99/04/23 第17回厚生科学審議会先端医療技術評価部会議事録 第17回厚生科学審議会先端医療技術評価部会議事録 1.日 時:平成11年4月23日 (金) 14:00〜16:00 2.場 所:中央合同庁舎第5号館 共用第9会議室 3.出席委員:高久史麿部会長 (委員:五十音順:敬称略)     木村利人 柴田鐵治 寺田雅昭 (専門委員:五十音順:敬称略)         入村達郎 金城清子 松田一郎 森岡恭彦 山崎修道 4.議  事:(1)東京大学医科学研究所附属病院の遺伝子治療臨床研究(腎がん)     及び岡山大学医学部附属病院の遺伝子治療床研究(肺がん)の経過     報告について        (2)がん遺伝子治療臨床研究作業委員会の開催状況について  (3)名古屋大学医学部附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画     (悪性グリオーマ)及び東京慈恵会医科大学附属病院の遺伝子治療     臨床研究実施計画(肺がん)について  (4)遺伝子治療臨床研究に関する指針等について  (5)その他 5.資  料:1.東京大学医科学研究所附属病院遺伝子治療臨床研究(腎がん)の経過          報告について 2.岡山大学医学部附属病院遺伝子治療臨床研究(肺がん)の経過報告に          ついて 3.がん遺伝子治療臨床研究作業委員会(第5回)・遺伝子治療臨床研究          (がん)審査ワーキンググループ(第7回)の概要について がん遺伝子治療臨床研究作業委員会(第6回)・遺伝子治療臨床研究 (がん)審査ワーキンググループ(第8回)の概要について 4.名古屋大学医学部附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画申請書 5-1.名古屋大学医学部附属病院の遺伝子治療臨床研究実施のための同意          説明文書(第1グループ) 5-2.名古屋大学医学部附属病院の遺伝子治療臨床研究実施のための同意          説明文書(第2グループ) 6.東京慈恵会医科大学附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画申請書 7.東京慈恵会医科大学附属病院の遺伝子治療臨床研究実施のための同意         説明文書 8.「遺伝子治療臨床研究に関する指針」等 9.ヒト胚性幹(ES)細胞について ○事務局  ただいまから第17回厚生科学審議会先端医療技術評価部会を開催いたします。本日 はメンバーのうち、加藤委員、軽部委員、曽野委員、廣井委員の4名の先生方からやむ を得ずご欠席の旨のご連絡をいただいております。 まず、資料の確認をさせていただきます。 (以下、資料の説明と確認) ○高久部会長 それではこの会議を進行させていただきます。  本日の部会では最初に、現在実施されています東京大学医学部医科学研究所附属病院 (以下、医科研附属病院)の腎がんについて、さらに岡山大学医学部附属病院、これは 肺がんですが、この二つのがんに対する遺伝子治療研究の進捗状況について、事務局の ほうから説明していただきます。 ○事務局  それでは、ただいま部会長のほうから御指示のありました、医科研附属病院の腎がん についてと、岡山大学医学部附属病院の肺がんについての臨床研究の進捗状況について ご説明申し上げます。資料といたしましては資料1、資料2を使いまして、二つとも連 続してご説明申し上げます。  まず資料1に基づきまして、医科研附属病院につきまして説明いたします。  めくっていただきますと、前回2月の当該部会におきまして、総括責任者から、まず 経過について説明をしていただいております。本日はその後の対応ということでご報告 申し上げます。  1ページ目に「経過報告(第1例目)」というところがございまして、前回の部会で は5回目の接種を終え、そこまで特に問題となるような状況は起こっていないというと ころまで報告を行いました。番号でいいますと14番までということでございます。そ れ以後、15番以下にありますように、2月18日には、当初予定の6回目の接種を行い その後の免疫反応において効果が見られたことから、施設内の検討会において追加接種 をあと3回行うこととしたということになっております。  現在、1例目の患者さんには、21番の3月30日までの経緯が示されておりますが、 これ以後4月13日に2×107個の細胞を、右下腹部内2ヵ所へ9回目の接種が行われ ておりまして、落ちついている状況とのことでございます。  なお、今後の1例目の追加接種の予定につきましては、患者さんの状態と免疫反応の 評価を行った後に決定するということでございます。  資料をめくっていただきまして、2例目の患者さんについても選定がされておりまし て、治療研究が開始されております。開始といっても、ここにも書いてございますが、 現在臨床研究に必要な細胞処理を開始したということで、実際の接種というものにつき ましては2ヵ月以内に開始される予定というものでございます。  以上が医科研附属病院の経過報告でございます。  続きまして資料2に基づきまして、岡山大学医学部の附属病院、肺がんの経過報告に ついてご説明を申し上げます。  資料2をあけていただきますと、現在岡山大学におきましては、ある濃度のベクター を単独で3人の患者さんに投与して、副作用とかがんに対する効果の有無を調べている 段階にございまして、現在のところ2例の患者さんについて行われているものでござい ます。 1例目の患者さんにつきましては、ここにも書いてございますが、2月3日ま でに2回目のインフォームド・コンセントを行い了解を得たという状況でございまして その後2月24日に学内の審査委員会の部会において、この患者さんが対象患者さんとし て選定され、これに基づきまして3月1日に再度インフォームド・コンセントを実施し 了解を得られたことから、3月2日に治療前の腫瘍組織の採取を行うとともに、ベク ター液を腫瘍内に注入しているものでございます。  それ以後3月17日まで特に問題なく経過したことから、また、喀痰からの組み換えウ イルス等も検出されなかったことから、現在は退院されているということで ございます。 その後月1回の投与する計画でございますので、同様の手順で3月30日に2回目の投 与が行われておりまして、それも同様に問題なく経過し、本日、予定ではございますが 3回目の投与のための入院が予定されているという状況でございます。  また引き続きですが、岡山県の2例目の患者さんについても同様に治療が始まってお りまして、1回目の投与は3月30日に行われており、本日、2回目の投与のための入院 が予定されているという状況でございます。  どちらとも、接種におきまして特に問題となるような状況は認められていないとのこ とです。一過性の発熱が見られているということですが、その他は生じていないという ことです。  発熱に関しまして、ベクターの投与との因果関係は不明としているという状況でござ います。  研究経過につきましては以上でございます。 ○高久部会長 どうもありがとうございました。医科研附属病院の腎がんと岡山大学医学部附属病院 の肺がんに対する遺伝子治療臨床研究の経過を事務局から報告していただいたわけです が、何かご質問おありでしょうか。 ○木村委員  岡山大学のほうは、まとめとしては、ベクター投与との因果関係は明らかではないと いうことで、データとしては、学問的な報告書は一応出ているんですか。たとえば出て いるとすれば、どういうものに出ているんでしょうか。 ○高久部会長 まだ報告書は出ていないですね。 ○事務局  まだ治療研究の実施途中でございまして、その途中での研究成果は出されております が、まだ論文にはまとまっておりません。 ○高久部会長 病歴として記載されているのだと思います。 ○木村委員  まとめと書いてありましたものですから。 ○高久部会長 ほかにどなたか。  患者さんの経過については逐一この会で報告されることになると思います。  次の千葉大学医学部附属病院からの申請は食道がんに対する遺伝子治療臨床研究 です。それから医科研附属病院の肝がんに対する遺伝子治療臨床研究計画、さらに財団 法人癌研究会附属病院(以下、癌研)では、乳がんに対する遺伝子治療臨床研究計画に ついて各々の作業委員会の開催状況について、これも事務局のほうから報告していただ けますか。よろしくお願いします。 ○事務局  これにつきましては、お手持ちの資料3に基づきましてご説明申し上げます。前回2 月9日の当部会開催以降、3月9日と4月13日の2回、がん遺伝子治療臨床研究作業委 員会を文部省と合同で開催させていただきました。  この間に当該作業委員会では、部会長から先ほどおっしゃっていただきました三つの 大学からの遺伝子治療臨床研究実施計画について議論が行われました。  まず、千葉大学医学部附属病院の実施計画につきましては3月の会議で、意見書に対 する正式回答及び実施計画の変更について再度議論が行われました。 その結果、第II相臨床研究での実施に関することなど、再度確認等すべき事項を取りま とめることとなりました。  そしてまた、再度確認等をすべき事項について意見書として、事務局から施設に対し 発出したところ、迅速な対応をされたことから、4月13日の会議で総括責任者より、回 答についての説明を受け、先生方との間で議論が行われました。その結果、科学的側面 についての論点整理をほぼ終了し、作業委員会委員長の取りまとめの上、今後、厚生科 学審議会及び学術審議会への手続きを進めることとされました。  現在、今回の最後の回答書の最終的な整備、それらに伴う実施計画の整備、必要な学 内の手続きが施設内におきまして進められている状況であり、これが終わり次第、当部 会で、社会的、倫理的な面を含めて総合的な検討をいただく予定としております。  なおベクターに関しましては現在、医薬安全局に品質の確認の申請が出されており、 中央薬事審議会で審査される予定でございます。  続きまして医科研附属病院の肝がんに対する遺伝子治療臨床研究実施計画に対する検 討の状況について説明いたします。  同じく3月の会議で、今後の審議の進め方について意見交換が行われまして、4月の 会議では、委員から提出された意見を取りまとめた意見案について検討され、その内容 が基本的に了承されましたので、先般、事務局から施設に対し、当該意見書を発出した ものです。今後、この意見書に対する回答が施設側から提出されれば、作業委員会で総 括責任者等から回答の説明をいただき、議論する予定でおります。  最後に、癌研の乳がんに対する遺伝子治療臨床研究実施計画の作業委員会での状況に ついて説明いたします。  3月の会議で、事務局より施設に伝達した意見書に対する回答をいただきました。審 議の参考人としてこの実施計画の総括責任者を招致し、説明を頂き、委員の方々との間 で議論が行われました。その結果、作業委員会としましては、再度確認等をすべき事項 などをもう一度取りまとめようということとなりました。  それを受けまして4月の会議では、確認等をすべき事項を取りまとめる中で、本計画 に対します今後の取り扱いを含めた議論を行う必要があるとの意見も出されたことから この点について再度意見交換を行いました。  その結果、最終的に再度、意見書として事務局より施設側に伝達し、施設側より回答 を求めることが必要ということになりまして、現在その手続きを進めているところでご ざいます。以上でございます。 ○高久部会長 どうもありがとうございました。千葉大学の医学部附属病院に関しては、一応作業委 員会での作業はヒアリングを含めて終わり、これから向こうからの返事を待って、いず れこの部会に提出されることになります。 医科研附属病院と癌研の遺伝子治療臨床研究については、まだ作業委員会のほうで作 業中であるという説明でしたが、寺田委員、それでよろしいですね。 ○寺田委員 結構でございます。 ○高久部会長 ということですが、何かご質問おありでしょうか。 ○木村委員 再度検討を求めて、現在大学側と調整中ということですが、具体的な内容はこの資料 のどこにあるんですか。 ○高久部会長 ここには入っていません。 ○木村委員  もし入っていないとすれば、具体的な内容は、箇条書きでいうとどういうことになる んでしょうか。 ○高久部会長 非常にたくさんありました。 ○木村委員  要点か何か出てこないんですか。 ○高久部会長 30項目ぐらいあったですかね。もっとありますか。 ○木村委員 主にメディカルな、いわゆるマテリアルについての問題点とかそういうことに関する ことなのか、それとも具体的に患者のインフォームド・コンセント、いわばバイオエシ ックス的な問題に関するものなのか、その内容についてはいかがでございましょうか。 ○寺田委員 簡単にいいますが、いま言われたようにたくさんあったのですが、特に癌研は、MD Rという薬に対する抵抗性の遺伝子を入れて、それで大量に薬を投入してがんを治そう というもくろみで、それはいいことですが、ただ、乳がんの治療法として、大量の抗が ん剤をやるということが本当に正当化できるのかどうかということが一つあります。大 きなところですね。  それから2番目のところは、動物で、マウスで非常に条件が違った極端な形態なんで すけれども、MDR遺伝子という、抗がん剤に対する抵抗性の遺伝子を入れると、白血 病まではいかないんですけれども、白血病に近いような状態がマウスで起きるというの が最近の報告書で出ましたので、そこの安全性の問題は多少考える必要があるのではな いかということです。  大きなところはその二つが委員の中で問題になっておりまして、そこに対する回答、 それに付属したいろんなことに関して、委員会それから事務局と検討して、さらに申請 者側に回答を求めるという形になっております。 ○事務局  いま作業委員会委員長からご説明があったとおりでございます。細目については当然 いろいろあるかと思います。  それと、事務局から言わずもがなのことでございますが、当該作業委員会におきまし ては、この部会の指示を受けまして科学的な論点整理に従事するということであります ので、基本的には、いま委員長から申し上げたような科学的な面からの解明といいます か、明らかにしていただくという作業を続けているところでございます。  ただ、それに伴いまして、患者さんへの説明と同意の文書等の記述にも多少かかわっ てはまいりますが、その点については科学的な論点の整理がつきました段階で、この部 会でご議論いただくものと考えております。 ○木村委員  いま寺田委員長のほうからご説明いただいた内容というのは、患者の立場にとっても 大変重要な具体的な内容で、その内容を、いまご説明いただいて大変よく、再度検討と いうことの中身がわかったわけですので、できればこの委員会でも、そういう背景が全 くわからない中で再度検討と言われても私ども何も言えないことになりますので、項目 その他につきましては確かに多数の項目があるかと存じますけれども、今後、概要をま とめて一応ご提出いただければ大変にありがたいと思います。 ○寺田委員  委員長の立場としてはそれで結構だと思いますが、事務局側がどうおっしゃるか。単 なる文章の作業の問題だと思います。  そこで一つ問題になっていまして、これは一般的な問題なんですが、遺伝子治療とい うことに関して、これはフェーズ1と考えるのか、フェーズ1、2と考えるのかという ところがわりあい議論になりまして、一応1、2という考えであるということを、この 委員会でも申し上げておきたいと思います。 ○木村委員 おっしゃるとおりかと思うんですが、遺伝子治療では、アメリカでも相当の数が行わ れておりまして、これが確かに成果があったというふうに臨床的に証明されたものはき わめて少ないというか、ほとんどない状況でございますので、そういう観点から、いま 寺田委員の言われた抗がん剤の成果とか、あるいはMDR遺伝子を中に入れたときどう なるかというようなことについては、一般の患者の人たちも大変に関心のあるところだ と思うんですね。ぜひそういうことを事務局のほうも今後ご検討いただければと思いま す。 ○高久部会長 簡単に出していいと思います。ただ、あんまり詳しく報告するとなると、何のために 作業委員会があるのかわからないことになりますので、この部会では主に倫理的な面等 について議論していただくというふうに住み分けしていました。もちろん皆さま方にな るべく多くの情報を、事務局でできる範囲でお知らせするということになると思い ます。非常に専門的な細かい部分がたくさんありますので、かえって煩わしいのではな いかなと思ったものですから。  他に何かご意見、ご質問ございますか。それでは次に、本日、厚生大臣から厚生科学 審議会に諮問があり、その後さらにこの部会に付議されました、平成11年4月21日に名 古屋大学医学部附属病院長から提出されました、「正電荷リポソーム包埋ヒトβ型イン ターフェロン遺伝子による悪性グリオーマの遺伝子治療臨床研究」実施計画につきまし て、今後の取り扱いを含めた、部会としてのご審議をお願いしたいと思います。 まず事務局から、申請の経緯、計画の概要について説明をよろしくお願います。 ○事務局 それでは研究計画の概要、申請の経緯につきましてご説明申し上げます。  当該申請書につきましては、4月21日に厚生大臣及び文部大臣あてに提出されたもの でございます。名古屋大学の研究につきましては、悪性グリオーマを対象とするもので あり、この疾患を対象とする研究計画のデータは今回初めてのものであります。また、 リポソームによる遺伝子の導入ということも初めてのことでございます。 それでは資料4に基づきまして順次ご説明申し上げます。なお今回4月21日というこ ともございまして、先生方には前もって資料を送れなかったという状況をご了解いただ きたいと思います。 まず資料4につきまして説明いたします。まず1枚目のほうには、厚生大臣から厚生 科学審議会長あて意見を求めるという形の諮問書の写しがついているものでござい ます。  2枚目には、厚生科学審議会会長から当該先端医療技術評価部会長あての付議書の写 しがついているものでございます。  3枚目につきましては、当該治療臨床研究の実施計画の申請書の表紙の写しでござい ます。ここにも書いてございますとおり、実施施設は名古屋大学医学部附属病院でござ いまして、今回、斎藤病院長からの申請となっているものでございます。  遺伝子治療臨床研究の課題といたしましては、その下の欄を見ていただきますと、 「正電荷リポソーム包埋ヒトβ型インターフェロン遺伝子による悪性グリオーマの遺伝 子治療臨床研究」ということでございまして、総括責任者は医学部脳神経外科学講座教 授の吉田先生でございます。  4ページ目の中ほどに「総括責任者以外の研究者」の欄がございますが、これが当該 研究における研究者の概要でございます。また最後のところに審査委員会が当該臨床研 究計画の実施を適当と認める理由ということが書いてございますが、これにつきまして は当該資料の最後に2枚ほど添付されているものでございます。  5ページ目には研究の目的ということでございますが、当該治療研究では、ある条件 の悪性グリオーマの患者さんに対して、その条件にもよりますが、開頭等をし、正電荷 のリポソーム包埋ヒトβ型インターフェロン遺伝子を腫瘍内に直接注入し、その後2週 間目より神経内視鏡または定位脳手術装置などを介しまして、腫瘍内に注入することを 週2回の割合で5回繰り返すというものでございます。  また、別の場合は週に2回の割合で合計3回注入するということで、実際はインター フェロンの産生状況や神経症状の変化を十分観察することにより、この治療研究におい て安全性と効果を確認することを目的としているというものでございます。  この治療研究において使用する、プラスミドとリポソームの調製につきましては、名 古屋大学医学部附属病院の施設で行われるものでございます。  続きまして対象疾患ですが、これにつきましては悪性グリオーマと言っておりますが 6ページ目の一番上の欄を見ていただきますと、上の欄の下から5行目のところにあり ますように、本研究の対象としては、組織学的に病理診断が確立されている悪性グリ オーマの症例を選択し、また患者さんにつきましては、生命維持が困難な状況に至って いない症例を選択するということとされております。  続きまして、これまでの研究の成果の状況ですが、ヌードマウスへのヒトグリオーマ 細胞を入れたことによる、移植ヌードマウスのモデルによって脳内腫瘍が形成されたも のに今回のものを注入した場合に腫瘍効果を確認したというものでございます。そうい うふうな研究成果が出ているものでございます。  7ページにいきまして、今回のリポソーム自体につきまして、プラスミドDNAにつ きましては、臨床研究に必要とされる安全性を確立しているというふうな内容が記載さ れているものでございます。  またラット及びサルにつきまして静脈内投与と脳内投与毒性試験を行っているという ことであり、その毒性試験から、今回臨床研究として考えている投与量の約10倍までの 安全性を確認しているという内容でございます。 7ページ目の真ん中の欄につきましては「遺伝子治療臨床研究の実施が可能であると 判断する理由」ということが書いてあるものでございます。  今回の名古屋大学の方法につきましては、これまで初めてということでございまして ここの中には、名古屋大学の施設自体の体制が適当だという内容の記載がされているも のでございます。  その下には実施計画ということでございまして、対象患者につきまして二つのグルー プに分ける。  大きく簡単に言ってしまいますと、第1のグループの方は悪性グリオーマと確認され ていて、いろいろな治療を施行したにもかかわらず、腫瘍の再発あるいは進行が確認さ れたグループでございまして、第2グループにつきましては、8ページ目の上から3行 目でございますが、CT及びMRIの画像診断にて腫瘍が脳深部にあるもので、もし摘 出術を施行すればいろいろな障害が予想されるものということで、二つのグループに分 けて実施するという内容になってございます。  実施期間につきましては8ページの真ん中ほどにございますが、約2年間を予定して いて、さらに約1年間の経過観察期間を設けるということにしているものでござい ます。  その下には症例数ということでございまして、第1グループ、第2グループそれぞれ 5例を予定しているというふうに記載がされているものでございます。  9ページを見ていただきますと、備考欄につきましては、名古屋大学の中の関連審査 委員会での審議の経過について記載されているものでございまして、平成3年から約18 回以上にわたり議論がされた。原則公開の中で審議を持ったということが記載されてい るものでございます。 10ページ目以降の2枚紙につきましては、その審査委員会の報告でございまして、こ のような内容をもとにして、適当だとしたということでございます。  資料5−1、資料5−2につきましてはそれぞれ、先ほど第1グループ、第2グルー プということで説明しましたが、グループ別の同意文書の案というものでございます。  資料5−1につきまして簡単に説明いたしますと、大変厚くなっておりますが、実際 は、資料5−1の21ページをめくっていただきますと、21ページ以前のものが、実際の 説明同意の文書の概要のみを書いたものでございまして、21ページまでの内容について 各項目についてチェック欄をつけたものが22ページ以降というものでございます。22 ページ目以降は、基本的には同じ21ページまでの繰り返しというものになっているもの でございます。 内容につきまして参考になるところといえば、同意文書のたとえば18 ページ、19ページ、20ページにつきまして図が掲載されておりまして、18ページにつき ましては、リポソームの腫瘍効果がどういうふうに発現するかの図が書いてあるもので ございます。19ページにつきましては、遺伝子導入のために開発された新しいリポソー ムということです。  リポソーム自体につきましては、ここにもありますように脂質の二重層がプラスミド といいますか、遺伝子の周りをこのように囲っているものということでございまして、 正電荷、プラスと書いてありますが、プラスの電荷が外にあることによって細胞にくっ つき、その後、細胞のどん食作用によって中に入っていくというものでございます。 20ページの図3というものがございますが、注入の方法について簡単に説明している ところでございます。  名古屋大学から提出された資料につきましての説明は以上でございます。 ○高久部会長 どうもありがとうございました。いま、名古屋大学医学部附属病院から出てきました 悪性のグリオーマに対する遺伝子治療臨床研究計画申請書について事務局から説明があ りましたが、どなたかご質問、ご意見おありでしょうか。これはいずれ作業委員会で検 討していただくことになると思います。 ○木村委員  いまご説明いただきまして、内容的に理解できるところはいろいろありましたけれど も、この方々が、たとえば7ページを拝見しますと、これは厚生省当局にお伺いしたい んですが、名古屋大学では八木先生はじめいろいろスタッフをそろえて、遺伝子治療臨 床研究の実施が可能であると判断する理由についていろいろ書いてあって、その下のほ うに、多くの学会発表、論文発表を行ってきた、そして、その研究チームは専門家をす べてそろえてあって万全の体制をとっていると書いてあるんですけれども、もちろんど ういうような学会発表で、どういう論文をお書きになったかということは、厚生省のほ うには資料としては取りそろえてあるわけなんですね。 ○事務局  本日お手元に提出いたしましたのは、きわめて要約いたしました概要書と、患者さん への説明と同意に際して用います文書の案ということだけでございますので、いま木村 委員からご指摘のような、これらの審議の際に参照したもの、あるいはこれらのチーム が発表した論文のリスト等についてはここには添付しておりません。また、作業委員会 での審議に際しまして順次、申請者から提出をいただいて提供してまいりたいと考えて おります。 ○木村委員  4ページのところを見ますと、「総括責任者以外の研究者」というところで、非常に 大事なリポソーム・プラスミドの調製を名古屋大学の中で行うということで、調製をす る方々が、それぞれ水野さん、梶田さん、永谷さん、妹尾さんと書いてありますが、こ の方々が具体的に、リポソーム・プラスミドの調製ということで、その品質管理と安全 性につきまして実績があって、かつ責任を持って安全性を確認できる内容であるから結 局こういうことになったんだと思うんですが、私ども詳しくそういうデータを調べよう と思えば厚生省のほうに行けるということであれば、それはそれで結構で ございますが。 ○高久部会長 当然資料が出ていると思います。 ○松田委員  安全性は、いまの木村委員のお話である程度理解できたんですけれども、どういうこ とでもって治療効果を判定するのかということが出ていないように思うんですけれども やはりこういう計画をする以上は安全性はこうである、しかし治療効果に関しては、こ ういう基準でわれわれはエボリューションするんだというものはここに入れなくていい んでしょうかね。ちょっとそれが気になったんですけど。 ○高久部会長 これはフェーズ1としてですか。それともフェーズ1、2ですか。 ○事務局  一応計画全体としましてはフェーズ1、2の混合と。と申しますのは、現在の厚生大 臣が示しております基準では、何らかの有効性が期待できるということと、安全性の相 応の確認がされているものに限って計画の確認をするということになっておりますので やはりフェーズ1のみではなく、フェーズ2的な要素の期待がどうしても記述されて参 ります。  ただ、これにさらに膨大な資料をつけまして作業委員会で論議いたしますので、その ときの論点整理には当然、いま松田委員がご指摘のような、どのようなものをメルク マールとして有効性の判定をしていくのか、これは当然論じられる点だろうと思ってお ります。 ○高久部会長 これは作業委員会で行うことかもしれませんが、気になるのは、第1グループのとき には、手術の後に放射線、化学療法、免疫療法をやる。第2グループはそれを全然やら ないで直ちに遺伝子治療臨床研究をやっていいのかということですね。 ○木村委員  もう一つ、インフォームド・コンセントの文書のほうですけれども、患者をどのよう に選択しているのかということははっきりわかりませんが、「症例、本人及び家族(親 権者、監護者)」というのが入っているわけですけれども、これは法的にいろいろな問 題があるかと思います。治療の段階で小児に参加して貰うというようなことも含めたイ ンフォームド・コンセントという形になっていると思うんですが、そういう観点から、 すでに患者の候補者がいて、それを待っているということであるのか、それとも、これ からそれに沿って患者の選択をし、その中には小児も含めて行うということになるのか という点については何かデータがございますでしょうか。 ○事務局  現在までに事務局として聞いておりますところでは、いわゆるがんの患者さんという こともありまして、当該の名古屋大学では年間相当数、たしか 200例近い患者さんを診 ている。そんな中で具体的に除外基準あるいは適合基準、それぞれに照らして候補者を 選定した上でインフォームド・コンセントを得て実施するということですので、現段階 でこの臨床研究に参加したいということで待っておられる方がいるということではない そうです。 ただ、すでに相当以前からこの試みの検討を進めておりますので、大学には「私は参 加したい」というような趣旨の問い合わせは多々あるようでございます。 それから資料4の8ページでございますが、ここでは対象患者といたしまして18歳以 上の男女で、妊娠の可能性のある女性の方と70歳以上の高齢者を除外するという形でと りあえず選定を進めるということにしております。したがって当面、いわゆる年少者の 参入はないものと思っております。 ○金城委員 20ページを見ますと大変痛そうだなという感じがするわけですよね。ところが、イン フォームド・コンセントをとるときには危険性とかそういうことは説明があるわけです けれども、どの程度痛いのかというようなことは、この治療がそれほど効果的でないと したら、選択をする患者さんにとっては大変大きな意味を持つんじゃないかと思うんで すけど、それはどうなんですか。 ○事務局  そこらへんは確かに、本日提出した資料では記述が十分ではない可能性はあるかと思 います。また、第1グループ、第2グループの設定のところ、部会長からもご指摘があ りました点を含めて、作業委員会での科学的論点整理の中でも進めてまいりたいと思い ます。  当然、脳腫瘍の切除術自体が、資料の20ページにありますような施術をいたしますの で、それに追加になる痛みがあるわけではなさそうですが、合わせて今後よく聞いてま いりたいと思います。 ○高久部会長 第2グループは手術の出来ない症例ですね。第1グループは手術をして、その後にい ろいろな治療をして最後に遺伝子治療臨床研究をする。第2グループは大変だと思いま す。 ○金城委員  2週間目より週2回の割合で計5回ですよね。手術していたって痛いんじゃないかと 思うんですけど。そこらへん素人ですので、何かご説明いただければと思います。大変 痛いというのは本人にとってはつらいことなのではないかと思うんですけれども。 ○寺田委員  私は神経外科でもありませんからわかりませんけれども、対象になっているがんは非 常に悪質でありまして、成長がずっと早いものですから、それの症状は強烈なものがあ りますから、それとのいろんな比較があると思います。ですから、そこは慎重に検討し て、余分な苦しみを患者さんに与えるということは避けなくてはいけないと考えており ます。 ○山崎委員  βインターフェロンというのは製剤としては、悪性グリオーマの対象疾患になってお りましたでしょうか。まだされていないんですか。 ○高久部会長 製剤としてはなっています。 ○山崎委員  インターフェロンそのものでは効果はあまり。 ○高久部会長 全身的に投与していたと思います。副作用が強い。インターフェロンβの脳腫瘍に対 する投与はインターフェロン開発のかなり初期の時期に認可になった。確か獨協大学に おられた永井政勝教授が中心にやられたと思います。認可になったかどうかということ については正確には知りませんが、治験をやられたことは事実です。結果はあまりよく はなかったと思います。今回のは局所投与で今迄のは全身投与であったという差がある と思います。  それでは、作業委員会がつくられるわけですが、委員の構成などについては事務局か ら説明していただけますか。 ○事務局  作業委員会を従来から設置してやっているわけですが、今回につきましては現在のと ころ、ここの部会のほうに提示する案を持っておりませんので、今後厚生科学審議会の 豊島会長、高久部会長、作業委員会の寺田委員長等にご相談申し上げましてメンバーを 決定し、後日、部会の先生方にご報告申し上げる方向にしたいと考えております。 ○高久部会長 従来、食道がん、肺がん、腎がんのときには、コアの方々に、食道がん、腎がん、肺 がんの専門家の方に加わっていただくという形をとっていたと思います。中心の先生方 がいつも審査されるのは大変だと思いますが、どうしても欠かせない方がいらっしゃる と思います。あとは当然脳外科の方に入っていただくことになると思います。豊島会長 といろいろご相談して、作業委員会のメンバーを決定させていただきたいと思いますの で、よろしくお願いします。 ○入村委員  今のことと、その前のご議論にちょっと関係があるんですが、こういう方法で投与す るというのは、たぶん治験というか、トライアルとしては、ほかのものに関してもやら れているんじゃないか。日本ではわかりませんが、少なくとも外国ではございますね。 そういうのに関する説明ができる方が加わられると、もしかしたらいいんじゃないかと 思います。 ○高久部会長 外国ではインターフェロンβは扱っていませんが、サイミジンカイネース(チミジン キナーゼ)の遺伝子を入れて、ガンサイクロビル(ガンシクロビル)を投与する方法が 行われています。部分的には効いたという事ですが、その方法はかなりよく使われてい ます。  定位的脳手術は、脳外科の分野では非常によく使われている方法だと私は理解してい ます。 ○寺田委員  おっしゃるとおりでありまして、ここの新しいところは、一つはβインターフェロン の遺伝子を使うということと、日本産のリポソームを使うということです。  それから吉田先生は脳外科で、ずいぶん前から遺伝子治療をやろうということでいろ んな動物実験をやっておられまして、定位のところでも工夫がたしかあったと 思います。 ○木村委員  これは日本の先端医療の場面でも現実かと思いますが、たとえば14ページに「同意に 関する文書」というのがあって、16ページにも未成年用のが書いてありますね。  そして14ページの真ん中のところに、今回の臨床研究の対象が脳の疾患という、大変 に特殊なことだと思いますが、「ヒトの理解力、判断力に影響を及ぼしかねない部位で あるだけに、私の理解や判断を介助する者として、「親族の代表者(   氏)」にも 同席してもらいました」ということで、親族の代表というのが出てきますね。  これは具体的に配偶者であるのか。あるいは本当に親戚であるのか。法的にネクス ト・トゥ・キン(近親者)といって、その人を代表するにふさわしい人であるのかどう か、いろんな論議があるかと思いますが、その場合に「親族の代表者」という言葉が入 っていますと、たとえばこの人を私は信頼しているので、この人にやってもらいたいみ たいなことが、いままで臨床の現場であったのかどうかですね。  たとえば「患者の選任した者、たとえば親族の代表者にも同席してもらいました」と いうような形にしておくと非常にキチッとわかりやすいんじゃないかと思うんですね。 こちらの親権者のほうと監護権者のほうは、これは未成年者ですからはっきりとしてい ますね。「親権者あるいは監護権者」とはっきりしていますが、こちらのほうは果して 親族の代表で患者が納得するのかどうか。いままでこういうことについてはいかがだっ たのか。大抵親族の代表が出てくるんでしょうけど、どうでしょうね。法律的には親族 の代表でないほうがいいという場合もあるんじゃないかと思いますが。  これは卑近な話ですが、たとえばいろいろ、患者が手術を受けたことにより意識不明 に陥った場合のいろんな法的な諸問題が発生してまいりますので、それを親族の方々が むしろ情報として持っていないほうが公正な判断ができるという可能性もありますので アメリカの場合にはヘルスディシジョンについて決定する、これは「デュアラブル・パ ワー・オブ・アトーニー」という健康上の意志決定に関する持続的委任状みたいなもの を、特にアドバンス・ディレクティブスなんかでは使っておりますけれども、日本の場 合にはそういうことで、親族でない人が何らかの形の書類に、仮に法的な資格を持った 弁護士であるとか、そういうことがあるとしたら、はっきりと「患者の選任する者、た とえば親族の代表者など」というふうに入れておいたほうがいいんじゃないかと思うん ですが、いかがでしょうか。 ○高久部会長 それで結構だと思いますが、どうなんですか。 ○事務局  この部分は患者さんへの説明と同意の、しかも医科学的検討事項の外でございますの で、作業委員会とは別に、計画の実施をしようとする名古屋大学のほうとも、いまのご 意見等伝えた上で、この部会で改めてご議論いただくまでに整理を進めていただくよう にしたいと思います。 ○柴田委員  このケースの内容とは全く関係ないんですけれども、9ページに「費用について」と いうところで、全く払わなくていいとありますし、当然各大学の研究費を充てるんだと 思うんですけど、このところずっと遺伝子治療というのはかなり続々とといいましょう か、メジロ押しに並んできて、若干費用の問題なんかも社会的にはどうなっているのか なと疑問に思うんですけど、これはどうなんでしょう。臓器移植ほどお金がかかる話で はないと見てよろしいんでしょうか。 ○高久部会長 今迄の遺伝子治療臨床研究の場合、たとえば岡山大学、医科研附属病院の場合には、 千葉大学もそうですけど、ベクターは会社から、治験として供給されていました。名古 屋大学の場合には、自分でインターフェロンの入ったベクターをつくるわけですから、 かなりかかるのではないでしょうか。  その前にGMPに準じて、ベクター生産の設備を作られたのですね。文部省から出た お金でつくられたと思うのですが、それにもかなりお金がかかっていますし、ベクター 自体の生産にもかなりお金がかかっていると思います。  厚生科学研究費の中にゲノム研究費という項目がありまして、吉田先生のところにあ る程度の研究費を差し上げていると思います。それで足りるかどうかは判断しかねるの ですが。  いま審議している癌研の場合と、名古屋大学の場合には治験ではないので、ほかのと ころの研究よりはお金がかかると思います。  それでは時間の都合もありますので、先ほどお話しいたしましたように、作業委員会 での論点整理を終えた時点で、この部会でご討論していただきたいと思います。  先ほど木村委員からご意見がありました親族の点については、ごもっともな御意見で す。おっしゃるように親族といってもいろいろおられるでしょうから。  次に、名古屋大学からの申請と同じ日に東京慈恵会医科大学附属病院から、「非小細 胞肺がんに対する正常型p53遺伝子発現アデノウイルスベクター及びシスプラチンを用 いた遺伝子治療臨床研究」の実施計画について厚生大臣から厚生科学審議会に諮問があ り、本日付で当部会に付議されましたので、これにつきましてご審議いただきたいと思 います。 その前に事務局から、この申請の経過並びに内容について説明していただけますか。 ○事務局 それでは東京慈恵会医科大学からの研究計画の概要等につきましてご説明申し上げま す。  まず資料6につきましては、先ほどと同様でございますが、1ページ目のほうには、 厚生大臣より厚生科学審議会会長あてに意見を求める旨の諮問書の写しがついてござい ます。  2ページ目をめくっていただきますと、当審議会会長より先端医療技術部会長あての 付議書がついております。  3枚目には、申請書表紙の写しがついてございます。実施施設につきましては、先ほ ど部会長のほうからご紹介がございましたように、東京慈恵会医科大学附属病院での、 大石幸彦病院長からの申請でございます。遺伝子治療臨床研究の課題につきましては 「非小細胞肺がんに対する正常型p53遺伝子発現アデノウイルスベクター及びシスプラ チン(CDDP)を用いた遺伝子治療臨床研究」という課題でございます。  総括責任者につきましては3ページの下にもありますが、同大学のDNA医学研究所 遺伝子治療研究部門教授の衛藤義勝先生でございます。  4ページ目以降が総括責任者以外の研究者の概要でございまして、なお、当該臨床研 究計画実施計画につきましては、先に当該部会等で確認されました岡山大学医学部附属 病院、きょう最初の議題のところで進捗状況をご説明いたしましたが、この病院との共 同研究の形をとるという内容でございまして、研究者の方はいろいろ載っていますが、 7ページ目のところにも、岡山大学医学部附属病院第一外科の藤原俊義先生他の名前が 挙げられているものでございます。またその下には、審査委員会が当該研究計画の実施 を適当と認める理由につきましては最後のほうに添付しましたという内容が書かれてい るものでございます。  岡山大学と同じプロトコールで実施するという内容でございますが、内容につきまし てもう一度簡単に説明いたしますと、まず8ページ目のところには研究の目的が示され ておりまして、先ほど言いましたように、本研究の目的につきましては、上から5行目 にありますように、「p53遺伝子に突然変異や欠損などの異常を有しており根治的切除 不可能な原発性あるいは再発性の非小細胞肺がん症例に対しまして、正常型のp53遺伝 子発現アデノウイルスベクターを局所投与することと、シスプラチンの全身投与を行っ た場合の安全性を確認し、最大耐量を決定するとともに、合わせて治療効果も検討す る」ということとしておりまして、岡山大学と同じ目的でございます。 また、この研究に使用するアデノウイルスベクターにつきましては、そこの目的の欄 の最後にもございますように、アールピーアールジェンセル株式会社を経由して供給さ れるものでございまして、すでに岡山大学での臨床研究で用いることの許可が得られて いる製剤の範囲のものを使うと聞いているものでございます。 当該研究につきましては同一プロトコールということもございますので、対象疾患そ の他の理由、遺伝子その他の導入の方法等につきまして、これまでの研究成果等につき ましては岡山大学と同じですので、説明は省略させていただき、記載が異なる点につい て説明したいと思います。 10ページ目を開いていただきますと、「遺伝子治療研究の実施が可能であると判断す る理由」ということでございまして、ここに慈恵会医科大学のほうでやられている先生 方が、たとえばDNA医学研究所では吉村先生を中心とする研究グループが、数年前よ り肺がんに対する遺伝子治療の基礎的研究を行っているということとか、DNA医学研 究所におきまして、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター等を用いた基礎 研究を行っており、ベクターに関する基礎的背景は十分であるという内容が記載されて いるものでございます。  また、その欄の最後のほうには、治験を実施するに当たり必要となる院内の感染対策 公衆衛生の配慮につきましての、実際アメリカのほうで進められている米国アンダーソ ンがんセンターのハンドリングガイドラインを踏まえまして、みずから作成したガイド ラインに基づいてやるというような内容が11ページの上にわたって書いてあるものでご ざいます。 また11ページのところにつきましては、実施計画のところの上から3行目、本研究に つきましては、共同研究参加施設で調整委員会を設置し、各施設が協力し行うというこ とが記載されているものでございます。  またページをめくっていただきまして、備考欄につきましては、当該臨床研究につい ては、同大学の遺伝子治療審査委員会で審議が行われた旨が同様に記載されているもの でございます。  まためくっていただきまして、別紙最後に添付すると書いてありました研究計画につ きまして、「遺伝子治療審査委員会が実施を適当と認める理由」というものが2枚ほど 書いてございまして、そこの部分の一番最後、14ページの上のところには、情報等を共 有する等について4施設ぐらいの共同研究を考えているというような情報として記載が されているものでございます。  資料7につきましては、東京慈恵会医科大学で用いようとしている同意説明文書とい うものでございまして、提出のあったそのものをご提出させていただいております。  以上でございます。 ○高久部会長 どうもありがとうございました。いま慈恵会医科大学の附属病院から出てきました遺 伝子治療臨床研究の実施計画の申請書と同意説明文書の説明がありましたが、岡山大学 でなされたのと同じ疾患の患者を対象としており、使うベクターも全く同じです。計画 申請書のほうには慈恵医大の事情などがつけ加えられています。  同意説明文書は岡山大学のと違っているのですか。あまり違うとおかしなことになる と思いますが。 ○事務局  事務局でザッと眺めました限りは、基本的には同一のものというふうに理解しており ます。ただ、作業委員会においてご検討願いますのはプロトコールそのものよりも、こ のプロトコールに基づいて、臨床研究を慈恵会医科大学において実施できるのかどうか ということの新しい確認、それから他施設において共同して進めていく、調整機構を設 けながら行うということが明示されておりますが、そのへんについて初めてのことにな りますので、そこらへんについて作業委員会ではおそらく入念に検討されるものと考え ております。 ○木村委員  名古屋大学のほうのインフォームド・コンセントの書類と、慈恵会医科大学のほうか ら出てきた同意説明文書というのがあり、インフォームド・コンセントでいろいろ説明 していらっしゃるわけですけれども、慈恵会医科大学のほうは非常にはっきりと「遺伝 子治療に参加される方への説明書」と、同意のほうも「遺伝子治療参加についての同意 書」というふうになっているのが、名古屋大学やほかの大学との大きい違いだと思うん ですね。  岡山大学は「遺伝子治療臨床研究のための説明と同意書」となっていますので、遺伝 子治療というと、患者に対する、この治療をすれば、治療ということでイマジネーショ ンがわいて、自分が治る可能性があるというふうに誤解する可能性がありますので、こ れは統一性、整合性の観点から、やはり「遺伝子治療臨床研究」という言葉で最初から 提出していただきませんと誤解を招くのではないかと思いますが。 ○事務局  大変重要な点を見落としておりましてまことに申しわけありません。 21日に受け取って、ここに無理やり提出ということだったものですから、一番肝心な点 の配慮が抜けましたもので、ここは当然訂正といいますか、適切な記述に改めていただ くようにいたしたいと思います。 ○高久部会長 今迄議論をしてきた、岡山大学の同意文書と基本的には同じようにしていただいたほ うが良いと思います。 ○木村委員 同感です。委員長の言われたとおりだと思いますが、9ページでございますけれども これは細かいことなんですが、パッと見たときに、「治療参加にかかわる条件など」と いうところの3番目ですけれども、「いつでも治療担当医師にたずねるください」、 「たずねて」ですね。これは字句が違ってミスプリだと思いますが。  その次のところですが、2)に「参加継続に関する意思に影響する情報が得られたと き」というのが書いてあって、「そのことを伝えること」と書いてあって、その次のと ころですけれども、「したがって、治療の途中に大幅な変更 (スケジュールや投与方法 の変更など) があったときや、お伝えしなければならない新たな安全情報を入手したと きは」と書いてあるんですけれども、安全情報だけじゃなくて、おそらくリスクのこと も伝えることになっているようなんですね。「以下の場合は治療を中止します」とか。  ですから、これは安全情報だけ伝えるんじゃなくて、「お伝えしなければならない安 全あるいはリスクの情報その他の情報を入手したときには」、安全情報だけというふう になってしまうと、後で、このことについては別に書いてないじゃないか、安全情報し か書いてないということになるんじゃないでしょうか。リスクの情報も伝えなくちゃい けないわけですよね。基本的には。 ○高久部会長 おっしゃるとおりで、すべての情報ですから、「新たな情報を入手したとき」に適切 な時期ではなくて、直ちに知らせなきゃならない。適切な時期ということで待っておら れては困る。おっしゃるとおりだと思います。 ○木村委員  全般的に治療という言葉だけが使われている文章になっているので、それをご訂正い ただければと思います。 ○高久部会長 どうもありがとうございました。ほかに何か。  それでは次の議題として、「遺伝子治療臨床研究に関する指針」があります。本日な ぜこれをご議論願うかといいますと、新聞等でご覧になったと思いますが、大阪大学で 血管の疾患に対する遺伝子治療臨床研究の申請が、大学の中のIRBに提出されたとい うことです。いずれそのIRBを通れば、文部省、厚生省に提出されることになります が、厚生省の遺伝子治療研究に関する指針では、対象疾患として「致死性の遺伝性疾患 がん、後天的免疫不全症候群その他の生命を脅かす疾患であること」となっているので 大阪大学で検討されている血管の疾患が対象疾患としてこの文言に当てはまるかどうか ということが問題になっているものですから、その点をご検討願いたいということ です。事務局から説明していただけますか。 ○事務局  いま部会長からお話がありましたとおり、現在、大阪大学医学部附属病院におきまし て、末梢循環障害を対象疾患とします遺伝子治療臨床研究の計画に対し、学内委員会に おける検討が開始されたところであります。 その中で、いま部会長からご紹介がありましたとおり、文部省と厚生省で現在、作業 委員会レベルでは共同して、この計画の確認に当たっているところでございますけれど も、そのような末梢循環障害という対象疾患が文部省、厚生省で、1ページの横表のと ころでごく微妙に言いぶりが違っています。「致死性の遺伝性疾患、がん、後天的免疫 不全症候群その他の生命を脅かす疾患」ということで、これまで厚生大臣が確認いたし ました疾患は、一番最初が致死性のADA欠損症候群、2番目がエイズ、3番目以降が がんということであり、非常に重篤な生命の危険のある疾患が順次これまで確認されて きているところでございます。  そんな点で、文部省のほうの非常に簡明な、命を脅かす先天性または後天性の難治疾 患というものに比べて限定されているのではないかという疑問が出てきておりまして、 今般あらかじめそこらへんについてご確認をしていただければよろしいんじゃないかと いうことです。事務局でいわゆる法令関係の専門家等と検討しましたところでは、この 読み方としまして、「その他の」までが全部例示的な修飾語であって、実は「生命を脅 かす疾患」ということが1番目の要件、2番目が「治療効果が」云々、3番目が「得ら れる利益が不利益を十分上回る」云々と、この三つの要件によって規定しているけれど も、1番目の要件としては命を脅かす疾患ということであるので、基本的に文部省の規 定と厚生省の規定は同価値、等価であるということだったんですが、確かにいろいろ国 民の広い層から見ましたときに、これまでの確認がされてきた疾病と考え合わせるとな かなか理解がしづらいんじゃないかというご指摘もありまして、そのような理解といい ますか趣旨だけどもということで、この部会でもご議論の上ご確認いただければありが たいという考えでございます。 ○木村委員  いま大阪大学の事例が出されたわけでございますけど、私は医学の専門家でないので 具体的な病気の内容がわからないのでございますけれども、症状が致死性ではないわけ でございますか。具体的な症状はいかがなものでございましょうか。 ○事務局  事務局で聞き及んでおりますところでは末梢といいますか、手足の先のほうの循環が 何らかの原因で細くなる。血のめぐりが悪くなりますと、冷たいとか何かを通り越しま すと、そこの部分がいわば壊死を起こしてしまう。すなわち四肢を順次失っていくもの だそうです。  そういう意味では、心臓回りその他にすぐ影響が出るわけではありませんけれども、 いわゆるクオリティー・オブ・ライフからいたしますと、非常に重篤な疾患であるとい うものでございます。病変が出たから直ちに死亡するというものではない、しかしなが らQOL上はきわめて重大な疾患であるということで、現在、阪大でこの検討が進んで おりますが、米国等でも同様に、直ちに致死性ではない疾患群に対する遺伝子治療の応 用の試みというものが最近ふえてきているというふうに聞いております。 ○高久部会長 文部省のほうですと、これは難治疾患にはいります。いま事務局が説明したのは確か に非常に治りにくい、いざとなれば手足を切り落とさなきゃならない病気です。手足を 切断すると生活のクオリティーは非常に悪くなりますが、生命が脅かされるとは限らな い。 ○金城委員  質問なんですけれども、致死性という言葉をなぜ厚生省のほうでは入れたんでしょう か。何かそこらへんの歴史的な事情がおありなんでしょうか。 ○事務局  厚生省告示の制定のきっかけになりましたものが、米国で最初に成功した遺伝子治療 といわれます、世界遺伝子治療実験といわれますADA欠損症、いわゆる致死性の遺伝 性疾患でありました。それから、遺伝性疾患のすべてが致死性であるわけではないとい う点で、遺伝性の何らかの健康に影響のある要因を抱えておられても、生命あるいは生 活の質自体にそれほど重篤な障害が生じない事例もありますので、そのすべてを含んで いるものではありませんということで、当時、致死性の遺伝性疾患、すなわち遺伝性疾 患に限っては致死性という、もう一つ修飾語を加えたということのようでございます。 ○高久部会長 それにはもっと古い経緯がありまして、遺伝子治療研究を始めたときに、レトロウイ ルスベクターが本当に安全なのかということが非常に議論になりました。そのときはま だレトロウイルスベクターの安全性が確認されていないものですから、対象疾患の致死 性ということが強調された時代がありました。そのうちに、効果の点ではいろいろディ スカッションがありますが、安全性に関しては、あまり問題がないということで少しニ ュアンスが変わってきたという経過があります。 もう一つ、致死性という言葉を入れたときに、最初は、遺伝性疾患もがんも後天性免 疫不全症候群も、頭の中に入れていたはずなんですね。ところが文部省のガイドライン 作製のときに、がんは致死性じゃないという議論が出てきて、それで文部省のほうは、 致死性という言葉を使わなかった。がんは50%ぐらいは種類によっては治る。確かにこ の文言のとおりですと、致死性は遺伝性疾患の事で、がんは致死性じゃないということ で差し支えないということですが、「生命を脅かす」という言葉がありますから、生命 を脅かすということと致死性とは基本的には同じことだと思います。 しかしがんやエイズには化学療法など色々な治療法がありますが、血管障害、特に血 管が詰まる病気に対しては、外科的に壊死を起こした部分を取り除く以外には、余り有 効な治療法がない。そういう意味では、今後は血管性疾患のほうが、遺伝子治療の対象 疾患としてふさわしいのではないか。そういうことが最近言われています。それで、今 日ご議論願っているわけですが、いま事務局から説明があった手足の血管の閉塞、遺伝 子治療をガイドラインの1で読み取れるかどうかどうなんでしょうか。森岡委員が一番 御専門が近いと思うのですけれが。 ○森岡委員  どういう症例かは選択によるんでしょうね。いまの御議論を聞いていても、安全性が ある程度高まってくると、疾患の限定というのはなくなってくるんですね。そこをどこ で踏み切るかという問題だと思うんですね。 ○金城委員  私は医学については素人なのでよくわからないんですけど、厚生省の指針にしろ、文 部省のガイドラインにしろ、できたときには、遺伝子治療というのはとにかく危険であ る、あまりやらないというような考え方があったんじゃないかと思うんですね。でも、 いろいろ行える中で変わってくれば、やはりガイドラインというのもキチッと直してお く必要があるんじゃないかと思います。  そして、生命を脅かすといったら、本当に致死性とかなり近い意味だと思うん ですよ。ですから、こういうことをまず置いておいて、いろんな理屈をつけて、いいん だとか悪いんだとか言うよりは、やはり状況が変われば、ガイドラインとか指針という ものも十分検討した上で、現在の状況を反映したものにしておくことは大切だと 思います。  ただ、そのときにいろいろ、安全性がどうだとかいうような問題についてはもう少し キチッと検討しなければいけないと思います。 ○木村委員  私はこの文言のままで文部省のほうと整合性があるように考えるんですね。  ですから、いま金城委員が、ともかく遺伝子治療は危険である、だから致死性の疾患 の下に使うと言うとおかしいんですけれども、それをはじめとして、安全性を確認しな がらいろいろやろうということになったんですが、その効果はまだ不明であり、かつ遺 伝子治療その他が、先ほどのお話にもあったように、抗がん剤を併用してやるというこ とになると、かえって死に近づくことも想定されるわけですので、生命を脅かすという 中には質という意味も入っているんですね。身体を脅かすとは言っていないんですね。  いのちというのは、我々の身体が持っているクオリティーをも含んだ概念ですので、 生命を脅かす疾患ということは何も死に至る疾患ということではなくて、そういうこと を含んでいると理解すれば、これは現段階で直す必要がないというふうに、私も法律専 門家の一人として思うんですけどね。 ○高久部会長 「致死性」と「生命を脅かす」とは同じ意味と考えていいとするならば、本当に軽い 病気でない限りは、大抵の病気は生命を脅かす可能性があるわけですね。インフルエン ザの流行でもずいぶん亡くなりますから。だから、そういうふうに広く解釈すれば良い のではないでしょうか。 ○松田委員  いままでのお話を伺っていて思ったんですけど、もしこれを変えるとすれば、相当何 か理由を、正当性のある理由を出さないと、ただ言葉がこうだとかいうことだけでは変 えれないと思うんですよね。  だから、いままでのお話を伺っていると、本当に変えなきゃならないという理由はあ んまり浮かんでこないですね。僕自身には。 ○事務局  いずれにしましても、このようなことを申し上げるように至りましたのは、当初より も早く、安全性に関するいろいろな情報が、米国を中心ですが取りまとまってきたとい うことと、今後、大阪大学におけますような事例が日本でも増加してくると考えており ます。  それで、仮に「致死性の」ということがすべてにかかる、厚生省のほうが狭いんだと いうことになりますと、文部省のほうは格別、厚生省関係の機関がこのような試みに取 り組もうとしますと門前払いになりかねないわけです。門前払いするよりは、そういっ たものも、是非こういった場でご議論いただくような方向にしたほうがいいのではなか ろうかということが一つでございます。  ですから、そういった点では、金城委員ご指摘のような、もとから直したほうがいい とというご指摘のほうが正しいわけですが、とりあえず門前払いにしないんだというこ とのご了解が得られればありがたいなということと、実は本日の参考資料のほうに出て まいりますけれども、こういった試みに対する国の会議のあり方について、厚生科学審 議会が現在検討している中でも論議がありますので、そこと合わせてご議論いただけれ ばありがたいと思っております。 ○高久部会長 世界的な傾向として、血管障害に対する遺伝子治療が非常に急速に展開されつつあり ますので、いま事務局からお話がありましたように、門前払いしないという、もし出て きた場合の話ですけれども、それだけは一応ご了解していただき、対象疾患を見直すと するならば、小委員会でもつくっていただいて検討していただければと思います。大阪 大学のがかなり早く出てくる可能性がないわけではないと思いますので、そのときには いまの指針でご検討いただくことをご了承いただければと思います。  次に、これは今日の直接の議題ではありませんが、ご存じのように、ヒトの胚性幹細 胞( Embryonic Stem Cell)について新聞等で、あるいはその他のニュースでご覧にな ったことがあると思います。昨年の暮れに、アメリカの二つの研究グループが、ヒトの 胚性幹細胞の細胞系列を確立したということが、「サイエンス」等、世界的に有名な雑 誌に載りまして、そこで大きな話題になりました。現在、科学技術庁の中に、「ヒトの 胚性幹細胞」ではなくて「ヒトの胚研究」に関する小委員会ができまして、そこで検討 をしております。  ただ、胚の研究ということだとかなり広範囲な議論をしなければなりません。ES細 胞がなぜ大きな議論になったかといいますと、臨床的な応用の可能性が世界的に広く問 題になるからです。臨床応用となりますと、この先端医療技術部会でも無関係でいるわ けにはいかないと思います。そこで提案ですが、次回以降に専門家の方に来ていただい てES細胞について少しお話を伺ってはと思います。  その前にES細胞自体のことについて、それから、わが国における状況などについて 事務局のほうで説明していただけますか。 ○事務局  要点につきましては、いま部会長からご発言があったとおりでございます。資料の9 は、急遽事務局で取りまとめたもので不完全なものでございますけれども、ヒト胚性幹 細胞について、どんなものかというのが1ページの1に書いてございます。いわば全能 性を持った細胞ということで、あらゆる組織・器官への分化の可能性を持っているとい うものだそうでございます。98年11月、12月にかけまして、こういったものの樹立がさ れたということで、いままでは理論的あるいは期待される研究対象であったものが非常 に具体化されてきたということで非常に脚光を浴びております。 わが国におきましては、先ほどご紹介がありましたように、科学技術会議生命倫理委 員会におきまして、岡田善雄先生を座長としますヒト胚研究小委員会において、いろい ろな課題について検討が進められているところでございます。 また文部省におきましては学術審議会バイオサイエンス部会におきましてクローン研 究の検討を進めている中で、それに関連する研究が、このES細胞の研究では出てくる ということで急遽、文部省学術国際局研究助成課長名の通知を発出しております。  その通知につきましては資料9の4ページ目以降に添付しておりますが、基本的には 大学等におきましてヒトES細胞の研究を行おうとする場合、施設の長に確認を求める ようになさいということと、施設の長は専門家のといいますか、諮問委員会並びに文部 省に対して確認を行いなさい。そして文部大臣は、そういった依頼がありました場合、 専門委員会の意見を求めて対処をする。こういった点になっております。  資料1の3では、現在の科学技術会議の生命倫理委員会ヒト胚研究小委員会でどんな ことが検討されているかということですが、ここではすべての省庁にまたがるというこ とがありまして、非常に一般的な分野について検討が進められている。しかしながら、 ヒト胚研究の、ヒトES細胞があらゆる臓器・器官への分化の可能性を持っているとい う点では、本日の参考資料のところにも出てまいりますが、いわゆる再生医療等の、あ るいは臓器移植等への代替技術とした、いろいろな医療面での画期的な応用の期待があ るからこそ注目が集まっているということがあろうかと思います。  そういった点につきましては、やはりこの部会においてご議論をあらかじめ進めてい ただくことが将来に向けて必要ではないかというふうに考えております。  ただ、いままでのところまだ十分な資料が集まっているわけではございませんので、 先ほど部会長からご指示ありましたとおり、次回以降に適切な専門家が得られれば、そ ういった専門家の方からの意見の陳述をもとに、ES細胞研究とか応用についてのご理 解をまず深めていただければと存じております。 ○高久部会長 文部省の資料の9の4ページの「記」の一番上の所で問題になるのは、ヒトの胚性幹 細胞はヒトのクローン個体の作製をもたらすと書いている事で、その恐れはないはずで すね。  もう一つ「サイエンス」の今月号に、ES細胞ではなくて中胚葉性の幹細胞が一人ひ とりの骨髄から簡単に樹立されて、その細胞が、骨の細胞、繊維細胞、脂肪細胞、更に やりようによっては筋肉細胞に分化し、その分化した細胞は非常に均一であるというこ とが発表されて、話題になっています。例えば筋肉が一部無くなった人の場合、その患 者さんの骨髄を採ってきてうまく培養すれば、患者さん自身の筋細胞ができる。その筋 細胞をそこに注射してあげるということが、かなり現実の問題として出てきています。 サイエンスの進歩は非常に早い。  しかし、それでもES細胞からでないと分化できない細胞がある。特に神経細胞など は、いまのところはまだヒトの幹細胞が in vitroで分化きないですから。そういうこと も含めて、専門の方にいろいろとご説明していただく機会を作ればと考えています。 ○木村委員  部会長のご指摘ですけれども、4ページの「『ヒトのクローン個体の作製をもたらす おそれのある研究』に該当する可能性のあるものもあり得る」という表現になっている んですけれども、先生のご意見では、ヒトのクローン個体の作製をもたらすおそれのあ る研究に該当する可能性もないと。これは「あるものもあり得る」となっているんです ね。それはどうなんですか。 ○高久部会長 寺田委員、どうですかね。日本語はむずかしいですね。 ○寺田委員  むずかしいですね。 ○高久部会長 今のところはマウスでも、ES細胞から個体のマウスを直接つくることはできないは ずですね。そのためわざわざ「胚性幹細胞」と呼んで、「胚幹細胞」とは呼んでいない のですね。それからトテイポテンシャル(全能性)ではなくてマルチポテンシャル(多 能性)である。そういうふうに、ES細胞の研究をしておられる方々はおっしゃってい ます。私にも詳しいことはよくわかりませんが。 ○森岡委員  ヒトクローンの問題については、日本学術会議とか、それから科学技術庁とか、厚生 省とか、文部省、いろんなところで議論されていますが、少し意見の違うところがあり ますね。  文部省が一番厳格なんですね。クローン個体の作製につながるおそれがあるものは全 部やめると。  いま別々に議論されているんですが、日本で行政として、これをどういうふうにまと めていくかということについて、厚生省としてどういう取り組みをするのでしょうか。 ○高原課長  ヒトクローンというのはたぶんマッドサイエンティストといいますか、そう言うと失 礼ですが、まずそういうことを試みる人はいないだろうし、いたら、科学者というか、 特に医療人としては非常に問題があるだろうということは押さえた上で、確かにいま森 岡委員が言われたように、昨年の暮頃から科学技術庁、文部省、農水省、そして厚生省 の4省庁で連絡会議をやっています。  具体的には、私どものほうからは西沢研究企画官が出ておりまして、それは非常に普 遍的なES細胞一般ないしはクローニング一般という議論と医療、特にヒトにおけるE S細胞の利用、ないしはES以外の中胚葉性細胞であるとか、またはそのほかの、臍帯 血というのは幹細胞の応用でございますので、幹細胞一般の医学応用というふうに少し ずつ切り口が違うので、これはあえて合わせる必要はないんじゃないか。しかし、全然 違った方向に向く、ないしは本当に実質的に齟齬があるとやはり問題が起こるので、実 務面では息を合わせていきたいということで連絡会議をやっております。しかし、これ も公式なものではございません。 ○高久部会長 ヒトクローンの個体の産生については、それはしないということに科学技術庁も文部 省も厚生省もなっていると私は理解をしています。確か科学技術庁でも、1997年の3月 には、すでにヒトのクローンの個体はつくらないとしています。いま問題になっている のは、ヒトのクローン個体をつくらないということをガイドラインの形にするのか、法 律で禁止するのかということでして、クローン個体をつくるということの可否はもう問 題になっていないと思います。この点については誰にも意見の相違はないと私は理解を しています。  ES細胞については、いま事務局からお話がありましたように、科学技術庁では広範 な議論をしていますが、ゲロン社がES細胞のセルライン(培養細胞系)を持っていま して、もうすでに日本に売り込んできている。これはすでに確立した細胞系列ですから 研究者が試験管の中でそれを扱うことを止めることはできないと思います。その細胞を 買うなり提供を受けて、その細胞を使って試験管の中でいろんな細胞に分化させること を、明日にでも研究者がやる可能性はあるということで、かなり緊急な問題です。  ただこれが臨床のレベルにいくまでにはかなりのステップがあると思います。そう簡 単に臨床にはいかない。研究者が試験管レベルで研究を始めても、それが悪いという理 由はないですね。  たとえばいろんな細胞を培養して、研究にどんどん使っています。ES細胞はヒーラ 細胞等とは非常に違いますが、アメリカでは既にマーケットに出ていますし、日本にも 来る可能性はあるということをご理解願えればと思います。この部会でも皆さんにいろ いろご議論しておかないと間に合わない可能性がないか。そういうふうに思ったもので すから、事務局と相談して、ヒアリングでもしてみてはと思いました。 ○森岡委員  いまの高久部会長のご発言ですけど、ヒトのクローン個体の作製を目的とするものは 確かにやらないということなんですね。ただ、試験管内で体細胞の核を卵子の核と入れ 替えるといったことをも文部省は禁止しているんですね。ヒト胚の取扱に対して、ヒト のクローン個人作成に通じる恐れがあるものは全部だめだと。これにはちょっと問題が あると思います。 ○柴田委員  2年前だと思いますが、イギリスでクローン羊ができたというニュースが伝わったと き、アメリカのクリントン大統領とフランスのシラク大統領がいち早く、クローン人間 はだめということをすぐ言ったわけですよね。  そのときに日本の記者団が、当時の橋本総理に、クローン羊をどう思うかと言ったら 首相は目を白黒させたというのが、当時の新聞報道にあるんですけどね。それで首相が 悪いということは全然なくて、そうだろうと思うんですけど。  確かにいまおっしゃるとおり、クローン人間はだめだという点で、二人の先生の意見 は違わないと思うんです。たぶん世界的にも意見が一致するんですが、だからといって この問題が本当に全人類のコンセンサスかというと、私は必ずしもそうではないと思う んですね。もちろんアメリカの研究者なんか、やると宣言している者もいますし。  なぜクローン人間はいけないのかということについては常に議論と、いけないという ことをキチッと論理立てていかない限り、この問題はまだまだ、研究段階というのはず っと連続しているわけですし、どこに線を引くかという問題は当然起こってくるわけで すよね。  だから、クローン人間はだめだということで一致していますということで終わってし まわないほうがいいのではないか。もっと、なぜいけないのかということについての確 固としたものを。  特に私は日本の社会というのは、欧米に比べると、この問題については、国民レベル でいえば反応は鈍いテーマだと思うんですよね。それだけに、そういう議論と理論づけ というのが大切なんじゃないかと常々思っているんですけれども。 ○高久部会長 おっしゃるとおりで、アメリカの場合でも、モラトリアムということで、ノンとは言 っていないんですね。それから国の研究費を出さないということであって、民間もやら ないとは思いますが、やるのを阻止する力はアメリカの場合はないと私は理解していま した。ユネスコはやらないと宣言をした。そのときでもいろんな議論があって、本当に 永久に禁止して、将来、医学的な応用ということが出てきたときにどうするのだという 事が問題になった。柴田委員のおっしゃるとおり、そう簡単でない面があると思います が、一応いまのところはやらないということになっている。  時間の都合もありますので、次の議題「今後の厚生科学研究の在り方」について説明 していただけますか。これは途中の報告ですね。 ○唐澤室長  お手元の参考資料に、「今後の厚生科学研究の在り方について(部会報告案、未定 稿)」というのがございますのでご覧をいただきたいと思います。  時間の関係もございますのでポイントだけお話をさせていただきますが、まず部会報 告案につきましては昨年来1年ほどにわたりまして、研究企画部会で、厚生科学研究の あり方をご議論してきていただいたところでございます。議論全体のほうが、先生方の ご議論がご集約いただけるような段階が近づきましたので、前回の4月19日に厚生大臣 から、厚生科学研究のあり方について審議会に諮問をさせていただきました。そして研 究企画部会に付議をされておりまして、その部会報告案、総会への報告案ということで この「在り方」を提出させていただいたところでございます。 前回の部会でも先生方から幾つかのご意見がございましたので、こうしたご意見を、 ご提言をいただきました先生とご相談をして、そして部会長のところで、最終的な形で 一部文章等の修正をいたしまして、5月10日の総会にご報告をさせていただきたいと、 現在作業を進めているところでございます。 まず目次をお開きいただきたいと思います。全体が五つの章立てになっておりまして まず「厚生科学の意義」というのがIでございます。IIが「厚生科学研究のこれまでの推 進状況」、IIIは「厚生科学研究を取り巻く状況の変化」について記述をしております。 IVは「新たな変化に対応して求められる研究領域」ということで、切り口が多少違うも のもございますけれども、六つの研究領域につきまして記載をしております。最後にV 「今後の厚生科学研究の推進方策」ということで、今後厚生科学研究を推進していく上 での組織上の問題、あるいは人的資源の問題、体制の問題、あるいは社会的、倫理的な 観点からの体制整備の問題、こういうような事柄についてまとめさせていただいたとこ ろでございます。 関係のところに少しだけ触れさせていただきますと、3ページが状況の変化になって おりまして、特に3ページに至るまでの、最初の「厚生科学の意義」のところでは、一 つは厚生科学の医療、福祉水準への向上の意義と、もう一つは、これまでの健康危害と か地球環境問題、こういう面にも光を当てまして、全体として人間の尊厳ある生活に考 慮をしていく科学としての意義を位置づけるべきであるということを記述をしておりま す。  5ページからは個別領域になりますので項目だけご説明させていただきますと、一つ は5ページに始まります「健康科学研究の推進」という関係でございます。これは生命 科学の関係でございますとか、次のページに参りましてQOLの問題でございます。2 番目は少子高齢社会への対応とノーマライゼーション、3番目が「根拠に基づく医療等 の推進と情報技術の活用」ということでございます。4が7ページに参りますけれども 「健康への脅威と生活の安全の確保」ということで、感染症の問題とか、食品の安全あ るいは化学物質問題等に触れております。9ページが医薬品と医療機器の開発と安全性 の確保、さらに「厚生科学の国際化」ということに触れているところでございます。 最後に10ページが方策の関係になりますので、10ページ以降について少しだけコメン トをさせていただきますけれども、まず全体的に大きな考え方として、三つの推進の考 え方を整理しております。一つは「EBM(根拠に基づく医療)の推進」ということで ございます。  これはEBMそのものが、新規の技術あるいは既存の技術につきまして評価を加えま して、それを医療現場に普及をしていく、そういう最新の科学技術の成果を医療現場に 常に提供をしていくという面と、もう一つは、国民が現在の医療の最新の状況あるいは 標準的な状況というものにアプローチをしていく。そういう両面ができるようにしてい こう、そういう形を実現するためにEBMを推進をしていこうというのが第1点でござ います。  第2点目は、厚生科学研究を総合的に推進するための、法制面も含めたシステムの検 討ということでございまして、こうしたEBMを推進をしていくためには、客観的な疾 病情報あるいは医療の状況についての情報の蓄積が必要なわけでございますけれども、 そういう情報を活用するためには、たとえばある個人の研究者の先生が蓄積した研究 データ、これは当然医療のデータでございますから、患者さんの個人データになるわけ でございますが、そういうものをなかなか他の研究者が共同利用するという場合には守 秘義務等の問題がかかわってくるわけでございます。  そういうものを、たとえば国民が安心するという観点ではきちんとした守秘義務が必 要になってまいりますし、また、その研究を推進をして、最終的には国民にその成果を 還元をしていくという面では、公共財として共同利用できるようなしくみも必要なわけ でございます。そういう面も検討していく必要があるだろうというのが第2点目でござ います。  第3点目は社会的、倫理的観点からの問題ということで、こういう調和の観点から、 ガイドラインの整備等の研究実施体制の整備を図ることが重要であるということでござ います。  研究費の配分等のところはまた後ほどごらんをいただくことにいたしまして、倫理的 観点のところだけごらんをいただきたいんですが、14ページをお開きいただきたいと思 います。 「社会的、倫理的観点からの研究実施体制の整備」というところがございまして、大 きく二つの事柄に触れておりますけれども、一つは「倫理委員会の審査準則の制定と自 主審査体制の充実」ということでございます。  現在、遺伝子治療につきまして、当部会におきましてご審議をいただいているわけで ございますけれども、ここにございますように、一つには症例数が蓄積をしていきまし て安全性がある程度確認をされる。そして、そういう治療法が普及をしてまいりますと それを全部個別審査をしていくということは、今度はかえって治療そのものをおくらせ てしまうというようなこともございますので、むしろそうした問題については準則とい うものをきちんと制定をして、自主審査の充実を図る。その準則に準じてきちんと審査 がされているかどうかについて公的なチェックのしくみをつくったらどうかというのが 第1点目でございます。  もちろん症例の少ない、安全性の確立されていないものについては個別の審査を継続 しなければならないのではないかというような考え方が当然出てまいりますし、きょう もご審議ございましたように、部会長からも木村先生からもお話がございましたが、あ る程度、たとえば同意書などにつきましては、これまでこの場で吟味検討いただきまし た成果を反映をして、共通の枠組みを活用していただくということがどうしても必要だ ろうと思っておりますし、きょうの中のご議論にもございましたけれども、現在は遺伝 子治療についてご審議をいただいておりますけれども、生殖医療関係の技術については この領域に入っておりませんので、本日、ES細胞の問題などもございますけれども、 そうした点についても何らかの枠組みが必要ではないかというようなご議論があろうか と思いますので、そうした点について、今後この審議会の場で検討していただければよ ろしいのではないかと考えているところでございます。  それからインフォームド・コンセントの徹底ということで、特に医学水準の向上とい うのは、研究技術とともに、患者あるいは国民の皆さんが安心してそれに参加をできる ということが非常に重要でございますので、そういう枠組みを整えていく必要があろう ということでございます。  以上簡単でございますが、状況をご報告させていただきました。 ○高久部会長 この部会報告案につきましては、研究企画部会で何回にもわたって議論をされておら れます。この中にも、研究企画部会にも属しておられる委員の方が2、3名いらっしゃ いますが、そこでかなり議論をしていまして、その後審議会に出るわけですね。総会に 出てということになると思います。 ○事務局  去る19日研究企画部会部会が開催されまして、この案に基づいてご議論がございまし た。現在、部会長のもとで最終的な集約をしておりまして、5月10日に予定されており ます厚生科学審議会総会において、研究企画部会からの報告として提出される予定でご ざいます。そこでご議論の結果まとまるようであれば、厚生大臣に対する答申として取 りまとめられるのではないかと思っております。 ○高久部会長 今日は時間の関係もありますので議論いたしませんが、ご意見がありましたら、事務 局の方にお伝えください。 ○木村委員 いまの一番最後の14ページのところ、これは大変大事な、今後の厚生省の推進方策、 全般的にいいますと、これもいろいろ言いたいことがあるのでございますが、それは略 しまして、倫理的、法的、社会的問題その他につきましてまとめていただいたわけです が、倫理委員会の審査基準、「審査準則の制定と自主審査体制の充実」という趣旨はま ことに賛成なんですね。しかし、ここは非常に重要な、いままでのコンセプトの、われ われが遺伝子治療という人類未踏の分野に取り組んでいるコンセプトの変革にかかわる 問題がちょっとここに出てくるんですね。 ですから、その点で、そういうことが必要であるということはいいのかもしれません が、安全性が確認されてきたので、それに個別審査は非常に煩雑であるというご意見か ら、国においては一々個別の審査をしないという方向を打ち出したいというふうに読み 取れるわけですが、これはやはりわれわれ、この中にも出ていますように、国際的な協 調、協力という点から考えますと、いま国の審査を個別的にやめている国は一つもない わけですね。 たとえばアメリカの場合も、今日ご配付いただきました資料、大変いい資料をつくっ ていただいて、「遺伝子治療臨床研究に関する指針等」をごらんいただけばわかるんで すけど、確かにRACでの審議は省略した形になっておりますが、FDAのガイダンス に従って、体細胞治療と遺伝子治療に関する審査を全部やっているわけです。GTAG ジーン・セラピー・アドバイザリーグループ、イギリスもそうですし。  ですから、これはローカルなコミッティーを充実させていくということは大賛成です し、そういう方向に厚生省がぜひ歩み出していただきたい思いますが、遺伝子治療申請 につきましては、現段階で国による統一審査を外している国はないので、そういう観点 から、よほど注意しませんと、日本がそれを取っ払っていち早く、これをローカルなコ ミッティーに遺伝子治療を任せたということになりますと、国際的なハーモニーという 観点から非常な問題が起きてくる。  アメリカもイギリスもその他の諸国もナショナルなレビューをきちんとした上で、そ れをスピードアップするために、たとえばFDAの場合は30日とかそういう形でスピー ドアップして、イエス、ノーをはっきりさせて、非常に中身に問題のある場合にはRA Cで審議するということになっているわけでございますので、その点につきまして、あ たかも遺伝子治療の個別審査につきまして、国が、いわばローカルの施設にその決定を 委ねるかのような方向性というのは、きわめて国際的に問題のある方向性になるのでは ないかというふうに理解しておりますが、その点いかがでしょうか。 ○唐澤室長  木村委員からいただきました御意見のような趣旨でございますので、個別審査を直ち に廃止をするということではございませんで、普及したものについては審査の充実をど ういうふうに考えていくか、症例の少ないものについてはきちんとした審査をしていか なければいけませんし、もちろんそれを、あるいは生殖医療の問題をどういうふうに考 えていくかということで、すぐにそうした方向に移行できるわけではないと考えており ます。  むしろこの部会などで大いにご議論をいただいて、金城委員の「遺伝子治療臨床研究 に関する指針」みたいなものはこれだけでいいのかというようなご意見もございました ので、そういうものも含めて幅広に、少し先生方の間でご議論をいただいて、何らかの 意見の一つの方向というものが出た段階で、将来どうするかというようなことを検討し たいというようなことでございます。 ただし、非常に普及が早くなってきておりますので、少し将来のことも考えてご議論 をいただいてはどうかという趣旨でございまして、先生のおっしゃっているような誤解 を受けないように、文章面でも工夫してみたいと思っております。 ○高久部会長 総会に出ますので、そのときに十分にご議論をしていただければと思います。 事務局のほうから連絡事項があると思いますけれども、よろしくお願いします。 ○事務局 次回の日程につきましては机上に配付しておりますとおり、5月、6月の先生方のご 都合をお伺いしておりますので、調整の上、事務局で決めさせていただきたいと思いま す。以上でございます。 ○高久部会長 きょう、もし日程がご記入できれば、お書きになって置いていっていただければと思 います。  ちょうど時間になりましたので、本日の部会はこれで終了させていただきます。いろ いろご議論いただきましてどうもありがとうございました。                                     −了− 問い合わせ先 厚生省大臣官房厚生科学課 担 当 須田(内線3804) 電 話 (代表)03-3503-1711 (直通)03-3595-2171