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表1 ワクチン別副反応報告数 (平成9年4月〜平成10年3月) |
(参考)ワクチン別接種者数 (平成9年1月〜12月) |
ワクチン |
症 例 数 |
副反応件数 |
D P T |
270例 |
274件 |
D T |
40例 |
40件 |
麻 し ん |
107例 |
125件 |
風 し ん |
55例 |
55件 |
日本脳炎 |
106例 |
106件 |
ポ リ オ |
16例 |
16件 |
B C G |
80例 |
80件 |
計 |
674例 |
696件 |
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ワクチン |
接種者数 |
D P T |
4,800,174 |
D T |
1,025,644 |
麻 し ん |
1,116,218 |
風 し ん |
2,084,625 |
日本脳炎 |
4,204,981 |
ポ リ オ |
2,346,628 |
B C G |
2,564,350 |
計 |
18,142,620 |
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※ 症例数は副反応が起こった人の報告人数であり、副反応件数はその人数に対する副反応の発生数(重複あり)である。
ワクチン別副反応報告数 (平成6年10月〜平成10年3月) |
(参考)ワクチン別接種者数 (平成6年〜平成9年) |
ワクチン |
症 例 数 |
副反応件数 |
D P T |
640例 |
668件 |
D T |
99例 |
101件 |
麻 し ん |
429例 |
532件 |
風 し ん |
296例 |
305件 |
日本脳炎 |
258例 |
265件 |
ポ リ オ |
36例 |
36件 |
B C G |
166例 |
176件 |
計 |
1924例 |
2083件 |
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ワクチン |
接種者数 |
D P T |
18,621,742 |
D T |
3,422,909 |
麻 し ん |
4,230,802 |
風 し ん |
6,589,923 |
日本脳炎 |
16,843,140 |
ポ リ オ |
9,251,307 |
B C G |
9,714,375 |
計 |
68,674,198 |
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※ 症例数は副反応が起こった人の報告人数であり、副反応件数はその人数に対する副反応の発生数(重複あり)である。
II 各 論
1.DPT,DTワクチン(表2ー1〜3参照)
報告されたDPT,DTワクチン接種後の副反応件数は314件で、このうち基準外報告は112件(35.6%)であった。日数別に見ると314件中296件(94.2%)が接種後3日以内に副反応ありと報告された。年齢別に見ると0歳が57件、1歳が64件、2歳70件、3歳52件が特に多く見られた。
報告された副反応でもっとも多かったのは接種局所の異常で124件(39.4%)であった。接種後の副反応で入院を必要としたのは12件(3.8%)であった。このうち7件がけいれんである。局所の腫脹、発熱が各々1件である。これらを含めて副反応の回復率は62.4%であるが、これは回復したという報告の単純計算で、報告時に追加報告のない例がみられた。
報告時に未回復と回答されたのは局所反応の25件と全身じんましん1件,発熱3件,基準外18件の47件であった。
アナフィラキシーと報告されたのは8件で3歳の4件、4歳の1件,12歳の3件であった。
けいれんは15件が報告された。このうち6例が無熱性けいれんであった。
後遺症を残し回復していないと報告されたのは1例で基準外報告で局所反応である。
重篤な副反応と報告されたのは2件で1件は,けいれんであったが回復したと報告された。1件は基準外報告で局所反応であるがこれも回復したと報告された。なお、DT接種後1例死亡例が報告された。2歳11カ月の女児で接種後4日目夕刻に発熱、口唇チアノーゼ、嘔吐があり、翌朝死亡した。因果関係は不明とされた。
また、11カ月の女児と4歳の男児に1例づつ無菌性髄膜炎が報告された。前者が接種翌日の発生であり、後者は接種後4日目の発生でこれは夏かぜウイルスによると報告されている。
2.麻しんワクチン(表3ー1〜3参照)
麻しん副反応報告総症例数は107例であった。報告件数は125件となった。74件(59.2%)が24時間以内の副反応であり、1〜3日4件(3.2%)、4〜7日15件(12.0%)、8〜14日26件(20.8%)15〜28日3件(2.4%)、29日以降2件(1.6%)であった。
1歳85例、2歳20例、3歳6例、4歳6例、5歳3例、6歳1例であった。
神経合併症では、熱性けいれんが9例いずれも3日目から10日目の間に発症している。1歳男の3日目の無熱性けいれんが1例、11歳男の7日目のけいれん、意識混濁が1例あった。1歳女26日目発熱、27日目にけいれんから急性脳症が1例あり、第1報告の時点では回復していない。また、4歳男の1年6月後のSSPE例が報告された。
アナフィラキシーが20例、すべて24時間以内の発症であった。急性じんましんが30例で1例を除いてすべて24時間以内の発症であった。
発疹は33件報告されているが、確実にアレルギー反応と思われる24時間以内の発症は20件であった。一方、麻しんワクチンウイルスの増殖に伴うと判断される4〜7日あるいは8〜14日の発症は合わせて12件であり、そのうち10件は発熱を伴っていた。
局所反応は1件のみであった。
その他に分類された2例は、いずれも急性血小板減少性紫斑病で1例は1歳女8日目発症、もう1例は1歳男22日目の発症で、いずれも入院し、回復している。
死亡例はない。
3. 風しんワクチン(表4ー1〜3参照)
報告された風しんワクチン接種後の副反応件数は55件(男22件、女33件)で55症例が報告された。基準外報告はそのうち5件(9.0%)であった。
日数別にみると副反応の発生の43件(78.1%)が24時間以内の発生であった。その内訳はアナフィラキシー16件(45.7%)、全身じんましん19件(54.2%)である。また即時型全身反応が35件(63.6%)を占めていた。その他はけいれん2件(有熱1件、無熱1件)、その他の神経障害2件(注射側の手のしびれ2件)、その他の異常反応(発疹、局所反応、その他)で11件(20.0%)となっていた。24時間以降の報告例は12件、重篤なものとしてはけいれん1件のみであった。
副反応の男女比は0.6で多少女児に多かった。また年齢別では1歳12件(21.8%)、2歳12件(21.8%)、3歳8件(14.5%)、4歳3件(5.4%)であった。5〜9歳10件(18.1%)、10〜15歳10件(18.1%)となっていた。約6割が低年齢であった。
予後別にみると15件(27.2%)が治癒、入院15件(27.2%)、後遺症なしとなっている一方、無記入が12件(21.8%)にみられた。報告時点で回復していない症例が3件であるが詳細は不明である。
今回も風しんの自然感染にみられる脳炎、脳症をワクチンで発症した例は認めていない。
4.日本脳炎ワクチン(表5ー1〜3参照)
報告された日本脳炎ワクチン接種後の副反応は症例数106例(副反応106件)である。
最も多い副反応は即時性全身反応で39件ありそのうち17件はアナフィラキシー、22件は全身じんましんであった。アナフィラキシーの全例、全身じんましんの大部分は24時間以内、5件は1〜3日以内に発症した。次に多かったのは39℃以上の高熱
23件で、多くは24時間以内、少なくとも3日以内に発症しそれ以後の発症は1例にすぎなかった。
重篤な副反応である神経系副反応が今回多く、脳炎.脳症が3件あり、24時間以内1件、1〜3日に2件発症した。さらにその他の神経系副反応としてけいれん3件、その他の神経障害2件が報告された。
脳炎・脳症の4例をみると、何れもその詳細は不明であるため解釈が難しいが、4例の内1例は急性脳炎とし、ADEMの可能性も否定出来ないと報告している。しかしこの例は接種翌日鼻汁、発熱頚部リンパ節腫張、嘔吐、頭痛などに引き続いて5日目に項部硬直の為入院しており、接種直後に鼻汁など上気道症状があるので紛れ込み脳症の可能性も否定できない。その他ADEMと診断された報告例は1例、ADEM疑い例が1例があり、さらに、3歳6カ月男児で接種後2日目発熱、4日目呼吸障害を呈し、心肺停止状態で運ばれ死亡した症例があり、現在、病理的研究の報告が1例あった。
けいれんをみると無熱性半身けいれん1例、発熱を伴い全身けいれん後一過性の運動失調を伴ったけいれん1例、持続する熱性けいれんのため入院した1例の合計3例が報告された。
その他の神経障害として分類した3例は、1例はADEMの既往歴があり接種8日目にワクチン後視神経炎を来した例と他は接種当日接種側の上肢に一過性のしびれと運動麻痺を来した例である。
今回全身発疹はなく、異常局所反応は2件報告され、遅くとも3日以内に発症した。
32件は基準外報告で軽度の発赤、腫張などの局所反応は19件、微熱などの全身反応、その他はそれぞれ7件、6件であった。
5.ポリオワクチン(表6ー1〜3参照)
報告されたポリオワクチン後の副反応は16件(男9件、女7件)であった。報告症例数も16例である。
免疫不全のない症例で麻痺様の症状をきたした症例が3例(18.7%)認められた。その内2例の回復が確認されているが1例は未確認である。日本ポリオ研究所ロット番号33番1例、36番2例であった。
その他の異常反応として、服用後にアレルギー反応(じんましん、くしゃみ、下瞼の腫れ、喘鳴、顔面蒼白)をきたした症例が8例(50.0%)報告された。ロット番号36番5例、37番3例であった。
基準外報告は5例であった。16件中10件は24時間以内、1〜3日1件、4〜7日1件、8〜14日3件、15〜28日1件であった。報告の時点で回復していない症例が2件であったが、その後の追加報告はされていない。死亡例が1件あったが、主治医の記載ではワクチン服用の翌日でありポリオワクチンに関係なく、細気管支炎の疑いと記載されている。
6.BCGワクチン(表7−1〜3参照)
報告されたBCGワクチン接種後の副反応件数は80件(基準外報告4件を含む)であった。性別では男52件、女28件と男児が多かった。
年齢別には0歳52件(65.0%)、1〜4歳23件(28.7%)、5〜9歳4件(5.0%)、10〜15歳1件(1.2%)と乳幼児の被接種者が多かった。
副反応の種別では、腋窩リンパ節腫脹63件(78.7%)が最も多く、次いで接種局所の膿瘍・潰瘍5件(6.2%)であり、その他の異常反応として腋窩以外のリンパ節腫脹が5件(6.2%)あった。ほかに皮膚結核様病変が2例、それに全身性播種性BCG感染症が各1件みられた。
腋窩リンパ節腫脹例63件の大半(62件)が乳幼児で、特に0歳が46件(73.0%)を占めていた。他では5〜9歳が1件、10〜15歳では皆無であった。その発生時期は8日〜1カ月が18件(28.5%)、〜2カ月で累計47件(74.6%)と大半がこの時期までに発生していた。遅い者では3カ月を越えるものが5件あった。報告時点までの回復状況が知られた48件のうち「回復している」が19件、「未回復」が29件であった。経過中に入院した者が7件あった。
腋窩以外のリンパ節腫脹は1歳4件で0歳(1件)と比して多く、経過中入院した者が2件であった。
接種局所の膿瘍・潰瘍は5件中3件(60.0%)が0歳、他の2件(40.0%)が5歳以上で、発生時期は接種後4日〜1カ月(3件)から〜4カ月(1件)、6カ月以後(1件)の間に分布している。6カ月以後の例は「ケロイド」の症例であった。回復状況の知られた4件のうち「回復している」が2件、「未回復」が2件であった。
全身性播種性BCG感染症の1件は(後天性)細胞性免疫不全症候群と考えられる6歳女児に起こったもので、接種後1カ月後に高熱で発症し、血液からBCG菌を検出したものである。接種後1年半の時点で本児は非結核性敗血症にて入院治療中である。皮膚結核様病変の2件のうち1件は0歳男児に接種後1カ月に全身性水疱形成を発症したものであり、その後症状は消失している。他の1件は6歳女児に接種後2週間頃に接種部位と同側上肢に水疱を伴う発疹を生じたものである。