99/02/25 第4回地域保健問題検討会 第4回地域保健問題検討会 日 時 平成11年2月15日(月) 14:00〜16:00 場 所 厚生省2階 共用第6会議室 北川座長  それでは定刻になりましたので地域保健問題検討会を始めたいと思います。本日は、 遠藤委員、田中委員、長谷委員がご欠席、米田委員が遅れる連絡が入っています。  今日は危機管理の関係で会議をしますが、最初に事務局から資料の説明をお願いした いと思います。 岩尾課長  それではお手元の資料の説明をさせていただきます。今日はだいぶ資料がございます ので、確認をしていただきたいと思います。  まず、本日の日付の入った地域保健問題検討会第4回会議次第と書いてクリップで留 めてあるものがあります。名簿、座席表に続きまして、右方に、「第4回資料1」と書 いてあります。資料1が、健康危機管理について。資料2−(1)から(5)までが危機管理 の実例として、各地域で起きたエピソードについての資料であります。その次、資料3 として、厚生省発厚第1号、事務次官通知ですが、「厚生省健康危機管理基本指針につ いて」という資料がございます。資料4として、厚生省健康機器管理調整会議設置規程 があります。資料5−(1)から5−(4)までありますが、これがそれぞれ各厚生省の関係 局でつくりました感染症、食中毒、飲料水、医薬品等における危機管理の実施要領 です。資料6度に毒劇物対策会議報告書というものがありまして、これは内閣総理府の ほうでまとめた資料ですが、やはり報告書として本日付けさせていただいております。 資料7これは平成9年にでました「地方衛生研究所の機能強化について」という通知で す。最後のページに、第4回の参考資料として、前回、前々回に配っていますが「地域 保健対策の基本指針」の抜粋を並べております。これが一つ綴じてあるほうです。  もう一つの綴じてあるのを見ていただきますと、これは本日後ほど説明いただきます 地方衛生研究所の大月先生からの資料でして、健康危機管理における地方衛生研究所の 役割という資料、以下報告書の写し、それから後ろのほうに別添の資料というのがつい てます。それからその下に紛らわしいのですが、資料2と書いてますが、日付が平成10 年12月2日となっています。前回お出しした資料ですが、保健所で行われている各種業 務についての一覧表をまたまとめております。 それから後ほど犬塚委員からご説明い ただけるものかと思いますが、豊田市における健康危機管理対策というのを別添でつけ てます。以上でございます。 北川座長  資料はよろしいですか、それでは引き続いて事務局から論点の説明をお願いします。 岩尾課長  それでは今日の議事次第、資料にしたがって説明をさせていただきます。  私から説明しますのは、資料1と資料2の(1)から(5)まででして、資料3、4、5、 6につきましては、のちほど厚生科学課のほうから説明をさせていただきます。資料7 につきましては、地衛研の関連ですので、まとめて大月委員から説明をしていただくこ とになっています。  それではまず健康危機管理ということで資料1から説明します。昨今の健康に危機を 及ぼすような問題というのが幾つかでてまいりまして、それに基づいて一体保健所がど のような役割をとるかということが問題です。とくに、実際に係る状態が、食中毒にし ろ感染症にしろ、起きないような仕事をしているわけですが、それでも起きてしまった あとどのような対応をしているかということです。  資料1に危機管理とは?ということでいくつか書いてますが、具体的なイメージが伴 わないかと思いますので、できれば過去の実例に即して説明をさせていただければ少し はわかりやすいかと思っています。そこで資料2−(1)から2−(5)について説明をして また資料1に戻ります。  資料2につきましては、地域における健康危機管理の事例ということで、2-(1)が岡 山県の邑久でおきましたO157の食中毒。資料2-(2)が堺で起きた同じくO157の中毒、 資料2-(3)が埼玉県越生で起きた水道汚水に含まれていますクリプトスポリジウムによ る集団下痢症の問題。資料2-(4)が若干古くなりますが、平成6年に起きました松本サ リン中毒のときの対応の話。資料2-(5)として、まだ記憶に新しい和歌山のカレー毒物 混入事件のケースについて、発表あるいは発表予定の資料がいくつかでてきましたので それを元に説明します。  まず資料2-(1)岡山のO157の事例です。1ページ目をご覧いただきますように、保健 所が第1報を受けましたがのが5月28日、患者発症者が468人、入院患者29人、HUS重篤 な合併症を起こしたのが10人、死者が2人ということです。1ページめくっていただき ますと、それについての当時関与した保健所の所長さんが、公衆衛生院の年報に報告書 を載せてまして、それが7ページまであります。そこを飛ばして8ページを見てくださ い。これは県の『邑久町・新見市集団食中毒報告書』が平成9年3月にでていますので それの抜粋です。  事件が起きたのが5月28日、午前11時45分、岡山市内の医療機関から、第1報が保健 所に入ってます。隣のページを見ていただきますと表になっていますが、今から考える といいますか報告書を作成時点で、初発と思われる患者というのは24日頃出ていたので はないかということで、後日の調査での判明ですが、保健所に入ったのが5月28日でし て、それから保健所が各種の調査、健康調査ですとか食中毒関係の現場へ出掛けて行っ て、抜き取り調査なり聞き取りの調査をしているということがずっと続いてます。そこ でその指揮にあたった本人が書いたものに戻りますが、この資料の2ページに戻ってく ださい。  集団感染の概要というのが真ん中にでていまして、その隣に起きたのが5月24日です が、右の行の真ん中あたりに、以下の条件を満たしたため、7月15日に終息宣言を行っ たとして、1)新規有症者が4週連続発生していない。2)食中毒の症状を有する者がいな い。3)全員の菌が陰性という、この3点をもって終息としたわけですが、この間、5月 28日から7月15日ということで、約6週間強にわたる保健所の活動があったということ です。そこの右の下段にでていますが、28日からそういうことがあったので、保健所が どのようなことをしたかというのが、次のページに、これは先程の表よりもっと詳しく でていますが、食中毒ということで食品衛生の機動班というのが動き出して、各種の対 策をたてたということででています。  個別の話は長くなりますので飛ばしますが、結局この26日の週、その次のページに6 月2日からの週で、ずっといろいろなことをやっています。一番のポイントは、3ペー ジの6月1日の朝、入院児童が1人死んだというエピソード、4ページにあります6月 5日にさらに1人亡くなったということが、この問題をかなり重要視して、世間でもO 157の問題になったきっかけだろうと思います。  役所の中では、いったんこういうことが起きるとこのように動き出すわけですが、問 題は、こういうものが起きたときにどう対応するかということで、当時の保健所長の發 坂先生が5ページ下、4.集団感染事例からの反省、教訓として幾つかのことを書いて います。6ページ上の、「しかし、町の行政、教育委員会、医師会など関係機関との日 頃の協力関係を基礎に、全面的な支援を受け、活動が円滑に進んだと考えている。とく に、集団感染時には、公衆衛生面だけではなく、急増する業務に迅速かつ効率的に対応 するため、集団組織の管理といった観点からの取り組みが重要と考えている」というこ とを述べています。(1)からいくつかでていますが、迅速な初期対応。(2)で言っていま すのは、どうしてもこういう事件になりますと、町の議会とか県の議会で説明しなけれ ばならないということがあります。PTAの総会などにも出掛けていって説明をしてきたと いうことです。それから(3)にマスコミ対策は失敗かと書いてありますが、決して失敗し ているわけでなくマスコミもちょっときつく“昔軍隊、今マスコミ”とか書いてますが 要するに報道する立場の人たちにどうやってこちらの事務、正確な情報をどうやって伝 えるかということですが、本来なら本庁の担当者が対応することになっていたのですが 一番最後にパラグラフにありますが、結局、現地対策本部としては、会議室を立入禁止 とするとともに、個別職員では対応せず、保健所次長が一定の情報を元に忍耐強く対応 した、ということでマスコミ対応してきたことを書いてます。 あと、いくつか書いて ありまして7ページに(8)でさすが専門職と書いてますが、保健婦さんと話しあった結果 一息ついたあとに家庭訪問をした結果、O157については過半数の家庭で、後遺症への不 安といった身体面でなく、ストレスや食事の恐怖といったPTSDのような問題があったと いうことが、この時もわかっています。ですからこういうフォローアップも重要であろ うという話になってます。  こういうのが全体の危機管理として問題点、それから自分たちが対応してきた事例と いうことで邑久町の紹介をさせていただきました。  次が同じO157による資料2-(2)ですが、堺のケースです。これも最初の2、3ページ は押田先生の『公衆衛生』という雑誌に載っていたと思いますが、その資料です。4 ページにこれも「堺市学童集団下痢症対策本部の報告書」をいただいてます。これは対 策本部ができて、13日から本部と保健所と教育委員会がどういうことをやってきたかと いう一覧表がでています。とにかくご存じのようにかなり長い経過を辿ってきました。 13日に本部ができて動き出しているのですが、やはり被害の拡大に併せて、13日には本 部の本部長が環境保健局長、14日が本部長を助役に格上げ、16日に本部長を市長とする というように被害の拡大に応じて、対策本部のレベルを上げてきたという経緯がありま す。改めて堺の事件というまでもありませんが、2ページにあります押田先生の記述を 元に、もう一度確認をしてみますと、これは平成8年7月13日、土曜日の午前中ですが 市立の堺病院から「前日12日の夜間診療で、下痢、血便をともなう学童10名を診察し た」旨、堺市の環境保健局衛生部に届け出があったということです。  先程の邑久の場合には、岡山市内の病院の先生から保健所に連絡があったと。食中毒 ということですから食品衛生法に基づく届け出ということで、お医者さんはそういうも のを見た場合に義務があるわけですから、届け出るという格好ですが、このケースでは 堺市の衛生部にそういう届け出があったということです。市立の病院から市の衛生部と いうことで、そういう連絡の仕方があったのかもしれません。  そのあとああいうかなり幅広い事件になるわけですが、2行目に行政の対応と書いて ますが、医療の確保ということで、とくに13日が土曜日であったため、特定の病院に患 者が集中するなど相当の混乱が生じたということがあります。堺の場合の悲劇というの は、土曜日に事件が起きたということで、3ページ左側、課題として危機管理体制、医 療機関の確保いろいろあります。危機管理という意味ではO-157の中毒というのは、先 程の邑久の話その他があったから、食品衛生講習会の開催とか発生予防の啓発をしてい たけれども、また万一の場合にも、休日の連絡体制、衛生研究所の検査体制の整備が十 分できていると考えていた。しかしながらこれはまさに事実ですが、今回のような大規 模の発生、食中毒患者、2次感染者を含め約10,000人に及ぶ患者発生に直面すると、そ の対応には困難を極めるというのはまさに実感だろうと思います。そしてその次の2. 医療機関の確保にありますが、こういう土曜、日曜、月曜で急激に増えてきます。特定 の医療機関に患者が集中し、重症患者が多くて一人の診察時間が3時間から5時間の診 察待ちという状況では、やはり相当の混乱が生じたということは事実でした。右側6行 目から、市内の病院では対応できず、約4割の患者が市外の病院への入院となった。空 きベッドの確保というようなことの問題。それから緊急時にどうやって患者を円滑に輸 送できるかというようなことが問題であろうと述べています。それから3.マンパワー としては、医療の確保が最優先ということで、それから2次感染予防のためのいろんな 施策、聞き取り調査などやらなければいけないのですが、こういうマンパワーの確保と いうのが不可欠であるということです。4.情報の収集と処理ということで、食中毒の 発生情報というのは普通は医療機関から食品衛生法27条による発生届が来るはずである が、相当混乱していたので実際の届け出は少なかった。  それから事件が起きて対策本部ができて、行政から患者の聞き取り調査など医師会を 通じて行うわけですが、集団発生の人数が膨大であったということから、あとで調べて みると24%が複数受診、それから重複報告ということかなり多かったということです。 こういうような問題をどうするかというのがあとの反省点としてでてきました。それか ら人権の問題等いくつかでていました。こういうようなのが堺の食中毒のケースです。  3番目が、埼玉県越生のクリプトスポリジウムの集団下痢症です。2ページ、埼玉県 衛生部の報告書です。平成8年6月10日、越生で下痢、腹痛の小中学校の児童生徒が多 数欠席していると一報が入りと書いてあります。ここで、組織のそれぞれの立場を確認 しておきますが、4ページにある横表、ここは越生町という町ですから所管は県の坂戸 保健所という管轄で、患者の発生状況を見ますと事件の2週間以上前の5月15日頃すで に、これもあとでわかったのですが発症者が15人と二桁となっていた。6月7日の小中 学校の欠席者が62人、ということで町の教育委員会が3つの学校から児童、生徒の欠席 が増えているという連絡を7日に受けています。10日になり、教育委員会がこういう欠 席状況把握。隣に保健所の動きがありますが越生町の保健センターから微熱、腹痛、下 痢の主要症状とする患者が小中学校で発生しているということが坂戸保健所に、つまり 県の保健所に伝わったということで、それを受けて保健所が教育委員会に検便とか疫学 調査の実施をやったらいかがですかと言って、教育委員会に話をしたということです。  翌11日は、衛生研究所がありますが県の衛生研究所が坂戸の保健所から状況について の報告を受けて、既に食品等62検体。水道水3検体を受け入れて、病原菌の検査を開始 してます。こういう意味で、この場合に衛生研究所はかなり早い時期に対応してます。 ちなみに世間一般の知れることになったのは6月14日の、一番右欄に書いてますが読売 新聞の朝刊で、200人以上の集団下痢が越生で発生しているというのが載って、世間に明 らかになった時期です。その事件までに、ご覧のように町・保健所・衛生研究所でもう クリプトスポリジウムというものを患者の便から見付けてますので、かなり早い時期に 対応してきたというのがあるかと思います。  この事件の問題は、結果として水道水だったということですから、いわゆる毎日飲ん でいる水を今後どうするかということが結構問題になって、そのあとずっといくつかの 対策を、水道は町営ですから、町と県との間でいろいろな話し合いがなされ、結局いく つかの対策を立てて最終的には安全宣言に至ったという経緯がでてきます。これはそう いうことです。  4番の松本市のサリン中毒、これはもう原因も何もわかって、今から考えればエピ ソードの1つですが、2ページ、これも松本市の中毒の調査報告書から抜粋して います。事件発生が平成6年6月27日、119番受信によって始まっています。23時9分に 119番通報があって、救急隊がでています。保健所がどこで情報を得たかということで すが、その四角で囲ってある絵で見ますと、0:30松本警察から、そのページでいきま すと右側6月28日、長野県・松本保健所と書いてあるところの0:30ですが、警察の当 直から保健所の職員、保健所はご存じと思いますが、感染症や食中毒に備えて必ず防 災、防疫の担当者が決まってまして、だいたい予防課長、衛生課長職の方は24時間ご自 宅なり緊急連絡先を登録するという制度はできています。そういうことがあるからで しょうか、火曜日夜中にこういうような情報が入りました。1時に、「有害ガス関係は 地方事務所ではどこが担当か」という話も入っているのですが、組織としてどういう対 応するかということが平成6年当時はよくわからないから、こういうことになったのか もしれません。言ってみれば、この時点で保健所に入ってくるとすると、係る情報がこ の場合には警察から保健所に入ってきたということになります。そのあと、保健所の人 がどう対応したかというのが3ページにつながっています。職員が出勤して保健所に来 たのが夜中2:50、保健所に職員が待機して警察等々の連絡がずっと来ています。保健 所長には朝6:00に電話を入れて経過報告。それから県庁のほうからの指示で薬務課、 毒物ということで、公害課、これは環境保健の問題からということでしょうが来ており まして、その日の10:40には、県の衛生研究所、長野県は衛生公害研究所といっていま すが、それが立ち入りをしてこの日にサンプルを既に持っていっています。松本市とし ては、火曜日、明けてすぐですが午前10:30に中毒事故対策本部を作りまして、それ以 降、市を中心にやっています。  松本は県の保健所ですので市と連絡を取って対策協議会を次のページになりますが、 松本市地域包括医療協議会を設置して各種の調査などを行いました。こういう格好でや ってます。実は1週間でサリンが見つかっています。6ページ、長野県・松本保健所と 書いてありますが、7月3日、日曜日に県の公害課からサリンであるというのを報道し ています。ですから3日までにわかっていたことになります。そしてこの有機リン系の 毒物ということがわかってから、4ページ、6月30日以降の動きとして、7月4日に、 医療協議会の中に実診療担当者連絡会議をすぐ起こして、中毒患者の診療に携わってい る医療機関の医師が集まって、情報交換したということで、患者のその後のフォローア ップについてはこういうところできちんと行いました。そのあと血液中のコリンエステ ラーゼとかリンに関する検査を指標としてずっと調べていますが、こういう形で動きは じめたということです。これがサリンの話です。  5番目に和歌山のカレー混入事件で、いただいた資料は今度の公衆衛生学会の地方会 に、こんなことで発表したいというのを保健所の永井課長に書いていただきましたので それをご了解を得て載せております。  昨年のこれも土曜日ですが、午後6時すぎ、自治会の夏祭りでカレーに毒物が混入さ れたと、このあたりのことは皆さんもご存じだと思います。事実関係とすると2ページ IIIにありますが、午後7時45分に、消防司令室から保健所に連絡があったということで す。午後8時に保健所の人間が現場に行きまして、検体の採取、つまりこの時点では食 中毒という想定ですから、現場に行って消防と一緒になりながら、主治医に患者搬送そ の他で回していたということです。26日に青酸だという話、結果として3ページ頭に8 月2日、つまり一週間経ってから県警より砒素という話になってまして、このへんは保 健所なり衛生研究所というよりも、どちらかというと警察マターという話で、これは警 察がサンプルその他も全部分析していたということです。  事件の時系列的な流れがでていますが、このことについて3ページIVに、検討課題と して気づいたことを述べています。平常時の体制から健康危機管理体制へのスイッチの 切り替え、切り替えの判断を保健所長がきちんとやらなければいけないであろう。(1)合 議で決定できる組織。(2)正確な現場情報の集約。(3)発生した健康危機に関する専門的 な医療情報、検査情報の収集、とくに(1)〜(3)について、保健所が当然中心となるけれ ども、環境汚染、ガス爆発等の危機発生時に、保健所がどのように関わっていくべきか 医療の情報の中心はどこにあるかということを考えていかなければいけない。保健所と してどうしなければいけないかということを述べています。  2年から4年の間にこういうエピソードがあったわけですが、そういうことを踏まえ ると、いずれの保健所が嫌でもとは言いませんが、どうしてもでてきているわけです。 そこでそういうようなエピソードを踏まえて、この保健所におけるといいますか、健康 危機という問題に保健所がどう対応していくのかということを考えていかなければなら ないだろうというのが、今日先生方にご議論していただきたいところです。  ちなみにその保健所の基本指針というものには、こういう観点での記述は一切ありま せん。そこが私ども、今回どういう形で基本指針に書き込むべきかということをご議論 いただきたいと思っているわけです。  最初の資料1に戻ります。健康危機管理についてということです。健康危機とはとい うことで、これは定義といいますか、こういう言葉については後ほど厚生科学課のほう から説明があるかと思いますが、健康危機とは、医薬品、食中毒、感染症、飲料水その 他何らかの原因により生じる国民の生命、健康の安全を脅かす事態として、この健康危 機管理はこういうことに対して行われる健康被害の発生予防、拡大予防、治療等に関す る業務ということです。こういうのに保健所としてどこまで関わるかということです。  健康危機管理の種類には今述べたのはほとんど事後管理にあたるかと思いますが、通 常は事前管理、狭義の危機管理、つまり危機の予測、防止、解決のために必要な対応の 同定・準備及び計画の策定、こういうことがあるかと思いますが、こういうものは実は 普段やっているわけですが、起きてしまうとどうしてもニュースになるので、この事後 管理、つまり被害管理ということについてどんなものがあるかというのが書いてありま す。  それから現在行われている地域における危機管理の事例として、事前管理では、危機 管理指針ですとか対策要領の策定。感染症ではサーベランス事業。食品衛生では許認可 監視・指導、収去検査など。環境衛生では、やはり施設の衛生監視ですとか指導、それ から飲料水の水質検査。医療関係では病院の医療監視等々あります。救急医療体制の整 備というのも、二次保健医療圏ごとにやっていただこうと思っています。  事後管理としては、伝染病予防法に基づく二次感染の防止。食品衛生法に基づく原因 物質の特定、再発防止のための措置。台風・地震等自然災害時におけるこのような 問題。災害・事件発生時における医療の確保等々が実際には行われているところですけ れどもこういうようなものを保健所の業務としてどういうふうに考えていったらいいか ということが今日の論点であろうと思います。  それではこのあとは、厚生省で今までどのような指針なりを出してきたかということ を西沢企画官のほうから説明させていただきます。 北川座長  今のお話の中で質問等ありますか、よろしいようでしたらお願いします。 西沢企画官  厚生科学課ですが、厚生省の健康危機管理調整会議の事務局を私どもの課が担当して ますので、その説明をさせていただきます。  資料3から順次説明していきたいと思います。先程課長から説明がありました通り、 厚生省の健康危機管理基本指針は、平成9年1月9日に、事務次官の依命通達という形 で出されてます。2ページ、これがなんで出たのかということが冒頭に書いてあります が、今説明がありました実例、都道府県で現に問題が起き、採取が行われたそこに基づ いてというよりは、省内の不祥事に基づいてでたものそういうふうに正直に書いていま す。そこにあります通り、医薬品に見る健康被害あるいはエイズといった形で例示され てますように、新しい感染症であるHIV感染症の問題が、適切な情報の伝達が省内で 行われなかったために、被害者を生み出したのではないかといった反省から、健康被害 に関わる情報の伝達とその対処を適切に行うための仕組みをつくるということが当初の 引き金になっています。かつその時の案件としまして、医薬品等をもともとの問題の他 に、健康に関わる重要なものとして4つのものが例示的に挙げられています。それが定 義の(1)にある医薬品、食中毒、感染症、飲料水そしてその他と書いてますが、冒頭の4 つの例示が当時考えられていた、健康被害をもたらすであろう最も関わりの深いもので はないかというふうに考えられています。したがって5の(1)から(4)までの実施要領が それぞれこの事象ごとに作成されております。  この基本指針では、そういった反省に立ちまして省内の連携を強化するとともに、省 外の都道府県あるいは関係行政庁、日本医師会をはじめとする関係専門団体との連携を どうとっていくのかということの基本的な枠組みを規程しています。これによって新し い何か権威ができたというよりも、省内の調整を円滑化することによって適切・迅速に かつもれなく対処を図るという響きになっています。あちらこちらに都道府県という用 語がちりばめられていますが、これはあくまで連携の対象としてでてきているわけです ので、取り立てて地方衛生研究所が大きな位置づけあるいは具体的な位置づけにされて いるというものではないというのは、今から見ますと残念な部分ではないかと思い ます。  詳細の内容につきましては、既にご承知の先生方も多いと思いますので割愛して飛ば しますが、基本的にはそれぞれの部署部署で受けました健康危機関連情報というものを 自分のところだけで課内でするのでなく、それを適切に判断して、しかるべく伝えてい く、必要なところには配備していく、それから適切な情報の提供を進めていくと、これ がキーポイントになっていると思います。そして迅速に、必要に応じて対策本部の設置 等を行っていくということですが、具体的な活動として、各部署部署におきます国内外 の情報の収集ということ、この得た情報というものを少なくとも定期的に交換をしてい く、そして必要な場合には、臨時的に会議を開いて対策を講じていくというようなこと が盛り込まれています。  7ページに組織ということで、厚生省健康危機管理調整会議が設置されてます。これ は厚生省の中の厚生省科学課長を主査としまして、関係の内部の課長あるいは関係する 外部の厚生省の研究機関の長、あるいは部長をメンバーとして、毎月1回定期的に開催 をして情報交換をする。その下に幹事会を設けて、各関係課の課長補佐クラスを指名し た上で、現在調整会議が毎月第2金曜日の朝開いていますが、それと交互になるよう毎 月第4金曜日の朝に幹事会を行うと、そして必要に応じて関係者間の連絡会を行うこと にしています。資料4が、この会議の設置規程で、どういったメンバーで構成するとい うことが書いてあります。  資料5-(1)から(4)までが、具体的な4つの医薬品、食中毒、感染症、水道水といった 代表的な健康危機に関わる分野ごとの、どのようなことを具体的にやっていくのか、と くに感染症につきましては、現在感染症新法が施行になりますので、改訂する予定です が、その改訂前の場合にされまして、また伝染病予防法といった言葉があちこちでてき ますが、伝染病関係については、いわゆる既知の伝染病予防法対象のもの以外に、未知 あるいは海外からの日本では通常見られない感染症の流入に伴ういろいろ対処の仕方、 とくに5ページですが、事例に応じてレベルを分けて対処するといったような工夫もこ れには凝らされています。  資料5-(2)ですが、食中毒について書いたものです。岩尾課長からも説明ありました 事例のうち(1)から(4)までは、基本指針あるいは実施要領ができる前の事象です。和歌 山の事例は、この実施要領等ができたあとの事象ですが、この食中毒の実施要領でも策 定した段階では、従来型のいわゆる細菌による汚染あるいはなんらかの意図、非意図的 な汚染による事例を想定して書かれているといったものがありまして、そういった点で は今回の和歌山のような事例について、十分にここに書き込まれているわけではないと いうことはご容赦いただきたいと思います。  5-(3)が飲料水健康危機管理実施要領ですが、ここでは通常の水道水以外に井戸水あ るいは自家水道と称します小規模の水道供給施設についても対象とするといったかたち で、通常の水道水の守備範囲をさらに踏み越えるかたちで規程はしています。  5-(4)は、医薬品等健康危機管理実施要領で医薬品あるいは化粧品、部外品、医療機 器に関わる危機について書いてまして、ここのところはどちらかといいますと医薬安全 局を中心にした取り組みになるかと思います。  それぞれこういったかたちで各4つの分野について、厚生省内の部局が都道府県ある いは関係団体と連携を取りながら対処していく際の実施要領となっています。今回の資 料に入っていませんが、その他の実施要領として、国立病院関係それから各国立試験研 究所関係で実施要領を整備しているところです。  資料6の毒劇物対策会議報告書ですが、これは和歌山の事例以降、先般容疑者の逮捕 に至りました新潟の事例をはじめとして、約全国で50数件の毒劇物混入と思われるよう な模倣事例が発生したということにかんがみまして、内閣の内政審議室におきまして関 係省庁のメンバーによる「毒劇物対策会議」というのを設置し、その対策の検討を行っ たときの報告書になっています。  この報告書に関連して、都道府県、保健所施設等におかれましては、各都道府県ごと の健康危機管理に対する指針、あるいは実施要領等の作成状況についてご報告をお願い してまして、既にほとんどの都道府県自治体からご協力いただきありがとうござい ます。また本日から3日間、国立公衆衛生院におきまして都道府県の健康危機管理担当 者の第1回の講習会を実施しているところです。こういった点は、この報告書の中にも 盛り込まれています。  毒劇物の当時のものとしては、毒劇物を適正使用ということは当然されていましても これは犯罪目的に用いるところの防止ということは、今の毒劇物取締法ではあまり想定 されていないと言っていいかと思います。そういった中で、毒劇物の管理ということと 共に、混入対象となります飲食物関係の防護ということをどうやって行っていくかと、 またいざ事件が発生した場合のその拡大の防止、事後の対処といったことをどう行って いくかということが、この報告書の中心になってまして、この中では当時の基本指針と か実施要領では十分に盛り込まれていなかった地方衛生研究所、保健所といったものを 位置づけ、こういったものがより明確に表されてきていることが読みとれるのではない かと思います。  とくに事後の事件が発生した場合の対処という点については、その原因の究明あるい は医療機関との連携、こういった中で都道府県のあるいは保健所設置におきます衛生研 究所の役割というものが、諸処に例示されているところです。これをどう具体化してい くかということが、恐らく今回以降のこの会議でご議論がされるものと期待してますし その結果、今後これをさらに充実させていくようになるのではないかと思います。ちな みにこの毒劇物対策会議の報告書の提言のフォローアップについては、本年3月末を予 定してますので、どうかよろしくご協力のほどお願いしたいと思います。ありがとうご ざいました。 北川座長  ありがとうございました。今の西沢企画官の説明に対して、何か質問がありましたら どうぞ。 山本委員  資料3の2ページに、いわゆる危機管理の対象として医薬品、食中毒、感染症、飲料 水その他云々とありますが、実際的に大きな事故としてサリン、有機塩素製剤とか亜砒 酸は毒物ですが、そういうものが具体的に入ってないというのは、別に毒劇物対策会議 があるからということで、とくにこの点非常に全国的に大きく話題になった事件ですが 対象に入ってないのは理由があるのですか。 西沢企画官  そこらへんのところは、これが作成されたのが平成9年1月ということで、もともと サリン事件は既にあったわけですが、あのような事件が多数発生するという想定が、実 はこの作成当時にはあまりなかったのです。いうことで代表的なものとしてその4つの み挙げた上で、その他ということで、なんでも一応読み込めるという形にはなっていま す。今後実施要領その他の整備に併せて、この基本指針についても見直しをしたいと思 っています。 山本委員 資料1ですが、健康危機管理についての事前管理については、結局ここにもいわゆる 毒物、劇物とか、薬務とかそういうものが全く事前管理に入ってないのですが、やはり 管内で流通している毒物・劇物は、各種製造業者が製造段階で使用している試薬など、 主なものはやはり事前管理で事前に把握しておく必要があるのではないかという気がす るのですが、全くこれには記述されてないのですが、これも何かとくに意図があるわけ ですか。とくに来年は、権限の移譲で毒物・劇物販売業は保健所政令市に権限が移譲に なると聞いてますが、非常に重要な問題かと思います。 西沢企画官  資料1につきましては、例示ということで代表的なものを掲げたものではないかと思 います。今ご指摘のような都道府県等におきます現在毒劇物取締法、都道府県の薬事課 を中心に担当しているかと思いますが、一応毒劇物法の取扱い事業者等については、当 該の業の登録に際して扱う毒劇物の種類等についても、できるかぎりの把握はされてい るということではないかと思いますが、現在確かコンピューター化による業務の合理化 とあわせて、実施が中核市と都道府県に受け継がれるというふうに聞いています。  この毒劇物関係の事件、とくに和歌山、新潟以降、この毒劇物会議の報告書以前から 各都道府県それから保健所設置等の協力をいただいて、管内の毒劇物取扱い事業者等の 特別査察の前倒し実施等が実施されて、管理の強化等がなされたといふうに聞いており ます。 北川座長  ありがとうございました。どうですかこれはまたあとでいろいろと議論をしていただ いたらいいかと思います。従来のパターンでは、そういうことまでは十分考えてなかっ たのだろうと思いますが、今後やっぱりそれが必要なのかあるいはそれが合理的なのか どうかという議論を、後日、山本委員からも問題提起をしていただけますか。よろしい ですね。他によろしいですか。  衛生研究所のほうも先に説明をしていただいたほうがいいのですか、あるいはここで 一度議論してからにしますか。大月委員どうでしょうか。 大月委員  先に説明します。資料7を見ていただきますと、地方衛生研究所の機能強化という書 類があるかと思います。地方衛生研究所というのは意外にご存じないと思いますので、 少し基礎的なことでこの資料を用意させていただきました。2ページの最初のところに 設置の目的があります。地方衛生研究所は、地域保健対策を効果的に推進し、公衆衛生 の向上等を図るため、都道府県又は指定都市における科学的かつ技術的な中核として、 関係機関と連携して調査研究、試験検査、研修指導、公衆衛生情報関連業務を行う。こ の調査研究、試験検査、研修指導、情報業務の4つが、地方衛生研究所の大きな仕事に なっています。ご了解いただいた上で、別冊になっています「危機管理における地方衛 生研究所の役割」を見ていただきたいと思います。  まず、この地方衛生研究所が組織をしてます全国協議会の説明がそこにあるわけで、 先程申しましたように各自治体が設置している研究所ですので、都道府県立の衛生研究 所、指定都市の公立衛生研究所、政令市あるいは東京都の特別区でも設置しているわけ ですが、必ずしも100%入っているわけではありませんで、現在私どもの組織には73の研 究所が加入しているというのが、1)の説明です。もともとこの衛生研究所というのは、 昭和23年に厚生省からの通達に基づき設置されているわけで、今年設立50年になるわけ ですが、昭和40年代の公害国会に象徴されます公害問題が起こってきまして、公害セン ターや公害研究所が全国で作られたわけです。ところがその後、公害研究センターを衛 生研究所に併設をする、合併するといった動きがありまして、現在は、衛生研究所に2 つのタイプがありまして、従来の独立型の衛生研究所それから公害研究所を併設してい る衛生研究所の2つあるということをご理解いただきたいということです。個々の都道 府県とか政令市、指定都市の名前はそこに書いてあるとおりです。  73の衛生研究所の職員総数が、昨年12月現在で3,459人。研究所別職員はそこに書いて ありますように一番多い東京都からはじまって、姫路市まであります。ただこれも今申 しましたように、例えば鹿児島県の衛生研究所は18人と少ないですが、鹿児島県には、 環境センターという公害関係の組織が別にありますので、両方合わせますと48人の研究 所になります。佐賀県も同じでして、環境センターを別に持っていますので16人だけで はないということです。職種別職員数を出してみましたが、とくにここの場合は、国家 資格を持っている人を中心に書いてみたわけですが、医師72人、獣医師297人、薬剤師 678人とご覧の通りです。ただ環境部門あるいは化学系は、一括まとめて、理学・工学・ 農学系1,119人ということで、ここは詳しく今回調べてないですが、いずれにしても多様 な職種の人がこの研究所に勤務されておられるということです。  別添資料1に、設置主体別の職種別の構成率が書いてあります。これも先程申しまし たように独立型と公害研との併設型で若干ニュアンスが違いますので、必ずしも適切な 形になっているかどうかは疑問ですが、図に示した傾向があるということです。マンパ ワーの一つのレベルとして、1ページ一番下ですが、学位の取得状況を書いています。 ドクター、マスター含めましてかなりのマンパワーが、衛生研究所にはいるという一つ の証拠です。  2ページ目は、先程より説明がありますように、衛生研究所でも健康危機管理の問題 につきましては、昨年以来大きな課題として取り組んでいまして、そこに縷々アンケー ト調査あるいはディスカッション等々の経緯が書いてありますが、(4)に地衛研の連携に よる危機的健康被害に関する厚生科学研究の紹介をしています。右側に「オレンジ本」 と書いてますが、これは平成9年度の厚生科学特別研究で、大阪の江部所長を主任研究 者として行った地衛研における危機管理の健康被害の状況を把握した調査でして、この 分厚いもので、これはほとんどないものですから皆さん方にお配りできないのですが、 この抜粋をお配りしたところです。全国で、衛生研究所でどういう事例を扱ったか、昭 和40年以降について調べましたところ639件上ってきまして、そのうちの112件について 細かな報告をいただいて、ここに載せてあります。本日はそのうちの目次だけをお見せ したということです。目次のところをご覧いただければと思いますが、たくさん書いて ありますのでわかりやすいのは57ページ、ここに改めて目次がありますのは、ここから 細かな各事例報告があるものについてここに挙げてあるわけです。一番上にウイルス・ リケッチア感染症がありますが、そこにインフルエンザからはじまって、各地域で流行 しました感染症の事例が載っているわけです。2.に、細菌感染症,の3番目に有田市 のコレラのことなども書いてありますし、3.の原虫・寄生虫、衛生動物のところの一 番下、1996年クリプトスポリジウムによる集団下痢症、これは衛生研究所の立場で報告 があるわけです。  注意してご覧になりますと、クリプトスポリジウムは埼玉県が初めてではありません で、下から4行目、1994年雑居ビルの簡易専用水道による集団下痢が、神奈川県で発生 していまして、これも既に報告をされていることもこういう事例調査でわかると思いま す。  58ページには、いわゆる食中毒の事例がたくさんあります。先程説明がありました、 1996年堺市のO157による学童集団下痢症も載っています。このO-157という事例は、上 から5行目、日本で初の散発下痢症患者よりO-157:H7を検出というのがありますが 川崎で初めて見つけているわけです。欧米でいろいろ話題になって社会で爆発流行した ということですが、そういうようなことも衛生研究所の仕事としてあったわけです。以 下、5.魚貝などによる食中毒。6.化学物質による食品汚染、7.環境汚染といろい ろあります。8.人体影響がありますが、カドミウムからはじまって松本サリン事件に よる原因物質の究明。これもあまり公式にでてませんが、先程ご紹介がありましたよう に、警察で見つけるより前に、長野県の衛生公害研究所でこのサリンを特定しているわ けです。それから東京の地下鉄サリン事件、あるいは横浜の異臭事件等につきましても 衛生研究所でその原因物質の究明を行っているということも、事例の中に示されていま す。これが厚い「オレンジ本」の説明です。 元へ戻って2ページ、2)の健康危機管理における地衛研の主な役割とありますが、こ れはいろいろ状況を伺ってこんなところが多いということで整備したのでして、推定物 質、原因物質の検索が一番基本的な仕事になっておりまして、あとはそれに関連する検 索情報であるとか、専門的な見解・意見であるとか、あるいは推定物質の解説であると かと、疫学的な処理であるとそういうものを衛生研究所に期待されているわけです。  昨年以来、地方公共団体の危機管理の体制づくりが行われてまして、事例1は、大分 県の例ですがこんな形の一つの流れ図、マニュアルができてお互い連携をとって体制を 立てることができているということですし、3ページ目は衛生研究所レベルで、これは 埼玉県の衛生研究所の例ですが、一つの事件が起きたときにはそれなりに分担して出動 する、そんな形もできているということです。  衛生研究所の原因物質の究明の方法は2つありまして、1つは微生物つまり感染症で すと微生物の同定という仕事があります。それから飲料水、医薬品、化学物質等になり ますとこれは分析ということになります。その分析とか微生物の同定については、技術 プラス高額な先進的な機器が必要なわけでして、衛生研究所の備品について調査をさせ ていただきました。それが60ページのところに書いてあります。細かい数字でわかりづ らいですが、ありとあらゆる物質について分析をするということになりますと、それな りの先進的な機器あるいは技術が必要だということになります。一つ代表的なのは、ガ スマスというGC/MSと書いてある機器と、液マスLC/MS、液体クロマトグラフ 質量分析装置というのですが、その2つが代表的な最も期待される機器になるわけ です。例えば農薬など一つの成分でありませんから、そういう混合物を分離するのはク ロマトグラフという装置で分析するわけですが、クロマトグラフと質量分析という分子 量レベルで分析をする機器と組み合わせたのが、例えばガスクロマトグラフ質量分析装 置GC/MSと書いてある機器です。これももちろんレベルがありますが、今話題に なっていますダイオキシンなどを測る高分解能のGC/MSになりますと1億円ぐら い、安いのは2,000万ぐらいのがありまして、このGC/MSがどのくらい整備されて いるかを見ていただきますと、都道府県レベルでは100%、どの衛生研究所でも装備さ れているということですし、2枚目の指定都市あるいは中核市、その他の政令市、特別 区を見ていただきますと、やはりかなり整備率が高いと言えます。  ガス化しない、揮発性でない物質については、液体クロマトグラフ質量分析装置LC /MSを使うわけですけれども、これにつきましてはまだ導入されてないところがあり まして、都道府県レベルでも17%程度ということで、全体としてまだまだです。こうい う機器をこれからどんどん導入しないと、いざという時に対応できないといったことに なるかと思います。  その他にICP/MSがありますが、これはプラズマを使って分析をするものでして 多元素を迅速かつ高感度で測定できるということで、これから整備が進むと考えていま す。そういう高額な機器をそれなりに整備をしていきませんと、いろんなものにつきま して分析できないということになります。それから右側は、微生物の検出機器が中心で す。一番右にPFGEがありますが、パルスフィールド電気泳動装置というもので、こ れは例のO157のときに一躍有名になったもので、O157というバクテリアをただ見つけ るだけでは駄目で、このバクテリアの中のDNAのパターンを見つけることによって例 えば大阪の堺市で見つかった菌と京都で見つかった病原菌が同じオリジンである、そう いうことを確定できるのがこのPFGE装置です。そういうものがこのO157事件を機会 に、厚生省で多少補助措置をしていただきましたお陰で、都道府県では100%、この最先 端の装置があるということで、これは厚生省から若干インセンティブをかけていただき ますとすぐ整備される、そういうこともありましてぜひこの備品整備についてもいろい ろご支援いただきたいと思います。  4ページですが、これは感染症新法になりまして、いろんな感染症に対して病原体の 検査機能が問われるわけですが、衛生研究所レベルでもそれなりの検査技術を持ってい ますという調査結果です。  結論は、4ページの3「科学的に根拠のある」健康危機管理対策を推進するためには 直接的・間接的に健康影響をもたらす危険性のある化学物質を1兆分の1、これはダイ オキシンなどのレベルがこういうピコグラムというオーダーですが、そういう超感度で 分析をする、あるいは先程のクリプトにしてもO-157にしても、あるいはこれからでる であろう未知の病原微生物、出血熱などの問題に対応する場合には、それなりの試験検 査能力の保持、拡充が必要であると。そのためには何が必要かということで、1つは今 申しましたように高分解能の分析機器、それから高度先進機器の整備ということです。 先程申しましたようにちょっとした支援策があると、研究所の基盤整備が高まる、そう いう一つの証拠を先程ご紹介したわけです。それから当然のことながら、(2)これはダイ オキシンを含め、実験する人の安全ということがあります。バイオセーフティとかケミ カルハザード対策というのは、環境条件といいますか検査条件、そのための設備、そう いうための整備基準というのがまだはっきりしてないわけで、この機会にきちんと決め ていただいて、その基準に基づく整備あるいは運営に対する助成措置も必要なのではな いかということです。  (3)こういう高度なレベルになりますと、技術職員が赴任してすぐ翌日からできるとい うことでは決してありません。1年から2年かからないと、まともな検査ができないよ うな検査機器もあるわけです。そういう意味ではハイレベルな技術や関連する情報を持 って、しかもそれなりの経験を持ち合わせた技術集団を常時確保する必要がある。それ にはやっぱり研修システムをきちんと作っておかないと、いざという時には役に立ちま せんということです。もう一つは、(4)後方支援ということで、化学物質の標準品、例え ばサリンなどは日本では手に入らない。先程分析機器などはそういう標準品があって、 その標準品とサンプルと合わせて分析をするのが一つの検査システムですけれども、長 野県ではそこがなくてサリンを同定しようとしたため、大変な苦労をしたわけです。そ ういう意味では基本的なものにつきましては、標準品をちゃんと衛生研究所には供与し てくださるシステムが必要です。微生物につきましても標準株というものがありまして その株を見ながらきちんと決めていくわけですので、そういうものをぜひ国立試験研究 機関等できちんとバックアップをするシステムが必要ではないかということです。それ から(5)もちろん情報あるいは技術的な支援というのが書いてあります。そういうものが ないと、なかなかこれからたくさんの問題に対応できないのではないかと考えて います。(6)これは保健所も同じですが、こういう危機管理の業務を指導、統括をする リーダーというのがいないと困るということです。医者の免許があればいいということ ではなくてやはりこういう基本的な知識を持ってあるいは技術を持った人がいないと、 いざという時になかなか対応できないという意味で、リーダーの養成というものがぜひ これから必要なのではないかということです。(7)も余分なことですが、研究所へ持っ ていけばなんでもできるのだと思われても困るわけです。つまりある程度見当をつけ て、これは農薬系、これはバクテリアといった、ある程度見当をつけてサンプリングし ていただかないと、採取できるものを全部持ってきて検査しろというのはおかしいので はないかという意味です。昔で言えば検病調査ができるような職員がいて、その中から 検体を採取してもらうという今日では「現地疫学」的な対応ができるマンパワーが必要 なのではないかということです。先程企画官が言われた事前管理の問題では、ただ1回 測ってどうのこうのと結論できるものではありませんので、ぜひそのベースラインをき ちんと把握しておいて、それと比較して今回の事例では何が異常なんだということを判 断するためには「異常」を探知するためのサーベランス事業の強化が必要なのではない かということです。 北川座長  ありがとうございました。今までの説明で何か質問ありますか。 小倉委員  今のことを含めまして、最初に岩尾課長から危機が起こってしまってからのあとの問 題を大変詳しく事例をひいてお話があったのですが、私どもはどちらかというと、危機 がなるべく起こらないようにということをメインに仕事をやっているという立場で、今 日、12月2日にお示しした保健所の業務に関する資料をもう一度、出していただきまし た。  実は保健所でやってます仕事の中で、サービス行政とでも申しますか、この部分は大 変良く目に見えるわけでして、例えば衛生教育、健康診断、健康相談、訪問指導、各種 の検査、公費負担の医療給付、そういうようなサービス部門というのは住民に理解され やすいのですが、そうでなく間接サービスとでもいいますか、別の言葉でいいますと規 制行政とでも申しますか、その部門についてはなかなか住民に理解していただけない部 分です。保健所の一番基本的な機能として、規制行政といいますか、水面下のところで 危機が起こるのを防いでいる、つまりあまり感謝されては困るという仕事を私どもやっ ているのではないかと思っています。 規制行政の中にも、直接規制、これはわかりや すいのですが、例えば結核の排菌患者の命令入所であるとか、あるいはこれは個別的な 危機管理とでもいえますが、精神保健福祉法による措置入院、これは、自傷他害の恐れ のある患者さんを2名の指定医師に診察していただいて、措置入院をさせるという制度 ですが、24時間、365日体制で直接的な危機介入をしている業務です。その他、伝染病予 防法が変わりましたので今後は変わりますが、従来は法定伝染病の患者さんが発生しま したら、それを隔離するというような直接規制があったわけです。そうでなくて今まで ずっとお話がありました、岩尾課長が作られた資料1の4の中のこの事前管理、これを 北海道から沖縄までの全ての保健所できちんと行う必要があるのではないかと思い ます。もちろん一旦事が起こってからは先程来、現地の対策本部をつくりまして、対応 することは縷々お話がありましたので置いておきますが、この事前管理、これは間接規 制とでも申しましょうか公衆衛生に関係のある業務に従事する人であるとか、あるいは 施設であるとかあるいは設備、そういうものを規制することを通じて、国民に健康な生 活を保障するという非常に大事な仕事を保健所はやっているのですが、ここのところが どうしても医学部の学生さんたちまで含めても、ご理解がいただけないというもどかし さがあります。  それが今日また12月2日の資料を改めて出させていただきましたが、それに列挙され ているように精神保健福祉法とか伝染病予防法、食品衛生法、あるいはクリーニングや 美容や理容など営業6法と呼ばれるような法律による業務、あるいは資料の2枚目にあ ります医療法とか先程も質問がありました薬事法、そういうものに基づく規制行政を1 年中を通じて地味に行っていますが、これが保健所の基本的な仕事ではなかろうかと思 っております。  とくに、表1に書いてある順序で申しますと、食品衛生に関しては食中毒も事前に防 げたほうがいいわけです。これは許認可から店舗検査あるいは食品の収去検査、これは 衛生研究所にも大変お世話になってますけれども、そういうことを絶えずやっている。 それから環境衛生に関しては、今言いました6つの営業施設、それから2枚目の紙の一 番上にある、今大変大きな仕事になっているのですが、建築物における衛生的環境の確 保に関する法律、普通ビル環法といってますけれども、3,000平方メートル以上のデパー ト等の衛生環境、空気、湿度、温度等を含めまして、保健所の仕事になっております。  その他、いわゆるシックハウスシンドロームに関連して、住宅衛生の問題が特に都市 部の保健所では、法律では決められていませんが大きな課題になっているということ。 医務のところにできれば薬務というのを入れていただければ良かったかなと思うのです が、全ての管内の病院あるいは診療所、老人保健施設に対する医療監視、いかに良質な 医療が住民に提供されているか、それぞれの病院で院内感染防止対策が講じられている か、あるいは医療従事者の研修がやられているか、医療従事者が健康診断をきちんと受 けているか、そのようなことまで含めてハード面だけでなく、ソフト面まで含めての医 療監視。それから劇物毒物の管理であるとか、あるいは管理薬剤師がいるかとか、いろ んなこと含めての薬務監視等々、ここに書いてある以外にもまだいろいろあるわけです が、法律に基づくもの、基づかないものを含めまして、基本的にはそういう事前対応と いうのを間接サービスとでもいいますか、目に見えないところで健康危機が起こらない ように、日常的な活動をやっているのが保健所だとご理解いただければと思います。  その保健所の仕事をバックアップしてくださる意味での、地方衛生研究所の役割とい うのはまた大変重要なものでして、保健所ではできないウイルスの検査であるとかそう いうものを含めて、高度な検査、それから保健所の検査業務の精度管理、保健所のとく に検査関係などの職員の研修、今環境衛生の問題が非常に多く持ち込まれていますが、 魚が浮いたなどの事件がありますと、衛生研究所に運び込むということも多くあり ます。そういった意味で、平常時においても衛生研究所は保健所のバックアップシステ ムとして高い役割を担っていただいてます。もちろん緊急時には、さらにもっと重い意 味を持ってくるわけです。そういった意味で、間接規制といいますか、こういうものを 全国一律に、できれば同じような質で、きちんと行うということが本日の話題になって いる健康危機管理、そういう状態を起こさない一番基本的なことではなかろうかと思っ ています。  そういうことともう一つは、あとでまた犬塚先生からお話があるかと思いますが、都 道府県ごとあるいは市ごとで、健康危機管理に関するいろいろん要綱が作られ対応がな されていると思いますが、私ども千葉県では全保健所に医薬品の備蓄、これが神戸の災 害以後保健所の基本的な役割とされています。15の全ての保健所に、37、8種類の薬と 12種類ぐらいの衛生材料、これを1,000人分ぐらいですが保健所に備蓄されていまして、 いざという時、医療機関の需要に対応できるような、役割というものも保健所に負わさ れています。そういうことを含めまして、一番最初からずっと通して話題になっている と思いますが、やはり健康危機を事前に防ぐためには、あまり集約化が極端に進んでし まいますとどうしても目が粗くなってしまうと思いますので、保健所の設置基準を一定 の面積、人口、あるいは医療機関とか監視する業者の数、等いろいろなことを考慮に入 れて、きめ細かく決めていただければなと思いながら述べさせていただきました。以上 です。 北川座長  ありがとうございました。小倉委員からは、保健所は日常的な業務と緊急時の業務を 含めてどんなことになっているのか、あるいはサービスという面と規制という面の両方 の仕事をやっていますよという話だったと思います。  それでは今の保健所の問題について、とくに中核市問題というのがこの委員会の一つ のテーマでもあると思いますので、その関連の分野で犬塚委員から説明をいただき ます。 犬塚委員  お手元に豊田市における健康危機管理対策という2ページのものがあると思います。 これはたいした中身でなく、もし豊田で何かが起こったときにどういう体制を組むべき だろうかという議論の結果、関係のところと話し合ってこういったものを作ったという ことです。  先程からお話がありますように、和歌山の事件、新潟のアジ化ナトリウムの事件があ りました。いずれも中核市でして、我々も少し中核市は狙われているかなといった冗談 もいいながら、そういう地方の中核市というのはいろんな事件が起こる要素もはらんで いるのだろうな、それくらいいろんなポテンシャルの高いところかもしれないというこ とです。  ただ、豊田市の場合は、平成10年に中核市になったばかりですので、市の保健所の位 置づけというのが、健康危機管理における役割というのが非常に不明瞭だったものです から、こういった機会にぜひ関係機関と相談して保健所の役割をある程度明確にしよう ということで、この対策を考えたところです。  豊田市の一番の弱点は、できたばかりの市の保健所ですので、まだ検査関係が不十分 です。食中毒事件に関しても菌の同定までできない状況で、県の保健所あるいは愛知県 の衛生研究所のほうに最終的には依頼をしているという状況でして、まだまだ検査関係 につきましては一人立ちできる状況にはありません。今日お示しした対策というのは、 対策本部は市役所内部の組織のことですので、こういう関係部署に集まってもらって一 応本部になる。ただこれは感染症、食中毒、毒物等ということで掲げてありますが、も ちろんこれ以上の大規模な災害などで、市が対策本部を設けたときにはそれに吸収され るといいますか、そういう筋合いのものです。現実には、関係機関と日頃から情報交換 ができるようにということで、健康危機管理調整会議というものを設けさせていただく ここで関係機関とくに医師会、薬剤司会、警察あるいは消防も市内部の組織になるわけ ですが、そういうところとの情報交換を常に行いながら対応していこうという 組織です。  2枚目の緊急連絡体制は、黒くなっている部分は豊田市保健所ということで、豊田市 保健所の役割としては、基本的には連絡調整を行うということです。これは、情報の流 れあるいは報告ということに終始してまして、検査の検体の流れについては基本的には 自前での限界がありますので、愛知県に依頼をするという形をとっています。できるだ け早いうちに、市の保健所として衛生研究所まではいきませんが、ある程度検査機能は 高めていきたいそういう方向で少し整備を進めています。  これを考えますときに思いましたのは、中核市の保健所で限られた人員で、果たして 大規模な事件が起こったときにどういった対応をしたらいいかというのがきちっと判断 できるかどうか、岩尾課長の説明の中に、健康危機管理体制へのスイッチの切り替えを 保健所長が行うと報告がありましたが、実際それを判断する人間はとても辛いわけ です。調整会議等がそういったところで合議をする中で助けていただければと思ってい ます。たまたまこれは昨年10月からこの対策に基づく要綱を作って動いていますが、検 討している最中に、中学校の体育祭の食事が元で食中毒事件がありました。現実にこう いった話をしていましたので、警察とも連携が非常にうまくいきました。たまたまこれ は土曜日夜情報が入ってきた話ですが、少なくとも毒物反応については日曜日の朝まで に、警察のほうで対応していただき、そちらの心配はないということで、一般的な細菌 の食中毒でその後原因を明らかにしました。こういった時期だけに、無用の心配を市民 にかけずに済んだということもエピソードとして付け加えておきたいと思います。 以上です。 北川座長  ちょっと質問ですが、2枚目の資料の黒いところですが、上のほうに豊田市保健所と あって、その下のほうにも字があるようですが何か書いてあるのですか。 犬塚委員  連絡調整です。 北川座長  矢印のあるところが連絡調整ですか。 犬塚委員  はい。 北川座長  まだ下のほうにも何かありますか。 犬塚委員  いえ、これだけです。基本的には連絡調整を保健所が行うということです。 北川座長  もう一つ、先程の中核市と県の保健所との対比で、他の県の保健所レベルの検査機能 はもっていると考えていいのですか。 犬塚委員  愛知県の保健所の検査体制は、衛生研究所をピラミッドの頂点にしまして、保健所を 二段階に分けています。県下を4地区に分けて、各地区に1カ所、センター保健所とい うのを設けてまして、衛生研究所に次ぐ機能を持った保健所を整備してまして、それ以 外の保健所は一般保健所という形で整備しています。  従来の愛知県豊田保健所は一般保健所だったものですから、現在その庁舎を借りて豊 田市保健所は業務を行っております。検査機器の整備が十分でなかったものですから、 一部今年1月から稼働できるように機器整備を行いましたが、隣の岡崎保健所のほうへ 検体を持っていったり、あるいはモノによっては直接県の衛生研究所に検体を持ち込ん で依頼するケースで行っているという状況です。 北川座長  衛研のサポートは受けている。 犬塚委員  はい、衛生研究所と岡崎保健所の両方サポートを受けているという状況です。 北川座長  ありがとうございました。これで今日は大変長い時間を割いていただいて説明をいた だいたわけですが、これからどうぞ委員の皆さま方からご発言をいただきたいと思いま す。 竹澤委員  岩尾課長のほうから、今回この健康危機管理について、地域保健の基本的な指針の中 で保健所がどのような役割を担うかというところを議論して欲しいとのことでしたが、 今日示されました事例を伺いまして、岡山県、埼玉県の事例でもやはり市町村の保健セ ンターが動いているわけです。保健所の役割機能もありますが、実際的には身近な市町 村が住民のいろいろな相談や不安などに対し細かく対応しているというのが現実ですの で、この指針の中にある市町村保健センターのところに、健康危機管理についても役割 を担っていくという意味で、位置づけていただければと思っています。 北川座長  そういうご意見ですね。それまたあとで議論をすることにしましょう。他に。 衛藤委員  今の意見と先程の小倉先生のお話とも関連するのですが、危機管理というのはたぶん リーダーシップというか、トップダウンの対応が必要な場合があると思うのです。そう なった場合、命令系統が幾重にもなるのは望ましくないのではないか、そのへんで今竹 澤委員がおっしゃった形で権限を分散することがいいのかなという、それとも何かどこ かに集中させるほうがいいのかケースバイケースだと思うのですが、もう少し詳しくお 伺いしたいと思います。 小倉委員 起こった事件の大きさによって、例えばレベルが決められており、最高の時には副知 事が対策本部長になり、それから衛生部長がなる、地元の保健所長がなるとかいろいろ レベルによって違いますが、通常よくみられる食中毒等、あるいは法定伝染病が起こっ た時等の対応は、現地対策本部長はこれ保健所長が全てやっています。保健所には市町 村保健センターと異なりまして、10種類以上の国家試験資格を有する、先程も衛生研究 所のお話がありましたが、そういう専門職がおります。ごく通常の食中毒等が発生した 場合は、保健所長が本部長になり、それぞれ例えば食品衛生監視員は専門的に喫食調査 であるとかあるいは食材の検査。環境衛生監視員は上下水道あるいは食堂等の環境を調 べる。保健婦は保健婦の特性を発揮しまして、健病調査といいますが健康調査、どこま で健康被害が広がっているか、あるいは患者さんや食中毒を起こした人の周りの人たち の健康状態の聴取。検査技師は保健所に待機してまして、現場から運び込まれた検体の 検査、場合によっては衛研に送ることもあります。それから総務課長あたりは、みんな の食事とか車の手配などいろんなことまで含めて雑務的なことをやってくれていると、 そういう具合に保健所長をトップにして各専門職がチームを組んで対応するというのが 危機管理のときの一番基本的な形です。  レベルが、堺など非常に大きくなりますとこの対策本部がだんだんと上に上がってい くというのは、これは当然のことだと思います。千葉県の場合もこういう危機管理の体 制ができてますが、現地の対策本部長は大きな事件のときもやはり保健所長があたると きめられています。もちろん犯罪が絡むなどになりますと、少し複雑な要因がでてくる と思うのですが、単純な意味での健康危機管理というときの現地対策本部長は保健所長 があたるということが、一番すっきりしてていいのではないかと思います。  現実的に今までも赤痢が発生した、食中毒が発生した場合にはそういう形でずっと処 理されてきたように思っています。 米田委員  健康危機管理について、和歌山県の毒入りカレー事件等の毒物反応について警察がか かわった時点で、警察の犯罪捜査と保健所における初期健康被害調査の結果について照 合がなされず、警察機能の科学捜査研究所において、独自の分析を行うことになり、犯 罪捜査上の機密事項として扱われ、保健所職員に対しても情報提供がないものとなって います。結果的に現場では保健所機能としての調査と、警察機能の捜査との連携が最重 要課題でありながら、警察が主導を握り、保健所として介入ができるような状況下では ない実態となると伺っています。やはり機密事項ということは十分わかりながらも、双 方の信頼感のもとに連携の強化が求められていると思います。仮に犯罪という形になっ てしまうと、その時点で保健所機能があってもどうにもならないものとなってしまいま す。また、健康危機管理という点から見たら、直接的にはつながらないと思いますが、 公害に対する業務や環境保全に対して環境庁ができてから、厚生行政と環境行政がどの よう形で連携が行われているのか、その結果、厚生行政として如何にするのかによって は、自治体による格差が出て来るのではないかと危惧します。  それともう1点、基本指針のなかに安心で快適な生活環境をとありますが、やはり生 活環境ということになりますと、保健所機能の強化が必要になってきます。厚生省には 生活衛生局がありますが、各自治体に生活衛生局があまり整備されていないと思い ます。その点から、厚生省の生活衛生局で生活環境の範囲をどの程度に見ているのかに よって保健所機能も変わってくると思われます。生活環境に対して広義の視点なのか、 狭義の視点なのかによって違うわけですが、双方の視点で機能強化が求められていると 思います。 北川座長  ありがとうございました。 池田委員  2つほどお伺いしたいと思います。一つは大月先生に確認をしたいのですが、実は平 成6年6月、例の松本サリン事件ですが、記憶の中では非常に衛生研究所の職員が、直 ちに国内外のサンプルを集めて、専門機関への依頼とか情報収集、解析分析機器の選択 などを行って検査結果、その原因となる毒物の判明が早かったということで評価を受け たということを聞きました。現在では、こうした機能は当然のことなのかということで す。  それから小倉先生、保健所の代表として伺いたいのですがO157が発生したとき、これ は盛岡の例で非常に私感銘を受けたのですが、発生現場の責任者例えば学校でいきます と校長先生が、PTAの方たちに必ずしも正しい指導をされるとは限らない、というこ とで保健所の保健婦が適切なアドバイスをして、時間を置かずに指導を徹底させた。そ の結果、2次感染の防止にかなり役だったという話を聞きました。保健所として、そう いった事件が発生した現場の長、責任者に対してどれだけ直接指導できるのか、指導が 周知されにくいようなこととか、そういうことなどは現在の法の中でないものかなとい うところが知りたいところですのでお願いしたいと思いします。 大月委員  松本サリン事件は先程説明しましたが、長野県の職員がかなり苦労されて、現物のな い中で当て推量で検素を進めていったわけです。一番いいのは現物があって採取した池 の水なら池の水を比較して、ピタリと波型が一致しますとこれが一番いいわけです。そ ういう分析法ができないわけです。ですから分子量をある程度推定して、合わせるよう な形に絞り込んでたまたまその位置に達したと、可能性があるかということを調べて、 いろいろな毒物がたくさんあるのですが、そういうものも全部調べてやっと辿り着いた ということです。  ただ、先程でましたが警察の問題があると思います。これはもともと犯罪で捜査しま すから、ある段階でわかっていても県警としては報告はできないわけです。かなり長時 間抵抗したみたいですけれど、それは駄目でした。結果的に情報を警察に流して、警察 で長野県の科学捜査研究所のほうで追試をされているわけです。それで確かにそうだと いうことになって、これでいいますと7月4日に警察発表ということです。  私どもからいいますと、現物があるないに関わらずいろいろそういう問題が起こった ときに、検体を持ってこられると精一杯やるしかないわけです。これはO157の時も同じ です。ですからなんとかして食品からO157を検出したいと大変な努力をしましたが、あ の時はできなかった。その後技術が開発されて、今はO-157は野菜だろうが肉だろうが 検出できます。ですからそういう形ですが、研究所とすれば現場から持ち込まれた検体 については、24時間対応でやる体制にもともとあるし、やってきたということです。 小倉委員  学校保健の現場と、保健所との関連についてのお話だと思いますが、国レベルとかあ るいは県庁レベルですと、残念なことに厚生省と文部省と労働省の壁は厚いというのが 現実です。ところが地域の健康に責任を持っています保健所の場合は、管内にある学校 職場そういうところから要請がありましたら、あるいは要請がなくても必要がある場合 には専門家としてのアドバイス、そういうものは積極的にどんどん行っています。そう いった意味で、例えば学校でO157などそういう事件が起こった場合には、2次感染をど のように防止するかという意味で、保健婦さんたちがPTAの方や高学年の子供に話に 行くということはしばしばあります。職域に対しても同じようなことがあります。また 学童などが発症した場合には、学校のどことどこをどのように消毒するかとか、きわめ て具体的な指導まで全部保健所がやらなければどこもやるとこがありませんので、細か く指示をします。タオルまで含めて全て学校の場合でも保健所が関与しています。  ただもう少し上のレベルになって、学校給食、集団給食に従事している人たちの検便 をどうするのだという問題になりますと、縦割り行政の弊害ができます。厚生省は1回 でいいといっているのに、文部省は2回やれというような現実的にそういう問題が起こ りました。上のほうは今度厚生省は労働省と一緒になるようですから、そのへんはどう クリアされるのか別として、現場のほうでは、専門職として当然やるべきことをやると いう立場でやっています。 生田委員  小倉委員の関連で二つ、ぜひ今後論議していただきたいことがあります。一つは、 O157の堺市の事例で関わった保健婦からの話で分かったことですが、とくに学校との関 係で、学校の養教も家族の健康調査とか不安解消のための相談という形で、家庭訪問を しており、保健所保健婦も同じ目的で同じことをやはり同じ家族のところへ行ったとこ ろ「どうなっているの、さっき学校の担当者が来て言ったことをまた言うのですか、ど ちらか一方にしてください」と、その逆もあったというようなことでした。ぜひそうこ とのないように、学校と保健所が連携できるように役割などを明確にしていただけたら ありがたいと思っています。  もう一つは、やはり事件の教訓から伺ったことですが、非常時に保健婦は対策会議に 加わらず、どちらかというと手足、あるいは現地に行ってしまうということが多くあっ たそうですが、その対策会議の中に保健婦も入れるような組織づくりをしていただきた いと思います。保健婦は、地域の健康問題、環境問題あるいは家族の健康状況をよくつ かんでいます。また、当該地区の対応については、この対策会議で有効な発言ができる 立場におります。地域との信頼関係の確立ができているということで、今回は最初のう ちは間接的に意見を言ったり、間接の指示を受けて動いていたようですが、途中から直 接入ったほうが良いということで入ったそうです。ぜひ対策本部や会議の中に保健婦が 入れるように論議をしていただきたいと思います。 北川座長  これは小倉さんに答えていただく必要がないかもしれませんが、取りあえず。 小倉委員  その通りだと思います。私どもは可能な限りそのようにしてます。急性、慢性も感染 症を問わず、難病、精神とかいろいろなこと全て地域に起こっている健康問題を最も良 く知っているのは保健婦ですから、そういった意味で保健婦には必ずブレーンとして入 っていただいてます。現実的に役割分担をやった場合には、現地に飛んで行きいろいろ 健康状態を調べていただくとか、そのような役割を分担していただくことが多くありま すが、どこまで調査を広げるとか誰が担当するとかという対策会議にはブレーンとして 保健婦さんに必ず入っていただくようにしています。  それからそれぞれの都道府県で予防計画というのを3月いっぱいに立てることになっ たわけですが、千葉県の場合などもちゃんと職域代表として保健婦が県の予防計画を立 てる委員として代表で選ばれて入っています。そういった意味で、保健婦の専門性もか なりいろいろなところで組織的に活かされてくるようになってきているのではないかと 思っています。 北川座長  わかりました。櫻井委員、診療の現場というのはやっぱり患者をつかんだり、事件を つかむ一つの大きなスタートのポイントとなると思うのですが、とくにご発言あります か。 櫻井委員  健康危機管理については、日本医師会も医師会なりの危機管理対策を作ってやってい ます。それからとくに毒物劇物の事件が続きましたが、この部分がなかなか難しくて、 実際には当然医師のところへ患者さんが来るのですが、医師としてもどちらかというと 感染症とかについてはある程度の知識があっても、サリンについてどうするというのは なかなか難しい。私は日本橋で開業していますが、サリン事件の時、数人の被害者が来 ました。あの時は、ご存じのように目の症状がでましたから、眼科の先生のところに数 10人が飛び込んでいるのです。全く医師としても何が起きたかがわからないという状況 がありました。医師会としては、だいたいそういう教科書というのは、砒素であれば砒 素中毒とはどういうふうなことが起きると書いてあるので、どういうときが起きたとき に何を考えればいいという教科書がないので、日本医師会でもどこまでできるかわかり ませんが、いろいろ専門の先生方にお願いして、こういう時にこういう毒物劇物の症状 として考える必要があるという症候から見た毒物劇物に対する対応の特集みたいなもの の発刊を考えています。今度の和歌山の砒素事件の時もずいぶんいろいろな意見が新聞 には書かれましたが、確かに医師とすれば非常に稀な毒物劇物中毒を診断するのはなか なか困難です。患者さんが目の前にいるときにこれが砒素中毒かと考えるのはなかなか 難しいことです。砒素中毒だとわかればなるほどこういう症状だと逆は分かるのですが 逆は難しいところがあると思います。  それからたくさんいろいろな問題がありますが、今の学校保健の問題は、縦割りとお っしゃったのですが、逆に言えば別に文部省の肩を持つわけではありませんが、学校保 健は学校保健で一つの体系を持っています。我々のほうから言えば学校医、学校歯科医 学校薬剤師が必ず学校についています。そこに養護教員がいて他の職種も含めてどこの 地域でも学校保健会という組織ができています。必要があれば、学校保健会との連絡を きちっと取ってくれれば、多くのケースは、医師が学校保健会長をやっているはずです から、そういうところの連絡が取れれば、保健婦さんにお願いすることがあればすぐお 願いできるということになる筈です。この学校保健の問題は縦割りと言われてしまえば それまでですが、平静の学校保健の中に保健所の保健婦さんはあまり関与して いません。そのへんの問題が元々あるかもしれません。危機が起きたときだけ、保健所 の保健婦さんが学校の中に入り込んでどうするかという話になると、これはやっぱり入 られるほうの養護教員にはある程度抵抗感はあるかもしれません。一応養護教員という のはいろいろな人がいますが、保健婦さんの資格などを持っている人も中にはおります から、そういう問題はあると思います。  医師会としてはいろいろな対策が必要だということ、それから細かいことを言ったら いっぱい問題点があると思います。しかし、危機管理対策が必要であることは医師会も 医師会なりに考えて打ち出してますから、国としてもこういうことで健康危機管理対策 について、いろいろなことが検討されることは大変いいことだと思います。ぜひ広い範 囲のご意見をいただいて、先程ありましたように平成9年の時は、毒物などを考えてい なかったということで項目に入ってないと言われましたが、考えてなかったことが起き るのが危機管理だと思います。全部考えていることが起きればあまり大きな危機管理に ならないはずですから、何かまたすごい訳の分からないことが起きることが絶対にある と思うのです。そのときにも対策できるような危機管理対策というふうに考えておかな いと、全部わかってて筋書きどおりいくのはあまり危機管理対策ではないのだろうと思 うので、そこが難しい点ですが重要なのではないでしょうか。 北川座長  古い話になりますが、15年くらい前ですか熊本でポツリヌス事件があったときに、あ る病院の女医さんがポッと頭にひらめいた、さっきの鑑別診断ですね、そのようにちゃ んと頭の中にあったために、非常に対応が早かったということが評価されていましたか ら、先生おっしゃられたような鑑別診断表みたいなものが必要になるかもしれませんで すね。 小倉委員  一言付け加えるのを忘れてました。必ず学校医のお許しを得てからでかけており ます。それと全国保健所長会で、学校保健でどれくらい全国の保健所長が関与している のかという調査をやりましたけれども、意外に多くかかわっておりました。学校保健会 への参画を含めて、6割以上の保健所長が関与しておりましたし、保健婦も切り口はい ろいろですが、とくにエイズ問題、たばこ、覚醒剤、いろんなことで学校のほうから依 頼を受けているようでして、以前よりは現場での交流が深くなっており、連携が深まっ ているということも一言付け加えたいと思います。  それから警察との関係ですが、従来は精神障害といったことだけで生活安全課とだけ 定期的な会合を持っていました。和歌山の事件以後、警察の総務課というところと保健 所とで定期的な会合を持って情報交換をやることが、方々で増えてきたということも追 加しておきたいと思います。 北川座長  ありがとうございました。だいたい予定の時間が過ぎていますが、これから今日ご発 言の点を整理してまた事務局で次の資料を作っていただきたいと思います。それまでに 何かご発言があれば受けます。 高橋委員  危機管理については、健康危機管理という以外にもさまざまに危機管理の問題があり まして、私も実は別のところで別の問題の危機管理をやっています。いわゆる情報の管 理の問題であるとか、権限のある機関同士の緊密な連携をどう組織的に担保するのかと かありますので他の危機管理の方策、阪神大震災以降、いろいろな形で危機管理問題が 表面にでていますので、参考にすべきところは参考にするという視点も考えられていい のではないかと思います。 園田委員  本日のお話を伺いまして、私など改めてこういう分野での保健所の役割をいろいろ教 えていただいたわけです。それだけに前回もあるいは適切な発言かどうかということも 含めて申したのですが、所長という保健所を統括する方が、医師だけでなければならな いかという、確かに医師は病理学、薬物や細菌こういうものについてはあるレベル以上 のものを持っておられますが、今回いろいろ問題になりました情報の伝達や管理、ある いは他の組織との連絡調整や人間関係、さらにはリーダーシップ、こういうことは、こ れはここの会議にでておられる医師の方は大変そういう能力を持っている方ばかりです が、必ずしも全員の医師が同じようにある高い水準の技術や知識をもっているわけでは ない。ですからただ単に医師だけという、医師の資格だけでなく、これからますます組 織の統括、運営、管理などの、一定の資格を検討されるとか、あるいはそういう資格を 持っている人であれば、先程保健所には10何種類の国家試験資格を有する専門職の方が おられるという話もあったわけですから、他の専門職の方もそういう地位につけるとい うようなことが検討されることがある面では必要なのではないかと感じました。 櫻井委員  今のことでちょっと、この問題は議論すると長くなりますが、保健所長をやる医師は 単なる医師ではなく、私の知っている範囲でも保健所長になるための公衆衛生院の勉強 だけでも、あんなに勉強しなければならないのかと思うほど、医師の中でも勉強してい る熱心な先生たちがなっているのです。逆に言えば、医師でない人が保健所長になりた かったら、医師の持っているこれだけの医療情報を勉強して欲しいので、最低でも10年 ぐらいかかると思いますから、そのくらいやった上で保健所長を望まれるなら望まれた らいいと思います。医学部の6年分と基礎研修と、それプラス保健所長になるためのす ごいカリキュラムを見ただけでも私なんかこれはとてもなれないと思うぐらい勉強して ますので、ぜひそれもご理解いただきたいと思います。事実だけ申し上げます。 園田委員  そういう保健所長になられるためのいろいろ条件などを、もう少しきちんと整える、 ということも大切なことだと思います。 池田委員  事前管理のところで、台風、地震等の災害の時についてはあまり触れなかったのです が、実は震災のときに、神戸の外回りをずっと見せていただいたときに感じたのですが 地域がその時に備えられて教育されているかどうかということで、初期の3日間の地域 の動きというのがその後を左右したような気がします。それからもう一つは、リスクと いうと少し言い方が間違っているかもしれませんが、なんらかの形で支援をしなければ いけない人たちの台帳、とくに難病、寝たきり、精神、結核、慢性疾患、妊婦、乳幼児 こういう人たちの台帳があるかないかということが、実際に災害発生後に動くときの善 し悪しを決めたということがありますので、こういうのがもしかすればこの事前管理の ところに入るといいのかと思ったのですが。 北川座長  大事なポイントだと思いますので、また整理をさせていただきます。  それでは今日ご議論のあった点を整理していただいて、それを基本指針にどういうふ うにうまく載せていくかというのが、全体とのバランスの問題もあったり難しい点もあ ると思いますから、少し事務局で考えていただいて、次回また提案をしていただけたら と思います。 岩尾課長  ありがとうございました。次回の地域保健問題検討会ですが、3月4日木曜日、午後 2時から4時、厚生省別館8階第23会議室になっています。  その日には、介護保険制度導入を踏まえた保健所あるいは市町村の役割についてとい うことでご議論をお願いします。そしてそこで一応各論が終わりますので、報告書の案 みたいなものを、3月26日金曜日、午前10時から12時ということで先生方のお時間をと らしていただいております。場所その他はお知らせします。26日に、一通りのまとめの 案を出したいと思っています。  なお、これは単なるお知らせですが、来月9日、10日にこういう地域保健の事例の発 表会がありますので、4日にでもパンフレットその他ができましたらば先生方にもお配 りしたいと思っています。北川座長が中心となって報告会がある筈です。ひとつよろし くお願いします。 北川座長  それではやや時間をオーバーをしてしまいましたが、本日の会議はこれで終わらせて いただきます。ありがとうございました。      問い合わせ先  厚生省保健医療局地域保健・健康増進栄養課 担 当 水 谷 電 話 (代)03−3503−1711(内線2391)