99/05/10 第7回厚生科学審議会総会議事録 第7回厚生科学審議会総会議事録 1.日  時 : 平成11年5月10日(月) 16:00〜18:00 2.場 所 : 厚生省 特別第1会議室(中央合同庁舎第5号館 7階) 3.出席委員 : 豊島久真男会長    矢崎義雄 研究企画部会長 寺田雅昭 先端医療技術評価部会長代理          飯田経夫委員  内山充委員  大石道夫委員  軽部征夫委員          木村利人委員  柴田鐵治委員 曽野綾子委員  竹田美文委員          船越正也委員 4.議 事 : 21世紀に向けた今後の厚生科学研究の在り方について 5.資  料 : (1)「21世紀に向けた今後の厚生科学研究の在り方について」    (諮問書、付議書)          (2)「21世紀に向けた今後の厚生科学研究の在り方について」    (研究企画部会報告) ○事務局 只今より第7回厚生科学審議会総会を開催いたします。 なお、あらかじめ石井委員、大塚委員、岸本委員、茂木委員から、やむを得ず欠席の 旨のご連絡をいただいております。  また、柴田委員におかれましては、所用のため若干遅れてご到着になるというご連絡 をいただいております。また研究企画部会長の矢崎委員におかれましては、現在こちら に向かっておられるということでございます。 ○豊島会長  本日は皆様お忙しいところどうもありがとうございました。それでは早速始めさせて いただきたいと存じます。 まず事務局の方から資料の確認をお願いできますでしょうか。 ○事務局 (資料の説明と確認) ○豊島会長  よろしゅうございますでしょうか。 それでは本日の議題でございますが、「21世紀に向けた今後の厚生科学研究の在り 方」につきましては、これまで研究企画部会において精力的に議論がなされてきたとこ ろでございます。当総会といたしましても、平成10年3月の第4回総会と平成11年3月 の第6回総会において議論してまいりました。資料1にございますように、このたび厚 生大臣より当審議会に諮問され、研究企画部会に付議いたしておりましたところ、当該 部会において報告が取りまとめられましたので、矢崎部会長よりご報告をお願いしたい と思います。  それではよろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長  本年4月23日に厚生大臣から諮問されまして、研究企画部会に付議されました「21世 紀に向けた今後の厚生科学研究の在り方について」ご報告いたします。  研究企画部会では平成10年3月から審議をいたし、トータルにしますと合計8回開催 し、1年以上にわたりまして本件について審議を進めてまいりました。この度部会報告 として一応取りまとめることができましたので、報告申し上げたいと思います。 厚生科学については、最近の著しい生命科学の進歩をどのように疾病の克服に向け て、あるいは国民の健康改善に向けて進めたらいいかという点と、それから生命科学の 進歩による医療技術の進展と社会との調和を今後どのように進めていくべきかというこ とを踏まえて研究企画部会の委員の方々に討論していただき、まとめさせていただきま した。その詳細につきましては事務局より説明いただきまして、この報告全体につい て、またご意見を賜れば大変ありがたく存じます。よろしくお願いいたします。 ○唐澤室長  それでは事務局の方からお手元の資料に沿いまして、報告書の概要をまず朗読させて いただきまして、それから若干ポイントをご説明させていただきたいと思います。 目次をご覧ください。全部で5つの部分に分けておりまして、第Iは「厚生科学の意 義」、第IIが「厚生科学研究のこれまでの推進状況」、IIIが「厚生科学研究を取り巻く 状況の変化」ということで、IVとして「新たな変化に対応して求められる研究領域」と いうことで、具体的な研究領域の記述をしてございます。それから最後のローマ数字 の・が「今後の厚生科学研究の推進方策」ということで、これは研究を推進するための 方策、あるいは支援の体制というような事柄について記述をしているわけでござい ます。 それでは朗読をさせていただきます。 <以下、資料>  I 厚生科学の意義  ○ 20世紀は偉大な科学技術の世紀であり、その飛躍的な進展は、人類に大きな福 音をもたらし、人々は健康で豊かな生活を享受できるようになった。21世紀に向 け、2003年を到達目標とするヒトゲノム解析に続き、各遺伝子の機能を解明す る研究の推進により、がん、糖尿病、高血圧といった生活習慣病を含む多くの疾病 の成因や病態生理が遺伝子レベルから解明されるとともに、その情報を基盤として 病態に的確に対応する治療法の開発や、分子設計による創薬、さらには再生医学を 用いた革新的治療法の開発が期待される。また、近年の画像処理技術等の向上によ り、診断法の進歩も著しい。今後、厚生科学の一層の発達が、人類の福祉の向上と 経済社会の発展に大きく貢献するものと期待されている。  ○ 厚生科学とは、医学、歯学、薬学、看護学、栄養学、獣医学、数学、工学、経済 学、社会学等の幅広い関連諸科学の手法を用いて、健康増進、公衆衛生と福祉水準 の向上、疾病の原因解明、予防・診断・治療の向上、生活・労働環境の安全性の確 保を目指した研究及び開発を行う科学である。厚生科学は、健康で自立と尊厳を持 った生き方を支援する科学であり、その推進は、人間と社会に対する幅広い総合的 な視野を持ち、あたたかい心と高い倫理観、深い洞察に基づいて行わなければなら ない。一方、諸科学の進歩は、人類に文明の恩恵を与える反面、これまで経験した ことのない健康危害や倫理的問題、地球環境問題などを引き起こす可能性があるこ とにも留意しなければならない。また、生命科学の発達は、生命や身体を操作可能 なものとすることにより、今までの人間観の転換をも迫っている。今後、厚生科学 に求められるものは、新たな問題に対して十分配慮し、医学・医療に対する国民の 信頼感と満足度を向上させ、尊厳のある生活に貢献するものでなければならない。  II 厚生科学研究のこれまでの推進状況  ○ 本審議会の前身ともいうべき厚生科学会議は、厚生科学全般にわたる研究の基本 戦略を策定するとともに、これに基づく将来に向けての重点研究課題の設定等を目 的に昭和61年11月に発足し、厚生科学研究振興のための中長期的基本戦略、将 来にわたる重点研究課題、厚生科学研究の評価のあり方等の問題に関して討議を行 い、これまで、「厚生科学研究の基盤確立とブレイクスルーのために」(昭和63 年9月)、「研究評価の基本的あり方」(平成元年8月)、「厚生省におけるヒト ゲノム研究の推進について」(平成3年10月)、「遺伝子治療臨床研究に関する ガイドライン」(平成5年4月)、「厚生科学研究の大いなる飛躍をめざして−新 たな重点研究分野の設定と推進−」(平成7年8月)、「厚生科学と健康被害防止 のための行政のあり方−薬害エイズ問題から何を学ぶか−」(平成8年6月)等の 報告がなされた。 ○ 平成9年4月には、厚生科学会議を発展させた形で、厚生省所管行政における科 学技術に関する重要事項を調査審議するために、本審議会が設置され、さらに厚生 科学研究の企画、評価に関する事項を審議するための研究企画部会と、生殖医療、 遺伝子治療臨床研究などの先端医療技術の評価に関する事項を審議するための先端 医療技術評価部会が設けられた。これまで、研究企画部会での検討に基づき、「厚 生科学研究に係る評価の実施方法に関する指針」(平成10年1月)の答申がなさ れた。また、先端医療技術評価部会においては、平成9年11月には、がん遺伝子 治療臨床研究作業委員会、平成9年12月には、ヒト組織を用いた研究開発の在り 方に関する専門委員会、平成10年10月には、生殖補助医療技術に関する専門委 員会及び出生前診断に関する専門委員会をそれぞれ設置し、手術等で摘出されたヒ ト組織を用いた研究開発の在り方について、部会での検討を経て答申(平成10年 12月)がなされるなど、最近の先端医療をめぐる動きに対応している。このほ か、厚生科学研究費補助金についても、平成10年度には、競争的な研究環境を形 成するため、原則公募型とする  とともに、研究の大型化に対応するため、研究 事業をそれまでの34から18に集約  した。  ○ また、政府全体においても、我が国の科学技術の厳しい現状や国民の科学技術離 れ等を踏まえ、平成7年には、科学技術基本法が成立し、同法に基づいて平成8年 に、新たな研究開発システムの構築、研究開発基盤の整備、研究開発投資額の拡充 等を内容とする「科学技術基本計画」を閣議決定した。さらに、平成9年には、科 学技術会議で「ライフサイエンスに関する研究開発基本計画」が策定され、特に国 が取り組む領域として、脳、がん、発生等を掲げ、生体システムとゲノム等の基礎 的生体分子に着目した研究開発を選定した。  III 厚生科学研究を取り巻く状況の変化  ○ 厚生科学研究を取り巻く状況は、21世紀に向けて大きく変化しており、遺伝子 や細胞といったミクロレベルから地球全体のマクロレベルまでの様々なレベルで次 のような変化が生じている。  1.個体レベル   ○ 近年、生命科学の進歩は著しく、遺伝子領域では、ヒトゲノムの解析が200 3年(あるいは2001年)にも一応完了するといわれ、今後、幅広い分野での 疾病構造の解明、発病予測、診断・治療法の開発等において更に大きな貢献が期 待される。   ○ 他方、遺伝子治療、生殖医療や発生工学的手法による細胞・臓器移植の新しい 展開等とともに、科学技術と個人の生命観や諸制度との間に、法的、社会的、倫 理的な問題が発生している。   ○ 情報処理技術を活用した画像処理等の医療機器の発達により、非侵襲的で正確 な診断・治療法の発展への期待が高まっている。   ○ 長寿社会における健康の意味や尊厳ある生活とはどういうものかが問われてお り、要介護者、高齢者などの生活の質(QOL)の維持向上について、関心が高 まっている。  2.社会レベル   ○ 高齢者人口の急増、出生率の低下など少子高齢化に伴って、信頼できる効率的 な医療、年金、福祉の社会保障制度の構築や、予防、治療、リハビリテーショ ン、地域ケアを含む保健・医療・福祉システムの包括的・効率的な再構築が求め られている。   ○ 情報化の進展等、職場環境を含め社会環境の急速な変化により、心の健康の問 題や、青少年を中心に深刻な社会問題となりつつある薬物乱用について、治療法 の確立等が求められている。   ○ 患者に妥当、適切な医療を提供するために、インフォームド・コンセントの普 及定着を図っていくとともに、根拠に基づく医療(Evidence BasedMedicine:E BM)の推進が必要である。このため、その基礎となる疾病情報の収集や蓄積及 び国民に対する正しい情報の提供について関心が高まっている。   ○ ゲノム創薬等に基づく次世代医薬品や人工臓器等の画期的医療用具の研究開発 を進めることは、その成果を社会全体に還元することにより、医学・医療の進歩 への貢献はもとより、次世代産業の創出も含め、今後の我が国の産業経済の発 展、活性化を図ること(科学技術創造立国)にもつながることから、大きな期待 が寄せられており、知的所有権の保護などの対応が求められている。   ○ 毒物混入事件や食中毒や自然災害のみならず、国際的にも化学物質や微生物を 用いたテロリズム(バイオテロリズム等)などへの対処について関心が高まって おり、感染症、医薬品、飲料水等を始めとする様々な分野において健康危害が発 生した場合に備え、迅速・的確な健康危機管理体制の整備の必要性が高まってい る。  3.地球レベル   ○ グローバリゼーション等により、エボラ出血熱、コレラ、マラリア、HIV/ AIDS、腸管出血性大腸菌(O157等)感染症など新興・再興感染症による 健康への脅威が増大している。また、医療の進展に付随して、メチシリン耐性黄 色ブドウ球菌(MRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、多剤耐性結 核菌などの問題も発生しており、新たな感染症対策が求められている。   ○ ダイオキシン類、内分泌かく乱化学物質等の環境問題による健康影響が懸念さ れており、地球規模で取り組むべき課題となっている。   ○ また、我が国の国際的地位の向上に伴い、内分泌かく乱化学物質の研究や大量 化学物質の規制、医薬品等の許認可についてのグローバル・スタンダード作成へ の参画等国際協調や、発展途上国に対する保健医療、水道、社会保障制度等の面 での技術協力等国際貢献の推進が求められている。  IV 新たな変化に対応して求められる研究領域  1.健康科学研究の推進   ○ 創造性に富み、かつ疾病の克服を視野に入れた基礎的な研究を引き続き推進す るとともに、基礎研究の成果を臨床応用につなぐための基礎研究と臨床研究の橋 渡しを行う研究(トランスレーショナル・リサーチ)の推進が重要である。   ○ 産学官の連携を確保するとともに、臨床研究について国民の理解を得る必要が あり、そのためには、被験者の積極的依頼方策の検討や、患者が安心して協力で きる仕組みが重要である。  (1)健康科学としての生命科学研究の推進    ○ 生命科学の分野では、ヒトゲノム解析の進展等急速に技術革新が進行してお り、がん、循環器疾患、精神・神経疾患、リウマチ等の自己免疫疾患、アレル ギー疾患及び感染症等の本態・発症機構を解明し、診断・予防・治療法を開発 していくことが、引き続き重要である。    ○ 疾病関連遺伝子の解明、遺伝子の発現形態である蛋白質の解析と機能解明に 基づいたゲノム創薬等の分野は、次世代の医薬品開発の分野として注目されて いる。同時に個々人の病気へのかかりやすさを遺伝子レベルで診断し、予防を 個別化するとともに、遺伝子レベルで疾病を治療する遺伝子治療研究分野は、 次世代の治療法として注目が集まっている。また、遺伝子治療における国内で のベクターの開発や安全性のチェックなどの基盤整備が重要である。    ○ 遺伝子解析により疾病の素因の見つかった人のプライバシーと人権の保護を 図りつつ、発病抑制を目指した生活習慣の改善、予防医薬品、特定保健用食品 (いわゆる機能性食品)の開発等の研究を推進していくことが重要である。  (2)生活の質(QOL)の向上    ○ 生活の質の維持・向上の視点から、生活習慣に関連する疾患(生活習慣病) に関する行動科学的・社会科学的研究や、難聴、耳鳴り、視力低下等の感覚器 の障害や失禁など、生活の質を低下させる疾患等に関する研究の推進及び評価 が重要である。また、患者の立場に立った医療の一層の推進を図る上で、治療 効果のみならず満足度の評価研究等を含む医療技術評価研究の推進が重要であ る。    ○ 末期医療における苦痛の緩和及び在宅ターミナルケア等の政策に資する研究 やストレス、心身症、うつ病等の複雑・高度化する現在の精神保健に関する問 題に対応した研究の推進が重要である。  2.少子高齢化社会への対応とノーマライゼイションの推進  ○ 少子化、長寿化、人口減少化及び価値観の多様化等が21世紀社会に及ぼす影 響をより正確に把握し、包括的、効率的な保健・医療・福祉制度の構築や社会保 障制度の構造改革に関する政策に資する研究の推進が重要である。   ○ 少子高齢化に対応し、高齢者の健康の維持に資する生理的老化の研究や老年病 や痴呆の原因解明、予防・治療法の開発を目指した老年病学、老人医学の研究及 び女性の生涯にわたる健康支援対策、児童の心身にわたる健全育成対策に関する 研究の推進が重要である。   ○ 介護保険制度の導入に伴うリハビリテーション技術の効率的な利用や高齢者、 障害者の安全な生活及び自立、社会参加の促進のための各種福祉器具等の開発と 評価に関する研究を推進していくことが重要である。  3.根拠に基づく医療(EBM)等の推進と情報技術の活用  (1)臨床疫学研究の推進    ○ 臨床研究領域では、ヒトにおける長期間の観察やランダム化比較試験を行う 疫学研究の充実が、根拠に基づく医療(EBM)の基礎をつくるものとして重 要である。    ○ 医療行為・技術の有用性・有効性を評価する医療技術評価研究を医療上、医 療経済上の優先度の高いものに対して進めることが重要である。  (2)根拠に基づく医療等の推進及び情報技術の活用    ○ 医療関係者が、最新の確立された医療サービス提供を行う根拠となる、簡便 に利用でき、かつ、随時更新されていくデータベースシステム及び情報ネット ワークの整備と利用の促進が重要である。また、医療を安全に提供するための 手法や、提供される医療サービスの質を維持・向上させるための管理手法等に 関する研究の推進が重要である。    ○ 疫学情報等の提供と利用は、医療関係者のみならず広く国民に関わるもので あり、情報の保存、加工、蓄積、応用の方面からの推進が重要である。その場 合、国民の生命や健康等の情報を取り扱う特殊性から、改ざん防止やプライバ シーの保護や公共性の確保のための研究が不可欠である。    ○ 保健・医療・福祉政策の総合的評価指標として、健康寿命や障害調整生存年      (Disability Adjusted Life Years:DALYs)等が提起されており、世 界保健機関(WHO)などと協力しつつ、こうした総合的評価の研究を推進す ることが重要である。    ○ 在宅医療、へき地医療の向上に資する情報システムや、障害者の社会参加、 介護保険の円滑な実施等を支援するためのケアマネジメント等に関する情報シ ステムの研究及び整備が重要である。また、地理情報システム (Geographic In formation System :GIS)を活用した保健・医療・福祉の地理的情報デー タベースや、健康危機管理を円滑に実施するための緊急時の情報ネットワーク の構築のための研究の推進が重要である。  4.健康への脅威の対応と生活の安全の確保  (1)新興・再興感染症への対応    ○ 新型インフルエンザ、クリプトスポリジウム症など新しく対応を迫られてい る感染症や寄生虫疾患に対する迅速診断法の開発や、発生情報を的確に把握・ 分析し、対策を行うための疫学等の研究の推進が重要である。また、HIV/ AIDSや多剤耐性結核菌など再興感染症に対する新たなワクチンや治療薬等 の開発に関する研究の推進が重要である。    ○ 医原性疾患ともいうべきメチシリン耐性黄色ブドウ球菌、バンコマイシン耐 性腸球菌による感染症などの実態把握や院内感染対策の開発、化学療法剤等の 使用適正化等に関する研究の推進が重要である。    ○ 動物が自然宿主の場合の疾患については、動物由来経路も念頭においた疫学 や検査法の開発を関係省庁と連携して推進することが重要である。  (2)食の安全の確保    ○ 食の安全の一層の確保を図るため、予測微生物学を用いた食品の微生物学的 リスク評価に関する研究や、食品中化学物質の様々な健康影響に関する研究、 また、これらを踏まえた最適な行政手法の選択に資する研究の推進が重要であ る。    ○ 高度化・多様化が著しいバイオテクノロジーを応用した食品の安全性評価に 関する研究や、食品中アレルギー物質によって人体に重篤な影響を与えるアナ フィラキシー・ショックなどの食物アレルギーの発症機序の解明、実態把握等 の研究の推進が重要である。  (3)新たな化学物質問題や環境問題への対応    ○ 適正規制科学(レギュラトリー・サイエンス)に基づき、生活環境や職場環 境における微量化学物質暴露について、安全性の分析・評価法の確立、及びダ イオキシン類や内分泌かく乱化学物質等の分析・評価技術や排出低減技術の開 発の推進が重要である。    ○ リサイクル技術に関する研究や資源循環型社会経済システムへの転換等の政 策を支援する研究及び環境への負荷の少ない適切な廃棄物処理技術に関する研 究の推進が重要である。    ○ 水源水質の悪化、水道施設の老朽化などに対応し、安全で良質な水道水を適 切なコストで安定的に供給するための新たな水処理技術や水道施設の質的改善 に関する技術等の研究推進が重要である。  5.画期的な医薬品及び医療機器等の開発と安全性の確保   ○ 医薬品、医療機器等の安全性の向上を目指し、副作用の発生を防止、低減する 方法等の研究を推進するとともに、特に、ゲノム情報に基づいた病態に的確に 反応する画期的な新作用機序医薬品等の開発が必要である。また、上市後の医 薬品の副作用防止策の徹底、とりわけ薬剤疫学の普及などの、適切な安全性確 保に関する研究の推進が重要である。また、薬物依存の形成や中毒性精神病の 発現の機序について、分子レベルで解明する研究も重要である。   ○ 骨、皮膚等の他者からの提供組織の利用や、本人の正常組織部分等の利用によ り、損傷部位や機能不全に陥った臓器を修復していく、いわゆる再生医学が期 待されている。これは、医療と創薬、医用工学の特質を併せ持つものであり、 倫理性、有効性、安全性の確保のための制度的検討が重要である。また、副作 用が少なく、安定的供給にも寄与することが期待される人工血液や、人工臓器 及び超微細技術を活かしたマイクロマシンなどを応用した高度先端治療機器の 臨床応用に向けた開発や研究も重要である。   ○ 医薬品、医療機器の研究開発については、産学官の連携の確保、知的所有権の 保護、ベンチャー企業の育成等長期的視野に基づいた投資戦略が必要であり、 また、円滑な臨床試験のための基盤整備・体制充実が必要である。こうした研 究開発の成果は医療、福祉水準の向上と我が国経済の活性化に貢献するもので ある。  6.厚生科学の国際化   ○ 長寿科学や新興・再興感染症分野の技術、水処理に関係する技術など、リヨン サミットで提唱された世界福祉構想の精神を生かした発展途上国に対する国際 貢献が重要である。また、国内外の研究者の積極的受け入れ制度の検討等によ り、発展途上国も含めた諸外国と我が国の研究者との交流を一層推進すること が重要である。   ○ 医薬品、医療機器及び食品等については、制度の国際的調和への積極的な関与 の推進とそれに対応した国内規制、規格及び評価方法の整備が重要である。   ○ ダイオキシン類や内分泌かく乱化学物質など化学物質の安全性評価については     経済協力開発機構(OECD)、世界保健機関(WHO)などの場を活用し、 各国分担による共通の指標、規格、基準及びデータを作成・利用していくこと が重要である。   ○ 疾病関連遺伝子の解析、ゲノム創薬、遺伝子治療研究等の分野は、次世代の治 療技術開発として、各国による激しい競争下にあり、このため、我が国におい ても、これらの基礎となるヒトゲノム解析及びその関連先端科学研究分野に関 し、知的所有権保護のための検討が必要である。  V 今後の厚生科学研究の推進方策  1.今後の厚生科学研究推進の基本的考え方   今後、厚生科学研究を効果的に推進する上で、次の基本的考え方が重要である。   ○ 第1は、基礎から臨床までを視野に入れた健康科学研究の推進である。    研究室で発見・発明された研究成果を、より安全かつ早期に、臨床の場に展開で きるようにしていく必要がある。このため、基礎研究及び臨床研究の推進ととも に、基礎研究と臨床研究の橋渡しを行う研究の推進が重要である。   ○ 第2は、根拠に基づく医療(EBM)等の推進である。    根拠に基づく医療(EBM)の考え方に基づき、新たに開発された技術のみなら ず、既存の技術についても客観的な評価を加え、医療現場に普及させるととも に、国民への情報提供を行うことは、医療の質的な向上に資するばかりでなく、 医療に対する信頼感の確保と満足度の向上のために重要である。また、このよう な実証的な考え方を適正規制科学等の分野においても、一層活用していく必要が ある。   ○ 第3は、厚生科学研究を総合的に推進するため、法制面も含めたシステムの検 討である。     厚生科学研究の基盤を強化するためには、疾病等の個人情報や医療機関等から の情報を集積することが必要であり、そのためには情報の保護や共同活用など厚 生科学研究推進の環境整備に関する総合的なシステムの整備について、法制面も 含めて検討すべきである。   ○ 第4は、社会的・倫理的観点からの研究実施体制の整備である。    生殖医療や遺伝子治療等の高度先端医療の進展に伴い、科学技術と社会との調和 を図るため、社会的・倫理的観点からのガイドラインの作成など研究実施体制の 整備が重要である。  2.今後の厚生科学研究の推進方策  (1)研究企画・評価、研究費の配分及び研究組織    ○ 厚生科学を推進していくためには、戦略的研究分野の適切な設定や研究体制 の整備を行う研究企画と、そのための組織が重要である。また、研究分野(事 業)と研究機関毎に中長期的研究計画を策定し、定期的な研究評価を行うこと が重要である。    ○ グラント型研究(研究者の応募による小規模研究)とプロジェクト型研究 (大型の組織的な研究)を、研究の目的・領域や行政ニーズに応じた政策研究と してそれぞれの特性を生かして活用すべきである。また、研究費の執行にあた り、対象期間や費目について柔軟な対応が図れるよう検討することが必要であ る。    ○ グラント型研究では、国立試験研究機関等、大学、民間の研究者からの幅広 い公募を基本とし、課題の重要性や科学的創造性と研究者の遂行能力等の評価 により、最適な研究計画を選択することが重要である。    ○ プロジェクト型研究など大型の組織や長期にわたる研究が必要な分野では、 国立機関として存続する国立試験研究機関や国立高度専門医療センター及び独 立行政法人に移行する高度専門医療施設等を明確な目的と使命を持つ研究拠点 施設として位置づけることにより、その基盤の強化を図るとともに、研究者の 能力を最大限引き出すため、適切な研究評価とそれに伴う柔軟な人事配置を行 い、責任ある研究を推進する体制を確保すべきである。その際、米国のNIH (National I-nstitutes of Health:国立健康研究所)等を参考とし、大学や 他の研究機関との連携を図りつつ集中的、集学的な研究が実施できるよう、研 究組織の改革強化を図ることが重要である。    ○ 国立試験研究機関、国立高度専門医療センター及び国立病院・療養所は、政 策医療とそのネットワークを推進・活用しながら、疾患データベースの整備、 治験の実施、健康危機管理機能など、厚生行政と一体となって役割を果たして いくべきである。    ○ 幅広い視野から総合的に厚生科学研究を進めていくためには、大学、地方自 治体及び民間の研究機関と国の研究機関との連携及び研究者の交流等を推進す ることが重要である。  (2)新たな分野の人的資源の養成・確保   厚生科学研究を積極的に推進するためには、次のような人材の計画的な養成・確 保が重要である。   1)新分野の研究者    ○ 今後、厚生科学研究を進める上で不可欠な新分野の研究者の養成確保の推進 が重要である。特に、生命倫理学、生物統計学、臨床疫学及び医療経済学等の 分野の専門家の人材養成が必要であり、国立試験研究機関等もこの観点から取 組みの強化を図ることが必要である。   2)研究支援者    ○ また、臨床現場における看護の視点からの臨床研究支援者(リサーチ・ナー      ス)、過去の臨床研究の成果の集積と提供を行う専門家(リサーチ・ライブ ラリアン)、臨床試験コーディネーター(Clinical Research Coordinator : CRC)等人材供給の少ない分野においては、養成と教育を組織的に行うこと が必要である。また、実験動物等の飼育、繁殖、管理や特殊な機器の管理・操 作といった試験研究を支える業務を担う人々の適正な確保も重要である。   3)若手研究者    ○ 若手研究者等の任期付採用や博士号取得直後の研究者(ポストドクター)の 活用による人材の流動性を確保するとともに、研究費配分や採用・昇格の各段 階に公募などの競争的環境を取り入れ、研究者の経済的基盤の確保と資質向上 を図ることが重要である。  (3)研究支援体制の整備と研究資源の確保   1)疫学情報等の活用の在り方に関する制度的な検討と基盤の確立     今後、根拠に基づく医療(EBM)に基づいて医療・介護サービス等の質の向 上を図るためには、適切な情報の共有及びその活用が重要である。このため、 各種統計情報、研究者個人の蓄積した長期にわたる疫学研究情報等を公共財と して共同利用していく観点から、以下の事項について、推進及び検討が必要で ある。    ○ 疾病研究の推進の観点から、個人情報の保護との整合性を考慮した疾病登録 システムの検討を行う必要がある。また、国際的に保健・医療・福祉情報を協 力して集積・分析する可能性のあることを想定し、その場合の個人情報の保護 に関する国際的な調和の確保が必要である。    ○ 国立試験研究機関並びに国立高度専門医療センター及び高度専門医療施設を 頂点とする国立病院・療養所の政策医療ネットワークや大学、地方自治体、民 間医療機関との連携のもと臨床研究の基盤となる疾患情報データベースの構築 を推進する必要がある。    ○ 個人情報を扱う医療情報については、特に、情報機器や情報システムに対す るセキュリティー体制と個人情報保護の制度的な検討が必要である。   2)電子医学図書館機能の充実    ○ 根拠に基づく医療(EBM)の推進の観点から、医療行為・技術の有用性や 有効性について評価を進めることが重要である。我が国における過去の臨床研 究の成果に関し、その集積と解析を行う電子医学図書館機能の充実について、 コクランライブラリーを参考としつつ、検討する必要がある。   3)研究資源の提供基盤の充実    ○ 研究の信頼性向上と効率化に向けて、共通基盤となる研究資源の確保と研究 手段の向上が必要である。このため、ヒト由来遺伝子、細胞及び組織並びに特 殊実験動物、病原体、標準物質及び標準検体等を、収集、保存及び提供するリ サーチリソースバンク機能の充実及びその他の研究資源の開発を省庁間、官民 及び国際間の連携を図り、進めていく体制を整備することが重要である。  (4)研究成果の公開と知的所有権の保護    ○ 研究成果を学会や学術誌に発表するとともに、その成果を行政の科学的根拠 として積極的に利用することが重要である。また、国民の啓発のためのイン ターネットの活用やシンポジウム等を通じた研究成果の公開が重要である。    ○ 研究成果を知的所有権として保護するため、研究者に対する啓発活動や研究 評価における特許取得の位置づけの明確化など知的所有権の取得に向けた動機 付けを高めるとともに、リエゾン機能(研究成果から知的財産を見出し、権利 化するとともに、企業に技術移転させ、事業化に結びつける機能)を果たす仕 組みを設けるべきである。また、産学官連携に関するルールを明確化しつつ、 その取組みを推進することが重要である。  (5)社会的、倫理的観点からの研究実施体制の整備    ○ 生殖医療や遺伝子診断・治療など生命科学の進歩による新技術の出現に伴っ て、これまで経験したことのない社会的、倫理的課題が発生している。社会と 科学技術の調和を図る観点から、臨床研究における被験者の権利の尊重及び研 究を進める上での倫理性確保がこれまで以上に重要である。   1)審査準則の制定と自主審査体制の充実    ○ 現在、遺伝子治療臨床研究については、各研究機関の自主審査に加え、本審 議会及び文部省において各研究機関の臨床研究計画の個別事前審査を実施して いる。今後、こうした研究に基づいた治療法の普及が予想されることから、あ る程度普及した遺伝子治療臨床研究については、迅速に行えるよう、国におい て倫理面も含めた審査準則を制定し、各研究機関に設置されている倫理委員会 の委員構成、審査事項等の共通化を図ることにより、現行の個別審査から自主 審査の充実への切り替えを図ることが必要である。その際、新規あるいは症例 の少ない治療研究の取扱い及び各研究機関で自主審査が適切に行われたかどう かを評価する仕組みを設けること等について、引き続き本審議会で検討を行う べきである。    ○ また、現在、遺伝子治療臨床研究については上述のような枠組みが設けられ ているが、生殖医療技術、クローンニング、ヒトゲノム解析、ヒト胚性幹細胞 (ES細胞)作成などの新しい技術の応用については、枠組みが設けられてい ない。      クローン技術等については、現在、政府全体の立場から法制面の問題も含め た検討が行われているところであるので、こうした検討の動向も踏まえつつ、 このような技術に関して、どのような枠組みを設けたらよいのか審査準則等の 在り方等も含めて、引き続き本審議会で検討を行う必要がある。   2)インフォームド・コンセントの徹底と情報の公開等    ○ こうした審査体制の充実とともに、遺伝子治療や生殖医療技術の実施等にあ たっては、患者に対するインフォームド・コンセントの徹底と情報の適切な公 開を進めていくことが重要であり、併せて、研究者や研究補助者に必要な倫理 観や法知識について教育・研修を行うことが必要である。    ○ 新しい診断・治療法の研究においては、ランダム化比較試験等の臨床研究も 多用されることから、被験者に対するインフォームド・コンセントの確保、プ ライバシーの保護等を図るとともに、新薬に関する臨床試験も含めて被験者の 募集のための情報提供活動を推進し、被験者が安心して協力できるような体制 を整備することが重要である。  (6)健康危機管理の推進    ○ 国際的に化学物質、微生物等による健康危機に対応した管理体制の整備の重 要性が指摘されており、地域における保健所を中心とした体制の整備や、地方 衛生研究所の役割、国及び国のブロック機関と医療機関、医師会等の専門職能 団体及び地方自治体との連携等について、技術面、法制面を合わせた検討を行 うとともに、健康危険情報収集のためのグローバルネットワークの構築が必要 である。  (7)厚生科学研究に対する理解と協力    ○ 研究成果の享受と研究のための情報提供は表裏一体であり、蓄積された疾病 情報等は最終的には国民に還元され、医療や科学技術の向上と透明性の確保に 資することとなるものである。このため、厚生科学研究の推進には、国民の厚 生科学研究に対する理解と協力が不可欠であり、個人情報保護の法制面での整 備とともに、研究等に対する理解の促進、啓発、情報発信等に努めることが重 要である。  おわりに  ○ 以上、本報告書においては、先行する本審議会の報告や他機関によって提言され ている事項については、できるかぎり重複を避けることとし、21世紀に向けた今 後の厚生科学研究の重点領域とともに、研究体制の整備・施策について提言したと ころである。なお、本報告書に掲載されている研究領域については、あくまでも例 示であり、本報告書に記載されていない研究領域が重要でないという意味ではない ことに留意されたい。  ○ 今後は、本審議会において引き続き検討を行うとともに、政府においては可能な ものから速やかに具体化のための取組みを進められたい。 <資料了> ○豊島会長  どうもありがとうございました。 かなりのボリュームのものになっておりますので、この報告書について2つほどに区 切ってご審議をいただきたいと存じます。 まず最初に、この報告書の目次を見ていただきまして、それのI「厚生科学の意義」か らIV「新たな変化に対して対応して求められる研究領域」というところまでを最初に議 論していただき、それからその後にVについて議論いただきたいと思います。 それでは、まずIからIVにつきましてご意見ございましたら伺いたいと思います。 ○木村委員  矢崎部会長のもとで8回でございますか、大変慎重にいろいろな方々が大変多様な意 見を出されたのをおまとめいただいて、こういう形で出てきまして、これからの将来へ の展望ということで、私たちも非常にわかりやすく、これを読ませていただきました。 最初にお伺いしたいのは、この文章の性格でございますけれども、大臣から諮問が出 て、そして審議会でこうやってつくるわけですが、この性格といいますか、これはもち ろん法律ではないわけでございますけれども、どのような性格のもので、どの程度拘束 されるのか、省令とかそういうものとは違うのでございましょうが、全般的な行政の中 の位置付けと申しますか、そういうことについて最初お伺いしておきませんと、ここに 書いてある中身につきまして、大変いいことは言っているけれども、これは別に文章と して出ているけれども拘束力はないとか、そういうことになりますとまたいろいろな問 題があるかと思うんですが、全体的に今までの我が国の行政、特に厚生行政の中でこう いうものはどういうふうに扱われてきているのでしょうか。21世紀を展望した報告です ので、いづれ厚生労働省になるかと思いますが、将来もこれは大変重要なドキュメント になるかと思うんです。そういう未来展望を含めたことでございますので、その点につ いてお伺いできればと思います。 ○豊島会長  高原課長お願いいたします。 ○高原課長  ただいま木村委員からご指摘がございましたように、この中には中長期的な非常に長 いスパンで言及しておるものやら、それから場合によれば、来年度の予算案に生かして 予算の材料といいますか、これを基本にいたしました予算を要求するというふうなもの までいろいろございます。また法律を検討すべきである、法制面を検討すべきであると いった場合は、普通は強制力を持った法律、政令、省令ないしは告示といったようなレ ベルものを検討していくということでございます。ほとんどのところに検討していくべ きであるというのがついておりますのは、まさに検討するというオブリゲーションを政 府なり、この審議会にかかっている訳でありまして、それをそのまま実施する。だか ら、これは書いてあるけれども、それだけのことではないかと言われれば、そういう要 素も確かにある。しかしながら、これを出したということによって、審議会のご意見と いうふうなものは、そういうふうな形で存在するということがある訳でございますし、 これを受け取った行政側としては、こういうふうなことを審議していただきたいという ことをお願いして、長時間をかけていただいて、ある一定の結論をいただいた以上は、 これは100 %できるというふうにはお約束はできませんし、特に法律事項になってきま すと、これは立法府のものの見方というのはまた違ってあると思いますが、行政府とし てはこれを真摯に受けとめてこの方向で努力をする。  それからまた多くのものについては非常に総論的な書き方でお願いしていると思いま すので、この審議会自体で、ないしはこの審議会もしくは部会、もしくは専門委員会と いったところで少しずつブレークダウンをしていきます。例えば後ろに出てきておりま す、新たなマンパワーの養成というふうなことがございますが、それは一体どういうふ うなところで、どこでやって、どういうカリキュラムでやるんだとか、それから研究所 や病院における準則というのは、準則とは言うけれども、それこそどういうふうな性格 のものでつくるのでしょうか。法律でつくるのか、告示でつくるのか、何でつくるの か、今の遺伝子治療臨床研究の場合は告示でつくっておりますが、そういうふうな形で やるのかやらないのか。それから後でこれに関して出てきておりますが、これが実効あ る、担保されているというふうに厚生省の方でチェックしなさいという書き方がなされ ておりますが、よその研究所にずかずか入っていって、カルテを見せてくださいという ふうなことは、法的なバックグラウンドでもない限りなかなか難しいところがあるので はないか。いろいろ様々これから分析して、これは法律が必要だ、これは予算措置でで きるものだ、これは長期の議論をやって合意事項が必要だと分けて書いて、もし今日、 この報告書をお認めいただけるといたしましたら、その中身を分けて対応していく。丸 のみといいますか、これを全体としてどう扱うかというふうなことはお答えできません が、そういうふうな扱いになると思います。 ○豊島会長  木村委員どうぞ。 ○木村委員  高原課長のご説明を受けまして、なるほどというふうに思ったわけでございますが、 これは研究企画部会で大変慎重な審議をしていただいて、ここにきっちりとした形で文 章となって出てきたわけですが、今日の厚生科学審議会総会の意見を反映して、またこ れがこのままでなくて、具体的に内容的に今まで研究企画部会で討議したことを、本日 ここでもそれを踏まえての討議として新しく文書として出てくるわけでございますね、 その点はどうなんですか。 ○高原課長 非常に役人的な、いわゆるこれの設置の要項によりますと、研究企画部会に付議され たものは、部会の決議をもって総会の決議にかえることができるというふうな規定がご ざいます。したがって、これはこのままでも総会の決議をもってかえるというふうなこ とも論理的には不可能ではないわけでございますが、しかし、このような重要な事項に つきまして、手続上の瑕疵がないから、それでいいのだというふうには私どもも思って おりませんで、ここでご自由にご議論いただいてよろしいのではないか。場合によれば 修正というふうなこともなくはないんだろう、そういうふうに考えております。 ○木村委員  どうもありがとうございました。そうしませんと発言しておりますことが、ともかく 研究企画部会の方で決まったので、本日発言しても一応議事録には残るけれども、反映 されないということになりますと、発言の意味が余りないのではないかというふうに思 ましたものですから、一応ご確認いただいたわけでございます。 ○豊島会長 内山委員どうぞ。 ○内山委員 今、木村委員のご発言に高原課長のお答えを伺っておりましたことだけ先に申し上げ ておきますが、研究企画部会に付託されたものは部会の報告をもって総会の報告にかえ ることができるということにつきましては、第1回の厚生科学審議会総会で既に議論さ れておりまして、それはあらかじめ総会の会長の了解を得ているものについてという制 限がついていたはずです。そういうことでかなり長かった議論がやっと収拾されたとい ういきさつがございますので、その辺をよくご理解いただきたいと思います。それがま ず1点。  それからこの中身につきましてですけれども、矢崎部会長初め部会の方々のご苦労は 大変だったと思いまして、必要であると思われる言葉は極めて全部含んでお書きになっ ていらっしゃるということがわかります。今、会長のご指摘のように、前半だけのとこ ろで気がついたところを二、三申し上げますが、これは気がついているから、この中身 が不満であるとか、直してほしいということではなくて、全体としては私は大変よく出 来ていると思いますが、これから私が申し上げることがもし合理的であると思っていた だければ訂正していただきたいと思います。  今は前半のところですから研究領域の議論のところでありますから、例えば5ページ には出ておりますけれども、私はこの報告書全体が厚生省の研究として極めて厚生省ら しいまとめ方になっている。言いかえれば、医療中心あるいは患者の代わりに厚生省が 研究をし、行政をするという精神があらわれていると思っておりますので、その辺を十 分に表現できるような、それが間違えて読まれるようなところがあってはならないと思 っております。例えば5ページの一番下、遺伝子解析から始まるところですが、ここは 本来は厚生省の研究というのは未だ病まざるものを癒すという精神が非常に重要である ということをいっているはずのところなんです。2行目の「発病抑制を」というところ からあとはすべてそういう意味でくくられております。しかし1行目はそうではない。 1行目は一つ前のパラグラフの続きのような感じもいたします。従いまして、言葉を全 部網羅するのは結構なんですが、そこのパラグラフで何を言いたいかということがはっ きりわかるようにお書きいただいた方がいい。私の提案は、先ほど申し上げましたよう に、このパラグラフは未だ病まざるものを癒すということが極めて重要であるというこ とを言えるようにお考えいただいたらありがたいと思います。 それからもう一つだけ申し上げますが、6ページ以降、EBMがかなり何回も出てき ておりますが、これは何回も出てくるだけの意味がありますから結構ですが、EBMと 一緒に情報技術の活用、あるいは情報化ということがたくさん出てまいります。この情 報化を対策の意味で議論しているのは後半ですから、後半また情報化の時にお考えいた だけるとよろしいのですが、6ページ、7ページにかかりまして、「情報技術の活用」 という言葉がたくさん出ておりますが、ここの情報技術あるいはその活用が医療サービ ス、疫学情報、在宅・へき地医療、介護保険といったような種類の緊急時の情報ネット ワークまで含めて、いわゆる医療に必要な、EBMに必要な情報に限定されているよう な気がして仕方がないんです。私は基本的に厚生科学研究の情報化というのをどこかで 考えていただかないと、厚生科学研究が従来も、それからこれからもその成果が活用さ れるためには、厚生科学研究自体の情報化が必要ではなかろうかと思っておりますか ら、ここは厚生科学研究の在り方を議論しているところではありますけれども、この報 告書の基本として厚生科学研究は役に立つことをやっているんだ。それは情報化をして おけば、もっと役に立つんだというふうに考えていただきたい。したがって、情報化の 中に厚生科学研究の情報化、厚生科学研究の成果を活用するというような言い方がどこ かに出てきてほしかったのですが、ずうっと全部探しましたけれどもございません。  最後に一つだけ、8ページの(3)のところに適正規制科学(レギュラトリー・サイ エンス)と書いてあります。「適正規制科学」という言葉は極めてすばらしい言葉だと 私は先ほど来感心しておりまして、これからも使わせていただこうと思っております。 一番先に申し上げましたように、厚生省の研究というのは、患者の代わりに、消費者に 成り代わって、安全性あるいは有効性、あるいは適切性、妥当性というものを保証する ための科学であるというふうに思います。従いまして、もちろんこの化学物質問題のと ころに、そういった意味で適正規制科学が入るのは結構なんですけれども、医療という もの自体も、医療を適正に推進するというのは、それは患者に代わって厚生省が、その 推進の方針を決めたり、方策を考えたりするわけですから、いずれにしても、それは適 正規制科学であるに違いないわけです。厚生省のやるレギュレーションは、全部適正規 制科学ですから、できれば食も、それから化学物質も、医薬品も非常に幅の広い意味で 全体にその精神が行き渡るようにお扱いいただければありがたいというふうに思いま す。 ○豊島会長  どうもありがとうございました。 ○木村委員  内山委員のご指摘のように、研究企画部会で取りまとめられた意見をもって総会の意 見とすることができるという点につきましては確かに議論したわけでございますし、私 も了解しておりますが、先ほど高原課長のお答えにありましたように、これは大変重要 な日本の、これから21世紀に向けて基本的な厚生科学研究の方針の大筋を決めるという ことでございますので、先ほど課長が言われましたように、ここでいろいろな意見があ ったら意見を出すという方向で行えるということが大変に喜ばしいということで、私も その点は大賛成でございます。  そこで、審議方法としまして前半部分と後半部分というふうに審議会の会長も分けら れたわけですけれども、全般的に見ますとバイオ・エシックス、特に生命倫理の側面、 それから患者の人権の側面、その他制度的な側面につきましても、大変に新しい視点を 中に取り込んでよくできているというふうに理解をしております。ただ一部、具体的に もしお差し支えなければ、先ほど課長が言われましたが、いろんな点でこれがステート メントといいますか、状況の変化、こうなっているというのと、それからこういうこと は必要であるという一種の価値判断、それから高まっているというような、要するに生 じている、あるいは期待される、それから高まっている、求められる、必要である、重 要であるというような文章にいろいろ分かれているわけなんですが、二、三の点につき まして一番最初に申し上げますと、内山委員の言われたところがちょっと私よく理解で きなかったんですが、5ページの一番下の表現のところが、私はここに「プライバシー と人権の保護」という言葉が入っているということに大変にこの文章の先見性といいま すか、基本的な、大事な「プライバシーと人権の保護」という言葉をわざわざここに入 れてあるということに、特にヒトゲノムの解析をめぐって大変に重要な問題になるもの ですから的確な表現がされているというふうに思いました。  7ページをごらんいただきますと、ちょうど真ん中のところに「改ざん防止やプライ バシーの保護や」というふうになっていますが、これは前のページの表現と同じように 「改ざん防止やプライバシーと人権の保護や」というふうに「人権」という言葉をここ に入れた方がいいのではないか。これは細かいことですので、部会長の方で取りまとめ ということになるかもしれませんが、その用語の整合性の問題を感じました。  それから、4ページでございますけれども、一番上のところでございますが、これも 課長が言われましたように、ここのところは項目としては厚生科学研究を取り巻く状況 の変化という項目になっておりまして、そして個体レベル、社会レベルの中に、要する にこういう状況になっているということの、いわば説明の中で出てきている項目なんで ございますけれども、4の一番上のところでございますが、「患者に妥当、適切な医療 を提供するために、インフォームド・コンセントの普及定着を図っていくとともに」 と、これは大変に積極的な前向きな文章がここに入っていると思うんです。部会でどう いう討議がされたかよく存じ上げませんけれども、その前に一言、「患者の権利を保障 し、患者に妥当、適切な医療を提供するためにインフォームド・コンセントの普及定着 を図っていく」というふうな、患者の立場という、先ほど内山委員も何回も言われまし たが、「患者の権利の保障」ということが非常に大事な項目になってくると思いますの で、ご勘案いただいて、むしろ、その言葉がここに入っていた方がいいんじゃないか、 というのが私の意見でございます。  その他、一番最初に戻りますとこれは文章上のことですが、1ページのところをご覧 いただきますと、これは私の日本語のセンスがおかしいのかもしれないのですが、真ん 中のところでございますが、「厚生科学とは」というところから始まります。そしその パラグラフのちょうど真ん中辺で終わっているところに、「深い洞察に基づいて行わな ければならない」となっています。文章を見ていますと、「厚生科学は、健康で自立と 尊厳を持った生き方を支援する科学であり、その推進は、人間と社会に対する幅広い総 合的な視野を持ち、あたたかい心と高い倫理観、深い洞察に基づいて行わなければなら ない」のか、「行われなければならない」のかという表現の問題です。これは「行われ なければならない」のか、それとも「行わなければならない」のか。これは「れ」が要 るんじゃないかと思いました。細かいことですが、ちょっと日本語の表現として、これ はまた事務当局の方でお考えいただければ結構かと思いましたので、一言申し上げまし た。 ○唐澤室長  主語と述語が多少合っていませんので、後ほど会長と相談して直したいと思います。 ○木村委員  それで結構です。 ○豊島会長  大石委員どうぞ。 ○大石委員  2点ございまして、私、実は研究企画部会の委員でございまして、本報告書の前の草 案をいただきまして、コメントを送りましたが、その後かなり大幅に変わっているとい う印象を私は受けました。ただ、2点ほど敷衍したいと思います。  1点は「厚生科学研究の在り方について」ということが本来のタイトルにあるにして は、今最も重要と言われている、恐らく人類の歴史上始まって以来いろいろな健康の問 題がいろんな意味で解決するレベルに立っている、非常に近代的ないろいろな治療法、 特にDNAゲノムの研究を通じてのことでございますけれども、それらについてがすべ て期待されるとか、注目が集まっているとかそういう形で述べて、実際我が国でそれを どういうふうにするのか、もう少しそれについて積極的にするのかしないのかというこ とについての文面が欠けているんではないかと思っています。やはりそれに引きかえ、 それについて制約というわけではないんですけれども、若い研究者が非常に情熱を持っ てやっているのが、実際にこういうことが本当の厚生科学の研究だろうかという意味 で、私としてはもう少し、夜も昼も研究をしている若い研究者をエンカレッジするよう な形の国の施策を出していただきたかった。この前もその点がバランスの問題として少 し欠けているんじゃないかということを申しまして、随分そういう面では部会長はじめ ご苦労なさったと思います。実際にそれをやるというようなことを1行だけ書いてある んですけれども、他はすべて期待される、注目をされているということで、結局アメリ カなどでやったことを、そのまま日本でやる上にいろいろな問題があるから、それにつ いてこういうことを注意しなきゃならない、ああしなきゃならないということでは、僕 はこのタイトルからいって、厚生科学研究の在り方ということをうたっている以上、そ こが私は一番大事なことだと思います。  それからもう1点、最後の報告書案に私の意見を書く時に非常に迷ったことなのでご ざいますけれども、実はここに「健康への脅威の対応と生活の安定の確保」というとこ ろにあって、水の問題とか、いろいろ書いてあるんですけれども、実際たばこの問題は どうなんでしょうか。一言もこれに触れていない訳です。たばこの問題はアメリカでは 犯罪になっていますし、ご承知のように、たばこ会社はそれで数兆円の罰金を払うとい うことで、これはダイオキシンとか、内分泌かく乱化学物質と桁違いに、実験的に科学 的に証明されている問題に一言も触れていないというのは、何か政治的なことがあるん ならやむを得ないと思いますが、水源水質の悪化とか、ダイオキシン、内分泌かく乱化 学物質がどうこうと書くのなら、まずたばこのことについて一言述べるべきだと思いま す。その点について、私が恐れるのはこれが日本の政府の公式の見解であって、それを 一番今世界で注目されているところを一切書かないというのは、やはりこれは何かの問 題かあるのではないか、そういうふうに思います。 ○豊島会長  どうもありがとうございました。 ○軽部委員  全体的に皆様方がおっしゃるように非常によく書かれていると思いますが、大石委員 と同じように、私自身も余り総花的過ぎて、今後の日本にとって最も重要な厚生科学研 究というのは何かなというようなことがどうもこの中から消えちゃっているんじゃない かというイメージがしております。私はエンジニアなものですから我々の方から見ます と、今、医療の中で著しく日本の医療が遅れているとすれば「情報を使った医療」なん です。これはゲノム情報とか、そういうもののセキュリティーの問題とか、そのネット ワーク化の問題とか、そういうものもすべて含めてなんです。実は私の知人がある国立 病院の院長におなりになりまして、先生どうですかというお話を伺ったら、情報化にお いてこんな初歩的だとは自分は想像もしていなかった。こういうようなお話をしており まして、我々情報をやっている人間から見ましても、特に医療分野の情報化がものすご く遅れている。これが実は大問題でありまして、こういう問題を中心に打ち出すような ことを考えなきゃいけないんじゃないかという気がするんです。もちろん、ここに書い ていないから俺の研究ができないじゃないかというクレームがあってはまずいので、そ ういうことを全般的に書いていただいていいんですが、今、僕は医療でとにかく緊急に やらなきゃいけないことは、情報化、ネットワーク化を相当に進めないといけないんじ ゃないかという気がいたしております。ですから、この中でそういうのが浮き上がって くるように全体を書いていただけると、今後21世紀に向けて厚生科学が何をすべきかと いうことを打ち出す時に、その情報化が前面に出てくると、ものすごくこの内容が全体 が生きてくるんじゃないかという感じを受けました。  それから少し細かいところなんですが、実は9ページの6「厚生科学の国際化」とい うタイトルを見てしまいますと、日本は何だか発展途上国だというイメージを受けてし まいます。10年か20年前にはやって、あちこちで「国際化」という言葉をつけたんです が、もう少し何かうまいタイトルをつけられないのか。今さら「国際化」と厚生科学研 究が言われると、いかに日本が遅れているかということを証明しているようなものでは ないかという気がしておりました。 それからもう少し細かい話、さらに細かい話なんですが、3ページ目の「社会レベ ル」、「地球レベル」というのはいいんですが、「個体レベル」というのが、ここの中 に書かれている内容とどうもあわないんですね。分子レベルの話もあれば、臓器レベル の話もありますし、個体レベルの話もありますし、また老化みたいな話もありますし、 何かもう少しうまいタイトルがあるといいのかなという気がしたんですが、私も考えた んですが、いいアイデアがないんです。個体レベルというと我々ですと細胞レベルと か、分子レベル、ついそういうふうに考えてしまうものですから、何かうまいタイトル があればと思いました。 以上です。 ○豊島会長  どうもありがとうございました。  曽野委員どうぞ。 ○曽野委員  最も科学的な知識のない一読者の考えですが、これは日本の厚生省が、日本人に向け て発せられた報告書であるということでした。これでよろしいと思うんですけれども、 書き出しに「厚生科学の意義」というのがあります。本の前書きというのは、一つの導 入部というか、顔というか、姿勢というものがよく出てくるところなのですが、2行目 の「人々は健康で豊かな生活を享受できるようになった」。その理由は「20世紀は偉 大な科学技術の世紀であり、その飛躍的な進展は、人間に大きな福音をもたらし」とあ ります。これは日本においては間違いないのですし、先進国の多くの人々は健康で豊か な生活を享受できるようになったと思いますが、世界の多くの国は全く暗黒の状況にさ らされているという視点が抜けております。  例えばアフリカなどにおきましては、一つの大地が生産できる雑穀の量というのは決 まっております。古来そこで3,000 人なら3,000 人の人を養えるようになっていたので しょう。その間には他部族と喧嘩して殺し合ったり、事故で死んだり、病気がはやって 死んだりして、そこで自然な人口の調節が行われておりました。 そこにワクチンが入って人口が爆発いたしますと途端に飢餓が訪れるというわけです。 そういう人達は殆ど豊かな生活など享受しませんでした。ですから、先進国向きの視点 だけでは不正確です。 ○豊島会長  どうもありがとうございました。 ○船越委員  前回のこの会議で「WHOの健康の定義の改正について」という話がございました。 その中に健康の定義には、spiritualという言葉が一つ加わるという話がございましたが この報告書の中に、そういう意味合いのところがあるかなと思って読んでいたわけなん ですが、それはないように思います。7ページの(2)「根拠に基づく医療等の推進及 び情報技術の活用」という中の3つ目の○ですけれども、「保健・医療・福祉政策の総 合的評価指標として」云々という言葉がございます。そこで入れていただくとすれば、 この3行目、「世界保健機関(WHO)などと協力しつつ」の後ろに「Spiritual、well -nessを含む、こうした総合的評価の研究を推進することが重要である」というふうに入 れておく方が21世紀に向けての健康ということでよりよいのではないかと思いましたの で発言させていただきました。 ○豊島会長  他にご意見は。 ○内山委員  委員の方のご発言にセコンドしておかないと取り上げていただける確率が少ないと思 って、先ほどの大石委員のお話のたばこのことなんですが、もし特別の理由がないので あれば、ぜひ取り扱っていただきたいと思っております。もし特別の理由があるのな ら、ここであらかじめ断っていただいた方がありがたいと思っております。  それから木村委員がお話しされました「プライバシーと人権の保護」は非常に重要 で、非常に重要であるからこそ、その後半に書いてある罹病に対する対応というのがぼ けてしまうから離してください。分離をしてくださいという意味で申し上げました。 ○木村委員  たばこについては、厚生省が特別の報告書といいますか、特別なタスクフォースみた いなものがかつてあって、厚生省としても取り組んできた、その延長線上にあるので、 入れることについては、委員の一人としても私は個人的に大賛成です。 それから今の船越委員のご発言につきましても、私もどこに入っているかなと思って 見たわけなんですが、それなりに研究企画部会で討議をしたわけでございますので、そ れを踏まえて何らかの形でここに文章を入れるという船越委員の提案に賛成でございま す。 ○豊島会長  どうもありがとうございました。 ○寺田部会長代理  研究企画部会に参加しいろいろと検討してこれで大丈夫と考えていましたが、ここで 私共がいろいろ気がつかなかったところを指摘してください、感謝しています。ただ一 つ気になりましたのは、内山委員が「厚生科学は適正規制科学である」というふうに定 義を言われましたが、間違いではありませんか。 ○内山委員  「厚生科学は」とは申しません。「行政は」と言ったんです。「厚生省のやるレギュ レーションは」とご理解ください。 ○寺田委員  失礼しました。もし厚生科学が規制科学ということになりますと元気がますますなく なると思い、発言させていただきました。それからこれは大変難しいんですけれども、 世界の立場ということも最初のところに書いておくべきであったなというふうに思いま した。情報のことも大変大事で、もうちょっと強調した方がいい気がしました。次のこ れからあるべき姿というところで出てきますから、もう少しそこで強調した方がいいか もわかりません。意見というか、感想みたいなものです。 ○豊島会長  どうもありがとうございました。  かなりいろいろ出ましたけれども、やはり対応しなければならない重要なことがたく さんございます。それから私といたしましても、曽野委員の方からお話も出ました途上 国に対する問題意識というのも、日本の厚生科学としては入れておいた方がいいだろう というふうに思います。 ○木村委員  軽部委員からご指摘のあった「厚生科学の国際化」の項目のところは、私としては非 常に重要なことだと思っているんです。 ○軽部委員  タイトルを変えるといいですね。 ○木村委員  10年前に流行ったからというようなレベルの問題ではなく、基本的な哲学の問題とし て、やはり日本というのは、ある意味ではいつもナショナリスティックな方向に揺れ動 く国なんです。世界の諸国が何をやっていたって、日本は日本だみたいな発想がいつも あるわけでございまして、そういう意味でこれはしつこくても、10年経っても、20年経 っても入れておきませんと、やはり世界的な動向と孤立してしまうような方向を容易に 導き出す可能性が非常に強い国だということを感じておりますものですから、このタイ トルは大事になってくるんじゃないか。その中に先ほど曽野委員の言われた開発途上国 の問題に、我が国は研究者との交流を一層推進し、その他貢献していこうということが 入っているわけでございますので、そういう点で軽部委員のご意見は非常に大切じゃな いかと思うんですが。 ○軽部委員  そのとおりだと思うんです。「国際化」という言い方ではなく何かもう少しタイトル がつけられないかという感じがします。「国際化」というと、いかにも日本というのは 発展途上にあるというイメージになるものですから。 ○木村委員  もちろん発展途上ですよ。 ○軽部委員  ある面ではです。国際化というのが最後にきているものですから、内容は非常に大事 なことをここでうたっているし、大事なことだと思うんですが、何というんですか、う まいタイトルをつけられないのかなという、要するに先ほどそ曽野委員がおっしゃった ように、日本がある意味で世界の医療の先導的立場をとらなきゃいけないような意味 で、国際化と最後に言うと何となくまだ大分遅れているんじゃないかというイメージが 前面に出ちゃうんじゃないか。内容は全くこのとおりで大事なことだと私は思っており ます。以上です。 ○豊島会長  竹田委員どうぞ。 ○竹田委員  今の議論の内容は「国際貢献」という意味だと思います。従って、「我が国の厚生科 学の国際貢献」というタイトルに。 ○軽部委員  そういうタイトルだったらいいですね。前向きですね。 ○矢崎部会長  どうも貴重なご意見をありがとうございました。 まず厚生科学研究がどうあるべきかということにつきましては、今までに「厚生科学 研究の基盤確立とブレイクスルーのために」と「厚生科学研究の大いなる飛躍をめざし て−新たな重点研究分野の設定と推進−」で研究の進め方、ライフサイエンスとしての 健康科学の進め方がそこに書いてありますので、今回は研究に関しては研究者がインセ ンティブを自ら持ってどんどん進めていかれるでしょう。ですから、進歩に対してどう いうふうに我々は捉えたらいいか。いろいろな科学の進歩と社会との調和の面で考えね ばならない点を今回ちょっと強調したので、そういうふうに理解していただきたいとい うふうに思います。と同時に、やはり先生方のご意見を十分斟酌して、できればもう少 し取り入れさせていただきたいというふうに考えています。  それから5ページの最後の内山委員を初め、いろいろ議論をやりました遺伝子解析、 疾病の素因の見つかった人を、いかに人権とプライバシーを保護するかということであ ります。これはこれから予防医学、あるいは患者さんを治療する場合に、こういう素質 を持っている人はこういう薬が効くとか、オーダーメードの予防とか治療ができる。医 療としては非常に効率よく進むし、医療経済の点でも非常に効果があるんですけれど も、逆にその一方では、それをもって社会活動の側面から制限を受けたり、あるいは社 会的な差別を受けたらいけないのではないかということで、これをひっくるめて、ここ の○にしたわけであります。ですから、そういう意味をさらに一般の方々にもわかりや すくするためには、重なるかもしれませんけれども、そういう項目を入れさせていただ ければ、後でプライバシーをいかに保つかという法制面の整備とか、具体的な対応につ いては述べておりますので、可能であればそういうふうにさせていただきたいと思いま す。  軽部委員から提起された「医療の情報化」というのは研究企画部会でも非常に重要な ポイントだろうと思っております。ただ実際にどういうふうにストラテジーを立てるか というところが非常に難しくて、あとで会長から5番目のところに議論を進めていただ くと思います。考えるとなかなか難しいところがあり、我々が考えるとどうしてもコク ランライブラリー的なものとか、そういうことしかなかなか思い浮かべなくて、医療の 情報化を我が国でどういうふうにシステム化するかというのが、EBMを含めてものす ごい大きな問題であります。そのエビデンスをどういうふうにこれからつくっていくか という時も、やはり安心して患者さんが参加できるようなシステムを構築しないといけ ないと思います。そのためには情報化と同時に、そのプライバシーに鍵をかける方法を やらないと、情報化だけが進んでしまうといろいろ問題が起こるのではないかというこ とで、そういう法的整備と情報化というのを述べたわけです。後で具体的なご提案をい ただければ大変ありがたく存じます。どうもありがとうございました。 ○豊島会長  どうもありがとうございました。  それではもう時間もかなり過ぎましたので、次へ移りたいと思いますが、一つだけ、 先ほど曽野委員のおっしゃいました「国際貢献の問題」、それから大石委員のおっしゃ いました「研究の問題」というのは、多分「厚生科学の意義」というところが全体を見 回したら重要なので、そこに言葉として取り上げておくということは一つのいいポイン トになると思いますので、その点もご配慮いただけたらというふうに思います。  それでは後半の方に移りたいと思います。後半の方でかなり各論的になってまいりま す。ご意見ざいましたら、軽部委員どうぞ。 ○軽部委員  二つございまして、一つは「新分野の研究者」というところに、情報関係とか、生物 工学というまさに今の情報化の担い手になるような人たちが抜けているんではないかと いう気がします。実は私、先週T病院の日帰りドックに入ったんです。驚くことにドッ クを受ける人は番号付のファイルを持たされまして、看護婦さんが陣頭指揮をとる訳で す。「あなた、あっちへ行って、こっちへ行って」と。我々情報科学を知っている人間 から見てこんなことはあり得るのか、こういうようなことなんです。要するに医療現場 を一つとっても、そんなのは全部コンピュータに入れて各部所で今何人待っているかと いうようなことを全部入れれば、例えば人がどう廻ったら最も効率的に最も短時間でド ックを受けられるかということなのです。最も有力病院の一つでありますが、これは何 年通ってもそんな状態なんです。ですから、要するにデータべースをつくるとか、いわ ゆるネットワーク化するという問題じゃなくて、医療現場を情報にのせるということが まず基本的に大問題であるという気がするんです。ですから、そういうところからやっ ていかないと、相変わらずカルテをこんなに持って、看護婦さんが内科から他の泌尿器 科とか、外科の間を行ったり来たりしている。とにかく我々にとっては想像できない。 その根本にあるのは先ほどのプライバシーの問題も一つあるんですけれども、いわゆる 医師のカルテがネットワークにのせられるのかという話がまず前提にあります。これは 木村先生のご専門だと思うんですが、ご存じのようにそれが医局内では出来ても、医局 を変わってしまうと非常に難しいというような問題があります。私の知人が日本で一番 大きな企業の北海道から九州までの全社員のドックのデータをデータベース化した。そ して今までの経過を全部データにのせたらものすごくデータベースが充実してきたため に、ほとんど医師の手を経なくても予測がきちんとできるようになったという例もあり まして、医療現場はどう情報にのせるかという話自身が、まず大事な点だと思うんで す。それは先ほどお話しましたように、例えば2時間待って3分間医師に診ていただく みたいな状況が、情報化が遅れているために、今、日本にできちゃっているわけです。 そこら辺をどうやってやったらいいのかというようなことを考えていかなきゃいけない 。それからネットワーク化というような問題で、僕は極端に結論を言わせていただけれ ば、いわゆる医療機関の情報科学の専門家が圧倒的に不足しているということだと思う んです。ですから、全面的に研究支援者等も、医療情報科学といわずに普通の情報科学 でいいわけですけれども、それを医療で特化してくれるような情報科学者を大量に導入 しない限り、今の局面を打開するには、医師と看護婦以外にもっとそれ以上の情報科学 者を大量に投入したら極端によくなるだろうと思うんです。そこら辺は新分野の研究者 のところと支援者のところにうまく盛り込むとかなり情報化が進むんじゃないか。  いわゆる情報科学をやっている人はいっぱいいるんですけれども、やはりその現場に 入らないといろんなアイディアはどんどん出てこないんです。情報科学というのは、い わゆるアイディアが非常に大きな意味を持つと思うんです。ですから、アメリカのもの をそのまま持ってきて日本に当てはめるというわけにいかないところがありますので、 日本の医療現場ではどれだけ情報化した時に、患者さんに対する負荷がどれだけ少なく なるか、医師に対する負荷がどれだけ少なくなるか、ナースに対する負荷がどれだけ少 なくなるかという最適制御ができるんです。我々はすぐに最適制御ということを考えて しまうんですけれども、そういう視点から見たら、医療現場が大変遅れている。そうい うことから先生もおっしゃっていたような先ほどのプライバシーのゲノムの情報をどう やって保持するのか。今ネットワークにのれば完全にハッカーできるわけです。ですか ら、バリアをつくるということは難しいわけです。しかも情報を壊すようなウィルスも どんどん入ってくるわけです。どう記号化するのか、暗号化するのか、個人を認知する のかとか、そういう問題もすべて遅れているというようなことがありまして、ぜひそこ ら辺を進めていただきたいと思います。 ○豊島会長  いかがでございましょうか。 ○木村委員  14ページでございますけれども、(5)のところに大変大事な項目、特に「社会的、 倫理的観点からも研究実施体制の整備」、これは大事な項目が入ったわけですが、確か に今、軽部委員のおっしゃたように、会社の社長が社員の健康データを見ていいのかど うかというのも非常に大きい問題なんです。ですから、日本では平気で自分の会社のク リニックの情報を手にした人事担当者が、例えば東南アジア旅行でHIVに感染したと いうふうな情報を入手して、左遷といいますか、解職したりというようなケースも出て きているわけでして、企業による健康情報の整備などは、生命倫理の大変大きい問題が あるわけですので、軽部委員がおっしゃった意味での、それを21世紀に向かってどうす るのか、データをどういうふうにするのか、シークレットコードをどういうふうにする のかということは大変に重要な問題になるかと思うんです。そういうこととの関連で 「社会的、倫理的観点からの研究実施体制の整備」という項目がきちんとこういうふう に入った。特に「臨床研究における被験者の権利の尊重及び研究を進める上での倫理性 の確保」ということが入ったということは大変に先見的といいますか、当然のことなん ですけれども、これは厚生省の文書として、こういうことがはっきり入ったということ は大変にいいことだと思います。  問題は次のところなのでございますけれども、1)「審査準則の制定と自主審査体制の 充実」というのは、これを読んでまいりますと、先ほどの課長の話では、拘束力はない ということなのでございますが、一番下から6行目を見ますと、「現行の個別審査から 自主審査への充実への切り替えを図ることが必要である」というふうに言っているわけ です。これは今まで遺伝子治療というのが、一つ一つのプロトコルを全部ナショナルレ ビューでやっている。そのナショナルレビューというものは非常に時間もエネルギーも かかるので、社会的、倫理的な整備、共通項目をある程度共通化を図って個別化しよう ということになるんですが、これは大変に大きいジャンプがここにありまして、今、世 界の諸国でそれをやっている国は無いわけですから、例えばアメリカでもNIHはある 程度ショートカットして、これは薬品にも関係してまいりますので、FDAの方であら ゆる遺伝子治療についてはナショナルレビューをしているわけなんです。イギリスでも GTAGでナショナルレビューをしています。ドイツでもやっているわけですから、ナ ショナルレビューを今やっていないという国は無いです。そういう切り替えを図るなど が検討されることが必要であるというならわかるんですけれども、これで検討されるこ とは必要でしたら、そういう検討はいいんですが、図ることは必要であるというのは、 ちょっとこれはそれこそ先ほど申し上げましたが、国際的な状況に大変に大きな問題を 提起することになるんじゃないか。研究企画部会ではどういうふうに討議されたのかと いうことが質問としてあるわけですけれども、一番最後の部分を見ると、「等につい て、引き続き本審議会で検討を行うべきである」となっていますので、これが前の文章 とつながっていると考えれば、本審議会で検討されるというふうに読めるわけです。も しそうだとすると、念のためにここのところは「図ることが必要である」という言い方 よりも、「図ること等が検討されることも必要である」というふうな文言を入れておき ませんと、大きなナショナルポリシーの変革がここに起こる可能性を非常に持っている のではないか。遺伝子治療が国の規制を外れてローカルな方式になってしまう可能性を 持っているんじゃないか。それは国際的な調和を乱す元凶として、日本がまた槍玉に上 がることになりかねないということを指摘しておきたいと思います。 ○豊島会長  これはどうしましょう。矢崎部会長、部分的なことですが。 ○矢崎部会長  時間がありませんので簡単に申し上げます。  軽部委員の「情報科学の専門家」について、これは医療の現場でコンピュータ化する ことによってものすごく効率化されるんです。私、東大病院から出ましたけれども、東 大病院もベッドの稼働率とか、それが国立大学で一番低かったのが今トップになってい るんです。それは全てコンピュータで情報化しまして、どこにベッドが空いているかと いうことがみんなにわかるようになったために、そういう意味で医療資源の公開という ものがものすごく合理化につながりますし、それから先生のおっしゃるオーダリングシ ステムとか、そういうのも確立するということが重要なことで、確かにその人がいるか いないかで病院の将来が決まってきますので、そういう意味では必要だというふうにぜ ひ加えさせていただきたいと思います。  それから今の木村委員のご意見について、私個人である程度考えますのは、遺伝子治 療も、例えば血管が詰まって心筋でバイパス手術なんかが行われますけれども、それよ りも、そこに注射でグロースファクターを入れることによって血管新生ができる。そう いうのはアメリカでも臨床でどんどんやられている。そういうような遺伝子治療という ことも頭に描いて、ある程度安全性とかそういうのが確かめられたら、一々個別ではな くて、将来はある程度検討していってもいいのではないかということなので、遺伝子治 療全体をナショナルレビューをやめるということではありません。もし安全性とかが確 認されればという仮定の上でのお話ではないかというふうに考えます。  それと、先ほどの「厚生科学の研究」ですけれども、ライフサイエンスとしてどんど ん進むのですが、厚生科学として重要なのは、基礎から医学研究から上がった成果をど のように臨床に応用するか、橋渡し的な研究(トランスレーショナルな研究)をどうい うふうに進めるかということがこれからは重要な位置を占めるんではないかということ で、この報告書のメインのところはそういうところもあります。先ほど会長が言われま したように、全体的な幅広い視野からこれを今後考えるという意味で、この報告だけで 厚生科学というものを考えられる方には、やはりそうことも含めて、先ほど会長が言わ れました国際貢献も含めて、もう少しコンファームしていきたいと思います。この遺伝 子治療の審査についてはそういうようなことでよろしいでしょうか。 ○高原課長  今、木村委員が後ろに引き続いて読めばそう読めるという意図で、我々もちょっと前 の文章よりも修文していると思うんです。検討した上で、できるという見極めをつけた 上でそういうふうなことも検討する。ご趣旨としては同じことでございます。  それから、たばこのことにつきまして一言発言させていただきますと、厚生省といた しましては、たばこが有害であるというふうなことは、これは厚生科学以前の話で、赤 信号を渡ると危ないよということで、確かに交通事故で死んでいる人はたくさんいるわ けですからこれも厚生科学だと言えば、いささかたばこが危ないというのが厚生科学だ というのがビヘービアルなモディフィケーションというところにひっかければ別であり ますが、医学領域、少なくとも自然科学領域としてはこれは常識の範囲ではないか。そ れで問題はやはり対策でありまして、これからどのように対策をやるかということで、 木村委員からご指摘がございましたように、厚生省の省内でタスクフォースを設けてお りまして、今年度内には「たばこ白書」というふうな形で、たばこ対策に対するレポー トを改めて出そうと思います。科学的な議論、もちろん社会科学とか、行動科学とかと いえば、そういうことになるのかもわかりません。  それから情報に関しては、確かに少し漏れたような印象もあるかと思いますが、現 在、私どもの日常的な仕事の中に、もう既にエレクトリック・ペーシェントレコードと か、病院のオブジェクト化されたモデルの作成とかというふうなことをやっておるわけ でありまして、研究というより、これは実務のレベルに入ったのかなというふうなこと で、ちょっとそこら辺のところが抜けたのかなと思います。いずれにせよ、医療情報も しくは現場でやっていることをそのままコンピュータにのせようとする人たちと、コン ピュータは敵だと思っている人がぶつかり合って、コンピュータを使って仕事を改正し ようというふうにならないのが、私ども病院を情報化しようとしていつもぶつかってい る点でございます。そういうふうなことは実務ベースでもやっておりますが、研究とし ても意義があると考えております。  以上でございます。 ○豊島会長  どうもありがとうございました。 ○大石委員  今のたばこのことは、私は健康への脅威のところにいろいろリストアップしている中 に入れておかないと片手落ちになるんではないかということでございます。  それからもう一つ後半のことで、ちょっと細かいことなんですけれども、私がさっき 言ったことと関係するんですけれども、やはり研究者についての態度というんですか、 全体のトーンがややネガティブとは言いませんけれども、ちょっとそういう感じがする 訳です。例えば14ページの「研究成果の公開と知的所有権の保護と研究成果を学会や学 術に発表するとともに」、常識でこれをやっていないというところはまずないわけなの で、こういうことを改めてここで言うということ自体、そういうトーンがやはり端々に 気になるというのがさっき私が申したところなんです。実情はきちんと客観的な事実と してあるわけですから、それはきちんと書いておかないと、これだといかにも研究成果 はみんな隠しているというようなこと、これは全くあり得ないことなんです。それは1 万のうち1個とか、2個あるかもしれませんが、そういうことは研究者にとって自殺行 為です。そういうことは少なくともするはずはないわけなんです。そのことだけちょっ と一言申し上げます。 ○豊島会長  もう時間になりましたので手短にお願いします。 ○木村委員  手短に申し上げますと15ページですが、一応発言だけさせていただきますと、「イン フォームド・コンセントの徹底と情報の公開等」、これも大変大事な文章がここにきち んと入って、これは大変前向きでいいと思います。この2行目ですけれども、「こうし た審査体制の充実とともに、遺伝子治療や生殖医療技術の実施にあたっては」というこ とで、実際に厚生省としてはインフォームド・コンセントについてはきちんとした対応 をして、先端医療技術評価部会でも全部文書をきちんとレビューしているわけでござい ます。したがって、ここに「患者に対するインフォームド・コンセントの徹底と」、 「患者に対する」というのが、先ほどの患者中心の厚生省ということから考えますと、 ここははっきりと今までのいろいろな厚生省の現実にやっていること、それからこの文 章に書かれたことから、当然のことの文章として「患者の権利としてのインフォーム ド・コンセントの徹底」というふうに文章を書きかえていただければというのが私の願 いでありまして、「患者に対する」という表現は極めてパターナリスティックな表現で はないかというふうに思いましたので一言言わせていただきました。 ○豊島会長  どうもありがとうございました。  いろいろご意見をいただきました。でも基本的には前向きだというふうに受け取らせ ていただきたいと思いますので、皆様の今日いただきましたご意見を踏まえて、一部修 正を加えていきたいという考えております。それでもしよろしければ、その修正を私の 方にご一任いただけますでしょうか。               (「異議なし」と声あり) ○豊島会長  どうもありがとうございます。それでは、そのように図らせていただきます。 続きまして、先端医療評価部会における審議の状況について、事務局の方からご説明 をお願いいたします。 ○事務局 特段の資料はございません。前回の総会以降、先端医療技術評価部会は5月23日に開 かれておりまして、そこにおきまして、がん遺伝子治療臨床研究作業委員会からの活動 状況報告とともに、現行の遺伝子治療臨床研究の基準の解釈についてご議論いただいて おります。これは文部省と厚生省とほぼ同様の基準によって現在作業を行っております が、多少文言の違いがあるということで、現在、大阪大学の学内の検討が始まっており ます「血管増殖因子等に関する末梢循環障害に対する遺伝子治療臨床研究」の試みの検 討の中で、直ちに致命的ではないということで、文部省では十分読めるんだけれども、 厚生省の場合は読めないのではないかという疑問が一部あったということで、部会にお きましてご議論いただいたところです。最終的には、命にかかわるような疾患について は、十分それぞれほかの二つの要件とあわせて考えた上で、この基準の適用対象になる ということのご確認をいただいております。すなわち致命的な遺伝疾患その他云々とい うことで、命にかかわるような疾患について、期待される効果が十分にリスクを上回る といったような幾つかの要件が十分満たされれば、基準に従った検討が進められるべき である。こういうご議論をいただいたところでございます。また併せまして、本日の研 究企画部会報告に出ておりますES細胞(ヒト胚性幹細胞)のような新しい科学的な進 歩につきまして、先端医療技術評価部会としても、医療への応用面を踏まえて少し勉強 を進めていきたいということが発議されまして部会で了承されております。  以上でございます。 ○豊島会長  どうもありがとうございました。  今のご発言に関して何かご質問ございますでしょうか、よろしゅうございますでしょ うか。 ○柴田委員  私は研究企画部会に参加しており十分意見は言いましたので、つけ加えることは何も ないのですが、さっき木村委員がおっしゃったところで、準則のところで遺伝子治療な どの審査が軽くなるんじゃないかという疑問が述べられたのは、むしろ、そうではな く、その次の項目にありますように、現在いろんな枠組みがないものがいっぱいあるわ けです。その枠組みについて、準則等の在り方を含めて引き続き本審議会で検討を行う ということを自らに課したこの責任の重さというのは相当なものじゃないかと思ってい るんです。ですから、我々としてはこれで終わったんじゃなくて、むしろ中間であり、 引き続きという部分に社会的には非常に大きなものを背負わされているという実感をむ しろ持っているんです。そういう意味で、軽く個別審査がなくて通っていいんだという のではなく、例えば従来、この前の第三者の卵子を使った対外受精というのは、現在で は第三者の目が全く注がれない中で行われているわけです。そういうことに対して何ら かの規制というか、ガイドラインをどうつくっていくかということについて、この審議 会が負っている部分というのがまだ中間なんだということをつけ加えさせていただきた いと思います。立場は変なのですけれども、研究企画部会で審議した者としての意見 と、まだ終わりではないという感じを強調したかったんです。 ○木村委員  もう終わったことなんですが、そういうふうに後半の文章問題では責任を課したとい うふうに、それがはっきりしていればそれはそれでいいんですが、前半のところを読み ますと、何かあたかも規則を外すように非常に強調されていたようですので。今日の部 会報告は全般としてはきちんとおまとめいただいた良い報告が出てきたということなの で、部会長並びに審議会の会長のご判断によりまして、本日の我々の発言が取り込まれ ることになるのかどうかちょっとわからないんですが、その点は何か我々の方に課題が あってFAXで出すとか、そういうことになるんですか。それともこのまま何らかの意 味で事務当局と会長と部会長とご相談の上文書ができる形になるんでしょうか。そこら 辺はどうなんでしょうか。 ○豊島会長  基本的には私と部会長、事務局が相談してやりますが、特段のご意見があれば、でき るだけ早急に事務局の方へFAXを入れていただければと思います。 ○木村委員  先ほど大石委員が、部会長にFAXを送ったというお話をされていましたが、部会長 とか審議会の会長ではなくて事務当局に送ればいいわけですね。 ○豊島会長  事務当局の方からすぐに回してくれますので。それでよろしゅうございますでしょう か。 ○唐澤室長  お送り頂くのであれば早目に、できれば明日迄にいただきたいと思います。審議会全 体との関係もございまして、大変恐縮ですが、お願いいたしたいと思います。今日のご 意見を私どもの方でも事務局としてメモをしておりますので、基本的には今日のご意見 を整理をしてご相談をさせていただきたいと思っております。 ○豊島会長  どうもありがとうございました。  それではこれで「21世紀に向けた今後の厚生科学研究の在り方」に対する意見がまと められる方向ということになりましたので、篠崎審議官より一言ごあいさつを申し上げ たいということでございますので、審議官よろしくお願いいたします。 ○篠崎審議官 それでは一言ごあいさつを申し上げます。 本日は「21世紀に向けた今後の厚生科学研究の在り方について」ご審議、そして答申 の取りまとめをしていただきまして誠にありがとうございました。 本日お取りまとめをいただきました答申につきましては、今後21世紀に向けて厚生科 学研究を推進する上での重要な指針として受けとめさせていただきたいと考えておりま す。 厚生省といたしましては、本日お取りまとめをいただきました答申につきましては、順 次その具体化に向けて取り組んでいきたいと考えておりますので、今後ともどうかよろ しくご理解、ご協力のほどをお願いをいたしたいと思います。本当にありがとうござい ました。 ○豊島会長  それでは今日は長時間どうもありがとうございました。本日はこれで閉会とさせてい ただきたいと存じます。 <了> 問い合わせ先 厚生省大臣官房厚生科学課 担 当 須田(内線3804) 岡本(内線3806) 白石(内線3807) 電 話 (代表)03-3503-1711 (直通)03-3595-2171