審議会議事録等 HOME

医療保険福祉審議会 第48回制度企画部会議事要旨


1.日時及び場所

平成11年4月26日(月)15:00〜17:05
厚生省共用第23会議室

2.出席した委員等

金平、井形、磯村、糸氏、大宅、塩野谷、高木、高秀、鴇田、堀田、若杉の各委員
岡本、鳴神の各専門委員

3.議題

(1) 高齢者医療制度等の見直しについて
(2) その他

4.審議の概要

1)はじめに事務局より、「高齢者医療に対する公費負担のあり方に関する参考資料」について説明があり、その後、発言及び質疑応答が行われたが、その概要は以下のとおりである。

(金平部会長)

○ 本日の資料「高齢者医療制度改革に関する主な議論(論点ごと)」にある各委員の発言要旨は、どのようにまとめたものか。

(事務局 川尻老人保健福祉局企画官)

○ 今年に入って行われた2回の部会の各委員の発言要旨をまとめたものである。

(塩野谷委員)

○ なぜ、今年の2回分だけの発言要旨なのか。この2日分の要旨では議論を進める上で助けとならない。今までのものも全部要約してほしい。

(事務局 川尻老人保健福祉局企画官)

○ 昨年の11月に意見書を取りまとめたが、それまでの各委員の意見は意見書に集約されているものと考えており、意見書取りまとめ後の第2段階に入った議論ということで制度モデルA、Bについての各委員の意見を集約した。
(堀田委員)
○ 制度モデルA、Bについてとは別に、全体を通しての考えとして、今後の30〜40年は、若年者が少なく高齢者が多いという人口構成逆ピラミッドの異常事態が続くので、所得税とか間接税とかでなく国有財産を処理した費用を充てるなど特別な措置で公費を入れてもよいと思う。
○ 公費負担をどうするかという議論の前に、医療の無駄を省くことを大前提に考えれば、命の問題であり、必要な医療費がかかるものは仕方ない。
○ 若い人にこれ以上負担をかけないということになると、特別なお金を入れざるを得ない。しかし、この場で議論しても合意できるはずもないので、ここでは、最大限医療の無駄を省くこと、必要な負担はきちんとすること、負担については負担世代の生活、意欲を破壊しない程度にとどめること、という位の合意でよいと考える。

(鴇田委員)

○ 公費負担の話に入る前に、私の考え方に基づいて事務局に試算を依頼した資料について説明したい。

(事務局 井口老人保健福祉局企画課長)

○ 鴇田委員を含め、3人の委員から関連試算の要望があったので、これらを一括して説明した後に一緒に御議論いただければと考える。

2)事務局より、「制度モデルA(鴇田委員の求めによる試算)」、「制度モデルB(若杉委員の求めによる試算)」、「制度モデルA及び制度モデルB(本間委員の求めによる試算)」について説明があり、その後、発言及び質疑応答が行われたが、その概要は以下のとおりである。

(鴇田委員)

○ 具体的なモデルを作らないとイメージが湧かないので事務局に試算を依頼したが、厄介な計算を試みてもらったことに敬意を表する。
○ 私の提案するモデルA′は、糸氏委員の提案する制度モデルAを変更したものである。
○ 案の内容については、糸氏委員の案が75歳で自己負担5%、残り95%のうちの5%を保険料、残りを公費という考え方に対して、年齢は65歳以上ということで介護保険との整合性を保つこと、それから65歳以上と現行の70歳以上との間にひとつ幅を持たせて、保険料は1割で共通であるが、自己負担は65歳から70歳までを2割、70歳以上を1割と年齢で刻んで2段階としている。
○ 試算結果は、長瀬効果を用いて試算したが、70歳以上は自己負担が7〜8%から10%に増えたため医療費がやや抑制されたが、65歳から70歳までは一律2割としたため需要が増加したため、相殺されて医療費の削減効果は大きくはない。
○ 公費負担については、保険料と自己負担以外は高齢者医療に関しては公費ということで計算してもらった。
○ 保険料については、サラリーマンの場合、60歳までは800万円支払い、400万円受療しているので、60歳の段階で支払い超過となっている。その後、生涯医療費は1700万円となるので、それではカバーできないが、現役世代からの拠出は、その限りでは許容できる。
○ 現在の現役世代からの拠出は、大幅に突出していて問題外とは思うが、ある程度の拠出は今言った意味では正当化できる。
○ 以前、フランスでたばことかアルコールについての目的税的なもので医療保険の一部をカバーするような事例があると紹介があったが、少なくとも、国鉄の年金の赤字をたばこ税で賄うよりは、疫学的にみてもたばこで健康を損なって医療費を増大させるという因果関係は明らかであるので、そういった意味では公費負担はいろいろな面を考えるべきだと考える。
○ 保険でやるか公費でやるかについては、堀田委員の言うように異常事態であるので、理論的な整合性にこだわらずカバーできるものは可能な限り充当するというような考え方で乗り切るしかないのではと考える。
(若杉委員)
○ 我々は国保グループへの公費の重点投入を主張していたので、試算結果では、平成12年度推計の1人当たり市町村国保の保険料が、現行6.3万円が7.0万円、平成22年度推計は現行11.5万円が12万円と若干増加しているが、平成37年度推計は現行27.2万円が24.9万円と相当減少しているので、長期的にみて効果が現れていると考える。
○ 一方、平成37年度推計の政管健保の1人当たり保険料は、現行44.7万円が47万円と負担増となっているので、政管健保への公費投入を増やすとか被用者グループ内の財政調整が対策として考えられる。
○ 注目してほしいのは、平成37年度の公費負担の合計額が現行29.42兆円が29.36兆円と下がっている点である。国保に5割投入しても現状よりは公費投入が小さくなる。
○ 我々はかねてから、現在の個人負担のバランスをあまり崩すことなく、全体として公費のトータルを変えずにやれないかということを申し上げてきたので、長期的にみると我々の期待している姿に近い。
○ 堀田委員の「一時的なもので公費で切り抜ける」という発言については、数年間ならば公費オンリーで切り抜けることもできるが、30年位の長期となると一時的な現象と捉えるには長すぎるのではないか。

(井形委員)

○ 今のモデルについて、医療費の伸びをどれくらいとして計算し、GDPの変動や高齢者の雇用率などが変数に入っているのか質問したい。
○ この部会でやろうとしているのは、無駄を省いた合理的かつ理想的な医療制度を作ることを議論するわけで、その上で、負担できるのは自己負担、国庫負担、保険料以外にはあり得ないと考える。
○ 無駄を省いたベストな医療制度を行えば、今の医療費の伸びが若干抑えられることは確実だと思う。

(事務局 太皷地保険局調査課長)

○ 今回の試算も1月28日の試算と同様に、1人当たり医療費の伸びは一定の前提をおいているが、前回の試算と同様に平均的に4%程度としている。
○ 標準報酬等についても、制度モデルBに書いてあったように2.5%と仮定している。
○ これらの数字はいずれも、積極的な意味を持っているのではなく、医療費については、平成9年の国民医療費の将来推計を発表したときと同じ前提を、標準報酬は公表されている年金の財政再計算と同じ前提を使った。

(糸氏委員)

○ これからの高齢者医療を考える上では、いくつかの基礎的条件について、もう少し検討する必要がある。
○ 第一に、高齢者の人口の推移を的確に把握すること。
○ 二番目に、介護問題について、介護保険を将来的に合体させるのかどうか。
○ 三番目に、現役世代の拠出金について現役の制度が崩壊しかねないと言われているが、現役世代が高齢者世代を連帯して支えるという理念は老人保健制度創設当初から今日まで続いており、仮に高齢者だけでやれといってもできない話であるので、保険者の財政状況をもう一度洗い直してつまびらかにすることも条件ではないかと考える。
○ 医療費の無駄については、生存権に関わる可能性もあるが、どういうものが医療費の無駄か国民的な合意を得る必要がある。
○ 終末期医療は高齢者医療費のかなりの部分を占めるが、これをどの程度にするかの国民的合意を得なければ、医療担当者1人では決められない問題である。
○ 高齢者の医療費が減るかについては、ここ20〜30年は毎年50〜60万人高齢者が増えていく現状を考えると、増える率をできるだけ平坦な方向に抑え込むということが我々のできる精一杯なところではないか。
○ 制度モデルAで我々が指摘したように、圧倒的に高齢者が増えていく中で介護保険と同じように後期高齢者に焦点を当てて老人医療を考えていくべきではないかと考える。

(堀田委員)

○ 非常事態と言っても、制度であるので何十年単位で考えるべきで、30年、40年という期間は、やはり一種の特別期間だろうと思うし、それが過ぎた後は全部一本化していく方向に移行する。保険とは本来そういうものである。
○ 一本化していく方向での移行しやすさという観点で考えれば、制度モデルAの方が移行しやすいし、高齢者全部合わせてやるという制度の方が、考え方として保険制度、国民全体で問題を解決するという考えに沿うと考える。
○ 所得捕捉でクロヨンの問題があり、一緒にやるのに抵抗感があるのは理解できるが、その問題は税の問題、納税義務履行の全体の問題に関わることであり、そちらで解決すべき問題ある。
○ 若杉委員の案で、例えば組合健保の1人当たり保険料が平成37年に現行の46万円が43万円になるいうことで、現行よりはましであるとのことだが、企業の方で半額負担ができるのであろうか。
○ 個人の負担の観点からみても、平成37年の32万円とか30万円台の国保の負担というのは、およそ、生活維持、意欲ある生活を送るという点からしても考えられない。
○ 介護保険についても、高齢者の1ヶ月の保険料負担が2,500円とか市町村によっては6,000〜7,000円という試算をしているところがあるが、いずれにしても、年金生活者から悲鳴が上がっており、非常な不安を持っている。そういう実態を踏まえて、将来の試算でも、1人当たり保険料が30万円台、40万円台などおよそあり得ない。
○ そのような観点からみると、鴇田委員の案は平成37年度でも大体20万円台位にとどまっており、この辺が実際に限度かなという気がする。

(若杉委員)

○ 今の堀田委員の発言の中で、鴇田委員の案は平成37年度でも20万円位で、今のレベルからみると大した増加額ではないが、反面、公費負担は我々の考え方の29兆円から51兆円と22兆円増えている。
○ 保険料も税金も帰する所は国民一人一人にかかるわけだから、この22兆円を仮に保険料に直せば、どれくらいになるか厚生省に伺いたい。

(塩野谷委員)

○ それぞれの案が提案されているが、制度を変えればその負担関係が変わるだけであり、一方の負担が減れば他方は増えるという格好になるだけで、永久に収斂しない。
○ 違う観点から光を当てるということで、全国民医療費を3種の財源でどう負担しているかを考えてみると、ひとつの経験的なパターンがあり、老人保健制度が適用されている時代は、ほぼ安定的に保険料56%、税金32%、自己負担12%と6:3:1という比率で推移している。老人医療費無料化の10年間は税金の方が少し高くて保険料が低かった。それが今逆転しているが、ひとつの型が数量的、マクロ的に出来上がっている。
○ そのような観点から、A案、B案の将来像についてみると、前回の部会の資料「要求資料」の最後のページに「医療費の伸び率の増加要因(粗い試算)」という表で、現在から平成37年度までのA案、B案のパターンをみると、A案は4:5:1というように公費30%台が50%になる。
○ 今まで日本の医療費の中で税金が50%を超えるようなケースはなく、公費に非常なウエイトを置くようなものがあり得るかについては財政当局の話であるが、公費についてもこのパターンを基本に一応考えることができる。
○ それに対しB案は、保険料ほぼ6、公費3、自己負担1という現行のパターンをほぼ踏襲しており、将来、全体のパイは大きくなるがこれまでと同じ割合だから合意を得やすいと考える。
○ もし、割合を変えることになれば、負担が増す所からは抵抗を受けることになり、そういう意味でA案は実行不可能であり、大きなシェアの変更ができるか疑問を持つ。
○ 私はB案をよいと思うが、若杉委員が先ほど国保の方に公費を出せばいいと発言されたが、それを入れるとA案に近づいてしまうので、現行の比率を守るためには年齢調整というリーズナブルな仕組みを入れるべきと考える。
○ A案のよいところは年齢調整をアクセプトしているところだと思われる。 ○ 政策的決定の中には踏み込まないけれど、条件としてある程度推測できるものはパターンという論理であり、その点で6:3:1というものならばリーズナブルに実行できる。

(井形委員)

○ 私としてはA案の方がよいと思っているので、1人の人が若い時からどれだけ保険料を払って、どれだけ医療費を使ったかについてという出し入れの視点を入れてほしい。
○ 介護保険に虚弱老人というカテゴリーを作り、要介護にならないための給付をすることで、今までの健康保険には全くなかった予防給付という概念が入ったが、予防給付が明らかに医療費の抑制に役立つというはっきりしたものがあれば、医療保険の中に入れてほしい。
○ 情緒的な議論になるが、生活習慣に努力した人が後期高齢者まで健康に過ごしたとすれば、その時にかかる医療費は優遇されてよいのではないかと思う。

(高木委員)

○ 井形委員の発言では、若い人は全然貢献していないように聞こえるが、実態としては今でも多く出している。

(井形委員)

○ 若い時に医療費を使い、高齢者になっても使う人が一番望ましくないが、多くの場合、若い時に医療費を使った人は早く死んでいる。

(高木委員)

○ いろいろなケースがあるが、若い人が是認しない限りこのような制度は成り立たない。
○ 所得捕捉の仕組みが十分現実的に捉えられていない、重きを置かれていない中で負担と給付の関係について議論する場合、十分な議論にならないのではないか。

(磯村委員)

○ 健保組合が老健拠出金で苦労しているときに、一本化のような案を考えると不公平感がすごくある。突き抜け方式で自分の仲間の分だから支援しようということならばまだ理解が得られると思う。
○ 国保については、少しずつ民営化して最終的に民営化できれば、A案のような形でもいいかもしれないが、今の段階では難しいし、我々としてはB案を支持したい。

(鴇田委員)

○ 高齢者の受診率が高いので、ある程度抑制しなくてはいけないが、ある程度リーズナブルなところで自己負担率を調整しなくては、病院に行くなということになってしまう。
○ 若い人と高齢者の割合も、若い人の負担をあまりに重くすれば、民間保険が出来上がっていることもあり、どんどん離脱して民間保険に移行してしまう。
○ 現状では、保険者としての機能が期待できないので、保険者機能の強化に力点を置き、磯村委員の言われたように民間の血を入れることを本格的に考える時期にきていると思う。
○ 高齢者医療の問題については、ファイナンスの面だけでなく、受診の抑制とか、税と保険と自己負担の比率とか、世代間の負担の問題とか、保険者機能とか、多面的に考える必要がある。

(堀田委員)

○ 高木委員からクロヨン問題は現実的には難しいという発言があったが、やはり、あるべき姿をきちんと目指す、そのためにみんなで努力するという姿勢が大事であり、現実で難しいからという所から議論を出発することについては賛成できない。
○ また、なぜ塩野谷委員の言う6:3:1の比率が大前提になるのか、理論的根拠がわからない。現在、大きな問題があり先を見越して変えていかなければならない時に、現実で難しいとか、現実でこうなのだからでは議論はかみ合わない。
○ 過剰診療は絶対になくすという基本的な前提が必要なので、ここの部分は断固情報開示で、国民の審判を受けて過剰医療をなくすことが重要で、そのためにはカルテも全部開示してきちんとやるというような姿勢が必要と考える。

(事務局 太皷地保険局調査課長)
○ 先ほどの若杉委員の質問については、公費負担22.37兆円の差を平成37年の国民1億1,962万人で割ると国民1人当たりでは年間18.7
万円公費負担が純増になる。

(若杉委員)

○ それを保険料でカバーするとなると18万円足すことになり、例えば42万円になるということでよいのか。

(事務局 太皷地保険局調査課長)
○ 大体、そのような形になる。

(若杉委員)

○ 鴇田委員の案では皆負担が低くなるが、財源をどうするのか伺いたい。

(鴇田委員)

○ 財源については、保険料で払うのか一般税で払うのかの問題になるが、保険料で払うと賃金労働者により多くの負担が重くかかり、一般税で負担すればより広範な国民に負担が行くことになる。

3)最後に、金平部会長より、次回は5月17日(月)午後3時から厚生省特別第一会議室において、高齢者医療制度等の見直しについて審議する旨発言があり、閉会した。


照会先
担当者 老人保健福祉局 企画課 課長補佐 宮本 直樹 内線3917


審議会議事録等 HOME