99/05/06 第5回生殖補助医療技術に関する専門委員会議事録 第5回    厚生科学審議会先端医療技術評価部会   生殖補助医療技術に関する専門委員会 議事録 厚生省児童家庭局母子保健課 厚生科学審議会先端医療技術評価部会 生殖医療技術に関する専門委員会議事次第 日 時 平成11年5月6日(木) 13:30〜16:30 場 所 厚生省特別第1会議室(7階)  1 開 会  2 議 事   (1)「生殖補助医療技術についての意識調査」の結果について   (2)生殖補助医療における法的問題について   (3)精子、卵子、受精卵の提供について   (4)その他  3 閉 会 〔出席委員〕中谷 委員長  石井(ト)委員  石井(美)委員  加藤 委員  高橋 委員  辰巳 委員   田中 委員   丸山 委員  矢内原 委員  吉村 委員 ○東課長補佐  それでは、定刻になりましたので、ただいまから、「第5回厚生科学審議会先端医療 技術評価部会・生殖補助医療技術に関する専門委員会」を開催いたします。  本日は、お忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございました。本日は欠席 はございません。  本日は「生殖補助医療技術に対する医師及び国民の意識に関する研究班」の分担研究 者として、アンケート調査の集計に当たられました山梨医大の山縣助教授に御出席いた だいております。  また、きょうの議事次第でございますが、(1)、(2)の生殖補助医療における法 的問題について、ここまで報道が入ることになっておりますので、よろしくお願いしま す。  それでは、中谷委員長、議事進行よろしくお願いいたします。 ○中谷委員長  ありがとうございました。  今の事務局からの御挨拶にもありましたように、きょうは連休明けの日でございまし て、皆様御多忙のところをおそろいで御出席いただきまして、まことにありがとうござ いました。本日の議事に入ります前に、事務局から本日の資料の確認をお願いいたしま す。 ○武田主査  それでは、本日の資料の確認をさせていただきます。  まず、黒いクリップでとめてある資料でございますが、それをとっていただきまして 1枚目の資料が議事次第でございます。その次の「資料1」とナンバーが右側に振って ある資料でございますが、こちらが「生殖補助医療技術についての意識調査の結果概 要」でございまして、調査結果についての厚生省の方で作成させていただいた概要版で ございます。  次に資料2でございますが、「生殖補助医療技術についての意識調査」の、矢内原先 生と山縣先生の集計結果の詳細版の報告書でございます。  次に資料3でございますが、こちらはきょう議事の2番目で「生殖補助医療の法的諸 問題」という題で、石井先生にプレゼンテーションをしていただきますが、この際の石 井先生の資料でございます。  次に資料4、B4の縦長の資料でございますが、「精子、卵子、受精卵の提供につい ての各委員の意見」、本日3番目の議事の資料でございまして、各委員の先生から2月 末日までに回収した意見を整理したものでございます。こちらの方を参考にしていただ きまして、本日の議事の3番目を御議論いただくことになっております。  最後に参考資料1でございまして、インターネットで寄せらました国民からの生殖医 療に関する御意見でございます。  以上が事務局から御用意させていただいた資料でございまして、そのほかに、先生の お手元の方には、前回の議事録と生殖補助医療技術についての意識調査の調査表を前々 回のときにお配りしておりますが、その資料を配付しております。  以上でございます。 ○中谷委員長  ありがとうございました。  次に議事の(1)の「『生殖補助医療技術についての意識調査』の結果について」に 入ります。「生殖補助医療技術についての意識調査」については、主任研究者の矢内原 委員と分担研究者の山梨医科大学の山縣助教授の研究班により実施されまして、このた び、調査結果がまとまったようでございます。両先生には大変御苦労さまでした。あり がとうございました。  それでは、調査結果について、矢内原先生と山縣先生に御報告をお願いいたします。 どうぞよろしく。 ○矢内原委員  今回の厚生科学研究の「生殖補助医療技術に関する医師及び国民の意識に関する研究 班」の主任研究者をさせていただきました矢内原でございます。  この問題は本委員会でも今審議されていることにも関係ありますし、実際に倫理面や 法律を含め大変問題になっています。そういうことで、その臨床応用には親子関係を含 む法律の問題、その他がたくさん関連をしておるわけであります。特に非配偶者間の体 外受精、また、代理母の問題などについては国民の意識も非常に高こうございますので そういう意味で、国民及び医療関係者等の御意見を伺うということが今回の調査の目的 でございました。大変短期間でございますけれども、また、広い範囲を網羅しておりま す。  これから、実際に解析に当たっていただきました山縣先生にその調査結果のまとめの お話をいただきます。ただ、まだ一次解析の段階ですし、今後この内容をもっと詰めて クロスの解析もどんどん進めていかなければなりませんが、一応まとまったというとこ ろで報告をさせていただきたいと思います。  それでは、山縣先生よろしくお願いいたします。 ○山縣分担研究者 山梨医科大学の山縣でございます。こちらの方のスライドで御説明させていただきま す。                 (スライド上映)  「目的」といたしましては、今、班長の矢内原先生がお話になったように、これらの 生殖補助医療技術の諸問題について、医療関係者、一般国民の意識を知ることを目的と してアンケート部査が行われました。  「対象」ですが、一般国民(4,000名)、日本産科婦人科学会体外受精登録医療機関の 産婦人科医、この医療機関が 402ございますので( 402名)。その医療機関を受診して います患者さんが(804名)、その他の産婦人科医(400名) 、小児科医(400名) の計6,006 名を対象といたしました。 「方法」ですが、まず、一般国民の方の 4,000名の抽出には、層化二段階無作為抽出 法を用いました。詳細につきましては資料をごらんください。全部で 200地点を決めま して、おのおのの地点より20名ずつの無作為抽出された20歳から69歳の方でござい ます。  日本産科婦人科学会体外受精登録医(以下、登録産婦人科医)に関しましては、平成 10年3月31日現在、住所一覧表により、402施設の実施責任者を対象といたし ました。 「患者」さんにおきましては、上記の医療機関において、調査通知が届いた翌日以降 不妊治療のために来院されました再来院の最初の2名の方というふうにいたしました。  「その他の産婦人科医」は、日本産科婦人科学会、日本母性保護産婦人科医会の会員 名簿(1996年12月版)から 400名を等間隔抽出法により抽出いたしました。 「小児科医師」につきましては、日本小児科学会より平成10年12月時点での会員名簿 の一覧の提供を受けまして、等間隔抽出により 400名を抽出いたしました。 「調査方法」ですが、一般国民の方は抽出地点を管轄する保健所の協力を得まして、 いわゆる留め置き法、訪問配付いたしまして、後日回収する方法をとりました。本人の 意思により郵送法も可能となっております。また、一部、郵送法としたところもござい ます。 患者は主治医より手渡しをしていただき、郵送法により回収しました。  医師に関しましては、全部郵送法といたしました。  すべて無記名回答です。  「調査期間」は、平成11年2月でございます。一部3月に入ったところもございまし た。  「回収率」ですが、一般国民の方(4,000)名) に配付いたしましたが、そのうち 354 通に関しましては、転居等により配付できませんで、配付数(3,646) 、回収数(2,568) で、回収率が70.4%と当初目標とした70%をクリアーいたしました。 登録産婦人科医 は 243の回収数で60.4%の回収率。 その他の産婦人科は 166の回収数で41.6%。 小児科医は同様に46.5%。 患者さんですが、 329の回収がありまして、40.9%ですが、患者さんに関しましては 先ほどもお話しましたように、登録産婦人科医から手渡しということでございますので 登録産婦人科医の回収数をもとに推定いたしますと、渡った数が恐らく 486、そういう ところから回収率は67.7%と一般国民の方と同じ程度の回収率でございます。 全体といたしましては、61.8%。患者さんの先ほどの推定で行いますと65.5%と6割 を超えている回収で、従来、他の国で行われたものに比べまして、はるかに回収率のい い結果となっております。  中身ですが、今回は基本的には単純集計に関して簡単にお話させていただきます。  まずは「一般国民」を対象とした調査です。各技術に対して「自分なら使うか」とい う質問がございます。「利用したい」という方、例えばAIDは3%程度でございまし て、「配偶者が望めば利用したい」というのが、その上の25%程度、残りの71.6%が 「望んでも利用しない」。  同様に「第三者の精子を用いた体外受精」に関しても同じような結果が出ております し「第三者の卵子」もそうでございます。  それから、「第三者の受精卵を利用した胚移植」に関しては、それまでの3つよりも 利用しない方が多く、8割を超えています。  「代理母」、「借り腹」に関してもこういう結果でございまして、第三者の受精卵及 び代理母に比べて、借り腹の方がどちらかというと多いことも今回の調査でわかりまし た。  それから、各技術に関しまして「一般論として認められるか」どうかという質問に対 してですが、おのおのの技術に対しまして「認めてよい」という方が7%から10%。 「条件付で認めてよい」というものを入れますと、6割がAID及び第三者の精子、第 三者の卵子を用いた体外受精に関しては「認める」という答えになっています。  ただ、第三者の受精卵の胚移植や代理母に関しては「認められない」方が35%を超え ておりますし、借り腹に関しても30%程度の方が「認められない」という結果が出てい ます。ただ、いずれも「認めてよい」という方は「認められない」という方よりもはる かに少ないという結果でございました。  次に、生まれてくる子どもに対してどういうふうな「親子関係」にあるのかという質 問でございますが、AID及び第三者の精子を用いました体外受精に関しましては、約 6割の方が「依頼者夫婦の実子とする」というふうにお答えになっております。  一方で「わからない」と答えている方も20%以上いらっしゃいまして、そのほかの補 助医療技術に関しまして「わからない」とお答えになっている方が非常に多いというこ とが、これでわかりました。  それから、「出自を知る権利」、生まれてきたお子さんが自分の親を知る権利です が、「いつでも知る権利がある」という方が15.1%、「成人になったら知る権利があ る」という方が11.6%、「婚姻年齢になったら知る権利がある」が 9.7%で、「いつか の時点で知る権利がある」と考えていらっしゃる方が36.4%。それで比べまして「知ら ないでいるべきである」という方が33.2%で「知る権利がある」という方を上回ってお ります。 それから、患者を対象とした調査です。同じように各技術に対して、自分は利用した いかどうかの質問でありますが、これもやはり一般国民の方と同じように「利用した い」と言われる方は非常に少なく「配偶者が望んでも利用したくない」という方が大勢 を占めていることがおわかりになると思います。  一般論としての部分になりますと、「条件付きで認めてよい」というのが、一般国民 に比べて非常に多くなっているところが特徴でございますが、一方で「第三者の受精卵 を利用した胚移植」、「代理母」、「借り腹」に関しては「認められない」という方が 非常に多くなっております。  「親子関係」でございますが、これは一般国民よりもどちらかというとやはり「依頼 者夫婦の実子とする」というふうにお答えになっている方が多いのですが、やはり第三 者の受精卵を用いた胚移植、代理母、借り腹に関しては「わからない」と答えていらっ しゃる方が多くあります。  「出自を知る権利」ですが、同様に「いつかの時点で出自を知る権利がある」という ふうに答えていらっしゃる方が43.8%で、「知らないでいるべきである」という35.8% これは「知る権利がある」という方を上回っておりました。  次に医師を対象とした調査で、医師に対しましては、自分なら利用するかという質問 はございませんで、一般論として皆さんお答えになっているわけですが、ここにはAI D、第三者の精子を用いた体外受精、第三者の卵子を用いた体外受精について、一番左 側が登録産婦人科医、真ん中の棒がその他の産婦人科医、一番右側が小児科医でござい ます。  まず、AIDにしても、第三者の精子を利用した体外受精にいたしましても、第三者 の卵子を利用した体外受精にいたしましても、例えば黒いところですが「認められな い」が登録産婦人科医、その他の産婦人科医、小児科医という順番で多くなっておりま して、これはどの技術に対しても同様な結果で、特に小児科医の先生方が「認められな い」と答えていらっしゃる方が非常に多いということがこれでわかります。産婦人科医 の先生方は、「条件付きで認めてよい」というところが多いことも特徴でございます。  次に「第三者の受精卵を用いた胚移植」、「代理母」、「借り腹」に関しても同様の 図でございます。これは先ほどに比べまして「認められない」と答えた方がいずれの専 門家も多くございまして、これも一般国民と同様で、借り腹はこの2つの技術に比べて 「条件付きで」という方が多く「認めない」という方が少ないのが特徴でございます。 これはどうしてこういう技術をというのを認めないかという理由にも関係してくるもの と思われます。  非常に見にくいもので恐縮ですが、どうしてそういった技術が認められないのかとい う理由でございます。一番多かったのが4番目のいわゆる「親子関係」に関する問題で ございました。それから、「遺産」やそういったものの問題が生じるということなども 多くございました。これはそれぞれ一般、患者、各専門家によって分けてございます。  こちらは同じものを一般国民、患者さん、登録産婦人科医、その他の産婦人科医、小 児科に分けてその理由を聞いたものです。白く抜けていますのが、いわゆる4番目の 「家族関係が不自然になる」ということで、どの属性の方もこれが一番多くなっており ますが、一般国民の方は2番目に圧倒的に多いのがオレンジ色でございまして、これが 6番目の、「妊娠はあくまで自然になされるべきだ」というふうに一般国民の方はお考 えです。患者さん、産婦人科医は比較的こういうものが少なく、小児科では少し多めで ございます。患者さんの方で次に多いのが「その他」という理由というものがありまし て、これが非常に多いのが患者さんの特徴でございました。この内容に関しましては、 5つか6つぐらいの内容に分けることができるわけですが、すべてそこで網羅いたしま したところ、まず、一番多かったのが「夫婦の子どもが欲しい」と。患者さん、こうい った技術を利用されている方は、「自分の主人と自分との子どもが欲しい」というのが 最も多い理由でございました。  次に第三者の精子なり卵子なりというものでの「子どもを育てていく自信がない」と いう方がその次に多くありました。そのほかとしましては、例えば「養子」だとかそう いったことで、子どもが必要なときにはそういった手段を考えるということや「生理的 に第三者の精子なり卵子を自分の体の中に入れることができない」という御意見。あと 非常に多かったものとしては、いろんなものに対する不安、例えば、体のことや子ども が大きくなったときのこと、そういったいろんな不安が多くございました。  それから、一方で医師に関してですが、いわゆる5番目の「親権や遺産相続などいろ いろなトラブルが生じる可能性があるから」を比較的多く挙げております。  登録産婦人科医、その他の産婦人科医の方が多いのが、「商業的に利用されると思う から」というものを挙げていらっしゃる方が専門家の方では多くございました。  あと小児科医で、ほかのところに比べて多かったのが、「生まれてくる子どものこと が心配である」ということが1つ大きな理由として挙がっておりました。  基本的には、今のが単純集計になるわけでございますが、一般国民の方で年齢別に見 てみますと、例えば、これは第三者の卵子を用いた体外受精に関してですが、20代、30 代、40代、50代、60代というふうに分けていきますと、年齢が上がるに従って「認めら れない」という方が増えてきております。逆に「認める」という方は少なくなっている ことがわかると思います。これはほかの生殖補助医療技術に関しても同様な結果でござ いました。  このように、これは「認められない」人だけの割合を各医療技術に対して年齢別に見 たものでございます。おのおの一番左側が20代、一番右側が60代ですが、どの技術も右 上がりで、年齢が上がるに従って「認められない」という人が多くなっております。  それから、必ずしも一般国民や患者さんと医師等を並べてみるのは、今回の調査の場 合、適切かどうかという問題はあるとは思いますが、こうやって並べてみますと、例え ば、第三者の卵子を用いた体外受精に関しまして「認められない」と答えている方はむ しろ専門家で多く一般の方で少なくなっております。例えば、男性の場合は「条件付き で認めてもよい」という方が多くなっておりますし、患者さんは条件付けますと80%近 くの方が「認めてもよい」と考えていらっしゃいます。この専門家とのギャップがここ でおわかりになると思います。女性は比較的「認めない」という方が多いことがわかる と思います。  今のすべての技術で見ていきますと「認められない」、赤が患者ですが、いずれの技 術も最も少なく、専門家がいずれの技術に関しても多くなっております。特にその中で も小児科医が比較的「認められない」と回答しておりました。  さて、一般国民に関しましては、問いの1番で、いわゆる「性に関する意識」、つま り男性とか女性に関して社会的にどういった役割があると考えているか、そういったこ とを7項目にわたって聞いております。いわゆる性に関する意識としまして、それを得 点化いたしまして、得点が低いほど保守的、男性は男性、女性は女性で役割があると。 得点が高い人ほど男女平等感が強いということにいたしますと、これに関しましては、 年齢や性と関係がございます。例えば、年齢に関しましては、30代が男女とも最も高い 得点をとっておりまして、20代、40代、さらに50代、60代といくに従って得点か低く、 年齢が上がるとともに保守的である。20代よりも30代の方が男女平等感が強い。  それから、男女差に関しましても女性の方が高得点でありまして、男女平等感といい ますか、そういう意識を持っている方が多いことが問いの1番でございました。  それから、知識に関しても聞いております。おのおのの生殖医療技術に関して「知っ ている」、「聞いたことがある」、「知らない」という3つの答えですが、全部「知っ ている」と答えた方が全体の20%いらっしゃいました。これに関しましては男女差はご ざいませんで、ただ、年齢に関しては40代が最も高得点といいますか、これも得点が高 いほどいろんな技術を知っていると考えますと、高得点で知識があったということで年 齢差はございました。  さて、その1番の「性に関する意識」によって、おのおのの生殖補助医療技術に対し て、それを一般的には「認められない」と答えていらっしゃる方が違うのではないかと いうことで簡単なクロス集計をやりましたらそのとおりでございまして、得点を「四分 位数」といいまして、頻度が4分の1ずつになるように得点を分けますと、7〜14点、 15〜18点、19〜22点、23〜28点の方の4つのグループに分けることができるのですが、 その最も得点の低い方、つまり、男女の意識に関しては保守的といいますか、そういっ た考え方の方が白になるわけで、一番右側の赤が男女平等感が強い方になるわけですが 「認めない」という方がやはり保守的な方に非常に多いことがわかりますし、逆に男女 平等感のある方はこういった技術を一般的にも「認めていい」のではないかと答えてい る方が逆に多いということになります。  一応、疫学者ですので、全体としてはこういったものに関して、この意識に与える因 子としてどういったものがあるのか。いわゆる多変量解析を用いてやりますと、今まで 御紹介しましたものに関しまして、おのおのの因子に対しは、例えば、ほかの要素が影 響を与えているかもしれないので、それを取り除いたものです。そうしますとやはり 「性」では女性の方が認めない。「年齢」では高齢者が認めない。「性に関する意識」 としては保守的な方が認めない。ただし「知識」に関しては、こういった例えば、年齢 とか性みたいなもので調整されますと関連がなくなります。それから「婚姻状況」も関 連がございません。それから「子どもの有無」は、いわゆる統計学的な有意差から見る と関連がないんですが、子どもがある方の方が「認めない傾向」にあるということでご ざいました。  それから、医師に対して同様にやりますと、「性」は関係ございませんでした。やは り「年齢」、専門家が3つに分けられているわけですが、小児科の先生方が認めないと いう方が多い。「婚姻状況」、「子どもの有無」に関しては関係がないという結果でご ざいました。  最後ですが、今回の調査で、いわゆる「利用したい」という方はどの技術に関しても 1%〜3%ぐらいまでしかどの医療技術に関してもいらっしゃらなかったわけですが、 一方で、一般論としては「条件付きで認めてもよい」という方がかなりいらしたわけで すが、おのおのの方、例えば、「一般論として認めてもよい」という方が、では自分な ら利用するかと言われると、16%ぐらいの方しか「利用しない」と。「一般論としては 認めるが、自分は利用しない」という方が3分の1いらっしゃる。「条件付きで認めて いい」という方も半分の方は「自分は利用しない」とお答えになっているということが わかりました。  用意しましたスライドは以上でございますが、さらにいろんな意味で分析を重ねてい き今後の資料にしていただければと思いますが、最後に感想といたしましては、「その 他」のところでいろんなことが書かれているのですが、患者さんにしても一般国民の方 にしても、生殖補助医療技術に関しては、自分のことを考えたときには「自分たちの子 どもが欲しい」、そういうふうな意識が非常に強いことがアンケートの選択肢の回答か らも、その他の欄に自由記載されているところからもわかりました。  以上でございます。 ○中谷委員長  どうもありがとうございました。  矢内原、山縣両先生には本当にありがとうございました。こういう調査は、日本では 初めての調査でございますので、これを参考にして、これからのこの委員会での議論を 進めてまいりたいと思います。  委員の先生方にはいろいろ御質問がおありだと思いますけれども、次の議事までは報 道関係の方に入っていただくことになっておりますので、調査結果に対する質疑や意見 交換は次の議題が終了した後でまとめて行いたいと思います。  続きまして、議事2の「生殖補助医療における法的問題について」に移らせていただ きます。この議事については、石井美智子委員に、生殖補助医療技術のうち、特に第三 者からの配偶子提供についての諸外国における訴訟事例や我が国における法的問題につ いて、御説明いただきたいと思います。石井先生、よろしく。 ○石井(美)委員  資料というほどのものをお配りしてないのですが、一応メモ程度のものが皆様のお手 元にあるかと思います。「生殖補助医療の法的諸問題」ということでお話をさせていた だきたいと思います。  まず、最初に考えておきたいのは「生殖補助医療が特殊な医療である」言える点 です。そもそも不妊が「病気」なのかどうかということもあります。「治療」といわれ ますけれども、病的疾患が治るわけではないという点で特殊な医療性があると思います が、何よりも結果として、人が生まれるという点に生殖補助医療の特殊性があり、それ ゆえに法的問題を検討する必要があり、公的規制が必要なのではないかと考えておりま す。  「法の課題」といたしましては、生命・人間の尊厳、人権、子の福祉、公序良俗、安 全性を確保・保障するということがあり、そのために、法的規制としては、どこの範囲 まで生殖補助医療は許されるのかという許容範囲を確定し、また、その許される生殖補 助医療についても、どのような条件、手続において許されるのかということを明らかに する必要があると考えております。  そういう前提のもとに、ここでは大きく2点に分けて問題を考えてみたいと思い ます。  1つは、「生命・人間の尊厳」という観点からどのような問題があるのかということ で、その中心は受精卵・胚をどのように考えるのか。果たして「人」なのかどうかとい う視点から考えるということであります。  まず、受精卵・胚を破壊した場合に、果たして「殺人」なのか「器物損壊罪」に当た るのかというような法律家の議論はございます。現実には、1973年にアメリカで、イギ リスのルイーズちゃんが生まれる以前の段階でありますけれども、実験的に体外受精、 胚の培養を行っていた病院において、それに反対する医師が無断でその胚を破壊してし まったという事件が起きております。それについては刑事事件ではなくて民事の方で損 害賠償責任が病院に認められております。そこにおいては、胚は人なのかどうかという 議論はしておりませんけれども、胚というものは単なる物と考えることはやはりできな いだろうと思います。人になる可能性を持った存在としての保護が必要で、そういう観 点から受精卵・胚というものをどう取り扱っていくのかということを考えていかなけれ ばならないのだと思います。  そういう観点に立ちますと、移植されなかった受精卵・胚というものをどのように取 り扱うか。実験に使えるのか、どのような実験ならば許されるのかということも考えな くてはいけない問題だと思います。さらに本人たちがもはや子どもを欲しない、利用す ることがないことになった場合に胚を提供することが許されるかどうかということがこ こでの大きな問題だろうと思います。  提供するにしましても処分するにしましても、実験に用いるにいたしましても、それ をだれが決定するのかということが大きな問題になります。  具体的には、余剰というよりは、後で利用するという前提のもとに凍結保存された胚 の処分ということが外国では問題になった例がございます。具体的には死後の生殖の問 題として、皆様御存じのように、1984年にアメリカで億万長者が飛行機事故で亡くなっ た後にオーストラリアに凍結保存されていた胚をどうするのかということが世界的に話 題になったことがございます。それは移植すべきなのか、だれの子宮に移植すべきなの か。その受精卵に億万といわれる財産を相続することが認められるのかどうかが話題と なり、我が国でも受精卵は胎児として相続権があるのかという議論もなされました。  もう一つは、配偶者間の一人が亡くなった後に残された一人がその子どもを生みたい そういうことが許されるかどうかということでございますけれども、それについては具 体的に問題になったのは、未亡人が冷凍保存されていた夫の精子を使って子どもを産み たいという事件で、一番最初に話題になりましたのがフランスの事件であります。これ は精子バンクに妻の方が人工授精のために亡夫の精子を返して欲しいといった訴訟でご ざいました。  アメリカでは、妻と先妻の子どもとの間で亡くなった夫の精子をめぐって争いまし た。相続の争いの中で精子を妻は自分が承継して産みたい、それに対して子どもたちの 方は反対するというような事件です。  胚につきましては、離婚した場合に問題になっております。離婚した時点で凍結保存 されている胚を、妻は自分が産みたいと言い、夫はそのような子どもは欲しくないとい う場合に、どちらの希望によって決定すべきなのか。これは訴訟事件になっておりまし て、一審段階では妻の主張が認められ、最高裁の段階では夫の反対の方が認められると いうように裁判所の判断も分かれています。  胚をどう評価するかという点で大きな問題になりますのは、その売買が許されるのか です。胚だけではなく精子、卵子もそうですが、胚は人になる可能性を持った存在とい うことで、生殖細胞である精子、卵子以上にその取り扱いが問題になります。  我が国でも臓器移植の場合の臓器提供は無償ということになっております。また、養 子については我が国では規定はございませんけれども、諸外国では金銭のやりとりを禁 止する法をつくっている国が少なくございません。人身売買はどこの国でも禁止される 事柄だと思います。人になる可能性を持った存在の売買ということが許されるのかどう か。諸外国を見ますとそれは規制されています。ただ、売買は禁止されるということは わかりやすいのですけれども、「無償」といった場合に実費の支払いを現実には認めて いる国もあるわけで、その実費というものをどこまで認めるのかということが問題にな るだろうと思います。  また、人になる可能性のある胚ということですと、その遺伝子の操作が許されるのか どうかという問題と、生命の選別として具体的に問題になっていますのが「受精卵診 断」と言われている不妊治療とは別に、障害児を産まないための体外受精利用というよ うな問題がございます。  さらに、先日議論いたしました多胎からくる減数手術の問題、生命をつくりながら、 それを破壊するという問題もあると思います。  以上、簡単ですが、生命、人間の尊厳にかかわる問題です。  次に、最初に、人が生まれるということが生殖補助医療の大きな特殊性としてあると 申しました。その場合に、自分自身で身を守ることのできない、生まれてくる子どもの 福祉をはかるのが法の一番の役割だろうと考えています。子の福祉ということを考えま した場合に、一番問題になりますのは、生まれてくる子どもの親はだれかということが 明らかではないという問題。殊に提供卵子、提供精子による生殖補助医療等の場合には だれが親なのかということが不明になってしまうということがございます。  2ページに現在どのような技術が使われ、その結果、生まれてくる子どもの親はだれ になのかということを考えてみた表がございます。時間がございませんので詳細は申し ませんが、そこに空白になっておりますのは、現行法を当てはめてみて答えが見いだせ ない、親子関係の確定ができないという状況が現に起きているということでござい ます。果たして親というのは遺伝的につながりのある人なのか、産んだ人なのか、子の 出生を望んだ人なのか、養育する人なのか、従来、血縁か育ての親かという議論があっ たわけですけれども、それ以上に複雑な状況を生み出している。  その結果、生じております争いが子の奪い合いという事件でございまして、これは代 理母、借り腹の事件で有名な事件がございます。1988年にアメリカでは「ベビーM事 件」という代理母が出産した子どもを依頼者夫婦と争った有名な事件がございます。  さらに1993年には、借り腹で、子宮を提供した女性と依頼者夫婦が争うという事件が 起きています。産んだ女性なのか、遺伝的につながった女性なのか、どちらが母なのか 問題となりました。カリフォルニア州最高裁は、遺伝的な母も産んだ母も母性を持って いるけれども、この場合、子どもの出生を意図した女性が母であるという結論を出して おります。  子どもにとっては奪い合い、両者が望んでいる事件はまだ救いがあると思いますが、 一番悲劇的なのは引き取りを拒否した事件であります。具体的には障害児が生まれた場 合に、依頼者夫婦が引き取りを拒否した事件がございました。  また、先日も大きく報道された事件がございましたけれども、病院において精子、卵 子、胚が取り違えられて、本来、自分たち夫婦の子どもを望んでいたにもかかわらず、 他人の遺伝子を持った子どもを産んでしまうという事件が起きております。そういう場 合に、果たして生まれた子どもについて、親をだれにするのかということはより深刻な 問題を生じさせるものでございます。  さらにイギリスでは実験的に可能というふうに報道されておりましたけれども、提供 卵が得難いという状況で、流産した胎児の始源生殖細胞を利用して子どもを生むという 技術があります。そういうものを利用した場合には母親というものがこの世に存在しな かった、そういう子どもが生まれてきてしまうという問題も起きる可能性がござい ます。また、先ほど紹介したような死後の生殖においては、初めから子どもにとって親 がいない子どもが生まれてくる可能性はございます。  さらに「子の福祉」ということを考えますと、未成年養子の場合に、我が国において も、家裁の許可を要件として認められることになっておりますが、親としての適格性を 人工的に子どもをつくる場合に判断しなくてよいのだろうか。これは昨年だったと思い ますけれども、アメリカで代理母によって子どもをもうけた父親が虐待して子どもを殺 してしまったという事件が起きてかなり話題になったことがございました。自然に生ま れる場合には親としての適格性は問われることはないわけですけれども、人工的につく られる場合にそれを考えなくていいのか。親としての適格性ということを考えるもう一 つの問題としては、通常では生まれる可能性のない、閉経後の出産のような高齢の現実 に子どもが生まれる可能性のない年齢になって子どもをもうけるという問題もあるかと 思います。  そして、先ほど御紹介のあった事柄ではありますけれども、子の「福祉」の観点では 親をだれにするかとは別に、子どもにとって生物学的な親、子の出自を知る権利をどう 保障するのかという問題がもう一つございます。  このような問題に対して、諸外国では政府レベルの委員会を設けて議論をした上で、 子どもの保護のための親子関係を明確にする法律、そして技術の利用を制限する法律を つくっております。  我が国もいよいよこの委員会が検討を始めましたけれども、現状においては、我が国 は産科婦人科学会の会告による規制があるのみでございます。AIDについてはもう50 年の歴史がありながら問題が起きなかったと言われてきたわけですけれども、改めて今 日この問題を検討せざるを得ない状況にあるのは、営利の精子バンクというものがかな り活動を始めている状況にあること。独身の女性のAIDの利用などということもかな り話題になっていること。何よりも根津医師による非配偶者間体外受精の事実の公表と いうことがあったと思います。さらに調停において問題になった事件はあったけれども AIDについて訴訟事件はなかったと言われていたのですが、昨年、2件相次いで明ら かになったものがございます。  1つが昨年の暮れ、かなり新聞で大きく報道されましたAIDによって生まれた子ど もについて、「父親」が自分は父親ではないという嫡出否認の訴えを起こした事件でご ざいます。ただ、これは従来、私たち法律家が論じてきました夫の同意を得た上でのA IDによって生まれた子どもについて、夫が自分は父親ではないと主張したものではな く、夫が知らない間にAIDが行われ、夫は自分の子どもだと思っていた事件です。不 妊治療は行っていたけれども、自分の精子を使って子どもが生まれたと思っていた。そ の子どもについて、自分の精子ではない、他人の精子によって生まれた子どもであるこ とがわかったために、自分は父親ではないという主張をし、裁判所も夫の同意がないか ら父親ではないということを認める判決が出されています。これは同意というものをど う確保するのかということを考える上で重要であり、医師の責任を考える上でも大変重 要な問題です。子どもの福祉の観点から同意をどのように確保していくか。AIDだけ ではなく、AIHでさえ、手続きをきちんとしないと問題が起きてしまうことを示す事 例ではないかと思います。  もう一つの事件は、これは東京高裁の平成10年9月16日の決定でございますが、これ は親子関係そのものを争ったわけではないのですが、AIDによって子どもをもうけた 夫婦が離婚に際して、どちらを親権者、母とするか父とするかを争った事件です。我が 国では婚姻中は共同親権ですが、離婚後は父、母どちらかの単独親権になります。別居 状態のときから父親が育てていたので、一審では父親を親権者としたのに対して、抗告 した母親の方がAIDだから夫は父親ではないので自分を親権者とすべきであるという 主張をした。  しかし、裁判所は父親ではないとは言わなかった。初めてかもしれません。裁判所は 夫の同意を得てAIDを行った場合に、夫が父親であるということを判示しています。 事件そのものではだれが父親かが争われていませんし、傍論なんですけれども、夫が父 親であるということを判示しております。また、同時に、父親が遺伝的につながってい ない。AIDで生まれた子であるということも1つの判断材料にはなるということも申 しております。その上で、この事件においては、AIDであるという事実を考慮しない でも、母親の方が親権者として適当であるとして母親を親権者としました。  我が国では事件が「ない、ない」と言われていたのですが、裁判所で争われる事件、 それも公になる事件が出てきている。潜在的には紛争が起こっている可能性があり、か つ、従来起こらなかった紛争の可能性が増えているのではないかと思わせる状況にある と思います。  そして、ここではAID子について、同意した夫が父であるという方向での議論には なっているのですけれども、果たしてそれで問題解決になるのかといいますとそうは言 えない。そこに挙げましたように「藁の上からの養子」というのは、自分が産んでいな い子どもを自分が産んだ子として直接届けてしまう。養子なのだけれども、自分の実子 として届けてしまうという事件でございます。菊田医師の事件でかなり話題になって、 我が国でも「特別養子」という制度がつくられました。その事件においては、戸籍上 「父母」となっていても、事実が異なっている場合には親子でないということが我が国 の確定した判例でございますので、戸籍上載っているということだけでは親が確定する ものではないのです。  さらに、最近ではDNA鑑定が進んでおりまして、そのDNAに基づいて親子関係が ないことが明らかになった場合に、嫡出推定規定、妻の産んだ子の父親は夫であるとい う推定を排除するという考え方が強く主張されています。その前提としては、最高裁も DNAについては認める判決が出ていませんけれども、妻が夫の子どもを懐胎し得ない 状況において懐胎した子どもについては推定を排除するという考えを認めていることが あります。最高裁は夫婦が長期の別居をしている等の場合、外観的に明らかな場合に今 のところ限っていますが、学説等、また高裁段階ではDNA鑑定による親子関係の否定 ということも認めておりますので、そのような流れの中においては、生まれた子どもの 親を確定することが我が国でも難しい状況にあり、紛争の可能性は増えているといえま す。  たまたま事件になった判決は離婚の事件ですが、藁の上からの養子事件では相続をめ ぐって争いになっている事件が多いということもございます。調停でAIDが問題にな ったのは相続の事件と言われております。  このような状況のもと、立法の検討事項として考えなくてはならない要素として「生 命の尊厳」、「親となろうとする者の権利」、「子どもの権利」、「提供者の権利」、 「社会の利益」、これらを総合的に判断した上で決定する必要があります。法的に規制 するか、医師会、学会によるガイドライン等々の規制によるか、最終的にどうするかは 別といたしまして、大枠として決めなくてはいけない問題として、実施者・施設の限定 被実施者の範囲、配偶子・胚の保存の期間、配偶子・胚の提供の可否、1人の人の配偶 子によって生まれる子の数の制限、親としての適格性、スクリーニング、マッチング 等々、挙げておきました。  もう一つ、下から4番目に挙がっています「『親』決定手続」、生物学的につながっ ている人を親とする手続を特別に設けるかどうかということも、だれを親とするかとい う中で1つの考慮すべきことだろうと思っております。  そして、それらの手続の違反について制裁を考えなくてはならないだろうと思ってお ります。  大変早口で簡単な説明でしたのでわかりにくいかと思いますが、以上でございます。 ○中谷委員長  どうもありがとうございました。それでは、ここで報道関係者の方は恐れ入りますが 御退室ください。                (報道関係者退室) ○中谷委員長  それでは、先ほどの意識調査の結果についての御報告に対しての質疑応答に移らせて いただきたいと思います。どなたでもどうぞ、ご発言いただきたいと思います。どうぞ 加藤先生。 ○加藤委員  親子関係が不安定になるとか、法律上のトラブルが起こるかもしれないという不安を 回答している人がいるわけですが、その場合に質問者に対してはどういう認識が与えら れているのでしょうか。あるいはどういう前提でそういう質問が出されているのでしょ うか。全く予備知識なしでそういう質問をしているのか、それとも何か予備知識を与え た上で質問しているのかということです。 ○矢内原委員  最初に意識調査をし、その次に知識の調査をして、いろいろな各項目について全部質 問しています。その項目の最後に「認められない」という理由の中に10ほど理由を挙げ てありまして、その中の1つに、こちらから指示して、どれにマルをつけるかというこ とになっています。  ですから、アンケートをごらんいただきますと、全部一応項目書いてありますけれど も、これは複数回答でいいわけですが、「家族関係が不自然になると思うから」、そう いうところにマルをつけるとか、「親権や遺産相続などいろいろなトラブルが生じる可 能性があるから」と、こういうものが非常に多かったということです。ですから前もっ て知っています。 ○加藤委員  その場合、現行法ではそうであるけれども、例えば、法律が整備されたならば、そう いう問題は起こらなくなるということについては、回答者にはそういうことについては 触れられていないわけですね。 ○矢内原委員  はい。 ○中谷委員長  ほかにいかがでしょうか。初めての調査ですから、随分いろいろ教えていただいて、 ありがとうございました。いかがでしょうか、何か御質問。 ○石井(美)委員  知識の有無が結果に関係ないというお話だったと思いますが、知識が全部わかってい る20%の人と差がなかったということなのでしょうか。 ○山縣分担研究者 二通りの解析をやっておりまして、一つは、今、先生言われたように20%の方と80% の方でどういう違いがあるかという分析と、あともう一つは、得点化できますので、お のおのの得点と「認める」、「認めない」についての解析、両方でございます。その結 果として、単純に解析しますと、知識のない方が「認めない」又は「わからない」と回 答される方が多いんですが、最後にお話しましたほかの年齢や性などを調整しますと差 がないという結果になりました。 ○中谷委員長  ほかにいかがでしょうか。 ○田中委員  5割以上が「わからない」と答えた質問に対して、残り半分ずつ「反対」と「賛成」 であった場合の回答に対してどのように解釈するのでしょうか。 ○山縣分担研究者 統計解析上は、1つは「わからない」というものを除いて、シロ、クロに関する解析 の方法と、あともう一つは、いわゆる順番をつけずに「わからない」も含めた形での分 析もできますので、私は後者の方をやっておりますので、なるべく全部入れた形の分析 です。 ○中谷委員長  田中委員ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。 ○石井(ト)委員  小児科医を対象としているのですが、一番子どものことがよくわかるという形で多分 やったと思います。結果を見ますとほとんど否定的な傾向ですね。私が推測するには、 親子関係をいろいろ勘案して多分そういう値が低いのではないかと思うのですが、何か その他のいろいろな意見の中で参考になるようなまとまった内容がありましたら教えて いただきたいと思います。 ○山縣分担研究者 小児科の先生の場合に、先ほどの選択肢でほとんどの方がお答えになっておりまして 例えば、選択肢の中で多かったのは、生まれてくる子どもの問題、親子関係の問題、 「生まれた子どもが結婚する時」というふうに子ども関係のところにマルのついている ものが多かったわけでございますが、「その他の理由」として、数名の方がお答えにな っているのですが、1つには、「子どもの精神面で負担となる」、「将来、子どもが精 子提供者を探す可能性がある」、そういったような意見がございます。  これに関しましては、一般の方の「認めない」という「その他の理由」の中で、やは り1つ大きなウエートを占めているものでして、いわゆる「子どもの権利」、「子ども が事実を知ったら悩むから」、「生まれてくる子どもが悲しむ」、「子どもはおもちゃ ではない」、「子どもの人権保護ができない」、「大人のエゴだと思う」というふうに 子どもの権利の問題があるので、こういうことに反対するといった意見が多くて、その あたりは小児科の先生方と一部同じような認識ではないかと思います。 ○中谷委員長  どうもありがとうございました。ほかに何か御質問。どうぞ、丸山委員。 ○丸山委員  性に関する意識別、各種生殖補助医療技術に対する「認めない」の者の割合は、今お 配りいただいた机上資料の75ページに、先ほどのスライドと同じものがあるのですが、 これは「関連ある」という御説明だったと思うんですが、強い関連、弱い関連というこ とは、どちらかというのは言えるものでしょうか。 ○山縣分担研究者  統計学的に5%の有意水準で見て、この差を見たときには、統計学的に有意な差とし てあらわれております。 ○丸山委員  強い、弱いは出てこないんですか。余り強くないんじゃないかなという感じがします もので。 ○山縣分担研究者  ちょっとここに具体的なデータを持ってきておりませんが、例えば多変量解析のとき に、その中のいわゆる変改係数のような数字を見ることによって、例えば年齢や性と比 べてそれが大きいのか小さいのかということがわかるのですが、私の記憶しているとこ ろでは、性に関する意識は、例えば、性差と比べてそんなに差がないというように記憶 しております。また、これについては詳しく報告書でお示ししたいと思います。 ○中谷委員長  ありがとうございました。ほかはよろしゅうございましょうか。何か御質問。課長か ら、どうぞ。 ○母子保健課長  確認だけお願いしたいのですが、不妊治療を受けたことがあるかどうかという質問が 一般の方と産婦人科の先生方、小児科の先生方それぞれありますね。産婦人科とか小児 科の先生方のところで体外受精を受けたことがあって、不妊治療により子どもが生まれ たというのは、一般の方のところと比べて異様に多いのですか、これは間違いないでし ょうか。 ○加藤委員  何ページですか。 ○母子保健課長  60ページが小児科だと思うんですが、体外受精で「不妊治療により子どもが生まれ た」というのは81件挙がっているんですね。  その前の、49ページは一般の産婦人科の先生なんですが、「不妊治療により子どもが 生まれた」、これも36件で非常に多いですね。排卵誘発剤などに比べてはるかに多い。  その前の登録産婦人科医は37ページ、やはり体外受精で「不妊治療により子どもが生 まれた」、これは実数が載っているわけですね。37件ということで、これも排卵誘発剤 よりはるかに多い。  それを14ページの一般の方のと比べますと、これがガタッと減って、それぞれ「回答 なし」が非常に多いのですが、「治療して子どもが生まれた」という方は顕微授精2件 体外受精2件という感じになっているので、ここら辺ちょっと確認していただいた方が よろしいかなと思います。 ○山縣分担研究者  何かのミスですね。 ○母子保健課長  そうですね、多分。 ○山縣分担研究者  確認いたします。 ○中谷委員長  大事な御指摘をありがとうございました。ほかには、別によろしゅうございましょう か。事務局の方で、ほかにはよろしゅうございましょうか。  それでは、引き続きまして、石井美智子委員の御報告についていかがでしょうか。大 変詳細な、非常に論理的な御説明いただきましてありがとうございました。御質問何か おありじゃないでしょうか。非常に法論理的に正確な御報告でございましたけれども、 私からエピソードみたいなものをつけ加えさせていただこうかと思いますけれども、よ ろしゅうございましょうか。  アメリカのケースについては、たしか判決が1973年の7月でしたね。 ○石井(美)委員  はい。 ○中谷委員長  父親となるべき人、精子の提供者については3ドル、母親となるべき人、卵子の提供 の人にはたしか5万ドルの損害賠償だったんですね。おもしろいですね。そういうこと がありました。  それから、フランスのケースについては、これは直接妻が凍結保存されていた精子を 相続の形で受け取ったのではなくて、妻にはフランスではその当時、今はどうか知りま せんけれど、相続権がなかったんです。それで、両親が相続権を持っていまして、両親 が施設から精子を取り出しまして、それをお嫁さんに渡して人工授精で子どもをつくっ たというケースでございました。それまで配偶子の所有者といいますか、提供者が死亡 した後には、そういうことはやらないというのが一般的だったんですけれども、フラン スではそれをやった。しかも、そういう形で図らずも妻には相続権がないということが わかって、私には大変興味深かった事件でございました。  もう一つは、ことしの4月20日の、NHKの深夜番組の「地球法廷」というので、 オーストラリアにごく最近、リプロダクションに関する統一法ができたということなん ですが、それは御存じでしょうか。私はそれを見まして、インターネットで探したんで すけど、わからなかったんですけれども、そういう法律ができたのであれば、事務局の 方で御入手いただきたい。ほかの方でどなたかお持ちの方、石井先生、お持ちではない ですか。 ○石井(美)委員  はい。 ○矢内原委員  今までオーストラリアは州によって違っていたのですが、それを一緒にしたというこ とですか。 ○中谷委員長  一緒にした。統一的なものだというので、今までビクトリア州とかいろいろありまし たでしょう。北部12州とかというのがあった。そういうのではなくて、統一的なものが できたという、深夜番組の報道ですから、それが本当かどうか確認のしようがないもの ですから、もしあればと思いました。 ○吉村委員  一つ、先生に確認したいのですが、AIDの判例の2例のケースですけれども、裁判 所はドナー精子を提供した者が父親であるとは絶対言ってないんですね。夫婦であった 離婚しても離婚してなくても、要するにAIDを受けた夫婦の父親が、父親であるとい うことも言っていないんですか。 ○石井(美)委員  親権の前提としては、夫の同意を得て人工授精が行われた場合には、人工授精子は嫡 出推定の及ぶ嫡出子であると解するのが相当であると言っております。初めて裁判所が 明確に言ったという意味を法律家としてはどう評価するかです。 ○石井(ト)委員  それは東京高裁の方の親権の争いで、そういう判断をしたんですか。 ○石井(美)委員  ただ、親権を、父親には結局認めてはいません。 ○吉村委員  東京高裁は、最終的には母親が親権を持つということにしたんですね。 ○石井(美)委員  はい、そうです。 ○吉村委員  ところが父親が親権を持てないということも言ってないということですね。そういう 理解でいいんですね。 ○石井(美)委員  はい。 ○吉村委員  要するに推定できる嫡出子であると。 ○石井(美)委員  嫡出子であると。 ○吉村委員  わかりました。 ○石井(ト)委員  法的に確認された。 ○中谷委員長  それは1つの踏み切りですよね。前は嫡出子推定が機能するかどうかということにつ いて、法的に確認されたかどうかということすら問題だったわけですから、そういう意 味では非常に意味がある。 ○田中委員  特別養子縁組の件ですけど、これは拡大して考えれば、受精卵の胚の提供は子どもを もらうわけですから、同様のものとして考えられないでしょうか。 ○中谷委員長  特別養子縁組というのはまた違いまして、菊田さんが言ったのは実子特例法だったん ですよ。 ○田中委員  特別養子縁組というのは実子になるんでしょう。 ○石井(美)委員  実子同様です。養子ではあります。 ○田中委員  私が言いたいのは、要するに生まれた子どもをもらう夫婦には一滴も血が入ってない ですね。 ○石井(美)委員  はい。 ○田中委員  大きな意味で言えば、受精卵の移植みたいなものですね。 ○石井(美)委員  受精卵の移植が特別養子と同じように考えられないかということはあると思います。 ○田中委員  今、特別養子縁組というのは、生まれてすぐ実子になるんでしょう。裁判所に申し出 れば。 ○中谷委員長  特別養子縁組というのは条件がありまして、6歳未満の子どもについてですよね。 ○石井(美)委員  生まれてすぐというわけにはいかない。 ○田中委員  生まれてすぐでしょう。 ○中谷委員長  違うんです。6カ月はね。 ○石井(美)委員  6カ月の試験養育が必要です。 ○田中委員  それは特別養子縁組と言わないでしょう。 ○中谷委員長  いえ、民法の規定ではそういうふうに言っているんです。先生のおっしゃるのは、藁 の上の養子縁組のことをおっしゃっていらっしゃるんじゃない。 ○田中委員  そうです。私は経験があるんですけれども、特別養子縁組というふうに言われまし た。それは生まれてすぐ、1週間以内でした。 ○石井(美)委員  に、子と引き渡してはいるのだと思います。 ○田中委員  ええ、渡しました。裁判所にも行きましたよ。 ○石井(美)委員  裁判所の判断というか、審判が出るのは6カ月を過ぎないと出ません。 ○田中委員  特別養子縁組制度は大きな意味での受精卵の移植にならないかと。同じようなもので はないかと思うんですけれどもね。 ○石井(美)委員  特別養子というのは、既に生まれた子どもで、親が育てられない子どもに親を与える 制度というふうに説明されています。生殖補助医療の方は、親のために子どもをつくる という点では違うと思います。特別養子ももちろん子どもを望んでいる親がいて、初め て成り立つ制度ですけれども、制度趣旨としては親のいない子どもに親を与える制度で す。 ○吉村委員  ちょっとそのことで聞きたいんですけど、戸籍はどういうふうにして入るんですか。 ○石井(美)委員  一たん子どもだけの戸籍をつくりました上で、実子同様の戸籍がつくられます。普通 の養子縁組の場合には「養子」と書かれる。実親と養親と両方が戸籍に載っています。 特別養子の場合には、養子縁組をした親だけが親として載って、戸籍上はそれだけを見 れば実子と同様です。  「身分事項欄」の記載で特別養子ということはわかりますけれども。 ○加藤委員  よく見るとわかる。 ○石井(美)委員  よく見るとわかる。 ○中谷委員長  ちょっと見たところでは。 ○石井(美)委員  実子と同じです。 ○矢内原委員  ほかの人が見てもわかるわけですね。 ○石井(美)委員  わかりますし、戸籍によって実親をたどることもできます。 ○中谷委員長  実親をたどることができる。 ○石井(美)委員  戸籍と除籍をたどっていけばわかる。ですから、近親婚の禁止は及びます。ただ、法 律上の親子関係は近親婚の禁止以外にはないです。実親子との関係は、普通養子の場合 にはありますけれども。 ○矢内原委員  我々に参考になったんですけど、その1つの大きな理由は、一番最後におっしゃいま した立法の検討事項。これはその前に、これは学会で決めるなり、法で決めるなり、ガ イドライン決めるなり、ともかくこういうものは決めておかなければいけないというふ うに伺ったんですけれども、これを拝見していますと、今の我々ドクター側の質問にあ ったように、本当にガイドラインでこういうものを決めることができるでしょうか。  と申しますのは、このアンケートの中で、どういうふうにしてほしいかという医師に 対する質問の中に、圧倒的に多いのは学会なりがガイドラインをつくって、それにみん なが従うべきだという意見が強いんですね。五、六十%ありました。したがって、こう いうことまで学会のガイドラインにつくって子どもの保護になるかどうかというのは非 常に心配になってきたんですけれども。 ○石井(美)委員  この中のかなりの部分は法によらなければならないことではないかと私自身は思って おりますが、ただ、詳細についてすべてを法で決めることはできないので、ガイドライ ン等にゆだねるということが出てくるのではないかと思います。 ○中谷委員長  そのガイドラインといっても、産婦人科学会に依頼するというのではなくてほかのほ かのちゃんとした機関でそういうものをつくった方がいいのではないかと思います。法 的に決めるのは親子関係を確定するだけでいいのではないか。私個人はそういうふうに 思っております。  もう一つ、伺いたいのは、大阪地裁の12月18日で、夫の了解がないというんで しょう。 ○石井(美)委員  はい。 ○中谷委員長  産婦人科のお医者さんがAIDを実施するのに、配偶者の了解を得ないでやるという ことはあるんですか。 ○吉村委員  ありません。 ○中谷委員長  ありませんでしょう。これは一体どういうことなのか、私、それがとても不思議だっ たんですよ。 ○吉村委員  この訴訟のAIDがいつごろ行われたかという問題点がありますけれども、おくれば せながら出た1997年の会告では、同意がない者にしてはならないということをしっかり 明記してあります。 ○中谷委員長  そうですね。 ○石井(美)委員  本当にAIDだったのかどうかということも夫は疑っています。 ○中谷委員長  不倫。 ○石井(美)委員  不倫をまず疑ったところが出発点です。妻は病院には、自分の夫の精子として持って いってるというふうにも聞きました。「夫の精子です」と持って行けばできるのであれ ば、簡単にAIDができてしまう。 ○田中委員  奥さんしかわからないんですね、実態は。 ○中谷委員長  治療機関がたくさんあるんですよね。幾つも幾つもやって、それで最後の医療機関で やったのが。 ○石井(美)委員  不妊治療していたことは確かです。 ○吉村委員  現実面の産婦人科医として、「AIHです」と言って持ってこられても、本当は夫以 外の精子を用いたAIDになってしまっていることがあり得ますね。それは現実面とし てどうすることもできないですね。御主人の精子であるかどうかなんて判定することな んてできません。本人が言われたらば、それは自分の御主人の精子だと思ってやるしか これはないですよね。 ○中谷委員長  AIHの場合ですと承諾は要らないんですか。 ○吉村委員  AIHの承諾は要りません。 ○中谷委員長  要りませんね。だから、そうするとこれでもよかったわけですね。 ○吉村委員  書面による同意はやっていません。私どものやり方は、御両親を呼んで、あなたの御 主人の場合はこれだけの数ですから、フーナー検査でも子宮の中には精子は入っており ませんと、ですから、人工授精をやられた方がいいですよということは言います。だけ ど、AIHの場合は書面による同意はしていません。 ○田中委員  話が逆行するようなことで恐縮なんですけど、私たちは毎日子どもを欲しいという患 者さんを見ていますと、いろんな方がおられまして、今、吉村先生言われましたように 自分のだんなの精子だと持ってきている精子が違うという経験もあるんですよ。 不妊 の治療を一生懸命、患者さんとか子どもを守ることをやっていますけど、やっている 我々もある程度リスクを負っているというのが現状なんです。確かに夫婦で来られても 免許証見るわけではないですし、自分の妻といって違う人を連れて来る可能性もないこ とはない。そういう中で、あくまでも私たちは患者さんを 100%信じて治療を行ってお りますので常にそういうリスクというのを感じています。 ○中谷委員長 戸籍抄本かなんか持ってくるんですか。 ○田中委員 普通は戸籍見ません。 ○吉村委員 AIDの場合は持ってきますけれども。 ○田中委員 戸籍を持ってきても顔写真ないですしね。 ○吉村委員 そうですね。そこまで言われると確認のしようが確かにないですね。 ○田中委員 車の免許証が一番いいと思うんですね。 ○高橋委員 確かに今のような事例は私も経験しています。AIDで、夫の親が自分のものを提供 したいと言って申し出たケースがあるんです。私は断りましたけれども、ほかのドナー ではなく、夫の父親は最終的には自分の精子で子どもをつくりたい。頑固にそれを主張 する方もいるんですよ。  今、IVFを行っている病院に週2回行っていますけれども、最近は非常にそういう 点は厳格になりました。しかしながら、昔は本人が書類にサインすれば、これはわから ないんです。ちょっと話違いますが、人工中絶も同じです。夫だと言って、別の男が書 いて判を押せば、夫と認めて人工中絶やるのが現実なんです。 ○中谷委員長  でも人工妊娠中絶なら本人の同意があれば、別にそれが成人であればいいわけですよ ね。未成年の場合はちょっと問題がある。 ○石井(美)委員  配偶者の同意が必要です。 ○高橋委員  現行法はだめです。 ○中谷委員長  配偶者の同意が必要ですね。それはこれから考えなければいけないことです。 ○高橋委員  どこまで突っ込んで、どの程度の書類提供をさせればいいかというのは、プライバ シーの問題とも関係してくることもあると思うんです。 ○中谷委員長  そうですね。 ○矢内原委員  今回の場合にも調査で非常に年齢によっていろいろな価値観というか、判定の出し方 が違ってきていますね。2月にヨーロッパへ行っていろいろな国で話を聞いてきたとき に、これは1つの例なんですけれども、パリの出産した子どもたち、その40%は実際に 結婚をしている亭主を持ってない人ということです。我々出生証明書くときに大学とい うこともあるんですが、99%以上はちゃんと御主人の名前が入っている。そういう社会 的な背景も日本とフランスと全く違う。  もっとおもしろいというか、興味ある話題があったのは、スイスあたりはこれから国 民投票で規制を持とうとしている国なんですけれども、そこでも遺伝子診断で親子関係 がすぐわかるわけですね。実際に婚姻されていて、ちゃんと届け出のある何百人かの子 どもと両親の遺伝子を比べたら、産んだのは母親ですからわかりますけれども、その父 親が遺伝的に違うのは18%あったというんです。政府がそれに対して非常に慌てたとい うことです。  今のそういう背景から考えると、立法したときに時代が変わっていきますね。法律を つくるのにすごく時間がかかると。この前やった堕胎法の話が出て、死に法だというよ うなお話もありましたけれども、つくるのに時間がかかって、つくったときには、日本 の社会がある程度そういう感覚に動いてしまって、つまり、今の若い人たちがもっと自 由、自由と言ったらおかしいですけれども、欧米のような広い考え方を婚姻関係に対し て持ったときに簡単に変えていけるものですか、民法は。 ○石井(美)委員  日本の法律は変わらないということで有名で、民法も余り変わりません。 ○中谷委員長  例えばスウェーデンなんかはアンレジスタードマリッジとレジスタード・マリッジが 半々かそのくらいですから、初めから婚姻ということではなくてやりますね、両方全く 同じ。だけど、全く同じに扱うけれども、しかし、条件としては非常に謙抑的といいま すか、体外授精などの場合はごく限定された範囲でしか認めない。 ○矢内原委員  ステーブル・リレーションという日本で言う内縁関係ですか、それの証明の仕方とい うのは、今のパートナーがどうのこうのという証明の仕方と同じなんですけれども、そ れを聞いてみますと、非常に単純なことなんです。例えば、水道料金をどうやって払っ ているかとか、家賃をどういうふうに払っているとか、そういうものの証明で。 ○中谷委員長  住民票みたいな。 ○矢内原委員  住民票みたいなもの。一緒に住んでいる期間を2年間にするか3年間にするか。その 辺のところまで法律は決めているのかどうか。また、決められることなのか。内縁まで 広げようという話は、何回も学会の倫理委員会で出てきている問題なんですけれども、 どうもその辺の証明の仕方がわからないと。  申し上げたいのは、社会がどんどん変わって動いていて、人の心、男女関係自身が変 わっていく中で、どういうふうに、この委員会が物を決めていくときにしていったらい いのか、現状で判定する以外にはないわけですけれども。 ○中谷委員長  例えば、イギリスのコード・オブ・プラクティスなんかだと、婚姻夫婦か3年以上安 定したカップルといいますか、そういうのを同一に扱うというふうになっていますね。 ○矢内原委員  3年が多いですね。 ○辰巳委員  東京で開業しているせいか、やはり事実婚という方が非常に多い。実際、不妊治療受 けている方にも事実婚の方が結構多いんです。でも体外受精のところでストップしてし まう。体外受精は夫婦間でしかできませんから。だから、既に東京あたりではそういう ふうな社会形態が既に始まっているのではない かと考えています。 ○中谷委員長 なかなかいい議論になってまいりましたけれども、皆様いかがでしょうか。はい、ど うぞ。 ○田中委員 さっきの発表で非常にびっくりしたんですが、非配偶者の卵子をもらった場合、子ど もに出自を知る権利があると認める人が多かったですね。隠しておいていいという意見 よりも。同じことをこの前、Bourn Hallの所長が来られたときにお聞きしたのですが、 コードの中には「子どもは自分の出自を知る権利がある」と書いてあるんです。ところ が一方は、「よほどのことがない限りプライバシーを守られるべきだと二通りの解釈が あるようでしたね。  質問したところ、所見は、「いや、これは絶対知らさない」とおっしゃいましたね。 コードにはしっかり書いてあるので、日本でも半分ぐらいの医療の人が「知る権利があ る」というふうに言っている中で、これからAIDだとかこういうものはどうなるんで しょうか。 ○中谷委員長  イギリスの場合は、提供者については、そういう提供を受けて治療を受けたという事 実はわかるけれども、一般的にはだれか特定できないようになっているんです。とにか く1990年法(ヒトの受精と胚研究等に関する法律)ではそういうふうになっているわけ です。しかし、例えば、不妊治療を受けたという者同士が愛人関係になって結婚しよう かということになったときは、例外的に、特別にドナーを特定できるような方法がとら れるというふうになっているようです。  それから、フランスは絶対匿名です。完全匿名。 ○吉村委員  このデータも、不妊治療の患者さんですけれども、実際に非配偶者間の体外受精を受 けた人は本当にいないわけですから、AIDを受けた方も多分この中にはいないでしょ う。私がAIDの統計を2月、3月にとった段階では、AIDを受けて、実際に自分に 子どもができた父親二百何名に統計をとった。そうすると「出自を知らせますか」とい った質問に対して、知らせるといった人は2人ぐらいで「絶対に知らせるべきではな い」という人が圧倒的大多数です。1人は「将来になったら考える」、「知らせてもよ い」という意見でありまして、大多数、99%以上の方は、「自分の子どもにはAIDだ と知らせない」とこれが現実です。  この意識調査を見る場合も、一般論としてはどうですかと聞いた質問と、あなただっ たらどうしますかという質問と、あなたが実際にやった、自分がAIDを受けた人、あ るいは非配偶者間の体外受精を受けた人がどう答えるのかというのは、明らかに答えは 違ってくるだろうと思うんですね。 ○辰巳委員  これは大分のセントルカの宇都宮先生から頼まれたんですけれども、AIDによって 生まれた子どもの意識調査というのはあるんでしょうか。AIDによって生まれた子ど もが、自分がAIDと知ったときにどういうふうに思っているのかということに 関して。それに関して、インターネットの「地球法廷」のところでいろいろ検索してみ まして、2件ぐらいあったそうなんですが、その2つとも自分の親を知れないというの はどんなにつらいことかということを切々と訴えている。だから、子どものことを考え るならばやはり出自を知る権利は保証すべきである。生まれてきた子どもにとっては自 分のルーツを知りたいというのはすごい切実な望みであるというふうなことを言ってお られました。 ○田中委員  申すべきでしょう。 ○加藤委員  本当の親と思っても18%ぐらい危ない。 ○矢内原委員  田中先生の質問に続けて、それでは子どもの福祉というものを第一に、お宅のアクト は考えているにもかかわらず、知らせないというのは福祉に反するのではないかという 質問を私はしたんですけれども、そのときに彼が言ったのは「知らせないことも1つの 福祉である」というような回答をしていましたですね。今のに関連をしているのでつけ 足します。 ○加藤委員  知らせないというのと、記録を残しておいて、場合によっては調べられるというのと は随分違うので、今まで日本でやっていたみたいに知らせない、記録も残していないと いうのと……。 ○吉村委員  記録は最近残し出したんです。 ○加藤委員  残し始めたんですか。 ○吉村委員  残して出自を知る権利だけは一応確保しているというか、そういう段階です。 ○加藤委員  特に遺伝子治療やDNA鑑定が問題になってきたときに、それが法律的にあいまいに されちゃうのは非常に困るんじゃないでしょうか。  この問題で、子どもが「知らない方がいい」という意見の中には、精子の提供者が親 としての法的な地位を持たないということが必ずしも確立されていないという不安感も あるのではないでしょうか。 ○吉村委員  その父親が。 ○加藤委員  ええ。精子の提供者が、いかなる意味でも父親としての権利を行使することはないと いうことは法律的にある程度不安定性さがあるわけです、現行法では。 ○中谷委員長  日本の場合は。 ○加藤委員  むしろ精子の提供者の法的地位を限定することをはっきり確立することも1つの大事 な項目なのではないでしょうか。 ○中谷委員長  それと関連いたしまして、先ほど石井美智子委員から、裁判所における親決定の決定 があると。あれは代理母が産んだ子についてなんですね。代理母が産んだ子について、 代理母契約というのが一応有効とされていますけれども、違反があったときには強制で きないことになっておりますね。それでもとにかく代理母が、いいとか悪いとかいって も子どもが生まれたと。その子どもの親をどうするかということについては、90年法の 30条だったと思いますけれども、裁判所で親決定の判決をやるという。 ○加藤委員  その場合には代理母が違法であっても、その場合の親の決定の判断枠はつくっていく 必要があるわけですね。 ○中谷委員長  はい。それをつけるということですね。いろいろ建設的ないい意見が出てまいりまし たけれども、ほかにいかがでしょうか。 ○加藤委員  石井美智子先生に伺いたいんですけれども、死後の出生、夫が死んでしまった後で子 どもを生むとか、場合によっては母親ですらもあり得ることだと思うんですけれども、 それについては法律上の判断が示されたケースはあるんですか。それをちゃんとした親 子関係で。 ○中谷委員長  国会で問題になったときに民事局の人の説明があったんですね、日本で。 ○加藤委員  日本でなくて、世界的に見て。 ○石井(美)委員  先ほどの中谷先生も説明されましたが、フランスもイギリスもアメリカも裁判所の結 論的には人工授精を認めるという判断です。イギリスの例はイギリス国内ではだめだけ れども、イギリス外だったらよいということになったと思います。 ○中谷委員長  生まれたんでしょうね、きっと。 ○石井(美)委員  裁判所はいずれも結論的には妻の意思を認めています。ただ、アメリカの、先妻の子 と争った事件では、夫も遺言で妻が産むことを認めるようなことを書いていたというこ とがあるようですけれども、イギリスの場合の方は夫の意思がわからないことが問題に なりました。ただ、外国では独身でもできるところがあるので、夫の死後であろうと関 係ないとも言えます。精子提供者がたまたま死んだ夫だったと考える可能性もあると思 います。ただ、父親がその結果、だれになっているかというところは、わかりません。 ○吉村委員  もっと簡単な例で、例えば、日本人夫婦で、夫が妊娠の3カ月で亡くなってしまった という場合は。 ○中谷委員長  それは大丈夫です。 ○吉村委員  それは大丈夫。それは父親として。 ○石井(美)委員  夫の死亡後300日以内に生まれれば摘出子と推定、胎児は生まれたとみなすという ことで相続権も認められますから。 ○加藤委員  男は自分が自覚症状も何もないところで、自分の子どもができちゃう可能性があるわ けですよね。女でもそうかもしれませんけれどもね。原因となる行為について責任が成 立しないというのは非常に倫理的に困ると思うんですけれどもね。 ○石井(美)委員  精子を保存したのですから。でも、植物人間状態で勝手に採取したというのは全く知 らないということですね。 ○中谷委員長  アメリカで最近ありましたね。 ○吉村委員  日本人で、例えば、御主人が亡くなって精子がとってあるので、人工授精をしてくだ さいと奥さんが言われた場合には、日本の現行法ていうとどうなるんですか。 ○石井(美)委員  通常夫が死んだ後に人工授精を行った場合には嫡出推定期間内には生まれないと思う ので、嫡出子は無理だと思います。 ○矢内原委員  死亡診断書が出た段階で夫婦の関係はなくなるわけですね。学会でそういう問い合わ せがありましたですね。 ○石井(美)委員  ただ、認知は死後3年以内であれば請求できますので、非嫡出子の可能性はないわけ ではない。 ○矢内原委員  だれが認知するんですか。 ○石井(美)委員  子どもの方から、裁判所に死後認知の訴訟を起こす。 ○矢内原委員  子どもからですか。 ○石井(美)委員  子どもからです。 ○矢内原委員  3歳の子どもがですか。 ○中谷委員長  法定代理人がいますから。 ○石井(美)委員  裁判所が認めるかどうかわかりませんけれども、論理的には可能性はあるだろうと思 います。 ○吉村委員  3歳までですか。 ○中谷委員長  夫の死後3年以内。 ○矢内原委員  さっきの億万長者の凍結の胚の遺産相続の話、非常におもしろく、いい例えとして伺 ったんですけれども、民法というのは法律をつくっていく段階で、そういう判例が幾つ かないといけないんですか。外国なんかはそういう例がすごく多いですね。私の聞いた ところでは。日本の民法、法律をつくっていくときに判例が先になりますか。 ○石井(美)委員  日本は、法律そのものを外国にならってつくっている。明治のときも、戦後も事実よ りも先行した法律をつくってきたといえます。確かに紛争があるから解決しなくてはい けないし、時代を受けて改正案などは出てくる。非嫡出子の相続分とか有責配偶者から の離婚請求を認めるというのは判例を受けて改正という話にはなっていますけれども、 必ずしも判例の積み重ねが法律になるというものでもない。 ○中谷委員長  判例といっても下級審のはだめですからね。 ○矢内原委員  親子鑑別ですけど、近い将来、この前もお話をしましたけれども、妊娠中に、その子 どもとその父親と母親とは遺伝的にはある程度かなりの確率わかるんですね。もし、こ ういうものが表に出て一般化したときには、自信のない父親というか夫はその鑑定を要 求する可能性が出てきますね。そのときに遺伝的に自分の子どもでないということが妊 娠中にわかったときには、これはもちろん否認をするケースが出てきますね。そういう ことを妊娠中してはいけないのだという決めをつくることはできないんですか。 ○石井(美)委員  そもそも意思に反して強制できるかということが問題なんですね。先ほど紹介したよ うな推定が及ぶか及ばないかという東京高裁の事件などでは、父親側はDNA鑑定を要 求したのだけれども、子ども側というか母親側が拒否した結果、DNA鑑定は行われな いで判決が出ているのです。だから裁判になっても今のところ強制という手続、それが いいかどうかは別として、ないと思います。妊娠中はそもそもさせるべきではないとい う考えはもちろんあると思います。 ○矢内原委員  これは山縣先生とも、もっと詳しく調べましょうということになったのですが、今度 の調査の中でドナーが「姉妹、兄弟であるべきである」というのは何%かいるんです ね。ところが「匿名であるべきだ」という、同じ集団が答えているんですね。それを強 く述べている。全く相反することなんですけれども、実際にこういう今の問題は多分匿 名性ということが子どもにとって福祉につながるか、つながらないかという議論だと思 うんですが、これはどういうような形でこの解析をしていったらいいか。よろしいです か、山縣先生に御意見伺って。 ○中谷委員長  どうぞ。 ○矢内原委員  解析のしようがありますか。 ○山縣分担研究者  個々にだれがどういうふうに答えたかというのがわかりますので、そういうクロスの 集計することによって、ある程度わかるのだろうと思いますが、数が非常に少ないので そのことがどういう意味を持つのかというのは、また、別の問題だと思います。 ○石井(美)委員  今のに関連しては、我が国では養子でも血縁関係にある者が養子として選ばれること は多いですから、精子や卵子をもらう場合でも何らかのつながりのある人をという希望 は多いのではないかとは推測はされます。 ○吉村委員  日本では。 ○石井(美)委員  はい。 ○吉村委員  もう一つだけ、先生に確認しておきたいんですが、私、法律のことはよくわからない ので。例えば、御主人が1年前に亡くなりました。精子が保存してあります。妻からや ってくださいと言われました。それは医療側は拒否をしてもいいわけですね。法律違反 にはならない。 ○石井(美)委員  はい。 ○吉村委員  御主人が亡くなっているからできませんと拒否をして。 ○石井(美)委員  人工授精について。 ○加藤委員  だんなさんの許可証を持って来いと言えばいいんじゃないでしょうかね。 ○石井(美)委員  今の会告は夫婦であることになっています。 ○吉村委員  人工授精は会告はないですから。 ○矢内原委員  AIHで。 ○吉村委員  AIHです。 ○矢内原委員  採取したときにとっている、それは。 ○石井(美)委員  婚姻している配偶者。 ○吉村委員  だから拡大解釈すれば、体外受精に関しては夫婦でありませんので、亡くなっていま すから、できませんということは一応今の会告に従って。AIHの場合にはできません ということは言っても、民法とかそういうものに対して違反するものではない。 ○石井(美)委員  現に夫ではないですよね、その精子は。 ○吉村委員  そうですね。 ○石井(美)委員  だから法律的にAIHとは言えないのではないでしょうか。 ○吉村委員  そういう解釈でいいんですか。 ○石井(美)委員  そういうことが1つと、もう一つは、そもそもお医者さんとしては、会告とか何かと は別に自己の良心に従って、先ほど「生殖補助医療が果たして医療か」ということに関 連しますけれども、自己の良心に反するとしたら拒否できるとは私は思います。 ○加藤委員  判例で認められていますか。医師法には、「正当な理由なく拒否してはならない」と しか書いてないわけでしょう。特に生殖医療の場合も自分の信念でだめだという方あり ますけれども、特に輸血拒否などの場合に、医師の側の良心に従った治療拒否というの は認めないとお医者さんかわいそうだという気もするんですけれども、何かそういう判 例は全然ないんですか。 ○中谷委員長  外国だと医師の自由意思に基づいて、自分の信念あるいは宗教上の立場から「拒否で きるものとする」という条文が大体入っていますけれども、日本の場合はないですね。 ○吉村委員  よく言えば、間違っているにしても間違ってないにしろ、その本人にしてみれば、大 多数の人が間違っていると判断したとしても、良心に従ってやっていると思ってますか ら。だから、そういうものを保障するというか、そういうことはないんじゃないです か。 ○石井(美)委員  本人が良心に従っているとすれば、それは拒否できないと思うんですが、自己の良心 に、倫理として、自分の反するという判断であれば、それは認められるのではないかと 私は考えるんですが、現行法で根拠があるかと言われると。 ○中谷委員長  現行法で根拠はない。 ○石井(美)委員  先ほど言いましたように、医療としての特殊性ということは言えると思っており ます。 ○中谷委員長  その場合に正当な理由に基づきということになるかどうかということでしょう。結局 突き詰めて言えば。 ○石井(ト)委員  確認したいのですけど、現行法では、夫がいつ死んだかということだと思いますが、 同居して6カ月以上、その後御主人さんが亡くなって、たまたま精子を保存していた と。そういうことが可能ですよね。先程、3年後は認知できるということになると、そ の前も可能だということになりますが、法律的にはどうなんでしょうか。 ○石井(美)委員  できるどうかはわからないのですが、論理的に可能性はあるということは申し上げま した。 ○石井(ト)委員  論理的に法的な可能性があるかということをまず知りたいんですね。あとは倫理的な 問題はこれはいろんな考え方がありますから何とも言えないのですが、法的にどこまで だったら可能かということです。それが3年以内だったら可能になるのか、同居の6カ 月以上というのは何となく覚えているんですが、今、認知が3年という話が出たもので すから、3年というのはどこから出たのかなと思います。 ○石井(美)委員  婚姻後というのは嫡出推定です。婚姻後 200日がたっていないと夫が父親であると推 定はされないのです。夫が死んでいる場合もありますが、死んでから生まれるのであっ て、懐胎そのものは生きているうちにあるという前提ですね。 認知も、本来は民法が前提としているのは、夫が生きているうちに懐胎した子につい て、たまたま親子関係を確定する認知の訴えが夫が死んだ後に起こされるということを 予定しているのであって、夫が死んだ後で懐胎されるということを前提として死後認知 ということを考えているわけではないので、たまたま死んだ後になってから、父親がわ かった、そういう場合でもできるということにすぎません。死んだ後で懐胎してもでき ますよということを言っているのではないですから、それを使えるかといえば疑問では あります。ただ、子どもにとって、父親がいないよりはいた方がいいという判断からす れば、死後認知と認めるという可能性も現行法解釈としてあり得るかというだけであっ て、もともと無理な話ではあると思います。 ○矢内原委員 今、離婚をした場合に、女性は何カ月間。 ○石井(美)委員 6カ月、待婚期間があります。 ○矢内原委員 その法律はまだ生きていますか。 ○石井(美)委員 はい。改正後 100日に短縮するという話だったんです。 ○矢内原委員 仮に、例えば、IVFにしろ何にせよ、ドナーという問題を広く解釈してとったとき に、その辺の法律から変えなくてもいいんですか。要するにドナーをほかからもらった ときに、何カ月間は離婚をした後、そういう行為をしてはいけないとか、つまり、ある 女性が離婚をしますね。 ○加藤委員  今までの法律で全部自然に生まれる場合しか考えてないんですね。 ○矢内原委員  それを今度そういう人工操作が加わったときには、6カ月というものを撤回しないと できない場合が出てきますね。それは現行法に縛られてしまう。 ○吉村委員  先生、離婚する前にそれは非配偶者間の体外受精してないとできないんじゃないです か。現実面としてそういうことは起こりえないと私は思いますけど、現行法のままでい いと思います。 ○矢内原委員  それはだめでしょう。ある夫婦がいて、離婚をします。そのある女性が、生殖補助医 療を受けなければ子どもができないとしますね。6カ月間はできないということになり ますね。 ○吉村委員  そんなことないです。 ○矢内原委員  それは大丈夫? ○吉村委員  生まれるのが6カ月でしょう。 ○石井(美)委員 婚姻が6カ月できない。 ○矢内原委員  婚姻はできる。 ○石井(美)委員 婚姻しないと6カ月間は不妊治療ができないということですか。 ○矢内原委員  可能性はないですかと。 ○石井(美)委員 現行でも高齢で懐胎の可能性がないとかいうときは6カ月間待たなくていいというよ うな運用があると聞いております。 ○中谷委員長  まだ、いろいろ問題はありそうでございますが、よろしゅうございましょうか、次に 移らせていただいて。よろしゅうございますか。  それでは、次に議事の第3番目に掲げてあります「精子、卵子、受精卵の提供につい て」に移りたいと思います。前回、出されましたこの問題に対する各委員の意見をまと めた資料を修正したものが、今回資料4として出されておりますので、これについて事 務局から御説明をいただきたいと思います。どうぞよろしく。 ○武田主査  資料4「精子、卵子、受精卵の提供についての各委員の意見」という資料をごらんい ただきたいと思います。こちらでございますが、前々回、第3回の委員会の際に先生た ちに出していただきまして机上配付資料として配付させていただいたものを、その後、 2月末日まで修正の御意見を受け付けておりまして、修正した上で、再度正式な資料と して出させていただいた資料でございます。前回、本年2月末日までというような、回 収の期間を書いた方がいいということで左上の方に書かせていただいております。  この資料でございますが「AID」が1ページから2ページ目の真ん中辺。「精子提 供による体外受精」が2ページ目の真ん中から。「卵子提供の体外受精」が3ページ目 の下から。5ページ目の真ん中ちょっと上から「受精卵の提供」ということで、各技術 について「技術の是非(認める・認めない)とする理由」。「認めるとした場合」の条 件、「出生時の法的地位」の問題、それから、「国等の関与のあり方」ということで、 各委員の御意見を匿名でまとめさせておるものでございます。  ただ、2名、まだ御意見をいただいてない先生がございまして、また、お寄せいただ ければ、この場で御意見がある場合には追加していただきたく思います。  以上でございます。 ○中谷委員長  読み上げていただいた方がわかりやすくないですか。 ○武田主査  そういたしますか。 ○中谷委員長  よろしいですか、別に。 ○武田主査  前々回出したものとほぼ同じでございますので、皆様、内容の方は大体頭の方に入ら れているかなと思っているんですが、いかがでしょうか。  では、簡単に御説明させていただきますと、「AID」でございますが、すべての先 生が「認める」または「条件付きで認める」とされております。「認める」とする理由 でございますが、いろいろ御意見が出されております。  「認める」とした場合の条件といたしましてはいろいろございますが、「不妊に対す る治療として」という御意見が多いと思います。 「対象者」でございますが、「婚姻届の有無に関係なく挙児を希望する夫婦」という 方と「法律婚の配偶者間に限定」すべきという方がいるようでございます。  「実施方法」については「依頼者は匿名」であるべきとか、「学会の会告に従うべ き」とかいろいろ御意見が出されています。  「実施施設」については「登録制又は許可制(認可制)」といった御意見が多いよう でございます。  「商業利用」でございますが、「認められない」とする御意見が多い一方、「精子銀 行などはあってもよい」というような御意見もございます。  「秘密の保護」については、「プライバシーは保護されるべき」という御意見が多い 一方、「出自を知る権利について検討する必要がある」という御意見がございます。  それから「出生時の法的地位」の問題でございますが、「嫡出推定の条文を使うもの でいい」という御意見がある一方、これは推定規定なので「民法を改正する必要がある のではないか」というような御意見がございます。  「国の関与のあり方」でございますが、「法律等をつくった方がいい」という御意見 がある一方、「国は余り関与せずに学会等のガイドラインでいくべき」というような御 意見がございます。  次に「精子提供による体外受精」でございますが、これにつきましては「認める」又 は「条件付きで認める」という御意見が多い一方、「認めない」とする方もござい ます。 理由については、「AIDを認めているとの整合性」ということを認める理由とされ る方がある一方、「卵子提供との関係で認めないとした方がいい」というような御意見 もございます。  「利用目的」ですと、「対象者」、「実施方法」については大体AIDのものと同じ ような御意見持っておる方がほとんどでございます。  3ページ目、「卵子提供」でございますが、「認める」、「当面認めない」、「認め ない」という方がございまして、割合といたしましては、これにつきましては「認め る」とする方よりも、「当面認めない」、「認めない」とする方が若干多いような感じ でございます。  「理由」については、「認める」という方は、「望んでいる方がいらっしゃる」とい うものがある一方で、「認めない」とする理由については、侵襲の度合いが大きいです とか、そういった御意見が多くございます。  「条件」については、ほかの記述と変わってございません。  それから、「受精卵の提供」でございますが、これについても「認める」、「当面認 めない」、「認めない」と三様の御意見がございまして、これも「当面認めない」、 「認めない」とする方の方がちょっと多いような感じでございます。  簡単に申し上げると以上のような感じでございます。 ○中谷委員長  どうもありがとうございました。何か、つけ加えて御発言があれば、いかがでしょう か。 ○田中委員  専門委員のアンケートを読みましたが、その内容に驚いております。 ○中谷委員長  例えば、どういう。 ○田中委員  卵子提供、受精卵提供を「認める」という御意見の方は私以外にはおられないのでは と予想しておりましたところ、意外にも「条件付きで認める」という方を含めますと委 員のうちの半分近くの方が「認める」という結果であったからです。この結果は専門委 員のうち、3名が女性、4名が法律関係者ということに関係しているのではないでしょ うか。 ○石井(美)委員  女性は否定的ですね。 ○田中委員  先ほどのアンケートとちょっと違うような気がしませんか。 ○矢内原委員  逆ですね。女性は自分の遺伝子をとにかく残したいということが非常に強くアンケー トに出ている。 ○加藤委員  遺伝子を残したいという意識は女性の方が強い。 ○矢内原委員  それは自分のものが欲しいという、精子はどうでもいい。どうでもいいというとおか しいですけど。 ○加藤委員  法律や倫理の考えは、たとえ少数者であっても、人間としての基本的な要求であれば 権利を認めなければならないという考え方強いと思うんですね。そういうことを普及す ることが望ましいかどうかということは別問題で。 ○田中委員  そうですね。禁止するより認めた方がいいという考え方もありますね。 ○加藤委員  嫌な人は自分で拒否すればいいので、だから当枠、枠としては許容しておいて、それ で不適切だというふうに判断する人は権利を多くすればいいんだと。だから権利だけは 認めるべきだという考え方が強いと思います、私なんかの場合には。 ○田中委員  よくわかりました。 ○吉村委員  これからのやり方ですけれども、何らかの結論を出していく操作に移っていかなくて はいけないと思うので、例えばAIDは一番初め比較的議論しやすいと思います。だか ら、一つひとつ問題点がどういうところにあって、やっていった方がよろしいのではな いかなと私は思うんですけれども、どうでしょうか。AIDから今問題となっているの はどうか。 ○加藤委員  AID、この間、ドイツからの報告でも非常に数がどんどん減っていって、顕微授精 の方は増えているという話がありましたけれども、実際に日本でもそういった傾向があ るのでしょうか。 ○吉村委員  AIDに関しましては、数は少し減っていますけれども、AIDをしなくてはいけな い症例はやはり厳然とあるわけです。精子細胞といいますか、生殖細胞のない方が3割 から4割ぐらいを占めていますので、少なくとも3割から4割ぐらいはどうしてもAI Dが必要となります。 ○加藤委員  審議しても空振りということにはならないんですね。 ○吉村委員  そういうことですね。顕微授精がいかにうまくできるようになったとしても、そうい う症例は厳然と存在するとお考えくださっていいと思います。 ○中谷委員長  顕微授精は随分増えていますよね。 ○吉村委員  顕微授精は増えていますが、顕微授精7回やりました、でもできませんという現実面 で、そういう御依頼ももちろんあります。 ○中谷委員長  ただ、顕微授精はイギリスの例ですと、かなり障害のある子が生まれる確率が高いと いうことで、今日では大分問題になっていますが、日本では顕微授精についてそういう 危機意識はないんですね。 ○吉村委員  そういうのはないと思います。 ○中谷委員長  それが大分違うところだと思いますけれども。 ○辰巳委員  顕微授精もAIDも選択できるといった場合に、AIDの方をお願いします。顕微授 精はまだ心配ですと、先のことがわからないから。やはりAIDをしてくださいという ふうな方もおられます。 ○矢内原委員  同じドナーということですか、そうではなくて。 ○辰巳委員  非常に乏精子症が強い場合、どちらも選択できるといった場合に、私は顕微授精では なくてAIDの方をお願いしたいという方もおられます。 ○石井(美)委員  産科婦人科の会告は顕微授精で懐胎の可能性がある場合をAIDの適応事例と認めて いるのですか、認めてないのですか。 ○吉村委員  認めておりません。ですから、うちなんかでも、昔は顕微授精をやってもできなかっ た方は、ほかで顕微授精やられて、AIDをやってくださいと言った場合にはAIDを すぐ昔はやっていたんですが、あの会告をでてからは、うちでも顕微授精をもう一度し てくださいということは言います。そういうふうにちょっと変わってきましたけれども 現実面として、辰巳先生がおっしゃったような患者さんもお見えになるわけです。顕微 授精は私は嫌ですとおっしゃる患者さんもいるわけですけれども、現実の今日産婦の会 告を正しく読むと、それも顕微授精をしなくてはいけないというふうに読めますね。た だ、患者さんはAIDを希望される方もお見えになることは事実です。 ○中谷委員長  顕微授精だと、もともと欠陥のある精子を使うんだからという意識があるんですか ね。 ○吉村委員  ということもありますし、やはり自分に排卵誘発剤を使わなくちゃいけないという女 性側の訴えもあります。大体がうちへ来られるときには三、四回顕微授精をされている 方に、もう一回顕微授精やりましょうと言うと、もうやめてくださいという方もお見え になることは事実です。それは女性側の訴えの方が強いですね。 ○高橋委員  また、反対に何回も顕微授精を続けてほしいという方もいます。 ○吉村委員 それはお見えになります。自分の子どもがいいとおっしゃる方ももちろんお見えにな ります。その方が多いと私は思います。 ○高橋委員  多いですね。 ○中谷委員長  どうもありがとうございました。ほか、よろしゅうございましょうか。 ○石井(美)委員  吉村先生おっしゃった今後の進め方はどうなるのでしょうか。 ○吉村委員  今後の進め方はどうしたらいいのでしょうか。 ○中谷委員長  スピードアップしていきませんと、なかなか結論に達しませんから、答申案ができま せんから、なるべく精力的に効率よく審議を進めていかないといけないだろうと思いま すけれども。 ○石井(美)委員  この委員会の意識が一般とかなりずれているということは意識調査の結果を相当考慮 しなくてはいけないということになりますね。 ○中谷委員長  そうですね。 ○高橋委員  調査の結果を十分に読んで、それで考えが変わるというか、全面的に変わることはな いでしょうけれども、一部訂正することはあり得ると思うんですね。先ほどの結果で、 一般の人がドクターよりもそちらの方を認めていいというような意味の回答を出してま すね。そうすると、こういう方々の意識調査の結果を踏まえた上で再度検討してもよろ しいのではないかと思ったんです。ですから、十分に読んでみて、ある程度、自分の考 えをまとめてみたいなと思うんです。 ○中谷委員長  意識調査の結果と、きょういただいた各委員の意見とそれを総合しまして、今後どう いうふうに進めるかということを検討する必要があろうと思いますけれども、事務局の 方でいかがでしょうか。 ○母子保健課長  特に今後の進め方について具体的な案を持っているわけではないのですが、それぞれ の技術について、まず初めに、この専門委員会としては認めていく方向なのか、あるい はそうでない方向なのかというところから議論をしていただいて、その中でいろんな意 見が出てくると思うんですね。こういう場合だけは認めるべきだとか、あるいはそれで も絶対認めない方もいらっしゃる。認めない方が多数であれば、あるいは条件付きで認 めるという場合にはこういうケースであったというふうな、最後のまとめは全員のコン センサスが得られるものについてはコンセンサスでもいいと思いますが、そうでないも のは各論併記の形にならざるを得ないのではないかなと思います。  仮に「認めない」といった場合には、基本的にはそれほど議論する必要はないと思う んですね。理由がいろいろ出てくるのでしょうけれども。「認める」といった場合には どういう前提が必要なのか。登録とかそういったものはほとんど共通していると思うん ですね。第三者の精子、卵子の場合には、登録制度が要るのだとかいう場合には、それ はそれでまた1つ、論点を別のところで整理すればいいのだと思いますが、個々の技術 に直結して、この技術の場合はこういう前提がないとだめですよとか、そこら辺を1つ 1つの技術について御議論をしていただければいいのかなと思っております。  私どもでは、一応次回あたりで、ある程度、この先生方の御意見ときょうのアンケー ト調査の結果等を踏まえて、1つ論点のたたき台みたいなものをお示しさせていただい た方が議論が進むのではないかと考えております。もちろんそれは議論を進めるための 単なる1つのたたき台であって、それに委員の先生方は全然拘束される必要は何もあり ませんし、その方向で議論を持っていただく必要もないと思いますが、ただ、個々の先 生方の御意見の、先ほど多数がどうだ、少数がどうだというのがありましたけれども、 また、きょうのアンケートの結果で意見が少し変わってくる先生もいらっしゃるかもし れませんが、そういったものを踏まえた整理を私どもでさせていただければと思ってお ります。  きょうはできれば、AIDをはじめとして、それぞれ「認める」、「認めない」の立 場から、少し御意見を残りの時間やっていただけると、我々が次回にたたかれ台みたい なものを出しやすくなるかなと思っています。 ○中谷委員長  ただいまの小田課長のおっしゃるとおりでございまして、まず、この意識調査の結果 について私どもも十分理解した上で、かつ各委員の意見をも総合して次回までに考えて くると。その点についてたたき台を出してくださるとおっしゃいますので、そのたたき 台に対する意見をまたそこではっきりするというふうにしていただいた方がいいかと思 いますので、その点に関して、ここでまずはこういう意見を出しておきたいとおっしゃ る委員もおられると思いますので、どうぞ、積極的に御発言いただきたいと思います。 いかがでしょうか、石井トク委員。 ○石井(ト)委員  確認したいのですが、私が一番危惧したのは、一般の方たちの知識は余りよくわかっ ていないのではないかということです。そのことによって、内容はかなり違ってくるの ではないかということです。  76ページの「多変量解析」で、Q2(知識)に関しては「関連なし」としていますが 個々の、生殖補助医療技術をも従属変数にしているわけですね。更に細かいところで知 識との関連はどうなのか。有意差だけでなく、傾向についても、それぞれの項目にわた って知識とのマッチングはどうだったのか、多変量解析はどうだったのか知りたいと思 います。 ○山縣分担研究者 報告書のときには具体的な数値をきちんと出したいと思います。今、簡単に御説明し ますと、おのおのの生殖補助医療技術に対して、AIDならAIDを従属変数として、 これらを説明変数として全部やって、基本的にほとんど全部同じ結果であることが 1つ。 あとは、単純集計しますと、知識と生殖補助医療技術を一般的に認めるかどうかとい うことに関しては関連があります。知識がある方の方がこういった技術は認めるという ふうに回答されています。 多変量解析をすると、例えば、知識は年齢にも関係がありますし、男女差にも関係が ありますので、そういったもので調整された結果としては関連がなくなってしまうとい うのがこの結果でございます。  それが1つなんですが、知識がある、なしが、このアンケートで十分にとらえられた かどうかということがむしろ大切だと思うんです。私が予測しておりましたのは、Q1 (性に関する意識)というのは関連があって、このアンケート項目をつけましたら、そ のとおりになりました。知識に関しても、石井先生が言われるように、関係があると思 ったのでこれをつけたんですが、関係がなかったということは、1つの原因としては、 この設問自体に問題があったということが考えられると。  それから、知識があってもなくても同じ結果だというのは、このアンケートの分析か らははかり知れないような、ファクターがここにあるためにこういう結果が出たのでは ないかというふうに考えられるのではないかと思っています。 ○母子保健課長  この知識というのは、Q2のところですね。 ○山縣分担研究者 Q2です。 ○母子保健課長  Q2は、5ページですが、ほとんどの方が「知っているか」、「聞いたことはある」 の中に入ってしまうから、それで区分しても差はまず出ないだろうと考えます。これが 「知っている」、3分の1、「聞いたことはある」、3分の1、「知らない」、3分の 1ぐらいだと統計的にはある程度出てくるかもしれないですね。ただ、これだとなかな か、仮に差があったとしてもほとんど出ないのではないでしょうか。マジョリティーは 「知っている」あるいは「聞いたことはある」ですものね。 ○山縣分担研究者  そうなんです。そういう分析をやった場合もだめですし、全部知っている人とそうで ない人を分けた分析に関しては同じように出ましたので、今のような解析もできますし やはりこれそのものの聞き方に問題がある。その両方の点があるのではないかと思って おります。 ○母子保健課長  調査の結果を云々する必要はないのかもしれませんが、例えば、「代理母」、「借り 腹」、これは説明が質問用紙にたくさん書いてあるので、「知っている」が54%とか41 %と高くなっている可能性がありますね。私は母子保健課に来るまでは「代理母」、 「借り腹」の差はわかりませんでした。我々みたいな職業についている者でも、それほ ど明確に認識していないのですが、一般の人が片方を5割以上知っているというふうな 回答をされているということも考慮に入れて、御判断いただければよろしいのではない かなという気がします。ただ、それでも、こういう第三者の精子、卵子の提供がいい、 悪いということに関しては、一般の人は一般の人の知識なりに1つの判断を下しててい るというのも御参考にしていただかなければいけないのかなという気はしています。 ○山縣分担研究者  今、課長が言われたことに関してちょっとだけ追加させていただきます。今、最後に 言われたことは全くそのとおりで、ここに説明があるというのはとても大きいファク ターで、私はこの調査に関して、一般国民用に関しては、このアンケート調査そのもの の信頼性を別のところでやっております。つまり、1つは、再現性がちゃんとあるかど うかという検査なんですが、それに関してはかなり再現性があるので、それはいいだろ うと思っているのですが、ここの部分に関しては、最初は説明なしで知っているかどう かを聞くと知らない人がやはり多いんです。だけど、これをつけた瞬間に変わるという ことは、やはりこの説明のところが非常に大きかったということは反省の1つとしてご ざいます。 ○高橋委員  ですから、これはあくまで参考であって、私は「知っています」といっても、どこま で知ってるか疑問です。産婦人科の医者だって「借り腹」と「代理母」との区別を知ら ない医師も実際にいます。このデータはこのデータとして素直に受け取り、大変参考に なると思っています。 ○石井(美)委員  違う質問ですが、医師の方が否定的な回答が多いということについて、説明はあるの ですか。 ○矢内原委員  何に対する否定的、全体的に。 ○石井(美)委員  全体に。 ○吉村委員  小児科医は特に。 ○石井(美)委員  小児科は子どもを考えるというのはわかりますが。 ○加藤委員  ほかのアンケートでも、産婦人科医と小児科医は大抵対照的になりますね。 ○吉村委員  そうですね。 ○石井(美)委員  産婦人科医も一般の人よりは否定的である。 ○矢内原委員  1つは「安全性」ということに関して、生殖医療やっている専門家はかなり安全性に 対して肯定、「安全である」というところにマルをつけている方が多いんですね。とこ ろが一般の産婦人科医または小児科医の場合には、安全性に対してまだ疑問。例えば、 先ほどの顕微授精に関しての安全性に対しても疑問を持っている方がおられるというこ とで、あと全体に対する安全性にまだとろうとしても不安を持っている方もおられると いうことではないかと思います。 ○山縣分担研究者  この分析の結果からだけ言いますと、一般の方と医師とで「認めない」理由が、先ほ ど話したみたいにかなり違うんです。どこが医師の場合に違うかといいますと、一般の 患者さんに関して反対の理由は「親子関係が不自然になる」というのが圧倒的に多いで すし、一般の方は「妊娠はあくまでも自然に」、これでほとんど占めるのですが、医師 の場合は1つは「卵子を提供する女性の健康問題」をかなり挙げられます。それから 「遺産相続のトラブルの問題」、つまり法的な問題を挙げられます。それから、もう一 つは「商業的に利用される」というような、一般の方が余り考えていないようなかなり 専門的な、まさに知っているかどうかとい部分で反対されている方が多いために「認め ない」ということが多くなっているのではないかというふうに分析できるのだと思いま す。そういう意味でも、さっきの知識という意味が、知識がそこまでないということが わかるのだろうと思います。 ○田中委員  これは登録医に郵送したときには、厚生省の封筒で送っているんですか。 ○山縣分担研究者  研究班の。 ○田中委員  というのは、私たちも矢内原先生からこの様なアンケートをいただいた時には、これ は無記名だけど、回答がだれかわかるように細工しているのではないかと思うことがあ ります。そうすると登録医ほど慎重になるんです。だから、総論ではほとんど9割ぐら いはAIDやってよろしいと答えていて、代理母や卵子提供になると肯定率がガクッと 落ちているでしょう。これは多分自分たちのことをわかられるのではないかという危険 な気持ちを反映してるのではないでしょうか。だから、ついマルしたいところがペケに いっちゃうというのはあると思うんですね。私もはそういうことがありました。多分ど こかに番号振ってあるんだとみな言っているんです。封筒のどこかに番号振っていて、 だれだかわかるんだと。 ○加藤委員  あぶり出す。 ○田中委員  実際はもうちょっと肯定の率が上がると思います。 ○山縣分担研究者  そういうファクターはあって、あぶり出しとかという方法も当然あるんですが、今回 はそれは面倒くさいのでしなかった。もう一つは、消印はほぼ不可能なんですよ。札幌 とかそういうのが押してあればいいですけど、例えば「田富」とかいっても、それは全 国に幾つもあって、それでやるのは無理なので、私も実は地域差みたいのを一般国民の 方で見たいなと思って、消印に対して後で全部番号つけた。これは現実的には不可能で ございました。 ○矢内原委員   1,000ぐらいの統計をやりますと封筒をとる人と作業が分かれますから、だれがだれ だかわかりません。面倒くさい。わかってもどうということないですけれども、わから ない。  皆さんにお願いがあるんですけれども、このアンケートの調査のときに、いわゆるグ レーゾーンで、「条件が満たせば認める」というところが非常に多くのものをとってい る。ところが「認める」、「認めない」ということになりますと、「認めない」という ことの方が極めて多いんです。この「条件付きで認めてよい」ということは、この条件 がつかない現在では認められないというふうに理解するのか。または条件が認められれ ば認めてよいというふうに、認める方向に近いのか、解釈の仕方が難しいと思うん です。これはこういうときに「認める」という項目を挙げることが非常にたくさんあっ たし、例えば、患者さんが要求すればということに関しては非常に弱いですから、そう いう誘導的な質問になってしまうので、「認められない理由」というところに条件付き のをかぶせてこの質問をつくったわけなんです。  ところがその条件付けということをどういうふうに理解をされるか。どういうふうに この条件が必要なのかということを教えていただきたいということを考えながら、この 表を見ていただきたいと思います。 ○中谷委員長  一般的に申しますと、こういう意識調査、アンケート調査では「イエス」、 「ノー」。強いて言えば、何とかで「イエス」、強いて言えば「ノー」を2つ組み合わ せてやっていますね。それで言えば、条件付きで「イエス」と言えば「イエス」の方に 入れてもいいのではないかという気もしますけれども、それは皆さん方はどうお考えに なるのかわかりませんけれども、難しいんですね。いろんな場合の条件がさまざま出て きますからそれが難しいんですね。 ○矢内原委員  これは一般に調査をされているいろいろな先生方にお伺いしたいんですけれども、さ っき加藤委員が言われたみたいに、一般的にはそういうことがあったら、そういうこと できるようにしておいたらどうだろうかと。だけど、私は嫌だよというのは、これは国 民性ですか、それとも一般的にそうなんですか。これを見ますと「あなたの場合どうで すか」と「ノー」というのが多いですね。ところが「一般論として伺います」というと 非常に「イエス」の幅が増えてくる。こういう調査のそういう聞き方の場合にはほとん どがそうなんですか。それとも日本の国民性ですか。 ○加藤委員  調査の方法にもよるのではないでしょうか。例えば「末期がんの場合、告知を受けま すか」というアンケートがあって、大体新聞社の場合には非常に広範な人から意見を聞 くわけですね。そうするとほとんど末期がんの経験もないし、近親者に経験もない人が 答えるわけで、そのときには「告知を受けます」というのが物すごく多いわけですよ。 実際に家族にそういう経験を持った人の意見だと全然違ってきちゃうと思うんですね。 ですから当事者の場合とそうでない場合では随分違う。  日本の場合に、一般に「権利として認めるかどうか」ということについて、権利とし て認める場合には、例えば、非常に不自然な親子関係をもたらすから自分は反対だとい うときには、権利としては認めもらって、自分は不自然な親子関係を形成するから嫌だ と言って拒否すればいいわけですよね。ところが日本の場合には、そういうのを 「ノー」に答えさせるようなアンケートの形態が多いと思うんです。ですから権利とし て認めるかどうかという枠で質問をしていないというところがいろいろ問題とあると思 います。 ○矢内原委員  この今回の場合には、権利として認めるというと……。 ○加藤委員  どっちなのか、いろんなアンケートをもらったときも判断に困るんですね。私はいつ も、私が世界大統領であったならばどう答えるか、そういう観点から答えていますけれ ども。 ○石井(ト)委員  権利として答えさせなかったことが先生は問題だったという指摘をされましたが、私 はそれに対して若干の考えを持っています。 ○加藤委員  ふだん議論が権利としての議論をしてないということですね。 ○石井(ト)委員  もう一つ重要なことは、私どもは健康レベルによって判断はかなり変化すると、それ を大前提にしているわけです。ですから当事者でなければ、普通の一般論として答えま すね。しかし、いざ自分の立場になりますと、当事者とは全然違うわけです。ですから 立場による相違を十分に配慮した形で解釈しないといけないと思っています。 ○田中委員  我々の属している産婦人科学会にはガイドラインというのがあるんですが、あのガイ ドラインは学会の立場で書いたものだと私は思うんです。先ほど先生も言われたことに 私も非常に共鳴します。患者さんの立場で考えたガイドラインではないように思えるこ とがあります。専門家の立場から患者さんのために考えたというふうにとれるんですけ れども、本当に患者さんの立場に立ったガイドラインかというとそうでもないような気 がするんです。患者さん一人ひとりに治療を受ける権利があるということを認めるとい うことが忘れられているように思えます。これからいろんな先端の医療が出てきたとき に、反対意見は非常に聞こえるんです。が実際治療を受けたいと思っている人の声が現 実となるとなかなか出てこないということが現実にあります。実際治療が必要としてい る患者さんの権利を認めてあげていくことは非常に大事なことではないかと思います。 ○中谷委員長  ありがとうございました。  私はガイドラインは産婦人科学会のガイドラインではなくて、もっと包括的なといい ますか、総括的なといいますか、そういうガイドラインが欲しいと思っています。だか ら、この委員会でも提言することがあるとすれば、子どもの法的な地位の確立とガイド ラインをどうするかという点についての何か提案みたいなものができればいいのかなと 今のところは。 ○加藤委員  法の改正と学会レベルのガイドラインを両方見込んで、どちらに対しても、だから、 こういう路線から学会のガイドラインをつくってください、こういう路線から法の改正 をお願いしますというような、両方に対してアピールできるようなものができればいい のではないでしょうか。 ○中谷委員長  丸山委員いかがですか。 ○丸山委員  ちょっとお尋ねしたいのですが、患者の方相手の調査なんですけど、不妊であるとい うのはほぼ確実なんでしょうか。 ○矢内原委員  これは不妊の施設に来られた「最初の2人の患者さん」というふうにしておりますの で。 ○丸山委員  不妊の施設に来られて。 ○矢内原委員  不妊の治療を受けられた。 ○丸山委員  10組に1組の不妊である方なんですね。 ○加藤委員  それにしては差が少ないという感じがするんじゃないですか、ほかの人と。 ○丸山委員  それでして、御自身でAIDなんか利用したいという人が少ないのがちょっと今も指 摘ありましたけど、びっくりしますね。 ○辰巳委員  例えば、AIHや体外受精をする、そういったレベルでもやはりみんなすごい抵抗が あるんですね、1つ治療を上げるに従って。だから、AIHや体外受精を自分で受ける ことになるとは思っていない人が、第三者のということになると全然考えられないとい うことになるのではないでしょうか。 ○丸山委員  AIHだともうちょっと高い値になるということでしょうか。ここは高い値のものが ないのでちょっとどういう理由なのか不安ですね。 ○辰巳委員 このAIDとか、そういうふうなところまで必要な人は不妊患者さんの中でもすごく 少ないんですね。だから、それは自分たち受けている不妊治療の流れの中に考えてない のではないでしょうか。 ○田中委員  頻度としては少ないと思います。AIDのことを常に頭に入れている患者さんは。 ○吉村委員  少ないです。 100人に1人もいないです。 ○北島課長補佐  アンケート用紙の紫色の紙が日産婦の体外受精登録機関の方へのアンケートなんです けれども、ここの表紙のところに、「不妊治療のために来院した再来患者の最初の2人 にお渡しいただき」と書いてありますので、これが一応患者さんの定義づけになってお ります。 ○山縣分担研究者  単純集計の25ページ、患者さんの設問29の(5)になるわけですが、その上のところ に、今、実際にどういうふうな治療を受けているかということを入れておりますので、 先生方が言われたように、いわゆる排卵誘発剤、AIH、昨今体外受精ももちろん夫婦 間のという、そういう方がほとんど。それからAIDが過去よりも現在が減っていると いうのが、先ほど吉村先生が言われたとおりでございまして、顕微授精が増えているの もこういったところでわかるかなという気がします。 ○矢内原委員  これは流れがよくわかりますね。 ○山縣分担研究者  ですから、もしも必要であれば、今、実際にこういう治療を受けていらっしゃる方の クロス集計を出すことは可能です。ただ、数が非常に少ないですが。 ○矢内原委員  体外受精の頻度は多いですね。 ○石井(ト)委員  自由記載の記録は全部とってあるのでしょうか。 ○山縣分担研究者  今やっているところでございます。特に患者さんに関してはほとんどの方がかなり書 いていらっしゃいますので。 ○石井(ト)委員  それはいただくわけにいきませんか。 ○山縣分担研究者  最終的な報告書のときには何らかの形でお示しできればと思っております。現在のと ころは、「認めない理由」の「その他」のところの自由記載に関してはほぼ終わってお りますので、そこに関しては今回の机上資料のもので入っております。  それから、最後の部分に関して、これはとても大変な作業なんですが、かなりの方が 書いてらっしゃいますので、今、それを1つひとつ読んで入力をしているところでござ います。 ○高橋委員  登録医用の回答の中で、あなたは「登録している」、「登録していない」のところで 「登録していない」が4施設あるんですね。登録医にアンケート出しておいて「登録し てない」と、こういうことが実際あるのでしょうか。というのは、IVFの器具を取り 扱うメーカーの方々は、実際にIVFをやっている施設は今の登録施設より約 1.5倍か ら2倍近くあると言っているのです。そうすると学会の登録というのは、一体どの程度 まで実態を把握しているのか。私たち学会員はこれでいいのですけれども、外部の関係 者の方々はそういうように見ているので、このような点についてもシビアに見ていかな ければならないのではないか。 ○矢内原委員  昨年までは登録施設、いわゆる登録制ですね。今度の調査で 1.7%登録していないの に体外受精を行っているところがあるということがわかったわけですね。これは調べよ うが実際ないんですね。昨年決められたことは、登録しているところはそれを公表して よろしいかということを1つ質問に出したのと、それからもう一つは、それが今までは ボランティアベースでの結果の報告義務というのがなくて、ボランティアベースでやっ ていたんですけれども、今度は非常に詳細に報告をしていただくことになりました。し たがいましてこういうものがどんどん減っていくと思います。  ただ、実際に登録してないのに、自分のところでやっているというのは、それはいか んということもないわけで、これだけいるという事実はわかっただけでも非常に驚きで もあります。 ○高橋委員  「登録医」宛にアンケート出しているのに、実際は私は登録してませんでしたという ところを、学会の方では登録医として取り扱っているのでしょう。本人は登録してない わけですから、その違いがやはり4というのはちょっとおかしいなと思ったんです。 ○中谷委員長  学会としては登録しなければならないことになっていますでしょう。 ○高橋委員  そうです。 ○中谷委員長  登録しないでやっている施設に対しても、何か学会としての対応はないんですか。 ○吉村委員  登録してない施設を把握できない。 ○矢内原委員  これで把握できた。 ○北島課長補佐  名簿が平成10年3月31日現在という名簿を使用させていただいていますので、1年く らいのタイムラグは確かにございますので。 ○中谷委員長  五十何施設か増えていますものね。 ○北島課長補佐  やめてしまったところもあるかもしれません。 ○母子保健課長  登録しても必ずずっと登録し続けるわけではないですよね。 ○吉村委員  そうです。 ○母子保健課長  ですからやめていらっしゃる方と、39ページを見ると、その他の産婦人科の医療機関 で20%が「登録している」と書いてあるわけですね。ですから、そこら辺はタイムラグ が相当あるのではないかと思われます。 ○高橋委員  医療器械店とかそのほかの関係の方々が実際に登録していないところに納入している 数が結構あるのですよ。 ○矢内原委員  産婦人科医師じゃなくて? ○高橋委員 産婦人科医であるけれども、実際登録してないで、このIVFをやっているのが実際 は 1.5倍から倍ぐらいあるというのが器具を納入しているメーカーの方々の言っている ことなのです。これは調べようがないかもしれませんけれども、その事実、こういう現 実であるということを認識した上で物を考えていく必要があります。また、医療機械と かそういう人たちの協力を得ればよいのですが、企業秘密に入るから明かすわけにはい きませんと言うんです。実際はそういうような現実になっているということをただお話 したのです。 ○中谷委員長 このアンケート調査でいろんな副産物が出てきましたね。非常にそういう意味でもい い調査だったと思いますけれども。 ○石井(美)委員  今、先生がおっしゃった登録していないで行っているということ等も、ここでは把握 した上で議論しなくてはいけないのではないでしょうか。 ○中谷委員長  把握しようがないでしょう。 ○石井(美)委員  その機械屋さんに、どこと聞くわけにはいきませんけれども、どれぐらいの数を出し ているとか、そういうことは調べられるのではないんですか。 ○高橋委員  それはある程度まではできると思いますね。 ○吉村委員  それは難しいでしょうね。例えば、メデウムを使いますよね。そのメデウム屋さんは たくさんありますね。だから 1.5倍というふうに先生言われたんですけれども、そんな にあるとは思えませんが。 ○辰巳委員  症例数的な比率としてはうんと小さいじゃないでしょうか。体外受精を受けている患 者さんは結構いろいろ回ってこられるわけで、どこでしましたということを聞いてみる と大体知っているところばかりです。それは大体登録しているところばかりで、余り聞 いた事のないところで体外受精を受けたという話はないですから、受けている患者さん の症例数からいうとすごく少ない数ではないかと思います。 ○中谷委員長 きょうは大変いろいろな話題が提供されまして、大変有意義な委員会だったと思いま すが、そろそろ時間も少なくなってまいりましたので、事務局の方で何か御連絡事項、 その他おありでしたら。 ○武田主査 今回、特に御意見というか、議論に入れませんでしたが、「精子、卵子、受精卵の提 供」というテーマ。それから、前々回の「多胎減数手術」について議論したわけでござ いますが、それについて、事務局において次回までに報告書のたたき台とするため、先 ほど課長の方から言いましたが、この委員会での議論を整理したいと思っております。 このため委員の皆様で、今回と前々回の議論で言い足りなかったような点がございまし たら、5月20日(木曜日)までに事務局の方に御提出いただければと思います。 ○母子保健課長  本当はきょう時間があれば、御議論いただきたかったんですが、例えばAIDは皆さ んが「認める」あるいは「条件付きで認める」とこうなっていますが、その中にやはり 出生時の法的地位とか国の関与等で法律の話が必ず出てくるわけですね。現行制度で認 めていいという御意見なのかどうか。現在、学会では認めていますけれども、子どもの 地位等は今のままでいいのか。あるいはそういったものは法的に整備された段階で初め て認めるべきなのか、その辺のところは、ほとんど全会一致で認めるというような技術 についてもかなり大きな問題としてはあるのかなという気がしています。  それから、もう一つは、これはほかの臓器移植などでも非常に問題になっているわけ ですが、ここで仮にこの中の幾つかの技術を認めない、あるいは法的に禁止すべきだと いう議論になった場合、外国に行って実施するものはどういうふうに考えたらいいのか と。これは多分禁止はできないんじゃないかなという気がしますが。 ○加藤委員  外国人が日本に来てやる場合もありますね。 ○母子保健課長  ものによっては可能性はあるでしょう。 ○矢内原委員  イギリスはそうだと言っていましたね。他国から随分来られるそうです。 ○加藤委員  例えば、外国人が来て、精子の提供をするにしても、同国同一人種でなくては嫌だと 言って、人種についての選択権を主張した場合にそれは拒否できるかどうかというよう な問題ありますね。選択一般を禁止するとなると、それは認められないので、どんな顔 色の子どもが生まれるかわからないということになるんだけれども、例えば、そういう 場合にも拒否するのかどうか。 ○母子保健課長  そこら辺を含めて御議論いただければと思います。外国に行ってやるということにな りますと、お金がある人はできるが、お金がない人はできない。貧富の差によって得ら れるメリットが違ってくるというところについて、私は個人的には非常に疑問を感じて いるんですけれども。 ○矢内原委員  それは通常のIVFもそうじゃないですか、現行では。 ○中谷委員長 子どもの法的な地位の問題も非常に問題がありますので、今までやってきたように、 民法 772条の1項でいいのか、それも私法学会としては公認していないわけですけれど も、事実上はそうなっている。それでいいのか、それとももっときちんとしなければな らないのか、いろんな問題が出てきますね。だから、ある場合には借り腹でも代理母で も、どちらでも認めなければならない場合があるだろうと思いますけれども、その場合 の子どもの法的な地位をどうするか、いろいろ問題がありますので、次回までにお考え いただいて、御意見を述べていただければ大変いいんじゃないかと思います。 ○武田主査  次回でございますけれども、6月22日(火曜日)13時半から、場所の方はまだ決まっ てございませんが、決まり次第、御連絡申し上げたいと思います。 ○母子保健課長  それから、毎回、専門委員会が終わった後に、私どもで委員会にかわって、事務局と して記者クラブとのレクをさせていただいているわけですが、きょうはこの調査結果が 出ましたものですから、それからマスコミの関心が非常に高いものですから、調査を直 接担当していただいた山縣先生と主任研究者の矢内原先生に記者会見に同席していただ きたいと思っております。これは研究報告の発表ということでお願いしたいと思ってい ます。 ○中谷委員長  はい。石井美智子委員はいいですか。 ○母子保健課長  委員会の報告というよりも、研究結果、調査をやった結果の発表ということで同席を お願いしたいと思っておりますので、よろしくお願いします。 ○中谷委員長  どうぞよろしく。  それでは、皆様どうもありがとうございました。  問い合わせ先   所 属:児童家庭局母子保健課   担当者:北島 智子・武田 康祐   内 線:3173・3179