98/09/01 第26回年金審議会全員懇談会議事録            第26回年金審議会全員懇談会議事録 日 時 平成10年9月1日(火) 9:00〜12:15 場 所 サンピア佐久 2階大会議室  1 開会の辞  2 委員出席状況報告  3 議 事    ・次期財政再計算に向けての集中審議    ・女性の年金    ・その他  4 閉会の辞 〔出席委員〕   京 極 会 長   八 木 委 員  砂子田 委 員  岡 崎 委 員  国 広 委 員 久保田 委 員  神 代 委 員  坂 巻 委 員  高 山 委 員   都 村 委 員  福 岡 委 員 桝 本 委 員  山 田 委 員 山 根 委 員  吉 原 委 員  若 杉 委 員 渡 邊 委 員 貝 塚 委 員 船 後 委 員  ○会長  ただいまより、第26回年金審議会全員懇談会を開始いたします。本日は全員懇談会で ございますが、記者クラブから、冒頭にカメラ撮りをしたいという申し出がございます 議事に入りますまでの間、これを許可したいと思いますが、よろしゅうございましょう か。 (「異議なし」と声あり) (カメラ撮り) (報道関係者退場) ○ 会長  ただいまから、第26回年金審議会全員懇談会を開催いたします。   委員の出席状況について、事務局から報告をお願いします。 ○事務局  本日は木原委員、富田委員、目黒委員が御欠席で、そのほかの委員は御出席でござい ます。 ○会長  本日は、集中審議の2日目として、次期年金制度改正に向けて、御議論いただきます 日程としては、女性の年金につきまして審議を行いたいということでございます。昨日 基礎年金と「給付と負担の関係」という2つの項目について御審議いただきましたが、 自分はまだ言い残したことがあるとお考えの方もいらっしゃると存じます。もし、言い 残したことがある、この機会にぜひ言っておきたいことがございましたら、御発言いた だけたらと思いますが、いかがでございましょうか。 ○A委員  会長。 ○会長  どうぞ。 ○A委員  今朝の日経だったか、朝日だったか、ちょっと読みまして、なるほどこういう書き方 になるのかなと思ったんですが、昨日基礎年金本体の在り方論について、税方式、特に 目的間接税、この「目的間接税」という言葉が一言も出てないのは非常に不満なんです が、という議論をしたわけでありますが、国庫負担率を3分の1から2分の1へという 議論をそんなにしたという記憶が実はないんです。後でよく議事録を見てみればわかり ますが。ところが今朝の新聞を見ますと、3分の1から2分の1は、まず大体大勢とし て意見が多かったと。それで、かつ将来方向は税方式ということが議論されたという印 象になっているんですけれども、念のために私申し上げておきたいんですが、今の税体 系を前提として3分の1から2分の1というのは反対だと。2兆2,000億毎年毎年出すこ とについては、私は賛成できないと、この点だけは念のために申し上げておきたいと思 います。以上でございます。 ○会長 はい。ほかにどなたか。どうぞ、B委員。 ○B委員 今のA委員の御発言に関連する部分と、昨日の審議そのものがどこまで進行したのか についての、これは技術的な確認等をさせていただくという趣旨で発言させていただき ます。 今日これ以上この問題について突っ込んだ議論はできないかもしれませんが、税方式 ということを私ども主張しております。その場合の税の在り方については大変いろいな 問題を考えなければいけない点まだ残っていると思いますし、私どもは次の改正で、い わゆる税方式への移行をただちにできるとは考えておりません。また、その税財源に関 しましても、それは現在の消費税の中には大変な問題があって、A委員御指摘の現在の 税体系のままであればとおっしゃる意味が、現在の間接税を念頭に置かれて反対という ことであれば、その点については同意見でございます。ただし、目的税ということにつ いての問題は、それはそれできちんと検討されるべきだと思いますし、あるいは私ども 間接税を強く念頭に置いてはおりますが、とにかくそれは間接税だということをまず前 提に議論できることでもないのかなと。 今回の改正議論については、そのあたりの議論をなるべく深めて審議会として議論の 中身を整理した上で、今度の改正に関しては、現在の給付費の3分の1の公費負担を2 分の1へ引き上げるということをとりあえずの措置としてすべきだという立場でござい ます。  それから、もう一つ、昨日の審議でございますが、昨日いただいた資料2の「給付と 負担」という項目には、1から5までございますけれども、実際に議論されたのは、1 と2ぐらいのところについて、各委員からの御発言があったわけです。スライドの問題 支給開始年齢、ここにはいわゆる別個の給付の問題が入ると思いますけれども、このあ たりについては、ちらほらと御言及があったという程度以上に議論したとはまだなって ないと思いますし、高在老の問題についてはほとんど触れられていない。  という意味では、昨日の議論そのものは、資料No2に則して言えば、議論したと言え るのは1と2の項目というところに終わっているのではあるまいか。これをどういうふ うに処理するかは別にいたしまして、スライド方式の問題、これも負担や給付の問題と 無縁ではないわけですが、今後に審議としては残っていると私は認識しておりまして、 ぜひ、当審議会でもそのように確認をしていただければ、ありがたいと思います。これ は会長への御質問ということになるかもしれませんが、よろしくお願いいたします。 ○会長  審議すべき事項が残っているという御発言です。そのほかにどなたか、御発言ござい ませんでしょうか。昨日の基礎年金と「負担と給付」の2つの項目ですが、ほかにどな たか。 ○B委員 すいません、今の点はよろしゅうございましょうか。「給付と負担」の3、4、5の 項目については、まだ議論として残っているということで考えているのでしょうか。 ○ 会長  議論すべき点だというお申し入れがあったということを御確認いたします。 ○B委員  ちょっとすいません。ついでにもう一つよろしいですか。 ○会長  どうぞ。 ○B委員  昨日、いただきました資料No1の後半の方の事務局の手になる試算でございますが、 私どももそのテーマについては大変強い関心を持っておりますので、これは後日という ことになろうかと思いますが、前提条件になりますバックグラウンドデータについて、 次回にでも改めて教えていただくようにお願いをする運びになろうかと思いますが、そ の点ぜひよろしくお願いいたします。 ○事務局  積算根拠等につきましては、何らかの形でお示しするようにしたいと思います。 ○会長  それでは、「女性の年金」という主題につきまして……。 ○C委員  その前にちょっとよろしいですか。 ○会長  どうぞ。 ○C委員  B委員がおっしゃるように、確かに議論していないところもあったんですが、やや言 い残した点がございますので、あえて発言をさせていただきたいんですが、将来を考え ると、今のままでいいとはほとんどの人がやっぱり考えていない。負担についてももう 少し下げられないかということを検討せざるを得ない。そうすると給付についても、そ の分、どこかスリムにするところはすると。あるいは明らかにおかしいと思うような不 公平だとか格差があるような問題については、これを是正するという方向にいかざるを 得ないのではないか。  昨日の議論の中では、負担については、一部、今、時期はともかく中長期的に少なく とも国庫負担の割合を拡大し、それを間接目的税といいますか、目的消費税というか、 言い方は違っていたと思うんですが、そういうものが有力候補として検討課題になって いるということだと思います。それを入れれば、例えば2分の1にするという段階で、 ピーク時の保険料負担は3%前後下がるということだと思いますね。それは財源を保険 料から一部そういう税に移していくという話でありまして、これは形式的には国につい て、将来の年金について今まで以上に貢献をしてもらうという意味で、国について少し 譲歩してもらう話ではないか。  将来の給付を下げるという点になると、どこをどうやるかは別として、例えば既裁定 の年金は将来は賃金スライドを当面しないということにすれば、これも将来の受給者に ついて少し遠慮してもらう話である。あるいは私の理解では、例えば満額年金の受給要 件を将来は40年ではなくて、45年にするというような話をすると、これも今現役の人に 少し泣いてもらう話になるではないかという話でありまして、現役も少し今の制度より は譲歩してもらう話をお願いせざるを得ない。  国についても、国庫負担割合を少し高めていく話では多少譲歩をお願いし、現役の人 にも譲歩をお願いするという話をするときに、現に今年金を受給中の人に対して、従来 のように、皆さんの年金は今までどおりですよと、何も手をつけませんと言っていられ るかということだと思うんですね。私はある意味では、日本的だと言われるかもしれま せんけれども、年金は給付を分配するという時代はもう終わり、どうやって負担を分配 するかという時代に変わってきた。みんなが少しずつ痛みを分け合う形でしかやはり話 がまとまらないのではないかと思います。少なくとも現在の年金受給者について、明ら かに行き過ぎだと思われる点があるとしたら、それについてはやっぱり譲ってもらうこ とを年金審としても求めていく。次回に向けてそういうことについて提案していく必要 があるのではないかと思っております。  それが具体的にどういう形になるかは、いずれにしても今後まださらに詰めなければ いけないと思うんですが、従来のように年金受給者については何もしませんと、今まで どおりですというふうに言えない段階に入ってきたのではないか。負担を分配するのだ という観点から見て、年金受給者にも多少譲歩してもらう。それが給付課税強化だけに 終わるかどうか、これからの話次第だと思いますけれども、そういう形の議論を全体と してしていかざるを得ない。これは大変重い政治的な課題だと私も理解はしております けれども、少なくとも現在の受給者について、従来の改正と同じように、皆さんは今ま でどおりですというふうに申し上げられない段階に来たのではないかと私自身思ってお りまして、この点について、審議会がどう考えるかということについて、きょうはとも かく少なくとも意見書を取りまとめるまでに議論を深めていっていただきたい。あるい はもし多数派の意見として、何らかの形で意見表明ができるのであれば、そういう形に していただきたいと思います。以上です。 ○会長  今の御議論ですが、E委員、あるいはD委員、何か御発言ありませんか。 ○D委員  今のC委員の御意見で確認をさせていただきたいんですけれども、満額年金の受給資 格を45年にするのは1つの考え方だと思うんですが、全く形式的な話ですけれども、中 卒の人は45年でも全然問題ないかもしれないですが、高卒だと45年では63歳だから、支 給開始年齢を65歳までするんだったらいいかもしれないけど、大卒の多くは45年だと大 体67歳〜68歳になっちゃいます。大学院へ行くのは勝手かもしれないけど、大学院進学 者も増えている。そうすると70歳になるでしょう。その辺のことはどう考えるのかとい うのが1つと、既受給者の給付制限というか、カットですか、それは年金税制の面の是 正をやっても、なおかつそれに加えて過剰給付があるから、その一部を是正しろと、そ ういうご主張でしょうか。 ○C委員  2番目の話からお答えしたいと思うんですけれども、給付課税強化の話は、これはむ しろ税調が議論すべき話で、年金審としては深く立ち入る話かどうかよくわからないん ですが、方向として明らかに私は行き過ぎがあると思っていますので、給付課税強化は やむを得ないという立場です。それだけで済むのかどうかということについての、私の 個人的な意見を言えば、現在の年金受給者の間に明らかに行き過ぎた格差があるのでは ないかと私は思っております。同じような過去のキャリアを持っている人を念頭に置い て給付額を比べた場合に明らかに差があり過ぎる。それは年金受給者間の格差として問 題視せざるを得ないのではないかと私は思っておりますので、その点について、さらに 踏み込む必要が少なくともあると私は個人的には思います。これが2番目の問題です。  1番目の大学卒業者は22〜23歳だと考えますと、45年というのは確かに65歳ではない ということなんですが、公的年金制度であるがゆえの難しさなんですけれども、中卒は ほとんどいなくて、高卒、大卒で半々とすれば、大体20歳前後から保険料を納め始める と。65歳が支給開始年齢ということにかんがみますと、45年だということなんですね。 これは諸外国によって全然取り扱いは違うんですが、少なくともイギリスは49年拠出が 満額年金の要件なんです。一番長い人を念頭に置いているんです。15歳から保険料を掛 け始めて64歳まで。65歳からもらう人を満額年金の要件としているわけですね。こうい う人がイギリスで多数派かというとそんなことはありません。絶対少数なんですが、当 然大卒の人たちは、それでもやむを得ないという形で、イギリスは多数派が満額年金要 件49年を飲んだわけですね。ドイツは45年です。45年拠出という条件を満たしている人 は絶対少数ですが、それにもかかわらず制度上は45年が満額年金の要件になっているわ けです。  ですから、これはモノの考え方、整理の仕方だと思うんです。それをやらなければ、 やはり支給開始年齢引上げとか、そういうものが代替案としてきっと議論されざるを得 ない。それとの比較考量の問題だというふうに私自身は考えております。 ○会長  どうぞ、E委員。 ○E委員  年金受給者の間にどういう点で明らかな格差があるかということが具体的によくわか りませんけれども、少なくとも今年金を受給している人たちは、きちんとした法律の制 度に基づいた金額で受給をしているわけですね。その場合にそれがもらい過ぎだからと いってカットするということは私は基本的に反対でございます。と申しますのは、現実 にたくさんの年金積立金もあるわけですし、今すぐに年金財政は赤字になるという状況 ではないわけでありますから、既に受給している人の年金は、高齢者の生活を支える1 つのベースになっているんですね。さらに来年は介護保険なんかも天引きされるような 状況の中で、今年金審がカットを打ち出したということになれば、ますます年金への不 信感というものがつのるわけですし、これは高齢者にとっては非常に大きなショックで ありますし、当然大きな反対が出てくるだろうと思います。その意味では、既裁定の年 金をカットすることについては基本的には私は反対をするわけです。  それから、45年の問題ですが、当然これは定年制とも絡んでこなければならないわけ で、定年制が60歳が法定化をされたばかりの時点で、45年という形になりますと、当然 その間にブランクが出てくるわけですね。45年というならば、やはり労働行政などに対 しても年金審として定年制をきちんと65歳までに延ばすようにしろという形での意見を つけての、45年という形で言うべきであって、ただ単に延ばすということだけではまず いのではないかと考えます。 ○C委員  ちょっとすいません。やや、私の発言が舌足らずだったものですから、恐らく誤解だ と思うんですけれども、既裁定の年金をカットするということを私は申し上げておりま せん。少し譲ってもらうというふうに先ほど発言したつもりなんですが、それは既裁定 の年金は、特にサラリーマンOBを念頭に置きますと、1階と2階について年金を受給 しているわけですね。あるいは共済グループは一部3階がついていると。1階はこの審 議会で、私が従来から一貫して申し上げておりますけれども、物価スライドはすべきだ と、こう言っているわけですね。そこの給付は物価が上がっていく限り増えていくわけ ですから、それで減るということはないわけです。2階ないし3階について、一部の人 について、ぎりぎりできることは、今の給付額のままでいくということだと思うんです 今までどおりの年金額でがまんしてもらって、給付改善について、多少の期間遠慮をし てもらう。ただし、1階はスライドをするという話です。名目額を減らすとか、スライ ドを全然しないとか、そういう話ではないというふうに御理解をいただきたいと思いま す。 ○F委員  スライドをしなければ、どれくらい価値が減っていくかということなんですが、賃金 と物価の差が2%としますと、10年間で82%、20年で67%、つまり3分の2まで下がり ます。30年になれば、55%という数字になるんですけれども、それを考えましても、ス ライドを物価スライド、場合によっては、それ以下のレベルに下げて、かたや賃金は数 %、1%でも2%でも上がっていくという状態が、10年、20年続くと、相対的に相当価 値が落ちるということは現実問題として起こるわけでございます。 ○B委員  受給者の間での格差の問題、昨日も私の方からも関心を有していることについては発 言をさせていただきました。そこに恐らく2つ問題がありまして、現在の70歳ぐらいか ら先の人の民間労働者の場合には、加入期間の非常に短い人がかなりおりまして、いわ ゆる旧制度で言う15年で受給権を得る中高年特例の対象者が、特に高度成長期に農業そ の他を離れて雇用労働者の世界へ移行した人もかなりおるわけです。  それからもう一つは、当時は中卒就職者がこれまた非常に多くて、中卒の中には非常 に格差がございまして、大企業の学校推薦での養成工クラスはむしろ高卒よりは生涯賃 金が高かったのに対して、集団就職のような形で就職した人たちの賃金は極めて低かっ たわけで、女子の場合には若年で離職をし脱退一時金を取るのが通例のパターンでござ いました。そういういくつかの要素がある受給者間の格差の問題で、これは私ども以前 から年金局には、例えば学歴別あるいは現役時代の所属の企業規模別等による受給水準 の格差のデータをぜひ一度整理をしていただけないかというお願いをしてきた経緯がご ざいます。  C委員の御提起、一方では従前額保証という表現で言われていることについて、さら にディテールへ立ち入れられた御提起かと思いますので、その点の検討は検討としては 大変大事なテーマかと思います。一度現在の受給者の受給実態に関する格差データを出 していただいて、それに基づく議論を少しやらせたらいただいたらいかがでしょうか。 ○会長  今のB委員の話ですけれども、そういう格差別データを集めることは割に楽にできま すか。 ○事務局  今そういった統計はとっておらないので、どういう形のものができるか、ちょっと研 究はしてみたいと思います。 ○会長  調査の方はどういうデザインで、どういうデータを集めればいいかというところから お考えいただければと思います。 ○G委員  年金受給者の格差というのは、一体どういうことを問題にしておられるのか。C委員 のおっしゃる具体的なイメージがなかなかわいてこないので、その辺をもうちょっと、 格差というのは、何を問題にしておられるのか。年金額の差なのか、条件の差なのか、 その辺をもうちょっとお話しいただけませんでしょうか。 ○C委員  すいません、相変わらず舌足らずなんですけれども、G委員を前にこういう話をする のはいささか問題だとは思うんですけれども、事実上、現在の年金制度の骨格は、昭和 60年改正ででき上がっているわけです。昭和60年改正の基本的な給付のスリム化の方向 は、私の理解では、平均加入期間が今後延びていく、当時30年と言っていたんですが、 長期的には40年になる。平均的に加入期間が延びる分について、給付乗率を下げよう じゃないかという話で、1000分の10が、徐々に1000分の 7.5に移るという、そういう改 正であったと私は理解しております。間違っていたら御訂正をいただきたいんですが。 ○G委員 それはそのとおりなんですけど。 ○C委員 それは1つの、確かにモノの考え方、整理の仕方だったと思うんですね。当時関係者 がそれでいいと言ったことは間違いない事実でありまして、それはそうだったんですが 今ここにきて、私がやや問題だと思っているのは、例えば厚生年金に40年加入した人を 例にとってみたいと思います。40年加入した人で過去の平均的な標準報酬月額、これは 例えば前回改正だと34万円となるんですけれども、34万円という過去の賃金が、基本的 に同じだという人を念頭に置いていただきたいと思いますが、それで40年加入をしてい た、違いは生年月日だというふうに考えます。ということは、今の年金受給者で、例え ば80歳の人とか、65歳の人だとか、それによって、どれだけ年金額に違いがあるかとい うことをぜひ資料として出してほしいということですね。 今の給付算式のもとでは、80歳の人、75歳の人、70歳の人、65歳の人で、過去の平均 標準報酬月額が同じで40年加入の人は当然給付額が違っているはずなんですね、60年改 正の趣旨だと。これは世代別に給付乗率が違うからなんですね。この給付乗率の違いは 平均的な加入期間において調整するという発想だったんですね。平均的な加入期間が違 うから給付乗率を変えようというのが当時の合意内容です。ただ、同じように保険料を 40年納めた、過去の月給はほぼ同じとみなされる、そういう人をとってきて、年齢が違 うだけでこんなに給付に違いがある。端的に言いますと、1000分の10が1000分の7.5になったわけですから、25%の違いが構造的にはあるわけですね。1000分の10を1000分の7.5 にしたわけですが、構造的に言えば、25%の違いがあるわけです。40年加入者を例にと った場合ですけれども。それで皆さん納得しますかという議論をやっぱりやらざるを得 ない段階にあるのではないかというふうに申し上げたいです。 ○G委員 それは本当に格差というか、不合理な格差なのかどうかは、私はそうは思わないんで す。年金額を下げていく、乗率を下げていく場合に、現在受給している人、それから、 受給までの期間が近い人と遠い人と、相当長い期間のある人と、それは区別して下げて いかないといけない。すぐ年金をもらう年齢に達している人の乗率をぐんと下げるとい うわけにいかないんですね。そういうことで生年月日別といいますか、将来その人が何 年後に年金がもらえるかに応じて段階的に乗率を下げていっているんです。 ですから標準報酬と保険料を納めた期間が同じなのに、年齢によって年金額が違うの は当然と言えば当然ですし、やむを得ないと言えばやむを得ないんで、それをおかしい というのは、私はちょっとどうかなと。当時は給付水準の適正化と言っておりましたけ れども、そういうふうなやり方でしか公平に下げていくということができないんですよ ね。ある意味では既得権なり期待権を尊重しながら徐々に下げていくという考え方でや ったわけで、それを今になって、報酬や加入期間が同じなのに年金額に年齢によってそ んなに差があるのはおかしいじゃないかという議論は、私は今でも必ずしもそうは思わ ないんですけれどもね。ここはいろいろ御意見あると思いますけれども、それほど大き な格差といいますか、不合理な違いではないと思うんですね。意見は違うかもしれませ んけど、私どもはそういう考え方だったわけですから。 ○C委員 現在の年金受給者に一度問いかけをなさっていただきたいと思うんですね。それだけ 違いがあるんだけれども、皆さんそれで納得しますかという問題だと思うんです。 ○会長 F委員。 ○F委員 1000分の10の支給乗率で、現実に年金もらっている人は加入期間が割と短いんじゃな いんですか。それは現実ですよ。 ○C委員 平均的に見れば、おっしゃるとおりです。ただ、個別にみると長い人はいるわけです ○F委員 だけど、余りに個別個別ということを言い出すと収拾つかない問題だと思うんですよね 昨日先生がおられなかったんですけど、申し上げたのは、実額で高い年金を受給してい る個人を何とか頭打ちする方法を考えることはなかろうかという言い方で申し上げたん ですけれどもね。制度的に私はおかしいとは思っておりません。現実に1000分の10から 下がってきているあたりの年金額の方が高いと思いますから。 ○G委員 ちょっと補足させてもらいますと、もしC委員の考え方で、それがおかしいとおっし ゃるんなら、給付の適正化なんかできないですね。平均標準報酬や加入期間が同じでも 世代によって年金に違いが出てくるのは、これはやむを得ないんですね。それがおかし いということをおっしゃっているというふうに、私には聞こえるわけで、そういうこと をおかしいとおっしゃるんなら、賃金が全く同じ、納めた期間が同じなら、同じ年金で ないとおかしいんだ、どんな時代に生まれても同じ年金でないとおかしいんだというこ とをおっしゃっているように、私は受け取れますけど。 ○C委員 いや、過去の保険料率は違っているわけですから、同じ40年加入者でも納めた保険料 は違うわけです。そこは目をつぶって、しようがないと私は思っているんですが、給付 について格差があることを問題にしているわけです。 ○G委員 しかし、それはどうなんでしょうか。 ○会長 生まれたときが悪いのか、という歌の文句がありました。G委員よろしいですか。 ○G委員 御意見違うようですから、私はそれほど。 ○B委員 今の議論は大変大事な点に触れながらすれ違っている感じもいたしますし、私も大変 関心があります。ぜひ、これは具体的なデータに基づいた議論にしていただけないでし ょうか。というのは、理屈の上で何もずるしているわけではないというE委員の御指摘 はそのとおりですし、ずるしているか否かではなくて、そういうある実態が合意を得に くくなっているのだとすれば、それについて一定の検討をしなければならない。 例えば、第3号被保険者問題、これから議論になると思いますが、あれだって、制度 的に間違っているわけでも何でもないわけです。原理的にあれが間違った制度だとは思 いませんが、昨今の状況の中でそれは合意を得にくくなっている問題の1つであること は間違いないわけですね。  少なくとも今後の給付制限ということが、ないしは水準の適正化と言葉で言われるよ うなものが、年金額の高い人も低い人も全部くそみそにして一律スライド停止だとか何 だとかという議論は非常に乱暴なんで、我々はこれは絶対反対です。さりとて既裁定者 は聖域なのかということについては、これは単純に、そうだ、そうだとばかりも言って いられない面はあるので、検討することはぜひ必要だと思っています。今議論されてい るテーマそのものは非常に重く受けとめなければいけないと思っております。 ○H委員  先ほどから出ている意見で、厚生年金の給付乗率の話が出ましたけど、現場からこの 声は、私どものところにしょっちゅう入っております。これは今B委員がおっしゃった ように、具体的なデータをつけて、きちんと検証してみる必要があると思います。基調 的にはC委員がおっしゃった意見に、私もほぼ同感なんです。現場から声を聞かされて おりますことをあらためて付言しておきたいと思います。  昨日の最後のころにちょっと私から申し上げましたが、ほかの方に話が波及したんで すけれども、要するに給付の格差の問題の1つとして申し上げました視点からの問題指 摘もあるということをちょっとつけ加えておきます。 ○会長  そろそろ女性の年金の問題の方に……。B委員何か。 ○B委員  すいません。言い残したということで、1つだけつけ加えさせてください。基礎年金 の問題でございます。これは何度か話題にのぼったはずなのですが、昨日のレジュメに もありませんし、「これまでの主な意見」というこのリストからも外されていて、これ について御意見申し上げなかったのをちょっと手抜きをしていた私の方の責任もあるん ですが、前倒し受給に関する減額率の見直し、これは前回改正で話題にのぼったと聞い ておりますが、現在の減額率、5年前倒しだと48%の減額というのは、これは制度発足 当時の65歳の平均余命データに基づいたものではないかと思います。 ○C委員  42%です。 ○B委員  42%です。現在それから非常に長い時間たって、まさにいわゆる長寿化という傾向が 進んで来た以上、平均余命も平均年齢ほどではないにしても相当長引いたと思いますの で、これについてはきちんとした合理的な数字に是正すると。これは何度か何人かの委 員の方々から御指摘があった点ですので、それはぜひ今回の検討課題、その中でも大事 な検討課題の1つとして再確認をお願いしたいと思います。以上です。 ○A委員  スライドの話については改めて議論されるのかどうかなんですが、一応きのう私ども お配りしましたペーパーの中に、なだらかに2〜3割年金水準は削減と。なだらかにと いうのは説明がありましたように、20〜30年かけてという意味ですが、1階の部分につ きましては、物価スライドは行いますが、賃金スライドは行わないと。それから2階の 部分につきましては、いわゆる移行時の既裁定者、これは額としては従前額は維持する けれども、従前額支給期間中は基本的にスライドはなしとするという考え方を出してお りますので念のために申し上げておきたいと思います。 ○事務局  今、B委員から減額率の扱いについて御指摘があったわけでありますけれども、これ について、確かに前回の改正のときからの宿題になっているところであります。ここの 変更というのは年金財政の中でも非常に大きな影響のあるところでありまして、今回給 付と負担全般にわたって御議論いただいておりますので、その中で取り扱いをぜひ御検 討いただきたいというふうに思います。まだ全体のバランスを決めないうちに、これだ けは先に決めるのはなかなか難しいテーマなのではないかと理解しております。 ○B委員  今のお話、財政上の配慮の問題としてはわかりますが、制度を議論する立場から言え ば、非常に違うものが一緒にされているような気がいたします。水準をどうするかとい う話ではなくて、減額率というのは水準とは別個な問題として公正に設定をされるべき であって、そのように公正に設定したときに、予定されている水準での給付をやったと きの財政上の影響がどうなのかということはそれはそれで検討のテーマにすべきです。 例えば極端の話、今の基礎年金がそういった公正な合理的な減額率にした場合に、給付 が増え過ぎてしまうから、財政上問題だというときに、それを調整すべきは減額率では なくて、給付水準そのものなんじゃないでしょうか。 ○F委員  この減額率あるいは増額率については前も発言申し上げましたけれども、数理的に完 全に中立ということは、例えば死亡率を固定するとか、あるいは予定利率を固定するこ とをやらなければ、それをまたそういう数理的な前提を正しいと認識しない限り、数理 的に中立とは言いがたいわけです。例えば予定利率に関しまして5.5%で計算すると5.5 %は実態と違うじゃないかとか、4%とか3%とかという数字が実勢だからということ で、それでは減額率をそこで変える。そういうことが起きてくる。それではおかしいか ら、何か一定にしておかなくてはいけない。それが5.5%だと仮にいたします。それで死 亡率はどうなるか、死亡率もどんどん、どんどん低くなっていると。 それでは低くなるたびに減額率変えるかと。これはやはり変えると非常に混乱が起き ますよね。特に一遍そういう減額率の適用を受けた人が後から死亡率が変わってきたか ら、おれのあれも変えてくれと。利率が変わっているのだから変えてくれということを 主張するようなことがあったら、大変混乱するわけですね。それこそ減額を希望する時 期によって、予定死亡率なり、利率を変えているために、大きく数字がぶれるといった ことがあったら、これもまたまずいのではないでしょうか。 ということで、数理的に完全に中立なということは本当はないんだろうと。何か政策 的に決められた率といったものがあって、それはなかば恒久的に適用されていく。それ は今までのが正しいという意味ではありません。これはもちろんその部分は今後次はど うするかということは考えなければいけないけれども、これは相当長い期間使われてい かなければいけないだろう、そのように考えております。 それと現在の適用率ですが、非常に減額率が厳しいではないかという御意見なんです が、それにもかかわらず繰り上げ受給を選択する人が非常に多いという実態を考えてみ ると、決して減額が厳し過ぎることにはならないのではないかと思います。仮に今の実 態に合わせた減額率をつくったといたしますと、さらに選択が増えると。これは数理的 に言いますと逆選択なんですね。みんながそろって選択するとそのために赤字が出ると いうようなことになりかねませんから、ここのところは別途検討する必要がある事項で はないかと考えております。 ○会長 数理の世界もつじつまを合わせるという別の考慮があるというお話のようです。年金 数理のほかに政治数理があるというお話もあります。 昨日言い足りなかったという、基礎年金と「負担と給付の関係」のお話、大体よろし ゅうございますか。よろしければ、「女性と年金」のお話の方にお願いしたいと思いま す。どなたからでも、どうぞ。I委員。 ○I委員 最初に一般的な原則について述べさせていただきたいと思います。女性の年金を考え るに当たりましては、以下のような原則に基づくべきだと思います。 第1点は、社会的・文化的に形成された性別、ジェンダーによる理由によって、女性 を男性よりも不利に取り扱ったり、あるいはその逆の男性を女性よりも不利に取り扱う ことは基本的な人権を否定するものであって、全く受け入れられないことであると思い ます。  第2点は、同居している者は婚姻の有無にかかわらず、一方が夫もしくはほかの者の 被扶養者として取り扱われるのではなく、自分自身の受給権、年金制度の場合は年金権 をそれぞれ持つべきであると。それから、またもし必要がある場合は、一方がその収入 の中から相手を保障をするための保険料を支払いべきであるということです。 第3に、受給権が保険料拠出期間に基づいて得られる場合、同居している者が得た各 年の受給権は、どちらからも自活能力を奪うことのないよう給付を別々に行うことによ って、夫婦の間でそれぞれに分割されるべきであるということです。  第4番目は、育児と看護、介護等、家族責任のために労働力となれなかった期間につ いては、手当または給付によって、あるいはもし適用できるならば、拠出制年金保険に 対する拠出期間として社会的に認められるべきであるということです。  それれから、第5番目は、社会保障の権利を確立する場合は、生計をともにするすべ てのタイプの夫婦を認めることを目標とすべきである。  このような5つの原則に基づくべきであると思います。  多くの国の社会保障制度は、創設当初に3つの前提によってつくられています。第1 は、成人した女性は、通常は家庭にとどまって、有給の仕事にはつかない被扶養者であ るということです。  第2番目は、結婚は永続的であって、死亡するまで続くということです。  3番目は、子供は婚姻以外から生まれないし、また生まれるべきではない。そういう 3つの前提に基づいて制度が組み立てられたわけです。ビバリッジは1942年に「ビバリ ッジ報告」の中で、倫理、結婚、家族に関する彼自身の価値観をその報告書に投影しま した。成人した女性は夫の被扶養者であるという形で位置づけたわけです。それが世界 各国の社会保障制度に非常に大きな影響を及ぼすようになったわけです。  しかし、現代社会では、社会保障制度創設当初に比べますと、有給の仕事を持つ女性 の割合は有配偶の女性とか、また死別、離別後扶養児童を連れている独身の女性も含め て、著しく増大してきているわけですね。労働力調査によりますと、我が国において、 有配偶の女性就業者数が専業主婦の数を上回ったのは1983年です。その後ずっと15年間 ことしに至るまで15年間、有配偶の女性就業者数の方が専業主婦の数よりも多いわけで すね。それが15年間続いているわけです。  そういうふうに女性の就業パターンの変化とか、婚姻率の低下や出生率の低下、ある いは離婚率の上昇といったような新しいライフスタイルとか、新しい生活パターンとい うのは、年金制度に調整を必要とする新しい問題を提起していると思います。個人がど のような生き方を選択しても、それに対して中立的に働くような社会の枠組みを確立し ていくことが必要だと思います。  年金について、振り返ってみてみますと、昭和36年の国民年金制度実施のときに、家 族従業者とか無業の女性とかが、初めて年金制度の中に位置づけられたわけですけれど も、国民年金制度を策定する過程において、妻を適用対象とするかどうかということは 最も強く争われた点だったわけです。適用除外とすべきだという論拠はいろいろあった のですけれども、今と同じように、一般に妻には所得がない以上、妻を独立の被保険者 としても、保険料の拠出能力がないということだったのです。  他方、妻も独立の被保険者として認めるべきであるという考え方もかなり議論された わけですが、そこではこういうふうに書かれているのです。国民年金制度においては、 夫であると妻であるとを問わず、等しく年金を受けられるようにするところにその時代 的意義がある。言いかえれば、妻も保険料を拠出し、老齢になった場合、夫とは別の独 立した自己の老齢年金を受ける現実の必要があるし、この制度に対する国民の要望もそ の方向に傾いてきている。年金局の『国民年金の歩み』の中にそういうふうに書かれて いるのです。これは1961年のことです。  ですけれども、実際にはすべての女性に独自の年金権ができたのは1985年の改正のと きですね。24年間かかっていて、その間は被用者の妻は任意加入という道は希望によっ てできたわけですけれども、すべての被用者の妻に独自の年金権が与えられたのは1985 年改正ですね。そういう意味では、1985年改正で自分名義の年金権ができたのは非常に 大きな改革であったし前進だと思うわけですね。この時点で給付の面では、従来妻に適 用されていた被扶養という概念が除去されたのですけれども、拠出面ではそれが残され たということですね。  ですから女性の老齢年金とか遺族年金、また離婚の場合の年金とか、ライフサイクル によっていろいろな問題が出てくるわけですが、それらについては、先ほど述べました 一般原則に基づいて見直しが行われるべきだと私は思います。遺族年金につきましても その根拠になっているのは、前にも遺族年金の議論のときに申し上げましたけれども、 妻を夫の被扶養者として位置づける。そういう考え方ですね。かつては、確かに一生涯 専業主婦で生活をして、無理して働く必要もないし、また既婚女性の雇用機会も余りな かったわけですね。ですから、かつては遺族年金の位置づけというか、重要性はかなり 大きかったと思うのですけれども、現代は女性も働いて年金に加入して、退職後は独自 の自分の年金を受給するというふうになっているわけです。  ですから、この遺族年金についても、例えば配偶者が死亡して、3年間ぐらいの間は 職業訓練を受けて、次に自立するために十分な年金を支給すると。その後は自立して生 活をするようにするとか、あるいは子供がいる場合はまた別だと思いますけれども、子 供がいない、あるいは子供が成長してしまっている場合には、外国のように、遺族年金 の支給開始年齢をおくらせることも考えられてもいいと思います。  最初に女性の年金を考える場合の基本的なというか、一般的な原則について述べさせ ていただきました。以上です。 ○会長  J委員どうぞ。 ○J委員  基本的な原則については全く同感です。ただ、この原則というものが女性にとっては 常識化している部分が大きいんですけれども、年金審議会とか、いわゆるサラリーマン 社会では常識化されていない。今までの論議の中で、あるいは組合でされてないという ことを感じてきましたので、もう少しそれをかみ砕いてというか、私の実感した中で話 ししたいと思うんです。今おっしゃった1985年の改革のときには、こういうふうに普通 の人々が考えていたのではないかと思うんです。サラリーマンと結婚した女性は離婚し ないと、よっぽどひどい人でない限りは。離婚する場合は女の人が悪いか、あるいは男 の方がサラリーマンとしてでも不適格なようなひどい人でしかないだろうと、そんなふ うに考えられていた。  それから、サラリーマンは失業しないというか、勤めたらもうやめないと考えられて いたのではないか。それから、そのころは実態はそうではなかったんですけれども、サ ラリーマンの大半は男性で、その男性は妻に暴力を振るったりもしないし、妻は家事と か育児とか介護をしていれば、心からそれに満足して、夫の取ってくる給料をありがた くもらって家計を維持している。そして夫に感謝しながら一生を送るのだというふうに 考えられていたのではないでしょうか。さらに、もし離婚するならば、サラリーマンの 男性が離婚するときにはちゃんと養育費も出すし、財産分与もするのだと、そういうふ うにも考えていたのではないでしょうか。  ところがこういう前提は、その当時も違ったと思うんですけれども、すごく大きく変 わっていますよね。特に離婚率の上昇とか、男性がサラリーマンを一生続けられるわけ ではないとか、そういう中で、その認識はどんどん高まっているわけです。でもなかな かそれが社会の常識とならないのは、それはジェンダーというか、女性の考えているこ とがなかなか普通のことと思われないで、一部のエリートの女性の言うことであるとか 今さっきI委員がおっしゃったようなことはずっと前から言われてきていることだと思 うんですけれども、認識されてこなかったと思うんです。  この際、もう一回現実をよく見つめ直して、今まで厚生省からいただいている資料で も、男女の年金の格差とか、意識の変化というものも、私は十分あらわれていると思い ます。また、有識者調査でも、確かに第3号に保険料を負担させるという意見は少数か もしれませんが、将来は変えると言っている意見がかなり多くて、その将来というのを どのぐらいの時点で見込むかということは、将来というのは漠然とした言い方ですから その将来を遠くに見る必要はないのではないかと思います。 ○D委員  一般原則がたくさんあったものですからよくわからなかったんですけれども、何かメ モかなんかにしていただければありがたいんですが、あるいはもう一度ゆっくり言って いただくか。それと「一般原則」というふうにおっしゃった。第1原則というのは公序 良俗に属することでよくわかりますが、税制と矛盾する部分もかなりあるし、だれが一 般原則というふうに決めたことなんですか。 ○I委員  決められたというのではなくて、女性の年金を考える場合には、このような考え方に 基づくべきではないかと。 ○D委員  先生のご主張である。 ○I委員  はい。 ○D委員  それならよくわかりますが、ちょっと何分長いのでメモにして配っていただけるとあ りがたい。 ○K委員  私は割とフェミニストの方なので、今の原則は大体わかったと思います。ただ、同時 にJ委員がおっしゃるように、世間一般の人がどう考えているかということが今、我々 が年金制度をどうしようかというときにはかなり必要だと思うんですね。だから有識者 調査などでも、今すぐには変えないけどといった保留がついているので、だから、私は 今回の年金再計算のときには、今の時点で余り無理なことを言わないで、いつかの将来 は、I委員の原則の方にいくのが一番穏健な今の判断だと思いますね。私はなぜ3号、 専業主婦から保険料を取らないかと非常に疑問に思います。賃金というのは家族を扶助 するために払っているものですから、当然その中から奥さんの取り分があるので、そこ から出したらいいのではないか。それが全うな生き方ではないか、こう私は思うわけで す。  そういう言い方と、それからI委員が言われた、実際は働く女性が随分増えていって いることを考えると、専業主婦だけをモデルにした年金設計は少し不足であって、もっ といくつかのケースを出した上で判断すれば、女性には年金権も与え、かつ負担も女性 に持ってもらうという方向へ進むのが全うだと思いますから、私以外の男性は保守的だ から今すぐは簡単にはそうなるとは思えないです。どうもすいませんでした。 ○L委員  年金分割の話でもよろしゅうございますか。 ○会長  どうぞ。 ○L委員  私はかねがね年金分割ということを考えたらどうかということを申し上げておりまし た。今までの主な意見の14ページを見ますと、ちょっと気になるんです。14ページのウ のところの上から3つ目のマル、これは「年金分割を検討する必要」とあって、次のマ ルは「司法手続きで解決すべき問題ではないか」と書いてありますが、3番目と4番目 とは別に矛盾するわけでも何でもないので、仮に年金分割を認めても、恐らく実際的に は全部これは司法手続きで解決するだろうと思います。年金法で初めから2分の1ずつ にしようとか、そういうわけにいかないと思います。  この問題は、御承知のとおり、年金は非常に厳重に保護されておりまして、担保は禁 止ですし譲渡は禁止、分割はできません。今では、例えば司法手続きに入りまして、裁 判官が財産分与を考える場合に年金権も分割した方がいいのではないかと考えても、こ れは現行制度は不可能なんです、一切できませんから。それほど年金権は司法的に保護 されているんです。そういうことが今後も続けてもいいのかという問題を、実は私は提 起したわけでして、2分の1ずつにすべきであるとか、あるいは婚姻期間に応じてどう すべきだとか、そんなことはそれから先の問題なんです。一番根っこにある年金権は分 割できない、一身専属だという原則のままでいいのかということを申し上げたわけでし て、この問題は別に離婚のときの夫の年金権には限らないわけです。例えば私もさる ところの不服審査に関係しておりますけれども、例の重婚的内縁関係と言われる問題で ありますが、これは具体的に当たりますと、本当にナッシング・オア・オールでいいの かどうか迷うんですね。しかし今の制度では年金権の分割は不可能ですから、どちらか へ軍配を上げねばならない、法律上の妻か、あるいは事実上の妻か、どちらかへ軍配を 上げねばならない。これは非常に難しい判断なんですね。  私はそういう場合に、もしも年金分割ということが、これは司法手続きが要るのだろ うと思うんですが、何らかのことで可能ならば、夫の年金を離婚時に分割する問題では なくて、夫の遺族年金、これを法律上の妻と事実上の妻の間で分割するということも考 えられる。これは非常に難しい問題ですから、恐らく司法手続きの中で、もし裁判官が それが公平だとこうお考えになったら、可能なような制度にしておく方がいいのではな いかということを私は申し上げておるわけです。  この14ページを見ますと、どうも3番目のマルと4番目のマルは、どちらかがいずれ かというような形にとれるんですけれども、そうではなくて、一番肝心なのは、現在の 年金法で保護しておる年金権が分割不可能ということが、果たしてそのままでよいのか ということが根っこにあると思います。  以上、申し上げておきます。 ○J委員  今の件ですが、3番目のマルというのが、私が発言したのかちょっとわからないんで すけれども、年金権は分割できるというようなことを一言加えるためにはどういうこと が今必要なんでしょうか。もし審議会で、年金権は分割できるという方向に進めるべき だといった考えが合意を得た場合、どういうことを進めなければいけないのでしょうか ○L委員  まず譲渡禁止の規定を外さなければならない。こういう場合には譲渡できる、あるい は分割できるという規定を設けてもらえばいいわけでして、これは各国は最近そういう 方向に向いています。一番新しい法律では、例えばイギリスの法律などは参考になると 思います。スウェーデンもたしかそれがあったと思います。 ○C委員  ドイツもそうです。 ○G委員  今、L委員おっしゃいましたように、年金権というのは非常に厳重に、一身専属だと いうのは、実は昔からの非常に長い伝統的な考え方なんです。しかしそうは言いまして も簡単に分割権を認めるのはなかなか難しい面が私はあると思うんですね。公的年金と いうのは、その人のいわば特に生存権にかかわることですから、その権利を簡単に普通 の財産と同じように分割は、私はこれからも認めるべきではないだろうと思います。け れども、今おっしゃったような夫婦の間とか、法律上の配偶者、事実上の配偶者いろい ろありますが、相当限定的な範囲内、一定の厳しい条件のもとで、そういう道もあるよ というのは、私は研究する余地というか、必要性はあると思います。余り簡単に普通の 財産権と同じように、だれにでも分けられるのだというのは、私はどうかと思っており ますけれども、これは少し時間をかけて研究すべき問題ではないかというのが、私の今 持っている考え方であります。 ○L委員  私も全くG委員と同意見でして、時間かけて、これは検討しなければなりません。ど この国の立法を見ましても数年かけて議論しております。しかもその議論には、年金関 係の学者、経験者のみならず、民事の人が参加してやっておれます。日本でもそういう コミッティーが要るのではないかと私は思っております。 ○事務局  この女性の年金というのは非常に悩ましいというか、難しい問題でございまして、理 屈で割り切ってスパッとやって、それで世の中うまくおさまってハッピーになれば、こ んないいことはないんですけれども、現実は往々にしてそうではないという実態がある わけですね。だからなかなか難しいと。  それから、特に今の年金制度が前提としていたような女性のライフスタイルあるいは 家族とか、そういうのが特に最近非常に変わってきつつある。それが完全に変わってし まえば、また、それに合った年金制度にすればいいわけですけれども、今そういう歴史 的な変化の真っ只中といいますか、過程にあるのではないかということで、そういう点 でも非常に難しさがございます。  そういうことで年金を担当しておりまして、非常に悩ましいことが多いわけですけれ ども、実は何回か前だったと思いますけど、L委員から、こういった女性の年金問題は 民法と非常に関係がある。また、税制とも非常につながりがあると。だからこういった 方々で専門の委員会をつくって、こういった女性の年金の問題を議論したらどうか、こ ういう御提案がございまして、私はこれは非常に望ましい方向だし、ぜひそういうのを 厚生省としてもやるべきではないかと、こう強く感じたんです。ただ、今は何しろ目の 前に年金改正が控えておりまして、とてもそういうゆとりはないんですが、来年、皆様 方の御協力で年金法が無事成立したということになりますと、若干余裕も出てきますの で、ぜひ、そういう検討の場をつくったらいいのではないかと、内心そういうことを感 じております。 ○H委員  今日のためということではないんですが、前回改正の意見書で、今テーマになってい る女性の年金権や、第3号被保険者問題に関する記述がどの程度あったかなということ で少し振り返ってみたら、7行ぐらい文章が書いてあるんです。そのことと、前回のい ろんな動きを思い起こしてみますと、当時女性の委員の方が、相当女性の年金権の確立 その拡充の方向へ向けて御発言が多々あったというように思っています。そしてまとめ の段階では、私の印象ですから、失礼があったらお許しいただきたいんですが、発言内 容を相当押し戻した形でまとめられたような記憶がございます。  したがって、今回大変たくさんの意見がA4横版のメモにも出されていますが、それ はそれなりにきちんと整理をしてほしい。有識者調査なり世論調査を見ても、例えば3 号被保険者制度に関して保険料を徴収すべきという考え方については双方ともまだ3割 に満たない。現状でいいという意見の方が多数派になっているわけであります。そんな ことが、必ずしもマイナス要因とは断定的に申し上げるつもりはありませんが、今、事 務局から話がありましたように、女性の社会進出や女性の個の確立がどんどん社会的に は進んでいく中で、今事務局が言われましたように、多角度に整備をしなければならな い問題がたくさんあるわけです。今回どうまとめるかということになりますが、今、私 が申し上げた前回の7行の文章の中で、既に実行に移された問題もあるわけですが、今 回まとめるに当たっては、女性の年金権問題については一歩も二歩も踏み込んだことを ぜひ盛り込んでほしい。女性の年金の給付と負担ということになれば、各調査でも圧倒 的に、改善を求める女性の方が多いわけであります。最近の女性の個の確立ということ もあわせた一定の見解を相当積極的に盛り込んで、今お話のあったような問題を早急に 論議を開始するというのが、私は流れとしては妥当なのではないか、このように思って おります。 ○B委員  理念の問題を議論するのか、具体的な制度改正の問題を議論するのか、ある程度整理 をしておく必要があると思います。I委員から出された一般原則の内容、大変私個人的 には興味深い論点がいくつもありまして、時間があれば、ぜひいろいろお教えを賜りた いと思います。例えばそれとの関連で、世帯単位の考え方から個人単位の考え方へとい うこともしばしば女性の論者によって強調されてきているところですが、昨日のJ委員 のお話ですと、個人単位といってもいろいろあるのだということでございまして、ぜひ そのあたりは一度整理をして伺う機会を得たいと思います。  当面の問題としては、女性という局面で現在の公的年金制度を切ったときにいろいろ 上がってくる問題は決して小さい問題ではないし、また、いわゆる女性の年金問題でも ない。むしろ、そこのところには、男と女の暮らし方や働き方が変わっていることの問 題なのであって、いわゆる女性の問題ではなくて、男女を含めた在り方の問題だと思い ます。その中で、特にかまびすしく議論されてきた、かまびすしいという形容詞がどう かは別にしまして、激しく議論されてきたのが第3号ですが、あと挙げれば遺族と新し い問題が今の分割の問題だと思うんですね。  少なくとも今回の改正問題で、第3号問題についてはこれだけの議論があるわけです から、一定の筋道をきちんと改正内容として提言すべきではないだろうか。  遺族年金については、前回部分的な手直しがされましたけれども、これについては、 なお不十分だという御指摘がC委員がいつぞやされたところでありまして、これは今回 どのような扱いにするのか。  それから、分割問題はL委員から、今日を含めて二度にわたって詳細な御提起があっ たとおりでございまして、事務局もこれについての検討に着手をしたいという御意向で 私も全く賛成でございます。しかし、3号問題を含めて、今後の検討というふうに繰り 込んでしまうことには反対でございます。分割問題については、ぜひとも法律家を含め た小委員会を当審議会のもとに設定をする。これ自体が1つのアクションですから、具 体的な今回の法改正に組み込まれなくても、これは審議会として1つの具体的なアクシ ョンとしてきちんと提言をするというテーマではないだろうか、そのように思います。  ちょっと遺族年金について、C委員、前回の改正だけでは不十分だという御指摘につ いては中身をお伺いしたいと思いますし、今回どのように扱うべきだとお考えなのか、 そこも伺いたいと思います。しかし、少なくとも3号の問題について、これをちょちょ っと格好だけいじったような格好で先送りすることには、私はそれでは通らない状況だ ろうと、そのように思います。  それから、K委員のコメントについて、私は余り偉そうなこと申し上げる気はありま せんが、J委員が、先ほど85年当時の考え方はこうであったのではないかと言われまし たけれども、恐らくそれは85年改正よりもはるかに前の考え方であって、85年当時とい うのは、既に2回の石油危機をくぐって、サラリーマンが失業しないなんてだれも思っ てない。それから、当時離婚率は急上昇しており、当時の一般的な考え方は、先ほどの ような御指摘のほど牧歌的ではなかったのだというのが、当時の私の記憶であることを つけ加えます。 ○会長  I委員の5原則と3つの方針は、年金審議会の記録にきちんと残るように、文書で改 めて事務局の方へお渡しをお願いします。 ○D委員  さっきのI委員のおっしゃった内容が、私全部理解できてないので、2番目の御主張 は、二分二乗みたいなお考えなんですかね。それは別として、仮にそうだと、私は仮に 理解しておりますけれど。  この資料にたくさん問題点が書いてあるんですけれども、3号被保険者に関しては基 本的な論点は、やっぱり応能負担論というのは非常に頑強な理論で、これを崩すのは非 常に難しいのではないかと思うんですね。L委員からアメリカやイギリスの例について の御指摘もありましたし、資料の中にも入っていますけれども、なかなかこれは崩しに くい議論だと思うんですね。 ○B委員  崩した方がいいとお考えですか。 ○D委員  いやいや、論理的に崩しにくい議論だから崩せないのではないか。個人的な感情は別 としてね。もし、それにかわるものとして、何かもう少し女性のフルタイムでキャリア で働いている人たちの御主張をも入れるような考え方が成り立つとすると、二分二乗方 式みたいなものしかないのかなと。私の知識ちょっと限りがありますから違っているか もしれませんが、二分二乗方式で、あるいはフランスみたいなN分N乗の方が税金に関 してはもっといいように個人的には思うんですけど。税法学者がなかなか認めてくれな いので、これもなかなか通りにくいと思うんですが、私よくわからないので教えていた だければありがたいんですが、仮に二分二乗方式みたいな形で負担の方はやるとした場 合に、給付の方には基礎年金含めてどういう問題が出てくるのか。負担の方に関しては 非常にうまい解決のように思いますけれども、給付に関してはどういう問題があるのか というのがちょっとよくわからないので、専門家がいらしたら教えてほしい。 ○C委員  直接お答えすることになるかどうかよくわからないんですが、第3号被保険者問題は 遺族年金を外して老齢年金だけに限定して問題を見ますと、少なくともサラリーマン族 は二分二乗制なり、N分N乗制になっていて、私はそういう観点から何ら不都合はない 制度に既になっていると個人的に理解しています。  問題は遺族年金のところで発生しているんですね、第3号被保険者問題というのは。 老齢年金のところで発生してないというのが私の理解でありまして、第1号被保険者と の比で言えば、また、いろいろまた別の問題の立て方があるんですが、サラリーマン世 帯内部で共働きと専業主婦世帯で見る限り二分二乗になっているというふうに割り切れ ば、制度に何の不都合はない。これが従来の考え方でそういう説明をしてきたはずなん です。問題は遺族年金のところが、いわゆる一部の人たちがおっしゃっているように掛 け捨て問題というのが残っているわけです。掛け捨て問題というのはどうしても出てき ちゃっている。そこに対する不満は正当に受けとめなければいけないと私は思っていま す。  前回改正のときに選択肢を1つ増やしたんですけれども、あれは実質的には二分二乗 制に結果論として非常に近い案であったのではないかと思います。ただ、水準として4 分の3が妥当かどうかは、これはまた別の問題等ありまして、そこの整理をどうするか という問題がペンディングになっている。ただ、二分二乗制にしましても、先ほど来、 L委員がおっしゃっているように、年金に対する法律の基本的な考え方と抵触する部分 があって、考え方としてはいいんですが、制度としてそういうものを直接盛り込むこと が非常に難しいというところに今あるのではないかと思います。それはやっぱり法律の 専門家がクリアするしかないのではないか。  それから、先ほどB委員がおっしゃった遺族年金にかかわる問題ですが、第3号被保 険者問題を外れまして問題があるのは、再婚すると遺族年金の受給権をなくしてしまう という制度に今なっていると思うんですね。これがいいかどうかという問題。  それから、老齢年金を受給している男性が、初婚でも再婚でもいいんですが、結婚し た場合、その時迎えられた妻、老齢年金受給後に、要するに保険料を拠出する段階では 生活を共にしてない、年金受給段階になって結婚した女性に今の制度のもとでは遺族年 金権が与えられているわけです。これはやや行き過ぎではないかという問題意識という のがあるわけです。それから、今、母子年金を認めているんですが、父子年金は制度上 認めてないんですね。これは恐らくジェンダー論者から見ればおかしな話だと思います  問題は次回改正で具体的にできることは何なのか。あるいは次回に向けて積極的に検 討すべき事項は何かという仕分けの問題だというふうに私は理解しております。 ○会長  10時半になりますので、一たん休憩したいと存じます。休憩後は、女性と年金の問題 年金積立金の運用などについて御議論いただきたいと思います。それでは休憩します。 ○事務局  再開はいかがいたしましょうか。 ○会長  再開は45分。 ○事務局  10時45分再開で、隣の部屋に休憩を準備させていただいています。                 ──休 憩── ○会長  それでは再開いたします。  今度は年金積立金の運用という問題も加えて御議論をお願いします。今まで審議会に 提出された資料の一覧はお手元に配付してあります。女性と年金の問題について、ただ いま申し上げました年金積立金の運用等について、どなたからでも御発言を。どうぞ、 M委員。 ○M委員  パート労働者の扱いについて申し上げたいと思いますが、厚生年金の適用労働者の範 囲につきまして、労働時間あるいは年収の額で現在の基準を緩和しといいますか、適用 拡大を行うべきという意見がありますが、これは健康保険法上の被扶養者の扱い、企業 の配偶者手当の扱い、さらに税法上の配偶者控除などとの関連もありますので、総合的 に考慮する必要があります。年金だけ単独でというわけにいかないと思います。  それから、パート労働者自身あるいは企業がその適用拡大についてどう考えているか といったことも十分に見きわめる必要がありますので、拡大すべしという見解につきま して、反対というわけではありませんが、総合的に考慮した上で判断する必要があるこ とを申し上げたいと思います。 ○B委員 ただいまの御指摘大変大事なところだと思うんですが、よく1号被保険者の未納・未 加入で空洞化だと言われますが、雇用労働者の中で適用されていない人がいる。しかも それは無視できる数ではなくかつ増えている。ということは言い方をかえれば、2号の 世界でも一種の空洞化があらわれていることだと思うんですね。今、1号被保険者の職 業別の分類をこの間ちょっと教えてもらいましたが、大変衝撃的な数字でございました 私どもは1号は自営業者を念頭に置いてつくられた制度だとばかり思っていたんですが 実際には自営業者とカウントされる人が50%に満たない。あと残りの半分強のうちの半 分、すなわち4分の1が無業者、これは恐らく学生の強制適用という、私あの制度は反 対ですが、ことの影響がどうも多いらしくて、残りの4分の1が、被用者すなわち雇用 労働者である。つまり、これは本来2号であるべき社会的なポジションにいる人が2号 として扱われず、したがって、報酬比例部分年金も受け取れない。そこで定額保険料と いう制度の中で、これは特に都市部であったと思いますが、こういう階層が増えている ことが実は未加入・未納と言われる1号の世界での空洞化の1つの要因になっているの ではないかとすら思えるほどであります。  翻って、今パートというお話でございましたが、そういう意味で漏れているのがパー トタイマーだけではありません。正規雇用労働者であっても、5人未満事業所は御案内 のとおり任意適用ですし、法人企業ではない個人経営企業ですと、これは業種によって の違いがあると思いますが、5人を超えても任意適用であります。この間の不況の中で 今までは任意適用だけれども、任意で適用してきた良心的な経営者の中で、保険料支払 いに耐えられずに任意適用からおりていくという現象が見られるために1号へ落ちてい く。落ちていくという言い方がいいかどうかわからないけど、そういう現象が増えてい るようであります。  それから、先年の会計検査院の手入れというのか、監査で特に大きな話題になったの が派遣労働者でございます。多くの派遣会社では、内勤の人たちについては社会保険を 適用していながら、同じく雇用関係のある派遣労働者について適用しているケースは極 めて少ない。これは登録している人を全部雇用関係にあるとみなして、全員について2 年間さかのぼって払うべくして払われなかったものを払えという、あの言い方がいいか どうかについては私は疑問がありますが、制度上、これは5人未満の問題とも関連しま すけれども、非常に適用しにくい就労形態にあることは事実なんですね。  労働保険というのは、これに対して、5人未満の任意適用といったことはありません あれは社会保険に比べると保険料金額も少ないし、ある意味では労災にしろ失業にしろ 実際の給付の件数が比較的少ないといったことだとか、保険制度としてかなりどんぶり 勘定だとかいろいろありますけれども。別に労働省と厚生省が一緒になるからとか、そ ういうことではなくて、雇用労働者に対して適用されるべき労働保険、社会保険に関し ては、同一の適用原則がまず貫かれるべきだろうと思います。そういう雇用労働者であ りながら、被用者保険、これは年金、健保合わせてですが、適用されないような人が増 えているという現在の雇用構造というのは非常に大きな問題で、悪い言い方をすれば、 賃金は安い、クビはいつでも切れる、おまけに社会保険料も負担しなくても済む、こう いった雇用が増えていくということは、ある意味では公序良俗に反することと言っても 決して大げさではないだろう。またそういう種類の労働者に多く依存できる産業とそう でない産業との間に、実際の労働コスト面での基本的な格差が拡大することは、産業構 造上も決して公正なこととは言えないだろうと思います。  したがって、この適用問題はパートに限らず、現在の医療、年金含めた社会保険の雇 用労働者における適用漏れをどうするのかということとして、総括的にとらえて議論す べきだろうと思います。  私どもはとりあえず2段階の問題を提案をいたしました。1つは、これは健保、年金 共通でございますが、被保険者の資格にかかわる問題。これは主として労働時間ないし は労働日数でございますが、通常労働者の4分の3以上といっておりますのを2分の1 以上に広げるべきである。それから、被扶養者認定基準、現在年収130万でありますが、 これを90万円へ引き下げるべきである。この2分の1及び90万円というのは便宜的でご ざいまして、便宜的と申しますのは、短時間労働者に対する失業保険の適用基準にとり あえずあるものですから、これに準じただけで、それ自体についての合理的な根拠が余 りあるわけではありません。ただ、一応制度としてわかりやすい方がいいだろうと思っ て、そういうふうに提案いたしました。  特に被扶養者認定基準ではなくて、被保険者資格にかかわる労働時間ないし労働日数 の問題は、高齢者の問題を考える上で大変大事だと思います。高齢者に関して、特に60 歳代前半層を中心にして、かつて労働省は「なだらかな引退」という表現で、短時間就 労の促進をうたったことがあります。現実にこの年代層の労働者の中で、隔日勤務を含 む短時間就労の規模は大変多いのですが、現実の就業機会の中にはそういうケースはま だまだ少なく、高齢者の短時間就労促進のためにつくられた雇用保険の中の助成金は裏 へ隠されてしまいました。ほとんど利用されていないという状態でございまして、その 意味で、労働時間が4分の3を切ることをめぐって、例えば在職老齢年金はそこからは 適用されない。4分の3を超えれば、在職老齢年金制度が適用されて給付制限が行わ れるといったような不公平が現実に生まれているわけです。今後の高齢者雇用は大変重 要なテーマですが、特にその中でも短時間就労を促進するということを含めて、単に パートの問題だけではなくて、この被保険者資格にかかわる要件を含めて、今回の改正 で一定の前進を図るべきではないだろうか。これが第1段階でございます。  それから、第2段階につきましては、5人未満事業所の問題。それから法人資格を持 たない個人経営企業の従業員の問題。これを包括的にすべて全員完全適用をできるため に、従来の事業所単位とは違う適用スキームを検討すべきだと思います。これは派遣労 働者問題を検討する中で深刻にぶつかった問題でございまして、「連合」では派遣業界 の団体とも意見交換をしながら、この問題について模索をしてまいりました。ぜひとも これについては、単に年金の問題ではございませんので、M委員おっしゃるように、医 療も含めた社会保険全体の問題ですので、年金審でということには必ずしもならないか もしれませんが、独自の検討の場を公式にも発足をさせるべきだということを年金審と して提言すべきだと、そのように考えております。  特に法人資格を持たないということだけで、5人規模を超えても、そこで任意適用の 世界になっているといったことについては、早急な是正が必要ではないだろうか。  以上、我々の考え方の概略でございます。人を雇うことに伴うコストの問題は、やは り平等に負担をしていただくべきだし、労働者側についてもまたそれに対応して、雇わ れて働くことに伴う一定の負担を平等に行うべきだ、そのように思います。以上です。 ○事務局  社会保険庁でございますけれども、1点だけ御確認をしておきたいと思いますが、今 の適用の関係でございますけれども、現在のところ法人の事業所につきましては、これ は5人未満であっても適用するということになってございます。また、個人の事業所に つきましては、5人未満については任意適用ということになっておるのが今の現状でご ざいます。 ○B委員  法人であれば、1人でも。 ○ 事務局  法人についてはすべて強制適用ということになってございます。 ○B委員  そうですか、ごめんなさい。 ○A委員  今のB委員からの話、非常にこれから多様化していきます雇用関係との関連で大事な 問題だと思うんです。ただ、社会保険であるという大前提をまず置くと、負担に応じて 受け取るという原則が必要。でないと、どこかからお金を持ってこなければいかんわけ ですから。そういう意味で、あるけじめというのは、少なくとも社会保険である限りは そこにきちんとしたものがなければいかん。社会保険でなくなったって、それは論議は 一緒ですけれども、そういう意味で、今の断面で考えますと、今お話のあった問題とし て言えば、4分の3以上というのは1つの原則として、これが短期の生活保障的な意味 のいわゆる雇用保険と、しかもそのときそのときもらうわけではなくて、長期にわたっ て負担をし、かつその後の生活を賄う年金あるいは医療保険、こういった性格を持つも のとは話がやはり違うのだろうと思います。そういう意味で、4分の3以上という原則 は、社会保障というものの前提に立つ上で、かつまたほかの人に財源を持ってこないと いう意味で、今の制度を守るべきであると思います。  逆に言いまして、非常に少ない月収の方が、仮に、おれも負担するから厚生年金に加 入させろという話になった場合に、1号被保険者だと月額13,300円の保険料払っている わけですが、2階建てに顔を出すとして、いくらになるのかというと、パートで月収の 少ない人は、1万3,300円よりも月々に払う厚生年金の保険料というのは少なくなるんじ ゃないか。ということは、2階の給付があるのに1階だけの人より保険料が少ないとい うのは、論理的に合わなくなってくるのではないか、そういう気がしますので、にわか には応じえない考え方だということを申し上げておきたいと思います。 ○E委員 ちょっとB委員に伺いたいんですが、4分の3を2分の1にする、それから、130万を 90万にして適用を広げるということですが、これは単なる財政対策でそういふうに広げ たというふうに理解をされるとするならば、やや問題があるだろうと思うんですね。年 収90万といいますと、月に直すと7〜8万の収入になるわけですけれども、仮にこの人 たちに保険料を適用するとなると、収入に比べて比率はかなり高くなるわけですね。 そうした場合に国の年金財政が苦しいから、低所得者にも広げているんだというふうに 解釈をされる危険性があると思うんですが。 ○B委員  お答えします。 ○会長  I委員先に。 ○I委員  それはちょっと視点が違うと思うんですけれども、今の社会保険、年金保険とか健康 保険における被扶養者の認定基準というものがあるために、特にパート就労などは女性 が多いわけですけれども、女性の就労を抑制する要因になっているわけです。これは何 回か会議でも申し上げたのですけれども、やはり働きたいと思う女性が就業調整等をし ないで、よりもっともっと働けるような、そういう社会にしていくべきで、制度という のは税制も健康保険も年金保険もそうですが、そういうふうに就労に対して中立的な制 度であるべきです。B委員は便宜的に今としてはということで、4分の3から2分の1 130万から90万円ということで、将来を見据えた今の第一段階としてはこれは1つの考え 方だし、非常に重要な改正で、B委員が今回の改正で前進を図るべきだとおっしゃった ことには賛成です。女性の年金は議論されるのですけれども、先ほどH委員がおっしゃ ったように、前回の5年前と比べても、とても前進しそうにないので、パート就労に関 しては、職業に関する女性の自由な選択を促進するような方向で改正が行われるべきで す。また、これは個人にとっても、将来の2階部分ができるわけですから、生活保障と いう意味でも年金のベネフィットを受けられるわけですね。そういう形で働いている方 は確かに月収とかが低いために、将来の年金の2階部分というようなところを認識され ていないかもしれませんが、受給権がきちんとできるわけです。130万円をこえて200万 とか250万円へどんどん働いて社会参加していく、経済参加していくということが、社会 全体にとっても、プラスになると思われます。 女性の就労を促進するという意味で、今回の一歩前進を図るべきだというB委員の御 意見に私は賛成です。 ○B委員 まずE委員の御指摘についてお答えしますが、私どもは財政対策で考えたのではあり ませんし、現在の制度で財政対策上はこれは逆に言うとマイナスになる可能性がありま す。なぜかというと、基礎年金を含めた給付総額自体についてはかなり再分配機能が強 く働いておりますので、低所得層が2号として適用された場合には、保険料はかなり低 いけれども、給付水準はそれほど低くはならない。その意味では高額保険料を払ってい る階層からの再分配によって、その人たちの給付が賄われるわけですから、全体の被保 険者の中で低所得層が増えれば増えるほど、平均給付水準は下がっていく。平均給付水 準を維持しようと思えば、財政上別な財源を生み出されなければならない。その意味で は、財政対策上で考えたのか、動機も違いますし、結果としてもそうはならないという ことを指摘をさせていただきたいと思います。  私どもはこの問題を考えましたのは、いわゆる第3号被保険者問題の議論が1つ、高 齢者就労の問題が1つでございます。そして、女子と高齢者、これを一緒くたにすると うちの組合員はすぐに怒るんですけれども、しかし、労働市場の構造から言えば、大変 似通った面がある。それは否定しがたいことでありまして、その意味で応能負担という 原則は、これは非常に基本的な原則ですから、収入のある人にはそれなりに負担を求め るという意味で言えば、いわゆる被扶養者認定基準というのは引下げいくべきであって 逆にそのことによって、収入のない人からは保険料は取らないという原則を改めて貫徹 をすべきである。  一番乱暴なのは、あの定額保険料という極めて極端な逆進的な制度を、自分の収入も ない人たちに強制しようとする制度でございました。これはよろしくないという観点で ございます。  それから、2分の1につきましては、特に高齢者の短時間就労の拡大を念頭に置いた 措置だということを御理解いただきたいと思います。  それから、I委員の御発言に関連いたしまして、就労抑制についてしばしば指摘がご ざいました。就労を抑制しない中立化ということが、これは経済学の用語だと思うんで すが、使われます。ただ、そのときに1つ混乱がありますのは、プッシュとプルとの間 にニュートラルな点があるという意味での中立性という議論と、それから、いささかで も阻害するというか、抑制するような要因があれば、それはすべて中立的でない。つま り一切の抑制的と考えられる要素をすべてゼロにしてしまうという議論とは、これはか なり違うわけですね。そこでの整理が就労抑制問題に関しては違うと思います。  ただ、つけ加えておきますと、現在のパートタイマーの中で、パートタイマーと呼ば れる就労形態をとっている人の中の一部では、年収130万円を超える条件に実際に突入し つつある人がかなりいます。これがいいことか、悪いことかというのは、労働内容と照 らしてみると、本当は正規雇用にすべきような労働をパートの人に求めているという面 が流通産業なんかではたまたま見られるので、必ずしもいいことだと思いません。しか し、少なくとも収入基準に関して引き下げることは、当面1つの重要なテーマで、それ と2分の1の問題との兼ね合いを1つだけ申しますと、現在のパート労働市場における 時間賃率の低さを同時に是正することを考慮すべきだと思っております。4分の3、130 万円に対して、2分の1、90万というのは、わずかながら時間賃率の引上げを含意して いるものである。これは私どもの主観的な意味づけにすぎませんが、同一価値労働、同 一原則というところへ向かって、時間賃率の平準化を図っていくべきだと考えている、 そういう背景があるということを申し添えておきたいと思います。 ○J委員  基本的には、今のパート等労働者の厚生年金適用というのに賛成なんです。けれども ただ、先ほどB委員もおっしゃったように、90万というのは一時的なというか、過渡的 な基準だということでしたけれども、現実に厚生省からいただいている調査でも出てい ますように、103万の壁とか、130万の壁とかいろいろ言われますが、130万の方が高いの で、現実には103万に壁がある。100万から90万前後にパートの、特に被扶養配偶者だと 思うんですが、その人たちの実態があるということを考えますと、90万がもう一つの壁 というか、引下げの壁になって就労調整するということですね。雇用する側からも、働 く側からも90万円が壁になるという危険があると私は非常に危惧を持つんですね。  応分負担というのは、所得がある人が負担するという、基本的に大ざっぱに言ってし まうと、そういうふうに考えたいと思うんですけれども、1号である妻、あるいは自営 業と言われながら自営ではないような女性たち、男性もそうですが、そういう人たちは 負担すると。そして、サラリーマンに扶養されている妻は負担しないという、しかも扶 養している夫ではなくて、2号と言われる人たち全体で負担するという、この矛盾とい うのでしょうか、それを考えざるを得ないですね。  その問題をどうやって解決すればいいかというのは、すごく全部の制度に関連するの で難しいのですけれども、1号、2号、3号という分け方自体がやっぱり時代に合わな くなってきているのではないでしょうか。先ほど自営業者というのが半分しかいない。 それから、今盛んに話題になっています女性の起業とかいうようなことが言われており ますし、NPOという形での法人化が進むわけですから、何かその辺が私は納得がいか ないなというふうに思っています。  90万の危険性ということがあるので、この額についてはもう少し慎重に考えなければ いけないのではないかと思います。 ○A委員  私も本当に真剣に考えないかんと思っているのはNPO、要するにNPOの広がり。 いわゆる雇用関係における就労という問題以外の、就労という言葉がちょっとおかしい ので、向こうの言葉で言えば、奉仕ということになるのもしれませんが、いずれにしま しても、それには有料のボランティアもあれば、無料のボランティアもある。そういっ た広がりがすごく大きな世界を占めている国が随分多いわけですね。したがって、再び 雇用関係、つまり隷属関係の中に入っていくことを嫌う国がたくさんあって、しかもそ ういう世界では、やっぱり無償、あるいは有償で社会貢献することに社会的な価値と認 知と称賛があると。そういう姿があるから、高齢者が生き生きとして、そういうことに 参加して、いわゆる雇用関係の仕事を求めない、そういう風土ができているわけです。 だんだんに男の古びた人たちも、家で粗大ごみ扱いされないように、そういう社会的な 使命感に燃えた世界を、これは男女にかかわらずでしょうけど、つくり上げなければい かんということは私はよくわかるんです。そういう世界を描いたときに、どういう世界 が今後我々の1つの夢になるのかなということは、一生懸命そういうことも勉強させた り、勉強したりさせてもらっているんです。ただ、当面のこの問題との関係で言えば、 1つは、さっきI委員おっしゃったように、年金制度が抑制になるのだといえば、抑制 になっている。所得控除、家族控除をまずやめるべきだと思うんですね。まず、そっち をやめて年金制度をどう考えるんだという、そっちの方と抱き合わせでないとまずはお かしい。  それから、もう一つ、今の年金制度、1階建て、2階建てを前提にして、4分の3を2分 の1に改めて1階も2階ももらえるよという理屈には、さっきE委員がおっしゃったけれ ども、年収で90万円位、月に7万円の人が1号保険料の1万3,300円を払えますかという ことになると、多分何千円ぐらいしか払わないことになる。そうすると1万3,300円より 保険料が低いわけですから、2階建てに顔を出すのはおかしいわけです。おかしいん だけど、それが標準報酬最大限の9万2,000円というところに顔が出せるというところを ねらうとすると、これはだれかが犠牲になるということになる。だれかの財源を犠牲に して、その人たちがもらえることになっちゃうわけでありますので、応能と受益との関 係のバランスをきちんしておかないと話がこんがらがるということになります。そこの ところはよほど気をつけて考えなければいけないと、先ほど申し上げたわけでありまし て、簡単に4分の3を崩すべきではないと申し上げたのはそういう意味でございます。 ○会長  年金積立金の運用について、この際、ぜひとも言っておきたいことがございましたら お願いします。どうぞ、B委員。 ○B委員  積立金の議論、大変大事な点でございます。ちょっとその前に1つだけ今のテーマに 関連して、1、2、3号という枠組みを取っ払えというJ委員の御指摘は、私はこれは 税方式への移行によって完成するのだというふうに理解をしておりました。現行の制度 の中でできるのは、それの適用範囲の変更だと思います。現行3号の不合理なところは 配偶者であることに限定されている。必ずしも婚姻関係が厳密に要求されているわけで はないにしても。しかし問題は老親の介護等で家事労働に拘束された結果、結婚もでき ないという言い方をするとまた怒られるんだけど、そういう状態に置かれている女性は 無収入でありながら1万3,300円払え、そうでなければ無年金だと言われ、配偶者である 女性に関してはそういうことは課せられない。明らかにこれは不合理であって、私ども は収入のある3号は2号へ移行する。それとあわせて、配偶者という限定は不合理なも のであるから取り除くということをあわせて3号に関しては提言していることを御報告 をしておきたいと思います。  さて、積立金でございますが、このまとめられました主な意見の19ページの「融資事 業等」という項目がありまして、これは特にいつぞやの機会に、I委員から大変体系的 にこの問題については意義が御説明あったところでございまして、私も感銘を持って聞 かせていただきました。それにつけ加えることは特段はございません。現在の融資事業 の中で、雇用労働者にとって特に大事なのは住宅の融資でございます。これは共済年金 制度にはきちんと最初からこういうものが組み込まれているものを、厚生年金では後か らこしらえてきた。これを厚生年金だけなくしてしまうといったことは、再び新しい官 民格差ということを呼ぶことになるので、これはぜひとも継続をすることが必要だし、 現実に今の景気動向による変動を別にいたしますと、今後とも住宅ニーズというのは、 かつてのような規模でないにしても継続的に存在するだろう。  それから、高齢化に対応して住宅ニーズは新しい局面を、例えばバリアフリーという 言い方で表現されているものを持ってまいりました。バリアフリーと言い方自体が、年 金福祉事業団が最初に発案したものだというふうに聞いていますが、そういうニーズに 対しても、これは現役の被保険者に対する「還元融資」という言い方は伝統的な言い方 なのかもしれませんが、制度としては、これは大変重要な意義があろうかと思っており ます。  それから、昨年6月の閣議決定では、いわゆる大型保養基地・グリンピアからは即撤 退というふうに読みうる内容のものが考えられておりますが、大型保養基地、私自身は 行ったことがないのですが、行った人たちの感想を聞きますと、ああいう立派な施設を ただつくっておいて、遊ばせたあげくぶっ壊してしまうといったことは、明らかに資源 の浪費といいますか、これは大変なむだであって、むしろ有効活用を考えるべきだとい うことが提言されております。また、そこに働いている人たちも総員で1,000人近く、直 接雇われているだけでも800人を超えた人たちがいるわけで、そういうところについて、 軽々な撤収みたいなことを考えるのは非常に乱暴ではないだろうか、そのように思う次 第でございます。 そのほか、関連するいくつかの業務内容についてもう少し精査をし、整理すべきもの は整理をすることについて賛成だということを前提にした上で、何もかも市場運用だと いう観点ではなく、全体の年金積立金の運用の中で、これをきちんと位置づけた在り方 を積極的に検討するのが社会保険としての年金制度の責務ではないのかということを申 し上げておきたいと思います。 なお、積立金の運用の問題だけに限定されているようでございますが、積立金の規模 について、ついでに言わせていただければ、現状の積立金の規模をこれ以上拡大する必 要があるとは思いません。現在ある積立金をやたらと取り崩すということではなくて、 これはこれでしっかりと大事にしていただきたいと思いますが、将来に向かって積立金 をこれ以上拡大をする、積み増していく必要があるとは考えていないことを申し添えて おきたいと思います。 ○H委員 前段言われました住宅を中心にした還元融資の問題については、全くB委員と同意見 であります。融資にかかわっては、住宅に限らず社会保障基盤整備ということが大きな グランドなんでしょうけれども、これからの日本全体の産業とか、我々の生活環境を考 えてみると、今さまざまな問題で、生活の周辺がざわめいているわけであります。これ からの産業には相当多額の投資も含めまして負担がかかるというような側面もあります 社会保険にかかわる積立という側面はありますけれども、融資の範疇を拡大すべきだと 考えます。この19ページのメモには書いてないんですが、いつか申し上げたことがある んですが、ダイオキシン、環境ホルモン、炭酸ガスだとか、いろいろ対策をこれから積 極的にはやっていかなければいけないという状況があるわけですから、狭い意味での社 会基盤の整備、社会保障にかかわらないで、もっと広範な社会基盤の整備につながるよ うな融資事業も新たな側面として考えていただいたらいいのではないかと思っておりま す。 そのことを申し上げている背景には、やっぱり労使で財源を拠出しているという側面 があり、それは極めて大事にすべきだと思っています。むしろ財源を出した側の考え方 より、財源を受け取った側の判断でいろんなことがやられているということであります もっと拠出した側の意見を十分拝聴して、グランドを広げて、さまざまな面の社会基盤 の整備という方向で活用していくのも1つの方法だと考えております。そのことを申し 上げておきたいと思います。 ○K委員 私も大体H委員とB員おっしゃった線と同じなんですけれども、巨額の積立金を持っ ておりまして、1つは市場運用で、これはこれで結構でありますが、融資事業等につい てもかなり積極的な姿勢を持って使うのがいいと私は思います。ここには住宅融資等の 運用といった言葉がありますが、これはこれで非常に大切ですし、その下にあります少 子・高齢社会に対応した社会保障基盤といった抽象的な言葉ですが、こういったところ に積立金をうまく使って、そして公的年金が存在することが年金の掛金を出している人 にとって、どれぐらい意味があるかということを認知してもらうようなために使うこと が有効ではないかと思います。  例の保険料を払わないという大変困った問題があるわけですが、その人たちがなぜ払 わないかということをいろいろ考えてみると、やはり公的年金が存在する、特に基礎年 金、国民年金が存在することの意味がはっきりわからないといったことにあるのではな いかと思います。その一部を解消するために、この積立金をうまく使って、その人たち に、年金制度があるということは、単に老人になって年金をもらえることだけではなし に、現役のときにいろいろと生きていくのに大変いいものがあることをわかってもらう ことに使うべきだと私は思います。  ちょっとつけ足しますが、前回、人口構造が非常に深刻な状況になっていることを少 し極端に言い過ぎて、ちょっと私はあれは言い過ぎたと思うんです。しかし、実際、人 口構造は平均子供数2人をずっと下回っておりますから、こういった問題について年金 がこれと無関係では決してないわけです。少子社会、そして高齢社会、この2つを支え る1つの、住宅は一応ハードウエアですけれども、もう少しソフトウエア的な社会資本 というものを充実すると。つまりもっとソフトに宣伝をするとか、教育をするとか、あ るいは特別な方法で、国民年金を宣伝するといったことに積立金を使うのがいいと思い ます。  たまたま今日の年金審の会場になっている施設には初めて来たんですが、これは厚生 年金の施設だそうですけれども、こういったものが、国民年金・基礎年金に入っている ということで有利に使えるといったことで、子供を遊ばせる、あるいは家族を連れてレ クリエーションをやるといったことに非常に役立ったことがわかれば、自分たちが納め ている保険料が有効に生きていることになります。以上、重複いたしますが、私として も同じような意見を持っているということでございます。 ○G委員 ちょっと今までの御意見と違うといいますか、こういう問題をどう考えたらいいかと いうことなんですが、今の厚生年金といいますか、日本の年金制度で大変大きな問題と して言われていることに物すごい積立不足があるじゃないかと。それが後代の世代に大 きな負担を残していると。それを何とかしなくちゃいかんじゃないかということが大変 いろんな方面から言われて問題になっております。  そのことに対して、この審議会としてどういった考え方をとったらいいかという点を もう少し私は議論した方がいいのではないかと思うんですね。単に積立金が百何十兆あ るから巨額だと、これ以上、持つ必要はないということで、その答えになるだろうか。 将来給付を、場合によっては2割、3割、あるいは4割も下げなくちゃいけない。賦課 方式が問題だということも言われておりますときに、積立金はある程度福祉施設に使っ ても私はいいと思いますけれども、余りそういうことに積極的な意味合いを持たせるの はどうかなと。私はそういう意見です。基本的には私はできるだけ積立金不足を解消す る。解消といいますか、完全な積立方式でないわけですから、何百兆という積立不足が あるという指摘そのものにも、私は議論といいますか、多少違った意見があるんですけ れども、今の積立金でいいとは私自身は思っておりません。  ただ、こういう経済情勢ですから、どんどん保険料を上げて積立金を増やせばいいと 単純に考えるわけにいかないことも確かなんで、C委員なんかは別の御意見をこの間お っしゃっておられましたけれども、その辺をもう少しどう考えたらいいかということは 私は少し議論を深めるべきだと思います。 ○L委員  私もG委員の御意見に賛成だということを申し上げた上で1つつけ加えておきたいの は、逆に積立金は福祉運用に使うべきだということになりますと、実はいろんな施設を つくって利用されるのは全員じゃないんですね。やはり一部に限られるわけです。全体 の利益というのは、結局後代の、G委員がおっしゃった後代に残しておる莫大な未積立 債務をどうするんだとか、そういったのはこれは全員の問題なんですね。あるいは少し でもその積立金から利子を稼いで、これを給付費に充てようじゃないかと、これは全員 にわたるわけなんですが、施設をつくって、高齢者に利用させるというのはその中の一 部なんですね。  ですから積立金の運用に余裕があれば、私は現在やっている程度の福祉運用というの は是認できるかと思うんですが、これから非常に厳しくなっていく中でやりますと、こ れはお金のむだ遣いだと、C委員もそういうことを言っておられるわけなんですが、そ れも私もわかるわけなんですね。ですから余り市場条件を無視した運用をやりますと、 やはり一方においてむだ遣いじゃないかという議論は出てくる。その辺のバランスをど う考えていくかということは大切ではないかと思います。 ○F委員  G委員がおっしゃったことに、私全面的に賛成でございます。やはり将来世代の負担 を若干でも軽減する。同じ制度で運営されるという前提で考えた場合に、これはやはり 積立方式の様相を深めるということ以外にはない。もちろん完全な積立方式、前もお話 し申し上げましたけれども、完全な積立方式ということになりますと、これは私的年金 の分野になってくるので、公的年金には全くそぐわない。結果的には公的年金の場合は 完全な積立方式と賦課方式との融合された形の積立方式で、今のやり方は修正積立です が、これをもう少し厚く積むという形を目指すべきと私は考えております。  今は給付が増えていく過程にありますから、年間給付金の5倍ぐらいの積立になって いるわけですけれども、具体的にそれでは、最終的にどれくらいになればいいのかと。 これは非常に難しい問題だとは思うんですけれども、例えば年間給付費の2年分積立金 を持つことにいたしますと、そのときの保険料は約10%は軽減される。給付のトータル の10%はそれで軽減される。仮に5年もつということになりますと、少なくとも4分の 1は軽減されるという形に最終的になるわけです。5年分というのは非常に大きな数字 でございますから、確かに市場運用という観点からどうなのかということは問題として 非常に大きいわけでございますけれども、現実に積立を持つことの効果は、そのように 非常に大きく出てくるということを申し上げておきたいと思います。 ○M委員  年金福祉事業団の被保険者向け融資業務について、私、前回発言しましたので、改め て申し上げたいと思いますが、住宅融資につきましては、現に住宅金融公庫、あるいは 民間金融機関が行っておりますし、私は原則として民間でやっておる事業に対しては、 よほどのことがない限り、役所はそれに競合するようなことをするべきではない。民間 活力を大いに活用すべきだという考え方で、閣議決定の融資業務の廃止については賛成 であります。  雇用の問題につきましては、今融資業務に何千人か携わっておられますけれども、こ れは時間をかけて解決すればいいのではないかと。融資業務を今やめたからといって、 すぐに全部事業をやめるわけではありませんので、過渡期の時間がありますから、時間 をかけて吸収していくということでいいのではないか。  それから、保養センターとか年金病院とか、こういう年金のファンドで行っている厚 生関係の施設についても、なるべく民間の活力に任せるという考え方で、この大事な年 金積立金は給付に充てるファンドとして余り固定させるべきではないのではないか、そ ういうふうに考えております。 ○事務局  この積立金の運用問題といいますのは、要はこれは保険料拠出者のお金ですから、保 険料拠出者の意見を最大限反映させるべきだ、そういう運用をすべきだと思います。こ れは先ほどH委員からそういう御発言がありましたけれども、私どもも基本的にはそう いうことだと思っております。そういうことで、9月の最終意見書には、積立金運用に ついての基本原則について、年金審議会としての明確な御意見をぜひ盛り込んでいただ きたい、こういうお願いでございます。  それから、もう一つ、昨年6月の閣議決定で、年金福祉事業団の廃止というのが決ま りまして、基本的な考え方につきましてもこの場で御紹介したように、積立金運用の新 たな仕組みをつくった上で年金福祉事業団を廃止をするとか、グリンピアは撤退とか、 融資事業は適切な経過措置を置いた上で最終的に撤退とか、そういう方針が示されてお ります。  そういうことで、この閣議決定に沿って、具体的にどういう方法があるのかというの を今検討中でございますけれども、グリンピアにつきましては、先ほど有効活用を図る べきだと、雇用問題もあると、こういう御指摘ございました。私どもも全く同じ考えで ございまして、ぜひ、これは地元自治体で引き受けていただいて、有効活用を図ってい ただきたいということで、地元自治体と御相談をしております。そういう中で、割引措 置を講ずるとか、そういうことによりまして、ぜひ地元でやっていただきたいとこう思 っておるわけでございます。地元で引き受けられないということになりますと、最終的 には閉鎖をして売却とこういうことにならざるを得ないんですけれども、ぜひ有効活用 を図りたいということで、今申し上げたような作業をやっておるということでございま す。  それから、融資事業につきましても、いろんな意見がございまして、今のような形で 続ける、ある一定期間続けるという考え方もありましょうし、先ほど御意見が出ました ように、同じ公的な融資制度として住宅金融公庫があるわけですから、そこの中で一括 してやればいいじゃないか、こういう考え方も当然あるわけでございまして、いろいろ な方策について検討中ということでございます。  ただ、先ほど少子・高齢化に備えた社会保障基盤整備のために積極的に活用すべきだ という御意見がありました。これにつきましては、いろんな議論がございまして、例え ば財投制度のむだとか、非効率とか、さんざん言われまして、今、財投改革に取り組ん でいるわけですけれども、そういう中にあって、今度年金が少子・高齢化のためだとい うことでいろんな融資制度を新たに設けて、そこに資金を供給する、こういう仕組みを 仮につくるということになりますと、また第2の財投をつくることになるんじゃないか と、こういう議論があるわけですね。したがって、年金としては既存の財投機関の財投 機関債なり、あるいは財投債を購入することによって、こういう社会基盤整備に年金と しての応分の、協力というか、資金供給を円滑にすべきではないか。  もちろんその場合に、財投債とか財投機関債の金利はこれは市場で決定されるわけで すから、年金にとっても有利と判断される場合に、財投債とか財投機関債を購入すると こういうことになるわけでございまして、一方的に低い金利を押しつけられるとか、そ ういうことでは全くないんです。年金としてはそういう社会基盤整備のための資金供給 については、財投債とか財投機関債の購入にとどめるべきで、年金みずからが、第2の 財投制度をつくる、こういうことはいかがなものかと、こういう御意見もございます。  そういうことで、私どもとしましては、事務的にいろいろな方策を探っているという 段階でございまして、意見書を9月にいただきますと、その趣旨に沿って精いっぱい努 力していきたいと、こう思っておるわけでございます。 ○C委員  先ほど来、G委員やL委員のところから問題提起があったんですが、通常言われてい るところの積立不足に対する対処をどうするかという問題なんです。積立不足という話 は、現在の厚生年金が仮に完全積立方式で運営されているというふうに仮定したとした ら、どれだけ積立不足があるかという計算結果なんですね。現在の厚生年金が完全積立 で行われているといった理解はほとんどの人がしてないはずなんです。350兆円という数 字があるんですが、1階部分というか、基礎年金部分は賦課方式だとして計算してある んですけれども、少なくとも350兆円というのは、完全積立を仮定して計算された数字な んですね。厚生年金はそういうふうにできているとは私はだれも理解していないと思う んですね。  積立金をどうするかという問題、積立不足という問題は、実はそれだけの問題ではな くて、今後保険料をどう上げていくかとか、どう下げるかという話もあるんですが、そ ういう問題と裏腹の問題なわけです。これは年金だけの問題で処理できない問題だと、 私は個人的には思っているんですね。経済環境の問題とか、運用環境の問題だとか、公 的機関にそういう運用ノウハウがあるのかどうかとか、そういうすべてのことを総合的 に考えざるを得ない。少なくとも今の日本の経済を見る限り、非常に問題が多くて、保 険料を簡単に引き上げられるような状況にはない。だから、積立金は事実上増やせない という状況だろうと思うんです。あるいは公的機関が積立金を保有し、その管理をして いくことについては、日本の過去については成功例がいっぱいあったとは思うんです けれども、今問題になっているのは失敗例であります。 アメリカの議論を聞いていても、やはり公的機関、政府が公的年金の積立金を持つこ とに対するいろんな意見が出ていて、どうもうまい方法について意見が分かれている。 むしろ、それだったら、民間の器でやるべきで、公的年金については、余り積立金を増 やさない方向でどうかという意見が結構出ているわけです。現にイギリス、ドイツ、フ ランス等を見ても、積立金をほとんど持っていない公的年金に走っているわけです。 日本だけ公的年金という器の中で、積立金を積み増していく。それでうまく積立金の 管理ができるというふうに考えることが本当にできるのかということだと思います。私 はその点については非常にネガティブな評価をしているということでありまして、積立 金を増やすのだったら、それは民間の器で、民間の企業年金なり職域年金、個人年金で やればいい話ではないか。 ○A委員 民間の活力を活用すべきだという、さっきのM委員のお話、それから事務局からあり ましたいろんな福利に伴う諸施策に年金資金は使うべきではないということでのモノの 考え方の整理、これは両方とも私は賛成でございます。特に年金のお金はあくまで年金 のお金をできるだけ増やすためにやるべきであって、年金だから少子化対策に使っても いいじゃないか、何か使ってもいいじゃないかということにはならない。それは一銭も 利潤を生まないお金でございます。そういう目的のために国はあるわけで、一般会計で やるべきです。まさに今新社会資本というような問題、場合によっては、少子化対策と いうのは、国の一番大きな課題になるかもしれない、そういうときの新社会資本の在り 方というのは、もちろんこれは民活との絡みもありますが、それは利潤を生まなくても やらなければならない仕事があるわけで、そういうところは一般会計でしっかりやって おかなければいけない。もともと「生活大国」だとか、言葉だけ言っていますけれども ちっとも生活大国でも何でもないわけで、そういう意味での利潤を生まなくても国とし てやらなければならない事業は事業としてきちんと整理してやるべきです。こういう年 金みたいに預けているお金がどんなにふくらむかということは、それはいちずにそっち のほうに純化しておくべきだという意味で、かつまた変な疑惑だとか、何とかが出てこ ないようにするためにも純化してやるべきだと思います。 もう一つは積立金の問題なんですが、これはもう少し整理した話をしなければならん と思いますけれども、私自身もこれ以上積立金を拡大する必要はないのではないか、そ れだけはちょっと申し上げておきたいと思います。 ○J委員 私、こういうところに泊まったのは年金審議会のときだけなんですね。2号の被保険 者だったときもありましたけど、全然泊まったことはなかったんですね。厚生年金ホー ルがあるのは知って行ってたことがありますけれども、グリンピアなんていうのは行こ うなんて全然周りでも声はなかったですよね。そういったものを、一体だれのために、 何をつくってきたのかということは、ちゃんと、今資金がどうなっているからどうだと いうことの前にやっぱりきちんと報告すべきだし、意見を、利用している人なり、利用 してない人にも聞くべきではないかと思います。  それから、もう一つ、戻ってしまって恐縮なんですが、女性と年金というと、何か全 然意見が出なくて、いつも発言する委員の方が大体同じで、そして、このままいってし まうというのはすごく残念なので、皆さんもっと意見、どうしてわからないということ でもいいから、ほかの委員の方にも何か言っていただきたいと本当は思っているので、 ぜひよろしくお願いしたいと思います。  それで、先ほどの局長の一番最初におっしゃった委員会なり、研究会を設けることに ついて、先ほど年金分割のことでというふうに解釈したんですけれども、もっと全体の ことなのかどうか。ちょっとその範囲ですね。あるいはいつ設けるおつもりなのか、そ の辺ちょっと伺っておきたいと思います。 それから、B委員が3号については進めたいというふうに休憩の前のおっしゃっていた んですけれども、先ほどの発言だと、税金にしてしまえば、3号問題はなくなるといっ たことをおっしゃったので、そのことを意味していらっしゃるのか、それとも3号につ いて進めたいとおっしゃっているときは何を意味していらっしゃるのか、伺いたいと思 います。  それから、税金にした場合、2階建てというか、今の国民年金基金ですか、2階建て の部分、そこはどういうふうに考えていらっしゃるのか。きのういただいた経団連のは 2階は企業年金の形にしていくというふうなことだと私は思ったんですけれども、それ はどうなのかということを伺いたいと思います。  それから、女性の年金というのは、先ほどどなたかもおっしゃったように、女性の年 金ということじゃなくて、女性と年金という問題だと私は思っていて、「の」というの をつけるのは男女の年金とか、男女の老後とか、男女という視点で両方の格差というも のを見ていく問題の視点なので、先ほど申し上げたように、別に女性の委員とか、その ことを組合とかで問題にしている方だけじゃなくて、これからのことを考える上では、 やはり皆さんに意見をここではっきり記録というか、議事録に残るような形で意見をで きれば言っていただきたいと思います。 ○会長  B委員からどうぞ。 ○B委員  まず、3号について進めるというのは、遠くない将来に税方式にすればというのは、 1、2、3号という区分がそこではなくなるということを申し上げたのであって、3号 について進めるということと消滅するということとは全然論理次元違いますね。次期改 正で、とにかく3号について一定の改善を図るべきだと。3号についての改善案につい ては、先ほど述べたつもりですが。 ○J委員  先ほどの130万を90万という、そのことをおっしゃったんですか。 ○B委員 だけではありません。 ○J委員 配偶者だけではなくて。 ○B委員 配偶者という範囲を外すこと、一定の収入のある者は2号として扱うこと。それから あえて言えば、扶養側の2号という者が2号資格を、年金受給者になって失った場合に は被扶養配偶者は3号の資格を引き続き、そのステータスを継続すること。具体的に言 えば、その3点ですね。それは十分現行制度で可能なことだと思っています。  それから、2階をどうするんだというお話ですが、3号というのはもともと基礎年金 にかかわることでもって、3号自体の2階は議論するべきテーマではそもそもないんじ ゃないでしょうか。 ○J委員  いや、そうではなくて、基礎年金を税金にした場合にですね。 ○B委員  ちょっと御質問の趣旨がよくわからないんですが、3号被保険者というのは、基礎年 金制度の一部であって、基礎年金の部分を税方式にすれば、保険者区分というのはなく なるわけでしょう。3号被保険者自身は2階の給付を持ってないわけですよね。 ○J委員  今は持ってないですね。 ○B委員  したがって、3号の2階をどうするという議論は問題として成り立たないと私は思っ ています。 ○J委員  そうではなくて、私の質問の趣旨は、今は3号というのは、2階部分を持たないふう に位置づけられていますけれども、1号、2号、3号という区分をなくすような、税金 で基礎年金を賄うという形にした場合に、厚生年金とか共済年金の加入者以外の人の2 階部分というのはどういうふうに考えられているのかということです。 ○B委員  大変申しわけないんですけど、御質問の趣旨よくわからないんですが。 ○J委員  私が言っているのはおかしいことなのか。つまり、今1号の人たちは希望すれば、2 階が持てますよね。 ○B委員  えっ? ○J委員  2階というか、国民年金基金がありますよね。それはどうなのかということかを伺い たい。また、区別がなくなれば、今3号の人も2階を持てることになるわけですよね。 ○A委員  2階じゃなく3階ではないですか。 ○J委員  国民年金基金はどうするかということについては、何かプランをお持ちかということ です。 ○B委員  全然持っていません。大体現在の国民年金基金という制度は、悪いけれども、とんで もない欠陥制度であって、全然普及してないという認識です。ただし、いわゆる自営業 者の人たちにとって、被用者年金の報酬比例部分に相当するものを何か考えなくていい のかどうかというのは、これは大変大事なテーマですね。これはまともに提起されたこ とが一遍もないように記憶をしております。ただし、現在の国民年金基金という制度は 私どもは全く評価していません。 ○J委員  私の質問の趣旨は、私は先ほど申しましたように、1号、2号、3号という区別自体 がどうも現実的ではなくなっているのではないかという認識を持っていて、その1つの 解決策として税金というのは考えられるんですけれども、すぐにはできないだろうとい うような、昨日の論議がありまして、もう少し近いところで考えたときに、3号という 人が、今基礎年金以上のものを持てないという状態を少しでも改善するために分割とい う問題もありますし、何か別に考えられないかということを頭にイメージして質問しま した。 ○事務局  それから、研究会の件ですけど、これはまだ私の個人的な考えでございます。局の中 でも、来年の年金の改正が無事終われば、こういう研究会をつくろうじゃないかと、そ ういう話をしている程度でございまして、局の方針としてがっちりかためたと、こうい うことではございません。私が考えていますのは、時期としましては、来年の年金改正 法が国会を通った後ということにならざるを得ないと思っています。  それから、テーマにつきましては、年金分割だけでなく、もっと幅広く、遺族年金の 在り方ですとか、先ほど来、遺族年金の問題点を御指摘いただいていますけれども、そ ういった問題ということで、幅広く女性と年金、そういう視点から年金の在り方を考え ていただいたらどうかと、こういうことを考えております。正式にやるとなると、年金 審の下部の研究会という位置づけに多分なるでしょうし、そのときにはテーマとか、時 期ですとか、メンバーとか、こういった問題について、年金審議会の皆さん方にお諮り をして、御了承を得て研究会をスタートさせると、こういうことになろうかと思います  そういうことで考えておりますので、研究会については、当然9月の年金審の意見書 の中で、そういうことをやれということを年金審の意見として書いていただければ、そ れで決まると思いますので、ぜひ、そういう点も含めて意見書の中では、どう取り扱う かということを考えていただきたいと思います。 ○L委員  C委員が提起されました問題なんですけれども、これは後からF委員に専門家ですか ら補足していただいた方がいいと思うんですけれども、私の理解する限りでは、年金債 務というのは給付を約束すれば、必ず債務が発生するわけでありまして、それを費用現 価という形で表現しますと350兆円とか、こういうことに相なりまして、これは別に財政 方式が、賦課方式であろうと積立方式であろうといずれにしても計算できるはずでござ います。財政方式というのは、例えば350兆円というふうに計算された費用現価は、どう いうやり方でもって負担していくかというところで分かれてくるわけでして、理論的に 申しますと、膨大なる積立金を持っておる方が利子収入の分だけは助かるとこういうこ とになるわけです。 しかし賦課方式の方は、これはサムエルソンが指摘しておりますように、リターンは 人口増×賃金上昇率とこういうふうに言われておるわけですが、それと比較して、市場 リターンというものが一体どっちが高いかという問題があるわけであります。しかし、 今までの経験からすれば、やはり市場のリターンの方が大きいというのが大体常識でご ざいます。 積立金は持たない方がいいという議論は確かにございます。これは数理的な議論とい うよりはむしろ政治的なことでございます。つまり積立金も持つと政治リスクがあり、 つい使っちゃう、むだ遣いします。ここに問題があるわけでして、今世界中でいろんな 民営化論が言われております。その民営化論のほとんどは、政府に持たしたら危ないか ら、これを分散して、皆個人が持てばいいと。そうなりますと、今度はリスクを全部個 人が持たねばならない。こういう問題が出てくる。いいことはないわけなんです。 だから、そこらあたりをどう考えていくかという問題にすぎない。だから、積立金は 持っちゃ悪いということはないわけであります。 ○F委員  今、L委員おっしゃったとおりで、350兆円というのは、積立方式には関係なしに決ま る数字でございます。 ○C委員 今のご説明は給付債務だとおっしゃったら、私はオーケイなんです。ただ、積立不足 という表現を使うと、それは違うんじゃないでしょうかというふうに申し上げたい。 ○L委員 それは表現の問題です。表現をそういうふうに表現しちゃいけないということはない わけですから、間違いじゃありません。そういう表現の仕方は。 ○F委員 ですから、現に350兆円あれば、その分の債務は全然心配する必要が今はないわけです やはりこれは将来に向けて、何らかの形で償却、あるいは積立をやっていかなければい けない額であることは間違いないわけです。ですから、それは今の財政方式とは関係な いわけです。完全積立方式で将来給付マイナス将来の保険料収入が責任準備金だという 意味で計算された数字ではございません。あくまでも今の制度で発生した債務のトータ ルがそうだということです。 それから、今の修正積立方式が不足がちだということについて、それは完全積立から 比べての議論だろうというふうにおっしゃったんですが、決してそういうつもりで申し 上げているわけではございません。今、完全積立をやろうと思ったら、『年金白書』に もありますけれども、26.2%という動態平準保険料を取らなければいけないわけですよ ね。それに比べて低いから積立不足だという言い方を少なくとも私はしているつもりは ございません。現に年間の保険料収入と給付とがほとんどイコールになってきていると いうのが現状で、これはやはり将来に向かってもう少し積立を持っていこうという立場 から考えると、今のままほっといたら、どんどん積立金が減るということにつながりか ねないということをあわせて考えて、やはり少し積立が薄いのではないかと思っている わけです。これは主観の分かれるところだとは思います。 ○K委員 それとは違う話ですが、ちょっと蒸し返すかもしれませんが、年金積立金の運用の部 分の融資事業等ついての話なんですが、前から言っておりますように、私はこの積立金 を年金の加入者のために使う事業は意味があるというふうに発言をずっとしてきたわけ です。先ほど来、そういらんことをする必要はないと、民間に任せろと、あるいはまた 基盤整備はもっと広い財投でやれというふうなことであったわけですが、ちょっとこれ は私のムードとしては意見が随分変わってきたもので、かつ、また事務局の方もそうい うふうにおっしゃった。そちらの側のムードの方に傾いておられるような気がするんで すが、重ねて言いますと、せっかく年金の積立金として持っているものを、年金の方で 考えるような有効な、一般の財投と違って、年金の方から考えて有効と思われるような 事業に使うことは決してむだではないと。今までいろんなむだがあったとか、赤字にな ったというようなことがあって、そういうことはいけませんけど、有効に使うのだった ら、私は意味があると、こういうふうにもう一度言っておきたいと思います。 ○L委員 恐らく私の発言に対する反論だと思うんですが、誤解のないように、念のために申し 上げますが、私は福祉運用というモノの考え方に反対しているのではないんですね。問 題は今K委員がおっしゃいましたような運用をだれが決めるのかという問題なんですね 日本の制度では、それは財投という仕組みで今は決めておるわけなんです。ですから、 今後も年金資金を財投で、例えば財投債を買うといった形で、今度は財投の方で、そう いう施設を必要に応じてつくっていくということはあり得るわけでして、その際に、そ れを低利でもしどうしても貸してほしいとなれば、これはまた補助金を別途お出しにな って、その点の透明性は保たれた方がいいのではないか。 それをいきなり年金基金の方から補助金を出すというのがいいのか、あるいは一般会 計から出すのがいいのか、これはまた別の問題として議論されたらいいということであ って、いきなり年金積立金があるから、そこへ手を突っ込んで使っちゃえと、こういう 仕組みは一番よくないと、こういうことを申し上げておきたいと思います。 ○E委員 今の問題とからめて、私は基本的にはK委員の考え方なんですね。財投というものの 在り方が今問われているわけで、財投となるとどうしても……。 ○L委員  ちょっと待ってください。私は現在の財投を擁護しているんじゃないんですよ。そう いう財投がなくなれば、また財投にかわるどういうシステムをつくるのか。それはある いは先ほど来出ておりましたような民間資金でやるのかもしれませんが、そういうとこ ろでおやりになったらいいということなんです。 ○ E委員  むしろ、やはり個人の年金加入者が小口の融資とか、教育費用とか……。 ○L委員  それはまた事業サイドの問題ですからね。 ○E委員  はい。そういうことに道を開けるような形が望ましいのでないかというふうに、私は 積立金の場合思うんですね。 ○L委員  それはそう考えるべきです。 ○E委員  積立金を、今、F委員が足りないとおっしゃいましたけれども、では、これから積立 金を増やすために保険料を多額に求めるのかということになると、これはとてもじゃな いけど、世論は納得できないだろうと思います。やっぱり積立金は今かなり持っている わけですから、当面私は現状維持がいいのではないかと積立金に関しては思います。  それから、3号についてはちょっと困っちゃっているんですが、基本的に何も働いて いない奥さんというのは、これは印象で言ってはいけないんですけど、かなり高額所得 者の奥さんが多いだろうと思うんですね。共働きというのはやはりかなり所得の低い階 層の方が比較的多いだろうと思っているわけですけれども、そのお金持ちの、だんなが 高額所得者の奥さんが一銭も払わないで年金がもらえるというのにはいささか矛盾を感 じるわけです。したがって、個人単位にすべきだと思うんですが、しかしながら健康保 険とか、ほかの制度も全部世帯単位になっているわけで、年金だけが今の段階でそうい うことを打ち出せるかどうかということになると、いささか無理があるのではないかと 思うので、次回は問題点の指摘ぐらいにとどめる以外ないわけで、やはりその点は、事 務局のような研究会みたいなものをつくって検討していただくということだろうと思い ます。  しかしながら、3号被保険者の中には、現実に働いていて収入のある女性はたくさん おりまして、私の大学なんかでも一定の収入になりますと、後は休ませてくださいと言 って休んだしまうような女性パートがたくさんおります。そういう方たちもやはりある 程度の負担をすべきだろうと思いますので、その点については、B委員の御提案の2分 の1、90万という、その数字がどうかわかりませんけれども、ある程度の負担を求める ということは私は当たり前のことだろうと思っています。 ○会長  申しわけありませんが、15分に終了する予定になっております。その後のいろいろな 予定があります。B委員、御発言を30秒ないし1分でお願いできますか。 ○B委員  1分いただけると大変助かります。3号に関しては、今、3号どうするかということ は、問題の指摘に今回とどめるというのは私は反対でございまして、具体的な改革に踏 み込むべきで、これを事務局の言われた検討会にゆだねちゃって先送りすることには反 対です。改革内容については、提案は先ほど申し上げました。  それから、融資の問題について、もし誤解があったらということで申し上げますが、 私は年金積立金を削って何かをつくれとか、低利融資をやれとか、そんなことは全く言 っておりません。常識的な金利による融資制度は継続をすべきだと。それから、私ども は箱もの行政には基本的に反対であるということを申し添えておきたい。 ○会長  まだお話し足りない方がいらっしゃいます。残ったこともございますが、この辺でき ょうの第2セッション、通算して第4セッションを終わりにいたします。年金の話です から、年金数理の世界だけのことのようでありますけれども、実は人間の世界のことで すから、政治数理が絶えず割り込んでくる。このあたりのことを御心配になっていらっ しゃるお話です。非常に大事な点と思いますので、よろしくお願いします。  それではよろしゅうございますか。これで終了します。  事務局の方から、連絡事項を。 ○事務局  まず次回の審議会の日程につきまして確認をさせていただきたい思います。次回は8 日(火曜日)午後2時からお願いをいたしております。会場につきまして、恐縮であり ますが、厚生省の会議室がとれませんでしたので、麹町の全国都市会館の3階、文書は 別途出させていただいておりますけれども、2時から全国都市会館の3階でお願いをい たしたいと思っております。これまで使ってきた会場でございます。  次々会でございますが、16日(水曜日)、これは午前10時からでございます。  21日(月曜日)午後2時。16日と21日はいずれも厚生省でございます。よろしくお願 いをいたします。                 (事務局連絡) ○ 会長  二日間、長い時間のところ、みなさま、ご苦労さまでした。これで散会します。 照会先 年金局企画課須田(3316)