98/10/23 先端医療技術評価部会出生前診断専門委員会議事録 厚生科学審議会先端医療技術評価部会 出生前診断に関する専門委員会 議事録 (平成10年10月23日開催) 厚生省児童家庭局母子保健課 厚生科学審議会先端医療技術評価部会 出生前診断に関する専門委員会議事次第  日 時:平成10年10月23日(金) 午後1時27分〜4時47分  場 所:通産省別館833号会議室   1.開  会   2.厚生省あいさつ   3.委員紹介   4.委員長選任   5.委員長あいさつ   6.議  事    1)資料確認    2)厚生科学審議会について    3)公開の在り方について    4)これまでの部会の検討内容、ヒアリング結果について    5)主な検討項目について    6)今後の進め方について    7)その他   7.閉  会 ○東課長補佐  それでは、定刻前でございますが皆様おそろいでございますので、ただいまから厚生 科学審議会先端医療技術評価部会出生前診断に関する専門委員会を開催いたします。  本日は、大変お忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。  はじめに、児童家庭局長よりごあいさつ申し上げます。 ○横田児童家庭局長  出生前診断に関する専門委員会が開かれるに際しまして、一言ごあいさつ申し上げま す。  近年、生殖医療の分野におきます技術進歩は大変目覚しいものがありまして、体外受 精でございますとか、胎児の出生前診断、遺伝子診断、胎児治療といった技術が開発さ れ普及されつつあります。しかしながら、一方におきまして、これらの技術の適用を巡 って妊婦に対するインフォームド・コンセントや事後のカウンセリングが不十分ではな いか。あるいは、障害者の生きる権利の否定につながるおそれはないかといったさまざ まな問題が指摘されてきているところでございます。  こうした問題につきましては、私どもの厚生科学審議会先端医療技術評価部会におき まして、これまでも議論が行われてきたところでございますけれども、今回、改めて出 生前診断につきまして、より掘り下げた検討を行う必要があるということで、同部会の 下にこの出生前診断に関する専門委員会が設けられまして専門の先生方にお集まりいた だくこととなった次第でございます。  この委員会におきましては、出生前診断に関するさまざまな問題点の整理をしていた だきまして、今後の技術の適用の在り方に関する基本的な方向をお示しいただきたいと 考えております。この問題は、生命に関するさまざまな価値観が関係する大変難しい問 題であると承知しておりますけれども、どうか委員の先生方におかれましては活発な御 論議をお願いしたいと考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。  以上、簡単でございますが、一言あいさつとさせていただきたいと思います。 ○東課長補佐  次に、委員の御紹介を申し上げます。委員の先生方の所属につきましては、資料1を ごらんいただきたいと思います。  安藤広子委員でございます。  鈴森薫委員でございます。  武部啓委員でございます。  寺尾俊彦委員でございます。  長谷川知子委員でございます。  古山順一委員でございます。  山田卓生委員でございます。  このほかにもう一方、松田一郎委員は渡米中のため年内の会議は御欠席の予定でござ います。  また、本専門委員会には文部省、科学技術庁からオブザーバーとして御出席をいただ いております。関係省庁及び厚生省の関係課並びに事務局の担当者につきましては、時 間の関係もございますので、配付資料の座席表をごらんいただき紹介に代えさせていた だきます。  なお、委員の皆様方には次回の開催のための日程表をお配りしてございますので、御 記入願いましてお帰りの際に回収させていただきます。  それでは、委員長の選任を行いたいと思います。事務局から御説明申し上げます。 ○小田母子保健課長  本来であれば委員長は委員の皆様の互選で選ぶということが妥当かと思いますが、多 分野からの委員の先生方ですので、お互いにそれぞれ御存じないという状況もございま すので、誠に僭越でございますが私どもの方から推薦させていただきたいと思っており ます。  本専門委員会を創設するに当たりまして、当初からいろいろと御相談に乗っていただ いております兵庫医科大学の古山先生に委員長をお願いしたいと思いますが、いかがで しょうか。 (「異議なし」と声あり) ○小田母子保健課長  そういうことで、よろしくお願いいたします。 ○東課長補佐  それでは、異議なしとのことでございますので、古山委員に委員長をよろしくお願い 申し上げます。委員長席にお移りくださるようお願いいたします。  ここで、委員長よりごあいさつをお願いいたしたいと思います。 ○古山委員長  ただいま本委員会の委員長に選任されました古山でございます。  先ほど、児童家庭局長からのお話にもありましたが、出生前診断についてはさまざま な意見があり、国民からも高い関心が寄せられております。こうしたことから、本委員 会は出生前診断に関する安全面、倫理面、法的な側面からの問題を集中的に論議して問 題点を整理し、意見をまとめていくことが求められていると認識しております。  特に近年、急速に普及している母体血清マーカー検査については、インフォームド・ コンセントや事後のカウンセリングが十分に行われていない場合もありまして、妊婦さ んたちの間に不安や混乱を生じているという声も聞かれております。本委員会での検討 の成果が妊婦さんたちが安心して出産することが出来ることの一助となればと思います。 大変大きな課題でありますが、委員の先生方は法律・医療・倫理等のそれぞれの分野は 異なりますが、この問題に日ごろから取り組まれている方ばかりでありますので、御専 門のお立場から活発な論議をお願い申し上げます。  また、論議を深めるためにも皆様には参考資料の提供やレポートの提出などを積極的 に行っていただきますようお願いいたしまして、簡単ではございますがごあいさつとい たします。 ○東課長補佐  それでは、議事に入りたいと思います。古山委員長、議事進行よろしくお願いいたし ます。  なお、児童家庭局長は所用のためここで退席させていただきます。 (横田児童家庭局長退室) ○古山委員長  事務局の方から本日の資料の確認をお願いいたします。 ○北島課長補佐  それでは、今お机の上に配付させていただいております資料の確認をさせていただき ます。  まず、とじてある資料の一番上に議事次第というものがございまして、その次資料1 に委員の先生方の名簿がございます。それから、資料2に厚生省組織令というのがござ います。資料3が、生殖医療を巡る論点でございます。資料4が、出生前診断について の主な意見というA3型の大きな紙がございます。それから、資料5が主な検討項目で ございまして、資料6が今後の進め方の案でございます。  それから、参考資料に移りまして、参考資料1はヒト遺伝学における倫理社会的問題 という資料。それから、次に参考資料1−2というのがございまして、日本人類遺伝学 会会告というのがついております。それから、参考資料2という形で厚い資料がとじて あるものがございます。それから、参考資料3でございますが、今月の日本産科婦人科 学会に着床前診断に関する見解が掲載されておりましたので、御参考までに配付させて いただきました。参考資料4でございますが、インターネット等でこういった問題につ きまして広く一般の方から御意見をちょうだいしているところでございますので、寄せ られた意見を参考資料4として配付させていただいたところでございます。この中で7 ページのところに団体等からの要望書という形のものも出されておりますので、後ほど 御確認いただきたいと思います。  それから、別の冊子といたしまして水色の冊子とピンクの冊子を別にお配りしており ます。この水色の冊子は、「遺伝医学と遺伝サービスにおける倫理的諸問題に関して提 案された国際的ガイドライン」というもので、松田委員の方から資料提供をいただいて おります。  また、このピンクの方につきましては、昨年度の厚生省心身障害研究で松田委員が主 任研究者として実施されました出生前診断の実態に関する研究というものの研究報告書 でございます。この中に侵襲的出生前診断と母体血清マーカー検査に関する実施状況、 それから、事前のインフォームド・コンセントの状況、事後の相談の状況等をまとめら れております。これにつきましては、本日御出席の鈴森先生、寺尾先生も研究の協力を されておられますので、また後ほど何かございましたら御発言をお願いしたいと思いま す。  資料につきましては以上でございますが、後ほど長谷川委員等から追加の資料がござ いますので、長谷川委員の御発言の際にまた追加で配らせていただきます。  以上でございます。 ○古山委員長  どうもありがとうございました。  では次に、議事の3、公開の在り方についてに入ります。 ○北島課長補佐  済みません、2の厚生科学審議会の御説明を先にさせていただいてよろしいでしょう か。申し訳ありません。 ○古山委員長  今は議事1だったんですね。2は説明なさいますか。では、厚生科学審議会について の説明をお願いいたします。 ○北島課長補佐  第1回目ということで、この委員会の性質といいますか位置づけ等について御説明申 し上げます。  資料2の1枚目をごらんいただきたいと思います。クリップを外していただくと、そ れぞれにとじてございますので見やすいかと思います。  1ページ目でございますが、厚生省組織令というのがございまして、この厚生省組織 令に基づく厚生科学審議会という審議会がございます。  資料の2ページに厚生科学審議会令というのがございまして、この中で第三条に任期 というのがございます。この任期につきましては、2年となっております。また、第五 条、次のページでございますけれども、審議会は部会を置くことが出来るとなっており ます。 部会につきましては、この資料の6ページ目にございまして、厚生科学審議会の中には 研究企画部会と先端医療技術評価部会という2つの部会が置かれております。先端医療 技術評価部会の方で遺伝子治療ですとか出生前診断、それから、生殖補助医療技術等の 先端医療技術に関連した生命倫理の問題等も取り上げておりまして、この部会の中に設 けられた専門委員会というのが、この委員会の位置づけでございます。  それから、資料の4ページ目をごらんいただきたいと思います。厚生科学審議会の運 営規程というのがございまして、この中の5ページ目の第七条というところがございま すが、ここに「会長は、必要があると認めるときは、審議会又は部会に委員会を置くこ とができる」、これが専門委員会の位置づけでございます。  また、ちょっと戻っていただきますが、この資料の3ページ目のところに庶務という のがございまして、「審議会の庶務は、厚生省大臣官房厚生科学課において処理する」 となっておりますが、厚生科学審議会または両部会につきましては厚生科学課が所管を しておりますけれども、この専門委員会につきましては専門的事項を検討するというこ とで、内容の関連で母子保健課の方で運営をさせていただきたいと考えておりますので よろしくお願いしたいと思います。  以上でございます。 ○古山委員長  どうもありがとうございました。  ただいまの厚生科学審議会の御説明について何か御質問ございますか。なければ議事 3、先ほど申し上げました公開の在り方についてに入らせていただきます。 ○武部委員  ちょっとその前に。先ほどからの御発言で、この会の名称で漢字では問題はないので すが、読み方で「しゅっせいぜんしんだん」と統一してよろしいですか。人によっては 「しゅっしょう」が正しいという人もいるのですが。 ○鈴森委員  「しゅっしょう」というのが我々の慣用句になっております。 ○古山委員長  産婦人科では「しゅっしょう」ですか。 ○鈴森委員  そうではなくて、これはコロニーの井上センター長が「しゅっしょう」と読むのが正 しいのだということをおっしゃったことがあるんです。 ○長谷川委員  辞書を引きますと「しゅっしょう」は「しゅっせい」の老人語と書いてあったので、 それだけの違いかなと思うのですけれども。 ○武部委員  法律では「しゅっしょうとどけ」などと言うらしいですね。戸籍か何かのとき。私は 「しゅっせい」と自分が言いなれているから違和感は全然ないのですけれども、厚生省 で決まっていればそれに。先ほど、厚生省の方がたまたま「しゅっせいぜんしんだん」 とおっしゃったのでそうかなと思っているのですが、それでよろしいですか。 ○古山委員長  いかがいたしましょう。法律的には「しゅっしょう」。 ○山田委員  いいえ、そこまで決まっておりませんけれども、民法の方は「しゅっしょうに始ま る」という、それは「しゅっしょう」と読むこともあるし。だけれども、届けのときは 「しゅっせいとどけ」と言う。「しゅっしょうとどけ」とは言いません。 ○古山委員長  いかがいたしましょう。どっちでもいいような気もするのですが。 ○山田委員  下に何かつけるときは「せい」の方がいいですね。「しゅしょうぜん」と言うよりも 「しゅっせいぜん」と。つかないときは「しゅっしょう」でいいかもしれないけれども。 ○鈴森委員  今まで「しゅっしょう」で言ってきましたから抵抗があるなと。改めるのでしたら、 これから。 ○古山委員長  マスコミ関係というか新聞記者の方は「しゅっしょう」と発音されています。我々は 「しゅっせい」で通してきていますので、急にどちらかにすると言ってもとっさに「し ゅっせい」が出てくる可能性もあります。統一した方がよろしいでしょうか、武部先生。 ○武部委員  委員長が「しゅっせい」で言いやすければそれがいいし、たまたま児童家庭局長さん が「しゅっせい」でおっしゃったので、私はもし鈴森先生などが御納得されれば「しゅ っせい」で通してほしいと思っています。 ○山田委員  どちらでも間違いではないですから。 ○古山委員長  どっちでも間違いではないですね。両方使えることにしたらどうでしょう。 ○鈴森委員  公的には「しゅっせい」ということで。 ○古山委員長  私は「しゅっせい」と言ってしまうと思います。ですから、ここではどちらも同じ言 葉ということで使わせていただくことにしてよろしゅうございますか。では、それでま いります。どうぞよろしくお願いします。  では、公開の在り方について事務局の方から説明をしていただきたいと思います。 ○北島課長補佐  先ほどの資料2の5ページ目をごらんいただきたいと思います。公開につきましては この専門委員会の先生方でお決めいただくことになる訳でございますが、実は、先ほど 参考資料でお配りいたしました各団体からの意見等にも是非公開でやってほしいという 御要望、また、先端医療技術評価部会の方の一部の委員の先生から是非公開でやってほ しいという御要望がございまして、部会長の方からはそういった御意見を是非お伝えし ますと。ただ、どういうふうな形でやるかは専門委員会の委員の決定事項でございます という御発言がございましたので、御報告をさせていただきます。  それから、議事録につきましては、資料2の5ページにございますように「審議会及 び部会における議事は、次の事項を含め、議事録に記載するものとする」というふうに されておりまして、議事を公開しても非公開にしても議事録につきましては公開という ことになっておりまして、通常、厚生省のインターネットを通じて一般に公表している ところでございます。  以上でございます。 ○古山委員長  どうもありがとうございました。  では、この会を公開にするか非公開かということをお決め願うことになりますが、委 員の先生方、御意見をおっしゃっていただきたいと思います。 ○山田委員  この専門委員会の性格ですけれども、作業部会的なものであるとすればインフォーマ ルな話し合いをした方がいいと思います。もう少し公式なものであればまた別だと思い ますが、公開しない方が話しやすいような感じはします。ただ、秘密にするという意味 ではなくて、先ほど言いましたように、勿論責任を持った発言ということではあります が。 ○武部委員  いわゆる親委員会というのがあると思うのですが、それは完全に公開なんですか。 ○北島課長補佐  失礼しました。ちょっと申し遅れましたが、実はこの親部会の方の議論につきまして は、一部の議題につきましては全部議事公開でやっておりますが、この出生前診断と生 殖補助医療に関する部分におきましては議事非公開、議事録公開でございます。 ただ、ヒアリングを行う場合にはヒアリング先の団体、それから、委員の先生の御了解 を得てよろしいということでしたので、ヒアリングは全部公開でされております。ただ 議事録につきましては、委員の名前入りの議事録を一字一句公開しております。 ○小田母子保健課長  今のは先端医療技術評価部会といって、これの親部会です。 ○武部委員  一番上のですか。 ○小田母子保健課長  一番上は審議会ですから、その下に部会がありまして先端医療技術評価部会。その先 端医療技術評価部会にこの委員会があります。その部会の取扱いがそういうことです。 ○武部委員  その部会というこの一つ上の会も公開の場合と非公開があって、その基準が今おっし ゃったように、ヒアリング等は了承を得た上で公開して、それ以外の専門委員会に関す ることについては非公開と。その理由は何か議論されましたか。 ○北島課長補佐  公開の場合には、委員の先生方皆さんの御了解が必要になりますので、先生方に御意 見を伺って非公開でいこうというお話になったと伺っております。 ○武部委員  分かりました。たしか、この専門委員会はもう一つ生殖医療ですか、もう開かれたん ですね。 ○古山委員長  おととい開かれた「生殖補助医療技術に関する専門委員会」ではどうなっているかと いうお話を教えていただけますか。 ○北島課長補佐  それに関しましては、専門委員の先生方に全員から御意見をおっしゃっていただきま して、その結果、議事は非公開、議事録公開でいくという形になっております。 ○鈴森委員  私もその考え方でいいと思います。 ○古山委員長  作業部会的な性質であればインフォーマルということで、非公開の方がいいのではな いかと。 ○山田委員  この会議の持ち方ですけれども、例えば役所側で何か提案されて、それについて意見 を述べてくださいというのであれば公開でもいいのですけれども、多分そうではなくて 何かまとめてほしいということです。そうするといろいろな意見の中からごしゃごしゃ まとめていくものの場合には、性質上余り公開にはなじまないような感じはするのです けれども。その性格はどうなんですか。何かそちらでたたき台みたいなものを出されて それについてわいわいやっていくということですか。 ○北島課長補佐  性格と言えるかどうか分かりませんが、会議の事務的な性格を申し上げますと、審議 会の中の部会の一部でございますので正式な審議会の検討という位置づけではございま す。ただ、お願いしていることにつきましては、先生おっしゃいましたように、この委 員会の中で御議論いただいて、一つの考え方をまとめていただきたいというお願いでご ざいます。 ○山田委員  そうですね。そうすると、やはりいろいろな曲折があるかと思いますので、私の経験 から性格的にはそんな感じがいたします。 ○寺尾委員  私は、例えばヒアリングというような場合には公開の方がいいのですが、当然のこと ながら、だれからヒアリングをするのかという、いわゆる議事というものは非公開が当 然だと思います。だから、むしろ今回は公開にしましょう、これに関しては公開にしま しょうという決め方を随時なさるのが一番いいのではないかというふうに私は考えます。 ○古山委員長  議題によってですか。 ○寺尾委員  要するに、原則非公開で次回はこういうことに関してヒアリングを行うので公開いた しましょうというか。原則と言うと変ですね、通常と言った方がいいか。いわゆる議事 に関しては非公開。 ○古山委員長  安藤先生、いかがでしょうか。 ○安藤委員  私もいろいろな議論をされるところは、いろいろ御意見が出されるのではないかと思 いますので、そこら辺は非公開でいいかなと思うのですが、議事録だけはしっかりと公 開しておいた方がいいのかなと思います。 ○古山委員長  議事録は原則的に公開になるんですね。厚生科学審議会、それから、その親部会も含 めて。 ○ 小田母子保健課長  正確に申し上げますと、先ほどの5ページの第八条の四のところにございますけれど も、「調査審議過程の概要及び結果」を公開するものとなっております。 ですから、いわゆる議事録の中に記載するものはこういった概要と結果であって、本来 すべての議事を公開するということとはちょっと違うかもしれませんが、一応ほかの部 会等においてもあるいはこれと2日前に行われた専門委員会におきましても、議事録を 個々人の名前入りで公開するというふうな形です。それから、ヒアリング等のときは親 部会と同じような形にするということで、もう一方の専門委員会では一応合意をみてお ります。 ○山田委員  だから、議事録は一字一句ではないということですね。 ○北島課長補佐  いえ、皆さんで取り決めいただきまして一字一句を公開するという格好に親の部会、 それから、もう一つの専門委員会はなっております。 ○小田母子保健課長  必要最低限のレベルというのは一字一句ではないと思いますが、一応、約束で一字一 句という形で親部会あるいはもう一つの専門委員会は合意をみているということです。 ○山田委員  しかし、3時間やると膨大になりますよ。 ○小田母子保健課長  大変なんです。 ○北島課長補佐  ただ、議事録につきましては誤字等も入りますし、よく聞き取れないところ等がござ いますので、私どもまた先生方の御発言の部分については先生方に御確認をいただいて いるところでございます。 ○古山委員長  長谷川先生、いかがですか。 ○長谷川委員  私も全く同じです。後からお配りする資料の中にある親の会からの意見をちょっと書 きましたので、それに公開を希望するというのが書いてありますけれども、話をしたと ころ全部の公開というのではなくて必要なポイント、ポイントで公開していただく、デ ィスカッションそのものを全て公開という訳ではないということは言っていました。 一応伝えておきます。 ○武部委員  私は、どんな会議でも基本的には公開するのが大原則であるという信念を持っており ます。こういった生殖医療あるいは出生前診断というのは極めて多岐にわたる内容と、 それから、専門でいろいろな御経験を論じられる場合、例えば、長谷川先生、松田先生 などが、非常に貴重な症例など出されて具体例について論ずるようなときには、ある程 度プライバシーが守られることが保障されると言っても、問題になるおそれがあると思 います。  実は、京都大学の倫理委員をやっていましたときに、やはりそういう例に多くぶつか りまして、一番簡単な例を言いますと、例えば、父親が本物かどうか遺伝子を調べたら すぐ分かるといった例のときに発言すると、それがとんでもない疑心暗鬼を生じてうち の子もお父さんが違うのだろうかと変な連想をされるおそれなどがありました。この会 議ではそのような生々しい症例などが出てくることまで必要になるのではないかという 気がしていますので、少なくとも当面の間非公開で、あるいは議論を進めた上で今後は 公開した方が望ましいということになった場合に公開に踏み切ることを前提といいます か、可能な限り公開する方向を考えるのがよいと思います。私は現時点では公開を最初 からするということは無理があると思います。  今、私もお聞きしようと思ったのは、つまりこの専門委員会が何のためにつくられた かということが多分上の部会の議事録を見るとあると思うのですけれども、先ほどのお 話ですと具体的な諮問事項がある訳ではなくて、一般的な審議をするようにということ であるようなので、むしろどういうことを議論するかもここで決めなければならぬと理 解してよろしいですね。そうなると、私は具体的な個別例まで出してほしいという意見 を持っている人間ですから。そういう意味で、少なくとも公開は原則とするが当面は非 公開でやむを得ないと考えます。  ただし、2つ条件があって、さっきあったように議事録は全面公開するということ。 それから、出来れば委員長は大変かもしれないけれども、毎回必ず委員長の責任である いはだれかが同席することで記者会見等を可能な限りやるということ。それも記者クラ ブの時間の都合や何かあるとなかなか難しいし、古山先生は関西からですから時間的な 御都合があると思いますが、やはりそういうことを条件にして御理解を求めるというこ とが望ましいと思います。  ちょっと済みませんが、今までのそういう非公開のときも記者会見等は必ずやってい らっしゃいましたか、他の部会で。 ○小田母子保健課長  これは、各審議会により扱いが違いまして、厚生科学審議会等では非公開の場合であ って一応記者クラブにレクをするというケースが結構多いのですが、ほかの審議会です と特に、例えば結論が出た場合にレクをするというふうなことでやっているものもあり ます。  それから、委員の先生が同席するというものにつきましても、毎回毎回、委員の先生 に同席していただくという形は、ほとんどないか少ないと思います。ですから、例えば 本委員会ですと報告がまとまる最後の委員会の場合に、委員の先生あるいは委員長先生 でなければ答えにくいだろうと、我々事務局が代わって行うのは僭越であろうといった ものについては、当然ながら委員の先生方に同席していただいて記者会見をするという ふうな形でありますが、審議の途中のものをどこまでそういう形にするかといったとこ ろ、それもこの委員会でお決めいただければ結構なのですが、事務局としてはそこまで おつき合いいただくというのもどうかなという気がしております。節目節目で御無理を お願いすることはあるかと思いますが、勿論、私どもが代わって御連絡するのが非常に 難しいという場合には、それはそれで、また委員の先生方に御相談させていただきたい と思っております。 通常はそういう形であります。 ○武部委員  生殖医療の専門委員会のときに新聞にある程度の記載があくる日に載りましたが、あ れは今のような形でなされたものですか。 ○小田母子保健課長  それは、私どもが対応させていただきました。 ○武部委員  私はこだわりませんけれども、やはり可能な限り公正かつ正確な情報を流すためには 御苦労様でも委員長は場合によったら会の後に記者会見する覚悟をしておいていただい て、ただし、記者クラブの都合でということではなくこちらが強く主張して終了後直ち に行うということでやるべきと考えます。 ○小田母子保健課長  一応、事情だけ説明しておきますと、厚生省記者クラブは2つございまして、その2 つを別々にやらなければいけない訳でありまして、大体1つ30分はかかるとすると1時 間という拘束時間になります。 ○武部委員  何で、2つなのですか。 ○小田母子保健課長  いわゆる新聞等の関係と、それから、業界紙関係で2つに分かれております。厚生記 者クラブというものと日比谷記者会というものがあります。慣習的にそれぞれ別々にや るということになっているようです。 ○古山委員長  では、議事は一応非公開ということですが、議事録は委員の名前入りで公開するとい うものでよろしゅうございますか。これは、一字一句全部ということになりますか。 ○北島課長補佐  そうしていただいてもよろしいでしょうか。 ○武部委員  このマイクはそのためですか。 ○北島課長補佐  議事録は、公開するかどうかは別にして一応取らせていただきます。ただ、どのぐら いまでを公開するかというところは委員の先生方の御了承が必要になってくると思いま す。 ○武部委員  ということは、記録を各委員が目を通す機会があるということですか。公開前に。 ○北島課長補佐  はい。1つは、議事録を例えば公開するということになりますと、大体1か月ちょっ とぐらい最終版になるまでに時間が必要かと思います。それは、1つは議事録を業者に 頼んでいる訳ですけれども、速記の方から出来たものをいただきまして、聞き取れなか ったところや誤字などもありますので先生方にそれぞれ御発言になったところの内容が 正確に載っているかどうか御確認をいただいた上で取りまとめをさせていただきまして 公開という格好になります。ですから、知らないところでどんどん出ていくというのも のではございません。 ○古山委員長  いかがでしょうか。審議会及び部会における議事の議事録への記載について先ほど説 明がありましたが、厚生科学審議会運営規定によると最低限、「調査審議過程の概要及 び結果」でもいい訳ですね。 ○小田母子保健課長  議事要旨と言っているものもあります。ただし、議事要旨は最近は少ないと思います。 大体議事録です。 ○古山委員長  厚生科学審議会の議事録というのが、随分インターネットに出ていますね。 あれと同じような形になると考えたらいいのでしょうか。 ○小田母子保健課長  お手元のファイルがございます。その1つに、厚生科学審議会の議事録が載っている と思います。それをちょっと参考までにごらんになっていただければ、こういうふうな 形で議事録が公開されるということでございます。要するに、御発言になっていただい たものが発言のときにちょっと不正確で、どうも読んだら分からないと。議事録公開で すので読んで分かるような形に直していただくということもあり得ますし、あるいはち ょっと言葉や数字を間違ってしまったというものを訂正していただくということもあり ます。議事録の一番初めにテープ起こしをしたものが上がってきた段階で先生方にお届 けしまして、それを直していただいて、約1か月後ぐらいにそういった議事録の形でイ ンターネット等で公表する。大体、会を1か月半ぐらいに1回という形で考えておりま すが、それは1か月後ぐらいにでインターネットで公開される、その後で次の会が開か れるというようなことを考えた上の予定でございます。 ○古山委員長  これと同時に発足した生殖補助医療技術に関する専門委員会も議事非公開、それで議 事録は委員の名前入りで公開するというになっている訳ですね。だから、もう一つの専 門委員会と同じ歩調を取るということでよろしゅうございますでしょうか。寺尾先生も よろしゅうございますか。 ○寺尾委員  私もそれに賛成です。先ほど申し上げたことはそういうことで、例えば、ヒアリング をだれにするかというのを決めるとか、そういうような類の議事はすべての発言内容を 書いたものの公表は必要ないし、それから、それも公開である必要はない。原則的には 議事録は公開しますし、時によっては公開の席で行ってもいいと。 ○古山委員長  議事録の一部は非公開の部分もあるということをおっしゃっていらっしゃるのでしょ うか。 ○寺尾委員  はい。 ○古山委員長  そういうことも出来ますでしょうか。 ○小田母子保健課長  基本的に議事要旨を公開するということが必要最小限求められていることですので、 それは先生方の取り決めで、特に議事録の中でやはり個人のプライバシーが分かって非 常に不都合であるということであれば、その部分については議事録の中でここについて は、これこれこういう理由のため議事録には載せないということを先生方で明記してい ただければよろしいのかなという気がします。やはり、個々の症例が出てきて、それが 議事録であっても非常に差し障りがあるということは可能性としてはあると思います。 それは、個別のケースで判断いただければよろしいのではないかと思います。 ○古山委員長  では、すべてに原則としてというのをつけておきます。そうすれば、全てに対応出来 ます。では、原則として非公開といたします。原則でない場合もある訳で。先ほど寺尾 先生おっしゃったように、ヒアリングのときは一部公開することもあり得る訳です。 ○寺尾委員  そのボリュームによりけりなんですが、もしそうでしたら原則として公開、一部は非 公開ということでも結構です。 ○北島課長補佐  それは、議事録ですか、議事ですか。 ○寺尾委員  議事及び議事録です。 ○北島課長補佐  ただ、実は議事に関しましては、通常のディスカッションを公開してほしいという御 要望がございますので、原則公開ということになると一般の方に事前に御要望を取りま して、抽選をして入っていただくということになりますので、その都度その都度決める というのは大変難しいんです。事前に次の会は公開というふうになると、その手続をす るということになります。 ○古山委員長  そういうことを想定して、あらかじめお話を聞いていたのですけれども、公開になり ますと50人ぐらいはお見えになるそうです。 ○北島課長補佐  そうですね。この会場に入れる範囲になると思いますので、ぎっしり入っても50人入 れるか入れないかぐらいかと思いますが。 ○古山委員長  もう一度確認しておきます。議事は原則として非公開。議事録は公開ですね。議事録 は委員の名前入りで公開と。両方とも原則としてというのを入れて、それでよろしゅう ございますか。 ○小田母子保健課長  よろしいですか。寺尾先生が先ほどお話されたようなヒアリングの関係ですが、一応 親部会ではヒアリング等のときは公開で行っておりますので、その辺についてもきちん と取り決めをされた方がよろしいかと思います。というのは、この委員会ではヒアリン グを行う可能性があります。例えば母体血清マーカー等ですと、まだいわゆる業者サイ ドからは一切、親部会でもヒアリングはしておりませんので、何か実施する際にはヒア リング等が必要になってくるかとも思いますので、その辺もあらかじめ決めておいてい ただくと私ども作業する際に非常に助かる訳でございます。 ○古山委員長  原則としてという中で処理出来ますね。ですから、ヒアリングのときにはわざわざ書 く必要はありますか。 ○小田母子保健課長  ヒアリング等ということで、例えば、ヒアリング等では公開ということを、その都度 その都度決めていただければよろしいかと思います。 ○武部委員  ヒアリングということは、この委員以外の人が入ってくることを公然と認める訳です から、仮に非公開と言っても全く意味はない訳ですね。ですから、当然公開にすると。  それから、やはり上の部会が守っている原則よりも厳しくしなければならない必然性 は私は全くないと思いますので、もし、そういうことがあった場合には、やはりきちん と議論をして結論を出せばいい訳で、今の段階でそういうことが予想されるかどうかは 分かりませんので、私としては親の部会の基本方針であってヒアリングは公開を原則と するということはもし何らかの申合せが必要であれば、この段階で申合せしてもいいの ではないかと思っております。 ○古山委員長  それでは、そういう文言を入れてヒアリングの際は公開とするというのでよろしゅう ございますでしょうか。 ○寺尾委員  ヒアリングとしなくても、随時公開することもあるというふうにしておけばいいので はないでしょうか。 ○山田委員  やはり限定しておいた方がいいと思います。非常に恣意的に思われますので。 ○寺尾委員  例えば、次回は公開でやりましょうとか、それはこういう理由で公開にしましょうと か。 ○古山委員長  技術的に次回公開するというのは難しいとおっしゃいましたね。 ○北島課長補佐  次回でも、ぎりぎり間合うとは思うのですが、抽選の手続等がございます。 ○山田委員  次回はヒアリングですから公開になりますねというふうに。 ○古山委員長  厚生省の方で用意していただいた資料6「出生前診断に関する専門委員会の今後の進 め方(案)」をご覧下さい。その中で、今日10月23日第1回の専門委員会、12月上旬の 第2回の専門委員会でヒアリングの対象者の選定、ヒアリング内容の検討。それから、 1月下旬第3回目は関係者からのヒアリングという議事が作業スケジュールとして予定 されております。1月下旬のこの委員会はヒアリングですから公開ということになろう かと思います。この資料については後程御審議いただきます。 ○北島課長補佐  それはまた後で御議論いただきたいと思います。これはあくまでも私どもがつくった 案ですから。これが採用されるということになればヒアリングということになると思い ます。 ○古山委員長  では、議事の公開、それから、議事録の公開等についてはこれまでにいたします。こ の専門委員会は各方面の専門家から構成されておりまして、出生前診断技術については 専門でない方もいらっしゃると思いますので、次に鈴森委員から出生前診断技術に関す る御説明をいただいた後、御意見や御質問をいただきたいと思います。用意していただ いていますので鈴森委員よろしくお願いいたします。 ○鈴森委員  それでは、実態に関する研究というのは各委員の先生方のお手元の方で松田一郎主任 研究者の報告として昨年1年間の実績が書いてございますので、今日は出生前診断の手 技について概略を御説明したいと思います。スライドをお願いいたします。  2つ大きく分けて考えておりますが、1つはいつごろからこういうことが行われるか ということで皆さん御存じないと思いますので、ちょっとその点を説明いたします。 (スライド) まず、出生前診断の歴史的背景というのでしょうか、今まで我が国でど ういうことが行われてきたかということを年代別に記載したものですけれども、大きく 分けてこの出生前診断主技は3つあるいは4つに分けられます。歴史的に見て一番古く から行われておりますのが、この羊水穿刺という方法です。我が国では大体私どもの教 室が先駆的な研究を果たしてまいりましたので、私どもの教室の歴史としてお話しさせ ていただきます。すなわち1971年から我が国で羊水穿刺による出生前診断が開始された ということになります。  それから、引き続いて、絨毛採取という方法が欧米では1975年ぐらいから行われ、我 が国では1985年から開始されております。  それから、胎児の血液を直接取ってくる胎児採血の方法に関しては1987年ごろから我 が国でも開始されるようになったということです。 (スライド)  実技的なことをちょっとお話しします。羊水穿刺というのは、おなかの上から長い針 で羊水を取ってくるという方法で、羊水の中に浮遊している胎児由来の細胞を培養して 胎児の遺伝情報を知るという方法です。 (スライド)  絨毛採取法というもので、これは胎盤の一部、これも胎児由来の組織ですけれども、 そこの部分を採取するというものです。 (スライド)  現在こういう器具が、これはヨーロッパの方で市販されておりますが、それで取って おります。 (スライド)  実技的には膣の方から今の器具を入れて採取します。 (スライド)  これは、妊娠9週ごろの超音波の画像です。これが胎児で、これが羊膜腔ですが、絨 毛を取ってくるのはこの絨毛膜有毛部で将来胎盤となるところです。したがって、この 部分は胎児由来のもともと一つの細胞から成り立った胎児組織、胎児由来の組織という ことになります。 (スライド)  取れたものが絨毛でないと誤診の原因にもなりますので、実体顕微鏡で絨毛であるこ とを確認すれば確実な胎児遺伝情報が得られるということです。 (スライド)  胎児採血法です。 (スライド故障) ○小田母子保健課長  すみません、事務局の方の不手際で余りなれていないものですから、お茶を飲んでい ただいて、それまでにちょっと直らなかったから先の議題を進めていただき、直ったと ころでまた戻る形でお願いしたいと思います。 ○古山委員長  では、議事の4「これまでの部会の検討内容、ヒアリングの結果について」ですが、 事務局の方から説明いただけますでしょうか。 ○武田主査  それでは、この専門委員会の親部会であります厚生科学審議会先端医療技術評価部会 における生殖医療に関する審議内容について御説明申し上げます。時間が長くなります ので座って御説明をさせていただきます。  資料3をごらんいただきたいと思います。親部会であります先端医療技術評価部会に おきましては、1ページ目にありますような生殖補助医療技術、出生前診断、研究利用 の在り方等の論点について御議論いただきました。本委員会では後ほど説明があります が、このうち出生前診断の部分について御議論をいただきたいと考えております。  2ページ目をごらんください。ここにありますように、部会では1ページ目の論点に ついて昨年の7月から御議論をいただきました。うち3回から8回までの6回について は、3ページ目にございます医療、法曹、障害者、女性、その他の団体からヒアリング を行い、議論が行われました。  それでは、部会における委員及び意見聴取を行った各種団体の主要な御意見について 御説明申し上げます。資料4をごらんください。なお、ここには主要な御意見をまとめ てありますが、詳細についてはお手元に部会で提出されました資料、議事録を配付して おります。こちらの方でその内容を御確認ください。  それから、この表の見方でございますが、一番左の欄が資料3の1ページ目の部会に おける論点の各項目に対応しております。また、下線を引いたものは日本産科婦人科学 会の会告の内容となっております。  それでは、資料4について御説明申し上げます。  資料3の論点の1「生殖補助医療技術」については、もう一つの専門委員会でござい ます生殖補助医療技術に関する専門委員会の方で御議論いただきますので、ここでは省 略させていただきます。  2「出生前診断技術」について、各項目についての議論について御説明申し上げます。  まず、21)出生前診断の現状と安全性でございますが、医学会、それから、医療関係 関係団体からは、 ・精度の向上が必要。なお、母体血清マーカー検査は評価が未確立であり今後研究が必 要。 ・羊水検査、絨毛膜診断は、長期間の経験があるとともに安全性の客観的評価が可能で あるので慎重に進めてよい。 ・着床前診断はこれからの技術。安全性・確実性について注視することが必要。 等の御意見が出されております。  障害者・女性団体関係でございますが、障害者団体からは、 ・現在のところ完全に副作用の生じない技術は開発されておらず臨床応用は時期尚早。 また技術導入の可否は、諸外国の状況ではなく日本文化に基づき判断。  なお、これは生殖医療技術全般について語られておるものでございます。 ・人から疎まれやすい迷惑がられる病気を根絶するために利用される、いわば民族の浄 化のための策動でしかない。 等の御意見が出されております。  女性団体からは、 ・出生前診断に対する説明はお粗末。 等の御意見が出されております。  先端医療技術評価部会の委員の先生たちからは、 ・染色体異常の方の発育状況等について、なかなか一般に情報が行き渡っていないこと が問題。 ・血清マーカーについては、日本では一部のコマーシャルな企業がやっていて、その場 合、十分なインフォームド・コンセントがとられていない。また、日本人のデーターに 基づいて確率に係るデーターをとっていない会社もある。 ・日本では母体血清マーカーテストに係る技術評価が未だ定まっていないにも関わらず 商業主義も手伝って、普及してしまっている。 ・生命を尊重し、出生前診断の実施や妊娠人工中絶に対して強く反対する考えを持つ 人々(プロライフ)の割合は各国共通で約1割。 ・日本の国はよその国と違い遺伝的に非常に違う風土、バックグラウンドがある。 等の御意見が出されております。  次に、22)出生前診断の意義・目的・適用範囲(許容条件)についてでございます。日 本産科婦人科学会の会告は、 ・先天異常の胎児診断、特に妊娠初期絨毛検査については、十分なインフォームド・コ ンセント・カウンセリングを行い、重篤な遺伝性疾患の保有や染色体異常児の分娩経験 がある者等厳格な要件下で実施しているとの御説明でございます。  そのほかの医療関係団体からは、 ・侵襲的検査(羊水、絨毛検査等)、着床前診断については重篤な遺伝性疾患の保有等を 要件として実施すべき。 ・母体血清マーカー検査も他の侵襲的検査と同様の要件で実施すべき。 ・実施するかどうかは夫婦の自由意志によるべき。十分なインフォームド・コンセント とカウンセリングが必要。 ・国が直接指導するのではなく、関係学会が学問的、社会的、論理的立場から情報を十 分公表し社会がこれらを総合的に判断・評価できるようにすべき。 ・十分な情報を得た上で「受ける自由」と「受けない自由」が保証される社会が望まし い。 ・出生前診断が確実で精度が高いこと、胎児が重篤な遺伝性疾患にかかっている可能性 が相当程度高いこと、十分な事前のカウンセリングが行われ、被験者の自主的な判断で 強く要望されていることなど厳しい条件を設けるべき。 ・不特定多数を対象とした遺伝病のマスクリーニング試験は行うべきではない。 ・検査前のカウンセリングでは検査の内容等に関する情報の他に予想される疾患を取り 巻く総合的な情報を提供し、クライアントが自主的に解決できるよう支援すべき。 ・個人の利益のためのみ行い、優生学的な目的で行うべきではない。 ・出生前診断技術が公平に普及・発展するための背景として、社会に先天異常を持つ人 への差別がないこと、社会的支援が十分行われていること、先天異常等についての適切 な教育が行われていこと等が必要。 等の御意見が出されております。  次に、この点についての障害者団体からでございますが、 ・母体血清マーカー検査は凍結すべき。 ・目的が人の生命・尊厳に影響を与えるものであるときは原則として認めるべきではな い。 障害の発生予防ないし治療準備の目的で行う場合を許容範囲とすべき。 ・出生前診断は障害を持つ人の生命の尊厳を守るためのものでなければならない。 ・障害や障害者に対する正しい知識が社会的に共有されていることが大前提。 等の御意見が出されております。  女性団体からは、 ・「障害児の選別・中絶」のためにだけは行って欲しくない。 ・出生前診断により障害の有無を知る意義をあえていえば、出生以前に、障害を持つ子 を産むことは恐ろしいことではなく、障害があっても幸せな人生が送れるという正しい 情報を伝えるカウンセリングを十分行い、産む心の準備ができるという点につきる。 等の御意見が出されております。  法曹団体からは、 ・重篤な遺伝性疾患の保有を除き禁止。 ただし、内部でも意見の分裂があるとの御説明でございました。  この点について先端医療技術評価部会の委員の先生たちの御意見でございます。 ・出生前診断についての適切な基準がないと非常に恣意的で商業的な利用の可能性が絡 んでくるため、この領域での妥当な線を早く出すべき。 ・出生前遺伝子診断については早急に専門家だけではなく、色々な方のコンセンサスを 得て、当面ガイドラインを作る必要がある。商業的に悪用されない社会をつくる必要が ある。 ・年齢的な要因により医療側が出生前診断を積極的に勧めるようになると、色々な問題 が出てくると思う。 ・マーカー検査は、妊娠している方に年齢を問わずルーティンに行う方法ではない。特 にコマーシャルレベルで行われていることに非常に嫌悪感がある。 ・母体血清マーカー検査については、したいと望んでいる人がいて禁止するのは不可能。 検査法があることは情報として知らせる必要があるが、勧めることはすべきではない。 正しいインフォメーションをしてチョイスしてもらうことが大事。また、障害者の成長 や社会での適応について正しい情報を与えなければならない。 ・学会の会告も違反した場合に対処する方法がない。規制にあまり走るのは疑問もある が、現在の法律では満足ではない。 ・母体血清マーカー検査は利益につながるということで、出来れば元気な赤ちゃんを産 みたいと考えているお母さんにとって、どうしてもやらざるを得ないように追い込まれ るようなこともあり得るので、ガイドラインできっちりする必要がある。 ・米国の場合、出生前診断は、障害児の排除が目的ではなく、教育環境、居住環境等の 出生後の諸準備を目的に行われている。 ・出生前診断で陽性であった者のうち9割が中絶を選択しており、現実として出生前診 断は障害児排除を目的に実施されていると言えるのではないか。 ・出生前診断について健康保険を適用すると、政策的に推進することになるので優生思 想につながるという判断がある。 ・現在の母体血清マーカーテストの実施は、科学的にも社会倫理的にも問題がある。 等の御意見が出されております。  次に、23)先天性異常等と判断された場合の対応についての御意見でございます。  医学会・医療団体からは、 ・カウンセリングが必要。 ・カウンセリングの上、妊娠の継続等は父母が自己決定すべき。(胎児胎外生存可能後 は胎児の生存権を優先) ・異常と診断されてからどうするかを考えるのではなく、異常があった場合の対応を事 前に十分協議した上で行うべき。 ・出生前診断と中絶は次元の異なる問題。中絶は行政・学会だけで結論を出せる問題で はなく、世界的なコンセンサスと日本人の国民性を考慮すべき。 ・検査結果の告知後の生殖行動(産む産まない)の決定は、クライアントの自主的判断 に任せるべきで主治医やカウンセラーはその決定に関与してはならない。 等の御意見が出されております。  次に、障害者団体でございますが、 ・障害児への社会支援が不十分。共生社会として未成熟であり、自己決定に委ねるのは 時期尚早。胎児条項の導入は障害者差別の固定化であり反対。 ・診断の結果によって出生が左右されるものであってはならない。 ・結果は胎児治療、出生後の子供や家族も含めた医療や福祉的なケア体制のプランニン グに用いられるべき。 ・障害者を隔離・排除する可能性を持つ法や制度の成立には反対。 等の御意見が出されております。  それから、女性団体でございますが、 ・性と生殖について女性が自己決定できる環境が必要と考えるが、それは障害児を産ま ないという選択肢によって実現するとは考えていない。むしろ、障害者を産み育てられ る環境の整備や障害等への正確な情報提供が必要。 ・女性の産む産まないの意思決定が尊重され、かつ全ての子供の誕生が尊重されること を第一に施策を講じるべき。 ・胎児条項は反対。 ・堕胎罪をそのままにして、障害等の有無で中絶するかしないかの場合のみ女性の自己 決定を認めるというのは、障害児等の中絶の責任を女性に押しつけているに過ぎない。 ・遺伝性疾患等と診断した場合の医師の価値観が優生的観点から抜け出していない。 等の御意見が出されております。  この問題に関しまして、先端医療技術評価部会の委員からは、 ・ある面では胎児条項というのがあった方が、母体保護法その他で大変実際的な面もあ る。 例えば、無脳症で全然生きていけないことが判っていながら末期まで持ってこなければ ならないのは非常に問題点が多いのは事実。 ・診断技術は、それによって得られた情報に基づく対処法があってやる技術ではないか。 カウンセリングという非常に曖昧な形でしかフォローアップ出来ないというのはある意 味で不思議。 ・治療の方法がある場合のカウンセリングの仕方、ない場合のカウンセリングの仕方が いろいろあり、事情によって違ってくる。カウンセリングの重要性を医学教育や看護教 育の中でやる意味は非常にある。 ・障害者に対する支援体制は病院の中にないし、社会の中でも非常に貧しい。日本の社 会はそれを差別して除こうとする。家族も隠してしまう場合もある。非常に貧しい支援 体制の下でも障害児も幸せだという議論は本当はおかしい。もう少し正直な議論が日本 でもされるべきではないか。 ・母親の自己決定がどこまで及ぶか非常に問題。母親が産む産まないを決めれば、すべ ていいのか。それでよくないという場合、何をもってそれを制限するのか。それが我々 の一番の悩み。本当に当事者だけの自己決定だけで問題は解決するのかという悩みを医 者は持っている。 ・出生前診断及びその結果について、日本ではペアで判断するべきとする意見が多いが WHOガイドライン素案で述べられているとおり、生命倫理原則に反しない限り、女性 の自己決定によるべき。その場合、十分な情報提供が必要であり、また技術的な安全性 の確保が必要。 ・遺伝カウンセラーの養成や、出生前診断を行う医師と中絶手術を実施する医師の分離 等の対応により、女性が適切に自己決定できる環境を作るべき。 等の御意見が出されております。  最後に、24)性別検査でございます。日本産科婦人科学会の会告では、 ・ 伴性劣性遺伝性疾患のための検査が行われる場合を除き、性別告知は禁止、 とされております。  この問題について、障害者団体からは、 ・男女の性別検査は男女産み分けという人為的調整に利用されることが多く、同時にそ の結果は生命の抹殺を伴う場合が多いので問題視。 等の御意見が出されております。  以上でございます。 ○古山委員長  どうもありがとうございました。盛りだくさんの説明がございましたが、何か質問ご ざいますでしょうか。  これまでの部会での検討内容及びヒアリングの結果でございますが、ただいまの説明 だけでよろしゅうございますか。 ○鈴森委員  ちょっと細かいことでよろしいですか。意義・目的・適用範囲のところで学会・医療 団体関係の下にアンダーラインが引いてあるところがございますが、その3行目の「重 篤な遺伝性疾患の保有」と書いてありますけれども、これは保因者だと思います。  それから、その次の侵襲的検査のところの「保有など」、これも保因者の間違いでは ないかと思います。 ○武田主査  正しくは、この会告は昭和63年1月の「先天異常の胎児診断、特に妊娠初期絨毛検査 に関する見解」にあります。 ○鈴森委員  ですけれども、そのときに保因者という言葉で表していると思います。 ○武田主査  そうですね。保因者という書き方をしております。 ○山田委員  今伺って、それから、議事録などを見ますと、この問題は評価部会で相当議論されて おりますが、もう一度専門部会でやれということになると、かなり繰り返しといいます か団体その他についても同じことをやらなければいけないことになるかどうか、その意 味で、この専門部会の位置づけのようなことをちょっと伺いたいのですが。 ○北島課長補佐  この専門部会につきましては、実はもともとは部会の方でこういった御議論をまとめ ていただき、今後の在り方のようなものを御提言いただくべきところだったのですけれ ども、部会の方が遺伝子治療の問題ですとかいろいろな検討課題が盛りだくさんでござ いまして、毎月審議をしておりましても、なかなかこの問題だけについて議論を深める ことが難しいという状況もございましたし、また、法律や倫理なども含めて各方面から 出生前診断の問題を御専門とする先生方のご協力をいただき、委員を増やして集中的に 議論したらどうかという御意見もございましたので、専門委員会が設けられたところで ございまして、後ほど今後の進め方のところでこの委員会にお願いしたい内容等も含め まして、御説明申し上げたいと思いますが、集中的にこの問題を審議いたしまして考え 方をまとめるというところが、なかなかいろいろなことを所掌している部会のみでは難 しかったということはございます。  この議論につきましては、部会の委員からもダブってしまってはもったいないですの で、今までの議論を十分先生方に御説明願いたいという御指示をいただいておりますの で、そういったことで今日ちょっと厚いファイルなのですけれども、部会で配られまし た資料全般と、それから、議事録を全部打ち出したものをお配りしております。これは 委員会の中だけではごらんいただけないと思いますので、議事録の方は全部先生方のお 宅の方に郵送させていただきたいと思っておりますし、また、資料の方ごらんいただく ということであればお宅でごらんいただいても結構かと思っております。  そんなことで、今日A3版の大きな紙にまとめましたのは、本当にダイジェストでご ざいますので、それぞれの意見がどういうふうな形で出たのかというところは議事録や 資料等をごらんいただければと思っております。なるべくここで議論をしたこと、それ から、団体からのヒアリングはもう一度ヒアリングを繰り返していますと、なかなかま とめが出来ませんので、これまでの資料を踏まえて議論を進めていただければと思って おります。 ○古山委員長  どうもありがとうございました。山田先生、只今の回答でよろしゅうございますか。 ○山田委員  はい。それなら分かりますけれども、何かここまでされていてもう一回やれと言われ るとその必要があるのかと思います。 ○小田母子保健課長  こういうふうに整理しますと議論がかなりされているなという感じを受けるかもしれ ませんが、例えば、厚生科学審議会の評価部会の方では、これは私どもは整理してそれ ぞれの項目ごとに割り振った形でありまして、例えば、現状と安全性についてをテーマ に議論した、あるいは意義・目的・適用範囲について議論したということではありませ ん。ヒアリングのときにそういう関連のことがヒアリング対象者から言われた場合に、 それについて委員の方がいろいろコメントしたものを集めて整理したものであります。 ですから、それぞれについて集中的な議論はしていないというふうに御理解いただけれ ばと思います。 ○山田委員  そうすると、この資料を前提にして作業部会みたいな形でここでまとめてほしいとい うことなんですね。分かりました。 ○武部委員  全部資料を見ていないのですが、私も議事録を前から一部拝見しまして印象としては 今、山田委員からそういう御指摘がありましたが、幾つか抜けているといいますか、あ るいは決め手となるようなことがなされていない。例えば、具体的に言いますと、学 会・医療団体の関係からはあるのですが、本当に現場でやっている医者からの生々しい 現状、例えば、実際にどう説明しているのかと。たまたまこれは多分長谷川先生が用意 されたと思いますが、業者の方からのパンフレットなどもありますが、同時に、業者な ら業者が例えば産婦人科の医者に対してこんなテストがありますよというときに一体ど ういう宣伝というか説明がされているのか。あるいは、実際にその業者の検査がどうい うふうに行われていて、秘密保持がどうなされているかという現状が今いただいている 資料では分からない。母体血清マーカーに限るというような話がちらっとさっきありま したが、それであれば、やはりもうちょっと突っ込んだ、それが私がさっき言いました 場合によったら生々しいことすら出てくるかもしれぬという印象を持っていますので、 非公開はある程度やむを得ないというふうに判断した理由なのです。鈴森先生は勿論現 場でやっていらっしゃった方なのですが、どんな印象ですか。そういう感じがないです か。何か上の幹部の方だけが学会から来られてお話しになったという。 ○鈴森委員  先生おっしゃるとおりで、そういうところはありますね。 ○武部委員  特に、検査を実際に行う業者が一体どんな形で宣伝し、どんな形で広めようとしてい るかという、そういうマーケティングの戦略とか。 ○鈴森委員  そういう個別なことに関しては長谷川先生が一番よく御存じで。 ○長谷川委員  後からの資料で一部ですけれども入れてありますが、なかなか一度には出来ないので もっと調べてみたいと思います。 ○武部委員  そういうような印象を私は持っておりましたので、まだヒアリングの余地は十分ある と思っています。 ○鈴森委員  前に研究班で業者に対するヒアリングを行ったのですが実数とかそういうことに関す る情報ということだったんですね。実際に具体的にどうやって行っているかということ に関しては、きちんとしたヒアリングはしていないと思います。 ○小田母子保健課長  では、一応、先ほどの鈴森先生のスライドの話がありますが、議事の5と6をさせて いただきまして、それから各委員の先生にプレゼンテーションをちょっとお願いしてお りますので、その前に鈴森先生にお願いして、それから、長谷川先生と武部先生にお願 いするような形でどうかなと思います。 ○古山委員長  そうですね。4の続きとして5、6の議題を続けていった方が議事進行上、非常に具 合がいいのではないかと思います。では、5番目の議題、「主な検討項目について」 事務局からの説明をお願いします。 ○北島課長補佐  それでは、資料の説明をさせていただきます。  資料3に戻っていただきたいと思いますが、部会の方で生殖医療を巡る論点というも のを最初のうちに部会の委員の皆さんで固めていただきましたのがこのペーパーでござ いますが、この中の出生前診断技術というところに4つの柱がございます。これらに基 づいてヒアリングとまた一般の方からインターネットの御意見等を伺っている訳でござ いますが、資料5をごらんいただきたいと思いますけれども、この専門委員会で更にど ういった形で議論を掘り下げていくかということを決めていただくために、事務局の方 でこれまでのヒアリング結果ですとか、団体からの意見等を含めまして、この資料3の 4つの柱を更に細かくしたものが資料5でございます。今後の議論をこういった形で論 点を整理しながら議論いただくということがございますので、この資料5をたたき台に していただきまして、これからの議論を進めていただければという参考資料でございま す。  この資料5について、少し御説明を申し上げます。  主な検討項目ということで出生前診断について。「出生前診断技術の現状と安全性に ついて」ということで、これらの今まで議論に上がりました検査の項目を挙げておりま す。これらについて、もう安全性を確立しているのか、どのような点に問題が残ってい るのかということが1番目でございます。  次が、「出生前診断の意義・目的と適用範囲(許容条件)について」。 (1) 意義・目的 ・出生前診断の利用目的についてどう考えるか。例えば、特定の遺伝性疾患の発  見を目的とする場合に限定するか、広く諸疾患の発見を目的として認められる  か。また出生後の態勢準備として広く認められるか。 ・母体血清マーカー検査や画像診断などスクリーニング検査として行われること      についてどう考えるか。 ・着床前診断についてどう考えるか。 (2) 対象者 ・染色体異常や遺伝性疾患保因者又は高齢出産者に限定するか。 ・希望者すべてを対象とするか。 ○事前のインフォームド・コンセントとして事後指導のあり方について (1) 事前のインフォームド・コンセント ・十分な情報提供を行った上で希望する人にのみ実施すべきか。 ・署名入りの同意をとるべきか。 (2) 事後指導 ・結果に応じたカウンセリングの実施の必要性とその内容。  とくに、先天性異常、遺伝性疾患等と診断された場合の対応について。 ○男女の性別検査について ・性別検査に基づく生み分けについてどう考えるか。例えば、伴性劣性遺伝のおそれが ある場合に限定するか。 2 その他 ○国等の関与のあり方について   1)国等の行政または学会等が関与すべき事項(分野、事項)は何か。   2)どのように国等の行政又は学会等が関与すべきか。例えば、学会等の自主規制と するか、国等の指針(ガイドライン)による規制とするか、法的規制とするか。  ということが論点の案でございますが、この参考といたしましたのは、もともとの部 会の方の論点の中に研究利用の在り方等がございまして、これらについて例えば移植に 用いなかった受精卵・胚の取扱い、実験利用というような問題がございますので、胚の 取扱い、例えば、着床前診断にかかわる問題でこういった関連が出てまいりましたら、 この参考についても若干触れていただいてもよろしいかと思っております。  以上でございます。 ○古山委員長  どうもありがとうございました。  この委員会で検討が期待される検討項目について挙げていただいたのですが、大変重 要な問題でありますので御意見ございますか。 ○鈴森委員  この間も松田委員は外国へ出張されていらっしゃらないので代わって、私と松田委員 との間で話したことを申し上げますが、出生前診断技術というのがいろいろここに書い てありますが、非常にコンフューズしているのではないかということで、ちょっと整理 をした方がいいのではないですか。例えば、大きな2つの種類の技術に分かれると思う んです。  1つは、超音波検査と母体血清マーカー検査で、出生前検査という位置づけにしたら どうか。これは、一般の妊婦さんを対象にした広い意味でのスクリーニング的な意味合 いがある。それから、今日御説明した羊水検査とか絨毛検査、胎児血検査というものは 侵襲性があるということから、遺伝的なリスクを持った人を対象とした出生前診断とい うふうに分けた方がいいのではないでしょうか。母体血清マーカー検査と例えば羊水診 断は並列で議論されても、ちょっと我々としては困るということなのですが。 ○古山委員長  鈴森委員から御提案がございましたが、超音波、母体血清マーカー検査は出生前検査。 それから、羊水検査、絨毛検査、臍帯血、胎児臓器検査、着床前診断も含めて、出生前 診断技術というふうに大きく2つに分けて、ということですね。 ○鈴森委員  議論していただきたいと思います。 ○古山委員長  そういうことでございますが、いかがでしょうか。 ○山田委員  侵襲があるかないかというのは、インフォームド・コンセントの要否と関係があるの ですか。 ○鈴森委員  例えば、母体血清マーカーでもインフォームド・コンセントは必要としている訳です。 それは、出た検査結果によって侵襲的な診断技術を応用して、更に、確定診断に至り場 合によっては中絶まで含まれる段階のワンステップですから、インフォームド・コンセ ントは必要だという訳です。ただ、超音波検査に関してはいろいろ議論があるところで 一般的に産科医療の中でルーチン検査としてインフォームド・コンセントなしで行われ ています。しかしたまたま見つかった異常に関しては、例えば強く染色体異常が疑われ る胎児であるというような場合には、カウンセリングあるいは侵襲的な検査に進む段階 でのインフォームド・コンセントが必要ではないかというように私自身は考えています。 ○山田委員  だから、検査だけの段階だったらインフォームド・コンセントなしでできるように今 伺えたものですから。その先へ行けば勿論そうだとは思うのですが。 ○鈴森委員  ただ、超音波だけに関しては一々こういう可能性がありますよということまで説明し ながらやることはかなり困難だと思うんです。全ての妊婦さんに対してやっている訳で すから。母体血清マーカー検査に関してはある目的を持ってやっている訳で、ダウン症 などが対象疾患となりますから、それに対するインフォームド・コンセントは必要だと 思います。 ○山田委員  普通は、侵襲があるかどうかでインフォームド・コンセントを区別している。 ○鈴森委員  そうですね。ただ、これは遺伝的なリスクが高いということですね。検査の対象疾患 となっているものが。 ○山田委員  そうですね。分かりました。 ○長谷川委員  今、鈴森先生が分けられたのはよく分かるのですけれど。言葉の面で検査と言うと、 インフォームド・コンセントが要らないのではないかというふうに思われると山田先生 がおっしゃいましたけれども、ある検査会社の方は検査と診断を分けていて、ここにそ の資料も持ってきたのですが、結局、検査はインフォームド・コンセントが要らないか ら母体血清マーカーには最初に説明する必要はないということを主張しているというこ とがあるので、それはちょっと危険なので、言葉の問題だと思うのですけれども、少し そこら辺を検討していただいた方が誤解されないでいいのではないかと思います。 ○鈴森委員  スクリーニングという言葉の方が難しいと思うんです。スクリーニングと言うと何か もうちょっといい言葉があれば。 ○長谷川委員  そうなんです。ここにそういうことを書いてあるものを持ってきたのですけれども、 スクリーニング検査であって診断検査とは違うんだということで、混同した論議をして いたことはよくないということを、あるクリニックの方が書いてあるので、ちょっとそ こが危険ではないかなというふうに思ったんです。言葉の面を少し検討していただけれ ばと思います。 ○寺尾委員  今の議論は、超音波検査を何か入れてしまうから余計ややこしくなるんですね。超音 波検査というのは、あることだけを目的とした検査ではなくて、全身を診る検査で、た またま全身を上から下まで診ている間に、例えば、首のところがちょっと熱いというこ とを感ずる、全身を診る検査。それに対して、トリプルマーカーは同じ検査でもそれを 目的とした検査ですから、ちょっと意味が違うので。 ○鈴森委員  それは、私もそういう考え方でいますが、やはり産科医の中ではこの間の関東連合部 会の中でも話が出ましたように、可能性があるなら初めからそれをインフォメーション として与えなければいけないという言い方をされたんです。そこまで私は超音波で求め るのはちょっと無理があるのではないかなと、先生の意見と全く一緒なのですが、超音 波検査もそれだけ深い生命倫理的な問題があるのですよということをおっしゃる人がい る以上、超音波だから別物だというふうにはちょっと分けられないなという。 ○山田委員  でも、2段階ある訳ですね。診断そのものについてはインフォームド・コンセントが ある訳ですね。ある意味では、医療機関へ患者が行ってお医者さんに相談しているとい うことについてはある程度医師に任せている。そういう中で、侵襲を伴うようなものに ついては、やはり個別にこういうことですけれどもよろしいですかという説明をした上 で、では、お願いしますという形になると思うんです。だから、超音波の場合には一般 的な検査であり医療機関に行ってお医者さんに相談しているという中に入っているとい うふうに言える訳です。 ○古山委員長  鈴森先生が言われた出生前検査と出生前診断技術について、もう一度、分ける理由を おっしゃっていただけますか。 ○鈴森委員  超音波検査もトリプルマーカー検査も診断ではないんです。 ○古山委員長  陽性とか陰性と言うと診断になるんですね。 ○鈴森委員  陰性とか陽性という言葉を使わないようにということが前提にあるんです。 したがって、確率であるからこれは診断ではない。例えば、ダウン症ですよということ にはならない訳です。あくまでも、検査結果は確率であって診断ではない訳ですから。 ○古山委員長  超音波の場合にも全部検査になりますか。 ○鈴森委員  超音波の場合でも、診断が可能な場合があります。無脳症などは確定的な診断ができ ます。ただ、ルーチンにやっている検査は、胎児が生きているか死んでいるかとか、胎 盤の位置がどこにあるかとか、羊水量はどうかというのは検査です。 ○寺尾委員  これから議論を進めるに当たりまして、コンフューズしないように鈴森先生が出生前 診断と出生前検査と2大別したらとおっしゃったのですが、私は出生前診断と出生前検 査と超音波検査と3大別にするということを申し上げているんです。 ○古山委員長  鈴森先生いかがでしょうか。 ○鈴森委員  でも、超音波の検査の意義ということは、そこまで突っ込んだところまでいくケース がかなりあるんです。 ○寺尾委員  同一に論ずることは出来ないので、別個の言葉を使って論じた方が誤解がないのでは ないかという気がするのですが。 ○武部委員  ちょうど今おっしゃったことは、この意義・目的に3項目に・をつけて書いてあって 結局2番目の母体血清マーカー検査と、画像診断、これは超音波のことを意識していま すが、これらはつまりスクリーニング検査、スクリーニングという言葉はやめた方がよ いという意見もありましたが、つまり不特定多数について行うものです。診断という場 合には、ある疑いを持ったときに行うものという意味では共通性がある。しかし、先生 がおっしゃるように画像診断の方がはるかに範囲が広いと言いますか、さっきおっしゃ ったように一般的なところがある。ですから、強いて言えば、この分類の中で更に母体 血清マーカー検査、今はたまたま母体血清マーカー検査しかない訳ですがこれから出て くる可能性もありますし、私は正直言って遺伝子のジーンチップというのが開発されて きますと、血液1滴でもって遺伝子検査というものは不特定多数に出来る時代がもう来 ていると思っております。  ですから、不特定多数の方を検査するという意味で2番目にしておいて、その中で先 生のおっしゃるような分類をするというので私はいいのではないかと思います。ですか ら、分類としては3つに結果的になると思うのですが、3つに分けてしまうと不特定多 数というイメージが出てきません。ジーンチップは御存じだとは思いますが、血液1滴 取って小さな半インチ四方のところにやると、今の段階で最大4万6,000の遺伝情報が分 かるというのも開発されていますので、そういう時代が来ることを予測しないと、一々 特定のことだけ言っておったのではちょっと時代についていけないという印象を持って います。  それから、つくってくださった方には非常に申し訳ないのですが、非常に大きな問題 があるというのは、事前のインフォームド・コンセントの問題です。WHOのガイドラ インの例えば13、14ページを見ていただくと全然概念が違うんですね。14ページには、 出生前診断の前に行われる遺伝カウンセリングの要点という表があって、つまり、少な くともWHOの委員たちは出生前診断の前にカウンセリングが行われることが大前提で あって、しかも、13ページの真ん中辺に遺伝カウンセリングは出生前診断の前に行わな ければならないと明記してある訳です。つまり、これが日本できちんと行われていたら ほとんどこの委員会の必要性すらないような状態なんです。それが行われていないから この委員会が必要であり、議論が必要なんです。だから、その状態を見極めるなら、今 用意してくださった資料の1ページの一番最後の事前のインフォームド・コンセントと いう言葉はなくて、事前の遺伝カウンセリングとインフォームド・コンセントとしない と、非常に手落ちになります。カウンセリングは実施できる医療機関も限られています し、妊娠した直後から、本来でしたら妊娠する前からそういうことをしていなければい けない訳ですが、そういうことが全くないというところが致命的で、これはさんざん人 類遺伝学会の中で議論されていることなのですけれども、その視点を入れないと話が進 まないように思います。 ○古山委員長  ちょっと問題点を絞って、最初の出生前診断のところを先にまとめますが、鈴森先生 のおっしゃったのは出生前検査と出生前診断技術の2つに分けるということですね。 ○鈴森委員  今、武部先生が言われたように、対象が何かということで分けられた方がいい。例え ば、遺伝的にリスクを持っている人、それから、もう一つは先生がおっしゃったように 一般的な妊婦が対象になるという分け方で。 ○古山委員長  具体的にどういう言葉になりますでしょうか。先生は不特定多数の検査と。 ○武部委員  不特定多数を対象とするという表現が一般的ではないかと思うのですけれども。ただ 不特定多数というと診断とは目的が勿論違うのです。診断というからには疑いがあると いうことで、それに対する診断であると。検査は疑いがあると言えばだれだってあるの ですけれども、非常に範囲が広くて疑いが見つかる率が非常に低い。ですから、やはり 不特定多数と理解すべきだと思います。 ○古山委員長  不特定多数を対象とする出生前検査ですか。それと、個人を対象とするということ。 ○武部委員  エコーの場合には疑って診断するのが随分ありますので、画像診断というよりも、エ コー又は、超音波検診という表現ではどうでしょうか。 ○古山委員長  余り細かく分けずに、出生前診断検査と「・」でも打って、両方一緒に包含してしま っては如何ですか。鈴森先生、分けた方がやはりよろしいですか。 ○鈴森委員  私は、分けた方がいいと思います。 ○古山委員長  分けるとまたややこしくなってきますね。 ○鈴森委員  分けないと、私はまた同じ意見の繰り返しになると思います。 ○古山委員長  そうしますと、寺尾先生おっしゃるように、超音波を分けるかどうかということです ね。検査の中に一緒に入れるか入れないか。 ○寺尾委員  インフォームド・コンセントを論ずるときには、超音波をちょっと別にして論じない と無理だと思いますので。 ○古山委員長  3つにするのでよろしゅうございますか。 ○長谷川委員  ただ、超音波は見解が一定していませんのでね。 ○寺尾委員  普通の聴診器代わりに使っている訳ですから。 ○長谷川委員  そうですね。だから、これからの問題ですね。 ○鈴森委員  ですから、超音波もファーストステップになり得るんですよね。 ○長谷川委員  そうですね。これから検討する問題ですね、超音波は。 ○鈴森委員  ただ、もっと幅広く使われているということに関しては。 ○山田委員  承諾は得ていないですね。 ○古山委員長  インフォームド・コンセントも得ずにエコーをやっている時に、色々のことが自然に 見つかる場合が多い訳ですね。 ○山田委員  だから、やはり検査と診断とは違いますね。 ○古山委員長  これは、両方含んでいるということですね、超音波を。 ○山田委員  「検査・診断」か。 ○武部委員  だから、「出生前診断・検査」という論議には賛成です。 ○古山委員長  「技術」というのを取りましたら、出生前診断というのと出生前検査というのと、そ れから、超音波で出生前診断・検査、その3つですね。 ○鈴森委員  2つでいいと思います。後は細則になってくるのではないかと思います。 ○古山委員長  寺尾先生、検査の方に超音波を入れておってもいいじゃないかという御意見がありま すけれども、それで御納得いただけますでしょうか。 ○寺尾委員  それは勿論、それで分けて。 ○古山委員長  これをやっているとどんどん長くなりますのでこのぐらいにして、また、どうしても 具合が悪いようになったら整合性を取りましょう。  では、この主な検討項目ですが、用意していただいたのがこれだけありますが、これ は大変重要な問題でありますので次回の専門委員会でこの検討項目を決定したいと思い ます。今日はお持ち帰りになられまして、御意見のある方は11月20日まで事務局に御意 見を提出して下さい。  では、次の議事6、今後の進め方について検討したいと思います。 ○北島課長補佐  資料6を御説明申し上げます。  実は、先ほどこの専門委員会とはどのような役割をというような御質問等がございま したけれども、この委員会におきましては、出生前診断について総論的にどういった意 見があるかというようなことを議論していただくことは勿論でございますが、特に、近 年問題になっております母体血清マーカー検査に関して、この委員会で十分な御議論を いただきまして、この委員会としてのお考えをまとめていただければというふうに思っ ております。  そういったことで、この作業スケジュールでございますけれども、第2回目を12月の 上旬、それから、第3回目が1月下旬、最後に3月上旬に一度開催いたしまして、大体 まとまったところで部会の方に御報告をいただければと思っております。1か月半に一 度のペースになってございますが、これは議事録が公表ということでございますので、 インターネットに載る時期との調整がございまして、次回の会合を開く前にはインター ネットに議事録を載せたいということもございまして、大体1か月半に一度のペースに なっております。  1つは、今回こういった形でこれまでの御議論、それから、委員からの御説明等いた だきますが、次回専門委員会の提言案と書いてございますけれども、たたき台のような ものを御検討いただければと思っておりまして、紙に書いたものをもとにして議論を深 める必要があるのだろうということで提言案、これはたたき台に直していただきたいと 思いますが、たたき台の検討をお願いしたいと思っております。  また、ヒアリング対象者を次回具体的に選定をお願いいたしまして、どういったこと をヒアリングするのかというようなことも御議論いただければと思っております。  1月下旬から松田委員も御出席可能になりまして、第3回にはヒアリングをお願いし たいと思っております。また、引き続き提言案、このころになりますともう提言案とい う形になっているかと思いますが、これを詰めていただきたいということでございます。 大体3月上旬ぐらいで提言の完成版を作成いただければという事務局からのお願いでご ざいまして、ちょっと時期が短いというようなこともございましたら、先生方の間で御 議論いただければと思っております。  出生前診断に関しましては、部会の方でヒアリング等を行ってもいろいろなお考えが 団体ごと、または個人ごとにございまして、こういった問題を一つにまとめることが出 来るのかどうかということも言われているところでございますので、少なくとも議論の 整理といいますか、どういった意見があってというようなことは、この専門委員会の中 で十分御検討いただきたいと思っておりますし、母体血清マーカーにつきましては、松 田委員が主任研究者で実施されました、この出生前診断の実態に関する研究という中で もインフォームド・コンセントと、それから、カウンセリングが不十分であるというこ との御報告もされておりまして、現場での混乱等も聞こえてまいりますので、出来るだ け早くこれに対応出来ればということもございまして、こういった短いスケジュールに させていただいておりますが、具体的にはこの委員会でスケジュールについて御議論い ただければと思っております。  以上でございます。 ○古山委員長  どうもありがとうございました。  ただいま事務局の方から今後の進め方についての御提案がありましたが。 ○ 小田母子保健課長  委員長ちょっと補足させていただいてよろしいですか。今のお話だと多分、先生方、 若干その提案がどういうふうになっていくのかというところが見えないかと思いますの で御説明申し上げますが、この専門委員会あるいは部会、審議会を経て御提案された内 容について、提案の内容にもよりますけれども、例えばこういう体制を整えるべきであ るといった具体的な提案、あるいはそういう提案が出来ない場合でこういう考えもある が、こういう考えもあり、これは当面こういう形で対応していくべきであるとかいろい ろな形の提案があると思いますが、そういう中で例えばカウンセリング、相談体制等に ついて至急に体制整理をすべきであるとか。仮にそういうものがあった場合には、それ に対して今度は行政として行うべきところはないか。勿論、書き分けの中で学会等はこ ういうことをすべきであるということは書かれることもあろうかと思いますが、そうい う場合には学会に対してこういう形の要請があったということをまた学会にお伝えする あるいは行政として体制を整えるべきであるということが書かれていれば、それに対し て行政としてどう対応するかを検討するというふうな形で具体的に、施策なりあるいは 実施に移されていくというような形になります。その元になるのがこの委員会の提言と いうことであります。その内容に法制度等に絡むものがどれだけあるか分かりませんけ れども、例えば、こういったものは法制度をきちんと整えるべきであるというようなこ とは、特に生殖補助医療に関する専門委員会の方には相当ある訳でして、そういういろ いろなレベルにおいて御提言が多分なされのだろうと思いますが。それを私どもが受け 止めて、また、かみ砕いて施策として展開していくというふうな形になる訳であります。 そういう位置づけの提言ということで御理解いただければと思います。 ○武部委員  ちょっと私の理解は違うのですが、今のお話ですと、提言というのはやや抽象的な印 象を持つ。例えば、簡単に言ってカウンセリングが必要であるという結論になって。で は、具体的に例えば国家資格としてカウンセラーというのを設けようということを出す としますね。出すとしたら、当然大学の中にカウンセラー科をつくれというふうにうん と具体的に考えないと何も実効がないという印象を持っている訳です。ですから、これ は非常に短期的な、例えば、うんと簡単に言えば母体血清マーカーテストを極端な場合 には禁止しろと言うのかとか、あるいはこれは無条件に認めて現状でよろしいと判断す るのかという具体的実効のあるような提言までを期待されているのか。今言ったように カウンセリングが望ましいとかインフォームド・コンセントを確実に努力しろとかこん なことを言うのはやさしいのですけれども、私は何の意味もないと思います。その点い かがですか。 ○小田母子保健課長  それについては、どこまでこの委員会で具体的に出せるかということだと思います。 コンセンサスが得られて、この点はもうちょっと具体的に出していった方がいいのでは ないかということであれば、それは出されても構いません。余り詳細な点にいくと、ど うも意見が一致しないと。だから、こういう方向で後は学会なり行政なり何なりで考え てもらおうじゃないかというような形もあろうかと思います。私の方で具体的に余り例 示を出すのも適当ではないかと思いましたので申し上げませんでしたが、それは、武部 先生のおっしゃるようなかなり具体的な提案があり、この専門委員会でまとまれば私ど もは受け止めさせていただいて、要するに、どういう対応が可能かということをまた今 度は施策あるいは予算とかいろいろありますので、それと照らし合わせて検討するとい うことです。 ○武部委員  この資料にあるかどうか知りませんが、例えば具体的にはカウンセリングのカウンセ リング料というものについて、少なくとも2つの学会が例えば500点とか1,000点とか具 体的提案すらしていると聞いておりますが、そういうものは任意団体である学会の単な る提案であって、ある意味では迫力がないかもしれないけれども、この専門委員会が例 えば部会を挙げて、部会として公的にそういう提案をすればより実現が高いのではない かということを私自身は思っている訳ですが、それぐらいの具体性があってもいいのか それはあくまでも短い期間でそこまで期待されていないのかというところを私はうんと 具体的に聞きたいです。 ○小田母子保健課長  その辺は、私個人がお答えするのは難しいのですけれども、厚生省の他部局にもまた がる話なのですが、所管している我々の立場からすれば委員の先生方がそこまで言うべ きであるというふうな議論になれば、私どもの方はそれをそのまま受け止めるというこ とであります。 ○古山委員長  よろしゅうございますか。  本委員会の主な検討項目については、次の委員会で決めるということですが、それと 並行しまして母体血清マーカーの検査についていろいろ問題が起きているということで それに対しての母体血清マーカーを中心に、この専門委員会が提言するという形で意見 をまとめるということについてはいかがでしょうか。事務局の資料によりますと、第2 回の専門委員会のときに専門委員会の提言案を出来れば出してほしいというようなこと がございまして、次回には提言のたたき台を資料として用意するということに、もしや るとすればなろうかと思います。たたき台の作成を何人かの委員の先生にお願いするこ とになると思いますが、そういうことでいかがでしょうか。 ○鈴森委員  母体血清マーカーについてですか。たたき台というのは、例えば人類遺伝学会ではも う出している訳ですね。 ○古山委員長  見解として出していますね。 ○鈴森委員  そういうものと全く異なるものでは困る訳で、あれが基準になってどういうふうに使 いやすくするかとか、もう少し具体性を持たせるか、そういうことではないかと思いま す。また新たにたたき台をつくるというのもかなりな作業量ですし、全く別なものが出 来てしまってもおかしなことで、その点は委員長はどういうふうに。 ○武部委員  人類遺伝学会のものは時間が間に合わなくて、理事会レベルでしかやっていないと、 評議員会でいい訳がございましたが、緊急だということでやや非公式だという理事長が 説明なさったと思います。しかし、基本的には同じものです。人類遺伝学会では、これ に対して学会全体の意見に反するという意見は全くなかったので。 ○山田委員  虎ノ門の佐藤先生がどこかに書いておられましたね。最近まとめたというのは、何で したか。 ○鈴森委員  虎ノ門の佐藤先生から一緒に。これです。彼も委員ですから。 ○古山委員長  それから、この報告書の中に研究班でまとめたヒアリングのまとめというのがありま すね。 ○鈴森委員  そうですね。寺尾先生も御一緒だったのですけれども、これは業者4社から現状を聞 いたものです。 ○古山委員長  日本人類遺伝学会の見解よりはもう少し具体的なことが、この中に書いてあるんです ね。 ○鈴森委員  これは、検査の実行に関する問題点です。 ○古山委員長  そういうことも含めた提言をこの委員会でやってほしいということではないんですか。 ○小田母子保健課長  要するに、この出生前診断あるいは生殖補助医療にかかわる個々の学会が行ってきた 勧告なり会告なりが、広く議論されて出来たものかというところに一つ関係者の問題認 識がある訳でして、そういう意味でいわゆる学会関係者にも入っていただいて、それ以 外の方々にも入っていただいて一つ新しい目で見直してつくっていくというふうなこと だろうと思います。  勿論そういう学術団体がつくったものとまるっきり違うものが出来てくるということ は一般的には考えにくいのではないかなという気はします。ただし、生殖補助医療など の議論においては、現在学会等で認めている医療技術についても、もう一回白紙に戻し て議論してみるというふうな観点から考えていますので、現状是認という訳では基本的 にありません。ただ、出生前診断やこういったものについては、内容的にもう一回先生 方に見直していただいて学会関係の方以外の先生方もいらっしゃる訳ですから、そうい った観点から内容が重復するのか、あるいは一部直していくのか、新たなものをつくっ ていくのか、それはそれでここで議論していただければよろしいかと思います。 ○古山委員長  鈴森先生よろしゅうございますか。安藤先生は。 ○安藤委員  私としては、こういうトリプルマーカーとか検査をするに当たっての対象者がどうい うふうに保護されるべきかというところまで、少し突っ込んだところまで出した方がい いかなと思うのですが。会告レベルですと、本当に抽象的なところですね。 ○鈴森委員  ですから、それはカウンセリングでどういう項目を必要とするかとか、インフォーム ド・コンセントの内容という細かいことを討議するのが、この会かなという気がしてい たのですが、実施に当たっての問題点というか解決していくことが討議されればいいの ではないかなと思いますが。 ○古山委員長  そういうものも盛り込めたら盛り込んだらいかかでしょうか。先生は、そういうワー キンググループみたいなものをつくることには別に反対はございませんか。そういう提 言をつくる作業を進めてよろしいという立場でいらっしゃいますね。 ○安藤委員  はい。 ○武部委員  3月までという時間的制限があるのだと思うのですけれども、要するに、審議内容を この次に決めるというのに、母体血清マーカーだけ提言を出すというのも無理な話なの ですけれども、一つの見方としては、少なくともこれは専門委員会だからある程度専門 的に十分知識を持ち、また、それに対して意見を持っている人間が集まっているという 前提であれば、私はこの中で小委員会をつくって、少なくともその人たちの経験を尊重 して、ここへたたき台を出すというような御提案であれば賛成です。  ただ、非常に無理だろうということは百も承知で、しかし、事務局があえておっしゃ るのはそれだけ緊急な問題という意味だろうと覚悟していますので、そういうことです ね。 ○小田母子保健課長  まさに、武部先生おっしゃるとおりです。 ○古山委員長  寺尾先生いかがでしょうか。そういうワーキンググループをつくって。 ○寺尾委員  こういうところで議論しても、何かディスカスする材料がないと。ですから、スモー ルグループでたたき台をある程度形として出してしまって、それを修正したりディスカ スした方が早いのではないでしょうか。 ○武部委員  私は、長谷川先生がちょっと御指摘になったように、いろいろな業者がどういう宣伝 をしているかというのは非常に深刻な問題でして、そこはやはりヒアリングでもやらな いと、最終的なそういう提言は出来ないと思います。しかし、現状である程度、例えば 長谷川先生だったら十分そういう背景を御存じですから、少なくともここでたたき台を つくる材料としては医師の側も、それから、業者の側も、受けた経験者の側の資料もか なり現時点で、ここに集まっている資料も含めて十分な資料はそろっているというふう に理解しています。 ○寺尾委員  私の感じでは、業者の方のヒアリングはある程度、松田先生の班で済んでいるんです ね。もしないとすれば、受ける側の人の一般女性の意見を聞いたということがない。そ れは、松田先生が遺伝子診断に関するアンケートを取られたデータしかないのではない かという気がしますね。受ける側の一般市民のアンケートを取るということが足らない。  業者に関しては、一日掛けて実はヒアリングをやったんですよ。それで、値段とかど の程度の情報を出しているということは一応材料はございますので、もしお聞きくださ れば聞いていました我々が提供出来ますし、もし提供出来なければそこでまたヒアリン グなさって結構ですけれども。 ○武部委員  それは、2つの業者を聞かれましたか。 ○鈴森委員  4社です。 ○古山委員長  業者のヒアリングの結果は公開はまだされていないですね。今おっしゃったように、 先生方のお手元にある訳です。この中にはございませんね。 ○寺尾委員  ございません。それは、厚生省にありますよね。 ○北島課長補佐  この研究班の報告の30、31ページにヒアリングのまとめというのがございますが、丸 一日掛けて4社から先生方がヒアリングをされておられますので、かなり細かいことで すとかいろいろな議論もあったところでございますが、研究班として非公開で行ったヒ アリングだけでいいかどうかというところもあります。この委員会で行えば、議事録が すべて公開になりますので、そういった業者サイドがどういうふうな形でやっておられ るのかということも議事録に載せて皆さんにお知らせした方がいいのではないかという 面はあるのかもしれないと思います。  ただ、ヒアリングも回数がそう何回も出来ませんので、対象者については次回にでも それぞれの先生方から是非聞くべきというような具体的な対象をお持ち寄りいただきま して、その中でセレクトしていただければよろしいのではないかと思っております。 ○古山委員長  よろしゅうございますか。長谷川先生。 ○長谷川委員  後でお話ししようと思ったのですけれども、一応具体的にいろいろな経験から血清 マーカー検査の実施に当たって配慮すべきことについて電子メールで事務局に送ったも のが、今日新しく配られた資料にあるのですが、実はこれは最後のところが切れている ので後が続いていないのですけれども、かなり具体的に提言の素案に入れる項目として 項目別に出してみましたので、それを御利用いただけるのではないかということと、そ れから、さっきの人類遺伝学会のものなのですけれども、資料の一番最後のところに、 実は、倫理審議委員会で協議されていた鈴森先生にはちょっと失礼かとは思ったのです が、作るのに時間がなかったということを伺っていましたし、その後いろいろな条件が 随分変わってきたということ、それから、この書き方に対して専門家は分かるけれども 対象が一般の産婦人科の先生なので、多分これを読んでも訳が分からないのではないか と思ったので、人類遺伝学会のものにちょっと番号をつけたところが私の率直な疑問点 でございます。それをまたこちらのいろいろな経験とか妊婦さんたちの情報、それから 実際にやっている方、親御さんたちの情報を含めまして配慮すべきことの提言の最初の 素案みたいなものをつくってみました。 ○古山委員長  内容については、また言っていただきますけれども、そのワーキンググループをつく ることに賛成かどうかということだけちょっとお聞きしたいのですが、よろしいですか。 ○長谷川委員  それは勿論。 ○古山委員長  山田先生はいかがですか。 ○山田委員  はい。ただ、私はこういうことはよく分かりませんので。 ○古山委員長  そうしましたら、私の方からワーキンググループの委員の先生方をちょっと御指名さ せていただきたいと思うのですが、まず、産婦人科を代表して鈴森先生に入っていただ きたい。それから、小児科から長谷川先生。それから、倫理的な面で武部委員に入って いただくと。それと、委員長の私を含めて4名でワーキンググループを結成いたしまし て、次回までに何とか草案らしきものを作成して委員会に持ってくると。勿論、その中 にヒアリングをすべき対象はこういうものもありますよと、提案の中に盛り込むために はそういう材料が要るんだというようなことも入っていてもいいだろうと思いますけれ ども、そういうことを含めてワーキンググループで検討することに御了承いただけます でしょうか。 (「異議なし」と声あり) ○古山委員長  では、鈴森先生、武部先生、長谷川先生、どうぞよろしくお願いいたします。  一応6の議題まで大体終了したのですが、先ほど鈴森先生の御説明が残っていました ね。スライドの方は大丈夫でしょうか。鈴森先生が終わりましたら、あと引き続いて、 今日は武部先生と長谷川先生に御説明をお願いしたいと思います。 ○小田母子保健課長  ちょっと休みましょう。5分ぐらい。 ○古山委員長  では、55分ぐらいまで休憩します。 (休  憩) ○古山委員長  では、お願いします。 ○鈴森委員  先ほどの続きですけれども、胎児採血の方法ですが、臍帯から取っております。こう いう胎盤の付着部へ針を刺して。 (スライド)  実際にやっているのは、こういうふうに1人助手を使って血液を取る訳です。大体5分 から10分ぐらいで取ることが出来ます。 ○武部委員  それは、物すごく腕が要りますか。 ○鈴森委員  これはかなり難しいです。 ○古山委員長  エコーを掛けながらですか。 ○鈴森委員  はい。ちょうど臍帯の根元のところをねらって刺している訳です。 (スライド)  今、お話ししましたように臓器生検というのもありますけれども、いつの時期に実施 出来るかと申しますと、羊水に関しては最近の文献では早い時期のは流産率が高いとい うことで、やはり15週以降が適当であろうと思います。  それから、絨毛採取に関しては、今は催奇形性が少し問題だということで10週から11 週が一番適当な時期だということが言われています。  それから、経腹壁法は胎盤の位置によっていつの時期でも取れるという利点はござい ますが、今日は説明は省かせていただきました。  胎児採血は、17週ぐらいから取ることが出来ます。  皮膚生検は、私どももやっておりますけれども、皮膚が完成した時期ということで19 週ごろに皮膚生検を行います。 (スライド)  これが最後のスライドですが、これは先生方にお渡しした松田班の報告書をグラフに したものですけれども、昨年1年間に出生前診断として行われた症例は5,748症例です。 5,557例が羊水穿刺、109症例が絨毛採取、臍帯穿刺が71症例、皮膚生検が4例、肝臓生 検が1例と、トータルで5,748症例がこういうような診断的ないわゆる本当の出生前診断 が行われた。これが現状ということです。  どうもありがとうございました。 ○古山委員長  2回に分けてプレゼンテーションを行う結果となり失礼しました。 ○鈴森委員  大体年間の実施率が6,000弱ぐらいです。 ○武部委員  それは、日本全体をカバーしているのですか。 ○鈴森委員  この調査は、ある程度分娩数があるというような施設を対象に行っており、全部で270 施設です。 ○武部委員  その程度の規模でないとなかなか。 ○鈴森委員  通常はあまりやっていないと思います。 ○古山委員長  ほかに御質問ございませんでしょうか。  では、引き続いて、武部先生のプレゼンテーションをお願いいたします。 ○武部委員  参考資料1としまして、ある雑誌に書いたものを載せました。ほとんど御存じのこと ばかりだと思いますので簡単にこの委員会に関係したことを申します。  私はヒト遺伝子解析の国際的な倫理委員をやっています関係からこういう問題、それ から、また京都大学の倫理委員を10年ほどやっておりまして、その間にやはり遺伝に関 することが随分出てきましたので、このような問題に関心を抱いてきました。日本では 皆さん御存じのように、遺伝に対して暗いイメージがあるというのですが、これは大都 会で話しますと、多くの先生方がそんなことはないよとおっしゃるのです。しかし、京 都周辺の滋賀県などでは依然として、例えば、遺伝の相談に来るときに必ず1時間以上 離れた病院しか来ないとか、近所には絶対に行かないというのはごく普通でありまして これは多くの医者がそういうことを語っておりまして、やはり依然として暗いイメージ がございます。  それから、一番大事なことは研究がどんどん進みまして、遺伝子に関してはすばらし い進展があるのに診療、特に治療が全く追いつかないといいますか、日本に出版された 本の中には、例えば絶対に治療方法がないような遺伝子が解析されたことを何とすばら しい学問の進歩であろうかとたたえているような文もありまして、その陰でそれをどう 伝え、説明するかにどれだけ苦労するかということが全く無視されていると。つまり、 医師、研究者の間にも遺伝子研究が倫理的問題を伴うということがほとんど理解されて おりません。  ヒトゲノムの解析も日本では残念ながらPHD、つまり医者でない方の研究費獲得の 手段みたいなことを思っている方もなきにしもあらずでありまして、そういう方々は自 分たちは倫理にかかわるようなことは全くやっていない、あなた方がどう応用しようと それは知らないと。しかし、それでは私はやはりいけないというふうに考えておりまし て、こういった今の出生前診断でも技術自体を開発する人が、それをどういうふうに応 用されるかということを頭に入れておかないといけないと思います。さっき例えば母体 血清マーカーも含めて感度が悪いとありましたが、それは感度を上げればいいという問 題ではないんです。  それから、一番大事なことなのですが、遺伝病患者というのはどの病気もそれぞれの 病気の患者は非常に少ないんです。ですから、ほとんど発言の力がないんです。ダウン 症はその中で多いのですが、ダウン症の方を遺伝病と一緒にするとダウン症は遺伝病で はないから一緒にしてもらっては困るとか、そういう患者あるいは家族あるいは関係者 同士の差別意識みたいなものもありまして、非常に対応に苦慮します。これが、私が障 害者団体を含めて公開することに対してやや抵抗がある理由のひとつであります。つま り、患者団体同士が、例えば、遺伝病と精神病を一緒にするととんでもないと言って怒 られますし、私はそういう苦い経験を何度もしております。  それから、厚生省の方に今お問い合わせしている最中でありまして、日本ではまだ問 題になっていないのですが、生命保険に遺伝情報が利用されるおそれというおそれは非 常に高いと思っております。既に、家族性大腸ポリボースで生命保険の加入を断られた 例が実際にあるということをある医師から聞いております。遺伝子診断の結果等を生命 保険や健康保険は、利用することはアメリカでは完全に禁止する方向に行っております ので、日本も私は是非そういう方向に行ってほしいと思っています。  その理由は非常に簡単でして、保険というのは生まれながらの素質のように、本人に は責任がないものに対して平等にチャンスを与えるのが保険の精神であり、それから、 基本的人権の問題、つまり生まれたときには人間は平等であるという、この2つの原点 からということをきちんと頭に入れないと、遺伝情報が保険に利用されそうになってお ります。  それから、出生前診断でもこれが結果として、それを診断したのに産んでしまったの だったら、例えば、保険に対して不利になることは覚悟しろというような圧力が掛から ぬとは限りません。私はそういうことを非常に恐れます。  優生学についてはヨーロッパでナチスドイツへの猛烈な反省があったために優生思想 はいけないということが非常に厳しく言われている訳ですが、日本はナチスドイツがつ ぶれた後に優生保護法が出来たというずれがございまして、その点で日本の優生思想に 対する反省の度合が少ないということが外国から厳しく指摘されております。私は、日 本の優生保護法の原文を送ってくれと言われて、たまたま英訳がきちんとありましたの で送ったところ、はっきり言って非常に厳しい批判を受けました。1948年に何でこんな ことを決めることが出来たのだと叱られました。  私がヒトゲノム解析国際倫理委員会の委員をやっていまして、一番感ずるのが私以外 の13人の委員が、全員ユダヤ教か、キリスト教でありまして、聖書に書いてあることの 頭でもって善悪を判断するということで、例えば、クローン人間はなぜいけない、これ は神様の御意志に反するとみんな頭から決めてかかって、いけないから禁止しようとい うことになる。何でいけないのですかと聞くと、おまえはどうしてそんなことを聞くの か、日本人は神様がいない不便なやつだと。やはりそれではいけない訳で、私は日本独 自のものが絶対に要ると思います。  そういう点で、私はWHOのガイドラインに対して厳しい批判を持っております。さ っき言いましたように、出生前診断の前にカウンセリングが行われることは当たり前と いうふうな前提で書いておる訳ですが、当たり前でない国があるということを知らずに 書いているか、日本から行っている委員が発言しなかったか、あるいはそれを認識しな かったか、そういうことはもっともっと厳しく考えないと、ここで話が進みません。つ まり、WHOのものをぽんと持ってきていいのだという人がやはり日本にもいらっしゃ ると思うのですけれども、それでは絶対に日本人は納得しないし、日本だけではなくて 中国、インド等世界の半分以上の人が絶対に納得しないということを意識しないといけ ないと思っています。  日本で非常に困っていますのは、医師あるいは医療関係者が遺伝ということに対して ほとんど御理解がないことです。非常に御理解がなくてとんでもないことを口走ったり 非常に古い知識を患者や家族に教えることがしょっちゅうございます。医学教育の改革 が勿論必要ですが、それは長期的なものでありまして、私はお上という言葉はいやなの ですけれども、ある程度具体的なガイドラインを示して最低限これだけ守っていくとい うことをやらないといけないんです。WHOではなくて日本のガイドラインが絶対要る というふうに考えているものです。  それから、出生前診断でも現在では検査の材料をどうしているかという実態が余り分 かっておりません。これが、私が検査会社のヒアリングを必要とすると考えている理由 の一つですが、現在ある検査会社に聞いたことでは検査をしている人の目の前にある血 液サンプルのチューブに個人の名前が書いてある例があるといいます。こういうことは 個人の秘密保持上、非常に問題があるのではないかということを検査会社の技術者から 聞かれまして、そういうことはどこで直したらいいのですかという問題があります。こ ういうことも、やはりきちんとこういうところで対応しておかないと、プライバシーの 保護という点で問題があると思います。  ちみなに、それを暗号化していいかとなると、これはまた大問題がありまして、暗号 化したりコンピューターに入力すると必ずある場面でミスが起きます。今アメリカでH IVで一番困っているのは、集めた血液でポジティブに出たものを1万本に1本の割合 でマイナスとコンピューター入力で間違ったために感染者が確実にいるという、これは アメリカの赤十字の方が私の前で実際に国際会議で講演したので間違いないですが、そ ういう問題を改善しないと、マススクリーニングになったときにはこのミスは影響が大 きくなります。人為的なミスが入る余地を少なくするということとプライバシーを守る ということの両立をどうするかということを、よほど体制をきちんとしておかないとい けないと考えております。  もう一つは、ヒアリングの記録を拝見しておりましても、一般市民の方は実は分かっ ているようでやや知識が偏っているような感じが随分ありまして、一般市民へどんどん 啓発活動をしたい訳です。例えば、私は日本ダウン症ネットワークというものの委員長 をやっておりまして、ダウン症の情報のパンフレットをつくっておりましたが、これを 京都の市役所に置いてくれと言ったら公的機関以外が発行したものは一切置かないとい うことで、いとも簡単に門前払いを食われまして、行ってみるとエイズに関しては物す ごくたくさんあるんです。これはすべて公的機関が出しているようで、エイズよりも明 らかに数の多いダウン症については全く配慮がない。これではやはりいけないので、こ の委員会の責任ではないと思いますが、親委員会、それは厚生審議会も含めてもっとも っとこういう一般市民への、あるいは一般市民だけではなくて行政あるいはマスコミ等 も含めてこういう情報がもっともっと自由にアクセス出来るようなことを期待したいと 思います。  その一例として、例えばEUがマンチェスタ国際空港に遺伝子ショップという遺伝情 報のPRコーナーを開設していまして、つまりEUというものが国際組織を挙げてこう いうことが必要だという認識をしている。私は日本で例えば羽田空港にこういうものが 置かれるということが当たり前になってほしいと願っていまして、そういうことを積み 上げていかないと、なかなか一委員会が何らかの決定をしてガイドラインをまとめても その先へ進まないという印象を持っております。  以上でございます。 ○古山委員長  どうもありがとうございました。  ただいまの武部先生のヒト遺伝学における倫理社会的問題ということについて、何か 御質問ございますか。 ○小田母子保健課長  最後の方でダウン症ネットワークのしおりみたいなものの話で、窓口がどうと、そこ がちょっとよく分からなかったのですけれども。 ○武部委員  要するに、具体的には区役所や保健所に持っていきまして置いてくれと言ったら、公 的機関あるいは厚生省の外部団体等、公的なものでない限り一切うちには置けませんと。 ○小田母子保健課長  公的な機関からのものでないといけないと。 ○武部委員  京都で言いましたら、簡単に言いますと宗教団体のものは置かないというのと同じな んです。それはある程度必要な理由だと思います、そんなものを受け付けたら切りがあ りませんから。だけれども、それは配慮がないかなと。例えば、仮に保健所長でもいい から判断するとか、その程度の余裕があってもいいのではないかと思ったのですが。 ○小田母子保健課長  多分ケース・バイ・ケースだと思います。というのは、私どもでは乳幼児の突然死症 候群というのをキャンペーンをこれからやっていこうと思っているのですが、家族の会 が我々に先駆けてたくさん活動されているんです。世界的にも日本国内でも。そういっ たところと一緒になってやっていこうという形で考えていますけれども、そういったと ころがつくったパンフレット等を我々は都道府県の方が集まる際にも配付させていただ いて、会の方に問い合わせれば幾らで手に入りますとお伝えしています。窓口に置いて いるかどうかというのはよく分かりません、それほど枚数がないから置けないかもしれ ませんが、そこら辺はちょっとケース・バイ・ケースかなという気がします。 ○武部委員  私どもの努力が足りないということは認めます。 ○小田母子保健課長  その市役所はそういう取扱いなのかなという気もしないではないです。 ○武部委員  たまたま私どもの大学のすぐそばの区役所などで尋ねた結果がそうでありまして、同 じことを別のところで聞いたら同じ返事が返ってきました。 ○小田母子保健課長  分かりました。ありがとうございました。 ○古山委員長  ほかにございませんでしょうか。  なければ、あと長谷川先生に最後の。 ○長谷川委員  時間がないので簡単に申します。母体血清マーカーに限って資料をまとめてまいりま した。説明をせよと言われまして、それは本当は鈴森先生にしていただいた方が私より もはっきりお分かりになっている方なのですけれども、説明を実はそんなにする時間が ないので、参考資料2の一番最初のところに今年3月の『ペリネイタルケア』という雑 誌に特集で母体血清マーカー、妊婦血清マーカーという名前に統一したのですけれども それを書きましたのでその中から私たちの書いた仲間の1人の、持っていらっしゃらな い方には後で差し上げますけれども、北谷先生という方が書かれたのが非常に簡単で分 かりやすいかと思って持ってまいりました。  実際、読んでいただければ分かると思うのですけれども、大体のことを先生方はもう お分かりになっているとは思うのですが、ダウン症だけではなくてもともと神経管閉鎖 不全、無脳症とか開放性の二分脊椎(顕在性脳髄膜瘤)のそういう異常を見つけるとい う目的でスクリーニング検査という形で取り入れられたα−フェトプロテインというも のがありますが、ダウン症においても妊婦さんの血清のα−フェトプロテインが低くな るとか、それから、hCGとうヒト絨毛性胎盤刺激ホルモンとエストリオールという物 質がありまして、hCGが高くなる、それから、エストリオールが低くなるという3つ の物質の条件を統計学的に処理いたしまして、もともと母体年齢、母親年齢がダウン症 の子どもが出生するときに確率が高くなる。実は危険率という言葉を避けさせていただ きたいんです。後でも書きましたけれども、「大変危険なものがおなかにある」という 反応が多いものですから。それから、危険率としつこく言うと耳障りな言葉なので確率 とかせいぜいリスク。リスクという言葉は全体にはデンジャラスという意味を含んでい ないので一応リスクという言葉か確率と申しますけれども、ダウン症の子どもが生まれ るリスクが母親の年齢で推定出来るということで、それに加えて血清でのマーカースク リーニング検査の値、MoM値というのですけれども、それを加味した統計学的な処理 によって、どのくらいの確率であなたの胎児がダウン症である可能性かということを判 定する検査です。  いろいろな条件がありまして、ずっとそのページを追ってまいります。簡単に御説明 しますとどんなものが入っているか。これは、病院での配付資料です。こういう病院で 実際にもらってきた方たちの話を聞きますと、こういう出している配付資料の内容自体 もかなり問題があることが多いと思いますけれども、実際何も言わないで渡していると か、こういうところはほとんど説明をされていないということを聞いております。  また後でゆっくりごらんいただきたいのですけれども、その後12ページからは検査の 案内書をそのまま入れておきました。どんな形で案内しているかということで、一番普 及されているというか最初に普及させたと言った方がいいかもしれないのですけれども ジェンザイム・ジャパン社の検査案内ですが、これを見ましていろいろ書いてあること を読んでいただくと。あとインフォームド・コンセント資料というのがあって、それは ちょっと持って来なかったのですが、例えば20ページにありますように「スクリーニン グ・テスト安心をあなたの手に知っておきたい私と赤ちゃんのからだ」という、どう見 ても検査をしたくなるような、検査すれば安心するという情報でサブリミナルどころか そのまま出ているみたいなメッセージなのですけれども、それを出しています。次の ページに「お母さんと赤ちゃんに優しい安全な出生前検査です」というふうに書いてあ りますけれども、これからどういう方向になっていくかということは非常に小さい字で 大体最後まできちんと読んで検査を受ける人というのは、多分余りいないのではないか と思います。  その前の18、19ページが結果でございまして、それにはスクリーン陽性、ダウン症の 確率が高いということです。たしかほかの資料が後にあります。そういうことで、確率 が高いというのはどのぐらいかというと、例えば10分の1であっても9対1の割合なので すけれども、実際に確率が高いというとみんなは20%以上、場合によっては100%私のお なかの子はダウン症だと決めつけてしまい、おまけにその検査の結果だけで中絶した ケースも何人もいると。そういうような例が実際に出ています。  それから、19ページにスクリーン陰性と書いてありますけれども、この中から実際異 常が出ておりまして、実は私もそういうお子さんを見ていますけれども、親御さんは非 常にこの検査に対して嫌悪感を抱いて、この検査の傷が余りにも深かったというので話 してくれません。今度来るときにこういう厚生科学審議会の会があるけれども、何か一 言メッセージをと言ったら、あの検査はやめてほしいと、そのお母さんは一言言ってお りました。こういう陽性とか陰性という言葉で結果が出されているということがかなり 問題ではないかというふうに思いますし、こういうふうにはっきり誘導しているという こと。  その後にインフォームド・コンセントの資料がございますね。22ページからがインフ ォームド・コンセントと書いてありますけれども、こんなものがインフォームド・コン セントになるとはとても思えないのと、それから、23ページの右にとてもびっくりする ようなものが書いてありますけれども、これは胎児に何らかの染色体異常が生じる頻度 というふうに書いてあって、これはダウン症ではなくて「何らかの」染色体異常なんで す。ですから、いろいろな染色体異常の中でダウン症の子がこの中のほんの一部なんだ ということを読み取る方は多分少なくて、こんなに染色体異常は多いんだよと、だから 検査しましょうと、それもサブリミナルメッセージになっているのではないかと。実を 言うと、このデータを知り合いの弁護士さんに見せましたら、霊感商法ではないかと言 われまして非常に心配なんです。  それから、もう一つ、先ほどの検体の問題で私は感じたのですけれども、これは外国 に全部検体を送る訳です。そうしますと、日本人の血液をどんどん送って、その血液を どういうふうに処分するか、どういうふうに使うかということは一切インフォームド・ コンセントを取っていませんので、あちらで他の遺伝子検査をされていないという保障 はないということも知っていないといけないと思いました。  それから、26ページからは住友金属バイオサイエンスで出しているαβテストという ので、これも実際には確立したデータがあるとはちょっと思えないのですけれども、ダ ブルマーカーテストになる訳です。これがそうなのですけれども、すごくやさしいしお りでございまして、いかにもやると安心をするような。最初に「健康な赤ちゃんであっ てほしい」、だれもが思う共通の願いですということを出していますと、やはり健康な 赤ちゃんがこの検査をすると生まれるんだということを暗黙のことを書いてありますし それから、インフォームド・コンセントの後に受診に同意と書いてありますけれども、 受診に同意するのはインフォームド・コンセントではないと思います。それから、羊水 検査の後で遺伝カウンセリングをとかいてありますが、ここではじめてカウンセリング にいくとしたら、これほどやりにくい遺伝カウンセリングはないと思います。遺伝カウ ンセリングというのは、事前説明からカウンセリングを考えてやっていかなければいけ ないということが全く出されていないという、いろいろな面で問題のあるものです。  それから、結果もよく分かりません。レベル6まで何で分けたか分からない。 それから、最後に37ページがトリプルマーカー検査についてのSRLの資料で、これ は、実は、ヒアリングをされたあの前後くらいから書き換えております。これも完全な ものとは思えませんが、私も見せていただきましたけれども、少なくとも勧漿というか 勧めるようなことを防いで、これだけのことをやらないとこの検査をするのは無理だよ ということを言おうというふうにSRLの人たちは言っています。だた、SRLの肩を 持つ訳ではありませんけれども、とにかくこういうことをするのであればかなりのこと をしなくてはいけないということは、かなり釘を刺して書いているとは思います。まだ ちょっと内容の面で誤解される面などもあるのではないかと思いますけれども。ただこ ういうことについて検査センターからだけの情報でインフォームド・コンセントなどを するというのはおかしいのではないかと思います。検査センターがインフォームド・コ ンセントをやるのではなくて、本来医師がインフォームド・コンセントを取らなければ ならないというところが、すべての検査で言えることですけれども、必要なことではな いかというふうに思います。  それから、60ページなのですが、実はダウン症協会の事務局の当番日誌でして、これ はまとめるよりもそのまま読んでいただければと思います。ある病院でグループでまと めて検査しているということを知らされたということで、インフォームド・コンセント どころか何もなく、するのが当たり前の胎児検査のようにしていると。中には本当に、 この前もちょっとある県の方から言われたのですけれども、風疹の検査と一緒に血液検 査をしているところもあるという話まで聞いております。そういうことに対して、やは り歯止めというのは絶対必要だと思った訳です。  62ページは、京都のトライアングルのダウン症児を育てる親の会、日本ダウン症ネッ トワークの母体になったところなのですけれども、武部先生も勿論これに参加されてい る訳ですけれども、こういうアンケート調査をしていまして、これはまた御希望の方に は差し上げます。そのときに、63ページから幾つかこれはダウン症の親御さんたちの声 なのです。一般の方の声というのは、分かっていない人からいろいろアンケートを取っ ても、かなり偏っているのではないかと思うので、本当に経験したダウン症の方たちの お母さんたちの声をここの資料に出してあります。  ここを見ますと産婦人科の先生からの説明がないとあります。だから、産婦人科の先 生たちにこういうことを言ってはなんですけれども、勿論良心的な先生は多いでしょう に全体的な不信感というものが出されていて、それに対してここの京都でやったかどう かは知らないのですが、広島とか静岡県の浜松市で生まれた子どもたちがこんなによく 育っています、取り上げてくださってありがとうございましたという手紙で産婦人科の 先生たちにお礼状を出そうという作戦をしまして、それなどかなり積極的に、分かって いただくのにはいい方法ではないか、産婦人科の先生たちが、お子さんが生まれて母親 父親、家族がとてもショックを受けたという段階しか御存じないのは当然で、その後の 情報というものを伝えていないというのは小児科医の責任もありますし、産婦人科の先 生と小児の医療ともっと、例えば超音波の結果も含めまして、もっともっと緊密な連絡 を取っていかないといけないのではないかということを考えさせられました。また読ん でいただければと思います。  実は、それは2年前なのですけれども、では、2年経ってどうなったかということで 69ページ、これはこの委員会があるので慌てて調べてくれた結果なのですけれども、京 都市全部の産婦人科医院を当たって今どういう状況かということを聞いて回ってくださ ったんです。それで見ていますと、実は意外とそんなには検査はやっていないと。それ を、ですから、中にはポリシーでやっていないとか実際にトリプルマーカー検査をそん なに安易にやらなくなった。これは、恐らくやはりいろいろPRがきいているのではな いか。それから、人類遺伝学会の見解がきいているのではないかと親の会の方は言って おられましたけれども、産婦人科の先生たちにそれが伝わっているのかどうかよく分か らないのですが、とにかく何かブレーキが掛かっているのではないかと。ここに感想と して書いてあります。  だったら、こちらでガイドラインをつくる必要はないのかというと、そうではなくて 一つには、こういうやらない先生たちが本当にやらないでも大丈夫かということを思っ ている方は結構多いと思うので、そういう方たちをサポートしてあげる必要もあると思 うのです。それから、まだ中にはとんでもないことをされているということは、この中 にも書いてあります。今4か所、実は名古屋と熊本も入っているのですけれども、そこ でどういうことを言われたかということを調査され少し出されているのですが、やはり とんでもないことを言われたとか、全く何も言われないで検査したということはありま すので、少しでもそういう実態を知っていただくことと、これからの問題があるので、 ガイドラインは必要ではないかと思いました。  次に71ページなのですけれども、外国はうまくいっているのかということを言いたく てもってきました。先ほども、日本でのやり方というのをきちんとしていかないといけ ないという話がありましたが、こういう問題というのは世界どこに行ってもまだだれも 経験していなくて、全部試行錯誤でやっている訳ですから、外国のまねをするのは私も 非常にナンセンスだと思います。実際アメリカでのこの記事、日経新聞に出されたとい うものを見ますと、アメリカでもかなり危ないなという感じがします。これだけではな くて、欧米の場合には、医師が非常に専門家に徹しているために、自分の専門以外のこ とは何も知らないという医師とか遺伝学者が多いのですから。私が欧米の臨床遺伝の専 門医という人と話したのでも、びっくりするほど無知と言っていいぐらい社会的なこと を知らない人が結構いますので、やはりこれはまねをしてはいけないかと痛感した訳で す。問題が出てからでは困るということだと思います。  最後に、人類遺伝学会の母体血清マーカーに関する見解で、僭越だとは思うのですけ れども、ここに先ほど申しましたように、番号をつけてあるところは、ちょっと誤解さ れるのではないかと。それと、内容が高度過ぎて一般の人には誤解されそうではないか というところもチェックさせていただいたのです。こういうことを踏まえて、母体血清 マーカーの実施に当たって配慮すべきことという文を作ったのですが、実はこれは時間 がなくてインターネットで送ったらなぜか途中で切れて後の方が続いていないので全く 申し訳ないのですが、またワーキンググループの方で出して、これはもう一回たたき台 の、またはその下のたたき台だと思うのですけれどもやっていただければと思います。  ここにはいろいろな問題のケースをずっと並べました。これは、私たちのところに来 たケース、それから、産婦人科の先生方のところに来たケース、それから、ジャーナリ ストの人に訴えがあったケースでそれらを集めて皆様方にお配りしたのですが、それを 見ていただきますと、これは静岡の場合は、実は静岡の一部の市で最初に導入して、か なり積極的に進めたということがありまして、そういうこともあるので私たちも危機感 を感じていたのですが、今は結構産婦人科の先生たちの中からも、これはおかしいとい うことを言ってくださる方も増えてきたので少し静まっています。ただ、やはり分かっ ていない方はいます。例えば3番目の方は「偽陰性」ですけれども、その3番目の方と、 それから、7番目の18トリソミーであったけれども異常なしと言われていて、親御さん が、お子さんが亡くなっても、いつまで経っても「何であの検査をしたのだろうか」と 言い続けてなかなか回復しないというケースもあります。それから、ほかはいわゆる疑 陽性ということになってパニックになったりとか、産むつもりだった子どもなのに陽性 という結果が出たので不安が突然起こった、不安材料になってしまったという例です。 それから、後の方は、要するに遺伝カウンセリングをしている何か所かの産婦人科の先 生に相談のあった例をまとめて送っていただいのたですけれども、それによりますと、 やはりこういうケース、私たちのところに来ているケースというのは、こういうことを 言ってはなんですけれども、掛け込み寺みたいなもので、バックグラウンドとしてはも っともっとあるだろうということは氷山の一角だろうと思う訳です。それはおかしいと 思っていたい、不安になって実際にどこに行っていいか分からないという人とか、ただ 黙って一人で悩んでいる人が随分いるのではないかというふうに思うのです。これは全 部ではなくてちょっと穴からこぼれたぐらいの人たちでしょうから、それを見ても、こ んなにばっとたくさん見つかるのです。これは2年半前から始まっていますから、この 2年のうちにこれだけのケースが来ているということは、これも本当に日本の中の数か 所にすぎませんので、多分日本じゅうでやると相当な問題になっているのではないかと 思います。  駆け足で済みませんが、もしまた、御不審なこととか御意見、コメントがあったらお 寄せいただければと思います。 ○古山委員長  どうもありがとうございました。大量の資料を準備していただいて説明するのに十分 な時間を差し上げることが出来ずに申し訳ありません。今日この資料はお持ち帰りにな っていただいて、じっくり読んでいただいて。 ○長谷川委員  この資料の中に入れましたけれども、精神療法でいわれている「不安の方程式」とい うのがありまして、不安は資源分のリスク(リスク/資源)だそうなんです。 ですから、「リスク」が大きくても「資源」が大きければ不安になりませんし、「リス ク」が小さくても「資源」が小さければ不安が大きくなるということです。面白いので 御参考にしていただければと思います。 ○古山委員長  ただいまの長谷川先生の説明について、何か御質問ございませんでしょうか。この後 今日の全体についてのフリーディスカッションをお願いしようかと思ったのですが、時 間が5分ほど超過してしまいました。この部屋も何時までというのもございますでしょ うし、今日はこのぐらいにさせていただきたいなと思うのですが、何か特別に御発言ご ざいましたらおっしゃっていただきたいと思います。 ○山田委員  次回の日程は。 ○古山委員長  そうですね、次回の日程を決めなければいけません。これは事務局の方から諮ってい ただけますか。 ○北島課長補佐  次回なのですが、1か月半後ということで12月の上旬ぐらいはいかがかと思うのです けれども。 (日程調整) ○北島課長補佐  では、12月9日の13時30分から16時30分ということで、30分か1時間程度前後は可能 だと思いますが、この時間でよろしいですか。では、9日の13時30分から16時30分の予 定でお願い申し上げたいと思います。 ○小田母子保健課長  次回までに、ワーキンググループを開かなければいけませんが、ワーキンググループ につきましては先生方の地理的ないろいろ都合もございますので、名古屋辺りがいかが かなと考えております。名古屋あるいは大阪でも構いませんが、その周辺で東京まで来 ていただかないということで、静岡、神戸ぐらいのところかなと思っております。  また、日程は先生方の方に御連絡させていただきます。  それから、ヒアリング等につきましても、次回対象者を選定していただくことになり ますが、私どもとしてはやはり業界の方から正式にこの審議会で聞いておりませんので 業界の意見も聞く必要があるのではないかというふうに認識しております。それ以外に も必要であれば、先生方からこの人の意見をということであれば、またお願いしたいと 思います。主として、トリプルマーカー関係ということでお願いしたいと思います。そ れ以外には、基本的にここにいらっしゃる先生方で十分対応出来るということで私ども は選考させていただいていますので、よろしくお願いいたします。 ○ 古山委員長  では、長時間ありがとうございました。予定しました議事をすべて終了いたしました。 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。   <照会先>     児童家庭局母子保健課      北島(内3173)、武田(内3179)      (代表)03−3503−1711      (直通)03−3595−2544