99/03/12 第13回厚生科学審議会研究企画部会議事議事録 第13回厚生科学審議会研究企画部会議事議事録 日  時:平成11年3月12日(金) 14:00〜16:00 場  所:厚生省共用第9会議室 出席委員:矢崎部会長      (委員:五十音順:敬称略)       柴田鐵治      (専門委員:五十音順:敬称略))       杉田秀夫 高久史麿 土屋喜一 寺尾允男 初山泰弘       眞柄泰基 眞崎知生 宮本昭正 柳澤信夫 山崎修道 議  事:1.バイオテクノロジー産業の創造に向けた基本方針について(報告)      2.研究開発の評価の現状について(報告)      3.平成11年度における厚生科学研究費補助金公募研究事業について       4.今後の厚生科学研究の在り方について 資  料:1. バイオテクノロジー産業の創造に向けた基本方針      2−1.平成11年度における厚生科学研究費補助金公募研究事業について         (諮問書・付議書)      2−2.平成11年度厚生科学研究費補助金新規研究事業公募課題案      3.骨子案 ○事務局  それでは定刻となりましたので、ただいまから第13回厚生科学審議会研究企画部会を 開催いたします。  本日は寺田委員と大石委員が御欠席でございます。また、高久委員は若干遅れてお見 えになるという連絡が入っております。  まず配布資料の確認をさせていただきたいと思います。 (以下、資料確認)  資料を御確認いただき、もしお手元にない資料がございましたらお申し出いただけれ ばと思います。  それでは、部会長よろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長  それでは、本日の議題に入らせていただきます。本日は年度末の大変お忙しいところ を多くの委員の先生方にお集まりいただきまして、ありがとうございました。  まず資料1及び資料2について、事務局から説明をよろしくお願いいたします。 ○事務局  資料1につきまして御説明申し上げます。  表紙をめくっていただきますと、「バイオテクノロジー産業の創造に向けた基本方 針」ということで、平成11年1月29日関係閣僚申合せということになっております。バイ オテクノロジーの関連分野につきましては、平成9年に閣議決定されました経済構造の 変革と創造のための行動計画、平成9年5月16日の閣議決定でございますが、その中にお きまして、今後成長が期待される15分野の1つというふうに位置付けられ、政府全体と してその研究開発、産業化を進めているという現状にあるわけでございますが、今般そ の中で新事業、雇用創出の観点からその加速化を進めるため、産業再生計画というもの が同じく平成11年1月29日閣議決定をいたしました。  これを受けまして、バイオテクノロジーに関係する主要5省庁は、厚生省、科学技術 庁、文部省、通産省、農水省でございますが、主要5省庁の大臣の申合せということで、 ゲノム情報を活用した産業化の加速的促進に向けて関係省庁一丸となって取り組みを強 化する必要があるという認識に立ちまして、今ご覧いただいております資料1のとおり 申合せになったものでございます。  申合せの中身でございますが、ゲノム解析の加速的推進、事業化支援、実用化に向け た取り組みの強化といった施策を進めることを内容といたしております。具体的な施策 の内容を詰めるべく、今後具体的な計画を策定するということになっております。  以上、御報告でございます。  続きまして、研究開発の評価の現状でございます。それにつきまして御報告申し上げ ます。  御案内のとおり当審議会の御意見を踏まえまして策定されました「厚生科学研究に係 る評価の実施方法に関する指針」に基づきまして、現在研究評価を厚生省として進めて いるところでございますが、国民の科学技術に関する理解と支持を得るため、今般政府 全体の研究評価の取り組みの現状というものが取りまとめられましたので、参考までに お手元にお配りしておるわけでございます。後ほど時間のあるときにご覧いただければ と思います。  以上でございます。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。最初の資料1は、5省庁のバイオテクノロジー産業の 創造に向けた基本方針ということが書かれておりまして、具体的な内容のものでござい ます。後ほど目を通して何か御意見ございますれば、こちらの方にいただきたいと思い ます。  続きまして、平成11年度におけます厚生科学研究費補助金の公募研究事項の方針につ きまして、資料2−1のとおり厚生大臣から諮問をされまして研究企画部会に付議されて おりますので、これにつきまして御検討いただければと思います。まず事務局から内容 について説明をよろしくお願いします。 ○事務局  次の議題につきまして御説明申し上げます。資料は資料2−1と資料2−2で ございます。  まず資料2−1の方でございます。先ほど部会長から御説明のありましたとおり、表紙 をめくっていただきますと、3月12日付で厚生大臣より厚生科学審議会豊島会長あてに 諮問がなされております。それを受けまして、当部会に付議されている形になるわけで ございますが、その付議書につきましては3ページ目にございます。御承知のように、継 続の事業につきましては昨年の12月に当部会で公募課題の方針につきまして御審議いた だいたわけでございますが、今回は平成11年度の新規事業につきまして現在国会で審議 中であるわけでございますが、その新しい新規事業の公募方針につきまして御議論いた だくということでございます。  資料2ページでございますが、厚生科学研究費補助金公募研究事業の新規研究事業分 ということで下に表になっておりますけれども、2つの事業が新規の事業として平成11 年度予算案の中に盛り込まれております。1つが、社会保障国際協力推進研究事業でご ざいます。もう一つが特定疾患対策研究事業ということでございます。資料2−2に具体 的な課題の、官報告示に載せるときにこんな感じになるのではないかという案というも のをお付けいたしておりますので、それを参照しながら平成11年度の研究課題の採択方 針というものを御審議いただければと思います。  まず1番目といたしまして、「社会保障国際協力推進研究事業」でございます。方針 といたしまして、「医療保険・年金、公衆衛生等を含めた広義の社会保障分野に係る国 際協力の推進方法の開発や、国際協力の人材育成の在り方に関する研究」というもので 公募課題の採択をしたいということでございます。  2つ目の「特定疾患対策研究事業」でございますが、「原因が不明、治療方法が未確 立な難治性稀少疾患を対象とする発症機序の解明及び治療方法の開発に関する研究」で ございます。大きな方針でございますがただし書きが付いておりまして、「平成11年度 の新規公募については、次の事項に関する研究を除く」ということで、臨床調査研究の うち次に掲げるもの、1番目の血液凝固異常症から21番目のスモンまで、これらにつき ましては、今回11年度には公募しないということでございます。  2番目といたしまして、「横断的基盤研究のうち次に掲げるもの」ということで、 「特定疾患の研究評価に関する研究」。これにつきましては、平成11年度には新規の公 募をしないということでございます。具体的に官報で告示をして募集しますのは、資料 2−2に付いている資料で官報告示をしたいというふうに、現時点で想定しているわけで ございます。  資料の説明は以上でございます。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。これはあくまでも現在国会で審議中の予算案に基づ いた方針でございますので、それを前提にお考えいただければ大変ありがたいと思いま す。2番の「特定疾患対策研究事業」は、従来は特定疾患対策懇談会で方針を立てられ ているところを、このたび厚生科学研究費補助金への移行ということでこういうような 採択方針ということが決定したわけですけれども、何か御質問、内容の詳しい事項が知 りたいという先生方がいらっしゃれば、担当課に御説明いただきたいと思いますけれど も、何かございますでしょうか。 ○山崎委員  資料2−1の臨床調査研究のうち次に掲げるものと書いてありますので、1〜21までの 疾患の臨床調査でない基礎研究その他は対象とするということなのでしょうか。 ○エイズ疾病対策課 中谷課長  お答え申し上げます。御質問が理解できたか定かでないのですが、現在の体制を含め まして御説明申し上げたいと思っております。  難病の研究事業でございますが、昭和47年以来特定疾患調査研究事業といたして継続 してきたところでございます。その意思決定機関といたしましては、特定疾患対策懇談 会が意思決定機関として研究調査を行ってきたわけでございます。それをこの度平成11 年度から、厚生科学研究の先端的厚生科学研究の1分野として位置付けていただこうと いう趣旨でございます。  そこで、今、行っている研究というのは臨床調査研究部門は14グループ39班、横断的 基礎研究部門は2グループ11班という50班体制、プラスプロジェクトといたしまして重 点研究16プロジェクト、こういう66のプロジェクトが今、進行中でございます。このう ち今回お諮りしておりますのが特定疾患対策懇談会でどのように移行させるかというよ うな論議をいたしまして、その結果でございますけれども、1クール3年といたしまし て2クール6年終わった班は全部この際に公募、横断的・基盤的部門も全部公募、重点 研究は実は平成10年から始めておりますが既に公募しております。したがって引き続き 公募。こういう考え方で整理いたした結果がここに出ております。  したがいまして、横断的な研究部門ということでいいますと、今回資料2−2の方でお 示ししてございますが、3ページ目でございます。横断的基盤研究のうち次に掲げるも のというので、(1)基盤研究のうち(a)〜(e)と、(2)社会医学研究のうち(a)〜(e)という 課題を募集させていただきたいというのが現下の考え方でございます。  更に付け加えますと、特定疾患対策懇談会ではやはり難病の臨床的なEBM(科学的根拠 に基づく医療)をつくっていく研究というものが特定疾患対策研究の主体ではないか。 そのために基盤的な研究、それも各臨床班では行っていただきたいけれども、やはり念 頭にあるのは患者さんの治療、予防ということを念頭に置いていただきたいというよう な御意見も併せて提出していただいたところでございますので、募集要項の中にはそう いうことも盛り込ませていただきたいというふうに考えております。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。内容の詳しいことについては資料2−2を見ていただ ければお分かりいただけるかと思います。そのほか何かございますでしょうか。一応資 料2−2も目を通していただくと大変ありがたいと思いますので、よろしくお願い します。  もし御意見がございませんようでしたら、このまま私から厚生科学審議会総会に報告 申し上げるということで御了承いただけますでしょうか。 (一同了承)  どうもありがとうございました。  先ほど申し上げましたように、この方針といいますのは現在国会で審議中の予算案に 基づいたものでありますので、国会で修正された場合には再度検討する必要があるとい うことを委員皆様方に確認申し上げると同時に、総会におきましても申し添えたいと思 っておりますのでよろしくお願いしたいと思います。  それでは、予算関係の概算要求の内容、研究課題の募集についての告示について参考 資料として先生方のお手元にお配り申し上げておりますので、後ほど目を通していただ ければ大変ありがたく思います。何とぞよろしくお願いいたします。  続きまして、前から懸案でありました「今後の厚生科学研究の在り方」について何回 かこの部会でも御議論いただいて、さまざまな御提言があったところでありまして、事 務局とも相談しまして骨子案メモというものを整理し直しまして委員の皆様方のお手元 にお配りしております。従来は厚生科学会議で昭和63年に「厚生科学研究の基盤確立と ブレークスルーのために」という報告書がございます。それから厚生科学会議が厚生科 学審議会に変わりまして、厚生省における科学研究を統一的な視点から効率よく運用し ていこうということで、先ほどの御説明もありましたような特定疾患の対策その他も厚 生科学研究費補助金の下に一本化されつつあるわけであります。  そこで、厚生科学審議会研究企画部会として報告書を作成して提案しようということ を前々から委員の皆様方に先ほど申し上げたように御議論いただいたところであり ます。今回の骨子案メモは本当に骨子案で重複する部分もあって十分には整理されてお りませんけれども、そういう認識の下で先生方に更に内容を詰めるような御議論をいた だければ大変ありがたいと思います。それでは事務局から御説明いただけますでしょう か。よろしくお願いいたします。 ○唐澤室長  それでは、資料3をお開きいただきたいと思います。1ページ目「骨子案報告書作成 のためのメモ」というようになっております。  まず全体の性格から最初に御説明、お断りを申し上げなければならないのでございま すけれども、このメモというものはこれがそのまま報告書の原案になるということでは ございません。そうではございませんで、これまで先生方からいただきました御意見で ございますとか、部会長からも御指示をいただいておりますので、そういうものを総覧 的にメモという形で並べたものでございます。したがって、私ども事務局の能力の問題 もございまして、精粗さまざまでございまして、重複も整理をしたつもりでございます が、不統一で不十分な点も多いかと思います。そうした点についてこれから御意見をい ただきまして、また部会長の御指示もいただきまして、今後でき上がりに向けて進めて いきたいと思いますので、並べたメモということで御理解いただければと思っておりま す。  まず全体の構成を最初にお話しいたしますと、全体は全部で13ページになっておりま すけれども、4つの部分に分かれております。Iは1ページにございますような「厚生科 学の意義」ということで、厚生科学とはいかなる科学であるかということが第1番目の パラグラフでございます。  IIといたしましては、「厚生科学研究のこれまでの推進状況」ということで、どのよ うな取組を進めてきたかというのが2番目でございます。  めくっていただきまして2ページのところにIIIがございまして、「厚生科学研究を取 り巻く新しい時代の変化」というものを述べているわけでございます。  次にIVといたしまして、「新たな変化に対応して求められる研究領域」ということで 具体的な研究領域を例示として掲げてございます。  最後に恐縮でございますけれども11ページを開いていただきますと、Vといたしまして 「厚生科学研究推進の方法」ということで、これはテーマというよりは推進の方策であ りますとか支援体制でありますとか、そうした全部で5つの部門に分けまして整理した メモでございます。  恐縮ですが最初の1ページに戻っていただきたいと思います。以下、ポイントを簡潔 に御説明させていただきたいと思います。まず「厚生科学の意義」でございますが、最 初の○にございますように、厚生科学とは、保健・医療、生活衛生、福祉等の分野につ いて、医学、薬学、工学、経済学、社会学等の関連諸科学の手法を用いて疾病原因の解 明、予防・診断、治療技術の向上、生活環境の安全性の確保、福祉水準の向上を目指し た研究開発の総称。定義と言うと大げさですけれどもそういう位置付けをしており ます。これは従来の厚生科学会議の報告書の中で用いられておりました定義を引き継い だ形でしております。  2つ目といたしましては、これまでの先生方の御意見にもございましたけれども、や はり厚生科学というのは臨床でありますとか応用というものを視野に置く、人間という ものに関心を持つ研究でございますので、健康で自立と尊厳を持った生き方を支援する 科学であって、健康と生活の向上に貢献して、人間の未来を開く科学としての厚生科学 に期待される役割は大きいということをまず最初に意義として申し述べておいてはどう かということでございます。  II「厚生科学研究のこれまでの推進状況」でございますけれども、まず最初の○では 厚生科学会議時代に2つの提言をいただいております。63年と平成7年であったわけで あります。ただ、この厚生科学会議は正式な組織ではございませんでしたので、平成9 年度に当厚生科学審議会が設置されました。そしてこの審議会の研究企画部会を中心と いたしまして、総合的な視野の下に統一的な評価に基づいて重点的かつ効率的な研究方 針を策定し、そうした方針に沿って厚生科学研究を推進してきたというのが第2番目で ございます。それから平成10年には原則公募型ということで競争的な研究関係を形成す るというような取り組みも進めてきたというのが第2番目のパラグラフでございます。 3番目は政府全体の取り組みということで、2ページの方にまいりまして、科学技術基本 計画でございますとかライフサイエンス、こうした部分の動きを記述してございます。  IIIにまいりまして新しい時代の変化ということでございますけれども、いろいろな変 化の記述があるわけでございますけれども、カテゴリーとして4つほどのミクロからマ クロまでの最近の変化というものを整理してみたものでございます。1つは「遺伝子・ 細胞レベル」ということで大変生命科学関係の進歩は著しいわけでございまして、がん でありますとか遺伝性疾患、免疫疾患等での期待というものがあるわけでございます。  他方、生命倫理でございますとか、社会・倫理的な問題も検討が求められているとい うのがまず最初の1でございます。  2番目の「身体レベル」というように書いてございますのは、これは感染症の脅威の 問題でありますとか、食の安全の問題、あるいは医薬品、医療用具というような問題が 第2番目の変化として記述してございます。  3ページにまいりまして「社会レベル」でございますけれども、長寿社会における健 康生活習慣病対策、QOLというような福祉用具等も含めた生活の質的向上、更には社会保 障制度全体の少子高齢化に対応した再構築、包括的な医療システムの問題、情報化に関 連いたしまして、コンピュータ、ネットワーク技術等の進歩の活用、またそれを反映さ せたEBMに関する関心の高まり、社会の複雑化でございますとか健康危機管理というよう な問題が指摘されているわけでございます。  最後に、地球全体というような大きなレベルにおきましては、ダイオキシンでありま すとか内分泌かく乱化学物質の問題でございますとか、グローバル・スタンダードの問 題が対応を求められている状況でございます。  そこで、こうしたこれまでの取り組み状況、新しい時代の変化を踏まえまして、どの ような研究領域で対応が求められていくのかということを整理したものでございます。 ただし、ここは先ほど冒頭にも申し上げましたように、精粗さまざまでございまして不 十分で不統一な点がございますので御意見をいただきたいと思いますが、このIVの研究 領域の部分では、大きく分けまして次のように分けてございます。まず4ページが「健 康科学研究の推進」として1でございます。その中身は生命科学関係のもの、QOL等の関 係のものでございます。  5ページにまいりまして2といたしまして、「少子高齢社会への対応」でございます。  6ページが3といたしまして「健康への脅威と生活の安全の確保」ということでござ いまして、中身といたしましては、感染症の問題、食品関係の問題、化学物質問題、地 球環境規模での問題というような問題でございます。  7ページに4といたしまして、医薬品と医療機器等の開発の関係。  8ページにまいりまして5といたしまして、「根拠に基づく医療の推進と情報技術の 活用」。  最後に9ページで、6といたしまして「厚生科学の国際化」。全体的にそうした構成 をとって整理してみたものでございます。  4ページにまたお戻りいただきまして、まず最初の「健康科学研究の推進」というこ とでございますけれども、厚生科学研究はとりわけ健康に関する科学でございますので 創造性に富んでかつ疾病の克服を視野に入れた基礎的な研究の推進が第1点。第2点目と いたしまして、疾病の克服に関して原因の解明、診断・治療法の開発、リハビリテーシ ョンを含めたQOL向上等に関する研究の推進。3つ目といたしまして、基礎的な研究と疫 学研究を始めとした臨床研究との相互の橋渡しを行うトランスレーショナル・リサーチ のバランスの取れた研究の推進といった基本的な事柄を3つほど掲げてございます。  具体的にまず「健康科学の視野の下での生命科学研究」ということで、こちらの方は 改めて御説明申し上げるまでもございませんけれども、主な研究対象疾患と分野といた しまして、がん、循環器等を始めといたします5つほどの分野を例として掲げておりま す。  2つ目の○にまいりまして、生命科学の分野における優れた研究者の養成確保や研究 基盤の整備ということで、知的所有権の問題への対応、研究支援者の問題といたしまし てリサーチ・レジデントでございますとか、研究補助者の育成確保制度の充実、あるい は研究材料確保のためのリサーチ・リソースバンクというような事柄に触れているわけ でございます。これは後ほど支援方法の最後のVの方でも出てまいります。そうした人材 と支援環境の問題でございます。  3つ目といたしまして、クローン、遺伝子、ゲノムというような問題、ヒト胚性幹細 胞などの新しい技術の応用と社会・倫理的な問題への対応ということでございます。こ れは社会・倫理面を配慮した人権、プライバシー保護に関するガイドライン等の整備と いうような問題でございます。  5ページにまいりまして、健康科学の分野での(2)といたしまして、「生活の質の向上 とノーマライゼーションの推進に資する研究」ということで、まず1つ目といたしまし ては、生活習慣病に代表される慢性疾患等への対応。2つ目といたしまして、疾患分野 の例といたしまして、生活習慣病のほかに感覚器、アトピーであるとかそういうアレル ギー疾患等の問題、ストレス、PTSD等の事柄に触れているところでございます。  第2といたしましては、「少子高齢社会への対応」ということで、まず健康、医療分 野で推進すべき課題といたしまして、高齢者QOLや障害者等の社会参加の向上に資するよ うな新たなリハビリテーション技術の開発でございますとか、介護の方法論の問題でご ざいますとか、安全な生活、あるいは社会参加を促進していくための各種福祉用具の開 発、日常生活の支援、老化のメカニズムというような問題でございます。  生活の質の確保という観点からは、慢性疾患患者のQOL、苦痛の緩和ということでペイ ン・コントロールというような問題、あるいは末期のケア、これはなかなか難しい問題 がございますけれども、そうした在り方も課題となっていくだろうというふうに考えて おります。  そのほか、医療システムの問題でございますとか、社会保障制度の構造改革。経済情 勢が非常に厳しいわけでございますが、少子・高齢化の状況の中での公平・公正な社会 保障制度の確立というような問題でございます。  6ページ第3といたしましては、「健康への脅威と生活の安全の確保」という問題で ございます。(1)は「新興・再興感染症への対応」ということで、O157でございますとか 新型インフルエンザというような問題、多剤耐性結核菌やマラリアというような問題、 HIVのような問題、あるいはバンコマイシン耐性腸球菌のような問題、こうした事柄を提 供してございます。  食の安全の関係では、O157は昨年のイクラの食中毒の事件というのがございましたけ れども、こうした健康危機管理の観点からの問題、あるいは外国における狂牛病等の問 題、こういうような事柄を整理しております。  (3)の化学物質の問題といたしましては、安全性評価分野の調査研究でございますとか ダイオキシン、内分泌撹乱物質、地球規模の環境問題、資源循環型社会でございますと か、水の安全といった問題の整理をしてみたところでございます。  第4は医薬品と医療機器の関係でございますけれども、この分野では疾病関連遺伝子 の解析でございますとか、遺伝子の発現形態である蛋白質の解析、機能解明というよう な分野での探索、またそれらから開発される医薬品、ゲノム創薬、プロテオーム創薬の 分野、こういうような分野に注目が集まっているわけでございます。そうした分野に対 して、医薬品の研究につきましては、民間企業で具体的には医薬品の開発が行われてお りますので、産官学の連携のとれた先端分野への研究でありますとか、知的財産の保護 の問題、基礎研究を臨床研究につなげていく問題、あるいは人工骨でありますとか関節 といったような手術補助器具は既に一定の成果が上がってきておりますけれども、人工 臓器でございますとか、新規材料、そうしたような分野、更に皮膚組織等の再生医療と いうような問題、こうしたような項目について整理してみたところでございます。  5番目でございますが、「根拠に基づく医療の推進と情報技術の活用」という整理を しておりますが、5と次の6の厚生科学の国際化の関係は分野ごとの整理というよりは 新しい取り組み方として項目を立ててみたものでございます。  まず「根拠に基づく医療の推進と情報技術の活用」という部分におきましては、1つ には、その時代の標準的な医療サービス提供の態様というものにつきまして、医療関係 者、例えば具体的にはドクターというような方が瞬時に情報利用ができる。それが随時 更新されて、最新のものとしてメンテナンスされていくようなシステムの整備に関する 研究というものが必要になってくるのではないかというのが第1点目でございます。  併せて、そうした「医療サービス提供の標準的態様」、こういう言葉が適切かどうか は御論議いただきたいと思いますけれども、標準的態様とともにサービス提供の体制で ございますとか資源など、こうしたものに対する国民への情報の提供、理解の促進とい うことを図っていくことが大変重要ではないかというのが第1点目でございます。  併せて第2点目といたしまして、臨床研究では、長期間の観察を行う疫学研究の充実 が重要になってまいりますので、疾病の登録でございますとか統計利用、あるいはこう したデータというものが1つの公共財として共有されて利用されていくということが非 常に重要でございます。次の9ページにまいりまして、そうしたものに対する組織的な 対応の在り方でございますとか財源の問題、あるいは、やはりデータの利用ということ になってまいりますとプライバシーの保護ということが出てまいりますし、医療関係者 には守秘義務というものがございますので、そうした問題の検討というものも必要にな ってくるわけでございますが、いろいろな課題を整理して並べてみたものでござい ます。  次の○といたしましては、EBMの観点からの有用性や有効性についての医療技術評価と いった事柄に関する研究。  次に、情報システムの標準化、共通性、再現性、個人情報の保護というような事柄に ついての主な3つほどの事柄を整理してございます。  最後にそのほか、今後研究開発をすべき情報システムといたしましては、障害のある 方の社会参加を支援するシステムでありますとか、在宅医療、僻地医療の向上を支援す るシステム、健康危機管理、あるいはGISというような「地理情報システム」を活用した 情報ネットワークというような事柄を整理してみたところでございます。  「厚生科学の国際化」といたしましては4つほど整理してございますが、(1)は先端科 学技術分野ということで9〜10ページにかけまして、次世代の技術開発、あるいは知的 財産保護の問題。それから医薬品の開発に関するハーモナイゼーションの問題。化学物 質評価の国際分担。これは大変分析に費用も掛かりますので、先進国共同して取り組ん でいこうという取り決めが行われているわけでございますが、そういう問題や国際貢献 というような事柄が含まれてくるのではないかと考えているわけでございます。  11ページでございますが、最後が「厚生科学研究推進の方法」ということで、「厚生 科学研究の推進に求められる特徴」といたしまして、まず長期的な視野に立った幅広い 研究、そして戦略的推進には研究の企画、組織、支援体制、法制度等の整備が必要だと いう総論的な部分が1でございます。  具体的なそれぞれの分野につきましては、2といたしまして「研究企画の充実」とい うことで、研究分野の設定等の問題があるわけでございますけれども、研究分野と研究 機関ごとに中・長期的な計画的なものを策定いたしまして、各年度の実施と定期的な研 究評価と企画の向上を図る。グラント型、これは研究者個人の応募による小規模な研究 を想定しておりますけれども、テーマによりましては、プロジェクト型といたしまして 大型の組織研究、こういうものを研究目的と研究領域に応じて活用していく、あるいは 年度を超えた研究費用の問題等いろいろな問題もございますけれども、そうしたものに ついてもどのような方策というものがあり得るのかということを含めて検討していく必 要があろうと考えております。グラント型の問題では幅広い分野からの公募をいたしま して、課題の重要性、創造性や遂行能力等の評価によって最適な研究計画を選択してい くということでございます。  3といたしまして、研究所(組織)の問題でございますけれども、最初の○でございま すが、大型の組織や長期にわたる研究が必要な分野では、国立試験研究機関やナショナ ルセンターといったものを明確な目的と使命を持つ研究拠点施設として基盤施設や人員 等の予算充実の問題。平成13年には省庁の再編が予定されているわけでございますけれ ども、厚生科学研究を行う国立試験研究機関としての公共性と研究レベルの確保という ような問題でございます。  4といたしまして人的資源の問題でございますけれども、具体的には、専門分野の研 究者、若手の研究者、研究支援者、あるいはCRC(治験コーディネーター)、生物統計学 の専門家というような人的資源の養成、確保の問題です。具体的には新分野の研究者、 生命倫理、生物統計、臨床疫学、医療経済等、こうした分野のまだ全体的には人数の少 ない分野、それから研究支援者の養成の問題、若手研究者の任期付採用、あるいはポス トドクターの活用による人材の流動性の確保等の問題が4番目の人的資源の問題でござ います。  5番目は「研究資源の確保、体制整備」ということで、特にこれまでの知見を共通に 活用できるような基盤をつくっていくということが大変重要だという御指摘もございま すので、共通基盤となるようなこうした研究資源確保のためのさまざまな方策の検討が 必要であるということでございます。その次は食品等の分析の問題でございます。  6番目「研究情報の公開・研究成果の公開」等の問題でございますけれども、成果に つきましてはできるだけ積極的にこれを公開して、啓発等を進めてホームページ等の活 用を進めていくということでございます。研究成果の知的所有権確保の支援、民間への 技術移転の活用というようなことも考えていく。  最後に7でございますけれども、生殖医療や遺伝子解析などの分野におきましては、 新たな社会倫理的課題ということが生じておりますので、こうした問題に対応できるよ うな方策、ガイドライン、マニュアル等の問題、こういうような事柄に取り組んでいく ということでございます。  以上、簡単に御説明させていただきました。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。膨大な内容を非常に簡潔に、分かりやすく御説明い ただいたと思います。厚生科学の今までの流れから今後の厚生科学研究の在り方につい て報告書を作成するためのメモとして事務局にこのようなものをまとめていただきまし たけれども、どこからでもよろしいと思いますが、何か御意見がございましたら御自由 に御発言お願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○眞崎委員  質問ですけれども、11ページの真ん中に書いてあるグラント型とプロジェクト型とい うのは規模の大きさの違いだけなのですか。 ○事務局  仮にこのようなメモにしておりますが、グラント型は現在の厚生科学研究費補助金、 名前のとおり補助金ということで個人の方の提案に対して補助をさせていただくという 形になっておりまして、ほとんどがこの形式で現在執行しております。  プロジェクト型と申しますのは、どちらかと申しますと厚生省では国立試験研究機関 とかナショナルセンターにおいて機関研究と称されるものがそれに近いかと思いますけ れども、現在これは非常に少ない状況です。例えば農林水産省、通商産業省等の他省庁 研究ではこういうプロジェクト型のものが相当を占めておりまして、逆にグラント型は ほとんどないといった状況になっています。  厚生省では科学技術基本計画に基づきまして、柔軟かつ競争型の研究費の増額という ことにこの近年努めてまいりました。しかしながら、ここで御議論いただいた中でも、 そういったものだけに偏っていてはいけないのではないかという御指摘があったという ことで、このような記述にさせていただいております。したがって必ずしも大小だけで はございませんが、個人を対象にしたグラントということからしますと、グラント型の 方がどうしても小規模、それからプロジェクト型の場合には必ずしも大きいだけではな いと思いますが、大型のものが当然出てくるのではないかと思われます。 ○宮本委員  総論としては大変結構であるというふうに思って、立派に書かれているというふうに 思いますけれども、各論というか具体的に例えば同じ厚生省の中で幾つかの主任研究者 がダブったり、あるいは厚生省の大型の研究費をもらっておりながら他の省庁の研究費 を更にもらうというふうなことであります。以前は少なくともそういうことがありまし たら、それをできるだけ下げていただくこと。あるいは主任研究者ではなくて同じ主任 研究者がほかの、あれは主任研究者ではなくて研究者ですか、その中にかなり名前をダ ブり、あるいはトリプル、40人もダブっていることがないわけではないのです。そのあ たりをある程度将来の課題として補正するというふうな点はどうかというふうに思いま すけれども、いかがでございましょうか。 ○事務局  誠にもっともな御指摘でありまして、実は厚生省のみならずこのような研究推進を行 っております省庁間、約7つぐらいの主立った省庁がございまして、そこでも顧問会議 等から指摘を受けているところでございます。現在厚生省等、直に官庁から補助金等の 形で交付しているもののほか、厚生省ですと医薬品副作用被害救済研究・振興調査機構 (以下:医薬品機構)による研究助成といった大型の制度ができておりまして、それら を共通いたしまして、まず主任研究者において複数の研究制度から同一課題に多額の研 究費を受けていないかといったことについて調整することとしております。更に平成11 年度からは分担研究者でも大体お一人当たり1案件1千万円以上の、比較的大型の研究 費を受けておられるものについては重複がないかどうかと、こういったことについても 精査していこうということになっております。  そうは申しましても、日本の大学の制度その他から考えまして、代表される先生の下 に多数の研究者が居られまして、十分に遂行能力があり、かつ課題間の重複がないとい うものについてまで一律に規制をするのはいかがなものかという御議論もありまして、 そこら辺についてはよく検討するようにというふうな話になっております。 ○宮本委員  おっしゃるようにある特定の先生の場合には、教室員だとかあるいは部下のいろいろ な先生方の数が多い。したがって研究の推進能力が大変あると。そんなことで幾つかの 研究班の班長をやったり、分担研究者として名前を連ねるというのはある程度やむを得 ないと思うのです。ですけれども余りにも多過ぎますと何となく目についたり、あるい は、ほかのところから既にこういうふうな研究費の配分の対象が厚生省の方である程度 決められていて、そしてこういうふうな形になっているのではなかろうかというふうな あらぬ噂を立てられたり、批判されたりすることがあるものですから、一応そういうこ とは頭の中に入れていただいて御考慮いただければということでありまして、決して二 重である、三重である、これはけしからぬというわけではございませんので。 ○高原課長  このグラント型の厚生科学研究はそういうふうな形でやっておるわけでございますが 1つは、研究者個人に対する補助金であるというのが基本的な性格になっております。 したがいまして、非常に補助金額の多い先生の属されている試験研究機関では、電気料 など様々なものがショートしてくるということがあって、何とか一般的な管理運営コス トというふうなものを合法的に払うことはできないものだろうかというふうな問題意識 も1つございます。これは非常に事務的な問題で恐縮でございます。  あともう少し深刻な問題が幾つかあるわけでございますが、1つは、研究者個人の事 業がなるほど結構であるので、厚生省としても補助させていただきましょう、という趣 旨でございますので、得られたデータは研究者個人のものになるわけでございます。こ れは一般の研究ですと非常によろしいわけでございますが、特に、これから必要になっ てくるだろうというお話をたびたび伺っております長期コーホートのデータのような場 合、その先生が例えばお亡くなりになりますと、帰属がだれのものやらよく分から ない。それをもう一度現在の時点でオープンして評価すれば相当なことが分かるのでは なかろうかというふうなものについても、これは基本的に個人の財産でございますの で、何かうまく公共物として使うことはできないのかという議論があります。これはほ かのところでコーホートの話と一緒によい知恵がありますといただきたい話でござい ます。  もう一つは、これは一部の、特に従来は厚生省の方である先生にお願いして班研究を 組むというタイプが非常に多くて、その時代とは物の考え方が少し変わったのですよと いうことが十分広報されていないこともございまして、これは厚生省の事業だというふ うに理解されることが非常に多い。例えば、疫学調査などで、これは厚生省補助金によ る事業というふうにお書きいただければ結構なのですが、これは厚生省何とか事業であ りますということで、いろいろな場合に私どもとしては責任がとりかねるような事態に なることもままある。特に最近例えば介護のような問題ですと、同一の市町村にいろい ろな研究者からおたくではどうやっているのですかというふうな調査票が来るのだそう です。一体厚生省は何を考えているのだというお叱りも受けます。こういうふうなとこ ろでグラント型はいい点はたくさんあるわけでございますけれども、少し考慮しなけれ ばならない点も幾つかあるということでございます。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。でき上がった成果を共有するということに関して、 一方では知的財産権の確立というものが重要な事項だと思います。それを確保した上で 共有化ということで5番目の、今、課長の言われた調査研究データの共有化というところ に知的財産権の、これはいろいろな省庁間の協議で実際には進んでいると思いますけれ ども、これも書き加えていただければ大変ありがたいと思います。  それと研究者の重なりにつきましては、文部省、科学技術庁、厚生省と随分情報交換 して、研究者も大体そういうことを認識してきているようには思いますけれども、宮本 委員の言われるように更に十分チェックするように今後も努めていかなければならない というふうに私どもも思っております。 ○杉田委員  4ページ(1)「健康科学の視野の下での生命科学研究」というところでございますが、 研究対象疾患や分野の2行目、アレルギー疾患、感染症、難病等とありますが、難病とい うのはおかしいのではないかと。つまり、いろいろな医学疾患には全部難病が入ってい ますから、あえてこれは必要ないのではないかというふうに1つ思います。  5ページの2「少子高齢化社会への対応」。これから書いてある項目は高齢化社会への 対応をいろいろ書いてあるように思いますが、少子に対する対応がどこにあるのだろう かと思うのです。  12ページの5「研究資源の確保、体制整備」でございますが、リサーチ・リソースバ ンクの拡充を進めるとともに運用体制をつくると。この中にヒト由来の遺伝子、細胞、 組織とありますが、これを採取する前に倫理的なガイドラインが非常に重要なわけ です。例えば、倫理的なガイドラインにのっとった採取といいますか、そういう言葉が 要るのではないかというふうに思います。  以上、ちょっと気が付きました。 ○矢崎部会長  貴重な御指摘ありがとうございます。難病というのは治療に抵抗性のという意味なの で、確かに各論があってそれから治療の切り口からは再びというのは変ですので。 ○杉田委員  もう一つ大変細かいことで恐縮なのですが、病気の名前、がん、循環器病疾患、神 経・精神疾患と。日本語では実は精神・神経ということになっておるのです。どちらか というのは実は大変重要な問題なので、慣習的には精神が先ですから、精神・神経の方 が一般かと思います。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。御指摘のとおりだと思います。その前の循環器病疾 患というものは重なってしまうので、まさに循環器疾患だと思います。すみません、そ ういうところを十分チェックできませんでした。どうもありがとうございます。  それと、確かに少子をどういうふうに対応するかというのは実際には難しい。恐らく 社会保障制度の構造改革というところに少子化の問題が集約されるかと思いますけれど も、厚生科学として取扱いは社会保障制度構造改革でいかがでしょうか。 ○唐澤室長  確かに少子化のことを書いてございませんので、また先生方の御意見も踏まえて検討 させていただきたいと思います。例えば、従来の厚生科学会議などでは発達育成研究の ようなことが記述されておりますので、そうした分野でございますとか、あるいは人口 学的な面からのアプローチもあると思いますので、御意見も踏まえて私どもも勉強させ ていただいて、また先生方の御意見もいただいて研究させていただきたいと思います。 ○矢崎部会長  杉田委員の12ページの倫理的なガイドラインにのっとった収集、保存という文言をき っちり入れるという御意見でございます。どうもありがとうございました。 ○柳澤委員  2つございますけれども、1つは9ページから始まる「厚生科学の国際化」でござい ますが、ここに挙げられておりますのは先端科学技術と医薬品開発であります。ただ、 私は高齢者というか長寿医療の方に関係しておりますけれども、WHOなどから非常に強く 言われますのは、我が国における生活習慣病やいろいろな疫学的なデータを基にした高 齢者対策というものが、特に発展途上国で高齢者というのは非常に急増しているという 現状があって、それに対していろいろな形の協力が是非欲しいというふうなことが言わ れてございます。やはり医薬品の開発、先端科学に並んでそういったコーホート・スタ ディーや生活習慣病に関する実際の疾患に関する臨床的な研究の成果なども国際協力の 中に是非含めるような形で表現を考えていただきたいというふうに思います。それが1 つでございます。  もう一つは12ページでございますけれども、「人的資源の確保と整備」ということで ここに書かれておりますことは大変重要なことで全く異論はないというか、非常に適切 な指摘だろうと思いますけれども、新しく医療や介護など保健、医療に関する領域がど んどん変わっていく中で、技術者やそれを支える人たちの育成に関して必要性というこ とは言われてここにも書かれてあるのですけれども、具体的にそれをどういうふうに養 成していくのか。例えば、国立試験研究機関で養成するようなシステムを考えるのか、 それとも新しく厚生省で考える、看護大学の中にそういった職種の養成を入れるのか、 厚生省としてどういったシステムを使ってこういった必要な人材を育成するかというこ とをもう少し提言していただければ大変ありがたいというか、それは必要ではないかと いうふうに思います。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。第1点目は、国際化は先端医療、医薬品開発だけで はなくて各国が抱えている生活習慣病、高齢化に伴った臨床的な問題点も国際的に調査 研究していくことという御指摘、大変ありがとうございました。  それと、研究者の人材養成をどういうふうに具体的に厚生省は考えているかという御 指摘でございますけれども、何かお考えありますでしょうか。 ○高原課長  広い意味での従来の公衆衛生院を国立医療病院管理研究所と統合いたしまして、厚生 省の自然科学系のトレーニング・センターといいますか、広い意味でのスクール・オ ブ・パブリック・ヘルスということで、こういうコースが全部できるかどうかというの は私どもも確保に自信がないわけでございますが、地方自治体ないしは国の機関で、例 えば疫学でありますと、国立感染症研究所とCDCのジョイント・プロジェクトでフィール ド・エピデミオロジスト(現地疫学員(者))を養成してみようというふうな試みも出 ております。  また、文部省の方でも先般出されました医学教育の提言の中に、スクール・オブ・パ ブリック・ヘルスというふうなことも言われておりますし、これは他の省のことでござ いますので私どもが何かを言う話ではありません。例えばそういうふうなところが充実 していけば、こういった領域についても人的な供給というふうなものは改善されるので はないかというふうにも考えております。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。やはり文部省と共同で、今、課長が言われましたス クール・オブ・パブリック・ヘルスは大学院の修士課程的なとらえ方で人材を養成する ということだと思いますので、そこにつきましても、今の御意見に従って少し内容を詰 めさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。 ○山崎委員  全体的によくまとめられていると思いますが、細かいところから入って申し訳ないの ですが、最初の2ページの「遺伝子・細胞レベル」に対して一般には個体レベルという 言葉が使われますが、わざわざ身体レベルとした根拠を勉強のために知りたいと思うの が1つ。  それから、次の3ページ目でございますが、「地球レベル」ということをわざわざ設 けていらっしゃいますが、そこにはダイオキシンぐらいしか書いていなくて、やはりい ろいろある。特に、今度の感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関 する法律)見直しの基本的な問題は感染症のグローバリゼーションということで、地球 レベルの問題を言うならば感染症を是非入れていただきたい。グローバリゼーションと いうことへの対応が必要だということを入れていただきたいというのが1つ。  それから6ページ目でございますが、課長から御説明があったこととも関連があるの ですけれども、(1)「新興・再興感染症への対応」というものの書き方は全部各論的にそ れぞれの病気に対してどうというようなことが書いてありまして、厚生科学としてどう いう対応の仕方をするかというストラテジー(戦略)のことに全く触れていないのでは ないか。例えば、実際には新興・再興感染症推進事業というものを基本にして国際交流 を図ったりしているわけで、そういう支援がある。そういう方法論が書かれていない。 あるいは、少し触れられましたけれども、国と地方の連携の強化をするような形で研究 費が出されているわけです。だからこういう問題がありますよと言うだけではなくて、 こういう対応の仕方を強調しなければいけないということを書く必要があるのではない かというふうに思います。  大変細かいことで恐縮ですが、気がついたついでに申し上げますが、同じページの外 国における狂牛病の問題、ラズベリーによるサイクロスポーラ、ほかにもたくさんあり ますので、ここには「等」と入れていただかないと、ほかのことはどうでもいいのかと 言われると困ると思うのです。  最後の「厚生科学の国際化」というところに、感染症のアウト・ブレークへの国際的 対応への協力というのは、こういう化学物質だとか医薬品などを入れるならば1つの厚 生科学の対応の大事な柱ではないかというふうに思うので、その点を申し上げます。 ○唐澤室長  どうもありがとうございました。全体的に大きな御指摘のところはいい御指摘をいた だきましたので、私どもまた委員皆様方の御意見をお伺いしながらまとめたいと思いま す。  細かなところを少し申し上げますと、まず身体レベルという言葉は御指摘によります と適切な言葉ではございませんので、考えさせていただきたいと思います。実は身体と 精神と分けて書こうかと思っておりまして、精神の方がなかなか書きにくくて身体だけ 残ってしまったということなのですが、正しくは確かに個体レベルで総称的に入れた方 がいいと思っております。  それからストラテジーなどのところは、きちんとした方針というものを書き込んでい きたいと。  国際的な対応、最初の方の地球全体のレベルでの感染症の問題なども触れられるよう に私どもの方で勉強してまた御意見をお伺いしたいと思っております。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。わざわざ個体レベルではなくて身体レベルだから厚 生省らしい言葉だなと私自身は感じていたのですけれども。確かに地球レベルでもいろ いろな問題がありますので、もう少し書き加えて詰めさせていただきたいと思います。 ○眞柄委員  1つ2つは今のことと関係いたしますけれども、やはり国際的な分担、調和というこ とになりますと、生活環境の部門あたりはWHOが随分期待しておりますし、つい2週間ほ ど前WHOやUNDPが主体になりまして、インドやバングラデシュの水のヒ素の大中毒症のこ とについて、具体的には厚生省から出向している方が協力されていらっしゃいますが、 そういう仕事も是非ポイントを置いていただきたいと思います。  もう一つは、厚生省としての科学研究というのはこういうことなのかもしれませんが どんどん地方分権が進んでいっておりますので、特に国立公衆衛生院レベルの支援とい うものを厚生科学研究の在り方の中でどこかに書いていただきたいなと思います。  もう一つはどういうふうにアプローチしていいか私もよく分からないのですが、幸い 厚生省の国立試験研究機関とナショナル・センターは省庁再編で国立機関として残るわ けですが、その理由が11ページに書いてあるような大型の組織や長期にわたる研究が必 要であるとか、高い公共性と研究レベルを確保するというのが国立試験研究機関として 残る理由では、それだけではない、もっと何か重要なポイントがあるのではないだろう かという意味で、やはり国立試験研究機関の位置付けをしていただくためには、最初の 厚生科学の意義かどこかのところで、ほかの省庁の研究所とは違うところを明確にして いただけるといいのではないかなと。そうすれば国立試験研究機関の人間もそれなりの 他の省庁の独立行政法人とは違う意識で研究を推進していただけると思いますので、お 考えください。 ○高原課長  唐澤の方から申し上げました、身体というのが実は精神を考えておりましてという話 に戻って補足させていただきます。実は今年のWHO総会で「健康の定義」について議論が なされることになっております。  といいますのは、従来健康の定義としてwell-beingをphysical、mental、socialとい うふうな形でいわば三次元的にとらえていたのですが、これに対してspiritualというも のを入れるべきではないかということで四次元的になるものです。実はspiritualと言っ た場合は、非常にすんなりあたり前ではないかと言われる国と、日本のように比較的警 戒心を持ってといいますか、コントラバーシャル(意見が分かれるよう)な話ではない かと言うのとございまして、そこら辺の議論もあったものですから、実はまたこれにつ きましてもアドホック(特別)でよろしゅうございますので、もしそういうことについ てお考えの先生がいらっしゃいましたら御意見をお聞かせ願いたいということで、実は 身体レベルの背後に精神というものが考えられていて、その精神という言葉の背後には mentalを日本語で「精神」と訳しておりますが、これは実はspiritualに近い意味がある のではないかと。確かに「精神」、神経に「神」というのが入っているのだからこれは spiritなのではないかという話もあるわけで、これにつきましては、私どもも非常に苦 労しておりますので、いいアイデアがございましたらお教え願いたいと思うわけでござ います。  国立試験研究機関のことにつきましては、研究所が行っている研究が重要であるとか 重要でないとかいったレベルの話では全くございませんで、厚生省の研究所はいわゆる 健康危機管理に直結した領域であります。例えば感染症などの場合ですと、普通研究所 というものはある程度中期的な目標を立てていただいて、独立行政法人などは例えば5 年間ぐらいの包括的な計画が大臣に提出されたら、あとは細かいことは申しませんよと いうのが独立行政法人の趣旨であったわけでありますが、例えば、ただいま山崎委員が 言われましたように、グローバリゼーションでアジアのどこかで現に数年前ペストが発 生したことがあるわけです。では、肺・ペストがあるのかどうか。専門家の国立試験研 究機関の研究者の方に、これは業務命令として死地に赴いていただかなければいけない かもしれない。我々ももしやるとしたらボランティアで、勿論強制的にということはな いにせよ、相当危険な仕事を引き受けていただかなければならないことがある。そうい うふうな場合には、厚生大臣が所長を通じて直接的に行っていただくという、これはか なり危ないこともあり得るという想定でございます。  それから、国立医薬品食品衛生研究所につきましても、例えば環境ホルモンというふ うな話が出ますと、例えばおもちゃにあるのではないかと言われると、なぜかおもちゃ に食品衛生法が適用されるのですが、食品衛生監視員の方が口に入れるおしゃぶりのよ うなものを集めてまいりまして、トラックで国立医薬品食品衛生研究所に運んでこれを 1週間以内に分析してくださいとか、相当無理なことがお願いできるように、国立試験 研究機関に残っていただいたということでございますので、重要性というふうなものと いうよりも、機動的に行政と一体となって動いていただくことを担保するために、厚生 省関係のものは比較的そういうことが多いということで、例えば警察庁科学警察研究所 は独立行政法人になっておりませんが、それに非常に近い性格があるのだということで ございます。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。国立試験研究機関の性格づけというのは厳しい です。  先ほど課長が提言された身体レベルというもので、確かに遺伝子・細胞レベルという 物質的なものから社会的なものへのレベルの段階として、個体というのもいいのですけ れども、そういうようなニュアンスのいい言葉が先生方で何かアイデアがあれば。 ○高原課長  その件は後で結構でございます。ここでspiritualを議論してレポートに入れるという ことは当面無理かなというふうに思っておりますし、後でも結構でございますので、お 気づきの先生がありましたらお寄せいただきたいという趣旨でございます。 ○矢崎部会長  でもこういう面は往々にしてこの部屋を出てしまうと忘れてしまいますので、この場 でもし何かアイデアあればということであります。 ○土屋委員  理工系として少し感じているのですが、全体にQOLという活字がたびたび出てまいりま すが、「生活の質」となっておりますが、これは結構なのですが非常に直訳的で、実は 余り好きな言葉ではないのですけれども、そういうふうに日本では定着してしまったの でしようがないなと思うのですが、ある先生が人生の中身と訳された方がいて、この方 がよほど分かりやすいなと思ったのですけれども時既に遅しで生活の質で動いています が。  3ページの真ん中にEBMとありまして「根拠に基づく医療」と書いてあります。これも 直訳なのですが、これが一人歩きすると嫌な言葉で、「根拠に基づく医療」と言うと 「基づかない医療」も勿論あるわけで、そうすると少しまずいのではないかと思うので す。それが8ページの5の表題になっていまして、そうすると基づかない医療というのが あるわけでして、もっと細かい、余り普及しないうちにいい日本語を意訳しておいた方 がいいのではないでしょうか。誤解を招くおそれがあると思います。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。QOLはいろいろな考え方があって、生活だけではなく て「命の質」などありますが、もうほぼQOL=生活の質というものが定着してしまったよ うな感じがありまして、今、後半のEBMについていろいろ議論があったのですけれども、 高久委員何か御意見ありませんか。 ○高久委員  EBMを長くやっている人に何かいい日本語ないですかと言うとないのです。本当のこと を言うとこれまた怒られるかもしれませんが、科学的根拠に基づく医療というのがいい のではないかということを言う人も多いのですけれども、余り科学的と言うと非人間的 みたいになるからというので、心の科学的根拠なのです。ですけれども表に出すときに は根拠ぐらいにしておいた方が抵抗が少ないのではないかということで、根拠に基づく 医療という言葉を使っています。  今、土屋委員がおっしゃったように根拠に基づかない医療というものがあるかという と、みんな個々では根拠に基づいていると思っているのですけれども、ただ、実際には EBMというのは特殊な手法がありまして、そういう統計的な手法に基づかない医療という こともしばしば行われていたと。これからはもう少し臨床的なデータとか、たくさんの 統計に基づいたそういうものをベースにして、勿論個々の患者に対応しなければなりま せんけれども、基本的なところはそういう科学的な、統計的なデータベースに基づいた 医療の方向ということが、勿論反対の人はいますけれども、世界的にはそういう傾向に あるものですから。むしろQOLと同じようにEBMという言葉にした方がかえってややこし くないかなというふうに今のところは思っていますけれども。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。本当にQOLやEBMとか、そもそもプライマリー・ケア というのも全然日本語がなくて定義も余りないというところが、どうしても日本語にな りにくいところがあって、EBMに関していいアイデアがありましたら考えていただければ と思います。 ○高久委員  遅れてきて申し訳ないのですけれども、2ページの「遺伝子・細胞レベル」のパラグ ラフの2つ目ですけれども、遺伝子のレベルで将来非常に問題になるのはむしろがんや そういう病気よりは、いわゆる生活習慣病が遺伝子のレベルで明らかになるということ が非常に大きなインパクトを将来持っていくことがあるので、「等」でもいいのですけ れども生活習慣病を入れられた方がいいのではないかなと思います。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。 ○柴田委員  全体について大変よくできていて、落ちているところを探すのが難しいくらいよくで きていると思うのですけれども、いつも私は同じことを繰り返しますけれども、全体を 統括する医療の新しい厚生科学研究の哲学というのでしょうか、あるいは医療の哲学と いうものがどうしても欲しいということを、前から同じことを言って、ただなかなかい いものがなくて、さっき話が出たEBMも、QOLも、インフォームド・コンセントも、プラ イマリー・ケアもみんな英語ではないかという話はこの前御指摘したとおりなので、こ こで何としても新しい日本語をつくり、新しい厚生科学研究の門出にしたいということ をもう一回、ないものねだりかもしれないけれどもお願いしたい。私自身も勿論考えま す。  それで先ほどからお話を聞いていて少し思ったのですけれども、さっき課長が言われ た健康ということに新しい定義をつくろうという動きがあるならば、そこにヒントがあ るのかもしれないなと。健康というものに新しい定義が生まれてくるならば、その言葉 をうまく先取りすれば、それを目指す厚生科学研究とか、うまくいけばその辺にヒント がありそうな気が少ししたので、私も考えてみますけれども、先ほどの英語も直したい のですけれども、全体を統括する見出しが欲しいと。私は新聞記者なものだから見出し が欲しいと思うのは悪い癖なのですけれども、やはりそういうインパクトを与えていき たいというふうに思いますので、是非考えてもらえたらと思います。 ○矢崎部会長  大変貴重な御意見ありがとうございました。一番課長が得意とするようなところでは ないかと思いますので、先ほどの健康とは何ぞやというときに、やはり身体レベルとい うところの議論にまた戻るかと思いますので、それについても今後考えていかなければ いけない問題だと思います。 ○眞崎委員  2つほど伺いたいのですけれども、1つは、10ページに発展途上国に医療技術を移転 と書いてございますね。そのページの上の方に国際競争が激しいと。日本の知的資源を 守るというようなことが書いてありますね。やはり日本は非常に後れた分野もあるわけ で、通産省などが昔やっていた技術導入とか技術移転というものをどうするかというこ とが余り書かれていないですね。積極的にやるのかどうかということが1つであり ます。  もう一つは、これは愚問かもしれないですけれども、一番最初のページの「厚生科学 の意義」というところで向上という言葉はあるのですけれども、疾病の克服という言葉 がないのです。それは私たちが好んでよく使っているのですけれども、疾病の克服とい う考え方はもう時代遅れなのかどうかということを伺いたいのです。途中に病気の克服 という言葉が1つだけ出てきているのですけれども。 ○唐澤室長  国際化の関係のところでございますけれども、実は生命科学関連の知的所有権の問題 については制度の違いや取り組みの違いがございまして、特にアメリカが先行している というような状況があります。それでこういう分野の知的所有権の保護や活用というも のをもっと進めていこうというのが我が国政府全体の問題意識なわけでございます。た だ、国際化のところは今、眞崎委員から御指摘もいただきましたし、ほかの先生方から もこういう問題も抜けているという御指摘がございましたので、今日たくさん御意見を 国際関係でいただきましたので、全部そうしたものをまた私どもの方で書き起こして整 理いたしまして、全体的に国際化の部分をつくり直したいと思っております。御意見と して御参考にさせていただきたいと思っております。 ○矢崎部会長  2番目の疾病の克服ですけれども、確かに中の生命科学のところに入っておりますけ れども、それをどういうふうに取扱うかというのは。 ○唐澤室長  疾病の克服は大変重要な問題で変わらぬ重さを持っているというふうに思っておりま す。ただし、疾病の形態自体が特に長寿社会になりまして生活習慣病のウエートが大き くなってきておりますし、ノーマライゼーションの流れの中では何がしかのハンディが あっても、その人らしい自立した生活の形態というものがあるのではないか。以前は基 本的には経済的に自立しているということが自立であるという考え方に立っておりまし たけれども、しかし、例えば、全部を自分の経済的自立ではなくても、その人らしい残 された能力でのライフスタイルがあるのではないかと。そういう意味で、あるいは何が しかの1つの慢性疾患を抱えていても、それを持っているけれどもなお人間の人生とし ては健康な生き方があるのではないかという幅広い意味で健康というものを考えていっ てはどうかというような御意見もございましたので、こんな表現にしてございますけれ ども、疾病の克服が重要でなくなったということでは全くないというふうに私ども思っ ております。 ○矢崎部会長  そうしますと、「厚生科学の意義」で疾病原因の解明、予防とか具体的なところがあ りますので、そこに少し眞崎委員の言われていることで、2番目のところで少し健康の とらえ方をきっちりして、分けてある程度。もともと分けてありますけれども、そうい う意味も含めて考慮していきたいと思います。 ○寺尾委員  非常によく書かれているのですけれども、少し感じたところを申しますと、1ページ II「厚生科学研究のこれまでの推進状況」の最初の○の一番最後のところに、情報政策 研究というのは緊急課題だということが既に平成7年に指摘されているということでご ざいまして、多分非常にいろいろなことをその後情報関係では行われているのだろうと 思うのですけれども、この骨子案の中にもいろいろ書かれているのですけれども、やは り情報の収集と発信というのは、国内、国外の情報も全部含めまして、しかもこれは医 療ばかりではなくて生活関連のあらゆるところに関係してくることでありまして、しか も健康危機管理ということと非常に絡む問題なのですけれども、これを見ますと、そこ ら辺のところが余り強調されていないような感じがいたします。ですから、グローバル な情報の収集・発信、勿論国内も含めましてそういうもののシステムを確立するという ことが非常に重要だと思うのです。  先ほど山崎委員も言われましたけれども、地方の衛研も含めた連携というものが非常 に大事なのですけれども、情報についても地方の衛研も含めたような情報の連携という ものが非常に大事なものですから、医療に関しての情報ということで中に書かれていま すけれども、もう少し分野を広めた書き方をなさった方がよろしいのではないかという ような気がいたします。  もう一つ質問なのですけれども、老化のメカニズムの解明という言葉が2か所に出て くるのです。4ページ(1)「健康科学の視野の下での生命科学研究」というところに入っ ておりますし、5ページの2「少子高齢化社会への対応」というところに書いてございま すけれども、意味するところは同じなのですか。これは対象が少し違うのか、そこら辺 のところがはっきりしなかったものですからお聞かせ願えればとありがたいです。 ○唐澤室長  これは私どもの整理がまだ十分でないということが1つございます。ただ、大変実は 悩んでおりましたのは、先生方にいろいろな御意見をいただきまして、どういうふうな カテゴリーで整理をしていこうかと。ただ、平らに並べるわけにはまいりませんので、 やはり重点を今までの御意見の中から立てていこうかと思っているのですが、少しダブ ってしまいました。ただ、老化のメカニズムの解明が遺伝子・細胞レベルの議論にいっ ておりますので、確かにどちらかというとそういう分野の方に書くべきだと思っており ます。後ろの方はどちらかというと長寿科学研究の推進というような感じかなと思って おります。 ○矢崎部会長  どうしてもサンプルを挙げる場合に、例えばダイオキシンが3か所ぐらいに入ってい ますけれども、それはそのくくりの中では極めて重要な位置を占めるということで、あ る程度重複するところは御勘弁をお願いしたいと思うのです。そういう意味で、何回か 出たところが非常に重要だということかもしれませんけれども。 ○山崎委員  表現の問題で恐縮ですけれども、「厚生科学の意義」というところは非常に大事なと ころだと思うのですが、下の方の○の最後「21世紀は真の意味での人間の世紀」という 言葉の意味が非常に分かりにくい。「真の意味」というのは「人間」に係る形容詞なの か「人間の世紀」に係る形容詞なのかで意味が違ってくると思うのです。これは多分後 の文章を読むと、むしろ21世紀は真の意味での人間科学の世紀と言いたいのだろうとい うような気がするのです。あるいは健康な人間を創造するための世紀とか、そういう意 味の真の意味ではないかなと思うのですが、いかがでしょうか。 ○唐澤室長  これは私どもが書いた文章でございまして、私どもの表現したいと思いました意味は 山崎委員のお話のようなことなのでございますが、例えば、20世紀というのは大変科学 技術が発達したのですけれども、他方では大量の破壊ですとか、戦争ですとか、そうい うものも同時に起こったわけでございます。そういう意味で本当に人間が人類として本 来の生き方にふさわしいようなものに貢献する科学、その第1番目のものは厚生科学で はないかという、大変恐縮ですが私どもの思い込みで書きましたので、更にもっと一般 の方に分かりやすくて伝わりやすいようなものがあれば是非先生方からいろいろものを いただきたいと思っております。 ○矢崎部会長  「厚生科学の意義」の2番目が先ほど柴田委員の言われた医療の哲学、提言のような 部分だと思いますので、もう少し御指摘のとおりに分かりやすく、QOL、EBM、インフ ォームド・コンセントを含めた医療の哲学的な基本路線のようなものをここで書ければ ということです。室長さんに四苦八苦してまとめていただいたのですけれども。 ○唐澤室長  私どもは余りこの表現にはこだわっておりませんので、むしろよいものを、先生方か ら今までこの会議で出た御意見をとりあえずこういうふうに表現してみたものでござい ますので、先ほど柴田委員からお話がありましたような、もっと国民の皆さんに伝わっ て分かっていただけるようなものがあれば非常にいいのではないかと思っておるの です。その点が一般的な産業技術とは違う面があると思いますので、是非そういうもの を伝えられる表現があれば非常にありがたいと思いますのでよろしくお願いいたし ます。 ○矢崎部会長  真の意味での内容を固めていきたいというふうに思っております。  先ほどの健康をどういうふうに規定していくか、個体、身体というものの考え方も含 めて整理できればというふうに思っております。少子高齢化でも少子のところに、先ほ ど御発言ありましたように母性の保護というものもここに。女性の問題ですよね。これ から社会で女性にどういうふうに能力を発揮していただくかということも少子化の対応 にも入るのではないかと思いますので、そういうことも含めていただければというふう に思います。  そのほか先生方で何かございますか。今日は本当にたくさんいい御提言、アイデアを いただきまして、また全体的に大きく詰めてまとめなければというふうに思っておりま す。今後も先ほどの御提案のようにいい言葉がもし思いつかれましたら、あるいはその 他今日御指摘いただけなかったことで後で気がつかれた点なども含めまして、どうぞ御 遠慮なく事務局の方にファクシミリなり何らかの方法で御指示をいただければ大変あり がたいと思います。  本日もそろそろ時間となってまいりましたので、本日はこれで一応議論を終わらせて いただきたいと思います。そして今後の厚生科学研究の在り方につきましては、次回以 降もう少し具体的な答申として、作文としてある程度の形をつくって、そして同時に議 論も今日いただいたように深めてまいりたいと思っておりますので、よろしく御指導の ほどをお願い申し上げます。  最後に、事務局から連絡ございますでしょうか。 ○事務局  事務局の方からでございます。本日の骨子案につきまして、今日いろいろな御意見も 伺ったわけでございますが、更に追加する御意見もしおありになりましたら、ファクシ ミリ等によりまして事務局あてにお送りいただければ幸いでございます。  次回以降の部会の開催日程につきましては、先生方大変御多忙は承知の上なのでござ いますけれども、可能でありましたら4月中に2回ほど開催させていただければというふ うに考えております。委員の皆様方と調整の上、日程を調整させていただきたいと思い ます。決まり次第御連絡いたしますので、それに伴います日程お伺いのための文書をお 配りいたしておりますので、記入、返送方よろしくお願いいたします。  以上でございます。 ○矢崎部会長  御多忙の委員の先生方には大変恐縮に存じますけれども、今、事務局から御説明のと おり、4月中に少し具体的に議論を詰めて報告書として是非まとめさせていただきたい と思いますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。  それでは、これをもちまして本日の部会を終了させていただきたいと思います。貴重 な御意見どうもありがとうございました。 <了>  問い合わせ先 厚生省大臣官房厚生科学課 担 当 岡本(内線3806) 電 話 (代表)03-3503-1711 (直通)03-3595-2171