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医療保険福祉審議会 第50回制度企画部会議事要旨


1.日時及び場所

平成11年5月26日(水)17:00〜19:10
厚生省特別第1会議室

2.出席した委員等

金平、井形、糸氏、大宅、塩野谷、高木、高秀、鴇田、堀田、若杉の各委員
岡本、鳴神の各専門委員

3.議題

(1) 高齢者医療制度等の見直しについて
(2) その他

4.審議の概要

1)はじめに高秀委員より、前回配布された全国市長会・全国町村会・国保中央会の三団体の緊急意見書「医療保険制度の抜本改革に関する緊急意見」の趣旨説明があり、金平部会長より、資料131「試算の前提としてのモデルに係る主な特色と論点」の項目に沿った審議が一巡した後に三団体からヒアリングを実施する旨が提案されて、部会で了解された。
 次に事務局より、「高齢者の負担(患者一部負担及び保険料)のあり方に関する参考資料」について説明があり、その後、発言及び質疑応答が行われたが、その概要は以下のとおりである。

(若杉委員)

○ 資料4ページの「4.1人当たり医療費の老若比率の推移」で、老若の格差が昭和58年度から5倍以上となっており、欧米と比較してもかなり高いが、なぜ5倍にもなり、5倍から下がらないのか伺いたい。
(事務局 川尻老人保健福祉局企画官)
○ 3月10日の部会の資料121「高齢者医療に関する参考資料」の1ページ「1.老人医療費の特性」の1人当たり診療費の若人との比較で、平成8年度は入院が7.4倍、外来が4.3倍となっている。
○ 診療費を構成する3要素の比較では、受診率、1件当たり受診日数、1日当たり診療費が、それぞれ、入院で6.2倍、1.3倍、0.9倍、外来で2.5倍、1.5倍、1.1倍と、受診率と1件当たり受診日数が高い。
○ 老若比率の推移で考えると、老人医療費を無料化した昭和48年度の受診率は入院4.1倍、外来2.1倍と低かったが、昭和58年度の老人保健法施行までに上昇してきた。上昇の理由については、医師数、病床数の増加などもあるが、一部負担がゼロになったことが相当影響していたと思われる。

(鴇田委員)

○ 受診率が高くなったことは、老人医療費無料化政策の負の遺産である。
○ 平成9年9月の制度改正で窓口での自己負担率が3ポイント近く上がったことにより受診率が下がったが、どういう病気で下がったかが問題で、重症なら問題があるが、軽症なら重大な事態を招いたことにならない。高齢者の自己負担率を10%にしたら受診率にどういう影響を与えるか、データがあったら示してほしい。

(事務局 太皷地保険局調査課長)

○ 制度改正による受診行動への影響について、詳しいことは不明だが、概ね負担増によって受診率は低下した。
○ 老人の場合はあまり変わらなかった。レセプト1件当たりの日数は下がったので、軽い病気の人の受診回数抑制があったと思われる。疾病別の具体的な結果については、統計が作成されていないが、今後、分析することとしている。

(井形委員)

○ 社会的入院の費用は介護保険に移行すると予想しているが、社会的入院と見ている医療費は高齢者医療費の何%位か概数を教えてほしい。

(事務局 井口老人保健福祉局企画課長)

○ 現在、関係の審議会で整理しているが、市町村の積み上げを基とした新しいベースの試算が夏頃出る予定なので、現時点で具体的数字は示せない。
○ 古い数字では、平成7年度価格で全体の介護費用約4兆円のうち半分位が医療費と見込まれているが、改めて数字を見直しているので、もう少しお待ちいただきたい。

(近藤老人保健福祉局長)

○ 社会的入院とは一般病院に6か月以上入院している方で、約10万人と申し上げていたが、徐々に減少し今では約6〜7万人となっている。
○ 介護保険制度が施行されても、一挙に社会的入院が消えるわけではないので、費用を一度に見込むことは出来ない。

(井形委員)

○ 高齢者の医療費が高額になる理由の一つに、高齢者医療が包括的医療でなく若人と同じような専門別医療であることがあると思う。高齢者は普通3〜4つ病気があり、受療した場合に別々に薬をもらっている状況である。
○ 最初のアセスメントで全体の状況を見て何が重要かを視点においた高齢者医療を、私の勤務していた中部病院では、高齢者総合外来と包括医療病棟というモデル事業として行っているが、このような総合医療体系を推進することで高齢者医療はかなり是正されると思う。

(糸氏委員)

○ 高齢者医療をコントロールする条件として、大きく3つ考えられる。一点目は医療から介護を分離することで、今まで後期高齢者の寝たきり者の受け皿がなく、やむを得ず医療が抱えてきた一面があったが、介護保険が施行されることにより介護分がなくなるので、受け皿づくりを早くスタートさせることが望まれる。
○ 二点目は終末期医療のあり方で、患者が亡くなる2〜3か月前から医療費が急激に上がる傾向にあるが、本人、家族との相談の中で過剰な医療が行われている部分があり、老人医療費を引き上げている原因でもあるので、難しい問題ではあるが時間をかけても解決するべき。
○ 三点目は負担のあり方で、高齢者の負担については、負担できる人は出来るだけ負担してもよいと思うが、負担できない人の対策も考えるべき。

(若杉委員)

○ 年金の問題でもよく言われているが、資料12ページ「12.高齢者の生活実態」の可処分所得の比較では、高齢者と現役世代では格差がなく、寧ろ年金受給者に税金控除面の恩典があり、30〜40代の子供を抱える世帯に比べ生活は楽だと言われている。
○ 一部負担のあり方については、11月の意見書にもあるように若年者と同程度の負担か介護保険との整合性を踏まえ1割程度とするのが妥当と考える。
○ 薬価制度改革の重要な柱の一つとして薬価に注目した定率負担があり、1月の意見書でも質と価格による選択と競争を促進する観点から議論があった。薬剤定率負担を導入する必要性は高齢者も若人も変わらないと考えるが、厚生省はどう考えているのか伺いたい。

(事務局 柴田保険局企画課長)

○ 薬剤定率負担の問題は、薬剤制度改革の一環として、先の当部会でも御報告したような経過を経て、現在、与党で議論されているところ。厚生省としては、与党における議論を踏まえて検討していくこととなるので、現時点では確定的なことは申し上げられないことを御理解願いたい。
○ 薬の給付に着目した定率負担の考え方については、質と価格による選択の促進やコスト意識を踏まえた薬剤使用の適正化、薬剤費の効率化という観点から検討すべきものと理解している。このような考え方からすれば、基本的には、高齢者についても若人と同じ考え方が当てはまると思われる。
○ 一方、高齢者の負担については、現行の定額負担の見直しも含め、世代間の給付と負担の公平の観点、高齢者の負担能力の観点、あるいは介護保険との整合性というような観点から総合的に考えていく問題だと思う。
○ したがって、高齢者の薬剤定率負担については、薬価制度改革の一環という面と、高齢者の患者負担のあり方という面の両面から総合的に検討する必要があると考えている。

(高木委員)

○ 11月の意見書以降どのような議論となっているのか方向性が今一つ不明。A案、B案で具体的に議論を進めるのかと思えば、総論に戻ったような議論になっている印象を受ける。各論で議論した方が生産的だと思う。

(事務局 井口老人保健福祉局企画課長)

○ 意見書後の流れとしては、財政試算に続いて、さらに意見の集約をしていただけるよう、具体的な制度設計にあたって検討すべき事項を改めて論点ごとに整理し、これに沿って現在まで御議論いただいている。

(堀田委員)

○ 若年と高齢者で一部負担を変える考え方がわからない。同じでよいと思う。
○ 基本的に自分の生涯について自分で責任を持つことが大原則で、若い頃から年老いた場合を考え資産を蓄えておく等準備するべきだと思う。
○ 高齢者になると稼げなくなり不測の事態も生ずるので、いろいろ補う配慮は必要だと思うが、資産面では年金制度で配慮されているし、他に手厚くしてしまうと自分で生計を立てるという基礎の部分を否定してしまうことになる。基本の考え方を貫かないと若い人も納得しないし、人間としての自立した生き方を甘やかしたり無責任にしてしまうことが懸念される。

(井形委員)

○ 高齢者の可処分所得は現役世代と同じ位あるというが、お金が余ったから蓄えたというのではなく、老後に不安があるため爪に火を灯すようにして蓄えたものだと思う。
○ 大阪大の大森教授は、「介護保険で公的に保障され、老後の心配がなくなれば、老後の蓄えが消費に回りGDPを押し上げ景気回復につながる。」と朝日新聞で発表したが、妥当な説だと思う。
○ 高齢者はこれだけお金を持っているから負担してもいいというのではなく、この貯蓄は将来減っていくという予想を持つべきで、現に公的に面倒をみてくれるスウェーデンでは貯蓄があまりないと聞いている。
○ 介護保険が普及してくれば貯蓄はやがて減るに違いないし、今のデータで何年か先のことを決めるのはどうかと思う。

(塩野谷委員)

○ 11月の意見書にもあるが、多くの委員は自己負担について若年者と同じ程度か介護保険との整合性に配慮して1割という意見であった。
○ 制度モデルAを推す人も、高齢者の制度を別建てにする点に特徴があるのならば、制度と切り離し、多数意見である自己負担1割でもよいと思う。
○ 資料の24ページ「18.高齢者の患者一部負担・保険料負担に関する国際比較」で、諸外国が老若の区別なしとしていることはすばらしい。
○ 社会連帯を世代間で実施するにあたっては、病気になり医療費が多くかかることは仕方ないが、出来ることは平等にしようが当たり前である。老人が気の毒な存在という神話は既に崩壊している。
○ 今の老人が戦後50年の経済成長の成果を享受している反面、若年は暗い将来に直面している。高齢者と若年者との全体の均衡関係を、過去、将来に向けて考えれば、かかるものは仕方ないがやれることは平等に負担するということになるのではないかと思う。

(若杉委員)

○ 制度モデルBでは、高齢者の窓口自己負担は1割、保険料率は若人と同じ率で年金にかけると提案している。

(鴇田委員)

○ 私の提案する制度モデルA′は、窓口自己負担は10%、残り90%のうち10%を保険料としている。
○ 事務局の高齢者の生活実態の説明では、収入の面では少しばらつきはあるものの殆ど差がなく、資産の面でも住宅、貯蓄額で高齢者が恵まれていることがわかった。
○ しかし、アメリカのように殆ど自己責任で賄う国でも65歳以上はメディケアで対応しているように、世代間の公平から考えると、寧ろ低所得者には配慮しながら窓口10%、保険料10%位が妥当ではないか。

(糸氏委員)

○ 高齢者も若い人と同じように扱うというのも一つの正論であるが、一時は無料の時もあったのに、それが一度に若い人と同じ負担というのは国民が納得するのか疑問を感じる。
○ 自己責任でやらせるという負担の問題よりも、医療の中身をいかに効率的にやるかが重要だと思う。
○ 自己負担を5%から10%に引き上げたとしても、財政的には大きな影響にはならず、それならば、高齢者は病気になると長期化、重症化しやすく、資産等もすぐ現金化できない状況を考慮して、定率化に伴う負担増の不安を取り除いた方がよいのではないか。
○ 制度モデルAの自己負担の考え方は、元気な間は若人並みの負担で頑張ってもらい、病気が長期化、重症化しやすい年齢になったら不安を取り除くという趣旨で負担を軽くするということである。

(若杉委員)

○ 我々の主張は、高齢者の自己負担を若人と同じ2割、3割にしろとは言ってなく、70歳までは現行制度、70歳以上は定率1割で、74歳まで現行制度とする糸氏委員の案より優しい部分がある。

(糸氏委員)

○ 定率か定額かの議論では、ちょっとしたことで致命的な病気に陥りやすい老人の医療特性からみると、定率の場合は定額に比べ負担が何倍にもなるので、患者の安心の立場から配慮する必要がある。

(堀田委員)

○ 国民の納得が得られるかについて、欲得で考えたら自己負担は少ない甘い方がいいということになってしまう。人間の生き方の基本から納得してもらうことが第一だと思う。
○ 自己負担のあり方の問題については、制度モデルA、Bのどちらかにするという議論に必ずしも直接関係しないと認識している。

(塩野谷委員)

○ 糸氏委員の言う国民の納得というのが国会の場での決定ということならば、部会で案を一つに絞らなくてもいいのかもしれないが、この部会で一つの結論に達するのが我々の義務だと思うし、並行意見となった場合は意見集約に失敗したことになる。
○ 意見の違う人がいた場合に民主的結論に達する方法として、(1)投票、(2)討議を尽くして結論、(3)バーゲニングによる結論、と3つあると政治学の本にあるが、我々は討議を通じて結論を得たいと考えている。糸氏委員が2割でも3割でもいいと言うなら、なぜ意見の一致が出来ないのか聞きたい。
○ 糸氏委員が2割、3割の自己負担は影響がないと言われたが、2割、3割にした場合で何が変わり何が変わらないのか伺いたい。

(事務局 太皷地保険局調査課長)

○ 平成9年9月の制度改正で一番影響が大きかった人が被用者保険の本人で、自己負担1割が2割プラス薬剤負担となったが、受診率の低下は大きかったので、2〜3割の大幅な引き上げを行った場合、被用者保険本人と同じような受診抑制が起こると考える。
○ 高齢者の場合は薬剤負担は増えたが、外来1か月1,020円が500円×最高4回までと変更されことに、受診のかかり方を工夫し1月当たりの通院回数を上手に減らしたことで対応したので、受診率は下がらなかった。

(糸氏委員)

○ 過去に何回か自己負担の引き上げが試みられ、引き上げられた直後は受診抑制は起きたが、いずれも半年〜1年で元に戻った。
○ 平成9年9月の制度改正の場合、改正前からの経済不況の長期化と4月の消費税の引き上げがあったために厳しい受診抑制となった。
○ 自己負担の引き上げについては、患者負担で受診抑制すること自体医療上好ましいと思われないし、財政的にも一時的な効果しか出ないのであれば他の方法を模索するべきと思う。

(塩野谷委員)

○ 自己負担の引き上げについては、財政的な影響を重視しているのでなく、世代間の連帯の中で高齢者も1割位負担してもいいと若い人にメッセージを送ることが重要で、そこにシンボリックな意味があると考える。

(金平部会長)

○ 世代間の負担の問題を含めいろいろな問題があるが、最終的には意見集約していきたい。事務局より次回以降の進め方について説明願いたい。

(事務局 井口老人保健福祉局企画課長)

○ これまで、資料131「試算の前提としての制度モデルに係る主な特色と論点」の、具体的な制度設計にあたって検討すべき事項の各論点ごとに順次議論していただいている。
○ 議論については再度確認していただいているような部分もあるが、制度モデルA、Bを考える際に論議を尽くさないと、どちらがいいか選択しにくいような点を中心に論点を設けている。
○ 次回6月4日は、残った7番目の論点の「医療保険各保険者の安定的運営について」、具体的には制度間における負担の調整という問題が残っているので御議論願いたい。
○ その次の6月11日には、全国市長会・全国町村会・国保中央会の三団体と調整してヒアリングを行うとともに、合せて、近々専門委員会においてヘルス関係の報告書がまとまるので御審議をお願いしたい。その後については、状況を見ながら全体的な討議をしていただくような段取りで進んでいったらどうかと考えている。


2)最後に、金平部会長より、次回は6月4日(金)午後2時から別館8階共用第23会議室において、高齢者医療制度等の見直しについて審議する旨発言があり、閉会した。


照会先
担当者 老人保健福祉局 企画課 課長補佐 宮本 直樹 内線3917


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