99/02/24 第2回眼球・アイバンク作業班          第2回  眼球・アイバンク作業班         日時   平成11年2月24日(水)              14:00〜16:00         場所   虎ノ門パストラル              5階 「桔梗の間」 出席者 (○:座長 敬称略)  小口 芳久  金井  淳   鎌田  薫  ○木下  茂  佐野 七郎  篠崎 尚史   眞鍋 禮三   丸木 一成  八木 明美  横瀬 寛一 1.開 会 2.議 題   (1)角膜移植におけるドナー適応基準について      (2)平成10年度厚生科学研究事業よるアンケート調査結果         の概要について      (3)アイバンクにおけるレシピエント登録等の実施について      (4)角膜以外の眼球組織の利用について      (5)その他 事務局  大変お待たせしました。眞鍋委員が少し遅れておりますが、定刻になりましたので、 ただ今より、第2回公衆衛生審議会疾病対策部会臓器移植専門委員会眼球・アイバンク 作業班の会議を開催させていただきます。先生方におかれましては、本日はお忙しい 中、ご出席いただきまして誠にありがとうございます。最初に、本日の委員の出欠の状 況ですが、全委員が出席することになっていることをご報告させていただきます。  続きまして、本日、お手元にお配りしています資料の確認をさせていただきたいと思 います。最初に、公衆衛生審議会疾病対策部会眼球・アイバンク作業班議事次第でござ います。そのうしろが作業班の名簿になっております。そのうしろが今日の作業班の配 置図でございます。以下、「第2回眼球・アイバンク作業班資料一覧」。資料1-1、 「角膜移植における提供者(ドナー)適応基準(案)」。資料1-2,「使用禁忌につい て」。資料1-3、「各臓器移植におけるドナーの適応基準(使用禁忌など)」。資料 1-4、「角膜移植における感染症発生防止に係る普及啓発について」。資料2-1、 「平成10年度厚生省厚生科学研究事業「アイバンク・ネットワークに関する研究」、ア イバンクにおける感染症検査の実施状況について」。資料2-3、「厚生省厚生科学研 究事業、アイバンクアンケート(調査票)」。資料3、「眼球提供者発生から移植実施 までの流れのイメージ」。資料4、「アイバンクにおけるレシピエント登録等の実施に ついて」。資料5、「角膜以外の眼球組織の利用について」。参考資料1、「アイバン ク事業における検討課題」。参考資料2-1、「臓器の移植に関する法律」。参考資料 2-2、「(旧)角膜及び腎臓の移植に関する法律」。参考資料2-3、「眼球提供あっ せん業の許可について」。参考資料2-4、「眼球提供あっせん業者許可基準の取扱に ついて」。以上でございます。何か不備がございましたら、事務局までお申し出願いた いと思います。  それでは、木下座長、よろしくお願いいたします。 木下座長  それでは議題に入りたいと思います。本日の議題としては、最初に、議事次第のとこ ろに書いております「角膜移植におけるドナー適応基準について」。前回、かなり議論 させていただきましたが、これがあります。それから2番目に、「平成10年度の厚生科 学研究事業」。これは眞鍋先生を班長として行ったアンケート調査結果がありますの で、こういった概要を、議論の中で取り扱っていきたいと思います。3番目の「アイバ ンクにおけるレシピエントの登録等の実施状況」。これもアンケート調査の中に入って いますので、これを踏まえさせていただきたいと思います。4番目に、「角膜以外の眼 球組織の利用」ということで、実際に行われている強膜移植などと、どのように整合性 を持たせるかということ。もうひとつは、現在、まだ日本では実施されていませんが、 網膜移植等を正式にしたいという要請が日本眼科学会のほうから出ておりますので、こ の点をどうするのか、こういったことが議題になるかと思います。第1回目のときに、 これ以外に輸入角膜の問題やコーディネーターの問題などがありましたが、本日は、非 常に内容も豊富ですので、とりあえず、このあたりのことについて進めていきたいと思 います。  まず、議題の1番目。「角膜移植におけるドナー適応基準について」ということです が、これは前回の本作業班で、角膜移植におけるドナー適応基準、すなわちアイバンク が眼球をあっせんする際に、確認すべき感染症検査結果、あるいは角膜移植の安全性の 確保の観点から、眼球のあっせんを行ってはならない場合について、みなさんと検討を させていただきましたが、引き続き、この課題について検討させていただきたいと思い ます。  前回、事務局のほうでこの検討結果をとりまとめ、資料を作成してくることになって いましたので、まず、その説明からお願いいたします。 山本補佐  お手元の資料1-1でございます。次のページに1-2がついていますが、前回、実は この1-2のほうで、アメリカでの基準、学会での基準、それから、それを加味して案を つくり、ひとつずつ議論していただいたところ、資料1-1のような形になったかと思い ます。ひとつ、資料1-1ですが、角膜移植におけるドナーの適応基準案として、アイバ ンクとして、以下の疾患または状態を伴っている場合には眼球をあっせんしない、つま り、以下の疾患・状態を伴わないことをする、ということになりました。(1)原因不 明の死。(2)原因不明の中枢神経系疾患。(3)細菌、真菌、ウィルス全身性活動性 感染症。前回、項目出ししておりました敗血症等は、この中に入ろうかと思います。( 4)白血病。(5)HIV抗体、HTLV-1抗体、HBs抗原、HCV抗体などが陽 性。前回、このHCV抗体陽性に関する取扱いについて、慎重な取扱いという形でいい のではないかというご意見と、やはり使用禁忌とすべきというご意見があったかと思い ます。(6)Slow virus infection。ヤコブ等の疾患です。(7)悪性リンパ腫。 HodgkinのHodgkinリンフォーマーです。(8)Reye症候群。(9)眼内悪性腫瘍。 (10)活動性ウィルス性脳炎および原因不明の脳炎、進行性脳症。以上となっておりま す。  2番目に、慎重使用というか、次の疾患や状態を伴う提供者からの眼球の提供があっ た場合には、移植を行う医師にその旨を伝え、判断をまかせるということです。(1) アルツハイマー病。これはヤコブとの混同を避けるという注意書きがついています。( 2)屈折矯正手術の既往眼。(3)内因性の眼疾患。それから、これも議論がありまし た、(4)梅毒反応陽性、ということでございます。  また、この基準については、その都度、医学の進歩の状況に応じて見直されること、 ということが書いてあります。検討すべき状況について、下に特記してございますが、 HCVの抗体については、アメリカアイバンク協会の医学基準では使用禁忌とされてい ます。それから、わが国の他の臓器移植の適応基準については、資料1-3に、ざっと書 いております。その最後のページに、表の形でまとめてございます。心臓、肺、肝臓、 腎臓、膵臓、小腸、それぞれの臓器に、同じような適応基準が既に定められています が、ご覧のように、HCV抗体陽性の取扱いについては、心、肺、腎臓、膵臓、小腸に ついては使用禁忌になっています。ただ、肝臓については慎重使用の取扱いになってい ます。  それから、現在までのところ、角膜移植によってC型肝炎に感染したという事例は内 外とも報告されていません。  2番目の課題として、梅毒反応の陽性者についての取扱いですが、ひとつは強角膜切 片で3日以上、4℃で保存されたものでは感染力がないという科学的なベースがあると いうことが1点目。それから、梅毒については、アメリカアイバンク協会の医学基準に ついても、使用禁忌からはずれています。それから、わが国の他の臓器移植において は、ドナーの適応基準に明示されていない、つまり、この、感染の検査そのものも義務 づけられていないということになります。また、現在までのところ、角膜移植によっ て、梅毒に感染した事例も、内外とも報告されていない。以上の点を踏まえて、梅毒反 応陽性者の取扱いをどうするか、ということが2点目の問題として残っておりました。  それから、前回、実は全層角膜移植についてと、表層の角膜移植について、別に適応 基準を決めるのかどうかということも、議論の途中で残っておりまして、アイバンク協 会の基準、それから日本角膜学会の基準では、「注」として、特記すべきことを書いて いるということがあります。この3点について、議論が起こっていたかと存じます。  参考のために、資料1-4を付けさせていただきました。これは、その時点での感染検 査について必要であるということを整理したもので、診療報酬の点数の改訂のときに、 特定保険医療材料の角膜についてはB型抗原検査と、このときに関係する梅毒の問題、 C型の抗体検査、それからHIV、HTLV-1の免疫学検査については込み込みで、診 療報酬の点数が改正されているということがございます。  それから、実はこのあとの議論に関係しますので、参考として、参考資料2-1があり ます。アイバンクの実態に関する調査結果の報告については、このあと、また、ご説明 させていただきますが、その中でアイバンクに対して感染症検査の実施状況について も、眞鍋先生以下、研究者の方々にご調査いただき、回収率82.4%のところ、感染症の 検査の実施が8割を超えていますが、その中で、死後採血による感染症検査により判明 した陽性者数の中で、今日、議論になる梅毒については陽性者数が14/720ということで す。HCV抗体については31例の陽性例が、実際にあったという結果も出ています。以 上でございます。 木下座長  ありがとうございました。今のご説明に対して、何かご質問、ご意見等、ありますで しょうか。前回、かなり、この、日本角膜移植学会の特別委員会でつくりました使用禁 忌と、アメリカのアイバンク協会の医学基準、1998年度版、こういったところを踏まえ て議論しましたので、概ね、先ほどお話にあったHCV抗体や梅毒のこと、そして表層 角膜移植について、新たな適応基準をつくるかという、この3点以外については、従来 から、かなり、医学的専門家の方々は、了解しておられることと思います。よろしけれ ば、本日、検討すべき課題として、梅毒検査の取扱いおよびHCV抗体検査の取扱いに いて議論していただきたいと思います。まずは篠崎さん、口火を切っていただけます か。 篠崎委員  前回の議論の中でまとまってきたものは、他の臓器の禁忌にやや合致した形で、非常 に分かりやすいかなあという気がします。前にも申し上げたとおり、やはり、これは運 用の段階でもう少し分かりやすいマニュアルに落とすということが非常に必要かと思い ますが、この席で決めるのには、ガイドラインとして、こういう区分けというのは非常 に分かりやすいし、他の関連学会とも整合性があってよろしいのではないかなあという 気はします。ただ、特筆的な、たとえば梅毒の扱い云々がひとつと、もうひとつ、先ほ どもあったように屈折矯正眼の扱いとか、この業界特有の項目があるので、それらにつ いての総合的なコンセンサスがとれればいいのではないかと思います。 木下座長  ありがとうございます。ちなみに今回、呼び方を「提供者(ドナー)適応基準」とい うふうにさせていただきました。これは今まで「角膜移植の禁忌」とか「使用禁忌」と 言っていたんですが、他の臓器移植のほうと整合性を合わせるためにも、「提供者(ド ナー)適応基準」とさせていただきました。また、内容についても、できるだけ他の臓 器移植と言葉を合わせるような形でやっているつもりです。  まず、梅毒の話からさせていただきたいと思います。先ほどの山本さんからのご説明 のように、強角膜片切片では、3日以上、4℃で保存されたものは感染力がないという ことと、アメリカでももう、アイバンク協会の医学基準では使用禁忌から除かれている ということで、少なくとも、これを慎重使用とすることには、ご異論のある方はないか とは思うんですが、丸木委員、いかがでしょうか。 丸木委員  私もその意見に賛成です。アメリカの基準に従えばいいというわけではありません が、これを見る限りは、やはり慎重使用したほうが、一応、上に上げるよりもいいと思 います。確かに、あとで統計にも出てくるように、ちょっと多いことは多いんですが、 それは提供者の年代的な問題もありますし、せっかくの善意を生かすという面からも、 慎重使用ということがいいのではないかという感じがします。また、こういう形の適応 基準にするということにも賛成します。 山本補佐  事務局の説明が悪くて失礼しました。こちらの問題意識としては、梅毒反応をまず、 アイバンクは検査しなければならないのかどうか、検査した場合、結果が陽性だった場 合に禁忌とするのか、それとも結果が陽性であっても、主治医にその旨を伝えて慎重使 用という判断にするのか、検査そのものを義務づけないのか、ということです。他の臓 器については、検査そのものが義務づけられていません。つまり、まったくチェックし ないということなので、その3つのオプションの中で、どういうふうに考えたらいいの かということをご議論いただければと思ったんですが。 木下座長  はい、分かりました。われわれの頭の中では、これは厚生省の保健局のほうから、こ ういう検査をするようにということで、自動的になっていましたので、これまで、はず すという感じではなかったんですが、いかがでしょうか。 金井委員  他の臓器の場合、検査していないということですが、それはどういう理由なんです か。そのあたりの根拠があれば、われわれも納得するんですが、そのへんの説明をお願 いします。 山本委員  はい。非常に詳細に、どこまで議論したかということはあるんですが、ひとつは、他 臓器の場合は、かなり生命に関わる移植を待っている方が多いです。その場合、ひとつ は、コントローラブルであるということ、万が一感染しても、梅毒の場合、コントロー ルできるということがひとつ。それから、梅毒陽性者の中に、必ずしも感染力はなくて も抗体陽性が出る人も、かなり年齢の高い方ではいらっしゃるということ。そういう問 題も加味して、前回の会議でもありました、どれだけ致死的かどうかという議論、どれ だけ重篤かどうかというようなことも含めて、そもそも検査をしないということで動い ています。 眞鍋委員  今まで、梅毒に関しては、ずっと歴史がありまして、たいてい、入院するというか手 術するというと、必ずというぐらい事前検査としてやられていますので、亡くなった方 は、死後採血なんかはする必要もないぐらい、梅毒が陽性か陰性かというのは、もう、 既に分かっていることが多いと思います。そういう意味では、新たに付け加えるのでは なく、それを一応、情報として知っておくのがいちばんいいのではないかと思います。 今まで禁止されていたのが、今度は注意して、こういう適応をすれば使ってもいい、そ れは科学的にも認められている、というのであれば、注意して使うという形で、しか も、梅毒が陽性であれば、陽性であるけれども使えますよ、ということを、ちゃんとイ ンフォームドコンセントをして使ったらどうかなあと思います。 木下座長  眞鍋先生のご意見は、基本的には、死後採血のところからははずしていいということ ですか。 眞鍋委員  そうです。 木下座長  それまでにデータ的にあるから、死後採血ははずして、そして慎重使用としてはいか がかということかと思います。鎌田先生、いかがでしょうか。先生のお考えは、基本的 には、検査としても、死後採血の中からははずしていい、そして慎重使用ということで しょうか。 鎌田委員  今のご指摘だと、わざわざ検査しなくてもいいということですが、ただ、事故死なん かの場合にはどうなんでしょうか。 木下座長  少なくとも、検査はどこかの時点ではされていなければならないという考えでしょう か。そのへんは、なかなか、かえって難しいところがあるんですね。しないならしな い、するならするというほうが明確なんでしょうけれど。 小口委員  資料2-1のところですが、このWassermann、梅毒の陽性者が14人となっています。カ ルテ上が94、死後採血によるものが639と書いてありますが、この14の数字はどちらから 出てきたものなんでしょうか。 木下座長  これは死後採血です。 小口委員  そうしますと、やはり死後採血でも見つかるということですよね。それまでは分から ないということがありますよね。ただ、亡くなる方というのは、ほとんど病気で亡くな る方が多いので、大概は分かっていると思うんですね。ですから、死後採血で確認とい うことになると思いますけれど。 眞鍋委員  この、死後採血で14あったというのは、今まで分かっていなかったということではあ りません。分かっているけれども、やったら、あったということで、すべて、死後採血 で分かったということですね。 小口委員  分かりました。ですから、慎重に……とくに使ったからといって、すぐに感染すると いうことはないというお話ですので、慎重にやればいいんじゃないかと私も思います。 木下座長  八木委員、実際的な立場から、いかがですか。 八木委員  いずれにしても、他の項目で採血をしなければいけないものですから、そこにもう1 回、あらためてというか、梅毒の検査が加わっていても、あまり……。だから、わざわ ざ省かなくても、今までどおりで……。うちの場合、一応、3カ月以内のデータなら信 用するけれど、それ以前のものはあらためて検査をするというふうに、静岡の中では独 自に決めてやっています。5年とか10年前には梅毒マイナスでも、そのあとということ もありますから、わざわざはずす必要はないというか、どっちみち採血するんだった ら、梅毒も一緒に検査をしてしまったほうが、強角膜片にして4日間とかということに 持っていきやすいような気がします。 佐野委員  私も、今、八木委員が言われたように、実際に現場の方が、たとえばこういう知識が ある方が、梅毒はどうなんですか、と質問されないとも限らないし……。これは、あと に書いてあるように、漸次、適宜、見直すということですから、現時点では、やはり八 木委員の言われるようなことのほうが、やりやすいのではないかと思います。 横瀬委員  私も、ほとんど座長のご意向のとおりで、だいたい、よろしいのではないかと思いま す。あまり禁忌症ばかりつくってしまうという印象はよくないと思うし、もちろんそれ は必要なことだから、当然、移植はできないという形はとるんでしょうけれど、さしあ たっての段階としては、なるべく、可能である限りは、やはり移植を進行させたいとい うのが基本です。 木下座長  篠崎委員、このことについて、いかがでしょうか。 篠崎委員  梅毒に関しては、ひとつ、アメリカの話をさせていただきますと、一応、3日間以 上、4℃でオプティゾール保存した場合に活性がないわけですから、3日以内に使う可 能性があるという現時点のことを考えますと、やはり一旦、検査すべきであるという か、どこかの時点で知るということが非常に重要かなあという気がします。もうひと つ、先ほど八木委員がおっしゃったように、たとえば10年前の検査でネガティブだった からといって、今もネガティブとは限りませんし、輸血の問題等も出てくると思います ので、やはり、検査は必要だと思います。われわれ、現場にいて、たとえば梅毒ひとつ を落とすか落とさないかというのは、唯一、費用だけの問題になってきますので、そこ で限定を絞っていくと、梅毒は逆に、それほど高価な検査でもありませんので、安全性 確保の意味からも、取る価値をさほど見出せないというのが現場の意見です。 木下座長  そうですね。だいたい、どの方も同じような意見であろうかと思います。私自身もか なり類似した意見です。まとめさせていただきますと、まず、この、梅毒反応陽性の人 を慎重使用のところに入れる、このことについては、みなさん、ご賛同いただけたと思 います。それから、検査をするかどうかについてですが、これはもう、場合によっては しなくてもいいという意見と、それから、やはり死後採血の中で、あまり手間暇かかる わけではありませんから、とりあえず現状では、従来のように流してはどうかという、 2つの意見になっているかと思います。私自身は、この、厚生省の保健局の医療課長か ら出ております、実際の梅毒の定性検査をせよという、これが特定保険医療材料費の中 に入っている、これが残っていますので、現状では、やはり死後採血の中でやって、そ して、その結果をある程度……感情的なものだけかもしれませんが、もしもそれを使う 場合、インフォームドするということ、それから、3日以内には使用しないということ を確認するという形で、現状のように、検査はしていく。これは適宜、見直していくと いうことですので、そのうち、本当に、これが不必要であるということになれば、その 時点で検査から落とすというようなところでいかがかなあと思いますけれど、よろしい でしょうか。  それでは、梅毒については、そのような整理をさせていただきまして、次に、HCV 抗体等が陽性ということについて、少しお話しさせていただきたいと思います。先ほど のアイバンクの実施状況でいうと、このHCV抗体、31名ということで、死後採血の639 のうちの31名、約5%ということになります。だいたい、これは関西と関東では、関西 のほうがちょっと多い傾向があるんですが、なべて、4〜5%ということになります。 ですから、HCV抗体のこれを禁忌に入れるということになると、全体の眼球数から5 %落ちるという、数の少ない中のやりくりの問題がひとつ出てきます。しかし、片方 の、全体の臓器移植のほうから見ていくと、肝臓移植の慎重使用以外は、すべて一応、 使わないという適応基準になっているということです。あえて、もうひとつ言います と、角膜はほとんど、血液と混じらない組織ですので、他の臓器とは、そこがかなり違 う、そういう逃げもないことはないというところです。このことについて議論していた だきたいんですが、金井先生、いかがでしょうか。 金井委員  以前、この問題はやはり、うちの大学の中で、アイバンクの中でディスカッションし たことがあるんですが、そのときに、やはり、肝臓の先生に聞いたほうがいいんじゃな いかということで、一応、聞いてみたら、その時点ではやはり眼球は使わないほうがい いんんじゃないかということを言われました。あまり細かいことは分かっていないんで すが、ただ、外国の報告は、このあいだの角膜移植学会誌に載せたんですが、結構、い ろんな問題があるように思いました。ですから、もうちょっと文献的に調べて、あるい は、そういう専門の先生のご意見を聞いた上で決めたほうが安全ではないかと思うんで す。 篠崎委員  金井先生がおっしゃることは、もっともだと思います。研究班のときも、やはり内科 的なというか、感染症の専門の先生の話を聞くべきだと思います。僕は複数の内科系の 先生にお聞きしたんですが、やはり、言うことはまちまちで、とくに肝炎専門の先生に 言わせると、べつにそれぐらいはいいのではないかという先生が圧倒的に多くて、最 初、驚愕を覚えた記憶があります。やはり専門の先生のご意見を聞いて決めていくとい う方向性は、確かに正しいのかなあという気はしますけれど。あと、そこに今度、角膜 の特殊性を理解していただくのが重要かと思いますけれど。 木下座長  私自身も、自分の大学の肝臓の先生に聞きますと、ある一定の基準をクリアすれば大 丈夫だ、と。ただ、緊急性の問題が言われることもありますし、それが行政的というか 全般にわたったとき、それで許されるのかという議論が前回もあったかと思い ます。 鎌田委員  実際上、どれぐらい危険なのかということは、もう、ご専門のほうで判断していただ けると思いますが、そのへんがはっきりしない以上は、現時点では、むしろ、やめてお いたほうがいいと……。血液なんかでも、かつてはC型はもう、やむを得ないと言って いましたが、今は、いろんな国で、国が全部、感染者に保証するという時代になってき ました。まあ、安全性が確認されない段階では、避けておいたほうが無難なのではない かという印象です。 丸木委員  私もやはり、患者の立場から考えて、危険であるものは今のところは避けるという鎌 田さんの意見に賛成します。ただ、専門の先生から、これはそういうことはないという データが出て、医学的根拠に基づいて、その段階で、これははずしてもいいという決断 をされるのはいいんですが、疑わしいという状態で……。ただ、確かに件数を考える と、ちょっと問題はあるかもしれませんが、やはり、受ける人にとってマイナスになら ないようにということを考えると、原則としては、そういう感じではないでしょうか。 木下座長  八木委員、いかがでしょうか。 八木委員  みなさんとまったく同じです。やはりレシピエントの安全性を守るということが第一 ですので、本当に安全性が確認できた段階で、もし使えるようになるのであれば、それ はとてもいいことだと思いますが、今のところ、あまり無理はできないのかなあと思い ます。 横瀬委員  私も、やはり同じ考えです。 佐野委員  確かに、金井先生が言われることにも一理ありますけれど、学会で全学者全員が一致 して問題はないということであれば別ですが、議論がもし、少数派でも分かれるとした ら、禁忌のほうに入れたほうがいいのではないかと思います。 小口委員  実際、C型肝炎の方とか、C、Bの抗体を持っておられる方は非常に多いんですね。 たとえば白内障の手術の術前検査でもやっていますが、やはり5%とか……私どものと ころで15人やると、必ず1人ぐらいはおられますので、結構な確率だと思うんです。そ ういうことで、移植の数が非常に足りないということで、これをどかしてしまいます と、さらに減るという問題はあるますが、やはり、完全に安全性が確立されていなけれ ば禁忌にしておいたほうがいいのではないかと思います。 眞鍋委員  一般の人の同意を得るためには、やはり安全運転がいちばんいいのではないかと思い ます。それで多少、数が制限される可能性もあるかもしれませんが、それは他の方法に よって補うということで、やはり、安全性を第一にすべきではないかと思います。 木下座長  ありがとうございました。まあ、いちばん抵抗していたのは私自身だと思うんですが (笑)、みなさんのご意見から、だいたい、ここで譲るべきであろうというふうに思い ました。ただ、これは「上記の基準に関しては、しかるべき機関で適宜、少なくとも年 1回、見直されること」ということで、サイエンティフィックなデータの積み重ねを行 い、それで本当に、ある基準を満たせば安全であるということが……たとえば梅毒の3 日とか、そういうデータが出てきたら、その時点でまた見直して、慎重使用の方に入る 可能性もあるというような考えで整理したいと思います。それでは、HCVは「以下の 疾患または状態を伴わないこととする」という方へ入れさせていただきたいと思いま す。  次に、表層角膜移植について、別に適応基準を定めるか否かということなんですが、 私自身の考えとしては、感染症等のことがかなりしっかり入っていますし、それから屈 折矯正手術の既往眼とか、こういうものも慎重利用とかに入っていますので、あえて表 層角膜移植についてつくる必要はないかなあと思いますけれど、いかがでしょうか。ご 異論のある方がいらっしゃらなければ、そのように整理させていただいて……。 小口委員  そうですね。表層だと思ってやっているうちに、全層になってしまうこともあります からね。分ける必要はないですよ。 木下座長  よろしいですか。では、そのようにさせていただきます。あと、篠崎委員、白血病と いうふうにひっくるめて、完全に禁忌になっていますが、これはいかがですか。 篠崎委員  今までの使用禁忌が、多分、芽球性白血病を出したと思うんですが、急性白血病も、 両方の白血病でも、多かれ少なかれ、すべてのタイプで芽球は発見されているという事 実から、逆に、そこでの現場の混乱がありましたので、恐らく白血病としてしまったほ うが分かりやすい、と。HTLV-1陽性だけに限った問題ではなく、すべての白血病と 言ったほうが安全ではないかという気はします。 木下座長  はい。今ひとつ、眼内悪性腫瘍という、9番目の項目ですが、これは昔から網膜細胞 腫とか、そういった目を使うとかということは、現場では行われてきましたし、これを あえて、眼内の悪性腫瘍すべてとするのか、あるいは前眼部悪性腫瘍とするのか、この へんはいかがでしょうか。まあ、こうしておけば……眼内悪性腫瘍と言えば、絶対に安 全なんですが、いかがでしょうか。 眞鍋委員  このことについては、この前のときにも話がありましたが、レチノブラストーマが網 膜にある……いわゆるメタの時期でないときには、まったく問題ないと思いますけれ ど。また、それが幼児のための角膜の提供源になる可能性は非常にあると思います。だ からやはり、できれば前眼部での悪性腫瘍というふうに決めていただけたらと思いま す。 木下座長  このあたり、金井先生、いかがでしょうか。なかなか難しいところですけれど。 金井委員  大変難しい問題なんですが、僕も眞鍋委員と同じような意見です。できればやはり、 小さいお子さんの提供になりますので、角膜としては大変、条件としては100%いいの で、もし使えるようであれば、本当はぜひ使わせていただきたいなあと思います。た だ、レチノブラストーマでも、前眼部のほうに炎症のあるような症例は、やはり慎重を 期さないといけないかなあ、と。ですから、今、眞鍋委員が言われたような形にしてお けばいいのではないかと思いますけれど。 小口委員  うちでは使ったことがないんですが、レチノブラストーマあるいはメラノーム、それ が眼内腫瘍でいちばん多いわけですが、レチノブラストーマは、多分、遺伝的なもので みんな決まっていて、ウィルスとか、そういうものは考えなくていいと思いますので、 まあ、安全である、と。ただ、全眼内炎みたいなことが起こってくると、角膜内皮の障 害とか、いろいろありますから、そういうものは使えないのではないかと思います。先 生方と同じです。 木下座長  これは一応、「内因性眼疾患で虹彩炎などがある場合には慎重使用」というふうに入 っておりますが、篠崎委員、いかがですか。 篠崎委員  確かに、レチノブラストーマにしてもメタティスティックな状態でなければいいと思 うんですが、それを判断する機関が各アイバンクに必要なのではないか、と。眼球提供 があったときに、それをチェックできるシステムが整っていれば必要ないのかなあとい う気はしますけれど。たとえばブドウ膜炎がある状態、虹彩炎がある状態かどうかとい うあたりを見られるシステムのほうが重要なのかなあという気がしますね。 小口委員  ただ、今、レチノブラストーマも、抜かない方向になってきているんですね。抜くと いうのは、かなり大きいやつで、眼内に炎症が来ているような、どうしようもないもの ですから、とくにレチノブラストーマに関しては、非常に適応が狭まるのではないかと 思います。 木下座長  このへんは検討事項として、適宜見直すというところに入れてもいいかなあと思いま す。小口委員がおっしゃったように、実際上は、今、ラディエーションとかでかなりし まして、重傷のもの以外は摘出しないようになってきているのも事実です。それから、 メラノーマなんかのときは逆にどうかというところもありますから、議論として、一 応、眼内悪性腫瘍という形で残しておいて、ただ、将来的にまた検討する課題のひとつ というふうに整理させていただけたらと思います。  それでは、角膜移植における提供者(ドナー)適応基準につきましては、だいたい、 議論が行われたと考えておりますので、本作業班の検討結果を、臓器移植専門委員会へ 報告しまして、さらにそこで検討していただくことにしたいと思います。  次に、議題の2に移りますが、平成10年度の厚生科学研究事業でアンケート調査を行 いました。この結果の概要について、議題を移します。前回の本作業班において、平成 9年度に実施した各アイバンクに対するアンケート調査の結果をご紹介しました。厚生 科学研究事業において、平成10年度においても、引き続き、関連の調査が実施されてお り、眞鍋委員を班長としまして、その結果がほぼ、取りまとめられているように思いま す。今後、さまざまな課題を検討するうえで、非常にいい基礎資料となるかと思われま すので、事務局のほうから説明していただき、足りないところがあれば、その補足説明 を眞鍋委員もしくは篠崎委員からしていただきたいと思います。では、山本さん、よろ しくお願いします。 山本補佐  先ほど、若干触れましたけれども、資料2-1でございます。調査期間は平成10年1 月1日〜10月31日。51アイバンクに対して感染症検査の実施状況が調査されています。 回収率は82.4%。検眼者数852に対し、検査したのは720。重複もありますが、カルテに よるものが94、死後採血によるものが639。死後採血の感染症実施状況は、前回、ご紹 介させていただいた平成9年度の研究事業のときのデータよりもかなり改善されている かと思います。先ほど申し上げたように、死後採血による感染症検査の判明ということ で、梅毒からHTLV-1までございます。HIVの抗体検査のところに*印が書いて ありますが、これはスクリーニング検査でフォールス・ポジティブが1件出て、確認検 査で陰性ということですので、陰性のケースが1例ございます。  次に資料2-2。まず、アイバンクに対しての調査ということで、全国51アイバンクに 対して、業務の内容について調査をしていただき、返却数50バンクということで、1バ ンクだけお返事がなかったということです。まず、バンクのスタッフの問題ですが、常 勤の理事がいないところ、0人というところが30を超えておりますし、常勤の事務局員 数としても1名というバンクがいちばん多くなっています。それから、常勤コーディ ネーターについては、いないというバンクが最も多く、1名いる、もしくは4名いると いうバンクが1つあります。その他の職員として、非常勤理事や監事の数が上がってい ます。2番目に、ドナーの所在地についてですが、県内のドナーからご提供いただいた ものをあっせんしたという眼球数が788。県外が32ということです。  次のページ。眼球を摘出したあと、「強角膜切片を作成していますか?」ということ で、すべて作成しているバンクが35、作成していないバンクも7バンクありました。ま た、移植後の状態に関係する「内皮細胞の検査を行っていますか?」という質問に対し て、行っているバンクが19、行っていないのが18、ほぼ同数でした。  摘出医の状況ですが、「摘出医の選択はどのように行っていますか?」というところ で、「献眼者発生順の医療機関の輪番」……医療機関が輪番でやっているというとこ ろ、それから「レシピエントを管理している医療機関」がやっている、そして、その他 が30でした。この内訳については、眞鍋委員からもご説明があるかもしれません。  また、「眼球摘出医療機関と移植医療機関は同一ですか?」ということで、原則とし て摘出した医療機関で移植しているというところが12バンク。1眼は摘出した医療機関 がキープして、もう1眼は出しているというのが7バンク。「必ずしも同一でない」、 というふうにお答えいただいたのが25バンクでした。  摘出にかかる費用については、アイバンクより一定額負担しておられるとことろがい ちばん多く、実費を負担しているというお答えもありましたが、「移植医療機関の実費 負担」ということはありませんでした。  次のページ、「摘出費の金額は?」という質問ですが、3万円ぐらいというところが 真ん中ぐらい。最高は6万円というお答えもいただいてます。  次に、レシピエントの選択ですが、移植を希望されている患者さんで、どのレシピエ ントの方に角膜を使うかという選択を、どこが行っているかというのは、アイバンクが 行っているのは18、医療機関で行っているのが29で、こちらのほうが多くなっていま す。  レシピエントの二重登録については、「認めている」「認めていない」の割合は、若 干、認めていないほうが多い。ダブルチェックの方法等の詳細なところについては分か らない状況です。また、レシピエントを選択する機関としては、医療機関がやはり多く て35です。  それから4ページ目。レシピエントの選択に際して「明文化された選択基準はありま すか?」ということについては、「ない」が15、「ある」が2で、残りのバンクはお答 えいただかなかったことになります。実は、このアンケート用紙の雛形2のほう、若干 違う部分もありますが、資料2-3として添付しています。この設問では「明文化された 基準がある」と言ったところに対して「どういう基準ですか?」という問いが設けてい たんですが、「ある」が2行しかないにもかかわらず、次のところで「登録順」という 答えが14出ていますので、若干、設問が分かりづらくて回答が混乱しているのかもしれ ません。  待機患者に関する項目で、待機患者数は20以下の3バンクから500までの3バンクま で、だいたい、50〜100人ぐらいは待機しているというお答えでした。待機時間には通 常と緊急時とありますが、通常の場合については3〜4年というのが最高のお答えです 。2カ月ぐらいというところもありました。また、緊急時で3日、7日……とあります が、だいたい、30日という、1カ月のところにピークがあります。一方、1年以内とい う「緊急時」もありました。  次は承諾に関する項目です。「眼球摘出に際し、本人の臓器提供に関する生前の意思 が不明な場合に、もしくは生前登録者の場合に遺族からの書面による承諾は、誰が得て いますか?」ということで、アイバンク自身がやっているところよりも、摘出医がお願 いしているというところが36バンクで最も多くなっています。また、承諾を得ていない というところも1バンクあります。これは、生前の意思不明の方と、生前登録している 方で、あまり傾向としては差がない状況です。それから、眼球の提供の承諾は、どなた が得ていますか、ということについても、コーディネーターがいる4バンクがありまし たが、コーディネーターがいるバンクについてはコーディネーターということでしょう し、摘出医というのがいちばん多いですし、ライオンズクラブの方にお願いしていると いうこともあります。  次のページからは、アイバンクに対してではなく、角膜移植医療会員に対する調査で す。角膜移植学会員に対して、実際にアンケート調査を行ったということで、回収率は 520人の学会員に対して77名、14.8%の回収率。ただ、この調査自身は、同一医療機関 内に複数の会員がいる場合は、代表者でいいということになっていますので、そういう 状況もあろうかと思います。結果として、期間内の移植件数が859件。先ほどのアイバ ンクのほうの調査とそれほど数字は変わらない……若干少ない程度です。そういう意味 では、かなりカバー率はよかったのかもしれません。そのうち、感染症の検査件数が82 9で9割に近い値になっています。この期間中に、どのバンクから提供を受けました か、ということで、静岡バンク、読売バンク、その他、外国のバンクの名前もあがって います。また、バンク名ではなく、地域でもらったという回答をいただいているものも あります。  それから、移植医院に対して、角膜移植希望者の登録を行っている機関はどこです か、という質問。病院が独自にやっているというお答えのほうが43と多く、アイバンク で行っているというお答えは23名でした。また、他の医療機関への二重登録を認めてい るか、という質問にも、認めているという回答のほうが多くなっています。  次のページですが、レシピエントの選択をどうやっているかということについても、 アイバンクではなくて医療機関自身が行うんだ、というお答えが48と、最も多い状況で す。では、明文化された基準はあるのかというと、「ない」という答えが50ということ で、明文化はされていないけれども、選択方法としては「患者の登録順」というのが 25。残り29はさまざまで、原則は登録順だけれども、緊急時はケースバイケースという ふうに、いろいろ、そのときどきに応じた判断が働いているようです。  それから、「角膜の移植について、臓器移植法に基づいて、記録を作成し保管してい ますか?」という質問。臓器移植法ができた場合には、この、移植の記録の保管義務が 医師に課されたわけですが、「行っていない」という答えが19ということです。  それから、「眼球摘出に際し、本人の意思が不明な場合、遺族からの承諾は書面で得 ていますか?」。これも、臓器移植法に基づいて、遺族の承諾を書面でいただくという ことになっていますが、「アイバンクの職員が得ている」「摘出医療機関の医師が得て いる」……先ほどと同様の傾向です。「得ていない」という答えも2件いただいていま す。  最後に輸入角膜に関する項目ですが、「調査期間中の海外ドナー移植件数」が326例と いうことで、全部で800ぐらいの例からいきますと、4割近い、38%ぐらいの割合で、海 外での角膜の利用ということになっています。提供先のアイバンクとしては、アメリカ が多いんですが、スリランカの16というのもあります。Processing Fee、値段としては さまざまで、最高25万円ということです。また、このときの問題点として何があったか というと、「輸送中のトラブル」「検査の不足」「費用が高い」等が上げられていま す。調査結果は以上です。実際のアンケート項目については、資料2-3に書いてあり ます。 木下座長  ありがとうございました。今のご説明に対して、何かご質問、あるいは補足説明等、 眞鍋委員 もしくは篠崎委員からありますでしょうか。 篠崎委員  こういった結果が出まして、私、取りまとめた担当として、先週の北川班でも発表さ せていただいたとおりです。 木下座長  アンケートの結果ということですので、こういうことだろうということになります。 ただ、このアンケート結果の中の6番目、これだけ補足させていただきますと、レシピ エントの選択に関する項目で、「レシピエントの選択はどこで行っていまか?」という のがありました。アイバンクと各医療機関となっていますが、ここらへんのことが、本 来は、アイバンク……法律との整合性ということで、もう少し、これから整理していか ないといけないところではないかと思うんですが、若干の混乱があり、臓器移植法に変 わったところに、まだ、十分に各アイバンクが意識的についていけていないところがあ るかなあ、というのが実態であろうかと思いますけれど。 篠崎委員  今回、アンケートを行った印象として、非常に……これは、お答えをアイバンクにお 願いして、「うちでは分からないので、近所の先生に聞いてみます」、と。アイバンク の担当の先生、あるいは大学病院の先生に聞いてみます、ということで先生にお尋ねし ています。恐らく、先生方の考えとしては、患者の選択、つまりレシピエント選択とい うことなんですが、適応を判断しているという意味でお答えいただいているほうが、逆 に多かったのではないか、と。臓器のようにネットワークのような組織があって、そこ で誰を選ぶかという客観的なデータに基づいての選択ではなく、患者さんが外来でいら したときに、この人は適応があるかないかという判断は、「そんなもの、アイバンクが するわけないじゃないか」というような印象のお答えが非常に多かったということを付 け加えさせていただきます。 木下座長  ありがとうございます。このような調査結果から、全国のアイバンクが角膜移植を考 えるときに、ずいぶん、バラエティーがあるなあという印象があります。そういう中か ら、現在のアイバンクの役割を典型的な、本来、イメージしているようなアイバンク と、それから現実のものということで、いくつかあるように思います。このあたりにつ いて、事務局で2つの流れがあるのではないかということで、そのイメージを少しまと めていただきました。それについて、山本さんのほうからご説明いただきたいと思いま す。 山本補佐  お手元の資料3でございます。今回の調査結果からも、いろんな機能を果たしている アイバンクが現実に存在しているということで、典型的なパターンのイメージを2つ、 事務局のほうでつくりました。上からいきますと、アイバンクの中にコーディネーター がいたりいなかったりでしょうけれども、実際に、まず、レシピエント、患者さんのほ うは、基本的には移植実施医療機関に受診をして、移植の適応があるということであれ ば、アイバンクにレシピエント登録を行う。アイバンクは、レシピエントの登録リスト を持っていて、かつ、また、レシピエントの選択基準等を持っている。ひとたび、眼球 提供者が発生した場合……それは、医療機関なり、ご家族から連絡があるわけですが… …その場合には、その情報が(1)でアイバンクに入ると、アイバンクは、典型的な場 合、コーディネーターを派遣している。そのコーディネーターが眼球提供施設でド ナー・ファミリーに会って、ご説明をし、必要な承諾を取る。ご承諾をいただけると、 アイバンク自ら、もしくは地元の医療機関の先生方のご協力を得て、チームが摘出する ためにその医療機関なりご家庭に行く。摘出した眼球はアイバンクに搬送され、アイバ ンクで強角膜切片も作成される。そして、アイバンクにあるレシピエントの登録リスト から、選択基準に基づいて、優先順位の高い方に移植するために、その移植医療施設に 連絡が行き、そこで移植を行うということになると、その角膜をその移植施設に搬送す る、というような流れを持っているようなバンクというのもあります。  また、その下にあるのは、レシピエント自身、患者さんが医療機関で受診します。そ の医療機関が移植施設であった場合に、移植の適応があるといったときに、その移植施 設の中に患者のリストみたいなものが蓄積されていて、アイバンク自身は、その移植施 設と非常に密接に関連しているために、ひとたび眼球の提供があった場合には、その情 報がアイバンクには入るんですが、その情報はその前に移植施設に行き、移植施設から 摘出チームが行き、摘出した眼球は、そのままその移植施設に行って、そこで移植に使 われる。いくつかの移植施設が関係している場合もありますが、典型的には、こういう 場合があるということです。この場合には、レシピエントの登録リストが移植施設にあ り、基準はほとんど明文化はされていなくて、医療機関内で利用しているというような 例が、今回の調査で2パターンぐらいはありました。  このバリエーションの中で、いろんなバンクの形態が、現在、わが国ではあるのでは ないかということで資料をまとめさせていただきました。以上です。 木下座長  ありがとうございます。流れのイメージとして、こういう2パターンがありますが、 現実にはイメージ2というアイバンクがまだまだ多いのではなかろうか、と。その中 で、アイバンクあるいは、これからのレシピエントの選択・登録などのより一層の公平 性ということを議論していく場合には、これは、できるだけ、イメージ1のような形態 になっていけば、より成熟したアイバンクになっていくのではないかということです。 とくにご質問がないようでしたら、今の資料の内容を踏まえて今後の検討を行っていき たいと思います。よろしいでしょうか。アンケートの調査結果のご説明ということです ので、次に移りたいと思います。  議題の3、アイバンクにおけるレシピエント登録等の実施について。他の臓器移植と 同様に、角膜移植においても、先ほど山本さんからご説明がありましたように、公平で 公正で、かつ、レシピエントをはじめとする国民に分かりやすい透明なシステムを構築 することが重要である、と。現状では、角膜移植を受けることができるレシピエントの 選択方法などは、各アイバンクでかなり異なっている、ということになります。このこ とは、先ほどのアンケート調査結果でも、だいたい、お分かりいただけたことと思いま す。アイバンクのレシピエントの登録あるいは選択について、事務局から、資料の説明 をお願いします。 山本補佐  お手元の資料4でございます。実際にアイバンクで行われている、レシピエント(移 植希望患者)の登録および選択の現状については、以下のとおりです。まず、背景です が、参考資料2-1等として、前回と同様に添付させていただいていますが、臓器の移植 に関する法律の基本理念、第2条において、「移植術を必要とする者に係る移植術を受 ける機会は、公平に与えられるように配慮しなければならない」、と。移植の機会の公 平性ということを基本理念としてうたっています。また、同じ法律の12条において、臓 器のあっせん……眼球の場合はアイバンクですが……あっせん業を不許可にする要件と して、ひとつは営利性の場合。2つ目として、「移植術を受ける者の選択を公平かつ適 正に行わないおそれがあると認められる者」、この場合には、あっせん業の許可をしな いというふうに規定されています。ちなみに眼球以外の他の臓器、心臓や肺、肝臓等に ついては、臓器ごとにレシピエントの選択基準が定められて明文化されています。これ で一応、他臓器に関しては、日本臓器移植ネットワークにおいて全国一元的なレシピエ ントの登録が行われていて、どこで臓器が出ようと、その基準にしたがって、あっせん 機関である日本臓器移植ネットワークがレシピエント選択を行って、その移植医療機関 に連絡をし提供する、と。移植医療機関の医学的な判断、その臓器が使えるかどうかと か、患者さんが実際に移植を望むかどうかという、インフォームドコンセントの問題は また、そのうえで、その移植医療機関で行うということになっています。繰り返しにな りますが、実態として、先ほどご紹介した調査によりますと、レシピエント選択のため に待機患者のリストを作成しているアイバンクは全国51アイバンクのうちの18で、残り は医療機関がそれを持っているということです。レシピエント選択も、アイバンク自身 が行っているというのは、4カ所のみで、残りは医療機関が選択しています。ただ、こ れは、先ほどの篠崎先生から、ちょっと違う意味で回答したのではないかというコメン トがありました。それから、レシピエントの選択基準を明文化しているのかということ については、明文化した基準を持っているアイバンクは2カ所のみでした。公平な眼球 のあっせんを行うという観点から、検討すべき課題として、以下の点があろうかという ことで列記しています。  まず、レシピエントの登録をどこが行うべきなのか。これはアイバンクなのか、移植 医療機関なのか、また別のところなのか、ということです。また、選択を誰が行うのか ということについても、アイバンクか医療機関かという問題があります。選択方法につ いても、どんなふうにしたらいいのか、と。たとえばレシピエントの選択基準を定める べきなのか、そんなものはいらないということなのか、その基準はまた、全国統一の基 準でいくのか、もしくは各アイバンクごとに異なる基準とするのか、もしくは基本的な 考え方は共通で、あとは地域のバンクによってバリエーションがあってもいいのか、と いったこともあります。最後に、レシピエントの選択基準をつくる際に考慮すべき事項 として、こんなものもあるのかなあということで、事務局としてまとめたものがありま す。待機期間の長い人ほど優先なのか、あるいは、緊急症例をどういうふうに扱うの か。たとえば両眼とも障害がある場合と、片側のみ障害がある場合とでは、両眼の方を 優先するのか、やはり待機期間だけでいくのか、とか。いくつかの議論すべき点があろ うかということで資料をまとめさせていただきました。  法律については、臓器の移植に関する法律、全文が資料2-1にありまして、先ほどの 2条、10条がこの中にあります。旧角腎法と呼ばれる旧角膜移植に関する法律が、参考 資料2-2です。実は参考資料2-3には、前回もお出ししたように、非常に古いんです が、昭和38年と40年に、厚生省があっせん業の許可を行う際の基準と考え方について出 した通知があります。ただ、この通知では、眼球、アイバンクというものが、たとえば 特定の医療機関のみにサービスをするアイバンクの設置というのも掲げていますので、 地域全体に眼球を提供するという概念ではないものも、その当時、こちらのほうでも示 しているということがあります。以上です。 木下座長  ありがとうございました。今の説明に対して、何かご質問等、ありますでしょうか。 ここではレシピエントの登録とか選択とか選択方法、基準ということについて、ある程 度、基本的な考え方のガイドラインのようなものがつくれたらいいかなあ、と。そし て、それに基づいて、各アイバンクが、それなりに、もう少しモディファイしたものを つくっていく、そういう考え方もできるかと思いますし、もちろん、統一したガイドラ インをつくるという考え方もできるかと思います。少なくとも、基本的な、何らかの考 え方を示すようなものができれば、と。そういうことを踏まえてご議論いただきたいと 思います。 横瀬委員  今、いろいろ、山本さんからお話をお聞かせいただいたんですが、私が想像していた 以上に、非常にラフな状態ですべてのことが運営されているというふうに思います。少 なくとも臓器移植ネットワークでは、やはり、公平性というものと、準則性というもの をまず第一に考えて、どういうふうにするかということをみなさんで討議し、かつ、一 元化するような形でコンピュータを導入して、それによる優先順位を定めて、ドナーが 出た場合の対応は、少なくとも、その優先順位にしたがってディストリビュートすると いう形だったと思います。もちろん、この、角膜の場合には、地域性というものが非常 に強いし、非常に熱心な県とそうではない地域があるという側面がありますので、一概 に、全部統一化するということは無理かもしれませんが、しかし、やはり本来の在り方 としては、日本にどこかセンターを設けて、そのセンターで集中してレシピエントの登 録、優先順位等、状況に応じての必要性というものを加味すべきだと思いますけれど も、それが今、ほとんど地域的な、あるいは病院とか、各アイバンクのひとつの独自性 というもので運営されているような気がしてなりません。やはり、これは、全体的なも のとして、その考え方としては、公平かつ準則にそれが配分されるという形での組織に 改めていくべきだと思うし、今、各地区にある、それぞれのアイバンクは、やはり、ど こかにひとつセンターをつくって、そのセンターでもって、ある程度までのコントロー ルができるような状況というものと、それから、情報の収集等、そういったものを行う べきではないかという気がします。もちろん、地域性というものを否定するわけではあ りません。非常に熱心な県とそうではない県との格差があっても、やむを得ないとは思 いますけれど、やはり、原則的には公平であるということがいちばん大事なことではな いかなあという気がします。 木下座長  ありがとうございました。角膜移植というのは、臓器のような捉え方もされているん ですが、実際には組織移植ということで、他の臓器とはちょっと違う面もあったり、組 織適合性抗原等のチェック、あるいはその適合性を検査することはされていませんし、 現状では、しても医学的に意味がないということなどがあります。そういうことから、 センター化というふうにはなっていないところもあります。篠崎委員、アメリカの現状 を少し、ご説明いただけますでしょうか。 篠崎委員  前回も申し上げましたように、アメリカはアイバンクが今、110行ですか、150カ所に ありまして、全体の献眼数は96,000眼ぐらいで、そのうち45,000件ぐらいの移植しか行 われていません。潤沢にありますので、角膜移植というと、患者さんに「何月何日何時 何分に来てください」と言って、そのときに角膜が来るのは当然という概念がありま す。ただ、ひとつ問題は、緊急のときにアメリカでも足りないことがあって、海外から 持ち込んだりということはあります。そういう緊急のときは、一応、別の議案として、 通常時の公平性ということはある程度担保するというか、法律に、ちゃんと、公平にや れと書いてある以上は、やらざるを得ないと思いますし、それは当然、国民の理解を得 るためには必要だと思うんです。何度も繰り返して申し訳ないんですが、今回、調査を している中で感じたのは、患者さんの適応を見るという段階の行為と、アイバンクが、 この、ドナーが出た角膜をどの医療機関のどの患者さんに送るかという行為が、完璧に 明確に分かれていないというのが現状のアイバンクの姿だと思います。そのへんからの 洗い直しというか、各アイバンクに、そういった目で2つ、クリアに分けていただくな り、あるいはそれを指導するなりということが、まず第一段階で必要なのかなあという 印象を持っています。 木下座長  ありがとうございました。八木委員、実際的なところでいかがでしょうか。 八木委員  今、すごく混乱していまして、うちでも昔、あっせん基準を明文化してつくたんです が、とにかく眼球が足りないものですから、守りきれなかったというか……。アメリカ へ行って思ったのは、本当に90,000眼のうち、使用されるのは45,000眼で、それだけ眼 球があれば、本当に順番どおりにやっていっても、どの眼球を使っても、どんな症例に も、適応するようないい眼球が手に入るんでしょうけれども、日本の場合というのは、 一応、基準があって、じゃあ、感染症はすべてマイナスで、内皮細胞は2,000以上とか と言っても、2,000以上ではあっても2,000ぎりぎりとかというのもあったりするんです 。平均して2,000という数は出たけれども、内皮の中で欠落部分があるとかということ もあったりします。そうすると、たとえば症例によって、その眼球をどういう症例に使 うかということですごく迷う部分があって、アイバンクが個人の患者さんまで選べるか というと、それはちょっと難しいんじゃないかと思います。うちでは今、各移植医療機 関に対しては公平性を保とうとしていますが、その医療機関の中で誰に移植するかにつ いては、アイバンクが決めることはできないというか、決めにくい状態です。それは移 植医療機関のドクターに任せている状態です。だから、どこが登録するかというのも、 静岡の場合ですと、その移植医療機関も、自分のところの患者の登録というのを持って いて、それがそのままアイバンクのほうに上がってきています。アイバンクでは、どこ の病院にどれだけの患者さんがいるというのをつかんでいて、それに対して、今のとこ ろ、できるだけ公平にあっせんしているつもりです。そのやり方がいいのかどうかとい うか、今、現状では仕方がないような気もするんですが、今後、よりよい方法が出てく れば、それを実行していきたいと思います。 眞鍋委員  いちばん最初のアンケートに、スタッフの数が出ていましたが、結局、事務員が1人 もいないというアイバンクがあったり、1人しかいないというのが大部分であるという ことで、しかも、今、篠崎先生が言われたように、そこで患者の適応を決めるのさえ、 アイバンクでは不可能というような感じですので、ましてや、先ほど言われたように細 かく、内皮にちょっと欠損があるけれども、それはどういう患者さんに移植すればいい かというような判断をすることは、もう、主治医以外は不可能だろうと思いますね。そ れを全国的に集めて、そこに角膜移植の専門家が詰めて、眼球が提供されるたびに集ま って、今度はどこにあっせんしよう、というようなことを決めるなどということも、ち ょっと、角膜の場合は不可能ではないかなあという感じがします。したがって、やはり 各医療機関の主治医そのものが、その患者を代表して……主治医が何人もいる場合は全 部の主治医が集まって、その医療機関は医療機関で、公平に適正に分配できるようなシ ステムを構築し、外部に「うちは、こういう基準でやっています、公平性を保っていま す」ということが言えるような、そういう形をとれば、世間の人も納得してくれるので はないかと思います。それを、腎臓とか肝臓のように、HLAのDローカスがいくつ合 い、A、B、Cがどれだけ合うというような、数学的な組み合わせによって順位が決め らるという、そういう、客観的なものがあればいいんですが、角膜の場合は、それがま ったく数値で表せない状態ですので、いかに角膜移植のベテランの先生が集まったとし ても、実際の患者を診ないで順位を決めるなどということは不可能だろうと思います。 やはり、現場で実際にやっている人の意見がいちばん大事ではないかと思います。そし て、公平にやっているということを他の方法で担保する。それにはやはり、ここで決め た原則を、各アイバンクおよび各医療機関に守っていただいて、国民全体に対して公平 性が確保される、そういう形をとらざるを得ないのではないかと思います。 木下座長  ありがとうございます。今、移植医療機関が国民に対して公平性を保てているという ことと、それから、アイバンクが国民に対して公平性を保てているかどうかというとこ ろが、若干、議論の中で全体に混乱があるかと思います。ここでは、まず、アイバンク が、どこのどの人に言われても公平性を保たれているというシステム、おおまかな捉え というのがあり、そして、なおかつそのためには、移植医療機関の中でも、もちろん順 位等が決まっている必要があるかとは思うんですけれど、アイバンクから、少なくと も、眼球をあっせんするときに、どういう基準下で公平性が保たれるようなガイドライ ンというものが必要かなあ、と。ですから、臓器ネットワークのようなやり方というの は、現実に不可能でしょうし、また、それが角膜に適しているとも思いませんけれど も、そういうようなものが必要かというふうに、私自身は思っています。 鎌田委員  大変難しいテーマというか……。これから新たに、全国的な統一的バンクをつくろう ということであれば、いろんな絵の描き方があると思うんですが、アイバンクの場合 は、既にいろんなところで、いろんなバンクが活動を続けておられますし、しかもその 中で、先ほど、イメージのご説明がありましたが、アイバンクと移植施設の関係も、組 織自体が、極端に言えば移植施設に付属のアイバンク的なものと、もうちょっとパブリ ックなアイバンクもあって、なかなか統一的な基準、全国一元的な配分の決定というも のになじみにくい実態が既にあるのではないかと思うんです。そういう中で一元化をた だちに目指そうとしても、かなり難しいので、現実のバンクの活動を前提にして、その 中で、どうやって公平性を確保できるか、と。そのときに、おっしゃるように、現実に 患者さんを見ているお医者さんじゃないと判断しにくい部分もあるというのも確かにそ うだろうと思いますので、機械的な実質基準ではなく、むしろプロセスでの公平性担保 という考え方をとらざるを得ないのではないか、と。どこかで、やはり、公平性を保つ ような、きちんとしたプロセスがあって、そういう基準を持っているという限りのしば りしかできないのかなあ、というのが今のところの印象です。 金井委員  実際にアイバンクをやっていると、いろいろな問題点があると思うんです。まず第一 に、アイバンクの成り立ちによって、これはだいぶん違ってくると思います。たとえ ば、うちの順天堂とか慶應のアイバンクの場合ですと、大学がやっていますから、大学 のアイバンク、イコール病院ということで、これがイコールになってしまうので、そう いう意味では患者さんの公平性というものは、一応、保つことができると思います。た とえば両眼の失明者を優先するとか、そういうことはできると思います。それから、緊 急性の場合ですと、中核アイバンクで、連絡網が今、整っていますので、それである程 度、緊急性は補うことができるんじゃないかと思います。たとえば、ライオンズの方々 がつくられているような、メインでアクティビティーのあるアイバンクの場合、たとえ ば静岡県もそうなんですが、ああいう大きいところで一元化した場合に、たとえば静岡 の中でも、静岡の先生が取りに行くということ。それから、東京から取りに行くとか。 東京から取りに行っても一元性で、全国の、このような状態になってしまっては、現実 には取りに行かなくなってしまうかもしれません。だからひとつ、まず、やはり今は眼 球を、この利害の中で、どうやっていただくか……たくさんいただける方法が、何か他 にもっとないかというのも、ぜひ、できればディスカッションしてもらいたいです。あ る程度、豊富になれば、それは一元化しても十分だと思います。ないところで、一生懸 命、公平性といっても、なかなか問題は解決できないんじゃないか、と。ただ、現時点 ではむしろ、各アイバンクが公平性を保つように努力していると思うんです。それは多 分、努力をするように、この会から、それを再度お願いするような形で、なるだけ努力 して、緊急はお互いに中核アイバンクが情報を流す、というふうにしていただければい いと思いますけれど。それが僕の考えです。 小口委員  私も、だいたい、金井先生の意見に賛成なんですが、資料3にある流れのイメージの 1と2ということで、将来的には、この1に行くのがいちばんいいのではないかと思い ますけれど、現在のところは2の流れが非常に多いのではないかと思います。たとえば 中央に、アイバンクのセンターを設けたとして、待機患者の順番をつける。眼球が入っ たときに、それを番号順にまわすというようなことが実際に行われているとしても、や はり日本列島は北海道から沖縄まであって、広いですから、それを運ぶということも考 えると、やはり地域性ごとに、こういう1みたいなものを、ブロックでつくっておいた ほうがいいんじゃないかという感じがします。これはまあ、将来のことですけれど。現 実には、やはり今のところは、私のところも眼球銀行がありますが、公平ということに 関しては、いろいろと気を使ってやっているつもりです。あとは慶應の関連の、いろい ろな病院もありまして、眼球が入ったら、ぜひいただきたいという申し入れもあります ので、そういう場合には、角膜内皮がいくつ以上とか、何歳ぐらいの方とか、そういう 希望もありますので、そういったものをあっせんするということはやっています。本当 は、やはり文章でちゃんと書いておかないといけないんじゃないかなあというふうに思 います。 丸木委員  いろいろ、委員の方のお話を聞いていて、まったくそのとおりだと思います。ひとつ は、やはり、確かに公平性の原則からいけば、この1のイメージのような、腎その他の 移植ネットワークのようなものがあるのが望ましいとは思います。私自身もやはり、究 極は、こういう形のところにいかに持っていくかということだと思います。臓器移植法 が法律として現実にあるわけですから、それを無視することはできないと思うんですよ ね。ただ、じゃあ、ただちにそういった全国ネットをつくったからといって、今のアイ バンクが明日から職員が倍に増えて、角膜のあっせん数が何十倍に増えるという可能性 があるのなら、そういうふうに法律でしばるのもいいと思うんですが、やはり多分、現 実を見る必要があるんだろうと思うんです。じゃあ、そこでどうするかといった場合に は、やはり最低限、その選択方法であるとか、コーディネーターがいるとか、そうい う、バンクとして最低限、これだけはやるべきじゃないかというルールづくりを話しあ うべきじゃないのかなあという感じがするんですよね。私は現状をあまりよく知らない ものですから、いちばん聞きたいのは、これだけのバンクがあって、なんでこんなに差 があるのか、と。アメリカはこれだけの件数がなんで出るんだろうというのを、もう少 し教えていただければ、と。たとえばアメリカは移植先進国ではありますが、日本では 残念ながら1件もないという、ただそれだけの理由なのかどうなのか、意識の違いなの か、それともシステムの違いなのかというのを、もうちょっと教えていただければと思 うんですが。 山本補佐  事務局の説明が悪かったのかもしれません。先ほど、資料3でお示ししたイメージと いうのは、1がいいとかということで書いたつもりは毛頭ございません。それから、こ の、アイバンク自身も、全国で一律に、臓器移植ネットワークのようなアイバンクセン ターみたいなものをつくろうとかという趣旨では全然なくて、現在の、たとえばひとつ のアイバンク……これは51、これでもいいんですけれど……各バンクの中で、こういう ふうにルールを決めているバンクもわが国にはある。それから、そうではない、違う ルールのものもあるということなので、全国で1個にしようとかということを意図する ものではまったくありません。 木下座長  資料3の説明は、私自身が何か補足したように、イメージ1のほうがよさそうだとい うようなことを言いましたので、どうも、それでそっちに行ったのかもしれません。佐 野委員、いかがでしょうか。 佐野委員  金井先生が言われたのもごもっともだし、それから小口先生の発案も面白いと思うん ですが、私は、角膜移植をまったく知らない者としての発言としてお話ししますと、た とえば全国統一をいきなりやっても、なかなか大変だと思うんですね。思いつきかもし れませんが、たとえば静岡なら静岡でたくさん持っていらしゃる。この何%かは……た とえば10%とかを、全国ネットワークにまず乗せる。そういう2段構えがひとつです ね。それから、小口先生がいわれたようにブロック単位で……これは交通のことだと思 うんですが、多分、日本国が考えているブロックは交通の便から分けていると思うんで すよ。たとえば東海・北陸というところをひとつにしないで、北陸と東海を分ける。そ れから、今はだいぶん変わってきましたけれど、山陰と山陽を分ける。関東、東京とい うのは交通が発達しているから、これは1つの圏内にしてしまう。そういった、交通が どんどん変わってきますけれど、県単位から少し考えをはずすには、そういう、交通の 便で何県かが一緒のブロックを敷いて、その中でやってみる。これはもちろん、理想論 で、先ほどどなたかがおっしゃったように、登録者を増やすのは大事なんですけれど、 この議論だけを考えれば、ただ、「だめだ、だめだ」ではなくて、そういうふうに小さ いブロックに、交通機関で分けていく。それで全国に持っていく方法と、各アイバンク の何%かを全国へ献納というか、そういうふうにすれば、その、残った分は独自のアイ バンクの努力として報いられる。全部、全国登録してしまっては、一生懸命やっている ところが非常に気の毒な感じがします。たとえばそういったこと、それから、今度、医 学のほうで言うと、水泡性角膜炎をどうするか、円錐角膜をどうするか、やはり、上位 を多少決めておく。それを全部組み合わせると大変な作業ですけれど、そういったこと を構想を持って、これは夢のような感じですけれど、何かとっかかりをつけるんだった ら、そういう考えもあるんじゃないかと思います。 木下座長  ありがとうございました。だいたい、みなさんのご意見が出たかと思うんですけれ ど、ひとつは、臓器の移植に関する法律の第12条の2項、ここに「業として行う臓器の あっせんに当たって当該臓器を使用した移植術を受ける者の選択を公平かつ適正に行わ ないおそれがあると認められる者」ということがあって、アイバンク自体がある程度、 移植術を受ける者を把握している必要があり、かつ、それに対して公平にする、と。実 際の運用面では、そこは多少違うかもしれませんけれど、そういったことがある程度… …たとえばレシピエントの選択を行うときの選択基準を明文化しておく必要があるかな いかとか、そういうところがあるかなあとも思うんです。先ほどのドナー適応基準のよ うな、きっちりとしたものでなくてもいいかと思いますし、各アイバンクにおいて、少 なくとも、レシピエントの登録を行うか、あるいは登録を随時把握している、そしてア イバンクはある明文化された選択基準に基づいてレシピエントの選択を行っている、そ のレシピエントの選択基準というのは、原則として、何らかの……待機期間が長い人、 あるいは、こういう場合はこう、というような……公正だとみなさんが認められるよう な基本原則が決まっている、と。もちろん、ローカルの各アイバンクによって、多少、 基準が異なっていても、それは当然だろうというような、基本的ガイドラインというの がいるのかなあ、というふうに思いますけれども、いかがでしょうか。 眞鍋委員  恐らく、今年の3月になると思いますが、眼球銀行協会は、厚生省のご指導もありま して、評議員というものをつくり、その評議員会で議題になると思いますが、各アイバ ンクにメディカルディレクターというものをつくっていただこうという計画があります 。やはり、事務の方が1人しかいないというようなアイバンクでは、とてもではないで すけれども、優先順位を決めたり適応を決めたりすることもほとんど不可能だろうと思 いますし、現在、アイバンクそのものが必ずと言ってもいいぐらい、誰か角膜移植に堪 能な先生のご相談を受けていると思いますので、私は去年だったか一昨年だったか、メ ディカルディレクターはもう、絶対に各アイバンクに必要だから、メディカルディレ クターの会をつくりましょう、というような文書を流してえらく怒られたことがあるん ですが……まだ、時期尚早ということで……今は撤回しておりまして、評議員会が決ま ってから、それをもう一度出そうというふうに計画しています。各アイバンクに、やは り、角膜移植に対してある程度理解ができる、メディカルなディレクターというのが絶 対に必要ではないかと思います。アメリカには、ちゃんとそれがおりまして、アメリカ がよく発展したのはそれによるのではないかと思うぐらい、そういうことが完璧に行わ れておりますので、ぜひ、日本でも実現していければと思います。 木下座長  非常に実際的で、かつ、アイバンクの強化という意味でも、メディカルディレクター が置かれて、そしてそこで公平性を保つようなことが、眼球のあっせんの選択基準を含 めてなされていくということで、これは眼球銀行協会のほうからの指導で現実に、これ から、51アイバンクに置かれますので、ちょうど、うまくコーディネートしていけるか なあ、というふうに思います。何らかの形で、先ほどのような……ただ、アイバンクは もう、単純に眼球を言われるがままにあっせんするんだというアイバンクが、かなり現 実に多くあるように思いますので、少なくとも、意識的に、「いや、そうではないん だ」と。アイバンク自身がある程度、リーダーシップを持って、公正に眼球を提供して いくんですよ、という概念が分かるような、ひとつの、ガイドラインとなるべく、文面 をつくっていけたらいいかなあというふうに思いますので、そのへんのことは、またこ れから、今日の議論を踏まえて、事務局なり、われわれのほうでつくらせていただけた らいいかなあと思うんですが、いかがでしょうか。基本的な考えとしては、臓器の移植 に関する法律との整合性ということと、意識的に、各ローカルのアイバンクが、その役 割ということを十分、公正というのは各アイバンクに課せられていることでもあるとい うことが十分理解できるように……ただ、それは各ローカルアイバンクをさほどしばる ものではない、と。その中で、新たにまた、その内容を吟味、把握して、独自な基準を つくっていただけたらいいかなあ、というようなものを今後また、検討して、つくらさ せていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。  それでは、今日の最後の議題ですが、角膜以外の眼球組織の利用について。これは従 来から、角膜移植以外に強膜を移植に利用するということが、実際、臨床利用されてい ますし、さらに将来的には網膜を移植に利用すると、現在、全然治らないという網膜色 素変性症とか、こういったものを治癒させ得る可能性があるということで、これを利用 したいという動きが出てきています。一方、旧角腎法の時代から、法律上は、眼球のう ち、移植に利用するのは角膜だけであるという、一般的な理解がありました。移植に用 いない眼球、すなわち角膜以外の……角膜の外側についている強膜とか、あるいは眼球 のうしろについている網膜とか、こういったところは焼却することになっています。2 月10日に開催された臓器移植の専門委員会で、この問題が取り上げられ、この作業部会 で検討したうえで、臓器移植専門委員会でも検討することになりました。まず、事務局 のほうから資料の説明をお願いします。 山本補佐  お手元の資料5でございます。最初に資料の最後のページ、3ページをご覧くださ い。ご専門の先生方はご存じかと思いますが、眼球の構造ということで、輪切りにした ところを書いてございます。今まで議論してきましたが、角膜はいちばん左側の、目の 前のほうにある部分です。今、強膜という言葉が出ましたが、絵の右下のほうに書いて あります、ぐるっとまわっている白目の部分がこれにあたります。網膜というのは、目 の輪切りの内側部分の膜です。眼球には、その他いろんな構造があります。お手元の資 料の1ページに戻りますが、今、木下先生からお話がありましたように、従来、眼球組 織の移植への利用は角膜移植に限られていますし、旧角腎法と言われる法律では、角膜 移植を目的とした眼球の摘出について法律上、規定されていました。臓器の移植に関す る法律ということになったときでも、全部、「眼球の利用」とか「眼球の摘出」という 言葉に変わりましたけれども、一応、角膜移植を想定したものでした。実際、今、角膜 移植が行われているわけですが、一方で、眼球のうち、強膜の移植への利用ということ も、既に臨床応用されていますし、網膜の移植についても将来的な利用の可能性が言わ れているところです。下のほうにありますが、角膜移植、強膜移植、網膜移植として、 主な適応症があります。角膜移植は、最初の実施例が昭和32年、強膜移植は現在でも、 かなり行われているんですが、最初に行われたのがいつかというのは事務局で調べきれ ませんでした。網膜移植については、わが国では実施事例はありません。諸外国では、 もう、移植事例が報告されています。移植件数ですけれど、これも、角膜移植は今まで 申し上げたとおりですが、強膜移植は、現在、何例、わが国に蓄積があるかということ を調べきれませんでした。網膜移植も件数はありません。保険の適用の状況ですが、角 膜移植はご存じのとおり、移植術の点数および角膜の、物としての特定保険医療材料と して、先ほど数値をご紹介しましたけれども90,000円のお金がついています。実は、強 膜の利用というのは、今まで想定されていなかったんですが、保険適用上は、強膜移植 術は既に11,900円という点数がついています。網膜移植については、まだ、適用されて いません。次の参考1のほうには、法令上の規定ということで、冒頭で申しました昭和3 3年の角膜移植についての法律、昭和54年に角腎と言われる法律になったもの、それか ら平成9年の臓器移植法。いずれも、移植術に使用されなかった部分の臓器については 焼却しなければならないという規定があります。この資料は臓器移植専門委員会に2月1 0日に出されたもので、この問題については、この作業班で専門的に議論したうえでと いうことで、こちらのほうに付託されたものです。以上です。 木下座長  ありがとうございました。強膜移植と網膜移植では、少し、現状は違うかと思います が、今の説明に対して、何かご質問等、ありますでしょうか。強膜のほうは、もう、実 際に保険点数がついていて、強膜移植がされています。恐らく、これはたとえば死体解 剖保存法というか、病理解剖のときにいただいた強膜を使えば、それでいいんだと思う んですが、現実にはそうではなくて、角膜移植に使った角膜の横についている強膜を、 そのまま保存して強膜移植にも使っているということであろうかと思います。このへん のところを整理する必要があるかと思います。もうひとつは、今まで全然、移植という ことで考えていなかった網膜あるいは網膜色素上皮細胞とか、こういったものを移植す るということが、アメリカやスウェーデン、インドなどで現実に人でされつつあります ので、そういう網膜移植をできるようにして欲しいという要望が、日本眼科学会のほう から出ているというところです。とくに強膜移植についてお詳しい眞鍋先生、いかがで しょうか。 眞鍋委員  実際、審議会の専門委員会でも、このことを事務局のほうから提案していただいて、 私自身も説明させていただいたんですが、強膜移植は確かに現実に保険の点数にも入っ ているわけですから、相当たくさん行われています。昔は恐らく病理解剖とか、そうい うところから得てやっていたものに保険の点数がついたんだろうと思います。強膜の病 気としては、いちばん多いのはリウマチによって強膜が溶けてしまうという、非常に難 儀な病気があって、それがいちばん多いんですが、それに対して強膜移植がいいという ことで使われていただけではなく、たとえば瞼板ケンバンをつくるのに強膜が非常に役 に立っていました。強膜を軟骨の代わりに使うとか、あるいは眼瞼下垂で、昔はここの 広筋膜をよく移植していたんですが、その代用としても使えるというようなことで、相 当、たくさん、強膜移植というのが、強膜のところ以外にも使われていた事実がありま す。しかし、それが角膜移植に関する法律ができてから、よくよく法律を読んでみる と、角膜移植のために眼球は提供されているのであって、角膜移植以外に使ってはなら ないという……。それ以外に使った場合は罰金に処するなどと書いてありますので、結 局、表には出なくなってしまったということがあります。仕方がないものですから、今 度は、脳硬膜移植といって、硬膜がドイツなどで商業的に売られていましたので、それ を輸入して、強膜に対して硬膜を移植するということが……同じような組織ですので… …だいぶん行われていまして、そういう文献も出ています。しかし、最近、硬膜にはク ロイツフェルド・ヤコブ病があるということが問題になりまして、それでまた禁止さ れ、今のところ、リウマチによって溶けてくる患者さんは救いようがないということ で、かなり学会のほうで、これはぜひ、なんとかして欲しいという要求が出ているとい う状態です。私自身は、患者さんを救うためであれば、コンセンサスというかイン フォームドコンセントを与えて、あるいは承諾書を前もって取っておけば、可能ではな いかと今現在は思っているわけですが、そのあたり、厚生省のご見解もお聞かせ願っ て、ぜひ、これを実現していきたいと思っております。 木下座長  ありがとうございました。実際には、臓器の移植に関する法律では、「角膜」を読み 変えて「眼球」となっています。ただ、これは国会答弁のときには、厚生省の局長は、 読み変えているだけで、これはあくまで角膜として使用するという理解であるというよ うな答弁になっています。それが現実ですけれど、「眼球」となっていますから、もう ひと押しふた押しして、ここでコンセンサスが得られれば、眼球の中の他の組織も、網 膜に限らず、使っていける可能性もあると思います。将来的なことを考えれば、なんと かこういうものは通していけたらいいなあと、個人的には思っていますけれど、鎌田先 生、いかがでしょうか。 鎌田委員  法律の解釈は大変難しいし、立法者というか起草者意思がどれほど、その後の法律の 解釈を拘束するかというのも大変難しい問題です。実際上、局長答弁から、数年以内に 厚生省自身が解釈を変えるのは、なかなか難しいんだろうとは思うんですが、やはり、 その当時、角膜移植が念頭に置かれていたというのは間違いないと思うんですが、それ は角膜移植が一般的な移植の対象であったというのが前提で、それ以外のものを積極的 に排除するつもりだったかというと、多分、そこまで強い意思はなかったんだろうと思 います。それから、こういう、目的外使用の禁止とか焼却しなければいけないというの は、なぜ、そういう規制がかかっているのかというのが、実質的に解釈を決めていくん だと思うんです。正確に臓器移植法その他の立法経過をフォローしていませんので推測 ですけれど、常識的に考えれば、それはやはり提供者の生前の意思や、ご遺族の意思か らはずれたところで、そういうものが扱われるということは好ましくないし、それから 遺体に対する礼を失してはいけないという規定もあったと思うんですが、そういう観点 から、ある種倫理的な側面も含めて禁止しなければいけないという趣旨だろうと思うん です。それに照らして考えれば、提供者は、角膜だけを使ってくれという意思を……厳 格に、それ以外は使って欲しくないというふうに思っているかというと、それは文字ど おり眼球の提供であって、患者さんを救うために角膜は移植されるし、それ以外の部分 も移植されるということは、多分、提供者の意思にも遺族の意思にも反しないし、また 倫理的な観点なり、あるいは遺体に対する尊敬の念から言っても、こういうものはまっ たく、法律が目的外使用を禁止した趣旨には反しない。むしろ、積極的に提供者の意思 を生かす方向だというふうに理解できますので、解釈論的には、無理だという結論には ならないんじゃないかと思います。 佐野委員  死体の尊厳とか、そういうことはあると思いますけれど、この角膜移植の法律ができ た当時、私はまだ役員の端くれで、登録者を多くするために、要するに死体提供者…… 東大なんかでは白菊会とかがありますから、そういうところへ行って、いろいろたのみ 込んだところ、どうにか、片方の目だけは結構だということなんですね。これは死体の 尊厳ではなくて、やはり、日本人の宗教的な問題がかなり……儒教的というか、そうい うものが根強いから、国がどういうふうに考えたか……あまりそういうことを、やたら と取ってしまうといけないという観念からだと思うんですね。ですから、そういった日 本の国民性から考えないといけないんですが、だんだん、そういう概念は少なくなって きているから、大いに利用していただきたいと思っています。 小口委員  昭和54年のこの法律が、63号ですか、これが角膜移植術に使用されるための眼球を死 体から摘出することができる、と。角膜移植術に使用しなかった部分の眼球は焼却しな ければいけない、と。これが非常に日本において、いろいろな意味で学問の発展にマイ ナスになっていた。実は私が日本眼科学会の雑誌の編集委員をやっていた頃、やはり網 膜の研究がすごくさかんにされていたわけですけれども、日本では眼球銀行で使用した 眼球の網膜は実験に使えない。そこで日本人はみんな、アメリカへ行って研究をして、 それを日本の雑誌に発表するという、非常に困ったことが起こっていたわけです。この 法律が引っかかっていて何もできなかったということで、将来は、網膜移植というもの も、実際によその国では行われているわけですし、日本でも網膜色素変性症の患者さん が非常に熱望しています。こういった研究をするためには、やはり角膜だけではなく て、強膜も含めて、網膜の移植の前に、まず、提供された眼球の網膜あるいは網膜の色 素上皮とか、そういった組織を使った、いろいろな研究がなされなければいけないんじ ゃないかと思います。目的外の使用ということもありますが、そういったものも広く含 めて考えていただきたいと思っています。 山本補佐  多分、十分に分かってご発言いただいたかと思いますけれども、臓器移植法の議論の 中で、角膜以外の組織の移植という利用については、ちょっと幅があるんですが、移植 ではなく研究に使うとかという話は、他の臓器も含めて、この移植法の議論の中で厳し く……。想定されていないので、それを超えてのご発言だったかなあと思いますけれ ど。 小口委員  はい。あえて、そういう意味で申し上げました。 木下座長  ありがとうございます。この、臓器の移植に関する法律のしばりの中では、今のこと は、なかなか、なり得ないことなんですが、もう少し幅広く、将来的に考えていったと きに、アメリカなどでは現実にそのことは許されていますので、法律の解釈ではなく、 もう少し大きな次元で、そういうふうに日本もなっていって欲しい。それが結局、科 学、医学の発展につながり、ひいては国民の医療のレベルが向上するということになる かと思います。横瀬委員、いかがでしょうか。 横瀬委員  今、海外では、網膜の移植というのは現実に行われているわけですよね。 木下座長  アメリカやスウェーデンなどで行われています。ただ、数は少ないです。 横瀬委員  数が少ないということは、それだけの必要性がないということなんですか。 木下座長  いえ、まだ、かなり臨床、研究的な……。 横瀬委員  ただ、今、糖尿その他で網膜が剥離するということがある。それがもし、移植で救済 されるような状況であれば、われわれの委員会でも、そういったものを積極的にお願い して、少なくとも、最初は研究の段階であるのかもしれませんが、その次の段階として は、やはり、移植をターゲットしてお願いしてみる必要があるんじゃないかと思いま す。 木下座長  では、少し現状を……。 小口委員  はい。実は私、網膜色素変性症のことをやっていまして、東北大学でかなりさかん に、網膜の移植に関する研究が行われています。網膜を移植できないものですから、結 局、東北大学では何をやっているかというと、網膜ではなくて、虹彩の色素上皮を取っ て、それを培養して、培養した色素上皮を移植するというような研究がされています。 これは網膜色素変性症ではなくて、黄斑変性症という、黄斑の病気ですけれど、そうい ったことが実際に患者さんで行われ始めています。できればこういったものも、日本で は、将来、アメリカとかインド、スウェーデンとかで行われているようですので、こう いった……まだまだ、本当に安全なものかどうかは分かりませんが、将来的には行われ るようになるのではないかと思います。 横瀬委員  それからもうひとつ、さっき眞鍋先生が、メディカルディレクターの制度を3月ぐら いからやりたいとおっしゃっていましたが、これはテクニカルディレクターとは全然違 うものですか。 眞鍋委員  そうですね。メディカルに関するディレクターですので、テクニカルな人の指導にも あたるし、コーディネーターの指導もできるという、そういう意味でのメディカルディ レクターです。 横瀬委員  それは必ずしも医者でなくてもいいんですか。 眞鍋委員  メディカルですから、医者のほうが望ましいでしょうけれど、そういうことが全般的 に分かるような人であれば、医師免許証を持っているかどうかということは関係ないと 思います。 木下座長  八木委員、いかがでしょうか。 八木委員  すみません、ついていけなくてというか……。全然、違っているかもしれませんが、 眼球をくださる方というのは、本当に、使える部分はいろんな意味で使って欲しいと思 われていると思いますので、強膜にしても網膜にしても、使っていける方向でいけたら いいと思います。あと、移植をするドクターを増やすために、ウェットラボなんかを行 うときに、今、豚眼を使ってやっているんですが、やっぱり、豚眼と人眼の違いという か、そういうことも、すごくあるものですから、リサーチ用にも将来的に、せっかくく ださった眼球を、移植に使えなかったら焼却するというのも、何か、もったいないとい うか、くださった方のためにも何らかの意味で、それが生かせたらと……。移植に使え ないものは全部燃やしてしまうというのは、かえって提供者の意思を無視しているよう な気もしますから、リサーチ用にも使えたらいいなあと思います。 木下座長  ありがとうございます。感覚的には、そういう感覚がすごくあるんですね。なかなか 法律で規定されているので難しいですけれど。丸木委員、いかがでしょうか。 丸木委員  みなさんの意見に賛成します。これはやはり、進めたほうがいいと思います。 木下座長  それでは、この件については、基本的には委員の先生方、できるだけ強膜あるいは網 膜移植がこの中に入れられるような方向へ向けたいということですけれど、実際の実態 とか有効性とか将来性といったことについて、まだまだ、われわれは、ここで全般的な 議論をしているだけですので、実態を把握しておりませんので、できれば次回のこの作 業班のときにでも、専門家においでいただくなり、あるいは資料を提出していただくな り、そういうことで、もう少し詳しくご説明いただいたうえで、さらに委員のみなさま にご検討いただくということにするのが、いちばん納得できる方法ではないかなあと思 いますけれども、事務局のほうは、そういう方向でもよろしいですか。 事務局  はい。 眞鍋委員  これは法律のほうのお話で、そういうことが可能かどうかは知りませんけれども、今 現在、組織移植というのが進みつつあります。組織移植というのは、あまり臓器移植法 では規定されていないということで、それもいろいろやっているんですが、その中で、 やはり、一般国民の理解を得るためには、ぜひ、組織といえども、提供者の同意を完全 に得なければならないということが言われていますので、たとえば眼球の場合も、角膜 以外の組織を使ってもよろしいという同意書をちゃんと生前からいただいていれば、法 律的には、こういう法律があるにもかかわらず組織として使えるのかどうかということ を、ちょっと教えていただきたいんですが。 木下座長  そうですね。鎌田先生、お願いします。 鎌田委員  むしろ厚生省のほうから、ちゃんとお答えをいただいたほうがいいと思うんですけれ ど……ひとつは、もちろん、組織は、ちゃんと同意をいただいていればいいと思います し、逆にこちらのアイバンク事業でやる場合も、今まで、角膜を前提にしていた同意書 ならば、同意書の内容は変えなければいけないと思います。それともうひとつ、多分、 考えなければいけないのは、個別的に同意をいただいて、要するに、個別的な移植術を 施すということと、バンクに行って、そこから先にずっと……言ってみれば不特定多数 の人に流れていく、組織的な事業に乗せるのはどうかというのは、やはり分けて考えな いといけないだろう、と。私が死んだら私の息子に何かをあげてくれ、というのは、こ れはもう、同意さえあれば、かなり幅広くやっても許されるんだろうけれども、バンク 事業ということの特殊性との絡みがやはり……。 眞鍋委員  あっせんできるかどうかという……。 鎌田委員  ええ、あっせん業的なものとの絡みで、こういう移植法の規制がかかっているという 側面もあるんだろうと思います。 木下座長  ありがとうございました。かなり、今日も、いろいろな議論がなされたと思います。 先ほどの件については、しかるべき専門家ということですけれども、そのへんはこちら で検討させていただき、次回の本作業班に、できればご参加いただくようにしたいと思 います。 金井委員  その他に、今、眼球のことなんですが、羊膜もやはり、角膜へ移植しますよね。羊膜 のことは組織のほうなので、ちょっと離れるかもしれませんが、できれば一緒に、含め てやっていただいたほうが、眼科医にとっても、より有効なのではないかと思いますけ れど。 木下座長  はい。ありがとうございました。羊膜という、実際には、これは帝王切開のときにい ただく、胎児を包んでいる膜および胎盤の上を覆っている膜ですが、これを目に移植す る方法がいいのではないかということで、最近、徐々にされてきています。基本的に廃 棄物という考え方ですので、まあいいじゃないか、ということもありますし、われわれ のところですと、大学の倫理委員会で許可をいただいて、そこで決められた範囲内でや っていますが、もう少し一般的なしばりを持って、その中でやれるようにすればいいの かなあと思います。鎌田委員、そのあたり、いかがでしょうか。 鎌田委員  いえ、ちょっと、まだ……。 木下座長  はい。では、また次回ということで、そのへんのことも含めて検討できればと思いま す。 小口委員  最後に、厚生省の方にお伺いしたいんですが、厚生省のほうで、リサーチリソースバ ンク事業というのがあるというふうに聞いたんですが、これは生体の手術のときに取っ てくるという考え方ですか。それと羊膜なんかとの関係はどうなんでしょうか。 山本補佐  今日はちょっと、手元に資料がありませんので、次回、担当の課のほうから資料をい ただいて提出させていただきたいと思います。先生が今、ご指摘いただいたように、基 本は組織の利用を研究開発、もしくは創薬……薬の開発にも使っていけるシステムで す。わが国では、ほとんど外国に依存している状況ですので、考えるべきだということ で、医療研の研究開発を所管している課のほうが、今回、立ち上げたプロジェクトで、 基本的には医療機関、大学等にバンクというか、リソーシスに強力してくださるところ に保存する施設をつくり、そこで手術等……「等」となっていまして、その「等」の範 囲がいろいろ議論があるんですが……手術で取ってきた組織等を保存し、それをきちっ としたルールに基づいて、研究開発に使うという考え方です。それと組織との関係とい うことですが、非常にホットなところなんですが、次回までに、そちらのほうから資料 をいただいて、もう一度、こちらから提出させていただきたいと存じます。 木下座長  他にどなたか、ありませんでしょうか。ないようでしたら、一応、定刻を10分ほど過 ぎましたので、本日の議題につきましては、これで終わらせていただきます。あと、次 回の日程について調整をしていただいたと思うんですが、決まりましたでしょうか。 事務局  先程来、日程を調整させていただいたんですが、なかなか先生方、お忙しいようで、 全員出席されるような日にちは取れませんでした。事務局で善後を考えまして、3月15 日が8名ほど出席できるような回答がありましたので、できれば3月15日、午後14時〜 16時を予定させていただきたいと思うんですが。 木下座長  何曜日ですか。 事務局  月曜日です。大変申し訳ありませんけれども……。 木下座長  よろしいでしょうか。3月15日、月曜日、午後14時〜16時ということですが。 事務局  よろしければ、私どものほうで会場をこれから探して、先生方の最終的な出欠と場所 をファクス等でお知らせたしいと思います。 木下座長  よろしいでしょうか。鎌田先生、丸木さん、出席いただけますか。ぜひ……。これで もう、決定でいいですか。それでは、余程のことがない限り、3月15日、月曜日、 14時〜16時ということで、次回のこの作業部会、第3会を開催させていただきます。こ れで本日の作業班を終わらせていただきます。本当にどうもありがとうございました。 問い合わせ先  厚生省保健医療局エイズ疾病対策課臓器移植対策室    担 当  山本(内2361)、眞鍋(内2364)    電 話 (代)03−3503−1711