98/10/07 第11回厚生科学審議会研究企画部会議事録 第11回厚生科学審議会研究企画部会議事録 1.日  時:平成10年10月7日(水) 14:00〜16:00 2.場  所:厚生省特別第一会議室 3.出席委員:矢崎部会長        (委員:五十音順:敬称略)         大石道夫 柴田鐵治 寺田雅昭        (委員:五十音順:敬称略)         土屋喜一 寺尾允男 初山泰弘 眞柄泰基 眞崎知生 宮本昭正          柳澤信夫 山崎修道 4.議  事:(1)平成11年度厚生省科学技術関係予算概算要求の概要(報告)        (2)特許法改正による特許料について(報告)        (3)今後の厚生科学研究の在り方について 5.資  料:1.平成11年度厚生省科学技術関係予算概算要求一覧表        2.平成11年度厚生科学研究費補助金概算要求の概要        3.厚生科学研究費補助金各研究事業新旧対照表        4.特許法改正による特許料について        5.「今後の厚生科学研究の在り方」に関する厚生科学審議会における           主な論点(修正案) ○事務局  それでは定刻になりましたので、ただいまから第11回の「厚生科学審議会研究企画部 会」を開催させていただきます。  本日は高久委員、杉田委員が御欠席でございます。  では最初に、本日の配布しております資料につきまして、事務局から御説明申し上げ ます。 お手元に「議事次第」という1枚紙がございます。  それから資料1−1「平成11年度厚生省科学技術関係予算概算要求一覧表」という1枚 紙でございます。  資料1−2「平成11年度厚生科学研究費補助金概算要求の概要」でございます。  資料1−3「厚生科学研究費補助金研究事業新旧対照表」でございます。  資料2「特許法改正による特許料について」でございます。  資料3『「今後の厚生科学研究の在り方」に関する厚生科学審議会における主な論点 (修正案)』でございます。  以上、資料の御確認をいただきたいと思います。 ○矢崎部会長  本日は御多用のところお集まりいただきまして、ありがとうございました。一応4時 までということで議論を進めさせていただきたいと思います。  まず事務局から、平成11年度厚生省の科学技術関係予算概算要求の概略についてよろ しくお願いいたします。 ○事務局  それでは資料1−1〜1−3に基づきまして、御説明申し上げたいと思います。  まず資料1−1でございます。現在大蔵省の方に提出しております平成11年度の概算要 求の中で、厚生省の科学技術関係に係る予算をとりあえずひとまとめにした資料でござ います。一番下の欄をごらんいただきますと、厚生省の科学技術関係予算11年度要求額 が1,032億余りということで、1千億の大台に乗ったということでございまして、伸び率 といたしまして前年度比108.5ということで、8.5%の増ということでございます。  その内訳といたしまして、まず一般会計でございます。その大部分を占めますのは科 学技術振興費でございます。その中で、今回資料1−2、1−3としてお付けいたしており ますものは、資料1−1の3)の補助金のところにあります厚生科学研究費補助金でござ います。これはこの部会で平成10年度の公募方針であるとか、いろいろなところで御説 明申し上げてきた予算でございます。11年度の要求額が280億6,000万円余りということ でございまして、前年増で63億7,800万円余りということになります。伸び率で29.4%増 ということになっております。全体の中で、先ほどの一番下の欄でございますが、合計 額で増が81億円ということになっておりますので大層を占めますのが厚生科学研究費補 助金ということになっております。  その他でございますが、試験研究機関の経費等が増になっております。他の補助金、 例えて申しますと、科学試験研究費補助金であるとか、結核研究所の補助金、放射線影 響研究所の補助金であるとかというのが、補助金全体の削減の方向の中で削減されてお ります。  下の欄でございますが、特別会計。いわゆる国立病院関係の研究費等でございます。 ナショナルセンターの経費というのが4.3%の増になっております。いわゆる研究費の部 分でございますががん研究助成金から循環器病研究委託費、国際医療協力研究委託費、 小児医療研究委託費、精神・神経疾患研究委託費につきましては前年同ということにな っております。長寿医療研究委託費が前年より5,000万円増の2億5,000万円ということで ございます。それから治療研究費は1億600万幾らかの増で、7.3%の増ということになっ ております。  これが非常に簡単でありますが、厚生省関係の科学技術関係予算の概算要求の一覧と いうことでございます。今日詳しい資料をお付けいたしておりますのは資料1−2でござ います。「平成11年度厚生科学研究費補助金概算要求の概要」という資料で、厚生科学 研究費につきまして資料を付けさせていただいております。  この部会の中でも、平成10年度の公募の方針であるとか、そういうところでいろいろ 資料を以前から御提示申し上げておりますが、行政政策研究分野、総合的プロジェクト 研究分野、それから先端的厚生科学研究分野、健康安全確保総合研究分野ということで 厚生科学研究費は大きく4つの分野に分けまして研究を推進しているわけでございます。 その中で11年度につきましては、ここに記載してございますとおり、一般会計の通常の 枠で245億6,100万円というものを要求いたしております。前年額は216億8,200万円でご ざいます。  それで、先ほど資料1−1で全体が280億円の予算と申し上げましたけれども、それはそ の数字の下のところに記載してございます、21世紀特別枠といたしまして35億円を別途 要望しているということでございます。これにつきましては、資料1−1の一番下の欄に 情報通信・科学技術・環境等21世紀発展基盤整備特別枠分を除くというふうに書いてご ざいます。21世紀特別枠と称しておりますけれども、情報通信関係、科学技術関係、環 境関係については来年度の予算の中で特別枠というものが認められております。これは 政府全体で1,500億円の枠がございますが、厚生省枠として66億円が割り当てられている ものでございます。実際には最終的に1,500億円になりますが、各省庁が要求する額は総 額で2,300億円ということになっておりまして、それが最終的に査定をされまして1,500 億円、つまり、1.5倍程度の競争があるということになるわけでございますが、その予算 を使いまして厚生省で35億の枠を研究費分で取っております。後ほど中身については御 説明申し上げます。  1番目といたしまして、行政政策研究分野につきましては、(1)の政策科学推進研究か ら(4)社会保障国際協力推進研究という4つの分野の研究を推進していくということを予 定いたしております。額につきましてはごらんいただいたとおりでございますが、ここ の分野につきましては、(4)の社会保障国際協力推進研究として社会保障分野に関する国 際的な政策研究、調査等を行うという国際協力推進に直結する研究のために5,100万円の 新規要求をいたさせていただいております。  2番目の総合的プロジェクト研究分野でございますが、これはがん克服戦略研究、長 寿科学総合研究、障害保健福祉総合研究、子ども家庭総合研究の4つの研究から成り立 っております。この分野につきましては、基本的には単価の増というようなところの微 増にとどまっております。  2ページでございます。先端的厚生科学研究分野でございますが、脳科学研究、ヒト ゲノム・遺伝子治療研究、高度先端医療研究、新興・再興感染症研究、エイズ対策研究 感覚器障害及び免疫・アレルギー等研究、それから新規といたしまして、特定疾患対策 研究という7つの大きな研究から成り立っております。脳科学研究、ヒトゲノム、高度 先端医療研究、感覚器障害及び免疫・アレルギー等研究につきましては、前年と比べま して単価の増ということで増額要求になっておりますが、新興・再興感染症研究につき ましては1億円の増ということになっております。  エイズ対策研究につきましては、下のところに注を付けてございますが、エイズ対策 研究の中に医薬品開発ということで医薬品の開発分の予算がございましたが、これが10 年度予算11億4,900万円、11年度の予算要求11億5,500万円ということで若干の増要求を した上で、エイズ対策研究から創薬等ヒューマンサイエンス総合研究へと、医薬品開発 を総合的に実施する方の研究費へ移替えをいたしております。  特定疾患対策研究でございますが、19億8,800万円というのが新規要求になっておりま すが、これは資料1−1に戻っていただきますと、従来は厚生科学研究費補助金の枠の外 の特定疾患調査研究費という枠で19億8,750万円というものを要求いたしておりましたが それを同額厚生科学研究費補助金の中で研究を実施していくということで組み替えたも のでございます。  3ページ目でございますが、健康安全確保総合研究分野ということで、大きく5つの 柱がございます。生活安全総合研究、医薬安全総合研究、健康科学総合研究、創薬等ヒ ューマンサイエンス総合研究、医療技術評価総合研究ということでございます。  一番初めの生活安全総合研究が14億9,900万円から11億600万円ということで減のよう に見えますが、注に書いてございますとおり、ここでやっておりましたダイオキシン類 内分泌撹乱化学物質関係の研究費を増額いたしまして、その部分を21世紀特別枠として 35億円という形で別途要求しておりますので、ここの部分は実際には15億円弱から46億 円へという形で増額要求になっているわけでございます。  医薬安全総合研究につきましては、単価のアップに伴う増要求でございます。  健康科学総合研究につきましては、1億円余りの増額要求。  創薬等ヒューマンサイエンス研究につきましては、エイズ医薬品の開発部分を含めま して増要求になっております。  医療技術評価総合研究につきましては、5億9,000万円の平成11年度要求から8億2,800 万円へという増要求という形で現在大蔵省の方に概算要求をさせていただいているわけ でございます。  資料1−3でございますが、これは先ほど移替えを行ったということで御説明申し上げ ましたけれども、エイズ対策研究経費につきましては矢印に記載しているとおり、エイ ズ対策研究経費と創薬等ヒューマンサイエンス総合研究経費という2つになっている。 それから特定疾患研究費補助金を今度は厚生科学研究費補助金の方に組み入れまして、 特定疾患対策研究経費ということで要求させていただいているというものでございます。  以上でございます。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。今の御説明で何か御質問ございますでしょうか。厚 生科学研究補助金が随分予算として増やしていただいて大変ありがたいと思います。  21世紀枠の予算として1,500億円のうちの厚生省の中で研究補助金もその中に一部組み 込まれているのでしょうか。 ○高原厚生科学課長  実は内政審議室の方でずっと各省からいろいろ話を聞いて、そこで総合調整するとい うことでありますが、厚生省枠としては余り多くないので、66億円が割り当てになって おります。66億円の中で厚生科学研究費という形で今、要求を予定しておりますのがダ イオキシン関係が25億円、エンドクリンディスラプター(内分泌かく乱化学物質)が10 億円ということでございます。これは特徴といたしまして、豊かな生活空間の拡大とか そういうふうなスローガンが付いておりまして、それに資する研究ということになって おります。幾つかの複数の省庁で連合してやるような研究に重点を置きなさいというふ うなことで対象がこういうふうに絞られたわけであります。例えばダイオキシンにいた しますと、環境庁が生態系に対する影響をやる。厚生省が発生源関係の研究、人体に対 する研究をやると。労働省が、例えば焼却工場で働いている人の労働衛生という観点か らやるというふうな、各省庁が連合して短期間にある程度目覚ましい成果が上げられそ うだというふうな領域をやるということになります。 ○矢崎部会長  医療の世界で情報化というものが随分後れているのではないかと思うのですが、それ に対しては予算の申請に対する説得力はないのでしょうか。 ○高原厚生科学課長  医療情報関係の研究費は4の健康安全確保総合研究の中の(5)医療技術評価総合研究と いうもので若干増えているということでございます。21世紀枠では入っておりません。 というのは、医療情報になりますと厚生省の単独の話になりまして、なかなか他省庁と 連合してやるというふうな形に必ずしもうまくいかないということでございます。 ○宮本委員  課長さんのお話に関連してなのですけれども、例えば、21世紀の特別枠というのは各 省庁の横並びでの研究であるというふうにおっしゃいましたけれども、ここに出てきて おります例えば25億円、10億円というのは厚生省だけが使える金額であるというふうに 考えてよろしいのですか。 ○高原厚生科学課長  そうです。 ○眞柄委員  今度新しく社会保障国際協力推進研究費というものが付きましたが、これと現在国際 医療協力研究の委託費が計上されていますけれども、この辺の関係というか整理を御紹 介していただければありがたいですが。 ○国際課  ただいまの御質問の件についてですけれども、従来の国際医療協力研究委託費という ものは、特に国際協力の医療に関する研究というものについてなされてきたという経緯 がございます。それに対し、新規の社会保障国際協力推進研究経費というものは、平成 8年のサミットで世界福祉構想が出されましてそういうことが背景になって、もっと社会 保障に関する国際的な研究をアドミニストレーション(行政的に施行)というか行政的 な面を念頭に置いて研究する必要があるのではないかと。そういったアドミニストレー ションの面についても科学的な根拠というものをきちんと得て、それぞれの地域の現状 分析ですとか、国際協力のプライオリティー(優先順位)付けはどのようにやっていく かとか、そういうことを研究するという整理にしております。 ○矢崎部会長  そのほかに何かございますでしょうか。それでは、この数字については後でまたゆっ くりお目通しいただくことにして、次に、前回の部会におきまして、あるいはその前か ら委員の間から依頼のありました特許に関する事項でございます。今まで得られた情報 について事務局から説明願います。 ○事務局  前回の部会におきまして、特許法の改正等につきまして御説明を申し上げました際に 委員の方から要求のございました、特許法の改正により特許料がどういうふうになるの か具体的に示してほしいというお話でございましたので、今日は具体的に額をお示しし たいと思います。  資料2でございますが、改正前が左の欄、改正後が右の欄ということになっておりま す。従来でありますと、10年以降の特許料につきまして、1出願当たりの額につきまし ても3年間ぐらいで倍々になっていくというような特許料の設定になっておったわけで ございます。請求項当たりの加算料金につきましても同様に倍々という形になっておっ たものを、改正後につきましては10年で頭打ちということになりますので、10年以降は 1出願当たり8万1,200円、1請求当たりの加算料金が8,400円ということになるわけでご ざいます。  下の方に注が記載してございますけれども、この表につきましては、昭和63年の1月1 日以降に出願された特許につきまして、本年の6月1日以降に支払われる特許料というも のに対して適用されているわけでございます。昭和62年以前に出願された特許につきま しても、ここにはお示ししておりませんが、同様の引下げが行われております。  次のところでございますが、通常の特許で平均的なケースということでございますが 大体、1出願あたり5つぐらいの請求項目というものがございますので、10年目以降に つきましては12万3,200円余りというのが大体平均的なケースということでございます。 通常の特許というのは20年ということになっておりますけれども、薬事法等の関係で延 長の特例ということがございますので、表上では25年迄記載してございます。  簡単ですが、以上でございます。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。何か先生方で御意見ございませんでしょうか。いろ いろ研究企画部会で特許料以外にも議論がありました。生命科学におけるいろいろな発 見された、あるいは開発されたものの特許については理工系と少し違うところがあって 包括的な特許の取り方とか、アメリカですとどんどん特許が先行しますけれど、日本で は外国に打ち勝つためにはまず最初にペーパーを出すということで、特許を二の次に考 えている傾向がありますので、それについては生命科学の方は少しいろいろな問題を抱 えているということを特許庁に申し上げて、なるべく早く御配慮を願うという状態では ないかと思います。 ○寺田委員  企業との共同研究のときに一番ネックになる事があります。10年来話をしているので すけれども、国と共同研究をやる場合に特許をどうするのだということがはっきりしな い限り、企業の方もなかなかやってくれないです。やはりそこは非常に大事だと思いま すし、部会長おっしゃいましたように、日本ではどうしてもペーパー優先で、このごろ では3Pとかいってペーパー、パテント、パフォーマンスかプレゼンテーションのどち らかで3Pというのが大体1対1対1ぐらいで評価されるという話しもあるほどです。本 当の昔流の科学からいくと少しおかしなところがあるのですけれども、パテントは非常 に大事ですので是非システムとして作って頂きたく思います。こういうお金もそうなの ですけれども、どこへ持っていったら間違いのないオープンな形で国の研究費を使った 研究がパテントを取れるのかという形をつくっていただければ大変ありがたいと思いま す。つくらなければ結局せっかくの国民の税金を使わせてもらって生まれた成果が無駄 になります。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。恐らく特許庁も今、そのように検討されておられる と思いますけれども、よく意思を明確に更に伝えていきたいと思います。 ○大石委員  特許に関しまして気がつかないというか唯一の救いというのは、口頭発表の場合、学 会によって発表をしても、それがあと6か月ないし1年の猶予期間があって、それ以内に 出願すれば特許として認められるというのがあるのですけれども、問題が、発表する会 が非常に日本では厳しいわけで、ある特別のここでなければだめだと、普通のところで はだめだという形になっていますので、その辺を少し緩めますと、割合皆さんが自由に 発表しても、なおかつ特許を申請する余地が残っているというようなことがありますの で、その辺ももしあれでしたら検討していただければ結構だと思います。 ○矢崎部会長  それでは今、寺田委員、大石委員に御提示いただきました、国の研究費を使った研究 の結果とパテントの在り方、あるいは企業と国でどう関係をうまく調和してパテントを 取るかということと、発表する学会その他の規制の緩和という2点をこの会からも特許 庁に申し入れたいと思います。  その他ございませんでしょうか。どうもありがとうございました。  それでは、第8回から議論を続けておりました、「今後の厚生科学研究の在り方」に ついて今日御議論いただきたいと思っております。前回の部会でいろいろな御意見、御 提言をいただきまして、事務局の上で資料3にあります主な論点ということで整理し直 しました。前回の資料では4番目のその他の中にありました、いかに基礎的研究を臨床的 研究につなげていくかという支援体制などにつきまして、寺田委員と御相談の上に、1 の今後より重点的に推進すべき研究の方向性ということで整理し直してみましたので、 併せて事務局から説明をお願いしたいと思います。 ○事務局  それでは資料3に基づきまして、御説明申し上げます。『「今後の厚生科学研究の在 り方」に関する厚生科学審議会に関する主な論点(修正案)』ということで御提示申し 上げております。下線を引いた部分が前回の部会のときに提出いたしました資料を加筆 したもの、または修正をしたものということになっておりまして、1番のタイトルが 「今後推進すべき研究分野について」というふうになっておりましたが、分野ではなく て方向性であるとか戦略ではないかというふうな御意見がございましたので、ここを 「今後より重点的に推進すべき研究の方向性について」ということで書き換えてござい ます。  それから一番上の○でございます。EBMの推進に関する治療研究や予防研究という形で 治療研究と予防研究にアンダーラインが引いてございますが、これは臨床研究と前に御 提示申し上げたものではなっておりましたが、やはり予防ということをもう少し強調し た方がいいのではないかという御意見を踏まえまして、ここを「治療研究や予防研究な ど」というふうに修正させていただいております。  下の3つ、ポツでございますけれども、まず一番上でございます。「RCTの推進(社会 的・倫理的・法的側面の整備、研究マニュアルの作成)」ということでございますが、こ れは前回に記載していなかったものでございます。これにつきまして、EBMの推進の中に 明記をした方がいいのではないかということでここに明記をさせていただいております。  2番目のポツでございますが、「効果的、効率的な医療や疾病予防を目指すために」 となっております。ここは従来「医療」ということで書いてございましたが、ここもや はり予防の側面というものを強調した方がいいのではないかという御提言をいただいて ここに疾病予防ということで追加させていただいております。  「安全性や有効性の評価に関する研究」でございますが、これは従来○になっており ましたけれども、やはりEBMの中できちんと位置づけてやるべきではないかという御提言 をいただいて、記載の場所を変更させていただいております。  2つ目の○「測定方法、測定機器の開発や測定データの標準化に関する研究」という ものは特に変更はございません。  次の○「医療技術の進歩に対する、社会的、経済的及び倫理的側面からの総合的な研 究」ということでございますが、これは前回の御議論の中で経済面の研究というものを もう少し明示的に書いた方がいいのではないかということ。それから、「総合的」とい う言葉を付け加えたらいいのではないかというような御提言がございましたので、それ を踏まえて修正させていただいております。  一番下の大きな○でございますが、「臨床的展開が可能な研究」となっております。 これは先ほど部会長から御説明がありましたとおり、前回御提示申し上げました論点の 中では、4のその他に「基礎的研究を臨床的研究につなげていくシステムの整備」とい うことで御提示申し上げておりましたけれども、前回の御議論、それから部会長と寺田 委員に御相談をいたしまして、その他ではなくて1の「今後より重点的に推進すべき研 究の方向性について」の中にきちんと位置づけた方がいいという御意見でございました ので、「臨床的展開が可能な研究」ということに少し言葉を分かりやすくさせていただ いております。その中で大きな方向性といたしまして、ここにポツ4つがございますが 「官民共同研究の推進」「臨床的研究の実施に対する安全性評価システムの充実」「研 究費の充実」「研究補助員等の人材の確保・充実」という大きな4つの観点から記載を させていただいております。  2番目でございますが、「研究支援体制の充実について」ということでございます。 一番上の○を追加してございますが、「若手研究者の養成、確保」ということでござい ます。前回研究補助員というふうに記載して、それにつきまして誤解を招くという指摘 を受けまして、ここを若手研究者と研究補助員ということで明確に書き分けさせていた だいております。  次の○が「若手研究者の人事交流の促進や任期雇用制の導入による国立試験研究機関 等の活性化」ということでございます。これは人材交流などの促進によるというふうに 前回は記載してございましたが、少し詳しく書いて修正させていただいております。  次の2つの○でございますが、これは前回の部会の中で御指摘いただきました、「研 究費の柔軟な運用や事務の簡素化」「厚生科学研究費補助金推進事業の運用面の改善」 という2つの御意見をここに盛り込んで追加させていただいております。最後の○が 「リサーチ・リソース(研究材料)の確保」ということでございます。  3番目の「研究に関する情報について」は、今回は変更、修正はございません。  4の「その他」は、先ほど申し上げましたように、従来ここに「基礎的研究を臨床的 研究につなげていくシステムの整備」というものを記載してございましたが、それを1 の方に上げましたので、1つ項目が減っているというところでございます。  以上でございます。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。「今後の厚生科学研究の在り方」については既に何 回か立派な御提言がありますが、この研究企画部会で改めてどういう提言をするかとい うことでずっと今まで御議論をいただいたわけであります。21世紀を目指した遠い将来 のことと、もう一つは、現実に医療、医学が抱えている問題点を具体的にどういうふう にピックアップして、効率的に研究を進めるか、その枠組みをきっちりある程度は提示 した方がよいのではないかということで、研究の在り方というと非常に本質論で、なか なか具体的な議論まで一歩進めることができなかったのですが、主な論点を取り上げま して、これを基に骨子案のようなものをつくりながら、在り方の現時点での提案のよう なものを作成していきたいというふうに考えさせていただいております。  まずこのような研究の方向性とか、そういう論点の進め方で何か御意見ございますれ ば、御発言いただきたいと思います。 ○眞柄委員  前回用があって欠席しまして、議事録は送っていただいて拝見をしたのですが、何人 かの先生からも御指摘があったかと思いますが、そういう意味で、予防という言葉が今 回入っているわけでございますが、私の気持ちとしては、予防というよりも健康増進と いうような、もう少し幅広な公衆衛生の目標を決めるための研究というものをどこかで 入れていただきたい。そういう意味で、3番目のところが「医療技術の進歩」という言 葉になっておりますが、広くそのような部門を包含するという意味では、「厚生科学の 進歩に対する」というふうにしていただきますと、健康増進のことも、あるいは生活環 境、生活衛生の部門も、いずれも社会的、経済的、倫理的な側面を担っているわけでご ざいますので、広く厚生科学というふうに直していただいて、そういう側面があるとい うように御配慮いただければなというふうに思います。  もう一つは、順番の並びなのかもしれませんが、「測定方法、測定機器の開発や測定 データの標準化に関する研究」だけ非常に具体的でございますので、順序とすれば、場 合によれば一番後ろぐらいの方がいいのではないかなというふうに考えます。 ○矢崎部会長  大変貴重な御意見ありがとうございました。 ○山崎委員  大変分かりやすくなりましたし、いろいろな面で重点的に整理されて非常によくなっ たのではないかと思うのですけれども、今の御発言と重複しますけれども、私も予防研 究という言葉が入ったことは大変ありがたいと思っています。特に医療という言葉です が、しばしばこれは一般の人の解釈と行政サイドの解釈は違っていると思うのです。や はり一般には医療というと病気に対する治療ということが考えられていまして、健康を 維持するとか予防するという言葉の概念は余り入ってこないと思います。行政サイドで は、それは入るのですよと。医療と言えば当然ワクチンも入りますよというお話ですけ れども、こういうふうに具体的に書かれたということで大変いいと思っております。  1つ質問は、EBMですが、Evidence Based Medicineという横文字が入ってきますと この定義なのですけれども、ここでは科学的証拠に基づいた医療というふうに訳してあ りますけれども、具体的にこれはどういうことを意味するか。例えば、我々の分野で言 えば、これはある感染症なら感染症の社会に及ぼす経済的インパクトというようなもの を意味する。いわゆるディジーズ・バードン・サーベイというようなものは1つのEBMの マーカーになるわけなのですが、ほかにどういうものがあるのか、この定義を読んだ場 合にもう少し分かりやすくなった方がいいのではないかというのが1つ。  もう一つは、この中に「安全性や有効性の評価に関する研究」というのがございます が、これは勿論頭が抜けておりますけれども、治療予防薬の安全性や有効性というふう に解釈して読みますと、次の下に出てきます臨床的展開の中の「臨床的研究の実施に対 する安全性評価システムの充実」というものと何か別なことを考えているのかどうか。 あるいは同じことを別な言葉で言い換えているのかどうか、この2点お願いしたいと思 います。 ○矢崎部会長  EBMという言葉の定義、ですからこれを科学的なデータに基づいた医療ということで、 主治医が自分の経験とか裁断でやる医療ではなくて、ある標準化されたガイドラインに 基づいて医療をやるということで、もっといい言葉がないか何かいい考えはありますか。 ○山崎委員  私はそういうふうに解釈していなかったのです。この文章の書き方としますと、EBMの 推進に関する治療研究ということは、つまりなぜその治療研究、あるいは予防研究をし なければならないかという科学的エビデンス。例えば、これだけ経済的なインパクトが あるからとか、これだけ人々を苦しめているから、だからこの研究は必要なのだと。そ ういうための証拠を出しなさいという意味に私は解釈していたのです。ですから部会長 の今の解釈と違うと思うのです。この言葉が余りはっきり定義されていないのではない かという気がするので、何か解説が要るような気がしました。 ○矢崎部会長  そうですね。取り方によってそのような広い取り方にもなりますね。私ども臨床医は ある疾患で治療法がABCあるとする。この患者さんにはABCのどれが一番いいか決定しな ければいけない。そうすると、患者さんの予後はどうなるか知らなければいけない。そ ういうデータベースになるものが我が国ではほとんどないのです。例えばがんセンター のデータとか、私どもの大学のデータがありますけれども、外国はそういうデータがた くさんあるわけです。ですから、EBMの研究を進めるにはどういう工夫が要るかというこ とは勿論必要なのですけれども、どうしたらこういう疾患を予防できるか、あるいは感 染症を予防できるかという具体的なストラテジーを根拠に基づいて組み立てていくかと いうことと思っています。今EBMといいますと、輸入した新しい概念で、すぐ横文字に飛 びついてけしからぬという議論があるかと思うのですが、これは結局医療の根本だと思 うのです。  私が入局したときの内科の教授は沖中先生で、沖中先生は有名な先生ですけれども、 先生を非常に尊敬申し上げるのは、最終講義で話されたように、私の誤診率は13.4%で した。胆のうがんですと19%でしたと。あの当時はいろいろなデータを公開するという 情報開示というのは考えられなかった時代に、沖仲先生はEBMのアメリカでもそんなこと を言われないときに我が国でやられたということで、EBMの精神というのは我が国にもあ ったと思うのです。だけれども、単にマスコミが、あんな名医の先生がこんなに誤診率 があるかと、それだけを取り上げてしまったのが不本意ではないかとずっと考えていた のです。沖仲先生の臨床講義集を見ていただくと分かりますけれども、先生の対応は、 最新の文献をそろえて病気を考え、この患者さんにどうしたらいいかということに基づ いて徹夜で勉強して講義されたのです。それこそ本当に今、見ても、先生はEBMに沿った 講義をされていたなと思うのです。ですから、何々教授の臨床講義というのではなくて 皆がある程度最新の情報を持って患者さんに当たるという医療をしないと、なかなか医 療も今後成り立たないのではないかというふうに考えているのです。  話が長くなりますけれども、これは聞いた話で本当かどうか分かりませんが、朝鮮戦 争のときに若い兵士がたくさん亡くなって、剖検してみると若い人に冠動脈の硬化症が 物すごくあると。それでアメリカでフラミンガムスタディーが始まった。50年近く前で すね。そういうことでアメリカはいち早くそれに気付いてデータベースをどんどんと蓄 積した。ところが日本が余りそういう機会がなかったので、そういうデータベースがな い。  ですから、臨床的なデータベースをしっかりそろえる研究を推進したい。先ほど少し 課長さんに情報化というふうにお話し申し上げたのですが、単に医療サービスの情報化 だけではなくて、医療のデータベースをどういうふうに集めるかという、例えば、感染 症、届出制の疾患ならいいのですけれども、急性心筋梗塞が実際に我が国で何人あるか だれも知らないのです。だからそういう意味では、もう少し情報化があってもいい。そ れには随分お金が掛かるのではないかと思うのです。 ○山崎委員  部会長の今の御説明を聞いて、私の言っていることも含まれるというふうに解釈いた します。2番目のことはいかがでしょうか。ダブっておりませんでしょうか。安全性、 有効性の評価に関するというのと、その下の臨床的研究実施に対する安全性評価システ ム。ここは勿論倫理性の評価ということも入った方がいいと思うのですけれども。 ○寺田委員  これは同じような意見を部会長からも言われたのですが、上の方は既に企業が作った 例えば製薬会社なら製薬会社がつくった薬、あるいはワクチンの有効性、副作用という ことに関して、RCT(Randomized Clinical Trial:無作為抽出臨床試験)できちっとし たデータを出す研究で、EBMのもとになります。  下の方は、例えば遺伝子治療や診断をやる場合に、研究室では有効性があっても、そ の次の最初のステップ、臨床のところに持っていくことが大切になります。そこのとこ ろの倫理的な面は随分皆さんの努力でよくなりました。しかし、倫理のところに持って いく前に、これが本当に安全なものかどうかというところをチェックするところが殆ど ありません。そこでそういう意味で、ここに書き入れました。勿論最終報告のときには 二重にならないようにした方がいいと思いますけれども、そういう意味で入れるのがよ いと思います。 ○山崎委員  分かりました。上の方はどちらかというと新薬も入るかもしれないけれども、既存の 医薬品も含めた安全性、有効性の再評価ということも入るという解釈ですね。どうもあ りがとうございました。 ○矢崎部会長  上の方はエビデンスを確かめるための評価ということで、下は未来を目指した開発の 安全性を、臨床応用するときの安全性とかそういうものを評価ということで寺田委員が 強調されたところだと思います。 ○寺尾委員  私は前回欠席したと思いますけれども、もし議論済みのことであればお許し願いたい のですけれども、この文章非常にうまく書けているのですけれども、臨床、あるいは医 療という切り口だけで書いてございますね。しかし、厚生省がカバーしている分野とい うのは非常に広いところをカバーしているわけで、例えば、食品の問題であるとか、福 祉の問題とかいろいろあると思うのですけれども、そういうものを全然これに盛り込ま ないでこれだけをぽんと出しますと、最終的にこうなるのかもしれませんけれども、プ ライオリティーを考えますと医療というものが一番高いのかもしれませんけれども、ほ かの分野のことについて何も議論をしないでこれを出すというのは少し具合が悪いので はないかという気がいたしますけれども、いかがでございましょうか。 ○高原厚生科学課長  例えば一番上、EBMという言葉で広がっているのでこういうふうに表現されたわけだと 思うのですが、実はEvidence Based Health Policyというふうな領域も出ているわけ ですが、それにはレギュラトリー・サイエンスというのは大変重要な分野として入って おるわけでございます。規格基準を例えば設定するというふうなものも、やはり多数の といいますか、特に人間におけるハザードの発生についてメタアナリシスを行って、 データベースで蓄積をしてそれを基に、勿論人間だけのデータではとてもレギュラト リー・サイエンスがカバーできるわけではございませんが、そういうデータベースを、 例えば、ダイオキシンの20年後の発がん率であるとか、今でも使われております広島・ 長崎の原爆の発がん率であるとか、そういうふうなデータを利用してある種の外挿法を 行ってレギュレーションのスタンダードをつくっていく。  これはそういうふうな意味では、Evidence Based Medicineと言うと臨床的な検査と か、特に治験的なものの評価だけに限定、割とそれが量とすれば多いと思われますが、 ここでEBMと書いたのはメディシンというか、クリニカル・メディシンだけというよりも Evidence Based Nursingとか、Evidence Based Health Policyとか、いろいろなも のに何でもEvidence Basedを付ければいいのかと揶揄したくなるような傾向もないでは ないわけでございますけれども、やはりレギュラトリー・サイエンスの基礎になるよう なものというのは、ここにある程度含まれているのだと思います。しかしながら、では 更にその基礎になるような実験的な、例えばトキシコロジーであるとか、分析科学であ るとかというのが十分含まれているかどうかというふうなことは、先生の御指摘をいた だきまして充実させてまいりたいというふうに思います。 ○眞崎委員  臨床的展開が可能な研究というのは、1番の今後より重点的に推進すべきにわざわざ 入れた理由ですね。要するに臨床研究が基礎研究に比べて後れているということを言う のですか。これだけだと、基礎的研究は十分だというような感じに取れないでもないの ですけれども、その点が1つ。  もう一点は、先ほど山崎委員から御指摘があったのですけれども、臨床研究で非常に 日本の研究者が困っているということは、日本は外国に比べて非常に臨床的研究がやり にくいのです。それは倫理的なガイドライン等がばらばらであるということもあります けれども、例えば、ヒトの材料を使うときにどうしたらいいのかということが全然分か らないわけです。その辺のことを含めて「臨床的展開が可能な研究」のところにわざと 倫理面を強調して入れた方がいいのではないかというふうに思いますが、いかがでしょ うか。 ○矢崎部会長  貴重な御意見ありがとうございました。先ほどの寺尾委員の御質問を含めて、これは 決して基礎的研究とかその他のものを無視して、これからこういうふうにやるのだとい うことではなくて、今までどおりに進める必要があります。というのは、我が国の医療 は今、経済的な面から言われていますけれども、医療そのものも早晩ビックバンみたい なものを迎えて、そのときに我が国で独自に開発した医療技術とか創薬というものを持 っていないと医療を維持できないのではないかというふうに思っています。そのときは グローバルな視点からハーモナイゼーションとやったときに、我が国は臨床的な基礎と なるデータがないので、これは個人的な考えですが、ハーモナイゼーションやるとアメ リカの一人勝ちになってしまうと思うのです。ハーモナイゼーションというのはうっか りすると恐ろしい。私は何も鎖国主義者ではないのですけれども、やはり我が国ではあ る程度論理的に医療を進められるベースがないと、ハーモナイゼーションというのはす なわち外国のデータで日本の医療を全て行うような事態になってしまう可能性があるの で、我が国のデータも大事だということでもEBMというお話をしたのです。  それと我が国独自の医療技術開発といっても、いわゆる応用研究とか臨床研究ではで きないわけで、病態に関連した基礎研究がしっかりできていないと、芽が出てこないわ けです。ですから、そういう意味で疾患に関する基礎的な研究は従来どおりやらなけれ ばいけない。厚生科学としての研究に関しては、勿論将来の臨床的研究に展開する可能 な研究を推進するということかと思います。しかし、この中には相当広い範囲のものが あって、単にこれは医療や臨床重視でほかはもう無視していいのだということではなく て、差し迫って我が国が医療のレベルとか、本当にビックバンになったときに生き残れ るかどうかというときに、厚生省としてしっかりした対応を今、立てておかないと大き な問題を抱えるのではないかと。今いろいろな変革期で、私自身はそういう危機感を持 っていて、ともかくグローバリゼーションとかハーモナイゼーションという非常に、私 はEBMよりはその方が格好いいけれども、実態は難しい問題ではないかなと個人的には思 っています。厚生省はハーモナイゼーションでやっておられるから、もし違っていたら 申し訳ないのですが。  今、経済的な意味からばかり議論されていて、今に自分がしてほしい医療ができなく なるとか、そういうことを国民が非常に不安がっていますけれども、私自身は本当に患 者さんにクオリティーが保障された医療を受けられる状態に持っていかないといけない。 話が長くなってしまいますけれども、私どもの病院に高血圧の患者さんとか、糖尿病の 患者さんが毎日200人ぐらい来るわけです。それはやはり厚生省の、あるいは日本医師会 がかかりつけ医といっても、やはり医療に対する信頼感が十分ないとなかなか難しいの ではないか。ですから、EBMがしっかりすれば自然と患者さんも安心できるし、お医者さ んもプロテクトできるのでかかりつけ医が確立するし、特定機能病院も本来の機能を発 揮できると思いました。  そういう意味で、思い入れが過ぎたかもしれませんけれども、先生おっしゃられるよ うに、病態に関する基礎的研究というのは、それなくしてはオリジナリティーの高い先 端医療を開発できませんので、むしろ私は厚生省の厚生科学課長さんにお願いしたいの は、そういう医療のビックバンに置かれたときに、日本の医療をどういうふうに維持し ていくかということに関して、研究費が出せないか。ですから、今までの枠の中で基礎 的研究を切り捨ててこちらに持っていくということではなくて、できたらアディショナ ルに是非研究費を取ってきていただきたいというお願いでもあるのです。勝手なことば かり言ってすみません。 ○高原厚生科学課長  厚生省としましては、実は先生方御存じのように省庁の再編という問題を控えており まして、そうしますと、例えば総合科学技術会議というものが今の科学技術会議を強化 してつくられるわけですけれども、その中に厚生省は恐らく入らないのではないかとい う見込みもございます。そこら辺のところは先生方に是非問題意識として持っていただ けたらありがたいわけでございますが、先ほどの21世紀枠でも2,300億円の中で厚生省の シェアは66億円。これは大体公共事業でシェアが固定しているという話がよく悪口で出 るのですが、実は科学技術の研究費も我々にとって非常に不愉快なわけでありますが、 固定的なシェアがある。そしてその中で、厚生科学と言われているもののシェアという のは2,300分の66程度だと。これは少し極端な表現でございますけれども。そういうふう な必ずしもありがたい状況では十分、私ども喜んでいるような状況ではない。その中で 省庁の再編が起こって、いわゆるメディカル、もしくはバイオ・メディカル、ヘルス、 それからレギュラトリー・サイエンス、社会保障といったものについてはいろいろな省 庁、勿論文部省、今回科学教育庁になる。そういうふうなところとどういうふうに我が 省としての、厚生科学としての独自性というか重点課題を見つけていくか。この世の中 でこれが重要だというふうなつもりは私どもは、そこまで口はばったいことは余り考え ておりませんで、厚生科学の領域でどういうふうなところに重点を絞ればいいのか先生 方のお知恵をいただきたいというつもりでお願いしておるわけでございます。これだけ が世の中で大事なのだ、日本で大事なのだというつもりでは毛頭ないのだということで ございます。  そういたしますと、1つは、医療の面で言うと医療の質をどのように維持するのか。 ないしは、こういうことを言うと嫌われるのですが、医療費の効率的なもの、ないしは 介護、そういうふうなものをどのようにして実現していくのかというふうなことが1つ のポイントになってくるのだろう。  もう一つは、ただいま座長からも御指摘のございました、国際協力の関係でございま すけれども、EBM関係でも、例えばここらの共同研究、ないしはEBMのG7、先進7か国 会議の中でも部会ができておるわけでございますけれども、こういうふうな中で日本も 何らかの役割を果たしてくれ。というのは、1つは日本のデータを世界に向かって知ら せてくれと、日本のデータベースをつくって日本の臨床成績、もしくは基礎医学の成績 を外に出してくれという要望もかなり私ども外交レベルで受けておるわけでございます し、もう一つは、世界の医学等の流れの何かを、日本がセンターになって取りまとめて 世界に発信してくれと。今ごろは少し危なくなってまいりましたが、しばらく前までは 日本はそのくらい経済力も十分あるではないかと。そういうふうなことを国際的には要 望されておるわけでございます。  それが事務局としての、1つは、厚生科学としてどういうところが日本全体の中で欠 けておって、そういうところにより重点、座長の言葉で言いますとプラスαのアディシ ョナルなファンドを持っていくかということ。それから国際協力というふうなフレーム ワークの中でどういうことが日本に要請されていて、どういうことができるのか。そう いうふうな点が私どもの方としては問題意識として持っておるということでございます。 ○矢崎部会長  どうもすみません。座長と事務局の課長さんが長くお話申し上げて。本来座長は黙っ ていなくてはいけないところ、今日はお許しください。 ○柴田委員  今のお話に関連して感想を含めて意見を。最初の課長の話で、2,300分の66とか、総合 科学会議ですか、そういうものから厚生科学が外れてしまうかもしれないという御心配 をされているけれども、そんなことは絶対ないと思います。国民の科学技術に対しての 関心とか期待というものの中の半分は健康医療に関するものだと思うのです。現に、例 えば報道の部門でいわゆる科学ニュースとか、科学報道という場合にも半分は健康医療 に関するもので、ニュースとしてのウエートでもそのぐらいあるわけです。ですから、 厚生科学が日本の総合的な科学技術政策の中から抜け落ちるなどということはあり得な いことで、その御心配はないのではないかというのがその1つ。  もう一つの国際協力の話しに関連して、確かに日本の医学の医療とあえて言わないで 医学といいますが世界全体の医学に対しての貢献度というようなものを考えると、どう も20世紀の前半、つまり戦前の方が日本のウエートが高かったのではないかという印象 があるのです。これは先生方の見方は違うかもしれませんが、今世紀の初めのころの日 本人の医学研究者は、勿論大抵は外国に行って研究した成果だったかもしれませんけれ ども、大変な成果を上げていたと思います。それに対して戦後の成果はやはり考えなけ ればいけないなという部分があると思うのです。その点で矢崎部会長のさっきのお話に その前の沖中先生の話も含めて大変感動を受けました。私は矢崎部会長の考え方に99% 賛成です。  それに続けてもう1つ申し上げたいのは、先ほどの話に戻って、EBMという言葉を使わ ないで、もっと日本人が皆分かって、なるほどと思わせる言葉にすることが大事です。 そういう言葉をつくる、ネーミングというのですか、そのこと自身が厚生科学の非常に 大事な部分ではないかと思うのです。お前が代案出せと言われると困るのですけれども 例えば、「科学的データに基づくだれにも分かる医療」というような言い方でも、それ ではまだ長いと思うのですが、もっと非常に短い言葉にスパッとして、そういうものを 目指すのだということを日本語で言えないか。そのことをテーマとして、私自身もこれ から考えてみたいと思います。  今、例えばインフォームド・コンセントという言葉は半分日本語になりかかっていま すけれども、やはり「説明と同意」という訳は何ともさえないと思うし、そういう医療 の根本のところで問われている部分、新しい方向を目指す部分のところを新しい言葉で 示すこと。そういう言葉をここでつくり出さなければいけない時期にきていると思いま す。先ほどビックバンと言われましたけれども、医療ビックバンというのがあるとすれ ば、同時にそれに伴う言葉が要るのではないか。だから是非EBMという言葉を使わないで その考え方を表す言葉を考え出すことをこの審議会自身に課したい。自分もその一人と して一定の役割は果たすつもりですが、それを是非という感想を持ちました。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。輸入した3文字ということで不評を買っています。 寺田委員の3Pの最後のパフォーマンスで、アメリカはこういうキャッチフレーズとい うのが非常に得意で、それを日本語でどうしたらいいかというのは前々から我々思って いるのですけれども、言葉に出ないというところがあって、それが物すごく歯がゆいの です。是非この会で3文字か4文字ぐらいで表せるようなものを。  医療ではインフォームド・コンセントもそうですし、プライマリー・ケアもそうです し、何となく横文字が先行してしまって、ではプライマリー・ケアというのはどういう ことかというとよく分からないわけです。だからそういう意味で、何かつくらなければ いけないということ、柴田委員以外には考えられないのではないかと思うのです。  あとやはり、国際協力の中で、柴田委員がおっしゃるように昔の本や何か見ていると 戦前の方がはるかにアクティビティーが高かったし、それは真剣に外国のことをその当 時は勉強したと思うのです。留学した人は語学も本当に真剣に勉強している。ですけれ ども、戦後は何となくホワホワした中でやっているので、そういう海外交流の本当の真 剣さというのがすごく少なくなった、もう少し真剣に取り組まなければならない問題で それも今後残されたすごい大きな問題ではないかと思います。  どうなってしまうのかという、柴田委員が言われました厚生科学の位置付けですが、 それはあり得ないのではないかと私も思うのです。 ○高原厚生科学課長  これから伸ばしていこうという。 ○矢崎部会長  分かりました。 ○大石委員  少し話題が変わるかもしれませんし、それから私前回、前々回失礼させていただいた ので、もう既に議論されていましたら失礼させていただきます。  実は今後の厚生科学研究の在り方に関する論点という形でお出しになっているのです けれども、よくずっと見ていきますと、結局厚生省でかなり解決できる問題と、ここの 省だけではなかなか難しいという問題が一緒に入っているわけです。特に研究支援体制 のところで、例えば人事交流の促進、任期の採用とか、研究費の柔軟な運用と事務の簡 素化とか、一般的な研究費の運用面の改善というものは、何も厚生省だけの問題ではな くて、ほかの省の似たようなものに出ますと、必ずこういうものがあるわけなのです。 実はもう恐らく10年とか15年同じようなことをあれしていまして、私の率直な印象とい たしまして、おのおのの省庁で特色あるというか、そこでやれる範囲のことはかなりの 部分既に解決されている部分が多いのではないかと。ところが実際こういう根本的な、 会計法とかいろいろな問題があると思うので、そういう問題が現在のところ日本全部の 研究を含めて残ってしまっていると。それが日本の研究その他を含めて非常な、はっき り言えば悪い影響が現在顕在化しているという印象を持っているのです。  これを解決する戦術として、いつも毎回この問題があります、ありますという形で、 毎回のようにどこの省に行っても出てくることではなくて、何かこういう根本的な問題 を解くような省庁間のコーディネーションというものはあるのでしょうか。あるいは、 何かそういうような努力をするような動きというのを是非何らかの形でやっていただき たいと。あるいはやっていただかないといろいろな問題がこれからますます閉塞状態に 陥っていくのではないかという気がするのですけれども、御意見お伺いできますでしょ うか。 ○矢崎部会長  その点は単年度会計ですから、大石委員おっしゃるとおり人件費が一番問題が大きい のですけれども、それは各省庁で考えていてくださっているのではないかと思うのです。 例えば文部省であればリサーチ・アシスタントとかリサーチ・アソシエイトというのは 学術振興会で出して、会計年度で縛られないである程度給料を出せる。厚生省の方でも 今リサーチ・アソシエイト的な臨床研究に携わるような方は長寿科学振興財団の方でま とめて採用するということで、研究のプロジェクトは単年度ごとに終わりますから、そ れについた給与というのはなかなかそれで出しにくい状況ですけれども、各省庁でそう いうふうな任期制のプロジェクトが終われば御遠慮お願いしますというようなシステム を非常に努力してつくられました。一方厚生省で借金して前倒しでやられたらどうかと いう提案もあったのですけれども、やはり厚生科学のリサーチ・アソシエイトみたいな ものは既存の長寿科学振興財団というところに統一して単年度会計のバリアをクリアし ています。  ですから、こういうふうな主張を繰り返すということは絶対必要であって、諦めては いけないし、そうしますと、一生懸命考えていただいて、そういう施策を立てていただ けるということです。私どもとしてはリサーチ・アソシエイトの数をもっと増やしてい ただきたい。実際にはこの要望は、徐々にではありますが、文部省ではポスドクの1万 人計画ということでやっているので、私自身はいい方向に向いているとは思います。 ○寺田委員  例えば、そういうことを大石委員が言われるのは全くそのとおりで、かなりオーバー ラップするところがあります。今後どういう名の省になるのか分かりませんが、例えば 厚生省という省の中でいる研究補助員と、大学でいる研究補助員とは少し性格が違う部 分があるのです。今、言われた病棟での看護婦さんがいて医者を助けるとか、保健所な どが、例えばダイオキシンのところの土を採取するとか、少し違うニュアンスがありま す。各省で違うと思うのです。ですから、やはりいろいろな省庁がそれぞれの立場で研 究を行うがどこかで一つにコーディネートしてやることが大切です。しかし、ここでも し言わなかったら、例えば科学技術庁の頭の中にある補助員と、厚生省の研究補助員は 違うので、やはりここで言うことは言っておかないと、健康科学に役立たない仕事をす る補助員ばかりになります。 ○大石委員  私はそういうことをここで主張するのは非常に結構なことだと思うのですけれども、 少し私も短気というかあれかもしれないのですけれども、今、言ったように皆さん非常 に工夫はされていて、それのある程度のところまでやれるところは全部やられたような 気がするのです。いろいろな省庁である程度の工夫はやられたと思うのです。ところが どうしても根っこのところで根本的な日本の会計制度か、一般会計か、特別会計かその 辺のところよく分かりませんけれども、どうしても根本的に非常に問題があるというよ うなところなので、私はこのことに対してクエスチョンしているのではなくて、是非厚 生省もそういう機会があったら根本的なところで、私は主に会計制度のことをお話しし ているのですけれども、非常に煩雑で問題があるということをもう少し1つの動きとし てまとめられれば非常にいいのではないか。例えば、単年度制などという大きな問題は そう簡単に変えられると楽観視はしていませんけれども、できる限りそこで是非。特に 厚生省はこういうふうな人の健康を扱っているという非常に大事なものが、こういうよ うなつまらないことと言ってはおかしいのですが、そういうことのために妨げられるの だったらそれは非常にゆゆしきことだと。そういう面では、一番説得性のある官庁では ないかと思うのです。別にこれは質問というのではなくて意見です。 ○矢崎部会長  その在り方の骨子に大石委員の御意見を十分取り入れて、内容を志の高いところで、 さっきの3PのPとして是非活用させていただきたいと思います。  あと、基礎的研究をどうするかというところで、私少し疑問に思ったのは、私自身が 大学を来年定年で辞めるからお前は勝手ではないかと怒られそうですけれども、国研の 先生方の研究費というのは厚生省が頼りでありますし、そこにはやはりある程度評価と か競争原理が入らないといけません、その基礎的な研究と、大学とか、他で行われてい る研究と同じレベルで、同じ深さでやる必要があるのですけれども、厚生科学研究費と して大学のそういうレベルの研究までサポートを今後も大いにすべきかどうかというこ ともあるのではないかと思うのです。それは非常に難しい問題で、眞崎委員いかがでし ょうか。 ○眞崎委員  非常に重要な問題でありまして、EBMという言葉がありますけれども、厚生科学研究と いうのは科学的根拠に基づくという、これがなかったら本当の末端の臨床データの集積 にすぎないのです。ハイレベルの臨床的な研究の成果というのはそういう裏付けがない といけない。ちょうど大学は、もともと近代医学というのはパリで病院から始まったわ けです。それがなぜ大学に移っていったかというと、ドイツの大学組織を利用したわけ です。そこでドイツは何を持ったかというと、教育というシステムを持ったわけです。 それ以来、教育と研究というのは裏腹でずっと世界的な教育のレベルが進んできたので す。研究のレベルも進んできた。ところが、診療と研究という組み合わせは絶対必要な わけです。それを厚生科学が担うべきなのです。これは離したらだめなのです。という ふうに私は思いますけれども。 ○矢崎部会長  離すというのではなくて、独立に基礎研究だけに確立するというのはなかなか、そう いう部分は難しいのではないか。ですから、臨床と本当の基礎研究がつながっていない とそこには何ら新しい革新的な技術とか治療法などは開発されませんから、基礎研究は 絶対必要です。しかし、眞崎委員が言われた末端のつまらないデータとおっしゃいます けれども、ある疾患にこういう治療でどういう結果になるかという末端のデータすら、 例えば、私の専門の心筋梗塞の患者さんが年間に我が国で何人いて、実際増えているか どうかということもないわけです。ですから、本当の医療の現場のデータも必要なわけ です。だけれども、それをしたからって新しい医療が生まれるわけではなくて、今まで のある医療のベストな医療がそこで皆の確認の下で行われるということがある。だから 2つ我々は持っていなければいけない。  1つは、ベーシックなサイエンスを基盤とした新しい先端的な医療技術とか治療法の 開発を持っていなくてはいけない。それはベーシック・サイエンスが基盤になっている。  もう一つは、今、アベイラブルな治療法でどれが患者さんにベストな医療なのかとい うことの確証がないわけです。それも1つの科学がないという意味だと思うのです。で すからそういう意味で、医療を進める場合のデータベースというのは絶対必要だと思う のです。 ○眞崎委員  それはそのとおりでありまして、データを集めるということと、そのデータをどうい うふうに利用してきちんと研究を務めていくかという問題は裏と表の関係なわけです。 それがやはり研究というところで、研究をする場所でもって行うことだというふうに私 は思っています。非常に言葉が足らないかもしれないけれども。 ○宮本委員  先程の先生のお話は、厚生科学研究費を大学に出すか出さないかというような、そう いう意味ではないのですか。研究ですから両者にオーバーラップしていることがしばし ばあるわけです。しかしながら、どちらかといえば大学は文部省の管轄ではありますし 国立病院、国立療養所等は厚生省の管轄ですから、あえて言うならば文部省的な研究費 は文部省から大学に出す。しかしながら、厚生省の厚生科学研究費はできるならば国立 病院、国立療養所の方に重点的に配分するというふうな形が好ましいと思います。勿論 両者の研究はオーバーラップしておることがありますし、しばしば人間もオーバーラッ プするとは思いますが、そのあたりをうまく調整しないと、同じ研究、同じテーマ、そ して同じ人間に文部省からも、厚生省からも金が行くというふうに二重、三重になる可 能性があります。ですから、そのあたりをある程度は勘案し、枠をつくるというか配慮 する必要があるのではないかと思います。 ○寺田委員  やはりこの研究機関はどこどこの省庁に属しているからこの研究費はそこに行くべき だというのは、それはいけないと思うのです。やはり病気克服を目指した科学、だから 厚生科学で例えば人を病気にさせない、なったら早く見つけて治すと。治らない人はQOL を重視した治療をすると。また、全体の健康維持、推進、病気克服を経済的にもきっち りと効率的にやる基盤をつくる。これが厚生科学だと思っているのです。だから病気・ 健康に関しての研究に関しては、大学であろうが、普通の病院であろうが、いい研究を やっているところへ出すべきだと思うのです。それがいいかどうかという判断をし、研 究費などのサポートをするところは、厚生省がやられたらいいと思うのです。  例えば、大学へは厚生省の研究費が行ったらいけないとか、逆に文部省が国立病院に 金を出さないのはおかしいと思っているのです。宮本委員がおっしゃるように二重、三 重に種々な所から、お金が足りなくてもらうのは必ずしも悪いと思わないのです。きっ ちり説明がつけばよいと思います。また、せっかくいい研究なのにその人がどこどこの 機関に属しているために研究の成果が出せないというのはやはりまずいと思います。 ○宮本委員  それは寺田委員のおっしゃるとおりだと思います。私が申し上げたいのは、余りオー バーラップすることのないようにというのが1つ。  もう一つは、限られた研究費の中ですから、どちらかといえば厚生省関係は国立の厚 生省の管轄のところにある程度重点的に。文部省は文部省の管轄にある程度重点的に。 勿論両者の研究は度々オーバーラップしておりますから、人的にも、あるいは研究テー マそのものも、研究費もオーバーラップしても構わないと思いますけれども、例えば、 余り厚生科学研究費のほとんどが大学に行くとかということであれば、それは少し問題 があるのではないかというふうに申し上げたわけです。 ○寺田委員  少し誤解していましたけれども、そのとおりだと思います。ただ、医学のことになり ますと、文部省は大学病院とか大学の臨床的研究にほとんど金を出していないですね。 そうしますと、がんなどをやっている立場からみますと、がんセンターなどは割合温か い支援を受けていますけれども、大学病院で一生懸命がんのことをやっていまして、そ れが基礎だったら文部省から金が来るのですが、大学病院の臨床の先生方は来ないので す。今の臨床の研究費というのは随分掛かるものですから、製薬会社とかそういうとこ ろから研究費をもらって大学の先生はやっておられるのです。良い研究をまじめにこつ こつやっておられる臨床の先生のところに国の金が行かないというのはおかしいと思い ます。やはり臨床の研究は厚生省が旗を立てて支援をすべきだと考えますし、私は臨床 医学のことをたまたま言っていますが、感染症の危機管理の在り方にしましても、中毒 とかそういうことに関しての研究にしましても、例えば地方の衛生研究所で頑張ってや っている方にもきちんと支援が厚生省からいくのがよいと思います。  課長にもっとお金を取ってきてくれ、取ってきてくれと言うようで申し訳ないのです けれども、非常に大事な問題なので発言させて頂きました。さっき柴田委員もおっしゃ いましたように、厚生科学は総合科学というところに入るのも当然であると思います。 それは厚生省というのではなくて全日本の医療とか、医学、予防ということに関して日 本の政府は殆ど何もないという危機感はあります。それは大変ゆゆしきことであるとい うふうな、それも非常にショックなことであります。細かいことはいろいろありますけ れども、日本全体の中で医療とか医学に対してもう少し世の中の人に正しく知っていた だきたいような、今さっきのパフォーマンス、今度はプロパガンダとも言えますけれど も、やる必要があると考えています。 ○柳澤委員  厚生科学研究における基礎的な研究の位置付けということですけれども、考え方とし ては、伊藤正男さんが前の学術会議のときに、日本の科学技術研究ということで戦略的 研究と戦術的研究というふうに分けて言われましたけれども、そういう考え方というの は比較的我々の厚生科学の領域で問題を整理するときに分かりやすいと思うのです。戦 略的研究というのは、例えばがんをなくすとか、アルツハイマー病をなくすということ で、戦術的といったら、それはがんの治療法として現在あるオプションをどういうふう に使ったならば、例えば、膵臓がんなら膵臓がんの5年生存率を何%改善することがで きる。そういうふうなことを例として考えてみるとよろしいと思うのです。  そうしますと、厚生科学の研究の中の基礎研究というのは、少なくとも病気の原因の 解明、治療、そして予防ということに関するものであれば、幾ら基礎的なものであって も厚生省がカバーすべき領域であろうと思います。それは長期的に見たら、各省庁の研 究費の出し方の基本方針から考えてみると、やはり厚生省が第一にすべきであると。そ ういう意味では、どちらかというと我々のような実際の研究者とか医者というのは、ど こでどういう研究をやってもいいというのが基本的な考え方なのですけれども、行政の 立場の方、例えば、これはほんの1例なのですけれども、厚生省の研究所が行っている 研究に対して、厚生省ではなくて全然別のところの行政関係者の言なのですけれども、 あそこは動物実験ばかりやっているということを批判として言われるわけです。そうい う見解というのは正しくないわけで、現在の先端的厚生科学研究費の配分の仕方という のは、むしろ先ほどの戦略的な研究にかなり重点的に研究費を出すという立場ですから やはりその立場は是非貫くようにしていただきたいというふうに考えます。  それから、もう一つの戦術的な研究というのは、どちらかというと文部省も含めた全 体的な学問的な研究の中ではどうしても軽視して扱われやすいというのは先ほどから御 議論になっているとおりで、それについてもきちんとした位置付けをして、しかるべき 研究をしていくということが必要だと思います。その辺は是非基礎研究と双方の位置付 けが必要なので、決して厚生省だから応用研究が主であるというふうな理解はすべきで はないだろうと思います。 ○眞崎委員  先ほどの宮本委員の御発言に関連してですけれども、国立病院にお金が行かないで厚 生科学研究費が大学に行っているという1つの大きな理由は、多分国立病院の先生方の 研究の場がないからなのです。研究の場をつくらないで、要するに臨床の片手間にやっ ているというような、しかも文部省の科学研究費も取らないような状況ですから、そう いうものを整備することが厚生科学研究を広く発展させる大きなポイントではないかと いうふうに思います。 ○柳澤委員  今の眞崎委員の御発言に対しましては、実際に国立病院療養所の現場でできる研究、 先ほどの厚生科学研究に広い位置付けをした場合には、もっとできる研究というものが たくさんあるだろうと思うのです。現在厚生省がエージェンシー化に向けてどういうふ うな医療、研究をすべきかということをいろいろ検討されていますけれども、私は国立 病院・療養所、場合によっては国立病院・療養所だけではなくて、そこを中心としても っと広い範囲のものを含めたところで行うべき研究、どちらかというと政策的研究とか あるいは先ほどの戦術的研究と言われるものになると思いますけれども、そういうもの をもう少し明確に検討して、提示していく場は必要だろうと思うのです。それをここで 行うのは少し大変かもしれませんけれども、別のコミッティーをつくるなり何なり、是 非これから検討していただきたいと思います。勿論国立病院療養所の医師は非常に忙し いのですけれども、現在でもそれぞれの目的意識を持っている医師はきちんと研究はし ているわけですし、それをもう少し組織化して、いい方向で研究をまとめていくという 努力は我々がしなければいけないだろうというふうに思います。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。考えようによっては非常にクリティカルな問題です が、そのほかいかがでしょうか。 ○大石委員  また少し漠然とした話で申し訳ないのですけれども、結局基本的には、恐らく医学が 随分変質してきていると思うのです。非常に基礎的な、いわゆるモラキュラ分子生物学 も導入したり、そういうのに基本的には日本の今までの体制がついてこなかったという ところが根本的な問題だと思うのです。アメリカも1960年代から見てみますと、その当 時はいろいろなあれがあったのですけれども、最終的にはライフサイエンスという形で NIHが大きな組織をつくって、それがいろいろな応用から基礎からを総合的に判断して重 点的にお金を配分していくと。そういうシステムをつくったからこそああいう成功をし たと思うのです。やはり医学なり生物学それ自体が医学も含めて、極端に言えば農業も 含めて渾然としている現在に、やはり今までのような体制をこれから続けていくという ことはどうしても必然的に無理が生じて、そのためのいろいろなほころびが出てきて、 いろいろな難しい問題が出ているのではないかということが、さっき私の言ったことの 実は背景にあるのですけれども、余りにこれは大きな問題で、こういう現実的な解決策 としてはなかなかとれないと思うのだけれども、見ていますと、医学なり何なりの変質 というものにいろいろな制度そのものが、基本的にはなかなか今のような省庁分けの体 制がついていけなかったところにここで議論になったいろいろな問題が顕在化している のではないかと。そこの中で解こうとすると、さっき寺田委員のおっしゃったようなこ とに私は全く賛成なのですけれども、理想的にはそうだけれども難しい問題がそこにあ るのではないかという気が非常に強くいたします。 ○寺田委員  例えば、大石委員が言われた日本にNIHがないのです。CDCもやろうとしているけれど もいろいろ御苦労なさっている。FDAもありません。やはり厚生省は生命科学というとこ ろを別にしまして、厚生省としてのそういう一まとまりのマスがあることがかなりいい と思うのです。そのときには厚生省のと言うのではなくて、やはり日本全体を見て、省 庁を超えた形でこの部分は厚生省がやるのですよというような形がよいと考えます。NIH のああいう新しいのを日本でつくるのなんてとても無理ですし、大学の研究所を集めて やるのもなかなか難しいから、そういうライフサイエンスとヘルスサイエンスというと ころのヘルスサイエンスのところを受け持つ部分で、それはかなり行政的な面が表に出 てくると思います。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。議論を提示申し上げたのは、あなたは大学にいるか ら文部省から研究費をもらいなさい。あなたは国研にいるから厚生省から研究費をもら いなさいという議論では、私はそういう意味で提示したわけでは決してなくて、寺田委 員が最初の御意見の前半に言われたような、宮本委員もそういうふうに言われましたけ れども、厚生科学として研究でサポートすべき領域というのはある程度あって、先ほど 寺田委員が大学の病院でもがんの臨床的な研究に関してはお金の出所がないということ もあって、ですから、そういうものをいかにカバーしていったらいいかということを。  ですから、研究者の置かれた立場で差別するのではなくて、研究そのものをよく理解 して、厚生省らしい研究に厚生科学としてはやっていかないと、要するに、従来ならい いのですけれども、これからグローバリゼーションとかいろいろなことが起こったとき に、我が国で独自の臨床データとか、独自の独創的な技術や創薬を持っていないと、非 常にこれから立ち行かなくなるのではないか。それを何とか持ちこたえるには、厚生科 学として何かそれをサポートするような展開に持っていくということが重要ではないか。 ですから、サイエンスとして立派な研究ならどこの省庁からも研究費をもらって当然い いわけですけれども、そのときに、やはりライフサイエンスより少しヘルスサイエンス に、そのサイエンスのレベルをうんと変えるということはできないでしょうけれども、 焦点をある程度そういう意識で見るということもある。  それからもう一つ、さっきの科学的根拠になるようなデータを集めるのはサイエンス でも何にでもありませんし、既存の医療技術の評価ですから。ただ、それには労力と膨 大な費用が掛かりますから、そういうことも。フラミンガムスタディーで御存じのよう に、そこから新しい科学の芽も生まれてきますのでそういう研究も非常に大事なので、 先端的な研究だけではなくて、現状の持っている臨床的な問題点をクリアにしていくと いうのも厚生科学の使命の1つではないかというふうに思って、厚生省か文部省かとい うような刺激的な発言をしてしまいましたけれども、そういうことです。  そうしますと、今日いろいろな議論をいただいてもう少し考えまして、次回また改め て論点を整理して、骨子案のようなものを先生方にお示しして、更にもう少し具体的な 御議論をいただければというふうに思っております。  2の研究支援体制の充実につきましては、各省庁間の連絡の下で随分改善されており ますし、大石委員の御発言のように、我が国の憲法の次に重要な法律と言えば会計法で すから、憲法を変えるようなことはなかなかできない可能性、余りそんなことを言って はいけませんけれども。その中でどういうふうに解決していくかということについては 今、非常に各省庁運用面で頑張っていただいて、特に研究費の事務の簡素化。厚生省に 特にお願い申し上げたいのは、文部省に比べるとはるかに書類が多いのです。それにつ いては厚生省として御意見おありでしょうけれども、その点についてもう少しこの次に 進めさせていただくということで。高原課長何か御意見ありそうですけれども、次回に まとめていただいてよろしいでしょうか。  3番目に研究ですけれども、従来の国研のいろいろな情報化の問題、これはもう少し 内容を詰めていかないといけないと思います。  その他で、国際的な共同研究の枠組みについて。これは山崎委員からいろいろ御指摘 があった懸案でございますけれども、今日大分議論をしていただきましたので、これら についてはまた後日御議論いただくということで、全体的な厚生科学研究の在り方の方 向性について、今とりあえず問題になっている点を早急に対応していくという方向で、 またもう一度まとめさせていただきまして、問題点、お考えの筋道を示していただけれ ば大変ありがたいと思います。  そういうことで、一応今日の議論はこの辺で終了させていただきたいと思うのですけ れども、何か一言ありますか。 ○寺尾委員  2の研究支援体制の充実というところに、施設や設備ということが入っていませんけ れども、これは落ちているのか、あるいは意識的に外したのかどちらなのでしょう。 ○矢崎部会長  ハードの面ですね。これはソフト面について。ハードは十分だという意味ではなくて より戦略的に推進すべきということで、ソフトの面で充実していくということをここで 強調しました。厚生科学は恐らく箱物や設備ということではなくて研究費としていくの で、そういうソフト面をメーンに提示させていただいたということです。 ○寺尾委員  もう一つ細かいことで申し訳ないのですけれども、2番目の○のところに研究補助員 という言葉が出てきまして、1番目の一番最後のところに研究補助員というのが出てき て、大体同じことが書いてあるのですけれども、この研究補助員というのは違う研究補 助員なのですか。それともダブって書いてあるのかということだけ教えてもらえますか。 ○矢崎部会長  研究的な補助員というのは従来どおりある程度要求されていますけれども、より臨床 的な研究に対する補助員というのがなかなか得られないので、わざわざここのところに ダブって取り上げさせていただいています。 ○寺尾委員  同じ名前で書いてありましてね。 ○矢崎部会長  身分は同じことなのです。 ○寺尾委員  そういう意味ですか、分かりました。 ○寺田委員  まとめるまでのタイム・コースって前におっしゃいましたか。いろいろなことが横に 動いていますから、大体目標枠として、目標の日というのはどういうふうに考えたらよ いでしょうか。 ○矢崎部会長  これは先生方の議論がいかに具体的に進むかによるところも大きいと。事務局はタイ ムリミットがあって、ここまで仕上げてくださいということではなくて、ですから、余 り具体的な議論に踏み込めなければ永遠に在り方についての議論が続いてしまうという ことで、そういう意味で、ただ厚生科学研究の在り方だけではなくて、医療、医学研究 の在り方についてしっかり考え直す時期があるのではないかということで、ある程度問 題提示する必要があるということですので、なるべく早く議論を具体的に進めていただ ければありがたいと思います。何か事務局で御意見ありますか。 ○事務局  部会長から御発言いただいたような趣旨でございまして、確かに、何かにこれを軽々 に使おうという魂胆でデッドラインいついつなどということは考えておりませんが、大 体従前の厚生科学会議がほぼ5年経って見直しを行っていただいたというところからし ますと、もうそろそろこういう作業を詰めていって、5年経ったところで言わば2度目の 見直しの方向性を打ち出していただくということが、ここで御議論を開始していただい た趣旨でございます。  それとともに、非常に重要な問題でありますので、なかなか議論を簡単には尽きない と思うのですけれども、余りゆっくりしておりますと、厚生省という看板から別な看板 になってしまいまして、厚生科学という表題が使えなくなることもありますので、ほど ほどのところで我慢してまとめていただければありがたいと思っています。 ○寺田委員  割合早いことまとめた方がいろいろなことでまとめとしていいのではないかというよ うな感じがいたしますので、申し上げたのです。少々不備でも、事務局これからますま す忙しくなるときでしょうけれども、案のようなものをつくっていただいて、前もって ある時期で回してもらって、訂正して、具体的な要旨ではなくて報告書の形で議論する というのをぼつぼつやり始めたらいいのではないかという感じがします。 ○矢崎部会長  大変ありがたいサポートの御意見をいただきました。前回、前々回の在り方の提言を 読ませていただきますと、非常に高邁な理論であるべき方向を示しているのですけれど も、実際に我が国が今、直面している問題点に対して対応できているかどうかというと ちょっと私、批判する意味ではなくて時代が変わったということだと思います。本当に 最近物すごく変わったということで、別に経済的に変わったということではなくて意識 が変わったということであります。私の責任でもありますが方向性をある程度まとめて 先生方またそれに基づいて御議論いただいて、決して誤った方向に行かないように、あ るいは誤解を受けることのないような作業をしていきたいと思います。大変御多忙の先 生方ばかりですけれども、何とぞ今後とも御指導のほどよろしくお願いいたします。  それでは、本日長時間にわたりまして御熱心な御討論ありがとうございました。これ で終了させていただきます。  最後に、事務局からお願いいたします。 ○事務局  机上に次回の開催の案内をお配りいたしておりますが、次回11月30日月曜日の14時か ら、同じ特別第一会議室にて開催させていただきますので、よろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長  それでは御案内のとおりに、是非御出席いただきたくよろしくお願いいたします。ど うもありがとうございました。 <以上> 問い合わせ先 厚生省大臣官房厚生科学課 担 当 岡本(内線3806) 電 話 (代表)03-3503-1711 (直通)03-3595-2171