99/07/23 第7回生殖補助医療技術に関する専門委員会議事録        第7回 厚生科学審議会先端医療技術評価部会 生殖補助医療技術に関する専門委員会 議 事 録                                 厚生省児童家庭局母子保健課                                        厚生科学審議会先端医療技術評価部会        生殖補助医療技術に関する専門委員会(第7回)議事次第 日 時 平成11年7月23日(金) 13:30〜17:05 場 所 全社協第4、5会議室  1 開 会  2 議 事   (1)精子・卵子・受精卵の提供について   (2)多胎・減数手術について   (3)その他  3 閉 会 〔出席委員〕                                    中 谷 委員長   石井(ト)委員  石井(美)委員  加 藤 委 員 高 橋 委 員 辰 巳 委 員 田 中 委 員  丸 山 委 員  矢内原 委 員 吉 村 委 員 ○東課長補佐  それでは、定刻になりましたので、ただいまから、第7回厚生科学審議会先端医療技 術評価部会生殖補助医療技術に関する専門委員会を開催いたします。  本日は大変お忙しいところ、お暑い中、お集まりいただきましてありがとうございま す。きょうは辰巳委員からちょっとおくれるという御連絡をいただいております。  それでは、議事に入りたいと思いますので、中谷委員長、議事の方よろしくお願いい たします。 ○中谷委員長  どうもお暑うございます。もう既に30度を超えているそうでございますけれども、こ の暑いさなか、かつ委員の方もおっしゃったように、特に遠い場所での会議の開催とい うことで、まことに御苦労さまでございます。いろいろな議事がたくさんありますから なるべく手際よく進行させていただきたいと思いますが、議事録を拝見いたしますと、 非常に私の司会がまずいということが明瞭になりまして、まことに申しわけなく思って おりますので、その反省を込めまして、きょうはなるべく進行を順調に進めたいと思い ますので、皆様方の御協力をよろしくお願い申し上げます。  本日の議事に入ります前に、事務局からきょうの資料の確認をお願いいたします。ど うぞ、よろしく。 ○武田主査  それでは、本日の資料を確認させていただきます。  まず、左肩に黒いクリップでとめてある資料でございますが、まず、一番初めが「議 事次第」でございます。  次に資料1でございますが、「精子、卵子、受精卵の提供について」、議事の(1) の議論のたたき台でございます。  次に資料2でございますが、「多胎・減数手術について(たたき台)」ということで ございまして、前回の提出いたしました資料を修正いたしたものでございます。  資料の方は以上でございまして、次に参考資料でございますが、参考資料1は、イン ターネット等で寄せられました生殖補助医療技術に関する御意見でございます。  次に机上配布資料1でございますが、こちらの方は吉村委員から提供いただいた資料 でございます。  次に机上配布資料2でございますが、「ひまわりの会」というところから御意見がご ざいまして、こちらの方は意見書でございますが、報道機関には配らないでほしいと要 請がございましたので、机上配布とさせていただきました。  最後に別添、“THE LANCET”と書いてある資料ですが、こちらの方はアメ リカにおけますAIDによるHIVの感染の例に関するものでございます。  資料の方は以上でございまして、そのほかに、先生たちのお手元には前回の本委員会 の議事録を配布いたしてございます。 ○中谷委員長  どうもありがとうございました。ただいま御紹介いただきました、このたたき台とい うのは、事務局の方で大変苦労しておつくりいただきまして、ありがとうございまし た。きっといい参考になると思います。よろしくどうぞお願いいたします。  それでは、始めさせていただきますが、第1が、「精子、卵子、受精卵の提供につい て(たたき台)」でございまして、これも御説明いただけますか。 ○武田主査  それでは、資料1について御説明させていただきます。座らせていただきます。  こちらのたたき台でございますが、各委員から寄せられた御意見、前回の本委員会の 議論を踏まえまして、議論のたたき台としてご用意したものでございます。なお、こち らについては、特に厚生省の意見というものではなく、あくまでも本委員会の議論のた たき台になればということでつくったものでございます。  まず、「1 実施条件等」ということでございまして、先に各技術が是認された場合 に考えられる実施条件についてこちらの方では検討しております。  「1 対象について」でございますが、「(1)対象についての基本的な考え方」と いうことで、 ○ 妊娠は基本的には自然になされるべきではないか。生殖補助医療技術を用いるのは 妊娠が自然になされることが不可能な場合に限るべきではないか。 ○ また、親子関係は遺伝的な関係があることが基本ではないか。このため、第三者か ら配偶子の提供については、いかなる方法によっても配偶子が得られず、かつ、自分と は遺伝的な関係がない子供であっても愛情と責任を持って養育できると思われる者に対 して実施することに限るべきではないか。 ○ アメリカ等では未婚の女性が精子提供を受け人工授精によって子供を設ける例があ るが、子供の養育上、子供には両親がいることが望ましいのではないか。また、子供の 法的地位は両親が法的な婚姻関係にあることを基本としており、婚姻制度については尊 重する必要があるのではないか。 「(2)国民の意識の動向」ということでございますが、 ○ 2月に行いました厚生科学特別研究「生殖補助医療技術についての意識調査」の結 果におきましては、患者がどのような場合に実施されるべきかとの問いには、「効果的 な方法がない者に限定すべき」と答えた方が最も多く43.9%であり、「希望すれば誰に でも実施してよい」と答えた人は 5.2%でした。 ○ 同調査では、対象者として誰が適当かとの問いには、「婚姻届を提出した夫婦」と 答えた方が64.3%と最も多く、「婚姻届は提出していないが事実上夫婦関係にあるカッ プル」は 8.4%、「独身者」は 3.5%となっている。 以上を踏まえると、各技術の対象者としてはということで、これは前回出したものと同 じでございますが、 〔AID〕 ・ 女性側に特に問題がなく、男性側に精巣機能が高度な障害を有しているなど精子を 得ることができない問題がある場合。 〔第三者の精子を用いた対外受精〕 ・ 男性側に精巣機能が高度な障害を有しているなど精子を得ることができない問題が あり、かつ、女性側にも卵管閉塞などの問題がある場合。 〔第三の卵子を用いた体外受精〕 ・ 女性側に卵巣機能が廃絶しているなど卵子を得ることができない問題がある場合。 〔第三者の受精卵を用いた胚移植〕 ・ 男性側に精巣機能が高度な障害を有しているなど精子を得ることができない問題が あり、かつ、女性側も卵巣機能が廃絶しているなど卵子を得ることができない問題があ る場合であって、夫婦間の人工授精、体外受精等では妊娠・出産することができないこ とが確認された者とすることが適当ではないか。  それから、対象者の結婚をしているかどうかというものでございます。 ○ 対象者は法律的に結婚していることを条件とすべきではないか。これはあくまでた たき台でございます。一方で、不妊症ではなく、結婚したくないが子供を産みたい女性 については、父のない子供を生み出すこと等の出生児への影響を考えると認めるべきで ないのではないか。 ○ さらに、対象者については、出生児を愛情と責任を持って養育できるものであるか どうか判断する必要があるのではないか。また、第三者の配偶子提供については、十分 なインフォームドコンセントが必要であり、被提供者が配偶子提供による妊娠・出産を 同意した場合には、その者と出生児には親子関係があることを明確化し、その者が出生 児の養育を容易に放棄できないような制度的な仕組みを整える必要があるのではない か。 ○ これらの技術を用いて妊娠・出産する女性については、妊娠・出産にかかる事故を 防ぐためにも、生殖年齢を著しく超えた者については対象とすべきではないのではない か。 以上が「対象者について」でございます。 2.実施方法について (1)性感染症の予防 ○ 第三者から配偶者の提供を受けることに伴い、HIV等の性感染症に被提供者は感 染する可能性があるため、以下の防止策を講ずる必要があるのではないか。 〔AID〕 ・ AIDを行う場合には、HIV等の感染を予防するため、医療機関において、精子 提供者へのHIV等の検査についての十分なインフォームドコンセントとカウンセリグ をした上で、次のことを実施する必要がある。 ・ 精子提供を受ける前に精子提供者のHIVの抗体検査を実施し、陰性であることを  確認する。 ・ 提供された精子については、6カ月間凍結保存し、再度、当該精子提供者のHIV の抗体検査を実施し、陰性であった場合に限り、当該精子を人工授精に用いる。 ・ その他、人工授精に伴う感染症を予防するために必要な検査等を行う。 〔第三者の精子を用いた体外受精〕 ・ これもAIDと同様の措置を講じる必要がある。 〔第三者の卵子を用いた体外受精〕 ・ これは、私どもに知見がなかったものですから、空欄とさせていただきました。 〔第三者の受精卵を用いた胚移植〕 ・ AID及び第三者の卵子を用いた体外受精で述べた方法により得られた精子及び卵 子を用いて行われる必要がある。 (2)提供者 ○ アメリカ等においては、配偶子の被提供者が、提供者を選ぶことができる場合があ るが、提供者を選択可能にすることは、商業主義に陥りやすく、出生児の特質等を選択 することにつながり論理的に問題があるために行われべきではなく、提供者については 匿名とすべきではないか。 ○ ただし、出生児は被提供者の子として育てられることから、容易に被提供者の遺伝 的な子ではないことを分からないようにするため、提供者の血液型は被提供者の血液型 とあわせておく必要があるのではないか。 ○ 近親者からの提供については、提供者と出生児との間で親子の情が生じるなど親子 関係に問題が生じる可能性がある。しかしながら、この場合、被提供者にとっては、出 生児と血のつながりがあるため提供を希望するのであり、その考えは理解できるのでは ないか。近親者からの提供を認める場合には、提供者、被提供者に関する十分なインフ ォームドコンセントやカウンセリングを実施するとともに、提供者と出生児は親子関係 がないことを法的に明確にする必要があるのではないか。 ○ 提供者については、性感染症等の検査のほか、健康診断等を実施する必要がある か。 ○ この件に関する意識調査結果でございますが、被提供者が提供者をどのくらい知っ ているべきかとの問いには「ある程度知っているべき」と答えた方が最も多く26.9%、 「まったく知らないでいるべき」は21.8%、「よく知っているべき」は20.6%となって います。 ○ 被提供者と提供者との関係はどうあるべきかとの問いには、「血縁関係であるかど うかにとらわれるべきではない」と答えた方が26.4%と最も多く、「血縁関係であって はならない」は20.2%、「血縁関係である場合に限定すべき」は 7.8%でございまし た。 (3)配偶子の提供数 ○ 提供する回数が多い場合には、遺伝的父母とする子が多数出生し、それらが婚姻す る可能性がある(近親婚のおそれ)。このため、1人の提供者の配偶子によって出生す る子の数を5人までに制限する必要があるのではないか。(これはフランスを例として たたき台として提示したものでございます)。提供者や被提供者、出生児の情報を特定 の機関が保管し、出生児が結婚する際、必要に応じて、当該出生児に情報提供すること とすべきではないか。(この点は諸外国にもいろいろ例がございますので、その点も考 慮する必要があるのかということでございます) 3 実施機関について ○ 個人情報の保存と保護、社会的信用の向上、カウンセリング体制を含む一定水準以 上の生殖補助医療の提供を図る必要があるのではないか。 ○ 技術の十分でない医療機関等が実施した場合には、多胎妊娠、性感染症等の健康被 害、出生児の法的な地位が不安定になるなどいろいろな問題が生じる可能性があるので はないか。 ○ このため、適切に実施することが可能な医療機関を学会等が認定・登録し、これら の技術の実施をこれらの医療機関に限定する等の措置を講じる必要があるのではない か。 4 商業主義について ○ 優秀な提供者の配偶子を高額であっせんするケースが米国等でみられるが、配偶子 は人でないとはいえ人身売買的であり、被提供者による出生児の特質等の選択につなが ることから、許されるべきではないのではないか。 ○ 一方、実費程度を支払わなければ、提供者が集まらないとの指摘もございまして、 適正な費用の設定について検討する必要があるのではないか。 5 遺伝的な親を知る権利について ○ 出生児が成長過程で遺伝的父母を知りたいと考える可能性がある。一方、配偶子の 提供者は、被提供者や出生児に個人情報を知られたくない場合が多いのではないかと思 われます。 ○ この問題に関する意識調査の結果でございますが、「知らないでいるべき」と答え た方が最も多く33.2%である一方、「いつでも知る権利がある」は15.1%、「成人にな ったら知る権利がある」が11.6%、「婚姻年齢になったら知る権利がある」が 9.7%で ございまして、「いずれかの時点で知る権利がある」とした者が36.4%となっておりま して、若干、「全く知らないでいるべき」とした人を上回っております。 ○ また、同調査では、出生児と提供者の関係については、「第三者は子供と一切関係 を持つべきでない」と答えた方が57.2%、「第三者は子供について知る権利がある」と 答えた方が 9.3%、「第三者は子供の親としての権利を持つ」は 1.0%となっていま す。 ○ 出生児の遺伝的な親を知る権利については、近親婚の防止のためにも、婚姻する際 には、本人の希望により、本人のみに対し認めてはどうか。(これがたたき台でござい ます)このためには、配偶子の提供者の情報については、特定の機関が保管する必要が あるのではないか。 ○ 一方で、それによって、提供者に対し出生児の養育の義務が生じたり、出生児に相 続の権利が生じたりすることがないよう法的な措置を講じる必要があるのではないか。 提供者の保護のためにも必要ではないか。 ○ 提供者の情報をどの程度まで通知すべきか、提供者のプライバシーの保護に配慮し た出生児への情報の通知の仕方についても検討すべきではないか。 6 出生児の法的地位について (1)問題点 ○ 出生児の法的地位は以下の通り不安定な面があるということでございまして、この 点は、前回書かせていただいたものと同様でございます。 (2)国民の意識の動向  これも前回出させていただいたものと一緒でございますが、「実子とする」と答えた 方が58.4%と一番多くなっております。 (3)この問題についての考え方のたたき台でございます。 ○ 出生児については、法的な地位の安定を図るためにも配偶子の提供を受けた両親の 嫡出子とする法的措置を講じることが適当ではないか。この場合、一般の妊娠・出産に よる出生児と同様の取り扱いとするのか。または特別養子制度のように、こういった方 に特別の地位を与えて、ただ、法律上の効果や戸籍上の表記は、一般に生まれた嫡出子 と同様の取り扱いというような新たな制度とするか、そういう検討が必要ではないか。 ○ 配偶子の提供者については、出生児と親子関係がないことを法的にも明確化する必 要があるのではないか。 7 出生児の心理や取り巻く環境への対応 ○ 出生児が戸籍上の父母が遺伝的な父母でないことが分かったときに精神的ショック を受ける可能性があるのではないか。 ○ 第三者からの配偶子の提供を受けて出生したことが周囲の人に知られた場合に、出 生児が偏見を持たれるおそれがあるのではないか。 ○ このため、出生児や配偶子提供を受けた被提供者に対しカウンセリング等の体制を 整備する必要があるのではないか。  ただ、これはかなり難しいという御意見を事前に中谷先生からはいただいています。  以上、考えられる条件でございます。 次に是非についての検討ということでございまして、こちらの方は案は出しておりませ ん。今までの国民と意識と委員の意見の傾向を述べただけでございまして、こちらの方 は先生たちで御議論をしていただきたいと思います。 ○ 厚生科学特別研究の意識調査では、AID、第三者の精子提供、第三者の卵子提供 も体外受精については、「認めてよい」又は「条件付きで認めてよい」と答えた方が5 割を超えております。受精卵を用いた胚移植については5割を下回っているというよう な状況になっております。 2 委員の意見の傾向といたしましては、 ○ 他の方法では挙児を望めない人がいるのであれば、その技術の利用を認め、子供を 持つチャンスを与えるべきではないか。その場合であっても、提供者である第三者や出 生児に悪影響が出ないよう条件整備をする必要があるのではないかというような御意見 がございました。 ○ その一方で、体外受精については、社会的理解がまだまだ進んでいないので、夫婦 間に限定して行うべきという意見でございますとか、第三者の卵子を用いた体外受精の ように第三者に対する侵襲性が大きく危険である技術については実施されるべきではな いのではないかという御意見がございました。  資料の方は以上でございます。 ○中谷委員長  どうもありがとうございました。  それでは、このたたき台に基づいて、「精子、卵子、受精卵の提供について」議論し たいと思います。御自由に御発言いただいて結構だと思いますが、いかがでしょうか。 大体の括弧のない数字のIから順次にやった方がいいかとも思いますが、まず、第Iの 「実施条件等について」というところあたりはいかがでございましょうか。 ○加藤委員  実際に行われているのは何が一番たくさん行われているか。AIDというのは圧倒的 に多いのですか。 ○中谷委員長  今はどうですか。 ○吉村委員  AID以外は行われておりません。 ○加藤委員  行われていないんですか。 ○吉村委員  はい。 ○加藤委員  根津さんなどは全く例外的。 ○吉村委員  例外的ですね。 ○中谷委員長  そうですね。 ○加藤委員  場合によっては、AIDを禁止するという可能性もあるわけですね。 ○矢内原委員  IVFでの卵提供を禁止されているために。 ○中谷委員長  現在はAIDは正式婚姻夫婦に限っていらっしゃるわけですね。 ○吉村委員  そうですね。 ○中谷委員長  京大だけが内縁を認めたのではなかったんですか。 ○吉村委員  それは体外受精です。 ○中谷委員長  体外受精のときでしたか。 ○矢内原委員  京都大学の中の倫理委員会がそれを認めたということで、学会ではまだそれは会告と してはいいと言ってません。 ○中谷委員長  とにかくAIDについてはそういうことだそうですが、何か加藤委員。 ○加藤委員  AIDが認められているのであれば、法律的、倫理的に見て同一の線上に並ぶものは まず認めるというのは基本線ではないかと思いますけど、AIDを禁止するという案も あるでしょうけれども。 ○中谷委員長  法律の対応については、また後で石井(美)委員あたりからいろいろ御説明いただく ことになりますけれども。 ○加藤委員  倫理的に言えば、同一事例は同一に扱わなければならないという極めて形式的な規則 で言えば、AIDが認められているのであれば、例えば、卵子の提供について危険率を 除外して、他人の遺伝的な素因を入れてでも出生を援助していいという線で言えば、卵 子の提供だって同じだということになるのではないかと思いますけど。 ○中谷委員長  どうぞ、辰巳委員。 ○辰巳委員  加藤先生が、この間、日本医師会のときに講演された中で、「他者危害の法則」でし たか。 ○加藤委員  はい。 ○辰巳委員  「他人に危害を及ぼすものであってはいけない」というのがあったと思いますが、A ID及び非配偶者の精子を用いたIVFまでは他人に危害は及ばないのですが、他人の 卵子を用いたIVF(体外受精)からは、他人に侵襲が起きる。 ○加藤委員  例えば、生体肝移植なんていうもっと危険率の高いことが行われているわけですね。 それは当人の同意があればということと治療の効果がある、ほかに方法がないとか、そ ういう理由で認められているのですけれども、卵子の提供についても、どの程度での危 険率か私はよく知らないんですが、いろんな危険率がありますね。例えば、途中でやめ れば、目的は達成されないけれども、提供者に危害は全く及ばないという、そういう危 険である場合もありますし、もし危険が生じたとしても、それは比較的命に別状がかか るような危険でないという場合もあるし、いろんな場合があるのですが、卵子の提供と いうのは、先生方から教えてもらいたいのですが、私は多分当人の同意があれば認めて もいいという程度の危険ではないかと思うのですが、それは間違ってますか。 ○辰巳委員  危険率という意味から言えば、生体肝移植などに比べればうんと低いと思います。た だ、起こる可能性がないとは言えない。 ○加藤委員  取り返しのつかない障害を残す可能性はどうなのですか。 ○辰巳委員  それは途中でやめるとか、そういうふうなことをして、何とか安全にしようとすれば 非常に起こる確率は低い。 ○加藤委員  例えば、アデノウイルスを使った遺伝子治療というのはあるわけですね。 100匹のア デノウイルスを使えば、そのうち2〜3匹は安全性の処置が施されていない生ウイルス だというふうに考えた場合に、アデノウイルスによる障害と同じ障害が発生する可能性 がありますね。しかし、その場合にはほとんど病気という状態にまでいく前に、遺伝子 治療をやめてしまえば、遺伝子治療という目的は達成されないけれども、その弊害は回 避することはできるわけですね。  そういうふうに、例えば、卵子の提供などでも、ここまでやると危ないということが わかったときに、目的は達成されないけれども、やめれば、提供者に対する危害はない という場合もあり得るのではないかと思うのです。                 ○辰巳委員  そういう意味で言えば、非常に低いことは低い。でも絶対起こらないとは言えないと いったレベルだと思います。 ○中谷委員長  その点については、例のリプロダクティブヘルス/ライツとか、それとも関連して、 ご本人の意思といいますか、希望といいますか、同意といいますか、そういうものでカ バーし切れる範囲のものではないかというふうに言えるのかもしれませんね。 ○加藤委員  この間、田中先生のフィルムを見せてもらったので見ると、許容限度内でも危険では ないかなと思ったんですけれどもね。 ○田中委員  私は常々思っておるのですが、生体肝移植が非常に短期間の間に日本の治療の中で定 着しましたが、ある意味では非常に危険な部分があると思うんです。そういう子供を持 った親は肝臓を提供しないといけないのではないかというふうに見られる風潮を生んで しまったと。この生体肝移植と卵子提供とを比較しますと危険性の点では全く問題にな らないぐらい卵子の採卵という危険は低いと思います。京都大学、信州大学で始まった この治療は殆ど障害なく受け入れられております。  次に、話は違いますけど、埼玉医療センターでの、性転換手術のスタートがありまし たね。私、問題が起きなければいけないと思うんだけど、何か知らないけど、大学なり そういうところで始められると何も起こってない。もっと広く討論が必要な気がしま す。 ○加藤委員  田中先生の意見では、生体肝移植は提供者の安全の尺度としては使えないと。 ○田中委員  非常に危険だと思います。 ○加藤委員  危険の領域に入ると。 ○田中委員  入ると思います。実際に治療に参加している友達に聞いてみますと、結構危険な場合 があると言っています。生体肝移植を全面的に受け入れている現状で、卵子の提供が危 ないということは医学的にいって納得ができません。  ただ、この治療の一番大きな問題は、治療した結果、当事者と関係ない第三者の新し い生命が生まれるという点ですね。ここが生体肝移植や骨髄移植と違う点だと思いま す。ですから、法律的にどうかということをクリアーしていただければ、私は技術的に は問題ないと考えております。 ○石井(美)委員  もう一つ違う点は、生体肝移植は、命を助けるために行われる。1人の命が生きるか 死ぬかということで、その生存、生命の権利と子供が欲しいという親の希望とが同じ水 準かということもやはり考えなくてはいけない問題なのだろうと思います。危害がなけ れば何でもやってもよいということではないですし、危害は確かにあるわけです。私は なるべく親の希望をかなえてあげたいと思う方ではありますけれども、やはり命を助け るのと同じレベルだとまではちょっと言いにくい。 ○中谷委員長  ほかに御意見いかがですか。 ○石井(美)委員  私の記憶間違いかもしれませんが、加藤先生は、先ほど辰巳先生がおっしゃった日本 医師会の会のときにAIDに否定的な発言をされた印象があるのですが。 ○加藤委員  いや、そんなことありません。 ○石井(美)委員  そうですか。 ○加藤委員  AIDが事実上認められている以上、その尺度は尊重した方がうまくいくのではない か、そういう線でお話したつもりですけど。 ○石井(美)委員  他人が入るかどうかで線を引くことはない。 ○加藤委員  そういう枠の中で言えば、他人の遺伝子が既に入ってくるというところまでは社会的 な承認できていると。 ○石井(美)委員  本当にそうなのかどうかはもう一度やっぱりここで議論する必要があるのではないか と思うのですけれども、今まで正面切って議論されたことはないですね。産婦人科学会 も会告を出されましたけれども、それについて、国民的議論をしたとか、公の場で議論 したとか、そういうことはなかったわけですから。確かに黙認はされてきて、それが産 婦人科学会が、一応学会としては公に認めたという段階であって、社会的に認めてきた というのはちょっと言い過ぎなのではないかと思いますけれども。 ○中谷委員長  事実上黙認というか、行われてきたということは言えるのだろうと思いますけれど も。 ○石井(美)委員  アンケート結果でもそんなに否定的でないということも言えるのかもしれませんけれ ども。 ○吉村委員  この場では是か非かということを理論的、倫理的にお話しするという場でもあるとは 思うのですけれども、まず、実際にそれが是となった場合にどうやってプラクティカル にできるかということは、今は考えないで是か非かをここでは論ずるのですか。 ○中谷委員長  そういえば、ここに現実的に行われている。それがなければ。 ○吉村委員  プラクティカルにそれができるかどうかという問題点ですね。これは精子提供による 卵子提供による、受精卵の提供による、この3つの場合、全部違うのですか。 ○中谷委員長  はい。 ○吉村委員  例えば、その場合に一番の問題点はドナーをどうするかということです。それから、 例えば、レシピエントをどういう年代にするかという問題点もありますね。それから、 レシピエントに全く関係ない提供者の副作用のことばかり今おっしゃっていたんですけ ど、レシピエントに対する危険性もあるわけですね。  そうするとやはり是か非かということを初めに問うことはもちろん大事ですけれども 是とした場合にはどうやって実際に、今の日本の医療制度の中でやっていけるのかとい うことをやはり話し合われないと、なかなかやる方にとっては、かなり難しい問題にな ってくるだろうと思うんですね。  精子提供のAIDを私たちやっているのですが、AIDに関してもドナーの人数の確 保は大変なことなんですね。卵子提供になるともっと大変になると思うのです。だから 卵子の提供者に対する副作用つまり体外受精の副作用は、加藤先生もおっしゃったよう に、私はそれをやってはいけないというほどのものを与えることは比較的少ないだろう と思うんです。それはないとは言えませんけれども、非常に少ないだろうと思いますが そのドナーをどうやって確保していくのか。それから、レシピエントに与える場合に、 例えば、これから先、欧米でもあるように50歳以上の妊娠ということが非常に多くなっ てくると思うんですね。そうすると、私、毎回言っているんですけど、当然のことなが ら妊産婦死亡率は圧倒的に高くなるわけですね。  今、大体自然妊娠で45歳までぐらいの妊娠だと思うのですけど、妊産婦死亡率は 800 人に1人です。35歳から39歳ぐらいだと5分の1から6分の1ぐらいです。そうやって 考えておきますと、45以上あるいは50歳以上の人の妊産婦死亡率は欧米でも統計があり ませんので、かなりの、例えば 300人に1人とか 200人に1人妊産婦が死亡するという ようなことが起きてくるのではないか。  そういう意味で、卵子の提供に関しては受精卵の移植に関してもかなり難しい点があ るのではないか。私は実際やる側としてこれが認められると大変なことになるなという ような感じがしています。 ○石井(ト)委員  今までのお話のプロセスからみますと、もうそろそろ具体的な条件付に焦点を当てて どの程度それが可能なのかということをディスカッションをしたらよろしいかなと私は 思っています。先端医療技術の発展と多様な価値観によって、どの倫理モデルを用いて 判断することだと思いますが、リプロダクティブヘルスの、女性の権利のみで展開する と、すべて承認ということになり、議論の意味がなくなると思います。  そこで、具体的に何をどのような形で条件付をしていくのかというところを、具体的 にお話を進めていただいた方が、今までの話題も整理ができるのではないかという気が します。 ○加藤委員  今、吉村さんがおっしゃったような場合に、初めから、全面禁止というふうにするの か、だから全面的に自由化というふうにするのか、条件付にするのかというのと、それ から、もう一つは、一応権利として認めるのだけれども、実際にあなたは危ないですよ ということを個別的な事例についてアドバイスする、そういう処理ですね。つまり法律 の枠としては条件付でない形で認めておくけれども、実際個別事例について危険があれ ば、当人に説得するなり何なりするという形もあると思うのですね。 ○石井(ト)委員  即、法律で定めるのではなく、とりあえず、どんな条件があればベターなのかという ところで整理したいと思います。先生がおっしゃった危険論をここで持ち出すと、混乱 すると思います。 ○加藤委員  予防接種の場合にしても何にしても一応法律の枠としてやってもいいと認めておいて 実際にいやな人はやめてもいいと、あるいは事例によっては相談をしっかりやるという 形で処理しているケースも多いわけですね。 ○中谷委員長  そういう条件みたいなものは、せいぜいガイドラインで示すべきであって、法律がそ こまでいくべきとは考えておりませんので、実施する以上はそれなりの条件というか制 約みたいなものは、実際に実施しておられる先生方、吉村委員、矢内原委員他医系委員 のお考えだと思いますけれども。  もう一つ、よろしいですか。AIDは一応何となく認められ実施されてきましたが、 公的には確定してはいないんです。しかし、とにかく認められてきた。それなのにIV Fはどうして精子の提供は認めなかったのですか。 ○矢内原委員  その前に前提を1つ言わせていただいていいですか。この委員会で私は非常にショッ クだったというか、非常に印象深かった1つの言葉は、人間が権利を有するならば、あ る技術が可能となった場合、それを使ってもいいだろうということを法律の先生方がお っしゃったことです。これはなぜかというと、生殖というものが一体何だろうかという ことの議論が全くなされてないで、技術論的なこと、または人間が行う技術と取り決め ということに議論が具体的に進んでしまっています。今の吉村先生、加藤先生の議論な ども全部そうだったと思うんですね。そこを議論できたらまずしていただきたいという ことです。  つまり、生殖ということが、これはあくまで生殖補助医療のテクニカルな問題ならば 配偶子のいろんな組み合わせができるはずです。何が大切かを根本に考えていただけれ ば、肝移植とこの生殖医療は全く同じレベルで危険度とかそういうことで議論するので はないのだろうということです。  あと、今の質問に答えます。日本産婦人科学会がIVFで精子や卵子のドナーを禁止 して、その前にAIDを認めていたのはなぜかということですが、これはAIDという ものが歴史的に長い間使われてきていたと。既に1万人以上の子供たちが生まれている こと。当時の文献、そのときの委員会が調べたところでは、それなりに当時議論してい て記録が残っていて、そして、そのときの法律の解釈、世の中の受け入れから見ていい だろうということで、当時は学会の取り決めもありませんでしたから、限られた施設で 行われてきたという歴史があったということです。ですからAIDを撤回するといけな いのだということに立ち戻れば、それはそれでいけると思います。  理論的に申しますと、それならばIVFのスパームもドナーだって当然いいわけで す。何ら変わらない。むしろあった方がかなりAIDを認めるならばいいだろうと。と ころが一般的に見たときに、人工授精という方法と体外受精というのは妊娠の成立とい うことから考えると、理屈では同じようですが、非常に大きな隔たりがあるんですね。 つまり体外受精というのは、大変我々生殖医療技術にとって革命的な出来事であったと いうことで、体内で受精することと体外で受精することの違いというのは、今のところ 外にはあらわれてませんけれども、大きな隔たりがまずあると思います。ですけれど も、他人の配偶子を使うという意味では同じであるということです。  したがって、体外受精で、もしそういう方法で精子に障害のある方が子供ができない のでしたら、AIDを認めているのであれば、体外受精もいいだろうということになり ますけれども、恐ろしいのはそこに1つ大きな隔たりがあることと、もう一つは、同じ 配偶子ということで、それでは精子、卵子だって同じではないということに当然なって くる。そうすると、その次に来るのは貸し腹、借り腹、代理母という次のステップに胚 の提供になります。  つまり、どこかのところで線を引かなければなりませんし、それでは精子と卵子は同 じ配偶子としての位置づけは生物学の中で認められているかということに関しての議論 はなく、まだわからないことはすごくあります。  したがって、一番最初の生殖というのは一体何か。つまり2人のある特定の男女が、 その遺伝子を伝えていくということを生殖とすると。その片方に欠陥があるときに何か の形で補うために遺伝子を持ってきてもいいのだということになりますと、これは卵子 だっていいだろうというようにもなってくると思うんですね。  もし生殖ということの行為が、ある特定の男女が、つまり結婚しているということを 日本の社会では認められていることですけれども、それがそれぞれの遺伝子を持ち寄る のだったら、卵の提供よりはむしろ胚の提供の方がはるかに極端ですが、胚は代理母で すか、つまり代理母の方が理屈に合うわけですね。ところがそこには当然自分の子供を 産んでもらうというリスクを他人に背負わせるわけですから、これを商業主義抜きには 考えられないことになってくることは当然で、この問題に対してだれでもが反対してい ることは商業主義なんですね。そうすると卵の提供、代理母、または貸し腹にせよ、あ る意味でリスクというものと、それから、先ほどどなたかおっしゃいましたけれども、 子供の権利ということを考えたときに、技術としてすぐできるからやっていいというこ とと全く違う。  考え方は非常にコンサーバティブなんですけど、できたら技術論やそのことよりか、 ベーシックに、何をこれから我々が考えなければならないかということを、全く根本に 戻ってしまうようなんですけれども、そこをひとつ考えていただきたい。きのうからず っと、きょう何を申し上げようかなと考えてました。私が申し上げたいのはこの点だけ です。 ○中谷委員長  どうも感銘深いお話ありがとうございました。実はスウェーデンで人工授精法ができ 体外受精法ができたわけですけど、その過程で、これはそれに関する同じ委員会で結論 出してきたんですけれども、やはり本来神の手といいますか、それで子供は産まれると いうことに対して人工的に、不妊というのも神の追誤の1つだというふうな考え方をし て、それをどこまで補助できるのかという限界を考えなければならないという非常に限 定的な報告書があるんですね。それはまさに今矢内原委員の言われたような点について 非常に深い議論をしておりました。私はそれは非常に感銘深く読んだのですけれども、 やはりそういうことを基本的には考えなくてはいけないだろうとは思います。  ほかに御意見いかがでしょうか。 ○田中委員  矢内原委員からお話がありました点は一番大事なことだと思います。ただ、こういう 問題を言い始めますと私はきりがないと思うんです。日本産婦人科学会を代表される2 人の教授がここに出ておられますけれども、もし、この教授が違ったお考えの教授であ れば内容はがらっと変わると思います。ただ、宗教だとか倫理という問題とこういう生 殖医療技術という問題を同じ土俵では話し合えないのではないかと私は思うんです。  宗教と科学、要するにローマ法王がここにいて、体外受精どうのこうのという話にな るのではないでしょうか。一番大事なのは患者だと思います。それを施行する医療従事 者の考えも大事ですけど、私達は目の前にいる患者を治療する際には、患者の利益を考 えて行っておりますから、そういう場合に、宗教や倫理の問題を持ち出されると何もで きなくなるような気がします。そういうことはないですかね。 ○矢内原委員  ちょっとインターラプトするようですけれども、私は宗教的なことを言っているので はなくて、そういうディスカッションがまだないですねということをまず申し上げた。 それから、もし遺伝子を前提で、生殖ということが遺伝子が伝わっていくということが 根本に、子供を欲しいということとまた別で、遺伝子を使っていいということが生殖の 根本にあるのならば、卵巣もしっかりしている、御主人の精子もしっかりしている、だ けど子宮がないという方が一番使えるんですね。他人のおなかを借りるということが。  ですから、そういう技術があって、それを我々は技術的にはできるわけですが、我々 は生殖について何を知っているかといえば、やればやるほどわからないことだらけです ね。どうしてなんだろう、どうしてなんだろうということがすごくある。だから、あく までもっと人間は引き下がらなければいけないし、だけど、できている技術を患者のた めに使ってあげたいという気持ちは、これは医者でありますから、田中先生も私も吉村 先生も高橋先生も、先生方は皆同じだと思うんですね。  そこで、私は最初に言ったショックだというのは、そういう権利を人間が有している のだという法律の解釈。それは与えてあげればいいのではないかと、本当にそうかなと いうことをすごく感じました。だけど、事実権利はあるということは否定はしませんけ れどもね。 ○加藤委員  人工妊娠中絶のときもよくある議論なんですが、例えば、私が翻訳したエンゲル・ ハートさんてカトリックなんですね。人工妊娠中絶を法律的に許容せよということを主 張しているのです。ご当人は多分子供は3人ぐらいしかいないけれども、多分人工妊娠 中絶は反対だと思います。つまり彼の理由は、人工妊娠中絶を法律の枠としては許容せ よと。しかし、自分は宗教上の理由で拒否すると。宗教上の理由で拒否する自由を認め てもらう。それをもし認めないというのであれば、自分は重大なる権利の侵害だと思う けれども、しかし、そういう理由以外の理由で、例えば受けたいという人を自分は阻止 する権利はないわけだから、だから、もし宗教上の理由で、それを拒否したいという人 がいれば、それは拒否できる形で許容すればいいのであると。一般に許容する場合にそ れを強制するということはありませんから、実際にそんなことはないんですけれども、 これはピエール・ベールという人の『寛容論』という書物の中に出てくる議論と同じ形 で、歴史的に言えば、ピエール・ベールの『寛容論』という形で17世紀なんかにも最初 に登場したんですけれども、アメリカで宗教と法律と倫理などの問題が絡んだときに1 つの典型として出てくるものだと思います。  ですから、私は権利だというふうに言ったのは、神に対する人間の権利だというので はなくて、人間同士がそれを制限してはならないという意味で、患者の権利なので、そ の患者が自分の宗教上の理由、おじいちゃんからの遺言でもいいんですけれども、宗教 的でない理由でも拒否するということはもちろん認められると、そういう枠が法律上の 枠という問題なのではないか。だから、法律上の枠として認めるということは必ずしも 宗教上の拒否権というものとぶつかるものではないと思います。 ○中谷委員長  中絶については、ヨーロッパの各国はそういう信念でもって求められても施行しない という権利は法律でちゃんと保障されているんですね。 ○加藤委員  法律で認めているんですか。 ○中谷委員長  ええ。 ○吉村委員  私、1つ先生にお伺いしたいんですけど、例えば、着床前遺伝子診断という医療技術 があったとしますね。その患者さんはずっと自分の子供が、例えば筋ジストロフィーに かかるかもしれない。前の子がそうだった。2番目の子供を産みたいと。患者は着床前 遺伝子診断で調べてほしいというわけですね。医療サイドもそれに対する医療技術を開 発していくわけですね。そうすると、そこにおいては患者と医者2人がよろしいと。私 たちもできるし、私たちもやってあげたいし、患者さんもやっていただきたいと思って いるんですね。  そこにおいて、医療行為が社会においてなされる場合においては、この社会からのい ろんな反発ありますね。そうするとその医療行為ができなくなることだって当然あるわ けです。私は同じような問題点を含んでいると思うんですけれども。医師ができる、患 者がやってほしい、これだけで医療行為というのは成り立たないと思うんです。どうな んでしょう。  そこにおいては、すべての人が賛成して医療行為を行えるような状況なんて一切ない と思うんですね。そこにおいては、やっぱり時をかけて、ゆっくりゆっくり、待つとい うことも必要だと思うんですね。それがいわゆる内容はわからないけれども、いつもみ んなが言う「社会のコンセンサス」という言葉だと思うんですね。  この「社会のコンセンサス」なんて永遠に得られないと思うんです。そうするとこう いう医療行為を見ていた場合に、私と矢内原先生が何か保守的のように語られています が、実際にやるようになると、例えばドナーをどうやって集めてくるのか。日本では難 しいかもしれないけれども、親子関係のことは法律で決めればいいことですから。それ は遺伝的な親、社会的な親、法的な保障をすれば、これはまだ可能かもしれません。安 全性につきましては、先生おっしゃったように、私はそれほど危険なものではないと思 う。ただ、先ほど言ったように、卵子の提供に関しては、レシピエントをどうするかと いうことはちょっと大きな問題です。  それから、商業主義的な乱用に関しましては、例えば、精子の提供であれば、例えば 簡単に言えば、アメリカだったら50ドルとか60ドル。日本の場合1万円ちょっと払って います。しかし、過排卵をかけて卵を採卵するときに、アメリカは 5,000ドルぐらいを 今払っているわけです。低いところでも 3,000ドルぐらい、その若い人に与えているわ けですね。そうすると、そういう技術をやることによって、昔、売血があったり、そん なこと言ったら古いかもしれませんが、今の若い子たちだったら、売春もあるわけです から、卵を売ることぐらい何でもないというような状況は大いに予想できます。これを どうやって制限していくのかは、大きな問題になると思います。  それから、医療経済的にも、ドナーに注射を打つ場合、その医療費はどうなるのか、 例えば患者自身が負担するのか、いろんな問題点があり過ぎて非常に困ってしまう、そ ういう考えなんですけれども、どうでしょうか。 ○田中委員  吉村先生のお話ちょっとよろしいですか。筋ジスの話ですが、これは吉村先生にもぜ ひお話ししたいと思っていたんですけど、先生たちがやる仕事、すごくすばらしくてい いことだと思うんです。ただ、私が先生方含めて筋ジスの着床前診断をされようとして いる先生方に言いたい点は、受けたいという患者がいる。診断の技術もある。それを少 数の人たちが反対する。なぜ、やめてしまうかなんですよ。反対する人たちがいたとし ても、その人たちが診断を受けたいという人の権利奪うことできますか。1人目筋ジス で、2人目はどうしても、この子を育てるためにも健康な子が欲しい。先生たちの技術 でできる。なのに、少数の人たちが反対がするがために会が流れてしまう。 ○中谷委員長  筋ジストロフィーの会に課長もお出になりましたよね。 ○田中委員  つくづくいつも思うんです。 ○中谷委員長  あれで見ると、兄弟が何人もそういう方持ってらっしゃる、ご兄弟で、そういう 病気。 ○吉村委員  筋ジスは先生話がちょっと違います。 ○中谷委員長  そうですね。だけど、それと同時に問題になるのは、遺伝子といいますか、そういう ことを明らかにしたりしますと、今度はそのプライバシーの保護といいますか、秘匿す ること自体がまた非常に問題になってくるんですね。これはほかの場面でも今どんどん 問題になってきますから、いずれここでも何か考えなければいけないだろうとは思いま すけれども。 ○田中委員  正直言って全く理解できませんね。私は患者さんが希望して、そういう治療を望んだ 場合には、我々はでき得る限りの努力と協力をすべきではないでしょうか。 ○加藤委員  大体3つぐらい考え方があると思うんです。アメリカの独立宣言だと、幸福追求の権 利というので、これは同性愛者は子供を産む権利でも、ご当人の幸福になることは全部 権利だというのが幸福追求の権利の最大バージョンですね。  2番目が健康で文化的な生活を営む権利というのがあるんですね。これは何をやって もいいというのではなくて、不健康なことはそんなに社会的に強要する必要ないだろう と。不健康なことまでやりたいやつがいたら、それはやめろという権利が社会の側にあ るだろう、そのぐらいの範囲になると思うんですね。  それに対して生存権というのがあるわけですね。生存権の場合には、おまえ、やめろ というわけにいかないので、例えば、遺伝子治療で助かる見込みはほとんどゼロに近く ても、やってみたいという人がいれば、それはやってごらんになったらと、それをあえ てとめるわけにいきませんということになると思うんですね。  医療アクセス権がどこで成立するかという問題について、最大バージョンでいうと、 幸福追求の権利になるものはすべて権利として医療アクセス権が成立しているという、 そういうのが自由主義の最大バージョンだと思います。アメリカの場合、そういうこと を主張している人が結構多いのですけれども、例えば非常に商業主義が生殖の領域に入 ってくるというようなことが、もし社会的な弊害として考えられた場合には、特に生殖 医療の場合には、生命の生存権にかかわるものではありませんので、それと社会的な安 全性や公正とかというのとぶつかってくる場合があると思うんですね。ですから生殖医 療の場合に個人の幸福追求権が優先すると無条件には言えないのではないかと思いま す。 ○田中委員  そのための制限は必要だと思いますが、技術があって、患者さんがそれによって利益 を受けて、第三者に危害が及ばない、人に迷惑をかけない治療内容であるならば、基本 的には行う方向でいって、その上でのいろんな制約は条件をつけて構わないと私は思う んです。 ○中谷委員長  先ほどの筋ジストロフィーの関係では、ドイツの胚保護法の第3条で、デュシェンヌ 型の筋ジストロフィーについては男女の産み分けを認めています。そういう対応をして いる国もあります。これは生まれてからの話ではありませんから、あれですけれども。 ○高橋委員  私は卵の提供も少なくとも禁止すべきではないと思います。というのは、産婦人科学 会の最初の会告、これが非常に制限が強過ぎるために、いろいろと問題になっていると 思います。御承知のように、東北大学でIVFの第1例が成功し、その後、会告をつく ろうということになり、当時の鈴木先生と私で原案をつくったのです。今になって、鈴 木先生は、あれはちょっと厳しくて困りましたと言っておりますが、婚姻関係にあると か、夫の精子に限定するとか、そのほか、御承知のような制限する会告になったわけで す。  当時、新聞記者の一部の人から、婚姻関係とあるけれども、婚姻には法律の上で認知 していない婚姻もあるだろうし、こんなに厳しくていいんですかという意見も出まし た。制限したり禁止したりする条文ができますと、後でこれを取り除くのは大変です。 認めた上でいろいろな制限をつけることにした方が運用が楽ではないかと思います。  実際に卵の提供となりますと、卵は簡単に採れますけれども、リスクを伴いますし、 提供する方もどの程度いるか。もしもたくさんいるようだったら、制限をつければいい のであって、将来を見据えた場合、幅広い選択ができるような条文にしておいた方がい いのではないかと考えます。 ○中谷委員長  ありがとうございました。 ○石井(ト)委員  考え方を整理するためにもう一度確認したいのですが、先ほど加藤先生がおっしゃっ た幸福追求論が、医学は生存権に一番近いと思います。しかし、生殖に幸福追及論を適 応すると、患者が要求すれば、すべての生殖技術の恩恵を受けることができるようにな る。しかし、無制限に許してしまうと社会の秩序を乱すから、社会文化的背景を考慮す るということですね。先ほど「保守的」だという言葉がありましたが、あまり発展的な 意味がないように解しているように感じましたが、保守的と思われるなかには、積み重 なったルールだと思いますので、大切にする部分もあると思いますので、大切にする部 分もあると思います。しかし、これに相当しない時に制限が必要だということでしょう か。 ○加藤委員  もう一つ、生まれる子供の保護ということもありますよね。生まれる子供の保護とい うのは、国家か親がわりになるというか、パレンス・パトリエというか、生まれる子供 が余り野放図な育ち方されたりなんかする場合には国家は、こんなひどい子供の産み方 しちゃいけないというように制限する権利があると思うんですね。それは子供が健全に 育つという条件を国家は見届けるという、そういう権利があると思います。  だから、そのことに、いいか悪いかだけではなくて、子供が余り乱暴な育て方をした り、例えば、独身の人が子供を産みたいといったとき禁止して私はいいのではないかと 思うんですけど、それは国家が親がわりになって、子供はやっぱり両親がいた方がいい という判断を持てば、制限するということになると思いますね。 ○石井(ト)委員  かなり具体的にどのような条件をつけてということでお話しができたらなという気が します。今までかなり出ているような感じがします。 ○中谷委員長  丸山委員いかがですか。 ○丸山委員  矢内原先生のお話は非常に興味深かったのですけれども、矢内原先生の生殖のとらえ 方は遺伝子の伝達を軸にしてお考え。 ○矢内原委員  いや、そういう議論もまだないじゃないですかということを申し上げただけです。 ○丸山委員  そういう見方があり得るということですね。 ○矢内原  はい。 ○丸山委員  そういう見方があり得るというのは、私はこれまで余り考えてこなかったのですね。 そういう見方をとれば、この人工生殖医療技術の中で借り腹がまだ容認可能なものにな りそうだというのもありますし、日本人はわりかし遺伝を重視しますし、一般国民のア ンケートの結果見ますと、借り腹のところがやや容認できるというのが多いんですね。 だから、そういう見方もあり得るなとは思うんですけれども、より広い見方というか、 我々普通の者が生殖について考えるのはやはり子供を持ちたいということではないかと 思うんです。ですから、そういう見方もある。  根本的・基本的な点についての議論をするというのは、確かにこれまで真っ正面から そういうことを取り上げていませんから、議論をする場は必要だろうと思うんですけれ ど、もう少し先になってからの方がいいのではないかと思うのです。もし、これで物事 といいますか、生殖補助医療技術の是非を決めてしまうとなりますと、基本的な原理、 原則で決めてしまうということになって、最終的にそうなるかもしれないのですけれど も、細かいところに目配せがいってないような気がしますので、あるいは次回か次々回 あたりにそれなりの時間をとって根本的な原理的なところを検討する場を持つのは私は 必要だと思います。ですけど、最初にそれをやるのは、ある意味では論理的な順序では あるのですけれど、最初にそれをしてしまって結論まで導いてしまうと、ちょっと大き ななたで結論を決めてしまうような感じがしますのでどうかなという感じがいたしま す。それについて議論をしなければならないというのは矢内原先生のおっしゃるとおり だろうと思います。  それから、吉村先生の方で、実際上の問題点が多数あると。たくさんあるから大変だ からやめようかという趣旨かなというふうに私は受けとったのですけれども。 ○吉村委員  私はやめようじゃなくて自信がないと。 ○丸山委員  移植における危険率などの数値、あるいは出生前診断の羊水穿刺なんかの数値、絨毛 診断などの数値を見ておりますと、胎児が流産してしまう危険性と既に生活されている 妊婦の方が亡くなる危険性は同一のレベルでは比較できないと思うのですが、 800分の 1の死亡の危険でもしたいという人がいれば、社会的にはやってはいけないとまでは言 える大きさではないのではないかと思うのです。これがもっと高齢の人が技術を使って 子供を産みたいとなって 300の1、 150分の1、50分の1、ですけど、医療の問題だと 50分の1でも本人がよしとし、やりましょうという医療機関があって、社会に対する悪 影響が余り大きくなければ許容される可能性もあると思うんですね。  ですから、先生のご懸念は非常に現実的なもの、それにこれだけではありませんで、 商業主義の問題やいろいろ具体的なものがありますけれども、条件の工夫次第では何と か乗り越えられないものではないのではないか。乗り越えられる可能性があるのではな いかと思いました。  それから、田中先生の御発言については、技術があって医師と患者がやりましょうと いうことになって、周りに迷惑がかからなければ基本的にはいいと思うんですけれど、 医療として認められるかどうかということでは社会的に容認するという態度があと必要 かなと思いました。  で、私の意見はどうなのかということになるのですが、事務局で、用意していただい た是非はさておいて、個別的な条件、どういうものが考えられるかということについて 最初に中谷先生がおっしゃったように、順にIの(1)あたりから検討しておくことが これは最終的に是認するにせよ、否認するにせよ、こういうところも目配せしています よということを示すためにも必要だと思います。 ○中谷委員長  そう思います。順次御意見を述べていただいて、いかがでしょうか。 ○石井(美)委員  丸山先生の意見も、最後にきちんと矢内原先生の問題提起にはここで答えなくてはい けないということにまず賛成をしたいのですが、私は丸山先生と違って、最初に、その 大問題について、ここで話し合って答えが出るとは思わないのです。でもここの場で一 度やらなくてはいけないと思うのです。それをやった上で、細かい話をし、そしてもう 一度最終的に議論した方がよいのではないか。時間はかかるかもしれませんけど、その 方がよいと思います。  矢内原先生の問題提起を最初に、一定の時間をとって問題提起に時間をさいた方がよ いと思います。 ○中谷委員長  方向はわかりましたけれど、事務局としてはどうお考えですか。方法論について、課 長いかがですか。 ○母子保健課長  先生方で御議論していただれば。 ○中谷委員長  先ほど高橋委員がおっしゃられたように、卵の提供ということについても積極的にと いうことですが、提供者は得られるんですか。 ○高橋委員  卵の提供者を探し出すことは難しいと思います。それから、それのインフォームドコ ンセントはもちろんのことですが、周辺のいろいろな方々、親戚、兄弟に相談するかも 知れません。また卵のドナーの数は非常に少ないだろうと思います。ドナーが非常に少 ないのであれば、将来の研究とかいろんなことを考えたら、禁止ではなしに、条件付で 認める方がよい。それほどこれは医療には使われないのではないかなと思いますね。  本当に子供が欲しい人は、兄弟や特別親しい間柄の人からもらってくるでしょう。社 会に迷惑かけないとか、いろんな条件を満たした上で、なおかつ子供欲しいというよう な方、そういう方はほんのわずかだと思います。従って、禁止すべきではなくて、条件 付で認める方向で考えたらいいのではないかというのが私の考えです。 ○中谷委員長  高橋委員は日本人でいらっしゃるんですね。というのは、外国ではドナーとレシピエ ントは匿名なんですね。お互いにだれがだれからもらったとか、あげたとかということ がわからない。ところが日本の場合は、身内の人、親戚からという意識調査についてそ れが非常にはっきりしてましてね。 ○加藤委員  生体肝移植も近親者からの提供は認めないというのがあるでしょう。 ○中谷委員長  生体肝移植は近親者じゃないですか。 ○加藤委員  日本では近親者だけど、外国では近親者からの生体肝移植を認めないというところは あるんじゃないですか。それはないですか。 ○中谷委員長  生体肝移植は日本ほど行われてないし、脳死の臓器移植の場合は近親者でないという ふうな。 ○加藤委員  批判としてはよく言われますよね。近親者からというのはかえって危険だという。 ○高橋委員  もう一つは、商取引の対象にしないとかそういう条件が入るでしょう。実際に提供者 でお金も受け取らずに提供する人は皆無だと思うんです。それから、実費だけとか言う のはきれい事だと思います。そこでは必ず別な金が動いたり、将来ごたごたが出ると思 います。ですから商取引の対象にしない、実費でやれ、謝金でやれというのであれば、 そういうことができるのは近親者とか親しい人とか、そういう人に限られると思いま す。 ○中谷委員長  その点はいかがでしょうか。 ○矢内原委員  相談が出る、商談。 ○高橋委員  商談です。 ○矢内原委員  商談の相談があると。 ○高橋委員  相談でもあります。 ○矢内原委員  金銭の取引はやむを得ないということですか。 ○高橋委員  やむを得ないと言っているんじゃないです。そういうことが起こり得るだろうという ことです。 ○矢内原委員  起こり得るね。 ○高橋委員  それには反対ですけれども、現実の問題としてやはりそういう方向にいく可能性があ るのではないかと思います。 ○中谷委員長  エッグ・ドネーションの場合も精子のドネーションの場合も、精子については現実に 幾らか払っていますよね。その程度でエッグ・ドネーションの場合はだめですか。 ○高橋委員  最近は外来で経膣的に卵胞から卵をとります。採卵の時も、消毒をし、器具を使い、 場合によっては鎮痛剤も使い、鎮痛剤を使わない人もいますけれども、ほとんどは使っ ています。採卵のときに、まれに血管を刺して開腹したという人もいますし、そういう リスクが伴うわけです。そういうリスクをあらかじめ説明しても、なおかつ無報酬で卵 を提供してくれるという人は実際にはいないと思うんです。 ○中谷委員長  そのときの費用はもちろんレシピエントの方が費用を払うわけですね。 ○吉村委員  今はそうですね。報酬料として、アメリカは普通一般的には 2,500ドルですね。最近 高くなって 5,000ドルだと言われています。 5,000ドルだと60万ぐらいですね。 ○矢内原委員 留学生が多いみたいですね。 ○辰巳委員 そうなると実際のところはほとんど姉妹がドナーになるわけで、そうしますと、それ が当たり前みたいになってくると、強要される姉妹がいっぱい出てくる。お姉さんのた めにあなた何とかしてあげなさいよというふうなことがいっぱい起こってくると思いま すね。その辺の善悪というところ、やはりそういうふうなことを最初にちょっとお話し しなくてはいけないのではないかと思います。 ○中谷委員長 そういうような話をするのに、ちょうど脳死、臓器移植の場合と同じように、コーデ ィネーターみたいな方はいないのですか。全部産婦人科、お医者さんが説明をするんで すか。 ○辰巳委員 全部ですか。 ○中谷委員長  はい。 ○辰巳委員 IVFコーディネーターというのを置いているところもあります。 ○丸山委員 質問したいのですが、卵は凍結保存はできないんですか。 ○中谷委員長 卵はできませんね。 ○吉村委員 受精卵は凍結しますが、卵はやった研究者もいますけど、ほとんどできないとお考え になって結構だと思います。 ○丸山委員 これから技術が進歩したら。 ○吉村委員 それは可能になると思います。 ○丸山委員 という質問していますのは、最初、我が国でしたら、近親者内からの提供と、残りも のの利用があり得るのではないかと。卵も採卵しましたけど、もうできてしまったから 要らないわというのを保存できれば、そのあたりから広がるのかなという感じはするん ですよ。 ○田中委員 受精卵がありますね。 ○丸山委員 受精卵はアンケートだと容認度が低いんですね。ですから、そのあたりを考えると難 しいかなと思います。 ○辰巳委員 受精卵提供ですが、これは建前上は精子もだめ、卵子もだめなカップルがだれかに頼 んで、第三者の精子と卵子で受精卵を作ってもらってということになっていますけれど も、実際のところは、凍結保存をしていて、その人たちが子供ができたので、もう子供 は要らないといった場合に、たくさん凍結した受精卵が余ってくる。それをだれかに提 供しても良いですがどうですかというふうな形がほとんどじゃないかなと思うんです ね。 だから、この流れでいくと、まるで第三者の男子と女子に頼んで受精卵をつくっても らってという形で書いていますけれども、実際上は凍結保存をして、もう使われなくな った受精卵を使うという形になると思うのです。それをちょっと認識しておいていただ いた方がいいかなと思います。 ○母子保健課長 その辺はもちろん十分認識した上でこういう条件をつけて、要するにそういうものは 容認しないという形のペーパーなんです。 ○辰巳委員 そうなんですか、わかりました。 ○母子保健課長 そういうものも容認すべきではないかということであれば、現実的な可能性としては イギリスなどでやられているように、余った受精卵を本人たちの了承を得て、廃棄しま すか、それともほかの方にあげますかというふうなことをやっていますので、現実的に はドナーということからすれば、利用価値は相当あるのかもしれませんが、ただ、それ を精子がある程度使えるカップルに渡すとか、あるいは卵子はある程度使えるカップル に渡すということを果たして許容すべきかどうかということで、一応この案ではそれは 条件に該当しないのではないかと意識して書いています。ですから、それは取っ払って もいいんじゃないか、そこら辺もいいのではないかということであれば、また、ここで そういうところは外して、現実的に促進するような方向であれば、そういう御意見でも よろしいかと思います。 ○中谷委員長 余剰の凍結した受精卵を他の方に提供することについて同意が得られるか、それもち ょっと問題ですね。 ○辰巳委員 そこが一番大事というか、難しいところだと思います。 ○中谷委員長 だから研究のために使用するのはいいけれども、提供はしたくないという考えの人が 結構多いのではないかと思いますけれども。 ○丸山委員 私、最初に卵の凍結保存というふうに聞きましたのは、前回、国民以外の方でも技術 別の表をつくってくださいとお願いしたんですけど、結局なくて、私、山縣先生にお願 いして、大変お忙しい中、申し訳なかったのですが、つくってもらいました。もし皆さ んにお配りするようでしたら、後でコピーしていただいていいんですけど、登録産婦人 科の先生方の意見でもやはり受精卵提供は許容度低いんですね。精子、卵子の提供より もやっぱり落ちてしまうんですね。ですから受精卵の残ったから使いましょうというの は、日本では、残ったから使いましょうというのでは、実際上の可能性がありそうなん ですが、概念自体としては低いのでしょうね。血縁主義なんですかね。 ○辰巳委員 外国の受精卵提供の利用はほとんど凍結して余った分をというふうなことではないん でしょうか。 ○母子保健課長 イギリスあたりを見ているとそういう感じですよね。 ○吉村委員 大体そうです。ただ、これは第三者の精子、第三者の卵子、受精卵、体外受精。対象 者を見ますと、こういう症例でしっかりとした適応を考えてする場合、私、別に産婦人 科医を信用してないというわけではないんですけど、こういう適応で本来ならやられる べきことなんです。  ただ、一般の診療している場合に、この適応が本当に守られるかどうか。例えば第三 者の精子を用いた体外受精は症例としては極めて少ない。ただ、第三者の卵子に対する 提供はある程度対象となる患者はあると思うんです。早発閉経とか早く月経 がなくなってしまって卵がなくなるとか、これは非常に多いと思うんです。第三者の精 子を用いた体外受精ということはどういうことかというと、御主人が全く無精子症であ って、なおかつ奥様が体外受精をしなければいけない何らかのファクターがあるという ことですね。ほとんどこういう患者さんはお見えにならないのではないかと私は思いま す。 ただ、精子はあるけど、体外受精で妊娠しないから、他人の精子で体外受精してしま うということは、私は絶対ないとは言い切れない。かなり拡大解釈をされて、非配偶者 間の体外受精が許されるのであるから、ドナーの精子を使っていこうかというようなこ とは、現実の医療としてあり得るのではないかと、私はそういう点を非常に危惧するの です。 ○丸山委員  そういう場合は提供精子よりも顕微授精などでやる方が多いから、提供精子というの は実際上ないのではないかということなんですか。 ◯吉村委員  いや、そうではなくて、顕微授精をやっても妊娠しないと、そういう場合に第三者の 精子を使って普通の体外受精をして子供をつくろうということだってあり得るのではな いか。 ○丸山委員 あり得る方なんですか。 ○吉村委員 あり得るのではないかなと私は心配するだけであって、これは。 ○丸山委員 あり得るけれども、数は少ないだろう。 ○加藤委員 名目的な理由が多いという。 ○吉村委員 そういうことですね。だから、体外受精やっても顕微授精やっても妊娠しないから、 じゃあ、ちょっとドナーの精子をいただいて、それで子供をつくってあげようかという 気持ちになる医師が多いのではないかと心配するのです。ただ、厳密な意味で、こうい う適応を考えて、ここに書いてくださった適応のための規準は正しいと思うんですね。 この適応が本当に守られるかどうかということが私は心配です。 ○母子保健課長 ここは「実施機関」のところで、これはどういうふうに後考えていくかというところ はありますけれども、別に私共はやることを前提に考えているわけではなくて、この前 提として、前段の方は一応やるという場合にはこういうことは考えなければいけないの ではないかというふうに書いてありますが、この実施機関をどれくらいの形で考えるか ということにもよると思うんですね。カウンセラーとか、ある一定以上の、それこそ多 分その中に個別のケースに対する倫理的検討みたいなものが必要になってくるのだろう と思うんですね。その際に、吉村先生がおっしゃるように、たまたま適当なケースがあ ったからやるというふうな機関にはならないようにしなければいけないのではないかな と思います。 ○石井(ト)委員 ちょっと話は違いますが、先ほど高年の女性に対して卵子を提供するということで、 先生は年齢制限しないというような趣旨のお話しましたよね。 ○丸山委員 いや。 ○石井(ト)委員  と申しましたのは、例えば、60歳の人が妊娠して子供を産みますと、子供の立場から 見たときには、その子が20歳になるときは80歳ですね。人間は永遠に生命があるわけで はないので、ある程度常識的な考え方があると思います。ですから、そういう社会的な ことも考えなければいけないと思いますし、吉村先生おっしゃるとおりで、高齢になれ ば、合併症の危険率が高くなります。ですから、医学的、社会的要因も範疇に入れて条 件付きのあり方があるのではないかと感じています。 ○丸山委員  前半の養育に耐えられるかというのはおっしゃるとおりだと思います。私が申したか ったのは、 800分の1の妊産婦死亡率、あるいはそれが高齢になるとともに高くなって 100分の1、50分の1になっても、その数値だけではやってはいけませんよということの 根拠にはならないのではないかということで、ほかのことを考えなければならないとい うのはもちろんそうで、それを考え合わせると、おっしゃるように、45歳、50歳ぐらい が限界、これ以上は認められないという限界だろうと思いますけど。 ○加藤委員  自然に産まれる場合でも高齢の場合はやっぱり危険度は高い。 ○石井(ト)委員  妊娠経過中に合併症が出やすい。 ○吉村委員  40歳以上では圧倒的に高くなります。大体6倍ぐらいですね。5倍は完全にありま す。 ○加藤委員  高齢者が妊娠すると、「あんたやめた方がいいですよ」と言うんですか。 ○吉村委員  そんなことは言いません。ただ、そういうデータが出ておりますということでありま して、自然妊娠された方は決してそんなこと言えません。 ○矢内原委員  特別なマーク、「マル高」がついております。 ○吉村委員  産科の医師としても注意しておかないと出血死がありますし、妊娠中毒症が必ず出て まいりますし、胎児がお腹の中で死亡する場合もあります。40歳以上になるとそれらの 頻度が非常に高くなります。10万人対で、35から39歳は24.5、40歳以上が 124.7。イギ リスでもブリンスデンさんにお聞きしても、50歳以上の方が妊娠がどうだったかという データがないんです。そういうことになってくると、こういった厚生省の今までのデー タでしか類推することができないわけで、全く妊婦管理がよくて余り変わらないかもし れません。 ○石井(ト)委員  危険度というのは理論的に先生出せるんですよね。 ○吉村委員 出せると思うけど、結構高い。 ○矢内原委員 卵の提供が必要な人にいいといったときに、年齢の制限ができますかね。 ○吉村委員 提供者ですか、もらう方ですか。 ○矢内原委員 受け取る。 ○吉村委員 レシピエントですか。 ○矢内原委員 今言った危険率、ご自分は死んでもいいから、50人中49人は助かるんだから、私はも う一回母親になってみたいですと。 ○丸山委員 イギリスにはあったんじゃないですか。 ○吉村委員 60ぐらいであります、お母さんの場合。 ○中谷委員長 イギリスはドナーの方が問題、ドネーションの問題。 ○丸山委員 ドネーションもありましたが、レシピエントはなかったですか。 ○吉村委員 レシピエントはないです。 ○中谷委員長 レシピエントはないです。 ○吉村委員 お母様が娘のために産むということはよくある。 ○中谷委員長 それはあるんですね。 ○矢内原委員 こういう方法ができたという、最初学会でも娘の子供を産んでやるというのは美談だ というふうにみんな我々は思いましたですね。だけど、今の議論でいって、卵の提供と いうことを突き詰めていくと、子供をこの年になってあきらめた夫婦にすごい望みがで きるわけですね。そうすると50歳同士の夫婦、またその年以上の人たちがどっと、よし もう一遍頑張ってみようと、女房には卵は出ないけど、卵もらえるそうだということの 適用をどういう形で禁止するかということはできないと思うんですね。 ○辰巳委員  生殖補助医療が周産期医療に随分多胎ということで圧迫、圧迫というか、負担をかけ ているところがあります。これにうんと高齢のハイリスクがうんと増えてくるというこ とになるとますます周産期医療が圧迫されるので、周産期医療の先生はまた随分苦労さ れるのではないかなと思うんです。そういう面と、それから御本人にすごい危険がある ということ。ですからやはり年齢制限というのは私は大事ではないかなと思います。や はり50分の1と言われても、多分1でなくて49だと思ってやられるわけでしょうね。 ○加藤委員  それは競馬だって何だってそうですよ。(笑)。 ○吉村委員  だから、そういうのは、この前の矢内原先生のとられた調査でも産婦人科と小児科医 はかなりのギャップがあるんですね。それは出た方をずっと見ていかなくちゃいけない という方はやはり生殖医療に対して疑問視されているんですね。だから、私たち産婦人 科医としては、小児科医がかなり一般の国民より反対して見えるということをもう少し 我々もそういうことを理解すべきではないかなと思ったりもするんです。 ○矢内原委員  新生児学会へ行ったときに、出生前診断、つまり妊娠中の胎児の診断ですら小児科の 先生は次のことを考えないで勝手に診断技術が、これがわかった、これが出生前でわか ったと言っている婦人科医はけしからんと、その次のことを考えないと。むしろ患者に インフォームドする方が間違っているというような議論があるのです。  ですから、我々の認識は、出生前にこれだけ子供のことがわかればという進歩を学会 で発表しても、小児科としては、その後始末を我々がやるんだよと。ですから、そのこ とを患者さんに言うことすら、また、そういう診断技術ができてくることが本当に子供 にとって幸福か不幸かということを考えなさいと。ですから意識が同じ医師でもそうい う意味では違います。なるほどなと思った。 ○中谷委員長  考え方によっては、障害があるということが決して不幸であるということを考えちゃ いけない、そういう考え方もありますのでね。 ○矢内原委員  そのとおりです。 ○中谷委員長  ほかによろしいですか。 ○矢内原委員  どうしてもこの順番でいかなければいけないんですか。逆からいってはいけないんで すか。 ○中谷委員長  いいです、逆でも何でも、どうぞ。 ○矢内原委員  例えば、借り腹とか代理母の一連に流れが上からきていますよね。精子、卵子、胚提 供と、その次に代理母があり、借り腹というような形になっていくのでしょうけれども きょうのテーマがもしドネーションであるならば、胚のドネーション、卵のドネーショ ン、精子のドネーションと逆行していってもいいですか。 ○中谷委員長  よろしいですよ。 ○矢内原委員  ちょっとお伺いしたいんですけれども、今法律的にこういう生殖医療で決められてい るということは1つ昔の堕胎法がありますね。それからもう一つ母体保護法があります ね。もう一つは親子の認知ですか、その3つだけですか、法律的に決められたことは。 ○中谷委員長  そうですね。親子関係については何もないと言っていいですね。 ○矢内原委員  民法ではありますでしょう。 ○丸山委員  民法の規定。 ○矢内原委員  中にはありますね。 ○中谷委員長  親子。 ○矢内原委員  その3つだけですね。 ○中谷委員長 はい。 ○丸山委員  石井(美)先生がお詳しいと思いますが。 ○石井(美)委員  親子については、生殖補助医療についてあるわけではなくて、一般的な規定です。 ○矢内原委員  産んだ母親は母親であると。 ○石井(美)委員  という規定はないですけれども。 ○中谷委員長  ローマ法以来、「母は確定す。されど父は確定せず。」という法諺があります。 ○矢内原委員  日本の法律にないんですか。あったと思ったけど。 ○石井(ト)委員  私はあると思っていましたけど、違いますか。産んだ母親が母親であるという規定、 民法でありませんでした? ○石井(美)委員  民法には母親について、産んだ人が母であるという規定はありません。 ○石井(ト)委員 どういう言葉、それに類似した言葉ですか。 ○矢内原委員 そうなんですか。 ○丸山委員  嫡出否認もできるという条文になっているんですか。 ○石井(美)委員  いいえ。 ○丸山委員  母親が認知するという規定はあるんですか、民法の条文には。 ○石井(美)委員  非嫡出子については母の認知の規定はあります。 ○吉村委員  非嫡出子についてはでしょう。 ○石井(美)委員  そうです。 ○丸山委員  結婚外。 ○石井(美)委員  婚外子です。 ○丸山委員  だけど産んだ事実はわかっているんですよね。 ○石井(美)委員  はい。 ○丸山委員  だけど認知しないと母子関係も成立しない。 ○石井(美)委員  民法の規定は。 ○丸山委員  文言自体はね。 ○石井(美)委員  はい。 ○矢内原委員  自分で産んでおいても、これは自分の子供じゃないと言えるんですか。 ○石井(美)委員  いえ、最高裁の判例はそれを否定して、分娩の事実で母子関係は決まるということに なっている。 ○丸山委員  もともと民法の規定は母の認知があるんですね。 ○石井(美)委員  非嫡出子です。嫡出子については母の規定はありません。 ○矢内原委員  1年又は1年以内に認知すれば嫡出子になる。 ○吉村委員  夫の規定は 772条第1項しかないんですよ。 ○石井(美)委員  その後に嫡出否認等の規定があります。 ○吉村委員  ありますね。 ○加藤委員  それとさっき矢内原先生がおっしゃった御主人の精子と奥様の卵子で第三者のおなか で産まれた場合に、それは絶対第三者の赤ちゃんだとして法律上届けなければいけない という拘束はないんですか。 ○石井(美)委員  今規定はないと言いましたけれど、民法は産んだ人が母であるという前提になってま すから、産んでない子供を届けたとしても、通常は否定されると思います。ただ、わか りませんから、戸籍上は載っておりますが、多分裁判で親子関係を否定される可能性は あると。 ○中谷委員長  正確に言えば、母親になるべき人は養子縁組かなんかしなければいけない。それで父 親になる人、夫の精子を使ったとすれば、夫はそれを認知すればいいということになる じゃないですかね。 ○吉村委員  その場合、認知しなくちゃいけないですね。 ○石井(美)委員  夫は。 ○中谷委員長  正確にはね。そうしないと産んだ人が母親じゃなくて、代理母が母になるわけですか ら、その代理母が結婚していれば、その代理母の夫が父親ということになりかねない。 そういうことがあるわけですね。複雑ですよね。何も規定がないと同じですから。要す るにこれをいろいろと拝見していますと、とにかく日本の親子法は何とか考えてみなけ ればいけないという法の規定は非常に不備だということだけは確かですね。 ○吉村委員  それは思います。 ○中谷委員長  でも法律が介入するのはそこまでじゃないですかね。後はどういうふうにやるかなん ていうのは。 ○矢内原委員  法律を変えないでできることを考えたときに、そうでなければ小回りききませんから なるたけ法律で縛られたくないなというのが我々の考えです。 ○中谷委員長  もう一つ、私、いつか最高裁の判事さんに会ったときに話をしたんですけれども、児 童の権利条約というのがありますね。これは日本でも批准したわけですけど、それの第 7条の第1項だったと思いますが、子供が自分の真正な親だったか、本来の親だったか に養育される権利を有するというのがあったんですよね。だから「AIDの場合はどう なのかしらね」と話をしたことがありましたけど。そのとき、最高裁の判事さんは、 「そんなこと考えたこともありませんでした」と。民事局長に話したら、民事局長も 「そんなこと考えたことありませんでした」とおっしゃっていました。 ○加藤委員  子供を勝手にさらってきてどこかへ連れていっちゃうとか、無理やりどこか養子へや っちゃうとかというのはかわいそうだという、そういうことなんじゃないですか、考え 方は。 ○中谷委員長  そうでしょうね。そういう意味では、日本の法律は非常に不備だけれども、じゃあ、 法律がみんなそこに出しゃばっていいのかというとそうでもないですから、最低限のと ころだけ。 ○丸山委員  最低限の中には親子関係の決定は含まれるんですね。 ○中谷委員長  ええ、それは。 ○丸山委員  それについては手当てしないと法的に。 ○中谷委員長  例えば代理母が産んだ子でも、代理母の契約とか、出産が違法だといっても、子供が 産まれてますから、その子供の法的な身分をどうするかということだけは決めておかな いといけない訳で。イギリスだと裁判所で依頼者の嫡出子だということを裁判の決定に よって決めるという1990年法の30条に規定があり、更に1993年にその実施方法に関する 詳細な「規則」が制定されております。しかし、日本だったら裁判所でそれを決定する というのはとてもふさわしくありませんから、何か対応が必要なのかなと思います。 ○石井(ト)委員  代理母であれどのようなプロセスでも産まれた子供はすべて保護するということで法 律で規定しますと、そのような法を逆手にとって、先に子どもありきということで、あ らゆる生殖補助技術を用いてしまうということに成りかねないと思いますが。 ○丸山委員  子供には罪はないんだから。 ○石井(ト)委員  子供に罪はありません。ですから、正しい条件付が必要かと思います。 ○中谷委員長  ある意味で代理母というのは利用されるわけですからね。だから、そういう意味での 保護みたいなものが必要になってくる。 ○矢内原委員  学会は今足どめというか、足どまりをしてしまって、どうしていいかわからないのは IVFというテクニックの中に精子のドネーションを認めたらダダダッと借り腹まで結 局一括して考えなければだめだろうということです。そこで法律と整合性をとられない ところが出てくるに違いない。卵のドネーションのときには、精子のドネーションはA IDの歴史があるからいいかなという意見もあります。卵のドネーションという経験が ないわけですね。そのときにもし卵の提供者が母親権というものをもし要求してきたら どうだろうかと。それは匿名でない場合に親族だったら、どういうふうになるだろう と。 ○中谷委員長  親族だったら、それ以上に複雑な問題が生じるおそれがあると思います。フランスで 完全匿名制をとっているのもその意味で理解できます。 ○矢内原委員  ひっくり返せば、これは借り腹ではないかと、そこまで考えてしまうと、ちょっとこ こでもう一遍考えてみようといって、何もいけないと言っているわけではないんです、 どうしていいかわからない。ですから、こういうところで、皆さんのお知恵を拝借した いというのが本音だと思う。患者もいることは事実ですから、どうにかしてあげたいと いう、田中先生のおっしゃるのは1つも間違いはないし、みんなそう思っていると思う ので、ただ、そこには幾つかのステップがあって、それが全部つながっているじゃない かということが恐ろしい。 ○石井(ト)委員  先生、何年間にわたって産婦人科学会会告を出しておりますが、今の現状と照らして 今ここを何とかクリアーしたいというところでが幾つかありましたらポイントを示して いただきたいと思います。 ○矢内原委員  これは田中先生、吉村先生、皆さんドクターどうおっしゃるかわかりませんけれども 私は精子のところまではしようがないかななんて思っています。精子の提供、IVFに 関しては。卵の提供になりますと、本当に提供者が無償でそういう人がいるかどうか。 それから、当然金銭の授受がそこに加わってくると。だけど、そこを理論的にもし詰め られると同じ配偶子じゃないかということで、卵子と精子と同等に皆さんだれでもとる と思うんですね。ですから精子の前でとまっているんですけれども、順番的に決めてい くならば、そこから精子はいいじゃないかと、次は卵はどうだろう、卵に伴う問題どう だろうか、ここで言われた順番になっていってしまうんですけど、そうすると結局はな し崩しといったらおかしいですけど、最後に法律の問題でひっかかってくるだろうと。  そうだとしたら、法というものを変えないでやるためには、今の法律で応用していく ときに、逆に考えていった方がいいのではないかと、順番を変えてみたらどうですかと 申し上げたんです。吉村先生どう思いますか。 ○吉村委員  私は矢内原先生とちょっと違うんですけど、AIDに関しては、慣習法をあてはめて もよいのではないかという法律家の御意見もありました。それも非常につらいところが あるんですね。民法 772条第1項に当てはめて、昔はそれでよかったと思うのです。で すからAIDについても親子関係だけは明確に法律的に規定をつくることがまず先決だ と思うんです。 ○中谷委員長  私はそう考えています。 ○吉村委員  それがないとこの先を云々するということができないだろうと思うんです。例えば、 AIDした場合のドナーは精子を提供した段階で父親の権利を放棄するとか、AIDを 希望した夫婦が親として親権を認めるとか、そういうようなことだけでも決めていただ かないと。非配偶者間の体外受精なんてとんでもない話だということになってくると思 います。親子関係について法的な処置を講じなくてはいけない時代にきたのではないか と思います。  第三者の配偶子を用いた体外受精に関しては、やる、やらないは別としても、そうい うようなことが行われる可能性は今後あるわけですから、その辺も親子関係を確定する 法的措置があって、しかるべきと思います。 ○矢内原委員 だから逆からいく、同じことですね(笑)。 ○田中委員 最近、国会で不妊症治療を保険にしてはどうかということが出ていますね。こういう ことが、マスコミの場に登場するのは初めてだと思います。もし不妊治療が法案が通り 保険適用となれば、こういう問題は我々の間だけでなくはっきりした形を作っておかな ければいけないと思います。 ○中谷委員長 こういう生殖補助医療技術に関してはほとんど法的な規定がないように見えるアメリ カでさえ1973年にUniform Parentage Act(統一親子関係法)というのをつくっているん ですね。それで提供者は生まれた子どもとの親子関係はない、父親としての権利も義務 もないと。それで依頼した夫婦が親だということを決めているわけですけれども、そう いう規定も日本にはないわけで、ほかではみんなあるわけですけれども、やっぱり少な くともその点は明確にするのがこの委員会の大きな使命というか課題ではないかと私自 身は考えておりますけれども、石井(美)委員いかがでしょうか。 ○石井(美)委員 私もそう思いますが、全体としてどこまでを法にするとか、ガイドラインにするかと いうのは全体の枠組みをつくってからの方がよろしいのではないでしょうか。これまで は学会に任せられるとか、通達にできるとか、どこまでを法にするかというのは全体の 中で決まってくるのではないかと思います。 ○中谷委員長 法で決めなければならないのは、その点だけではないかと私は思っているんですけど ガイドラインみたいなものは学会にお任せするのか、学会とは別の公的な機関を考えて 決定し、かつ許認可権を与えるようにするか、そういうことはこれからまたご議論いた だかなければいけないのではないかと思っていますけれども。 ○石井(美)委員 代理母をもし禁止するとすれば、それは法律にしない限りは禁止したにはならないだ ろうと思いますし、それは胚提供でも卵の提供でも、もし禁止するということであれば 法によるのかどうかということはやはり考えなくてはいけない問題だろうと思います。 実施機関を制限するというのも学会任せで済むのかどうか。実施機関は認められた機関 に限るという一文だけでも法律が必要かもしれません。認める基準まで法律で決めるこ とはできないにしても、カウンセリングをしなくてはいけないとか、そういうことを法 律にしなくていいかどうかということもやはり検討は必要なのだろうと思います。 ○中谷委員長 カウンセリングを前提とするということになりますと、その制度の確立としては大変 ですね。本当に大変でして、このたたき台の中にも出てくるんですけれども、言うは易 くてなかなかこれはできない。システムづくりが大変ではないかなと考えられるところ が多かったんですけれども。 ○石井(美)委員 そのシステムができないから、やっぱりやってはいけないということにするのか、や る以上は絶対それをつくらなくてはいけないということにするのかというのもなかなか 難しい議論だと思うのですけれども。 ○石井(ト)委員  今、カウンセリングの養成みたいのを一部ではやっていますね。 ○中谷委員長  そうですか。 ○石井(ト)委員  岩手でもそろそろそういう形でちょっとしてみようかとなっていますので。 ○中谷委員長 矢内原委員のところはいかがですか。 ○矢内原委員 カウンセリングですか。 ○中谷委員長  はい。 ○矢内原委員  カウセリングのことに関しては非常に大切だなということで、今度の学術身会のプロ グラムの中でカウンセリングのワークショップつくりますけれども、今までやはりない がしろにされてきたんですね。ですから本当いうと、今のカウンセリングを含めた医療 パートの施設の認可制ということとクォリティーコントロールということを、あるオー ソリティがきちんとやらないとだめだと思うのです。 ○中谷委員長 そのカウンセラーの養成の何ていうんですか。 ○矢内原委員 そういう教育システムですか。それは日本にはないですね。必要だと思います。 ○中谷委員長 どれだけの講義を受けたとか受けないとか、そこまでやらないとなかなかうまくいか ないだろうと思いますけれども。 ○石井(ト)委員 私は、以前にも申し上げましたが、助産婦は生殖に深く関係しておりますので、適切 な指導をしています。医師は、丁寧に説明していますが、時間的制約がありますので、 遠慮し、質問したくてもできない患者がいます。また、医師には聞けないが、助産婦に は聞くことができるという状況もあります。ですから、特別にトレーニングし、カウン セリングの役割を担うことによって、患者にとって最善の選択と、支援ができると思い ます。すでに、そのような養成セミナーが開催されているようです。 ○辰巳委員 前も一度言ったのですが、日本生殖医療協会というのを自治医大の荒木先生がつくら れまして、そこでIVFコーディネーター、不妊カウンセラー養成講座というのを今で 5回ぐらいやっておりまして、3回それを受講した方々にはそれなりの認定状みたいな ものを出しております。 ○中谷委員長  そういう認定状を受けた人は身分の保証とつながるんですか。 ○辰巳委員  今のところは何も全くそういうのはありません。 ○中谷委員長  それにつながらないとなかなかね。 ○辰巳委員  ただ皆さん、すごく熱心で、私も講師をしたことがあるんですけれども、二百何十人 全国から、それは別に助産婦に限らずに看護婦さんもいれば臨床検査技師の人もいま す。この分野にかかわっておられる人で、そういう仕事をしてみたいという人たちが集 まってすごく熱心に勉強していますね。だから、もう少しきちんとした資格というふう な形でつくっていけば、そういう仕事をしたいという希望者は随分多くいらっしゃると 思います。 ○中谷委員長  そういう情報は委員の方々はご存じでいらっしゃるわけですね。 ○吉村委員  あります。 ○中谷委員長  丸山委員どうぞ。 ○丸山委員  親子関係、出生児の法的地位のところに戻ってよければ戻りたいんですけど、家族法 の人はどう考えているんですか。去年の学会、家族、社会と法学会のシンポジウム、最 後の1時間ほどしか出席できなかったのですが、その議論を聞いていると、意外という か、AIDについて夫婦の嫡出子として認めるというのは少なかったように思うんです けれど。 ○石井(美)委員  私の認識では多数説は嫡出子だと思うのですが。 ○丸山委員  そうですか。 ○石井(美)委員  ええ。というか、みんなが論じているわけではありませんし。 ○丸山委員  たたき台の7ページの上の方に、「国民の意識の動向」として、AID、精子提供、 卵子提供の体外受精について、60%近くの人たちが「夫婦の実子とする」というのがあ るのですが、その国民一般の意識調査の結果と余り違わない。 ○石井(美)委員  いや、家族法学者にアンケートやったことがありませんから、それはわからない。 ○丸山委員  大体の認識も。 ○石井(美)委員  学会で決議したり、そういうことをするものはないですし。 ○丸山委員  決議は日本の学会はしないと思いますけれども、世界の界の方の学界では、最初に去 年の家族法学会のことを例に出したのはまずかったんですけれども、家族法専門家の意 見の大方の趨勢はどうなんですか。 ○石井(美)委員  私の認識はさっきも述べましたように、多数説は摘出子だというふうに思う。 ○丸山委員  嫡出子でいいと。 ○石井(美)委員  それは子供にとって一番そちらの方が保護になりますから、というところが大きいだ ろうと思いますけれど。 ○丸山委員  戸籍もそのまま嫡出子として書いてしまう。 ○石井(美)委員  それについては反対意見もあるわけです、非嫡出子、養子という意見も。 ○丸山委員  それが多数でもないんですか。 ○石井(美)委員  推定されない嫡出子という考えもあります。 ○丸山委員  非嫡出子、養子というのが過半数を占めるという状況ではないんですか。 ○石井(美)委員  私はそうは思っていませんが、わかりません。 ○中谷委員長  親子法で決めているところは大体嫡出子でやっていますよね。 ○丸山委員  先ほど先生がおっしゃいましたユニフォーム・ペアレンテージ・アクトみたいにあっ さり言い切ってしまうのが私は自然かなと思っていたんですけど、去年のあのシンポに 出ていると異論が幾つか出されて、そうでない説の方が強いのかなという印象を持ちま したので、ちょっとしつこくお尋ねしました。 ○石井(美)委員  逆に、英米法学者である丸山委員に伺いたいんですが、アメリカのユニフォームアク トもそうですけれども、アズ、イフですね。実子とは言ってない。実子と同様に扱うと いう意見がありますが。 ○丸山委員  現実には違うのでアズ、イフといっていますけど、だけど、「実父と扱う」、「実子 と扱う」というニュアンスだと思うのですが。 ○石井(美)委員  そういう意味では法律がないところで、どう位置づけるかという問題としては、現行 法で、子供にとって一番保護になる、夫の同意があれば、その夫の子とするというふう に考える方が多数だろうと思っているんですが、私も全部の教科書、それぞれについて 何て言っているか調べたわけではありません、従来はそこまで言っている教科書は少な かったと思いますが、最近は言及される教科書も少なくはないと思います。家族法学者 が私法学会でAIDについて最初に議論した時でも多数はそちらの方ではないかと私は 思っていたのですけれども。 ○丸山委員  我々が小学生だったころの議論ですか。 ○石井(美)委員  ええ。 ○中谷委員長  それはここで御提案申し上げますけれども、実はこの件について、ある雑誌社の依頼 を受けまして特集号をつくることになりまして、それに唄先生に御執筆いただくことを お願いいたしましたら、そういう点について書きたいとおっしゃっていらっしゃるので こちらに来て一度、昭和36年秋の第17回日本私法学会での議論等についてヒアリングを していただいたらどうかと思いますが、事務局の方いかがですか。唄先生にはちょっと 御相談したら、それについて書くから、それが8月末締め切りの原稿ですので、その後 でしたらということだったんですけど。 ○母子保健課長  それは特に差し支えないと思いますが、先ほどきょうの議論でもうちょっと議論を深 めて、さらに議論を重ねる必要があるのであれば、そういった外部の方の、有識者とい いますか、御意見をお聞きすることも1つ必要なことではないかなという気がします。 ○中谷委員長  一応御検討下さいますか。 ○母子保健課長  はい。一応国民の意見は調査したわけですね。それから、各委員の御意見はいただい ているわけですね。そういったものをもとにこのたたき台をつくったわけですが、いわ ゆるこういったことに造詣が深い、この委員会以外の方々のご意見も聞いた上で、さら に議論を深めるということは必要かなという気がしております。 ○中谷委員長  吉村委員がずっとやっておられるAIDについて、一応民法の 772条の1項というの をよりどころにしてらっしゃると思うんですが、その点については、そのときの学会で は、シニアの先生方は大方で反対だった。だけど、大半の人は賛成の人もいるし、反対 の人もいて、要するに態度決定はなかったということなんですけれども、私はそのころ 刑法ばかりやってましたから、私法学会に出ることがありませんでしたし、両先生はま だ幼くていらっしゃったので、その学会に御出席ではなかったものですから、それをき ちんと証言していただける。そのときの司会は北大の宮崎孝次郎先生だったんですけれ ども、唄先生がその件については詳しいものですから、一度お話を承ったらどうかなと いうことで御提案申し上げます。御検討くださいませ。 ○母子保健課長  ついでに、他の先生方でお呼びしたい、あるいはお話しを聞いた方がいいのではない かという委員の先生方の御要望等があれば、今でも結構ですし、あるいは後ほどでも結 構ですが、御提案いただければ、また、中谷委員長先生にも相談しながら、何回程度が 適当か、あるいはどなたをさらに呼んでお話を聞くことが適当かということも御相談さ せていただきたいと思います。 ○中谷委員長  関連がありますのでお伺いしますけれども、もう一つの専門委員会、「出生前診断」 に関する専門委員会がありますが、こちらは大体議論が終わられたわけですか。 ○母子保健課長  一応トリプルマーカーについては議論を終えました。出生前診断一般につきましては 各委員の御意見をお聞きしたのですが、なかなか難しいことと、緊急に取り上げて議論 するテーマというのは出てないのではないかというふうなことで、何かそういうものが 出てきたら、専門委員としてはまだ任期が相当ありますので、その時にまた議論してい ただくということで、とりあえずはトリプルマーカーの通知をおととい(21日付)出さ せていただいて、一応終了しています。 ○中谷委員長  そちらの御議論の結果も伺わせていただければ、関連が全然ないわけではなさそうで ございますので。 ○母子保健課長  それは次回にでも時間をとらせていただいて、その結論を御報告させていただきま す。 ○中谷委員長  そうしていただければ幸いです。ありがとうございました。 ○加藤委員   772条についてはどこか検討委員会が開かれているとか、学会レベルで諮問が出てい るとか、そういうことはないんですか。 ○石井(美)委員 法務省の方はどうなったのですか。中谷先生が最初のときに法務省のことでおっしゃ っていたと思いますが。 ○加藤委員 奥田先生のところでやってないんですか。 ○石井(美)委員 奥田先生は最高裁。 ○加藤委員 最高裁へ行っちゃったからお役御免で。 ○中谷委員長 最高裁の判事さんと個人的にお目にかかったとき話をしただけで、別にそういう機会 にそういう議論をするという場ではなかったのです。 ○加藤委員 772 条について、こういう方向で法律を改正するとか、案が出ているとか、たたき台 が出ているとかということがあれば、それが一番関連性が深いのではないかという気が するんですけれども。 ○中谷委員長 法務省について、国会答弁の中で触れられたことがあったという。 ○石井(美)委員 この間いただきました。 ○武田主査 前回の資料で出させていただきましたが、法務省は同意があれば、嫡出否認できない と。1年間経過すれば親子関係は確定するというような趣旨の民事局長が答弁しており ます。ですから、特に改正に向けての具体的な動きはないと思います。 ○中谷委員長  ということだそうです。 ○石井(美)委員  先ほど矢内原先生がちょっとおっしゃったAIDがはじめて行われたときに学会とし て議論された記録について差し支えなかったら、ここでご紹介いただきたいと思いま す。 ○吉村委員  産婦人科学会ではないですね。当時の安藤画一産婦人科教授と小池隆一先生ですね。 ○中谷委員長  それが第17回日本私法学会なんですよ。 ○吉村委員  それが資料として残っているというものなんですね。 ○中谷委員長  本が。それは皆さん御存じで。 ○吉村委員  何とか叢書。 ○中谷委員長  要するに『私法』という学会誌の16号だったと思いますが、それをそのまんま本にし たものがありまして、慶應の、それは学会の議事録を完全にそのまま載せたものなんで す。  よろしゅうございましょうか。辰巳委員。 ○辰巳委員  親子関係に関する法律というのはつくろうとしてから、でき上がって法律になるまで どれぐらいかかるものなんでしょうか。 ○中谷委員長  さあ(笑)。 ○辰巳委員  それがないと動けないんじゃないでしょうか、現実的に。 ○中谷委員長  とてもできませんね。でもこちらの委員会の方で、そういう提案があったということ はある程度。 ○辰巳委員  それでつくられて。 ○中谷委員長  インフルエンスはあるだろうと思いますけど。 ○辰巳委員  それで実際法律になるというのは大体どんな感じなんでしょうか。 ○加藤委員  イギリスだって結構時間かかったという話この間聞きましたよね。 ○母子保健課長  ここでの議論がある程度まとまった後での話ですので、委員の先生方には、議論をま とめていただくのが最優先で、まとまった後どうしようかというのはまたその時点でじ っくりと我々の方で検討させていただきますので、よろしくお願いします。 ○中谷委員長  それでは、ほかの議事もございますので、まだまだ御議論はつきませんけれども、今 回はここまでといたします。事務局には今回の議論を踏まえてペーパーを修正していた だきたいと思います。よろしくお願いいたします。  それでは、議事の第2の「多胎・減数手術について」に移りたいと思います。事務局 が前回の議論を踏まえて、前回提出されたペーパーの修正を行っていますので、それに ついての御説明をお願いしたいと思います。 ○母子保健課長  その前にちょっと私どもの方からお願いがあるんですが、実はきょうの今の資料の3 ページ目のところのAIDの関係で、「HIV等の感染予防」ということで幾つかの項 目が出ているわけですが、前回、AIDを実施している吉村先生から、HIVの感染で ウインドーズ・ピリオドの関係で別添資料の2ページ目の下から2つ目の黒い枠で囲わ れていますHIV INFECTION THROUGH ARTIFICIAL I NSEMINATION(p728)というのがありますが、これは昨年の3月のLA NCETに掲載されたもののアブストラクトですが、ドイツでそういった感染例があっ て、初めに検査したときには検査データは陰性だったけれども、3カ月後に検査したら ポジティブであったと。それで実際にレシピエントの方は感染をしております。前回の お話のときに、AIDに関しては、凍結保存して、しかも6カ月保存して、その間に2 回検査をするといった形をとっていないというふうな話がありましたが、そこら辺も実 際にはこういった感染予防という観点から、これは議論とは別に、アメリカの勧告が机 上配付資料の1、やや黒い表紙のものですが、こちらの方にAmerican Society for Repr oductive Medicine というところから、こういったドナー・インセミネーションに関す る勧告が出ておりまして、この中にも2ページ目の右上の方にHIVの関係、あるいは 3ページ目の6というところでしょうか、この辺にHIV、B型肝炎、もうちょっと下 へいきますと、サイトメガロ・ウイルス等については、6カ月後に再度検査を実施する ということと、その間、凍結保存しておくべきだというふうなことで、フレッシュなも のは使わないといったことが出ております。これに基づきまして、私ども行政の方でも 現在AIDを実施している機関につきましては、これに従って行うようにというふうな ことで、患者さんの感染防止の危険性をゼロにするためにも必要かなと考えておりまし て、こういった趣旨に従った通知を出したいなと思っておりますが、その点に関して先 生方の御意見をお伺いできればと思います。 ○中谷委員長  関係される方はどなたもいらっしゃらないんじゃないですか。今、AID実施の施設 はどのくらいあるんですか。 ○吉村委員  14施設です。 ○石井(美)委員  どういう形で出されるんですか、通知というのは。 ○母子保健課長  AIDを実施する場合にはここにあるような段取りを踏んで、少なくとも凍結保存を 6カ月した上でAIDを実施してくださいと。その間にHIV等の検査は2回必ず実施 して、そういったウインドーズ・ピリオドの危険を排除するということです。  それと同時にこれまでの1万件やられておりますが、ほとんどそういう方が危険だと いうリスクはまずないと思いますけれども、一応エイズが流行し始めた時期以降に行っ た方で不安に思われる方については関係の医療機関で相談に乗るようにというふうなこ とを通知したいと考えております。それは日母、日産婦、日医それぞれの団体にお願い します。あと実際に行っている医療施設については、これはどういうふうにするか、ち ょっとまだ決めておりませんが、基本的には日産婦学会か、あるいは日母から直接当該 施設にお願いをしていただくというふうな形になろうかと思います。 ○石井(美)委員  趣旨には賛成なんですが、厚生省がAIDについて通知を出すというのはそれが初め てということで、AIDを行っている事実を認めるということなのか、それは行ってよ いということを、厚生省が認めたことを意味することになるのか、という理解が生まれ る可能性もあると思ったものですから。 ○母子保健課長  現在行われているということに対しては、いいか悪いかというのは審議中なわけです が、とりあえず危険があるということで、その件に関しては防止をしようという趣旨で マルかバツかということを明らかにしたわけではないということは明言したいと思いま すが。 ○中谷委員長  大変模範的な回答で。 ○母子保健課長  一応私どもの方からはそれだけです。 ○中谷委員長  どうもありがとうございました。  それでは、議題の2の方へ移らせていただきますが。 ○石井(美)委員  今のに関連して質問なのですが、卵子の提供ではHIVには感染するということはな いのですか。 ○吉村委員  可能性としてはあると思います。 ○中谷委員長  ありますでしょうね。 ○吉村委員  可能性としてはあります。 ○武田主査  どういう予防方法がいいかという知見がなかったものですから、書かなかっただけで す。 ○吉村委員  そうですね。 ○北島課長補佐  3ページ目のところに実施方法についてで、性感染症の予防というところにAIDと ありまして幾つか書かれているんですけど、特に専門の先生方、この表現ぶりといいま すか、内容についてちょっと御確認をいただきたいと思うんですが。 ○吉村委員  3ページ目のAIDのところですね。 ○北島課長補佐  はい。 ○吉村委員  いいと思いますけど。 ○田中委員  そうするとフレッシュなAIDは、2回の抗体検査で陰性の場合でもできないことに なるんですか。フレッシュ消毒液を用いたAIDはだめということですね。 ○中谷委員長  ということになりますね。 ○母子保健課長  アメリカのガイドラインがまさにそういう形です。 ○北島課長補佐  吉村先生のところでは。 ○吉村委員  私のところも7月から、この場合の議論を、1年ぐらい前からやりたかったんですが なかなか忙しくて準備ができなくてということもありましたが、7月1日から全例そう いうふうにいたしました。 ○加藤委員  安全性のチェックはこれ以外の方法はないんですか。 ○吉村委員  ないですね。潜伏期が8週なんです。HIVの検査で陽性に出るのに8週ぐらいかか りますから、どうしてもやっぱり置かないと、ダブルチェックしないと完全に、これで も完全に除去できるか、それはわかりませんけれども。HIVに関しては、中谷先生い つもおっしゃるんですけど、それは当然のことであって、私たちも前からわかっていた んですけど、一応7月から全例そういうふうにいたしました。 ○中谷委員長  それによって妊娠率が低くなるということのほかに費用としてはどのくらいかかるん ですか。 ○吉村委員  費用も、具体的に1人に幾らかかるかということをするのは難しいですね。 ○中谷委員長  それはもちろんレシピエントの方が負担をなさる。 ○吉村委員  負担は、1人、私のところでは 4,000円ぐらいに上げました。まだ上げてませんが、 9月から上げようかなと、患者さんにも御了解いただけるものと思っております。8月 はお休みですので。 ○丸山委員  凍結と直接関係ないんですが、4ページの2つ目のマルの遺伝性疾患の検査に関する 検査は慶應では何らかの対処なさっているんですか。何かの保因者であるかもしれない と。 ○吉村委員  いや、そういうことはほとんどやってません。お話だけですね。 ○丸山委員  提供者にお尋ねにはなる。 ○吉村委員  それはもちろんしています。 ○丸山委員  近親者にそういう病気の患者はいませんねという。 ○吉村委員  それは聞いておりますが、何も調べてはおりません。 ○石井(ト)委員  HIVの通知はいつ出す予定なんですか。 ○母子保健課長  できるだけ早く。きょう先生方にもご意見いただきましたので、これからできるだけ 早く。できるだけ早くというのは、1週間とかそんな期間は、内部の決裁がかかる期間 ぐらいですね。 ○石井(ト)委員  ありがとうございました。 ○中谷委員長  HIVによる感染症を予防するために、通知を出していただくということでよろしゅ うございましょうか。それでは、次に進めてください。 ○武田主査  資料2について御説明させていただきます。座らせていただきます。  前回、提出しました資料を修正したものでございます。修正点について御説明いたし ますと、1ページ目に「多胎妊娠危険性」の1つ目のマルの4行目、「五胎は」の部分 でございますが、±2499となっていたんですが、9 をとりました。 それから、2ページ目の1つ目のマルでございますが、以前は母体についての記述が ございませんでしたので、母体についての記述を入れたものでございます。  2つ目のマルで、「極めて不良」、ちょっと極めては言い過ぎではないかという指摘 がございまして、そういたしているものでございます。  3ページ目、下から2つ目のマルでございますが、「緊急避難的に」というのを、ち ょっとここも議論がございましたので取り除いております。  4ページ目、マルはございませんが、上のパラグラフの3行目ぐらいから、原則とし て3個以内というような議論がございましたが、こちらの方で「原則として、2個、受 精卵や子宮の状況によっては3個以内に制限することが適当である」、そのように改め させていただいております。  それから、4ページ目の下のマルの2行目、指摘議論、これは前回私の方で直させて いただいたものでございます。  それから、5ページ目の1つ目のマルの下の方でございますが、石井(美)先生から 御意見がございましたので、母体保護法の改正の必要はないというものに加えまして、 「なお、規定の解釈や見直しを含めて検討すべきとの意見もある」ということで加えさ せていただいております。  それから、次のマルでございますが、緊急避難の部分でございますが、ここも議論が ございましたので、ちょっと取り除いておるような形でございますが、ただ、「認めら れうるものと考える」としております。  それから、5ページ目の4つ目のマルでございますが、産み分けの部分でございます が、これは母体保護法に胎児条項がないという表現よりも「倫理的な観点から」という 表現の方がいいのではないかということで、これは書き換えております。  それから、5ページ目の最後、下から3つ目のマルでございますが、これは吉村先生 から御意見があった部分を加えております。  以上でございます。 ○辰巳委員  よろしいでしょうか。 ○中谷委員長  はい、どうぞ、辰巳委員。 ○辰巳委員  3ページの5の2つ目のマルなんですが、最後のパラグラフ、「また、凍結保存した 受精卵をタイミングよく子宮に移植することにより、受精卵2個の移植でも相当の妊娠 率が得られるという指摘もある」。やはり「凍結保存した」がちょっとやはりひっかか るんですが、「また、受精卵2個の移植でも相当の妊娠率が得られるという指摘もあ る」にしていただいた方がいいのではないでしょうか。凍結は余り前面に出さない方が いいように思います。  同じことが、次の4ページ目の一番上の3行目、「凍結保存した受精卵の移植では2 個でも相当の妊娠率」と書いていますが、これも「2個でも相当の妊娠率が得られる」 ということにとどめていただいた方がいいと思います。 ○中谷委員長  それでよろしゅうございますか。ほかに。 ○丸山委員   3のところは「2個でも」から文章始まるんですか。4ページの3行目。 ○辰巳委員  武田さん、何とかうまくしてほしいんですが。 ○武田主査  受精卵の移植は2個でもですか。 ○辰巳委員  「移植胚数は2個でも相当な妊娠率が得られることを踏まえ」という形にしていただ きたい。 ○中谷委員長  よろしゅうございますか。 ○辰巳委員  田中先生、2個、受精卵や子宮の状態によっては3個以内でよろしいですか。 ○田中委員  私は原則3個、経産婦は2個と考えております。 ○中谷委員長  よろしゅうございますか。 ○丸山委員  これから妊婦になろうとする方でも3個以内で大丈夫なものなんですか。前回年齢に 相関して妊娠率が増減するというお話しがあったと思うんですけれども。 ○辰巳委員  原則として2個で、悪い方については3個以内ということで、これでいいんじゃない かと思います。 ○中谷委員長  それでよろしいんでしょうか。よろしければ、議事2の多胎・減数手術について、前 回提出されたページの修正を行っています。これについて御説明をいただいて、それで 御議論に入りたいと思いますけれども、どうぞ、御自由に御意見をおっしゃってくださ いませ。いかがでしょうか。 ○石井(ト)委員  よろしいでしょうか。 ○中谷委員長  どうぞ、石井(ト)委員。 ○石井(ト)委員  後から資料が渡されたと思いますが、その説明をさせていただきたいと思います。 ○中谷委員長  これですか。 ○石井(ト)委員  実は前回話が出ておりました日母の会長だった森山豊先生が見解を示した資料です。 1993年、私が「多胎出産と倫理」の章の中で引用させていただきました。261ページをご らんになってください。上から9、「これらの状況を鑑み日本母性保護医協会(前名) は、1987年わが国で施行された多胎妊娠における多胎減少を目的とした手術に対して次 のような原則を打ち出した」ということが、この 1、 2、 3、 4という形で述べており ます。さらに括弧書きで「優生保護法にいう人工妊娠中絶に該当しないのみならず『人 間による生命の選択』という点からも容認されがたいものと思われる」と述べていま す。一応御参考のために、資料を提出させていただきました。 ○加藤委員  数日前の新聞に日母が新しい方針を出したと書いてありましたけれども、これとは違 う見解になったんですね。 ○石井(ト)委員  いいえ、前回の会議で、日母がどんな見解を出したのかということが、あいまいだっ たものですから、これで確認できたということです。 ○中谷委員長  日母の見解については皆様御存じでいらっしゃいますよね。もう一度、高橋委員御説 明いただけますか。 ○高橋委員  「母体保護法改正の問題点」という題の日本母性保護産婦人科医会の提言の案が、7 月17日でしょうか。 ○中谷委員長  17日、土曜日ですね。 ○高橋委員  そうです。理事会とその翌日の18日の全国支部長会議に出されたのです。それで、そ の問題点の1つが、「女性の権利に基づく人工妊娠中絶」です。要するにどういうとこ ろを改正したらいいかという、そういうところだけ抜粋して、この6ページの小冊子に して当日配布しました。先ほど事務局の方にお聞きしましたら、日母の方では公にする ことについては逡巡しているところもあるということですが……。 ○加藤委員  記者会見したんじゃないですか。 ○高橋委員  日母の方で逡巡しているので、これを配ることをためらっているという話ですけども 記者会見もしましたし、全国の支部長会で約 100名の方に配ったのであれば、ここに提 出してもいいのではないかというのが私の考えです。 ○北島課長補佐 日母の方にお話を私どもこういう検討されているというお話を承っております。関係 の方とか興味のある方に私どもがいただいてお渡しするというのはいかがということを お伺いしましたところ、まだ、内部でいろいろ意見をいただいていて、中身が変わる可 能性があるのでちょっと配布は早いのではないかと思っておられるというお返事でござ いまして、変わることを前提に、今、高橋委員がそういう御発言ございましたので、日 母の方で、この委員会に提供いただけるのであれば、また委員の先生方からぜひ配って ほしいという御要望があれば、それを会の方にお伝えして御相談をしたいと思います。 ○高橋委員  これをもとにして、日母の会員の方々から意見を聴取し、さらにこの案をどのように 改正するか考える。また、一方では公聴会のようなものを開いて、これに関心を持って いる方々の意見を聞くと。さらにその上でいろいろとディスカッションをして、また、 この委員会の考え方を参考にして、最終的に、議員立法のような形で提案したいという 考えを当日述べられたと思います。  そうしますと、私はこれを御希望ならお上げしてもいいと思うのですが。 ○母子保健課長  先生の御判断でお配りいただければ結構です。 ○中谷委員長  確定的ではないということの了解のもとにいただけばいいわけでしょう。 ○高橋委員  何ですか。 ○加藤委員  確定的でないという了解のもとに。 ○高橋委員  そうです。 ○中谷委員長  そうですね。 ○母子保健課長  それはコピーする必要がありますか。 ○高橋委員  コピーして下さい。 ○矢内原委員  代議員会は通ってないんですか。 ○高橋委員  代議員会は来年の3月ですので、案がまとまった時点で代議員会にかけることになっ ております。 ○矢内原委員  委員会の会長への答申を支部長と理事会で説明したということですか。 ○高橋委員  そうです。この委員会の方にでしたら、私個人としてはお配りしてもよろしいのでは ないかと思います。既に新聞に載りましたし、テレビも出ましたし、会長が記者を相手 にして説明をしました。ですから、先生方は、これをいろいろなところで話されても問 題が起きることないと思います。 ○中谷委員長  どうもありがとうございました。 ○高橋委員  私の真意を御理解いただいて、お読みいただきたいと思います。 ○中谷委員長  皆さんよくおわかりだと思いますので。 ○吉村委員  丸山委員、この前、四胎以上という規定はどうかとおっしゃっていましたけど、私は これで非常にいいのではないかと思うんですが、先生。 ○丸山委員  私は不満ですね。重大な問題ですから意見が一致しなくても大方のところに決すれば それでいいかなとも思うんですが、ちょっと狭いような気がします。前回の議事録の校 正をしていたときにも感じたのですが、四胎以上の場合にはここでは認められうるとい うことですね。 ○吉村委員  先生の御意見では三胎でも必要なものはすべきだということですね。 ○丸山委員  ちょっと話がずれるんですけど、イギリスではこの前のブリンスデン先生の講演で、 各クリニックごとに成績を公表しているというお話しを伺って、へえ、すごいなと思っ たのですが、アメリカについて調べてましたらアメリカでも同じことをやってまして、 すべての不妊治療クリニック三百幾つかあって、そのうちの 300は回答よこして、十幾 つかがさぼって、各施設ごとの成功率、戻す胚の数なんか書いているんですね(CDC, 1996 Assisted Reproductive Technology Success Rates (1998))。そうしたらやっぱ り4個前後以上を戻すというところが多いんですね。ですから、3個までというのが可 能なのかなというのを多少懸念するのと、前回言えばよかったのですが、サーベイラン ス98で、四胎以上ではいい方法だと。恐らく三胎以上についてもいい方法だと世界的な 文献で書かれていて、我が国だけ厳しい基準を立てる、その説明というのは、合理的な 根拠というのが何があるのだろうというのを伺えたらと思って校正していたんですけれ どもね。 ○中谷委員長  これはこの前ありましたが、四胎以上になると急に危険性が高くなるからというよう な御説明がありましたね。 ○丸山委員  それは確かに出産前後の危険性の点からはそういえると思うんですけど、それから後 親は3人の子供を育てていかなければならないので、きょうの新聞でしたか、きのうの 新聞でしたか、双子、三つ子の育てる際の社会的な援助についての検討会を設けるとい うのがありました。ああいうことを考えると、医学的な障害の発生の危険度が急に高く なるのが四胎以上というだけでは見る視野がちょっと狭いのではないかと。もうちょっ と先まで考えますと親が子を育てる際に、現在は核家族化で、おじいさん、おばあさん の助けが得られるという前提で考えてはいけないと思うんです。あるとすれば、社会的 な援助だけでというふうに考えると、やはり三胎は医学的には障害は特に発生する可能 性が高くないということで、特に当初生殖補助医療を利用するということで、そういう 危険性についても説明があったという状況があったとしても、あらゆる場合について三 胎の減数が合法になる可能性を排除するというのは厳しすぎるのではないか。この書き 方だったら四胎以上でも認められるうるなんですね。四胎の場合、必ず認められるとい うことではもちろんない。そのこと自体はそれでよろしいかと思うんですけれども、三 胎の場合でも認められる可能性があるような書き方が必要でないかと思います。  他方、なるべく多胎の発生を防ぐよう母体に戻す胚の数を考える。そして排卵誘発剤 の投与についても、それを十分頭に入れるといった書き方ができれば、そちらの方がい いのだと、まだあきらめきれません。 ○石井(美)委員  ただ、生命保護の観点から認められると書いていますから、それを除かないと、先ほ どのは入れられないのではないかと思いますが。 ○丸山委員  そうですね。生命保護よりもう少し広く、健全な生育というんですか、発育というん ですかね。 ○中谷委員長  前回は「緊急避難的」というような言葉がたくさん出てきたものですから、緊急避難 的というと、やっぱり生命、身体の保護とか、そういうものに限定されるかなというこ とで生命保護の観点からということだったと思いますけれども、それ以上にもっと生育 の心理的、社会的といいますか、そういう考えでということになれば、三胎でもあり得 るということになるのだろうと思います。いかがでしょうか、課長。 ○母子保健課長  日母の見解の中に、一応減数手術については三胎以上というふうな形の見解だったと 思うのですが、そこら辺はどういうふうな理論的根拠によるものなのですか。 ○高橋委員  今来てから御説明しましょう。 ○母子保健課長  そうですか。 ○中谷委員長  三胎以上ということは三胎も入るということですからね。 ○母子保健課長  そうですね。 ○丸山委員  アメリカのをさきほど引きましたけれども、毎年報告させるんですね、各クリニック に。各クリニック毎に1ページ使って成功率を表示するんですね。これは消費者保護の 観点からの文献だそうですけけど、日本でもこういうのはできないでしょうかね。 ○中谷委員長  イギリスでもありますからね。 ○丸山委員  イギリスはある、アメリカはある。 ○矢内原委員  それに近いものは出していますでしょう。各施設には出していますね。 ○丸山委員  さらに開示を進める方向では、施設単位ではやっぱり個人の医師の上手、下手がある から、今月号でしたか、先月号の『ファーティリティー・アンド・ステリリティー』 (6月号)に、個人ごとの成功率をというふうな意見もあったみたいに思いますけど。 ○田中委員  個々の施設で毎年報告しています。 ○矢内原委員  個々の施設ではないんで。 ○吉村委員  個々の施設はないんですけど。 ○矢内原委員  実際は送ってもらっているんですが、公表はしてない。 ○田中委員  1例1例症例を報告しています。ですから、大変な労力です。 ○矢内原委員  あれは世界に出しているやつです。 ○田中委員  あれは大変ですね。 ○矢内原委員  大変なんですよ。 ○田中委員  こんなにありますね。 ○矢内原委員  100 ぐらいしか来ないですね。 ○田中委員  報告は毎年行っております。 ○吉村委員 先生、今の時間ちょっと利用して、高橋先生にお伺いしたいのですけど、三胎以上の 多胎に減数を認めるということであると、体外受精で三個戻すということと整合性はと れないですね。 ○高橋委員  戻すのは2個ですね。 ○吉村委員  戻すのは3つ以内ですから、日産婦の会告では。ということは三胎はできるというこ とを前提にしてますね。そうすると、それは一卵性もあるかもしれませんが、いろんな ことを考えて、三胎で減数が認められるということになると、3つ戻すということはお かしいということになりますね。私はそれが非常に気になったんですけど。 ○高橋委員  検討委員会の中でのディスカッションの結果、大方の方々が三胎以上という意見だっ たのです。将来は周産期医療が進歩して、双胎や三胎でも養育しやすくなります。現在 の日本では、三胎などはIVFや排卵誘発剤の使用で産まれることが多いので、各施設 でもNICUが満杯になって困っていることも確かです。  しかしながら、厚生省が各地区に総合周産期医療センターのような施設をつくってい くと、設備も整えられるだろうし、それから、少子社会という背景もありますので、将 来医療が進んでくると、三胎であっても、満期産近くまで管理することも可能になるだ ろうと思います。  そういうようなことを踏まえた場合、大方の意見が3胎でというようになったと思い ます。 ○中谷委員長  3個戻していいということであれば、三胎までは原則として、減数できないのでは? ○高橋委員  3個戻すということを言っているのではないのです。 ○石井(美)委員  日本産科婦人科学会の会告はそうだと思います。 ○吉村委員  だから、先生の御議論は正しいです。 ○中谷委員長  そうだと思うんですね。 ○吉村委員  三胎まで戻していいということが前提であるならば、三胎で減数をやってもいいとい うことにはならないと思います。 ○中谷委員長  ならないだろう。そこまでは。 ○吉村委員  減数をおこなうために三胎戻しているということになります。 ○中谷委員長  そうなんですよ。 ○吉村委員  自己矛盾に陥ってしまう。 ○中谷委員長  ちょっとそれがおかしいのかなと思うなと思うんですけれどもね。 ○石井(美)委員  3個着床するという可能性は余り高くないということはないのですか。 ○吉村委員  それは高くないです。 ○辰巳委員  三胎を期待して3個戻しているわけではないので、必ずしも整合性がとれていないと は言えないと思うんですが。 ○吉村委員  可能性としてあるわけでしょう。 ○辰巳委員  可能性としてはあります。 ○高橋委員  ですから、あくまで減数手術の場合は、その人がしてほしいと言った場合にすること であって。 ○中谷委員長  もちろんそうです。 ○高橋委員  そうでしょう。そうすると3つ戻したから3胎が必ず産まれるとも限らない。 ○吉村委員  限りません。 ○高橋委員  それから、その人が3胎でもいいといえば、そうなるし、そこの議論まで言うと、ま た、さかのぼって、幾つ戻す、そこからまた議論を始めなければならない。当時の委員 の方々の考えがこういうようにまとまったというだけで、何個戻すかまでは、日母のこ の委員会では結論を出していないと思います。 ○中谷委員長  いずれにせよ実施者の説明の方法は大変問題にもなるわけですよね。 ○高橋委員  そうですね。ちょっとよろしいでしょうか。 ○中谷委員長  はい、どうぞ。 ○高橋委員  最初のページには今までの経過とか、リプロダクティブヘルス/ライツのこと、生殖 云々というのが出ていますが、これは大きな問題ではありません。  次のページ、妊娠12週未満まで、女性の権利に基づく任意の妊娠人工中絶として認め る。その次の12週以上の人工妊娠中絶は適用条項によるという、米国の適用条項を書い ています。これは夫側の同意が望ましいですけれども、最終的に夫が同意しない場合で も、妻がこの手術を受けたいという時は妻の意向が優先するということです。  それから、下から4行目、「一方、我が国では分娩に対する一時金の支給」、この 「一時金の支給」という言葉は正しくありませんで、一般にこういうように言ってます から、こう書いたんですが、「出産育児手当金」という名前が正しいです。  適用条項については後でまた説明しております。3ページですが、「配偶者の同意」 ということをここで述べておりまして、その解説がここについております。  それから、(4)のところに「未成年者あるいは15歳未満の場合には親権者あるいは 法定代理人の人工妊娠中絶に関する同意を必要とする」とありますが、意思決定権とい うのが18歳というのが正しいようですけれども、15歳というのは、最近の臓器移植の意 思決定が15歳で認められているということのために、ここでは「15歳未満」にしたよう でございます。 ○田中委員  15歳以上であれば本人の意見だけでいいんですか。 ○高橋委員  日母の案ではそういうことにしております。これは臓器移植の意思決定権と整合性を 持たせた考えに立っております。  それから、4ページ、妊娠12週以上の人工妊娠中絶の適用条項です。ここに新しく 「精神的理由」というのをつけております。それから、今まで「経済的理由」という言 葉が入っていたのですが、経済的理由というのは現在の日本の経済状況からすれば不適 切ではないかという意見がありました。しかし、それでもやはり経済的な理由で手術を 受けたいという方もいるわけです。そういうことを勘案しまして、もっと幅広く経済的 理由を「社会的理由」の文言に変えて残したらどうかというので「社会的理由」という 文言を使っております。 また、精神的理由を入れましては、1人だけ欲しいと思った のに多胎になっていろいろと精神的に苦痛に感じて、さらにそのために健康を害するよ うなおそれもあるだろうということで、精神的疾患を意味するものではないですけれど も、「精神的」という文言にして入れたということです。  5ページは、今まで何回か申し述べましたが、母体保護法における人工妊娠中絶の定 義、これは従来、母体内の胎児を体外に排出するという文言でした。このために、従来 の定義では減数手術はできないという考えに立って、日母では禁止してきたわけです。 それで「母体内において胎児を消滅させる場合をいう」というように文言を変えれば、 減数手術も、人工妊娠中絶の定義の中で行うのではないかという考えで、こういう文言 にしております。  それから、6ページ、これは多胎の減数手術の適用として、「人工妊娠中絶の適用を 実施する」。ここに精神的理由、医学的理由、社会的理由のほかに、かつて、先生方に 項目だけのパンフレットをお配りしたことがあったと思いますが、あの中には胎児条項 というのが一応案文として載っておりました。しかしながら、胎児条項が原因で、これ は具体的には風疹問題で裁判になりまして、敗訴になった事例があります。その後、別 の事例ですけれども、風疹問題で裁判になり逆転勝訴になった例もあります。そういう ことで、胎児条項を入れるとまた将来に問題を残すといった考えから、胎児条項は削っ てあります。  減数手術の場合は医学的理由とその他の理由ということにして、ここで説明を加えて おります。  説明が不十分かもしれませんけれども、以上が日母の先般の理事会及び支部長会議で 配られた資料の説明です。 ○石井(美)委員  質問。 ○中谷委員長  はい、どうぞ、石井(美)委員。 ○石井(美)委員  減数手術というのは12週未満で行われるのではないですか。 ○高橋委員  そうです。 ○石井(美)委員  そうしますと、5のところの「多胎・減数手術は人工妊娠中絶の適応で実施する」と いうことと、定義で人工妊娠中絶の中に減数手術も入れたということで、12週未満は女 性の権利だから適応なしでできるということとは矛盾しませんか。 ○矢内原委員  出生届のためじゃないんですか、12週で限ったのは。 ○高橋委員  これについても非常に議論がありまして、普通妊娠22週まで人工妊娠中絶はできるわ けですが、妊娠22週まで減数手術を認めるとリスクが高くなるし、実際はできないこと が多いわけです。またそれに伴ういろんな障害が起きたりして、問題がおこるだろうと いうので、人工妊娠中絶の厳密な適用とはずれますけれども、一応これは12週で抑えよ うということになりました。それから死産届の問題もあります。 ○中谷委員長  ほかの国だと、要するに胎児条項の場合は週数を限定しないんですよね。 ○高橋委員  そうですね。 ○中谷委員長  随分後まで中絶ができる。それから、ドイツも胎児条項(妊娠22週まで中絶可)を廃 止したのはいいけれども、1995年の最新の法改正で、「医学的、社会的適応」という名 前で胎児条項と同じようなものを認めた、それは分娩開始までなんですよね。そういう いろんな問題がありますよね。この問題やはり考えていかなければいけないのかもしれ ませんけれども。 ○石井(美)委員  私の質問の意味は違うのですが、12週未満であれば、12週以上の適応条項は関係なく 減数手術もできるのですかという意味です。 ○高橋委員  そうです。 ○石井(美)委員  そういうことですね。 ○加藤委員  だから、6ページの4項目は不用になるんじゃないかということですね。 ○吉村委員  そうですね。そうすると先生、人工妊娠中絶の適用でやるとなると、本人が1人にし たいと言ったらば、1人にせざるを得なくなる。三胎ができていて、12週以前であって 私は1人にしたいんですと言えば、当然1人、我々医師サイドが言う権利もなくなる。 ○高橋委員  それを受ける受けないかは医師側の裁量権の問題ですから、拒否できるんじゃないで しょうか。 ○吉村委員  そうですね、拒否できる。 ○丸山委員  よろしいですか、日母の方は終わって、たたき台の方なんですが、この専門委員会 の。今の日母の御見解に力を得て、私の修正案を出してみたいと思うんですが、5ペー ジの2つ目のマルですが、「しかしながら、多胎妊娠の予備措置を講じたのにも関わら ず、やむを得ず」、ここまで同じですね。「四胎以上の」を取りまして「多胎(原則と して四胎、やむを得ない場合にあっては三胎)となった場合には」、また戻りますが、 「母子の生命、健康の保護の観点から」、その後の点は取った方がいいと思うんです が、「母子の生命、健康の保護の観点から実施されるものについては認められうるもの と考える」。これぐらいでお認めいただけませんですかね。  それでも、さっきの多胎、括弧なんですが、(原則として四胎、という原則としてが あると、スリッパリスロープでだんだん広がっていくというのであれば、「多胎(四胎 やむを得ない場合にあっては三胎)」、この方がちょっとニュアンスの点で縛りがきつ くなるかなと思うんですが。 ○辰巳委員  実際三胎でも非常に危険な例はあると思いますので、その方がいいかなと私は思いま す。 ○田中委員  私も丸山先生の、非常に助かります。現場にいると、そういう方もおられます。 ○丸山委員  母体か子供の生命、健康に関係のない場合に自由にできるわけではない。だから、そ の点で日母の見解のほうは読み方によってはそれが認められる可能性があるのですが、 私の案はそうではなくて、母体、子供の生命、健康に関係のある、それを救うためにや むを得ない措置として認める、そういうところでどうでしょうかね。御検討お願いでき れば。 ○中谷委員長  矢内原委員いかがですか。 ○矢内原委員  精子が生かしていただいているので、しょせんはじめから減数手術には反対してます から、この辺のところの数の問題は、医学的に考えていっただけで、本当に双胎と三胎 とは実際問題違うんですね。それから、そう言えば、双胎と単胎とはもっと違うじゃな いかというふうに私言っていますから、だけど、リプロダクティブヘルス/ライツとい うことを表に出されてしまうと、もうどうぞ御自由にということになってしまうんです ね。  ただ、この前の議論のときも、前の説明のときも申し上げた私自身が言いたい精神は 十分、数ということに生かされておりますので、私はやむを得ないと思います。今の丸 山委員のことでも数を入れていただいたので、それだけでも。 ○石井(美)委員  ただ、これはかなり否定的論調が基本になっていたのが、四胎まで広げてくるという のと、日母の方は減数手術を今までは否定していたけど、今後は否定しないという立場 に立った見解だった。この間の議論は否定はするんだけど、やむを得ないときという感 じでは、丸山先生はどうもそうじゃなさそうな。 ○丸山委員  やっぱり望ましくないことは望ましくないことです。 ○矢内原委員  その精神は生かされたんですね。 ○丸山委員  社会資源が十分あったり、乳母がたくさんいるような家庭、社会であれば、そうして 母体が耐えられるものなら、それはしない方がいいのではないですか。 ○高橋委員  日母でもやはり同じような考えなんです。ですから「生殖医療に携わる医師は、多胎 妊娠の発生防止に努め、安易に多胎・減数手術を実施するような状況を回避しければな らない」とこういうふうにうたっているのです。 ○中谷委員長  回避しても、なおかつそういう事態が発生した場合はやむを得ないだろうという。 ○高橋委員  そうですね。  それから、なぜ日母の方ではこれで悩んだかといいますと、減数手術をする施設、I VFをしている施設は、IVFの登録施設が大体四百幾らですから。日母会員一万三千 何百人の中ではほんの一部に過ぎません。全国的にはIVFを行っていない施設が大部 分ですので、その人たちの中からIVFの問題に対し、相当批判的な意見が出てくるの も確かです。  日母がこれを安易に認めるような姿勢を出しますと、またいろいろと問題が出てくる ことも確かです。ですけれども、世界的には減数手術を認めている国がほとんどですの で、これは将来は認めなければならないだろうという考えに日母はなっています。 ○中谷委員長  IVFの施設が非常に多いですよね、 432。イギリスがたしか 117ぐらいですよね。 だから、その辺もなかなか難しいですね。それぞれの施設に倫理委員会なんかあるよう なところは少ないわけですし、そういう問題もまたどこかで議論しなければいけないの かもしれません。  でも、前回から引き続きまして、御議論を賜りまして、少なくとも問題点は明らかに なってきたということは言えるだろうと思います。 ○加藤委員 新聞記者会見では胎児条項を入れないということも重要な案件であったかのように聞 きましたけれども、この報告書ではそれについて一切触れてないんですね。 ○高橋委員 触れてません。 ○高橋委員  私は新聞記者会見の場にいません。会長が行いましたので、わかりません。 ○中谷委員長 よろしゅうございましょうか。もう時間がたちまして、相変わらず司会が下手くそで 押せ押せになってしまいましたけれども。 ○吉村委員 今のところは結論はどうなったんですか。四胎、やむを得ない場合は三胎ですか。 ○中谷委員長  さっきの丸山委員のご意見の通り。 ○吉村委員  そうですか。 ○丸山委員  よろしいですか。 ○吉村委員  この案の中では非常に整合性がとれていると思うんです。私、この案では2個をリコ メンドしていますし、3個以内、状況によっては3個以内としていますから、非常に整 合性は一応この委員会ではとれているんですけども。何となく気になるのは、3個妊娠 する可能性があるものを、3個戻して3個もやむを得ない場合には減数していいという のは何となくひっかかりますね。 ○石井(美)委員  戻した数は産まなくてはいけないという形の制限を逆に入れるという方法もあるんじ ゃないですか。 ○吉村委員  それはありませんね。 ○中谷委員長  それを考えるから、私はちょっと躊躇するんですが。 ○矢内原委員  「三胎出産する確実な意志があって」と書いてある。4ページ、「三胎出産する確実 な意志があって医学的にも三胎出産に耐えうる」ならば。 ○吉村委員  それはいいですね。ただ、減数をするという項目において、何となく私自身は、この 委員会の案は非常にいいんですよ、これはとれてますから。 ○中谷委員長  ちょっと気になるんです、その辺がね。 ○吉村委員  ちょっと気になりますね。 ○中谷委員長  三個戻すということを認めて、かつ。 ○吉村委員  やむを得ない場合はという。 ○中谷委員長  やむを得ない場合はというのがあるから。 ○吉村委員  結構、意外とやむを得ない場合じゃない場合も多いじゃないですか。3つ返せば3つ できるという可能性はあるわけです。 ○丸山委員  その場合、3つ着床し出産することを求めて3つ返しているわけじゃないんでしょう 多くの場合。3つ返しても……。 ○吉村委員  3つ返すときには3人産まれる可能性はありますよということは言います。それは当 然どこでもおっしゃっていると思います。 ○加藤委員  実際問題として成功率はどのくらいなんですか。 ○吉村委員  日本の平均は19%ぐらいです。 ○加藤委員  3つ返した場合に3人赤ちゃんができちゃうということは。 ○吉村委員  それはかなり低いでしょうね。 ○丸山委員  それをにらんで、だけど、説明ではおっしゃるでしょうけれど、実際はだけど1人か 2人かと思って、みんな戻すんじゃないですか。 ○吉村委員  それはそうです。 ○高橋委員  要するに妊娠率を上げるために3個戻すのであって。 ○丸山委員  だから、そこをちょっとお考えに入れていただきたいんですよ。 ○吉村委員  それは非常によくわかるんですけど、何となく自己矛盾に陥っているような感じしま すけれどもね。 ○高橋委員  言葉だけ見ればですね。 ○中谷委員長  だけど、先ほど丸山委員がおっしゃったように、母子の生命、健康保護の観点からと ありますから、それで説明はつくだろうと、私はそれで納得いたしましたのですが、よ ろしゅうございますか。そんなところで。石井(美)委員何か。 ○石井(美)委員  私の意見はここに入れていただいたからよいのですけれども、なお書きで、やはり法 律的に三胎でもできるという根拠がなくて大丈夫なのかなという疑問は持っているとい うだけです。吉村先生も言われましたけれども、これが最終案になるわけではないです ね。また、検討の機会があるということですね。 ○中谷委員長  はい。  本当に時間が来てしまいましたけれども、この議論は今回はここまでといたしますけ れども、事務局には今回の議論踏まえてこのペーパーを修正していただきたいわけでご ざいまして、そういう意味で、先ほどの精子、卵子、受精卵の提供のペーパーについて きょう御発言いただきました以外に、修正、加筆する必要があると思われる方は8月13 日必着だそうです。事務局にご連絡いただきたいということだそうでございます。  それから、次回の専門委員会の進め方について、課長からちょっとお話しをいただい た方がよろしいんじゃないかと思いますけれども。 ○母子保健課長  先ほどもちょっと中谷委員長からお話しがありましたけれども、もうちょっと議論を 深めるという意味で、今の段階でどれがいい、どれがだめだというふうななかなか合意 といいますか、そういう議論までいかないような状況ですので、もうちょっと関係の 方々からヒアリングなどをした上でさらに意見を詰めたらどうかなという気がしており ますが、もしそうであれば、次回はそういった、先ほどの委員長の御推薦の方、あるい はそれ以外の方も含めて、次回はヒアリングとヒアリングの後で、ヒアリングした先生 を踏まえてディスカッションをするというふうなことでいかがかなという気がしており ます。 ○中谷委員長  やはり生殖補助医療を受ける患者さんのほかに、この医療では子供が産まれますので 産まれた子供の心理状態とか生育の過程でどうとかという問題がいろいろ出てきますの で、心理学的な見地からの御検討も必要なのか。あるいは小児科の先生がいいのか、よ くわかりませんけれども、どなたか心理学の方で御専門の方を御存じの方いらっしゃい ませんか。 ○吉村委員  それはもちろん大事なことだと思うんですけれども。産まれた子供が、AID児であ るかとか、日本では体外受精児ないんですけれども、非配偶者間の生殖医療で産まれた 子供であるということを知っている人はいません。ほとんどが99%の両親は自分の子供 に伝えておりませんので。 ○中谷委員長  そこが外国と違うんですよね。 ○吉村委員  それが日本では難しいのではないでしょうか。 ○加藤委員  この問題について小児科学会は何か意見は持ってないんですか、発表してないんです か。 ○矢内原委員  そのことは出してないし、きてないですね。 ○吉村委員  余り賛成でないということは。 ○矢内原委員  着床前のときに基本的には嫌だと言ってましたね。 ○加藤委員  大分小児科関係のパンフレットなんか送られてきた内容見ると、雰囲気が違うんです ね。 ○吉村委員  そうですね。どちらかといえば、反対だと思います。 ○中谷委員長  障害のお子さんが産まれたときの産婦人科医の対応と小児科医の対応と全く違うんで すね。 ○加藤委員  そうですね。特にその辺になると百八十度違う感じがします。減数の問題などについ て、小児科の関係の方はどんな御判断持っているのか。 ○中谷委員長  御存じでいっしゃいますか。 ○矢内原委員  私が知っているのは、この間の報告書だけですね。 ○中谷委員長  意識調査というのは難しいですね。大体が条件付と。その条件が全部そろわなければ 否定なのか、一部ある程度充足されれば肯定なのか、どっちに考えるかよくわからない ので難しいですね。 ○丸山委員  その双子、三つ子の検討会の担当はこちらじゃないんですか。 ○北島課長補佐  母子保健課でやっています。 ○丸山委員  めぼしい方いらっしゃるんじゃないですか、減数についての小児科医とか。 ○北島課長補佐  きのう検討会だったのですが、そこでは産まれる支援策みたいなことを検討しており ますので、減数とかそういうことまでは。 ○丸山委員  支援なさるのに熱心な先生は減胎などもってもほかというふうな意見もないんです か。 ○北島課長補佐  そこのところは議論はなくてですね。 ○丸山委員  産まれてからの方の。 ○北島課長補佐  妊娠の維持、要するに産むことを前提に、双子、三つ子だったときの妊娠の管理とか 産まれた後の支援策について検討している会なものですから、減数まではお話はないで す。 ○加藤委員  3人子供が産まれて、1人障害を持って、リハビリやっている先生なんかだと、出産 についての判断も普通の小児科の先生とは随分判断が違うような感じしますけれども ね。 ○石井(ト)委員  私も双子の支援をしていました。障害を持っているお子さんが確実にその中には含ま れておりました。30人に1人はいるという資料もあります。そうしますと、そのお子さ んをなかなか連れてこないのが現状です。 ○加藤委員  障害のない子と障害の持った子とが同時に多胎で産まれているという場合の家庭のい ろんな精神的な負担はかなり大きいんじゃないかと思うんですけれどもね。 ○石井(ト)委員  そうです。そういう意味で、これからサポートというのはお金だけでなくて精神的な サポートということも当然必要になってくると思いますね。 ○中谷委員長  当然そうですよね。 ○加藤委員  小児科の先生が一般的に全部障害があって産まれるようにという意見の持ち主ばっか りではないような感じがします。特にリハビリやっている人などの意見では。 ○中谷委員長  次回はいつごろになりますか。 ○母子保健課長  ヒアリングをするということになりますと、その先生の御都合も聞かなければいけま せんので、3日ぐらい日を用意させていただいて、御都合をお伺いするという形にした いと思いけれども。              (次回専門委員会日程調整) ○母子保健課長  これの中で、欠席者の人数の少ない日で、講師になる先生の御都合を聞いた上で、で きるだけ早めに確定させていただきたいと思います。 ○石井(美)委員  講師の先生ということだと違うかと思うのですけれども、当事者からは、インターネ ットでも求めているのですが、もし、そういう方からの意見も聞けるのでしたら直接伺 えたらと思うのですが。 ○加藤委員  中絶された子供。 ○石井(美)委員  それは無理です。 ○北島課長補佐  普通の第三者の精子、卵子提供ではなくて、普通の避妊の患者さんですか。 ○石井(ト)委員  苦しいですよ。 ○中谷委員長  不妊の治療を受けている方。 ○北島課長補佐  この間、アンケートを不妊の治療中の患者さんに 800人ほど出したと思うんですが。 ○石井(ト)委員 そこから読み取れますね。私はそういう当事者をここにお呼びになるというのは難し いのではないかという気がします。 ○母子保健課長 それよりも、個人個人によって相当考え方が違うので、その当事者から、不妊治療を 受けている方の代表者になり得ないので、だれを選ぶか、何か団体があって、その方が 不妊治療団体の全体の雰囲気を述べていただくというのはいいかもしれませんが、そう ではない特定の当事者を呼んでも、その人の意見は全体の意見でも全然何でもないと思 うんですね。そうすると難しいんですよね。その人の意見をどうとるかが、相当難しい のではないかと思いますけど。 ○丸山委員 団体の方、フィンレージの会とか。 ○北島課長補佐 前に具体の例でフィンレージにお願いしたことがあるんですが、全体としては不妊治 療そのものにも厳しい御意見があります。精子、卵子の提供まで具体には伺ってないん ですけれども、やはり女性の産む、産まないの権利といいますか、強制されてはいけな いというところで、必ずしも皆さん全体が同じ意見ではないということと、それから、 前にヒアリングした方はかなり女性が強制されないような環境づくりが必要だというこ とで、第三者の提供以外の、そもそもの不妊治療についても余り強制されないようにす べきだというお考えが述べられていたと思います。 ○丸山委員 基本原理のところで、そこに焦点が定まっているんですね。現在治療を受けている患 者の方は団体なんかは余りつくられないですね。 ○母子保健課長 田中先生のところも患者さんの会あるようですけれども、そういうところの代表の方 の声を聞いてもいいのかもしれませんが、多分そういう方は全体にかなりポジティブな 御意見になる可能性はありますけれども、ただ、こういう第三者の精子、卵子まで使っ てやるかどうかということに関しては、それもまた相当個人で意見が分かれるのではな いかなと思うんですね。ですから、そこら辺が果たして必要というか、聞く代表性があ るかどうかというところはちょっと考えなければいけないかと思うんです。 ○丸山委員 代表性は問題ですけど、手続としたら、やはり当事者の意見は聞いておかないと手続 的によくないのではないかという感じはいたしますね。 ○石井(ト)委員  確かに当事者がすべて代表するわけではないということなんです。多様な価値観があ り、また、おかれている状況がすべて異なりますので、この会にお呼びするまでもない と思います。 ○丸山委員 最後から2つ目のご発言から最後のご発言に行くのはちょっと飛躍があるんじゃない ですか。価値を認めないのに。 ○石井(ト)委員  だから聞くことに対して。だから、代表で来る方が代表するとは限らないということ です。 ○加藤委員  切実な要求を持っている人の意見を聞くというか、少数であっても、むしろ少数者の 方が声が出しにくいということがあるんだから、非常に少数だけれども、切実な要求を 持っている人がいれば、そういう人の声を聞いてあげる必要はあるのではないかと思い ます。 ○石井(ト)委員  私は様々な方に関わっていますので、情報も持っています。また、それを知るのが委 員としての務めだと思っています。また、本事務局からも、資料が提供されてきていま すので、それで充分だと思うんです。 ○丸山委員  すべての多様な意見を酌み上げるのは難しいにしても、だけど、問題からして、直接 影響受ける人の意見を聞かないというのはデュー・プロセスに反すると思いますね。 ○母子保健課長  そうしましたら、既に予定の3時間を過ぎていますので、それぞれご都合があろうか と思いますので、一応関係者の意見を聞くというふうな前提で、適切な人がいるかどう かを考えて、また委員長と相談させていただいて、人がいれば、当事者のご意見も聞く ということでよろしいでしょうか。 ○田中委員  私はこの会に選ばれた理由として、なるべくそういう患者さんの肉声を伝えたいとい う意思があって話しているつもりです。ですから、患者さんの気持ちや意見などでご質 問があれば、聞いていただければ大体わかるようにお答えできると思います。 ○石井(美)委員  その点では、ヒアリングということの位置づけということが1つだと思うんですけど あともう一つ、希望だけを言わせていただければ、あっせん業者の人の話を一度聞きた いと思うのです。新聞報道されているのではなくて、現実に何をしているのかという話 を伺いたいと私は思います。 ○矢内原委員  十人集まったら十人十色でおっしゃることが違う。 ○吉村委員  あっせん業者というのはAIDの話ですか。ザーメンのドナー。 ○丸山委員  精子バンクもあるけど、アメリカに送り出すものもあるんでしょう。 ○中谷委員長  ええ。 ○吉村委員  堤さん、女の人。 ○母子保健課長  わかりました。非常に難しいところは、そういう方の宣伝になってしまう可能性があ るんですよね。そこがちょっと我々としては危惧するんです。公開になりますから。 ○中谷委員長  随分前ですけれども、やはり厚生科学研究で京大の森崇英先生が主任研究員で調査を したことがあるんです。そのときにやはり治療を受けた人と不妊の治療を受けた人と子 供のいる御夫婦とか一般の人とか比較してアンケート調査みたいなことをやったんです よね。それは割合にいろんな結果が出ていますので、今度持ってきます。 ○母子保健課長  どなたか御推薦していただけるとか、ぜひお声を聞きたいという方がおられらたら、 また私どもの方に御連絡いただくということで、次回ヒアリングの対応は委員長とその 結果を踏まえて相談させていただくということでよろしくお願いします。 ○石井(美)委員  最後に、この間テレビで報道してました精子をネズミに入れるとかいう話もここで議 論しなくてよいのでしょうか。 ○加藤委員  鳥取大学で。 ○石井(美)委員  ええ。 ○母子保健課長  あれは研究とか実験の話になりますので、ちょっとこの専門委員会に求められている 趣旨とは違う。もしやるとすれば、親の部会の方での研究関係の議論かなと思っていま す。 ○加藤委員  ちょっとこの部会より違うところじゃないですか、ネズミの問題は。 ○石井(美)委員  ただ、外国ではネズミの精巣で育てた精子を使って、すでに子どもが生まれたという 説も別に報道されていますので、研究だけの問題とも言えないのではないかと思います が。 ○武田主査  御推薦がありましたら、7月28日ぐらいまでにお寄せいただければ。 ○母子保健課長  来週中ぐらいに、ということでよろしくお願いします。 ○中谷委員長  どうも長時間にわたってありがとうございました。 担当:児童家庭局母子保健課        武田 康祐