98/07/27 第10回厚生科学審議会研究企画部会議事録       第10回厚生科学審議会研究企画部会議事録 1.日  時:平成10年7月27日(月) 14:00〜16:00 2.場  所:厚生省特別第一会議室 3.議  事:1. 平成10年度厚生科学研究費補助金公募課題の採択について(報告)        2. 特許法の改正等について(報告)        3. 文部省の施策による連携大学院について(報告)        4. 今後の厚生科学研究の在り方について 4.出席委員:矢崎義雄部会長 (委員:五十音順:敬称略) 柴田鐵治 寺田雅昭         (委員:五十音順:敬称略)          杉田秀夫 高久史麿 土屋喜一 宮本昭正 U澤信夫 山崎修道 ○事務局  それでは定刻になりましたので、ただ今から第10回厚生科学審議会研究企画部会を開 催いたします。  本日は、大石委員、寺尾委員、初山委員、眞柄委員、真崎委員の5名の委員の方々が 御欠でございます。  なお、7月に厚生省の方で人事異動がございましたので、御報告方々御紹介させてい ただきます。  まず科学技術担当審議官に就任いたしました、篠崎でございます。同じく、厚生科学 課長に就任いたしました原でございます。  それでは、まず最初に、本日の配布資料につきまして、事務局から御説明申し上げま す。手元の資料を御確認いただきたいと思います。 まず議事次第という1枚紙でございます。 資料1−1「平成10年度厚生科学研究費補助金公募申請・採択結果一覧表」。 資料1−2「平成10年度厚生科学研究費補助金各研究事業採択研究課題一覧表」。 資料1−3「平成10年度厚生科学研究費補助金各研究事業事前評価委員会等委員名簿」。 資料2−1「特許法等の一部改正について」。 資料2−2「大学等における技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進に関する   法律について」。 資料3−1「文部省の施策による連携大学院について」。 資料3−2「国立試験研究機関等における文部省の施策による連携大学院について」。 資料4「『今後の厚生科学研究の在り方』に関する厚生科学審議会における主な論点」 資料は以上でございます。御確認いただきたいと思います。 それでは、議事の進行の方を矢崎部会長よろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長  本日は大変暑い中、研究企画部会に御参加いただきまして、ありがとうございました  それでは、本日の審議に入ります前に、新しく審議官になられました篠崎審議官より 一言ごあいさつをお願いいたします。 ○篠崎審議官  7月7日付で伊藤前審議官の後、科学技術審議官を拝命いたしました篠崎でございます  ちょうど2年ほど前に厚生科学課長をしておりましたので、当時の厚生科学会議が今 は正式な審議会になって発足をいたしておるわけでございまして、厚生省の担当いたし ます厚生科学の振興に先生方の御意見を積極的に取り入れて、この会を非常に大きな、 大事な審議会というふうに位置づけておるわけでございます。  既に御承知と思いますけれども、政府の方では科学技術基本法というものが通りまし て、この法律に基づきまして基本計画が策定されておりますが、厚生省といたしまして は、昨年度この基本計画に呼応いたしまして、脳科学研究、ヒトゲノム・遺伝子治療研 究などの6つの分野を先端的な厚生省の科学研究事業として創設したところでございま す。更に今年度には、医薬品の安全対策などの健康安全確保に向けた重点研究分野も創 設いたしまして、その研究費自体の拡充にも取り組んでいるところでございます。  厚生科学審議会の中の当研究企画部会におきましては、今、冒頭に申し上げましたよ うに非常に大事な厚生省の行政分野でございます厚生科学研究の振興に向けまして、喫 緊の課題から、あるいは将来的な課題まで各分野の先生方に精力的に御議論をいただい て、厚生科学審議会としての考え方を整理していただきたいというように思っておるわ けでございます。今後ともどうかよろしくお願い申し上げます。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。それでは、最初の議事であります平成10年度厚生科 学研究費補助金公募課題の採択について、まず事務局から説明をお願いいたします。 ○事務局  では、資料1−1、資料1−2、資料1−3に基づきまして、簡単に御説明申し上げたいと 思います。  この部会でお決めいただきました、厚生科学研究費の評価の指針に基づきまして、事 前評価等を行ったものにつきまして、厚生科学審議会に報告をするということになって おりましたので、今年度の厚生科学研究費補助金の公募の採択の課題であるとか、公募 の応募の状況というものにつきまして、御説明申し上げたいと思います。  全体でございますが、資料1−1でございます。ここに記載してあるとおりの研究事業 につきまして、真ん中に申請の件数、金額、右の欄に採択の件数、採択の金額というこ とでまとめさせていただいております。  総申請件数2,287件の申請がございまして、総申請額が450億円強ということになって おります。それを指針に基づきまして事前評価委員会等による事前評価等を行いまして 現時点で717件の採択、金額にいたしまして125億3,954万3,000円となっております。  資料1−2でございますが、非常に厚い資料になってございます。それぞれの、先ほど 資料1−1にありました研究事業ごとに主任研究者、所属施設、職名、それから研究課題 名、それから研究費の交付予定額ということで、すべての事業について取りまとめさせ ていただいた資料でございます。非常に膨大な資料でございますので、一々御説明をす ることはせずに、後ほどご覧いただきたいというふうに思います。  事前評価委員会の名簿を、資料1−3というものにしておりますので、またこれも後ほ どご覧いただきたいと思います。  以上につきまして、評価の指針に基づきまして研究採択課題、研究費の交付予定額等 について、厚生省のホームページに掲載してまいりたいというふうに考えております。 併せて事前評価委員会の名簿等につきましても、厚生省のホームページ等により公表す るという指針に基づいた扱いをさせていただくということになっております。  非常に簡単ですが、以上でございます。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。個々の詳しい課題と研究者については一覧表がござ いますけれども、何か御意見ございますでしょうか。特に事前評価委員会に御出席いた だきました杉田委員、高久委員、山崎委員、寺田委員何かコメントございますか。 ○杉田委員  大変すばらしい研究費が平成9年度からスタートしたのですが、研究費は10年度完全 に横ばいなわけですね。特に脳に関しましてはね。それで来年になりますと、もしこの ままだと新規採用が非常に減らざるを得ないという形になるわけで、その辺の先の見通 しがどういうふうになっているか、もしある程度分かりましたらお教えいただくと大変 ありがたいのです。 ○事務局  平成11年度の厚生科学研究費につきましては、現在省内で来年度の予算要求の作業中 ということでございますので、現時点では申し訳ありませんが、見通しというものをお 示しできる状況にありませんので、そこは御容赦いただきたいと思います。 ○矢崎部会長  そうしますと、杉田委員のおっしゃられるように予算が横ばいになった場合に、新規 採用をどういうふうにしていくかという工夫を少し考えないといけないことになります ○宮本委員  申請金額と採択の金額を、総合計で見ますと全体では大体1対3ぐらいになっていま すね。申請件数に対する採択数もほぼ同様の比率です。ところが研究テーマというか、 研究班によっては1対3ではなくて1対5だとか、あるいは1対2に近いものもあります が、このあたりの差はどういうところから出ているのか、そのあたりを御説明願えれば と思うのですが、いかがでしょうか。 ○事務局  厚生科学研究費の積算につきましては、統一単価で要求いただくことになっておるわ けでございますが、正直申し上げましてかなり厳しい単価であることもございまして、 統一単価に基づかない御要求、御積算になったものがございます。こういうふうなもの につきましては、事務的に査定させていただいております。  それから、特に今年度が初年度に該当するものについては、できるだけ数を拾って、 その中で継続、中間・事後評価というシステムを本年より特に強化するというところで ございますので、中間・事後評価の段階におきまして、進捗状況のはかばかしくないも のについては御遠慮願って、物によれば増額する、ないしは、先ほどの御質問にもあり ましたが、あるものについては新規採択というふうなことを考える。そういうふうな事 務的な処理をさせていただいております。 ○宮本委員  先ほど杉田委員からも御質問になりましたけれども、初年度が原則として3年の継続 2年度から新しく採用されたものも3年の継続ということになりますと、研究費が増えな い限りは大体来年の採択はゼロに近いだろうと思いますけれども、このあたりについて 例えば査定をしたり、評価したりして、場合によっては中途から降りていただくとか、 金額を減額するとかいうふうなことで、来年度の新規採用を少しでも多くしていただけ たらと思いますが、いかがでございましょう。よろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長  大変な事業になるかと思いますけれども、今後十分その点を検討させていただきたい と思います。そのほかコメントございませんでしょうか。毎年この事前評価は大変な事 業で、先生方には大変貴重なお時間をいただいて恐縮に存じます。本年度も無事に、7 月中に課題が一応定まったということでございます。よろしいでしょうか。  それでは、今、御発言いただいたことを実際にどうするかを更に詰めさせていただき たいと思います。  次の議題の2と3につきまして、前回の研究企画部会におきまして委員の先生方から 御依頼のあった事項です。事務局からまず報告をお願いいたします。 ○事務局  それでは、前回の研究企画部会で宿題になっておりました事項につきまして、御説明 申し上げます。資料の方はまず2−1、2−2の特許に係る資料でございます。特許法等の 一部改正ということでございます。これにつきましては、改正の目的等はここに記載し ているとおりでございますが、特にこの部会に関係しそうなところは2「法律改正の主 な概要」の3)でございまして、特許料等の引き下げということでございます。  2つ事項がございまして、まず1つといたしまして、国と民間企業等の共有特許に係 る特許料等の取扱いということでございますが、国と民間企業等の共有特許につきまし て、このたび改めて国の持ち分の相当額の特許の特許料とか、出願料等の手数料につき まして、その部分を控除できるということになりまして、共有特許に係ります共同出願 が行いやすくなったということでございます。  2番目といたしまして、登録後10年目以降の特許料が平準化されたということでござ います。従来は3年ごとに倍増するというような特許料の設定になっておりましたもの を、10年目以降は平準化されるということで、これも特許の出願が楽になるということ でございます。  資料2−2でございます。横になっておりますけれども、大学等における技術に関する 研究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律ということでございます。大学を中 心に置いておりますけれども、右の方にありますように、国の試験研究機関も一応対象 になるわけでございます。その職員や組織が特許とか特許化できる研究成果を持ってい る際にそれを活用していく上の支援策ということでございます。大学でありますと特定 大学技術移転事業者という、通産大臣や文部大臣の承認を得た民間事業者も含めまして 特許の移転に関します事業を請け負う組織をつくるということでございます。国の試験 研究機関でありますと、それぞれの所管大臣の認定に基づいた認定事業者が特許の申請 または使用に関する代行をしていくということになるわけでございます。つまり特許の 申請または特許の維持等につきまして、それを専門にサポートする機関ができるという ことでございます。厚生省の方はこれにつきましてどうしていくかというのは今後の検 討事項ということになっております。  非常に簡単ですが、以上でございます。 ○矢崎部会長  まず特許の方につきまして、これは以前から委員の先生方からその後の進捗状況はど うかという御質問を受けておりました。今、事務局からの報告で何か御意見ございます でしょうか。 ○寺田委員  特許のことは大変ありがたく思っています。資料2−1の2の3)の(1)のところに、国 の持分相当額を控除できると書いてございますが、この特許料及び出願料というのは、 例えば、出願した後の弁護士、争いになった場合のお金も含まれているわけですか。そ れは出願料というところに入っているわけですか。  それから、国際特許に関してもこのことはあてはまるということでしょうか。 ○事務局  特許の出願の手続関係手数料等で、特許料であるとか、出願料等について国の持分の 支払いは免除されるということでございます。  それから、係争になった場合の裁判等の費用であるとか、弁理士の手数料、国際特許 の取得等の費用につきましての免除の規定というものは特にございません。 ○矢崎部会長  具体的にどれほど安くなるのか、あるいは特許の維持費が2にありますように、どの ぐらい法改正によって減額されるかということは大変私ども関心のあるところですけれ ども、恐らくそういう細かい数字についてはまた後ほど、ケーススタディーといいます か、例を挙げて事務局の方でどのぐらい安くなっているかというのを後で可能であれば 調べていただくということでよろしくお願いいたします。 ○宮本委員  私このあたり詳しくないので少しお教え願いたいと思います。例えば国の金でやった 新たな独創的な研究は個人の名前で企業を使って特許は申請できるというふうな意味で ございますか。というのは、昔ですと特許はすべて国の方に入っていたような記憶があ るのですが、最近では個人にもある程度還元されるということなのでしょうか。それと もそういうことはあり得ないのでしょうか。特許料についてそのものが国内あるいは国 際的に広く使われるようになって、それによって利潤が上がったような場合ですが。 ○矢崎部会長  費用の問題でしょうか。 ○宮本委員  参考までにお伺いしたいのは、特許が広く一般にも使われるようになって、それによ って特許の実施料が上がってくるわけです。それによる収益がどのぐらい国に入り、ど のぐらい個人に入り、あるいは民間企業に入り得るか。そのあたりを少しお教え願えれ ばと思って。 ○寺田委員  私が理解していますのは、国と企業が共同研究した場合、通常、半分は国、半分は企 業。国に入った実施料のうち、職員である研究者に対しては、年間600万円を上限として 補償金が支払われるというようなことになったと思うのです。それは1年位前からなっ たと思うのです。結局特許を出しても実際にお金になるというのは御存じのように非常 に少のうございまして、特にいい特許となりますと国際特許を取得しようということに なりますから、いろいろなことでもめたりしますと、大体私などでも企業と前やったり しましたが、聞くところによりますとやはり1千万円掛かると言います。  そうしますと、そのお金のどこまでの部分をカバーしてくれるのか。またもめ出すと どのぐらいのお金が掛かるのかというところによっていろいろとまた変わります。場合 によりましたら、少し敷衍しますけれども、実際に国立試験研究機関だけで見つけた成 果で、いわゆる国民のタックス・ペイヤーのお金だけを使った研究については、本来な らば企業との共同出願でなくて国が全部やってくれたら本当はありがたいのですが。そ ういうシステムがないものですから、現実には企業が貢献していないにもかかわらずこ ちら側からお願いして共同出願という形をとっているというのが、文部省も厚生省も含 めましてかなり多いと思います。できましたら厳密な審査によって、これは特許に出す 価値があるという価値判断をしたならば、それがしかも国だけでやったものであれば、 国だけの財産にするように特許を出すようにするのが正当だろうと考えております。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。確かに現実に特許を取る段になると、手続が大変煩 雑であるということと、費用がかかるということで、企業の方に代行していただくとい うような感じですね。それを寺田委員は国できちんと何かシステムをつくって、そこに 乗せれば国際的にも通用する特許が得られるというようなことを提案されているのでは ないかと思います。  文部省、科技庁、厚生省、あるいはその他の省庁で総合的にそういうシステムづくり というものを今後も検討されるのでしょうか。 ○寺田委員  その前に、科学技術基本法、確かにそれによって多くのお金を使える、基礎研究に金 が出るようになったのですが、議員立法で全員でつくってくださったその根底にありま すのは、やはり次の世代に特許といった形で知的財産を残していくという考えですから どうしても特許のところをきちっとしておかないと、後でとんでもないしっぺ返しがく るのだろうと考えます。  それから、今、部会長から言われました他省庁ということで、これも事務局は御存じ だと思うのですけれども、知っている範囲内では科学技術庁の科学技術振興事業団の中 には特許化支援事業をやるセクションがあって、そこにお願いすればすっと動くシステ ムがあります。それ以外に具体的に、例えば私が何かしたときにお願いしようかと持っ ていけるような国が関与したシステムはないような気がいたします。  それから文部省の日本学術振興会の中にも大学等の研究成果の特許化を支援するシス テムがありますがなかなか使いにくいとのことです。先生御存じのように、東京大学の 先端科学技術研究センターに今度新しい会社ができて、そこをどういうふうにするかと いうことをいろいろと考えておられます。 ○矢崎部会長  何か事務局の方でコメントございませんか。 ○事務局  資料2−2の方でありますが、大学等における技術に関する研究成果の民間事業者への 移転の促進に関する法律でございます。これは特許権等の取得につながる研究成果を持 つ大学であるとか、国の試験研究機関が、その研究成果を活用したいという企業との仲 介を行う中立性や透明性の高い機関を設立するということでございます。新聞情報によ りますと、例えば、東北大学で10月にいわゆる大学の教官の特許の管理の専門会社とい うものが設立されることになっておりまして、教授に代わって特許を申請する、取得後 は企業などに特許の売り込みをする、また実施料を教授や大学に還元するというような ことを行う、それがこの法律に基づく特定大学技術移転事業者として承認される見通し となっているわけでございます。特許の取得または管理ということに対しまして、少し でも支援をしていこうというのがこの法律の趣旨でございます。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。厚生省関係では特に国立の試験研究機関の先生方が 特許をどういうふうに申請して特許権を確立するかということに一番御関心の深い問題 ではないかと。そういう視点からも是非今後検討していただければというふうに思って います。そのほかに何かございませんでしょうか。  それでは、3番目の大学院についてよろしくお願いいたします。 ○事務局  それでは、資料3−1、資料3−2でございますが、まず資料3−1に基づきまして御説明 申し上げます。「文部省の施策による連携大学院について」ということでございます。 これも前回のこの部会で宿題になった事項でございます。  「概要」といたしまして、大学院教育の実施に当たりまして、学外における高度な研 究水準をもつ国立試験研究所や民間等の研究所の施設・設備や人的資源を活用して、大 学院の教育を行う研究方法の1つということでございまして、ねらいといたしまして、 2「趣旨」のところに記載してあるとおり、教育研究内容の豊富化、学際化、それから 連携研究所の研究者との交流の促進、共同研究のシーズの形成、それから社会に開かれ た大学院というものをねらいとしているわけでございます。  「制度的位置付け」ということでございますが、従来から大学院設置基準の中に、大 学院の学生が研究所等において必要な研究指導を受けることが認められているというこ とがあったわけでございますが、それを組織的に実施するという方式であるということ でございます。  実施の方法といたしましては、大学と連携先の研究所が学生に対します指導方法であ るとか、研究員の派遣等について協定書を結び、主に連携先研究所において学生の研究 指導を行うというやり方で行っているものでございます。  それから、連携先の研究所の研究員につきましては、客員教授等の発令を行う、また は学位論文の審査や教育課程の策定などに参画をしていくということになるわけでござ います。  平成9年度で、文部省からいただいた数字でございますが、国立の21大学39研究科、 それから私立大学の2大学4研究科がこの連携大学院というものを運用しているというこ とでございます。しかし、これは国立では予算措置された大学の数、私立の方は文部省 で把握できている数というものでございまして、実態を必ずしも反映していないのでは ないかというふうにコメントいただいております。  資料3−2でございますが、厚生省関係の国立試験研究機関等におきます文部省の施策 による連携大学院について、それぞれの研究機関ごとに連携大学院というものの一覧表 でございます。例えてみますと、国立社会保障・人口問題研究所はお茶の水女子大学大 学院と、また、国立がんセンター研究所につきましては京都大学・東京理科大学・千葉 大学の3大学の大学院と連携大学院ということになっているということでございます。 あと国立小児病院小児医療研究センター等では、現在筑波大学、東京理科大学と連携大 学院についての手続を行っている最中であります。それぞれの機関から事務局に御報告 をいただいたものをまとめた資料でございます。 以上でございます。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。これに関しまして、先生方何かコメントございます でしょうか。 ○杉田委員  私は第一線を退いておるのですが、私どもの国立精神・神経センターは該当なしとな っておるのですけれども、現実は30人を超す学生が来ているのです。ただ、これはかな り個人的なレベルで受入れを決めて現実に行われているわけですが、今後こういう大学 院学生を受け入れる場合には協定書を結ぶことが必要なのでしょうか。我々のところは 研究所長と相談して少し検討しろとは言っておるのですけれども、それについて御教示 いただければありがたいと思います。現実には30人以上来ているのです。この辺いかが なものでしょうか。それとも厚生省に一応お伺いを立てて大学とするのか、直接大学と やっていいのか。技術的なことで恐縮なのですけれども、教えていただければありがた いと思います。事務局で結構でございます。 ○事務局  わかる範囲でお答えさせていただきますが、大学との協定書を結ぶ必要があるかどう かということでございますが、基本的にはここに書いてございますとおり、これも文部 省からの情報でございますが、協定書を結んで、いわゆる仕組みをきちんと整えるとい うことでございます。  それから、もう一つ協定書ということの意味は、先ほど実施大学のところで若干御説 明したとおり、いわゆる予算を伴うかどうかということにも大きな影響があるのではな いかと思いますので、協定書を結んできっちりとした形にしてあれば、大学の方で予算 要求ということにも資するのではないかというふうに考えております。  連携大学院についてそれぞれの厚生省の方に、具体的に私が知っている限りでは、協 議というような形ではなく、大体御報告程度をいただいているということでございます ○杉田委員  どうもありがとうございました。 ○矢崎部会長  これは研究のレベルでは自由に交流して、例えば、私どもの研究室の黒尾君、先生の ところにお伺いして研究を行ったということで、研究のニーズによって人的な交流は大 いにあると思うのです。ただ、ここで連携大学院と言った場合には、恐らく予算措置を 伴った正式な関係であって、各大学である程度、私の理解の下では大学院で数とかその 他が決まっていて、新たに、例えば、杉田委員の国立精神・神経センターの、あるいは 国立がんセンターと一緒に連携大学院をつくろうと言っても、お互いに意気投合しても そのまますぐいくかどうかというのが杉田委員の御質問の趣旨ではないかと思うのです 現状では予算措置を伴うので、2つの機関で自由に連携大学の覚え書きを取り交わすと いうシステムではないように思われますが。 ○杉田委員  私が御質問申し上げたのは、大学院学生のカリキュラムを研究所でやっているのです だからこれはある程度まで大学院のカリキュラムの延長としてやっているわけです。で すから、卒後の、先ほど黒尾君のことが出ましたが、それとは全然違うわけです。5つ か6つぐらいの大学から来て、彼らは研究所での研究をやってることが大学院のカリキ ュラムになっているわけです。こういう場合に、大学の主任教授との間の文章的な交換 をやっているらしいのですけれども、大学等は全然やっていないわけです。それでもう 10年以上来てしまっているわけです。こういう指導を見ますと、もう少し組織的な書類 文書を交換するとか、そういうことが必要ではないかなと実は思うのです。  ただ、非常に悪い面は、そういう協定を結ぶと、その大学からどうしても受け入れな ければならないという義務が生じるのかそうでないのか、その辺のことがありまして少 し躊躇はしておるのですが、国研がこれだけやっておられますと、やはり少し本当に真 剣に考えたいと思っていますので、御質問いたしました。 ○柳澤委員  私どものところも実際に作業をスタートしているものですけれども、それぞれ既に行 っているところからの御意見というか、実情をお教えいただきたいと思います。私のと ころは長寿医療研究センターですけれども、国立精神・神経センターと似たような形で 多くの大学院生を預かって、実際に教育というか研究活動をしてもらっています。それ で、連携大学院の話が厚生省の方から出た段階で、多くの学生を派遣されている名古屋 大学の方と協議をしまして、連携大学院にしようということで、今年はしかし予算上2人 ぐらいまでの客員教授というか定員を採って、それから次年度はまた学生の実情に応じ た形でもって広げるというふうな話になってきています。  したがいまして、そういうことでやっていけばいいのかなというふうには思っている のですが、私自身の感触としましては、例えば、どこかの大学から大学院生を受け入れ たときに、連携大学院としての協定を結ぶか結ばないかということは、むしろ指導研究 者と大学との関係、あるいは研究所と大学との関係でケース・バイ・ケースに対処する ことでよい。余り画一的にしてしまうとかえってまたやりにくくなるというふうに理解 しています。そういうケース・バイ・ケースでやっていく形で、基本的にそういうこと でいいのかどうかということだけお教えいただければと思います。現在ここにいらっし ゃる委員の方々の御経験からどんな様子かということをお聞かせいただければそれで結 構でございますけれども。 ○寺田委員  私ども国立がんセンターでは、実は京都大学の場合はたまたま私にそういう連携大学 院講座の教授にして頂いた。教授会で決めて、一応文部大臣任命ということになってい ます。というのが4年ほど前にありました。一番最初に大阪大学が連携大学院をつくっ て、その次に京都大学がつくって、それから他へずっと移っていったと。東京大学は今 年位から始められたのではなかったでしょうか。 ○矢崎部会長  先ほど申し上げましたように、柳澤委員の御質問のように、本当に予算を伴って協定 でやっていかなければならないのか、あるいは、当事者としてはもう少し緩やかな、現 実問題として、例えば、寺田委員のところに私どものところからたくさん大学院の学生 が研究ということでお伺いしていますけれども、ですから、実際には国立がんセンター は、私自身感じたことを勝手に言わせていただければ、連携大学院になっていただいて お願い申し上げているわけです。  ところが、こういう書類上ではこういう連携大学院になっていないということは、本 当に予算措置を伴ってがっちりしたシステムにすると、先ほど杉田委員が言われたよう に、ともかく決まったある定数になって、それよりは適材適所の人材を集めて第一線の 研究を進められる方が現実的にはフレキシブルなシステムの方がいいのではないかとい うふうに思っているのです。私どもの東京大学大学院の重点化のときには、結構がっし りとしたシステムをつくるようにというようなインフォメーションでしたので、どうい うふうにするかということを非常にディスカッションしたわけなのです。 ○寺田委員  そういう形のものを東京大学としては連携大学院というのはつくっておられないわけ ですか。医学部の方は。 ○矢崎部会長  まだはっきりした点はないのではないかと思います。 ○寺田委員  実はここで書いてあるのはもう少し付言すると、大学が大学院という制度を強化して くると、若い人の囲い込みになる恐れがあります。臨床の方は割合やっていますけれど も、だんだん大学が大学院の学生を囲い込んでしまうので、例えば厚生省関係で疾病の 研究をやるような研究機関に若い人が出にくくなるということがあります。少し先取り したような形で積極的に連携大学院制度に正式に参加した方が安全と感じています。そ れはもう何もきちっとしたシステムなしでやる方が本当はいいと思うのです。万が一正 式なきちっとした制度でそういう囲い込みをやられて、発令をし伴って予算措置を伴う 連携大学院のみが、多くの優秀な大学院の学生さんが集まるということになると、教育 する機関との連携が閉ざされてしまいます。厚生省の試験研究機関はそれでもう完全に 駄目になってしまいます。そういうことを恐れて私のところではやろうということです ここには書いてございませんが、柏市の方に東京大学の先端生命科学研究科というもの が出来ることになって、そこには一応申請書の中に国立がんセンターの研究所の4〜5 人の方が向こうの連携大学教授という形で申請書を出し順調にいっています。要するに 囲い込みを恐れて若い優秀な方にできるだけこちらに来ていただくということのためだ けに連携大学院の教授になることを勧めています。勿論、正式の連携大学院講座に入っ ていなくて、非公式なものも非常勤教授、講師などになることをすすめています。 ○宮本委員  個人的にはこういう構想というか施策というのは大変結構だと思いますし、大変大き な進歩だと思います。その反面医学部の臨床教育に関しまして、例えば、他の病院の部 長あるいは院長、副院長などに客員臨床教授という名称を与えるようなシステムをつく って大学の臨床教育を充実させるというような考え方もないわけではないわけです。そ ういう点をもう一歩前進させていただければと思っております。 ○高久委員  臨床教授については文部省の方の21世紀の医学医療懇談会の報告が出て、既に京都大 学ではスタートして、各講座に2人ということでどんどん任命をしているようです。こ れは大学の方の自主的な事業で、国立病院の人でもだれでもと言ったらおかしいのです が、大学の自主的判断でもう既に実施されていると思います。 ○宮本委員  そのときの予算などはどうなのでしょうか。 ○高久委員  予算は付いてます。国立の場合には文部省の予算を付けて、予算が出ているから早く 任命しなければならないということで、かなり速やかにやっております。私学の場合は 別ですが、国立の場合には付いています。 ○宮本委員  大変な進歩ですね。どうもありがとうございました。 ○柴田委員  今、お話を伺っていると、具体的に協定書というのを結ぶのは、大学側が全部イニシ アチブをとっているのでしょうか。むしろ国立試験研究機関の方には余りイニシアチブ がないのかなというような気がしたのですけれども、その辺はどうなのでしょうか。 ○山崎委員  少なくともうちの研究所(国立感染症研究所)の場合はそうですね。つまり、国立感 染症研究所には筑波医学実験用霊長類センターという施設があって、その施設を利用し た研究を大学の人が一緒にやりたいという大学側からの要望を受けてこういう連携をし たわけです。ですから、さっき杉田委員がおっしゃった意味の個人レベルでの大学との 連携というのは他にいっぱいありますけれども、それは必ずしも連携協定書を結んでな くてもお互いに自由にできる。特に差し支えないのではないかと。だからほとんどは大 学の側からの働き掛けが多いのではないかと思うのです。しかし、それは同時に国立試 験研究機関にとって非常に利益のある実際の制度ですから、国立試験研究機関側として もウエルカムな点が勿論あるのですけれども、先生がおっしゃっているように、将来は ひょっとしたら国立試験研究機関側の要望としてこういうことをやるには少し別な考え 方が多分必要なのではないかという気がいたします。 ○柴田委員  制度ができるときはしようがないと思うのですけれども、大学側だけのイニシアチブ ではなくて、やはり国立試験研究機関の方からもむしろ次の世代の人たちを養成してい くためにはこういう制度がむしろあった方がいいわけですね。大学側だけのイニシアチ ブですとどうしても偏ってきますよね。ある特定の研究所に集まってくる、ないしはそ こで非常に大きな格差がついてくるということもあると思うので、国立試験研究機関の これからの成長といいましょうか、発展への道としては、こういうものについてはもう 少し両方にイニシアチブがある方がいいのではないかという気がするのですけれども、 難しいかもしれませんけれども、そういう形をとらないと、ただ予算を付けて一方的に 示したところのみという形というのは、最初は仕方がないのかなと思いますけれども、 やはりだんだん変わっていった方がいいような気がします。単なる参考意見です。 ○矢崎部会長  今の御意見で、国立試験研究機関の先生方で何か。 ○寺田委員  そういう制度ができればありがたいと思います。ただ、この場合は博士号の問題があ ります。それが絡んで向こう側の方は、博士号となりますとやはり大学の方は強うござ います。私ども非常に注意していますが、現在の私共のようにいろいろな大学学部から 来ているのが国立試験研究機関の1つの強みでございますから、できるだけ1つの大学 院に偏って、そこの附属機関には絶対にならないようにというのを非常に意識的には努 力してやっております。 ○高久委員  基本的にいい研究者を集めれば大学の方から来るので、国立試験研究機関がどれだけ いい研究者を集めるかにかなり左右されますね。 ○寺田委員  おっしゃるとおりで、大学は伝統があって先輩とか卒業生がありますけれども、国立 試験研究機関はいいところも随分あるのですが、その日暮らしの、よかったら人が来て くれる、悪かったらつぶれるというところが本質的にございます。組織は全て人です。 ○矢崎部会長  その他にありますでしょうか。今の柴田委員の言われた大学のみのイニシアチブとい うことでは現実的にはないと思うのです。というのは、その研究領域の大学のスタッフ と国立試験研究機関のスタッフとがディスカッションして、こういう研究を進めたいと いうときに、それを上に持ち上げていくと。上からこことここと連携しなさいというシ ステムでは今ないのではないかと。ですから、むしろ杉田委員が御心配なされていたの は、上でこことここが連携大学院というふうに決めてしまうと、現実の研究とそぐわな くなってきてしまうということで、実際には大学と国立試験研究機関の研究者の先生方 と相談しながら交渉してやっている状況では、それが現状だと思います。 ○柴田委員  現状はそのとおりだと思うのですけれども、先ほどから先生が言われたように、いい 研究所がいい研究者を集めれば更にはということではあるということは分かるのですけ れども、1つのこういう連携が逆に大学側からは全く示されない研究所というような形 1つの研究所格差みたいなものができ始めますと、悪い方へ循環していくという可能性 というのはあるわけです。ですから、特に国立試験研究機関の活性化というものは、な るべく多くの人がまず動いていくことだと思うのですけれども、動く過程の中には連携 大学院なども、1つの国立試験研究機関がどこかに偏らない方がいいし、大学もいろい ろな大学から見たときにいろいろな国立試験研究機関と協定を結ぶような形に行った方 がいいと思うのです。なるべく広く行った方が、恐らく国立試験研究機関の成長に多分 役立っていくのではないかなという、こんな大学側からの意見です。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。そのほか、よろしいでしょうか。  それでは、本日4番目の議事であります、今後の厚生科学研究の在り方について、前 回に引き続いて御討論をお願いしたいと思います。過去2回の部会、あるいは前回の総 会でも様々な御提言をいただいたところであります。事務局とも相談しまして、最後の 資料4にあります主な論点ということでまとめさせていただきましたので、まず初めに 事務局から説明をお願いします。 ○事務局  それでは資料4でございます。『「今後の厚生科学研究の在り方」に関する厚生科学 審議会における主な論点』ということでございます。  大きく1〜4まで4つに分類して記載させていただいております。1つといたしまし て、「今後推進すべき研究分野について」。2つ目といたしまして、「研究支援体制の 充実について」。3番目といたしまして「研究に関する情報について」。それから「そ の他」ということでございます。  まず1番目の分野であります「今後推進すべき研究分野について」ということで、大 きく5つにまとめております。まず第1に、EBM(Evidence Based Medicine:科学的証拠 に基づいた医療)の推進に関する臨床研究など、他省庁の研究と異なる厚生行政に直接反 映できるような研究、いわゆる厚生省らしい研究というものをもう少し推進すべきでは ないかということでございます。  それから、効果的、効率的な医療を目指すために必要な情報を収集、把握できるよう な、5〜10年程度にわたります長期縦断の疫学研究というものが必要ではないか。  それから、安全性や有効性の評価に関する研究ということでございます。  4番目の分野といたしまして、測定方法や測定機器の開発や、測定データの標準化に 関する研究ということでございます。  医療技術の進歩に対します社会的、または倫理的側面からの研究という、大きく5つ の分野というものが今後推進すべき研究分野ではないかということで御議論いただいた わけでございます。  2番目といたしまして「研究支援体制の充実について」ということで、大きく3つで ございました。  まず1番目に研究補助員の養成、確保ということが重要ではないか。  それから、人材交流などの促進による国立試験研究機関等の活性化ということでござ います。  最後に、リサーチ・リソース、いわゆる研究材料というものの確保をきちんと行う体 制ということでございました。  それから3番目の情報関連でございますが、まず第1に国立試験研究機関等の研究情報 の情報化に関する総合的な取組ということで、国立試験研究機関の情報化が少し遅れて いるのではないかというようなお話でございました。  それからシンポジウムの開催などを通じまして、国民に研究成果をきちんと公表して いく制度を整えていくべきであるというようなことでございました。  最後にその他ということでございますが、基礎的な研究を臨床的な研究につなげてい くシステム、そういうものの整備ということに取り組まなければいけない。  最後でございますが、国際的な共同研究の枠組みが必要ではないかということでござ いました。  非常に簡単ですが、今までの2回の部会、それから1回の総会におきまして、それぞれ の委員の方々から出された意見を事務局の方で部会長と相談して取りまとめさせていた だいた資料でございます。  以上でございます。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。今までいただいた御議論を、項目を立てて一応整理 したということでありますけれども、先生方の御意見を十分に反映していないところも あるかと思います。時間の制限もありますので、論点の最初から議論を順番に進めてい きたいと思います。  まず1番目の「今後推進すべき研究分野について」ということで御意見をいただけれ ば大変ありがたく存じますけれども。 ○高久委員  1の「今後推進すべき研究分野について」5つ挙げてありますが、このうちの最初の 3つはいろいろな形で、Evidence Based Medicineに関連する研究分野でして、臨床の立 場から言いますと、日本はこの分野の研究が非常に遅れているということがよく言われ ておりまして、事実そうだと思います。この3つのテーマは厚生科学でなければできな いテーマだと思いますので、是非重点を置いて推進していただきたいと思います。  今までも難病とかがんとか、いろいろな分野で研究が行われてきたし、それなりの実 績を上げてきたと思うのですが、よく例に出されるのですが、『ニューイングランド・ ジャーナル・オブ・メディシン』に載るだけのがっちりした臨床研究がなかなかできな い。特に2番目に挙げています長期縦断疫学的な、しかも、高いサイエンスのレベルの 臨床研究が今後非常に強く要求されると思いますので、是非推進していただきたいと思 います。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。これに関しては既に厚生省でもこういう方面で取り 組むということで委員会その他を組織して議論が進められつつあると思います。 治療 の有効性の評価とか、あるいは医療技術の評価とかそういうことで、高久委員が主に中 心となって今やっておられると思いますが、今それを踏まえて高久委員に御意見いただ いたのではないかというふうに理解しています。 ○山崎委員  ここで今、問われているのは、例えば資料1−2にあります研究分野の見直しのことな のですか。もう少し別なことを言っているわけですか。議題の意味が分からないのです が。 ○矢崎部会長  見直しということではなくて、今後進めるべき重点を置くような研究分野が特に今、 挙げられるかどうかということです。 ○山崎委員  例えば、遺伝子治療とか、ゲノムとか、こういうもの以外にということでございます か。現在既に進行中のプロジェクトというのは幾つもの研究分野に分かれているわけで すね。それ以外に何かあるかという意味でございますか。 ○矢崎部会長  それ以外という特別な意味ではありませんけれども、従来の進んでいる研究も含めて 恐らく遺伝子治療その他についても結局は有効性の評価とか、そういうものが大事にな ってくるのではないかと思いますので、そういう側面からもやはり研究を進めていかな いと、ただ先端医療だけでは問題ではないかということです。 ○山崎委員  お聞きした意味は、1〜4全部に関係あることだと私は思うのですが、厚生科学研究 の推進の仕方の中に、例えば、今日は議題に上がっていませんが、厚生科学研究費以外 に推進事業費というものを取っているわけです。ああいう推進事業費の使い方とか、推 進事業費を出すときのいろいろな条件とか何かが、時代に合っていない面があると思う のです。もう少し現在の時代に即して役立つような扱い方をしないといけないのに、余 りにもレギュレーション(規制)が多過ぎて、臨機応変、有効な使い方ができないとい うところがあるので、こういういろいろな研究分野の研究を推進する事業そのものの体 制をこの際見直していただきたいというふうに思うのですが、いかがなものでしょうか そういうことは現在検討されているかどうかをお聞きしたい。  例えば、若手研究者の派遣の問題にしろ、非常にいい仕事をしている外国人招聘の問 題にしても、いつも期間の問題だとかいろいろな問題が、現在の我々の分野でいえば、 例えばイマージング・インフェクション(新興感染症)などに対応するような、そうい うグローバルな視点からきちっと対応するにはふさわしくない旧態依然としたような制 度がいろいろあるわけです。それはやはり変えていかないとうまく使えないと思うので す。そこがいつも議論になっても、「そういうことになっておりますから」というよう な形で進んでいってしまうわけです。何とかここをもう一回見直すということはできな いものでしょうか。 ○矢崎部会長  前々回の部会で山崎委員から同じようなことを御指摘受けたのですが、現実的にはな かなか難しい点もあって、個別的な議論はちょっとここでは進めにくい点がありますけ れども、事務局の方で。 ○事務局  推進事業につきまして、非常にレギュレーションはきついではないか、使い勝手が悪 いではないかという御批判は十分私どもも承知しております。ただ、これの多くの領域 に関しましては、この推進事業費が認められましたのが比較的短い、数年しか経験がな いということでございまして、徐々に拡大してまいりたいというふうに考えております 今のままでいいというふうには必ずしも考えておりませんので、できるだけ現実的にな るように私どもも考えてまいりたいと思います。  特に、海外派遣ないしは招聘等の期間についての問題は十分承知しておりますが、で は、どの程度だったらいいのかというふうなことも含めまして、また各国立試験研究所 ないしは研究者の方々等と御相談してまいりまして、よりよい方向を目指したいと考え ております。 ○山崎委員  よろしくお願いしたいと思います。率直な意見を申し上げて、今の制度というのは日 本は後進国で常に先進国に物を学びにいくという基本的な考えで動いているような気が するのです。しかし、我々の分野でいえば少なくともそういう時代は終わっておりまし て、日本が指導的立場で先進諸国にも出ていかなければならない問題というのはいっぱ いあるわけです。それにはほとんど今の予算のやり方というのは使えません。ある程度 専門的な知識で、そういう経験を持っていい仕事をした人が行くには、やはり1年とか 何とかあけられないわけですね。しかし、本当に国際貢献できる人がいるのに、そうい う人を短期派遣できるような体制になっていないのです。ですから、その辺を是非考え 直す機会をいただきたいと思います。よろしくお願いします。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。厚生科学研究費の執行に当たっては、もっと大きな 問題、これは厚生省に限らず文部省その他もそうですけれども、単年度会計という会計 の憲法みたいなものがありまして、そうしますと、継続的な研究というものが物すごく やりにくいというところもあって、そういう意味では何か国全体で少し抜本的に変えて いかないとなかなか難しい問題が多々あるように思われます。 ○寺田委員  いろいろな問題があるでしょうけれども、資料4の1番の最初にEvidence Based Medi cineとか、いろいろ書いてあるところ、高久委員が言われたとおりの話です。しかし、 ここへ医療という言葉ばかりが出ていますが、やはり予防とか、パブリックヘルス(公 衆衛生)的な要素というのは絶対にやらないといけないと考えます。医療といいますと 病気になった人を治すという感覚が表に出てきますので、もしこういうことが基になっ て厚生科学とは何であるかというときにはそこの言葉を入れないと誤解を招く恐れがあ ります。  もう一つは、ここで5つあって上の3つをまとめた形で考えるのが非常に大事だと思 うのです。  もう一つは社会保障の問題とか医療経済の問題というのも厚生科学の場で、これは文 科系の社会科学ですけれども、現に今ここを読みましたら政策科学推進で厚生科学の中 に入れて議論していますから、これもやはり入れなくてはいけないのではないかと考え ます。少し議論が複雑になりますけれども、国民の健康に関して非常に近いところでや っているというところが強調されるのがよいと思います。  もう一つは、これはいろいろ抵抗があって、ここへくると文部省、将来的には科学技 術庁が一緒になった省の行う生命科学に近いところも入ってきますが、やはり厚生科学 でトランスレーショナル・リサーチは絶対必要です。アメリカの真似ばかりでEvidence Based Medicine、その次がトランスレーショナル・リサーチで余りよくない言葉ですが 要するに基礎の研究の成果臨床の現場にもっていく研究です。一番下のところに書いて あります基礎から臨床へのシステムをどういうふうに整備するか、それにつながる問題 です。まとめますと、パブリックヘルスの概念を1つ入れていただきたいということ、 社会科学的な科学がやはり厚生科学の中に入っているということと、トランスレーショ ナル・リサーチ(外国の模倣)を入れていただければいいのではないかなと考えます。 ○矢崎部会長  大変具体的に、しかも貴重な御意見をいただきましてありがとうございました。是非 それは取り入れさせていただきたいというふうに思っております。  今、厚生省もそういう予防という、国民の健康の保持ということでいろいろ委員会そ の他検討会で検討されているところであります。厚生科学として具体的にそれを協調す るということを今、御指摘いただいたと思うのです。どうもありがとうございました。 ○宮本委員  前にも少し申し上げたことがございますけれども、これは厚生省だけではなくて文部 省その他の科学研究費についてもすべてそうなのですが、研究を推進するというのが最 も重要であるというふうに考えますので、それに対する研究費については、もう少し研 究者の自由裁断に任せるとか、事務をもう少し簡素化するとかいうふうな方法で御検討 いただければ有効に研究費が使え、しかも効率的な研究ができるのではないかというふ うにかねてから思っているものですから、是非そのあたりを御配慮願えればというふう に考えます。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。これは先ほど山崎委員おっしゃったことに含まれる と思います。 ○宮本委員  山崎委員のおっしゃったことはもう少しグローバルな話ですけれども、私はもう少し 狭い意味で研究者がいろいろな面で、例えば会場を設営する場合だとか、何か購入する 場合、一々初めに申請した金額に合わせないと、最後にまたいろいろと査定されてせっ かくの報告書がまた返ってくるというようなことがございますものですから、そのあた りについて一応御配慮願えればというふうに思います。 ○高久委員  さっき寺田委員のおっしゃったとおりで私も賛成ですが、医療と言った場合には当然 予防も入ってくるというふうに理解しております。それから、1の中の5番目の中に社 会的、倫理的側面とあって、社会的の中に当然経済とか法的なものも入ってくるという ふうに私は理解しています。社会と言うと一番問題なのはお金をどうするかという事に なる。社会的な側面は非常に重要です。これはその中に入っているのかなと思っていま した。  それから、EBMの場合当然コスト・パフォーマンス(費用対効果)ということが常に 問題になりますので、1の中にも経済的なことが入ってくるのではないかと理解してい ます。  それから、山崎委員がおっしゃった研究分野のことですが、私の理解では特に新しい 研究分野ということではなくて、勿論今後加わることも十分考えられますが、現在ある いろいろな研究分野の中で、その研究の推進に当たって、この5つの点を厚生科学とし ては考慮して採択する必要があるのではないかと。そういうことを私は言いたいと思っ ております。 ○山崎委員  ストラテジー(戦略)ですね。 ○高久委員  そうです。 ○山崎委員  はい、分かりました。 ○寺田委員  やはり社会的、倫理的というのは社会のコンセンサスを得られるかということで、経 済とは少し違います。括弧して広義の社会的と書かないと無理ではないですか。 ○高久委員  柴田委員の御意見をお伺いして。 ○寺田委員  柴田委員どう思われますか。 ○柴田委員  広い意味では社会的と言えば経済も入ると思いますけれども、ここの意味はもう少し 狭い意味だと思いますね。  やはり5番目の社会的、倫理的側面からの研究というのは、もっと重視された方がい いという気がするのです。資料1−2の採択された研究課題一覧表を見て、これで言いま すと、多分最後の5項目目の研究は医療技術評価の総合研究というと最後の分野に入る のが一番多いのかと思うのですけれども、全体の中の比率からいっても、それからもう 少し本当に先端医療技術評価部会でやっているような体外受精・出生前診断だとか、そ ういう非常にシビアな問題などももう少し研究費などで行ってもいいような気が私はす るのです。意見を含めてついでに申し上げました。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。厚生科学審議会におきましても、特別枠で倫理的な 研究を総合的に進めるべきだという御意見をいただいておりますので、確かに5番目は そういう総合的な研究ということで進めさせていただくと同時に、少し分かりやすく提 示するという意味では、寺田委員が言われた予防という文字を入れておいた方が分かり やすいかなという感じもします。そういうパブリックヘルス、あるいは社会科学的なも の、それから応用研究の更なる推進というものをもう少し具体的に提言として今後検討 させていただきたいというふうに思っています。 ○高久委員  資料4にはないしこの議題に直接関係があるかどうか分からないのですが、実は今回 のヒトゲノム遺伝子治療研究事業の採択課題の中には、糖尿病、高血圧、動脈硬化など の生活習慣病の遺伝子治療に関する研究が含まれています。今の日本の遺伝子治療のガ イドラインでは、糖尿病や動脈硬化の遺伝子治療ができないことになっていますので、 ガイドラインを早急に変える必要があるのではないか。厚生科学審議会で是非ガイドラ インの変更ということを検討していただきたいと思っています。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。だんだん遺伝子治療という概念が少しずつ最初のこ ろと変わってきていますね。 ○高久委員  アメリカでも重篤な先天性疾患、がん、エイズに限っていたのですが、最近血管性の 疾患に対する遺伝子治療がどんどん認められるようになりました。日本の遺伝子治療の ガイドラインでは動脈硬化などに対する遺伝子治療ができないことになっているもので すから、申請が出たときに困るのではないかと思います。 ○矢崎部会長  例えば、アンチセンスみたいなものは遺伝子治療というよりは薬剤というふうに考え てもよろしいでしょうか。 ○高久委員  それは少し別だと思うのですが、日本の遺伝子治療のガイドラインでは対象疾患が重 篤な先天性疾患とがん、エイズなどのような治りにくい病気とあって、循環器系の病気 は入っていない。ですから、対象疾患を少し変えないと困るのではないかということで す。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。 ○寺田委員  これはきちんと書いていただいているのですけれども、2番の研究補助員の養成、確 保というのは、特に臨床とか疫学的なことをやる場合に非常に大事なので、病院の医者 がすべてやるわけではありませんから、そういうシステムがだんだん今入ってきつつあ りますけれども、是非これは何とか早い時期により拡充していただければありがたいと 思います。リサーチ・ナースとか、そういうものは大変ありがたいと思います。 ○矢崎部会長  それでは、2番目の研究支援体制の充実について話題を移らせていただきますので、 どうもありがとうございました。今の寺田委員の御提言に何か追加で御意見いただけま すでしょうか。 ○U澤委員  研究補助員、それからまた補助員ではありませんけれども、例えばリサーチ・レジデ ントのような立場の人たちも含めて、パーマネント(永久的な)ポスト以外のそういう 研究者及び研究補助員という方々一般に通じることだろうというふうに私は思いますけ れども、各省庁によって採用の基準だとか金額とか、いろいろな条件がかなり違ってい るということがありまして、それが現場では非常に不必要と言うと変ですけれども、い ろいろなコンフリクト(衝突)を起こす原因になっているということがあります。  実際今のこういった科学技術基本計画に基づいて非常に多額の研究費が出されるとい うような状況の下で、一時的に雇用される研究補助者とか、あるいは研究員の人達が比 較的身分が不安定なままでどんどん研究に入ってきて、かつてここでも問題になったか と思いますけれども、早晩そういう人たちの身分の問題とか、先々のポストの問題とい うのは深刻な問題になるのではないかというふうに思われます。私どもの研究所でも若 干そういうことが懸念されるようなことが実際にありまして、やはり研究補助員の養成 それから若手の研究者として先ほどの寺田委員のお話にありました、もう少し広い範囲 での研究職についてどういうように養成したらいいのか、それからそういった人たちの 身分をどういう形で保障して、そして先についてのある程度の見通しなら見通しという ものも与えてあげることができるかということは、これは厚生科学研究を進めていく上 で、恐らく非常に大事なインフラストラクチュア(社会的基盤整備)の部分ではないか と思います。その辺を是非これからも十分検討していただけたらと思います。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。ポスドク1万人計画ということで、ポスドクの、そ れが終わったときにまたどういうふうに展開していくかというのは難しい問題ですね。 ○宮本委員  確かにU澤委員のおっしゃったことは現場では非常に深刻に考えているのです。です から、そのあたりは是非早い時期に、ある程度将来の展望を持たせてあげなければいけ ないと思います。  具体的に、私が勤務しておった国立相模原病院には何人かPhD(理学博士)の人がいる のですけれども、若いときには問題はあまりないのですけれども、50歳を過ぎてだんだ ん定年に近づいてまいりますと、そういう人たちの将来が非常に暗いわけです。しかも ポジションのというか、昇進の道もかなり閉ざされているというような点があります。 そのあたりを是非厚生省としても十分御配慮願いたいと思っております。 ○山崎委員  研究補助員と言った場合に、リサーチ・アシスタント(研究補助員)と違って将来の 研究者の幹部候補生みたいなことをおっしゃったのですね。育てるという意味で。 ○宮本委員  それは両方含めてです。いわゆるアルバイトの人たちも、あるいは常勤でいるような 人たちにとっても将来は必ずしも明るくないということなのです。 ○山崎委員  アシスタントについては、つまり、そういうものは職員として採れないというのが今 の方針だと私は理解しております。例えば、昔の行政職2みたいに技術補助ができる人 それは採れないわけです。我々研究補助員と呼んでいるのですが、そういう人を養成、 確保するというのはどういうことか、実際にはどんな方法があるのか。つまり、臨職と して雇う以外に方法はない。そういうような人材銀行的なものは今かなり、ヒューマン サイエンスその他もやっていますけれどもプールされていて、そこからお金でそういう 人を雇うと。その代わり、そういう人たちは職員にしない。こういう補助員も非常に大 事ですよね。それから宮本委員がおっしゃったように、将来の立派な研究者を養成する という意味での、それは少し意味が違うと思いますが、ここで議論すべきことはどちら なのかなと思っているのです。 ○矢崎部会長  問題は2つあって、今、山崎委員の御指摘のように、いわゆる補助員をどういうふう にするかということも大きな問題で、事務局の方で追加いただけますか。 ○事務局  研究補助員というふうに書かせていただいていますが、事務局サイドといたしまして は、どちらかといえば先ほどから出ていますリサーチ・レジデント(流動研究員)等の 処遇の問題であるとかということ、それプラス先ほど言いましたアシスタントみたいな 研究補助者、両方の意味で使わせていただいておりますので、リサーチ・レジデント、 それから補助員、それから先ほど出ましたいわゆるPhDの方、そういうところすべて含ん で御議論していただいて結構でございます。 ○寺田委員  やはり若手の研究者の育成でありまして、考え方として研究補助員ではないのです。 これは絶対違って、研究者として育てるわけですから、これは別個にしていただかない と困ります。それとも研究補助員というのを括弧して2つ意味があると書いていただか ないと、こういうものがどこかに出回って、要するに厚生省の厚生科学の将来担ってく ださる若い人を研究補助員という形で見ているのかというのは大変まずいと思います。  やはり若手の研究者を育てるというのも非常に大事です。言ったら失礼ですけれども 大学の場合には若い医局員とか、大学の学生がいますけれども、その人たちが、一時か なり補助員的なこともやっているわけです。それが国立の研究機関ではないものですか ら、これはやはり欧米でありますようなテクニシャンというような研究補助員、これを もちろん国家公務員などで採るなんて無理ですから、人材派遣会社、経済が許す限りは そういうところから研究費で採ってやっていただくのがよいのではないかと考えます。 そういう方に関して将来勿論身分を保障してあげたり、そういうことをしてあげたらい いのですけれども、やがては職員もすべて結局任期制になりますから、そこまで面倒は 見切れないというのが本音ではないでしょうか。  PhDのことをおっしゃいましたけれども、確かに厚生省、特に医学部を中心にしている 研究機関では、PhDの方は大変行きづらいとも聞きます。例えば、リサーチ・レジデント あるいはポスドクのレベルで採るときから、この人を採ったら必ず将来どこかで売り出 さすことが出来る能力があるとか、大学の教授に行けるかとか、相当神経質になって、 少なくとも私どものところでは医学部に比べて将来のことも考え厳しく選抜基準を設け ます。35〜36歳ぐらいではとにかくターンオーバーするのが大切です。また、PhDは極め て必要な人材で非常に大事なことは部長の半分ぐらいPhDで、半分がMDであるのがよいと 思っています。 ○矢崎部会長  将来の身分保障というのは研究分野ではなかなか難しくて、アメリカみたいに社会の あらゆる分野で人事の交流が盛んに行われて、人事がオープンになればいいのですけれ ども、まだ我が国ではそこの段階に至っていないので、研究領域だけでもまず初めにそ ういう交流をもうそろそろ始めないと、今度の金融だけではなくて医療その他でビック バンが起こったときに、やはり我が国はやっていけないのではないかというふうに思い ます。 ○高久委員  私も寺田委員のおっしゃることに賛成でして、大学審議会でも今、大学では任期制を 採用する、実際にどの程度行われるか非常に問題があるにしても、方針としては任期制 ということを言っておりますから、いずれ国立試験研究機関も方針としては任期制とい うことを考えないと仕方がないと思います。特に研究者のレベルでは永久ということは なかなか。発展のためにはむしろマイナスになる面があるので、その点は仕方がないの ではないかなと。要するに、税金を使ってある意味では自分の好きなことをやっている わけですから、厳しさがあっても当然だと思っています。 ○杉田委員  私も高久委員が言われているように国立試験研究機関の活性化というのは、任期制な ければ実際にできないだろうというふうに思います。かつて国立試験研究機関の所長を やったときにこの議論が出たことありますけれども、やはり欲しい人はなかなか出した くないのです。はっきり言いますとですね。どうでもいいと言ったら失礼ですけれども 出してもいいという方はなかなかアクセプト(受け入れ)をしないということになりま して、実際難しいわけです。やはりやるのは高久委員が言われたような任期制を取るこ とではないか。それが国立試験研究機関の活性化そのものだと思います。  ついでに、リサーチ・リソース、これはどなたも同感されるように、最も重要な問題 ではあるのですけれども、これは恐らく実験動物も含めておられると思いますが、言う は易しいけれども実際は大変難しいのです。やはり疾患研究にとって材料が必要である ことは勿論重要なのですけれども、なかなか日本はそういうシステムができていないこ とは皆さん御存じのとおりで、具体的にどういうふうにやっていったらいいか非常に悩 むのですが、何か事務局でこういうふうにやったらどうかというような案でもございま したら承りたいというふうに思いますが。 ○矢崎部会長  リサーチ・リソースに関しましては、確か寺尾先生の委員会が実際に国でリサーチ・ リソースをどういうふうに確保してシステムを構築していくかということを検討されて いるところではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。 ○事務局  補足させていただきますが、いわゆるリサーチ・リソースについて、一部分ではあり ますが、例えばヒューマンサイエンス振興財団の方でリサーチ・リソース・バンク事業 のようなことが行われております。それから、一部の研究費事業の中で、いわゆるリ サーチ・リソース・バンク的な研究という形で行われている事業があろうかと思います  研究材料以外にも、例えば、データであるとか、先ほどの縦断疫学研究のデータの共 有化みたいなお話であるとか、そういうようなお話も当然この中で対象にしていただく べきリサーチ・リソースというふうに考えております。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。研究体制の2番目の充実ということに関しましては 先ほどから御議論がある任期制ということでありますけれども、それは国研の所長の先 生方の権限を強化するということで、そういう問題はある程度解決できるのでしょうか 人材の交流といいますか。 ○寺田委員  やはり50歳過ぎてから任期制というのは少しなじまないと思うのです。これはどこの 社会でもアメリカでも同じと思います。だから部長でなるときにはその代わり非常にセ レクションをきちっとする。室長までは任期制でやっていくというふうになるのではな いでしょうか。結局リサーチ・レジデントやポスドクも増えてきていますし、そういう 方の延長線上に任期制にだんだんなっていくのではないかと思います。人事は所長の権 限というよりも、所長の周りに委員会とか何かつくって、そこでそういうことを判断し ていただいて、所長に意見を具申していただくというような形にだんだんとなると思い ます。要するに欧米型になってくるのではないかなというふうに思っています。 ○矢崎部会長  是非そうなっていくといいと思いますけれども。 ○U澤委員  私は厚生省の方に伺ってからちょうど1年になりますが、いろいろ考えさせられるこ とが多いのですけれども、やはり厚生省の研究所の場合も、特に、厚生省のように今日 の推進すべき研究分野などを見てもそう思うのですけれども、大学のように応用的とい うか、すぐの成果ということでなくて、学問そのものをやっているということが非常に 大事なところと、研究の立場が違うわけですね。やはりプロジェクト研究をきちんと進 めるということを大きな仕事の柱にしていきますと、当然任期制をとらざるを得なくな ってくるのではないかと思うのです。それは5年であるか8年であるか内容によると思い ますけれども。  そうしますと、例えば、さっきから問題になっているような比較的身分の不安定な 方々、リサーチ・レジデントとか、流動研究員とか、そういう人たちにとっての将来の チャンスも開けてくるでしょうし、それからまた、パーマネント・ポストにいる人たち が、余りその立場に安住しなくても済むと。実際年を取るとつらいとは思いますけれど も。でも、結局はそういうふうなプロジェクト研究をどんどん進めていくという観点で そこに研究費をつぎ込むということをしたら、それはもう任期制というものがないと全 体としての研究の在り方が、人事だけぼこっと脇に除けられてしまうと非常に整合性が とれなくなるということが恐らく予測されます。ですから、この任期制という問題は非 常に大事な問題として厚生省でも是非考えていかなければいけないというふうに思いま す。 ○柴田委員  私も任期制には大賛成です。ただ、任期制というのは社会が一斉にやらないとだめだ と思うのです。つまり、どこかだけ一生懸命になっていても絶対だめなわけです。だか ら大学とかいわゆる研究所というのがほとんど一斉にやれないと意味がない。そうだと すればどこかの、さっきお話が出たように、部長になるところとか、あるいは大学で言 えば助教授、教授になるというようなところに交流が成り立つような、研究所から大学 へ、大学から研究所へというふうな、それとの任期制とマッチするような、そういう制 度の導入だろうと思うのです。言うなら1、2、3と言って一緒にやらないとまず絶対う まくいかないケースなのだと思うのです。  恐らく一番いい方法は、国立試験研究機関で言えば、例えば部長になる資格というも のにかなりいろいろな場所を歩いて来た方が有利だというような形の評価の導入という のでしょうか、大学の場合もそうだと思うのです。大学一筋というのは、日本の社会で は一筋が評価されるのですけれども、一筋ではなくて、二筋、三筋というか、いろいろ な道を通っている人の方を評価するような方法を考えるのがいいのではないかというふ うに思っています。  それからもう一つ、研究補助員のところに戻るのですけれども、研究補助員の中で2 種類あるというのはそのとおりかもしれないけれども、一番難しいのは、かつての技術 員とか、テクニシャンとかいろいろな言い方で呼んでいた部分の補助員だと思うのです けれども、今いろいろな研究所で、特に、国立の研究所などでは、定員ということで縛 られるので、同じ定員なら補助員よりは研究者が欲しいとみんななってしまうのです。 ですから、どんどん補助員を減らして研究者を増やすというふうに今の日本の研究所は ずっと来たと思うのです。個々に採れば確かにそのとおりだと思うのですけれども、た だ、全体として研究の効率というものは、研究者と補助員との比率というのは全部研究 者の方が効率が上がるのかどうかということについて、そうではないのではないかとい う部分もあると思うのです。  そうすると、どういう比率が一番最適というか、最大効果を得る比率みたいなものを 勿論分野によって違うことはよく分かりますけれども、そういう研究を少しして、ある 程度研究というものの効率を上げていく方法論というのでしょうか、そういうものがは っきりしてくれば補助員に対して、補助員よりは同じ枠なら研究者だという論理を多少 でも緩めることはできるのではないか。今のままで行ってしまえばどんどん補助員とい うのは要らないというよりは、研究員にその枠を使おうというふうに変わっていってし まうのではないかと若干私は心配をしているものですから、そんなところへも研究の目 を向けていただきたいということを希望します。 ○矢崎部会長  どうも貴重な御意見ありがとうございました。確かに大学でも研究補助員的なポジシ ョンが随分研究者の方に振替えられてしまっているということで大きな問題になってい ます。御指摘のとおりだと思います。  実際に任期制の場合に、先ほどの研究推進事業費の使い勝手が悪いということの1つ に、単年度の会計制があるように、任期制の場合にも国家公務員法の問題があると思う のです。 例えば、交流というのは、施設を変えて人事を動かすという交流、あるいは 任期制ということでしょうか。または、新たに契約するときに何か契約書を取り交わせ ばある程度バリアを加えるとか、任期制を考えるときにその問題を解決しないとなかな か難しい感じもします。 ○U澤委員  特に日本の国民的な風土というか、1つのところへの帰属というのがものすごく重視 されてきたという長年の考え方というか経験があるものですから簡単ではないと思いま す。ただしかし、例えば、国立試験研究機関の場合だったら室長にしても部長にしても やはり5年なり10年なりで一旦評価をすると。そして再任をする場合もあるけれども、 再任をしない場合もあるというふうなことでスタートすることがまず恐らく一番プラク ティカルでしょう。そうすると、やはりその5年、10年の間に当然やらなければいけな い仕事のプロジェクトというものをきちんと出して、例えば、室長にアプライするとき にも、そういうふうな条件の下で選考するということで、だんだん任期制が実効を持つ ような形に変えていくということは可能ではないかと思います。最初から余り形式的に 期間だけ決めたって絶対うまくいかないでしょうから、その辺はいろいろと今までの経 験の上にのっとって知恵を出してやっていくということだろうと思いますけれども、基 本的にはそういう任期制は可能ではないかと思います。 ○宮本委員  任期制は大変結構だと思いますけれども、ただ私が危惧するのは、5年なり10年なり の任期で場合によったら辞めてもらうのだということになりますと、その人にとっては 大変将来不安なわけです。そういたしますと、わざわざ国立関係の研究機関に就職する よりも、では民間の製薬会社なりその他のところに就職しようかというふうなことがだ んだんと広がってきて、優秀な人材が国立関係に集まってこないという危惧もないわけ ではないのです。ですからそのあたりの整合性をどのようにするかというのは非常に大 きな将来の課題だと思います。任期制は結構だと思いますけれども、それだけを全面に 押し出して云々するといろいろと問題があるのではないかというふうな危惧はいたしま す。 ○山崎委員  今の話ですけれども、5年、10年というとそういう問題が多少起こると思うのです。 現実には今ヒューマンサイエンス振興財団にしても、エイズ予防財団なりにしても、い わゆる流動研究というのはみんな3年単位で動いています。3年見ればこの人は研究者と して将来伸びるかどうかという見当は大体つくわけです。3年でもしどこかに移るのだ ったら、今おっしゃったように移りやすいという点から考えても、まだよその機関とか もう少し適したところに移っていく、あるいは会社に行くというような可能性があると 思うのです。その3年をもう一回やって6年になりますと物すごく難しくなるというのは 過去の経験で重々我々も知っています。ですから大体3年間で評価して、この人はうち の研究所で採って将来研究者にした方がいいと思う人を採ってしまう。残りの人はでき れば人材銀行に預けてしまって、その人たちはうちの研究所には合わなくても、例えば 国立がんセンターに合うような研究をやっているかもしれない。ですから、そういうも う少し期間を短く回転するということが1つの方針になった方がいいと思うのです。か つては5年でしたけれども、今は5年待っていると就職は非常に難しくなると思います。 ○矢崎部会長  任期制というのは、先ほど柴田委員言われたように、一斉に始まれば良いのですが。 移る場合にも、その人にはハッピーなポジションがアメリカみたいに、その人がだめだ ということではなくて、うまくいくようになっていることが大切で、がんセンターとか そこだけが任期制でやると大変な問題になると思います。柴田委員がおっしゃられたよ うに、大学を含めて研究機関全体が任期制になると、レッテルを張られるということで はなくて、先ほどU澤委員がおっしゃったように、プロジェクトにたまたま合わなかっ たということでうまく人事が交流する道ではないかと思います。これは我が国の今まで のカルチャーといいますかコンセプトというものから一歩前進しないと、これから国際 化を迎えたときに、特に研究の領域では重要な課題になってくるのではないかと思いま す。  今日せっかくお集まりいただきましたけれども、3、4についてはまた、4の一部は 臨床研究につなげていくような研究の推進というものを加えなければいけないという御 意見をいただきました。これについてはまた改めて機会を見て検討を進めさせていただ きたいと思いますけれども、それでよろしいでしょうか。 ○山崎委員  人材交流という言葉ですけれども、これは国際的なことも含めての人材交流というこ とも検討する必要があるのではないか。そのときに、さっき申し上げた期間の問題とか そういう問題が残ってまいりますけれども、やはり国際的に今は交流しないと、分野に よっては大変進歩していかないというところがありますので、是非そういう観点から検 討いただきたいと思います。 ○寺田委員  一番全体を通じまして上の方のEvidence Based Medicineに入っていると思うのですが やはり厚生科学で非常に困ったことは、GCP(医薬品の臨床試験の実施の基準)に添った 体制が日本でなかなかできないです。それをEBMの後ぐらいに入れて、その制度を何とか つくらないと全部外国で行かれてしまうということがあるということであります。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。EBMの基礎になるための一番評価の高いのはランダマ イズドクリニカルトライアル(無作為抽出臨床試験)で、それにはGCPをしっかり制度化 しないといけないということだと思います。確かに御意見を承りたいと思いますが、そ のほかございますでしょうか。  もう一度確認させていただきますと、先ほど高久委員から補足で御意見いただきまし たように、新たな分野を立てるということではなくて、従来の分野を含めて研究推進に 当たっての基本的な姿勢としてどういうふうに対応していくかということで提案したい 今後推薦すべき研究分野というふうに書いてあるので少し誤解をお招きしたかと思いま すので、この点については少し考えさせていただきたいと思います。  同じく高久委員から医療、広くとればパブリックヘルスに入るということもお話しい ただきましたけれども、できれば分かりやすいということであれば、予防ということも 加えさせていただきたいと思います。  あと広い意味では、EBMの中に医療経済が重要なポイントに入るという高久委員の御指 示を得ましたけれども、医療経済についても、できるだけ分かりやすくという意味では そういう項目を入れさせていただきたいというふうに思っています。  2番目につきましては、研究支援体制は研究者と研究補助員という2つの問題点があ るので、その辺を注意してまとめさせていただきたいと思います。  それから人材交流などの基礎になるにはどうしたらいいかということに関しては、任 期制をどういうふうに取り入れるかということだと思います。  リサーチ・リソースについては、現在ヒューマンサイエンス振興財団を中心に検討さ れておりますので、厚生科学としてもそれを支援するような方向で活動していきたいと いうふうに考えております。  そういうことで、また改めて事務局と相談しまして、もう一度論点整理してからなる べく先生方の御意見を取り入れながら、誤解を招かないような文章にしていきたいと思 います。また先生方に御意見をいただきたいと思いますので、大変お忙しいところを恐 縮ですけれども、またこの研究企画部会に出席いただき、貴重な御意見を賜りたいとい うふうに思っております。  それでは最後に、事務局から何か御連絡ありますか。 ○事務局  次回の日程の調整でございますけれども、机上に配布してありますとおり、皆様の御 都合をお伺いいたしまして、部会長とも御相談の上、事務局で決定させていただきたい と思いますので、予定等につきまして、提出方よろしくお願いいたします。  以上でございます。 ○矢崎部会長  それでは、本日大変暑い中を先生方にお集まりいただき、貴重な御意見賜りましてあ りがとうございました。時間が参りましたので、本日の審議会はこれで終了させていた だきます。どうもありがとうございました。                                   <以上> 問い合わせ先 厚生省大臣官房厚生科学課 担 当 岡本(内線3806) 電 話 (代表)03-3503-1711 (直通)03-3595-2171