98/08/21 第12回厚生科学審議会先端医療技術評価部会議事録        第12回厚生科学審議会先端医療技術評価部会議事録 1.日  時:平成10年8月21日(金) 14:00〜15:30 2.場  所:中央合同庁舎第5号館 共用第9会議室 3.ヒト組織を用いた研究開発の在り方に関する専門委員会からの報告について 4.出席委員:高久史麿部会長     (委員:五十音順:敬称略) 軽部征夫 柴田鐵治 (専門委員:五十音順:敬称略)      入村達郎 加藤尚武 金城清子 廣井正彦 松田一郎 森岡恭彦 山崎修道   専門委員会説明者:黒川委員長 ○事務局  それでは定刻になりましたので、ただいまから第12回「厚生科学審議会先端医療技術 評価部会」を開催したいと思います。 本日は曽野委員、木村委員、寺田委員の3名の委員が御欠席でございます。  また、本日の議題でございます「手術等で摘出されましたヒト組織を用いた研究開発 の在り方」について、専門委員会の黒川委員長にも本日は御出席いただいております。 それでは最初に、お手元の配布資料につきまして、事務局から確認させていただきた いと思います。  まず議事次第に続きまして資料1でございますが、「手術等で摘出されたヒト組織を 用いた研究開発の在り方について」専門委員会の報告書でございます。  資料2は、説明用の参考資料でございます。  資料3〜7につきましては、当部会に対しましていただいております御意見等でござ いまして、資料3は、第8回開催時において宗教者の立場から生殖医療に関する御意見を 述べていただきました島崎光正様から、その時の御意見の続きとしました「体外受精を 巡って」というものでございます。  資料4「日本ダウン症ネットワーク」からの御意見でございます。 資料5「SOSHIREN 女(わたし)のからだから」からの御意見でございます。  資料6「卵子提供の倫理問題」ということで、加藤委員からの御意見でございます。  そして資料7「出生前診断の実態に関する研究」に対する意見ということで、愛児クリ ニック院長及びジェンザイム・ジャパン株式会社からの御意見と、それに対する研究班 からの回答でございます。  更に資料といたしまして、日本ダウン症ネットワークからのパンフレット、アンケー ト調査結果の報告書、日本ダウン症ネットワーク委員会で作成されました、「日本ダウ ン症フォーラム in きょうと」という冊子、そして最後に、前回の議事録を用意して いるところでございます。  以上でございます。不足な資料等ありましたら、お申しつけいただきますようお願い いたします。よろしいでしょうか。  それでは、以下の進行につきましては、部会長からよろしくお願いいたします。 ○高久部会長  本日は昨年12月10日に厚生大臣から厚生科学審議会に諮問がありまして、12月12日付 で厚生科学審議会会長からこの部会に付議されました「手術等で摘出されたヒト組織を 用いた研究開発の在り方」について、当部会に設置いたしました「ヒト組織を用いた研 究開発の在り方に関する専門委員会」で御議論いただきまして、その論点の整理が終了 したということですので、お手元にあります報告書について御議論、御報告いただいた 上で、部会として皆さん方の御議論をいただきたいと思います。  この議題につきましては、委員の皆様方から御了解を得ておりますので、公開という 形で議事を進めさせていただきます。  まず事務局から、報告書の取りまとめの背景についてよろしくお願いいたします。 ○事務局  それでは、お手元の資料1が委員会からの報告書で、1ページ目に簡単に背景がござ いますが、これでは少し簡便ですので、資料2の方の『「手術等で摘出されたヒト組織 を用いた研究開発の在り方について」(説明用参考資料)』の方を用いて御説明させてい ただきます。  まず1ページ目でございますけれども、今回取り上げられました、手術等で摘出され たヒト組織を用いた研究開発の目的と意義について簡単にまとめてございます。まずこ こで目的といたします第1番目は、医薬品の研究開発において非常に有用な情報が得ら れるという点がございます。1の(1)〜(3)に挙げておりますように、薬物相互作用の予 測、それから薬物の体内動態の予測というものが、ヒトでの臨床試験の前に情報として 得られることから、臨床試験の安全性なり有効性についての事前の検討が十分できると いうことがございます。そして、動物実験だけの情報にプラスしてこの情報が得られる ことによりまして、ヒトでの毒性の予測がより正確に予測できるという点がございます  第2点目として、ヒトの病因部位を用いる場合においては、疾病メカニズムの解明等に 寄与することができるということがございます。  例えば、そこの(1)にありますように、病態、薬物治療の最適化の研究、ヒト組織の継 代培養化の確立などが期待されるということでございます。  3点目に、環境化学物質においても同じようなことが使えるものと予想されます。 次の2ページ目に、具体的にどんな事例があったかということを参考に付けてございます が、まず1点目にありますのが非常に分かりやすい例でございまして、まさに薬の開発で カペシタビンというお薬ですが、この酵素が組織特異性ということで、がんの組織特異 性があるかどうかということが、薬として使えるかどうかという点で非常に重要な点で したが、これが動物で一般に用いられますマウス、ラット、イヌでは効果がないという ことでしたが、ヒト、サルの組織で酵素が組織特異性ということがあり、薬として使え る見込みが出たということで改善がされたという事例がございます。  その他に薬物相互作用に関しては、いろいろな方面では使いますけれども、ここでは 免疫抑制剤の例を挙げまして、非常に多彩な相互作用を持つお薬の全般的に広く調べる ことができた事例を御紹介しております。  次に3ページ目をお開きいただけますでしょうか。横になっておりますので、少し見に くうございますが、ここでは「諸外国のヒト組織の研究開発利用に関する状況」として 簡単にまとめさせていただいております。アメリカ、英国、フランス、カナダの事例で ございますが、それぞれ法規制として、研究利用に関しての規制があるということがそ こにごらんのとおりでございます。  移植・研究等への利用の目的の違いによる取扱いについても、特にないということか ら、それらの法規制を御紹介させていただいております。 具体的な利用に関しては次の4ページ目をお開きください。こちらの方で、具体的にどの ような運用でこのヒト組織が活用されているかという点を一覧にしております。  まず「金銭の授受」の点からは、いずれも規定をしております米、英で記載してござ いますように、実費の経費ということで、英国では組織提供の誘因として働かない妥当 な金額と書いておりますが、そういった形でなされているということでございます。  そしてその次に「ヒト組織の入手方法」ということで、我々の報告書でも取扱ってい る内容でございますが、アメリカでは非営利のバンクと言うところが仲介して、必要な 研究者の方に流れる形。これは英国でも同様でございます。カナダにおいても米国のバ ンクと同じような形でやられているということでございます。  フランスにおいては、行政機関の許可を受けて、保健施設、非営利団体が行っている という事実がございます。  「その他」に関しまして、米国の状況として書かせていただいておりますのは、医薬 品の開発においてFDAがヒト組織を用いた研究というものをガイドラインでもって推奨し ているという事実があるということが記載してございます。  英国では、倫理規定がナフィールド委員会と言うところで規定されております。  またフランスにおきましては、ヒト組織を用いる際に事前審査が必要という点を決め ております。  カナダにおきましては、3者委員会というMedical Research Council of Canadaなど の合同の委員会の中で、ヒト組織研究利用に重要な点として、インフォームド・コンセ ント、個人情報の保護などが必要ということをはっきり言っているという事実がござい ます。  先に進ませていただきまして、こうしてヒト組織の利用というものが進んでおります アメリカでの状況でございますが、5ページから記載してございますのが、アメリカでの 研究利用を目的としたヒト組織関連のバンクの状況というものを具体的に御紹介いたし たいと思います。  アメリカで2つの事例を御紹介しておりますが、まず最初の5ページの事例は、NDRI (National Disease Research Interchange)というものでございますが、ここでは 特に組織等の保存はしないで事務手続を行うという組織となっております。  具体的な運用等につきまして特に(4)のところをご覧ください。「組織を入手するため の事前審査」といたしまして、研究計画、倫理的妥当性について審査委員会による審査 が行われるということで、その目的としては学術研究、開発研究、教育目的に限定して いるということがございます。  そして費用にしましても実費のみ。それから提供者へのインフォームド・コンセント というものを規定しているということがございます。  次のページにまいりまして、IIAM(International Institute for the Advancement of Medicine)ということで、こちらでは臓器移植に不適応とされたヒト組織及び臓器を供 給するということを目的としておりまして、一部にはヒト肝組織の供給ということで、 製品化されたもの、肝細胞ですとか細胞分画、スライス状とか、酵素の測定等のほかの 仕事もしておりますけれども、そういった組織でございます。こちらの組織においては 臓器の保存、配送まで手掛けているということでございます。こちらにおきましても、 先ほどのバンクと同じように事前に計画等についての審査委員会での審査、実費のみの 徴収であること、それから提供者へのインフォームド・コンセントが必要というふうに 規定がございます。  7ページにまいりまして、日本での状況でございますが、日本では臓器移植に関する法 律の規定を御紹介させていただきたいと思います。1の真ん中あたりの「臓器の移植に 関する法律施行規則」によりまして、移植ができなかった臓器に関しては、臓器の処理 は焼却して行うということで、適合しなかった臓器、移植できなかった臓器については 焼却をしなければならないということが規定されているということでございます。  その他、死体解剖保存法等によりまして、利用についての規定があります。  それから8ページ目にまいりまして、医学及び歯学の教育のための献体に関する法律 それから角膜・腎臓移植に関しての法律等の具体的に我が国で規定されている法律につ いてそこに記載してございます。  9ページにつきましては、死体の保存に関しての規定ということで、これも局長の通達 を記載してございます。これは処分等の問題ということの許可に関しての規定になって ございます。  具体的に10ページにまいりまして、我が国の現状ということで御紹介させていただき たいと思います。  「我が国におけるヒト組織の研究開発利用に関する状況」ということでございまして 現在ヒト組織関連の研究開発実施状況で把握されているものとして御紹介いたしたいと 思います。  1番にございますHAB(Human and Animal Bridge Discussion Group)協議会、これは 12ページから具体的な資料等を添付させていただいておりますけれども、概要について はここで御説明させていただきたいと思います。1992年に発足した任意の団体でござい ます。ここでは1996年から、先ほど御紹介いたしましたNDRIから臓器移植不適合臓器に 関しまして入手して研究機関に配布するとともに、ここの附属研究施設で研究がなされ ているということでございます。活動の内容としては、情報収集ですとか、実際に先ほ ど申し上げましたヒト肝臓の入手、それから研究活動として相互作用等の研究をなされ ているということでございます。  2点目に、日本産科婦人科学会の会告ということで、11ページ目に御紹介させていただ いておりますが、死亡した胎児、新生児等の臓器を研究に用いることに関しては、基本 的には死体解剖保存法に従いますが、期待される研究成果は極めて大きいということ、 それからそれ以外にも方法がない場合に限定すべきということ。研究者が医師であるこ と。そのほかに、プライバシー等が十分尊重されなければならないといった点が述べら れております。  もう一度10ページ目にお戻りいただきまして、3点目にヒト由来の試薬として、これは 組織でなくて入手できるものとしては、海外組織のバンクで調整したものヒト肝ミクロ ソームが、試薬として入手できること、もしくは薬物とヒト肝細胞のインキュベーショ ン(培養)という、研究自体を委託するということで実施することが可能ということが ございます。  以上、12ページ以降には、具体的なHAB協議会の組織についての説明を付けてございま す。  以上でございます。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。引き続きまして、専門委員会の黒川委員長から、議 論の経過とか、専門委員会における検討結果の概要について、よろしくお願いします。 ○黒川委員長  それでは、お手元の資料1というものに沿って御説明させていただきたいと思います。  今、説明があったとおりでございますけれども、まず1ページ目の1「背景」について 5つの○がありますが、特に、この場合はいろいろなゼネラル・ディスカッション(一 般的な議論)をまず5回のうちの最初はかなりやったわけですが、今回はヒト組織を用 いた研究開発の在り方ということで、新医薬品の研究開発ということにある程度目的を 絞りました。それでないといろいろなことがありますので、特に、新医薬品の研究開発 では、今、言いましたように薬物の代謝や反応性にヒトと動物の間の種差があるという ようなことから言うと、もしこういうことができれば、実際の前臨床から本当の臨床に 入る前にある程度いろいろな予測ができるような医薬の相互作用、あるいは動物では予 測できなかったようなことをある程度スクリーニングできるというようなことから言う と、今、言いましたように欧米の新薬の開発ではそういうものが使われているという現 況にかんがみれば、当然ある程度のこういう事柄についての整備をすべきであろうとい うことで、こういうものが書かれているということであります。  したがって、そこのところにつきましては、4番目の○になりますが、ヒト組織を用い た研究開発を進めるに当たりましては、提供者の意思の確認、倫理的側面の検討が不可 欠でありますので、その辺の手続の明確化をしたいというのが我々の委員会の骨子にな ったと思います。  そういうわけですので、検討の経緯につきましては、次のページに4つの○がありま すが、この委員会では医薬品の研究開発における有効性・安全性評価のためにヒト組織 を用いる場合について、また特に欧米では主要な供給源である、今、言いましたように 移植不適合、脳死からのいろいろな移植が行われるわけですが、そのプロセスで実際に 臓器をいただいたわけですが、実際にいろいろな理由で使われないということがありま すので、そういう移植不適合の組織が使われている事例が多いわけですが、我が国にお いては法令によって使用が不可能であるという現状がありますので、手術等で摘出され たヒト組織の利用について検討を行うことにいたしました。  しかし、議論としてはそういうことに限らず、一般的にヒト組織を用いたほかの研究 にも関係すると思われることから、大学等の研究者が行う研究や、ヒト組織そのものを 医薬品等の材料として用いる研究、また例えば死体、あるいは移植不適合の臓器等を用 いる研究も一応視野に入れた検討を行いまして、ヒト組織の利用にかかわる普遍的な問 題を一応洗い出してみたいということをいたしました。  第1回を2月に行い全体として5回行いましたが、そのうち2回目には日本製薬工業協会 それから今、御説明がありましたHAB協議会という実際にアメリカで使われなかった移植 不適合の肝臓を輸入して、それを一応供給してくれている団体があるわけですが、その 両方から意見をいただきました。  それからこの委員会の内容の審議でありますが、議事録は全面に公開する。意見を聴 取する場合につきましては、特にHAB協議会、それから日本製薬工業協会の場合には公開 でヒアリングをさせていただきました。  第4回の委員会で、「手術等で摘出されたヒト組織を用いた研究開発の在り方につい て」という中間メモをつくらせていただきましたが、それをインターネット上で公開し て、広く国民一般の意見をいただきました。それを更にその次の検討に、その項目も加 えたということであります。  そうしますと、インターネットで幾つぐらい来たと思われますでしょうか。実は何千 と来たわけではなくて、28でありますが、製薬企業や学会、大学の方、あるいは一般の 方からも随分ありまして、そのうち、早急に結論を出すべきではないというような意見 もありましたが、皆さん肯定的な意見で、その条件をしっかり整備してくださいという 意見が多かったと思いますが、主にこれをまとめると、インフォームド・コンセントを きちんと徹底すべきであるとか、特に、ヒト組織の取扱いについては、アメリカと同じ ようなバイオ・セーフティー(生物学的安全性)のレベルをきちんと規定することが必 要である。あるいはヒト組織利用に関する情報公開を推進しよう。 それから、公的な 組織での収集、提供機関の設置、その透明化を確保すべきである。あるいは組織の収 集・提供機関の監視制度、モニタリングの制度の整備をする。検討の対象とするヒト組 織を明確にしてほしい。検討の対象とする研究を明確化すべき。あるいは移植不適合臓 器の有効利用を推進すべきであるというような幾つかの御意見がありまして、それにつ いても検討させていただきました。  さて、お手元の資料の2ページ3に行きますと、現在のヒト組織を用いた医薬品の研究 開発の現状は、今、事務局の方から説明があったとおりでありますが、アメリカでは移 植不適合の臓器に由来するものが中心になって行われておりまして、新薬の開発に非常 に役に立っているということが1つ。それからイギリスの場合でも、ナフィールド委員 会の方で一応のガイドラインができ上がっているというふうになっています。  次のページに進みます。日本の場合は、今、言いましたようにHAB協議会ということが アメリカの輸入という格好でしているわけですが、そのほかに肝臓のミクロソーム等が 試薬として輸入販売されているという現況がありまして、これらのソースから、製薬企 業の方では新しい医薬品の開発に一部これらを使っているという現状があります。  そういうわけですから、どうしてもある程度、特に新薬の開発は今ICH(医薬品基準の 国際調和)ということで、日本とアメリカと欧州全体が同じルール、同じスタンダード でやっていますので、どうしてもその辺は外注をせざるを得ないという場合も出てくる ということが日本の製薬企業からはかなり強い意見が出ておりました。  4番目ですが、医薬品の研究開発におけるヒト組織利用の必要性ですが、今、事務局か らもあったとおりで、新しい医薬品の研究開発におきましては、勿論動物、いろいろな 合成、あるいはテストをした後、動物を用いた前臨床試験が行われて、その有効性、安 全性が確認された上で、いよいよフェーズ1と言われる臨床試験に入るわけですが、し かし、そこで新しい薬物に関しては、ヒトに移したときにいろいろな種差その他の問題 それからほかの薬とのインタラクション(相互作用)ということがありますので、そう いうことから言うと、思いがけないことも起こることがないわけではないということで ヒト組織を用いた試験を行うことによって、いろいろな有利な点が確かにあるというこ とは間違いないことであります。  もう一つは、それでは全部外注でいいではないかということもなくはないのですが、 やはりいろいろな体内動態、それから薬のインタラクション、特に、肝臓の場合は人種 差もあることもありますし、特に御存じのようにp450の酵素などというものはかな り違うわけで、それによって大きく影響を受ける薬剤もありますので、特に、できれば 日本人にとってより有効性と安全性の高い医薬品の創薬ということからいっても、日本 でもそういう制度ができるようにしておいた方がいいということは議論の余地がないと ころではないだろうかと思われます。  それから、動物実験ではできないというか、しないことですが、一番下の○ですが、 医療の現場では患者さんは単剤だけ使っているわけではなくて、いろいろな薬剤を同時 に使っていることがよくありますので、これをどの程度までスクリーニングするかは別 としても、特に、p450エンザイム(酵素)とか、そういうことになりますと、薬剤 のお互いの相互作用ということをある程度予測するということは必要でありまして、こ のような場合においてもヒト組織を用いて薬物の代謝や反応性を検討するということは ある程度の予測を持つことからいって、臨床治験に入ったときの危険を回避できるとい う有利さがあるということでございます。  4ページにまいります。先ほど言いましたように、今度から日米欧では新薬の開発は共 通の基準に従って行われることになりますので、欧米などの開発で行われているような ことにつきましては、日本でもできるだけ制度を整備した方がいいということでありま して、この点からいってもヒト組織を用いた研究開発を推進する必要があるということ でありますので、この辺を整理したいということであります。  今回は一般的な議論だけをしましたが、ヒト組織の研究開発を推進するということは ヒトの蛋白質をヒトの細胞に製造させるとか、いわゆるバイオテクノロジーがどんどん 進んでいますので、それ以上のことがどんどん進んでいく可能性もあります。そういう ことがひいては画期的な新しい医薬品、人工臓器などになり得る可能性もあるわけです が、そのようなことをするのにもこういうことの議論というのは更に将来的な1つのス テップになり得るのではないかと思います。そういうわけですから、ヒト組織を研究開 発に利用するということは、保健医療の向上に必要不可欠なものでありまして、その利 用については公明でかつ厳正な一定の条件を確立することは当然でありまして、我が国 でも積極的な推進を図るべきであろうというのが委員会の結論でございます。  さて、5から実際にそれではどのようなことをするかということでありますが、これ はかなり総論的なこともございまして、具体的にこういうふうなものをつくりましょう という話まではいかないわけですが、5から説明させていただきます。  1番目の○ですが、ヒト組織の収集・提供にあたっては、人体の組織や器官などを利用 するということが日本人はどうかなというふうに思うのは当然でありますので、日本人 の感覚に配慮するとともに、ヒト組織の利用に対する不信感を持たれないような配慮を すべきである。非営利の組織収集・提供機関によって、製薬企業を含めた研究開発を行 うものにヒト組織を提供するというシステムを構築したい。関係組織の協力の下に、こ のようなヒト組織の収集・提供を行う非営利の機関を前向きに検討して、設置するとい うような方向に持っていってほしいということであります。  もう一つは、医薬品の研究開発にヒト組織の供給を今後も海外に頼っていくというこ とは、国際的な日本の責任のシェアリングということからいっても余りよくないのでは ないかということですので、日本でもできるだけそういうふうにしたい。  組織ですが、いろいろな組織が人によってはいろいろあるとは思うのですが、一番多 く使われているのは肝臓のようでありますが、欧米では移植不適合臓器が中心ですが、 日本ではそういうことが今、法律ではできないようになっていますから、移植の不適合 は焼却するということに法律でなっています。これは3年後の見直しのときに改定される 可能性はありますが、現在のところは分かりませんので、量は恐らく少ないとは思われ ますが、日本でも利用が可能だと、入手が可能なものとして手術で摘出されたヒトの組 織を利用してはどうかという議論がありました。まずそこから始めようと。これは勿論 その組織を取るための手術ではありませんから、手術で摘出された組織は当該医療行為 が適正に行われた上での利用が前提でありまして、したがって、術前に詳細な説明によ って医療行為が適切に行われることについての担保をしなくてはいけない。それから提 供者の理解と同意を得る必要があるとともに、提供者、その家族等の要望において、当 該医療行為が適正に行われたかについて情報を開示できるようにしておきたいというこ とであります。  ヒト組織としては、手術等で摘出された組織以外にも生検で得られた組織、胎盤等も 研究開発に利用できるとは思われますが、そのような組織についても適正な手続を踏ま えた上で利用が図られる体制の構築が必要であると思われます。  移植不適合の臓器につきましては、現在の法律上では研究開発に利用することは不可 能でありまして、これは今、言いましたように3年後の見直しの際に、ある程度これを 研究開発できるように検討するという項目を入れたいというふうに思います。実際に臓 器移植法の専門委員会の方では、これについても一応の議論は少しずつされております  さて6番目にいきますが、「ヒト組織を研究開発に利用するために必要とされる要件」 でありますが、「組織を摘出する際の説明と同意」であります。どのような理由があっ ても、ヒト組織を研究開発に利用するためには組織を摘出する先生、ドクターが医療の 専門家でない提供者にも理解できるように十分な説明を行った上で文書による同意を得 る。しかもそのときには適正な医療行為があるわけなので、こういうことをするために 余分に臓器を取るなどということは勿論するわけがないし、してはいけないわけですの で、その辺についても十分に説明して、同意を得る必要がある。それは勿論その先生が 使うわけではなくて、非営利の組織収集・提供機関に提供させていただきたいというこ とであります。しかも、提供する患者さんの同意の有無や、当該手術の実施やその内容 に影響することはあってはならないのは当たり前でありまして、それについても患者さ んに十分説明してくださいと。  2番目にいきますが、提供者からの同意は、基本的には医療行為の前に得るべきだとい うのは当然でありますが、実際診療しているときには、病変部位を摘出した後に、実は その当該の病変部位の学問的重要性が明らかになって、いろいろな研究の対象になるこ とはあり得るわけなので、そういうときにも一応提供者の理解と同意を得られれば、そ ういうふうに使っても結構ではないだろうかという議論になりました。  子どもの場合どうするかということですが、これは余り深入りした議論が十分できな かったのですが、本検討とは別にその在り方を検討する必要があるということで、現在 はできるだけ早い時期を見て、そういうことができるようにしたいということで、現在 子どものことはまだ検討する必要があるということで終わらせていただきました。  (2)の事前の審査と事後の評価でありますが、これは先生方考えられると分かると思う のですが、倫理委員会がどこにあるかということになりますが、まず患者さんがおられ て、適正な医療行為で、例えば肝臓の部分切除をするような場合、医療機関ですから医 療機関には当然審査倫理委員会がある。そのほかに組織を収集して、提供する機関にも 勿論なくてはいけないわけですし、それから研究開発を実施する場所、これを使わせて もらいたいという場所にも倫理委員会が必要であるということであります。その構成は 勿論医学の専門家でない人も入れてほしいということが第1。  第2番目は、医療機関の倫理委員会について、どういう性質のものだろうかということ を議論いたしまして、提供者からの同意の取り方及びその文書様式、研究計画などの倫 理的妥当性について事前審査を行うとともに、定期的な事後評価を行ってほしい。  2番目に、公的なある程度第三者的な組織、収集・提供機関の倫理委員会は、倫理と審 査委員会、少し性格が違うのではないかということで、研究開発機関の方からいろいろ な申し込みがあるわけですが、その申請について倫理的科学的妥当性についての事前評 価を行うとともに、定期的に研究の進行状況、研究の結果などについての報告を求めて その妥当性について評価を定期的に行っていくべきであるということであります。  研究開発実施機関の方でも倫理委員会をつくっていただかないといけないということ でありまして、倫理的な妥当性についての審査を行うとともに、科学的に意味のない研 究が行われないよう、研究目的、研究計画、事前審査、研究の進捗状況、研究結果など の定期的な事後評価を行うということであります。  さて(3)に、今度はこのような研究開発の経費の負担でありますが、あくまでも提供さ れる方は善意の意思による無償の提供であるべきでありまして、利益の誘導があっては ならないということであります。  しかし、実際には手術で摘出されたときも、手術の外科の病棟、外科の手術者の現場 から見ると、やはりそのためにいろいろな組織を適切な状態で収集・運搬し、検査・提 供するには常に余分な負担が掛かるということは確かなのでありまして、そのための経 費については利用者負担ということになります。ディスポータブル(使い捨て)のいろ いろな器具その他、サプライ(消耗品)を使うわけですから、そういうことは当然あっ ていいということであります。  組織に関する情報の保護及び公開について議論いたしまして、提供者個人が特定され 得るような情報については厳重に管理されて、漏れることがあってはならない。  ただ、病名、年齢、性別等の研究開発に必要な情報で、かつ提供者個人が特定されな い情報については、提供者からあらかじめ同意を得て、研究開発を行う者に提供するこ とができるようにするということであります。  それから、ヒト組織を用いた研究開発によって得られた成果、結果は一定期間を経た 後、公表するものとする。一定期間というのは、特に新薬開発だとパテントその他の問 題がありますので、一定期間ということであります。恐らくこういうものは、新薬の申 請に係れば勿論出てくると思いますが、途中で諦める場合もあるわけで、その場合も一 応そういう時点で、ある一定の期間を経た後、公表するという意味であります。  その他検討すべき事項といたしましては、ヒト組織を実際に非常にうまく使えるよう にするためには、保存方法、輸送方法、研究開発に利用できるかどうかの判定基準。や はりフレッシュなものがいいといっても、実際の医療の現場ではプライオリティー(決 定権)は患者さんにあるわけですので、そういうことから言うと、どのようなところま でが使えるかというようなことのある程度の判定基準作成のための研究が必要ではない かということであります。  それからヒト組織を利用する研究者が研究開発を行うに当たっては、研究者の安全の 確保というのが必要で、バイオハザード(生物学的危険)その他のことが常にあるわけ ですので、ヒト組織の生物学的汚染等に関する情報提供については、本専門委員会の検 討とは別に、更に専門家による検討が必要であるという結論に達しました。  私どもこの委員会の検討対象としたヒト組織の研究開発利用については、科学的進歩 や経験の蓄積は日進月歩でありますし、更に、その時々の社会通念によってもその取扱 いが異なるべきものであることから、適宜見直すことが必要であろうということでこの 報告書をまとめさせていただきまして、今日お届けさせていただいたということであり ます。よろしくお願いいたします。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。今、事務局の方からと黒川委員長の方から詳しい御 説明がありましたが、特に、資料1を中心にして御議論をこれからお願いしたいと思い ます。  長くなっていますので、まず最初に1〜4、「背景」「専門委員会での検討経緯」、 次に2ページ目の「ヒト組織を用いた医薬品の研究開発の現状」「医薬品の研究開発にお けるヒト組織利用の必要性」の4つの項目、これは前置きみたいなものですが、この4 つの項目についてまず御質問あるいは御意見をお伺いいたしまして、その後、5の「ヒト 組織の提供について」、更に6の「ヒト組織を研究開発に利用するために必要とされる要 件」。6番目が一番重要だと思いますが、5、6の順番に御議論を願いたいと思います。  最初に、資料1の1〜4の部分について御質問、あるいは御意見おありでしょうか。 ○山崎委員  3「ヒト組織を用いた医薬品の研究開発の現状」のところで、米国は組織臓器利用の 指針をつくって、ヒト組織の使用を推奨しているというふうに書かれておりますが、現 状は新薬承認においてヒト組織利用のデータが要求されているかどうか、そこをまず1 つお聞きしたいのです。 ○黒川委員長  私が米国のFDAのガイドラインとナフィールド委員会の両方を見たところでは、絶対そ うでなくてはいけないというふうにまだ書いていないというふうに理解していますが。 ○事務局  そのとおりで、FDAのガイドラインではヒト組織がコマーシャルベースに入手が可能に なっていることから、それらを使うべきであるというような感じの書き方になっており ます。ですから、それが必要条件というのではないと思います。 ○山崎委員  その次は、同じ3の2番目の項目ですが、現実にはHAB協議会の活動以外に、別なルー トとして肝ミクロソームなどが試薬として輸入販売されているというふうに書かれてお りますが、これは我が国においてはどこが輸入販売を承認しているのか、あるいは承認 基準というものがあるのかどうか。 ○事務局  それは試薬ですので、医薬品としての承認ということはあり得ませんので、特に国の 方から規制ということは掛かってはいないと思います。 ○山崎委員  価格の設定なども厚生省は関与していないということですか。 ○事務局  実験するときによく試薬を海外から輸入されていますよね。それと同じ様な形で輸入 されております。 ○軽部委員  インターネットでさっき二十幾つかの御意見があったというのですが、これはほとん どは医療従事者なのでしょうか。 ○黒川委員長  正確な数その他は分かりませんが、今、言ったように大学の研究者、製薬企業の研究 開発にかかわっている方、あるいは一般の方もおられました。 ○事務局  正確な数は覚えておりませんけれども、主婦の方も4名ほどいらっしゃいましたし、 また、例を挙げますと、国士館大学の方がゼミか何かでこの問題を取り上げて検討した 結果を出してきたりとか、そういう意味では広い方々から意見をいただいたものと思っ ております。 ○入村委員  ここでは病理組織標本を使った病理学的な研究というものを対象外にしているような 気がするのですが、これは従来非常に行われていると思うのですが、その辺の線引きと いうのはどうなっているのでしょうか。 ○黒川委員長  それも議論いたしましたが、従来の患者さんの診断、治療方針の決定にかかわる医療 行為は、当然従来のままに含まれているので、これはそういうものを対象にしているわ けではなくて、恐らくみんなが想定しているのは、例えば、どうしても手術で肝臓の腫 瘍その他を取ったときに、腫瘍だけ取れるわけではないので、周りに正常の組織が残り ますから、それを使わせていただきたいということについて説明をするということにつ いてやったわけで、従来の診断、治療にかかわることは患者さんの利益のことですから 全く問題にしませんでした。 ○松田委員  今までのお話ですと、タイトルでは摘出された組織を用いた研究開発というふうにな っていますけれども、お話を伺っていますと、ほとんどが医薬品の研究開発と新薬の開 発というふうに受け取られるのですけれども、そうしますと、むしろ副タイトルがいい のではないかというふうに思います。  第2番目は、もしも副タイトルがないとすれば、研究者間同士で例えばやりとりをす るという場合、そういう場合も含まれるのかどうか。 ○黒川委員  これにつきましても、最初大分総論として議論いたしました。医学あるいは臨床、医 学関係の研究、クリエイティブなリサーチという意味の研究ですが、そういう部分につ きましては現在も行われているところですし、過去にも行われているわけで、あくまで も患者さんとドクター、研究者とのインフォームド・コンセント、その他を十分にして おかないとパブリケーションもできないわけですし、そういう意味では、一応議論しま したが、今回はそうではなくて、いろいろな問題があると思うのですが、早急に整備し なくてはいけないのは新医薬品の研究開発ということに絞ろうということになりました のでこのようにさせていただきました。 ○高久部会長  それでは、次の5「ヒト組織の提供について」について御質問、御意見を。  その前に、松田委員から御意見がありましたタイトルの件について。 ○黒川委員長  これは、私ども最初に先生方の委員会の方から諮問をいただきまして、こういう名前 をいただいたので、こういう名前で返しているだけの話で。 ○高久部会長  我々としては審議会の方からこういう名前で出てきたという、順送りみたいになって いますが、検討してみましょう。  では、5「ヒト組織の提供について」ということで御意見何かありますでしょうか。 ○山崎委員  最初のところに書かれているのですけれども、こういう組織を収集・提供を行う非営 利の提供機関というのは日本にはまだないわけです。これは現在厚生科学課が中心に検 討を進めておられます、いわゆる基盤研の臓器バンクとしての業務の位置付けを考えて おられるのか、その辺どういう議論があったのかお聞きしたいと思います。 ○黒川委員長  その辺の事情は私ども下っ端の方では分かりませんので、そういうものがあれば利用 されればいいし、もしないのであれば新たにつくらなければいけないかなという話であ りますので、既存のものを利用するにしろ、つくるにしろ、そういうものをつくるべき だというのがこの趣旨でございます。 ○山崎委員  専門委員会では公的機関であることが必要というような議論があるのでございましょ うか。 ○黒川委員長  それはここがしているわけではなくて、それに適切だと思われる公的機関があればそ れでもいいし、民間非営利でも構わないのではないかと思いますが、我々の委員会でそ の性格については議論いたしませんでした。 ○高久部会長  基本的に非営利ということですね。 ○黒川委員長  はい。 ○松田委員  質問ではないのですけれども、先ほど先生がおっしゃいました議論の中にあった移植 目的で取られた肝ですが、それが組織不適合である場合とおっしゃいましたけれども、 そういった肝臓は将来ハイブリッドといいますか、人工肝臓などにも使われることが十 分考えられるわけですから、そういうことを考えますと、先生の臓器移植法の専門委員 会としては積極的にそういうことも見直しをしていただく。かくかくしかじかの理由で 使えることも十分に考えられるので、焼却しないで使っていただきたい、使わせていた だきたいというような提言までをなさる気持ちはないのでしょうか。 ○黒川委員長  それは例の脳死からの臓器移植の法律をつくったときに、あれは議員立法でありまし て、使われなかったものは焼却しろというのが法律にありますので、それを変えるわけ にはいかなかった。だけれどもあれは3年後見直しするということが書いていますので それまでには恐らく、例えば腎臓、肝臓、心臓その他のいわゆる臓器移植の対象になっ た臓器、それの近接の血管、それが使われなかったときには有効利用するべきではない かという議論はありますので、あれができてから3年後ですから、あと2年後に多分そ ういう議論は出るだろうというふうに思います。 ○加藤委員  今までの法律でカバーできない、今までの法律では既にいろいろ人体利用ができる範 囲があるわけです。それに対して、どうしてもこの領域を新しくしないと困るというの は、臓器移植法の場合だけなのですか。それともそれ以外にも何か今までの法律ではこ れではできないから、法の改正なり何なりが必要だというのはどこになるのでしょうか ○黒川委員長  それは先ほど事務局から背景で説明していただきましたので、事務局の方でお願いし ます。 ○事務局  今回の検討は手術によって摘出された組織で、通常廃棄物ということで処理されてい たものを有効利用するということですので、特にそれに対して私ども今、勉強した限り では法律改正は必要ないのではないかと思います。ただ、この議論の中で、海外で大体 ほとんどが脳死移植の移植不適合臓器を使って用いられていることから、それを利用す るためには、法律改正が必要だということです。 ○金城委員  臓器移植法が制定されたとき、こういう問題についてもう諸外国ではいろいろ利用も 始まっていたわけですし、不適合臓器についてどうするとか、議論は当然あったと思う のです。それを日本では焼却にしてしまった。そこら辺はどうしてなのでしょうか。や はり何か問題ありますか。それとも、問題提起がそのころきちっとなされていなかった のでしょうか。 ○黒川委員長  私は臓器移植の方の専門委員会の委員長もやっていますので、その辺のいきさつとい うか、実際の省令を作ったりガイドラインをつくるときには随分勉強させていただきま したけれども、実際議員立法ができたときは、御存じのようにああいう世間のというか 世の中の脳死の問題、それから死体から、脳死からの問題というのは随分ありましたよ ね。  恐らく全体の国会の審議の流れでは、使わなかった臓器はまた使っていいよなどと言 うととんでもないことになるのではないかということを先に考えたのではないかと思っ て、あれはあれで自己完結型にできるだけクリーンにしたいというのが多分発案した議 員の先生たちの考えだったのではないかなと私は推測しています。ですから、そういう ことに関わる専門の人達にいろいろ意見を伺ったなどという形跡は余り見られないので ないでしょうか。 ○廣井委員  これは医薬品の研究開発ということなのですけれども、いわゆる胎児についてはどう お考えになるのでしょうか。 ○黒川委員長  これも実は大分議論しました。現状はどうなっているのか。胎児、胎盤由来の製剤と いうものがありますよね。今は正常の胎児だけではなくて、胎児の場合は特にパーキン ソン病その他に胎児の脳を使うというのがございます。  それからもう一つは、胎盤は現在捨てられていて、その胎盤を集めてそこから胎盤エ キスをつくってかなり大もうけしているという噂がないわけではないので、その辺も議 論しましたが、これについてはここで特に更に議論を深めるという対象ではないのでは ないかという話でこのようにまとめさせていただいたので、現在それがあるから、これ を出すことによってそれを駄目にするとか、もう少し整備するというのは別の次元で問 題提起をされて何かしなくてはいけないのではないか。現行で行われていますので、胎 児の脳のパーキンソンその他は多分まだできないとは思いますけれども、それについて も一度議論をしました。ここでは特に報告には入れてありません。 ○山崎委員  それに関連して部会長にお聞きしたいのですけれども、今のお話ですけれども、パー キンソン病にそういうふうに使われるとは知らなかったのですが……。 ○高久部会長  日本では使っていないです。外国です。 ○山崎委員  日本で現に非常に使われている胎盤とか、死胎児、これが一番使われるのは研究です よね。例えば、HIVの母子感染経路を研究するために産婦人科医に協力いただいてやって おりますが、これは全部うちの研究所はうちの研究所で倫理委員会を立てて、その研究 は妥当かどうかという議論をやっているのです。こういうものに対しても、できれば私 は厚生省のガイドラインがあった方が、各大学とか研究所がばらばらにやるのではなく て、一応のガイドラインがあった方が非常にやりやすいのではないかと思いますが。 ○高久部会長  確かにおっしゃるとおりだと思いますが、この問題はまた別に議論をする必要があり ます。日本産科婦人科学会の会告が出されていますが、この会告を見ますとインフォー ムド・コンセントのことが書かれていないので、必要に応じてはこの部会でそれらの点 についても検討する必要があると思います。今回は専門委員会の方である程度範囲を絞 って検討されたので、その範囲の中でまとめたいと思います。 ○黒川委員長  4ページの5の一番最初の○の1行目から書いてありますが、「ヒト組織の収集・提 供にあたっては」というのは、この医薬品の開発ということは考えていますが、「人体 の組織とか器官などの利用に対する日本人の感覚に配慮するとともに」というところが それを全体としてカバーしているつもりで入れているのですが、確かに胎児や死胎児と いうものについては個々の研究者が何かしている部分について、あくまでも個々のドク ターと患者さん、それからそういうもののインフォームド・コンセント、研究の成果の 発表についてはヘルシンキ宣言その他について基づかなければいけないわけですので、 それにのっとってやっているということからいって、ここの委員会がインタービーン (関与)することではないと。むしろコマーシャルベースに使うものについてはどうす るかということについてやったわけなので、胎盤その他についても私個人としては非常 に引っ掛かっているのですが、これはどうしようかなというのは別かなと思っておりま す。 ○金城委員  私は胎盤などは外国ではどんどん化粧品などは使っているというのは聞いているので すけれども、日本でもそういうことを現実にやっているのですか。 ○黒川委員長  あれは今どうしているかというと捨てているのです。集めて廃棄する業者がいるのだ と思うのですが、それをまたもらっている人がいるのではないかなと思うのですけれど も。 ○事務局  実際に売られている医薬品の中に入っている場合がございます。私どもで調べたので すけれども、通常は一般廃棄物として捨てられておりますが、県や地域によって大分違 っておりまして、ある県によってはそれを再利用するという指定を受けて再利用してい る場合や、廃棄したものを業者が譲り受けて使っている場合などがあるというふうに聞 いております。 ○黒川委員長  胎盤の場合どうせ捨てるからとか、そこから何か価値が出てくるということは常にあ り得るわけなのですが、それは尿とか血液、あるいは取った細胞のバイオテクノロジー でクローン化して、新しいものをつくって、それで実際そのパテントになって利益を生 んだときに患者さんがクレームを付けたという事例もアメリカであるわけなので、そう いうことについても議論はしました。  例えば、尿も捨ててしまうわけですけれども、それを使って何かするとなるとインフ ォームド・コンセントが要るかと言うと多分要るだろう。要るようになってきましたね 多分。それはドクターと患者さんの関係次第で。 ○高久部会長  日本の場合に、使っているのは正常の人の尿ですね。今はやられているかどうか分か りませんが、以前は、自衛隊員の健康な男性の尿を集めて、それから薬品をつくってい ました。胎盤の場合には正常分娩したものですね。アメリカで裁判になったのは、特定 の患者さんの腫瘍細胞を使った製品のパテントの問題です。正常の人の尿を使って物を つくるときに、インフォームド・コンセントは不可能では。  正常分娩で生まれた胎盤をどう使うかという事の議論をしますと時間がかかりますの で、次の6「ヒト組織を研究開発に利用するために必要とされる要件」、この問題が一 番重要だと思いますので、この6番目の項目について御議論いただければと思います。 ○柴田委員  2番目の倫理委員会についてですが、医療機関には既に大体全部あると思うのですけ れども、今回のテーマは主に製薬会社だとした場合、製薬会社などはみんな倫理委員会 とのようなものを持っているのですか。 ○黒川委員長  分かりませんが、恐らく新薬の開発に当たっては前臨床でいろいろな試験をしますよ ね。動物を使ってやっているわけですけれども。それについては倫理委員会があるかな と言うと、恐らく動物を使うことについての倫理の問題はあると思いますが、この場合 全く無駄に意味のない実験をやってもいけないので、そのプロトコルを出して、それの サイエンティフィック、あるいはオブジェクティブについての問題はないかということ は検討してほしい。それから使った後、どういう成果が出ましたかということも一定の 時間をやってやはり発表すべきである。提供機関に報告するなり何なりして、モニター するべきであるというのが我々の見解だと思うのです。 ○柴田委員 いずれにせよ、こういった研究をしようとすれば、倫理委員会をつくる必要があるの でしょうが、そしてこの3つの委員会が一致して大丈夫だというときに実施されるのだ と思うのですけれども、製薬会社の倫理委員会というものが医療機関の倫理委員会と同 じものかどうか、どういう性格のものになってくるのかということがはっきりしません ここには第三者を入れろということは勿論書いてありますけれども、倫理委員会の性格 みたいなものについて、いわゆる第三者の目がそこにきちんと注がれることが必要だと いうような、何か具体的な指示があった方がいいような気がするのです。 ○高久部会長  6ページの一番上に「医学の専門家でないものの参画」という表現しかありませんか ら、もう少しそういう表現にした方がいいのかもしれません。 ○黒川委員長  多分研究開発をする製薬メーカーの方については、パテントとか、コンフィデンシャ リティー(企業秘密)の問題がありますから、どこからどこまで書き込めるかという問 題は多分あると思うのです。だけれども恐らくこれを収集する機関、真ん中の機関など に定期的に事後評価その他にしてもらいたいということは、多分その情報はいずれある 時期を見て全部公開できると思いますので、それによればフィードバックというのは一 番大事なのではないかなと。それによってやはりパブリックというか、国民にいい方向 に向かっているのだという話が公開されるというのが一番望ましいのではないかと思い ます。 ○柴田委員  そうだと思います。いわゆるパテントの問題などは秘密はあっても、少なくともこの 倫理委員会については、そのメンバーが秘密である必要はないわけなので、その点は事 前に公開をきちっとするようにと規定した方がいいのではないかと思うのです。 ○加藤委員  臓器を摘出したときに、治療目的以外に研究目的のために余計に臓器を取ってしまう のではないかという疑いがよく出されるわけです。それに対して、あくまで治療目的の 範囲内でしか臓器を取っていないと。ただ、その中で使えなくなったものについて研究 目的に回すのだということを立証する責任が研究者や医師の側にあることになるわけで すけれども、その方法については何か考えがあるのでしょうか。 ○黒川委員長 これは4ページの一番下のところにあると思うのですが、当該医療行為が適正に行わ れた上での利用が前提でありますので、術前に詳細な説明によって当該医療行為が適正 に行われることについて、提供者の理解と同意を得ると。更に、提供者やその家族等の 要望において当該医療行為が適正に行われたことについて情報を開示できるということ なので、後でどうでしたという話は聞けると思います。それを担保するのが大事なこと が1つ。  やはりこれは日本の医療制度の一般的な問題ですが、患者側に立ってやはりセカン ド・オピニオン(色々な意見)を求めるとか、患者さんの方に主治医がいればこういう 問題は普段から少なくなると思います。それは多分そういうふうになっていくのではな いかなと思って、情報は開示しようということで担保できるのではないか。  それから取るお医者さん、手術する外科の先生にしてみると、全然インセンティブ (動機)は何もありませんので、煩わしいなと思っているだけではないかなと私どもは 思っているのですけれども。 ○山崎委員  私理解が足らないのですが、「子ども等の一般成人と同様の扱いができないもの」と いうふうに書いてあります。この「子ども等」ということの内容ですが、説明いただけ ますか。 ○黒川委員長  これは臓器移植の自分の意思のところも問題だと思うのですが、やはりインフォーム ドして同意が自分でできるかということだというふうに理解しております。ですから一 般は、子どもの場合は、自分が脳死になった場合云々かんぬんは15歳ということになっ ていますね。15歳の理由は遺言を書けるかどうかということのあれですから(民法第九 六一条)その辺の整合性は少し法律的にやっていただきたいということです。 ○高久部会長  やはり親が「うん」と言うわけにいかないですね。本人の問題ですね。 ○金城委員  情報の公開ですよね。一定期間を経た後、公開するということなのですが、これは 個々の研究について公開するということだけでしょうか。それとも、ヒト組織を用いた 研究については年度ごとにきちっと公開をしていくということなのでしょうか。どちら でしょうか。 ○黒川委員長  これは具体的には分かりません。僕らの委員会で特にそこについてうんと追求したと いうか議論したわけではないので。恐らく真ん中に立っている機関がそういう情報は全 部ファイルしてあって、必要に応じて公開するということで、恐らく個々のはリクエス トによってはできるのではないかと私は思いますけれども、全体幾つできて、幾つ行わ れたというようなアニュアル・リポート(年次報告)は当然出てくると思います。 ○高久部会長  具体的にはそういう形になるのでしょうね。 ○森岡委員  組織といった場合に、外国でも問題のようですが、骨髄とか血液を含めていることが あるように思います。特に骨髄というのはどうなのですか。組織というのはどこまでを 組織と言うのか。そういう議論はされているのですか。 ○高久部会長  骨髄は一番取りやすいのですが、研究に使う場合、今まで研究者はお金を払ってボラ ンティアに提供してもらっていました。 ○森岡委員  そういう疑問が出るので、組織というのはなにかということをはっきりしておいた方 がいい。 ○黒川委員長  これは非常に難しい問題で、実は組織の裏返しは何かというと臓器なのです。臓器の 移植に関する法律、省令を見ると、それはかなり議論したのですけれども、一応今のと ころの省令と法律では決まっていて、心臓、肝臓、腎臓、膵臓、小腸、肺、眼球という ことになっているのです。そのほかは臓器ではないのかというと、臓器ではないという 見解になってしまっているのです。そうすると、例えば骨、間接、皮膚というものはど うかというと、それは組織であって臓器ではないということになっております。  さてそこで、骨や間接、皮膚を移植に使いたいという、脳死、あるいは心臓死でもい いのですけれども、そういうことについてはどうするかということも議論しましたが、 それは移植学会にお願いいたしまして、ある程度の組織の使用についてのガイドライン というものを今、整備しているところだと思います。そういうことから言うと、この組 織は一体何だということになりますから、やはり適正な医療行為で取られた部分を利用 させていただくという建前ですから、どこまでいくのかなと。例えば、皮膚だと適正な 医療行為で取られた皮膚というのはあるのかなということもあるので、委員会としては 現在は今、新薬の開発からいうと、恐らく皮膚も例えば化粧品その他を考えるとすぐに 頭に入ってくると思うのですが、現在のところは肝臓を主に議論したというつもりであ りまして、そのほかのことについては、またケース・バイ・ケースでこういう組織がで きたときに恐らく議論になるのではないかなと思っています。 ○加藤委員 例えば、肝臓が出回ったとき、不正な手段でもって入手された肝臓が、やはり同じよ うに出回ってくると、どこで区別するかということが分からなくなる。だから、そうい う経過が適正な方法で入手した組織であるか、経過が分からない組織であるかというこ とについてどういうチェックをするかという問題です。  これは廃棄物一般の議論なのですけれども、普通廃棄物は経過消滅型で、一旦廃棄し てしまうと、だれが廃棄したか分からなくなってしまう。それに対して適正な処理をす るために経過保存型にするという考え方が出てきているわけです。ですからどこかの企 業が廃棄したら、必ず最初の廃棄者がだれかということが分かるような廃棄をしないと 適正な廃棄だとは言えないという問題があるわけです。  この臓器の場合にも、経過消滅型にするのか、経過保存型にするのかという問題が起 こるし、 それからまた臓器の固体差が問題になって、脳の硬膜などの場合には提供者の固体名が 分かって、提供者の病歴が分かるという形で経過保存型になっていて、それは経過保存 型にするということが医療目的のためにまた必要であったわけです。この組織の場合に 経過消滅型にすべてしてしまうような性質のものなのか、それともどういう場合には経 過保存型にするのか。あるいはまた、軽度の適正というものを保証するために経過保存 型にする必要がないかどうか。 ○黒川委員長  これは6ページの(4)の下の2つの○ですが、処理そのものについては実際の提供する 医療機関、それをハンドリングする中間の機関にある程度倫理委員会その他があります ので、闇ルートだと言うとこれはやむを得ない、分からない、これは犯罪的だとは思う のですが、そういうものがあれば少しやむを得ないと思うのですけれども、そうでなけ れば提供者個人が特定されるような情報についてはこうだと。  ですけれども一番下にあるように、加藤委員がおっしゃったようにある特殊な目的を もって、こういうものが必要だという場合にはそれを使わせていただきたい。例えば、 肝細胞でも人によって、例えばp450エンザイムが違いますから、そういう情報が必 要であるということであれば、だから真ん中の管理するところには一体どういう情報を それぞれのサンプルについて整備するか。バイアビリティー(活動能力)をどう決める か。例えばC型肝炎になっているときはどうするかとか、その辺のことを整備する必要 はあると思うのです。つまりクォリティー・コントロールだと思うのですが、それはあ ると思います。 ○高久部会長  基本的には保存型だと思います。先ほども議論がありましたように、公開といっても 企業のパテントの問題とも絡んですぐ公開できない場合があると思います。そうした場 合にはしばらく経って公開する。その間は当然保存しなければなりませんから、何年間 保存するのかという問題はよく分かりませんが、基本的には保存型にならないとこの機 構が成り立たないのではないかというふうに私は理解しています。 ○黒川委員長  それからマイクロソームのフラクション(分画)もありますが、これについても肝ミ クロソームで代謝されるものの代謝する能力なり、タイプがいろいろありますので、そ れらについては一応例示させていただいて、1つのタイプは1つということですから、 ただ混ぜてもしようがないわけで、その辺のレジスターは将来的には勿論すると思いま すけれども、現在アメリカではそういうふうになっています。 ○高久部会長  次の7ページに、7「その他検討すべき事項」というのがございますが、「その他検討 すべき事項」について何か御議論、御意見があればお伺いしたいと思います。 ○山崎委員  特にここに書かれているヒト組織の生物学的汚染等に関する情報と書いてありますが これは非常に複雑だと私は思うのです。いわゆる生物学的製剤の、例えば血液製剤みた いなものでしたらPL法がございますから、メーカーの責任でそれはコントロールできる わけです。臓器移植の場合は、当然臓器を提供する人の肝炎があるとかないとかできち っとやっていく。しかし、この場合は、ありとあらゆる手術、一般の手術を含めており ますから、必ずしもHIVとかプリオンを調べているとは限らない。それをどういうふうに やっていくかという議論は何かあったのでしょうか。  それから、開発する医薬品によっては、わざと感染している臓器、例えば肝炎に感染 している肝臓が必要であるという場合もあると思うのです。そういうことに対してもチ ェック機関というか、それはアメリカではどうなっているか私知らないものですから、 お調べになりましたか。 ○黒川委員長  アメリカや何かのことは分かりませんが、あくまでも肝臓は臓器移植で取られた肝臓 が移植の適合その他でだめだったというわけですので、いろいろなことがあると思うの です。それは当然ドナーの要件に合わない人からのものは多分ないだろうというふうに 思います。つまりドナーの要件というのは、がんを持っている患者さんであるとか、C 型肝炎だというのは使わないわけですから、そこでスクリーニングされているとは思う のですが、この場合は、それほど量が多くもないことからいうと、ある程度きめ細かく そういうことをやらなくてはいけないのではないかということで、山崎委員がおっしゃ ったように、肝炎があるのであれば、その提供者の情報はある程度必要ではないかとい うのはそういう意味で書いてあるわけで、実際どこまでがよくてどこまでよくないか、 どこまでバイアブル(活動)でそこからは捨てなさいという話は僕らのところではでき ないのではないかということだと思います。 ○山崎委員  それは方法ですけれども、例えば、今HIVで一番問題になっているのはウィンドウピリ オド(感染してから抗体が出来るまでの期間)の人で、抗体で幾ら陰性であってもウイ ルスがいることはあるわけですね。それが後で分かったときに遡及調査でもってどうの という話がまた起こってしまう。ですから、そこをどういうふうにするかというのはあ る程度決めないといけないのではないかと私は思うのです。 ○黒川委員長  ここに少し書いてありますけれども、使ったサンプルを全部そこまでスクリーニング するというのはプラクティカルかどうかという問題がありますから、少なくとも一般的 なプレコーション(前もっての注意)、例えばウイルス感染があるなし、あるいはプリ オンがあるなし、その程度のバイオハザードのプロテクション(防御)は、その真ん中 についてもそうだし、使う側もその辺は一応万一あったらどうかという対策は当然すべ きで、この場合は全部in vitroの試験ですから、人間にトランスミットするということ は全然ないので、違った実験のバイオハザードのプレコーションは必要だと思いますけ れども、それはあるものだと仮定してやるべきだと思います。 ○高久部会長  患者さんの情報に関しても同意を得た場合には、研究開発を行う者に情報を提供でき ることになっていますから、当然そういう情報は同意が得られるならば研究者に提供す ることになると思います。in vivoで調べられた範囲ですが。 ○黒川委員長  もう一つは、これはルーティンの臨床の検査に含まれる程度のもので十分だと思いま す。プリオンを調べろなんて言われたらみんな嫌ですからそんなことはしないと思うの です。 ○高久部会長  御議論をいろいろいただきましたが、資料1の「手術等で摘出されたヒト組織を用いた 研究開発の在り方について」は専門委員会で非常に長時間にわたって御検討された。そ の結果だと思いますが、非常によくまとめられた報告書だと思います。  先ほど松田委員から御提案がありましたサブタイトルにつきましては、事務局の方と 検討したいと思います。それから、用語の整理ということについても検討したいと思い ますが、基本的には、資料1の案の形で厚生科学審議会に報告をしてよろしいでしょう か。  それではどうもありがとうございました。どうも専門委員会の方々御苦労様でした。  次に、事務局の方から遺伝子治療臨床研究の実施計画について御報告よろしくお願い いたします。 ○事務局  お手元に特段の資料はございません。前回の会議におきまして、東京大学医科学研究 所附属病院の腎がんに対する遺伝子治療臨床研究計画について御承諾いただいたところ でございますが、これにつきましては、部会長から審議会会長に審議結果を報告いたし まして、会長から厚生大臣に答申をいただきました。8月10日付をもちまして、厚生大臣 から東京大学医科学研究所附属病院長に対しまして、実施して差し支えないという旨の 通知を出させていただいております。  また、並行して申請が出ておりました岡山大学医学部附属病院におきます、肺がんに 対する遺伝子治療臨床研究計画でございますが、これについてはベクター供給を予定し ておりますRpRジェンセル社が行っておりました中央薬事審議会に対しますベクターに関 する申請について、当審議会の調査会、私どもで言います作業委員会に相当するレベル かと思いますが、こちらでの審議がほぼ終了したということで、現在そのところでの作 業事項を更に詰めているところかと思いますが、ほぼ順調に審議が進んでおるというこ とでございまして、これについてはできれば、次回9月のこの部会におきまして、このが ん遺伝子治療臨床研究の作業委員会からの報告が取りまとまって上がってまいりますの で、これについて再度審議を行っていただきたいというふうに考えております。  なお、並行いたしまして、中央薬事審議会におきましては、この調査会での報告を基 にしまして、特別部会並びに常任部会におきまして審議が進められるということを聞い ております。  前回御報告いたしました千葉大学医学部附属病院におきます遺伝子治療臨床研究、こ れは食道がんを対象にしたもの、また、がん研究会附属病院におきます乳がんを対象に いたしました遺伝子治療臨床研究計画でございますが、これにつきましては、がん遺伝 子治療臨床研究作業委員会の委員に、腎がん等の臨床専門家が入っておられますけれど も、このほか、食道がんと乳がんと臨床系の専門家の方々に参加いただきまして、構成 を若干変更した形で作業委員会を引き続き実施していきたいということで、現在準備を 進めておるところでございます。手続等が完了いたしました段階で、メンバー等また次 回御報告させていただければと思います。  一応進捗状況は以上でございます。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。そういうことで、現在岡山大学、千葉大学、更にが ん研究会附属病院から出ております遺伝子治療研究について随時検討中、あるいはこれ から始めるということですので、よろしく御了承お願いしたいと思います。  続きまして、前回の部会で皆さん方に御議論いただいた生殖医療技術に関する議論の 中間的な取りまとめに関しまして、この部会の下に専門委員会を設けて審議をしていた だくということになっておりますが、事務局からその後の専門委員会の状況について説 明お願いいたします。 ○高原厚生科学課長  先般の部会におきまして、部会の下に専門委員会を設置いたしまして、意見の取りま とめに向けて議論を深めてということになったところでございます。これを踏まえまし て、会長、部会長と御相談しながらこれまで医療関係、倫理学関係、法学関係等々の各 分野の方々を対象として、専門委員会立ち上げに向けまして、所要の作業を進めてきて おります。既に数名の方につきましては、個別に御相談もさせていただいております。  しかしながら、ちょうど時期的に大学が夏季休暇で、海外の方で研修中の先生がいら っしゃるとか等々もございまして、連絡が取れない方が多数いらっしゃいます。我々が 考えましたより作業が予想以上に滞ってしまっておりまして、申し訳ないと思っており ます。  事務局といたしましては、先般の部会での議論を踏まえまして、できるだけ速やかに 専門委員会を立ち上げたいと考えております。候補者の方々の全体像ができました段階 で、部会長と御相談いたしまして、会長にお諮りしまして、会長の方から構成委員を決 定して、委員会を立ち上げられることといたしたいというふうな状況でございます。以 上御報告申し上げます。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。前回の部会のときに専門委員会を速やかに立ち上げ て、早急に議論を始めて何らかの結論を早く出すようにという御意見があったのですけ れども、今、事務局の方から説明がありましたように、現実に委員会を立ち上げようと いたしましたところ、時期的になかなか集まりにくいという状況でした。  しかしながら、もうすぐ夏休みも終わりますので、早急に委員会を開いていただいて 今回の「ヒト組織を用いた研究開発の在り方に関する専門委員会」と同じようなペース で時間を掛けて十分に御議論願えればというふうに考えております。前回早急にと部会 の皆さん方にお約束しながら進みませんことを申し訳なく思っております。以上、事務 局から説明のありましたような状況ですので、よろしく御了承お願いしたいと思います  今日の会議は4時までになっておりますが、まだ少し時間がありますので、前回議論し たことなどについて御議論がございましたらお伺いしたいと思います。何か御意見おあ りでしょうか。 ○加藤委員  生殖医療問題については大体いろいろな国が既に立法化を終えているという状況なの に、日本だけが民法の772条というものを使って親子関係の推定をしているという、言わ ば法制化の立ち後れというものが非常にはっきりとしているのではないかと思います。 既に、諸外国で出されている親子関係についての法律については論文もたくさん書かれ ていますし、法律の翻訳なども全部大体入手可能な状況になっていると思いますので、 すぐに立法までいかないまでも、既に諸外国で出ている法律のサンプルはきちんと出し て、大体この線でまとめたらいいという路線をまとめることはそう時間はかからないの ではないかと思いますので、是非そんな方向でやっていただきたいと思います。 ○高久部会長  加藤委員のおっしゃるとおりで、先ほど事務局からも説明がありましたように、法律 家の方が専門委員会で重要な役目を果たされると理解しています。当然、外国の法律を 十分に参照していただければと期待しております。 ○金城委員  その際に、やはり民法の改正ということになりますと、法制審議会ということで法務 省がかかわってくると思うのです。これは医学的な問題なのだからということで全くそ ういうことは必要ないかというと決してそうはいかないのではないかと思いますので、 事前に法務省などとも御連絡をとっておいていただくとそういう改正作業もうまくいく のではないかと思います。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。並行して検討していただきたいと思っております。  もし御意見がないようでしたら、事務局の方からお願いいたします。 ○事務局  前回御案内いたしましたとおり、次回は9月17日の16時からがん遺伝子の治療臨床計画 岡山大学の医学部関係でございますが、これについて審議をお願いしたいと考えており ます。  なお、開催場所等につきましては追って事務局の方から御連絡させていただきますの で、どうぞよろしくお願いいたします。 ○高久部会長  それではこれで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。 <以上> 問い合わせ先 厚生省大臣官房厚生科学課 担 当 須田(内線3804) 電 話 (代表)03-3503-1711 (直通)03-3595-2171