98/06/26 第78回人口問題審議会総会議事録 第78回人口問題審議会総会議事録    平成10年6月26日(金)    10時30分〜12時30分 共 用 第 9 会 議 室 椋野室長 大臣官房政策課情報化・地域政策推進室長の椋野でございます。今般、     これまで会長をお務めいただいた宮澤委員を含め、委員及び専門委員の     方々の大幅な改選がございましたので、会長が互選されるまでの間、私     が暫時、進行役を務めさせていただきます。      本日はご多用のところご出席いただきまして、まことにありがとうご     ざいます。ただいまより第78回人口問題審議会総会を開会いたします。      まず、お手元の人口問題審議会要覧、こういう青い冊子がお手元に配     布してあると思うんですけれども、その13ページに名簿が載っておりま     すので、それに沿って委員並びに専門委員の方々を紹介させていただき     ます。13ページに名簿が載っておりますけれども。では、あいうえお順     に私のほうからご紹介をさせていただきます。      放送大学教授、麻生委員でいらっしゃいます。国立社会保障・人口問     題研究所副所長、阿藤誠委員でいらっしゃいます。それから日本大学教     授、井上委員でいらっしゃいます。産経新聞社論説委員、岩渕委員でい     らっしゃいます。王子製紙株式会社代表取締役社長、大國委員です。大     國委員は、今日はご欠席のご連絡をいただいております。それから中央     大学教授、大淵寛委員でいらっしゃいます。早稲田大学教授、岡沢憲芙     委員も今日はご欠席のご連絡をいただいております。それから共立女子     大学教授、木村治美委員も今日はご欠席のご連絡をいただいております。     それから日本労働組合総連合会副事務局長、熊崎清子委員でいらっしゃ     います。株式会社リクルート代表取締役社長、河野栄子委員も今日はご     欠席のご連絡をいただいております。それから全国生命保険労働組合連     合会中央執行委員長、河野洋太郎委員も今日はご欠席のご連絡をいただ     いております。甲南女子大学教授、小林登委員でいらっしゃいます。日     本母性保護産婦人科医会会長、坂元正一委員も今日はご欠席のご連絡を     いただいております。慶応義塾大学教授、清家篤委員でいらっしゃいま     す。それからお茶の水女子大学教授、袖井孝子委員も今日はご欠席のご     連絡をいただいております。日本医師会会長、坪井栄孝委員も今日はご     欠席のご通知をいただいております。それから株式会社イトーヨーカド     ー取締役、水越さくえ委員でいらっしゃいます。兵庫県立看護大学学長、     南裕子委員も今日はご欠席のご連絡をいただいております。それから一     橋大学名誉教授、宮澤健一委員でいらっしゃいます。毎日新聞社論説委     員、宮武剛委員でいらっしゃいます。それから上智大学教授、八代尚宏     委員でいらっしゃいます。八代委員は、ちょっと遅れていらっしゃるよ     うです。それから日本アクチュアリー会参与、山本正也委員でいらっし     ゃいます。厚生年金基金連合会理事長、吉原健二委員でいらっしゃいま     す。      それから専門委員のほうに移らせていただきます。東京女子医科大学     助教授、安達知子委員でいらっしゃいます。新任の委員でいらっしゃい     ますが、今日はご欠席のご通知をいただいております。それから上智大     学教授、網野武博委員でいらっしゃいます。それから元日本大学教授、     岡崎陽一委員でいらっしゃいます。新任の委員でいらっしゃいます国際     日本文化研究センター助教授、落合恵美子委員でいらっしゃいます。そ     れから奈良女子大学助教授、木村陽子委員でいらっしゃいます。それか     ら麗澤大学教授、河野稠果委員でいらっしゃいます。一橋大学教授、高     山憲之委員でいらっしゃいます。新任の委員でいらっしゃいます東北大     学教授、水野紀子委員でいらっしゃいます。それから東京学芸大学助教     授、山田昌弘委員でいらっしゃいます。      以上でご紹介を終わらせていただきまして、続きまして本審議会の会     長の選出を行いたいと思いますけれども、いかがいたしましょうか。 大淵委員 昨年、人口問題審議会の報告書を取りまとめるにあたって大変ご尽力     なさいました前会長の宮澤健一委員に、引き続き会長をお願いしたらど     うかと考えますが、いかがでしょうか。 椋野室長 ただいま大淵委員より宮澤健一委員を会長にというご提案がございま     して、皆様からご異議もないようでしたので、それでは引き続き宮澤健     一委員に会長をお願いすることとさせていただきます。それでは宮澤会     長、以後の進行について、よろしくお願いします。 宮澤会長 ただいま、会長ということで、引き続き務めさせていただきます。皆     様、委員、専門委員の方々のご協力を得まして、円滑に運営を進めてい     きたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。      それでは、ただいまから本日の議題に入らせていただきます。報告が     3点ほどございますが、1つは『第11回出生動向基本調査』、もう一つ     は『平成9年人口動態統計月報年計の概況』、それから『平成10年版厚     生白書』、この3点につきましてご説明いただきます。      最初に『第11回出生動向基本調査』につきまして、国立社会保障・人     口問題研究所、高橋人口動向研究部長からご説明をお願いいたします。      よろしくお願いします。 高橋部長 それでは、こちらのほうから説明させていただきます。座ってご報告     いたします。      お手元の資料の資料番号2番をごらんいただきたいと思います。1枚     目をめくっていただきますと、調査の概要について記述がございます。      この『第11回出生動向基本調査』は、昨年の6月に全国で実施したも     のです。そもそもこの調査は、戦前の昭和15年に第1回を実施しており     まして、第2回目が昭和27年に実施されております。それ以降、5年ご     とに『出産力調査』の名称で実施してきているものです。      今回報告します調査には夫婦調査と独身者調査と2本がございますけ     れども、夫婦調査について報告させていただきます。      この夫婦調査は、全国の妻の年齢50歳未満の夫婦を対象としておりま     して、回答者は妻ということになっております。そして平成9年6月1     日現在の事実について調べたものです。そこに表I−2−1がございま      すけれども、調査客対数が9,417、最終的に有効な票数というのは8,148、     有効回収率が86.5%というものでございます。      それでは、さっそく結果についてご報告申し上げます。2ページのほ     うをご覧いただきたいと思います。      近年の少子化、つまり出生率の低下の最大要因というのは晩婚化とい     うことでございます。この調査におきましても、近年結婚した夫婦がど     のような結婚の仕方をしているかということをまず調べております。最     初にございます表II−1−1によって、夫婦がどのように出会い、どれ     ぐらいの交際期間を経て結婚したのかということを調べてみますと、19     87年の調査では夫が25.7歳で出会い、結婚の年齢が28.2歳でありました。     妻のほうは平均出会い年齢が22.7歳で、平均初婚年齢が25.3歳。平均的     な交際期間というのが2.5年ございました。ところが97年、昨年のデータ     で見ますと、夫について見ますと、平均出会い年齢が25.1歳と若くなっ     ています。ところが平均初婚年齢は、ほぼ同じ28.4歳ということになっ     ております。ところが妻のほうはこの傾向と違いまして、平均の出会い     年齢は22.7歳とほとんど変わりない。しかしながら平均初婚年齢は26.1     歳と上昇傾向にある。したがって、結果的に平均の交際期間というのが     3.4年と、10年前の87年の調査と比べて1年ほど交際期間の延長傾向が見     られます。      このことは後で触れますけれども、交際期間の延長ということと、そ     して夫の平均出会い年齢が下がって妻の平均初婚年齢が上がったという     ことが、結果として結婚年齢差の縮小傾向に拍車をかけています。      3ページのほうに入りますと、夫妻がどのようなきっかけで出会った     かということ、そしてそれぞれの出会い方と交際の期間がどう違うのか     というものを見ております。学校で出会ったというのは平均出会い年齢     が最も若くて18.3歳、妻のほうで17.7歳、平均交際期間が7.4年と非常に     長期にわたっています。しかしながら、それ以外の出会いのきっかけで     は、見合いを除いてほぼ3〜4年弱という年数になっております。      下の図をごらんいただきますとよくわかると思うんですけれども、見     合いというのは夫の場合30歳を越えてから発生している。妻のほうで見     ますと、見合いは27歳を越えたところにあり、やや他の出会いの仕方と     異なっているという傾向がうかがえます。      次に4ページのほうに入りますと、近年、高学歴化の進行というのは     ますます進んでいるわけですが、こうした学歴別に見た場合、こういう     出会いや結婚というものがどうなっているのかというのを見てみますと、     下の図で見ると明白に見て取れるんですけれども、学歴別に出会いの年     齢が違う。そして、出会いの年齢が高学歴で遅い分だけ結婚の年齢も遅     いという実態が、夫も妻も現れています。したがいまして、高学歴化の     進行というのが、こうした出会いの年齢が遅く結婚の年齢の遅い層の増     加ということにつながりますので、全体として高学歴化というのは結婚     の年齢に対して相当の強い影響を持っているということが推察されます。      5ページ目の表II−1−4のほうですけれども、これがいわば夫と妻     の結婚年齢の組み合わせに関する調査結果です。1982年の調査を見ます     と、同い年婚というのが11.5%でした。ところが今回の調査では16.5%     というように、同い年での結婚が増えている。なおかつ妻1歳年上も19     82年の5.9%から現在では11.9%というように、いわば夫が年上で妻が年     下というパターンが、そうとう崩れてきつつあるということがうかがえ     ます。その事実は、その下の図からも明らかでありまして、平均年齢差     の減少、そして同い年婚、妻年上婚のパーセンテージの増加から明らか     になっています。      続いて6ページのほうをごらんいただきたいと思います。配偶者選択     の機会ということなんですが。どのような出会いの仕方をしているのか     というのを分布で見てみますと、職場や仕事でというのが33.6%、友人     ・兄弟を通じてというのが27.1%、学校でというのが10.4%。この三者     で71.1%を占めておりまして、いわば出会いのきっかけというのはこの     三者がそうとう大きいということがわかります。さらに今回の特徴の1     つは、見合い結婚が1割を切ったということでありまして、今回の調査     で見ますと9.6%という結果になっております。      7ページの右側のほうは、これを時系列的に並べたものでありまして、     戦前の見合い結婚7割台が、1965年前後に見合いと恋愛結婚がイーブン     になって、そして現在の1割を切る水準へと大転換をしてきたというこ     とがうかがえます。ここまでは結婚に関するものです。      8ページ以降で、夫婦の子どもの生み方について調べております。ま     ず最初のところで見ておりますのは、すでに子どもを生み終えたという     夫婦について、子どもはどれぐらい生んでいるのかというのを見たもの     です。結婚15〜19年を経過した夫婦ということになります。      戦前段階の4人を超える水準から1972年の第6回調査で2.20人を記録     して以降、ほぼ2.2人の水準を保っておりました。今回の調査でも生み終     えた夫婦について見ますと2.21人と、前回調査とまったく同じ水準であ     りました。そして具体的な分布を見てみますと下の表なんですけども、     子ども2人、子ども3人を合わせて81.5%と、日本人の結婚した夫婦の     8割は2人か3人の子どもを持っているという状況が現れております。      ただし、子ども0人というのが前回調査に比べて0.6ポイント上昇して     おりますし、子ども1人というのも9.3%から9.8%へと若干増えており     ます。そして逆に2人というのが56.3%から53.6%へと減っておりまし     て、逆に3人、4人が若干増えているという結果になっております。      9ページのほうにまいりますと、これは結婚の年齢が若いほど子ども     を生んでいるという結果でありまして、19〜20歳で結婚した場合は平均     的に2.35人の子どもを持っている。ところが29〜30歳と結婚の年齢が遅     くなると、子どもの数というのは2人を割り込んで1.78人という水準に     なっていきます。この傾向は以前の調査でも同様の傾向でありました。      9ページの下のほうは、社会経済的な階層別に出生率に差があるのか     どうかというのを見たものですけれども、これは以前から見られること     で、非人口集中地区で子ども数がやや多く、都市部で少ないという傾向。     さらに農林漁業という職種の部分で子ども数は多くてホワイトカラーで     少ないという傾向が現れております。      10ページのほうにいきたいと思います。出生のタイミングということ     なんですけれども。結婚してから第1子を生むまでの期間というのは、     今回調査で1.60年ということでありました。前回調査は1.52年、前々回     は1.54年ですから、若干伸びているという特徴はうかがえます。しかし     ながら平均的に4.45年という数字でありまして、これはほぼこれまでの     調査と似たような数値になっております。      次に11ページの上の方を見ていただきたいと思います。11ページ以降     が最近、1980年以降に結婚した夫婦の出生行動についての表であります。      この結婚0〜4年、結婚してからまだ5年たっていない夫婦について     見ますと、1987年の出生率が0.91人であると。92年が0.80人、97年が 0.71人だというように、いわば結婚から若い、あまり時間の経過してい ない夫婦のところで出生率の低下傾向が見られる。5〜9年についても 1.96人、1.84人、1.75人というように出生率が落ちておりまして、どう やら1980年代以降に結婚した夫婦の出生行動は、それ以前の世代とそう とう違う様子が今回の調査で明確に表れてきております。      これをより仔細に見るために、その一番下の表ですが、III−2−5と     いう表があります。出生子ども数0人の割合というところを見てみます     と、結婚0〜4年で子ども0人という人々のパーセンテージが1987年で     32.5%ありました。92年で38.9%、97年で42.6%と、この10年間の調査     を調べてみますと、ここの部分のパーセンテージが上昇している。5〜     9年につきましても同様でありまして、87年の調査で4.8%であったもの     が、今回調査で10.3%と増加をしております。10〜14年についても若干     の増加傾向がうかがえます。このように、近年に結婚してそれほど時間     の経過していない夫婦については、子どもを持たないという行動をとり     つつ出生率を下げているという実態がうかがえるわけであります。      12ページをごらんいただきたいと思います。12ページのほうでは、日     本全体の女性1人あたりの出生率として合計特殊出生率がございますけ     れども、この調査データを用いますと結婚した夫婦の合計特殊出生率に     相当する合計結婚出生率というのが観察できます。前回までの調査で見     ますと、だいたい1990年ごろの水準で2人を超える水準にありましたけ     れども、今回調査の結果、90年代に入って以降、この水準が1.9内外の水     準にあるということがわかりました。ただし、この率というのはコーホ     ートのデータではありませんので、このデータを読む際には注意が必要     かと思います。      13ページのところは避妊に関するデータでございます。前回、10年前     の調査で見ますと64.6%が現在避妊を実行中であると。今回調査では 60.4%と、やや減少傾向にあります。避妊の手段につきまして見てみま すと、我が国の場合は伝統的にコンドームが一番多いという状態には変 わりはございません。      それから14ページの下の表で人工妊娠中絶について見ますと、全体の     平均回数が0.32回ということでありまして、全体の22.8%が経験ありと     答えております。ただし、これは妻の年齢の若い時期の経験数というの     は少ないわけでありまして、45〜49歳になりますと41.7%の人々が経験     ありと答えておりまして、平均回数は0.62回ということになっておりま     す。そのことからも避妊の失敗による、いわばバックアップアボモーシ     ョンといいますか、そうしたものの存在というのが推察されるわけです。      15ページのほうに入りますと、理想子ども数に関する表がございます。      理想的な子どもの数と具体的に実際に持つ予定の子ども数を調べてお     りますが、理想子ども数は前回までの調査で2.6人を超えていたものが、     今回2.6人を割り込み2.53人という数値が観察されました。さらに具体的     に持つ予定子ども数は、前回調査の2.19人から2.17人へと若干減少傾向     にあります。      下の図を見ていただきたいんですけども、結婚0〜4年、5〜9年の     ところで見てみましても、予定する子どもの数というのは若い夫婦でも     2.12人の水準であります。そしてこの予定子ども数というのは、そうと     う実現の確度の高いものでありますので、若い夫婦は現在出生率が低い     んですけれども、出生の意欲はそうとう持っている。2人を超える水準     はあるということに留意する必要があるかと思います。      若干ページを飛ばしまして18ページのほうをごらんいただきたいと思     います。18ページのほうで理想とする子どもの数と予定する子どもの数     の間にギャップがある人について、なぜ理想の子どもほど実際に予定し     ないのかという理由を聞いております。これを聞いてみますと、最も高     いのは「一般的に子どもを育てるのにお金がかかるから」というのが37     %。「子どもの教育にお金がかかるから」というのが33.8%。次いで      「高齢で生むのはいやだ」というのが33.5%という結果でありました。      ここで注意しておきたいのは、前回調査、第10回調査、それから82年     調査と比べて、この3つともこの理由を掲げる人々というの増加をして     きているというところに注目しておく必要があるであろうと思います。      さらに「一般的に子どもを育てるのにお金がかかる」というのは、非     常に年齢層の若いところでパーセンテージが高い。25歳未満では73.1%     という高率になっているというのが特徴になっております。      ページを飛ばしまして20ページにいきたいと思います。20ページのと     ころでは、妻の就業ということと出産ということの関連を見ております。      20ページの表をごらんいただきますと、ここでは一貫就業コースと非     一貫就業コースというライフコース別に人々の状態を見ております。       まず人口集中地区で見ますと、一貫就業コースの人々が5年前に比べ     てパーセンテージが増加をした。結婚0〜4年では31.2%から37%へ増     加しておりますし、5〜9年でも同様の傾向がある。つまり、働いてい     る母親が増えてきている実態というのが、この調査から見て取れるわけ     です。      それと出生率の関係については、次の21ページのほうにあります。一     貫就業コースのところを見てみますと、0〜4年で0.25人でありまして、     非一貫就業コースと比べてそうとう低い。さらに5〜9年についても 1.82人と1.20人ですので、そうとう低いと。つまり一貫就業の人々の出 生率の水準というのが、そうとう低いということがわかります。      じゃあ、この原因はいったい何だろうかということを若干見てみます     と、その下に妻のライフコース別に子どものいない夫婦の割合を調べて     いますが、結婚0〜4年で一貫就業コース78.8%が子どもがいない。つ     まり、結婚からしばらくの間、子どもの出産を控えている。そして長ら     く働いているという実態がうかがえます。かつてのように結婚退職が一     般的な時代から、結婚して第1子の出産をもって退職するパーセンテー     ジが増えている中では、このように結婚の開始からしばらくの間の子ど     もを持たないということによって出生率が落ちてくるという可能性がう     かがえるわけです。      まだまだいろいろ資料はございますけれども、時間の都合でここで報     告を終わらせていただきたいと思いますが、今回の調査から特に重要な     ことを最後に一言申し上げておきますと、80年代以降に結婚した人々の     出生率に陰りがそうとう出てきているんだということを特徴として申し     上げておきたいと思います。以上です。 宮澤会長 どうもありがとうございました。それでは、ただいまの説明について     ご質問、あるいはご意見がございましたら、お願いいたします。はい、     どうぞ。 岩渕委員 経済階級別の調査というのをもうちょっとやったらどうかというのが     閣僚懇談会なんかでも出ていたようなんですけれども、やるのはなかな     か難しいかと思うんですが、ちょっと工夫して努力していただきたいと     思います。 宮澤会長 ご要請でありますが、事務局のほう、何かございますか。ひとつご検     討をお願いいたします。他にございましょうか。      それでは続きまして平成9年の『人口動態統計月報年計の概況』につ     きまして、中田人口動態統計課長からご説明をお願いいたします。 中田課長 人口動態統計課長の中田です。先日公表した平成9年の『人口動態統     計』につきまして説明させていただきます。      資料の3の中の「平成9年人口動態統計(概数)の結果の概要」をは     じめにごらんいただきたいと思います。      この結果は平成9年の1〜12月の各月分の出生数等の結果を集計した     ものです。出生数ですが、平成9年は119万人ということで、平成8年の     121万人から1万5,000人ほど減少しております。合計特殊出生率も1.39     ということで1.4を割りまして、平成8年の1.43から0.04ほど減少してい     ます。死亡数は逆に91万3,000人ということで、平成8年の89万6,000人     から1万7,000人ほど増加しています。      この結果、出生数から死亡数を引いた自然増加数が27万8,000人という     ことで30万人を切りまして、平成7年に次いで戦後では2番目に低い伸     びということになっています。人口に対する伸びは0.22%です。この結     果、県別で見ますと8つの県で人口が減少しています。      次に婚姻組数ですが、77万6,000組ということで、平成8年の79万 5,000組から1万9,000組ほど減少しています。逆に離婚数は22万3,000組 ということで、平成8年の20万7,000組から1万6,000組ほど増加してい ます。内容につきまして、もう少し詳しくご説明させていただきます。      資料3の本文の5ページの図1ですが、そこに出生数と合計特殊出生     率の年次推移を示しています。棒グラフが出生数、折れ線グラフが合計     特殊出生率です。出生数のほうをみますと、戦後すぐに第1次ベビーブ     ームがあり、その子どもが昭和40年代後半に第2次ベビーブームという     ことで出生数が非常に増えたという時代がありました。本来ですと、現     在それらの子どもがまた子どもを生む時期で、ある意味では第3次ベビ     ーブームになってもおかしくはないときですが、そういう盛り上がりは     現在見られず、最近を見ますとほぼ横這い状態です。出生率は、合計特     殊出生率が示していますように非常に下がっています。つまり、分母の     赤ちゃんを生むお母さんの人口自体は増えているわけですが、出生率が     下がっているということで、出生数自体が横這いになっているというこ     とです。      この出生率の低下に関してよく言われております晩婚、晩産というこ     とですが、その晩産の状況を表3に示しています。第1子出生時の母の     平均年齢の年次推移ですが、平成7年、8年、9年と依然として少しず     つ上がっているという状況です。      次に、7ページの図2ですが、そこに合計特殊出生率の年齢階級別の     内訳を示しています。一番上が合計で合計特殊出生率そのものの年次推     移です。最近の状況をごらんいただきますと、傾向的に下がっていると     いうことがおわかりいただけようかと思います。内訳を見ますと、20代     の25〜29歳、それから20〜24歳、ここのところが下がっておりまして、     逆に30〜34歳や35〜39歳、このへんのところが少し上がっているという     状況です。全般的には20代で下がり、30代で上がっているという状況で     すが、20代の落ちこみが非常に大きいということで、30代で取り返しが     できずに全体として下がってきているということです。      平成9年は平成8年に比べますと、0.04と非常に大きく落ちたように     読まれるわけですが、その前の年が1.42で、そこから見ますと2年間で     0.03落ちているということで、これは1年あたり0.01〜0.02ぐらい落ち     てくるというトレンド上の動きを示しているというふうに私どもでは考     えております。      都道府県別にみますと(表5)、よく言われておりますが東京、神奈     川、あるいは京都、こういった大都市の地域で非常に低い出生率になっ     ています。鳥取と香川だけが若干ですが上昇しています。それから9ペ     ージの図4ですが、これも棒グラフが死亡数、折れ線グラフが死亡率と     いうことです。死亡数自体は高齢化の影響もございまして最近少しずつ     上がってきているというところです。平成9年をみましても、表6をの     ところみますとおわかりいただけると思いますが、死亡率の対前年増減     を見ても年齢階級別にはほとんど下がっているという状況ですけれども、     高齢化の影響もありまして死亡数は年齢階級別に見ても少しずつ上がっ     ているという状況です。      11ページに主な死因別にみた死亡率の年次推移を示しています。図5     をみていただきますと悪性新生物、これが非常に伸びているということ     がわかろうかと思います。心疾患と脳血管疾患が平成8年に比べまして     順位の2位と3位が逆転したのが今回の特徴です。これは平成7年に、     ICDと言っています国際的な疾病分類、これが変更になりまして、その      影響で統計の取り方が変わり、心疾患と脳血管疾患の順位が変わりまし     た。ただ、もともと心疾患は上昇傾向、脳血管疾患は減少ないし横ばい     傾向ということでしたので、変わった順位はそのうちまたもとに戻るだ     ろうと考えていたわけですが、2年かけてまた平成7年以前の状態の心     疾患、脳血管疾患という順位に戻ったということです。      16ページ、17ぺージをみていただきたいと思います。そこに婚姻の状     況を示しています。16ページの図8をみていただきますと、これも同じ     ように棒グラフが婚姻件数、折れ線グラフが婚姻率を示しているもので     す。平成に入りましてから婚姻数自体は若干増加の傾向にあったわけで     すが、平成9年は前年に比べまして減少いたしました。率につきまして     も減少いたしております。その内訳を見ますと、17ページの表9ですが、     対前年の増減数、対前年の増減率とも、20代のところで非常に落ちてい     るということがわかっていただけようかと思います。      また、少子化に絡みまして晩婚、晩産ということが言われるわけです     が、その晩婚の関係のデータを表10に示しています。初婚夫婦の平均婚     姻年齢を見ますと、夫のほうは28.5歳ということでここ数年ずっと変わ     っていませんが、妻のほうは毎年0.1ずつ現在も上がっていまして、晩婚     化傾向はまだ続いているということが言えようかと思います。      表11に県別に見た平均初婚年齢がありますが、これもよく言われてい     ますように東京ですとか神奈川、こういった都会地で非常に高くなって     いるということが見ていただけるかと思います。      18ページですが、離婚の件数及び離婚率の年次推移を図10に掲げてい     ます。離婚件数は、平成に入りまして非常に増えてきているわけですが、     平成9年は今までの伸び以上に非常に伸びています。19ページの同居期     間別の離婚の状況をみていただきますと、従来は比較的5年未満のとこ     ろ、それから20年以上のところ、この両極端のところで伸びが高いとい     う傾向がありましたけれども、平成9年につきましては、その他もほぼ     同じように伸びているのが一つの特徴かと考えています。      以上簡単ですが平成9年の人口動態統計の概況につきまして説明させ     ていただきました。 宮澤会長 どうもありがとうございました。ただいまのご説明につきましてご意     見、ご質問ございましたら、お願いいたします。 八代委員 遅れてきて申し訳ございません。いまご説明いただいた中で特に私が     興味を持っておりますのは、6ページの合計特殊出生率の年次推移、特     に年齢別で見たものであります。      今回の出生率の低下というのは、確かに平均値で見ますと中位推計の     想定の範囲内に落ちているように見えますけれども、年齢別で見るとか     なり大きな特長があるのではないか。特に30歳代前半の出生率が大きく     落ちている。これはいまのご説明ですと、単に前の年が上がったからそ     れを相殺して、トレンド上では変わりないというようなご説明だったと     思うんですが、少なくとも平成7年と平成9年を比較してほとんど変わ     っていない状態で、これでトレンド上の同じ動きといえるのかどうか。      それから、たとえそうだとしても一方で20歳代の出生率の落ち込みが     どんどん大きくなっていれば、それを晩婚化で説明するためには、30歳     代の出生率が同じように上がってこなければ、将来の出生率の回復とい     うのはできないと思う。そういう意味で考えたときに、その30歳代の婚     姻率とか晩婚化について、はたして当初の予想と整合的なものかどうか     という点について、ちょっと詳しくご説明いただければありがたいと思     います。以上です。 中田課長 人口推計との関係というのは後ほど説明があると思うんですが、これ     迄のトレンドの関係で申しますと、30〜34歳、30代前半のところで、若     干上がっているということなんですが、トレンド的に見ますと、少しは     上がっているんですが、そんなにはもともと上がっていないということ     です。平成5年から見ますと、平成5年、6年、7年、8年、9年とい     うふうに最近は1年おきに上がったり下がったりしているわけですが、     その傾向自体は直線当てはめをしますと、0.003ぐらいの傾きしかないと     いうことで、この傾向上から今回の平成9年の値は大きくずれていない     だろうと考えているというところです。      それから逆に20代のところですが、25〜29歳のところの落ち方が非常     に大きいわけですが、ここは直線当てはめをいたしますと0.02ぐらい落     ちているということです。数字の大きさで見ますと、20代前半の落ち込     み程度を30代の前半及び30代の後半ぐらいで取り返しをしています。20     代の後半の落ち込みが0.02というのは非常に大きいんですが、これが全     体をだいたい支配しているというのが、平成に入ってからの全般的な年     齢階級別の合計特殊出生率の動きということです。 高橋部長 将来予測との関連でお答えしておきますと、将来推計の場合は1980年     生まれの世代の人々、つまり現在17歳ぐらいですが、その人々まで晩婚     化というのは続くと仮定しております。したがいまして、今回ここの30     歳前半の部分の出生率が下がるという部分というのは、まだ晩婚化の延     長線上で起きていることですから、これが下がるのは推計の前提と照ら     し合わせて見てもおかしくないことだと考えております。以上です。 宮澤会長 よろしいでしょうか。他にございましょうか。はい、どうぞ。 高山専門委員 昨年の合計特殊出生率1.39をもうちょっと詳しく。これは1.388で     しょうか。これは昨年1月の人口推計は1.397だったと私は記憶してます ので、ほぼ予想の範囲だと考えていいんですが。中位推計の場合ですね。 0.397だったと思うので、それは予想の範囲だと思いますけれども、それ でも下回った理由としていまご説明があったように、20代の後半のとこ ろがやや予想を下回ったという、そこだけの要因なんでしょうか。それ に加えて何か特別の要因があるかどうかについて、もし何かある程度の データをお持ちでしたら、ご説明をお願いしたいと思います。 高橋部長 お答えいたします。実は30歳のところに、いま現在丙午世代がいます。     したがいまして、そこのところの出生率が非常にイレギュラーな性質を     持っておりまして、例えば6ページのところの30〜34歳のところを見て     いただきますと、8、7年についてはプラスに振れています。この丙午     が30代に入ってくることによって、これがマイナスに振れています。丙     午というのは、結局のところ分母人口と分子の対応が取れていない世代     になりますので、そこのところのイレギュラーがここの部分には出てい     る。そうした効果というのが出生率で見てみると小数点以下2桁目のと     ころでブレを呼ぶ可能性があるのではないかと私は思っております。      なおかつ人口推計の場合、そうしたイレギュラーな部分というのはモ     デル上ではきれいに反映されません。その問題もあって、そこのところ     は若干ブレているんだと考えております。以上です。 宮澤会長 よろしゅうございましょうか。他にございましょうか。はい、どうぞ。 麻生委員 地域差でレンジで1.86〜1.07ぐらい差があるんですけど、地域差とい     うのを説明するのは、いままでどおり‥‥何でしたっけ‥‥そういうも     ので説明するんですか。それとも要因というのかな、レンジの大きな要     因というのは何で説明なさるんでしょう。つまりレンジが非常に大きい     と思うんですけれど。地域によって。特殊出生率です。都道府県別。例     えば7ページ。 宮澤会長 お願いいたします。 中田課長 先生のご指摘のように、地域差が非常に大きいわけです。7ページで     すけれども、東京、神奈川、こういった都会地のところで非常に低い。      それから、沖縄、あるいは地方のほうでは、それなりに高いというこ     とがあります。これにつきまして、この審議会でもいろいろご議論があ     ったと思いますが、私どもとしても、都会地だと、割と生まない、そう     いう意識になっているだろうと思っています。地方のほうは、どちらか     というと昔風というのは変ですが、そういうのがまだ残っている。一応     そういうふうに考えているというところです。地域差についての、詳し     い分析はまだこれからいろいろ勉強していきたいと考えていますが、現     在のところはそういうふうに考えているというところです。 麻生委員 わかりました。サッと見ると、高等教育の進学率の低いところは高い     みたいで。それからもう一つよろしゅうございますか。      学歴で中卒のパターンが非常に違うんですけれど、学歴間の結婚障壁     というのは、いま日本ではそうとうあるんですか。例えば中卒というの     は非常にマイノリティーになって、非常に少ないですね。そうすると、     中卒と結婚する人、それから中卒の人は進学歴が障壁みたいなものにな     って、ツウコン率みたいなものが大きく出ていると。私が調査したとこ     ろによると、中卒の若い人の結婚の障壁というのは、関西の被差別地区     の人々の障壁よりも高いんですよね。そういう学歴が非常に壁になるか     という、そんなことについて。ちょっと学歴というのも、いつか今度や     るときに入れていただきたい。 宮澤会長 よろしゅうございましょうか。いま出されたお話は、これから白書の     ご報告をお聞きすると思いますが、その報告でも将来の予測とか考え方     など、いろいろ出てまいると思います。      2つの新しいデータについてお聞きしましたが、引き続きまして、い     ままでのデータをベースにした評価、あるいは予測を含めました『平成     10年版厚生白書』の中身につきまして、椋野室長から説明をお願いいた     します。 椋野室長 お手元に資料4として「少子社会を考える」という、1枚目にフロー     チャートのようなものがついたコピーをまとめたものと、それから『平     成10年版厚生白書』、表紙に絵のついたものとを配布させていただいて     おりますけれども、資料4のほうに沿ってご説明をさせていただきます。      資料4のフローチャートは全体の関係を描いてみたものでございます。      1枚めくっていただきまして、「平成10年版厚生白書の概要」とい      うものに沿ってご説明をさせていただきます。      まず「序章 少子社会を考える」というところで全体を振り返ってみ     ました。20世紀後半に日本が豊かさを目指して走り続けてきたわけです     けれども、振り返ってみると、その間、出生率は下がり続けたというこ     とで、日本は結婚や子育てに夢を持てない社会になっているのではない     だろかと。こういう問題意識で今回の白書をまとめてみました。テーマ     が「少子社会を考える」というようなことですので、やや異例のことで     すけれども問題提起型の白書というような位置づけにしまして、あえて     事実だけではなくて仮説も含めて述べてみたようなものになっておりま     す。21世紀の第2四半世紀を見通すと、人口は2割減り、高齢化率は3     割に達すると。そういうような時代に向けて、いったい我々はどういう     社会をつくろうとするのかが、いま問われているのじゃないか。そうす     ると、それは「男女が共に暮らし、子どもを産み育てることに夢を持て     る社会」と、そういうものをつくろうとしているのではないかというふ     うな問題提起でございます。もちろん、少子化の要因への政策的対応の     中核は、昨年おまとめいただきましたこの審議会の報告でも明確に述べ     られておりますように、固定的な男女の役割分業や雇用慣行の是正、そ     れから仕事と育児の両立に向けた子育て支援。政策的対応の中核はこの     2つであり、これらは着実に推進されることが必要です。しかし、その     報告の中でも、少子化は我が国社会のあり方に深く関わっており、社会     の警鐘であると、新しい家族像を基本に据えた新しい地域社会、企業風     土の形成が必要だというような指摘をいただいておりましたので、社会     状況をさらに今回の白書では分析をしてみたというものでございます。      そうしますと、振り返ってみて20世紀後半は経済成長の過程で雇用者     化が進み、居住空間は郊外になっていき、その動きがいわば行き着くと     ころまで行き着き、非常に国民の生活や社会のかたちが画一的・固定的     になりすぎた結果、結婚や子育ての魅力がなくなり、その負担感が増し     てきたところに根本原因があるのではないかというふうに考えまして、     そういうふうに考えれば出生率の回復を目指す取り組みというのは、さ     まざまな役割を持つ自立した個人が、相互に結びつき支え合えるような     「家庭、地域、職場、学校」をつくっていくことではないだろうかと。      いま見てみれば、社会のいたるところに多様化・流動化の動きの兆し     がみられる。その多様化・流動化の兆し、動きを生かして、個人の自立     を基本にした「多様性と連帯の社会」をつくることが、出生率の回復を     目指す取り組みにもつながっていくんじゃないかと。そういうような仮     説を置き、「家庭、地域、職場、学校」という個人の生活に深く関わる     場を分析をしてみました。      1ページめくっていただきまして、第1章でございますけれども、こ     こはこの審議会でもいろいろとご議論いただきました、今後の人口減少     社会の到来というのを振り返ったところでございます。      それから3ページにまいりますと、これもこの審議会の報告を基本的     に受けさせていただきまして、少子化の要因とそれをめぐる社会状況。      ただ、少し戦後の時代区分をして、その動きを詳細に眺めてみました。      ここは新しく専門委員に加わっていただきました落合恵美子先生の著     書をかなり参考にして書かせていただきました。      戦後の出生率の低下というのが、2つの時期に分けられると。第1回     目は1950年代半ばまでで、これは一組の夫婦の生む子どもの数が急激に     低下したと。そのあと1950年代半ばから70年代半ばまでは、出生率は安     定していた。この安定していた時代というのはどういう時代かと振り返     ってみれば、まさに高度成長期であり、総人口は増加し、就業者はサラ     リーマンになっていき、日本型雇用慣行は普及し、それから都市に集ま     った人々が住むために都市の郊外に新興住宅地域が形成され、核家族化     が進み、専業主婦化が進行して高等教育が普遍化するというように、社     会が一定の方向へ急激に変化した時代だった。その結果、1970年代半ば     の日本は、男は仕事、女は家庭という男女の固定的役割分業が最も徹底     された社会だった。      そういう時代というのは、若い女性にとってはサラリーマンと結婚し     て、近所づきあいもないし、仕えなきゃいけない舅・姑もいないという     ような核家族で、郊外の新しいきれいな住宅団地で専業主婦すればいい     というのは、ある意味で夢だったんじゃないか。そういうふうにして、     みんながサラリーマンになり専業主婦になっていった結果、ところがそ     の実態というのは必ずしもバラ色ではなかったということで、1970年代     半ばから2つの急激な変化が出てきたと。それは未婚率の上昇であり、     もう一つは子育てを終えた専業主婦がパートや、あるいはカルチャーセ     ンターや地域活動などに急激に出ていった。というような変化を踏まえ     ると、やはりそういうバラ色と見えていた郊外での専業主婦生活という     のに漠然とした不満が生まれたんじゃないかというような仮説を立てて     おります。このあたりも落合先生の著書をかなり参考にさせていただき     ました。      それに続く世代、いわば団塊の世代に続く昭和30年代生まれの女性に     とっては先行世代を見ていますから、単なる主婦というだけでは結婚と     いうのは夢でなくなってしまった。そうすると、いわばそれに何かプラ     スアルファがある、「付加価値のある結婚生活」でないと、なかなか結     婚する気になれないということで、そういう相手をじっくり探して晩婚     化が進んだんじゃないか。      そういう晩婚化が進んでいった1980年代後半というのは、女性の就業     率だけは1970年代の半ばから逆方向に向きますが、それ以外の社会の動     き、サラリーマン化、居住空間の郊外化などは、さらに進行していって     おります。そういう職場では、家庭よりも仕事を優先させることを求め     る企業風土は維持され、夫の子育て支援はやはり期待できない。さらに     生活空間は郊外化してますから、伝統的な地域社会にあったような子育     て支援の力は乏しい。さらにきょうだい数はもう2人から3人に減って     ますので、その前のきょうだいが多かったときにあったような兄弟・姉     妹による子育ての相互支援機能というのも失われて、二重、三重の意味     で子育ての負担が母親に集中してかかる状況が、この時代に一層進行し     ていったと。      1970年代半ば以降、女性の就業率は高まっていますけども、仕事と家     事・育児の両立を志向する女性にとっては、キャリアウーマンといわれ     たような、そういう女性が育児との両立を志向すると非常に負担が重い。      一方、専業主婦にとっても子育てというのは必ずしもラクなものでは     まったくなく、自分の時間を持つことは困難。さらにこの時代、学校歴     社会が進んでいきますので、そういう意味での母親の負担も増していく。      そういう先行世代を見るさらにその次の世代、昭和40年代生まれの女     性にとっては、もう結婚というのは夢や希望の感じられるものではなく     なってきてしまったんじゃないか。この世代というのは、ものごころつ     いたころはもう社会は豊かになっていたということで、豊かさを享受し     てきたこの世代にとって、「豊かで居心地の良い結婚生活」を確信でき     ない限りは、なかなか結婚に踏み切れない。      「結婚は個人の自由」といいながら、「いずれは結婚したい」という     気持ちは未婚の方の9割ということで高いわけですけれども、積極的な     夢や希望を結婚に見いだせないために、いわば自由気ままな未婚の“い     ま”を楽しむということで、結婚を先送りして晩婚化が進んでいるので     はないだろうか。そんなふうに時代と世代をやや分けて、少子化の要因     とそれをめぐる社会状況を眺めてみました。      4ページをめくっていただきますと、「新・専業主婦志向」というコ     ラムを載せております。昨年のこの審議会の報告でも、子育てと仕事の     両立支援というのは施策の中核だといいながら、しかし一方で継続就労     型の女性は必ずしも多数派ではない現状には留意する必要があるという     ようなご意見をいただいておりましたけれども、そういう意味で、専業     主婦志向が強まっているといわれる若い世代の新しい専業主婦志向の中     身を小倉千加子先生にお願いして、20歳代、30歳代の未婚女性52名の方     に突っ込んだヒアリング調査をしていただいて、その結果をここに書い     ていいただいたものでございます。      そういう中で、新しい専業主婦志向というのは、いわゆる生活のため     に働くパート、男性に互して働くキャリアウーマンというような、そう     いう既成の働き方への忌避が非常に強まった結果、専業主婦のほうに志     向が出てきている。そうはいっても社会とつながっていたいので、憧れ     の職業はエッセイストだったりライターだったり、いわば趣味、あるい     は趣味的仕事。女性は家事と趣味的仕事をする。男性は仕事だけではな     くて、家事も協力してほしいと、そういうような志向になってきている     と。一時期いわれていたような3高志向ではなくて、3Cといっており     ますけども、cumfortable、communicative、cooperativeというような、 十分な給料、理解し合える、家事に協力的な結婚相手の条件があり、そ れを待って、専業主婦志向であるけれどもそういう相手を探して晩婚化 は進んでいっているという、そういうような、この白書のために新しく していただいた調査の結果をここに載せております。      それから5ページにまいりますと、少子化の要因への対応。ここはや     はり人口問題審議会のお出しいただいた報告を基本的に受けているとこ     ろでございますけども。ここで見ていただきたいのは、新しくこの白書     のために有識者調査を行いまして。それによりますと、「政府が出生率     回復に取り組むことについて、どのようにお考えですか」ということに     ついて、7割の方は「個人の望む結婚や出産を阻んでいる要因を取り除     く限りにおいて」ということですが「対応を図るべき」。さらに3割の     方は、「国を挙げて積極的に取り組むべき」ということで、政府が取り     組むことについては、もうほとんど100%に近い方が賛成というふうにい     っておられるということで、この2〜3年でかなり意識が変わってきた     ということがここで見受けられましたので、データを載せております。      6ページに入りまして、白書の章立ては家族、地域、職場、学校とい     うふうに順次その場を分析しております。家族のところは近年の家族の     変化。核家族世帯ですらも、もう家族構成の典型ではなくなりつつあり、     いま増えているのは単独世帯。4世帯に1世帯が単独世帯になっている     と。一方、「大切に思うもの」は「家族」という方が増えており、家族     を重視する気持ちも、それから結婚する意識も強いというような近年の     家族の変化、結婚、妊娠・出産の問題についてリプロダクティブヘルス     /ライツあたりも含めて述べ、夫婦のほうでは、夫婦の約半数は共働き     で、いまはもうすでに片働きよりも共働きのほうが多い状況になってい     る。しかしながら子どもの年齢が低い層では、やはり片働きが多い。そ     れから、夫の所得が高くなるほど、妻の有業率は下がっているというよ     うな基本的な状況を踏まえ、それから家計費の分担で、妻が常勤で働き、     夫と均等に家計費を負担している場合でも、家計の管理責任というのは     妻が担っている場合が多いと。この人口問題審議会でも妻のおしゃもじ     権というか、伝統的に日本では妻が家計を握っているというようなお話     を木村先生がしておられましたけども、そういうところを含めて家計管     理責任についても分析をしております。      7ページに入りまして、母親と子どもの関係ですけれども。ここでは     「母親は子育てに専念するもの、すべきもの」というような社会的規範     が戦後数十年の間に形成されたにすぎないんじゃないかというような歴     史的なことを押さえ、それから事実としても育児の大半は父親によって     も遂行可能、さらに専業主婦のほうが子育てについては不安傾向が高い     というようなデータなりを押さえ、その結論として、母親が子育てに重     圧やストレスを感じるよりも、むしろそういう母親を過剰な責任や期待     から解放することによって、母親が心にゆとりを持ち、よりよい母子関     係が築かれるのではないかというような考え方を述べ、子どもは三歳ま     では常時家庭において母親の手で育てないと、子どものその後の成長に     悪影響を及ぼすという、いわゆる三歳児神話については、少なくとも合     理的な根拠は認められないのではないかということを書いております。      そして最も大切なのは、やはり育児者によって注がれる愛情の質では     ないかと。      母親と子の関係についてはそういうことを述べておりまして、次に8     ページで最近いわれる父親と子どもの関係ですけれども。9ページにや     や細かいデータを付けておりまして、データは細かいので省略しますけ     ども、父親の育児参画意識は高まっているけれども、やはり参画してい     るといっても子どもと遊ぶとかいうようなところにとどまり、子どもが     病気のときに仕事を休むというのはやはり母親で、仕事に差し支えがな     い限りで、楽しいところで子育てに参画するというような実態が見える     というようなことをデータも付けて述べております。      今後の方向としては、やはり子育てに父親は積極的に参画、分担する     こと。それはもちろん母親の子育て負担を軽減するという意味もありま     すし、父親自身にとっても子育ての喜びを味わう機会を取り戻すという     意味もあるというような押さえ方をしております。      母親、父親と分けずに、家庭における子育てについては、これも最近     いわれます父性の問題を取り上げました。父性原理と呼ばれる社会の規     則を教える厳しさ、規範性、それから母性原理と呼ばれる子どもをある     がままに肯定し受容する優しさ、包容生、この2つが子育てにとっては     必要だと。ただし、それは必ずしも父親が父性原理、母親が母性原理に     限られるわけではなく、両方の原理を持ちえる。大切なのは、夫婦がと     もに子育てを担う中で、この2つの優しさと厳しさという態度を持って     子どもと接すること。この厳しさが足りないこと、親から本気で叱られ     た経験に乏しいことが、最近問題になっています、すぐに「キレてしま     う」子どもたちをつくる一因になっているのではないかということで、     この父性原理、規範性の重要性を家庭における子育てのところでは一つ     押さえております。      次、データの細かいところ、9ページは省略をさせていただきまして、     10ページにまいりまして、成人した子と親の関係。これも自立の問題と     してこの審議会の報告書の中にもお書き入れいただいた部分でございま     すけれども。これについては審議会でも両論あるというようなことでご     ざいましたが、白書でも一応両論を書いております。ただ、いずれにせ     よ社会は変化していく中で、どちらが望ましい、望ましくないというこ     とに関わらず、やはり自立ということは問われ、結婚前であっても早期     に親から自立していく必要に迫られていくのではないかというような問     題提起をしております。      それから、家庭内暴力について取り上げましたけれども、ここでも家     庭内暴力というのは家族内の特定のものへの行き過ぎた役割期待の集中     や家族間の対等でない関係が招いている側面があるのではないかと。児     童への虐待の問題もそうですし、それから子どもから親への、いわゆる     家庭内暴力といわれるものも分析し、そういう一定の者に責任が過度に     かかるというようなことを改めていくことが、家庭内暴力の予防につな     がるのではないかという考え方を出しております。      家族との関係では、社会保障において個人単位と世帯単位の設計のこ     とが問題になりますけれども、これについては個人単位化することにも     さまざまな問題がありますけれども、ただ、今後女性の就業は時代の要     請となり、生き方の多様化も進んでいくことを考えると、現行の制度の     設計がさまざまな問題を抱えていることは間違いないということで、今     後国民全体でそのあり方について議論を深めていくことが必要だという     ような書きぶりをしております。      家庭の将来像としては11ページでございますが、ここでは個人が家族     を得たいという欲求は強いと。しかし、それが仕事や学習とか地域参加     とか、それ以外のさまざまな活動をしたいという個人としての欲求の実     現と両立できそうにないということで晩婚化が進んでいるのではないか     という分析をし、その両立をさせるためには、やはり一定の家族内の誰     かに過度に責任・役割がかかるということではなく、個人それぞれが自     立し、尊重しあう、そういう家族が必要ではないか。そして社会の仕組     みもそういう家族像に適合していくものに改めていく必要があるのでは     ないか。家族の将来像としては、そういうものを打ち出しております。      次、12ページ、地域の問題でございます。地域の問題については、人     口問題審議会の報告書でも新しい地域像が必要ということをご提言いた     だいたわけですけれども、私どものデータも十分お出しできなくて、十     分な分析ができなかったところでもあったように思いましたので、デー     タを集めて少し書き込んでみました。      これも歴史を振り返ってみると、やはり1950年代後半から70年代後半     の時代に郊外に大規模な住宅地が次々と開発される。そこでは年齢も家     族構成も生活様式も極めて似通った住民から成り立つという画一性、そ     れから新しい住民たちが来てますから人間関係が希薄、地域社会の共同     体意識は低い。地域社会への参加は1970年代半ばから女性がドッと地域     社会に出ていきますが、やはりそういう意味で専業主婦中心で、サラリ     ーマンは参加しにくいため、地域社会が多様性や厚みに欠けているもの     になっている。このように都市部についての分析をし、今後、地域社会     に共同性を取り戻すためには、できるだけ生活圏にあったまちづくりを     進めることが必要なんじゃないか。そのためには職住近接のまちづくり、     都市計画が必要で、そうすることによってベッドタウン、単に寝るため     だけに帰る地域ではなくて、その地域で仕事をし、生活をし、子どもを     育てるということになれば、そこへの参加意識も高まるんじゃないか。     その結果として地域社会が多様性のある豊かな厚みのあるものになり、     子育て支援力も増していくのではないかというような考え方も出ており     ます。      もう一つ、昔は下町の共同性があったといわれる都市の中心部の最近     の空洞化の動きを分析し、中心市街地の再生の試みの事例なんかも紹介     しております。      それから、これも人口問題審議会で問題提起だけいただきましたけれ     ども、十分にデータがお出しできなかった農村部の地域社会についての     ところでございます。農村部でも、いわゆる「結婚難」というものは見     られるわけですが、そこでは子育ての負担そのものよりも多様な生き方、     家族のあり方を受け入れない画一的な「農家の嫁」ということを求める     地域風土に、むしろ晩婚化の原因はあるのではないか。それはここには     伝統的な地域共同体、親族共同体は残存しており、子育てはそういう共     同体が支援してくれるんだけれども、そういう伝統的な共同体を若い女     性は忌避しているというところがあるんじゃないかというデータも付け     て、むしろこれからはそういう広域連携や交流を進める中で、若い女性     も憧れるような、そういう人間関係、新しい地域風土を持った農村にし     ていくことが、農村部の未婚率上昇への対応になるのではないかと、都     市部と違った事情を分析をしております。      それから13ページにまいりまして、サラリーマンの地域社会への参加     が少ないというものの、最近男性サラリーマンの地域活動への参加事例     も徐々に見られております。それから新しい動きとして、いわゆるNPO      民間団体の非営利活動がさまざまな地域でみられはじめ、この民間団体     の非営利活動は従来の伝統的な共同性と違って多元主義的に活動が展開     できるということで、いわば新しい共同性が地域社会に生み出されるも     のとして大きく期待できるのではないかというような考え方を出してお     ります。      それからもう一つ、地方分権の動きも紹介し、地域住民が参加するた     めには参加する意欲のわく自治体にしていくことが必要であり、そうい     う意味では市町村への権限委譲を推進していくことが重要ではないかと。     分権の流れもこの文脈の中で述べております。      それから子育てサービス。地域の中でも特に子育てサービスを大きく     取り上げて分析をしております。就学前の保育サービスを見ますと、や     はり中核は認可保育所が担っております。サービスの多様化はいろいろ     進んでおりますけれども、やはり量的にみると認可保育所以外のサービ     スは少なく、中核は認可保育所。ただ、認可外の保育施設、認可保育所     以外の保育サービスも今回かなり分析をいたしました。認可保育所が応     えていない多様な需要に対応していますけれども、やはり質のばらつき     が大きいと。それとも関連するわけですけれども、認可保育所以外の保     育サービスでは基本的に利用者の負担により利用料は賄われております。      今後の方向としては認可保育所の保育サービスの充実、それから多様     な民間主体の活用によるサービスの多様化が求められているわけですが、     特に今後子育て支援の一層の展開を図るためには、公的助成のあり方に     ついて検討することが必要であり、そういう場合、いま述べたような実     態を鑑みると、効率性、それから公平性の観点を十分踏まえた公的助成     のあり方について検討し、今後子育て地域の子育て支援の一層の展開を     図っている必要があるのではないかという考え方を述べております。      1ページめくっていただいて14ページですけれども、ここでは地域に     おける子育て相談、最近の少年非行の増加、凶悪化の関係で総合的な相     談体制の整備が必要ということで、事例として例えば児童相談所での相     談事例なんかも取り上げて、相談体制についてもかなり詳しく述べてお     ります。      15ページにまいります。次に職場の関係でございますが、これは人口     問題審議会の報告書でもかなり強く問題提起をしていただいた部分でご     ざいますし、それから八代委員のご著書もかなり参考にさせていただい     て書いてみました。      問題意識としては、日本的雇用慣行が高度成長の中で広く普及してき     た。日本的雇用慣行はもちろんメリットのあるものではありますけれど     も、職場での強い一体感、職場の仕事や人間関係を優先する企業風土を     もたらして、その結果、日本的雇用慣行の中心である男性雇用者が家庭     や地域での活動に参加できなくなってしまっている。その結果として女     性に子育て負担が集中し、地域社会の人間関係も希薄になっているとい     う問題点。それから、日本的雇用慣行のもとで女性が離職すると、その     あと復職後も含めた収入の減少につながるという機会費用の問題。これ     もこの審議会でかなり強くご指摘いただいた点ですが、その機会費用の     問題を生んでいるということ。これを今後やはりメリットは生かしつつ     も見直していく必要があるのではないかということで、16ページ、まず     職場優先の企業風土、それから年功序列型賃金、あるいは男性中心の企     業風土というように、やや詳しく見ていきました。      職場優先の企業風土を生んでいるのは、やはり長期雇用、年功序列と     いう慣行のもとで、他の企業に移るという自由が非常に少ない。その中     で、同期横並びで時間をかけて選抜していくという雇用管理がなされる     ために、競争がより長期化しており、それがやはり職場の都合最優先の     企業風土を生み出しているのではないか。それで有給休暇を取りづらい     とか、定時を過ぎても帰りにくいというような職場の雰囲気を生んでい     る。ただ、経済状況が変わってきていますので、今後そういうことから     も職場の都合を最優先する意欲、態度を過度に評価するような雇用管理     のあり方については見直して、もっとメリハリのある効率的な働き方を     進めることによって、職場優先の企業風土は是正していくべきであるの     ではないか。実際にそういう動きも出ていると。      それから採用方法とこれと一体になった年功序列型賃金ですが、まず     採用方法で新規学卒者を一括して採用して、企業内訓練をして長期雇用     をする。それを偏重しているという仕組みが学校歴偏重につながりやす     く、受験競争も激化させているのではないか。もう一つ、この新規学卒     者の一括採用の偏重というのは、裏返しで中途採用枠が十分でないので     機会費用をやはり増している。これを見直して、採用時の年齢制限を撤     廃し、中途採用枠を拡大していくというようなことが求められるのでは     ないか。実際に企業にもそういう動きが出てきている。      それから年功序列型賃金についても、もちろんメリットはありますけ     れども、やはり転職や子育てのための就業中断の費用を過大にして機会     費用を過大にしているということもあるし、それから一方で女性が継続     就業をにしくい。長くいると年功序列賃金で上がっていくために結婚や     出産で退職するような慣行が、なお残っているというようなこともあり、     女性が継続就業しにくい企業風土を生んで、高齢者も継続就業しにくい     というような状況を生んでいるのではないかということで、これはやは     り賃金勾配をもっとなだらかにするとか、業績評価の比重を高めるとか、     見直しの必要性が増しているのではないか。      さらに男性中心の企業風土。日本的雇用慣行は、振り返ってみれば、     やはり男女の役割分業に支えられていたのではないか。だからこそ職場     優先の企業風土が成り立っていたわけであり、育児期間中も継続就業が     できていたわけですから、そういう中で女性は排除されがちで継続就業     がしにくかった。      さらに17ページ。パートタイム労働というのが、日本の場合一旦退職     したあと正規に就職する採用枠が少ないために、中高年齢の女性に多い。      それから労働条件、雇用管理も改善すべき課題が多々みられるという     ことが日本的雇用慣行、男性中心ということの裏腹で女性の多いパート     タイム労働に問題が出てきていると。この改善が今後期待されるという     こと。それからもう一つ、同質な男性中心の職場というのは、やはりセ     クシャルハラスメントなんかにもつながる企業風土になっているのでは     ないか。こういう状況があるわけですが、近年はパートタイム労働も、     いわゆるパートタイム労働ではなくて、短時間だけれども責任を持って     長期に就業し、さらに経験に応じて賃金も上昇するというような動きも     出てきてますし、それから派遣労働者も増えていますし、それ以外にも     専門職、地域限定職など、さまざまな就業形態の多様化の動きがみられ     ると。これは個人の希望に応じて働ける選択肢が増えるという意味で望     ましいわけでございます。ただ、内容に応じて適切に処遇されるという     ことがもちろん条件で、さらに一旦個人の状況によって選んだ就業形態     が、能力や生活環境に応じて途中で柔軟に変更できるということもセッ     トで必要だろう。そういうことをしていけば、仕事と家庭や地域での活     動とも男女ともに両立できる、そういう職場風土の形成につながってい     くのではないか。職場については日本的雇用慣行を少子化の要因との関     係で分析をし、見直しの必要性を問題提起しております。実際にそうい     う動きが出ているということも紹介をしております。      最後に18ページ、学校でございますけれども。学校教育については、     昨年いただいた報告書では少子化の影響への対応としてはいろいろとご     報告いただいておりましたけれども、要因との関係では必ずしも突っ込     んだ報告をいただいていなかったところでございましたけども、狭い意     味での要因という意味では必ずしも要因といえない面はあるでしょうけ     れども、子どもを生み育てることに夢を持てる社会をつくるということ     では、学校教育の果たす役割の重要性はあるわけで、そういう観点から     狭い意味での要因対応ではないけれども、ここに大きく取り上げてみま     した。      ここではやはり学校歴偏重、過度の受験競争というのが、単に定員だ     けでいくと子どもが減っていますから受験競争は減りそうですけども、     先ほども述べたような職場の新卒一括採用の問題もあって、一定の学校     に集まるという意味での受験競争の状況は依然として厳しいと。そうい     う中で子どもはゆとりを失い、あるいは子どもは受験勉強ばかりしてい     ればよいということで、家庭のしつけ機能も失われる、あるいは家庭で     子どもがくつろぐというような機能も失われ低下していっているという     状況がある。また、学校の受験競争の中でよい成績を修めることが「よ     い子」であるというような画一的な評価が家庭でもなされ、それから地     域にもそういう評価が浸透し、学校でも家庭でも地域でも居場所を見い     だせない子どもたちという問題も出てきている。そこにデータを付けて     おりますけれども、日本では子育ての悩みの問題点のトップが、この      「受験や進学問題」でございます。韓国も同じですけれども、アメリカ、     イギリス、スウェーデンあたりを見てみると、イギリスが5番目に上が     っておりますが、アメリカ、スウェーデンではまったくそういう問題は     上がっていないということで、日本の子育ての負担にこの進学、受験競     争の問題がやはり大きく陰を投げかけているということが、このデータ     でうかがわれるわけでございます。      これについては、すでにさまざまな多様化の動きが教育の中でもみら     れます。選択幅を拡大する方向での改革が進められており、例えば高等     学校における総合学校の創設、あるいは中学における選択教科にあてる     授業時数の拡大などの教育課程の見直しが進んでおります。こういうこ     とはいじめや登校拒否を生んでいるといわれるような同質志向の改善に     もつながっていくのではないかと。多様性を積極的に評価するというこ     とで、そういうことにもつながるのではないか。      さらに、就学コースの柔軟化を進める方向での改革も進められており     ます。高等学校で学年を越えて科目履修ができるような単位制高校の整     備も進められておりますし、大学で編入学、転入学、あるいは社会人入     学の枠の拡大も進められております。      それから19ページにまいりまして、もう一つの学校の動きとして、何     もかも学校が抱え込むというようなことではなく、家庭や地域社会との     適切な役割分担をしていくという動きがもう一つ見られます。それは学     校週5日制を完全実施するとか、しつけや学校外での巡回指導補導とい     うのを家庭や地域社会へ返していき、何もかも学校が抱え込み、その中     で子どもが息苦しいという状況を改善することが必要ではないか。ただ、      それを受け止める家庭や地域社会が、その機能を取り戻すことも一方     で重要だと。      20ページに簡単に書いておりますけれども、そういう動きが全体とし     て進めば家族も変わり、地域も変わり、職場も変わり、学校が変わるこ     とによって、そういう動きが総合的に組み合わさることによって男女が     共に暮らして子どもを生み育てることに夢を持てる社会の形成につなが     っていくのではないかと。全体をそういう枠組みで書いてみました。      いろいろとご意見を委員の先生方にいただいたりしたことを、私ども     なりにデータの足りなかった部分も反省してデータを集め、一応こうい     う仮説に基づいた問題提起型の白書をまとめてみました。      以上でございます。ちょっと長くなって恐縮でございます。 宮澤会長 どうもありがとうございました。大変多面的な白書をつくっていただ     きました。いまのご説明につきまして、ご意見、ご質問、どうぞご自由     にお願いいたいます。どうぞ。 落合専門委員 いま説明を伺いまして、この白書は前に拝見していたんですけれ     ども、その意図がよりはっきりわかったように思います。私、いまいろ     いろ出生率の問題でも、その他いろいろなことでも制度改革というよう     なことが言われていますけれども、省庁の枠を越えて全体を見通すとい     うようなことが、あまりなされていないように思って不満に思っており     ました。でも、この白書ではそこを大胆に乗り越えられて提言をなさっ     ているというところが、いま非常に必要なものをなさったなと思いまし     た。ただ、最初におっしゃいましたように仮説も含めて提示して、問題     提起型にしたというふうにおっしゃっていましたけれども、確かにそれ     もそうでして、私の著書をある程度参考にしていただいたところもある     んですけれども、そこなどを見てましても、これがこれの原因だという     ふうに、ここまで言いにくいものもあるなと思う点もないわけではない     んですけれども、問題提起型ということで受け止めたいと思いました。 宮澤会長 ありがとうございました。はい、お願いいたします。 清家委員 この中で、いまご説明にあった日本的な雇用制度との関係のところ、     非常に面白いと思うんですが、2つぐらい質問があるんですけれども。     1つは大きな質問かもしれませんけれども。      おっしゃるように、例えば年功的な制度とか、あるいは終身雇用制度     のようなものが女性の就業継続を阻んでいるというのは一般論として、     確かにそのとおりだと思いますし、私も基本的にはここに書かれている     とおりだと思うんですが、ただ、もちろん企業によっては年功的な賃金     がいいという企業もあって、その中で労使がそれに賛成してそういう仕     組みを取っているところも、これからもあり続けるだろうと思いますし、     また終身雇用がいいということで、特別の企業だとか産業の特性によっ     てはそちらのほうが望ましいということで、そういうような制度を労使     が合意のもとで取るということは十分にあるし、それについて別に外か     らどうこう言うことはできないと思うんです。一般論としてこういうよ     うなことがいえるときに、そういう個別の労使が決める雇用制度につい     て、どの程度政策的に介入できるのかどうか。もし仮に少子化に対して     ネガティブの影響があるということがはっきりした場合に、例えば年功     賃金とか終身雇用制度というのをとり続けている企業に対して、何か政     策的に対応手段があるんだろうか、あるいはするべきなのかということ     については、多少議論の余地があるかなと思います。      それからもう一つ、今度はちょっとマイナーなことかもしれないんで     すけれども、これは本文ですと184ページぐらいのところにありますけれ     ども、16ページのところに「新規学卒者の一括採用の偏重は、学校歴偏     重につながりやすく、受験戦争を激化させるひとの誘因となっていると     考えられる」と書いてあります。私も確かに新規学卒者の一括採用とい     うのがこのようなことにつながっていることはあると思いますが、しか     し一方で、例えばアメリカ等で女性が比較的ビジネスの場所で活躍しや     すいのは、例えば経営大学院を出たというような資格が非常に重視され     るとかいったような、ある面でいえば日本よりも、学歴を重視するとい     うようなところが、例えば女性の活躍というような場所ではプラスに効     いていると思うんです。そのあとにありますように、日本の企業の場      には、むしろそういう学位だとか、あるいは学歴というようなものを必     ずしも重視しないで、その企業の中における長年の貢献だとか組織への     忠誠というようなものを人の評価の中心にするというようなところが、     かえって女性の活躍を阻んでいるというような部分もありますので。場     合によっては、女性が例えばキャリアを途中で中断しても、またもとの     キャリアに戻ったりするということができるためには、企業がむしろ学     歴だとか資格だとか、そういうようなものを重視するような仕組みに変     わっていったほうがいいという面もありますので。そのへんはちょっと     前後の話と多少整合性が取れるのかなという印象を持ちました。以上で     す。   宮澤会長 ありがとうございました。はい、お願いします。 八代委員 私も落合委員のおっしゃったように、少子化という総合的な問題を白     書で非常に幅広く取り上げておられるということを評価させていただき     たいと思います。特に他省庁の所管事項にも積極的に発言しているとい     うことが大事だと思います。      ただ、それと同時に、やはりせっかくの厚生白書で総理府の白書じゃ     ないわけですから、どうせなら厚生省所管についてはもう少し具体的に     取り上げるべきではないか。特に先ほどご説明のあった保育所のところ     は、まさに厚生省の所管であります。例えば白書の162ページを見ますと、     効率性が高いとはいえない公営保育所に、より多額の公費が使われてい     るという、かなり厳しい自己批判みたいなのがあるわけなんですが、単     に今後の保育サービスに関する公的助成がどのようにあるべきかを検討     するという第三者的なものじゃなくて、もっと具体的にどのように検討     するのか。例えば1つよくいわれているのは、公立保育所に直接補助金     を出すのじゃなくて、子どもを持っている親に保育切符を渡して、その     切符で公営とか民営の保育所に自由に行けるようにするとか。より踏み     込んだ具体的な案みないなものですね。そういうようなものも、より提     示されるとより明解ではないかなと思います。      それから2点は、いま清家委員がおっしゃった日本的雇用慣行の関係     は、これもかなり踏み込んで書いていただいてよかったと思う。確かに     いま清家委員がコメントされましたように、やはりここまで書くならも     う少し書かないと誤解を生みやすいという点はあろうかと思います。      清家委員がおっしゃった2点についていえば、ここでいっているのは     当然個々の労使が自主的な判断で決めた制度に政策的に労働基準法みた     いなかたちで介入するのではない。むしろ、政府自ら日本的雇用慣行を     サポートしているような税制とか、あるいはポータビリティーの年金を     阻んでいる制度とか、そういうバイアスをなくすことによって、より政     府の関与を中立的にすることによって間接的により女性が働きやすいよ     うな雇用システムの方向に誘導していく。あるいはいま労使が賛成して     いるといっても、労使は労働組合の意見がどの程度労働者全体の意見を     反映しているかというのは、かなり疑問なわけです。そういう意味で、     より啓蒙的な役割を果たしていくという点は重要ではないかと思います。      2番目に清家委員がおっしゃった学歴と学校歴の区別も、確かにここ     は学歴とはいわずに学校歴と書いてあるんですが、いきなりこれをいっ     ても学歴とどう違うのかというのが一般にはやはりわかりにくい。ここ     まで書くなら、いま清家委員がおっしゃったように、アメリカの学歴と     日本の学歴は正反対である。アメリカの学歴のように縦の学歴といいま     すか、Ph.Dとか修士号を高く評価するようであれば、個人の自己負担で     教育投資がなされるわけですから、それは比較的男女平等である。しか     し日本のように企業内教育でもっぱら技術を身につける場合は、これは     人事部のかなり恣意的な判断が重要ですので、そのときに非常に女性に     とって不利になる。そういう意味ではむしろアメリカ型の縦の学歴を重     視するというほうが、より重要なんだということがここでは必ずしもよ     くわからない。そういう点について、次回なんかはより詳しい説明があ     ればありがたいと思います。以上でございます。 宮澤会長 ありがとうございました。どうぞ。 小林委員 私も報告書を前にいただいたものですから、一通り目をとおして大変     勉強になりましたし、従来にない報告書だと私は思いました。      ただ、育児だとか教育の問題を論じるときに「子ども」という言葉を     使っておりますけれども、子どもといっても赤ちゃんから思春期の子ど     もまであるわけですから。それぞれの時期、発達段階で問題が全然違う     ことがあると思うんですよね。ですから、そこらあたりを考えないとい     けないんじゃないかというのが1つ。      それから、私が調べた限りでは、この報告書の中に「子育てが楽しい」     ということは一つも書いてないんですね。だけど、相当数のお母さんや     父親にとって子育ては楽しいと思っていると私は思うんですね。政府が     「子育ては楽しいんですよ」と旗を振ってもらわないと、絶対に子育て     はうまくいかないし、子どもを産む気にはなれないじゃないかという点     を私は1つ申し上げたいと思うんです。      3番目には「ムカつく」、「キレる」という最近の教育問題は、8ペ     ージの中に書いてあると思うんですけれども、非常に深刻な問題であっ     てなかなか難しい問題のようなんですね。心理学の人は子どもたちが欲     求不満で我慢ができなくて、そしてそれを攻撃行動に転化するんだとい     うような説明をしておりますけれども、小児精神医学の人たちは、それ     は意識と行動の乖離だというんですね。ですからある意味でいうと、問     題はもう少し深刻で、学校へ来るまでの赤ちゃんの時からいろいろな問     題がそこに関わっているんじゃないかと。アメリカでも、いまから10年     以上前に急に増えだしたというんですね。おそらく銃で乱射するような     子どもたちも同じだと思うんですね。そして、自分自身がやった行動が     わからないというような状態になって、意識と行動がバラバラになって     いるんです、それがどういう理由で起こるかということを考えなきゃい     けない事態になっているんじゃないかと私は実は思っているわけです。      そういう意味で、ここに書いてあるように簡単に書いてしまうと、将     来いろいろな問題が出てくるんじゃないかと思うんですね。アメリカで     確実に増えているのは虐待によるこのような状態ですね。親の子どもに     対する虐待によって、そういう子どもが増えているというんですが、こ     の間のNHKの番組なんかで見てみても、日本のああいう子どもたちが親      の虐待かどうかというのは、実は私は自信がないんですけれども、少な     くとも心の傷でできるということだけは多くの心理学者も精神医学者も     認めていることであって、何か私たちが知らないことで子どもの心が傷     ついているんじゃないかと私は思うんですね。      それ以外については、私も大変勉強になりました。本当にありがとう     ございました。 宮澤会長 ありがとうございました。はい、お願いいたします。 山田専門委員 本当に大変面白い厚生白書だと思うんですけれども、ただ1点、     いまの親の子育てについて少し厳しすぎるのではないかなという印象を     受けました。いまもちょっとおっしゃられましたけれども、少年犯罪な     どの統計を見てまいりますと、むしろ昭和30年代ぐらいのほうが、例え     ば子捨てとか子どもの遺棄に関しても、いまよりもかなり多かったわけ     ですし、いわゆる少年の性犯罪に関しても、いまよりも20年前、30年前     のほうがそうとう多かったというふうに思っています。犯罪の罪種によ     って違うんですけれども、いまの親の子育てがすごくまずいから何か子     どもの問題が起こっているとするならば、昔よりもいまのお母さん、お     父さんは非常によくやっている、というかよくやりすぎているのではな     いかというふうな印象を私は持っております。 宮澤会長 ありがとうございました。どうぞ。 熊崎委員 私もこの白書を読ませていただきまして、独断ですけれども、椋野さ     んを中心にした女性の視点でこういうものに取り組んで、従来にないも     のだと、私はそういふうに考えて読ませていただきました。      しかし、この白書を出されまして、この枠組みが椋野さんもおっしゃ     っているように問題提起型ということですので、これを中心にして今後     どのような面でこの少子社会を少しずつ変えていかなければならないか     という課題を、むしろ大きな課題がたくさんあるというものを私はクロ     ーズアップさせられたという思いで、さてどこから手をつけていってい     いのか。膨大なものであると思っています。      そういうことを前置きにして、私は1点だけ。この中に書いてありま     す2節の中で、学校とその他の教育の場というところで、私は日頃考え     ているのは、先ほど結婚観に対して結婚する相手を選んで、そして家庭     をつくり子どもを両性が生み育てていくということになる場合に、もち     ろん学歴偏重があって就学が高いパーセンテージを示しておりますけれ     ども、これはいろいろな統計的な数字が出ますけれども、やはり現実的     な面では、例えば中卒と高卒というところも現存しているとなれば、私     は学校教育といいましょうか、低学年教育の中にも「働く」という労働     観がある程度入り込むような、そういうものがないと、高等学校以上の     大学院のところの人たちが非常に意識が高くて、結婚の伴侶を選ぶのに     選択をしてしまうという傾向があってはならないと私は思っております。      私はごくごく身近なところで、そういう学校教育を受けた人ももちろ     ん当たり前に結婚し、また専門的な分野で自分が将来専門の仕事に力を     発揮し、そして家庭生活を営むというようなことがあってもいいのでは     ないかなと思っていますので、私の考えを述べさせていただきました。     以上です。 宮澤会長 ありがとうございました。どうぞ。 河野専門委員 こういう白書といいますか報告書は、おそらくスウェーデンとイ     ギリスで半世紀前に、あるいはそれ以上前にこういう報告書を出されて     おりますけれども、国際的に見てもこのような非常に広範囲で、非常に     多角的なレポートというのは珍しいのではないか。非常にそういう点で     画期的なことだと思います。      この白書は、結局いままで日本が欧米に追いつき、追い越せというこ     とで一所懸命走り続けてた一種のいろいろな意味での無理というか、ツ     ケがドッと出てきた感じで。これは単に出生力低下だけでなくて、いろ     いろな面でもいま起きていることだと思いますけども。そういうことで     ありますので、ここでいわれることは、小手先の改革だけではダメなん     で、やはり弥縫策ではダメと。やっぱり何か根本的なそういうことが必     要だということはわかります。      ただ、これはちょっと皮肉なようなことかもしれませんけど、はたし     て我々が男女共同参画社会をつくるとか、家庭内で個人が自立するとか、     そういうことができれば、それで出生率が上がるのかなと。それがなく     なると、すぐ出生率が上がるかどうか、一抹の疑問があるという、そう     いうことだけでございます。以上です。 宮澤会長 いろいろご意見をいただきまして、全体として非常に高い評価である。     しかしながら、仮説に基づいた問題提起型ということで、少し気になる     とか、あるいはかなり気になるところもあるというお話がございました。      そういう気になるところを引き出したこと自体が、この白書の1つの     成功だと思います。しかしさらに、この成功を大成功につなげるために     は、そういういろいろなコメント、あるいは気になる点について、事務     局としてキチッとした回答なり、回答をするための準備なりを整えるこ     とが必要になるかと思います。      また、我々の審議会といたしましては、これを受けまして、むしろど     ういう課題に絞って問題を取り上げていくべきかということが、基本的     な仕事となると思います。前に出しました審議会の報告、それから白書     の指摘を受けましてですね。そこで議事進行予定の6と7、「その他」     と「今後の運営」というところに進みたいと思います。人口問題審議会     報告書以降の経過、あるいは今後の課題を含めまして、事務局のほうか     ら説明、話題の提供をお願いいたします。 椋野室長 昨年にご報告をいただきましたあと、お手元に資料6、7、8、9と     お配りさせていただいておりますけれども、報告書のポイント、資料6、     水色のパンフレットにまとめさせていただいております。      一番最後のところにアンケートの葉書が付いておりますけれども、こ     ういうかたちでパンフレットができてからはここに挟んでありますし、     それから報告書にも挟んでかなり配布をしまして、その結果を資料8で     まとめたものを後ほどごく簡単にご紹介させていただきます。      それから資料7、『人口減少社会、未来の責任と選択』という小さな     本は、この審議会でご審議を始めるにあたって、いろいろな有識者の方     からお話を伺ったわけですが、そのお話をまとめたものでございます。      それから資料8、いま申し上げましたようにパンフレットや報告書に     付けたアンケートの結果をまとめたものでございます。時間の関係でご     く簡単に申し上げますけれども。返していただいた方が女性210名、男性     361名、合計571名のご回答がございました。女性では30歳代が最も多く、     男性では40歳代が多いと。回答者の4分の3は配偶者がありまして、め     くっていただきますと配偶者のあるうち3分の2は子どもを持っており     ますし、3分の2は就業しております。就業形態は8割が正社員と。そ     ういう方々がお答えくださいました。アンケートに答えてくださったの     ですから、もちろん対象者に偏りはありますけれども、むしろその偏り     は、この少子化問題に関心を持っている方々というふうにもみることが     できるかと思います。      結果の概要でございますけれども、少子化が問題だと思いますかとい     うことについては、9割以上が問題と考えております。性別に見ると男     性、年齢的に見ると高いほうが、「全くそう思う」。つまり非常に問題     だと思っている割合が高い。それから対策についてですが、個人が望む     結婚や育児を妨げている要因を取り除く限りにおいて取組を行うべきと     いうことについては、概ね6割が「そのとおりである」と答えておられ     ます。ただ、ちょっとここで気になりますのは、女性の60歳以上の約20     %の方が、「出産や育児は個人の問題なので、どういうかたちあでれ取     組はすべきでない」というふうにお答えになっております。60歳以上と     いうと、戦中の人口増加政策の思い出があるのか、女性の60歳以上でそ     ういう方が2割いらっしゃるのが、ちょっと目立つ点でございます。      それからQ3で1ページめくっていただきまして、報告書で出生率を     回復させるための基本として、固定的な男女の役割分業意識や雇用慣行     を見直すことが重要だといっているが、どう思うかということについて     は、回答者の9割弱がこの指摘に賛成をしておられます。これもここで     ちょっと気になるのは、子育て期の中心にあると考えられる男性の30歳     代でやや少ない。「全くそう思う」方が4割弱、「どちらかといえばそ     う思う」と考える方も35.6%で。もちろん多いわけですけれども、他世     代に比べると子育て期にある男性でそう思う方が少ないというのが、や     や気になるというか、目立つ点でございます。      それから少子化への対応として特に重要と思うもの、Q4ですが、      「雇用環境の整備」というのが女性の20歳代で非常に高いところです。     もう一つ、男性の20歳代での高いところは、「子育ての経済的負担の軽     減」でございます。保育サービスについては、女性の30歳代で「雇用環     境の整備」と並ぶ53%ということで、かなり高くなっております。男性、     女性、年齢によって違いがございます。      それから最後、この報告書の提言内容の実現に向けて、どのように取     り組んでいくべきと思いますかということについては、回答者の5割が、     「様々な議論がある問題であり、じっくりと議論を重ねて、まず国民の     理解を得るべき」と考えておられます。もちろん「政府が主導となって、     一刻も早く実現に向けた取組をすべきである」という方も4割以上とな     っていますが、5割以上の方が、まず国民の理解を得るべきというふう     にお答えになっております。      こういうこともあり、いろいろなところでパンフレットを配ったり、     私どもでご説明をさせていただいております。      それから資料9は、厚生省の監修で毎月『月刊厚生』という雑誌を出     しております。そこでずっと連載で「少子化を考える」という対談なり     インタビューを載せておりますので、ご参考までに配布させていただき     ました。      それから今後の進め方でございますけれども、いまさまざまな委員の     方から白書についても、ここはやや問題があるのではないかというよう     なご指摘もいただきましたし、最初に落合委員からも、仮説ということ     でわかるけれども、本当にそこまでいえるかどうかはやや疑問の点もあ     るというふうなご意見をいただきましたけれども。政府としての取り組     みのほうについては、新聞報道等でもごらんになっているかもしれませ     んけども、総理が内閣サイドでも有識者会議のようなものを立ち上げる     というようなことを言っておられます。もちろん、そういう有識者会議     で議論を始めるにしても、昨年おまとめいただいたこの審議会の報告書     をまず参考にしていただき、それを手掛かりとして議論をいただくので     はないかと思いますけれども、一方でそういう動きもございますので、     私どもとしては、できますればせっかくさまざまな分野の専門家の先生     方にお集まりいただいておりますので、この審議会では、やや疑問に思     うと思われたようなことも含めて、そういう点について専門的な立場で     いろいろと議論をお願いをできないかと思っております。      白書では家族、地域、職場、学校について問題提起等を行いましたけ     れども、もちろん反対の意見の方もいらっしゃるでしょうが、そういう     方にもお出でいただいてご意見を伺うなり、あるいは参考にさせていた     だいた著書をお書きになった先生にお出でいただくなり、もちろんここ     の委員の方々から少し詳しくご意見をいただくなり、進め方はいろいろ     あろうかと思いますが、私どもがあえて仮説だとして書いたところを、     もし審議会としてお深めいただければ、大変ありたいと存じます。 宮澤会長 それでは、ただいまご説明いただいた点について、ご質問ございます     か。どうぞ。 八代委員 すみません、ちょっとさっき言い忘れた点とも関連して。やはり一番     大きな点は、先ほどの白書のレジュメの3ページ目の一番下のセンテン     スなんですが、これは河野先生がおっしゃった点とも関連するんですが、     せっかくこれだけキチッと分析して、なぜ少子化の要因かについて仮説     をつくられているんですが、その結論が結局結婚を先送りすることで晩     婚化が進んでいるのではないかというふうに1行で片づけているんです     が、いま本当に大事なことは晩婚化か非婚化ということなんですね。な     ぜこれだけキチッと分析していて、それは単に先送りで、いつかは必ず     結婚するという強い結論がどこから出てくるのかということであって。      この白書をキチッと読めば、こういう問題が解決しない限りは永久に     結婚しないという結論があっても決しておかしくないので。それはまさ     に先ほどご説明のあった人口の将来推計の基本的なポイントに関わる点     で、人口の将来推計は、それは単に仮定で置いているだけなんだと思う     んですね、私の理解では。その仮定が本当に正しいかどうかということ     が、今後の人口問題審議会の非常に重要なポイント。晩婚化か非婚化か     ということですね。特に30代、40代の女性の行動について。その点につ     いて、ぜひご検討いただければと思います。 宮澤委員 どうぞお願いします。 阿藤委員 いまの八代委員の意見でございますが、一言だけコメントさせていた     だきますと、晩婚化と非婚化というのは、ある程度連続的なもので、は     っきり区分のできるものじゃないですね。個人的に考えても、いつか結     婚したいと思っていて、それがズルズルいって結局結婚しないですんで     しまうという、そういうプロセスなわけですね。ですから、これはまた     推計の仮定とも絡むんですが、決していまの推計が非婚化をしないとい     っているわけじゃなくて、相当数の方が結婚しないという非婚化の仮定     を置いているわけですね。それはあとは程度問題であって、どこまで晩     婚化し、どこまで非婚化が進むかという。そういう連続的なものとして     把握する必要があるんじゃないかと思います。 宮澤会長 どうぞ。 岡崎専門委員 私は将来のことを考えると、ちょっと違った方向に動く可能性も     あるということを研究したらいいんじゃないかと思いますが。一斉に晩     婚化、非婚化、一斉に少子化のほうに動いていますけど、もう少し待て     ばあるグループの人は結婚して子どもをたくさん生む、あるグループの     人は生まないという方向に社会が分裂するという可能性があるかどうか     ということが、私はちょっと面白いテーマだと思います。その点につい     て、現在でもかなり子どもを生んでいる人がいる。4人生む人がいる。     そうすると、その人はどういう条件で生んだんだろうかということを研     究してみたらですね。いま一斉に少子化のほうの分析に傾いていますけ     ど、生める人はどういう条件にあって生んだんだろうかということを、     先ほど高橋部長が紹介しました人口研のデータ、非常に豊富なものを持     っていますから、そういったところからどういう条件だったら生めて。     どういう条件の人は生まないということはわかってきたんですけど、ど     ういう条件の人が生むのか。例えば祖父(祖母?)が一緒にいて子育て     をサポートするという世帯。あるいは、割と高学歴でお金がたくさんあ     って、シッターを雇ったりすることが可能な世帯と、いろいろなことが     あると思うので、生める人はどうして生んでいるのかということを研究     したらどうかと思います。 宮澤会長 ありがとうございました。どうぞ。 吉原会長代理 いまのご意見にも関連するんですけど、私は先ほどの麻生委員の     ご意見にあった都道府県別の出生率。これが非常に違いますね。一番低     いのは東京の1.08で、一番高いのが沖縄の1.81ですけど、先ほどの厚生     省のお答えだけじゃ、どうもあまり納得できないんですけれども。いろ     いろな要因が関わっていると思うんですね。いまのまま進みますと、も     っと経済、社会が進んでいくと結局東京のように‥‥実際にはならない     と思いますけどね。どこかで止まると思いますけれども、極端なことを     言いますと日本全部が東京のようになってしまうんじゃないかと。そう     いうことも考えられないわけじゃないので。だからといって、沖縄の1.8     というのが本当に沖縄の社会としていいのかどうかという問題もあるわ     けですね。      それから同じ高齢化が進んでいても、鳥取とか島根は比較的出生率が     高い。一方四国の高知なんかも高齢化が一番進んでますけど、割合出生     率が低くなっているんですね。静岡と同じぐらいになっているので。私     はこういった地域差の原因をもう少し突っ込んで研究する必要があるん     じゃないかと。それが出生率を高める、あるいはそれほど低くさせない     対策の1つのヒントが得られるんじゃないかと思うんですけどね。そう     いった意味で、もうちょっと研究をしてみたらどうか。あるいは厚生省     自身でできなければ、どこかに委託研究をお願いするなりですね。それ     が今後の対策を考えるうえで、何かいいヒントが得られるんじゃないか     という気がいたします。 宮澤会長 ありがとうございました。どうぞ。 落合専門委員 ご報告いただいたこのアンケートについてなんですけれども、ア     ンケートの例えばQの1、少子化は問題だと思いますかだとか、男女の     役割分業について、それから少子化の対応として重要だと思うもの等に     つきまして、性別と年齢による回答の差が大きいということが非常に面     白いと思いました。それでちょっと変な意見かもしれないんですけれど     も、少子化が問題だと思いますかというのを見ますと、先ほどご報告の     ありましたように、男性のほうが問題だと答えている。それから年齢が     高いほうが問題だと思っているということですね。そうしますと、いか     がなんでしょうね。この委員の構成というのは、代表性がありませんね。     社会全体の意見の。      ちょっとこんな皮肉を申しますのは、先ほどからやっぱり少子化は問     題だとか、出生率を回復させたいとか、そういうのが暗黙の前提になっ     て議論が進行していると思うんですけれども、まさにいま生んでいる若     い女性たちというのは、ずいぶん意識が違うんですよね。ですから、自     分で生むんじゃない人たちが意見を言っているんだということ。それは     社会全体の意見ともしかしたらズレているかもしれないということをち     ょっと自戒しながら進めていきたいと思うんですが。 宮澤会長 ありがとうございました。他にご意見ありますか。      いろいろご意見をいただきました。問題誘発的な白書でもありました     し、また我々の審議会の報告にいたるまでにも多面的な問題提起を含ん     でいるということでございました。これを受けて、今後の進め方ですが、     今日出ました各委員からいろいろな意見を事務局のほうで整理をしてい     ただきまして、一つはそれをスタート台にする。もう一つは、代表性の     指摘がございましたが、これも踏まえ広く一般の識者から聞くというこ     とで、いま事務局からお話がございましたようにヒアリングを再開する。      もう一つは厚生白書で示さされたさまざまな問題提起のように、家族、     地域、職場、学校というような単位に分けて進めるのがよろしいか。そ     れとも、社会全体をいろいろ統合した場面、例えば社会保障との関係は     どうとか、あるいは労働市場や保育市場との関係はどうとか、そういっ     た局面からのまとめ方もあります。どういう重点を選ぶかということが     一つ重要になるかと思います。いままでの人口問題審議会の議論で欠け     ておりましたところをさらに深めるということを含めまして、またいた     だいたご意見を踏まえながら、さしあたりは議論を整理しながらヒアリ     ングを再開したい。ヒアリングを再開する場合にも、どういう面の方か     らご意見をいただいたらよろしいか。委員のほうから何か特別のサジェ     スチョンなりがございましたら、ぜひ事務局のほうにお申し出いただき     たいと思います。      今後の段取りにつきましては、さらに事務局と相談をさせて進めさせ     ていただきたいと思います。      本日はどうもご多用のところをありがとうございました。次回の日程     につきましても、改めてご連絡をさせていただくことにいたします。ど     うもありがとうございました。      問い合わせ先      厚生省大臣官房政策課      担当 山内(内2250)齋藤(内2931)     電話 (代)03−3503−1711 (直)03−3595−2159