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医療保険福祉審議会 第4回介護給付費部会議事要旨


1 日時及び場所

平成10年7月31日(金) 10時00分から12時00分
厚生省 共用第9会議室

2 出席委員

星野、青柳、石井、加藤、見坊、田中、中西、中村、野中、橋本、堀江、山口の各委員
鈴木、高梨、山崎、小島、赤司参考人

3 議題

(1)介護給付費部会の主な検討事項の視点及び論点について
(2)施設サービスにおける介護報酬の検討に当たっての主な論点について
(3)その他

○ 資料010に沿って、介護給付費部会の主な検討の視点及び論点について、介護保険制度施行準備室神田次長より説明。

(青柳委員)

 医療系施設のサービスでは、入院入所期間に応じた報酬設定の考え方として逓減制の取扱いがあるが、介護保険では再認定があるので、同様の取扱いでは議論に無理があるのではないか。
 要介護度区分あるいは人員配置等によってある程度報酬に差をつける点については、例えば、現行の医療保険制度下の療養型病床群のように、マンパワーに対する評価で差を設けることは議論の対象になるが、全体の報酬枠に差をつけるのはおかしいのではないか。
 現行の医療保険制度における在総診、外総診、慢性疾患指導管理料等の指導管理料の目的は、あくまでも疾病管理、疾病指導を主体としている。その上で介護保険制度の居宅療養管理指導をどういう具体的な内容にするのかというのを考えるべき。いろいろな考え方があるが、介護サービスを提供する上で必要な医療管理指導というのが一つあるし、また、意見書の提出に当たって、ある一定期間、介護関連の指導管理が必要であるので、介護サービスに関する指導管理に焦点を当てて、内容を考えておくべき。

(見坊委員)

 検討に当たっては、保険財政の視点、サービス提供サイドの視点、利用者サイドの視点が、それぞれ明確になっていなければならない。
 特に利用者の視点に立って、現行制度の実態、利用者側がどのように費用を負担しているのかをわかりやすくした資料をつくっていただきたい。そうした視点に立った調査もやっていただく必要がある。
(鈴木参考人)
 要介護度に応じたサービスの内容と、それに対する費用の実態をまず調べていただき、それぞれ要介護度ごとにどのぐらいの経費がかかっているのかを、調査していただきたい。
 施設ごとに現在の人員基準も配慮して報酬を決めるという複雑な制度になると、同じような状態の人がいろいろな事情でそれぞれ違った施設に入っていることを、利用者に説明しにくい。
 将来的には、3施設は一元化していくべきだが、どのような段階を踏んで計画的に統一していくか、という筋道をこれから考える必要がある。

(星野部会長)

 事務局が用意した8つの論点について、本日中に委員の方々から意見を伺い、秋に、さらに必要な調査等の議論をさらに深くしていただくということにしたい。

○ 資料011、012、013に沿って、施設サービスに係る介護報酬の検討に当たっての主な論点について、神田次長より説明。

[「1報酬の基本構造」について]

(青柳委員)

 特別養護老人ホームの一般事務費の地域格差と比較して、診療報酬における入院環境料地域加算は比率が極めて小さいので、横並びにはできないのではないか。

(神田次長)

 入院環境料の比率については、社会医療診療行為別調査等で確認できるので、今後は、そういった注記をすることも検討したい。

(青柳委員)

 報酬の基本構造として、要介護度のみの評価か、人員配置を加味した評価かなどいくつか論点が挙げられているが、最終的には、それを利用する患者さんにとって、どちらの方が多くのメリットを受けるかによって、論点をまとめるべきだ。

(田中委員)

 サービスを評価して質を担保する見通しが定まらない段階では、人員配置を加味した評価を、当面、入れていかざるを得ないのではないか。

(山口委員)

 現行の3類型の施設のまま移行するとすれば、人員基準等の違いを無視すると混乱が起こると考えられるため、人員基準をかなり加味した介護報酬を設定すべきである。

(小島参考人)

 施設の人員配置、設備基準が最終的に固まっていない中で報酬について議論するというのはなかなか難しいので、まず、現行の人員配置、あるいは施設基準ということを改善する、という方向での検討が必要だ。

(山崎参考人)

 人員配置を加味した評価は大変重要である。人員配置の基準は最低の基本的なところとし、介護報酬で質的向上の動機付けをしていくことが、非常に大切ではないか。

(石井委員)

 特養から介護保険施設への移行に際しては、さまざまな配慮が必要である。例えば、一番数が多い50人定員をもとにして報酬を考えたとしても、30人の小規模施設に、独立して採算を取らせるということは非常に困難である。

(堀江委員)

 介護報酬体系は、要介護度のみの評価ということを基本に、簡素化を重視すべきではないか。

[「2地域差の勘案方法」について]

(小島参考人)

 地域差換算は必要だと思うが、保険料負担の基準が全国一律であることとの整理が必要ではないか。全国一律の医療保険との違いも、はっきりさせる必要がある。
 また、公務員の調整手当の地域区分というのが事例として出されているが、地域別の最低賃金の区分も参考に入れてもらいたい。

(石井委員)

 少なくとも、小規模特養等においては、この地域区分や大都市の特性を見込んでいただきたい。

(加藤委員)

 介護保険施設になると、おそらく人件費が半分ぐらいを占めるので、当然、地域差を加味した報酬制度は必要だ。

[「3定員別の報酬設定」について]

(中村委員)

 それぞれの業界代表の議論も必要だが、介護保険の本旨に立たなければ、この審議会自体が支離滅裂になる。各団体とも小は殺し、国民にとって介護保険を導入してよかったということにすべきではないか。
 定員別の報酬設定は、できるだけすべきでない。30人特養といったものでは設定せざるを得ないが、将来的には、介護報酬で経営が困難な施設整備は留め置くべきだ。
 実態調査についても、必ずしも都市部の物価が高いとは限らないが、都市部の単価が高くなったりしている場合があるので、より深く分析をしていただきたい。

(見坊委員)

 定員別・地域別の報酬設定、あるいは加算等いろいろな角度の議論があるが、利用する高齢者の1割負担に差が出てくるのか。

(神田次長)

 まず、施設入所では、家庭で負担しているのと同じ程度の食費額を負担していただくということになっており、法律上、地域差を設けるというようなことは書いていない。次に、介護費用の部分については、地域別の単価を設定し、地域によって加算があって高くなっているところは、一部負担も若干増える。

(田中委員)

 地域別というのは、例えば大都会は費用がかかる、というような程度にとどめるべきであって、旧来の社会福祉制度のように、市町村ごとに違うというのは、介護保険の本質に合わないのではないか。

(橋本委員)

 生活施設である福祉施設で定員を配慮しないとすれば、運営が楽になるのは、大きな施設であろう。ところが、暮らしの場である生活施設の質は、実は、小さければ小さいほどいい。規模の経済性ではなく、そこで暮らす人にとって居心地のいい暮らしの場ということを考えると、夜勤の問題等、大きなところと違い、十分配慮しないと小さな施設の運営ができなくなる。

(加藤委員)

 規模の大小によって報酬は変えるべきではない。病院にも老人保健施設にも規模の大小がある。それは、同じようにに扱わなければならないのではないか。

(橋本委員)

 どのくらいの入所期間があるかを、考慮しなければいけない。暮らしの場となる施設については、入所期間が長くなることを十分前提にした上での配慮が必要である。

[「4入院・入所期間に応じた報酬設定の考え方」について]

(山口委員)

 逓減制の問題については、老人保健施設でも2年前の診療報酬改定で導入されたが、非常に重度化、長期化したケースは、家庭へ復帰できないというケースが現実にある。介護保険制度にまでこうした逓減制を引きずるというのはいかがなものか。要介護度や再認定の制度も重視する必要がある。
 介護老人福祉施設についても、在宅へ帰って行くケースを視野に入れ、施設の報酬は要介護度で決めていくという考え方であるべきではないか。

(中村委員)

 特養は、逓減制が馴染まない性格のものであるが、介護保険では、絶対に在宅介護を促さなくてはならないので、加算で対応していく仕組みを設ければよいのではないか。

(高梨参考人)

 現物給付であり、長期になるに伴ってコストが逓減してくる、ということを考慮すれば、3施設とも逓減制を設けることでいいのではないか。定員別の問題についても、規模の拡大に伴い報酬単価が下がるという視点もあっても良い。

(見坊委員)

 要介護認定、認定の変更があるので、逓減制をなぜ持続するのか、理屈がよくわからない。現行の逓減制は、別の目的があって持ち込まれたように思われる。
 また、入所する場合は、要介護度だけではなく、当然、家族等との関係、住宅環境、あるいは生活条件、そうしたものが加味されて決まるのではないか。
 なお、療養型病床群、老健施設と特養は、よく一元化すると言われているが、将来はそうであるとしても、当分は、それぞれの特色を生かして運営していただくと、利用者が選択する場合の目安になる。

(野中委員)

 療養型病床群、老人保健施設、特別養護老人ホームは、出発点から違いがあり、同じように逓減制をすべて入れるということについては、抵抗せざるを得ない。特別養護老人ホームは、帰る場がほとんどない入所者の長期的な生活の場になる、ということを原則的に考えていただきたい。
 また、ほとんど忘れ去られている養護老人ホームの扱いも、明確にしていただきたい。施設によっては、特別養護と養護を併設しているところがあり、同じ施設の中に居ながら、一方は介護保険、一方は措置という形で区分されるのか。
 さらに、地域差の問題では、この頃は大都市のほうが生活必需品等は安く、周辺の過疎地域のほうが生活必需品、日常の食糧品等は高い。現況を十分見極めた上で、勘案をしていただきたい。

(堀江委員)

 報酬は、介護の程度、区分に従って決定されるという原則がある以上、なぜ入所期間に応じた逓減制という議論がそこに入り込むのか。理論的に整理をしていただく必要がある。

(石井委員)

 入所者のほとんどが、家のことばかり考えているので、当然帰さなければならないのだが、帰れない人がいる。むしろ、こうした人を帰すためには、家族と話したり、生活の環境を改善したりといった加算をもっと出す必要がある。それなのに、逓減制を、なぜ入れなければならないのか。

[「5必要な医療の評価」について]

(鈴木参考人)

 出来高部分を設けないという原則でいくべきだ。医療保険改革では、制度企画部会の方で診療報酬の問題が出ており、昨年の与党協や厚生省の案でも、慢性期については定額、急性期については出来高、というような方向で今議論されている。
 介護保険施設に入っている方は慢性期の方が非常に多いので、医療が必要であっても、包括が原則であるべきだ。なぜなら、費用の適正化の動機付けが働くような報酬が必要だからである。不必要な費用が発生しないような形での介護報酬というものを、是非お願いしたい。

(青柳委員)

 現行の医療保険制度下での療養型病床群の包括部分は、そのまま介護保険制度でも継続していくことになるが、急性期対応やQOL等々を考慮すると、リハビリテーションを積極的に提供していかなければならない。
 施設のターミナル医療についても、在宅におけるターミナル医療との整合性を考えながら、議論を深めていかなければならない。
 老人保健施設では、患者さんの重症化、長期化が進んでおり、一般内科的な治療ではなく専門科の治療を必要とする患者さんが増えてきている。
 特養については、実際に、どの程度、ドクターが医療管理を行っているか、あるいは実際どの程度医療保険からの給付を受けているか、そういう内容を是非今度の調査に加えていただきたい。
(山口委員)
 全国老人保健施設協会で行った調査では、老人保健施設でかなりの医療行為をやっているという結果が出ているので、調査を行う上で、是非参考にしていただきたい。
 老人保健施設ではリハビリスタッフが必置になっているが、リハビリテーションの充実は介護保険制度の目標の1つであり、介護費用の節減にもつながる。
 他の介護施設でもリハビリテーションを重視する必要があることから、やってもやらなくても同じとなる包括報酬の中に入れずに、別枠もしくは、特段の配慮をしていただきたい。
 介護が非常に重度化、長期化しているのはすべての施設で言えることであり、高齢者がさまざまな疾患を持ち、専門科の受診が必要になっているので、寝たきりをつくらない、予防という発想で、枠にとらわれない仕組みとしていただきたい。

(石井委員)

 特養では、嘱託医を原則的に置いているが、専門的治療を要する外来受診をするところが多くなっているため、通院の人員配置で苦しんでいる。そこで、これからもっと普及するかかりつけ医に自由に診ていただくことを提案したい。
 医療サービスの薄いところでは、施設が常勤医を抱えて地域医療も行う、ということができるような応用的な人件費にすべきだ。

(小島参考人)

 介護保険でカバーする医療行為と医療保険でカバーする医療行為を、はじめに仕分ける必要がある。その上で、介護保険では、基本的に、包括的な評価としていくべきだ。
 リハビリについては、状態が改善されたことに対する加算、評価の考え方と合わせて検討すべきだ。

(山崎参考人)

 特定疾病の中にかなり難病等の方たちが入っているが、これらの方については、介護報酬も、一部を出来高払いとすべきだ。
 ターミナルケアについては、療養型医療施設だけではなく、生活の場である老人福祉施設等においても必要な人員配置をすべきだ。
 包括報酬となると、施設が自前でやるのか、外部サービスを活用するのかについての議論が必要だ。

(中村委員)

 北海道や広島県を中心に、特養の医務室が診療所として認められている場合がある。特養は、医療が弱いのではなく、医師の需給関係で常勤医が少ないのであり、本来の姿ではない。他方、常勤医がいる特養では、常勤医がいなくなること、医療が後退することを心配している。
 リハビリテーションを行っている特養もたくさんあり、その中で当然、保険請求をしてリハビリテーションを行っているところもあるのだから、そういう実態も明らかにしていただきたい。

(中西委員)

 3つの施設の類型によって、ずいぶんサービスの中身が違っている。一番問題なのは、特養では指導管理料がほとんど使えないような制度設計になっていることである。旧来の制度は、もう一度洗い直しをすべきだ。

(加藤委員)

 療養型病床群、介護力強化病院で、急性増悪やターミナルの方を看ている。介護保険制度になっても、是非、同様に扱っていただきたい。
 また、要支援の人が急性増悪を起こした場合は、介護保険施設以外の医療施設に入院しなければならない。在宅支援として、こうした人が短期的な入院もできるように考えて欲しい。

[「6現在の各種加算の取り扱い」について]

(田中委員)

 痴呆性老人等介護加算は、要介護度基準ができる以上意味がないはずである。民間施設給与等改善費も、基本的な報酬に包含すべきだ。むしろ、入所時とか入院時の加算があり得ると思う。
(高梨参考人)
 各種の加算は、できるだけ簡素化すべきだ。

[「7施設整備費との関係」について]

(中村委員)

 高額の施設整備費補助が行われている事業者といない事業者による単価差がどう出てくるかによって、旧来の施設整備費の必要性も決まってくる。
 また、説明資料の記述とは逆に、介護報酬の議論が、社会福祉構造改革や社会福祉法人のあり方に影響を与えていくのではないか。

(高梨参考人)

 介護老人保健施設については、老人保健福祉部会であり方を検討すべきだが、特養と同じような施設整備費との関係の問題が出てくると思う。

(石井委員)

 社会福祉法人の財産は全ては国に帰属するので、減価償却は、今は許されてない。減価償却を導入するとして、どこの部分でどれだけやるかという問題がある。また、税の問題等も含めて、総合的に判断をしてもらいたい。

[「8要介護度の改善の誘因の付け方」について]

(田中委員)

 そもそも成功報酬があったほうがいいか、ないほうがいいかという議論と、成功報酬を入れるとしたらどういう方法があるかという議論とは別に分けて考えたい。
 成功報酬というのはとても難しく、成功報酬に伴うデメリットも多い。成功報酬があることによって、関係者にさまざまな動機付けを与え、必ずしもプラスになるとは限らない。それに、専門職業人である医師、看護婦、薬剤師、あるいは介護職の方々が、成功報酬がないと仕事をしないということではないと思う。

(見坊委員)

 要介護度が改善されたら成功報酬がある、というのは誤解を招く表現である。自立する意欲を、時には専門家から引き出してもらいながら、本人の努力によって病気を克服したり、あるいは要介護の状況を改善する、ということであって、専門家と、介護を要する人との二人三脚で成果を上げるものと理解している。
 施設の場合は、安定的運営を考慮すると、要介護度が改善したから突然費用が減るというのではなく、一定期間、必要ならば、そういう報酬が支払われるべきである。在宅サービスでも、場合によってはそういう視点を持つべきだが、成功したかどうかということで一方的に報酬を変えるというのはいかがなものか。慎重にご検討いただきたい。
(橋本委員)
 医師が早く病気をしっかり治したいと思うのと同じように、介護職もいい介護をしたいと思っているので、頑張ったから専門職に飴玉をあげる、という発想は本当はおかしい。
 ただ、リハビリテーションは、やったかやらないかではなくて、どれだけ機能が改善されたかということを関連させて考えるべきではないだろうか。そのためには、リハビリという概念をきちんと整理しておく必要がある。

(鈴木参考人)

 商品でもサービスでも、品質を決める、あるいは判断するのは消費者である。限られた財源の中で、適正なコストでよりよいサービスをしていることを、入所者が判断して、いい施設へ利用者が行くというのが基本であり、改善の動機付けを与えるというのはおかしい。
 評価をするとすれば、施設ごとの評価を是非早くやっていただきたい。そして、その情報開示をしていただき、利用者が選択し判断できるようお願いしたい。

(高梨参考人)

 改善を報酬の面で評価する、という方法もあるが、それ以外の方法もあるのかどうか。施行日までにきっちり回答を出さなければならない課題なのか、あるいは、もっと運営をしながら考えていける課題なのかどうか。例えばドイツ等ではどのようににしているのかなど、少し幅広に考えていく課題ではないか。

(石井委員)

 成功報酬を導入することについては、我々の中でも非常に期待をしている部分である。サービスの効果が上がり、帰宅する人が多くなればなるほど、時間単位で空きベッドが多くなる。その分も、仮に入所していたと仮定して評価をいただける仕組みがある方が、励みになる面がある。

(星野部会長)

 本日は、これで閉会としたい。


 問い合わせ先 厚生省老人保健福祉局企画課
    電 話 (直)03-3591-0954
 厚生省老人保健福祉局介護保険制度施行準備室
    電 話 (直)03-3595-2890


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