであって、現場ではなく話をしているので何でもいえるのですが、コーディネー ターはある意味では非常にリアルタイムで物が動きながらやらないといけない、大変だ と思います。これについては何かございますか。  コーディネーターはとりまとめにどのように関与するのか等の具体的な点について、 明確な基準がない。そうなのかという気もするのですが、基準が書けるほどのものかと いうこともあるわけです。 〇大久保委員  コーディネーターが取りまとめをするということは、あまりしてはいけないというよ うなガイドラインのときの議論ではなかったかなという気がするのです。 〇黒川委員長  ただ遺族の同意です。 〇大久保委員  その範囲はもちろん考えないといけませんね。 〇黒川委員長  家族によって違うから、そのときに返事をするのは誰かということになるりますね。 〇菊地委員  非常に困るのはガイドラインに記載されてない家族が現れた場合。その家族の範囲に 入っていない例えば一緒に住んでおられるとか、非常にその方との信頼関係が深いいろ いろな関わりがある方という人が現れた場合等、いろいろこれは想定して私どもがお伺 いしたものですが、そういう場合に、非常にどの範囲まで確認すればいいのかという疑 問が生じてきます。  ガイドラインに記載されております2親等の範囲の家族、同居の親族等につきまして も、その方の存在があるのかないのかということすらも、確実に調べるのは非常に苦労 するところがございます。  例えば喪主の方にすべてをお任せするというような、もう少し細部というか小さな決 まりがあれば、私どもの方も確信をもった形で承諾をいただくことができるんです。先 ほど大久保さんがいわれました家族のとりまとめに係わるというのは、ご家族の判断の 中に、ご家族が判断する場合の中に係わるという意味ではなく、家族の範囲の取りまと めに、私どもがどこまで係わるかということです。範囲の確定というか、調べるのにど こまで係わるかという意味だと思います。以上です。 〇黒川委員長  確かにまとめる責任はないわけですが、家族として、そちらはいいんですねといった ときに、家族といってもいろいろな家族があるわけだからね。確かに現場ではそこに書 いてないような人が沢山いて、よほど発言権のある家族もいるわけですね。そういうこ との事例は沢山ありますよね。  たがらコーディネーターがここに書いてあるガイドラインにしたがってやるというの も馴染まないし、書いたからうまくいくというわけでもないということですね。だから 何か決めるべきものではないのかも知れないが、コーディネーターをバックアップして いるという体制をこちらも作っておかないといけないので、それぞれのブロックセン ターのメディカルアドバイサーにしろ、ある程度ニュートラルな立場でこうしたらどう でしょうかという話をして、また家族に返すということがあるわけだが、ずーと時間が たっていくという話もあるわけですよね。非常に難しいと思います。  その他に次の下にありますが、実際にあったわけですが、4例目の事例でもそうです が、臓器を搬送した、結局最終的には使われなかった。それは費用は誰がどう負担する のかという問題がありまして、なかなか難しい問題であります。2例目まではこういう ことはなかったのですが3・4と出てきたということです。  肺の移植も実際に開胸をしてみて、これは使えないという判断があったので、それま では使えるかも知れないという判断のプロセスもあったわけです。そのときにも、もち ろん家族には充分説明しているわけです。やっぱり駄目でしたという話だと思います。 こういう問題がいろいろあるということだと思います。  現場はいろいろなプレッシャーと時間とタイミングの問題、いろいろな電話とかいろ いろなことをやりながらやっていくとなると、非常に大変なので、確かに2例の経験か ら3・4と比較的スムーズにいったが、また思いがけないいろいろなことが起こってい るという話をここに報告していただいているわけです。  小泉委員会の方では、その意味からいくと非常に評価は高くて、スムーズにはいった が、新たな問題が沢山提起されているということであると思います。 〇小泉委員  使わなかった臓器という問題では二つあります。いずれも議論されていることですが 一つは家族への説明ということです。これを経過を追ってしておれば結論が出たときの 理解をしてもらいやすいということが一つです。  もう一つは費用の問題です。これも作業班で議論しまして、いろいろな意見がでまし たが、よくわからんが、法的には多分臓器移植ネットワークが負担するべきではないか しかし、それは大きな重荷になるかも知れないという問題です。あるいは厚生省が考え るべきだという意見もありました。  結論が出たわけではございませんので、いろいろと意見があったという形で書かせて いただきました。 〇小柳委員  臓器が使われなかったときという想定は、まさかこんなに早く出るとは思わなかった のですが、厚生科学研究では一度作業をしたことがあります。そのメンバーには損保の 方が入っていらっしゃったのです。多少は臓器提供周辺の費用を、周辺を膨らませてお いて、非常にスリムにコンパクトに臓器提供が完了した場合には、コアの部分だけが支 払われるというような考え方であったのではないかと思うのです。基本的には損保の考 え方で処理しようというようなことでございました。 〇黒川委員長  会社としては計算のしようがないのではないかな。掛け金の問題とかリスクの問題と か、事例が少ないからということだから、これも将来的な検討課題とかという話は不可 能ではないと思います。  小泉委員がおっしゃったように、今は提供された家族にある程度フォローアップの方 法があるということも、それはそうかも知れないが、しかし遺族の方にしてみれば、実 際に臓器を提供されて、運ばれて先でどうなるのかというのは数時間後の話ですよね。 でも家族の方としてはもう終わっているわけだから、早くご遺体を家にもって帰りたい とかいろいろな話はあるわけです。そういうことを一々言われても煩わしいと思うかも 知れない。かえって迷惑ということもあると思うのです。  あれは使われませんでしたという報告は何らかの格好で必要かも知れませんがね。 〇菊地委員  臓器が移植施設に運ばれて使用できないということが決まったおりには、ご家族には きんちとその旨をお話しなければいけない。リアルタイムでお話しないといけないと思 うのです。それについて、移植施設の発表が先行してしまう場合があるのです。そのと きには、説明者としては非常に困るわけです。できましたら本部を通じて、私どもに連 絡をいただいて、私どもの方からご家族に話をした後に記者発表をするという形に今後 していただけたらありがたいと思います。 〇黒川委員長  それは確かに非常に微妙というか、大事なポイントかも知れません。事務局何かあり ますか。移植施設の方でリアルタイムで報道をどんどんされて、いろいろな話があると ついついそうなるとは思うが、ある程度は情報のモニタリングという話をどうするかと いうのはね。確かに取材の自由とか、今度は移植になると制限が少なくなるから、移植 する場所で記者会見をして残念ながら出来ませんでしたと先に言われると、遺族として は複雑な心境だろうと確かに思います。 〇朝浦室長  ご遺族のご心情を考えると、そういうことも充分に配慮して、あっせんの中で円滑に いくように運用していきたいと思っております。 〇黒川委員長  そういうことであれば、どうも難しそうだというときに、移植の施設の方は例えばビ デオで撮ったり公開というか開かれている状況は多いのだが、スムーズにいっていると きは問題はないとしても、そうではないときには、ご遺族の心情を考えると、ご一報い ただいて、コーディネーターがこうなっているという話で、先に届いている方が確かに いろいろな意味からフォローアップのケアも含めて、配慮が望まれるのかもしれないと いう気がします。 〇浅野委員  それから使われなかった場合の理由です。理由についても一部のメディアはかなり診 断名というか、例えば肝臓が移植できなかったということの理由について書いてますよ ね。そういうこともかなり家族の方は心が痛むのではないか考えておりまして、もう少 し違う表現で、恐らく移植ネットとかの方からそういうことを発表しているとは思わな いのですが、今、委員長が言われた大阪大学の場合でもリアルタイムで移植手術の映像 を記者に見せていると思いますが、後で映像を提供されているということも含めて、そ れはもちろん報道の自由ですが、そういうことや報道のタイミングを含めて、全体的に 新聞協会や民間放送連盟、NHKなどで、ここで行われた議論などを踏まえてやってほ しいと思います。 〇黒川委員長  その他、特にございませんか。引き続き、こういう新しい問題ですから、今のような ことを先生方に考えていただいておきたいと思います。 〇浅野委員  私は前から各事例で、家族の方がメディアについてどのようにいっておられるのかと いうことを、私が今までの報道で知る限り、3例目の方の場合も高知のケースをかなり 気にしておられた。4例目の方の場合には3例目の週刊誌やテレビ局の自宅取材につい ても、かなり気になさったということが言われていて、そのことについて一つお聞きし たいです。  もう1点です。3例目の場合はテレビ局と週刊誌が取材しました。週刊文春が摘出直 後というか摘出の同じ時間帯と思われるのですが、その後、一部のある週刊誌が実際に 家族の方に取材されて、それが4ページくらいの記事になっております。  それについて移植ネット方で7月2日付けで森常勤理事の名前で、報道関係者各位宛 の文書が配られていて、その中で家族の方は取材に応じた覚えはない。今後も取材に応 じる覚えはないということを言っておられます。更に「移植ネット、厚生省から臓器提 供されたご家族の取材をしないように要請しておりますので、ご理解いただけない会社 は、今後の取材等を一切お断りすることを検討しております。」という文書が出ており ます。  その経緯などについて、家族の方が取材を受けてない、一方は取材したという誠に奇 妙な事態になっていることについて、何か分かっていることがありましたらお聞きした いと思います。 〇菊地委員  私どもも一部週刊誌の記事を見まして、びっくりしました。私とコーディネーターが ご家族のところにいってまいりました。ご家族ははっきり取材の受け答えをした覚えは ないと申しております。今後も受けるつもりはないというふうに申しておりますので、 それだけははっきりとお伝えしておきます。以上です。 〇黒川委員長  よろしければ、この報告についてはいろいろな問題点が指摘されましたが、全体とし ては小泉先生がおっしゃったように1例目2例目の経験を踏まえたコーディネーターが 入っておられたので、かなりスムーズに進行はした。だが、シチュエーションは新しい のが出てますし、例えば移植が行われなかった、肺は移植を前提として開胸までしたけ れどできないという判断がされた、肝臓は運ばれた先でできなかった。いろいろな状況 がありまして、そういう状況についてどう反応するか。  遺族の範囲にしても、ガイドラインでは十分にいろいろな議論はしても、現場ではい ろいろな家族がいるわけで、そういうことについて、誰がどうするのかという話も出て きました。  臓器が使われなかったときの実際のコストをどうするのかとか、そういう話です。  遺族の方もかなり気にされているいろいろな話について、どこまで発表してもいいの かという話については、遺族なり家族の意思をかなり尊重しないといけないわけですが 特定されない限りは、どこまで発表させていただいていいのかという話は常にあるわけ でございます。 そういうわけで差し支えなければ、第3例目、第4例目に係る移植ネットワークのあ っせん業務に係る評価に関する作業報告書をお認めいただいたという格好にさせていた だいてよろしいでしょうか。これについては、新しい問題もいろいろありますので、こ れについてはまた十分に考えていただて、これからの議論、また事務局も整理していた だだくということす。司法解剖の問題なども出てきましたから、この辺ももうちょっと 整理させていだたくということです。 〇山本補佐  ご承認いただく前に、先ほどご指摘いただいた8ページです。家族の総意をどのよう にとりまとめるべきかという表現ですが、先ほどの菊地委員がおっしゃった通りですの で、正確に修文させていただきます。 ○黒川委員長  一応検討するべきポイントはしたと思います。では議題の1については終了させてい ただきます。これを承認していただいたという格好にさせていただきたいと思います。 ありがとうございました。  脳死下の臓器提供に係る第三者検討機関、この間も大分議論させていただいたわけで すが、これについて今まで検討していって、この間事務局の原案というのがあったわけ ですが、前回いろいろな議論が出ましたので、その議論を踏まえて事務局案をまとめて いただきましたので、これについて資料の説明をお願いします。 〇朝浦室長  資料2です。これに基づきましてご説明したいと思います。前回の本委員会の場にお いて、第三者検証機関の具体的な内容についてご提案をさせていただいたわけです。前 回先生方から頂戴しましたご意見を踏まえて、案を再度提案させていただきたいと思っ ております。  まず第三者検証を行う理由につきましては、これは前回と同じような形になっており ます。臓器提供事例につきましてということで、「提供」という言葉を敢えて入れてお ります。移植側の検証も行うべきではないかというご意見がありましたが、移植につき ましては、これまで腎移植等を含めて一般的な医療として行われている面もあるので、 当面今回は臓器提供という提供の場面における検証を行いたいということでございま す。  機関の審議する事項の中身や、前回提案させていただきました救命治療の状況、脳死 判定の状況、あっせん業務の状況、この3点の検証を行うということでございます。  次のページです。機関の構成員につきましては、これも前回と同様でございます。 (2)で構成員が関係する臓器提供施設等が審議の対象となる場合には、当該構成員はそ の審議には加わらないものとするということを追加させていただいております。  審議方法でございます。 (3)で前回は審議は原則として非公開とするということにな っておりましたが、ここは会議を原則として非公開とするということにしまして、審議 状況及び結果報告書については公表とする、というふうに文書を改めさせていただいて おります。報告書の公表の際には、必ず臓器提供者の家族の承諾を得るということを追 加させていただきました。   (5)で検証を行う際のチェック項目についてあらかじめ検討して公表する、というこ とを追加させていただいております。  最後に3ページになりますが、第三者検証機関の設立運営についてでございます。  事務局を厚生省とする暫定的な機関として設置・運営を行わざるを得ないものと考え ております。具体的な形としては、前回は本審議会の下に、機関を設ける案と、厚生省 の下に別に私的諮問機関を作って行う案と、二つ提示させておりますが、私どもとして は具体的な機関の形としては厚生大臣の私的諮問機関としまして、大臣より任命された 委員により審議を行うという形にさせていただきたいと思っております。  委員の選定につきましては、本委員会でいろいろな観点からのご議論をいただいてお りますので、そういう議論を踏まえて厚生省において行いたいと考えております。簡単 でございますが以上でございます。 〇黒川委員長  このようにまとめてきていただいたのですが、これについて何かご意見はありません か。これの趣旨は一つは実際は全くこれはインディペンデントな外部機関というのは多 分望ましい形だと思うが、ただ事務局としては、これにも書いてありますが、事務局を 厚生省とする暫定的な機関として設置・運営を行わざるを得ないのではないか、という のはそうかなという気がします。一応、厚生省大臣の私的諮問機関とするというのはど うかと思います。  2ページの一番最後の4の (5)です。設立後速やかに、検証を行う際のチェック項目 これは今までの4例のを見ていると、どこがポイントでどこが大事かという話がかなり 流れとしてはわかってきていますので、そこをやっていただいた上で、その他のことが あればという話になってくると非常にやりやすいのではないかと思います。  どんどんご意見をいってください。 〇大塚委員  私はよくわからないのですが、第三者検証機関は確かにいいには良いのでしょうが、 審議する項目は3つございます。この3つの審議をするのであれば、なぜ今の作業班で はいけないのでしょうか。 〇黒川委員長  それは誰でも思うことかなと思うのです。この間もだから、形として第三者といって いるがという話がね。 〇大塚委員  私はこの会の意見などをずーと伺っておりまして、今日だけではございませんよ、こ ういう次のページに出ているような構成メンバーでやりましたら、最終結論などは得ら れないのではないかという感じがするのですがいかがでしょうか。 〇黒川委員長  これについて何かご意見ありますか。 〇桐野委員  実際に私も作業班に関係していましたのですが、大塚先生がおっしゃったように趣旨 が作業班とは大分違って、メンバーも専門性だけをいうのではなく、いろいろな広い範 囲から意見を求めるような形式になってますが、実際の救命医療の状況及び脳死の診断 についての細かい内容についても、立ち入っていろいろな評価をするわけでございまし て、なかなか困難な感じになるのではないかという気はします。  ただ、こういう会が定着して行われるようになれば、それも良いことかなという気も しますので、なんとなく見通しが、今すぐに良いとか悪いと言えといわれても、難しい 面があります。 〇大塚委員  具体的に申し上げます。審議する項目の1です。救命治療の状況というところがござ います。これはまさに専門医でないとわからない問題でございます。ここに書かれてお りますような移植希望者の立場を代表できる方であるとか、あるいは臨床心理の専門家 とか、倫理に詳しい方というのは大変に結構なことでございますが、こういう方々は本 当に純粋な医学がご理解できますのでしょうか。もしも、委員になられた方に私ども医 師以上に医学を勉強していただきませんと、この問題には口は出せないのではないかと 思います。 〇黒川委員長  今やっているような竹内委員のような委員会を作ってもらって、それを吸い上げてい うという話になってしまうと思うのです。その時に、私はこの間からいっているのは、 こういうものをやるのは、もちろん理論的にも望ましいし、第三者というのはかまわな いが、時期早々とは言わないのですが、今やっていることをまた評価してくれるところ があればいいかなという気もするのです。この公衆衛生審議会の下ですよね。だからこ こでやっていることについて、これが全部公開されていてインターネットにも出るとな ると、それについてこういうところの検証が少ないというようないろいろな話があった ときに、それをアドホックに外にまたやっていただいてもいいという話も考えられる。  今やっている竹内委員会、小泉委員会の代わりをやっていただいて、プラスいろいろ な人を入れたときに、この委員会の外でこれをモニターするという格好になるのかなと いう気もしないでもないのです。形を整えても内容が伴わないというのを一番心配して いるというだけの話です。 〇桐野委員  今大塚先生がおっしゃったことは、本当に心配です。この3項目のうち、脳死判定が 適切に行われたかどうかは、これはちゃんとやる必要があるのは当たり前であります。 (3)もそうだと思います。救命治療の状況について、適切な救命治療とは何であるかとい うことのコンセンサスがないまま、この委員会に突入しますと、ある患者さんがいたと きに、何かをやらなかったことについての非難が集中する可能性があります。  例えば第1例の高知の症例では、脳神経外科医からみて、ああいう症例に手術をやる べきだという議論は到底個人的には受け入れられません。しかし、少数ではありますが ああいう非常に殆ど希望がない状態の患者さんでも手術を試みるという脳外科医もおり ます。これはそういう意見を言われた方もおいでになる。  しかしそのようなものが一般的に適切な救命治療であるという考えにたつと、救命救 急医療というのは、とにかくその場でやれることは全てやる、適切でないものであって も、やらなかったことについて非難されるが、やったことについては非難されないとい う今の状況からみますと、大塚先生が非常に心配されることは当然であって、これを専 門家でないものが、わからないではないかという議論をいうと嫌われるのですが、実際 にある状態で入ってきた患者さんを、どう治療するかの選択については、かなり長い経 験と過去の事例に基づいて判断されるわけで、今のようにやったことについてよりもや らなかったことについて根掘り葉掘り言われるような状況というのは、1の判断につい て、いろいろな方、例えば生命倫理に造詣の深い方などが入ってこられたときに、議論 が適切な救急医療とは何かということを、何も前提を置かないままでやりはじめると、 大変なことになる。これは大塚先生が心配されるのと私も全く同感です。 〇大島委員  この問題に関しては、医療サイドの方から積極的に第三者機関を設けろという意見は 私も含めてなかったと思います。  私は特に移植医側なので、そのことについて意見を言う立場ではないと思っていたの ですが、プロフェッションが日本の中では本当に大事にされてないというのは、私も ずーと言い続けていたことです。その問題に随分リンクするところはありますが、第三 者機関を設置して、何をやるかという具体的な詰めがないまま、第三者機関を作って検 証しろという大きな声と流れができたように思うのです。  そこで、具体的な詰めの話になってきたわけですから、第三者機関を作れというふう に大きく主張されている方に、いったい何をやるのかということを、今ここで改めてお 聞きになったらどうでしょうか。 〇黒川委員長  だから幾つかの視点があるわけです。確かに第三者機関というのはそのクオリティと 能力と、そこまで担保されるような世の中になってくればいいと思うが、その辺がどう かな。確かに望ましいには望ましいが、そこでさえバイアスがかかると、かえって足を 引っ張ってマイナスになるということを心配しているわけです。この間いったのは日本 にはそのプロフェッションというようなプロというのはいない世界ですから、オールサ ラリーマンの世界でという話ですね。  だから作ったという格好は作るが、かえって内容について問題が噴出してしまってか えって足を引っ張りはしないかということを心配しているわけです。その意味ではこの 専門委員会は全部公開してくださいというのは、その意味でやらせてもらっているつも りですが、それによって検証なんかができるだけ第三者にもわかるようにしておきたい ということで、フィードバックが受けられるようにしておきたいというのが実は目的で す。  わたし自身の考えでは、今やっていることはかなり公開されて、第三者に開かれてや っているという意味では、今のあまりプロがいない世界ではいいのかなという気はして いるのです。だからこれを無理やり作るのは構わないが、これを作ることによって免罪 符になってしまって、第三者機関そのものが責任をどこまで取れるのかという話になる と、ちょっと心配というのがありますね。 〇竹内委員  大塚委員桐野委員が言われたことと私は同じような考えをもっております。これは今 までの作業班の経験からです。  医者だけが我々の作業班のメンバーになるわけです。医者同士がかばいあうのではな いかという勘繰りが世の中にある以上、この第三者機関を望むということはあっても仕 方ないという気がするのです。実際に脳死判定がどうであったとか、救急医療がどうで あったかということを的確に判断するのは専門の人でないと無理だろうと思います。  医療サイドからのいろいろな雑音がかなり多いので、そういうものに対して適正に対 応できるということになると、より高度な判断をもっている人でないと無理だと思いま す。 どうしても今のメンバーからいいますと、脳死判定に係る専門家が1人、救命医 療に係る専門家が1人ということになると、その1人の人に非常に負担が大きくなるし その人の能力の限界以上のことがいくらでも起こってくるのではないかという気がして おります。以上です。 〇町野委員  私は医者ではなく小泉委員会の方におりました。結論を言わせていただきますと、こ の事務局案で結構ではないかというのが私の考え方です。どういうことかといいますと まず一つは、どうしても専門委員会の下に作られております評価委員会というのは、内 部のものでございまして、外から見たときに果して公正にされているかということにつ いて疑問が出てくるというのは、わたしは当然のことであろうと思います。  確かに格好だけつけて、これが免罪符になるのは困りますが、まず格好はつけないと いけないなというのが私の考え方です。  もう一つは、確かに専門家でない人間がどれだけ判定できるのかというのは、確かに 言われてみると非常に難しいことではありますが、恐らくお医者さんほどは勉強できな いと思いますが、やっていて教育していただきますと、ある程度は私も理解できたとい う感じはしたと思います。もしかしたら違っていて、私が小泉委員会の足を引っ張った のかも知れませんが、少なくとも私はある程度勉強させていただいて、大体わかったと いう感じはします。  ですから医学的に無知であるかも知れませんが、その過程でなんとか日本のいろいろ なところの大臣というものも専門家でないものがなってから勉強するわけですから、そ れと同じことが通常の人間にはできるのではないかという具合に思います。 〇桐野委員  もちろんおっしゃる通りで専門家ばかりが偉いわけではないのですが、一つ例を上げ ます。低脳温療法というのが一時随分盛んに提唱され、そして医学のことについてもお 医者さんではないのですが、相当に詳しいと思われる方がそれを支持されて、日本国中 が急性期の脳疾患に対して低脳温療法をやらないことは罪であるような時代がかなりあ りました。本当にその療法がよってきているメカニズムの基盤とか動物実験等でわかっ ているいろいろな限界等、かなりヒストリカルに知っている人間でさえも相当騙されま した。現状では、もちろんまだまだ可能性のある治療法でありまして、これからも十分 に発展する可能性のある治療法ですが、脳死に至るあるいは殆ど脳死になっているよう な患者さんを、この治療法は何もできないことははっきりしてます。  中等症よりもっと軽いケースについては可能性があるが、米国のやり方ではやった ケースとやらないケースを比較して詳細に検討した結果、良い点はなかったという結論 が出ておりまして、ということはその時の状況というのは目茶苦茶に流されるのです。  多分あの時期に丁度またまた今の脳死が時期的に一致していたとして、このような形 の委員会をすると大混乱になって収拾がつかないと思います。これは低脳温療法をやっ ていない以上、適切な救命救急医療をやってないということで、脳死を判定してのは間 違いであったという結論になる可能性がかなりあると思います。  ですからそのようなことも、専門家だけが偉いわけではないし、いろいろなフィール ドの方が全体的に見て、なるほどフェアにやっているということは、僕は適切だと思い ますが、そういう問題があるということです。  それから大部分の作業は本当に救命救急医療が適切に行われた、本当の意味で適切に 行われたかということと、脳死の判定が厳正に行われたかということに非常に大きなウ エイトがあるわけでして、そういう作業の過程での倫理性の問題とかということも勿論 あると思いますが、竹内先生がおっしゃったように、この構成の1名ずつということで 上手くいくのかなという気はいたします。 〇黒川委員長  今の発言は、竹内委員会の先生方と、救命救急の方と、脳外科ということになると、 そこでバイヤスをかけて見る人もいるかも知れないが、基本からいうと、しかし救命救 急の方と、実際は元々はコンフリクトがあるわけですよね。救命救急の人は救いたいと おもってやっているわけで、決して臓器提供したいと思っているわけではないのですよ ね。その人達が実は両方の脳外科の先生と救命の先生が入ってやっているということ は、実をいうとドナーの方のプロテクションを一生懸命やっているという立場で検証し ているわけですから、それを誤解ないようにしてほしいなと思います。その辺が町野先 生のご意見も最もと思うが、その辺の層の厚さです。 〇朝浦室長  本日ご意見をいただいております。専門的な観点からの検証というものがどうしても 欠かせないということになれば、私どもが今ご提案している検証機関の下に専門的なグ ループを作って、そこで議論していただいて、またここの検証機関で作業するという形 態が一つ考えられるのではないかと思います。  今の専門委員会の下に作業グループを作ってやっている現行の方式を前提に、この専 門委員会の中に、多方面からの参画を得て、そこで公開で作業グループのご報告をして いただく、こういう二つの考え方が恐らく出てくると思います。只今のご議論を踏まえ まして、もう一度事務局の方で検討させていただきたいと思っております。 〇黒川委員長  私も実はここの委員会でいろいろと委員会を作っていただいて、アドホックで検証し ていただいて報告していただいて、皆さんのご意見を聞いている。それを全部公開して いるというところにこの委員会があるわけです。やっていることがまだいろいろと他の プロセス、柳田参考人などもそうですが、いっておられたことにも確かにポイントがあ るわけです。もしそうであれば、そういう委員会をアドホックに作って、そこでここに 注文を付ける会があっても結構だし、いずれそういうプロセスを経て、完全な第三者機 関として成立するかも知れない。そこまで成熟してくるかも知れないと思うのです。ど うかなというのがあります、まだ悩ましいというかね。組織の構造としては、日本はそ ういうのをやるのは好きだが、一つ一つのコンポーネントのクオリティをどう保障する のかということに非常に心配があるというだけの話です。それを判断した上で、これは 公開させてほしいというのは実はそういうところにあるわけです。誰でも聞いてくださ いという話でフィードバックをもらいたいと思っているのです。  そういうことですので、その意味では望ましいかも知れないが、一つ一つのクオリテ ィ、例えば大学の第三者評価というのでも文部省の下部機構がやるというのだから、何 をやっているのだという気がしないでもないのです。第三者というのは行政から金を貰 わない人にしてくださいといったのですが、そういうのはなかなか出てこないですね。 日本全体かそういう組織になっているから、これはなかなか市民の社会になるには時間 がかかるかなということです。  事務局とも相談しましょう。また検討してください。これをすーとやってこれができ ると、今のこの委員会はその報告を受けるという格好になるので、本当にそれでいいの かというのは私もまだ判断をしかねているところがあるのです。 〇浅野委員  先ほど大島委員から積極的に検証が必要だといっている人に意見をといわれたので、 私のことではないかも知れませんが、私はそのようにいってきたのでちょっと言わせて いただきたいです。  竹内先生の作業班の最初の報告のことを思い出してほしいのです。その時に恐らく山 谷さんや私らがいなかったら、あそこですんなり承認されたのではないでしょうか。あ そこで手順ミスなどが、本当に問題がなかったのか。一部の委員からはその後の議論の 中で処分までするべきだということいった人もいたと思うのです。  そういう議論に発展したのは、お医者さんだけの報告書では、お医者さんだけの検証 議論では出てなかった議論が、医者ではない医学の勉強などをしたことがない人間がい ることによって、竹内先生が再び記者会見でお話になり、その後書き直したと私は理解 しているのです。それが専門家でない人が入っていることのメリットであろうと思うの です。  この検証機関がなぜ必要なのかということを振り返るなら、2月の末の高知の例で、 報道機関の方はリアルタイムの取材と報道が必要であるという、それを支持する研究者 や弁護士の方も沢山いて、しかしそうはいっても、当事者である市民、患者の人達がそ れを望まないという状況がある中で、そうするとリアルタイムの取材はできない、情報 開示はできない中で、では密室での医療と言われているものについて、プロセスの過程 と後でどのように検証したらいいのかという議論から、特に他の医療ではなく、この脳 死臓器移植という日本における歴史的なものを踏まえて、そういう議論に展開されたと 思うのです。  今までのお医者さんの意見を聞いて私がびっくりしているのは、そういうことが吹っ 飛んでいるのではないか、先ほど「我々以上に医学の勉強をしていただかないと困る」 と言われたことにびっくりしました。東海大学の医学部に学士入学するしかないのかと 思って聞いていたのです。それは51歳の人間には無理です。そして私たち本職をもって いる人間が、今から医学のイロハからはじめるのは不可能です。私も医者になりたいと 思ったことが一時期ありましたが、今も非常に興味はあるのですが、それは医学部の学 生が勉強することをもう一回やれといわれたら無理です。そういう議論をされたら非常 に心が痛むのです。そうではない人が入ることのメリットをここで確認したと思うので す。  なぜ必要かというのは、柳田邦男さんがここで言われたことにつきると思います。柳 田さんは日本におけるお医者さんが一生懸命やっていることも分かってるが、その上で こういうことが必要ではないか。しかもそれは情報開示との関係で出てきたということ を確認しないといけないと思います。  今度、事務局案がある意味で問題なのは、今ある作業班と、新しくできるものとの関 係です。私は前回これは殆ど同じではないですかといった。今日のお医者さんの委員の 方もそういうことを言われているような気がします。作業班を下にもっていて委員会で 議論するというやり方と、どこが違うのかというのが、今日もあまり明確ではない気が しております。私はこのシステムを第三者機関と呼んでいませんが、検証機関、オンブ ズマン的な検証機関が必要であるといってきたわけです。  それはあくまでも医者と患者、病院と患者の関係において、どうしても患者が力関係 からいって弱い立場にあるのです。医療をうける立場と医療をする側が対等な立場にな るように、市民の側、患者の側、ドナー家族の方々をオンブズ(スウェーデン語で代理 するという意味)する、支えてあげる、代理してあげる、そういう機構でないといけな いと思うのです。  ですから専門家の人達がどれだけ専門的にちゃんとやったのかということの検証は作 業班でやっておられわけで、そうではなく、提供する側というかドナー家族というか、 そういう方々にかわって、その人たちの権利をきちんと守ってあげる、ひょっとして沢 山いるお医者さんの中に、早く臓器を摘出した方がいいのではないかと考える人がいる かも知れないという前提で、ちゃんとした救急医療を受けられたのかということを後で 検証する、そういうものをオンブズマンと私は呼んでいるのですが、その全体的な構造 を税金をつかって運営することは当然です。  ですからどういう人をメンバーに選ぶのか、そういうことを厚生省だけではなく、厚 生省が入ってもいいのですが、厚生省だけではなく、そこの選ぶ主体とか責任の元のと ころを第三者にするのは賛成です。  あくまでもそれは医療を受け市民の側の立場に立って、その他の公的な機関とかと対 等の関係になれるようなシステムを作ってほしいという意味です。 〇黒川委員長  多分浅野委員は、私を医者で発言していると思っているかも知れないが、私は全く違 います。それを誤解されるのは非常に不満であります。私はあくまでもニュートラルな つもりです。だからお医者さんの意見を聞いて同じような感じはもっているのですが、 例えば町野委員が入っていたり、もしそうであれば竹内委員会に何人か入ってもらって もいいわけです。  もう一つは竹内委員会の医学的な検証をここに出しているというのは、あくまでもお 医者さんでない人に見てもらうというつもりで出しているわけです。そういう意味では この委員会は結構機能しているかなということです。公開の場所でしているというのは 凄く大事だと思っているわけです。こっちのやっていることが非常におかしいと思えば マスコミがいくらいってもいいわけです。僕はこれを公開しているというのが、チェッ ク機構になっているのではないかと思ってます。  私がさっきからいっているのは、先生のいっていることはよくわかるが、今、医者の 話をしているとおっしゃったからね。東海大学に入るのは結構ですよ。入れますよ。そ ういうつもりで言っただけの話です。だからその意味では勿論もっとベターなシステム をつくるのは望ましいけど、現在のウエイトからいくと、今ここで第三者機関をつくっ て、今の委員会を止めてそこに身を任せるのも構わないが、私は自信がないのです。 〇浅野委員  そういうことは全然いってません。 〇大島委員  医者の側が医者の立場で話をするのは当たり前のことです。その点から大塚先生とか 桐野先生がこういうものを構想したときに、頭の中で少なくとも共通のイメージができ てないわけです。その中で非常に危惧されることを、ちょっと表現は浅野先生からいけ ば納得のいかない表現であったかも知れませんが、非常に分かりやすい形で指摘された と思うのです。決して、医者だからおごっているとか専門家だからどうだとか、少なく ともそういう形では出てなかったと思うのです。  お互いの立場で一番いいと思われることが、かなり率直にぶつけられてきた。それで 少なくとも今までの検証のプロセスにしても、いろいろなことがいろいろな形で検証さ れて、それでチェックされてきたというプロセスであったと思うのです。医学的な問題 とかに絞ってみれば、今ここでイメージされている第三者機関というのは今のシステム でもきちんとやれる部分が十分にあるのではないかというのが、片一方の頭の中にある そうではないのだという考え方があって第三者機関でやろうとすることが違うなら、い ったい何をやろうとしているのかということの共通認識が少なくともできてないと思う のです。  その点について、共通の理解を作るために、医療者側でない形がどういうイメージを もっているのかということを、少しお話していただきたいというつもりで、私は発言し たつもりです。  町野先生は少なくともそういうスタンスに立ってお話いただけたので、私は私なりに 理解はできていると思いますが、それでもまだ十分に頭の中に入りきれてないという部 分はあります。 〇山谷委員  第三者検証機関が必要であるというのは、国民の信頼を確保して、その定着を図る上 でという、こちらにも書いてあります。やはり国民の信頼の確保、今の状態では若干で きていない状況ではないか。医者が医者を庇うというようなことで、そういうことから これが持ち上がってきていると思うのです。  確かに医学的なプロフェッショナルな判断を、そうでない人達ができるのかどうかと いうのはあるわけです。ただ本当に無呼吸テストの順番の位置が違っても問題はないと いっても、それは納得できないというのが市民の側でございまして、そういうようない ろいろなことが、いろいろな議論が出ていくということが、国民の信頼を得ていくため にはプロセスとして必要なのだと思っております。  今回の小泉委員会の報告書で非常におもしろいと思ったのは、ガイドラインには家族 というものの規定があるわけですが、現実ではそれが上手く機能しない部分があると か、以前から私自身がいっていた日本臓器移植ネットワークのあり方、コーディネー ターのあり方の見直しとか、そういうものが必要なんです。それが医者だけの委員会で は出ないということもありますので、移植希望患者の立場を代弁できるもの、あるいは 心理の専門家、生命倫理、こういう新しいタイプの人達を入れていくことによって、こ のような問題がどんどん指摘されていって、国民はより大きな信頼を寄せていくことが できるのではないかと思っております。  これまでの議論に第三者検討検証機関を形だけ作っても、クオリティとか、あるいは 現実として機能しないのではないかという、その恐れは確かにないわけではないわけで 私は竹内委員会とか小泉委員会のメンバーに新しく加えていくという形でやった方が現 実的ではあるかなという気はしているのです。 〇大久保委員  前から第三者機関ということをずーと言いつづけてきていたのです。それは法案がで きる前からの話です。そういうことでこの委員会自体はそういう話が出る前の非常に第 三者的な立場から、いろいろな方が加わっている委員会として、非常に高く評価してお ります。今回も1例目2例目に対してのいろいろな報告、そしてここの議論に関しては かなりある程度この委員会というのは機能したと評価しております。  では第三者機関をどのように作っていくのかというのは、本当にこの委員会との兼ね 合いが非常に難しい。わたしも第三者機関がどこから見ても第三者とみれる機関がある というのは非常に重要だと思うのですが、ではそれとこの委員会との関係をどうしてい くのか、さっきからずーと悩んでます。ではこれから事例が非常に増えてきて、年間に 何十例となったときに、とてもではないが、この委員会自体がそういうことを全て検証 するのは難しいということで、そういうものを一つずつ検証する機関を別において、こ こに委員会として報告するとか、そういう形であればまた方策はあるが、今のように全 ての事例をこの委員会で検証していくのであれば、この委員会にもう少し今いない生命 倫理の方とかを加えることによって、そういう機能はできるのではないか。  確かにこの委員会自体は非常にお医者さんに偏ってる部分がありますので、そういう 他の分野の方、今回、浅野先生とかいろいろ違う方が恒久的ではないのですか、加わっ てくださったことによって、かなりそういう機能が出てきましたので、もう少し委員と して、恒久的な委員として新たにそういう方々を加えていただいて、お医者さんが殆ど というのではなく、そういう方が一杯入っている形の委員会というをここで作っていけ ば、ある程度対応はできるのではないか。  ただいま申しましたように、ではそれで年間の何十例というものをここで全部やるの かということになると、またこの委員会の今後の役割からすると少し違ってくるかなと 思って非常に悩んでいるところでございます。 〇竹内委員  先ほど浅野委員のいわれたことで気になることがあります。脳死の判定がどうだった のかということを後で検証する場合に、医科大学を卒業したくらいで、それが的確にで きるということではないと思うのです。我々が判定基準を作るときに、医師であれば誰 でもが判定できるようにという目標でやりましたし、理想的な判定基準はそうであるの ですが、実際には判定はそれぞれの資格をもった専門医によってなされるということで す。しかも複数でやらないといけないということになってます。  ちょっと医学を勉強した程度で理解できるよなことではないことを、作業班でいろい ろ苦労して検討するわけであります。その点だけは十分にご理解いただきたいと思って おります。以上です。 〇浅野委員  議事録をあとでよく読んでいただいたら、今の疑問は解けると思います。私は今いわ れたちゃんと資格もった医師になるには、まずスタートとして医学部に入らないといけ ないと思っただけであります。もちろん医学部を出たら脳死判定できるということは一 言も申し上げておりません。  大島先生が言われたあるいは黒川委員長が言われたことは、私もよくわかっておりま す。特に黒川委員長がいわれた、自分は医師として委員長をやっているのではないとい うのは、非常に重要な指摘であると思います。私もここで、発言しているのは、別にメ ディア論の同志社大学の教員として発言しているのではなく、私という市民の義務とし て、たまたま勤務先はそうですが、一人の市民としてここで自分の持っている知識をも とに発言しているという意味で、ここで僕はお医者さんといったのは、お医者さんをし ている委員の方という意味でありまして、そういうふうに理解していただきたいと思い ます。  なるべく委員長が言われるように、自分の職業とかというものを離れて、国民への責 任としてやっているのは当たり前です。今度の検証機関もそのように、スウェーデンの 例でいいますとオンブズマンというような評議会というのは、そこに来たときにはネク タイなどはしてなく、普通の市民として、裁判官の人やお医者さんや弁護士さんや会社 員の人がきて、そこで平場で議論をする。名前も何々教授とは呼ばないでファースト ネームで呼ぶ、そういう関係を将来目指すべきだという意味であります。  大島委員が聞かれたことについてお答えしたいと思います。先ほど桐野委員が言われ たやらなかったことが追求される、やっていれば追求されないという、そういう実態が 確かに一部のメディアにはあると思います。しかしやはり、やっていれば助かったかも 知れないという気持ちというのはあるのではないか、患者の側には。そのことについて 最終的にきちんとした医療が、100 %の医療というのはないと思いますが、出来るだけ のことがベストの医療がなされたのだということについて、まず私は検証したい。  つまり、簡単にいってしまうと意思表示カードをもっている家族が同意したことによ って救急医療が万が一きちんとしないという可能性はないのか、そういうのが国民の不 安であると思うのです。そこのところをクリアにするためのことは大事だと思います。  もう一つです。移植ネットのコーディネーターの人達と患者家族の人達のやり取りで すね。これは今までのところでは全然明らかになってません。家族の人が本当の意味で ボランタリーに同意したのかどうかということについて、家族の側からも聞くための検 証は絶対に必要だろうと思います。  慶応病院以降の例では、1例目ではいろいろなものがここで提供されましたが、具体 的なデータがかなり減ってきているようにも思います。そういうことは高知新聞の連載 や読売新聞の大阪本社の連載できちんと指摘されているわけです。それを私はきちんと 受け止めるべきだと思います。特に読売新聞の連載については東京では報道されません でしたが、毎日新聞やその他の新聞や雑誌では、非常に真面目に別にお医者さんを信用 しないというのではなく、お医者さんたちは一生懸命やっている、医療関係者は一生懸 命やっている、しかしそういう心配があるのだということを、その懸念とか心配に対し て応える。  しかも報道機関に対してリアルタイム取材や報道は控えてほしいというなら、そうい うことは後で、例えば一部の先生は脳死判定の過程をビデオで撮るべきだとか録音を取 るべきだという意見も表明されております。それが良いとか悪いは別にしても、そうい ことで様々な工夫を、後で検証できやすいようにする工夫を求めているわけで、そこの ところを、ですから後できちんと検証できる材料が少なくとも記録されるということ も、非常にこの機関にとって重要ではないかと思っております。 〇黒川委員長  こういうわけでいろいろとご意見が出ているし、それぞれの立場、それぞれの意見も それぞれのご本人のいろいろな背景その他がありますから、大変にそれなりに意義のあ るコメントですので、引き続き検討させていただくということでどうでしょうか。 〇大久保委員  浅野委員のおっしゃったことですが、今回のネットワークのあっせんに関する業務に 係る評価の作業班の中には、コーディネーターとその提供家族のやり取りというのは全 く公開されてないのでしょうか。 〇小泉委員  作業班の検討にはオブザーバーとしてコーディネーターの方に出席していただいて、 状況についてのご説明も、私からお願いして、していただいております。しかし、具体 的にどのようなご家族との会話があったのかということについては情報はいただきます が、そのこと自体は、我々はそこに出されたコーディネーターの方のご意見は担当され た方の意見として聞いております。したがって今のご質問の前に、もし発言できたらと 思ったのは、竹内先生のもそうでしょうが、我々の作業班の場合にはネットワークのあ っせん業務に係る評価に関するということで、一般論というか原則論を検討して、たま たまその原則論の検討の中で1例目・2例目が起こってきて、それを検討材料として議 論した。しかし、前々回のこの委員会で、3例目も4例目も作業班会議で、1例目、2 例目と同様に検討しろということになったのでいたしましたので、決して5例・6例も 続けていまの調子でやっていくというつもりは全くもっておりません。 〇黒川委員長  確かにそうです。この間の柳田参考人の話もそうですが、ではドナーになったファミ リーの側からの言い分はどうだという話もあるわけですから、それはまた別のことでは ないかと思います。それはいずれ何かしないといけない、それがそれこそオンブズマン かも知れない、そのオンブズマンがどのくらいニュートラルで出てくるのか、そういう 話が出てくるのではないかと、わたしは思ってます。そういう全部を入れたところが第 三者機関としてというのがいいのかどうかは、すっきりすすと踏み切れないという気が しているということです。 〇山本補佐  一言です。事務的にはコーディネーターの側から小泉先生の委員会には、コーディ ネーションの細かい記録を全て出していただいて、やりとりを検証させていただいてお ります。ただし、いろいろな場面での感情の吐露ですとか、ご家族のやり方をそのまま 世の中に公表するかどうかについては、今回の公表資料もご家族のご同意を得て、この 会議で公表させていただいております。それは竹内先生の班の研究班も全く同様で、全 ての記録を提供の上でということでございます。 〇伊藤局長  中座をして失礼しました。室長から事務局案の説明があったと思います。実は私ども はこの専門委員会の議論を踏まえて、事務局案を作成するにあたりまして、頭の中でイ メージしていたことを若干補足させていただきます。  第三者検証を行う具体的な中身につきましては、今まで、第1例目から4例目までや っていただいたこの作業班のこの仕事の中身を、大体そういうレベルかなということを イメージして、この事務局案というのを考えております。  したがいまして、この検証する事項につきましても、1ページの2のところにありま すように、本当に臓器提供意思カードをもっていたために、救命救急医療に最善を尽く すということが行われなかったということがなかったかとか、臨床的脳死診断の法的脳 死判定が医学的にも手続き的にも適正に行われたか、さらにネットワークの業務が適正 であったか、そういうことをやっていただくということです。  いま、いろいろと浅野先生から出ております本当にオンブズマン的な第三者検証機関 という形になりますと、これは単に行政的に設置するというのは、その費用を誰が負担 するのかとか、守秘義務をどうするとか、非常にそこに至るいろいろな法的な根拠でご ざいますとか、いろいろと時間がかかる話なので、そこは今それができるまで待つとい うよりは、1例目から4例目までの経験を踏まえて、当面、厚生省が基本的には事務局 になって、今までやっていたような形を念頭において、5例目以降もやるということで どうでしょうか。  ただこの検証の委員会というか、それをどういう形で位置づけるかという点について は、新たに大臣の諮問機関という形で大臣から任命していただくのか、もう一つはこの 臓器移植専門委員会の下に従来のように作業班という形で更に必要なメンバーを追加す るなりなんなりする。この二つの考え方はあったと思います。  そこは二つの方法があるということで、私どもとしては、そこは基本的にはあまり大 きな違いはないのではないかと考えております。しかし今までいろいろな議論の経過か ら、今回の事務局案は、大臣の私的諮問機関という形で、事務局案という形で提案させ ていただいたということでございます。ご議論いただいております臓器移植専門委員会 に設置する作業委員会という形も当然考えうると思います。 〇黒川委員長  ありがとうございました。そういう基本的な考えと、いろいろな意見があるというこ とですので、これは引き続きということでさせていただきたいと思います。よろしいで しょうか。 〇野本委員  現場をやる立場で黙って最後にかえるわけにはいきません。患者さんのサイド、一般 の国民が必要とする情報、医学界でも提供施設、移植施設、その他のいろいろな社会の その時点時点で、必要とする情報の質や量が違ってきます。  私は実際に1例目からああいう対策本部で揉みくちゃになっておりますと、できるこ とは今のその時点の流れの中で、今の時点で必要なこと、最善を尽くしながらこういう 第三者機関の性格も刻々と変わっていっていい、変わっていかざるを得ないのだろうと 思います。  私の方の現場のリーダーとしては、とにかく今の時点で必要なものを作っていただき たい。今の時点で国民が納得できる仕組みを作っていただきたい。だから議論されると きに、これは100 例やったときに役に立つというような仕組みを今作れというようなお 考えではなくて、いま国民が何が必要かということを考えた上で判断をていただきたい なと思います。そうしないと私自身がやれなくなります。  例えば、秋になるとまた5例目がはじまると思うのですが、5例目をやるときに100 例目のときの条件と同じことでこうしろといわれても、それはできませんので、やはり 100 目くらいになると1・2・3・4例でいろいろやってきたことが、むしろお前の過 剰反応であったということも批判されることも覚悟でやっているわけです。時の流れと いうものを入れて考えていただきたいです。  常に国民が納得できる仕組みを、その流れの中で作っていっていただくというように 考えていただいたらいいのではないかと思います。 〇黒川委員長  よろしくお願いします。次です。これに関係あることですので進めさせていただきま す。議題の3です。臓器移植の透明性の確保と臓器提供者等のプライバシー保護の関係 につついてです。これについても今の問題とある程度関わりがあるのです。これについ て従来の4例の話を踏まえて事務局からのご説明をお願いします。時間が過ぎてしまっ て申し訳ないですがよろしくお願いします。 〇朝浦室長  時間がおしてますので簡単にご説明させていただきます。資料の3です。臓器移植の 透明性の確保とプライバシーの保護の関係につきましては、従来からご議論いただきま して中間報告でもご意見を頂戴しているわけです。最終的に議論として残っております のが、ご家族の方から情報公開をしないでほしいと言われたときに、どのように対応す るのかという問題があったかと思います。  ここで中間報告の抜粋を付けておりますが、ここは省略し割愛させていただきまして 2ページの3からご説明したいと思います。  1)です。中間報告では家族から開示されては困るといった事項は原則として開示しな いということについては合意がみられております。こういった中間報告の考え方を踏ま えて、厚生省、臓器移植ネットワークにおいて情報公開をする場合の考え方をお示しを しております。  2)です。臓器提供の事実を含めてご家族が開示を承諾しなかった場合の対応としては 臓器提供の手続き自体は行うものの、コーディネーターが臓器提供について説明する際 には、事実関係、医学的な情報等は開示されること及びその項目をご家族に説明し、十 分に納得していただくよう努力するものとし、それでもなおかつご家族が承諾されない 場合には、1)の考え方に沿って、基本的には開示を行わないこととなってもやむを得な いと考えております。  この場合、コーディネーターからご家族に提示する事項は、中間報告においても一定 の評価を受けております第3例目の際の情報開示の方針、別添に付けておりますが、こ の方針における開示項目を基本としたいと現在考えているところでございます。以上で す。 〇黒川委員長  ありがとうございました。これは別添1にもありますが、こういうことで今はやって いたわけですが、これについていかがでしょうか。  どうしてもご家族の同意がないといけないわけですが、ご家族といってもいろいろあ るという気はするのです。ご家族はどうしても開示しては困るという事項については、 原則として開示しない、だが、一方的に聞いているわけではなく、コーディネーターか らの説明も十分に納得していただけるような説明、どこまでこういうことだけだという お話ももちろんお願いしたいということです。 〇浅野委員  基本的にとか基本とするという表現はありますが、これはごく少ない例として、例外 があるという意味があるのでしょうか。 〇朝浦室長  言葉の定義の問題だと思います。開示を行わないというふうに考えております。 〇板倉委員  すると基本的にというのは例外がないということですか。どのような医学情報でも、 ご家族というかご家族といってもいろいろな方がおられると思いますが、例えば家族と いう人が、ほとんど全員一致して同意してないという場合には、例外を許さないとする と、いかなる医学情報も開示を行わないという意味であるわけですね。だから基本的に というのは、そうすると我々は原則的にという意味に理解すると、例外があるというこ とになります。 〇朝浦室長  もし誤解かあれば取っていただいていいと思います。 〇板倉委員  では取るということですね。わかりました。 〇黒川委員長  小泉先生何かございます。コーディネーター、ネットワークの検証の場合ですが、こ ういうのが実際にあったのかどうかまだわかりませんが、患者さんの家族の意向を尊重 せざるを得ない部分がかなりある。こちらとしてはここまでは発表したいという話もあ るということですか。 〇小泉委員  これまでのところは、家族の方は原則論としてここまでは結構ですというような、そ ういう総論的なご意見はでますが、むしろ、偶然といっていいような形で、取材があっ てそれが記事になるというようなことを非常に気にしておられます。 〇黒川委員長  これはもちろん、ここで検討するときに公開されているから、どこまで言っていいの かというのはまた別の問題で、検討の資料などについてはもちろんそういう情報は取ら せていただきますが、どこまでプレスあるいは公開するかという話であります。 〇大島委員  私は腎臓移植をずーとやってきたものですから、昔の腎臓移植がはじまった頃という か、死体腎移植が動きはじめた頃のことを思いだしてみますと、メディアの問題という のは、脳死移植ほどこんな大騒ぎにはならなかったのですが、それでも、1例やったと か2例やったという段階ではメディアにいろいろと載ったのです。ドナーの情報がどの くらい載っていたのかということについても、今考えてもあまり思い出せないのです が、もちろん今ほど家族とか遺族という方のところに、いろいろなプレッシャーがかか ったということはなかったと思いますが、ほとんどこの事が問題になったことはなかっ たです。私が知らなかっただけかも知れないのですが。  別にこれは移植だけではなく、どんな医療においても、新しいことであるとか何か起 こったときに、メディアの側が取材にくるということはよくあることでして、その都度 例えば腎臓移植の場合のレシピエントの場合でも、よくメディアからの取材ということ があって、その都度お話を患者さんにするわけです。患者さんにお話をしても、受け止 め方はそれぞれによって全く違う、あまり良い表現ではないかも知れないのですが、非 常にメディアに出たがるという方もいるし、絶対に嫌だと完全に全て拒否される方もい る。これくらいだったら構いませんと言われる方もいる、それは本当に様々だと思うの です。  いま、これほど大きな問題になっているのは、今だから非常に大きな問題になってい ることでして、あまり今の時点で細かいところまで根掘り葉掘り決めてしまうと、あと これから移植が日本で当たり前になってほしいと思っているのですが、当たり前の医療 になったときに、手かせ足かせになる状況を作ってしまうというのは、あまりよろしく ないのではないかという感じがします。 〇菊地委員  先ほど大島先生が言われたように、ご家族によって情報開示していい項目というの は、人間ですので開示してもいいと言われる方もおられるし、開示を拒む方もおられる と思います。私どもコーディネーターとしての意見としましては、コーディネーターは 第三者機関の人間として、移植施設の先生方でもなく、救急施設の先生方という立場で もなく、第三者の人間として係わっているつもりです。それをまた第三者の先生方が検 証されているわけです。  少し私どもの立場からいいますと、ご家族が公表してほしくないと言われたことに関 しては、どういうことがあってもそれは守るつもりです。 〇黒川委員長  確かに数が多くなるとどうなるのかというのは、かなり違うと思います。4例のとこ ろである程度決めてしまうと、またどうこうということになりかねないので、別添1に 書いてあるような基本と、この間の中間報告の基本ということで、どのように定着して いくのかという話で、その場その場の判断はまたいろいろなことかあり得ると思うので 少ない4例くらいの経験でどこまでやるのかというのは結構難しい問題かも知れない。  アメリカでは年間に2万近くやられていて、腎臓だけでも死体腎が7千ですから、3 千5百のドナーから行われてますから、誰も追いかけないですね。唯一マスコミに載っ た最近の話は、2年くらい前にアメリカではリビングリレーテッドもやりますから、あ る人が婚約した人から一つ頂戴といってもらったというのがあって、そのもらった後で 婚約を破棄して、その時に入院した看護婦さんと結婚することにしたという話があっ て、そういうのがメディアに出るわけですが、それ以外は誰も何もいわないということ ですよね。  実際に数が多くなってくると、そういうこととは別に実際の検証はネットワークでし ているわけです。一つ一つの症例についての問題点はやって、それを更に中の評価委員 会でやって、今度は全く外のネットワークの評価委員会にやっていただいているので、 それをまたここに上げているという格好に多分なってくるのではないか、それだとかな り普遍性のあるところに到達する可能性があると思ってます。  大島先生のいっていることも確かに一理ある。菊地さんのいっていることも一理ある そういことからいうと、今までの対応で非常におかしなことが起こったということもな いという気もしないでもないです。その他に何かありますか。 〇浅野委員  私はこの基本的というのを残した方がいいと思います。その意味で質問したのです。 じつは100 %駄目だというとそれに従うという、それの前提として、公表と開示を分け るべきだと思います。先ほどから議論している検証機関に対する開示なのか、それとも 先ほどから問題になってるのは、マスメディアの報道の問題ですね。そこのところ、私 がこの委員会に来てからの懸案事項ですが、そういうところのガイドラインがマスメデ ィア等に未だにないので、混乱するのですが、その意味で当面は、一切厚生省やネット としては開示しないというのはわかるのですが、それを全く例外がないとしてしまうと 将来いろいろな問題が起きるのではないかと思います。 〇黒川委員長  一応は開示するということで、でも家族がどうしても嫌だといったときには、どこま で開示したいかということでありますので、この別添1にあるようなところまでは何と かしたいということで、なるべく開示していきたいということですよね。アイデンティ ティがわからない程度ですね。もし間違っていたら補足してください。 〇朝浦室長  ご家族の了解を得てここで掲げております項目については開示をする。ただし、どう してもご家族の了解を得られない場合は、開示できないこともやむを得ないのではない かと考えております。 〇大久保委員  これは検討のところには当然細かいことは全部開示するということですね。これは公 に開示するかしないかのことですね。 〇朝浦室長  公的な開示の場面でございます。 〇大久保委員  そうですね。はい。 〇野本委員  こういう情報論会議というのは公開の場で、しかるべき立場でいった言葉は、いわば メディアに乗せて世の中に流していいですよというアグリメントのようなものですね。 今回、対策本部をやってみてわかったのは、各社の現場の記者の諸君は、よく知った上 で、書いたらご家族の心が傷つくというようなところは、ほとんど抑えてくれたという のが実態です。  したがって第3例のやり方というのが基本になって、出来るかぎり国民の納得を得る ために開示する努力は、厚生省もネットワークもやっているつもりです。4例ともお願 いして、何とか少しでも公開するようにしたわけです。先ほど僕がいったように世の中 の動きと平行しながら、情報を要求する質や量も変わってくるので、そこのところはシ ステムをつくられる場合も、移り変わっていくという覚悟の上でシステムを作っていた だきたい。何もなく勝手に動けというよりは、システムを作る方がいいのですが、その システムがずーと1年も2年も続くという発想ではなく、今の状況を凌ぐにはこうした 方がいいというふうに考えていただきたい。  幸いにもこの専門委員会が経常的に開かれて、問題の本質まで議論する性格になって おりますので、いつでも変えられるという動きのポリティカルなシステムができている ので、そういう感じでしていただいた方がいいような気がします。 〇黒川委員長  この事務局案は中間報告までにやったことと、実際にやったことを踏まえてこの1・ 2・3と2ページに書いてあるわけです。板倉委員から基本的にとはいったいなんだと いう話がありましたが、これをとってしまうと、開示を行わないことになってもやむを 得ないということになると、しないということが全てに当てはまってしまうので、現在 は基本的にということを入れておいた方がいいのではないか。 〇板倉委員  いいです。 〇黒川委員長  そうですか。そした事務局案を現在のところはご承認していただくということで対応 させていただくということでよろしいでしょうか。ありがとうございました。では次に 臓器提供意思表示カードの様式ということです。これは6月1日の16回のこの委員会で 意思表示カードに眼球を明記するということがなかったので、それについてご了承いた だいたので、具体的な文面について事務局から揃えていただきましたのでこれのご説明 をお願いします。 〇朝浦室長  時間の関係で簡略にご説明します。資料4でございます。3ページに現行の意思表示 カードと新しく改正案としてご提案しているカードの様式を載せております。現行の カードには脳死下での臓器提供をするという項目の中に眼球という記載がなかったわけ ですが、それが第2例目の脳死提供下で問題となっておりました。脳死下でも眼球提供 ということがあり得るので明記をした方がいいということです。  もう一つです。角膜移植だけではなくて、胸膜移植というものも今後認めていく方向 で検討しておりますが、それを配慮しますと、2番目に心停止後の移植のところに書い てありますが、眼球(角膜)という記載が少し不都合ではないかということで、角膜と いう言葉を取るということでございます。  前回の委員会では臓器の順番をどうするのかということがございましたが、基本的に は、基本的にという言葉をあまり使わない方がいいのかも知れないのですが、法律ある いは政令省令というものを見てまいりまして、法律にしたがって腎臓、脳死の場合は心 臓・肺・肝臓・腎臓・膵臓・小腸・眼球・その他という順番で、心停止後は腎臓・膵 臓・眼球・その他という順番にさせていただきたいと思っております。  改正の時期でございますが、現在まだ臓器意思表示カード及びシールが在庫として若 干残っておりますので、その在庫がなくなりしだい、逐次新しいカードを配付していく ということで進めさせていただければと思っております。以上です。 〇黒川委員長  これについていかがですか。眼球のことはこの間議論していただいたので、これを加 えて誤解のないようにするということで、この案でよろしいでしょうか。これはこれで よろしいと思います。  まだ配られてないというか、残っている不備なものがなくなったらというのはそれで いいのかなというのはどうでしょうか。 〇朝浦室長  不備ではなくて、カードに眼球という言葉が入ってないということですから、眼球を 提供したいという方は眼球という言葉を書いていただくということを、いろいろなとこ ろでPRしたいと思っております。 〇黒川委員長  カッコの中に書いてくださいということですね。その辺がそれを担当している人、あ るいはそれを気にしている人はわかるかも知れないが、周知するというか、皆さんにど れだけ理解していただけるのかという努力はなかなか大変だと思います。それではその ようにお願いするということでどうでしょうか。  その他に最後の議題でその他です。これについて事務局から調査結果ということでお 願いします。 〇山本補佐  参考資料の1でございます。前回のこの専門委員会のときに、若干言及しましたが、 今年の5月に、各都道府県コーディネーターさんの勤務状況等につきまして、実態調査 をさせていただきましたので簡単にご報告いたします。  回答数53名で、性別は女性優位ということです。年代的には30代の方が多いというこ とです。都道府県コーディネーターさんの職種、国家資格としては看護婦・看護士31名 と圧倒多数です。コーディネーターとしての経験年数については、非常に短い方が多い というのは次の表4にございます。  2ページ目です。所属機関は4割が医療機関、半分が腎バンクその他ということで す。勤務状態は常勤の方が半分ちょっとです。常勤といっても病院として常勤という場 合もありますので、ここでは問題もありますが、常勤の方がほとんどです。  日常業務として啓発普及は1日平均4.5 時間、その下を見ていただきますとわかりま すように、グラフで書いてありますように非常に啓発普及時間が短い方と、腎バンク等 に勤めておられる方はフルタイムで啓発普及業務をやるということで、シフトしている ということになります。  あっせん業務に要した時間は月平均10時間ということで非常に短い。これは具体的な 臓器提供がなかったり、また臓器搬送がなかったりということとも関係しております。  3ページ目です。普及啓発活動については、これは件数でいうのが妥当かどうかとい うことがございますが、病院、その他、講演、講習会等でやった活動の回数が書いてご ざいます。ただ、殆ど活動していない人と、非常に多く活動している方に別れていると いうところもございます。具体的な活動内容については、後でご一読ください。  5ページ目です。10年度に具体的な臓器のあっせん業務に要した業務ということで実 際に関与した件数、平均5.6 件、殆ど関与してない方と、30件以上で非常に多く関与し ている層がございます。これはあっせん業務ですから、実際に病院にいってあっせん、 コーディネーションを行うことから、臓器搬送への補助等も含まれます。  実際に臓器提供があった場合の対応については、かなりの部分、夜間休日等対応でき るということなんですが、問10のところでコーディネーター業務を行う場合、誰の指揮 命令系統かということです。これは中間報告で小泉委員長のところからもご指摘いただ きましたように、ブロックセンターという方から、県の支持、病院長の支持とか、支持 系統を複数回答した方もおられますし、かなりばらついているということになります。  啓発業務の指揮命令系統については同様に下に書いてございます。  最後のページです。過去5年間にコーディネーターの業務に関する研修を受けたかと いうことにつきましては、ほとんどの方が研修を受けておりまして、これは日本臓器移 植ネットワークが研修会をやっておりますので、多くの方はこれは受けていただいてい るということかと思います。以上でございます。  今日はもう一枚新聞記事をお配りしましたが、一部報道機関におかれまして、都道府 県の移植コーディネーターについて見直す、最後のところでは今後は都道府県コーディ ネーターについては啓発業務だけに縮小していく等の記事が書いてございますが、これ につきましては厚生省としての方針がこのようであるということでは全くございません ので、この報道機関については、こちらからも厳重に抗議を申し入れたところでござい ます。  そういうこともあるということでご報告させていただきます。 〇黒川委員長  これについては前も議論していただいたところです。実態としては小泉委員会の報告 を受けて、実際の都道府県コーディネーターの実態の調査をしてみたという話から、こ ういうのが出てきました。これについては確かに都道府県の腎バンクその他のコーディ ネーターの方は、誰との雇用関係があるのか、それから実際のネットワークの業務にな ったときの、いろいろな事故が起きたときの保障はどうするのか、そのようないろいろ な複雑な問題もありますので、その辺の実態がこのようになっているということがわか りましたので、ここの新聞記事もあるわけですが、行政当局としては、ネットワークも そうですが、これについてもっと整備して、コーディネーターの充実ということが大事 なわけですから、その辺については対策をしたいということでご意見を伺っているとこ ろであります。  これについて何かございますでしょうか。 〇野本委員  今大島委員を中心に、腎提供を何とか千例くらいのレベルまではまず早急にもってい きたいというアクションをやってます。そのようにもっていくときは、各ブロックに所 属するコーディネーター以外に、地域密着型の人が非常に必要です。更に私どもがもう 一つ都道府県コーディネーターより病院個々に張りついている方々を、情報提供者とし て指定して、そこからデータも入るようにしているというところまでやっているので、 現場の人達の活動を縮小してやるとかという発想は全くございません。それを変えてい くということでございますから、現場はいらないという考え方は全くもってないという ことでございます。 〇黒川委員長  変えていくというのは仕事をしやすくするために基盤整備したいということですね。 その他にどうですか。これについては更に前から提案されてますが、コーディネーター の仕事、資質、充実という方向でもっていくので、実態調査はこのようになっていると いうことです。これに基づいてまたいろいろ考えていただくということになると思いま す。  では一応こちらの用意した議題は以上です。最後に今浅野委員から配られたものがあ りますので、これについて簡単に説明していただいてもよろしいですか。 〇浅野委員  これは先ほど私が話したこととほとんど同じです。わたしのこの検証機関に対する考 え方を書きました。 〇黒川委員長  浅野先生はこれが専門ですから、いろいろなところに書いておられますので、皆様に もいろいろとコピーを送っていただくといいのではないかと思います。その他に事務局 として何かございますでしょうか。ございませんか、ではいつもですがオーバーしまし て申し訳ございません。きょうはこれで終わらせていただきます。貴重なご意見をまた よろしくお願いします。                                 −終了− 問い合わせ先  厚生省保健医療局エイズ疾病対策課臓器移植対策室    担 当  山本(内2361)、木村(内2364)    電 話 (代)03−3503−1711