98/07/21 公衆衛生審議会精神保健福祉部会議事録 公衆衛生審議会精神保健福祉部会 議事録 厚生省大臣官房障害保健福祉部精神保健福祉課 議 事 次 第   日 時  平成10年7月21日(火) 10:00〜12:23   場 所  厚生省特別第1会議室  1 開 会  2 議 事   (1)性同一性障害の治療について   (2)欠格条項の見直しについて   (3)長期在院患者への対応について   (4)臨床心理技術者の位置づけについて   (5)その他  3 閉 会 ○部会長  定刻になりましたので、精神保健福祉部会を開催させていただきます。 初めに委員の交代がございましたのでご紹介を申し上げます。きょうはご欠席でござ いますが、6月30日付で、比嘉委員の後任に冨永委員が着任されております。ご紹介申 し上げます。  それから、4月1日付及び7月7日付で事務局にも人事異動がございましたので、ま ず、その御紹介からお願いできましょうか。 ○杉中補佐  ただいま、部会長よりご説明いただきましたとおり、本年4月1日、7月7日付で人 事異動がございましたので、ご紹介させていただきます。一言ずつごあいさつをお願い いたします。  まず、障害保健福祉部長の今田でございます。 ○今田部長  篠崎前部長の後任ということで、この度、着任いたしました今田でございます。5年 目の見直しということで、先生方にいろいろご検討いただいているわけでございますが これからの精神障害者の保健医療福祉に努力をしていく所存でございますので、よろし くご指導いただきたいと思います。どうぞ、よろしくお願いいたします。 ○杉中補佐  引き続きまして、同じく7月7日付で、障害保健福祉部企画課長になりました遠藤で ございます。 ○遠藤企画課長  遠藤でございます。よろしくお願いいたします。障害福祉課長から、部内で企画課長 の方に異動いたしました。引き続き、どうぞ、よろしくお願いいたします。 ○杉中補佐  同じく7月7日付で、精神保健福祉課長に就任いたしました三觜でございます。 ○三觜課長  三觜と申します。精神衛生課の時代、54年から56年の3年間、補佐でおりまして、17 年ぶりぐらいに戻ってきた感じで、その間の精神保健医療の変化、今さら驚いている次 第でございます。かなり昔と比べて精神障害者の施策もまた人々の理解も深まってきた のかなということで感激している次第であります。こういった流れをさらに進めてまい りたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。 ○杉中補佐  本年、4月1日付で、精神保健福祉課の社会復帰対策指導官に就任いたしました内藤 でございます。 ○内藤指導官  内藤でございます。よろしくお願いします。 ○杉中補佐  以上でございます。 ○部会長  ありがとうございました。  では、本日の委員の出欠についてご報告をいただきます。 ○杉中補佐  本日は、精神保健福祉部会委員22名中15名の委員にご出席いただいております。定数 の過半数を満たしておりますので、部会の開催は成立いたしております。なお、本日、 欠席される旨のご連絡をいただいている委員は、相澤委員、岡上委員、窪田委員、冨永 委員、谷中委員、藤井委員、渡邉委員の計7名でございます。以上でございます。 ○部会長  ありがとうございました。  では議事に入りますが、その前に、配布資料の確認をいたします。 ○杉中補佐  それでは、配布資料の確認をさせていただきます。  まず、本日の議事次第、委員の名簿、座席表のほかに、「配布資料一覧」といたしま して、  資料1、「各種資格制度等における障害者の欠格条項の見直しについて」。  資料2、「各種資格制度等における障害者の欠格条項調査結果について」。  資料3、「欠格条項見直しに係る検討方針の視点(案)」。  資料4、「長期入院患者の療養のあり方に関する検討会(中間とりまとめ骨子)」。  資料5、「臨床心理技術者の資格化問題についての経緯」。  資料6、「臨床心理技術者のあり方に関する研究(厚生科学研究)」 でございます。  そのほか、本日の議題の1に関しまして、精神神経学会に配布していただきました4 つの資料、「性同一性障害について」、「性同一性障害に関する答申と提言」、「性同 一性障害の外科手術に対する5月13日朝刊各紙論評」、「麻薬取締法違反、優生保護法 違反被告事件」の東京高裁の判決の概要。以上の資料でございます。欠落している資料 等ございましたら、事務局まで申しつけください。以上でございます。 ○部会長  よろしゅうございますか。  では、第1議題から入らせていただきます。「性同一性障害」という言葉はちょっと わかりにくいと存じますが、これからご説明があります。この治療につきましては、先 般、日本精神神経学会からガイドラインが出ました。それが本日、学会から配布の資料 の2番目にございます、「性同一性障害に関する答申と提言」です。これによりますと この障害の方に精神療法、ホルモン療法に加えまして、昨今では形成外科の治療技術の 進歩によりまして、外性器の外科的処置が可能になりましたが、外科的処置でございま すから、不可逆でございますし、性転換として取り扱われる一面があり、世論への影響 には大きなものがあると考えます。学会から配布の資料の3番目に、5月13日の朝刊各 紙の論評などがございますが、ほとんどの新聞が論評をしておられます。  こういう状況がございますので、当部会といたしましても、状況を把握したいと考え 本日、ガイドラインをおまとめになりました日本精神神経学会の幹部にご出席をいただ き、ご説明いただくとともに、皆様のご意見を伺いたい、と部会長として考えた次第で ございます。  なお、外科治療が生殖器に及ぶものでございますから、母体保護法の28条に触れる場 合がございまして、こうなりますと当部会の所管を超える問題でございます。  それから、また、戸籍という点なども法務省の問題でございます。したがいまして、 そういう点はちょっと論議を外していただき、本日の審議会といたしましては、精神疾 患の中に含まれますところの「性同一性障害の治療」という視点に限定してご議論をい ただければ、と思うものでございます。  では、最初に鈴木理事長、牛島副理事長、山内教授のお三方にお暑い中、おいでいた だきまして、ご意見をいただくわけでございます。お礼を申し上げます。どうぞ、よろ しくお願いいたします。 ○鈴木  日本精神神経学会の理事長の鈴木でございます。どうぞ、よろしくお願いいたします  この問題に関しまして、日本精神神経学会から昨年の5月28日に「性同一性障害に関 する答申と提言」というのを提出いたしました。これはいきさつを簡単に申し上げます と、1995年でございますが、5月に埼玉医大で性転換治療の手術の申請がございまして それを受けまして、埼玉医大の倫理委員会が検討を開始し、それをさらに受けまして、 専門の学会におけるしかるべき検討後に認可されるというふうなことがございまして、 それを受けまして、平成8年9月に精神神経学会として検討を開始いたしました。  そのときの検討の特別委員会の委員長がこちらにおられます山内教授でございます。 その結果といたしまして、昨年5月28日に答申がなされております。それを埼玉医大あ るいは厚生省等に答申申し上げました。  さらに多少おくれましたが、本年の6月に至りまして、法務省にさらにこの問題に関 して、戸籍上の問題等もございますでしょうということで法務省に提言をいたしました  「性同一性障害」というのは、先生方、専門でいらっしゃるので改めて申し上げるこ とはないと思います。改めて私たちの定義を申し上げたいと思います。これはアメリカ の精神医学会の診断基準に基づきます「DSM−IV」というのがございまして、これは 1994年に制定されたものですが、これは英語で、セクシュアル・アンド・ジェンダー・ アイデンティティ・ディソーダー、アイデンティティ・ディソーダーという2つの項目 のセクシュアル・ジェンダー・アイデンティティ・ディソーダーということになってお ります。日本語に翻訳されたものを申し上げますと、「性同一性障害とは『生物学的に は完全に正常であり、しかも自分の肉体がどちらの性に所属しているかはっきり認知し ていながら、その反面で、人格的には自分が別の性に属していると確信している状 態』」と定義されるというわけでございます。したがいまして、極めてこれは精神医学 的な苦悩に陥っている状態であるというふうに考えることができます。  これに関しまして、かつては「性転換願望」と呼ばれていた状態でありますが、これ をはっきりと医学的に検討して治療していく必要があるというのがアメリカの精神医学 会の判断でございまして、それに基づきましてDSM−IVでいろんな診断基準がなされ たということでございます。  この問題に関する私たちの学会の詳細な検討、あるいは埼玉医大の詳細な検討等に関 しましては、牛島副理事長あるいは山内教授からご説明を申し上げたいと思います。以 上でございます。 ○部会長  ありがとうございました。それでは、先生方、20分程度のご説明で、後は議論のため に時間をとりたいと存じますのでお願いいたします。 ○山内  精神神経学会の幹事で、埼玉医科大学の山内でございます。どうぞ、よろしくお願い します。座って失礼します。  ただいま鈴木理事長から概略の説明がありましたが、実は私は埼玉医大の倫理委員会 の委員長をやっておりまして、平成7年の5月に私どもの大学の形成外科から「性転換 手術に関する倫理的判断を求める」という申請が出まして、私たち委員はあまり性転換 に関する知識がなかったものですから勉強会から始めまして、実際には我々男性とか女 性という生物学的なセックスについてはよく承知しているわけですが、それ以外に、自 分が男であるとか女であるという性の自己認知(gender) と呼ばれるものが実は別にあ りまして、一般的には生物学的性と性の自己認知というのが一致しているのが普通なわ けですけれども、中にそれが一致していないで、生物学的には男性なのに自己意識とし ては自分は女性であると。女らしいというふうな認知を持ったり、その逆の場合がある ということがわかってきまして、そういう人たちは非常にさまざまな意味でもって精神 的にも心理的にも、あるいは社会においても職業上でもさまざまな困難を抱えているこ とがだんだんわかってきまして、埼玉医大の倫理委員会としましては結局そういう生物 学的性の不一致というgender identity disorderと呼ばれるものは1つの病気であると  発生学的にも胎児の時期からのいろいろな内分泌の異常とか、そういうものによる生 物学的原因あるいは心理社会的原因でそういう性の自己認知というものができてくるこ とはわかってきているわけですが、確立した成因論というのはまだないのですが、現実 としてはそういう人たちがいるのだということを認識しまして、これは治療対象である ということをそこでは結論づけたわけであります。  ただ、それに当たっては、1つとしては、性同一性障害に関する診断と治療に関する きちんとしたガイドラインをつくって、そのガイドラインに従って診断、治療を進める べきであるという第1の付帯条件をつけました。  第2番目の付帯条件としては、この障害はさまざまな領域にまたがりますので、精神 科医とか形成外科医だけが単独でそういう診断、治療をするわけではなくて、医療チー ムをつくりなさいと。各関連科の泌尿器科、産婦人科、あるいは小児科も含めた医師に よる医療チームをつくって行うべきであると。その上でどうしても手術よりその人の悩 みを救う方法がない場合には外科的治療も治療の方法であろうということを言ったわけ です。  3番目の付帯条件としては、やはり性にまつわる問題あるいは性別変更にまつわる問 題ですから、これは社会的認知とか関連所轄の官庁、法的整備、さまざまなものについ て、あるいは一般の人たちの認知も高める方向のいろいろの活動が必要であろうと、そ ういうことの整備が整った上で本当にそういう疾患についての治療も行われるだろうと いったようなことを倫理委員会では述べたわけであります。  その第1番目のこれに関するきちんとした診断と治療のガイドラインをつくりなさい という我々の付帯条件を受けて、日本精神神経学会が昨年5月にこれに関する答申と提 言をまとめて、お手元にありますような特別委員会報告ということになったわけであり ます。牛島先生に学会の答申と提言を含めて説明していただきたいと思います。 ○部会長  ありがとうございました。どうぞ、牛島先生、お願いいたします。 ○牛島  精神神経学会の副理事長をしております牛島でございます。  「性同一性障害に関する特別委員会」ができました折、私もその一員として参画いた しましたので学会からの立場ないしは議論になりましたことなどを簡単にご説明申し上 げたいと思います。  埼玉医大から外科手術というのは1つの適応であろうということが提言されまして、 それを受けて、精神医学ではこれをどう考えるかということが第1の課題でございまし た。もともとジェンダー・アイデンティティ・ディソーダーというのは、歴史的には精 神分析的なものの考え方が非常に根強くございましたので、幼いころの母子関係が問題 であるという考え方がかなりのところまであったわけでございます。  ところがその考え方にのっとっていろいろ治療しても一向に変化が起こらない。それ から、生物学的な研究の知見が集積されるに従って、どうもそう簡単なものではないら しいということがわかってきて、現実に諸外国では外科手術が行われるようになってき ている。そういうことがあるわけでございますけれども、それとともに精神科の方で、 私どもがこういう手術をすることの社会的な意味ということを考えましたときに、1つ 一番印象に残ったのは、この種の患者さんたちが非常に苦しんでいるということであり ます。  それに対して精神的にもそのほかにもいろいろこちらからしてあげる手だてがほかに も全く方法がない、そういうことがございまして、そういったことから、恐らく現在の 世界的な趨勢から見ましても、現場の状況から見ましても、手術をすることは1つの大 事な選択であろう、そういう認識に立ちました。それを受けて、いろいろ特別委員会で 検討したわけでございます。  日本ではご承知のようにあまり精神科の医者の経験というのがございません。我々は 我々なりのいろいろな勉強会をここで開いたわけでございますけれども、そのうち、そ れぞれ患者さんが個人的に一、二受診しまして、またその接触もできてきたということ も踏まえまして、どういうことがわかってきたかといいますと、転換手術を求める患者 さんにはおよそ大体3つの種類があると言われています。  1つはホモセクシュアルな人。それから、もう一つは、transvestite(傾錯)といって クロージング・ドレッシングをしたがる方の中に、それが本当の意味でのジェンダー・ アイデンティティ・ディソーダー、この3種類の人たちが織り混ざってということが1 つございますね。それから、もう一つは、本当のジェンダー・アイデンティティ・ディ ソーダーでも、長距離のトラックの運転手をやっていた方が、突然30過ぎてから女性に なりたいと言い出しても、どう逆立ちしても、女性として将来生かすことはとてもでき ないというような、いろんな問題があることが指摘されております。したがいまして、 恐らく転換手術を求める人たちの中できちんとそれにインディケーションをする必要が あるだろう。そういうふうなことから、先ほど山内教授からございましたように、診断 のためのチーム医療といったことが、心理学的な、例えば精神科医だけではなくてサイ コロジー、そういう人たちも必要だろう、動員する必要があるのではないかということ が1つ議題に上がりました。  それから、もう一つ、この人たちは、男性に生まれながら、女性として生きたいとい う願望を持っているはざまで、同一性の形成が非常に困難をきわめていることは間違い ございません。これは長年の間にいろんな形の認知を受けておりますし、本人の願望と 重なりまして、これは同一性形成にかなりの混乱を来している。そういったことの精神 療法といったことも必要だろう。そういうことの中できちんとした診断をしていかねば ならない。そういうふうなことが議論されました。  したがって、第1段階として、こういった精神療法的なといいましても、診断とこう いった同一性形成をめぐる問題と、この人たちが置かれている社会的なハンディキャッ プといいますか、非常な苦境といいますか、そういったものをどう支えていくかという ことと、また、手術をしたときに別の性として生きることの難しさをもう少し考えさせ るとかといったことの精神療法的な設計が必要だろう。そういったことの第一段階でど うしても必要だということで、第一段階として、そういった精神療法の段階が設けられ たわけでございます。  そういったことがある程度なされました後、第2段階では現実に内科的なホルモン療 法を始めることが実際に必要であろうと。そのためにはそういった領域の専門家の参画 が必要であるということがまた議論になりました。  その間も、また体が別の性に変わっていきます段階で、さまざまな不安や葛藤、社会 的な適応での問題も起こってまいりますので、この段階でも精神療法は当然必要になっ てくることになります。  これが終わりまして、この段階に至りましても本人の決意は変わらない。全体的に見 て、診断の面でもこの方向で本人を活かした方が幸せであろうという判断がつきました ところで、第3段階の手術を行うことになってまいりました。そして、手術をした後の アフターケアをどうするか。先ほど申しましたように、この人たちは、ともすれば同一 性形成に非常に問題を持っていますだけに、人格障害とかその他の精神科的なプロブレ ムを持った人たちが非常に多いようでございますし、適応性というのが必ずしも健康に 成長した人たちと同じようにいかないという面がございますので、第3段階でもフォ ローアップはかなり必要であろうということが議論になりました。  ことにサンフランシスコのReiko Honma True女史からいろいろお話を伺いましたけれ ども、やはり治療した後にも問題を残すケースが少なくないとは申しませんけれども、 精神科医がかかわりあわねばならないような状態はないわけではないということがそこ で指摘されておりますし、我々もその線に沿って1つの治療手段として、そういったフ ォローアップが必要だろうと、そういうふうに考えた次第でございます。 以上でよろしゅうございましょうか。 ○部会長 ありがとうございました。また、随意ご追加いただくことにいたしまして、どうぞ、 ご質問をお願いいたします。 ○吉川委員 山内先生にちょっとお伺いしたいんですけれども、埼玉医科大学に本人が、この性転 換手術というべきなんでしょうか、その手術を求めて来られたいきさつはどんなことな んでしょうか。そして、それをお聞きする理由はまた後でお話ししますけれども、まず それだけちょっとお聞かせいただけますか。 ○山内 実は形成外科の教授がマイクロサージャリーを得意としておりまして、ある男性患者 さんが交通外傷で外性器を傷つけたということで、外性器の再生術をしたことが週刊誌 に出たらしいんですね。それを読んだ、こういうことに悩んでいる方たちが、それでは 自分たちも外性器の形成術を受けられるのではないかということで形成外科を訪れるよ うになりまして、そういうことが発端で、諸外国では普通にやられているところがたく さんあるんですが、日本ではそういうことがタブーになっていたものですから行われて いなかったのがかなり表面化してきたということであります。 ○吉川委員 ありがとうございました。その経過の中に、ご本人たち、少なくとも今回申し出られ ているお一人かどうかわかりませんけれども、その方だけでもいいんですけれども、自 分の性が自分で決定できないでいることに対して医療以外のところにどういう形で訴え られていたか、おわかりになりますか。 ○山内 実はこういうことがあって、みんなが、「ああ、自分の病気は精神科に行けばいいん だということがわかった」と答える人がたくさんいるのですが、たくさんの人たちは、 自分たちがどこに行っていいのかよくわからないでいたということで、実は諸外国で手 術を受けたり、闇でホルモン療法を行われたりといったケースがたくさんあったという のが実情だったと思います。 ○吉川委員 私、今、こういう質問をしていますのは、我々医者は、私も精神科医ですけれども、 医者が人から訴えられたとき、どうしても自分でできる範囲のことを考えようとするん ですね。こういう問題はほかに社会的な問題だから、私たちが手に負えないという、そ うした考え方というのになかなか立てない。これは精神科の医療の中で、昭和30年代か ら40年代みんなそうで、精神障害者を病院の中に抱えたという経過もそれを思わせます ね。医者が自分たちなら何とかやれると考えてしまうところから出発するのと、また、 これは自分たちの問題ではない、医療の問題ではないということから出発するのとかな り違うと思うんですね。 その違いのところで、今、山内先生が言われた患者さんと言うべきなのか、少なくと も転換手術を求めている人たちは、ああ、病気なんだ、だから医者のところへ来たんで 今度、医者はそれは病気じゃないよという返し方がなかったのかどうか。そこのところ をちょっとお聞きしたかったんですね。 ○山内 実は私自身について言いますと、かなりこの問題にはヘジテートしていまして、本当 に精神科医がかかわる問題なのか、あるいは医療がかかわる問題なのかということでた めらっていたのですが、いろいろなことにかかわりを持つようになってからわかってき たのは、やはり医療が手を差し延べないとさまざまな形で本人は救われないんじゃない かという問題が1つと、それから、当事者の会に呼ばれたときに、こういう答申が出た ので、自分たちが病気として位置づけられて治療対象であることに非常に安堵感をおぼ えたと。それまでは自分は変態じゃないかとか、あるいはうちの人にそんな変な格好し て外に出るなと言われて閉じ込められたり、阻害されていた人たちが何か自分たちの立 場を持てたというふうなことを口々に言うのを聞きまして、やはりそれは必要なことだ ったのではないかというふうにちょっと私は認識を改めたことをつけ加えさせていただ きます。 ○吉川委員 部会長が冒頭にお話になられましたように、少なくとも精神医学的な何らかの関与が 必要であるかもしれない。ここまではいいと思うんですね。問題はそこから先で、手術 を実施するかどうかというのは不可逆だとおっしゃいましたね。そういう不可逆な問題 まで手をそめることは、私たち精神科医はかつて脳の切断術やったわけですし、それを 否定してきましたけれども、切断された人はもう返らないですよね。 ですから、私たち自身が本当に「医療」という視点だけではなくて、人間トータルに 考える視点をきちんと持っていないと、医学の範囲の中だけで人を救わなくちゃいけな いと思っている、その延長上でこの問題が議論されたとすると私は少々疑問があるので それで今ちょっと確認をさせていただきました。 ○山内 私もおっしゃるとおりで、これは社会的な広い広がりを持っている問題だと思ってい ます。 ○鈴木 一言追加させていただきます。この性転換願望あるいは妄想、性同一性障害という方々 の問題は、これは今、吉川委員がおっしゃるように、精神的な障害ととらえる前に人間 のあり方の本質を自分自身疑問に思っておられる方々であるということがありますね。 それに対して医師がどれだけ何ができるかということを、山内先生以下の特別委員会の 人たちは謙虚に考えた結果、こういう答申をしたと私は思います。 ○部会長 大熊委員、どうぞ。 ○大熊委員 同一性の問題が肉体的に解決されたとすると、今度は戸籍との同一性でまたまた悩ま れるということになると思うのですが、法務省にはどのような提言をされ、また、ポイ ントを教えていただきたいというのと、それから、吉川先生がおっしゃったロボトミー との関係では、ロボトミーはご本人がそうしたいと言ったわけではなくて、周りが見繕 ってよかれと思ったりなんかしてやってしまったけれども、こちらの手術の場合は、か なりご本人の意志がはっきりしているので、ちょっとそこのところは違うかなという気 がいたしました。 ○部会長 どうぞ、お願いいたします。 ○鈴木 法務省の方には早くお知らせすべきであったんですけれども、これは我々の学会の内 部事情ですが、理事会が交代した時期に答申が当たりまして、そのために手続きがおく れたのですが、当然手術を仮に受けた方が出た場合に、その方の戸籍、あるいはその後 の生涯のいろんな問題にかかわりますので、いち早くそのことに関して法務省の方針を 決定していただかなくてはいけないということがございまして、大変おくれましたので すが、6月22日に法務大臣宛に要望いたしましたけれども、これは「性同一障害に関す る答申と提言」をご参照いただきまして、特に「戸籍上の性別変更の問題及びそれに関 連した運転免許証や健康保険証等の性別変更についてもご検討いただき、関連各方面へ の適切なご支持を賜りますようお願い申し上げます」と。それから、「ことに埼玉医科 大学において、性同一性障害患者の性転換手術が許可され、その実行が目前に迫ってお りますことにかんがみ、ここに急ぎ要望申し上げる次第でございます」と、こういった 簡単な要望を提出してございます。 ○大熊委員  お考えとしては変えた方がいいというご判断の上でしょうか。それから、そういうの を、例えばこの部会でも応援した方がいいというふうにお考えでしょうか。 ○鈴木  我々の学会といたしましては、各医療機関において許可されて行われたものについて しかも、それが我々のガイドラインと申しますか、提言と要望に従ってなされたもので あれば、特に見解を表明することはございませんけれども、一応精神的には、ある意味 ではサポートしているつもりでございますけれども、具体的な形で表現はしておりませ ん。 ○部会長  山内先生。 ○山内  この部会ではどうするのかというのは、私の範囲を超えますけれども、実は確かに性 転換術を受けた場合でも、例えば運転免許証とかパスポートなどもみんな性別が入って おりまして、そういうところで起こってくる二次的ないろいろなトラブルとか障害は今 後考えられるとは思うんです。外国によっては、ドイツをはじめとして、そういう性転 換法みたいな法律がございまして、そういうもので性の表示の変換をできるようになっ ているようなんですけれども、そういう問題も今後こういうことが医療として行われる ようになれば、どうしても社会問題化せざるを得ないとは思っています。 ○部会長  牛島先生、どうぞ。 ○牛島  同じようなことでございますけれども、見方を考えますと、やっぱり精神神経学会は この患者さんたちは精神科の患者さんたちだというふうな認知が前提としてあると思い ます。それに従って、この患者さんたちを幸せにするにはどうしたらいいかという立場 でこの答申ができ上がっていることを申し述べておきたいと思います。 ○部会長  私も1つ伺いたいのは、アメリカが先進的なんでしょうが、外科手術という段階では マイクロサージャリーの進歩などがありまして随分成功率が高いのでしょうが、先ほど からお話のように、外科手術が成功したからといって、この患者さんたちの問題は済む わけではない。多分その後のフォローは精神科医が責任を持っていかなければならない 責任というのはおかしいですが、少なくとも治療を続ける一員でなければならんだろう と存じますが、専門誌はこういうケースのフォローアップ・スタディにおいて、例えば 5年後、できれば10年後どういうふうになっていくのかを報告しておりましょうか。  きょういただきました中にも1つそれに類する報告がございましたが、全般的にそう いうペーパーが既に幾つも出る段階にまで進歩した医療なのかどうなのか、もしわかり ましたらお教えください。 ○山内  実はアメリカではジョンズホプキンス大学にジェンダー・クリニックというのが昭和 40年の前半、1965年くらいのころにできたんです。そこでもってやられました治療法に ついてのフォローアップ・スタディがございまして、それだとやはり自殺した方なんか も多くて余りいい成績ではなかったんですが、その後、1975年くらいからハリー・ベン ジェミンというジェンダー・クリニックのあるルールができまして、そこで我々学会が 答申したような診断と治療に関するきめ細かな手続きができ上がりまして、それ以降、 非常に手術成績といいますか、その後の満足度というのは高くなったというふうに論文 には書かれておりまして、どうしてもそういう意味ではきちんとした診断と治療の手続 きが必要であるということが強調された論文がございますが、アメリカなどでも精神科 医の関与がもう少し多くなければいけないといったような指摘もございまして、日本の このガイドラインをつくるときには、診断の段階から手術の後のフォローアップも含め て精神科医の、あるいは心理畑の人たちの関与を強調しているということも、そういう ところと関係があるのですが、何をもってよかったとするかというのがちょっとわから なくて、モノによっては、転居率、それまではいろいろな地域にいられなくて動いたり するというようなことが多かったようですが、アメリカで手術後と手術前を比べたら、 そういう転居率は優位に少なくなっているので社会適応もよくなっているのだろうとい ったような論文もあったりしますけれども、その辺は何をもって決めるか、ちょっとわ かりませんけれども。 ○部会長  どうぞ、鈴木先生。 ○鈴木  今、事務方にお願いしましてコピーをつくっていただいていますが、ジェンダー・ア イデンティティ・ディソーダーをDSM−IVで詳細に記述したブラッドレイという人が ジェンダー・アイデンティティ・ディソーダー・レビュー・オブ・10・アンド・パス・ 10イヤーズという10年の評価をまとめた論文がございまして、それをきょう持っており ますので、今ちょっと配っていただきます。余り詳しい、10年間どうであったか、診断 といろんな取り扱いどうであったかという解説が主で手術をした後でどうであるかとい う詳しいデータはないんですが、今後十分検討する必要があるというふうなことは書い てございます。  もう一つ、今、手術後のことが問題になっておりますけれども、実は最初の診断も非 常に重要でございまして、さっき吉川先生がおっしゃられたことも関係するのですが、 かなり自分自身が別の性ではないかと言ってくる方の中に、はっきりある意味の精神病 である方もあります。例えば、私どものところの一例ではっきりした25歳の男性であっ た人でかなり強固なそれを持っている人がいたんですが、いろんな症状もあって、治療 いたしまして、その方が、それまで、男性ですが、女性として暮らしてきた方が、純粋 に精神医学的な治療ではっきり男性としてのアイデンティティを取り戻したというケー スがございまして、そういう意味で最初に精神科医がしっかりかかわる必要はあるとい うことを申し上げておきたいと思います。 ○牛島  フォローアップに関して一言、先生のお話では、今も治療は完備されて比較的きちん としたデータが出ているのかというお話でございましたけれども、まだまだ問題はかな り山積しているような印象を、いろいろお話伺った範囲内でございます。例えばアメリ カで完備しているといいましても、経済的な問題で東南アジアあたりへ行って治療を受 けたというような例だってあり得るんだそうでございまして、そういう人たちの予後と いうのは必ずしもよろしくないといった意見もございます。  したがいまして、精神神経学会としては、1つの時流としてこれを認めざるを得ない だろうという立場に立ちながらも、そこあたりは非常に慎重になくてはいけないという ことで、第1例目が埼玉医大で手術が行われるようでございますので、それを受けて精 神神経学会でもフォローアップ委員会を設けて、きちんとそういったことはやっていき たい、そういうふうに考えているところです。 ○宮坂委員  今の話を聞いておりますと、性というものは、男性と女性にしか区別ができないよう な感じの議論をなさっておるわけですけれども、こういうふうな悩みを持っている人と いうことは確かに精神科で治療しなければならないんですけれども、その治療方法が、 男に分けるか女に分けるかということだけではないような気がします。ですから精神科 の医師が治療することは非常に結構なんですけれども、外科的手術なりそういうことに よって、あれかこれかに分けるのは非常に危険ではないのか。やはりいろいろ人間は生 き方があるわけですので、そこの点を認知するにはどうするのかというようなことも議 論していかないと取り返しのつかないことになるのではないかと思っております。  どうも科学者といいましょうか、こういうことをやりますと、どちらかに分類種を分 けようというような気持ちが起きてきすぎはしないかというふうな気を持っておりまし て、こういう人がいることを社会的に認知することの方に向ける。そして悩みを解決す るにはどうするかということを考えていかないと、医療の世界だけでこういうふうなこ とを解決しようとするのは非常に危険だと思っております。それに対して学会の先生方 はどういうふうにお考えなのか、そこの点を聞かせていただきたい。 ○部会長  山内先生。 ○山内  全くおっしゃるとおりでありまして、私もこういう問題を始めまして、おっしゃるよ うに男と女にクリアに二分することにはいろいろ問題があるのではないかと思っており ます。実はその中間に性別違和、ジェンダー・ディスフォリアという名前で呼ばれてい ますが、そういう広いグループもありまして、どっちかにいかなければいけないという わけではないんだけれども、どうしても生物学的性とジェンダーの不一致感があるとい う人もおりまして、そういう方やなんかは手術をする必要もなくて、精神療法の段階で うまく安定するケースもあるわけでありまして、実は学会の答申の中に、こういうこと で性同一障害の中核群だけを扱うために、そこからはじき出されてしまう、そういう違 和感を持っている人たち、連続的に2つに分かれた性の間にある人たちにも手を差し延 べるべきであるということを一応付言としてつけ加えてあるのは、そういう今おっしゃ られたその意味そのもので考えたわけであります。 ○部会長  もう一つ、おうかがいしますが、今、「時流として」という言葉が出ましたが、確か にインフォームド・コンセントということが重視される時代ですから、その方が精神疾 患の急性状態等によって自己決定権にいささかの問題があるという場合以外で、そして この処置の結果、かくかくしかじかの障害ないし困難が今後もこういう格好で続くであ ろうということを告知して、それでもなおその方が手術を望まれる、そういう場合、我 々には2つ立場があるかと思うんです。1つはそういうことをすれば大変であるからや めておきなさいと先回りしてとめるのが精神科医的なのか、あるいはある一定のインフ ォームド・コンセントを満たせば、それはその方のご決定ですし、そして、外科的にも そういう手術が可能であるとするならば、それは認めざるを得ない、そういう考えがも う一つあると思うんです。どちらかといえば、精神神経学会のご答申は後者であると考 えてよろしゅうございますか。 ○鈴木  そのとおりでございます。インフォームド・コンセントの基本的な考え方と、これは 私自身の個人的なものも含めますが、我々の学会の理事、メンバーはほとんどそうだと 思いますが、その当事者本人がその生活に安定して幸せでいられるかということが一番 の基本の問題だろうと思います。したがって、我々がある目標を設定して、この方がよ ろしいのではないですかということをお勧めするのは必ずしも正しくないと。それは幾 つかのこういう選択の可能性がありますよという道をお示しすることは我々はできると 思いますが、それを選んでいただくのはご本人であると私は思います。つまり、こうい うことはあり得るということをお知らせすることもインフォームド・コンセントに含ま れると私は思っているわけです。 ○部会長  どうぞ、牛島先生。 ○牛島  一言つけ加えておきますけれども、こういう種類の患者さんの現場におりますと、も う一つ、家族が非常にこれに巻き込まれているということもやはり認識しておかねばな らないような気がいたします。我々のところに来るときは長年家族との間の非常な相剋 があって、ある状況に達しておりますけれども、その間で家族の方がいかに子供が手術 を受けたいという願望。自分の本当の性は男に生まれたんだけれども、男でないという ことを言い張ることに対して、親の方から物すごい抵抗がしばらくあるんですね。それ が5年、10年ぐらいになってくると、基本的にはそれを認めない以上、お互いに自分た ちも幸せになれないんだと、そういう認識まで到達しているという、こういう認識も、 非常にニュロチックじゃないという意味で、社会的に客観的に見るとやっぱりそうだろ うなという感じのする判断がそこにもあるということを考えておいた方がいいような気 がいたします。 ○部会長  どうぞ、三浦委員。 ○三浦委員  ちょっとお伺いしたいのですが、ジェンダー・アイデンティティ・ディソーダーは3 つの障害があるという中で、先生たちが性転換手術、最終的にはそれしかないというこ とは、その3つのうちのどれでしたか。 ○牛島  トランス・セクシュアル(性転換願望症)と言われるものです。これは本当の意味で のジェンダー・アイデンティティ・ディソーダー。しかし、性転換を望む人たちには、例 えばホモセクシュアルな人があったり、先ほど山内教授が言われたように、ジェンダー・ ディスホリックな服装傾錯症ですか、そういったふうな形の人もいるんですね。  それから、先ほど第4のケースとして、今、鈴木教授は、精神の患者さんが妄想に基 づいてそんなになりたがっているという、そういうふうなことはもちろんございます。 だから、我々が言っているのは、本当の意味でのジェンダー・アイデンティティ・ディ ソーダーというのはあるんだけれども、それを囲む周辺にはまたたくさんの種類の患者 さんがいるということを申し上げたんでございます。 ○三浦委員  埼玉医大で今度やられるかもしれないというのは、かなり除外されて、純粋に取り出 した症例なんですか。 ○山内  おっしゃるとおりです。これは先ほど申し上げました医療チーム、我々のところでは ジェンダー・クリニックと称していますが、そこで綿密に検討されて、生物学的性につ いてのきちんとした判断、外性器ないし染色体とか、それから、ジェンダーに関する精 神科医2名以上の診断とかというものをもとにして、手続きを踏んだ上でのケースであ ります。 ○三浦委員  やっぱり手術以外に方法がないというインフォームドというところがちょっとひっか かるんですけれども。 ○山内  どうしても性転換術というところに焦点が合い過ぎますけれども、実は治療は、精神 療法、ホルモン療法、手術療法という3段階に段階を追って行われることになっていま して、最初の段階は2年以上にわたって精神療法を行ったり、時にはツルー・ライフ・ テストと呼ばれるように、ほかの自分が欲する性でもってフルタイムでもって生活して 見て、本当にそれでいいのかどうかということを確かめるといったような段階が第1段 階にありまして、その段階で、自分はいろいろな精神療法受けて違和感はあるんだけど これでもいいという形でもっておさまる人が、アメリカの報告ですが、7割はいるとい うふうに言われております。どうしても、それでは満足しないで外形を変えたいという ことでホルモン療法をやって筋肉のつき方とか、乳房のふくらみとか、あるいは女性の 場合には、月経がなくなるとかといったようなことで非常な満足感を得て、その段階で もういいというふうにおっしゃって、ホルモン療法を続けていくケースもかなりあるよ うでありまして、手術しかほかに方法はないというふうに考える人は、実はそんなには 多くないと言われておりまして、埼玉医大で今上がってきている一例につきましては、 そういう段階を全部踏みまして、これしか自分では一致感を持つ方法はないんだという ところまで来ているケースであります。 ○部会長  どうぞ、融委員。 ○融委員  精神科医として関与できる部分は精神療法までだと思うのですが、それから離れた場 合、第2段階、ホルモン療法、手術療法になってくると、我々の関与から離れてしまう わけですね。そこで問題なのは、一番最初に性同一性障害であるという診断を2名の者 がすることになっているのですが、やはり精神療法から離れる段階で2名。それも恐ら く異なった施設あるいは少し離れた精神科医2名が慎重に判断すべきではないかと思う んです。私は精神疾患のかなりのものがこういうものを含んでいることを考えると、そ のようなふうにちょっと変えていただいた方がいいのではないかと思います。 ○山内  実は、今、融先生のお話は、我が国においてどういうシステムを持てるか、そういう ことと関係がありまして、今のところジェンダー・クリニックという医療チームを持っ ているのは一医科大学でしかないんですが、今までのところでもって、私の聞き及ぶと ころでは、北海道から九州にわたって、そういうことについての問い合わせがございま して、実際にはご本人のことを考えれば、少なくとも全国に最寄りのところで、そうい うことの相談できるようなプライマリーケア的なことも含めてあるシステムができる必 要があるかと思うんです。  そういう中でもって精神療法のあり方とか診断のあり方は、今始まったばかりなので これがうまく動けば、そういう医療の現場の条件整備も必要ではないかというふうには 考えております。 ○牛島  そのことに関して、これは参考になるのではないかと思いましたのは、性同一性障害 特別委員会でいろいろ議題になったときに、例えばカリフォルニアではどのくらいジェ ンダー・クリニックの手術できるところがあるのかというと2つぐらいだそうですね。 多くて3つだったか、それぐらいなものだそうでございまして、現実にそれをやってい くことになると、だから差し当たって、我が国ではせいぜい関東の方に1つと、関西か 西の方に1つぐらいのことをやっていけば、大体間に合うのではないかという印象を持 って、それをディスカッションしたことがございます。  したがいまして、例えばいろんな施設で、2人の人間が診断したら、すぐそれが手術 にいっちゃってという、余り専門じゃないところでも安易にやれるような、そういう性 質のものではないということはちょっと申し上げておきたいと思います。 ○部会長  大体時間がきましたが、どなたか、ぜひと仰せの方はどうぞ、お願いいたします。 ○大熊委員  大変厳密にお考えになっていらっしゃるようなので、それらを全部クリアした方にと って、先生方がおっしゃる患者さんが幸せになるという目標を持つとすれば、法務省の 問題は重要だと思うのですが、事務局の方ではどんなふうに法務省の動きを把握してい らっしゃるでしょうか。 ○部会長  中村補佐、少しご説明くださいますか。 ○中村補佐  具体的に法務省の方と情報交換はしておりますけれども、基本的な立場として、法務 省の方として、今コメントできる立場にはないということでお話は伺っております。た だ、戸籍法の位置づけとしては、手続法という位置づけがありまして、男として生まれ た、女として生まれたという者を手続きをして登録をするというような法律であるとい う理解の下であって、診断というか、男である、女であるという基準を戸籍法の中に持 っているというものではないというふうに法律の性格があるというふうには認識してお りますけれども。以上でございます。 ○部会長  大熊先生、何かご意見があったら教えておいてください。 ○大熊委員  ここまでいらっしゃったというのは、きっとかなり学会だけがおっしゃってもなかな か通らないから、ほかのいろんな応援も必要だとお考えになっているんじゃないかなと お顔を見て思ったものですから、我々もどういうふうに考えたらいいかを検討したらど うかなと思いました。 ○部会長  ありがとうございました。では、時間でございますので、これで打ち切らせていただ きますが、三先生にはご多忙の中をわざわざお越しいただきましてありがとうございま した。ただいまフォローアップ・スタディも拝見いたしましたので、読ませていただき ます。こういう社会の注目を浴びる話題でございますので、私どもも状況を把握してお こうと考えた次第でございますが、大変よくわかりました。また、先生方が大変思慮深 い検討過程をお持ちであることも推測されました。どうぞ、これからもいろいろお考え いただきまして、慎重にご対応くださいますようお願いいたします。  私どもは分裂病というふうな宿痾についての社会的問題をここで話題にすることは多 いのでございますが、時代に応じて新しい問題が出てきて、それを精神保健も無視する わけにいかない。そういう事情もあろうかと存じます。どうもありがとうございました ○鈴木  どうもありがとうございました。どうぞ、よろしくお願いいたします。              (鈴木・牛島・山内氏退室) ○部会長  それでは次の議題に入らせていただきます。 ○宮坂委員  ちょっとよろしいですか。 ○部会長  どうぞ。 ○宮坂委員  この議事として、これを取り上げたということは、この部会で議論したということに とどまるのか。これに対してどういう対応をするかを決めるのか。そこのところは議論 はしなくてよろしいのでしょうか。この内容だけ聞いて、わかりましたということなの か。それであれば、それでよろしいんですけれども、どういうふうに考えていられるの か、ちょっと座長にお伺いしたい。 ○部会長  座長として申します。私がここへ出しました理由は、現在、社会的なテーマになって おりますものでございますから、精神保健福祉部会としても、それだけの認識を持つべ きではないかということでございまして、ここで議論をしていただくことが目的でござ います。 ○宮坂委員  それに対して対応をどうするかとか、こうするかということは、まだこの次のことで あって、ただ、ここで議論したということにとどめておいてよろしゅうございますか。 ○部会長  そうしていただければと存じます。 ○宮坂委員  わかりました。 ○部会長  次へ入ってよろしゅうございますか。事務局の方、よろしゅうございますね。次は、 欠格条項についての検討状況のご説明を事務局からいただきます。これは資料1でござ います。 ○杉中補佐  それでは説明をさせていただきます。座って説明をさせていただきます。  各種資格制度等における障害者の欠格条項、特にそのうちでも精神障害者に係る欠格 条項というものは、従来から精神保健福祉行政の重要な関心事項の1つでございました 過去の公衆衛生審議会の精神保健福祉部会等でも何度も取り上げられてございますし、 過去の精神衛生法、精神保健法等の改正時の国会の附帯決議等でも取り上げられている 事項でございます。今回、総理府が中心となりまして、精神障害者を含む障害者全体の 欠格条項の見直しの方針を明らかにいたしましたので、それについてのご報告をさせて いただきたいと考えます。それでは資料1をよろしくお願いします。  まず趣旨でございますけれども、「障害者対策に関する新長期計画」において、精神 障害、視聴覚障害者等に関する資格制限について見直しを行うこととされておりまして また、「障害者プランの中」におきましても、各種資格制限等における精神障害者の欠 格条項の見直しを推進することとして、平成14年度までの期間内に、資格等の制度にお いて、障害を欠格事由とする条項に係る見直しを行うということを政府として明示して おります。こういった見直しにつきまして、総理府の障害者施策推進本部を中心に検討 を行うということになっておりました。  これらのことを踏まえまして、平成9年9月から平成10年3月にかけまして、総理府 障害者施策推進本部におきまして、各省庁の所管する法令において規定している障害者 の欠格条項についての調査を行ったところでございます。その結果、79制度に欠格条項 (身体障害に関わるもの17、身体障害・精神障害双方に関わるもの10、全障害に関わる もの5、欠落しておりますが、精神薄弱と精神障害者の双方に関わるものが5つ、その ほか、精神障害に関わるもの42)があることがわかりました。  その内容については、資料2として、欠格条項の調査がありますので、後ほどごらん ください。  このように総理府を中心に欠格条項についての調査を行いまして、本年5月にその結 果を中央障害者施策推進協議会に報告したところでございます。現在の条項でございま すけれども、中障協での見直しの方向に関する議論を踏まえて、総理府としては欠格条 項見直しに係る検討方針の視点を定めて、総理府から各省庁に対応の検討を依頼するこ ととなっております。その案が資料3としてございますので、若干説明をさせていただ きます。  簡単に説明いたしますと、障害についての見直しの視点といたしまして、1ページの 真ん中以降から書いてありますように、規制撤廃・緩和の視点といたしましては、まず 試験等で確認できるものについては、法令の中で欠格事由として残さない。撤廃するこ とについての検討を行う。  また、絶対的欠格事由に関しては、できるだけ相対的欠格事由に改めていくように検 討する。  次のページでございますが、障害を理由とする。精神障害である等の欠格事由から障 害者を特定しない規定の改正を行うという検討を行う。例えば心身の故障によって業務 を適正に遂行できないことといったような感じでの障害を特定しない規定の改正を行う  また、一定の条件を付し条件成就後に資格を付与する規定の検討等を行う。  また欠格事由の条件となった事由がやんだときに再び資格等を回復する規定等の明確 化を行うといったような方針を出して、その方針に基づいて各省庁で資格等のあり方に ついての検討をすることになっております。  また、資料1に戻らせていただきますけれども、今後のスケジュールでございますが 今月中に各省庁に見直しの依頼を行いまして、各省庁で中間的な検討条項を総理府にお いて取りまとめ、それが今年の10月ごろとなっております。  また中障協での中間的な検討を踏まえて、総理府より各省庁に再検討を依頼する。  各省庁の検討結果、これは11年2月ぐらいをめどに行うことになっておりまして、総 理府で対象方針を取りまとめるのが11年3月ごろまでに行うこととなっております。  また、その対処方針案につきまして、中障協で議論を行うということで、方針を11年 12月ぐらいまでに行う。  その最終的な結果に基づきまして、欠格条項に係る法律等12年度中をめどに行う。改 正事項が多数に上がる場合には、一括法等の可能性についても検討する。このような方 針に基づいて検討を行うことになっております。  精神保健福祉課といいますか、我が方に期待されていることでございますが、また、 過去精神障害者に関する欠格条項の見直しが精神衛生法、精神保健法等の改正の中で行 われておりますので、そのときの改正状況等の情報の提供を行うことが期待されており ます。また、非常に期待されておりますのは、特に障害者については、できるだけ欠格 条項の適用除外としていくという中で、今、特に医師の診断は、精神障害者であるかな いかということだけについて行われることになっておりますけれども、できるだけ欠格 条項の適用除外としていくために、障害の状態、特に生活能力障害についての客観的な 判定方法、診察のあり方をつくれないかといったような形で、このような診断方法の検 討が期待されております。  今後、当課といたしましても、このようなことについての議論を行っていきたいと考 えております。以上でございます。 ○部会長  ありがとうございました。どうぞ、ご意見をお願いいたします。 ○藤原委員  欠格条項の見直しということは必要だとは思っておりますが、その前に、精神障害者 の対象になる者の規定といいますか、何でも自傷他害のおそれがあったら措置ですし、 それが全部精神障害者に入っておりますので、前からお願いしておりますように、薬物 中毒とか人格障害とか、そういった人と分けて定義をして、精神障害者の中の、いわゆ る分裂病とか、そういう者に対しての欠格条項、中毒患者に対しての欠格条項とか、そ ういうふうに分けてもらわないと全部一緒に入れますと、やっぱりこれはだめだねとい うのがたくさん出てくるのではないかという気がするんです。  それから、もう一つ、何回も申してますように、痴呆性老人も入っているんですよね そういう人も皆含めて一緒にまとめて議論していくというのはちょっと無理があるので はないかと思うんですが。 ○杉中補佐  総理府の見直しもそういった問題点がまさしく根底にございまして、いわゆる精神障 害というものに着目するのではなくて、その欠格事由となる条項に対応する能力あるか どうかということに着目して欠格条項を定めていこうという方針で見直すというのが総 理府の検討方針でございます。だから、分裂病に当たるかとか、そういったことではな くて、その分裂病の結果、例えば免許取得できるような状況にあるのかどうかといった ことに着目していこうということで、逆にそういった判定をすることができるのかどう かということについて、我が方での検討が期待されているということでございます。  だから、精神障害に対する範囲は、確かにさまざまなものがございまして、すべてが 欠格条項に入ることはないという問題意識は皆さん持っておりまして、それに関して、 精神障害に該当するかどうかではなくて、そういった資格を取得する能力があるかどう かということに着目していくというのが総理府の方針でございます。以上でございます ○部会長  それは、補佐、かなり成功しそうですか。そういうふうになると大変いいですけどね ○杉中補佐  そうですね。我々としても今後検討しなければならないのは、既に精神障害者保健福 祉手帳等におきましては、能力障害等にも着目した判定を行っておりますので、その資 格取得に当たっての大半は精神科医であると思いますけれども、そういう診断に当たっ て、もうちょっと能力的なところに着目した診断のあり方ができないものかなと考えて おります。それにつきましては、今後の検討課題として、ぜひこの部会でも取り上げて いただきたいと考えております。 ○部会長  藤原委員が言われるように、分裂病の人で外来へ20年マイカーで通っている人もいる そうだからこそ遠いところからでも外来へこれるんです。 ○藤原委員  だから、そういったことを決めていく前に、この欠格条項の見直しはできないと思う んですけれど、だから、どこでどういうふうに決めるのかということが先にないと、そ れぞれあるんですね。分裂病の患者さん、うちも運転免許持って通ってきてますよね。 だから、その人ならばいいけれど、こっちの方はだめだというのが先にないと、全部外 れてしまったはちょっと問題があるので、いつも我々の方で警察とトラブルになるのは そこなんですよね。だけど、一応今のところは医者の判断で退院させるというのだから しようがないんですよというので納得してもらうけれど、警察の方は保健所の方に、24 時間監視しておれとかということを言われるし、警察の方も24時間その人の張り込みす るわけにいかんと言われるし、先にそういうのを分けていただかないと、この欠格条項 はそれぞれ個別で違うんではないかと思うんですけど、どこでどのように判断されるの か、そこのところを先に決めていっていただかないといけないんではないかと思うんで すけど。 ○部会長  よく承っておきます。全くそのとおりだと存じます。また、あるときよくても、次の ときだめで、だめな人もよくなったりといろいろするものですから、何かきめ細かい、 今、補佐のおっしゃるように、生活力と申しますか、社会適応能力みたいなものをチェ ックするリストがぜひほしいですね。 ○藤原委員  地域で生活している場で見られるところが必要だと思いますね。 ○部会長  ありがとうございました。  では次の議題へ移らせていただきます。次は「長期入院患者の療養のあり方に関する 検討会」の中間報告でございまして、No4でございます。お願いいたします。 ○中村補佐  それでは、資料4に基づきましてご説明させていただきます。  本日付で長期入院患者の療養のあり方に関する検討会(中間取りまとめ)が骨子とし てまとまりましたので概要についてご説明させていただきます。資料をおめくりいただ きまして、早速内容をご説明させていただきたいと思いますが、2ページをお願いいた します。我が国は精神医療に関しまして、長期入院等の問題が指摘されて久しいわけで ございますが、精神障害者の社会復帰を促進することが喫緊の課題となっているところ でございます。こうした中、長期入院患者についても社会復帰を推進し、その自立と社 会参加を進めていく療養体制を整備することが必要となっております。  この検討会におきましては、長期に入院を続けている精神障害者について、その療養 のあり方について検討することで、昨年の9月に設置されまして、我が国の状況、諸外 国の状況、また精神障害者の処遇、長期入院患者の療養のあり方、社会復帰援助のあり 方ということについての検討を5回にわたってまとめたものでございます。  まず現状でございますが、2ページにありますように、平成8年厚生省患者調査では 入院患者34万人、在宅患者等 183万人、合計 217万人の精神障害者がいるという数字に なってございます。精神病床数は、人口1万人対29.1床という数字でございます。  その入院期間を見てみますと、記載のとおりでございますが、一番下のマルが総括的 なものでございますけれども、5年以上の長期入院患者が全入院患者の約50%である。 このうち精神分裂病患者が76%を占めているということでございます。  1つ上を見ていただきますと、平成5年の調査で、これは日本精神病院協会の調査で ございますが、入院患者の重症度別比率で、寛解 2.7%、院内寛解10.2%、併せて12.9 %。このうち、入院後1年以上に限ると、寛解及び院内寛解は約9%、3万人になると いうことでございます。こういった方々の社会復帰をどんどん促進をしていこうという 対象に今あるわけでございます。  3ページをおめくりいただきたいと思いますが、そのほかの救護施設等にも精神障害 者の方がかなり入所されているという実態でございます。  一方、昭和61年、少しデータが古くなりますけれども、全国精神障害者家族連合会の 「日本の精神障害者と家族の生活実態白書」では、入院中の精神障害者の66.7%が退院 を希望している。しかし退院についての家族の考えとしては、「退院させたくない」33.9 %が最も多く、次に「退院させたいが現実的に困難」29.5%、併せて63.4%の家族がな かなか難しいという判断をされているということでございます。 その支障となるものにつきましては、「まだ、病気が良くなっていない」57.3%、「病 気の管理ができず再発する」46.6%など病状に関するものが上位を占めております家族 の受け入れ条件としても、「病状が安定していること」61.5%が最も多いということで ございます。  この調査の資料につきましては、この資料の17ページにアンケート全体の調査表が載 っているところでございます。17ページから18ページ、退院と家族の受け入れ、どのよ うな条件がそろえば、家で引き取れるか、18ページにございますが、「病状が安定」と いうのがかなり高いということがおわかりいただけると思います。  19ページにも引き続き、「退院と家族の受け入れ」という調査表がございますが、今 ほど申し上げたようなデータはここからの抜粋ということでご理解いただきたいと思い ます。  3ページに戻りまして、長期入院患者に関する問題点といたしまして、「精神障害者 の状況の改善」ということで、精神症状が不安定であったり、家族や地域の受け入れ態 勢が整わないなどの理由により長期入院患者の退院が進まないというふうに言われてお ります。  また、「サービスの内容の充実」を図っていくことが必要だということで、社会復帰 を促進するために有効な精神科リハビリテーションプログラムが確立しておらず、その 開発・普及が必要と言われております。  さらに「適切な施設サービス」という観点から特別養護老人ホームや老人保健施設と 比べ、遜色のない、長期入院患者にふさわしい療養環境への改善や適切な医療、精神科 リハビリテーション介護サービスの提供が必要と。  退院後の受け皿としての精神障害者社会復帰施設は、整備がおくれており、さらなる 整備が必要。これが今我が国の課題だというふうにまとめております。  一方、諸外国の状況でございますが、アメリカ、カナダ、イギリスについてご報告を いただいております。アメリカにつきましては、1963年ケネディ教書によりまして、地 域医療の方針変更が行われまして、その結果、精神病床は、それまで人口1万人対26.4 床であったものが、1万人対11床まで減少している。州立病院の病床が激減して、私立 精神病院、総合精神病院科が増加。  退院後の受け皿としての居住施設が整備されているということでございます。  その次にどのような施設があるかが列挙されているところでございます。  次に5ページをお開きいただきたいと思いますが、これらのうちアメリカではナーシ ングホームが36万床、人口1万対15床まで整備されているということでございました。  カナダでございますが、こちらも1972年に精神医療改革がスタートいたしまして、社 会復帰の促進が図られ、平均在院日数の大幅な短縮と精神病床の縮小、地域ケアの整備 が行われているところでございます。  ブリティシュ・コロンビア州の例でございますけれども、ここの州立精神病院は病床 5千といったところが25年間で 750まで縮小したということもございます。 こちらでも地域ケアの施設がいろいろ整備されておりまして、一番下のマルになりま すが、地域ケアの施設として、危機介入施設、短期居住施設、長期ホステル、ボーディ ングホーム、ナーシングホームなどの多彩な居住施設を現在1万対10.9床まで整備して いるが、これでもまだ不足しているというお話でございました。  6ページでございますが、イギリスの場合は、1960年代より、脱施設化施策が開始さ れていると。これで退院促進がされたわけですが、4つ目のマルですけれども、精神分 裂病患者の再入院率が増えること「回転ドア現象」といたものは起きていないというご 報告でございました。  精神病床の入院患者は3分の1まで減少しまして、精神病床は、人口1万対14.8とい うことでございます。  我が国のこれまでの「長期入院患者に関する検討の経緯」でございますが、昭和29年 生活保護を受けている長期入院精神障害者を対象とした更生保護収容施設としての第2 種病院構想が発表されたわけですが、これはなかなか各界の反対が多くて断念したと。  さらに33年生活保護を受けている方に、緊急保護施設を創設した経緯がございます。  また、40年精神衛生法が一部改正されまして、その後、7ページになりますけれども 「精神障害回復者社会復帰促進センター」「精神衛生社会生活適応施設」などの社会復 帰施設が議論されるようになってきたということでございます。  昭和63年以降、日本精神病院協会から「病院内機能分化試案」を出されたり、また平 成2年には厚生科学研究で、急性期病棟、療養病棟、保養棟の病棟類型構想が示された り、さらに平成5年にも、日本精神病院協会から、精神科医療供給体制構想など、新し い構想が矢継ぎ早に出されているという状況でございます。  実際平成6年には、精神療養病棟が診療報酬の中で導入されてきているという状況が ございます。 平成7年に、日本精神病院協会の案として、「心のケアホーム」という案が示されて おります。これはお手持ちの資料の21ページにどういった人員配置、施設基準であるべ きかという概要が示されてございますけれども、こういう医療の継続性を確保しながら 生活支援を行う福祉的居住施設で生活環境に配慮した独立型病院併設型の施設を整備し たらどうかという案が出されたわけでございます。  8ページをおめくりいただきまして、平成8年の厚生科学研究の中でも、福祉施設ま た医療福祉型施設の2つの案が示された。これは22ページに資料として添付させていた だいております。  こういったいろいろ構想案が示されている中で、これから考えられる施策ということ でございますけれども、「病棟整備と治療プログラムの開発」をしていく。先ほど申し 上げましたような継続した入院医療と精神科リハビリテーションを必要とする長期入院 患者に関する療養病棟の整備と有効な治療プログラムの開発・普及を行う。  さらに、「施設の多様化」を図っていることが言われております。例えば、医療との 関わりが入院治療を要する程度ではないが、継続した医療及び日常生活指導、社会復帰 のための訓練を行う医療と福祉の中間的施設。  また、病状は安定しているが、高齢等のため就労できる見込みがない者を対象として 日常生活訓練や日常生活サービスなどの医療的ケアと生活の場を提供する医療、福祉的 居住施設。  医療的な面での支援をあまり必要としないが、精神障害者特有の生活能力に対応でき る福祉施設といったようなものが示されてございます。 さらに「社会復帰促進のための施策」として、家族や地域住民の理解促進、施策の充 実、病院等の外来機能の強化ということが述べられております。  最後に「今後の検討課題」でございますが、「研究・開発」の視点といたしましては 重症度や状態像による類型化や療養ニーズの調査研究。さらに有効な治療プログラムの 開発・研究を行うべきである。 また、「施設類型の検討」という観点からは、例えば「老人性痴呆疾患を含む慢性期 医療施設」「日常生活訓練と医療的ケアを備えた施設」「自立支援を強化した施設」な どの施設類型について検討を考える。  次に「障害者福祉施設類型との調整」ということで、障害を重複して有している精神 障害者が、実態として多数入所している他の障害者福祉施設類型との調整を図る必要が ある。  また、医療計画、障害者プランとも今後の調整をしてかかるという骨子でございます 以上でございます。 ○部会長  ありがとうございました。どうぞ、ご質問、ご質疑をお願いいたします。 ○井上委員  資料の20ページですけれども、諸外国の状況というところで、アメリカ、カナダ、イ ギリスの精神病床がそれぞれ人口万対11床、16.3床、14.8床とあるんですけれども、こ れは資料として正確なのかどうかということが、これまでいろいろ調べてきた数よりは かなり多い感じがするんですけれども、これの実態は3分の1ぐらいじゃないか。ある いはそれ以下かもしれませんけれども、ちょっとその点について、ここでは結構ですけ れども、私、ちょっと疑念を持ちましたので、そのことだけをちょっと申し上げておき たいと思います。  といいますのは、これはかなりベースになる数字で、1つのこれからの日本の精神医 療、精神病床の数を考えていく上では非常に重要な数値になるのではないかなと思いま すので、もしかわかれば、どういう出典だったかというふうなことを示していただけれ ば、ありがたく存じますが。 ○阿部補佐  この諸外国のデータに関しましては、従前の精神病床以外にも急性期の救急医療施設 なども含まれておりまして、あるいは医療、処遇困難などを含むそういう病床も含まれ ておりますので、若干先生のイメージされている病床よりも多くなっているかもしれま せん。  一方、出典に関しましては、直近の、先ほど論議でも出てきましたHonma Reiko 先生 の論文などを引用させていただいております。 ○部会長 井上委員、狭義の病床数はどれくらいですか。大体のがわかれば。 ○井上委員 狭義かどうかちょっとわからないですけれども、カナダは大体5床、イギリス5床以 下、アメリカはもっと少ないんじゃないかなというふうに、私はふだんから大体あれで 考えてきたものですから。 ○部会長  ありがとうございました。拝見して思うのに、23ページの表が目玉ですか。 ○中村補佐  骨子の中ではいろいろ多様化ということで示されたわけでありますけれども、それを まとめて、今の社会復帰施設体系の中で、さらに長期入院患者のための施設としてはこ ういうイメージではどうかという案でございます。 ○部会長  議論を少し絞るために、このあたりはいかがでございますか。これによりますと、例 えば人件費はかなり精神保健対策費補助金の中から得られるわけですね。 ○中村補佐  ここにもイメージとしてありますように、今、既存の制度の中で活用して、できるだ けすぐできるものとしてはこういうイメージがどうかということでございます。 ○部会長  余り遠い理想ではなくて、何とかできそうなものと、そういうところですね。 ○中村補佐  はい。 ○部会長  大熊委員、どうぞ。 ○大熊委員  この目玉についてなんですけれども、社会復帰のためのものなのか、おうちには帰れ ないから、そこが終の住みかになるものをイメージしていらっしゃるのか、どっちかと いうことなんですけど、書いてあるのを見ると、この先、おうちへ帰れそうもない方が 並んでいますから、多分ここが住みかということになるのだと思うんですけど、世界の 流れで言えば、日本で既に存在するグループホーム、それに1日の生活リズムをつける ための日本で言えば、共同作業所のようなものがあれば、それで足りるのであって、今 さらこういう20人というような規模のものを新たにつくるのは、時計を逆回しにするよ うな感じが私にはするのですが、どういうお考えに基づくのでしょうか。 ○中村補佐  今の社会復帰施設、グループホームに援護寮とかいろいろございますが、利用年限と か、あと就労要件とか、そういう施設を利用するに当たっての要件がございまして、こ こにありますような高齢等のために就労の力がないというような方はなかなかそういっ た社会復帰施設、今、整備されている中でも利用しにくいというところがございまして そういう利用年数やまた就労といったものを少し緩和した形で受け皿をつくれないかと いうような、より緩やかな形での受け皿をイメージしたものでございます。 ○小池委員  検討委員会に私もいたのですが、こういう具体的な議論ではなくて、外周りの情勢を めぐっての議論に終始したように思うのですが、2つほど申し上げますと、1つは、精 神病院の中で高齢化した人は、うちの5年間の経験でも3分の1は老人福祉施設に収容 可能でした。ですから精神病院を終生の場所として障害者を入れておくという考え方は 正しくないのではないか。これが第1点。第2点は、現在痴呆老人の老人福祉施設の地 域内につくる動きがありますし、実際にあるわけですので、こういうような形をイメー ジするのであれば、精神病院の奥深い敷地の中につくるのはおかしいのではないかとい うふうに思います。  ただ、長期入院者が今のままではよくないという発想で、長期入院者の検討委員会が できて議論されてきているといういきさつについては、私たちも評価しておりますが、 今後イメージされるべきものは、第3番目の問題といたしまして、こういう小さな社会 復帰施設といいますか、まだ、これはイメージで漠然としておりますが、地域の中でど のように生きていけるかという形の社会復帰のあり方ということをやはり重点的にやっ てほしいと思います。以上です。 ○部会長  今、小池委員、精神病院で老人ホームへ移せたのが何%とおっしゃいましたか。 ○小池委員  3割ですね。待機ケースまで入れますと4割は可能です。60歳以上の長期入院患者に ついて。再入院は5%だけでしたね。 ○部会長  小池委員の今のご質問で言うと、社会復帰に対して、ある意味ではマイナスである、 そういうご趣旨ですか。 ○小池委員  精神病院の中につくるのであればマイナスでしかならないと思いますね。 ○部会長  真ん中に線がありますが、この線の意味ですね。 ○小池委員  ただ、今の精神病院が非常に格差が大きくて、約2〜3割は非常にアメニティー等で 問題だと思います。そういうものを改善するという努力は厚生省もしておるようですし 団体もしておるようですので、これはこれで大事なことで、何らかの形で改善をしなけ ればいけないとは思いますが、精神病院だけが老人を全部取り込むのではなくて、どん どんほかの福祉施設に出すべきであると考えます。 ○部会長  ありがとうございました。これはこれでよろしゅうございますか。どうぞ。 ○井上委員  精神障害者の「ゴールドプラン」では、入院している人の1割ぐらいが地域の方に出 せるというふうな全体のごく大まかなプランだったと思うんですけれども、前の課長さ んの田中課長さんも大体そういうご発言で、1割ぐらいが外に出せれば流動化するので はないかというお考えだったように記憶しています。  これを出された委員会では大体どれぐらいの人を地域ケアの方に出せるのかというふ うなイメージ。数値的なことがもしわかれば、教えていただきたいということが1つ。  もう一つ、これは私の意見なんですけど、今、小池委員がおっしゃっていましたよう に、基本的に長期入院の人を病院ケアでやるのか、あるいは地域ケアでやろうとしてい るのか。その辺のウエートをどういうふうに置いておられるのか、ちょっと見た限りで はよくわかりませんので、その辺もちょっと基本的な考えがもしかあれば、お知らせい ただきたいと思います。 ○中村補佐  資料の2ページをごらんいただきたいと思いますが、今、ご指摘の障害者プランでの 入院患者の1割というところは、平成5年の調査で入院患者の重症度別比率、寛解 2.7% 院内寛解10.2はと、これは入院を1年以上に限りますと、3万人ということで、この3 万人を対象に社会復帰施設の整備を図っていこうということでございます。  さらに、5年以上の長期入院患者につきましては、50%全入院患者は占めているわけ でございますけれども、このうち分裂病患者のうち、軽度、中等度の方が38%(5万人) いらっしゃるということで、寛解、院内寛解のプラスアルファの部分、こういう医療的 な、入院は必要としなくても医療的なケアがあれば、社会復帰が可能な方々を対象にし ようというイメージでございます。  それで、資料の14ページをごらんいただきたいと思いますけれども、「精神分裂病入 院患者の入院期間別構成比でございますけれども、この中で一番下の表をごらんいただ きたいと思いますが、精神分裂病で最重度、重度、寛解までそれぞれ分けて見てみます と、5年以上の方、10年以上の方でもそれぞれの重症度において、それなりのかなり割 合がいらっしゃいますので、こういったところで長い方の中でも、最重度、重度の方が いらっしゃると。こういった方が継続して入院治療が必要なんであろうと考えておりま すが、中等度、軽度の方はその中の一部の方は社会的な受け皿を整えば、長期入院をす る必要がなく社会参加ができるのだろうと考えているところでございます。 ○井上委員  そういったご意見をお伺いしたのは初めてのような気がしますので、ちょっと確認し ますと、社会的な受け皿の整備にもよりますけれども、絶対的に入院が必要だというの は、最重度と重度の全体の約4分の1、そういった理解でよろしいわけですね。 ○中村補佐  そういった方々は引き続き入院医療が必要だとこのデータからは言えると考えており ます。 ○井上委員  ありがとうございました。 ○大熊委員  たびたび恐縮です。小池先生がおっしゃったことに私は全く賛成でありまして、精神 病院の奥深いところに社会復帰施設と銘打つものをつくるというのは矛盾した白いカラ スとか、そういうような感じになっちゃうと思いますので、そのようなことを、今の段 階では骨子ですけれども、ちゃんとしたものにするときには、これは精神病院の敷地内 にはつくらないものであるということを明記していただきたいと思います。  それから、先ほど小池先生が4割は普通の特養へ行けるということは、6割はそれが もし難しいとして、万一小規模な20人くらいのがつくられるとして、ここの資料に載っ ております「心のケアホーム構想」の建物基準は1人 4.8平方メートル以上というので 今の特養の10.45 平方メートルよりも大分少ないし、今、特養も4名というのをどんど ん個室化しているというのに対して、精神病の人が余りにもお気の毒という感じがいた します。  それから、痴呆の方にもこれをということですけれども、今、痴呆の方たちは、精神 病院という環境が余計異常なような行動を引き起こすのであって、なるべく病院らしく ない普通の家の感じがいいんだということが世界的にも、また国内でも言われていて、 そういう痴呆の精神病院の草分けの「キノコエスポーワル」の佐々木先生なども、ご自 分の長い体験から現在は「ろばたの家」という普通の家の感じのものをつくって、それ がこれから行くべき道であるという、最もこういうことに先進的に取り組んでこられて いる方がそうおっしゃっているわけで、そのような成果を活かして、先へ進むというよ うな方向にしないと、後世、あの時点でまた変なことやっちゃったなということになる のではないかと大変心配いたしますので、骨子ということは、報告書というのはもうち ょっとちゃんとつくるのでしょうか。それにぜひ活かしていただきたいと思います。 ○部会長  ありがとうございました。 ○古谷委員  8ページのところの「入院患者に対して考えられる施策」のところで3点ございます けれども、特に長期入院の場合は、3点目の「社会復帰促進のための施策」、上の2つ ももちろんですけれども、ここを特に力を入れていただきたいと考えております。それ が3ページ退院についての家族の考え方とか家族の受け入れ条件、この辺がかなり変わ ってくるのではないかと思っております。やはり地域の中でどういうふうに受け入れら れるかというのが、家族も安心して患者さん方を見れる、迎えられるというところにい くというふうに考えております。上の、例えば、施設類型と施設と地域での問題。でき れば、この辺は併せてモデル的に行ってみるのも1つの方法なのかなというふうに考え ております。  それと、1つ伺いたいんですけれども、2ページのところで入院期間の問題がござい ますけれども、これは診断された時期と患者さんの年齢と入院期間との関係がもしわか りましたら教えていただきたいと思っております。以上でございます。 ○部会長  最後の点はいかがですか。 ○阿部補佐  最後のデータにつきましては、今、手持ちにございませんので、また、委員の方にご 報告させていただきます。 ○藤原委員  二、三ございますが、1つ、今、大熊委員さんがおっしゃいました痴呆老人は、私も 同感でございまして、精神病院でなくて地域で家庭的なところで扱っていただきたいと 保健所の方でもそういう形で保健婦も対応しております。  それから、長期入院患者といいましても年齢でもうちょっと分けてきめ細かく考える 必要があるのではないかと思いますのは、10年で長期入院といったら、20歳で入院すれ ば、長期入院ですよね。それから、高齢になって、今、特養とか老人ホームに行けるよ うになる。こういう方はもっと年が上ですよね。ですから社会復帰のあり方も、私ども の方も高齢者は60になるのを待って、特養とか老人ホームとか入れてもらおうねという ので待ってもらっているんですけれども、それよりももっと若い人に焦点をあてて社会 復帰というのは考えていくべきないかと思うんですね。  そういう人の場合は、私どものところは、特に地方で特有なのかもしれませんが、単 科の精神病院はもともとな歴史的なものがございまして、非常に僻地にあるわけなんで すよね。僻地で社会復帰するようなグループホームつくってもらったって、通って来れ ないわけなんですよね。全然社会復帰にならないんです。ちょっと寝る場所を変えて、 その中で掃除をしているとかというような感じで社会復帰と言っているだけで、本当の 意味の社会復帰になってないと思うので、ぜひ地域で、私ども保健所の方でも社会復帰 の活動を市町村に広めておりますが、そういう市町村単位ででも取り組んでいただいて 市町村は保健婦しかおらないからちょっとできないと言われることもあるかと思います が、保健所が必ずいろんな形でかかわっておりますので、おつき合いさせていただける と思いますので、そこには限りませんけれども、社会復帰はやはり病院の中でなくて、 地域で何かグループホームでも施設でも作業所でもつくっていただくことを重点的に考 えていただく必要があるのではないか。  年齢全部一緒に考えますと、ちょっとややこしくなるので、若い人を対象にというこ とでお考えいただけたらよろしいんではないかと思うんですけれど。 ○部会長  ありがとうございました。どうぞ、牧委員。締めくくってください。 ○牧委員  いや、締めくくりはできませんのですけど、援護寮、授産施設がなぜ発展しないのか というのもやっぱり1つ問題ではないかという気がしておるわけです。援護寮にしても 授産施設にしても病院の敷地内ではないわけです。いわゆる外に面しておかなければい けないというようになっておりますし、これは社会福祉法人でございます。ただ、問題 はやっぱり2年間という縛りがあるのと、10人の職員というような形でいろんな縛りが ある。それと社福になってしまうということ。それと補助金をいただきますので、いろ んな意味で監査が厳しいのはいいんですけれども、なかなかやりづらいし発展しない。  だから、この辺を緩めるのも1つの方法ではないかなと思うんですが、今、1つ精神 病院で自由にやっておるのは共同住居でございます。むしろ、お金ももらわずに、患者 さんを下宿をさせる。そしてデイケアに通わせる。そうすると年限もないしずっとおっ てもいいし、退院して職親のところに勤めてもいいといったようなことも考えて、実際 にそれが進んでおるような状況です。  それから、もう一つ、小池先生も大熊先生も保健婦の先生も言われましたが、地域の 中につくれということでございますが、地域の中にだれがつくるか。だれがつくってく れるのか。土地があるのか。地域の人が「来い、来い」と言ってくれるのか。そういっ たような患者さんを地域の方が喜んで引き受けるところがあれば、それはいいんじゃな いかというふうに思うんです。  いかがでございましょう、小池先生。 ○小池委員  地域の中でできるだけ出す努力も必要だと思いますし、実際に社会復帰施設も今ノー マライゼーションプランで始めておるわけですね。だから、そういう一環の中で考えて いかなければいけないと思いますね。グループホームもたくさんできてきています。ア パートに入っている人もたくさんおられるわけですね。60歳以上の人はむしろ老人ホー ムでやれるんです。社会復帰がかなりできるんです。我々のデータから言いましても。 むしろ60以下の長期入院の人の社会復帰施設づくりの方が難しいんですね。 ○牧委員  私も老人はグループホームを地域でやるというのは非常にいいと思います。それから また各県で、熊本県ではグループホームを精神病院協会でやっております。それから、 佐賀でもアパートを借り上げて、そこのオーナーさんが施設長になって、いくらかその 施設長さんに差し上げて、そういうふうな下宿をさせておるといったような幾つかのそ ういうケースはあるわけでございますが、なかなかこれを地域の中にすぐ持っていくと いうことになると、やっぱりそうすんなりといくかどうかなというのは、我々努力せね ばいけない。 ○小池委員  それが精神医療関係者の努力じゃないですか。精神病院を開放化して、できるだけリ ハビリ活動して、デイケアをつくり、外来を増やし、長期入院を減らすというのがやは り必要なことではないですかね。 ○部会長  大熊委員、どうぞ。 ○大熊委員  これも小池先生と、私、同じ考えで、実際に例えば関東だったらサン前橋病院の周り には多分三十幾つかの共同住居があるわけで、最初の1つ、2つというのは抵抗があっ たけれども、それが3つ、4つとなるうちに地域の人たちがなるほどと思って、むしろ 下宿として提供するというふうに地域が変わっていったわけで、そういうことの信用も ないような精神病院が仮にあったとして、そこが地域が理解してくれないという大義名 分のもとにまたまた病院の敷地内に変なものをつくったりするというのは非常に危険な ことだというふうに思います。 ○藤原委員  今、受け皿がないというお話をされましたが、その受け皿づくりをしているのが私ど も保健所でございますし、精神科の先生方のご指導を得ないと、いきなりではできませ んが、グループに入っていただいて、精神病院というのは今申しました僻地にあること が多いですから、それで保健所に入ってきていただいてご指導いただいて、保健所が受 け皿づくりを今しているんですよね。  だけど、保健所も今度地域保健法の関係でかなり管轄が大きくなりましたので、やは りもっと近くでということで市町村にお願いして、社会復帰の小規模作業所もつくって いただいておりますし、そういうのを民生委員さんとかいろいろお願いしていきました らできますので、地域でつくることを基本に考えていただいたら、これから努力てして いけば、いけるのではないかと思います。保健所をぜひチームに入れていただければと 思います。 ○部会長  ありがとうございました。 ○牧委員  これから努力していきたいと思っておりますが、1つ、これ熊本で起こったことでご ざいますが、そういうグループホームに入っている方が、裏のおうちに上がり込んで痴 漢行為を起こして、病院が訴えられたといったようなこともあるわけでございます。そ れは地域につくっていたわけでございます。1つ1つそういう困難を乗り越えて、我々 努力していかねばならないというふうには思っております。以上でございます。 ○部会長  ありがとうございました。どうぞ、中村補佐。 ○中村補佐  23ページの先ほどの資料のことで、医療機関と枠が一緒になっているものですから、 敷地内というようなイメージで、ちょっと言葉が足りなかったかもしれませんけれども 決して病院の中にこういうものをつくるという前提でこの絵をかいたわけではなくて、 地域に開かれた形でこういった施設を整備していくということが前提でございます。つ け加えさせていただきます。 ○部会長  どうも活発なご意見をいただきましてありがとうございました。 ○小池委員  先ほど牧委員が言われましたけれども、福祉施設の方は監査も厳しくて発展しないと いうようなことをおっしゃっていましたが、やはり監査は厳しくしてくれないと、仮に グループホーム的なものをつくる場合も困るわけでして、情報公開というものは、福祉 施設は一応ガラス張りなんです。ですから病院も情報公開をきっちり進めないと、国民 の支持も得られないし、医療も発展しないというふうに私は思いますので、その点よろ しくお願いいたしたいと思います。 ○牧委員  それは肝に命じておりますし、病院も情報公開をするということを前提にしておりま すし、うちの病院も情報公開をやっております。 ○部会長  ありがとうございました。  では次の議題に移らせていただきます。最後が「臨床心理技術者の位置づけについて」 でございます。お願いします。 ○阿部補佐  精神保健福祉課の阿部でございます。それでは説明をさせていただきます。資料5で ございます。臨床心理技術者の近年の資格化問題についての経緯でございます。  近年におきましては、平成5年3月に公衆衛生審議会で資格化についての創設あるべ しという意見が出ておりますが、平成5年6月、精神保健法改正時に衆参の両委員会で も附帯決議が出ております。  飛びまして、平成7年、精神保健法の改正時におきましても、衆参両委員会でも同様 の附帯決議が出ておるところでございまして、平成7年12月、「障害者プラン」作成時 におきましても精神科ソーシャルワーカー、臨床心理技術者等の資格のあり方について 鋭意検討を進めるべしという意見が出ております。  それに従いまして、私ども厚生省でも厚生科学研究あるいは検討会を設けまして検討 してまいったところでございまして、さらに平成8年から9年にかけましては、「精神 科ソーシャルワーカー及び臨床心理技術者の業務及び資格化に関する研究班が設置され ております。  この研究班の報告をもとに、精神科ソーシャルワーカーにおきましては、平成9年12 月精神保健福祉士法として、成立の日の目を見たわけでございますが、その法成立のと きに、衆参両委員会の附帯決議におきまして、「精神保健におけるチーム医療を確立す るため、臨床心理技術者の国家資格制度の創設について検討すること」という意見が添 えられております。  これに基づきまして、10年3月「臨床心理技術者の資格の在り方に関する研究班」が 発足しております。  資料6をお願いします。  先ほど平成8年から9年にかけまして、厚生科学研究の研究班がございましたが、そ こでの論議は団体間の意見がまとまらず、今回、平成10年度3月の研究班では、検討テー マを絞って検討を行っております。その中では、臨床心理技術者の行う心理行為と医行 為、診療の補助との関係について、症例を通じて検討するということで、臨床心理行為 の内容、あるいは心理行為と医行為との関係について検討を行いました。  研究班メンバーにつきましては、ここにお示ししているとおりでございまして、班長 としまして、日本精神病院協会常務理事の三村先生に、平成8年同様班長をお務めいた だいております。委員のメンバーにつきましては、精神科あるいは小児科、そして、心 理団体を団体をお呼びしまして検討を深めていただきました。  検討の経緯としましては、第1回目に、臨床心理技術者の行う心理行為の内容につい てということで、まず児童相談所における心理判定委員の行う業務、臨床心理士の行う 業務ということで、それぞれ委員でもあります方から話を伺いまして、そして論議をす るという形式をとっております。この中で、臨床心理技術者の行う業務は、医行為では なく、あくまで心理行為であって医療でカバーできないことを実施しているという意見 が日本臨床心理士会の副会長でもあります乾委員からも出ておりますし、他方、医行為 といっても、身体的医学ばかりでなく、精神医学行為もあり、精神医学的行為と臨床心 理行為は関連し合うものであり、これらが別であるというのは無理であるという意見が 大勢を占めております。  続きまして、第2回の班会議でございますが、精神科医療以外での臨床心理技術者の 位置づけということで、教育分野から、文部省の健康教育課健康教育企画室長からご発 言いただいておりますし、あるいは労働の分野からということで、労働省の労働衛生課 専門官からもご意見をいただいております。  一方、小児科領域からは、委員でもあります慶応義塾大学の松尾小児科教授からご発 言いただいております。  文部省からスクールカウンセラー、あるいは家庭教育カウンセラーについて報告を受 けておりますし、あるいは労働省からはトータル・ヘルス・プロモーション・プランに 基づく心理相談担当者の役割についてご報告を受けております。また、小児科領域の慶 応義塾大学の松尾教授からは、摂食障害を例にとり、医療行為を心と身体とに切り離す 構図に懸念を抱かれまして、臨床心理技術者の行う臨床心理行為と医師の行う医行為が 重なり、また、臨床心理技術者のケースの抱え込みについての意見が述べられておりま す。  続きまして、第3回目でございますが、心理業務と医行為との関係について、臨床心 理技術者の専門的アプローチということで、全国保健医療福祉心理職能協会会長からご 発言いただいております。  臨床心理業務の中には、医行為に該当するものがあるということで、臨床心理行為と 医行為とを分けることは難しく、重なる部分が多い。傷病者に対しては、病気について の十分な理解なしに臨床心理行為を行うことは危険を伴うものであり、精神医学につい ての知識が必要となるということで、最後に結論としまして、臨床心理行為についての 専門的な議論は、この3回の論議で深まったわけでございますが、臨床心理行為と医行 為との関係については、さまざまな意見がございまして、意見の一致を見なかったとい うことで、ここにご報告させていただいております。  この研究班につきましては、現在、班長が取りまとめを行っておるところでございま すが、平成10年度についても班会議を継続したいという考えでございます。  資料の3ページ目でございますが、これは昨年(平成8年度)の厚生科学研究でござ いますが、ここでの意見はそれぞれの団体の意見がまとまらなかったということで、参 考のためにつけさせていただいております。  資料4ページは、その際のメンバーでございますが、その研究報告でございます。  以上でございます。 ○部会長  ありがとうございました。どうぞ、ご質疑をお願いいたします。 ○三浦委員  ちょっとお伺いしたいんですが、医療の方で使う臨床というのと、心理方面で使う臨 床というのと何か意味が違うというような話聞きましたけど、それはどうなんでしょう ○阿部補佐  私どもの少なくとも研究班ではその定義づけというものは論議しておりませんが、従 前の臨床という定義でございます。 ○三浦委員  それから、前からいわゆる臨床心理とPSWはペアでいつもいろんなところに出てい たのが、PSWだけ先行して資格化したというのは、何かいきさつがあったんでしょう か。 ○阿部補佐  精神保健福祉士に関しましては、以前の公衆衛生審議会でもご論議いただきましたよ うに、団体側の調整あるいは法律的な整備というものの論議が十分になされた上で法制 化ができたということでございます。 ○三浦委員  この資料をちょっと見させていただいておりますけれども、臨床心理、あるいは心理 臨床、現場で実際にやっている全心協ですか、その中で意見が大分違うように感じられ るのですが、実際やっぱり違っているのでしょうか。 ○阿部補佐  先ほどもご説明させていただきましたが、心理行為と医行為との関係についてテーマ を絞ったわけでございますが、そこでも団体間の意見、あるいは小児科医、精神科医含 めましてそれぞれのお考えが違ったというところでございます。 ○部会長  この問題は、精神医療にかかわる人々がこういう資格を持った人が入ってきてチーム を組んでくれることの必要度をどれぐらい感じているか、という問題にかかわると思い ます。一層の努力をお願いして、私はできれば……。 ○融委員  私、この問題はほとんど知らないものですが、心理士が我々の仲間になってくれると いうことは歓迎すべきことだと思うんですが、2ページのところの下のところの検討概 要のところに、「傷病者に対しては、病気についての十分な理解なしに臨床心理行為を 行うことは危険を伴うものであり、精神医学についての知識が必要となる」というのが 大多数の意見としてあるんですけれども、私は傷病者に対して臨床心理行為を行う場合 には精神医学の知識ではなくて、医学の知識が必要なのではないかと思うんです。です から、その辺のところが非常に重要な問題ではないかと思いました。 ○部会長  精神医学も医学ですから、精神を論ずるに必要な医学知識は持っていると考えて「精 神医学」という言葉でどうですか。 ○融委員  それは、私、最初そう思ったんですけれども、精神医学では精神科の疾患であるかど うかというふうに診断するということが一番最初に大事なことであって、それには精神 医学以外の医学が非常に必要になるわけですね。例えば内科疾患によってもたらされて いるものかどうか。そういうものを精神医学と含めるかどうかという問題になるわけで すけれども、精神医学だけ知っていればいいということには私はならないと思うんです ね。独立して臨床心理的な行為を行うということに関してはですね。その辺が私はちょ っと気になったわけです。 ○部会長  わかりました。言葉の定義ですね。私は精神医学というのはそういうものだと思って いるんです。身体因性の、あるいは脳器質性の精神疾患を診断し治療するのに役立つ現 在の医学研究の動向を知っているのが精神医学であると、そう解釈していただければい かがでしょう。その意見で意見を統一してくださいませんか。  特に、先ほど出た「痩せ症」の場合なんか非常に困るんですね。精神医学知識、その 背景にある身体医学の知識がなければ、本当の意味でのカウンセリングはできません。 先生のご懸念はよくわかりますが、精神医学というのはそういうものでありたいし、あ るべきだと思います。 ○古谷委員  1つわからないので教えていただきたいのですが、臨床心理士が今いらっしゃいます けれども、臨床心理士と臨床心理技術者の業務を分けようとされているのか、その辺の 定義みたいなもの、それを教えていただきたいということと、もう一つは、平成10年度 においても同メンバーにて班会議を開催予定というふうになっておりまして、4ページ のところで、厚科研の問題ですけれども、いろんな方々がメンバーに加わって厚生科学 研究をやってらしたんですが、ぜひ10年度については、看護の部分との関係もございま して、研究班メンバーの中に看護職を一人追加していただけるとありがたいというふう に思っておりますので、要望いたします。以上です。 ○阿部補佐  最初のご質問の臨床心理士と技術者の違いでございますが、臨床心理士といいますの は、臨床心理士認定協会というのがございまして、民間の団体でございますが、そちら が認定を行っておる民間資格でございます。臨床心理技術者といいますのは、実際に医 療の現場でお働きの分析等を行う方々を称して、いわゆる臨床心理技術者ということで 診療報酬上、あるいは厚生省として、そういう呼称を使っておるということでございま す。  今回、論議のテーマは、それら臨床心理技術者が行う行為と医行為との関係について 論議したものでございまして、臨床心理士の行為と臨床心理技術者の行為を区別したも のではございません。  ご要望につきましては、班長と相談いたしまして、検討したいというふうに考えてお ります。 ○部会長  どうぞ、小池委員。 ○小池委員  今、ご要望が出ましたので申しわけないですが、やはり総合病院の仕事というのは非 常に重要なんですが、そういう方の代表が入ってなくて、民間の精神病院の単科の病院 の代表が2人入っている、精神科では。ほかには笠原先生が入っておられますが、総合 病院ということかもわかりませんが、これも私立大学といいますか、そういう意味では 公立なり国公立なり、そういうことにも一応考えておいていただければありがたいなと ただ、メンバーも絞らなければなりませんから、その辺は特にどうのという要望ではあ りません。感想です。以上です。 ○吉川委員  事務当局の方にちょっとお願いなんですけれども、資料5をいただきますと、「臨床 心理技術者の資格化問題についての経緯」ということで、近年の経緯というふうにさっ きおっしゃいました。それはそれでよろしいんですけれども、近年の経緯がこんなふう になってしまった経緯もあるはずなんですね。その辺のところを少し明らかにしていた だかないと、恐らくここだけで見れば、今までなぜできなかったのかと思うことだけに なってしまいますし、できたら、これ以前の経過も少し明快にしていただいた上で、考 えてみれば、精神科の医療の畑そのものも反省すべき点もあるでしょうし、行政的にも 考え直さなければいけない点もあるでしょうし、そうしたことをお互いに情報としてき ちんと持った上で先へ進めたらいいなと、こう思っていますので、ぜひ、平成5年以前 の、先ほどもちょっと話が出ましたけれども、民間団体である臨床心理何とか協会、よ くわかりませんが、その協会がなぜできたのかといういきさつあたりは、昭和60年代の 問題だと思いますので、ぜひ、その辺は明らかにしていただければ、こう思います。 ○部会長  承っておいていいですね。  時間が近づきました。どなたか、よろしゅうございますか。その他是非という方がご ざいますが、少し時間がございますので、どうぞ。 ○牧委員  私の先ほどのお話しましたことは、社会復帰を進めたいという気持ちでございます。 それにはもっと規制緩和をした形で自然な形で社会復帰を進められる方がいいのではな いかというのが私の真意でございまして、社会復帰は進めていかねばならないという気 持ちにはかわりございませんので、どうぞ、よろしくお願いいたします。 ○三浦委員  事務局からいただいた通知には「(4)臨床心理士の位置付け」というふうに書いて あったものですから、今、それと臨床心理技術者とははっきり違うことがわかったんで すが、通知の「臨床心理士」ではなくて、これは「臨床心理技術者」についてですか。 ○阿部補佐  「臨床心理技術者」でございます。 ○部会長  そのほかよろしゅうございますか。  どうも本日は長時間ありがとうございました。少し時間を延長いたしましたが、ご了 承ください。事務局の方、何かありますか。特にきょうのところありませんね。  では、これで終了いたします。ありがとうございました。 照会先 障害保健福祉部精神保健福祉課        医療第一係 高橋(内3057)