98/11/19 第11回成人病難病対策部会臓器移植専門委員会議事録  第11回公衆衛生審議会成人病難病対策部会  臓器移植専門委員会議事録   平成10年11月19日    10:00〜12:00    法曹会館「高砂の間」 出席者  (○:委員長 敬称略)   大久保 通方  大島 伸一   大塚 敏文   桐野 高明  ○黒川  清   小柳  仁   田中 紘一   谷川 久一   野本 亀久雄  藤村 重文   町野  朔   眞鍋 禮三   森岡 恭彦   山谷 えり子  1.開 会  2.議 題       (1)臓器移植の現状について       (2)臓器移植普及推進月間(仮称)の設定について       (3)臓器移植コーディネーターの研修について       (4)アイ・バンク事業における検討課題について       (5)臓器提供に関する意思表示の方式について       (6)その他  3.その他 ○事務局(成瀬) 定刻になりましたので、ただいまより第11回公衆衛生審議会成人病難病対策部会臓器 移植専門委員会を開催します。 最初に本日の委員の出席の状況でございます。井形委員、座間委員、矢崎委員から欠 席とのご連絡を頂いていることをご報告いたします。続きまして事務局の異動につきま してご報告させていただきます。 本年7月の定期異動によりまして、前小林保健医療局長が健康政策局長に異動となり 後任といたしまして伊藤保健医療局長が着任しておりますことをご報告いたします。で は局長、一言ご挨拶をお願いします。 ○伊藤局長 7月に人事異動がありましてから、最初の移植専門委員会でございますので一言ご挨 拶をさせていただきたいと思います。本日は大変お忙しい中、委員の皆様方ご参集いた だきまして、誠にありがとうございました。ご承知のように昨年6月の臓器移植法の成 立以来、実は10月に施行になったわけでございますが、以来、脳死状態からの臓器移植 がまだ一例も行われていないという状況にございます。厚生省といたしましては、関係 各位のご協力の元に、国民への移植医療の普及・啓発、意思表示カードの普及など、そ の他、肺の移植に関します環境整備などを行ってきたところであります。 特に前回の本委員会のご意見を踏まえまして、本人意思の尊重という観点から本年6 月26日に臓器の移植に関する法律の運用に関する指針、ガイドラインでございますが、 これを改正しまして、臓器提供施設96から340 余りに拡大したところでございます。 本日はこうした法律施行後1年間の状況につきまして、事務局よりご報告させていた だきますとともに、その経過の中でいろいろ問題点が浮かび上がってきているわけです が、それをご検討いただきたいと思います。 正直なところ、私もいろいろと話しを伺いまして、難問が山積しているという印象を 持っておりまして、何とか私どもも移植医療の普及定着のために、努力していきたいと 考えておりますので、委員の皆さま方に今後ともご協力お願い申し上げまして、ご挨拶 にかえさせていただきたいと思います。 ○事務局(成瀬)  会議を始める前に、資料等の確認をさせていただきたいと思います。既に配付してお りますものです。 最初に、第11回臓器移植専門委員会の議事次第でございます。続きまして委員の名簿 です。続きまして委員の配置図でございます。次が第11回臓器移植専門委員会資料一覧 でございます。 資料1−1 臓器移植の現状について 資料1−2 臓器移植の実施状況 資料1−3 臓器提供意思表示カード配付状況 資料1−4 移植関係統計 資料1−5 意思カードによる情報 資料1−6 臓器移植に係る医療施設の整備状況に関する調査集計結果の概要 資料2 臓器移植普及推進月間(仮称)の事業概要(案) 資料3−1 臓器の移植に関する法律案に対する付帯決議 資料3−2 移植コーディネーターの研修 資料4 アイ・バンク事業における検討課題 資料5−1 臓器移植の法的事項に関する研究 資料5−2 ドナーカード取扱い改善に関する要望書 (社団法人全日本鍼灸マッサージ師会) 参考資料1 ドイツの臓器移植について 参考資料2 臓器提供意思表示カードに関する地方自治体の取り組み 以上でございます。お揃いでございましょうか。不備等がございましたら事務局まで お申しつけ願いたいと思います。では黒川委員長よろしくおねがいします。 ○黒川委員長 先生方おはようございます。久しぶりの専門委員会でございます。丁度移植の法律が 施行されましてから1年少したちました。その後の状況を先生方とシェアしながら、こ れからの検討事項もいろいろありますので、ご意見を伺いたいと思います。 では資料に従いまして、その後の状況ということについて、勿論、ご存じの先生も多 いと思いますが、資料にしたがって事務局の方から説明していただきたいと思います。 よろしくお願いします。 ○朝浦室長 資料1−1から資料の1−6までの現状説明ということで、この資料につきまして簡 単にご説明させていただきたいと思います。 資料の1−1、臓器移植をめぐる1年間の動きということです。 前回の委員会にも出させていただいたものに、その後の状況を追加したものでござい ます。2枚目ですが、前回は6月17日に専門委員会を開催させていただきました。その 後の状況を説明をいたします。 6月18日に「臓器移植の実施状況に関する報告書」を参議院の国民福祉委員会に提出 をしております。法律ができるときの参議院の特別委員会で臓器移植の状況について、 国会に報告をするようにという付帯決議がなされておりまして、それを受けて、厚生省 の方から参議院の委員会の方にその状況報告をしたというものでございます。 6月26日、先程局長の方からご挨拶がありましたが、ガイドラインの一部を改正しま して、臓器提供施設の拡大を図っております。6月中旬から9月の上旬に向けまして、 全国の7ブロックで臓器提供施設の拡大をしたことを受けまして、対象となる施設にお 声を掛けて、ネットワーク、厚生省と一緒になって説明をしております。 8月7日でございます。薬局・薬店関係の団体であります社団法人日本薬局協励会と いうところに、そのカードの設置について協力依頼をしております。 10月14日です。「臓器移植に係る医療施設の整備状況に関する調査」をして、その結 果を公表しております。詳しいことは後ほどまたご説明をしたいと思います。 資料の1−2です。臓器移植の実施状況です。 1.現在の移植実施件数です。法律が施行された後の状況です。残念ながら心臓、肝 臓、肺につきましては、脳死した者の身体からの移植の例がないということです。腎臓 に関しましては心停止後の移植の実績が159 例ございます。 2.ネットワークに登録されている移植希望患者数の10月31日現在の数字でござい ます。心臓が17名、肝臓が29名、肺が4名、腎臓が13,987名という状況でございます。 3.意思表示カードの配付状況はまた後ほど表でご説明します。この1年間で約2,570 万枚の配付をしております。ただ、この2,570 万枚が全て一枚一枚、国民の皆様方の 手元に届いているのかということにつきましては、実態調査等をやっておりませんので 今の段階で申し上げることはできません。 4.臓器提供施設につきましては、先程説明した通りでございます。このガイドライ ンに書いてある大学附属病院及び日本救急医学会の指導医指定施設から、それに加えま して日本脳神経外科学会の専門医訓練施設(A項)と救命救急センターとして認定され た施設を追加して、約380 施設を臓器提供の可能施設にしたところでございます。 5.移植実施施設としては、心臓3施設、肝臓2施設、肺4施設という状況になって おります。 次に資料1−3でございます。臓器提供意思表示カード配付状況です。 全体で約2,570 万枚でございますが、内訳を申し上げます。行政や自治体が750 万枚 郵便局220 万枚、国民健康保険の関係、これは市町村が保険者になっている国民健康保 険の保険証の切替えのときに、一緒にドナーカードを配付していただくということで、 国民健康保険の関係部局に協力を依頼しまして、それぞれの保険者の方からアンケート でいただいたカードを配付をしている数です。平成10年度に切替えを迎えるところに現 在注文を出しておりまして、その結果、現在730 万枚が配られているということでござ います。ただこの中には、実際に世帯に配っているところもあれば、事務所の方に置い てあるというところもあるようでございます。国立大学・短期大学の例えば学生課の窓 口あたりに置いていただくということで140 万枚くらいのカードを配付しております。 ネットワークを中心とした様々な団体に配付しております。腎バンクも非常に協力して いただいておりまして140 万枚くらいの配付になっております。 次に資料1−4です。移植関係の統計ということです。 特に腎移植につきまして2ページに今年度の移植の件数が出ております。現在4月か ら10月までの統計で見ますと、提供数が41、移植数が74という状況でございます。これ を昨年度の同時期と比べますと、昨年度は47の提供があり、移植が89ということでござ いますので、若干下回っているという状況でございます。 次のページです。時期はずれておりますが平成9年4月から12月までの統計です。各 都道府県間における腎移植の状況を付けさせていただいております。例えば23番の東海 北陸の愛知県を見てみます。県内の移植の腎数、左から4つ目くらいの段ですが、摘出 の腎数が28ございます。実際に県内で移植があったのが12です。右の欄のバランスで −16ということです。愛知県においては、摘出の件数の方が移植の件数を16上回ってい るという状況でございます。各県それぞれご事情があり、また環境もかなり違うわけで すが、出入りがかなりあるという状況でございます。 次に資料1−5です。意思表示カードによる情報提供の状況でございます。 法律施行後、ドナーカードを持って亡くなった方で、ネットワークの方に連絡があっ たケースが、10月末現在で36件ございます。この中で、どういうことが言えるのかとい うことは、決定的なことは申し上げられませんが、36件の提供したものを表にしたもの が3ページ以降のものでございます。 情報の受信時期です。心停止後が25件で圧倒的に多いです。通報者を見てみますと、主 治医からあったのが約半数、家族からあったのが10件、あと警察、このようなところか ら情報があるようでございます。情報の受信地域をブロック別に分けたものが あります。 関東甲信越地域が多いという状況でございます。 亡くなった患者さんの原疾患を見てみますと、自殺が3分の1で12件です。悪性腫瘍 が9件、拡張型心筋症が3件、というようなことで、亡くなった方の臓器そのものがな かなか移植に馴染まないというケースがあるという状況でございます。 次のページ、年齢別に見ます。各年齢それぞれこのような状況になっております。 資料1−6に移らせていただきます。臓器提供施設の現在の実施状況でございます。 10月1日現在、臓器提供可能施設と考えられる施設に、厚生省から郵送で調査票を送 りまして、郵送で回答をいただいたというものでございます。 384 の施設に郵送したわけですが、そのうち、既に臓器提供施設としての体制を整え ているという施設が168 施設ございます。その中で、臓器提供施設として公表してもい いという施設が167 ございまして、そのリストが次の3ページ以降、各県ごとに付けて ございます。大体、現状としては以上でございます。 ○黒川委員長 ありがとうございました。前回のことからのデータのフォローアップでございます。 1年1ヵ月たったことを踏まえて、何かご意見をいただきたいと思います。資料の1− 1はこの間に起こったイベントであります。 ここにありますように6月26日、臓器提供施設をここでのご議論を踏まえて広げさせ ていただいたわけですが、その後、全国いろいろなブロックで提供施設とのネットワー クが中心になっておりますが、いろいろな説明の会とか質疑応答がありました。その意 味では、ある程度それぞれのブロックが定期的に行うのではないかと思いますが、お互 いのコミュニケーションをよくするという意味では大変に良かったと思います。特に提 供施設の救急の先生方からいうと、今までは十分な情報がなくて、こういうものをやっ ていくのは、協力していく上で極めて大事だなという感じがしました。これについては 何かご意見はありませんか。 次に資料の1−2にまいります。臓器移植の実施状況は、今、事務局からご説明があ った通りです。1ページ目からです。勿論、心臓・肝臓・肺については、脳死からの移 植は1例も行われていないということであります。ここにありますように、肝臓・腎臓 は生体間移植も行われておりますし、腎臓につきましては死体腎ですが、先程もご報告 がありましたように、資料の1−4にありまして、未だ十分な症例ではなく、過去3年 に比べると1割ちょっとくらいペースが落ちているという現状であります。 移植の実施施設です。資料1−2の2ページです。肺が更に加わって4施設加わってい るということです。 ○小柳委員  生体肺移植がありましたので、(注)のところですが、肝臓、腎臓と肺も行われたと いうことです。 ○黒川委員長  はい。では次に資料の1−3です。臓器提供の意思表示カードの配付状況です。いろ いろなところから配付していただいています。2,500 万という現在です。これはどう実 際的に皆さんに渡るのかという話、それぞれの場所で工夫していただいているところだ と思います。 資料1−4の移植希望者の登録者の統計、現在のところは、勿論、腎臓が一番多いわ けです。実際に行われている移植の件数が2ページ目にありまして、過去3年間の実績 と今年の10月一杯までの成績が出てまして、過去に比べると、少しペースが落ちている ということです。特にネットワークの事務局としては、随分頑張ってコーディネーター の教育とか、コーディネーターが時間がある限り、ブロック内のいろいろな施設を回っ ているのですが、マンパワーの不足などもありますが、確かに行ってみるとコミュニケ ーションがよくなるところがあるということです。各ブロックセンターではそういうこ とを積極的にやっていると思います。時間とその他で、そういうことはこれからもどん どん進めないといけません。 3ページです。献腎・移植・シッピング実績というのがあります。この真ん中の提供 先のブロック内、県内、県外というところ見ていただきますと、東北、北海道はこうで すが、関東甲信越は3と29、東北はこれが11と28、近畿が7と14、中国四国が0と16、 九州沖縄が0と4ということですから、何をいっているのかというと、同じブロック内 でよりよいマッチを求めて、都道府県の行政地区の県境を越えているということで、移 植の成績は一般にフェアで公平・公正なディストリビューションが行われているという ことだろうと思います。 全体のバランスをみるとそれぞれがプラス・マイナスです。先程事務局からコメント がありましたが、愛知の−16を除けば、みなは一桁代のプラス・マイナスでありまして これも移植の数が増えてきたら、段々平均されて突出したことはなくなってくるのでは ないかと思います。 資料1−5、先生方のコメントはいろいろあるのではないかと思います。意思カード です。去年の法律を施行されてから現在まで、意思カードがいろいろな恰好で情報があ ったのは36件です。36あったのですが、その内の3分の1の12件が自殺というのがあり ます。自殺をさらに右側を見ていくと死亡確認後の連絡とか、心停止後家族から連絡が あったとか、遺品の整理中に発見されたとか、死後二日目の連絡とか、いろいろなこと がありまして、状況が少しずつ推察されるかと思います。 こういう残念な状況が幾つかあるというのは、自殺しないとならない方は非常に気の 毒な状況ではあると思います。多分も話をしたのですが、死亡後の遺品の整理中という のですね。これは5月の中旬に亡くなったのですが、遺品を整理していたらあったとい うので、7月に連絡があったのですが2ヵ月後です。ですから情報といっても、そうい うのがありましたという情報をいただいたということで、丁重にお礼をするということ だと思います。こういう状況であります。 資料1−6です。提供施設を拡大させていただいて、いろいろな説明会をさせていただ いて、現在の状況についての案件の調査の結果ということです。半分少しが体制を整え ているということです。今準備をしているというところがありまして、両方併せると殆 どの施設は協力するという意思はお持ちであるということではないでしょうか。そうい うのが経過報告です。どうぞご意見がありましたらお願いします。 ○野本委員 移植学会の理事長としてではないのですが、今一番しないといけないのは体制整理だ と考えております。厚生省・ネットワーク両方の共同事業として、日本中飛び回ってま す。私の考え方は臓器提供というのは、全国ルールが共通でないといけない。したがっ て、法律家の先生はじめ、各学会のリーダーの方々、更に各グループの実際の提供施設 の方々と話し合をするというのを、やっと終わりました。6つの学会と7つのグループ です。これで大体縦の糸の提供のシステムに関しては、皆さんに共通の認識をもってい ただいたと思います。 現場を見てみますと、都道府県ごとにシステムが違います。これは統一の仕組みでこ れでやるというと反発を受けます。全部勝手におやりくださいというと困ったことにな る。ということで、各都道府県の自主性と全国共通の線はよく考えないといけない。全 国の都道府県を全部回って、お願いするというので、ようやっと7つの都道府県だけ通 せました。とのときの窓口が医師会てあったり、地方自治体であったり、医科大であっ り、様々にそのときの一番その地域の人に声をかけられる窓口に声を掛けて いただいた。 その時にこれは是非ともしておかないといけないということで気をつけているのです が、県のコーディネーターの方々が、そういうアクションに直接参画して、一緒に働け るような雰囲気を作ろうということでやっております。ちょっと申し訳ないのですが倒 れて、漸く体調が戻ってきたので再び動こうかと考えてます。 この専門委員会の先生方はいろいろな情報があるので、こういうところにはこういう ラインからアクセスしたらいい、というようなことを厚生省の窓口なりネットワークと か私にお教え願いたいと思います。 その地域で一番いいチームが作れるところからアクセスして、最終的には行政も全部 参画して、話し合うという形をとってます。それが最初から全て行政を窓口にすると、 関心の薄いところでは、そこで切れるのです。だから一番アクセスし易いところにまず アクセスしてお願いして,共通に話し合いをする機会を作るというやり方をしておりま す。 今言いましたように、例えば福島県の場合には、県立医大でして知事さんが腹を決め てくれているので、医科大学の学長さんが窓口になっていろいろなことをやってくださ るというアクセスができました。県によって随分違いますので、その事情もお教えねが えると喜んで飛んでいって話し合いをするということになると思います。 地域に定着しているコーディネーターの人達が活動できる社会的な条件を作らないと どうにもならないということです。それだけはやる覚悟でおります。 ○黒川委員長 ありがとうございます。野本先生はネットワークの副理事長というお立場もあります が、これが発足してから全国を回っていただいております。ボランタリーに回っておら れますが、本分はどうなっているのかと心配しております。しかもそういう旅費がどこ から出るのかというと、自分のを殆ど使っておられるようです。本当に頭の下がる思い がします。 これは全くこの立場での発言ではなく、私どももブロックセンターとしての立場から いうと、提供施設の先生方といろいろミーティングをさせていただいたし、コーディネ ーターがいって説明をすると、随分よくなってきます。それと場所によって、先生方の 考え方、今までの都道府県の歴史、バンクの歴史がいろいろありまして、コミュニケー ションを図るというのにはどうしたらいいのかということを、お互いに話し合うのが非 常に大事だと思います。 ○大塚委員  野本副理事長には大変に献身的な努力でやっていただいております。大分意識が高ま ってきたのは事実です。シンポジウムなどではやっているのですが、私から言わせれば まだ低調です。やはり本質的なところ日本救急医学会のメンバーの方々の集約する意見 というのは、臓器移植と救急医療とがかみ合わない。全く歯車が合わないということで しょか。 ですから今回6月に施設を拡大していただきましたが、私が申し上げた通りにやって おりません。ということは結局、施設の問題ではなく、その施設に臓器移植にどのくら い関心をもっているドクターがいるかということにかかると思うのです。ですから多く の施設であっても、そういう医者がいないと、カードを持っているかどうかも、全く問 い合わせをしないという状況が事実だと思います。 しかし、臓器移植にかなり前向きのドクターがいるときには、直ぐにカードをもって いるかと聞いてくれる。そして直ぐに家族に問いかけるということが実例だと 思います。 具体的に私のところの救命救急センターは、かなり前は沢山出ていたのです。それは、 私のところに極めて臓器移植に前向きのドクターがいたのです。ところが今は派遣で外 に出てしまったら止まってしまったという状況があるらしいのです。よその施設でも、 同じことが言えるのではないかという感じがします。 ○桐野委員  脳外科の方は10月の脳神経外科学科の総会で、特別シンポジウムということで脳死の 問題を取り上げました。厚生省及び移植側から寺岡先生と北海道大学の藤堂先生、脳神 経外科学科側から貫井先生の臓器移植に関する委員会がありますが、その委員長が報告 しました。最後に野本先生には時間がなくなってしまって申し訳なかったのですが、お 話をしていただきました。私は司会をしろということでしたのですが、大変な好評で、 時間はほとんど皆が帰ってしまうような時間であったにもかかわらず、かなり沢山の方 で立ち席が出る状況でした。後でいろいろな方から非常に良かったということで、もう 一回やってくれということで来年もまたやらないといけないということに なりそうです。 ただ脳外科のそれぞれの施設の医師の問題については、救急の場は大塚先生がおっし ゃったことと似ているのだろうと思います。ただ、非常に関心をもっている脳外科医は かなりの数いて、まだ状況を見ているというのが実情ではないでしょうか。 ○黒川委員長  確かに、大塚委員と桐野委員がおっしゃられましたように、救命救急センターとか、 提供側の先生の協力は必須であります。ただ協力協力といってもしょうがないので、お 互いに意見を深める、理解を深めるということです。それはお医者さんだけではなく、 国民全体の問題であるとは思います。その辺について、実際に関わっておられる委員の 先生方何かコメントはありますか。田中委員。 ○田中委員  移植をする側は別のがあるのですが、ただ近畿でも、臓器提供の先生方と話をする中 で、次第に皆さんの考え方が少しずつ変わってきているのは事実です。だから今大塚先 生がおっしゃられた、どのくらい関心のある医師がいるかが問題であるというのが問題 の大きいポイントであれば、これはいろいろと話をする中で、解決しうる問題でもある と思います。 ○黒川委員長 そうですね。今の桐野委員の話を聞いてもそうではないかと思います。 ○大島委員 1年以上たって1例も出てこないというのは、私たち移植をやっている医者の中では かなり難しいだろうと思っていたところはあったのですが、まさかというのも 本音です。 それの原因を考えてみますと、書面での意思表示は大前提でありますので、これはカー ドをいかに普及して、沢山の方にもってもらうのかというのが一番大きな問題になると 思います。 2番目にはもっている人の情報が、確実に上がるかどうかというのが2番目の問題で す。今日の30数名の方の情報を見ましても、非常にタイミングよくきちんと情報が上が ってくれば、臓器提供に繋がったというケースも幾つかあると私は理解をします。 日本の状況は、書面での意思表示は大前提ですので、その状況でどのくらいの臓器提 供が見込まれるのかということを考えると、欧米のどこの国でも、全体の移植数の恐ら く数%くらいしか書面で意思表示をしている国はないという実情を考えると、極めて限 られた数にしかならざるを得ない。その限られた数を、どうやって臓器提供に結び付け るのかということになりますと、持っているか、持ってないかということを、現場でい かに確認するのかということです。持っているということを確認された場合に、脳死状 況になったら、必ずその連絡が回ってくるという二つが満足しないと、これはどうにも ならないことだろうと思います。 一つは先程から出てますように、パーソナルコミュニケーション、あるいはその現場 に直結している国民全体を含めて、臓器を提供したいという人の人権というと非常に大 げさな話になりますが、その人の人権をきちんと保護するという形で、その意思が明快 になっている人の臓器提供をきちんとさせるという意識が、国民全体に浸透して、特に 直接影響のある現場で、臓器提供に関わるドクター、あるいは医療関係者が、そういう 意識でもって考えていただくというような、これはかなり.パーソナルコミュニケーシ ョン的なニュアンスが強いかと思いますが、そういう運動は地道にずーと続けていかな いといけないと思うのです。 そのこととは別に、パーソナルコミュニケーションから同時、あるいはパーソナルコ ミュニケーションから一歩進んだ形でのシステム化ということも、何らかの形で考えて いっていいのではないか。例えば持っているかどうかということを確認するということ これを義務化させるということになると大げさになりますが、それを何らかの形で確認 する、意思表示カードを持っているかどうか確認する、そして、持っているということ が確認されて脳死状況になったら、それは必ず情報として上げてくるということを、何 らかの形でシステム化する。実際にはそれを法制化して義務化している国もあるかと思 いますが、そういうことが日本の事情に合うのかどうか分かりませんが、何らかの形で システムとしてそういうことを取り上げるということも必要ではないかと考えます。 ○大久保委員 今の先生の件です。私は義務化することは日本の医療状況では非常に難しいと思いま す。それであれば、私たちが考えているのは、まず情報が上がって、必ず持っているか 持ってないか尋ねる、それの確認をネットワークなりに報告をすると、これが保険点数 に付くというような、ある程度の裏付けをもって、行為自体が医療行為の一環となるよ うな方策を取らないと難しいのではないかと思います。 だから、今はとりあえず尋ねるように努めるとなっているのは、努めても努めなくて もいいわけです。そうかといって義務化するのも非常に難しい。それならあなたはドナ ーカードを持っていますか、意思表示はありますか、ということを尋ねて、それで向こ うがありませんと言うならそれでいいわけです。ありませんならありませんということ を必ずネットワークに報告する、すると保険点数が付くというような、別の方策を考え ないと、なかなか日本ではかなり多くのお医者さんが、尋ねてくださるという状況は出 来ないのではないかと思います。 ○黒川委員長 ありがとうございました。いろいろご意見があると思いますが、後で発言していただ きたいと思います。次に進めます。一般にヨーロッパでも、臓器が段々不足していると いうことになっていて、法律というかいろいろな議論をして法律にすると、途端に減る のです。実際に減っているのです。ですからいろいろなことをするほど、冷えていくと いうのはヨーロッパでもあるようです。オーストリアではハプスブルグ家の法律という のがあって、死んだ人は必ず解剖するというような法律のあるところは、死体に対する アプローチが全然違うのですが、そうでないところは、そういうことをやればやるほど 冷えてくるというのはあるようです。それも考えないといけないかなと思います。 次に進ませていただきましてよろしいでしょうか。「臓器移植普及推進月間(仮称) の設置について(案)」でございます。 こういうことで皆さんが、臓器移植はいいものだという意識が、全体として上がって いくということの方が大事なわけです。そうなるためにはキャンペーンとかドナーカー ドということもありますが、今以上に、救急の先生とか現場の先生だけではなく、全体 としてそういうことをサポートする意識レベルというのが大事ではないかと思います。 その方策の一つとして、この間厚生大臣から臓器移植普及推進月間の設置というのは どうかという話があったので、それを受けて、ここで先生方にご検討いただければと思 いますので事務局からよろしくお願いします。 ○朝浦室長 資料の2です。「臓器移植普及推進月間(仮称)の事業概要(案)」ということでご 説明いたします。先般、厚生大臣の方から事務局の方に、臓器移植普及推進月間という ものを作ってみてはどうかと指示がありました。現在、腎臓につきましては毎年普及推 進月間がございまして、それが10月に開かれて、今年も全国大会を広島県で行います。 もう少し幅広く臓器全体のことを考え、あるいは普及推進するような取り組みにしては はどうかということを、事務局にご指示がありまして、それにつきましては、この専門 委員会で基本的な方針について図ってほしいというご指示がありまして、本日この議題 にさせていただいたわけです。 基本的な方針としまして、主催をどこにするか、あるいは後援とか、月間の事業内容 などのようなものを考えるか、ということでここで書いてございます。腎移植推進月間 につきましては、主体としては厚生省、都道府県、日本医師会、ネットワーク、腎研究 会、透析医会というのが主催になっております。後援もいろいろなところに入っていた だいております。 月間の事業内容につきましては、腎移植推進月間の際には全国大会、各都道府県にお いて、それぞれ患者団体の取り組みでキャンペーンをしていただいているということで ございます。 事業内容について、基本的にはシンポジウムとか民間の公開講座とか、あるいはドナ ー家族の集いとか、チャリティーマラソンとかここに書いてございますが、先生方にも これについてご意見を伺えればと思っております。よろしくお願いします。 ○黒川委員長  このような月間(仮称)ですが、実際には腎移植普及推進月間というのが10月にこの 前広島で全国大会があったわけですが、こういうことについていかがでしょうか。ご意 見を自由にお願いします。 腎移植推進月間というのではなく臓器移植普及推進月間となります。 ○大久保委員 希望を出した患者団体としては、今年の4月に一度要望書の中に入れて、また先日厚 生大臣にも、臓器移植推進月間に換えてほしいということでお願いをしております。そ れは去年の法律でこういう方向で国をあげてやっていただきたいということを考えてお ります。恐らく、来年もし決まれば、それに併せて、患者団体もそういうイベントとか の催しをやらせていただくことになると思います。是非、積極的にこの方向で考えてい ただきたいと思います。 ○山谷委員 誠にこの1年、脳死移植0ということで、手足を縛ってしまうような形のものであっ たのだなということを、改めて思っております。正しく知るということと、体験者の話 を聴くということで、国民に接する機会が今は全くないのです。先日、腎移植推進月間 の中に、臓器移植も含めて、アグネスチャンと私と養老孟先生と、ゾウの時間ネズミの 時間の本川達雄さんとで、トークをやったのです。それは割と宗教的な生命感とか日本 民族がどういう共同体を作ってきたのかとか、生物学的に考えたらどうかという非常に 広い、つまり命を考える、その中で臓器を皆さんはどう考えますかというような広いア プローチであったのです。 この臓器移植普及推進月間というのは、名前もこれで構わないのですが、もっと広く 命を考えるというようなアプローチの方が国民には入りやすいかと思うのです。日本人 はまだ儒教的生命感に非常に影響されている部分があって、その辺をクリアしていかな いと臓器移植というキーポイントだけを取り上げても、すんなり入っていけないのでは ないか。窓口としては後援はその時にはライオンズクラブが後援をしてくれていたので すが、公民館とか今は労働組合が、この意思表示カードでも随分頑張っていてくれてい るようですが、公民館活動とか労働組合とかPTAのような社会教育活動とか、あるい は学校で子供たちに総合学科でいろいろな意味で命を考えるということの中に、こうい うものを入れてみたりとか、仏教団体は必ずしも積極的ではないのですが、キリスト教 というのは、身体髪膚これを父母に受け、敢えてキショウせざるは孝の始めなりという 儒教的な生命感ではなく、神から体をいただいているだから、臓器をあげるのは素晴ら しい愛の行為であると考えていて、キリスト教団体は非常に積極的なんです。 その意味でいろいろなもっと大きなアプローチの仕方を考えていった方が、割合とす んなり広がっていくのかなと考えます。 ○黒川委員長 そうでしょうね。一つは山谷委員のおっしゃる通りだと思います。今のところは日本 はこれはもっとボランタリーな団体、もうちょっと民間から出てくる運動をしましょう という話が出てこないと、本当はいけないのだが、日本だとお上がやってくれないとと いうことになって、そうなるとマスコミが騒ぐという話かなという気がします。 たがらマスコミも、市民団体とかいろいろなところにバイアスがかかってない、トー ク番組とか対談をやっていただけると本当はいいですね。 ○眞鍋委員 臓器移植普及推進月間、実をいいますと10月10日が今度代わりまして体育の日は連休 になるように第一月曜に代わるということが決まりました。それまで10月10日は目の愛 護デーということで、我々眼科医にとりましては全国的な失明予防に関するキャンペー ンをやってました。アイバンクができてから、角膜移植や献眼のキャンペーンを、それ に関連づけてやってまいりました。 今年、角膜移植に関する法律ができて40周年に当たったものですから、角膜センター アイ・バンクが主催してくださって、ドナーファミリーの会を開きました。資料2の中 にもドナー家族のつどいとか、チャリティーマラソンとか書いてありますが、そういう ものを企画してくださいまして、厚生省の方からも応援いただきまして、皇居の周りで マラソンをするというような、視覚障害者の人がボランティアの付添いをつけてマラソ ンをするといようなことをいたしました。それに非常に沢山の共感を得まして、協力し てくださったり、沢山の方が参加して下さいました。 その時に一緒に、ドナーの家族に集まってもらったわけですから、その人達の体験談 を講演会でやりました。それを聞いていただいて、ドナーの輪を拡げることが 大切です。 今までは慰霊祭とか法要とか陰気くさい湿っぽいお祭りをやってきたのですが、それ ではなかなか集まってこれないというのがありますので、こういう陽気なドナーファミ リーの会とかチャリティーマラソンなどをやって、とにかく提供者のリピーターを増や すというのが非常に大事だと思うのです。 提供して良かったということを、どんどん皆さんにしゃべっていただいて、それを増 やさないとなかなか提供してくれないという感じがします。 ○黒川委員長 そうですね。その話も伺ったところ、確かに提供したファミリーのご遺族の方ですか 随分ポジティブに考えておられる方が多いというのを聞きました。そういうものも大事 だなと思います。腎臓の移植の場合には関連学会が年に1回やってます。腎臓学会、透 析医学会、透析医会、移植学会等が集まって懇談してます。 家族と透析患者さんというか移植を受けた人達、そういう人達の集まりというのはア メリカなどではピクニックなどをやったりするのですが、日本では受けた人が圧倒的に 少ないのです。そうなるとベネフィットを受けた人と、受けたいと思って待機してなか なか受けられないと言う人が集まってやるというのは、なかなか難しいという話もちょ っとしてます。そういう一つの草の根運動のようなものは、山谷さんがおっしゃったよ うにすごく大事ですよね。 さっき山谷委員がおっしゃったように、受けた人の話をいろいろ聞きたいというのは これから待機している人と一緒にやるって広がるのは、その辺の数のバランスというの は結構大事なのかなと思っております。 大久保委員がおっしゃっているように移植を受けた人達の、国際オリンピックなども あります。2001年に日本でいよいよ開催するということで、それまでそういう何となく 国民的なものがあれば一番いいと思います。 これについてはどうでしょうか。これは事業の概要、厚生大臣から来た(案)という のは、結構ではないですかという話でしうょか。応援しましょうという話でしょうか。 今は腎移植推進月間というのがあるが、それを臓器移植普及推進月間としようというこ とですか。 ○眞鍋委員 今までは厚生省の後援だったのですが、ひょっとしたら厚生大臣がこういうことを提案 してくださったわけです。だから1億円くらい出すからやりましょうということで予算 が付くのではないかという期待があるのです。 ○黒川委員長  それは難しいかな。 ○朝浦室長  事務局としては本日ご議論をいただたいものを含めて、臓器移植への協力を得ながら 今後関係者の方々との話し合いの場をもって、実現に向けて準備を進めさせていただき たいと考えております。いかがでしょうか。 ○黒川委員長 なんでも政府と行政が主導でやって、金をもってこないとできないというのがどうも 日本の弱点ではないかと思います。もっと民間がやって、それを行政が温かく見守ると いうのが一番いいのではないかと思います。なかなかそうはいかないのでしょうかね。 マスコミの人達は頑張ってほしいと思います。 ○伊藤局長  厚生省の(案)というのは実はないのです。その考え方はこの委員会にお諮りをしま して、どうやって普及啓発事業を進めていったらいいかということです。そのプロセス を含めて、実は私どもの考え方というのは、若い人たちから支持されるやり方を、いろ いろな人に加わっていただいて、ワーキンググループを作っていったらどうかと実は考 えていたわけです。ですからこの案を了承するとかではなく、これを議題にさせていた だいたということです。 ○黒川委員長  そうですね。するとこれをやって主催とか後援、その他、どういう形態、どういうこ とをやるかということで、来年は札幌でやるのでしょうか。 ○朝浦室長  全国大会を札幌で行いたいと考えております。 ○黒川委員長  では普段からこういうことをやっていくと思っていいわけね。するとこれは山谷さん 主催して頑張ってやってください。各地でね。お友達も沢山いると思うのです。僕等は 協力します。喋りに行きます。これも考えましょう。ワーキンググループを 作りますか。 あるいはここで聞いておられる方々、委員でない人達もいろいろなご意見があればどん どん寄せていただいて、良いものは企画しながら育てるというのは大事かも知れないで すね。 ○小柳委員  移植を受けた患者さんが、あまり数は多くないのですが、そういう方が、手術の前と は違って、自分の使命感に目覚めて、ある役割を果してくださっていることは間違いが ないのですが、いかんせん患者さんの数が少ないです。毎回、同じ方にお願いするしか ないというのがあります。学会などをやってそういう患者さんを含めてシンポジウムな どをしましても、子供を連れて地方から出てくる、するとお金も多少はかかる わけです。 そういうことも含めて、現場では一所懸命やっておりますが、訴えるチャンスが少ない という実感を今述べられました。それはその通りだと思うのですが、少ない患者さんは 術後は非常に頑張っていらっしゃるということは言えると思います。人目に触れること を承諾しておられるありがたい存在であると思っております。 もう一つ、私は言葉のことをお話したいのです。私は循環器の世界で生きて おります。 循環器という言葉は何だ、非常に難しくて理解されないのではないか。脳の科学はあれ だけ予算をとっているのは、頭とか脳味噌というくらいですから非常に判りやすい。循 環器は分かりにくくて、それで予算が取れないのではないかという反省が 生まれてます。 それは人工臓器の世界でも、最近は人工臓器という言葉は難しいのではないかと言われ ております。臓器移植普及推進月間というのは横並びで、行政のお役所の中をさっと通 るかも知れませんが、もう少しやさしい言葉はないか、もし難しかったらやさしい副題 を毎年選んで付けるとか、日本の文明文化にこれから切り込むわけですから、そういう やさしいアプローチを考える時期ではないかと思っているのです。  国立循環器病センターというのがございますが、私も創立のときにおりました。あれ は学術会議の答申の時には循環器センターだったのです。循環器とは何だということを 調べましたら、循環器には井戸のポンプも含まれるという話だったのです。それで病を 付けました。設立2年くらい前から循環器病という名前に変わったのです。それくらい 難しい言葉ですので、臓器移植というのも難しい。臓器移植という言葉を理解されるよ うなレベルの方は、殆ど理解しておられると思うのです。それ以外の多数の方が大切だ と思いますので、是非言葉の問題を考えていただく時期ではないか。あるいは我々が考 え直す時期ではないかと思っております。 随分言葉を気をつけながら直してきました。臓器摘出なんとかという言葉を本当にい っていいのかとか、ドナー・レシピエントを段々止めていこうとか、移植希望者という 言葉に変えていこうとか、随分言葉は変わってきましたが、こういうキャンペーンをや るときにも、言葉の問題を大切にしていただきたいと思います。あるいはそういうこと を考える時期かなと思います。 ○黒川委員長 言葉よりも内容が大事ですが、理解されるにはそれは大事でしょうね。 ○谷川委員  1年に1回の推進月間ですが、これは今年も後援をさせていただいたらいいと思いま す。私はいつも思っております。実は肝臓学会は年に5回、全国で市民公開講座をやっ ております。それの一つに何をやるのかというと、3題くらい演題はあるのですが、一 つに必ず肝臓移植のことをやっているわけです。その時にアンケートをとるのです。脳 死状態のときあなたは臓器提供をしますかと聞くと、すると半数以上が「します」とい う回答です。これは特別講演会に出てくれる方は特別かと思っておりますが、今年の始 め、NHKの調査でも半分くらいが臓器を提供するのです。これは全く普通の人です。 その半数くらいは臓器を提供してもいいという回答と、ドナーカードに書く人がすごく 少ないというのは、臓器を提供してもいいという意思と、実際に書くというところまで いくというのを、もう少し工夫したらいいのではないかと思います。それも考慮しなが らです。 もう一つです。オランダの例をいうとまたですが、オランダは18歳になると臓器提供 をするのかどうかをイエスとかノーと書くことになってます。だから将来の展望として は、高校の教育のくらいのところから、臓器提供の教育をシステムの中に いれてもらう。 先程の命の問題ともかかわる教育をしてもらうということも、将来的には重要ではない かと思います。 ○黒川委員長  オランダは実際そうやったのだが、実際には増えてないですね。それにオランダは安 楽死も認めている唯一の国で、非常にシビアに進んでますね。でも実際にそういうこと をしたら、却ってマイナスであったということはオランダでも言えますね。 ○野本委員  いらんことですが、推進月間と似たようなものに国体があるのです。主催県があって 毎年マンネリなのに、割合と皆がし続けるのです。なぜかというと国体には主催県は少 し選手を集めて強くなるが、各県は日本都道府県から集まってくるのです。積極的に参 加するからですね。だからいろいろな推進月間の中で、主催県は一所懸命やるが、それ 以外の県は全然関心がない。するとぐるりと回ってきて一回だけ関心を持つというよう になっているのが実情です。だから今度のシステムのときには、どこかの主催県がやる にしても、その会に全国から何らかの形で動けるように。参加意識をもっていただくと いうことだと思います。 ○藤村委員  この臓器移植普及推進月間については、私も大変前向きでいいことだと思います。こ れは1ヶ月間ですよね。すると残りの11カ月は空くわけです。ですからその月間の間に メディアを通して全国に推進しているということが伝わると思いますが、持続的にメデ ィアを使わないと物事はあまり一般には伝わらないということがあります。 臓器移植についての何かをテレビに、スポンサーを作ってでもいいから作って、テーマ を決めて流すということも非常に大事なことかなという気がします。 学会とか市民公開講座等でその時にはやるにはやるのですが、来る人はそう多くはな いわけですから、それを末端までということになると、茶の間で聞けるようなことをや った方がいい、そういうことを考えた方がいいのではないかと考えます。 ○黒川委員長 いろいろなご意見があると思いますが、先程局長がおっしゃったように先生方のご承 認を得られれば、ワーキンググループを作って広く意見を徴集して、一回で上手くいく ことはないわけですから、持続しながら段々やっていくという方向が大事だと 思います。 先生がおっしゃったように、マスメディアその他が協力しないといけないわけだし、前 にもこの委員会で私もいったと思いますが、ドナーカードでなくても意思表示はいいわ けですから、全国1千万も販売部数をもっている新聞とかは、1月に1回くらいは10セ ンチ四方くらいの印刷をして、これにサインすればいいというくらいはしろというので すが、ちっともやってくれないです。これは何故かというと、多分そのスペースを売っ た方が儲かると思っているのではないかと思うのです。その意味では、ボランタリーの 精神もそっちにも欠けているということになると思います。1月に1回くらい何とかし てください。 そういうことで、検討して準備を進めていきたいということでよろしいでしょうか。で はそのようにしますので、是非皆さんご協力お願いします。 次の議題があるのですが、時間の都合で、これはやむを得ない事情もあるらしいので 議題の5、臓器提供に関する意思表示の方式について、これは前々から先生方のご意見 も沢山伺っていて、むしろ行政的にそういうことができるのかなと、事務局として随分 つめていただいておりましたので、これについて事務局の方から資料を配付していただ いて説明していただきたいと思います。よろしくお願いします。 朝浦室長 説明します。ただいまお手元に配付しております資料に沿いまして説明を したいと思います。 ご承知の通りに臓器移植法につきましては、ご本人の書面による意思表示がなければ 脳死体からの移植につながらないのです。現在その意思表示ができる方法として、臓器 提供意思表示カードというものをお作りして配付しているという状況です。先程ご説明 しました通りに、約2,600 万枚のカードを配付している状況です。 一方で先ほどからご議論になっていますように、カードをもっていても、亡くなった 後に発見されるというようなケースも出てきております。被保険者証とか運転免許を活 用してできるだけ携帯をして、発見が早期になされるという方法として、こういう方法 を使ったらどうかというご意見が、この専門委員会の中でも従来から出されておりまし た。 そういうご意見を踏まえて、私ども事務局として関係の部局とご相談しながら、一つ の方向として、臓器提供意思表示シールというものを作って、それを活用していただく ということで考えたものでございます。 別添の1にシールのとりあえずの様式が書いてございます。上に書いておりますのが 現在の臓器提供意思表示カードの表面と裏面です。臓器提供意思表示シールには、臓器 提供意思表示カードの裏面に書いてある文言を参考にしまして、3つのシールを作りま した。一つはカードの1番に書いてある脳死後提供する意思。真ん中のシールが、心臓 が停止した死後に提供する意思を表示するシール。右のシールが、私は臓器を提供しな いということです。この3つのシールを作って、それを被保険者証に貼るという形にし たいと思っております。 被保険者証の貼り方です。それが3ページに出ております。3ページの上の方に被保 険者証のモデルが出ております。被保険者証を見てみますと、被扶養者欄の一番下のと ころに若干のスペースがございます。そこにこのシールを張りつけていただく形にした いと思っております。非常にスペースが限られておりますので、これはお一人ないしは お二人の意思表示しかスペース的にはないという限界がございます。その場合にはカバ ーにも貼ることができるという形で進めさせていただいております。 医療保険部局とはそういう形で折衝をしておりまして、現在厚生省が所管している健 康保険組合、政府管掌健康保険、国民健康保険の3つの保険の方に対してこれから働き かけをしていきたいと思っております。 運転免許につきましては、現在、警察庁において検討を進めていただいておると聞い ております。 ○黒川委員長 いかがでしょうか。これは前々から先生方、委員の方々いろいろなところで意見があ ったわけです。それについて一歩前進ということで事務方の努力を多としたい わけです。 これについて何かございますでしょうか。 ○大塚委員  そうしますと、この「シール=ドナーカード」ということでしょうか。このシールを 貼ってある保険証を持っている方は、ドナーカードを持っているという意味ですか。 ○朝浦室長  例えばドナーカードの1番に○を付けて、臓器に○をつけたというものと、シールの 一番左の欄を被保険者証に付けているというのは全く同じです。 ○大塚委員  ということはドナーカードを持ってなくても、このシールを貼ってあれば、有効とい うことですね。わかりました。 ○黒川委員長  ドナーカードはあくまでも意思表示の一つの手段ですから、他のやりかたでもいいで すよね。サインは勿論するわけです。 ○朝浦室長 小さくて見にくいかも知れないのですが、署名欄を書くようにしてます。これは一応 試作品ということでご了解いただきたいのですが、もう少し事務的に詰めまして、スペ ースが非常に限られておりますので、ぎりぎりの活用ができるように検討していきたい と思います。一応はサイズは実物大です。 ○大久保委員 私は昨日そういうことをちらりと伺ったので保険証を幾つか調べました。一番下の欄は これより狭いものがあるのです。すると貼るのはかなり難しいです。被保険者は二人と か三人ですね。はみ出してはいけませんか。 ○朝浦室長  これは保険者の方々のご協力をいただいてやらせていただいているものですから、こ れから保険者の方とも十分に相談をさせていただきたいと思います。ギリギリ空欄しか 使えないということになれば、この程度のものになるだろうと思います。 いま報告が入りまして、警察庁の方でも運転免許証にこのような活用が図れないかと いうことで、今日は実は今の同じ時間帯に国家公安委員会において審議をされてまして 一応それの了解があったという報告が現在ありましたので、ご報告いたします。 ○黒川委員長  ありがとうございました。かなりの前進だと思います。大久保委員のおっしゃったこ とも、もっとも思います。家族の名前が3つも4つもあったらどうするのかということ ですが、ドナーカードをもっていても構わないわけです。これだけではなく、これは更 に増やすということで理解していただくには非常に前進したのではないかと思います。 サイズの問題とかいろいろありますが、当該当局は対応に非常に好意的にしていただけ るのは大変に良いことではないかと思います。 ○山谷委員 質問です。今現在2,600 万枚というのは、確か平成10年度の予算で1,000 万枚のド ナーカードの予算かついていたと思うのですが、シールの方は両方でどう進めていくの でしょうか。免許にも貼るとすれば数は全然違うと思うのですが、数的にはどうなので しょうか。 ○朝浦室長  これはどのくらいのご要望があるのかにもよると思います。一方でカードも携帯でき るようになっているので、状況を見ながら組み合わせで考えていかざるを得ないのでは ないかと思っております。 ○藤村委員 確かめるということでお聞きしたいのです。これは自分の署名だけですよね。ドナー カードというか意思表示カードは家族署名の欄もありますが、この当たりの関係はどう なっているのでしょうか。 ○朝浦室長 スペースの関係で家族の署名欄は割愛されております。カードに書いてある家族の署 名の意味は、ご本人がカードに意思の署名をしているということを、家族にも分かって いただいておいた方が、亡くなったときに発見しやすいだろうということで、家族の署 名欄を書いております。最終的な家族の同意というのは亡くなった後に、改めて得ると いうことでございます。その意味では、カードの家族署名欄というのは法律的な要件で はないと考えております。 ○黒川委員長 そういうことですが、これを一端保険証に貼ってしまえば剥がれなくなったらどうす るのでしょうか。 ○朝浦室長  そういうご懸念もありまして、シールの材質を剥がれやすいようなものにしたいと思 っております。ただ、直ぐに剥がれるというものではなく、恒久的には張れるが剥がそ うと思えば剥がせるという材質がありますので、そういうものを使いたいと思っており ます。 ○大塚委員  先程ドナーカードをもっていてという一覧表がありました。30何名かありました よね。 このようにドナーカードの記載方法はなかなか皆さんは理解されてないのです。このよ うに、二つも三つも持たせるということになりますと、シールは一番だがドナーカード を見てみると2番に○が付いていたというケースが出てくる可能性はありますが、そう いう時にはどうされるのでしょうか。 ○朝浦室長 署名年月日の記載がありますので、一番新しい署名年月日を書いてあるものを有効と するということになると思います。 ○黒川委員長 それは省令で扱う話でしょうか。 ○朝浦室長 意思表明の時期がいつなのかということですので、最終の時点の意思表示の時期を使 うということです。 ○黒川委員長  そういうことはありうることですから、それをどこに書くのか、ネットワークのポリ シーとしてやるということですか。またそれも検討しましょう。ネットワークのガイド ラインなんですからね。だが後の日付の方が正しいという話は別に詰めないといけない かもしれないですね。それは行政的には何かありますか。 ○朝浦室長 事務方としては、最新の署名年月日が有効ではないかと考えております。 ○黒川委員長  そうだと思いますが、そう思うのは周知の事実になってこないといけないかも知れな いね。例えばネットワークの運用をするときに、二つあったと言われたりしたらね。 ○朝浦室長 その点については誤解のないように今後つめていきたいと思います。 ○黒川委員長  いろいろ最後に詰めないといけないことはあるし、どうやって配るのかとかいろいろ あると思いますが、一歩前進ということでご了解いただければ一番いいと思います。ど うでしょうかといわれても、よろしいですということになろうかと思います。 ○大久保委員  カードだけちゃんと配っていただければと思います。希望者に送られるのでしょうか ら、全加入者に行き渡る方策をぜひ考えていただきたいと思います。 ○黒川委員長  それは今のドナーカードも同じことですから、人によってまたいろいろなアイデアも あるでしょうから、それをどう実際に行うかというところに、知恵と時間と労力がかか ることだと思います。 ではもう一つの課題です。意思表示の方式ですが、視聴覚障害者が自筆で署名するこ とはできないのだが、そういう気持ちが凄くあるということが実際にありまして、これ につきましては、実際に研究をやっていただいているわけですが、これについてもご報 告を事務局からお願いできますか。 ○朝浦室長 資料の5−2でございます。現在のカードの2面には署名欄として本人が署名する欄 があります。そこに自署と書いてあります。自ら署名しなければいけないということで す。視覚障害者の方をはじめ、自分で署名できない方から、意思表示の方法が限られて いるので、何とかもう少し工夫できないかというご要望が来ております。 社団法人全日本鍼灸マッサージ師会の方から具体的な要望が来ております。2ページ の一番下に書いております。現在のドナーカードを使って、ご家族が代筆をしてご本人 の拇印を押すことで有効となされないだろうか、というご提案をいただいているところ であります。この件につきましては、町野先生の研究班でご検討いただいたものがござ います。資料5−1でございます。この中身については後ほど先生の方からご説明をお 願いしたいと思います。 基本的にはできないことはないというご報告だろうと思います。この研究書2ページ に出ております。視覚障害者の場合につきましては、点字署名ということと、それに拇 印を押す、それから証人の署名を加えることで可能であろうというご報告であります。 視覚障害者をはじめとして、自ら文字を書くことができない場合は、代筆カードとい うものを作って、現在のドナーカードとは別に、3ページに出ているような形のものを 考案されているようでございます。これは代筆者の氏名に、立会人を更にもう一人つけ て、これは公職選挙法の投票のときに採用されている方式のようですが、そういう形の ものも考えられる。 もう一つは、現在の意思表示カードを改良して、代書の欄を設ける。それにご本人の 拇印を押すことによって意思表示として有効となるということでご報告をいただいてい るところでございます。 ○町野委員 あまり付け加えることはないのですが、1番の問題は、意思表示カードの簡便な意思 表示方式、それを維持しながら、しかももしかしたらこれは偽造ではないかということ が生じるということを、何とか除かないといけないということで、恐らく3番くらいの ところに落ちつくかなと思います。最も、若干、これについて拇印を押すということに ついては少し危惧の念のある人もいました。指紋押捺のような問題で、嫌なイメージが 拇印にはあるのです。その点が少しあったのですが、我々のグループでは、それはある かも知れないが、この程度は要求しないと、問題は出てくるのではないかということで 結局拇印ということに落ちつきました。 ○黒川委員長 実際にこの資料の5−1の3ページ目ですが、一つのモデルとして、これなら多分よ ろしいのではないかというのはあるのですか。 ○町野委員 正直申しまして、ここまでは考えてこなかったのです。これは事務局がお考えいただ いたもので、今拝見しましてこれで結構であろうと思います。 ○黒川委員長 このくらい大きな紙でもいいですよということもありますよね。これについてはどう でしょうか、拇印を押すということについて抵抗があるというのは確かに理解もできる ような気もしますが、あくまでも善意の意思表示ということからいうと、そういうこと も含めた善意という話だったらよろしいでしょうかね。 これの問題はないわけではないと思うのですがね。資料の5−1の真ん中辺です。公 証役場で公証人にやってもらうということは、手続きにお金がかかりそうですから、何 とかお考えはありますか。 ○町野委員 これでもいいけど、もうちょっと簡便な(3)の方式がいいだろうという意見があった ということです。 ○黒川委員長 すると(3)の立会い人というのは公証人がいいのではないかということはありません か。 ○町野委員 それはないです。 ○黒川委員長 だからあくまでもその意思のカードがあって、現場では家族に確認して、同意を受け るというプロセスはあるわけですから、オートマティックではないですからね。そうい う意思があるという表示をしたいという方が、ということですね。 町野先生が研究班長で、これでよろしいのではないかとおっしゃるから、あくまでも 善意の意思のある方をなるべく受け入れたいということですね。不自由があってもとう いことを整理したいということですね。よろしいのではないでしょうか。事務局の方で 何かありますか。 ○朝浦室長 障害者の方々のご意見の一つとしてあがってきているわけです。他にもいろいろな団 体とか研究者がいらっしゃるので、そういう方々の意見ももう少し幅広くお聞きした上 で、またお伺いをしたいと思います。 ○黒川委員長 結構なことだと思います。そのようにお願いしたいと思います。よろしいですか。で は次回その報告も受けることにして、そのようにさせていただきたいと思います。では 元に戻ります。 議題3の臓器移植コーディネーターの研修というのがございます。これについて事務 局から説明していただきたいと思います。現在のコーディネーターについても、ネット ワークを中心にして鋭意行っておりますが、現状も含めて事務局からご説明いただけれ ばと思います。資料の3です。 ○朝浦室長 資料3につきましてご説明したいと思います。 移植コーディネーターにつきまては、皆さんがこ承知の通りに臓器移植において非常 に中心的な役割を担うという方々でござます。現在ネットワークに所属するコーディネ ーターが約20名、都道府県において活動されるコーディネーターが約50名、それぞれの 施設において、院内で、いろいろな情報提供とか収集を行っていただける院内コーディ ネーターと呼ばれる方も活動されていると聞いております。様々なコーディネーターの 方がいらっしゃるわけです。 資料の3−1で示しておりますように、国会の付帯決議におきましてコーディネータ ーの資質の向上と養成に努めることという付帯決議をいただいておりまして、今後、更 にコーディネーター活動がよりよいものになって臓器移植を円滑にするというこめには コーディネーターの資質の向上と養成を深めるための検討をしないといけないと考えて おります。 現在のコーディネーターの養成についての考え方でございます。次のページです。ネ ットワーク準備委員会の報告書がございます。平成9年8月18日付けですが、コーディ ネーターの養成につきましては非常に大事である。当面、臓器移植ネットワークの再教 育、あるいは研修によって資質の向上を図っていくという考え方で、現在のところは臓 器移植ネットワークに研修、あるいは養成をお願いしているという考え方ではなかろう かと思っております。具体的に、次のページでございます。ネットワークからいただい た資料によりますと、ネットワークに所属されているコーディネーター、都道府県にお いて活動されているコーディネーターの研修については、ここに書いてあるような研修 を行っていただいているという状況でございます。 これからのことを考えますと、ネットワークの中で研修を行い養成を行っていくこと は勿論のことですが、関係者が集まって全体のレベルを高めるということも必要ではな いかと思っておりまして、その辺について、ご議論いただければと思います。 ○黒川委員長 確かにシステムの整備からいっても非常に大事なことだと思います。現在は確かに、 ネットワークの方でコーディネーターあるいはバンクその他でやりたいという方がおり ますと、面接してどういうことをしてきたかという話を聞いた上で、適切なコース、研 修をしながら、また実地等をみたりして、一緒にやっているわけです。もうちょっと整 備して、広く人材や理解できる人のプールを増やしていった方がいい、という話だと思 います。何かご意見はございますでしょうか。 ある意味からいうと、全国のネットワークのコーディネーターの質の向上というのは 非常に大事です。行政面でもそうですし、ネットワークの運用面でも非常に大事なエレ メントでありますから、こういう研修のシステム、コーディネーターの人材の発掘、興 味のある人をもうちょっと広く体験させながら、資格のある人がいれば、実際に採用す るかどうかは別ですが、私はそういうコースは受けてますというのはよろしいかと思い ます。 ○野本委員 従来ネットワークとして教育はしているわけですが、本格的な教育体制を作りたい。 これは特に朝浦室長が決意をしてくださっているのでありがたいと思います。そういう きちんとした教育体制を作るとすると、幅広くいろいろな学会に依頼をしないといけな い。システムを作る。するとネットワークの方から、どうしてもネットワーク、従来の 移植関係の学会にしかパスは通らないのです。実をいいますとね。やはり厚生省という 形、政府という形で、必要な学会にパスを通して協力をお願いして、システムを作り、 そのシステムをネットワークに渡していただくのがいいのではないかと考えます。 ○黒川委員長 確かにそういうことをいうと、今、ネットワークの方の経験からいうと、いろいな先 生に研修をお願いしますとかを一々文書を書いて送ってという話が常にありますから、 確かにこういうプログラムを、ある程度行政的なサポートのシステムで作っていただけ ると、ネットワークとしては非常にやりやすくなるのではないか。しかも広い人材の中 から採用させていただけるというメリットはすごくあると思います。 もしよろしければ、今ディテールについて先生方のご意見を伺うということも適切で はないので、むしろコーディネーターの研修のプログラム、どうシステムを展開してい って、どう人材、カリキュラムを書きながら、資格のある人のベースを広げていくのか ということも、ここでお話をしていただいても仕方ないし、事務局だけではいけないの で、そういう作業委員会というかワーキンググループのようなものを作っていただいて いろいろな問題点を洗い出して、それをここにまたあげていただくということをさせて いただいたらと思うのですが、いかがでしょうか。ではその作業委員会を作るというこ とで、先生方にご報告したいと思います。それを作って検討するとしたいと思います。 ではよろしくお願いします。 次の議題です。実はアイ・バンクのことでございます。このアイ・バンクのことは、 皆さんは角膜移植のことはご存じでない方が多く、眞鍋委員がおられるので時々は発言 からわかるのですが、アイ・バンク事業について、更に検討すべきかなという幾つかの 課題があるようなので、その辺で事務局からの説明をお願いしたいと思います。 ○朝浦室長 資料4です。アイ・バンク事業に対する検討課題についてご説明いたします。アイ・ バンクの現状です。現在アイ・バンクは全国で51カ所ございます。高知県だけが未設置 という状況です。ほぼ全国各都道府県に設置がされております。課題は沢山あるわけで すが、その中、現在当面緊急に対応しないといけないのを、事務局として考えたものを あげております。 (1)は安全性の確保でございます。摘出する眼球、角膜についての安全性の確保につ いて、実態調査をしたわけです。必ずしも十分なものにはなってないという状況でござ いまして、それについて今後更に安全性の確保についての方策を検討していく必要があ ると考えます。 (2)51のアイ・バンクの活動状況を見てみますと、非常に別れているというか、摘出 眼球数で見てみても、全くないというところが2カ所ございます。かなりやっていただ いているところもございます。最高で371 個となっております。かなりアンバランスな 状態であるということです。 参考2で付けておりますのは、日米の移植の件数の実績の比較でございます。わが国 の場合は年間の移植件数が1,545 件でございますが、アメリカの場合には桁が違いまし て44,652ということで約30倍の件数でございます。ただ待機患者数は5,600 と5,900 と いうことで、あまり変わらないという状況です。これは恐らく待機患者以外に、要望は 持っているが、登録されてないという方が非常に多いのではないかと思います。 人口比でみると大体日本はアメリカの半分くらいですので、恐らく移植を希望する方 もアメリカの半分くらいと推測はされるのですが、その辺のところはまだ日本には十分 に現れてないという状況ではないかと思います。 (3)レシピエントの適応基準、あるいは優先順位についても、各バンクばらばらにな ってまして、その辺のところを中立・公正にどういうふうに配分するかというところも 議論していく必要があるのではないかと思います。 (4)輸入角膜の問題です。アメリカにおきましてはかなり眼球の摘出がありまして、 その一部がわが国において医師の個人輸入という形で移植に使われているという状況で ございます。このような状況について、このままでいいのか、あるいはもう少し公的な 整備も含めて考えていく必要があるのか、その辺についても現在検討するべき課題であ ると考えております。 (5)アイ・バンクによるコーディネーターの設置につきましては、臓器移植ネットワ ークをはじめとして、角膜以外の臓器についてはコーディネーターがいて、そこでご本 人の意思の確認であるとか、ご家族の意思の確認を図っているわけですが、アイ・バン クにおいても必ずしもそういう形になってないようでございますが、先進的なアイ・バ ンクにおきましては、ここに上げましたように4バンクにおいてはコーディネーターを 設置して、そのような活動を行っているという状況で、これについても、他のバンク活 動においても、このような活動が必要になってくるのではないかという問題意識です。 医学的な事項についても、十分アドバイスができるような体制を作っていく必要がある のではないかという問題意識をもっております。 この辺のところは、また眞鍋先生にもお願いできれば有り難いと思っております。 ○黒川委員長 では眞鍋委員から、こういう検討課題を見せていただくと、それぞれに感じることが あると思います。 ○眞鍋委員 アイバンクは他のバンクに比べて早くからはじめておりますが、ずーと不足不足でや ってきました。今度の臓器移植法ができまして見直してみますと、何だかそこそこやっ ているではないかという感じが一つあります。アメリカなどから比べますと、非常に不 足しているということで、他の臓器に比べて、既に30,000くらいの移植はやっておりま すし、非常に成績もよろしいということですから、極端に悲観することは無いと思いま す。 アメリカでエイズが問題になりましてから、わが国でもそういうことかあるのではな いか、あるいはB型肝炎のがあるのではないかということで、厚生省からも注意を受け まして、それに対する検査をしているのかどうかということを、昨年、アンケートをと りました。そうしますと、検査はしてないが、あまり問題は起こってないということと 一応亡くなった時のカルテを調べて、そういうことがあれば使わないということをしよ うということで対応してました。今後は、全部検査をしないといけませんよということ を申し合わせまして、恐らく今年一杯で大分改善されてきて良くなってきていると思い ます。 一番最初にやったときには、非常に成績が悪かったので、そのことをここに書いてあ ります。今はかなり改善されてます。現在、角膜の材料費としての角膜斡旋料が9万円 になるのですが、その9万円につきましては、こういうことで安全性を確保してない場 合には、9万円を支給しないということが厚生省から通知がいきまして、各アイ・バン クもそういうことで、今後もし感染症が起こったりした場合にはアイ・バンクの責任だ ということがはっきりしましたので、非常に神経質にやっているということです。 ただし、それを非常にはっきりといいますと、今度は提供する数が非常にマイナスの 方向に働いて、これを始めますと途端に提供が減るということがありまして、それを増 やすためにはどうしたらいいのかということで、最後に書いてあるように、それにはド ナーカード制もいいが、できたらコーディネーター制をとってやらないといけないとい うことです。 4つほどコーディネーターのあるアイ・バンクがありますが、それ以外のアイ・バン クでは非常に増えないで現状あるいは少し減るという状態があります。この4つのアイ バンクに関しては、毎年それこそ倍増するという形で提供者が増えている状態です。そ れでコーディネーターはぜひ必要であろうと考えまして、コーディネーター制を是非に とアイ・バンクにいっているのですが、これには予算を伴うことですので、それにつき ましてもいろいろと考慮しないといけない問題があると思いますので、厚生省とも相談 して、どう進めていけばいいかということです。 アメリカの方が100,000 眼くらい提供があります。角膜移植には40,000眼しか使って ないので、残りの60,000眼くらいは結局は余剰というか余っているという状態で、アメ リカのアイ・バンクの会社とも話し合いまして、いくらでも提供してあげますというこ とで、アメリカでも非常に安全性に対してはチェックしておりまして、ウイルスの感染 症の安全性だけではなく、角膜の内皮細胞の密度まで調べたものでないと提供しないと いうのがはっきりしておりますので、そういう安全な角膜であれば、私はぜひ日本人で 視力障害で困っている方に対しては、提供していただいてもいいのではないかと思って 厚生省にお願いしているのです。 アイ・バンクが斡旋するのは、今のところちょっと認められないが、個人の方は元々 スリランカの角膜提供のころから個人輸入はいいということで、今のところは通ってお りますが、何とかこれをアイ・バンクを通して提供をして、安全なものについては提供 していただいて、視力障害の助けにしたいと思っておりますので、よろしくお願いしま す。 ○黒川委員長  これを見てみるとアメリカは40,000行われていて、待機が6,000 ということは、待機 は申し込めばすぐにやってもらえるということですよね。日本の場合には待機が5,600 だが、移植件数が少ないから待機が長いということですね。アメリカの半分くらい出て もいいのではないかという気がしますよね。しかもアメリカの今の話だと100,000 眼出 ているということだから、半分は使われてないということですよね。 ○町野委員  研究用に使ってます。 ○黒川委員長  だから日本でももっと出てもいいわけですよね。それには皆さんがあまり考えてない ということはありますよね。先程の移植もそうだが、肝臓と心臓の場合は非常に少ない から、出るとか出ないの話がセンセーショナルに扱われるが、腎臓の方は登録している 人が14,000で透析患者が170,000 人もいる、だから普段日常的に皆さんも腎臓の患者さ んと会っているわけだがね。矢崎委員は今日はご欠席だが、今年の循環器病学会で矢崎 先生がドナーカードを一所懸命配ったのだが、会員はほとんど興味をしめさないといっ て頭にきてました。循環器をやっている先生は移植の適用の患者をほとんど見たことが ないという、生活の実感がお医者さんでもないのですよね。 だから眼の方もそういうところがあるのかも知れないと思うのです。これを増やすた めには整備をするということは必須でしょうという気がします。 アメリカから輸入するというのも構わないが、また、足りないのはみな輸入かという のもみっともないという気もしますよね。 我々もこういうデータを見させていただくまでは、眼のことは目になかったというわ けではないのですがね。すると今のネットワークの方がコーディネーターが実際に現場 でとって、心臓死の方から臓器移植を受けるときに、腎臓と角膜という話もそのコーデ ィネーターがやっていくことになるのですよね。その辺も含めてコーディネーターの研 修がさっきありましたが、もう少し整備が必要ということはありますね。 だからこれも先程と同じです。研修と同じですが、この下に作業部会を作られていた だいて、問題点を洗いなおし、これは是か非かという話をもうちょっと詰めていただか ないと、先生がさっきおっしゃったように、ウイルスの感染とかプリオンを含めていろ いろなことがあるので、その辺の整備はきちんとしないといけないのではないかと思い ます。 いかがでしょうかワーキンググループを作っていただいて、ここにもってきて頂くと いう恰好にさせていたたければと思います。よろしいですか。そのようにしていただけ ますか。ではそのようにさせていただきます。またその結果を是非伺いたいと思います。 最後に参考資料が2つございます。これについて実はその後の調査について、ドイツ の臓器移植の状況についての事務局での調査報告書、意思表示カードの配付状況につい ての調査結果が、参考資料2つ出てます。これについて事務局から説明を お願いします。 ○朝浦室長  時間の制約もありますので簡単に説明したいと思います。ドイツの臓器移植法も、大 体日本と同じ時期に法律が通りまして現在施行されているという状況です。臓器移植法 の概要につきましては4ページ以降、日本との比較を含めて、少し丁寧にまとめており ますので、また持ちかえってご一報いただければと思いますので、この点については割 愛させていただきたいと思います。 12ページにアメリカ・イギリス・ドイツの移植の件数を横長の表で付けております。 腎臓移植の例で申しあげます。日本の場合は昨年166 だったわけです。ドイツは1,822 件ということです。大体10倍くらいの差があるという状況でございます。参考資料の2 でございます。 地方公共団体においても臓器提供意思表示カードの配付をはじめとして、いろいろな 普及活動に取り組んでいただいております。3月に一度この取り組みの状況について、 調査をしたわけです。10月にもう一度調査をしまして、それをまとめたのが この紙です。 概略をご説明します。臓器提供意思表示カードの主な配付先は2で書いてあります。右 側の欄の下から半分、破線以下のところが3月以降新しく配付先として登場したものと してあがってきております。運動公園、ゴルフ場、動物園、生涯学習センター、お城・ これは高知県が高知城で配付しているようです、森林組合、農協、漁協というようなと ころにご協力をしていただいているということです。 3番目、自治体独自のドナーカードを作成しているかどうか聞いております。前回は 4件という報告を受けておりますが、半年たって15件になった、かなり増えているとい う状況であります。 4番目、主な取り組み状況です。下に書いてあるようにいろいろな工夫をしてやって おります。学園祭でPRをしたり、電車やバスの車内に広告を出したり、ミュージカル を開催したりということでやっております。 一番下に書いてあるのは臓器提供意思表示完了ステッカーというものを作って、カー ドに記載をしたという方は、それを車に、私は臓器提供をしましたというステッカーを 張るということで、発見しやすい一つの手段として作っているという報告も、ある県か ら受けております。簡単ですが以上です。 ○黒川委員長 ドイツもこのような法律を作った。その後の経過は、まだ98年度のデータは出てませ んが、ちょこちょこと読ませていただくと、数が非常に増えたというわけでもないし減 ったというわけでもない。98年度のはいずれ出てきますから、そういうことは非常に参 考になると思います。各国がぞれぞれに努力しているということがよくわかると思いま す。ぜひお目を通していただきたいと思います。 その他いろいろな自治体、いろいろなところでそれぞれが努力をされているというわ けです。しかしこういうことはいろいろな意味で、それぞれの地方自治体の取り組みは お互いに情報がいろいろ出る、こういう取り組みをやっている、これが良かったという 話であれば、なおさら是非いろいろなところでPRをしていただけると一番いい。する と考えてないようなことが、これは簡単にできそうだというような話はすごく大事なわ けです。そういうことではマスメディアの人達の役割も大事ですし、行政の役割も非常 に役に立つ、学会の取り組みも、それぞれのレベルでぜひやってみたいと思います。 主なその他の取り組みなどを見ると、非常になるほどということもあるのではないか と思います。 今日用意しました議題につきましては終了しましたが、全般ということで結構ですが 委員の先生方何かご質問とかコメントはございませんか。 ○森岡委員 先程もご指摘がありましたが、議論をして、いろいろと慎重に慎重にやるとなるとど んどん難しくなりますね。実際には例えばコーディネーターもどの段階で参加させるの かとか、非常に微妙な問題があります。脳死らしい患者がいるときに手続きを少し簡略 にすることも考えないと、現実問題として、なかなか臓器提供は難しいということもあ ります。 私のところでも、マニュアルのようなものを作るということで、議論を聞いています と、複雑になってしまうのですね。またこの次に改定があるのでしょうが、もう少しそ ういうことも考慮していく必要が逆にあるのではないかと思います。 ○黒川委員長 先生がおっしゃる通りだと思います。例えば関東甲信越で毎年いろいろな会議をやっ ておりますが、実際のケースに基づいてこういうことがあってこうであった、早く行き 過ぎたとか遅かったといういろいろな話があります。そういう事例を本部にあげて、各 ブロックセンターにそういう話の検討会をという、実体験をどんどんしていくというの は非常に大事なことだと思っております。先生のおっしゃる通りだと思います。現場で ない人が一所懸命仮にこうであったらどうするのだということを書いていると、ごちゃ ごちゃになるのは、確かに先生がおっしゃる通りだと思います。これはネットワークの 仕事ですから、鋭意努力してもらいたいと思います。その他にはございませんか。 今日は幾つかの作業部会も作っていただきましたし、次回の報告も楽しみでございます が、先生方、またこれからもよろしくお願いします。今日の専門委員会はこれで終わり にさせていただきます。 (以上) 問い合わせ先 厚生省保健医療局エイズ疾病対策課臓器移植対策室    担 当 山本(内2361)、眞鍋(内2364)    電 話 (代)03-3503-1711