99/03/15 第34回年金審議会全員懇談会・総会議事録 第34回年金審議会全員懇談会・総会議事録 日 時 平成11年3月15日(月) 15:00〜18:00 場 所 厚生省別館共用23会議室 ○ 全員懇談会 1.開会の辞  2.委員出席状況報告  3.議 事    ・国民年金制度及び厚生年金制度並びに年金積立金の運用の改正について 4.開会の辞   ○ 総 会  1.開会の辞  2.議 事  3.・国民年金制度及び厚生年金制度並びに年金積立金の運用の改正について    (答申)  4.閉会の辞 出席委員   京 極 会 長   岡 崎 委 員  砂子田 委 員  木 原 委 員  神 代 委 員   坂 巻 委 員  都 村 委 員  富 田 委 員  福 岡 委 員   桝 本 委 員  宗 岡 委 員  山 田 委 員  山 根 委 員   吉 原 委 員  渡 邊 委 員  貝 塚 委 員  船 後 委 員 ○会長  ただいまから、第34回年金審議会全員懇談会を開会いたします。  まず、事務局から本日の出席状況の御報告をします。 ○事務局  本日は国広委員、久保田委員、高山委員、目黒委員が御欠席でございます。木原委員 は少しおくれてお見えになるということでございます。なお、貝塚委員も少しおくれる ようでございます。以上でございます。 ○会長  それでは、全員懇談会の議事に入ります。  本日は、先週金曜日に行われました年金制度改正案に関する諮問につきまして、引き 続き審議を行い、できれば本日中に答申まで行いたいと存じます。金曜日の審議会では 給付水準、60歳台後半の在職老齢年金、報酬比例部分の支給開始年齢の引上げ、国庫負 担割合の引上げ、保険料の凍結、国民年金の未納・未加入対策、総報酬制、厚生年金基 金、年金積立金の自主運用等につきまして幅広い御意見をちょうだいいたしました。  本日は前回御欠席であった方々、前回の審議会でまだ十二分には言い尽くしていない という方々の御意見をまずお伺いいたしまして、それから答申案の作成作業に入りたい と存じます。  それでは、御質問、御意見などをお願いいたします。 ○A委員  改正案の要綱に沿って、私の意見を述べさせていただきたいと思います。年金額の改 定のところ、これはこんなものかなと。7.5が5%引き下げられ−7.125、これもいたし 方がないことと考えております。 裁定後の基礎年金・厚生年金の改定方式の変更でございますが、これは最初の案では たしか乖離幅が80%となっておったんです。私は80%という数字が非常に気に入りまし て、80%ならいいなというふうに前から思っておりましたので、非常に結構だと思って おったのですが、それがなぜが「乖離が過大にならないよう」にという表現に変わって しまった。やはりここは本当は何か数字があった方が受給者が安心するのではないか、 そんな気が少ししております。 それから、支給開始年齢の引上げ、これも前からいろいろ議論がありましたが、これ で結構だと思います。 それから、60歳台後半の在職老齢年金制度の導入、これもいたし方ないと。 国民年金保険料の半額免除制度。 学生の保険料納付の特例、これも大変結構ではないかというふうに考えております。 その次の育児休業期間中のも結構だと思います。 その次の8番の費用負担でございますが、これは国民年金も厚生年金保険も現在の経 済情勢を見る限り、いたし方ないとは思うんですが、何か非常に残念な気がしておりま す。できるだけ凍結の期間が早く溶けてほしいと、このように私は考えております。  標準報酬の改定はこれでよろしいと思います。  総報酬制の導入ですが、これにつきましては、私がかねてから何回も発言してきたの ですが、月々の報酬と賞与というのは関係があるようで関係がない。あるいは非常に恣 意的に変えられる。 恣意的に変えられるということで新しいこういう形をとられたわけですけれども、これ でもやはり問題は起きてくるということは指摘させていただきたいと思います。つまり 62万円を超える月々の報酬をもらっている方が、例えば賞与を月割りにしてしまって月 収の方に入れてしまうということをすると、月々の標準報酬は変わらないで、そして賞 与は非常に少ない額になってしまう。つまり、それで厚生年金保険料がトータルで少な くなるということを考えるところも当然出てくるだろうと思います。それもいたし方が ないかなと思います。  今度考えられたこの形が事務的には比較的やりやすいのではないかと考えております が、ただ、余り詳しくは検討しておりませんけれども、若干数理計算上ややこしい問題 が出てくるのではないか。賞与というものが非常にバリアブルな要素が大きいわけです から、何か計算上問題が出てくることがあるかなと、若干その辺危惧しております。  あと、基金制度につきましては、本体が凍結になるのですから、免除保険料等の凍結 はやむを得ないと考えております。  規制緩和も長いこと議論されてきているわけでございます。  その他の中で、2番目の「基金間の権利義務の承継」、過去にこういう権利義務を承 継したいというような事例が現実にそういう希望があったのでしょうか。その点だけ御 質問させていただきたいと思います。  あと、年金積立金の自主運用以下はこのとおりで結構でございます。以上でございま す。 ○事務局  8ページの3.その他、(2)の基金間の権利義務の承継についてでございますが、過 去に例があったかというのは、これまでは、例えば2つの企業が合併する場合、それぞ れが今までは別の総合型の基金に加入していた。その場合、合併しますとどちらか一方 になりますので、吸収される方がそれまでの基金を抜けて別の基金に行きたいというお 話がございました。これまではどうしていたのかといいますと、それまでの基金を一回 分割をいたしまして、基金を一たん設立し、その新設の基金と吸収する方の基金で合併 をするという手続きをとっておりましたが、法律的にはやや不備な、余り整備なされて いないような形でございましたので、今回手続規定を整備をするということでございま す。 ○事務局  それから、御質問ではなかったのですけれども、先ほどのスライドの方法で、80%と いう数字が消えているということについてちょっと御説明申し上げたいと思います。考 え方としては80%はもちろん維持するつもりでございますし、計算上の前提もそういう ことで財政再計算をしておるわけであります。けれども、これは与党の論議でもあった わけですが、全員が一律80%まで下がっていくような、逆な誤解を与えて、それはそれ で不安をあおるという指摘がありました。この賃金スライドは5年毎に過去の報酬を再 評価して行うものでありますから、今回の要綱で80%と書ききらなくてもいいのではな いか。賃金スライドの是非は財政再計算の都度考えるけど、80%がいわば底だというこ とでどうかということで数字が入っていない。そういうことで考え方は変わっておりま せんので、御参考までに申し上げます。 ○会長  B委員何か御発言ありますか。 ○B委員  前回、中座させていただいて恐縮でございました。幾つか述べさせていただきたいと 思います。  まず、国民年金と厚生年金につきましては、年金支給額の水準、賃金スライドの問題 支給開始年齢の問題、60歳台後半の在職老齢年金につきまして、世代間の負担の問題に 対応する施策として、私としては理解できるというふうに考えております。また、保険 料の据置きにつきましても現下の状況の中でやむを得ないものというふうに考えたいと 思います。  ただ、従来から日経連を中心に主張しております国庫負担の引上げについてはまだ不 十分と申し上げざるを得ないということで、今後社会保障制度全体の問題として継続し た論議が必要であろうというふうに思っております。  そのほか、育児休業中の保険料の免除でございますとか、学生の保険料の追納の制度 の導入、そういったことも評価できるというふうに考えております。  ただし、総報酬制につきましては、財源として不安定であるとかいろいろ問題がござ います。これは別問題かもしれませんけれども、国民年金のいわゆる空洞化問題が改善 されていない中での導入ということも含めて、我々企業人として納得しがたいものがあ るということを申し上げざるを得ません。  また、厚生年金基金につきましては、自主運用の規制撤廃についていろんな手だてが 講じられておりますことを評価したいと思います。企業年金への株式の現物拠出につき まして、年金財政あるいは企業財政双方にとって有効な対策になると考えておりまして 制度の枠組みの詳細につきまして、極力柔軟な設計になるように御努力をお願い申し上 げたいと思います。  そのほか、企業年金につきましては、申し上げるまでもなく長期安定的な運営ができ る年金制度を維持することが私どもにとって最大の視点でございまして、そういうこと を考えますと代行制度の返上も含めた見直しということはぜひ今後とも御努力をいただ きたいと思います。また、厚生年金基金と適格年金の相互移管の問題、これは企業の合 併その他ございます中で非常に大きな問題として、今後私どもとして大きな宿題になろ うかと思っております。こういう観点でもさらなる御努力をお願いしたいというふうに 申し上げたいと思います。 ○会長  C委員どうぞ。 ○C委員  私たち長いこと議論してきたことを具体的にこういう形で出していただいたことを大 変感謝しております。年金の給付の点については別に問題ないのですが、「給付水準の 5%の適正化」、「適正化」という表現をよく行政用語で使うんですね。これは一体ど ういう意味なのか。国民は「適正化」と言われてもよくわからないのではないかと思う ので、この辺がもうちょっとわかりやすい表現ができないかと思います。何か非常にあ いまいな言葉でどうにでも解釈できる意味がありますので、ちょっとここのところがひ っかかるものがございます。  それから、保険料の据置きにつきましては、私は個人的には反対でございますけれど も、これは皆さんの流れでございますから仕方がないのでありますけれども、基礎年金 の国庫負担の引上げと保険料の凍結解除の時期を同時に行うというところが5ページに 書いてあるわけです。「同時とし、できるだけ速やかに実施する」。2つを同時にやる ことになると、2つの期間が合わなければずるずる引っ張ってしまうこともあり得るの で、同時にやらなければならない意味というのは何かあるのかなという気がするんで す。この辺がちょっとひっかかるわけで、2つを一遍に納得させるのは難しいのではな いかという気がいたしますので、同時の意味を御説明いただきたいと思います。  それから、基金に株を時価で出すというのを認めるという、株のことはよくわからな いんですけれども、時の相場によって上がったり下がったりするものを基金の掛金とし て入れるというのは大丈夫かなというのがちょっと心配でございます。これはわからな いから心配しているのかもしれません。  最後は自主運用の、資金運用に当たる職員の責務を明らかにするという形で責任をと れということをきっちり書いているんですけれども、具体的にどういう責任をとらせる のか。「厚生大臣及び年金積立金の管理運用に当たる職員の責務を明らかにする」とか 違反に対して制裁処分を行うと書いてありますが、赤字を出したら厚生大臣はやめるの かどうかとか、この辺の責務をどういうふうに考えておられるのか、その辺もちょっと 伺いたいことでございます。 ○事務局  まず「適正化」という用語について御指摘いただきまして、これは確かに厚生省の行 政用語としてはよく使われることであります。年金のここでの使い方としては、下に書 いておりますとおり7.5という乗率を7.125にするということでありますから、引き下げ るということでありますけれども、考え方として、今回、将来のあるべき負担と給付の バランスをとるということで、給付の総額をある程度抑えて負担の限界も抑えようとい うことでバランスをとった。いわば給付、負担それぞれを適正な水準に一遍移し替える という意味で使ったわけでありますが、はっきり言いますと、7.5を7.125に引き下げた ということでございます。  それから、次の「同時」ということでございますけれども、ページでいきますと、5 ページの8.の(4)に書いていることでございます。これが入りました考え方といいます のは、保険料の凍結解除をいたしますと、そのときに、例えば厚生年金なら2%とか2. 数%、国民年金であっても凍結分を取り戻すには 500円以上の幅の引上げが起きる。そ のときに国庫負担の割合の引上げが同時に行われていれば、今度は例えば国庫負担を2 分の1上げることによって、国民年金・基礎年金であれば3,000円ぐらい下げる力があ る。厚生年金ですと1%ぐらい下に押し下げる効果があるということで、例えば2%上 げなければいけないところを1%下げる力があれば若干上げるだけで済むとか、そうい う意味で、この両者は同時ということが政策的判断としてもいいだろうということでこ ういう表現になったところでございます。  ただ、これについては法律事項とはしないで政策的な方向ということで書き残すとい うことになっております。法律でぎりぎり縛るということではありませんので、例えば 極論すると、どちらかが先行することが法律違反になるのかというところまでは縛って いないということが1つであります。また、この記述が永劫続くのかということであり ますけれども、これは今回の改正に際しての考え方でありますので、基本的には2004年 の次の再計算までに国庫負担を引き上げることと連動して私どもは読んでいるところで ございます。 ○事務局  ただいまのC委員からの現物拠出関係のお話しでございますが、8ページの(1)にあ ります。今回、厚生年金基金につきまして、有価証券による拠出を認めた趣旨は積立不 足をできるだけ早く解消をする。現実のこの経済実態を見ますと、それを全部キャッシ ュで持ってくるのは今なかなか大変だと。特に積立不足をできるだけ早く解消というこ とになりますとかなりの掛金が必要とされますので、持っている資産をもって拠出をす るという道も開こうという趣旨でございます。  先ほど値の動くものは大丈夫かというお話しございましたが、現実に現在の厚生年金 基金の運用の中では信託、投資顧問などに株式が直接入っているのもございます。大体 4分の1ぐらいでございますが、現実にもう入っているということで日々値が動いてい るわけでございます。したがいまして、拠出をする段階で値段の評価がきちんと客観的 かつ公正であるようにというところが大事なポイントだと思いますけれども、その辺は 上場株式ということで値付けが客観的になされるように私どもとしても配慮していると いうことでございます。 ○事務局  委員から御質問がございました自主運用事業に関します職員の責任に関する規定でご ざいます。私ども検討しておりますのは、いわゆる運用に携わる者の受託者責任という 考え方でございまして、いわゆる注意に関する義務、それから、保険料拠出者のために 運用するという忠実に関する義務というものを法令上規定するということでございま す。  したがいまして、そういった忠実義務・注意義務に違反するという場合において、委 員の御指摘がありましたような制裁規定なり懲戒処分なり働くということでございま す。運用そのものの結果に関しましては、市場環境なり、経済状況なりに規定されるわ けでございますので結果責任は問われない。その運用のプロセスにおいて、しかるべき 専門家としての注意をきちんと全うしたかどうかというところで責任が問われる、こう いう仕組みでございます。 ○C委員  それはだれがするのですか。 ○事務局  まず厚生省職員の場合でございますと、懲戒処分そのものは国家公務員法にもとづい て処分をするということになりますので、厚生大臣でございます。  それから、運用管理機関の方は、新しい運用管理機関に制裁規定という服務規定を設 けますので理事長が判断する、こういうことでございます。 ○会長  D委員、何か御発言ございませんか。 ○D委員  なぜ年金審議会がかくも異常な事態で、それに関するコメントです。連立政権下では いろんな変なことが起きるというのが世界各国いろいろありまして、ですから日本もあ る意味ではその事例ではないか。この審議会は行政府・厚生省からの委任を受けてやっ ているわけですが、行政府と立法府の関係、その辺のところが非常に複雑怪奇になりま して、今の状況は。したがって、私自身は、後は行政府・厚生省として、今の段階でこ ういう形で出されるという御判断であればそれを尊重するということです。内容につき ましてはまだ煮詰まってない部分、特に国庫負担の問題は私は文章をどういうふうに読 むのかよくわかりません。平たく言えば、税負担は上がるということが込みになってい れば、これはある意味では大きな問題になると思います。私どもがいろいろ議論したこ とは相当程度取り入れられているということはこのとおりでありますので、細かい点は ちょっと別でありますが、全体的には賛成いたします。 ○ 会長  それでは、E委員、御発言の準備が沢山あると思いますが、どうぞ。 ○E委員  会長からそう言われると。すいません、前回、包括的な意見を申し述べる用意が整っ ておりませんでしたので、きょう改めて申し上げたいと思います。一応誤解がないよう にというつもりで急遽欠席をせざるを得なかったO委員も含めて短時間ですが意見交換 をしてまとめてきたものがございますので、お差し支えなければ資料としてまずお配り をさせていただいた上で発言をさせていただきたいのですが、よろしゅうございましょ うか。 ○会長  どうぞ。                  (資料配付) ○E委員  今回出されております諮問された内容が広範囲にわたっておりますのでやや長めのも ので恐縮でございます。なるべく簡潔に御報告をいたします。  まず、「厚生年金・国民年金制度について」の項でございますけれども、年金水準の 改定についていろいろな局面からの新しい提案が出されています。1つひとつについて 申し上げますと、まず報酬比例部分の給付乗率を引き下げる、裁定後の給付額の賃金ス ライドを停止するという措置の導入には反対でございます。  これは現在の制度が将来に約束している水準をどう見るかということによるわけで す。現在の制度が将来の制度の成熟時に約束している水準は現役労働者の手取り賃金に 対して、年金の方もいろいろな負担が増えることを考慮して手取りで見るといたします と、幾つか仮定を置きますと、大体年収ベースで55%の代替率ということに相なりま す。ILOの基準というのは非常にあいまいなものですが、おまけにその条約を我が国 が批准していないという事情もございますけれども、ILOの基準は1つの国際的な指 標というように考えられると思います。また、ほかの国のケースというものも判断いた しまして、例えばドイツで言うと大まか6割ぐらいというように言われていることと照 らし合わせてみれば、むしろ低めともいえるようなものでございます。この水準を将来 受給する世代、つまり現在の保険料を負担している世代の将来に対して今約束する。せ めてこの程度の水準は保障するということは公的年金に対する信頼を確保する上で非常 に大事な条件ではないかというふうに考えておるところでございます。  よく水準というとモデルの金額での議論が多いのですが、実際にはモデルどおりにな る人は非常に例外的であって、大体平均的な給付水準はモデル金額の1割減ぐらいとい うふうに考えられます。若干ややこしい計算をいたしますと、現在の制度が将来に約束 している水準も、その意味では手取りで、モデルではなく実態ということで判断しよう といたしますと相当程度低いものでございます。それに加えて今回の引下げ措置をとり ますと、手取りで見た場合の実際の受給額の平均は代替率で見ると45%ぐらいまで下が ってしまうという推計が成り立ちますので、これはいくらなんでも公的年金としてはふ さわしくない水準ではないかと思います。  次にいわゆる別個の給付と呼ばれる部分を段階的に廃止して、65歳支給開始にしよう ということでございますが、これについても、私どもは賛成できません。前回の改正で いろいろ議論があった上でこれが残されたことはそれだけの経緯があると思います。今 後の60歳台の雇用就業を改善しようとしていく場合に1つのキーはワークシェアリング でありまして、特に短時間の就労、あるいは少ない日数での就労を希望する高齢者は大 変多くございますけれども、実際にはそういう受け皿はない。そういういわゆる部分就 労、部分年金というふうに呼べるような状態をつくっていく上でこの別個の給付は大変 積極的な意義を持っているというふうに私たちは思います。その意義を十分に発揮でき るのはむしろこれからなのではないか、そのように思います。  また、今という状況の中、雇用就業状況が本当に泥沼というか、なべ底というか、大 変な状態でございます。なかんずく高齢者の人たちの就業状況は非常に大変でございま して、ここで言われていることは将来のことだというふうに一応の説明はできるかもし れませんが、この時点でこういう制度改正を行うことは大変多くの人々に不安を呼ぶこ とになるだろうと思います。いわゆる年金と雇用の接続という条件がこの措置によって むしろ大きな不安を生むのではないかということで反対でございます。  それから、この65歳への支給開始年金の引上げとあわせて前倒し受給の減額率の問題 について言及がございますが、極めてあいまいな内容で、一体どのような数字へ改定を するのか、これは全く先送りでございます。今の減額率、すなわち5年前倒しで42%の カットでしょうか、非常に大きなものでございます。これは昭和36年国民年金制度が発 足したとき、まだ今のように長寿化していない時代の生命表で計算されたものがそのま ま、非常に長い間放置されているわけで、これを現状に合わせて改定するということは 前回改正のときにも非常に大きなテーマだったはずでございます。しかも、これは実は 2013年から問題になるテーマではございませんで、前回改正に従って特別給付の定額部 分が引上げられ始めるときからただちに問題になります。これは2001年、2年後から問 題になる。例えば、昭和16年、17年生まれというのは、定額部分は61歳支給開始という ことになるわけでございまして、60歳から61歳の間をつなぐというテーマがただちに出 てくるわけですから、これは今回見直さなければいけない。これは繰り返し私どもが主 張してまいりましたが、この点についてまた先送りしようという内容については決して 見過ごすことができないと思います。  次に「在職老齢年金」の問題でございます。今回の要綱の特徴は、現状の在職老齢年 金とはやや違うものを、60歳台後半層についても新しく導入しようと。かつて60年改正 の前にいわゆる「高在老」と呼ばれていたものがございましたけれども、それに近い形 のものだろうと思います。 しかし、むしろ現在の60歳台前半層の在職老齢年金制度自身が非常に問題がありまして ちょっとでも賃金収入がある被保険者になっている人について、ただちに年金支給を2 割カットするところからスタートする。これはいくらなんでも非常にひどい制度で、こ ういう重大な欠陥については厚生省御自身の中でもつとに問題になっていたはずでござ います。したがって、60歳台後半層の在職者を対象にした新しい制度を考えるよりも前 に、まず現行制度の欠陥是正を行うべきだというふうに考えます。  それから、その上に立って、今回の案をよく見ますと、在職老齢年金制度というもの が発足した当時の考え方、つまり本来なら年金もらっていない人に賃金が少ないから一 定程度の年金を出そうという趣旨よりも年金の減額制度ということに非常に大きく傾い ていると思います。そうであるとすれば、むしろいつか審議会でも議論が出ましたよう に、退職年金という伝統的な枠組みから老齢年金という枠組みへ年金のあり方そのもの を変えていくということを正面から議論すべきではないか。その上で高額所得の高齢者 に対する公的年金の給付制限というもののあり方を検討すべきで、私どもは給付制限一 切反対だと言っているのではなくて、今の在職老齢年金制度は全面的に見直すべきだと いうことを申し上げているわけでございます。これについては、公的年金の一元化とい うことを射程に入れると大変大事な問題なのではないか。そういう制度論の観点抜きに ただ給付を抑制するという観点からだけ部分的な制度変更をあれこれと重ねていくこと によって制度全体の歪みが広がっていくことを私たちは強く危惧いたします。  それから、連合の言うように、そういう給付制約、給付削減措置を一切やらなければ 将来の保険料負担はどうなるのかということがよく言われますけれども、私たちは改正 案要綱の示すような水準抑制を行わなくても将来の保険料率は厚生省の財政見通しが言 うほど高くなることはないと考えております。ちなみに非常に単純なモデルで計算いた しますと、2025年段階で月例ベースでは25%ぐらい、総報酬ベースで考えますと20%弱 程度にとどめることができます。これは基礎年金の公費負担率を半分に引き上げた場合 です。さらに従来から主張しておりますように、基礎年金を税方式に切り替えるならば 保険料率は月例で18%、年収比で言うと13.4%程度となるというのが私どもの試算結果 でございます。  次に基礎年金の国庫負担割合の引上げの問題と税方式について意見を述べたいと思い ます。国庫負担割合を2分の1へ引き上げる。これは前回改正以来の懸案でございまし て、これはただちに実施すべきことだろうと考えます。同時に相当する保険料あるいは 保険料率の引下げをあわせて行うべきであるというふうに考えます。このためにもちろ ん財源が要るわけですけれども、この財源は間接税の新しい引上げによってではなくて 一般会計から充当すべきで、そのために行財政改革等を積極的に行うべきだというふう に考えてございます。  しかし、要綱の文言の中では、このメインになっております8.の「費用負担」の(1) というところは、以上のような点いずれについてもむしろ逆行していて、ただちにどこ ろか2004年までやらないのではないか。「安定した財源」という言い方は間接税の引上 げを強く念頭に置いているのではないかというふうに考えられる節がございます。同じ 項目の(4)というところに別な文章が入っておりますが、これとも全く整合いたしま せん。  それから、次に国庫負担割合の引上げは、単に2分の1に引き上げればそれでよいと いうものではなくて、将来基礎年金そのものを税方式へ転換させていく、そういった方 向づけの中で行われるべきだということでございます。これは現在の国民年金制度にお ける特に1号被保険者について話題になります空洞化あるいは徴収コストの上昇といっ た問題。それから、最近非常に同意が得にくくなっている第3号被保険者をめぐる議論 あるいは学生の扱い、こういった問題について、国民皆年金という立場を守ろうとする ならば、そのための大事な選択だろうと考えます。 今回、2年間にわたる議論の当初から提起をしてきたつもりでございますけれども、今 回の改正要綱はこの選択、21世紀に向かっての非常に重大な選択を回避して、公的年金 制度の最大の問題を先送りしたいわば抜本改正のない内容というふうに言わざるを得ま せん。税方式というのは非常に珍奇な議論のようにおっしゃる方もございますけれども 諸外国では既に多く導入されておりますし、我が国でも昭和52年に社会保障制度審議会 が基本年金構想という形で提起をしたことは広く知られているとおりでございます。む しろ社制審構想が放置されてきたところに大きな問題があるように私どもは思っており ます。  それから、「育児休業」期間中の保険料について事業主負担分を新たに免除する措置 についてはもちろん賛成でございます。けれども、これとあわせて介護休業の問題につ いても同様の措置をとるべきだと思います。この点については、F委員からも後から御 意見いただけるかもしれませんが、介護休業の導入は2000年度、厳密に言うと再来年で ございますので、これについては同時に今回処置をすべきであったというふうに考えま すが、それが無視されていることは大変遺憾でございます。  次に「総報酬制」の問題でございます。年間総賃金に占める一時金の比率というのは 産業業種あるいは企業規模、同一企業にあっても男女の間で非常に大きく異なるのが実 態でございます。 年間総賃金に対する保険料の負担割合を実効負担率と考えますと、ボーナスが低い人の 方が実効負担率が高い。しばしばそういう人は賃金水準も低いという意味で極めて逆進 的な傾向を持っているわけで、この公平を担保するために総報酬制に切り替えるべきだ ということは前から主張してまいりました。これについて一定の方向が出されたことは 歓迎したいと思います。けれども、前回の席上、P委員その他の方々から御指摘があり ましたように、この要綱に出されている方法というのはなお問題点が残っていると思い ます。月例賃金と一時金等を区別せず同列に扱うことが総報酬制の本来の意味であると すれば、徴収方法を具体化するためにもっと突っ込んだ議論が必要なのではないかと思 います。  基金制度等については簡単に済ませたいと思いますが、特に免除保険料率の凍結その 他についてはよくわからない。すいません、一度御説明を伺いながら、よくわからない のは私の頭の悪いせいで申しわけないんですけれども、一体厚生年金という公的年金の 保険料が凍結措置をとったということと、私的年金である厚生年金基金の最低責任準備 金の凍結がどうして連動するのか、少しもわかりません。厚生年金本体は事実上賦課方 式であるのに対して基金の方は完全な積立方式ですから、最低責任準備金というのはそ の給付設計によって決まってくるものであって、これが私にはよく理解できない理由で 公的年金との連動で政策的に凍結されたときに、例えば、昨年末にようやく整理し確認 をいたしました非継続基準といったようなルールはどういうことになるのか、ここの ルールを守らなくてもいいよということを公式に認めるということになるのか、そのあ たりについては御説明をいただければありがたいと思います。  それから、規制緩和にかかわる事項が幾つか出ております。私ども企業経営のお立場 からはいろいろな御意見があると思いますが、労働組合としては、1つだけ、私的年金 である企業年金の厚生年金基金の問題ですから、こういう規制緩和にかかわる要綱につ いては、私的年金としての自己責任によるということをくれぐれも明確にしていただき たいと思います。  それから、基金制度そのものについては、代行制度のあり方とか、税制適格年金との 相互移動の問題とか大変多くの点を労使で指摘をしてまいりました。先ほどもB委員か ら御発言があったとおりでございまして、こういった問題点の改革が先送りされたこと は非常に遺憾でございます。  また、現在低金利を背景にして企業年金が財政的に非常に危機にある。こういう中で 大事なことは、関係労働者の受給権の保護の問題でございました。この受給権の保護と いうことは、先ほどから御言及がありました関係組織の職員の責任であるとか、あるい は受託者責任だとかということが、罰則があるとかないとかということで担保されるも のではないので、ぜひこの受給権の保護ということを保障するような法整備を含む積極 的な措置を打ち出すことが特に必要だと思います。これに関しては、既に大蔵、厚生、 労働3省で、企業年金基本法というものが検討されてきたはずでございますけれども、 その経緯についてはここに影も形もないというのは、受給権保護に関する観点が大変大 きく後退しているのではないかというふうに考えざるを得ません。  それから、積立金の自主運用その他についてでございますが、自主運用そのものにつ きまして、まず第一に、現在ありますような巨額の積立金をさらに積み増していくとい うのが年金局の財政見通しでございますが、そんなに巨額の積立金が必要なのか。持っ てどうするのか。そして、持つことに伴うリスクというものはどういうふうに対応する のか、いずれも不安な金額が膨張しようといたしております。私どもは公的な年金制度 というものがマネーゲームのように行われることについては全く反対でございまして、 積立金のあり方そのものの検討をぜひ行うべきだと、そのように考えます。  また当面、現在ある積立金についてはこれ以上積み足すことはやめて、もちろん物価 上昇分ぐらいは実質価値を維持するとしても、その管理運用については受託者責任を明 確にすることはもちろんですけれども、実際の運用管理に当たっては、保険料を拠出す る労使の代表が加わった透明な体制を確立することを特に明らかにすべきだ、そのよう に思います。  融資事業等についていろいろな御意見がございました。しかし私どもとしては、年金 福祉事業団が行ってきた融資事業、特に住宅融資については、これまで多くの労働者が 利用してきましたし、今後とも利用したいと考えております。公務員の共済年金制度に はこういう融資制度がきちんと織り込まれている。民間の方にはなかったものを後から つくってきたわけでありまして、そういう官民両制度のバランスを崩すような廃止につ いては反対であるということを繰り返して申してまいりました。また、全体としての福 祉行政の観点からも意義があると思います。その意味で要綱がこの項目について示され た方向については概ね妥当なものだというふうに考えます。  また、グリーンピアは大変立派な施設だそうで、私、直接行ったことがないんですけ れども、施設は立派だけど行くところは大変不便だと逆な評価もございました。これは 労使が拠出してきた保険料でつくった公的な資産ですから、今後ともこれを高齢化に対 応した有効な活用方法を考えて、そういうことを中心にして対処していくべきで、くれ ぐれもあのまま壊してしまうというふうなことがないようにお願いしたいと思います。 つくるときに、あれはたしか田中内閣の列島改造計画の中だったと思うんですが、つく るときに建設会社をもうけさせ、壊すので建設会社をもうけさせ、我々拠出金をしてき た者については、後は何も残らない。こんなばかげたことはないと思いますので、よろ しくお願いいたします。 ○事務局  これ以降、この議論をいたしますのは、むしろ先生方のお役目かと思いますので、事 務方として、既に議論申し上げたこと、あるいは数字等について確認すべきことについ てのみざっと御説明させていただきたいと思います。  まず、総論でありますけれども、1つひとつの項目についての御議論はありますが、 基本的に将来の給付の総額の伸びをある程度抑えて、負担の伸びも同時に抑えていこう ということがあります。それぞれの項目について、既に認められた制度でもある程度変 更をお願いすることはやむを得ないというのがまずベースにあるということでありま す。そこがもしお認めいただけなければ一個一個の制度を全部存置することがよいとい うことにつながるわけであります。  そこで、まず(5)の将来の保険料負担について、現状で行けるという前提に立てば、一 個一個のこういった給付の適正化等は不要になるわけでありますが、そこがどうも私ど もの考え方とは違っておるということです。ここは審議会で約30回にわたり繰り返し説 明申し上げたところでありますが、現状を放置しますと、月給で保険料が35%を超える レベルまでいくということで、それを将来的には月給の26%、年収の2割程度に抑えた いということがスタートラインでありました。  ただ今いただいた資料によると国庫負担を2分の1に引き上げた場合に2025年段階で 厚生年金の保険料が月例ベースで25%になるという計算が示されておりまして、これは 去年の秋にいただいた数字でありますが、私どもはこの前提をいろいろ拝見しましたと ころ、私どもの取りうる前提ではないと。2025年以降の人口の伸びも含めて、私どもは もっと将来まで含めて考えておりますので、これは違う前提に立っておるということで ございます。したがいまして、その前提に立って、私ども将来設計をすることができな い。また、将来の時点で今回の計算方法を問われることになることは私どもはおそれる ものであります。  それから、まず(1)でありますけれども、水準についてであります。これも私どもの説 明ぶりとは大分違っておりまして、最初の55%という考え方は平均値ということで、例 えば加入期間の短い方やこれまでの歴史を非常に引きずった数字でありまして、私ども は今後40年加入のサラリーマンが厚生年金の受給者になっていくことを前提として制度 設計を考えますので、平均値で水準を低く表現することは方法としてとっておりま せん。それが最後には45%まで低下するというのも、これも幾つか考え方が違っており ます。  1つはこの計算の前提は、恐らく賃金スライドをとめたときに非常に年齢を重ねてい くことによって、若い人、現役から比べれば確かに水準は下がってまいります。ですか ら、この45%になるというのは、女性で94歳まで生きた方がいわば下がっていくケース ではないのか。それから、手取りのことにつきましても、この計算の前提としまして、 サラリーマンの月給が手取りで下がっていくという計算が前提になっているのではない か。私どもは違う考え方をとっておりますので、この計算前提も随分違っておりますか ら、ちょっとスタートラインが違うというふうに理解します。  それから、(3)について、前倒しの減額率につきましては、今お話しありましたけれど も、要綱の考え方では、2013年に1階、2階ともあわせて65歳支給になるときにその時 点で減額率を見直したいと考えているところでございます。  それから、次の在職老齢年金につきましては、これから負担が高まる中で、若い人の 負担感というものを考えましたときに、ある程度現役の高齢者の方には保険料も納めて いただき、また収入の多い方については遠慮いただくという考え方の導入であります。 これは総額を押さえていくときに、すべての人をなべて年金の水準を下げるのか、それ ともある程度現役でまだバリバリ活躍していただく方から遠慮していただくか、これは 判断の問題であろうかと思います。  それから、2の間接税が念頭にあるかどうか、前回も御説明を申し上げたところでご ざいますので省略をいたします。  それから、育児休業・介護の関係でありますけれども、これについては、「審議で多 くの委員から」というふうに書かれておりますが、去年の10月のたしか意見書のぎりぎ りのところでJ委員から一度御指摘いただいたことは記憶しております。そのときにも ちょっとお答え申し上げたことに加えまして、今回、例えば保険料の引上げについては 凍結されたということであります。 保険料が凍結される中で、一方で免除をどんどん進めていくということが本当にバラン スとして取りえるかということが1つ大きな問題としてあります。  また、育児の問題、これは出生率が高まれば年金制度の改善に資する。これは人口バ ランスの面からみても当然なことでありますけれども、介護の問題はこれとは必ずしも 同列に論じることはできない。ですから社会的に価値のあることがあれば、これはすべ て保険料で免除するという考え方に立つのかどうか、これは今回はまだそこまで踏み切 れなかったところであります。  総報酬につきましては、ここに書いておられますけれども、運用において、私どもは 工夫をしてまいりたいと考えております。以上でございます。 ○事務局  ただいまお話しがあった基金関係の点でございますが、まず1点目、技術的な問題で はございますが、免除保険料率などの凍結について(1)でございますけれども、今回の凍 結の措置は厚生年金本体の保険料の凍結に伴って免除保険料も凍結せざるを得ない。免 除保険料を凍結するということは、今までのような積立方式をそのまま使いますと、代 行部分に関して必要な免除保険料を十分には基金側には与えていないということになり ますので、必要な積立については、これはどうやっても、今のやり方では計算上穴がで きてしまうということでございます。  そこで、しばらく凍結期間中は積立方式ではなく、最低責任準備金の凍結をして、そ の後は資産の出入りを調整するという考え方で、最低責任準備金を計算しようと。これ はあくまでも代行部分に関しての最低責任準備金でございますけれども、その部分を凍 結期間中は今までとは違ったルールで算定をするということでございます。非継続基準 などにつきましては、それをクリアすることが変なことにならないようにルールの方で きちんとその手当てをしたいというふうに考えてございます。  ほかの点は御意見にわたる点でございますから申し上げませんが、一番最後の方で、 2の(2)で3省会議の検討経過の片鱗も出てこないというお話しございましたが、これは 昨年まで年金審でも御議論をいただいておりますけれども、この企業年金に関する共通 ルールにつきましては、まだ関係者の合意が十分にできていないという感じもいたしま す。それから厚生年金基金、適格年金制度の間でかなりの格差があって、それをどうい うふうに調整にしていくのか、この辺についてはもう少しお時間いただきまして、関係 省と詰めさせていただきたい、かように考えているところでございます。 ○事務局  先ほど保険料の将来の負担の見通しが制度改正をしなくても、連合の方の試算ではい けるという話しがございましたが、私どもは個々の受給者とか被保険者のデータに基づ きまして、その方が1年勤務すれば被保険者期間が長くなると。途中で亡くなられれば 遺族がおられる方には遺族年金が出る。そういったことをずっと積み上げて、将来の給 付を見積もっております。昨年の9月に連合の方で出されたものを見せていただきます と、そういったものについては一定の仮定を置いて試算をされているわけですが、私ど もどういうことかはわかりませんが、結果として費用が過少になっているのではないか というふうに思っております。例えば、2025年におきましては、老齢年金の定額部分の かさ上げなんか残っておるわけですが、昨年見せていただいたものでは定額のかさ上げ 等は推計に織り込んでいないとか、そういういろんなことがあって、結果的に過少にな っているのではないかということが第1点。  それから、新しい人口推計の下では、2025年以降も少子・高齢化は進行していきます ので、2025年の時点をとらえて、将来の財政を見るというのはどうか。私どもは2025年 だけではなくて、2050年とか、そういった高齢化のピークも見据えた保険料の見通しを 出しているということでございます。 ○事務局  自主運用についてでございますが、自主運用事業の資金というものが保険料拠出者か ら負託されております貴重な公的年金資金であるという資金性格を十分踏まえまして、 安全かつ効率的に運用してまいりたいと考えております。  それから、御指摘のございました保険料拠出者の意向の反映、受託者責任の明確化と いうことに関しましても最大限に配慮しながら運営をしていきたいと考えております。 ○F委員  E委員から出されました御意見についてですけれども、まず、名前も出ました介護休 業中の保険料については、たしか9月の審議会でJ委員がこの点を御指摘になりまし た。私も10月のときに介護休業中の保険料も免除すべきだということを発言いたしまし た。前回の金曜日にはこの点は意見を出さなかったわけですけれども、ここはE委員の 大変遺憾であるというのに全く賛成であります。ことしの4月から、もう半月もします と介護休業給付は創設されるわけです。  それに伴って、育児休業の方は被保険者についてはかなり早く保険料免除については 実施されていたわけで、これは被保険者、事業主両方について、ちょうど7のところの 事業主負担の免除が平成12年4月からということでございますので、ぜひ平成12年4月 から、介護休業中は、期間としましても育児休業に比べると4分の1なのですから、ぜ ひ、これは両方について免除をするように、その方向で進めていくべきだと思います。  先ほど事務局が凍結と関連させたのですが、育児と介護は違うのだというようなお話 しがあったんですけれども、それは大変問題だというふうに私は思います。  それから、E委員の御意見で最初の年金水準の改定、これは一番労働側の方が問題に していらっしゃるところだと思うんです。確かに主として賃金と給与のみだけで生活し ている被用者にとりまして、将来の年金水準がどうなるかというのは非常に大きな問題 になるということは私も大変よく理解できるんです。ですが、31回審議会は議論してき ましたけれども、その中での議論では、年金制度の枠組みの中で人口動態の変化と経済 の基調の変化というものに対して対応を考えていくというのが1つあったと思うんで す。途中ではちょっと意見も出ましたけれども、最終的には、年金制度の枠の中で考え る。もう一つは、負担の限界を優先する、それがまず最初にありきというか、最初にあ ったと思うんです。  そういう枠の中で対応を考えていくということになりますと、給付については負担の 範囲以内に抑えざるを得ないということですから、結局支出を抑制する方法を考えなけ ればいけない。そうすると給付水準を調整するか。これは所得代替率を引き下げるとい うこと。それをやるか、あるいは年金受給者数を調整するということですから、これは 年金支給開始年齢を引上げて遅くするとか、それになってしまうわけです。そのほかに 収入を増加させるという方法もあるわけです。 ですから拠出ベースを拡大するということを考えてもっと年金制度を支えるものを増や す。これはいろいろあります。少子化もかかわってきますし、女性とか高齢者の雇用を 促進するということもあります。  特に子育てをしながら働けるような環境にして、パートとかではなくてきちんとフル タイムで女性や高齢者も働けるようにするということになると、これは年金を拠出する 側に回るわけです。 ですから非常にメリットがあるわけです。そういう点で、今、厚生省のCMで「育児を しない男は父親と呼ばない」という安室さんの御主人が出ていて大分ヒットしているよ うですが、厚生省としては今ままでとは違うなというふうに思うんですけれども、やは りこれは家庭内の父親に期待するということで、厚生省としてはすごく消極的なわけで す。もっと積極的な、女性があるいは高齢者がフルタイムで働いても、小さい子どもが いても両立できるような社会環境というか、支援をしていくという、子育て支援策を積 極的に考える必要がある。  収入を増加させる方法はほかにも、もっときちんと年金課税をするということによっ て、その課税した分については年金の収入の方に入れるとかある。そういう年金制度と 他の社会保障制度、あるいは他の社会保障以外の関連制度、雇用、税制、私的な年金、 それはいろいろあるわけですけれども、そういうものとの間で連携したり調整したりし てもっと総合化を考えていくということが必要です。そういうことが行われれば、年金 水準を若干下げなければいけないとしても、もっと抑えることもできるかもしれないし またほかの道がひらけてくるわけです。  ですけど、今回の議論については、31回の議論で年金制度の枠の中で、給付と負担を どう考えるかというのに集中してずっと収れんしてきたわけです。  E委員の第1の1.というところは、私はわかるんですけれども、今回はやむを得な いと思うんです。今後はもっと総合性の原則というのでしょうか、それをもっと重視す るような形で議論もするし分析もするということが必要なのではないかというふうに思 うわけです。  それから、基礎年金を税方式に、もちろん2分の1にしたら保険料が下がるわけです けれども、それを全額税方式にしたとしても、財源は、例えば消費税にするとかという のがありますけれども、トータルとしての国民の負担は変わらない。保険料はかなり下 がりますけれども、他が上がるわけです。だから確かに拠出者は入れ代わるから、所得 再分配効果は上がるかもしれない。今、国民年金を掛けれないような人たちが掛けなく てもよくなって、そのかわり高い贅沢品とかを買う人が出した税で賄うということにな って、それは入れ代わるから、そういう意味では意味があるかもしれませんけれども、 トータルとしては変わらないわけです。そこの部分があると思います。  それから、1枚目のところの雇用との関連ですけれども、1の(2)のところです。男子 の方が2013年から、女子が2018年から支給開始年齢引上げということですね。ですから 15年から20年、あるいは30年先まで高齢者雇用の状況が現在と同じという前提で考える ことは適当ではないと思うんです。高齢者の雇用についてももっと変えなければいけな い。現に若年の労働力が減ってきますから、そこのところは変わらざるを得ないと思う んです。ですから現在は確かに60歳台の雇用就業条件が極めて厳しい。これは若い人も 厳しいわけですから、当然60歳台前半なんか厳しいわけです。現状はそうですけれども 20年とか25年先については絶対変える必要があるわけです。現在と同じ前提で考えるの は私は適当ではないのではないかと思います。  まだ、あったかもしれませんが、そのくらいにします。 ○会長  E委員、資料の御説明があって、それから厚生省の方から御意見なりお答えがありま したが、追加の御発言がありますか。 ○E委員  発言の機会を与えていただいてありがとうございます。別にこれをめぐって、そんな にまた一からの議論をするつもりはございませんが、二、三誤解を呼ばないために追加 的な説明だけをさせていただきます。  1つは、事務局から代替率45%というのは、みんながみんな20%下がった。そこに張 りついた段階のことを言っているのではないかというふうに言われましたが、これは誤 解でございます。 これは説明不足なのでそういう誤解を呼んだかもしれませんが、推計過程はこういうこ とです。 今、2階の部分を5%下げる。というのは本人だけですと基礎年金を入れて3%下が る。しかし、これはモデル年金ですから配偶者の基礎年金も入ったものを言っているわ けです。23万円にしろ、何にしろ、トータルベースでいうと2%の低下というふうに単 純に考えればなるわけです。  それから、前回の審議会の席上、事務局から教えていただいたのが、その後の20%ま で下がっていく過程での平均的な水準の低下を、いわゆる総原資ベースで見ると7%ぐ らいのダウンだという数字、これは口頭で教えていただきました。したがって、掛け算 ではなくて近似的に足し算をいたしますと両方で9%ということになります。そういう ものを使ったことです。しかし、先ほどちょっと金額のことも触れましたけれども、こ れはあくまでもモデルから実体水準を大体1割引きというふうに見たものでございま す。そういうことで、金額でいうと14万5,000円ぐらいになると思います。 それから、額について賃金が上がらないとか手取り賃金が下がる将来を想定している のかというけれども、そういうことではありません。60年改正のときにモデル年金像を 描くときに、32年旧制度のモデルと20年後の40年加入のモデルが同じ高さになるという 図をさんざん説明されました。あれだって、その間、20年間に賃金は当然変動するだろ うけれども、そういう時間軸を入れないでつくったのがモデル年金だったはずなので、 それと同じ考え方をとっているというだけのことでございます。そこはぜひ御理解をい ただきたいと思います。 それから、今、F委員から大変大事な御指摘がありました。高齢者の雇用状態をどう 見るかということです。これは25年や30年後の高齢者や女子の労働市場、あるいは処遇 というものが今のままでいいはずがないし、ぜひともこれは積極的に改善すべきものだ と思います。年金がないから、あるいはカットされるからやむなく働くということで就 労に押し出すのではなくて、むしろ雇用就業条件が改善することによってより安定した 高い収入を得るために働こうという意欲が今後の高齢者や女性を誘導して、結果として 高齢者に関して言えば、年金を受ける側ではなくて年金の保険料を払う側に回る、そう いう措置が必要なのです。しかし今は逆に高齢者の労働市場は少しも改善されぬまま年 金だけがこうやって削られていくということになれば、それは見かけ上就業率が上がっ ても、それは非常にミゼラブルな話が広がるだけのことではないのか。これは全く違う 話だと思います。 女子についても全く同様のことが言えるわけです。過去25年見ますと、K委員などの 御努力もあって、例えば60歳定年というようなものはようやく実現をしております。ま た、女子の就業率も確かに高くなっておりますし、一部有能な女子は男性と同じような 処遇をも獲得しているわけです。過去25年の変動ということは、将来25年もまた新しい 変動が十分可能だということだと思うのです。その意味で、私たちは現状を未来に投影 してはおりません。しかし、どうしても60歳でリタイアしなければいけないような人た ちのために制度としてはとっておく、利用する人が少なくなればそれでいいと、こうい う考え方です。 現状をむしろ将来に向かってそのまま投影しているのは、厚生省年金局の財政推計で あって、例えば人口推計は2050年までわかっているというけれども、労働力率の見通し は2025年までしかわかっていないわけです。今後の賃金の改善なんていうことはもっと わかっていないわけです。 その意味では、将来25年における変革が2050年の状況を、今考えられているのとは違う 姿に変わるだろうし、変えていくべきだと。それを今から半世紀も先のことを純数理的 に、ただ、人口統計だけをとって繰り込んでしまって、これだけのミゼラブルな話にな るというストーリーをつくり出すのは、私どもは反対だとこういうことでございます。 ○G委員 E委員のメモの最初の1.の(1)のところ、国際労働条約との比較の問題なんです。こ れは条約をごらんになるとおわかりだと思いますけれども、特に日本語になった方は何 を書いているのかよくわからないようなところがたくさんある条約ですけれども、ただ 非常にはっきりしている点で、どうも連合は意図的に計算の仕方を条約で書いているの とは違うやり方でやってらっしゃるのではなかろうかと推定されます。もし、もうちょ っと詳しい根拠が示していただけるなら、別にきょうでなくてもいいんですが、これは 将来気の長い話ですから大いに議論した方がいいと思います。私の知っている範囲では 1つは基準になっているのが標準報酬の平均額とかそういうことではなくて、最低給の 未熟練労働者の賃金になっているんです。ですから34万円を基準にするなんていうもの ではなくて、うんとそれより低いはずなんです。一体連合は何を基準にして計算してい るのかよくわからないんですけれども、ただ、実際には厚生省や労働省の方も最低給で ない数字をどうも使っているらしいので、この辺は条約の解釈の問題にかかわるところ ので、議論するならもうちょっときちんとした議論をした方がいいと思います。条約に ははっきり未熟練労働者の賃金水準に対してというふうに書いてあります。  もう一つは、例えば40年間満期の賃金を20年しか掛けてないとか30年しか掛けてない という場合は、払った期間に比例して水準が低くなることを何も禁止しているわけでは ないので、そういう意味では平均であれば相当低い数字が出てくるのは制度上やむを得 ない面があるんです。  その2点をはっきりおっしゃらないで、日本はILO102号を批准している方ですね。 もう一つ、ILO127号でしたか、批准してないんですけれども、あたかもILOの水準 を著しく下回るような甚だしくお粗末な年金だというような印象を連合ともあろうもの が世の中に向かって叫ぶというのはいかがなものかなと私は非常に残念に思います。 ○E委員 むしろ低めとこう申し上げた。 ○G委員 ですから、もうちょっと正確に条約をきちんと議論するならした方がいいと思いま す。 ○会長 H委員よろしいですか。 ○H委員 私は給付水準の引下げは、今回の答申を含めましてやむを得ない措置ではないかと思 います。収支のバランスがとれていればよろしいのですが、そうでない限りはやむを得 ないだろうと。 保険料につきましても、事業主の立場からしたら本来は現在以上、上がるのはぐあい が悪いと思いますけれども、そうでなくて、制度としてある程度保険料も上げていかざ るを得ないとすれば凍結もある時期には解除するのもやむを得ないと思います。 それから総報酬制については、これは賞与が非常に今回の賃金交渉でも各産業は相当 ばらつきがありますけれども、ばらつきが大きくなるという意味で、社会保険としては むしろ不公平が増大するという意味で、これは今まで述べてきましたように総報酬制の 導入には事業主としては反対であります。 それから、税方式につきましては基本的に議論すべきだと思いますけれども、今回2 分の1までということを答申するのは一歩前進ではないか、かように思います。  企業年金につきましては、これは審議会の場で申し上げましたけれども、厚生年金基 金の代行部分の返上につきましては、私の会社は入れておりませんけれども、関連企業 で入れていまして、これは返上できる形に直してほしいという声が強いので、その点は 早急に検討していただきたいと思います。  それから、私どもは税制適格年金でありますけれども、これは特法税を2年間免除す るとありますけれども、これは永久に免除してもらえるように直してもらたい。  それから、受給権の保護につきましては、これは積立基準の明確化という形で必ず外 部拠出をしてこれは守られる形がとれれば、これは受給権が保護されるということで、 ぜひともそうせざるを得ないと思いますけれども、支払い保障制度等の導入については 反対であります。  ということで、今まで述べてきたことから、今回の答申はやむを得ないというふうに 思います。 ○A委員  さっきE委員から御説明のあった「将来の保険料負担について」というところです。 事務局がお答えになりましたから、それ以上、私から申し上げることないんですが、昨 年、夏の前後にたしか日経連さんと連合さん両方から冊子が出たと思うんです。当時私 読ませていただきまして、その結果、今はっきりは覚えていませんけれども、両方とも 非常に計算の前提が甘いなと、これでは年金数理としては通用しないというふうに私当 時判断させていただきました。  結果的に何が抜けているかというと、昨年もいろいろ議論された中で、今の厚生年金 保険自体の負債が350兆円あるという部分がはっきり言って抜けているわけです。その部 分を抜いて、例えば2025年なら2025年の時点で、そこから先の年金に入ってくる人を考 えると、随分安くて済むというような格好に計算がなっていたように記憶しておりま す。 それと自主運用についてのところで、巨額な積立金ということを言っておられますが これについても、昨年、特に長野で議論したときなどは何べんも申し上げたと思うんで す。巨額、巨額といっても、今の130兆円というのは、例えば30年ぐらい先の1年分の給 付で消えて飛んでしまう、その程度の額でございます。確かに大きいことは大きいんで すけれども、それと大きいか小さいかということとは別に、やはり将来の世代に大きな 負担をかけない。そのためにはどうするかということで少しずつでも保険料を早い時期 に上げていった方が結果的によくなる。そのために積立金が増えるという格好になる。 だから原因と結果が逆だと思います。保険料を上げざるを得ないから、将来の世代に大 きな負担をかけたくないから今上げると。その結果として積立金ができるということで ございます。 ○J委員  先ほどE委員の方から、3人の連名の文書を配布していただきまして、それぞれ御説 明がありましたので、そのことについて重ねての御説明は私の方からはしません。少な くとも3人の委員がメモを出しました内容というのは、私たち3人が連合を母体に選出 されている委員であるということですが、今、E委員から発言がありましたけれども、 この意見全体が私たち連合に構成されている組織化された人たちの思い、そういうもの で成り立っているというように考えています。また受給間近の世代だとか、これからさ らに負担を持続的に引き受けていかなければならない多くの生活者の立場の人たちから も共感を得られていると思いますし、説得力を持っているというこの内容の背景的なこ とを1点申し上げておきたい、そのように思います。  それから、もう一つは、改正案要綱なるものは、中長期のことだと言われるかもしれ ません。しかし、改革をどういうように受けとめるかという受けとめる側の勤労者の実 情というのは、きょう御欠席になっていますO委員のところもそうでありますが、4桁 の賃上げができるのかどうなのか、それもままならないところ、あるいは賃金の引下げ が現に提案されているところ、賃金が凍結をされているところ、さらに企業内の福利厚 生の見直しがされているところ、もっとひどい例でいきますと、工場の再配置というこ とで工場閉鎖の提案を受けているところ、あるいは個々人レベルでは転籍を命ぜられて いる人たちもいます。そういう人が大変多発をしているわけであります。これが今日の 社会の現状であります。  そういう状況の中で、年金の行く末というものは、私たちの生活にとって大変大きな インパクトを与えることは論を待たないわけです。一般的に今前段で申し上げましたよ うな、労使間で春の1つの取り組みの具体的な内容以上に、年金にかかわる将来問題、 とりわけ負担と給付の関係については大変大きな労使の関心事になっているわけであり ます。それは厚生年金基金も同じことであります。したがって、この改革の中身がいか に共有できるかということ。そして、その改革の手続きというものについては、私は十 分時間をかけ、踏まえる必要があると思っております。  先ほどほかの委員の先生方からもお話しがありましたけれども、年金の財政上の切り 込みということが主軸になって、今そのことを論議しても始まらないわけでありますが 全体基調としては、とにかく財政上の切り込みだけがベースになっているわけでありま す。今私が前段申し上げました労使間のいろんな話し合いの中に登場している1つの考 え方の中には、現状で負担と給付のバランスをとることだけではなしに、将来こういう ことが望ましいから、むしろ逆に別の選択肢が国民の側にあるのではないかという考え 方も全くないわけではありません。そういう面でこの取り扱いについては社会的なイン パクトもあると思っていますから、取り扱いとしては慎重にしていただくことが必要な のではないか。この期に及んでそういうことを感じております。 ○会長  ほかにどなたか御発言ございませんでしょうか。K委員どうぞ。 ○K委員  ちょっと細かいことですけれども、総報酬制の問題なんです。これは前にも申し上げ たから重複しますけれども、これはいわゆる賞与の額が大企業を中心にたくさん払って いるところがまずいとか何とかという意味で申し上げているわけでは毛頭なくて、例え ば今度の春季労使交渉の中で賞与の要求をしないところもあるわけです。既に業績リン ク制を検討を始めていて賞与の要求をしないというようなところも出てきている。した がって、「賞与」という言葉で一言であらわされていますけれども、これは非常に変わ る可能性が物すごくあります。  もう一つ、非常に大きな問題は、日本の年功制の最たる姿というのは退職金制度なん ですが、退職金制度自体が今御承知のように2001年の会計原則の変更によりまして、こ れは退職一時金制度であれ基金制度であれ、適年制度であれ、債務を公開しなければい かんというような問題で今大変な問題になっております。そういうこととの兼ね合いも ありまして、いわゆる債権債務をそのとき払いにしてしまうという動きがかなり大きく 始まっていまして、既に新聞等で御存じのように、ある大企業、そこだけではございま せんけれども、退職金の第二賞与分割払いという形が進んでいます。これはそうせざる を得ない。  もう一つはポータビリティー、勤労者の異動というものが大きくなってきていますか ら、そういう面に即応する側面と、それから今言った負担の側面とお互いがハッピーな ためにそういうことが随分進んでくる。  そうするとどの範囲をもって、ここでおっしゃる総報酬制と認識するのかという重大 問題になってくるので、私はしたがって、ここで総報酬制を決断するには余りにも問題 なり課題が多過ぎる、そういう意味で反対だということを一回申し上げておきたい。  もう一点は、F委員からお話しがありました点について私もよくわかります。よくわ かりますが、それは言えば、後々我々が努力して、そういうハッピーなことになれば結 構なことで、我々は今ここはどっちかというと、これは国もそうですし、企業もそうな んですが、実は企業も今人事制度の改革を一生懸命やっております。それは一番大きな 圧力になっているのは何かというと実は人口構成なんです。やっぱり国も人口構成の問 題、企業も実は人口構成の圧力の問題、そこがインプットとアウトプットが合わない問 題でありまして、したがって、我々はそこはつらい話なんですけれども、やはり冷静に 受けとめて、それでその後、いずれにしても将来に向けて女性の就労問題であるとか高 齢者のあり方の問題、これもしかし年功制の下では到底もちません。  そういったことをプラスアルファの話としてよりいい方向に向かえばよしと。しかし 今の断面でそれを幾ら想定しろといってもだれも想定できませんし、かつそういう冷厳 な世界にあるということはやはり国民全体に共有していただかなければいかんというの が今の断面だと思います。 結局、F委員がおっしゃったこともそういうことだと思うんですが、今の断面ではこう いうところで考えざるを得ないということだろうと思います。ちょっと余計なことを言 いました。 ○会長  ほかに御発言ございませんですか。そろそろ4時半も過ぎました。諮問に対する答申 案を準備するという方に移ってよろしゅうございましょうか。E委員どうぞ。 ○E委員  私どもは、先ほど冒頭会長の方から、できればきょうじゅうに答申をというふうなこ とがありましたが、この出されたような改正案要綱を肯定する形で答申を行うことには 反対でございます。日程的にも、先ほどD委員から異常なとおっしゃったのは何を指し ておっしゃったのかよくわかりませんが、もう日程がいかに異常だったかということに ついては前回るる申し上げましたので繰り返しませんけれども、こういう中で慌ただし く日本の21世紀がかかっているような問題がこんなことで決められていいのだというふ うには私どもは思いません。 ○会長  E委員のおっしゃることはそれとしてはごもっともと存じます。しかし、大臣の方か ら諮問が来ております。要綱について答申案を用意せざるを得ないと思います。しばら く休憩をいただき、答申案を用意することに御了承をいただきたいと思います。 それでは休憩します。事務局の感触ですと、5時5分前くらいに再開したいということ です。                 ──休 憩──                 ──再 開── ○ 会長  答申案の配付が終わりましたところで、全員懇談会を再開します。   答申案がお手元にございますが、事務局から朗読をいたします。              (事務局より答申案朗読)        国民年金制度及び厚生年金保険制度並びに年金積立金の        運用の改正について(答申)  平成11年3月12日厚生省発年第10号をもって諮問のあった標記について下記のとおり 答申する。                    記  今回の改正は、少子高齢化が進行する中、将来世代の負担を過重なものとしないとい う考え方に立ち、年金制度の各般にわたり見直しを行い、長期的な安定を図ろうとする ものであって、保険料凍結は現下の経済状況に鑑み緊急避難的な措置としてやむを得な いものと考えるが、基礎年金の国庫負担割合の引上げを明示したことは評価でき、これ を了承する。  また、基礎年金の国庫負担割合の引上げと保険料凍結解除は、平成16年(2004年)を またず、できるだけ速やかな実現に努められたい。  さらに、以下の点について留意されたい。 1.国民年金について、学生の保険料納付の特例や保険料の半額免除の制度の周知に努 めるとともに、未納・未加入対策の徹底を図ること。 2.総報酬制について、その運営に当たり、導入後の月給やボーナスの支給実態の変化 を踏まえ適切に対応すること。 3.年金積立金の自主運用事業の実施に当たって、保険料拠出者の意向を十分反映させ るとともに、関係者の責任の明確化、徹底した情報公開による透明性の確保、専門的な 人材の確保を図ること。 なお、次のような意見があった。 ○ 厚生年金給付水準の適正化、裁定後の年金額の改定を物価スライドのみとすること 支給開始年齢の引上げ等の給付抑制策については、反対である。 ○ 60歳からの繰り上げ年金の減額率について、今回見直すべきである。 ○ 介護休業期間中の保険料について、免除制度を設けるべきである。 ○ 保険料凍結解除は、我が国の置かれている経済状況から慎重に判断すべきであり、 基礎年金の国庫負担割合の引上げを急ぐべきである。 ○ 基礎年金の税方式への転換について、政府全体として、財源問題の在り方や具体的 内容等を検討する場を設け、早期に結論を得るべきである。 ○ 総報酬制の導入は、制度自体に問題が多く、反対である。 ○ 厚生年金基金制度の代行部分の返上などを含め、企業年金の在り方について全般的 な検討を早急に進めるべきである。 ○ 被保険者向け融資事業については、一定期間を定めて撤退すべきであるという意見 と、被保険者の福祉の向上を図り、新たな官民格差を生じさせない観点から、引き続き 実施すべきであるという意見があった。 ○会長  以上、朗読していただいただきました。この答申案につきまして、皆様方ご自由に御 意見をお述べいただきたいと存じます。どなたからでもお願いいたします。 ○J委員 きょう3人の連名で文書をE委員から具体的な形でお出しし御説明をいただいたわけ ですが、我々連合のエリアから出ています3名の委員としては、最後にいろんな意見が あったというくだりがございますが、基本的には要綱の中に盛られているわけではあり ませんし、今後の推移は全く見えてこないわけであります。答申という形のものに置き 変わって、今まで論議に参加をしてまいりましたけれども、これ以上の論議については 我々として十分なる責任が持てないということで、論議には参加をしにくいと考えてい ます。極めて残念ですけれども、そのように思います。 ○E委員  本審議会の開催については、12日金曜日の夜に続いて賃上げ交渉の集中改定日を目前 にしたきょうという非常に委員の出席事情が困難なことも承知の上で強引に開催された ことについて、我々は抗議してまいりました。自民党だけが了解して確認した年金制度 改正案の要綱というものを、私たちの意見を取り入れることなく、ただ了解するという 答申を行うことについては、私どもとしては全く認めることができないということでご ざいます。  大変今回の改正内容は広範にわたっておりますが、それをわずか2回、それも金曜日 の夜と月曜日の午後というほとんど信じがたいような日程で諮問され、今答申をされよ うとしている。こういった今回の審議会運営というのは、言葉は悪いですけど、暴挙と いうふうに言って差し支えないものだろうというふうに思います。今回よりもはるかに 小規模の改正であった前回でさえ、諮問から答申まで審議会は3回開かれておりますし その間、2週間をかけているわけです。今回のこういう事態は審議会自身の権威だけで なく、公的年金制度そのものの信頼を非常に傷つけるものだと思いますし、その責任は 挙げてこういった審議会運営をなさった厚生省当局にあるのだというふうに私どもは考 えます。  3月月内法案提出というスケジュールを一方的に決められて、その上で進められたの が今回の審議会運営である。安心と信頼の年金というものを求める勤労国民の大変強い 願いに逆行して、抜本改革を先送りし給付水準の引下げを強行しようとする政府・自民 党の姿勢を今回の運営は露骨に示したというふうに受けとめております。  私たちはこの事態に心から怒っておりますし、これをもって大変失礼ですが、退場さ せていただきたいと思います。大変失礼しました。 ○会長  長い間、御苦労さまでした。              (桝本委員・山根委員退室) ○会長  それでは、ほかの委員の皆様方、この答申案について、例えば、日本語と申しますか 文章がもう少し直らないかとか、いろいろ御意見がおありと存じます。どなたからでも 御自由に御発言いただきたいと存じます。 ○G委員  2枚目の「なお」書きの4つ目の「保険料凍結解除は」というそこの文章が前段の意 味がちょっとよくつかみにくいのですけれども。 ○事務局  保険料凍結解除するということは、いわば一般的には保険料を引き上がるということ を意味しているので、そういうことは慎重に配慮すべきというふうに記述したんです。 ○L委員  今のことなんですけれども、こういう御意見は、私は先だってもきょうも必ずしも出 ていなかったように思います。もし委員の方がこういうことをおっしゃっているのなら ちょっとこれを御説明していただければありがたいと思います。事務局が解説するよう なことではないと思うんですけれども、どなたからこういう意見が出て、それはどうい う趣旨なのか。いかにも保険料の凍結解除よりかは国庫負担の引上げの方が先だよとい うふうに読めますけれども、それはどういうことなんでしょうか、御意見を聞かせてい ただきたいと思います。 ○会長  今のL委員の御質問でございますが、どなたか。 ○L委員  事務局ではないです、委員の方でしょう、恐らく。 ○会長  委員のどなたか。 ○D委員  代弁するわけにいかないんですが、たしか私の記憶ではP委員がこの意見に近かった と思います。 ○G委員  前回。 ○D委員  前回かどうか知らないですけど、ずっと。ただ、どっちが先かはわからないですが。 ○ G委員  彼は保険料を下げろとは言っているけど、こういう表現は使っていなかった。 ○D委員  こういう表現はしてないですけど、上げるという方には反対。 ○M委員  その点、御本人がいらっしゃらない席上であれこれ議論するのもどうかと思いますが 前回、P委員の発言は総報酬のところが中心で、ここの部分はなかったように思うんで す。P委員は、去年の夏から秋にかけてのあたりのところで、保険料の凍結どころか引 下げということまで積極的に主張しておられたので、恐らく事務局の方ではそういうこ とも頭に入れてこういう文章にされたのではないか、私はそういうふうに推定しておる わけです。 ○事務局  本来、私の方で申し上げる立場ではございませんけれども、こういう御意見はK委員 の方からは承っていることがございます。 ○H委員  こういう表現は、恐らくK委員がされたのではないかと思います。私は直接にこうい う表現したことはありませんが、事業主の立場からしますと、国庫負担の割合を引き上 げるということは当然2分の1ということも非常に評価しますし、これを将来増やして いくことも議論すべきだと。こういう中で保険料については、現在の水準でできればと どめてもらいたいというのが事業主の立場であります。そういう意味ではこういう表現 になることはあり得る。収支のバランスがどうなるかということについては、事業主の 立場からすれば、給付水準についてはさらなる工夫を加えていくということだろうと。 こういう意見だと思いますので、直接私はこういう表現はしませんが、K委員がこうい う意見を言われたのだろうとこういうふうに思います。私はこの表現で別に構わないと 思います。 ○N委員  私は前回の審議会で保険料の据え置きについては評価したい、基礎年金の国庫負担引 上げの方向についても賛成であると申し上げたところでありまして、今回、答申本体で そういう方向が出されておりますので、そういうことかと思います。必ずしも論理的で はありませんが、さらに踏み込んで考えると、「保険料凍結解除」という言い方はどう かという思いがあります。 基礎年金の国庫負担割合の引上げが進んでいく、さらに、またそれと関連して税負担の ありようについて一定の方向が出されていくときに、あわせて保険料を引き上げていき ますみたいなことが果たして通るのかどうかということがあろうかと思っております。  いずれにしろ基礎年金、とりわけ国民年金の立場からしますと、未納・未加入問題も 含めまして、そういう面では保険料引上げ問題について十分な配慮がなされていいので はないかと思っておりますので、書きぶりはともかくとしまして、精神としてはこうい う理念については賛成であります。 ○会長  ということでございます。今の御質問はいかがですか。 ○G委員  読んだだけではちょっと意味がよくわからなかった。わかりましたけれども、いない 委員の発言力の方が強いのはいかがなものか。 ○M委員  今、H委員のコメントで私も思い出したんですけれども、確かにこの種のことはK委 員は大体このニュアンスに近い線だったと思うんです。保険料の凍結解除を急ぐよりは 国庫負担の引上げを急ぐ方が先だといった意味にとれるような発言しておられたと思っ た。ここはP委員の御意見ではないと思います。ですから、ここらあたりでいいんじゃ ないですか。もしK委員の意見を意識してのことならば、御当人いらっしゃらないので 困ってしまうんですが。 ○H委員  私もM委員と全く同じ意見です。 ○M委員  そうですか。ではH委員のおっしゃるとおりでいいのではございませんか。 ○会長  保険料の引上げ自体が無理であると初めから終始、おっしゃっておられますから。ど うぞ、L委員。 ○L委員  私もそれは委員の中にそういう御意見があるのであれば、それをそのまま書くことに ついてはどうこう言うつもりはありませんけれども、基礎年金の国庫負担割合の引上げ というのは、我が国のそれこそ置かれている財政の状況からは非常に慎重に判断すべき であるという意見もあるのではないかと思います。私はそういう点を心配しております けれども、こういう意見だけを少数意見として書くのであればちょっと審議会としては どうかなと私個人としては思います。 両方の意見があると思うんです。一番最後に書いてあるように、被保険者向けの融資事 業については撤退すべきであるという意見と、引き続き実施すべきであるという意見、 これは両方書いてあるわけですが、少数意見にしても、こういう意見だけを書くのは私 はいかがなものかなという感じがします。書くべきではないとは申しませんけれども、 そういうふうに思います。 ○会長  いかがでしょうか。今のL委員のお考えのように、基礎年金の国庫負担割合の引上げ についてもまた慎重に考慮すべきであるという意見もあった。ここへ追加しますか。 ○L委員  順序まで書くというのはいかがなものかという、どちらが先だということを書くのは どうかなという感じがいたします。 ○A委員  保険料の凍結解除というのは期間を決めてなかった、いつからと。あのときの私の印 象は、保険料の凍結解除の方が国庫負担割合の引上げよりも手前にあると自分は勝手に 考えておったんですけれども、それから見るとこれは全く逆転になるわけで、非常に変 なものが入っているという感じがしました。 ○会長  A委員の御意見ではこの2行は削除すると。 ○A委員  できれば削除していただいた方がいいかなという感じがするんです。 ○ 会長  という御意見ですが、ほかの方はいかがでしょうか。H委員いかがですか。 ○H委員  残しておいてもらいたいと思いますけれども、何かうまい方法はないでしょうかね。 ○会長  それでは、この問題はもうちょっと時間をかけて考えることにして、ほかの文章につ いては何か御意見ございますでしょうか。 ○H委員  総報酬制について反対というのは、事業主は皆そう言ってまいったわけですけれども これについては、留意点のところに「導入後の月給やボーナスの支給実態の変化を踏ま え適切に対応すること」と書いていただいておりますので、ぜひとも適切に対応してい ただきたい。  最近の状況で、特にことしの春季交渉でありますけれども、非常に賞与の水準が産業 ごとに大きくばらける可能性があります。同じ産業におきましても、私は鉄鋼業ですが 鉄鋼業においても大きく賞与の水準がばらけると思います。極端に言いますと、こうい う不況の状況ですから、20%以上前年に比べて賞与水準を下げる企業はかなり出てくる 可能性があります。そうしますと、例えば総年収500万円ぐらいの、あるいは700万円で も結構なんですが、仮に500万円としますと、20%に下がりますと年収としても1割以上 下がる。したがって、500万円の年収の人が450万円ぐらいになるわけです。 それで今労使の交渉は非常に厳しいわけですけれども、そういう中で、その翌年に前 年の年収でこの年金の保険料がかけられますと、恐らく10万円以上さらに追加で取られ ることになるわけです。そうしますと厳しい労使の交渉をしている中で、全然別途に国 からこの制度の変化によって下がった人が、また労使の交渉以上の幅を超えて制度で悪 くなるんです。非常に大勢の人にそういう問題がありますので、特にベースとしては、 前年の総報酬に対してということになると思いますが、非常に大きな矛盾を今まで以上 に賞与の水準の幅が大きく増えますので、ぜひとも適正に対応していただきたい、こう 思います。 ○事務局  今、御指摘いただきましたような心配がありまして、前回はそこは随分議論になりま したものですから、前回そこを説明しましたのですが、もう一度申しますと、前年度に かかるということにはならないようにしようということで、ボーナスはその都度150万と いう上限を置いて保険料を徴収しようと。本来であれば、前年度の総報酬にかけて全体 で見た方がよかったんですけれども、そういうことがありまして、ボーナス支給の都度 上限を置いて徴収するというふうにいたしました。 どっちの方法にも問題がありますが、むしろH委員の指摘に沿う格好で、今回設計を させていただいたというのが1つ。 それから、大幅に変動があるケースもございますけれども、年金額は生涯の平均で計 算しますので、1年度大きく揺れても生涯で見た場合には平均で考えておりますので、 1年の激変が年金の裁定時に大きくはねるということはないように制度は運営されるも のと思っていますので、そこも何とか大丈夫かなと思っております。 ○会長  ほかにはよろしゅうございますか。どなたか御発言ございませんでしょうか。 どうぞ。 ○C委員  先ほどの国庫負担の話ですが、「次のような意見があった」ということは少数意見を 書いているのだろうと理解しますと、本文の方に基礎年金の国庫負担割合の引上げと保 険料凍結解除は速やかにやれと言っているわけですね。前段階は、速やかにやれという ことと慎重に判断すべきだということはわかるのですが、後ろの「基礎年金の国庫負担 割合の引上げを急ぐべきである」というのは、この本文の記のところと同じことを言っ ているので後ろの方は要らないのではないか。前段階だけは、本記の方で、凍結解除を 早くやれといっているのに対して、「経済状況から慎重に判断すべきであり」、上は残 してもいいけれども、下は要らないと思います。下の「基礎年金の国庫負担割合の引上 げは急ぐべきである」ということは本文の記の中で言っているわけです。 ○事務局  確かに本文の方で、両方急げと書いて、少数意見は順番づけで書いてあります。確か に意見が違っておるのは、保険料凍結解除の分だけということでは正しい御指摘かと思 います。 あとは文章の問題として、意見提出された側の御了解さえあれば、文理的には整理でき ると思います。 ○会長  どうぞ、F委員。 ○F委員  年金制度にとっては、凍結期間をずっと長く引っ張って、それで基礎年金の国庫負担 割合も現在のまま3分の1というのを維持するということになりますと、かなり先に凍 結を解除したときにかなり大幅な国民年金・厚生年金も保険料引上げをしなければいけ なくなって、年金制度としては非常に厳しいことになるわけですね。ですから「基礎年 金の国庫負担割合の引上げを急ぐべきである」というところは私は強調すべきだと思い ます。 ○M委員  会長。 ○会長  M委員どうぞ。 ○M委員  これはもともとこの審議会で議論した問題ではないんです。保険料の凍結解除と国庫 負担の引上げという問題は。まさに先ほどD委員が冒頭におっしゃった連立内閣という ところから出てきた問題でございまして、ですから私は今C委員がおっしゃったように 本文には両方とも早く済ませと書いてあるのですから、これを書きますと、保険料の凍 結したままでも国庫負担の引上げだけはやれというような意味にしかとれないわけです これをわざわざ書くということは。そこまでK委員は主張しておられたのかどうか、私 はよくわからないんですが、もし、これを外せるならば、4番目のところは取った方が すっきりすると思います。 ○A委員  今、M委員のおっしゃったとおりだと思います。F委員のおっしゃった国庫負担割合 引上げをしなければ財政上とおっしゃったんですけれども、それは裏腹で同じことで、 保険料の凍結を早く解除すれば財政の問題は1つ前へ進むわけですから、だから、どっ ちを先にということではないと思うんです、そういう意味では。ですからやはり後ろの 「国庫負担割合の引上げを急ぐべきである」というところを削ってちょうどいいのでは ないかという感じがいたします。 ○会長  さて、いかがいたしましょうか。本文といいますか、記のすぐ下の7行目というのは 次の財政再計算までにできれば早くやった方がいいと考えているという意味でしょう。 後の方は、それもいいけれども、しかし、慎重に考えてほしいというのもあると、両立 はすると思うんですけれども、いかがでしょうか。 ○N委員  私も強く言うほどの論拠が十分なくて申し上げて恐縮なんですが、E委員とJ委員は 退場されましたが、本日お出しになりました御意見の中の1.の(5)、「将来の保険料負 担について」という部分の言いぶりからいたしますと、保険料はできるだけ動かさない で、かつ国庫負担の引上げをやってほしいという精神があるのではないかと思います。 退場されたお二人の意見をあえて言うわけではありませんが、私もそういう部分につい て一定の努力がなされるべきと先ほど申し上げました。そのことが国民年金への信頼性 の確保という部分で一定の戦略といいますか、未納・未加入対策の1つの力になると考 えますので、再度申し上げるわけであります。 ○会長  D委員何か。 ○D委員  ここは好みの問題で、なるべく簡単に。いろんな解釈が起きるところは切った方がい いというのは私の考えです。それが玉虫色にそれぞれが解釈してうまくいくならそれで もいいのですが、やはりここはかなり誤解を生む可能性はありますので、後段を削除す るか、あるいは全部削除するか、どちらかを切った方がいいというのが私の意見です。 ○会長  局長の案はありますか。 ○年金局長  ちょっとこれは主張された方がいずれもいらっしゃらなくなったもので、本来事務局 が申し上げるようなことではないんですけれども、いろいろ御意見をお伺いしておりま すと、少数意見の中の保険料凍結解除は慎重に判断するべきであるというのはこういう 意見があるわけですから、ここは残す。「基礎年金の国庫負担割合の引上げを急ぐべき である」、ここを削れば、これをおっしゃっている方の、主張の一番の論点は、経済状 況が厳しい中で凍結解除をすると非常に大幅な引上げにつながるということで、そこは 慎重にやってほしいと、こういうことでしたので、少数意見としてはそれも1つの御意 見ですから、これは残しておくというのも1つの考え方ではないかと思います。 ○H委員  私はそれで結構です。ただし、私はK委員の代弁者ではありませんので、私はいいと 言ってもK委員が。私は結構でございます。 ○会長  それでは、今の「なお」書きから後の4つ目のマルのところは、「経済状況から慎重 に判断すべきである」というところで結び、後を、削除することでよろしゅうございま すか。ほかには何かございませんでしょうか。皆様方、この答申の文章、よろしゅうご ざいますか。ただいまのところは、今のようにもう一度プリントをし直すということに なりますが、お願いできますか。  御意見としては、今のところの後段を削除するということで、残りの部分はよろしゅ うございますか。               (「異議なし」の声あり) ○会長  それでは、御了承いただいたということで、ちょっと休憩します。  これで、全員懇談会を閉会します。よろしゅうございましょうか。               (「異議なし」の声あり)  きょうは連合から資料が提出されておりますので、これを公開します。よろしゅうご ざいましょうか。これは従来の例です。               (「異議なし」の声あり)  引き続き総会を開催することになりますが、しばらくお待ちいただきます。大臣がお 入りになります。その前に報道関係の皆さんがお入りになります。                 ──休 憩── ○ 会長  大臣がお見えになりましたので、ただいまから年金審議会総会を開催いたします。   まず、事務局から、答申案の朗読をお願いいたします。              (事務局より答申案朗読) 厚生大臣 宮下 創平 殿                          年金審議会                           会長 京極 純一        国民年金制度及び厚生年金保険制度並びに年金積立金の        運用の改正について(答申)  平成11年3月12日厚生省発年第10号をもって諮問のあった標記について下記のとおり 答申する。                    記  今回の改正は、少子高齢化が進行する中、将来世代の負担を過重なものとしないとい う考え方に立ち、年金制度の各般にわたり見直しを行い、長期的な安定を図ろうとする ものであって、保険料凍結は現下の経済状況に鑑み緊急避難的な措置としてやむを得な いものと考えるが、基礎年金の国庫負担割合の引上げを明示したことは評価でき、これ を了承する。  また、基礎年金の国庫負担割合の引上げと保険料凍結解除は、平成16年(2004年)を またず、できるだけ速やかな実現に努められたい。  さらに、以下の点について留意されたい。 1.国民年金について、学生の保険料納付の特例や保険料の半額免除の制度の周知に努 めるとともに、未納・未加入対策の徹底を図ること。 2.総報酬制について、その運営に当たり、導入後の月給やボーナスの支給実態の変化 を踏まえ適切に対応すること。 3.年金積立金の自主運用事業の実施に当たって、保険料拠出者の意向を十分反映させ るとともち、関係者の責任の明確化、徹底した情報公開による透明性の確保、専門的な 人材の確保を図ること。 なお、次のような意見があった。 ○ 厚生年金給付水準の適正化、裁定後の年金額の改定を物価スライドのみとすること 支給開始年齢の引上げ等の給付抑制策については、反対である。 ○ 60歳からの繰り上げ年金の減額率について、今回見直すべきである。 ○ 介護休業期間中の保険料について、免除制度を設けるべきである。 ○ 保険料凍結解除は、我が国の置かれている経済状況から慎重に判断すべきである。 ○ 基礎年金の税方式への転換について、政府全体として、財源問題の在り方や具体的 内容等を検討する場を設け、早期に結論を得るべきである。 ○ 総報酬制の導入は、制度自体に問題が多く、反対である。 ○ 厚生年金基金制度の代行部分の返上などを含め、企業年金の在り方について全般的 な検討を早急に進めるべきである。 ○ 被保険者向け融資事業については、一定期間を定めて撤退すべきであるという意見 と、被保険者の福祉の向上を図り、新たな官民格差を生じさせない観点から、引き続き 実施すべきであるという意見があった。 ○会長  以上が答申案でございますが、何か御意見ございますでしょうか。               (「異議なし」の声あり) ○会長  よろしゅうございますか。それでは、ただいまから答申をいたします。  本日は大臣がお見えでございますので、答申書をお手渡しいたます。          (答申書を京極会長から宮下厚生大臣へ) ○会長  それでは、ここで大臣から一言御挨拶をお願いいたします。 ○宮下厚生大臣  それでは、一言御挨拶申し上げたいと思います。  今回の年金制度の改革についての諮問を申し上げましたところ本日答申をいただくこ とができました。委員の先生方の御労苦と、それから答申をいただいたことに改めて感 謝申し上げたいと存じます。  この上は、この答申の趣旨に沿いまして、法案の整備を行い、また国会における審議 等の促進を図り、同時に円滑な実施ができますように相努めたいと存じます。  この年金審議会の諸先生方におかれましては、きょうを含めて34回ということで、1 昨年の5月以来大変御努力をいただいたことに改めて感謝を申し上げたいと存じます。 今後ますます委員各位の御健闘をお祈りすると同時に、引き続き、また御指導、御鞭撻 をいただきますようにお願い申し上げまして、御挨拶にさせていただきます。  ありがとうございました。 ○ 会長  それでは、本日はこれをもちまして閉会します。長期間にわたる御審議ありがとうご ざいました。 問い合わせ先 年金局 企画課       須田(3316)