99/08/02 内分泌かく乱化学物質の健康影響検討会第7回議事録    内 分 泌 か く 乱 化 学 物 質    の 健 康 影 響 に 関 す る 検 討 会 ( 第 7 回 )                 議  事  録         厚 生 省 生 活 衛 生 局 食 品 化 学 課    内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会(第7回)議事次第 日 時:平成11年8月2日(月)10:00〜17:30     平成11年8月3日(火) 9:00〜18:15 場 所:中央合同庁舎第5号館別館8階共用第23会議室 1  開会 2  生活衛生局長挨拶 3 資料確認 4 議題   (1) 平成10年度厚生科学研究成果発表について   (2) その他 5 閉会 〔出席委員〕  (8月2日)  伊 東 座 長 青 山 委 員  阿 部 委 員  井 上 委 員  岩 本 委 員 押 尾 委 員  黒 川 委 員  紫 芝 委 員  鈴木(勝)委員 鈴木(継)委員  高 田 委 員  武 谷 委 員  田 中 委 員 津 金 委 員  寺 尾 委 員  寺 田 委 員  藤 原 委 員 眞 柄 委 員  松 尾 委 員  安 田 委 員  山 崎 委 員 和 田 委 員  (8月3日)  伊 東 座 長 青 山 委 員  阿 部 委 員  井 口 委 員  井 上 委 員 岩 本 委 員  押 尾 委 員  黒 川 委 員  紫 芝 委 員 鈴木(勝)委員  鈴木(継)委員  高 田 委 員  田 中 委 員 津 金 委 員  寺 尾 委 員  寺 田 委 員  西 原 委 員 藤 原 委 員  眞 柄 委 員  松 尾 委 員  安 田 委 員 山 崎 委 員  和 田 委 員 〔事務局〕  (8月2日、3日)  小野生活衛生局長、内田食品化学課長、平山生活化学安全対策室長、他課長補佐以下9名 〔オブザーバー〕  (8月2日、3日)  環境庁、通商産業省、農林水産省、文部省、科学技術庁 ******照会先****** 連絡先 厚生省 食品化学課(額田)  TEL:03−3501−1711(2487) ○内田食品化学課長 皆様、おはようございます。それでは、定刻になりましたので、ただいまから「第7 回 内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会」を開催いたします。 本日は御多忙のところお集まりいただいきまして誠にありがとうございます。本日は 本検討会の委員25名の先生方のうち22名の先生方に御出席いただくことになっておりま す。それでは、まず開催に当たりまして、生活衛生局長からごあいさつ申し上げます。 ○小野生活衛生局長 おはようございます。生活衛生局長の小野でございます。大変暑い日の中、また御多 忙の中、御出席をいただきましてありがとうございます。 内分泌かく乱化学物質につきましては、国際的にも非常に注目を浴びている問題でご ざいます。ただ、試験と言っては大変失礼でありますが、言わば科学的な解明の度合い 進捗度がまだ必ずしも十分でないというのにもかかわらず、人類あるいは私どもの子孫 に対する影響というのが、非常に大きな形で報道をされるきらいがございます。 確かに、科学的な解明というものを通じて、この問題がきちんと解決をされることが 極めて重要でありますが、ただ、先生方御存じのように現在その疑いがあるのではない かというふうに言われております物質の中には、私どものいわゆる日常生活に密着をし ておりまして、言わば一定の有用性を有しているという物質もあるわけでございます。 その反面として安全性に問題が投げ掛けられているという物質、ある意味で有用性と安 全性というものの判断が非常に難しい領域に属している物質ではないかと私は考えてい るわけでございます。 ただ、国民の皆さんの言わば危機感というのは非常に大きいわけでもございます。し たがいまして、科学的な事実をきちんと一つ一つ解明をしていくということが今の私ど もに課せられた課題だと認識をいたしております。 本課題に対しましては、平成10年度の補正予算といたしまして10億円の研究費が計上 されまして、先生方に多大の御苦労をお掛けいたしているところでございます。 今、申し上げましたように、さまざまな分野でいろいろ多面的なアプローチをしてい く必要があると考えているわけでございますので、今日から2日間大変暑い中で恐縮で ございますけれども、これまでに得られました成果を御披歴をいただきまして、今後の 歩むべき姿の方向性というものをお示しいただければ幸いかと考えております。非常に 御苦労をお掛けいたしますが、どうぞよろしくお願いをいたします。 ○伊東座長 ありがとうございました。それでは、座ったままで失礼ではございますが司会をさせ ていただきます。 それでは、事務局の方から、配付資料についての確認をお願いいたします。 ○池田補佐 それでは、事務局から配付資料の確認をさせていただきます。事前にお送りさせてい ただいております資料が、資料の1番「第7回 内分泌かく乱化学物質の健康影響に関 する検討会」の「平成10年度厚生科学研究成果発表プログラム」という5枚ほどのつづ りでございます。 それから、資料の2番ということで「平成10年度厚生科学研究成果発表要旨」という 資料でございまして、各研究成果発表についての要旨をまとめたモノでございます。 次に、本日お手元に2つ資料を配布させていただいておりましが、一つは8月2日付 の国立公衆衛生院の国包先生の資料でございますが、内分泌かく乱化学物質の水道水か らの暴露等に関する調査研究取りまとめということで、この資料でございますが、プロ グラムで申しますとIIの1番の厚生科学研究主任研究者、国包先生の御発表の別紙とい う形になってございます。 それから、もう一つが同じく8月2日付で国立医薬品食品衛生研究所の安藤部長のお 名前で、内分泌かく乱化学物質の空気からの暴露等に関する調査研究取りまとめと、こ ちらにつきましては同じくIIの2番「内分泌かく乱化学物質の水道水からの暴露等に関 する調査研究」の分担研究ということでの御発表の別添という形になっております。 以上4点でございますので、よろしくお願いいたします。 それでは、配付資料の御説明に続きまして、本日の成果発表につきまして若干事務局 から御説明をさせていただきます。 本日の成果発表はただ今御説明をいたしました資料1番のプログラムに従いまして御 発表いただくわけでございますけれども、今回の発表内容は大きく分けて2つございま す。一つは、昨年の7月と9月開催の検討会でも御説明をさせていただきました、平成 10年度の10億円の補正予算によります厚生科学研究で実施されました研究成果の発表。 それから、前年度の当初予算という形で実は厚生科学研究が確保されておりまして、 そちらによります研究成果も入ってございます。 資料1番で簡単に御説明すると、1枚目のI番、それから2枚目のII番、III番、それ から飛ばしていただきましてVI番、VII番、VIII番、こちらが平成10年度の補正予算によ ります研究ということで、昨年の7月及び9月の段階で研究内容等については御説明を してあるものでございます。 それから、もともとの当初予算で実施されておりました厚生科学研究でございますが 内分泌の関係がございますということで資料の1番で言いますと2枚目の下の方の資料 ナンバーIV番のグループ、それから、もう1枚めくっていただきましたV番のグループと それから、1番最後のIX番こちらのグループにつきましては今、申し上げました当初予 算での平成10年度の厚生科学研究ということでございます。 したがいまして、こちらの検討会では研究内容等の御説明はまだしておらなかったわ けですけれども、この内分泌かく乱化学物質の健康影響というテーマに関連するという ことで、今回の検討会の場を借りまして、一緒に御発表していただくという予定でござ います。 順番につきましては、今のプログラムに書かせていただきましたような時間 の配分で進めさせていただきますが、1つのテーマが15分間でございまして、そのうち 発表時間が10分間、それから質疑応答を5分間ということで進めさせていただくことと いたしております。  なお、VIIIの8、9、10、につきましてはIVの今井班に属しておりますが、時間調 整の都合上VIIIに組み込まさせて頂きました。 大変研究テーマの数も多く、発表につきましては短い時間でございますけれども、ど うか時間のオーバーがないように進めさせていただきたいと思いますので、質疑等につ きましても適宜速かにお願いしたいと思っております。 以上、よろしくお願いいたします。 ○内田食品化学課長 それでは、これから発表に入るわけでございますが、その前に会場のレイアウトを少 し変えたいと思いますので、今しばらくお待ち下さい。 (会場レイアウト変更) ○伊東座長 それでは、準備が終わりましたので、少し早うございますが、これから始めさせてい ただきたいと思います。 今までの内分泌かく乱化学物質問題につきまして、随分御議論いただいた上で中間報 告書として取りまとめが行われたことは御存じのとおりでございますが、その際、委員 の先生方からこれだけたくさんの研究費が出ており、国民の税金を随分使っているわけ でありますから、研究内容等についての評価というものをしっかりやるべきであるとい う御指摘が強うございました。従いまして、たくさんの研究費が出ている状況を踏まえ まして、各研究成果をきっちりと御発表いただき、そのデータ・成果等についての御質 問をいただくということで今年度最初の検討会を開催いたしました。また、御発表いた だく成果等については、このデータがどのような問題があるかまた、どのような現状か ということ等をこの検討会で御議論していただくということを考えておりますた。 このため、先生方の御準備も大変でございましたけれども、この資料の取りまとめ等 につきましては、厚生省の担当課の方々に随分御迷惑を掛けました。従いまして、この 暑い8月の始めの2日間をたっぷりと御議論いただくということでありまして、委員の 先生方から活発な御意見等を賜わりたいと思います。 それでは、最初の御発表からお願いします。 ○池田補佐 それでは、プログラムのI番の1番でございますが、「内分泌かく乱化学物質の食品、 食器等からの暴露に関する調査研究(研究総括)」ということで、前の国立医薬品食品 衛生研究所・副所長の斉藤行生先生でございます。よろしくお願いいたします。 ○斉藤研究員 ただいま、御紹介いただきました国立医薬品食品衛生研究所にこの3月までおりまし た斉藤でございます。 本日は内分泌かく乱物質の食品、食器からの暴露に関する調査研究班の総括者としま して、後から御説明いただきます各分担研究者のお話の内容と重複しないように総括さ せていただきたいと思います。 (OHP) これは、研究班の構成でございます。分担研究者5名、研究協力者30名、参加機関が 17機関でございます。 (OHP) 『失われし未来』の著者の1人でありますコルボーン博士も参加しておられます、世 界自然保護基金が内分泌かく乱作用が疑われている化学物質として、約40種類ばかり挙 げております。ここにお示しのように農薬が47種類です。これは数え方によりまして少 し違いますけれども、ほぼ47種類です。 次に、フタル酸のエステル類、それから、食器の原料、分解生成物、あるいは残留物 等のビスフェノールA、ノニルフェノール、スチレンダイマー、トリマー、それに有機 塩素系化合物、PCB、DDT、HCBドリン、アルドリン、ディルドリン等でござい ます。 更に有機スズ化合物、重金属等が続いております。 このうち農薬は47種類で70%に相当します。御存じのように農薬は毒性や、代謝、食 品、中の残留あるいは摂取量につきまして、既に多くのデータがございます。それに毎 日同じ農薬を継続的に取っているということは経験上あり得ませんので、本研究におき ましては可塑剤とビスフェノールA、ノニルフェノール、スチレンダイマー、トリマー それから有機塩素系化合物をとりあげました。有機塩素系化合物は微量ではありますけ れども、環境中に存在する難分解性の物質であります。 特に有機スズ化合物、トリブチルスズはメーカーの自主規制によってほとんど新たな 流入、自然への流入はないにもかかわらず魚介類などには検出されるということで、今 回も、有機塩素系化合物と一緒に分析いたしております。 そのほかに肥育ホルモン、エストラジオールやプロゲステロン、テストステロン、こ れらの物質は成長促進剤、あるいは飼料効率の向上のために使われておりますので、果 たして、我々はどのぐらい摂取しているのかを調査研究をいたしました。 それから、エストロジェンであるダイゼイン、ゲニスティン等9種類の化合物、これ は大豆の中にかなり含まれておりまして、日本人は古来から大豆あるいは大豆食品の形 で摂取いたしております。これらのイソフラボン類はエストロジェン様作用がありまし て、よい面と悪い面、よい面ではがんに効くとか、骨粗鬆症の予防になるということも あります。一方では内分泌かく乱性もあるというような両面の作用を示す物質でありま す。 まず、可塑剤でありますけれども、これは我々の日常生活のあらゆる場面に出現して まいります。食器の中にも含まれていますし、大気の中、実験室の実験機具、溶媒、蒸 留水などにも含まれております。したがいまして、フタル酸エステルの分析には非常に 注意が必要であります。分析には工夫が必要であります。 それから、フタル酸エステ類が体内に入る経路としましては、乳児、幼児の場合には おもちゃや歯がためからの移行があり、それについて調査研究いたしました、それから 食器、容器、包装等から食品への移行、汚染実態、それに摂取量等ついて調査研究をい たしました。 ビスフェノールAはエポキシ樹脂やポリカーボネート製の食器の原料でありまして、 当然残留が考えられます。したがいまして、材質試験が必要であります。また食品への 移行を調べるために溶質試験も行いました。さらに実態調査及び摂取量推計等を行って おります。 ノニルフェノールが、界面活性剤として添加剤としても使われておりますが、スチ ロール樹脂だとか、ポリプロピレン、ポリスチレン、食器等に入っているかどうかが問 題ですが、発見の端緒はお医者さんや研究者が使うチューブです。チューブの中からノ ニルフェノールが出てきたということが発端になりまして、ほかの食器はどうかという ことで本研究班で実態の調査研究を行ったわけであります。 次いでスチレントリマー、ダイマー、アクリロニトリル・ブタジェン・スチレン共重 合体、アクリロニトリルのA、ブタジェンのB、スチレンのSを取ってABS樹脂とい っておりますけれども、ABS樹脂やAS樹脂の中に含まれております。 この材質の食器を使って食品を保存するときには食品にも移行する。したがいまして 材質試験等と溶出試験を行いました。 有機塩素系化合物、PCB、DDT、HCB、ドリン剤等につきましては、汚染の実 態はかなり調べられておりますし、また摂取量の調査も行われておりますが、有機スズ と同時に分析し更に継続調査研究する必要があるということで、有機スズと一緒に今回 も調査研究をいたしました。 有機スズの方は、北陸・東北・北海道、日本海域と、東京湾、瀬戸内海、若狭湾及び 淡水の琵琶湖等で捕獲した30種類にのぼる魚介類の中の有機塩素系化合物、あるいは有 機スズ混合物について分析いたしました。 重金属及びダイオキシンについては今回は分析いたしておりません。肥育ホルモンに 関しましては、EUを除く各国で長い間使われておりますので、汚染の実態といいます か、摂取量の実態はどのぐらいか文献学的な検索、と実態調査を行っております。 植物エストロジェンについては、先ほどお話しましたように古来我々はこの植物エス トロジェンを食品の一部として、成分として摂取しております。これが実際どのぐらい 我々の体の中に入っているかを調べてみました。 以上、簡単ではありますが、いろいろな見地からこれらの物質の調査研究を行ったわ けですが、問題点としましてはこれらの化合物が今、同時に我々の体内に入ってきてい るが、その影響はどうかということです。また、内分泌かく乱化学物質の吸収率はどの ぐらいなんだろうかということも、今後、研究しなければならないことだろうと思いま す。 我々は昔、ベンズピレンの吸収率について研究しました、その分析の結果、動物実験 ではありますけれども、同時に摂取する食品によって20%しか吸収されない場合もあり ますし、油と一緒に摂るとそれが70%に吸収率が増えるというような事実もございま す。いずれにしましても、100 %以下でありますが、同時に摂取する食品の影響等につ いても今後研究しなければならないだろうと思います。 以上が、各研究分担研究者から報告していただくということであります。以上でござ います。どうもありがとうございました。 ○池田補佐 それでは、斉藤先生からの食品、食器等に関する報告でございましたが、何かこれに 対して御質問等ございますでしょうか。 それでは、先生どうもありがとうございました。 続きまして、それぞれの分担研究ということで最初にI−2でございますが、「フタル 酸エステル等の暴露に関する調査研究」、おもちゃ、ポリ塩化ビニール食器等からの溶 出に関する研究とポスチレン食器等からのスチレンダイマー、トリマー等の溶出に関す る調査研究ということで、国立医薬品食品衛生研究所・食品添加物部長の山田先生の御 発表でございます。よろしくお願いします。 ○山田研究員 私はフタル酸エステルの話と、それから、スチレンダイマー、スチレントリマーの話 と2つお話しいたしますけれども、まずフタル酸エステルの話からになります。 (スライド) このようなメンバーが協力研究者として協力していただいております。 内分泌かく乱化学物質に対しましては、特に感受性が高い可能性があるということか ら、乳幼児がポリ塩化ビニル製のおもちゃを口に入れた際に、どの程度のフタル酸エス テルが口に入るかということについて実験をいたしました。 それで、まずその際に昨年の9月にオランダのグループが研究発表をいたしまして、 どの程度乳幼児が物を口に入れるかということを観察しているんですけれども、私たち も日本の乳児でどの程度かということをまず観察いたしました。 (スライド) これが、その口に入れるMOUTHINGの時間の分布でありますけれども、方法と いたしましては3か月から12か月の子ども50名を対象といたいまして、母親によって15 分間ずつ10回家庭で行動を観察いたしまして、その間、口に物を入れるのがどの程度の 時間かということを記録いたしました。それから1日の内の起きている時間から1日で どれぐらいになるかというのを観察した結果であります。 観察した結果はこのようにいろいろになっておりますけれども、平均で大体180分ぐら いということになります。 ところが、子どもの年齢によって、月齢によってかなり違いがございまして、中央値 で比べますと3か月から5か月ではオランダの方がやや長くて、6か月から12か月です とオランダが50分に対して日本が174 分という結果が得られております。 (スライド) どんな物を口に入れるかというのがこれでありますけれども、この黒いような部分が プラスチックのおもちゃを口に入れている時間でありまして、月齢によってかなり違う ということがおわかりいただけるかと思います。 先ほど申しました、3か月から5か月児でオランダの方が長い理由といたしましては 恐らくオランダの方がおしゃぶりというのを使用する家庭が多いからだろうと、それか ら、この時期には子どもが余り動かないで手の届く範囲の物だけを口に入れるというた めだろう思われます。 それから、6か月から12か月児で日本の方がずっと長いというのは、ベビーサークル などで子どもの行動を制限する家庭というのが少ないからだろうと思います。これはま だ例数が50名と少ない人数でしたので、最も口に物を入れている時間が長い6か月から 12か月を対象といたしまして、今後更に続ける予定であります。 (スライド) 次に、子どもがポリ塩化ビニル製のおもちゃを口に入れた際にどの程度フタル酸エス テル類が唾液中に溶け出してくるだろうかということが問題になると思います。 これにつきましては、オランダの先の報告にも載っているんですけれども、なにぶん 子どもを使って実験するわけにはいきませんので、大人のボランティアに頼んで試験片 を口に入れるということで行っております。 私どもはこれを追試験したんですけれども、なにぶんまだ大人3人ほどで予備実験を したという段階ですので、これにつきましてはもっと人数を増やして実験する予定であ りまして、今回は結果は省略させていただきます。 (スライド) 大人にいろいろ口に入れてもらってどの程度溶出するかを調べると申しましても、そ ういたしますと1つ試験片について例えば10人の人にやってもらうとしましても、試験 の片の種類が玩具の種類や入っているものの種類がいろいろあるため大変でありますの で、それをなんとか試験管の中で実験できないかということで、試験管の中で溶出する ということで実際に口に入れたのと同じ程度の溶出をするにはどうしたらいいだろうか ということを考えましたが、そのためにまず分析したのはここにある12種類のフタル酸 エステル類です。これはフタル酸エステルではありませんけれども、最近よくポリ塩化 ビニルの可塑剤として使われるようになってきております。そういうものを分析いたし まして、52種類の玩具について分析いたしましたところ一番多く入っていたのはジイソ ノニルフタレイトで、これは52種類中36種類から出てきたと、続いてジ- 2- エチルヘ キシル、それからこのようなものも入っておりました。 このおしゃぶりとガラガラは現在市販されているものではなくて、過去に販売された ものなんですけれども、この一番たくさん入っているジイソノニルフタレイトというの は、入っている量も大変多くて一番多いものでは58%、つまりポリ塩化ビニル製品の6 割近くがジイソノニルフタレイトとそういうようなものであります。 (スライド) これを一定の大きさに切りまして、それを試験管に入れていろいろな振とうの仕方を するということであります。 (スライド) これが8の字型に平面で振とうする、これが往復に平面で振とうする、これが縦にに 振とうする、それとかあと超音波をかけるとかいろいろやって見まして、振とう数を変 えてみましたところ、いろいろやってみた結果、結局わかったことは試験片が試験管の 中でよく動き回るようだと溶出量も多いという結果であります。 この上下振とうを300 回しますと一番よく試験片が動いて溶出量も多く出るというだ けではなく、ばらつきが少ない安定した結果が得られますので、今後その上下振とう300 回というので何分ぐらいの時間を取ったらば、ちょうど人が口に入れたのと同じ程度溶 出してくるかというのを、いろいろなおもちゃの試験片が入っているもので実験しよう と思っております。 (スライド) 次はおもちゃではなくて食器の場合でありますけれども、これは食器とかその他食品 に触れるものをサンプルといたしまして、全部で460 余りの品を関東と近畿で買ってき て調べた結果であります。 それで、フタル酸エステルの内で検出されたものはここに書きました6種類でありま す。含量としては0.03%〜45.5%程度でいろいろでありましたけれども、これらのもの からのフタル酸エステルが実際に溶出してくるというのは余り量としては多くありませ んでした。 それで、フタル酸エステルの話をこれで終わりにいたしまして、次にスチ レンダイマー、トリマーの話に移ります。 (スライド) この2人の方に研究協力者としてやっていただきました。 スチレンダイマー、トリマーに関しましては、昨年この実験を始めました当時は、余 りデータが数多くありませんでしたので、食品に触れるポリスチレンとかポリスチレン を含む樹脂、すなわちアクリロニトリル・スチレン共重合樹脂とか、アクリロニトリ ル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂などにつきまして、どの程度のスチレンダイマー トリマーが入っているかということと、それらが食品の擬似溶媒といわれる食品に溶け 出してくるか、それから食品中にどれだけ溶け出してくるかということを実験いたしま した。 その結果でありますけれども、ポリスチレンの製品の65検体を調べました中で、材質 の中には430 〜28,300ppb と非常に幅の広い含量でありました。そしてポリスチレンの 中にもビーズ成形品とか、ビーズ発泡成型品とかいろいろ製法によって違うんですけれ ども、押し出しシート法でつくりましたものですと、油の入った食品は大体その含量に 比例して溶け出してくる。 それから、量はかなり入っていても油でない。 ○伊東座長 先生発表時間は守ってください。 ○山田研究員 では、この辺で終わります。結果につきましては、余り内分泌かく乱作用がないとい うようなことで、この実験に対してはこれで終わりにしようと思っております。 以上 です。 ○池田補佐 ありがとうございました。では少し時間をオーバーしておりますが、先生方何か御質 問等ございますでしょうか。 それでは、どうもありがとうございました。 続きまして、豊田先生の御発表ですが、・・・・。 ○外海研究員 フタル酸エステルの部分だけ先に御説明させていただきます。 ○池田補佐 それでは、I−3番でございますが「フタル酸エステル等の暴露に関する調査研究」で ございます。 国立医薬品食品衛生研究所の豊田先生及び外海先生でございますが、外海先生に先に 御報告をお願いします。 ○外海研究員 私どもは食品中に汚染されておりますフタル酸エステル類の分析法の作成とその実態 調査を行いました。 対象としました化合物は、ここに挙げました11種類のフタル酸エステル類と1種類の アジピン酸エステルでございます。 (OHP) そして次に分析法を検討いたしました。ここに簡略化して書きましたけれども、でき るだけシンプルにしようということで試料を採りましてアセトン抽出、それから再抽出 脱脂、精製、濃縮してGC/MSで高感度に分析するという方法を設定いたしました。 この分析法作成上で一番問題になりますのは、実験操作中に試薬ブランクあるいは環 境中の汚染物質が、最終的な試験容液に入ってくるのをいかに抑えるかというところが 非常に苦労した点でございます。 (OHP) まず、1つ目の検討事項としまして、操作ブランクをいかにして低減するかという方 法をいろいろ試行錯誤して検討した結果が、ここに書いたような方法でございます。 まず、ガラス器具等は2時間200 ℃で加熱したり、あるいは使用前に有機溶媒で洗浄 したり、それから、塩化ナトリウム、フロリジル等も加熱してあらかじめ汚染を除いて おきます。それから、有機溶媒はフタル酸エステル試験用を採用いたします。硫酸ナト リウム及び水もそれらのものを使用いたしました。ろ紙は使用前に溶媒で洗浄すること を注意しております。 それから、ロータリー・エバポレーターで、濃縮する際にも空気中のフタル酸エステ ル類が一部入ってくるということが確認されおります。 それから、検出量及び検出限界の計算法でありますが、ここに書きましたように測定 日毎に操作ブランクを作成して、試料中のフタル酸エステル類検出量から操作ブランク 値の平均値を差し引いて真の検出量を算出するということで、毎回ブランクを採ってお ります。それから、操作ブランク値の変動係数の3倍を検出限界といたしました。 (OHP) 次に高感度分析としまして、GC/MSによる一斉分析を行っております。モニター イオンと検出限界は、ここに示した通りで単位は試料中の濃度としてppbでございます。 非常に高感度まで測定することができました。 (OHP) それから、いろんな食品につきまして、その汚染実態を測定した結果でございます。 横軸にサンプルの名前と括弧の中は試行数であります。縦軸の方が11種類のフタル酸エ ステル類及び1種類のアルピン酸でございます。一般的にたくさん検出されましたのは ジ- n-ブチルフタレイトとジ-2- エチルヘキシルフタレイトがほどんどのものからま んべんなく検出されております。 それから、一番奥の方ですけれども、ジ- n- オクチルフタレイトというものがコン ビニ弁当から何検体か出てまいりました。このコンビニの弁当といいますのは、ラップ されておりますので、恐らくそのラップフィルムの可塑剤が検出されたものと思いま す。 それから、ジ-2- エチルヘキシルフタレイトの中にもほうれん草とか弁当に突発的に 高い値が得られたものもございます。 それから、本年度の成果といたしましては、高感度分析法を作成したということと、 ブランク値をいかに減少するかというような方法を作成いたしました。そして、合計131 の検体について汚染実態を調査し、更に今後はもう少し1日摂取量ということを念頭に 置いた場合には、病院給食など1週間分採取し日本人の摂取量というものを次に出して みたいと考えております。 以上でございます。 ○池田補佐 続いて、豊田先生お願いいたします。 ○豊田研究員 引続きまして、3題内容がございまして、フェノール化合物、トリブチルスズ、それ から、有機塩素系農薬についてお話をしたいと思います。 (OHP) 最初に食品中のアルキルフェノール化合物、2, 4- ジクロロフェノールの含量に関 する実態調査でございますけれども、ここにございますように、1番最後の11番目、12 番目と書いてございます。良く環境中にあるといわれております、ノニルフェノール化 合物を含めまして分析をいたしました。分析方法はここに書いてございますように、抽 出し、精製して、GC/MSで測るという方法でございます。 ノニルフェノールの食品中の分析結果でございますけれども、ここに網掛けしてござ いますのが、特に意味はないんですけれども、ほかの中でも高いものをただ区分けした ものでございまして、一応食品、普通の野菜類、肉類、魚、バター、チーズ、それから その他の缶詰食品等のものについて測定しておりますけれども。ここからわかりますよ うに肉製品、それから魚で若干高い数値が見られているということでございます。 (OHP) 続きまして、2, 4- ジクロロフェノールの分析結果でございますけれども、同じよ うな食品、同一食品について分析した結果でございますけれども、これも同じように特 に乳製品で若干高い数値というものが見られいてるということでございます。 (OHP) 引き続きまして、魚介類中のトリブチルスズ等の汚染に関する調査研究ということで ございますけれども、これは主に目的といたしましては、特に従来から調べられており ますトリブチルスズ関係につきまして、左の方に書いてございますように汚染が少ない と考えられるような日本海側、それから、汚染が高いのではないかと考えられる東京湾 瀬戸内海、若狭湾、淡水としては琵琶湖、こういったところに生息する食品となる魚に ついて調べてみようということでございます。 (OHP) これが、魚介類中の有機スズ化合物などの結果でございまして、上の方にTBT、そ れから、DBT、TBT、とございますけれども、ジフェニールスズ、一番最後のジフ ェニールスズは検出されておりませんけれども、。TBTに関しましてはごらんのよう に平均値を比較いたしますと海産魚の方が高くなって、淡水魚の方が低くなっていると いうこと、それから、そのほか濃度の高いものでは、タチウオ、ハマチ、スズキ、セイ ゴ、こういったものが高くなっています。それから、DBTではヒラメ等が高くなって いる。 この表には示しておりませんでけれども、要旨の方には書いてございますけれども、 今、最初に申しましたような東京湾とか瀬戸内海の魚では有機スズの濃度が非常に高い と、従来知られているように高くなっているという結論が得られております。 (OHP) 最後に、食品中の有機塩素系農薬に関するものでございますけれども、これもかく乱 作用があるとされております、特にDDTあたりを対象に30種類ぐらいの乳製品、輸入 食品、陰膳食品としての病院給食のもの、それから妊婦用の給食、こういったものにつ いて分析をしてみました。 (OHP) 結果でございますけれども、これは個別食品から検出されたもので網掛けはやはりち ょっと高いものということでございますけれども、従来知られておりますように、DD T、DDE、こういったものはやはり環境中に存在するということで、生物濃縮により バター中や、チーズ中に含まれてくる。そのほか輸入のウナギで、そういったものから も検出されているということでございます。 (OHP) 最後に陰膳による有機塩素系農薬、特にDDT、DDE、こういったもののところを 見ていただきたいと思いますけれども、このような従来知られておりますように、日本 では禁止されておりますけれども、諸外国での使用状況によってやはり食品の中で、勿 論、ADIより当然低いんですけれども、微量検出されているということになっている わけでございます。 なお、1から5の方は一般の職員用の陰膳試料の1日分でございまして、後ろの方が 妊婦用のございますけれども、特に有意な差があるという結果は得られませんでした。 以上でございます。 ○池田補佐 ありがとうございました。それでは、委員の先生方ただいまの御発表につきまして何 か御質問ございますでしょうか。 井上先生。 ○井上委員 蛇足のような質問ですけれども、先生の抄録等に、濃度が高いという表現がときどき 出てきますけれども、これはあくまでも相対的に高いということですか。 ○豊田研究員 そうですね。 ○井上委員 その高いということが、特に何を意味しているということはわからないという理解で よろしゅうございますか。 ○豊田研究員 そうです。今、御指摘がございましたように、確かに、今日は時間がなかったので十 分御説明できなかったんですけれども、従来の文献値とほぼ同じレベルか、特にTBT とか、TPTについては従来よりもむしろ減っているんです。環境庁の方でやってござ いますけれども、むしろ減っているということでございます。 また毒性についてはいろいろ検討をされているということでございます。 ○井上委員 どうもありがとうございました。 ○池田補佐 そのほか何か御質問ございますでしょうか。 ○寺尾委員 細かいことで申し訳ないのですけれども、抄録の20ページのトータルDDTのところ に、ハマチというのが2か所に出てくるんですけれども、これは何か間違いではないか というふうに思うんですけれども、そこにありますか。 ○豊田研究員 私持ってないんですけれども。 ○寺尾委員 そうですか。原稿はお持ちですか、20ページの左、一番下からすぐ上のところ2か所 にハマチと出ているんだけれども、これでいいのか、あるいはどっちかハマチがダブっ ちゃって間違いなのか、どちらでもいいですけれども、とにかく正確に書いておいた方 が。 ○豊田研究員 そうですね。わかりました。 ○寺尾委員 これは外に多分オープンになると思いますので、混乱するとまずいので。 ○豊田研究員 はい、訂正させていただきます。 ○池田補佐 済みません、資料の整備のときに事務局で間違えたのかもしれませんので、そこは確 認させていただきます。 ○寺尾委員 いずれにしましても、ちゃんとしたものを出さないと後で混乱するとまずいので。 ○寺尾委員 今の全体の組織で主任研究者が最初にしゃべられて斉藤先生は重複を避けるからとお っしゃったけれども、できれば主任研究者として全体として何をやって、全体の何かと いうのをお話ししてくれないと、分担研究者としゃべられたり、研究協力者としゃべら れたりしてよくわからない。研究協力者というのは具体的にはお金がいっているわけで すか、そこへ。 ○豊田研究員 いっております。 ○寺田委員 では、そこで独立に会議をなさっているわけですか。 ○豊田研究員 独立ではありません。一緒にやっております。 ○寺田委員 一緒にやっているということは、例えば、何かを測ってくれと言って、そのはかるの に掛かったお金などはそちらで払われるんですか、あるいはこちらで。 ○豊田研究員 私の場合には一応斉藤先生の中の分担研究者という立場でございますけれども、その 分担研究者の中が共同研究者でかなりいろいろな衛研とか、それから今の大阪支所の外 海先生とか、それぞれのテーマについてメインの方々を中心に組織してやっていただく という、その方がずっと仕事の整理がしやすいということでございますので、そういう ふうにやっております。 ○寺田委員 そうしますと、例えばこの場合主任研究者にいられて、そこに主任研究者が分担研究 者を決められて、その分担研究者が研究協力者を決められる。 ○豊田研究員 そうです。 ○寺田委員 それで主任研究者を決めるのは企画委員会かどこかで決められるわけですね。 ○豊田研究員 多分そうだと思います。 ○池田補佐 ほかに何かございますでしょうか。ないようでしたら、どうもありがとうございまし た。 それでは、続きましてI−4番のテーマでございますが「その他の内分泌かく乱化学物 質の暴露に関する調査研究」ということで、プログラムの方では「イソフラボンの分析 法の設定」、資料の方では「食品中の植物エストロゲンに関する調査研究」ということ で、国立医薬品食品衛生研究所・大阪支社の外海先生よろしくお願いします。 ○外海研究員 大豆中に含まれますイソフラボン類に内分泌かく乱作用があるということが報告され ましたので、大豆及びその製品から日本人が摂取しておりますイソフラボンの1日摂取 量を計算するための実験を行いました。 対象としました化合物はここに示しましたように、9種類の化合物であります。大豆 の主成分であります、ダイゼイン、ゲニスタイン、グリシテイン、それから、それの配 糖体3種類。そのほかにホルモノネチン、バイオカニンA、エコールというものをター ゲットとしましてHPLCで測定したしました。 それから、そのほかにグルコシドの一部がサクシニルとか、マロニールとかに一部変 更している化合物もございます。しかし、これらにつきましては標品が入手できません でしましたので、9種以外につきましては全体を加水分解してアグリコンの総量として 出す方法も試みましたので、そちらの方に入ってくるということで検討いたしました。 試験溶液の調製法ですけれども、チャート1は固体食品であります。メタノールで抽 出した後Sep-pak C18でクリーンナップした後HPLCで測定します。 チャート2は液体食品でC18でクリーンナップした後HPLCで測します。 それから、チャート3は今、言いましたように、10規定の塩酸/エタノールでリフラッ クスし、加水分解してトータルなアグリコンを測ろうということで、これはC18でク リーンナップした後HPLCで測定します。ですから、そのままの状態と加水分解した 状態と両方測ることになります。 (OHP) これが標品のHPLCクロマトグラムでございます。1・2・3が配糖体で、4・ 5・6がフリーのアグリコンとなっております。 (OHP) グラジェントの溶出できれいに、良好に分離できました。 (OHP) これは大豆を加水分解しない状態で大豆成分を測ったクロマトグラムでございます。 1・2・3がグルコシド、4・5・6がフリーの状態のものでして、量的な関係から言 いますとグルコシドの方がずっと多いというのがわかります。 そして、対象としましたホルモノネチンとか、エコールとか、バイオカニンAという ものは、いずれの大豆製品からも検出されませんでした。 (OHP) これは同じ大豆を加水分解した後測定したHPLCチャートでございます。いずれも フリーの状態で、ダイゼイン、グリシテイン、ゲニスタイン、この3種類が検出されて おりまして、当然のことながらグルコシドは検出されておりません。 (OHP) これは添加回収率を示しております。固体食品の場合ですけれども、大豆と豆腐と味 噌に標品を添加して、本法により回収率を測定いたしました。 ジェニュインと書きましたのは加水分解しない場合、それから右側の方が加水分解し た場合、両方について添加回収率を測定しております。 いずれにつきましてもほぼ良好な回収率を得たものと考えております。 (OHP) 次に、液体の食品、豆乳と醤油ですけれども、これにつきましても同様に、そのまま の状態と加水分解した場合と両方について回収率を測定しておりますが、この場合につ きましても、本法でほぼ良好な添加回収率を得たものと考えております。 (OHP) これは測定結果でございます。サンプルとしましては大豆、煮豆、炒り豆、黄粉、豆 腐、凍り豆腐、おから、あげ、湯葉、納豆、味噌、醤油、豆乳というものをやりまし た。そしてアグリコン+グルコシドと書いておりますけれども、ダイゼインがアグリコ ンでダイジンがグルコシド、それぞれ別々に数値を算出してあります。 そうしますと、この中で一番多いのは黄粉でして、これにつきましては非常に多量の イソフラボン類が検出されております。その次が炒り豆、それから凍り豆腐もかなり出 ております。 一番上の大豆とか、一番下の豆乳につきましてはかなり低い値となっております。 (OHP) これは、加水分解してアグリコンとしてのトータルを出した場合です。ですから、こ の場合ですと、先ほどのグルコシド以外のものもここには入ってまいります。 この結果からも同様に、黄粉で非常に高い値が出ております。単位はμg/gでございま す。それから、大豆とか炒り豆、黄粉も、水分の関係もあるかと思いますけれども、そ れらが非常に高い値で、醤油は非常に低い値という結果となりました。 (OHP) それから先ほどの結果をパーセントで表示して比較してみました。先ほどの加水分解 して得たアグリコンの総量を100 %としまして、それに対してそれぞれが何%ぐらいあ るかという存在比をパーセントでここに示してございます。 それと同時に、右側にアグリコンと書いてありますのは、この表の中でダイゼインと グリシテインとゲニスタインを足した値です。そうしますと、アグリコンのパーセン テージが高いものは凍り豆腐、その次に高いのが味噌ということになっておりまして、 これはフリーの状態が多いということで食品の加工や、加工工程の多い物につきまして はアグリコンの割合が高いという結果が出ております。 それに比べまして、大豆そのものではアグリコンが非常に少いということで、それと もう1つ重要なことは大豆の横軸を全部足しても、100 にはなっておりません。という ことはグルコシド以外の配糖体の形もかなり含まれているということが予測されると思 います。 豆乳につきましても横軸を足した値が100 にはなっておりませんので、グルコシド以 外の結合型の形がまだほかにあるということが考えられます。 (OHP) これは加水分解した結果をパーセントで表したもので、これは横軸の3つの合計がほ ぼ100 になっております。これはあらゆる形のものを全部加水分解しておりますので、 真のアグリコンとしての値が出ております。 これにつきましては、黄粉ですとダイゼインが58.3%、それから、ゲニスタインが 38.4%、そういうような形になっていましてグリシテインは比較的低い値となっており ます。 (OHP) それから、イソフラボンの1日摂取量を以上の実験結果を基にして算出してみまし た。その根拠は国民栄養調査に基づきまして、1日の食事摂取量は1417.5g ですけれど も、そのうちで大豆及び大豆製品は70.4g 摂取することになっております。 それぞれにつきまして、計算値を出しまして、それの総トータルは27.75mg/day とい うことになりました。この値がどうかということや毒性なんかは別の分野で御議論され ると思いますけれども、大豆製品は古来から食べておりますので、その辺問題はないの ではないか、ただ乳幼児に豆乳とか、高濃度のものを食べた場合には、十分配慮しなけ ればいけないのではないかというふうに考えております。 以上です。 ○池田補佐 ありがとうございました。ただいまの発表につきまして何か御質問ございますでしょ うか。阿部先生お願いします。 ○阿部委員 いろいろお測りになったようなんですけれども、人間でも動物でも生体で産生すエス トロジェンというのはあるわけです。それと比較してこの値というのはどのような意味 があるのでしょうか。 ○外海研究員 生体の方は私はほとんど調べておりませんが、大豆及び大豆製品について出された データはほかにも多少あるんですけれども、私どもはかなり広範囲の食品について調べ たということが特徴かと思います。 私ちょっと御質問の内容についてよく……。 ○阿部委員 その活性はホルモン活性ですね、生体は体の中でエストロジェンをつくっているわけ ですから。その活性と比較してどうなのかということを知りたかったのでお聞きしたん ですけれども。 ○外海研究員 摂取量の調査しか私ども考えていなかったものですから。ちょっとよくわかりませ ん。お答えできないですけれども。 ○池田補佐 それでは、続きまして、山崎先生。 ○山崎委員 大変いろんな食品について細かく調べているので興味深い結果を拝見しましたけれど も、イソフラボンの1日摂取量のところで文献集のところにある戸田さんと木村さんの データがあって、そのちょうど間くらいに入る、これはイソフラボンの計量法とか算出 の方法によって違ったんだろうというふうにお書きになっていますけれども、これはや はり今後も測定法とか算出の方法でもって、1日摂取量というのは動いてしまうものな んですか、前の結果に比べて今回が、この結果が信頼できるというふうな受け止め方は できないんですか。 ○外海研究員 ばらつきがかなりあると思うんです。その対象とします、例えば、大豆にもバラエテ ィーがありますし、加工食品となりますともっとバラエティーがありますので、たまた まそれを選んだときにはこの値になったけれども、ほかのを選んだらどうかというふう なことで、それを正確にするためにはもっと試行数を増やすとか、そういう実験の繰返 し精度を増やしていかないといけないのではないかと思います。 ○山崎研究員 そうするとここに出ている1日摂取量というのはまだ。 ○外海研究員 大体の目安を示したということで、それが最終的にはっきりこれだという断言はでき ないんですけれども、ほかの方との数値を比較しますと大体似たようなところにいって いますので、その辺が妥当ではないかなと思っています。 ○池田補佐 続きまして、鈴木先生お願いします。 ○鈴木(継)委員 今の御質問に関連する部分があるんですが、物によってサンプルの数が1つとか2つ とかいうのが幾つもありますけれども、それは、これから各サンプルをどんどん増やし ていこうとお考えですか。 ○外海研究員 はい、増やしてやろうと思っております。 ○鈴木(継)委員 その場合に、日本全体として代表的な値を求めようとするのか、そうではなくてある 地域に関して代表的な値を求めようとするのかによってサンプリングの仕方の標本数も 必要なものが変わってくると思うんですけれども、その辺の計画はどんなふうに立てて らっしゃいますか。 ○外海研究員 今のところ大阪近辺の小売商から集めてやっておりますけれども。 ○鈴木(継)委員 それはうまくサンプルを取るのはものすごく難しいと思うんです。本当に代表性があ るものは。 ○外海研究員 大豆はほとんど輸入されておりますので、別に大阪で生産されたものというわけでは ないと思うんですけれども。 ○鈴木(継)委員 それからもう1つの質問は、大豆以外の食品にはこれは広めていかれるわけですか、 例えば、植物エストロゲンの問題で、ビールの中に結構入ってますよなんていう話もあ るわけです。いろんな物にいろんな物が入っている可能性からいえば大豆だけに我々目 がいっていますけれども、摂取量の大きい食品としてはまだあると思うんですけれども その辺はどうお考えでしょうか。 ○外海研究員 その辺は情報が得られましたら是非やってみたいと思っております。どうもありがと うございます。ただ、イソフラボン含量は豆類に比してかなり低いと考えられます。 ○池田補佐 それから。 ○津金委員 前の質問と非常に似ていますけれども、実際に11検体とか1検体とかいろいろ検体数 が違いますけれども、どうしてそういう検体数を決められたのかということと、実際、 複数の検体で測定された場合、得られたデータは、先ほど結構ばらつきがあるとおっし ゃっていましたね、そういうばらつきがどういうものであったのか、そうすると、また そのばらつきを考慮しながら国民の1日の摂取量というものも考えていかなければ。こ ういう1点の、27.75mgという点推定を出されていますけれども、それはやはりある程度 幅を持つと思いますので、幅を考えながら示していかないといけないのではないかなと 思います。 ○外海研究員 今回は、ただ、実験の期間が非常に短かったものですから、やっとこれだけできたと いうことに気を取られまして、是非もっとたくさんやって出したいと考えておりますけ れども。 ○池田補佐 続いて井上先生。 ○井上委員 先ほどの阿部先生の御質問に関連したコメントを申し上げます。私の認識では、この 厚生科学研究班のリスクアセスメントはまた別途行われるものだという認識でおりまし て、この測定値はこの測定で、それから生体影響は生体影響というふうな形の構成にな っていると存じます。したがいまして、これから申し上げますことは蛇足でございます が、先ほどの御質問をゲニスタインで今、青山先生と大ざっぱら計算をしたんですけれ ども、大体アルファー受容体で観察されるところの反応を、レポータージーンアッセイ の結果だけで見た場合には、大体10の5乗から、10の6乗ぐらいの差が17βエストラダ イオールとゲニスタインの間にあります。それを大前提にしまして、その種の生態では ベータ受容体もありますし、アルファー受容体もありますし、たまたまエストラダイ オールにつきましてはアルファー受容体が主に反応しておりますけれども、それで計算 しますと大体10分の1から、100 分の1ぐらいの摂取量というか濃度差になります。た だし、これはプレムエストラールの状態に限った場合でございます。それが生態で上が った場合には更に数百倍ぐらいの差になるという大ざっぱな計算でございます。 ○池田補佐 ありがとうございました。 済みません。時間がないものですから。 それでは時間ですので次のテーマにまいります。I−5でございますが「肥育ホルモン 等の畜水産食品中の残留に関する調査研究」ということで「牛肉中の肥育ホルモンに関 する調査研究」。東京都立衛生研究所、宮崎先生よろしくお願いします。 ○宮崎研究員 宮崎ですよろしくお願いします。 (スライド) 牛肉中の肥育ホルモンに関する調査研究についてお話をさせていただきたいと思いま す。 (スライド) 目的は国内産及び外国産の牛肉中の天然ホルモン濃度を測定するということです。こ れまでほとんど牛肉中の天然ホルモンについて測定されていない、データがないから測 るということです。その測った濃度を文献調査を基にして内分泌かく乱作用を含めた視 点から、安全性を評価するというのが研究の目的です。 (スライド) 肉牛の飼育にはホルモン剤が使用されております。合成型、天然型がありまして、ア メリカ、オーストラリアでは合成型、天然型が使用され、日本では天然型のエストラジ オールとプロゲステロンの使用が許可(使用実態はない)されています。合成型につき ましては既に調査が進んでおりますが、天然型については先ほど言いましたように、殆 ど調査されていないのが現状です。 (スライド) まず、牛肉中のホルモンの分析法の開発を行いました。非常に低いレベルで天然ホル モンをこのような方法にて測定いたしました。 最終的にはラジオ・イムノアッセイで 測定いたしました。 (スライド) 添加回収率ですけれども、おおよそ65%程度以上の回収率が得られました。エストラ ジオールの検出限界は肉中1ppt 、プロゲステロンは0.04 ppb 、テストステロンは 10pptのレベルです。 (スライド) 実際に用いました試料の内訳ですが、国内産の試料は、産地として東京、静岡、北海 道、ホルスタイン種か和牛種という品種、雌雄に分けました。この※印のついている雌 の検体につきましては、卵巣を添付していただきまして、その肉の牛がどういう性周期 にあるかということを調査することにいたしました。当然ホルモン濃度というのは雌雄 性周期に非常に関係があるということが解っております。 それから、国内産は合計60検体ですけれども、外国産につきましては40検体で、オー ストラリア産20検体とアメリカ産20検体です。これらの輸入牛肉につきましては情報は ほとんど得られておりません。 (スライド) 国産牛肉の測定データをいろいろな要因から解析し、相関を求めました。これは雌、 雄別のデータです。雌では経産、未経産か、雄では去勢、未去勢か、更に品種別に分け てエストラジオールとプロゲステロンとテストステロンの濃度を算出しました。エスト ラジオールにつきましては雌の方が全然高いんですけれども、中には雄でも高い値があ ること、プロゲステロンにつきましては雌が圧倒的に雄に比べて高く、テストステロン は非常に高い雄もあり、雌で高い値が得られたという結果です。 これはこれだけの要因ではなくて性周期とか、他の生理的要因等が絡んでいることが 考えられました。 (スライド) これは雌の牛肉中のホルモン濃度で、そのときの性周期を示しております。黄体期、 卵胞期、卵胞期につきましては排卵直後と卵胞期とに分けてみました。 血清中では、卵胞期にエストラジオール濃度が高くなって、黄体期でプロゲステロン 濃度が高いということは既に公知の事実です。そして牛肉ですけれども、やはり同じよ うな傾向でエストラジオールは卵胞期に高い。ただ、排卵直後のところでは下がってい ます。プロゲステロンは黄体期に高く、約2倍程度です。またテストステロンにつきま しても黄体期で高い傾向が見られました。 このほかいろいろな要因、例えば、産地ですとか、部位ですとか、ホルスタイン、和 牛という品種、脂肪濃度など、いろいろな要因ごとにこの濃度の平均値及び各要因間の 相関を算出してみました。、プロゲステロンとテストステロンには正の相関がありまし た。牛肉中の脂肪濃度とプロゲステロンにも若干正の相関があるという結果ですが、そ れ以外につきましては明確ではありませんでした。 (スライド) これは外国産のオーストラリア産とアメリカ産のホルモン剤濃度を示しております。 極めてよく類似した平均濃度で検出されておりまして、エストラジオール-17 βは約3p pt 、プロゲステロンは0.5ppbです。テストステロンは9ppt(計算上算出された値:な お、検出限界以下の場合は検出限界値の1/2を導入して計算ちた)のレベルです。 先ほどの国内産のデータからしますと、プロゲステロンがかなり低いということは、 これらの検体の多くが雌ではなくて雄の肉に由来する可能性が高いという推定ができま す。 (スライド) これは国内産と外国産の牛肉中のホルモン濃度を示しております。外国産のエストラ ジオールの平均は3ppt 、国内産は1ppt 、そしてプロゲステロンにつきましては、国 産牛の平均値で3ppb 、それに比べて外国産が0.5 ppb 、テストステロンにつきまして は30と9ppt です。エストラジオールにつきましては外国産が、プロゲステロンとテス トステロンにつきましては国内産が高い。ただ、この理由としては、雌雄の差なのか、 国内では全くホルモン剤の使用実態はないわけで、外国産ではホルモン剤を使っている ということがありますので、そのためにエストラジオールが高いという可能性もないと は言えませんけれども、このレベルはやはり生理的な範囲内と考えられます。 (スライド) これは、いろいろな文献から得られている牛の筋肉中のホルモン濃度で、雌では妊娠 期にエストラジオールが非常に高く30pptぐらいになるわけです。雄の方は高くても5〜 6ppt レベルです。プロゲステロンにつきましては雌で高くて雄で低く、テストステロ ンにつきましてはかなりのばらつきがあります。括弧で示しました値は脂肪中の濃度で して、プロゲステロンとテストステロンにつきましては、脂肪組織の方が非常に高い、 脂肪に溶けやすいという性質があり、そのために脂肪濃度との相関が推測されます。 (スライド) これは今年の2月にローマで第52回のJECFA(FAO/WHO)の会議がありまして、その ときにホルモン剤についてのNOEL(最大無作用量)とADI(一日摂取量)が提案されて おります。 その数値はヒトの臨床用例から算出された値です。 (スライド) 今回、この値を用いて試算してみました。国民食品群栄養摂取量、肉としましては 82.3g牛肉としては24.6g ですけれども、今回肉類をすべて牛肉から取った考えて、日 本人の体重は50kg、今回の肉の平均値及び最高値の濃度を導入して、その摂取量の割合 がADIにどのぐらい占めるかということを計算してみましたところ、エストラジオー ルで最高値で0.04%、プロゲステロンで0.2 %、テストステロンで0.08%という値でか なり余裕があり、問題ないのではないかと考えております。 (スライド) まとめですが、国内産及び外国産牛肉中のホルモン濃度はいずれも生理的範囲内と推 定されました。今回のJECFAのADIからすると最大プロゲステロンで0.2 %相当 でした。しかし、今回の結果というのは国内産牛60検体、外国産40検体の測定結果であ るため、我が国で流通するすべてを代表しているとはいいがたいということです。 (スライド) これが今回協力していただきました研究者等です。 以上です。ありがとうございました。 ○池田補佐 ありがとうございました。それでは、ただいまの御発表に何か御質問等ございますで しょうか。阿部先生、お願いします。 ○阿部委員 見損ないかもしれないんですが、去勢した雄でテストステロンがかなり高い、異常に 高いのは何でかと、あれはどういうことなんでしょうか。 ○宮崎研究員 ですから、去勢すると女性化が起こります、ある意味では。そういう意味でちょっと 高かったのかなというふうには推測しているんですけれども。 ○阿部委員 去勢すれば完全に下がるはずですから。ゼロにはならないと思うんです。しかし、下 がることは間違いない、雄である限りですね。 ○宮崎研究員 あとは性周期の問題で、その肉はどのステージで屠殺されたのかという問題で。 ○阿部委員 雄ですから性周期がないわけです。 ○宮崎研究員 あともう一つはその肉の部位とか、いろんなものも関与している可能性もあるんです けれども。 ○鈴木(勝)委員 今の去勢の件なんですけれども、畜産の領域でやっている去勢というのは、非観血的 な去勢というのもままやられまして、その精索のところの、外部から圧迫できることが あるものですから、一部精巣が残ってしまうことがあるんです。そういうようなものに ついては、恐らく非常に高いテストステロンが出ても不思議ではないと思います。 ○宮崎研究員 どうもありがとうございました。 ○池田補佐 松尾先生どうぞ。 ○松尾委員 一つお伺いしたいんですけれども、今、測定されたのは、例えば後にグルクロン酸抱 合体とか硫酸抱合体とかがあると思うんですけれども、それらを一緒にしたものです が。 ○宮崎研究員 入ってはおりません。あくまでもフリーのものだけです。 ○松尾委員 純粋にフリーのものだけですか。 ○宮崎研究員 はい、そういうことです。 ○松尾委員 ほかのものは、例えばそういう形で入っているものは検出されていないということで すか。 ○宮崎研究員 入っていないということです。今回は筋肉中のみということです。 ○松尾委員 1つ前の講演でも、どういう形で入っていたのか、状態なのか質問しなかったのです が、、これらは吸収の際、挙動が随分違ってきますので、それを正確に表現するという のは、あとでリスクアセスメントで非常に役立つんではないかと思います。 ○宮崎研究員 はい、どうもありがとうございました。 ○池田補佐 続いて武谷先生お願いします。 ○武谷委員 今の質問に関連して、フリーというのはコンジュゲイトとか硫酸化されていないもの をフリーとおしゃっているのか、あるいはバインディングログリンとくっついてないも のをフリーと言っているのか。いわゆるトータルで測っているんですね。 ○宮崎研究員 今回は、そうではなくて抽出法からいってコンジュゲイトしたもの(抱合体)を測っ ていない。 ○武谷委員 コンジュゲイトではなくて、バインディングログリンにくっついているものは、これ に入っているのではないでしょうか、バウンドホウムも。 ○宮崎研究員 バウンドホーム(組織結合型)はその抽出条件に絡んでくると思うんです。 ○武谷委員 トータルのテストステロンとか、トータルのエストラジオールを測っておられるので はないかと思うんですけれども。コンジュゲイトではなくてですね。 ○宮崎研究員 はい、そういうことです。 ○武谷委員 そう解釈でよろしいわけですね。 ○宮崎研究員 コンジュゲイト(抱合体)は測っていません。 ○武谷委員 測ってないけれども、プロテインバウンドは測っていますね。 ○宮崎研究員 そうです。それはできると思います。 ○武谷委員 一般にフリーフォームといった場合にはプロテインに結合していないものを指すこと になりますが、また一般に経口は摂取した場合の吸収量というのは極めて少ないです ね。エストラジオールにしてもプロゲステロンにしてもテストステロンにしてもかなり 吸収率は低いのではないかと。 ○宮崎研究員 ですから、これに吸収率を掛けないと評価はできないと思います。 ○武谷委員 それで実際に入るエストラジオールはかエストロンなどににすぐに転換しますので、 エストラジオールの形で吸収されることは極めて少ないのではないかという気はいたし ます。 ○宮崎研究員 どうもありがとうございました。 ○池田補佐 ありがとうございました。それでは、そのほかなければ時間でございますので、発表 どうもありがとうございました。 それでは、順調に進んでまいりましたが今日の午前中の最後でございますが、I−6番 でございます。ビスフェノルーA等の調査研究の中のポリカーボネート食器、食品缶詰 等からのビスフェノルーAなどフェノール化合物の調査研究ということで、東京都立衛 生研究所の渡辺先生、お願いいたします。 ○渡辺研究員 本調査を担当いたしました東京都立衛生研究所の渡辺と申します。 調査の内容を御報告いたします。内分泌をかく乱する恐れのある物質としまして、プ ラスチックに関連する幾つかの化学物質が指摘されております。そこで私どもは今回ポ リカーボネート及びエポキシ樹脂の合成原料であります、ビスフェノールA並びにプラ スチックから溶出しますノニルフェノールについて、食品用のプラスチック製品からの 溶出量の実態を調査いたしましたので御報告いたします。 なお、調査はお手元の資料にございますように5つの機関で実施しております。 (スライド) このスライドは市販のポリカーボネート製品53試料につきまして、製品中のビスフェ ノールAの残存量と溶出量を示したものであります。なお、ここでは残存量の単位をppm 溶出量の単位をppb と置き換えます。 この図の中で残存量の多いもの溶出量の多いもの、これはすべて乳白色に着色された のものでした。53試料中乳白色に着色されたものは12種類ございまして、この溶出量の 平均は乳白色のものが約11ppb 、乳白色以外のものは0.3ppbでございました。この乳白 色のものには白色顔料として、酸化チタンが0.8 〜3.9 %添加されておりました。平成 9年度の厚生省の研究班の報告によりますと、ポリカーボネート中に金属酸化物が存在 しますと、樹脂の分解を起こす恐れがあるという報告がなされております。 したがいまして、今回のこれらの試料もこの酸化チタンが樹脂を分解して残存量およ び溶出量を増加させたものと推定されます。なお、この図にはありませんけれども、エ ポキシ樹脂で塗装された箸でやはり高い溶出濃度、高いといいますか22ppb という溶出 量が認められております。 (スライド) ポリカーボネートは耐熱性があるということで電子レンジ容器として使用されており ます。この中で持続的な溶出が認められております、乳幼児用のわん及びコップですけ れども、持続的な溶出が認められております。これに対しましてそれ以外のものはすべ て乳白色以外の色でして、溶出が認められておりません。 (スライド) 次に、ポリカーボネートは食品の色や油に対して極めて浸透しにくい樹脂であるとい うことで、給食器として使用されております。これは給食施設で6か月から多くて4年 半使用されていた、ポリカーボネート製給食器からの溶出量を測定したものでありま す。 溶出量は0.4 〜120ppb範囲で認められておりますけれども、その平均溶出量は約10ppb であります。とりわけはしに約40ppb という溶出量が認められます。なお、はしを除く 平均は4.2ppbでありました。この4.2ppbを基に児童の1回の給食時における摂取量を求 めますと、約0.15μg/kgになるかと推測されます。 (スライド) 次に、ポリカーボネートはほ乳びんとして汎用されております。そこで実際の一般家 庭で使用するような方法で実験系を立てましてそのときの溶出量を測定してみました。 実験は5分間煮沸消毒しまして、その後、一般の方法に従って使用します。これを360 回繰り返しまして、その間これらの回数毎に溶出量を測定しております。 水溶出液の場合95℃の水を入れまして、その後30分間放置したものでございますけれ ども、0.3 〜0.5ppbの範囲で持続的な溶出量が認められております。 0.5%クエン酸溶出液、これはジュースを想定した実験系ですけれども、全く溶出は認 められておりません。 次はノルマルヘプタン溶出液、これは脂肪を想定しまして、ノルマルへプタン溶出を 使った実験を行っておりますけれども、初期の段階にわずかに認めらるだけでその後溶 出は認められておりません。 (スライド) 最近一般家庭では煮沸消毒ではなくて、電子レンジを使って手軽な電子レンジによる 消毒ということが盛んに行われているようであります。そこで市販の電子レンジ用の消 毒バッグを用いましてどの程度出てくるかという実験をしたものであります。ほ乳びん 2種類を使って実験をしております。 実際にはバッグに2本のほ乳びんと水70ccを入れまして約3分間加熱するというよう な取扱い説明がなされておりました。 水を使った溶出液で4回目までに溶出が見えますけれども、その後は溶出は見えてお りません。したがいまして、先ほどの煮沸実験に比べますと早い段階で溶出が見えてい ない、ということが言えようかと思います。 なお、消毒の際の、消毒液と書いてありますけれども、水道水中の濃度が非常に高い ものがありますので、消毒後は速かに水を捨てるという注意が必要になろうかと思いま す。 (スライド) これは病院等の施設で、1か月から2〜3年使用していたほ乳びんからの溶出量であ ります。溶出量は0.3から多いもので2.5ppbでありました。それで、平均0.8ppbになりま す。先ほどの煮沸実験に比べますとやや高い溶出量になるわけですけれども、これは施 設では煮沸消毒ではなくてアルカリ洗浄、アルカリ系の洗浄剤を使って洗浄する、あと は使用期間が長いこと、スチーム殺菌などを行うということで、溶出量は高くなったも のと思われます。 (スライド) 食用缶の場合一般にこれまで内面塗装剤として、エポキシ樹脂塗装が行われておりま した。そこで缶詰食品等41種類につきまして、ビスフェノールAの溶出量を測定した表 であります。 缶詰食品17食品につきましては、すべての食品からこのような範囲でビスフェノール Aの溶出が認められまして、最も高いものはサバの味噌煮で480ppbという溶出が認めら れております。また、飲料缶、缶飲料につきましてはコーヒーで、これは内面はポリエ チレンテレフタレートで塗装されたものでしたけれども、平均18ppb という濃度の溶出 が認められております。 また、缶入り、瓶入り食品ではビスフェノールAの溶出は認 められませんでした。なお、レトルト食品で1種類に溶出が認められております。この 飲料缶のコーヒーですけれども、缶胴部はポリエチレンテレフタレートで塗装されてお りましたけれども、底とふたのタブのところの塗装はエポキシ樹脂、あるいは塩化ビニ ル樹脂で塗装されておりました。 これらの缶、容器の種類、食品の種類、あるいはその検出量からこの缶詰食品中に溶 出する原因といいますのは、恐らく缶詰の製造の際の加熱殺菌工程にあるものと推測さ れます。 (スライド) プラスチック製品をつくる場合いろんな添加剤を加えるわけですけれども、中に酸化 防止剤としましてトリスノニルフェニルフォスファイト、あるいは非イオン界面活性剤 としてノニルフェノールポリエトキシレート、このような物質を使うことがございま す。 その分解生成物、あるいは未反応のノニルフェノールが製品中に残存しまして、溶出 することが考えられます。そこでプラスチック製品50種類につきまして、ノニルフェ ノールの溶出を調べてみました。 50検体中ノニルフェノールが検出されましたのは16検体で、その検出量には製品ごと に大きな変動が見られます。高い溶出を見せましたのは、ポリスチレン、ポリプロピレ ンでありまして、最も高い溶出を見せましたものはポリスチレンのコップで約2,500ng/ ‡ということになります。 その他、ポリエチレンの容器等からは検出されないか、検出がありましてもごくわず かな量でございました。 また、ポリスチレン、ポリプロピレンにありましても検出するもの、されないものが ありまして、材質などによる明確な傾向は認められませんでした。 以上、ビスフェノールAとノニルフェノールについての溶出量の実態調査を御報告い たしました。 ○池田補佐 ありがとうございました。ただいまの御発表に御質問ありますでしょうか。 ○津金委員 幾つかあるんですけれども、飲料のところでコーヒーだけ高く溶出していて、ほかの はほとんど溶出されていなかったんですけれども、なぜコーヒーだけ溶出が高いのかと いうことが1つと2つ目は、例えば、コーヒーでも冷たいコーヒーとか、温めている コーヒーとかが実際に我々の口に入ります、それから、ミルク入りのものとそうでない ものがあります。そういうので溶出に違いが生じるんでしょうか。 ○渡辺研究員 今回の私どもの調査では、この缶詰食品等については私実際には担当しておりません けれども、ほかの報告によりますと、例えば、お茶とかそういうものからも溶出すると いう報告がありますので、恐らく今回の試料で認められなかったということで、もう少 し試料を多くしますと出てくるものもあるのではないかという推測は持っておりますけ れども。 あとコーヒーが出てきたのは確かに先ほどありましたように缶胴部がポリエチレンテ レフタレートでこれは出る可能性がないんですけれども、ただサイドシームのところに エポキシを使う可能性があるとか、この場合天・地がエポキシと塩ビで塗装されていた ということですから、その辺が原因になっているかと思います。 恐らくこれは本来食品にあるものではなくて、内面塗装剤に由来して出てくるものだ ろうということにはなるかと思うんですけれども、やはり先ほど説明しましたように、 加熱殺菌工程によってこれが溶出する要因でないかというような推測に今のところはと どまっています。 ○池田補佐 山崎先生お願いします。 ○山崎委員 私も今のところを御質問しようと思ったんですが、これかなり重大な問題を持ってい るのではないかと思うのは、サバの煮込みとかコーヒーという食品名が出てますね。そ うではなくて缶自体の製造工程というか、それにある種の食品が入って加熱殺菌の工程 で出てくると、つまり内部のコーティングの材料とか、コーティングの方法とか、です から、食品を入れる前の缶自体の問題というのが根底にあるんではないかと思うんで す。この場合たまたまサバの煮込みとコーヒーという名前が出てきますと、この食品に 問題にあるのかという誤解を受けるので、そういうところがちょっと問題というか、発 表の方法というか、実験の方法というか、そこのところにもうちょっと慎重な態度が必 要ではないかと思ったんですけれども。 ○渡辺研究員 おっしゃるとおりだと思います。これは缶自体にやはり問題があるということでたま たまそういう溶出がたくさん出る可能性のあるものが、あるいはサバに使われていたと いうことかもしれませんので、今回は17種類しかやっておりませんけれども、これは例 えば、サバの味噌煮だけ一つ取ってもいろんな食品メーカーのものをやるとか、もっと 幅広くデータを今後集めていく必要があろうかと思います。 ○池田補佐 次は、阿部先生お願いします。 ○阿部委員 間違いかもしれません。たしか何回も洗うと出なくなりましたね。出る率、溶出物が 少なくなってきた。ところがほ乳びんですと2年経っても、3年経っても相変わらず出 てくる、その間に私はたくさん洗っていると思うんですけれども、要するに、洗ったり 何かしてもずっと出続けるのか、洗っていけば出なくなるのかどっちなんでしょうか。 ○渡辺研究員 先ほどのデータの中に、私どもは360 回しかやっておりませんですけれども、これは 360 回毎回煮沸消毒を繰り返すわけで、やはり煮沸をするということは樹脂の表面に何 らかの影響を与えるだろうということで、わずかながらずっと出てきているんだろうと 思うんです。 それと、実際の施設、病院等で繰り返し使用していたほ乳びんですけれども、これは やはり一般家庭とは少し条件が違うと思うんです。一般家庭は単に煮沸消毒するだけで すけれども、実際調べてみますと施設でやはり普通煮沸消毒をしませんで、アルカリ洗 浄というものをよく行われているんです。ポリカーボネート樹脂自体はやはりアルカリ に弱い樹脂でございますので、これが長い間そういうものが繰り返し使用されますと、 表面が劣化を受けまして、実際、我々のやった実験よりは高い濃度の、1か月から2〜 3年の使用でしたけれども、やはり表面がアルカリにより影響を受けて、溶出している 量が少し増えてきたものと、私個人では思っておりますけれども。 ○池田補佐 ありがとうございました。そのほか御質問ございませんでしょうか。 よろしければ、午前中の研究発表はここまでとさせていただきます。それでは、これ で昼食の休憩に入らせていただきます。1時間ほど休憩を取っていただきまして、午後 の部は1時からとなってますが、準備ができ次第12時45分ぐらいからスタートしたいと 考えておりますのでよろしくお願いいたします。 では、午前中はこれで終了といたします。引き続き午後の部もよろしくお願いしま す。 (昼 食 休 憩) ○池田補佐  それでは、時間になりましたので、午後の部を始めたいと思います。  IIの1番ということでございまして、内分泌かく乱化学物質の水道水からの暴露等に 関する調査研究。研究総括ということで、国立公衆衛生院の国包部長からお願いいたし ます。よろしくお願いします。 ○国包研究員  ただいま御紹介いただきました国立公衆衛生院の国包でございます。OHPを使いま して御説明をさせていただきます。 (OHP)  私どもの課題は水道水でございます。目的でございますが、ここにも書いております ように、ヒトに対する内分泌かく乱作用の疑いのある化学物質のうち、水道水に含まれ ております可能性のあるもの等につきまして、その存在状況ですとか、それから、水道 用の資機材からの溶出量等を明らかにし、水道水を通じた暴露量を評価するための情報 を整備することを目的といたしております。  それから、これと併せまして、空気を通じた暴露量評価のための情報整備も目的とい たしております。 (OHP)  私ども研究班のメンバー構成でございますが、私、主任研究者を仰せつかっておりま す国包でございます。それから、分担研究者としましては5名の先生方でございまして それ以外に研究協力者といたしまして、ここには3名の方しか書いておりませんが、広 く関係の方々にも御協力をいただいております。 (OHP)  本日の御報告でございますが、まず、私の方から総括的なお話をさせていただきま す。続きまして、国立医薬品食品衛生研究所の安藤先生の方から、水質分析方法、溶出 試験方法につきましての検討結果、それから、空気からの暴露に関する調査研究の結果 について御報告をさせていただきます。  3番目は、水道水等の内分泌かく乱作用の評価に関する研究でございます。これにつ きましては、何名かの分担研究者等が関与いたしておりますが、本日は、同じく国立医 薬品食品衛生研究所の西村先生の方からまとめて報告をさせていただきます。  次に、4番目ですが、水道における現場調査の実施というものがございます。これに つきましては、人事異動等のことがございまして、引き続いてこれを担当していただき ました社団法人日本水道協会の米澤課長の方から報告をさせていただきます。  一番最後になりますが、資機材からの溶出の試験結果につきましてですが、これにつ きましても少しメンバーが変わっておりますが、水道技術研究センターの鈴木部長の方 から報告をさせていただきます。 (OHP)  次に、私どもの方で対象にいたしました内分泌かく乱化学物質等でございますが、こ の中には環境庁のリストには含まれていないような関連の物質、例えば、この下の方で すがアルキルフェノール類の中でフェノールですとか、あるいは一番最後の揮発性の炭 化水素類ですとか、こういったものも含まれておりますが、いずれにしましても、この 中心はフタル酸エステル類、それから、アジピン酸類、アルキルフェノール類、こうい ったものでございます。あと、スチレンの2量体、3量体。それから、対照としまして 17βエストラジオール、こういったもの、全部で33物質を対象にいたしております。 (OHP)  この研究を大きく分けますと、この4つに分かれるかと思います。1番が現場調査で ございます。これは、全国の代表的な水道の浄水場25か所につきまして実態調査を行っ ております。これは先ほどの33物質でございます。  それから、次に2番目ですが、資機材からの溶出試験につきましては、代表的な水道 用の資機材22種につきまして溶出試験を行っております。これは、17βエストラジオー ルを除いた32物質が対象でございます。  更に、2番の溶出試験と併せまして、いわゆる調査対象物質の標準試薬を使いまして 塩素処理によってそれぞれの物質がどういうふうに変化していくか。もっと端的にいい ますと、塩素処理によって分解されるかどうかといった試験を補足的に行っておりま す。と申しますのは、1番の現場調査では、最終的に蛇口から出る水は塩素が入ってお ります。そういったことで、この現場調査の中では塩素が既に入った水道水について調 べております。それから、もう一つ、2番の溶出試験におきましては、塩素の入らない 状態で水に浸すなり、水と接触させて溶出試験をやっておりますので、その辺の関係を 補足的に調べてみるためにこれをやっておるということでございます。  それから、3番目でございますが、水道水とか水のサンプルにつきまして、こういっ た内分泌かく乱作用をどういった方法で評価すればいいのかということを予備的に検討 するために、この検討をやっております。  それから、最後4番目が空気からの暴露でございまして、これは少し物質の数が少な くなっておりますが、いわゆるフタル酸類を中心に検討をいたしております。 (OHP)  それぞれの概要をごく簡略にですが、まず、水道の現場調査の結果でございますが、 水道の原水、原料水と、それから、浄水場を出る段階の水、それから、最後には蛇口の 水、この3つのサンプルを一つのセットにいたしまして、25の水道で実態調査をやって おります。一回の調査でございますが、昨年の11月にサンプリングを実施いたしまし た。  この結果、下にも書いておりますように、フタル酸ジ−2−エチルエキシル等が水道 原水から7物質、浄水場出口の浄水から5物質、給水栓水からは2物質、定量下限値以 上の濃度で検出されております。 (OHP)  次に、資材等を使いました溶出試験でございますが、これも1回きりの試験でござい まして、この中では真ん中に書いておりますように、サンプルとしまして現在は新しく は使われていないものも参考までに含めて試験をやっております。この結果ですが、一 番下に書いておりますように、フタル酸類、それから、アルキルフェノール類等17物質 が低い濃度ですが溶出することが確認されました。  それから、塩素処理の結果でございますが、アルキルフェノール類等幾つかの物質に つきましては、塩素で容易に分解することも確認いたしております。 (OHP)  次に、水サンプルについての内分泌かく乱作用の評価に関する研究でございますが、 これは、検討会の先生方も皆さん御専門であろうと思いますので詳しいことは申し上げ ませんが、フェノール等の物質につきまして分子構造解析に基づく予測をいたしており まして、これと実測の結果がこの蛍光偏光度法ではかなりいい相関が見られたというふ うな結果が出ております。  それから、もう一つ、水の浄水処理過程におきまして、この内分泌かく乱作用の減少 が一部の実験結果で見られたというふうなことでございます。 (OHP)  最後になりますが、空気からの暴露に関する調査研究でございますが、これにつきま しては、サンプル数も7つと限られておりますが、室内と室外でサンプリングをいたし まして測定をいたしております。フタル酸類等4物質で定量下限値以上の濃度で検出さ れております。 (OHP)  以上の結果をまとめますと、こういった具合になろうかと思います。読ませていただ きますと、水道水中の存在状況に関する実態調査の結果、フタル酸ジ−2−エチルヘキ シル等が水道原水から7物質、浄水から5物質、給水栓水から2物質、いずれも定量下 限値以上の濃度で検出されております。また、水道用の資機材を用いました溶出試験の 結果では、フタル酸類、アルキルフェノール類等17物質がそれぞれ低濃度で溶出いたし ております。  それから、標準試薬と塩素、この場合はいわゆる残留塩素でございますが、残留塩素 等の反応について別途検討しました結果、アルキルフェノール類等は塩素処理によって 容易に分解することが確認されているということでございます。  以上のようなことですが、今回の調査研究はいずれも1回のデータでございまして、 水道水につきましては実態あるいはこういった物質の挙動の解明のためには今後更に詳 細な検討が必要だろうというふうに考えております。  若干、時間を超過しましたが以上でございます。 ○池田補佐  ありがとうございました。  それでは、引き続きまして、ただいまの研究総括に従いまして進めさせていただきま す。次はIIの2番ということでございまして、水質分析法、それから、溶出試験方法の 検討及び空気からの暴露に関する調査研究ということで、国立医薬品食品衛生研究所の 安藤部長にお願いいたします。  安藤先生の発表時間が多少長く取ってございますので、その点御了承ください。よろ しくお願いします。 ○安藤研究員  それでは、私から水道水中の内分泌かく乱性物質の測定方法、水道用資機材からの溶 出試験方法、室内空気からの、特に、フタル酸エステル類の測定方法の開発及びその予 備的な調査として室内空気中フタル酸エステルの濃度を測定した結果の4つの事項につ いてお話をさせていただきます。  まず初めに、今回水道水中の測定方法ということで検討したわけでございますけれど も、水道水中あるいは水道の資機材に使われております物質からの対象項目としては、 フタル酸エステル類、アジピン酸類、アルキルフェノール類、スチレンのモノマーから 2量体、3量体、人畜由来のホルモン、揮発性の炭化水素という5つに分けて検討をい たしました。  省力化するため三十数項目の検討は測定法から分けたということになります。従って ここでは5つの測定方法ということで検討いたしました。  その測定方法にはいろいろあるわけですけれども、その前に、私どもが一番気にいた しましたのが測定環境からの汚染です。例えば、こういう室内だとかあるいはいろいろ な測定条件からの汚染というのが非常にございます。したがいまして、それをいかに低 くするために、それにかなり時間を割いたという状況でございます。  まず、フタル酸の容器からも溶出あるいは汚染されますので、その汚染というものを いかに下げるかということを検討しております。まず、我々は水道水では2l瓶とガロ ン瓶及び250ml瓶を使用いたしましたが、それぞれ瓶の内壁に対象物質が吸着されている 可能性が高いということがございますので、それをいかに低くするかということにかな り神経を使いました。  ちなみに、フタル酸エステル類では、幾つかの洗剤で洗った後に溶媒で洗浄後に、さ らに200度で3時間加熱するという操作条件を行いました。こうすることによって、ほぼ 内面からの存在量というものがほとんどなくなるという条件が設定できたということで ございます。  更に、それを用いて採水するわけでございますけれども、その採水方法もかなりシビ アに行いました。と申しますのは、全国から水道水を集めるという作業になりますので その作業の過程で汚染されるということがございます。勿論、トラベルブランクとして 同じようなブランクのサンプルを同じようにルートで運搬するという作業はいたしまし たけれども、それでもいろいろ問題がございます。したがいまして、きれいに洗った瓶 を更にどういうふうに採水するかということについてもかなり神経を使って、その調製 法を明記いたしました。  実際にこれを測定していただく、あるいはサンプリングをしていただくという方はこ れほど汚染され易く分析が難しい状況は知りませんので、相当事細かにサンプリングの 方法について規定いたしました。こういうことで一つの方法というものをつくったとい うことでございます。これを基に、それぞれの水道原水だとかいろいろなものを測って いただくことにいたしました。  ここまでの操作が、まず第1の大きな段階になります。この段階をクリアいたします と、その次が分析法になるわけですけれども、今回の分析というものは、一つの分析機 関にお願いいたしました。と申しますのは、当然、分析機関での測定誤差というのが非 常に大きなもので、しかも簡単に差が出てしまうということがございますので私どもは 一つの機関にお願いするということにいたしました。これをすることによって、機関間 の差というものをなくそうということに努めました。そうしないと、これら内分泌かく 乱化学物質のデータは幾らでも出てきてしまいますので、いかに正しいデータをつくる かというのに力を注いだということでございます。  次に分析法ですが、フタル酸エステル類はヘキサン抽出でGC/MS、SIM法というこ とで行いました。ここでもいろいろ検討いたしましたが水中の内分泌かく乱化学物質は 非常に薄いと考えられますことから、このような薄い媒体の中からそれを濃縮するのに 最近では固相抽出というやりかたを使います。しかし、この方法で私ども検討いたして いる過程で、その固相の中にもフタル酸エステルが入っているということがわかりまし た。それで急遽その方法を変えまして、溶媒抽出に切り替えたという経緯もございま す。こうすることによって、ブランク値をかなり低く抑えられたということになりまし た。  その次がアルキルフェノール類ですが、アルキルフェノール類はpHを下げまして、そ れから、ジクロロメタン抽出でTMSで誘導体化させるということをいたしました。こ れでGC/MS/SIMで測るということにいたしました。ただ、ここでのフタル酸エ ステル類ほどではありませんが、多少妨害ということもございます。  それから、スチレン類は、やはりジクロロメタン抽出して、それからGC/MS/S IMによる方法を行いました。  揮発性物質については、揮発性物質の測定方法は、既に私どもが開発して、厚生省の 方法としてでき上がっているわけでございます。その感度も十分に耐え得るだけの感度 が得られるというところでございます。  そのほかには、ちょっと具体的なお話になりますが、フタル酸エステルについては、 1lを使うということ、それから、ヘキサンで25mlで抽出し、窒素でふきつけて溶媒を 飛ばすという方法をしておりましたが、ここが一つのポイントになります。ポイントに なると申しますのは、私ども水道水中の内分泌かく乱性物質の測定をする場合、まず何 を考えたかと申しますと、どこまで測ろうか、これが一つのポイントになるだろうと。 つまり、今どこまで測るかという一応尺度がないわけですので、なるべく下まで測ると いうことを建前にしようということで考えました。その結果、試料を1l使うというこ とにいたしました。実は、これが後で非常に有利なことになりまして、試料水量を多く 採取することによって感度が上がるということ、もう一つが、妨害物質が非常に低く抑 えられる、この2つがございました。そういうことから、分析操作過程を含めますと他 の省庁が実施した方法に比べて10倍近く定量下限を下げることができ、非常に低いレ ベルまで測定が可能になったというところでございます。  それから、やはりフェノール類はこのようにして誘導体化させるという方法で検討を 行いました。ここでの濃縮にはロータリーエバポレータを使うということにいたしてお ります。つまり、ここで室内空気からの汚染が少ないということから、この方法を使っ たというところでございます。  もう一つの大きな問題は、測定されたデータをどういうふうに評価しようかというこ とでございます。ここでのポイントは環境中にも存在しているということです。つまり 分析過程の分析機器、つまりGC/MSの段階でもフタル酸エステルが入っているんです。 つまり、例えば、私どもガスクロマトグラフというものを使うわけですが、そのガスク ロマトグラフの注入口のところのゴムがございます。そのゴムの中に既に入っていると いうことになりますので、そのブランクのレベルと存在量をどういうふうに評価しよう かと。これが、かなりの議論をして決めていったという経過でございます。つまり、水 の場合は検出下限値として標準偏差の3倍を使うということ。それから、定量下限とし て標準偏差の10倍とするということを基本的な考え方といたしました。特に、このフタ ル酸ジエチル、ジ−n−ブチル、ジ−2−エチルヘキシルの3つの化合物は環境中から よく出てきてしまいます。したがいまして、本当に水の中に存在していたかどうかとい うのは、なかなか難しいということでございます。そのために、こういうようなものを 基本として、その他幾つかの決め方をしていたというところでございます。こういうふ うにして一つの方法を決めたというところでございます。  定量下限値というものの設定は、ブランクの下限値と、試料中の値からブランク値を 差し引くことを基本的に採用いたしました。こういう形で水道水あるいはそういうよう な原水だとかそういうところの測定方法をつくったというところでございます。  その結果が、表に示すような検出下限、定量下限の値になったというところでござい ます。これで定量下限値が、フタル酸エステル類の場合は大体0.05μg/l、あるいはア ルキルフェノールについては0.01というふうな設定値を決定したというところでござい ます。これが水道水の場合でございます。  引き続きまして、水道に使われるいろいろな資機材がございますが、その資機材につ いての概略、溶出試験方法、その他について若干御説明いたします。  資機材の場合は、大体この2つの方法で行いました。水道の資機材というのは1つは パイプ、もう一つはパイプでない、例えば、塗料だとかあるいはパッキングのシールだ とかいろいろございます。そういうものは、それぞれ分けて条件を設定したというとこ ろでございます。大体パイプ類は充填法といって、中に水を入れて両側をポリエチレン のフィルムで密閉いたしまして溶出をさせる方法になりますし、パイプ類でないものは 浸せき法というガラス片に塗料なりそういうものを塗って、それを浸せきさせるという 方法でございます。  その条件は、まず23度付近、恒温器の場合は23度、あるいはパイプのように非常に長 いものについては入りませんので室温で、16時間という条件を設定いたしました。こう いう条件で接水面積、その他については厚生省の告示だとかあるいはJISの方法、あ るいはJWWA規格という水道協会の規格がございますが、そういうものを用いて行い ました。  具体的に、ちなみに供試水というもの、その中に入れる水も汚染される可能性がある わけですから、この水は一体どこの水が使えるかということを調べました。これも結構 時間を使いました。結局あるメーカーのミネラル水が非常に少なかったということから それを使ったというところでございます。  それについて具体的な方法といたしましては、バックグラウンドというものが当然あ るわけで、そこでの差というのは先ほどと大体似ておりますが、若干違うところがござ います。まず、検出下限は、先ほどの標準偏差の3倍というものを使いました。これは 水道水中の測定方法と同じです。もう一つは、定量下限というものについては非常に小 さいので、標準偏差の10倍をとると、ほとんどマイナスになってしまう状況がありまし て、定量下限は標準偏差の6倍というものを基本といたしました。  その具体的な溶出濃度というのは、基本的なサンプルのデータからブランクを引くと いう考え方とそれぞれのサンプルのデータは平均値という考え方でいくというところで ございます。  その結果がここにありますように、定量下限としては水道水の場合に比べると1オー ダーが高くなっております。 続きまして、室内空気のお話に移ります。室内空気は水 道水あるいはこういう資機材よりももっと測定操作中の汚染が考えられることからシビ アになってまいります。つまり、いろいろなところからの汚染というのが考えられると いうことになります。今回は、一つには室内空気からあるいは空気中からのサンプリン グ方法というものがございませんので、それを確立したこと、もう一つは、試験的に室 内空気で測ってみたという、この2つになります。  対象化合物は今回はぐっと絞りまして、フタル酸エステル類のみということにいたし ました。10化合物でございます。  その方法といたしましては、これは基本的には環境庁でお示されている方法と似てお りますが、そのブランク値というものについて詳細に検討を行いました。具体的にはフ ィルターで空気をろ過するという方法でございます。空気をろ過するにはフィルターは 何を使うかというのは、1つは石英繊維フィルター、もう一つは活性炭繊維フィルター の2種類を使いました。この2種類のフィルターを室内でしたら室内の中央に採取装置 を置き、空気を吸引いたしました。  石英繊維フィルターでトラップされたものを粒子状のフタル酸エステル類と活性炭繊 維フィルターでトラップできたものをガス状のフタル酸エステル類というふうに規定い たしました。それをガスメーターで約12m3になるように吸引いたしました。それを保 存し、後で測定するということでございます。  更に、石英繊維フィルターあるいは活性炭繊維フィルターというものも、実は非常に フタル酸エステル類で汚染されております。つまりブランク値が非常に高くなってしま うということになります。したがいまして、まずは石英繊維フィルターと活性炭繊維フ ィルターからのフタル酸エステル類を、極力下げるということに力を注いだということ でございます。その結果、かなり低く抑えることができました。それは後でお示しいた しますが、そうしたものを用いて空気を吸引した後、次にフィルターをジクロロメタン で抽出して、それをGC/MSで測るという方法でございます。  先ほどのフタル酸エステル類の測定方法は、先ほどの水道水で用いた方法と同じでご ざいます。  具体的に、いろいろなデータについての評価の方法というのは水道水あるいはそれと 非常に似た方法で行いました。ここでは、先ほどの同じように検出下限としては標準偏 差の3倍、それから、定量下限値は標準偏差の10倍という値を取って検討いたしまし た。  やはり測定値については、操作ブランクというものをサンプルから差し引くという方 法で実験いたしました。  そのほかに、いろいろなデータのまとめ方だとかいろいろなことを検討いたしました が、その結果、定量下限値の設定というものが表に示した値になったということでござ います。その単位はng/m3という単位でございます。最後までブランク値設定に影響し たのがジ−2−エチルヘキシルで、これは活性炭繊維フィルターで約60ng/m3以下は測 定できないというところでございます。つまり、このぐらいの値以下は真の値として採 用いたしませんでした。  室内空気の予備的調査データとして、7地点を選んで検討いたしましたが、たまたま 7つのうちの2地点で外で塗装工事が行われていたということがございました。この調 査は、平常時の状況を把握することを目的としておりますので、7地点のうちの2地点 についてはデータを省いております。その5地点について平均値を示したものが表のよ うで、ここで認められたのがフタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−ブチル、ジ−2−エ チルヘキシル、アジピン酸というものが観察されました。いずれにしても、室内濃度が 高いということは事実として受け止めざるを得ないというところでございます。  こういうふうな結果から、データは少ないわけですけれども、これからいろいろなこ とをやっていかなければいけないだろうなというふうに考えています。  以上のことから、私はまず水道水中からの微量の定量法及び水道用資機材からの溶出 試験法を確立したということ、空気中からの微量の定量法を確立したということ。それ から、室内空気にはこういうフタル酸類というのは確実に存在しているということを報 告いたしました。また、室内空気中の存在量については、非常にまだデータが少のうご ざいますので、これからそのデータを増やしていくことが非常に重要なことだろうとい うふうに考えております。  以上でございます。 ○池田補佐  ありがとうございました。ただいまの点、何か御質問ございますでしょうか。 ○鈴木(継)委員  室内空気のデータがうんと気になったのですけれども、7つのうち2つか3つ高くは っきり出ていて、低いのとかなりばらついていますよね。あのデータを解析して、何か 室内大気中のこの手のものの存在に関する仮説ができたのですか。 ○安藤研究員  これは、あくまで1回の測定でございますので、具体的に云々ということはちょっと 不可能だろうというふうに考えております。ただ、フタル酸エステルは大気より室内の 方がずっと高いだろうということは事実だろうと。そのフタル酸の使われているものと いうのは、室内ではいろいろなところに使われています。ですから、今これがどれだと いうことは言えませんけれども、相当のこういうものが存在しているということかなと 今の段階ではそこまでしか言えませんが。 ○鈴木(継)委員  もう少したくさんやらなければわからないですか。 ○安藤研究員  はい。たかだか7つでございますので、100、200という。私どもはほんの一部をやっ たにすぎないということですので、これから相当の数をこなさないと全体像はつかめな いだろうと思っております。 ○松尾委員  空気中では分子の状態だったのでしょうか、それとも粒子と一緒(吸着)だったので すか。その粒子というのは、大きなパーティクルだったのでしょうか。 ○安藤研究員  私が今考えているのは、パーティクルに吸着しているというふうに考えています。水 道水のとき非常に気にした汚染というのも、結局ガラスの内面に付着してということが ございますので、いろいろな空気中に存在している微粒子に吸着しているというふうに 考えております。 ○松尾委員  その粒子の大きさなどというのもわかりませんよね。と言いますのは、御承知のよう に、中に吸い込む粒子の大きさによって影響は随分違いますので、ちょっとそういう質 問をしたのですけれども。 ○安藤研究員  ここでは、具体的にはわかっておりません。これからの問題かなというふうに考えて おります。 ○池田補佐  ありがとうございました。  それでは、時間もございますので、次のテーマに移らせていただきます。  続きまして、演題IIの3番でございますが、水道水等の内分泌かく乱作用の評価に関 する調査研究。京都大学の伊藤先生、北海道大学の亀井先生の分担ですが、本日は協力 研究者の国立医薬品食品衛生研究所の西村先生にお願いします。 ○西村研究員  それでは、分担課題の水道水等の内分泌かく乱作用の評価に関する調査研究について 御報告させていただきます。ここでお示ししました4名の、分担研究者2名及び協力研 究者2名の報告をまとめてお話しさせていただきます。 (スライド)  水道水質の水質管理を目標としまして、水道水における内分泌かく乱化学物質の評価 試験法の水質管理への適用の可能性について検討しましたので御報告いたします。その 条件としましては、短時間で結果が得られること、それから、操作が容易なこと、それ から、特殊な技術や装置を必要としないということを考慮いたしまして、本年度は蛍光 偏光度法、それから、酵母Two−hybrid法、遺伝子導入ヒト乳がん由来細胞レポートアッ セイ法、(以下)MVLN法と省略いたしますけれども、この3法について検討いたしまし た。 (スライド)  簡単にその試験法の概略をお示ししますけれども、蛍光偏光度法はエストロゲン受容 体と蛍光物質をつけたリガンド、これはエストロゲンと考えていただいて結構ですけれ ども、その複合体を準備いたしまして、そこに被験物質を加えまして、そして、競合的 に置き換わった結果、この内分泌かく乱作用を疑われる物質がここに結合したという、 この状態に変化した場合、この蛍光物質が分子量が大きいものから小さいものに変わる ということを偏光度によって調べ、その偏光度の差を指標としてエストロゲン受容体へ の結合活性、親和性を評価する方法です。 (スライド)  それから、酵母Two−hybrid法は大阪大学の西川先生らが開発された方法ですけれども 同じように人工的に発現させたヒトのエストロゲン受容体の一部、それから、必要なレ ポーター遺伝子であるβガラクトシダーゼ遺伝子を持つものを導入したα酵母を用いま して、外から内分泌かく乱物質を作用させた場合、この受容体に結合した情報が順次伝 わって、最終的にβガラクトシダーゼ遺伝子が誘導されます。この誘導活性を指標とし て内分泌かく乱性の評価をしたものです。  また、MVLN法は酵母のTwo−hybrid法と違うところは、ヒトの細胞を使ったこと、また その細胞が持っている受容体を使うこと、そして、レポーター遺伝子としてβガラクト シダーゼ遺伝子の代わりに、蛍のルシフェラーゼ遺伝子を使った方法であるということ です。  この3つの方法はすべてエストロゲンリセプターのαに対する結合親和性を指標とし た方法であるということです。 (スライド)  その3法によって、水域環境に広く検出されるフェノール類についてまず検討いたし ました。そのエストロゲン様活性の比較をしたものですけれども、こちらが蛍光偏光度 法で調べた方で、リガンドが半分置き換わる、それに必要なこの物質の濃度をここで表 示しております。  それから、こちらは酵母Two−hybrid法ですけれども、エストラジオールの活性がこの 値を出るときの濃度、そのユニット数に対してその強弱をここで表示しております。 MVLN法はエストラジオール活性を100%としたときに、その相対活性がどれだけあるか ということを表示しておりますけれども、4−ノルマルノニルフェノールの場合に、こ ちら蛍光偏光度法では非常に強い親和性が見られますけれども、酵母Two−hybrid法、 MVLN法ではネガティブだという結果を除きまして、大体同じような傾向が見られまし た。 (スライド)  蛍光偏光度法によるエストロゲン受容体の結合活性と、それぞれ試験いたします物質 の物理学的特性の間の関係を調べました。先ほど示しましたようなフェノール類14種類 についてエストロゲンのリセプターに結合する濃度、半分置き換わる濃度に対する対数 の値と、それから、水素結合するときにプロトンを受け渡す能力を表す物理学的数字で すけれども、εHOMO、それから、分子の体積の大きさを表すものですけれども、その3 つの間に非常にいい相関が見られました。更に、そのフェノール類14種類に加えてステ ロイドホルモン5種類を加えた場合についても検討いたしましたが、ここで見られます ように非常によい相関が見られました。  実際、先ほどの化学物質で半数の分子がおきかわる対数の値の予測値と実測値の関係 を表したのがこのグラフですけれども、非常によい相関が見られます。この方法により まして、ある化学物質の物理的特性がわかった場合に、その受容体に対する結合親和性 を推測するということができるという可能性が示唆されました。  しかしながら、ここで出した式というものは、ここで5種類加えた場合に非常にいい 相関があるわけですけれども、必ずしも数式が一致しているというわけではないことか ら、他の化学物質についても今後検討して、その他化学物資についてもこのことが言え るかどうかということを更に検討したいと考えております。 (スライド)  水道水というものは、皆さん御存じだと思いますけれども、原水から浄水処理過程を 踏んで化学物質などを除去した後浄水として、最終的に給水栓水として水道水として 我々に供給されるわけですけれども、その水道水で内分泌かく乱作用の疑いのある化学 物質として調べる対象物質としてどういうものがあるかということを、エドスタックの 勧告の中から抽出してきましたけれども、原水では植物性エストロゲン、それから、自 然由来の有機物質、それから、廃棄物処理場などで検出されるような化学物質、それか ら、農薬肥料、このような物質が考えられます。  また、浄水過程では、このような物質が塩素処理やオゾン処理をすることによって生 じる副生成物、これも考えなければいけないと考えます。  また、給水栓水では資機材などから溶出してくるような合成化学物質についても検討 しなければいけないと考えます。 (スライド)  そこで一例ですけれども、ある浄水場の原水におけるエストロゲン様活性、これは先 ほどお話ししましたようにエストロゲン受容体αの結合親和性を見たものですけれども 水道水の場合、それから、抽出、濃縮という操作をしなければいけないということで、 オクタデシル基の結合型のシリカゲルで濃縮したサンプルを酵母のTwo−hybrid法で評価 した結果です。測定したのは、秋から冬に掛けて10月、11月、1月の、これも1日の試 料ですけれども、この試料を濃縮した後、この酵母Two−hybrid法で評価いたしました。 そうしますと、1,000倍以上濃縮いたしますと、エストロゲン活性が見られました。月に よっての変動は、この結果からは見られておりません。 (スライド)  浄水場におけるエストロゲン活性が処理過程において、どのように変化するかを同じ ように酵母Two−hybrid法でオクタデシル基結合型のシリカゲルで濃縮したサンプルにつ いて見てみました。そうしますと、ここで見られますように1,000倍以上の濃度で原水で は非常に高い活性が見られますけれども、凝集沈殿ろ過をした水に関しましては、約半 分にその活性が減っております。更に、塩素を加えた給水栓水では、この活性がこれに 対して非常に弱くなっているということで、この処理をすることによって、エストロゲ ン受容体のαに結合するような物質というものは、ある程度除去されているということ が見られました。 (スライド)  更に、自然水について見ましたけれども、先ほど浄水場の原水でも見られましたが、 この場合はXADの7HPという樹脂を使いまして濃縮したサンプルをレポートアッセ イ法で、これはヒトのレポートアッセイ法で掛けた場合ですけれども、同じようにやは り見られます。この物質を濃縮する前に塩素処理をした場合、このように活性の上昇が 見られるということから、水道原水のところに自然由来のものを含めて多くの物質が含 まれておりまして、それが塩素処理によりエストロゲン活性を示すということが考えら れます。  そのことからも、先ほどお示ししましたものですけれども、このような物質に対する 浄水過程での挙動や、それから、除去性についても今後検討していかなければいけない と考えております。 (スライド)  最後にまとめですけれども、今回の研究におきまして水道水において内分泌かく乱作 用が疑われている化学物質の水質管理を行うことを目的として、エストロゲン様活性試 験法である3法について、その適用の可能性を検討いたしました。  更に、酵母Two−hybrid法を用いて浄水処理によるエストロゲン様活性の変動をオクタ デシル基結合型シリカゲルの固相カートリッジによって抽出した試料について調べた結 果、原水では活性が認められていましたけれども、凝集沈殿ろ過及び塩素処理により、 ほぼ活性が消失する結果が得られました。  以上です。 ○池田補佐  ありがとうございました。ただいまの御発表に何か御質問等ございますでしょうか。 ○井上委員  酵母アッセイと乳がん由来細胞のアッセイで比較されていますけれども、お調べにな った範囲では目立った違いはなかったというお答えなわけですけれども、強いて見たと きにどんなもので違いが出たのでしょうか。 ○西村研究員  物質でしょうか。現在まだフェノール類を中心にしかやっていませんので詳しいこと はまだわかりませんけれども、MVLNの方のレポートアッセイの方が感度は若干いいとい う傾向は見られますが、その他の物質について今後、水道水にかかわるような物質につ いて検討したいと思っています。 ○松尾委員  厚生科学研究と余り関係がないとおしかりを受けるかもしれないけれども、εHOMOで 非常にいい相関があって、式からは、エネルギーが高いと要するによく結合するといえ ます。メカニズムの方はどういうふうにお考えでしょうか。 ○西村研究員  それは、私も詳しくは分からないのですけれども、やはり結合して安定に保持される ということが、次の反応に対して強く出るというのですか、内分泌かく乱ホルモン作用 が強く出るような形に持っていくのではないかと考えていますけれども、要するに、つ いたり離れたりする作用のうち結合保持作用というのは強くなるのかなというのは推測 していますが、その辺はちょっと詳しいことはわかりませんので、また教えていただけ れば幸いに思いますが。 ○池田補佐  そのほかに何かございますでしょうか。  それでは、どうもありがとうございました。  続きまして、IIの4番でございますが、内分泌かく乱の水道水からの暴露で水道にお ける現場調査の実施ということでございます。分担研究者は一戸さんでございますが、 本日は日本水道協会の米沢先生にお願いします。よろしくお願いします。 ○米沢研究員  ただいま御紹介いただきました米沢でございます。  分担研究のうち水道における現場調査の実施につきまして、御報告をいたします。 (スライド)  この調査内容としましては、水道水におきます内分泌かく乱化学物質の存在状況を把 握するために、昨年、平成10年11月に行いました。全国平均的なものを把握するという ことで、代表浄水場としましては全国の25か所の浄水場を選定してございます。北海道 地区が4か所、東北地区が3、関東が4、中部が4、関西が3、中国が2、四国が2、 九州が3、全国で25か所の浄水場を選定いたしました。 (スライド)  次に、調査対象の水源と浄水処理の方法ですけれども、水源としましては河川水が17 か所、湖沼水が1か所、ダム水が3か所、地下水が4か所になっております。  浄水処理方法としましては、急速ろ過が15か所、急速ろ過と緩速ろ過の併用が2か所 それから、急速ろ過に粒状活性炭処理をしたものが1か所、急速ろ過にオゾンと粒状活 性炭処理をしたものが3か所、それから、消毒のみ、これは地下水ですけれども、4か 所ございました。 (スライド)  次に、全部で33項目の物質を測定いたしましたけれども、フタル酸エステル類としま してフタル酸ジ−2−エチルヘキシル等7物質。それから、アジピン酸類といたしまし てアジピン酸ジ−2−エチルヘキシルが1物質。 (スライド)  それから、アルキルフェノール類としまして、ノニルフェノールからフェノールまで 15物質を選定してございます。 (スライド)  スチレン2量体、3量体では1,3−ジフェニルプロパン等6物質になっております。  それから、人畜由来のホルモンとしましては17−βエストラジオール1物質でござい ます。  また、揮発性炭化水素類としまして、塩化ビニルモノマー等3物質を選定し、合計33 物質を今回測定いたしました。 (スライド)  安藤部長の方からも採水、それから、輸送中、また分析等でコンタミネーションを防 ぐということが重要という報告がございましたけれども、今回、採水容器と洗浄方法と しましては、若干重複するところがございますけれども、フタル酸類及びアジピン酸類 それから、アルキルフェノール、それから、揮発性炭化水素、この3系統に分けて採水 をしております。  まず、フタル酸及びアジピン酸類につきましては、2lの透明のすりガラス瓶を使用 し、また、容器の洗浄方法としましては洗剤を使って洗い、純粋アセトンの順に洗浄し た後、高純度の窒素ガスを吹きつけて乾燥させ、200℃で3時間加熱。この200℃3時間 という今回新たにつけ加えたものですけれども、放冷後、速やかに密栓してアルミホイ ルで覆うという洗浄方法を取っております。  アルキルフェノール類、それから、人畜由来ホルモン等につきましては、ガロン瓶を 使用して洗浄方法としまして、洗剤、純粋アセトンの順に洗浄して、高純度窒素ガスを 吹きつけて乾燥させて、速やかに密栓するという方法を取っております。  また、揮発性炭化水素類につきましては、250mlのガラス瓶ですけれども、ここに示し たような洗浄を行っております。 (スライド)  次に、採水容器と採水する試料の固定方法でございますけれども、まず、フタル酸と アジピン酸類につきましては、瓶としましてはガラスの2l瓶を使用しておりまして、 満水にして密栓をし、金属製のクリップで栓を固定してアルミホイルで覆う。特に、ビ ニルテープなどのシール類は巻かないという注意を各水道事業体にお願いしてございま す。  それから、アルキルフェノール類等につきまして、ガロン瓶の3.5lを2本ということ ですけれども、これにつきましては、試料水1l当たり0.1gのL-アスコルビン酸ナトリ ウムを加えて満水にして密栓をするということで、試料の固定をいたしました。  それから、揮発性炭化水素類につきましては、試料を泡立てないように静かに採取し まして、残留塩素、浄水と給水栓水については残留塩素が含まれておりますので、採水 容器にL-アスコルビン酸ナトリウムを加えて満水にして密栓するという試料の固定方法 を取りました。  なお、輸送中のブランクということで必ず試料が入っていないものについても併せて 行っております。 (スライド)  分析方法の概略ですけれども、フタル酸及びアジピン酸類につきましては、ヘキサン 抽出後、濃縮しましてGC/MS、SIM法で測定をしております。  それから、アルキルフェノール類につきましては、試料をpH3前後に調整をして、ジ クロロメタンで抽出、濃縮、脱水をしてトリメチルシリル化してGC/MS、SIM法で測定を しております。  それから、スチレン2量体、3量体につきましてジクロロメタン抽出後、濃縮してGC /MS、SIM法で測定をしております。  人畜由来のホルモンにつきましては、固相抽出で酸処理後トリメチルシリル化しまし てGC/MS、SIM法で測定をしております。  揮発性炭化水素類につきましては、パージトラップ法でGC/MS、SIM法で測定をいたし ました。 (スライド)  最後になりますけれども、原水の水質測定結果につきまして御報告をいたします。33 物質のうちフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、それから、2,4-ジ−フェニル-1-ブテン までの7種類のものが今回、定量下限値以上で検出されております。  まず、フタル酸ジ−2−エチルヘキシルですけれども、25か所の浄水場のうち16か所 の原水から最大値0.16μg/l、検出率としましては64%の数値になりますけれども、フ タル酸ジ−2−エチルヘキシルが検出されております。そのほか、検出率が高いといい ますのはビスフェノールAで、最大値が0.16μg/lですけれども、25か所のうち11か所 44%の検出率がございました。  そのほか、フェノール、これは水質基準項目になっておりますが、25か所のうち2か 所で検出をされております。 (スライド)  次に、浄水の水質測定結果ですけれども、これは浄水場の出口の水でございます。塩 素処理等をして残留塩素が存在する水でございますが、フタル酸ジ−2−エチルヘキシ ルから2,4,6-トリフェニル-1-ヘキセンまで5種類のものが検出されております。原水 と同様ですけれども、フタル酸ジ−2−エチルヘキシルにつきましては、25か所のうち 17の浄水場で最大値0.15μg/lですが、68%が検出状況でございました。  そのほかとしましては、25か所のうちのこの2物質が2か所、フェノール等が1か所 それぞれ検出されております。 (スライド)  最後ですけれども、給水栓水、これは各家庭の蛇口からの水ということでとらえてい ただきたいのですが、その測定結果ですと33物質のうち2物質が検出されております。 これは、フタル酸ジ−2−エチルヘキシルとしましては、25か所のうち10の給水栓水か ら0.12μg/lの最大値ですけれども、40%の箇所で検出されております。  そのほか水質基準項目のフェノールですが、25か所の給水栓のうち1か所測定されて おりました。  以上で、水道におけます現場調査の実施の報告を終わらせていただきます。 ○池田補佐  ありがとうございました。  何かただいまの発表で御質問ございますか。 ○青山委員  大変素人考えで恐縮なのですが、浄水場の出口の水よりも水道をひねって出る水の方 が汚染物質の検出率が低くなるということは、浄水場から家庭で水を使うまでの間に、 例えば、塩素が何か分解しているとか、そのようなことがあるというふうに考えればよ ろしいのでしょうか。 ○米沢研究員  塩素との接触時間との差と考えられます。浄水場の出口ですと、その浄水場によりま して前塩素処理ですとか中間塩素処理等で塩素との接触時間が多少異なりますけれども そんなに長い時間接触はしておりませんが、各家庭に行きますまでに相当時間が掛かる ところもございますので、塩素との接触時間でこれらの物質が分解されて数が少なくな ってきているのだろうというふうに考えております。 ○田中委員  ちょっと関連があるのですけれども、今のそうでない場合がありますよね。給水栓水 では出ていて原水にないとか、給水栓と浄水、原水との関連、給水栓で出ているものは 浄水に出ている、原水に出ているというような関係は非常に強いのでしょうか。それと も、その辺はばらばらなのでしょうか。 ○米沢研究員  これは、今回1回ということで浄水場の数も25か所ということで限られた範囲ですの で、これらの詳細につきましては、継続して調査をする必要があるだろうというふうに 考えております。現時点では明確なことは言えないというふうに考えております。 ○田中委員  例えば、フェノールだったら給水栓から出ているものは浄水栓でもという、この25分 の1の部分は同じ水道でしょうか。 ○米沢研究員  若干違っていたと思いました。今ちょっと手元に持ってきておりませんけれども。 ○阿部委員  済みません。いろいろな物質がしかも生理活性を持つものが発見されておるわけです ね。このぐらいの濃度で発見されますと、これは我々、水道を飲んでいる人には、どう いうふうな意味を持つというふうにお考えなのでしょうか。 ○米沢研究員  今回、給水栓水から検出されましたものにつきましては、フタル酸ジ−2−エチルヘ キシルにつきましては、現在、水質基準を補完する項目のうち監視項目に選定されてい る項目でございます。監視項目の指針値ですと0.06mg/lということで、今回検出され ました濃度につきましては、その指針値の100分の1ぐらいの濃度ということになってお ります。  また、フェノールにつきましては、水質基準ですとフェノール類ということですけれ ども、0.005mg/lという基準値がございますが、今回、高感度の分析法を使っておりま すので、今回検出されました数値につきましては、水質基準値の100分の1程度の濃度と いうことで、比較しますと指針値とか基準値の100分の1程度しか今回検出されていなか ったというような状況でございます。 ○池田補佐  済みません、時間も来ていますけれども、津金先生。 ○津金委員  25の浄水場の中で、まだ十分な数ではないとは思うのですけれども、検出率が地域に よって違っているのか、それとも水道の原水の種類によって違っているのか、何らかの 傾向はあるのでしょうか。 ○米沢研究員  これは、特にフタル酸類などですと、地域によっては差がないような状況でございま した。 ○池田補佐  それでは、時間ですので、ここまでにしたいと思います。ありがとうございました。  それでは、次がIIの5番でございますが、水道用資機材を用いた溶出試験等の実施で ございます。分担研究者は財団法人水道技術研究センター、八木さんですが、御発表は 鈴木部長でお願いします。 ○鈴木研究員  それでは、私から水道用の資機材から溶出する物質の濃度につきましての試験等につ きまして御報告申し上げます。 (スライド)  研究の内容といたしましては、まず、代表的な水道用の資機材につきまして溶出試験 を実施したわけでございます。それとまた、調査対象物質と残留塩素との反応性を調査 いたしました。方法といたしましては、水道用の資機材22種、39品目、この中には、現 在生産されておりませんが、そういった使用実績のあるもの2種3品目を含んでおりま すけれども、これを対象に水による溶出試験を実施したわけでございます。  また、2つ目といたしましては、残留塩素と対象化学物質との反応性です。これは標 準物質を使ったものでございますが、その濃度変化を調べたということでございます。  調査の対象とした化学物質でございますけれども、32物質でございます。先ほどの水 道現場の調査では33種類にいたしておりましたけれども、その中から17βエストラジ オールを除いたものでございます。これは、こういう対象資機材の中で使われていない というふうに判断したものでございまして、他の対象項目については全く同じでござい ます。 (スライド)  調査の方法でございますが、これはフローを図示ししたものでございますけれども、 まず、水道用の資機材として実際にどういうものが使われているかというのをリストア ップ、絞り込みをいたしまして、その中でよく使われているものを選び、それらの中か ら溶出試験の対象資機材を選定いたしまして溶出試験を実施したという流れになるわけ でございます。 (スライド)  水道用資機材にはどういったものがあるかというのをごく大まかに御説明する図がこ れでございますが、浄水場で水をきれいにするところが浄水設備でございますが、それ を各御家庭にお配りする前にパイプで送ります。その前に、川や湖から水をくむ、これ を導水と言いますが、導水するパイプにも資機材が使われております。その後、浄水を した後、送配水、これは各御家庭に送るまでのいわゆる街の中に走っている水道管とい うイメージでございますが、そういう設備がございます。それから、各御家庭の中で使 われている給水設備というふうに分かれてございます。  この中で非常に多く共通しているものを数えますと管、それから、管をつないでいる 継手類あるいはゴム輪、バルブ、ポンプ、水槽、こういったたぐいのものがございます し、浄水場で主に使われているものは沈降装置ですとか、あるいは生物作用を促進する ための接触装置といったものもあるわけでございます。給水設備の方は皆さん御承知の とおりだと思います。 (スライド)  これらの中でよく使われているものを選び出すということになるわけでございまして 合成樹脂でつくられております管、母材を中心に考えてみますと、まず、硬質塩化ビニ ル管あるいはポリエチレン管、ポリブテン管、それから、強化プラスチック樹脂製品、 それから、沈降装置と称します、先ほど御説明した浄水場の中で使われるものでござい ます。あるいは生物接触装置。そして、パイプあるいはコンクリートなどに塗装をして いる、あるいはパイプそのものをライニングしているということがございますが、そう いったものの中の合成樹脂製品を洗い上げますと、合成樹脂塗装あるいはエポキシ樹脂 粉体塗装、それから、液状エポキシ樹脂塗装、硬質塩化ビニル、これをライニングした もの、あるいはポリエチレンライニングあるいはその粉体ライニングあるいはシール材 ですとか、昔使われておりましたがタールエポキシ樹脂塗装、それから、コールタール エナメル塗装などがございます。この2つにつきましては、現在生産されていないわけ でございますが、念のために調査を実施しようということにしたものでございます。 (スライド)  実際に溶出試験した方法を御説明申し上げますと、まず、2種類ございまして、充填 法と浸せき法でございます。充填法というものは、管をそのまま使いまして、例えば、 20mm口径のものあるいは50mm口径のもの、基本的には一番小さなサイズのパイプを使お うということにしておりますけれども、これを長さ1m程度に切りまして、両端をふさい でその中に水を入れて23℃あるいは室温で16時間放置した後、中の水を分析しようとい うものでございます。  それから、こういうことが困難なものがございます。塗料などがそうでございますが これはガラス片に塗装剤を塗って乾燥させて2リットルあるいは4リットルのふたつき の瓶に水を入れて、浸せきして溶け出す量を調べるという方法で、先ほどの16時間23℃ などの条件は同じでございます。  あるいはまた、商品の形態そっくりそのまま、あるいはその一部、切断したものとい う意味でございますが、これをやはり同様に、ガラスの瓶に水とともに封入して試験し たというものもございます。 (スライド)  溶出試験そのものは、ガラス瓶入りのミネラルウォーター、これは勿論、無塩素水で ございますが、これを使いまして、この中に試料を入れるあるいはこれ充填するという 方法で行ったものでございまして、23℃または室温で16時間放置と、これが条件でござ います。 (スライド)  次に、実際に溶出試験を行ったときに溶出の下限値というものを設定いたしました。 これは、溶出試験結果に基づきまして、調査対象物質の溶出があったかどうかを判断し なければならないわけですが、その際の基準といたしまして溶出下限値を溶出試験の方 法ごと、つまり充填法あるいは浸せき法といった方法ごとに設定をいたしました。試験 区と、それから、対象区つまり水そのものでございますが、その測定値の差が溶出下限 値以上の場合は溶出があったというふうに判断をいたしまして、あるいはまた試験区と 対象区の測定値の差が溶出下限値に満たないというふうになった場合には、これは溶出 が認められないというふうにしたわけでございます。 (スライド)  これが溶出試験の結果の一部でございます。まず、見方でございますけれども、物質 名を一番左に書いてございます。それから、次が溶出の下限値で、これは先ほど申し上 げましたように、方法によって少し違いが出てくるものもございます。  次に、溶出資材の種類の数でございますけれども、ブランクのところは溶出がなかっ たと認められるものばかりでございますが、書いてあるのが溶出のあったと考えられる 種類の数でございます。フタル酸ジ−n−ブチルが10などここに書いておりますが、フ ェノールが15ということでございます。そのうちの最大溶出濃度がここに書いてござい まして、その右側は単位面積当たりの最大溶出量を書いてございます。 (スライド)  最後まで見ていただきますと、これがスチレンの2量体、3量体あるいは塩化ビニル 揮発性炭化水素類などを示しているわけでございます。これが、溶出試験の結果でござ います。  最後になりますが、先ほどちょっと御質問があったようでございますけれども、塩素 による分解の話をさせていただきます。  塩化ビニルモノマーは水中で不安定なために、これだけは対象外といたしまして、残 る31物質につきまして塩素が1mg/リットルの濃度である場合に分解するかどうかとい うのを調べました。濃度は薄い濃度と濃い濃度、大体濃い濃度の方は薄い濃度の4倍量 の標準物質を使いまして溶液をつくりまして、塩素があるなしで分解の仕方を調べたも のでございます。  結果を申し上げますと、フタル酸類とアジピン酸類は塩素で分解はいたしませんけれ ども、アルキルフェノール類の15物質についてすべて塩素で分解される。それから、ス チレンの2量体、3量体については、3分の1程度の物質は分解されますが残りは余り 分解しないといったような結果が出てきたわけでございます。  私からの御報告は以上とさせていただきます。ありがとうございました。 ○池田補佐  ありがとうございました。  何か御質問ございますでしょうか。 ○田中委員  こういうような溶出試験法は海外ではあるのでしょうか。水道管だから16時間そのま ま浸せきしていますよね。この場合、実際は水が流れるような状態をつくってぐるぐる 循環させるというわけですね。そういうような方法も考えられるのではないかと思うの ですけれども、海外にはそういうものはないのか、そういうことは検討されているかと いうことは。 ○鈴木研究員  海外の実績としては特に承知いたしておりません。  それから、流水でということも頭の中では勿論考えているわけでございますが、やや 装置が大がかりになることあるいは汚染の機会が増えるということで、現在はいたして おりませんが、今後の課題かと考えております。 ○池田補佐  ほかに質問等ございますか。  それでは、どうもありがとうございました。  続きまして、3つ目の大きなテーマでございます内分泌かく乱化学物質の胎児、成人 等の暴露に関する調査研究。IIIの1といたしまして、研究総括といたしまして星薬科大 学、中澤先生、よろしくお願いします。 ○中澤研究員  星薬科大学の中澤です。  それでは、スライドをお願い致します。 (スライド)  この研究プロジェクトは、内分泌かく乱物質の胎児、成人等の暴露に関する調査研究 というテーマで、私が主任研究者をさせていただきました。赤字でお示ししました4人 の先生方が分担研究者でいらっしゃいます。  今日は、私が牧野先生及び織田先生がご担当された部分、すなわち成人血液、母乳あ るいは臍帯血に関して内分泌かく乱化学物質の分析法を検討し、存在量を調べました。 私のあとに松浦先生、それから、秦先生にそれぞれダイオキシンを中心とした生体影響 あるいは生体臓器中の残留量ということでお話ししていただくことにします。 (スライド)  私達が織田先生と牧野先生とで共同で実施した研究内容は、内分泌かく乱化学物質の 胎児、成人の暴露に関して視点を置いております。どういう物質を取り上げるかという ことで、最初は社会的に非常に関心の高い物質と、それから、環境中にかなり放出され ていると言われるような物質を取り上げて、いわゆる生体試料、特にこの場合は対象が ヒトでありますから、ヒト成人血液あるいは臍帯血あるいは妊婦の血液、そして、母 乳。それから、今回は毛髪も検討してみようということで、これらの試料を対象とした 内分泌かく乱化学物質の微量分析法をまず開発いたしました。  本日、これまでに多くの先生方からお話ありましたように、非常に高感度で精度の高 い分析法を構築しなければいけないというのが、この仕事の一番難しいところだと思っ ております。そして、実際の試料を分析しまして厚生行政の施策に寄与できるデータを 取りたいということで、次のような方針を選びました。  この研究プロジェクトでは、五ヶ所の公的研究機関に入っていただきました。いずれ も地方の衛生研究所で、国内でもトップレベルの技術を持っているグループです。そし て、それぞれが得意とする化合物について分析をお願いして、できるところからまずや ろうということで始めたわけであります。  ただ、途中におきましては相互に情報交換をしていこうということ、それから、ある 物質について検出された場合については、同一試料を分析していこうではないかという ことで仕事をしてまいりました。すなわち、データの信頼性というものが、内分泌かく 乱化学物質の場合には数値だけが非常に独り歩きしておりますので、大事ではないかと いうふうに考えたわけであります。  今日、限られた時間の中でお話しします内容は、主に3つであります。1つは、今日 も午前中からお話ありましたように、高分子素材に由来する化学物質、特に、フタル酸 エステル類あるいはビスフェノールAといったものが我々の血液の中にあるのか、ある いは生体試料の中にあるのかということ。それから、同じように有機塩素系化合物、す なわちクロルデン、ヘキサクロロベンゼン、それから、ホルモン系の除草剤について調 べました。  それから、ダイオキシン類、PCBといった化合物です。  最後に、生活関連化学物質ということでパラベン類、それから、パラジクロロベンゼ ンといった化合物について得られた成果を御報告申し上げます。 (スライド)  このように考えて仕事をスタートしたわけでありますが、最初からつまずいたのが、 ビスフェノールAの血液中レベルの測定です。測定を難しくしている、つまりコント ロール、バックグラウンド値をふらつかせている1つの理由に、このスライドにありま す、固相抽出カートリッジの使用です。これがビスフェノールAの汚染源の一つなるので はないかということが研究の途中でわかってまいりました。従来、カラムクロマトグラ フィーを用いる場合、充填剤をカラム管に詰めてクロマトグラフィーをやっていたので すが、最近はここにありますように、Solid Phase Extraction、いわゆる固相抽出とし て非常に便利なカートリッジが市販されております。これが環境試料あるいは生体試料 あるいは食品試料というものの試料調製において、クリーンアップや濃縮操作というと ころに使われております。  今、このスライドの一番右に示してあります外筒部分でありますが、この部分がやは りプラスチックでできているということ、それから、中の詰められている充填剤の中に はポリマー系の充填剤があるということ。また、両端を押さえている、いわゆるフィル ターの部分、これもものによってはプラスチック製であるということで、それぞれを分 解して取り出し、ここに示しましたように、調べてみますと非常にトレースであります が、ビスフェノールAが溶出してくるものがございます。  それから、測定に使用する水でありますが、この水につきましても、我々は実験室で は超純水と称してイオン交換及び蒸留を行って非常にきれいな水だとして使ってきてい るわけでありますが、これもここにお示ししますように非常にトレースでありますが、 ビスフェノールAが混入してくるということがわかってまいりました。 (スライド)  これは、今回の分析で我々が一番気をつけたのは、本当にその物質が測定対象の化学 物質であるかということを確認することです。ただクロマトグラムのピークだけで見る というのは非常に不安ということで、GC/MSあるいはLC/MSを使いました。ここは、LC /MSを用いて研究に使用した水の分析をしてみたときに、このようにビスフェノールA が検出されるというデータの一つです。また、これは血清のデータであります。右側の 方に若干小さなピークが出ておりますが、ビスフェノールAの場合はサンプルによって 0.2とか0.3ppbというような非常にトレースなレベルで検出することができます。 (スライド)  ビスフェノールAのほかに、フタル酸エステル類も測定対象にしました。これは参加 頂いた研究者の皆さんが測定を避けた化学物質です。まず、今の測定技術での精度の高 い分析はほとんど不可能に近い状況です。これは、今日のお話にもありましたように、 測定環境中の空気や水を分析しても検出されるような物質で、我々としては手の打ちよ うがないという化学物質でございます。試薬や溶媒からも検出されます。  ましてや、血液の分析の場合どうしていいかということで、これはまだ結果としては 途中なのですが、ここに示す精油定量装置というものを用いた試料調製法を検討してい ます。この装置は、ここにサンプルを入れまして蒸留していきますと、揮発性の物質は 逃げてしまうのですが、ある程度のものはここから冷やされて戻ってきまして、ここの トルエン層に抽出することができます。ここではトルエンが一番いいということを見つ けたわけですが、このような装置を用いますと、いわゆる閉鎖系でサンプル調製ができ 周りの環境からの汚染というものを抑えることができるということです。  今、食品などの分析はできるようになっておりますが、血液の方の分析にも、この方 法でのアプローチを検討しています。スライド上、右上の方に回収率を出しておりまし て、ほぼ満足するような回収率が得られています。 (スライド)  ここまでの内容を一まとめにしてみます。ビスフェノールAというのは先ほどLC/MS を使いましたけれども、GC/MSあるいは電気化学検出HPLCといった異なった分析法でア プローチしております。これは、異なる分析法でクロスティックするということも非常 に大事だというふうに考えています。  血液を取る注射器の包装部分、いわゆるカバーの部分でありますが、そういうものか らの溶出や、先ほど申し上げたように純水あるいはカートリッジ、こういうものから出 てまいりますけれども、試薬などからも検出されるということで、分析操作上、極めて 気をつける必要があります。  フタル酸エステルについても同様で、やはり薬の注射器といったものにも気をつける 必要があるということがわかってまいりました。  有機スズは、トリブチルスズが毛髪から非常にトレースでありますが、検出されてお ります。さらに例数を増やし、検討する必要があると考えています。 (スライド)  このスライドは、クロルデン等の有機塩素系化合物に関する成果です。このような有 機塩素系の化合物も大体皆さん方が報告されているようなレベルで検出されていると思 います。特に、濃度が高いというわけではございません。 (スライド)  これは、大阪府が行った長期間のモニタリング成果でありますが、いわゆる妊婦さん の母乳中のDDE濃度が20年前に比べて減っているという結果と、PCBやDDTも減 衰傾向にあるという結果の一部であります。 (スライド)  有機塩素系化合物の暴露に関しては、今申し上げたようにクロルデン類、これは通常 皆さん方が検出されているレベルで出ているというふうに思います。それから、ヘキサ クロロベンゼンもある程度母乳血清から非常にトレースでありますが、検出されます。  それから、ダイオキシン類、PCBは先ほどのDDEと同じように20年前に比べて非 常に減少してきてございます。この研究グループはサンプルを保存していたため、そう いった経時的な流れというのを追跡することができました。  なお、ホルモン系の除草剤、2,4−D、2,4,5−Tについては、今回は検出されており ません。 (スライド)  ここに示す成果は、一般病院で得られた試料について見たものですが、パラジクロロ ベンゼン、それから、パラヒドロキシ安息香酸というものが出てまいりました。これが なぜ検出されるのかということに関しては、今、私ども非常に関心を持っております。 母乳とか妊婦の血液や臍帯血からも非常にトレースでありますが、このパラジクロロベ ンゼンという化学物質が検出されております。これらの物質は、クロマトグラム上、有 意なレベルで見出されるピークについて、これはどういう物質かということで追及して いきましたらわかってきたものであります。 (スライド)  このスライドに示しますように、血液中のパラジクロロベンゼンというのは、室内中 の濃度とかなりパラレルな関係で出てきます。いわゆる防虫剤というところで使われて いる物質であります。 (スライド)  最後、これをまとめてみますと、パラヒドロキシ安息香酸はパラベン類の代謝物の一 つとして検出されているのではないかと私どもは今考えております。パラジクロロベン ゼンについては、防虫剤あるいはトイレの芳香剤に使われており、室内空気によるもの ではないかと考えています。  以上申し上げてまいりましたように、我々のこの研究成果から言えることは、日常生 活の中で、一般の人がかなりの量、暴露され、血液中から有意に検出されるような化学 物質を今後追跡していく必要があるのではないかと考えております。  以上でございます。 ○池田補佐  ありがとうございました。  ただいまの御発表に何か御質問ございますでしょうか。 ○山崎委員  聞くからに、大変御苦労の多い研究だというのがよくわかりました。それで、ある程 度の傾向が今のお話からも見えてきているのですが、特にサンプルがヒトのサンプルで やって個体差が相当あると思うんです。ですから、そこを先生方の研究でどういうふう に克服していくかという、ある程度見通しというか御意見ございますでしょうか。 ○中澤研究員  今回、研究を行ったきた印象としては、血液を採血する状況におきまして、ほとんど がボランティアの血液を使っております。例えば、研究所の職員とかその家族というこ とで。普遍的にほとんどの方から見つかってくる物質と、ある特定の人に出てくる物質 とがございます。それがどこから由来するのかというのは、今のところわからない物質 を抱えております。ただ、GC/MSなどのクロマトグラム上で明らかに有意に出てくる ピークというのもございます。これが一体何であるかということで、私どもが途中から 研究方針を少し変えまして追い掛けてきて見つけたのが、先ほどのパラジクロロベンゼ ン、いわゆるたんすに入れている防虫剤、それから、パラヒドロキシ安息香酸です。パ ラヒドロキシ安息香酸というのは、いわゆるパラベンと言われている食品添加物あるい は化粧品などに入っている物質の実は代謝物ではないかというふうに思っております。  ただ、それにしてはちょっと不思議に思っておりますのは、妊婦の血液とか臍帯血の 量が成人に比べて高い化学物質が、先ほどのデータでもお見せしましたように観測され ます。これがどうしてかということに関しては、もっといろいろな要因が関係している のではないかと思われます。ただ、この2物質に関しては、恐らくここにいらっしゃる 先生方ほとんどの方から検出することができるというように思います。 ○伊東座長  中澤先生ありがとうございました。非常に大変な仕事だと思うのですけれども、どう してもどの地域の人かとか、例えばボランティアとして研究者の人とか家族ということ ではなくて、地方であるといったことについての調査に是非進んでいただきたいと思い ます。 ○中澤研究員  是非やりたいと思っております。 ○藤原委員  先ほどのグラフを私は見間違えたのかもしれないのですが、ちょっと確認させていた だきたいのですが、20年前と比べて傾向的にずっと下がっておりますので、それが一体 何に由来するかということを先生はどのようにお考えでいらっしゃるかということなの ですけれども。 ○中澤研究員  20年前に比べて、やはり我々の生活環境あるいは環境が大分改善されてきて、そうい った物質の汚染というものが非常に提言されているのではないかと思います。その結果 恐らく食品経由で暴露されている物質も多いと思いますが、出てきているのではないか というふうに思っています。これは、食品の中のレベルというのも減少しております。 ○藤原委員  ちょっとよろしいですか。ダイオキシン類については。 ○中澤研究員  母乳中のダイオキシンレベルは減少しております。 ○藤原委員  それは、専ら食品、その他ということをお考えでいらっしゃるわけですか。 ○中澤研究員  食品レベルの減少、その他だと思います。 ○寺尾委員  ちょっと確認したいのですけれども、最後のところでパラヒドロキシ安息香酸とあり ますね、それが生体試料から出てきたからなんだということでお調べになっているのか これは何か。 ○中澤研究員  これは、血液を分析していたときに他の化学物質に比べてppbオーダーで高いレベルで 検出されます。一番高いものですと200ppbを超します。 ○寺尾委員  それと、内分泌かく乱化学物質という視点から見たときに、それは何か問題がありま すか。 ○中澤研究員  全くわかっておりません。そういう調査もされていないと思います。 ○寺尾委員  そうですか。それは、なったからそれは何だということは。 ○中澤研究員  ありません。 ○寺尾委員  何だということを同定したという意味ですね。 ○中澤研究員  そうです。今回は同定しただけです。 ○寺尾委員  というのは、我々はかなりいろいろな物質を日々摂取していますよね。ですから、か なりいろいろなものが出てくると思うのですが、それを一々チェックしているというの は、なかなか難しいなというので。 ○中澤研究員  はい。ただ、普遍的にといいますか、一般の方がほとんど暴露されいて、しかも、血 液中の濃度レベルが高いというのは暴露量から考えたら、その毒性と今回のような内分 泌かく乱性に関しては、今後やはり検討していっていただきたい化合物かなというふう に思って提言させていただきました。 ○寺尾委員  あと、毛髪の中にスズが出てきたというお話がありましたが。 ○中澤研究員  あれは、濃度レベルとしてほとんど問題ないレベルではないかと思います。 ○寺尾委員  そうですか。あれは、スズとして出てきたのか、あるいは有機スズとして出てきたの か。 ○中澤研究員  有機スズです。有機スズとして測っております。 ○寺尾委員  ブチルスズですね。 ○中澤研究員  トリブチルスズです。 ○池田補佐  それでは、時間でございますので、中澤先生どうもありがとうございました。  それでは、続きまして、IIIの2番ということで、母乳中の内分泌かく乱化学物質と乳 児の健康影響に関する研究。北里大学の松浦先生、よろしくお願いします。 ○松浦研究員  スライドお願いいたします。 (スライド)  私たちは、平成9年から母乳中のダイオキシン類に関する研究班というのを発足しま して、生後5ないし6日、それから、30日、150日、300日の母乳を採取しまして、その 中のダイオキシン類を測定し、1年間に乳児が悪化されるダイオキシンの量を検討して まいりました。 (スライド)  平成10年度から中澤先生の班に加わりまして、母乳中の内分泌かく乱物質と乳児の健 康影響に対する研究ということを行いまして、生後1年経ったときの甲状腺機能、免疫 機能、それから、成長発育等について検討してまいりました。 (スライド)  平成10年度の調査方法は、母乳を飲んでいる12ないし14か月の時点で採血し、免疫機 能、甲状腺機能を併せて成育レンキ発達等の指標を調べました。対象としまして、人工 栄養で育てられた同様の対象の検査を行いました。そして、第2子の調査を行うととも に、平成9年度のは4都府県ですけれども、それを17県1指定都市に拡大して調査を継 続いたしました。 (スライド)  実施の方法はインフォームド・コンセントで同意を得て、そして、詳細な問診等々を 行ったわけであります。 (スライド)  いろいろな条件で免疫機能が、特に免疫機能が動きますので採血に当たっては、その 子どもの状態を統一して、いろいろな免疫機能が動かないような状態で採血いたしまし た。 (スライド)  これもそうであります。 (スライド)  測定しました項目は、甲状腺機能T3、T4、FT4、TSH抗体。それから、免疫 機能としましてはいろいろな細胞マーカーを検査し、 (スライド)  併せてリンパ球、PHA、それから、インターロイキン2による幼若反応、それから 炎症がないかどうかということでCRP、免疫グロブリン、IgE、それから、卵、ダニ、 牛乳に対するRASTテストを測定いたしました。 (スライド)  4地区で20名ずつ、80名が対象になりましたけれども、最終的に同意をして母乳で血 液採取が評価されたのが57名であります。そのうち2名は母乳中の濃度は測定したけれ ども、母乳は全く与えていないということで、これは、人工栄養群に入れました。人工 栄養群は30名であります。ですから、母乳群55名、人工栄養群32名という形になりま す。 (スライド)  これは、甲状腺機能でありますけれども、サイロキシンの母乳群と人工栄養群の比較 であります。これからのデータはすべて母乳群と人工栄養群の比較が1つと、それから 推計したダイオキシンの摂取量とこういう甲状腺系の機能の相関関係を見るという形に なっております。これはサイロキシンであります。4.6ぐらいが正常値ですから、全く低 い症例はなくて左右差は全くございません。T3のデータは示しておりませんけれども 同じであります。 (スライド)  FT4についても同じでありまして、正常下限以下のものはありませんし、全く両群 では差を認めませんでした。 (スライド)  TSHでありますけれども、正常の上限が3.6ぐらいなわけですが、母乳群で約4名、 それから、人工栄養分群1名わずかに上昇しているものがありまして、この平均値の差 は有意差で母乳群でやや高いという値であります。しかしながら、その平均値は2.3です から全く正常の範囲ではありますけれども、両群で比べた場合ややTSHが高いという 結果でありました。 (スライド)  これは、ダイオキシンの推定摂取量とFT4の値ですけれども、全く相関は認められ ません。 (スライド)  同じくダイオキシンの推定摂取量とTSHの値ですが、これは全く相関を認めないと いう結果であります。 (スライド)  CD3、これはT3マーカーを持っているものですけれども、CD4、CD8、CD4 /CD8比、CD19、これはBセルマーカーですけれども、CD16NKセルであります。こ れで、差があるのはCD19、これはビーセルでありますけれども、いずれも正常な範囲 にはありますが、母乳群でやや人工栄養群に比べるとBセルマーカーの持っている割合 が有意に低いという結果でありました。 (スライド)  これは、アレルギー検査としてのPHのプラストジェネイシスは全く差がなくて、 RASTIgEの値も差がありません。それから、免疫グロブリンのIgGMAにおいても、全く両 群に差は認めませんでした。 (スライド)  推定摂取量とマーカーの相関でありますけれども、CD3、Tセル、それから、CD 4、ヘルパーTセルのニュアンスも相関がありませんけれども、TセルのCD8がダイ オキシン群の摂取が多くなるとやや高くなるという相関が見られます。その結果として CD4/CD8比はやや低くなるという結果であります。CD19についても、同じようにダイ オキシンの摂取量が多くなるとTセルのマーカーの数が少なくなるということでありま す。しかしながら、この範囲はいずれも全く正常範囲の中での動きであります。 (スライド)  これは相関でありますけれども、これはCD8の割合と推定の摂取量でありますが、 R=0.268で弱い正の相関が認められたということであります。 (スライド)  逆に、CD4/CD8比が結果としてはCD4が動いていませんので、やや低くなるという ことであります。 (スライド)  Tセルマーカーは推定摂取量に対して弱い負の相関を認めるという形であります。 (スライド)  今までの結果をまとめますと、甲状腺機能は全く各両群で差がなく、すべての自己抗 体は陰性でありました。TSHは母乳群が2.3、人工栄養群が1.8といずれも全く正常範 囲ではありますけれども、母乳群でやや高い傾向が認められました。相関に関しては、 摂取量とTSHの間には相関は認められませんでした。 (スライド)  免疫系ではCD4、CD8、それから、Tセルマーカーの割合が有意に動いていたと いうことで、それ以外の免疫グロブリン、それから、プラスジェネレーシス、IgE、牛乳 たんぱく、ハウスダストに対するRASTは両群に差は認めませんでした。 (スライド)  ダイオキシンの推定摂取量とCD8は弱い正の相関、結果としてCD4、CD8はや や有意な負の相関。それから、Tセルに対しては弱い負の相関が認められましたけれど も、いずれもこれは正常範囲の中での動きでありました。 (スライド)  以上、結論を要約いたしますと、ここにはデータを出しておりませんけれども、成長 発育には全く両群で差は認められておりません。いろいろな乳児の神経的な発達の評価 も全く差は認められておりません。  それから、リンパ球では一部のマーカーが母乳群と人工栄養群で差がありますけれど も、これは単なるダイオキシンによるものというよりは、母乳栄養自体による変化では ないかというふうに考えております。  今回の症例数は、55例と32例という比較的少ない量でありますので、現在、地域を拡 大しまして約400例を目標に同様の検討を行って、母乳が児の発達に影響がないかどうか ということを更に調査する予定にしております。  以上であります。 ○池田補佐  ありがとうございました。  ただいまの御発表に何か御質問ございますか。 ○柴芝委員  ありがとうございます。母乳群で4例がTSHが高かったという話ですね。これが生 後1年目となっておりますけれども、生下時もTSHは測定されているはずなので、生 下時のTSHはむしろ母乳と全く関係ない、母体から胎盤を経て入ってきているものの 影響をより反映すると思いますので、その4人の生下時のTSHがどうだったかという のは非常に大事なことだと思うのですけれども、その点いかがでございますか。 ○松浦研究員  これは、厚生省の、それから、本人のインフォームド・コンセントを取って、生後5 日目の濾紙血のスクリーニングの値をすべて集めております。そして、相関を取ってお りますけれども、全く1年目と生後5日目には相関はございません。 ○柴芝委員  4人の方は、それぞれ生下時は高くなかったということですね。 ○松浦研究員  はい。ちょっと一人一人について突き合わせて見ていませんでしたので、もう一回帰 って調べてみますけれども。 ○柴芝委員  是非、一人一人について突き合わせて見ていただくことが大事なのではないかという ふうに思うのですけれども。 ○松浦研究員  マスで見た場合の相関は全くなかったのですけれども、高いものは是非そうしてみた いと思います。 ○柴芝委員  是非そうしていただきたいと思います。 ○池田補佐  続きまして、鈴木先生お願いします。 ○鈴木(継)委員  2つ伺いたいことがあるのですが、1つは、ダイオキシン類の摂取量の推定というの はどうなさったか、もう少し詳しく教えていただいて、お示しいただいた推定量なるも のが、どの期間をどうカバーしている数値なのかがわかるようにしていただきたい。 ○松浦研究員  推定量は2つの方法で検討いたしました。1つは、生後5日、6日目、それから、30 日、150日、300日で母乳中のダイオキシン量を測定しております。しかしながら、その 期間の間の摂取量というのがなかなか難しいわけでありまして、1つは、多数の母乳栄 養群が大体平均してどの期間でどのぐらい母乳を摂取しているかというのを計算しまし て、それを合わせて濃度に掛け合わせました。それが1つであります。 ○鈴木(継)委員  そのダイオキシンとおっしゃった中身は、ダイオキシンと。 ○松浦研究員  ダイオキシン類19種と、それから、PCBの今回は3種であります。今やっているの は17種でありますけれども。 ○鈴木(継)委員  分かりました。 ○松浦研究員  もう1つは、母乳を最初に飲ませて、その後だんだん母乳中のダイオキシンが減って くるわけでありますけれども、その差は、ですから母乳中の差がお母さんから児に移行 したという仮定の下に、これをBMIで掛けて推定の摂取量としています。だけれども 2つとも非常によく相関しておりまして、大きなディスクレパンシーはありませんでし た。 ○鈴木(継)委員  それから、もう1つ伺いたいのは母乳群と人工栄養群というふうにセットされている わけですけれども、この2つの群のそれぞれの胎児の在胎期間中の暴露なるものが両方 とも同じ量であったかということをどうやって保障するのか、あるいは違っていたのか そこら辺をどうコントロールするのかに関して相当話としてはいやらしいんですよね。 そこをどうなさっているのか。 ○松浦研究員  これは、一番いいのは同じ母乳を取ったところから健康な人工栄養だけの対象を取れ ば一番よろしいのですけれども、まず人工栄養だけで育てる子というのは著しく少ない ということと、そういう健康な赤ちゃんから採血するというのは、やはりよほどいろい ろなコミュニケーションが取れている人でないとだめだということで、ここで医者で、 そしてかつ、この研究に携わっている岐阜大学の近藤教授、私、それから、東邦大学の 多田教授、この外来で、また関連病院で十分に説明して、かつ、人工栄養の人を一生懸 命探して30例を集めたわけで、そういう意味では、その4つの地区からの人工栄養では ありませんから、胎児期の暴露というのはちょっと評価に入れることはできませんでし た。 ○鈴木(継)委員  どうもありがとうございました。 ○阿部委員  甲状腺機能、柴芝先生の後に非常に僣越なのですけれども、ああいうふうにT3、T 4、TSHとかというものを測っても私は差は出ないと思うんです。更に400名測っても 恐らく差は出ないと思います。どうしてもお調べになるのであれば、内分泌ホルモンの 場合には抑制試験とか刺激試験をやらなければ差が出ないと思うのですが、甲状腺とい うのは9割取ったって血中のホルモン濃度は正常に作用するものですから、それをお調 べになっても、こういう方法では差は出ない。更に、400名追加するのは10mlの採血と すると赤ちゃんがかわいそうだと思いますけれども。 ○松浦研究員  これは、甲状腺だけのことではありませんし、今までの報告では、やはり一番敏感な TSHだけが動いているという報告がございます。ですから、特に主要ホルモンの場合 にはほとんど動かないと思いますけれども、TSHがちょっと正常の範囲ではあります が、わずかに差がありましたので。 ○事務局  ちょっと教えていただきたいのですが、人工栄養というのは結局、粉ミルクとかそう いうものだと思うのですけれども、その中のダイオキシン濃度というのはどうなってい ますか。 ○松浦研究員  人工栄養の中のダイオキシンは、ほとんど含んでおりません。 ○宇山(事務局)  それはチェックされているわけですね。 ○松浦研究員  はい。 ○宇山(事務局)  そうすると母乳中からのダイオキシン濃度の推定摂取量とT3あるいはCD8のレベ ルを見たときに、CD8で少し相関が見れたということですか。あの中には、人工栄養 のグループというのは入っていないのですか。 ○松浦研究員  含まれておりません。 ○池田補佐  それでは、ちょっと済みません、時間の関係もございますので、どうもありがとうご ざいました。  続きまして、IIIの3でございますけれども、ヒトの解剖検体の肝臓、脂肪、血液等各 種臓器等の調査研究ということで、分担研究者の慶應義塾大学の秦先生なのですが、本 日ちょっと先生は御都合が悪いということで山田先生にお願いいたします。 ○山田研究員  本日、秦がよんどころない事情で来れなくなりまして大変申し訳ありません。代わっ て山田が御報告させていただきます。スライドお願いいたします。 (スライド)  私たちは、ヒト剖検例の胆汁、血液を含む各種臓器の内分泌かく乱物質の蓄積状況を 調査いたしました。 (スライド)  目的は、日本人での内分泌かく乱物質の暴露状況をとにかく把握すること。そして、 将来的にこのデータベースを基に、食品あるいは環境中の値と比較検討して、特定の疾 患あるいは病態等と蓄積との関係を研究していきたいと考えています。 (スライド)  方法ですけれども、剖検症例ですのでインフォームド・コンセントを得てあります。 インフォームド・コンセントを得た剖検症例のほとんどすべての臓器あるいは血液、胆 汁を採取し、測定までマイナス80℃で凍結保存しました。現在までに約100例のファイリ ングが終わっております。  今年度は肝臓、腸間膜脂肪組織、腹壁脂肪組織、胆汁、血液について測定しましたの で御報告させていただきます。  方法に関しましてはダイオキシンからPCBはGC/MS、重金属類はICP、ブチルスズ化合 物はGC-FPD、塩素系の農薬はGC-ECDで解析しました。また、相関関係などはSPSS統計解 析プログラムで解析しました。 (スライド)  対象となった14症例ですけれども、年齢は20歳から80歳代まで多岐にわたっておりま すが、男性8例、女性が6例となっております。 (スライド)  分析した物質を簡単に紹介しますと、PCB、DDT、HCH、ヘキサクロロシクルヘキサン、 それから、クロルデン、HCB、それから、今回TCPメタンあるいはメタノールを測定して おります。ここにどういったものかということが書いてありますけれども、主に殺虫剤 系統が多いですけれども、後で詳しくお話ししますが、このTCPに関しては、実際に はポリマーの原料の一部であるということです。 (スライド)  もう一つは、ブチルスズ化合物に関しましてはTBT、TBT/MBTといった殺虫剤あるいは 防腐剤、これは魚の網に塗る薬だそうですが、こういったものを測定しました。また、 毒性元素として知られていますこういった微量元素あるいは必須元素、非必須元素につ いても測定しました。 (スライド)  まず、PCBに関しましてモノオルソとダイオルソのデータでちょっと見にくくて恐縮な のですが、IUPACで118、それから、ダイオルソの170と180の3つが主なPCBの蓄積で あります。これは、腸間膜の脂肪組織の測定結果でありますが、脂肪1g当たりのピコ グラムで表しております。この並んでいるPCBの順番は全く同じでありまして、このグラ フでは縦軸のスケールがここが30万になっております。腸間膜脂肪と腹壁脂肪は基本的 にほぼ同じ傾向を示しました。 (スライド)  肝臓に関してですが、肝臓も同様にファット1g当たりのピコグラムで表しますと縦 軸のスケールが10万になっていますので絶対値でみますと約3分の1なのですけれども やはりIUPACで118、170、180といった同じ分布を示しているということが分かりまし た。 (スライド)  このモノオルソとダイオルソPCBの相関を見たものですけれども、非常にきれいに相関 しておりまして、ダイオルソが高い人はモノオルソも高いということであります。 (スライド)  次に、微量元素を肝臓で測っております。これは、ドライウエイトでグラム当たりの マイクログラムで表していますけれども、いわゆる毒性元素であるカドミウム、水銀、 鉛に関しましては、特にリスクが問題となるような量のものはございません。  また、必須元素に関しまして亜鉛、銅以下並んでいますけれども、こちらも同様であ ります。 (スライド)  非必須元素ですけれども、こちらの方も特に最高値で見ましても問題になるような値 はございませんでした。 (スライド)  それから、やはり同様に肝臓からブチルスズ化合物を出しました。これは1症例ずつ 細かく書いてあるのでちょっと見にくくて恐縮なのですが、見ていただきたいのは、こ のTBT、DBT, MBTでありまして、(湿重量)グラムウエイト当たりのナノグラムで表して おりますが、一番毒性の強いTBTに関しましては、すべて測定限界の2ナノグラム以下と いうことであります。ところが、CRT、MBTに関しましては、DBTで8.3から81ナノグラム が検出されおり、MBTも同様に検出されております。  しかし、ここにすべてのスズ当たりのブチルスズ化合物のパーセントを示してありま すが、約8から28%と、ブチルスズが非常に蓄積している海の哺乳動物に比べるとヒト は極めて低い値でありまして、人間は恐らくこういったブチルスズ化合物を分解する能 力を持っているのだろうと推測されます。  一方、こういったMBT、DBTが出たということで、実際に日本人にブチルスズ化合物の 蓄積が濃度は低いですけれども、あるということであります。 (スライド)  次に、腹壁脂肪中の塩素化合物について示しています。まず見ていただきたのはPCBで す。それから、DDTの合計、それから、αβγを足したHCBといった農薬ですけれども、 それぞれヒトの脂肪の中に含まれているということがわかりました。 (スライド)  これは、上の5つがクロルデンの仲間でありまして、クロルデンの総和は湿重量1グラ ムあたり157ナノグラムです。それから、別の農薬でありますアルドリン、ディエルドリ ンがそれぞれ2および8ナノグラムです。  そして、最後にここにTCPメタンとTCPメタノールがありますが、これが人間の 脂肪から初めて出たということなのですけれども、濃度は低いのですが平均で6.3と4.6 ナノグラムということであります。 (スライド)  このTCPメタン、それから、メタノールというのは、もともとこのメタンの方はDDTの 不純物でありますけれども、アクリル繊維の原材料にも含まれているということです。 それから、このTCPメタノールの方は、ポリマーの染料の原料でありまして、このTCPメ タンがこちらTCPメタノールに代謝されてくるということで、このTCPメタノールの方は いわゆる抗アンドロゲン作用が知られている新しい内分泌かく乱物質だというふうに聞 いています。この2つが、人体の脂肪組織から初めて発見されたということになりま す。 (スライド)  これらの塩素化合物の濃度を高い方から順番に並べたものですけれども、やはり圧倒 的にPCBが高い。次に、DDT、HCH、クロルデン、HCB、TCPになります。こういった濃度全 体としては、直ちにリスクだということではないのですけれども、こういった低濃度な がら多くのものが人体に含まれているということが実際どういうふうに影響しているか ということは、これから考えていかなくてはならない課題だと思います。 (スライド)  これらの毒性金属あるいは農薬類との相関を出したもので、ちょっと見にくくて恐縮 なのですが、見ていただきたいのは例えばPCBと水銀あるいはPCBとクロルデンといった 幾つかの農薬あるいは重金属の間で相関が見られるということです。 (スライド)  実際それを解析いたしますと、PCBとクロルデンが0.718、あるいはPCBと水銀が0.676 と有意な相関を示しております。 (スライド)  最後に、ちょっと時間がないので簡単に触れますが、胆汁、肝臓、血液のダイオキシ ンの濃度をTEQで比較したもので、胆汁、肝臓、血液になりますけれども、これは遠 くから見ていただいても一目瞭然ですが、非常に胆汁、肝臓、血液というのは相関があ りまして、やはり血液で高い人は肝臓、胆汁も高いという傾向は明らかです。絶対値と しては1.1から37というTEQが出ております。 (スライド)  まとめですけれども、今回ヒトのインフォームド・コンセントを取りました剖検例か ら血液、胆汁、肝臓、脂肪などでPCBあるいは有機塩素化合物、毒性元素、ダイオキシン 類を検出したわけです。濃度としてはPCBが(最も)多くて、それ以下を示しておりま す。またTCPメタン、特にTCPメタノールといった新しい内分泌かく乱物質は、世界で初 めてヒトの体内から検出されたということです。  それから、一部の有機塩素化合物あるいはPCB毒性元素の暴露で一定の相関が見られま す。この意味するところは今後の課題だと思います  こういったものを全体でまとめますと、1個1個の体内暴露量自体はすぐにリスクと いうわけではないですけれども、複合的にどういう影響があるかということが問題であ ると思われます。  それから、今日はお示しませんでしたけれども、剖検例ですので、臨床データあるい は解剖において診断がついておりますので、そういった各疾患あるいは臨床化学データ との比較検討が今後できると思われます。  以上です。 ○池田補佐  ありがとうございました。  ただいまの御発表に御質問ございますか。 ○津金委員  剖検例では、やはり長いそれなりの病歴がありますよね。それによって、例えば病態 的に肝臓の病気だったら何らかの影響を及ぼす可能性がある、それから、病気療養中の 食習慣などもすごく影響を与えるだろうし、あるいは中心静脈栄養というものを受けて いるかもしれない、そういうようなことまで今後考えていかなければいけないのではな いかと考えます。  もう一つは、さっきの中心静脈もそうなのですけれども、治療の影響、例えば治療に はプラスチックの注射器などを使うと思うのですけれども、そういうものの影響もある 程度今後考えていく必要があるのではないかという気がします。今14例なのですが、今 後、例数を増やしていくときに、そういうようなことも検討も含めて解析をしていただ ければというふうに思います。 ○山田研究員  そのとおりだと思いまして検討したいと思います。いわゆる病院というのは結構、塩 素化合物というのは使っておりますので、そういったものが一般の住民と比べて病院に いる方が多いという可能性は勿論否定できません。とりあえず各臓器の濃度が測れるの はインフォームド・コンセントの下に解剖できるところなので、先生のおっしゃるとお り検討していきたいと思います。 ○池田補佐  そのほかございますか。 ○井上委員  全体の企画は存じませんけれども、監察医務院の症例などの比較は検討があるのです か。 ○山田研究員  まだ全く比較検討しておりません。 ○伊東座長  先生の教室は病理教室でしたね。測定はどこがやっていらっしゃるのですか。 ○山田研究員  先ほどスライドで出ましたように、研究協力者であります東京農大の渡辺昌教授のと ころで。 ○伊東座長  そこで全部やられているのですか。 ○山田研究員  いいえ、違います。愛媛大学の田辺先生が重金属あるいはPCB塩素系化合物を、福岡県 の飯田先生がPCBのモノオルソ、ダイオルソを測定しており、一部重なっています。 ○伊東座長  その研究室の測定のレベルということについては、先生は十分に御承知なのでしょう か。 ○山田研究員  もともと専門ではないのですけれども一応勉強しまして、そのスタンダードをどう取 るかとか、それから、ダブルチェックをどうするかというようなことについては、一応 検討しております。 ○伊東座長  それから、年齢的な影響、まだ症例が少ないから分析というのは難しいと思いますけ れども、この点も踏まえて、これは是非、今後おやりいただきたいと思います。 ○山田研究員  もともとダイオキシンなどは年齢とともに蓄積濃度が上がると言われておりますし、 是非、相関を見たいと思います。 ○池田補佐  それでは、時間でございますので、どうもありがとうございました。これで3番目の グループの御発表を終わらせていただきます。  ここで、15分間休憩とさせていただきます。この部屋の時計でいきますと3時10分ぐ らいから続きを開催したいと思います。 (休  憩) ○池田補佐 それでは、少し早いですがそろそろ続けてようろしゅうございますか、では開始いた します。 それでは、引続きIV番目の御要旨でございます「内分泌かく乱化学物質等、生活環境 中化学物質によるヒトの健康影響についての試験法に関する調査研究」、これは平成10 年度の当初予算によります厚生科学研究ということでございます。 最初にIV−1番ということで、こちらの研究の総括研究ということで、食品薬品安全 センター秦野研究所の今井先生からお願いいたします。よろしくお願いします。 ○今井研究員 ただいま御紹介あずかりました今井でございます。 (スライド) 私の班の課題はここに書いてあるように、主として内分泌かく乱物質の試験法の開発 ということでございます。 (スライド) 現在まで内分泌かく乱化学物質の試験法としては、一応in vitroの試験法としてEP A方式によったハイスループットを用いる方法、それから動物を用いる方法といたしま してはOECD対応の子宮肥大試験、それからハーシュバーガー試験、去勢雄ラット反 応試験といいますが、あるいは一般の毒性試験の中に組込まれたOECDテストガイド ラインTG407改良型というような試験がございます。 ただ、この試験法にそれぞれいろいろな問題点がございまして、例えばハイスループ ットに関しましては、ホルモン受容体のシグナルのレポーターアッセイであることから 内分泌かく乱化学物質のヒトでの性格を正しく反映していないということで改良法が必 要であります。 それから、動物を用いる試験法にいたしましても、投与法あるいは投与時期など細か なところでいろいろ各国で相違がございます。したがいまして、国際的には試験法の統 一などの改良が必要になってまいります。昨年まではプレバリデーション試験のみが終 了しておりまして、今年度から新しくバリデーション試験が始まります。日本がこれに 参加することになっております。 それから、もう1つは今ヒトの影響を調べる生物試験系が不足しておりまして特に胎 生期、新生児期の影響の把握、あるいは発がん促進効果、こういったものを検討するた めの適切な試験法がないのが現状で新たに独自の試験法の開発が必要になってまいりま す。 (スライド) そのようなことから当班の主な課題といたしましては、国際協力に基づいた既存の試 験法の実証、問題点の抽出、それから新たな試験法の開発、特に試験管内の試験法の強 化と、ヒトの影響を調べるための新しい動物試験法の開発ということ、それから、内分 泌かく乱化学物質に関する情報の収集とデータベースの作成というのが主な課題になっ ております。 (スライド) そういうことで、当班を一応4つの大きなグループ即ち試験管内の試験法の検証と開 発、代謝薬理に関する試験法の検証と開発、動物を用いた試験法の検証と開発、それか ら、情報収集調査グループに分けましてここに掲げました先生方がそれぞれ担当してい ただいております。 (スライド) まず、概要を説明いたしますけれども、試験管内の試験法としてはラットとヒト・エ ストロジェン受容体の種々の物質との親和性を検討し、特にヒトの受容体とラットの受 容体の比較を行っております。 それから、もう1つは雄ラットに特異なタンパクであるα2u-globulin というタンパ クの動きを指標にしてエストロジェン様物質がどういう影響を与えるかということを見 ております。 もう1つ、エストロジェンの核内受容体の転写因子NOR1を導入した細胞を用いて 内分泌かく乱化学物質の影響を検討し、この方法が試験法に使えないかということ、そ れから、もう1つは、性腺刺激ホルモンのような膜受容体を介したホルモンのアッセイ ができないかということで、その試験法の検討をやっております。 (スライド) それから、代謝薬理に関する問題としてはフェノール類のヒトにおける硫酸転移酵素 の遺伝的な多型性、これはヒトの個人差にかかわるような問題でありますけれども、そ ういったことを検討しております。 それから、もう1つは、エストロジェンの発がん性の原因物質としてその代謝物であ るカテコールエストロジェンが非常に問題になっておりますけれども、その代謝物の尿 中からの検出法の開発ということで、研究を進めております。 (スライド) 動物を用いた試験法といたしましては、代表的な内分泌かく乱化学物質を用いて、雄 の新生児に投与したときに、第3脳室の周囲の性の分化にかかわると言われている神経 核、これは性的二型核を呼ばれていますけれども、そこにどういう影響があるかという こと、それから、その後の交尾行動がどう変わってくるかということを検討しておりま す。 もう1つはマウスの胎児の胚を培養いたしまして、そこに農薬を添加して、胎児の中 枢神経系にどういう影響があるか、特に細胞の死。アポトーシスの関与、エストジェン レセプターの発現について調べております。もう1つは、代表的な物質ですけれども、 フタル酸エステルを妊娠動物へ投与して、胚への影響、母体の卵巣重量、子宮重量、あ るいは血中プロジェステロン等のホルモンへの影響を調べております。 (スライド) それから更に、先ほどちょっと申し上げましたけれども、中期発がん試験法を用いま していわゆる内分泌かく乱化学物質がどういうふうな影響を与えるかということを検討 し、現在のところ14物質中10物質が陽性であるというデータが得られておりますけれど も、更にノニルフェノールについても検討をいたします。 それから、もう1つは、卵巣摘出の雌ラットを用いまして、甲状腺に弱い発がん性を 示す物質を処理したのち、内分泌かく乱化学物質が甲状腺腫瘍の発現にどういう影響を 与えるかということを見ております。 (スライド) そういうことで今年度、あるいは更に将来的には各試験を単独でなくて、受容体原性 の影響を見るにはどうしたらいいかということ、あるいは複合、いわゆるカクテル効果 ですが、複合作用を見るにはどうしたらいいか、それからいわゆるザ・ウインド問題、 ある一定の時期にしか効果が表れないという内分泌かく乱化学物質の特徴をどの様にし て調べるかといった問題をどう解決するか。 また、低用量での反応が本当に存在するのかどうか、存在すればどういうふうな試験 法がいいのかということ、これらを総合してバッテリー試験法を樹立して最終的な判断 を行うということを一応戦略といいますか、基本的な課題として試験法を開発していく ことを目標に研究を進めたいと思っております。 (スライド) 最後に、内分泌かく乱物質のヒトの健康への影響に関する情報の調査により、これま で集めましたいろんな情報、あるいは我々が今まで研究してきた研究方法等、を集約い たしまして試験法の解説書の出版を現在予定しております。以上です。 ○池田補佐 どうもありがとうございました。それでは、ただいま御発表いただきました総括研究 の内容に従いまして、順次御発表いただくのですが。研究者の方の時間の都合等もあり まして、本日全部ではございません。明日に時間割がいっているものもございますので それはまた後ほど御説明をします。 ただいまの内容で何か御質問等ございませんでしょうか。座長。 ○伊東座長 今井先生、ザ・ウィンドウの問題ということはどのような化合物で具体的にどのよう なものが話題になっているんですか。 ○今井研究員 実際には標準化学物質として普通のエストロジェンを用いまして、新生児に投与した ときに、非常に若いときの3日ぐらいしか感受性のある時期がないと、というのは内因 性のホルモンが出てまいりますので、そうなると非常に感受性が弱くなってくるという ことでその辺をどういうふうに解決するかというのが1つの問題になっています。 あとは胎児に投与して、胎児への影響を見るときに、ある化学物質の場合には胎齢の 15日が一番感受性が高く、他の時期では余りその影響がないという成績もございます。 そういうことを考慮して適切な試験法がどうあるべきかというのを考えたいと思ってお ります。 ○伊東座長 ありがとうございました。 ○池田補佐 ありがとうございました。よろしければ次にまいります。研究者の到着が遅れた関係 で、続きましてIV−3の方にいっていただきたいのですが、IV−3「新規in vivo スク リーニング法開発のための研究」ということで「(α2u-globulin の生体動態と内分泌 かく乱化学物質のscreening 法への応用)」化学品検査協会の武吉先生にお願いしたい す。よろしくお願いします。 ○武吉研究員 化学品検査協会の武吉でございます。よろしくお願いいたします。 (スライド) α2u-globulin は成熟雄ラットの血清及び尿中に見られるたん白質でございまして、 肝臓で生合成され、その分子量はキドニー(Kidney)タイプで16キロダルトン、ネーテ ィブタイプで19キロダルトンと言われております。このたん白質は化学物質の28日間 反復投与毒性試験などでしばしば見られます、好酸性小体との関連で毒性学的な意義が 注目されているたん白質でもあります。 (スライド) ところで、このたん白質はその生合成や遺伝子の転写がエストロジェンの暴露により まして著しく減少することが知られており、また数々のホルモンにより影響を受けるこ とが知られています。 上の表は去勢した雄ラットのα2u-globulinレベルに対する影響ですけれども、その動 物に対してアンドロジェンであるとか、成長ホルモン、インスリン、コルチコステロー ルなどを投与すると上昇いたします。すなわちこれらのホルモンというのはα2u-globul in の生合成に必須のホルモンだということが言えるかと思います。 ところで下の表ですけれども、これは正常な雄ラットに対してアンドロジェンを加え た場合、ここは全く変化はいたしませんが、エストロジェンを加えた場合に著しく減少 することが知られています。 この性質を利用したしまして、我々はエライザ(ELISA)法によるこのたん白質の測定 方法を開発いたしまして、エンドクラインディスラプターのスクリーニング法への応用 の可能性について検討いたしました。 (スライド) 開発した定量方法ですけれども、ELISAサンドイッチ法を用いまして抗体はいずれもポ リクローナル抗体、ウサギのポリクローナル抗体のアフィニティー精製したもの、それ とIgGフラクションにパーオキシダーゼ標識をしたものを使っております。この測定 系の添加回収率は98.3%、精度はプレート内の変動は4.53〜13%ぐらい、アッセイ間の ばらきつは6.24%という結果でございました。 (スライド) この測定法を使いまして、正常な雄ラットの成長に伴う血清中のα2u-globulin の変 動を示したものがこのグラフでございます。α2u-globulin は5週齢ではほとんど血清 中には認められておりませんが、6週齢から血清中に出現し、8週齢から10週齢におい てほぼプラトーに達して以後同様のレベルで推移いたします。 この推移というのは、既に報告されているものと一致する結果でございまして、また 性成長と非常に呼応して増えてくることが言えるかと思います。 (スライド) DESの投与によってこのたん白質の血中レベルがどのように変動するかというのを 調べた結果ですけれども、実験にはIGSの雄SDラットを用い、8週齢時から投与開始 し、各群5匹の動物に対して1mg、10mg、100mg/kg/dayの用量で14日間投与いたしまし た。投与終了時に精巣重量、そして精巣の組織学的所見を観察いたしまして、また投与 期間中のα2u-globulin の変動を観察いたしました。 (スライド) これは投与終了時の精巣の相対重量です。対照群と1mg投与群では全く変化は認めら ませんが、10mg、100mg 投与群では有意に減少しておりまして、また用量依存的な減少 が確認されております。 (スライド) これは投与終了時の精巣の組織学的所見です。これはすべて等倍で示しておりますけ れども、対照群と1mg投与群では精細管の太さ等についてほとんど変化はありません。 しかし、10mg、100mg 投与群では用量依存的に精細管の太さが細くなる傾向、言わば萎 縮傾向が見られております。 (スライド) これは1mg投与群の精巣の拡大ですけれども、1mgの投与群でもこのようにパキテン 期の精母細胞の変性像が散見されておりました。 (スライド) これは投与期間中の血清のα2u-globulin の濃度を変動を示したものです。対照群の 変動はほとんどありませんけれども、DES投与群、いずれも3日目ぐらいから減少を 始めまして7日後、1週間投与して以降はもう10mg、100mg の投与群ではいずれも血清 中にほとんど検出できないぐらいに低下しております。 (スライド) これは投与終了時の精巣の組織学的所見と血清のα2u-globulin 濃度を示したもので す。このように認められた所見としましてはパキテン期の精母細胞の変性、精子放出抑 制、伸長精子の滞留や減少、そして、萎縮性の変化やLeydig細胞の増生、こういった変 化が見られておりまして、それも用量依存的にその程度は増強する傾向がございまし た。 この中で全く病理組織学的な所見が認められていない動物につきましても、α2u-glob ulin の濃度というのは、対照群に比べまして明らかに減少しておりました。 (スライド) 結論ですけれども、今回α2u-globulin の測定法確立をしまして、DES投与に伴う その変動を観察しました結果、このα2u-globulin の濃度変動というのはエストロジェ ニックな化学物質の性質を検出するための有用な方法になる可能性が予想されます。 また、この方法自体は正常な雄ラットを利用いたします。したがいまして、通常行わ れております毒性試験の範疇で測定し評価することは可能ですので、非常に有用な方法 になり得るのではないかと考えております。以上です。 ○池田補佐 ありがとうございました。ただいまの御発表に何か御質問ございますか。 ○黒川委員 そうしますと、将来的にはDESの比率がどの程度かという、そういうポジコンにD ESを使うということで進められているわけですか。 ○武吉研究員 ポジコンというよりも、このたん白自体がエストロジェニックなケミカルやエストロ ジェンなどで、低下するということが明らかになっておりますので、その性質を利用い たしまして、通常の例えば化審法の28日間反復投与毒性試験などの測定項目にすること によって、検出が可能ではないかと考えています。 ○池田補佐 黒川先生ありがとうございました。続いて阿部先生お願いします。 ○阿部委員 Diethylstilbestrol は、私たち乳がんの治療に昔使っていましたが、ちょうど1日50 mgという量を使っていたんです。これは人間にとっては超大量なんです。それでものす ごいはっきりとしたエストロジェン効果が出るです。ところが先生の系だとmg/kg でも 余り精巣などに差が出ていなかったと思うので、非常に感受性が悪いのではないかとい う気がするんですけれども、いかがでしょうか。 ○武吉研究員 どうしても正常な動物を使っていますので、ホルモンのフィードバックがかなり掛か ってきます。したがいまして、雄のラットでもなかなか影響が出ないというのが今の データからも言えるかと思うんですけれども、病理組織学的な所見ではやはり1mgでや っと見られる程度ということが言えるかと思います。 ○池田補佐 ありがとうございます。続けて岩本先生お願いします。 ○岩本委員 ちょっとお伺いしたいんですが、内分泌のFSH, LH値だとか、テストステロンレベルは 今日お示しになっていないんですが、いかがでございますか。 ○武吉研究員 今回の実験系では測定しておりません。 ○岩本委員 そうですか。その時点でどういうFSH, LH値が抑えられて、どうなのかというこという ことは大変興味があるもんですから。それから、精巣自体のフローサイトを見たりとか α2u-globulin の濃度だけではなくて免疫、それから組織学的なことだけではなて、ほ かのパラメーターもちょっとお教えいただけたらと思って。 ○武吉研究員 わかりました。 ○池田補佐 続きまして、座長お願いします。 ○伊東座長 DESのような非常に強いものでの影響力より、むしろ我々の問題にしているのは、 例えばビスフェノールAであるとか、ノニルフェノールであるとか、そういうのは非常 に弱いものでどういう影響が出るかということを調べたいんですね。 そうすると、そのような弱いもので、どの程度のレスポンスがあるかということを先 に見ていただかないと、これが利用できるかどうかということについては問題があると 思うんですけれども、その点は先生いかがお考えですか。 ○武吉研究員 ビスフェノールAにつきましては現在実験を行っている途中でございまして、28日間 の投与を行いました。2mg、20mg、200mg/ kg/day で28日間投与しておりますけれども この用量で一般状態には全く影響は出ません。 この用量で見た場合に、現在、肝臓でのメッセンジャーRNA(mRNA)の発現につい て結果が出ているんですけれども、その結果では最高用量の200mg 投与群ではメッセン ジャーRNAの発現抑制が見られるということが現在わかっております。今回はまだ データ整理ができていませんので持ってきていません。 ○池田補佐 ありがとうございました。それでは、申し訳ありません、時間でございますので次に いかせていただきます。ありがとうございました。 それでは、1つ戻らさせていただきましてIV−2でございますが「去勢雄ラットの前 立腺複葉における細胞動態を指標とした抗アンドロジェン活性評価系の検討」、三菱化 学安全科学研究所、永井先生よろしくお願いいたします。 ○永井研究員 OHPでお願いします。 プログラムの演題では去勢ラットの前立腺複葉における細胞動態を指標とした抗アン ドロジェン活性評価系の検討となっていると思いますけれども、平成10年度はエストロ ジェンリセプター及びアンドロジェンリセプターを、ERあるいはARと略しますけれ ども、受容体結合試験法の評価を行いましたので、今日はその結果を中心に述べさせて いただきます。 また、抗アンドロジェン活性評価系の検討につきましては、その試験計画の概要並び にこれまで実施した成果の一部についてお話ししたいと思います。 受容体結合試験の成績は、種々の試験法の中で最も基本的な指標となりますけれども 今回ER及びARの特異性の検討をまず行いました。また、本研究班がヒトの健康影響 に対する試験法の開発を目的としておりますので、ERにつきましてヒト、ラット間の 種差について検討をいたしました。 この試験成績は本研究班の各試験分担研究に対して、基礎的なデータを提供し得るも のと考えております。 (OHP) このグラフはラットのER、ARの特異性を検討した成績でございます。ラットER はラットの子宮から、ARは前立腺複葉から受容体を調製しております。リガンドはト リチウムで標識したエストラジオール及びトリチウム標識のテストステロンでございま す。 (OHP) まずERの方ですけれども、×印で示しましたE2エストラジオールはIC50が10−1 0 程度から結合抑制が認められ、IC50が約10−9Mでございます。 一方、DESは若干E2よりも親和性が強い、高い結果でございました。また、▲で 示しましたテストステロン、それから、□のDHTにつきましては10−5Mから阻害が 認められております。 一方、エストロジェン活性を持つことが知られております ビスフェノールAにつきましてはIC50が3.0 ×10−6M程度でございました。 ARの方ですけれども、▲で示しましたテストステロン、それから、□のDHTはそ れぞれ3×10−10 M程度のIC50でございました。 DHTの方が若干強い親和性を示します。 一方、DESにつきましては3×10−6程度から抑制が始まり、このような結果が出 ています。 注目すべきはビスAでIC50がアンドロジェンリセプターに対しても3×10−6程度と ほとんどエストロジェンリセプターに対する親和性と同じような親和性を示しました。 なお、ここには示してはおりませんけれども、E2エストラジオールのアンドロジェン リセプターに対する結合親和性は、おおよそIC50が3×10−8この辺りがIC50、更にプ ロゲステロンのARに対する親和性は3×10−7程度のIC50と、プロゲステロンはERに ついては全く結合を阻害しないのに対して、ARについてはそのような結合親和性を示 すということで、ラットARにつきましては、特異性がERに比べて弱いという結果が 得られております。 (OHP) これはヒトのER、ラットERについて比較したデータです。 それぞれデータはIC50、括弧内の値はE2に対する相対活性を示しております。まず ラットのERとヒトのERαですけれども、E2,DES、E3、ゲニスタイン、タモ キシフェン、プロゲステロンについて評価いたしました結果ですけれども、両者でほと んど親和性に差はありません。 一方、ヒトのERα、それから、ERβの差ですけれども、これもゲニスタインを除 いて両者でほとんど差がありません、ゲニスタインは日本人がよく食する大豆中の代表 的なファイトエストロジェンですけれども、ERαに対してはIC50がおおよそ3×10− 8M、それからβに対しては4×10−9Mということで、おおよそ10倍程ERβに対し て親和性が強いということがわかります。 これはERについての結果ですけれども、ARについても今後検討していく予定でご ざいます。 (OHP) 次にアンドロジェン評価系の検討について話を進めます。これはin vivo のアンドロ ジェン、あるいは抗アンドロジェンの評価の代表的なハーシュバーガーアッセーの試験 の例です。 9週齢で去勢した動物に1週間後の10週齢から7日間テストステロンプロピオネート を投与いたしました。最終投与の翌日に解剖しました。ここに示しましたのはその精の う及び前立腺腹葉の重量です。これらの臓器重量は比較的よい指標でありまして、テス トステロンプロピオネート0.1mg/kgで有意差がついております。 なお、ここにお示ししました前立腺複葉のRDS誘発率、これは更に濃度の低いところ テストステロンプロピオネート、0.03mg/kgから有意差がついております。そういった意 味で、このRDS誘発率は非常にいい指標であるんですけれども、ただ、BRDUの免疫染 色あるいは測定が肉眼的に鏡検で数えなければいないということで、多大な労力を要し ます。そこでこれを簡便に評価する系ができないかということで検討を行いました。 (OHP) これは前立腺複葉の細胞動態、増殖あるいはアポトーシスをフローサイトメーターで 解析することによって迅速かつ簡便な抗アンドロジェン系、あるいはアンドロジェン活 性評価系を確立することを検討しております。 測定項目としましては、RDS誘発率を指標とする細胞増殖、アポトーシス、それから 細胞周期の解析を行っております。 (OHP) それぞれのパラメーターはこのような形で変動するものと思われます。細胞増殖につ きましては去勢後いったん回復期間をおきまして、それから、検体を投与します。 一方、アポトーシスでは、去勢によってアポトーシスが進みますので、去勢後すぐに 検体を投与するといった系になると思います。 基礎検討はin vivoでは効率的ではありませんので、現在前段階として樹立された細胞 株であるヒト前立腺がん細胞のLNCap細胞を用いた検討を行っております。 また、前立腺複葉をフローサイトメーターで解析するには細胞を単一化する必要があ りますので、その単一化条件について検討してまいりました。ほぼ単一化条件について は条件が決まりましたので、その条件をお示ししたいと思います。 (OHP) 種々の酵素を使いまして細胞の分散検討を行いましたけれども、最終的にまずEDTA で処理し、その後コラゲナーゼタイプ1で処理するという、この系で非常に生存率の高 い細胞を効率よく回収することが可能になりました。 細胞の収率は非常に重要でありまして、収率が悪いと例えば、動物3匹からまとめて 1例にするとかいったことをやらなければいけませんけれども、この方法によりまして 1匹から1例を取ることが可能となりました。 以上、このような分散系を使いまして、細胞増殖、アポトーシスの系を検討していく 予定でございます。以上です。 ○池田補佐 ありがとうございました。それでは御質問、青山先生お願いします。 ○青山委員 リセプターバイディングアッセイで、ビスフェノールAのアンドロジェンリセプター に対するIC50と、エストロジェンレセプターに対するIC50はほとんど同じぐらいだった ということでちょっと驚いたんですけれども、ということはこれに対応してビスフェ ノールAのイフェクトというのは、もしかするとアンドロジェン作動系をもう少し考え なければいけないというようなことにつながりませんか。 ○永井研究員 可能性はあるかと思います。ただ、あくまでこれは受容体への結合濃度を見たところ でありまして、その後の標的遺伝子への結合、誘導についてはわかりませんので、少な くとも受容体に結合するところではどの程度の力があるということです。 ○池田補佐 そのほか御質問ございますでしょか。 ○宇山(事務局) 今の先生の御質問にも関連するのですが、ヒトのERを用いた実験で例えば最大結合 量とか結合定数などを求められて、ビスフェノールAの受容体へのバインデイングとい うのは競合的だというふうにお考えですか、それともバインデイングサイトは別にある と考えた方が妥当なのでしょうか。 ○永井研究員 基本的には受容体結合試験は一定の受容体を使いまして、その結合を見ますのでそう いった意味では同じ受容体を競合的に争っている、そのように考えております。 ○宇山(事務局) それは、アンドロジェン受容体に対しても、同様のバインディング形式だということ でしょうか。 ○永井研究員 そうです。ただ、使っているリガンドが今回テストステロンですので、そのほかDHTと かR−1881 といったものもありますので、何種類か今後リガンドを変えて検討してみた いと思っておりますけれども。 ○宇山(事務局) もう1点、ヒトのERαリセプターを用いられたということですけれども、もともと 遺伝学的にラットのものに似ているということが、薬理学的に類似した性質をサポート しているのかというのが1点と、ここのERαリセプターの中で、例えば、日本人と黒 人であったり外人であったりそういうヒトの間の相同性なりアゴニストに対する感受性 が異なっている可能性というのがあるのかないのか、もし、わかっていれば教えていた だきたいんですが。 ○永井研究員 まず、ラットのテストロジェンリセプターですけれども、これはもともと昔からあっ たものがエストロジェンリセプターのαと言われておりまして、ラットのエストロジェ ンは基本的にαと考えております。 そういうこともありまして、ラットのERを用いた場合と、ヒトのαを用いた場合と で結果がほとんど違いがない、ですから、レセプター自体も比較的保存されている、そ んなに大きな差はないんではないかというふうに考えています。 ○池田補佐 それでは、続いて井上先生。 ○井上委員 質問ではなくて、ただいまの御質問に対するコメントなんですけれども、ちょっと補 足しておきますけれども、基本的には永井先生がおっしゃったことでよろしいと言えば よろしいんですけれども、バインディングのメインによってこういったケミカルライガ ンドはバインディングの仕方で違うことがわかっているんです。 それの比率だとか、そういったことはリセプターの方をいろいろ削ったりする実験が 今、盛んに行われていまして、そういうことによってケミカルライガンドによる毒性が 出てくるんです。そんなことが研究の対象になっているということ。 それから、スピーシイズ・スペスィフィシティについては、基本的には、むしろこの エンドクラインデイスラプター問題では、大前提は非常にホモロジーが高いということ です。 しかしながら、そうでない場合もあるし、ケミカルライガンドの場合には違っ た結び付き方をする可能性もあるので、そこのところを注意して調べようというような 考え方で進んでいると思うんです。永井先生の御検討もそういう方向だと思います。 ○池田補佐 ありがとうございました。山崎先生どうぞ。 ○山崎委員 小さな質問なんですけれども、先ほどジェニステインがヒトのERβですか、10倍高 い値が出て、ほかの例えば大豆のイソフラボン、ダイゼインみたいなものにも一般的な 性質なのか、あるいはジェニステインだけ特異的だたったのかという。 ○永井研究員 それについてはまだ調べておりません。 ○山崎委員 わかりました。 ○池田補佐 よろしゅうございますでしょうか。それでは、どうもありがとうございました。 続きましてIV−4番のテーマでございますけれども、「哺乳動物培養細胞を用いた内 分泌かく乱物質検出系の検討」ということで国立がんセンター研究所の塚田先生よろし くお願いいたします。 ○塚田研究員 最初のスライドお願いいたします。 (スライド) 培養細胞を用いました試験法というのは一般に生物固体を用いるよりも簡便であり、 しかも、効果判定のエンドポイントが生物活性であるといった利点があるわけです。 一方、その生物反応が問題とされておりますような生殖の異常、あるいは発がんとい った現象と結びつくのかどうかという点が明瞭でないといった限界もあります。 したがって、培養細胞を用いました試験系作成の目的の1つは、数多くの物質につき ましてその生物作用を簡便にスクリーニングできるような、比較的ハイスループットの 試験法とすることであります。 また、バイオアッセイであるということの利点を生かしまして、特定のホルモン作用 に限ったスクリーニングではなくて、もう少し広い範囲の影響を見られるような測定系 を得ることがもう1つの目標であります。 (スライド) この研究の目的は今、申し上げましたような培養細胞の利点を生かした、簡便な検出 系を開発することではありますけれども、私どもは特に膜受容体を介するシグナル伝達 系への影響を検出したいと思っております。 内分泌かく乱化学物質の作用としまして、現在では主にエストロジェンやアンドロジ ェンのような、核受容体に結合するいわゆる脂溶性ホルモンの作用が重要視されており ます。しかし、このような脂溶性ホルモンのホルモン作用につきましては、受容体の結 合能を測定することにより、ある程度かく乱作用がスクリーニングという意味ではでき るわけであります。 一方、膜受容体を介する細胞内シグナル伝達は、多くの経路が複雑に絡み合っており まして、外来物質が作用するような標的部位というのも、数多く存在するであろうと考 えられます。したがって、特別な受容体にとらわれない検出系が必要と考えられます。 (スライド) 私どもが親株として用いましたPC12細胞と申しますのは、ラットの褐色細胞種由来の 培養細胞であります。この細胞は神経の分化とシグナル伝達という点から非常によく研 究されている細胞で、サイクリックAMPの刺激等によって形態も変化いたします。 この細胞はまた「(vasoactive intestinal peptide ,VIP)」というホルモンを 産生しておりまして、VIPプロモーターからの転写を強力にサポートいたします。そ こで、この細胞にヒトのVIP遺伝子のプロモーターを、大腸菌のLacZ・ベータ・ガラ クトシダーゼの遺伝子につないだキメラの遺伝子をつくりまして、これを細胞に導入し 安定した形質転換細胞を得ました。 このVIPプロモーターには、サイクリックAMPやCカイネース系をアクティベート すると言われている、TPAに反応して転写が促進するようなエレメントが乗っており ます。 この細胞の中のサイクリックAMP等を上げてあげますと、この遺伝子からベータ・ ガラクトシダーゼが出てきまして、この酵素活性を測定することによって転写活性を見 ることが出きるわけですが、この酵素活性の測定につきましては数多くの合成基質があ りますので、用途に応じて適切な気質を選ぶことができます。 (スライド) これはPC12‐VG細胞という、先ほどの細胞をPC12‐VG細胞と呼んでいるのですけれど も、これを X‐GAL という発色色素で染めたものであります。上は刺激をしていない状 態で、下はフォルスコリンという植物アルカロイドで細胞内のサイクリックAMPを増 やすアルカロイドですが、これで刺激をしますとこのようにひとつひとつ粒々に見える のが細胞ですが、100 %の細胞が大腸菌のベータ・ガラクトシダーゼを強力に発現いた します。コントロールではほとんどのこの発現は認められません。 (スライド) これは酵素の基質をONPGという基質を使いますと、ONPGというのはベータ・ガラクト シダーゼで黄色い色素に分解されるわけですけれども、それを吸光度計で定量いたしま すと、縦軸が吸光度で横軸は刺激時間を示しますが、このように刺激約6時間後に最高 になり、その後低下いたします。 (スライド) このような方法で、例えばサイクリックAMPのアナログであるとかフォルスコリン またPC12-VG 細胞にはVIPのリセプターがありますので、VIPを投与しましてもこ のように用量依存性にベータ・ガラクトシダーゼの活性が上昇してまいります。 また、そこにTPAを加えますとその誘導は更に増強されます。 (スライド) こういった測定はここに示しますような96穴のプレートに細胞をまくことによって簡 便に測定することができます。すなわち測定前日、アッセイの前日に細胞を一定量まい ておきまして、次の日にテスト物質を加えて約6時間培養した後、培養液を反応液と交 換して、すぐに吸光度測定に供することができます。 (スライド) このようなPC12-VG 細胞はAカイネースとかCカイネースといった既知のキナーゼを 介するシグナル伝達のみならず、作用機序不明のものに対しても反応する場合があるこ とをこれから2例お示しいたします。 1つはスタウロスポリンという、これは放線菌がつくるアルカロイドで、これはある 種の細胞に作用させますと、この左のような細胞が右のように3週間掛かるわけですが 大きな形態変化を起こさせるものであります。しかし、その作用機序はよくわかってお りません。 (スライド) このスタウロスポリンで先ほどのPC12-VG 細胞を刺激しますと、例えばフォルスコリ ンを一定量にしておいて、スタウロスポリンを増やしていきますと、このようにインダ クションが増強されます。 (スライド) これは京都大学の宮越先生との共同研究でありますけれども、最近問題となっており ます磁場の生物作用に関してですが、強い低周波の変動磁場をこの細胞に加えますと、 ベータ・ガラクトシダーゼの活性が上昇してまいります。 (スライド) 更に、このPC12-VG 細胞というのは、この細胞が本来持っていない受容体であっても アデニレートサイクレースと共役するような受容体を強制的に発現させますと、そのリ ガンドに反応するような細胞を作製することができます。実際この図に示しますように ヒトの黄体形成ホルモンの受容体をこの細胞に強制発現させますと、このホルモンに対 して反応してベータ・ガラクトシダーゼの活性があがるという細胞を得られました。 以上のようにこのPC12-VG 細胞は既知のキナーゼのみならず、作用機序不明の刺激に 対しても反応するために、化学物質のような非生理的な物質の生物活性をスクリーニン グするのに適しているのではないかと思っております。 (スライド) 一方、VIP遺伝子プロモーターからの転写活性というのはPC12-VG 細胞では非常に 高いわけですけれども、別の種類の培養細胞を親細胞として使うためには、別の遺伝子 プロモーターを使う必要があります。 これには、ほとんどすべての細胞で発現しており、多くの刺激によって誘導される遺 伝子neuron‐derived orphan receptor のプロモーターが適切ではないかと考えており ます。 (スライド) このスライドは、この左側にNOR-1 という今、申し上げました遺伝子のフォルスコリ ン、あるいはTPAで刺激した場合の誘導を示しておりますが、中央右はNOR-1とよく 似た遺伝子の誘導を示しておりますが、このようにこれらの遺伝子はAキナーゼ系やC キナーゼ系を介する刺激で非常に強い誘導を受けます。 (スライド) また、このNOR-1 遺伝子もやはり変動磁場の影響を見ましたところ、これはメッセン ジャーRNAのレベルでありますけれども、やはり強い変動磁場を加えますと誘導が起 こることが確認されました。今後この遺伝子プロモーターを用いた簡便な検出系の作製 を試みる予定であります。 (スライド) 以上、結果をまとめますとPC12-VG 細胞というものを作製して、植物アルカロイドや 磁場の生物作用を検出することができました。また、この細胞にホルモン受容体を強制 発現させますと、そのホルモン活性の検出を容易に行うことができました。 最後に、NOR-1 遺伝子のプロモーターを用いることにより、PC12-VG 細胞だけではな く更に広範囲な細胞種を用いた反応系が作製できる可能性があることがわかりました。 以上です。 ○池田補佐 ありがとうございました。ただいまの御発表に何か御質問は、阿部先生お願いいたし ます。 ○阿部委員 なかなか面白い発表だったと思いますが、LHのレセプターですね、あれが発現させ たと、あれはたしか膜レセプターですが、エストロジェンレセプターのような核内のレ セプターを発現することはできますか。 ○塚田研究員 できますが、ただ、この細胞はもともと持っていると思うんですが。 ○池田補佐 そのほかございますでしょうか。 ○伊東座長 一番最初にお話しされましたけれども、やはりin vitroとin vivo とのディスクレパ ンシーというか・・・・ですから、このアッセイがin vivo の系ではどういうふうにな るかということのアプローチということは、どういうふうにお考えですか。 ○塚田研究員 このアッセイの位置付けは、やはりプレスクリーニグということで、ある程度機序は よくわからないけれども、何らかの生物作用のあるものをまずスクリーニングして、そ の後何かそこで見つかったものに関しましては、やはり動物実験をやらなければいけな いと思うんですが、その場合に何を指標として見ればよいかということは現在のところ よくわかりません。 やはり、ある物質がある細胞に影響を与えた場合に、どのメカニズムを介して生物作 用を発揮しているのかということを、生化学的に抑えるというところが次のステップと してどうしても必要なのではないかと考えております。 ○池田補佐 よろしゅございますか、それでは、どうもありがとうございました。 次の御発表でございますが、一方遅れておられますので、IV‐6の方にいかせていた だきます「内分泌かく乱化学物質のエストロゲン代謝に及ぼす影響とそのスクリーニン グ法の開発」ということで、食品薬品安全センターの鈴木先生お願いいたします。 ○鈴木研究員 内分泌かく乱化学物質の暴露は複雑で、また、複数の化学物質が関与することから、 個々の物質を測定して暴露量を積算するのは難しいと考えられます。そこで我々は内分 泌かく乱化学物質のエストロゲンへの影響をエストロゲンによる発がんに的を絞り、尿 中リスクマーカーの検出で全体をとらえようとしております。 発がんのリスクマーカーとしては、エストロゲンの2- あるいは4- が水酸化を受け てカテコールエストロゲンになる経路と、15α- あるいは16α- が水酸化を受けて代謝 されるこの3つの経路の代謝物が考えられます。 我々はカテコールエストロゲンの経路と、15αの経路について検討を行っております が、今日は主にカテコールエストロゲンを経て尿中にN−アセチルシステイン抱合体と して、排泄される経路についてお話しいたします。 カテコールエストロゲンはエストロゲンの主代謝経路ですが、一部は酸化されまして カテコールエストロゲンキノンになります。このカテコールエストロゲンキノンがDN Aを修飾して、それが発がんに関与すると考えられています。この際生成しましたカテ コールエストロゲンキノンは、グルタチオンとも同様に反応しまして抱合体を生成しま す。これは更に体内で代謝を受けまして、N−アセチルシステイン抱合体、いわゆるメ ルカプツール酸として尿中に排泄されます。 これらのものが、したがってリスクマーカーとして用いられると考えられるわけです が、これまでこれらのものの定量法がありませんので、測定されていません。我々は既 にこの化合物、3つの化合物を標品として合成いたしました。 更に今回は、このカテコールエストロゲンは大部分がメチル化を受けて排泄されるこ とから、これらの化合物もメチル体として一部排泄されると考えられますので、この化 合物のモノメチル体の合成も行いました。 更に、この3つの化合物とこのうちの1つのモノメチル体について免疫原を合成し抗 血清を得ました。この得られました抗血清を用いまして2OHE1 1SRと2OHE1 4SRがラット の尿中、エストロゲンを投与したラット尿中、に排泄されているということを今回はじ めて証明いたしました。 (OHP) まず、メチル体の合成なんですけれども、この2つの両方にメチル基を入れるのは簡 単なんですけれども、1つずつ入れるというのは難しいわけです。しかし、ここの3-位 のOHのHと、このカルボン酸のOHが脱水縮合して無水酢酸の存在下、7員環ラクト ンを形成するということがわかりましたので、その性質を利用して合成いたしました。 このように無水酢酸で処理しますと、この3- の水酸基はこちらのラクトンの方に取 り込まれますので、4- 位のOHだけがフリーになってまいります。そこで、これをジ アゾメタンでメチル化して加水分解して目的とする4だけにメチル基の入った化合物を 得ました。 (OHP) 次に3メチル体の方なんですけれども、これは無水酢酸はピリジンの存在下、アセチ ル化の触媒となることがわかっていますので、ここでアセチル基を、ピリジンを加える ことによって4- 位にアセチル基を、導入して保護いたしました。それと同時に無水酢 酸がありますとラクトン化が起こります。 このアセチル基を壊さないように、今度は酸で加水分解いたしますとここが切れてメ チルエステルができます。そこでフリーになりましたこの3- のOHだけをジアゾメタ ンでメチル化した後、アルカリでこのカルボン酸のメチルエステルとアセチル基を加水 分解して3メチル体を選択的に合成することができました。 (OHP) そこでこの性質について検討を行いました。4-OHE1-2SR をカテコール-O-メチルトラ ンスフェレーズ、これはメチル化の酵素なんですが、これはラットのサイトゾームから 得たものを使用しました。S-アデノシルメチオニン、これはメチルドナーですが、これ の存在下、マグネシウムイオンと共存いたしますとこの場合3メチル体のみが得られま した。 これはこちらがバルキーなのに、こちらだけに入るというのは興味深い結果と思われ ました。同じ条件で4-OHE1 、ここ置換基にないものをやりますとこの場合4メチルだけ が入ることがわかりました。この4-OHE1 の方は既に報告されています。 (OHP) ここで、これは今の結果を図で示したものですが、こちらはインキュベーションの時 間で、こちらはパーセントで出ています。こちらは原料の減少で、こちらがこの場合は 3メチル体のみ生成しますが、4-OHE1の方では逆に3メチル体もわずかに生成しますが 4メチル体がメインに生成いたします。 (OHP) 次に、先ほどの3つのN−アセチルシステイン抱合体と今、得られました4-OHE1の3 - メチル体、この4つの化合物の定量法を考えました。 これらの化合物は量的に非常に少ないし、体液中には類似の化合物がたくさん認めら れます。更にこのものはカテコール構造を持っていますので、化学的に非常に不安定で あるということから、通常の測定法では無理で免疫化学的測定法を用いて測定すること にいたしました。 そこで、これら4つの化合物の免疫原の合成を行いました。免疫原はここのカルボン 酸をそのまま利用することにいたしまして、N−ヒドロシキコハク酸イミドと水溶性カ ルボジイミドの存在下活性エステルとし、それをBSAと反応させて免疫原を得まし た。 これらの化合物についても同様にこのカルボン酸を利用して免疫原を合成いたしまし た。このハプテンとBSAとの結合モル比は、大体このぐらいの値でいい値が得られま した。 (OHP) そこで、この化合物についてウサギに1匹当たり、ウサギの背中にコンプリートのフ ロイントアジュバンドで乳化して月2回インジェクションしました。しかし、この4つ とも抗血清は得られませんでした。通常この条件でエストロゲンの抗血清は簡単に得ら れるのですけれども、得られなかったので、そこで2倍の量を使って同じようにやって みました。そうしますと、この化合物だけ3匹のうち2匹に抗体価の上昇が認められま した。そこで以下はこの2-OHE1-1SRから得られた抗血清について検討いたしました。 (OHP) 抗血清はプロテインAで精製して、ラットのピューリファイドIgGを得ました。これは アフィゲル10に固層化して、これは残っている活性基を壊したんですけれども、それで イムノアフィニティーカラムを得ました。このイムノアフィニティーカラムに先ほどの カテコールエストロゲンとN−アセチルシステイン抱合体を一定量添加しまして、その 測定法について検討した結果、1ナノから15ナノの間で一斉分析が可能なことが明らか となりました。 そこでラットにエストラジオールを投与して、72時間尿を集めその一 定量をろ過した後にイムノアフィニティーカラムにアプライしました。リン酸バッフ ァーで洗って余分なものを全部除いた後に、目的物を95%のメタノールで溶出いたしま した。得られました残査をHPLCで分析しました。検出は電気化学検出器で行いました。 (OHP) これが得られた結果なのですけれども、ラットにE2を5mg/Kg、メスですけれども投 与し尿をイムノアフィニティーカラムで分析いたしました結果、このカテコールエスト ロゲンのほかにここに示しました2つのN−アセチルシステイン抱合体を検出すること ができました。これは今まで報告されていませんで、今後これらについて更に検討して いきたいと思っております。以上です。 ○池田補佐 ありがとうございました。ただいまの御発表に何か御質問ございますでしょうか。特 にないようですのでどうもありがとうございました。 それでは、引続きまして次の研究発表ということでございますけれども、IV−7とい うことで「内分泌かく乱化学物質の胎生期及び新生児期暴露による視床下部神経核の構 造変化と生殖異常」、食品薬品安全センターの長尾先生にお願いします。 ○長尾研究員 スライドお願いします。 (スライド) 胎生期及び新生児期暴露による視床下部神経核の構造変化と生殖異常についてお話し させていただきます。 (スライド) 視床下部神経核の中に、SDN−POAセクシャル・ディ・モルフィックニュークレ アス・イン・ザ・プレ・オプティック・エリアがあり、これはラットの内側視束前野に あります性的二型核でSDN−POAは雄ラットの性的な覚醒中枢といわれています。 もう1つ雌の方は、AVPVN-POAという略で同じように英語で書いてありますけ れども、これは前腹側脳室周囲にあります神経核で、雌ラットの性周期を制御すると言 われております。 (スライド) このSDN−POAですが、ラットの場合雄の方が体積は雌より大きくて約五倍、ア ンドロジェン、エストロジェンは中枢の発達の過程で神経細胞の数や大きさを調節する 働きがあるということで、その機序については下に書いてあります。移動してくるニ ューロンに対して選択的に働いて集合するように誘導するということ、それから、細胞 死をアンドロジェンが抑えるように働くという2つの作用が、このSDN−POAの大 きさに影響を与えると考えられております。 (スライド) 一方、AVPVN-POAという雌の方なんですけれども、これは雄よりも大きくて約 二倍、ゴナードトロピンの周期的分泌調整に関与し、アンドロジェンがAVPVN-PO Aのニューロンの細胞死を促進すると言われております。(スライド) 視床がありましてこれが視交叉シコウサの部分ですけれども、ラットのSDN−PO Aというのはこの部分にあります。ラグビーのボールのような形をしております。 一方、雌の方が大きいというAVPVN-POAというのはもう少し前にあります。 (スライド) 今度はコロナルプレーンですけれども、側脳室があって、第3脳室があって、視交叉 がここにあります。SDN−POAはこの黄色い部分です。雄の方が雌よりも大きいと いうものです。 この研究では、まず、連続接片をつくりまして断面積を求めて画像解析によって、S DN−POAの体積を求めるのが主な仕事であります。 (スライド) 大事なことはヒトにもやはり性的二型核があるということ、視束前野から視床下部の 全部にかけてINAHの1から4というものがあって、男性の2と3は特に女性よりも 大きいということ、それから、つい最近、サルでもこのINAHの存在が確認され胎生 期、あるいは新生児期の性ホルモンの影響によってこのINAHの大きさ、体積が変化 しているという報告がなされました。ラットでもヒトでもあるというこの共通接点が非 常に大切ではないかと思っております。 (スライド) これはラットのSDN−POAの体積の推移ですけれども、ここで生まれまして雄の 方はもうこの辺りで雌の2倍ぐらいの体積になって、10日ぐらいにはもう完全に雄の方 が大きくなっているという発育を示します。 (スライド) これはSDN−POAのpicknotic cellsですけれども、雄よりもSDN−POAの部 分ではpicknotic cellsが自然発生的に多いという結果が得られました。 (スライド) 実験ですけれども、SDラットを使って新生児期、生まれて翌日を1日目、そこから 連続5日間投与しました。観察した項目としてはSDN−POAとAVPVN-POAの アポトーシス、体積、ニューロン密度、性成熟後の生殖機能の各指標です。それを見て おります。 特に性行動です。実際にホルモン処理をした雌と、同居させてどのような性行動をす るかという観察をしております。 それから、最終的に生殖能力があるかどうか、交尾能力、受胎能があるかというもの を見ております。 (スライド) 今日はすべてお話しできませんけれども、代表的なものとしてビスフェノールA、エ ストラジオールベンゾエイトと、それからタモキシフェンの実験成績をお示ししたいと 思います。 (スライド) 先ほどのこれはビスフェノールAです。エストラジオールベンゾエイトなんですけれ ども、これを投与しますと、新生児期に投与して12週齢ぐらいまで成熟させて、実際に 交配能力があるかどうかを見たものですけれども、ビスフェノールAは300mg/kgですが これでは対照群と同レベルのよい成績を示していますが、エストラジオールベンゾエイ トでは交尾能力がありません。 (スライド) これは今のグラフですけれども、エストラジオールベンゾエイトでは交尾能力、受胎 能力共にない。ビスフェノールAは皮下投与の場合は影響はなかったということです。 (スライド) 実際にこの12週になってSDN−POAの体積を見ますと、生殖能力に影響のなかっ たビスフェノールAは、SDN−POAの体積も対照レベルでしたが、エストラジオー ルベンゾエイトでは対照レベルの約半分まで小さくなっていました。 (スライド) 同じく交尾行動、sexual behavior(性行動)を観察しました。ビスフェノールAはす べてのマウントとかイントロミッションとかエジャキュレーション、こういうセクシャ ルビヘービアの各指標に関しては対照群と差はありませんでしたが、エストラジオール ベンゾエイトではマウントとかイントロミッションとかに影響が出ていたということで す。(スライド) 実際にこれは1断面ですけれども、この部分がSDN−POAです。対照群です。 (スライド) ビスフェノールAは対照群と変わりません。 (スライド) エストラジオールベンゾエイトは非常に小さくなっている、これの表面積を求めて連 続接片から体積を求めました。 (スライド) 同様にこれは途中経過なんですけれども、E2とかE3とか幾つか交尾行動、それか ら、受胎能を見ましたけれども、例えばこの後出てきますタモキシフェンに関しては交 尾行動も受胎能力もなかった。 (スライド) これも性行動です、タモキシフェンではありませんけれども、一番興味があったのは ノニルフェノールで、マウントの回数が少なくなるという非常に面白い結果が得られま した。 (スライド) タモキシフェンとDESですけれども、これのSDN−POA、タモキシフェンは非 常に体積が小さくなっている、ニューロンの数も少なくなっていましたが、密度には変 化はなかったということです。タモキシフェンに影響があったということで、これは性 周期とも相関があったということです。 (スライド) これは方法ですから、先ほど言いましたように連続切片をつくって体積を求める、表 面積を求めて体積を求めるというやり方をここに書いてあるわけですけれども、染色液 としてはチオニンを使っております。 (スライド) この体積の減少が何に起因するかということで、最近少しですけれども報告が出てき ております。それは、このSDN−POAの部分なんですけれども、この辺りのニュー ロンのアポトーシスが起因しているんではないかということで実際にタモキシフェンを 例に取りましたところ、やはりアポトーシスが、この茶色くなった部分ですが、これが アポトーシスなんですが、実際に見えました。これはまだ定量的な評価はしておりませ ん。 (スライド) これも、やはり同じでこの辺りがSDN−POAなんですけれども、やはりアポトー シスが見られました。 (スライド) 胎児期、新生児期に内分泌かく乱作用が報告されている物質を投与しますと、通常は 生殖器官の組織学的な変化を含めた発達障害が見られて、一般にいう生殖毒性というも のがあって、生殖機能が障害されるという下のラインが重要視されているんですけれど も、本研究は視床下部のアポトーシスがまず起こり、それから、SDN−POA、視床 下部神経核の構造変化が起こって性行動が起こり、最終的には生殖機能の障害が起こる という、上のラインの可能性があるのではないかということです。 もう1つは、今回このSDN−POAの評価を非常に遅い時期にやったんですけれど も、もっと新生児期の早い時期から体積は求められるので、もっと早く評価したいとい うことであれば、もっと早く観察ができるんではないかということで今はそれを検討し ています。用量反応関係についてはほとんど何も、今回は評価に入れていないというこ とでその辺が問題になるということ、投与量が非常に高いということ、投与経路にもま だ幾つか問題点が残っているのではないかということで、その辺を徐々に詰めていきた いと考えております。以上です。 ○池田補佐 ありがとうございました。ただいまの御発表に何か御質問ございますか。安田先生。 ○安田委員 このラットの新生児期はヒトでは胎生期であるというふうに言われますけれども、こ の研究対象にされましたSDN−POAに関しては、例えば新生児、出生後ゼロ日はヒ トで言えばどういう発生段階に当たるとかいう点はいがでしょうか。 ○長尾研究員 当然ラットの場合はヒトと比較すると、まだ胎児期と考えられますので、必ずしもラ ットの新生児期イコール、ヒトの新生児期というふうには言えませんので、今後もう少 しラットの新生児期を、今回は非常に早い時期の新生児期だったんですけれども、10日 とか2週後とかというふうにもっていって、最終的にヒトの新生児期と合わせていきた いとは思っております。 ○池田補佐 そのほかございますか、よろしければどうもありがとうございました。 それでは、次の御発表は少し戻っていただきましてIV−5でございます「内分泌かく 乱作用を修復するヒト代謝物活性系及び不活性化系導入・発現細胞の開発」ということ で、国立医薬品食品衛生研究所の大野先生よろしくお願いいたします。 ○大野研究員 スライドお願いします。 (スライド) 私どもでは、ヒトにおける内分泌かく乱化学物質の解毒・代謝活性化による、エン ドクラインディスラプターの作用の修飾を評価できる系を開発するということ、及び ビスフェノールAなどで知られているDNA損傷作用が、内分泌かく乱作用に必須な のかどうかを明らかにすること、この2つの目的で3年間にわたる研究の計画を立て ました。 (スライド) ただ、代謝酵素といってもかなりたくさんの種類がありますので、そのうちのフェ ノール硫酸転移酵素による内分泌かく乱物質代謝試験系の確立を平成10年度の研究題 目といたしました。 その理由の一つはエンドクラインディスラプターといわれているものの中には、フ ェノール性の水酸基を持っているものが非常に多いということ、及び、通常、硫酸抱 合を受けると解毒というか、生物活性を失いますが、モルヒネのように硫酸抱合を 受けても中枢での作用を保持しているものもあります。そういうことで、フェノール 系の硫酸抱合を受けることによってビスフェノールAの活性が変化を示すかどうか、 ということを調べるのも必要だと考えました。 またビスフェノールAをラットに投与したときに血中の代謝物とか、血中に存在する ものを測定してみますとほとんどが抱合体であるということがわかっています。そう いうことで、まず硫酸抱合酵素について検討してみたものです。 なお、本研究ではヒトの硫酸転移酵素を用いて、ビスフェノールAが代謝されるか ということも検討しました。 更に、ヒトの肝における主要なフェノール硫酸転移酵素である分子種、そのST1 A3には欧米人において、コドンの213 にアルギニンからヒスチジンに変わった遺伝 多系が認められてます。この多系が日本人にも認められるかどうかということ。 それから、また、そのような変換を起こした硫酸転移酵素がビスフェノールAの代謝 にどのうな影響を与えるかどうかというを調べました。 (スライド) これは、フェノール性水酸基を有し、内分泌かく乱作用を持つとされている化学物 質の例を挙げたものですけれども、皆さん御存じのようにエストラジオールやエスト ロンみたいな難溶性物質、また、ジエチルスチルベストロールやヘキセステロール、エ チニルエストラジオール、こういったホルモン剤として人間や動物に使われているも の、また、クメストロールやジェニスタインのような植物性由来のエストロジェン様 化合物と、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ペンチルフェノールといった人 工の化学物質、こういったものはいずれもOH基を分子の中に持っております。これ が硫酸抱合を受けて多くは活性を失うと考えられるわけでございます。 (スライド) これはビスフェノールAですけれども、一方ビスフェノールAが、これはまだはっ きりしていませんけれども、多分P4502Eによって代謝されてオルト位が水酸化を受け ます。するとオルト位の水酸基同士が電気的に共役し、セミキノンが生じるといわれ ております。 これは一般に化学的に不安定であって、DNAとかたん白とかそういったものに結 合すると報告されています。それと同様の作用はジエチルスチルベストロールでも報 告をされていまして、そういった機序を介した細胞内高分子へのバインディングがジ エチルスチルベストロールによるがんの原因の一つではないかと考えられているわけ です。 (スライド) これは、今回実験をするに当たって使用した硫酸転移酵素活性の測定法を簡単に述 べたものです。活性硫酸であるTAPSを35Sでラベルしたものを反応液中に添加し まして、ビスフェノールAを代謝させまます。そして、ビスフェノールと反応せずに 残った32SでラベルされたTAPSがバリウム存在下で、非常に不要性の結合物を生 成し、沈殿する反応を利用し、反応液中から除き、抱合体として水溶液中に残った放 射活性を測定することにより、容易に硫酸転移酵素を測られるということがわかりま した。 (スライド) これは、私どもの共同研究者である小澤が明らかにしたことですけれども、ST1 A3というヒトの硫酸転移酵素ですけれども、その213位のアルギニンがヒスチジン に変わって、223位メチオニンがバリンに変換しているという、そういうバリアント があります。 このような変異をアメリカ人で確認しました。そこで、日本人でも同様な変移が起 こるかどうかということを調べた結果がこれでございます。 そうすると、野生型のものは大体69.2%ということで、アメリカ人の結果とそれほ ど大きな差はございませんでした。また、ヘテロの変移型でも28%でほとんど同じで 、ホモの変移型が2.8%と若干少ないようですけれども、まだ例数がそれほど多くない ので、それほど有意な差ではないのではないかと思っております。 一方、223位のメチオニンがバリンに変わったような変移体はアメリカ人で3例認 められて5.8 %ですけれども、日本人には今のところ認められておりません。 (スライド) 一方、このヒト型の、SULT1A1humとしておりますけれどもST1A3と同じもので す。それを大腸菌に発現させましてその活性を調べました。その過程で大腸菌内発現 ベクターpTrcHisBというものを使いまして、ST1A3そのものの発現と、それにヒ スチジン残基を含む46のアミノ酸を付加させたもの、その2つのタイプのものを発現 させました。と申しますのは、蛋白の末端にたくさんのヒスチジン残基を連続して付 けておくと、ニッケルカラムで非常に容易に精製できますので、そういうものをわざ と作りました。これはそれを含まないものの完全な精製はそれほど容易では無いので 、ヒスチジン残基をつけたものを対照にすることにより、SDS電気泳動上のバンドか ら硫酸転移酵素の蛋白量の定量し、それを酵素活性と比較することにより、蛋白含量 あたりの活性を計算しました。 (スライド) Aは未精製の大腸菌ホモジネートを電気泳動で分けたものを、ST1A3に対する抗体で 染色したものですけれども、ベクターだけを泳動させた場合には何もバンドが出てい ません。しかし、硫酸転移酵素のワイルドタイプとヒスチジンバリアントを発現させ た大腸菌から部分精製したものを泳動させた場合には、両者同じような位置にバンド が現れます。末端に連続したヒスチジンをくっつけたものは、若干、高分子側にバン ドがあります。一方、Bはそれらを精製したものです。 (スライド) これは、その部分精製したST1A3酵素の代謝活性を比較したものですけれども 、ビスフェノールAに対する活性は野生型では2.5nmol/min/nmol ST1A3という活性で す。一方、ヒスチジンに変わった異型でもほとんど同じ活性で、この異型によって 代謝がそれほど変わらないことがわかります。ただ、ニトロフェノールや(+)-イソ プロテレノールといった典型的な基質の代謝活性と比べるとビスフェノールAの代謝 活性は、5分の1ぐらいの活性ということで低いものでした。 (スライド) これは酵素学的なパラメーターを求めたものですけれども、ほとんど野生型と異型 型と同じようなパターンをしています。Km値の野生型は6.7μM 、ヒスチジン異型型 は11.6μM、Vmaxも4.6 と6.4nmol ST・min/nmol ということでそれほど変わっておりま せんでした。 (スライド) 以上、ヒトで認められた変異型を持つ硫酸転移酵素を大腸菌で発現させてその活性 を調べましたが、ビスフェノールAに対する代謝活性はそれほど差がないということ が判りました。また、ビスフェノールAに対する代謝活性は典型的な基質と比べると かなり低いということがわかりました。 今後は、MCF7かPC3とかいったエス トロジェンに対してリスポンシブルな細胞にCYP2E1と硫酸転移酵素を導入し、内分泌 撹乱化学物質として想定されている化合物の作用を検討し、代謝と内分泌撹乱化学 物質としての作用の両方を同時に検討する系を確立したいと思っています。どうもあ りがとうございました。 ○池田補佐 ありがとうございました。ただいまの御発表について何か御質問ございますでしょう か。 特にないようなので、ありがとうございました。 それでは、本日の最後のテーマになりましたが、IV−8ということで「哺乳動物培養 胚を用いた内分泌かく乱化学物質の中枢神経及び生殖細胞の及ぼす影響の検討」、山形 大学の渡辺先生よろしくお願いいたします。 ○渡辺研究員 それでは、最初のスライドお願いいたします。 (スライド) 早速ですが私どもは昨年度の研究班におきまして、哺乳動物培養法を用いまして内分 泌かく乱化学物質中枢神経系における影響について、検討させていただきましたので御 報告いたします。 (スライド) 有機塩素系農薬につきましては、多くの場合内分泌かく乱作用があることが疑われて おります。この機序といたしましては、中枢神経系などにおけるレセプターの発現やmR NAの転写の促進などが関係していると示唆されております。 一方、有機リン系の農薬につきましては、ここに示してありますように、一般に神経 毒性が非常に強いことが知られております。 これまで、殺虫剤といたしましてパラチオンあるいはマラチオンなどで環境かく乱作 用が疑われております。しかしながら、ここにあります除草剤につきましては、今のと ころ余り明らかではありません。 (スライド) これは、私どもの仮説で胎生期に環境化学物質に暴露された場合に、どのような生殖 障害が起こるかをまとめたものです、幾つかの可能性はあるかと思いますが、私どもは この中におきましてとくに中枢神経あるいは生殖原基における細胞障害が次世代におけ る異常と何らかの関係があるのではないかと考えております。 (スライド) これは、現在使われております除草剤「バスタ」の主成分で、グルホシネートの化学 構造式であります。グルタミン酸に非常に類似した構造をしており、グルタミン合成酵 素を特異的に阻害します。 この結果体内におきましては、グルタミン酸及びアンモニアが蓄積することが知られ ております。しかしながら、動物では生体影響が非常に低いということで、in vivo 試 験におきましては催奇形性は認められておりません。 そこで、私どもはin vitro試験を用いましてグルホシネートの中枢神経に及ぼす影響 を検討し、有機リン系農薬の内分泌かく乱作用の有無を明らかにしたいと考えておりま す。 (スライド) これは、私どもが培養しましたマウスの妊娠8日の胚であります。この対照胚に比べ ましてグルホシネートを暴露いたしますと、前脳及び弓の低形成などが認められます。 また、下段の妊娠10日胚におきましてはグルホシネートを暴露しますと、側脳のところ に水疱が特異的に認められております。 (スライド) これは、8日胚の結果をまとめたものであります。この場合、種々の外表奇形のほか に頭殿長や、あるいは発生スコアの減少が認められております。 (スライド) これは10日胚の培養結果であります。8日胚と同じように発育の遅れが認められてい ます。先ほど示した水疱あるいは前脳の低形成のほかに、口唇裂などの外表の異常が認 められております。 (スライド) これは培養胚頭部の横断切片でHE染色したものであります。右側がグルホシネート の暴露胚でありますが、脳胞の神経上皮細胞層が対照胚に比べて薄くなっております。 また、細胞間隙が広く細胞が疎になっております。 ここにこのように認められております。 (スライド) これは神経上皮細胞層を拡大したものであります。対照胚では両側に突起を持った円 柱状の細胞が規則正しく並んでいると同時に、このように最内層には分裂像がたくさん 見られます。これに対しまして、グルホシネートを暴露いたしますと、濃汚された核を 持つ細胞が多数認められます。 このほか細胞間隙がたくさん認められます。また、この脳疱内には剥離した細胞も認 められております。左側はTUNEL染色をしたものであり、このように濃汚された核は褐色 となり、陽性を示しております。 (スライド) これを透過型電検で観察したものであります。対照に比べグルホシネートを暴露いた しますと、このようにクロマチンが凝集した核が多数認められます。ここにご注目いた だきますと、クロマチンが核の辺縁に三日月状に認められております。 このようにアポトーシス小体と思われるものが多数みられます。 (スライド) これは神経上皮細胞層のみを採取して、DNA電気泳動を行ったものであります。 レーン3はグルホシネートを暴露したものです。組織の場合に、このようにスメア状 になっておりますが、少なくとも5本のバンドが500bpから2,000bpの間に認められてお ります。 このような特徴からグルホシネートによる神経上皮細胞層における細胞死はアポトー シスによるものであることが明らかになりました。 (スライド) グルホシネートによるアポトーシス誘発の機序はよくわかっておりません。1つの可 能性といたしましては、グルタミン合成酵素が阻害されることによって体内にグルタミ ン酸がたくさん蓄積されます。 この結果、例えば、神経細胞におけるカルシウムの流入が増大され、エンドヌクレ アーゼの活性化が起こります。DNAの切断が誘発されるのでないかということが考え られます。 この機序につきましては、これから検討していきたいと考えております。 (スライド) 今回の結果をまとめたものがこのスライドでありますが。結論といたしまして、グル ホシネートを暴露いたしますと、神経上皮細胞層に多数のアポトーシスが認めらまし た。これまでにin vivo 試験ではありますが、妊娠中にグルホシネートを投与いたしま すと出生児の甲状腺ホルモンでありますカルシトニンが変化するということが報告され ております。 また、これらの暴露された新生児におきましては、グルタミン酸レセプターの数や、 感受性が減少しております。 今回のin vitro結果と合わせて考えますと、妊娠中にグルホシネートを暴露されます と、胎児の神経細胞にアポトーシスが特異的に誘発され、出生児におきまして、ホルモ ンの分泌、発育、あるいは行動異常の誘発される可能性があるのではないかと考えられ ます。今後はグルホシネートの次世代における生態影響について更に検討いていきたい と考えております。以上です。 ○池田補佐 ありがとうございました。ただいまの御発表に、安田先生。 ○安田委員 御発表の中にあったのかと思いますが、聞き漏らしたとか思いますけれども、まず、 暴露量をもう一度お聞かせいただきたいということと、最後におっしゃったvivoでの実 験で、ちょっとポジティブな所見も出ているんだがというふうなお話ですが、そこでの 暴露量との比較みたいなものをお聞かせいただけないでしょうか。 ○渡辺研究員 今回の in vivo試験におきましては、第1ステップの試験ということもありまして、 暴露量は5ng/ml から20 ng/mlであります、既知の内分泌かく乱化学物質と比較いたし ますと単位が1つあるいは2つぐらい違う高濃度の量を使っております。今回の結果を 参考にいたしまして、今後どのようなことが行えるか検討したいとと考えておりま。 また、藤井先生の御報告ですけれども、このin vivo 試験におきましては体重kg当た り3mg、あるいは5mgといった投与量が使われております。これは、環境中の「バス タ」の暴露などに比べると非常に高い濃度であると思います。 ○池田補佐 すみません。事務局から。 ○宇山(事務局) 先生1つ教えていただきたいのですが、このグルホシネートがグルタミン酸に似てい るということですが、グルタミン酸が神経細胞死に関連していることはよく知られてい ることだと思います。このものがホルモン受容体ではなく、グルタミン酸受容体を介し てこういう作用を引き起こしているという可能性はどうなんでしょうか。 ○渡辺研究員 その点につきましては、全く否定することはできないと思います。 ただ、私どもは同じin vitro試験でグルタミン酸を暴露いたしましたが、グルタミン 酸では培養胚にこのような変化は認められておりません。 私どもが考えておりますのは、内分泌かく乱化学物質の作用機序として、ホルモンレ セプターを介していると考えれば、説明はしやすいかと思います。しかし、必ずしもホ ルモンレセプターを介さなくても、中枢神経系に不可逆的な細胞死が起これば、それら が何らかの次世代での生体影響と関連してくるのではないでしょうか。 ○池田補佐 次の御質問、青山先生お願いします。 ○青山委員 私が自分で実験しても、脳細胞が死んでくるような時期ですね、あるいは正常なもの でも胎齢のあれぐらいの時期ですと、かなりマップカイネースはERKもJNKも非常 に強く発現しているんですけれども、その辺の例えばJNKマップカイネースがアクテ ィベートされているとか、ERKマップカイネースが逆にダウンレギュレートされるだ とか、そんなような可能性はいかがでしょうか。 ○渡辺研究員 マップカイネースにつきましては、今後検討させていただきたいと思います。ERα あるいはβなどにつきまして検討させていただきたいと思っております。 ○池田補佐 そのほかございますでしょうか、よろしいでしょうか、それではどうもありがとうご ざいました。 それでは、本日の日程は以上でございますが、開始時にもお話させていただきました が、実はこのIV番のグループの研究テーマとしてはまだまだテーマがあるのですが、日 程調整の都合で明日の方に入っておりますので一応御説明しておきます。プログラムで いいますと最後の方のVIII番の最後ということで、明日の15時から15時15分の休憩のあ との3つのテーマ8、9、10、というのが、今日の今のIV番の続きでございますのでそ のように御了承いただければと思います。 それでは、本日はこれで終了とさせていただきます。明日は本会議室にて、午前9時 から18時15分までの予定で開催致しますので、よろしくお願いいたします。 どうもありがとうございました。 8月3日(火) ○池田補佐  皆様おはようございます。  それでは、時間になりましたので、昨日に引き続きまして2日目の研究成果発表に入 らせていただきたいと思います。  本日は、V番目のグループでございますが、「内分泌かく乱化学物質等、生活環境中の 化学物質による健康影響に関する調査研究」ということで、日本人の正常男性の生殖機 能に関する総合的な研究でございます。  最初に、研究の総括ということで聖マリアンナ医科大学の岩本先生、よろしくお願い いたします。 ○岩本研究員  今世紀後半におけるヒト精子の減少や質の低下を指摘する報告がなされ、また、同時 期に精巣腫瘍の発生頻度の増加、尿道下裂や停留精巣などの生殖奇形の発生率が増加し ているとのデータから、何らかの環境因子が関与しているのではとの仮説が立てられて おります。それでは、スライドお願いいたします。 (スライド)  精子数の問題について長期間のフォローアップがなされている報告をまとめてみます と、スライドのようになります。上段にありますのが、カールセンの論文でございます けれども、50年間に精子数が減少しているという報告がありまして、この下の方は、こ のカールセンの論文の中に含まれているもの、それから、含まれていないもの、そして 1990年以降に論文が出されたものをまとめてございます。赤が減少を表しておりまして 緑が横ばいです。それから、水色が増加というようなことで、ごらんになっていただく と赤が6つ、横ばいと上昇傾向を見ているというのを合わせますと6つと、大体半々ぐ らいのデータが今出ているかと思います。  我が国では、このような調査というのはなかったのですが、最近、札幌医大グループ による20年前と現在との調査結果の比較が報告され、札幌地域では、やや上昇傾向を示 していたというようなことでございました。  このようなデータをどのように解釈したらよいのでしょうか。同一施設からのデータ は、その地域の推移を表しているものと考えられますが、各施設間のデータを単純に比 較することは無理があります。すなわち、調査された対象者のバックグラウンドが異な ること、例えば、精子銀行のドナーボランティア、精管結紮希望者、妊孕能が不明な正 常男性、不妊外来を訪れたカップル、対象者の年齢等が一定しないことがございます。 更に大きな問題は、精液検査にかかわるバイアス、更に解析法による差異が挙げられま す。  そこで、私はこの問題に対して泌尿器科医の立場から明らかにしなければならないと 思っていたところ、スカケベックのヨーロッパでの男性生殖機能に関する国際調査を知 り、参加したわけであります。 (スライド)  この調査を進めている間に、川崎・横浜地域のデータを日本のデータとして発表して よいのか。また、調査上のさまざま問題点を明らかにすること、そして、我が国の現状 の生殖機能をきちんと把握すること、更に、次世代にわたった生殖機能を調べなければ ならないことから、基礎的研究も一部含めて日本人正常男性の生殖機能にかかわる総合 的研究の計画を立てたわけであります。 (スライド)  平成10年度は、私どもの川崎・横浜での調査経験を基に、本邦での地域差を見るべく 疫学観点から地域の選定法、プロトコール遵守のための精液検査法及び対象者のリク ルート法の統一化に向けて、精液検査技術者、コーディネーターに教育トレーニングを 行いましたので、その報告、精子数、精子運動率測定上の問題について研究分担者から 話していただきます。  成果として、精液検査のマニュアルを作成し、7月に行われました日本アンドロロ ジー学会で発表、今後、不妊学会、日本泌尿器科学会に提示し、コンセンサスを得た後 最終的なマニュアルを御提示したいと考えております。  末岡には、慶応大学での長年のAIDドナーのデータを解析していただいており、10 年度の報告をいたします。  基礎研究については、田中により報告、更に、平成11年度から加わっていただくこと になっております分担研究者、中堀よりY染色体の多型と精子についての大変興味ある データが予備調査でありましたので、報告させていただきます。 (スライド)  それでは、小生の分担研究の成果の一部を報告いたします。  既に、本検討委員会でも発表しておりますので簡単に述べますが、本研究の目的は、 国際共同研究による男性生殖機能調査に基づき、自然妊娠した女性のパートナー、すな わち、妊孕能を有する正常男性の生殖機能について生殖器の診察、精液検査、血液検査 及びカップルのライフスタイルや健康についての情報を分析し、現在の正常男性の生殖 機能に関するデータベースを作成することにあります。更に、ヨーロッパ、米国との同 一プロトコールによる調査結果と合わせて国際比較を行い、地球規模での環境汚染との 関係を解明することを目指すものであります。 (スライド)  聖マリアンナ医科大学本院と関連病院及び協力病院の産婦人科において妊娠が判明し た女性のパートナーの男性20歳から44歳までに協力を求め、承諾の得られた255名より精 液を採取し、精液量、精子濃度、精子運動率などのパラメーター、同時に男性生殖器の 診察を行い、不妊の原因の1つとされます精索静脈瘤ほか生殖奇形の有無を調べており ます。また、質問表によりカップルと男性の母親のライフスタイルや健康に関する情報 を得ております。  調査に当たっては、国際調査のプロトコールの示すとおり、ボランティアに対する倫 理上の配慮として同意を得ること、秘密厳守、結果の告知をするかどうかの確認が義務 づけられており、本調査は聖マリアンナ医科大学倫理委員会の承認の下、文書による同 意書を取っております。  参加を呼び掛けた妊婦の約22%のカップルが同意されました。調査した255例の年齢分 布は、20歳代が83名、30歳代158名、40歳代14名で平均31歳でありました。 (スライド)  精液量の分布でございますが、最低0.5mlぐらいから多い人で9mlぐらい。平均は 3.2mlでございます。 WHOの基準で2ml以上が正常とされております。 (スライド)  精子濃度の分布でございますが、最低50万ぐらいから、多い人で8億ちょっとござい まして、平均で1億790万というデータでございます。 (スライド)  これは、精子運動率の表でございますけれども、最低は9%ぐらいの方でも妊娠され ております。多い人で90%近い値で、平均が約56.8%でございました。 (スライド)  これは、全体の精液所見をまとめたスライドでございますけれども、20歳代と30歳代 にさほど差はございません。40歳代は、ちょっと対象者数数字が少ないので統計処理し てはおりません。 (スライド)  これは、2,000万未満のWHOの基準を満たさなかった症例が約10%ぐらいございます というスライドです。 (スライド)  それから、精索静脈瘤の頻度でございますけれども、これは左側に主としてできる疾 患でございますが、約3割ぐらいの男性に観察されました。 (スライド)  私どもの川崎・横浜地区での調査は359例をもって終了しており、今後、精液所見の最 終報告、それから、内分泌検査はコペンハーゲンで検査されておりますので、平成11年 度にはその関係も明らかにできると思います。更に、妊孕能の不明な非選択的若年者、 18歳から24歳までの男性生殖機能調査についてもデンマーク、フィンランドとの国際共 同研究調査をしております。  以上でございます。 ○池田補佐  ありがとうございました。  ただいまの御発表について、何か御質問ございますか。 ○津金委員  精子数とか精子濃度などの個人内変動というものが大体今、見せていただいた個人間 の変動に対してどのぐらいあるものなのでしょうか。 ○岩本研究員  私ども不妊外来で患者さんの造精機能を評価するのに2〜3回調べておりますが実際 に結構な変動があることも事実でございます。 ○津金委員  集団の平均値を求めるという意味では問題ないと思うのですけれども、今後、個人の 内分泌かく乱物質の暴露量と精子濃度との関係を見るときに、そういう個人内の変動と いうものを考慮していかないと正確に見れない可能性があるので、個人レベルでの相関 を見る研究をするに当たっては、数回、例えば、3回取って平均値を取るというような ことも考慮する必要があるかもしれません。 ○岩本研究員  分かりました。妊孕能の有する男性の本国際調査は1回のみのプロトコールになって おり順守しました。若い人の調査では年4回調査して、その変動も考慮していくという ふうに考えております。  それから、シーズンについても変動するとのデータが出ておりますので、シーズンに ついても検討したいと思っております。 ○阿部委員  精子の膜の構造だとか、それから、中に持っている酵素の異常だとか、そういう方面 は余り調べなくてもいいというふうにお考えでしょうか。 ○岩本研究員  今回のこの厚生省の研究班では、調査を主体としており、そこまでどうしても調べる ことができませんので、今後、基礎的研究としてせっかく精子が得られるものですから 先生御指摘の点について十分考慮してまいりたいと思っております。 ○藤原委員  初歩的な質問で恐縮でございますけれども、先ほど男性の母親のライフスタイルを調 べたとおっしゃいましたが、これは、どのような要因が関わりになるとお考えになって なさったのかということと、何か特別の所見があれば教えていただきたいと思います。 ○岩本研究員  疫学担当の伊津野の報告が後でありますけれども、今、問題になっている内分泌かく 乱化学物質の胎児期での、特に12週までの何らかの暴露というものが関係しているので はなかろうかというようなことから、母親の妊娠中の薬物投与あるいは仕事場がどうだ ったのか、喫煙はどうだったのか、アルコールはどうだったのかというようなことが質 問事項の中に入っておりまして、それについて解析させていただく予定でございます。 ○池田補佐  ありがとうございました。  ほかにございますか。よろしければお時間ですので、どうもありがとうございまし た。  それでは、続きまして、次は正常男性の生殖機能に関する研究ということで、大阪大 学医学部の奥山先生の御発表予定ですが、本日御都合で松宮先生にお願いいたします。 よろしくお願いします。 ○松宮研究員  主任研究者の岩本らは1997年より妊孕能を有する男性を対象とした生殖機能調査を川 崎・横浜地区において実施してきました。この調査は平成10年度本研究事業の一部であ ると同時に、コペンハーゲン大学のスカケベックらの提唱により実施されている、ヨー ロッパにおける国際共同研究の一環として進められてきました。それは今、岩本が報告 したとおりです。  調査を開始して間もなく、川崎・横浜地区という限定された地域での調査結果を日本 からのデータとして国際共同研究の場に提出できるかどうかという議論が起こり、全国 規模での調査の必要性が検討されました。結局、これまでの報告から地域差の問題は無 視できないという結論になり、より総合的な評価を目指して、全国複数か所での調査を 行うことを決定いたしました。  調査は先に進められた川崎・横浜地区での調査と同様の条件で、各地域300例を目標に 1年余りの期間で実施することとなります。この場合、地域間でデータを比較できるよ うに調査は可能な限り一定の条件下で実施されなければなりません。我々は、条件が異 なることによって生じるバイアスを、最小限にしようとするためには、詳細な手順を示 したマニュアルの作成と、それに従って調査が実施されるようなシステムの整備が必須 であると考えました。それで、平成10年度は調査の方法、特に、精液検査法と調査参加 者の募集方法を国際共同研究のプロトコールに基づいて可能な限り標準化し、統一化す ることを目的に準備を進めました。  平成10年度におけるその準備状況を御報告申し上げます。スライドお願いします。 (スライド)  日本の代表地を決めたり、国内の地域差を検討するためには、既に川崎・横浜で調査 が行われている関東のほかに、少なくとも北海道、北陸、関西、九州の4地区から選出 することが検討されました。そこから、無作為に拠点となる病院を選出できれば理想的 でしたが、実際に調査を遂行し得る条件を満たす施設となると非常に限られてきますの で、最終的には札幌、金沢、大阪、福岡地区の主要な大学病院及び総合病院を選出し、 調査拠点となることを依頼しました。 (スライド)  札幌医科大学、大阪大学医学部、金沢大学医学部、福岡の原三信会病院の各泌尿器科 を調査拠点とし、それらの関連病院産婦人科の協力で調査を実施することにしました。 (スライド)  調査場所となる各拠点病院の泌尿器科に調査事務局を設置し、医師、検査技師、コー ディネーターから成る調査チームを組織しました。調査実施に当たっては、各施設の倫 理委員会に承認申請を行っております。  また、この調査は妊婦のパートナーを対象とするということで、最初に産科外来に通 院中の妊娠14週から37週の女性に声を掛けますので、拠点病院及び関連病院の産婦人科 に協力を要請し、調査協力者の募集窓口となる産科外来数か所を決めました。調査チー ムの編成後、スタッフの教育訓練を実施しました。 (スライド)  まず、精液検査の担当者に対して行ったことですけれども、精液検査は数の勘定だけ かと思われるかもわかりませんが、実際には測定法や希釈により同一検体でも大きく測 定値が変わってくることがあります。このため、国際調査プロトコールに示された方法 に基づいた精液検査の標準マニュアルを作成しました。更に、この標準マニュアルにし たがって、各施設の精液検査担当者の教育訓練を行いました。  最初、調査本部である聖マリアンナ医科大学泌尿器科に各施設の担当者に集まっても らい、講習会を開きました。そこで、兼子分担研究者による講義と、聖マリアンナ泌尿 器科技師による実技指導、つまり精子濃度と精子運動率の測定のトレーニングを実施し ました。  講習会の終了後は、調査本部から同一の固定検体、精子をホルマリン固定したものを 各施設に発送し、その測定結果を本部に返送するという方式での訓練を3回実施しまし た。最後に、再び調査本部に集まって、精液検査技術の習熟度を確認しました。  教育訓練の結果につきましては、後ほどお示しします。  次に、コーディネーターに対する訓練ですけれども、調査参加者の募集に当たっては バイアスの排除のために各施設の調査コーディネーターが対象者に接触し、統一化され た一定の手順で勧誘する方法を取ることといたしました。参加者募集から調査までの手 順を示したマニュアルを作成し、それを用いた講習会を開催し、各施設のコーディネー ターの教育訓練を実施しました。講習会では、伊津野分担研究者が参加者募集に関する 疫学的な観点からの基本的な考え方を講義し、聖マリアンナ医科大学泌尿器科の調査 コーディネーターが実際の手順について説明しました。 (スライド)  先ほど申し上げました精液検査上の問題点なのですけれども、各施設の精液検査担当 者を対象とした実技訓練では、施設間の検査精度を上げるために、ここに示した点につ きまして、つまり、精液の液化と均一化、適切な濃度に希釈すること、計算盤を常に清 浄に保つことなどの点の徹底を指導しました。  精液検査については、精液の液化や希釈などの操作が測定値のばらつきに大きく影響 しますが、それらを適正に行うことによって検査精度が上がることがこのトレーニング で示されたことは、次にお示しします。 (スライド)  トレーニングには4施設の精液検査担当者のほかに、AIDドナーの精液所見に関す る研究を行っている末岡分担研究者の慶応大学産婦人科の技師も参加しました。このグ ラフは、同じ精子検体を使って各施設の担当者が測定したときの数値を並べたもので す。  第1回目は5検体について測定していますが、このように非常に値がばらついていま す。それが4回目になりますと、3検体を測っていますけれども、聖マリの技師の値に 近づいてきているのがわかると思います。 (スライド)  トレーニング回数を重ねるにしたがって、測定値が安定してきました。このグラフは 聖マリ技師による測定値を標準値としたときの、それに対する各施設担当者の測定値の 平均偏差がトレーニングによってどう変わってきたかを示したものです。第1回の講習 会直後では、平均偏差が1.9から4.7であったのが、教育訓練の最後の測定では、0.5から 1.5と小さくなっているのがわかると思います。  調査開始後も、調査本部から各施設に定期的に固定検体を発送する方法で検査法の精 度管理を行っております。 (スライド)  次に、コーディネーターの教育訓練ですが、バイアスを少なくするためには、調査の 方法を統一化する必要があります。そのためには、対象者の選択基準や選択の方法を一 定にしなければなりません。そこで、本調査では、調査参加者募集に当たっては、各施 設の調査コーディネーターが対象者に直接接触して、統一化された手順で勧誘する方法 を取ることにしました。  コーディネーターは、疫学の専門家である伊津野共同研究者を中心とした調査本部で の講習会に参加し、調査内容の詳しい説明と疫学調査における注意事項について教育訓 練を受けました。特に、本調査においては、必ず遵守すべき点と、各施設の状況に合わ せて変更可能な点などを十分に確認し、各施設に戻ってマニュアルどおりに調査が実施 できるよう、各施設の責任者と相談しながら最終的な準備を進めることにしました。 (スライド)  これは、コーディネーターマニュアルの一部ですが、コーディネーターが産科外来で 妊婦さんに対してパートナーの調査への参加をお願いするときのシナリオです。ここに は、相手に伝えるべき情報と、その伝え方について詳しく示されています。調査本部で は調査参加者募集に関する詳細なマニュアルと関係書類一式から成るコーディネーター 用のファイルを作成し、それを用いて調査内容を完全に理解したコーディネーターが、 常に一定の手順で対象者に接触する方法を取ることができるようにしました。  コーディネーター用ファイルには、協力を要請する産科外来向けの説明資料から調査 対象者を勧誘するチラシ、参加希望者に調査内容を説明するための資料一式とシナリオ などが含まれております。 (スライド)  最後になりましたが、共同研究者の名前と所属をお示しします。平成11年度より全国 4地域で妊孕能を有する男性を対象とした生殖機能調査が開始されます。先行の川崎・ 横浜地区での調査は、平成10年度で359例の参加を得て終了し、現在データを解析中で す。4地域での調査は、平成12年度前半には終了する予定で、平成12年度中に全国5地 域でのデータがそろうことになります。これにより、我が国の妊孕能を有する男性生殖 機能の標準値を示すことができるとともに、国内外のデータの総合比較により問題にな っている精液の質の地域差について新たな検討材料を提供することになるものと思いま す。  以上です。ありがとうございました。 ○池田補佐  ありがとうございました。  ただいまの御発表に何か御質問ございますでしょうか。 ○山崎委員  大変緻密な教育をやっておられるのはわかったのですが、ちょっと失礼な質問になる かもしれないのですが、5回繰り返していって、だんだんに標準偏差が集約されていく という図がありましたけれども、あれを拝見しますと、Aというものだけがグループの 中で飛び離れていて、あとのB、C、D、Eでしたか、あれは割合と最初から聖マリの データに近いような感じを受けます。ですから、5回の繰り返しのトレーニングという よりも、飛び離れたところを排除するという方法の方が近いのではないかと。これは大 変失礼で怒られるかもしれないですけれども、率直な感想として図を見たところではそ う思ったんです。 ○松宮研究員  私は、各施設の検査担当者のそれまでどういうことをされておられたかということま では把握しておりませんが、精液検査というのは御指摘にありましたように、やはり少 しでも経験がある方とそうでない方では多少出る値に差があるのではないかと思われま す。御指摘のありました施設の方は、多分余り精液検査の方は担当なされたことがない のではないかと思っております。 ○山崎委員  失礼なことを申し上げて、申し訳ありませんでした。 ○津金委員  可能な限り一定の条件下で地域比較をしようというようなことで大学病院の泌尿器科 を拠点にされているのだと思うのですが、ちょっと気になるのが九州だけ個人病院にな っているのですけれども、そこで例えば、患者さんの可能な限り一定の条件というのは 崩れてきてしまうのではないかという心配があるのですけれども。 ○松宮研究員  ここではちょっと細かいところではお示しできませんでしたけれども、協力していた だける産科の病院というのは、一施設1つの産科ではなくて、複数箇所を選ぶようにし ております。それで、原三信会も公立病院とかそういうところもコーディネーターを派 遣する病院に入れていると聞いております。 ○池田補佐  ありがとうございました。ほかに御質問ございませんか。  それでは、どうもありがとうございました。  続きまして、Vの3番目でございますが、非配偶者間の人工受精ドナー精子の精液所見 に関する研究ということで、慶應義塾大学の末岡先生、よろしくお願いいたします。 ○末岡研究員  私の与えられました命題は、ヒトの精液所見に関する疫学的研究の中で、本邦におけ る正常精液所見を有する日本人ドナーの精液所見の変化についてでございます。最初の スライドをお願いいたします。 (スライド)  近年、生殖補助技術、ARTと私たちは略しますが、その急速な発展により、特に治 療が困難とされてきた重症の乏精子症に対しても不妊治療が可能となりつつあります。 特に、顕微授精法の開発は、治療対象となる男性不妊患者の適応を著しく拡大する結果 をもたらしております。しかし、その一方で、AZF遺伝子群を初めとする造精機能障 害の本体が明らかにされつつあり、生殖技術によるこれらの遺伝子の形態が危惧されて いることも事実でございます。 (スライド)  この背景の中で男性不妊患者の割合が増加しているかどうかについては不明ですが、 精液所見の統計的分析が1992年のSkakkebaekらによってなされまして、過去50年間の精 液所見が減少したという報告が非常にセンセーショナルな記憶として残っております。 広く知られておりますように、この報告は世界各地の男性について文献的に調査したも ので、精子濃度、精液量の明らかな減少を示したということでございました。  この後で報告いたします本邦の正常ドナー精子数の年次推移を検討する前に、諸外国 の3つの代表的な報告の内容を比較として明確にしておきたいと思います。まず、ここ にお示ししますSkakkebaekらの報告は、61論文から1万4,947件について検索したもので ありまして、1940年に比較し、1990年には平均精子濃度が1億1,300万から6,600万へ、 精液量は3.40mlから2.75mlへと減少を示していたと示されております。  この減少を単純計算しますと、50年間で精子濃度は約25%、精液量は約20%の減少を 示し、年平均では精子濃度は1cc当たり0.94×10の6乗、精液量は0.0013mlずつ減少し たことになり、射出精子総数を計算いたしますと、1万2,200ずつ減少したことになりま す。  また、これらのデータは欧州、北米、南米、アフリカ、中近東、アジア、オセアニア の広範囲にまたがり、地球規模での減少を示しておりましたが、日本は残念ながら調査 の中に含まれておりませんでした。 (スライド)  この後に、精子減少の疫学的報告がたくさん出てまいりましたけれども、この統計の バイアスに関する考慮が必要であるということが指摘されておりました。年齢や禁欲期 間、地理的条件、季節変動などデータをサンプルにする上での選別条件も重要な要素と なるということが言われておりますが、残念ながら、これをすべてクリアしたデータは 過去に余りございませんでした。  このフランスのデータは、年齢や健康状態などの特定した母集団を選定した上で、少 しそういう意味での条件がそろったものでございます。1973年から1992年までの精子バ ンクに存在した1,750検体の精子についての分析をしたデータでございます。これは、精 液を第一射精精子、年齢と禁欲期間を補正したものでございます。この上から精子濃度 精子運動率、それから、精子正常形態率というふうにございますけれども、精子濃度の 減少率は年に2.6%、精子運動率と正常形態率から算出した正常精子数の減少は、年に 0.3%から0.7%であったことが報告されております。 (スライド)  もう1つ、このフランスで卵管不妊のみを限定した体外受精患者の精子数の分析で、 夫の出生年が1950年以降で減少しているという報告が行われました。すなわち、男性因 子が正常である統計と解釈できるデータですけれども、大事な点は、1950年ごろから減 少傾向が見られたということでございます。 (スライド)  前にも述べましたように、精子に関する国際的疫学調査の中で、本邦の精子にかかわ る情報は得られておりません。条件を限定した母集団のデータは、更に貴重な意義を有 すると考えられます。慶應義塾大学病院では、本邦において初めて1948年から非配偶者 間人工授精を開始し、今日に至るまで長年にわたり行われてまいりましたが、その精液 所見は年齢の条件や測定方法が同一である健康男性のデータとして、国際的にも、また 我が国の生殖能力の変遷を知る上でも重要なデータになるのではないかと考えておりま す。  1970年から1998年に及ぶ28年間の精子数変化、約2万検体について現在解析中でござ いますが、その詳細は、今後バイアスに関するさまざまな検討の評価を経なければなら ないと考えております。  精子の提供者は、19歳から25歳の健康男性で、登録時に感染症検査及び精液検査を施 行いたしまして、精液量2.0ml以上、精子濃度が1ml当たり5,000万以上、精子運動率 50%以上の良好群をドナー登録者としております。ただし、1970年から1989年までの精 子データは、人工授精に用いられた精液所見からの調査をしたものでございまして、提 供者別解析が困難でございます。1990年以降のデータは提供者ごとの精液所見の集積で ございますので、このため、この双方の結果を同一条件の下として対応させるためには バイアスの考察がなお必要でございます。その傾向を今日はお示しいたします。 (スライド)  まず、1971年から1986年までの全精液検体に関する精子濃度の平均値をスライドにお 示しいたしますが、ちょっと分かりづらいかもしれませんけれども、右肩下がりの減少 傾向を示しております。 (スライド)  1992年から1996年までの精子濃度の平均値の年次変化でございます。同様に、これも 緩徐ではございますが右肩下がりの減少傾向を示す結果となっております。 (スライド)  1971年から1986年までの全精液検体に関する精子運動率の平均値の年次変化でござい ます。運動率に関しまして、この年次には減少傾向を示しております。 (スライド)  1992年から1996年までの精子運動率の平均値の年次変化でございますが、ここでは統 計的には明らかな減少傾向は認められませんでした。 (スライド)  更に、全精液検体に関する統計処理ではなく、1990年以降の精子濃度について、各ド ナーごとの平均値をプロットして見た結果をスライドにお示しいたします。各精液検体 のデータと同様右下がりとなりまして、ドナー個人個人の平均精子数でも減少傾向を認 めております。 (スライド)  これは、各ドナーの精液所見に毎回変動があることは造精機能のみならず射出条件な ど多様な因子が関与することが理解できますが、1年以上採取し続けたドナーについて そのドナー各人の精子濃度の増減を調査いたしました。ドナー75名について減少40名、 増加35名を示しておりまして、ドナー各自について全例が減少を示しているのではなく 減少を示す例が増加を示しているという結果と理解できました。  スライドありがとうございました。  これらの結果をまとめますと、現在までに調査した範囲では、Skakkebaekらの報告の ほどのドラスティックな減少傾向は認められておりませんが、精子濃度は1970年から 1989年群、1990年から1998年群ともに総検体データについての検討で減少傾向を示し、 精子運動率については、1970年から1989年群で軽度の減少傾向を示しましたが、1990年 以降では減少傾向とは言えないという結果になりました。その原因は、環境汚染や生活 習慣などの変化も含め、多様な原因が考えられますが、抽出した母集団の年齢が19歳か ら25歳であることから、もし、ドナー男性が胎児期の精巣形成過程以降に影響を受けた と仮定いたしますと、約20年から25年前、すなわち1970年から1998年のデータは少なく とも1940年代後半から1978年ごろまでの間に及ぼされた影響というように仮定すること ができるかと考えております。  以上でございます。 ○池田補佐  ありがとうございました。 ○阿部委員  平均値が減少傾向を示したと何回もおっしゃいましたけれども、あのブルーはスタン ダード・デヴィエーションですね。あの読み方は、有意な変化がなかったという意味で はないでしょうか。傾向という言葉は適切でないと思うのですけれども、いかがでしょ うか。 ○末岡研究員  これも、さまざまな統計的な手法を用いて検討が必要かというふうに私たちは考えて おりますが、確かに総精子検体、要するに、人工授精で使われた総精子検体をすべてプ ロットしてまいりまして、統計の専門の方と御相談した結果では、今の段階では傾向と いうふうに申し上げるのが一番いいのではないだろうかという御意見でございました。 取り方に非常に難しい部分があるかと思いますけれども、全体的にはこれから御検討い たしたいと思いますが、古い検体では有意な差と判断できる部分もあると考えておりま す。 ○池田補佐  そのほかございますでしょうか。 ○伊東座長  先生の結果で、40年代の母親から生まれたというような推測をなさっておりますけれ ども、それは非常に大胆な先生のお考えでして、サイエンティフィックなベースに基づ いた考えではないと思うんです。ですから、そういう御発言をされるときには、サイエ ンティフィックにこうであるということが言えない限り、思いつきのような発言をされ るのは非常に混乱を招くことになるのではないでしょうか。 ○末岡研究員  御指摘のとおりなところがございます。それは失言をいたしました。失礼いたしまし た。 ○津金委員  前のところで、施設間の差が何回も訓練をしていると小さくなってくるというような 傾向が示されましたが、検査する人によって随分差があるということを感じました。従 って、このような長期にわたるものを比較するときには、同じ人がずっとやっていると いうことでなければ、同じようにスタンダリゼーションをしなければいけないと思うの ですが、そこら辺の部分はいかがなものでしょうか。 ○末岡研究員  このデータは、たった2人ですべてのデータが検査をされております。これは、ある 意味では、この人がずっと長い期間培われてきた一人の経験の中でのデータというふう に私たちは理解しております。 ○池田補佐  もう一点、伊東座長。 ○伊東座長  それから、先ほど岩本先生は48時間以上の禁欲とされていましたね。先生は3日とお っしゃっていましたが、これはいかがですか。 ○末岡研究員  これは、私たちすごく古くから決めておりました禁欲期間というものを基にこのデー タをお示ししましたので、後からいろいろな研究プロトコールの中でつくられた禁欲期 間と必ずしも一致しない部分がございますので、その辺については御了承いただきたい と思います。 ○池田補佐  そのほかございますか。よろしければ、どうもありがとうございました。  それでは、続きまして、4番でございますが、疫学調査における精液所見検査法の標 準化ということで、東京歯科大学の兼子先生、よろしくお願いいたします。 ○兼子研究員  精液所見の測定は、不妊治療におきまして造精機能の指標としてずっと測られてきた わけでございますけれども、その方法自体は施設によりさまざまでございました。私 は、今回の調査におきまして、主任研究者から2つの課題を出されました。これは、今 回の測定におきまして、ヒトの精液に関する疫学調査を行うためには、測定法の標準化 と精度管理が不可欠であります。それで、私の行いました研究は精子濃度、精子運動 率、奇形率等の各項目におきまして標準品を設定すること、検量線を策定すること、そ れらの精度管理を行うということが第1点目でございます。それと、これから述べます が、精子濃度というのは造精機能を測定する上で伝統的に用いられてきましたが、これ は結構難しい指標でございますので、精子濃度に代わる生化学的マーカーが探せないか という検索の2点でございます。では、スライドをお願いいたします。 (スライド)  まず、スライドは体液中の細胞濃度測定の代表例である赤血球と、精子の濃度測定を 比較したものであります。血液は常に循環しており採血により一定の条件で標本採取が できます。また、濃度については変動幅はせいぜい数倍でございます。  一方、精液は射精時に精子を含む精巣上体液と副性腺液が混合する不均一形であり、 標本採取、すなわちこの場合には射精でございますが、中枢性の興奮が必要であるな ど、また、濃度につきましては、精子が無精子、つまりゼロから数億匹/mlまで大きな 変動幅を有するという測定が非常に難しい系であるということを初めに御理解いただき たいと思います。 (スライド)  それと、射精精液中の精子濃度の変動に関する因子といたしましては、まず、マス ターベーションの条件が大きく影響してまいります。また、それによって精液量の多少 ということは精子を含む精巣上体液と副性腺液の混合比が変化してくるということで、 これも濃度に影響してまいります。  また、現状では、精子濃度が造精機能、すなわち精巣における精子産生量と正比例す るというモデルが採用されておりますが、射精精子量は精子産生量からアポトーシス、 ネクローシス等により消去された精子量を差し引いた値であり、産生系と消去系の両者 を考慮した新しい計量モデルが必要となってまいります。 (スライド)  このスライドは、6人の方が定期的に8回射精したときの精子濃度の変化を示してお ります。毎回かなりの変動が見られており、先ほども御質問でありましたように、どこ の部分をその人の精子濃度とするかということで大きな問題が出てまいります。 (スライド)  これまで精子濃度、運動率、奇形率などが男性妊孕性の指標としてきたわけでござい ますが、今後は精液所見の何が精液の量的、質的な妊孕性に影響するのかを再検討する 必要があると考えております。  本研究は、精子濃度を正確に測定するという部分を今日御発表させていただきますの で、この部分は置いておきまして、この下に書いてございます精液所見の観察法をどの ように標準化するのかということにテーマを移らせていただきます。  まず、標準品の設定なのですが、精子濃度標準品、精子運動率標準品、精子運動速度 標準品、奇形精子標準画像ということでございますけれども、本日は、この濃度と運動 率と奇形についてのお話をさせていただきます。  それと、精子濃度に関しましては先ほども申し上げましたように、濃度幅の変動が大 きいということから、検量線の直線部分をどこに設定するかということが大きな問題と なってまいります。 (スライド)  これは、精液を中性ホルマリンで固定いたしまして、希釈して血球算定盤で測定した 結果でございます。精液を3から15倍に希釈いたしまして、約200匹程度カウントいたし ます。この方法では、血球算定盤自体が標準機器であり検量線を必要としないという利 点がある反面、先ほどからお話がたびたび出てまいりますが、検査技師の習熟度合いに よりばらつきが出ます。この値は経験10年以上のベテランが測定した値であり、標準誤 差は数パーセント以内で収まっております。  このように、精子濃度に関しましては、血球算定盤を用いる方が非常に高精度である ということから、先ほど申しました標準品の設定に関しましては、本法により複数のベ テラン検査技師によって測定されたものを統計学的処理をすることにより、標準品の設 定が可能ではないかと考えております。 (スライド)  次に、人間が手動でやる方法というのは精子濃度では便利なのでございますが、ほか の項目、例えば、運動率ですと人間では余り正確に測れません。そこで、画像解析装置 を使った自動化のシステムが最近導入されております。この問題点について申し上げま す。  コンピューター画像解析装置を用いた精液所見測定法では、まず、CCDカメラ画像 をデジタル処理いたしますが、コンピューターは焦点面にはっきり結像した精子のみを 認識するため、チャンバー厚の変化を追従できないという欠点を有しております。この ため、間隙、隙間が薄い特殊なチャンバーを用いますが、精液は粘度が高く、チャン バーへの浸透過程でばらつきが生じます。我々は、ここを解消するために、精子濃度と 精子運動の同時測定は誤差を生む要因と考え、まず、精子濃度に関しましては中性ホル マリンで約400万/ml程度に希釈不動化した精液を、間隙が70μから100μのチャンバー に浸透させまして、5分から10分静置することによって底面に一層になるように沈降さ せて、ここにレンズ焦点面を合わせて測定することにより精度が上げられないかという ことを工夫いたしました。 (スライド)  コンピューターを用いることにより、直ちに高精度なデータが得られるように思われ ますが、電気信号に変換された値をアナログデータにするためには標準品を用いた検量 線が不可欠であります。この図は、従来用いられてきたいろいろな濃度の精液を無希釈 で測定する方法を再現したものであり、血球算定盤により1億2,300万/mlと算定された 精液を中性ホルマリンで2倍希釈系列を策定し、コンピューター画像解析装置で解析し た結果でございます。横軸は血算盤の値、縦軸はコンピューターで示された値ですが、 ごらんのように濃度が低いところでは直線性が得られますが、濃度が高くなると精子濃 度の増加を追従できないという結果が得られ、濃度の測定については現状の条件では問 題があるということが明らかになりました。 (スライド)  この図は、血球算定盤の場合は100μm、検鏡プレートの場合は70μmの間隙を有するデ バイスを用いまして、ここに精子を入れまして、先ほどの方法で測ったわけでございま すが、横軸は血球算定盤、縦軸がそれぞれのプレートを用いたときの画像解析装置の値 ですが、先ほどよりずっと直線性が濃度に従って広い範囲で得られております。これは まだ予備的な実験ですので、更に条件を整えることによって、この希釈固定化する方法 で機械を使っても精子濃度が正確に測れる可能性が示されたわけで、今後、条件の整備 を進めてまいりたいと思います。 (スライド)  精子運動の定量には画像解析装置が不可欠でございます。現状では機械が算出した値 をそのまま採用しておりますが、運動率標準品によるキャリブレーションを試みまし た。このスライドは標準品作成法を示しております。まず、射精精液を攪拌密度勾配法 で濃縮した後、スイムアップ、またはスイムダウン法により運動精子を分離いたしま す。人間の目では60%か70%かという運動率は正確には判定できませんが、精子が全く 動いていない0%と、全部の精子が動いている100%に関しましては目視法により確認 ができますので、両者を調製します。つまり、100%運動精子分画を取りまして、それを 50℃で10分間温度処理をすることによって非動化して同じ濃度の0%と100%をつくり まして、それを任意の割合で混ぜることにより、精子運動率標準品を作成いたしまし た。 (スライド)  スライドは精子運動率の理論値が横軸、実測値が縦軸でございますが、Rが0.997で直 線に乗る運動率標準曲線が得られて、この方法で運動率の標準化が可能だと考えており ます。 (スライド)  次に、精子の奇形率でございますが、異常な形態を有する精子の割合を算定するとい うことは、奇形精子の定義や分類が確定していない現状では、私どもでは円形の正常な 形体を有する精子の割合を示す、逆に、正常精子形体比率を取る方が簡便、かつ高精度 ではないかと考えておりまして、そちらの方向で検討を進めております。更に、染色法 を含めていろいろな検討を行っていきたいと考えております。  スライドありがとうございました。  本研究は、ヒト精液所見の疫学調査のための準備研究として企画されましたが、先 日、精巣毒性研究会で医薬品の開発過程における毒性評価に実験動物精液所見の観察が 加わるということで、製薬業界でも同様の標準化作業が行われているということを知り ました。今後、両者が意見交換をして共通な標準化が行われるようにしていきたいと考 えております。  以上でございます。 ○池田補佐  ありがとうございました。 ○井上委員  どうもありがとうございました。2つ感銘を受けたことがあるのですけれども、1つ は、精子希釈比率というのが実験動物とヒトとで全く違うのだということがよくわかり ましたので、ただ数えるだけではないんだということがよく分かりました。私は自動計 測などを専門にしているものですから、精子運動と数を両方計測できないというのは結 構ショックでした。実験動物ではそれなりに出るデータが、そういうふうにヒトの場合 にはイジャキュレーションの条件だとかそういったもので変わってくるということなど は大変感銘を受けました。  1つ質問なのですけれども、先ほどこの慶応のデータなどに対する見方を議論すると きに、すぐ増えたの減ったの変わらないのという議論になるのですけれども、勿論そう いう増えたの減ったの変わらないのということがあるのかもしれないけれども、私など の立場からすると、精子の正常値というのはかねてより岩本先生などに聞いてみると、 正常値そのものがはっきりわからないということを伺っていました。この内分泌かく乱 問題というのは、もともと私どもの担当している分野から言いますと、核内レセプター 問題だとかわからないことが物すごくあるんです。そのテクノロジカルなことではわか らないことと、それから、内分泌かく乱化学物資のライガンドとしての役割と、その両 方は分けて考えなくてはいけないんですね。そういう意味でも、今の正常値の問題その ものがわからないというところにありますので、それをもし、精子問題に置き換えて考 えた場合に、何を私が伺いたいかといいますと、古いデータはとかく多く出てくる性質 がある、それは、技術的にこういうところにこういうことを世界でやっていたから、こ ういうことになる傾向があるんだというようなものが、こういうことをお調べになって いてないかどうか、今、勿論即答していただく必要はないのですけれども、何かそうい うここ100年の技術的なあれでもってついうっかり、何となく昔はこういうことをやって いて、最近はこういうことをやっているので、こういう傾向になりがちなんだというよ うな単なる技術的な問題……。 ○伊東座長  井上先生、御質問は簡単に。先生のプレゼンテーションではございませんから。 ○兼子研究員  簡単に申し上げますと、昔より顕微鏡の精度が上がっているとかそういう簡単な技術 的な問題も含めまして、時系列、いわゆる年代順にどうのこうのという数字を比較する というのは非常に難しいのでございますけれども、データ的には昔からのそれを踏襲し て比較していくしかないわけで、そこのところをどう解釈するかというのは非常に難し い問題だと考えております。 ○池田補佐  済みません、ちょっと時間がないのですが。では、1つだけ、押尾先生お願いしま す。 ○押尾委員  血球計算盤で精液を数えるということなのですけれども、ああいう計算盤などですと 使っているうちにかなり悪くなってきたりしますが、例えば、何回まで使ったのはもう 使わないとか、そういうようなことまで御検討されていらっしゃるのでしょうか。 ○兼子研究員  これに関しましては、現在では標準品の設定ということがオーソライズされていませ んので、ある程度使ったら廃棄するという形で対応しておりますが、将来的には標準品 が設定されれば随時標準品を測ることによって、誤差要因が顕著になってきた場合には 廃棄するということで十分対応できると考えております。 ○池田補佐  ありがとうございました。済みません、時間もありませんので、これで終わらせてい ただきます。どうもありがとうございました。  それでは、続きまして、Vの5番でございますが、精子の運動性に関する運動生理学的 研究ということで、東京工業大学の石島先生お願いいたします。 ○石島研究員  今回精子の数を数えようというテーマがありましたので、どういう方法で数えたら一 番簡単に、しかも、確実に数えられるのかということを考えてみたいのというのが出発 点でありました。  御存じのように、古くから最終的には我々が採用しました血球算定盤の方法というの が、長い間行われていたわけですが、現在、流れといたしましてできればコンピュー ターを使いたい、画像解析を使いたいというのも必然でありまして、ヒトの手の省略と かいろいろなことを考えますと、どうしてもそのことを考えずにはいられません。とこ ろが、不幸にして、これができてからまだ10年足らずなのですけれども、例えば、論文 を見てみますと、まずデータはめちゃくちゃなんですね。このめちゃくちゃさはどこか ら出てくるのかということを、まず基本的に検討しようということで、精子の運動その ものの問題、あるいは顕微鏡の問題などを、きちんと今回やってみようという気になり ました。  それでは、最初のスライドお願いします。 (スライド)  これは、一番現在よく使われている装置でして、これが顕微鏡で、ここに精子を入れ まして、その精子の像を顕微鏡で拡大する。一般的には、ここにコンピューターがあり まして、この像をテレビカメラで取り込みコンピューターを使って、ここでテープレ コーダーで記入します。最近では、ICメモリーが大きくなりましたので、ICメモ リーの中に入れることもできます。  精子の像を取りまして、それをここにあります解析装置、それを使ってコンピュー ターで二値化したりして、その運動とか精子の数を数えるという作業を行うわけです。 ですから、問題の1つは、顕微鏡できちんとした像が取れるかどうか。それから、カメ ラも含めまして、その画像がどの程度きちんと取れるのかどうか。そして、最後に、い わゆる画像解析装置、プログラムの問題ですが、それがまずきちんと信頼するものなの かどうかという点が問題になります。 (スライド)  まず、顕微鏡の問題を考えてみるわけですが、実はこれは位相差顕微鏡の典型的な2 つの像です。一般的に値段も問題がありますけれども、使いやすさの点からこういう運 動あるいは精子の数を数えるときに、位相差顕微鏡を使うということが常道ですが、一 般的にこの2つのタイプの位相差顕微鏡があるわけです。ニコンの言い方ですと、これ はダークコントラスト、こちらがブライトコントラストという2つの種類があるわけで して、普通は我々ずっとこちら側、ブライトコントラストを使ってまいりました。理由 はどうしてかというと、これではちょっと比較できにくいのですが、こちらの方が画像 解析用のために、要するに像を認識する方法としては、いいわけですね。こちらは実に 見にくい。ところが、どうしてかわからないのですが、ニコンとオリンパスは長い間こ の製造、ブライトコントラストの対物レンズの製造を中止してしまいました。ニコンの 場合20年前、オリンパスは5〜6年前にこれを中止してしまったんですね。ある自動解 析装置の会社は、これを推奨してきたのですが、その後、現在どういう状況になってい るかわかりません。  こういうマイナーな問題は、コンピューターのセッティングあるいは画像処理のセッ ティングをうまく行えばクリアできるわけですが、残念ながらここに問題があります。 それは、そういう製品を販売しているところのどこも画像処理のプログラム、それか ら、ボードの性能について一切明らかにしてくれません。ですから、研究者が測ってい ても何を測っているのか一切わからないということになるわけです。 (スライド)  これはいわゆる暗視野顕微鏡の写真の例です。ある製品はこの暗視野顕微鏡を使って いろいろな像を取り込んでいる例があります。先ほど言いましたように、これはブライ トコントラストをより以上にコントラストを上げたものです。ですから、そういう意味 ではこちらの方が画像解析用にはいいのですが、残念ながら、この方法の一番大きなデ メリットはごみを数えてしまうという点なんです。暗視野顕微鏡を一度でもやったこと がある人はすぐわかると思うのですが、暗視野顕微鏡でごみをなくすということは、ま ず、不可能です。これは私の論文から取ってきたのですが、私もかなり努力してごみを 取り除こうとしたのですが、こういうところ不必要なごみが出てきてしまう。ですか ら、一般的にこの装置を使って出した論文は、精子数はほとんど2〜3割多目に出てま いります。これが顕微鏡についての幾つかの問題点です。 (スライド)  次に、そもそも精子の運動に関係する問題もあるだろうということで、精子について の個々の動き、それから、観察のための容器について検討したいと思います。 (スライド)  その前に、精子がどうして動くのかという簡単な説明をしますが、これはヒトの精子 のつもりで書いた図ですけれども、精子の運動装置というのはここにあります。すなわ ち、この辺にあります軸糸というものが能動的な運動をすることによって精子全体が動 くわけです。それが原動力になりますので、これのメカニズムが重要になりますが、今 回は省略いたします。 (スライド)  一般的に普通に精子の運動を見るということはどういうことかといいますと、先ほど 兼子先生からお話がありましたが、普通スライドあるいはいろいろな容器にこういった 精子を入れまして、それを見るわけですが、種類によって大ざっぱにこの2つのタイプ がございます。例えば、比較的真っ直ぐ進む場合、あるいはこういうふうに少し円運動 をする場合です。例えば、ヒトの精子あるいはウシの精子などはこれに属すると思いま すが、ラットの場合にはこちら側のタイプになります。  ところが、これがどうしてこういうタイプになるのか、今まで明らかにされておりま せんでした。 (スライド)  実は、先ほどいわゆる普通に顕微鏡で観察するという言い方をしましたが、あれは実 はカバーグラスのアーティファクトなんですね。精子は何も運動を邪魔するようなとこ ろがない場合、決してあのような運動はしないわけです。つまり、ガラス表面近くでや むなく運動を妨げられた結果が、ああいう運動になって表れるわけです。それでは、精 子が何も運動を妨げられないような、要するに、自由に運動できるような場合の運動と いうのは何かということを調べようとしたのが、この装置です。これは、私ども二重焦 点顕微鏡ということで開発したわけですが、何をしたかというと、接眼レンズの片方を すこしずらした両方の接眼レンズのそれぞれにビデオカメラを取りつけて、モニター上 に出しますと、ある1つの物体の焦点面が少しずれた二つの画像を取り出すことができ ます。これは、顕微鏡の性能を少しもいじりませんので、どのような速い現象でも追随 できるわけです。 (スライド)  これがその結果です。何も運動を妨げるようなもののないとき、精子はこのようにら せんを描きます。らせんのこのステップに当たる部分、らせん面ですけれども、この部 分で振動しながら全体的にはこういうふうな運動をします。  先ほど言いましたが、スライドガラスがある場合には、ここで前進ができませんの で、あとはこういうふうに円運動をすることになります。これが、精子の数の測定、そ ういったものに何が問題かといいますと、ここでトラップされてしまうわけです。同じ ことがカバーグラスについても起きるわけです。そうしますと、極端な言い方をする と、実はここだけを測ってみますと、精子の数が半分になってしまうんですね。ですか ら、ここだけ、この近くあるいはカバーグラスの近くだけを測って、それを精子数とす ると、つまり2倍の違いは何の意味もなくなります。 (スライド)  それでは、ああいうような運動というのはどういうところから来るのかということ で、精子鞭毛がそういうことをしているだろう、単純な生き物ですから、そういうこと を考えてみて、精子1匹の鞭毛の様子を見てみようということで、このようなことを考 えました。これはガラスのピペットの先端に精子の頭を吸いつけまして、精子1匹をい ろいろな方向から見てやろうということです。ここに精子がいることになります。ここ でマニピュレータで保持しております。 (スライド)  結果は、こういうことになりまして、普通はこのような像を見るわけですが、それを 直角な方向から見たわけで、要するに、こういう三次元成分があるということになりま す。 (スライド)  これが、一般的にヒトを含めた精子の形です。メガホンを少し押しつぶしたような形 になりまして、このような三次元成分を持ったものがあります。ですから、ヒトの精子 はAの成分がBに比べて20%ございますので、比較的回転をしやすくぐるぐる回って進 むということになります。ラットの場合には、比較的Aが小さいことになりますので、 小さな運動、円を描くということになります。  問題は、このBなのですが、この楕円の長軸、これが約10μmあります。したがいまし て、もし、薄い容器を使いますと精子は回転できませんので、厚い場合には回転してそ の回転の運動を見ますが、薄い溶液を入れた場合は、その回転を妨げることになりま す。ですから、精子の運動の何を見るのかということによって容器の形、厚さ、いろい ろなことを考えないと何を見ているかわからなくなります。 (スライド)  時間ですので簡単に言いますが、先ほどちょっと触れましたが、今、一番問題なのは 今、市販されていて我々が使えるもののほとんどが、プログラムすべてが秘密になって おります。これは、いろいろなものを変えるときに非常に問題でして、何を測っている のか一切答えてくれないという重大な問題がありまして、できればこういうものを秘密 にする必要のない装置というのをつくり上げることができればと考えております。  以上です。どうもありがとうございました。 ○池田補佐  ありがとうございました。何か御質問ございますか。もし、なければ、どうもありが とうございました。  それでは、続きまして、Vの6番ということでございますが、精液調査における疫学的 検討とデータ解析ということで、東邦大学医学部の伊津野先生です。よろしくお願いし ます。 ○伊津野研究員  この発表では、先ほど大阪大学の松宮先生から発表された調査の方法についての補足 と、先行スタディーとしての聖マリアンナ医大でのアンケート調査の結果を、ごく一部 ですけれども出ていますので、それを発表したいと思います。  まず、調査地点の選出方法と対象者の募集方法について発表します。  まず、この研究は、国際研究の一部になっていますので、日本の代表値というものを 世界に向けて発信したいという1つの目的があります。それとともに、日本国内でも、 やはり九州地区の方が関東地区より精子濃度が高いとかいろいろ言われていますので、 そういう地域差というのが本当にあるのかどうかというのを検討したいと思っていま す。  先行スタディーとして横浜・川崎地区で聖マリアンナ医大が調査していましたので、 日本の代表値を求めるためにほかに北海道、関西、北陸、九州の4地区、できれば各県 1つずつやりたいのですけれども、この4地区をとりあえず選びたいというふうに考え ました。  理想としましては、すべての産科外来の病院をピックアップして乱数表なりサイコロ なりでランダムに割り振るのがいいのでしょうけれども、現実問題としましてどういう 問題があったかといいますと、多数の産科外来患者数が必要だということが挙げられま した。また、産科外来だけではなくて、男性生殖機能調査を行う泌尿器科医が必要で す。また、更に、面倒なのですけれども、精子測定に熟練した検査技師が必要です。ま た、アンケート調査の実施や回収、データ入力などの事務処理のマンパワー、これもか なりばかにならないものが必要である。こういう条件が満たされる場所ということで、 先ほどの地図にあったとおりなのですけれども、札幌の札幌医科大と川崎は聖マリアン ナがやっていまして、関西では大阪の大阪大学、北陸では金沢の金沢医大、九州では福 岡の原三信病院です。これで先ほど津金先生の方から九州だけ個人病院ではないかとい う御指摘がありました。確かに、その拠点病院を決める過程でいろいろ議論があったの ですが、現実的には大学病院を調査拠点としましても、大学病院の産科の外来患者さん というのは、やはり不妊外来だとか特殊な産科の条件の方が多いです。今回の調査には 不妊治療をやっていないという1つの条件がありまして、そうすると、大学病院の産科 に来られる患者さんというのは、かなり対象から外れてしまいます。ですから、聖マリ の先行スタディーでも現実には関連病院ですとか、関連した個人病院の患者さんという のがかなり入ってきていますので、あくまでも事務局として大学の泌尿器科がなった場 合が多かったのです。原三信病院はそういう意味ではほかの4つに比べても、特に条件 的に離れているわけではないと考えております。  今回、どういう人を対象としたかといいますと、不妊治療をやっていない妊孕能を持 つ男性を対象としました。どうして妊孕能を持つ男性を対象としたかといいますと、こ れは、カールセンのこの50年間で男性の精子数が半減したというグラフなのですけれど も、カールセンの論文では、この○の数が論文の対象者の数を対数を取っているんです ね。対数を取っているので、かなり差がなくなっているのですけれども、このグラフで は対数を取らないで、そのまま素のデータを取ったのでかなりわかりやすくなったと思 うのですが、この●が妊孕性を確認されている集団のです。61個の論文が全部であるの ですけれども、この赤○が妊孕性が未確認の論文なんです。当然、妊孕性が確認されて いる人の方が未確認の人よりは精子数は高いというのは考えられるのですが、この中 で、この2つの大きい赤い妊孕性が未確認の論文です。これがかなり全体の中で下に引 っ張っているというのが考えられるんです。これは精管結紮に来られた方のデータが入 っているのですけれども、カールセンの論文に対する批判の1つとして妊孕性が確認さ れた論文と、未確認の論文がごっちゃになっているというのがありましたので、今回、 国際調査の方でやるのに、とりあえず妊孕性が確認された人だけを対象として研究を進 めていこうという1つの合意がなされまして、今回こういうふうに妊孕性が確認された 男性だけをやっていこうということです。岩本教授の方から最後の方に言われましたよ うに、妊孕性が未確認の若年者の大学生とか20歳とかそのぐらいの男性だけを集めて、 また別なデータとして解析しようという研究もおこなっております。  妊婦へのコンタクトということで、コーディネーターという人を、これは日本独自 で、各国ではやはり産科医が直接説明するのですけれども、日本の診療時間の制限の中 では、やはりドクターが直接妊婦に接触してその意義だとか参加を募る方法をいろいろ 説明する時間はないだろうということで、聖マリのスタディーでもコーディネーターと いうのを介入させて、うまくいったという実績がありました、ほかの4施設について も、主に看護婦さんの資格を持っている人が多いのですが、コーディネーターというの が最初に妊婦に接触して、本研究の趣旨を説明して参加を募る方法としました。  以上が、本研究についての補足事項で、先行スタディーとしての聖マリアンナの解析 が一部進んでいますので、それを御紹介したいと思います。  参加率としましては、1,600人に参加を呼び掛けて359人で22.4%ぐらいが参加に協力 してくれたということです。  男性の年齢ですけれども31.8歳、プラスマイナス4.7歳、それぐらいの年齢層というこ とです。  精子濃度は1億2,000万、プラスマイナス1億ということで、かなりSDが大きい、ば らつきのある集団ということです。これから見てもわかるように、かなり低い濃度から 高い濃度まで妊娠可能、妊孕性が確認されているわけですから、そういうばらつきのあ る精子のデータというのがわかります。最小が50万から最大が8億まであります。メデ ィアンとしては9,300万。これが基礎データです。  生活様式についての調査、ごく一部なのですけれども、男性の喫煙率、喫煙している かどうかということですが、精子濃度が低い群と高い群にとりあえず分けてやってみた 結果だけなのですけれども、喫煙率が両方50%ちょっとであるということです。この中 で10年以上喫煙しているのも67%ぐらい、同じぐらいです。1日20本以上喫煙している のも59%と68%。そんなに違いはないです。  国際調査の中で有機野菜というのがかなり注目されていまして、摂取しているかどう かだけの設問なのですけれども、精子濃度低群の方でちょっと高い結果になっていま す。教育レベルとして大学進学率は同じような感じです。  母親の喫煙、対象者が妊娠期間中、ずっと昔のことなのですけれども、母親が喫煙し ていたかどうかというのは、わかった範囲では余り差はなかったです。  母親の仕事ありというのが、精子の低群で少し高い結果と、とりあえず結果としては なっております。  以上です。 ○池田補佐  ありがとうございました。何か御質問は。 ○津金委員  まず、日本の代表値を求めると言われているのですが、要するに、地域差ぐらいしか 考慮していないのに代表というのは言い過ぎではないかと。むしろ、要するに、聖マリ アンナ医大で得られたデータが特殊ではないということを確認するために、ほかの地域 でも行ったという方がいいのではないかなというふうに考えます。  それから、今のデータでもそうなのですけれども、かなり個人間変動が大きい。そこ で、どのくらいの地域差を見るためにどのくらいのサンプルサイズが必要であるという ふうに考えて行ったのか。  それから、この抄録に高かったとかいう言葉が頻繁に出ているのですけれども、統計 的な差があるものとそうでないもの、今、見ていると有機野菜に関して統計的に下がっ たけれども、喫煙率に関しては有意差がないのにここでは高いという表現を使っていま すけれども、そこら辺を気をつけられて表現した方がいいのではないかと思います。 ○伊津野研究員  わかりました。 ○池田補佐  ほかにございませんでしょうか。よろしいですか。  それでは、どうもありがとうございました。  では、続きまして、7番でございますが、内分泌かく乱物質による精巣内ホルモン環 境、精子形成能、受精能に関する研究ということで、聖マリアンナ医科大学小林先生が 行った研究ですが、御発表は田中先生です。よろしくお願いします。 ○田中研究員  スライドお願いいたします。 (スライド)  私どもは、内分泌かく乱化学物質母体経由暴露の雄性生殖機能への影響について精巣 内ホルモン環境、精子形成能、それから、受精能の影響を明らかにすることを目的とし て動物実験を計画しました。また、内分泌かく乱化学物質として、今回まずビスフェ ノールAについて検討を行いました。  近年、不安視されています精子の量的、質的低下の原因の1つとして、母体経由で暴 露された内分泌かく乱化学物質による胎児期や新生児期の精巣ホルモン環境のかく乱が 考えられておりますが、特に、生殖器の性分化を担っている胎児精巣由来のテストステ ロンの乱れは、性分化の異常を誘導し、成熟後の生殖器に不可逆的な変化を引き起こす 可能性が考えられております。 (スライド)  これは、ラット周産期における血清テストステロン濃度とLH受容体、mRNAの発 現について論文から引用したものですが、左側の血清中テストステロン濃度は出生の2 時間後に急峻なピークを示し、これは性分化に重要な役割を持つと考えられています。  また、精巣のテストステロン産生を刺激するLHの受容体mRNAの発現は、右側で すが出生前日にピークを示すことが報告されており、内分泌かく乱化学物質暴露による 周産期血清テストステロン濃度や精巣のテストステロン産生にかかわるLH受容体等の 関連因子への影響を明らかにすることは、内分泌かく乱化学物質母体経由暴露の雄性生 殖機能への影響を検討する上で必要であると考えられます。 (スライド)  本研究では、1、精巣内ホルモン環境への影響について、ビスフェノールA母体経由 暴露による周産期及び成熟雄の血清テストステロン濃度と精巣テストステロン産生の調 節因子として、ステロイド代謝酵素やゴナドトロピン受容体のmRNA発現への影響に ついてマウス及びラットを用いて検討しました。  2、精子形成能への影響については、1の精巣内ホルモン環境の変化を踏まえての検 討を今後に予定しております。  3、受精能への影響について、ビスフェノールAを投与した母体から生まれた雄マウ スの精子濃度、精子運動率を調べるとともに、体外受精や顕微受精による受精率、発生 率を求めるための予備的検討を行っております。 (スライド)  ビスフェノールAの投与について示します。ICR/MCH系マウスとSD系ラットを用 い、膣プラグ確認日を胎齢1日としてビスフェノールAの飲水投与を開始しました。出 生21日の離乳時まで母体に対してビスフェノールAの投与を行いました。投与量は、 0.2μg/ml、20μg/ml、それから、200μg/mlの各濃度について投与を行いました。  出生前後の周産期の各時期と成熟後の胎齢23日で、この日は出生日に当たるのです が、この前後、周産期とそれから、成熟後10週齢について血液、精巣等を現在サンプリ ング中で、胎齢19日、23日、それから、出生4日、70日について、4日目まではラット を用いて、70日齢についてはマウスを用いて現在までに得られている結果を報告いたし ます。 (スライド)  まず、精巣内ホルモン環境への影響について示します。これは、マウス10週齢の体 重、精巣及び性腺付属器官の重量を示します。これは、0.2μg/mlと20μg/ml濃度の 投与についての結果です。体重、精巣重量、前立腺、凝固線、貯精嚢、いずれにおいて も有意な変化は認められておりません。 (スライド)  これは、同じくマウス10週齢血清テストステロン濃度を示します。0.2μg/mlと20 μg/mlの濃度についての結果ですが、コントロールに比べて有意な変化は認められて おりません。 (スライド)  これも同じくマウス10週齢精巣のステロイド代謝酵素のmRNAの発現についてRT−PCR 法による結果を示したものです。これは、ビスフェノールA20μg/ml濃度についての結 果ですが、左側の8レーンがコントロール、右側の8レーンがビスフェノールAです。 側鎖切断酵素、3β−HSD、それから、P450c17の3つについてですが、いずれもコ ントロールに比べて変化はありません。  また、スライドには示しておりませんけれども、インヒビンのmRAについても変化 は認められませんでした。 (スライド)  次に、ラットを用いました周産期での影響について示します。これは、胎齢23日、そ れから、出生4日の血清中のテストステロン濃度について示したものです。胎齢23日に ついては20μg/mlと200μg/mlの濃度について、出生4日については200μg/mlのデー タについて示しております。  胎齢23日におきましては、高濃度の200μg/mlの投与群、また、出生4日ではやはり 高濃度200μg/mlの投与群で、コントロールに比べ低下する傾向を示しておりますが、 これは統計学的には有意な変化ではありませんでした。 (スライド)  今の結果とはちょっと時期はずれるのですが、これは胎齢19日精巣におけるステロイ ド代謝酵素のmRNAの発現を示します。左から側鎖切断酵素、3β−HSD、 P450c17、17β−HSDで、これがβ−アクチンになります。各レーン左側がコント ロール、右側がビスフェノール20μg/ml投与のものです。いずれの酵素もコントロー ルと差は認められませんでした。 (スライド)  これは、今と同じく胎齢19日精巣におけますLH受容体のmRNAの発現を示しま す。コントロールに比べ20μg/ml投与群ですが、差は認められませんでした。 (スライド)  次に、受精能への影響について示します。これは、ビスフェノールAを投与された母 体から生まれた雄マウスにおける精子濃度と精子運動率について示します。成熟した雄 マウスを頚椎脱臼により屠殺し、精巣上体より精子を回収しました。この精巣上体精子 を37℃、5%CO2中で30分間培養し、その後、精子濃度と運動率を血球計算盤にて2 検者により各3回測定してデータを求めました。コントロールは5匹、0.2μg/mlビス フェノールAについては4匹、それから、20μg/ml投与についても4匹の結果です。  精子濃度、精子運動率いずれも投与群においてコントロール群との差は認めませんで した。  また、更に、内分泌かく乱化学物質の受精能への影響を検討するため、マウスの顕微 受精のための装置の設定を現在進めており、顕微受精技術の基礎的検討として現在、未 受精卵への精子の注入と、その後の胚発生を確認している段階です。顕微受精の実際に ついて簡単に示します。 (スライド)  これは、PMSG−hCG投与により過排卵させた卵子を、これがそうですが、ホーリング ピペットで固定保持しております。 (スライド)  引き続き、精巣上体から得た精子の頭部をインセミネーションピペットで、こちらに 精子の頭部が見えているのですが、ちょうど卵子に注入しようとしているところです。 透明体の部分に来ています。 (スライド)  卵子の透明体をピペットにより貫き、更に、細胞質内に精子の頭部を注入していると ころです。これはちょうど完了したところになります。注入完了後は、インキュベー ターの中に移し、胚の発育を観察していきます。 (スライド)  以上、ラット、マウスを用いての精巣内ホルモン環境に関する検討において胎児期か ら授乳期における20μg/ml以下のビスフェノールA母体経由の暴露は、雄胎齢23日、出 生4日及び成熟後の血清テストステロン濃度に影響しないこと。また、胎齢19日及び成 熟後の精巣におけるステロイド代謝酵素、LH受容体及びインヒビンmRNAの発現に は影響しないことが示唆されました。  更に、周産期を細分してのステロイド代謝酵素やLH受容体mRNAの発現等の影響 を確認することが必要であり、現在サンプリング中であります。  また、高濃度200μg/mlのビスフェノールAの暴露は、周産期の血清テストステロン 濃度を低下させる可能性が示唆され、今後、詳細に検討したいと考えております。  また、今回調べていないテストステロン関連因子、アンドロゲンレセプター、5α− レダクターゼ等、また、他の組織、精巣上体、下垂体等及び他の内分泌かく乱化学物 質、スチレン、ノニルフェノール等の検討も実施したいと考えております。  受精能に関する検討において少数例の検討ではありますが、20μg/ml以下のビスフェ ノールA母体経由の暴露は、成熟後の精子濃度、精子運動率に影響しませんでした。今 後、更に顕微受精による検討を進めるとともに、体外受精により発生した胚を胚移植 し、産仔を得る系を確立する予定であります。  また、母体に投与したビスフェノールAの胎児、新生児への移行を検討するため、蛍 光プレラベル化剤を用いた高速液体クロマトグラフィーによる高感度測定による血清及 び組織中ビスフェノールAの測定を予定しております。  以上です。スライドありがとうございました。 ○池田補佐  ありがとうございました。ただいまの御発表、何か御質問ございますか。 ○青山委員  1つだけお伺いしたいのですが、水の中に20μgとかいろいろな量を入れておられます が、実際飲水量から計算して実際動物には大体どれくらいの量が入っているかというこ とはおわかりでしょうか。 ○田中研究員  今はっきりした数値は持ち合わせていないのですけれども、マウス1匹当たりで、ち ょっと間違えていたら申し訳ないのですが、0.2μg/mlで1μg/ボディーぐらい ではないかと思います。これは現在、影響が報告されている量よりも、この 0.2μg/mlでやや多い量ぐらいではないかと思います。 ○押尾委員  精巣上体の精子の数を数えていらっしゃいますけれども、かなり部位とか何かよって 違うと思うのですが、それをどういうふうにされたのかなというのと、よくそのために 精巣全体をつぶしてデイリースパマアウトプットとか取りますけれども、そちらもごら んになっているのかということが1点と、もう1つは、受精能を見るのにイクシーを使 われていますけれども、普通の体外受精はどうして使われないのでしょうか。 ○田中研究員  受精能に関する研究については、私ではなくて共同研究者が行っていて、本日参りま せんのではっきりしたお答えは申し上げることはできません。 ○押尾委員  ただ、一般的には普通はコンベンショナルなもので見て、それで受精能があるとかな いとかという議論をして、その後イクシーを、イクシーというのはそれを飛び越えて受 精させるという方法ですから、それを先にお使いになるには、何らかの理由がないとち ょっと考えにくいと思うのでお聞きしました。 ○池田補佐  ありがとうございました。そのほか御質問ございますか。よろしいでしょうか。  それでは、どうもありがとうございました。  次に、5番目の最後、8番でございますが、遺伝的素因に対する反応性の差違に関す る研究ということで、徳島大学の中堀先生お願いいたします。 ○中堀研究員  私は平成11年度から班に加えていただくことになっておりまして、ここへ来ることを 用意して来てみたら平成10年度報告会ということで、一応前倒しということでお話しさ せていただきます。  今日これからお話しさせていただくのは、9月1日発行のジャーナル・オブ・ヒュー マン・ジェネティックスに出ますし、それから、人類遺伝学会及び公衆衛生学会が秋に ありますけれども、そこで発表する予定でございます。  私はY染色体というのを主にやっておりまして、今日、私のお話は本来はYの性の意 味とか配偶子形成の話とかYの成り立ちとか進化というものをお話ししてからお話しし た方がわかりやすいと思うのですけれども、時間がございませんので絶対に知っておい ていただきたい話だけまずして、それから、話に入っていきたいと思います。スライド お願いいたします。 (スライド)  これはヒトの染色体ですけれども、ここに性染色体があります。そして、X染色体、 Y染色体とありますが、XYは両方とも性染色体と言われ、随分大きさも形も違う染色 体でございます。Y染色体というのは、ヒトの染色体の中では小さい方の染色体です。  男の子が生まれるときには、これはお父さんが精子の中にY染色体を入れて、そのY を持った精子が受精されたために男の子ができるわけです。女の人はXXでございます ので、Y染色体は全く持っていないわけです。Y染色体というのは父親から息子へダイ レクトに伝わっていく。  それから、もう1つ、普通、相同染色体の場合にはこういう染色体というのは配偶子 をつくるときにそれぞれのDNAを入れ替えしますけれども、Y染色体の場合には相手 になる場所がありませんので、このまま男親から子どもへ伝わっていくという、これだ けを頭に止めておいていただきたいと思います。組み変わらないでそのまま伝わるとい うことです。  それから、Y染色体は男性を決めまして、ここに睾丸決定因子という遺伝子が乗って おるのが知られております。それから、精子形成関係の遺伝子が乗っているだろうと言 われていて、候補遺伝子が2つばかり取られております。まだ何も証明はされておりま せん。 (スライド)  日本人の男性を4つのタイプに分けるお話をいたします。Y染色体の上に多型がござ います。ここにSRYの多型、それから、47Zの多型、YAPの多型とございますけれ ども、この2つは私が見つけた多型でございます。それから、このYAPの多型という のはハマーという方が見つけた多型でございます。  この多型というのがどういうものかということをお話ししたいと思います。まずSR Y多型ですけれども、次のスライドをお願いいたします。 (スライド)  見ていただくとぱっとわかりますけれども、ここのところの塩基配列にはCの人とT の人がおります。我々はこのCの人をCアリル、Tの人をSアリルと呼んでおりますけ れども、SSCPありますと、Sアリルの人はここにバンドが出ますし、Cの人はここ にバンドが出るという、こういうどっちかというような多型でございます。 (スライド)  47Zという多型はこういうものでございまして、ここにY1、Y2と書いてあります けれども、Y1タイプの人というのはSTU1で切ってサザンハイブリダイゼーション したときにこういうバンド1本しか出ない人で、Y2のタイプの人というのは、こうい うバンドが出る人でございます。これは2人とも違う人ですけれども、こういうバンド が出るのをY2と呼んでおります。だから、これが出るか出ないかというだけでござい ます。 (スライド)  YAPというのは、Yの上にアルノインサーションがありまして、アルノインサーシ ョンがある人はそこのところが長くなっておりますので、YAPのインサーションがあ る人は、こういう450ベースのバンドが出るのに比べて、YAPのインサーションがない 人は150ベースのバンドが出る、それぞれ個人ですけれども、こういうふうな違いのこれ かこれかというだけでございます。 (スライド)  今、SRY多型、47Z多型、YAP多型というのがどのようなものかお示ししました けれども、それぞれに2つずつパターンがあるわけです。これは、2つあって、2つ2 つ2つだから2×2×2で8タイプあるように思いますけれども、実はそうではござい ません。なぜかといいますと、これは丸ごと父親から息子へ伝わっていくわけです。だ から、あるタイプしかないということが期待されるわけです。それで、実際に調べてみ ますと、 (スライド)  こういう4つのタイプしか日本人の集団中には見出せません。それで、例えば、Y2 とSとYAPマイナスというタイプを見た場合に、Y2タイプというのは必ずここがS で、ここがYAPマイナスなわけです。一方でYAPプラスというものは、必ずY1と Cと一緒にいるわけです。これは考えると、すぐわかるのですけれども、要するにY1 とC、YAPマイナスというタイプが先祖型で、それから、あるインサーションが起こ ってYAPプラスになったタイプがあり、それから、それがそのまま来ているタイプが あり、それから、SRYのミューテーションが起こったタイプがあり、そのミューテー ションが起こったタイプから47Zのミューテーションが起こったタイプがあると、こう いうふうに順番づけることができるわけです。  これは、我々の研究ではありませんけれども、ハマーが言うのにはこのYAPイン サーションというのは人類史上1回だけ起こって、約5万年前にこれが分かれたという ふうにハマーは言っております。  このタイプを1型、このタイプを2型、このタイプを3、4というふうに我々は名づ けております。一応、後で1、2、3、4と分けているときと、グループA、B、Cと 分けているときがありますけれども、Cというのは、このタイプは親戚だと考えて、こ のタイプを一まとめにして扱っているときに、グループA、B、Cと分けております。 それ以外は1、2、3、4と分けております。  日本人の集団というのは、大体このタイプの Y染色体を持つ男性が4割から5 割、このタイプのY染色体をもつ男性が3割から3割5分くらい、このタイプの人が2 割から3割ぐらいの割合で日本人の集団中に認められます。ここまでがYのタイプ分け のお話です。要するに、日本人の男性には大きく分けて4つないしは3つにわかれるよ うなタイプがあるということです。 (スライド)  岩本先生のところの検体で、精子数のわかっている方についてこのタイプ分けを行い ました。それがこのデータであります。全部でDNAの検体として解析できたのが198検 体でございます。先ほど申しましたように、大体こちらが47%、それから、これが22 %、これとこれを合わせて30%ぐらいでございます。  それぞれの方の精子数の平均値を取っております。この人たちは1億プラスマイナス 84、それから、これが8,300万、これが1億2,000万ぐらいですね。これが1億1,000万ぐ らいということになります。ぱっと見て、このタイプの人が精子が少ないということが わかります。 (スライド)  こういう分布を取るときに対数を取った方がグラフとしてはきれいなグラフになる、 正規分布に近づくというような例がありまして、一応これは対数を取っております。タ イプ1、タイプ2、タイプ3、タイプ4とそのままの実数をここに棒グラフで示してお ります。この1と書いたところが1,000万、2と書いたところが1億でございます。それ から、この縦棒は丸々の人数を示しております。  タイプ1の方というのは人数も多いですから、大体こんなふうな分布になっておりま す。タイプ2の人というのはこれですけれども、こういう感じの分布になっておりま す。タイプ3の人というのはこの辺がありませんで、この辺からぎゅっと上がってきま す。タイプ4の人というのも、こういうふうにあって、この辺にたくさんいます。 1,000万以下の人の中にはタイプ2の人が1人だけいて、11人タイプ1とタイプ2の人 が入っております。  それから、これは勿論、子どもさんのある男性ですけれども、一応4,000万以下をオリ ゴスパミアというふうにもし言いますと、この辺が4,000万ですので、大体タイプ2の人 に至りましては、37〜38%の方が4,000万以下という精子数になります。 (スライド)  これは、一応年齢30歳以下と30歳以上に分けたものです。これはトータルで先ほど示 しておりましたけれども、さっき申しておりましたように、これがタイプ1の人、これ がタイプ2の人、これがタイプ3、4の人を合わせた数字です。大体1億1,000万ぐらい の平均ですけれども、これで30歳で切りますと、この30歳以前では余り変わらない、こ の人たちよりはちょっと少ないかなということですけれども、これは統計的有意ではご ざいません。30歳以上になりますと、27人でございますけれども、この方たちが非常に 少ないということがよくわかります。  これが、精子数というのは男性のグループによって違っている、だから、遺伝的に違 っている、もしくは遺伝的に、もし何かの影響を現在の男性が受けていたら少なくなっ ている人たちというのは一部あるのかなというような感じを受けます。 (スライド)  私ども以前から、今のは精子の濃度の話でしたけれども、以前から無精子症という患 者さんを集めておりました。原因がわからなくて無精子症で、Y染色体の上に欠失があ る人がたまにいるのですけれども、そういう人を全部除いて、何か全然全くわからない 無精子症の患者さん。それは、岩本先生との共同でもう10年ほど集めておりまして、こ ちらは阪大の並木先生との共同で集めております。AZOと書いてあるのが無精子症の 患者さんであります。  それから、このコントロールというのは、聖マリアンナの岩本先生のほかの患者さん のコントロール。それから、これは阪大関係の病院の、この患者さんたちのベースにな っていると思われる地域の病院の働いている方のDNAをいただいたコントロールで す。  大体さっき申しておりましたように、コントロールではグループAが40%ぐらい、グ ループBが20数%、グループCは30%ぐらいですけれども、これを見ていただくと、 無精子症の人というのではグループBの人が高いということがわかります。これで一応 ドリアティブリスクを出しますと、この人たちが無精子症になるリスクが1とします と、この人たちが2.05と、有意な数字で出てまいります。 (スライド)  こういうタイプの分布というのは、決して日本じゅう全部同じというわけではござい ません。ただ、我々はそんなに日本でいろいろなところで集めたことはございませんか らわかりませんけれども、例えば、韓国で見ますと、この1、2、3、4というのがそ れぞれのタイプで、○の大きさがタイプの頻度を表しております。韓国には2のタイプ というのはございません。2のタイプというのはどういうふうに考えられているかとい いますと、いわゆる縄文人というふうに考えられております。日本に縄文人がいたとこ ろに韓国、朝鮮半島から弥生人が入ってきて、その縄文人をこっちとこっちに追いやっ たというふうに言われておりまして、現在、日本の集団というのはこういう集団でござ いますけれども、この集団の頻度というのは場所によって違うというようなことが考え られるわけでございます。  以上で、発表を終わります。スライドどうもありがとうございました。 ○池田補佐  どうもありがとうございました。大変面白い研究ですが、どなたか御質問ございます か。なければ、どうもありがとうございました。  それでは、引き続き、次のテーマに移らせていただきます。次はVI番のグループです が、「内分泌かく乱化学物質の超高速選別法の開発・検討に関する調査研究」というこ とで、まず、バイオフィールド3次元定量的構造活性相関に関する調査研究、国立医薬 品食品衛生研究所の菅野先生、お願いいたします。 ○菅野研究員  では、早速スライドをお願いいたします。 (スライド)  この研究班では、高速選別法ということで、2通りのものを検討してまいりました。 そのうちの一つ、3D-QSARの方をまずお話しさせていただきます。 (スライド)  3D-QSAR、3次元定量的構造活性相関というのは、既知の化学物質の構造とその既知の 物質の生物活性を数理モデルを用いて関連づけて、数式をつくります。そして、そこに 生物活性がわかっていない化合物のデータをインプットして、生物活性を予測するとい う手法です。これが、もし完璧に行われますれば、コンピューターの中でスクリーニン グができるということで、ハイスループットの一つの理想型とも考えられるわけです。  これに関しまして、日米を調査して回りまして、今後の応用の可能性について検討い たしました。 (スライド)  我々が検討しましたのは、ここに挙げます4種類です。CoMFA、すなわちコンパラティ ブ・モレキュラ・フィールド・アナリシス、HQSAR、Hologram QSAR、Pharmacophoreに よる方法及びドッキングモデル法であります。このいずれにしましても、計算のモデル に対しましては、実験動物などを用いた実験で見られた生物活性、あるいは試験管内で 得られたデータをコンピューターにフィードバックして計算式を教育しなければならな いという手続きが必須であります。この4つにつきまして、その特性を検討しました。 (スライド)  CoMFAですが、これはお手本となります化合物、ここではエストラジオールを示してい ますが、これを3次元の格子の中に浮かべます。2オングストロームの格子点すべてに 関して、sp3の軌道を持ったプローブと称するものをスキャンして、相互作用を計算し、 それをお手本となる化合物の鋳型として計算式に覚え込ませます。 (スライド)  次のHologram QSARというのは、化学構造式を構成要素に分解いたしまして、それを 特定の数字のライブラリーに変換します。このライブラリーと生物学的な実験データ活 性とを対比させてコンピューターに教育を施し、未知の物質の活性を予想させるという ものであります。 (スライド)  Pharmacophoreと申しますのは、右の図にありますように、例えば、酸素原子が占める 場所を赤い(球)フォアーで表わす一方、アルキル鎖の疎水性の部分を緑の雲で表す。 これをやはり、お手本となる化合物でつくっておきまして、そこに未知の物質の球や雲 の形を当てはめる計算を行い、どのくらい合うかによって、お手本の化合物に近い作用 があるかどうかを想定するものです。この方法では、定性評価が行われます。 (スライド)  では、今、挙げた3つの方法の特徴を挙げますと、第一に、計算モデルの教育に使う お手本物質が決まっておりまして、大体どの施設でも強力なエストロジェン、例えば1 7βエストラジオールやジエチルスチルベストロール、あるいは性質のよく分かってい る抗エストロジェン、例えば、4ハイドロキシタモキシフェンなどです。 (スライド)  加えてエストロジェン受容体のリガンドバインディングドメーンのX線解析データを 利用しております。 (スライド)  これは、エストラジオールとラロキシフェンの例でネーチャー誌に掲載された有名な 論文からのものです。この3通りの方法は鋳型となる化学物質がレセプターに結合した 状況を考えてはおりますがあくまでもお手本の化合物、例えばエストラジオールの場合 はこうであるという情報を用いているところがキーポイントになります。 (スライド)  これらの3法の方法の基本的な性質をまとめますと、3次元の鋳型を考えるとき、例 えば、エストロジェン受容体との結合を考えておりましても、鋳型は化学物質の方から 決めております。アゴニストが取り得る鋳型の形を、例えば優等生的な出っ張りとかへ こみとか、そういう形でコンピュータに覚えさせますし、アンタゴニストが取り得る鋳 型のところは、禁止的な凹凸という形でコンピューターに覚え込ませる方式でありま す。  この方法の欠点は、強いて挙げますと、鋳型に用いた化合物の骨格に近い化合物しか 予測できない傾向が強いということになります。 (スライド)  これに対しまして、第4の方法として、医薬分子設計研究所の板井博士らが主に開 発・使用中のドッキング法を御紹介いたします。これは、まず受容体分子の構造を先に 解析することに特徴があります。図は黄色で一部に青とか赤の色がついた網目が受容体 の結合部位のポケットを描き出しているものですが、これはリガンドバインディングド メインの構造を先に計算した結果であります。疎水性の部分は青、親水性の部分は赤と いうふうに表示されています。 (スライド)  次に、リガンド分子の方についても、回転の可能な結合の部分に関して、取り得る構 造を全て計算して確認するという方式を取ります。ですから、受容体と結合分子との相 互作用についてシミュレーションを行うという方法になります。 (スライド)  これを3次元の場でエネルギー的に最も安定した状態を計算により割り出すという形 で、結合の強さなどを計算して行きます。(スライド)  こちらがエストラジオールがポケットにはまったところで、青い網目がご覧になれる と思いますが、疎水性のポケットにすっぽり包まれているという形になります。ここが 有名なHelix12で、その方向がこのようになっています。  それに対しまして、タモキシフェンはどのように計算されるかと申しますと、ここに ありますように、ポケットが非常に長く伸びて開いた状態になっており、そこにタモキ シフェンが収まっています。そして、Helix12が別の方向を向いているということも見る ことができます。 (スライド)  この方法の基本は、繰り返しになりますが、受容体の構造の可塑性を直接検討でき る。さらに、リガンド分子の構造についても一次結合に関して可塑性を検討できる。こ れによる利点としまして、例えば、化学構造の骨格が全く違っているものでも予測され る率が高いということがわかっております。生物学的な興味からいたしますと、今後の 受容体学の発展、特に、共役因子との相互作用などのことも考えますと、こちらのドッ キングモデル法の方が守備範囲が広いと考えております。 (スライド)  創薬の場ではリード化合物を選び出すために3次元構造活性相関というのはよく行わ れているわけですが、ここで特にエストロジェン受容体を仮にターゲットといたします と、これに結合するであろう化学物質をコンピューター上で選別できるということは、 今後のスクリーニング、すなわち、次の段階の試験に供すべき物質の優先順位付けのた めには非常にハイスループットな手法としての期待が大きいと考えます。今回、我々が 検討した限りでは、ドッキングモデル法が最も適切ではないかという結論に達しており ます。  以上でございます。 ○池田補佐  ありがとうございました。御質問は阿部先生。 ○阿部委員  非常にすばらしいお話を聞かせていただいたのですが、例えば、こういう場合はどう なるのでしょうか。タモキシフェン、これは乳がんに対してはアンチエストロジェンで すね。ところが、子宮に対してはエストロジェニックなんです。動物のエストロジェン に対してはラットなどに対して明らかにエストロジェニックなんですね。こういう場合 はどう考えたらいいのでしょうか。 ○ 菅野研究員  エストロジェン受容体に2か所共役因子が結合する部位、AF-1とAF-2というの がございまして、タモキシフェンに関しましては、AF-2のアンタゴニストでAF-1 のアゴニストだということがわかっていますので、組織や細胞の種類によって共役因子 が異なっていると、タモキシフェンに対する応答性が異なってくることが考えられま す。現在、タモキシフェンのそのような性質は、その様に説明されていると思います。 ですから、そういう意味ではタモキシフェンをアンチエストロジェンの代表物質の鋳型 として使うというのは、確かに問題があります。先の3法はこの様な先生のご指摘の部 分を未解決のまま、問題として抱える可能性があります。しかし、例えば、ドッキング 法で、もし、リガンドに依存した受容体アミノ酸鎖の折りたたみ具合が計算できて、そ れによって、次の段階の共役因子との相互作用まで計算できるとすると、そしてアゴニ ストとしてプラスに働くかマイナスに働くかが予測できるようになると、それは非常に 有用であろうというふうに、逆に考えております。 ○池田補佐  ありがとうございました。続きまして、青山先生お願いいたします。 ○青山委員  今の阿部先生の御質問に非常に近いのですが、そうしますと、お手本とするエストロ ジェンが今、菅野先生は4つお示しいただきましたけれども、これぐらいで十分なので しょうか。それとももう少し幾つかのものが必要でしょうか。 ○菅野研究員  最初に述べた3通りは、お手本に相当強烈に影響されてしまう様なので、お手本を増 やすことがどの程度有効か、例えば、タモキシフェンみたいなものを加えると、シミュ レーションとして扱いきれなくて、かえって足をすくわれるのではないかという怖さを 感じます。それに比べてドッキング法の方はもっと自由度が高い方法であると認識して おります。ですから、この方法でも勿論お手本で確認はしなくてはいけないけれども、 計算法自体が全然違うものですから、その点、生物屋としても安心しておつき合いでき るかなという、そういう風に思っております。 ○松尾委員  大変面白いお話なのですけれども、1つだけお聞きしたいのですが、OH(水酸基) ですね、普通エストロジェンですと、アンカ(錨)と言っていますけれども、OHが2 つですね。がちっといかりを下ろしていますよね。それがほとんどのレセプターの立体 構造を決める。今、質問しているのは、OHが1個しかない場合は、どちら側にくっつ くのかという非常に任意性があるんですね。ですから、今おっしゃった最後の非常にい いモデルではどういうふうに決めるのでしょうか。例えば、オクチルフェノールなどは OHが1個しかありませんね。上に2つ場所があるんですね、水素結合する。どちらに くっつくのでしょうか。 ○菅野研究員  申し訳ありません。オクチルフェノールのポケットの計算データはまだ見ていないの ですが、似たような問題点があるシミュレーションを検討しているのを知っておりまし て、その場合はエネルギー準位でどっちがフィットするかで決めております。ただ、で は、アライメントは全部コンピューター任せの自動でいくかというと、ケミストの経験 によってある程度寄せてやらなければいけないというプロセスは確かに残っています。 ですが、最終のところはエネルギー準位の計算でいっているはずです。 以上です。 ○池田補佐  時間もないのですが、事務局が1つ。井上さん。 ○井上(事務局)  ちょっとお聞きしたいのですけれども、例えば、分子と分子の2分子が安定化すると き、エネルギー準位が安定化するという要因で、一つの電子同士のフェーズが合うとか そういうふうなことは考えに入れられないのでしょうか。 ○菅野研究員  そこまで細かい話は、私はフォローできないのですが、ファンデルワールス力のレベ ルの計算であると認識しております。余談ですが、板井先生の話ですと本当に学問的に わかっていないのは水和水の扱いだそうです。ですから、多分そっちの方が強烈に効く のではないかと思っているのですけれども。お答えにならなくて済みません。 ○池田補佐  ありがとうございました。  それでは、時間もございますので、次にまいります。  次はVIの2番ということで、超高速選抜法の検証の評価に関する調査研究。同じく国 立医薬品食品衛生研究所の井上先生が分担研究者ですが、御発表は菅野先生お願いいた します。 ○菅野研究員  続けてやらせていただきます。スライドお願いいたします。 (スライド)  こちらの研究は、通産省と厚生省のジョイントという形で進めた研究でございます。 (スライド)  その背景となる目的は、膨大な数の物質に内分泌かく乱作用があるかないかを早急に チェックする必要があるという要請に対応することにあります。そのときには、最終的 には動物実験を含むいろいろな試験を重ねて結論を出すわけですが、それには余りにも 対象物質数が多いということで、どの化合物から順番に手をつけたらいいかということ をまず考える必要があるというのが現段階での認識であります。  そこで、優先順位付けのための方法としては先ほどの3D-QSARも候補の一つなのです が、現在手中にある方法論でハイスループットスクリーニング系をつくりたいというの が本研究の動機であります。ですから、ハイスループットスクリーニングの目的は、更 に調査するための化合物が余りにも種類が多いので、それの優先順位をつけること、そ れが最大の目的になるわけです。 (スライド)  本研究は、米国、EPA(環境保護庁)が提案したヒト由来培養細胞系を用いた方法 を我々日本で独自に開発し、それの検証をするということであります。本研究は通産省 との共同研究であります。用いた系はHela細胞に受容体分子を強制発現させ、ホルモン 応答性を持たせた培養株を住友化学で開発を行い、その細胞系を用いたハイスループッ トスクリーニングのロボットを化学品検査協会の方に設置するという形で進みました。  細かいことになりますが、代謝系を組み入れたもの、組み入れないものを含め、この 研究班の中では延べ350測定ほどが行われました。 (スライド)  これがロボットの概要であります。基本的には一々人間がやればできる作業なのです が、それをコンピューターで制御した機械に全部やらせるためには多数のノウハウが必 要になるということで、これ自体が一つの大仕事になります。細胞を播きまして、化学 物質を添加し、細胞がその化学物質に反応したかどうかを、最終的にここの化学発光の 装置で測るという手順をロボット化するものであります。 (スライド)  細胞系は、ヒトのエストロジェン受容体のα、β、、アンドロジェン受容体及び甲状 腺の受容体α、β、この5系統について検討いたしました。 (スライド)  これがその細胞株の漫画ですが、Hela細胞の中に2つの遺伝子を入れます。1つは、 エストロジェン受容体そのものをつくるものであります。Hela細胞はもともとほとんど エストロジェン受容体をつくっていない細胞なものですから、外からその遺伝子を入れ てやります。  それに反応して、ルシフェラーゼという蛍光たんぱくをつくる遺伝子も入れます。こ れにはエストロジェン応答性のEREを組み込んでおきまして、リガンドによる刺激が 入って初めて光るようにするというわけです。  ここには書いてありませんが、細胞の活きのよしあしを調べるために、もう一つモニ ターする遺伝子が入っておりますが、測定には直接関係ありませんので、ここでは省略 してあります。 (スライド)  これが結果の一例です。陽性対照として用いた17βエストラジオール。文字が小さく て申し訳ありません、1ピコモルから10倍10倍で7乗の区間が振ってあります。最大活 性が100ピコモルで出ているという系になります。 (スライド)  ジエチルスチルベストロールを陽性対照として使ってみまして、この場合は1,000ピコ でピークが出るという系がエストロジェン受容体αに関して完成いたしました。 (スライド)  繰り返しになりますが、17βエストラジオール、あるいはビスフェノールAなどのエ ストロジェン作用の弱いものも測っておりますが、大体3×10−11ないしは10−7Mに EC50が来るという程度の感度の系ができたということであります。これは、他のイー ストを用いた系やレセプターバインディングアッセーの系の値とほぼ同等ないしは若干 よいというところです。  問題点としては、作用の弱い物資を流してみた際に、EC50が算出できない物質もた くさん出現したということであります。それは系の感度としての限界なのか否か、とい うところが問題になります。 (スライド)  EC50がなかなかきれいに求まらないという経験がありましたので、ここではPC50 というものとThresholdというものを定義し直しました。PC50というのは、ほとんどE C50と同じ意味なのですが、このEC50がその物質での最高反応を100とするのに対し て、PC50は陽性対照として計測したエストラジオールの最大活性を100とした際の50 %反応濃度の値です。ですから、PC50の方が一般論としてEC50よりも少し厳しい値 として求まる、そういう値になります。  Thresholdは、ブランクの値よりも3SD以上反応が出た濃度と定義いたしました。こ の理由は、弱い化合物によっては用量反応曲線が最高濃度のところでちょっとだけ、し かしながら有意にたち上がる物質が出てくるものですから、そのデータをThresholdとい う値で救ってやろうという意図であります。  このような非常に低い用量反応曲線を描く場合には、PC50も求まらない場合があり ました。 (スライド) いろいろ測った経験から申しますと、Threshold値は多くの物質で求まりましたが、PC 50が求まらない物質もかなり出ました。また、ここはまだ解決の済んでいない問題なの ですが、Thresholdは比較的低濃度で求まったものの用量反応曲線がだらだらと高濃度の ところまで横這いとなりPC50が求まるに至らないというような化合物が見つかってお ります。 問題点を纏めますと、第1に、すべての化合物がきれいなシグモイドを描くわけではな い、第二に、かなり物質は最高濃度のところだけでちょっとしか反応を起こさないとい う2つが挙げられます。 (スライド)  次に、S9ミックスに関して簡単に御説明いたします。肝臓のS9ミックスを用意し て添加すると、活性化ないし代謝を受けたときだけエストロジェン受容体に結合すると いうことがわかっている物質があるものですから、これがこの系でどのくらい有効かを 検討したということです。 (スライド)  これは、その1例です。スチルベンと申しまして、ジエチルスチルベストロールの骨 格部分、ベンゼン環が2つ、その間にCが2つ二重結合でつながったものですが、それ 単体では全く反応を起こしません。その系にS9を入れてやりますとこの系でも反応が 出るようになります。  ただし、お示ししませんが、エストラジオールのようなものにこの系を加えるとかえ って感度は落ちます。代謝によって壊れてしまうものもあるということです。 (スライド)  では、実際このロボットの系でどのくらいの時間が掛かったかというと、96結のプ レートで大体3物質できるような系を組んでおりまして、細胞に15分、培養24時間、発 光の測定に20分ということです。今回の実績は化検協さんの方の話によると、63物質、 22プレートが大体30時間で終わったというようなスピードの系ができたということにな ります。 (スライド)  考察、繰り返しになって申し訳ありませんが、多くの物質でPC50が求まらない、な いしはThresholdしか求まらないということもわかりました。PC50はEC50の代用とし て使えるが、Thresholdというのは対数表示でのシグモイド用量反応曲線の裾野の部分を 拾っておりますので、EC50ないしはPC50の代用として扱うのは難しいだろうと考え られます。定性的な判断あるいは上限を規定する指標値として扱うのがよろしいだろう ということに研究班においては結論されました。  以上です。どうもありがとうございました。 ○池田補佐  ありがとうございました。ただいまの御発表に何か御質問等ございますでしょうか。  それでは、どうもありがとうございました。  それでは、続きまして、一旦、菅野先生には戻っていただきまして、7番目でござい ますが、28日間反復投与試験等に関する調査研究ということで、最初に国立医薬品食品 衛生研究所の広瀬先生からお願いいたします。 ○広瀬研究員  我々の研究班では、日米欧で統一したプロトコールで内分泌かく乱物質を検出しよう というような試みを行っております。具体的には28日間反復投与試験を基礎とした方 法、子宮重量を指標とした生体試験、それから、ハーシュバーガーの3種類の試験を行 っております。  まず、私の方で行いました28日間反復投与試験を基礎とした方法の結果をお知らせし たいと思います。では、スライドをお願いします。 (スライド)  内分泌かく乱物質のスクリーニングを目的としたOECDenhanced Test Guideline (TG)407というラット28日間反復試験投与を基礎としたドラフトプロトコールが作成 され、我々はこの試験で内分泌かく乱化学物質が果たして検出できるかどうかというこ とについて検討しました。  被験物質としては、非ステロイド性の抗アンドロジェン作用物質であるフルタマイド および合成男性ホルモンであるメチルテストステロン、2種類を用いました。試験方法 は従来のTG407に加えテストステロン、エストラジオール、FSH、LH、プロラクチ ン等、血中ホルモンの測定、下垂体、甲状腺、副腎、雌雄の生殖器など内分泌関連臓器 の重量測定および病理学的検索精子数、運動性、形態異常などのような精子検査、さら に、雌では性周期の観察を行うという方法であります。 (スライド)  通常のTG407は各群5匹を用いていますが、今回はより正確な統計学的処理を行うた め、各10匹の雌雄の(SD)IGSラットを用いました。フルタマイドあるいはメチルテストス テロンの1日1回強制経口投与を28回行い、雄は28日で屠殺しますが、雌では投与20日 目から性周期を観察し、発情静止期になった日に屠殺します。  投与量は最高用量として確実にホルモンの影響が出る量、最低の用量はNOELに設定 し、これらは文献的な値から採用しております。 (スライド)  各検査項目の具体的な値として、まず、血中ホルモンのレベルは、フルタマイドを投 与した雌では何も影響はなく、雄でのみテストステロンとエストラジオールが高用量で 有意に増加しました。  メチルテストステロンに関しては、雄では全く影響がなく、雌のFSHのみ有意な増 加が認められました。 (スライド)  内分泌関連臓器の相対重量は、フルタイマドでは、雄で性嚢、凝固腺、背側葉前立腺 を合わせた重量が有意に低下していますが、精巣には明らかな影響が出ておりません。 精巣上体は1mgで低下していますが、高用量では低下しておらず、投与の影響とは考え られません。雌では影響ありませんでした。 (スライド)  メチルテストステロンに関しては、雄では高用量で精巣あるいは精巣上体の重量が有 意に低下し、雌では下垂体、副腎、卵巣の相対重量が低用量から有意に減少しておりま す。従って、テストステロンではNOELが求められませんでした。 (スライド)  病理組織学的な所見では、フルタマイドの雄で乳腺小葉の萎縮が高用量で有意に認め られ、その下の1mg用量でも有意差はないものの用量相関性に増加しており、1mgも 投与の影響と考えられます。 (スライド)  メチルテストステロンでは、高用量で明らかな精巣の萎縮が認められ、雌では卵巣の 多卵胞性のう胞の発生頻度が有意に増加していますが、これはFSHの増加に関連した 変化と考えられます。  さらに、子宮内腔の拡張上皮の空胞変性、膣上皮の円柱状上皮化乳管の過形成、副腎 皮質網状体の萎縮が20mgあるいは80mgで観察され、多卵胞性のう胞は低用量の5mgから 発現しております。 (スライド)  意外にも、精子の数、運動性、形態異常は、フルタマイド、メチルテストステロン、 とも全く対照に比べ有意な差は認められませんでした。メチルテストステロンで精巣の 萎縮が明らかに認められましたので、精子数がある程度影響を受けるかと思ったのです けれども、精子数は全く影響は受けませんでした。 (スライド)  雌の性周期は、フルタマイドではほとんど影響がありませんでしたが、メチルテスト ステロンでは5mgの低用量から周期が延長するという傾向がありまして、高用量では性 周期の判定が全く不可能でありました。  各検査項目をまとめますとまず、フルタマイドに関しましては、雌では全く影響が見 られません。雄ではホルモン(テストステロン、エストラジロール)の増加、副生殖器 の重量の低下、乳腺小葉の萎縮がみられたことから、臓器重量、組織所見、およびホル モンが指標となり得ると考えられます。  メチルテストステロンについては、雄ではホルモンは全く影響を受けませんでした が、臓器重量では、精巣と精巣上体が低下し、組織学的にもそれを裏付ける所見が認め られています。  雌でも、やはり臓器重量、組織所見、それから、性周期がよい指標となるということ が言えると思います。  一番最後のスライドお願いします。 (スライド)  以上、まとめますと、内分泌関連作用の検出感度のすぐれた検査指標は、臓器重量、 組織所見、性周期で、血中ホルモンレベルや精子所見はさほどよい指標とはなっていな いようです。  それから、プロトコールにおける問題点としましては、現在、公比4で用量を設定し ておりますけれども、ホルモンの場合かなり広範囲にホルモン作用が出ますので、公比 4の場合最低用量でもいろいろな変化が出るということが考えられ、公比4以上にする 必要もあろうかと思います。  また、今回用いた被験物質はかなり強いホルモン物質です。今後弱いホルモン作用を 持つ物質を当然検討する必要があり、その場合、もう少し感度を上げるための改良点と して、雄の精巣のステージ分類による解析、雌では性周期を考慮した黄体、子宮内膜、 膣上皮の病理学的検査あるいは化研協さんが現在いろいろ検討しておりますα2uグロ ブリンの発現量を解析するなどの改良点がまだあろうかと考えております。  以上です。 ○阿部委員  済みません、こんがらがってしまったのですが、フルタマイドをやるとあれはブロッ カーですから、FSHとLHが上がってテストステロンが上がるという話はわかるので すが、メチルテストステロンを大量にやると、精巣の萎縮が起こっていると、あれはち ょっとどうしてもわからないのですが、どうしてそうなってしまうのでしょうか。 ○広瀬研究員  その辺、我々もよくわからないのですけれども、ひょっとしたらメチルテストステロ ンにもタモキシフェンと同様に、二面性つまりある臓器ではエストロジェニックな作用 を示し、ある臓器では男性ホルモンとして作用することがあるのかも知れません。 ○阿部委員  それよりも先生、ドーズがトキシックということはないでしょうか。 ○広瀬研究員  トキシックということもあるかもしれないですね。というのは、ホルモンのレベルが ほとんど変わらないのに精巣に萎縮影響がみられたということで、そういう可能性もあ るかもしれないです。ですから、かなり低い用量での実験も必要かと思います。 ○池田補佐  ありがとうございました。その他御質問ございますでしょうか。  なければ、どうもありがとうございました。  それでは、続きまして、VIIの2番でございますが、子宮重量等を指標とした生体試験 ということで、分担研究は井上部長ですが、御発表は再び菅野先生お願いいたします。 ○菅野研究員  では、早速スライドお願いいたします。 (スライド) 本研究は、この内分泌かく乱化学物質のin vivoスクリーニング法開発を目的とした国際 共同バリデーションプロジェクト、OECDのプロジェクトに参加する目的で行いまし た。OECDが統一プロトコールをユテロトロフィック・アッセイ、すなわち子宮肥大 試験について作ろうとした際に、先ほどの広瀬先生のTG407と違いまして、この子宮肥 大試験というのは、いまだかつて国際的なプロトコールに一本化されたことがないこと が一つの問題でした。すなわち、子宮肥大試験とは言っても、複数の方法が既に知られ ておりまして、そのどれを選ぶかということで、OECDの場では、はっきり言って、 もめたという経緯がございます。この試験系の基礎的な情報が若干不足しているという ことが認識されたものですから、OECDといたしましても、結果的に、現段階、すな わち子宮肥大試験のプレバリデーションの段階としては3通りのプロトコールを並行し て用意して、それを国際的に実施してみる、さらには6種類の代表的な化合物について も、その3つのプロトコールで実施してみるという方針で動いております。この研究班 では、そのOECDの場において提供すべき基礎的なデータを作り出しました。 (スライド) 動物実験としては世界的に大きく分けて2通りのユテロトロフィック・アッセイのプロ トコールがあります。1つは、未熟の雌ラットを使うものです。これは、離乳した直後 の1週間ほどは卵巣が機能を開始しないということ、すなわち、内因性のエストロジェ ン供給がない状態であることを利用したものです。この状態では外来性のエストロジェ ンに対する、子宮の反応性が高いので、これを試験系として用いるもので、未熟ラット 試験と呼ばれるものです。それに対しまして、もう一つのプロトコールは、成熟した動 物の卵巣を摘出してしまって内因性のエストロジェンがない状態にしておき、そこに外 来性の物質を与えたときに子宮が反応するかどうかを見るというものです。この2つの 代表的な系について検討しました。代表的なレファレンスケミカルとしては、エストラ ジオール、ゲニスタイン、ビスフェノールA等を用いました。エンドポイントといたし ましては、子宮重量あるいはBrdUラベリングによる細胞増殖、膣開口、膣擦過細胞像等 を用いました。 (スライド) 未熟ラットを用いた系は21日齢雌にエストラジオールを3日、7日、あるいは14日間皮 下投与してみました。世界的なプロトコールは3日です。ただし、長くやった場合どう なるかというのは、学問的に確認する必要があると考えチェックいたしました。その結 果、7日間以上では子宮重量増加に用量依存性がなくなります。組織学的に見ますと、 卵巣で黄体が形成されていることが分かります。予想通りではありますが、卵巣からの 内因性のエストロジェンの分泌が系の感度を著しく低下させることが確認されました。 3日間投与の場合は用量作用曲線が描けるのに対して、7日間投与しますと用量反応性 がなくなります。14日間投与しても同様であります。ですから、この未熟な動物の系は 非常に狭い期間、時間的にたった3日間か4日間のところをねらわないと、きれいな用 量作用関係が得られない系だということを再確認しました。 (スライド) これが、卵巣の組織像です。もう35日齢では黄体が出てきてしまっていますから、排卵 が始まっていることが分かります。28日齢でも、このグラーフ卵胞化したものが見えて きていますので、そろそろ性周期が始まる時期であることを示しています。ですから、 この未熟ラットの系では生後24日辺りまでに実験を終えないといけないということにな ります。 (スライド) 膣開口日がエストロジェンによって早くなるということは事実として知られておりまし たが、それが子宮重量の反応性に比べてどのくらい競い合えるほど良いエンドポイント かを確認しました。 (スライド) この黒く表示しているところが膣開口を始めた動物のいる時期で、だいだい色が濃いほ どエストロジェンを大量に投与した群です。無処置動物での膣開口が大体30日辺りです が、先ほど言いました3日間投与で子宮を見るという期間は膣開口それよりもずっと早 い時期です。実は膣開口の感度も悪いし、時期的にも子宮を見てしまった方が早くわか るということで、膣開口そのものは指標としては余り有用ではないということです。 (スライド) 他方、卵巣摘出成熟動物ではどうかということで、この場合も同じく3日、7日、及び 14日間投与してみました。 (スライド) 卵巣を取りますと、1週間で子宮がこのように小さくなります。 (スライド) 卵巣を摘出してからの子宮の重量をずっと追ってみた実験もやってみたのですが、この ように指数関数的と申していいのでしょうか、急激に落ちていきます。このようにして 安定化するわけですが、この状態に外来性のエストロジェンを加えると、細くなった子 宮が肥大して元に戻る。この反応を利用するわけです。 (スライド) 14日間投与してもちゃんと用量依存性がきれいにあることが分かります。もう一つ見ら れることは、エストラジオール5μg/kgの高濃度では3日で十分反応は見られるのです が、0.25μg/kgですと、ここ7日目辺りでやっと有意差が出るということで、長期投与 というものが感度の向上に確かに効くということが分かりました。これは未熟ラットの 系では行い得ない長所になるわけであります。 (スライド) 高濃度では急速に子宮が重くなっておりますが、、これはどうも水がたまっている可能 性がありそうです。すなわち、細胞増殖以外に体液の移動など、ほかの因子が動いてる 可能性があると考えております。 (スライド) 以上、考察いたしますと、未熟ラットの場合は3日間投与が限界であろうと思われま す。これに対して卵巣摘出の系の場合は14日でも何日でも投与期間を伸ばせる。全体の 感度は大体3倍程度違うということがわかりました。ただし、卵巣摘出の系は手術が必 要ですし、ネズミも大きいといった様な、それなりの制約があることが指摘されていま す。また、子宮肥大は細胞増殖以外に浮腫など、その他いろいろな複雑なことが関与し ているらしいということがわかったということです。 (スライド) 余談ですが、こういうことをやっている間に、エストラジオールを生食で溶いた場合と オリーブオイルで溶いた場合で、マウスに皮下注した場合に4倍感度が違うという、こ のような副産物的所見も得られております。 (スライド) 以上、このようなことでOECDのプロトコールの設定に対して、ある程度の貢献がで きたというふうに考えております。以上です。どうもありがとうございました。 ○池田補佐  ありがとうございました。ただいまの御発表に、阿部先生どうぞ。 ○阿部委員  済みません、何度も。何か40年ぐらい前を思い出すんですよ。当時、ホルモンの物質 を測りたいということで、いろいろなバイオアッセイの系が次から次へと出てきた。そ れは、病人で高い血中ホルモンレベルは測れたけれども正常人の血中のホルモン分析と いうのはできないというのが結論だったと思います。私たち正常を測るためには、ヒト の血液を大体1リットル位は取らなければならない。それを抽出でやらなければならな い。現在やっていることはもっともっと微量なものですよね。それから、ラジオイムノ アッセイという方に移っていったという気がするのですが、ちょっとこういうふうな方 向で本当にこの研究が目指しているものの測定法ができるとお考えになってやってるの か、それをちょっとお聞きしたいと思うのですけれども。 ○菅野研究員  そうですね。確かに、40年前というのは論文をひも解けばそういう面は多々あるとは 思うのですが、困りましたね。これもエンドクラインディスラプターのバッテリーテス トの1つだという考えではおります。ですから、in vivoの前にin vitroのデータがあっ て、バインディングアッセイとかそういうものがあって、あとはイーストを使った系と かセルラインの系があって、スクリーニングの系があると。それと、その次のin vivoに 持っていくときの、いきなり407に持っていけるかとか、いきなり二世代試験でいいのか とかいろいろ論議があるときに、in vivoの最初のところでは、今のところこういう古典 的な方法をもう一回蒸し返すしかアイデアがなかったというのが正直なところだと思い ます。感度的には0.03μg/kg/day皮下注ぐらいからは何とか見れる、エストラジオー ル換算でですね。その程度ですね。 ○池田補佐  そのほかございますでしょうか。 ○井上委員  何かお答えせざるを得ないような御質問をいただきまして、私どもこれは結局、ゆく ゆく先ほど菅野先生が御説明したように3D−QSARとか、リセプターバインディングだと かそういったものをバッテリーで組み合わせていく中で、こういうものが必要なくなる 可能性というのは勿論考えております。しかしながら、どうしても生きた試験管のよう な形で、何せ阿部先生も御承知のとおり、受容体のリダンダンシーであるといったこと があるものですから、リセプターバインディングアッセイではどうしても取りこぼすこ とが確実なものですから、その辺のところを考えると、このセミin vivoの実験を現段階 では外せないというのが、OECDの考え方というふうに理解しております。 ○池田補佐  よろしゅうございますでしょうか。  それでは、よろしければ次にまいりまして、続けてまた菅野先生ですが、VIIの3番、 子宮重量等を指標とした生体試験による相加相乗効果の検討でございます。よろしくお 願いします。 菅野研究員 スライドお願いいたします。 (スライド) 今の阿部先生の御質問を受けた後でやるというのは、ちょっとやりにくいことはやりに くいのでございますが、一応、生きた試験管の系であるという考え方、例えば、IL-6が この反応にどう絡むか、はっきりとはわかっていないところも、この系なら包括的に見 られるかもしれないという立場でお聞きいただきたいと思います。 (スライド) 本研究を計画するに至った最初のアイデアは、内分泌かく乱化学物質問題としても環境 化学物質として複合暴露というキーワードを外せないだろうということから出発してお ります。ただし、in vitroでは相乗効果を見ても多分何も出ない、ないしは非常に解釈 が難しい。そうすると、もし、相乗効果ないしは複合暴露の影響を見るとしたらin vivo しかないと考えたわけです。二世代試験で相乗効果を見てみたらどうかという話も当然 出るのですが、いきなり二世代はちょっときつい。では、ここで選ぶとしたら、一世代 試験を頂点に今、問題になっている子宮肥大試験とハーシュバーガー試験を組み合わせ て、in vivo系でどう出るかというのを検討するのが現実的に実行可能なぎりぎりのとこ ろであろうと考えたわけであります。 (スライド) 実際に計画しておりますのは子宮肥大試験とハーシュバーガー試験と一世代試験です。 一世代を頂点にピラミッド型に計画を配置したい、そういう発想です。子宮肥大試験 は、おおよそラットを用いた14日間皮下投与系を行っております。一部対比のために3 日間投与の21日令未熟ラットの系もつけ加えてあります。 (スライド) ハーシュバーガー試験は抗アンドロジェン検出系として組みました。一世代試験は予算 との関係から何本も走らせられないもので、組み合わせを選び3本ほど計画いたしまし た。 (スライド) 実験プロトコールの構成群はケミカルA、ケミカルBについて用量はそれぞれ、0、1、 2、を取りまして、複合暴露群は対角線45度の上の点を2点とりました。すなわち、1/4 と1/4、1/2と1/2の2点です。合計7点を求める系を子宮肥大試験とハーシュバーガー 試験については設定いたしました。 (スライド) 一世代試験はちょっと7群は実行が難しいということで、ちょっとギャンブル性は出て しまうのですが0、1、1、と1/2+1/2の4点を求める系としました。 (スライド) 組み合わせは基本的にエストロジェン受容体を介すると思われるもの同士、PPARを 介すると思われるものとエストロジェン受容体を介すると思われるものの掛け合わせの 系、AhRを介するものとの掛け合わせを見る系です。 (スライド) 未熟ラットの系は、そのごく一部の代表的なものに関して、ハーシュバーガーは、テス トステロンプロピオネートを天井に持ってきまして、そこから抗アンドロジェン作用を 引き算効果で見るという形で、この5本を計画いたしました。 (スライド) 結果なのですが、実はケミカルの調達などでちょっと手間取った都合上、まだ完全に終 わっていないところがありますが、徐々にデータがたまりつつある段階でございます。 何十倍もの相乗効果が出るわけもない実験系ではありますが、ある程度相加的あるいは 相乗的、相殺的な結果が出つつあります。 (スライド) 例えば、これはゲニスタインとビスフェノールAですが、未熟ラットの場合は、ゲニス タインの方がビスより感度がいい結果になっていますが、それに対して卵巣摘出ラット の方は逆になっております。そして、対角線のところが両端より凹んでいればある程度 相殺的と読めるわけで、未熟ラットではそう見えますが、卵巣摘出ラットでは逆に出っ 張っているように見えます。どうも反応性が違う様なのですが、例えば、エストロジェ ンβとαの受容体の差なのかもしれないということで、これに起因した追加プロジェク トも計画中であります。 (スライド) これはビンクロゾリンとフルタミドをテストステロンプロピオネートの効果から引き算 してみる立場で見たハーシュバーガー試験ですが、この場合は大体相加的に減っている ように見えます。 (スライド) 考察としましては、ロットの統一とか合成を待たなくてはいけない化合物が多かったこ とで遅れておりますが、プレリミナリデータは集積されつつあります。先ほどすこし申 し上げましたように、系によって微妙に結果がずれてきておりますし、エストロジェン 受容体αβあるいはほかのサイトカインのことも考えなくてはいけないのかなという段 階にあります。以上です。 ○池田補佐  ありがとうございました。ただいまの御発表について何か御質問等ございますでしょ うか。 ○伊東座長  非常によく研究しておられると思うのですけれども、先ほど来ずっと菅野先生出っぱ なしで、すごい研究費用をお取りになっているなというふうに思うんです。したがっ て、やはり少し整理をされて、フォーカスをつくられるということが大事なのではない かと思うんです。やはり、たくさん研究費があるから、いろいろ手をつけると片っ端か らデータはそれは出ると。しっかりしたデザインできっちりおやりになっているから、 私はいいデータが出てきていると思うのですけれども、その辺りを少し配慮されない と、あそこは研究費をめちゃくちゃに取っている、研究所1つ分ぐらいの研究費を菅野 さんが全部使っているのではないかと思われないように、これから御配慮をお願いした いと思います。 ○池田補佐  菅野先生は午後からもございますので。 ○菅野研究員  化研協さんとか住化さんとか色々な研究所や研究者により分担でおこなっておりまし て、その部分は委託費として支出いたしております、最初に研究費の配分等について、 若干ご説明させていただいた方がよろしかったですね。 ○池田補佐  そのほか何か御質問等ございますか。  ないようですので、それでは、どうもお疲れ様でした。ありがとうございます。  それでは、これで午前中の部が一通り終わりましたので、ただいまから昼食の時間と させていただきます。午後の部はかなり多いものですから、多少早目にさせていただけ ればと思っております。45分間の昼休みということで、申し訳ありません、12時35分ぐ らいから。ただ、午後の先生方の集まり具合もありますので、集まり次第開始するとい うことでご了承いただければと存じます。 (昼 食 休 憩) ○池田補佐  それではお待たせいたしました。ただいまから午後の部を始めさせていただきたいと 思います。午後からはVIII番目のグループでございます。ビスフェノールAとゲニステ イン等の繁殖影響及び体内動態に関する調査研究ということで、最初にまずスチレン等 の内分泌かく乱物質の発がん性と閾値に関する調査研究ということで、大阪市立大学の 福島先生よろしくお願いいたします。 ○福島研究員  福島でございます。よろしくお願いいたします。早速スライドお願いいたします。 (スライド)  発がん物質の低用量域での発がん性に関しましては、たとえ発がん物質といえども低 用量での発がん性は検証が困難であります。したがいまして、リスク・アセスメントに 当たりましては、高用量域から低用量域への外挿という手法をとってリスク・アセスメ ントします。もう1つ、それとクラシカルな発がん物質を中心としまして、閾値は存在 しないという仮説に基づきまして、この低用量域での発がん反応曲線というものはゼロ にたどる曲線ということで理解されております。  そうしますと、現実問題として、遺伝毒性発がん物質、更には非遺伝毒性物質、特に 非遺伝毒性物質についてはこの仮説とは異なり、現実的には閾値が存在するということ で対応しております。ところが、残念ながらそれを裏付ける実験的事実がないのがこれ まででございます。すなわち、今回のエンドクラインディスラプター、内分泌かく乱化 学物質を中心とする発がん性に関しましても、このようなことが言えるのかどうかとい うこと、そこのところが大きな問題で、今、大きな1つの課題として、いわゆるウエー ト・オブ・エビデンス、いろいろな事実の積み重ねということが非常に重要視されてお ります。私どもはそこにフォーカスを絞りまして今回実験を行いました。 (スライド)  今回は肝臓を標的とする発がん実験系に取り組みました。といいますのは、現在幾つ かの、この場合EDと略称させていただきますが、EDが肝臓を標的とする発がん性を発揮 することが分かっております。まず最初にそのことからstyrene monomer、ビスフェノー ルAがそれではラット肝発がんにどのような発がん性を発揮するかということを長期の 発がん実験ではなく、8週間の短期系で検索しました。いわゆる伊東法と呼んでいるもの でございます。  フィッシャー系のラット、オスを用いまして、ディエチルニトロサンミン(DEN)でイ ニシエーションした後、プロモーションの段階、今回はstyrene monomer、ビスフェノー ルAをこれらの用量で投与いたしました。この用量は予備試験の結果からの用量でござ います。そして溶媒をプロモーションの過程に投与したこのコントロール群との間の差 を比較することによって、前がん病変のマーカーでありますGST−P陽性細胞巣がどれだ け増加するかということで発がん性を検証しております。下の2つのグループはいわゆる DENなしの被験物質のみのコントロール群でございます。なお、3分の2肝部分切除を第 3週にやっておりまして、細胞増殖を起こさせております。 (スライド)  この実験経過の体重曲線を見ますと、先ほどのstyrene monomerの高用量群、ビスフェ ノールAの高用量群、これらに体重抑制が強く認められております。 (スライド)  まず最初に、styrene monomerの結果をお知らせいたしますと、styrene monomerの 250、そして1,000と用量に相関しまして体重抑制が見られ、styrene monomerの1,000で は肝の重量が増加し、体重比にしますときれいな用量相関をもって肝重量の増加が認め られます。 (スライド)  ところが、前がん病変のGST−P陽性細胞巣のようなものをイメージ・アナライザーを 用いて計測いたしました。 (スライド)  そうしますと、その結果はコーン油の対照群に比較しまして、styrene monomerの 250、1,000と用量が高くなるにしたがいまして、GST−P陽性細胞巣の個数が有意に用 量相関をもって減少するということが分かったわけであります。GST-P陽性細胞巣の面 積も同じような傾向を示しました。 (スライド)  すなわち、styrene monomerは高用量では肝発がん抑制作用を示すということが分かっ たわけであります。したがいまして、私どもは、実際にそれでは我々が暴露するレベル ではどうかということで追加実験を行いました。この実験では、ここに示しましたよう に0.0006〜0.6までの3用量、特にこの用量は現在報告されておりますいわゆる食材カッ プに熱湯を通して30分放置した後に溶出している87ppbというstyrene monomerの量から 換算した量でございます。そしてそれの更に10分の1量をここに最低用量として取って あります。それから高用量として100倍量取っておりますが、そうしますと体重、肝重量 ともこの実験群については全く差が見られませんでした。現在実はこの実験はまだ終了 したところでGST-Pについて早急に検索しているところでございます。 (スライド)  これから、それでは実際に我々暴露されている範囲内で抑制作用が見られるかどうか ということが大きな注目でございます。  次にビスフェノールでございますが、ビスフェノールAに関しましては、体重抑制が 高用量群で見られました。しかし、肝臓の方には何らの変化も見られませんでした。 (スライド)  そして、前がん病変のマーカーでありますGST-P陽性細胞巣を見ていますと、その個 数、面積ともビスフェノールAは対照群のCMC群に比較しまして有意な差が見られません でした。すなわち、このことからビスフェノールAはラット肝発がんに対しましては発 がん性を示さないということが分かったわけであります。 (スライド)  次に話題を変えまして、これはEDではございませんが、フェノバルビタールのラット 肝の低用量域における発がん性でございます。その結果を1枚のスライドにまとめたもの ですが、従来の500ppmというような用量で発がん性が分かっております。この実験系に おきましても、対照群に比較しますと、GST-P陽性細胞巣の発生個数は有意に高く、それ からこのような用量曲線をもって減少してまいります。面積についても同様でございま す。ただ、注目すべきことは、このフェノバルビタールの低用量群におきましては、個 数、面積とも対照群に比較しますと、GST-P陽性細胞巣の発生は低下いたしまして、この ことから私どもは、フェノバルビタールの発がん性には閾値があると思っております。 (スライド)  このことがエンドクラインディスラプターについても言えるかどうかということで、 既に発がん性が証明されておりますdieldrinの肝発がん性の低用量域について検証いた しました。まずこの実験はGST-P陽性細胞巣の個数を示しておりますが、100ppmというよ うな高用量では対照群に比較しましてGST-P陽性細胞巣の発生が有意に増加し、10ppmま では統計学的に増加が有意でございました。ところが、0.1〜3.3までについては平坦 で、ここの間には対照群と差がなく、どうも無作用量があるだろうということが示唆さ れたわけであります。  ところが、私どもは、この0.3ppmの小さな上がりに注目しまして再実験を行いまし た。そういたしますと、再実験では低用量をとっておりますが、0.3を中心としてこの ように山型の曲線、すなわち逆U字状に曲線が描かれたわけです。すなわち、高用量か らおりてきた曲線は一旦上がり、また下がるという現象が得られたわけであります。 (スライド)  このことは、面積でも同様であります。すなわち、低用量域におきましては、確かに 作用しない用量があるにしても、一旦低用量域でまた上がるという現象、統計学的に有 意でないにしても上がるという現象が見られるということでございます。 (スライド)  このdieldrinの代謝に関与する肝のCYP2B1についての誘導を調べてみますと、それ と先ほどの曲線との関連は認められませんでした。 (スライド)  これは少し前のデータですが、抄録には載せておりませんが、αBHCのラット肝に対す る反応曲線を見てみますと、この曲線は低用量になると対照群より下がるというような U字型の曲線が描かれたわけでございます。したがいまして、ここから言えますこと は、2つの少なくともエンドクラインディスラプターの肝発がん性から言えますこと は、どうも実際上無作用量はあるけれども、その低用量域における反応というのは一様 ではない。いろいろなカーブが描かれるだろうということでございます。私どもはこの ような事実を基にして、更にこれから閾値に関する事実を積み上げるというような努力 をしたいと思っております。  以上です。 ○池田補佐  ありがとうございました。ただいまの御発表に何か御質問等ございますでしょうか。 なければどうもありがとうございました。  それでは続きまして、順番が前後いたしますけれども、VIII−3「ビスフェノールA の体内動態に関する調査研究」、国立医薬品食品衛生研究所の大野先生お願いいたしま す。 ○大野研究員  国立衛研の大野でございます。スライドをお願いいたします。 (スライド)  ビスフェノールAに関してはin vitroまたin vivoの動物実験でさまざまなエストロ ジェン様作用が報告されていますけれども、そういった動物実験の結果をヒトに外挿し たり、in vitroの結果をin vivoに外挿するといった場合に、薬物動態に関するデータが 必須でございます。しかし、薬物動態に関するデータに関してはビスフェノールAの800 mg/kgとか、100mg/kgとか、普通の暴露レベルの1,000倍から1万倍ぐらいの濃度での結 果しか報告されていません。また、ラットでの結果のみをもとにヒトに外挿するという のは非常に危険だと考えております。  そこで今回の研究では、なるべく低い用量、暴露レベルに近いレベルまで用量を下げ て体内動態を調べること、また、ラット及びサルで薬物動態を検討させて、その結果を 基に動物実験の毒性実験の結果を考察するということを目的にいたしました。 (スライド)  薬物動態試験にはビスフェノールAのリングを14Cでラベルしたアイソトープ標識検 体を用いて、その動態を調べました。 (スライド)  まずラットにおける動態を説明いたします。 (スライド)  横軸は経口投与後の時間を示してございます。放射活性で測定していますので縦軸は ビスフェノールA及びその代謝物を含む、ビスフェノールA当量で表しております。左 がオス、右がメスでございます。使用した用量は20、100、500μg/kgです。実際の暴露 レベルでは20μg/kgあるいはそれより低いといわれておりますけれども、20μg/kgで は、ここに示しましたようにばらつきがかなり大きくなりまして、これ以上下げること はできませんでした。そこで、これ以降の詳しい検討は100μg/kgで検討いたしました。 20から500μg/kgの用量の範囲の経口投与ではほぼ用量に依存して血漿中のビスフェ ノールAの投与量が上がってきます。メスでも同様でございます。 この図で分かりま すように、経口投与した場合、吸収があって最高に達してまた下がって、それからまた 上がってくるという、いわゆる薬物動態で言う二相性の反応が認められています。オス でもメスでもそうです。これは代謝の過程に腸肝循環があるということを示唆しており ます。  もう一つ注目しておいていただきたいのは、100μg/kgを投与したときのラットで の血中レベルが大体5〜17ng/mlの値になっております。 (スライド)  これは静注での結果と経口投与での結果を比較したものですけれども、大体見かけの バイアベラビリティーが60〜70%ぐらいの値がオスでもメスでも得られております。 (スライド)  これは体内分布を調べたものですけれども、投与後30分では肝臓や消化管にかなり強 く放射活性が認められています。また、皮膚のところにも若干認められています。腎臓 にも放射活性が認められています。24時間経ちますと、放射活性は肝臓と腎臓、消化管 に残留していますが、ほかのところの分布はかなり少なくなってきております。なお、 72時間目でも肝臓と消化管と腎臓に活性がまだ残っております。 (スライド)  これは排泄の様子を見たものですけれども、オスでもメスでも排泄のほとんどは糞中 に行われます。尿中への排泄はオスでは投与量の大体10%ぐらい、メスでは若干多くて 20〜30%ぐらいになっています。なお、呼気中への排泄はほとんど認められませんでし た。 (スライド)  尿中で排泄されたものの分析をしたものですけれども、ここに認められているのは抱 合体でございます。グルクロン酸抱合体と硫酸抱合体の両方が重ってしまっていますけ れども、それ以外にもはっきりしませんけれども、バンドが認められます。これらをグ ルクロニダーゼとスルファターゼで加水分解いたしますと、未変化体と同じ位置に来ま す。一方、糞中に排泄されるものはほとんどが未変化体でございました。また、血漿中 に存在するものは抱合体がほとんどでございまして、未変化体はほとんど認められてお りません。 (スライド)  これは胎児中への分布を見たものでございますけれども、妊娠12日目に投与して24時 間後の分布では胎児中への分布はほとんど認められていません。15日目でも同様でござ います。ところが18日目になりますと、胎児中への分布がかなり認められるようになり ます。また、胎児の消化管の中にも排泄が起きてます。 (スライド)  これは乳汁中への排泄ですけれども、大体かなりの量が乳汁中にも排泄されることが 分かりました。量がCmaxのところで計算しますと、大体血漿中の5分の1から6分の1程度 の濃度になっております。 (スライド)  次にカニクイザルの体内動態を説明いたします。 (スライド)  カニクイザルにおきましては、ラットと違いまして二相性の反応は認められておりま せん。オスでもメスでも同じように急速に低下します。ラットの場合には半減期が13時 間から19時間とかなり長かったのですけれども、これは3〜5時間と短いです。また、 血漿中の濃度がラットでは5〜7ng当量/mLぐらいの値だったのですけれども、サルでは 約100ng当量/mLということで、大体ラットの10〜20倍の濃度になっております。 (スライド)  これは排泄過程を示したものですけれども、ラットでは糞中排泄がほとんどであった のに対して、サルではほとんどが尿中に排泄されて、糞中への排泄はほとんど認められ ませんでした。 (スライド)  これはラットとサルを比較したものですけれども、Cmaxで比較しますと大体サルの方 が13〜20倍高い。一方、半減期は0.2〜0.3ということでサルの方かかなり短いというこ とです。しかし、AUCで比較しますと差は大体2倍以内ということです。バイオアベラビ リティーだとラットが57〜66%、サルでは70〜63%となっています。なお、この場合のバ イオアベラビリティーは全身血流中のラジオアクティビティーではかっていますけれど も、ラットでは吸収されたものの多くが胆汁中に排泄されてくると思われます。従っ て、消化管での吸収率はもっと高く、ほとんどが吸収されて、全身循環に入る前に、胆 汁中に排泄されてしまい、見掛けの吸収率の値が低いという値になっています。 (スライド)  今までの結果をまとめますと、投与されたビスフェノールAは速やかに消化管より吸 収される。ラット血漿中には主に抱合体として存在する。ラットと比較しサルではビス フェノールA当量の見掛けの半減期は短いけれども、血中濃度は10〜20倍と高めであ る。ビスフェノールAは主に消化管、肝臓に分布する。胎児への移行は妊娠15日目まで はほとんど認められないが、18日目では胎児の分布が有意になっている。ラットは糞中 に排泄されるけれども、サルではほとんど尿中である。乳汁中の排泄は血漿中濃度の6 分の1程度ということです。 (スライド)  まだこれから検討しなければいけないところがかなり残っています。1つは、アカゲ サルにおいて代謝物の分析のデータがそろっていません。サル血漿中のビスフェノール A当量が未変化体なのか代謝物なのかの検討をこれからしなければいけないと思ってい ます。それから、組織分布のデータが先ほどオートラジオグラフィーで示しましたが、 定量的なオートラジオグラフィーで測定しておりますので、定量化することができま す。ただ、全部のデータが出ていませんので表として示すことができませんでした。9 月ぐらいまでには定量値として示せる予定になっています。  更に、サルとラットで非常に大きな代謝の差がありましたので、ヒトはどちらに似て いるのかを、ヒトの肝臓を使って今後検討していきたいと思っております。  スライドありがとうございました。 ○池田補佐  どうもありがとうございました。ただいまの発表に何か御質問等ございませんでしょ うか。 ○松尾委員  1つだけ教えていただきたいのですけれども、ラットの胎児に18日目に移行しており ましたね。あれはどういう形なのか、抱合体であるかの御検討はされていますでしょう か。 ○大野研究員  今のところまだしておりません。ただ、胎盤では分子量が600ぐらいまでは通過すると いうふうに言われています。一方、硫酸抱合体の分子量は300ぐらいですし、グルクロニ ドでも400ぐらいですので、両方胎児に行っているのではないかというふうに思っていま す。 ○池田補佐  そのほか御質問等ございますでしょうか。ないようでしたら先生どうもありがとうご ざいました。  それでは続きまして、1つまた戻っていただきまして、VIII−2になりますけれど も、ビスフェノールAとゲニステインの2世代繁殖試験に関する調査研究、国立医薬品 食品衛生研究所大阪支所の川島先生が分担ですが、発表は江馬先生お願いいたします。 ○江馬研究員  スライドお願いします。 (スライド)  ビスフェノールAとゲニステインの2世代繁殖試験ということで実験を今、継続中であ ります。投与は、オスにつきましてはF0の交配前10週から、メスにつきましては交配前2 週間から投与を開始しまして、最大2週間ですが交配中も投与して、F0の妊娠中、F1が生 まれまして授乳中投与を行います。したがって、F1は妊娠中、母乳を介して、胎盤を介 して検体を摂取するわけです。F1を8週〜10週飼育しまして、この間投与を継続して、F1 の交配中、F0と同じですが妊娠中、授乳中に投与を行いまして、F2のオスについては7 週、メスについては6週まで飼育を行って実験を継続いたします。 (スライド)  ビスフェノールAにつきましては、投与量はvom Saalの実験、これは2及び2μg/kg/ dayを妊娠11〜17日に経口投与して、オス胎児の2μg/kg群でオス胎児の体重低下、包皮 腺の重量増加、精巣状態の重量低下を報告しております。それから20μgでは精巣1g当た りの1日精子産生数の減少を報告しております。それから両投与量で前立腺の重量増加な どが報告されておりまして、我々の実験ではこれを追試しましたケーガンらの投与量と 同じで0.2、2、20、200μg/kgをラットを用いまして2世代の繁殖試験を行っておりま す。ゲニステインにつきましては200μg/kg投与群と400g/kg投与群とを設定して、同じ 方法で実験をしております。ゲニステインの濃度につきましては、報告されております ヒトの摂取量の下限と上限ぐらいに当たると考えております。 (スライド)  本日ゲニステインの実験がF0の交配前の8週ぐらいまでしか進んでおりませんので、今 回はビスフェノールAの実験について報告いたします。ビスフェノールAの実験につき ましては、F0の交配を終了しまして、F1を出産させて、現在生後8週ぐらいになっており ます。これはF0のオスラットの体重の増加及び摂餌量の変化を示したものですが、対照 群とビスフェノールA投与群との間に差は認められておりません。 (スライド)  次に、F0のメスラットの体重と摂餌量の変化をお示しいたしました。オスと同様に対 照群と投与群との間に体重及び摂餌量ともに差は認められておりません。 (スライド)  スライドが細かくて申し訳ありませんが、これはF0の繁殖成績についてお示しいたし ました。オス、メスについての交尾率、受胎率、妊娠率、メス当たりの着床数、分娩 率、分娩児数、分娩児の性比、離乳までの分娩児F1の生存率をお示しいたしましたが、 いずれも対照群と投与群との間の差は認められておりません。 (スライド)  次に、交配に用いましたF0の精子検査を行った結果をスライドに示しておりますが、 精巣上体状態の精子数、運動率ともに対照群と実験群との間には差は認められていませ ん。 (スライド)  次に、F0のオスラットのホルモンを定量した結果でありますが、ここにお示ししてお りますようにエストラジオールは測定限界以下ということです。プロラクチン、テスト ステロン、FSH、LH、T3、T4、TSHに対照群と実験群との間に差は認められていません。 (スライド)  F0はメスについてお示ししましたが、ここをごらんいただきますと、ビスフェノールA の一番高いDose、200μg/kg投与群でT3とT4の値が対照群に比べて有意の低下が認められ ましたが、これらの意味についてはまだ現在不明であります。今後実験終了時点でF1へ の影響等を加味して考察したいと考えております。 (スライド)  F1の子どもの離乳までの体重の増加をお示ししましたが、対照群とビスフェノールA 投与群との間に差は認められておりません。 (スライド)  F1ラットの生殖器関係の重量を調べたものです。これは離乳時の重量値ですが、ビス フェノールA20μg/kg群で児体重の低下、これは先ほどお示ししましたように全体で見ま すと児体重の低下はありませんのでたまたまここで選んで屠殺したものが引っ掛かった のだろうというふうに考えております。オスにつきましては精巣、精巣上体、精嚢、前 立腺に対照群とビスフェノールA投与群との間の差は認められませんでした。F1のメス につきましては体重も対照群と投与群同様でありまして、卵巣及び子宮重量も対照群と 投与群との間の差は認められませんでした。 (スライド)  子どもについての発育、まず反射反応性ですが、正向反射、背地走性反射、空中立ち 直り反射、これはいずれもこのような日齢までに獲得しておりして、対照群と投与群と の間の差は認められませんでした。  発育分化に関しては耳介分離、切歯萌出、眼瞼開裂、精巣下降を調べましたが、全群 でこのような日齢に完了しておりまして、これも対照群と実験群との間の差は認められ ませんでした。 (スライド)  F1の性成熟について調べたものでありますが、包皮の分離の日齢に、対照群と実験群 との差は認められません。これに至った時点の体重ですが、体重にも差は認められませ んでした。メスにつきましては、膣開口の日齢、そのときの体重を示しましたが、いず れも対照群と投与群との間の差は認められませんでした。 (スライド)  ビスフェノールA投与のF1ラットの離乳前の肛門生殖突起間距離をお示しいたしまし た。オスでは生後14日、授乳の14日に0.2μg/kgで対照群よりも低い値が認められまし た。メスにつきましては、生後4日で200μg、生後7日の2、20μgで対照群に比べて高 い値が認められました。 (スライド)  これは離乳後の肛門生殖突起間距離を示したものであります。生後29日では200μgの オスで対照群に比べて低い値が認められております。50日には220μgで低値が認められ ております。また、57日齢は印が間違っておりますが、0.2、20、200μg/kg投与群で対 照群に比べて低い値が認められております。メスにつきましては、離乳後の肛門生殖器 突起間距離は対照群と同様の値でありました。オスの変化につきましては、57日以降も 継続して測定しておりまして、その値及びこれらの体重で換算した値等を比べてみてこ の変化がどのように毒性学的な意味を持つかを検討したいと考えております。  スライドありがとうございました。  現在のところ進んでおりますところまで結果をお示しいたしましたが、実験が終了し た時点で、今お話ししました変化等につきましては、再度いろいろなデータを突き合わ せて結論を出したいと考えております。  以上です。 ○池田補佐  ありがとうございました。ただいまの御発表につきまして、何か御質問等ございます でしょうか。 ○鈴木(勝)委員  細かいことで恐縮なのですけれども、生まれて間もないときの肛門生殖突起間距離は 分かるのですが、かなり成長してから後の、特にオスの部分のはかり方なのですが、ど んなふうにやられたのですか。 ○江馬研究員  肛門生殖突起距離はノギスではかっております。外表です。生きておりますから。 ○鈴木(勝)委員  かなり動いてしまうのではないかと思うのですが。 ○江馬研究員  御指摘のとおりです。体重などと違いまして目ではかるものですから誤差は大きくな るとは思いますが、一応齢数を重ねておりまして、それなりの値は出てきておりますの で変化は出ているわけですが、今のところ実測値だけ出しておりまして、体重などの換 算値を出しておりませんので、それらを加味して、あるいはそれ以降の変化を見て結論 をしたいと考えております。 ○松尾委員  ゲニステインの実験の結果で、餌のコントロール、餌に含まれているそれを気にして いるのですけれども、その辺のところは。 ○江馬研究員  ゲニステインの方の実験の餌中の含量ですが、ラットの体重250〜300gぐらいとして、 1日当たりの摂取量が50〜60μg/kgぐらいになると思います。今回の実験ではそれを餌か ら抜くということはしておりませんで、そこに投与した分を上積みしたということでや っております。 ○安田委員  拝見しますと、131ページあたりから後、μgであったものがmgになっているのです が、これは単純なミスプリと考えてよろしいのでしょうか。 ○池田補佐  多分事務局のタイプミスだと思います。申し訳ありません。 ○江馬研究員  μgです。申し訳ありません。 ○池田補佐  そのほかございますでしょうか。なければ先生どうもありがとうございました。  次の御発表ですが、順番を入れ替えさせていただきまして、ずっと後ろなのですが VIII-10でございますが、甲状腺腫瘍に対する内分泌かく乱物質の影響に関する研究と いうことで、国立医薬品食品衛生研究所の広瀬先生よろしくお願いいたします。 ○広瀬研究員  スライドお願いします。 (スライド)  エストロジェンと甲状腺発がんの関連につきましては、以前から正常の甲状腺、ある いは甲状腺腫瘍にエストロジエンのレセプターが発現するということが言われておりま す。また、1995年には広島大学のグループが、F344系のメスラットの卵巣を摘出し、そ の後ヨード欠乏食を3週間投与し甲状腺を肥大させた後に、発がんイニシエーションとし てメチルニトロソウレアを投与する。その後にエストラジオールベンゾエート(EB)を 30週間投与しますと、甲状腺腺腫の発生頻度は変わらないのですが、甲状腺がんが、エ ストラジオールベンゾエートを投与しない群では17%が、投与すると低用量で100%、高 用量で90%と非常に強い甲状腺発がんプロモーション作用が認められたことを発表して おります。私たちは今回の実験では同様な実験系を用いまして、エストラジオール以外 種々の内分泌かく乱物質を投与しまして、これらが甲状腺発がんのプロモーションを起 こすかということについて検討しました。  若干広島大学のグループと実験系が違っておりまして、我々は同じ系統のラットを用 いておりますが、卵巣を摘除した後に発がんのイニシエーションを行います。その後に ヨード欠乏食に相当する処置として、サルファジメトキシン(SDM)というサイロデペロ オキシテーズの阻害剤を与えT3を落として、その結果甲状腺を肥大させるわけですけれ ども、この処置を8週間行いまして、その後に内分泌かく乱物質を投与するという系で す。 (スライド)  これが具体的な実験方法ですけれども、雄のF344ラットにまず最初に卵巣摘出を行 い、その1週後に発がんのイニシエーションとして、DHPNを投与します。次にサルファ ジメトキシン(SDM)で処置し、その後内分泌かく乱物質としまして、エチニルエストラ ディオール、メトキシクロール、アトラジン、ビスフェノールAを、また陽性対照とし てSDMを28週まで投与して動物を屠殺します。用量はMTDに近い用量を用いております。 エチニルエストラディオールの場合は1ppmで2週間投与した段階でかなり体重減少がみ られましたので、1週間基礎食で放置した後、用量を0.5ppmに減らし実験を続けました。 (スライド)  まず最終体重は、卵巣摘出した群では、基礎食だけのコントロールに比べて、全体に かなり体重の減少が見られております。コントロールが220g程度ですが、EEの場合は 140g、メトキシクロールも大体同じぐらいです。 (スライド)  臓器の相対重量は、まず甲状腺では陽性対照として用いたSDMの場合は当然甲状腺の重 量が非常に増加しています。これは腫瘍が非常に大きいために増加しているわけです。 しかし、その他の物質を投与した場合には、対照よりかえって減少傾向が見られます。  子宮重量はエチニルエストラディオールとメトキシクロールを投与した群でのみ有意 に増加してますが、ほかの群では有意な増加は見られておりません。従いまして、少な くともEE、メトキシクロールではエストロジェニックな作用があったのではないかとい うことが想像されます。下垂体は全体にそれほど強い増加ではありませんが、相対重量 が増加しております。肝臓も若干重量が増加しております。 (スライド)  これは各群の甲状腺の肉眼所見です。白色調に見える結節が腫瘍ですけれども、陽性 対照として用いたSDMの場合は全体に大きな腫瘍が発生しており、そのため甲状腺の重量 が増加しております。それに対して、予想に反し、エチニルエストラディオールを投与 した群では腫瘍の発生が少なく、甲状腺の大きさもコントロール群より小さくなってお ります。メトキシクロールでも同様な傾向がみられます。 (スライド)  甲状腺の増殖性病変、つまり過形成腺腫、腺がんの発生頻度は、卵巣摘除した群では コントロールで11例中9例に甲状腺がんが発生しております。SDMでは頻度はコントロー ルと変わりませんが全体に甲状腺腫瘍が大きくなっています。それに対してビスフェ ノールA、メトキシクロール、エチニルエストラディオールいずれも逆に甲状腺がんの頻 度が有意に減少しております。アトラジンでも減少傾向がみられました。 (スライド)  甲状腺増殖性病変の一匹(スライド1切片)当たりの発生個数対照群に比べて各群と も明らかな増減ははありません。 (スライド)  甲状腺増殖性病変のPCNA標識率を対照と被験物質を投与した群で比較してみますと、 陽性対照として用いたSDMの場合、有意差はありませんが過形成、腺がんの部位いずれも 増加傾向がみられます。しかし、被験物質として、内分泌かく乱物質を投与した群では 全体に標識率が低く、特にEEでは有意に低下しております。 (スライド)  今回、広島大学のグループと我々で同様な実験を行いましたが、腫瘍の発生頻度で全 く逆の結果が得られてしまった。その原因として、まず我々の実験で、MTDに近い用量を 用いたため全体に体重増加の抑制が見られました。体重増加の抑制が見られた場合に、 それ自体で甲状腺の発がんを抑制することがあります。  実験系を比べてみますと、広島大学のグループでは、EBを皮下埋植したのに対し、 我々は混餌で行っております。イニシエーターは広島大学がMNUに対し我々はDHPNを 用いております。ろ胞上皮の増殖処置として、広島大学はMNU処置前にヨード欠乏食を与 えているのに対し我々は、処置後にSDMを投与しております。従って現在我々は、EB を用いて皮下埋植、MNU、ヨード欠乏食の組み合わせで広島大学の結果の再現性について 実験を行っております。  また、我々の実験系を使い、エチニルエストラディオールの代わりに、エストラディ オールベンゾエートを投与する実験も行っております。  以上です。 ○池田補佐  ありがとうございました。ただいまの発表に何か御質問はありますか。 ○柴芝委員  2つ伺いたいのですけれども、1つは、最後から4枚目のスライドの左上パネルでお示 しになったと思うのですけれども、先生の実験のコントロール群でかなり甲状腺が大き くなって、かつ増殖性病変も出ておりましたね。先生のスライドでBDと書いてあったと ころです。それであれは何も処置していないわけですよね。 ○広瀬研究員  被験物質を投与していないということだけで、イニエシエーションその他のの処置は 行っております。 ○柴芝委員  イニシエーションはしているのですか、そうですか。  それからもう1つ伺いたいのは、結局ヨード欠乏にしますとラットは随分たくさん甲 状腺にいろいろな変化を起こしてくるわけですけれども、先生の実験の飼料の中のヨー ドの含量はどのくらいにしていらっしゃるのですか。 ○広瀬研究員  それは直接はかっておりませんけれども、正常の普通の飼料を使っておりますので。 ○柴芝委員  普通の飼料と言われている中に非常にバリエーションが大きくてかなり欠乏状態に近 いのからかなりリッチになっているものまでバリエーションがございますので、どのく らいのヨード量になっているかでかなり甲状腺違ってくる。  それからもう1つ、EEを使った群とそうでない群というのは血中の甲状腺ホルモンの バインディングがかなり変わってくる可能性があるので、ディプリートしようとしても なかなかディプリートし切れないという問題があると思うのですけれども、その辺血中 の甲状腺ホルモンいかがでございましょうか。 ○広瀬研究員  血中の甲状腺ホルモンは余り変動がなかったと記憶しております。 ○柴芝委員  ありがとうございました。 ○池田補佐  そのほかございますでしょうか。なければ先生どうもありがとうございました。  また2つ戻っていただきまして、次は8番のフタル酸エステルによる生殖障害に関する 研究。やはり大阪支所の川島先生が研究を江馬先生にお願いしたということです。 ○江馬研究員  よろしくお願いします。スライドお願いします。 (スライド)  フタル酸エステルによる生殖障害、ラットにおける生殖障害に関する研究です。 (スライド)  まずジブチルフタレート、フタル酸エステルとしては非常によく使われておりますジ ブチルフタレートを用いまして、ラットで検討いたしました。ジブチルフタレートはラ ット胎児の器官形成期に投与しますと奇形を誘発するわけですが、それを妊娠の初期に 投与したときの影響についてまず検討いたしました。 (スライド)  ウイスターラットを用いまして、ジブチルフタレートを餌中に2%の割合で混ぜまし て、妊娠0日〜最高11日まで、7日、9日まで投与しまして、その胚致死作用について検 討いたしました。 (スライド)  これは母体の所見をお示したものでありますが、2%のジブチルフタレート投与群、こ こではごらんいただきますと分かりますように飼料の摂取量の低下が著しく出ますので 、この群の摂取量に合わせたペアフェッド群を設けてこれとの比較で対照群との比較、 ペアフェッド群との比較で検討を行いました。2%のジブチルフタレートを含む飼料を妊 娠の11日まで与えたときのジブチルフタレートの摂取量、計算量は大体900mg/kg程度に なります。 (スライド)  これは着床胚死亡率、これが着床前の胚死亡率、これが着床後の胚死亡率です。投与 は妊娠の0〜11日まで行いまして、2%のジブチルフタレートを与えますと95%、あるい は96%ぐらいの着床後の胚死亡率を示します。餌の摂取量をこの群と同じ程度に制限し ても、着床後の胚死亡率の上昇は認められません。したがって、投与したジブチルフタ レートがこのような変化を起こしたものと考えられます。 (スライド)  これは妊娠11日に開腹したときの胚死亡率と妊娠20日に開腹したときの胚死亡率を示 したものですが、これは先ほどのカラムと同様でありますが、妊娠11日に開腹して調べ ましても既に着床後の胚死亡率は80%を超えておりまして、妊娠11日までに大部分の胚 は死亡しているものと考えられました。 (スライド)  これは妊娠の0〜7日までジブチルフタレートを与えて、7日に開腹したときの、着床 数でありますが、これが0〜9日までで9日に開腹、0〜11日投与で11日に開腹したもの でありますが、着床数にはこの3群の間にいずれの日におきましても差は認められませ んでした。 (スライド)  子宮重量をお示しいたします。7日、9日では差が認められませんでしたが、11日では このように2%ジブチルフタレート投与群で対照群、ペアフェッド群に比べて有意の低下 が認められました。これは受胎産物が死亡しているせいもありますが、発育が悪かった ことも原因していると考えられました。 (スライド)  次に、卵巣重量をお示ししましたが、妊娠の7日では対照群に比べてジブチルフタレー ト投与群で有意に低くなっております。妊娠9日と11日では対照群、ペアフェッド群に比 べて有意に低い卵巣重量が認められまして、卵巣に影響を及ぼしているものと考えられ ました。 (スライド)  そこで、母体血中のプロゲステロン濃度を測定しました。その結果、2%のジブチルフ タレート投与群で低下傾向が7日、9日で認められまして、11日では対照群よりも低い値 が認められました。 (スライド)  可塑剤として使われておりますジブチルフタレートをラットの妊娠初期に投与して胚 に対する影響を調べてみました。2%のジブチルフタレートを含む飼料をラットの妊娠0 〜11日に与えて妊娠20日に母ラットを開腹したとき、着床後の胚死亡率が99%に上昇い たしました。2%のジブチルフタレートを含む飼料をラットの妊娠0〜11日に与えて妊娠 11日に母ラットを開腹したとき、着床後の胚死亡率は85%となりまして、妊娠前半に既 に大部分の胚が死亡していることが明らかになりました。2%のジブチルフタレートを含 む飼料をラットの妊娠初期に与えたとき、卵巣重量の低下及び妊娠ラット血清中プロゲ ステロンレベルの低下が観察されまして、ジブチルフタレートが卵巣機能に影響を及ぼ していることが示唆されました。それから、2%ディブチールエスタレート投与群の飼料 摂取量と同量の飼料を与えたペアフェッド群では、これらの影響は観察されませんでし た。  このようなことから、妊娠初期に投与したジブチルフタレートは著しい胚致死作用を 示し、この胚致死作用は妊娠母体の生殖機能に対する影響を介して発現することが示唆 されました。 (スライド)  次に、ただいま発表しました結果に従いまして、妊娠の初期にジブチルフタレートを 今度は強制経口投与で複数の投与群を設けまして胚致死作用を現在調べております。 (スライド)  更に、母体機能に対する影響として、母体の子宮機能に対する影響に焦点を当てまし て、偽妊娠ラットの脱落膜反応、脱落膜種形成能に及ぼす影響を調べてみたいと考えて おります。これを偽妊娠4日に子宮の頚管側から細い針金を挿入しまして子宮内を引っ かきますと、偽妊娠の9日、5日後にこのように脱落膜種が形成されます。脱落膜種形成 能に及ぼすジブチルフタレートの影響を調べて、子宮に及ぼす影響の指標としたいと考 えております。 (スライド)  それの実験スケジュールですが、偽妊娠0〜8日まで妊娠ラットと同様の投与量のジブ チルフタレートを与えまして、4日に脱落膜反応を起こして9日の子宮の重量を測定して 子宮機能の指標にして検討していきたいと考えております。  以上です。 ○池田補佐  ありがとうございました。ただいまの御発表で何か御質問等ございますでしょうか。 ○伊東座長  お聞きしたいのですけれども、ジブチルフタレートを非常に大量にやっておられます よね。ですから次にいろいろと実験されるときにドーズ・レスポンスというか、我々の 目的とする健康影響に対する何かの示唆に富むようなデザインを是非考えていただきた い。大量では確かに変化は来るのですけれども、そういうことについてはいかがです か。 ○江馬研究員  フタル酸エステルの実験は大体がかなり多い量を用いてやっているものが多くて、ブ チルベンジルフタレートでμgオーダーの実験が1つあったと思うのですが、それは否定 する実験もありまして、それを除くとかなりどれも大量、kg当たり1gというような量で やっている実験がほとんどです。 ○伊東座長  研究者としては何もデータが出ないという結果を長い時間と労力でやるというのは非 常に面白くないのです。ですけれどもやはり、ヒトの健康に対する影響ということです から、我々のエクスポーズされる量ではどうかということを考えてやっていただかない と、大量にやって何か変化が出るか出ないかということではこの研究費の目的には合わ ないので、研究費のカットということを考慮させていただかないといけないのではない かと思うのですが。 ○江馬研究員  伊東座長の御指摘どおりヒトの摂取量を踏まえて、そういうドーズも組み込んで行っ ていきたいと思います。どうもありがとうございます。 ○松尾委員  今のメカニズムの解析で、生殖機能を通しての作用というふうに説明されたのですけ れども、ほかの臓器に異常はなかったでしょうか。これはクラシカルトキシコロジーか ら言いましても、ちょっと異常な実験だと思いますしね。母獣に影響があればその原因 をどこに求めるかというのは非常に難しいです。どうお考えでしょうか。 ○江馬研究員  確かに量が多いので母獣に影響が出るドーズです。それで影響をよりはっきりさせる ためには高用量を用いて実験するということで、この実験ではかなり高用量ですが、そ のドースを用いております。 ○池田補佐  そのほかございますでしょうか。なければ先生どうもありがとうございました。  続きまして、また1つ戻っていただきまして、VIII−7でございますけれども、ビス フェノールAとゲニステイン等の生殖、免疫機能への影響及び代謝に関する研究というこ とで、東京薬科大学の別府先生お願いいたします。 ○別府研究員  OHPでやらせていただきます。まず本研究の性格と目的を申しますと、私の所属する東 京薬科大学の幾つかの研究室が集まりまして、この表題にあるような趣旨で、それぞれ の持っているin vivo、あるいはin vitroの実験系、あるいはその技術を用いてそれぞれ の立場からいろいろな角度で取り組むという趣旨でございます。合計9研究室が参加し ておりまして、分担研究テーマが非常に多いですので10分間で話し切れるか心配なので すが、こういった研究テーマでやっております。  1番目は、要旨の目次の順番と同じなのですけれども、まず生殖・発生に対する影響。 これはin vivoの実験を行っております。  2番目は、器官培養ということで、一応in vitroですけれども器官を用いた研究です。 括弧内はその担当研究者です。  3番目は、ヒトの培養細胞を用いたin vitroの実験系。  4番目は、組換え体のヒトの酵素を用いた実験系で、それぞれいろいろなレベルで取り 組んだということであります。  まずこれはin vivoの実験で、この種の実験は過去ないわけではなかったと思います が、ラットの生殖に対する影響をゲニステイン、ビスフェノールについて見たというこ とです。これは交配前の投与で、ウイスター系のラットに1日2回背部の皮下に13日間連 続投与しました。その後、それぞれ、例えばオスに対してはメス、メスに対してはオス と交配させて、妊娠の効率を見ました。このドースはここに書いてあるとおりで0.3〜3 mg/kgで、この辺だとそうめちゃくちゃ多くはないドースだと思います。上がゲニステイ ンの結果、下がビスフェノールAの結果ですけれども、結論から申しますと影響がほと んどないと思われます。ただし、例数が1群5匹ですので少し少ないということは否めま せん。  ただ、ここのところの結果で少し妊娠に影響があるかなという気配がありますが、こ れについてはもう少し詳細に、動物の数を増やした実験が必要かと考えております。  今度は妊娠したラットに対して、ゲニステイン、ビスフェノールAを同様に投与し て、ドースも同じです。分娩前に開腹して胎児の数と胎児の重量を調べました。結論か ら申しますと、影響はほとんど認められませんでした。ただしこれも1群5〜6匹とい うことで数が少ないということはあるかもしれませんが、少なくともこの実験では顕著 な影響は認められなかったということです。  次もin vivoの実験なのですが、鶏の卵を用いた実験でして、鶏の受精後2日目の卵 を購入しまして、卵黄の胚に直接ビスフェノールAやゲニステインの溶液を注入しま す。注入した量は50μlですから量的にはそう多くありません。その後、例えば20日ぐ らいで孵化するのですけれども、孵化したヒヨコの重量、あるいは孵化前に、すなわ ち、注入後8日目で開腹して、その胎児の重量を調べるといったことをしますと、ほと んどコントロールに比べて影響がないということでした。ここで用いた濃度の範囲では 影響がないということです。この辺の濃度は決して薄くはありませんので、かなりの濃 度でも影響がなかったと考えております。奇形の発生も認められませんでした。それか らゲニスタインについても同じように影響は認められませんでした。  これも同じ実験系で、注入後8日後に胎児を取り出して、大腿骨、骨に対する影響に興 味がありましたので、その影響を見ました。その骨のカルシウム、マグネシウム、リン の量を測定いたしますと、それについても投与の影響は認められなかったということで あります。  以上がin vivoの実験ですが、今度はin vitroの実験です。これは器官培養なのです が、ラットの脳の海馬のスライスをin vitroでカルチャーします。カルチャーのときに 1週間ゲニステイン、ビスフェノールAを共存させます。  そうしますと、これは海馬の普通の顕微鏡写真なのですが、これはコントロールでこ んなふうに見えるのですけれども、ゲニステインの1μMの濃度のところでかなり黒いと ころが多い。黒いところが多いというのは細胞が増えているということだそうで、この 研究の担当の先生がそんなふうにおっしゃっていまして、したがって、細胞がむしろ神 経栄養因子のような影響効果を受けて増殖をしているのではないかというふうに考えら れるということです。毒性があって細胞が死ぬとか、組織がめちゃくちゃになるという ことは少なくともこういう濃度ではなかったということです。  今度は機能に対する影響なのですけれども、これは先ほどの海馬スライスの面なので すが、この場所からこの場所に対する神経伝達の刺激をここに書いてあるような方法で 調べるということをいたします。これはコントロールで脱分極の程度を見た場合で、1 つだけ見ればいいわけですが3点あります。結論から言いますと、ゲニステインの1μM のところで少し脱分極が強まっています。その回復にも少し時間が掛かっているという ことで、これは神経の活動がむしろ活発になっているように見えるということです。こ の面積をはかって数値化しますと、ゲニステインの1μMのときに有意な差が見られ、ほ かでは差は見られません。ゲニステイン1μMのとき以外はそういう活性化のようなこと は起こっていないようだということです。  以上が脳のスライスを使った実験なのですが、今度は培養細胞を用いた細胞の機能に 対する影響です。免疫細胞の免疫関連機能に対する影響に興味がありましたので、まず はU937細胞、これはマクロファージや単球系の細胞で、ヒトの細胞を用いました。これ はゲニステイン、ビスフェノールAを横に示しました濃度で培地に加えまして、ずっと 継代が続きます。同じ濃度でずっと継代を続けるわけですけれども、4日間暴露したも の、12日間暴露したもの、例えば、そのデータを示します。これは細胞のアポトーシス に対する影響なのですが、この条件では細胞の増殖率やバイアビリティーには影響があ りませんでした。例えばゲニステインではU937に対してこの濃度まで単独ではアポトー シスを引き起こす効果は認められないけれども、どのグラフもみんなそうです。ビスフ ェノールAもそうです。  ところが、エトポシド、これはアポトーシスの誘導剤ですけれども、この誘導剤で誘 導しますとこのぐらいのアポトーシスが誘導されますが、細胞がゲニステインに既にイ クスポーズされているとこれだけの増加が見られます。ビスフェノールAの場合も増加が 見られます。したがって、ゲニステイン、ビスフェノールAともにアポトーシスを促進す る効果、すなわち、別なものでアポトーシスが起こっている細胞のアポトーシスをさら に促進するような効果があるように見えます。これは1ナノモーラあたりでも、ここは 100ですけれども認められます。  これはT細胞系のヒトの細胞でジャーカット細胞ですけれども、これも単独では影響が なくて、エトポシドで誘導されるアポトーシスを増強する作用がこういうふうに見られ ます。ゲニステイン、ビスフェノールAともにヒトの培養細胞のアポトーシスを促進する 作用があるように見えます。これはもっとU937細胞で長いことやった場合ですけれど も、やはり同じということです。要旨には暴露期間が長くなるとよりセンシティブにな るというようなことを書きましたが、その後よく見てみますと、時間と余り関係なく起 こるようです。  これはアポトーシスをDNAラダーで見たものです。言い忘れましたが、先ほどのはヘキ スト染色という方法で見ております。これはDNAラダーですが、これでは余り顕著な差は 見られません。ラダーの差が出るほどの激変が起こっているわけではなさそうですけれ ども、やはりアポトーシスには影響があるのではないかと考えております。  いろいろ話が飛んで申し訳ありませんが、今度は組換え体のヒトの酵素を用いて代謝 に対する影響を見ました。つまりヒトの代謝酵素でもってこういったものが分解を受け るかという実験ですが、これはスルホトランスフェラーゼでフェノール性の化合物を代 謝分解するものですけれども、スルホトランスフェラーゼの組換え体を幾つかつくって どういうものが分解されやすいかを調べた結果です。スルホトランスフェラーゼは詳し くは申しませんが4つ種類があって、その中の3つがこういったものを分解することが分 かりました。オクチルフェノール、ゲニステイン、ノニルフェノール、ビスフェノール A、ダイゼインといったものがこういった酵素でよく分解されます。これは1つのデー タでその証拠ですけれども、例えばPSTだとそれぞれのものがこれだけのKm値で分解され たということです。  今度はグルタチオンSトランスフェラーゼ、これはステロイドホルモンなどの化合物 をグルタチオン抱合するわけですけれども、それに対する阻害活性でビスフェノール A、ゲニステインを見てみますと、これはコントロールで見たフラーレンC60、これは 非常にこの酵素に結合しやすいものだそうですが、これに対し1,000倍ぐらいの濃度で 阻害活性が出ました。ただ、この阻害活性は非常に弱いということで、余り意味があり そうではなく、代謝も受けなさそうだということです。実際に実験をおやりになった先 生のコメントはそういうことでした。  これはヒトのアロマターゼがテストステロンをエストラジオールに転換するときに、 このアロマターゼにかく乱物質が作用してその活性に何らかの影響を与えるかどうかを 調べるための実験系なのですが、組換え酵素にトリチウムテストステロンを加えてエス トラジオールになるかどうか見ています。実はこの実験系は7月にでき上がったばかりで これは初めてのプリリミナリーなデータですので、ここで結論、結果を論じることはで きないと思うのですけれども、ただ、ある程度の濃度のところでは活性を上げているよ うにも見えます。今後、更にきちっとした検討が必要だということです。  いろいろなものが出てきましたのでまとめます。乱暴なのですが簡単に言ってしまい ますと、ここに示しましたこれだけの実験系の中で影響があったと思われるものは、脳 の組織の器官培養に対する影響、悪い影響なのかいい影響なのかよく分かりませんが。 それからヒト免疫細胞については、アポトーシスに対して影響がありました。あと、分 化に対してこれはプリリミナルなデータですが、U937のマクロファージへの分化を阻害 するような作用が認められました。ただし、もうちょっとコンファームする必要がある のでここではお話しいたしませんでした。あと、スルホトトランスフェラーゼがそれら の代謝に関係しているだろうということです。これに関してはまだ分かりません。あと は影響はないのではないかということです。  以上です。 ○池田補佐  ありがとうございました。ただいまの発表につきまして、何か御質問ありますでしょ うか。 ○宇山(事務局)  少し教えていただきたいのですが、先生の実験の中で影響があったと言われているも のがエストロゲン様作用によるものなのか、例えば先生がお示しになった培養系の話 で、先生が直接はやっていらっしゃらないということですけれども、それを見ていると どうもリバースのところが抑えられて面積を求めると全部大きくなっていると。これら がカリウムチャネルの直接的なブロック作用によるとか、そういう可能性についてはど うでしょうか。 ○別府研究員  メカニズムですか。なぜああいう影響が出るのか。 ○宇山(事務局)  このゲニステインというものについていわゆるエストロゲンのような作用があるのは 分かっていますけれどもそれ以外の作用もあるわけで、ここで影響があるということが 実際にいわゆる内分泌かく乱化学物質というものの作用によるのか、あるいは非選択的 な作用によるのか。 ○別府研究員  そこのところはまだ分かりません。この間1年という期間でしたので、とにかく影響が あるかないかというようなことがある程度分かってきたということで、どういうメカニ ズムかということは今後の当然取り組むべき課題でありまして、それは進行中というこ となのですけれども、ゲニステインに関しては確かにホルモンライクな作用以外のもの が以前から知られていましたし、例えばチロシンキナーゼの阻害剤とかそういうことも ありますが、まだメカニズムについてはいろいろな角度から検討する必要があると思っ ております。 ○鈴木(勝)委員  鶏卵を用いてやられていたと思うのですが、受精後2日の卵に投与されたというのは何 か特別な理由があるのですか。 ○別府研究員  あとで受精させるというのは難しいですので。 ○鈴木(勝)委員  勿論受精卵を買うわけなのですけれども。 ○別府研究員  卵によって変わりますから、受精保証付のものを買うということで。 ○鈴木(勝)委員  ですよね。そのときに、通常は生まれた日のところの話で投与するのですけれども、 要するに2日という意味がよく分からなくて。 ○別府研究員  2日というのは産卵してから翌日にしか手に入らないというただそれだけの理由なの です。 ○鈴木(勝)委員  その間卵はどういうふうに保存されていたのですか。 ○別府研究員  業者はどんなふうな扱いをしているかわかりません、ニワトリが抱っこしているかも しれませんし。 ○鈴木(勝)委員  それが大変問題になってきてしまうので、通常は冷やしておけば産卵してから発生は 進まないのですけれども、それで孵卵器にかければ同じステージで入るのですけれど も、そうでない状況で投与されたとなると、少し条件が変わってきてしまうのではない かと思うのです。 ○別府研究員  業者のところでどういう状態で置かれていたのかというのは把握していませんが、手 元に来てからは勿論孵卵器でやっております。それ以前のところが今、問題になってい るわけですね。 ○池田補佐  続いて安田委員よろしいですか。 ○安田委員  結構です。鈴木委員からお聞きいただいた方がいいと思うのですが、まずニワトリ鶏 というものの発生、1回の後尾後かなりの期間受精卵を産みつづけるという基本的な現 象をきちんと把握しておいていただきたい。 ○池田補佐  そのほかございますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは先生どうもありがと うございました。  続きまして、前に戻っていただきまして、VIII−4になりますが、内分泌かく乱物質 の行動影響に関する調査研究ということで、星薬科大学の鈴木先生お願いいたします。 ○鈴木研究員  スライドをお願いいたします。 (スライド)  私どもは行動影響に関する調査研究を行いましたので、御報告させていただきます。 (スライド)  今回用いました物質はこちらに書いておりますようにベンゾピレン、ビスフェノール A、フタル酸ジ−nブチルを用いております。行動影響ということで、まずこれらの物質 をマウスに投与いたしまして、一般行動の観察、葛藤、コンフリクトに及ぼす影響、学 習記憶に及ぼす影響、運動協調性及び自発運動量に及ぼす影響をそれぞれ検討いたしま した。 (スライド)  一般行動に及ぼす影響といたしましては、ddY系の雄性マウスに各物質を3mg及び10mg 経口投与いたしまして、それぞれ30分、60分、120分に行動観察を行いました。主に姿 勢、あるいは眼瞼下垂や反射、それから運動に及ぼす影響、自律神経症状についてそれ ぞれ行動観察を行いましたけれども、いずれの物質に関しましても対照群と有意な差は 見られませんでした。 (スライド)  次にコンフリクト実験ですけれども、これはこちらに図を示してありますけれども、 この中にマウスが入っております。このマウスはこちらに書きましたように24時間絶水 しておりますので、非常に水を飲みたいというドライブが掛かっているわけです。そう しますと、こちらに給水びんがありまして、これをマウスが飲むわけです。最終的には 10分間の試験を行うのですけれども、このときには水を飲むと同時に装置の床面がグリ ッドになっておりまして、これらからは電撃が加えられます。そういうことで、動物は 非常に水を飲みたいけれども、同時に電撃を受けることで葛藤状況になるわけです。そ ういうような行動に対してこれらの3つの化合物が影響を与えるかどうかということを 検討したわけですけれども、いずれも影響は認められませんでした。 (スライド)  次に学習・記憶試験ですが、これも幾つかの方法がございますけれども、今回はステ ップ・ダウンという方法を用いております。このようにこちらに台がありまして、動物 がこの台の上に乗っていれば電撃を受けないのですけれども、この台の下に降りますと 床面がグリッドになっておりまして、電撃を受けるわけです。前もって、トレーニング を行っておきまして、その後マウスを台に乗せますと、動物は前日に台から降りて電撃 を受けておりますので、台の上に長い時間滞在するようになります。すなわち、前日の 電気ショックの状況をマウスが学習記憶しているということがこの実験から判断できる わけです。この装置に対してこれらの3つの化合物の影響を検討したわけですけれど も、これに関しましても、有意な影響は認められませんでした。 (スライド)  次に運動協調性試験を行いました。こちらに示しましたような回転棒試験、すなわち マウスを回転棒、ここがこういうふうに回っているわけですけれども、そこに乗せ、マ ウスが5分間乗れるようにトレーニングするわけです。その後、被験物質を投与しまし て、回転棒上にマウスがどれだけ乗っていれるかを測定し、各化合物の運動協調性に及 ぼす影響を検討しました。しかし、これに関しましても対照群に対して何ら有意な差は 認められませんでした。 (スライド)  次に、自発運動に及ぼす影響を検討いたしました。測定方法は、こちらに示しました ようなティルティング・ケージ法を用いました。すなわち、このようなバケツの中央に 支点がありまして、動物をこのバケツの中に入れるわけですけれども、動物がバケツの 中で動きますと、バケツの周りに取り付けた3か所マイクロスイッチのどれか1つが作 動するようになっておりますので、動物がバケツの中を動きますと、このマイクロスイ ッチがカウントされて、そのカウント数を運動量として測定することができるわけで す。 (スライド)  これはベンゾ(a)ピレンの結果です。一般的に、動物は前のスライドのような装置に 入れますと、新規環境になりますので、最初は非常に探索行動を示して、約30分ぐらい でその新規環境に順応します。そして、その後は余り行動変化を示さないようになるわ けです。ベンゾ(a)ピレン3、あるいは10ミリをマウスに経口投与いたしまして、自発 運動量を測定いたしますと、こちらで見ていただいてお分かりのように、この前半部分 が対照群に比べて上昇していることがお分かりいただけるのではないかと思います。 (スライド)  前の結果を装置に入れて60分間の総カウント数で表したものがこのスライドです。縦 軸には総カウント数を示し、コントロール群、ベンゾ(a)ピレン3ミリ投与群、10ミリ投 与群をそれぞれ示しております。ベンゾ(a)ピレン10ミリ投与群においてこのように有 意な自発運動量の増加が見られます。すなわち、これはどういうことを意味しているか といいますと、マウスは新規環境に対して一般的には30分ぐらいで順応してくるわけで すけれども、ベンゾ(a)ピレンを3、10ミリと投与しますと、大体用量依存的に自発運 動が増加し、特に10ミリにおきましては有意な増加を示すということは、新規環境に対 する順応性が多少低下しているのではないかと考えられるわけです。 (スライド)  次に、フタル酸ジ−n-ブチルとビスフェノールAについても同様に急性処置による自 発運動に及ぼす影響を検討しましたが、有意な変化は認められませんでした。そこで、 今度は長期間、すなわち28日間各化合物を餌に混ぜて処置した後、それぞれ自発運動量 を測定致しました。濃度はここに書きましたように、0.03 mgを1gの餌に付加しておりま す。こちらは0.1 mgを同様に混入しまして、28日間処置し、その後自発運動量を測定し ました。このように、コントロールに対してビスフェノールA処置群で若干運動量が増 えているように見えておりますが、残念ながらこれは有意な結果ではありませんでし た。また、ベンゾ(a)ピレンおよびフタル酸ジ−nブチル処置群でも同様に、コント ロールに対して有意な差は認められませんでした。  このように慢性処置した動物に対して、今度は更に各化合物を経口投与したらどうか ということで、次のスライドお願いいたします。 (スライド)  これが慢性的に各化合物の混入飼料で処置した後に、こちらに書いてありますように 3mgあるいは10 mgを経口投与した場合の結果であります。そうしますと、ビスフェノー ルA投与群でやはり初期の自発運動量の明らかな増加が見られております。これを総カ ウント数として表しますと、次のスライドお願いいたします。 (スライド)  これが結果になりますけれども、ビスフェノールAの慢性処置を行った後にビスフェ ノールAを経口投与しますと、このように明らかな自発運動量の増加が認められまし た。したがいまして、ビスフェノールAを慢性的に処置した場合、ベンゾ(a)ピレンの 単回投与と同じように新規環境に対する順応性が少し落ちているのではないかというこ とが示唆できるのではないかと思います。 (スライド)  以上の結果をまとめますと、ベンゾ(a)ピレン、ビスフェノールA、フタル酸ジ−n −ブチル、これらの物質は一般行動、葛藤、運動協調性、学習・記憶には何ら影響を及 ぼすことはありませんでした。しかし、ベンゾ(a)ピレンの単回投与によって、新規環 境における自発運動量を増加させることが分かったわけです。  また、ビスフェノールAの混餌による28日間慢性投与後の経口投与におきまして、同 様に新規環境における自発運動量の増加が明らかになりました。  以上のような結果が得られました。どうもありがとうございました。スライドありが とうございます。 ○池田補佐  ありがとうございました。 ○黒川委員  扱った3物質とも3ミリとか10ミリ、それに合わせていらっしゃるのですけれども、そ の設定根拠というのは何なのですか。 ○鈴木研究員  一般的な濃度とはかなり懸け離れていることは確かだと思います。それで、予試験に おきましてかなり用量を上げていってみたわけなのですけれども、それで何らかの変化 が見られるところを最初の実験としては採用しようということで、ここまで上げてみた わけです。それ以外の根拠というのはありません。 ○山崎委員  先生おっしゃっているように、こういう物質に関するいわゆる行動薬理的なデータと いうのは今までないのですが、こういうデータを取らなければならない根拠というの は、どういうところにあるのですか。 ○鈴木研究員  これらの行動影響ということでしょうか。 ○山崎委員  例えばコンフレクションなどを見なければいけないという。 ○鈴木研究員  要するに、いろいろな本や報道で、最近の子どもが切れやすいということが言われ、 これが環境物質の影響ではないかと言われております。そこで、この辺を明らかにする ためにはこのような実験をやらなければいけないのではないかというふうに考えており ます。 ○井上委員  エンドクラインディスラプターのこういう問題でアダルト・レベルに達した状態での 行動に問題が出るか出ないかというのはいろいろ議論のあるところだと思いますので、 先生がそういう仮説を立てておられるのでしたら、それはそれでとやかく言うことでは ないのですけれども、ただ、こういう議論になるときのためにやはり研究者の皆さんい ろいろお困りですので、ICIカンパウンドだとかZMだとか、アンタゴニストをOECDの方で は用意しなければいけないというふうに考えているのです。これはOECDのテストのため に勿論計画をしているのですけれども、ただ、もっと広く、ゼネカの方からできれば生 産の特許をオープンにしてもらって、日本の製薬メーカー、試薬メーカーさんでつくっ ていただいて、こういうもので本当にアンタゴニストでもって消去されるのかどうかを 確かめながら実験を進めていただくことが大事なのではないかと思っております。 ○鈴木研究員  まさに先生おっしゃるとおりだと思います。 ○伊東座長  皆さんの御心配のポイントを研究していただいて非常にありがたいのですけれども、 アニマル・ライトの人たちはいいのですね。 ○鈴木研究員  大丈夫だと思います。その辺は十分心得てやっておりますので。 ○伊東座長  随分やらしい実験だから。 ○鈴木研究員  これはそれでないとできないものですから、必ず倫理委員会を通してやっております ので問題はございません。 ○池田補佐  そのほかどなたかございますでしょうか。よろしければ時間でございますので、先生 どうもありがとうございました。続きましてVIII-5でございますが、ゲニステインの生 態影響及び体内動態に関する研究ということで、前国立健康・栄養研究所の池上先生お 願いします。 ○池上研究員  それでは初めのスライドをお願いいたします。 (スライド)  我が国では大豆、あるいは大豆の加工品はたんぱく質源として非常に重重なものであ り、最近では大豆を摂取することが日本人の健康上にも大きな利点を持っているという ことが言われております。 (スライド)  ここに示しましたのは、大豆の中に入っておりますゲニスタインですがこれがイソフ ラボンの一種であり、そのほかにもダイゼインというのも大豆の中には含まれておりま す。これは構造的にはエストロジェンと極めて類似しているところから、内分泌かく乱 化学物質としての候補にも挙がっているものであります。これまでの研究では、ゲニス タインに関しましてはエストロジェン様の作用を持つことによって、血清中のコレステ ロールを下げるというような利点も知られていますが、一方で子宮重量を増加させると いうネガティブな影響もあることも知られています。  他方また、ゲニステインの場合は、アンティエストロジェニックな作用もあるという ふうなことを言われて、このことが乳がんその他のがんの増殖を抑えていくというよう なことで、日本人や東南アジアの人々に乳がんや前立腺がんの少ないことはこのゲニス タインが要因になっているというふうにも考えられております。ゲニスタインにはその ほかに、チロシンカイネースのインヒビター、あるいはトポイソメラーゼのインヒビ ター、あるいは抗酸化性といったようなことからさまざまながん細胞の増殖を抑制す る、あるいは細胞の分化を促進するというようなことも知られております。 (スライド)  このゲニスタインについては今、御紹介したようながんや高脂血症に対する抑制効果 が知られておりますけれども、私どもは骨に対する作用の面からこの物質についてアプ ローチしてまいりました。この実験にはddyマウスを用い、このマウスに卵巣摘出(OV X)を行った後、このゲニスタインやエストロジェンが一定量常にマウスに投与されるよ うに、皮下にポンプを埋め込みまして投与いたしました。OVXした後、直ちにゲニスタイ ンやエストロジェンを投与して、2週間目に殺し、それからまた更に継続して飼育いたし まして、骨の成長、骨髄にありますB細胞がこのメカニズムに非常に大きくかかわってい るということで、そういった測定も併せて行いました。 (スライド)  これは体重を表したもので、OVXいたしますと一般には体重が増えてまいりますけれど も、このOVXしたものにゲニスタインやエストラジオールを投与いたしますと、体重増加 が抑制されてまいります。エストラジオールの場合には子宮重量が増加してまいります けれども、私どもが投与したレベルでのゲニスタインでは子宮重量の増加が見られない ということが分かりました。そして、先ほど少し御紹介いたしましたが、未成熟な骨髄 のBリンパ球がOVXをいたしますと増えてまいりますが、これにゲニスタインやエストラ ジオールを投与するとその増加が抑制されるということが分かりました。 (スライド)  先ほど御紹介したのは0.5mg/kgレベルでの影響を見たものですが、ドーズ・レスポン スを見てまいりますと、0.1〜0.7mg/kgぐらいの間では子宮重量に全く影響せずにBリ ンパ球のフラクションがOVXで増加いたしますものがゲニスタインによって低下すると いうことが分かりました。エストラジオールの場合にはBリンパ球が明らかに低下して いることが観察することができます。同時に、子宮の重量が増加することも分かりま す。 (スライド)  幾つかデータがあるのですけれども、先生方に一番見ていただいて分かりやすいデー タを見せます。これはマイクロCTスキャニングということで大腿骨の立体構造をコンピ ュータでグラフィック化したものですが、これはshamの状態での海綿骨と言われる部分 が、通常骨粗鬆症になっている状態を示しています。OVXをいたしますとこんなふうに海 綿骨が非常に疎になってまいりまして、このことが骨粗鬆症と言われる状態になるわけ です。それに対してゲニスタインを投与いたしますと、明らかに改善が見られるという ことが分かりました。 (スライド)  今のようなゲニスタインの投与レベルでは、いわゆる子宮重量をメルクマールにした 内分泌かく乱の作用というのは見られないわけですが、更に投与量を上げてまいります と、それなりに影響が出るということが分かりました。これは未成熟なメスのマウスを 行ってやったものですが、ゲニスタインを骨に対して有効であった量の10倍量を投与い たしますと、明らかに子宮重量が増加してまいります。通常のマウスで、卵巣摘出をし ておりませんものでも10倍量投与すると明らかに子宮重量に影響が出てくるということ が分かります。もう1つのOVXをしたものでも明らかに重量の増加が観察され、大量に 投与すればゲニスタインにおいても内分泌かく乱作用が出るということが観察できまし た。 (スライド)  これは同じような実験を再度繰り返したものであります。卵巣摘出をしていないノー マルなマウスですが、それに対して卵巣摘出したマウスと両方で比べてみました。子宮 重量をメルクマールにいたしますと、1mg/kg以下のところで、これが先ほど骨に対して 有効な量を示した量でありますけれども、それの数倍量を投与していくとやはり子宮重 量に対する影響が出るということが分かりました。 (スライド)  私どもはヒトでの影響との比較というものをどういうことで現時点でできるのか、ま だ模索をしているところであります。そのため、実際に血中にゲニスタインがどの程度 のレベルで現れてきているのかマウスを使って測定をいたしました。私どもの実験では 固形飼料を使って動物を飼育しておりまして、固形飼料の中にもかなりゲニスタインが 入っているということが分かりました。これが通常の飼料で何らゲニスタインの投与を していないものですが、こういうものでも血中にこれだけのレベルが出てくるというこ とが分かりました。フィンランド人と日本人の血中イソフラボン濃度を比較したものが ありますが、それで見ますと日本人の血中レベルにほぼ匹敵するぐらいのレベルであり ます。それよりやや高いところで実際に骨に対して有効で、これは子宮重量が明らかに 増加するレベルであります。 (スライド)  次に私どもは、ゲニスタインが妊娠期のラットに投与したとき、授乳を通して、ある いは胎児にどのように移行するかを検討致しました。まだ充分なデータは出ておりませ んけれども予備的な実験を行いました。これはそのときの親の体重の変化を示したもの であります。ゲニスタインは非常に高いものですから、少し純度の低いゲニスタインと ダイゼインが等量混合されているものを飼料に混ぜて投与しました。そうしますと動物 は餌を食べなくなりまして、体重の増加が抑制されるということが分かりました。胎児 数や出産数にも影響が出てまいりましたけれども、これに対しては現在詳細な検討を続 けております。 (スライド)  これは乳児の胃の内容物、生後2日目、あるいは13日目は母乳以外には餌を全く食べて おりませんので、胃の内容物はほとんど水分と母乳から来ているということで、胃の内 容物の分析をいたしました。ここでは、ダイゼインとゲニスタインを測定して濃度で表 しておりますけれども、生後2日目ぐらいでは非常に濃度が低い。それに対して13日目に なるとかなりの高濃度になってくるということで、母乳を介して乳児に移行することが 分かりました。 (スライド)  このスライドは血中レベルを見たもので、これは親の方である母親の血中のレベルに 対して乳児血中レベルは低いということが観察できました。この辺のレベルは先ほど言 いました日本人の現在の血中レベルにほぼ匹敵するぐらいの濃度というふうに考え、こ れらはそれの10倍以上というような濃度になるということを確認いたしました。 (スライド)  これが最後のスライドですが、私どもは骨に注目して、骨へのゲニスタインの作用と いうことで見ております。私どもが有効レベルとしたあたりではほとんど内分泌かく乱 の作用がなく、ここにありますエストラジオールや、タモキシフェンではやはり内分泌 かく乱作用がありますが、ラロキシフェンというのは薬剤として開発された骨粗鬆症の 予防薬です。これらの薬剤ほどではありませんけれども、今の我々の実験データからは 比較的安全なレベルで骨に対して有効ではないかというふうに考えております。まだ研 究を始めたばかりの胎児、乳児への移行に関しては今後更に詳細に、現在のところ純度 の低いゲニスタイン、ダイゼインの混合物を使っておりますので、純度の高いゲニスタ インを使った実験へ発展させたいというふうに考えております。  以上です。 ○池田補佐  ありがとうございました。ただいまの御発表に何か御質問等ございますでしょうか。 ○安田委員  少し細かい要望についてのお尋ねで恐縮なのですが、先生は妊娠5日目というふうな表 現を使っておられます。またお話の中で生後2日目という表現をお使いになりました。妊 娠日と生後日齢の定義をお教えいただきたいのですが。 ○池上研究員  私どもが使っておりますのは、妊娠を確認した日を1日目、誕生した日を1日目という ふうに数えております。 ○安田委員  妊娠の確認というのは、つまり、ラットの場合精子発見日を1日というふうに。 ○池上研究員  スメアテストで確認したものを購入して実験に供しております。 ○安田委員  ですからそれを確認した日が第1日目、ファースト・デーということですね。 ○池上研究員  そうです。 ○寺田委員  意見ではなくてコメントなのですけれども、ダイエット(食餌)の中にイソフラボン 系がたくさんあるというのは非常に大事で、こういうホルモン系の仕事をされるほかの 方にも言おうかなと思っていたのですけれども、日本のロットの問題とか、外国のダイ エットとちがって、魚の粉が大分主成分として入っているのです。そういうことがあり ますので、こういう非常に微妙な問題が出てきて、特に外国のデータと比較などをする のに大事だなと思っておりました、そういうことを指摘されてなかなか感心になりまし た。どうもありがとうございます。 ○池上研究員  後半の妊娠ラットの実験の場合には確実に合成飼料を使っておりますので、通常こう いう実験のときには大豆が推奨されていますが、私どもはコーン油を使って飼料からの コンタミネーションが極力下げられるようにして実験を行っております。最初の方は普 通の固形飼料を使ったものですから、ああいうコンタミネーションがあったということ です。 ○池田補佐  よろしゅうございますでしょうか。それでは先生どうもありがとうございました。  続きまして6番でございますが、ビスフェノールAとゲニステインの胎児期暴露の雄性 生殖機能への影響評価、東京理科大学の武田先生お願いいたします。 ○武田研究員  東京理科大学の武田です。よろしくお願いします。最初のスライドをお願いいたしま す。 (スライド)  私たちはビスフェノールA、あるいはゲニステインの胎児期暴露の雄性生殖機能への影 響を検討いたしました。主にin vivoとin vitroの両方の実験系、アッセイ系を用いてビ スフェノールA、ゲニステインの活性について検討しております。 (スライド)  最初はビスフェノールAについて検討したお話をいたします。ビスフェノールAが果 たして経口で投与したときに胎児へ移行するかどうかということをまず検討いたしまし た。19日齢のウイスター系のラットに、ビスフェノールAを10mg/kg体重を経口的に投与 しまして、一定時間後、1時間、3時間、24時間後に検討いたしましたが、母親のラット の血液、胎児全組織を用いて測定しました。ビスフェノールAを抽出、前処理し、GC/MS で分析定量しました。 (スライド)  ビスフェノールA定量のプロトコールはスライドで示しますが、説明は省略させてい ただきます。 (スライド)  測定した結果がこの図でありまして、ビスフェノールAの濃度の単位がppbで取ってあ ります。1時間後に母親の血液は34ppbという濃度になりました。そのとき胎児組織当た りの濃度はその約3分の1で11ppbという濃度でした。母親の血液の方は3時間、あるい は24時間後には10分の1に急激に低下してしまいましたが、胎児の方はこの値が割と維 持されまして、24時間後でも3分の2ぐらいに保たれていました。この結果はビスフェ ノールAは速やかに胎児に移行すること、すなわち血液胎盤関門を通過して胎児に行き 得るということと、胎児ではクリアランスが相当遅れる傾向があることが示唆されまし た。 (スライド)  In vitroの実験系でビスフェノールAの活性を評価するため、精巣のライデイッヒ細 胞を培養し、テストステロンの合成系を調べるアッセイ系をつくりました。ラットある いはマウスのライデイッヒ細胞を精巣から分離し、被験試薬と24時間培養します。その 後hCGを添加しまして6時間、テストステロンの産生を見ます。産生されたテストステロ ンは放射標識テストステロンと抗体を用いたRIA(リア)法で測定します。このとき同時に WST-1法という方法で細胞の生存率をチェックしました。ここにかかわってくるテストス テロン合成酵素のmRNAの発現も同時に調べております。 (スライド)  ビスフェノールAのテストステロン産生への影響を調べた結果を図に示しました。テ ストステロンの産生量が縦軸に取ってあります。hCGを加えますとこのようにテストステ ロンが合成されるようになります。この系においてビスフェノールAがどういう影響を与 えるかということを見たもので、ビスフェノールAの濃度が横軸に取ってあり、赤いカラ ムがこのときのテストステロンの産生量です。ほとんどコントロールと変わりがないと いう結果です。このときの生きている細胞数をこちらの縦軸にプロットしましたけれど も、ここも影響が出ない濃度範囲ではビスフェノールAはテストステロンの産生に影響を 与えないという結果です。これは被験試薬の暴露時間が1日という割合短い時間のアッ セイ系であり、この範囲では影響はなかったということです。後でゲニステインについ て触れますけれども、ゲニステインもこの系では同じように影響が出ませんでした。 (スライド)  同じアッセイ系ですけれども、幾つか化合物をテストした中では、TPAやオカダ酸とい うプロモーターが割と低い濃度でこのようにテストステロンの産生を抑制しました。作 用機作が全く違うプロモーターですから、作用機作が異なってもプロモーター活性があ る物質がこのようにテストステロンの産生を抑えるということが分かりました。これは TPAと同じ作用機序を持つプロモーター、あるいはオカダ酸と同じグループのプロモー ターを使っても同じ結果が得られております。 (スライド)  同じ実験系でこれはTCDD(ダイオキシン)の影響を見たものですけれども、ダイオキ シンもこの系では1ピコモラーという非常に低い濃度で影響が出ます。抑制するという ことです。このアッセイ系でビスフェノールA、ゲニステインは影響が出ませんでし た。 (スライド)  先ほど池上先生の話でイソフラボンの研究が出てきましたけれども、これは池上先生 と共同で行わさせていただいた研究で、実験系は先ほどの系と全く同じです。妊娠5日目 のラットにイソフラボンの餌が投与されまして、出産、それから解剖という、この間、 母親はずっとイソフラボンの餌を食べ続けているということになります。この餌にはゲ ニスタインがこのぐらい含まれています。生まれてから13日目のラットをいただきまし て、精巣に対する影響を調べました。解析はまだ十分行っていないのですが、1つはっ きりしてきたことを次のスライドでお見せします。 (スライド)  ホルモン・レセプターの発現に対する影響です。In vivoで投与した結果の影響ですけ れども、LHレセプター、FSHレセプター、アンドロジェン・レセプター、エストロジェ ン・レセプターα、もう一つエストロジェン・レセプターβを見ていまして、βは1,000 分の1ぐらいの発現量ですのでこのグラフにのってこないという発現量です。黄色がコ ントロールで、緑が餌を与えたものです。500 mg/kg、1,000 mg/kgではこのように各レ セプターの発現量が亢進していることが認められました。濃度が濃いところは落ちてし まうのですが、調べた範囲ではこういうことで、結果的にはイソフラボンの餌を食べさ せて生まれた仔は、mRNA、各レセプターの発現が高まっているという傾向が認められま した。 (スライド)  今度は先ほどのin vitroの精巣でのテストステロンの合成です。合成酵素に対するゲ ニステインの影響を見たものです。ここに相対的なmRNAの発現が見てありまして、テス トステロン合成酵素、P450scc、P450c17、17β-HSD、3β-HSDそれぞれに対する影響 で、これは何も処理していないものです。これはhCGで刺激を加えたものです。それか ら、hCGプラスでビスフェノールA、ゲニステイン、エストラジオールというものを加 えた結果で、ピンクがゲニステインになりますけれども、ゲニステインのみがP450sccと P450c17を促進するという結果が得られました。  一方、HSDに関しては17β-HSD、3β-HSDの2つともゲニステインによって抑制される という傾向が認められました。エストラジオール、ビスフェノールAではこのような結 果が得られませんので、ゲニステインはどうもエストロジェン作用ではない作用でホル モンの合成酵素に影響を与えそうだという結果です。 (スライド)  今の酵素はここの開裂酵素と水酸化酵素、これが促進されまして、HSDの方が抑制され ていますので、ゲニステイン添加後、コレステロールからテストステロン経路の代謝中 間体を測定し、その辺のバランスがどうなっているかということを調べたいと思ってい ます。 (スライド)  最後のスライドはまとめですが、短い時間ですのでトータルの繰り返しは避けます。 ビスフェノールAについてはそれほど影響がない。ところがゲニステインについてはどう もエストロジェン様作用以外の作用で内分泌かく乱活性を多少持っていそうだというこ とになりました。その点を今後検討していきたいと思っています。  In vivoの実験結果を多く発表することができなかったのですけれども、今、継続中 で、これからデータが出てくるというところで勘弁していただきたいと思います。  以上で発表を終わります。どうもありがとうございました。 ○池田補佐  ありがとうございました。 ○井上委員  武田先生、ホルモン受容体の発現を見ておられるわけですけれども、α受容体、β受 容体の発現を経時的に見たペーパーというのは、グスタフソンのところからせんだって 出たばかりだと思うのです。そういう意味で新しい仕事で大変結構なデータだと思って 拝見したのですけれども、あれは臓器はどこですか。 ○武田研究員  私達の場合は精巣全体をばらばらにして、トータルのmRNAの発現で見ています。 ○井上委員  グスタフソンのデータと少しずれがあるように思いまして、生後2週目でございました よね。たしかβ受容体も出そろっていたのではなかったかというような記憶があるので すけれども。 ○武田研究員  最初にお見せしたデータはβを見ましてこれは生後2週です。これはプリズムPCRで測 定して、相当増幅を掛けてやっと出てくるというところで、計算するとαの1,000分の1 ぐらいになったのですが、私達のラットの系ではこういう感じだったということです。 (その後調べた結果、グスタフソンらもβ受容体は前立腺や精巣上体では発現が見られ たが、精巣では認められなかったと報告しています) ○井上委員  いずれにしましてもいろいろな臓器の発現、α、βさまざまな量比でもって出てくる ようでございますので、その辺のところ是非今後ともお調べいただきたいと思います。 ○伊東座長  ビスフェノールAが胎児の方にすぐ移行するというのは分かるのですけれども、胎児 から出ていくということについての検討はいかがでございますか。 ○武田研究員  そこは詳細にはやっていないのですけれども。 ○伊東座長  案外それが大事だと思うのです。当然胎盤を通って移行するというのは分かりますけ れども、同時に出ていくはずですから、それについてのフォローを是非お願いしたいと 思います。 ○大野研究員  私の方もビスフェノールAの胎児移行を見たのですけれども、そのときに母親の血中 ビスフェノールAを調べているときに、ほとんどが代謝物だったのです。先生の結果だ とビスフェノールAそのものが存在しているというふうに。 ○武田研究員  これは全部フリーのビスフェノールAだけを測定しています。代謝されたものについ ては今回は数字になって出ていないのです。 ○大野研究員  聞き漏らしてしまったのですけれども、そういうものは何mgですか。 ○武田研究員  10mg/kg経口投与し、1時間後に胎仔に移行した量は11 ppbです。 ○大野研究員  そうすると、抱合体が切れやすいのではないかという印象を持っているのですけれど も、そういう操作というのは途中で入っていないのでしょうか。 ○武田研究員  抽出の段階で0.01規定の塩酸は少し使ったところはありますが、抱合体が切れる条件 ではないと思います。 ○大野研究員  私の方でグルコイダーゼとかコスタダーゼしているときにかなり切れてしまう。それ で酸に弱いのかなと。それで今検討している段階なのですけれども、教えていただける とありがたいなと。 ○武田研究員  たしかその辺検討していたと思うのですけれども、帰ってからその点をもう一度確か めてみます。 ○大野研究員  お願いします。 ○池田補佐  そのほか御質問ございませんでしょうか。それではないようですので先生どうもあり がとうございました。  それでは、順調に進んでまいりましたので、ここで一旦休憩に入りたいと思います。 手元の時計でいいますと15時まで休憩ということでお願いします。 (休  憩) ○池田補佐  お待たせいたしました。おいでいただきました早々で恐縮ですが、それでは次のVIII- 9でございますけれども、内分泌かく乱物質の発がんプロモーション作用の検討というこ とで、名古屋市立大学の白井先生よろしくお願いいたします。 ○白井研究員  名古屋市立大学の白井でございます。よろしくお願いいたします。それでは、スライ ドをお願いいたします。 (スライド)  本日私は内分泌かく乱化学物質の発がんプロモーション作用ということでお話しさせ ていただきます。 (スライド)  このプロモーション作用は肝臓におけるプロモーション作用でございまして、ここに ございますのは通常伊東法と言われて世界中で認められている肝中期発がん試験法の1 つでございまして、ここから御説明申し上げますが、動物はF344ラットを用いまして、 通常オスを使いますが、3群に大きく分けます。2段階発がんが基本になっておりまし て、まず最初にDENを1回腹腔内投与しました後、2週後からいわゆる検体をいろいろな方 法で6週間投与いたします。その検体を投与している途中でラットの肝臓3分の2を切除 いたしまして、いわゆる肝発がん過程をブーストとするといいますか、促進させて8週間 の短い期間で発がん過程の促進があるかどうかを検討しようとする実験系でございます 。 (スライド)  8週間の実験の終了後、肝臓を固定後組織標本にしました後に、Glutathione S tran sferase のplacental typeという肝の前がん病変に特異的にポジティブになります酵素 の活性を免疫組織学的に染めまして、その陽性の細胞巣を画像解析装置を用いて、その 数や面積を測定し、対照群と定量的に比較検討して、もし有意差があれば陽性という判 定をいたします。 (スライド)  現在までのところ303の化学物質についてこの試験法で検討してまいっております。検 討した発がん物質は一応肝臓に発がん性のあるものとして分類されているもの、それか ら肝臓以外に発がん性があるものとしていいもの、それから発がん性のないもの、分か らないものというふうに4段階に分けてございますが、発がん性を示すものは65の化学物 質のうち60化学物質が陽性と92%です。このうち陰性となっておりますのはDDPM、ダイ アミノジフェニールメタンとあと4つがクロフィブレート等のペルオキシゾーム増殖剤 でございまして、この4つのペルオキシゾーム増殖剤作用のあるものについては用いて おりますGST-Pの酵素活性をこの化学物質自身が抑制するために、見掛け上ネガティブに なってしまうということでございまして、ほぼ100%近くが陽性になるということです。  もう一方、肝臓に標的性がないと言われている物質につきましても42のうち9化学物 質が陽性を示しております。  また一方、発がん性のないと言われているものにつきましては、ほぼ45のうち44がネ ガティブということで、1例だけマラチオンという物質が弱いながら陽性を示して、特殊 な状況ではマラチオンも肝発がん促進作用を示す能力があるということを示している結 果かと思います。  以上の結果から、この実験系は肝の発がん性、あるいはプロモーション作用を調べる には極めて有効な方法という評価をいただいておるわけでございます。 (スライド)  今までに私たちの教室で行ってきたケミカルから、いわゆる内分泌かく乱作用がある と指摘されている物質をピックアップいたしました。ここには農薬と言われている10化 学物質がございます。これはすべて同時に試験しているわけではございませんので、 各々の化学物質にはその実験時のコントロールの値をそれぞれ設けております、ごらん いただきますように、10のうち8つが結果として肝プロモーション、あるいは発がん性 がありと判定されておりまして、多くのものがエストロジェニックなものでございます が、例えばアトラジン、ビンクロゾリンといったアンチ・アンドロジェニックなものも 陽性になって、アトラジンだけはネガティブでございます。おおむねその強さは大体コ ントロールの2倍弱というところでございます。 (スライド)  非農薬系といたしまして、ペルオキシゾーム増殖剤でありジエチルヘキシルフタレー トとか、ジエチルスチルベストロール、PCB、フェノールといった物質についても調べて おりますが、その中で強力なエストロジェン作用のあるDESとPCBが陽性になっておりま す。PCBはほかの化学物質ケミカルに比べましてかなり強く陽性というか発がん性がある というふうに結果が出ておりますが、数だけが増えていて、エアリアはそれほど増えな いという結果でございます。この場合、確かに増えているのですけれども、スタンダー ド・デビエーションが多いために有意差が付いております。  このように内分泌かく乱作用があると指摘されている物質にラット肝臓に対する発が んプロモーション作用が少なからず認められるということでございまして、これらが果 たして内分泌の環境をかく乱するためにこういう発がん性というプロモーション作用が 出たかどうかということも非常に重要な点だと思います。 (スライド)  そこで、この実験系を用いまして、雌雄両方を用いて去勢することによりまして、こ のGST-Pの発現がどのように変わるかというものを検討してみました。オス・メスとも正 常な状態でジエチルニトロソアミンを1回腹腔内投与しまして、その1週間後にメスは両 側の卵巣を、オスは両側の睾丸を摘出いたします。対照群はお腹を開けるだけのシャ ム・オペレーションを行いまして、型通り第3週目に3分の2の肝部分切除を行って8週間 の実験系といたしておりまして、ここで先ほど申し上げましたGST-Pの陽性細胞巣の数と 大きさを検討しております。 (スライド)  用いましたのは同じくF344のラットでございまして、このようにオスの睾丸を取りま すと、メス化するといいますか体重が有意に抑制されてまいりますし、逆にメスの場合 に卵巣を取りますと、体重が上がってまいります。 (スライド)  これは去勢によって子宮だとかそういった内分泌臓器の目方が変わるかということを 示したのですけれども、期待どおりといいますか子宮は極めて小さく萎縮しておりま す。卵巣は摘出してしまって存在しませんので比較できません。下垂体も少し小さくな っております。 (スライド)  それから、前立腺につきましても同様に非常に小さくなっております。 (スライド)  ホルモンですけれども、やはり去勢することによってエストロジェンはぐっと下がり ます。テストロンも下がりますが、逆にLHという刺激ホルモンは両方ともどっと上がり ます。このように全体に内分泌環境が変わっていることが分かります。 (スライド)  これはGST-Pの陽性細胞巣のデータです。 (スライド)  これをグラフに表しますと、メス・オスとも去勢によってその数と面積は変わりませ んでした。 (スライド)  したがいまして結果ですが、体重はメスでは卵巣摘出後に増加し、オスでは摘出によ って逆に減少した。肝臓の相対重量を示しませんでしたがともに減少いたしました。そ れによって子宮だとか前立腺といった生殖器の著明な重量の減少があります。血中ホル モンもエストロジェン、あるいはテストロンが著明に減少しました。先ほど申し上げま した肝の前がん病変でありますGST-P陽性細胞巣の数、面積には性腺摘出による影響は雌 雄ともありませんでした。 (スライド)  したがいまして、内在性の性ホルモンというのは肝の前がん病変であるGST-P陽性細胞 巣の発生には影響しないということがこの実験からわかりまして、このことは内在する レベルでの性ホルモンの変動は肝の前がん病変の発生には影響しないということであり ます。したがってここから推測されますのは、この肝中期発がん性試験法で陽性を示し た内分泌かく乱物質とされている農薬、DESなどの作用機序としてエンドクリンメカニズ ムを経たものでないということが示唆されると思います。  以上でございます。 ○池田補佐  ありがとうございました。ただいまの御発表に御質問等ございませんでしょうか。特 段なければ先生どうもありがとうございました。  それでは続きまして、本日最後の研究班でございますが、IXのグループでございま す。内分泌かく乱化学物質のヒトの健康への影響のメカニズム等に関する調査研究とい うことで、最初に研究総括ということでございます。御担当は国立医薬品食品衛生研究 所の井上先生でございます。よろしくお願いします。 ○井上研究員  それではスライドをお願いします。 (スライド)  内分泌かく乱化学物質のヒトの健康への影響のメカニズムに関する研究班でございま す。 (スライド)  御承知のとおり、平成9年には9省庁の内分泌かく乱化学物質に関する各省庁連携図が ここに厚生省の中間報告から取ってございますが、課長会議を中心として厚生省、環境 庁等9つの省庁の連携の下にこの問題に関する調査研究が進められるようになりました 。その中で厚生省では、ヒトへの影響研究ということで、その中でヒトへの暴露と障 害、構造の機構の関連。ヒト健康影響調査、障害認定アセスメント手法の開発といった ことが中心として進められることになりました。 (スライド)  11月の中間報告にもありますように、背景としては内分泌かく乱の指摘と器具の増大 に基づいて懸念の増大、行政の対策の要求とか、科学的に未解明の問題が多いというこ とを背景として幾つかの取組がそれぞれ進められていくことになったことは私が申すま でもないことでございますが、その中で国際機関としてはOECDやIPCSの対応、日米欧等 による試験法の開発といったことが進められましたし、また厚生省ではここに開かれて いますような専門家による検討会のようなものが発足したわけでございます。当研究班 はこれらのお取組の中の赤字で示したような先端的な研究の必要な課題、特に作業メカ ニズム、複合影響、植物エストロジェンの影響といったものを中心に機構的なことが明 らかになるようにと努力しているところでございます。  現時点での科学的な認識としては、問題解決のための前提条件として厚生省でまとめ ているところでは、胎生期などのホルモン制御がかく乱を起こしやすい状態が本当にあ るのかどうか。あるいは複数の化学物質による予想外の相乗効果があるのかどうか。あ るいは、いわゆるロードーズ・イシューと言われる低用量での未知の反応形態の問題と いうことになります。 (スライド)  これに先立ちまして、平成8年度以前帝京大学の瀬高教授を中心とした瀬高班が発足し ておりまして、このエンドクラインの研究班の当初はこの班の一部の仕事としてスター トしております。その中では既に古くからの先生方が御承知のとおり、もともと性ホル モン様の作用を持つ化学物質というものはエストロジェン様作用物質としてよく知られ ていたものが多数というかある程度ございましたし、そういう中で生活化学安全対策室 などを始めとして、そのころからこの問題が重視されていたところでございます。  その中で、平成9年度、実際には平成8年度末ですけれども、内分泌かく乱の懸念のさ れる化学物質の毒性に関する文献調査及び暴露としてのヒト健常者の精子測定。今日の 岩本教授がお進めになっておられる班の萌芽的な研究を岩本先生が既にスタートされま したし、その中の1つの課題として作用機構に関する班が発足いたしました。当班はこ の流れをくんでおります。  参考までにその当時に直ちにエストロジェン様作用に関する酵母のアッセイ系である とか、アンドロジェン様作用検出系であるとか、ここに書いたようなものについても各 国と連携をとりながら国内外のその辺の領域で活躍しておられる方々と連携をとりなが ら仕事が進められまして、これが大ざっぱに言いますと今日の今井班につながっており ます。 (スライド)  私どもの班を除きましては大部分が委託の形でもって、化研協の方々などの御協力を いただいておりますが、この班はほぼ通常の厚生科学の研究班であります。  ステート・オブ・アーツとしましては、ヒトの影響に関するコンセンサスというのは 昨日、今日の御議論、御発表をお聞きいただいてもお分かりのとおり、はっきりしない ことが多いこれからの問題であるという認識であろうかと思います。その辺のところに つきましては、WHOでもIPCSでポジション・ペーパーを作成しておりますが、そういう認 識でございます。その点が少し語弊があるかもしれませんけれども、ある一定の物質が リークしたような事故のような形で起こって確認されてリンクがはっきりしているケー スでの野生生物の場合とは違っているということがあろうかと思います。  こういった問題の中で、化学物質を測定する方はそれなりにまた精力的に北欧でも、 また国内でも昨日、今日御発表があったように進んでいるわけですけれども、検出量だ けでリスク評価はできないわけでございますから、そこでまた生態影響の問題が出てま いります。ところが生態サイドの問題については、確かにin vivoでの投与を通じての データは出てくるわけでありますけれども、阿倍委員からも再三御質問がありましたよ うに、ホルモン系の臓器影響というのはインタクトの動物に幾ら投与しても結局はフ ィードバック機構が働いてよく見えませんから、昔からいろいろな工夫がなされてきて いるわけでありますが、何よりもいろいろなことが分かってまいりましたことは、受容 体機構に即した検出系といったものが分からなければならないし、また、そういう意味 ではβ受容体に関するエクスプレッションなどはペーパーが出始めたばかりのところで すし、それ以前の問題としてトランスピリクションファクターとしての核内受容体がど ういうふうな修飾をしていくか、その辺のところについては未知のことが多うございま すので、そういう意味ではとりあえずのリスク・アセスメントに必要なセミin vivoの データであるとか、そういったものについては進めていくとしても、なかなかこういっ た検討も並行して進められなければならないということになろうかと思います。 (スライド)  私の方からお話しすることは余りないので、イントロダクションで我々の班の考え方 を御説明しているので間もなく終わろうと思いますが、ともかくジェノエストロジエン としての非生理性とエストラダイオールといえども非生理的に作用することがあるとい う2つの問題を分けて整理して考えていかないとこの実験系の問題についての解釈は難 しいということがだんだん分かってきたように思います。 (スライド)  これは私が出すまでもなく、レキネッガーシートの受容体のαとγでありますけれど も、ちょっとした構造の違いがありますけれども、それぞれ午前中でしたかに菅野先生 が示しましたように、ライガンドがバインドしたときにこういったγループははね上が るようになりますけれども、こちらとこちらではそれぞれ違いますから当然反応性の違 いが出てきますし、要するに受容体が動くということは非常に重要な問題だろうと思い ます。 (スライド)  解決の糸口としましては、こういった5つぐらいの問題点を念頭に置きながらそれぞ れの班員の先生方には仕事を進めていただいておりますけれども、とにかく受容体メデ ィエートでのソキシスティーとしての問題を中心に、勿論それ以外のものもあるわけで すけれども、主要なロードーズで働いてくる可能性がある問題についてはそういったこ とが中心になろうかと。あとは今日も幾つかの演題が出ておりましたけれども、リダン ダンシーの問題があって、受容体がスペシフィックに幾つかの受容体に交差して働く。 したがってドーズ・レスポンスがロードーズでリニアに出てこない。その問題であると かプレオトロピズムの問題、胎生期ウインドーの問題、シグナルクロストークの問題な どを念頭に置いていこうということでございます。 (スライド)  この班で特に課題にしておりますのが高次ネットワーク、皆記憶系なのですけれど も、神経系、免疫系、生殖系等について、あと入り込んだ後のシグナル伝達系について それぞれの班員の方に分担していただいております。 (スライド)  テーマごとにはっきりされたものをつくればよかったのですけれども、免疫系で今ま で広川教授にお願いしておりましたけれども、広川教授と松島教授に今年度以降共同で やっていただくということであるとか、生殖系では井口教授と鈴木教授にお願いすると か、核内レセプターについて藤本教授と新たに分析研の加藤教授に加わっていただくと いうような形で進めております。  以上でございます。 ○池田補佐  ありがとうございました。それでは何か御質問はございますか。ないようですので、 順次お願いいたします。  最初はIX-3になりますけれども、神経幹細胞分化に及ぼす内分泌かく乱化学物質の影 響に関する研究ということで、国立医薬品食品衛生研究所の菅野先生でございます。よ ろしくお願いします。 ○菅野研究員  早速スライドをお願いいたします。 (スライド)  班長の御説明にありましたように、神経内分泌免疫という大枠のうちの神経の一部分 をやらせていただいております。 (スライド)  内分泌かく乱化学物質の生体影響として最も危惧されている問題の1つに生殖及び胎 児への影響があります。胎児期における影響、例えば大量のエストロジェンを投与した 場合に、成体になってから影響が現れることは特に動物実験で知られているわけです が、胎児期のある一定の期間に投与しなければそういうことが起こらないということも また知られております。例えばエストロジェンに対する高感受性を示すような現象を estrogen window hypothesisと呼ぶといたしますと、これに着目いたしまして、内分 泌かく乱物質の生体影響が胎児に対してどのように現れるかということを検討するのが 本研究の目的です。  このEstrogen window hypothesisのモデルとして神経系を取り上げました。性分化 に関して神経系では、ラットにおける性的二型核などのin vivoの実験系も知られており ますが、我々は神経幹細胞をin vitro培養系に持ち込みまして、これの増殖分化を指標 として最終的にestrogen window hypothesisに繋げていけるような系をつくりたいと 考えております。神経系の発生・分化に対するエストロジェン及び内分泌かく乱化学物 質の影響をin vitro系を用いて分子レベルで解明しようとするものであります。 (スライド)  研究の要旨ですが、2本立てでスタートいたしております。1つ目が神経細胞分化のモ デル系を選ぶことであります。神経幹細胞からなるニューラルボールの系(友岡ら)の 方法を採用いたしました。もう一本の柱はエストロジェン受容体のスプライシングバリ アントを検出するということであります。こちらはヒトでまずRT-PCR法を確立いたして その作動性をチェックいたしまして、次いで、マウスについても立ち上げました。 (スライド)  まず神経系モデルの方ですが、マウスの神経幹細胞培養系をつくろうということで、 ニューラルボールができる系(友岡らの方法)を使います。神経管類似の球状の固まり を作る系であります。勿論ばらばらの細胞にして飼うこともできます。ニューラルボー ルはニューラルチューブに似たような内腔を持ったスフェロイド系です。内部に極性を 持った構造ができるため、将来、分化指標に形態変化を加えたアッセイ系ができるもの と期待して、この方法を採用したわけであります。 (スライド)  実際には胎生10.5あるいは11.5日あたりのマウス胎児の脳組織よりスタートいたしま して、基本的には接着性の細胞を取り除く操作を繰り返してこのような球状の固まりを 得ます。今回報告させていただくものは予備的なものでありますが、今後マップ2 ニューロフィラメントなどの分化マーカーを用いて詳細に検討する方向に進んでおりま す。 (スライド)  次にスプライシングバリアントについてご説明します。胎児期に内分泌かく乱化学物 質に暴露されたときに、その影響が後世代に残る可能性があるとすると、そのメカニズ ムとして発生過程で考えられるメカニズムの1つにスプライシングバリアントがあると いうことに注目いたしました。本研究ではまずRT-PCR法でどういうバリアントが出てい るかを検出する系を確立いたしました。 (スライド)  まずヒトのバリアントをチェックできる方法をつくりました。ヒトのERαのexon2〜7 の各exonのスプライシングバリアントがチェックできるようなプライマリー・ペアを設 定して、そのRT-PCR条件の設定をいたしました。もし複数のバンドが見られた場合は、 ノーザンブロッティングとダイレクトシークェンシングによりそれらを確認するという 計画で進めております。 (スライド)  これは有名な図ですが、ヒトのERαのexonのストラクチュアは1〜8までありまし て、DNAバインディングドメイン、ホルモンバインディングドメイン。特にがんではER のデルタ5というのが有名です。 (スライド)  ここでは、4番が抜けたかどうかを見るためのプライマーのセッティングを示しまし た。スプライシングが起きれば157ベース・ペアのプロダクトができるし、起こらなけれ ば490ベース・ペアになります。 (スライド)  これがヒトの乳がん細胞由来のMCF-7で確認したものです。 (スライド)  次にマウスのERαについて方法を確立しました。これからお示ししますPCRの結果は子 宮と脳のものでありますが、これを順次進めてまいりまして、ニューラルボールでの暴 露前後の違い、あるいはin vivoに戻りまして、胎内暴露マウスの脳に於いてどうなるか 更に検討を進めていく予定です。 (スライド)  これは子宮のデータです。プラスマイナスは逆転写酵素を入れたか入れないかを示し ており、当然入れなければバンドがでないのですが、これはマウスERαのexon2と3に関 してここにバリアントがあるという結果であります。 (スライド)  こちらはマウスの大脳と小脳です。今のところ大脳、小脳で差があるという結果は得 ておりませんが、バリアントがexon2〜3等で見つかっております。 (スライド)  結論といたしまして、神経細胞のモデルとしてはいろいろなモデルが知られておりま すが、先ほど申し上げた理由からニューラルボールが見られる系を一応我々は採用する ことに決めました。RT-PCR法によってマウス及びヒトのスプライシングバリアントを検 出できる系を確立いたしました。 (スライド)  神経幹細胞の系は重要だとは分かっておりますが、なかなか手のつけどころが難しい ということもあって国内外的にも余り報告がないようですが、我々は今お示ししたよう な方法で更に発生・分化に対するエストロジェンそのものの影響及び外来性エストロジ ェン様物質の影響を解析し、エンドクラインディスラプター問題の本質に迫りたいと考 えております。  以上です。 ○池田補佐  ありがとうございました。ただいまの発表に御質問等ございますでしょうか。特にな ければ、先生どうもありがとうございました。  それでは続きまして、IX-5になりますが、マウス生殖腺の分化及び精子、卵子形成へ の内分泌かく乱化学物質の影響に関する研究ということで、分担研究者横浜市立大学井 口先生です。よろしくお願いいたします。 ○ 井口研究員  マウスの子宮、膣、輸卵管は1本のミュラー管から分化しますけれども、その分化の 過程で形態形成遺伝子のHoxAの9〜12などが部域特異的に発現してまいります。エスト ロジェンがこれらの発現阻害をするという報告もあります。形態形成遺伝子の発現に注 目しながら研究を発展させるつもりです。現在は形態形成遺伝子のプローブを作成して いる段階です。in situ hybridizationはこれからです。さらに、エストロジェンレセプ ターのノックアウトマウスを供与していただくということが随分前に決まっていたので すが、やっと届きました。ノックアウトマウスも利用して、形態形成遺伝子の発現に対 してエストロジェンなりエストロジェン様物質がどのような作用をするか調べることを 目的にしています。今回は毒性学的な内容の発表をさせていただきます。 (スライド)  今まで、合成女性ホルモンのジエチルスチルベストロール(DES)、あるいはエストロ ジェンを、菅野先生のお話にもありました、発生の臨界期に投与しますと、免疫系、神 経系、内分泌系のいろ、いろな異常が起こるということが分かっています。DESとか、エ ストラジオールをポジティブ・コントロールとして、胎児期から新生児期(生後3日目ぐ らいまで)に投与しますと、いろいろな影響が出ますけれども、ここでは再確認した膣 のことに関してだけお話しします。成獣では膣上皮は増殖しておりますが、卵巣を摘出 して、体内のエストロジェンが減少すると、アポトーシスを起こして細胞が死にます。 アポトーシスの過程ではFas、あるいはTNF-alphaというようなレセプターや、因子が発 現する事を確認しました。卵巣を摘出して、エストロジェンがないと膣上皮や子宮上皮 は退縮しますが、女性ホルモンを投与するとまた細胞増殖が起こる、可逆的な反応を示 します。 女性ホルモンを胎児期(マクラクランは妊娠9日目から、私たちは妊娠10日目から)に投 与したり、出生直後から5日間だけ投与すると、成獣になって膣上皮は細胞増殖を持続 し、卵巣を摘出しても退縮しない、卵巣非依存の不可逆的な反応がおこります。卵巣非 依存の増殖では、エストロジェン・レセプターが減少しているとか、c-fosやc-junの原 ガン遺伝子が発現し続けることを確認しております。こういったことが例えばビスフェ ノールAで起こるのかということに焦点を絞ってみました。 (スライド) 卵巣非依存に増殖している膣上皮です。卵巣があれば細胞増殖と角質化が起こります が、卵巣摘出により退縮します。出生直後に5日間だけエストラジオール、あるいはDES を投与しますと,卵巣非依存の増殖が起こります。 (スライド)  先ほど形態形成遺伝子の話をいたしましたけれども、女性ホルモンは細胞増殖を刺激 する因子であるとともに発生過程では形態形成に関与する因子としても働いている可能 性があります。女性ホルモンの細胞増殖・分化機構と細胞死誘導機構をまとめて理解し たいと考えております。 (スライド) 出生直後に女性ホルモンを投与すると、1つの卵胞に1つ以上の卵をもつ多卵性卵胞が 誘導されます。多卵性卵胞を排卵させることもできます。 (スライド) 排卵させた卵を人工受精いたしますと、やはりDESを投与したマウスの卵は受精能が悪い ということを確認しております。ビスフェノールAに関してはまだ調べておりません。 (スライド) ビスフェノールA、メトキシクロール、ノニルフェノール、オクチルフェノールのエス トロジェン活性をエストロジェンと比較いたしました。 (スライド) 卵巣を摘出して10日後に4回、エストラジオール、ビスフェノールA、メトキシクロー ル、ノニルフェノールを投与した結果が次でございます。 (スライド) 子宮重量変化で見ますと、化学物質はエストロジェンの約10万倍で子宮重量を増加さ せました。エストロジェン活性を示す量の化学物質が、精子形成に対してどういう影響 をするかを調べてみました。 (スライド) 子宮重量変化のみならず、子宮上皮細胞の細胞分裂が増加し、子宮上皮の丈が高くなる という、他のパラメーターも確認しております。 (スライド) メトキシクロールとか、ビスフェノールAも、大量に投与すれば細胞分裂率が上がりま すし、子宮上皮の丈の高さも上がります。 (スライド) エストロジェンによって発現が誘導される遺伝子の1つとして、ラクトフェリンが知ら れております。子宮で、エストラジオールの濃度依存的にラクトフェリン遺伝子が発現 しました。ラクトフェリン遺伝子の発現に対してメトキシクロールやビスフェノールA の作用を調べました。 (スライド) ビスフェノールA投与ではラクトフェリン遺伝は発現しませんが、メトキシクロールと ノニルフェノールでは遺伝子発現が誘導されたことから、エストロジェン活性が出てい るということになります。 (スライド) 次に、成獣のオスに週3回、大量の化学物質を投与して、精子形成に対する影響を調べま した。 (スライド) 1か月間投与しまして、精巣上体尾部から精子塊を取り、精子数をコンピュータ解析し ました。 (スライド)  その結果、エストラジオール、ビスフェノールA、メトキシクロールなどすべての化学 物質で精子数は減少しました。 (スライド) 体内のテストステロン量の、処理による差はありませんでした。 (スライド) 一旦減少した精子数は回復します。エストラジオールのペレットを30日間埋め込みます と精子形成は停止します。 (スライド) エストラジオールのペレットを摘出しますと、20日目、30日目には、精子数は回復しま した。メトキシクロールやビスフェノールAの注射では精子形成が停止するということ はありません。ですから、投与をやめれば簡単に回復してまいります。 (スライド) 妊娠は膣栓を確認した日を妊娠0日としています。妊娠10日目〜18日目まで、DES、ビス フェノールAを投与し、メスでは30日齢に卵巣を摘出して40日に剖検しました。オスで は、妊娠19日目に剖検しました。 (スライド) 今回使用したビスフェノールAが、胎児に移行するか否かを確認いたしました。その結 果、武田先生の結果と同じで、30分でも胎児に移行します。私たちが投与しているの は、放射ラベルしているものではありませんので、ビスフェノールAそのものを測定す ることから、大量に投与しています。 (スライド) 妊娠19日目の胎児の精巣で、単位面積当たりの精細管の数を画像解析で計測する事がで きます。 (スライド) DESを投与しますと、精細管の数が少なくなっております。 (スライド) DESを少し多く投与しますと精細管の数が単位面積当たり減少しますが、ビスフェノー ルAも高用量では少なくなっております。 (スライド) 生殖細胞の数は、ビスフェノールA処理で若干少なく出ますが、19日だけです。これは40 日、60日では回復していました。DES処理では影響が残ります。 (スライド) メスではDESの投与で子宮の扁平上皮化成が起こりましたが、ビスフェノールAでは影響 が認められませんでした。 (スライド) 現在、胎児期にビスフェノールA、DESを投与されたマウスを交配して生殖能力の有無を 確認しております。DESの投与では確かにいろいろな影響が出てきますけれども、ビスフ ェノールAに関しては、一過性の影響は出ても回復しますし、生殖能力もあるようです。 ビスフェノールに関しては、我々が用いた高用量では影響は出ておりません。  以上です。 (スライド) ○池田補佐  ありがとうございました。ただいまの御発表に御質問ございますでしょうか。御質問 ないようですが、なければ先生どうもありがとうございました。  それでは続きまして、IX-6に移らせていただきます。初期発育鶏卵に及ぼすエストロ ジェンの発生障害作用研究ということで、日本獣医畜産大学の鈴木勝士先生です。よろ しくお願いします。 ○鈴木研究員  それではスライドをお願いいたします。 (スライド)  初期発育鶏卵に及ぼすエストロジェンの発生障害ということで幾つか実験をやってま いりました。抄録の方に書いてあることに若干今年やった仕事を付け加えますので、少 し内容が変わるかもしれません。 (スライド)  実は既にお話がされているわけですけれども、多くのEDCの場合で器官形成期以降のと ころに今の時点では多くの関心が集まっておりまして、生殖性であるとか、その他もろ もろの影響があるというふうに言われているのですが、昨日、今日の話の中でもう1つ 非常に大きな関心を集めているところが初期胚のところでございます。私の仕事はちょ うどこの辺のところと関連があります。  従来の化学物質の話ですと、初期胚に対する影響というのは大体が死んでしまうか、 あるいは初期胚の多能性のゆえに損傷が回復してしまうので全く影響が見られないか、 あるいは、極めてまれにではあるけれども重篤な奇形が出るというような形で認識され ていた分野なのでありますが、この辺のところに内分泌かく乱物質がどういうふうな形 で影響を及ぼすだろうかということをなかなか初期胚、哺乳類の胚でやるのは難しいの で鶏胚でやろうというような実験であります。 (スライド)  後ほど初期胚着床前のところというのは胞胚期というところに当たっておりまして、 これらについての影響についてはin vivoでは先ほどお話ししたように一部薬剤で非常 に重篤な奇形、例えば、顔面形成異常があるであるとか、重複奇形があるとかいったよ うなことが見つけられております。例えば、メチルニトロソウレアみたいなものなので すけれども。その場合、すべての子どもが影響されるわけではないといったような特徴 であるとか、あるいは、これはかなり古い時代なのですけれども、羊膜と胚が接触して しまうとモンスターのような奇形が出る。それも薬物がこういうところに吸着すると出 ることがあるといったような指摘があるところではあるのですが、機序が全く分かって いません。  最近in vitro系の併用というのが提唱されてはいるのですが、例えば、ブラストシス トを取ってきて一旦培養してそれを偽妊娠の腹に戻すという話がやられているのですけ れども、なかなか効率が悪くて大多数の事例で胚が死亡してしまうことが多いようで す。これは恐らくは酸化的ストレスに対して胚が弱いというようなことが問題になって おるようでして、対照ですらこうしたことに対しての防御をしても60%ぐらいしか着床 しないというようなことでなかなか実験が難しゅうございます。恐らく影響があるのに 検出されていない可能性が非常に大きいというふうに考えております。 (スライド)  いきなりで恐縮なのですが、下の方にニワトリの胚、こちら側が哺乳類、マウスのブ ラストシストのところを対比して書いてあります。後でまた出てきますけれども、ニワ トリ胚というのは盤割をしまして市販で受精卵というものを買ってきますと、ちょうど このステージ、ここが卵黄のところが割ってあるところなのですが、大体この直径が5ミ リあるかないかのところなのですが、ここまで進んだ段階で手に入る状況になっていま す。この状況自体はちょうどそのブラストシストと同じ状況、つまり内部細胞塊がある 状況でこの近辺がハイポプラスといいますか、それに相当するような状況になっている わけであります。ここのところがちょうど透明帯から出てきた時期で、ここに薬物が加 わると大変に影響があるだろうと思われるわけですが、先ほど言ったようになかなかう まくいきませんから、これにニワトリ胚を用いてみたらどうかというのが発想の1つで あります。 (スライド)  ステージ10という状況で通常言われるのですが、これは実はポステリアマージンと言 われている部分、胚の後部周辺なのですけれども、ここで既に体軸の決定が終わってい る段階になっています。言い替えると、ボディープランのマスタージーンが既に発現し ている段階であると。それ以降でボディープラン、リレーテッドジーンのカスケードが あると想定されておりまして、体節ができるとか、手足ができるとかいったような後ろ の方は分かってきている部分があるのですが、ちょうどこの辺のところがよく分かって おりません。加えて、ハイポブラストの発生学的意味というのが非常に訳が分からない ところになります。古典的には、除去によりましてチューブ様の中胚葉構造ができるで あるとか、あるいはポステリアマージンの下部の移植をやりますと体軸が分かれてしま うとかというようなことで、非常に現象としては面白いのですがどうなっているのか分 からないというようなところがあります。卵の場合ですと比較的酸化的ストレスに耐え るのではないかというようなことで実験を始めたわけです。 (スライド)  一応これは胚の経時的な発生段階、ハンバーガー・ハミルトンのステージに従って並 べましたけれども、ステージ10のここのところでは何が何か分からない。明帯、暗帯が あるぐらいのところでして、ポステリアマージンというのはこの辺のところであります が、既にこれで体軸決定が決まっていて、この時期に薬物を投与して48時間後ですから この辺のところ、これで解剖するといったようなことになります。順次こういう形で発 生していくわけです。 (スライド)  一応今回は過去にやったものをお示ししますので、投与ルートとしては2通り。とり あえず卵殻に穿孔して、卵白側からと卵黄側から投与したというこの2通りでございま す。下に書いてあるのは現在やっておる話のところでして、卵殻を開放して胚核あるい は胚直下に入れるというような形で精密に実験しようという系が今、立ち上がっている ところでございます。  最初の話では、投与量として10pg/μg/g卵重という形で投与しておりますが、これは 実は卵殻に穴をあけて、例えば卵黄や卵白に入れた場合に投与液がディフューズするだ ろうというふうに当初思っていたものですから、それでg卵重の補正をしたのですが、そ の後いろいろ調べてみますと、実は卵黄の中に投与した場合でも、これは卵黄とは完全 に分離しまして、胚盤葉下層のところに投与液がべちゃっとくっついてしまうというよ うなこと分かってきましたので、今後はモル濃度の形で表すようにしようというふうに は思っておりますが、今回はこういう形でやっております。対照群には生理食塩水で DMSOを入れてやっております。48時間孵卵して、とりあえず体節数と発生異常といった ようなものを調べ、これはエストロンですね。実際はエストロンE1なのですが、E2もや ってあるのですけれどもE2では反応しなくてなぜかE1で反応したのでE1の成績をお見せ するという形になっています。エストロジェン・レセプターについての話をとりあえず やったところまでお見せしましょうという話になっています。 (スライド)  これはコントロールの48時間孵卵の胚です。これは頭と心臓がこちら側に向いており ますから、胚の卵黄の側からのぞいた形の図になっていますが、48時間ぐらい、あるい は49時間ぐらいの孵卵のステージにほぼ一致したものが取れているわけでございます。 (スライド)  それに対して卵白の側から、つまり胚の表面側の方からエストロンEを投与しますと、 こういうふうなところであるとか、曲がってしまったものができる。もしくはこういう ふうに2つに分かれてしまったものができてくる。 (スライド)  卵黄内に投与しますともっと強烈な話でして、胚の発生がかなり遅れる、あるいは胚 盤葉下層がなくなってしまってチューブ様の構造ができてくる、もしくは体軸が分裂す る。 (スライド)  ここで神経管の融合がうまくいかない、あるいは神経管のところに非常に大きな歪み が生ずるといったような非常に重篤な奇形が生じます。 (スライド)  これは全体をまとめたものでありますが、卵白の側からのアプローチと卵黄の側から のアプローチで、胚盤葉下層がなくなってしまうというのは卵黄の側からのアプローチ のものでしか見えない。体節数は卵白の側の方が大きく影響を受けるのですが、卵黄の 側からは余り影響を受けない。奇形としていろいろなものがありましたけれども、これ らについてはやはり卵黄の側からのアプローチの方が頻度が高いといったようなことが 分かりました。一応エストロンですから何かの機序で効いているということになります と、エストロジェン・レセプターということになりますから、次のスライドお願いしま す。 (スライド)  一応ネスティッドの形でプライマーを設定いたしまして、セカンド・ラウンドまで回 してみようということで、CERとアクチンについてPCRを型通り行いました。 (スライド)  これは1回目のPCRですけれども、下の方がアクチンで上がERですけれども、0、つま りステージ10から24時間後、48時間後ということでこちらがアダルトのものなのですけ れども、一応想定どおりの場所にバンドがありまして、うっすらとあるようなのです が、よく分からないのでセカンドのPCRを行いました。 (スライド)  そうしますと、はっきりと24時間のところからエストロジェンレセプター、mRNAが存 在しているということが分かりまして、さきに見られた影響というのがERを介してのこ とであろうというのが分かったというところまででございます。今後のところで更に作 用機序を分析していきたいというふうに考えております。  以上です。 ○池田補佐  ありがとうございました。ただいまの御発表に何か御質問等ございますでしょうか。 よろしいでしょうか、それでは先生どうもありがとうございました。  それでは続きまして7番目でございますが、ホルモンレセプターを介する内分泌かく乱 化学物質の作用発現機構に関する研究ということで、大阪大学の西原先生よろしくお願 いします。 ○西原研究員  阪大の西原でございます。まずスライドをお願いします。 (スライド)  私、井上班という形で昨年度までメカニズムの研究ということをやっていたのです が、今年度からは今井班の方に引っ越すことになりました。というのはこれから内容を お話しいたしますが、ホルモンの作用メカニズムに関する知見に基づいて酵母 Two-Hybridシステムを用いたスクリーニング試験法の1つの系を我々がつくり上げたと いうことがあります。この方法を使って内分泌かく乱物質、EDとしての一般的な化学物 質の作用機構の解明を試みたわけです。だから、要旨に書いてあること以外に今年度の 今井班の課題に関する話も少し入るかもしれませんし、できれば昨日あったような話に も触れたいと思います。EDというものを考えた場合、そのメカニズムとしてそれぞれの 生体ホルモンの生合成から代謝、排泄に至る各プロセスにおいて何らかの阻害、あるい は障害、妨害、かく乱を起こす化学物質だということになると思います。そのうちで一 番重要であろうと考えたのがレセプター、特にエストロゲンレセプター、ERを介する発 現機構であります。そのレセプターを介する発現機構に対して一般の化学物質がどのよ うな作用をするのかということについて検討を開始したわけであります。 (スライド)  このスライドは一般的なホルモン、エストロゲンの例で描いた、レセプターを介する ホルモンの作用モデルということになります。 特に今までよく言われているのは、リガンドであるエストロゲンが核内受容体であるER と結合し、ダイマーを形成してDNA上のエストロゲン・レスポンシブルエレメントに結合 する。そのとき、コアクチベーターがリクルートされてきて、それらがリガンド依存的 に反応して、その情報をターゲット・ジーンの方に伝えて標的たんぱく質をつくるとい うことが最近分かってきたのであります。  特に、このコアクチベーターと呼ばれるたんぱく質はここ数年のホルモン研究で分か ってきた新たなたんぱく質で、いわゆる基本転写因子群との間の情報伝達を仲介するた んぱく質であります。そこで我々は、この系をin vitroといいますか酵母で構築して模 倣できないかということを考えたわけであります。 (スライド)  これが我々が使ったTwo Hybrid Systemを用いた方法の概略であります。今までエス トロゲン活性のスクリーニング手法をして酵母を使う系、いわゆるYESと呼ばれる系があ りますが、その場合にはコアクチベーターというのは考慮されていません。具体的には ここに示しますように、ホルモンレセプターのリガンドバインディングドメインとGAL4 のDNA結合ドメインのヒュージョンたんぱく質、それからコアクチベーターの一部とGAL4 のアクティベーションドメインのヒュージョンたんぱく質、この2つのたんぱく質のエ クスプレッションプラスミドを酵母に導入すると同時に、レポータージーンとしてGAL4 の系を放り込んだ訳です。そういうことをすることによって、EDの作用が最終的にはβ −ガラクトシダーゼ活性として現れるような系を構築しました。 (スライド)  まずコアクチベーターが何種類も発見されていますので、どのコアクチベーターがど のホルモン作用に関与しているのかということを検討しました。我々はTIF2を含む6種 類のコアクチベーターの系を構築して、ERαの系で検討しました。エストラジオール、 E2を各濃度入れてレスポンスを見たものです。そうしますと、一番よく応答したのはTIF 2でありました。そういう意味で、ERの系としてはTIF2のコアクチベーターを使う系をス クリーニング手法として採用しました。 (スライド)  それでは、一般的な化学物質、いわゆるEDと言われている物質ではコアクチベーター によって違うのかということを最初に考えたわけです。物質によっては違うコアクチ ベーターを使って非常に強く発現する可能性があるのではないか。それで、よく知られ ているようなエストロゲン様活性を示すことが知られている化合物についてテストした わけです。一見これらは少し違うように見えるのですが、これにはマジックがありま す。縦軸は相対活性、つまり、E2を1にしたときの値として描いています。1つ前のス ライドで示しましたようにE2に対するレスポンスはTIF2、SRC1、RIP40、TIF1の順で、TI F1ではTIF2の約1/50となります。これを100%にここまで拡大して描いていますので、 こういうふうな形になるのです。強さの順番で見てやると、E2、DES、エストロンがE2 とほぼ同等、次いで、ゲニステイン、DHT、ビスフェノールAです。DHTはメカニズムと しては面白いので、少し今後検討してみたいと思っています。 このような順序というのはどのコアクチベーターを使っても同じでありました。という ことは、レスポンスに関してコアクチベーターの違いはまずないというふうに考えるべ きだと思います。 (スライド)  もう一つ検討は、ノニルフェノールとかビスフェノールAと言われるものがエストロ ゲン系だけに作用するものか、あるいは非特異的にいろいろなホルモンレセプターと反 応するのかということです。酵母Ttwo-hybrid法の変法ですけれども、その方法でやった のがこれです。これはエストロゲン、アンドロジェン、プロゲステロン、グルコゴルチ コイド、サイロイドの系であります。これらの系のコアクチベーターはほとんどがTIF2 ですが、SRC1を使っている系もあります。  ノニルフェノール、ビスフェノールAを見てみるとERの系のみしか反応していない。 ということは、やはりこれらは特異的にERを介して作用を発現しているということが、 いわゆるエストロジェニックな作用を発現しているということが分かると思います。 (スライド)  それを更に確認するために、リガンドディペンデントなERの立体構造変化をSRC1が認 識しているということを証明するためにGSTプルダウンアッセイを行いました。その結 果、E2はもちろんですが、先ほどのスライドで示した化学物質もすべて同じようなレ セプターの立体構造の変化を引き起こしているということが分かったわけであります。 (スライド)  これが典型的なドーズレスポンス・カーブです。 (スライド)  これは今まで我々の開発した方法で約200種類の化学物質についてテストした結果を まとめ、E2をはじめとしてその化学構造を強さの順番に並べたのです。先ほどQSA Rの話がありましたけれども、これをぱっと見て分かるのは陽性物質はすべてフェノー ル骨格を持っているということです。ただし、フタール酸エステルは例外になるので今 後の検討課題だと思います。  さらにそのパラ位にアリファティックな基があるということです。というのは、オル ト位にあるものはネガティブなのです。もう一つ強さという面で見てやりますと、昨日 問題になったようですがパラベンの場合です。ブチルパラベン、プロピルパラベン、エ チルパラベン、メチルパラベンとエステルのアルキル基が小さくなればなるほど少しず つ活性が弱くなってくる。そしてフリーのパラベンはネガティブです。そういう意味 で、体内に入った場合、これらのものは当然エステラーゼによってフリーのパラベンに なり、もし血中で検出されたとするとこの形であると考えれられ、エストロゲン活性は 少なくとも我々の系では検出できないと想像されます。これらのパラベンに関する結果 はラットの子宮重量肥大試験でも同様の報告があります。 (スライド)  もう一つの例はアルキルフェノール類です。1つ前のときにこれを指すのを忘れたので すが、アルキルの数をメチル、エチル、プロピルというふうに大きくしていきますと、 ポジティブ・コントロールの10%を与えるような濃度ということで活性を描いたのです が、だんだんアルキルが大きくなればなるほど活性が強くなるのですが、炭素数が8、9 になると活性がなくなります。その理由をひとつ検討しようということで、バインディ ングアッセイをやったところ、炭素数8,9でもバインディングしました。つまり、こ れらの物質の膜透過性の問題か、アンタゴニスト活性があるためではないかというふう に考えられるということであります。 (スライド)  これは最後のスライドですけれども、今までがERαのレセプターでやったのですが、 βの系、ヒトのベーターの系を同じくTwo Hybridシステムを構築してやってみました。 そうすると、E2の場合にはαとβでレスポンスに、少なくとも我々の系ではほとんど 変わりありません。ところがゲニステイン、あるいはパラベン類、アルキルフェノール 類に関して言うと、βの方が強くレスポンスする。動物実験はどうなのかというのは動 物実験をやっている先生にお伺いしたいなと思うのですが、ただ、どこの細胞で、どこ の臓器でβがよく発現するとか、どういう状態でβがよく動いているかというふうな検 討をこれからしようかなと思っている段階であります。  以上です。どうもありがとうございました。 ○山本補佐  ありがとうございました。食品化学課の池田は所用により外させていただきまして、 司会進行を生活化学の山本に替わらせていただきます。それでは、今の御発表につきま して御質問がありましたらよろしくお願いいたします。 ○青山委員  昨日永井先生がラットのARを使うとビスフェノールAは結構ARとバインドするという ようなデータをお示しいただいたのですが、先生の系を見ましたら余り……。 ○西原研究員  そうですね。あれでは反応していないですし、それからARの系で液体的にもう少し詳 しくやったのですが、少なくとも我々の系では反応していません。 ○青山委員  どうしてかというようなことはこれからですか。 ○西原研究員  これからです。ただし、アンドロゲンのアンタゴニストとして働く可能性もあるかも しれません。 ○阿部委員  教えていただきたいのですが、レセプターに結合するというのは作用を持つという1 つの前提かもしれませんが、それがエストロジェン作用を発現するのとステップである と思うのですが。結合と作用の発現をどうやって見分けることができるのでしょうか。 ○ 西原研究員  私たちの系では、結合するだけではなく、それがタンパク質の発現という過程まで行 っているということを見ているわけですから、単なるバインディング試験よりはエスト ロゲン活性を正確にみていると思っています。なお、アンタゴニスト活性を調べようと 思いますとE2を共存させてやりますと一応我々の系でもできます。ただ、E2を共存させ てその阻害の程度を見るということなので、そのE2の濃度と化学物質の濃度のバランス といいますか、その辺が非常に微妙であります。もっと言いますと多分培養細胞でも同 じだと思うのですが、いわゆる殺菌活性とかたんぱく変性活性を持った物質というのが 結構多いのです。そうすると、確かに下がるのですが実は酵母が死んでいたとかいうこ ともあって、その結果の解釈については非常に難しい点があります。これらについては 別のプロジェクトでやろうと思っています。 ○山本補佐  ほかにどなたかあれば。よろしければ先生どうもありがとうございました。  それでは次の発表でございますが順番をさかのぼりまして、2番の垣塚先生にお願いし たいと思います。先生よろしくお願いいたします。 ○垣塚研究員  大阪バイオサイエンス研究所の垣塚でございます。私どもは内分泌かく乱物質がいわ ゆる神経の機能、これから日本高齢化社会を迎えるに当たって大変問題になります神経 の変性に対して内分泌かく乱物質が影響する可能性を調べるためのアッセイ系をつくり まして、今日はまだ具体的なかく乱物質の効果はお示しいたしませんけれども、そうい うアッセイ系ができたので、そのことについて御紹介させていただいて、これからそう いう系を使って内分泌かく乱物質が神経変性に及ぼす影響を調べていきたいというとこ ろをお話しさせていただきたいと思います。なるたけ神経変性疾患一般的に当てはまる ような系をつくるために我々は以下のようなことを考えてまいりました。 (スライド)  神経変性疾患は非常に多種多様な表現系を示すのですけれども、共通点がかなりあり ます。多くのものが優性遺伝をすること、それから障害される部位とか、場所は疾患ご とに異なりますけれども、変性と神経の消失というものを特徴とすること。それから中 年以降に発症する方が多い。こういうふうな3つの特徴をする神経変性疾患が非常に多 い。ということは、ベースに基本的なメカニズムがあると考えられますので、その点を ターゲットとしていろいろなことを解析することができるのではないかと考えたわけで す。またある群では、親から子から孫に伝わるにつれて症状が重くなるというような現 象がありまして、それをアンティシペーション、日本語では表現促進現象という現象と して呼ばれております。 (スライド)  このような4つの性質を示す最も代表的なものはハンチントン舞踏病でございますけ れども、そのほかに8つの疾患が原因遺伝子内のCAGのリピートが伸びるということによ って引き起こされる遺伝性神経変性疾患を引き起こすということがこれまで分かってま いりました。これはアンドロジェン受容体のL末端にあるCAGリピートがポリグルタミン を亢進するCAGリピートが引き起こす神経の病気であります。  ごらんのように最初に見つかったアンドロジェン受容体、これはx線ショットでござい ますからSSシブですけれどもあとは優性遺伝します。我々1994年にMJDという原因遺伝子 を同定いたしまして、それを使った解析を紹介させていただきます。 (スライド)  これもMJDの前兆で、正常の26リピート、正常上限の35リピート、患者さんが79リピー ト、それからポリグルタミンを含む部分たんぱく質を最後に発現させました。そうする と上の4つは基本的に同じように細胞に均一に分布して細胞を発現させても何も起こら ないのですけれども、長いポリグルタミンを含む部分たんぱくを発現させると細胞内に ポリグルタミンを凝集して細胞が死んでいくということにいたました。 (スライド)  同じようなセットのものをトランスジェニックで発現させますと、やはり長いポリグ ルタミンを含む部分発現させたときだけマウスがごらんのようなアタキシックなフェノ タイプを示すことから、次のスライドお願いします。 (スライド)  我々は多分全長では余り悪さをしないのですけれども、ポリグルタミンを含む部分た んぱくが切り出されたときに特定の脳の領域で障害が起こるというモデルを1996年に提 唱いたしました。 (スライド)  このモデルはアルツハイマー病とよく似ておりまして、アルツハイマー病ではAβと 言われている42アミノ酸から成るβシートを特徴とするものが非常に長いたんぱく質か ら切り出されて、それが蓄積して細胞死を起こすと考えられているわけですけれども、 MJDのようなポリグルタミンが伸びているようなたんぱく質でもやはり部分的なプロセ ッシングが起こってそれがたまって細胞死を引き起こすのではないかと考えられるわけ です。このようなプロセッシングのメカニズム、プロセスする酵素自体が非常に興味の 対象になるわけです。 (スライド)  実際に神経細胞にこういう長い全長79リピートを持つMJDたんぱくを発現させますと、 ほとんどの細胞ではNマスの抗体もCマスの抗体も同じように認識するのですけれども 、たまにCマスの抗体だけで核内に凝集が見られることがあります。つまりこの辺で切 られていることが実際に神経細胞で起こることが明らかになりました。こういう酵素を 今一生懸命追いかけるのと同時に、こういう酵素の活性に対していろいろな物質、内分 泌かく乱物質等との効果が1つ検証できるわけです。 (スライド)  では実際に切れた後何が起こるかというのを調べるために同調的にポリグルタミンを 神経細胞に発現させる系をつくりました。この場合はPC-12というNGFで神経に分化する 細胞で、テトラサイクリンを培地から除くとポリグルタミンの転写が起こって、ポリグ ルタミンが神経細胞にたまるという系をつくったわけです。 (スライド)  そうしますと、最初は細胞質に凝集体が現れるのですけれども、その後核内に凝集体 が現れてきます。一方、短いポリグルタミンでこのような凝集体はありません。 (スライド)  72時間後ぐらいまでは大体細胞も生きているのですけれども、その後細胞が一斉に死 んでいくという、同調的に細胞死を引き起こす系ができたわけです。このような細胞死 は同調的に起こりますから、このような系を使ってバイオケミカルに解析することが可 能になると同時に、いろいろな薬剤を投与いたしまして、その薬剤の効果で細胞死を促 進したり、防いだりする薬剤の効果と作用点が解析できるわけです。 (スライド)  いろいろなバイオケミカルな解析をした結果です。この系ではストレスで活性化され るJNK、ストレスアクティビティープロテインからのSEK1-JNKという系が動いていること が明らかになりました。例えば活性が検出するポストJNK、ポストSEKに対する抗体で見 た場合ですけれども、ポリグルタミンの発現の後48時間からJNKが、24時間からその上流 のSEKが活性化されています。つまりこの系はSEK1-JNKというカイネースカスケードが動 いている。 (スライド)  では、上流のSEKはどこで活性化されているかを調べてみますと、ごらんのように細胞 質にあるポリグルタミンではSEKの活性、これは活性化されたSEKを赤で検出しているの ですけれども、細胞質のポリグルタミンはSEKを活性化しませんが、核内での凝集体に応 じてSEKが活性化される。これは72時間後ですけれども、ごらんのように核内のポリグル タミンの凝集体グリーンと完全に一致しまして、SEKが活性化される。1つの核を後方か らで取ってみましても核内の凝集体とSEKは活性化する。活性化の位置が非常にオーバー ラップしているということ分かります。 (スライド)  それでは実際にSEKの活性化が細胞死に関係しているかどうかというのを調べたので すけれども、そのためにはドミナント・ネガティブSEKと言いまして、正常のSEKの機能 を抑えるような変異体を発現させたときに実際に細胞死がレスキューできるかどうかと いう実験をしました。コントロールのGFPでは発現させても細胞死は救えないのですけれ ども、GFPとドミナント・ネガティブSEKを融合させたたんぱくを発現している細胞は細 胞死を免れているということから、実際に核で活性化されたSEK1が細胞死のトリガーに なっているということが明らかになってまいりました。  つまり、このような系を使ってカイネースの関与も明らかになったわけですけれど も、そういうものに対していろいろな薬剤、特に内分泌ディスラプタントの影響を調べ ていこうというのが計画の骨子であります。 (スライド)  時に、最初すべて細胞があったわけですけれども、96時間経ってみますとほとんどの 細胞は死に絶えています。ところがこのように、たまに細胞死が免れる細胞が出現して まいります。 (スライド)  そういう細胞では、細胞質にポリグルタミンを発現しているのですけれども、核には 発現していないということで、ポリグルタミンが細胞質から核に移行するというメカニ ズムと細胞死の関係も非常に重要だということが分かってまいりました。例えばエスト ロジェン受容体はエストロジェンに反応して細胞質から核に移りますけれども、このよ うな物質の核輸送にはどういうメカニズムがあるのか。それが細胞死のトリガーになっ ているわけですけれども、そういうメカニズムについても解析していこうと考えていま す。 (スライド)  先ほどアルツハイマー病のことをお話ししましたけれども、それ以外にでもプリオン 病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、このようなものの原因たんぱく質の細胞内 動態が最近調べられまして、ポリグルタミンだけでなく、またアルツハイマーだけでな く多くの神経変性疾患を引き起こすたんぱく質が実際に神経細胞内にたまって、それが 神経細胞死を引き起こしていることがだんだん示されてまいりました。つまり、1つの たんぱく質がたまって細胞死を引き起こすというメカニズム。それに対する影響を及ぼ すドラッグの影響を調べることによって多くの神経変性疾患に共通なことが解析できる のではないかと考えておりまして、このようなシステムを使って神経変性疾患にかかわ る内分泌かく乱物質等の化学物質の影響を解析していきたいと考えております。  以上でございます。 ○山本補佐  ありがとうございました。 ○寺田委員  ポリグルタミンでの仕事はすごくすばらしい仕事だったのですけれども、これと今お 話しになった内分泌かく乱物質の関係がいまいちピンとこないのですけれども、どうい う理由で内分泌かく乱物質がこの系に関係しているというふうに考えたのですか。 ○垣塚研究員  内分泌かく乱物質が神経の機能にも大きく影響しているだろうということは長らく推 測はされていたわけですけれども、簡便なというか適当なアッセイ系がないために非常 にその点についてはいまだにあいまいになっているわけです。それで簡便に神経の機能 と内分泌かく乱物質を調べる方法として我々がつくったアッセイ系にのせることによっ て、少なくとも神経細胞の寿命という観点からそういう内分泌かく乱物質の影響が調べ られるのではないかというふうに考えているわけです。そこから分かってきたメカニズ ムを基に一般的な神経の機能に対する影響へと研究を拡大できるのではないかと考えて 、少し遠回りかもわからないですけれども、そういう方法をとろうというのがストラテ ジーであります。 ○阿部委員  研究費をもらったのが1年ぐらい前ですよね。1年間の期間があってこれだけのシステ ムが機能できたのでなければ、内分泌かく乱物質は100も幾つもその辺にあるわけです。 それでテストされた成績ぐらいまであってしかるべきではないかというふうに思います けれども、いかがなのでしょう。要するに何もやっていないということですよね。 ○垣塚研究員  有意な結果というのはまだ出ておりませんので今回は持ってこなかったということで あります。 ○伊東座長  だけどそれはやられたのですか。何の化合物でやられたのですか。 ○垣塚研究員  ビスフェノールとか代表的なものを幾つかは。 ○伊東座長  どのぐらいの量でやられたのですか。 ○垣塚研究員  濃度ということですか。 ○伊東座長  濃度です。 ○垣塚研究員  それはマイクロモーラを前後に振ってですね。 ○伊東座長  いいかげんなことを言わないできっちりしたことを言ってくださいよ。 ○垣塚研究員  きっちりしたことと言われましても。個々の物質については今日そういうつもりで用 意しておりませんでしたので、全部言えと言われましても、はっきり申しまして覚えて おりません。 ○井上委員  JNKにつながる経路への可能性を御指摘になりましたけれども、パーキンソンでのそう いう影響などについての指摘があるわけで、それとエンドクラインディスラプターとの 関連などについての指摘もあるので、その辺のところを詰めていただくのは意義がある だろうと思うのですけれども、サイオレドキシンノックアウトマウスではこのJNKについ て紫外線などを照射したときのアクティベーションが出ないのです。そういうことを全 部つなぎ合わせると、エンドクラインディスラプターというのは酸化的障害のようなも のにも関係がある可能性がありますか。 ○垣塚研究員  勿論エストロジェン自体に抗酸化性があるかと思いますし、神経変性疾患で発症にお いて男女差があるという報告もあります。特にポリグルタミン病に関しては女性の方が 同じリピート数の場合には発症が遅いという傾向があるという報告がありますので、エ ストロジェンの抗酸化作用等との関係も十分考えられるわけです。  それから、先ほどのエドックスの話では、多分SEK、JNKの上流にあるASK1との絡みが 重要かと思うのですけれども、その辺についても実際調べておりますけれども、まだ ASK1、SEKの活性化メカニズムについてはまだはっきりとしたことは、活性化される部位 は分かりますけれども、具体的なメカニズムは現在検討しているところでございます。 ○山本補佐  ほかにもし質問等なければ、先生どうもありがとうございました。  次の御発表は9番にまいりまして、東北大学の笹野先生にお願いしたいと思います。 ○笹野研究員  スライドお願いします。 (スライド)  ヒトの生態の中で内分泌かく乱物質を含めたエストロゲンが経口されてから分解され るまでの代謝のメカニズムがほとんどヒトでは検討されてはおりません。そこで我々は まず最初にエストロゲンの分解ということに注目いたしまして、エストロゲンの分解酵 素の主たるものであります17β-HSD2という酵素の検討をしております。  まず最初に、一番のエストロゲン代謝の基本であります胎盤における検索をお目にか けます。この胎盤におきます検索はエストロゲンの胎児に対しましての影響を考えます と非常に重要なところであります。エストロゲンは妊娠の維持に重要なホルモンであり まして、その分泌量は妊娠経過を通じて増加します。そして妊娠末期にエストロゲンの 血中濃度はピークに達します。ところで過剰のエストロゲンが胎児に入りますと、いろ いろな性の分化でDESの投与を受けた妊婦から生まれてきます子供に見られる外陰の clear cell carcinomaを始めとしまして種々の悪影響を及ぼすおそれがあります。 そ こでそれを防ぐ機構が胎盤に存在するのではないかと我々は考えました。すなわち、エ ストロゲンの胎児への移行のゲート・キーパーのような役割が胎盤にあるのではないか と考えました。 (スライド)  ここで簡単におさらいしますけれども、胎盤におきましては成人とは違いまして、胎 盤から胎児に入るのが臍静脈、すなわち酸素の分圧の高いものの方の血液が流れるのが 臍静脈でありまして、胎児から胎盤に入るのが臍動脈であります。 (スライド)  そして母体の方を見ていきますと、エストロゲンは当然妊娠の進行とともに増加いた しまして、これらのうちの エストロンとエストラジオールとありますエストロゲンのう ちで、より生物学的活性の高いエストラジオールが母体血中では非常に増加してきま す。  ところで母体ではこのようにE2の方が非常に増加するのですけれども、臍静脈で見て いきますとE1は確かに増加しますが、それに比較いたしますとE2は増加しないという差 異が見られます。すなわち、E2の濃度が母体と胎盤の臍静脈との間で異なるということ が分かってきております。 (スライド)  これを更に追い駆けていきますと、14週ぐらいでもってE2の濃度がプラトーになりま して、それ以上は増えないという、すなわち胎児の方に過剰な余分なエストロゲン特に エストラジオールが行かないような機構があるということが昔から知られておりました 。 (スライド)  すなわちこのように16週ぐらいのところ臍静脈の方から胎児の方に行くエストロゲン 、エストラジオールは頭打ちになるということが知られていましたが、その機構という ことは全く分かっておりませんでした。 (スライド)  ところが近年、このエストラジオールとエストロンとの間をこのように相互変換す る、つまり生物学的に活性の高いエストロゲンにしたり、それを分解したりするところ を司っております17β水酸化ステロイド脱水素酵素というものが分かってきております 。この酵素は6つぐらいタイプがあるのですけれども、一番重要なのはタイプ1とタイ プ2でありまして、タイプ1がE1から生物学的活性の高いエストロゲンであるエストラ ジオールをつくるという方でありまして、タイプ2が逆にE2をE1に分解するという酵素 であります。 (スライド)  それで、私たちはいろいろなヒトの胎盤をその場で集めてきまして、まず最初にこの 酵素蛋白がどこに分布しているのかということを免疫組織学的に検討いたしました。 (スライド)  そうしましたところ、エストラジオールをつくる酵素のタイプ1の方は全ての症例で syncytiotrophoblasts発現しておりました。このsyncytiotrophoblastsでaromataseによ り産生されるE1はこの酵素によりましてより生物学的活性の高いE2に転換されるという ことが分かりました。 (スライド)  しかし、このE2を壊すタイプ2に関しましては面白いことに12週ぐらいから絨毛の中の 毛細血管、臍静脈の内皮細胞において発現が認められてきます。そしてこの20週前後に なりますとほとんどすべての血管内皮細胞で見られるということが分かりました。 (スライド)  ここに示しましたように、茶色いのが17βHSD1、すなわちエストラジオールをつくっ ているところであります。胎盤でつくられたエストラジオールはすぐにこの臍静脈に入 ってくるのですけれども、この青いところにあります17β-HSD2によってすぐに分解され まして、結局胎児の方に行くE1、E2の量が制御されている、あるいは低下しているとい うことの機序が明らかになったわけであります。 (スライド)  これが結果です。 (スライド)  そしてこれもだんだんと12週、19週あたりでこのエストロゲンを分解するというこの 酵素が非常によくヒトの胎盤では発現しているということが分かりました。 そして逆 にこれ以前に過剰なエストロゲンが入ってきますと、かなり胎児の方には影響がよく出 てくるのではないかという傍証が得られました。 (スライド)  そして次にはもう少し定量的にできないものかということで、内皮のマーカーであり ますCD34の陽性面積を画像解析でコンピュータで取り込みまして解析しました。この検 索から果たして絨毛内血管が発達すると自動的にこのエストラジオールを壊す酵素が出 てくるのかどうかということを検討いたしました。具体的にはこのように赤のところを CCDカメラで認識しまして、それをコンピュータにかけて面積として表します。 (スライド)  実際の結果ですけれども、緑色のものが血管の発達です。そうしますと、必ずしもエ ストラジオールを壊す17β-HSD2は血管が単に発達すれば出てくるという自動的なもの ではありませんで、やはり12週〜14週のところの血管から出始めるということが分かっ てまいりました。 (スライド)  ということによりまして、ヒトの胎盤におきましては、今まで余り分かっていなかっ たのですけれども、胎盤のsyncytiotrophoblastsで17βタイプ1によりまして、強力なエ ストロゲンでありますE2がつくられるのですけれども、胎児血中に移行したE2は血管内 皮細胞にありますタイプ2によってエストロゲン活性の低いE1に転換されて、これによ って胎児に対してのエストロゲンの過剰暴露というものから守られているということが 明らかになってきました。 (スライド)  以上のことをまたまとめております。 (スライド)  そして今まで述べた内容が今年の2月までの発表でありまして、実際今度はいろいろな 内分泌かく乱物質というものは口から入るわけであります。となりますと、この胎児、 大人でもってエストラジオールを壊す酵素はどこに分布しているのかということを検討 しました。 そうしましたところまずノーザンブロットでやってみたところ、肝臓と興 味深いところに消化管と肝臓とで極めて強い発現が見られております。すなわち口から 入った性ステロイドが壊されるといいますか、代謝されるところでこのタイプ2が非常に よく発現しているということが分かりまして、現在一体どこの細胞にこの酵素蛋白があ るのかということを検討しております。  それから、この活性が本当にあるのかどうなのかということも現在プレリミナリーな データは出ていますが、ヒトの実際の消化管と肝臓の細胞でどうなっているかというこ とも検討しております。  以上です。 ○山本補佐  ありがとうございました。今の御発表につきまして何か御質問等ございましたらどう ぞ。 ○安田委員  大変興味深い成績を伺いましたけれども、1つお伺いしたいのは、先生の方では妊娠 何週という表現が使ってございましたけれども、スライドでは胎生何週という表現があ ったと思いますが、胎齢の定義をお教えいただきたいと思います。 ○笹野研究員  失礼しました。月経後胎齢です。こちらの方が間違っています。先生のおっしゃると おりです。失礼いたしました。 ○寺田委員  一番最後に触れられたPCRのデータは、あれは組織学的な、例えば肝臓の内皮系とか、 血管系で発現しているのですか。 ○笹野研究員  ノーザンブロットなのですけれども、免疫組織化学では発現していますところが門脈 の周囲の肝細胞です。ということは恐らくエンテロサーキュレーションで入ってきたい ろいろな性ステロイドがまず腸管の、(来年のところで発表しようと思ったのですけれ ども申し上げますと)、まず腸管の吸収上皮細胞で発現します17β-HSD2によって壊され て、それでも不十分なものが門脈の方に入っていきまして、その門脈の周囲の肝細胞で 発現しておりますこの酵素蛋白によってさらに代謝されていくと思われます。 ○寺田委員  それから言われたと思うのですけれども、タイプ2というのは基質サブストリートは 何で、産物は何でしたか。 ○笹野研究員  エストロゲンに関しましてはE2でプロダクトはE1です。それで、これもまた実際出し ていないデータを出して申し訳ないのですけれども、E.coliに強制的にこの酵素蛋白を 発現させまして、それがいわゆるビスフェノールとかの内分泌環境ホルモンがこの酵素 の発現、活性を制御してE2の吸収を促進したり抑制 とかいうことによっても種々の生物 学的作用が起きるのではないのかと少し発想の転換をいたしました。 そこでこのいろ いろな物質を与えてこの酵素活性がどう変化するのかということを現在見ております。 すなわち何かほかの物質によってこの酵素が変わりますと吸収が促進されたりとか、あ るいは阻害されたりするのではないかと、全くの仮説ですけれども今少し検討していま す。 ○伊東座長  笹野先生、これは厚生省の内分泌かく乱化学物質の人体への影響の検討班で環境ホル モンの会ではないので、環境ホルモンとおっしゃらないでください。名付け親の井口先 生がいらっしゃいますけれども、厚生省では内分泌かく乱化学物質というふうにきっち り決まっておりますので。 ○阿部委員  確かにE2が壊れるのは肝臓であって、それは肝硬変の患者さんにはE2の作用が過剰に 発現しているいうことはよく知られていますよね。ですからいろいろな内分泌かく乱物 質が一体どこで本当に代謝されるのか、どういうプロセスで破壊されるのか。それか ら、本当に半減期というものが、蓄積性があって半減期がどうなるのかということは非 常に重要だと思うのです。ですからそういうことも是非お調べいただけたらというふう に思います。 ○山本補佐  ほかにございませんでしたら先生どうもありがとうございました。  次の御発表に移りたいと思います。次は4番の演題でございますが、東京医科歯科大学 の広川先生にお願いいたしたいと思います。 ○広川研究員  スライドお願いします。 (スライド)  私たちは内分泌かく乱化学物質の免疫系への影響をテーマとして研究を進めてきまし た。 (スライド)  免疫系と内分泌系の間にはいろいろ共通のメディエーターがあるので、内分泌系を介 して免疫にはいろいろな影響が波及します。共通のメディエーターとしては、従来の常 識を越えたものがあり、例えばリンパ球であっても下垂体ホルモンを作り、また、内分 泌系の細胞であっても、サイトカインの影響を受けるとということがあります。従っ て、内分泌かく乱化学物質の免疫系への働き方としては、免疫系の細胞に直接作用する 場合と、他の細胞を介して間接的に働く場合が想定されます。(スライド)  内分泌系のホルモンが免疫系に作用するとき、その機能を亢進する場合、抑制する場 合、そして全く作用のない場合があります。しかし共通のメディエーターがたくさんあ ることを考えると、作用のない場合は少ないといえます。一般的に下垂体系のホルモン は免疫系を亢進させ、ステロイド系のホルモンは抑制的に作用します。そういう意味 で、外から何らかの内分泌かく乱化学物質が入ってきますと、いろいろな経路でもって 免疫系の方に影響が及ぶだろうということがすぐ想像できます。そして、多くの共通の メディエーターは神経系にも働きますので、その影響というのは先ほども少し話題にな りましたけれども中枢神経系の方にも十分に働き得るとといえます。 (スライド)  もう1つの問題は、こういった免疫系に何らかの変化を及ぼすような物質が入ってき た場合に、その影響の仕方が年齢によって変わるということを考慮する必要があると云 うことです。内分泌かく乱物質の場合、個体発生の早い時期に働きますと、形態異常を もたらす、催奇性がまず問題になります。もう1つあまり問題にすることが少ないが、 大事なのは、老人に対する影響です。とくに内分泌かく乱化学物質により免疫系の機能 が低下したときに問題になります。多例えば若い個体でありますと、何らかのストレス が加わって一旦免疫機能が下がっても、それはすぐに戻ってきます。ところが、老人の 場合ですと、一旦落ちた免疫機能がはなかなかもとに戻らないということがおこりま す。  ですから、もし内分泌かく乱化学物質が老人に働いて免疫機能がが下がった場合、そ の下がった免疫機能はなかなかもとに戻らないということが起こりやすいのです。恐ら くこれから年寄りが増えてくるわけですから、それは大きな問題の1つになると思いま す。 (スライド)  例えばこれはマウスをモデルにして、拘束ストレスを与えた後の免疫系の回復を見た 実験です。こちらは胸腺の変化を見ていますけれども、若いマウスですと一度下がった 重量がすぐ戻ってきますけれども、年をとるとなかなか戻らないということが起きてき ます。では内分泌かく乱化学物質ではどうなるのかということになります。 (スライド)  内分泌かく乱化学物質としてはDESを用いました。実験モデルとしては、まず若いオス の、C57BL/6マウスを使いました。DESの投与量は高い量と低い量の2種類を用い、投与 は腹腔内投与です。最初の実験では1回投与し、次の実験では5日間連続投与して、急性 期の免疫系への影響をまず見ました。 (スライド)  検査項目としては、臓器重量、リンパ球の亜集団、T細胞の増殖能、脾臓における抗 体産性能、あるいはNK活性というように多方面から見てみました。 (スライド)  DESはエストロゲン作用をもたらしますので、オスとメスでは当然その影響が違うこと が期待されます。まず、臓器の重量で見ますと、オスでは副腎が少し増加します。高用 量のDESで精巣の重量が増加します。メスでは当然ですけれども卵巣重量の増加が著明で す。そのほか、DES代謝の負荷によるものだろうと思うのですけれども、肝がかなり両方 とも大きくなっております。 (スライド)  次に、免疫系のいろいろな細胞とそれらのサブセットの変化です。これは5日間投与し た後の変化ですけれども、こちらの3つがオスで右の方がメスです。T細胞は、用量に 余り関係なしにパーセンテージが減少します。B細胞もやや減りますが、メスではその 減少が少なく有意差がありません。  面白いのは、T細胞の中の亜集団であるナイーブT細胞とメモリーT細胞によって感 受性が違うことです。ナイーブT細胞の場合には余り変化がないか、あるいは少用量投 与した後増える傾向がオスで見られます。メスでもやや増えております。ところがメモ リーT細胞の方は逆に投与後有意に数が減少します。つまり、T細胞のサブセットによ ってDESに対する感受性が違うということが分かりました。 (スライド)  次に免疫機能として、ごく単純な抗体産生能を見てみますと、これはかなり著明な変 化があります。メスでもオスでも用量に従って抗体産生能が低下します。それに反して NK活性はDESの投与後意外と上昇します。その上昇の程度はオスの場合に特にはっきり しています。メスでは少し上がるぐらいで有意差はありません。ただ、いろいろなドー スをやってみた場合には、どこかのドースでいろいろな効果が出てくるだろうと思いま すが、ともかく影響を見てみましても、T細胞とかB細胞のサブセットによって違うと いうこと。何の機能を見るかによって結構影響が異なるということが分かってきまし た。 (スライド)  今回のDESの免疫機能への影響を見た実験の結論としては、1)投与量によって影響が 異なる。1回投与では免疫系をやや高進させるが、5回投与では免疫系を抑制することが 多いということです。2)DESの影響は免疫系の細胞の亜集団、機能により違いがある。 例えばT細胞とB細胞の両方の協力により行われる抗体産生能の場合はその機能はDES 投与により減少します。一方、NK活性はむしろ高進するということが起こります。今回 の実験ではDES投与後の急性期の作用を見ましたが、これからはもう少し穏やかな慢性の 影響を見る必要があると考えています。また、先ほど申し上げましたけれども、老齢マ ウスではどうなるのかということも見なければならないと計画しています。  それから、T細胞のサブセットによりDESに対する感受性が異なるということは、恐ら くそれはレセプターの発現が違うことが予想されます.あるいは発現が同じであっても、 その後のシグナル伝達の仕方が違うのではないかという可能性もあります。いろいろな 受容体の後のシグナル伝達については加齢によって変わってくるということが分かって おりますので、加齢による変化ではその点も併せて見る必要があると考えています。ま だ予備的な段階ですが、老齢マウスでは若齢マウスのとき以上に顕著に免疫機能が下が ります。年寄りの個体、この場合はマウスですけれども、老齢マウスの免疫機能はもと もと低くなっていますが、それがこのDES投与によって更に低くなるということで、今、 その解析を進めております。どうもありがとうございました。 ○山本補佐  どうもありがとうございました。 ○阿部委員  このお仕事はこれでいいと思うのですのが、生体の体内におけるホルモン系統という のは非常にバランスがとれていまし、そうドラスティックスに変わるものではないと。 DESが少ないとおっしゃるけれども、あれはまだ非常に大量ですね。ああいうふうなもの が生体に投与した。それで免疫系統がこう動いたから、だから内分泌かく乱物質である と結論なさるのは早いのではないかと思うのですけれども。 ○広川研究員  私どもは今50mgと、もう1つはやや低い方で5mgというものを使っております。それで まずドースを決めまして、そして現在老齢マウスの場合には少ない量でやっていまし て、更にもう1つ、腹腔内に打つというのは非常にアブノーマルなやり方でございます 。ですから、食べさせて、そして非常に微量に長い期間やったらどうかという実験を 今、進めております。 ○鈴木(継)委員  阿部先生の質問を受けるのですけれども、いろいろな変化がDESにスペシフィックな現 象であるというふうに言えるのでしょうか。 ○広川研究員  これははっきり言いまして、個体の反応です。ですから一番最初に申し上げましたよ うに、ディレクトの変化、非常に直接的な変化と、もう1つはいろいろな物質を介した インディレクトの影響と2つございます。もし先生がおっしゃるようにディレクトの影 響をどうしても見たいという、勿論私どもそれをやろうと思いますけれども。 ○鈴木(継)委員  それを問題にしているのです。スペシフィティーなのです。 ○広川研究員  ですからそれを見るためには、in vitroの実験をやる必要があると思っています。そ れは実際に計画しています。 ○寺田委員  B細胞とかNK細胞にエストロジェンの受容体が発現しているわけですか。 ○広川研究員  そのはずです。ただ、量的な問題は私どもでまだ調べておりませんので、それは分か りません。 ○寺田委員  はずというのはどういうことですか?、発現しているというペーパーがあるわけです か。 ○広川研究員  ペーパーはあります。あるのですが、私自身がまだ調べておりませんのでこれからそ れを予定をしております。私は恐らくサブセットによってDESの影響が違うとは期待して いなかったのです。それがこんなに影響が違うということは、多分発現している受容体 の量が違うのだろうと考えています。これはどうしても見なければいけないのだろうと 思っています。 ○山本補佐  ほかに御質問がなければ、先生どうもありがとうございました。  それでは本日最後の御発表になります。プログラム8番になりますが、広島大学の藤本 先生にお願いしたいと思います。先生よろしくお願いいたします。 ○藤本研究員  それではスライドお願いいたします。 (スライド)  エストロジェン依存性、エストロジェン・レセプターを介した遺伝子調節というのは 言うまでもなくこのDNAのエストロジェン・レスポンスエレメントを介した系というのが メジャーに働いているわけでありますけれども、一方で、AP-1たんぱく質、つまりフォ スジュンfos/jun複合体が結合するDNA上のAP-1部位を介してもレセプターを介してエス トロジェンが遺伝子を調節しているということが報告されてまいりました。このAP-1部 位というのはもともとTPAに対するレスポンス・エレメントとしても認知されてきたもの でありまして、そういうことから、細胞増殖に関係するような、また、いわゆるがんの トランスフォーメーションに関係するような遺伝子群に遺伝子の調節をしているような 部位でありまして、非常に興味を持たれてきたところで、実際にステロイド受容体との インターラクションについても多く報告があります。一般論としてはAP-1たんぱくとの 相互作用によって相互抑制的な遺伝子調節をするとされておりますけれども、次のスラ イドをお願いいたします。 (スライド)  エストロジェンに関してはAP-1サイトを介してポジティブなレギュレーションという のが報告されてまいりました。実際には、オボアルブミンであるとかIGF-1であるとか、 コラゲナーゼの遺伝子のAP-1部位を含む上流側のいわゆる調節部位をモデルにして行わ れた研究でありますけれども。インパクトがありましたのは、この部位を介したレギュ レーションに対してエストロジェン受容体αとβがスペシフィックそれぞれ特異的なリ ガンド応答特異性を持つという報告であります。 (スライド)  そこで我々は、今まで報告されたよりももっと単純な、いわゆるコンセンサスなAP-1 配列だけでつくったレポーターを使った依存的なエストロジェン・レセプター、依存的 なAP-1レスポンスの系をつくれないものかと考えました。その系で実際に受容体のαと βの差があるのかとか、リガンド特異性に差があるのかどうか、また、内分泌かく乱物 質を含む多くのリガンドに対していわゆるトラディショナルなEREのレスポンスとAP-1 を介したレスポンスの間に反応特異性があるのかを見てみたいと考えました。更に、よ り生理的に近いようなエストロジェン依存的なAP-1応答細胞というものを作製して、そ こでのAP-1レスポンスが見れないかということも考えました。 (スライド)  まず最初に、エストロジェンレスポンシブな増殖をする細胞株の方でありますけれど も、我々はラットの下垂体細胞株から新しくエストロジェン依存的に細胞増殖するよう なMtT/E-2細胞というものを樹立いたしました。その増殖のメカニズムの中については、 解析をしたのですけれども結果は報告書にはありますが、今回ここでは特にこれを単純 なアッセイ系として見たときのデータをお示しいたします。  これは増殖活性を見たものですけれども、このように乳がんなどの細胞に比べますと 非常にセンシティビティーが高くて、10−12Mの濃度で非常に有意なエストロジェンに 対するレスポンスの増殖が見られます。幾つかの内分泌かく乱物質について見てみまし たけれども、ビスフェノールA、メトキシクロール、DDTの誘導体DDD、リンデン、そして ジブロモ酢酸で見ますと、ここが少しないですけれども、比較的高濃度側でエストロジ ェン依存性の増殖と思われるレスポンスが見られました。 (スライド)  これは同様の細胞を使ったエストロジェン受容体を使った結合阻害実験でありますけ れども、ビスフェノールA、メトキシクロール、DDDという順番でレセプターに対するア フィニティーが高くなっておりまして、増殖のレスポンスのデータとよい一致を見たわ けであります。こういった細胞で来たので先ほど初めに申しました、この系で基本的に はAP-1のレスポンスを見たいというのが最初はあったわけですけれども、実際にはレ ポーターアッセイをこの系でした場合に、そのレスポンスは出てまいりませんで、次の スライドをお願いいたします。 (スライド)  AP-1のレスポンスを見る、より人工的になってしまいますけれどもそういう系を確立 することを考えました。これはNIH/3T3細胞に対してフォスジンを恒常的に発現させるよ うな条件でヒトERα、またはβのエスクプレッションベクター発現ベクターとコンセン サスAP-1のみを含むようなレスピレーションルシフェラーゼのレポーター、またそのコ ントロールとしてはトラディショナルなEREのレポーターをトランスフィクションする ことでレポーターアッセイ実験を行いました。 (スライド)  その結果でありますけれども、こちらがAP-1の今、申しましたコンストラクトのレス ポンスであります。基本的にはこのコンセンサスが非常に単純化したエストロジェン依 存性のAP-1のレスポンスは何とか見られたと。2〜3倍というところで見られたわけで、 エストロジェンの濃度はここにありますけれどもです。この系ではEREのレスポンスも非 常にいいとは言えないですけれども、基本的にはそういうレスポンスする系が確立でき ました。  抗エストロジェン剤、タモキシフェンについてはEREのレスポンスは惹起しませんけれ ども、AP-1のレスポンスに対してはアゴニスティックに働くことが分かり、これは以前 より報告されてきた複雑なコラゲナーゼのレポーターなどを使った実験と基本的にその 実験結果とおなじですが、それがより単純な系でも再現できたということであります。  先ほどお示ししました物質についてはゲニスタインが付け加わっておりますけれども 、見てみますと、いわゆるトラディショナルなEREレスポンス、そしてAP-1レスポンスを 比較してみると、基本的には例えばいまタモキシフェンに見られたようなドラスティッ クな2つの間のレスポンスの変化というのは観察できませんでした。 (スライド)  これはデータが不完全で、今はもう少しきっちりしたものがありますけれども、これ は2〜3月前のスライドをそのまま持ってきてしまったものですから。βのエストロジ ェンの受容体をトランスフェクションした系でのそれぞれのEREとAP-1のレスポンスで あります。これも基本的には同じでありまして、タモキシフェンに対してやはりタモキ シフェンはAP-1に対してはアゴニスティックに働く。他の物質、この辺まだ検討の余地 はあると思いますけれども、大まかに見て質的にはAP-1のレスポンスとEREのトラディシ ョナルレスポンスというのは余り差がなかったということでありました。 (スライド)  まとめでありますけれども、我々はエストロジェンに応答性の増殖するラットの下垂 体細胞株をつくり、それに向けて解析いたしました。ここでは内分泌かく乱物質に対す るアッセイ系という部分だけを少しについてお示しいたしました。  NIH/3T3の細胞系を使ってERE、AP-1の応答系を確立し、その間のレスポンスを比較い たしましたが、確かにAF-1アゴニストと言われているいわゆるタモキシフェンやナフォ キシジンのような物質に対してはAP-1応答というのは特異的に観察されましたが、我々 が今回見た内分泌かく乱物質についてはその間のリガンド特異的な、またはα、βとい う受容体特異的な差というのは見ることはできませんでした。  以上です。どうもありがとうございました。 ○山本補佐  ありがとうございました。 ○青山委員  大変センシティビティーの高い系ですごく興味あったのですけれども、実は私メトキ シクロールは幾つか仕事をやっているのですが、あれは基本的にメトキシクロールのま まですと余りレセプターとバインディングアッセイや何かやっても、エストロジェンレ セプターのαともエストロジェンセプターβとも余り結合しなくて、代謝されてHPTEの 形になるとアフィニティーが格段に上がる。先生の方で行きますと、AP-1を使うと結構 そのままで反応が出るようなのですけれども。 ○藤本研究員  ただ何分レスポンス全体が低いので実験が難しいところなので、これからむしろそこ をもう少しレスポンスのいい系を開発した時点でメカニズム解析へと移っていきたいと 思います。 ○青山委員  大変興味深いと思います。ありがとうございました。 ○寺尾委員  今までいろいろな系がありますけれども、先生の系というのは何か今までのものより すぐれているという。 ○藤本研究員  すぐれているというか、AP-1のレスポンス自体については非常に論文的にも今までの 報告も少ないわけでありまして、そういう意味でいわゆる、通常見ているエストロジェ ン応答のシステムというのはエストロジェン・レセプター、そしてEREを介したレスポン スを見ているわけですけれども、AP-1を介したメカニズム系というのはメカニズム的に は十分明らかになっておりませんけれども、別の遺伝子調節の系なわけでありまして、 そこでのさまざまな内分泌かく乱物質の働き方というのはこれからコファクターがどう いうふうなインタラクションをするかということを含めて検討が必要でしょうけれども 、あろうと考えます。それを明らかにしなければ、つまりいわゆるトラディショナルな リアリーなEREレスポンスだけを見ているだけではいけない内分泌かく乱物質の作用をみ るのに不十分なのではないかという発想です。 ○山本補佐  ほかにもしなければ、先生どうもありがとうございました。  以上をもちまして、予定しておりました演題すべて終了したわけでございますが、こ こで伊東座長何か一言お願いできますでしょうか。 ○伊東座長  ありがとうございました。今回の検討会は昨年度の厚生科学研究の研究成果の発表と いうことで大変貴重な研究成果を御発表いただきましてありがとうございました。御存 じのように、昨年度は補正予算を含めまして11億2,000万円余りの莫大な研究費がこの領 域に投入されたわけでありまして、そういった立場から立派な研究成果を出していただ けるということを期待しておったわけであります。  ただ、残念なことには非常に内分泌かく乱物質に焦点を当てた立派なお仕事もある反 面、どういったところに幾ら内分泌かく乱化学物質と思われるものが見つかったという ような御発表が続きまして、非常に失望した内容の研究もあったかに見ております。  御存じのようにこの検討会は健康影響について検討するところでありまして、本問題 に関連する研究というのは、やはり「内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する」とい うことが一番大きなポイントのように感じております、やはり我々はヒトの健康に対し てどういう影響があるのか等、国民が非常に心配している問題について、研究によりど の様な結果が出て、その結果が、どのような意味があるのかということを国民が待って おるという状態であることを是非御記憶いただきたいというふうに思うわけでございま す。今回の研究成果に関する御議論というものは、次回の本検討会でまとめまして、皆 様方と御議論させていただきたいというふうに思っております。  また、昨年度の11億2,000万円余りの補正予算等の研究費とは別に今年度は7億5,000万 円の研究費が既に内示されておるというところでございまして、一部今年は前倒しで研 究発表があったということもございましたけれども、今以上に掘り下げて国民が等しく 望んでおる研究内容にフォーカスを進めていただきたい。基本的なデータがあり、この データを使ってやるということは十分分かりましたけれども、それをもっと深く掘り下 げて研究をし、我々が心配をしている研究成果に近づけていただきたいというふうに思 うわけでございます。  この検討会、次回も執り行いたいと思いますが、この件に関しまして、事務局の方か ら一言よろしくお願いいたします。 ○内田課長  伊東座長どうもありがとうございます。それから2日間にわたりまして熱心に発表者に 対していろいろコメントなり御意見、御質問をいただいた検討会委員の先生方、本当に ありがとうございました。  それから、今回発表者の先生方、10分間という短い発表時間でしたけれども、発表時 間をできるだけ守ろうということに対し、努力していただいたことにも感謝したいと思 います。  併せて、この会場の運営は私どもだけではありませんで、スライド運搬や操作等、い ろいろロジ的なことに御協力頂いた方々におかれましても、感謝致したいと思います。  今回の検討会2日間になりましたが、お時間の都合上先生方とのディスカッションとい うお時間がございませんで、あくまでも発表者の発表に対するクラリフィケーションと いうようなものが主でございましたので、次回の検討会の席にて成果発表いただいた内 容につき各委員の先生方に御討議をお願いしたいと思います。  次回でございますが、ただ今、事務局の方で日程調整を致しております。また、次回 の検討会では昨年来新たに入手できた論文等が仮にありましたら、それも併せて御検討 させていただくということで次回の検討会を開催させていただきたいと考えております 。猛暑の中、2日間長い間本当にどうもありがとうございました。次回もよろしくお願い いたします。 ○伊東座長  それでは、これで検討会を終了いたしたいと思います。どうも長い間御協力ありがと うございました。 照会先 連絡先 厚生省 食品化学課(額田) TEL:03−3501−1711(2487)