98/09/07 公衆衛生審議会精神保健福祉部会議事録 公衆衛生審議会精神保健福祉部会 議事録 厚生省大臣官房障害保健福祉部精神保健福祉課 議 事 次 第  日 時  平成10年9月7日(月) 10:30〜12:45  場 所  厚生省特別第1会議室  1 開 会  2 議 事  (1)精神保健福祉法に関する専門委員会報告について  (2)その他  3 閉 会 出席委員  相 澤 委 員  井 上 委 員  大 熊 委 員  岡 上 委 員   笠 原 委 員  河 崎 委 員  北 川 委 員  吉 川 委 員   窪 田 委 員  小 池 委 員  新 田 委 員  藤 原 委 員   古 谷 委 員  牧   委 員  町 野 委 員  三 浦 委 員   宮 坂 委 員  谷 中 委 員  渡 邉 委 員 ○部会長  定刻になりましたので、ただいまから、精神保健福祉部会を開会いたします。まず、 出欠からお願いいたします。 ○杉中補佐  本日は精神保健福祉部会委員22名中19名の委員にご出席いただいております。定 数の過半数を満たしておりますので、部会の開催は成立いたしております。  なお、本日欠席される旨のご連絡をいただいている委員は、融委員、冨永委員、藤井 委員の3名でございます。以上でございます。 ○部会長  ありがとうございました。では資料のご説明をいただきます。 ○杉中補佐  それでは、本日の配布資料についてご説明をさせていただきます。  本日の配布資料といたしましては、議事次第、座席表のほかに、「精神保健福祉法に 関する専門委員会(案)」及び「専門委員会に関する審議資料集」という本になってい るものでございます。抜けている資料等ございましたら、事務局までよろしくお願いい たします。 ○部会長  これはよろしゅうございますですね。  それでは、まず本日の議事の(1)でございますが、この部会に設置いたしました専 門委員会から報告書(案)が出てまいりましたので、そのご報告を座長の吉川委員から お願いをいたしとうございます。夏の暑いときを含め、長い間ありがとうございました ○吉川委員 それでは、専門委員会の検討経過についてご説明をいたします。  まず、この分厚い資料集の第1ページをお開きください。ここに精神保健福祉法に関 する専門委員会の委員名簿がついてございますが、この16名の委員によって、これま で検討を進めてまいりました。そして、検討経過は2ページのところに書いてあります ように、この精神保健部会の決定を受けまして、第1回を平成10年3月23日に開催 し、以後10回、平成10年8月20日までこの検討をしてまいりました。  この専門委員会で審議しました内容につきましては、そのページの右側の方に、それ ぞれそのときのときの審議の内容をメモしてございます。  さて、この専門委員会で検討しました内容についてご報告をこれからするわけでござ いますけれども、それらにつきましては、7ページをお開きいただきたいと思います。 この7ページのところにありますように、大きく4項目立てになっております。その4 項目立ての中でも、特に第2、第3、これらのところが現状の問題と、状況をどのよう に把握しているかという基本的な考え方をここに述べてあります。それから、第4のと ころに具体的な施策の方向として6つほどまとめて書きました。このような構成になっ ております。次に9ページをお開きいただきたいと思います。ここからがご報告の内容 でございまして、本日このご報告を申し上げるに当たりまして、報告(案)として提示 いたしましたのは、私ども専門委員会がこの部会の委託を受けまして審議をしてまいり ましたけれども、それなりに私たちはこの時期にみんな集まって検討してまいりました でもやはり部会の方にもそれぞれのご意見もあろうかと思って、それで本日このような 形で一応(案)という形でお出しをしてあります。いずれにいたしましても、この提出 いたしましたものにいろいろのご意見もあると思いますけれども、これからそれを読ま せていただきます。 「第1 はじめに ○ 我が国の精神保健福祉行政については、精神障害者の人権に配慮した適正な医療を 確保するとともに、精神障害者の社会復帰の促進を図るという視点から、昭和62年に 精神衛生法の一部改正を、平成5年に精神保健法の一部改正を行ったところである。 ○ また、平成5年12月には障害者基本法が成立し、精神障害者がこの法律の対象と して明確に位置づけられることになり、平成7年には、精神障害者の福祉施策の一層の 推進を図る観点から精神保健法の一部改正を行い、法律名も精神保健法から精神保健及 び精神障害者福祉に関する法律(以下「精神保健福祉法」という。)と変更したほか、 同年には、精神障害者社会復帰施設(以下「社会復帰施設」という。)の計画的な整備 を含む「障害者プラン」が策定されるなど、精神障害者施策の推進が図られている。 ○ また、平成8年7月には、障害者の保健福祉施策を総合的に実施する観点から、大 臣官房に障害保健福祉部を設置したところであり、また、障害者保健福祉施策のあり方 を検討するため同年10年に、身体障害者福祉審議会、中央児童福祉審議会障害福祉部 会、公衆衛生審議会精神保健福祉部会にそれぞれ企画分科会を設け、合同で審議を行っ ており、平成9年12月に中間報告を出したところである。 ○ 平成5年の「精神保健法等の一部を改正する法律」の附則第2条において、改正法 の施行後5年を目途として、改正後の精神保健法の規定の施行の状況及び精神保健を取 りまく状況を勘案して見直しを行うこととされており、また障害者関係審議会合同企画 分科会の中間報告でも、精神障害者の保健医療については別途検討することとされてい る。これらを踏まえて見直しを行うために本年3月に公衆衛生審議会精神保健部会に 「精神保健福祉法に関する専門委員会」を設置した。 ○ 当専門委員会においては、3月以来10回にわたり審議を重ね、精神保健福祉制度 の見直しに当たっての基本的な考え方及び具体的な施策の方向について次のとおり取り まとめを行った。」 これが第1でございまして、この部会の中で、私たちが専門委員会として持ちましたの は、精神保健法に関する専門委員会でございまして、当然のことながら、平成11年改 正を目指しております精神保健法の改正に向けて、この委員会を持ったことではありま すけれども、3月の部会の中で、私もこの専門委員会の座長をお引き受けするに当たっ ては、あくまでも法改正だけではなくて、精神保健福祉の今後の問題について論ずる委 員会としてお受けするという発言を中でいたしております。 「第2 精神保健福祉を取りまく状況について ○ 平成8年患者調査によれば、精神病院等に入院・通院する精神障害者数が217万 人(推計)で、平成5年の同調査による推計値157万人と比べ急激に増加している。 また、病院報告によると新規の入院患者数についても平成5年の約26万7千人と比べ 平成8年には約28万1千人と増加傾向にある。近年の社会の複雑化等に伴い、精神障 害者の医療及び福祉の問題は、限られた人々や地域の問題ではなく、誰にとっても身近 な問題となっている。 ○ 入院患者については、平成8年患者調査によれば32万2千人と平成5年の同調査 の結果(32万人)と比較してほぼ横ばいである。また、平成8年患者調査によれば5 年以上の入院患者が46.5%(平成5年同調査では45.7%)を占めている。入院 の長期化の傾向に変化がないのは疾患の特殊性もあるが、精神障害者の社会復帰が進ん でいないことを示している。 ○ 精神障害者の福祉施策については、基本的には自立可能な精神障害者に対する社会 復帰対策を中心に行っている。社会復帰施設等については、平成9年度までに整備に着 手したもので、約900ケ所、約10,000人分(社会復帰施設+グループホームの合計ケ 所数、人数)となっているが、障害者プランに基づき引き続き計画的な整備を図る必要 がある。(平成14年のプラン終了時の目標、約2000ケ所、約25,000人分) ○ 在宅精神障害者に対する生活支援は実質上家族に依存しているが、家族のあり方の 変化、家族の高齢化、単身で生活する精神障害者の増加等により、これらの精神障害者 に対する生活支援を家族に依存することが難しくなってきている。 病状が安定していても、日常生活能力が著しく低下しているために生活面での支援が 無くては地域生活が困難な精神障害者に対しては、現行制度は十分に対応することがで きず、これらの者に対する支援策が求められている。 ○ 一方、昭和59年の宇都宮病院事件をきっかけに精神病院における人権擁護のあり 方について検討がなされ、昭和62年改正において、精神病院に対する指導監督の創設 精神医療審査会の設置、精神保健指定医制度の創設等の措置が講じられた。  しかしながら、同改正後も平成元年の越川記念病院事件、平成9年の大和川病院事件 栗田病院事件、山本病院事件等にみられるように、一部の精神病院において人権侵害事 案が発生している。」  このような認識の上に、基本的な考え方をつくっていきました。 「第3 基本的な考え方 1 総論 ○ 精神保健福施策の基本は、精神障害者に対し、良質かつ適切な保健医療サービス及 び祉サービスを提供することにより、精神障害者の社会復帰を促進し、その自立と社会 経済活動への参加を促進することである。このため、施策の推進に当たっては、精神障 害者の人権に十分に配慮することを前提に、身近な地域において総合的な保健医療福祉 サービスを受けることができる体制を整備していくことが必要である。 II 基本的な施設の方向 (1)地域に密着した精神保健福祉施策の充実 ○ 精神保健福祉施策は、国民全体で取り組まなければならない重要かつ身近な問題で あるが、未だに精神障害者に対する社会的偏見は根強く、そのような偏見を除去する施 策が求められるなど依然として地域における精神保健福祉施策は遅れている。都道府県 中心の現行施策を転換し、地域における保健・医療・福祉施策を推進していくためには 従来の都道府県単位での医療保健福祉制度ではなくて、よた生活に密着した単位で施策 を進めることが必要である。 ○ 医療施策については、地域での即応体制の整備を図るため、精神科救急医療体制の 確保について検討する必要がある。また、現在、一般病床について、病床を急性期と慢 性期に区分すること等の検討が進められており、精神病床についても地域に密着した精 神医療の提供を確保する観点からそのあり方について検討を行う必要がある。 ○ 福祉施策についても、在宅の精神障害者に対する生活支援を積極的に行うとともに 障害者福祉施策の総合化の観点からも、障害者に対する総合的な相談窓口を市町村に設 けるなど、従来の都道府県中心の体制から市町村を中心として精神障害者の福祉施策を 推進する体制を整備する必要がある。 (2)精神障害者の社会復帰施策の推進 ○ 精神障害者の社会復帰については、社会復帰施設等の整備を引き続き図るとともに 特に在宅の精神障害者に対する福祉施策について質・量の充実を図ることにより、他の 障害者の福祉施策と遜色のないものとしていく必要がある。また、授産施設、地域生活 援助事業等については、障害種別間の相互利用を推進することにより、社会福祉資源の 効率的な活用を図ってくべきである。 (3)精神障害者の人権の確保 ○ 近年の精神病院における人権問題の頻発にかんがみ、精神障害者の人権を確保する 観点から、問題のある精神病院に対する指導監督を強化することが必要である。また、 社会復帰施設についても指導監督のための規定を設けることが必要である。 ○ 近年の精神病院における不祥事件においては、医療保護入院の運用について本人の 同意能力がある場合にも強制的に入院させられたり、また、逆に判断能力が不十分でも 任意入院となっている事例が見られる。このため、任意入院の対象との区別化を図るた め、医療保護入院の要件を明確化する必要がある。 ○ 精神障害者の自己決定権を尊重するとともに、保護者が高齢化している実情や成年 後見人制度の見直しの動きを踏まえ、保護者制度のあり方について見直しを行うべきで ある。」  以上、基本的な方向をこんなふうに定めた上で、具体的な検討をいたしました。その 内容についてご報告します。 「第4 具体的な施策の方向 I 精神医療のあり方について 1)精神科救急事業の法定化について ○ 精神障害者の社会復帰を進め、地域医療を推進していくためには、緊急時に対応し た医療体制を整備することが必要である。このため、現在の精神科救急事業を法定化し 「精神科救急医療のための指定病院制度」を設けることによって、精神科救急医療体制 の確保を図る必要がある。 ○ また、救急時の対応については、入院先の病院の確保だけではなく、その病院まで の移送の手段を確保することが重要であることから、併せて緊急に治療を必要とする精 神障害者の移送に関する制度を設ける必要がある。 2)医療保護入院について ○ 医療保護入院は、本人の同意に基づかない強制入院の一種であることにかんがみれ ば、その運用は限定的になされるべきである。しかしながら、現行の制度においては、 本人に判断能力が十分あるにもかかわらず、医療保護入院になるような運用がなされて いる事例が生じている。 ○ したがって、医療保護入院の対象を精神障害により入院の要否を判断できない者に 限定し、医療保護入院と任意入院の対象を明確に区分する必要がある。また、医療保護 入院の対象者について、入院の判定基準を作成することについて検討するべきである。 ○ なお、自傷他害のおそれはないが、治療の必要性が明らかであるにもかかわらず、 入院についての判断能力が不足している精神障害者に対する強制入院のあり方について は引き続き検討する必要がある。 3)仮入院について ○ 仮入院については、精神障害であるという診断が確定しない段階で、強制的に入院 させることができる制度であり、患者の人権尊重の観点からできる限りこの規定を適用 させないことが望ましいものと考えられる。また、精神医学の進歩による診断能力の向 上の結果、現在では年間20件あまり(平成8年度の厚生省報告例)と事例がほとんど ないことから、これを廃止すべきである。 4)措置入院について ○ 措置入院にかかる現行の指定病院の指定基準については、必ずしも十分な医療サー ビスが提供できる人員・構造設備の基準とはなっていない。このため、指定病院の基準 を見直し、国公立病院等の措置入院にかかる適切な医療を行う体制が十分に整備されて いる病院で措置入院患者を受け入れていくこととするとともに、指定病院の指定につい ては、地域における措置入院患者の受け入れに必要な病床数を考慮して指定を行う必要 がある。 5)精神病床のあり方について ○ 現在、一般病床については急性期と慢性期に区分すること等の検討が進められてい る。精神病院については、医療法関係規定において、医師、看護職員の特例的な人員配 置が認められているが、この特例については、精神障害は慢性疾患であるという前提に 立ったものであるとする指摘がある。このため、医療法関係規定を見直し、精神障害者 の病状に応じた適切な医療を確保するため精神病床を病棟単位で急性期病床と慢性期病 床に区分し、当該区分にふさわしい人員配置基準及び構造設備基準を設けることについ て検討していく必要がある。 ○ また、急性期病床については、医療計画上の取扱いを現在の都道府県単位からより 身近な地域での医療が受けられるよう2次医療圏単位とすることについて検討する必要 がある。その際、急性期病床と慢性期病床の総数が現行の各都道府県圏域毎の医療計画 上の必要病床数を上回らないように留意すべきである。 ○ なお、医療法施行規則第10条第3号に規定する精神病床外の収容禁止規定や、同 規則第16条第1項第6号に規定する精神病室にかかる危険防止のための構造設備基準 については、合理的な理由に乏しいと考えられることから、見直すべきである。また、 保護室の適正な使用を確保するために、保護室に収容されている患者の病床が同一病院 内で確保されることを条件として、保護室について医療計画上の病床数に算定しないこ ととするべきである(医療法施行規則第30条の33第1項第2号関係)。 II 福祉施設の充実について、 1)在宅の精神障害者に対する福祉施策の充実 1精神障害者の訪問介護事業の法定化 ○ 病状が安定していて入院は不要であっても、日常生活能力が著しく低下している精 神障害者について、当該精神障害者が地域で生活することを支援するとともに、精神障 害者を在宅で介護している家族の負担を軽減するために、市町村を実施主体として訪問 介護事業を法定化する必要がある。 ○ 市町村は、現在、精神障害者に対する福祉サービスに関する事務をほとんど取り扱 っておらず、精神保健福祉行政に関する専門的な知識や技術を十分に有していないため 訪問介護事業の運営に支障をきたすおそれがある。このため、保健所による市町村に対 する技術的支援を規定し、市町村との連携を図る等市町村への支援策を講じる必要があ る。 2短期入所事業の法定化 ○ 在宅福祉施策の重要な施策の一つである短期入所事業が精神保健福祉法に規定され ていない。短期入所事業の質を確保するためにも法定化するとともに、法令に基づく最 低基準や指導監督規定の対象として位置づける必要がある。 2)利用者本位のサービス提供の仕組みについて ○ 現行の精神障害者福祉施策はすべて本人とサービス提供者との利用契約に基づくも のとなっているが、 1精神障害者自身に提供されるべきサービスの内容に関する情報提 供が十分になされていないこと、 2精神障害者の一部には判断能力が不十分であるため に自ら必要な福祉サービスを選択することが困難な者がいること等の問題があり、結果 として希望するサービスの適切な提供がなされていない可能性があるとともに、サービ ス提供者側においても、精神障害者のニーズの把握が十分にできていないおそれがある ○ また、上述したように在宅の福祉施策の充実に伴い、適切なサービスを紹介するサー ビスが重要になると考えられるため、精神障害者が本人の希望や個々の障害の程度に応 じた適切なサービスを受けられるようケアマネジメント等を実施し、障害者に対する様 々なサービスを組み合わせ、総合的に調和のとれたサービスを提供する体制づくりを検 討する必要がある。 III 精神障害者の人権の確保について 1)精神障害者の閉鎖処遇について ○ 精神科医療については、できるだけ開放的な処遇を行うのが望ましいが、実際には 任意入院患者についても約50%が閉鎖的な処遇がなされている。このため、閉鎖処遇 のあり方・定義について検討するとともに、法第37条に基づく処遇の基準等において 閉鎖処遇を行動制限として位置づけ、閉鎖処遇を医療上必要な場合に限定することを検 討する必要がある。 2)精神病院に対する指導監督について ○ 近年の不祥事件により明らかになった問題病院の中には、行政に対して虚偽の届出・ 申告を行ったり、繰り返し行政指導等を行っても、全く改善を行わない悪質な病院があ り、このような病院に対しては処遇改善命令等の現行制度は有効に機能しなかった。 ○ したがって、入院患者の処遇等で著しい問題がある病院や改善命令に従わない病院 等に対し、厚生大臣又は都道府県知事が業務停止命令等の処分を行えることとする必要 がある。 3)社会復帰施設の指導監督について ○ 社会復帰施設におけるサービスの質及び施設内における処遇の確保を図るため、社 会福祉事業法の改正の方向をみすえつつ、社会復帰施設についても構造設備や処遇の方 法について法令に基づく明確な最低基準を定め、適正な運営を図る必要がある。 ○ また、社会復帰施設に対する指導監督を図るために、都道府県知事が社会復帰施設 に対して、報告徴収や問題がある施設等に対する改善命令、事業停止命令等を行うこと ができるよう、指導監督規定を設ける必要がある。 ○ さらに、地方分権推進計画を踏まえ、国民の生命、健康、安全のための緊急の必要 がある場合には、厚生大臣も、社会復帰施設に対して都道府県知事と同様の指導監督を 行うことができるようにする必要がある。  4)精神医療審査会の役割について ○ 精神病院等における人権問題に関し、精神医療審査会が、その役割を十分に果たす ことができるよう、以下のような機能を強化・見直しを行う必要がある。 1精神医療審査会の独立性を高めるために、都道府県における監督部局とは別の事務局 を設けること。 2精神医療審査会の審査にかかる調査機能を強化するため、精神医療審査会の委員に精 神病院等に対する報告徴収等を行う権限を付与すること。 3精神医療審査会の委員の構成について検討するとともに、委員数についても要件を緩 和し、必要最低限の人数(5人以上)のみを規定し、上限を撤廃すること。 ○ また、今後社会復帰施設等を利用する精神障害者が増大することにかんがみ、社会 復帰施設等における処遇についても精神医療審査会の審査の対象とすることについて検 討する必要がある。 5)精神保健指定医制度について ○精神保健指定医は、人権に配慮した医療を行う中心的存在であり、その職務は極めて 重要であるにも係わらず、その責務については不明確である。このため、精神保健指定 医の責務のあり方について検討する必要がある。 ○ また、指定医の業務の適正を確保するために、指定医としての業務の停止処分等を 設けることを検討する必要がある。 IV 保護者について 1)保護者の保護の対象について ○ 現行制度においては、全ての精神障害者に保護者が付されることになっているが、 精神障害者の自己決定を尊重する観点からも、任意入院患者や通院患者など本人の同意 能力がある場合にも保護者の保護の対象とされるのは望ましくないと考えられる。 ○ したがって、保護者の保護の対象を措置入院患者や医療保護入院患者等判断能力が 不十分な者に限定し、入院患者の同意能力が回復した場合には、本人の意思を尊重する こととする必要がある。 2)保護者の義務について ○ 精神障害者の自己決定を尊重していく中で、保護者の義務について検討する必要が ある。その中でも、自傷他害防止監督義務については、保護者としては、病状が悪化し た場合に医療を受けさせることしかできず、実質上は医療を受けさせる義務と同一であ る。この条項を維持することによりかえって保護者に過度の負担をかけるおそれがある ため廃止すべきである。 3)成年後見制度について ○ 現行精神保健福祉法上は、後見人が最優先で保護者となることとなっているが、「成 年後見制度」の見直しの動向を踏まえ、必要に応じ保護者となることができる成年後見人 の範囲について見直す必要がある。 ○ 具体的には、現在提案されている成年後見人が精神障害者の生活の支援を図る上で 最適かつ最も責任を有していることにかんかみれば、成年後見人が広く保護者となれる こととすべきである。したがって、新しい成年後見制度においては、保佐人についても 保護者とすることについて検討する必要がある。 ○ また、地域で暮らす精神障害者についても、判断能力が不十分で生活面に着目した 支援を必要としているにもかからわず、家族の高齢化等により、成年後見人となるべき 適切な人材がいない場合が予想される。したがって、民法改正の動向も踏まえつつ必要 に応じ、市町村長等による成年後見人の申し立て制度について規定することを検討すべ きである。 V 市町村、都道府県関係機関の役割について 1)福祉施策における市町村の役割について ○ 精神障害者保健福祉施策のうち、より市民に身近な行政主体である市町村が行うこ とが望ましい業務については、市町村が行うこととし、さらに、障害者の福祉施策の窓 口を市町村レベルで一本化していくことについて検討すべきである。これにより、地域 ケアの推進や他の種別の障害者施策との整合性の確保が期待できると考えられる。 ○ 市町村が行うことが適当な事務としては、以下のものが考えられるのではないか 1介護支援サービス(ケアマネジメント) 精神障害者に対して適正な福祉サービスを紹介するケアマネジメントについては、身近 な行政機関である市町村において体制を整備する必要がある。 2社会復帰施設及び在宅福祉サービスの利用に係るあっせん・調整  現行法第49条に規定する社会復帰施設等の利用に係る保健所長のあっせん・調整に 代え、市町村がケアマネジメントの結果を受け、施設等の利用のあっせん・調整を行う こととする。 3精神障害者に関する一般的な事務  精神障害者保健福祉手帳の交付の申請について、他の種別の障害者施策との整合性を 勘案し、市町村を窓口として行うこととするべきである。また、通院医療費の公費負担 の申請についても、保健所を経由して都道府県に送付されることになっているが、事務 処理の効率性や利用者の利便性を勘案し、市町村を窓口として行うべきである。 ○ 社会復帰施設の利用のあっせん・調整を市町村で実施することとした場合、都道府 県の精神保健福祉センター等において管内(若しくは近隣の都道府県)に所在する社会 復帰施設の利用等について広域的な調整を行うこととするべきである。 ○ また、精神障害者社会復帰施設等に対する運営費の補助は、施設に対して行ってい るが、他の障害者施策との整合性等を勘案し、利用者に着目した補助制度とすることを 含め検討するべきである。 ○ おな、現在、精神保健福祉施策に関する権限は中核市にも委譲されていないが、全 ての市町村ごとに実施されることは可能かという問題があり、小規模な市町村において は広域的な対応が行えるようにする等の支援策を検討する必要がある。 2)精神保健福祉センターの役割について ○ 社会の複雑化に伴い、精神障害や心の健康等に関する問題が増加しており、精神保 健福祉センターが果たすべき役割は大きくなっているが、精神保健福祉センターが必置 とされていないため、特にこのような機関が必要な大都市(指定都市)において、精神 保健福祉センターが設置されていないという結果を生んでいる。また、精神保健福祉セ ンターの専門性を有効に活用するために、通院医療費の公費負担の判定等の恒常的な業 務については精神保健福祉センターが行うことが望ましい。 ○ このため、「精神保健福祉に関する専門的な相談・判定・調整」を行う機関が必要 となるが、地方分権を推進する観点からも新たな機関を必置するよりも、精神保健福祉 センターの名称の弾力化等を行った上で、当該機能を持った機関を置くこととするべき である。 ○ そのうえで、現行の業務に加えて、現在都道府県の地方精神保健福祉審議会で行っ ている通院医療費の公費負担の判定業務や市町村の行う社会復帰施設の利用のあっせん 等に係る市町村間の調整業務等を精神保健福祉センターが行うこととすべきである。 3)地方精神保健福祉審議会について ○ 地方分権推進計画を踏まえ、また地方における他の障害者施策に係る審議会との連 携を図ることを可能にするために、地方精神保健福祉審議会の組織・名称に関する規制 を弾力化するべきである。 VI その他 1)精神障害者の定義について ○ 現行法においては、精神障害者は精神疾患を有する者と定義されており、その例示 として精神分裂病、中毒性精神病、精神薄弱、精神病質が挙げられている。このような 例示の方法について見直しが求められており、検討すべきである。 2)覚せい剤慢性中毒者の扱いについて ○ 覚せい剤依存者について、精神症状の程度に係わらず、強制的に入院させることが できるという現行法第44条を廃止すべきである。 ○ 覚せい剤依存者においては覚せい剤による中毒性精神病患者にみられるような顕著 な精神症状がないことから、強制的な入院措置を行う必要はなく、あくまで、覚せい剤 依存の入院治療は、患者本人に断薬の意思があることを前提とするべきである。 ○ また、薬物依存については、国立療養所等が政策医療の対象として積極的に取り組 むこととしているが、医療以外の関係機関の取り組みも重要であることから、薬物依存 脱却のための対策について検討を行い、 1精神保健福祉センターにおける薬物依存に対 する相談事業の実施、 2覚せい剤を含む薬物全体の依存についての医療制度やアフター ケア等の在り方について検討を行う必要がある。  3)重大な犯罪を繰り返す精神障害者について ○ 精神障害者の中には、重大な犯罪を繰り返す者が稀におり、そのような精神障害者 に対して精神障害者の医療施策だけでは対応できないとする指摘がある。しかしながら このような精神障害者に対する対策については、現行制度の問題点や対応策について意 見が統一されておらず、関係者との議論が引き続き必要であると考えられる。」  以上、私は一気にこの専門委員会の案について述べました。あと、この大きな資料の 中には、この検討を行うために、さまざまな方々から提供していただいた資料、そして 厚生省が提供してくださった資料をまとめて後段の方につけてございます。その上で、 皆様方、(案)として、私の方でご提出いたしました内容についてご検討いただきたい と思います。  なお、二、三少し加えさせていただきますけれども、これまで、精神保健福祉行政と いうものに関しては、従来から1987年の法改正から始まったことでもありますけれ ども、既に「精神病院から社会復帰施設」というコピーでもって、この1987年の法 改正は行われてきたこと。そして、それに続く5年後見直しのときには、「社会復帰か ら地域社会へ」というコピーでもって、この法改正を行ってきたこと等を勘案し、今後 精神保健福祉施策及びその行政はどういう方向に向くべきかということを私たちは検討 してきたということをまず加えさせていただきます。  それから、さまざま検討した中で、特に長期在院等に関しても議論が随分出ました。 そして資料もたくさん提示していただきましたけれども、この長期在院の問題をどう解 決していくかということに関しましては、既に長期在院に関する検討会が立ち上がって おりますので、そちらの方にこのたびお任せをするということで、資料としては出され ましたし、一応の検討はいたしましたけれども、ここの中には特に述べてありません。  それから、精神病床の問題でございますけれども、精神病床の問題に関しましては、 特例問題がかなり多くの方々からご意見として前もっていただいております。したがっ て、精神病床に関しましても、私たちはかなりの検討を加えたつもりでありますが、そ の特例廃止ということは、いずれにいたしましても医療法の動向を見なければいけない し、医療法の検討していらっしゃるところにどのような申し入れをするかということを 前提に考えてきました。したがいまして、医療法との関係の中で、この検討は進められ てきたわけですけれども、健康政策局からしたがってご意見をいただいたりいたしまし たけれども、この医療法の動向ということを踏まえて実質的な変化が今後起こることを 期待している。こんなふうに考えています。  そして、精神科救急に関してでございますけれども、精神科救急に関しましては、一 般救急の中で行うことができるのではないかというご意見もこの専門委員会の中でも一 部ございました。しかしながら現行の今の精神科医療の状況から考えて、やはり社会復 帰というものを進めていく以上、必ずその反対に、救急の医療に関する受け皿、あるい はその制度というようなものがきちんと決められていない限りは社会復帰がより進む状 況にはないという認識に達して、精神科救急については特別な制度を設けるべきではな いかという結論に達したわけであります。  そのほか、仮入院制度に関しましても、なお仮入院制度が必要であるというご意見も いくつかありました。しかしながら仮入院制度が現実的に年間総入院から見ますと、 微々たる20例しかないということと、また仮入院制度は仮入院した者が閉鎖病棟の中 で処遇されているという現実から考えますと、これらにつきましては、まだ患者と言え るかどうかわかりませんが、その人の人権上の問題から考えると疑問があるという意見 が強くあったように思います。したがって、仮入院制度というのは、精神疾患であるか 否かということの判断をするためにあるわけで、どのような精神疾患であるか、どのよ うな精神疾患の状態であるかという判断をするためのいわば鑑別診断をするための入院 ではないので、まず精神障害者であるか否かの判断をするために閉鎖病棟に入院させる というような制度としては不適切ではないか、こんなような意見があったことを加えま す。  以上、全体的な論調に対してもいろいろと問題があるかと思いますけれども、私ども かなりの時間を使って検討いたしましたので、皆様方のご判断をいただきたいと思いま す。以上です。 ○部会長  ありがとうございました。お聞きくださいましたように、小委員会から、いわばこの 親委員会にご報告がありまして、今後これを参考にしながら、多分11月末ぐらいの日 程だと思いますが、改正の作業をこの部会が責任を持ってやるわけでございますが、ど うぞ、本日の報告書につきまして、忌憚なきご意見をいただきとうございます。宮坂委 員どうぞ。 ○宮坂委員  まずこの報告書の取り扱いでございますが、先ほどの座長の話ですと(案)という形 で出されているというのは、専門委員会としての報告書はまだこれから変えるという話 なのか、専門委員会ではこの報告書というものを出して、そして、それに対して、この 審議会の場で、これをまた議論するというようにしていくのか、そこの点をはっきりさ せないと、何か専門委員会が出したから、もう審議会は一緒になってこれを認めるとい うのはおかしいのではないか。やはり報告書としてもらって、そして、議論すべきで、 今、会長がそういうようなご発言がありましたので、そうかなと思いましたが、ここに (案)と書いてあるのは問題ではないかと思いますが、いかがでしょう。 ○部会長  (案)として出ておりますのは、これは専門委員会の慎重なご討議の結果で、これが 我々部会のメンバーに敬意を表してると思います。これはご了承いただいて、そのまま 動き出すわけではありません。これをもとに、この部会がこれから練り上げていく。こ の中からどれをとっていくかは私どもの責任だと思います。 ○宮坂委員  わかりました。そのようにお願いしたいのですが、いつもこういうものが出てきます と、下でやったから、その上の親委員会といいましょうか、そういうところでは、いつ も議論されずにこのまますっといくのがよくありますので、あえてそういうことを申し 上げたわけです。ですから、これは報告書を専門委員会からいただいたという取り扱い にしていただきたいと思いますが、そこの点だけははっきりさせておきたい。 ○部会長 そのとおりと存じますが、それだけに私ども部会の委員の責任も大きいということで ございますので、どうぞよろしくお願いいたします。どうぞ、古谷委員。 ○古谷委員  基本的なところでお伺いしたいんですけれども、最後に社会復帰に目指してやってき たというふうな法律の改正のところでございましたけれども、社会復帰と同時に、心の健 康づくり等の予防の面も非常にこれからさらに重要になってくるわけですけれども、そ の割に保健領域が全く見られないということがございます。専門委員会の審議経過10 回にわたりました審議内容を見てみますと、これは確かに保健が抜けているから保健の 検討はされなかったのだというふうに思っておりますが、3月のこの部会のときに、や はり企画分科会では保健医療の分野が少ないということで、さらにここのところで検討 してといった文言が入っていました。そして、ここのところでは、ぜひそれを入れてほ しいと私は要望いたしました。保健の問題と保健所の位置づけがここのところでは非常 に不明確であると思います。  それから、「基本的な考え方」の総論のところでは、「良質かつ適切な保健医療福祉 サービスの提供」にあると書いてありますし、いろんな文言のところで、「精神保健福 祉」云々という文言が書いてございますが、その場合の「保健」というのはまくら言葉 にすぎないのでしょうか。まず基本的にその辺を伺ってから次にお伺いしたいと思いま す。 ○吉川委員  座長である私の個人的なまず見解からちょっとお話しをします。個人的な見解として は、精神保健ということを私は大変重要な視点として、これまでもモノに書いてきまし たし、たくさんの主張をしてまいりました。しかしながら厚生行政の中で、現在精神保 健福祉と言われているものは、障害保健福祉部の中に行政としては位置づけられてきた そして、精神保健に関しては、今保健医療局の別の課が担当するという形になっていま す。 こういうような「精神保健福祉」と一言で言う、あるいは「精神保健医療福祉」とい うような相対的なものがこの中で少し現在の厚生行政の中ではまたざきになっているこ とは間違いないと思います。こうした問題が前提にあって、なおかつ精神保健の問題だ けをこの専門委員会の中で検討しようとすると、実はなかなか検討の方向が見つかりま せんでした。  ここからはその検討の内容でございますけれども、したがって精神保健に関して、よ り積極的に精神健康を高めていこうとする、そうした考え方や少なくとも精神的な不健 康に陥らないように、どのように予防していくかという問題については、従来からこれ については保健所等において行われてきていることなので、この際はここでは論じない というようなことになったと思います。それらが全体の経過でございまして、私自身の 個人的な見解とは別に、今のように精神保健に関しては扱ったということになります。 私個人としてはちょっと残念なところありますけれども、しかし現段階、我が国の厚生 省はこういう方向にあることだけは間違いないので、その範囲で私たちは専門委員会を 持ったということになります。以上です。 ○古谷委員  そうしますと保健医療局でさらにこの法改正に向けて検討していくというふうに受け とめてよろしいのでしょうか。  それともう一つは、いろんなものが市町村へ市町村へと移行していく時世ではありま すけれども、こと精神保健に関しましては、特に平成11年の改正に向けては、保健も 福祉も、今介護保険の準備と、特に12年以降になりますと実施ということがあります ので、それの問題で非常に市町村の福祉も保健領域もとてもそういったものは受けられ ないというのが現場の声なんですね。その辺のことをひとつ承知しておいていただきた いことと、あとは保健所を含めた保健領域については、市町村への移行も含めまして、 今後保健医療局の方で検討して、この精神保健福祉法の中に入れていくといった受けと め方でよろしいのでしょうか、確認いたします。 ○杉中補佐  ちょっとよろしいですか。 ○部会長  どうぞ、お願いします。 ○杉中補佐  先ほど吉川先生の中で、一部の言い誤りがあったと思うんですけれども、保健医療局 の方で担当しているのは保健の中でいわゆるメンタルヘルスだけでございます。特にメ ンタルヘルスについて取り上げなかったというのは、議題の中にも専門委員会に委託し ていなかったということがございますし、先ほど委員が言われたようにメンタルヘルス に部分についてもこれから保健医療局の方で検討させてくれということは言っておりま すので、今後、保健医療局の地域保健・健康増進栄養課の方にも積極的な提案と、また 関係者も積極的な提案もしていただいて、この部会の中で取り扱っていただければとい うふうに考えております。 ○牧委員  ちょっと小さいことで、この文案に入るのかどうかわからないのですが、市町村、都 道府県関係の役割の中で、私が体験したことでございますが、退院した患者さんをよそ の病院のデイケアにお願いしたのですが、お願いしたのはいいんですけれども、そこの 市町村から、そこのデイケアのある病院で受診することという命令書が来ましたのです よ。患者さんはうちの病院で治療を受けたいという気持ちがあるわけですね。だから、 ここのところに障害者が選ぶことができるという文章もちょっと入れておいていただい た方がいいかなと。これだと市町村が全部決めてしまっていくような感じがちらっとせ んでもないのでございますが、細かい問題ですいませんが。 ○部会長  意見を伺っておきまして、今後の検討の資料にいたします。 ○三浦委員  先ほどからメンタルヘルスのお話が出たのですが、前の法改正のときに、メンタルヘ ルスのことがやっぱり抜けたんですね。それは当部会ではなくて、今おっしゃったけど 地域保健・健康増進栄養課で扱うから、こちらの方とはちょっと関係なくなるような厚 生省側のお話があったんですが、今、伺ったら、それをまたこちらでやってもいいとい うお話だったのでしょうか。 ○杉中補佐  組織としては、心の健康(メンタルヘルス)については地域保健・健康増進栄養課で やることとなっておりますが、当然法律としては精神保健福祉法の中で取り扱うわけで ございますので、厚生省の組織の問題は別として、法律に関することを扱う審議会とし ては当然この部会になってきますので、今後積極的な心の健康づくりについても提案の 地域保健・健康増進栄養課の方に促して、この部会の中で議論をしていきたいと考えて おります。 ○三浦委員  今までその後の地域保健・健康増進栄養課の方でそういう動きかなんかはどうだった のでしょうか。 ○杉中補佐  具体的にはございませんけれども、問題意識としては持っておりますし、最近いわゆ るメンタルヘルス的なこととか、PTSD、これも一応地域保健・健康増進栄養課の方 でやることになっておるのですけれども、そういったことに関する取り組みが求められ るという自体はかなり大きくなってきておりますので、地域保健・健康増進栄養課の方 でも問題意識は持っておるというふうに感じております。 ○三浦委員  それからもう一つ、この3年間で精神障害者が大分増えたということ、二百万とかに なったという、それはどういう障害者が増えたのでしょうか。例えば疾患別だったらど ういうこと。 ○杉中補佐  また資料として出させていただきたいと思いますけれども、ちょっと正確な記憶では ないのですけれども、増えているものは1つは神経症、中高年のうつ病、もう一つは分 裂病患者がかなり増えているというふうに認識しております。もう一度、217万人の 疾患別の内訳については精査して、次回の部会までに提出させていただきたいと考えて おります。 ○部会長  どうぞお願いいたします。それは興味ありますね。 ○宮坂委員  この報告書の取り扱いですけれども、今議論しているのは、この報告書についての質 問なんですか。それとも何をここで今議論を始めようとしているのか、その点がはっき りしませんのでまとめていただきたい。 ○部会長  座長としては、次の部会から具体的な問題検討、討議に入る。ただいまはこれをお読 みいただいたり、あるいはお聞きいただいたりして、お気づきの点をどうぞフリーディ スカッションでお願いしたいと考えます。 ○宮坂委員  そうするとこの報告書について、全体の流れの中でどんなような雰囲気なのかといっ たことも、これをつくった人たちがどういうふうな雰囲気であったのかとか、私は、こ の報告書について批判的なことになるものですから、そういった内容を申し上げていい のかどうなのか。 ○部会長  どうぞ。 ○宮坂委員  よろしいですか。 ○部会長  はい。 ○宮坂委員  この報告書全体を見ますと、医療そのものに不信感があるような感じの報告書だとい うことが言える。特に精神病院については、病院そのものが非常に悪というような感じ の立場に立った報告書のような感じを受ける。国公立病院はよし、私的病院の質悪しと いうようなものが全体として受けれるということ。また、厚生省が事務局であるにもか かわらず法的に間違えたことも書いてある。そういうふうなことを見て、もう少し議論 を深めていただいたらありがたかったと思いますが、全体では何か病院側が悪いことを しているというような雰囲気の上に立っているような感じがしてならないということを 申し上げておきます。  というのは、まず、第2の現状のところに、改正後も4つの病院が悪いことをしたと こういうふうな、これは事実でございますが、だからというようにしたのが見えること そういうことは世の中にはあるんだけれども、だから監督指導しなければならないとい うような風潮になっている。これが一般の人たちに公開されると、精神科の先生方はこ んなことをやっているのかととられるように思います。悪い精神病院も、悪いといえば 言葉は悪いんですが、法に違反している精神病院があります。精神病院がそのように法 違反をしているならば、これは行政が今の法において、こういうところがうまくいかな いのだということをはっきり述べられるならよろしいのですが、何か委員の先生にそう いうことを書かせているとしかとれない。例えば病院の中で、悪い病院には、どこでし たでしょうか、改ざんをしているというような内容でしたが、だから指導監督をしろと いうふうにどこかに書いてありましたけれども……。 ○部会長  7ページのIIIの2)でしょうね、先生のご指摘は。 ○宮坂委員  はい。虚偽の申し出、報告をしたということになれば、これは行政が今の法で処分で きるわけなんですね。それを不明にして平気でこういうところに書くということが、私 は非常に奇異な感じを受けるわけですよ。「繰り返し行政指導を行っても、全く改善を 行わない悪質な病院があり」とこういうふうに書いてある。これは行政の怠慢の何物で もないと私は考えているわけでして、これを書いて、そして精神病院の改善命令などや るのだというような、今の法律でできないと書いてありますが、これはできるはずだと そういう内容のことがあちこちに見られるということで、報告書全体が奇異に感じると  救急医療のことにつきまして重大なる間違いがあります。例えば精神障害者を緊急に 運ばないというふうに書いてありますが、これは救急救命士法又消防法等によって精神 障害者も運ばなければならないというふうに明記してあるわけでございまして、運ばな いなんていうことは絶対にないわけでございます。そういうことを平気でここに書くと いうことは一体どういうことなんだろうか。「精神障害者の移送に関する制度を設ける」 なんていうようなことを考えるのはいささかおかしいのではないか。これは自治体が行 う義務としてはっきりしているわけですから。  また、救急医療に関しましても、救急医療というのは当然医師がやるべきことであっ て、それを精神科だけ特別にしたときに救急医療が成り立つかどうかと。救急医療は法 定化して精神科だけでやるなんていうのはとんでもない話です。診療所のお医者さんが 救急の初期を行う。そして、精神科の2次病院の先生にお願いする。ですから精神病院 は2次医療をやるような形の整備をしていく。これは当然病院群輪番制の中にも入れる 必要があります。また、現在、精神保健福祉課では、指定医の待機のための予算もつけ ているわけでございまして、救急医療をやってないから法定化するということは、何か 上位に立ったモノの言い方ばかりしているような感じがして、私はこれを読むと不愉快 になったわけです。  というのは、医療をやっている者に対して、法定化してやらせるとか、指導監督をし ろとか、何でそんなことばかり書くのだろうというふうに私は全体として受けたもので すから、全体の印象というふうに申し上げるわけでございます。以上です。 ○部会長  それは、今後の議論の方向のために承っておいていいのですね。 ○宮坂委員  いや、議論でなくて、この報告書についてどうだという議論ですから、それを申し上 げた。そして今後精神保健福祉法を考えるに当たって、考えていく道は違いますよとい うことをはっきり申し上げたわけでして、これが世に出たときにそういうようなことを きちんとつけておかないと、この報告書だけで、多分記者レクもやるでしょう。そのと きにこういうふうなものが出たから、このとおりだということではなくて、この報告書 に対して議論が出たということをつけ加えていただかないと、世に変な感じで持たれれ ると困りますので、そういうことを申し上げたということです。 ○部会長 日本の精神医療を考えるとき、私立病院の功績というのを考えないわけにいかないん じゃないでしょうか。それは当然の前提で、分裂病だけでも入院患者は20万人近くで す。私立精神病院が全部悪であるということを前提にして作業がなされておるとは私は 思えないんですが。そういう誤解を受けては困りますから、記者レク等に当たってはこ ういう意見があったということはつけ加える。それはよろしゅうございますね。次へ行 きます。 ○三觜課長  会長。 ○部会長  はい。どうぞ、お願いいたします。 ○三觜課長  宮坂先生のご指摘のうち、二、三ご説明申し上げたいので、担当の方から説明いたし ます。 ○部会長  どうぞ。 ○杉中補佐  まず第1点は精神科救急の件でございますけれども、これについては自治省、特に消 防庁との担当課とも一応すり合わせをしたものなんですけれども、今のまず消防法上の 扱いですけれども、確かに著しく悪化するおそれがあると認められる症状を示す疾病と いうものについては消防の搬送の対象とはなっております。ただし原則論として、それ は生命にかかわるようなものの場合だという解釈を消防ではしておりまして、精神科に ついては、運んでいる消防もございますけれども、対象外と解釈して運んでないという 消防もあるといった現状であると聞いております。  あと指定病院の話でございますけれども、特に消防側の要望として、運ぶのは我々の 仕事ととしてできるが、ただし運び先がないと。5時間も6時間も運んだまま受入先の 病院を見つけるのに時間がかかるということがあると聞いておりますので、受入先の病 院については制度として明確に位置づけてもらいたいということについては、消防の担 当課の方もそういう意向でございます。既にそういった観点から一般のいわゆる救急指 定病院とは別に精神科救急事業も既にやらざるを得ない状況になっておりますので、そ れは現状を踏まえたものであると考えております。  あともう一点、改善の方ですけれども、確かに先生が言われたような行政の怠慢とい うのはあって、それについては確かに厚生省も含めて責任はあると考えておりますけれ ども、特にここで問題になっているのは、特に改善命令に従わない病院に対して、それ をさらに改善命令に従わせることが担保される措置がないということが問題なのではな いかという意見が専門委員会の中でも出まして、やはり改善命令をかけてもそれに従わ ないような病院があった場合の措置をつくっておく必要があるのではないかという議論 が出たところでございます。以上でございます。 ○宮坂委員  これは精神科の病院だけの問題ではないわけなんですね。改善命令で改善をしないと か、また行政の言うことを聞かないというのは全部の病院に言えることを精神病院に特 化したような形で書きますと、偏見がある上に一層社会の偏見は生ずるであろうと、精 神病院は悪いというふうに思われるんではないですかということを先ほど申し上げたわ けです。  また、救急のことに関しては非常に異議があります。これは消防庁に聞いたという話 ですけれども、運ぶところだけ私たちは確保してくれればいいんですよという話を、だ から法定化するのだというのは話がおかしいのではないか。これは行政が法定化して、 ここへ運べということは越権行為であって、医療というものは法定化して、こうだとい うようにすると非常にぎくしゃくしたものになるのであって、やはりかかりつけ医を中 心にした2次医療救急体制というものを仕組んでいくこと。その中で精神科もやってほ しい。  ただ、精神科の先生が受け入れないというのは何で受け入れないかという議論は、こ れまた別の問題だと思っています。処遇困難と言われているような患者さんが来たとき に、1日や2日は面倒見るけれども、3日、4日となったら大変だから、それは処遇困 難例のことですので、そのことを考えていくべきだとは思います。救急ということにつ いては、一般の医療も精神科医療も差をつけてはいけないのではない。つけることによ って一層偏見というものも起きてくるように私は思っているわけでございます。以上で す。 ○部会長  渡邉委員どうぞ。 ○渡邉委員  1つだけ、精神障害者の人権確保の項で、患者、医師及び保護者以外の患者の代理人 ないし権利擁護者、現在一部で弁護士などが行っておりますが、弁護士に限定するかど うかはまだ検討の余地がありますが、患者の希望する代理人を制度化するといところが やはり検討課題としてぜひこれに入れてほしいと考えております。 ○部会長  それは先生、何ページのところのどこに関係しますか。 ○渡邉委員  具体的に言いますと、7ページの「精神障害者の人権の確保」の1つの項目に上がる か、もしくは精神医療審査会の中における役割か、その位置づけは多少動くかと思いま す。 ○部会長  患者さんの希望する代理人……。 ○渡邉委員  代理人、権利擁護者を当事者以外に1つ位置づけないと、どうしても現在の治療ない し社会復帰というのが関係者だけの閉鎖的な中で行われますと、どうしても人権侵害の おそれが強いということです。 ○部会長  教えていただきたいのですが、後で出てきます成年後見制度とか保護者保佐人とかい うのとクロスするところがあるんですか。それは全く別に法律的にという意味ですか。 ○渡邉委員  別と考えます。ご存じの方はいらっしゃるかと思うんですが、現在いくつかの弁護士 会で、入院患者の精神保健福祉法上の諸要求、処遇改善及び退院請求、あるいは関連の 相談について、即座に弁護士が病院に出かけて行って実情を調査し、必要があれば助言 あるいは代理人になるという活動をしております。  そうしますと、もっと治療が必要な患者さんであれば、主治医と患者の側の代理人が 入って話し合うことによって、場合によっては患者自身が納得する。あるいは社会復帰 させていい患者の場合は受け入れ態勢を代理人の活動で確保する。漫然と病院に滞留さ せることを少なくするという役割を果たすわけです。 ○部会長  わかりました。記録しておきます。谷中委員どうぞ。 ○谷中委員  今回の位置づけで、少し私極端なことをお話しして少し論議したらよろしいかなとい うふうに思うので、先ほどの吉川先生のお話の中にありました「精神病院から社会復帰 施設へ」、さらには「地域」。今回の中心は地域において精神障害者をどう支えるかと いうことの仕組み、法制度、ソーシャルサービス、そういう体系づけをどう盛り込むか ということに私はポイントがあると思いますので、私なりの意見を述べた後、少しこの 委員会には躊躇されている部分もいっぱい見受けられるので、その点を少し明確にして いただきたいなというふうに思います。  私の考えはもうこの時代はより生活に密着した市町村がすべての中心になるべきだと 思います。そして、いろいろな障害も統合してケアマネジメントを市町村で相談窓口一 本化すべきだと思います。そして、さらには他の障害者の福祉施策と兼職の、老人も視 野に入れたソーシャルサービスの一体化を図るべきときが来ているのではないかと思い ます。  ちょっと極端なことを申しますと、精神障害、知的障害、身体障害等も施設等の利用 も相互利用できるような、そういう仕組みにすべきではないかと思います。そういうあ り方を考えますと、市町村の役割は実施の計画から実施、さらに査察、これを一体化し て市町村が担うべきではないかと思います。  こういうことから考えていきますと、まだ市町村の役割をきちんと明記するにはいく つかの配慮や躊躇やいろいろ問題で足踏みしているような感じを私には受けるんです。 例えば市町村がこれらのシステムを構築するためのプラン並びに実際に施設を整備する そういうことについても市町村に役割をきちんと位置づけられなかったのかとか、査察 のことに関しましても指導監督、これは私、先ほどの精神病院における指導観察の問題 と重ね合わせて考えますと、社会復帰施設に指導観察は絶対に必要だと思っています。 私の立場としては本当を言うと嫌なんですけれども、どうも日本の精神病院、特に民間 病院に第三者からの査察あるいは指導監督ということのすべがきちんとなされてなかっ たという問題性は、今度私たち社会復帰施設においても同じ過ちをしてはいけないと考 えているんです。ですから第三者がきちんと査察するなり、指導監督するという権限を 施設以外のところがきちんと持つべきだといった考えに基づきますと、これらのことを もう一度再構築する必要があると思います。  その際にそういう社会復帰施設のことに関して申し上げますと、精神医療審査会にそ のことがあるのはちょっと納得いかない点で、委員の構成も検討するというふうに述べ られておりますが、その辺の中身の問題ですね。  それから、もう一つの問題は、市町村に役割が精神保健の場合に落ちると、今度都道 府県のレベルにおける役割はどうかと。いくつか市町村へのサポートであるとか、調整 であるとか、技術指導であるとか、あるいは広域的なところを県が担うというふうに出 ておりますが、この辺の役割の明確とお金の流れや、従来の仕組みとその辺も抜本的に 変えていくというふうなところまでご議論が進まれたのかどうか、その辺についてお尋 ねしたい。 ○吉川委員  経過だけ話をしてお答えにしたいと思います。今、谷中先生からお話をいただきまし たようなことは確かに議論はされました。そして、報告書(案)としてご提出いたしま したこのことに少々ぶれがあるというような受けとめ方をされますことも私たちは承知 をしております。それはなぜかと申しますと現行の問題があるからでございまして、谷 中先生がおっしゃるように、本当にこうあるべきということだけで、この報告書を書け なかったのは、やはりそれぞれの委員の先生方は現場を持ってらっしゃいますし、その 現場の中で考えていくと、当面このぐらいのところがせいぜいかなというのから、やは りこうあるべきだという議論までたくさんあります。それらを勘案して、こんな形にさ せていただいたものですから、やはりぶれが出てくるのはやむを得ないかなと私はそう いうふうに思っています。もちろん私自身の責任が大きいと思っていますが、以上、そ の辺のところはご了解いただきたいと思っています。  ただ、今後の問題としては、当然のことながら、今、谷中先生ご指摘されたようなこ とは考えていかなくちゃいけないことですし、この報告書そのものに規定されることで はなくて、今後この部会がこれからの精神保健福祉のあり方を方向づけてくださること をお願いしたいと思います。 ○部会長  杉中補佐、どうぞ。 ○杉中補佐  最後の補助制度の仕組みとかということに関してコメントをさせていただきたいんで すけれども、今回我々が専門委員会の中で議論させて、多少事務局としての意見も入れ させていただいたのは、障害保健福祉部として、障害者の福祉に係る仕組みはできるだ け一本化していこうというところを盛り込んでいただきたいと。身体障害者と知的障害 者を併せて市町村を中心とした仕組みをつくろうというところではあるんですけれども 向こうの方が今いわゆる福祉における措置制度を利用契約制度に転換しようと、これま た非常に大きな課題について検討しているところでございまして、向こうをどうしてい くかということが決まらないことがあって、我々の地域における福祉施策の仕組みをど うしていくかということも最終的に具体的な形では出せなかったという経緯がございま す。  今後、秋以降、当然三審議会の合同企画分科会等を中心にその点について議論という ことになりますので、それを受けてこの部会の中で、さらに三障害統一の福祉施策のあ り方について議論していくというふうになると考えおります。 ○部会長  藤原委員どうぞ。 ○藤原委員  二、三お伺いやらご意見を申し上げたいのですが、一番最初に古谷委員さんがおっし ゃいましたように、今、市町村は非常に福祉の問題が量的に多くて、市町村の役割が随 分明確にまた多く位置づけられておりますけれども、とても市町村の立場に立ったら受 けきれないのではないかなということが1つ心配でございます。  それから、保健所はそれの支援という形で出ておりますが、現在のところは支援とい うよりも実際保健所が一時的にやらないとなかなか地域に根づいていかないというとこ ろがございますので、将来的には支援して市町村ができるようにしていったらいいので しょうけれども、ちょっと時間がかかるということをひとつご理解いただきたいと思い ます。  それから、精神科疾患というのは、知的障害なんかと一緒に障害者は地域でというこ とで足並みをそろえて今回議論されていかれておるので、それは当然だろうと思います けれども、少し違うのは知的障害者というのはずっとその地域に住み続けております。 精神障害者の場合は特に特殊性から言いますと、かなり思春期のころからそれ以後に発 病しておりますので、地元にずっと住み続けていないんですね。いろんな問題が広域的 に処理しなければならない、情報を集めなければならないということが1つネックにな っているのではないか、処遇の面で。例えて言えば、僻地の方ですとほとんど外へ出て 出稼ぎですよね。そこに発病して、それで地元へ帰らされても何の受け渡しといいます か、引き継ぎがないわけです。ただ要らなくなったから解雇したとか、大学生であれば 退学してもらうという感じで帰ってきてますので、親に対する説明が全然できてないと 地域に対しても。  そういうことがありますので、何かそういう結核のようなビジブルというのはまた問 題かもしれませんけれども、何か引き継げるようなシステムが必要ではないかと。そこ に必ずしも保健所が関与せいというわけではないんですが、結核のような全国的なシス テムを組んでいるこういうのを使っていただいたらスムーズにいくのではないか。それ が1つ私の方でも経験しておりまして、名古屋からの学生さん、保健所を通して家庭状 況なども所長さんにお伺いしまして、うまく向こうの方に引き渡しができたと。引き渡 しといいますか、親御さんに引き取ってもらったというのがありまして、そういう既存 のシステムを使って処遇していった例がございますので、広域的な情報交換が要るとい うことを1つ考えていただきたい。  もう一点、8ページにございます精神医療審査会、社会復帰施設等における処方につ いても精神医療審査会というのを視野に入れて考えていくということで結構なことだと 思いますが、なぜ今まで医療審査会がそういう役割を果たせなくて、機能できてなかっ たかということも1つお考えいただきたいと思いますのは、私はちょっと遠いと思うん です、地域から医療審査会というのは。県でよそはどうか知りませんが、地方において は県1つなんですね、医療審査会が。地元の意見とか地元の考え方、状況というのが全 然ここに入ってきていない。入所させるかどうか、処遇が適当かどうか、それだけです から、社会復帰のところまで視点がいっていなかったということが最大な原因でしょう けれども、それができないのは県一本である。ちょっと地元から遠いということがあろ うかと思うんです。社会復帰の視点を審査会に機能させるならば、もっと地元に近いと ころでの精神医療審査会を設置していただく必要があるのではないか。これも結核を視 点に入れまして、各保健所に結核審査会がございます。その方の家庭環境とか感染させ られるような、そんな家族がないかどうか、そんなことも調査して、これが入院しなけ ればならないのか、あるいは家庭で治療できるのかというのを決めてきた結核の審査会 のところから発想して、申し上げているのですが、県一本でちょっと地元から遠くなる ということは社会復帰の視点というのはなかなか盛り込みにくいのではないか、そのよ うに思います。 ○部会長  相澤委員どうぞ。 ○相澤委員  市町村の役割については、谷中委員がおっしゃったとおりですし、それを現実化させ るのは非常に困難であるということは藤原委員のおっしゃるとおりなんで、これは別途 多分協議されている市町村合併であるとか、広域連合であるとか、事務組合であるとか そういったものが同時的に進行していく中で、この議論を検討していかないとなかなか 推進できないことではないかと私は従来から思っておりました。当然福祉に関しては、 市町村が身近な住民のためにサービスを提供するのは当然のことですし、今後ともそれ を推進していかなければいけないとは思っております。ですから別の方の進行をにらみ ながら考えていくべきであろうと。  それから、福祉的なサービスを市町村にといいますと、従来から精神保健福祉センター で行っておりました心の健康づくりであるとか保健であるとか、そういったものの業務 はますますセンターに課せられてくるのだろうと思っております。この(案)の中にも わざわざ1項立てていただいているわけですけれども、そういうふうなセンターの役割 が、今まで余り世間の中で認められていないというのはやっぱり都道府県に設置が義務 づけられていないところが非常に大きいのではないか。ほかの更生相談所などは設置義 務を持たなければいけないようになっているんですが、仕事の中身からすれば、センター の方が何倍も大きな仕事をしていると思うんですね。ところが義務設置になっていると ころは、それなりの権限を持って仕事ができるといったことで、センターも都道府県で あれば、青森県を最後に全県に設置されましたし、あと政令市に若干残っているところ がありますが、ぜひともこれは必置にしていかないと、センターの役割をこれから大き く権限を持った力というふうにはいかないのではないかと思うんですね。  それは私十数年ずっとこのことは言い続けておりまして、前のセンター長会議のとき にも、厚生省側にご質問いたしました。何で都道府県に必置にならないのか。そのとき にお答えになったのが次のようなことでした。都道府県に必置にしてしまうと、設置を してない県が法律違反ということになるからだというふうなご答弁をいただいたんです ね。どうもそれはおかしいんじゃないか。必置となるのであれば、それに向けて都道府 県が努力すべきであって、現実につくってないから、おまえのところは法律違反だと決 めつける、そういうこととはまた別の話ではないかなと。現在政令市にまだつくられて いないところがありますけれども、やはり必置にしていけば、これからの大都市こそ大 きな問題が起きるとここにも書いてありますけれども、そういったものも解決されてい くのではないかと思っております。 ○岡上委員  2点申し上げます。1つは重要な問題がたくさんあって、その中に割り込むのも大変 だなという気がしますけれども、1つはぜひ作業所の問題をどこかで議論して位置づけ を少し議論していただきたいと思います。現在1万人から2万人ぐらいの規模であるわ けです。そういうことはほかの障害と一緒でいいではないかというご意見がありますが 実は合同分科会の意見もそうですけれども、議論するときは必ず身体障害から出発する んです。それは何も疑いもなくそういうことで進められてきているのが現実なんですね 知的障害とか精神障害の方から出発することは一遍もないんです。それはどうしてかと いうと、1つは内実が伴ってないということがあるんですね。やはり全体で一緒のもの 統合化していくには、やはり精神障害はそれなりの内実化を図っていかなければいけな いんですね。そういうことがないと、やはり統合は進まないと思うんです。ぜひ、その ことの1つのシンボルとして、作業所問題の位置づけを考えていただきたいということ が1つです。  2つ目は、11ページのその他のところに「精神障害者の定義」ということが書いて あるのは大変ありがたいことのわけですけれども、これについて、私は部会長に文書で お願いの申し入れをしたところなんでけれども、字句の問題だけではなくて、この定義 は従来言われている明確化ということの点において。2つ目は国際基準に合わせてとい うことについて。もう一つは人権上の問題について、大変重大な問題をはらんでいて、 これを看過するのは専門家として大変よくないと思っていますので、ぜひどこかで短時 間でも議論をしていただいて、今後の法改正に間に合うかどうかは別としまして、きち んと方向づけをすることが専門家の務めだと思いますので、どうぞよろしくお願いした いと思います。 ○部会長  簡単に委員のお考えをうけたまわれませんか。私もその問題は大事な問題だと思って いるんですが、なかなか難しいので。 ○岡上委員  申し入れしたことで言いますと、1つは精神疾患を有するものであるという精神疾患 というのを、国際分類でいうと何に当たるかということについて必ずしも統一されてな いわけです。統一されてないとすると、第5条の定義は何にも定義してないと同じなん ですね。それで人権上の問題の縛りをかけるとか決めるということはゆゆしき問題であ るということが1点です。  第2にそれを精神疾患ということで全部統一して「精神疾患者」というふうにすれば いいということがありますけど、そうしますと精神病質が疾患ということでないといけ ません。知的障害も同じです。定説という点ではそれもだめ。そのほかに国際基準に合 わせているときに「精神病質」という言葉を使っています。それは国際基準もそうです が、今、単に「精神病質」という言葉はどこの国でもまず使ってない。使っているのは 条件づきで使うということであります。全然国際的に通用しないと思います。 最後に人権上の問題ですけれども、例えば放射性同位元素等における放射線障害防止 に関する法律では精神障害者は絶対欠格になっています。そうすると現在言われている ような非常に包括的な精神障害者という概念を使うとだれでもみんなだめになっちゃう んですね。精神科に一遍かかった人がみんなだめになるという字句上の話ですけれども それから診療放射線技師法で、これは相対欠格ですけれども、精神障害になったら取り 消すことができるというふうになるんですね。これもやはり大変おかしな決まり方で、 現実に人権侵害が起こるとは私は思ってませんけれども、こういうことは基本的な問題 だと思います。 ○部会長  ありがとうございました。 ○小池委員  専門委員が網羅的に今問題になっている問題をよく整理してまとめていただいたとい うことについて、私は敬意を表したいと思います。ただ、もっと踏み込んでほしい問題 はいくつかあります。しかし今まで抜けていたこと、例えば医療法の特例撤廃、一般化 医療に引き上げるというような問題に踏み込んでおりますし、医療保護入院につきまし てはもっと踏み込むべき時代だと思うんですが、これについても触れておりますので、 全体的には合格点といいますか、非常によくできていると思います。  ただ、今後さらに提起させていただきたい問題がありますので、今後内実のある討議 をこの部会でやっていただきたいと思います。 ○部会長  古谷委員どうぞ。 ○古谷委員  確認と意見ですけれども、確認のところでは、先ほどの保健については保健医療局の 方が担当ということで、そことあわせて一体的にここの部会で検討していくということ でよろしいわけですね。それをちょっと確認させていただきます。  それから、市町村と都道府県との役割のところがございましたけれども、ここのとこ ろで、特に精神障害者の手帳の交付のところは市町村へと書いてございますが、ゆくゆ くは、これはそういうふうになろうかと思うんですが、交付ともう一つは通院公費負担 のところがございました。ここでは非常に医療部分の相談が多いところなんですね。申 請あるいは更新の手続きに来たときの相談が非常に多いということで、これは福祉とい うよりも保健と医療に関する部分、特に医療の部分が多いということがありますので、 これを市町村に移すということはどうなのかなというふうに考えております。そして、 最近は病院の入院期間が長いこともあろうかと思うんですが、かなりのこういう人がと いうような方がどんどん退院してきて、地域では受け皿がないままに相談に応じなけれ ばいけないといった現状も非常に多い。そして、特にグレーゾーンの方が増えているこ とも事実でございますので、やはりここのところではいきなり市町村というのは、また 物によっては医療部分の相談が多いということもご理解いただきたいと思います。  それから、精神保健福祉センターの役割のところでは、やはり広域的に行っている保 健所と保健福祉センターとの役割をもう一度考える必要もあるのではないかと思います 2次医療圏ごとに保健所がありますけれども、やはり全県1つ、あるいは全くないとこ ろに位置づけるのか、あるいは2次医療圏の保健所に広域的な調整部分を位置づけるの か、その辺もこれからの検討だと思っております。よろしくお願いいたします。 ○部会長  大熊委員どうぞ。 ○大熊委員  質問という形で4つほど尋ねさせていただきたいんですけれども、1つは、先ほど吉 川先生が第1回目の改正が「病院から社会復帰施設へ」、次が「社会復帰施設から社会 へ」、今回のキャッチフレーズといいますか、方向づけは何でしょうかというのが1つ です。  2つ目に、この中に「適切かつ良質な」ということがうたわれているのですが、今の 精神病院のアメニティであるとか、それからここにも書かれているように任意入院であ りながら、50%近くが閉鎖病棟に入っているというようなことについてのもうちょっと 強力なものがなぜ出ていないのかということ。  3番目は、そういう良質な医療が自動的に行われていくためには情報公開が一番手間 もかからず効果的だと思うのですが、例えば医療従事者の数であるとか、閉鎖の状況と かについての情報公開をなぜ盛り込まなかったのか。と申しますのは、こちらの小委員 会の方が終わるより前に宮城県から法改正についての要望書ができていて、さっき事務 局に、これ皆様にも配られたらどうかと申し上げたんですけれども、そこなどにも医師 看護婦、精神保健福祉士、医療スタッフの状況やデイケアの実施状況など病院側の情報 を公開することというような、ほかにもいろいろ数々いいことが書いてあるんですけど そういうものが入っていないのはなぜでしょうか。  それから、最後のは大変些細なことなんですけれども、この報告書で紙が貼ってある と、人間て紙貼る前は何て書いたあったんだろうかなというのが知りたくなって、すか してみましたところ、例えば2ページでございますと、 3のところの「病状が安定して いても」、その後にどうも「入院医療が不必要であっても」という文字が入っていて、 これは大変重要なことであり、やはりこれまでが、こういうふうだったからこうしなけ ればいけないという根拠になるように思います。それから、例えば3ページ目の最初の マルですけれども、「都道府県中心の現行施策を転換し」というところには、「都道府 県・入院医療中心の」というようなものが入っていたものが、なぜか紙が貼ってあると いうのは、せっかくいいこと書いてあったのに後退しているのではないかとすかしてみ ると思うわけであります。  先ほど宮坂先生から、ほかの病院と平等にやってほしいというお話がありましたけれ ども、それはほかの医療と違って精神保健の審議会が設けられているのは、ほかの病院 だったらば、ひどかったらその病院から自分で退院してくればいいし、いろいろな口コ ミの評判などでもだめな医療をやっているとかなり自然淘汰されていくけれども、こと 精神医療については身体拘束とかいろいろあって、ちょっと別に考えなければいけない ということがあるのではないか。  以上、4点お尋ねしたいと思います。 ○吉川委員  先ほど谷中委員の方からお話をいただきましたように、やはり平成5年の改正は、明 らかに「社会復帰施設から地域へ」、こういうようなキャッチフレーズで広められまし た。そのキャッチフレーズに乗って言えば、これから地域の中でより定着した生活がで きるようにということだろうと思います。特別にキャッチフレーズを考えていたわけで はありませんので、ただ、今回の専門委員会の中の議論というのはほぼその方向で議論 されていたと思います。それは現在精神病院をご自身で経営されている先生方にしろ、 あるいは公務員の方々で精神病院の中で勤務されている人にしろ、その考え方は私は一 致していたように思うんです。ですから医療というものを否定するところなんて全くな いわけで、ただ、医療を病院の中の医療というだけではなくて、そして、外来医療を含 めた医療だけでもなくて精神障害者の地域でのケアは、周辺のさまざまな力がなければ 進まないということを改めてこの委員会の中で私は検討できたと思っています。その辺 のところが、この報告書の案を読んでいただいてお酌み取りいただければなとこう思い ます。  適正な医療を提供するという問題に関しましても、もちろん当然なことでございます から、今申し上げたとおりでございますけれども、良質な医療、あるいは良質な保健福 祉サービスを提供するには情報公開が必要であることは重々わかっているつもりでした けれども、今回のこの専門委員会での議論と特別に柱として上げることはいたしません でした。ただ、常にその問題はあったわけでございまして、文章上確かにそんな形で載 せなかったことに問題があるとすれば、私自身が十分な認識がなかったということなの かもしれません。  先ほどの適正医療の問題が特に人員配置や何かにつきましては、従来からもいろいろ な情報を厚生省も持っておられますし、これらを徐々に広げていくお考えもあるように 伺っていますので、この辺のところはまた時間を見ていただきたいと思います。  あと、貼り紙をした問題に関しましては大変申しわけありませんけれども、私どもが 一応まとめた段階のところでさまざまな方々にご検討いただいたということがありまし て、その結果、この資料集の方が先にできてしまったという、そんな前後がありました ものですから、やむを得ず貼り紙で済まさせていただきました。その辺のところは私の 方からおわびしないといけないと思います。以上です。 ○北川委員  吉川先生、大変苦労されてまとめられたことに敬意を表するものであります。ただ、 法改正ということだけでなくて、将来へ向けていろんな議論もあったというふうにおっ しゃられたので、一言質問させていただきたいのですが、これだけのいろんな新しい方 向づけをしていく上で、マンパワーの話をどう考えられたのか。特に市町村にある機能 を持っていこうとする場合に、従来一般の地域保健の問題でもそうなんですけれども、 何となくなしくずしにといいますか、何となく自然発生的にそういうものが動いていく ことを期待しておるというのは非常によくないと私は思うんですね。だから、マンパワー の質と量の問題をあわせて何らかの方向で考えていかなければいけないのではないのか なと。  それから、行政の機構としてどんなことが市町村に想定できるのか。恐らく現在の段 階でもいろんなことをやっている市町村は多分あるだろうと思うんですね。そういうも のを1つの原型にしながら、将来の市町村の機能というものはこう考えていくのではな いかというようなことをもう少し議論をしていただく必要がないのか、これが1つ。  もう一つは、日本の精神保健医療全体のお金の問題、病院を中心とした施設の問題、 そこにいるマンパワーの問題、こういうものをどう考えていくのかと。患者さんが増え ているというような話もさっきあったわけですけれども、本質的にはもっと病院の患者 さんを地域社会の中に受け入れる体制をつくると、こういうふうな流れが非常に大きい と思うんですけれども、そういう場合に既存の病院というものを社会的なリソースとし てどう考えていくのか。一般によく言われるのは日本の病院のベッド数は国際的に見て も非常に大きいと、こういうことがいつもよく言われているわけですけれども、そこの ところはほっておくのかなと。あるいはもっと病院のパワーというものを社会的に現状 にフィットする格好でうまく活用していくかどうかという観点はどうかなと。  この2つの点について、専門委員会でどうお考えになられたのか、あるいはこれから この部会の中でどう議論が展開されていくのかなということについて問題提起を申し上 げたい。 ○吉川委員  やはり検討経過の中からお話しをしますけれども、マンパワーの問題は何度か話は出 ましたけれども、実際問題として、私たちの能力を超えているといいますか、やはり養 成の問題もありますし、一体どれぐらいのマンパワーが必要かという計算そのものをす るだけの力は十分になかったと思います。それで必ずしもマンパワーについて議論がま とまったことにはなりませんでした。ただ、勢いとしては、昨年の末に成立をいたしま した精神保健福祉士の問題ですけれども、こうした方々が今後は出てくることになりま すし、それらの方々の力をどういうふうに活用したらいいのかということはかなり論議 されたように思います。それがマンパワーの問題でございまして、それに続いてさっき 先生がおっしゃいました市町村行政のシステムということをどこまでわかっていたのか ということになりますが、それらにつきましては、必ずしも私たちが十分に把握してい たとは思いませんけれども、お話いただきましたモデル地域に近い考え方、すなわち現 在どういうところでどんなことをやっているかということに関してはかなり話が出たと 思います。それは資料として出たものもありますし、それではなくて、それぞれ委員の 方々が自分たちの地域でどういうことが行われているかということについてお話をして いただいたということもありました。ただ、まとめてそれを市町村行政の中に精神保健 福祉行政をどういうように位置づけるかというような意味合いで内容あるものにまとめ ることはできなかったと思います。  もう一つは、今の病院システムをどれだけ重要視するか。今後病院システムをもっと ポジティブな意味で活用していく方向ということは検討されたかどうかということでご ざいます。これは中に精神病院協会の所属していらっしゃる先生方も何人もおられまし たし、同時にそれらの先生方がかなり積極的にこれからの精神科医療というものについ てお考えくださっておりましたので、私はかなりそこのところは議論というよりも、む しろ積極的な意味合いを込めて話がされたと思っています。確かに具体的に病院がどう なければいけないのか、仮に社会復帰関連施設と精神病院の関係はどうなのかというこ とについて、ここの中で記載はできませんでしたが、こうしたことも含めて、今後の精 神保健福祉行政あるいは精神保健福祉の施策にかかわる問題として、精神病院が積極的 な意味を持つ必要があるということに関しても、私たちの委員の間で認識が深まったと いうことは申し上げられると思います。以上です。 ○部会長  窪田委員どうぞ。 ○窪田委員  全体として、今後の精神保健福祉の方向をとらえて、将来の検討課題という形でいろ いろ示していただくことを含めまして、この報告書の全体のトーン、何ていったらいい のでしょうか、方向については、私は賛成をいたします。それで、ただ、もちろん気に なりますのはいろいろ文章の中にも気をつけて、そういう必要があるとか、あるだろう とか、整備しろとか、いろいろな言葉をきっとお使いになった方たちはそれぞれの程度 があるのでしょうね。例えば次の法改正で扱うとか、いや、その次にとかというのがあ るのでしょうけれども、それが全部一緒に遠近法なく全部入っておりますので、法改正 を実際どうするかという段階の話になりましたときに、それはある程度区別されるにし ろ、これとして少し受けとりにくいことがあることは感想としてちょっと申し上げます  それとの関連で言いますと、この委員会の最初から問題になっております心の健康と の関係は、吉川先生の本来の流れのご主張から言えば本意でないという分け方をなさっ たのだというふうに承りましたし、そうであろうと思いますが、どういう切り方がいい のかというのは問題だと思います。というのは、新入院患者数の推移というので、いた だきました資料の24ページの一番下に表がございまして、そこで増えておりますのは 全部65歳以上層でございます。というのは、括弧つきで言わせていただく老人ぼけで すね。引用がいろいろ難しいと思いますが、その問題というのはやっぱり心の健康の部 分とか家族関係の部分と非常に重なっておりまして、思春期なんかも一方の話でそうで ありましょうけれども、医療は狭く言えば、医療法の問題でありますけれども、そこと のつながりをどう考えるかということについては、やはりこういう報告書を読む世論と いう立場で言えば、かなり重なりとつながりと区別みたいなものを専門委員会としてと いう形で、何かの形で、アルコールなどもそうですが、触れるべきかなというふうにち ょっと思いました。この報告書に入れるべきかどうか別として。  その点と同じことなのですが、さっき岡上先生がおっしゃいましたことは、私も本当 に同感でございまして、3つの障害を全部まとめるというのはいいんですけれども、そ のときにどうしても身体障害がモデルになる。数で言うと精神薄弱の方が多うございま すから、今度は精神薄弱の方がモデルになりますから、精神薄弱はそこで重度とか中度 とか、そういうふうにいくらか言ってもおりますけれども、そういうときに、精神障害 の対策の部分はおくれていると。だから身体障害やなんかのところに合わせなければな らないという論理、それの正さなんかもあるかわり、ホームヘルパーなんかは精神障害 者は使いたくても使えないのですから、それも使いたい。それはわかるのですけれども 同時に精神科疾患による障害というものの特性みたいなもの、特性というふうに十把ひ とからげに言えないということを百も承知の上で申し上げますけれども、しかし実際に グループホームにしても何にしても、やっぱり人数の問題とかマンパワー。それをマン パワーの問題ということができるのか、それともメンバー自身が生活していく単位の人 数もあると思うんですけれども、それから作業の種類とか、そういう一方では具体的に 精神障害者の支援について積み重ねられてきているものがいくつもございます。  そういったものを、精神障害は違うのだということを言い立てるのでなく、どういう ふうに統合していきます障害者福祉の中に入れていくかいうことの論理といいましょう か、その辺が今とても弱いように思います。精神障害者は別だ別だと言いたくない、一 緒だということを言いたいし、そうかといって、市町村やなんかで今障害者の問題やっ ている人に、全部一緒だから同じにしてくださいというふうに言っていいかという問題 はやっぱりあるわけでして、そこのところは今後の方向としてどう考えていくべきかを 一度議論したいと思います。つまらない意見ですが。 ○部会長  これで最後にさせていただきます。どうぞ、井上委員。 ○井上委員  簡単に2点だけお伺いしたいのですが、1つは医療保護入院なんですけれども、これ を廃止した方がいいという意見がいろんな団体から出ていると思うんですが、全体のバ ランスとしてそういう意見、結局、廃止しないといった方向で結論が出ていると思うん ですけれども、それは過去のICJの勧告以来ずっと議論が積み重なっていると思うん ですが、どの程度強くなってきているのか、あるいは変わらないのか、その辺の方向性 みたいなものがもしおわかりになればということが1点。  インフォームドコンセントのことが、今ちょっと資料を拝見しても余りクリアに書か れていなかったと思うんですが、これに関してはどの程度の議論がされたのかなという ことをちょっとお伺いしたい。 ○吉川委員  医療保護入院に関しましては、文面をごらんになっていただきますとおわかりいただ けると思いますけれども、医療保護入院というものの制限といいますか、そちらをかな り厳しくしながら、医療保護入院に従って判定基準等をつくるとか、あるいはこういう ことに限定すべきであるというような、そうした言い方でもって、医療保護入院の範囲 をできるだけ狭めていこうという方向で検討しました。それはいくつかもちろん理由が ありますが、医療保護入院に関しまして、保護者の問題がつきまといますし、保護者の 問題は、先ほど申しました成年後見制度の問題とも絡みますし、さまざまほかの要素と も絡んでいきます。  そんなことから、今回少なくともこの私たちの議論の中で、あるべき姿として医療保 護入院をすべてなくそうという意見の方も中にはおりましたけれども、それらが最終的 には、こうした段階的にそれを変えていくというところにおさまったということでござ います。  それから、インフォームドコンセントのことに関しましては、少なくとも精神障害者 にかかわる問題としては、精神保健指定医の問題と深く絡みますし、そのことは指定医 制度をつくることと、また指定医制度の中で、この部会の中でも指定医を資格を外すと いうような、そうした議論をこの部会の中でもしていただいたことがあると思いますけ れども、そのような議論が既にあるものですから、少なくともインフォームドコンセン トという形の表向き、私たちは取り上げることはしませんでした。ただ、当然のことだ と言えば当然のことでございまして、そんなふうに扱ったんですけれども、何かもっと きちんと強調すべきことがあったのかもしれないと思っています。以上です。 ○部会長  ありがとうございました。少し時間を超過してしまいました。大事なことでございま したので、お許しをいただきとうございます。  今ご議論いただきましたが、今後もこれをベースにはいたしますが、これに 100%束 縛されるとか、そういうことではありません。今ご指摘ありましたように、大体の問題 点はいろいろな形で頭を出しておると存じますので、この報告書のご努力に感謝して、 この(案)というのをとらせていただくことになりますが、よろしゅうございましょう か。 ありがとうございました。 ○宮坂委員 これはここで決めることじゃないでしょう。 ○部会長 どういうことですか。 ○宮坂委員  私、先ほど申し上げたのは、この精神保健福祉審議会で(案)をとるとか、とらない とかいう問題ではないのではないかということを申し上げたのであって、(案)をとる というのは吉川先生が報告書を持ってくる段階で、(案)はとれたのか、とれないのか ということを先ほどお聞きしたわけで、ここでもってオーソライズしたから、(案)が とれたとか、そういう意味ではないのではないか。そうしないと議論はおかしくなりま す。我々の(案)だということになったらとんでもない話になりますということを先ほ ど申し上げたわけです。 ○部会長  ちょっと私の理解が悪いかもわかりませんが、これは私どもの部会が委員を選任して お願いした専門委員会でございまして、そっちからご報告が出てきましたので、これは ここまでは(案)として出していただいて、(案)をとるのが正当ではないかと思うん ですが、そうじゃありませんか。 ○宮坂委員  それは違うのではないかと。やはり専門委員会として独立の委員会であるわけですか ら、全部我々が任したとなれば、これは我々の意見になります。しかし、我々の意見で はありませんので、専門委員会の報告書として出てきたのですから、その報告書として 吉川先生が(案)ではなくてお出しになればいいんですけれども、(案)になれば、ま た専門委員会のところに返してほしい。我々がいいとか悪いとかという問題ではないの ではないかということを申し上げています。 ○三觜課長  会長、宮坂先生のおっしゃるとおりでして、専門委員会の報告をきょう受けていろい ろな議論があったと。部会としていろいろ議論されたということでよろしいのではない かと思います。 ○吉川委員  もし皆様方のお許しというと変ですけれども、私がご報告したことを、この検討委員 会の報告としてお受りいただけるとすれば、そのまま私は(案)という字を消すことは 一向に構いません。この報告書をどうこれから扱うかはこの部会の問題でございますの で、そのような形で処理をしていただけるのであれば、私はこれでお役御免になります ので大変ありがたいと思っています。 ○部会長  どうぞ、岡上委員。 ○岡上委員  (案)をとるのでしたら、覚せい剤中毒のところに薬物依存というふうに、「覚せい 剤依存者」と書いてありますけれども、これは私は「乱用者」というふうに変えないと おかしいと思うので、それだけご検討お願いしたいと吉川委員にお願いします。  それから、もう一つ、今私が部会長に出したものが配られましたけれども、これは部 会長に対する私信のつもりであったんですけど、ちょっとミスプリとかいろんなことが あると思いますけど、どうぞお許しいただきたいと思います。 ○部会長  では、今課長のサジェスチョンもありますから、吉川委員(案)をとって。 ○吉川委員  お出しをしたことにします。 ○部会長  よろしゅうございましょうか、皆さん。では、そういうふうに考えることにいたしま す。どうも長時間ありがとうございました。あと5分ほどいただきまして、今後のスケ ジュールがございます。ご説明いただけますか。 ○杉中補佐  それでは説明させていただきます。今後の検討の進め方について、事務局として案を 提示いたしましたのでご説明をさせていただきます。  今後、精神保健福祉法の見直しと、あと先ほど言いました精神病床の部分は医療法の 関係がございますので、大きくこの2つについて検討をしていく必要があると考えてお りますけれども、以下のような体制で見直しをしていきたいと考えております。まず当 精神保健福祉部会でございますけれども、この専門委員会の報告書を土台にして、さら に最終的な報告に向けて精神保健福祉法の見直しについてこの部会として議論を行うと いうふうに考えております。  今後のスケジュールでございますが、これは目安でございますけれども、10月上旬 ぐらいにもう一回部会を開くということから、10月、11月にこの報告書に対する委 員の意見であるとか、また別途の観点等もございましょうが、精神保健福祉法のあり方 について議論を行うということで、11月中をめどに精神保健福祉部会としての報告を 取りまとめたいと考えております。  次に合同企画分科会でございますが、ここについて、今までも3障害の共通事項につ いて審議をしておるわけですけれども、今後特に身体障害者福祉制度、知的障害者の福 祉制度における利用者本位の考え方に立った新たなサービスの利用の仕組みについて議 論をするということになっておりますので、精神障害者の福祉施策についても他の障害 者の制度と整合性のとれたものとしていくという観点から、特に精神障害者の福祉施策 の仕組みについて、この合同企画分科会について議論を行うというふうに考えておりま す。  今後のスケジュールの案ですが、まず9月下旬をめどに合同企画分科会を再開すると いうことで、以後、適宜議論を行うことになっております。 また、精神保健福祉部会と同じく、各障害者、他の種別の障害者、プロパーの問題と いうのは各審議会で議論をしておりますので、各3審議会から11月中をめどに各審議 会の審議結果を報告するという形で、年内をめどに障害者の保健福祉施策に関する最終 報告書の取りまとめという形で最終的な報告書を出すと。これは去年の12月に出まし た中間的な報告を受けて最終的な報告になるということでございますので、当精神保健 福祉部会の最終的な報告についても、この障害者保健福祉施策に関する最終報告書の取 りまとめという中に収れんさせていくという形で考えております。  最後に精神病床に係る医療法の関係の話でございますけれども、これは医療法の改正 スケジュールの関係等もございますし、まだまだ技術的な詰めもございます。さらに慢 性のところについては既に存在している「長期入院患者の療養のあり方に関する検討会」 というものを歩調を合わせるような形で議論を行っていく必要があるだろうと考えてお りますので、技術的な検討をするために「長期入院患者の療養のあり方に関する検討会」 の中に、「精神病床のあり方に関する検討会」といったような検討会を設けて、そこで 精神病床のあり方についての議論を行いたいと考えております。  今後のスケジュールですけれども、このままの予定でいきますと、9月11日に「長 期入院患者の療養のあり方に関する検討会」を開いて、その中で「精神病床のあり方に 関する検討会」というものの設置をすると。さらに9月から11月にかけて、「精神病 床のあり方に関する検討会」等を集中して行いたいと考えております。11月中に「精 神病床のあり方に関する検討会」ということを中間的な取りまとめを行うということで スケジュールが合えば、当部会にその検討の中間的な結果を報告するいうことについて 考えております。  以上、まだまだ今後スケジュールは変わってくる可能性は大きいのですけれども、こ ういった考え方で議論を進めさせていただきたいと考えております。  以上でございます。 ○部会長  ということでございます。よろしくお願いいたします。 ○岡上委員  今後11月まで審議会は何回開かれるのでしょうか。 ○杉中補佐  最低でも3回、必要があれば、4回程度は開きたいというふうに考えております。 ○部会長  何かコメントはありませんか。  これで本日の会議を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。 照会先 障害保健福祉部精神保健福祉課        医療第一係 高橋(内3057)