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医療保険福祉審議会 第49回制度企画部会議事要旨


1.日時及び場所

平成11年5月17日(月)15:00〜17:04
厚生省特別第1会議室

2.出席した委員等

金平、井形、糸氏、塩野谷、鴇田、堀田、若杉の各委員
岡本、鳴神の各専門委員

3.議題

(1) 高齢者医療制度等の見直しについて
(2) その他

4.審議の概要

1)はじめに事務局より、「高齢者医療制度の運営主体のあり方に関する参考資料」について説明があり、その後、発言及び質疑応答が行われたが、その概要は以下のとおりである。

(金平部会長)

○ 審議に入る前に、高秀委員から申し出があり、私の判断で全国市長会・全国町村会・国保中央会の緊急意見書を配布したが、この取扱いについては後日相談させてもらう。
○ 本日のテーマである「新たに創設される制度の運営主体」についての意見を伺いたい。

(塩野谷委員)

○ 制度モデルAではどこの地方公共団体も引き受けず、制度モデルBでは大きな民間団体を作ることは現実としてできないと思うが、各案の提案者の説明を伺いたい。

(若杉委員)

○ 我々が提案している制度モデルBの場合、被用者保険を共同して単一の民営の保険者で運営したいと考えている。民間組織が運営主体となるには、資料「高齢者医療制度の運営主体のあり方に関する参考資料」20ページにもあるが、年金事務と切り離しての運営は難しいので、年金事務の民営化なども含め、保険者事務の円滑性を考えていかざるを得ない。

(糸氏委員)

○ 我々が提案している制度モデルAについては、今後の少子高齢化社会に移行する中で、医療の側面からみた場合、高齢者の医療内容の特性は一般と分けるべきとの考えがベースになっている。
○ 何歳から適用するかについては、国民全体で支援する高齢者を絞り込めないかと考えた場合、75歳以上になると圧倒的に高い確率で終末期医療を必ず迎える、痴呆・寝たきりの80%が75歳以上、医療費が75歳を境に伸びる、などの理由で75歳とした。
○ 財源については、消費税を使うことは安易という指摘もあるが、全部で支える、連帯という形で考えるならば、若い人も高齢者も負担しているという意味で、消費税を考えている。
○ 高齢者のうちの要支援の人達を重点的に絞り込んでいく中で、例えば、来年度の人口が70歳以上1,500万人が、75歳以上では880万人となりシステムとして運用しやすくなる。
○ 高齢者を75歳以上で独立の制度とする一方で、60歳から74歳までは若杉委員などが主張する突き抜け案のいい所をある程度採用している。
○ 介護保険の導入が今後の高齢者医療にどうインパクトを与えるかのシュミレーションが必ずしも十分ではないと思われる。A案でも提案しているように、2005年の介護保険の第1期の見直しの時期に介護保険の対象年齢を75歳に引き上げて統合させたらどうかと考えている。そうなれば、一体的な処理ができるし、保険料の徴収面でもわかりやすい。
○ 一度に制度モデルA、Bに移行するのが難しいのであれば、橋渡し的なものを考えることが必要で、最大の問題となっている拠出金の賦課を100%から70%、50%とするなど、将来あるべき姿に持って行くまでの二段階方式とするようなことも現実的に考えていくべきで、過渡的な案があってもよいと思う。
○ 高齢者の負担については、終末期医療や寝たきりなどで若人の5倍以上医療費を使う中で、定率化した場合かなりの負担となるので、高額療養費、低所得者対策を考える必要がある。
○ 医療保険の介護と介護保険の医療の仕分けが一般の方にはわかりにくい中で、今秋から認定作業が始まるが、どういう時に給付するのかはっきりさせないと、介護報酬か診療報酬かを決める関係もあり、夏頃までに全ての国民にわかるように提示していただきたいと思う。
○ 保険者は、介護保険との統合を考えた場合市町村がよいと思うが、小規模市町村の対策を考える必要がある。

(若杉委員)

○ 医療提供者側と保険者側で意見が対立する場合もあるが、共通する部分もある。薬価のように白紙に戻りそれまでの議論が無駄になっても困るし、現実が2、3歩でも改善されれば歩み寄る余地はあると考える。
○ 共通部分を基礎として、異なる部分は暫定的にどちらかを採用するなどバリエーションを考え、2歩でも3歩でも前進させるのが現実的な方法と考える。

(井形委員)

○ 今後の高齢化社会は人類が初めて経験する未曾有のもので、各国が注目している。既成概念にとらわれて石橋をたたいて渡るよりも、試行錯誤でやっていくべきと考える。
○ 私はA案を支持しているが、公費の大幅な投入も最初から忖度する必要はなく、部会で結論を出し国民の理解を求めていけば不可能ではない。
○ 医療に福祉の概念を入れ、先行投資することにより実年齢より若い人が増えてきて、平均的な社会的年齢が若くなることにより事態は変わってくる。
○ 介護保険が医療に与える影響を考えてみると、(1)社会的入院の解消により医療保険の負担が軽くなる。(2)在宅医療を中心とすることにより医療も在宅中心となる。(3)各種職業の人が集まって行うチーム作業の重視により医療もチーム医療という色彩が強くなる。(4)介護認定の際にかかりつけ医が必要なことからかかりつけ医制度も前進する。(5)高齢者の労働力を吸収するなど、大きいものがある。
○ 介護と医療は本来一体でなければ実効を上げず、今後の議論も、福祉と同様な発想で医療を考えてほしいと思う。

(堀田委員)

○ 全体の対象者で考えれば全国一律の制度がよいし、医療と介護は目的は同じであるので将来的には統合するべきと考えた場合、A案が適切だろうと考える。
○ 運営主体については、高齢者が地域の場で暮らし、市町村が生活の場として密着していることや、今後、生活方法が変わり転職が起こってくる中で、個人個人が市区町村に身をおいて個性ある生き方をすることが大勢となることを考えた場合、将来のあるべき姿としては市町村が望ましい。当面としては、制度モデルAで他の保険者を次第に市町村に移していくのがよい。
○ 市区町村が介護保険に続いて医療保険も運営主体となることが実際に可能かについては、実施可能な力を蓄えていってもらうことが重要であるが、小さすぎて実施不可能ならば、広域で連合して実施することを検討する必要があり、それにより市区町村の適正なあり方が実現されるし、市区町村に頑張ってもらうしかないと思う。

(鴇田委員)

○ モデルA′を提案しており、制度モデルAに与している立場であるが、保険者機能は悩ましい所で、介護保険でも大きな問題となっており、現状では、保険者は市町村主体で一部広域連合となっている。
○ 運営主体については、高齢者は地域をベースに考えざるを得ないことを勘案した場合、自治体をベースにしつつも広域連合という規模の人口数でなければ、多分やっていかれないのではと思う。
○ 公費負担については、未曾有の経験を今後持つのであり、従来の方法で考えるには無理がある。
○ 自治体の運営については、今まで自治体に地方自治の意識が希薄だったものが、介護保険法によりプレッシャーが与えられ、地方分権の厳しい戦いをするようになり、その実態に応じてやっていくようになってきた。また、地域により保険料に格差があることが、住民の関心を巻き起こしている。
○ 単に運営主体を自治体にするだけではなく、保険者機能を同時に与え、それを支援するという方向で考え、民間の運営機能を評価し導入することを長期的に考えていくべきと考える。

(若杉委員)

○ 制度モデルAの一番の問題点は、給付費の殆どを公費に依存することだが、実際に可能かどうか。財源は国で給付は市町村という形で、医療費の増大に歯止めが効くのかどうか疑問。また、財源と切り離され運営主体に限られた中での議論では本質を見誤るおそれがあると思われる。

(堀田委員)

○ 以前に同様の発言をし繰り返しとなるが、緊急事態であり国有財産の処分や相続税を投入すればよいと考える。

(井形委員)

○ 今のままの診療報酬の出来高払い制を今後も続けていくわけでなく、エビデンス・ベイスド・メディスンや本人の選択による医療、終末期医療、尊厳死のあり方の議論も盛んに行われている。また、公費を大幅に投入するからこそ、高齢者医療は非常にリーズナブルにできるという側面が強いと思われ、必ずしも医療費の増大に歯止めが効かないことにはならないと考える。

(糸氏委員)

○ 公費投入が9割まで図られれば、医療提供者と保険者との徹底的な意志疎通が図られなくてはならないし、我々医師も、場合によっては医療費の予算制をも受け入れざるを得ないというくらい厳しく考えている。
○ 全国各地の国保連合会や支払基金で、それぞれ、市町村、政党、医療担当者などの構成による協議組織があるが、なかなか効果が出てこないのが問題で、今後、それらの組織にいかに魂を入れるかが重要なことになってくる。
○ アメリカのマネージドケアにもあるように、保険者機能は、最終的には、保険者と医療担当者が率直に話し合って解決する所まで持って行かざるを得ないと思うし、日本でも今後5〜10年のうちにそういう形が出てくるだろうと考える。
○ 患者の医療について、良い医療をより安く、患者が人権侵害にならないような処置をとるなど、保険者と医療担当者が率直に話し合って決定していく組織が現在あるが、スリーピングな状態にあるので、もう少し有効活用すればアクティビティが出てくると思う。また、権限を与えるなどして、お互いを理解し合う共通の場として活性化させる必要がある。

(塩野谷委員)

○ 堀田委員の異常事態が30〜40年続くという発言について、30〜40年の根拠を伺いたい。若い人が65歳以上の人を支える比率をみると、明治時代に10:1だったものが、1950年代から65歳以上の人の比率が上がり、現在では5:1位で、今後2050年頃まで65歳以上の人は増え続け、1.7〜2:1の比率でフラットになる。
○ 11月の意見書の取りまとめ以降、どの新聞の社説を見ても、老人と若人を分けるのは世代間の対立を深めるのでだめだという論調が多い。
○ 高齢者医療により多くの公費が投じられることは否定しないが、排他的に老人にだけ入れることは、社会の公正、正義に訴えられない。公費を入れるのであれば医療制度全体のベースに入れるべきで、そうでなければ社会連帯に支障を来す。
○ 制度モデルAで保険者機能を働かすといっても、保険料5%では保険者機能を働かせるまではいかず、競争力も働かず、収支を合わせるだけになってしまうと思われる。
○ 介護保険、年金制度と高齢者医療制度を統合させるという視点からではなく、現状から出発して制度を変えていくべきで、それについては年齢調整機能を持つことによって、若い人から高齢者までの理解が得られると思う。いずれにしても、この問題はもう少し議論する必要がある。

(井形委員)

○ 塩野谷委員の議論を突き詰めてみると、健康保険で掛け金を払った人でも、医療費を多く使う層と使わない層では不公平だということにならないか。
○ 介護保険は若い人の税金を高齢者に入れる制度になっていることに皆が合意しているし、高齢者に対しては、今まで社会を発展させてきた功績に対する尊敬の念と今後自分も年をとるという共感で、高齢者に対して支援してもよいと思う。

(塩野谷委員)

○ 保険の概念では、掛け捨ててしまった人と使った人とでは対立関係になるとは全然考えていない。保険に入ったことで、心配からフリーになるという安全を買っているので、損得はないと考えられる。

(井形委員)

○ 病気になることと老化するということを同列に論じればよいのではないか。

(堀田委員)

○ 現在の人口構成の逆ピラミッドが特殊であることはグラフなどで見てもらえばわかると思うが、塩野谷委員が言われた今から2050年までの50年と私が言った30〜40年の10年の差は、長い歴史の中では、殆ど差がないと思われる。
○ 保険者機能を市町村に持っていくことの意味は、保険料の徴収、交付された税金の使い方を含めて、地域の医療、介護をどうすればいいのかを市町村が全部考える必要があると思っているからである。
○ 現状でも、市町村によっては音頭をとって、医師会、看護婦や保健婦の団体、福祉団体等とネットワークを作りつつある所もあり、提供体制と費用負担の両方を一緒に考えることで、地域一体の適切な体制が出来上がることを申し上げたい。

(糸氏委員)

○ 財政主体である市町村と医療関係者が、赤裸々な話し合いを前向きに進めれば、医療の効率性は高まると考えられるので、そういう組織を活用して活性化させていくことが必要である。
○ 医療の提供体制について、地方に行ったりすると、きれいで高性能な病院は県立が多く、老朽化した病院が民間であるような事例に出会わすことが多いが、全国の医療の80%を民間が提供している現状を考えた場合、このまま進んでよいのか検討する必要がある。
○ また、地域地域での医療が少なくとも国のスタンダードを確保できるような体制をつくることが必要である。

(金平部会長)

○ 本日は新たな資料の要望がなかったが、次回の進め方について事務局より説明願いたい。

(事務局 井口老人保健福祉局企画課長)

○ 次回のテーマとなる「高齢者の負担(患者一部負担及び保険料)のあり方について」は、本日すでに資料を配布してあるが、追加資料の要望があれば用意したい。次回は改めて資料の説明をした上で御議論いただきたい。

2)最後に、金平部会長より、次回は5月26日(水)午後5時から厚生省特別第一会議室において、高齢者医療制度等の見直しについて審議する旨発言があり、閉会した。


照会先
担当者 老人保健福祉局 企画課 課長補佐 宮本 直樹 内線3917

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