98/07/10 第23回年金審議会全員懇談会議事録 第23回年金審議会全員懇談会議事録 日 時 平成10年7月10日(金) 14:03〜16:28 場 所 全国都市会館第2会議室  1 開会の辞  2 委員出席状況報告  3 議 事  ・ 厚生年金基金・国民年金基金について   ・ 世論調査・大学生調査等について   ・ 今後の進め方について  4 閉会の辞 〔出席委員〕   京 極 会 長   八 木 委 員  木 原 委 員  久保田 委 員  神 代 委 員   高 山 委 員  富 田 委 員  桝 本 委 員  目 黒 委 員   山 田 委 員  山 根 委 員  吉 原 委 員  若 杉 委 員   渡 邊 委 員  貝 塚 委 員  ○会長  皆様、御多忙のところお集まりいただきありがとうございます。  本日は全員懇談会でございますが、記者クラブから、冒頭にカメラ撮りをしたいとい う申し出がございます。議事に入るまでの間、許可したいと思いますが、よろしゅうご ざいましょうか。                (「はい」と声あり) ○会長  それではお願いします。                 (カメラ撮り) ○会長  ただいまから、第23回年金審議会全員懇談会を開催いたします。初めに委員の出席状 況について事務局から報告をお願いします。 ○事務局  本日は砂子田委員、岡崎委員、国広委員、坂巻委員、都村委員、福岡委員、船後委員 が御欠席でございます。目黒委員は御出席の予定でございますが、遅れておられるよう でございます。そのほかの委員は御出席でございます。以上でございます。 ○会長  先般、厚生省幹部の人事異動がございました。議事に入ります前に、ごあいさつをお 願いします。 ○事務局  それでは、順次御紹介をさせていただきます。  まず、川邊社会保険庁運営部長でございます。  木村社会保険業務センター所長でございます。  皆川年金局資金管理課長でございます。  十菱年金局運用指導課長でございます。  宮崎年金局企画課国際年金企画室長でございます。  植村社会保険庁運営部企画・年金管理課長でございます。  本田社会保険業務センター総務部長でございます。  二川社会保険庁運営部企画・年金管理課年金調整室長でございます。  以上でございます。 ○会長  次期年金制度改正に向けての審議に入ります。本日は、まず、厚生年金基金・国民年 金基金について御審議をお願いします。その次に、総理府で実施した「世論調査」及び 厚生省で実施した「大学生調査」等について、御報告をいただきます。最後に、今後の 審議の進め方等についてフリートーキングを行います。以上、3つ考えております。  まず、厚生年金基金・国民年金基金について、事務局から資料のご説明をお願いしま す。 ○事務局  お手元の資料1をごらんいただきたいと思います。  資料1は「次期年金制度改正についての『論点整理』」の中で、厚生年金基金関係に ついて白書の該当部分と論点整理の基金関係の検討項目を示しております。厚生年金基 金関係につきましては、「代行制度の在り方」、あるいは「免除保険料率の在り方」、 「拠出建て給付設計の導入」、支払保証制度、企業年金全般ということでございますが 「企業年金に関する包括的な基本法の在り方について」、この辺がテーマということで ございます。  資料2−1をごらんいただきたいと思います。1ページでございます。  昨年11月にもお出しした資料でございますが、これまでの代行制度の「免除保険料率 の推移」を示しているものでございます。この免除保険料率は、(注2)に書いてござ いますが、各基金の代行給付に必要な保険料率を「代行保険料率」と呼びますけれども 実際に代行保険料率について基金に対して与えているもの、これは具体的には下限と上 限をつけておりますので、代行保険料率と免除保険料率に若干の違いがある基金がござ いますが、代行給付を賄うために基金の方に納付される保険料を「免除保険料」といっ ております。  その表にございますように、過去は1本の免除保険料率を設定しておりました。これ は「改正前」と書いてございますが、平成6年の年金改正の前でございますけれども、 以前は、厚生年金の被保険者全体で基金を設立した場合に必要な代行コストとして、一 律に算定しておりました。しかし、実際には各基金ごとに代行給付に必要なコストは異 なっております。一般的には加入員の年齢構成が高いほど高くなるという傾向がござい ますが、この実際の代行コストに見合った免除保険料率にするという趣旨で、前回の改 正から個別化という方向に動いているということでございます。実際には8年4月から 従前の3.5%一律のものを上下限3.2〜3.8の間で個別化したということでございます。  2ページをお開き願いたいと思います。  そこで前回の財政再計算におきます免除保険料率の考え方について書いてございます 意見書の抜粋でございますが、ちょっと読み上げますと、「高齢化した企業への厚生年 金基金の普及を促進するとともに、被保険者間の公平を図るため、現在一律に定められ ている厚生年金基金の免除保険料率について、現行制度からの円滑な移行に配慮しつつ 基金ごとの代行給付に要する費用に見合ったものに逐次改善していくべきである。」こ ういう御意見をいただきまして、一律の免除保険料から個別のものにということで免除 料率の改正を行ったところでございます。  現在の分布は下の図に書いてあるとおりでございます。32/1000〜38/1000の間に分 布している基金がおおむね全体の3/4ほどございます。上限以上のところ、これは代 行コストが実際には免除料率以上にかかっているという基金でございますが、これは15 %。それから、32/1000未満の代行保険料率の基金が11%ほどございまして、こちらの 方では、実際の代行コストよりも免除料率が高いというところでございます。このよう に上下を見ますと、1/4程度がこの上下限におさまらないところにございまして、さ きの改正の趣旨を踏まえまして、さらにこの上下限を広げて、あるいは撤廃して個別化 を進めていくかどうかというのが今回の1つのテーマでございます。  次に3ページにまいります。「厚生年金本体との財政の中立化」ということで書いて ございますが、今、御説明いたしました免除保険料率は、冒頭に書いてございますが、 現時点から将来に向けての期間にかかる代行給付費の予想額に幾らぐらいかかるか、代 行給付部分で幾らぐらいかかるかという予想額に見合うものとして設定されております 現在では予想でございますので、予想と実績が乖離した場合には、その乖離によって財 政的な過不足が生じるわけですが、これはすべて基金に帰属するという格好になってお ります。プラスのこともあればマイナスのこともあるわけでございます。  ただ、こういった過不足について、特に個別の基金の事情とかかわりなく生じる過不 足については、今までどおりの扱いでいいのかどうかということが1つの論点かと思わ れます。免除料率というのは厚生年金本体との関係で言いますと、事前に自分の基金に かかるコストを予想して、それに対して必要なコストを本体ではなく厚生年金基金に納 付することになっているわけですが、その免除料率の個別化を推し進めるということは その事前の予想額ということから見て、事前の意味での中立化ということになるのです けれども、実際にやってみたら、さらにまた乖離が出るという場合には事後的にも中立 化をどうするかという問題であります。  特に財政的に大きい影響を与えるものは利率と死亡率でございます。ほかにもいろい ろなファクターがございますが、代表選手として、利率と死亡率の実績と予想の乖離を 図でお示しをいたしております。  まず、1つが「代行部分の予定利率と厚生年金本体の運用利回りとの乖離」というこ とで、厚年の本体の利回りの実績を太い線で示しております。それに対しまして、代行 部分の予定利率は 5.5%で推移をしてきておりますので、この上下の差の分だけ実際の 免除料率の算定の基礎とした利率と実際の本体の運用利回りとは違っていたということ でありまして、これを今のままでやっておいていいのかどうか。これは具体的には、端 的に申し上げれば、例えば本体が予想よりも高く回った場合には免除保険料率がちょっ と多かったと。あるいは本体が5.5%より低く回っていれば免除料率が実は少なかった こういう関係でございまして、その辺の調整を今後どうしていくかということでござい ます。  2つ目の問題は「死亡率の低下に伴う代行給付費の増加」ということでございます。 戦後ずっと死亡率の低下を見ておりますが、これは言葉を変えれば、受給者だけではご ざいませんが、受給開始後の年金を受け取る期間が延びているということでございます この図では黒い影の部分をつけておりますが、事前に予想していた代行給付の支給期間 がさらに延びるという現象が起きているわけでして、この辺は今全部基金が負担してい るわけですが、これは基金の事情で生じているわけではないので、これを今後調整する べきかどうかということだろうと思います。  それから、3つ目の問題は、これは予想と実績との乖離とは違う問題で、仮にという 問題でございます。本体の方で予定利率を今後どうするかを前回御議論いただいたとこ ろでありますけれども、仮に厚年本体の予定利率が引き下げられる場合に、基金の場合 におきましても、代行給付の給付債務を新しい予定利率で評価し直すと、過去期間に係 る給付債務が増加することになります。4ページの図をごらんいただきますと、過去の 期間、ちょっと言葉が抜けておりますが、真ん中にある「基準日」と下に書いてござい ますが、下の一番左側の方の「過去期間」の先頭は基金の設立日ということでございま す。ですから予定利率を変えたその日から将来に向かっては新しい予定利率で免除料率 を組めば、それは将来期間に向けては代行コストに見合った免除保険料が入るというこ とですが、過去の期間につきましては、5.5%で回るであろうという前提で計算をされた 免除保険料が基金に入っておりますので、そこを予定利率を変えるということはちょっ と足りなかったということになるわけでございます。そこの対応をどうするかというこ とでございます。 大体、以上のような点が代行関係の論点でございます。 それから、資料1で、代行の免除保険料率の在り方というところがございましたけれ ども、今、免除保険料率の在り方についてのお話しをさせていただいたわけでございま すが、代行制度そのものの在り方については、現在のような低金利の状況が続くと、代 行制度を維持していくのは大変難しいと。この代行制度を選択性にしてはどうかという ような意見も出ているところでございます。これをつけ加えさせていただきます。  では、「2.確定拠出型年金」につきまして御説明申し上げます。5ページでござい ます。 5ページは、昨年11月にこのテーマで1回御議論いただいたときの資料と同じものを 用意させていただいています。ちょっと繰り返しになりますが、もう一度おさらいの意 味で申し上げますが、確定拠出型年金の対極のもう一つは「確定給付型年金」というこ とでございます。現在の厚生年金基金、あるいは広くは適格年金、退職金そのものもそ うでございますけれども、「1)概要」の〔参考〕にありますように、給付額が一定の算 定方法に基づいてあらかじめ定められている。つまり給付額が先に決まる。勤続年数な り、あるいは平均給与が決まれば、給付額が幾らになるか決まる。こういうのがまず確 定給付型年金の特徴でございます。括弧で「給付建て年金」と書いてございますが、給 付が先に建つということでございます。  給付額の算定方式を決めて幾らぐらいになるという予想を立てまして、そのコストを 賄うために必要な資金を積み立てていくために、掛金を一定の計算によって算出するタ イプのものを「確定給付型年金」と呼んでおります。  もう一方の「確定拠出型年金」といいますのは、1)の最初のマルにありますように、 まず掛金を拠出する。掛金額と運用収益の合計額が給付の原資になるというものでござ います。一般的には年金の原資を加入員ごとに管理して、個人ごとに勘定が建つという ことですが、個人ごとに勘定を建てて、その残高を加入員が運用方法を選択しながら運 用していくというのが割と見られるタイプ。最近、話題になっておりますアメリカの 「401K」と呼ばれるようなタイプはこのタイプでございます。  今までの確定給付型年金といろいろ言われている確定拠出型年金、どういうメリッ ト・デメリットが比較の上で出てくるかと言いますと、まず確定拠出型年金の一番大き いメリットとして言われておりますのは、これは企業側にとってのメリットですが、掛 金が決まっている。給付はその元利合計であるということでございまして、企業側にと っては後発負担が生じないということでございます。確定給付型の場合ですと、給付を 予定しているわけですけれども、実際に運用してみたらうまくいかなかった。不足を改 めて後で掛金として負担する、そういう構造になるわけでございますが、この確定拠出 型の場合にはそういう後発負担が生じないということでございます。その他、一般的に は短期間で受給権が付与されて、転職に際してポータビリティが高いことが1つ特徴と して言われております。  一方、デメリットは下に書いてあるところでございますが、リスクを加入員が負う形 になりますので、給付額が事前に確定しない。給付額が事前に確定しないということは 老後の生活設計としては非常に不安定であるということはどうかと一番言われている点 でございます。これは前回も御議論いただいておりますが、これについては賛否両論が 現在いろいろあるということでございます。  6ページに、では具体的に企業年金の世界で確定拠出年金をやるとしたら、どういう 点が具体的な検討事項として挙がってくるかというものを整理したものでございます。 端的に言いますと、これは掛金の元利合計が要は給付原資になるということですから、 貯蓄であるといって構わないわけですが、そういった確定拠出年金をこういった企業年 金という枠組みの中でどう位置づけるかという問題。それに絡みまして、加入員の自己 選択・自助努力との関係をどう見るか、こういう観点から、掛金負担の在り方がまず1 つ問題になります。退職金的な発想をすれば、事業主掛金だけだろう。あるいは御本人 の自助努力というものも加味すれば、加入員掛金もあるだろう、こういうことでござい ます。  ちょっと飛びますけれども、受給権保護あるいは労働移動との関係、こういうところ から見ますと、受給権付与の在り方をどういうふうに考えるかということは大きい問題 になります。現在の確定給付型の年金、あるいは退職金全般もそうでございますが、も らう権利、受給権は退職時に発生いたします。会社をやめたときに受給権が発生する。 これは1つの慣行でございますけれども、一般的には大体そういうふうになっていると いうことでございます。  したがいまして、例えば退職直前に何か懲戒解雇事由に当たるようなことをして、退 職金として期待していたものが全部なくなる、こういうケースもあるわけでございます が、この受給権の付与の問題は、仮に在職中に権利を与えれば、仮にそういう懲戒解雇 事由に当たるようなことがあったとしても、権利を付与された部分は決して消えない、 こういう制度になるわけであります。  そこで3つのケース、これは当たり前のことを3つ並べてありますが、現在の確定給 付型は3)であり、加入員掛金は一般的にこれかどうかわからないんですけれども、事業 主掛金分は退職時に付与ということで一般的に在職時の付与はございません。  ところがこういった確定拠出型のタイプですと、残高は掛金の元利合計ということで すので、残高は本人にも見えますので、また、特に加入員掛金分は、これは御本人が出 して、それを例えば運用して残高を見ることになれば、ほぼ貯蓄ということでございま して、その部分が退職時までもらえるかどうかわからないという法的なコンセンスがな かなか難しいだろう、こういうことでございます。あるいは事業主掛金につきましても 退職時付与ではなくて、やはり在職時に早めに権利を与えるというようなことが方向と しては考えられるということでございます。  それとからめまして、そのすぐ上でございますが、本人の自己選択という観点から運 用をどういうふうに考えていくか。事業主掛金あるいは加入員掛金それぞれにつきまし ては、御本人が運用を指図していくのか。アメリカの先ほど例に挙げました401Kは いずれの掛金につきましても加入員が運用指図をしているタイプでございますが、事業 主掛金については基金、あるいは適年の世界でいえば、事業主がまとめて運用するとい うケースも考えられるということでございます。  それから、もう一つ、離転職の場合に、こういった確定拠出型年金に、ある企業でず っと入っていた。そこの会社をやめて、次の企業に同じような確定拠出型の年金があれ ば、そこに残高を移管すればよろしいわけですが、転職先になかった場合にどうしよう かということでございまして、第三者機関がいるのか、あるいは個人ごとに何らかの税 制上の措置を設けまして、個人ごとの勘定を設置して、そこに移管するかといったこと も考えられるわけでございます。  あと、給付の在り方につきまして、これまでは確定給付型の年金、特に基金は年金給 付を重視してきたわけでございますが、こういった確定拠出型の場合には年金あるいは 一時金を同じような扱いで考えていっていいかと、こういった問題でございます。  あと周辺環境の整備ということでつけ加えておりますが、加入員に対して、どういう 投資教育を行っていくかが重要なポイントであろう、こういうふうに考えます。  それから、次に、論点整理の「3.支払保証制度」でございます。支払保証の充実に ついてどう考えるかというのが論点になっておりますが、これにつきましては、一方で は強化すべきという議論と、強化すべきではあるけれども、しかし適格年金と退職一時 金をも含めて、退職給付全体の問題として強化すべき、こういう議論がある一方で、ま たほかの企業の退職金の面倒を見るのはかなわないと、こういう意見もございまして、 支払保証制度はモラルハザードを生じるだろうというような意見もございます。  実は次の基本法の方でこういった議論が出てくるわけでございますが、大変各方面か らの意見が対立しているところでございまして、こういった中では、基金の中の支払保 証については、当面の現在の事業を粛々とやっていくのかなというのが私どもの現在の 見方でございます。  現在の厚生年金基金における支払保証制度の概要はそこに書いてあるとおりでござい まして、元年から実施をしております。平成7年以来、実際の給付が出始めておりまし て、下の表に実績が書いてございますが、7、8年度は1件で、9年度は3件でござい ます。10年度に入りまして、2件請求が出てきましたが、これについては、支払保証事 業の要件に該当しないとして不支給という扱いとなっております。大変厳しいではない かという話もあるかもしれませんが、この2件につきましては、母体企業に十分支払う 能力があったということで、人に頼らず、まず自分で面倒を見てください、こういうこ とで不支給になったというふうに聞いております。  その辺の議論を整理して、この事業の主体であります厚生年金基金連合会で、この事 業運営の基準の明確化を先ごろやったところでございます。これにつきましては、次の 基本法のところで、企業年金全般あるいは退職給付を含めた全般の支払保証として、さ らにどう考えていくかというのが大きい論点かというふうに考えております。  8ページ「4.企業年金に関する包括的な基本法」という4番目のテーマを挙げてお ります。論点整理の4つ目の話でございますが、これは昨年11月にこの審議会に大蔵・ 厚生・労働3省連名で「企業年金に関する包括的な基本法」についての検討事項をお示 しをいたしたところでございます。ちょっと資料つけておりませんが、11月の審議会で お話ししましたように、昨年の3月の閣議決定で、政府部内で企業年金に関する基本法 につきまして、この3省で検討を進めていくということで決定されておりまして、結論 は来年3月までに得るというのが1つ宿題になっているところでございます。 その具体的な論点として、「受給権保護」、「受託者責任」、「情報開示」、これが 主な柱でございます。受給権保護はさらに分かれまして、先ほどちょっと確定拠出のと ころで説明いたしましたが、「受給権の付与」、2番目には「積立の基準」、3つ目に 「支払保証」、この辺を今後企業年金全般としてどう取り組んでいくか。企業年金全体 の共通ルールは必要であるかどうか。あるいは必要とするならば、その中身をどうする か、こういうテーマで現在検討を進めているところでございます。それに関連いたしま して、2の(1)〜(5)に関連するテーマがあるということでございます。  現在、3省で検討を行っておりまして、これまで各方面のお話を聞いておりますけれ ども、特に支払保証をめぐりまして、賛否、大変厳しい意見対立があるということでご ざいます。  それから、中小企業関係の方からは、特に積立基準に関しても、それもちょっと規制 強化だからどうかという声が寄せられておりまして、私ども取り扱いをどうしようかと いうところで現在検討しているところでございます。  具体的にどういうポイントに焦点に当たっているかというものを基金と適年の比較表 をつくっておりますので、それで御説明いたしたいと思います。10ページをちょっとご らんいただきたいと思います。 これまで厚生年金基金は給付の厚みを重視して施策を進めてきたところでございます けれども、10ページの上の方の欄、給付関係の(イ)、(ウ)、(エ)のところをごら んいただきたいのですが、厚生年金基金の場合には代行部分相当額の3割以上の加算給 付をつけること。それから、給付期間は原則として終身年金。これは公的年金の上乗せ ということで終身年金を原則としてほしい。それから、一時金の選択との関係では、ち ょっといろいろ書いてございますが、端的に申し上げますと、年金の方を一時金よりも 優遇することということで、これまで施策を進めてきたわけでございます。 適格年金はこういったルールはないわけでございますが、平成5年だったと思います けれども、こういった厚生年金基金と同じような条件の適格年金につきましては、特例 適格年金ということで、厚生年金基金と同じような税制の取り扱いが認められていると ころでございます。  これまでこういった給付の厚みや給付設計ということを非常に重視をして施策を進め てきたわけでございますが、実際にはそれは中身があるのかと。つまり資産の裏づけの あるきちんとした企業年金であるのかということが最近大きい問題になってきていると いうことでございまして、下の方の財政運営基準、これは言葉を変えれば、積立基準、 つまり負債に見合った積立を行うということです。あるいは最近運用の自由化が急速に 進んでおりますけれども、受託者責任の問題、あるいは加入者・受給者に対する情報開 示、それから、大きい論点となっております支払保証、こういった点につきまして、基 金と適年との間でかなり違うということでございまして、基金の方もまだまだ情報開示 のおくれ、あるいは受託者責任もまだ未整備な点がございますけれども、企業年金とし ての共通ルールの設定の必要性を現在3省で検討しているところでございます。  先ほど申し上げましたように、各方面からの御意見がなかなか一致しない点が多いも のですから、3省の間でまだ相談をしている段階でございますが、来年の3月までに結 論ということで現在作業を進めさせていただいております。  それから、参考に12ページ以下にアメリカのERISA、これは被用者退職所得保障 法の略でございますが、その内容をこの基本法に関する検討事項に沿って一応示してお ります。これは御参考までにごらんいただければよろしいかと思います。  あと14ページ以下、国民年金基金、2枚ほどの資料をつけております。これは前回お 出しいたしました資料の数字の一部を新しいものに変えているものでございます。1号 被保険者の方々の場合には、報酬比例部分なり、企業年金に相当する部分がございませ んので、厚生年金基金の部分までをカバーするため、報酬比例部分と厚生年金基金部分 両方カバーできるような制度として自営業者のために国民年金基金制度が平成3年から 発足しております。制度発足からまだ8年目でございますので、まだなかなかひとり立 ちできないというとあれですが、まだ発足が間もないという段階でありまして、私ども 今のところ、今回の改正では大きい改正事項はないだろうというように考えております  そのほか、資料2−2として、「厚生年金基金事業概況(速報)」となっていますけ れども、これも昨年11月お出しした資料を、最近の8年度決算の資料で新しくしている ものでございます。 2枚目の上の表をごらんいただきたいと思います。2.の1)でございます。これは厚 生年金基金の中で別途積立金のあった基金、剰余も不足もなかった基金、不足金のあっ た基金、この整理で基金数を分類しておりますけれども、別途積立金のあった基金。つ まり剰余のあった基金が、平成7年度〜8年にかけましては、全体の47%から34%に減 少しておりまして、3分の1ぐらいが現在剰余になっている。一方、1,040は現在不足金 を抱えているということで、運用の低迷が大変大きい影響を与えているわけでございま すけれども、ちょっと状況が悪化しているということでございます。 次のページの下の方に運用利回りをつけております。8年度の場合ですと、生保、信 託別に見まして、信託(2.77)、生保(2.44)ということでございます。  9年度は、この3月でございますが、まだ決算の概要も報告もまだ出ておりませんが これまで簿価決算でございましたが、9年度から時価決算に変わります。今のところ見 ている限りでは、先ほど簿価の利回りを見ていただきましたが、9年度の利回りは時価 ベースで、信託が6%強、生命保険は元利保証利回り、一般勘定は2.5%そのままでござ いますが、生命保険でも信託と同じように実績配当型といいますか、特別勘定といわれ るものの利回りは大体7%前後の数字が出ておりますので、9年度の決算は恐らくは8 年度よりも悪化することはないだろうというふうに、今のところは見ておるところでご ざいます。  基金関係の御説明は以上でございます。 ○会長  ありがとうございました。  ただいま御説明をいただきました厚生年金基金・国民年金基金関係のことにつきまし て、御質問、また御意見などございましたら、どなたからでもお願いします。 ○A委員  私は代行制度について意見を申し上げたいと思っておりますが、そうしますと、そも そも代行制度を求めたのは日経連ではないのかという反論が予想されますので、初めに 昭和41年当時の状況から御説明したいと思います。  当時、産業界は代行制度を要望したわけではなくて、厚生年金の負担増の動きの中で 退職金負担の増大と厚生年金負担の引上げとの二重の負担の調整を求めたわけでありま す。戦後の深刻なインフレ等により、厚生年金保険制度がほとんどその機能を停止して いた間に、退職一時金の役割が重要性を増すことになりまして、このため、労働力の安 定、労務管理上の施策の一環として、大企業はじめ多くの企業で退職一時金制度が大幅 に充実されていきました。このような経緯を考慮すれば、当時、厚生年金の負担増大の 動きに対して退職一時金制度と厚生年金制度の機能上の調整、負担の調整を図ることを 産業界として主張することは当然のことであったと思います。  ところが国の年金制度と企業の退職手当は相互に調整されるべきというのが本来の意 図でありましたが、調整の機能は生じなかったというふうに言われております。  それで、今日、運用環境が長期的に低迷している中で、先ほどの資料にもありました けれども、厚生年金基金は予定利率と実現利回りとの大幅な乖離によって大きな困難に 直面しております。そして、巨額な利差損の補填が多くの場合、企業に課されておりま すため厚生年金基金の存在そのものが企業にとって大きな負担となってきております。 負担に耐えきれず、解散する基金も増えております。特に総合基金は、中小・零細企業 で構成されており、業種によっては深刻な状況にあります。特に予定利率と実現利回り との利差損が、加算部分、上積みの部分のみならず、公的年金の一部である代行部分に も発生し、企業負担を増大させていることが事態を深刻なものとしております。  加えて、現在新しい会計基準の導入が行われようとしており、加算部分、つまり企業 年金部分のみならず、代行部分の積立不足までもが企業の退職給付債務として認識され る可能性があり、我が国の企業の期間損益にさらに過大な影響をもたらすことが懸念さ れております。それというのも現行の厚生年金基金制度がいわば半官半民のもので、公 的年金の役割と私的年金である企業年金の役割とを併せ持った代行制度をとっているか らであります。  また、厚生年金基金は公的年金の一部を代行しているために、終身給付を義務づけら れるなど、労使合意を前提とする柔軟な制度設計を妨げる極めて規制の多い制度となっ ております。  さらに代行部分の免除保険料率の算定に当たっては、厚生年金本体の予定利率とリン クすることとされているため、今後、厚生年金本体の予定利率の引下げが行われたとき には、各基金の代行部分の積立金に巨額な積立不足を発生することになります。これは 一体だれが負担するかということになりますが。  さきに日経連は、公的年金と私的年金である企業年金とは明確に切り分けるべきであ る、という考え方から、代行部分については、基本的に廃止の方向で抜本的に見直すべ きである、という考えを固めました。そして、当面代行なし基金の創設、あるいは既設 基金の代行部分の国への返上も可能な制度とすべきであり、また厚生年金基金から適格 退職年金への移行を認めることなどが必要であるとしました。私もそのように思ってお ります。  ぜひ、こういう方向での検討もお願いしたいと思います。以上です。 ○B委員  今、A委員のおっしゃったことはすべて事実だろうと思うのです。現在、非常に財政 的に負担になっている。そのとおりだと思います。  それと当初のいきさつといたしまして、これは私どもも代行というよりは、イギリス のコントラクテッドアウトのような適用除外制度で、実質的に退職一時金と公的な年金 とがドッキングできるような形ということを考えたわけでございますが、現実問題とし て、そういった形はどうも日本のいろんな制度になじまない。日本の退職一時金制度の 考え方となじまないということで、最終的には代行という形になったのだというふうに 私は理解しております。確かに現在では極端な場合には解散に追い込まれるということ も出てきておるのは事実でございます。  ただ、現在のそういった状況だけで、この代行制度というものを考えるのはちょっと 危険ではないかというふうに考えております。逆に過去には利差益があるということで その利差益に基づきまして、いろいろな福祉制度とか、そういうものを運営することが できたということでございます。  それから、私はこの代行ということがあったからこそ日本の企業年金が育ってきたと いうふうに考えております。代行を取り入れることによったスケールメリットがあって スケールメリットという意味は給付もでございますが、年金資産もという意味でござい ます。これによって日本の企業年金時代が実現したのだというふうに考えております。  それから、今のA委員の御発言の中で、終身年金について、終身年金を強いられると いうような御発言であったわけでございますが、私はこの点に関しましては全く逆の考 え方でございます。 代行制度があったからこそ、日本の年金制度、企業年金制度が終身年金を取り入れる ことができて、それが定着したのだというふうに考えております。  税制適格年金では終身年金を導入している制度はほとんどございません。これは自分 のことになって大変恐縮でございますが、自分が年金を受ける年になってみて、終身年 金であることのありがたさを非常に感じております。やはり年金は終身年金でなければ いけない。この年金が、例えば10年で切られることになったらその先どうなるのか。や はり終身年金であることの価値は物すごく大きいものだ、そういうふうに考えておりま す。  それと総合設立に関してでございますが、確かに総合設立基金の場合には財政的にい ろいろマイナスの面が出てくると、これはなかなか大変でございます。単体の基金の場 合よりも難しいことが起こる可能性は十分あるかと思います。  しかし反面考えてみますと、総合設立が可能であったために中小企業が参画できる年 金制度というものが生まれたわけでございます。そして、その加算部分も含めて受給権 の保全ということが図られた。これは中小企業、あえて中小企業というより小企業と申 し上げますが、小企業では退職金が全くないところが非常に多いわけでございます。私 もこれはいろいろ聞いておりますが、小企業では基金制度ができたために、従業員が非 常に喜んでおると。本当におれたちが退職するときになにがしかのプラスアルファがも らえるようになったんだということを非常に喜んでおるということは各所で聞いており ます。  それから、小企業の場合には、もし基金制度がなければ、退職金制度自体が事業主の 意のままに運営される、そういう可能性が非常に強い。 これが基金制度となれば、その受給権の保全は完全に図られていくわけでございます から、この総合設立が可能になったということ。これが代行制度に基づく厚生年金基金 制度が誕生したことの非常に大きな意味合いではないかというふうに私は考えておりま す。とりあえず、以上でございます。 ○A委員  ただいまのお話の中で、有利な時期には代行を活用して利差益をもうけて、不利にな ると返上するというのは大変おかしいというふうなお考えではないかと思いますが、確 かにそういうことはあったのですけれども、これはこれまで資産規模が比較的小さかっ た時期の利差益と、これだけ資産規模が巨額になった最近の利差損とでは非常に大きな 違いがあるということを申し上げておきたいと思います。 ○C委員  お二方の議論を大変興味深く聞かせていただきました。  企業年金の問題が、どこまで公的年金を扱う当審議会のテーマになるべきなのかとい うことは1つの重要な議論だと私も思いますので、余りこのことで時間を使うべきかど うかはわかりませんが、事務局に1つ、それとの関連で御質問させていただきたいんで すけれども、おととしの研究会報告のダイジェストがさっきありましたね。さっき御説 明をいただいたところですが、資料の2ページの一番上ですね。平成5年10月の年金審 議会から出されたと言われている制度改正に関する意見で、「高齢化した企業への厚生 年金基金の普及を促進する」という文言がありますが、これは厚生省のお考えとしては 引き続き現在でもそうなんですか。 ○事務局  これは前回の年金審での御意見ですけれども、高齢化した企業といっても、別に50代 後半の人ばかりの企業、そういう意味ではございませんで、相対的に言えば、今、厚生 年金被保険者集団の全体の平均年齢が42歳ぐらいだと思いますけれども、45前後あるい は47〜48とか、せめて51〜52ぐらいを念頭に置いています。平均年齢ですね。例えば60 歳直前の方々ばっかりで基金をつくらせようとか、それは制度的な安定性が阻害されま すので、そういうことは、私どもとしては今考えていないということです。年齢的には 大体50歳ちょっとぐらいまでをということでございます。 ○C委員  すいません、もう一つ、その次にあります「被保険者間の公平を図るため」という文 言があるのですが、この被保険者というのは、厚生年金基金の被保険者ですか、それと も厚生年金全体の被保険者ですか。 ○事務局  私どもの受けとめとしては、当然、厚年本体全体の中でということでございます。で すから本体とそれぞれの基金の被保険者間の公平と、そういう意味で受けとめておりま す。 ○B委員 ここは免除保険料を個別化するという前提のところでの文章でございますから、高齢 化した企業も厚生年金基金が導入しやすいように免除保険料を個別化していこうという ことだったと思うんですけど、ここのところは。  それと「被保険者間」というのは、当然、免除保険料を個別化していけば、すべての 被保険者、これは基金の加入員も含めて、財政的にニュートラルになるということで、 こういう文章が出たのだと思います。私は直接はかんでおりませんけど。 ○C委員  そうですか。 ○D委員  B委員のおっしゃった年金基金の意味ということはそれはそういうふうになろうか と思いますが、その中で、もらう立場から、終身の持っている安心感というのはおっし ゃるとおりだろうと思います。私どもの会社の場合には厚生年金基金ではなくて適格年 金で15年間有期と、10年、15年の選択ということになっておるのですが、ただ、退職金 は事業主と労使の間で決めているということの中で、今の中では適年を採用して両立に なっているわけです。もし本来、もらう立場から安全な仕組みで、どの事業もすべて厚 生年金と同じ仕組みにしなさいということはちょっと違う話なんです。今の段階では、 適格年金を選択しているわけですが、おっしゃった仕組みとしては安心なんですけど、 これは実際は退職金の額がどのぐらいかによってまた変わるわけですね。  ですから、利率との関係がありますけれども、終身にする場合と有期の場合のリスク の大きさ、あるいは持ち出しのそれぞれの大きさを考えますと、それぞれの選択の中で 適年を採用している、こういうことなんです。ですから、これはもらう立場からの仕組 みの安全性、安心感というのは確かに年金基金にあることはわかりますけれども、事業 主の立場からの負担とリスクの大きさ、これはやはり今の仕組みの中では、労使もこの 適年の制度を選択するということは認められている。それについては今後ともその自由 度は当然のことながら認められてしかるべきだ、こういうふうに思います。  そういう中で、先ほど事務局の御説明の中で一、二、疑問の点があるんですけれども 企業年金基本法について検討するということが閣議決定されるということで、3省で御 検討されているということなんですが、企業年金基本法の検討するというニーズがどこ から来ているのか。いろんな意見があると言われましたけど、私どもは適格年金なんで すが、事業主の立場から、企業年金基本法を設定してほしいというようなことはどの事 業主も今の段階では考えてない。では、厚生年金基金を選択している事業主の中から検 討してくれという意見があるのだろうかと。  実はこの前もこの問題議論になりましたけど、経済団体で経団連がレポートを出して おりまして、その中で、企業年金基本法の検討ということをレポートの中でリファーし ているのですが、それは実は、公的年金の2階部分、報酬比例部分について、将来、民 営化する。その場合の受け皿として企業年金基本法ということを考えたレポートになっ ております。今、議論しているのは、3階建ての現在の企業年金についてどうするかと いうことなので、そういう意味では、具体的なニーズというのは、事業主の側からは、 適年及び厚生年金両方とも検討してほしいという要請はないのではなかろうか、こうい うふうに思います。そこで共通のルールの必要性とかいったら、どこでそういう必要性 があるのか、その辺がちょっと疑問のところなんですが。 ○事務局  こういう閣議決定、つまり基本法の検討をしろと、閣議決定がなされたいきさつにつ いては、私が当時担当しておったものですから、私の方から御紹介いたしますけれども これは最初自民党の方で、日本でもERISAみたいな基本法を検討しろということで 自民党の規制緩和計画だったでしょうか、自民党の方で先に決定されたんですね。  それを受けて役所サイドでどうするのかという話があったときに、私どもと大蔵省の 担当だということでどうなんだと、こういう御下問がありまして、そのとき私どもは、 これはやはり必要だとこういう判断をしたわけです。なぜ必要だという判断をしたかと 言いますと、これから公的年金だけで老後の生活を賄うのは、これからは非常に厳しく なるだろうと。公的年金が基本ですけれども、企業年金あるいは個人年金、こういった 自助努力を伸ばすことによって老後を乗り切る、こういう三本柱で対応するのだと、こ ういう方向にこれから向かわざるを得ないのではないか。  その場合、日本の企業年金は制度として非常に問題が多いんですね。厚生年金基金は これまで30年間基金関係者の大変な努力もありまして、世界的な水準で見ますと、まあ 何とか企業年金として恥ずかしくない、こういうレベルに達していると思うんですね。 ところが、こういう場で所管でもない適格年金のことを言うのは、私、個人的には非常 に気がひけるんですけれども、世界の常識からすると、とても企業年金でございますと いうようなことは言えた代物ではないんですね。これは実態から見ても退職一時金の事 前準備制度そのものですし、例えば受給権の保全、財政チェック、受託者責任、情報開 示、支払保証、こういったいろんな面見ましても、自主的にきちんとやってらっしゃる ところもそれはありますけれども、これは例外でして、制度的には何もないんですね。 ですから、こういったことで果たしていいんだろうかと。本当に労働者・国民がこうい う企業年金で将来本当に安心できるのだろうか。これは制度的にもやっぱりしっかりし なければ、三本柱でございますと言っても、これは相手にされないだろうと。  これ、また所管外でございますけれども、特別法人税の問題にしても、単にこれはお かしいから撤廃してくれというだけではなかなか相手にされないわけでございまして、 やはり企業年金としての実態も備える。きちんとするところはきちんとすると。だから 税制を見直してくれということであれば、これは話が通るんですけれども、ただ単に特 法税の撤廃を叫んでもなかなか難しいのではないか。 いろいろ多々ございまして、私どもとしては厚生年金基金だけでなく、適年を含めて もっと世界的な基準で見て、きちんとした企業年金をこれから育てていかなければいか んのじゃないか。そういう基盤整備をしていかなければいかんのじゃないか。そういう 判断に立って、私どもとしては大いにこの基本法の議論をやっていきましょうというこ とで、厚生省としてもやりますと、こういうお返事をしたわけです。 ○D委員  厚生省のお考えがはっきり非常によくわかりました。ただ、企業年金基本法を検討し ようというふうに言い出した自民党サイドの観点が果たして、今、事務局がおっしゃっ たようなことだったかどうかは、必ずしもそういう発端だったかどうか、私もそうじゃ ないんじゃないかなという気がするんですけれども。いずれにしても事務局のおっしゃ ったお考えはわかりますが、特法税のことについて言及されましたので、経団連も日経 連も大蔵省に、何とかしてこれを免除してほしいという要請を大きな声で何回もしてい るのですが、一向に聞いてもらえないのです。今おっしゃった事務局の適年の不備な点 ということを直すのであれば、それは厚生省としても特法税の免除についてはきちんと すればよろしいということと解釈してよろしいんでしょうか。 ○事務局  これも私のあくまで個人的な意見ということでお聞きいただきたいわけですけれど も、これは私どもの所管でもございませんし、厚生省の方針がこうでございますという ことを申し上げられないわけですけれども、適格年金もやはり年金らしい中身のあるも のにしていくことはぜひ必要ですし、そういうのと一体となって税制の面でも、こうい う企業年金を、どこの国でも普及促進しているんですけど、こんなにひどい税制という ところはないわけですから、これは適格年金の中身をしっかりしていく。それから税制 もきちんと優遇措置を講じていくと、これは当然だと思いますね。 ○D委員  私は制度的に若干厚生年金基金に比べて適年が不備であっても、この企業年金の中で 適年が外部拠出として完全に中立に管理されていれば、税法上は同等に扱うべきだ、こ ういうことだと思うんですが、もしおっしゃったように、もう少しきちんとしなさいと おっしゃった積立基準であるとか、受給権の保護、そういうことであるならば、そうい うふうにはっきりおっしゃっていただければ、我々はその点を十分議論した上で、また 厚生省にお願いしたいと思います。  ただ、1点非常にきついのは、先ほどB委員がおっしゃった厚生年金基金は終身であ る、適年は有期である。したがって、終身か有期の差で税金で差をつける、こう言われ ますと、これは根本的な問題なんですが、そうではなくて、積立基準のどこまではきち んと積立なさい。そういうような形の制限であれば、いろんな話ができるのではないか こういうふうに思いますけれども、その点いかがですか。 ○C委員  ちょっとすいません。今の最後のお話、今そのとおりになっているんじゃないですか まさに今の適年の中の特例適年ですね。 ○D委員  そうです。 ○C委員  人数要件があって厄介ですけれども、あれの場合は終身であって、終身であることを 理由にして特法税をあそこにかけた。 ○D委員  終身でなければ認めないということなんでしょうかと、こういう言っているんです。 それだと非常に問題だと思いますね。 ○事務局  これも私の個人的な意見ということでお聞きいただきたいんですけれども、私、終身 か、一時金かというのはそれほど大きな違いではないと思います。これは、例えばアメ リカの401Kでも税制上の優遇措置を講じております。これは拠出段階、積立金に対 しても非課税ですけれども、これは実際もらう場合には一時金の方が多いわけですね。 それで生保なんかの年金を買われると、こういうケースが多いわけでして、終身と一時 金というところは決定的な違いではないんじゃないかと。ただ、これはあくまで老後の 所得保障として優遇措置を講じるわけですから、一時金でもらって、それで車買ったり とか、海外旅行に使ったり、そういうことであるとなかなか優遇措置についてもすんな り受け入れられるかどうか。そういう問題はあると思いますけれども、一時金でもらっ て、それで生保の年金を買うというような形であれば、これは何ら問題ないわけですか ら、そこでの差というのは、税の優遇を受けるかどうかの本質的な問題ではないのでは ないかと思います。 ○D委員  ありがとうございました。 ○B委員  例として申し上げておきますけれども、適格年金にも終身年金を導入している制度は 若干あるわけです。その制度は、実は私の会社にもあるんですけど、これは特別法人税 を払っております。だから、終身だから、特別法人税は免除しますよという話では決し てないということを申し上げておきます。 ○E委員  話を元に戻しますけれども、代行の話を少しさせていただきたいと思いますが、前回 の年金審議会欠席いたしましたけれども、ちょうど年金関係の国際会議がありましてス トックホルムの方に行っていたんですが、そのときに議論の中心テーマになったのは、 年金制度をめぐる透明性ですね。その中でいろいろなことが議論されたのですが、いわ ゆる日本とイギリスだけでやっている適用除外といいますか、コントラクトアウトの制 度については、基本的にILOの関係者だとか、ISSAの関係者、これは相談があっ てもすすめない制度ということになっているんです。イギリスと日本はこれをどう説明 するかということを常に問われる制度であるわけです。イギリスの関係者は、今ステー クホルダー・ペンションとか、シテズンシップ・ペンションとかというものを考えてい て、基本的には政管の制度を廃止して、そちらに全部移行して、結果的に代行はないよ うな制度を今考えているんだというふうな説明をしておりましたが、日本はどうなんだ と言われて、私は答えに窮したわけです。  基本的には透明性という点からいくと、理屈の立つ制度ではもうなくなってきたわけ で、日本では30年の重みだけがあって、その重みで今議論が進んでいるというのが実態 ではないかと思います。  そうした中で日経連の意見の紹介が、先ほどA委員からありましたけれども、たしか 「連合」も私の理解では代行の制度に対して非常に懐疑的なスタンスだと思うんです。 労使双方、代行にそういうスタンスであって、足並みがそろったということあれば、こ れは事実として非常に重いのではないかと思うんです。企業年金は基本的に労使のもの であって、労使のそれぞれが合意したことは尊重せざるを得ないわけで、そういう形で 議論を今後やはり進めていくことが私は重要だというふうに考えます。  そういう観点から申しますと、今回の提案は、すでに2年前にあったんですが、基金 と本体の間の財政中立化案というのは、これも数理の専門家がいっぱい各国からストッ クホルムに来ていたものですから、いろいろな人に、日本ではこういうことを今議論し ているんだという話をしたら、笑われたのが実際なんですね。適用除外を受ける、コン トラクトアウトをするということは、自己選択に基づいているのだから、将来どういう ことになるかというリスクを承知の上で選んだもので、当然自己選択には自己責任が伴 うのではないか。それを後から予定と違ったからといって、どこかに助けてくれという のは筋違いであるというのが彼らの一般的な反応なんです。どうして、中立化ではなく て、基金を解散したり、代行をやめて、本体に復帰するという選択を議論しないのかと 逆に質問されたのが実際なんです。  日本だけなんですね。イギリスでも適用除外制度あるんですけど、中立化案なんて全 然議論してない。日本だけです。これは世界に通用する制度になるかということをやっ ぱり議論せざるを得ない。日本は今いろいろな意味で注目されているんです。単に経済 状況が悪いとか不良債権問題もあるんですけれども、いろいろな意味で注目されていて 企業年金についても、資産運用をめぐって世界各国の関係者、強い関心寄せているわけ です。そうした中で、日本の企業年金制度どうなっているんだということについての関 心が非常に強いんですね。そのときに、理屈の立つ制度を持つということは、今後の日 本において非常に重要なことではないかと思います。  そういう意味で幾つか、私自身がうまく説明できなかったことですけれども、厚生省 は本当に世界の関係者、専門家が納得できるような説明の仕方を用意できているのか。 むしろ、今、労使双方が、この制度については、廃止の方向を打ち出しているというこ との重みをやっぱり尊重せざるを得ないのではないかというのが私が個人的な見解であ ります。  そういう意味で、勝手に基金をつくってやっていたグループに対しては、本体グルー プが何かある程度責任を負わなければいけないというのはおかしいわけで、出て行った グループは、自己責任の原則というのはやっぱりあるわけですから、そこのところを無 視して、中立化制度をすぐ導入するというようなことはやはり問題ではないかと私自身 は考えます。  先ほどB委員の方から、企業年金において終身の制度というのは最も重要な制度だと いうふうな御指摘があったんですけれども、公的年金で終身の制度はやっているんです その終身がそんなに大事であれば、公的年金の厚みを確保することの方が大事であって 企業年金は労使のものだというのが基本的な理解で、労使が終身でなくて一時金の部分 を含め給付設計する自由を与えてほしいと言っているときに、終身でなければだめだと いう縛りをかけるのはいかがなものかと思うんですね。現にアメリカやイギリスの企業 年金だって、企業年金であるからには終身という縛りをかけないとだめですよとは私は 言ってないと思うんです。それが企業年金を成立させる理由だとも私は思っていない。 ですから、そこも若干私は違った見解を持っています。以上です。 ○会長  B委員どうぞ。 ○B委員  今の最後の点でございますけれども、現在、我々が議論しているのは、公的年金の水 準を21世紀に向けて、できるだけスリム化していこう。給付をどちらかというと抑えて いく方向で考えようとしているのだろうというふうに私は思っております。そうすると やはり終身部分というのがどうしても相対的に将来に向けて下がっていくという事態を 想定せざるを得ないのではないか。  そういうふうに考えると、やはり企業年金というものも終身年金である部分がかなり の程度まであって、それによって非常に機能的に作動するようになるということが必要 なんだろうと思います。  それから、その前段の中立化の話でございますけれども、これは免除保険料を一本で 決めたことによる問題が最初からあったわけですね。それがその問題点が非常に大きく なってきたということで、この時点で免除保険料を分散化するというか、個別化するこ とによって中立性を保つようにしていこうではないかということで、これは全然おかし なことではないと考えております。過去に免除保険料というのはずっと変わってきてお るわけですから、それは本体のコストが、本体が全員厚生年金基金をつくったとした場 合のコスト、これは免除保険料になっておったわけですけど、それで、24/1000から始 まって35まで上がってきたと。その過程でも基金の中に非常に大きな分散が生じてきた ので、それを中立化する方向で収束するということでございますから、これは全然おか しな話ではなくて、むしろそうあるべきではないか。  特に制度の上から言いますと、これは2,000近くある基金の免除保険料をだれが計算す るかという話だったわけです。これは御承知のように、「年金数理人制度」というのが 生まれて、年金数理人が計算に携わることができるようになったわけですから、そうい った意味で全く問題はないのではないかと思っております。 ○事務局 事務局からしばしば申し上げて失礼なんですけれども、私は、代行制度をめぐる問題 というのが非常に混乱しているような感じを受けるわけです。それはどういうことかと いいますと、代行制度の是非論というものと免除料率の決め方の是非論とごちゃごちゃ に議論されておるものですから混乱するし、普通の人には何のことかわからない、こう いうことになりがちなんですね。 それで、私、代行制度の意義とはなんぞやとこう聞かれますと、これは財政方式とし ては完全積立方式でやっているということが基金の代行制度の大きな本質だと思うんで すね。それから、もう一つは、本来なら国がやることを民間でやっていると。これがも う一つの大きな特色だと思うんですね。 これは賦課方式か積立方式かという議論の中でもございましたが、賦課方式のいろん な弱点、問題が言われておりまして、積立方式の要素を強めるべきではないか、こうい う議論が世界的にあるわけですけれども、基金はまさしく100%全部積み立て方式でやっ ているわけでして、これは非常に年金制度としては健全なやり方ではないかと思うんで すね。 それから、もう一つの基金の存在意義は、民間でやれることは民間でやろうというこ とです。この前、積立金の運用の問題で厚生省にそんなにたくさん金が集まって本当に 役人が責任持ってやれるのか、年金積立金はもっと分散をして運用すべきではないか、 そういう御議論もございましたけれども、まさしく基金はそれを先取りしているといい ますか、本来なら国に集まる金をそれぞれの基金で責任を持って運用しているというこ とで、運用のリスク分散にも役立っているし、民間で効率的にやろうと、こういうこと で進めているわけでございますので、そういった点では十分存在意義がある。 外国の場合は、御案内のとおり、ほとんどが完全賦課方式で公的年金やっておりまし て、積立金がほとんどございませんので、外国の方にはなかなか代行制度の存在や意義 がちょっとわかりにくいのではないかなという気もしますけれども、これは日本が、公 的年金でも積立方式の要素でかなりやっているということから、基金制度が生まれてく る背景や存在意義がある、こういう理解をしています。 それからもう一つ問題である免除料率の決め方ですけれども、これは先ほどB委員が おっしゃったように、昔は一本で決めていたわけで、いろいろ問題があるということで 基金相互間あるいは基金加入員と非加入員の間のいろんな不公平の問題、こういった点 がいろいろ指摘されてきた。そこで加入員と非加入員との公平性、また基金加入員相互 間の公平性、これが確保できるような免除料率の決め方を工夫していくということで、 そういう面で工夫をしていけば、代行制度についての批判とかいろいろございますけれ ども、そういった点もかなり解消できるのではないか。そういう考えを持っているわけ でございまして、代行制度の意義と免除保険料の決め方とは分けて考える必要があるの ではないかということでございます。 ○C委員  E委員の方から「連合」も代行制度に関しては極めて懐疑的な態度を表明しているで はないかという御言及がありましたので、少し基本的な点について、私どもの考え方を 申し上げておきたいと思います。 まず、後の基本法の問題にもかかわりますけれども、私どもこの基金制度について、 おととしの年金審での議論で初めて私などは勉強させていただいたので十分理解の行き 届かないところがあるかもしれませんが、大変複雑な制度、複雑にすぎる制度だという 印象があります。その複雑にすぎるというのは非常に単純なところかなと思いました。 つまり企業年金はあくまで私的年金の1つなのであって、私的年金というものと、また 公的な年金と基本的にやはり違うものであるはずですが、そこの区別建てがどうも非常 にあいまいな領域をつくっている。この公私の区別があいまいな領域がまさにこの代行 制度なのではないだろうか。大変印象的な言い方で申しわけありませんが、まずそれが 1つあります。 そこの公私の区別は、あらゆる社会領域できちんとした区別をしていくことが、先ほ どから強調されている透明性ということを考える上での鍵なのではないだろうか。ある いは、また自己責任ということを言う場合でも、まさに自己の範囲が鮮明であって初め て自己責任ということが言えるわけで、その意味でも不鮮明なところは明確にしていく べきだろうというふうに思うわけです。 それから、もう一つ、企業年金制度といいますか、特に基金の問題につきまして、 我々大変悲惨な経験をしたわけです。御案内のとおり日本紡績基金という総合設立型の 崩壊であります。ここでどういうことが起こったかと言いますと、結局、積立金不足で 解散に追い込まれて、解散に追い込まれたところで、実は代行部分さえもみずからは保 証できないために、所属していた企業の従業員、解散時点で、本来であれば、もらえる はずであった退職金そのものもかなりの程度そちらへいわば沈み込んでいく。そして支 払保証制度というものがあると言われていながら、これが十全には機能しなかった。 これはまさに厚生省年金局がしばしば言われるように、「準公的年金」というふうに 名づけられて、国が推奨している制度の下で、労使間で約束をされたはずの退職金その ものも従業員の手にそのままでは入らないような事態を生んでしまった。こういう悲惨 な事態は二度と繰り返してはならないというのが我々の基本的な決意であります。  そういう面から、基本法に関しても、私ども「基本法」という名前は言っておりませ んが、企業年金に関する法的な環境整備を図ることが必要だということは常々主張して まいりましたが、その場合の基本的な条件は、支払保証制度の確保でありまして、これ はよく言及されるアメリカのERISA法もその制度の裏づけを持っているはずであり ます。現在の基金制度の下での支払保証制度は残念ながら任意加入である。設立当初は これは全基金が入っていたようですが、現在では必ずしもそうではない。 そうではないということはどういうことかというと、比較的リスクの小さい基金がこ こには入らず、リスクの高いところが入るという、いわゆる逆選択の結果として部分加 入になっているのではないかと私どもは想像いたします。事実と違っていたら訂正いた しますが。そうであるとすれば、まさに危機が近づければ近づくほど安全なところから 逃げ出していくことにならざるを得ないし、日本紡績の場合にも事実そうであったよう に伝え聞いているわけです。 まさに支払保証制度の問題として、これをとらえる観点から基本法が議論されていれ ば結構なんですが、これは大蔵省に、私も「連合」として、どういう考え方なのか説明 しろというお話をいただいて行って参りましたけれども、そういう問題は当面検討の対 象に入っていない。ないしは将来検討の対象に加える予定も今のところないというお話 なので、そういうものであれば、我々としてはメリットを見いだすことはできないとい うことを御返事をしてまいりました。  そういう意味での我が国の企業年金の在り方を考えてみたときに、先ほどから1つの テーマになっている「終身」という件がございますが、そもそも私的年金で終身給付と いうのはごく特例な条件が保証されない限り、一般論としては、これは無理ではないの かというのがもう一つ、私どもの素人なりの直感でございます。  厚生年金基金の場合には、まさに厚生年金本体が終身給付をやっている。その一部を 代行する。それであるがゆえに終身でなければならないという順序でこの終身給付設計 というふうになってきたのではないだろうか。  そういうふうな道筋とは無関係に成り立った適格年金が終身給付でないのはむしろ当 たり前というふうに考えるべきだろうと思いますし、終身給付は、私は強制加入の公的 な年金制度によって初めて保証されるものではないのか、そのように思います。  なお、『年金白書』を拝見いたしますと、資料1で指摘をされているページに、きょ うの議論のそれぞれの項目が大変要領よく説明をされておりますが、これは全く感想と して聞いてもらいたいのですが、どうもここの部分、特に252ページの代行制度にかかわ るあたりの部分は、この年金白書全体の中では著しくトーンが違っていて、ほかのとこ ろでは、こういう根拠によってこういう説がある、こういう根拠によってこういう説が ある。比較的バランスのとれた各説の紹介のように見えますが、ここは何かそれではな くて、代行制度否定論などというのは、ほとんどバカではないかという言い方のような 印象を誘うがごとき記述であることについては、あっと思ったことを最後につけ加えた いと思います。以上でございます。 ○事務局 今、C委員の方から幾つのお話がございましたが、ちょっと私の方から説明させてい ただきますと、公私不分明というお話がございました。私自身の話の感じでございます が、実務として私どもやっている限りにおいては、公的な代行の部分と上乗せの部分は 明確に違った扱いで実務は取り扱っております。そこはちょっと複雑でよくわからんと いうのは、確かにそういう印象を与えているのかなという感じがいたしますが、公の部 分と私の部分ということではそこはきちんと分けた扱いをしているということです。 それから、日本紡績に絡みまして、支払保証は今は一部抜けているのではないかとい うお話がございましたが、現在も、任意ではございますけど、全基金の参加のもとでや っております。日本紡績は7ページの7年度の解散でA基金というのが実は日本紡績の 事例でございますけれども、確かに最低責任準備金を下回ったケースではございました ただ、これは制度全般の不備ということもございます。これは別に基金だけでなくて、 適年、日本の会計制度全般でもそうですけれども、簿価会計でやって、時価の重要性を よくわかっていなかったと。実は簿価で決算を見ていたら、よく見たら時価はかなりの 下の方で評価損が相当あったとか、財政運営においては、これは重要になりますけれど も、将来数の見通しなどでかなり減少しているのにそこを十分見込んでいなかったと、 そういった点があったということでございまして、これは代行そのものというよりは、 こういった企業年金の運営の経験として未熟であったところだろうと思います。例えば 簿価会計をとっていたということで、これは諸外国に比べても時価会計の導入が後手に は回りましたが、そういった日本の企業年金の未熟さが出た事例というふうに私ども見 ております。  それから、終身年金、先ほどからいろいろ議論ございますが、終身年金は企業では無 理というお話も今出ましたが、アメリカ、イギリスは伝統的には企業年金というのは終 身でやっているというのが普通でございます。 ○B委員  今の終身年金ですけれども、確かに今の税制適格年金において終身年金を導入という ことは私は無理だと思います。それは現在適年を実施している企業は既に10万近いわけ です。そのうちのごく一部を除いては非常に小さい先が多いわけでして、現実に終身年 金を給付することになると、生存確認というのを常にやっていかなくちゃいかんわけで すね。その場合に、例えば、年金制度の受託機関だけでできるかといったら、これは全 くできないです。そうすると企業が一枚かまなければ、15人や20人の小企業で現実に生 存確認をやっていくような事務体制がとれるか、これは絶対できない。  ということから考えても、これは今の適格年金が結果的に有期年金になったのは、こ れはむしろ当然だというふうに考えています。 ○D委員  今の点、C委員の中の、企業年金は私的年金だということで、終身でなければならな いということではないだろう、それは私も賛成なんですが、支払保証制度については、 事業主の立場から、これは絶対反対であります。よその会社、よその業界の分を支払保 証する側にそれぞれ入らなくちゃいけないというのは、そう簡単に「賛成」というふう にはいかないだろうと思います。  そうしますと先ほど言いました企業年金基本法は何のためにあるのかということなん ですが、先ほど事務局のおっしゃった中で、必ずしも終身ということではないと。ただ その中で支払保証であるとか積立基準であるとか、受給権保護と言われましたですね。 そういう観点からすると、支払いを保証するのはむしろ積立基準を明確化していくと。 そういうことであるならば、それは事業主の立場としても、それについてはいろいろ検 討していくことはできるのではないか、こういうふうに思っております。  そういう中で本当に企業年金基本法がいいのだろうかというのが改めて疑問になると ころであります。 ○会長  議事進行の御相談を申し上げます。きょう事項が3つございまして、現在、既に3時 40分になっております。あと20分しか予定時間がありません。「世論調査」、「学生調 査」等についての御報告と、それから、今後の議論の進め方についてのフリーディスカ ッションと両方残っています。もし、よろしければ、この辺で先へ移りたいと思います が、よろしゅうございましょうか。よろしいですか、F委員。申しわけありません。 ○F委員  結構でございます。 ○会長  それでは、次に「世論調査」、「学生調査」等についての御報告をお願いします。 ○事務局  それでは、まず「世論調査」の結果につきまして御報告をさせていただきます。資料 3−1をごらんいただきたいと思います。総理府が行った世論調査でございまして、資 料3−1を開いていただきまして、1ページをごらんいただきたいと思います  1ページに「調査の概要」が記述されております。対象は全国20歳以上の者を無作為 に5,000人抽出ということでございます。 調査のやり方といたしましては、調査員による面接聴取ということでございまして、 ことしの3月に行われたところでございます。有効回収数が3,646人ということでござい ます。 下に性別が挙がっておりますが、男女比率で言いますと、46対54になっております。 数字は書かれておりませんけれども、若干女性が多い、こういう結果になっております  各年齢区分がそこに掲げられておりますけれども、おおむね30代、40代、50代が2割 という状況でございます。  職業別につきましては、ちょっと恐縮でございますが、44ページをごらんいただきた いと思います。44ページの一番下に職業別の数字が括弧書きで掲げられておりまして、 全体 100%でございまして、主婦が23%、以下、労務職(21 %) 、事務職(18 %) 、こ ういう職業区分になっているところでございます。 次に調査の概要でございますが、資料3−1に書かれているところでございますが、 時間が限られておりますので、恐縮でございますが、調査票そのものに調査結果が書か れておりますので、それに沿いまして、簡単に御紹介だけさせていただきたいと思いま す。40ページをお開きいただきたいと思います。  40ページ、高齢化社会の対応として、「社会保障等の分野において、何が重要か」と いうことで選択していただいたものでございまして、「年金」、「医療」、「介護」の 順になっているところでございます。  次に41ページでございますが、「公的年金制度について関心があるか、ないか」とい うのを聞いたものでございます。(ア)、(イ)、「関心がある」合わせて78%でござ います。  次に「関心がある」と答えられた方に、「どのようなことに関心がありますか」と聞 いたのが、SQa2でございまして、ごらんいただきますように、「自分が受け取る年 金がどうなるか。制度全体の姿がどのようなものになるか」ということについて関心が 高いという結果でございます。  次に42ページでございますが、「公的年金制度の仕組みや役割について、どのような ものだと思っているのか」ということで、複数選択でございます。一番多かったのが、 「現役で働いている世代が、年金を受給している世代を扶養する社会的な仕組みであ る」というのが52%でございますが、「(ア)加入を義務づけられている」、あるいは 「(ウ)保険料を支払った期間に応じて年金が支給される」というのを選択された方も 多いわけでございます。  次に問4でございますが、「高齢期の生活設計の中での公的年金をどのように位置づ けるか」ということでございます。最も多かったのが、「公的年金を中心とし、これに 個人年金や貯蓄などの自助努力を組み合わせる」というのが半ばを超えたところでござ います。残り半分ずつの感じで「全面的に公的年金に頼る」あるいは「公的年金にはな るべく依存せず、できるだけ自助努力を中心に」という答えでございました。  次に今回の制度改正に関連いたしまして、問5でございますが、「5年ごとに行われ る財政再計算について、今回の改正についてはどの程度関心があるか」ということでご ざいます。おおむね2/3の方が「関心がある」というふうにお答えになっているとこ ろでございます。  次に問6でございますが、昨年来の動きにつきまして説明を行い、「こうした制度の 改正の動きについて知っていましたか」ということでございますが、「知っていた」と いう方が、(ア)と(イ)合わせて37.3%、こういった数字でございました。  次に43ページでございますが、問7でございます。公的年金の保険料の負担について 上昇が見込まれるわけですが、そのことについて知っていたかどうかということでござ います。「知っていた」という方が(ア)と(イ)合わせまして1/3強という数字で ございます。  次に問8でございますが、「給付と負担の均衡につきまして、どのような形で均衡さ せるか」ということでございます。世論調査で一番多かったのが、(イ)の「将来の世 代の保険料の負担をできるだけ上げずに、現状で維持して、給付の水準を抑制する方向 で均衡させるべきである」というのが43.6%。(ウ)の「給付水準もある程度抑制し、 負担もある程度高めていく」というのがその次でございます。  次に問9でございますが、3号被保険者の問題につきまして、「このような仕組みを 知っていましたか」ということで聞いたわけですが、「知っていた」、(ア)と(イ) 合わせまして、3/4近くの方が「知っていた」という答えでございます。  それでは、こういった専業主婦の年金保険料の負担について、「専業主婦等も負担す べきであるという意見と、現行どおりという意見がありますが、あなたはどういうお考 えですか」と聞いたわけですが、答えといたしましては、「所得がないのだから、現行 どおり配偶者の加入する制度全体で保険料を負担する仕組みでいい」という方が半ばを 超えたと、こういう結果でございます。  最後に44ページでございますが、少子化対策につきまして、「年金制度の中で少子化 対策を講じることについてどうか」ということですが、答えといたしましては、「年金 以外の社会保障の施策として少子化対策を行うべきであり、年金制度の中で少子化対策 は行うのは適当でない」という方が多かったという結果でございます。  以上が、世論調査の結果でございました。  次に資料3−2でございますが、「大学生アンケート」ということで、一度、本審議 会においても御報告したところでございますが、資料3−2の1ページをお開きいただ きたいと思います。ことしの5月に審議会委員の先生方の御協力また日本社会事業学校 連盟の協力を得まして、ごらんいただきますような全国17校におきまして、3,286人を対 象といたしまして、年金制度の現状や課題について説明を行い、その後アンケートをと ったものでございます。その結果につきまして2ページをお開きいただきたいと思いま す。  2ページ、問1でございますが、「年金制度のどのようなことについて関心がある か」、先ほどの「世論調査」と同じような質問ですが、ごらんいただくような結果でご ざいまして、負担する保険料あるいは将来の年金の給付の時期や内容、全体の姿という ような形で数字が出ております。  それから、年金制度につきまして、「現役世代から高齢世代への仕送りという仕組み について知っていたか」という質問ですが、1と2を合わせまして7割近くの学生が知 っていた、こういう結果でございます。  次に問3でございますが、この世代から世代への仕送りという仕組みについて関連し まして、「今後とも現行の仕組みを維持すべきかどうか」。積立の制度という意見もあ るわけで、これについて問うたところでございますが、「現役世代の負担が重くなりす ぎない範囲内で現行の仕組みを維持すべき」というのが最も多かったところでございま す。  次の問4でございますが、「高齢期の生活における公的年金の位置づけ」につきまし て、先ほど「世論調査」にございましたものと同じような質問でございますが、「公的 年金を中心に自助努力を組み合わせる」というのが6割くらいの数字でございます。  次に、「公的年金で、老後生活のどの範囲を賄えるようにするか」というものでござ います。ごらんいただきますように、基礎的な部分、また、その範囲を徐々に拡大して いく考え方がありますが、一番多かったのが2で、保健医療、交通通信費ぐらいまで、10 万円ぐらいの水準というのが半ばという数字でございます。  次に問6でございますが、「給付と負担の均衡」につきまして聞いたものでございま す。最も多かったのが、将来の世代の保険料をできるだけ上げずに現状を維持し、給付 水準を抑制する方向で均衡するというのが多かったわけですが、これとほぼ同じぐらい の数字が、給付と負担両方で均衡させていくという 3でございます。これにつきまして は、4にございます「わからない」という答えもかなり高い結果でございました。  次に問7でございますが、いわゆる「5つの選択肢」につきまして問うたものでござ います。結果といたしましては、3のC案が最も多くて37.6%。以下、B案、D案と並ん でおりますが、「わからない」という数字が19.8%でございました。  次に問8でございますが、「学生の保険料」につきまして問うたものでございます。 現行どおりとするもの。それから、社会人になって、学生時代の分を追納する制度を導 入する。さらには障害年金分の低い保険料を設定するというようなことで問うたわけで すが、 3が一番多かった、こういうことでございます。  次に「少子化対策」につきまして、世論調査と同じような質問したわけですが、学生 のアンケートの方では「年金制度の中で対策を講じるべきだ」というのが若干多く、 「どちらともいえない」というのが25.8%、かなり高い数字でございました。  以上が学生のアンケート調査結果でございます。  資料3−3では、今、申し上げました「世論調査」、「学生調査」。さらに既に御報 告をさせていただいた有識者調査の結果を合わせまして、3つの調査、あるいはそのう ちの2つの調査で対比的にとらえられる部分をまとめたものでございまして、お目通し をいただきたいと思います。  それから、資料3−4で「有識者調査における『その他』意見等」ということで、各 問におきまして「その他」の御意見があったわけです。その結果につきまして、まとめ かつ意見の例を御紹介をさせていただいているものでございます。  さらに資料3−5でございますが、厚生省の方に5つの選択肢発表後寄せられました 葉書、手紙及び電子メールなどによります「次期年金制度改革についての意見」、どの ような意見があったのかということで、数は1ページお開きいただきますとおわかりの とおり、370ぐらいでございますけれども、その意見の内容、また代表的な意見の例につ きまして、御参考までにまとめさせていただいたものでございます。以上でございます ○会長  最後のトピックに移ります。資料4にあります「今後の審議の進め方」について御相 談をお願いしたいと存じます。昨年12月の論点整理に掲げた論点につきまして、本日で とりあえず一通り御議論いただいたことになります。今後は、審議会としての意見書の 取りまとめに向け、さらに審議を進めることになると存じます。お手元にお配りしまし たスケジュール(案)について事務局から御説明をお願いします。 ○事務局  資料4をごらんいただきたいと思います。資料4、「今後の審議会のスケジュール (案)」ということで、既に審議会に申し上げました今後の審議会の日程につきまして まず記載をさせていただいております。一番最後に9月21日(月)午後ということで入 れさせていただいておりますが、この日程につきましては、その後の委員の御調整をさ せていただきまして、新たに設定させていただいたものでございますので、追加をさせ ていただいております。ごらんいただきますように、次回の審議会以降、総括的議論、 そして既に御案内させていただいておりますが、8月31日、9月1日は1泊2日で集中 審議をお願いをしたいということで、総括的議論をお願いをいたしたいというふうに考 えております。  なお、事務局といたしましては、7月30日の総括的議論の際に、これまで2順目の御 審議までに出されました意見につきまして、総括的に整理をしたものを整理メモの形で 出させていただくことで準備をさせていただいております。  それから、今後の進め方といたしまして、事務局といたしましては、これまでに審議 会で御発言ございましたように、今度の制度改正につきましての骨格的な部分、基本的 な問題について御審議をお願いさせていただいたらどうだろうかというふうに考えてお ります。例えば基礎年金の問題、あるいは給付と負担の水準の問題、こういったテーマ につきまして、あらかじめ審議日に審議テーマを設定をいたしまして、各委員の御意見 それまでにお考えを整理をしていただくというような形でお進めいただくことが考えら れるのではないかというふうに考えているところでございます。以上でございます。 ○会長  ありがとうございました。今の御説明もございますので、今後の審議会の進め方につ きまして、御意見などございましたら、どなたからでもお願いいたします。どうぞ、C 委員。 ○C委員 今後の進め方ということは、むしろ、これまでの進め方がどうであったかということ と密接不可分だと思いますので、感想めいたことで恐縮ですが、ちょっと意見を申し上 げたいと思います。  現在まで2順したと、一通り終わったはずだと、こういうことのようで、だから今か らまとめに入るとこういう御説明が事務局の方からあったわけですけれども、私、この 間、参加させていただいた感想から申しますと、個別テーマについて、それぞれ各委員 が全部言いっぱなしのまんま、ただ推移してきたように思います。例えばきょうの企業 年金の問題についても大変重要な問題、単に企業年金の問題だけではなくて、むしろ我 が国の年金制度全体の根幹に触れるような問題を含んでいながら、事務局から御報告の あった3つの論点についても、あっちへ飛び、こっちへ飛び、それぞれ委員としては、 それぞれ言いたいことを言っているわけですが、しかし審議会として特段それが整理を されるわけでもなければ、それが積み重ねられるわけでもない。そして、何らかの結論 めいた方向が探られるわけでもない。考えてみれば、これまでのすべての議論があらゆ る項目にわたってそうだったのではないか。その上でこれからは一応議論は一通り終わ ったからまとめだというふうに言われるのは大変むなしい感じを誘うところでありまし て、こういったむなしさを残した、ないしは引きずったまんま、後はまとめたと言われ ることについては大変率直に言って不満でございます。  今、事務局から、例えば基礎年金問題と、このように言われましたけれども、これは 一体次回改正でどのような改正をしようとするのか。その改正のイメージ全体にかかわ ることなので、例えば基礎年金制度については基本的には余りいじるのはやめようとい うことであれば、そういうことになりますし、いや、基礎年金制度こそ次回改正の1つ の重要なアイテムなんだということであれば、これまでの議論では全く合意形成の方向 に向かっているとは思いません。 それから、女性と年金の問題がこの間、盛んに話題 を呼んでおります。ジャーナリストの取材が時どき私どもなどにもあるのですが、大体 来るのは女性と年金の問題か、さもなかったらば、確定拠出型年金をどう考えるか、大 体この2つであって、公的年金制度の根幹にかかわるような部分についてはほとんど取 材らしいものが余りないのが実情ですが、それはどういうふうに評価するかは別として 例えば「女性と年金」という格好で1つの切り口を見たときに我が国の公的年金制度が さまざまな問題を輩出していることは、これは3号だけではなくて、全般にわたって大 変重要な問題だろうと思います。その点についても当審議会ではほとんど議論が深めら れているとは思えないわけでありまして、私の発言などはしばしば、極めて反女性的に 受け取られてきているのは不徳のいたすところと考えておりますが、しかし、例えば遺 族年金制度をどのように考えるのか、あるいは年金分割という問題についてどのように 考えるのか、これらについてほとんど議論されておりません。  それから、積立金をめぐっては、これは先ほどの代行の問題と同様、日経連と我が方 とがある意味では同床異夢というふうに人から言われるかもしれないけれども、結論部 分においてかなり重なった考え方として、現在のような巨額な積立金を本当に我が国の 公的年金は必要としているのだろうかという疑念を強く持っているところでありますが これについても議論が深められてきたというふうには思いません。  そういった積立金の在り方あるいは基礎年金制度の在り方、こういったものが変わる のであれば、実は「給付と負担」の問題も根っこから水準あるいはその数字等々ががら がらと動くはずのことでありまして、そういうことは括弧に入れたところで、幾つかの 試算が出されたものを「5つの選択肢」というふうに厚生省が提示をされ、学生さんに まで聞いているようですが、私どもはその選択という問題について、もっと幅広い基礎 の上で行うべきだというふうに思っています。  今、申しましたような考え方で次回改正を考えるのであれば、議論はもう少し個別項 目ごとに深められなければいけないと思います。そんなことは必要ないと。次回改正は そういう厄介なことには手を触れないのである。給付水準を下げ、負担水準を若干上げ 女性については130万円を下げるという程度の手直しをし等々ということであらかたの絵 をかいてしまえばいいのであるということであれば、ただちにまとめの作業に入っても 一向に構わないかと思いますが、そのようなまとめ作業に入る入り方については、私は 委員のひとりとしては到底同意できないということを申し上げておきたいと思います。 以上です。 ○会長 どうぞ、F委員。 ○F委員  今の御意見と多少関係があるのかもしれませんけど、今後の進め方について考えてい ることがあるんですが。まず改革の前提要件として、有識者がいろんな出版物に出して おられるように、財政構造改革最優先であるべきなのか、あるべきでないのかという問 題の切り口は大前提としてどうするのかということがまず入り口でもう一度要るのでは ないかということが1つと、そういうことも含めまして、改革の前提要件をどうするの かという問題は再度真剣な論議が要るのではないかと思います。  またこれまで論議してきたテーマをずっと俯瞰して考えてみますと、かなり急がなけ ればいけない短期的な課題があると思うんですね。この前の総務庁行政監察局から出さ れた国民年金の空洞化問題はどうするのかという点もあります。これはやっぱり責任あ る立場で早くきちんと方向性を出さねばいけないのではないか、個人的にはそう思いま す。  そういう緊急を要するテーマと少し中長期的に考えればいいテーマとをもう一度整理 をして話し合っていく方法もあるのではないか、こんなふうに思っております。  いずれにしても、今、C委員が言われたように、何か言いっぱなしで終わっている部 分を今後どうするかだと思います。たくさんメニューをいただいたわけですから、その 中で、このメニューは再度話し合いをやらないのか、やるのかという整理の仕方もある だろうと思いますし、厚生省当局の方で、そういう整理をされた上で新しいステージに 移してやるべきではないか、こんなふうに思います。 ○G委員  お二方のお話は、ある意味では共通の認識なんですが、私自身のやや外側から見てい る感じでは、今回の公的年金の改革ないし改正の話は世の中にいろんな反響を、従来と は違った意味でかなり大きな問題になる可能性になると私は予想しているのですが、し たがって、この審議会は相当大変だという印象です。それは現在の日本の今後のいろい ろな社会設計その他で多分一番重要な要素の1つをどうするかという話のかかわりがあ りまして、中長期的な話が相当程度重要なんですが、それが逆に言うと、割と待ったな しの状況に近い状況で、今、世の中はそういうふうに動いていますので、そのところを 慎重に今の段階でどういうふうに議論するかということについて十分配慮は必要だと思 います。  あとは学者の立場として割合と気楽に言えば、シナリオというのは単に数字のシナリ オではなくて、かなり違う考え方が現在ありますから、こういう考え方でこういうふう に議論をしていくならば、経済成長率が多少プラスになってきたら、こういう制度の方 向があり得る、そういうシナリオが2つか3つ。しかも昔ほど、昔といっても、今から 10年ぐらい前の年金の話と違って、かなり意見が多様になっていることもありますので 普通で言えば、シナリオを2つか3つぐらいあって、それ自身、ある程度の説得性をそ れぞれ持っているはずなんで、あとはそれぞれをどう考えるかという話が、その辺のと ころまでうまくいけば、割合と話としては世の中に、なるほど、こういう形で議論して こういうふうな多数の意見の人は、どちらかといえば、こちらをとりましたという感じ になっているのが本当は一番いいんじゃないか。 したがって、余り部分的に論点をそれぞれこなしていくというのは結構難しい。全体 が相当相互連関がありまして、その辺のところが十分配慮されてしかるべきではないか と思います。それぞれのシナリオを書くのは、お役人の方は余り得意じゃない話だと思 いますが、学者が色分けがどういうふうになっているか、私も余りよくわかりませんが 本当は学者がそれぞれの違う意見を持った人が少しずつ違ったシナリオを書いて、これ はどうですか、いや、これはだめです、なんていう話ぐらいに持っていく方が本当はあ る意味でやりやすいんです。そういうふうに学者の色分けがなっておるのかどうかも、 私もよくわからないですが、何かそういう工夫がある程度必要ではないかと思います。 ○H委員  テーマによってはC委員と結構対立したりするんですけど、先ほどのC委員の御意見 に私も賛成です。かなり言いっぱなしになったという印象は私も大変深く思っておりま す。それで、まとめの仕方について、今までにも幾つか御提案がありましたけれど、や はりG委員がおっしゃったように、数字のシナリオではなくて、考え方のシナリオを幾 つか出して、それに基づいて具体的なところをまとめていくということが、私は今、日 本全体で非常に強い関心を持たれている状況から見て、この審議会ができるかなり有効 な作業ではないかと考えます。  それで、そのシナリオをだれがどこまで書けるか、短い期間ではありますけれども、 今後早急に考えることが必要かもしれませんけれど、どうしても今まで出てきたシナリ オですと、数字、「給付と負担」というところに、あるいは「5つの選択肢」にもあり ますように、そういうものになってしまいがちですけど、そういうことが緊急課題では あっても、やはり今問われているのはもっと根幹的な問題だというのは、私は審議会の 委員全員が持っている認識だと思います。  随分前から、年金制度そのものを、今の社会保障制度の中でどう位置づけるかという ことをしなければいけないんだという、これは共通した意見だったと私は受けとめてお りますので、そういうことを踏まえますと、今のような形で考えていくのが、今、国民 に求められているようなまとめる方向ではないかと思います。 ○会長  ほかにどなたか御発言ございませんか。I委員、何か。 ○I委員  非常に問題が難しいし、複雑多岐にわたっていますから、皆さんおっしゃるように、 2年間議論してきても、この場で細かい個々の論点についてまで全員が一致するなんて ことは到底あり得ないことですよね。そうすると審議会というのは何のためにやってい るのかということを考えざるを得ないんですけれども。しかし、私自身は2年間この審 議に参加させていただいた結果、今まで自分で余りはっきり判断がつかなかった問題に ついてもそれなりに、正しいかどうは別としても、自分なりに判断はできるようになっ たことは非常に大事なことであったと思うんですね。各委員、皆さんそうだろうと思う んです。これだけ膨大な、実際に積立金もあり、将来の巨大な負担もベネフィットも含 んでいる問題がそう簡単にできるはずはないので、いかにして、日本の将来のために、 一番ためになるような解決策を、現在の時点で見通せる範囲のいろんなことを考えて断 を下すかということしかできないわけですね。  私は「5つの選択肢」というものに対する評判が甚だ芳しくないんですけれども、私 自身は、あれは非常に重要な問題提起であって、G委員おっしゃった基本的な考え方を 整理するといったら、やはり、ああいう「5つの選択肢」というものを出発点にする以 外に、いかなる整理の仕方があるのかというふうに思いますね。ですから、あの中には 現状維持という案から、民営化という案から、その中間の3つの案から、そのほかにも いろいろそれはあり得るとは思うけれども、日本の現在の高齢化や財政状態、マクロの 経済情勢とか、そういうことを考えた場合に、やはり細かいバリエーションはいろいろ あるにしても、あの中でどこかの選択をせざるを得ないということが中心だと思うんで すね。そのほかに個々の論点はもちろんありますから、ほかの委員がおっしゃったよう に、どうしても次期改正で解決を図らなければいけない問題点と、多少これはもう少し 長期にわたって議論してもいい問題と、その辺の振り分けはぜひ事務局でやっていただ いて議論していただいたらどうなんでしょうか。 ○D委員  C委員が言われるように、時間があれば十分に議論をするのもよろしいかと思います が、非常に難しい問題の中でいろんなパースぺクライブギャップが大きいと思うんです ね。したがいまして、議論をすれば、いい結論にすぐいくということでも必ずしもない んではなかろうか。そういう意味でスケジュールが後ろが切られているのであれば、事 務局が説明した中でできる限り議論を尽くしていくことだと思います。  私の立場は常に負担を心配する事業主の立場で申し上げているんですが、今、足元、 日本の各企業、事業主の立場は余裕がないわけです。当然長期的な展望で考える。こう いう時期がいつまで続くわけじゃないということなんですが、長期的展望、先行きにど の経営者も非常に不安を持っている。そういう状況の中で、負担がさらに大きく増える ということについて、どうしても保守的な意見を述べざるを得ないところに追い込まれ ている。したがいまして、そういうことについて、いくら議論しても国民的な理解は得 られないのではなかろうかと思っていますので、そういう意味では申し上げることは申 し上げますけれども、今までの議論の中でまとめていかれるということでないと、いく ら議論しても、これは日本経済がよっほどよくなればまた変わると思うんですけど、今 の段階では非常に長期的展望まで見れるような状況では、この数十年の中で今一番悪い 状況にあるのではないかと思いますので、そういう意味ではスケジュール的にまとめら れることでよろしいのではないかと思います。 ○会長  ほかにどなたか。どうぞ。 ○J委員  D委員からもありましたけれども、ちょっと日本経済最悪期に達しているということ ではないかと思います。ただ、この年金問題というのは、これだけ世間の注目を浴びて いるのも、大きな人口のトレンドだとか、そういうのを含めて、やはり21世紀の前半と いいますか、そういうところまでに見通して本当にどうするのかというところが、皆そ れぞれ国民各レベルも危機感を持っているからこそ、さまざまな意見とか、あるいは抜 本的な改革の意見だとか、これは経済界からも労働組合からも、あるいは学者先生方か らもいろんな面で出されていると思います。結論的に言えば、私も中長期的に少し考え ていくことと、短期で手を打っていかなければならないことと、やはりどこかの時点で 分けるべきではないかなというふうに思っています。  もう一点は、どうしても最後にくれば、G委員からも言われたことに似るのかもしれ ませんけれども、どういう国を選択するんだという、考え方の相違といいますか、そう いうことで幾つかストーリーがあるのではないかと。端的に新保守主義型でいくのか、 もう少しセーフティーネットをきちっと張った高負担、高福祉型でいくのかということ については、日本の現実の中、いわゆる頭の中での机上の空論ではなくて、この現実の 中でも幾つか選択肢があるのではないかというふうに思います。  ただ、そのときに、本当に「年金」のことだけに焦点をあてて、そこで答えが出るの かどうか。それから、ほかとの関連の中で、相互に関連させながら1つの提案といいま すか、国民に対する提示をしていくことが「安心感」ということにつながることもある のではないかという部分につきましては、医療や介護とか、そういう問題というのはあ ります。一方、負担ということになりますと、税金だとか、社会保険料とかいうものを 含めて考える必要がある。自分の年をくったことが、ああ、よかったなと、この国に住 んでよかったなというのは、安心できるというのは、そういうことについて、ある程度 イメージがわくようなものが要るのではないかと。そういう意味からすると、年金だけ で果たしてそういうきちっとした安心感が持てるような答えが出るのかどうかというこ とについては非常に疑問を感じます。  ここまで話を広げると結論が出ないじゃないかと、こういうことになるかもしれませ んが、そういう意味で少しロングランで、あるいはもう少し時間かけながらやる部分と そうじゃない部分と、ここまでの部分で議論と関心とが起こっているからこそ、そうい うことについては非常に大事にしっかりした議論と、しかも幾つかの選択肢があるはず ですから、そういう中での議論をきちんとすることが非常に大事ではないか。時間切れ で、えい、やったあということについては非常に問題があるというふうに思っています ○K委員  今まで議論が行われまして、C委員からお話ありましたように、今までの議論という のは言いっぱなしじゃないかという御意見でございますけれども、今まではある面では 言いっぱなしもやむを得ないと思うんです、そういう面では。一応、論点整理をしまし て、その項目について順次議論したわけですから、今までの経緯においては言いっぱな しという面もやむを得ないと思います。一通りこれで言いっぱなしの面が終わりました ので、確かにおっしゃるように議論が深まってない問題も幾つかあると思います。今ま でいろいろ御議論出た中で、中長期的な問題と次期制度改正の問題、両方の問題があり ますけど、そういう面で、これから次のラウンドへ入るのは、その辺を少しウエートを 置いて議論されるということで、しかも時間的にある面で制約がございますので、幸い 次回が総括的論議が行われるということでございます。  それから、この審議会で今まで議論した際に、検討項目の論点整理を一応それぞれの 項目で出したわけです。総論的なものを何にするか。それから、制度改正の基本的なス タンスをどうするとか、公的年金制度の在り方の問題、あるいは今後の具体的な問題、 両方分けておりますので、せっかく今まで論点整理の項目がまとまって一通り議論して おりますので、これをもう一遍深めて議論するということが、これから前進する面でや むを得ないのではないかと思います。  今まで、確かにおっしゃったように、それぞれが言いっぱなしの面もありましたけど この段階になりますと、特に労使が一部いるのでございますし、今までかなり御意見が 出ておりますけど、まだ完全に固まってない面もあると思いますので、そういう面でそ れぞれのサイドにおきます、こうあるべきだという意見を出していただくというのが、 これからの論点を進めていく上で大事ではないかと思います。 ○会長  どうぞ、L委員。 ○L委員  私もこれからの進め方としては、今までやった議論を深めることが1つと、もう一つ は、今いろいろ御意見出ましたけど、今の状態がいろんな意味で環境が非常に最悪の時 期ですね。将来も日本の将来がどうなるかということが非常に不透明であると。ですか ら、なかなか年金をどういうふうに持っていったらいいのかという判断が非常に難しい と。一番難しい時期にあることは確かなんですね。  恐らくG委員もそういうことで頭に置いて言われたのだろうと思いますが、もう少し 「5つの選択肢」の中の何をとるかという、結論は結局そういうことにならざるを得な いんですけれども、その前提として、将来の国づくりの一環としての年金制度の在り方 ということについてのストーリーなりシナリオをもう少し我々の間で形づくる、あるい は議論するということが必要なのではないかと思うんですね。  一方で、個別の議論についてのテーマを1つ1つ深めることと、今、いろいろ御意見 出ましたような、将来のシナリオについての大きな、日本の将来の在り方とか、枠組み についてのその中の一環としての年金制度の在り方についての議論がもう少し今まで足 りなかったのではないかという気がいたします。 ○M委員  先ほどのF委員と同じ意見になりますが、御意見もありましたが、今が最悪の時期で あるということとも関連するかと思いますけど、二度にわたる公聴会におきましても、 公的年金の在り方の基本として、基礎年金といいますか、国民年金の財政負担のありよ うについて異なる先生方の御意見もあったと思っております。しかし、このことについ て、あくまで財政構造改革方針とそのための法律に従わざるを得ないということであれ ば、そのことをかなりはっきりさせてかからないと次のステップになかなか入れないの ではないかと思うわけです。  審議会で意見を申し上げて、かつ審議会でそういう意見をまとめて、それで財政負担 問題について前へ進むのかどうか。それとも行政的にも政治的にもその部分について前 へ進めないんだということであれば、進めないということをピンどめしてかからないと なかなかその次に進めないのかなと思うんですよね。何かこの問題が最後に残されて、 そして、その最後でどう扱うんだということになったときの、委員としての判断が物す ごく難しくなるし、内容全体にも影響を与えると思うんですね。  F委員おっしゃいましたが、その前提となる項目について、行政的にも考え方をはっ きりさせてかかってほしいなという思いがあります。 ○事務局  事務方から一言発言させていただきたいと思うんですけれども、先ほど来、言いっぱ なしというお話が出てまいりまして、これは皆さん、多かれ少なかれそういう感じを持 っていらっしゃるんじゃないかと思うんです。けれども、実はこれは言いっぱなしでは ございませんで、議事録がちゃんとございまして、今、私も読み直しているんですけれ ども、全体で言いますと15センチとか20センチぐらいになっておりまして、これはあら ゆる問題が、相当いろんな視点からかなり深く突っ込んだ発言がございまして、こうい ったものの中に、次期制度改正の総論から各論からすべて網羅されているのではないか そういう感じを受けておるわけです。  それと、来たる7月30日の会議におきましては、先ほど会長が申し上げましたように これまでのいろんな御発言、それぞれの項目についてのいろんな御発言、これをきちん と整理をする、そういう資料をお出しをして、これからの議論に参考にしていただきた いと思っています。  それから、また今お話もございましたような、大枠についての、制度改正の方針があ るといいますか、あるいはこれからの我が国の社会経済の在り方の中での年金のあり方 とか、そういった非常に大きな議論があろうかと思うんですね。これにつきましても、 これまでの議論を踏まえて、何らかお役に立つような資料を考えてみたらということも 考えております。こういった次回資料につきましては、また事前に各委員の方と御相談 させていただいて、何かそういう形で準備させていただいて、そういったものも参考に しながら、まとめの議論をお願いしたいなと思っておるわけでございます。 ○C委員  私が言ったのは、言いっぱなしということで、事務局には御心配かけた。私は、言い っぱなしは言いっぱなしで言った方の責任であって、それはそうなんですが、審議会自 体のこれまでの議論の経緯ということから言えば、議事録が残っている、いないという ことを申し上げたのではなくて、議論が積み重ねられてきたという実感を残念ながら持 てないということを申し上げたんです。  その中に総論から各論まですべて含まれているというふうに言われてしまえば、もは や議論する必要もなくなってしまうような気がいたしますが、私が言いっぱなしと申し 上げたのは、もう少し被害者意識を振り回すような言い方をさせていただくと、言わさ れっぱなしというふうに言った方がいいと思います。 ○会長  言いっぱなしと言われますとちょっと困ります。いろいろなトピックにつきまして、 審議会の委員の皆様方がどう考えていらっしゃるか、感じていらっしゃるか、率直にお 話しいただいて、資料がたくさん集まりました。議事録に全部入っております。それを 並べかえ、整理し、また系統的につなげていく作業が必要です。もともとは皆様方の個 別の御発言ですが、筋道がつながってきたこともかなりございます。これをつなげなが ら、少しずつ方向づけをしていくことを考えればいいと、私は思っております。  ただいまお目にかけました資料4、「今後の審議会のスケジュール(案)」。日程な どこの案で進めてよろしゅうございますか。               (「異議なし」と声あり) ○会長  このとおりに進めたいと存じます。  本日、予定の議事はこれで終わりですが、そのほかにも資料が配布されております。 ちょっと御説明を。 ○事務局  資料5は前回の審議会の議事要旨(案)でございます。それから、資料といたしまし て、あと2点入れさせていただいております。前審議会において御説明をさせていただ きました年金福祉事業団の9年度の資金運用事業の決算の結果でございます。  それから、もう一つの資料は、これまでに各種団体から年金審議会宛に、各委員にも 個別に御要望が行っているようでございますが、年金審議会事務局宛に出されました要 望につきまして、16団体ございますが、その概要を整理させていただいたものでござい まして、ごらんいただくとおりでございます。以上でございます。 ○会長  本日の資料ですが、今までどおりすべて公開したいと存じますが、よろしゅうござい ましょうか。               (「異議なし」と声あり) ○会長  それではそのようにさせていただきます。  今後の日程について、スケジュール(案)が決まりましたが、事務局から確認をお願 いします。○事務局 それでは、次回につきまして御案内をさせていただきます。次回 は7月30日(木曜日)午後2時からでございます。よろしくお願いいたします。 ○ 会長  本日も、また2時間半かかりましたが、これで閉会したいと存じます。どうもありが とうございました。 年金局 企画課  須田(3316)