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医療保険福祉審議会 第51回制度企画部会議事要旨


1.日時及び場所

平成11年6月4日(金)14:00〜16:00
厚生省共用第23会議室

2.出席した委員等

金平、磯村、糸氏、塩野谷、高木、高秀、鴇田、堀田、若杉の各委員
岡本、鳴神の各専門委員

3.議題

(1) 高齢者医療制度等の見直しについて
(2) その他

4.審議の概要

1)はじめに事務局より「医療保険各保険者の安定的運営に関する参考資料」について説明があり、その後、発言及び質疑応答が行われたが、その概要 は以下のとおりである。

(鴇田委員)

○ 国民健康保険では給付費等の50%近くを公費で負担し、被用者保険は保険料の半分を事業主が負担している状況で、国保の場合は事業主に代り負担しているように思われるが、支出の根拠を教えてほしい。

(事務局 渡邉保険局国民健康保険課長)

○ 昭和36年から始まった国民健康保険制度は、大正時代から始まった健康保険制度の保険料が労使折半であったことを踏まえ、国が事業主に代わって負担する部分があった。
○ 当時の国保加入者は、結核などの病気で職場を離れた人が加入するなど、健保に比べ所得水準が低く、保険料負担能力も乏しかった。また、給付率も5割と健保と比べ格差があったので、少しでも健保に近づけようという意図があったと思う。国保については他に、低所得者の保険料軽減分を国・県・市町村で埋める制度がある。

(鴇田委員)

○ 経済学の分野では、事業主が支払う分は賃金に付随する部分、フリンジベネフィットと考えられるが、自営業者は国家公務員でないので国が支払う必要はないことになる。
○ 元来、健保加入者になる前に健康でなければ企業に採用されないわけで、疾病のリスクを考えた場合、本来の根拠としては薄弱であるが、健保から排除された人を国が補助することについては正当性がある。

(磯村委員)

○ 日本の企業は諸外国に比べ高コストといわれているが、理由の一つに人件費が挙げられ、給料が増えていないのに社会保険料が増えている実態がある。
○ サラリーマンの中でも、健康なのになぜ多くの保険料を出さなければならないのかという声がある。
○ 拠出金を出すにあたっても、自分の会社のOBの面倒をみるためならば納得する部分もあるが、他の人のために保険料の40%出す必要があるのか、また、所得捕捉が不十分で保険料を支払わない人がいるような国保は国庫で面倒をみればよいという意識がある。
○ 自分の健保組合の中で管理できれば、保険者機能も発揮でき効率化も可能であるが、拠出してどこかで管理するというのではそうもいかない。国保も改善されていけば将来は一緒になることも可能かもしれないが、今は無理だという気持ちが強い。保険で面倒みるのであれば、仲間の分なら仕方がないが他のグループまでは難しいというところである。

(高木委員)

○ 本日の資料7ページ「(2)国民健康保険(市町村)・政府管掌保険・組合管掌健康保険の比較」と8ページ「(3)被保険者平均年齢別保険者数の分布状況」の関係を教えてほしい。
(事務局 川尻老人保健福祉局企画官)
○ 8ページはデータの制約もあり、7ページの加入者の平均年齢ではなく、被保険者の平均年齢という指標を用いた。絶対水準あるいは市町村国保との格差を見てもらうよりは、健保組合の中でも年齢構成が異なっていることを見てもらうために載せた。被用者保険は本人だけで、子供、配偶者、父母などの被扶養者までは入っていない。市町村国保の場合は、加入者と被保険者は一致する。

(磯村委員)

○ 高齢化が進展し、経済成長以上に医療費が伸びている現状では、健保組合はやっていけなくなるので、少しでも改善出来る部分はやっていくべき。
○ 自己負担1割などコンセンサスが得られた部分からでも実施してもらいたい。このまま決着がつかず議論が長引き先送りされることを懸念する。

(塩野谷委員)

○ リスク構造調整を支持する意見を改めて強調したい。調整する方法は年齢、所得の2つあるが、日本では所得調整については懐疑的な意見が強いので、ここでは立ち入らない。
○ 年齢によるリスク構造調整は、どんな職場、年齢であろうと、給付と負担に関して同じ待遇を受けるという制度の一元化と同じ効果を発揮する。また、各保険者に平等な出発点を保証した上で、効率化のインセンティブを持たせるという一元化によって果たし得ない目的を達成できる。
○ 年齢調整は、制度モデルA案、B案をはじめ、あらゆる制度案の基礎にあり得る、合理的かつ中立的な制度である。
○ 各企業の健保、あるいは政管等の組合の赤字が主張されているが、保険料を上げる可能性を考えずに、単に、赤字であるから反対という議論はいかがなものか。
○ 標準的な医療費(基準医療費)だけを調整することにより、事実上の医療費が基準医療費を上回る保険者は医療費を下げるインセンティブが働き、逆の保険者の場合には、保険料を下げることも可能になる。
○ 現行の老健拠出金は70歳以上だけを基準に拠出金を積算しているが、若年者にかかる医療費の大小に応じた若人医療拠出金も本来は必要。全体を対称的にすると同時に細かく年齢別とすべき。また、基準医療費を平均値でなく、政策的なパラメータとして設定することも可能。
○ 最初に、公費と自己負担を設定した後、残った分を保険料で賄うにあたって、年齢調整するとどうなるかということを論ずるべき。制度モデルA、Bの接点はそこに求めるべきであり、現在の負担関係と比較して損か得かという議論は慎むべき。

(若杉委員)

○ 我々の提案する制度モデルBでは、国保に国費を入れることで調整することを主張している。
○ 年齢調整を実施するとしても、被用者保険と国保では所得形態、所得捕捉の方法が異なり、根本の部分を直さず理論的に調整しても難しいのではないか。数学的な調整よりも実態をみて国費を入れたらどうか。
○ 資料135「制度モデルBの関連試算(若杉委員の求めによる試算)」の4ページの平成37年度推計にもあるように、年齢調整を実施しなくても国保に公費を投入するだけで現行の保険料とあまり変わらず実施可能である。

(高木委員)

○ 塩野谷委員の主張する論理を遂行するには、現行の制度に対する信頼感を取り戻すことが必要だと思うが、医師の不正請求や不十分な情報開示がある中で実行できるか疑問に感じる。

(塩野谷委員)

○ 様々な議論がある中、年齢の違いがあるという事実だけは明白で、年齢調整をきちんと実行することで制度モデルA、Bの接点を作ることが出来る。

(堀田委員)

○ 高齢者医療制度の理念と現実の問題が錯綜しているように見える。企業が保険料の半分を面倒みるという歴史的経緯は理解できるが、なぜ企業自身自ら事務を行い保険料を負担するに至ったのかが理解できない。
○ 退職した人の面倒をみることは非常に優しくてよいと思うが、どういう理由でやるのか社会的に通る理屈があるのか疑問である。

(高木委員)

○ 保険料の事業主負担については、今までの労使の団体交渉の中で、働く上の条件として決めてきた経緯がある。組合によっては5割以上事業主が負担しているところもある。

(若杉委員)

○ 現状の老人保健制度では、被用者保険から国保に財源を移しているように見えるが、老人医療費を全国民で平等に負担しようとする目的のため、やむを得ず出しているのであることを理解願いたい。
○ 拠出金として一旦出て行ってしまったお金は自分で管理できないが、制度モデルBのような突き抜け型であれば、退職した人の分まで管理できて、保険者機能を働かせることが出来る。

(鴇田委員)

○ 各健保組合の拠出金負担割合が40%で、今後雇用形態が流動化しつつある現状では、今の制度を存続することは難しく、若年世代は自分の分を賄うことは可能だが、高齢者は自分の保険料だけでは賄えないので、各世代が公平に支出するような消費税に財源を求めざるを得ない。

(磯村委員)

○ 今後は今までの終身雇用制を続けることは不可能で、国保への公費50%投入も難しいとなると、広くみんなで負担する消費税という形となるが、すぐに財源を消費税に求めることが出来ない現状を考えると、突き抜け型の制度モデルBが望ましいと思う。

(金平部会長)

○ 今まで、具体的な制度設計にあたって検討すべき事項の7つの論点に沿って議論してきた。今後は再整理し直し全体的な議論にしたいがどうか。

(堀田委員)

○ 将来の高齢者医療制度のあるべき姿と現実にある問題を整理し、目標に向かって進むべき道筋を立てることが必要だと思う。

(磯村委員)

○ いつまでも議論していてよいのか。時間が経過するに従って解散する健保組合が出てくることを考えると、現実的な面で早急に対応できる所をまとめ実施する必要があると思う。

(金平部会長)

○ 事務局より次回以降の進め方について説明願いたい。

(事務局 井口老人保健福祉局企画課長)

○ 次回6月11日は、全国市長会・全国町村会・国保中央会の三団体に了承を得たので、ヒアリングを行うとともに、併せて、別の部会の専門委員会で健康づくりや予防などのヘルス関係の報告書がまとまりつつあるので御説明したうえ、御審議をお願いしたい。その後については、全体を総括して御議論いただけたらと考えている。


2)最後に、金平部会長より、次回は6月11日(金)午後2時から別館8階共用第23会議室において、高齢者医療制度等の見直しについて審議する旨発言があり、閉会した。


照会先
担当者 老人保健福祉局 企画課 課長補佐 宮本 直樹 内線3917


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