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精神保健福祉法に関する専門委員会報告書

平成10年9月

公衆衛生審議会精神保健福祉部会
精神保健福祉法に関する専門委員会

第1 はじめに

○ 我が国の精神保健福祉行政については、精神障害者の人権に配慮した適正な医療を確保するとともに、精神障害者の社会復帰の促進を図るという観点から、昭和62年に精神衛生法の一部改正を、平成5年に精神保健法の一部改正を行ったところである。

○ また、平成5年12月には障害者基本法が成立し、精神障害者がこの法律の対象として明確に位置づけられることになり、平成7年には、精神障害者の福祉施策の一層の推進を図る観点から精神保健法の一部改正を行い、法律名も精神保健法から精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下「精神保健福祉法」という。)と変更したほか、同年には、精神障害者社会復帰施設(以下「社会復帰施設」という。)の計画的な整備を含む「障害者プラン」が策定されるなど、精神障害者施策の推進が図られている。

○ また、平成8年7月には、障害者の保健福祉施策を総合的に実施する観点から、大臣官房に障害保健福祉部を設置したところであり、また、障害者保健福祉施策のあり方を検討するため同年10月に、身体障害者福祉審議会、中央児童福祉審議会障害福祉部会、公衆衛生審議会精神保健福祉部会にそれぞれ企画分科会を設け、合同で審議を行っており、平成9年12月に中間報告を出したところである。

○ 平成5年の「精神保健法等の一部を改正する法律」の附則第2条において、改正法の施行後5年を目途として、改正後の精神保健法の規定の施行の状況及び精神保健を取りまく状況を勘案して見直しを行うこととされており、また障害者関係審議会合同企画分科会の中間報告でも、精神障害者の保健医療については別途検討することとされている。これらを踏まえた見直しを行うために本年3月に公衆衛生審議会精神保健福祉部会に「精神保健福祉法に関する専門委員会」を設置した。

○ 当専門委員会においては、3月以来10回にわたり審議を重ね、精神保健福祉制度の見直しに当たっての基本的な考え方及び具体的な施策の方向について次のとおり取りまとめを行った。


第2 精神保健福祉を取りまく現状について

○ 平成8年患者調査によれば、精神病院等に入院・通院する精神障害者数が217万人(推計)で、平成5年の同調査による推計値157万人と比べ急激に増加している。
 また、病院報告によると新規の入院患者数についても平成5年の約26万7千人と比べ、平成8年には約28万1千人と増加傾向にある。近年の社会の複雑化等に伴い、精神障害者の医療及び福祉の問題は、限られた人々や地域の問題ではなく、誰にとっても身近な問題となっている。

○ 入院患者数については、平成8年患者調査によれば32万2千人と平成5年の同調査の結果(32万人)と比較してほぼ横ばいである。また、平成8年患者調査によれば5年以上の入院患者が約46.5%(平成5年同調査では45.7%)を占めている。入院の長期化の傾向に変化がないのは疾患の特殊性もあるが、精神障害者の社会復帰が進んでいないことを示している。

○ 精神障害者の福祉施策については、基本的には自立可能な精神障害者に対する社会復帰対策を中心に行っている。社会復帰施設等については、平成9年度までに整備に着手したもので、約900ヶ所、約10,000人分(社会復帰施設+グループホームの合計ヶ所数、人数)となっているが、障害者プランに基づき引き続き計画的な整備を図る必要がある。(平成14年のプラン終了時の目標は、約2000カ所、約25,000人分)

○ 在宅精神障害者に対する生活支援は実質上家族に依存しているが、家族の在り方の変化、家族の高齢化、単身で生活する精神障害者の増加等により、これらの精神障害者に対する生活支援を家族に依存することが難しくなってきている。
 病状が安定していても、日常生活能力が著しく低下しているために生活面での支援が無くては地域生活が困難な精神障害者に対しては、現行制度は十分に対応することができず、これらの者に対する支援策が求められている。

○ 一方、昭和59年の宇都宮病院事件をきっかけに精神病院における人権擁護の在り方について検討がなされ、昭和62年改正において、精神病院に対する指導監督の創設、精神医療審査会の設置、精神保健指定医制度の創設等の措置が講じられた。
 しかしながら、同改正後も平成元年の越川記念病院事件、平成9年の大和川病院事件、栗田病院事件、山本病院事件等にみられるように、一部の精神病院において人権侵害事案が発生している。

第3 基本的な考え方

I 総論

○ 精神保健福祉施策の基本は、精神障害者に対し、良質かつ適切な保健医療サービス及び福祉サービスを提供することにより、精神障害者の社会復帰を促進し、その自立と社会経済活動への参加を促進することである。このため、施策の推進に当たっては、精神障害者の人権に十分に配慮することを前提に、身近な地域において総合的な保健医療福祉サービスを受けることができる体制を整備していくことが必要である。

II 基本的な施策の方向

(1)地域に密着した精神保健福祉施策の充実

○ 精神保健福祉施策は、国民全体で取り組まなければならない重要かつ身近な問題であるが、未だに精神障害者に対する社会的偏見は根強く、そのような偏見を除去する施策が求められるなど依然として地域における精神保健福祉施策は遅れている。
 都道府県中心の現行施策を転換し、地域における保健・医療・福祉施策を推進していくためには、従来の都道府県単位での医療保健福祉制度ではなく、より生活に密着した単位で施策を進めることが必要である。
○ 医療施策については、地域での即応体制の整備を図るため、精神科救急医療体制の確保について検討する必要がある。また、現在、一般病床について、病床を急性期と慢性期に区分すること等の検討が進められており、精神病床についても地域に密着した精神医療の提供を確保する観点からそのあり方について検討を行う必要がある。
○ 福祉施策についても、在宅の精神障害者に対する生活支援を積極的に行うとともに、障害者福祉施策の総合化の観点からも、障害者に対する総合的な相談窓口を市町村に設けるなど、従来の都道府県中心の体制から市町村を中心として精神障害者の福祉施策を推進する体制を整備する必要がある。

(2)精神障害者の社会復帰施策の推進

○ 精神障害者の社会復帰については、社会復帰施設等の整備を引き続き図るとともに、特に在宅の精神障害者に対する福祉施策について質・量の充実を図ることにより、他の障害者の福祉施策と遜色のないものとしていく必要がある。また、授産施設、地域生活援助事業等については、障害種別間の相互利用を推進することにより、社会福祉資源の効率的な活用を図って行くべきである。

(3)精神障害者の人権の確保

○ 近年の精神病院における人権問題の頻発にかんがみ、精神障害者の人権を確保する観点から、問題のある精神病院に対する指導監督を強化することが必要である。
 また、社会復帰施設についても指導監督のための規定を設けることが必要である。
○ 近年の精神病院における不祥事件においては、医療保護入院の運用について本人の同意能力がある場合にも強制的に入院させられたり、また、逆に判断能力が不十分でも任意入院となっている事例が見られる。このため、任意入院の対象との区別化を図るため、医療保護入院の要件を明確化する必要がある。
○ 精神障害者の自己決定権を尊重するとともに、保護者が高齢化している実状や成年後見制度の見直しの動きを踏まえ、保護者制度の在り方について見直しを行うべきである。
第4 具体的な施策の方向

I 精神医療の在り方について

1)精神科救急事業の法定化について

○ 精神障害者の社会復帰を進め、地域医療を推進していくためには、緊急時に対応した医療体制を整備することが重要である。このため、現在の精神科救急事業を法定化し、「精神科救急医療のための指定病院制度」を設けることによって、精神科救急医療体制の確保を図る必要がある。
○ また、救急時の対応については、入院先の病院の確保だけでなく、その病院までの移送の手段を確保することが重要であることから、併せて緊急に治療を必要とする精神障害者の移送に関する制度を設ける必要がある。

2)医療保護入院について

○ 医療保護入院は、本人の同意に基づかない強制入院の一種であることにかんがみれば、その運用は限定的になされるべきである。しかしながら、現行の制度においては、本人に判断能力が十分あるにもかかわらず、医療保護入院になるような運用がなされている事例が生じている。
○ 従って、医療保護入院の対象を精神障害により入院の要否を判断できない者に限定し、医療保護入院と任意入院の対象を明確に区分する必要がある。また、医療保護入院の対象者について、入院の判定基準を作成することについて検討するべきである。
○ なお、自傷他害のおそれはないが、治療の必要性が明らかであるにもかかわらず、入院についての判断能力が不足している精神障害者に対する強制入院のあり方については引き続き検討する必要がある。

3)仮入院について

○ 仮入院については、精神障害であるという診断が確定していない段階で、強制的に入院させることができる制度であり、患者の人権尊重の観点からできる限りこの規定を適用させないことが望ましいものと考えられる。また、精神医学の進歩による診断能力の向上の結果、現在では年間20件あまり(平成8年の厚生省報告例)と事例がほとんどないことから、これを廃止するべきである。

4)措置入院について

○ 措置入院にかかる現行の指定病院の指定基準については、必ずしも十分な医療サービスが提供できる人員・構造設備の基準とはなっていない。このため、指定病院の基準を見直し、国公立病院等の措置入院にかかる適切な医療を行う体制が十分に整備されている病院で措置入院患者を受け入れていくこととするとともに、指定病院の指定については、地域における措置入院患者の受入れに必要な病床数を考慮して指定を行う必要がある。

5)精神病床の在り方について

○ 現在、一般病床について急性期と慢性期に区分すること等の検討が進められている。精神病院については、医療法関係規定において、医師、看護職員の特例的な人員配置が認められているが、この特例については、精神障害は慢性疾患であるという前提に立ったものであるとする指摘がある。このため、医療法関係規定を見直し、精神障害者の病状に応じた適切な医療を確保するため精神病床を病棟単位で急性期病床と慢性期病床に区分し、当該区分にふさわしい人員配置基準及び構造設備基準を設けることについて検討していく必要がある。
○ また、急性期病床については、医療計画上の取扱いを現在の都道府県単位からより身近な地域で医療が受けられるよう2次医療圏単位とすることについて検討する必要がある。その際、急性期病床と慢性期病床の総数が現行の各都道府県圏域毎の医療計画上の必要病床数を上回らないように留意するべきである。
○ なお、医療法施行規則第10条第3号に規定する精神病床外の収容禁止規定や、同規則第16条第1項第6号に規定する精神病室にかかる危害防止のための構造設備基準については、合理的な理由に乏しいと考えられることから、見直すべきである。また、保護室の適正な使用を確保するために、保護室に収容される患者の病床が同一病院内で確保されることを条件として、保護室について医療計画上の病床数に算定しないこととするべきである(医療法施行規則第30条の33第1項第2号関係)。

II 福祉施策の充実について

1)在宅の精神障害者に対する福祉施策の充実

(1)精神障害者の訪問介護事業の法定化
○ 病状が安定していて入院は不要であっても、日常生活能力が著しく低下している精神障害者について、当該精神障害者が地域で生活することを支援するとともに、精神障害者を在宅で介護している家族の負担を軽減するために、市町村を実施主体として訪問介護事業を法定化する必要がある。
○ 市町村は、現在、精神障害者に対する福祉サービスに関する事務をほとんど取り扱っておらず、精神保健福祉行政に関する専門的な知識や技術を十分に有していないため、訪問介護事業の運営に支障をきたすおそれがある。このため、保健所による市町村に対する技術的支援を規定し、市町村との連携を図る等市町村への支援策を講じる必要がある。

(2)短期入所事業の法定化
○ 在宅福祉施策の重要な施策の一つである短期入所事業が精神保健福祉法に規定されていない。短期入所事業の質を確保するためにも法定化するとともに、法令に基づく最低基準や指導監督規定の対象として位置づける必要がある。

2)利用者本位のサービス提供の仕組みについて

○ 現行の精神障害者福祉施策はすべて本人とサービス提供者との利用契約に基づくものとなっているが、(1)精神障害者自身に提供されるべきサービスの内容に関する情報提供が十分になされていないこと、(2)精神障害者の一部には判断能力が不十分であるために自ら必要な福祉サービスを選択することが困難な者がいること等の問題があり、結果として希望するサービスの適切な提供がなされていない可能性があるとともに、サービス提供者側においても、精神障害者のニーズの把握が十分できていないおそれがある。
○ また、上述したように在宅の福祉施策の充実に伴い、適切なサービスを紹介するサービスが重要になると考えられるため、精神障害者が本人の希望や個々の障害の程度に応じた適切なサービスを受けられるようケアマネジメント等を実施し、障害者に対する様々なサービスを組み合わせ、総合的に調和のとれたサービスを提供する体制づくりを検討する必要がある。

III 精神障害者の人権の確保について

1)精神障害者の閉鎖処遇について

○ 精神科医療については、できるだけ開放的な処遇を行うのが望ましいが、実際には、任意入院患者についても約50%が閉鎖的な処遇がなされている。このため、閉鎖処遇のあり方・定義について検討するとともに、法第37条に基づく処遇の基準等において閉鎖処遇を行動制限として位置づけ、閉鎖処遇を医療上必要な場合に限定することを検討する必要がある。

2)精神病院に対する指導監督について

○ 近年の不祥事件により明らかになった問題病院の中には、行政に対し虚偽の届出・申告を行ったり、繰り返し行政指導等を行っても、全く改善を行わない悪質な病院があり、このような病院に対しては処遇改善命令等の現行制度は有効に機能しなかった。
○ 従って、入院患者の処遇等で著しい問題がある病院や改善命令に従わない病院等に対し、厚生大臣又は都道府県知事が業務停止命令等の処分を行えることとする必要がある。

3)社会復帰施設の指導監督について

○ 社会復帰施設におけるサービスの質及び施設内における処遇の確保を図るため、社会福祉事業法の改正の方向をみすえつつ、社会復帰施設についても構造設備や処遇の方法について法令に基づく明確な最低基準を定め、適正な運営を図る必要がある。
○ また、社会復帰施設に対する指導監督を図るために、都道府県知事が社会復帰施設に対して、報告徴収や問題がある施設等に対する改善命令、事業停止命令等を行うことができるよう、指導監督規定を設ける必要がある。
○ 更に、地方分権推進計画を踏まえ、国民の生命、健康、安全のため緊急の必要がある場合には、厚生大臣も、社会復帰施設に対して都道府県知事と同様の指導監督を行うことができるようにする必要がある。

4)精神医療審査会の役割について

○ 精神病院等における人権問題に関し、精神医療審査会が、その役割を十分に果たすことができるよう、以下のような機能の強化・見直しを行う必要がある。
(1)精神医療審査会の独立性を高めるために、都道府県における監督部局とは別の事務局を設けること。
(2)精神医療審査会の審査にかかる調査機能を強化するため、精神医療審査会の委員に精神病院等に対する報告徴収等を行う権限を付与すること。
(3)精神医療審査会の委員の構成について検討するとともに、委員数についても要件を緩和し、必要最低限の人数(5人以上)のみを規定し、上限を撤廃すること。
○ また、今後社会復帰施設等を利用する精神障害者が増大することにかんがみ、社会復帰施設等における処遇についても精神医療審査会の審査の対象とすることについて検討する必要がある。

5)精神保健指定医制度について

○ 精神保健指定医は、人権に配慮した医療を行う中心的存在であり、その職務は極めて重要であるにも係わらず、その責務については不明確である。このため、精神保健指定医の責務の在り方について検討する必要がある。
○ また、指定医の業務の適正を確保するために、指定医としての業務の停止処分等を設けることを検討する必要がある。

IV 保護者について

1)保護者の保護の対象について

○ 現行制度においては、全ての精神障害者に保護者が付されることとなっているが、精神障害者の自己決定を尊重する観点からも、任意入院患者や通院患者など本人の同意能力がある場合にも保護者の保護の対象とされるのは望ましくないと考えられる。
○ 従って、保護者の保護の対象を措置入院患者や医療保護入院患者等判断能力が不十分な者に限定し、入院患者の同意能力が回復した場合には、本人の意思を尊重することとする必要がある。

2)保護者の義務について

○ 精神障害者の自己決定を尊重していく中で、保護者の義務について検討する必要がある。その中でも、自傷他害防止監督義務については、保護者としては、病状が悪化した場合に医療を受けさせることしかできず、実質上は医療を受けさせる義務と同一である。この条項を維持することによりかえって保護者に過度の負担をかけるおそれがあるため廃止するべきである。

3)成年後見制度について

○ 現行精神保健福祉法上は、後見人が最優先で保護者となることとなっているが、「成年後見制度」の見直しの動向を踏まえ、必要に応じ保護者となることができる成年後見人の範囲について見直す必要がある。
○ 具体的には、現在提案されている成年後見人が精神障害者の生活の支援を図る上で最適かつ最も責任を有していることにかんがみれば、成年後見人が広く保護者となれることとすべきである。従って、新しい成年後見制度においては、保佐人についても保護者とすることについて検討する必要がある。
○ また、地域で暮らす精神障害者についても、判断能力が不十分で生活面に着目した支援を必要としているにもかかわらず、家族の高齢化等により、成年後見人となるべき適切な人材がいない場合が予想される。従って、民法改正の動向も踏まえつつ必要に応じ、市町村長等による成年後見人の申し立て制度について規定することを検討すべきである。

V 市町村、都道府県関係機関の役割について

1)福祉施策における市町村の役割について

○ 精神障害者保健福祉施策のうち、より市民に身近な行政主体である市町村が行うことが望ましい業務については、市町村が行うこととし、さらに、障害者の福祉施策の窓口を市町村レベルで一本化していくことについて検討すべきである。これにより、地域ケアの推進や他の種別の障害者施策との整合性の確保が期待できると考えられる。
○ 市町村が行うことが適当な事務としては、以下のものが考えられるのではないか
(1)介護支援サービス(ケアマネジメント)
 精神障害者に対し適正な福祉サービスを紹介するケアマネジメントについては、身近な行政機関である市町村において体制を整備する必要がある。
(2)社会復帰施設及び在宅福祉サービスの利用に係るあっせん・調整
 現行法第49条に規定する社会復帰施設等の利用にかかる保健所長のあっせん・調整に代え、市町村がケアマネジメントの結果を受け、施設等の利用のあっせん・調整を行うこととする。
(3)精神障害者に関する一般的な事務
 精神障害者保健福祉手帳の交付の申請について、他の種別の障害者施策との整合性等を勘案し、市町村を窓口として行うこととするべきである。また、通院医療費の公費負担の申請についても、保健所を経由して都道府県に送付されることになっているが、事務処理の効率性や利用者の利便性を勘案し、市町村を窓口として行うべきである。
○ 社会復帰施設の利用のあっせん・調整を市町村で実施することとした場合、都道府県の精神保健福祉センター等において管内(若しくは近隣の都道府県)に所在する社会復帰施設の利用等について広域的な調整を行うこととするべきである。
○ また、精神障害者社会復帰施設等に対する運営費の補助は、施設に対して行っているが、他の障害者施策等との整合性等を勘案し、利用者に着目した補助制度とすることも含め検討するべきである。
○ なお、現在、精神保健福祉施策に関する権限は中核市にも委譲されていないが、全ての市町村ごとに実施させることは可能かという問題があり、小規模な市町村においては広域的な対応が行えるようにする等の支援策を検討する必要がある。

2)精神保健福祉センターの役割について

○ 社会の複雑化にともない、精神障害や心の健康等に関する問題が増加しており、精神保健福祉センターが果たすべき役割は大きくなっているが、精神保健福祉センターが必置とされていないため、特にこのような機関が必要な大都市(指定都市)において、精神保健福祉センターが設置されていないという結果を生んでいる。また、 精神保健福祉センターの専門性を有効に活用するために、通院医療費の公費負担の判定等の恒常的な業務については精神保健福祉センターが行うことが望ましい。
○ このため、「精神保健福祉に関する専門的な相談・判定・調整」を行う機関が必要となるが、地方分権を推進する観点からも新たな機関を必置とするよりも、精神保健福祉センターの名称の弾力化等を行った上で、当該機能を持った機関を置くこととするべきである。
○ そのうえで、現行の業務に加えて、現在都道府県の地方精神保健福祉審議会で行っている通院医療費の公費負担の判定業務や市町村の行う社会復帰施設の利用の斡旋等にかかる市町村間の調整業務等を精神保健福祉センターが行うことするべきである。

3)地方精神保健福祉審議会について

○ 地方分権推進計画を踏まえ、また地方における他の障害者施策にかかる審議会との連携を図ることを可能にするために、地方精神保健福祉審議会の組織・名称に関する規制を弾力化するべきである。

VI その他

1)精神障害者の定義について

○ 現行法においては、精神障害者は精神疾患を有する者と定義されており、その例示として精神分裂病、中毒性精神病、精神薄弱、精神病質が挙げられている。このような例示の方法について見直しが求められており、検討すべきである。

2)覚せい剤慢性中毒者の扱いについて

○ 覚せい剤依存者について、精神症状の程度に係わらず、強制的に入院させることができるという現行法第44条を廃止するべきである。
○ 覚せい剤依存者においては覚せい剤による中毒性精神病患者にみられるような顕著な精神症状がないことから、強制的な入院措置を行う必要はなく、あくまで、覚せい剤依存の入院治療は、患者本人に断薬の意思があることを前提とするべきである。
○ また、薬物依存については、国立療養所等が政策医療の対象として積極的に取り組むこととしているが、医療以外の関係機関の取り組みも重要であることから、薬物依存脱却のための対策について検討を行い、(1)精神保健福祉センターにおける薬物依存に対する相談事業の実施、(2)覚せい剤を含む薬物全体の依存についての医療制度やアフターケア等の在り方について検討を行う必要がある。

3)重大な犯罪を繰り返す精神障害者について

○ 精神障害者の中には、重大な犯罪を繰り返す者が稀におり、そのような精神障害者に対して精神障害者の医療施策だけでは対応できないとする指摘がある。しかしながら、このような精神障害者に対する対策については、現行制度の問題点や対応策について意見が統一されておらず、関係者との議論が引き続き必要であると考えられる。

連絡先
 障害保健福祉部精神保健福祉課
 医療第一係 高橋(内線3059)


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