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医療保険福祉審議会 第7回介護給付費部会議事要旨

1 日時及び場所

平成10年9月28日(月) 16時30分から18時30分
厚生省 特別第一会議室

2 出席委員

星野、青柳、井形、石井、加藤、喜多、京極、見坊、下村、田中、中西、成瀬、
中村、堀江、村上(忠)、山口の各委員、山崎、蒲生参考人

3 議題

(1)地域区分についての現行制度の比較について
(2)要介護度の改善等に対する誘因の考え方について
(3)介護報酬の主な論点と基本的考え方について

○ 資料019に沿って、地域区分についての現行制度の比較について、介護保険制度施行準備室神田次長より説明。

(喜多委員)

 入院環境料の加算補正追加地域補正は、どのように決めているのか。近隣がほとんど一体化されている大都市で、10/100、6/100、3/100の区分が適用されるのは非常に不公平だ。十分に精査をしていないのではないか。

(神田次長)

 基本的には、まわりが加算対象地域になっており均衡を図るべきところや国の官公署がないということでその部分が抜け落ちているというところを、補正をするという考え方である。

(喜多委員)

 資料にある表は、介護保険に関して補正をしていないということか。今後、事務局から試案が示されるのか。

(神田次長)

 表は現在の区分状況であり、その追加補正部分も示されている。介護保険での補正については、調整手当の級地区分は、全国の物価統計や賃金統計のデータに基づいてやっているということであり、この場の議論を踏まえて検討したい。

(喜多委員)

 物価や人件費のデータということより、地域区分がなされているところで、実態として、専門家でもなかなかわからないほど一体化しているところがある。実態性のある修正を是非ともお願いしたい。

(成瀬委員)

 最低賃金の区分は県別であり、実用性の見地から問題がある。一番合理的な方法は国家公務員の調整手当の区分であり、これに問題があるなら、そちらを直す必要がある。ここでは国全体のベースとして考え、それに準拠してやるのがよい。市町村別データがある消費水準等を勘案して計算していくしかないのではないか。

(井形委員)

 国家公務員の調整手当に準ずることには無理があるが、もしこれを踏襲するなら、区分間の比率をもっと小さいものに変えていただきたい。
介護支援専門員の配置もそうであるが、特に離島では人材難になると、どうしても高い給料を払わなければならなくなる。
大都会とそうでないところというふうにに緩く分けて、差額をなるべく少なくしていただきたい。

(田中委員)

 要介護者が住んでいる自宅と事業所所在地が違っていて、それぞれの給付の基準が違っている場合は、どちらの基準が適用になるのか。
事業者は、基準の高いほうに本拠地を置いたほうが得になる。逆だとよくわからない。こうしたことは、決まっていることなのか。

(神田次長)

 報酬に関しては、事業所・施設の所在地と法文上明確に規定している。

(京極委員)

 福祉エリアとか保健福祉エリアを前提として、考えていくべきではないか。その場合、生活保護が比較的に実態に即しているという意見を以前に述べたことがあるが、働く側からは、最低賃金や国家公務員の級地区分の方がわかりやすい。どれが1番合理的かというと、国家公務員の方がわかりやすい。ただし、そのまま使うのではなく、介護保険法で適用する場合は若干修正するほうがよい。

○ 資料020に沿って、要介護度の改善等に対する誘因の考え方について神田次長 より説明。

(青柳委員)

 表彰が一番よい。要介護度が改善した後、一定期間、以前の要介護度により給付を行う等の方法の場合、要介護者の負担額はどうなるのか。要介護度の改善は、サービス提供側と要介護者の意欲がフィフティ・フィフティ。1割負担をうまく解決しないと、矛盾が起こるのではないか。

(神田次長)

 資料にも、要介護度の改善の誘因を設けることは技術的にも難しく、利用者負担が減らない、との指摘が記されている。

(見坊委員)

 ただ1割負担がクリアされればいいという問題ではない。保険料全体にも跳ね返ってくる問題であり、また、高齢者自身の問題でもある。
どういう考え方でサービスが提供され、またサービスを受ける側がいかに自立に向けた努力をするか、双方の努力と意欲がなければ、専門家だけがいかに努力をしても成功しないと思う。そのあたりをきちんと整理し、一般国民にわかやすくまとめていただきたい。

(成瀬委員)

 本来マーケットが選別するべきところを制度でやろうとするため、難しくなっている。誰も客観的に金額に計算する判定基準がない。
いい事業者は、客観的評価が与えられるという利用者への適切な情報提供の条件を整えることによって、それがメリットとなるようにしていくべきではないか。

(村上(忠)委員)

 施設サービスだけではなく、在宅サービスにも誘因が働くような形をつくるべきである。どういう客観的な評価基準をつくるかということが一番難しく、あとのことは割り切りひとつで、やり方はある。一生懸命やったほうがかえって収入が減るのでやらないということでは、何のための介護保険かということになる。

(山崎参考人)

 施設の評価だけではなく、在宅も検討していただきたい。在宅でも、褥瘡の発生率、改善率、再入院率等、指標になりそうなものの基礎研究が進んでおり、使えるものがそのうち出てくるのではないか。

(京極委員)

 原則的には、保健、医療サービスは、利用者の自立促進のためにいい仕事をしたということで評価されるべきだが、制度上、一生懸命努力して、要介護度が軽減すれば軽減するほど収入が減っていく。逆に悪くした場合も罰がない。
年間を通じてよくなったり悪くなったりして、全体としていい方向に行ったということを総合的に評価し、何らかの報酬やインセンティブが与えられればいいのではないか。
(田中委員)
 以前も述べたように、介護保険制度では、成功報酬は本質的に馴染まないと思っている。
要介護度が改善されると収入が下がるというが、要介護度が下がれば手間も下がるわけで、収入は下がるかもしれないが、費用も下がってくる。組織の目的は収入ではなく、収入と費用との勘案で成り立つ。
そもそも、プロとして介護をする目的は、職業人としての責任感、倫理感、要介護者ご本人の努力がうまくいったことの喜びを得ることであって、それ以上をお金で評価するというのはおかしい。
事業者ごとの改善指標があって開示できることは大変素晴らしいことだが、特定要介護者について、誰の力で要介護度が改善したかをモニターしたり、その分配の方式を国家が管理するとしたら、市場への不可能な強い介入であり、モニタリング費用と管理コストばかりかかる。さらには、要介護度が下がりそうな人を優先的に事業者等が選ぶ、といったマイナスの誘因も含めるおそれがある。良質事業者の情報開示にとどめるべきである。

(見坊委員)

 80歳を過ぎれば、要介護度が部分的には改善されることはあっても、全体的に要介護状態が持続していくというのが、現在の特別養護老人ホームにおける実態ではないか。
全体としては、介護を要する状態が進行していくので、そうした視点も入れて、合理的な整理をしていただきたい。

(青柳委員)

 方法論が確立して、サービスの質の評価ができるようになれば、情報開示をする方法論ももちろん出てくるわけだが、今は成功報酬をどうつけるかという、極めて具体的なところに論点が入ってるので、質の評価については、別の時に分けて議論すべきである。

(石井委員)

 成功報酬は、やはり、介護度改善をさせるためにひとつの動機付けとして位置付けるべきであろう。誰もマイナスの介護をしようという考え方はないはずであり、各現場でプラスになる介護のプログラムをつくるよう努力をしてきた、実践の積み重ねがあるはずである。
それぞれの施設が持っている特色のある技術を駆使することによって成果が挙がっていくということは、施設に良い影響を及ばすと同時に、社会的にも効果を及ぼすことになる。

(下村委員)

 介護保険制度では、6カ月間はあまり状態が変わらないということを前提にして再認定を行うことになっている。要介護老人の状態が頻繁に動くようであれば、月単位に報酬を決めればいいという議論になるべきである。
6カ月の期間中に何カ月よくなれば成功と見るのか。ひと月よくなったところで再認定となる6カ月目が来て成功報酬をつけたところが、また悪くなった場合、制度の仕組みとして、インセンティブを与えるのがいいか、与えないほうがいいのかといった難しい議論もあり、本当に制度の仕組みとして動くのか疑問である。
質の評価も非常にわかりにくい議論であり、併せてできるものなのか。やるのなら、月ごとということだろうが、加齢とともに要介護状態が悪くなると考えるほうが一般的で、悪くなったから介護が悪いとは言えないのではないか。
報酬を決める時には、何らかの範囲で実態の平均値を取り、それをベースにすることになると思う。平均値を取る時に、要素として何を入れるかについて、多少の議論はやっておき、平均値の中に含まれないものを加算等の形で考える、というふうになっていくことが考えられる。実態として何と何を平均すればどういう数字が出るのかがわからないところで、成功報酬のような細かい議論をすることは難しい。 資料が提案ではなく、これまでの議論を一応とりまとめた叩き台であり、今後の実態の解明と議論によって変更があることをはっきりさせてほしい。

(神田次長)

 資料の基本的な位置付けについては、冒頭に書かれてあるように、これまでの議論を整理したものであり、今後の議論に伴って変更がありうる。
実態調査をする際にも、どういう地域区分を取るのか、加算に係る行為がどれくらいあるかによっても、調査の方法が変わってくるのではないか。調査の前提となる枠組みの方向について、これまでの主な論点に基づいてご議論いただいている。

(下村委員)

 地域区分を変更する目的でサンプルをとる場合に問題となるのは、コストの調査である。措置費で調査をしても、生活保護の級地区分で払っているのだから、生活保護の級地区分の数字しか出ないことになる。物価指数も市町村別にはない。施設のコストも厳密な意味での会計経理がない。とすると、一人ひとり要介護度別にかかっているコスト調査はできないのではないか。

(神田次長)

 一人ひとりの方のコストを厳密に調査するのは難しいであろうが、事業所や施設単位での支出内容の調査は、ある程度可能である。
今年度の要介護認定の試行的事業の実施によって、施設やサービスの種類ごとにどんな要介護度の方が利用しているのか、といったデータがとれるので、支出内容と併せて評価していくことができるであろう。
一人ひとりのコストが分からなくとも、要介護度は、その方が仮に施設に入ったとするとどれくらいの介護時間がかかっているか、ということと連動しているので、その指標も勘案しながら、報酬の水準を検討していくことになると思う。

○ 資料018に沿って、介護報酬の主な論点と基本的考え方について神田次長より 説明。

(見坊委員)

 在宅サービスに関する地域における相談、調整等の窓口として在宅介護支援センターをつくるということが、ゴールドプラン発足時から現在まで進行しているが、
介護保険で増加が予想される居宅介護支援事業者の業務との関係、連携は、介護報酬上どのようになるのか。

(山崎老人福祉計画課長)

 在宅介護支援センターの役割、任務は、依然として大変大事である。確かに、介護保険で、ケアマネジメント、ケアプラン作成機関の一翼を担うという面もあるが、それ以上に、増加が見込まれる在宅サービス業者の連絡調整や介護保険以外の市町村における保健福祉サービスとの連携を図る、といった役割が大変重要になってくると思っている。
今までの機能の見直しも必要と考え、今年度から、在宅介護支援センターの中で中立性、独立性を保ち、地域全体の連絡調整を行う、基幹型センターの機能を強化している。

(中村委員)

 在宅介護支援センターの機能の見直しや強化に関連して、居宅療養管理指導は、医師、歯科医師、薬剤師だけではなく、ソーシャルワーカーや看護婦もできるよう追加するべきではないか。
再三、医療保険分野と介護保険分野を線引きしていただきたいと言っているが、介護療養型医療施設の総量が大幅に増えることを、一番疑問に感じている。最近、介護療養型医療施設と医療保険対応療養型病床群とを同一施設内で混在させたり、有床診療所等の一般病床の中で介護保険対応の療養型病床群と併用させる、といった動きがあるが、歯止めがなくては大変な数量になるのではないか。養護老人ホームが、要介護度が高い方がいるにもかかわらず、介護保険の対象施設でないことを前提に、一生懸命模索をしているが、こういう点も含め再整理する必要があるのではないか。
人工透析で腹膜灌流等は介護保険で扱うべきだ、といった議論まで出てきていると聞くが、そうしたことも、この部会で整理していく必要がある。
施設サービスでは、特別養護老人ホームで行われている機能訓練については、理学療法士や作業療法士の評価が認められているが、特養にも横出しサービスや上乗せサービスができるように、規制緩和を視野に入れたとりまとめ方をお願いしたい。

(神田次長)

 居宅療養管理指導に看護婦やソーシャルワーカーを追加するとのご意見であるが、法律上、居宅療養管理指導は、在宅にいる要介護者などについて、病院、診療所、または薬局の医師、歯科医師、薬剤師その他厚生省令で定める者により行われる療養上の管理及び指導であり、主として医療面での管理指導であるという定義がなされている。
訪問看護で看護婦が行っている指導は、訪問看護の中で評価され、ソーシャルワーカーの方の相談や指導は、ケアプランの中で評価されることになるのではないか。
介護療養型医療施設に関しては、基本的には、同じ療養型病床群の中でも、介護保険部分と医療保険部分の適用を分けていただく、ということで考えている。区分適用の単位は、病院では、看護・介護体制や施設、設備のひとまとまりとして、病棟を原則とし、例外的に、小規模施設などで区分が困難な場合には病室単位の適用もある、というように、法案提出当初から一貫して説明している。
医療保険と介護保険の範囲については、今回の叩き台でもまだまだ議論の余地があるので、もう一度整理をした上でご議論いただきたい。

(中村委員)

 現在、老人保健施設に診療所が併設できるようになり、1つの建物の中で、老人保健施設入所者と診療所の入院患者との区別ができなくなっているところがある。一般病床と療養型病床群の併用では、隣りのベッドから保険適用が違ったり、廊下ひとつで介護保険と医療保険での取り扱いが異なるといったこととなり、利用者に不信を生む原因になりかねない。きちんとした線引き、区別をしていただきたい。

(成瀬委員)

 制度の基本設計で施設の設置の制限について論議をしたときに、設置の制限、需給調整を外してはということを強く主張したが、そういったことが、報酬設定時に大きく影響する。
より安いコストでよりよいサービスをするということが本来望ましいので、参入規制を取り払い、情報提供により、いいところにはたくさん利用者が行き、よくないところには行かない、という状況にしていくべきではないか。

(山口委員)

 介護保険の根幹には、予防という発想が入っている。リハビリテーションサービスを、老人保健施設に限らず介護施設全般で評価しようという考え方には賛成だが、ただし、人員基準等々を満たした場合ということになるのではないか。
「必要な医療の評価」として、介護施設での医療についての問題が整理されている。だいたいこんなところであろうと思うが、老人保健施設における必要な医療については、現在の緊急時の施設療養費を中心としながら対応していくことを基本的としつつも、本当に専門医の判断を仰がなければならない場合には、専門医への受診を認めていくべきである。
在宅サービスの場合は、要介護時間を念頭に、さまざまなサービスを組み合わせて報酬を設定していくことが基本となっているが、要介護時間をひとつの尺度のものさしとして使うものの、実際のサービス提供時間を縛るものではないという説明があり、現場は、非常に心強く思っている。
昨年に続いて、先週ドイツへ行ってきたが、ドイツでは、サービス提供が時間で縛られていることに対して、要支援者を給付対象としていないこととともに、現場のスタッフ、利用者、家族からの不満が強まっている印象を受けた。
在宅サービスでは、ドイツで今問題となっているようなことが我が国では絶対に起こってはならない。最初から100%の満足は得られないにしても、介護保険制度ができてよかったなと思ってもらえるような、仕組みにしていくべきではないか。

(加藤委員)

 療養型病床群には、医療保険対応の療養型病床群と介護保険対応の療養型病床群があってしかるべきと考えるが、医療と介護をどこで線引きするかということは、なかなか難しい問題である。
介護療養型医療施設の複雑な処置、手術が必要な場合、急性憎悪時には、急性期病棟に移って医療保険から給付するという考え方は、これでいいと思う。透析や緊急手術などは、当然、医療保険対応のベッドに移して行うべきであるが、急性増悪の場合やターミナルステージに要する医療費をどちらから払うかということに関しては、もう少し議論が必要であろう。

(下村委員)

 医療と介護の関係について、医療保険の審議の場では、全く議論をしていない。介護報酬、介護保険制度についても正式な説明がほとんどないので、これからの議論に待つより仕方がないが、この部会で決め切れない問題については、当然、これから議論をする必要がある。
コスト調査もある程度はやるとのことだが、介護と医療の関係について、看護単位にも満たない病室区分でコストを分けることができるのか。病室単位で介護と医療を分けた場合、看護婦の勤務体制はどうなるのか。どうやって報酬を支払うのか。

(中村委員)

 デイサービスは、最終的には全国で1万カ所できることになっている。在宅介護にシフトすれば、リハビリテーション中心となってくる。そうなれば、デイサービスがリハビリの供給施設とならなくてはならないのではないか。1万のサービス供給施設を捨て去ることにならないような議論を、ぜひお願いしたい。

(京極委員)

 居宅介護支援の担い手の中心は、看護婦、ソーシャルワーカー、介護福祉士あたりではないかと思うが、居宅介護支援を中心業務とする人たちと、たまにケアプランをつくる人との報酬単価の基準は変えるべきではないか。
介護機器についてはさまざまな考え方や方法があると思うが、介護機器の利用はケアプランの前提にすべきであると同時に、給付限度額内ではかなり自由度を持たせることが大事である。訪問介護や訪問看護とは異なり、可塑性が高く、日進月歩している分野でもあるので、報酬についてもあまり縛らないように考えていただきたい。

(青柳委員)

 グループホームの論点で気になるのは、貸家業ないしはアパート経営をする、という程度に考えている場合があることである。それでは、本来のグループホームの目的に適わない。現行制度では、市町村から社会福祉法人や医療法人等が事業委託を受けているが、特に24時間管理となるグループホームの質を指定基準の中でどう担保するかを考えていただきたい。
有料老人ホーム等の特定施設は、介護支援専門員がいればそこでケアプランをつくり、介護職員あるいは看護職員が必要なサービスを提供する、という仕組みと読みとれるので、一種の介護施設として考えられているのではないか。
有料老人ホームは、密室の介護になるおそれがあり、在宅という位置づけであり、中が見え、評価ができるような仕組みを考えておく必要がある。

(星野部会長)

 いろいろな議論していただいたが、本日はここで審議を終わりとしたい。介護報酬の設定の主要な論点とその考え方については、本日の意見等をさらにとりまとめて、中間のまとめを行いたい。


 問い合わせ先 厚生省老人保健福祉局企画課
    電 話 (直) 03-3591-0954
 厚生省老人保健福祉局介護保険制度施行準備室
    電 話 (直) 03-3595-2890


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