98/06/25 第7回精神保健福祉法に関する専門委員会議事録 公衆衛生審議会精神保健福祉部会 第7回精神保健福祉法に関する専門委員会 議事録 厚生省大臣官房障害保健福祉部精神保健福祉課 議 事 次 第   日  時  平成10年6月25日(木) 16:03〜19:15   場  所  厚生省特別第一会議室   会議次第    1 開 会    2 議 事    (1)精神障害者の福祉施策について    (2)市町村等の役割について    (3)その他    3 閉 会 〔出席委員〕 吉 川 座 長   池 原 委 員  伊 藤 委 員  金 子 委 員  後 藤 委 員   佐 伯 委 員  佐々木 委 員  佐 藤 委 員  新 保 委 員 高 柳 委 員 竹 島 委 員  長 尾 委 員  西 山 委 員  守 屋 委 員  山 本 委 員 ○吉川座長 それでは、定刻が少し過ぎましたので開会させていただきたいと思います。第7回の 精神保健福祉法に関する専門委員会でございますけれども、本日も本当にお忙しいとこ ろ、たびたびこうしてお集まりいただきましたことを感謝いたします。  本日の出欠状況につきまして、杉中補佐の方からお話を。 ○杉中補佐  本日でございますけれども、乳井委員から欠席のご連絡をいただいております。また 西山委員、山本委員からはおくれてご出席になるという連絡をいただいております。池 原委員、佐藤委員におかれましてはご出席のご返事いただいておりますので、しばらく して来られるということになると思います。以上でございます。 ○吉川座長  どうもありがとうございました。  それでは、議事に入りたいと思いますが、まず事務局より資料の確認をお願いいたし ます。 ○杉中補佐  それでは資料の確認をさせていただきたいと思います。  まず、「議事次第」のほかに、第7回の精神保健福祉法に関する専門委員会の目次が ありますけれども、基本的には前回配らせていただいたものでございます。ただ、お手 元に事前に配布されたのは資料5、これについては差し替えになっております。  また、資料18「精神障害者ホームへルプ制度導入に関する実証的研究」、資料19「精 神障害者に対するホームヘルプサービスの事例」というものが追加になっております。  残りの資料についてですけれども、本日持って来られてない方等がございましたら、 事務局の方に申し出ていただければ、ご用意しております。  あと、資料として配布させていただきましたけれども、前回、お話いただきましたD PIの方から要望書の追加と委員の皆様方に配布してくれという資料がございますので それを配布しております。また、ご存じの委員もおられるかもしれませんけれども、精 神病者集団という当事者の団体から、専門委員会の方に精神病者集団でつくった意見書 を配布してくれという依頼がありましたので、それについても配布しております。  あと、非常にばらばらと資料を置いているのですけれども、第3回、4回の専門委員 会の検討メモでございますけれども、委員からのご意見をいただいて直したものを配布 しておりますので、一応これで外部に公開することにさせていただきたいと思います。  以上でございます。 ○吉川座長  ありがとうございました。それでは、いかがでございましょう。資料の方はお手元に おありになりますでしょうか。それから、前回お配りいたしたもので、もしご持参でな い場合には、事務局の方にお申し出いただければよろしいかと思います。  それでは、議事に入らせていただきますけれども、本日は、この会議に先立ちまして 前々から何回かやっております、いろんな方のご経験、ご意見を承るという機会をつく っておりますが、きょうは東京医科歯科大学の山上教授から、またカウンセラーの穴田 さんからご紹介いただきました曽我部とし子様をお迎えして、被害者の問題として、ご 意見を伺おうと思っております。今後、次回に恐らく議論しなくちゃいけない触法問題 を含めて、今後、重要なご示唆をいただけると思いますので、お話しをいただければと 思います。どうぞ、話を始めてください。 ○曽我部  どういうふうにお話しすればいいのでしょうか。 ○穴田  すみません、ちょっとご説明させていただきます。  私、東京医科歯科大学の中の犯罪被害者相談室というところで働いております穴田と 申します。本日、きょうの会合で精神障害者による犯罪の被害者の方にぜひお話をとい う申し入れが山上教授の方にありました。それで、私どもと何度かお会いしてお話しな ども伺わせていただいている曽我部さんにお願いして話していただけるということにな りましたので、きょうは兵庫県の明石市から来ていただきました。  簡単に事件について、説明させていただきますと、曽我部さんは、6月9日がご命日 になるのですが、2年前にご長男が「通り魔殺人」と言っていいと思うんですけれども 精神障害者の人に道路上で刺されて急死なさったという、そういう事件の被害者でいら っしゃいます。当時ご長男は、お母さんといっしょに日本料理店をしていました。きょ うはお時間をいただきまして、お話をさせていただきますので、よろしくお願いいたし ます。 ○吉川座長  ありがとうございました。それでは、曽我部さん、どうぞ、あとはお話を続けていた だいて結構です。 ○曽我部  どういうふうに話したらよろしいでしょうか。私の気持ちを。 ○吉川座長  先ほど私たちにちょっとお話をしてくださったことを、ともあれお話をいただきなが ら、その中でどういうような問題を今感じているかというところをお伝えくださると、 皆さん方はおわかりいただけると思います。 ○曽我部  今、お話にありましたように、私は息子と一緒に小さな小料理屋を営んでおりました ので、息子が頼りでしたのが、その子が亡くなってしまいましたので、生活基盤という ものもなくなってしまいましたし、死にたいとか、非常にうつ状態になるんですよね。 うつ状態と闘いながら商売していかなければいけない。お客さんの前ではにこにこ笑っ て商売しなければならない。いらっしゃるお客さんの方も敷居が高いなと思いながら来 たら、時には暗い顔しているときもあるし、それもいややし、というて、にこにこ笑っ ているのは痛々しいところもあるし、何となく行きづらいからやめておこうかみたいな だんだん売り上げも下がってきます。  先ほどもお話したんですけれども、公的な中小企業の支援融資みたいなのも一応銀行 さんが窓口になって、「こんな支援融資があるんですけれども」と言ってきてくださっ て、書類一切そろえて「はい、保証人が要ります」という段になると保証人がないんで す。息子がおれば、息子に毎月々給料を払ってましたから、押せば、それで割と低利な 借入れができるんですけれども、そういうのもできない。じゃあ、いっそ店もやめよう かなと思うけれども、息子が生きているのを前提にして銀行から借りて、店の改築もし ているから、借入れもあるし、店を売って何とかしても手元に残るお金は何もないこと になると、さて、52歳になった料理やのおかみさんなんて商売以外の生活手段がないし できないんです。どうしようなんか思いながら、生命保険を取り崩し取り崩し店をやっ ているという状況なんです。  やっぱり死にたいな、死にたいなとよく思います。私が生きているのは、何で生きて いるかというたら、息子の下にもうひとり弟がおりますから。私が事件のときにいなか ったものですから、その子が遺体確認とかずっとしてくれたから、お兄ちゃんの遺体確 認した後に、私が死んだことを……。何でか知らないんですけど、先生、死ぬというの は、私は首吊り自殺を思うんです。首吊り自殺したい、したい、したい……。でも、そ の姿を見たら、子どもは、どない思うかな。きっとだめだろう。あの子のためだけに生 きておる。ほんとに何かに自分の体を縛りつけておかへんかったら、発作的に死ぬんじ ゃないかなと思うようなときもよくあります。  事件後、皆さんいろんな方から聞かれたんですけれども、加害者は息子を刺した後で もうひとり違う人をけがさせて、その後は割腹自殺を図って、本人は未遂に終わったん です。だから、すぐ精神異常者やというのもみんなわかったんです。だから、すぐに無 罪になって病院に入って、また、じき帰ってきて、また、罪を犯すんやろ。そんな人、 死刑にしてもらったらいいんねんと、わりかし簡単に言うてんですね。キチガイ(「キ チガイ」この言葉は厳然と残っているので使わせて頂きますが、)やろう、死刑にして もらえ。すっごくつらかったんです、その言葉を聞くのが、本当に。無責任にそんなこ と言わんといてほしいなと思いました。  私、救済措置というのでしょうか、犯人に、私に慰謝料みたいのを払う能力が全くな いと聞かされて、そういうと皆さんがそしたら、社会が悪いんねん。そういう人を野放 ししている社会が悪いと、わりかし何人もの方がおっしゃったんですね。社会が悪いっ て、何やろな。社会って、だれが悪いんやろな。国って、だれかなとか、物すごい考え たんです、ほんとに。社会って、みんながつくっているもんやなって、じゃあ、社会が 悪いと言うた人に、「ほんなら、あなたが悪いんですか」と私、問い返したら、その方 は、「いや、私は何も悪うない」と多分おっしゃるだろうな。社会って、何が悪いんだ ろうなって、よく思いました。  そんなところでよろしいでしょうか。 ○吉川座長  先ほどもお話を少し承りましたけれども、今の、罪は罪として、どういうふうに認め てほしいかというご意見もあったと思いますし、それから、今のことは、さっきもちょ っと話、そのほかにも幾つかの話の中で挙がってきましたよね。ですから、それをお話 しいただけると、もっとおわかりいただけるかなと思います。 ○曽我部  先生、ご質問いただけたら、何をお話ししたらいいか、私もあがってしまって。 ○吉川座長  罪は罪としてという、そのことで思い出していただいたと思いますけど、そんなこと でも、まず。 ○曽我部  犯人が不起訴だったものですので、そのときに初めて、事件後すぐに検事さんの方か ら「どうしてほしいですか、犯人に対する気持ちは」と聞かれましたので、私は、犯人 を死刑にしたからというて、子供は帰ってくるものではないので、一切のご判断はお任 せします。自分にとって私はよりよい生き方をしたいと思います。自分にとってよりよ い生き方というのは、今、何であるかわかりません。というふうに答えました。  12月18日に犯人が不起訴という連絡をいただきました。そのときに初めて頭の中に浮 かんだのは、罪は罪として科せてもらいたかった。10年なのか、15年なのかわからない んですけれども、この人の罪は何年ですよというふうに科せてもらって、それから病院 に入れてもらったら、そういうふうにしてほしかった。  それから、あくる年の春に、宮崎勉の死刑判決が下りたときに、ああいうふうに二転 三転するというのは、加害者もまたそのたびにさらし者みたいにされてんねんから、被 害者であるご家族もずっとそのたびそのたびに引きずっていってんねんから、そのとき に、この人の罪は何年ですよというふうに科せた方がいいんじゃないか。もしも死刑な ら死刑でいいんじゃないかなと思うんです。病気治してから死刑にしたってもいいんじ ゃないかなと思いました。死刑囚としても病気になれば治療するんだから、そういう意 味では、たとえ死刑判決が下りていても病気治してから、あなたは死刑に値するような ことをしているんですから死刑ですよと死刑にすればいいんじゃないかなと私は思いま したけれども。 ○吉川座長  何か再犯防止に関して、また、こういうことがないような工夫というのはないのか。 さっきちょっとおっしゃっていますね。 ○曽我部  病院から帰ってきて、多分ほかの地域に働きに行くということはできないと思うんで す。生まれ育ったところで事件を起こしていますね。遠く離れた東京へ出てきて労務者 になって働くとかというようなことができるような人には思えないので、出てきた地元 で働くぐらいのことしかできないけれども、そしたら、殺人事件を起こしたような人を 雇い入れる先があるんやろか、ないんじゃないかな。じゃあ、また同じように仕事がな くて、白い目で見られていたら、また事件を起こすんじゃないかな。その辺の受け皿み たいなのはどういうふうになっているのかなと思いました。 ○吉川座長  その上で慰謝料の話がさっきもちょっと出ましたけれども、やっぱり自分の息子が死 んだからといって慰謝料を請求するというのはなかなかしにくいことなので。 ○曽我部  そうです。自分の息子の命をお金に換算するというのはすごくつらいことで、それに 穴田先生とかのいろんな支援フォーラムに参加させてもらっていて、日本にはまだ懲罰 民事というふうな意識がないそうなんです。だから、そういう罪を犯したからというの で、慰謝料というふうな、世間通念として、そういうのはもらって当然という意識がま だ社会的な中にないんですので、何千万かのお金が私の手元のところにおりてきたら、 もらいつけないお金をもらっても使い方もわかりません。多分ちゃんとした使い方とい うのはできないだろうと思います。  それと息子の命をお金に何千万ですというふうに換算して請求するというのはすごく つらいことですし、それよりも厚生年金を私もかけておりましたし、息子もかけており ましたので、できたら遺族年金というような形で毎月々おりれば、毎月こんだけおりて くるんやといったらすごく頼りになるんです。私たち商売している者は、きょうは働か ないとやっていけませんね。あす、売り上げは幾らあるかというのはわかりませんので 毎月、これだけいただけるといったらすごく心強いものがあると思います。  なぜ、そういうふうに思ったかというのは、まことに不謹慎かもわかりませんけれど も、犯人の親が生活保護もらっているんですよね。よう考えてみたら、犯人の親は生活 保護もらっているんやな。生活保護というたら、あれは毎月々きちんきちんとおりてく るんやな。私は働いて苦労して税金払っている。毎月毎月赤字出して、何かすごくちょ っと矛盾を感じたものですから、それもあるんですけれども。 ○吉川座長  ありがとうございました。それでは、一応ここのところで曽我部さんのお話の方は一 たん終わらせていただきまして、ほかの方々、どなたかご質問なりしていただけません でしょうか。 ○曽我部  どうぞ、何なりとご遠慮なくご質問いただきましたら。 ○吉川座長  打ち合わせのときも何でも言ってくだされば、自分の答えられる範囲はお答えくださ ると言っておられました。どうぞ、高柳先生。 ○高柳委員  大変お気の毒な事件でお見舞い申し上げますが、実は私たちもそのことで非常に悩ん でいるんですけれども、日本の法律にはそういった心神喪失で不起訴になって犯罪を犯 した人を罰する法律がないんですよ。そういうことはご存じでしたか。 ○曽我部  いや、知りません。大体、新聞では心神耗弱のために不起訴とか、いや、不起訴は知 りませんでした。無罪というふうな、そういうふうな新聞で今まで見ていましたので、 多分無罪になるやろなというのは思ってましたけれど。 ○高柳委員  外国では精神障害のために罪を犯した場合にまず治療をする命令を出すんです、裁判 所で。何年間入院しなさい、あるいはきちんと治療しなさいという命令を出すんですね 日本では裁判所も命令を出さないんです。まるでほったらかし。検事は不起訴にするで しょう。そしたら、後は精神科の医者を呼んできて、何とか強制入院してくれというふ うに言うわけです。ところが入院させますと病気はすぐよくなっちゃいますね。そうす るとたった1人の精神科の医者がオーケイと言えばすぐ退院できるんですよ。そういう 実情があるんですが、そういうことについて、被害者としてどうお考えですか。 ○曽我部  精神障害者は何をするかわからないという差別を助長するだけだと思いますけれども ○吉川座長  長尾先生、何か体が動いたところを見ると。 ○長尾委員  これは次回の措置入院のところでも十分これは論議せないかんことなんですが、先ほ ど高柳先生が言われましたように、不起訴になると刑法からは離れてしまって、いわゆ る精神保健福祉法という、ご存じだと思いますけれども、その法律に入ってしまって、 その中で治療がそこそこよくなれば帰られると。ただし、もう退院ということになると 今度はそこから治療を続けるなり何なりする強制的なフォローシステムとか、そういっ たものは全く日本ではないわけなんですね。もし、本人さんが治療を受けたくないとい うようなことになれば、それを強制する手だては全く今ないんです。若干我々もそうい うのはおかしいというふうに考えていますし、できるだけそういった形をつくりたいと いうのは我々も思っているんですけれども、そういうことについてはいかがでしょうか ○曽我部  何か人権という問題が絡んでくるのかなと思うんですけれども、私たちいろんな人を 見ていて、お母さんがアル中だった方が入院さすのに、お母さんが柱にしがみついてい るのを無理やりに引っ張って入院させたというふうなことを聞いたんですね。そのとき に、「先生は?」と聞いたら、「先生はどうすることもできないんや」と言って、ああ 先生見ておくだけで、それは人権なんかというふうに思ったことがあるんですけれども ああ、そういうものなのかなというふうに思いましたけれども。 ○吉川座長  長尾先生、よろしいですか。ちょっと難しいところではありますよね。どうぞ、新保 先生。 ○新保委員  曽我部さん自身が死にたいと思うほど、ある意味ではつらい事件ですよね。 ○曽我部  そうですね。 ○新保委員  そういう事件に遭遇されても、なお精神障害者の方々の立場に立ってご発言されてい るということについては大変敬意を表するんですが、しかし、あえて私は社会参加を勧 める立場にある者なんですが、社会参加を勧めていく上でさまざまな精神障害者に対す る曽我部さんがそれだけの思いをしながらも、そういう思いを全くしてない人たちでさ え、精神障害者に対するきつい目線や視線があるわけですね。  ですから、死にたいと思うほどのことがあったんですから、必然的に曽我部さんにも 精神障害者に対する憎悪感というのが一時的にはあったんじゃなかろうかというふうに 思うんですね。ある意味では、そういったものを十分に表出させていただいて、そのこ とをみんなで一生懸命考えて、精神障害者の方々についての社会参加がうながせるよう にしたいというふうに私は思うんですね。  ですから、こういうことは道義的に、あるいは個人の心情としてつらくて許せないと 思うようなことがおありになれば、お話しいただければ、ありがたいというふうに思う んですが。 ○曽我部  もうちょっとわかりやすく。 ○新保委員  要するに曽我部さんが死にたいと思うほどつらかったことですよね。 ○曽我部  それと精神障害者を許すということとはまた別じゃないでしょうか。 ○新保委員  もちろん別のことですけど、個人的には精神障害者であれ、なかれ、刺した人に対し ての憎悪感というのはなかったんですか。 ○曽我部  あります。ありますけれども、それが私は警察で犯人の写真を見せないでほしいと言 ったんです。見せてもらったら、その顔ばっかりが頭にずっとこびりついているから写 真を見せないでほしいって申し上げましたから、多分そのせいかもしれませんけれども むしろ、そういう事件を犯すような人というのは、お母さんがひとりで、そのお母さん が生活保護もらっていて入院しているというふうに聞いたときに、この人に対して愛情 のない人に育ててもらったんやろうなというふうに思いました。多分まだ憎悪を抱くと ころまで私がいってないのかもわかりません。もっとしたら憎悪を抱くところに至り来 るかもわからないんですけれども、行く途中なのかもわかりませんけれども、もしかし たら、殺したいほど憎いと思ったこともありますし、また、反面では、私のところの刺 し身を食べながら、うちの息子を殺した犯人は、実の母親とあったかいご飯でこの刺し 身を食べたことがあるんかしら、そういうふうにも思いました。 ○吉川座長  ありがとうございました。それでは、そろそろ30分たちますので、ご意見をいただい たことを、私たち受けとめながら、また議論を進めさせていただきますので、どうもあ りがとうございました。 ○曽我部  どうもきょうはありがとうございました。               (穴田氏・曽我部氏退室) ○吉川座長  それでは、本日の議題について議論に入りたいと思います。本日は精神障害者に係る 福祉の問題でございます。特にホームヘルプサービスの問題についてこれからお話をし ていこうと思いますし、福祉施策としての主体が原則的には市町村でございますので、 市町村の役割や何かということ。そして、それをサポートするはずであります保健所、 都道府県の役割や何かということについてお話を進めていただこうと思います。  では資料の中身を説明していただけますか、杉中補佐。 ○杉中補佐  それでは、まず資料1のホームヘルプサービスのあり方についての説明をさせていた だきたいと思います。まず資料といたしましては、資料1と、きょう差し替えが一部あ ります資料5、8。また、きょうさらに配りました最後の18番、19番を使用したいと思 いますので、お手元にご用意ください。  まず、現在、社会福祉施策の概要ということで、まず資料5をご用意願いたいんです けれども、まず簡単に、今の「精神障害者に関する福祉施策の概要」ということで書い てございます。まず上から真ん中下ぐらいに福祉工場と言われるまでが、いわゆる精神 障害者社会復帰施設と言われるものでございます。まず生活訓練施設ということで、独 立して日常生活ができない者に対する生活能力の訓練をする施設、これが「生活訓練施 設」と言われているものでございます。  あと、その下に書いてある「ショートステイ」ということで、短期入所、これは法定 ではございませんけれども、生活訓練施設に付設して、在宅での処遇が一時的に困難と なった者を受け入れるといったサービスもございます。  生活の場のない者に対しては、「精神障害者福祉ホーム」という社会復帰施設がござ います。  それから、精神障害者に対する作業訓練を行う施設といたしましては、「精神障害者 の授産施設」、これは通所のものと入所のものがございます。  あと作業能力がありますけれども、障害を持っていることによって、一般の企業に就 職することが困難な者ということで精神障害者の福祉工場が設けられております。  以上が社会復帰施設と通常言われているものでございます。  あと、通常の雇用契約による就職の困難な者に関する社会的なリハビリテーションを するということで、社会適応訓練事業が行われております。  また、共同生活に支障のない者に生活の場を与えるということで、精神障害者地域生 活援助事業(グループホーム)というものがあります。  また、地域で生活している者に関する日常生活の支援、相談等をする「地域生活支援 事業」といった事業も行われております。  基本的には福祉工場までが施設における処遇と、それ以下が地域、在宅における処遇 ということになっております。  資料6についてご説明をさせていただきます。精神障害者に対する福祉施策の推移を 簡単に説明させていただいたものでございます。  精神障害者自身は精神衛生法ということで、元来は医療保健に関する法律ということ でスタートされたものですが、基本的に議論が始まったのは昭和40年代以降ということ で、まず昭和40年の改正のときには保健所を精神保健に関する第一線の機関として位置 づけて、精神衛生相談員と、今は精神保健福祉相談員と言いますけれども、制度化をし た。また通院医療の公費負担をつくったということで、40年を契機として大きく地域に おける医療のあり方というものが施策化されました。  それを契機といたしまして、45年、その後ですけれども、いわゆる精神障害回復者社 会復帰施設というものに関して議論が行われて、45年に精神障害回復者社会復帰施設が 事業化されるようになりました。ただ、ここに書かれておりますように、精神障害回復 者ということで、基本的には精神疾患が回復もしくは回復途上にあって、一定の自立生 活能力を有する者を対象にするということからスタートしておりまして、この精神障害 回復者社会復帰施設という始まりというのは、後ほど説明しますけれども、現在にも影 響を与えるところでございます。  本格的に精神障害に関する福祉施策が法律の中に位置づけられるようになったのは、 いわゆる昭和62年改正におきまして、精神障害者社会復帰施設が初めて法定事業化され るようになったということでございます。  その後、平成5年改正には地域生活援助事業(グループホーム)が法定化され、その 後、同じく平成5年ですけれども、障害者基本法ということで、精神障害者が障害者と して明確に位置づけられるようになった。  さらに、平成7年の改正におきましては、法律名が「精神保健及び精神障害者福祉に 関する法律」という福祉を法律名に明記した、もしくは地域における福祉施策の援助を するための精神障害者保健福祉手帳制度をつくった後、精神障害者社会適応訓練事業を 法定化したというような形で近年の法改正ごとに福祉施策に関する制度は充実されてき ております。  しかしながら資料7に移っていただきたいんですけれども、精神障害者の福祉施策、 もしくは他障害に対する福祉施策とを比較したものですが、他障害が大体ホームヘルプ デイサービス、ショートステイといったような地域における施策が充実しているのに比 較いたしますと、精神障害者にはホームヘルプサービスがないと。ただ、精神障害者の 場合はデイケアという形で医療的な手当てがされておりますので、これが全くないとい う形ではないんですけれども、デイサービス事業がございません。  また日常生活用具や補装具といったようなものも制度化されていない。場合によって は、てんかんの患者のための日常生活用具みたいなものは、身体障害児であるとか、精 神薄弱者の方では見られているにもかかわらず、精神障害者の方にはないといったよう な形で、他障害やもしくは老人の施策と比べるとまだまだ精神障害者の福祉施策はおく れているといった状況にございます。  以上を踏まえた上で資料1に戻っていただきたいと思います。以下、資料1に基づい て説明をさせていただきます。  まず「精神障害者に対する福祉施策」ということで、以上、説明したとおりですが、 昭和25年に精神衛生法が制定されて以来、基本的には精神障害者に対する適正な医療と 保護の確保という観点に重点を置いた施策がとられていた。  福祉施策といたしましては、昭和45年に事業化した精神障害回復者社会復帰施設、当 時の名称でございますけれども、初めてでありますが、これは精神症状が軽減しもはや 入院治療を必要としないものであって、一定の自活能力を有する者を対象とし社会復帰 のための訓練を行うという施設でございました。  その後、昭和62年に精神障害者社会復帰施設が法定化され、5年にはグループホーム 7年においては社会適応訓練や手帳といったものが法定化される等、福祉施策の充実が 図られているところでございます。  「精神障害者の福祉施策の問題点について」でございますけれども、以下のような問 題点があるのではないか。  まず、一定の自活能力を有する者を対象としたメニューが大半でございますので、入 院治療というところまでは至らないんですが、なかなか自立生活できるほどの能力はな いということで、自立が困難な者に対する福祉施策というものがなかなかない。  特に在宅で生活する精神障害者という者に対する支援が乏しいといったような特徴が あるのではないか。  このような状況の中で、精神障害者に対するホームヘルプサービスといったものに対 する要望は非常に大きくて、関係団体等の意見書の中でもかなり多くの団体が要望して おります。  以下、精神障害者に対するホームヘルプサービスに論点を絞った形で検討するという ことで、書かせていただいております。  まず、精神障害者に対するホームヘルプサービス事業が法定化されていない理由はい ろいろあると思うんですけれども、考え方をまとめてみました。  まず、精神障害者に対する福祉施策の全般がおくれていること。本格的に福祉という ものが法律に明記されるようになったこと自体が平成7年改正以降でございますので、 まだまだ福祉施策の充実というものが他障害もしくは老人等に比べておくれています。  また、福祉施策自体が精神症状が安定しており、基本的な自立生活がある者に対する 生活訓練といったものが中心となっております。医療機関に入院するほどの症状ではな いけれども、早期に生活能力障害を回復することが困難であり、適切なサポートがない と地域の中で生活を続けていくことが困難な精神障害者については、まだその実態が明 らかになっていない。したがって、これらの者については、現在は退院の対象になり得 ないということで、まず医療機関に居続けることになるか、または家庭で引き取って支 援をしているということになっているのではないか。  また、他障害のホームヘルプサービス等ですが、老人もそうですが、市町村が実施主 体となって、もしくは市町村の社会福祉協議会といったところが市町村レベルで事業を 行っているということですが、精神保健福祉施策と行政においては市町村がほとんどタ ッチしていないという状況でございます。したがって、市町村が精神障害者に対する ホームヘルプの必要性を認識しなかったこと。実施主体でもし認識したとしても、それ が施策というものに必要性としてはね返ってこなかったというようなことがあるのでは ないかというふうに考えております。  ホームヘルプサービス自身が精神障害者に対して必要なのかどうかということですが 近年、全家連であるとか、厚生科学研究の中でホームヘルプニーズ等に関する研究とい ったものを行っていただいているところでございます。資料18を見ていただきたいので すが、これは東京大学の大島助教授に専門委員会用ということで既存の資料なりをまと めていただいたものなんですが、これにホームヘルプに関するニーズであるとか、その 効果を、既存の全家連の調査であるとか、あと各都道府県、市町村等が、障害保健福祉 計画をつくるときに行ったようなニーズ調査といったものを中心としてまとめていただ いたものでございます。  これの7ページという形で下に番号が振られておりますが、基本的な各市町村等の データでは、大体ホームヘルプが必要なところを見ていると、大体10%〜40%ぐらいま でという非常に幅が広いんですけれども、それぐらいの地域で生活する精神障害者とい う者には、ヘルパーの派遣が必要か、もしくはあった方が望ましいといったような意見 が出ております。  同様なものは厚生科学研究で昨年行われました「ホームヘルプニーズに関する研究」 というものが資料10にありますけれども、これは9年度の厚生科学研究の概要というこ とでまとめさせていただきましたが、需要予測ということで、定期的ホームヘルプが必 要なのがローマ数字のIのところ、6%と。一時的にホームヘルプサービスが必要とし た者が28%ぐらいで、大体30数%ぐらいというような結果が出ております。大体本当に 定期的に必要な人が1割弱ぐらいで、全体を踏まえると35%ぐらいということで、各都 道府県の調査と厚生科学研究の調査を見ても、在宅で生活する精神障害者についても相 当数の精神障害者がホームヘルプサービスというものを必要としているという実態があ るのではなかろうかと。  あと、きょうは説明いたしませんけれども、市町村レベルでやっている事例も少ない ですけれども、ありますので、そのいずれも資料19としてつけさせていただいています ので、各自見ていただければと思います。  また、同じく厚生省の研究で、若年痴呆の実態に関する研究班という中で報告してお りまして、若年痴呆に関する福祉的ニーズの研究はまだ報告書が出ていない段階なんで すけれども、いわゆる頭部外傷や脳血管障害といった疑似性の障害による若年痴呆とい ったものの患者が2万 6,000人ぐらいいるという研究が出されておりますけれども、こ れにつきまして、一般の精神障害者に対する福祉サービスは若干違うところがあると思 うんですけれども、そういった人については、特に程度の激しい人については自立して 生活することはなかなか望めない状況にあって、そうした人についてもホームヘルプ ニーズはかなりあるのではないかと考えております。  資料18に戻っていただいて、今度は15ページをあけていただきたいのですが、既に市 町村レベルの段階でございますけれども、精神障害者を含めて実質的なホームヘルプを 実施しているという自治体が約3割ぐらいはあるということが、これは全家連が関東近 県 100件の市町村等に対して実施したアンケート調査によってわかっているんですけれ ども、実際には制度がなくても3割程度の人が実質上の必要性から派遣しているといっ た実態があるというふうに聞いております。  ただ、ホームヘルプサービスを実施してない市町村等におきまして、どうして実施し ないのかということを聞きますと、国の制度がなければ、サービスの提供は不可といっ た市町村が46%程度。もしくは専門的な支援がなければ、サービスの提供が難しい。56 %程度といったようなアンケート結果が出されております。  以上を踏まえた上で、「ホームヘルプサービス事業を制度化する上での問題点」とい うことですが、精神障害者につきましては、生活障害と、精神疾患いわゆる機能障害の 両方を抱えたものですので、精神障害者のホームヘルパーというものは、単にいわゆる 老人等の社会福祉に関する知識や介護技術といったものではなくて、やはり若干の精神 障害に関する保健医療的な知識というものも必要なのではないか。  また、市町村に関しては、精神障害者に関する保健や福祉に関する事務のノウハウが 全く蓄積されていないに近い状況にあると思いますので、また精神障害者に対する支援 施策には、継続的な医療ケアが不可欠だというふうに考えられますので、保健所なりの 保健機関みたいなものは市町村のバックアップをするというものが必要なのかなという ふうに考えております。  また、ホームヘルプサービスを必要とする精神障害者の必要性の判定ですが、それは 今の障害の手帳の判定といったものでは必ずしもできないといったような必要性があり ます。また、当該精神障害者を取り巻く家庭環境等の種々の条件を総合的に考慮した上 で決定する必要があるということで、「認定に時間がかかる」と書いておりますけれど も、認定に関してもノウハウが要るのではないか。  また手帳ですが、手帳自体がなかなか十分に浸透していないといった状況がありまし て、手帳を持っているか、持ってないか。また、手帳の等級で判定を行うものがなかな か困難な状況にあります。  先ほどの全家連の調査によっても、ホームヘルプの必要があると判断された者のうち 手帳を所持していない者がかなりいたということでございます。以上を踏まえて「基本 的な考え方」ですが、まず「ホームヘルプサービス事業の法定化」ということで、精神 障害者の特に在宅の福祉施策の充実を図っていくことが必要なのではないか。現在、実 質上、精神障害者を在宅で介護している精神障害者の家族の負担を軽減するためには市 町村を実施主体としたホームヘルプサービス事業を法定化する必要はあるのではないか  以下、簡単にこれは既存のホームヘルプサービスの事業の法定化を書いたもので、と りあえずこれを書いたようなものですが、こういったような規定を法律の中に設ける必 要があるのではないか。  2番の「バックアップ機関について」ということですが、ホームヘルプサービス事業 の実施主体を市町村とした場合には、市町村にはなかなか精神福祉行政に対するノウハ ウがございませんので、ホームヘルパーの派遣の必要性の有無を判定したりする場合に 支障を来すおそれがある。そのため、保健所を市町村のバックアップ機関として適正な 事務の遂行と効率化を図るため、「保健所等は、市町村が行うホームヘルプサービス事 業に関する事務に必要な協力をすること」といったような趣旨の規定を設けて、市町村 と保健所の連携を図る必要があるのではないか。  次に対象者でございますが、先ほど言ったように必ずしも手帳とはリンクしないとい う問題点はありますが、市町村の事務の効率化、手帳による福祉施策を拡充して、その 普及率を高める。もしくは医学的な管理下にあるといったことがヘルパー派遣の条件で あると思いますので、その証明のためには手帳を持っているのは有効なのではないか。 したがって、ホームヘルプ事業の対象者を手帳の所持者に限定するといった方向で検討 することとしてはどうか。  次に「ホームヘルパーの養成」ですが、現在、高齢者や障害者の増大かつ多様なニー ズに対応したホームヘルプサービスを提供するために必要な知識・技能を有するホーム ヘルパーの養成を図るべく、都道府県・指定都市を実施主体としてホームヘルパー養成 研修事業が行われておりますが、精神障害者に対してもホームヘルプサービス事業を行 うといった場合には、精神障害者に対して適切なサービスを提供できるよう必要な養成 体制、もしくは研修というものをつくっていく必要があるのではないかというふうに考 えております。以上でございます。 ○吉川座長  どうもありがとうございました。少し大部でございましたけれども、きょう議論して いただく最初の柱でございますが、ホームヘルプサービスについて読んでいただきまし た。いつものとおり検討メモを目を通していただいて、最後に基本的な考え方として整 理をしていただいてますもの、それにお目通しをいただきながらご議論を賜ればと思い ます。  それでは、少し資料を前後しながらお話をいたしましたけれども、要は資料1のとこ ろに書いてあるものの補強材料ということで、ほかの資料を少し使わせていただいたわ けですので、資料1のところで話を進めさせていただきたいと思います。  前段にありました「精神障害者に対する福祉施策」、そうしたタイトルで書いてある ところに関しましては1つの流れが書いてあるわけでございますが、これそのものはよ ろしゅうございますでしょうか。  そうしますと、「福祉施策の問題点」というところで、幾つか挙げられておりますけ れども、こちらの方で用意しました問題点よりもまた別な角度から問題点があるのであ れば、お話をいただきたいと思います。もちろんこれは今はここではホームヘルプサー ビスというものにできるだけ焦点を合わせていきたいと思っていますので、その意味で 今、福祉施策がどういうところに欠けているものがあるのか。また、どういうふうな サービスをすればいいのかということあたりをちょっと考えていただいて。この流れの 中で余り出てこないようであれば、実際の3のところに話を入れまして、そして何かあ れば、2の問題へまた戻りながら、3以下を整理していこうと思いますが。 ○金子委員  資料の7をごらんいただきますとわかりますように、身体障害または知的障害と呼ば れる精神薄弱の方々に対してはこれだけの福祉施策があるわけでございますが、世の中 の流れ、精神障害も障害の一部ということで考えれば、少なくとも横並びのサービスは 必要だろうと思いますので、当然ながらホームヘルプサービスに関しましても今後充実 していくような方向が望ましいと考えております。 ○吉川座長  ありがとうございました。これは市町村行政との関係ももちろんあるわけですけれど も、とりあえずはこの法の中でどういうふうに考えていくかということで進みたいと思 いますけれども。 ○後藤委員  地域精神保健福祉をずっとやってきた立場でちょっと意見を述べさせていただきます と、基本的にはここに述べられているホームヘルプサービス導入に関しては賛成、むし ろもっと積極的賛成と言っていいのかもしれないんですけれども、というのは、この資 料7を見まして、当然精神障害者の場合には日常生活用具とか補装具の部分はそれほど 必要がない、バツになっていても当然のところかもしれないですね。これがまた身体障 害の場合はこれが非常にわかりやすいのでそこに福祉制度が入りやすいわけですね。  精神障害者の場合のこの補装具に当たるものが何かなと考えると、それは人なんだろ うというふうに思うわけです。そうすると補装具と同じように、あるいは盲導犬になぞ らえるのは余りよくないのかもしれませんが、日常生活を円滑にする、援助をするため の人は何かの形で福祉制度の中で整備すべきだろうと思います。  そうすると今現行のものとしては多分ホームヘルプサービスというのが一番妥当では ないかなと、そんなふうに考えております。 ○吉川座長  わかりました。としますと、どうでしょう。今、3のところで一応流れの中では議論 していただいているわけですけれども、「ホームヘルプサービスのニーズについて」と いう4のところは、先ほどもご紹介しましたように、大島さんやなんかの資料であると か何かを根拠にして、ニーズがこれだけあるのではないかという整理をさせていただい ています。  その上で、そうすると事業化するときの問題点として5へ話を進ませていただいてよ ろしゅうございますでしょうか。  それでは、5のあたりのところ、ホームヘルプサービスというものを制度化していく という、そうした問題についてご意見がいただければと思いますが。 ○高柳委員  非常に大事なことだろうと思います。5の一番目のところ、生活障害と精神疾患の両 方を抱えたということ、この位置づけは非常に大事だと思うので、特に私の希望では、 例えば服薬指導とか、そういったものまで含めて考えていらっしゃるかどうか、そこら 辺を。 ○吉川座長  確認ですね。 ○高柳委員  はい。 ○吉川座長  わかりました。その辺では杉中補佐どうですか。 ○杉中補佐  服薬というのはちょっと難しいところなんですけれども、とりあえずヘルパーの中で は今のところは考えていません。というのは、既存のホームヘルパーの制度を使用して いかざるを得ないという状況がありますので、今のヘルパーのものを超えると難しいの ではないかというふうに考えます。ただ、それをサポートするためには保健的な立場の 者が必要に応じてバックアップするとか、何かあったら保健婦さんなりが同行するよう にするとか、そういった体制をつくることは必要だなとは考えております。 ○吉川座長  極めて一般論的に言って、今の服薬だけに限って言いますと、「お薬は飲んだ方がい いわよ」と、こういうサービス、こういうような声かけはあれですね。 ○杉中補佐  そうです。 ○吉川座長  そのぐらいで、実際に飲んだかどうかという確認をするということではないと思いま すね。それはホームヘルパーに対するぎりぎりのところかなと思います。高柳先生、い かがですか。 ○高柳委員  よくわかりました。 ○金子委員  今の件に関して、私、個人的な考えでございますが、ホームヘルプというのは福祉の サービスだと思うのですけれども、福祉の関係者が、保健や医療に関して知識を持つの は必要でございますが、ただ、それを業務の中に入れるのはサービスを受ける側にとっ ても混乱を招き兼ねないのではないかと思います。ですから、むしろ必要なのは、保健 や医療の関係者とネットワークを組む、連携を密にすることであって、サービスの内容 が混同されるということではないと思っております。 ○吉川座長  ありがとうございました。 ○新保委員  福祉の在宅サービス、いわゆる三本柱ということでホームヘルプ、デイサービス、シ ョートステイというのは各障害者別の中で言われていることですが、そのうち、精神障 害者について、ことに2つのサービスが欠けているということは、これからの障害者施 策という形で考えたときにどうしても推し進めてほしいということを前段で申し上げま して、その上でホームヘルプのサービスを事業化していくに際して、市町村のサイドか らすれば、国に制度がないということはやりづらいということが1つ。そういう意味で は、どうしても国の施策として制度化してほしいということ。  それから、もう一点は、先生方が今おっしゃられておりました、いわゆる5の当初の ものになるとは思うんですが、市町村に専門的な技術がないという点。このことがホー ムヘルプサービスを実施していくときに、簡単にホームヘルパーを養成できないという ネックにもなっているんだろうというふうに思うんです。  また、今は金子先生が、むしろ知識と業務の違いというのは振り分けておいて、ネッ トワーク化するということに力点を置くべきだというお話がございましたけれども、そ れは確かにそのとおりだとは思うんですが、それ以前の問題として、現実に精神障害者 に対するホームヘルプサービスの、いわば現状での芽生えというような、いわゆる精神 保健ボランティアの方々の活動を見ておりましても、精神保健ボランティアの方々が、 まさに知識先行型のボランティア教育を受けておりまして、いわゆる疾患の現状だとか 妄想だとかということが頭に残ってしまって対応がごく自然にできないとか、あるいは 私はヘルパーであるとかボランティアであるとかという役割意識のもとに、私は何々を しなければならないという思いが強くなってしまって、逆に精神障害者に対しての対応 をうまくでき得ないという現実がございますので、そういったことを踏まえてのヘル パーの養成ということについて、専門家の方々からむしろ十分な論議をいただいて、 ホームヘルパーの教育についても深めていただいて制度化の促進をしていただければあ りがたいというふうに思っております。 ○吉川座長  ありがとうございました。今、新保委員からお話がありましたことは、「基本的な考 え方」と書きました3ページのところの6の 1の「ホームヘルプサービス事業の法定 化」ということには、これは問題がないだろうというか、それは賛成であるというよう なご意見をいただいたことになると思います。ただ、問題はホームヘルパーの教育の問 題ということで1つ条件といいますか、ご意見をいただいたというふうに考えておきた いと思います。  そこで、6のところの「基本的な考え方」に入らせていただいて、 1のところに 「ホームヘルプサービス事業の法定化」に関しては、こんな形で考えていっていいだろ うかということでございます。理由も含めて考えていきたいんですが、いかがでしょう か。竹島委員、どうぞ。 ○竹島委員  ちょっと教えていただきたいんですが、私が以前に仕事をしてきた場所で、精神障害 者のいる世帯がヘルパーを派遣する場合に、除外規定の対象になっていると。「家族に 精神障害者のいる世帯にはヘルパーを派遣しない」という除外規定が生き残っている市 町村もまだあるのではないか推測をしているんですけれど、そういった問題は、この法 定化と表現されているものができることによって自然消滅していくのか、何らかの手続 きが要るのかということをちょっと教えていただきたいんですけど。 ○吉川座長  よろしいですか。 ○杉中補佐  それは現場の制度として除外されているということはないと認識いたしますので、運 用ということで、実施主体としては同じ主体がやるわけですから、精神障害者について もできるノウハウが蓄積するようになれば、あえて除外する必要もなくなるのかなと。 主体として除外しているようなのを運用としてやっている例はあるというのは聞いたこ とがございますけど。 ○竹島委員  今、申し上げたのは、私が見たのはコピーなんです。コピーにヘルパーの派遣の規定 といったものを社会福祉協議会で設けてあって、その中でそういう除外規定というのを 見たことがあったんですね。そういったところから、ヘルパーさんは行きたいんだけれ ど、その上部の人が反対をするといった事例がありましたものですから、これは法定化 に伴って、そういったバリアが除かれたらいいなと思うので申し上げました。 ○吉川座長  そうですね。この点は恐らく今お話まとまりましたように、こちらの法の方ができて くれば、実態は変わっていくだろうということだと思います。市町村が実施主体となっ ていくことに関しては、特別にご意見ございませんでしょうか。何か、先生、どうぞ。 ○長尾委員  市町村が実施主体になるということは問題はないと思いますし、実際の運用に当たっ てはそれが一番望ましいと思います。  ただ、ちょっと前に少し返らせていただきたいんですが、よろしいですか。 ○吉川座長  はい、どうぞ。 ○長尾委員  4番のところの若年痴呆のことがちょっと触れられているんですけれども、これに関 しましてはいろいろ問題があると思うんですが、脳血管障害による若年痴呆というのは 介護保険の対象になると。頭部外傷はそれにならないと、そういうようなことがあると 思うんですが、その辺の絡みにつきましてはどう考えておられるのでしょうか。 ○吉川座長  よろしくお願いします。 ○杉中補佐  そのあたりはもしかしたら必要であれば、調整規定を設ける必要があるのかもしれま せんけれども、基本的には介護保険でサービスを受けるところについては介護保険で優 先して見ることになると思います。ただ、脳血管障害といっても40歳以下であれば、対 象にならないとか、頭部外傷であれば、全て対象にならないとかありますので、保険の 適用外のところを拾っていくという形になるといった話になると思います。 ○吉川座長  わかりました。長尾先生、よろしいですか。 ○長尾委員  ぜひ介護保険等にかからない部分を十分拾っていただけるようにお願いしたいと思う んですね。今現在でも頭部外傷など、アルツハイマーとか脳血管障害以外のものは、施 設入所もできないというような問題もあるわけです。そのあたりも含めてご検討願いた いと思います。  それともう一点ですが、手帳の問題が出ておりますけれども、非常に手帳の普及率が 低いということですが、これはやはりメリットがまだ少ないということだと思います。 このホームヘルプサービスでそのメリットが図られるということであればいいと思うん ですが、もう一点は、公共交通に関してのメリットもないと。そのあたりについては、 ちょっとここは問題が違うかもしれませんけど、今どのような感じになっておるのでし ょうか。 ○吉川座長  よろしいですか。 ○杉中補佐  現在も継続して厚生省としても事業者の方にお願いをしているところでございますし その辺は例えばJRであれば運輸省、高速道路であれば建設省といったところと連携し て事業者にお願いしているところです。ただ、何せ今の経済状況なのでなかなか事業者 の方ができないといった厳しい状況にあるというのが実態のところでございます。 ○吉川座長  ありがとうございました。それでは、 1の「ホームヘルプサービス事業の法定化」の 中身はほぼこれで通過させていただきまして、どうぞ。 ○佐藤委員  法定化のところでかぎ括弧で括ってある内容のところですが、「市町村は、必要に応 じ」云々というところですが、例示として、「入浴、排せつ、食事等の介護その他」と なっておりますが、これはどちらかというと高齢者の身体介護の代表例として挙げられ ているものと思いますが、精神障害者の場合には身体介護よりも、例えば室内の清掃で あるとか、片づけであるとか、衣類の管理、繕い物、洗濯、買物、炊事というような日 常生活の支援のところの方が必要性が高いと思いますので、これはちょっとこの辺の文 言についてはご検討いただければと思います。 ○吉川座長  わかりました。もう少し精神障害者のホームヘルプを実体的に考えてみて、そして例 示として挙げるということだと思います。 ○杉中補佐  それに関してですが、おっしゃるとおりだと思うんですが、基本的に老人と身体障害 知的障害も同じような言い方をしているというのがまず1つあって、同じ主体がサービ スをするのにわざわざ文言を変えるまでの必要があるのかというのが1つ。あと、先ほ ど言われたような頭部外傷のような人まで含めた場合には、やはり入浴、身体的な介護 のところも必要な人がいないわけではないので、わざわざこれを違った表現にすること はないのかなと思って、とりあえず同じ書き方で例示として挙げさせていただいている んですが、当然書きぶりに関しては検討項目になってくるというふうに思います。 ○吉川座長  1つの例示だと思ってお読みいただいて、そして、なお細かいことがありましたらば どういうような例示が最も妥当かということについてご意見をまた課の方にでもお寄せ いただければありがたいと思います。  さて、バックアップ機関の問題ですが、これについてはいかがでございましょうか。 ○伊藤委員  バックアップ機関という表現がいいかどうかわからないんですが、病院では、今、訪 問看護というのが精神科で盛んに行われているんですけれども、そことの連携が非常に 大事なんですね。それで、私ども訪問看護しているんですが、現実にはホームヘルパー がないために訪問看護しながら、例えば北海道の場合だとストーブの石油が切れそうな ときに注文をかわりにしてあげたり、訪問看護しながらですね。これはホームヘルパー の仕事を訪問看護の中でやっているという実態があるわけですね。  そういう意味では、さっき服薬の問題が出ましたけれども、それは訪問看護とか医療 の範囲でかなり支援できると思うんですね。ですから、それをお互いの連携ということ でいえば、医療機関の側との連携もちょっと触れておいてもいいのではないかと思って 訪問看護との関係もありますので、それはバックアップという言い方がいいかどうか。 むしろ連携ということです。 ○吉川座長  わかりました。どうしましょうか。このまま文章になっていくわけではございません から、いずれにしてもタイトルなども考えながらつけていかなくちゃいけないと思いま すけれども、今お話いただきましたように、連携という視点の中で考えることも確かに 必要ではないかと思います。ただ、ここではバックアップ機関として市町村を位置づけ るというような意味合いだと思いますけれども、そうした意味ではいかがでしょう。そ して市町村の、もちろん保健センター等だと思いますけれども、それと保健所との関係 ということだと思うんですけれども。 ○佐々木委員  保健所との関係ではこれでよろしいと思います。例えばエイズの患者さんへのホーム ヘルプサービスとか、難病へのサービスとかでやらざるを得ないというふうに思ってお りますし、東京都なんですが、都の方の指導も両方でやるようにということで来ており ますから、このままでよろしいと思います。 ○吉川座長  もちろんこれは1つの例示ではありますけれども、こういう考え方でいいということ ですね。 ○佐々木委員  保健所側はいいと思います。 ○吉川座長  はい、わかりました。ありがとうございました。金子さん。 ○金子委員  ほかの障害の方に関するホームヘルプと横並びということになると難しいのかもしれ ませんが、精神のことに関しては、精神保健福祉センターというのもございますので、 保健所をまたバックアップするような形になるのでしょうか、ぜひ、今までの実績、ノ ウハウをホームヘルプを支える中でも生かしていただければと思います。 ○吉川座長  はい、わかりました。後藤先生、その辺のところでは。 ○後藤委員  前のページの5のところの2番目のマルのところに、「保健所等を市町村のバックア ップ」というふうに、ここでは問題提起は「等」になっている。「基本的な考え方」の ところでは「保健所」というふうに限定されているので、最初読んだとき、「等」の中 に当然今までの考え方で精神保健福祉センター、地域福祉センターなども含めてという ことかなと了解していたんですが、今、金子先生おっしゃったように、バックアップ機 関というふうになるのか、伊藤先生おっしゃったような連携の中でということになるか あるいは今直接ホームヘルパーさんたちから非常に要請があるのは、保健所や市町村を 飛び越して、研修の要求が随分センターの方に来ていますので、そことの関係になるの か、何らかの形で連携あるいはバックアップの中にセンターを位置づけてほしいという ふうには思っています。 ○吉川座長  ありがとうございました。それではそのバックアップ機関のところで、今のようなご 意見を承りながら、連携という視点も含めてこのところを整理させていただきたいと思 います。 ○長尾委員  確かに今言われましたように、精神保健福祉センターが上になってサポートするとい うのは確かにいいのかもしれませんが、ただ、県に1つというような形で、それをやは り市町村とどういうふうに位置づけていくのかということがちょっと大きな問題になる と思うんです。ただ、それ以上に保健所等ということであれば、例えば今の地域生活支 援センター等もある程度連携をとるというような形で入れる方がもう少し現実的な線に なるんじゃないかなということも考えます。 ○吉川座長  ありがとうございました。それもご意見として承っておきまして、実は先のところに 対象者と養成の問題がありまして、これについては精神保健福祉センターもかんでいた だかなくちゃいけないだろうなと思いながら話を少し先へ進めようと思いました。 そ れでは、対象者の問題でございますけれども、ここで提示されていますのは手帳の所持 者ということで言っているわけですけれども、前段のところにありましたように、手帳 を受け取る者が余り増えない。そして、長尾先生もおっしゃっていただいたように、手 帳をもらうことによってメリットがそうあるわけではない。そんなことから、手帳が余 り広がっていかないんじゃないだろうかというお話もありました。そのときに手帳を所 持している者という限定をすることが本当にいいのかどうかということもやはり議論し てみないといけないんじゃないかと思っています。いかがでございましょう。 ○新保委員  手帳を所持することによってホームヘルプサービスが受けられるというような形での メリットがあるということは、ある意味では手帳の普及に貢献するだろうと思います。 しかし現段階では手帳所持者に限定するのは難しいのかなというふうに思っております それは先ほど地域生活支援センターのお話が出ましたが、地域生活支援センターが、ま だ稼働して間もないんですが、2年目ぐらいに入りますと、大体地域からの相談件数が 私どもの手元に入ってくる資料を見てますと、年間 2,000件は超えていくんです、電話 相談数が。日に最低数件という数字になるんです。 そして、この方々の中には、いわゆる入院経験のない方もおられるんです。いわゆる 初発の状況の方々もおられるんですね。そして、この方たちは当然のように、そういう 状況ですと手帳を所持できる状況にないんです。でもこの方々の中にも訪問してあげた い人たちが含まれているわけですね。こういった事柄も含めて考え合わせますと、現況 では手帳の所持の有無にかかわらずホームヘルプのサービスの幅の域を持ってほしいと いうふうに思います。 ○吉川座長 仮に杉中さん、そうした考え方の中で進めることができるものですか。 ○杉中補佐 それは考え方だけであると思うんですけれども、ただ、ちょっと思ったのは、初発で 通院にもかかってない人にいきなりホームヘルパーが行くというのは、果たして妥当な のかという話と、あと地域にいても、長いこと医療から断絶しているような人とか、そ ういうのでホームヘルパーというふうになると、なかなか十分な手当てができない可能 性がありますので、何らかの医療にかかわっているということがわかっている人が必要 なのではないかというふうに考えましたので、そういったことから、手帳であれば、2 年ごとに更新ということなんで、手帳を所持しているというのは1つの定期的な医学的 な管理下にある目安かなと考えています。  その場合、初発の場合であれば、次の話にも係るんですけれども、いわゆるマネジメ ントの段階で、手帳も一緒にとっていただくみたいなことができないのかなというふう には考えております。 ○新保委員  今、補佐おっしゃられたように、もちろん初発等の方々について、あるいは長期に病 院から離れている方々についてホームヘルパーが行って何ができるという問題ではない んですが、できるという問題ではないという言い方はちょっとまずいかもしれませんが やはりやらなければいけないことは受診・受療のための援助だと思うんですね。そうい った事柄は、当事者の立場性を考えながら、まさに対等の目線でかかわれるヘルパーさ んが受診・受療援助をしてあげるということは大変有効だというふうに思います。その ことも含めて、手帳を持っていない方々にもヘルパーの派遣は必要なんじゃないかとい うふうには思っているんですが。 ○伊藤委員  今の意見に私もちょっと賛成なんですが、具体的な例としまして、私の担当している 患者さんで、かつては入院していたんですが、もう10年間ぐらい服薬してないんですね 本人が必要ないと言い出して。ずっと同じ状態で精神症状は少しあるんですが、単身生 活している。でも私としては不安なので、今もホームヘルパーみたいな形で保健婦さん に時どき行って栄養指導をしていただいているんですね。本来ならホームヘルパーの方 に、部屋の中も雑然としていますし、行っていただいて、もう少し支援していただけれ ば。その方は薬は飲まないし、病院には来たがらないんですが、そういう福祉的なサー ビスは拒否しないで受け入れてくれているんです。それで、障害者手帳も、僕は病気で はないと言って受けてくれないんですが、現実には自分が生活が不十分だということは わかっていただいて、そういう保健婦さんを受け入れてくれているわけですね。こうい うケースはあると思うんですね。  ですから、そういう場合に手帳がないからといって、ホームヘルプを受けられなくな る事例が出てくることはあると思うんですね。それをどうやって救うかということで、 少し道を開いておく工夫がないか。例えば主治医が必要と認めた場合は手帳がなくても ある程度できるとか、そういう何か抜け道がないと、手帳のあり、なしで切ってしまう のがいいのかどうか、臨床の現実の場面では気になることがありますので。 ○吉川座長  実例も含めてちょっと話をいただきまして、実用の上では確かにそういうことがある んだろうと思います。ということは、法文の問題を離れても、実際の通知類の中でその 辺のところが実質的にサービスができるような道を開いた方がいい。こんなふうなまと め方をさせていただきますけど、よろしゅうございますでしょうか。 ○佐藤委員  今の受診・受療援助のことですが、ホームヘルパーとの関係の中で、結果的に受診援 助につながったということが、それはあり得ることだとは思いますが、ただ、制度とし て、ホームヘルパーに受診・受療援助を期待するということは私は誤りではないかと思 います。 ○吉川座長  それはさっき一応議論をして、そこは通過したと思いますけれども。 ○佐藤委員  そうですか。 ○吉川座長  今は受診・受療援助ではなくて、むしろホームヘルプサービスの中身の話ではありま すけれども、手帳を持っている者だけにサービスをするという考え方はよろしいかどう かという設問だったと思いますので。 ○竹島委員  手帳の所持の問題なんですが、少なくとも手帳の所持の有無にかかわらずという表現 は私は避けた方がよろしいんじゃないかというふうに考えます。というのは、まず第1 段階は、市町村の中で30%ぐらいが実績があると、逆にいっても70%はないわけです。 それらの市町村が事業に円滑に導入できるためには一定の根拠が必要であろうと。それ をしながら、さらにこの対象だけではニーズが満たされない場合に付加的にさらに追加 して行われるようにするには伊藤先生のような根拠が必要なんだろうけど、ただ、手帳 の所持の有無にかかわらずというところまでいってしまうと、逆にいろんな困難が発生 して、市町村への普及が逆に遅れていってしまうのではないかという気がいたします。 やはり字句としてはこのような表現で、みんながそれで同意ができるものについてはプ ラスしてやっていくと。私も過去の事例で拒食症の人なんかで派遣をしてうまくいった という事例も聞いています。その人はもちろん手帳は持たないし、持つ対象でもなかっ たかもしれませんけれども、必要性はわかりますけれども、ただ、「有無にかかわら ず」という表現は避けた方がよろしいのではないかなという気がいたします。 ○吉川座長  ありがとうございました。 ○新保委員  竹島先生おっしゃられるとおりだと思うんですが、私が懸念したのは、資料の中にも 市町村で現在行っているホームヘルプサービスの対象者の方々の中で70%ぐらいがまだ 手帳を持ってない人がいたという現実がこの資料の中に提示されていましたので、その ことも踏まえてちょっと危惧して申し上げたので、ご意見としては、竹島先生のおっし ゃるとおりだと思います。 ○吉川座長  ありがとうございます。そうしますと、一応対象に関しては、原則この文言を大体活 用させていただくということでご了解を得たとします。  最後のところですけれども、ホームヘルパーに対する研修の問題ですが、先ほどちょ っと後藤委員から話が出ておりましたけれども、これについて特別なことはないでしょ うか。先ほど別にも医学的な知識というものを伝えるというようなことは、それほど重 要ではないんじゃないかというご発言をたしか新保先生からいただいたのかな。そんな ふうに聞こえましたけれども。 ○新保委員  大事なことは、ヘルパーさんは、精神障害者であれ、他の障害者であれ、ともかく地 域の何らかの事柄で困っている人のところに支援に行くということが前提でないと、変 に精神障害という知識にこだわってしまうことによって構えた活動をされては困るなと いうことがちょっと危惧されたものですから、特段の医学的知識を必要としないのでは ないかというような発言をしたのです。 ○吉川座長  わかりました。この文言の中、今、ちょっと読み直してみましたけれども、次のペー ジ、4ページの2行目の一番最後のあたりから、「精神障害者の保健や医療についての 知識も習得できるようなカリキュラム」と書いてありますね。その前段のところに、ど ういうカリキュラムが必要なのかということがちょっとなくて、ここだけがぽんと出て きたのが恐らく今のご質問というか、ご意見に何かつながるんじゃないかなと思ってい ます。もし、できたら、この前段のところにどういうものが必要なのか。保健とか医療 とかということに関する知識を教育をする前に何が必要なんだろうか。そんなことはい かがでしょうか。 ○長尾委員  ホームヘルプサービスについては先ほど基本的な考えは新保委員が言われたとおりだ と思うんですが、やはり精神障害者に対する知識をある程度持っておく必要があるので はないかと。例えば妄想であるとか幻覚であるとか、また、思考の障害であるとか、そ ういったものがある場合にどう対応していいのか、どう受けとめていいのか、そういっ たことをある程度知識として持っておく必要はやはりあるのではないか。でないと、や はりまた対応のまずさとか、そういったことでトラブルが起こる可能性もあり得ると思 いますので、そんなに詳しい知識でなくてもある程度の知識は必要ではないかと思いま す。 ○吉川座長  ありがとうございました。どうぞ、守屋先生。 ○守屋委員  今のカリキュラムの問題なんですが、私、今度ホームヘルパーの養成の授業の中で、 精神科的な部分についての講義を頼まれました、その教科書を見ますと精神分裂病、躁 鬱病など精神疾患に関する項目が多くあります。今のホームヘルパーの養成の教科書等 にも精神障害者について基本的な考え方をきちんと学んでおくべきであろうというふう になっているようですね。ただ、長尾先生もおっしゃられたように、どのようなカリキ ュラムを作るのか、どのようなことをホームヘルパーの養成の中で教えていくことが必 要なのかという検討はとても大事だと思います。精神障害者のホームヘルプにあたって の必要な知識ということは身につけておくべきだろうと思います。  最近、ホームヘルパーさんたちに私が聞いたところでは、精神障害者のところに訪問 することが非常に多くなっている。それで精神障害者についても勉強をしなければいけ ないと思って、先生に講義をお願いしましたというお話を聞いたものですから、やはり 知識は必要ですね。 ○吉川座長  ありがとうございました。いかがでございましょう。 ○後藤委員  守屋先生と同じように、ホームヘルパーの講義を頼まれてもう5、6年行っているん ですけれども、3年くらい前までの教科書は、今先生がおっしゃったように、20年くら い前の教科書じゃないかと思う感じの精神の部分だけですね。分裂病は一生治らないと か、そんな感じで、痴呆化してしまうというふうな記載があったんですが、去年か、お ととしぐらいの多分改訂版で、全く福祉というか、ノーマライゼーションの方を先にや って、疾病の方を非常に少なくするというふうな編集方針になってきているようです。 ですから、そういう意味での研修、ホームヘルパーの援助というベースにして、その中 でのちょっと必要な部分という研修にはなりつつあるのではないかなというふうに思い ます。 それともう一つは、よく頼まれていくのは、結局事例なんですね。訪れてみた けど、この人はどうなんでしょうかという分があって、それが多分市町村の保健婦さん たち、あるいは社会福祉協議会の中での検討では、今のところまだ解決というか、いい 案が出てこない。そのために、例えば精神科医であるなり、近くの病院のソーシャル ワーカーであるなりという方を必要とする。そういうものが今すごく必要とされている のではないか。  ですから、つくっていく研修は必要なんですが、その後の、さっき言った保健所のバ ックアップ体制のところにやはり専門家のかかわりという形で、センターなり地域の病 院なりというものが組み込めるやり方が必要ではないか、そんなふうに思います。 ○吉川座長  どうもありがとうございました。そういうような、いわば留保のお話をいただいたわ けでございまして、ホームヘルパーの研修そのものはこの形でもいいだろうけれども、 問題は、実際に実務に携わった人々に対するバックアップ体制をどういうふうにしたら いいんだろうかということ、そのことが、今、後藤委員からお話が出たと思いますが、 それは記録をしておきまして、そして今後のまた判断の材料にさせていただきたいと思 います。  それでは、ここで第1の資料1で議論をしなくちゃいけないところは終わらせていた だきまして、ちょっとお休みいたしましょうか。5時50分ぐらいに再開させていただき ます。                  (休 憩) ○吉川座長  それでは、時間が参りましたので、再開させていただきます。  それでは、杉中補佐の方から、資料2に関してご説明をいただいて、先へ進みたいと 思います。 ○杉中補佐  それでは、資料2について説明をさせていただきます。資料2のほかに資料11を使用 いたしますので、お手元に出していただければと思います。資料2は「精神障害者福祉 サービスの必要性の判定について」ということでございます。  まず「現行制度について」ということですが、現在の精神障害者の福祉施策につきま して、精神障害者社会復帰施設への入所等が福祉サービスの利用ということになるんで すけれども、それにつきまして、身体障害者とか精神薄弱者の場合の福祉施策、これは いわゆる措置によるものですが、とは違いまして、措置制度ではなくて利用者と施設の 間の直接の契約に基づくものとなっております。  資料11の2枚目を見てほしいのですけれども、現在の精神障害者の利用システムとい うことで、基本的には精神障害者と社会復帰施設等との間の利用契約を結ぶと。ただ、 その利用契約に当たって保健所に推薦を申請すると。保健所が適切たると推薦をしたも のについて、施設の利用を認めるという基本的にはそういう仕組みとなっております。  また資料2に戻らせていただきますけれども、精神保健福祉法の中で、49条において 精神障害者の申請に応じて保健所長が施設及び事業の利用のあっせんと調整を行うとい うことでサービスの利用の契約のつてがない人とか、そういう者に対する手助けをする ということになっております。ただ、この保健所長のあっせん・調整は、実質上機能し ていないといった状況にあるというふうに聞いております。実際には精神障害者本人と 施設との間の利用についての合意がなされた段階で、その上で保健所長の推薦状をもら っているというのが実態であるというふうに聞いております。  「他法令における福祉施策の制度」ということで、資料11の1ページ目のほうとあわ せて見ていただきたいのですが、身体障害者と精神薄弱者等は、いわゆるこれは措置制 度ですので、行政がそういうサービスが必要だという判断をした者に対してサービスの 提供をすることになっています。このため、行政庁、身体障害者の場合は市町村、精神 薄弱者は都道府県になるわけですが、自らの判断により福祉施設への入所や在宅サービ ス等についてサービスを提供するという措置制度になっておりまして、事業者と措置を 受ける者の間に契約関係はございません。サービスが必要かどうか。また、サービスの 供給量等についての判断は行政庁がすることになっております。  基本的に老人についてもそうだったんですが、新しくできた介護保険は基本的には契 約の世界に移行したということですが、その場合でも必要なサービスというものが必ず しもサービスを受ける側にわかるというわけではなく、介護保険においては、要介護認 定が受けられた場合には、本人の依頼に応じて介護サービスの計画等を認定するといっ た形でケアマネジメントというのがなされる中で、精神障害者に対する必要性の判定で あるとか、適切なサービスについての選択といったものに対して行政なりが支援をする といったようなことになっております。  精神障害者の現在の制度に関する問題点ですが、まずは情報の問題、「情報開示」と なっていますが、必ずしも開示ではないと思いますので直させていただきますけれども 精神障害者に対して必ずしも精神障害者が社会復帰施設等に関する情報を持っていると は限らず、個人で必要なサービスを選定することは容易ではないのではないか。したが って、特に精神病院に入院している患者については、病院が社会復帰施設と併設してい るといった場合であれば、社会復帰施設等に関する情報は入りやすいのですが、そうで もない限り、施設や事業についての情報を入手するのは難しいのではないか。  次に「社会復帰施設の付属施設化」ということで、社会復帰施設側としても、精神病 院と何らかの関係を持ってないと施設を利用する側に対する情報がいかないということ になっていますので、精神病院と関係のない単独の社会復帰施設等や事業等の運営をす るのは難しくなっているといったことは可能性としてはあるのではないか。このため、 精神障害者社会復帰施設等が精神病院と系列化した付属施設となりかねないおそれがあ ります。  次に「退院の制約事項となるおそれ」ということで、退院可能な精神障害者を受け入 れるための社会復帰施設等が見つけられない場合には、当該精神障害者が行き場がなく て退院できないといったことになるおそれもあるのではないか。この結果必要のない入 院、いわゆる社会的入院を余儀なくされるといったことも可能性としては考えられるの ではないか。  次に「病院への負担」ということですが、現在の制度においては、実質的には、退院 後の精神障害者の施設入所先といったようなものについての負担をかなり病院側にいっ ているのではないか。病院側があっせんしている場合が多いと考えられますので、病院 に過度の負担を負わせているおそれがあるのではないか。  次に「直接契約に伴う問題点」、現在、直接施設等を精神障害者本人が利用すること になっているのですが、基本的には現在の福祉施策が判断能力というものがあって自力 で契約を結べるといった者に関するサービスであるという前提のもとに成り立っている と考えられるんですけれども、回復途上で判断能力が不十分な精神障害者への支援とい った観点が欠けているのではないか。したがって、判断能力が不十分な者に対する支援 はないのではないか。  また「行政の関与」ということですが、精神障害者の施設等の利用については、直接 契約に委ねられておりますので、行政の関与が低いのではないか。したがって、精神障 害者の福祉施策に関する需要について行政が把握することができない。また、その問題 点としては、必ずしも直接契約によっていきますので、本当にそういう施設等における サービスが必要な者が優先してサービスを受けるといったことになっていないのではな いかといったようなおそれがあります。  「保健所の関与」ということで、現在、精神障害者の福祉施策についても保健所が窓 口となっていますが、保健所はどうしても市町村や福祉事務所等と比較すれば、社会福 祉に関する知識や経験、もしくは他の社会福祉資源に関するネットワークが不足してい るのではないか。また、精神障害者のみ他の障害と比較して保健所が窓口になっている ということは、他の福祉施策との整合性の確保という観点からも考えて、整合性の確保 は困難になるのではないかと考えられます。  特に判断能力不十分な者に対する支援や適切な福祉サービスの選定の方法に関する支 援といった観点からなんですが、障害者全体についてやっているんですけれども、精神 障害者についてもケアマネジメントのあり方に関する厚生科学研究等がなされておりま して、平成9年度の中で、精神障害者のケアガイドラインの検討委員会が設けられて、 ケアガイドラインの施行版を全国15都道府県で試行したところでございます。ケアマネ ジメント事業というものについては、事業化を昨年度いたしたところでございまして、 本年度は5つの都道府県・指定都市等が事業を行うことになっております。  ケアマネジメントの試行の結果ですが、積極的な取り組みが必要という声が大きかっ たわけなんですが、条件整備が必要だという声もございました。ケアマネジメントを行 う上での困難なところとしては、インフォーマルサポートへの働きかけ、ケア会議の開 催等が挙げられ、ケアマネジメントの条件整備として必要性の高い事項としては、地域 のケアサービス資源の充実、専門職の設置・拡大、ケアマネジメントの研修体制、緊急 対応が可能な医療体制の整備等が挙げられております。  以上に基づいて、「基本的な考え方」でございますが、「ケアマネジメントの必要 性」ということですが、現行の精神障害者福祉施策は契約に基づくものになっておりま すが、精神障害者自身に適切なサービスの決定を委ねるに必要な情報等が必ずしも十分 に与えられていないということ。特に回復途上にある精神障害者の場合は、判断能力が 不十分であるため、自ら必要な福祉施策を選択することが困難な場合がある等の問題が あるのではないか。結果として適切な需要の把握やサービスの給付がなされていない可 能性がある。このような問題を解決し、個々の障害の状況や程度に応じた適切なサービ スを受ける精神障害者の権利を保障するために、ケアマネジメントを行うことが重要な のではないか。  ケアマネジメントを行う場合の主体ですが、保健所自身は福祉施策については必ずし も十分な知識等がなくて、適切であるとは言えないのではないか。保健所自体が統廃合 が行われておりますので、必ずしも生活に密着した身近な行政機関と言いがたいという 状況になっているのではないか。したがって、保健所が各種福祉施策の利用の調整や支 援を行うといったことは困難ではないか。また、老人や身体障害者、精神薄弱者のホー ムヘルパーの派遣が市町村によって行われていることとの整合性、また、先ほど説明い たしましたように、精神障害者についても市町村がホームヘルパーを派遣をするという ことになるのであれは、やはり市町村が主体となっていくことが望ましいのではないか  したがって、精神保健福祉法を改正して、市町村が精神障害者の申請に応じてケアマ ネジメントを行う。そして、その結果に基づいて社会復帰施設等の利用のあっせん・調 整やホームヘルプサービスの提供を行えるような規定に改正することについて検討する べきではないか。  また、「ケアマネジメントを行う職員の養成等」でございますが、市町村は、先ほど から繰り返して言っておりますように、精神保健福祉行政に関して専門性を有した職員 がほとんどいないという状況でございまして、現行の体制ではケアマネジメントを行う のは難しいのではないか。したがって、マンパワーの強化や、市町村の担当職員の専門 性を高めるための研修体制の充実、ケアマネジメントについてのマニュアルであるケア ガイドラインの作成を進める必要があるのではないか。  次に「広域的な調整」ということですが、ケアガイドラインの結果の施設のサービス のあっせん・調整等をやるとしても、市町村域内で必ずしも適切なサービスを提供する といったことは考えられないので、広域的な調整といったものが必要となる可能性があ るのではないか。このような市町村間の調整については、精神保健福祉にかかる専門機 関である精神保健福祉センターが行うこととするべきではないか。  「ケアマネジメントにおける保健的バックアップの必要性」。精神障害者の場合は、 障害を有するとともに疾病もあわせ持つということですので、他の障害者等の福祉施策 と比較すると保健的施策の必要性が高い。このため、ケアマネジメントにおいても福祉 サービスの利用調整だけでなくて、保健サービスの利用調整も必要となる。  したがって、精神障害者のケアマネジメントを行う場合には、福祉担当職員の他に保 健担当職員、場合によっては保健所の職員等も構成員として加わること。  主として医療的なサービスが必要であるという判断がなされる場合には、保健所等で 適切な対応ができるよう保健所のバックアップを明確に位置づけるといったことが必要 になってくるのではないかというふうに考えました。以上でございます。 ○吉川座長  ありがとうございました。全体に今お聞きしながら気づいたことは、現行の福祉制度 に関する説明は情報ということでして、また、他法令における問題点といいますか、他 法令との関係についても、今までも何回か出てきた話でございます。1、2は卒業させ ていただいて、問題点から考えていきたいと思います。よろしゅうございますでしょう か。  そうしますと、問題点に関して、 1から、 5が2つありますので、 6と 7というふう に順に送っていただきますけれども、 7までの問題でお話をいただきたいと思っていま す。保健所の役割に関してもかなり検討されているのですけれども、その辺のところで 地域保健の関係の方々、何か少しご意見をいただければと思います。 ○長尾委員  3)のところになりますが、 2も含めて、「社会復帰施設の付属施設化」ということで 精神病院の系列化した付属施設となりかねないということ。なぜ、このようにならざる を得ないかということが1つあると思います。  それと3)の「退院の制約事項となるおそれ」ということで、「社会復帰施設等を見つ けられない場合」ということですが、これもやはり現在の社会復帰施設は絶対数が少な い。そこに問題点があるわけで、精神病院がなぜ社会復帰施設をつくらざるを得ないか ということにも問題があると思うんですね。そういった問題を抜きにしてこの問題点と して挙げることは逆に問題があるのではないかと私は思います。  それと、以前にも若干申したことがあるかと思いますが、社会復帰施設の利用の制約 ということがあると思うんです。いわゆる生活保護の問題も含めて、生活保護費が減額 されるというような問題、そういったこともちゃんと解決していかなければいけないだ ろうと思います。  直接契約に伴う問題点として、自力で契約を結べることを前提としているが、判断能 力が不十分な精神障害者への支援という観点が欠けているということで、これは成年後 見人法とか保護者の問題との絡みでやはり考えていくべきだろうと思いますので、自力 で契約でなくても成年後見制度のもとでちゃんと契約できれば今後はいいのではないか というふうに考えております。  それから、ちょっと1つ、社会復帰施設等の絡みで前回の論議とちょっと戻させてい ただいてもよろしいですか。 ○吉川座長  はい。 ○長尾委員  1つは、前回、精神医療審査会で社会復帰施設の処遇改善請求を行うということがあ りましたけれども、これは今そこまでする必要がないのではないか。社会復帰施設であ れば、いろいろな機関等にアクセスできるわけですから、人権的にそれほど侵害される ことは少ないのではないかと思いますし、精神医療審査会の性質上から言えば、入院と いうことに限定していく方がいいのではないか。その上で社会復帰施設への問題点につ きましては、都道府県の指導・監督を強化すればいいと考えますが、この点についても いかがでしょうか。 ○吉川座長  ありがとうございました。一番最後にお話なられましたのは、恐らく長尾先生の1つ の主張であろうと思いますので、これはちょっと脇に置きまして、そして今の流れの中 で問題点を幾つかご指摘いただきましたので、それらについてご意見があればいただき たいと思いますが、少し順番どおりにやっていきますと、1)はともかくとして、2)のと ころで、今、長尾先生から系列化云々というところまで言う必要があるのだろうかとい うことが1つと、もう一つは、退院が、そのために退院させなくなるのではないか、そ んな表現みたいなところまではちょっとどうだろうかという話が今出ていたと思います けれども、何かご意見いただけますか。どうぞ、新保先生。 ○新保委員  長尾先生おっしゃられたのはそのとおりなんですが、このような文言で、例えば書か れているのは、長尾先生は絶対数が少ないというお話をされましたが、援護寮の利用率 が現状で約70%でございます。そういう意味では措置施設と対比して利用率が少ない、 有効な活用がされているのかという疑問が起きても仕方ない現状があるということを踏 まえた上で、例えば問題点の1)につきましては、情報の開示の問題なんですが、選択権 を十分に行使できるようにさせてあげるための情報開示を仮に社会復帰施設がしようと しても、それが例えば社会復帰施設等を持っていない、あるいはまだ旧態依然としたと いう言い方は失礼ですが、病院もあるといったことから、そういった中で、本来なら必 要としている長期入院の患者さんたちに情報が伝わらないという現実もあるのだろうと いうふうに思います。そういった事柄についての改善策も含めて考えていただきません と、利用契約に伴う問題についても若干の疑問があるのかなというふうな思いがいたし ます。  例えば5)の「直接契約に伴う問題点」というところの中で、自力で契約を結べるとい う前提になっておりますので、そういう意味では、こういった方々については、本来な ら契約が結べるはずなんですが、今申し上げましたような事柄があって、選択をするこ とさえもできない状況があるということですね。ですから、ここのところを何とかス ムーズに情報が開示できるような形にしていっていただきたい。今般、精神保健福祉法 が制定されましたので、こういった人たちの役割をそこに期待したいというふうに考え ています。  そして、5)のところの最後の部分で、「回復途上で判断能力が不十分な精神障害者の 支援の観点が欠けている」と、ここにある意味では公的な役割をきちんとしようではな いかというお考えがあるのだろうと思いますけれども、それは現況の中で、先ほど老人 ホーム等の事例もございましたが、措置施設よりも利用施設、すなわち選択権を保障し 同時に選択権を保障するための情報開示は施設側も行っていって契約がスムーズに行わ れるような福祉体系の方向に流れがあるわけですので、あえて公的な形で何らかの措置 にかかわるような事柄を行う必要はないのではないかと思っております。  また、回復途上で判断能力が不十分な精神障害者への支援ということになりますと、 こうした対象者につきましては、現実問題として、2年間の期限で生活訓練が可能なの かどうか。というのは、援護寮の中でそれなりの生活訓練は可能ではございますが、恐 らくこうした対象者につきましては、アパート等での単身自立は不可能ではないかと思 われるんですね。そうしますと、さらに地域で生活をしうる、例えばグループホームの ような社会資源がきちんと整備されないと、こういう方々の措置をしてみても2年後の 受け皿がないという現実もまた新たな問題として出てくるのではなかろうかというふう に思うんです。現実の社会復帰施設の数、障害者プランに示された数からいけば、まず は自力で契約を結べるというほどではございませんが、それにしてもそれに近い方々が たくさんおられますので、その方々に社会復帰施設が利用できるような情報開示の方法 をきちんと確立してほしいというふうに思います。 ○吉川座長  ありがとうございました。情報開示の問題と、それから病院の中にこうした施設をつ くることの問題。さらに直接契約に基づく問題点を3つをつなぎながらご発言をいただ いたのですけれども、高柳先生、何かお考えありますか。 ○高柳委員  私は新保先生おっしゃったことで1つ気になることはやはり厚生省は福祉施策として 生涯施設を考えていらっしゃるかどうかということが非常に気になるんですが。 ○吉川座長  ショウガイというのは一生涯の生涯ですね。 ○高柳委員  はい。 ○吉川座長  よろしいですか、課長の方から。 ○田中課長  まさに、それは長期療養のあり方に関する検討会で今ご議論いただいているところで ございます。 ○吉川座長  どうですか。高柳先生、それで。 ○高柳委員  いや、満足ではありませんが。 ○吉川座長  そうですか。それはまた別な角度からお話をいただくことにいたしまして。 ○守屋委員  まず「基本的な考え方」の中で、いわゆるケアマネジメント、よろしいですか、そっ ちの方へ全体へ。 ○吉川座長  余りありがたくありません。下の方の問題から上へ上がることは一向に構いませんけ れども。 ○伊藤委員  問題点の2)と3)、長尾先生からいただいた、これは解釈といいましょうか、現実に精 神病院、医療法人の方に社会復帰施設をつくっていただかざるを得ない状況はあるんで すね。そちらの数が相当多いというのはありますから、それはできたら望ましいことで はないと私は思います。できたら町の中につくるべきだと思うので、これを何とかした いということがここに含まれているのだろうと思います。  その場合に、これは直接契約があるからこういうことになっているのかどうかという ことよりも、社会復帰施設を建てたくても住民の理解が得られなくて建てられないとい うことがこういうことにしている。そっちの方に問題があるんですね。ですから、この 説明の仕方が、ここへ持っていくのがちょっと誤解を招くということで、きっと長尾先 生おっしゃったのではないかと思うんですね。そういう点で、直接契約がこういうふう に問題になっているとは思わないんですけれども。  それから、「退院の制約事項となるおそれ」というのも、これもこのまま直接関係が あるのかどうか、ちょっと私もよくわからないところですね。その辺、説明をしていた だけますか。 ○杉中補佐  これは書き方が確かに適切でなかったかもしれないと思いますので、ここは改めさせ ていただきたいと思います。ただ、実際言いたいのは、長尾先生のおっしゃったような ことも踏まえて 4を書いておりますので、今、実際退院後の行き場であるとか、どうい ったサービスを利用するかということまでも含めて、医療に依存しているというのが実 態ではないかと。退院した後の身の振り方といいますか、どういうサービスを利用すれ ばいいのか、そういうことに関して、医療に依存しており行政が責任を負ってないので はないか。といった認識がございます。その結果、行き先がないから病院が社会復帰施 設も建てなければならないという風になっているのではないか。  利用契約といって、サービスのあっせんの機能が働いてないので、医療が奮起して施 設をつくったところの病院の患者さんのみが、その施設なりに入れるといったような実 態があるのではないか。そういった医療への過度の依存をやめて、やっぱり市町村なり がちゃんとケアマネジメントをやって適切なサービス提供、1つはあっせん、場合によ ってはホームヘルプといった直接のサービス提供といったようなものを行っていかない と、今の状況は変わらないのではないかといった問題から書いたもので、別に病院側が 社会復帰施設をサテライト化しようとしているとか、病院側が退院をさせないといった ような形で書いているのではなくて、ただ、実質上、今は医療に依存しているもので、 医療側の必要性に応じてつくった社会福祉施設のみができるとか、そういったことをや らないとこれでは退院できないといった事実があるのではないか。  それを解決するために退院した後のサービスの利用について、何らかの行政責任とい うものを持つべきではないかといった観点から書かせていただいているので、用語の不 適切さとか、説明の順番なりがおかしいところは確かに言われてみるとあったかなと思 いますので、それは改めさせていただきたいと考えております。 ○吉川座長  ありがとうございました。 ○伊藤委員  今のお話でわかったのですが、医療施設に依存している社会福祉施設のもう一つの問 題点は、医療側の必要性に左右されてしまうんですね。建てたりする動機が医療側にあ るか、ないかによって本当に必要とする人々の需要を考えてつくるという医療側の動機 が強いかどうかによって建てちゃう、そういう問題も1つあるので、そこも含めて少し 医療側に依存し過ぎるということはそういうことをおっしゃっているのかもしれません けれども、一生懸命やろうとする病院はあるんですが、そうでないところは全然増えな いという、そういう非常に恣意的な社会福祉施設のでき方というか、それをやはり改善 していかなければならないと。どの地域でも同じようにできていくということをするた めには行政のもう少し力がないとだめだと、こういうふうな点で整理していただければ と思います。 ○吉川座長  はい、わかりました。杉中補佐がおっしゃったことは大体そこのところだと思います ので、この問題のところは通過させていただきまして、直接契約に伴う問題点として挙 げられた、先ほど長尾先生ともうひとりどなたかでしたか、失念いたしましたけれども 判断能力が不十分な精神障害者の支援ということ。その支援は成年後見法がもう少しは っきりしたところで考えていくことなのか、こんなふうにはさっき話が出ましたけれど も、これと、それから実際の支援する主体はやはり公的機関ではなかろうかというご意 見があったように思いますが、これにつきましてはいかがでしょうか。 ○長尾委員  行政の関与ということで、公的機関がそれに関与していくということはこれで結構だ と思うのですが、本来的には先ほど伊藤先生が言われたこと、また杉中補佐の言われた ことに関連するのですが、本来的には社会復帰施設の建設等も含めて行政が関与すべき だと。社会的な反対その他があっても、それに対してそれを啓発していくのはやはり行 政の責任で持ってやるべきだと思います。今、それに非常な労力をとられるのが病院関 係者がやっている。これは間違っていると思います。 ○吉川座長  何か竹島先生、言いたそうな顔していましたよ。 ○竹島委員  その社会福祉施設のことなんですが、恐らくこれからは障害者プランがさらに進んで いったら、まず実体の活動があって、それから施設ができてくるという時期が過ぎてい って、まず施設をつくって、そこに実体をつくっていくという形がもっと増えてくると いうのが実際の勢いなのではないだろうかという気もするわけです。さらに地域住民の 反対とかいろんなものがあった場合に、本来ならここにつくりたいんだけど、ちょっと 場所をかえてという事例も増えてくるのではないかと。現実にそうなっていくんじゃな いかというふうに思うわけなんです。  そうした場合に、ここで保健所がネットワークが不足しているという言葉で書かれて いますけど、このネットワークを2つに理解した場合に、やはりそういった中でどうい う方法があるかということを一緒に汗をかくという部分のネットワークがやはり広域的 な部分として保健所が果たす役割なのであって、市町村はあくまで個別的な部分におい て機能を果たすというふうに理解した方が市町村に過剰な負担を強いなくて済むのでは ないかという気がいたします。  それは別に医療だけが孤立性を持つのではなしに、社会福祉の方だって、同じような 問題をそこに持つので、そういう地域の中のネットワークをつくったりという部分は、 どこかが大きい役割を担わなければ進みにくいのではないかなという気がするんですけ れど。 ○吉川座長  ありがとうございました。その辺は少し法そのものを手直しじゃないかということで はなくて、今後どうしていくかという考え方だと思いますので、ここはそれでは通過さ せていただきます。  その上でケアマネジメントの問題は、法も関係するところでございますので、これを 含めて、今、4)のところの「ケアマネジメントに関する研究」と書いてありますが、こ この中の経過等を過ぎて、3ページのところの「基本的な考え方」からは、ケアマネジ メントに関して一通りまとめてございますので、ここで話を進めていただきたいと思い ます。   1の「ケアマネジメントの必要性」という点についてはいかがでございましょうか。 これについては特別のご意見がなければ、ここは通過させていただきまして、今度は 「ケアマネジメントの主体」をどこに置くかという問題、こちらの方はずっと大きい問 題だと思います。この点につきましては、こうしたまとめ方をすることはいかがでござ いましょうか。 ○守屋委員  まず市町村がケアマネジメントを行うということの問題点をちょっと考えてみたので すが、市町村と一口に言いますが、平成7年4月1日で、2,571 市町村があるわけです けれども、そのうちの約87%( 2,244カ所) は人口2万未満になっています。加えて過 疎地域指定が41市、6,158 町村の約45%になっています。したがって、市町村単位では 社会資源数の格差が生じて機能しないということがまず考えられてくると思います。  もう一点は、いわゆる障害保健福祉圏域を設定した経緯から考えますと、再び市町村 単位に戻すということは、その考え方と逆行しないかということが考えられます。  3番目に、仮に市町村がケアマネジメントを行うとした場合に、自分の市町村にない サービスを近隣の市町村のサービスをもってかえることが可能であるかという問題があ ると思います。どの市町村であっても、自分の市町村の住民の推定利用者数からサービ ス料を算出すると考えられますので、多分それだけ財政負担をしているということも含 めましてですが、そうなった場合に他の市町村からの受け入れが円滑に行われるのは非 常に考えにくい。そのために広域圏の設定がこれまで行われてきたのではないかと考え ます。  そうなった場合に、社会資源の構築は広域圏で行い、ケアマネジメントは身近で頻度 の高い市町村で行うという考え方は一見理屈に合っているように見えるんですが、現実 には二重構造になってしまって、デスクプランの域を出ない非常に実行が難しい状況が できてこないかということを市町村を主体としていくという点には危惧がないかという ふうに考えます。 ○吉川座長  ありがとうございました。これに関して、身障、精薄もそうですね。その辺のところ で杉中補佐から。 ○杉中補佐  おっしゃるような問題点は確かにあると思いますけれども、同じように圏域を設定し ております老人についても、介護保険のケアマネジメントは市町村を主体としてやって いくという建前になっておりますので、現実には市町村が一部事務組合等をつくったり して、弱小市町村等についてはもうちょっと広域的なところでやる受け皿ができていく のではないかというふうに考えておりますので、そこでマネジメントのノウハウができ たら、それと別のものをつくるというよりは、その上に乗っかっていくような形でやっ ていくというのが一番円滑に済むのかなと考えております。  あと、他の障害との関係も実はこれは考慮に入れているんですが、市町村のところで も出てくるんですが、障害に関する窓口をやはり一本化していくべきだというふうに考 えておりまして、精神だけでは確かに難しいことも、3障害まとめて専門の人を置いた りということであればできなくはないのかなとも考えております。既に身体障害者につ いては市町村中心レベルという形でやっておりますので、身体障害者、これは措置です が、広域的な調整は更生相談所なりがやっているという実態もありますので、そこはそ の調整機関として精神保健福祉センターなりが働くといったことでできるのかなという ふうに考えて、とりあえず市町村ということにさせていただいたんですけれども。  あと圏域自体に法的な根拠というものがなくて、それをつくるのもなかなか難しい状 況であるということもありますので、やはり県レベルの機関にすると、どうしても社会 資源の地域的な偏在というのが出てくるのかなと。これは市町村のところで説明して地 図等も入れておりますけれども、やはり全く社会資源がない地域があったり、そういっ た偏在が出てきますので、それを考えると市町村しかないのかなという結論に至ったん ですけれども、おっしゃるような問題点は確かに重要な問題点としてあると認識してお ります。 ○吉川座長  ありがとうございました。 ○後藤委員  今の問題については、多分新潟の実例みたいなものはかなり参考になるのではないか と思うんですけど、ご承知かと思いますが、新潟県は社会復帰施設が対人口比で例外的 に多いところであります。そのうち医療法人及び医療法人立の、医療法人がバックにあ る福祉法人は医療法人が3分の1、過半数以上が多分今半数超えたと思いますが、広域 の市町村を母体にした家族会がかかわった福祉法人立が大部分であります。医療法人の 社会復帰施設に対しても複数の広域の市町村が設立のために補助金を出している。そう いう事態です。そういうことは非常にうまくいっているということですね。これはどこ からそれが出てきているのかというのを考えると、ずっと市町村の保健婦さんたちが精 神障害者に対してかかわってきたという歴史があるんですね。  ですので、私はこのケアマネジメントの主体は市町村になるべきだというふうに思っ ています。そうすると身近なサービスで、これが必要だというのをその市町村が発見し てくるんですね。そうするとその中で工夫してどこかと手を結んでつくっていくという ことをやります。だから基本的にはケアマネジメントの主体は市町村。  それは先ほど長尾先生が非常に危惧されていた全部が医療がしなくちゃいけないんじ ゃないかみたいな部分をむしろ解消するのは、身近な部分の市町村がケアマネジメント をやることによって、新しく市町村が自分たちが必要なサービスを発見していくという プロセスの中で解消されていくのだろうということを、新潟の経験から、私は割と楽観 的に考えているので、この方向で進めていただければと思います。  それに付随して、資料No9ですが、これは後で出てくるのかもしれませんけど、ケア ガイドラインが出ていますよね。これは後で出るのでしょうか、検討の中に。 ○杉中補佐  ガイドラインは以上ので。 ○後藤委員  実はこれは中を見ますといろんなサービスを組み合わせるというのがケアマネジメン トであるという思想になっているんですが、これはいろんなサービスがあるところに初 めて成立するもので、どうしても私はケアガイドラインの中にサービスを創出する、新 しく考え出していくというのもケアマネジメントの目標の1つということで入れてほし いんですね。というのは、精神科の中ではケースマネジメントという技術があって、こ れはケアマネジメントとほとんど同義なんですけれども、その中には必ずサービスの創 出という、それにかかわっていくというのが入っているので、これは都市部あるいは財 政が豊かなところでたくさんのサービスがあって、それをチョイスできるところでは オーケイなんですが、そうではないところでは新たにそのサービスを発見していくとい うものもケアマネジメントの1つの目標としてぜひ入れてほしいというのが、今から変 えるのは難しいかもしれないけど。 ○吉川座長  これはここで議論してつくったものではございませんので。高柳先生、お手を挙げら れましたか。 ○高柳委員  私は地元で人口せいぜい二万七、八千の町なんですが見ておりますと、実際守屋先生 がおっしゃったことに全く私は賛成なんですが、新潟県ほど進んでないせいもあるんで しょうか、そういう意味では精神障害者に対する特に市町村の取り組みは欠けておりま す。果たしてこういうことを法にうたって、実際絵にかいた餅に終わるのではないかと いう懸念が非常に強いんです。  それから、もう一つは、小さな町村で見てますと、例えば保険証1つ使うのさえ嫌が るという実態があるんですね。国保は絶対使いたくないという人が結構いるんですね。 果たしてそういうところで町村レベルにこれをおろして事業がうまくスムーズにいくか どうか、非常に私は疑問に思うんですが、ですから、守屋先生おっしゃったようにもう 少し広域的対応の方が、少しは障害者にとっては利用しやいかなというふうな感じを持 つんです。これは率直な印象ですので、何とも言えませんけれども、新潟みたいにうま くいけば非常にいいんですけれど。 ○金子委員  新潟の話をするのも気がひけるところなんですが、新潟の中でも私が勤務している病 院は、先ほど出ました過疎地と、振興山村ということと豪雪地帯といわゆる三重苦の地 域なんですが、市町村は非常に弱小でございまして、力を持っていません。地域の人口 比を見ますと、当然ながら高齢者の方と障害者の方が多いんですね。過疎地は大体その ような傾向がございますが、そうしますと、ある意味ではその対策をだれかが練らなけ ればいけないというのは各市町村もわかってはいるわけです。もう火のついた問題です から。  そこで自分の市町村だけだとだめだということになるので、周りを見回すと、ここと は手を組めるのではないかということで、例えば郡という単位がございますが、そうい うところでひとつ事業を興してみようではないか。例えば町村会がバックアップをした 形で社会福祉法人なりを興さざるを得ないということです。障害者のためを考えた理想 的なプランというよりも火がついてしまってやむを得ず進んでいるというところがござ います。ですから実効性が、実効性というのは、要するに有効である度合いが高くなる というふうに考えております。  市町村主体にしないで広域にしますと、各市町村は他人のことだと思いますよね。だ れかがやってくれるものだと思いますと、そういう計画はなかなか進まないというのが 私の印象です。例えばうちは県立の総合病院の精神科でございますが、私どもの医療機 関が非常に出足が遅い、対応が遅い。例えば社会復帰施設をというのは地域からも要望 がたくさんあったわけですが、県立としてはとても建てるわけにいかないというところ が、結局地元市町村のモチベーションをだんだん上げていって、そういうグループを組 ませたというところがあるように思っております。以上です。 ○吉川座長  ありがとうございました。さっき杉中補佐もお話になられましたけれども、市町村個 別に全部やろうというわけではなくて、事業組合の話も出ましたし、広域として、今、 障害保健福祉に関する地域の分割であるとか、あるいは保健医療関係の地域の問題であ るとか、そういう今まで提示されてきたものとは違った意味で市町村同士が手をくみな がら進めていくということがあるとすれば、それはどうなんでしょうか。そこを前提に して考えていけばいいのではないかと思うんですけれども、いかがでございましょう。  もし、よろしければ、そこで通過させていただいて、次のところは、先ほど 3のホー ムヘルパーについてご議論いただいたものとほぼ同じですので、ここも一緒に通過させ ていただきたいと思います。  そして、最後のフレーズのところにありました 4のところ、それは今も少しずつご議 論いただきました。 4と 5を改めてまとめに入りたいと思いますけど、いかがでしょう か。ご議論のまとめして考えていただければと思います。 ○竹島委員  提案なんですけど、市町村の担当の係長さんとか課長さんとかがお読みになったとき に、“ケアマネジメント”という言葉でつまづくのではないかという印象があります。 そういう担当の係長さん、課長さんに通じやすい言葉を、何か日本語でわかりやすい用 語がないか。  それから、私は基本的には障害行政の一元化というところで市町村でいくべきだとい う思いがあります。私が仕事をしてきた高知県も、人口81万で市町村区が53ということ で人口 5,000以下が半分でした。そういう市町村では、もちろん、いろんな問題がある と思います。ですから、ぜひ市町村の方には、直接自分のところの職員・保健婦がすべ ての事業を担うのではなしに、いろんな形のやり方があるのだと。実働部隊は別個につ くっていいんだということが伝わるような知らせ方を工夫していただければ、もっと市 町村の側も気持ちが楽になれるのではないかと。市町村で精神保健福祉の取り組みが遅 れると、その逆の意味の、精神障害者に対する差別というものに陥ってしまうのではな いかという危惧を感じます。 ○吉川座長 逆のとおっしゃるのは、身障、精薄に比較してということですね。 ○竹島委員 そうですね。もちろん、先ほど高柳先生の言われたプライバシーの問題とか、また別 個に何らかの手当が必要になってくるかもしれませんけど、できるだけそういう方向が いいのではないかと思います。 ○吉川座長 はい、わかりました。今、竹島委員からお話をいただいたあたりのところが全体のま とめかなと思っていますけれども、長尾先生よろしいですか。 ○長尾委員 理念的にはこれで結構だと思うんですね。ただ、 3にもありますけれども、やはりマ ンパワーの問題がどうクリアするのかということが市町村の問題点は非常に大きいので はないかと思いますね。それとケアマネジメント、先ほど言われましたけれども、ケア マネジメントの内容がどこまで要求されるのか、どこまでを考えておられるのか、これ によっても時間的・物理的いろんな要素がかかわってきますので、その辺も少し検討を 要するのではないかと思いますけれども。 ○吉川座長 わかりました。それでは、資料2につきましては、今、通過したことにいたしまして 資料3、4、同時にやっていただけますか。 ○杉中補佐  わかりました。同時にやらせていただきます。まず、資料3について説明させていた だきます。これは実は資料1、2でやったことの総括みたいな形ですので、ざっと説明 させていただきます。  まず、「精神保健福祉行政における市町村の役割の現状について」ということですが 最初の方は、余計な装飾なのかもしれませんが、平成8年の患者調査によりますと、い わゆる精神障害者数、これはいわゆる通院、入院の患者についての統計調査ですが、約 217万人という推計がなされております。平成5年患者調査で同じ手法でやったものによ ると 157万人になっておりまして、非常に激増していると。この実数でどれだけ増えた かということまでの分析はまだ済んでおりませんが、増加傾向にあるのは確かでござい ます。  こういった状況の中で、これまでの精神保健福祉行政は、都道府県及び保健所を中心 に行ってきたわけですが、従来の入院医療中心の施策の中から社会復帰のための福祉施 策、さらにそれを超えて地域の精神保健福祉施策の充実が重要になってきているという 現状がある。また、精神保健福祉に関する第一線の機関である保健所は、地域保健法の 改正によって統廃合されて総数としては減少してきているということから、精神障害者 にとって最も身近で親しみやすい行政機関である市町村に期待される役割が大きくなっ てきているのではないか。 しかしながら現状でございますが、精神保健福祉法においては第2条において、「国 及び地方公共団体は精神保健福祉の向上のための施策を総合的に講じ、精神障害者等が 社会復帰をし、自立と社会経済活動への参加をすることができるように努力すること」 とされておりましたが、また次のページ等にも若干市町村の役割に関する記述等もござ いますけれども、実際としては市町村において自主的な取り組みが行われているという 実例は非常に少ないという状況にございます。  「実施主体の観点からみた精神保健福祉行政の問題点」ということですが、市町村の 関心の低さということで、平成7年12月に障害者プランが策定されて以来、精神保健福 祉施策としてもノーマライゼーションの理念の実現に向けて、精神障害者社会復帰施設 の整備等に取り組んでおるところですが、市町村の関心の低さが、精神障害者にかかる 市町村計画の策定及び社会復帰施設の整備の推進等に大きな障害をもたらしている要因 の1つになっているのではないか。  資料12をちょっと見ていただきたいんですけれども、これは「精神障害者社会復帰施 設の設置主体別設置状況」を書いたものですが、精神障害者社会復帰施設は公立、国立 県立、市立のものが8%ぐらい。実際、民間に非常に大きく頼っているという状況にご ざいます。  これを下の他障害の施設等と比較してみますと、身障施設は公立が16%ぐらい。市町 村立が 100施設以上ある。精薄施設などでも割合としてみれば低いんですが、かなり多 くの市町村等が施設をつくっているという状況の中で、特にその他の市町村立、いわゆ る一般の市町村立の役割の低さがかなり目立つ状況にあるのではないかというふうに思 われております。この中で特に市町村の協力のなさというものがかなり実際の施設をつ くるときの障害になっているとまで言わないんですけれども、なかなか支援が得られな い状況で進まないといったような実態があるという話も聞いておるところでございます 次に 2の「都道府県中心の精神保健福祉施策」ということですが、精神保健福祉行政 に関する事務が都道府県に集中しているため、精神障害者に対するきめ細やかな保健福 祉サービス体制が確立しにくい。また、都道府県単位で社会復帰施設等の整備を行った 場合、施設の整備が局地的に集中する傾向にあり、地域に密着したバランスのとれた施 設整備が行われにくい。 これは資料13を見ていただきたいのですが、2県ぐらいしか間に合わなかったので申 しわけございませんが、千葉県と大分県の精神保健福祉に関する資源の配置状況を地図 にしてみたものがこれです。基本的に○●が病院、△と◆のものが社会復帰施設、Gと 書いてあるものがグループホーム等でございますが、かなり地域的な偏在がある。先ほ どの検討メモでも言ったように、実際、△のあるのを見ていると、必ず○のついたとこ ろにほとんどのものがあるという状況の中で、やはり病院に付設したというか、その周 辺に社会復帰施設がつくられているという現状があるのではないか。これは1つには医 療施設自体も都道府県単位でやっているといったことももしかしたら問題にはあるのか もしれませんが、千葉県に関しましても、千葉市なり船橋市、市原市といったところで ございまして、大分についても大分市等を中心に病院があるところに社会復帰施設が出 て、地域障害者福祉圏域等として見てみた場合でも社会復帰施設等の資源がほとんどな いといったこともあるという現状にあります。  また、資料3に戻っていただきたいんですが、「都道府県のみによる相談業務」とい うことですが、本来ならば、精神障害者の保健や福祉に関する相談業務についても、市 民にとって最も身近な行政主体である市町村等が行うことが望ましいと考えられますが 市町村には精神福祉行政に精通した職員はほとんどいないという実態があると思います 実質的にはその相談は保健所なり精神保健福祉センターといったものがやっているとこ ろであって、身近な行政機関である市町村ではほとんど対応できないといったような状 況にあるというふうに考えられます。  次のページなんですが、これは簡単に市町村の役割等について条文を書いたものでご ざいます。  その次に「市町村におけるサービス提供体制の一元化について」ということで、資料 として第1回目にお配りさせていただいたんですけれども、障害部として昨年12月に出 しました障害保健福祉施策のあり方の中間報告の中でも、障害保健福祉サービスの提供 体制の一元化を図るため、精神障害者の福祉サービスについても、身近な地域でサービ スを受けやすくし、地域における精神障害者福祉を推進するため、社会復帰施設の設置 や入所のあっせん等についても所要の準備期間をおいた上で、市町村が行えるようにす べきであるというふうに言っております。また、これらの権限移譲にあわせ、市町村の 専門性の確保、都道府県等のバックアップ体制のあり方、市町村の財政的及び人的な負 担増に対する支援、保健所の行うサービスとの関係等についても検討を行うべきである といった提言がなされているところでございます。  以上に基づいて、「基本的な考え方」ですが、精神障害者保健福祉施策における都道 府県と市町村の役割を明確にし、より市民に身近な行政主体である市町村が行うことが 望ましい業務については、市町村に行わせることとし、また障害者の福祉施策の窓口を 市町村レベルで一本化していくことについて検討するべきではないか。そうすることに よって、地域ケアの推進や身体障害者施策や精神薄弱施策との整合性の確保について効 果が期待できるのではないか。  「市町村が行うべきと考えられる事務」でございますが、 1は先ほど説明したケアマ ネジメントをまず市町村でやるべきではないか。  2)ですが、ケアマネジメント等の結果に基づく施設の利用のあっせん・調整等につき ましては、現在、保健所長が行うことになっているのですが、これを市町村に行わせる ことについて検討するべきではないか。  3)は最初に説明いたしましたホームヘルプサービスについて市町村が実施主体として やるべきではないか。  4)といたしましては、「精神障害者の福祉に関する一般的な事務」ということで、現 在、精神障害者保健福祉手帳の受け付けであるとか、通院医療費の公費負担の申請の受 理といった、これは単純な事務作業なんですが、それは保健所を経由して都道府県に送 付して、そこで必要な判定を行うことになっておりますが、事務処理の効率性や利用者 の利便性を勘案し、これらの事務についても、市町村を窓口として行わせる方向で検討 してはどうかというふうに考えております。  次に「委譲に際しての問題点」ですが、「市町村が行う保健的なサービスについて」 ということですが、精神障害者に対して保健的なサービスを提供するためには、精神保 健に関する専門的な知見が要求されるものであるため、しっかりしたバックアップ体制 が確立されないと、適正なサービスの提供は困難であるのではないか。そのため、今回 市町村に委譲するというのは福祉的なサービスに限定して委譲するというのが望ましい のではないか。  次に「市町村の費用負担」ということですが、他障害(身体障害)については、社会 復帰施設の運営費に相当する経費を措置費として支出しておりますが、精神障害につい ては、施設に対する補助であるため、社会復帰施設の有無によって財政的に市町村間の 地域格差が生じるということになっております。  また、整備費については、他障害においても市町村の負担業務はなくて、市町村に負 担業務を課すことは困難ではないかといったようなことで、市町村における財政負担増 に対する検討といったものが必要なのではないか。  次に「市町村の連携の必要性」といったことですが、先ほどのケアマネジメントのと ころでも議論がありましたが、社会復帰施設の利用・調整を市町村で実施することとし た場合、都道府県の精神保健福祉センター等において管内に所在する社会復帰施設の利 用等について広域的な調整を行えることとするべきではないか。  また「市町村の規模の問題」ですが、精神保健福祉施策に関する権限は中核市にも委 譲されていないが、全ての市町村がその事務を実施できるかどうかということについて は検討する必要があるのではないか。小規模な市町村においては一部事務組合の設置等 で対応することができるか、させるべきかどうかについて検討する必要があるのではな いか。  また、先ほど言いましたけれども、職員に対する研修体制をつくる必要があるのでは ないか。  また、現在なかなか進んでいない市町村の障害者計画といったものについて早期に策 定を進めさせる必要があるのではないかというふうになっております。以上でございま す。  次に、資料4に引き続きということなので行かせていただきます。  これではちょっとテーマが異なるものでございまして、検討メモとして書かせていた だいたものですが、これについてはこれをもとに保健所における受診・受療相談といっ たもののあり方について議論いただければと思って書いたものでございます。それを前 提といたしまして説明をさせていただきます。  先ほど2、3回前に精神障害者の家族の方で話をされた中の問題点でもあったと思う んですけれども、受療の問題はかなり重要な問題になっていると思います。まず現状の 問題点ですが、今、精神障害者が治療を受けるかどうかは、一部の措置入院等を除きま して、原則として精神障害者本人の意思に基づくものとなっている。しかしながら、精 神疾患の状態によっては、自分では治療の必要性を自覚し得ない者がいる。このような 者のうち精神疾患の状態が自傷他害に至ったおそれがある者については、都道府県知事 等による措置入院が行われますが、それ以外の者については、患者が病院まで来て診察 を受けて、その診察の結果に基づいて入院をするといったことになっております。この 場合、必要に応じて患者を病院まで連れていき、治療に結びつけるのは、実質上保護者 ほとんどの場合は家族に期待されております。  しかしながら、精神障害者の家族の高齢化や単身で生活する精神障害者の増加等によ り、家族が従来期待されていた役割を果たせなくなってきているという現状にあるので はないか。  このような中で、精神障害者のいる家族が、精神障害者を受診させることについて援 助を求める意見というものが大きく全家連等も医療保護入院のところでも説明いたしま したけれども、「行政が治療の必要な精神障害者を搬送して受診させることができるこ ととする」といったような要望を提出しているところです。  このような状況の中で、精神障害者の家族が民間の警備会社に精神障害者の搬送を依 頼して、強制的に病院に搬送して入院させるといったケースが増えている。厚生科学研 究によれば、概要は後ろに付けておりますので後で見ていただきたいのですが、約3割 の保健所が管内で民間警備会社による搬送の事実があるのを認識しているという調査結 果が出されています。  「受診の援助に関する保健所等の関与と問題点」ということですが、受診に関してで すが、地域保健法第6条において、精神保健に関する事項は保健所の主要の業務の1つ となっておりまして、また「地域保健対策の推進に関する基本的な指針(基本指針)」 の中でも、都道府県の設置する保健所は、“精神保健の専門的かつ技術的な業務につい ての機能を強化すること”となっております。  したがって、住民の精神保健の向上を図る観点から、上述したような医療を必要とし ているにもかかわらずアクセスがない精神障害者に対し、必要な医療サービスを受けさ せるということは、保健所に期待される役割ではないかと思っております。  また、精神保健福祉法第47条第2項という規定がございますが、その中で、“都道府 県等は必要に応じて、医療を必要とする精神障害者に対し、その精神障害の状態に応じ た適切な医療施設を紹介しなければらない”と規定をされております。この場合の“都 道府県等”は、都道府県、保健所を設置する市又は特別区ということになっております ので、実質上上記業務はかなり保健所に期待されているのではないか。  しかしながら、現在の制度には以下のような問題があるのではないか。  まず1)は、第47条第2項には、基本的には、精神障害者又は家族の相談等に応じて行 われるものであり、本人が受診を拒否する場合又は家族の協力が得られない場合には、 保健所等が積極的に介入する権限がなく、医療につなげることが困難となるのではない か。  また、医療機関の紹介を行っても、搬送もしくは移送についての明文の規定がないと いうことでありますので、そこに連れていくまでの家族の負担は依然として残っている のではないか。  「基本的な考え方」ですが、まず精神疾患の治療については、自傷他害のそれがあり 緊急に介入する必要がある場合を除いて、本人の意思をできるだけ尊重することが望ま しいと考えられます。しかしながら、一方で精神障害者については、精神疾患により医 療サービスの必要性を認識できる状況にいない者もいるというのも事実ではないか。こ れらの者に医療を受けさせることについて、現在のように保護者に期待し続けることに ついては限界があるのではないか。  住民に必要な保健サービスの提供、もしくは紹介を行うのは保健所の重要な役割であ ることから、保健所に受診の指導等を行う権限を与え、保護者の負担を軽減する必要が あるのではないか。したがって、保健所の受診援助体制のための技術や体制のあり方等 について検討することが必要ではないか。  また、精神保健福祉法を見直して、保健所等が単に医療機関の紹介だけでなく、積極 的に受診に関する指導を行えることとするといったことについても検討してみるべきで はないか。  また、治療の必要性を認識できない患者について、受診を強制するべきであるという 意見もございますが、精神障害者の意思の尊重という観点からみると望ましくないので はないか。しかしながら、保健所が患者等に受診を説得する根拠を明記することで、当 該規定に基づいて受診の説得を行うことにより、治療につなげることを期待するべきで はないか。  最後に、精神障害者の搬送、移送の問題ですが、精神保健福祉法上に適切な根拠規定 がございませんが、民間警備会社等による搬送といったような人権の侵害に当たりかね ないケースが発生しておりますので、法文上しかるべき機関(公的機関)が搬送できる ケースを明確化することについて検討するべきではないか。この搬送については、次回 の専門委員会で応急入院と精神科救急事業といったテーマで取り上げさせていただくと いうことを考えております。 ○吉川座長  ありがとうございました。私が2つをここで少し急がせていただきましたのは、時計 を見ておわかりのように7時でございまして、10分ほど少し延ばさせていただいて、そ れで、最初に読み上げていただきした資料No3は、ここまで議論してきたことをもう一 度整理し直している形だと私は思っていましたので、先ほどの議論を踏まえて、この資 料3のところは少し手直しをする必要があるかもしれませんが、これは大体ご了解いた だけるのではないか、こう思ってここをまず出してもらいました。  それから、資料4の部分は、これはきょうの議論ではございませんでしたが、これま での議論の中で、ただ焦点は保健所ということに焦点をあてておりますが、これまでの 議論の中から、では保健所は何をやらなければいけないんだろうかというわからせ方だ と思っています。このことに関してはもちろんご意見たくさんおありになると思います ので、こっちの方にウエートを置いて、資料3のところは、先ほどまでの議論の総まと めというようなこと、そんなふうに考えさせていただきますが、よろしゅうございます でしょうか。 はい、どうぞ。 ○高柳委員  資料3の3ページの 4、一般的な事務まではおろすという話はなかったような気がし ますので、私はこれはなかなか難しい問題だろうと思いますので、それだけ指摘させて ください。 ○吉川座長  そうですか。ありがとうございます。それでは、先ほど申しましたように10分ほど延 ばさせていただきまして、保健所等における受診相談援助のあり方ということで、保健 所の所長もおいでになっていますし、一体こんな形でこれまでの議論をまとめてもよろ しいのでしょうか。それをちょっとお伺いしたいと思います。 ○伊藤委員  市町村に相当精神保健福祉の方がおりてきますし、保健所としては残るのは保健の仕 事、受診に関連することというのはよくわかるのですが、流れとしては、ちょっと管理 的な側面が患者さんの側から見ると多くなる印象があると思うんですね。例えば搬送の ところまで受け持つというのは。  それから、受診を拒否しているような患者さんの受診指導も保健所としては相当受け 入れ難い問題があるのではないか。医療側から言えば、保健所の方でこういうふうにし てやっていただければ、随分受け入れやすくなるという面はあるのですが、その辺を保 健所の方にちょっとお聞きしたい。 ○吉川座長  やっぱりそうですよね。 ○佐々木委員  これまでずっと患者さんの人権の問題を挙げながら、それで家族あるいは保護者の責 務を軽くするという形になってきて、ここへ保健所にどさっとそれが全部かかってきた ようで大変重い気がいたします。これをどうやって保健所がやった場合に、保健所が地 域に受け入れられるといいますか、になるのかなととても気が重たい気がいたしますけ けれども。 ○吉川座長  個々の問題に関して、ここのところはこういうようなやり方とか、こういうような考 え方、そうしたご指摘をいただけるとありがたいんですけれども。基本的な考え方をな ぞっていただいても結構です。 ○佐々木委員  やはり搬送のところ。 ○吉川座長  搬送のところ。 ○池原委員  その搬送のことにもかかわるんですが、保健所がこういう機能を担いきれるかという 問題点も確かに1つあると思うんです。少し視点がずれるかもしれませんけれども、 「基本的な考え方」の下から2つの部分ですが、全家連では前にも申し上げたように、 実は受診の導入という制度を提案しているのですが、それをすぐにやってほしいという ことではないにしても、この表現として、一方では医療保護入院という、つまり治療の 必要性を認識できない人についての強制的な入院システムを置いておきながら、他方で 受診を強制するのは「精神障害者の意思の尊重から望ましくない」というのは、どうも 平仄が合わないというか、やや、整合性がないのではないかという気が1つはするんで す。  そして、可能な限り説得をするというシステムを整備していくということはもちろん 非常に重要なことだと思うんですけれども、その説得というテクニックが尽きた先のと ころに実は、必ずしも今の搬送というのがすべてそうではなくて、かなり安易に搬送さ れているところがあると思いますけれども、民間搬送会社のですね。ただ、恐らく説得 というテクニックが尽きた先に何かの問題がやはり残る可能性があるのではないか。  それと、もし、法文上しかるべき機関が搬送できるケースを明確化するということに なると、要件的にどんなイメージでとらえたらいいのか。本人の意思は尊重する、説得 はすると。しかし搬送もできると。この搬送というのは、この流れでいけば、少なくと も拒否していない患者さんを搬送するという前提になるのでしょうけれども、ただ、現 実に行われている搬送というのは、恐らく本人が嫌がっているのを搬送している場合の 方が実際には多いはずなので、その辺が言葉の上では何となくつながっているけれども 現実にうまく要件化できるのだろうかというのがちょっとよくわからないんですけれど もね。 ○吉川座長  わかりました。どうぞ、佐伯先生。 ○佐伯委員  私も池原先生と全く同感でして、入院を強制できるという前提ですので、受診を強制 するということも場合によってはあり得ることではないかと。それはただちに精神障害 者の意思の尊重に反するわけではない。あるいは意思に反することがある場合には許さ れるというのが法律の考え方ではないかというふうに思っています。  それから、治療の必要性を認識できないというのは、そういう診断がなされるならば それは判断能力がないことを意味しているのではないかと思います。ただ、医療保護入 院の場合には診断がなされているのに対して、この場合には恐らくこれから診断がなさ れるわけですから、その点の問題があるのですけれども、何らかの要件でもって受診を 強制するということはあり得ることではないか。強制的な搬送というのは、やはりそれ を前提としているのではないかというふうに思います。 ○吉川座長  恐らく慎重に、下からマルの2つ目のところの3行目のところですが、「保健所等が 患者に受診を説得する根拠を明記することで」というニュアンスだと思いますね。そこ に受診の強制ということもあり得る、そんな意味合いに私はとっています。ただし、ま ず大前提としては、「精神障害者の意思の尊重」ということを打ち出している。こんな ふうな流れとして受け取りましたけれども、いかがでございましょうか。  もし、これでよろしければ、一番下のマルのところ、すなわち搬送の問題は次の機会 に、応急入院等でまた議論していただくことになりますので、一番最後のマルのところ だけを除きまして、きょうここで審議を終わらせていただきたいと思いますけれども、 何かご意見ございますでしょうか。 ○杉中補佐  また、次回なんですけれども、保健婦さんをお呼びして、現場での苦労とか、特にお 話を聞こうかというふうに考えておりますので、その話も踏まえて、また次回にでも頭 ちょっとぐらい使って議論していただければと考えております。  ここのところは保護者の保護義務を病院内に限定するといったことであれば、やはり 地域における受診援助といったものについて、保健所なりの役割をもう少し機能強化す るとか、あり方を考える必要があるのかなという認識から出ておりますので、具体的に どうすればいいというアイディアが実はほとんどないというのが、申しわけないですが 現状でございますので、ちょっと考えていただければと考えております。 ○吉川座長  ありがとうございました。  それでは、申しわけありません。時間、さっき延ばしていただきました時間でござい ますので、これで一応終わらせていただきますけれども、次回の問題を私の方からは話 をしておきましょうか。7月8日16時から開かせていただくのは前にお約束をしました けれども、7月27日16時15分から少しおくれておりますけれども、開かせていただきた いと思っております。その上で、皆様方から日程を出していただいたものを見ますと、 8月に最終的にこれはまとめの時期ですけれども、まとめとして1回は開かなければい けないだろうということで8月の20日でしたか。 ○杉中補佐  20日をとりあえず。 ○吉川座長  最もご出席の多い日が8月20日でございましたので、8月20日に開かせていただきた いと思います。これは16時からですか。 ○杉中補佐  16時からです。 ○吉川座長  16時から開かせていただきたい。一応8月の末のところまでで、とにかくまとめてお こうと思いますので、ご協力いただきたいと思います。  それでは、本当に長い間、ご議論いただきましてありがとうございました。これで終 わらせていただきます。 照会先 大臣官房障害保健福祉部 精神保健福祉課医療第一係 高橋(内線3057)