99/01/13 第32回年金審議会総会・全員懇談会議事録 第32回年金審議会総会・全員懇談会議事録 日 時 平成11年1月13日(水) 14:03〜15:32 場 所 全国都市会館 第2会議室 ○ 総 会 1.開会の辞  2.新任委員紹介  3.出席状況報告  4.会長及び会長代理の選任  5.議 事    ・国民年金法等の一部を改正する法律の改正について ○ 全員懇談会  1.開会の辞  2.議 事    ・与野党の経緯・状況及び平成11年度予算等について    ・国民年金等の一部を改正する法律の改正について  3.閉会の辞 ○ 総 会  1.議 事    ・国民年金等の一部を改正する法律の改正について  2.閉会の辞 出席委員   砂子田 委 員  岡 崎 委 員  木 原 委 員  京 極 委 員   久保田 委 員  坂 巻 委 員  高 山 委 員  都 村 委 員   福 岡 委 員  桝 本 委 員  宗 岡 委 員  目 黒 委 員   山 田 委 員  山 根 委 員  吉 原 委 員  渡 邊 委 員   船 後 委 員 ○年金局長  本日は、御多忙中のところお集まりいただきましてありがとうございます。  ただいまから、第32回年金審議会総会を開会いたします。  委員の方の任期が満了したことに伴いまして、会長及び会長代理が空席となっており ますので、会長選出までの間、慣例によりまして私が議事の進行を務めさせていただき たいと思います。よろしいでしょうか。               (「異議なし」の声あり) ○年金局長  まず、昨年12月14日付で、若杉委員の後任として株式会社日立製作所取締役人事勤労 部長の宗岡広太郎さんが新たに委員に任命されましたので御紹介申し上げます。それで は、宗岡委員から一言御挨拶をお願いいたします。 ○宗岡委員  御紹介いただきました日立製作所の宗岡でございます。どうぞよろしくお願いいたし ます。  私どもたまたま厚生年金基金を社内で持っておりまして、私はその年金基金の理事長 も兼務させていただいております。現在加入員、受給者、退職者合わせましておよそ12 万人で、ファンドが約9,000億円という規模になっております。そういった意味で年金の 重要性ということを日々痛感しておりまして、こういう役割を負わせていただくという ことで、精いっぱい努力をさせていただきたいと思っています。御指導よろしくお願い 申し上げます。 ○年金局長 次に、事務局から本日の出席状況の御報告を申し上げます。 ○事務局 本日は国広委員、神代委員、富田委員、貝塚委員が御欠席でございます。木原委員は ちょっと遅れておられるようでございます。また、高山委員は30分遅れてお見えになる 御予定でございます。以上でございます。 ○年金局長 次に、会長の選任につきまして御協議をお願いしたいと思います。会長の選任につき ましては、年金審議会令により委員の方の互選によることとされております。いかがい たしましょうか。 ○坂巻委員 坂巻です。年金審議会答申を出し、それが今度法案化する大変大事な時期ですので、 今までどおり大変ですけれども、京極委員と岡崎委員にお願いしたらよろしいんじゃな いかと考えますが、いかがでございましょうか。               (「異議なし」と声あり) ○年金局長  それでは、坂巻委員の御意見に異議がないようですので、京極委員に会長に御就任い ただくことに決定いたします。  それでは、京極委員よろしくお願いいたします。 ○京極会長  かわりばえもいたしませんが、現在は制度改正と財政再計算に差しかかっております ので、しばらく会長を務めさせていただきます。何分よろしくお願い申し上げます。  続きまして、会長代理の選任をいたしたいと存じます。  会長代理は年金審議会令により会長が指名することとなっております。岡崎委員にお 願いしたいと存じますが、いかがでございましょうか。               (「異議なし」と声あり) ○京極会長  それでは、申しわけありませんが、会長代理の席まで御動座のほどをお願いします。 ○岡崎委員  どうぞ、よろしくお願いいたします。 ○京極会長  それでは、議事に入ります。  お手元にお配りしてありますとおり、本日、国民年金保険料の取扱いに関する諮問が ございました。これについて、審議をお願いします。  まず、事務局から諮問書の朗読をお願いします。             (事務局より諮問書朗読) ○京極会長  それでは、年金局長から諮問内容について趣旨説明をお願いします。 ○年金局長 それでは、私から今般御諮問申し上げました国民年金法等の一部改正につきまして趣 旨を説明させていただきます。  これは内容的にはただいま朗読したとおりでございまして、この国民年金の保険料に つきましては、平成6年改正で毎年500円ずつ引上げる。それから、それにプラス物価ス ライド率を掛けた額を上げるとこういうことになっているわけでございます。それに従 いまして、平成10年度は1万3,300円、平成11年度、ことしの4月でございますけれど も、4月からは1万4,000円に上がるということが前回の法律改正で決まっておるわけで ございます。 これを現下の非常に厳しい経済状況に鑑みまして、1万3,300円に据え置くと、こうい う内容でございます。 併せまして前納されていた方につきましては、これを還付をする、こういうことでご ざいます。 実はこういう諮問を申し上げなければいけないということは、去年の暮れのかなり遅 い段階まで、私自身夢にも思っておりませんでしたし、こういうことになったのは非常 に残念というか面目ない次第でございます。この問題につきましては、昨年の10月に当 審議会で意見書をいただきまして、その意見書は保険料につきましては段階的に引上げ る、ただ、具体的な引上げ方法につきましては現下の非常に厳しい経済状況に配慮すべ きだと、こういう意見書をいただいたわけでございます。 私どもはこれに沿って与党との調整を進めてまいったわけでございます。非常に経済 状況が厳しいということで、私どもとしましては1年、ぎりぎり頑張ったとしても2年 ぐらいの凍結であればやむを得ないのではないかと考えておりました。ただ、この凍結 によって穴があくわけでございますので、この穴はできるだけ早く埋めなければいけな い。将来につけ回しをするようなことは避けなければいけないと、こういう考え方で与 党との調整に臨んだわけでございますけれども、最終的には与党の方では、保険料は凍 結をする。それから、基礎年金の国庫負担については2分の1に引上げる。ただ、この 国庫負担の引上げと凍結解除は2004年までのできるだけ早い時期にして、しかも同時決 着だと、こういう方針が決定されたわけでございます。国庫負担引上げのための財源や 凍結解除、国庫負担の引上げ時期につきましては、具体的な時期は明確にされなかった わけでございます。  こういう決定がなされた以上、私どもとしてはこの決定に従わざるを得ないと、こう いうことで、本日、こういう諮問を申し上げる次第に至ったわけでございます。私ども としましては、国庫負担の2分の1引上げ、これはぜひともこれから実現させていただ きたいと思っておりますし、そのためには何よりも安定した財源を確保することが重要 であると考えております。  それから、また、給付の適正化につきましても、これは引き続き当審議会でも御審議 をいただきまして、今度の通常国会には法案を出させていただきまして、ぜひ成立を図 りたいとこう思っております。  そういうことでございまして、今回の諮問につきましては、御審議の上、御答申を賜 ればと思います。よろしくお願いいたします。 ○京極会長  ありがとうございました。  今回の諮問に関する審議につきまして、この場を総会から全員懇談会に切り替え審議 を進めたいと思いますが、いかがでしょうか。               (「異議なし」と声あり) ○京極会長  それでは、ここで総会を一たん終了し、引き続いて全員懇談会を開催します。 ○会長  これより、全員懇談会を開催します。  まず、平成11年度の年金関連予算等につきまして、事務局から御説明をお願い します。 その上で、先ほど諮問の件につき審議を行い、できれば本日中に答申したいと存じま す。  それでは、お願いします。 ○事務局  まず、私から制度改正と予算編成の経緯、状況につきまして、資料に即しまして御説 明を申し上げます。  ポイントは今事務局が御説明申し上げたとおりでございます。参考資料の1つ、「平 成11年年金制度改正について(試案)」、昨年12月の自民党の年金制度調査会会長試案 をごらんいただきたいと思います。  11月17日に本審議会の懇談会を開催していただきまして、10月に厚生省で出しました 厚生省の年金制度改正案につきまして御説明させていただいたところでございまして、 その後、この自民党の年金制度調査会におきまして通算20回の審議が行われまして、こ の会長(試案)というものが取りまとめられたものでございます。その時点におきまし て、自民党と自由党あるいは公明党との協議があるということで、この会長(試案)と いう形になったというふうに承知をいたしているところでございます。  1ページをごらんいただきたいと思います。基本的な考え方のもとに、基礎年金の国 庫負担あるいは保険料の凍結についての記述があるわけでございます。先ほど事務局か ら申し上げましたように、この国庫負担の引上げと保険料凍結解除につきまして、その 後与党の協議におきまして、同時期にするということが出されておるところでございま す。  2ページでございますが、これを前提といたしまして、基礎年金の国庫負担率を2分 の1にするということを前提に、最終保険料率につきまして、ピーク時におきまして も、厚生年金につきまして年収の19%、国民年金につきましては、2万円を相当程度下 回るものとするという考え方で取りまとめられたものでございます。  それから、2ページ、給付の関係の記述が続いておりますが、おおむね10月末の厚生 省の第1案という方向で整理がなされているところでございます。  3ページでございますが、積立金の運用の関係でございます。運用につきまして、安 全確実かつ有利な運用をするということで、積立金につきましては、市場運用を基本と する新たな仕組みを構築するという考え方で取りまとめられております。  6、その他の事項におきましても、厚生省案に盛り込まれた事項、ボーナスを含む総 報酬制の導入をはじめといたしまして、必要な措置を講じるというふうにされておると ころでございます。女性の年金の一元化、あるいは障害無年金者の問題などにつきまし ても引き続き検討というふうにされておるところでございます。  この自民党案をベースといたしまして、自由党、公明党との数回の政策協議が行われ まして、自民党の方からはこの試案に沿った提案がなされたところでございます。  この各政党間の協議、さらには予算編成前に、厚生大臣と大蔵大臣との間で事前大臣 折衝がございまして、11年度予算(案)につきまして、最終的に資料1にございますよ うな年金の取扱いが定められたものでございます。  まず、制度改正につきましては引き続き検討を行い、成案を得て次期通常国会におい て所要の法律改正を行うと定められております。  そして、11年度の年金額の改善につきましては、物価スライドにとどめるということ でございまして、対前年0.6%のアップを見込んで厚生年金・国民年金はそれぞれごらん いただきますような金額になる予定でございます。 一方、保険料につきましては、凍結ということでございまして、厚生年金は現行のま ま17.35%に凍結する。国民年金の保険料につきましては、月額1万3,300円に据え置く ということで、本日の諮問になったところでございます。 制度改正全体につきましては、11年度の予算への影響はございませんので、この国民 年金保険料の凍結部分を除きまして、非予算関連法案として国会に提出するということ で、現在制度改正につきまして、その内容を詰める作業を行っておるところでございま す。成案を得次第、改めて本審議会にお諮りをさせていただきたいと考えておるところ でございます。 それから、もう一点、税の関係でございますが、これも参考資料配付でございますけ れども、昨年12月の自民党の税制大綱の抜粋を挙げさせていただいております。 第三の検討事項におきまして、年金課税と確定拠出型年金につきまして、それぞれご らんいただきますような記述があるわけでございます。  確定拠出年金につきまして、年金制度の一環として制度の具体化が図れる場合には税 制上の措置を講ずるものとすることに党として決定されておりまして、これを受けた形 で政府ベースでもこの確定拠出型年金につきまして検討を開始したところでございます  以上、経緯及び予算の概況でございます。 ○事務局 平成11年度の年金関係の予算(案)の概要について御説明申し上げます。  資料2をごらんいただきたいと存じます。1ページでございますが、保険料収入、国 庫負担、年金給付費、積立金と4つ中身の大きなものだけ取り出してございます。  保険料収入でございますけれども、厚生年金の保険料収入につきましては、昨今の不 況の影響を受けまして、被保険者数、標準報酬月額ともに下がっておりますので、それ を見込みまして7,238億円の減ということで予定をいたしております。 それから、国民年金の保険料につきましても、やはり不況の影響で免除者数等の増を 見込まして866億円の減ということで見込んでおるところでございます。 国庫負担でございますが、厚生年金の国庫負担が8,054億円大幅な増になってございま すが、これは平成7年度から10年度までの間、厚生年金の国庫負担の一部につきまして 繰延べという措置がとられてきたところでございますが、平成11年度においては、この 措置を行わないということにいたしております。平成10年度に7,000億円ほどの国庫負担 が繰延べられておりまして、その分が平成11年度に上がったという形に見えており ます。 実力といたしましては、8,054億から7,000億を除きました1,054億円の増ということでご ざいます。 国民年金につきましては、基礎年金の拠出金に係ります国庫負担は増えております が、過去の免除期間に係ります国庫負担の部分、免除期間は全額国庫負担になっており ますが、この分が減っておりまして、トータルで若干の減ということになっておるとこ ろでございます。 それから、年金給付費でございます。これは各勘定別に分けてございまして、厚生年 金は旧法厚生年金と新法の2階部分でございますが、これが3,048億円ほどの増を見込ん でおります。それから、基礎年金は新法の基礎年金のみでございますが、8,071億円ほど の増を見込んでおります。 国民年金は旧法部分だけでございまして、これは減っていくということで、1,332億円 ほどの減を見込んでおるということでございます。 福祉年金でございますが、これは対象者がだんだん減ってまいりますので、これも若 干の減ということで見込んでおるところでございます。 積立金でございますが、なお、まだ剰余金が出る見込みでございまして、厚生年金・ 国民年金合わせまして、4兆1,229億円新規積立を行うことを予定しておりまして、平成 11年度末の積立金の累計額が144兆円強で見込んでおるということでございます。 2ページ以下はその細かい内訳でございますので、後ほどごらんいただければと存じ ます。 ○事務局  それでは、引き続きまして資料3に基づきまして、平成11年度厚生省関係財政投融資 資金計画(案)の概要について御説明申し上げます。  資料3の最後の合計にございますように、財投計画の厚生省関係全体は、10年度:8 兆6,686億円に対して、8兆4,094億円ということで微減でございますが、各機関におき まして効率化を進めつつ必要な資金は手当てするという姿勢で臨んだ結果でございます それぞれの機関には大きな異動はありませんが、一番上の年金福祉事業団だけ若干の 異動がありますので御説明申し上げます。1と2はいわゆる資金運用事業でござい ます。 資金運用事業につきましては、摘要に書いてございますように、償還額:3兆700億円プ ラス新規資金1兆円ということで、4兆700億円の資金を確保したということでございま す。この結果、累積運用額は11年度においては、26兆7,530億円になるということでござ います。  3番目の融資事業:1兆6,565億円が1兆2,146億円に減っておりますが、これは昨今 の住宅融資事業の実績を踏まえ、資金計画案を減じた次第であります。昨年の11月の緊 急経済対策の影響も踏まえまして、その結果若干増えるということも織り込んで1兆 2,146億円という資金計画を計上したわけでございます。 この結果、この表にはございませんが、いわゆる年金還元融資額という額につきまし ては、平成10年度:6兆4,685億円に対しまして、平成11年度は、6兆4,404億円という ことでございます。なお、平成11年度の新規預託見込み額は4兆3,100億円でございます から、新規見込み額に対しまして149%の還元融資額ということでございます。 以上でございます。 ○会長 ただいまの御説明について何か御質問がありましたら、 どなたからでもお願いします。 A委員どうぞ。 ○A委員 ちょっと予算のこと、私、素人でよくわからないのですが、今回予定されている年金 改正法なるものが予算非関連法案になるということの理由がいまいちぴんとこないので どうしてこれは予算非関連になるのかについての御説明を1つはいただきたい。 もう一つは、国民年金の保険料のことについてはよくわかるのですが、全体の財政再 計算のところで、賃金スライドの再評価率を確定していますね。これは平成5年のとこ ろまでが確定しているわけですが、この扱いは今回どういうことになるのでしょうか。 財政再計算をやるわけですよね。それに伴って再評価率そのものの書き換えはやらない んですか。以上、2点をお願いします。 ○事務局  今の2点、まず、予算非関連法案である理由でございますけれども、まず、今準備中 の制度改正案においては、来年度予算に直接影響して、その数字が大きくなる、こうい ったものがない。例えば施行時期が再来年度以降であるものとか、そういうものが中心 でありますので、そういう意味で予算非関連になっています。それから、後段が今A委 員の国民年金の金額の引上げ、賃金スライドと申しますか、政策改定にかかわる分であ りますが、そこと直接かかわる話になりますけれども、もし今回政策改定を盛り込むと いうことが決まっておれば、それは数字が増えますので予算関連になるわけであります けれども、今回の基礎年金の給付額につきましては、これまでの物価の上昇や消費水準 の動向等を勘案しますと、物価上昇を消費の水準がはるかに下回っておりまして、こう いう中で基礎年金をいわゆる政策改定ということで物価上昇以上に押し上げる必要が今 回はないであろうと判断いたしました。そうなりますと、いわゆる従来型の政策改定と いうことで給付額を増加させることは必要がないことになりますので、これも予算関連 法案にはならないということでございます。2つ併せてお答えしましたけれども、そう いう意味で、予算非関連法案で今後臨むということになります。今回の予算におきまし ては、いわゆる政策改定を盛り込んでおりませんが、それは法律改正でも基礎年金が物 価以上に上がるということは考えていないということでございます。 ○A委員  基礎年金はいいんですよ。まず、前段の方で言いますと、賃金スライドを停止すると いうのがあるわけでしょう。賃金スライドは基礎年金の問題ではなくて、2階の方に関 して言えば、これは法律事項のはずですよね。それが変わることになれば、当然予算面 で影響が出てくるはずのことではないかというのが1点、前半の問題なんです。  それから、後半の問題も、これは再評価率のことですから、これは基礎年金の政策ス ライドの問題ではありません。早い話が平成5年の4月以降についての、前回の評価率 表というやつの書き換えを今回やらないとすると、新しく今度の4月以降の新規裁定者 についてはどういう扱いになるのですか。 ○事務局  厚生年金の関係について申し上げますと、まず既裁定の方については、今回予算非関 連法案で私どもが準備しておりますのは賃金スライドを行わないということであります から、それは予算にはもちろん金額として出てこないことになります。  それから、再評価をどうするかということですが、これにつきましては、かつて御説 明申し上げました厚生省の第1案という立場に立ちますと、再評価は仮にいたしまして も、例えば、4%ぐらいが予期されるわけでありますが、厚生年金では5%の給付の適 正化を盛り込むことを考えておりますので、4%再評価で持ち上げても給付の適正化で 5%ダウンすることになりますと予算が増えることにはならないわけでありますから、 そういう意味で、再評価をしたとしても給付が法律改正によってふくらむことはないで あろうということでここは盛り込んでいない。  さらに、附帯的な御説明になると思いますけれども、保険料が凍結になっているとい う中で、いわゆるベースアップである再評価のところだけが先行するかということにつ いてはちょっと議論がございまして、そういう意味でも今回再評価を盛り込んだ予算に はなっておらないということでございます。 ○A委員  疑問だけ申し上げておきますが、まず、再評価というのは5年単位で行われるもので あって、先ほどやるとすれば4%ぐらいかというお話でしたけれども、我々は、これは 不正確で申しわけないんですが、大体7%ぐらいという御説明を伺った記憶があるんで すが、この数字については次回までに再確認お願いします。  それから、再評価をしたって4%、適正化で5%下がるんだからキャンセルするんだ という御説明とその後のベアにかかわる問題だから再評価しないんだということとは全 く論理的に整合しないのではないか。 ○事務局  7%と4%の違いは、まず3%は既に物価スライドで持ち上がっておりますので、そ の差の4%をプラスアルファとして再評価するかどうかという意味で、この両者には齟 齬はないと思います。  それから、後段で申し上げた説明は、私も附帯的な説明と申し上げましたとおり、そ ういう状況もある程度あるということを申し上げたので、それは論理的な必然ではござ いません。 ○A委員  論理的じゃなくて数字的にも合わない。今の事務局の御説明については、私、納得い たしません。つまり、物スラでもって持ち上げたあと残りだけだというのはおかしいの で、物スラは物スラでもって隔年やってきたやつに対して再評価で5年単位でもって、 改めて5年前から比べてどうするかというのが賃スラなんですから、既に3%は持ち上 げているからという話は全然論理的におかしいし、それから附帯的な説明というふうに 言われたけれども、再評価をしないんならしないということをきちんと打ち出されるな らともかく、再評価をする必要がないという御説明では違うのではないか。これは5年 単位の話ですからね。そういう意味で納得はいたしませんので、そのことだけ。 ○事務局  7%なり4%の考え方、再評価については今後また御諮問申し上げますいわゆる予算 非関連法案の中でもっと具体的にお示しをしたいと思います。 ○A委員  今のは納得しないということは、予算非関連だということについての理解を我々はこ のままではしにくいと思います。 ○会長  それでは、A委員よろしゅうございますか。お隣のB委員何か御発言を? ○B委員  事前に事務局に申し上げたのですが、ちょっと次の会合がございますので、先に発言 させていただきます。  まず、国民年金保険料の引上げ凍結の諮問についてでございますけれども、私の方か ら昨年の秋の本審議会におきまして、厚生年金保険料の凍結を主張してきた経過がござ います。政府・与党も昨年末に厚生年金保険料の引上げの凍結を決定したわけでござい ますから、国民年金の保険料を凍結する今回の諮問は当然のことだというふうに考える ところでございます。  それから、もう一つ、御説明のありました年金改正案の動向についてでございます が、御承知のように、当審議会の意見書を契機といたしまして、世論や各政党の間でも 基礎年金の財源の問題について大変議論が大きくなってきております。御承知のよう に、全額税方式の議論であるとか、私の方から強く主張してまいりました目的間接税の 話であるとか、いずれにしましても国民的な議論が起こっておりますし、政党でもそう いう議論が起こっているわけであります。さらに2階の積立方式などの議論も大きく なってきております。  そういった経過を踏まえまして、基礎年金の財源問題を含めて抜本改革についてきち んと議論すべきであろうと考えます。今回の改正はきょう諮問がございました保険料引 上げの凍結だけに終わることなく審議会の意見書に盛り込まれております将来世代の負 担を過重にしないというための給付の適正化策を講ずることが必要であると考えるとこ ろでありまして、例えば具体的には給付水準の適正化の問題、あるいは厚生年金の報酬 比例部分の支給開始年齢の引上げの問題、3番目には裁定後の年金の賃金スライドの停 止の問題など改正を図るべきでございまして、早急に成案を固めて諮問するべきである と考えるところでございます。  本件に関しましては以上でございますが、まことに先に失礼するので申しわけないの ですが、非常に気になっている問題、1つよろしゅうございましょうか。  実は厚生年金基金の問題につきまして、1月9日の日経新聞で代行部分の返上を認め るという報道が出ておりまして、どういう形でこの報道がなされたかということを今こ こで議論している暇がないので、それはちょっと置きまして、いずれこれがどういう経 過になっているかということについてはきちんとした御説明を求めたいと思います。い ずれにしましても、厚生年金基金につきましても抜本見直しを求めてきた経過がござい ますし、特に代行部分につきまして、国へ返上する方向で検討してほしいということを 申し上げてきた経過がございますので、ぜひこの問題について御検討をお願いしたい。 特に年金本体の利回りが引下げられることに伴いまして、代行部分の利率も引下げられ ることになりますと、基金の積立不足が新たに発生してくるということにもなります。  もう一つ、御承知だと思いますけれども、2000年の4月から国際会計基準の導入に伴 いまして、代行部分の積立不足までも企業会計にオンバランスされることになりまし て、企業経営上にも大きな影響を及ぼすのではないかというおそれがございます。この ように厚生年金基金が抱えている問題についても、きょうお尋ねする時間がないのです が、私の方で非常に心配している問題でございますので、そのことを申し上げておきた いと思います。以上でございます。 ○会長  ほかにどなたか御発言ありませんか。 ○C委員  来年度の予算について、特に異存があるわけではないのですが、本来であれば、意見 書を取りまとめる年金審議会の段階で、昨年のうちに申し上げるべきだったことが1つ ございますので、あえて申し上げたいと思います。  それは、今年度も従来どおり給付の物価スライドをするということで、対前年度で0.6 %上げるということになっております。昨今の日本経済の状況を見ますと、賃金上昇率 と物価上昇率を比べると賃金上昇率の方が低いということが起こりそうな気配が漂って いるわけです。今まで賃金上昇率の方が物価上昇率より低いということは日本経済、特 に戦後なかったことなんですね。年金については物価スライドが大事だということで 年々の給付改善は物価スライドだということで今まで走ってきて当然視されてきたので すが、仮に年々の賃金の変動とか物価の変動を見たときに、賃金の上昇率の方が物価の 上昇率よりも低いという場合に、物価スライドをすることが費用負担者の合意につなが るかどうかという問題が恐らくこれから起こってくるのではないかと私は考えます。  それで、今回これに反対しているわけではないのですけれども、今後の検討課題とし て、賃金上昇率の方が物価上昇率より低い場合の措置について早急に検討しなければい けないのではないかと思います。以上です。 ○会長  ほかにありませんようですから、先ほど諮問のありました国民年金保険料の取扱い案 につき審議を行います。改正案の内容等について事務局が資料を用意いたしております ので御説明をお願いします。 ○事務局  それでは、資料4に基づきまして御説明を申し上げます。  諮問の内容は先ほど申し上げましたとおり、1の「法律案概要」は、先ほど読み上げ ましたものとほとんど変わりございません。現在の1万3,300円の国民年金の保険料率を 同額で維持するという内容のものでございます。そして、既に前納された方については 請求に基づきまして還付をすることを定めております。 そこで、2の「予算への影響」でありますが、それを行いますと、平成11年度の予算 の政府案ベースで1,107億円の減収があるということでございます。 そして、参考に書いておりますが、特にこれを書いたのは、国民年金につきまして は、これはその時どきの改正で将来の5年間の保険料額を法律で決めて進んでおり ます。ですから、この黒く塗っておるところでありますけれども、平成11年4月から は、物価調整した後の数字を書いておりますが、これは法律で自動的に、前回改正のと きに1万4,000円に上がるということが決まっておったと。これを最後の1年分を今回 法律改正をして、自動的に上がるのをとめるという改正でございます。 したがいまして、これは前回審議会にもお諮りし、国会で決めたものについて、それを 国会で法律で改めるということでございます。  それから、直接関係ございませんが、では厚生年金はどうかということになります と、これは前回の改正で17.35%という数字を規定しているわけでありますから、こう いった種類の改正をする必要はない。国民年金だけがことしの4月に自動的に上がる表 現になっておるので、法律改正が要るということでございます。したがいまして、厚生 年金の関係、国民年金もいわゆる次期財政再計算に属する部分につきましては、今後ま たお諮りする法案で改めて御意見をちょうだいするということで、この法案はまさにこ の4月のものを上げないということだけをお諮りしておるということでございます。 以上です。 ○会長  どうもありがとうございました。  ただいまの御説明を受けまして、本日大臣から諮問がございました事項につき、皆様 方の御意見を承ります。御意見がありましたらどなたからでも御自由にお願いします。 A委員何かありませんか。 ○A委員  これは審議会で諮問をされ答申をし、そしてそれを国会で法案として決定をした。そ の決定のいわば5年分の最後の1年を政治判断でもって修正する、 こういうことですね。 私は前回改正の作業に加わってないので直接申し上げるのはあれなんですが、審議会で 協議をし決定をし諮問に対して答申をし、それが国会で決定をされた。という手続を経 たものが、何らかの政治的な理由によって変更されるということを一般論として考えた ときにどうなるのかなというちょっとした不安はございます。内容については反対であ りません。 ○D委員  審議会の議論の中で一貫しまして国民年金の保険料については何とか据え置けないか それから、財源問題についても言及してきた経緯があるわけでありまして、今回こうい う形で一定の方向が出されることにつきまして、局長の方は残念だなというふうに先ほ どおっしゃっておりましたが、私はそういうことではなくて、きっちり一定の評価をし て進んでいけるのではないかというふうに考えておりますので賛成です。 ○会長  ほかに御発言がありませんでしたら、答申案の準備に入りますが、よろしゅうござい ますか。諮問を結構だとお受けするほかない状況と思います。しばらくの間休憩しまし て、その間に答申案を事務方に準備させることにします。しばらく休憩します。                 ──休 憩── ○会長 それでは審議を再開します。答申案を配付します。お手元に届きましたか。漏れた方 はございませんか。  それでは、事務局の方で御朗読をお願いします。 ○事務局  国民年金法等の一部を改正する法律の改正について(答申) 平成11年1月13日厚生省発年第2号をもって諮問のあった標記については、国民年 金制度の中長期的安定を図る見地からは、本来は適切な保険料の段階的引上げを行うべ きであるが、現下の経済状況に鑑み、緊急避難的な措置としてやむを得ないものと考え る。 ○会長  という答申案でございます。皆様方の御意見はいかがでしょうか。 ○E委員  やむを得ないものと考えるのは結構なんですけれども、それだけでいいのかなという 気がちょっとするんですね。やはり毎年1,000億円超える負担が次の世代に繰り越されて いくわけですから、自民党の年金制度の改正のところにも後世代への負担の先送りを避 けるという言葉があるように、その辺のところに1つ歯どめをかけるような表現をつけ 加えた方がいいのではないかなという気が個人的にはいたします。以上です。 ○会長 例えば、どういうふうな文案がありますか。 ○E委員 やむを得ないものと考えるけれども、この結果として、毎年1,000億を超える負担が次 の世代に繰り越されていくわけで、金額を乗せるかどうかはともかくといたしまして、 しかしながら次の世代への負担のつけ回しというようなことが結果として起こってくる わけです。それを早急に解消する努力をすべきだとか、何かそういう、突然でどういう 表現がいいかわかりませんけれども、ただ、やむを得ないものと考えるというふうに了 解するのではなく、何かそういう表現をつけ加えていただければと個人的には考えてお ります。 ○会長 A委員どうぞ。 ○A委員 E委員の御意見と少し方向が逆なのかもしれないんですが、私はこれを読むと、冒頭 の局長の御挨拶を思い出して、いかにも悔しそうなという印象でございまして、こうい ういわば思いがにじむような答申案文というのはいろんなときに見ましたけど、初めて なので非常に印象深いので、これはそれで1つの在り方かと思うんですが、提案として はむしろいっそのこと極めてザックリと、1行目の後ろの「標記については」という後 に、「おおむね妥当と考える」というぐらいのものにしてしまうのはもう一つの案かな と思います。  実はここに2つ問題があるわけですね。1つは、本来は上げるべきなんだが、つまり 年金財政上から考えれば上げるべきなんだが、やむを得ないという意味では、ここはい わば屈折だという理解。これは局長の冒頭の御挨拶も今のE委員の御発言もそうだった ろうと思います。  他方から言うと、むしろ保険料という形での負担の在り方そのものを見直すべきだと いう考え方がもう一つございます。そして、ここは「本来は」とございますが、本来と いうのは、これは公費負担率3分の1が本来なんですね、ここで言われているのは。そ れの前提に立って引上げ計画もつくられてきたわけであって、しかし今回はほかの条件 一切抜きにして、ただ保険料の凍結だけを言っているわけではないので、2分の1への 公費負担の引上げとくっついているわけでしょう。したがって、公費負担率は変わらな い。したがって、保険料は払わなければいけないのにもかかわらず政治的な判断でこう なったのは審議会としてはいかにも残念であると、こういう話とはやや違うんだろうと 思うんです。  ただし、審議会が決定したことについて、そして、それが法案化されたことについ て、政治判断だけでそういうものが切り替えられるというようなことは、もう少し一般 論として考えればいろんな問題を含むのではないかという懸念は、私は先ほど言いまし たようにございます。もし歯どめが必要だったらむしろそちらの方である。  私どもは公費負担率の引上げを積極的に主張してきましたし、基礎年金については保 険方式ではそもそも原理的に無理なんだという立場でございますので、内容について悔 しいけれども、残念だけれども、やむを得ないという気持ちでは全然おりません。 ○F委員  同じエリアの委員の間で、意見が違うのはいかがなものかなとは思いますが、私は前 回改正の際の審議会における討議経過を踏まえて、審議会としては基本姿勢を変えない というか、基調として持ち続けているのだという意思ははっきり示しておくべきではな いかと思います。そうでないと審議会でいろんな審議をしたのだが、その結果が、政治 の舞台に行って簡単にねじ曲げられるというか、脚色されるというような側面が余り簡 単に出ることについて審議会の意地やプライドもあると思うんです。適切でない表現が あるかもしれませんけれども、私は審議会の立場はきちんと表に出すべきではないかと 思います。  今、A委員が言われたような考え方そのものに私は根本的に反論は持ち合わせていま せん。思いはわかりますけど、審議会は審議会として筋を通すべきではないか、という ように考えています。 ○A委員  そこの点を私は懸念を表明しています、内容とは別に。 ○G委員  前回、この審議会として、できるだけ引上げは抑制する方向で考えなくちゃいけない んですが、段階的な引上げが必要だということの答申をしたわけですから、今、A委員 のおっしゃるような意見は全くあの審議会の答申と基本的に反するので全く賛成できな い。やはりこの答申案に書いてあるように、本来、年金制度の立場から言うと引上げを 行うべきなんですね。しかし、今の経済情勢なり景気情勢からはすぐにというのは仕方 がないかなという感じで、私は何も局長だけのあれじゃなしに、年金制度を守る立場か らはこういう考え方が当然だと私は思います。A委員の意見には絶対承服できないとい うか、私は反対です。 ○会長  H委員いかがですか。 ○H委員  もうこの期に及んで、この答申案のとおりでいくほか方法がないような気がいたしま す。A委員の気持ちもわかるんですが、しかし、ここは経済戦略会議じゃなくて年金審 議会でございますから、あくまでも年金法の規定によりまして、年金財政の安定を考え るという審議会ですから、私も筋としてはG委員のおっしゃるとおりだと思うんです。 しかし、そういうことを今言ってもどうにもなりませんから、これは全く政治的な発言 でございますが、やむを得ないと思います。 ○会長  ほかの委員の方々、御意見ございませんか。 ○I委員  私もこの3行目の「段階的に引上げを行うべきであるが」、最後は「やむを 得ない」、この表現でよろしいのではないかというふうに思います。ただ、この答申は このような書き方でいいと思うんですけれども、昨年末から感じておりますのは、リス クに対して自己責任をとるということがかなり社会の中で強調されておりまして、それ は経済の領域だけではなくて、高齢期の生活という点でも自己責任を求めるというよう な提言が結構たくさん出てきているわけですね。今、つくづく必要とされるのは、やは り社会保障の将来像を、もうすぐ21世紀になるわけですけれども、社会保障の将来像を 描くことが大事ではないか。特に社会保障の非常に重要な柱として年金制度があるわけ ですから、意見書を取りまとめをする最終の段階でもかなり議論になったわけですけれ ども、年金制度の明確な将来像を描くというか、それが大事じゃないかと。公的年金制 度の理念をみんな国民とかに理解してもらうためには、やはり「安心」とか「公正」と か「連帯」といったような、そこへ導いていく価値、それをもっと広く、特に若い層、 あるいは働いている層を含めて、そういうところに理解してもらうような形で将来像を 描く必要があるのではないかと思います。  ちょっとつけ加えですけれども、学生なんかも99年が年金改正年であるということ と、それから、去年2月に「年金白書」が出たということで、私がかかわっているのは 経済学部の学生なんですけれども、非常に公的年金制度というものに関心を持っており まして、去年の5月の意識調査のときも、ふだん出て来ない学生まで出てきてアンケー ト用紙が足りなくなったぐらいで非常に関心を持っていろいろ議論しているんですね。 そういう議論を聞いてみましても、やはり公的年金の将来像を今こそはっきり描くとい うか提示する必要があるのではないか。そういうのはこの年金審議会のかなり大きな役 割ではないかと思います。  今回の国民年金の保険料につきましては、この案文で賛成です。以上です。 ○J委員  私も最終的にはこの文案で賛成でございますが、ただ、E委員がおっしゃったような 気持ちが私にもございます。1,100億円の赤字が出る。A委員は3分の1から2分の1に なるからいいではないかという趣旨の御発言あったんですけれども、自民党のを見ても 平成16年に行われる再計算までにという書き方をしております。この国民年金法の改正 とタイムラグがあるわけですよね。そうするとその間に毎年1,000億円以上の赤字が出て いっていると。それをだれが負担することになるかということ。これはいろいろ詳しく 吟味しないとわからないんですけれども、もしかしたらこの負担が厚生年金のグループ にしわ寄せがくるのかもしれないんですね、それはわかりませんけれども、いずれにし ましても、ここで1,000億円超の赤字が出ることは、本当はどこかではっきりさせるべき ではないかと思っております。 ただ、さっきからこの案文を見ておりましたけれども、1,000億円をどこかに入れるこ とはできるか、これはなかなか難しいようでございますので、この案文で結構だと思い ます。 ○K委員 年金審議会としまして、このような案文になるのは、意見書に書いてあることからし ましてもやむを得ないと思いますが、私が従来述べていた意見から私の案を申し上げま すと、この2行目の「標記については」以降、「国民年金……段階的な引上げを行うべ きであるが」まで含めまして、全部削除して、「現下の経済状況にかんがみ緊急避難的 な措置としてやむを得ないと考える」ということが私の意見として申し上げたい。  といいますのは、常々申し上げましたように、現時点で保険料を引上げることについ ては勘弁していただきたいということを申し上げてまいりました立場からしますと、現 時点において段階的引上げを行うということ自身は私は反対であります。ただ、均衡の 問題につきましては、給付水準を適切に引下げるべきだとこういうことを申し上げるの で、これは今回それは行われないのであれば、1,000億円の赤字がまた積み重なるのはい いとは思いません。本来でありますと、これは現下の経済状況ではなくて、現下の政治 状況も鑑み、こういうことになります。それは当然書けないと思いますが。 そういう意味では、段階的云々というのはなくてもいいのではないかと思いますが、 意見書とのつながりから言いますと、このような文案になることもまたやむを得ないか なと思います。 ○会長 L委員いかがですか。 ○L委員 この年金審での意見は、昨年の年金審の出口のところでも労働側委員が殊さらという ことなのかもしれませんが、もめたわけでございまして、それほど意見に幅があって収 れんさせるのは難しかったという部分もここは冷静にあったと思います。したがいまし て、G委員やJ委員、あるいはH委員の方から言われましたけれども、基本的にはとい うところはそうであるべきなんだということを少し言われましたけれども、年金審のこ の前の意見書の保険料負担のところの項目においても、できるだけ平準保険料に近づけ ていくべき、あるいは保険料引上げ計画を早めるべきとの意見がある一方で、現在の経 済状況から据え置くべきであるとの意見や引下げるべきであるとの意見もあったという 非常に幅の広い意見であったと思います。 これは結局この保険料だけをどうするかという問題ではなくて、給付と負担の問題や 基礎年金の税方式やそういう問題について、どういう時点でどう絵を描くのかというこ ととのセットの問題としての議論だったと思いますので、結論的に私の意見は、この保 険料問題だけを抜き出した経済情勢におけるこの表現については淡々と記述する以外に はないのではないかと。 問題は、先ほどB委員も少し言われましたが、この自民党案といいますか政府案の中 には国庫負担2分の1への引上げとセットになった凍結解除ということになっています ので、そういう問題について本当にどういうふうな設計図や、あるいはそのときの負担 の問題やそういうことについてどういうふうに絵をかくのかといいますか、論議をする のかということについて、できるだけ早急に法案の関連もあるでしょうから、また、こ の年金審議会での意見の聴取ということについてもぜひやっていただきたい。  ただ、伺っていますと、B委員のおっしゃることと連合なり、私ども労働組合出身の 委員で言っていることは結論は似たようなことではありますが、かなり同床異夢の部分 もあるのではないかと思います。問題先送り型ではなくて、やはり2004年まで待たずに かなりはっきりした議論と方向性をやっぱり示すべきときにきているのではないか。意 見がかなりまちまちであるとか、方向、ベクトルが違うということについてはわかって おりますけれども、あえて議論ということについて、一定の決着をつける国民的議論を 起こす今時期にきているのではないかという感じがいたします。以上でございます。 ○会長  M委員いかがでしょうか。中抜きにいたしますか、それとも。 ○M委員  私はこのままでよいと思います。それにはいろんな議論があるのだと思いますが、年 金審議会の役割から言うと、やっぱりこのぐらいは言わなければならないだろうと思い ます。もともと国なり公共団体というのは、先ほどI委員がおっしゃいましたけれども セイフティネットをどういうふうに構築するかというのが基本なのでして、それについ てどういう年金の在り方かということの議論ですから、年金審議会としていろんな議論 を今までやってきたのですから、この程度のことはやっぱり言っておくべきだと思いま す。 ○会長  N委員いかがですか。 ○N委員  十分勉強してないのであれですけれども、基本的にはこの答申でやむを得ないのでは ないかと思います。 ○会長  O委員いかがですか。 ○O委員  本来、諮問されているのは、一部法律改正をするということの内容が、負担の凍結と いうことなので、それに対するストレートな答えを書くのが最も妥当な方法ではないか という気がするんです。それは結局のところ、既に決まっていたことを政治的判断によ って変えるということについてどうかということなので、ならば、そのように書くのが いいのではないかと思うわけです。本来決まっていたやり方をこういうふうに変えると いうこと、例えば現下の経済状況に対する政治的判断に鑑み緊急避難的に、そういうふ うにやってもいいかなという気がします。  ですから、真ん中の問題になっている部分については、既に議論があって、なかなか 意見の収れんができない部分だということですので、そういう内容に触れることなく、 ただし、本来決定していたことについての政治的判断を尊重する、そういう表現にする のもいいのではないかという気がしております。 ○会長  私の感触で申しますと、事務方で用意なさったこの案でいいと思いますが、いかがで しょうか。年金審議会が年金局長に頼まれて仕事をしてきた、年金審議会としての筋が あります。御同意が得られれば原案通り答申したいと思いますが、いかがでしょうか。               (「異議なし」の声あり) ○会長  K委員、よろしゅうございますか。 ○K委員  やむを得ません。 ○事務局  事務局が、先ほどのB委員の御質問にお答えしたいということです。 ○会長  どうぞ、B委員の御質問にお答え下さい。 ○事務局  諮問答申とはちょっと離れますが、先ほどB委員から御退席前に厚生年金基金制度関 係3点ほどお話がございまして、お答えということではございませんが、少しお話をさ せていただきたいと思います。  B委員から第1点目は、代行制度に関しての抜本見直しなり代行部分の返上というお 話がございまして、先日、新聞報道に流れましたが、代行制度の在り方につきまして は、当審議会におきましても昨年の10月の答申におきまして、代行制度の在り方につい ては引き続き検討すべきということとなっております。私どもとしてもこれは当然幅広 にさまざまな角度から代行制度のみならず、公的年金制度の上乗せとして企業年金制度 はいかにあるべきかという観点から議論の中で検討しているところでございます。その 検討の一端が流れたのかと見ております。いずれにしても現在検討中ということでござ いまして、何か新聞に書いてあることのように、具体的にどうこうするということは現 段階において決めているわけではございません。  それから、本体の利回りの引下げに伴って、代行部分について積立不足が発生する と。そこをどうするのかということでございますが、この点につきましては、これは昨 年来、当審議会におきましてもお話があったところでございますけれども、これまで中 立化というような形で検討してきたところでございますが、昨年、与党での年金法案に 関する審議の中で保険料の凍結ということが決まったわけでございまして、そういった 新しい状況の中で、その辺どうするかということを現在練り直しを行っているところで ございます。  それから、会計基準につきまして、2000年度から国際会計基準の導入に伴って、我が 国の企業においても会計基準をどうするかということで、大蔵省から昨年の5月でした か6月でしたか、新たな会計基準の試案というものが公表されております。その中で、 企業年金、これは厚生年金基金あるいは適格年金、その他、いわゆる一般の自社年金な んかもみんな対象になりますけれども、退職一時金を含め、全体を「退職給付」と呼ん でおりますけれども、そういった債務を今までは一種の簿外、帳簿の外で処理をしてい たということでございますが、それを今度は会社の損益計算書なり貸借対照表に載せる ということで方向が決まっております。  これにつきましては、代行部分の不足まで出るというお話、先ほどB委員からござい ましたが、企業年金のサイドから会計基準そのものはどうこうということより、企業、 会社の会計基準でございますので、年金の方の都合からああだこうだというのはなかな か難しいとは見ておりますが、何かできることはないかということで、現在私どもとし ても検討しております。  それから、ちょっと事実関係を少し申し上げますと、昨年の大蔵省の試案が出た段階 で、私の名前ということになりますが、企業年金課長名で大蔵省の、あの当時は証券局 でございましたが、担当課長宛に、こういった会計基準導入そのものについては別に何 もないのですけれども、その際に企業年金あるいは退職一時金の負債を評価する場合 に、これは何%で割り引きかと。言葉を変えていいますと、予定利率、予定運用利回り を何%にするかは大変大きい問題でございまして、高いレートを使えば負債は小さく出 ますし、低いレートを使えば負債は大きく出るわけでございますが、そういった使う割 引率については、十分注意をしていただきたいし、関係団体、これは公認会計士協会で 今実務基準をつくっておりますけれども、そこで十分関係方面の意見を聞いていただき たいという申し入れを行っております。  その他、少し大蔵省の試案が出てからはあちこちでいろんな議論が出始めまして、私 どもはまた今関係方面ともちょっと話はしているという段階でございます。以上でござ います。 ○C委員  答申案の文面については、私の個人的な考え方とは違うんですが、従来の年金審の基 本的な考え方として、こういう立場は常に表明されてきたことでありまして、それを踏 まえてこういう形でまとめることについては、私はやむを得ないものと考えており ます。ですから、これでどうぞということなんですが、ちょっと別のことで質問という か、意見を申しあげたい。  自民党の年金制度調査会、藤本会長名で出た文書についてですが、これは厚生省が必 ずしも関与してないということではお答えになる立場にないと考えますけれども、国庫 負担をいずれにしても3分の1から2分の1に引上げるという方針が初めて明示された わけです。  これと保険料引上げ計画の凍結解除が同時に行われると理解をしておりますけれども それについて若干の危惧を表明したいと思います。それはどういうことかといいます と、消費税を3%から5%に上げたときがございました。このときに、先行減税という 形で特別減税を実施したんですね。特別減税をやめる時期と実は消費税の税率をアップ する時期が重なりまして、あのとき全体として他を含めて国民負担9兆円の増だという ことが大問題になって、結果的に景気の後退とかそういう話になったわけです。この自 民党の先生方の立場、2分の1に引上げる場合、私の理解では本来だったら保険料は下 げられるはずなんですけれども、保険料引上げ計画の凍結を解除するということと同時 だということですので、私の常識的な判断からすれば、国庫負担を2分の1に上げます よ。 しかし、同時に保険料も引上げますよというふうに理解するのが最も自然ではないか。  そうすると国庫負担2分の1に引上げれば、当然国民負担増が必要なわけです。それ と同時に保険料引上げを同時にやることになると、さらに国民負担は上がるということ でありまして、消費税の引上げをやったときと同じ話になるのではないのか。これは厚 生省が答える立場にいないと思いますので、お答えは不要ですけれども、その旨、私の 意見として申し上げたいと思います。 ○A委員  B委員、お帰りになってしまったので、先ほどの議論は何となく事務局の御説明で終 わりということなんだと思うんですが、1つだけ御質問、要望を1つ申し上げておきた いんですが、代行返上については、今のところどういうふうに扱うかはまだ決めていな いというお話ですが、これは今度出される年金法改正案の中に入れられるわけですか。 つまり、それまでには決めるということなのかどうかということが1つ。 それから、代行の返上ということについては、日経連も連合も従来から主張してきた1 つの大事な項目ではあるのですが、これに関しては代行をしてきたのは、厚生年金本体 を代行してきたわけですから、その代行という機能を返上されるということであれば、 それに相当する積立金は厚生年金本体に移管されるべきだと思うんです。2番目は要望 です。 ○事務局  第1点目は、代行の返上の問題について改正案に入れるかどうか。これは先ほど申し 上げましたように、多々いろいろある問題の中の1つということでありますけれども、 代行返上といっても返して残りは一体何なのかとか、あるいは他の制度との関係がどう いうふうになるのか、税制上の扱いをどういうふうにするのか、いろんな実は問題がご ざいまして、次期改正法案に入れるかどうかについては、まだ最終的には決めておりま せん。 ○A委員  いつごろ決めるんですか。 ○事務局  本体の検討もございますけれども、本体の改正に伴ういろんな基金関係の改正がある のですけれども、いつまでに決めるか、本体を出すときには必ずそれまでにはどうする かは決めるということでございます。 ○会長  よろしいですか。  それでは、全員懇談会をここで一応閉会します。本日の資料はすべて例会どおり公開 することとしますが、よろしゅうございましょうか。               (「異議なし」と声あり) ○ 会長  ここで、引き続き総会を再開します。しばらくこのままお待ちください。報道関係者 が入ってまいります。 ○会長  それでは、年金審議会総会を再開します。  まず、事務局から答申案の朗読をお願いします。 ○事務局  国民年金法等の一部を改正する法律の改正について(答申) 平成11年1月13日厚生省発年第2号をもって諮問のあった標記については、国民年 金制度の中長期的安定を図る見地からは、本来は適切な保険料の段階的引上げを行うべ きであるが、現下の経済状況に鑑み、緊急避難的な措置としてやむを得ないものと考え る。 ○会長  今の答申案に何か御意見がありますでしょうか。これで、よろしゅうございますか。               (「異議なし」と声あり) ○会長  それては、この案文で答申します。  本日は、厚生大臣殿が所用のため御欠席でございますので、年金局長に手渡します。             (会長から年金局長へ答申書手交) ○会長  ここで、年金局長から一言御挨拶をお願いします。 ○年金局長  きょうはこういう答申をいただいてありがとうございます。普通ですと、御答申いた だくと非常にうれしいんですけれども、きょうの答申は非常に苦い味がいたします。国 民年金保険料の凍結をバネにといいますか契機に、国民年金制度の長期的安定を図るた め国庫負担2分の1をめざして努力したいと思っております。そのためには安定した財 源が必要ですので、財源確保について国民の理解が得られるように、これから最大限努 力してまいりたいと思っております。 それから、年金制度全般にわたる制度改正につきましては、これはぜひ今国会できち んとした制度改正を行う必要があると思っております。これにつきましては、いろいろ 内部で検討中でございます。いずれ、当審議会にお諮りをして国会へ提出して、ぜひ今 国会で成立を図りたいとこう思っておりますので、引き続きよろしくお願いしたいと思 います。 ○会長  本日予定されておりました議事は以上で終わりです。  今後の日程について、事務局から御確認をお願いします。 ○事務局  次の年金審議会につきましては、会長と御相談の上、御案内をさせていただきます。 よろしくお願いいたします。 ○ 会長  それでは、本日はこれで閉会します。長時間ありがとうございました。 年金局 企画課 須田(3316)