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医療保険福祉審議会 老人保健福祉部会・介護給付費部会
第6回合同部会議事要旨


1 日時及び場所

平成11年2月15日(月) 15時00分から17時25分
厚生省 特別第1会議室

2 出席委員

星野、井形、青柳、石井、加藤、京極、見坊、下村、多田羅、田中、中西、中村、野中、橋本、樋口、堀江、水野、見藤、村上(忠)、山口の各委員、鶴見、池野、蒲生の各参考人

3 議題

(1)訪問リハビリテーションの運営に関する基準等について
(2)訪問看護の基準該当サービスに関する要望等について
(3)省令・告示諮問予定事項について
(4)その他


○ 資料032、033に沿って、訪問リハビリテーションの運営に関する基準等について及び訪問看護の基準該当サービスに関する要望等について、介護保険制度施行準備室神田次長より説明。

(見藤委員)

 訪問看護の基準該当サービスに関する要望が、都道府県アンケートではなかったというが、現在、訪問看護ステーションの未設置市町村が68%もあり、看護職の中での調査では、訪問看護ステーションで働きたいという人が34.4%もいる。また、1人で基準該当サービスを行うことを認めてもらえれるならば、やってみたいという意見が非常にたくさん寄せられている。医療機関であれば法人格がなくとも指定を受けられるということだけでは、訪問看護は広がらない。
 独占業務の専門職が行っているため人員要件の緩和を考えにくい、という理由も理解できない。人命に直結するおそれがあるという理由も、法人格があり基準を満たしている場合でも、医師の指示書で、市町村が認めれば1人で訪問することがあるので、国家資格保有者若しくは看護協会や都道府県の研修修了者に限定すれば、質の担保も可能ではないか。

(中村委員)

 今、インフルエンザが流行っているが、特養施設では、個室化が進んでいないというハード面で問題がでている。基準面積を超えて1人部屋や2人部屋をつくると、相対的に補助金が少なくなり自己負担となる。その結果、4人部屋が多くなっている。
 訪問リハビリテーションは、病院と診療所のみが対象となっているが、理学療法士等の配置基準を満たしている場合は、老健や特養も対象とすべきでないか。
 老人保健法による訪問看護の制度も残るが、介護保険適用部分と重なることがあった場合、厚生省令では、それをどのように整理するのか。
 訪問介護では、サービスの質の確保のためにも、責任者は、常勤、専従とされたい。

(神田次長)

 訪問看護については、介護保険法が優先的に適用されて、介護保険法上の給付が行われる場合には、老人保健法からは給付しない、という給付調整の規定が老人保健法に設けられることになっている。
 老人保健法から訪問看護が行われることが原則となるのは、要介護認定を受けていない場合などや急性増悪時や神経難病など急性期医療の場合としてはどうか、ということが介護給付費部会で議論されている。

(青柳委員)

 訪問看護の人員基準の議論をしたときには、見藤委員は、2.5人でも足りないと発言されていたと思う。
 60%以上の市町村でステーションが設置されていないとしても、医療機関からの訪問看護もあり、その数との比較を行う必要がある。
 地域によっては規制が残っていてステーションの設置が進まないことがあったが、昨年12月には、サテライトに係る地域の規制がなくなったと思う。今どのくらいサテライトがあり、今後の見通しとして、どのくらい増えていくのか。
 訪問看護は1人でいい、という議論をすると、訪問介護も同じでよいか、という議論をしなければならないことになるのではないか。

(村上(忠)委員)

 訪問看護の指定は、なぜ、老人保健法では法定受託事務として都道府県が行い、介護保険法では市町村が行うのか。

(西山課長)

 平成8年の9月現在、病院数としては3,416カ所で、約30%の病院が訪問看護を行っており、診療所についても、11,058カ所で、約10%が訪問看護を行っている。
 昨年12月の規制緩和以降3カ所のサテライト事業所が認められており、全部で56カ所が過疎地域のサテライトとして承認をされている。電話等ではかなりの数の照会があるので、今後も認めていきたいと考えている。

(神田次長)

 訪問看護の指定は、老人保健法でも、介護保険法でも、基本的には都道府県が行うという整理になっている。基準該当サービスは、個別に地域の実情に応じたサービスが提供できるように、市町村長が必要と認めた場合に、特例的に給付を行うことができる、という介護保険法上の規定に基づくものであり、例外的な取り扱いになっている。

(村上(忠)委員)

 自治事務と法定受託事務とに分けず、両方の訪問看護の指定を自治事務にしてはどうかということを聞いている。

(西山課長)

 地方分権の委員会での議論を踏まえてのご発言と思われるが、老人保健制度は、厚生大臣の直接事務である健康保険法の指定を受けた事業所が実施する制度となるため、訪問看護の指導監督は法定受託事務に整理したらどうか、ということが先週地方分権推進委員会において了解を得られたと聞いている。

(村上(忠)委員)

 了解ではなく、説明があったというだけである。老健法における訪問看護の指定事務は、今は、自治事務ではないのか。

(神田次長)

 訪問看護ステーションの指定や保険医療機関の指定は、国から都道府県への機関委任事務となっている。

(見藤委員)

 人員基準について2.5人では少ないと言ったのは、24時間のケアをやるためには、もっと人数が要るという意味である。
 現実には、看護婦からも市町村からも1人なら可能であり、実施したいという指摘があるので、考えを変えたわけである。
 サテライトは、主たる事業所が必要であり、非常に人口が少ない市町村などでは、連合、連携をしなければならない。サテライトでステーション数が少ない問題が解決されるわけではない。

(橋本委員)

 病院、診療所で行っている訪問看護は、老人保健法によるものか、それとも、診療報酬によるものなのか。
 介護保険をスタートさせて、できるだけ在宅ケアを推進するには、必要なサービスは、きちんと整備しなければならない。訪問看護も一定の量を満たす必要があるという前提で議論をすべきである。現在の見通しはどうなっているのか。

(西山課長)

 病院、診療所による訪問看護は診療報酬で、訪問看護ステーションは療養で対応している。
 新ゴールドプランで5千カ所を目標とし、現在は3千百数カ所が設置され、11年度末には予算措置で4,100カ所程度を見込んでいる。900カ所足りない部分は、いろいろな方法を考え、目標の達成に向け、さらに努力をしてまいりたい。

(多田羅委員)

 訪問看護の基準該当サービス設定の要望は、非常に重要である。地域において開業看護婦が活躍する基盤となる展望がある。ただ、人命に直結するという質の問題があるので、老人保健施設のように協力病院を基盤にした事業としてはどうか。

(京極委員)

 基本的には、看護協会の主張を問題提起と受けとめて検討すべきかもしれないが、要介護認定の範囲で使う場合には、若干単価を下げる必要がある。利用者側にとっては、訪問看護だけで訪問介護の時間がなくなってしまっては困るであろう。
 基準該当については柔軟に見直すとしても、単価抜きにサービスを無制限に広げるというわけにはいかないのではないか。

(見坊委員)

 認めない方向で議論するのか、基準該当を柔軟に運営させる方向で議論をするのかでは大きな違いがある。
 最近の医療機器の普及により、医療機器なしには在宅介護はできないケースが非常に多くなっているので、医師の指示のもとに看護婦さんができるだけ地域で活躍し、高齢者の在宅介護のニーズに応えられるようにしていただきたい。
 実際に地域に潜在している看護婦さんが、意欲をもって参加していただけるように道を開くのは当然ではないか。
(野中委員)
 サービスを受けるまでの手続きで、要介護認定の申請から審査、通知までは、被保険者と市町村間のやりとりが行われているが、それ以後は、すべて居宅介護支援事業者と被保険者の間の手続きとなっている。居宅介護支援事業者等から国保連合会や被保険者へ送付される給付管理票の写しは、市町村に必ず送付をさせる義務づけをしていただきたい。請求書と居宅介護支援事業者が指示をした内容とが的確であるかないかは、市町村がチェックすべきものである。
 訪問看護の基準該当をどうするかという提起があったが、保険者としては、在宅介護でどう対応していくかが一番重要な課題であって、訪問看護はその次に必要性が出てくる問題である。訪問看護の基準を1人にするとしても、被保険者側の立場を擁護する観点から、保険者と事前協議により保険者が認定できるようにしていただきたい。

(神田次長)

 現在の考え方としては、各ケアプランとの照合については、ケアプラン作成機関から上げていただいた資料と、各事業者から出てきた請求書を、国民健康保険団体連合会において突合することにしている。審査支払の委託元である市町村において事後的にチェックをすることは当然可能ではあるが、被保険者ごとに名寄せをして突合するというのは膨大な事務作業になる。

(野中委員)

 国民健康保険よりも件数が少ないので、ケアマネジャーの計画書の写しは、保険者にも送付され、保険者自らも請求書との照合をやる必要がある。

(樋口委員)

 訪問看護の基準該当サービスは、介護保険が在宅中心を謳っているからには、是非入れていただきたいと思っている。
 ただし、医師の指示、医療機関との連携は当然のこととして、だれでもいいということではなく、何らかの資格や研修は必要であろう。ヨーロッパなどでは、病院にいるナース以上に、地域で活躍するナースは経験を持った人たちである。
 医療的なサービスをする時には、看護婦とホームヘルパーのチームというような形で1人という問題をクリアすることもひとつの方法ではないだろうか。

(下村委員)

 委託者である市町村が要求すれば、受託機関である国保連から何時でも資料請求できるということで間違いないか、確認したい。
 訪問看護、訪問リハビリの医療機関のみなし指定では、個人開業でも届出を出して診療所となっているものも無条件でその対象となるのか。
 訪問看護の基準該当については、医療機関や訪問看護ステーションとの雇用関係まではなくとも、何らかの協力関係とかネットワークが前提になるのではないか。

(神田次長)

 委託者からの資料請求については、現在の医療保険でも、問題があれば資料の請求をしているので、委託契約によってできるのではないかと思う。
 医療機関の訪問看護、訪問リハビリについては、介護保険法上、現在の個人病院、個人診療所でも指定できることとしている。医療保険で、個人病院、個人診療所としてできていたものが、介護保険に移行することによってできなくなってしまうということのないように、例外的に規定されている。

(下村委員)

 病院と診療所を一緒にされては困る。病院は開設許可がいるが、診療所は届出だけでいいのに、それも全部無条件で介護保険では受け入れることになるのか。

(神田次長)

 許可か届出かというのは、医療法上の規制の問題だが、従来、個人開業の病院や診療所は、個人開業であっても、訪問看護や訪問リハビリは、看護婦、理学療法士、作業療法士を雇用していればできていたわけであり、介護保険でも、それに配慮することとされている。

(下村委員)

 個人の診療所には、いろいろなものがあっても無条件に受け入れられるとすると、個人の訪問看護を認めないこととのバランスが少し変ではないか。

(神田次長)

 訪問看護の指定基準の時にも議論をしていただいたと思うが、基本的には、現在も、訪問看護に従事する看護婦さんがいれば、個人立の診療所であっても訪問看護はできるということを前提にして、訪問看護に従事する看護婦さんがいれば指定は受けられるという整理をしている。

(堀江委員)

 サービスを受けるまでの手続きについて、保険者として、ペーパーワークの過程でどう関与するかという質問に対して、事後に内容を確認するのは差し支えないが、事前の一切の保険者経由はいらないという説明があった。
 しかし、医療保険のレセプトについての、保険者段階での審査も、医療費の適正化上、相当有効に働いている。
 居宅介護支援事業者が、国保連合会に給付管理票を直接提出すればいいということではなく、保険者にケアプラン原案を提出した後に、給付管理票についても事前にきちんと保険者に提出することを前提として、保険者が国保連合会に給付管理を委託をするという論理を明確にしていただきたい。
 国保連合会の立場としても、ただ単に事務的に数値管理をするだけでいいのかどうかということもあり、給付管理票に関連をした保険者と国保連の管理機能の役割をきちんとしていただきたい。

(山口委員)

 提案の訪問看護の基準該当サービスは、従来の訪問看護ステーションのサテライト方式とは異なり完全な独立型になるので、無条件に認めるのではなく、質の担保というのをどうするのかを今後検討していく必要がある。

(石井委員)

 前回も述べたが、全体的な連携システムが明確になっていない。医師から看護婦、ヘルパー、そして利用者へというルートは確立しているが、逆からのルートが確立していいない。
 訪問看護については、特に離島等では一番強化が必要であろうと思っている。在宅介護支援センターは、看護婦が必置になっているので、その人たちをどのように活用できるかという問題もある。
 同時に、ヘルパーの評価があまり高くないので、介護福祉士という国家資格を持っている人たちについては、今後、業務独占も考える必要がある。
(神田次長)
 事前の届出としては、現物給付で、審査支払を国保連に委託する場合であっても、どこのケアプラン作成機関にケアプランを作成依頼するかということは、事前に市町村に届け出ていただく、ということになっている。現在の案でも、必要があれば、ケアプランについて内容を聞く等の連携を図り、最低限のチェックができる。
 委託者のほうで最終的にさまざまなチェックができるのかということに関しては、審査支払機関から最終的に送られてくる資料などについて行うことは当然できるのではないか、という旨を申し上げたわけである。

(野中委員)

 ケアプランの写しは当然保険者に送られ、国保連に出される請求書の写しを当然保険者に送ってくることとし、計画が適正であるか否か、当初の計画と最後の請求とか適切であるか否かをチェックするのが、我々保険者の責務ではないか。
 法律的には、国保連には委託することができるということであり、しないこともあり得るのであり、保険者の責務も果たせることを前提として、はじめて国保連合会に委託するのであって、我々の権利のすべてを国保連にお任せするわけではない。

(下村委員)

 施設のサービスの場合は、そこで行われるサービスはある程度、人目があるので一定の保証があるものの、在宅サービスで特に一人住まいの方の場合には、そこで規定どおりサービスがきちんと提供されたかどうかは、なかなか保証できない。そこで、何らかの担保のために、ペーパーワークへ保険者が関与するというのであれば、大変結構なことである。

(多田羅委員)

 特定の者にサービス提供を依頼した場合は差額の支払いを受けることができる、という問題だが、ある看護婦さんに来てもらいたい、あるヘルパーさんに来てもらいたいということは、現実的にあるわけなので、それが特定の者を希望したことになるとすれば、それは世の中の一般的な慣行には反することになると思う。特定というものは、どういうイメージないしは定義で特定といえるのか。

(橋本委員)

 信頼ができ、いいサービスをしてくれる人からサービスを受けたいと思うのは当然のことであって、その時には高い費用を支払うというのはおかしい。
 サービスを受ける手続きに関する資料の中で、「居宅サービス計画に対する利用者の同意」、とあるが、この段階では、介護支援専門員がつくった原案について様々な専門職が合議を行い、利用者に同意させるというふうに読めてしまう。居宅サービス計画に対する関係者の参加と同意、とでも言葉を補ってもらいたい。

(樋口委員)

 関連して、同意できなかったらどうなるのか、ということを是非伺いたい。インフォームド・コンセントということが医療の分野で言われているが、ここにおける同意と全く同じなのかどうなのか、説明していただきたい。

(村上(忠)委員)

 前々から気になっていたが、説明は文書でとしか書いていない。目の不自由な方のためにも、人にやさしいということを忘れないで、文章をつくっていただきたい。

(見藤委員)

 インフォームド・コンセントは、最初に、ベスイスラエル病院が20数年前に出したペイシェントライトだと思う。徹底的に情報の格差をなくすということがまずあって、情報の格差をなくすだけの情報を患者が得なければならないという考えである。そのへんが全く日本とは考え方が違う。カルテの開示につながると思うが、情報の格差がないことを前提とし、それに向けた努力義務があり、当然ノーを言う権利がある、となっている。

(見坊委員)

 指名料の問題については、12月21日付の両部会長宛の文書による意見書の中で、はっきりと反対の意見を述べている。議論がなかったということで実際にはみんなが了承したかのごとく聞こえたが、私の反対意見をお取り上げいただくのが妥当ではないか。
 老人福祉施設における個室の差額の徴収なども、これは現在やってないので、将来はそれが常識になるとしても、論議の種になるようなことはできるだけ消していただきたい。
 いま要介護認定で不安だらけになっている状況である。10月には要介護認定の申請を受け付ける。その前に、介護支援事業者等の指定をし、介護保険料の告知もしなくてはならない。介護保険制度を本当に軌道に乗せたいならば、いろいろ議論のあるようなことは、事務局は先送りにしてほしい。

(中村委員)

 福祉部分の発言は、結構取り上げていただいていない。医療保険と介護保険の線引きの問題は、まだ不透明のままでずっと推移している。訪問看護と訪問リハビリについても、老人医療であれば月2千円ぐらいの負担が、介護保険では1割負担が発生し、利用料に大きな差が出てくる。利用者側の視点での選択は構わないが、施設側の作為によって医療保険対応となりうるような制度はするべきではない。やはりきれいに線を引いておいていただきたい。
 療養型病床群の介護保険対応と医療保険対応の指定もはっきりしていない。介護報酬と医療費の設定の多少を見るとの模様眺めをしていているからである。介護療養型医療施設の指定が先にあって、それに基づいて県の支援計画策定がなされなければならないのに、今や逆転現象が起こっている。介護保険料にも跳ね返ることでもあり、指定の考え方をはっきりしていただきたい。

(星野部会長)

 他の審議もあることから、本件につてはこの程度に留めたい。委員から発言があった意見、表現上の工夫について、事務局に検討していただきたい。
 なお、訪問看護の基準該当サービスに関する要望等についての取り扱いについても、事務局でさらにご検討いただきたい。


○ 資料035に沿って、省令・告示諮問予定事項一覧について、介護保険制度施行準備室高井室長より説明。

(下村委員)

 説明のあった事項の中で、医療保険に関連することについては、医療保険側の審議会との関係もある。検討してみるが、状況によっては留保していただきたい。

(野中委員)

 利用者負担の減免については、市町村が条例により1割負担分を減免することができるとなっているが、その場合の財政負担は国や都道府県が一定負担をすることにしていただきたい。
 次に、財政安定化基金の拠出金については、1000分の5はどうして出てきたのか。また、市町村が3分の1を負担することになっているが、国と都道府県で2分の1ずつ負担していただきたい。

(高井室長)

 利用者負担の減免の財源は特別調整交付金の対象となり得る場合がある。
 それから、1000分5は、給付費増や保険料の収納率の低下の場合に補填することから、それから算定したものである。その負担割合については、政令の答申の際にもご意見があったが、今の制度の枠組みの中で計算している。

(村上(忠)委員)

 各委員が出した意見書は、次の委員会で必ず出してほしい。

(高井室長)

 部会のテーマごとに合わせて提出しているが、提出していないものについては次回用意する。

(星野部会長)

 青柳委員より前回要望のあった、日本医師会、日医総研が独自に行った要介護認定の一次判定ソフトについての分析結果等について、説明をいただきたい。

(青柳委員)

 日本医師会は要介護認定の一次判定ソフトのロジックについて、公開するように要請を行ってきたが、いまだ公開されていない。このままだと我々委員は、内容がわからないままに判断を下すことになってしまう。
 今回の平成10年度モデル事業の報告をみると、二次判定における変更率が12.5%で、変更率が5%未満の地域数数が47.2%もある。これは、最終判定に至る過程で、審査会が義務を放棄したことの裏付けである。
 一方、審査会の委員になった医師のからは、問題となったケースを送ってもらったが、どうしてそういう結果になったかわからなかった。
 そこで、その2つの点を踏まえて、日本医師会としては一次判定ソフトのロジックを分析しようということになり、京極委員の入った検討委員会の中の作業委員会の委員長である土井先生の協力をいただいて、日本医師会・日医総研と共同研究したのである。
 平成10年度の一次判定のロジックは、直接生活介助、間接生活介助、機能訓練、それから問題行動、医療関連行為と、それぞれの分野ごとに樹形図をつくったという説明が厚生省からあった。日本医師会はそのうちの、直接生活介助に関する樹形図を3,403例のケアスタディを行った個々のケースをデータベースにして、推定しながらつくった。これが100%厚生省のモデルと同じかという確認をしていないが、我々の論理構成とデータは信用できることを確認した上で、直接生活介助に関する樹形図をつくったのである。
 樹形図の中に直接生活介助40.6分とあるが、ここからスタートして、下のほうに分岐していき、最終的にはすべて配分され、そこに書いてあるケア時間が直接生活介助に関するケア時間となり、他の間接生活介助等の分野のケア時間をそれぞれ足し合わせてトータルのケア時間として組み立てている。
 この流れを前提とすると、いくつか問題点がわかってきた。直接生活介助40.6分というスタート時点から「排便後の後始末」という項目で、2つのグループに分けているが、なぜ排便後の後始末という項目が第1分岐点になったかという疑問が生じる。排便後の後始末という調査項目が、自立とそれ以外に分けると、例えば、自立を300、それ以外を400とすると、二つの山ができる。それが一番遠くに離れていっている項目を第1順位にしたということが考えられる。
 「排便後の後始末」自立の方は、この時点で14.9分で、さらに、この中で「浴槽の出入り」という項目があり、ここで自立に分けられてしまった人は7.4分というケア時間を割り当てられて、これですでに解析は終っているわけある。
 つまり、直接生活介助に関する調査項目は、他に70項目以上あろうとも、自立、自立で来た人は、7.4分、これで終わりである。他にいくらチェック項目があったとしても、これでもう終りあるという分析なのである。
 もうひとつ、指摘をしておきたい。浴槽の出入りが自立というグループと、浴槽の出入りがそれ以外のグループ、これの区分けの問題である。一部介助、全介助、行っていない、という区分けが、記入マニュアルによると、行っていない、というのは、自立していても風呂嫌いで風呂に入っていない、という方も含まれるのである。するとこの段階では7.4分と63.1分のケア時間の差が出てくる。
 したがって我々は、調査項目と、その評価する項目を明確に規定しなければいけないという意見を言っていた問題がここに当たる。状態像を現場で見た時に、自立しているのに何で63.1分の直接生活介助関連のケア時間が必要であるのか。これでは認定審査会として違和感を持つのは当然である。
 直接生活介助からはじまって、それぞれの項目、順位で分岐をさせていく時に、統計的に分岐させていくというだけではなく、分岐させる評価項目が果たして介護の現場で臨床的に納得できる順位でなければならない。
 次に、3,403例という全症例のうち、問題行動のなかった症例は大体約20%とあり、問題行動のなかった症例をもとに、樹形図をつくったのでスタートした時のN数は700である。700を樹形分類をしていって、4段階、5段階と進むと、果たしてNはいくらか。単純計算すれば、7段階に進むと、Nは5〜10である。5から10例の平均時間が果たして、トータルのケア時間として統計的に意味があるのか。1例をあげれば、皮膚疾患がなしが108.2分で、皮膚疾患ありが84.6分である。N数が少ないためにこのようなことが起こる。
 座位保持ができないが85.3分、座位保持ができるが105.4分。施設のみのデータを使っているので矛盾がある。
 介護認定の初回認定をされる方を250万人とするとスタートのデータは3,403例である。もっと精度を高めるために、スタディを続けるべきである。しかし、それでは、本施行には間に合わないから、一次判定は参考資料として位置づけ二次判定の指標を明確なものをつくって判定しなければ、現場の混乱は最高になるのではないか。

(田中委員)

 これに対する厚生省側の説明がないと何とも言えないが、Nが5とか10の時に、Σと平均値の関係がわからなければ、統計的有意性はないという指摘は間違いない。

(橋本委員)

 青柳委員の説明で一次判定の仕組みがよくわかった。厚生省はなぜ、こうした説明をしないのかというのが素朴な疑問である。こうしたプロセスを理解させずに。客観的な認定だから了解して欲しいということでは納得できない。

(三浦補佐)

 樹形図の採用については、統計的にどれぐらいの時間になるかということを純粋に確認していくという手法を用いている。
 したがって、青柳委員の指摘のような臨床的な意味合いについては、価値を置かず、統計的な手法に徹しているのが、一次判定の考え方である、そのため、二次判定は、保健、医療、福祉の学識経験者の方に集まっていただき、まさに、臨床的な、あるいは実際の現場での価値観というのを入れていただくことになる。
 それから、1分間タイムスタディの対象となった方のうち700名のデータが利用されているということだが、これは問題行動がなかった方であり、全体の約2割程度で、逆に8割の方は問題行動が何らかの形であったという方である。この2割という数字は、今回の18万人の調査を行った中でも、2割程度の方は問題行動がなくて、残り8割が問題行動があったということなので、割合としては適正な割合であると考えている。さらに、その700名の方を勘案したというのは、いわゆる問題行動がなかった、という方の介護時間を推計する場合について、700名のデータを使うということであって、問題行動がある方については、全部のデータ、つまり3,400のデータを使っているので、700名のデータですべて判定しているということはない。
 それから、調査対象者の問題として、どれくらいの数を目指すかということについては、数が多ければ多いほど安定した結果が得られるということは事実なので、今後とも、一次判定の精度を上げるために、1分間タイムスタディをはじめとした調査、あるいはその実績を収集していくことにしている。
 今回は施設のデータにせざるを得ないという状況があることについては、これは、在宅については、地域によって介護サービスの量や質が非常にバラつきが多いがために、なかなか標準化できないということ、そして、在宅、施設いずれにあっても、共通の要介護度を使っていくという観点から、施設での要介護時間を物差しとしたものである、今後、在宅での介護の状況というのが標準化された時点においては、在宅の状況を加味した形というのもありうるのかもしれないが、残念ながら現時点では、施設のデータを物差しにしたものにならざるを得ない。

(村上(忠)委員)

 母数が700で、最終的にはNの数がいくつかという話では、統計学的処理はできない。少なくとも、最終的にはNが300ぐらいないといけないのではないか。

(星野部会長)

 本件については、引き続き、高齢者介護サービス体制整備検討委員会において検討することとしたい。

(井形部会長)

 モデル事業を実施して17万人のデータがあるので、どこに問題があるか、ひとつひとつの解決していく中で、施行に間に合うようなベストな選択ををしていきたい。
 形としては、高齢者介護サービス体制整備検討委員会で引き続き議論し、ある程度まとめたものを、本委員会に提出して、判断を仰ぐという手続きにしたい。

(星野部会長)

 それでは、本日の審議はこの程度で留めたい。なお、次回の合同部会においては要介護認定基準の関連事項と介護保険事業計画策定のための基本指針を除く省令・告示事項について、厚生大臣から諮問を受ける。本日はこれをもって閉会とする。


問い合わせ先 厚生省老人保健福祉局企画課
 電 話 (直) 03-3591-0954
厚生省老人保健福祉局介護保険制度施行準備室
 電 話 (直) 03-3595-2890


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