98/09/17 第13回厚生科学審議会先端医療技術評価部会議事録 第13回厚生科学審議会先端医療技術評価部会議事録 1.日 時:平成10年9月17日 (木) 16:00〜18:00 2.場 所:中央合同庁舎第5号館 共用第9会議室 3.出席委員:高久史麿部会長 (委員:五十音順:敬称略)     軽部征夫 木村利人 柴田鐵治 曽野綾子 寺田雅昭   (専門委員:五十音順:敬称略)         入村達郎 加藤尚武 金城清子 廣井正彦 松田一郎 山崎修道 4.議  事:(1)岡山大学医学部附属病院の遺伝子臨床研究実施計画について (2)厚生科学審議会先端医療技術評価部会専門委員会の設置について 5.資  料:        1.岡山大学医学部附属病院の遺伝治療臨床研究実施計画について       2.岡山大学医学部附属病院に係る遺伝子治療臨床研究実施計画の審議経過        について       3.厚生科学審議会先端医療技術評価部会がん遺伝子治療臨床研究作業委員 会委員(案)       (千葉大学医学部附属病院(食道がん)及び癌研究会附属病院(乳がん)の計 画)       4.インターネットで寄せられた生殖医療に関する御意見        (平成7月22日以降提出分)       5.厚生科学審議会先端医療技術評価部会専門委員会の設置について       6.出生前診断・体外受精の専門委員会に関する要望書        (優生思想を問うネットワーク) ○事務局  それでは定刻になりましたので、ただいまから第13回「厚生科学審議会先端医療技術 評価部会」を開催いたします。  本日は、森岡委員が御欠席でございます。また、加藤委員につきましては遅れて御出 席である旨の連絡をいただいております。曽野委員につきましては御出席の御連絡をい ただいておりますが、まだ到着していない状況でございます。  また、本日の議題にあります遺伝子治療臨床研究の関係から、岡山大学医学部附属病 院におきます臨床研究の総括責任者でいらっしゃいます田中先生と、共同研究者でいら っしゃいます藤原先生に本日は参考人として御出席をいただいております。  それでは最初に、本日お手元に配布してございます資料につきまして、事務局から説 明申し上げます。  議事次第1枚紙がございまして、資料としましては6点ございます。  資料1は、「岡山大学医学部附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画について」という 159ページにわたります大部の資料でございます。  資料2といたしまして、「岡山大学医学部附属病院に係る遺伝子治療臨床研究実施計画 の審議経過について」という資料でございます。  資料3は「厚生科学審議会先端医療技術評価部会がん遺伝子治療臨床研究作業委員会委 員(案)」でございます。  続きまして資料4は「インターネットで寄せられた生殖医療に関する御意見」でござい ます。  資料5は「厚生科学審議会先端医療技術評価部会専門委員会の設置について」という資 料でございます。  最後資料6は「出生前診断・体外受精の専門委員会に関する意見(優生思想を問うネッ トワーク)」ということで、要望書の提出がございます。  以上でございます。不足の資料等ございましたら、お申しつけいただきたいと思いま す。  それでは、以下の進行につきましては、部会長どうぞよろしくお願いいたします。 ○高久部会長  今日はお忙しいところ、御出席いただきましてどうもありがとうございました。本日 は昨年の7月10日に厚生大臣から厚生科学審議会に諮問がありまして、同日付で厚生科学 審議会長からこの部会に付議されました岡山大学医学部附属病院からの「非小細胞肺癌 に対する正常型p53遺伝子発現アデノウイルスベクター及びシスプラチンを用いた遺伝子 治療臨床研究計画」について、当部会に設置しましたがん遺伝子治療臨床研究作業委員 会におきまして、主として科学的な事項についての論点の整理が終わったということで すので、御報告いただいた上で、この岡山大学から出ています臨床研究実施計画につき まして、部会としての御審議をいただくことにしております。  まず事務局の方から、この遺伝子治療研究の申請の経緯等について説明をお願いいた します。 ○事務局  それでは、事務局より申請の経緯等につきまして、御説明申し上げます。見ていただ きます資料は、資料2の審議経過についてという資料で御説明申し上げます。  1枚めくりまして、課題名と実施施設につきましては、先ほど部会長の方からお話があ ったところでございます。1点、実施施設につきまして、附属病院長が平成10年度より荒 田先生になっておりまして、1点病院長の変更がございました。また、総括責任者は本 日お越しいただいております外科学第一講座の田中先生でございます。  当初の申請が平成8年12月2日にございまして、その後、委員会でのやりとりを経て、 一部投与量等の見直しを行った変更をしたということで、平成10年3月18日で回答及び変 更の報告がございました。  遺伝子治療臨床研究中央評価会議における審議の状況でございますが、まず申請を受 けまして、平成8年12月26日、第7回遺伝子治療臨床研究中央評価会議が開かれまして、 実施計画について主として科学的観点から論点整理を行う作業部会を設置することを決 定いたしまして、部会長として寺田委員が指名されてございます。  2枚目でございますが、委員分担一覧ということで、基礎系、臨床系、全般を見てい ただく委員ということでの分担が決められてございます。なお、この作業部会につきま しては、先日7月に御議論いただきました、東京大学医科学研究所附属病院の実施計画 の検討と併せて実施するということになっておりまして、臨床の専門家は本日の肺がん のみならず腎細胞がんの専門家も含んでございます。  続きまして3ページ目でございますが、以上の経緯で作業部会が設置されまして、こ の作業部会につきましては、文部省の同様のワーキンググループと共同で開催するとい うことで開催してございます。第1回目につきましては、平成9年3月12日に文部省にお いて開催され、事務局より実施計画の概要を説明いたしまして、また各委員の作業分担 の決定を行いました。  第2回目の作業部会につきましては、平成9年5月6日厚生省において行いまして、実施 計画の審議と作業部会の意見書の取りまとめを行いました。  引き続きまして、厚生科学審議会先端医療技術評価部会、本部会でございますが、そ ちらの経緯でございます。  平成9年7月10日第1回のこの部会が開かれた際に、この部会の設置ということに伴い まして、遺伝子治療臨床研究中央評価会議の業務の継承ということが行われました。ま た、部会の下に実施計画について主として科学的観点から論点整理を行う委員会を設置 するということにつきまして了承いただきまして、従前の作業部会の業務を継承すると いうことなりました。  続いて4ページ目でございます。平成9年10月3日、第2回の当部会が開催されまして、 従前のがん遺伝子治療臨床研究作業委員会の委員構成を引き継ぎ、また委員長は寺田委 員が指名されてございます。作業委員会規程等を整備したことについて事務局より報告 がございました。  続きまして、がん遺伝子治療臨床研究作業委員会の状況でございます。これにつきま しても、従前のとおり作業部会と同様文部省のワーキンググループと共同で開催してご ざいます。第1回の作業委員会につきましては、平成9年11月5日文部省において行われ まして、従前の作業部会から意見書が出ておりますので、それに対する岡山大学医学部 附属病院の回答の審議が行われ、その後、作業委員会から再意見書という形での意見の 取りまとめが行われました。  第2回作業委員会につきましては、平成10年5月14日厚生省において行われ、作業委員 会の再意見書に対する岡山大学医学部附属病院の回答の審議が行われ、おおむね妥当な ものと了承されました。また、新GCPを踏まえた患者への説明文書の整備やベクターの供 給の確保の状況等について委員長が確認した後、本委員会での論点整理の状況を先端医 療技術評価部会に報告することとされました。  以上、最後の点につきまして、寺田委員長の方で御確認をいただきまして、また、ベ クター供給の確保状況につきましては、事務局で中央薬事審議会の状況を中央薬事審議 会の事務局より聞きまして、御報告申し上げ、本日審議いただくことになった次第でご ざいます。  以上でございます。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。次に、本日は先ほど事務局から御紹介ありましたよ うに、参考人として臨床研究の総括責任者であります岡山大学医学部附属病院の田中教 授から、実施計画の内容について簡単に御説明していただけるということですので、田 中先生よろしくお願いいたします。 ○田中総括責任者  岡山大学の田中です。それでは、私たちの計画について簡単に御説明申し上げます。 お手元の資料1の133ページ、患者さんに対するインフォームド・コンセントのための書 類でございます。それに基づいて御説明申し上げます。  肺がんは御存じのとおり最近著しく増加してきておりますが、現在は胃がんを抜いて 男性のがん死亡の第1位を占めるほど増えてきております。肺がんの中でも今回の治療 の対象としております非小細胞肺がんと申しますものは約8割を占めておりまして、臨 床的に発見された時点でほぼ3分の2の患者さんは転移とか大切な臓器への浸潤のため に手術ができないというような状態になっておりまして、その場合、抗がん剤とか放射 線治療を試みるわけでありますが、なかなか客観的に見て延命効果があると保証できる 段階には至っておりません。  一方、がんの原因につきましては、遺伝子の異常によって生じてくるということがか なりはっきりしてまいりまして、そういうわけで、この遺伝子を操作してがんを治療す るということが考えられるようになりました。私たちは肺がんの新しい治療法として、 先ほど御紹介いただきましたように、非小細胞肺がんに対しまして、正常型p53遺伝子と いうものをアデノウイルスベクターに乗せましてがん細胞に導入し、併せて一部の症例 でございますが、シスプラチンという抗がん剤を併用した遺伝子治療の臨床研究を計画 いたしました。  この臨床試験の実施施設は、私たちの岡山大学医学部附属病院を予定しておりまして この臨床試験の依頼者はアールピーアールジェンセル株式会社であります。  それでは、お手元の135ページに図1がございますので、これを中心に御説明申し上げ ます。  がん細胞に見られる遺伝子異常のうち、特に注目されるのはがん抑制遺伝子というも のの異常であります。この遺伝子にもいろいろ種類があるわけでございますが、中でも p53遺伝子と言われるがん抑制遺伝子は、多くのがんの種類で異常が認められておりまし て、また、その異常の頻度も高頻度となっております。  例えば、非小細胞肺がんでは、約50%の方にこの遺伝子の異常が認められます。この p53というがん抑制遺伝子ですが、本来は細胞が無制限に増殖するのを抑えておりまして また、何らかの事情でその細胞の遺伝子に異常が生じた場合には、その細胞に自殺する ように指令を出します。この自殺のことをアポトーシスと言っておるわけですが、p53遺 伝子に異常がある多くのがん細胞は、したがいまして、増殖する力が強くなってきてお りますし、抗がん剤を用いましても、その抗がん剤ががん細胞に自殺するように命令を 出そうとするのですが、それを受け付けないということになって、抗がん剤に対して非 常に抵抗力を獲得するようになっております。  そういうわけで、この図にあります下段の方ですが、がん細胞に正常なp53遺伝子を入 れてやりまして、とりあえずがん細胞の増殖を抑える。更には、がん細胞を自殺に追い 込む。この際、速やかに自殺に追い込むためには抗がん剤を併用した方がいいのではな いかと考えているわけであります。  次のページをお開きください。図2を注目していただきたいのですが、p53というがん 抑制遺伝子をがん細胞に運び込むために、アデノウィルスというものを用います。アデ ノウィルスと申しますのは、普通の子どもさんの風邪を起こす原因のウイルスの1つで ありますが、このまま用いるわけにはまいりませんので、その図にございますように、 ウイルスが増殖に必要な遺伝子E1というものを取り除きまして、そこへ持ち込みたいp53 という遺伝子を入れ替えるわけであります。こうして入れ替えられたアデノウィルスと いうのは、いわば自ら増殖できないという、自分にとっては欠陥のウイルスでございま すけれども、守備よく下の図にありますようにがん細胞に感染しまして、そして核の中 に入りまして本来の遺伝子の機能を発揮し、最終的にはp53というたんぱく質をつくり出 して働くようになる。すなわちがん細胞が増殖をとめる、あるいは自殺するという仕組 みになっております。一旦感染したアデノウイルスは、E1という必要なものがありませ んので、再び増殖することはありません。  2ページ飛びまして139ページを先に見ていただきたいと思います。アデノウイルスベ クターといういわば一種の治療薬となったアデノウィルスですが、これをがん細胞に入 れるためには、この図にございますように、向かって左側に肺の絵が描いてあるのです けれども、その中心部に黒く塗りつぶしてあります。これががんでありますが、肺の付 け根にがんがある場合には気管というところに近いので、気管支鏡を用いまして、のぞ きながら直接注入いたします。  向かって右の図でございますが、肺の隅っこの方、末梢にがんがある場合は、逆に胸 の壁にごく近くなってまいりますので、直接体外から注射します。むろん直接体外から 注射すると申しましても、がんが見えなければいけませんので、CTというレントゲンの 装置を使いながら注射することになります。こういう治療を月に1度繰り返していくわけ であります。  それでは1ページ戻りまして138ページの一番下<適応判定の基準>と小さい字で書い てあるところがあるのですが、ここに御注目ください。どういう患者さんを選んでこの 治療をするかということが問題になります。特に、第2番目に書いてありますが、手術に よって切除することができない進行したがんである。また、そういうがんが再発して、 抗がん剤や放射線によって治療を行っても、その治療の効果がそれ以上認められないと いう患者さんを選んで治療いたします。  4番目の項目でございますが、この遺伝子治療はp53遺伝子が異常であるということが 前提でございますので、あらかじめp53遺伝子の異常の有無を確認いたします。異常があ る方を選んで治療しようというふうに計画しております。  このようにいろいろな臨床試験としての条件があるわけですが、それを客観的に判定 していただくために、139ページをごらんください。一応学内の審査委員会の下に安全・ 効果評価・適応判定部会というものを置きまして、客観的な委員でその判断を最終的に していただくという仕組みにいたしております。  また138ページに戻っていただきます。これは臨床試験ということでございますので、 臨床試験の目的は、何といってもこの治療法の安全性を確認するということであります。 そういうことで、現在ウイルス濃縮の最大限度量を最大投与量と想定いたしまして、そ の最大投与量の、今回の計画では100分の1のレベルからスタートいたします。このウイ ルスのベクター単独投与分と、いわば遺伝子治療と併用して抗がん剤を用いる第2群、 この2つの群でレベル1、そして10倍量のレベル2、更に10倍量のレベル3と次第に ドースアップして、副作用がない限り投与量の増大を図りながら安全性を確認いたしま して、予定どおりいけば全部で24人の方にこの治療を施す予定でございます。  インフォームド・コンセントの書類では、この後患者さんに安全性、副作用等につい て御説明するようになっておるわけですが、今回は手元の資料82ページ、米国でのアデ ノウィルスベクターp53及びシスプラチンを用いた非小細胞肺癌の遺伝子治療の臨床デー タということで、ここの表にありますものは、97年12月までのアメリカで先行しており ます本臨床試験と全く同じ計画途中の結果でございます。この表には副作用を一まとめ にしておりまして、昨年の12月の段階で34例の副作用の報告をいただいております。こ の表の向かって左側はウイルスベクターの副作用でございます。向かって右側は、一部 の患者さんに抗がん剤を用いておりますので、その抗がん剤の副作用をまとめてありま す。  向かって右側のウイルスベクターの副作用は、上段はベクターそのものの副作用、下 段はベクターを注射するときに注射する行為に伴って生じたと思われる有害事象でござ います。ベクターに直接関連したものとしては、まず8割型の患者さんが発熱を訴えて おられます。あと1例とか2例の数ですが、血痰、肺炎という症状が認められております。 注射に伴う有害事象としては、約6割ぐらいの方に何らかの痛みがあるということでござ います。  向かって右側は抗がん剤、シスプラチンの副作用ですが、これも大体予測どおり吐き 気、食欲不振、嘔吐などの消化器症状を中心に約5割の方がそういう症状を訴えておら れます。この段階のまとめとしては、強い副作用は余り多くは認められなかったという ように考えられます。  1ページ飛ばしまして84ページごらんください。2つの表がありますが、どちらもこ の治療の効果をまとめたものですが、表2の方が一番最新のデータでありまして、本年 の5月米国遺伝子治療学会で発表されたものです。ほぼこの結果は予定したウイルス投 与量の最高投与量まで達しておりまして、全部で48例の患者さんに対して臨床試験が行 われました。低い投与量から一番高い投与量まで全部まとめて示しているわけですが、 腫瘍が完全に消えた症例は一例もございませんでしたが、腫瘍が50%以上縮小して、そ れが1か月以上の長きにわたって維持されたという患者さんが4例認められます。それ から、この治療期間中、腫瘍がそれ以上大きくならなかったという、ステーブル・ディ ジーズと申しますが、そういう患者さんが33例認められ、約7割の方がステーブル・デ ィジーズ、安定な状態を維持できたという報告でございます。  一応以上の計画と、先行するアメリカでの臨床試験の状況を報告させていただきまし た。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。また後でいろいろ御質問があると思いますので、そ のときにまとめて御質問、御意見をお伺いしたいと思います。  ただ1つ、アームIとアームIIというのは、アームIがベクターだけ、アームIIがシス プラチンを加えたものですね。 ○田中総括責任者  そうです。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。次に、先ほども御紹介申し上げましたように、この岡 山大学のがん遺伝子治療臨床研究につきましては作業委員会がつくられていました。そ の委員長の寺田委員から御報告をお願いします。 ○寺田委員  それでは、がん遺伝子治療臨床研究作業委員会での論点整理の状況について報告いた します。  先ほど事務局より本臨床研究実施計画についての申請及び審議経緯の説明がありまし たが、最終的な論点整理の状況は、お手元にあります資料2の5ページ、4の項目のと ころに記載しておりますので、この点を事務局より代読していただきます。 ○事務局  それでは、事務局の方で代読させていただきます。お手元の資料5ページ目からでご ざいます。 (4「作業部会及び作業委員会における論点整理の状況」代読) ○高久部会長  どうもありがとうございました。寺田委員何か追加されることありますか。 ○寺田委員  ありません。 ○高久部会長  今、委員長並びに事務局の方から、岡山大学から出ております遺伝子治療臨床研究実 施計画の説明があったわけでありますが、作業委員会としては、科学的な観点からは臨 床研究の実施計画は妥当であると判断されたと理解しています。この部会では、科学的 な問題も御議論願いたいと思いますが、主として社会的、倫理的な面からの御議論をガ イドラインなどを御参考にしながら御審議いただきたいと思います。どうぞ御自由に御 発言願いたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○木村委員  このままの文章ですと、やはりバイオエシックスの観点から見ていろいろ問題が多い ので、私は申請書の文章の一部内容、表現の変更を条件として恐らく賛成することにな るかと思うのですが、それらのことについていろいろ質問したいと思うのです。  1つは、一番最初に御説明いただきました説明と同意の文書というところがございま すけれども、そこのところでお伺いさせていただきたいと思っているのは、資料1の145 ページなのですが、これをおつくりになった本人は非常に考えてつくったと思うので基 本的にはいいのですが、よく読んでみますと重要な問題点があることが明らかになると 思うのです。  それは、上から3行目「他の治療の有無・内容、及び中止の申し出ができる」となっ ているのです。「中止の申し出ができる」というのは、具体的にはどういうつもりでお 書きになったのですか。 ○田中総括責任者  実際に患者さんが治療に対して疑念を抱いてやめたいというお話がある場合を想定し て書いたわけでございます。 ○高久部会長  ですから、「この遺伝子治療の治療の中止」ということですね。 ○木村委員  これは読み方によりますと、中止の申し出ができるのだけれども、いろいろなことを 勘案して中止をしない。つまり申し出はできる、だけれども中止をしないこともあり得 るというふうに読めますよね。これは非常にあいまいな表現なのです。ですから文書に 中止するとは書いていないではないですかということになりかねません。確かに申し出 はできるけれども、今、研究のちょうど中心的で非常に大事なところですから、続行す るというお墨付きを与える文書になりかねない表現なのです。ですからこれは、「本臨 床試験の途中であっても、申し出により続行の中止ができる」とはっきり明記しないと 「申し出ができる」だけでは困るのです。 ○高久部会長  「続行」まで入れなくても「中止ができる」でいいのではないですか。 ○木村委員  そうですね。倫理的には「中止ができる」ということを明記していただければいいと 思うのです。  次の点はインフォームド・コンセントを考える場合に大変大事なことになってくるわ けですが、一番上のところに「がんの遺伝子治療に参加をご希望の患者さんへの説明と 同意書」と書いてありまして、その下に「同意」と書いてあるわけです。これと対にな っているのが133ページをごらんいただきますと、「がんの遺伝子治療に参加をご希望の 患者さんへの説明と同意書」で、その下が「説明」となっていまして、こちらが「説 明」で、145ページが「同意」になっているのです。私の印象ですと、これは本当はイン フォームド・コンセントという言葉なのですが、日本語が非常にあいまいなので、患者 さんへの説明と患者さんによる同意とは文章としては違うのです。ですから2番目の方 は「患者さんによる同意書」というふうに直しませんと、「患者さんへの説明と同意 書」というふうに読まれてしまうので、これはそう直すべきではないかというふうに思 うのです。  したがいまして、本来的には、私がここで考えておりましたことを御参考までに申し ますと、 「中止ができることなども併せて理解し、納得しましたので、私自身の自由な意思によ り、遺伝子治療に参加することに同意いたします」というふうに、「私自身の自由な意 思により」というのは、説明の中に入ってきていますけれども、改めてここで御確認と いうことで、その文章をむしろ入れた方がいいのではないかというふうに思いました。 この点についていかがでしょうか。 ○田中総括責任者  これは私ども不十分でございました。仰せのとおりでございます。ありがとうござい ました。 ○木村委員  念のためお伺いさせていただきたいのですが、125ページを拝見させていただきますと 岡山大学医学部としては、平成8年2月〜10月にわたりまして6回にわたる審議会を開い て、倫理委員会の中で審議していただいて、その中で説明と同意書についていろいろな 報道機関などに公開したり、コメントを求めたりしているのです。125ページの9月11日 の真ん中辺のところでございますけれども、その意見を聴取した結果、5社から意見書 の提出があった。これらを参考として文面を修正したというのですが、記録がございま せんでしょうか。5社から意見書の提出というのは、どういう意見書だったか御記憶が、 あるいは資料がございますか。 ○田中総括責任者  その資料は残しておると思うのですが。 ○木村委員  こうこうこういう内容の意見書があったということが、もしここに資料としてござい ますと、はっきりするのではないかと思います。 ○田中総括責任者  一番多かった御意見は、そのときは図を入れていなかったのです。ですから、これだ けでは分かりにくいという御意見が多かったものですから、いろいろ工夫してこの図を 入れさせていただきました。  それから、また別な会議で、遺伝子治療を考える市民会議というものがありまして、 そこでの御意見では、もう少し治療の選択肢のことについて書くようにというような御 要望もございまして、それも加えるようにいたしました。 ○木村委員  関連して聞きますが、同意書の場合はほかの大学でもそういうケースがないわけでは ないのですが、例えば立会人などというのは話には出てきているのですか。それともそ れは一切出てこなかったのですか。患者と代諾者の名前がここに挙がっていますが、例 えば看護婦とか事務当局の方が立ち会いして、確かにそれを確認するというようなこと は一切話題にはなかったわけですか。 ○田中総括責任者  代諾者というのですか、本人がまだ未成年であるとか、意思の表現が十分でないとか いう方に対しては代諾者という項目を加えたのですが、木村委員の御指摘の立会人とい うことは考えておりませんでした。 ○木村委員  諸外国のケースでは、これは場合によってですけれども、患者さんの側で本当に理解 し、納得しないままにサインするということもまま起こり得ることなのです。したがっ て、立会人が確かに担当者が詳しく説明したのを私は耳で聞いていたということを立会 人として証明することが極めて重要になるケースもあることがあり得ますものですから 立会人を置いているところもあるのですが。 ○田中総括責任者  御指摘のとおりでございます。先に審査を受けられました東大の資料では立会人とい う項目がございまして、やはりそれが必要なのだなと思っておりました。御指摘にでき れば従いたいと思います。 ○木村委員  これは私の見解ですので、他の委員の先生方のお話をお伺いできればと思います。  更に、27ページなのですが、添付資料2というものがございまして、これは私どもバ イオエシックスの専門の立場からしますと大変に関心のあることになるわけなのですが 添付資料2−2のテキサス大学のアンダーソン癌センターのインフォームド・コンセント 本文と2−2の和訳というものに*が付いていまして、「*を付けた資料に関しては添付 を省略する」となっているのですが、省略するというのがかなりあるのです。省略の理 由は何だったのでしょうか。これは単に多いということで省略ですか。それとも、何か 理由が特別あって省略したのかというふうに言われる可能性があるものですから、その 理由を明記して、なぜ省略したのかということをお伺いできればというふうに思います。 ○田中総括責任者  これは特別な理由はなかったのですが、全体として資料の量が多いというぐらいの判 断で省略したのだと思います。 ○木村委員  ということは、厚生省の方に提出してあるわけですね。委員会の配布資料の中に省略 されているわけなのですか。 ○田中総括責任者  最初はむろんこの資料を付けて提出しておりました。ですから、今回の時点で省略に させていただきました。 ○木村委員  最後にもう一つだけ御参考までに印象を申し上げて、これでこの項目については終わ るのですが、一番最初のところに要旨をいろいろ書いてあるのです。大変に簡明にお書 きいただきまして、18〜23ページまでコラムに入っていろいろ研究の目的とか、対象疾 患とかいろいろ書いてございますね。これは一般の方々は恐らくここだけぱっと見ると 思うのです。そして後の方は詳しくお知りになりたい方が見る、大変大事なまとめにな ると思うのです。  大事なまとめの中で、恐らく他の申請についてもそういう可能性があると思うのです けれども、例えば22ページ「実施計画」の中に、被験者あるいは患者を中に組み込んだ 形で、「また、被験者は本臨床研究について文書に基づいて説明を受け」云々というふ うにして、3行ばかり被験者のことが書いてあるのですが、本来的にはこれは別立ての コラムの中に同意のことについて書いた方がいいのではないかと考えているわけでして ここのところはしかも割合に簡略な形の文章になっているものですから、本文にせっか くいろいろ書いてあるので、一般の方々がこの要約を読む場合も分かりますように、も う少し親切にこの文章を書いて、枠を別組みにして独立させた方がいいのではないかと 思います。  例えば、「また」から3行終わった「被験者の病歴」というところまでがインフォー ムド・コンセントのことが書いてあるのです。したがって、「被験者は、本臨床研究に ついて文書に基づいて説明を受け、その内容と期待される治療効果及び危険性を理解し た上で、同意書に署名した者とする」という3行、これがやや簡略的な書き方になって いるので、せっかく中の方できちんと書いてあるので、ここのところは要約という形に 恐らくはなるのかと思いますが、例えば、「その治療効果及び危険性の内容を十分に理 解した上で、自主的に同意書に署名した者とする」とか、そういうことをきちんと中と 整合性をもって文章をはっきりさせて、コラムとして外に出した方がいいのではないか。 あるいは備考のところに入れるなり何なりして、その中に本臨床研究をめぐっては、審 議会で何月何日〜何月何日まで何回やったということも恐らくは含めるようなコラムを つくった方が、一般の方々が見たときに、これですと全体の遺伝子治療の中で被験者と しての患者が部分的にその中に出てくるという感じになってしまっているのです。中を 読まない人にとっては、この文章ですと非常にこれでいいのかしらということになる可 能性があるかと思いますので、そのことにつきまして、後の方の文章に合った形できち んとその内容を入れて、特に、先ほど申し上げました一番最後のところ、「なお、被験 者の申し出により研究プロジェクトに参加の中止または辞退ができる」といような文章 もここに入れて、きちんと表現をした方がいいのではないかというのが私の見解で、そ れらのことを踏まえまして、この文章を一部書き換えるという条件でしたら、これを通 過するということについて私自身は個人的にはいいのではないかというふうに思ってお りますが、ほかの先生方の御意見もまたあるかと思いますけれども、よろしくお願いし ます。 ○高久部会長  最初に御意見のあった、いわゆる説明と同意書に2つの項目があって、説明と同意に なっていますね。説明と同意というのは別々にしないで同じところに入れろという意見 が強かった。要するに、同意というのは説明と同じところにアタッチしなければならな い。そうしますと、むしろ項目は「がん遺伝子治療に参加を御希望の患者さんへの説明 と同意書」というタイトルで、説明の部分と同意の部分を置いた方がいいのではないか。 だから2番目のタイトルを外せば話は簡単ですね。 ○木村委員  その方がいいと思います。 ○高久部会長  薬のときも同意だけを別個にするのはよくないという議論が前からありまして、どう せ一緒にアタッチしなければならないと思いますので。  それから、立会人というのも患者さんの御希望だろうとは思うのですが、現在、輸血 から全部同意を取っていますので、全部立会人を置いたら大変な騒ぎになりますので、 これはどういう場合に立会人を置くか。代諾は当然必要だと思うのですが、立会人をど ういうケースに置いて、どういうケースに置かないかというのは判断が難しい場合があ るのではないか。 ○木村委員  結局非常に先端的な遺伝子治療の文書をつくるときの立会人という意味で、輸血その 他に一々全部立ち会いという意味ではないのです。 ○加藤委員  京都大学では生体肝移植の提供者に対してはインフォームド・コンセントのリコンフ ァメーションをやっています。それは担当医でない人が患者さんに会って、インフォー ムド・コンセントの内容を理解しているかどうかテストすると言うと失礼ですけれども こういうことがお分かりでしょうねと確認して、それでも結構ですかというリコンファ メーションをやっています。これは生体肝移植の提供者の場合で、すべての場合にリコ ンファメーションが必要であるとは私は判断しておりませんけれども、その場合にはそ ういうふうにやっています。 ○高久部会長  非血縁者間は骨髄移植の場合、提供者の同意の際弁護士の方が立ち会いをするのが ルールにしています。ですから今の肝臓移植とか骨髄移植のように健康な方が提供して しかも場合によっては何らかの障害がある場合には、当然しかるべき立会人が必要だと 思うのですが、患者さん御本人の場合に立会人を置く必要があるかどうかという問題が あるのではないかと思います。 ○松田委員  熊本大学でのHIVのときの審議に、立会人と呼ぶかどうか分かりませんけれども、患者 さんが十分に理解できていないのではないかということがあり得ると。その場合には、 やはりしかるべき人を中に入れて、理解しているかどうかを確かめるという意味でそう いう人を設けようという、場合によっては設けた方がいいという意見もあって、そこは たしか文書にしてあったと思います。そういった意味で木村委員がおっしゃっているな らばある程度いいことかもしれませんけれども、ただ、状況を決めるのは文章上かなり 難しいですね。そういう感じで聞きました。 ○曽野委員  私はこの中で素人の珍しい立場をとれる人間なので、その立場で申し上げたいのです が、患者が一番考えるのは治りたいということです。しかも、ここにいらっしゃる方々 は今、頭脳明晰、健康状況の中でこの文章をお考えになるのですけれども、私昨日から 風邪を引いておりまして、それだけでこの文章を読むと絶望的になって、もう面倒くさ いから理解するのを止めようやという気になります。  例えば、患者の夫なり、妻なり、息子なり、母親なりが決めるという前提であれば私 結構だと思いますけれども、私が患者になりましたときに、この文章が理解できるとは 到底思えません。この文章に耐えられるかどうかわかりません。素人の心配はやはり治 って、希望を持って帰れるのかどうか。注射されたらどの程度痛いのか、何分ぐらいそ ういうことに耐えたらいいのかということです。その部分の御説明はないのです。何分 ぐらいどういう注射をされて、どういうことをして、その後軽い人はどれぐらい、重い 人はどのぐらい苦しむのですかというふうなことを御説明いただきたいと思います。そ ういう問題については、こういう心弱い患者に対する場合どうお考えになっていらっし ゃいますでしょうか。 ○松田委員  やはりある程度立会人というか、理解できる人が要るのかもしれませんね。確かにそ の状況に追い込まれたら、説明されても、私たちがディスカッションやるときは、カッ となってしまって分からないというときには、やはりだれかがそばにいてくれた方がい いという意味でそういうことを考えたのですけれども。 ○高久部会長  私の個人的な意見ですが、患者さんがこの説明を一人で聞くということは余りないと 思います。恐らく配偶者、あるいは家族の誰かが一緒に説明を受けないと、曽野委員が おっしゃったように、肺がんの患者さんで、しかもいろいろな治療が効かなくなった人 が一人で聞くということは現実には余り行われないのではないかと思います。他の手術 の説明などのときも大抵家族の方が一緒に聞かれていますし、最終的には本人のサイン が必要だと思いますが、説明の段階では、現場ではそういうことになっていると思いま す。 ○加藤委員  治療計画書と同意書等で内容にずれがないかどうかということが心配なのですが、計 画書だとベクターを使って遺伝子治療をするということと、それから抗がん剤を使うと いう2つのことがあって、その相乗効果についてもチェックするという趣旨になってい ると思うのです。しかし、同意書を見ると、文面では確かに抗がん剤の利用が書いてあ りますけれども、相乗効果についてチェックするということについて、同意書ではほと んど触れていないのではないかと思うのです。ですから、治療内容と同意書の内容とに ずれがあるのではないかという心配をするのですが、どうでしょうか。 ○田中総括責任者  確かに御指摘のことは私も何回も読み直しまして、そのことについては少し気にいた しております。加藤委員の御指摘の点ですが、計画書に書いてある内容のことを同意書 にももう少し触れるべきだというふうに思っております。 ○加藤委員  発言を足していいですか。つまり、既にこの患者さんたちは抗がん剤の治療を受けて おられるということで、抗がん剤との相乗効果について同意書で省略しているかもしれ ないのですが、しかし、これはあくまでも遺伝子治療と抗がん剤との相乗効果が問題に なる事例ですので、それについてインフォームド・コンセントの文面にきちんと盛り込 むべきではないかと思いますけれども。 ○田中総括責任者  加藤委員の御指摘のようにもう少し表現を、そこをきちっと表現したいと思います。 9ページのところで、「予測される副作用がありますが、予想されない問題が起こるか もしれません」というような表現でそこを書いたつもりでおりますが、もう少しそこを 計画に即した形で書き表したいと思います。 ○高久部会長  臨床試験の進め方とか、そういうところでその点をはっきり書いた方がいいかもしれ ません。私も木村委員が御指摘のように22〜23ページのサマリー、せっかく備考の欄が ありますので、備考というのではなくて説明と同意というような形で入れたらいいと思 います。自発的な意思というのは結構なのですが、実は145ページのときには、木村委員 はおっしゃらなくて22ページでおっしゃったのですが、「十分に理解し」という「十分 に」という表現を入れる必要があるかどうか。「十分に理解」というのは非常に難しい 表現でどうなのでしょうか。上の段に「十分に説明を受けました」というのはあります ね。「十分に理解し納得しました」というのは、大した意味がないといえばないのです が、ある意味では非常に難しい表現ではないか。木村委員どうですか、そこのところは 日本語の難しいところかもしれませんけれども、「十分」というのはどういうことなの だという。 ○木村委員  ここは非常に難しいところですけれども、曽野委員がおっしゃられたように、やはり そこまで分からなかったという方も結構いると思うのです。あのとき先生がいろいろ説 明してくださったので、十分には理解しなかったけれどもサインしたという方が絶対出 てくるのです。 ○高久部会長  恐らく100%理解する人はいないのではないかと思います。変な話ですが、ほとんどの 方は大体理解したつもりでも、それは……。 ○加藤委員  高久部会長は分かっているのですか。 ○高久部会長  私は自分でも100%は理解しにくいのではないかと。 ○木村委員  ですから、これは前の方は詳しく説明を受けたということです。十分に説明されると いうことですから。 ○加藤委員  医療の因果関係や経過について患者さんが本当に十分に理解するということは実際あ り得ないことだと思うのです。ただ、インフォームド・コンセントの場合に必要なのは 曽野委員がおっしゃったように、患者がどういう苦痛を感じるのか、どういう負担を経 験するのか、どういうリスクを負うのかという患者が受けるであろう負担について十分 に理解している必要があるので、その点については単に注射をするのではなくて、激痛 を伴う注射なのか、普通の意味での注射なのかということもきちんと理解してもらう必 要があると思います。ですから、本来の意味での十分な理解というのは、患者の受ける 総合的な意味での負担についての十分な理解だというふうに考えたらいいのではないか と思うのです。 ○山崎委員  田中先生が来ておられるので直接お聞きしたいのですが、中央評価会議で議論したか どうか、去年のことですので忘れたのですが、140ページの「安全性と副作用について」 のところのアデノウイルス5型についての説明の3行の文章なのですけれども、「ベク ターの副作用について」というところがございますね。『アデノウイルスは、ふつうの 「かぜ」症状を起こすウイルスなので』という説明がございます。これはアメリカでこ ういう説明をしているのか、それとも田中先生たちの委員会でこういう説明を考えられ たのか、ここをお聞きしたい。  というのは、御存じだと思いますけれども、5型というのは日本では非常にポピュ ラーなアデノウイルスで、1型〜5型というのは最も高頻度に分離される普通に存在する ものですが、しかしそれはライノのような単なる鼻かぜではなくて、どちらかというと 上気道炎、下気道炎、胃腸炎などを起こす病原体なのです。広い意味では風邪と一般に 言いますけれども。ですから、『ふつうの「かぜ」症状』というと、もしもウイルスが 増えても大丈夫だということの説明としては少し問題があるのではないかと思うのです 今ごろ気が付いて申し訳ないのですが。  ですから、ここで言わなければいけないのは、「たとえ増殖可能な野生型のアデノウ イルスが存在しても」という、これがいけない、そういうものは絶対出ないということ でやっているのですよということを患者さんに説明するのはいいのです。はっきり言え ば、増殖型のウイルスが出たらこれは中止しなければいけないということなのです。で すから、たとえ増えることがあっても、重篤な副作用には結びつかないと考えています という根拠が余りないと思うのです。特に自然感染においては、今、言ったような割に 軽い症状かもしれませんけれども、この場合は肺に直接接種したり、気管支の中に入れ たりするわけです。そこで野生型が増えたらどうなるか。こういう実験はヒトではやら れたことはない。だからはっきり言えば全く分からないですね。そういう意味で、ここ の3行の書き方はもう少し真実に近い書き方の方がよかったのではないかなと。これは 本当は評価会議でやらなければいけなかった議論かもしれませんが、今になって、この ままほうっておいていいのかなと少し不安に思います。 ○加藤委員  今の山崎委員の発言重要だと思います。つまり、リスクについての過小表現は許され ないと思うのです。 ○高久部会長  山崎委員、今までもアメリカでは随分やっているのではないですか。 ○山崎委員  だから、アメリカにはこう書いてあるのかどうかが知りたいのです。 ○高久部会長  今までもシスティック・ファィブローシスなどで使われていますので、ヒトに対して 最初に行うトライアルではないと思います。 ○山崎委員  でもそれは増えないからではないですか。万が一増えたら問題になるかもしれない。 アメリカでは増えていないのですよね。野生型は増えてこない。 ○高久部会長  ただ、RCAを100%否定できないでしょう。感度の問題などで。ですから、野生型が絶 対にないとは言えないのではないかと思います。 ○山崎委員  それは科学的には同感なのですが、それならば、たとえ野生型のアデノウイルスの増 殖型が出たとしても重篤な副作用に結びつかないとは言えない。そこが問題なのです。 ですからはっきり言うと、これは非増殖型のアデノウイルスを10の11乗まで接種して も、熱しか出ていないですね。しかし、かなり高い熱ですけれどもね。そういうこと で、かなり増えても大丈夫なのだろうと私は思いますけれども、しかし、ヒトでのそう いう実験例はないのです。この表現が余り正確ではないような気がしてくるのです。む しろ「増殖可能な野生型のアデノウイルスが存在しても」という説明は要らないのでは ないかなと。増えないようにつくってあるのだということで、増えた場合は勿論中止で すよね。少なくとももっと言わなければいけないのは、アメリカではいつでもそういう RCAが出てきて、障害が起こったということはありませんでしたということの事実、そ のことを述べるべきだと思うのです。それで今改めてこの3行の表現がどうかなと反省 しているのですけれども。 ○高久部会長  寺田委員いかがですか。 ○寺田委員  確かに10の11乗ではテストしていないものですから、RCAが出る可能性はそう言われる となきにしもあらずです。それを正直にここに書いてもいいと思うのです。『ふつうの 「かぜ」症状を起こす』というよりも、アデノウイルスは普通の上気道感染、下気道、 胃腸炎を起こすウイルスです。万が一増殖する証拠が出た場合に、直ちに研究を中止い たします。それを書いておけばいいのではないでしょうか。多分ほかで増殖しましても p53ですから、いいものが中に入っているわけですから、ほかの人にたとえ万万が一それ で感染しても大丈夫だと思います。それから加藤委員が何かの場合にはオーバーにきち っとやっておかないといけないと言われるのはもっともなので、それは書いても構わな いと思います。少し言葉が固くなって読みにくいですが、そこは入れてもいいのではな いかと思います。 ○高久部会長  下の方に1993年からNIHを中心に云々ということで、今回のアデノウイルスベクターが 使用されていますが、増殖性ウイルスの発生による副作用はこれまでのところ報告され ていませんという表現はあります。それからもう一つ、上気道炎と気管支炎と胃腸症状 というのを併せて風邪様症候群と言わないのですか。 ○山崎委員  風邪という定義は非常に難しいところですけれども、鼻風邪から胃腸炎まで全部含み ますから。 ○高久部会長  ですから、「かぜ」症状という中に含まれないのですか。 ○松田委員  非常に単純な言葉で全身で風邪を引くというふうに私は学生に教えますけれども、つ まり、喉だけではないと、体全体だということですね。したがって、勿論書いた方がい いという意見もあればそうかもしれませんけれども、高久部会長のおっしゃるように 「かぜ」症状という言葉で表せば、当然インフルエンザの場合でも症状出てきますから つまり、ウイルス感染ですから一言で言えば全身感染なのですよね。それが理解しても らえれば、そこまで一々言わなくてもいいように思いますけれども。 ○高久部会長  ですから、御意見がありましたように、「たとえ増殖可能な野生型アデノウイルスが 存在しても」という表現は要らないのではないかと思います。かえって難しくなると思 いますので、そこのところは少し直してください。 ○廣井委員  患者さんへの説明の文書なのですけれども、140ページの「期待される治療効果につい て」というところに、最後の方に「外国での状況」と出ているからいいのですけれども これを見ていると、かなり期待される治療だなと思われますが、例えば、先ほどの84 ページのところに出ていますように、アームI、アームIIについても、CR、PRが非常に少 ないというようなところをもう少しどこかに触れておかなくてはいけないのではないか と思います。期待される治療効果は余り期待されないのではないかと感じます。 ○高久部会長  84ページの表が141ページに文章として表れているのではないかなと思ったのですが、 そうですね。 ○田中総括責任者  さようでございます。 ○高久部会長  非常にシビアなことを言うと、アメリカの今までのデータですと、確かにそれほどエ ンカレッジング(助長されている状態)ではないと思います。表で出ますよりは、この 文章の方が少しいいのかなと。 ○田中総括責任者  アメリカの成績は、フェーズIスタディーということで、低いドース(用量)から高い ドースまで一応計画どおり、副作用を確かめるということに慎重にドース・アップして います。ですから、適当な治療効果を一番期待できそうな投与量で臨床試験をしている わけではございませんので、このデータでそのまま効果を期待するとかしないとかとい うのはちょっと難しいと思うのです。今回安全性が確認されれば、次のステップとして は、そういうふうなことを本当に確かめる臨床試験に進めると思うのですが。 ○木村委員  もし今、田中先生が言われたことがそのとおりだとしますと、一番最初のところにあ る内容が変わってこざるを得ないのです。14ページと22ページのところにあるのですけ れども、14ページの「実施計画」の上のところの下から4行目、「有効性が期待される 新しい治療を試みることは、患者に対して適切に説明と同意が行われている限り倫理的 にも許容されると考えられる」と。あたかも有効性が期待される新しい治療であるかの ような表現ですよね。22ページもそうです。「有効性が期待される可能性のある新しい 治療」ではないのですか。 ○高久部会長  これはある程度はPRが出ていますから、この表現でいいのではないかと思うのですけ れども。「期待」ですからね。 ○木村委員  今の先生の御説明とこれは矛盾しなければそれでいいですけれども、それでいいので すか。 ○高久部会長  田中先生がおっしゃったように、最初のころは非常にロー・ドーシスでやっています から、恐らくハイ・ドーシスにした場合にはこれよりはいいデータが出てくるのではな いかと思っています。ですから期待はできる。約束はできないですが。 ○木村委員  「有効性が期待される可能性を持っている新しい治療法」です。 ○松田委員  基本的な話、多分もうディスカッションが終わっていると思うのですけれども、確認 なのですが、これは局所に注射するのですよね。その場合に、しかし発熱がありますか ら、全身にウイルスが行っている可能性もなきしにもあらず。その場合に、1つ気にな るのは、当然抗体ができますよね。実は私たちは前に同じアデノウイルスを使って動物 の遺伝子治療をやったのですけれども、2回目から効かなくなるのです。つまり抗体が あるから。だから、その辺のところのリピートしてやるということに関しての今までの データはどうなっているのですか。 ○田中総括責任者  その辺に関しては、データはもう出てきております。それでハイ・ドーシスにすると 非常に抗体価が高くなるので、そういう点非常に心配されたのですが、その患者さんか らの組織を取って調べてみますと、やはりそういう状況でもあるにもかかわらずベク ターは細胞に感染しておりまして、そしてp53の発現が認められるということも出てきて おります。 ○松田委員  ということは、局所投与だからうまくいくというふうに考えていいのですか。 ○田中総括責任者  1つは、そういうふうに考えたのですが、もっとほかに考える要素があるのかもしれ ません。 ○松田委員  分かりました。 ○柴田委員  参考までにお聞きしたいのですけれども、岡山大学でこの問題を審査したのは、遺伝 子治療の特別審査会をつくったわけですね。このためにつくって審査されたと思うので すが、岡山大学の医学部自身にも、これだけではなくていろいろな先端的な医療につい て審査する倫理委員会が従来からありますよね。その倫理委員会と、このための審査会 との関係といいましょうか、あるいはメンバーがどのぐらい重複しているとか、そうい うようなことを少しお聞きしたいのですけれども。 ○田中総括責任者  これは初めての試みということで、従来の倫理委員に加えてもう少し専門の委員を加 えて審査するという形で、かなり多くの人数の先生方にお願いして審査していただいて おります。社会的な問題、倫理的な問題に関する先生方は本来の倫理委員の先生と兼任 された形をとっております。それから、学外者も入ってきて審査する。特に、肺がんに 関しては専門的に検討する先生には学外者の先生にもお願いしております。 ○柴田委員  そうすると、いわゆる倫理委員会に更に専門家を加えて拡大したというような形だと いうふうに理解してよろしいですか。 ○田中総括責任者  さようでございます。 ○柴田委員  それでは結構です。 ○高久部会長  たしか遺伝子治療のガイドラインで従来の倫理委員会に必要に応じて新らしい委員を 加えると。又必ず第三者を入れるという条項が入っていたと思います。 ○入村委員  これは現在もMDアンダーソンの方でより進んだステージのトライアルが行われている ということだと思うのですが、そういうものの結果が今後出てくると、先ほどの可能性 が非常に高い、いいものなのか、あるいは結果としてそれほど可能性はないのかとか、 いろいろなことが出てきてしまう可能性があるわけですね。そういうときに、これをど のように反映させていくのかということに関してはどういうお考えでしょうか。 ○田中総括責任者  最初にこの計画を私たちMDアンダーソンのロス先生等から相談を受けたときには、向 こうはまだスタートの前でございまして、この計画が学内の審査委員会の承認を一応を 得たときは、もう既に向こうがスタートして、その時点でまだ10人いかなかったと思う のですが、そういう形で、本来は共同でやろうという計画でしたが、私たちの方が随分 遅れをとってきたというのが現状です。  しかし、向こうが今48人ですから、私たちが少しドースを上げて後半のドースから臨 床試験をスタートしていますので、私たちのデータが更に加わってまいれば、あるいは また、ほかの施設も参加されるようであれば、一番患者さんに期待される効果について もアメリカのデータを加えてもう少しはっきりしたことが出てくると思います。  アメリカでは、頭頸部腫瘍に関してはフェーズIIと言いまして、次のステップまで臨 床試験が進んでおりまして、そちらの方はアクセスしやすいということで、肺がんより ももっと効果が期待できるふうに話を聞いておりますが。 ○入村委員  そういう場合に、先ほどから議論になっている、患者さんにどう話すかというときに ニュアンスが変わってくる可能性があるような気がするのです。その辺は今こうつくっ たものというのと、だんだん進んでいったときに状況が変わってくる可能性がある非常 に新しいもの、その辺は現時点でどういうふうに考えたらいいのかというのが、最良の 結果を出すにはどうしたらいいのかというのが少し気になるところなのですけれども。 ○田中総括責任者  もともとこれは臨床試験ですから、危険性と効果とを確認するということで、それを 最初の共同研究ということですから、アメリカと私たちで折半して進めましょうという ことだったので、私たちがやや遅れをとっているということで、そういうふうな意味で 倫理的な問題を私たちは感じざるを得ない状況もあるわけでございます。 ○金城委員  日本で非常にとは言えないのかもしれませんけれども、やはり倫理的な問題をお感じ になるとおっしゃるほど遅れている。それはどうして、主とした原因は何だとお思いで すか。 ○田中総括責任者  それは逆に私ができればお聞きして、お教え願いたいと思ってまいったぐらいでござ います。 ○高久部会長  実際にはアメリカの場合にはこういう審査はほとんどなくなり、FDAのベクターに対す る審査だけどんどん進めています。当初に比べて非常にスピードアップしています。 我々もやはりスピードアップする必要があるのではないか。期待している患者さんがい らっしゃいますし、国際的なハーモナイゼーションということも考える必要がある。こ の治療にはまだ我が国で第4番目ですから仕方がないのですが、今後は遺伝子治療の事 前評価を作業委員会の分を含めてもう少しスピードアップしないと国際的に対応できな いというのが私の正直な感想です。 ○寺田委員  作業委員会をやっておりましても、皆さんの御意見も、こう言われると田中先生は心 外なと思われるかもしれませんけれども、物すごくスピードアップをしないといけない なという感じは皆持っています。ただ、日本では日本オリジナルのところで遺伝子治療 をどういうふうにしてやっていくかで、アメリカで1980年代の中頃からフレンチ・アン ダーソン博士が苦労して7〜8年かかってやっと最初の遺伝子治療をやりはじめた。そ れをぐっと短縮して今やろうとしているところですから、少々慎重しすぎると皆さん言 っているのですけれども、せっかく将来非常にいい治療法の1つになるかもわからない のに、ここではしょって、国民にそっぽ向かれたり、間違ったことをしたらいけない、 だから申し訳ないけれど少し慎重にやっているわけです。だんだんスピードは先生方の 御努力で上がっていくと思います。大変細かいところまで100ほど指摘をして、全部直し てもらって、きちんとよく回答してくれましたというのが、正直な気持ちです。ステー ジ3のAとか4といいますと大変進行した患者さんでございますから、そういう患者さ んに何とかしてあげたいという気持ちとのジレンマで大変苦労はしたのですけれども、 先生、患者さんの方も含めましてもう少し御辛抱願いたいとお願いします。 ○高久部会長  他にどなたか。もし御意見がなければ、岡山大学医学部附属病院から出ています非小 細胞性肺がんに対する遺伝子治療臨床研究実施計画を、各委員の御意見がありました点 を十分に参照して、患者さんへの説明と同意書、更に計画のサマリーなどを訂正すると いう条件付で妥当と認めて、ベクターについての中央薬事審議会の審議状況を踏まえて 私から部会長として厚生科学審議会長に報告をしてよろしいでしょうか。 ○木村委員  結局今まで述べましたことに沿って内容を修正していただく条件でということです。 ですから、柴田委員も先ほど言われましたような、全体の倫理委員会と特別の遺伝子治 療の倫理委員会のこととか、あるいはインフォームド・コンセントのことというのは別 枠にして、それが前面に出るような形で書きませんと、これは非常に医学オリエンテッ ドの完全にプロトコルの審査の書類になっていますので、そういう点でパブリックな、 公共の検証を得て着実に、寺田委員が今、言われたような意味の、少し時間は掛かるか もしれないけれども着実にやるということを特に表明するためには、そういうインフ ォームド・コンセントを含めた特別の枠をつくると。枠組みをきっちりさせて倫理審査 委員会も、遺伝子治療審査委員会も、インフォームド・コンセントもきちっとやってい るということを一般にきちんと示していく必要があるというふうに思うわけです。これ はまたインターネットに流れるわけですので、そういう点からも大変重要な、今後我々 の研究を蓄積する上で重要なステップになると思うのです。 ○高久部会長  先ほども申し上げましたように、委員の方々からの御意見を参照にして、改めた上で という条件を付けさせていただきたいと思います。  それでは、そういうふうにさせていただきます。どうもありがとうございました。  続いて、事務局の方からその他の遺伝子治療臨床研究の実施計画についてお願いいた します。 ○事務局  1点でございますが、先ほどの中央薬事審議会の状況につきましては、私ども事務局 から中央薬事審議会の事務局の方に確認をとりまして、その審議状況を今後部会長に相 談させていただくことの取扱いにさせていただきたいと思います。  それでは、そのほかの遺伝子治療臨床研究の評価の状況でございますが、お手元の資 料3を用意させていただきました。作業が遅れていまして、事務局として恐縮でござい ますが、7月22日に行われました当部会におきまして、千葉大学医学部附属病院(食道 がん)及び癌研究会附属病院(乳がん)の遺伝子治療臨床研究実施計画につきまして作 業をする委員会を設けて、主として科学的論点から論点整理を行ってくださいという御 指示をいただきまして、また、同様の指針を持っております文部省の方とも相談いたし ましたところ、文部省の方でもワーキンググループを設けて行うという決定がなされま して、その後、事務局より厚生科学審議会の豊島会長、当部会の高久部会長、あるいは さきに作業委員会を行っていただきました寺田委員長と協議をいたしました。  次のページに作業委員会の案という形で出てございますが、実際のところ、既に今、 御審議いただきました岡山大学医学部附属病院、あるいは先に御審議いただきました東 京大学医科学研究所附属病院でのがんに関する遺伝子治療臨床研究作業委員会というも のがございましたので、そちらを母体といたしまして、新たに臨床の面で食道がんと乳 がんが出てきますので、下の方(新規)と書いてございます東海大学医学部教授の幕内 博康先生、大阪大学医学部教授の野口眞三郎先生を委員としてお加わりいただくととも に、その他施設に関係する委員に、この場合は出ていただくという形で委員構成を御指 示いただきましたので、別添のような9名の委員で、また、御多忙のところ恐縮でござ いますが、寺田委員の方に取りまとめを行っていただくという形での作業を進めてござ います。  また、これにつきましては、委員の発令の作業等がございますし、委員会の日程につ きましては、共同事務局を行っております文部省の方から日程調整をしておる状況でご ざいまして、まだ明確に何日ということは申し上げられませんが、10月中にも開かせて いただきたいと思います。また、その委員会では、本日いろいろ御指摘いただきました ので、その状況を踏まえて御検討いただくように事務局から御報告申し上げる予定とし てございます。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。寺田委員また御苦労様ですけれども、よろしくお願 いいたします。  続きまして、生殖医療技術に関係する議論の取りまとめに向けまして、この部会の下 に専門委員会を設けて審議をするということについて皆様方の御了解を得ておりますけ れども、その後の専門委員会の状況について、これは課長さんの方からお願いいたしま す。 ○高原厚生科学課長  本件につきましては、前回の御報告以降部会長と御相談させていただいておったとこ ろでございますが、この専門委員会の運営につきましては、前回御了承いただきました ヒト組織を用いた研究開発の在り方に関する専門委員会と同様、政策面で担当しており ます児童家庭局母子保健課において処理するということといたしたいと考えております。 母子保健課から内容につきまして、説明させたいと思います。 ○母子保健課  この専門委員会の事務局を務めさせていただくことになりました、児童家庭局母子保 健課の課長補佐の北島でございます。よろしくお願いいたします。資料5をごらんいた だきたいと思います。「厚生科学審議会先端医療技術評価部会専門委員会の設置につい て」でございます。1ページをお開きいただきたいと思います。  専門委員会の設置につきましては、当部会の専門委員を増員いたしまして、部会の下 に生殖補助医療技術に関する専門委員会と出生前診断に関する専門委員会の2つの専門 委員会を設置することといたしました。各専門委員会の委員の名簿案を次のページに付 けてございます。  (1)生殖補助医療技術に関する専門委員会のメンバーでございますけれども、法律、医 学、倫理等、各方面の先生方10名で構成させていただいておりまして、慶応義塾大学名 誉教授の中谷瑾子先生に座長をお願いしたいと考えております。  また(2)の出生前診断に関する専門委員会でございますが、こちらの方も看護学、医学 倫理学、遺伝学等々の各方面の専門家8名で構成させていただきたいと思っております。 この中で兵庫医科大学の教授で、先端医学研究所長の古山順一先生に座長をお願いした いと考えております。  1ページの方に戻っていただきたいと思います。両部会とも集中的な議論を行うため に一月半に1回程度の開催を予定したいと思っております。第1回目の開催は両委員会と も10月中旬ごろに予定しているところでございまして、現在事務的な作業を進めており ます。  1つ申し遅れましたが、2ページの一番下のところに、「武部啓教授は渡航中のため 承諾をいただいておりません」と記載しておりますけれども、間接的に御内諾はいただ いておりますが、渡航中ということで御帰国後、正式に御承諾いただく予定とさせてい ただいております。  以上でございます。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。この専門委員会はなかなか大変だと思いますが、と りまとめをよろしくお願いしたいと思っています。この部会の中からも松田委員、加藤 委員が専門委員会に入っておられます。よろしくお願いいたします。これについて何か 御質問おありでしょうか。 ○木村委員  人選といいますか、御専門の分野によってこれだけの先生方がおいでいただくことに なって大変にいいと思うのですが、生殖補助医療と出生前診断というのは女性の問題に 直接かかわる問題ですので、これはこれで決まったとして、できましたら、本来的には 今後厚生省のこういう委員会の場合には半数は女性にするというような原則をお考えい ただくような方向性を出していただければというようなことを、これを見てすぐに思っ たものですから一応発言させていただきました。 ○柴田委員  専門委員会をつくること自体に別に反対ではないのですけれども、前回のときも少し 議論になりましたように、この問題はこの部会で相当長く審議をしてきたテーマなので すから、今まで審議してきたことをもう一回改めて一からやり直す形というのは、時間 的にもいろいろな面でも効率的ではないと思います。  したがって、専門委員会というのは、この部会では足りない部分を委員を広げて補完 しようとするものだというふうに私は理解していたのですが、このメンバーを見た感じ では今お話しのように、この部会から加藤委員と松田委員がそれぞれ入られるだけとい うのではおやっと思うぐらい少ないのではないかと思うのです。そうすると、今までの 議論やヒアリングを生かすためには、専門委員会から出てきたものをまた我々のところ でもう一回議論する必要が出てくるのではありませんか。そう考えますと、この専門委 員会の設置の位置付けというのが曖昧になってくるわけで、この問題についてはかなり 長時間議論してきたテーマである点からそれでは困るし、不可思議な感じがするのです。  例えば、今の、木村委員のお話でいえば、女性の委員をもっと増やすというのだった らば、例えばこの部会でも金城委員などがずっとこの問題について大変な関心を持って 議論に参加されているわけです。そういう方が専門委員会に入っていなくてもう一回議 論になってしまうのでは非常に時間的にももったいないと思うのです。ですから、専門 委員会とこの部会との関係といいましょうか、位置付けといいましょうか、その辺につ いてはっきり御説明いただけたらと思います。 ○小田母子保健課長  先ほど女性の委員が少ないということですが、母子保健課でございますので、事ある ごとにそういうふうな御指摘をいただいておりまして、できるだけ女性を増やすという ことで努力しております。専門委員会もそれぞれ3名、2名という形で入っていただいて おりますが、一応そういった形になっているということを御理解いただきたいと思いま す。  現在のこの部会との関係でございますが、部会でも確かに13回、そのうち1回を除い てこういったことについて議論いただいたわけですけれども、多くはヒアリングであり まして、議論が個別に深まっていっていないのではないかというふうに認識しておりま す。この人選に当たりましては、できるだけ実務的な面でこれまで論文等を掲載されて 意見を述べられている方で、個々の方それぞれが自分の意見を執筆できる、我々の方か ら情報を集めて提供するよりは、むしろ御自分で意見を述べられてまとめていただける というふうな方を中心に集めさせていただいています。  この部会との継続性でございますけれども、これにつきましては、私どもの方からも これまでの議論につきまして重複のないように取りまとめをさせていただいて、1回目 はその説明をさせていただくつもりです。  それから当然のことですが、特に、生殖補助医療関係につきましては、こういった部 会なり、専門委員会の先生方はそれなりの経験と知識をお持ちの方でございますけれど も、これまで議論にありましたように国によっても制度の取扱いが違うわけでございま すので、広く国民の意見も聞く必要があるのではないかと考えております。例えば、一 般の世論調査をかけるとか、あるいはまた関係者の不妊に悩む方々、それの治療に携わ る方々といったところからも広く御意見を拝聴しながら進める必要があるのではないか。 そういった意味でも、ある程度現場に近い方を中心に、日ごろからこういった問題を積 極的に議論されている方を中心に人選させていただいたところでございます。 ○高久部会長  私も確かに柴田委員がおっしゃった点があるのではないかと思います。せっかく何回 もやってきて、また専門委員会に下ろしてやるのかという、重複ではないかということ も随分考えたのですが、ヒアリングを何回もやりまして、正直なところ非常に難しい問 題だということを痛感いたしまして、もう少し専門に近い方でもう一回議論をしていた だいた方がいいのではないかと。皆さん方も御関心もあるし、お勉強もされていますけ れども、長い時間を掛けてこういう問題をずっとやってこられた方からもう一回御意見 を聞いて、それでこの部会で検討をした方がいいのではないか。慎重に検討をしなけれ ばということを非常に感じたものですから、柴田委員のおっしゃることももっともだと 思ったのですけれども、もう少し慎重に検討したいというのが私の率直な感想です。時 間を掛ける方がいいのかなというのが正直な感想でした。 ○金城委員  先端医療技術評価部会に専門委員として参加させていただいたときなのですけれども 生殖医療についてこれから議論しなければいけないので加わっていただきたいというこ とだったのです。私もそういうつもりでこの問題についてはかなり専門的に研究してお りますし、外国のことだけではなく日本の実情についても考えておりますので、できれ ば私は是非専門委員会に専門委員の一員として審議に加わりたいという希望なのですけ れども、いかがでしょうか。 ○高久部会長  専門委員会の委員長の御意見を聞いて判断させていただきたいと思います。 ○廣井委員  この生殖の問題は前回からも大変議論されているのですけれども、大体いつ頃を目途 に専門委員会の結論を出すというお考えでしょうか。 ○小田母子保健課長  出生前診断の方につきましては、この部会の中でも、特に団体のヒアリング等で、ト リプルマーカーの問題等、非常に現実的に問題を生じている部分もあるというふうなこ とから、出生前診断をできるだけ早目に議論していただきたい。できれば今年度中ぐら いに結論を出していただければと思います。ただし、その場合、内容的にどこまで議論 できるかというところはありますので、問題のある部分だけを早目に検討するというこ とになるかもしれません。  それから、生殖補助医療技術につきましては、これは先ほど申し上げましたように、 広く国民の意見を聞く必要があるのではないか。これはまた専門家の先生方の御意見も 伺いながら、そういう方向を確認していきたいと思いますけれども、そうなってくると 調査をかけるだけでも数か月以上掛かりますので、そういったものを踏まえて議論を進 めていくということからすると、座長になられる中谷先生等の御意見をお伺いしても、 10回近くは掛かるのではないかと思っておりますので、1か月半に1回で10回近くとな りますと、それなりの時間は必要だろうと思います。多分専門委員会の報告書を受けて 更に議論が必要になってくると思います。相当息の長いというか、相当慎重に扱わなけ ればいけない問題だというふうに認識しております。 ○柴田委員  非常に難しい問題があることは我々十分認識しているつもりなのですけれども、もう 一つは今の目途とも関係しますけれども、前回にも議論になった、専門委員会発足に当 たっての部会長談話というような形で、ある程度今現在動いているモラトリアム論とい う形で議論はされましたけれども、どういう形になるかはともかく、何らかの形でここ で部会長談話というような格好で、この問題についてこういうスケジュールで大体結論 を出す予定だというようなことをアピールすると同時に、その間に既成事実が発してい るようなことがないようにというような形のある程度の部会長談話で社会に対するア ピールをしていくというのが、前回も議論が出たところなのですけれども、いいのでは ないかと思うのですけれども、その点についてはどうでしょう。 ○高久部会長  事務局の方と相談したいと思います。モラトリアムについては廣井委員の方が御存じ だと思いますが、モラトリアムということをここで発表すると、既にやっておられます 先生からそんなことを言ったって既にやっているのだという発表があるだろう。そこの ところをどう考えたら良いのですかね。 ○廣井委員  そういう面で部会長談話ではなくてもいいですけれども、専門委員会でこうこうだか らもう少し慎重にやれというようなことの、何かを出していただいた方が非常によろし いのではないかと思います。 ○高久部会長  部会でもそういう御意見が前からありましたので、おっしゃるとおりだと思いますの で、事務局とも相談して何らかの形で。 ○高原厚生科学課長  専門委員会はある意味では大変立派な先生方にお集まりいただいているわけでありま すが、ある意味で論点を整理して明らかにするということで、そのレポートについては もう一度ここで議論していただく。現に前回もヒト組織を用いた研究開発の在り方に関 する専門委員会でもやりましたように、専門的な、技術的な論点の詰めを行っていただ いて、それをまたここで返していただくということになるのではないかと思います。  ただいま母子保健課長が申しましたように、今まで本委員会で行ってこられましたヒ アリングなり、議論なりをまとめ、できるだけコンパクトな形にすると同時に、議事録 も出ておりますので、そういうふうなものを専門委員会の方にお渡しいたしまして、そ こでどういうふうな形のアクションが必要なのかということをこれまで議論にありまし たように御議論いただければと思っております。この部会として何らかのアクションが 声明なり何なりが求められる意見が多かったということはお伝えいたしたいと思います が、私も部会長と同じ懸念がございまして、要望しても法的な強制力というものが全く ない形でございますし、理屈のレベルでもそれはそれなりにおやりになっている先生も いろいろなところにお書きになっている。それは1つの理屈だろうと思います。  そうしますと、ちょっとやめてくれというふうな話をやりますと、それが悪いとは必 ずしも考えておりませんが、一種の場外乱闘のような形で、それは勿論メディアを通じ て国民の皆さんに広く知っていただいて論点が明らかになるというのは決して悪い話で はないのですが、それに厚生科学審議会がインボルブ(含めた)された形で、厚生科学 審議会が球を投げて、またやめてくれと言われた先生が球を投げ返すと。そうすると、 一ドクターと厚生省の正規の審議会がキャッチボールを始めることになるわけです。問 題を解決するためにはボランタリーにお願いするか、ないしは論理のレベルできちんと 整理をしてしまうかだと思うわけでありまして、これはいずれにせよ難しい話だろうと 思うのですが、一応今まで御議論いただいたことをもう一度現場で、現実にそういった 医療に携わっていらっしゃる方々で技術的な点も含めて論点整理をしていただいて、場 合によれば中間報告も、今1か月半で10回というふうなスケジュールも母子保健課長申 しておりましたが、必要に応じて節目節目でこの委員会に御報告をしながら進めていく。 そのプロセスの中で、恐らく論点の違いというふうなものも明らかになってくると思い ますので、そのときには、やはり専門委員会なり審議会の意見とは明らかに違うという ふうなことになれば、あるいはその時点で審議会とその先生とのキャッチボールが始ま ってもそれはいいのだと思いますが、今、始めるのかなというふうなことが正直な私の 思いでございます。 ○高久部会長  そういうキャッチボールをやる必要はないと思っています。ただ、こういう専門委員 会ができている。これは非常に難しい問題だから、専門委員会の結論が出るまでは余り やらない方がいいのではないかという談話だけであって、やってはいけないとか、やっ ていいという議論ではなくて、専門委員会の結論が出るまでは慎重に行動してもらいた いというぐらいのことは言ってもいいのではないかというのが柴田委員の御意見だと思 います。ですからキャッチボールではないと思っていますが。 ○木村委員  それは同感です。ですから、今そういうふうにしてマスメディアでクローニングから 始まって非配偶者間体外受精の問題、毎日ほとんどこうやっていろいろ新聞記事が出て いる中で、厚生省がいち早く、以前から取り組んでいたのだけれども、そのことを専門 に、具体的に考える専門委員会を2つつくるというのはやはり1つのニュースだと思う のです。そういう中で、今、高久部会長が言われたように、そういうモラトリアムへの 強い見解を表明されたことを踏まえてこういう委員会が2つできて、これから検討に入 るというようなことは表明された方がむしろいいのではないかと。結論的に言うと柴田 委員の意見に賛成なのですが、何らかの意味の対応をこれだけ早くして、きちんとやっ ていくということはすばらしいことだと思うのです。それは国民に知ってもらうことが 必要ですので、厚生省は何しているのだというのではなくて、やはりそれなりに一応対 応しているわけですから、そういうことを部会長としては表明されるのが望ましいとい うことに、柴田委員の意見に賛成なのです。  と同時に、これは厚生科学審議会というものがあって、その下に技術評価部会があっ て、専門委員会が今度できるわけですけれども、専門委員会というのは独自の委員会で あるよりも先端技術評価部会の中に設置されるわけですね。したがいまして、上部組織 であるところの審議会、あるいは部会での閣議に始まる申し合わせ事項、公開のことに 関連しましては、専門委員会はそれに従うというふうに私は理解していますけれども、 その点につきましてはいかがでございますか。 ○小田母子保健課長  専門委員会の委員の先生方に議論をどういう形で公開していくことが必要かというこ とについて御意見を伺いたいと思っています。勿論密室で議論するといったような形は とりたくないと私ども思っていますが、あくまで専門委員会の先生方の御意見に従いた いと思っています。 ○木村委員  関連してきますが、結局私どもは先端医療技術評価部会の専門委員会の委員として、 生殖補助医療技術に関する評価部会でないところの委員会の開催に当たっては、一々御 通知とか、あるいは専門委員会委員としてこちらの専門委員会に出ることもできるとい うふうになっているのですか。それともこれは全く別個の、同じ先端医療技術評価部会 なのだけれども別個の委員会なので、我々は自動的にそれに出席することはできないと いう、これは先ほどの御意見の中にございましたけれども、別途に出るのか、それとそ れに参加することは、公開になればこれは一国民として出てこられるわけですよね。で すけれども審議会の委員、あるいは専門委員会の委員として小さな専門委員会に自動的 に出て良いのか、出ては良くないのかという点はどうなのですか。 ○高久部会長  生体材料のときには専門委員会だけで議論していただきました。ですから、公開した 場合には参加されるのは自由ですけれども、普通は発言はしないのだと思います。そう しませんと、こんがらがってしまいますから。 ○加藤委員  木村委員を見たら萎縮してしまう。 ○木村委員  そんなことはないでしょうけれども。ただ、こういうことはありますよね。ヒト組織 の場合も専門委員の一人として小さい委員会に出ていたわけですが、厚生省部内の方々 は職務上お出になっているケースが多かったわけです。ですから、我々も大きい意味で 言えば部内になるわけです。先端医療技術評価部会の委員として専門委員会に部内関係 者として出るということは、法的に見れば全く問題はないのではないかと思うのですけ れども、どうでしょう。 ○高久部会長  そこのところはよく分かりません。 ○小田母子保健課長  アドホックにこういう委員会を開くわけですから、その専門委員の議論を踏まえて、 この先端医療技術評価部会の方は大所高所からその委員会の審議結果に対してまた御意 見をいただいて、審議会としての意見としてまとめて表に出ていくという形が通常であ ります。 ○木村委員  そうしますと、先ほど金城委員が少し御表明されましたけれども、こうやって実際に この委員会で本日はこれで決まりということになりますと、金城委員が特に出たいと言 った場合には、部内者として出ることも難しいということになるわけですか。 ○小田母子保健課長  通常は専門委員として出ていただくという形ですので、部会の先生方が自由に専門委 員会の方に出ていただくという形はとらないということですが、金城委員に専門委員に なっていただくかどうかというのは、先ほど高久部会長の方からもお話がありましたよ うに、また部会長と相談させていただいて、御連絡したいと思っています。 ○高久部会長  専門委員会の場合に、委員長が決まりまして、その委員長の御意見をお伺いしながら 事務局の方で専門委員をつくったものですから、やはり委員長の方の御了承を得ないと なかなか難しいかなと思っています。 ○柴田委員  部会長談話問題なのですけれども、私の意見はこの前、モラトリアム問題が起こった ときにも、モラトリアムというのも1つの態度の表明だから、そのときに反対を申し上 げたとおりです。モラトリアムを今、打ち出すのは1つの結論になってしまいますから まずいと思うのですけれども、そうではなくて、この問題についてこの部会が十何回も 審議を続けてきたこと、先ほど事務局から審議が深まっていないというお話がありまし たけれども、そうではなくて、これまではヒアリングに重点を置いてきたわけで、これ から本当の討議が始まるところだったということ、ただ、議論を深めるには少し委員が 足りないということで専門委員を増やしたというのが今の時点だと思うのです。  だから、繰り返しますと、これまで十数回にわたって十分審議をしてきているのだと いうことと、この問題は非常に難しいし、専門家も足りないのでもう少し枠を広げると いうことで今回専門委員会を設置したのだと説明すると同時に、大体このぐらいの予定 でこういうものを出したいと思うので、その間、国民の間からも意見があれば寄せてく れというような部会長談話か声明を出すことによって、一種の無言の圧力をかけ、その 間に既成事実をつくってしまえと突っ走るのはよくないということを言っておくことだ と思うのです。キャッチボールというお話がありましたけれども、そんなことをすると いう意味ではなくて、つまり厚生省は何もしていないのではない。これまでずっとこう いう検討をしてきたのだと。更にもう一歩踏み込むのだと。そして近く結論を出すのだ という意思表明が専門委員会発足というニュースと対になっている必要があるのではな いか、というのが私の意見です。何らかの形で是非高久部会長に、専門委員会発足に当 たっての談話というような形で出していただいた方がいいと思います。 ○高久部会長  それはまた事務局の方と相談しまして、議事録も全部公開されているのですけれども それでも改めて、例えば厚生記者クラブの方々にそういう話をするということなども考 えてみたいと思います。  時間も過ぎましたので、次回のことについて事務局の方から説明いただけますか。 ○事務局  それでは、次回の部会につきましては、10月19日月曜日午後2時からで予定されてお りまして、会場は特別第1会議室、7階を予定いたしております。どうぞよろしくお願い いたします。 ○加藤委員  議題は何ですか。 ○高原厚生科学課長  ただいま審議を行っております、千葉大学医学部附属病院の食道がん及び癌研究会附 属病院の乳がんの計画について急いで議論するようにという御指示もございましたので そういったものを取り上げたいと思っております。 ○木村委員  関連での質問です。この間朝日新聞の一面に、遺伝カウンセラーその他のことについ ての厚生省関係の記事が出ていましたね。あれはどこからどういうふうに報道されて記 事になってたのか私ども全然存じ上げないのですが、その点はどうなのですか。 ○小田母子保健課長  朝日新聞に2度ほど出ておりまして、1度は厚生省の研究班の関係でありまして、これ は厚生科学研究の中で遺伝相談体制をつくるために、日本臨床遺伝学会、あるいは日本 人類遺伝学会の先生方にお願いして、どういう形で人の養成をしていったらいいかとか どういうネットワークでそういう遺伝情報の適切な提供をしていったらいいかというふ うなことを研究していただいているわけです。それが1つ目です。  一面に出た方は、来年度の予算要求、これは厚生省の概算要求が終わったわけでして 当然オープンになっている内容でございますが、その中でそういった遺伝相談体制をモ デル的につくっていく必要があるのではないかということで、各県に遺伝相談の中核セ ンターのようなものを設けて情報の提供、個々には既に400施設ほどで遺伝相談を実施し ておりますが、それがバラバラで実施されている状況ですので、それを中央レベル、都 道府県レベル、個々の実際に行っている利用施設レベルでネットワークをつくり、モデ ル的に5か所でやっていこうというものでございまして、概算要求中のものであります。 これは概算要求でありますので、政府の予算が通らない限りは案というレベルでありま すので、特に御説明は私どもとしてはしていないということであります。 ○高久部会長  今日は時間も過ぎましたので、これで終わらせていただきます。  おかげさまで岡山大学から出ていましたがん遺伝子治療臨床研究については委員の 方々の御意見を伺った線に従って、計画書を条件付で認めていただくことにいたしまし た。本当にありがとうございました。  これをもちまして、閉会といたします。 <以上>    厚生科学審議会先端医療技術評価部会専門委員会の設置について                          平成10年9月17日                          部 会 長 談 話  生殖補助医療技術等を巡る諸問題については、これまで1年余にわたり、関係団体等 からのヒアリングをはじめ、当部会において、種々審議を行ってきたところであるが、 この問題については、各方面において様々な議論があり、検討すべき課題が多いことか ら、今後さらに専門的観点からの審議を深める必要があるので、当部会に別紙の専門委 員会を設置することとした。  よって、本件に関しては、審議結果が得られるまで、慎重な対応を期待したい。 (別紙) 厚生科学審議会先端医療技術評価部会専門委員会 (五十音順) (1)生殖補助医療技術に関する専門委員会名簿      石井美智子 (東京都立大学法学部教授)    石井 トク (岩手県立大学看護学部教授)      加藤 尚武 (京都大学文学部教授)      高橋 克幸 (国立仙台病院名誉院長)      辰巳 賢一 (梅ヶ丘産婦人科副院長)     田中  温 (セントマザー産婦人科医院院長)     ※中谷 瑾子 (慶應義塾大学名誉教授)    丸山 英二 (神戸大学法学部教授)      矢内原 巧 (昭和大学医学部教授)      吉村 泰典 (慶應義塾大学医学部教授) (2)出生前診断に関する専門委員会名簿      安藤 広子 (日本赤十字看護大学助教授)    鈴森  薫 (名古屋市立大学医学部教授)      武部  啓 (京都大学名誉教授)      寺尾 俊彦 (浜松医科大学副学長)      長谷川知子 (静岡県立子ども病院遺伝染色体科)     ※古山 順一 (兵庫医科大学医学部教授、先端医学研究所長)    松田 一郎 (熊本大学名誉教授)      山田 卓生 (日本大学法学部教授) ※印は座長予定者   武部啓教授は渡航中のため承諾をいただいておりません。 問い合わせ先 厚生省大臣官房厚生科学課 担 当 須田(内線3804) 電 話 (代表)03-3503-1711 (直通)03-3595-2171