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医療審議会総会議事要旨

1.会議の日時及び場所

日時:平成11年1月27日(水) 10:00〜12:30
場所:厚生省特別第1会議室

2.出席した委員の氏名(五十音順)

出席委員 欠席委員
秋 葉 保 次
浅 田 敏 雄
有 山 雄 基
井 形 昭 弘
井 部 俊 子
植 松 治 雄
梅 田 昭 夫
大 熊 由紀子
梶 原 優
木 村 靜 子
黒 木 武 弘
近 寅 彦
篠 田 伸 夫
杉 崎 盛一郎
高 梨 昇 三
竹 中 浩 冶
田 中 滋
冨 永 清 次
野 口 敞 也
秀 嶋 宏
邉 見 公 雄
宮 坂 雄 平
柳 克 樹
山 田 美和子
若 林 之 矩
加 藤 順吉郎
行 天 良 雄
松 田 鈴 夫
水 野 肇
諸 橋 芳 夫
黒 川 清
澄 田 信 義
関 山 守 洋
福 間 莞 爾
藤 原 恒 弘
30名 5名

3.議題

○医療提供体制の改革について

4.審議の概要

・ 事務局から、診療記録の保存期間に関する資料の説明がなされ、まず、診療記録の保存期間の関係について集中的に議論がなされた。その概要は以下のとおり。

○ 10年間保存することは結構だが、それを行うためには、倉庫や保管、管理方法等において色々と問題がでてくる。コスト面の手当についても工夫してもらいたい。

○ 5年間、10年間といっても、それがいつから起算してなのかが明確になっていない。その診療が終わった時点なのか、それともその疾病に関しての診療が終わった時点なのか、明確にしていただきたい。

(事務局)保存期間の運用について、現行では転帰が決まった時点からということになっている。今後も同様の運用を考えている。

○ 保険上の転帰と医療法上の転帰には違いがあり、保険上では中止という転帰がある。例えば、同じ疾病が続いている人が一度、中止となり、その半年後に再度診察を受けた場合等、運用する上でややこしい問題も出てくる。法律では5年と決めておいて、あとはその病院の自主的な運用に任せるということでもよいのではないか。

○ 保存をするというのは、ただ積んでおくだけではなく、すぐに取り出せるようにしていなければ意味がない。5年を10年にと急にいわれても難しいのではないか。

○ 歯科の場合にも、長い間保存をするということで大変有利な点があるが、ビルの中で開業しているところが多く、保存場所には大変苦労するのではないか。

○ 現在では電子カルテというものが普及してきており、場所もいらないし検索も容易になる。もっと電子カルテについて推進していくべきではないか。

○ カルテの保存については、原則的には長ければ長いほどよいと思う。それによって無駄な検査等を防げることもあるだろうし、医療費の削減にもなるのではないか。ただ、期間が長くなればそれだけ整理が難しくなるということがある。また、現在は各診療科で保存せず、病院で一括に保存するようになってきているため、一番利用しやすい病院の中心に大きな保存場所を設けるようになってしまい、スペースの有効利用という点でも問題があるのではないか。

○ 保存期間を延長することに関しては、病院よりも診療所の方が、より大変なのではないか。実際に、カルテをずっと保存しているが、10年前のものを探そうと思ってもすぐには出てこない。

○ 必要か不必要かという議論がまずあるべきではないか。それで10年間は必要だということであれば、電子化のことやコストのことも含めて色々検討していくべきではないか。保存

○ カルテを保存して置いておくことは非常に価値があると思う。患者が過去にどのような薬を処方されたか等について、さかのぼり得るようにしていただきたい。そういう意味では診療所と病院に差を設けるべきではないし、むしろ10年でも短いぐらいではないか。

○ たたき台で想定されている必要な経過措置とは、どれくらいと考えているのか。

(事務局)5年を10年に延長するということは、5年間の経過措置では即スタートするということになる。例えば1年延長するのに2年間必要だということであれば、10年間の経過措置が必要となるが、期間については当審議会で議論してもらいたい。

○ 診療録管理というのは、病院の機能評価でも重要項目となっており、とても大事なことだと思う。ただ、その管理には場所も多く使うし、管理する人間も必要になってくる。診療報酬の上でもなんらかの措置があっていいのではないか。また、診療録については、外来よりも入院に関してウエートが大きいのではないか。そういう意味では診療所と病院に差があってもよいのではないか。

○ 保存期間を長くするのはよいことだと思うが、場所等の問題が大きいのもわかる。カルテの書き方、簡素化についても考えてみてはどうか。また、イギリスの例をみると、国営病院と家庭医では期間が違っているということもあるし、診療所と病院の取扱いについても柔軟に考えてよいのではないか。

・ 続いて、「カルテ等の診療情報の提供の在り方」全般について審議をすることとし、以下のような議論がなされた。

○ 診療情報の提供については、まずは日本医師会のガイドラインに沿って、その他の団体や医学界とも連携をとって推進していくことがよいと思う。その上で、不十分ということであれば、また考えていけばよいのではないか。

○ たたき台の中にある環境整備の推進というのは、具体的にどのようなことを考えているのか。

(事務局)診療情報の提供を推進していくにあたって、環境整備が非常に重要であるということから、たたき台の中で示している。具体的には、診療記録の記載内容の標準化や作成管理体制等について、ガイドラインを作成し、医療従事者に対して普及していく等の方法があると考えている。

○ 環境整備の問題に関しては、学生への教育も重要となってくるし、文部省との連携も含め、ぜひ強力に推進してもらいたい。

○ 診療録管理士というものがあるが、医療職でもなく、また診療報酬上の手当もない状態であるため、身分なり診療報酬点数なりの手当についても考えてもらいたい。

○ 診療記録の管理というものは、非常に重要な仕事であるが、非採算部門であるため、病院の経営を圧迫していると考えられがちである。費用の面の手当は必要ではないか。

○ 「ガイドライン」については、あくまでも団体の中の内部規範であるため、それ以外のものに対しては強制力を持っていないし、外部から「ガイドライン」の中身について、不利益を訴えることもできない。医療情報の開示については、医療を提供する側もそれを受ける側も双方が了解し、認識するという規範的なものを提供することが必要なのではないか。そういう意味では法制化が最も有効かつ適切な方法ではないか。

○ 法律によるのではなく、裁判による司法的手当をすればよいというのもひとつの方法かと思うが、裁判の場で争うことも信頼関係には反することであろうし、医師の側に強制力を持つという点では法制化することと変わらないのではないか。また、事前に裁判所の介入ができるアメリカのような状況には現在の日本はなっていないのではないか。

○ インフォームドコンセントの現行規定の中には、診療情報の開示も概念的に含まれているのではないか。ただ、国民の認識はそこまでいっていないと思うが、医師の教育等、様々な問題があるため、まず「ガイドライン」に沿ってやってみるというのもいとつの解決方法ではないか。 、

○ 医師と患者の信頼関係をいかに醸成するかということでいえば、医師が患者の様子を見ながら個々の事例で判断するものではないか。医師の倫理に関わる問題であり、法律で縛るというのは、馴染まないのではないか。

○ 現在でも医師はカルテを見せながら説明を行っている実態があり、それは特に地方の中小都市が顕著であると思われる。環境整備のなされていない段階では、カルテの書き方ひとつによっても色々なトラブルが起こることが考えられるため、法制化は時期早尚なのではないか。

○ 今の議論は、以前にインフォームドコンセントが法律に規定された時と状況が似ていると思う。その時も様々な危惧がいわれたが、実際にその後の経過をみてみると、医療関係者側、国民側双方の認識、理解が急速に高まったていった。今回についても同様で、法制化をすることによって、医療関係者と国民の理解、考え方の整理を促進することができるのではないか。

○ 最終的には法制化するのがよいと思うが、3年後に施行というふうに決めるのではなく、「ガイドライン」の浸透状況をみて、改めて施行する日を定めていくということでもよいのではないか。

○ 現在の規制緩和の流れの中では、それぞれの関係者が自らのルールを作り、きちっとやっていくということは非常に大事であるが、公的な情報については、法律で規定する方がよいのではないか。また、カルテの標準化や電子化、コストの問題等については個々の問題としてではなく、ひとつのシステムとして構築していくべきではないか。

○ 医師の倫理、看護婦の倫理という立場で情報提供をするというのではなく、患者の権利を保障するということを前面に出して考えるべきではないか。

○ 法制化に賛成するというのが国民の声であり、たたき台の中にある公布後相当の周知・準備期間を置くことや、遺族を開示対象としないということは、多くの国民が望んでいないことではないか。また、カルテの書き方の教育の問題や診療録管理士の身分等についても法制化をすることによって改善されていくのではないか。

○ 法制化をすることによって、患者の側も自己責任を負う、義務を負うということを明確にしてもらいたい。

○ 例外規定の、遺族についても当然開示をすべき、また、第三者の利益を損なう場合というのはどういうケースがあると考えられるのか。

(事務局)例えば、紹介状などに含まれる情報で、その患者について特別なことを指摘してあった時に、それが紹介者からの情報だということが開示されると問題になる場合があり得るのではないか。

○ 医療に対する社会的関心が強くなっている現在、職業団体の倫理や自主的な規制というもので対応するのではなく、公的な制度としてきちんと法律に書くということが求められているのではないか。いままでの医療法の改正の流れや、環境整備を推進していくことにとっても法制化することがよいのではないか。

○ カルテの電子化については、書き換えが容易に出来てしまうという点もあるため、その対策についても考えるべきではないか。

○ 診療記録の種類については、医師の書く診療録や助産録のように法律に規定されているものもあれば、看護記録のように規定されていないものもあるが、実際の現場ではチーム医療の概念が普及してきており、それぞれの記録が分離されていない場合もあるので、その点についても留意してもらいたい。

・ 続いて、事務局より「広告規制を緩和した場合に考えられる事項」について資料の説明がなされた後、梅田委員より提出された資料の説明がなされた。その後、広告規制の在り方について議論が行われた。その概要は以下のとおり。

○ 学位の有無などという、紛らわしいことを広告するのはいかがなものか。例えば、医学博士というのはひとつしかなく、外科を標榜している医師が全く関係のない分野で医学博士をとっている場合もあるので、誤った情報として伝わる可能性があるのではないか。

○ 患者が間違って誘引されること、望ましい医療体系の在り方の進展を阻害するものはいけないというのが原則なのではないか。そういう点からすると、原則自由化というのは、医療の世界にはなじまないため、現行の規制をポジティブリスト方式のまま緩和していくことが適当ではないか。また、病院と診療所に差を設けるということは、規模の大小で区別するということであり、納得がいかない。

○ 原則自由ということにして、肖像写真や学歴などについて広告することはいかがなものか。必要な情報について緩和していくということであれば、ポジティブリスト方式のままで十分ではないか。

○ 事実といっても、受け取る側によって違いが出ることもあるため、事実ならば何でもよいというのは、いかがなものか。
○ 広告という問題に関してはメディアの変化が非常に大きく、これをどのように規制するかというのも議論すべきではないか。

○ ポジティブリスト方式とネガティブリスト方式のどちらがよいかという問題は、どちらにした方がわかりやすいかという問題であり、それを明文化した時にボリュームが小さくなる方を選択すればよいのではないか。原則自由としてネガティブリストをしっかりとしたものを作るのがよいと思う。

○ 原則自由というと、イメージ広告を氾濫させて、本当の事実の表示というものから脱線し、国民が混乱する恐れがある。そもそも広告というのは、任意にやりたい人だけがやるものであり、むしろ制限がかかっている方が自然なのではないか。

○ 原則自由にしたら、患者に対して誤った情報が流れると単純に考えるのはどうか。国民にはきちんと判断できる能力があるのだから、情報は多ければ多いほどよいのではないか。

○ 日本公共広告機構のような、広告をチェックできる機関が必要ではないか。

○ 原則自由となると、イメージ広告的なものや虚偽、誇大に近い広告も増える可能性があるのではないか。そうした場合に本当にきちっと取り締まることができるのかどうかの危惧がある。

○ 現実には、国民は直接病院を選んでいるという状況にあり、病院の情報こそが望まれていると思うが、診療所にまずかかって、そこから病院を紹介していくという理念から考えると、国民の直接の窓口となる診療所が、より多くの情報を提供していくというのはわかる。

○ 専門医、認定医の問題については、それぞれを認定する団体にも差があり、混乱を招く恐れがあるため、十分に議論をしてもらいたい。


照会先
 健康政策局総務課 青木(内2513)


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