99/06/04 第18回厚生科学審議会先端医療技術評価部会議事録 第18回厚生科学審議会先端医療技術評価部会議事録 1.日  時:平成11年6月4日 (金) 9:30〜11:30 2.場 所:通商産業省別館 各省庁共用会議室 第944号会議室 3.出席委員:高久史麿部会長 (委員:五十音順:敬称略) 軽部征夫  木村利人  柴田鐵治  寺田雅昭 (専門委員:五十音順:敬称略)         入村達郎  金城清子  廣井正彦  松田一郎  森岡恭彦         出生前診断に関する専門委員会長  古山順一(専門委員) 4.研究計画説明者: 千葉大学医学部外科学第二講座 教授 落合武徳 5.議  事:(1)千葉大学医学部附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画 (食道がん) について        (2)東北大学加齢医学研究所附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画 (肺がん) について        (3)遺伝子治療臨床研究の経過報告について        (4)出生前診断に関する専門委員会からの報告について        (5)その他 6.資  料:(1)千葉大学医学部附属病院に係る遺伝子治療臨床研究実施計画の審議 経過        (2)千葉大学医学部附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画        (3)東北大学加齢医学研究所附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画申 請書        (4)東北大学加齢医学研究所附属病院の遺伝子治療臨床研究実施のため の説明と同意文書        (5)がん遺伝子治療臨床研究作業委員会委員一覧        (6)遺伝子治療臨床研究の経過報告         ・東京大学医科学研究所附属病院(腎がん)         ・岡山大学医学部附属病院(肺がん)        (7)出生前診断に関する専門委員会について        (8)母体血清マーカー検査に関する見解(出生前診断に関する専門委員会 報告)        (9)生殖補助医療技術についての意識調査結果概要 ○事務局  ただいまから第18回厚生科学審議会先端医療技術評価部会を開催いたします。  本日は、加藤委員、曽野委員、竹田委員が御欠席でございます。また、今回から山崎 委員に代わりまして、竹田委員が新たに先端医療技術評価部会の委員として任命されて おりますので御紹介いたします。また、本日、議題にございます千葉大学医学部附属病 院の遺伝子治療臨床研究実施計画につきまして、参考人として千葉大学医学部附属病院 の落合武徳教授に御出席をいただいております。また、併せまして、本日は、出生前診 断に関する専門委員会からの報告がございますので、同委員会の古山委員長にも御出席 をいただいているところでございます。 それでは、続きまして、配布資料の確認をさせていただきます。 (以下、資料の説明と確認) ○高久部会長  今日は、お手元の資料にありますように、最初に遺伝子治療臨床研究のことについて 御議論願いまして、その後「出生前診断に関する専門委員会」の古山委員長がお見えに なっていますので、もう既に公開になっておりますが、出生前診断についての報告書が 出ていますので、この報告書に関しまして委員の皆さん方の御意見をお伺いしたいと思 います。  最初に、昨年の7月22日に厚生大臣から厚生科学審議会に諮問があり、厚生科学審議 会会長から先端医療技術評価部会に付議されました千葉大学医学部附属病院から出され ております「進行食道癌(扁平上皮癌)非切除症例に対する正常型p53遺伝子発現アデ ノウイルスベクターを用いた遺伝子治療第I相・第II相試験計画について」。この計画に 関しましては、この部会に設置いたしました、がん遺伝子治療臨床研究作業委員会(以 下、作業委員会)におきまして、主として科学的な事項について論点整理が終了したと いうことですので、御報告いただいた上で、本研究臨床実施計画について部会としての 御審議をいただくこととなっています。まず、事務局から申請の経緯等について説明し ていただけますか。よろしくお願いします。 ○事務局 それでは、事務局より、申請の経緯等につきまして、資料1の「審議経過について」 という資料に基づき御説明申し上げます。  この資料につきましては、一部訂正がございます。  まず、課題名ですが、今、部会長の方から説明いただきましたように、「進行食道癌 (扁平上皮癌)非切除症例に対する正常型p53遺伝子発現アデノウイルスベクターを用 いた遺伝子治療第I相・第II相臨床試験」というものでございます。 実施施設の長は山浦病院長でございまして、総括責任者は本日お越しいただいており ます外科学第二講座教授の落合先生でございます。 (4)にございますが、当初、平成10 年7月14日に申請がございまして、その後、作業委員会とのやりとりを経まして、必要 な情報の追加のための概要書等の変更が行われたために、3月4日に一度変更がござい ます。また、最終的な変更が5月18日に行われているものでございます。 続きまして、「厚生科学審議会の先端医療技術評価部会における審議」を見ていただ きたいと思います。そこでの状況ですが、当該施設の意見の求めに応じまして、平成10 年7月22日の第11回当部会におきまして作業委員会の設置が決定されてございます。ま た、平成10年9月17日の第13回部会におきまして、作業委員会委員の構成が報告されて ございます。それで、資料では抜けておりますが、平成10年10月19日の第14回部会にお きまして当該研究計画に対する、社会・倫理的な観点から検討が行われたものでござい ます。そこでは、本研究におきまして代替療法の記述を詳しく記載して、患者さんが選 択出来るようにすることが望まれるとか、臨床研究と治療によりどのような行為が行わ れ、どのような痛みが生じるか等の身体的苦痛といった、患者さんにとって、より身近 な事象をインフォームド・コンセントの部分に記載すること等です。また、臨床研究に 係る金銭面についての説明を整備する必要があるという議論がなされております。 その次に作業委員会での検討事項が記載されております。この作業委員会につきまし ては、文部省の審査ワーキンググループと合同で開催しているものでございます。ここ にございますように、計4回の作業委員会におきまして検討が行われているものでござ います。その検討につきましては、もう1ぺージめくっていただきまして、3ぺージ目 の別紙1にございますように、寺田委員を委員長といたしまして、基礎系、臨床系、全 体の三つの大まかな分野を担当する委員を決めまして検討を進めたものでございます。  2ぺージ目の中ほどに、2)の第4回がん遺伝子治療臨床研究作業委員会の2)の議事 概要で「作業委員会の再意見書のとりまとめ」とございますが、これは削除いただきた いと思います。また、その下の3)の第5回の議事概要のところにつきましては、「再 意見書に対する」という最初の・がありますが、これは「意見書に対する」であり ます。その次に「作業委員会の3回目の」とございますが、これが「作業委員会の再意 見書のとりまとめ」でございます。それを受けまして、2ぺージ目の4)の2)議事概要 の1つ目の・で「3回目の意見書」という箇所も「再意見書に対する」と記載を変えて いただきたいと思います。  作業委員会での議論は、4ぺージに記載がされてございます。1回目の作業委員会に つきましては、そこにも述べられていますとおり、p53遺伝子に異常のある症例のみを 対象とするのかどうかなど、申請書を読んだだけでは具体的でなかった事項について具 体化する旨の指摘がなされまして、これについての意見書が千葉大学に出されておりま す。 2回目の作業委員会におきましては、意見書に対する回答が説明されましたが、回答 書及び実施計画書をもう一度整備した上で再検討するということになったものでござい ます。  3回目の作業委員会につきましては、千葉大学から整備された回答書及び計画書の訂 正がございましたので、その変更点を中心に検討が行われました。同じ遺伝子を導入し た他のがんに対する遺伝子治療臨床研究がどの程度参考になるのかなどが検討されまし た。これはアメリカでの頭頸部がんの臨床研究との比較ということでございますが、そ れが検討されまして、再度、意見書を提出することとされました。  4回目の作業委員会につきましては、その再意見書に対する回答が説明され、ほぼ妥 当というような状況になったものでございます。  申請の経緯そのほかにつきましては以上でございます。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。先ほども事務局から紹介がありましたように、 本日、参考人として、千葉大学医学部附属病院の落合先生が御出席されておられますの で、この臨床研究の総括責任者として、実施計画の内容について御説明をお願いし ます。 ○千葉大学 落合教授  千葉大学の落合でございます。千葉大学第二外科におきましては、20世紀の初頭の頃 から、食道がんの外科治療をメインテーマとしてやってまいりました。最初は、食道が んになった患者さんを救うということはほぼ出来ませんでしたけれども、40年ぐらい前 から外科治療が何とか出来るようになりまして、特に、この15年ぐらい前から化学療 法、放射線療法と外科治療を併用することによって、初期の患者さんはほぼ治すことが 出来るようになったという状況に持ってくることが出来ました。しかし、現在まだ、ス テージIII、ステージIVという進行の食道がんの患者さんの5年生存率は30%程度。更 に、今回対象にする切除不能の食道がんの患者さんの5年生存率はほとんどゼロに近い という状況でございまして、私どもといたしましては、食道がんの治療成績向上のため に、外科手術、放射線療法、化学療法、免疫療法に更に加える治療法を模索してまいり ましたが、今回、このようなp53がん抑制遺伝子を用いる遺伝子治療を用いることによ って成績の向上を図ることをさせていただきたいと考えまして、治療計画を立案いたし ました。しかし、これは遺伝子を用いること、更にアデノウイルスベクターを用いる事 に倫理的な検討が必要でございますので、1997年の9月から、6回にわたりまして千葉 大学の遺伝子治療の審査委員会で御審査をいただきまして、その倫理面、安全性、患者 に対するインフォームド・コンセント等について御審議をいただきまして、その結果を 昨年、厚生省に申請させていただいた訳でございます。  それで、私どもの対応といたしましては、その倫理性を十分に考えまして、本年1月 に、病室において、どのような手順で患者さんを取り扱うかというマニュアルも確立い たしまして、今日に至っております。どうぞ御審査をよろしくお願いいたします。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。それでは、続きまして、遺伝子治療の作業委員会の 責任者である寺田委員長の方からよろしくお願いします。事務局から説明がありまし た、付け加える事があればお願いします。 ○寺田委員  事務局の方から経過報告などをされましたので、その部分は省かせていただきます。 それから、ただいま総括責任者であります千葉大学の落合教授からも、教室の伝統的な 話、そういうことをバックにしたいろいろな経過もお話しなさったので、それほど付け 加えることはございませんが、ただいま事務局が言われましたように、厚生省、文部省 の合同の作業委員会におきまして、全部で4回にわたりまして検討してまいりました。  結局、資料1の4ぺージの一番下の (4)のところに書いてあるのが結論でございまし て、第4回の作業委員会では千葉大学から落合先生に御出席いただいて回答をいただ き、その説明を検討したところ、妥当なお答えがあったということであります。また、 ベクターの供給の確保、それから薬としての審議でございますが、今、中央薬事審議会 での調査会で検討が行われているというふうに理解しております。したがいまして、作 業部会としては「妥当」であるという結論でございました。 ○高久部会長  今、寺田委員から御報告がありましたように、作業委員会からは科学的、医学的にみ て妥当であるという結論をいただいております。この臨床研究の社会的・倫理的な面に 関しましては、先ほど事務局から報告がありましたように、既に昨年の10月に1度御議 論をいただいておりますが、本日の検討が今日で最後になる可能性がかなりあると思い ますので、改めてこの場で千葉大学医学部附属病院から出されております遺伝子治療臨 床研究について御意見をお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。 ○事務局  続いて事務局からですが、先ほど寺田委員長の方から概要を説明いただいたのです が、資料1の5ぺージ目以降にもう少し詳しくまとめたものがございますので、これを 事務局から代読させていただきたいと思うのですが、よろしいでしょうか。 ○高久部会長  では、代読してください。 ○事務局  資料1の5ぺージ目につきまして、科学的論点から進めました結果を資料整備に反映 させてところ、次のようなことになったということで御報告申し上げるものでございま す。 (資料)  1)対象疾患の選定について   本臨床研究は、p53遺伝子の異常の有無は問わないが、外科的切除により根治不 能、又は呼吸機能等に問題があり外科的に切除不能な進行食道癌 (扁平上皮癌) で、従 来の放射線療法、化学療法が無効であるなど、いまだ有効な治療法が確立されていない 症例を対象とする。また、米国では、連続する隣接臓器であり、同じ扁平上皮細胞によ り構成されている頭頸部癌 (扁平上皮癌) に対する同様な臨床研究が実施されており、 良好な忍容性が確認されている。本臨床研究、すなわち進行食道癌 (扁平上皮癌) 非切 除症例に対する正常型p53遺伝子発現アデノウイルスベクターを用いた遺伝子治療に係 る臨床研究について、さらに有効性や安全性について詳細な検討をする意義がある。 2)有効性及び安全性について   ヒト食道癌由来培養細胞をヌードマウス皮下に移植した担癌モデルを用いた実験で は、腫瘍縮小傾向が認められている。また、米国において、p53遺伝子異常の有無を問 わない進行頭頸部扁平上皮癌を対象とした臨床研究では、主な有害事象は注入部位疼 痛、便秘、発熱、悪心などであり、重篤な副作用は認められなかったとの報告がなされ ており、本臨床研究は有効かつ安全なものであることが予測される。 3)使用される遺伝子やベクター等の品質について   使用される遺伝子の構造、遺伝子産物の構造や生物活性、培養細胞を用いた研究報 告、使用するウイルスベクターの生物学的情報、作成方法や品質管理法、安全性に関す る試験結果等の資料から、一通りの品質確保は図られているものと推測される。なお、 実際に臨床研究に使用されるベクターは、アールピーアール・ジェンセル(株)により、 薬事法に係る治験の形をとって供給される予定であり、ベクターについては、別途アー ルピーアール・ジェンセル(株)の申請に基づき、中央薬事審議会で品質等の詳細な確 認作業を受けることとなっており、その作業の進捗状況を随時確認していく必要があ る。  4)公衆衛生上の配慮   ベクターについては、増殖可能なアデノウイルス(RCA)については、現在品質 管理上、可能な試験法による試験結果では見られていないが、高用量の投与量(101 0PFU)では、RCAの混入の可能性は完全には否定できない。但し、米国の臨床試 験においては、すでに1×1011PFUでの投与がなされており、重篤な毒性は報告 されておらず忍容性は良好であった。また、米国の臨床研究のガイドラインに準拠し て、ベクター投与後の患者を個室に一定期間隔離するなどの公衆衛生上の配慮を行うこ ととしている。従って、公衆衛生上の配慮もなされていると思料される。  これらの観点等から、本臨床研究実施計画の内容は科学的には妥当と思料され、今 般、先端医療技術評価部会に報告することとされた。  なお、中央薬事審議会でのベクターの品質の確認作業の進捗状況を随時確認する必要 があることを付記する。 (資料 了)  以上でございます。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。資料2の千葉大学から出されています遺伝子治療臨 床研究の実施計画について、作業委員会でサイエンティフィックな面はオーケーという ことになっていますが、インフォームド・コンセント、その他を含めまして、この部会 で御意見をいただきたいと思います。よろしくお願いします。どなたか御意見おありで しょうか。 ○木村委員  資料2によりますと、一番最初の遺伝子治療臨床研究実施計画概要書というのが平成 10年7月14日に出ていまして、その次のところは、10ぺージですが、平成何年何月と入 っていない訳です。これは、どうしてこういうふうに二つあるんですか。 ○事務局 概要書は、一番最初は平成10年7月14日に出されまして、その後訂正されたときに、 内容的に変わっているのに概要書の期日が7月14日でいいかどうかとかを検討したいと 思いまして、資料では消させていただいていたものです。今、千葉大学の方から最終的 に提出されている報告書には平成10年7月14日と期日が入ってございます。 ○木村委員 分かりました。その場合には、やはりこれは入れていただいた方がいいと思います。 したがって、変更されたということがはっきり分かるのは備考のところですね。18ぺー ジのところを見ますと、「被験者の同意取得について」というところが前の文書と比べ て明確に入って、しかも、倫理審査委員会での審議の条項もここに加えられると。これ は大変結構なことだと思うんですが、誤植がありまして、1行目ですが、「被験者は本 臨床研究について文書基づいて」じゃなくて、「文書に」と「に」が入ると思うん です。それから、その次のぺージにいきまして、「同意書に署名した者とする。なお、 被験者はその申し出により同意を撤回し、本臨床研究への参加を中止することができ る」。これは、いつでも中止することが出来るということを、たしか我々は部会で同意 したと思いますので、出来ればそれを入れておいていただきたいと思います。 ○事務局 承知しました。 ○高久部会長 他にどなたか御意見おありでしょうか。最初の頃注射が痛いとか、そういう事をイン フォームドコンセントにちゃんと書いていただきたいという御意見がありました。他に どなたか御意見おありでしょうか。 ○木村委員 今、事務局の方から、 (5)の1)の「対象疾患の選定について」という部分を御説明い ただきましたが、千葉大学の落合先生にお伺いしたいのですけれども、「対象疾患の選 定について」の内容を見ますと、要するに、外科療法などが無効である場合とか、いろ いろ書いてございます。これは、資料1の5ぺージの (5)の1)のところを今お伺いした いのですが、我々バイオエシックスの専門家から見ますと、対象疾患の選定について、 どういう患者が選ばれるかという医学的な情報がここに書いてありますが、先生の先ほ どのお話によりますと、安全性その他、インフォームド・コンセントについても、きち んとした手順を踏まえた上でということですが、それは具体的には入院患者の中から選 ぶことなんですか。それとも、アメリカのように、プロトコールに入る人をナショナル レジストリーみたいなところに公示の上、公募して適合する人を選ぶのか。その辺のこ とが、これですと、対象疾患は選定されますが患者の選定についてちょっと不明確なん ですが。 ○千葉大学 落合教授 現在の時点では、まだナショナルレジストリーということは考えておりませんで、 我々のところに入院してきた患者さんで、手術が出来る場合には手術をする、出来ない 患者さんを対象にするというところからスタートしようと思っております。しかし、こ の治療に関しましては、是非やってほしいという患者さんが非常に強くて、単にわれわ れのところに入院してきた患者さんを対象にしているだけでは済まなくなってくる場合 もあると思いますので、その場合には、先生がおっしゃるような門戸をきちんと設定す る必要も出てくるかと思います。現在は第I 相/第II相試験で有効性を安全性もまだ明 確ではございませんので、入院してきた患者さんによくお話をして理解していただいた 上で、その治療を行うという形にしたいと思っております。 ○木村委員 今、先生のお話の中で、やってほしいという声が多いということですが、それはどな たからの声ですか。医療側ですか、それとも患者側ですか。 ○千葉大学 落合教授   患者さん側です。 ○木村委員 家族も含めるんですか。 ○千葉大学 落合教授 そうです。 ○木村委員 それは、千葉大学において、現在入院している対象疾患をもっている患者さんの間か らそういう声が多いということですか。 ○千葉大学 落合教授  それもありますし、昨日は、北海道からわざわざ家族が来たというケースもございま す。電話の問い合わせもございます。それから、食道がん以外のがんの患者さんからの 問い合わせもございました。そうしますと、一つは、やりたくない人に無理に研究マイ ンドでやってしまうという御心配もあるかと思いますが、もう一つの心配は、受けたい という人にいかにして受けさせてあげるかということも心配していかなければいけない というふうに考えております。 ○金城委員  切除不能ながん患者というのは、同じようながん患者のうちの何パーセントぐらいに なるんですか。 ○千葉大学 落合教授  これは概要書に書いてございますけれども、食道がんの患者さんで、切除不能な患者 さんが約30%おいでになります。現在、それに対して放射線をやったり、化学療法をや ったりしているわけですが、まだその効果は十分なものではございません。 ○高久部会長 ほかにどなたか。作業委員会で何回にもわたって御検討いただいたし、その間、落合 教授にも御出席いただきました。もしも御異論がないようでしたら、この部会としては 妥当と認めて、あとは中央薬事審議会でのベクターの審査が残っていますが、当部会と しては妥当として厚生科学審議会の会長に報告をしてよろしいでしょうか。 ○松田委員 一つだけお伺いします。いわゆるバイオエシックスの立場からいけば、適用を決める 人と実際に治療する人は普通は分けた方がいいというのが、こういう実験的治療のとき の一つの原則だと思うんです。したがって、この場合は同一の人が診断して行うという ことになると、ちょっとその原則から外れると思うんですけれども、出来たら、適用を 決めるときに、部外者の人といいますか、第三者といいますか、全く第三者では大変難 しいと思いますけれども、実際に治療に入らない人も入っていただいて適用を決めると いう配慮ぐらいはしてほしいように思います。 ○高久部会長  東京大学医科学研究所附属病院の場合もそうしていましたね。 ○千葉大学 落合教授 このプロトコールは学内の遺伝子治療審査委員会で討議されたところでございますの で、その延長といたしまして、個々のケースについて客観的な評価をいただくような組 織をつくるということを考えたいと思います。 ○木村委員 基本的な流れといいますか、対応につきましては了承したいと思いますが、資料2の 110ぺージを見ますと、遺伝子治療につきましては、いろいろな経費がかかるということ は我々も当然認識しておりまして、治療にかかる諸経費のことにつきましても、こうい うドキュメントにきちんと入れていただいたということは大変はっきりしていていいと 思うんです。もちろん、ヨーロッパ、世界諸国の場合には、ナショナルのプロトコール に入る場合には全額負担ということになるのは当然な訳で、我々のこれからのあり方と しましても、そういう方向で、むしろプロトコールに合っている患者さんに来てもらう というような方向を考えなければいけないと思うのですが、ここに「入院して治療を受 けた場合も、これらの費用はあなたの健康保険で対応することになり、その一部はあな たが負担することになります」と書いてありまして、下にいろいろ書いてございます が、これが一部に当たるんですか。それとも、このうちの一部なのか。どういう費用が 遺伝子治療のために特別に患者が負担しなければならなくて、それは状況によって違い ますでしょうが、個人負担が極めて高額になるんでしょうか。その点、私どもははっき り分かりませんので、もし資料がございましたらお教えいただければと思います。 ○千葉大学 落合教授  遺伝子治療に係る部分に関しては、患者さんは支払わないでよろしい。それ以外の部 分に関しましては保険の適用を受けて、保険がカバーしてくれる以外のところを負担し なければいけないというふうに考えております。 ○高久部会長  インフォームド・コンセントの10ぺージ目に、遺伝子治療にかかる費用は会社がすべ て負担をするとあります。治験として行われるからそうなると思います。9ぺージの 「その一部は」と書いてある部分は保険でカバー出来るのではないのですか。「あなた が負担することになります」と書いていますが、そうではないのですか。 ○事務局  資料の 110ぺージから 111ぺージ(すなわち、もとの資料の9ぺージ、10ぺージ)は、 前回の当部会での御論議を受けて千葉大学側で御整備いただいたのですが、出来るだけ 原則まで全部書いたものです。現在の医療保険ですと、大抵の場合、自己負担分1割な いし2割というものがございますので、そこも含めて丁寧に書いていただいたというこ とで理解しております。したがいまして、本旨としましては、木村先生が御指摘のとお り、次の10ぺージにありますように、遺伝子治療に係る今回の治験としてアールピー アール・ジェンセル(株)が実施いたしている部分がございますので、本体部分につき ましては、落合先生からも御説明がありましたとおり、企業が負担をいたしますという ことでございます。 ○高久部会長  そういうことですので、よろしいでしょうか。 それでは、千葉大学から出ています遺伝子治療臨床研究につきまして、厚生科学審議 会会長に当部会で了承されたことを御報告したいと思います。 (千葉大学 落合教授 退席) ○高久部会長  続いて、本日厚生大臣から厚生科学審議会に諮問があり当部会に付議されました、本 年5月18日に東北大学加齢医学研究所附属病院から提出されました「非小細胞肺癌に対 する正常型p53遺伝子発現アデノウイルスベクター及びシスプラチンを用いた遺伝子治 療臨床研究実施計画」について審議いたします。これは、以前に既に御議論いただきま した岡山大学での遺伝子治療と全く同じプロトコール、同じ会社であります。事務局か ら計画の概要についてよろしくお願いします。 ○事務局  東北大学加齢医学研究所の話に入る前に、先ほどの件で事務局から追加をさせていた だきたいことがございます。  アメリカので頭頸部がんについてフェーズI の試験が行われたということは資料に載 っているのですが、それに引き続きまして、フェーズIIの有効性の試験も行われており まして、5月の末ぐらいにその試験の結果の一部が論文発表されています。内容といた しましては、例えば97名の患者さんに対して行われて、特に行われたことによる有害な 事象は出てこなかった。通常、先ほどもありましたとおり、発熱とか悪寒とか、注射部 位の疼痛とか、そういうものが同じように起こっている。それで、基本的にはどのぐら いの人がそれを行われて、生存率の話ですが、今のところは、平均的には、行われてか ら9か月には達していないとのことである。ただ、詳細についてはこれから評価をして いくと共に、これの有効性については、今後ともあると思われるので研究を進めていく という報告がありましたので、御報告申し上げます。  それでは、東北大学加齢医学研究所の報告をいたします。資料3、資料4に基づきま して簡単に説明いたします。資料3につきましては、申請書でございます。資料4につ きましては、この研究を行う場合の説明と同意書の案文でございます。  まず、申請書につきましては、この5月14日に厚生大臣に提出されたものでございま す。めくっていただきますと、今回の資料におきましては、従来であれば厚生大臣から 厚生科学審議会会長あて意見を求めるという形の諮問書、及び審議会会長より部会長あ て付議するという資料を添付させていただいてございますが、今回は省略させていただ いてございます。資料及び付議につきましては、先ほど部会長の方から報告がございま したとおり、本日6月4日付で行っておりますので、再度御報告申し上げます。  実施施設である東北大学加齢医学研究所附属病院の金丸院長から厚生大臣あて意見を 求めるという形の申請でございます。研究内容につきましては、「非小細胞肺癌に対す る正常型p53遺伝子発現アデノウイルスベクター及びシスプラチンを用いた遺伝子治療 臨床研究」というものでございます。  総括責任者は、1ぺージ目の一番下の欄にございますが、当該研究所の呼吸器腫瘍研 究分野教授の貫和先生でございます。  2ぺージ目以降が総括責任者以外の研究者の概要、どういう方々が臨床研究を行うか ということでございます。  また、3ぺージ目にいきますと続きがございまして、岡山大学医学部附属病院との共 同研究の形をとるということもございまして、岡山大学の先生の名前が挙げられている ものでございます。また、審査委員会が当該研究計画の実施を適当と認める理由につき ましては、8ぺージ目以降の資料に添付されてございます。  内容について説明いたしますと、4ぺージ目からは「研究の目的」ということでござ いまして、先ほどの繰り返しになりますが、非小細胞肺癌の症例につきまして、正常型 のp53遺伝子発現の遺伝子を入れたアデノウイルスベクターの局所投与と、シスプラチ ンの全身投与を行った場合の安全性を観察すること、最大耐量を決定するとともに、併 せて治療効果も研究するということでございます。これは、4ぺージ目の「研究の目 的」の中ほどにそのように書いてございます。これは、もちろん共同研究を行います岡 山大学と同じ目的でございます。この臨床研究において使用するアデノウイルスベク ターは、アールピーアール・ジェンセル(株)を経由して供給されるものでございまし て、既に岡山大学の臨床研究で用いることで、許可が与えられている製剤を使うことに なるというものでございます。  当該研究につきましては、岡山大学と同一のプロトコールということでございますの で、以後、申請の内容につきまして基本的な説明は省略をいたします。この申請書につ きまして、特に当該施設に係わる事項につきましては記載が異なってきますので、その 辺を中心に以後説明いたします。  5ぺージ目の一番下の欄、「遺伝子治療臨床研究の実施が可能であると判断する理 由」というのがございまして、そこの一番下から3行目、4行目あたりから、ここでい ろいろ名前が載ってございますが、当該研究所におきましては、PTに携わる予定の記 載の方々がウイルスベクターの取り扱いに慣れていることなど、研究を進める上での十 分な基礎的な背景を有しているというような内容がここに記載されているものでござい ます。  また、6ぺージ目「実施計画」という概要の欄がございますが、その上から3行目に つきまして、本研究は共同研究参加施設全体で調整委員会を設置し、共同でいろいろ意 見交換をしていくという旨が記載されているものでございます。  また、7ぺージ目先ほどの「実施計画」の引き続きになりますが、「備考」欄の上の 欄の下から2行目ぐらいに書いてございますように、症例数としましては、共同研究全 体として24例ということで書いてございます。 「備考」欄には、当該研究については、同大学の遺伝子治療の臨床研究審査委員会で 審議が6か月にわたり行われ、科学的・倫理的に妥当だと了解されている旨が記載され ているものでございます。  続きまして資料4でございますが、これは東北大学で今用いようとしている説明と同 意文書という案でございます。東北大学から提出のあったそのものを出させていただい ております。前回、4月23日の当部会におきまして、東京慈恵医科大学も同じような位 置付けで出されたときに、内容的にこうした文書も岡山大学と同じようなものでやった らいいという意見がございました。その内容については東北大学に伝えてございます が、とりあえず、今回は提出されたものをそのまま出しております。 事務局の方で見たところ内容的には同等という印象であり、こちらの方が、一部は、 例えば資料4の10ぺージ目にフローチャートのように書いてあって、前よりも少し分か り易いかもしれないという部分もございます。説明といたしましては以上でござい ます。 ○高久部会長 どうもありがとうございました。東北大学から出されました肺がんに対する遺伝子治 療臨床研究の計画について事務局から説明がありましたが、この件に関しましては、岡 山大学の場合、東京慈恵会医科大学の場合と同じプロトコールが出されていまして、既 に御議論をいただいている訳ですが、当然、作業委員会がつくられることになると思い ます。資料5にありますように、慈恵会医科大学からの同じプロトコールの作業委員会 と同じメンバーにして、前回のときも御説明いたしましたが、施設がこの遺伝子治療を 行うのに十分な能力を持っているかどうかということを主に作業委員会で検討していた だくことになっています。慈恵会医科大学の場合にも、御議論いただきましたが、イン フォームド・コンセントについては、岡山の場合と同じインフォームド・コンセントに しないとおかしいと思います。又同じにすべきであるという御意見があったと思い ます。この東北大学の計画書も、事務局から説明がありましたように、チャートを書い て少し分かり易くした以外は基本的に岡山大学と同じインフォームド・コンセントにな っていると思います。この点に関しまして何か御意見、御質問がおありでしたらどう ぞ。 ○木村委員  資料3の7ぺージの「備考」のところでございますが、先ほどの千葉大学のときと同 じように、「備考」の1)の一番最後のところ、「被験者はその申し出により、いかな る時点においても同意を撤回し」と「いかなる時点においても」という言葉を入れてお いていただいた方がはっきりしていいと思うんです。 ○高久部会長  そうですね。 ○木村委員  それから、資料4でございますが、これは先ほどの千葉大学のケースでも出ているこ とでございまして、真ん中に10ぺージ、右側の方に13ぺージと書いてあるところです が、ここに「健康被害補償」ということが出てきておりまして、「重大な損害を被った ときに備えて治験依頼者 (アールピーアール・ジェンセル(株))は、治験担当医師の 責任を含めた保険に加入しています」とはっきり書いてある訳ですが、その次のぺージ にいきまして、これも先ほどの千葉大学のケースと似ている訳で、恐らく同じフォーマ ットということになるかと思うのですが、治験に係わる入院というのは、この治験に係 わる入院と判断して、そして、これは会社が負担するということになっている訳でござ います。ということは、現段階で、いろいろな日本の遺伝子治療に関係する今後の方向 につきましては、いわば外国のマテリアルに頼らざるを得ない状況にあるということに なってくるかと思うのですが、そういう中で、企業側の支払いになると大変なことにな ると思うんですけれども、いわば何か特別の契約といいますか、これだけのやったこと についての見返りといいますか、要するに治験のデータを提供するということだけで、 その他の内容については一切ここには出てきていない訳ですが、それはないというふう に見てよろしい訳でございますね。 ○高久部会長 企業が関係して治験を行う場合には、治験のデータを提供する以外にはないと思いま す。患者さんに対するそれ以上の支払いも原則はないということです。 ○松田委員 岡山大学と同じだというふうに伺ったんですけれども、ちょっと確認させていただき たいのですが、まず第1番目に、この場合には、p53に変異があってもなくても使用す るということですね。 ○高久部会長  そうです。 ○松田委員  それから第2番目ですけれども、資料3の5ぺージの「遺伝子治療臨床研究の実施が 可能であると判断する理由」というところの下の方に「SSCP解析により迅速にp53 の遺伝子の変異や欠失を検出するシステムが確立されている。さらに必要があれば」と 書いてあるんですけれども、p53の変異をSSCPだけで見た場合に、分からなくはな いですけれども、「さらに必要があれば」という言葉を入れなければいけないんでしょ うか。千葉大学の場合にはそういうことは書いていなくて、見ますと、「変異後も調べ る」とはっきり書いてあるんです。だから、SSCPだけでやっておいて、さらに必要 があればという言い方をするよりも、むしろ、どんな場合でもちゃんとシークェンスま でやるべきではないかというふうに私は思うんですけど、その辺はどうなんでしょう か。 ○高久部会長  普通はSSCPで分かるのではないのですか。 ○松田委員  分かりますけれども、検出率は80%ぐらいですね。あとの20%ははっきり分かりませ ん。だから、逆に言うと、20%だけシークェンスするという意味かもしれませんけれど も、後からデータとしてはっきりさせるためには、エバリエーションするときにどこに 変異があったかというのはやはり問題になるでしょうから、全部していただいた方がい いんじゃないかと思うんですけれども、前のときはどうだったんでしょうか。 ○事務局 詳細につきましては、今後設置されます作業委員会における検討の中で計画者からの 聴取を含めて検討されることになると思いますが、p53の変異の有無について、その変 異がある者に限って実験すべきではないかという御指摘もたしか以前あって、作業委員 会でも御議論になっている案件かと思います。ただ、どちらかといいますと、変異の有 無を調べながら実施した上で、結果の解析の時点でという考え方に立っているものと思 われますが、詳細は作業委員会で御検討いただきまして、また当部会の御判断をいただ くようにしたいと思っております。 ○高久部会長 その点は、作業委員会で、はっきりしていた方がよいと思います。おっしゃるとおり です。 他にどなたか。もしなければ、資料5にあります作業委員会の方で、このプロトコー ルに関して検討する事を御了承いただきたいと思います。作業委員会が終わった時点 で、再びこの部会で総合的に審議をいたしますので、そのときにはまたよろしくお願い します。作業委員会についての御了承は資料5でいいですね。  引き続きまして、現在実施されております東京大学医科学研究所附属病院(以下、東 大医科研)、これは腎がんの遺伝子治療、それから岡山大学医学部附属病院、これは肺 がんですけれども、その遺伝子治療の研究の進捗状況について、事務局の方から説明し ていただけますか。 ○事務局  資料6に、今、部会長が言われた内容について書いてございます。内容といたしまし て、見ていただければということになるのですが、東大医科研につきましては、1例目 の患者さんについて、4月27日に最終的な接種をしたということでございます。また、 2例目の患者さんについても、前回は検査までだったんですが、1回目の接種が昨日行 われる予定というところでございます。また、岡山大学につきましても、1例目の患者 さんについて3回目、4回目の投与が行われて、2例目の患者さんについては2回目、 3回目の投与が行われたということでございます。  なお、両方の病院からの報告によりますと、この治療の研究に関して起こるようない ろいろな症状とか、問題になるような事故は発生していないというふうに確認をしてご ざいます。以上でございます。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。比較的順調に進んでいるのではないかと思います。 引き続きましてこの部会で二つのプロトコールで治療されている患者さんの経過につい て、また御報告させていただきたいと思います。  次に、NIHの審査方法についての説明をお願いします。 ○事務局  前回のときに、遺伝子治療臨床研究の取り扱いについて、今後更に増大してまいりま す負荷を考えながら、より適切かつ迅速に判断をしていくということの御検討を進めて いただくということで、現在、本日の参考資料といたしまして、米国NIHにおいて、 今どんな様子で取り扱っているかということを簡単なチャートに作成いたしましたの で、参考資料ということで配らせていただいております。今後、順次このような資料を 整備しながら、当部会としての御検討を適切な機会にまとめて実施いただきたいと思っ ておりますが、本日は、あくまで今後の検討のための参考資料でございます。 ○高久部会長  同じことで文部省から出ている資料についても、簡単に説明してください。 ○事務局  実は、前回の部会におきまして御議論いただきまして、厚生省の基準の読み方に対し まして、より致命的な遺伝性疾患、その他致命的な疾患に限って論議をするのかという ことについては、そうではないということで御了解いただいたところでございますが、 文部省におきましても同様の御議論がありまして、更により明確にガイドラインとして 理解していただこうというご趣旨で、本日お配りしましたような形でガイドラインの改 正を文部省では実施しております。 事務局といたしましては、文部省事務局とも相談いたしましたけれども、基本的に、 文言は多少異なるにしても、より前広に審議を尽くしていただこうという趣旨の改正で あって、基本的な窓口の広さといいますか、そういうものは何ら変わるものではないと いうことで相互に理解しております。 ○高久部会長  対象とする疾患に関しては、文部省の方では少し表現を変えましたが、当部会では、 基本的には同じ疾患を取り扱う。ただ、差し当たって文章を変えなくても、対象疾患は いまのガイドラインでカバーできるという判断で同じように取り扱いたいと思いますの で、御了承いただきたいと思います。  次に、大分前になりますが、この部会の下に出生前診断に関する専門委員会をつくら せていただきました。資料8にあります様に「母体血清マーカー検査に関する見解」と いう報告が出ています。この報告に関しましては、既に公開されておりまして、メディ アでも紹介されております。この報告に関しまして、事務局の方と、今日、御出席いた だいております古山委員長から御紹介いただきたいと思います。最初に、事務局の方か ら説明していただけますか。 ○事務局(母子保健課)  出生前診断に関する専門委員会の事務局をしております児童家庭局母子保健課でござ います。よろしくお願いいたします。  本日、資料7をご覧いただきたいと思いますが、事務局から出生前診断に関する専門 委員会の検討方針・経緯等について御説明を申し上げます。  出生前診断を含む生殖医療に関しましては、平成9年の7月から、当部会におかれま してヒアリング等が実施されてきたところでございますが、集中的に議論を行うという ことで、平成10年の10月に部会の下に出生前診断に関する専門委員会が設置され、10月 23日に第1回の専門委員会が開かれたところでございます。  専門委員会におきましては、まず検討方針について議論されました。資料7の上の方 にございますように、出生前診断の問題の中でも、近年、急速に普及している母体血清 マーカー検査につきましては、インフォームド・コンセントや事後のカウンセリングが 不十分な場合があり、妊婦の間にも混乱が生じているという指摘がございますことか ら、早急な対応が必要であるということで、専門委員会におきましては、母体血清マー カーについて、出来るだけ早く見解をまとめるという方針で議論が進められた訳でござ います。  資料7の「検討経緯」にありますように、専門委員会は全部で5回開催されまして、 そのほか委員の先生方の一部の先生で作業を行うためのワーキンググループを3回開催 していただきました。約半年という短期間で見解をまとめていただいた訳でございます が、ワーキンググループが1回平均5〜8時間、委員会の方も1回3時間半ぐらいの審 議をいただいておりますので、実際には相当の時間がかけられまして作成された訳でご ざいます。本年4月28日の委員会でこの見解が取りまとめられたところでございます。 委員会の検討の経緯等については以上でございますので、内容につきましては、委員 長の兵庫医大の古山教授に御出席をいただいておりますので、古山委員長からお願いし たいと思います。以上でございます。 ○高久部会長 それでは、古山先生、よろしくお願いします。 ○古山委員長  「出生前診断に関する専門委員会」の委員長を仰せつかっております古山でございま す。本日は、我々の専門委員会におきまして「母体血清マーカー検査に関する見解」を まとめまして、本部会に報告に参りました。どうぞよろしくお願いいたします。 先ほど事務局から説明がありましたように、専門委員会は計5回開催されました。更 に、見解案のたたき台を作成するためのワーキンググループを計3回開催いたしており ます。昨年11月中の2回のワーキンググループで「母体血清マーカー検査に関する見 解」の骨子はほとんど完成しておりまして、本年1月19日にその見解案を提示いたしま して、日本ダウン症協会及び検査実施会社より見解に対する御意見を拝聴いたしまし た。このヒアリングにおける御意見及びインターネットで寄せられた多くの御意見を十 分に考慮いたしまして、3月19日、4月28日の専門委員会での審議を経て、本日持参い たしました「母体血清マーカー検査に関する見解」がまとまりました。ただいまより「 母体血清マーカー検査に関する見解」について、概要を申し述べます。先端医療技術評 価部会の委員の先生方には、既に見解の全文をあらかじめ送付しておりますが、本日の 資料では、資料8の2枚目からを参考にしながら、概要を聞いていただきたいと思いま す。全文を読み上げることはせずに、要約のみを申し述べます。  資料8の2枚目をあけていただきますと、冒頭に「I はじめに」という文章がありま す。この「はじめに」におきましては、本見解を取りまとめるに至った出生前診断を取 り巻く学術的・社会的背景について述べております。  「II 検討の趣旨」においては出生前診断技術について述べ、特に母体血清マーカー 検査が妊婦に誤解や不安を与えていることにより、先端医療技術評価部会の検討におい て、早期対応の必要性から、専門委員会を設け、見解を取りまとめることになった経緯 が述べられております。  III「母体血清マーカー検査の問題点と対応の基本的考え方」におきましては、問題点 として三つ挙げてございます。一つは、妊婦が検査の内容や結果について十分な認識を 持たずに検査が行われる傾向があること。2番目の問題点としては、確率で示された検 査結果に対し、妊婦が誤解や不安を感じること。3番目に、胎児の疾患の発見を目的と したマススクリーニング検査として行われる可能性があること。この3点を指摘し、若 干の解説を加えております。  対応の基本的考え方といたしましては、医療の内容についての原則論を冒頭で述べま して、母体血清マーカー検査の特質や問題点と、本邦におけるカウンセリング体制が充 実していないことを踏まえると、医師が妊婦に対して、母体血清マーカー検査の情報を 積極的に知らせる必要はないこと、勧めるべきでもないこと、及び企業等が母体血清 マーカー検査を勧める文書などを作成・配布することは望ましくないといたしました。 しかし、妊婦から母体血清マーカー検査の説明の要請があり、その説明の際は、別紙内 容について配慮すべきであるといたしました。別紙の内容につきましては、当初案では 本文の中に含まれていましたが、検査の説明と実施に当たり配慮すべきことが具体的に 述べられていますので、別紙として分離いたすことにいたしました。  IVでございますが、「行政・関係学会等の対応」におきましては、母体血清マーカー 検査において、関係する医師のみでは妊婦の心理的、社会的問題の解決は容易では ない。そのため、先天性障害や遺伝性疾患の相談可能な機関との連携が大切であるが、 このような機関は限られている。このような専門機関が増え、専門家が育成されるよ う、行政・関係学会に要望し、既存の専門機関情報を広く一般に提供する必要性につい て述べております。  次に、別紙「母体血清マーカー検査の説明と実施に当たり配慮すべきこと」。この別 紙では、主として検査前及び検査後に、医師が妊婦等に対して説明する際、留意すべき 事項について述べてありますが、実施当事者は主文の方を読まずに、別紙のみを参考と することのなきように、この別紙の冒頭には、本文をよく理解した上で、別紙内容に配 慮し、慎重に行うよう喚起しております。  検査前については、そこに書いてありますが、簡単に申し上げますと、母体血清マー カー検査を実施する医師は、検査前に以下のことを説明する。検査の対象となる障害や 疾患についての説明。検査の目的・方法・原理・結果の理解の仕方についての説明。検 査によって予想される結果とその後の選択肢についての説明。  検査前の2番目としまして、母体血清マーカー検査を実施する医師は、妊婦等から文 書による同意を得ること。  3番目として、母体血清マーカー検査を実施する医師は、妊婦が専門的なカウンセリ ングが受けられる機関及び対象となる疾患を専門とする医師との連携体制を構築するこ と。 それから、4番目としましては、母体血清マーカー検査を行う検査会社は、秘密保持 を徹底すること。そういうことを検査前では述べております。  検査後では、検査を実施する医師は、検査後に次のことを行うといたしております。 1から5まで要旨がございまして、検査結果については、妊婦等に分かり易く説明 する。  それから、検査を実施する医師等の関係者は秘密保持を徹底する。  3番目、検査結果によって衝撃等を受ける場合があるため、妊婦及び配偶者等に対す る十分な心理的ケアと支援を行う。  4番目、母体血清マーカー検査の実施に際しては、専門的なカウンセリングが実施出 来る施設を速やかに紹介する。  5番目、当該疾患に関する相談が受けられる機関、例えば医療機関とか保健所、福祉 事務所等の存在やその情報を提供するというのが別紙でございます。  見解についての概要の御報告は以上でございます。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。専門委員会では、非常に長い時間をかけて見解をま とめていただきまして、どうもありがとうございました。この見解につきまして、何か 御意見おありでしょうか。 ○木村委員  委員長にお伺いしたいのですが、ここで見解にいろいろコメントをして、それをまた 最終的には部会長のもとで御勘案いただいて、修正するということも含めた発言になる 訳ですか。それとも、これは一応この線で一括して受け入れるということでしょうか。 ○高久部会長  私としては、専門委員会で非常に御苦労になってまとめていただきましたし、この報 告は既に新聞紙上にも公表されていますので、皆さん方の御意見をお伺いいたします が、この報告書を修正して部会の意見とするかということについては少し否定的に思っ ています。 ○木村委員  ということは、いわば先端医療技術評価部会の結論が審議会の結論にもなるという取 り決めがございましたね。ですから、もしここで了承されればこれが正式なものになる のですね。しかし、本日出てきた段階では、先端医療技術評価部会としてはまだ未定稿 な訳でございますね。 ○高久部会長  私自身は専門委員会の報告について、部会の皆さん方の御意見はお伺いいたします が、部会として新たに取りまとめるのは非常に難しいのではないかと思っています。で すから、膨大な時間をかけて専門委員会でまとめられたものを、また部会でやります と、同じ膨大な時間をかけなければならない。いろいろなことを考えますと、結論とし てはこれ以上のものはなかなか出てこないのではないか。ですから、もし御意見があれ ばどうぞおっしゃってくださいというのが正直なところです。 ○木村委員  私の提案では、これは確かに部会長が言われるように、先ほど事務局からもお話がご ざいましたように、大変な時間、エネルギーをかけておまとめいただいた訳で、基本的 には評価したいというふうに思いますが、2つ3つの点につきまして、もし出来ました ら、字句修正その他を含めて、部会長が積極的に御勘案いただいて最終的なものを出す ということの方が望ましいのではないか。そうしませんと、ここで申し上げます意見 が、ただ意見を述べたというだけになってしまうのではないかというふうに思いました ものですから一言言わせていただきました。  それで、細かいことはいろいろあるのですが、全般的にはいいんですが、語句を変え た方がいいのではないかというところが二、三ございます。本質的な方向としてはこれ でいいとしても、語句の修正ということで御了解いただければと思いまして提案いたし ます。  「母体血清マーカー検査に関する見解(報告)」の1ぺージ目の真ん中のあたりです が、これは見解が母子保健課と違うかもしれませんが、「優生思想に基づき人工妊娠中 絶等を認めていた条項が削除されたところである」と。これはそうなんですが、優生思 想に基づき全面的に削除されたのは、優生手術等を認めていた条項が削除されたん です。「優生」という言葉が使われていた手術という条項がなくなったんです。人工妊 娠中絶も確かに遺伝的な欠陥その他によるものの条項はなくなりましたが、今度の母体 保護法になった重点は、「優生思想に基づき優生手術、人工妊娠中絶等を認めていた」 と。私は、優生手術の方がわりに重要じゃないかと思うので、ここのところはちょっと どうかなというふうに思いましたものですから、厚生省母子保健課長としてどういうお 考えかということを一言お伺いしたかったんですけれども、どうなんでしょう。 ○小田母子保健課長  母体血清マーカーとの関連で、人工妊娠中絶のところを強調したのだと思いますけれ ども、先生のおっしゃるように、優生手術全体を削除したということですので、そこら 辺は委員長とも相談しながら、文言は修正をさせていただきたいというふうに考えてお ります。 ○木村委員  重ねて。せっかくの機会ですので、本当はいろいろ部会の方での御議論にも参加した かった訳ですが、1ぺージの上から3行目で、ちょっと前に逆上りましたが、「先天異 常などで」というふうに「先天異常」という言葉がここに出てくる訳です。これは、私 どもバイオエシックスの立場から見ますと、異常か正常かということのボーダーライン が極めて幅が広くて、何をもって異常とするのか正常とするのか。今、「先天異常」と いう言葉は比較的使われていないように思うのですが、なぜわざわざ「先天異常」とい う言葉が使われて、例えば、この文章のおしまいの方には「遺伝性疾患」という言葉に なっていますが、「先天異常」という言葉が入った理由は何かあるんでしょうか。 ○松田委員  「先天異常」という言葉はまだ医学的に残っていますし、一般的には「先天異常」と いった場合には遺伝性疾患を含めるんですよね。というのは、問題が起きてくる場合、 すべてが遺伝性疾患とは限りませんので、したがって、詳しく言えば「遺伝性疾患を含 めた先天異常」というふうになろうと思いますけれども、そういった意味では医学的に は問題ないと思います。 ○木村委員  「異常」という言葉は、バイオエシックスの方からは非常に問題のある言葉なん です。 ○松田委員  メディカル・サイエンスとしては存在しています。 ○木村委員  これは「変異」とは違うんですか。 ○松田委員  「変異」といいますと、はっきりと遺伝子に変異がないと「変異」という言葉は使わ ないんですけれども、「先天異常」と言う場合には、原因が何も分かっていない。しか し、メディカル・サイエンスとして先天的に異常であるという場合に使っていますの で、「変異」という言葉は、我々は遺伝子に限っては「遺伝子異常」とは言わないで 「遺伝子変異」と言っていますけれども、遺伝子までいかない場合は、全体としては 「先天異常」という言葉でまとめざるを得ないというのが現状です。 ○木村委員  イギリスでは「コンジェニタル・ディスアビリティーズ」という言葉を使ったりして いるのです。「先天障害」という言葉ではまずいわけですね。 ○松田委員  ええ。メディカルには「アブノーマリティー」という言い方をしています。 ○木村委員  では、それはメディカルな表現ということでクリアされたかと思います。  その次の行にまいりまして、「治療が可能な場合が限られていることから、この技術 の一部は障害のある胎児の出生を排除し」、ここも先天異常の問題のことと一般の障害 のことが非常につながってきている文章になっていますね。初めの方では、今、松田先 生が言われた遺伝的疾患を含む先天障害のことが取り上げられているのですが、後の方 になってくると、「障害のある者」というふうにつながってくるので、これは文章とし ては、「この技術の一部は障害のある胎児の出生を排除し、ひいては、障害のある者の 生きる権利と」というふうにしてつなげていかないといけない。むしろ「ひいては、障 害のある者の生きる権利と命の尊重を否定する」と、ここに一つ言葉がつながりません と、遺伝子障害があたかも障害のすべてであるかのような印象になりかねない文章にな っているのではないかというふうに思いましたものですから一言言わさせていただきま した。  引き続きまして、大変恐縮ですが、そのちょっと下のところですけれども、「倫理 的、社会的な問題も含んでいることから」というふうに書いてありますが、「IV 行政 ・関係学会等の対応」のところで、「心理的、社会的問題の解決が容易でない」という ふうに、こちらの方は「心理的、社会的」になっていますね。こちらの方は「倫理的、 社会的」になっているので、せっかくですので、これは両方共に「倫理的、社会的、心 理的な問題」というふうにして整合性をもって三つの言葉をそろえて、これは倫理面で も心理面でも社会面でも大変大きい問題でございますので、入れておいていただいた方 がいいのではないかと思います。  その次の行に「広く他分野の関係者の意見を聞くことが求められている」ということ で、これは恐らくワープロのミスプリではないかというふうに私は思ったのですが、医 学のみならず、医学のほかの分野ということでしたら「他分野」でいいのですが、「医 学のみならず、広く」と書いてありますね。しかも、下から3行目には「医学、看護 学、遺伝学、法学、生命倫理学の専門家からなる」と書いてございますので、この場合 の「他」は「多」という字でなければいけないので、「広く多くの分野の関係者の意見 を聞くことが求められている」というふうになるのではないか。これはオリジナルがど うなっていたのか分かりませんが、委員長、いかがでしょうか。 ○高久部会長  今、御指摘の点は、古山委員長の御判断にお任せしたいと思います。ほかにどなたか 御意見おありでしょうか。 ○金城委員  繰り返しになってしまうんですけど、「先天異常」というのは医学的な言葉であって も、やはりこれは社会的な文書ですので、この言葉については御検討いただく方がいい んじゃないかと思います。そして、ずっと「障害」というお言葉を使っていらっしゃい ますし、そういう意味では、私も「先天異常」という言葉を見ると余りいい気分はしな い訳です。ですから、そこのあたりは、日本の医学的な言葉であっても、今後はいろい ろ差別的な意味合いがないような形に変えていく必要があるんじゃないかと思います。 ○松田委員  お言葉を返すようですけれども、「日本先天異常学会」という学会すら存在しており ますので、我々は医学の立場でディスカッションしておりますので、我々自身は決して その言葉に対して差別的な意思を持っておりませんし、そういう言葉であらわすことに 問題があると言われても、私自身の考えとしては、おっしゃられる意味は分かりますけ れども、それに代わる言葉を今ここですぐ思いつきません。 ○金城委員  では、将来の問題としてお考えいただきたいということでございます。「日本先天異 常学会」という言葉を聞いたときも、私は非常にショックな感じを受けております。で すから、それも含めて、一般の人たちが見られるので、言葉については将来の問題とし て御検討いただきたいということです。  それから、母体血清マーカー検査については、ここに出ておりますように、さまざま な問題があるので知らせる必要はないということですね。これは、母体血清マーカー検 査というのは、検査としては非常に不完全な検査であり、問題も起こり易い、しかも、 カウンセリング体制もないということで、知らせる必要がないということになったので はないかと思います。そういう意味では、私は、そういう限定を付けて了解をしておき たいと思うんです。私は、原則として、女性が現在ある治療について知る権利があり、 そして、その知る権利を出来るだけ保障することが医学に求められるものだというふう に考えています。ただ、母体血清マーカー検査というのは非常に問題があるもので、し かも、有効性も非常に低いということから、こういう御結論になったということについ ては了解したいと思います。  そこで、一つ伺いたいんですけれども、よく分からないのですが、現在は母体血清 マーカー検査というのは余り効果のあるものとは私自身は思っておりません。でも、将 来の問題として、母体の血液の中に含まれる胎児の細胞を採取するということが可能に なるのではないかと思うんです。それについては、医学的にはいつ頃になるかというこ とをお知りでしたら教えていただきたい。それで、そうなったときに、マス・スクリー ニングとの関係はどうお考えになるのかということ。それまでは報告書の範囲を超えて いるということでしたら仕方がないと思うんですけれども、将来、胎児の細胞を取り出 すことが出来るようになったときには、どう対処するというふうに思っていらっしゃる のか。もし御意見がありましたら伺わせていただきたいと思います。 ○古山委員長  ただいま先生がおっしゃられたことについて、我々の委員会では討論していませんの で、その点についてはお答え出来ないのですが、母体血の中に混ざっている可能性があ る胎児の細胞を取り出して何かを調べることについてですね。 ○金城委員  胎児の細胞と母体の細胞をきちんと分離をして。今は分離出来ない訳ですよね。 ○高久部会長  もう既に出来ますね。 ○金城委員  そうなったときに、それはマス・スクリーニングとの関係では大変重大な問題が起こ ってくるのではないかと思うんです。 ○高久部会長  今は母体血清マーカー検査について議論をして、この報告書について御意見をお伺い したいと思いますので。 ○金城委員  分かりました。では、それはよろしいですので、将来、そういうことが起こってきた ときにあらためてということですね。 ○高久部会長 そういう事です。 ○廣井委員  そうしますと、専門委員会としては、少なくとも現時点では好ましくないという結論 ですか。 ○高久部会長  好ましいとも好ましくないともはっきりは言っていないと思います。 ○廣井委員  そうすると、現状のままにしておくということですか。 ○高久部会長  対応をいろいろ変えていくということです。検査前と検査後の対応ということについ ては、かなりしっかり書いていると思います。その分だけ専門委員会で非常に御苦労さ れたというふうに考えています。 ○木村委員  先ほど「IV 行政・関係学会等の対応」の2行目に「心理的、社会的、倫理的」と入 れていただくということで、イギリスで使っている「コンジェニタル・ディスアビリテ ィーズ」という言葉が、ここで「先天性障害」と。ここでは、どういう訳か「異常」と いう言葉を使っていないんですね。障害には先天性のものと後天性のものが当然ござい ます訳でして、ここでは「異常」と使っていないということに私は非常に注目した訳で ございますけれども、その次には「遺伝性疾患」という言葉が出てきている訳ですね。 ここで、この文章全体を見ますと、「連携を図る必要がある」、それから「行政・関係 学会等の一層の努力が望まれる」、それから「一般に提供する必要がある」となってい ますが、「一層の努力が必要である」で別に構わないと思うんです。ただ、ここのとこ ろは、もし出来ましたら、これは今日の私の発言で修正が可能かどうかは全く分かりま せんが、「このような専門家が育成され、専門機関が増えていくよう、行政・関係学会 等の一層の努力が望まれる」の中に、本来ならば、検査の実態の監視を含め、実態とい うのは一切分からない訳ですから、そういう監視を含め、専門機関が増えていくよう、 行政・関係学会等の一層の努力が望まれるではなくて、必要であると。ここにそういう 条項が入りますと、対応がきちんとなるのではないか。これは日本ダウン症協会の方か らの文書その他でも書いてございますけれども、私は、かねがねそういう必要性を思っ ておりましたので一言発言させていただきました。  それから、引き続きで大変恐縮でございますが、5ぺージをご覧いただきたいのです が、ここでも、これは人によって受けとめ方が違うものですから何とも言えないのです が、「検査前」のところのIの1の上から3行目でございますが、「その際、平易な言葉 を用い」、これは大変結構だと思います。「質問には納得いくまで応え、思いやりのあ る態度で接するとともに、秘密保持に留意する」。私は、これを読んでいますと、「思 いやりのある態度」というのは、素直にとればいいんですけれども、パターナリスティ ックな上からの発想がどうもこの言葉にはあるような気がしまして、しかも、「思いや り予算」とか、いろいろな使われ方もしておりますので、「慎重な配慮をもって接す る」とか、「思いやり」という言葉がちょっと引っかかるんです。  それから、日本先天異常学会もあるという話ですが、その次のところに「先天異常」 という言葉がまた出てくる。  それから、その次の2)のところでございます。これも非常に大事なところだと思う んですけれども、「障害はその子どもの一側面でしかなく、障害という側面だけから子 どもをみることは誤りであること」。「一側面でしかなく」という、やや否定的な表現 になっておりますが、これは、むしろ「障害はその子どもの個性の一側面であり、障害 という側面だけから子どもをみることは誤りである」というふうな表現の方がもっと前 向きでポジティブで、障害というのは豊かな子どもの個性の一種の発現として捉える方 々が多くなってきた訳ですので、そういう捉え方が必要ではないか。  3)のところも、障害の有無やその程度と本人及び家族の幸、不幸は「本質的に」関 連がないということをきちんと言葉として入れた方が良いと思います。関連があると思 っている方もおられるようでございますし、それは「本質的に」は関係がないというこ とを明確にしておいた方がいいんじゃないかというふうに思いました。  それから、【検査前】Iの5ですけれども、ここのところは専門委員会でどういうふう にお話し合いになったか分かりませんが、これは専門委員会の委員長にお伺いしたいの ですけれども、「検査の説明文書や同意書は、医師が自ら適切なものを用意する」。こ れは具体的にどういうことを、つまり医師というのは、患者の身になって考えるという ことで、長い間、そういう倫理が伝えられてきた訳ですが、医師だけの発想で作られた 説明文書や同意文書はだめだというところがバイオエシックスの基本点にございますの で、その観点から言いますと、私の提案は、いわば当該医療機関における倫理委員会等 での作成による公開されたフォーマットを用いるということにしておいた方が基本的に は正しいのではないか。そうでないと、医師が自ら思うところの適切なインフォームド ・コンセントの文書を患者側に示されても、一般の人たちは一切分からないということ になりかねない危険性のある文書ではないかというふうに思いまして、なぜ「医師が自 ら適切な」という表現が出てきたのかということの背景をちょっとお伺いしたいと思い ます。 ○古山委員長  御質問は、今おっしゃったのが御質問だと思いますので、それから先にお答えいたし ます。  この検査については、検査会社から説明とか、場合によっては同意書のフォーマット みたいなものが提示されていた経緯があるように聞いております。ですから、そういう ものを安易に医師が利用しないように、医師が自らの判断で適切な説明文書や同意書を 用意して検査を実施するという、一種の歯止めみたいなものでございます。そういう発 想からでございます。それでよろしゅうございますか。 ○柴田委員 先ほどの廣井委員の御質問に対して、好ましいとも好ましくないとも言ってないとい う答えは、私、ちょっと違うんじゃないかと思います。明らかにこの見解は、出生前診 断がどんどん広がっていき、それが一人歩きしていくことに社会的に待ったをかけた見 解だと思うんです。やはりそのことを明確にしないといけないのではないか。また、そ こにこそ最大の意義といいましょうか、私は社会的に大変大きな意義のある見解だと認 めて高く評価をしているのです。 その点から言えば、もう一歩強い言葉を使っても良かったのではないか、ちょっと及 び腰になっている点があるのでは、と思うんですけど、一方では、これは強制ではない んだという点を配慮したのでしょう。それでも母体血清マーカー検査を知らせる必要は ないとか、勧めるべきではないとか、そういう宣伝の文書などは配布するな、というよ うなところで見解の主旨は明確にはなっていると思うんです。慎重に言葉を使っている けれども、これは明確に社会的な待ったであると、そのことをはっきり再確認していた だきたいと思います。 ○高久部会長 おっしゃるとおりだと思います。 ○古山委員長 先ほど委員皆様からの御指摘の字句その他の訂正でございますが、これは委員長の裁 量で変えられるところは変え、6月23日に専門委員会がございますので、私だけの判断 では難しい部分は、そこで相談させていただきたいと思います。 ○高久部会長 もし御意見がありましたら、事務局にファックスでお送りいただければ、今、古山委 員長がおっしゃったように、専門委員会で当部会の意見を参考にして、変えられるもの は変えるということになると思います。 ○松田委員 さっきの先生の御質問にお答えを出さなければいけないと思いますけれども、「思い やりのある態度」というのは、ジェネティクス・カウンセリングの中に出てくる言葉 で、つまり「共感をもって接する」という言葉の言いかえだと思います。ですから、パ ターナリスティックという意味ではありませんので、そこのところをちょっと説明して おきたいと思います。これは私がつくった言葉ではありませんけれども、幾つかのジェ ネティクス・カウンセリングのキーワードがありまして、その中にある、「共感をもっ て患者に接して、相手の態度の決定をサポートする」という言葉の言いかえというふう に理解していただきたいと思います。 ○木村委員 今、私の質問へのお答を聞いておりますと、例えば企業側がそういう説明や同意の文 書をつくっているとか、ジェネティック・カウンセリングの方で非常にスタンダードな マニュアルの中に入っている言葉が「共感」であるとか、いろいろなことが分かってき て大変勉強になりました。もしそうだったら、むしろ「共感をもって接する」という言 葉の方がかえっていいんじゃないかと思うんですけれども。 ○松田委員 専門委員会の委員長が今後いろいろとなさると思います。 ○木村委員 今、部会長から大変重要な御指摘がございましたが、これは、これからの先端医療技 術評価をどのようにするかということについての大変重要な文書になりますので、そう いう意味で、部会長がおっしゃられましたように、修正するものは修正する。そしてま た、今後も意見があればファックスその他で意見を表明するとか、部会の中の委員によ る意見の表明でございますけれども、そういう形で御了解いただけたということは積極 的に評価できることだと思います。どうもありがとうございました。 ○柴田委員 先ほどの意見に続けて、一つだけ質問の形で。これは出生前診断に対する見解の第一 歩だろうと私は了解をしているのですが、この後に、これからもいろいろな見解を出し ていくつもりがあるのかどうか。各種の出生前診断に対して、専門委員会としてはどん なふうにこれから先の審議を考えておられるのかを質問します。これは第一歩だという 理解をしてよろしいのかどうかということです。 ○高久部会長 古山委員長に出生前診断についての御議論をお願いして、非常に苦労されて出てきた のがこの報告書です。現在もう一つの専門委員会、「生殖補助医療技術に関する専門委 員会」についての議論が行われていますので、そちらの方の意見を当部会でいづれお伺 いすることになると思います。出生前診断に関しては、今一番問題になっていますトリ プルマーカーについて専門委員会の見解が出ましたので、もう少し休みにしたい。こん なことを言っては怒られるかもしれませんが、それが私の正直な心境です。私の方にも いろいろな声がたくさん寄せられました。恐らく古山委員長もしばらくお休みになりた い心境じゃないかと思います。 それでは、まだいろいろ御意見があると思いますが、先ほど申し上げましたように、 御意見を事務局の方に後でまたお知らせ願えればと思います。 事務局から配布資料についてありますか。 ○小田母子保健課長 今後の取り扱いについて御報告させていただきたいのですが、今日の部会で出まし た、あるいは後ほどまた当部会の委員の先生方からいただく御意見をもとに、先ほど委 員長が申し上げましたように、6月23日に再度、専門委員会を開きまして、そこでの結 果をもとに、出来るだけ早く一般の医療機関、あるいは患者さん等にも周知したいと思 っております。部会の御意見をお聞きした形で修正させていただいた上で専門委員会の 見解として周知するということでよろしいでしょうか。 ○高久部会長 はい。そういうふうにさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。 ○事務局 (母子保健課) 資料9をご覧いただきたいと思います。1ページのところに「調査方法等」というの がございますが、この調査につきましては、厚生科学研究費補助金の特別研究の方で実 施されまして、今年の2月から3月にかけまして、一般の方、産婦人科医、小児科医、 また、不妊治療の患者さんを対象に意識調査が行われました結果でございます。生殖補 助医療技術に関する専門委員会におきましても、こういった調査が是非必要ということ で、内容につきましては、専門委員会の御意見も踏まえて実施されております。現在、 概要版ということで中間的に取りまとめておりますけれども、報告書として近々出され る予定でございます。以上でございます。 ○高久部会長 どうもありがとうございました。それでは、これで終わらせていただきたいと思いま す。 <了> 問い合わせ先 厚生省大臣官房厚生科学課 担 当 須田(内線3804) 電 話 (代表)03-3503-1711 (直通)03-3595-2171