98/06/30 第22回 年金審議会全員懇談会議事録 第22回 年金審議会全員懇談会議事録 1.日 時 平成10年6月30日(火) 14:00〜16:47 場 所: 厚生省特別第1会議室 1.開会の辞 2.委員出席状況報告 3.議事 ・年金積立金の運用について  ・次期財政再計算の経済的前提等について  ・国民年金事務の改善について 4.閉会の辞 出席委員  京 極 会 長  八 木 委 員   岡 崎 委 員   木 原 委 員   国 広 委 員  久保田 委 員   神 代 委 員   都 村 委 員   富 田 委 員  桝 本 委 員   目 黒 委 員   山 田 委 員   山 根 委 員  吉 原 委 員   若 杉 委 員   渡 邊 委 員   貝 塚 委 員  船 後 委 員 ○会長  ただいまから第22回年金審議会全員懇談会を開催いたします。 ○会長  委員の出席状況について、事務局からご報告をお願いします。 ○事務局  本日は砂子田委員、坂巻委員、高山委員、福岡委員がご欠席でございます。貝塚委員 は少し遅れてお見えになるというご連絡がございます。以上でございます。 ○会長  それでは、次期年金制度改正に向けて、審議に入ります。  本日は、まず年金積立金の運用について審議を行い、次に次期財政再計算の経済的前 提などについて審議を行い、最後に国民年金事務の改善についてご報告を受けます。審 議事項が3つございます。  まず、年金積立金の運用について審議を行います。事務局から資料の説明をお願いし ます。 ○事務局  資料2−1に基づきまして、説明をさせていただきます。  まず、資料の1ページでありますけれども、厚生年金・国民年金の積立金につきまし ては、資金運用部資金法によりまして、現在、全額を資金運用部に預託することが義務 づけられております。  平成8年度の数値で現状を申し上げますと、2つの積立金の合計額は126兆円、資 金運用部からの預託の運用利回りですけれども、8年度が厚生年金で4.99%、国民年 金で4.56%となっております。  新規の預託金利が右にありますように、8年度で平均的に3.2%、現時点では1.8% の預託金利になっておりますので、資金運用部からの預託の運用利回りは今後低下する ことが予想されるところでございます。  次に2ページでございますが、2ページは資金運用部の預託金利の推移を見たもので ございます。  預託金利は10年もの国債の表面利回りに連動いたしておりまして、表面発行利率に 0.2%上乗せをした金利が設定されております。一番下のところにございますように、 現在は国債の表面利回りが1.6%、0.2%上乗せした1.8%の預託金利になってござい ます。  それから、次の3ページでございますが、資金運用部に預託されました年金積立金が ストックベースでどうなっているかを平成8年度末で見たものでございます。  資金運用部に全額を預託されておりますが、まず左端にありますように、年金財政等 からの要請に基づきまして、年金福祉事業団が市場運用を行っております。これが24 兆円。次に、保険料納付者への還元の要請に基づきまして、年金福祉事業団で融資事業 等が行われております。これが10兆円。 それから、社会資本整備による福祉還元の要請ということで、例えば社会福祉施設等 の融資、あるいは地方公共団体の病院、廃棄物処理施設等の整備に関する融資の特別地 方債、その他国立病院の整備費等々がここであります。  以上、黒枠で囲ったものが広い意味での還元融資ということになるわけでありますが 全体で45.5兆円、年金積立金全体の36.2%を占めているものでございます。  残余が、一番右にあるその他の分野への活用ということで80.5兆円、60%以上が その他の分野に活用されております。国鉄清算事業団とか、もろもろの特殊法人に貸付 等が行われているものでございます。こうした財政投融資につきましては、その仕組み とか現状につきまして、非効率になっているとか、肥大化しているとか、いろいろな問 題が提起されているところでございます。  次に、4ページでございますが、4ページは特殊法人改革の一環として行われました 年金福祉事業団に関する閣議決定でございます。  昨年6月に行われておりまして、年金福祉事業団につきましては、「平成11年に行 われる年金の財政再計算に合わせ、年金資金の運用の新たな在り方につき結論を得て、 廃止する」と定められたところでございます。  具体的な業務につきまして、まず、資金運用業務については、資金運用部との関係を 含め、担当機関のあり方を長期的かつ専門的見地に立って、別途検討するとされており ます。これにつきましては、後ほどご説明申し上げます。  2番目に、大規模保養基地業務からは撤退ということでございます。これにつきまし ては、現在、関係都道府県等、引き受けていただけないか、その可能性につきまして、 相談させていただいているところでございます。  現時点の状況を申し上げますと、地方公共団体の方も行革等が強く求められていると ころでございまして、国の責任において存続してほしいというご意見をいただいており まして、まだ都道府県の了解は得られていないところでございます。  引き続き、民間活用も含めまして、都道府県に引き受けていただけるよう努力をして いきたいと思っております。引き受け手がない場合には、営業自体をやめるということ もやむを得ないのではないかということで、現在、考えているところでございます。  3番目の被保険者向け融資業務については、適切な経過措置を講じた上、撤退すると されています。これにつきましては、関連の論議を追って、これまでの経過も含めまし てご紹介したいと思います。  次に、5ページでございます。  5ページは、これまで公的年金におきますいわゆる還元融資につきまして、どんな議 論がなされてきたか、あるいはどういう考え方があったのかを、過去の審議会答申など を通して整理したものでございます。  まず、ちょっと古いですけれども、昭和18年に厚生年金の前身に当たる労働者年金 保険が創設されたわけですが、その際、積立金運用のあり方につきまして、厚生大臣と 大蔵大臣でやりとりがなされております。その段階におきまして、積立金の運用は「公 共団体等において施行する労働者及びその家族等の福祉施設に対する融通または国債等 に対する運用」ということでございまして、カギで囲った部分におきまして、還元融資 の原型のような考え方が示されていると思います。  それから、昭和26年、これも古い答申になりますが、社会保障制度審議会勧告であ りますが、2行目ですけれども、「積立金は言うまでもなく、労使の拠出にかかわるも のであるが、その資金が大蔵省預金部に預入され、その運用についてこれを拠出したも のの意志が完全に無視されている。この点を是正し、これを被保険者の福祉のため優先 的に還元利用せしめる必要がある。また社会保険に関連する諸施設の拡充その他のため にこれを有効に利用せしめるがごとき途を拓くべきである」ということで、最後の3行 あたりのところで還元融資の考え方が述べられているところでございます。  それから、国民年金創設に関連いたしまして、昭和34年度社会保障制度審議会の答 申でありますが、上から4行目「積立金の運用についても、被保険者の要望にこたえて 社会福祉等その利益に還元される制度を確立することが特に肝要であろう」ということ で、還元融資の必要性を指摘しているところでございます。  それから、昭和35年度、資金運用審議会の建議でありますが、この中でも国民年金 積立金の運用あるいは厚生年金に関連いたしまして、そこに書いてあるような趣旨の指 摘がなされているところでございます。  それから、国民年金の創設を提言いたしました国民年金審議会の答申でありますが、 国民年金積立金は、「できる限り多額の運用収益をあげなければならない。それと同時 に、その資金を被保険者等の生活の安定に寄与するような対象に運用する必要がある」 として、年金積立金の運用を、まず社会福祉の向上、生活環境の改善その他保険料の拠 出者等の生活の安定に直接寄与するような対象に運用する「福祉運用」、それから可及 的長期の約定期間及び可及的有利な率をもって運用する「有利運用」の2種類に分け、 この福祉運用と有利運用の2つがあるという考え方を提起しているところでございます  それから、最近の年金審議会の意見書でありますが、前回改正の際の年金審議会の意 見書の中でも、「年金資金の被保険者還元融資については、被保険者や年金受給者の ニーズに対応した融資制度とするため、要介護者向けの住宅新築・改造や介護機器、教 育資金等に対する融資の創設を図るべき」というふうに、提言をお出していただいてい るところでございます。その他、特に、そこに挙げておりませんが、年金審では、累次 にわたりまして、還元融資の必要性あるいは充実の必要性を指摘しているところでござ います。  なお、ここにも書いております還元融資の必要性のみならず自主運用、有利運用の拡 充の必要性についても、当然のことながら、いろいろな局面でご指摘でいただいている ところでございます。  こういうふうに、公的年金の創設以来、国民生活分野の向上を対象とした運用の必要 性ということが指摘されていると思いますけれども、こうした考え方につきまして、今 後の公的年金の積立金運用のあり方として否定されるべきかどうかという点が一つのポ イントであろうと思います。  次に、7ページですけれども、これまでの年金審議会におきまして、積立金の活用を めぐりましていろいろなされました議論の論点を整理したものでございます。  まず、「住宅融資等の被保険者の福祉向上に直接寄与する分野のために年金積立金を 運用することについてどう考えるか」ということでございます。  これについては、閣議決定がなされておりますので、それとの関連も頭に置く必要が あろうかと思います。  必要とする意見は、主に3つの意見に集約できると思いますが、1つは、年金制度は 強制的な保険料拠出の一方で、受給まで長期間を要することから、現役の被保険者の理 解が不可欠。こうした観点からは、現役被保険者の福祉向上、生活支援に直接寄与する ような積立金運用という仕組みが必要。  2つ目が、住宅融資等は現実に被保険者のニーズが存在。  3つ目ですけれども、廃止した場合、共済各制度との間に官民格差を生じる。  それから、不要とする意見ですけれども、政策的に金利設定がなされたり、景気対策 のために事業が肥大化する可能性があり、積立金の効率的な運用に反する。  それから、低金利による融資事業は、融資を受ける一部の被保険者のみを利する。  民業圧迫の恐れがある。  共済各制度においても、見直しを図るべき。  以上のような意見があったわけですが、それぞれの意見につきまして、関連の資料で 若干補足したいと思います。  資料の2−2の2ページを開けていただきたいと思います。  被保険者住宅貸付の現状でありますが、厚生年金の場合ですと520万〜1,320万 までの貸付が行われているわけでありまして、現在の金利は3.43%の固定金利で、 35年償還ということでございます。なお財投金利は1.8%でございます。  どの程度の方が借りているかですが、平成8年の数字で見ますと、件数が23万件、 金額で約2兆円ということになっております。  次に3ページを見ていただきたいと思うんですが、どういう方が利用しているかとい うところでありますが、平成8年度で見ますと、借りている方は20代、30代が中心 で、一次取得者で60%を超えておりますが、平均年齢で37.2歳でございます。  下の絵を見ていただきたいと思いますが、平均的なケースは3,908万円の家を建て る場合に、住宅金融公庫から1,849万円、民間から1,028万円、年金住宅融資 1,031万ということで、若い世代にとって年金住宅融資がかなりのシェアを占めてい るということが言えると思います。  それから、4ページでありますが、住宅貸付について、ややもすれば経済対策とか、 そういうものに活用されるという指摘がなされてきたわけですが、その表を見ていただ きますように、類似の経済対策の際に、予算増額などが行われておりますので、景気対 策として活用されたという批判は一部当たっているのではないかと思います。  それから、次に5ページを見ていただきたいと思います。  5ページは住宅融資の金利にさまざまな問題があるということを示したものでありま す。まず、逆ざやがかつて存在したということでございます。  線がいっぱいあってわかりづらいんですが、太い実線が実際の貸出金利、それから細 い実線が資金運用部からの借入金利でございます。その差が逆ざやということで、補給 金が発生していたということでございます。  それから、市場での運用に比べて、低利の運用になっているということでありますが 何と比較するかは難しいんですけれども、一応、一番上の点線ですが、これは長プラの 流れでやっていますが、長プラと比較しまして低い金利で貸し出されておりますので、 高利回りの運用とは言えないという批判が当たるんだろうと思います。  それから、若干補足しておきますと、かつて逆ざやがあったわけですけれども、これ につきましては、実際の金利が7%、8%という大変高い時代であったということとか 黒の太い点線がありますように、厚生年金全体の運用利回りもそう悪くはなかったとい う背景の中では許容されたのではないか、という議論もあるのではないかと思います。  それから、現在でありますが、平成7年以降の状況を右端の隅を見ていただきたいん でずか、現在は逆ざやも解消しておりますし、長プラよりも高いという状況になってい ます。これが一時的なものかどうかという評価もあると思います。いずれにいたしまし ても、こういう問題を見て、今後、住宅貸付を運用の一環としても位置づけていくこと ができるかどうかが議論のポイントであろうと思います。  次、6ページであります。住宅貸付に関する利子補給金の推移ということでございま す。逆ざやがかつてあったということから、補給金が相当程度に上っているということ でございます。  これまでの累積でありますが、一番下にありますように、2,275億円の補給金が出 されているということでございます。逆ざやは現在解消しておりますので、補給金は今 後は減少すると見込まれるところでございます。  それから、12ページを見ていただきたいと思います。  12ページは各共済制度とのバランスの議論があるということでございます。これは 地方公務員、共済組合等の例を見たものでございます。地方公務員組合制度におきまし ては、共済組合の長期経理の中で積立金の運用がなされておりますが、それとは別に福 祉経理がありまして、そこで各種貸付事業が行われているところでございます。  地方公務員等共済組合法におきましては、第1条第1項の中で、相互共済を目的とす る共済組合の福祉事業について、目的規定の中にその必要性を規定しているとともに、 第25条にございますように、「組合の業務上の余裕金は、政令に定めるところにより 事業の目的及び資金の性質に応じ、安全かつ効率的な方法により、かつ組合員の福祉の 増進または地方公共団体の行政目的の実現に資するよう運用しなければならない」と記 されているところでございます。 13ページでありますが、同じように、地共済法の中で福祉事業を法律で具体的な中 身を明記しているところでございます。実際の貸付内容もその表のとおりでございます これは地共済法に限らず、他の共済制度も同様の制度的な位置づけがなされております 14ページでございますが、各共済制度において、そういう被保険者の貸付がどのく らいのシェアを占めているかを見たものでありますが、国共済で17.6%、地共済で 16.1%というシェアになっているところでございます。  こういうように、各共済との差異とか官民格差というものを今後どう考えていくかは 一つの議論のポイントであろうと思います。  それから、資料の2−1に返っていただきたいと思います。  積立金に関するもう一つの論点が少子高齢社会に対応した社会保障基盤整備のために 年金積立金を運用することをどう考えるかであります。これもこれまでの審議会の意見 をピックアップしたものでございます。  まず、必要とする意見でありますが、介護支援、子育て支援等の社会保障基盤の整備 充実は高齢期の介護費用等の支出を減らすことにより、年金の実質価値を高める等々の 理由から、積立金の運用にふさわしいという論点が提起されております。  また、積立金を社会政策として将来性のために活用することは公的年金の意義につい て世代間の合意形成を図る上で有効という指摘がなされたところであります。 不要とする意見は、政策的に金利設定がなされたり、景気対策のために事業が肥大化 する可能性などがあり、積立金の効率的な運用に反する。  それから、資金運用審議会懇談会の意見書に書かれているところでありますが、自主 運用がなされて、仮に特殊法人等へ市場を通さない形で資金供給が行われる場合には、 第2、第3の財投になり、財投改革の趣旨に反するというご意見もございます。  それから、年金制度というのは金銭給付に純化すべきであって、社会資本整備等の社 会政策は税で実行すべきだというご意見が出たところでございます。  それから、次の9ページでありますけれども、年金積立金の自主運用に至るまでの経 緯をまとめたものでございます。  昭和17年に労働者年金保険制度が創設されたわけですが、その際にも、年金積立金 をどうするかという議論があり、国家資金と分離して、独立の管理運用をなすべきだと いう意見があったわけですけれども、結論としては大蔵省の預金部の預託という形で制 度がスタートしたわけでございます。  その後、国民年金制度創設の際にも同様な議論がございましたが、結論といたしまし ては、資金運用部において資金区分別の使途別分類を設けて、年金資金の使途を明確に するという形で決着がついたところでございます。  その後、昭和60年代になりまして、金利自由化とか、年金財政強化の必要性から、 市場運用の必要性が出てまいりまして、資金確保事業とか年金財源強化事業とか、現在 の年金福祉事業団が行っております市場運用事業がスタートしたところでございます。  その後も年金財政強化の観点から、厚生省としましては一貫して、自主運用・有利運 用の必要性を大蔵省に対して要求してきたところでありますが、平成9年になりまして 行革とか財投改革あるいは金融構造改革の流れの中で、年金福祉事業団の見直しの閣議 決定がなされたり、年金自主運用検討会、資金運用審議会懇談会等におきまして、自主 運用への動きが具体化したところでございます。  最後に、平成10年に中央省庁等改革基本法の中で、財務省の編成方針の中において 年金積立金の預託を廃止するということが法律に明記されたところでございます。  次、10ページが自主運用検討会報告書の要点で預託義務の廃止、自主運営の移行が 指摘されたところでございます。  11ページが資金運用審議会懇談会とりまとめの要点ということで、ここにおきまし ても財投改革と年金の自主運用の方向が提起されたところでございます。  最後が、中央省庁等改革基本法でありますが、その中でも第20条の中で、財務省の 編成方針の中で、預託の廃止が法律上明記されたということでございます。  以上で私の説明を終わりまして、引き続き、事務局からご説明申し上げます。 ○事務局  お手元の資料の2−3、2−4と、それからちょっと厚くなりますが、後ほどごらん いただければと思いますが、年金積立金の運用の基本方針に関する研究会の提出資料と いうもので少しご説明させていただきます。  2−3の4ページでございますが、先ほど事務局からお話がありましたが、新しい年 金積立金の運用の仕組み、これは昨年9月1日に年金自主運用検討会から報告があって 9月11日に年金審議会にご報告した基本的なスキームでございます。  そこでは、ご案内のように、これまで財政投融資制度、資金運用部から借りてきて運 用しているという仕組みを改めて、直接、保険者が運用のためにつくる運用管理機関に 資金を流す。そこで、運用してもらうということですが、ただこの際、大きな議論にな りましたのは、一体どうやって運用するんだ、あるいはどうやってリスク管理をするん だと。その大きな基本の方針がどうなのかということでございますが、それは真ん中の 枠の中に、「運用の基本方針の策定」ということがございますが、将来は保険者であり ます厚生大臣が制度設計と一体となってやると。ただ、運用の基本方針を決めるに当た っては、年金審議会と連携して、今後ご議論があるかと思いますが、運用委員会にお決 めいただくというスキームをご説明したわけでございます。  ただ、このコアになります運用の基本方針が非常に重要だということで、お手元の資 料の1ページでございますが、これは1月9日のこの当審議会で、それではそういうこ とを研究するということでご了解いただいた運用の基本方針に関する研究会でございま す。  メンバーといたしましては、次のページにありますが、当時は座長だけ報告したんで すが、10名の方々、特に金融の専門家、ファイナンスの専門家あるいは当審議会から はN委員、A委員にご参加いただいて、次のページにございますが、この1月から6月 22日にかけて精力的にご審議いただき、本日付で事務局に提出された資料が、資料No 2−4の『研究会報告書』というものでございます。  正確を期すために、ポイントをこの報告書に沿って少しご説明しますが、目次にござ いますように、3つの柱に分かれております。基本的な考え方、それから具体的な政策 的資産構成をどう策定するか。それから、具体的運用に当たっての留意事項でございま すが、1ページから簡単にその中身だけかいつまんで読み上げさせていただきます。ま ず、目的でございますが、2行目でございますけれども、「その運用収入によって、将 来の保険料負担の増加を抑制し、年金制度財政運営の安定化に資すること」。それから 下から2行目の右の方ですが、「その年金積立金の運用は専ら保険料拠出者の利益のた めに運用されなければならない」。  ただ、いろいろな制約条件があるわけですが、(2)の2行目、中ほどですけれども、 「年金加入者及び受給者が将来にわたり年金給付を確実に受け取ることができるよう、 安全確実に運用を行い、年金財政の安定を実現することが最優先の課題である」として おります。  実際の財政運営をどうするか、あるいは実際の制約条件をどう考えるかということで すが、まずアでございますが、「安定的財政運営の確保」ということで、「保険料拠出 者の保険料負担の軽減のためには、ある程度の運用リスクを負担することが必要である が、安定的な年金財政運営のためには、運用結果によって最終保険料率の大きな変動に つながることがないようにすることが重要である」としております。そのために、「下 方変動のリスクを管理し、最終保険料率の引き上げの可能性をできるだけ小さく抑制す る」としております。  それから、2つ目の制約条件としては、次のページのイですが、年金給付が物価・賃 金にスライドして上昇しますので、これを最低限とする実質的な運用収益の確保を目指 す、そういう運用です。  それから、ウでございますが、ご案内のように、年金給付のためには年に6回キャッ シュを用意しなくてはいけない。そのキャッシュの動向を見るということで、上から3 行目の右の方ですが、「将来は運用収益等を年金給付に充てていくことが予想されるた め、これに見合うキャッシュフローを確保する」。  それから、最後ですが、市場に対する影響ということで、下から3行目からですが、 「年金積立金の市場運用額は徐々に増加し、将来大きな額になる可能性があるため、市 場規模を考慮するとともに、その運用によって市場の価格形成や民間の投資行動を歪め ないように配慮する」ということでございます。  以上のような制約条件と、それではどういう資産を活用して運用するかということで すが、飛びまして3ページでございます。  具体的な政策的資産構成の中身でございますが、資産については中ほどの(2)の 1)で すが、「分散投資の必要性」ということで、2行目からですが、「積立金の規模、各国 市場の循環的変動等を考慮し、特定の国、資産、市場への集中を避け、国際的視野に立 った分散投資を基本とする。ただし、各国の合理的な投資家が自国市場への投資割合を 大きくしていること(ホームカントリー・バイアス)等を考慮する」、こういう基本的 な考え方のもとに、4ページ以降、具体的な資産についての注意事項がございます。  ア〜エまであるわけですが、まず、国内債券ですが、下から3行目ですが、「国内債 券はいわゆる安全資産として重要な運用対象である。そのため安全性が要求される運用 では、国内債券が中心となる」ということです。  株式については2行目ですが、「長期的観点から組み入れを行う」。  外国債券・外国株式については、「各国の債券・株式等に分散投資することの効果は 大きく、また巨額の資金投入に伴う国内市場への影響を小さくすることができる」。最 後の2行ですが、「ただし、為替変動リスク及び一部の国々における市場や制度の未整 備、政治的不安定や突然の政策変更等のリスクについては慎重に対応する」ということ が書いてあります。  具体的な政策的資産構成の割合については、後ほど少しご説明しますが、その前に、 幾つか具体的運用に当たっての留意事項で問題点になったところが、6ページにござい ます。  (3)の「個別銘柄株の選択や議決権の行使の制限」ということで、運用機関を通じてで すが、国が株式運用に出る場合については、個別銘柄の選択は、企業経営や他の投資家 に与える影響等を考慮して、国が直接行わないこととする」。  後段は議決権の行使について論じたところですが、下から5行目ほどの右側から、議 決権の行使につきましては、「国が民間企業の経営を支配する、あるいはこれに影響を 与えようとしているといった懸念を生じさせる恐れがあるので、議決権については国が 直接行うのではなく、運用を委託した民間運用機関の判断に委ねることとする」。  (7)ですが、デリバティブスについてご議論もしていただきましたが、「実際の運用に 当たっては、デリバティブスの活用については原資産の価格変動のヘッジや代替、為替 変動のヘッジ等を目的とし、投機的な運用にならないよう、厳格かつ適切な制約を設定 する。」  こういう留意事項のもとに、実際にどういった形で資産構成割合をつくるか、別紙2 の8ページでございますが、基本的には資産と負債の総合分析、いわゆるALM分析を して、最終的に資産構成割合を決め、その資産構成割合に基づく資産が将来どのように 変動するかという、確率論的な検討を行って、保険料拠出者にお示し、それから選んで いただこうという発想でございます。  負債構造の把握につきましては、(1)でございますが、当審議会で議論されます年金制 度設計の検討に基づいて、次のような点をまず確認をすると。  1つは、将来どのくらいの予定される積立金になるかということ。それから、もう1 つは毎年どのくらいのキャッシュフローが必要になるかということ。この2点を押さえ るということでございます。  資産側の検討につきましては、2の(1)でございますが、先ほどご紹介しました各種資 産を将来の収益率、それからリスク──ここではビルディング・ブロック方式と言って おりますが、負債サイドの経済の見通し等に合わせながら見通していくと。これはきょ うご紹介いたしませんが、分厚い本の148ページ以降、ビルディング・ブロック方式 の詳細を記述いたしております。  それから、収益のほかにリスクを計測するわけですが、リスクにつきましては、丸の 2つ目ですが、「過去の長期の実績の使用」ということで、25年間の実績を踏まえて リスクや相関係数を計測する。こういう手法で個別資産のリスク・リターンを計測して 資産を組み合わせるということでございます。  ただ、組み合わせに当たっては、先ほどご紹介いたしましたように、将来の現金収入 をきちんと確保するとか、(2)のイでございますが、自国資産への投資を多くとする、こ ういったホームカントリー・バイヤス等を考慮する。  そういった制約のもとで、有効フロンティアを導出する。これは厚い資料の350 ページに実際に線を引いたグラフが出ていますので、ごらんいただければと思います。 一定の手順で想定したリスクとかリターンのもとで組み合わせを書くと、下のグラフの ような線が引かれます。これには無数の資産構成があるわけですが、この無数を相手に してもしようがありませんので、非常に慨然性が高い、あるいは基本理念でご紹介され た安全確実、それから国内債券だけの運用と比較する等々の判断から、幾つかをとって シミュレーションを行う。  ここでは、II、III、IVの比較的低位のリスクのものについて3ケースをとって、後 ほどご紹介しますが、シミュレーションを行っております。  9ページですが、シミュレーションをどうするかというと、一定の資産構成のもとに 将来どのくらいブレが生じるか。そんなに詳しくはご紹介しませんが、乱数を発生させ まして分布を見ると。その分布を見ながら、予定する保険料率とか予定する積立金の間 のブレをご紹介して選んでいただく、こういう手法にしたらどうかということでござい ます。  話だけではなかなかすまないということで、12ページ以下、4つの資産構成につい て具体的にシミュレーションをしたというものをご紹介いたしております。  12ページは、資産構成Iから始まるわけですが、比較的ローリスク・ローリターンの ものから、資産構成割合IIIのハイリスク・ハイリターンまで、それからご参考のためと いうことで、IVに全額債券運用した場合についてリスク・リターンあるいは将来の予定 する積立金の額あるいは保険料率からの乖離というものをご紹介しております。  ここの前提は、簡単にご紹介しますと、10ページ、従来の財政再計算の想定をもと に、経済基礎率だけ変えて現実的になるようにしてシミュレーションしております。具 体的には、10ページの1の 2)にありますように、物価上昇率1%、標準報酬上昇率を 2.5%、それから資産についてはそれと合わせるように、2の 1)ですか、実質経済成長 率1.5%、物価上昇率1%と想定して、11ページにありますような各種資産のリター ンとリスク、相関係数を出した上での資産構成というふうになっているわけであります  恐縮ですが、12ページにお戻りいただきますと、どういうふうに見るかというだけ ご紹介したいと思いますが、12ページのIの資産構成割合は、長期にわたる期待収益が 4.2%、リスクが5%、そのときの資産構成割合はどうかというと、国内債券が8割、 株式5%、外国債券、外国株式、短期資産がそれぞれ5%、5%、5%となっている。  資産構成割合IIに行くに従って、いわゆるリスク性資産である株式とか、グローバル 資産がふえていく、こういったことになるわけであります。  16ページに3つのケースを比較した表が一表で掲げてございます。  見方をご紹介いたしますと、今申し上げましたように、Iの資産は4.2%のリターンで リスクが5.5%、それからシャープの測度というのは、1リスク当たりの超過収益です が、こういうものを計測する。その下に資産構成割合がある。  そういうもので運用すると、下の箱の一番上の表ですが、運用の結果ということで、 資産額の分布というものが載っております。  例えば、Iの資産であれば、平均的には2024年くらいですが、146兆円になるだ ろう。ハイリスク・ハイリターンになればなるほど、166兆円とか186兆円になる  ただ、上下のブレを見ていただきますと、ローリスク・ローリターンの方は、52兆 から268兆、ハイリスク・ハイリターンは53兆から366兆の範囲となる。リスク が大きくなるにつれ、中心値も高くなりますが、非常に分布が広くなるわけです。  上の方の資産構成の下に財政再計算上の積立金の予定がある。予定する積立金の額は 予定利率を期待収益率等で見た場合と、予定利率を4%と置いた場合とでは異なるが、 こういった将来の積立金の額と、今私が申し上げました実際シミュレーションをして運 用した場合の積立金の額や、それでもたらされる保険料率の分布というものを詳細に調 べて、どういったリスクのとり方がいいのかというものをお決めいただこうというわけ です。  例えば、最終保険料率の分布、下の方の箱の2番目ですけれども、実際の運用をする と、予定利回りが期待収益率の場合には、平均的には黒いところの保険料率になります が、上下にだんだんブレる可能性があると。上下のブレの大きさの可能性はリスク・リ ターンが大きくなればなるほど幅が広がる、こういう見方をするわけです。  もう少しそれを計数的に引き出したのは、下から3つ目の箱です。特定の確率で引き 上げることが必要となる保険料率の最低額、いわゆるバリューアットリスクという統計 的な処理で言われているわけですが、例えばIの予定利率を期待収益率と置いた場合は 25%の確率で0.6%の引き上げが生ずる可能性がある。IIやIIIのケースでは、0.8% 1.1%それぞれ引き上げる可能性が生じる。こういう計数をごらんいただきながら、そ れから今後決められるだろう財政再計算上の予定利回りと比較しながらご選択いただく そういう手順を報告書は示してあるわけであります。  全額債券運用につきましては、その前のページにあります。予定利回り4%と標準偏 差5.5%ということで、先ほどごらんいただいた有効フロンティア上にはないというこ とで、劣位の資産でありますけれども、一応計算はこういうふうにしてあるということ であります。  以上が、研究会報告のかいつまんだ内容でございます。  最後に、ちょっとお手元に1枚だけの「委員限り」とあります。これは、ただいまご 説明いたしました研究会とは関係ないんですが、年金福祉事業団の運用事業につきまし ては、今週、生命保険会社の社員総大会がありまして、決算が出るということで、9年 度の事業運営の状況が公表されます。次回の審議会にはもう既に新聞発表されていると いうことで、速報値だけご紹介いたしますと、一番右ですが、9年度でございますけれ ども、上から4つ目で、総合収益率7.06%となっています。国内株式市場等が悪かっ たわけですが、分散投資の効果もあって、7.06%の収益を上げた。  その2つ下ですが、財投から借り入れてやっているわけですが、財投の金利が5.0% 差し引き超過収益が2.03%ということで、その下で4,600億円ほどの超過収益があ ったということです。昨年度末、1兆3,000億ほどの時価ベースの赤字があったわけ ですが、これが8,000億強に減った。また年度末の評価益が6,000億円ということ で、今回はかなりふえてきているということでございます。 以上、ご紹介でした。 ○会長  ありがとうございました。  ただいまご説明のありました年金積立金の運用問題につきまして、ご質問、ご意見な ど、どなたからでもお願いします。 ○A委員  私とN委員が当審議会の委員の中から、この研究会に保険料拠出者の立場から加えて いただきました。ちょっと感想を含めてご報告めいたことを少し申し上げたいと思いま す。  まず、非常に感想的なことを言いますと、お集まりの皆様方は、N委員と私を除きま すと、投資理論のご専門家あるいは投資実務のご専門の方々でございまして、極めてハ イブローな議論や、あるいは極めて市場密着した実務的な議論が行われた。  N委員は経営者のお立場ですから、そういう世界に私よりは近いところにいらしたか もしれませんが、それでもいつも素人だとおっしゃっていて、私はN委員が素人であれ ば、ほとんどガキではないかという感じで、ときどきいるのが苦痛でございました (笑)。  そういう意味で、現代投資理論と言われるものを駆使した議論が行われたわけでござ います。それの今回の研究会の議論が持っていた位置と申しますのは、先ほど事務局か らご報告があった資料ナンバー2の1に即して言えば、3ページのところに「年金積立 金還元融資事業の仕組み」というふうなものがありますが、この3ページの太枠でくく られたところの左側「市場運用事業」、現状24兆と言われている、このマーケットで の運用に当たっての、今後、預託義務が廃止されて、自主運用の世界に移っていくとき の、まさに運用自体についての基本的な問題点の整理ということが位置づけであったろ うというふうに思います。  その中で、私や、これはN委員ともかなり重なっていると思いますが、支払い側とい いますか、保険料の拠出側から関心を持った点について幾つか申し上げたいと思います 1つは、私どもが月々拠出している保険料によって構成された積立金でございますので これに関してはぜひとも大切に扱っていただきたい。この点については、研究会報告の 冒頭で言われておりますように、その運用の目的に即して、「年金積立金は年金給付に 充てるために強制徴収した保険料の集積であり、その運用収入の如何によって将来の保 険料負担が影響を受けることから、年金積立金は専ら保険料拠出への利益のために運用 されなければならない」ということで、その立場を確認していただいたところでござい ます。  その上で、まず、1つは、先ほど言いましたように、これは積立金全体の運用の中で のマーケットにおける運用であるということが確認されておりますが、そこの中で、特 に大事なのは、この報告書の1ページ目の真ん中よりも下、「ア・安定的な財政運営の 確保」というところでございます。この積立金の運用によって、将来世代の負担を軽減 するという目的が冒頭掲げられているわけですけれども、それを受けて、ここでリスク の問題としては運用収益が予定よりも上回る場合あるいは下回る場合と両方あり、下回 る場合には保険料率の引き上げにつながる可能性もある。この可能性について、先ほど 確率的な数字は事務局からご報告があったとおりでございます。  その場合の分岐点はどこなのだろうかというのが、一つの論点といいますか、問題点 でございます。それについて、次の2ページの一番上のところの「実質的な運用収益の 確保」の2行目に「対応した実質的な運用収益の確保を目指す」という、この「実質的 な運用収益」というものがプラスであるかマイナスであるかというものの分岐点につい て、報告書の取りまとめの段階で、若干、認識の相違が事務局の皆さんと私との間に、 これは認識の違いだったのかどうなのかを含めて、本当は再確認をさせていただく必要 があるかもしれませんが、若干の議論があったことをご報告しておきます。  私どもは、完全賦課方式をとった場合と比較して、この積立金の運用が将来の保険料 率についてプラスに働く場合、マイナスに働く場合の分岐点がどこかということであろ うと思いますし、研究会の中での議論もそのように整理されてきたと思います。  そういう点から見ますと、まず、完全賦課方式の場合には、入ってくる保険料は被保 険者の賃金に完全に依存しております。したがって、それとの比較で言えば、積立金の 運用収益がプラスに作用するというのは、その利回りが名目賃金の上昇率を上回るかど うか。名目賃金の上昇率よりも高い運用収益を上げることができれば、それは完全賦課 方式よりも保険料を低く設定できるし、もしそれを下回るようであれば、完全賦課方式 の方が保険料負担としてはむしろ安くなる。そこが分岐点であろうというふうに思いま す。  これは、この席上でもう一度確認しておいていただいた方が、今後の議論のために役 立つのではないだろうかと思います。  それから、もう一つ、これは感想ですが、まずこのような格好で年金の積立金という ものが議論されたことは、日本の年金制度の歴史の上でも、多分、公的年金の歴史の上 でも初めてではないだろうかと思います。  また、国際的に見ましても、こういった積立金運用の問題が各国の公的年金の中で議 論された経験というのもほとんどないのではないか。例えば、ヨーロッパの場合、限り なく完全賦課方式に近いために、積立金の規模は我が国の現状に比べれば極めて小さな ものでございます。したがって、そういう意味では非常に新しい分野の議論であったと いうことを、ご専門の皆様方、非常に強く意識されておられたと思います。  ただ、そこで実際に援用されました現代投資理論というのは、理論はいつでも経験の 総括からつくられるんだろうと思いますが、経験のないところにしたがって理論もあり 得ないわけで、実際に使われた投資理論そのものはむしろ民間の投資行動に関する経験 を踏まえた理論以上でも以下でもないし、それしかあり得ないんだろうと思います。  しかし、年金の積立金というのは、先ほど例えば政府による市場の支配であるとか、 マーケットの歪みをもたらす、もたらさないという議論も、実はここも大変大きな論点 でございましたが、この市場の規模に対して、この積立金の規模は極めて巨額でござい ます。これは民間の投資理論が太平洋の中を耳掻きで掻くような前提で、議論されるの とは大分違うことであります。  そこにおいて、あるいはなお理論的に検討されるべき問題が残っているのかなと。こ れは素人ながらの感想でございました。  実際に、この積立金の運用に当たる機関の意思決定というものがマーケットに対して 安定的に作用するのか、あるいは攪乱的に作用するのか。これについてはまだ今後の課 題なのかなと、そのように思いました。  なお、つけ加えて申しますと、N委員がきょうご欠席でございますので、本当はご本 人から言っていただくべきことだと思いますが、何度かにわたってこうした巨額の積立 金、現状で言えば130兆といったようなものが、果たしてだれが責任を持って運用で きるだろうか。あるいはそれによって生じるリスクをだれが負うのだろうか。 あるいは年金の目的に照らして、本当にこのような巨額な積立金が必要なのだろうか このような点について、自分は素人だがとおっしゃりながら、何度か疑義を呈されたこ とについて、ご報告申し上げておきたいと思います。この疑義に関しては、私自身もま た共有するところでございます。 以上です。 ○事務局  1点目の認識ギャップについては、完全に一致していたかなという誤解を今までして いましたけれども、後段のそういう実質的な価値を維持するというのは、まさに少なく ともそういう意味です。それ以上のことをこの2行は意味していないということをここ で申し上げたいと思います。  補足ですが、現代投資理論は1980年代の初頭から始まって、もちろん民間の資金 運用に応用されていますが、専ら年金資金に応用されて発達してきているということで す。 ○B委員  先ほど来、お話を承っているところなんでありますが、年金積立金の運用につきまし て、ちょっとだけご説明を願ったような気がするんですけれども、還元融資の関係です ね。  私ども市町村にとりましては大変大きな話題でありまして、かねてから施設の建設等 に大変な便宜を図っていただいておりますので、先ほどのご説明ですと、あまりこの辺 の問題が出てまいらないんでありますけれども、審議の過程でどんなお話が出ておりま すか、その辺もちょっとお伺いできたらと思っております。 ○事務局  資料の2−2の24ページを開いていただきたいと思いますが、そこでございますよ うに、現在、年金資金は財政投融資、資金運用部を通じまして、地方公共団体が行う公 共施設、病院、社会福祉施設等、あるいは一般諸施設などの整備に活用されております  これらは特別地方債と称しておりまして、現在の地方債計画におきましては、地方自 治体がこういう施設を整備する際に、地方債を発行する場合には、すべて原則として年 金資金に限定されるという取り扱い方がなされているところでございます。  現在は、年金の資金と地方公共団体のこういう社会資本整備との関係がある程度明確 に関連づけられているわけでありますけれども、この制度をどうしていくかということ は今後の論議の一つのポイントだろうと思います。  これにつきましては、大蔵省の理財局におきましても、財政投融資制度における地方 債を今後どう位置づけていくのかということを論議しておりますし、自治省におきまし ても、地方債の調達に関する研究会を設けまして、地方債の調達をどうするかという論 議をしておりますので、厚生省におきましても、そういう論議も見ながら今後検討する ということになろうかと思っていますが、現在の考え方では市場運用を通じまして、地 方債を市場を通じて購入するという関係に今後なっていくのではないかと考えておりま す。 ○C委員  年金積立ての運用に関してですけれども、A委員が言われましたN委員の疑問ですね 私も全く同じような疑問を持っています。私も会社の中で、財務の専門家ではありませ んけれども、N委員が疑いを持った点は、非常に大きな心配の点であります。  それで、ご質問なんですが、このレポートは世の中に対して公にこれからされていく ということなんでしょうか。 ○事務局  公にすることを前提に研究会で研究を進め、きょう公表する予定でございます。 ○C委員  事業者の立場から言いますと、日経連は比較的社会保障制度、そういう観点から年金 問題にアプローチしてきているわけです。そのほかの経済団体にも、このようなものが 日本の経済に対して大きなインパクトをどう与えるか意見を聞かれた上でやらないと、 なかなか国民一般の理解が得られないのではなかろうか。  国民一般といいますか、特に事業者サイドとしては、この130兆円という運用の規 模のインパクト、そういうこととこの運用の仕組みですね。この辺もどうも厚生省がこ れを責任を本当に持ってやるという理解がなかなか得られないのではなかろうかという 気がしますので、そういう意味では世の中にぜひとも問うていただければと思います。 ○事務局  もちろん世の中に問います。  ただ、資産の規模としては130兆円が一挙に市場運用されるのではなく、徐々にし か新しい仕組みによる運用はふえていかないというふうにとらえています。  そういう意味で、研究会の報告は、どちらかというとこれは非常に中長期的な姿を描 いたわけですが、経過措置とか、どうやって責任を持つかということは、今後具体的に 検討していきたいと思っています。 ○D委員  年金積立金の運用につきましては、私はどのような基本理念に基づいて行われるかと いう、その基本理念の確認をすることが非常に大事なのではないかと思います。  そういう意味では先ほどご説明のありました、かなり古いですけれども、社会保障制 度審議会とか以前の国民年金審議会ですか、そういうところで大変重要な指摘がされて いるなというふうに思ったわけです。  年金積立金の運用の基本理念は、やはり保険料拠出者の利益のためにということだと 思います。ですから、運用を考えるに当たっては市場における有利な運用というだけで はなく、公的年金というのはもともと私的年金とは違って、社会連帯によって成り立っ ている社会保障制度の中の一つであるということ、この社会連帯の仕組みである公的年 金に対する国民の信頼を得ていくという上での保険者たる国の役割は何かという観点か らの議論もあわせて行うことが必要ではないかと思います。  このような観点からしますと、自主運用の方向について異論はありませんけれども、 次の点についても議論を深めておく必要があるのではないかと思います。  3点について申し上げたいんですけれども、第1は、自主運用は先ほどご説明があり ました国民年金審議会のときに出ている福祉運用──すなわち、社会政策的な運用によ って国民の生活の向上を図るという、そういう理念までを否定するものではないと思い ます。  自主運用が実現するということは、年金制度にとっては非常に望ましいことだと思い ます。しかし、自主運用は福祉運用の理念までを否定するものではないと思うわけです  福祉運用というのは、公的資金としての性格を考えて、例えば被保険者への貸付とか 教育の問題とか子育ての問題とかで、働く世代が苦労しているわけですけれども、そう いう人たちに対する貸付とか、それから社会保障分野の社会資本整備を行うことです。  それから、第2点は、福祉運用は公的年金の運用に求められている安全確実な運用に なり得るのではないかという点です。  できるだけ有利に運用するということはもちろん望ましいことですけれども、市場運 用には限界もありますし、リスクも伴うわけですね。それを考えますと、国債並みの金 利がもし確保されるのであれば、福祉運用を安全確実な運用として位置づけることがで きるのではないかと思います。  それから、第3点は、公的年金への国民の信頼を高める福祉運用と市場運用とのバラ ンスを考えるべきではないかと思います。  公的年金の積立金を活用した政策金融手法によって、社会保障分野の社会資本整備が 目に見える形で進んでいけば、社会保障の核である公的年金というものに対する国民の 信頼も高まると思います。  ですから、市場運用と福祉運用とをどういうふうにバランスをとっていくかというこ とが大事なのではないかと思います。福祉運用は、保険料を拠出する現役世代の、例え ば今進学率は上がっているんですけれども、やはり親にとっては教育資金というのは大 変負担になるわけですね。奨学金も結構限られており、みんなが受けられるわけではあ りませんので、そういう働く世代に対して子供の教育資金への貸付とか子育てとか、あ るいは住宅とかの生活支援となったり、あるいは社会資本整備によって結果的に年金の 実質価値を高めるというような、いろいろな意義をあわせもつものです。  ですから、市場運用一本やりで行くというのでは、私も国民の一人としてとても不安 に感じますので、ぜひそのバランスというか、組み合わせ、位置づけを議論していく必 要があるのではないかと思います。 ○E委員  二、三点、申し上げたいんですが、還元融資に係る点ですが、資料の2−2の『年金 積立金運用関係参考資料』がございますが、1は年金福祉事業団を通じた還元融資、他 の財投機関を通じるもの、特別地方債でというように今ご説明があったんですが、その 枠組みの中で、住宅についてのご説明がありました。ほかの委員からもご発言がござい ましたけれども、これはきちんと残してもらいたいということを改めて、申し上げてお きたいと思います。  それから、こういう融資を行なうシステム全体が複雑になっていますから、これをシ ンプルなものにしていくということを、構造改革の中でぜひ考えていただきたいという ことです。  それから、前回改正のときの積立金の活用にかかわるまとめの文章が資料の中に出て おりました。私は最近の化学産業を見て思うんですけれども、マスコミの皆さんに寄っ てたかって犯人扱いにされ、大変深刻なことになっている環境問題というのがあります そこで、この資料の2−1で言えば、社会福祉施設等という資金運用部からの流れの還 元融資なんだと思いますが、そういう枠組みではなしに、労使が拠出しているというこ とを原点にして、積立金を環境問題などの社会的な資本整備に政策的に振り向けていく そういう枠組みを新たにつくるべきではないかということを、申し上げておきたいと思 います。  したがって、今申し上げましたように、前回改正のまとめの中にありました融資的な ものに付加してもらうといいのではないか、このように思っています。  それから、もう一つは、改めてということになるのかもしれませんが、資料の2−3 の積立金の自主運用に関する4ページのところですが、この件について何かの折に発言 したような記憶があるんですが、このフローチャートを見る限り、積立金を拠出してい る人の意思とか考え方が、前段申し上げましたような運用というような側面、あるいは それをベースにした還元融資という側面も含めまして、拠出した側の意思がだれを通し てどういうふうに担保されるのかというところが極めてわかりにくいフローになってい ると思います。  したがって、財源は労使で負担しているという大原則を大事にしてもらい、新しい省 庁再編の中でできる省に、全面的にそういう権利というか、権威というのか、そういう ものを留保していただく必要があるのではないかということを改めて申し上げておきた いと思います。以上です。 ○F委員  還元融資につきまして、先の平成9年6月の閣議決定では、特殊法人等の整理合理化 についてということで、年金福祉事業団の被保険者向け融資業務について、適切な経過 措置を講じた上で、撤退するという決定が出ておりますけれども、私は行財政改革の一 環として、なるべく民のやっていることに官は口を出さないとか、あるいは同じような ことを2つやっている場合には1つに統一するとかいうふうな趣旨から、この閣議決定 の趣旨を踏まえた方向で対応すべきと思います。以上です。 ○B委員  先ほどのE委員、D委員のご発言に関連しているので、端的に申し上げたいと思うの でありますが、還元融資の関係なんですけれども、どこかに年金制度は金銭給付制度に 純化すべきであり、社会資本整備等の社会政策は税で実行すべきものであるというふう に説明がいただいてあるのでありますけれども、私は公的年金ということになりますと 国民的な理解を得るためにはも、やはり先ほどバランスのお話もあったわけですが、成 り立ちから言って、基本理念というものが非常に重要だと思うんです。  したがって、私は国債を買うのも、地方分権の進む中で、地方自治体に対して貸付を する場合であっても同じことだと思うんですね。同意に解釈いただきまして、還元融資 のウエートというもののもかなり意識して組み立てていただきたいというふうに希望い たします。以上です。 ○G委員  私も今のご意見と大体近いんですけれども、金銭給付に純化すべきという話はちょっ と単純過ぎるというふうに思います。  先ほどの厚生省が自主的に運用する金銭の運用については大変専門的なご意見があっ て、これはこれで大変結構なことだと思いますけれども、そちらばかりが重視されまし て、いわゆる還元融資で社会資本整備あるいは少子化対策、高齢化社会の基盤整備とい うふうな点を忘れてしまうということになると、ちょっとこれは異論を差し挟みたいと ころであります。  現在、国民年金についても、あるいは厚生年金についてさえも、新聞などではあまり 信頼感がないと。今の現役世代にとって、どれくらいの年金をもらえるかわからんとい うふうなことを言う人が多いそうですが、そういう意見に対する一つの防御としても、 何か現役の世代の人たちのためになるという意味での資金の使い方をやれば、もう少し 公的年金というものの意義が、一般の人にわかってもらえると思います。  ですから、先ほどのように資金の運用が非常に有利に回ると。したがって、将来の給 付が楽になるだろうというのは、ちょっと遠回しの説明になりますので、それを半分、 あと半分をいわゆる福祉的なものに使うという考え方を貫いた方がよろしいと思います これは半分・半分か、そのパーセンテージをどれだけに分けるかは、またご議論のある ところだし、社会資本その他の融資の仕方も、住宅がいいのか、教育資金がいいのか、 何がいいのか、これはまた改めて議論をすべき点だと思います。 ○H委員  最初にA委員さんあるいはC委員がおっしゃった疑問なんですけれども、これだけの 大きな百何十兆という資産の運用が大変なことだと、非常に難しいということはわかる んですけれども、ただそれを疑問だとか厚生省がやるのがどうかとか、必要があるのか という疑問を提出するだけでは、私はいけないのではないかという気がいたします。  結局、こういうふうな議論が出てきたというのは、賦課方式のままでいくと、同じ給 付水準を維持するにしても将来の世代の負担が大変大きくなると。ですから、積立金を もってできるだけ後代の負担を少なくする必要があるというところから、この議論は出 発しているわけです。  もう一つは、今までのように財投に運用していたのでは、財投自体が非常に問題があ るじゃないかということがあるわけですね。それは、むしろおっしゃっているのは財界 の方から、そういう議論が出てきている。それで、そういう議論が出てきたときに、新 しいこういうやり方も非常に疑問があるというふうにおっしゃったのでは、私は具体的 にどういう考えでいらっしゃるのかということを、そういう意見を言う人は、はっきり おっしゃる必要があるというふうに思います。  今までのやり方がだめで、新しいやり方をしようとするときに、それにも問題がある ということだけでは、私は今の段階では済まないのではないかというふうに思います。 ○C委員  世に問えば、対案が出てくるのではないかと思います。ですから、130兆という規 模が本当にどういうインパクトなのかということから、そういう意味ではカウンターの アイデアが出てくるのではないかというふうに私は思います。  いずれにしましても、財投が問題だと言えば、確かに財投の問題が出てきました。で すから、財投はもちろん問題になるんですが、今の130兆円のこの資金運用が、もち ろんいろいろなガードなり、移行措置でもってインパクトが少ないように検討されてい るんですけれども、それでも、私は専門家も含めましてもう少し吟味しないと、なかな か理解が得られないのではなかろうかというので、今は疑問の段階ということにしてい ただきたいと思います。 ○A委員 私も名前を挙げていただきましたので、ちょっと申し上げますが、疑問だけではだめ だというご指摘、そのとおりだと思いますが、まさにこのテーマこそ、この運用研究会 のテーマではなくて、当審議会の政策的な判断のテーマである。その役割だけははっき りさせておかなければいけないので、あの運用研究会の今回の報告が世に問われたとき に、そこから自動的にこの政策的な回答が出てくるというわけにはまいらないだろうと 思います。  もちろん、C委員のおっしゃったように、さらに膨張すると見込まれている巨額なも のがマーケットにどういう影響を与えるかということについては、マーケット実務家か らいろいろな意見が出てくることは期待されます。  それでは、年金積立金の全体の中で、どの程度の割合が市場運用に回されるのが適当 であり、どのくらいの割合がそれではD委員ご指摘のいわゆる福祉運用に充てられるべ きか、あるいはその福祉運用なるものはいかなる目的と方向を持つべきか。これはすべ て当審議会のテーマだと思いますので、今後検討されるべきテーマだというつもりで、 疑念という形をとって申し上げたところでございます。  ですから、それについて私どもの意見はありますが、きょう既に開会後1時間半近く たっていて、その問題についてきょうここで議論をする条件はないだろうと思いますの で、改めてこの積立金運用に係わる政策的な検討を当審議会で項目の整理も含めて、別 途機会を持っていただくようにお願いしたいと思います。これは十分に時間をかけるに 値することですし、公的年金の制度論としては恐らく我が国で初めてこういう議論が テーブルに上ったということだと思っておりますので、私どもとしては大変この問題を 重視しているとうことだけ申し上げておきます。 ○I委員  議論の大筋には賛成なんですが、この4ページの仕組みのフローチャートなんですけ れども、大きな議論としてこういう形で市場運用していくというのと、全くもう一つ別 のストーリーとして積立方式にして運用していく、やはりそれも市場運用という形にな りますね。それとの違いというのを考えるべきではないかと思うんですね。  この場合の一番最後──厚生大臣が保険者となってやる場合の、この民間運用機関な んですけれども、この信託銀行、生命保険会社、投資顧問会社等の具体的な機関ですね これが外国の金融会社とかがこれからどんどんそういう相手先になるわけですが、この 比率とかそういうことは考えていらっしゃるのかどうか。  例えば、これが積立方式になるとすれば、各企業が企業年金という形でやる場合は収 益率だけを考えてやるわけですから、そういうふうになると思うんですが、政府がやる 場合は民間運用機関については国内のもの、あるいは国外のものというようなことにつ いてどのように考えていらっしゃるか。もし、予測があれば教えていただきたいと思い ます。 ○事務局  仕組み全体が今後年金審議会とご相談して決めるものですから、予測というか、今仮 に別のところでやっている例をご紹介いたしますと、年金福祉事業団で24兆円の資産 を運用しております。  そこで、どういう運用機関に委ねるかというものにつきましては、それは色はござい ません。例えば、外国であろうが、日本の国内信託であろうが、優秀な機関をきちんと 評価して、どういう人が具体的にポートフォリオマネージャーとか、ファンドマネージ ャーになっているかということを選定してやる。それで、3年おきに評価をして、悪け れば落としていく、良ければ続ける。それから、コストの面がありますから、手数料が どうかとか、そういう面を注目してやります。  ただ、これとは別に、先ほど申し上げたようにホームカントリー・バイアスというこ とで、やはり国内のマーケットがあるとそこでの情報量は多いということで、国内資産 について運用しようと。そういう制約条件が少しありますけれども、どこの機関にどう いうふうに運用するかというのは、むしろ競争の中でお決めいただくというのが今のや り方であります。 ○I委員  ですけれども、その影響については私は全く予測がつかないんですけれども、これだ けの資金が動くということは、日本の金融業界とか、そういうところの影響ということ も考えるべきではないかと思うんですが。 ○事務局  具体的なスキームになりますとご相談しますが、C委員にもお答え申し上げましたよ うに、財投制度が全部なくなって、将来、全部市場運用に行けば、120兆とか140 兆とかになるという可能性もあります。  ただ、先ほどの閣議決定とか、法案の中にありましたように、今、財投制度、資金運 用部で運用している資金に影響を与えないように段階的に移行する。それは何かという と、年金積立金は今ほぼ全額預けてありますから、それがすぐに取り上げられて、財投 機能が一瞬にしてなくなるような仕組みというのは、ここ10年、15年、20年、考 えられない。それを段階的に移行しようということであります。  それから、詳しくは申し上げませんが、国内有価証券市場とか、グローバルに見れば いわゆる対象資産の範囲・規模というものは、ここで議論はしませんが、思っている以 上に大きいということがあります。 ○A委員  I委員のご懸念というのは、ちょっと正確にわからないんですが、一つ、こういう考 え方があるわけですね。これは日本の労使が拠出している資金が資本市場にあらわれる わけだから、それ自体の投資先について、むしろ日本経済そのものに貢献するような運 用が望まれるという考え方ももちろんあるし、そして3ページのところにおけるホーム カントリー・バイアスというようなことも、単に安定性の問題だけではなくて、そうい う政策的判断が全く働かないかと言えば、そんなこともないだろうというので、実はこ こは最後の取りまとめのところで少し議論になりました。  大変失礼だったのですが、事務局のことを私はナショナリストだなんて申し上げてし まいまして(笑)、その後抗議を受けたりいたしました。改めて訂正いたしますが、私 は逆に言うとこういう積立金運用が、例えば株価の引き上げのような目的のために恣意 的に運用されることの方が非常に懸念されます。  これは公的年金ではなくて、企業年金の問題ですが、企業年金に確定拠出型のものを つくれと。その目的は今低迷している株価の引き上げであるなどといったような議論が 自民党の一部から言われるようなことを考えると、そういう懸念は決して非現実的なも のではないと。  そういう政策的な判断で、こういうものが言わば歪められた形で使われるというのは むしろ今の財投の持っている歪みよりも、ある場合にはもっとひどくなるのではないか という感じを持つことが一点です。  それから、N委員と私と、これは図らずも共通したんですが、拠出者はもっとナショ ナリスティックだと思われたようなんですが、我々はそういった意味では大変サバサバ しておりまして、今年の4月1日から、ほとんど金融取引に関して国境が事実上なくな っている中で、それは実際に市場運用をするものについて言えば、なるべく安全性を見 込みながらも、きちんとした収益が上がるような運用が望ましい。そのために実際の投 資活動に当たる判断主体が日本国籍であるかどうかということは、事実上、現在大きな 問題ではないだろうということを表明したところでございます。  半分、報告でございます。 ○J委員  この研究会報告なんですけれども、今は年金積立金の運用についてというところで扱 っているわけなんですけれども、これはいずれ、次の財政再計算における経済的前提等 についてという項目で扱われることになるのではないかと思うんです。  具体的には、例えば、I、II、IIIとシミュレーションがある、まあ、IVもあるわけで すけれども、このうちのどれかを当審議会として最終的に選ぶということを意図して、 この研究会の報告というのはなされているんでしょうか。その辺についてお伺いしたい と思います。 ○事務局  お手元の9ページでございますが、4に「政策的資産構成割合の決定」とあります。 いろいろ今お話がありましたように、幾つかお示ししましたが、財政再計算における運 用利回りを念頭に置きながら、やはり最終的には制度改革と一体として、セットでご相 談させていただくということになるんだと思います。 ○会長  ほとんどの方にご発言をいただきました。この辺で、今お話にありました今日の2番 目の問題、次期財政再計算の経済的前提などについての審議に移ってよろしゅうござい ましょうか。               〔「異議なし」の声あり〕 ○会長  それでは、事務局の方から資料の説明をお願いします。 ○事務局  資料1をごらんになっていただきたいと思います。資料1に、論点整理が掲げてござ いますが、上の方に「(6)次期財政再計算における経済的前提等について」ということで その右の方の白い丸ですが、「人口問題研究所から、高位、中位及び低位の3通りの推 計が示されたが、次期財政再計算においてはどのように考えるのか」ということでござ います。  それから、その下の丸でございますが、「次期財政再計算を行うに当たっては、賃金 上昇率、物価上昇率及び年金積立金の運用利回りといった経済的前提についてはどのよ うに考えるのか」ということで、その右の方に、2つ目のポツがありますが、「複数の 経済的前提のもとでの将来の年金財政の姿も参考として示すべきではないか」というよ うな意見もございますし、また労働力率の見込みを変える場合に、どう考えるのかとい った課題もございます。  資料3をごらんになっていただきたいと思います。  経済的前提等の参考資料でございますが、1ページですが、賃金と物価の上昇率の推 移ということで、これまでの賃金上昇率と物価上昇率の推移がグラフで示してございま す。概ね、賃金上昇率と物価上昇率が連動したような動きになってございます。  次のページでございますが、それを表にしたもので、賃金上昇率につきまして、標準 報酬月額の上昇率、それからきまって支給する給与の上昇率、それからその右ですが、 物価の上昇率、一番右ですが、賃金上昇率から物価を引いたものがどのくらいあるのか を各年次、また下の方には5年ごとの平均、それから過去5年、過去10年、過去15 年といった数字が掲げてございます。  次のページでございますが、実質GDP成長率の見通しということで、いろいろなと ころで将来の見込みが示されておりますものをまとめて表にしたものでございます。  例えば、一番上で、経済企画庁経済研究所の見込みでございますが、標準ケースにつ きましては2000年までが2.94%、それから2000年〜2025年が1.37%、 その後が0.55と。改革ケースはもう少し高くなると。  同様に、産業構造審議会の見込みとか経済審議会等でも見込みが、どの年次まで示さ れているかという点では少し違いますが出ております。  それから、民間の研究所等においても、いろいろな予測がなされております。  いろいろな違いはありますが、概ね1%〜2%くらいのところが多いというような感 じでございます。  次のページは、諸外国における賃金と物価上昇率の推移ということで、参考にしてい ただければと思います。  それから、次のページでございますが、新規預託金利等の推移ということで、新規預 託金利の推移が点線で一番上のグラフでございますが、それと賃金と物価の動きが示し てございます。これも大ざっぱに言えば連動しているように見てとれます。  次のページがそれを表にしたものでございまして、左から賃金上昇率、それから物価 の上昇率、その右が利率といたしまして、厚生年金の利回り、国民年金の利回り、それ から資金運用部の新規預託金利、その右が預託金利から賃金上昇率を引いたもの、その 右が3−2ですが、預託金利から物価を引いたものがどういった値になっているのかを示 したものでございます。  次のページでございますが、3といたしまして、経済的要素の前提を変更した場合の 厚生年金の最終保険料率ということで、経済的前提が異なった場合に、最終保険料率が どのような影響があるのかを見るために、機械的に幾つかのケースについて試算したも のでございます。  最終保険料率に影響を与えますのは、ここにありますように、標準報酬上昇率と運用 利回りとの関係が大きいわけですが、そのほかに標準報酬上昇率と物価との差が小さい ほど、再計算の中間年度の物価スライドが相対的に大きくなるというような関係もあり まして、最終保険料率が大きくなるという関係にございます。  一番上には、平成6年の財政再計算の前提でございます標準報酬の上昇率が4%、物 価上昇率が2%、運用利回りが5.5%のケースでございますが、これの最終保険料率が 34.3%と見込まれております。その下のケース1といたしまして、標準報酬上昇率を 1%下げて3%、物価を2%、運用利回りを4.5%とした場合には、最終保険料率が 35.8%というふうに見込まれております。  その下のケース2でございますが、標準報酬上昇率が2.5%、それから2%、4%と いうケースにつきましては、36.6%の最終保険料が見込まれるということです。  それから、ケース3でございますが、標準報酬上昇率2.5%、物価1.0%、運用利回 り4%という前提の場合には、最終保険料率が35.4%。それから一番下でございます が、ケース4につきましては、標準報酬率の上昇率2%、消費者物価上昇率0%、運用 利回り3.5%という前提ですと、34.9%というふうに見込まれております。  次のページでございますが、過去の財政再計算における経済的要素をどういう考え方 で設定してきたかということでございますが、平成6年の再計算における考え方は、標 準報酬上昇率につきましては、そこにありますように、つまり一人当たり雇用者所得の 伸び率、一人当たり労働生産性上昇率の過去の実績、経済審議会における長期見通し等 を勘案して設定ということで、標準報酬上昇率の見通しは実質一人当たり雇用者所得の 伸び率の見通しプラス物価の伸びということでございます。  それから、次のマルの消費者物価上昇率でございますが、これは63年から平成4年 までの5年間の実績平均や経済見通し等を勘案して設定と。それから、運用利回りにつ きましては、公的年金の運用利回りや実質預託金利から物価上昇率を差し引いたものの 過去の実績を勘案して設定ということで、運用利回りにつきましては、実質預託金利プ ラス消費者物価上昇率の見通しということで設定してございます。  次のページでございますが、財政再計算における経済的要素の前提ということで、6 年は先ほど数字を言いましたけれども、元年につきましては、標準報酬上昇率が4.1% 物価上昇率が2%、運用利回りが5.5%という前提で行っております。  次のページでございますが、ただいま経済的要素についてご説明いたしましたけれど も、再計算におきましては、経済的要素だけではなく、次に述べるようないろいろな率 なり数値を使って行われています。一つには、(1)人口推計、(2)雇用の見通し、(3)基礎 数──被保険者とか受給者がどんな統計データに基づくのかということでございますし (4)基礎率といたしまして、人口学的要素として、被保険者とか受給者が今後どう変化し ていくかというものを推計するためのものでございます。 次のページでございますが、そういった基礎率の主なものを掲げてございます。  こういったものの数値につきましても財政再計算ごとに公表しております。  それから、次のページでございますが、例えば、被保険者の推計をどのように行うか ということですが、被保険者の将来に向けての推計について見ますと、ここの5−2に ありますように、被保険者数の過去の実績に基づきまして、次のページでございますが 将来推計人口における20〜64歳人口の推移といったようなもの、過去の実績と将来 の見込みというものを組み合わせて、実際には将来の性別・年齢別人口に対する厚生年 金の加入率というようなものを推計して、被保険者の見込みを作成しております。  次のページでございますが、そういった推計のうちで、6年にやりました推計の中で 高齢者とか女子雇用の見込みについて見たものがこのグラフでございます。60〜64 歳の高齢者の雇用の見込みにつきましては、60〜64歳の人口に対する厚生年金の被 保険者の加入率がグラフに示してあります。下の方の細い線が最近の傾向を反映した形 で推移するとした場合でございますが、そういった傾向プラス高齢者の継続雇用制度の 普及等によって、雇用が進むということを織り込んで、上のようなグラフの被保険者数 になるということが推計されております。  同様に、下の方の女子雇用の見込みにつきましては、同じく30〜39歳の人口に対 する厚生年金の被保険者の割合が、女子につきましては一時休業制度の普及等によって 雇用が進むということを織り込んで推計してございます。  以上でございます。 ○会長  ありがとうございました。  ただいまご説明のありました事柄につきまして、ご質問、ご意見などございましたら どなたからでもご自由にお願いします。 ○K委員  ちょっとよくわからないので教えていただきたいんですが、2ページの賃金上昇率の ところは、きまって支給する給与の上昇率を今までずっととってきたことはわかるんで すが、総報酬制に切りかえるということとの関係では、これでいいんですか。  現金給与総額の上昇率をとった方がいいのかなと思っていたんですけれども、その辺 はどういうふうに考えたらいいんでしょうか。 ○事務局  確かに、総報酬制にした場合はボーナス等が入ってきますが、これまでボーナスの割 合についてはあまり大きな変化がなかったので、こういった資料をお示ししましたけれ ども、ボーナスも含めたような数値も見ていく必要はあると思います。 ○L委員  14ページの将来の高齢者、女子雇用の見込みについての関連することなんですが、 年金の将来への大きな課題に少子・高齢化があると。これは一般的に言われていますし とりわけ、その中で5つの選択肢を中心に、給付と負担の関係ということで注目をされ ているし、またその議論は避けて通れないというのはよくわかるんですが、ただ、年金 の将来のあり方という設計の問題でもそうですし、それから、私、労働組合の立場なん ですが、個々人の組合員なり、国民の生涯設計といったときに、年金だけではなくて医 療の問題や介護の問題や、トータルでその人の生涯設計が果たしてどうなるのかという ことについては非常に重要な問題です。  そのときに、雇用と年金の接続という問題については、非常に重要なテーマだという ふに思っています。一般のマスコミ等々での論調やあるいは各界からの意見もさまざま なシミュレーションをする場合に、負担される側からできるだけ負担する方へというふ うにやはり設計を変えていくべきではないか。  それは女性が働くという問題、それから高齢者ができるだけ元気なうちは現役で頑張 るといいますか、支える側に回るという問題ということで、これは一般論としてよく言 われていることです。  このことが、今度の年金の将来設計あるいは負担と給付の関係について、一体どうい う影響を及ぼすのか。それは、どれだけのウエートで年金の財政面でもプラスになるの か、いや、それはあまり財政という点についてはそれほど大きな影響を及ぼさないとか 結局、この辺の問題については常にいろんな意見が出るんですが、きちんとしたシミュ レーションとそれについての論理的な解説というのは必ずしも十分に議論ができている とは限らないのではないかというふうに思います。  そういう意味では、14ページの図は、たまたま前回の再計算時における将来の高齢 者・女子雇用の見込みについて、こういう見方をしていますよと。要は、織り込んでい ますよということが一番厚生省としては言いたいことなんでしょうけれども、果たして これからどうこれが動くのか。動いたときに年金財政や年金の給付ということについて 一体どういう影響を持つのかということについて、もう少し突っ込んで、一定の数字や そういうことについても示していただけないかなと。この論議は非常に重要だと思いま すので、ご意見として申し上げておきたいと思います。以上です。 ○A委員  関連して、私もこの問題は大変重要な点だと思うんです。例えば高齢者の場合に、年 金水準を切り下げればもっと働くだろうと。高齢者をもっと働かせるために、もっと年 金給付を下げるのは合理的であるという考え方が例えばあるといたしますね。ないとは 言えないと思うんですが……。  そうした方が年金財政にとってプラスなのかどうかというのは、本当のところ、よく わからないですね。確かに、被保険者の数はそれでふえるでしょう。しかし、女子や高 齢者の賃金というのは、現役の男子労働者に比べて、目立って低水準であります。賃金 の低い、つまり標準報酬月額の下位にランクするような被保険者のウエートが高まると いうことは、現在の年金制度の中で財政的にはむしろマイナスに働くわけですね。  だから、「女子や高齢者の就業が一般に進めば財政的に楽になる」というふうには断 言できないし、逆に年金水準が仮に低いからといって、高齢者が働かざるを得ないとい う意味で労働市場へ出ていけば、それでなくてもここの労働市場というのは供給過剰で すから、賃金水準はさらに下がるように作用する。ますます、新しく被保険者になる高 齢者というのは、低い賃金で就労せざるを得ない人たちの比率が高まる。女子に関して も同じだろうと。  つまり、年金制度の側からそういう労働市場に対する押し出し型に作用するように設 計することは、財政上プラスになるわけではないので、むしろこういう女子や高齢者の 今の労働市場条件、つまり供給過剰を背景にした低賃金という状態の改善が一方で伴わ なければ、こういう就業者の数だけ、あるいは被保険者の数だけで財政問題を軽々には 論じられないという面をもう一段深めた上で、財政論に結びつけていただく必要がある のではないかというふうに思います。 ○事務局  今のご意見ですが、確かに女子の雇用が進んだ場合とか、高齢者の雇用が進んだ場合 に、厚生年金の保険料収入は当然ふえるわけですが、それは将来、厚生年金の2階部分 の年金給付も増大するということになります。例えば女子についてふえるといった場合 に、3号の被保険者から2号になるのかどうかとか、増加する人数がどのくらいあるの か、またどのくらいの年齢構成で入ってくるのか、また先ほどお話がありますように、 賃金がどのくらいの水準かといったようなことについても影響が違ってきますので、わ かりやすい形で資料を通してお示しするようなことについて、工夫していきたいと思っ ております。 ○J委員  今の関連なんですけれども、A委員がおっしゃった、仮に高齢者が非常に低い標準報 酬で雇用されているというような場合に、例えば60歳過ぎているような人は、保険料 を払って、それが給付に結びつく期間が非常に短いわけですね。ですから、言ってみれ ば、60歳を過ぎた人の保険料というのは、本来、非常に高くあるべきはずなんですね それが平均された保険料になっているから、結果的にあまり払わないのに、すぐに給付 が出るという格好になって、財政的にプラスの方向に大きく働くことはないというふう に考えられたらよろしいんだろうと思います。 ○A委員  なるほど、わかりました。 ○H委員  私はこの問題は厚生省が出しました5つの選択肢に対する世の中といいますか、世間 一般の意見といいますか、反論と言えるのかどうかわかりませんけれども、雇用が変わ ればあの5つの選択肢以外にもうちょっといろいろな選択肢があるのではないかという 意見が非常に強い──皆さんもそういうふうにお感じになっていると思います。  その場合に、高齢者雇用とか女子雇用が確かにふえたからといって、財政に対する影 響というのはプラスの面とマイナスの面と、私は確かに両方あると思いますけれども、 それは今ちょっとご意見がありましたように、制度の設計の仕方にもよるんですね。  ただ、雇用率が、こうやって数字を見せられますと、いかにも低い、将来も非常に低 い。現在で、大体60〜65歳が3分の1、将来も30%台だと。それが大体あまりも う変わらないんだという前提というのは、果たして将来の日本の社会のあり方としてい いんだろうかと。それが給付に跳ね返るかどうかは別にして、社会のあり方として、こ れ一つの前提でいいんだろうかというのは、私自身としてはちょっと疑問を持っていま す。  ですから、これからのあり方を考える場合に、やはり世間でもそういう批判があるわ けですから、これが何%がいいかはわかりませんけれども、少なくとも5割以上に上が るとか、6割くらいになるとかいう場合の数字もお出しになったらいいんじゃないかと いう気は私はしております、いろいろご意見あると思いますけれども ○A委員  ちょっと別なことで事務局に教えていただきたいんですが、7ページ、経済的要素の 前提を変更した場合のとおっしゃっているのですけれども、タイトルにあるほど要素の 前提は変更されていないのではないか。  つまり、運用利回りと標準報酬の上昇率との間は、これ全ケースについて1.5でしょ う。これ自体が前提のはずなのに、その前提は全然変えないで、前提を変更した場合の というのは、ちょっと看板に偽りあるんじゃないかなというのが一つ。  それとの関連で6ページですが、運用利回り等の推移について、今の表では標準報酬 月額とそれから運用利回りとの開きを見ているのに、この6ページのところでは、定期 給与と運用利回り、特に資金運用部の預託金利との差を3)─1)というふうにとっておら れるんですね。  3)─1)について、下の方の少しまとめたやつを見ると、3.6、2.2、2.0、2.1、バ ブルのときを挟んだところで2.6という数字が出ていますが、さっきの表のつくり方と ここは一致していないのはなぜか。  それから、仮に1) のところは、定期給与ではなくて標準報酬の方をとりますと、預託 金利と標準報酬の差は軒並みここにある数字よりも下がって、3.4、1.9、1.9、1.7 2.2というふうに低目に出てまいります。それでも、1.5よりは高いんですが、将来は さっきの7ページにあるような運用利回り標準報酬、これは総報酬に引き直してもいい んですが、果たしてこれはこの1.5ということは、これは変わらないんだという前提で いいんでしょうか。  まさに、これこそ、最終保険料率と言われているここの数字を左右する一番大きなフ ァクターだと思うんですが。 ○事務局  7ページの表が標準報酬上昇率と運用利回りの関係が1.5%のケースばかりというご 意見でございますが、運用の基本方針研究会報告の方に、標準報酬上昇率が2.5%、物 価上昇率が1%、運用利回りについては参考資料のIとして4.2%のケース、IIとして 4.5%のケース、それからIIIとして4.8%のケースが示されております。それぞれの ケースについて最終保険料率も参考資料の方に掲げてございますので、ここでは運用利 回りの違いについてはそちらの方で示されているということで、特に1.5%の場合を載 せたということでございます。  次期再計算がこれからどういった前提で行うかということは別に、機械的な幾つかの ケースを示したということで、今のようなご意見も踏まえて、今後どういうような前提 で再計算を行っていくかということについて検討していきたいと思っております。 ○C委員  質問ですけれども、4ページに諸外国と日本の賃金の推移がありますけれども、賃金 と物価を定めるときの賃金なんですが、労働省の勤労統計30人以上とありますが、こ れは過去はカバー率としてはあまり変わらない、あるいは今後も変わらないと見るかど うか。  その関連で、12ページの被保険者の推移ですが、2号保険者がこの10年ちょっと でかなりパーセンテージのウエートが1号と2号で動いているようなんですけれども、 ここら辺の関係というのは、今後10年見たときにどうなんでしょうか。 ○事務局  最初のお尋ねは4ページの資料が30人以上の規模のものになっておるわけですが、 これがふえていくかどうかというお尋ねでございますか。 ○C委員  カバーがですね。実際に働いてお金をもらう人の中での割合がどうかと。パートとか そういうことを頭に置いてなんですけど。  先ほど、その関連では12ページの1号、2号、3号の構成比が過去も多少変わって いるわけですが、今後どうなるか。それはあまり関係ないことかどうかということで、 ちょっとお尋ねします。 ○事務局  ここでは規模を同じにして、過去の推移を見るために、たまたま昔のデータが拾える 30人以上を掲げたものでございます。  今、お尋ねの30人以上の方がふえているかどうかということについては、調べさせ ていただきます。 それから、12ページの2号被保険者がふえているというのは、サラリーマン化して いるということのほかに、サラリーマンの中で厚生年金の適用がある意味では拡大して きている、そういうのが両方相まって、割合としてはふえてきているというふうに考え ております。 ○D委員  14ページの女子雇用の見込みの図ですけれども、これは例示的に30〜39歳の年 齢階級をとっているのでしょうか。  例えば、今、大学進学率も大卒の就職率も、女子が男子を上回っているわけですね。 だから、厚生年金の被保険者はふえてくる可能性があるということと、それから年齢階 級別に見た女子の労働力率は、例のM字型ですけれども、労働力特別調査によって、そ のM字型で下がっているところの女性に就労の意欲があるかどうかを調査し、就労意欲 があるというのを足し上げると先進諸国のフランスとかスウェーデンと同じように台形 になるわけですね。  そういうことですので、もしこれからこの10年とか15年間に、子育て支援政策が 非常に進んで──進むかどうか、ちょっと疑問ですけれども、公聴会で山崎さんの言わ れたようになかなか難しいところがあるかもしれませんけれども、もし子育て支援政策 が大いに促進されたら、この25〜29歳、30〜34歳というところは、3号被保険 者から2号の方に移行する可能性もあるわけですね。  ここで、30〜39歳を前の財政再計算ではこういうふうな前提で織り込みましたと いうことですけれども、ほかの年齢層についても、職業安定局の推計ではもっと引き上 げているんでしょうか。 ○事務局  15ページに労働省の推計のデータが掲げてございますが、女子育児休業制度で先生 がおっしゃるように、30〜39歳以外でも効果があるはずではございますが、推計と しては30〜39歳のところにそういった政策効果が及ぶという推計になっております ので、それを使っております。結果として推計上は30〜39歳の雇用が進むというこ とになっております。  それ以外のところについては、推計上は織り込んでおらないということでございます ○D委員  それは、育児休業制度だけですか。雇用保険の継続給付とか育児休業が1年とれると いうことだけを織り込んでいるという……。  子育て支援政策というのはもっと広いものですね。それは織り込んでいないという意 味でしょうか。 ○事務局  労働省の推計が平成5年でございますので、ちょっと手元に資料がございませんが、 育児休業制度の効果だけを織り込んでいるというふうに理解しております。 ○I委員  その育児休業制度による労働力率というか、正規のフルタイム雇用者を見込んだとい うことなんですが、残念ながら、そういうふうに作用しないで、やはり少子化の方に行 ったわけですね。つまり、子供を産まない方にむしろ行ってしまっているというのが現 状だと思うんです。  先ほどのA委員のご質問と、今の女子労働力率のことをあわせてちょっとおかしいな と思うんですけれども、2号被保険者は比率として減っているわけですね。これは男性 も12ページを見ていただきますと、少しですけれども平成6年よりも平成7年が減っ ていて、8年でもそんなに上がっていない。  これは、15ページの女子労働力率の高さとその前の14ページの人口分の厚生年金 被保険者の比率の低さということと関係していると思うんですね。  先ほど、M字型の例が言われましたけれども、M字型でもう一回再雇用されて、2つ 目のこぶになっているところは全部パートですから、30〜39歳人口分の女子厚生年 金被保険者の数には、今のままだとならないわけですね。  ここの労働力率のところを見ていただくとわかると思うんですが、労働力率は非常に 高いわけですね。例えば40〜44歳だと、2000年推計で7割になっているわけで すね。ですけれども、厚生年金被保険者はふえない。これはパートとか、あるいは13 0万以下ということでありますから、先ほどH委員の方から出ましたように、あまりに もいろいろな変化を読み込まない諸前提というところにここが象徴的にあらわれている ように思うんですけれども。 ○A委員  この12ページの表の中で、非常に注目しなければいけないのは、今、I委員からも ご指摘があったように、平成6年以後、第2号被保険者の構成比が傾向的に低下してい るという点であって、しかし、パート等だということであれば、3号の方の構成比に跳 ねるはずですが、そうではなくて1号の方に跳ねているということが重要なんだと思い ます。  したがって、これはパートかどうかという問題ではなくて、社会保険の適用がされな い雇用労働者がふえているというふうに見るべきですね。そして、事実、この第1号被 保険者の職業構成割合についてこの間資料をいだたきましたが、非常にショックでした これはほとんど衝撃的と言ってもいいんですが、標準的なモデルとして考えられている 自営業者の人は50%を下回っている。あとの半分はきれいに二等分されて、25%が 無業者であり、25%が雇用労働者であります。  つまり、雇用労働者本来第2号の社会保険の適用対象であるべき人が、そこから漏れ て、結果、1号被保険者になっている。もし、これが130万以下であれば、3号とい うことに、配偶者であればですが──配偶者だけ優遇するのはなぜだと私は強く思いま すけれども、それは別にして、したがって、ここには実は任意加入の世界で、今まで任 意加入であったが、使用者が努力して社会保険の適用を進めてきたところが、不況の中 で保険料支払いが大変なので、任意加入を取りやめるという傾向が一つ。  それから、現在の社会保険制度が雇用労働者に本来適応されるべきであるにもかかわ らず、適用しない悪質な経営者の拡大が一つ。それから、もう一つは、制度そのものが 例えば派遣労働者が典型でありますが、そういう雇用形態に適用できない制度的なフ レームワークの限界から来る問題が一つ。おおよそ3つの要素によって、この2号被保 険者が傾向的に、それまでは構成比が高まっていたのが、構成比が下がる傾向になり、 それが1号の方に反映しているということではないのだろうか、このように思うわけで す。  ここから、問題は社会保険の適用というものをどういうふうにきちんとやっていくか これは、今の3号対象になっている人の中で、一定の収入がある人をちゃんと2号に適 用する問題とあわせて、大変大事な課題だと思います。その制度上の配慮なしに、将来 の被保険者の拡大を見込むことはできないし、したがって、また財政の改善につながる 展望を見出すこともできないのではないだろうか。  言いかえれば、1号で言われるところの空洞化に対応して、2号の方でも空洞化とい うのは実はあるんだということをはっきりと見据えておかなければいけないというふう に思います。以上です。 ○事務局  今、A委員のご指摘の件ですけれども、これはおっしゃるような点が、それも確かに あると思うんですね。ただ、ここを見ていただくとおわかりのように、第2号というの は人数では着実にふえておるわけで、これは先ほど事務局が申し上げたように、サラ リーマン化とか、あるいは小規模事業所における厚生年金の適用ということで着実にふ えておる。  1号は、これは非常に特徴的なのは、例えば平成3年に約100万ちょっとふえてい ますけれども、これは学生を強制適用にした結果ということで、一挙に100万ふえた わけですね。その反面、2号、3号の比率は当然下がるということです。  それから、最近、1号が着実にふえておりますけれども、これは未納・未加入問題の うち、まず加入促進ということで、市町村、社会保険事務所を挙げて努力しておりまし て、そういう加入促進の結果、第1号被保険者がふえている、その結果比率としては2 号や3号が減少、これが一つの大きな理由ではないかと思います。  したがいまして、今、いろいろご指摘のような点も踏まえて、この数字についてはよ り深く分析すべきではないかという感じがいたします。 ○M委員  違う論点ですが、経済的諸前提についてエコノミストとして気になるのは、今の予測 というのは、最近の経験に基づく悲観であるか、楽観であるかという……。  今、日本は総悲観なわけですが、したがって、財政再計算をやる場合、かなり時間が 長いので、不況のときの数字だけを中心にとって考えるのはやや危険ですので、その辺 のところは、ある程度修正しないと困るという点で、ちょっとその点だけ。数字を採用 するときに、ごく最近の4〜5年間の数字だけとれば、これは大体不況のときで、日本 経済はしばらく──経済政策の如何によりますが、しばらく具合が悪いんですが、その 先、必ず戻るわけですから(笑)、戻るときも含めて再計算に入れておく必要がある。 ちょっとその点だけ。 ○K委員  同じような問題ですけれども、7ページにいろいろな前提が上がってくるんですが、 ケースIからIVですね。それの各ケースの前提になっている経済成長率とか失業率はどう なっているのかというのは、ちょっと見た中でよくわからないんです。  3ページには、政府や民間の成長の見通しが出ておりますけれども、10ページの方 の財政再計算の前提のいろいろなファクターの中には、労働力人口と被保険者数という のが出ているんですけれども、失業率というのはエクスプリシットには入っていないの で、7ページのケース4本をつくる際に、経済成長率と失業率はどういうふうになって いるのか、もしわかったら、教えてください。 ○事務局  7ページの方は、特に失業率が何%で、こういった経済前提になるということではな くて、機械的に6年のものと違う前提でやった場合に、どのくらい保険料に違いが生じ るのかということで見たものでございます。  それから、失業率につきましては、先ほど将来の被保険者数を推定するというところ でお話し申し上げましたけれども、基本的には年齢別・性別人口の中に占める厚生年金 の被保険者の割合というものの傾向を見まして、それを将来に投影していくというよう なことで、結果的に失業があって、厚生年金被保険者になっていない方も潜在的には織 り込んだ形での推計になっているということでございます。 ○K委員  そうすると、M委員と逆になるかもしれないけれども(笑)、別に僕は悲観論が好き だという意味ではないけれども、過去の趨勢だと失業率がかなり低い水準で、あまり問 題でない趨勢できている中で計算しているわけでしょう。  M委員の日はまた昇るのがいつごろになるのかよくわからないけれども、僕もいずれ はそうなってほしいと思うけれども、何年続くかよくわからないので、当分、失業率が 相当上がってくるようなことを考えると、あと向こう5年、10年のところが一番難し いと思いますけれども、労働力率の方はガンガン上がってきて、失業率がまた上がって くるということになると、今出ているような数字に相当影響があるんじゃないかと思う んですが、その辺は正確にはあまり入っていないということですか。 ○事務局  今お話にありましたように、例えば失業率がどのくらいかということを正確に数十年 にわたって予測するというのは非常に難しいわけで、ある程度、予測はできるものにつ いてはできるだけ予測を行って、将来を推計することとしています。  一方、失業率のように、なかなか数十年にわたってどのくらいになるかというような ことについて、見込みの難しいものについては、5年ごとに再計算を行って、そういっ たものが結果的に実績が出てきたところで見直されていくというようなことも含めてや っていくのが現実的ではないかと。失業率を将来にわたって見込むというものも、なか なか難しい面ががあると思います。 ○M委員  私が申し上げているのは、労働経済学の話とか関係のない──多少関係ありますけれ ども、賃金とか物価上昇とか、金利のところですね。そこが、今、異常にみんな低く出 ていますので、それは多分ある程度戻るでしょうと。  失業率とか、かなり細かいいろいろな先の需給の見通し、その他のところは、これは いろいろな要因があると思いますが、それはK委員の分野で私の発言する分野ではなく て(笑)、マクロ的な指標のところです。 ○会長  4時20分近くになりました。きょうご審議をお願いする事柄が3つございまして、 まだ2つ目の終わりの方です。最後が「国民年金事務の改善について」です。ご存じの ように、総務庁から勧告が出ております。そちらの報告も聞いたらと思いますが、いか がでございましょうか。A委員、よろしゅうございますか。 ○A委員  1つだけ言っておきたいんですが、私は事務局の方で今お出しになった数字が、失業 率なら失業率の問題を正確に織り込んでいるかいないかという、正確度の問題ではなく て、これはむしろ数字のつくり方の基本的な姿勢の問題だと思うんですね。  つまり、マクロ経済バランスの中でこれを議論するのか、幾つかの指標を代表的に取 り上げて、それについての個別に動かしてみるかどうかという問題とは違うことなので その意味では、別にこれが正確かどうかということとはちょっと違うのではないかと。  むしろ、年金の問題を考えるときに、そういう個別手法を全体との関連とは別に、個 別に動かしてしまうようなことが、予測という名のもとに行われていいのかどうかとい うことの方が問題なので、例えば年金水準がある程度あるということは、マクロで見た 消費支出については、比較的消費性向の高い高齢者の場合にはそれはどういうふうに作 用するのかといったことも含めた、本当の意味でのマクロ的な検討が望まれるけれども 従来、そういうことはやられてこなかった。その限界の問題だというふうに、私どもは 受けとめております。これは答弁とかそういうことは一切要りません、感想です。 ○会長  それでは3つ目の事柄として、国民年金事務の改善について、総務庁から勧告のあり ましたことについて、ご報告をお願いします。 ○事務局  資料の4をごらんいただきたいと思います。  国民年金事務につきましては、当審議会で昨年10月21日、また本年4月7日にも ご説明させていただきましたが、その後の動き等を踏まえ、現在の検討状況につきまし て、ご報告させていただきます。  1ページの下半分にある(1)でありますが、地方分権推進計画という閣議決定が5月2 9日になされております。内容的には、昨年ご報告させていただきました地方分権推進 委員会の第3次勧告に沿ったものでありますが、基本的には機関委任事務というものは やめまして、国の直接執行と固有事務と法定受託事務にするということであります。  その中で、国民年金事務につきましては、一部、法定受託事務ということになってお りますが、基本は国であるということで、国での直接執行ということであります。  なお、地方事務官制度につきましては、国の直接執行事務ということで、これは廃止 されるということであります。  2ページはその内容で、国民年金の関係に限定しております。法定受託事務というこ とで、言わば残されるものでありますけれども、主なものとしては基本的に各種届け出 の受理と審査ということであります。  ※でありますが、そういった事務につきましても、できる限り市町村の事務負担を軽 減する方向で見直すという注釈がついております。  廃止されるものとしては、下の方にありますが、手帳の交付の経由、国民年金印紙の 検認といった事務であります。  4月にもご報告いたしましたけれども、現在、前年度の保険料は印紙の方式で市町村 でお集めいただいておるわけでありますが、この印紙の方式をやめるということになり ますと、これはもう方法は2つしかありません。1つは、国で現年度のものも徴収する 2つは、現在、過年度のもの、つまり滞納になったもの、あるいはそれを含めた督促と か滞納処分、これは社会保険事務所、すなわち国の方での担当になっておりますけれど も、これも改めて市町村に法律の変更も含めてお願いするという2つしかございません それにつきまして、後ほどまた申し上げますけれども、そのほかの事務の流れ等ともあ わせまして、国で一元的に徴収をしようという方向で検討いたしております。  3ページであります。  2つ目の動きでありますが、先ほど会長からご案内いただきました総務庁の行政監察 であります。これが6月8日に出されました。国民年金につきまして、実地の調査もさ れまして勧告がなされたわけでありますが、ここではそのうちの結論部分を抜粋いたし て紹介させていただきたいと思います。  まず、「(1)第1号被保険者の適用促進」でありまして、「 1)基礎年金番号等を活用 して、適用者を把握しなさい」ということでありますが、これは現在、そういう方向で 進んでおります。総務庁の調査時期から多少時間が経過しており、これは順次進めると いう方向であります。  それから、「 2)滞納のため、25年の期間が足りない人について特例で何とか給付が できないか」ということでありますが、これは制度問題であります。 それから、(2)でありますが、「保険料免除制度の運用の適切化」ということであり ます。「 1)申請免除」につきまして、すなわち自分がこういう事情で払えないというこ とで免除させてくれということができるようになっているわけでありますが、その中で 例えば生命保険料が多額の場合には免除しませんよというようなことになっているわけ ですけれども、そういった場合の認定が現実にはなかなか難しいのではないかというよ うなことがあります。  それから、 2)では、免除に当たって、いろいろな資料をご提出いただくことになって おりますけれども、そういったものについて資料をすべて出させるということが往々に してないではないか、あるいは実際には十分な厳しい審査がなされていないのではない かといったような指摘であります。これにつきましては、免除の基準にも大いに関係す ると考えております。  (3)でありますが、「保険料納付の徹底」ということでありまして、4ページの 1)で ありますが、地域ごとの成績の違いが非常にあるということです。これは審議会でもご 報告させていただきましたけれども、そういった原因の分析を十分しなさいということ であります。  それから、 2)でありますけれども、未納者に対しましても納付督促の実施あるいは法 令で定められた滞納処分の実施といったようなことをしっかりやりなさいということで あります。  これも積極的に実施するということで、4月にご報告させていただきました。現在、 どういうふうにやるか詰めておるところであります。  イでありますが、「保険料納付に係る印紙制度の見直し」です。先ほどの閣議決定で も、印紙検認事務は廃止ということでありますが、その場合の方法でありますけれども この勧告の中では現年度保険料の納付方法の合理化を図る観点から、保険料の納付先を 社会保険事務所に一元化ということで書かれております。  (4)は「学生の保険料納付のあり方」であります。  これにつきましては、当審議会で制度論的に議論が多々なされておりますけれども、 ここで言われておりますのは、在学期間中は猶予しまして、卒業後に払ってもらっては どうかという、そういう制度の検討ということであります。  これは、いただく分には財政的にはいいわけでありますが、猶予ということになりま すと、債権管理等の問題がありますので、そういったものをクリアするための別の、例 えば貸付とかそういったものとのセットができないかということもあわせて検討いたし ております。  それから、5ページでありますが、3番目であります。  衆議院の決算委員会が決算行政監視委員会に変わりましたが、そこで前国会にさまざ まな議論がなされました中で、主要なものを委員長報告ということで、6月17日に取 りまとめられておりますが、その中で、国民年金が1項目入っております。  それがその四角の中でありまして、空洞化というようなことが大変心配だというのが 前提に書いております。4行目からでありますが、「このため、戸別訪問による納付督 励の実施あるいは罰則の適用など現行の未納者・未加入者対策の充実を図る。また、保 険料納付の利便性を高めるなど、新たな仕組みの構築や制度的対応について検討を早急 に進めるべきである」。  ここでの「新たな仕組み」と言いますのは、国会の議論の中では,コンビニエンスス トアの活用であるとか、あるいは未納者に対する生命保険料控除の廃止といったような ことが議論されておりますので、そういったものを多々含んでおるものと理解しており ます。  また、その次に、「国民の不信感を払拭し」──すなわち、崩壊するのではないかと いう心配を払拭し、「制度に対する正しい理解を深めるための広報・情報提供活動を充 実させなさい」ということであります。  次に、6ページ以降でありますが、簡単に説明させていただきます。  これは、昨年10月にお配りいたしました「事務処理の流れ」のうちの国民年金関係 部分のものであります。  そのうち、先ほどの閣議決定で議論になっておるものがどこかというのを点々の四角 で囲っております。市町村との関係でありますが、上の方で適用勧奨、こういったもの につきましては、今の機関委任の中でも必ずしも位置づけがはっきりしないということ で、これは廃止というようなことであります。  それから、下の方の年金手帳を被保険者に市町村を経由してお渡しいただいておるわ けでありますが、これも廃止ということでありまして、法定受託として残りますのは、 真ん中でありますが、各種の届け出及び受付及び審査ということであります。  それから、その次の7ページでありますが、保険料の関係でありますけれども、先ほ ど来申し上げておりますが、下半分でありますけれども、未納のまま翌年度に行った場 合、これをいただくのを過年度保険料徴収と言っておりますけれども、こういった関係 あるいは保険料の追納、これはすべて社会保険事務所になっておりますので変更はあり ませんが、現年度、つまり払うべき年のうちにいただく保険料でありますが、これが印 紙方式になっておるわけでありますけれども、これの印紙の廃止による見直しというこ とで、ここが見直しになります。  上のところは、保険料免除の関係の申請の受付等でありますので、これは各種届け出 の受付ということで、法定受託ということになるわけであります。ただ、免除基準の明 確化という問題は残ろうかと思います。  それから、その次の8ページでありますが、給付の関係でありますけれども、基礎年 金の導入以来、2号期間が少しでもありますと、これは既に社会保険事務所に直接とい うことになっておりますし、現況届けなどは社会保険業務センターと受給者が直接に接 触するということになっておりますので、下半分は関係ないわけであります。  全期間、全く2号期間がない、ずっと自営業者であったという方につきましては、市 区町村で年金裁定請求の受付といったことになるわけでありますが、それは数は非常に 少ないと思いますけれども、残るということでありますけれども、年金証書の送付、そ ういった経緯は廃止ということで点々で囲ってあります。  そこで、恐縮でありますが、1ページに戻っていただきまして、現在の検討状況等で あります。5点ほど、1)〜 5)までありますけれども、「 1)国民年金未加入者の解消」 であります。これは基礎年金番号等の活用等でありますけれども、そのほか、4月に若 干ご説明させていただきました医療保険の保険者との情報交換ということで協議・調整 を進めております。  といいますのは、被扶養者関係につきましては、健保組合等から提供を受けますし、 また国民健康保険と第1号被保険者は範囲が一致するということでありますので、私ど もからは2号の情報を国民健康保険の保険者に提供いたしまして、逆に国民健康保険で の受付、届け出等の情報を私どもがいただく。これによって、お互いに非常にメリット が出るのではないかということであります。  かいつまんで説明させていただきますが、「 2)保険料未納対策」であります。これは 先ほど来いろいろなところで指摘されておりますように、現行法規を使って厳しくやる ということでありますけれども、そのほかに先ほどのように印紙の廃止に伴いまして、 徴収を国に一元化する。現年度と過年度で双方で記録管理もダブって行うという問題も 報告させていただいておりますけれども、それを一元化するという方向で検討しておる わけであります。  それから、「 3)保険料免除の適正化」の関係でありますけれども、これにつきまして は、前回もご報告させていただきましたけれども、申請免除のうち、いわゆる特例免除 裁量によるものが37%と大変多くなっておりますし、地域間の格差も非常に大きくな っております。そういったことで、免除基準をだれが見ても明らかなような基準の明確 化、すなわち公的な証明、そういったものをつけて提出いただけば済むと、そういうこ とにならないかなということで、年金局とも検討しておるわけであります。  また、事務処理方法につきましても簡便化ということで検討いたしております。  それから、事業運営の効率化とかサービスでありますけれども、これらにつきまして も届け出用紙の統一化あるいは届け出用紙がどこでも手に入るような、タッチパネルの 簡単なプリンターでどこでも出るようなものをあちこちに設置してみようとか、そうい ったことであります。また基礎年金番号を導入しておりますので、過去の記録をご本人 にお知らせして注意を喚起するということ、さらには、裁定請求につきましても必要事 項をこちらで記載してお送りして、それを確認して出していただく。これによって相談 の件数などはかなり減るのではないかと思うわけでありますが、そういったものの検討 をしております。あるいは前回もご議論がありましたけれども、国民年金委員、いわゆ るボランティアの大幅な充実・活用といったことなども検討しておるわけであります。  そのほか、先ほど来、医療保険等の情報交換、そういったことを申し上げました。そ の過程で、個人情報が不当に出ていかないように、情報を見た人にその情報を管理して いただく、守っていただくという意味での規定といったようなことも、これはぜひ制度 としてお願い申し上げたいと思うわけであります。  大変、時間が超過して申しわけありませんが、報告を終わらせていただきます。 ○会長  ありがとうございました。  ただいまご報告のありました事柄につきまして、ご質問、ご議論などがございました ら、どなたからでもお願いします。 ○A委員  ご報告ですから、承っておけばいいことなのかもしれません。あえて議論も、もう時 間も時間ですから、やめたいと思います。  2つだけ申し上げておきたいと思いますが、事務局のご報告を聞いているたびに、聞 いている方が悲しくなるくらい大変な話だなと。こういう悲しい話、切なくなるような 話を生み出しているのは、やはり現行制度の基本的な構造欠陥だと思いますから、改め てそういうものとして検討を必要としていると思います。  それから、もう一つ、具体論でございますが、地方事務官制度の廃止はいいんですが これを改めて現在の地方事務官として社会保険事務所でやっていらっしゃる方々を国家 公務員とし、そして国の一元化というのは、これは分権の方向とは明らかに逆行するも のだという立場から、私どもはこれに反対であることは申し上げておきます。  むしろ、事実、これまでの地方事務官の人たちは地方公務員と極めて近い、事実上、 地方公務員として通念されてきましたし、例えば労働組合であれば、それは自治労に入 っているわけですね。  それから、先ほど医療保険との情報交換と言いましたが、特に、1号の場合の医療保 険というのは、国民健康保険、これは市町村であります。そういった意味から言えば、 これは国からの委託事務、全面的に地方自治体で受けとめることに何の問題もない、む しろその方が効率的じゃないか。これは意見ですので、特にお答えは求めません。以上 です。 ○事務局  それでは、ご説明だけさせていただきますが、地方分権の考え方は、国と地方との仕 事をその本質に基づいて整理をしようということであろうと思っております。  年金の場合には、保険者は国であるということから、先ほど申し上げたような結論に なったものと理解いたしております。 ○G委員  私、あまりたくさん言うことはないんですが、国民年金というのが一番問題の多い制 度だと思いますので、これを何とかして国民の方の合意をしっかり得て、そして生活保 護とは違うシステムだということを理解してもらった上で、しっかり保険料も納めても らう、また給付もする。  そこをしっかり言わないと何となく曖昧であるというので、最後に書いてございまし たけれども、その周知徹底ということを図っていただきたいと思います。 ○会長  それでは、ご報告を承ったということでよろしゅうございますか。4時40分になり 時間が少し長引きました。本日、予定された議事をこれで終了にしてよろしゅうござい ましょうか。 ○A委員  本日予定された議事の終了に関しては全く異議はございません。  ただ、きょうのような重大な問題が3つも一時にこういう格好で出されるということ は、審議会としてこれは審議したうちに入るのかということについて、重要な問題だと 思いますので、今後の審議会運営にもかかわると思いますが、こういうものを出して、 ザーッと頭から資料説明をやって、何となくチョロチョロ言わせて、はい、審議終わり というふうなことで済ましていい問題だとは、きょう出されている問題、最後のご報告 事項も含めて思わないんですね。  ですから、積立金の運用の問題、それから経済的な基本指標の問題、最後のご報告の 問題は、これは明らかに基礎年金制度のあり方にかかわる問題です。いずれにつきまし ても、それぞれ独立して1回ずつの審議の時間をとっていただくように強くお願いした いと思います。  そうでないと、当審議会の議論というのは、ただダラダラと流されて、実際の改正の 具体案というのはそういう審議の積み重ねとは別個なところで生み出されるのではない かと、非常に強い懸念と不安を抱いております。この不安が不信に転化しないように、 よろしくご配慮のほどをお願いいたします。 ○会長  この会合自体は7月にもございますし、8月にもございます。資料の準備その他につ いては、事務局からいろいろご案内があるかと思います。  本日の資料の取り扱いでございますが、参考配付の『年金福祉事業団の資金運用の推 移』につきましては、年金福祉事業団の方から今週末に公表するということになってお りますので、それを待つことにいたしまして、ほかの資料はすべて今までどおり公開す ることとしたいと存じますが、よろしゅうございましょうか。 ○A委員  『積立金運用研究会の報告書』がきょう入っておりますけれども、これの公表は審議 会としての公表になるんですか、それとも厚生省独自の公表になるんですか。 ○事務局  これは研究会として報告をするということです。研究会の座長がちゃんと記者会見を して、報告していただきます。 ○A委員  ということは、きょうの審議会資料の公表のうちには入らないと理解していいわけで すね。 ○事務局  期日がたまたまきょう一致しているわけですので、これは研究会報告ということで、 きょうきちんと報告いたします。 ○A委員  はい。 ○会長  資料の5と6が残っております。ご説明をお願いします。 ○事務局  資料の5と6は、これまでの審議会の議事要旨でございますので、お目通しをいただ きたいと思います。 ○会長  それから、今後の議事日程、審議の予定について、ご説明をお願いします。 ○事務局  2つ申し上げます。1つは、7月10日の審議会でございますが、14時からという ことでご案内させていただいておりますが、会場につきましては、平河町の全国都市会 館3階の会議室ということになりますので、場所につきましては、恐縮でございますが お手元に資料を配付させていただいておりますので、よろしくお願い申し上げたいと思 います。  それから、もう一つ恐縮でございますが、9月の審議会の日程につきまして、委員の 大方のご都合を伺いまして、9月8日(火)午後2時からということでお願いしたいと 思います。それから、もう一つは、9月16日(水)午前10時からということで、と りあえず9月2回の審議会の日程につきまして、確保をお願い申し上げたいと思います よろしくお願い申し上げます。 ○会長  以上で、本日は閉会したいと思いますが、よろしゅうございますか。              〔「異議なし」の声あり〕 ○ 会長  それではどうもありがとうございました。閉会いたします。 年金局 企画課 須田(3316)