98/08/31 第25回年金審議会全員懇談会議事録 第25回年金審議会全員懇談会議事録 日 時 平成10年8月31日(月) 13:03〜18:00 場 所 サンピア佐久2階 浅間会議室  1 開会の辞  2 委員出席状況報告  3 議 事    ・次期財政再計算に向けての集中審議    ・基礎年金    ・給付と負担  4.閉会の辞 〔出席委員〕   京 極 会 長   八 木 委 員  砂子田 委 員  岡 崎 委 員  木 原 委 員   国 広 委 員  久保田 委 員  神 代 委 員  坂 巻 委 員   高 山 委 員  都 村 委 員  福 岡 委 員 桝 本 委 員   山 田 委 員  山 根 委 員  吉 原 委 員  若 杉 委 員   渡 邊 委 員  貝 塚 委 員  船 後 委 員  ○会長  皆様、御多忙のところ、集中審議に御参加いただきましてありがとうございます。  本日は、全員懇談会でございますが、記者クラブから、冒頭にカメラ撮りをしたいと いう申し出がありまして、廊下でかなりの人数で待機いたしております。議事に入りま すまでの間、これを許可したいと思いますが、よろしゅうございましょうか。               (「異議なし」と声あり) ○会長  それではお願いします。                 (カメラ撮り)                (報道関係者退場) ○会長  ただいまから第25回年金審議会全員懇談会を開催します。  委員の出席状況について、事務局から御報告をお願いします。 ○事務局  本日は、富田委員、目黒委員御欠席で、その他の委員は御出席でございます。 ○会長  それでは、次期年金制度改正に向けての集中審議に入ります。まず、集中審議の進め 方について、皆様事前に御承知と存じますが、事務局から確認をお願いします。 ○事務局  本日、これから「基礎年金」、「給付と負担について」。明日午前中「女性の年金」 「その他」につきまして、それぞれ御審議をいただきたいと存じます。 ○会長  それでは、今御説明がありましたように、最初に基礎年金の問題について審議に入り ます。事務局から資料の説明をお願いします。 ○事務局  それでは、資料について御説明申し上げます。  まず資料1「基礎年金」という表題のついたものについて御説明申し上げたいと思い ますが、カバーのページは、これまで給付と負担の水準について、国庫負担あるいは税 方式、未納・未加入対策、どういう資料がこれまでの審議会で出されているかというも のをまとめて一覧にしております。ファイルで机の上にお配りしております。その中に 関係部分がございますので、適宜ごらんいただければと思います。  それから、今回準備しましたものにつきまして、1ページと2、3ページにつきまし て、まず御説明を申し上げます。1ページおめくりいただいて横長のまず1であります。 これは「基礎年金・国民年金保険料の問題と解決方向として出されている提言」という ことで、特に基礎年金・国民年金保険料について、どういう問題があり、どういう方法 が提言され、また、その考え方としてどういう視点があるかということを書いたもので す。これは既にこの大もとになるようなものはこの審議会にお示ししたところでありま すので、余り新しいペーパーではありません。考え方をもう一遍今回の御議論に先立ち まして、お役に立てていただければということでつくった程度のものでありますが、も う一遍申しますと、左の方から、現在の年金保険料について将来世代の負担増が見通さ れる。  それから、「未納・未加入」という問題がありまして、その中には、年金制度に対す る不信・不安に基づくのではないかというもの。あるいは国民年金保険料が上昇して、 負担感が高まっているのではないかというもの。あるいは低所得者が特に負担感を高め ているのではないか、こういったようなことでございます。  そこでどうすれば、そういった問題について改善を図ることができるかということで 提言としていろんな考え方がございます。  まず一番大括りなものとしては最初の四角の中でありますけれども、国庫負担率を引 上げて、こういった保険料の上昇に対応する。あるいは税方式へ転換するという考え方。  保険料の増高を抑えるために支出総額をある程度抑えていくという考え方。  それから、所得に応じた段階的な保険料免除を行って、特に低所得の方々でももうち ょっと払いやすい方法を考える。  また、適用・収納対策を強化していくやり方。  将来の負担を抑えるためにも、国民年金保険料の引上げ計画を前倒しをして、現役世 代がもっと払っていって、将来の負担を軽くするというやり方。  こういったものが考え方としてはあると。  右側に「基礎年金の給付水準を考える視点」として、1人暮らしの場合、2人暮らし の場合で消費をどう見るかという考え方とか、地域格差は非常に大きく、都市部での消 費と地方での消費では大分違いますので、それをどう見るか。  あるいは2でありますが、厚生年金の所得再分配という機能をどう考えていくかとい うことで、これも既に審議会で御説明したことでありますけれども、例えば厚生年金で 23万円と言われておりますモデルについて、23万の額を動かした場合に、それに占める 1階部分の基礎年金の額を固定していきますと、2階部分が非常に小さくなっていくと いう問題がありますが、そういったことによって、厚生年金がますます所得再分配が強 まる、こういったことをどう考えていくかということ。  それから、下の四角でありますけれども、ちょっとまとめた言い方になりますが、世 代間・世代内の給付と負担の公平の観点等から、国庫負担率の引上げ、税方式をどう評 価するかという大きい問題であります。  そこで、次の2ページ、3ページ、税方式の導入あるいは国庫負担を引上げるという ことについて考え方を要約してみた資料であります。この多くは既にこの審議会で長い 資料を出したことがありますが、それをちょっと要約したようなものでございます。ま ず税方式を導入する、あるいは国庫負担の引上げを行うメリットなり背景なりをまとめ ますと、「税方式導入、国庫負担の引上げについて」、1つ目のマルでありますが、こ れによって保険料率を抑制することができるということであります。  それから、税方式を導入するということになりますと、1つ目のマルですが、第3号 被保険者問題が解消できる。 今の第3号は2号全体で費用負担する形になっておりますが、このため、例えば3号本 人が保険料を納めていないではないか、こういった批判を呼ぶわけでありますけれども そういった問題が解消される。あるいは学生の問題、これも所得のない学生から保険料 を取るのが適当かという議論がありますが、そういった問題が解消される。あるいは障 害者等の無年金・低年金、期間が非常に短かったり、未納だった方々の低年金といった 問題が解決するのではないかというのが1つのメリットであります。  それから、2つ目のマルでありますが、現在の社会保険方式をとりますと、未納・未 加入の発生はある意味では不可避である。税方式とすれば、こういった空洞化が回避で きるということが指摘されております。  それから、より進めまして、この税方式について、一般によく言われるのは消費税、 それも目的税で賄うということではどうかという指摘がございますが、そういう立場か らの主張を整理いたしますと、一般財源に比べて、目的税によって財源の安定性が確保 できる。  あるいは目的消費税であれば、所得捕捉の不公平(いわゆるクロヨン問題)が避けら れて、水平的な公平が確保されるのではないか。  3つ目でありますが、高齢者にも負担を求めることとすれば、世代間の不公平の是正 に資するのではないか。  4 つ目でありますが、国際競争の激化等経済状況の変化を踏まえると、税方式を導入 して、法人の負担を軽減させることが必要だと、こういう立場からの意見。こういった ものが、消費税によって、また、それを目的税にして財源にあてようという考えの背景 であります。  そこで次のページでありますが、仮にそういう方法をとるとした場合に検討を要する 課題が多々あるのではないかということで1枚に要約しております。  1つ目でありますが、税方式を導入する、あるいは国庫負担の割合を引上げるという ことを言った場合に、これは一番最初に出てくるテーマでありますが、「巨額の税負担 について、国民の合意が得られるか」。特に金額を書いておりますが、平成10年度にあ てはめましても、現在の国庫負担の総額が、今国庫負担3分の1でありますが、 4.7兆 円、これを2分の1にした場合に 6.9兆円になりますので、 2.2兆円を即座に準備しな ければいけない。 全額国庫負担にした場合には13.3兆円が必要になる。 そして、それを将来に延ばしていきますと、平成37年の時点では総額で25兆円を用意 するということになりますから、消費税率で考えましても相当の率の消費税が必要にな るということでございます。 また、3分の1を2分の1に増額したとしましても、今は 2.2兆円ぐらいの追加負担 でありますけれども、平成37年であれば、4兆円強の追加負担になるということで、2 分の1と3分の1の差も年々大きくなっていくということであります。  それから、2つ目のマルでありますが、国の財政が極めて厳しい中で、医療、介護、 子育て等の社会保障施策や他の行政需要との競合を招いて、長期的財源として安定性を 欠くのではないか。年金に優先的に財源が分配されるであろうかという心配であります。  それから、年金目的消費税とした場合、これは4月のところでも資料をお出ししたと ころでありますが、基礎年金の拠出部分につきましても、これは労使折半でありますか ら、その労使折半の使用者側の負担が全部消費税に移り変わるために法人負担が減少す ると。現時点で約 3.3兆円という計算になりますが、その分国民負担が増加するという ことについて、その辺の財源の移動についての議論が要るのではないかということです。 それから、次の囲みでありますが、「税方式の導入について」というところで、現在 の国民年金の制度は社会保険方式をとっておりますので、これはメリットとして、拠出 と給付の関係が明確であるということが長所と考えておりますが、そういった現制度の 利点は失われることになるということについてどう考えていくかということであります  それから、2つ目でありますが、今の制度は社会保険という制度でありますので、所 得制限とかミーンズテストということにはならないとは考えておりますが、これが税を 財源にした場合に、例えば所得の多い方々に対して、税を財源として年金を出すことが いいのか、こういった議論を招くのではないか。所得制限あるいはミーンズテストが不 可避であるという意見もあるわけであります。そういった考え方に立ちますと、その場 合は年金もある意味で生活保護的な色彩が強まってくる。所得制限によって高額所得者 あるいはそのレベルが下がってくるならば、相当の方々が受給できない可能性も出てく るということで、その場合には国民皆年金は達成できないという見方もある。こういっ たことについてどう考えていくかということであります。  3つ目で、諸外国の例から見て、税方式の場合に年金額が低くなる傾向があるのでは ないかという危惧であります。  それから、4つ目でありますけれども、切り替え時、移行をどうしていくかというこ とで、移行期に不公平とか損得論が出ないようにうまい方法を考えていかなければいけ ないわけでありますが、その辺の扱いをどうするか。このあたりが重要な議論であろう かと思います。  ということで、税方式あるいは国庫負担の引上げについて、こういった検討課題もな おあるのではないかということを一覧にしてみました。  ○事務局  引き続きまして、4ページの資料ですが、基礎年金を税方式に改めた場合の厚生年金 の保険料率の見込みという資料を説明させていただきます。  一番上のマルにありますが、基礎年金の給付費の支払いに必要な費用を全額国庫負担 とし、その分、厚生年金の保険料を引き下げることとすると、厚生年金の保険料率は、 現在の17.35%は、厚生年金からの基礎年金拠出金がなくなる分、これが4.3%に相当す るわけですが、4.3%低くなりまして、13.05%になるものと見込まれると。これは平成 10年度ベースの数字でございます。 この場合、現行の3分の1の国庫負担は従来どおり一般会計より財源調達し、それ以 外の部分を年金目的の消費税により財源調達することとしますと、その分の消費税は3.2 %になるものと見込まれております。括弧書きにありますが、消費税収入は1%当たり 2.7兆円ということで計算しております。 その次のマルですが、さらに平成37年度には、この3分の2に相当する当該消費税率 は6.1%まで上昇するものと見込まれます。括弧書きですが、仮に基礎年金給付費の支払 いに必要な費用を全額消費税により調達することとしますと、先ほどもありましたが、 基礎年金給付費自体が平成37年には、平成10年度価格で25兆円になりますので、その消 費税率は9.3%になるものと見込まれております。 その下でございますが、税方式に改めた場合に、厚生年金の将来の保険料がどの程度 になるかにつきましては、 1)としまして、厚生年金給付の支払いや厚生年金からの基礎 年金拠出金のためには、現在保有している積立金を将来どのように活用するのか。   2)ですが、保険料をどのように引上げていくかというような制度の仕組みや保険料の 引上げ方といったものによっても異なってくるわけです。一番下の箱ですが、仮に平成 12年度以降、税方式に改めて、1)現在保有している積立金を厚生年金の支払い分と基礎 年金拠出分との給付債務(国庫負担控除後)の比で案分した、これが大体7対3という 比率ですが、その比率で案分して、前者に対応する積立金を将来厚生年金の給付の支払 いに活用するという前提を置く。   保険料は、当初、消費税財源に振り替えた分として、4.3%だけ引下げ、以降、将来 にわたって5年ごとに2.5%ずつ引上げていくこととして試算をいたしますと、厚生年金 の最終保険料率は34.3%から10%程度低下して、24%程度になるものと見込まれており ます。以上です。 ○会長 ありがとうございました。資料の説明が終わりましたので、基礎年金の問題につきま して、御意見のある方は、どなたからでも御自由にお願いします。 ○A委員 会長よろしゅうございますか。 ○会長 はい、どうぞ。 ○A委員 最初に実は先週事務局には届けておいたのですが、今日の問題とも関連するのですけ れども、私ども夏のトップセミナー、これは8月6、7日の両日、私ども日経連の経営 トップセミナーで議論をした「年金改革の基本方向」という2枚ものの資料があるんで す。今日の議論とも関係いたしますので、おおよそどういうことを今議論しているか、 実はこれをもう少しきちんとした形で、少なくとも1〜2週の間には提言にまとめたい と思っていますけれども、これをベースにたたき台として議論していただいた経過があ りますので、既に御承知の方も多いかと思いますけど、念のために配付させていただき たいと思いますが、よろしゅうございますか。 ○会長  どうぞ。時間はたくさんとれませんが。 ○A委員  いや、この内容の説明はいたしません。御覧いただければ結構でございます。                (日経連資料配付) ○B委員  会長よろしいですか。 ○会長  B委員どうぞ。 ○B委員  御説明どうもありがとうございました。特に私を含めて複数の委員が求めておりまし た、税方式に切り替えた場合の将来の保険料負担の上限、それについて新しく試算結果 をお示しいただいたことを大変感謝しております。 年金局は常々情報公開には前向きに対応するということをおっしゃっていただいており まして、こういうデータを出していただいたことは非常に有意義でして、そういう観点 からお礼を申し上げたいと思います。  ただ、資料を拝見いたしましていくつか仮定の置き方について、別の考え方もあるの ではないかということを申し上げたいと思います。 ○会長  B委員、ちょっと待ってください。A委員、口頭の御説明はいらないのですか。 ○A委員  それをごらんいただければ結構でございます。説明はいたしません。見ていただけれ ば。 ○会長  それだけでよろしいですか。 ○A委員  結構です。 ○会長  それでは、B委員どうぞ。 ○B委員  お示しをいただきました資料の中でいくつか仮定があって、将来のピーク時の負担が どうなるかということが、まさにどういう仮定を置くかに依存するかということでござ いますが、もともと基礎年金部分は全額消費税をもって充てるということですから、今 ある積立金を2つに按分して、一部を基礎年金部分に取り除くという仮定がやや変則的 といいますか、そういうふうに見えるということであります。1階というか、基礎年金 は全部消費税でやるのですから、今ある積立金は2階部分といいますか、厚生年金独自 の給付に回すものと仮定を置いて計算をなさった方が自然ではないかと思います。そう いう意味で、仮定の置き方がこれでいいかについての吟味をさらにしていただきたいと 思います。恐らく今ある積立金は多分130兆円くらいあると思うんですが、それをすべて 厚生年金の独自の給付に回すとすれば、ピーク時の保険料負担は24%よりも若干低くな るのではないかと推察いたしております。  それから、従来厚生年金の保険料負担、ピーク時に34.3%という数字を厚生省の事務 当局から示されておりますが、ピーク時の保険料負担は、厚生年金加入被保険者がどう なるかとか、月給の水準がどのくらいになるかとか、いろんな要因に左右されるのです が、基本的な仮定として、まず共済グループは今後とも組合員数というか、被保険者数 が変わらないことを前提にして推計しているものですから、将来人口が減り、サラリー マンの現役の数が減ることの影響は全部厚生年金で引き受ける形になっております。た だし、民間サラリーマンの数が減っていくのに国家公務員や地方公務員の数が全然減ら ないまま将来にいくという仮定もどちらかというと変でありまして、サラリーマンの現 役の数が減ることの一部は共済グループも引き受けると考えるのが自然だと思うのです が、こういう話はどちらかというと数理部会の方で指針等を示していただくのがいいの かもしれません。今のところ34.3%の前提というのは、サラリーマンの数は減っても共 済グループは変わらないという形で計算しているものですから、ピーク時の負担はより 少なくなったサラリーマンを全部厚生年金が影響を受ける形で将来試算をしている。そ の部分もややピーク時の保険料が高めに出る結果になっているのではないかと思います そういう意味で、こういう数字が一たん出るとひとり歩きしますので、読み方につい ての注意をとりあえずしておいた方がいいのではないかと思います。これは私の個人的 な意見です。以上です。 ○事務局 厚生年金の今保有している積立金をもし税方式に切り替えた場合に2階部分に全部充 てるという考え方もあるのではないかというお話でございますが、もともと厚生年金の 支出は、厚生年金の独自給付と厚生年金が基礎年金へ拠出する額、その2つを賄うため に保険料を集めているわけです。これは両方とも今後高齢化していく中で費用が増大し ていくということで、そういう意味で両方の費用に充てるために今のような階段の保険 料を設定して、結果として積立金ができていると。  そういう意味では、今持っている積立金は独自給付に充てる部分と基礎年金拠出金の 費用に充てるために保険料として集めているということで、この試算ではそういったそ れぞれの独自給付分と基礎年金拠出金の債務に分けて試算をしております。税方式にし た場合にどういった考え方でやるかは今後の議論だと思います。もちろん2階部分に全 部積立金を充てれば、今の24%よりは若干下がる。1%程度ではないかと思いますが、 下がると思われます。  それから、もう一つの方の、この再計算の前提自体が共済組合の被保険者数が一定だ という前提で、厚生年金の被保険者数が将来やや小ぶりになっているので、そういった 点も前提としてはっきりしておく必要があるということですが、もちろん生産年齢人口 が減っていく中で、共済組合の被保険者数がどういうふうになっていくかということを 見込むのはなかなか難しい面があります。そういった前提についても、例えば数理レ ポートとか、そういうところではっきりこういう前提でやっているということについて はこれまでも明確にしておりますけれども、これからもそういった前提等についてはは っきり明示していきたいと思っております。 ○会長  よろしいですか。ほかにどなたか。どうぞ、C委員。 ○C委員  税方式についてかなり御議論が今まであって求められているわけですが、税方式の導 入は、従来の日本の公的年金の制度的な枠組みを変えるもので、要するに社会保険方式 ではなくなるという点で相当大きな制度の変更です。社会保険方式が必ずしも世界の 国々でうまくいっているわけではありません。ですからかつての社会保険の方式が、例 えばイギリスでは随分姿が変わってきたことは間違いありません。現在の日本の年金制 度は社会保険方式を基本としてとっておりまして、税方式を入れるということは、それ をやはり変えるということであることは間違いないです。  これは制度のある種の理念に関連する問題で、したがって、大問題だというのが私の 意見で、簡単に賛成しますというふうには言えないということを最初に申し上げておき たいのです。それはともかくとして、ただ、この税方式の導入について給付をどうする か。税方式を入れたときにいろんなアイディアがあり得るわけです。要するにすべての 人に最低の年金を保障するというのが一番単純なやり方です。それから、あとはここに 出ていますが、かつての生活保護的な要素が少し入ってきて所得審査付の給付をする。 ついでに言えば、大蔵省の主税局で金を調達してこいというのも1つの考え方です。そ れはともかくとして、財源の調達だけの話ではなくて、やはり給付をどうするかという 問題が必ず絡んでいるはずで、そこのところをどうするかがかなり大きな問題で、した がって、先ほど申しましたように、相当話としては大きな問題を含んでおります。  ですから現在の社会保険方式がある程度問題を抱えているし、日本の場合は未加入者 の問題とか確かに問題はありますが、その問題から、ただちに税方式に移ることについ ては相当慎重な判断を要するというのが私の意見です。 ○会長  D委員。 ○D委員  1つは議事進行についてお願いがあります。今、配っていただいた資料の後ろの試算 結果そのものについての議論と、理念ないしは政策に関する判断をめぐる前半の方の議 論とは整理をしてやった方が議論全体としては、あっちへ飛んだりこっちへ飛んだりし なくて生産的なのではないだろうかということでございます。順序として、資料の前半 の方の、紙を繰っていくと前の方にあると思いますので、その点についてだけ発言をさ せていただいて、試算結果については、私ども手元でやっている結果と大分違いますの で、別途御報告をしてみたいと思います。  まず、税方式か社会保険方式か、公的年金全体について問われているわけではなくて 基礎年金をどうするかということについてだけ問われているのだと思うんですね。そし て、その前提にあるのは、現在の基礎年金制度がこのままの延長で、当初目的としてい た国民皆年金といった方向に耐えるものなのか、そうでないのか、この判断だろうと思 います。私どもは現状の制度の延長をしていく限りでは、21世紀において、皆年金とい う役割を果たすことができない。このことが既にはっきりしているのではないだろうか。 まず、この点について、審議会全体としての認識がどうなのかということの整理をぜひ ともしていただきたい。  2つ選択がそこから出てくるわけで、現在の制度を、変な言葉を使えば固執をして 「皆年金」という理念はやめてしまうと。あるいは「皆年金」という理念をいわば金科 玉条にして、そのために現状の制度でいかんとするならば別な方式を考える。ここでど ちらの選択をするのかということは、当審議会がまさに今世紀最後の改正に当たって社 会的に問われているところではないだろうか、このように思います。  私どもは結論から言えば、社会保険方式によっては残念ながら「皆年金」という理念 を達成することができない。 税方式必ずしもバラ色だとも思いませんし、問題が多々あるだろう。我々が認識してい ない問題もひょっとしたらあるかもしれない。それをクリアしながら基礎年金部分に関 しては税方式に切り替えることを方向として今回の改正で基本的に打ち出すべきではな いかと思います。  ちなみに徴収率を上げるということについて、地方の社会保険事務所の職員、現在地 方事務官という身分にございますが、1年目は地方自治体の職員、2年目は地方事務官 の立場にある社会保険事務所の職員が徴収業務に当たっておりますが、これは極めて惨 めというか、報われないというか、労働意欲そのものを削ぐような労働の実態でありま す。現場にいる人たちの側からもこの点から事態の改善が深刻に求められていることも あわせて御報告をしておきたいと思います。  それから、水準について、このペーパーで議論がございます。特に生活保護との関係 で水準の問題が1つ。もう一つは、生活保護的になってしまうのではないか。問題点が 2つ指摘されているわけですが、3ページに「税方式の導入について」という下の方の 2つ目のマルのところで、いわゆるミーンズテストないしはそれに類似したものが税方 式ということでは不可避であるという考え方が打ち出されております。まさにこれを不 可避だとする考え方こそ明治維新以来今日まで続いてきたいわゆる措置制度という我が 国社会福祉の基本的な考え方なのであって、21世紀においてはこの考え方から脱却する ことが今福祉問題に関する非常に大きなテーマであり、厚生省が別途検討されている社 会福祉事業法の改正をめぐる議論はまさにこの理念の転換を含意しているはずでござい まして、それとはそぐわない発想法がこういう形で語られることに対して、私どもは非 常に前向きでないという印象を強く持つところでございます。  それから、水準について、生活保護水準を上回る基礎年金というような議論がいくつ かの方向から提起されておりますが、特殊な状況に置かれた人たちに対する選別的な給 付に対して「国民皆年金」という観点から設計されるべき全国民を無差別に対象にした 基礎年金制度は水準から言えば、それよりもいくらかは低いことになるだろう。特に基 礎年金は全国一律であるのに対して生活保護水準というのは地域差をもって適用されて いるのは御案内のとおりでございまして、その意味でもこの基礎年金水準は現状の制度 的な水準は高くも低くもない妥当なことであり、生活保護を必要としている特別な事情 にある人たちに対してはそれを上回る分を生活保護として給付していくということにで きるのではないか、このように考えます。  とりあえず前半について以上でございます。 ○会長  E委員どうぞ。 ○E委員  税方式の問題でございますが、私も理論的に税方式に反対するものではございません。 これはまず初めにお断りしておきます。ただ、問題はその実現可能性でございます。昨 今のような情勢から判断いたしますと、結論的には私は当面どころか当分の間、その実 現の見込みはないと、かように考えております。  先ほどC委員もちょっとおっしゃいましたように、何兆円、何十兆の金がともかく今 までの負担者を変えるわけでありますから、これはちょっとした革命騒ぎでございまし て、よほど時間をかけて納得をしていただかなければ、国民の理解は得られないのでは ないかと思います。  第2に申し上げたいことは、仮に税方式に転換いたしましても、全体としての国民の 負担は変わらないわけであります。また、消費税ならば保険料よりも国民が喜んで負担 するというようなことも言えないのではないか。むしろ国民は消費税の方が嫌なのでは ないか。2%ばかり消費税を上げたばかりに現在の不況ができたと、こんなことが言わ れておるご時世でございますから、そこらあたりをよく考えなければならない。だから 保険料を上げずに済んで消費税を上げるというので問題は解決したのではない。といた しますれば、やはり問題は、現在の基礎年金及び2階部分の厚年を含めた年金の給付水 準が、国民の負担能力から考えて一体どうなのかということが先決問題だと思います。 ですから、この審議会で審議すべき問題は、まず給付面においては一体どういうふうに 考えていくかということが第一であって、それを財源問題の税方式を持ち出して、これ をやれば、例えば専業主婦問題あるいは学生問題、問題はすべて解決というのでは問題 を先送りにするにすぎないのではないかと思います。  よく言われておりますように、政府は国庫負担引上げ問題を棚上げいたしておりまし て、問題を先送りしておると言われておるのでありますが、しかしこの税方式も問題を 先送りしておるのではないかと言われればそれまでであります。ですから私は、その問 題はその問題として、ともかく給付と全体の負担の関係から、2階部分、1階部分の年 金制度をどうしていくのか、この審議をやっていただきたい。  そして、基本的には税の問題と社会保険料の問題は、私はやはり1つのテーブルの上 でそろえて論議するのが筋だと思います。しかし、これは大変な政治力の要ることでご ざいまして、橋本前総理がやっていただいても、これはなかなか大変だろうと思います。 それまで待っておるというわけにはいかんわけでありますから、やはりこの審議会では 従来のペースで、負担と給付の均衡の問題、それは財源のいかんにかかわらず、私は審 議は進めていただいて、早くそういった点でめどをつけていただく。そうでないと国民 はいつまでも不安が残るだけだろうと思います。以上でございます。 ○会長  今問題になっておりますのは、1人1人の人間が社会保険に加入して、保険料を払い たくさんの人たちの保険料をプールして、その中から年金を受け取る、という社会保険 方式と、国家が税金の中から年金と称する金額を配給する、という社会福祉方式と2つ のものの理念の問題、原則の問題という問題提起ですが、F委員、今の基本問題につい て御発言いただけませんか。 ○F委員  基礎年金といいますか、国民年金をつくるときから税がいいのか、あるいは保険料方 式がいいのかというのは大変な議論がありまして、結局それぞれ長所、短所があるんで すけれども、税では年金制度として発展が期待できない、保険料方式の方がいいのでは ないか。本人が自分が積み立てて年金の権利を得て、それで年金をもらうと。税ですと どうしも一般財源ですから、もちろん目的税ということもあるんですけれども、自分の 権利としての性格が非常に弱まってきて、その時どきの財政事情によって金額を国が決 めるということになってしまう。  税でやる以上は所得制限は絶対免れない、これからの時代でも私は避けられないと思 います。  そういったことをいろいろ考えますと、やはり今の時点でも完全な税方式に変えるこ とについては、私は無理なのではないかというふうな気持ちを持っております。ただ、 今の3分の1のままでいいかどうかということになりますと、私はこれはどうかなと。 どの辺が税方式と社会保険方式の中間点といいますか、接点といいますか、ということ を考えますと、今までいろんな議論が出ておりますけれども、私は将来は2分の1ぐら いまでは国庫負担、何らかの形で税で財源をみることに将来はすべきではないかという ふうな、私自身はそういう考え方を持っております。  それから、厚生省のいろんな説明資料ですが、何か税方式にするというと、今の2兆 とか3兆とかという財源をすぐ税に切り替えるような説明、あるいはそういう資料にな っていますけれども、やはり変えるにしても相当な時間が必要なので、今、C委員など からお話がありましたように、当然今の給付をどうするかということとセットでないと 財源方式なんていうのは考えるべきではないので、そっちの方を抜きにして、給付はそ のままで財源だけ税にするというのは、私は当然現実問題としてはとりえない考え方だ ろうと思います。 ○G委員  先ほどD委員さんもおっしゃったんですが、基本的に考え方はほぼ一緒なんですが、 先ほどからの論議を聞いていますと、社会保険方式なのか税方式なのかということと、 税方式に変えた場合の国民の合意に時間がかなりかかるので無理ではないかというよう な御発言もございました。今話されていることは当面の問題でもあるようですけれども 相当時間軸のある問題でもあります。しっかり議論をしたいと思います。我々勤労者の 立場から言いますと、税制面では直間バランスが大変いびつになっていて、直接税が相 当の負担感を増している状況の中で、今いろいろな税制の見直しもされようとするタイ ミングに入っているわけですから、うまくこのタイミングを利用し、時間をかけて国民 一般大衆に理解をしていただきながら社会保険方式から税方式に転換を図っていくこと にしたらいいのではないかと思っています。  その理由は、先ほどから話がありますように、基礎年金の部分が非常に不安定な状況 で、将来うまくいくのかなということを多くの方が現状をとらえられている。そういう 不安を解消するという点からも大変重要なことではないかと思っています。年金の1階 部分が大変不安定なことになっていることで2階もまた不安定になっています。そして 年金全体が大変不安定なものだと思っておられる方も多いわけですから、少なくとも基 礎年金部分は安定感のあるものに変えていくことが大切です。  戦後五十数年たって、やはり一定のものは負担して、お互いが助け合って、ベースに なるものはベースになるものとして守っていくのだ、つくり上げていくのだということ に社会全体をかじ取りして変えていく、そういうタイミングに来ているのだと思うんで す。そして何か過去のことを引きずってだらだらやると、今さまざまな問題になってい る、結局基礎年金のことは、ほとんど解消できないと思うんです。したがって、この際 抜本的に、老後の生活保障という側面から基礎的な部分を安定的なものとして確保して いくという点からも税方式への転換を進めた方がいいと申し上げておきたい。 ○H委員  私も今のG委員の御意見とほぼ同じでありますけれど、先ほど議論がありましたよう に、現下の経済情勢からしますと、税金を引き上げるとか消費税をアップするというこ とは、私も常識的にはなかなか難しいのであろうと思います。しかし、一方で視点を変 えまして、国民全体の立場からしましても、こうした経済状況の中では給付を下げられ るのかどうか。一方、また逆に負担を増やせるのかどうか、これも容易でないというこ とがあります。  給付と負担のありようについて同時に議論しなければいけないということについても 大変よくわかります。そういうことであろうと思うわけでありますけれど、今後の議論 になるか、ないしは計算によるかもしれませんが、若干給付を抑制しましても、しかし 保険料は上げざるを得ないということになると、構造的な問題も含めまして、年金審議 会としてはどういう方向で年金の在り方を考えたのだということを問われざるを得ない のではないかという気がするんです。  財政構造の改革方針につきまして凍結だという議論が一方で出ておるわけであります 少なくとも国会で決議したり、法律も附則に入っていると、これは従来から言われてい ることでありますから、私がここであえて言うことでないかもしれませんけれど、国庫 負担を2分の1にと盛り込んでおるにもかかわらず、ましてや財政構造改革も凍結だと 言われている中で、実際に次回の改正について、この議論が年金審の方向として盛り込 まれてもいないことになりますと、やはり国民全体の年金審議に対する期待感を裏切る のではないかと思っております。  それでは実際の財源問題をどうするんだということになれば、もう国会で決議してく れておるわけですから、一般会計でこの部分を充当しろと、してもらいたいということ を言うしかないわけでありますし、将来的には税方式なりを検討していくのだという方 向を示していくということではなかろうかと思います。 ○I委員  私は基礎年金の問題は非常に関心があると前にも言ったことがありますが、まさに今 でもそう思います。考えてみたんですけれども、結局老後の保障は三段階あると私には 思えるんですね。1つは生活保護でありまして、どうにもならなくなったら、今でも行 われている生活保護で老後を暮らすことができる。しかし、それだけではちょっと中産 階級化した日本社会では満足できないと。そこにもう一段上のライフネットがあって、 そのライフネットの下が基礎年金なんだと、こういうふうに考えますので、私は生活保 護による老後保障と公的年金における基礎年金による老後保障は全く別のものと考える べきだと。つまり生活保護を受ける場合には非常に厳しい条件でしか受けられなくなる ということをまず考えた上で、それではなしにもう少しソフトな意味で老後の生活をし たい人に最低基礎年金を保障すると。これを社会保険方式で保障するというのが公的年 金の役割だと思います。  ただ、この6万5,000円という数字が正しいかどうかという判断は非常に難しいのです が、昨今の難しい情勢の中で、年金白書を始終読んだ観点では、6万5,000円というのは 一応妥当な線ではないかと。そして、できれば、これは1人当たりと夫婦では別になる のではないかというお話がありますが、私はストレートに1人当たり6万5,000円でいい のではないかという感じがいたします。 さらに保険料が上がってくるのではないかという話については、私は今3分の1入っ ている国庫負担を2分の1の方向に変えていくということを検討した上でそれを解決す るということがいいと思います。ただ、私が非常に心配しますのは、5年ごとに年金の 改正をしますけれど、今の段階でごちゃごちゃになってしまって、どうにもならんから といって御破算にされるのは非常に困る。せっかく2年近くやりました今回の再計算に 対する答申はしっかり固めたものを出すべきだと思っておりますので、社会保険方式を とって、若干国庫負担を入れるという格好の今の方式が全うなところだと思うので、基 礎年金についてはそういう方向を出したらいいのではないかと思います。  厚生年金については、また後でそのときが来たら発言したいと思います。 ○J委員  D委員の御意見の中で、国民年金の破たん状況を非常に重視しておられる点は私も大 事な論点だと思うんですね。確かにそこのところがほころびてくるとシステム全体に非 常に致命的な問題が起こり得る。だから税方式にすべしというところはちょっと論理が 飛躍しているなという感じが私にはするわけです。国民年金の破たんのところは確かに おっしゃるとおり、何とかしなければいけないところで、私は税方式にするということ は、今日の事務局のつくった答案は大変よくできていて、最初のページを見ると、確か に税方式の方がたくさんメリットがあるなということが非常によく書いてあるので、私 も途中まで読んだときは、ああ、そうかなというふうに思ったんですが、次のページ以 下見ると、これはとてもあかんわと。非常にメリットがあるように見えるけれども、実 はつかもうと思うと、かげろうのように逃げていくという仕掛けになっていて、とても これは現状の日本の財政状況と、そう言っては何だけれども、政府の統治能力を前提に しては、これはとても実現不能だと。まして消費税で全部基礎年金をカバーするという ことは、言うは易いけれども、まずほとんど実現不可能で、年金審議会が全部責任を放 棄して、税調にげたを預けるに等しい。  私は現状の我が国力の低下を嘆いているばかりいるわけにもいかないので、やっぱり そういう置かれた政治的な予見の中で、我々としては最善を尽くした議論をして答案を 書かざるを得ないということですから、やはり社会保険方式で今までやってきた中の大 きな問題点をできるだけ是正する方向で議論する以外に現実的な解決策としてはあり得 ないのではないか。したがって、国民年金の破たん問題に関しては、既に何回か前に事 務局から相当強硬な対応説が出ていましたね。免許証をストップしろとか、私は選挙権 も停止してもいいぐらいに個人的には思いますけれども、要するに税に準じた扱いをし て、市民権とこれはペアの問題であるというくらいの強い国民年金の保険料の徴収を可 能にするような方策を政治的に考えていただくことしかないと。その方が税金で取れと いって、実際に何もできないよりははるかに現実的な方策であろう。現行の制度がある わけですから。実際に保険料を払ってない人たちの実態についても既に報告があったわ けで、金持ちの自営業者で払わない人がたくさんいるというようなことも報告の中にあ ったと思いますので、そういう点はきちんと、やはり徴収するのが国の義務であろうと 私は思います。  なおかつ将来的に、そうは言っても、3分の1の国庫負担では無理ではないかという ことも御指摘のとおりだと思いますので、日本の国家が再び経済が安定する時期もあれ ば、その時期に2分の1にすることはもう一度検討すべきだと思いますけれども、現状 では財政の状況からいっても、政治的な統治能力の点からいってもこれは確かに無理だ と思うんですね。ですから2分の1にできるということを前提にして、今回の我々の結 論を出すわけにいかない。  ですから給付の面で、賃金スライドを停止するということを前提にして、基礎年金に ついても給付の抑制を基本的なところでは同時に考えながら、保険料の徴収の強化とい うことを具体的に考えるというのが恐らく選択しうる唯一の道ではなかろうかという感 じがいたします。 ○K委員  基本的に言いますと、社会保険方式での基礎年金は現実に空洞化を考えますと破たん をしているだろうと思いますね。そして、これからこの年金不信がどんどん広がってい けば、ますます社会保険方式で基礎年金の部分を見ることは難しくなっていくことは当 然考えられると思うわけです。年金に入らなくても生活保護を受ければいいのではない かというような考え方が広がったり、自分自身で貯金すればいいじゃないかというふう になっていきますと、この基礎年金を社会保険ということは崩れていくわけです。基礎 年金というのは、国民が一定の年齢になったときに、国が最低限度の年金を保障してい るということになってくるわけですから、私は究極的には税金で見るべきものかと思っ ております。3分の1を2分の1にし、将来それを4分の3にするという形で税金で見 るべきだと思うわけですが、消費者としては、社会保険で保険料を払うのも税金で払う のも出す意味からすれば同じだと思うんですね。むしろ税金でもってきっちりと目的を 決めてとった方が納得を得られるのではないだろうか。当面早急にやれということは無 理にしても、将来的には税金でこの部分を見るべきだろうと私は考えています。 ○L委員  私負担の側からこの問題を考えますと、目的税の消費税にぜひ将来はすべきだとこう いうふうに思いますが、先ほどE委員が言いましたように、その議論をするがゆえに、 給付の問題と負担のバランスについての議論をしないということではなくて、給付をど うするかということはきっちりと議論をすべきだと思います。基礎年金の財源を目的消 費税にすると第1は負担者の構成が変わる。  第2は、先ほどお話がありました理想的な年金としての発展が阻害されないか。この 1番、2番というのがどういう意味があるのか、私はよくわかりませんが、これは十分 に議論されてしかるべきだろうと思います。3番目に今議論が出ました政治的な合意が 得られないというのは、今、K委員がおっしゃいましたように、消費税であれば、国民 的合意が得られないけど、社会保険料を上げるなら合意が得られるのか。これは社会保 険料を上げるか、上げないかというのは国民の前で議論がされにくい問題だが、消費税 を上げるか、上げないかは非常にわかりやすい、こういうことであって、1番、2番で 申し上げました負担の構成なり、あるいは年金の発展との関連はあろうかと思いますけ れども、経済学的には社会保険料を上げるのか、消費税を上げるのか、国民経済のイン パクトは同じような問題がある。目的消費税が上げられないのであれば、社会保険料も 上げられないのではないか、こういうことになろうかと思います。そういう意味では、 やはり税方式か、社会保険料か別にしまして、負担する側からしても、負担と給付の観 点は、今回ぜひともきっちり議論していただきたい、こう思います。  そういう意味で、先ほど日経連が配りましたメモ、これは全部御説明を私がする立場 ではありませんけれども、参考までに一、二言わせていただきますと、この「年金改革 基本方向」の中のマルの4番目、「負担の限界」、労使合わせて勤労者の月収の20%以 下、現在17.35%ですが、これについてはぜひともそういうふうにしていただきたい。 特に現在のような経済の状況のもとでは、17.35%からさらに上げることには賛成しかね ますと申し上げます。 その場合に、給付の水準がどうかということですが、これは中長期的になだらかに2 〜3割程度削減と書いてあります。5つの選択がありました、この本の9ページに、例 のA、B、C、D、Eの5つの選択がありますけれども、負担の限界は月収の20%以下 というのは、この中のD案に入る。それから、給付の水準を中長期的になだらかに2〜 3割程度削減する。これがどこに入るかなんですが、私の個人的なイメージとしては、 これはC案の給付総額を2割程度抑制するケースの年金水準になる。いろんな前提条件 がありますけれども、大体イメージとしてはそういうことを考えていいのではないかと 思います。  その際に非常に誤ったイメージがよくあるせいか、はがきがたくさん私のところに参 りますが、何か今もらっているものが来年からすぐにどんと落ちると、こういうふうに 誤解されているわけです。この1ページ目の一番下のマルに、2階の報酬比例年金の水 準の一番下のポツでありますが、まず移行時の既裁定者は従前額を維持、従前額を支給 期間中は基本的にスライドなしとする。これは5つの選択のA案が、仮に給付が標準的 な夫婦で23万円とすれば、それをもらっている人は23万円は維持する。それで基本的に はスライドなしとするかどうか。この辺は議論が分かれておりますけれども、従前額を 支給期間中は基本的にスライドなしとする。この辺は賃金スライド、物価スライドの議 論があろうかと思いますが、いずれにしても従前額を維持するということであります。 来年から減ることはない。  それから、もう一つ上のポツで、新規裁定時には賃金再評価とありますが、この辺も 具体的にいくらの金額が移行時のしょっぱな、それから、数年たって新規裁定者がどの ぐらいもらえるか。これはただちに必ずしも18万円が17万円に下がるということではな い。例えばD案は4割給付総額は下がりますけれども、新規裁定者が4割下がることに はならない、こういうことではないかと思います。  そういう意味で、負担を月収の20%以下にしながら、現在もらっている人はそのレベ ルを維持する。もしも物価スライドはやむを得ないとすれば、物価が上がる分はその分 増えていく、こういうことになろうかと思います。そういう意味で、この負担と給付に ついては、税方式か、社会保険方式かとは別個にきっちりと議論した方がよろしいので はないか、こう思っております。 ○A委員  まず基本的なモノの考え方になるわけですが、先般来、特に1号被保険者の3分の1 が払ってないというモラルハザードの問題が出ているわけですが、その問題も極めて重 大な問題であります。これはまじめな人がばかをみるという話になりかかっているわけ ですから、それも極めて重大なモラルハザードの問題ですが、先般来、私達も今までど っちかというと、社会保険でいくべきだと一貫して考えてきていたんですが、ここで人 口構成がこれだけ大きく変わってくる中でどうしたらいいのかいうことを考えていきま すと、やっぱり人口構成からなるべくフリーな体系を考えなければいけないのではない かということになってきた。それは一言で言うと、もっと大きなモラルハザードの問題 が重大な心配になってきたということであります。  というのは、これは1994年時点での厚生省の試算なんですが、現在年金を受けている 大正13年生まれの人、この人は約800万、これは現在価値に戻していますが、800万円の 負担に対して年金の支給総額は6,100万円、給付と負担は7.6倍。一方、現在現役世代で あります昭和39年生まれの人は、保険料負担総額が5.200万円、年金給付総額が5,800万 円で給付と負担は1.1倍。ところが近い将来、現役世代となります昭和59年生まれの人は 保険料の負担総額は6,800万円。それに対して年金の支給総額は5,800万円で、これは0.85 倍でマイナスになるということであります。  これは今の時点での人口構成を使っておりますから、さらに新しい人口構成だともっ とこれは変わってくるだろうと思います。いずれにしましても、非常に大きな重大なモ ラルハザードの問題は、要するにおれたちは払うけれども、もらえないのではないかと。 こっちのモラルハザードというのは根っこ全体を揺るがすモラルハザードの問題です。 そもそもこれほどのアンバランスが起こったのは、全部が全部人口構成の問題というよ りも、多分48年4月の改正法のときに、給付は上げて負担は上げなかったという失政と いうか、厚生省か政府か知りませんが、重大な問題がかんでいるのだとは思います。し かしいずれにしても現実はそうだということで、こっちの方のモラルハザードの問題が 私は根本的には今の国民年金の3分の1が保険料を払っていないというモラルハザード の問題以上に重大なモラルハザードの問題を含んでいるのではないか。ここが非常に今 心配。これが吹き出したら年金の根っこから崩壊してしまうわけでありますから。しか も税金ですと払わないと課徴金をつけて取り上げるということは可能ですが、社会保険 の場合はそういうことはできないわけです。  そういう意味で、私は何とか人口構成からフリーなことを考えざるを得ないし、そう だとすると、やっぱり1階建のところは目的間接税、これは目的間接税ですから、ほか に一銭も使ってはいけないという限定付の目的間接税であります。今消費税に対するア レルギーがあることは百も承知しておりますが、これは実際問題当然のことながら直間 比率の是正として、直接税を大幅に下げて間接税を上げることをやれば、国民の納得は 得られる。何の見返りもないのに、毎回毎回消費税だけを上げる、直接税は下げないと いうことをやってきた。これも重大なミスなんですけれども、そういうことによるアレ ルギーが非常に大きいわけです。勤労者にしてみれば、直間比率の是正は積年の悲願な わけでありまして、そういう意味で、私はそんなに抵抗感があるとは実は思えない。わ ざわざ抵抗感があるかような導き方をしてきたところに問題がある。  しかし、そういうことを言って、なかなかできないじゃないかというようなことを言 っているうちに、一番根っこのところがモラルハザードを起こしてしまった。本当にこ れをどうするんですかということを今問いかけておかないとできないのではないか。い わゆる目的間接税を基礎年金については真剣に導入することをここで決断しないと、そ ういう方向でまた考えていかないといけない。ダムが決壊しちゃった後、慌てても仕方 ないわけで、しかし現実に既に相当そういうモラルハザードが起こっていることは事実 なんですから、その辺は、これはある枠の範囲に閉じこまって考えることは問題がある。 真剣な議論をここでやるべきではないか、これが1点であります。  もう一点は、私は社会契約論を考えたらいいのではないかということを申し上げたわ けですが、D委員からもそれには非常に興味があるというか、同じような意見だという お話がありましたけれども、ただ、内容がちょっと違う。 これは1階と2階の込みの話なんですが、私が申し上げている社会契約というのは、人 口構成を大前提として、人口構成の変化のボリュームを前提とした社会契約であります。 したがって、例えば1人の人を5人で抱えている場合、仮に1人が10万円もらっている ということであるとすると、それを4人で抱えなければならないということになると8 万円になりますと。また、3人で抱えなければならんということになると6.6万円になり ます。2人で抱えなければならんことだったら5万円になりますと、そういう社会契約 を結ぶしか人口構成をクリアする方法はないじゃないかということを申し上げたわけで そこのところは誤解のないように一言申し上げておきます。以上です。 ○M委員  国民皆年金が達成されて37年ですね。また、1985年の改正から12年ということで、私 は国民年金の未納・未加入問題があることはあるのですけれども、やはり社会保険方式 というものが国民の間にある意味では定着してきていると思うんですね。それで拠出記 録をかなり積み重ねてきている人もいるわけですね。社会保険のメリットというのもあ るわけですね。  ですから、私の考えとしましては、この年金審の最後のまとめの終わりの方になって この税方式の導入とか目的税でということが出てきたわけですが、やはり一定の期間、 少なくともあと5年ですか、次の次という改正というところまで、この未納・未加入対 策も、18回、22回でいろいろ問題とされましたけれども、そういう未納・未加入対策、 あるいは3号の被保険者問題、学生問題等への対応あるいは改正といったものを行って みて、それでここから5〜6年、次の次のというところの、そこまで対応をとってみて それでも状況が全然変わらないということであれば、税方式をもっと強化するとか、あ るいは目的税を導入するとか、国庫負担2分の1までというのは将来的には考えられる のではないかと思いますけれども、その間、対応なり改正なりを行ってみることが必要 なのではないかと思います。  それと今日年金の財源として消費税、目的税としてということが出てきたわけですが 所得税負担、消費税負担、またいろいろな社会保険料負担の変更が家計に及ぼす影響に ついてやはり検討してみる必要があるのではないかと思います。これは高齢者にもかか ってくるわけですから、年齢階級別、逆進性ということもありますので、所得階層別に 各層に、所得税、消費税、社会保険料合わせたものがどのような影響を及ぼしているか を検討してみる必要があるのではないかと思います。  それと消費税の在り方についても、やはり改正すべきところはする必要があるわけで すね。平成3年に議員立法によって、全会一致で、消費税法の一部を改正することが行 われたわけです。非課税の範囲が広げられたわけですね。 例えば賃貸住宅を借りている人たちに対する賃貸料などは非課税になったとか、医療関 係も非課税になったとかということがあるわけですが、もし年金の財源を消費税でとい うことになれば、やはり非課税の範囲を、生活の基礎的な部分についてはある程度外す とか、賃貸住宅の貸付けと同じように、そういうことも考えられなければいけませんで やはり消費税の在り方ももう少し検討してみる必要があるのではないかと思います。 ○N委員  いろいろ御議論出ておりますが、基礎年金の今の国民皆年金体制が非常に揺らいでい るではないかと。基本的にはどうも保険料がかなり高くなってきているということだろ うと思います。特に将来2万4,000円ということは到底負担できる保険料ではない。した がって、国民皆年金体制を維持するという面でも、何らかの財政的な措置が必要だとい うことで出てきているのが1つは国庫負担率を上げる、1つは税方式だと考えられるわ けであります。  そこで、いずれにしましても制度の体系にかかわる問題ですから、国庫負担の引上げ にしましても、あるいは租税の負担にしましても財源をどうするかという対策抜きでは 考えられないので、当然消費税問題というのが出てくると思います。 基本的には若い人の負担が大変だということを考えた場合に、高齢者もある程度の負 担をするということは消費税しか考えられないわけですし、そういう面で、若い人だけ ではなしに高齢者も負担してもらうという面で消費税というのは、国庫負担の引上げで あろうと、租税であろうと必要だろうと考えます。ただ、現段階では消費税の議論は、 当面の改正では取り上げられない問題であります。少なくとも次回改正までに、この問 題を詰めていくということはどちらにしても必要なことではないかと思いますし、本当 に国民にこういうことをやるためには、消費税をある程度確保してもらうのだというコ ンセンサスをつくるのがまず大前提だろうと思います。 それから、オール税負担という考え方も1つの考え方ではございますが、先ほどE委 員からお話になりましたように、これを全部を消費税、税負担になると、そう簡単にで きる話ではないし、少なくとも現実的な可能性としては国庫負担の2分の1というのが 1つの落としどころではないか。現実的な可能性を考えると、その辺しか無理ではない かなということが考えられます。それから、オール税負担ということになりますと、今 事業主負担分があるわけですが、これがなくなってしまうことになりますので、その分 の新たな負担も考えられる。というようなことを考えますと、いずれにしても全額税と いうのはそう簡単な話ではないと思います。  それから、いろいろ御意見出ていますように、社会保険方式として、ある程度の実績 を踏んでおりますので、それの修正という形で前進というものを考えていいのではない かと考えます。 ○O委員  私は今、御発言最後の方にありましたように、基本的にはここまで来た社会保険方式 をできるだけ守っていくようなことを考えるべきではないか。確かに負担の問題になっ てくると、今の給付水準6万5,000円でいいのかということがまず出てくるわけでござい ますが、それはさておきまして、とにかくすべて税方式で賄うという考え方にすぐここ で切り替えるのは非常に無理があると考えます。 さっきA委員がおっしゃった世代間のモラルハザードということをおっしゃったんで んすが、これはおっしゃるとおりだと思うのですが、ただ、これを社会保険方式を税方 式に直したからといってその問題が解消することではございません。むしろ税方式の方 が、全く積立を持たない、完全な賦課方式になるわけですから、人口構成の変化による 影響ははるかに大きいと考えますので、それは私は違うのではないかと思っております。 ○E委員 私から技術的な点で若干コメントをしておきたいと思います。皆さん目的税と非常に 簡単におっしゃいますが、これがいかに難しく、かつ問題のあるものかということをち ょっと申し上げておきます。1つは、日本の財政制度で目的税が認められておりますの はガソリン税だけでございます。これは皆さんご存じのように30年代だと思いますが、 ああいったときに創設されたもので、その後、自動車重量税というのが登場しますが、 これは目的税ではございません。一般税でございます。ですから現在の情勢の中で、果 たして特別会計の特定財源としての目的税というものが認められるかどうか。これはC 委員が御専門ですから、ひとつ間違っておったらコメント願いたい。  それからもう一つは、現在の社会保険方式ですと、給付は賃金の上昇に従って伸びて いきます。また、一方、収入の保険料も賃金の上昇に従って伸びていきます。バランス がとれておる。ところが財源の方だけを消費税にしますと、これが必ずしもバランスが 保たれない。例えば現在のように、賃金は若干は伸びておりますが、消費はうんと沈ん でしまったときには一体どうなるのかという弾性値の問題ですね。これも長期にわたっ て推定されました上で、本当に目的税がいいとおっしゃるならば、それも1つの案とし てお聞きしたいと思います。  もう一つは、消費税が目的税の候補として言っておられるようですが、現在の日本の 消費税は、これは欧米のVATではございません。インボイスを伴うようなVATでは ない。ですから、本当に3%とか5%程度の消費税ではなくて、いわゆる益税的な消費 税ではなくて、本当の付加価値税をお考えになるならば、これはやはり将来十数%、20 %、ドイツは既に16%になりましたから、そういう消費税ならば、これはインボイスを 伴うVATになるということだけは、これは皆さんひとつ前提としてお考えにならなけ ればならない。  この点だけコメントしておきます。 ○P委員  資料1の3ページで、上から3番目のマルですが、目的消費税を導入すると、法人負 担が減少し、国民負担がその分増加すると。これは消費税を導入した場合のデメリット といった項目の中に入っていると思うんですけれども、現在社会保険料の負担額は年間 55兆円に達しておりまして、その半分以上を事業主が負担しております。現下の経済情 勢では、今企業負担も限界に達しておると言わざるを得ません。さらに今後介護保険な どができますと、これは本来地域保険でありまして、雇用とは無関係なわけですけれど も、こういうものも企業負担が義務づけられておるといったことで、今後の少子・高齢 化社会を控えていろいろな負担が企業にかかってくるのは非常にはっきりしております  これからの経済成長率の見通しにつきまして、厚生省の試算ではいつも大体2%とい った数字が出ておると思いますが、現実はもっと厳しくて、せいぜい1%台、あるいは 今後の少子・高齢化の進行を考えますとゼロ成長といった厳しい見方もあります。経済 成長がなければ、先ほどの給与の上昇で保険料が増えるといった話もありましたが、経 済成長がなければ、これはそういうことも大変難しくなりまして、社会保障費の増加に は対応できなくなると。そういう意味で、日本経済を支える民間企業の体力を強化する ことが片方では非常に重要な問題であります。  この項目によりますと、法人負担が減少して、その分、国民負担が増加するのはどう もけしからんと。企業が不当に利益を受けるのはいかがなものかというふうなニュアン スがあると思うんですけれども、そうではなくても企業負担はこれからいろんな意味で 増えざるを得ないといった状況下にありまして、現下の経済情勢ですから、まずは企業 の体力を強化すると。それによっていろいろな財源を増やしていくといったこともでき るわけであります。  そういうことですから、基礎年金の財源の3分の2である社会保険料負担分について 目的間接税を導入するべきであるという考え方に私は賛成でありまして、何かこういう ことによって企業が非常に負担を免れようとしているといったことは不適当ではないか と思います。 ○会長  D委員、どうぞ。 ○D委員  先ほどJ委員から私の議論についてコメントをいただいてありがとうございました。 ただ、私、J委員の御発言を承っておりますと、何か恐怖の年金というイメージがする んですね。つまり給付は下げる、負担は上げる、払わないやつはびしびしと取り立てる。 社会保障とか年金は老後の安心ということについて、それを支えるものであって、何か そういう場合によっては、払わないと選挙権を取り上げちゃうぞといったような、それ は1つの飛躍的な意味かもしれませんけれども、そもそも年金はそういうことで語られ ていいのだろうかという感じがいたします。  私ども実は内部で、例えば国民健康保険と国民年金と両方加入すべき人が、国民健康 保険は払っている。病気にいつなるかわからないから健康保険料払うが、年金は払わな いという現象に着目して、少なくとも年金の保険料を払わなかったら、国民健康保険の 保険証の発給を停止するなんていうことを考えたらどうかとかいろいろ言いましたけれ ども、実際に病気になって駆け込んできた人を治療しないわけにいかないのが医療の現 場ですし、年金は国の制度であり、医療は今のところ地方自治体ということになってい る現状を考えて、そういうものが簡単にリンクできるだろうか。  これは例えば運転免許証の問題をとっても、あるいはパスポートの発給の問題めぐっ ても多分同じことで、いわんやそこのところへ、例えば選挙権の停止といったことにな るとほとんど禁治産者扱いみたいなことになるわけで、私はそれは多分間接税引き上げ るよりももっと社会的に抵抗のある話だろうと思いますし、仮にそれをやってみたとこ ろで、実はそうやってびしびし取り立てるということが、どれだけの徴収コストの引上 げをもたらすかということを考えると、そっちの面でも必ずしも合理的だとは思いませ ん。例えば現在まじめに保険料払ってくださっている1号被保険者の方々、みんな自分 でもってきて、自分ではい、はい、払っているわけではないので、徴収係が一生懸命足 を運んじゃ、夜討ち朝駆け、休日で頼み込んで、ようやくそのうちの何人かが払ってく れているというところがいっぱいあるわけですね。  そういう意味では、私どもは税方式が何かバラ色だと言っているのではなくて、現状 にかんがみ将来を考えれば、これはやむを得ざる選択なんだろうという気がしておりま す。そして、現実に国民皆年金、つまり全国民を無差別に対象して給付されるような年 金が社会保険制度でうまくいった国、実際にはないのではないでしょうか。  そういう意味から、現在の基礎年金制度がそもそもの導入の経緯の問題までさかのぼ りませんけれども、原理的な問題があって、それが今火を噴きかけている。その噴きか けているところは、A委員が御指摘の、特に若い世代のところに集中しているわけでご ざいまして、これはいくつか、これまでの審議会でも未納・未加入がどこで多いかとい うと、大都市部の若い世代で多いということがデータで出てまいりましたけれども、実 はサラリーマンの若い連中だって本当は払いたくないんですよね。自分で積み立てた方 がよっぽどいいと思っているやつがどんどん増えている。  その意味で、今の若い諸君が将来年金を受給することになったときに、安心して年金 がこれだけは確実にもらえるんだということを示すのがまず公的年金の議論の大前提で あるべきです。今のままでいけば、将来の無年金者予備群が今どんどん増えているわけ ですし、ますます払う人が減るから、将来危ないという話がされる。将来の給付は下げ るんだ、あるいは下げなければいけないんだということで不安があおられる。そして、 残念なことに、政府自身がそういった将来不安をあおる一端を意図されているとは思い ませんが、結果的には担ってしまわれているという悪循環の中に現在の年金問題の一番 厄介な点があるのだろうと思います。その意味では、将来の給付に関する確実な展望を 示し、そのためにこれだけの負担が必要だということを説得するのがオーソドックスな ことである。  そういう意味で、将来方向を次の、来年国会に提出を予定されている法案の中に、た だちにそういうことが書き込める状況だとは思いません。これは政治的に困難だからじ ゃなくて、問題の検討がまだ必ずしも十分じゃないから、私どもはそう思っているわけ で、次回改正に関しては、しかし、そういう方向性をこの審議会としては提起しながら その上に立って、当面こういう方策をとるということをとられるべきだろうと思います。  2分の1問題が出ましたけれども、これこそ次回改正で提起すべき最大の問題であり それが将来についてのそういう方向性を具体的に示すことになるだろうし、それが若い 世代にとっての公的年金に対し増している不信を少しでも解消することにつながるので はないか。あるいはつなげていく政策努力を私たち自身が引き受けるべきだろうと思い ます。  それから、P委員から、資料の中の使用者負担の問題についてのコメントがございま した。これは大変難しい問題かと思いますが、労働組合の立場から一言言わせていただ きますと、現在までの労使折半負担は、負担形態が変わっても将来とも維持される方向 が考えられるべきである。これは必ずしも年金制度の内部でとは思いませんが、将来の 社会保障は、ある意味で将来の経済活力の基盤をなすものだろうと、そのように思いま すので、その辺については格段の御協力というと変なことですが、御配慮をいただきた いと思います。  それから、A委員の御指摘の中で、世代間の負担と給付のアンバランスの問題、資料 の数字を挙げて御指摘になりました。私どもこういう数字そのものは前提の置き方によ っていろいろあるわけですし、民間の金融機関からもっと極端な例も出されていて、30 歳ぐらいが損益分岐点だと。30歳から下は公的年金なんて、払えば払うだけ損するとい ったような一種の煽情的な記事も時どき見かけるわけですが、これはこの絵が出ている 資料は随分前に審議会で配られたもので、この数字そのものは1つの側面であって、そ れと同時に公的な社会保険料負担以外のものを家計ベースで各世代が負担してきたこと とあわせて考えようという議論の資料だったわけです。  例えば、今の70代の人たちが年金保険料は非常に少なかった。というのは、その親た ちにはまともな年金はなかったわけで、その親たちを家族内で扶養していた。それから 団塊の世代は、親にはようやく年金はできたから、親の扶養という私的負担は前の世代 に比べると随分減ったけれども、第1次石油危機等々の契機を含めて、住宅関係の負担 は極端に増えた。その子供たちの世代は、親の年金制度がある限りは、親の私的な扶養 も大体引き受けなくて済む。それから住宅ストックは、今の親の世代が大体何のかんの いってもつくってくれた。じいさん中卒、おやじ高卒で、息子たちはみんな大学行かせ てもらった。  というようなことを経て、今度は社会保険料負担の方がその年代ではかなりのウエー トを占めるということを全体として考えてみれば、そんなに大きな不公平だというふう に言うことはできないし、むしろ払った保険料と受け取った年金額との金額上の比較だ けで、これはアンバランスだという議論は非常に一面的な気がいたします。  また、そういう点をきちんと若い世代に説得をすること自体が、世代間の助け合いと いうのはいかなるものであるかということを、彼ら自身が引き受けるべき負担の必要性 という意味からいっても必要なんで、そこで我々大人がきちんと腹を据えないと。あい つはきっと払わないだろうからというので遠慮するという議論から、しようがないから 将来の給付減らすかということは、ますます不安と不信を醸し出す悪循環を結局断ち切 れないことになるのではないか。以上でございます。 ○C委員  今までの御議論伺って、私の感想ですが、今のD委員と重複的に私は全く意見は同じ であります。要するに現在の国民年金の制度がある意味で虫食い状態になっていること はそれはそうで、それはある段階で放置できないということは多分そうだろうと。ただ 今の段階でそれに対する処方箋を書くとしたときに、税方式に移るというのが、やはり 先ほどからいろいろ御議論になっていましたが、今とにかく、要するに日本の経済政策 の体系は、堺屋さんが頑張っておられるかもしれませんが、これは多少の皮肉ですが、 とにかく今意思決定をする場がきちんとうまく確保できていない。経済情勢が非常によ くないですね。  したがって、私は、先ほど来、御議論がありますが、5年後の改正のときは、せめて そのころまでには日本経済がまともに戻っていて、もうちょっと展望がきいて、そこで この種の大きないろんな改正は、その段階できちんと詰めて考える。的に問題点がある ことはそのとおりですが、ちょっと今の段階で税方式に変わるというのは、その辺の決 定は相当慎重にする必要がある。私は時期尚早だと申し上げておきます。 ○F委員  私はD委員のおっしゃることもわからないわけではなくて、昔はよくそういう議論が あったのです。私どももそういう議論をずっと何十年も前からしてきたんです。しかし 今の社会保険方式でいろんな問題が出てきていることは事実で、払いたくない人もたく さんいると思うんですけれども、払いたくない人がたくさん出てきたから、では税金で 全部みんながもらえるようにしようというのは方向としては間違っているのではないか 基本的に私はそういうふうに思います。それはモラルハザードのお話も出ましたけれど も、自分で払いたくない人にまで税金で無条件で年金を出す、そういう甘い時代にこれ から日本は入っていくと考えていいのかという気がします。  ですから、そういう意味では非常に税方式というのはきれいな制度なんですね。いい 制度できれいな制度なんですけれども、私は入れる以上は非常に惨めな制度になると、 年金制度としては。それは十分頭に置いて税方式の議論をしないと、入れてはみたけれ ども、非常に惨めになったということにならないようにしなくてはいけないと。どうい う点で惨めかというと、必ずきつい所得制限がつくということと、70歳への引上げ、こ れは絶対いつかは必ず出てくる問題だということを念頭に置いて完全な全額税方式の議 論をする方はされた方がいいと思いますね。その覚悟の上で、なおかつ税方式がいいと いうなら、それはそれで1つの選択だと思います。 ○D委員  すいません、ちょっと二言、三言だけ。C委員の御指摘との絡みでございますが、私 どもは次回改正でただちに税方式への切り替えを制度上決定すべきだと思っているわけ ではありません。ただ、それをめぐったきちんとした議論が社会的にできるような問題 の提起を本審議会としてはすべきであり、次回改正の課題は現行の3分の1の公費負担 を2分の1でとりあえず引き上げるということと、それから保険料の凍結によって、当 面の御指摘のような現下の経済局面に関しては対応すべきだと思いますし、それは可能 だと考えます。  それから、F委員の御指摘も大変重要な点をお教えいただいてありがとうございまし たが、税方式やるなら所得制限プラス70歳だぞと言われちゃうということは、私は気が 弱いからすぐびびるわけですけれども、しかし、そこは第1回目の発言で申し上げまし たように、そもそもこれは国民的な合意をどう取りつけるかということであって、F委 員が前提になさっている状況そのものは現在では変わりつつあるのではないか。あるい は変える方向を21世紀に向かって提起することが十分成熟しつつある時期なのではない だろうか。その点では数十年前の社会福祉一般の、いわゆる全額税方式による福祉給付 の扱いとは非常に思想的な大きな転換に入っているというのが私どもの認識でございま す。 ○B委員  先ほど、将来試算についてだけ意見申し上げまして、基礎年金をどうするかというこ とについて発言をしておりませんので、発言させていただきます。今日の資料の3ペー ジ目に検討課題がいろいろ書いてありますが、先ほど来、E委員以下いろいろな方々お っしゃっているんですが、給付と負担を別々に切り離して議論されるより、負担だけを 議論するというのはやっぱりおかしな話で、給付と負担を同時にしなければいけないこ とはそのとおりだと思います。特に基礎年金、これから新しくつくるなら、どうするか という議論は確かにあるんですが、既に今ある6万5,000円といいますか、実質繰り上げ 減が多いものですから、4〜5万の人を念頭に置きますと、これをすぐ引き下げること は私は国民の理解がなかなか得られない問題だというふうに思います。ただ、従来のよ うに、賃金スライドをすべきかどうかについては私はネガティブでありまして、せいぜ い物価スライドではないかと思います。  その上で負担をどうするかということですが、税負担だったら巨額であるけれども、 保険料負担は巨額でないという認識のもとにこの3ページ書かれていると思うんですが それは全くのうそで、金額は全く同じはずなんです。税負担だったら国民の合意が得ら れないけれども、保険料負担だったら得られるという発想は私には理解不可能ですね。 どっちだって同じです。要は税でやるか、保険料でやるかという選択を今まで余りして ないんです。仮に税でやるのだったら、保険料をこれだけ下げることができますよと。 それで皆さんどうですかという問いかけさえしてないんですよね。  今、まさにそういう問題であって、巨額の負担であるという点で言えば、税負担も保 険料負担も同じで、国民の理解が得られるかどうかは全く同じ問題だと思うんですね。 ですから、ここはやや一方的な書かれ方ではないかと思います。  それから、確かに全額税方式でやるのにも問題があるということを私は認めないわけ ではありません。でも社会保険方式も従来から言っているように問題があり、現に今動 いている制度は社会保険方式と言いながら、給付の3分の1は国庫負担で純然たる社会 保険方式ではないんですよね。今問題になっているのは、3分の1の国庫負担をどうす るかということであり、段階的なステップとして2分の1にするかどうかが問われてい る。将来として、さらにそれを全額税にするかどうかということは、また長期的に検討 せざるを得ない問題だと思うんですね。今3分の1になっている国庫負担を2分の1に するかどうかについて意見が分かれていると私は理解します。確かに今の経済、政治状 況を考えたときに、3分の1の国庫負担を2分の1にすることさえ難しいことは私だっ て重々承知をしておりますが、なぜ3分の1なのかということがよくわからないんです ね。  例えば社会保険の中で、国民健康保険の制度ありますが、これは国庫負担2分の1の はずです。あるいは新しくつくった介護保険も2分の1でやろうということを国会で決 めたわけですね。なぜ、基礎年金だけ給付の3分の1なのか。3分の1の合理性は何な のかということについては、私は実は説明できないんです。あるいは2分の1も、私は よくわからないんですけれども、とりあえず最近の流れの中で、2分の1というところ が何か落としどころとしてあることは事実だと思うんです。現に国民健康保険はそうや っているじゃないか、介護もそうやっているじゃないか、なぜ年金だけ3分の1なのか この説明をどうするかということだと思うんです。そこが今問われている問題ではない かと思うんですね。仮に2分の1に国庫負担を引き上げた場合に、保険料をこれだけ下 げることができますと。仮に目的消費税でやるとしたら、これだけ税負担は上がります。 トータルとしては総負担にかわりがありません。個々で見れば、負担が増える人と減る 人がいますと。その問題提起をして、初めてこれが動く話ではないかと思うんです。 そこの問題の評価が、今問われているのではないかと思います。  年金審議会は、実は税の話は守備範囲にないものですから、税の議論は実は税調にゆ だねるしかないんですが、これは国会の附帯決議で2分の1にすることを含めて検討し なさいという宿題になっているはずなんですね。ですから年金審が国庫負担を2分の1 にすることを議論することが、年金審の責任放棄だというふうには私は全然思いません。 税調にすべてゆだねるものだといったことにも私はならないと思うんですね。その辺の 議論が残念ながらまだ足りないのではないかと思っておりまして、私は今のような状況 を考えますと、そこの問題をまずセットすることが大事ではないか。できれば、次回改 正という枠内でその議論を深めてほしいと思っております。  この基礎年金問題、まだいろいろあるんですが、例えば3号被保険者の届け出問題に ついても、まだ脱落している人がいるのではないかと推察されます。前回の制度改正で 2年間の特例を認めて届け出を認めれば、資格をつなぐという整理をしたのですが、も うそれで、こういうような過去の資格を復活させることについても、何もしないのかど うかとか、いろいろまだ議論しなければいけない問題はたくさんあると思うんですが、 今日はとりあえず、その点だけ指摘させていただきます。以上です。 ○Q委員  私は、先ほどD委員が国民皆年金の話をされましたが、私も国民皆年金ということを 福祉元年以来ずっと続けてきたわけですが、本来、公的年金というのは強制加入という ことと、所得の再配分ということが基礎になっているわけですから、そのことを抜きに まず議論することは本当はできないと思っております。ところが国民皆年金だと言いな がら、実は1号被保険者にかかる部分は3分の1も納付されないという状況になると、 そこはどうも国民年金自身のところが空洞化されてしまった。結局そこへほかの2号被 保険者の方から3,000億円もつぎ込むというようなことは私は異常な事態だというふうに 考えざるを得ないわけです。 まだ年金は、全体としては国民負担率の中で税と保険料で考えるものですから、税と 保険で賄っていくということは、それは私は大変大事なことだと思います。税の方をど うするかということになると、今、B委員おっしゃったように、国庫負担を2分の1に するという国会の決議がある以上は、そこをすり抜けて議論するのはいささかどうかな という感じがしないわけではありません。ある程度その議論は詰めなければならないと 思います。  年金は税と保険料でやらなければならないことですから、国民負担率全体の中で税と 保険料との割合を考えるということは、やはりそれはこの年金審議会に課せられている 1つの課題だと私は思っております。そういう点で、これからの議論は、この基礎年金 にかかわる部分は、いろんなことがここに書いてありますけれども、やはり税で2分の 1を負担する議論は避けて通れないだろうと思っております。 ○会長  R委員どうぞ。 ○R委員  今の2分の1の議論につきましては、税方式を導入するか、あるいは税負担をどうい うふうに増やしていくかという問題と切り離しては考えられないと思います。それで2 分の1負担というものをまずクリアしない前に、税方式を全面的に導入するという議論 になかなかついていけないというのが正直なところです。  私はそもそも基礎年金のところで、1号、2号、3号という形で分けた制度、そうい う形にしたというところに疑問というか、問題を感じています。それが今ここの議論で は税方式を導入すると解決されるかのように思われていますが、それは基本的な問題と しては、2号の、例えば女性の方がそれは負担するのは嫌だと言っているような、そう いう問題は解決するかもしれませんが、3号という存在については、というか、配偶者 のいるサラリーマンの妻を3号といった括りをすること自体は変わってないわけで、ち ょっとこれはどうかなと思います。  1号の空洞化の問題は払えないで納められない人がいるという問題と、払いたくない から納めないという問題とを混同して議論するのはいかがなものかなと思います。払え ない人がいる。そしてもらえない人が増えていくということですね、払えないままに。 それは国民全体の負担を将来かえって増やすことですので、これを何とかしなければい けない。そのときに2分の1国庫負担という問題も出てくるのではないかと思います。  それから、そもそも税方式にするという場合に、今消費税というような形が出ていま すが、所得税という話は全然出てこないわけですよね。審議会は税金のことをする場で はないから、年金審議会はということですけど、どうしてそういうふうにならないのか。 1号と2号、3号とが税金においても違う制度の中にいるからだと思うんですね。そう いう在り方のまんま、21世紀、22世紀というふうに日本が進んでいくのかどうかという のも非常に疑問に思います。ですから払いたくない人というので、豊かなのに払わない 人が、本当はたくさん所得があるんだから、年金の保険料もたくさん払ってほしい人で はないかと思うし、払えないので、1号の中で払えないでいる人は、年金保険料をその 人に対しては安くすることできちんと国民皆年金の中に入れなければいけない人たちだ と思うので、そこの議論は分けた方がいいと思います。  それから、給付については、このことは給付と非常に関係があると思うんですが、I 委員が、先ほど6万5,000円でいいんじゃないか。前、I委員はたしか生活保護レベルま でというふうにおっしゃっていたように思うんですが、私が実際に自分の周囲とか女性 たちの意見を聞いていると、6万5,000円はやはり個人の老後の生活費として余りに少な い。つまり今の生活レベルを考えていたら、非常に少ないという実感があるわけですね。 それで、払いたくない人の方は、そんなのではばかばかしくて払いたくないのかもしれ ません。それから、払えない方の人も、6万5,000円しかもらえないということで、払え ないところを無理してまで払わないのかもしれません。その辺はちょっとわかりません が、とにかく6万5,000円で1人で暮らすことは無理ですね。 今、23万というような標準世帯のモデル年金がある。その23万なら暮らせるかもしれ ませんけれども、6万5,000円で暮らさなければいけない人は、私は増えると思うんです ね。離婚も増えますし、パートとか、いわゆる長期に大企業で勤められる女の人は非常 に少ないし、男の子でも大学卒業しても勤められないようなことが増えていますから、 ですから、基礎年金の部分は個人単位で暮らす生活の最低になるような額になるといい なと、私は考えます。 ○会長 A委員、さっき手を挙げていられましたが。 ○A委員 すいません2つあります。1つは、前回のときに国庫負担率3分の1か、2分の1か 私は2分の1には反対したわけなんですが、それはそのときは目的間接税という考え方 は議論されないで、いわば普通の税ということだったものですから、それはそもそも別 に税はどこからわいてくるわけではありませんから、とんでもないという話で反対をし た。前回の改正時に私が国会で発言している、次が上智の山崎先生、山崎先生は、2万 1,500円の負担が1万6,500円になったから払うことになるかと、それは同じだと。 もう一つは、同じ2兆5,000億を使うのであれば、もっと大事なところに使うべきでは ないか。こういうことで国会の先生方も納得されたと思っているんですが、今でもそう 思っています。 したがって、私が絶えず言っているのは、目的間接税というのは、ここでもう一回き ちんと正面から議論しなければいけない。結局こういう限定された目的の、さっきのE 委員のお話だと、目的税はガソリン税しかないと、ガソリン税よりも私はよほどこっち の方が大事だと思いますし、それから老若男女みんな負担するんだというモノの考え方 があってどうして悪いんだということであります。そのために、逆に言うと、若い人も 安心して、自分は老後必ずもらえる年金あるんだと。この安心感を若い人や国民に与え ることの意味は極めて重大な意味があるわけです。今一番問題なのは年寄りの人も、年 金が減らされるかもしらんという危惧をもっている。ちょっとマスコミのあおり過ぎで あるかもしれませんが。それよりも大事なのは、若い人が、おれたちも確実にもらえる と。もちろん彼らも消費税を払うわけですから、そういうことで、若い人にいかに安心 感を与えるかということが安心というものの意味になる。 支える気になる。そこのことが一番肝心なことで、その議論は実は前回の年金審ではし てない。 だけど、税の話をして悪いということ、税金は税調以外にやっちゃいけないなんてこ とはどこにも決まってないわけだし、逆に税調にこういう案が年金審としてはできまし たと、ぜひ御検討いただきたいと言ってもちっとも差し支えないと思う。 ○C委員 それはおっしゃるとおり、年金審議会は税制に関してこうあるべきだと言われること は当然で、それは税制調査会の場でどなたか説明しなければいかん。事務局がされるか あるいは会長がされるか、やはり税制としてこういうのがいいということは、はっきり ある段階で、このことは次の問題として非常に重要ですから、それはそうですね。ただ 税制調査会はそれを税金全体としてどういうふうに判断して決めるかというので、今専 門委員あるのかないのかよくわからないですが、税制調査会はとにかく厄介なところで あることは間違いないです。 ○A委員 確かにそうだと思うんですけれども、それをもちろん議論しちゃいけないということ ではないと思います。 これだけ大きく経済体質が変わり、しかも人口構成が好むと好まざるとにかかわらず大 きく変革してきている中で、とにもかくにもあらゆるものを、今までの既成概念にとら われずに考え直そうじゃないかというムードが今できているわけですね。堺屋太一さん が長官になって、どういう発言なさるか知りませんけど、彼が提起しているのはそうい うことを今まで提起している。まさにそういうことを今議論しなければならん局面で、 やっぱりあるところつらいこともありますし、苦しいこともあっても、しかし21世紀に 向けてしっかりしたかじ取りをしておかなければいかん。 しかもそれは次世代を担う人のモノの考え方を頭に置いた整理にしておかないと、次世 代の人たちに対して何をやってきたんだということになりますので、そういうことでぜ ひ議論させていただきたいと思うわけです。 ○会長 3時10分になりました。当初、1時から始めて、3時で一たん休憩と考えていました。 お茶の用意はありますか。 ○事務局  別室に準備してあります。 ○会長  ということを考えておりましたので、ここで休憩してA委員よろしゅうございますか。 ○A委員  切ります、ここで。 ○会長  再開したところで、C委員にもE委員にもお願いいたしますが、それでよろしゅうご ざいますか。2時間10分たちました。この集中審議は4セッション、あした2セッショ ンございます。この辺で休憩をお願いしたいと思います。 ○事務局  別室にお茶の準備をいたしておりますので、お休みいただきたいと思います。 ○会長  隣の部屋ですね。             (「何時再開ですか」と声あり) ○会長  再開は3時35分、40分くらいにしますか。 ○事務局  30分間休憩ということで、3時40分再開にいたします。             (「そんなに要らない」と声あり) ○会長  20分。 ○事務局  3時30分再開にいたします。                 ───休 憩── ○会長  それでは審議を再開いたします。  基礎年金について、税方式、国庫負担の引上げなど中心にいろいろ御意見をいただき ました。今回この第2セッションでは、これを整理して、また後で御議論いただくこと とします。御発言の残っている方がいらっしゃいますが、その方々にはお時間を差し上 げます。第2の議題であります「給付と負担」の方について御意見をいただくことにい たしたいと思います。第1セッションの終わりのところでご発言を延期していただきま したお三方、E委員、N委員、G委員、どうぞ。 ○G委員  もう一回、素朴な国民感情のようなところを、先ほどから税方式の話が出ていました ので、もう一度ちょっと御意見を申し上げてみたいと思います。国民感情としては、税 は取られるという思いが大変一般的ではないかと思うのです。源泉徴収をされていると いうこともあって、一般勤労者の税に対する感覚というのは、要するに使われ方につい てはほとんど、源泉徴収されるということもあってノーマークになっている。しかし、 最近いろんなことがあるものですから、使われ方に対して、中身に対しては相当不信感 があるというのが現状ではないかと思うんです。  社会保険の方は一方で、一定のフィードバックがあるものという受けとめがごくごく 一般的ではないかと思うわけです。これからこの年金問題も含めまして、社会保障全般 を考えるときに、生活者ベースの福祉社会とかいうものをどうしていくのかといった原 点を抑えたときに、共に生きて共に助け合っていくというような社会の方向転換をこの タイミングで積極的に考えていくべきだと思うんです。  そういう面では現行の負担のシステムや給付の在り方についても、先ほどから御意見 が出ているように、もう一度、ある意味では現状の追認型みたいなことではなしに、大 胆な意見をまとめる必要が私はあるように思っていますということが1点であります。  もう一つは、そのまとめ方の問題の基調の部分になるのかもしれませんが、少なくと も今社会のシステムがいろいろ改革というか、見直しがされている中で、他の分野の改 革とのバランスは相当考えておくべきではないかと思います。余りこちらの側が消極的 でもおかしいし、むしろ先ほど申し上げましたように、改革の時間軸というのは相当先 のことでありますから、そういう意味ではそこらのところのバランスを考えながらやる べきではないかと思いますし、あいまいなことにならないように明確な方向性も打ち出 す必要があるように思います。  それから、先ほどP委員さんがおっしゃったんですが、私も企業の中に身を置いてい て、少なくとも年に一度は賃金の引上げ交渉とか、そういうことをやるわけです。今労 使間でいろいろ決め事をして一定の労働条件の改善を進めているんですが、どう考えて も、これ以上、労使間で、雑な言い方ですが、はぎ取り合いっこすることのむなしさみ たいなものが現にひしひしと実感できるような中で、過去のいきさつもあってやってい るというか、こういう状況にあるわけであります。そういうことから考えますと、社会 保険にかかわるいろんな企業の社会全体のフィードバック、労使でのフィードバックを それなりの位置づけで考えるにしても、産業・企業の健全化はどうしてもどこかの早い タイミングでやっていかなければならないと思うんです。まわり回って原資がどう収れ んされていくかというところの原点につながるものでありますから、少なくともそうい う面での負担については、相当シビアな考え方、そして、広く薄く公平・公正に負担を していくといった考え方で進めていくべきではないかと思っております。  それから、もう一つは、先ほどから出ています消費税、目的税による税負担方式の話 でありますが、A委員からお話がございましたけれども、我々としては考え方は一緒な んであります。要はどうして合意形成を図っていくかというところの難しさはお互いに あるのだと思います。1つだけお聞きをしておきたいと思うんですが、企業のサイドか ら見れば、私が先ほど申し上げた話と逆の話になるかもしれませんが、税方式だと少な くとも企業の負担は下がることに結果的になるわけでありますが、そのことだけでよし とされているのか、それ以外に有力な何かそうすべきだという根拠めいたものが企業経 営サイドに何かおありなのかどうなのかということを改めて聞いておきたいと思います ○E委員  会長ちょっと。 ○会長  E委員どうぞ。 ○E委員  これもコメント的なんですけれども、私、年金審で保険料に関連する限りにおいて、 大いに税の論議はすべきだと、かように思っております。ただ、国庫負担の増額とか、 あるいは税方式の転換だけではなくて、そうなれば、例えば公的年金等控除というもの は一体どういう意味のものなのか。さらに進んでは社会保険料控除とは一体何なのかと いったあたりまで問題になるということは当然考えておかねばならない。  というのは、この2つとも、これは世界の税制から見ますと、むしろ非常に特殊な存 在でございまして、ほとんどの国にはこういう特別な控除はないということは申し上げ ておきたいと思います。絶対ないとは申しませんよ。少なくとも英米税制にはないと私 は記憶しております。 ○N委員  先ほどB委員から、前回の法律改正の際に、国会の方で国庫負担問題というのが条文 の中へ入ってきたということで、年金審で何らかこの問題、回答出さなければいかんと いうお話でございます。前回の改正を振り返ってみますと、年金審でやはりこの問題、 提言しているわけです。ただ前回最大の議論になったのは負担の限界がどうなるのかと いうことで、厚生年金の場合には30%以内、国民年金の場合には大体2万円ぐらいとい うのが議論になりましたけど、それでもやはりちょっと問題ではないかということから 国庫負担問題を年金審としても提言しているわけですね。  ただ、おっしゃったように、これはすぐの問題ではなしに長期的に検討する問題だと いうことで、財源問題をどうするかというような深い議論はしてなかったわけです。た だ、今回はより切実になっております。当然議論するのは必要だと思います。最近は年 金問題、当審議会内にいろんなところから議論しております。今、E委員からもお話あ りましたように、税制問題、本審議会の問題ではありませんけれども、財源問題等も議 論して、やはり議論する必要はあると思いますが、当面来年の改正では手をつけられな い。今の空気からして、まず無理な問題でございます。また、社会保険方式で国庫負担 を引き上げるか、あるいは税方式かと、議論も分かれている問題です。また、財源を消 費税に求めるか、所得税に求めるか、いろんな議論がある問題です。より切実な問題で はありますけれども、まだまだ議論する多くの問題があると思いますし、今回の次の改 正までの際に、次の年金審で議論するというのが1つの方向ではないかと思います。 ○会長  C委員何か、よろしいですか。S委員どうぞ。 ○S委員  ちょっと発言しておりませんでしたのでさせていただきたいと思います。税方式か否 かということにつきまして2点の観点で御意見申し上げたいのですが、第1点は給付と 負担という問題でございます。やはり人口構成の変動が今最大の原因になっているのだ と思います。そういう点でしますと、限られた財源の中での給付と負担という関係で、 どこで折り合いをつけるかという議論もあるでしょうけれども、もう一つの視点は、や はり薄く広くといいますか、支える側と支えられる側をどういうふうに構成していくの かというのが非常に大きな視点だと思います。そういう視点では、女性の労働力率の問 題もそうですし、高齢者雇用の問題もそうでしょうが、もう一方では支える側の負担の 在り方としては、やはり広く薄くという視点で、設計図を書いていく。基礎年金を中心 にした税方式の検討はどうしても踏み込んで検討すべき1つの項目ではないかと思いま す。これが第1点でございます。  第2点は、冒頭からも何となく基礎年金を税方式化とすれば、打ち出の小槌のような 関係ですべての問題が、さまざまな3号被保険者の問題そういうものが何かクリアされ るのではないかとか、あるいは負担と給付の問題でも何となくそこが逃げ道のようなこ とになって先送りになるのではないかという、そういう視点での心配といいますか、あ るいは甘さといいますか、そういうものがあるのではないかという御指摘もありました。 けれども、私は逆に、そういうことを本当に乗り越えていくためにも、税方式の議論が 必要だと思います。かつて税方式はやはり実現不可能ではないか、あるいは国民もそれ までの議論は、政治的にそういうことを乗り越えることは無理ではないかという議論が 今までは多かったと思うのです。しかし、今回の年金改正というのは、21世紀に向けて 本当に抜本的な問題も含めて、国民1人1人が本当に自分で考えるというところまで議 論をやっぱり発展させていく必要があるのではないかと思うわけです。  そういう意味からすれば、私の持論は、給付があれば必ず負担がある。それをどうす るんだと。あるいは負担はこれから大きくなる。その負担を国民全体がどういうふうに 分かち合うのかという時代に入っているのだということについては、ぜひ避けずに議論 を提起をすべきだと思います。国民の成熟度といいますか、そういうものがどこまで来 ているかというのはいろんな議論があるとは思いますが、私は5〜6年前と比べますと 相当その辺の議論をしようではないかと、あるいはしなければ、将来の日本の姿はあり 得ないのではないかという空気もようやく出始めているのではないかと思うのです。  そういう意味からすると、ごく専門的な年金審議会を中心に、専門的な先生で議論を 詰めるというよりは、そういうところの選択肢を出して、本当に国民1人1人に議論し てもらう。あるいはそういう議論をあえて起こさせるという意味も含めますと、従来の 社会保険方式の中でのころ合いを見つけて、どこか落としどころを探るというだけでは ない、一挙に議論がいろいろ噴き出すであろう税方式の問題も含めてやはり問題提起を するのは非常に意味があるのではないかと思います。  そういう意味からすると、「5つの選択肢」ということが提示をされて、そのとき議 論になりましたけれども、やはり私は6つ目あるいは7つ目なのかもしれませんけれど も、そのときの1つにこの税方式をとったときに一体どうなるのか。そのときの年金保 険料は一体どうなのか。そのことを選択するのか、しないのかみたいな議論の1つにぜ ひ加えていただきたい。それを来年からすぐできるかどうかは、これは非現実的かどう かの問題はあるでしょうけれども、年金審としていろいろ議論してきた選択肢の1つと しては、ぜひ、そういうことを置いた1つの設計図といいますか、そういうことをぜひ 出していくべきではないか。少し時間軸をとる必要はあるかもしれませんけれども、そ ういうことの1つとして位置づけるべきではないかと思っておりますので、ぜひ、よろ しくお願いしたいと思います。 ○J委員  今のS委員の御意見も、ほかの組合の委員から出された御意見も共通していると思う んですけれども、私も非常にロングタームの、あえて言えば、長々期の議論として税方 式への転換の可能性ということを考えることは決してむだではないし、別の選択肢との 比較考量するということ自身が大変意味のあることだと思いますから、そのこと自身に は私は理論的に反対するわけではないです。  ただ、そういう意味で言うと、B委員の御意見もそうですけれども、まさにB委員が そういう問題を出してくだすったおかげで、きょうの検討課題のような形で、そういう 選択をした場合の利害得失というものが、今までこういう数字は私は見たことがありま せんでしたが、かなりはっきり出てきたわけです。今、S委員の御発言とすり合わせて 言えば、まさに第6の選択肢として税方式をとった場合にはこういうメリット、デメリ ットがあるではないか、こういうことを言うことは、私は別に反対ではないですね。多 分そういうことで国民の理解が得られるなら。選択肢として考えたけれども、私はさっ き申し上げたように、現実的な選択の可能性の外にあると考えております。この審議会 のようなところで議論する場合には、直接厚生年金なり国民年金制度に関して、我々が この審議会で議論して動かすことのできる選択肢の中からどれを選ぶかということを第 一義的に議論すべきであるのは当然だと思うんですね。  私は税金にかかわる問題が多いことは、既にほかの会合の際にも申し上げてきたとお りですから、私自身、税との不可分な問題が多いことはいろいろ承知しているつもりで すが、目的と手段との適合性の相互秤量をどうするかということがこの審議会に問われ ているので、一般的な学術的な議論をするわけではないわけですね。そういう意味で、 ともすると、税でやるということは、少し勘繰ると、私自身含めて既に年金を受給して いる世代なんですね。ところが組合の委員の方々は多分団塊の世代か、あるいはその前 後かよくわかりませんが、これから年金をもらわれる世代、あるいはそういう人たちを 組合員に非常に多数抱えられておられる組織代表者として御発言されざるを得ないわけ で、抽象的にはそういうことが必要かもしれんけど、おれたちのときにはやめてくれと いう利害が絡むことは、これはある意味でしょうがないと思うんですね。  ただ、そういうことだけにとらわれていたのでは、より先の世代の人たちの利益を著 しく損なうことになるということが、そういう人口構成の問題として出てきているわけ ですから、税方式の議論は、私は一般的にそのこと自身議論することがむだだとは思い ませんけれども、先送りのための、要するにタクティックスとしてそういうことを議論 されるなら、それはやっぱりおかしい。この際、我々の審議会として、優先的に選択が 可能な政策手段の中でよりベターなものがあったら、それをまずとるべきだと思います。 別に税調にやるのはけしからんと言っているわけではないです。 ○会長  それで、これから資料2にあります「給付と負担」ということを主題として、今まで 第1セッションの皆様の御発言のかなりの部分は、実は「給付と負担」という問題をお 取り上げいただいていたわけですが、この資料2というのは、口頭の説明をなさいます か。それとも見ればわかるから要らないということでしょうか。 ○A委員  ちょっと会長、さっきのG委員の御質問に一言答えたいのですが。 ○会長  どうぞ。 ○A委員  消費税により基礎年金を賄うと確かに企業負担は下がりますが、あくまであるべき年 金の基本論に関してと、私の方は提言しているのであって、今焦眉の問題である国際競 争力強化のために云々ということとは考えておりません。 ○会長  それでよろしいですか。ということで、資料2は説明なしですか。 ○事務局  特に説明させていただきません。 ○会長  見ればわかるという。 ○事務局  はい。 ○会長  第1セッションの議論の裏返しという形になりますが、「給付と負担」について御議 論をお願いしたいと思います。 ○D委員  ちょっとJ委員、誤解されているのでなければ幸いなのですが、我々が主張している のは何か問題の先送りのためのタクティックス(戦術)ということとは全く逆のつもり でございますので、ぜひ、そこは御理解をいただきたいと思います。むしろ現在のよう な1号被保険者の未加入・未納が拡大をしていることに対するきちんとした制度的な対 応をこれ以上先送りすることは公的年金の構造的な危機、あるいは不信を招き兼ねない。 そのことが問題なのであって、我々は何も保険料という形であらわれた見かけ上の負担 を小さくしたいとか、あるいはそういう現状の中で起こっている問題をこれで回避でき るからとかいうことではありません。それはほかの委員の皆様方にも、もしそういった 受けとめ方をされているのでしたら、私どもの説明の仕方が悪かったのかなとも反省を いたしますが、現在の公的年金そのものの、いわば土台に当たるものが基礎年金制度で あるとすれば、まさにそこは既に黄信号ないしは赤信号が灯っているというのが我々の 認識でございます。  例えば旧制度のように被用者年金は被用者年金で独立で考えると。それ以外の人たち の年金はそれ以外の方々の年金ということで切り分けられているのであれば、こんな議 論しなくて済むのだと思います。しかし60年改正はまさにそこのところで、被用者年金 の定額部分を2階から切り離して、旧国民年金と一体にしたといいますか、1つの財政 調整ができるシステムを盛り込んでいる。しかもそのときに、それが全国民を対象にす るという、いわば皆年金制度の理念がこれで実現されたのだというふうに説明されたわ けですね。例えば3号についてもそのときに導入されて、女性の年金権はこれで確立し た。つまり、それは無年金者というのが、この制度がうまくワークすればなくなるとい うふうに説明されたわけですが、現実はそれとは逆の方向に動きつつある。これを放置 しておくと、例えばまじめに保険料を払っている人たちがその分だけ余計な負担をせざ るを得ないといったことがあるわけで、こういう言い方は不正確などと再三再四年金局 から指摘されておりますが、私どもはそういう要素が必ず付随せざるを得ないと思って います。  むしろ労働側の内部問題にわたって恐縮ですが、そういう事態が放置されていくよう だと、もう一度旧制度へ戻せと。つまり自営業者年金と被用者年金とを縦割りで切り分 けてしまえという議論が起こりかねないんですね。現に組織内にあります、こういう声 は。これもまた1つの年金不信なのであって、そういうことでは、国民皆年金という問 題に対する労働団体としての責任ある立場ではないということを主張しつつ、こういう ことを申し上げているのだということを、特にこの機会に、問題の先送りではなくて、 むしろ問題を先送りさせないという観点だということについて、ぜひ御理解を願ってお きたいと思います。 ○会長  大変深刻な御説明がございました。給付と負担の問題の議論をお願いしたいと思いま す。どなたからでも、どうぞ。 ○L委員  いつも負担の側からということで何度も申し上げたいのですが、望ましい給付水準を 負担する能力が個人でも企業でもあれば、負担をしたいと個人的には思うわけですが、 実際に負担する能力が現在以上に保険料の負担が上がるのは耐えられないということに ついて少し御説明したいと思います。  足元、現下の日本の各企業は、特別な会社を除きまして、今年度のフローでは、多く の会社が実質的には赤字にならざるを得ない状況になっております。これは経済が循環 するというけれども、たまたま今が不況だということもあろうかと思いますが、それで は日本の企業のストック、含み資産含めてどうなっているか。これは御承知のように、 バブルの状況からすれば、土地と株を含めまして1,000兆を超える名目価値が喪失された ということになっております。したがいまして、バブルのときは非常に浮ついたので、 実質からすれば、それほど落ちてないと思いますが、いずれにしても名目では1,000兆を 超えるような規模の財産がストックとしても喪失しております。その分、もちろん個人 の含み資産が減っているものもあろうかと思いますが、企業の資産も落ちているわけで す。したがいまして、今問題になっている金融機関の不良債権だけではなくて、どの会 社も同じような状況に陥っている、こういう状況であります。そういう意味では、循環 的な不況とは言えない非常に構造的な苦しい局面に日本の各企業は置かれているといっ ていいのではないかと思います。 そういう中におきまして、世界一名目賃金の高い、実質賃金はともかくとして、名目 賃金では高い労務費を払わざるを得ない。それから、法人税も5割近いものを日本の中 では払わざるを得ない、こういう状況でありまして、その中で医療保険、厚生年金含め まして、いわゆる法定福利費のパーセンテージも我々が競争している各国との関係では 非常な負担を強いられている。そういう中で国際競争力を確保する。あるいは雇用の海 外流出を防ぐ、雇用不安を防ぐと、こういう中で、日本の中でなるべく雇用を確保し、 経済を活性化しようといたしますと、例えば経済団体は法人税の引下げを強力に今お願 いをしているわけですけれども、私どもの会社で1%法人税を引下げていただきますと 利益によりますけど、数億であります。  ところが今現在厚生年金に私ども払っているのは、年間180億であります。これをこの 前議論いたしましたような総報酬制にしますと200億を年間超えることになります。これ を平成25年、15年間後には、今の給付水準を保障すれば、400億我々は負担しなければい けない。これは従業員の数を同じとすれば、そういうことをしなくちゃいけないことに なります。したがいまして、現下の足元ではフローでは赤字、ストックにも非常に比例 している。こういう中で、企業として、従来から強力に進めました法人税の引下げの パーセンテージに比べまして、厚生年金の保険料の企業に与える負担等の大きさはいか に大きいものか。こういうものはとても耐えられない。したがいまして、現在の180億程 度のもの、これ以上よりも増えることはぜひとも避けていただきたいというのが企業の 立場であります。 そういう意味では、先ほど申し上げましたことと重なりますけれども、現在の17.35% あるいは20%以下、そういうような労使の負担の中で、それでは一体どれぐらいの給付 水準になるのか。それが既裁定者が不安にならない、あるいはこれからの新規裁定者も 不安にならない、そういうようないろんな移行措置も含めまして、具体的に御検討をい ただければありがたい、こう思っております。 ○会長 負担と給付の均衡を図っていくことは、次回改正にとって大変重要なテーマでござい ますので、できれば、すべての委員の皆様から漏れなく御発言をいただければと思いま す。どなたからでもどうぞ。 ○E委員  私から皮切りを申し上げますが、先ほどA委員の方から、配っていただきました日経 連の資料でございますが、ちらっと拝見いたしまして、随分よく御検討になったと思っ ております。「負担と給付」の問題のところ、ちょうど真ん中辺に書いてございますが これは拝見しますと、負担の方は労使合わせ月収の20%。といたしますと、これは、い わゆるD案の線だろうと思いますが、しかもその中には税方式転換部分も含んでいると いいますから、恐らく保険料率だけでは現行の17.35%程度据え置き以下ではあるまいか と推定いたしております。 他方、給付水準の方は、2〜3割程度削減ということは、大体C案程度の線ですが、 果たしてこれでもって収支の均衡が合うことになるのか、ならないのか、そういう御検 討がございましたら、その資料もあわせて拝見させていただきたいと思います。 ○A委員  これは実は前回の改正のときに、私の方からこれは日経連の立場で強く話したことと 関連してまいりますけれども、あのときに、年金は65歳だということをまず確立すると。 これは全員の了解を得たと実は思っているわけですが、そこで65歳のところで年金権が 確立するし、65歳から年金が発生すると。そこで理論値で面積一定を理論的に計算しま して、仮に61歳から欲しい人は61歳からもらうべしと。63歳からもらう人は63歳からも らうべしと。67歳からもらう人は67歳からもらうべしと。ただし、年金の面積は65歳の ところで確定して、その面積をどういう形でもらうかは個人の選択だということを前に 申し上げておったわけであります。  それがそういう方向で御理解をいただいたと実は思っていたわけですが、ところが最 後の段階で、60歳と65歳との間の配慮が要るのではないかといった文言がついたわけで すね。これから先は私も別個の給付の中身を見て驚いたわけですけれども、これは、ま さに60歳年金制であって、60歳の年金のときと同額が2階建てについては払うという制 度が一番最後の段階で、我々の意見書を出した後ではないかと思うんですが、私にはわ からないんですけれども、ついちゃった。  もちろん在老については、私どももこれの上限を引き上げることについては賛成をい たしております。しかし、別個の給付がつくと、それも、従来の60歳年金のときについ ていた2階建ての報酬比例部分がそのままそっくりつくということは考えてない。それ で今ここで改めて、この前、私どもが主張した線をそのまま主張いたしたいということ でございます。そうしますと別個の給付がなくなりますので、これを逆算してみますと 今申しましたように、D案の負担で大体C案程度の支給が可能になるということであり ます。  したがって、言えば、私は別に厚生省のA、B、C、D、Eにこだわっているわけで はないのですが、だけど、このベースで言うと、DとCを結んだものが、別個の給付を 廃止することで可能になるというふうに考えています。ただ、別個の給付が今日ありま すから、あしたから廃止するというわけにはなかなかいかんとは実は思います。経過措 置は多少要るかもしれませんが、そのこと自体によって、D案の負担でC案の給付が可 能になることを申し上げておきたいと思います。以上でございます。 ○E委員  これは非常に重要な問題ですので、やはり数字にして示していただかなければ、私も はあ、そうですか、と了承するわけにはまいらんということをまず申し上げておきます。  それから、最近アメリカでの年金論議を見ますと、盛んにmagic bullet要するに魔法 の弾丸ですね。これはbite the bulletですか、手術の苦痛をこらえるために鉄砲の弾を 噛みしめるそうですね。向こうでは、年金問題にはそういう魔法の弾はないと言ってい ますが、どうもここでは、私は魔法の弾がどこかにあるのじゃないかという気がしてし ようがないんです。ひとつ厚生省の方でもチェックしていただけるならばチェックして いただきたい。果たしてこういうことが可能なのか、お願いしたいと思います。 ○会長  どうぞ、F委員。 ○F委員  今、A委員からお話あったんですけれども、私は別個の給付というのは、今の時点で は、つくるときはそれなりの理由があったのだと思いますが、今こういった状況の中で 将来とも別個の給付として、報酬比例部分、2階部分が事実上残るというのはいかにも おかしいなと。もし給付の方を合理化するとすれば、私は水準とか賃金スライドをどう こうするよりも、むしろこれが私個人としては一番問題ではないかという気がしていま す。  これは現にあると、今おっしゃいましたが、前回の改正のときに初めてできた制度な んですね。要するに65歳に上げるときに、下は、基礎年金部分は上げるけれども、上は 将来とも上げないという、実質的にはそういうことです。 上の報酬比例部分は将来とも残すよということで、何か全体が65歳に引き上げる計画が 決まったのではなしに、下だけが決まって、上はそのまま残しておくというような形に なっているので、これは今の時点では、おっしゃいましたように、一番おかしい制度で はないか。この辺をまず考え直すのが一番先決ではないかと思っております。 ○会長  D委員どうぞ。 ○D委員  支給開始年齢の問題ということになりますが、これはこの年代層の労働者の雇用の問 題と不可分でありまして、年金財政の問題だけで独立して議論できる話ではないはずで す。御案内のとおり、高齢者の雇用状態の問題について、これはJ委員御専門ですし、 現に労働省で検討の場の座長もされているわけですが、御指摘が繰り返されております 最近の不況の中で、ますますその年代層の雇用の状況は悪化しているわけであります。 その意味では、いつぞやL委員からも御指摘ありましたように、ここでの企業の雇用に 関する負担と社会保険に関する負担の問題とはある意味ではトレードオフなんですよね  私は、そこのところで一番大事なことは、年金の方をたたき切っておいて、働けなけ れば食えないという格好で高齢者を労働市場へ押し出すような、そういう作用を年金が 持っていいのかどうか。これは女性についても同じだと思います。私は高齢者や女性が よりよい労働条件で、より多くの人が就労できることが望ましいと思っていますし、そ の方向に行くべきだと思います。例えば65歳定年制などということを一律に主張するの は決して合理的な政策とは言えないと考えますのと同じように、年金についても、これ が市場への押し出し型の機能を持つことは年金制度として決して望ましいものだとは思 いません。  別個の給付があっても、そこの中で高齢者の雇用が進むのであれば、実際に受給する 人は減るはずでありまして、現在でも60歳代前半層の労働力率は、我が国は諸外国に比 べて非常に高いわけですね。60歳から65歳までの間に年金を用意しておくと、みんなそ れを取るみたいなイメージで考えるのはとんでもない間違いだと思います。むしろ、そ この中における個人の選択を通じて、よりよい選択が雇用の方へ向かうような環境条件 を整備をする。年金はそれに対してニュートラルであるべきではないだろうか。少なく ともそこをプッシュ型・押し出し型にすることについては非常に反対でございます。そ の意味で、私どもは、この60歳代前半層に関する特別給付の比例部分、最近では別個の 給付と呼ばれているこの部分に関しては維持すべきであって、制度的には維持しても、 実際の受給者が次第に傾向的には減っていく方向を用意をすべきである。このように考 えているところでございます。  それから、負担と給付の問題については、5つの選択肢をよしとするわけではないが 仮にというふうにおっしゃりながら、いろいろな方がついつい、これはD案であるとか これはC案であるとか、そういう御提起でございますが、例えば現在の制度の基礎年金 の中の国庫負担分をどうするのか。あるいは基礎年金を税方式にしたときにはどうなる のか。そういういろいろな条件によって、実はこの保険料の負担率も当然のことながら 変わってくるわけで、税方式論というのは、決してA、B、C、D、Eに対するF案で はなくて、A、B、C、D自身が現行制度を前提にした、負担と給付の財政論について のいくつかの計算式であり、また、税方式には関してはまた、これはいくつもの計算式 が成り立つはずのものだと思います。  そこで第1セッションの検討課題というところで出されているものの次にあります基 礎年金を税方式にした場合の将来の厚生年金の保険料率でございますが、私はこの内容 については1つの計算方式だと思いますので、ぜひ、これはバックデータと推計方法を 公開をしていただくように事務局の方にはお願いしたいと思います。これはこれで24% 程度と見込まれるということがありますが、前提条件、先ほどB委員の御指摘もありま したように置けば、いろいろな違いがあると思うんですね。私どもが指標としては似た ようなことを出発点にして計算した限りでは、これは極端な場合を除けば20%に達しま せん。  私どもはどういうふうにやったかというと積み上げ型でやっております。積み上げ型 と申しますのは、例えば切り替え時点から更地で出発した状態。それにそうではない引 きずっている要件、あるいは遺族年金や障害年金、こういったものの給付の問題等々を 足し込んでいったものなので、抜けているものがあれば低めに出ることは間違いない。  逆のやり方は引き算方式で、これは引き算方式でやったのか、あとで教えていただき たいんですが、要するに現状の前提を置いて、例えばA案ならA案というものを前提に 置いて、そしてそこから一部を間接税に代替した、その場合の保険料率の減額分を差し 引いていくのを引き算と仮に言うとすれば、どうも引き算でやられたような気がする。 また、恐らくその場合には積立金の問題が非常に大きな要因になるので、ここでも積立 金分割案が入っているわけですが、そもそもこれは積立金を引き続き積み増していくこ とが前提の計算だろうと思います。私ども置いてあります前提は、現在以上に積立金を 積み増す必要はない。そういうことになれば、直近のところに関しては保険料を引き下 げるというオプションも出てくるわけですが、とりあえず保険料を引き下げるのは後に 検討するとして、引き上げる必要は少なくともないということを当面見まして、2025年 時点での成熟度を、現役2.2人に対して1人程度で推計したところで、どう見ても20%に 達しないというのが私どもの推計。これはきちんとまとまった段階で御説明させていた だく機会があれば、ありがたいと思いますが、いずれにしても、この厚生省のお出しに なったものについては、推計の方式もよくわからないし、前提に置かれているものもこ れだけではよくわからない。しかし、これは大変重要な検討素材だと受けとめておりま す。 ○B委員  先ほど来、2階部分別個の給付をどうするかという話がありましたが、私は前回改正 が成立した直後から委員になりましたので、いきさつを必ずしも存じあげておりません が、とりあえずあの段階でああいう決着が図られて、実施は2001年からということにな っておりまして、少なくとも将来はこうなるんだなという思いで、今、中年の人たち、 あるいは団塊の世代も含めて、そういうイメージを描いている。  実はあれは違うんだという話もまたここで議論いたしますと、いかにも朝令暮改とい いますか、そういうことになってしまうのではないか。年金審の委員として、引き続き 委員をなさっている方も少なくないと思いますけれども、そこはやっぱり慎重にやらざ るを得ないのではないかというのが、私の個人的意見です。  特に前回の議論の柱は、60代前半は雇用と年金で生活保障するのだということが非常 に強く表明されていたと思います。それで、労働経済学者の多数か少数かよくわかりま せんが、今、高齢者の雇用促進で聞くのは何かというと、これは補助金をつけるしか手 がないんですね。労働供給サイドにいろいろやってもだめで、需要サイドに何らかのイ ンセンティブを与えるしかないというのが、私は少なくとも経済学者の多くは賛成する 意見だというふうに思っております。実は別個の給付というのは、そういう意味で補助 金として機能するわけですね。そこを削っちゃうと、むしろ補助金がなくなるわけです から、60代前半の雇用は、さらに悪化するという方向にいくおそれが実は強いのではな いかと私は個人的には思いますね。  そういう点を踏まえて、慎重な検討を要する問題だと思います。長期的にどうするか ということについては、まだ時間が足りない。むしろ前回決めたばかりで実施もしてい ない。2001年からとりあえず前回改正を実施に移すという段階でして、ここをまた改め ることが本当にそんなに簡単にできるのかなという気がいたします。  さはさりながら、将来の全体としての年金給付総額なり、年金負担を見ますと、これ は相当な負担になるわけでして、給付を徐々に下げていくという選択しか私はないと思 うんですね。その場合に、1階と2階も含めて下げていくのか、1階はとめておくのか。 2階だけ下げるのか、あるいは1階だけ下げて、2階はとめておくのかとか、いろいろ 選択肢があると思うんですけれども、個人的に意見を申し上げますと、結果論ですが、 あそこまで来た1階は給付を下げられないと思っております。下げられるのは2階だけ だというふうに思っております。2階を下げる場合に、直球ベースで給付乗率を下げる というのも1つの案だと思うんですけれども、それ以外に選択肢はないのかということ だと思うんです。  私は既裁定の年金については、とりあえず物価スライドにとどめて、賃金スライドは 当分見送るとか、あるいは満額年金の支給要件は40年なんですけれども、これを45年に するとか、検討すべき課題はまだ残っていると思います。 昭和60年の改正のときにも、1階部分については、25年拠出で満額年金だったのですが これを40年拠出に徐々に変えていくという整理をしたわけです。  あるいはドイツでも、今は45年拠出で満額年金。イギリスにいたっては、49年で満額 年金の要件になっているわけでして、40年でいいのかどうかということもむしろ議論し た方がいいのではないかと思います。  さらに申し上げますと、今恐らく問題になっているのは、年金受給者間の公平・不公 平の問題だろうと思うんですね。過去同じようなキャリアを積んできた、平均的な賃金 を手にしていた人が、例えば40年拠出した人を例にいたしまして、生年月日の違いだけ で年金給付にどれだけ差があるかということを比べてみますと、早く生まれた人たち、 年齢の高い人の方が今の給付算式のもとでは高い年金をもらっているはずなんですね。 昭和60年の改正の基本的な考え方は、平均的な加入期間の延びに応じて給付乗率を下げ るという調整でしたから、仮に同じ拠出期間であって、生年月日が違う人の給付につい ては違いを認めるという格好になって、年齢の高い人ほど給付をたくさんもらっている わけです。  今、若い人に今後ともこんなに負担を求めなければいけない。そういうときに年金受 給者の間で、40年という同じ保険料を拠出した人で、実質的な賃金水準は同じという縛 りをかけて、給付水準を比べますと、年齢の高い人たちの方がはるかに高い年金を手に している。60前後だとか、あるいは65の人の方が相対的に低い。さらにこれから給付乗 率を下げるとか、そんなことをやれば、次の世代はさらに低い。同じ40年拠出でもさら に低い年金ということになってしまうのではないか。むしろ年金受給者の間の公平とい うものを考える必要が出てきたのではないか。  年金受給者は今まで卒業扱いで手をつけないということをやってきたのですが、少な くとも高い年金を受給している人については、将来を考えると、これから何らかの形で 譲歩をお願いするということを提起せざるを得ない、そういう状況にあると思います。 ですから今9月末に向けてそんなに時間はないんですが、例えば事務局にお願いしたい のですが、仮に平均的な標準報酬月額を手にしている人で生年月日の違い、40年加入を みんなしていたということで、どのくらい年金額に違いがあるのかというようなことに ついて、資料を示していただければ、その点はもっとクリアになるのではないかと思い ます。  その上で、過去同じようなキャリアを積んだ人であるにもかかわらず、年金額にこん なに大きな違いが世代間にあるという問題をどう処理するかということをぜひ議論して いただきたいと思います。以上です。 ○J委員  今のB委員の御意見とかなり重複するところがあるのかもしれませんが、できたらち ょっと座長に議論の進め方を整理をしていただけないかなと思うんですけれども、給付 の水準を引き下げる方法にいろんな選択肢があり得るわけですね。先ほどのE委員がA 委員に対して御質問されたのも、多分その問題と絡んでいると思うんです。A委員のお 答えは、多分伺っていると3つくらいある。私自身ちょっと混乱していてよくわからな いんですが、基本的には賃金スライドとか物価スライドで、再評価後の従前賃金をどう いう水準にするかという、そこのされ方の問題と、給付乗率を今0.75ですか、老齢厚生 年金、それを0.5に下げるかどうかとか、給付乗率で調整するのと、基本的には2つあり ますね。そのほかに、なお別個の給付とか、3号被保険者とか、アペンディクス的な部 分があると思うんです。日経連のお出しになったのは、私はどういう計算方式かわから ないけど、結論の持って行きどころとしては、甚だ常識的なところかなという印象を受 けたんですよね。 ○A委員  ちょっと私の説明が間違ってまして、ちょっと釈明いたしますが、E委員の御質問に 対して、実は日経連の説明をしなくて、私の思いの方が先に出してまして。日経連のこ の整理はここに書いてあるとおりに、やっぱり負担がこれ以上不可能な前提の中では給 付を下げざるを得ない。それはそこにございますように、いわゆる水準としてはどうい う水準を考えていくのか。それから、下げるとして、例えば賃金スライドは行わないと か、そういうことで徐々に下げていきましょうというような、ある意味では極めて常識 的な方法でやりましょうというのが、実は日経連の提言でございます。 ○会長  よろしいですか。それではどうぞ続けてください。 ○J委員  そういうことで5つの選択肢にこだわると嫌う人もいますけれども、給付はC案に近 いところ、負担はD案に近いところというのは、ある意味で常識的な1つの選択肢では ないかという気がしますが、仮にそういう選択をする場合にも、どこをどういうふうに 直したらそうなるかという選択肢がたくさんあり得るわけですね。少なくともスライド のやり方で直すのか、給付乗率そのもので直すのか、あるいはB委員が今言われたのは 加入期間の月数に多分シーリングを設けろということなのかなというふうに聞いたんで すけれども。 ○B委員  いや、違います。 ○J委員  そうじゃない。 ○B委員  要するに満額年金を受給する要件ですね。45年保険料を納めないと満額年金はもらえ ませんと、そういうことなんです。例えば、仮に満額年金の支給要件を45年にして、40 年しか保険料を納めなかった人については年金が減額されるということですね。満額年 金×40/45になる。 ○J委員  今とっている老齢厚生年金の計算式から、どこのところをどういうふうにすると、ど ういうふうになるという話があるわけですよね。それとの関係でちょっと議論を整理し て最初にやっていただかないと、多分5つの選択肢のAからDは、非常に単純に理解す ると、給付乗率を下げようという話だったと私は理解していたんですが、B委員のは、 今、私はちょっと細かいところはよくわからないけれども、給付乗率をいきなり下げる のは少し戦術的に愚かだから、もう少しうまい方法を考えろとこういうことなんだろう と思いますが。 ○会長  ちょっと中断して、どうぞ。 ○事務局  今のに関連して。 ○会長  どうぞ。 ○事務局  A、B、C、D、Eにあえてこだわるわけではないんですけれども、選択肢のコンセ プトのところで、ちょっと一、二補足説明をさせていただきたいと思います。負担は例 えばD案、給付はC案というのは、これでは我々の説明は成り立たないということにな るわけです。なぜかと申しますと、例えば白書をきょうは配付してございますけれども 167ページにもう一回一覧表が出ておりますが、私どもの考え方は、あくまで給付の総額 で比べておりますので、例えばD案の負担、つまり、月給の20%で保険料を抑えますと 給付総額で例えば4割を落とさなければいけない。そうすると総額で4割落とすために は、給付乗率で例えば2〜3割落として、支給開始年齢で少し落として、スライドを調 整して少し落とすということにすれば、給付の水準は2〜3割減ですが、ほかのもくっ つけると、総額では4割落とすことができることになるわけです。ですから、給付水準 プラスいろんなものの組み合わせで総額ができ上がります。  ということで、先ほどの日経連から配付した資料も、そこは書き分けてありまして、 給付の水準が2割程度削減というふうになっておりますから、次のページの、例えばス ライドとか、支給開始年齢とか、例えば別個の給付を廃止するとか、いろんなものを組 み合わせますと、18万円ぐらいの給付水準にその他のものを組み合わせると、トータル で4割落ちるという姿ができるということで、給付の総額の問題と水準の問題は別々に 書いておりますし、組み合わせでいかようにもつくれる。例えば極論いたしますと、2 割の総額を落とすために給付水準は全くいじらないで、ですから23万円のままで、別個 の給付やスライドをいじることで、それは達成することができるというやり方もあるわ けで、必ずしも給付水準を落とさなければいけないという整理でもないと。あくまで総 額で2割とか4割達成する方法は組み合わせはいろいろある。こういうふうに考えてお ります。 ○I委員  今の議論と関係あるんですが、私のはもっとシンプルでして、給付水準が高過ぎると いうことなんですね。 今のお話は給付総額を下げるその手段について議論しておられますが、私はまず今の厚 生年金あるいは公的年金の給付水準が高過ぎるのではないかということを考えて、要す るにこれを下げるべきだという議論になるのですが、ちょっと説明しないと余り唐突す ぎるので申し上げますけれど、公的年金としての老齢年金というものの意義をどういう ふうに国民が正確に受け取っているかというところにちょっと私としては考えたい点が あります。何十通来るあのはがきを見ておりますと、公的年金で食えないという、これ は共済年金の方なんですけど、そういうふうに書いてある方が非常に多いんです。これ は公的年金を非常に過大に評価している考え方で、私たち将来どういうふうに考えるか という点ですが、公的年金というのは、自分が必要とする、あるいはこれぐらい欲しい なと思う年金額の半分を、簡単に言えば半分を出せばいいのであって、それ以上のこと を公的年金に期待するのはちょっとオーバーで、それをやったら、いつまでたっても負 担と給付の均衡はとれない。  この5つの選択肢の話は非常に嫌われるんですけど、大変わかりやすいので、現行ど おりで、A案でいくと23万になりまして、手取り総報酬の62%保障するということなん ですね。仮にC案、私、C案を別にサポートしているわけではないんですが、C案とし ますと、これが18万6,000円になって、手取り総報酬の50%になると、こういう計算にな るわけですね。要するに23万という金額は非常に高いような気がする。いつかもこれは 大学卒の初任給よりも高いじゃないか。現役世帯は夫婦で子供がいるということを考え ますと、相当な費用が可処分所得から子育て等に引かれるわけですね。 ところが高齢者というのはもう卒業してしまっている。子育ての費用も要らない。家 もあると、こういう条件ですから、そういう人に対する公的年金の支給額としてはかな り低いものでいいのではないか。もし、これが余りに高過ぎますと、かえって将来の生 活設計が狂ってくると。一種のモラルハザードになるんですけれども、老後の生活設計 を正確にやって、自分が老後のときには働いて暮らす。あるいはまた貯金を蓄えて、私 的年金で食べるというふうな手だてができて、それで平均的に半分は公的年金で食える。 あと半分は自分でやると、こういうことになると思うんですね。 ただ、問題は、公的年金はさっき議論されました基礎年金と対になっていますから、 基礎年金は6万5,000円でいいと申しましたので、厚生年金の支給額を下げるということ は、要するに2階部分を下げるという話につながっていると私は思います。そうします と、先ほど出てきました企業の負担が多過ぎるといった話とも関係するし、若い人の負 担が高過ぎるという話とも関係しまして、うまくおさまるのではないかという感じがし ます。 もう一点申し上げたいことは、これまた後で出てくる話だと思いますが、世代間の助 け合いということと同時に、世代世代の中で、高齢者で非常に恵まれた人は、世代助け 合いとして若干遠慮するということで、恵まれない高齢者のために再配分しろといった ことも行われておるなと。これはまた後で出てくる話だと思うんですが、そういうふう に思います。今非常に技術的な難しいお話が出ているときに、こういうシンプルな話を 言うのはどうかと思いますけれども、私はごく簡単に言うと、給付と負担の均衡という と、給付が高過ぎるから、これを切り下げることを考えたらどうかという提案をします が、多分物すごい反対論があると思います。 ○O委員  受給者の給付のことについては、私、昨年も発言いたしまして、皆さんの総スカンを 食ったような感じがしたんですけれども、確かに実現性は非常に難しいと思いますけれ ども、今のお話ございましたように、350兆円という大きな負債、これを考えてみると、 やはり年金受給者、既裁定者、在職者の過去の言うなれば期待権の部分ですね。こうい うものにも本来何らかの配慮が行われるべき状況に近づいてきているのではないか。こ れは少子化の進展がここまであるとは思わなかったということから、やはり何かを考え るべきではないかと。 先ほどB委員がおっしゃったように、確かに今の67歳から70歳ちょっと過ぎまでの方 の年金額というのは物すごい大きいですよね。その年金についても、やはり何か考える 必要があるのではないかという感じが私はずっとしております。そこの部分だけでも、 仮に23万でなくて、24〜25万から上の年金の現価部分ですか、これは計算すると、恐ら く10兆とか20兆、あるいはもっと大きい数字になるかもしれない。相当な額が出てくる と思うんですね。だから、それを仮に頭打ちするということができたとすれば、それだ けでも財政的に大きな影響があるのではないかという感じがいたします。 それから、事務局にちょっと質問させていただきたいんですが、先ほどから別個の給 付の問題が出ておりましたけれども、別個の給付は負債としてトータルどれくらいのス ケールになるものなんでしょうか。要するに5兆なのか、10兆なのか、あるいは50兆な のか。もし、何か。 ○事務局  ちょっと手元に数字はございませんが、別個の給付を廃止した場合の財政影響につき ましては、厚生年金の最終保険料は34.3%に将来なっていくわけですが、別個の給付を 廃止した場合には、34.3%ベースで最終保険料が3%程度低くなるというような財政影 響でございます。  それから、先ほどD委員から税方式にした場合に、厚生年金の最終保険料が20%に達 しないということで、そういった推計の根拠なり推計方法を示してほしいということで そういった点についても何らかの形でお示ししたいと思いますが、先ほどお話がありま したように、2025年というのは、年金制度の推計でいいますと、賦課方式の保険料で言 いますと、2025年というのは大体33%ぐらいで、2050年ぐらいがピークです。2050年と 2025年で賦課方式の保険料率を見ますと、2割ぐらいは違います。先ほど賦課方式でや られたということで、仮に賦課方式的に言うと2割ぐらいは違ってもおかしくないとい う面があります。また、積立金を保有しないということですが、積立金を保有しないと いうことは、前から申し上げておりますが、手前のところの保険料を低くするかわりに 将来の保険料を高くするという財政方式を選択するということでありまして、多分違い は2025年で見ているのと、将来まで見た保険料で見ていることの違いではないかと思い ます。 ○L委員  事務局に確認をさせていただきたいんですが、先ほどの件なんですが、167ページの 5つの選択肢であります。先ほど日経連のメモに関連しまして、負担はD案で、給付は C案、これはコンセプトとしては間違いで、事務局が言われるのは、D案は最終保険料 率が20%であれば、支出額4割抑制すると、それで自己完結していると。したがって、 C案、D案はコンセプトとしては自己完結しているわけですが、いろんな具体的な施策 をとりようによってはD案の負担でC案の給付水準ということがケースとしてはあり得 るとお考えなのかどうか、ちょっと確認したいのですが。 ○事務局 おっしゃるとおりでありまして、要するに18万というのは、例えばC案の説明をして おります170ページを確認のためにごらんいただきたいのですが、C案が18.6万と一般に 思われてしまいますのは、私どもの資料の提示もよくなかったのかもしれませんが、あ くまでこれは上の四角の中は総額で2割程度と書いております。しかし、下の参考で書 いたのは、総額では余りにイメージがわかないので、それを給付水準だけで、2割下げ たら23万はいくらになるかということを示したのが18.6万ということでございますから 確かにC案=18.6万ではないのでありますが、C案をほかの手段全部とらないで、給付 水準だけでやったらいくらになるかというのが18.6万ということでございます。  ですから日経連の案ということになりますと、給付の水準を2〜3割下げるというこ とで18.6万ぐらいにしておいて、ほかの支給開始年齢でいくらか抑制し、あるいはスラ イドで抑制して合計していくと、総額では例えば4割に到達することはできるわけであ りますから、おっしゃるとおりだと思います。 ○L委員  それであれば、私ども個別企業としましても、負担が現行と余り変わらない。それで 計算としては、現行23万円が18万前後になります。ただし、既裁定者にどうするかにつ いては、従前額を維持して追いついてくるのを待つことができるというのであると、将 来はロジカルにはDの負担で、Cで期待された給付水準は確保できると。そういうこと はあり得ると考えていいと思いますね。それであれば、それが一番いいのではないかと 思います。 ○事務局  C案で期待された給付水準、ちょっと誤解がありますけれども、18.6万円というもの は維持できるということでございます。 ○J委員  先ほどのI委員の御説明で、ちょっと私理解がしにくかったのでお尋ねしたいのです が、基礎年金は6万5,000円でいいと。だから給付を抑制するとしたら2階部分でやれと こういう御説明だったと思うんですが、例えば賃金スライドをやめると仮にします。従 来のやり方ですと、賃金スライドをやめた部分が基礎年金にもかかってくるわけですね。 ですから6万5,000円というのは、今の水準で6万5,000円が妥当で、将来的に実質額と してそれが下がることはやむを得ないということを含んでおられるのかどうか。 ○I委員 正確に答えれば、その意味ですが、今6万5,000円と私が言った基礎年金が実額で決ま っているということについ二、三日前にやっと気がついたんです。それは一種の生活保 護的な考え方なので、いわゆる生活保護じゃないけれど、ああいう厳しい条件じゃなし に、最低社会保険に加入しているものが受けられる金額として6万5,000円、夫婦で13万 円。これは地方だったら十分これで食えるそうですから、東京ではちょっと難しいとい う意味で言ったわけです。 ですから、それが公的年金全体のスライド何とかで下がってくるとすれば、それは合 意さえできれば下げてもいい金額という意味です。 ○M委員 給付と負担の調整で支給開始年齢による抑制というのが出ておりますので、それに関 連してですけれども、確かにOECDも推計しておりますように、いろいろな手法の中 で、支給開始年齢を引き上げることは、年金受給者数の総数を調整するということです から、非常に効果があると考えられます。ただ、高年齢者就業実態調査により、就業の 実態を見ますと、平成8年の男子で、65から69歳で就業している者の割合が53.4%です。 女子は同じく65歳から69歳で就業している者の割合が28.1%です。これは自営業者、任 意就業者という、近所とかで頼まれて少し働くというような人も含めている。それから 内職、家族従業者等も含めている。もちろん雇用者も含めてですけれども、それを全部 含めて、65歳から69歳のうちの男子では半数強ですね。女子は28%が就業しているとい うことですね。経企庁で2000年の推計をしていますが、それを1993年の労働力率と比べ ているのですけれども、65歳以上については低下すると推計されています。総数すなわ ち、分母が増えるということもあるのでしょうけれども、低下するということなのです ね。  それで、前にやはり給付と負担のときに、支給開始年齢における平均余命が男子も女 子も以前に比べてかなり延びておりますので、法律上の給付と負担を前提とすれば、年 金の財政収支をバランスさせることのできる均衡退職年齢といったようなものの引上げ をこれは意味するのではないかと申し上げたことがあるのですが、こういうような就業 の実態とか、それから、B委員も先ほどおっしゃいましたけれども、8割を超えている サラリーマンが、前回もちょっと申し上げましたけれども、65歳を一応基本として生涯 生活設計を立てようと考えています。それは男子中心かもしれませんが、そういう状況 になってきていると思うのですね。それが65歳から、さらに支給開始年齢という手法で 少し調整する部分もあるということになると、これは男性にとっても女性にとっても、 現状の就業状態を前提にしているとかなり厳しい状態ですね。特に女性にとってはかな り厳しい状態なので、高齢者といってもさまざまですから、選択制にするのはいいかも しれませんが、選択制でなくて支給開始年齢をそれ以上引き上げるのはこういう就業状 態を見ていると厳しいという気がします。  高齢化に伴うコスト増は結局現役世代と年金受給世代で分かち合っていくしかないわ けですが、その場合の方法としては、私は現在としましては、支給開始年齢で調整する よりも、先ほどから出ておりますけれども、年金受給者の給付の抑制で対応するほうが 望ましいと思います。それに伴って現役世代もそれほど負担が高くならないようにする ということですね。全国消費実態調査により、現役世代と退職世代の消費支出を、子供 が何人いるとか、個別に見ていきますと現役世代は今厳しいわけですね。だから、現役 世代がやはり幸せになって、それで高齢者も幸せになるということが大事だろうと思い ますので、年金受給者の年金の給付の抑制をかなり最優先で行うべきではないかと思い ます。  その場合の方法はいろいろあると思いますけれども、1つは、先ほどE委員もおっし ゃられましたけれども、日本の場合は高齢者、年金受給者に対する税制の優遇措置が余 りにも寛容なものになっています。外国は廃止をしたり、改正をしたり、見直しをかな り前からしてきております。日本だけは優遇しております。厚生省も税制の要望を出す ときに、たしか所得控除を高くするようにとか、そういうのを出しておると思いますけ れども、所得控除というのは非常に逆進性が強く、高齢者の優遇措置は年齢差別といっ てもいいくらいだと思いますので、これはなくすというか、改正をすることによって、 一部分給付の引下げはできると思います。それも1つの方法ではないかと思います。  とにかく年金支給開始年齢を65歳以上に引き上げるということは非常に厳しいのでは ないかということでございます。 ○事務局  ちょっと議論の進め方についてのお願いでございます。  今日の第1セッションの結論は、私なりに集約といいますか、取りまとめてみますと 次期制度改正におきましては、国庫負担の引上げ、税方式、これをただちに導入して、 法律改正まできっちりやるというのは、これは皆さんそこまでやるのは難しかろうと、 こういうことで大方の委員の意見は一致していたかと思います。  そうなりますと、次期制度改正でどういう改正をするのかといった場合に、これは前 回は御案内のとおり月収の30%が負担の限界だということで、その範囲内におさまるよ うに給付のあり方を見直しをしたと、こういう改正を行ったわけですね。したがいまし て、今回は、そういった大方針、大枠はどうなのか。方向を決めることが、まずもって 必要なことでございまして、したがいまして、それを実現するためには、先ほどからあ るようにいろんな手法があるわけですね。したがって、この手法についての組み合わせ をどう考えるかというのが次の議論になってくると、こういうことかと思いますので、 次期制度改正の大枠についてどう考えたらいいのか。この点について、皆さん方の御意 見をぜひ聞かせていただきたいわけです。そういう中で次のステップとして、給付水準 なり、支給開始年齢なり、スライド方式なり、優先順位をどう考えるべきか、こういう 御議論をいただければ、議論がスムーズに展開できるのではないかと思いますので、ぜ ひよろしくお願いしたいと思います。 ○C委員  この辺の議論はかなり技術的な部分もあって、相当理解が困難な部分もあるのですが 情報としては、A案、B案、C案ですか、もう一つ情報として重要なのは、各財政年度 の年次の給付の支出額と保険料の収入額、そのバランスが大体どうなっているのか。積 立金はどう推移するのか。要するに、ここをある時点でばっさり切ってあるのですが、 そこへいく途中は一体どういうぐあいになっているかというのは、保険料は適宜上げて ありますから、上げ方によって違ってくることはそうなんですが、一応こういう上げ方 でやってきたときに、収支として毎年毎年どういうぐあいになっていて、積立金はどの くらい減って、2025年でどれぐらい積立金が残っているか。その辺の情報がないと非常 に今後の年金制度全体の、単純に言えば、賦課方式型がどの程度維持できているのかと か、その辺のおおよその感じがわからないと非常に議論しにくい。  大阪大学の八田さんが自分が計算してみると、2030年か、2035年ぐらいに物すごい積 立金が増えて、これは大丈夫ですね、とかなんか言っていましたが、彼のソフトか何か 使ってやったのではそういうぐあいになっているらしいんですね。ですから時系列的に 推移をある程度見ておかないと、場合によっては誤解が発生しますので、その辺のとこ ろを何らか情報を出していただきたい。今後いろいろ議論があちこちで出てきて、その 辺多分錯綜してわけがわからない状態になったら困りますので。 ○事務局  それは、『年金白書』の47ページをごらんいただきたいのですけれども、ここに厚生 年金の財政見通しというのがございます。これは前回改正(平成6年改正)のときの財 政見通しでございまして、したがって、給付については現行制度を維持する場合の将来 の途中段階での見通しはこういうことだということでございます。  追加して説明することがあったら、追加して説明してみてください。 ○事務局  年金白書の47ページが平成6年のときの見通しでございまして、年金白書の125ページ の下の方にA案のときの厚生年金の財政見通しが示してございます。年金白書の125ペ ージの下の図でございますが、これがA案に相当するもので、収支と一番右の方に積立 度合いということで示してあります。B案、C案になった場合の積立度合いについては 全体に保険料水準が均衡するところから一定になっておりますので、このA案のときの 倍率からそんなに大きくは変わらないと思いますが、調べたいと思います。 ○K委員 現在の制度のままでは、将来負担が大きくなりすぎて制度がもたないというのは、そ れは皆さん共通しているだろうと思うんですね。そのためにどうしたらいいかというこ とを議論しているわけですが、1つは公的年金の給付の水準を勤労世代の平均所得に対 して何%ぐらいが妥当かという考え方を、皆さんが合意するかどうかわからないけれど も、少し議論する必要があるのではないかということが1つ。そのためには給付と負担 を見直さなければならない。給付をなるべく下げて負担を増やすということで、いくつ かの選択肢が出ているわけですね。 その辺まではわかるのですが、先ほどB委員などから出てきている世代間の不公平が 今まで年金をもらっている人が高過ぎて、だからこんなふうになっちゃったのだといっ た、そういうことをきちんと言わなければいけないということで、『年金白書』にも、 自分の出した保険料の何十倍ももらっているという形で、いかにも今の高齢者がおいし い思いをして若者たちが負担をしているような書き方をされているわけですね。私はそ れに非常に抵抗を感じるわけです。ただ、単に今の70代の世代と今の30代の世代が同じ 期間加入した者が同じ年金をもらわなければいけないと私思っておりません。今の高齢 者はそれなりにさまざまな苦労をしているわけですし、さまざまな実りを今の若い世代 に与えているわけですから、ただ単に給付と負担だけでもって、高齢者と現在の若い世 代を比べることについては、私はいささか抵抗感があるんですね。老人だけが悪いわけ ではない。制度によって、そういう形になっているわけですから、高齢者には何の責任 も私はないだろうと思っています。 それから、もう一つは、現実に厚生省の案は、5つの選択肢の中で、負担と給付だけ に絞って考えてくるわけですけれども、負担と給付の比率が先にあって、それに合わせ て制度を改正していくという考え方も1つだと思いますが、例えば現在負担が低くて給 付が高いとするならば、現在の制度の中でも改めていく具体的なテーマはいくつもある だろうと思うんですね。例えば支給開始年齢も1つでしょうし、賃金スライドをやめる のも1つの考え方でしょうし、総報酬制を導入するのも1つの考え方だと思います。あ るいは在職老齢年金、65歳になると、100万も200万も給料をもらっている人が満額の年 金をもらえるような制度そのものにもやはり問題があるだろうと思いますから、そうい った今の制度の持っている問題点をきっちりと詰めていって、おかしなところを改めて いくことによって、この給付と負担のパーセンテージがおのずから出てくるわけで、最 初から20%でいくらというような枠をはめて議論するのにはいささかちょっと抵抗感を 感じています。 そういう意味では、金額だけを比べるような考え方、あるいは負担と給付をただ単に 高齢世代と若い世代の給付を考えて、だから年金制度はおかしいのだという考え方では ちょっと私自身は抵抗感があることを申し上げたいと思います。 ○E委員 給付と負担を考える場合、中身の議論と全体としての枠の議論があると思うんですね。 C委員がおっしゃったのは、ともかく収支バランスが合うのか合わないのかというのを はっきり数字で教えてほしいということだと私は理解します。 先ほど事務当局から、125ページがA案だとおっしゃった。そうしますと、これはいろ んな仮定のもとに計算しておられるので、仮定を変えれば困りますから、むしろB案な り、C案なり、あるいは日経連の御提案なり、こういったのを同じ仮定で、同じ数字を 使って計算すれば、一体どうなるのか。先ほどの日経連のペーパーでは、負担サイドが D案なのに給付サイドがC案、これは魔法の弾丸がどこかにあるのだろうと、こう申し 上げたのは恐らく魔法の弾丸は税方式への移行の仕方の問題。それから、現在ある約5 年分の積立金をどういうスピードで食っていくか、ここらあたりに一番大きな問題があ るのではないかと思いますので、その辺をひとつはっきりさせていただかなければ、 個々のどういう項目で給付の削減を考えるとか、これはちょっと入れないと思うんです ね。それだけ申し上げておきます。 ○会長  今のお話、あしたの朝までにここで計算できそうですか。 ○事務局  そういったことができるかどうか、検討させていただきたいと思います。 ○会長  間に合えば、明朝ということで。どうぞ。 ○事務局  魔法の弾丸の話ですが、私は日経連の立場で説明するものではないのですけれども、 恐らくE委員のおっしゃるところは、この4つ目のマルの負担の限界20%で、(1階の 税方式部分の保険料率換算を含む)というところの読み方だと思うのですが、実は私は 日経連の事務局に聞いたことがありまして、これは税方式にした場合のものも飲み込ん で、だから今の現状でセットとしての20%以下ということでどうもお考えのようです。 そうなるといわゆるD案の負担の限界、月収の20%において、給付を総額で4割ほど減 額すればいいだろうと。そうすると給付水準で2〜3割下げて、支給開始年齢とかもろ もろ組み合わせると、総額で4割のカットは達成できるということで、それ以外のもの を組み合わせてということではないように私は日経連の事務局から聞いたわけです。  ですから、余りこれに入ってない、何か特別の要素があるとは私どもも理解しておら ずにこのペーパーをいただいたわけです。よろしゅうございましょうか。私がちょっと 解釈する立場ではなく、意見なんです。 ○Q委員  私は給付をどうするかという問題については、現実に今受けている人もいますし、来 年受ける人もいるし、再来年受ける人もいるということを考えますと、急激に給付を減 らすのは少し問題があるのではないかという気がいたします。せいぜい下げても、1割 ぐらい下げるのはともかくとして、ずっと後代まで、これからありますから、その下げ 方を少し考えなければいけませんけれども、急に去年やめた人から見たら2割も下がっ たというのは非常なショッキングなことになるのではないかと思います。  そういう点を考えますと、給付はせいぜい下げても1割ぐらいがいいところではない のかなという気がいたします。 私は、先ほどK委員がおっしゃいました説には賛成ですが、そのためには、事務当局が 明日資料を出すと言っておりますけれども、今の修正積立方式をとっていると、ここ2 〜3年の間は収入が支出を上回っているはずですね。だから、負担を上げなくてもそん なに給付に困らないだろうと今のところ思います。しかもいろんな組み合わせを考えま すと、例えばスライドをするにしましても、この113ページにありますが、賃金スライド はやめ、物価スライドをするにしてもやはり乗率が生年月日によって違うんですね。物 価水準を上げるのに、その乗率まで使うと非常に生年月日によって格差が広がり過ぎる のではないかと思います。物価水準のときには、生年月日による乗率を使わないという 方法をとった方がいいと思います。 そういうことを考えたり、あるいは高齢者の在職年金についても、退職を要件にする かどうかということを少し考えてみたり、あるいは年金が特に高いという人がいました ら、今のような課税の仕方ではなくて、総合所得として税を掛け、そして、年金から取 った税は年金に返すということを考えられたらいいのではないかと思いますが、何かそ ういういろんな仕組みを考える。あるいは総報酬制をとればいいのではないかという気 もしますが、先ほどの年金は現役の収入の50%という言い方は、まさにILOが提唱し ている総報酬制の50%でしょうけれども、先ほど申し上げましたように、そこまでいく ことは少し急過ぎるから、せいぜい1割ぐらい下げておけば、総報酬制の55%ぐらいで 済むだろうという気もします。給付を余り年代の近いところでぴしっと下げ過ぎないと いうことの方がむしろ私は国民感情としてもいいし、あるいは若い人がそれを見て、年 金というものに安心感を持ち、よく理解するのではないかという気がします。 ○会長  D委員、大分お待たせしました。 ○D委員  今、Q委員から大変適切な問題の御指摘をいただいたと受けとっております。将来の 年金財政の問題は大変大事なことですが、どのような選択を提示するにしても、これ以 上、公的年金に対する国民の、特に将来の受給者、当面の間の負担者である若い世代の 公的年金に対する不信の念をなるべく拡大しないで済むということがまず一番基本的な 要件として抑えられなければいけないのではないか。そこのところを無視して、そんな に高い保険料は払えないから、だからとにかく下げてしまえという議論は余りにも乱暴 というよりも、むしろ自己否定につながる感じを持ちます。例えば高額年金受給者につ いての給付制限の問題、これはO委員から何度か御提起あったと思います。大変興味深 く伺っておりますが、それに対して、例えば乗率をいじるとか、あるいはスライドをい じるとかというのは、実際に高額年金者から低額年金者まで一律にかかわるわけでしょ う。この問題については、実際の現在の受給者層の中の受給水準の開きというものを特 に配慮していただく必要があると思います。  今の60代後半から70過ぎぐらいまでの間の年金額は物すごく大きいという御指摘がO 委員からありました。確かにフル勤務してきた公務員の人なんかの年金は相当なものだ ろうと思いますね。これは旧国鉄年金が議論されたときに1つ挙がりました。それから これは年金局長がどこかで、どこかでというか、何度か御指摘ですが、夫婦2人で先生 やってきたらば、年金は月々50万以上だとか、そういう事例も事例としてはあるわけで すよね。そういうところについての選択的な給付制限という議論と、同じ年代であって も、これは私ども民間の労働組合の中の未熟練労働者層、特に旧中高年特例がかかって いたようなところでの受給者の年金水準は極めて低いんです。これは公務員年金などを 受け取っておられる方には、恐らく想像を絶する低さであって、そういう人たちも含め て一律に何%で引くような減額措置は極めて大きな問題がある。  今後の問題を考えますと、平均加入年数がかなり高まってくる。制度が成熟すること によって、そういう格差はなくなるであろうという議論はあるかもしれませんが、他方 で単身者、特に今後の女性の単身者の年金の問題については、将来のテーマとして十分 考慮すべきで、夫婦モデルだけで、これを一律に考えられないですね。ですから、その 意味では、実際の受給者の中に受給水準の相当な広い分布があって、公的年金と呼べる ものがふさわしい水準を確保しなければいけない部分がどこについて言えるのかという ことを、特に注意していただきたいと思います。その意味では一律、率で削減するよう な議論には、私どもは反対でございます。  第2に給付水準の現役とのバランスの問題は、これは先ほど何人かの方から御指摘が あったと思いますが、いわゆる現役の賃金水準と年金給付水準とのバランスの問題を基 本的に置くべきだと思います。その意味では前回改正で導入された可処分所得スライド 方式は大変合理的な制度であって、現役の労働者の生活を抱えているのは手取り賃金で あります。そして、その手取り賃金の動向によって年金の方の水準の動向を決定すると いうことは、この制度が成熟していくならば、当然のことながら、手取り賃金水準に対 する年金水準の手取りベースでの代替率を那辺に置くかということがテーマになるわけ で、私は前回改正のプラスの面を踏まえるならば、スライドがどうしたとかという以上 に、この制度の持っていた意義をもう一度再確認すべきなのではないか。これは単にス ライド率を低くした制度ではないわけですね。そうではなくて、高齢者の数が増えるこ とによって現役の負担が増える。現役の負担が増えれば、そのことは年金の伸び率の抑 制につながるという1つの自動安定装置を組み込んだもののはずで、なぜかこの厚生省 の白書は、その意義を十分に取り上げれているとはとても思いません。  私どもでやったシンポジウムの席上、その議論をいたしましたならば、年金局長から いや、そういうことは確かだがそれによっても吸収しきれないのであるとこういうご返 事でした。もし、それによって吸収されきれないというなら、どこまでが吸収され、ど こから先に問題が残るのかという御指摘があってしかるべきかと思いますが、ぜひ、今 日はそのお話の延長も含めて承りたいと思います。  現状の代替率は大体7割ぐらいです。私どもの試算では、いわゆる別個の給付を残す。 現在の手取りベースでの7割ぐらいのものを将来について約束する。これによっても税 方式へ基礎年金を転換した後の2階部分の保険料率は20%に達しないで済む。それは果 たして、そんなに過酷な負担かといえば、とてもそうは思いません。そうやっても給付 水準は相対的には下がってまいります。しかし、それは逆に言うと、将来の水準を将来 の世代に対して約束することができる1つの基準を持っているわけで、やたらと下げる 下げる、下げなければ持たないという議論よりは、むしろ若い世代の今後の負担に対す るインセンティブを保障していくのではないか、そのように考えます。 ○事務局  平成6年に導入された可処分所得スライド制でございますが、これは現役の可処分所 得と年金受給世代の年金額の比率を一定にするということで、将来にわたって保険料が 挙がれば、年金額が抑制されるという効果はあるわけですが、現在の手取り標準報酬月 収対比で言いますと、80%となっています。それから、手取り総報酬ベース対比で言う と、今の年金額は62%の水準ですが、それが可処分所得スライド制が入ったことによっ て、将来とも手取り標準報酬対比で80%、手取り総報酬対比で62%の水準が将来とも維 持されるということになりますが、その結果として、厚生年金の保険料が34.3%という 水準になります。  可処分所得スライドというのは、1つの安定装置ではありますが、それだけでは今申 し上げましたように、今の手取り総報酬ベースで62%の水準でいけば、保険料が最終的 に34.3%までいくことになる。そういう中で、そういった保険料が将来にわたって過大 なものかどうかということが課題になるということで、可処分所得スライドというのは 1つの安定化装置でありますが、それだけですべて問題が解決ということではないとい うことを申し上げておきたいと思います。 ○事務局  それから、もう二点ほど補足説明させていただきますが、給付水準を、例えば1割と か2割下げるという表現は過酷に聞こえますけど、方法としては、ある人を一挙に2割 下げるとか、目の前で2割一挙に下がるとか、そういうことは年金では恐らくとらない だろう。そこには経過措置を入れて、その人の本来の年金額が例えば2割下がったかも しれないんですけれども、受給額は急激に下がらないような工夫をして、例えば従来も らっていた額を保証するであるとか、従来もらっていた額にさらに物価スライドまで保 証するとかということで、ショックを緩和をしていくというのが恐らく経過措置として 付随すると思います。本来の水準を下げるというのは、法律上の本則の議論であります が、受給者に対してはそれがなだらかに機能するように進めようということで、例えば 2000年から2025年までいろんな経過措置を組み合わせて進めることになると思います。  それから、水準の議論で、例えば今もらっている方々が高いとかという議論がありま したし、例えば公務員の例もありましたが、今私どもが基準に置いて議論しております 数字は、現在の制度が規定しています大体23万円という、これから昭和21年生まれ以後 の方々がもらうことを前提にしている23万円というもので見ていった場合に、将来保険 料が34%までいくということが計算上明らかなものですから、その23万円というものを ベースに、給付水準を下げるかということをぜひ御議論していただきたいと思います。 これまでに裁定された高額年金の方々はあるのですが、それを基準に議論しているわけ ではございません。  ということで、補足させていただきました。 ○L委員  今のに関連して事務局に質問なのですが、白書の187ページ以降、給付の見直しの指標 がいろいろ解説してあります。この中の187ページの経過措置で、旧水準に基づく年金額 と新年金額を政策改定、物価スライドしたものを比較し、新年金額が上回るまでは旧年 金額を保証することを試算の前提とします。こう書いてありますが、要するにここに書 いてあることは、何度も確認しますが、既裁定者に対しては従前額を保証するという前 提で貫かれているということですね。 それから、新規裁定する人については、計算の根拠を現在の方式で計算をしますが、 一たん計算した後には、新規に裁定された人が翌年は既裁定者になりますね。そのとき には物価スライドはするけれども、賃金スライドはしないと、そういう前提で計算をさ れていると考えてよろしいのですか。 ○事務局 前段のところはおっしゃるとおりで、既裁定者は、例えば今23万もらっておられる方 は、その人に対する新年金が計算上19万に下がったとしても23万はずっと保証し続けて いきますと。例えば19万という水準が物価や賃金がだんだん上がっていきますから、ど こかで一致する点が来るわけですが、そこからは新年金額でまた上がり出すということ でございます。 それから、目の前に年金の受給年齢を控えておる62歳や63歳の方があるとしましたら その人については、これまでの制度で期待していた額というものが一方あります。それ から、例えば1割とか2割下がって19万円になるという新しい水準があります。両方を 計算してみて、従来の制度で期待していた額が高いうちは、それをずっと保証していっ て、新しい水準の額と一致するところで、今度は新しい水準の年金を支給するというこ とで考えております。 これはこの計算の前提にすぎませんで、制度改正するときに、従来の水準の年金につい ては金額は下がらないものの物価上昇を保証しないのではきついではないかということ であるならば、既裁定の方あるいは年金受給を目の前にしている方については、物価ス ライドはしていって、本来の水準が追いつくまでもっと時間をかけて調整していこうと いうやり方もあるわけです。年金白書で書いているのは既裁定者については物価スライ ドストップですから、かなり厳しめの計算前提ということで御理解いただきたいと思い ます。 ○L委員  私は非常に合理的な案で計算をされていると思うんですが、その辺のところが、たく さんはがきを出してくる方に十分理解されているのかどうかですね。自分のもらってい るものが、来年から減るのではないかとか、あるいはマスコミ等の、これからもらう人 が減るのではないか。今の御説明ですと、どちらか高い方が少なくとも額としては保証 されるということですね。その辺が十分理解されてないのではないかという気がいたし ます。 ○会長  時間がだんだん残り少なくなってまいりました。まだ御発言をいただいてない先生方 がいらっしゃいますので、御意見を私から順番に指名させていただきますが、R委員何 か。 ○R委員  基礎年金のことについては、前半のときに言ったと思うんですけれども、先ほどの公 務員の夫婦が50万円になるとかというようなお話が出ましたね。それの基本になってい る計算は、簡単に言ってしまえば、男の人が現役時代にもらっている給与、家族手当と か、そういったようなものを前提したようなものと同じような給料をもらっている公務 員の女性の場合だと多過ぎるという、そういう解釈だと思うんですね。今のまんまでい くと、今のこの世帯単位の方式の受給という形でいくと、女の人が男の人と同じように 働くようになればなるほど受給額がふくらんでいって、年金制度がますます破綻する、 多分そういうことではないかと思うんです。当然ますます給付がふくれますよね。  それはすごく変だと思うんですね。女性と男性の賃金が同じようになればなるほど年 金が破たんしてしまうというパラドックスという、それをどこかで調整しないことには いけなくて、それの基本にはやはり受給額を考えるときの個人単位化というのがあると 思うんですね。個人単位化については解釈がいろいろで研究者の間でもばらばらだし、 主張している方の間でもばらばらなので、ちょっと私としてはそれは調整しなければい けないと思っているんですけれども、そのことが今議論の中に出ていなかったと思いま す。  今の計算でいって、公務員の人がもらい過ぎになるというのは、別にもらっている人 が悪いのではなくて、年金の設計自体の間違いだと思いますので、少なくともそのこと を、もらっている人にもらっている人が悪いという言い方をすると、非常に一生懸命働 いて、子供も産んだりして、働きながら、しかも家事もやりながら働いている女の人が あんたはもらい過ぎだと言われるのは非常におかしいと思います。それは年金制度の設 計の方が間違っていると言いたいと思います。 ○会長  S委員はお話しいただきましたか。 ○S委員  簡単に申し上げますが、給付と負担の問題ですが、全般に今の年金水準は高過ぎると いう議論がどちらかというと、この審議会の中でも意見としては多かったような感じが いたしますけれども、本当にそうなのかということについては、私としてはもっと慎重 に議論すべきだと思っています。  D委員も先ほど言われましたが、あくまでもモデル年金だけではなくて、単身者の方 もおられますし、所得階層、いろいろ1階建てだけではなくて2階建てを含めますとい ろんな階層がおりますから、本当にどうなのかということについては、相当慎重に考え るべきだというのが第1点です。  2つ目に、給付と負担を、どちらを先に、要はある意味では、えい、やったあで固定 するのをどちらを先に考えるべきなのかということですけれども、今の若い人たちを含 めて、年金不信と言われているような状況からすると、自分たちが受給世代になったと きには一体いくらもらえるのかということについて、やはりしっかりと将来に向けては っきりさせる。そのことを、例えば数年たったら、またころころ、ころころ変わって、 逃げ水のように落ちていかないようにそういう部分をしっかりさせることが非常に大事 ではないかと思います。  そういう意味では、老後生活のすべてを保障しろとは言いませんけれども、しかし基 礎的部分はしっかりさせる。 戦後焼け野原の中からここまで一生懸命先輩たちを含めてやってきて、経済大国第2位 の日本で老いていくということを胸を張って言える程度の社会保障の水準、年金の水準 というのができるようになったんだということを胸を張って言えるといいますか、そう いうことでありたいなあと思います。人口構成が非常に変わっていく中で、余り甘いこ とばかりは言えないとは思いますけれども、しかし、給付の水準といいますか、そうい うことについてしっかり抑えた上で、その負担は、私の意見は少々の負担はみんなでか ぶるといいますか、どうそれを乗り切っていくのかという方向で議論を詰めていくべき ではないかと思います。  数年前まで月収の3割の負担は国民的合意というふうなところがあったはずなのに、 今や経済がそこまで疲弊しているというのはよくわかりますが、圧倒的に全体のムード が、負担はこれ以上はとてもできないという声が今余りにも強過ぎることについては、 一体あの合意は何だったのかなというふうに感じますので、もう一度しっかり給付の水 準ということについて考えるべきではないかと思います。そのときに生計費を積み上げ た部分の絶対額的な給付の水準の検討ということと、もう一つは、先進諸外国での、と りわけ総報酬ベースの手取りの、いわゆる代替率が直近で各国でどうなのかということ については、もう一度この審議会の中と同時に、広く国民にもオープンにする。日本の 年金の水準が今現在はどうなのかということについて、しっかり情報を開示するといい ますか、知らしめるということについては必要だと思いますので、代替率の問題と絶対 額の水準の問題はぜひ抑えて考えるべきではないか。一切見直しまかりならんとは言い ませんが、全体のムードの中で、何か当たり前といったムードだけで流されることにつ いては非常に慎重論で臨むべきではないかと考えております。 ○会長  H委員、どうぞ。 ○H委員  少子化・高齢化のもとで、さらにまた予定利率を下げざるを得ない。多分そういうこ とだろうと思いますが、そういう経済事情のもとで、若年者の負担を大きくしないため には、例えば賃金スライド等をやめたりして、給付を何らかの形で下げざるを得ないと いう部分については、おおよそ国民的な理解を何とか得られるのではないかと思います。 しかし、将来の給付を下げておいて、一方、保険料を上げていくだけでは大きな抵抗を 生むと思いますし、理解も得られないと思います。今の政治状況からしても、まず国会 は通らないのではないかと率直に言って思います。  では、どうすればいいのかということになるわけですが、私はこのことばかりにこだ わっている感じでありますけれども、先ほど来議論がありましたように、基礎年金部分 への段階的な国庫負担の引上げか、ないしは、その約束といいますか、そういうことの もとに、厚生年金の保険料負担の引上げをできるだけ抑制するという方向を打ち出して いくことでないと、まともにならないのではないか、こんなふうに思っています。 ○G委員  この件について発言してないので、少し発言しておきたいと思うんですが、今日のよ うな経済の疲弊状態がある中で、かなり先のことを検討していると言いながらも、まと め方によっては現実の受けとめとしては国民1人1人は相当のインパクトを受けます。 給付と負担の調整について、どういうふうに最小限のものに食いとめるかということか らすると、先ほど年金局長が大枠の議論をしてほしいと話をされましたけれども、私は 当面相当ミニマムな調整にすべきではないかと思っています。  先ほどS委員の方から、前回改正時は月収の30%が負担の限界云々の話ございました けれども、少なくともこの問題に関しては、前回マイナスアルファくらいの考え方が妥 当なのではないか。そして、これまで検討してきたさまざまなテーマの中から、いろん な手法が考えられるし、それによって受給の調整をするということを考えようというわ けでありますから、先ほどから委員の中から出ましたように、単にA案というように、 案がこれしかないということではなしに、さまざまな手法を積み上げて、最終的には給 付と負担のぎりぎりの選択をすべきではないか、このように思っております。  それから、もう一つは、私のようにどちらかというと、恵まれた企業の中で生活をし ている人間から見ると、今日の話は何となしに見えるわけであります。関連の中小企業 で働いていて、退職金も大して出ないなかで老後を迎えている人もおられるわけですか ら、こういう場はマクロ論議でいいのかもしれませんが、ミクロの老後生活の格差とい うものについては、相当慎重に実態をとらえた上で将来のあるべき論というものを考え ていくべきではないかということを御意見として申し上げておきたいと思います。 ○F委員  先ほど年金局長が少し大枠の議論をしてほしいというお話ありましたけれども、恐ら く5つの選択肢に沿って、皆さんどういう御意見でしょうかということを聞きたいんだ ろうと思うんですけれども、何となく5つの選択肢のうち何案がいいというのは、私ど もの立場からはちょっと言いにくいという感じもあるんですけれども、私、率直に言い まして、L委員がおっしゃったD案、水準はC案で、保険料はD案、これはちょっとわ かりにくいですし、恐らく成り立たないんだろうと思うんですね。結局A、B、C、D Eというのが保険料の水準で一応分けられるとしますと、企業の方が、今の日本の経済 こういった状況の中で、これ以上は負担しきれないよというお気持ちはよくわかります が、それなら給付全体を、給付の総額を4割カットというのが、国民的な合意が得られ るかというと私は現時点では無理だと思いますね。そうなりますと、A案という人はな いでしょうから、結局はだんだん絞っていきますと、厚生省の選択肢のペースに乗っち ゃうわけですけれども、恐らくあの選択肢の中では、私、B案か、C案が恐らく基本的 な考え方になるのではないだろうかと思います。  それから、先ほどちょっとおっしゃいましたけれども、年金制度は社会保障の一環で すから、所得再配分の機能はなくちゃいけないんですが、所得再配分の機能というのは 今までの体系では、下は基礎年金でフラットにする、上は保険料なり、掛けた金額に応 じた年金を出すということで、実は所得再配分の機能を持たせているので、これから給 付水準を下げるときに、報酬比例部分だけ下げる、収入の高い人についてはうんと下げ る、低い人は余り下げないというようなやり方をとるのは、これはやはりよほど考えて やらなくちゃいけないのではないかと思います。給付水準を下げるときに2階部分だけ を下げて、基礎年金をそのままにしておくのは、私は今までの体系からいうとちょっと どうかなという感じがしないでもない。それはそれで絶対おかしいということではあり ませんので、皆さんの合意がそういうことであれば、やむを得ないと思いますけれども 基礎年金は下げずに報酬比例部分だけ下げるのは、私は避けた方がいいのではないかと 思います。 ○P委員  厚生省の選択肢が、大体2割とか3割とか、給付水準を下げるというのはいつごろの ことを考えているのかよくわからないんですけれども、日経連が考えております給付水 準についての考え方は、資料の1ページの中ほどにありますように、中長期的になだら かに2〜3割程度削減するということでありまして、中長期的という言葉の内容は、大 体20年ないし30年かけて、長長期的な考え方であります。先ほどQ委員がおっしゃいま したように、急に2割とか1割ということではなくて、私は20〜30年かけて、2割ない し3割の給付水準の削減は大体賃金スライドをやめれば、それだけで達成できるのでは ないかというふうに考えております。20年ないし30年は中長期的というのは、やや拡張 解釈かと思いますけど、考え方としては、それぐらいのレンジで考えておることを申し 添えたいと思います。 ○L委員  F委員が私のことを言われましたので、気持ちは出せるものなら出したいということ なんですが、出せないのが現状だということを申し上げているのであります。  それから、先ほどS委員が、前回は最終保険料率30%で国民合意があったと言われま したけれども、平成6年の改正に向けて恐らく平成4年、5年に議論をしているわけで すね。平成4年、5年の日本経済のその時点における中長期的な見通しと現時点におけ る日本経済の中長期的見通しについては、全体的な状況も悲観的にならざるを得ない。 それから、税制あるいは健康保険、介護保険等の条件も変わってきてますので、そうい う意味で現時点で3割の合意があったのではないかということはとても受け入れられな い。現在は少なくともこれ以上の負担は耐えられる状況にないということであります。  そしてF委員言われましたように、4割について国民合意が今得られないと申しまし たけど、P委員が言われましたように、350兆円なり430兆円の、積立不足をどうするか ということでありますから、中長期的には相当の調整をせざるを得ないと。こういう中 で、かつ先ほどから事務局に確認しておりますけれども、足元の既裁定者の従前額は保 証すると。それから新規の裁定者、目の前に迫った、こうい人についても、先ほどお話 があったように、新旧水準のどちらか高い方で額は決めていくと。こういう中で、賃金 スライドをどうするか、物価スライドをどうするか。こういう議論で議論の仕方をうま くし、かつ説明もうまくしていけば、それはあり得るのではないか。 したがいまして、先ほどD案の負担でC案の給付がコンセプトとしてない。これは私 もそうだと思います。ただ、D案にあるような負担で、例えばA案で23万円という標準 のものは、18万円ぐらいのことはあり得ると事務局は言っていますので、そういう意味 では議論をしていただきたいと思います。 それから、E委員言われました魔法の弾丸などはなくて、日経連の事務局の中は、こ の『年金白書』の中にあるデータをおおむね使って数字を出しているものと思われます ので、その辺の確認を事務局並びに日経連としてもらえれば、よくわかるのではないか と思います。 ○E委員 魔法の弾丸の続きではございません。私が申し上げたいのは、むしろF委員の議論の 続きでございまして、給付水準の削減を2階部分で考える場合にやはり注意しなければ ならないのは、2階部分は所得再分配の要素はあまりございませんが、じゃあ、削りっ ぱなしでいいのかということになってきますと、これはやはり老後の生活保障という点 では所得比例年金は非常に重要なんですね。これは厚年基金の問題であり、それから、 企業年金に対する税制援助を一体どう考えていくかという問題ですから、その点はひと つお忘れなく御議論願いたいということだけ申し上げておきます。 ○J委員  日本の年金の給付水準の議論をするときに、数字をもうちょっとはっきり出してもら った方がいいのではないかと思うんですけれども、日本の賃金格差が、標準報酬でもい いんですが、賃金格差が国際的に非常に少ない国だということは大体異論がない話だと 思うんですね。現在の年金の給付水準の決め方は、さらにその中で標準報酬を59万円で すか、上限を抑えていますね。ですから59万円以上の月収のある人にとっては、もとも と物すごく上を抑えてあるわけですね。それに基づいて、平均のところで62%ぐらいの リプレースメントレートになる計算をしてますから、常識的に言うと、ほかの国の数字 を見ても多分そうですけれども、賃金の格差が今程度の日本にあるのもけしからんとい う話になるなら別なんですけれども、日本の賃金格差は相対的にほかの先進国よりは非 常に少ないという前提の上で、かつ標準報酬の上限が非常に低く抑えてあって、それで 平均では62%ぐらいということになると、相対的に言うと、低所得者のリプレースメン トレートは国際的に見て私は割に高い方だろうと思うんですね。  たまたま私はことし、自分の年金の裁定額を見てびっくりしたんですけれども、私の 辺だと2割ですよね、年金だけだと。退職金は別ですけれどもね。国際的に見るとどう なのか。多分税制やなんかのこともありますけれども、企業年金や退職金含めても、私 の辺はリプレースメントレートは相当低いんじゃないかと思います、国際的に見ると。 おまえ、それだって、ぜいたくしているからええじゃないかといえば、そういう議論は 十分あるんですよね。だけど、公的年金というのは、確かに働いたときの所得に基本的 な部分は比例しなければいけないんですけれども、同時に再分配もやりますから、本当 にリーズナブルな公的年金の水準というのは、難しいから今みたいな水準になっている のだと思いますけれども、私はやはりそういう日本のリプレースメントレートの全体の 構造をある程度、客観的に見定めて議論しないといけない。日本は収入が低い方を非常 にいたぶっている制度だという、もし仮定がどこかにあるとすれば、それはちょっとお かしいのではないか。相対的にはむしろ中以上の所得層のリプレースメントレートが割 合に低いんじゃないかなという印象ですが、間違っていたら、どうぞ訂正を。違ってま すか。 ○C委員  端的に言うと、私はC案。それで財政学者というのはそういうものだと考えている。 ただし、私は重要な点は、今の経済危機というのは、どういう形で起きているかという と、別の機会に1930年代のアメリカのことを調べた論文があるのですが、みんな将来に 不安なんですね。不安というのはどういう意味で不安かというと、どこまで落ちるかわ からないという不安ですね。  私は現在の日本の社会保障制度というのは、日本中の人は大体そういうふうに予想し ていると思いますが、給付の水準はやがてある程度相対的に下がることは、これはそう いうものだと、やむを得ないと。負担もある程度上がる。 それもやむを得ない。問題は、現在の日本政府が、ある程度年金水準は下がって、負担 水準は上がっても、しかし、ここまでは確実であるという線を政府が出せるか、出せな いかが非常に重要な点です。したがって、年金についても、ある段階で積立金は相当の 誤差があってもちゃんと残っていますと。ということは、要するに単純に言えば年金は 破産しないということですね。  そういうメッセージの方が今重要で、レベルは少し下がるということは、私はすべて の人が予測しているのではないか。ちょっと言い過ぎですが、現在そういうものとして みんな生活設計を立てているのが現実です。社会保障というのは、確実にここまで保障 するというのが非常に重要でして、そういうものとして年金は非常に重要ですし、医療 保険も重要ですし、介護保険も重要です。そういうもののパッケージが、あと20年ぐら いたったときに、生活水準のここまでは保障できますよということを、年金審議会だけ でなくて、厚生省とか日本政府全体がそれを国民にはっきりと言うべきで、そこまで責 任を持ちますと。民主党も責任も持つと、共産党も責任持つと言うかもしれないんです が、とにかくその辺のところが、今の一番重要なポイントで、その辺をメッセージとし て、年金審議会は出すのがいいのではないかというのが私の意見です。 ○会長  大変いいお話が出ましたところで。 ○E委員  一言だけ。 ○会長  E先生どうぞ。 ○E委員  C委員の説に全くの賛成でございます。今アメリカの年金改革で一番重点を置いてい るのはその点です。 UFOよりも社会保障の方が確かなんだということを国民にはっきり認識してもらうと やはりこの問題です。  それから、もう一つ、先ほどのJ委員の話ですが、リプレースメントレートは、私も 興味を持ってでき得る限り調べてみたんですが、各国の数字でともかく信頼できるのは 年金種別の平均受給額だけです。あとは全部意図的な数字と考えていいと思います。な るべく安く示そうか、あるいは高く示そうかという動機があって、嘘だとは申しません よ。いろんな前提を置き、いろんな仮定を置いて計算された数字であると、これだけは 申し上げておきたいと思います。だから比較にならないです。 ○会長  A委員どうぞ。そろそろお開きにしたいと思っておりますので、よろしく。 ○A委員  さっきS委員からありました、保険料は月収の30%が限度というのが国民的合意とい うふうに言われたんだけれども、これは私の受けとめとしては、前回改正時点では、65 歳年金を確立するということと、賃金スライドを可処分所得にリンクする制度に持って いくということ等々であって、30%というものが国民的合意であったとは私は夢にも思 ってないわけです。率直に言って、当時の委員として恥ずかしいんですが、読み違えた のは、経済体質まるっきり変わっていたことについて、これは間違っていたということ と、人口構成がこんなに急激に悪い方向に変わる。 この2つははっきり読み違えていたわけでありまして、そういう意味では恥ずべき話な んです。しかし勤労者の方々も、30%に合意するということは、半分の15%は勤労者自 らがいつか負担しなければいかんということですから、とても職場の勤労者の合意にな っていたとは私は全く思ってないということを念のために申し上げておきたいと思いま す。 ○会長  そろそろ6時になります。ほかにぜひともという御発言があれば別ですが、もしよろ しければこの辺で。どうぞ。 ○N委員  給付水準の議論ですけど、確かに今の23万円というのはかなりある面では高いと思い ます。ただ中身を分析しますと、基礎年金部分のウエートがはるかに高いわけですね。 かつては厚生年金の場合、定額部分と報酬比例部分がフィフティーフィフティーだった わけです。そういう面で今の6万5,000円というのは、スタートの5万円から見ますと、 かなりある面では高く上がってきたという面があるのではないかと思います。  といって、これから6万5,000円の給付水準を額の面で切り下げられるかということに なりますと、B委員おっしゃったように、社会的に、あるいは政治的にもそう簡単に6 万5,000円が引下げられる問題ではないと思います。 もう一つは、どうも厚生省のいろんな全体の施策を見てみますと、介護保険にしまし ても、あるいは医療保険の一部負担の問題、高齢者医療のこれからの新しい制度改革の 方向につきましても、ある程度の年金を受給しているという前提でどうもいろいろ議論 しているような段階で、6万5,000円というのは、そう簡単には額としてなかなか引下げ られないのではないか。そうなるとほかの手法を考えざるを得ない。 それから、報酬比例部分のウエートがかつてよりはかなり下がっていると。6万5,000 円が余り下げられない段階で、報酬比例部分だけ乗率をさらに下げるのは問題で給付の 額の面で手をつけるのは相当難しいのではないか。 そうなると考えられるのはほかの手法、やはりスライド問題。特に賃金スライド。国 民年金の場合には賃金スライドではありませんけれど、政策スライドでかなりのスライ ドをやっていますけど、これをある程度厚生年金を含めてストップする。これでかなり の財源が出てくると思いますし、それ以外の支給開始年齢の問題。65歳までの別個の給 付を廃止するとか、長期的に65歳を67歳にするとか、そういう問題で対処するのが1つ の方向だと思います。また、少なくとも高齢者の在職年金について、60年改正の前には 65歳以上の高齢者も厚生年金に入っておって、実際保険料払って、そのかわり支給額は 一部停止していたわけです。だから少なくともそれは既得権の侵害にもなりませんし、 これは少なくとも高齢者につきましては、65歳以上の在職者も保険料を徴収する、一方 支給は停止するというぐらいの措置はぜひとも必要であると思います。 それから、事務局が言われました負担の限界をどう考えるかという議論ですが、この 段階でA案の最終保険料34%というのはだれも納得しないと思いますし、少なくともB 案の30%以下、さらに踏み込めれば、もっとそれ以下に考えるというのが必要であろう と思いますが、それはいろんな議論の中で、優先度の高いものからコンセンサスが得や すいものを逐次取り上げていくのがやっぱりいいのではないかと思います。 ○会長 N委員のお話を最後に、この第2セッションはこれで終わりにしたいと思いますが、 よろしゅうございましょうか。               (「異議なし」と声あり) ○会長  本日の資料は今までと同じように、すべて公開するということでよろしゅうございま すか。               (「異議なし」と声あり) ○会長  それでは、本日のこれからの予定及び明日の予定について、事務局から御説明をお願 いします。                 (事務局連絡) ○ 会長  それでは、これで閉会します。 連絡先 年金局企画課須田(3316)