98/10/01 第30回年金審議会全員懇談会議事録            第30回年金審議会全員懇談会議事録 日 時 平成10年10月1日(木) 10:05〜12:15 場 所 厚生省特別第一会議室  1 開会の辞  2 委員出席状況報告  3 議 事   ・ 年金審議会意見書について 4 閉会の辞 〔出席委員〕   京 極 会 長   岡 崎 委 員 砂子田 委 員  木 原 委 員  国 広 委 員 久保田 委 員  神 代 委 員 坂 巻 委 員  高 山 委 員 都 村 委 員 福 岡 委 員 目 黒 委 員 山 根 委 員   吉 原 委 員  若 杉 委 員 渡 邊 委 員 船 後 委 員  ○会長 ただいまから第30回年金審議会全員懇談会を開催します。 まず、委員の出席状況について、事務局から御報告をお願いします。 ○事務局 本日は富田委員 桝本委員、山田委員、貝塚委員が御欠席でそのほかの委員は御出席 でございます。 ○会長 本日の議事に入ります。本日は意見書の取りまとめを終えたいと考えております。よ ろしく御協力をお願いします。 まず、資料1の意見書案の朗読をお願いします。          (事務局「意見書(案)」朗読) ○会長 長い文章を朗読、どうも御苦労さまでした。 主な修正点などにつき、起草委員の先生から一言御説明をお願いします。A委員いか がでしょうか。 ○A委員 それでは御説明させていただきます。 まず、9月16日の審議会を経まして、その翌日起草委員が集まりまして草案をつくり 21日の審議会に提出をいたしました。その御意見を皆様方からいただきまして、調整を いたしまして、24日に第2次の草案を作成いたしました。皆様方のお手元に郵便あるい はファクシミリなどでお送りしたと思います。その後、その内容につきまして、御意見 を事務局の方にお寄せいただきまして、それを調整いたしまして、28日以降調整して、 きのうの夜また集まりまして最終的な調整をいたしました。  それぞれの方がそれぞれのお立場でいろいろ御意見をいただいて大変ありがたかった のでありますが、労働委員側から国庫負担の引上げとか、あるいは報酬比例部分、別個 の給付についての支給開始年齢の引上げなどの箇所は両論併記にしてほしいという御意 見があったようでございますけれども、その部分は本文でごらんいただいたように対応 しておりません。その理由は両論併記にいたしますと、すべての論点が両論併記になり まして、今まで30回もただばらばらに意見を言ってきたのではないかという形で審議会 のこれまでの意見集約が全くできてないというふうにも見られますので、そういう点を 危惧したからでございます。  なお、表現につきましては、我々が大まかな合意が得られたのではないかと考えた部 分の表現は「適当である」とか「必要である」あるいは「考える」というふうにまとめ ております。それから、多数意見と認めた部分は「意見が強かった」とか、「概ね強か った」というような、そうした表現で多数意見を表現したつもりでございます。それか ら、少数意見といいましょうか、そういう部分は「意見があった」という形で記述をし ております。それから「主張がある」とか「指摘されている」とか「考え方がある」と いう表現がありますのは、世間一般的に言われている主張に対しての紹介でございます  こういった点につきまして、先生方からの御意見すべてに対応できてない部分がござ いますので、御意見があれば、これからお述べいただいて、御審議をいただきたいと思 います。以上でございます。 ○会長  ありがとうございました。  前回の審議会全員懇談会の後、各委員と個別に調整をさせていただいた結果が、ただ いま長時間朗読した意見書(案)です。この意見書(案)につき、文章の修正その他必 要であるというお考えがございましたら、どなたからでも御自由に御発言をお願いしま す。 ○B委員  ただいまA委員の方からも労働組合からのというのが少し御紹介ありましたけれども 組合側の委員としまして、前回の審議会以降意見書の取りまとめに向けまして、J委員 が欠席をしているものですから、連合と一体となりまして、大詰めのぎりぎりのところ の意見反映としてはどうなんだということにつきまして調整をし意見を申し上げてきま した。  そういう意味では起草委員の先生の皆さんに大変御苦労をおかけしたのではないかと いうふうには思って恐縮しておりますが、結論的に言いますと、私どもが申し上げてい た最大の観点はこの審議会としての本当に結論に至ったのかと。あるいはそこまでの審 議が尽くされたと、本当に審議会委員として言えるのかということにつきまして疑義が あると。とりわけ労働組合からの出身という立場で出ている者からすれば、そこで一致 をしたというわけにはいかないと思っているわけでございまして、もう少し冷静に、客 観的に、あるいは先入観念なく、今の審議状況やさまざまの意見をあらわすとすれば、 相当な項目にわたってのいわゆる両論併記ということが一番客観的ではないかと。  もちろんその中には少しこちらの方が多かったとか、濃淡というのはあるのでしょう が、今少し御紹介があったような文章整理のあり方については前回も、また前々回でも 確認をしております。「との意見」ということと「すべきである」というについては明 確に違うわけでございまして、あくまで一方は少数意見、一方は大勢のといますか、大 まかな合意という表現が今使われましたけれども、審議会としての責任を持った意見と いいますか、結論と、あえて言えば、そういうことになるわけでございます。労働組合 としては、本当にさまざまなことにつきましてしつこいぐらいにずっと一貫していろん なことについて申し上げてきましたが、若干取り上げられた部分もありますが、ほとん どが残念ながら「との意見」というところでおさまっているという大変悲しい気持ちで おります。しかし、自分たちの意見が入ってないというだけで拒否するわけにはいかな いと思っておりますけれども、しかし本当にそこまでの強弱をつけ、あるいはこれが本 道であるというところまで議論を尽くせたのかということについては疑義があるのでは ないかと思っています。  ちょっと長くなりますが、いくつか申し上げた点につきましてもうちょっと補足して おきますと、例えば「はじめに」のところでございます。1ページの下から2つ目のパ ラグラフの「これまで5年ごとに」というところがやっぱり基本の考え方で、非常にこ こは、まさにそのとおりと思っています。「制度全体にわたる見直しを行い、公的年金 の将来像を明確に示し、何よりも国民の年金に対する信頼を確保することが求められて いる」と。これがこの審議会に求められた最大の課題だと思います。しかし、このロジ ックは根本的な見直しについては審議をしたけれども、意見の一致をみなかった。これ は税方式のことを言われているのかもしれないと思っておりますけれども、こういうこ とになっています。しかし根本的なところで意見の一致をみなかった。しかし、それだ ったら今度は具体的なところで、この根本的なところと明確に違うように大勢の意見の 集約は本当にできたのか。ほぼ似たような観点での対立した意見やあるいは議論百出と いうような意見でとどまってきたのではないかというのが率直なところでございます。  そういう意味では、2ページ目にありますそういうものを受けまして、今回改正では というところでの、上から3つ目のパラグラフです。「年金制度を安定して運営してい くためには」と。すなわち少子・高齢化の進行、将来世代の負担の軽減、それには給付 抑制あるいは給付水準の切り下げしかない。この論理の展開が実はこの審議会の答申と いいますか、意見書を取りまとめる縦糸としての基本的なコンセプトなんだろうと思い ます。そして、この論理展開は2ページだけではなくて、その後の給付と負担の在り方 等々、繰り返し出てくる基本でありまして、それが基本になっているのではないかと思 います。ここについても、根本的な問題と同じように本当にここについて意見の一致を 見たのかということについては疑義を感じるということでございます。もちろんこの構 図について否定するものでもありませんし、給付と負担のバランスということについて 全く無視をしたり目を背けたりするということについて労働組合としてそういう思いで はございません。しかし、そのことだけが先行したり、あるいはその他の構造的な改革 の問題やさまざまな問題について、そういうのが先送りといいますか、あるいは意識的 に回避をして、結局結論はここだけになっているというふうにまた見られてしまうとい うことについて、本当にそれが30回にわたる審議会をして、結論としてそのことでいい のかということについて、労働組合としてはそうは思わないというふうに思っておりま す。  2つ目に基礎年金の空洞化のところについては随分入れていただきました。基礎年金 の在り方について、6ページのところでこれは入れていただきましたが、労働組合とし て、さらに「はじめに」の部分なり、あるいは「次期改正に当たっての基本的な考え 方」のところで基礎年金の空洞化なり公的年金の土台であります1階が揺らいでいると いうことについての危機感とそれを早急に制度的にも対応すべきという問題意識の在り 方につきまして、これは給付と負担のバランスだけではなくて、ここについてもっとし っかり位置づけをしてやるべしということを言ってきました。前段部分でもさらに位置 づけをきちんとすべきであるというような意見は言ってまいりました。  それから、3ページ目の給付と負担の在り方については、先ほどの「はじめに」の部 分と一緒でございます。3ページの一番下のところがやはり今回の基本なんだろうと思 いますが、「将来の給付総額についてその伸びを抑制していくことは避けられないと考 えられ」、そして具体的に「年金水準、支給開始年齢、スライド方式」等々が並んでい ますが、それを具体的に挙げる必要はないのではないか。そこまで意見一致をしてない のではないかということを言ってまいりました。  少し時間をとって申しわけありませんが、それから4ページ目の、少し組合がこだわ ったところでありますのは、2025年の記述のところでございます。その頭に「少子・高 齢化のピークが、21世紀の半ばであることを視野に入れつつ」と、2050年を視野に入れ てということについて少しこだわりました。これについて、こういう記述があった理由 は、水準論議というのは一体いつのことを指すのかという指摘での2025年。そして、そ のこととの関連の中でこういう言葉が挿入されたという経過についてはわかっているつ もりでありますが、組合としては文章の表現というよりは考え方の問題において、結局 年金の財政、給付と負担のバランスの問題、その前提になるのは高齢化のピークにおけ る2050年ということに今度はなるのでしょうけれども、そのことを前提にしながら設計 図を引いてきている。したがって、負担率の高さがそこから出てきまして、だからこれ 以上負担を増やすには、あるいは抑えるにはこの何割の支給水準の削減しかない、この 論理展開になっているわけでございます。  すべてを否定するわけではございませんが、あくまで2025年、前回の改正のときにさ んざん議論した2025年ぐらいを視野に入れたそこを基本にした改革であるべきというこ とであります。2050年、数理的にはそういうところも見ながらせざるを得ないというこ とについての御説明はありましたけれども、本当に21世紀の半ばまでのことを責任を持 って、しかもほかのことは全部フィックスした上で人口構成の変動がそうだからという ことで、次期改正における年金水準の在り方等々について結論を出すということは、本 当にそれで責任が持てるのかと。さまざまな変数や労働力率や、あるいは場合によって は外国人労働者の問題等々含めましてあると。年金だけがひとり歩きするわけはないの でありまして、21世紀の半ばに日本が沈没するような状況といいますか、そういうこと を放置する中で、ひとり年金財政のみが健全ということはあり得ないという意味からす ると少しこだわったところでございます。  4つ目に、先ほど申しました最大のポイントは、次期改正の個別検討課題についての 考え方でございます。A委員から国庫負担率の問題や支給開始年齢や給付と負担の水準 というようなことを少し言われました。労働組合としては税方式への転換、負担率の問 題、給付水準、厚生年金の給付と負担の水準、スライド方式、在職老齢年金、支給開始 年齢、保険料負担、積立金の保有等々全般にわたって基本的には両論併記ということで やってもらいたいということを申し上げました。もちろん最終30日、きのうぐらいの段 階で一定の強弱もつけながら一体どうするのかというところでボールを投げ返されるの を待っておりました。けれども、基本的にそこのことは無理ということでございました ので、きょうこの審議会の場でもう一度組合としては意見反映をさせていただくという 意味でちょっと長々と説明しているわけでございます。  そもそもこの審議会での審議ということについて組合としては非常に危惧をしてまい りました。一体どこで集約をしていくのか。これほど議論が百出し意見が対立している 中で、どういうふうにやっていくのかということにつきまして何回も危惧の念は申し上 げてきました。1クール目、2クール目、そして、佐久での審議ということにつきまし ても、この中でも議論ありましたけれども、正直言って、言いっぱなし、聞きっぱなし で、それをある程度収れんをさせ、濃淡をつけ、それが本当にそれぞれの委員がどうな のかというような収れんと積み上げの仕方は残念ながらしてこなかったのだろうと思い ます。  まさか時間切れの中で、衣の下から鎧が見えて一気に中央突破なんていうことはない でしょうねということが水面下でも随分言ってきましたけれども、何となくそういう感 じがしてならないわけでございます。審議整理メモからこの強弱なりメリハリがついた のが初めてこの審議会に提出されたということだと思いますけれども、それは9月16日 の起草委員会の指名の直前でございます。そういう意味では圧倒的にこの審議が本当に メリハリとここで言う「するべき」というような論点で書かれて、それがこの審議会委 員としての責任を持った一定の方向性を提起していることだというところまで行き着い たのかと。胸に手をあてて言いますと、さらっとした議論しかできてない部分、あるい はほとんど議論ができてないような部分の後段の部分もあります。そういう意味も含め ますと、率直に言わせてもらえば、両論併記あるいは根本の部分が意見一致を見なかっ たという記述をされているわけでございますが、ほぼそれと同様なのが実態ではないか と思います。そういう実態をもとに正確に反映をしていただけないでしょうかというこ とを申し上げてきたわけでございます。  ちょっと長くなりましたけれども、やりとりと往復の討議の中でのそういうことがあ りましたので、この場でももう一度意見表明をさせていただいたわけでございます。以 上です。 ○会長  C委員何か追加意見ありませんか。 ○C委員  それでは意見書に直接関係のないことで、連合の女性局の関係者から要請がありまし たことを冒頭ちょっと申し上げておきたいと思います。介護保険の導入に関する事です が介護休業になりました折の社会保険料について、今の育児休業と同等の扱いをしてほ しいということで最近厚生省の担当部局に要請があったようであります。このことに関 しても法律の実施は制度の発足とはずれた対応になるようでありますが、こういうもの についても、やっぱり女性の年金権問題をいろいろ論議してきたわけでありますから、 極めて柔軟に対処していただくことを冒頭に、改めて審議会の場で申し上げておきたい 内容は社会保険料の免除の問題であります。  それから、今、B委員からもいろいろお話がございましたが、私も基本的には申し上 げたとおりのことであります。多少重複するかもしれませんが意見を申し上げたいと思 うのです。この意見は今B委員からも発言がありましたように、連合の鷲尾会長、事務 局長等との話がされた後、事務局長と私たち委員の間で話をした総意でありますから、 そのおつもりでぜひ御判断を仰ぎたいと思います。30回に及ぶ全員懇談会での審議を踏 まえてまとめられている意見書ですが、確かにたくさんの修正を要請をしました。その 意を酌んでそれなりの修文作業がされたことについては私自身も一定の評価をしたいと 思います。起草委員の方には大変な御苦労をおかけしたということで感謝申し上げたい と思います。 しかし、その内容というのは、今もお話がございましたように、政府の財政構造改革 への対処方針や、いわゆる社会保障費用のキャップの問題など政府が軌道修正を図って いる中で、この意見書は2025年というような時間軸を置いた考え方を整理しているとい うことが言えるのだろうと思いますが、それに逆行する形に結果的になっています。し ょせん事務局の方針というのか、年金の給付と負担の見直しをするという建前が貫かれ た形というのか、それを先行するものになってしまっているのではないかと考えます。  そういう意味では連合の一員でもあり、1人の委員という立場でもありますが、今、 B委員も言われたように、総意としてこの意見書には私どもとしては同意できないとい うことで留保させてもらいたいというのが我々サイドで考え方の一致をみたところであ ります。  なお、この意見書を一見すると、今も話がございましたように、両論併記といった側 面も出ているところもあるんですが、どうしても厚生省の立場ということが見え隠れし ていまして課題によって濃淡がつけられており、審議が不十分だったと思われるものに ついてもその方向性がある面では強く出されているものも見当たるわけであります。そ して、年金改革がされるたびに意見書が当然出されるわけでありますが、財政再計算が されるたびに年金の給付と負担というものが見直され、予定されていた年金をまともに もらう人がいないという年金改革が繰り返されているわけであります。この文章の中に もありますように、年金に対する信頼とか不信をさらに助長させていく、そういった結 果になってはいないだろうかということを申し上げておきたいと思います。  このような見直しをしていくことについて、我々連合の委員としては責任を持てない というのが本音のところであります。今日デフレスパイラルというようなことも言われ ている中で、どのように確信を持って皆さんの間で理解、納得、合意形成を図るのは難 しいというように考えています。したがって連合サイドとしては、我々年金原資を出し ているという権利や主体性というものを発揮して、国民運動を展開して、その判断を仰 ぐことにしなければならないのではないかというのが整理をした考え方であります。そ のことを申し上げておきたいと思います。  このようなことを申し上げ、改めてこの意見書に我々としては全面同意はできないと いうことで、留保をさせてもらいたいということを申し上げておきます。以上です。 ○会長  以上、組合という括弧をつけた御発言がお二方からございました。ほかの委員の方々 どなたからでも御自由に、今の御両所から御発言のあった問題及びこの意見書自体につ いてのいろいろな御意見など、御発言願います。どうぞ、D委員。 ○D委員  今、最初に連合の女性部から介護休業の場合の保険料について要請がありました。介 護休業法が育児休業法と平成7年に一本になり、平成7年10月から事業主は努力された いというふうになりまして、平成11年4月、来年の春から企業にとって法制上義務化さ れるわけですね。そのときから本人の健康保険、年金保険の保険料は育児休業の場合と 同じように免除することは決まっていると思うのですけれども、それが11年からでは遅 いということでしょうか。  それから、もう一つの後半の方の意見書の内容についてですけれども、私も起草委員 としてこの意見書をまとめてきましたので一言申し上げたいと思います。審議会の意見 書というのは審議会の審議の中で述べられた各委員の意見を並べるのではなくて、審議 を通じて可能な限り一定の方向性を示す必要があると思います。それで起草委員として は、次の3種類の資料をもとに考えました。「年金制度改正の検討項目とこれまでの主 な意見」というのが、ちょうど7月末から8月中旬までに各委員に細かく修正していた だいたわけですね。それが8月31日に佐久で配られました。それと9月16日に「審議整 理メモ」が提出されました。それから全員懇談会の各回の議事録の要旨があります。か なり簡潔にどのような議論がなされたかというのが書かれています。主としてその3種 類を通じまして、審議会意見としてみんなの意見をできるだけ集約して調整を続けてき たわけです。その結果、完全に折り合うことは無理であっても概ね合意が得られたので はないかと考えられるものについては審議会の意見としての表記を行ったわけです。他 方、その他の意見についてはなお書きとかで少数意見として整理をして書くという形に してきました。  懸案事項がいろいろあるわけですが、それを解決しないで、こういう意見対立があり ますよということをすべてについて羅列するとか、あるいは先送りするというのでは、 審議会30回も議論してきて、どういうことなんだというふうに外部からも批判されると 思いますので、そういう方法をとらせていただきました。  それで労働側の方からも調整過程を通じて非常に細かい、前回も出されましたけれど も、いろいろな意見をいただいております。就業者の8割がサラリーマンであり、サラ リーマンには定年があるということ、それから、現状ではどれだけ就労するかの選択に 関してフレキシビリティーが与えられていないとか、あるいは健康度と個人の選好に従 って労働から退職へ徐々に移行するということが望ましいと思うんですけれども、そう いう機会もつくられていないものが多いという状態です。それからサラリーマンを退職 した後の年金生活者になって、年金受給世帯の所得とか資産格差というのはやはり拡大 傾向にあると思います。  そういう現状を考えますと、労働側の委員が今おっしゃられたように、個別項目のす べてについて両論併記というか、いろいろ異議ありと、あるいは十分審議が尽くされて いないので疑義があるというのも理解できるのです。理解できるのですけれども、最初 に言いました審議会の意見書とはということと、もう一つ、公的年金制度のキーワード で大事なのは、やはり「安心と公平」だと思うのですね。安心というのは高齢期の生活 が保障されるという高齢者にとっての安心と、それから現役世代にとって余り負担が過 重なものに将来的にならないという、そういう意味では、現役と退職世代両方にとって 安心ということが大事です。また、公平というのも世代間の公平と世代内の公平とその 2つが大事なわけで、それがこういう年金改革を考える場合もキーワードになると思う のですね。  ですから、このような形で意見書の案をつくったことについて御異議がおありだとい うのは私もわかるのですけれども、最初に申し上げましたような審議会としての大まか なところでの方向性が出せるところはやっぱり書くということで、特に例えば支給開始 年齢とか別個の給付の在り方について非常に問題ありと労働側がおっしゃっているのは 私もわかるのですけれども、中にも書いてありますように、十分な準備期間をとった上 で段階的にというような文章にもなっていると思います。やはり現役世代に過重な負担 を課さないという点からはやむを得ないというか、将来的にはこういう方向をというこ とで書かざるを得ないところがあるのではないかと思います。 ○事務局  事務的な点ですいません。介護休業制度につきましては、まだ年金、医療の保険料免 除については確定しておりませんので、これからの検討でございます。 ○会長  B委員どうぞ。 ○B委員  審議が本当にできたのかという我が手を胸に当てたところも含めてその部分を申し上 げましたけれども、もう一つは、結局「すべき」、「すべき」をずっとピックアップし ていきますと、負担と給付、年金財政というところに尽きていくわけでございます。う がった見方で見るわけではございませんが、去年の9月の財政構造改革法、そしてこの 年金審でもトップの方であったと思いますが、中期的に日本の国民負担率50%というと ころに置いた上でピーク時の社会保障の安定と、いわゆる社会保障構造改革を含めた財 改法での年金部分についての記述といいますか、規定というのが結局給付水準、スライ ド方式、支給開始年齢、これはほぼこの中で埋め込まれている基本の骨格とほぼリンク するわけでございます。初めに結論ありきとは申し上げませんけれども、かなりそうい うバイヤスのかかったものになっていないか。あるいは本当にそこまで審議できたのか ということを少し申し上げているわけでございます。  もう一つは、今、D委員からも言われましたけれども、組合としてはやはり国民の不 安の解消といいますか、「安心と公正」ということを言われましたけれども、そのこと が一番今大事ではないかと。国の年金や、国ということに対するコンフィデンシャルと いいますか、信任といいますか、それが足元の雇用不安と同時に自分の老後を含めた将 来不安ということがさらに消費を減らし、デフレスパイラルと言われているような状況 になるじゃないか。この国民の不安をどう解消するのか。そして将来の、それは痛みを ある程度分かち合わなければならないだろうけれども、しかし、ただ将来が暗いという のではなくて、21世紀の日本とこの国で生まれて、この国で死んでいく場合によかった なというビジョンと方式を出す。したがって、2025年の将来の姿を思い切って書いて、 その方向に向けた議論をしてみようということで、この「はじめに」のところの5行の 文章もそういうことになっているのだろうというふうに思います。  しかし、その中で税方式も相当な議論を私はされたのではないかと思っています。し かし、税方式だけではありません。国庫負担率のアップなんかは税方式と全く同じで、 根本的問題と記述されていることについては大いに疑問を感じますけれども、前回の審 議会でも国庫負担率の在り方についてははっきりとしたもっとシンプルな形で記述もさ れ、あるいは提起もされています。今回そういうものについては非常に腰が引けている し、あるいはできない理由をたくさん並べているのではないかと。組合から提起をした 基礎年金の問題についてもそうです。いろんなことについて、年金の将来、2025年を見 た、今改革をしていかなければならない部分については、先送りか回避か難しいという ことを言いながら、最後に浮かび上がってくるのは、結局年金の財政というところに注 目をした、しかも負担を抑えれば給付削減しかないとこの論理ではないかと。  そのことは本当に今国民の不安と公的年金に対する信頼感の確保ということの中で、 しかも足元の今現実の状況はどうかと。大変なへたしたら地獄を見るような状況が民間 の企業は寸前までいっているところが随分あるわけでございます。こういう状況の中で そのことを打ち出しやることが本当に我々審議会委員として、真剣にまじめに検討して きたことがそのとおり素直に伝わるのであろうかと、あるいは納得性を持って冷静に皆 それぞれが考えていくことになるのであろうか。  そういう意味では焦る必要はないのではないか。中長期的にやるべき課題と中期的に やるべき課題と、そして短期でこ来年やるべき課題は何なのかということについて整理 をして改革を進めるべきということは、9月21日の意見書の1ページ目のところで組合 側の意見として出していただきました。そういう意味において、今回の結果として、別 紙というところをつなぎ合わせた結論は給付の削減しかないですよという、また、そう いう報道のされ方を恐らくするでしょうけれども、そのことが本当に審議会委員として も納得づくで、しかも確信を持ってできたのか。ある意味では意見一致をみなかった、 大きな意味では意見一致をみなかった部類に入るのではないか。そういう意味では別に 壊そうとして言っているわけではなくて、もう少し腰を据えて、時間軸をちゃんととっ て、本来の不安解消とそういうものに向けてやるべきではないか。それが中央突破のよ うな形になっていけば、冷静に考えようとするような組合員やそういうところもあえて 向こう側に押しやるといいますか、それでは「年金改革反対」とこういうスローガンの 中でやっていかざるを得なくなるのではないか。それが本当に今我々年金審議委員とし て出していく結論として、そのことがいいのかということについて、やはりもう一度考 えるべきではないかというふうに思っているわけでございます。  したがって、この内容で労働組合出身の役員としてわかりましたと、了承というわけ には残念ながらいきませんと。その背景にはそういう思いと考え方があるのだというこ とについてもう一度表明させていただきたいと思います。 ○E委員  今回、起草委員の方、非常に御苦労されて、私が何度か言った意見については相当正 確に表現をしていただいたということで御苦労さまと申し上げておきます。  労働組合の方のいろんな意見がありましたけれども、私は9ページの上段のところで はっきり給付水準の定義と給付水準を引き下げることはやむを得ないと言いながら、4 行目で、「現に年金を受給している者や間もなく年金を受給する者については、現在受 給している年金額、又は、受給できるはずの年金額を物価スライドを含めて保証する措 置が前提となる」とこういうふうにはっきり書いていただいたんですね。これは非常に 世論に対しては、何となく今もらっているものがすぐに減っちゃう、あるいは数年後に 私がもらえるものが実はもらえないのではないか、そういう不安を払拭するという意味 で非常に高く評価したいと思います。  その意味では、連合の方が実質の給付がどんどん増えていくバラ色の世界がこないと いうことについて不満を言われるのはわかりますけれども、現在もらっている年金は減 らないと。それもインフレがあれば物価スライドは保証される。それから数年後にもら えるものもちゃんともらえると、そういうことでなぜ問題があるのか。したがいまして 何か年金が大改悪で、これから先真っ暗になっちゃう、そういう形で運動されることに ついては私は反対であります。そういう意味で意見書がここのところをはっきり書いて いるということでよろしいのではないかと思います。  あと、細かい点で2点、確認とお願いを申したいと思います。たびたび申し上げた中 で恐縮なんですが、7ページ、「税方式の転換」のところで、中段でありますが、中ご ろに「さらに、仮に目的間接税で財源を確保するとした場合、企業の負担が減少し家計 の負担が増大する結果になることについてどう考えるのか、検討が必要である」とこう 書いてあるのですが、この3行については、今回改正で税方式をとらないと言っている わけなんですね。したがいまして、これは削除していただきたいと私は申し上げました し、日経連の事務局からも申し上げたのですが、これは残っているわけですね。これは どうして残さざるを得なかったかということも含めまして後ほど御説明いただければと 思います。この3行は、税方式を入れるとなってから議論をすればいいことでありまし て、今回は削除していただきたいと思います。  それから「企業年金」に関しまして18ページですが、先ほどA委員から表現につきま して、大方方向が見えてきたときには「適当である」、「必要である」、「考えられ る」と、こういうことではっきり言い切ると。また、そうでない場合には「意見があっ た」と、世間で言われているときに「という主張がある」、「という考え方がある」と いうようなことで御説明がありました。これにつきましてほかの全体との表現の中のバ ランス上で再度お願いなんですが、この「企業年金に関する包括的な基本法」、18ペー ジの下でありますけれども、この3行目ですが、「受給権の保護を中心とした共通の基 準の設定を内容とする企業年金に関する包括的な基本法の制定が必要である」というふ うに年金審議会として言い切っておられるわけですが、ここのところは、できれば「必 要であるとの考えがある」としていただきたい。  確かにこの問題は何度もこの会で申し上げましたところ、事務局から「厚生省として 基本法の制定が必要であるというふうに考えている」という明確な御意見がありまして おっしゃる理由もよくわかります。それから、K委員等も含めまして、厚生年金とのつ ながりにおいて、企業年金、特に厚生年金基金の終身の在り方あるいは受給権保護の在 り方から、それが企業年金としては非常に理想的であるという御意見がありました。そ のことはそうだと思うんですが、企業年金基本法につきましては何度も申し上げていま すけれども、内閣でこれを検討すると、大蔵省、厚生省、労働省で検討するとなってお りましたけれども、この年金審の中において、これがここまではっきり議論されたかど うか。したがいまして、確かに経済団体も基本法の制定を言っているわけですが、それ は1階部分、2階部分をどうするかという公的年金のもう少し深いところのつながりで 主張しておりまして、この全体の流れであれば、「基本法制定が必要である」とまで言 い切れないのではないかと思います。事業主の多くの方から基本法の制定が必要だとい うことは申し上げてないということでありまして、そういう意味で厚生年金基金あるい は適格年金も企業年金というのは退職金を原資としてありますので、事業主あるいは組 合サイドの意向を尊重していただきたい。労働側もここのところを「制定すべし」とは 必ずしも言っておられなかったと思いますので、そういう意味ではここの「必要である」 のところを「考えがある」というふうに直していただけるとありがたいと思いますその 2点であります。 ○会長  B委員、手を挙げておられました。どうぞ。 ○B委員  E委員から水準の問題につきましてちょっとありました。給付の絶対額の切り込みで はないじゃないかという御趣旨なんだろうと思いますが、1つは心理的な面も含めまし て、今の時期にこれは相当慎重にやらないと国民の理解が得られませんよという状況の 問題が1つ。  それから、現在は給付について昭和60年改正による2006年までの経過措置の途中であ りますし、たった4年前に入れた可処分所得スライドによって厚生省の「年金白書」で は23.1万円が21万ぐらいの水準ですか、という形である意味では給付抑制をされていく という自動的なスタビライザー装置が働いてきつつあるわけです。そういう意味では進 行中であります。水準が抑制されたり、あるいは増額が抑制されるということについて は進行中です。その上にやはり安心と公正ということが今最大の課題だとすれば、2025 年とか2050年の遠い将来のことを言っているわけではないわけでございます。医療保険 もいわゆる第2次改革といいますか、宿題で残っていますね。これは来年の国会に出る のか出ないのか、そして介護保険制度は2000年でスタートをする。  そういうことの中で、では一体その負担率はどれぐらいで、その基本は各人の負担方 式ということではないのですかと。年金を当てにしてそこから天引きということを前提 にした政策ではないのですかと。しかもそれは同じ厚生省の中ではないですかと。若者 の方の負担の問題もありますが、しかし、今後の水準を考えていくときには、高齢者な り受給世代の負担の問題は一体どうなるのか。しかも直近の問題としてあることについ てやはり一定の政策と方向性を示しながら、だからこれで基礎部分はいけますねとか何 とかそういうことがしっかり説明ができなければ、それぞれ分断する中で年金は年金、 医療は医療、そしてそれぞれが負担で、我が身は我が身しか守るしかないと。こういう ことがどれだけ今の消費にさらに冷水を浴びせ、不安感をあおるのかと。結果的に年金 に対する不安感をあおったり、それに拍車をかけたりすることにならないのか。それを 防ぐための政策的な準備やさまざまな検討や、それが本当にできたのかということにつ いては、またG委員から、問題先送り型でというふうに怒られそうでございますが、そ ういう意味でやはり給付の在り方等々についてもそういうことを含めた提起と納得性が 要るのではないか。  そのためにはまだ審議不足といいますか、もう少し中期的な方向性も含めて議論した 上で出していくという方法論もあるのではないかというのが意見でございます。 ○会長  ほかの委員の方どうぞ。D委員。 ○D委員  E委員からの御意見がございました7ページ、税方式への転換のところですけれども ここのところでは最初の5行のところで積極論が書かれておりまして、その後続く9行 ぐらいのところで慎重論が書かれているわけです。それで慎重論の最後に「さらに」と いうところを削除した方がいいのではないかということですが、税方式へ転換する場合 にはいろいろな問題点というか論点がその上に書かれているわけですけれども、その1 つとして、税方式へ転換する場合に検討すべき1つの問題として、これは労働側委員と か研究者等々各方面から指摘されているわけですけれども、企業の負担が減少して家計 の負担が増大する結果になるのではないかと。その辺の分析、検討が必要ではないかと いうことがありますので、起草委員としては、ここの削除は、経営者側の御意見は伺っ ておりましたけれども、削除は適当ではないというふうに考えました。  それで、その後の最後のなお書きのところで、経営者側の意見として3行ほど追加し ているわけです。以上です。 ○会長  ほかに。どうぞ、F委員。 ○F委員  私の意見は前回申し上げましたので繰り返しません。きょう冒頭にA委員の方から説 明があった点についての確認を1点だけさせていただきたいと思います。それは、「意 見が強かった」という表記の理解の問題です。「意見が強かった」という言葉は、私、 普通使わないものですから、これはどう理解したらいいかという私の国語力の問題だと いうふうにも考えておりますけれども、通常、先ほどA委員がおっしゃったような多数 説の記述であるということであれば、単純に「意見が多かった」と書けばいい話なんで すね。それをあえて「意見が多かった」と書かなかったのにはそれなりの背景があった のではないかというふうに私自身はここを読み込んでいたわけです。多数の確認は必ず しもできていない。けれども、そういうような強いというか、強硬なといいますか、声 が大きいといったらいいかよくわからないんですけれども、場合によっては多数でなか ったかもしれないけれども、「強い意見があった」という意味での理解にとどまるべき ではないかというふうに思います。多数説だということであれば、それは「意見が多か った」と書くべきであって、それをあえて書かなかったということについて多数説とい うふうには必ずしもいってないというふうに理解をしたいということなんですが、この 点は会長を含め皆さんどうお考えなのかということの確認をしていただきたいんです。 ○会長 最初に起草委員の方。 ○A委員  「意見が強かった」というのは、私の記憶では。 ○F委員  2カ所あります。「国庫負担率を2分の1に引き上げる」というところと「報酬比 例」部分。 ○A委員  報酬比例の部分なんですね。「意見が多かった」という多数決で決めているわけでは ございませんので、D委員もおっしゃったように記録をベースにしながら、皆さん方の おっしゃったことを起草委員として聞いていて、多分これが主流、主であろうという形 で表現をとっているわけです。したがって、「多かった」、「少なかった」というふう な形というよりも、起草委員としての解釈でもってこの方の意見が主力であったという 意味で「強かった」という表現をしたんだと思っているんですね。「多かった」、「少 なかった」というと、それは8票か、9票かというような形になってしまう危険性があ るというふうに理解したわけです。 ○F委員  そういう説明であれば、私は納得できるんですが、要するに多数説であるという含意 は必ずしも持たないということを確認していただきたいという意味です。 ○会長  この審議会は裁判所ではありません。地労委、中労委、あるいは公労委のような形の 審決機関でもありません。学識経験者にお集まりいただいて、ある主題についてそれぞ れ意見を述べていただく。お述べになる方もあり、ほかの方がおっしゃったことに、 「わしも同じ意見だからあえて言わないが、大体そうだと思うよ」という形で座ってい られる方もあり、という雰囲気の中で、意見のひとつの形が認知されていく。それが審 議会の運用方式です。  これは、起草委員になられた方には、大変な御負担です。記録をごらんになり、当日 のその場面を思い出され、「だれさんがこうおっしゃったんだな。それに対して皆さん 黙っておられたけど、大体御賛成というふうな空気であったな」という風なことを思い 出されながら、文章を書いていかれる。ですから「強かった」という場合、人数からい えば多かったのかもしれません。非常に説得的で皆さんにインプレッシブであったと感 じられた面もあるのかもしれません。この辺は文芸的な面が出てもやむを得ないことも あります。ですから審議会の意見書も、あちらこちらから集めてきて首尾一貫しません この意見書(案)をお読みになりましても、1つの意見で理路整然とまとめてあるとは 決して言えません。こういう意見もあった、ああいう意見もあった、こういう考え方も ある、ああいう考え方もある。「それぞれ、それなりに無理のない根拠があることはわ かる。わかるけれども、実際にはちょっと無理だな。」そういうふうな判断をつけて、 世間に出して「いい仕事だなあ」と言ってもらえるものをつくっていく。これが審議会 の仕事と思います。 の意見書(案)も大体よくできています。  だ、組合というお立場で、これをきっかけにして運動ののろしをひとつ上げたい、そ ういうことに御活用になりたいと、お考えでしたら、これはいかんともしがたいことで す。 それは連合なら連合という組織体の御事情です。企業には企業の御事情があり、組合に は組合の御事情があります。私個人の感じで申しますと、せっかく30回審議会をやって まいり、皆様の御意見をちょうだいしたわけです。そこで、留保したい、ということで すと、今日この意見書を採択するのはいかがなものか、と感じます。  起草委員の方には大変御苦労さま、また御無理なお願いと思いますが、もしも皆様方 が御了解くだされば、私のところでちょっとあずかる。時間を来週までいただけません でしょうか。もう一度連合という組織体と調整ができないかどうか、努力をしたいと思 います。いかがでしょうか。どうぞ。 ○G委員  今の会長のおまとめで、私、大変結構だと思いますが、連合の委員の方から、特に草 案についていろいろコメントがありましたので、会長おっしゃるように、連合の立場と いうものがあるのかなと思いますが、特にB委員の御発言を伺っているとちょっと誤解 されている点がかなりあるのではないかという危惧が非常にするんですね。ですからぜ ひその点を1週間時間いただけるなら、その間にもうちょっと詰めていただいたらどう かと思うんです。これは先ほどE委員が適切に御指摘いただいた点が一番大きいんです が、数回、B委員の御発言の中で「給付削減」というふうにおっしゃっているんですが 「給付削減」という表現は非常にミスリーディングで、そうでないということを一生懸 命書くために、ある意味では私なんか努力をしたつもりなんです。この給付水準という のはかなり年金専門家の私から見ると特殊用語じゃないかと言って大分注文つけて表現 を(注)も付けてもらったんです。給付額の切り下げじゃなくて、いわゆるリプレース メントレートに当たる現役の所得に対する62%とか、そういう比率が将来的に下がるこ とはこの際やむを得ないと。  そういう意味ではっきり給付額の問題といわゆる年金用語としての給付水準というも のをはっきり区別して議論しているのです。「給付削減」という非常にアバウトな言い 方はそれを全部めちゃくちゃにしちゃうおそれが非常にあると思うので、ぜひそれは組 合員に御説明になる際に御注意していただいて説明していただいた方がいいという気が いたします。  それと「基本的なスタンス」のところでは、確かにいろんな基本的な論点が先送りせ ざるを得ない。基本的には私は2つだと思っていますが、社会保険方式を維持するのか どうかということですね。言い換えれば、税負担でやるのかどうか。それが基礎年金だ けにせよ、社会保険方式を維持しなければいかんということと、それから民営化は非現 実的だよというこの2点はかなりはっきり書いたわけですね。特に財政再計算という5 年ごとにやるシステムの中で我々は仕事しているわけです。B委員御指摘のようにいろ いろアンノンファクターいろいろマクロの情勢含めて、あるいは出生率さえ含めてそれ は5年たてば相当変わるわけですね。変わることがあるから5年ごとに見直す必要があ るというので議論をしているわけです。現状で我々が置かれている最も基本的な見直し をしなければいけないファクターは、やっぱりデモクラフィックなファクターであるこ とは事実ですよね。それを2025年までで止めるべきなのか、2050年まで、これはもう 2050年の受給者は生まれてきているわけですから、年金受給資格にいつなるかという意 味ではね。それは将来的に来年から以降どれだけ生まれてくるかはアンノンかもしれな いけれども、人口学というのは経済学よりは相当正確に予測の可能性があるらしいと私 は理解をしているんですけれども、そういう意味で、決してこれが唯一絶対の答案であ るとだれも思っているわけではない。  けれども、そういう5年ごとに見直すシステムの中で、どうしても現在我々が考慮に 入れなければいけない非常に重要なファクターは、去年の1月に出た新しい人口推計と その前の人口推計では非常に大きな差があって、特に2025年から2050年にかけての人口 減少というものが、特に若年人口の減少というものが非常に大きい。それが及ぼす影響 を全然カウントしないような審議会の答申は私はあり得ないと思うんですよ。焦る必要 はないというのは、私もそういうふうに反面では思いたい気持ち十分あります。しかし それはマクロの運営についてはまさにそうですけれども、人口構造の変化に関しては、 じゃあ、本当に連合はそういうことを責任持って言えるのかといったら、私は相当躊躇 されるのではないかと思うんですね、人口の見通しに関してですよ。専門家の粋を集め てやった推計でもいろいろ変わってくる。まして専門家でないものが焦る必要ないと言 われるのと、厚生省が大変だよと言っているのとどっちを信用するかといったら、それ は専門家の意見の方がそれは尊重しますよね。  ですから焦る必要がないという表現に含まれている基本的な考え方に、私は非常なむ しろ危惧を感ずるので、ぜひ、そこはお考えをいただけないものかなと。今、会長がお っしゃったように、よくいろいろ検討された結果を総合して、問題点もいろいろ指摘し 反対意見もいろいろ考慮に入れて書かれていると思うので、もう少し慎重に酌み取って いただいた方がいいのではないか。  私自身は連合のようなパワフルな社会的な組織が非常に強く反対していることの持っ ている意味は、ほかの方よりは職業柄非常に重要に感じているひとりだと思います。こ れは私個人の考えで、こういうところで言わない方がいいかなと思っていたことだけれ ども、先ほどおっしゃったようなことをおっしゃるのだったら、我々は特に公益委員と しての立場で言えば、連合は悪いけれども、サラリーマンの4分の1以下の組織しか代 表してないんですよね。4分の3の未組織の人、特に中小企業で働いているような人た ちは連合にほとんど入ってないわけだから、悪いけれども、そういう人たちの老後のこ とはやっぱりもっと広い視野で考えざるを得ないんですよね。  そういう議論はある意味ではタブーに近いところがあるんだけれども、もし連合が一 番強く今回の草案に対して根本的な疑義を提起されるだったら、私は個人として審議会 に参加している専門家として、それは未組織の人たちの将来のことも十分お考えなのか というとをあえてお尋ねしたいですね。 ○A委員  B委員からの御発言について十分意を尽くしたかと言われれば、私自身も尽くしまし たと言い切れない部分が残ることは事実だと思います。ただ、しかし次期制度改正の個 別検討項目についてまですべて各論で書けということになりますと、むしろ逆に言えば 年金制度に対する不信感を増幅することになるのではないかと思うんですね。30回も議 論してきて何の結論も出ないでもって、次期の制度改正も両方並べて、どっちか適当に やってちょうだいというのは、むしろ年金審議会に対する不信感にもつながりますし、 やはり共通の合意のできるところは将来的には若い世代が減っていって、高齢者が増え るんですから、ある程度の負担はしてもらわなければならないし、給付もある程度は遠 慮してもらわなければならない。しかし、きょう、あしたということではなく2025年あ るいは2050年を視野にして、そういう考え方でやることがむしろ年金制度の安心につな がるのですよというのが私たちこの書いた趣旨なんですね。  ですから各論併記でもって両論並べて、年金審議会は将来のことについては全く結論 が出ませんということは、年金の不信感をあおることになるのではないかということを ちょっとお考えいただきたいと思います。以上です。 ○D委員  B委員のおっしゃられた2番目の基礎年金の空洞化問題、それの位置づけが弱いので はないか。特に大きなIIの「基本的な考え方」のところに入れるべきではないかという ことですけれども、基礎年金の空洞化問題、我々も非常に大きな問題ととらえておりま す。ですから1ページのところの真ん中のいろいろな公的年金の課題があるのだという ところに、「国民年金の未納、未加入問題も大きな課題である」と書いたわけです。  それで、2ページ以降の「基本的な考え方」の中に位置づけるべきではないかという ことですけれども、現代社会では、あるプログラムにとって、かつては外性的な要因で あったものが内性的な要因になってほかの諸要因との相互影響がその制度にとって不可 欠な部分になっているわけです。公的年金制度というのもその最たる制度で、やはり少 子・高齢とか経済の低成長とか女性の労働力率が上がったとか、そういう年金制度の外 にあるいろいろな社会的な状況の影響を受けます。社会的な要因というか、そういう背 景が変化してきたということがこの年金改革において非常に大きな問題だということを 中心にこの「基本的な考え方」の2ページから5ページぐらいまでに書きました。  国民年金の未納、未加入問題は、どちらかというと年金制度の内部の問題ですので、 初めの部分と、年金業務とか後の部分で取り上げたということです。IIのところは大き くとらえましたので、そこに入れてないんです。けれども、大きな問題だということは きちんと認識しておりますので、そのことについて一言つけ加えさせていただきました ○H委員  今回のこの審議の中で人口構成の変化という問題は、この前、D委員も総括されまし たけれども、真っ正面から議論をしたと。これは人口構成がこういうふうに変わってい くことをだれも喜んでいる人はひとりもいないわけなんですが、現実の問題としてある わけなんで、これ、また直視しないのもおかしい。国民に対して率直に人口構成の変化 は、これは好むと好まざるとにかかわらず受け止めなければならないことを明確に年金 審議会で議論したということ。  それから、初めて税方式というものを正面からこの審議会で議論したということ。こ れは、私は相当な成果だろうと思うんです。ただ、この問題はなかなかに難しい問題、 前者は物理現象ですから、好む好まんの問題じゃなくて与えられた問題に、どう適応す るかという問題ですから、これは適応の仕方を考えなければならないですが、その1つ の大きな政策手段として税方式を入れようじゃないかと。目的間接税を入れようじゃな いかという提案があったわけでありまして、そういう意味では相当な議論があったと思 っているんです。  ただ、問題はこの1ページの段落のところで、将来像を明確にする。明確にする意味 の中では、国民みんなの方に人口構成の問題は今どうしようもない問題として現実ある のだよということをはっきり言わなければいかんし、マスコミもそういうことを言って もらわなければいけない。みんなが全員で受け止めるという気持ちになってもらわなけ ればいけない。そういうことを明確にすべきだということと、その1つの政策手段とし ての、とにかく税方式の問題は議論されたということなんですが、この1ページの最後 に、しかし結局まとまらなかったと。私は下から2段落のところに、どうして「精力的 に」というのを入れないのか非常に不思議でしようがないんですが、精力的に審議して きたと思うんですけどね。  それから、「議論をつづけることが必要であり、早期に結論を得ることが望まれる」 と。これはさっきのA委員のお言葉によれば合意なんですね。「早期に結論を得ること が望まれる」というのは全員の合意。ですから、これはつまり今回改正に向けてはここ にあるようなことなんだけど、じゃあ、また次回改正の直前になってこういうことをや るということじゃなくて、この審議会終わったらすぐ女性の年金権にかかわる問題は検 討会が設置されることになっていますが、この審議会自体として、今言った大きな問題 を5年を待ってまた議論をするというのではなくて、すぐこの議論を始めるんだと。た だ、今迫られているきょうの問題について何も答えないということはできませんから、 審議会としてはきちんと答えは出すけれども、しかし、次の5年後の姿は今考えている よりはよくはならないというようなお話がこの前もちょっとL委員の方からあったわけ ですから、そういうようなことも考えますと議論はすぐ始めなければいかん。  それからもう一つは、税方式の問題というのは多面的ないろんな問題持っていますか ら、簡単にいかないとすれば、ますます早く始めなければいかんという意味で、これは そういうことで私は全員合意がなされていると理解しているんですが、それは1つ確認 したい。紙の上に書くか書かないかは別といたしまして、少なくとも全員合意として、 そういう方向に向けて議論をすぐ始める。それから検討をすぐ、あるいは専門家会議を すぐつくって対応していかなければいけないんだという合意がなされているという1つ の前提が要るのではないかというふうに思っていますし、それは全員合意だと。これは 会長以下確認していただかなければならん事項だろうと思います。  それから、さっきE委員から2点要望いたしまして、D委員からの御回答はあったの ですが、7ページのところは確かにお考えはわかりました。ところがこっちは「検討が 必要である」とか「不可欠である」となって、こっちは「との意見があった」と。「意 見があった」というのは、さっきA委員の御説明だと少数意見というふうに、「意見が あった」と書いてあるから喜んでいたら、少数意見だと言われてがっくりきたんです。 だから、これは全然バランスを失しているわけですよ。ですから、もしおっしゃるなら 「不可欠であるとの意見があった」というふうにしていただけるなら別ですけど、この 文章のあれから言うと物すごくボリュームも違うし、これはどんなことがあってもひと つ3行切っていただいて、その前に「検討が不可欠であるとの意見があった」というぐ らいにしていただきたい。そうしないとバランスがとれないということを1つ申し上げ ておきたい。ほかにもいろいろ申し上げたいのですが、時間の関係もありますので、以 上でございます。 ○C委員  先ほどG委員がおっしゃいました4分の1と4分の3の関係については、私は日ごろ 連合の運動の一員と参加していて、連合は余り思い上がってはいけないということはし ょっちゅう自分に言い聞かせながらやっているつもりです。そのことはまず申し上げて おきたい。  それから、もう一つは中小のことについて、私、前回の審議会の場でちょっと発言し た記憶があるんですが、やはり配慮しなければならないのは、窓口に行ったとき、最近 愕然される方が多いということを申し上げたのは、そういうことも含めていろいろ申し 上げたということを少し重ねて申し上げておきたいと思います。  それから、先ほど申し上げたんですけれども、国民年金の空洞化のような問題だとか 今、H委員さんがおっしゃった税方式のところだったと思いますが、そういう問題やE 委員がおっしゃった企業年金法のような問題、それぞれのところでもう少し審議会全体 の状況をとらえてフラットにしていただけたらいいのではないかと思います。企業年金 法なんかは厚生省としてやらなければいけないというのがどうも文章の末尾のところに 決意の表明みたいなことがにおうわけです。極めてフラットにしていただいたら、別に 両論併記ということにこだわりを持って言っているわけではありません。そういうこと が極めて大事なのではないかということをちょっと申し上げておきたい。  それからもう一つは、全然別の角度ですが、1階部分を統合したとき、それから、 JRNTT、たばこ、そういうところの年金の一元化をやってきた経緯から見ますと、 厚生年金側は大変な御協力を申し上げているわけで、そのことに対するギブ・アンド・ テイクみたいなものは多少世の中だからあっていいのではないかなというように思うわ けです。  したがって、申し上げましたように、5年に1回の財政再計算をやるたびにどんどん どんどん切り下がる構図しか見せてない。このことについては時間軸の問題もあります けど、少しいろいろ考えていただいたらいいのではないかと申し上げたんです。  それからもう一つは、給付と負担の関係については、私は割と柔軟に考えているつも りです。やっぱり給付をたくさんもらえば負担をしなければならないという構図ははっ きりしているわけでありますから、これは国民の選択だと思うんですね。そこを余り決 めつけて、給付はこうあらねばならぬ、負担はこうあらねばならんというふうに大見え 切ってやると、そこでさっきB委員がおっしゃったようにあらゆる面で相当心理的に冷 えているときに、時間軸は先のこととは言いながら現状に追い打ちをかける。そこのと ころのバランスが大変難しいですけど、考えたらいいのではないかなと思います。  それから、H委員さんがおっしゃった少子・高齢化の問題ですけど、やっぱり蛇口を ひねれば、どんどん水が出るのと同じように、国民全体がそういう高度成長の余韻の中 に生ています。ですから、構造変化が起こったことに対する理解が十分進んでないんだ と思うんですね。したがって、年金教育も学校でやっていただいているようですけれど も、もっともっとそういう構造的な問題も含めて、国民教育というのか、公民教育とい うのか、そういう下りのところで文部省ともタイアップして真剣にやってもらう必要が あるのではないかと思います。年金だけがいろいろ粋がってやってみてもこういう難し い世の中ですから、なかなかうまくいかないんじゃないかと思うんです。以上のように 私は思いましたので、ちょっと発言しておきます。 ○I委員  実は進め方について意見を申し上げたいと思っておりましたら、会長が実に明快にお まとめになりましたので、会長のおまとめのとおりの線で進めていただきたいと思いま す。  それから、この起草委員の方が非常に難しい状況の中でさまざまな主張や意見を明快 におまとめになったことにつきましては私は敬意を表したいと思います。  私個としては言いたいことさまざまございます。しかし、この段階になっては、やは りこの意見書の案に沿って決めていくほかはないんじゃないかと思っております。  今、H委員が7ページの最後のところをおっしゃったんですけれども、それは連合と 日経連がどんなに合意されようと、それは両方の組織の合意の問題でございましたら、 この年金審議会はそれだけじゃない。広く国民の立場でやっておるわけでございますか ら、先ほどG委員がおっしゃいましたようにやはり問題があるわけでございます。です から、私はこの最後のなお書きの以上の了解があったというふうに解釈されるならば、 私はそれは反対したい。この表現でもっておまとめ願いたい。  そうでないと、この間の話のように、前回の審議会の委員の責任を問うと、こういう ことになりますと、私は問われちゃ困りますので、はっきりモノを言わなければならな い。それでは意見がまとまりません。そういうことを申し上げておきます。 ○会長  12時を過ぎました。皆様方の御了承、御承認がいただけましたら、きょうは意見書を この案のとおり採択することをいたしませんで、1週間、お時間をいただこうと思いま す。皆様方挙手で同意していただけますか。よろしゅうございますか。 (全員挙手・「はい」と声あり) ○会長  起草委員の方には肉体労働がまた重なって本当に申しわけありませんが、みなさま方 にふたつお願いがございます。ひとつはそれぞれの方がこの文章をごらんになって、文 章を少し直した方がいい、追加した方がいい、削った方がいい、とお考えのところがご ざいましたら、なるべく早くファックスで事務局の方へお申し出いただきたいことです それからJ委員がご病気でご入院という事情もありますが、B委員、C委員との調整に つきましては、来週に入りましてから時間をかけます。来週もう一回全員懇談会を開催 し、そこでまとまれば総会に移り、大臣殿に意見書を提出することにしたい、と思いま す。よろしゅうございましょうか。               (「異議なし」と声あり) ○会長 それでは、きょうはこの辺で終わりにしたいと存じます。よろしゅうございましょう か。御苦労さまでございました。 ○I委員  来週の段取りを。                  (日程調整) ○事務局  再度恐縮ですが、9日金曜日の線で調整をさせていただきたいと思いますので、各委 員御多忙でございましょうが、御協力よろしくお願いいたします。  年金局 企画課   須田(3316)