98/06/22 第10回厚生科学審議会先端医療技術評価部会議事録     第10回厚生科学審議会先端医療技術評価部会議事録 1.日 時:平成10年6月22日 (月) 14:00〜16:30 2.場 所:厚生省特別第1会議室(中央合同庁舎第5号館7階) 3.議  事:生殖医療問題について 4.出席委員:高久史麿部会長 (委員:五十音順:敬称略)     木村利人 柴田鐵治 寺田雅昭   (専門委員:五十音順:敬称略)         入村達郎 金城清子 廣井正彦 松田一郎 森岡恭彦 山崎修道 ○事務局  それでは定刻になりましたので、ただいまから第10回厚生科学審議会先端医療技術評 価部会を開催いたします。  本日は軽部委員、曽野委員、加藤委員の3名の委員の方々が御欠席でございます。そ れから所用で柴田委員がお遅れになるようでございます。  それではまず、配布資料につきまして事務局から御説明申し上げます。  本日配布資料といたしまして、A4の袋に収めましたものを2つ用意しておりますが 厚い方が本日の審議に利用いたします資料でございます。そちらの方から御説明いたし ます。  本日の資料は、直前になりまして急遽差し替えというようなものが入ってきておりま す関係で枝番が多くなっております。恐縮でございますが、よろしくお願いいたします  まず資料1関係といたしまして、「第三者からの卵子の提供による体外受精の実施につ いて」ということで、後でまた詳しくは御説明いたしますが、本年6月に公表されました 長野県の事例につきましての概要及びその新聞報道等の抜粋を用意いたしております。  また、それに関連いたしまして、資料1−2、資料1−3といたしまして、日本医師会及 び日本産科婦人科学会からの見解等につきまして、用意させていただいております。  なお、資料1−3には根津院長の意見がその参考として付いております。  資料2の関係でございますが、出生前診断の実態に関する研究、松田委員の研究班で行 われております研究の報告書及びそれに関する意見等につきまして用意いたしておりま す。  今はまだ少し間に合っておりませんが、資料2−2に対する研究班としての回答の資料 を用意しておりまして、到着次第配布させていただく手はずとしております。   資料3の関係で、出生前診断に関しまして、2人の方から御意見をいただいております 国立小児病院の田苗医師と、信州大学医療技術短期大学部の玉井先生から御意見をいた だいておりますので、その資料を用意いたしております。   資料4といたしまして、インターネットで寄せられました生殖医療に関する御意見であ りますが、5月21日以降の到着分につきまして、資料4として提出いたしております。  資料5といたしまして、先般の当部会でも御報告申し上げましたけれども、部会の傍聴 につきましての御要望、それから部会の今後の進め方についての御要望、2つ頂いてお りますので、資料5−1,5−2といたしまして提出させていただいております。  資料の方は以上でございます。  それからもう一点、薄い方の袋でございますけれども、これはヒト組織の関係で、ヒ ト組織を用いた研究開発の在り方につきまして、当部会の下に専門委員会を設けて本年 2月から審議を続けておりましたものでございますけれども、6月16日第4回の専門委員 会の会合におきまして、一応の意見の取りまとめがなされておりまして、翌日インター ネット等で公開されまして、一般から御意見を求めております。本件につきましては7月 3日に第5回の専門委員会が開催される予定になっておりまして、そこで寄せられた御意 見等を踏まえて専門委員会としての一応の報告がまとまることになっておりまして、そ の後は当部会の方に報告が提出されまして、本部会におきまして御審議がなされること になっている訳でございます。そのインターネットで公開した資料そのものを本日は資 料といたしましてお手元に用意させていただいた訳でございます。本日はこれについて の審議を行う予定がございませんが、お持ち帰りいただければと思う訳でございます。 それでは部会長、よろしくお願いいたします。 ○高久部会長  それでは本日の議題に入らせていただきます。  本日は出生前診断について御議論をお願いすることとなっておりましたけれども、前 回以降に第三者の卵子を利用した体外受精の問題が新聞紙上等で大きく報道され、社会 的な問題になっております。前回の議論を振り返ってみますと、時間の関係もあって若 干議論が不十分なところがあったと思いますので、本日はまず第三者からの卵子等の提 供について、若干前回の議論を補足しておきたいと思います。  それでは事務局から、事案の概要の説明を簡単によろしくお願いします。 ○事務局  それでは、お手元に資料1−1というものを用意いたしております。その1−1と別途 「生殖補助医療技術について(論点)」という2枚紙を用意いたしているかと思います それを用いまして説明させていただければと思います。  まず資料1−1でございますけれども、今般の事例につきましては、事案の概要といた しまして、30代の夫婦で妻が早期卵巣不全ということでその卵子の利用が困難という ケースにつきまして、第三者、本ケースの場合は奥様の妹さんにあたる方から卵子の提 供を受けまして、夫の精子を用いて体外受精を行いまして、昨年の春に双子の男児を出 生していたということでございまして、その事実を6月5日に長野県下諏訪町の諏訪マタ ニティークリニックの、「ねつ」とお読みするようでございますが、根津院長が公表し たということでございます。  同時に、20代、40代の夫婦につきまして、第三者、ともに実弟、夫の弟ということで ございますが、精子の提供を受けた事例につきましても公表されているようでございま す。 第1の事例につきましては、出産後順調のようでございまして、現在も双子として順調 に育っているというようなことでございます。  本件につきましては、日本産科婦人科学会の1983年の会告と照らしました場合に、会 告では「体外受精・胚移植」に関しましては、「被実施者は、婚姻しており、挙児を希 望する夫婦で、心身ともに妊娠・分娩・育児に耐え得る状態にあり、成熟卵の採取、着 床及び妊娠維持が可能なものとする」という条件の下に行うということになっておると ころでございまして、この会告には従っていない事例ということになる訳でございます  なお、次頁以降は読売、朝日、毎日、とにかくたくさん報道がございましたので、と りあえずその3紙から先週の金曜日までの報道状況につきまして、提出させていただい ております。  更にお手元に本日の朝日新聞等で若干の記事がありましたので、別途追加ということ で配布させていただいているところでございます。  続きまして、本件につきましては資料1−2といたしまして日本医師会から、資料1−3 といたしまして日本産科婦人科学会からそれぞれ会長の御見解が発表されておりまして それを資料として付けております。  特に資料1−3につきましては、一番最後のところでございますが、本件の関係で根津 院長の見解が、これはNHKのインターネットに載ったものでございますが、それがまず出 されておりまして、それに対する反論という形で日本産科婦人科学会の会長の見解とい うものが提出されております。  続きまして、若干論点の方を説明させていただければと思います。  実は生殖補助医療技術につきまして前回いろいろと御議論いただいた訳でございます が、本件の事例が生じましたこととの関係上、若干卵子の提供等につきまして再度御議 論いただいた方がよろしいのではないかということから、部会長の指示を受けまして用 意いたしたものでございます。全体といたしましては、生殖補助医療技術、特に体外受 精の利用目的、対象者の要件はどうであるべきか、あるいは精子、卵子、受精卵の提供 についてどのように考えるかということを中心として用意いたしておりまして、細部に つきましてはお読みいただきたい訳でございますが、利用目的、対象者、更に配偶者死 亡後の配偶子、受精卵の利用等についてどのように考えるか。更に精子、卵子、受精卵 の提供につきましては、そもそも配偶者間の配偶子使用に限定すべきか、第三者の配偶 子、受精卵の利用も認めるのか。  更に次の頁にまいりまして、仮に認めるとした場合に、どのような条件が付されるべ きかというようなことで用意いたしております。  更に、その他の問題点といたしまして、いわゆるインフォームド・コンセントの問題 或るいはプライバシー保護の問題、更に出生児、生まれてくる子どもの法的地位や遺伝 的な親を知る権利についてというような問題があるのではなかろうかというふうに考え ております。  更に、そもそも配偶子、受精卵の提供自体が一体どこが問題なのだろうかというよう なそもそも論もあろうかと思います。一応参考として掲げさせていただいておりますが 例えば、どのような問題点があるのであろうかということで、事務局の方で思いつくま まにとりあえず記したものでございまして、必ずしもこの論点自体成熟したものではご ざいませんが、本件事例に即しまして、幾つか考えておかなければいけないと思われる 事項につきまして、まとめさせていただいたものでございます。どうかひとつよろしく お願いいたします。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。皆さん方もよく御存じのことだと思いますが、今、 事務局の方から簡単な説明がありましたようなことがありまして、それで前回御議論し ていただいたこととかなり重複するところがありましたので、生殖医療を巡る論点につ いてということで配布をしました。  本日はあらかじめ連絡が行っていると思いますが、時間を少し延ばさせていただきま して、初めに体外受精の問題について50分ぐらい、ですから今2時10分ですので、3時ぐ らいまでこの問題について各委員の方々から御意見をお伺いいたしまして、その後、予 定のように松田委員から出生前診断の実態に関する研究の御報告をいただきたいと思い ます。どうぞ御自由に資料1−1〜1−3、更に配布資料について御意見をお伺いしたいと 思いますが、どなたかございますか。 ○木村委員  大変にタイミングよくこの問題を審議いただくように部会長並びに厚生省の事務当局 でお決めいただいたことはよかったと思います。  そこで、前回からの議論もいろいろある訳なのですが、全体的な枠組みといいますか 論議の今後の在り方、我々の部会としてこれに対応してどういうふうにやっていくのか という点から申し上げたいと思います。やはりこれだけ多くのマスメディアによる論議 がいろいろな形で沸き上がってまいりまして、今日資料を配布していただいた訳ですけ れども、この他にもいろいろなテレビその他でも議論がある訳でございますが、やはり 厚生省の審議会の中のこの部会が何らかの意味の国民的議論の中で中心的な役割を果た すことが一番望ましいのではないか。それは長い時間をかけていろいろな資料、論議の 蓄積がある訳でございますし、その点で具体的に部会長としても、また、厚生省事務当 局としても是非公開のセッションをつくっていただいて、関係者の方々においでいただ くとともに、このことについて言わば一般の方々の意見もお伺いするセッションが必要 なのではないかというふうに思っている訳です。  明日の朝の読売新聞に今、原稿を書いておりますが、厚生省ではこの問題については インターネットを通して非常に積極的に情報を国民の方に流し、国民の方々一般からも コメントをいただいて、去年1年間でインターネットの方は、厚生省全体ですけれども 650万件もアクセスがあったということですので、そういう意味でも、直接的な論議を受 け取る、それをまた返すという公開の場を是非どこかでおつくりいただければいいので はないか。そういうこともある程度枠組みを見た上で、この内容について今日論議をし たらどうかというふうに思うのでございますけれども、いかがでございましょうか。 ○高久部会長  セッションというのは、拡大部会みたいなものをお考えなのでしょうか。それとも公 開討論会のようなものをお考えですか。 ○木村委員  拡大で、やはり御関係の方々、例えば、根津医師、日本産科婦人科学会の倫理委員会 の方々、あるいはこれに対して非常に比較的批判的な産婦人科医の方々もお招きしてこ のセッションをお開きいただけたら大変いいのではないかというふうに思います。 ○高久部会長  私も木村委員の御意見に賛成です。金城委員がいらっしゃいますが、法律関係の方々 に何人か来ていただいて、少し時間を掛けて委員以外の御専門の方々からの御意見をお 伺いする機会を是非つくりたいと考えています。 ○金城委員  それから、これは根津さんが公表して初めて明らかになっただけで、前にも何件もあ るのです。  それからもう一つ恐れますのは、代理母の問題です。これもやっているという報道が ございます。報道まではいかないのかもしれません。  ですから、モラトリアムをかけていただきたいと思います。非常に重要な問題ですか ら、議論はやはりそう急いでやる訳にはいかないと思うのです。ですから、一切現行の 学会の会告は守ると。改めて審議し終わった段階でどうするかを決めるということをし ていただきたいと思います。 ○高久部会長  私も今、金城委員がおっしゃったモラトリアムが必要だと思います。この部会で出す のか、厚生科学審議会が出すのか、そこのところはよく検討しなければならないと思い ますが。モラトリアムを出しますと、その期間の間に結論、少なくともガイドライン的 なものをはっきり出さなければならないと考えています。 ○松田委員  前回私都合で欠席させていただきましたので、ずっと議事録を読ませていただきまし た。その延長線上にこの問題があるというふうに理解していますし、前回私欠席したと いうことで一言だけ言わせてもらいますと、ガイドラインというものをつくるときには やはりそれに準ずるということを前提にして我々がガイドラインをつくる訳ですから、 それに違反したということになるというと、それは1つの問題として我々受けとめるべ きだろうというふうに思います。  その次の問題は、その内容がどうだろうかということなのでありますけれども、内容 については今、先生たちがおっしゃったように、ディスカッションして、そしてどれが いい。基本的には精子の提供と卵子の提供はどこが違うのかとか、今、金城委員がおっ しゃいましたように、もしも産んだお母さんの子どもというふうに決めてしまえば、逆 に言うと代理母は成り立たない訳ですよね。代理母の場合は他の方に産んでもらって、 その子を自分の子どもにしようという訳ですから、だから代理母との関係が法的にどう なるのか。そこまでひとつ考えないと、この問題だけではなくてこれに派生する問題も 全部含めて考えないといけないのではないかというふうに思います。  もう一つ最後にお考えいただかなければいけないと思うのは、この問題だけを取り上 げてガイドラインなりディスカッションなりするのか、それとも今までのディスカッシ ョンの大きな流れの中で、出生前診断もみんな含めて、その流れの中でこの問題をディ スカッションしていくのか、ガイドラインを出すのか。そういったことも1回決めてお かないと、何か起きるたびに1つずつ出していくというのも少し問題とはいかないけれ ども、そういう方法論でいいのかなという気もしました。 ○高久部会長  これは当然生殖医療全体のガイドラインの中で作っていくべきだと考えています。今 木村委員からも御提案がありましたように、公開のセッションをかなり早目にもって、 といっても皆さんの時間の御都合もあるのですが、そこでいろいろ御意見をお伺いした 後に、恐らく2つの小委員会をつくらなければならないと思っています。出生前診断の 問題と今回のAID(非配偶者間人工授精)を含めた不妊症の治療の問題は、代理母の問題 を含めて、少し内容が違いますので、2つの小委員会或るいは専門委員会をつくって、 そこで議論をしていただいたものを又、この部会でまとめて厚生科学審議会に出すとい うようなことを考えています。  事務局の方と相談をして、今3人の委員の方々がおっしゃったような線でやっていき たいと思っています。時間的な問題が一番気になっていますが。他にどなたか御意見お ありでしょうか。 ○木村委員  今、部会長の言われたことに私は大変心強く、また、心から賛成したいと思います。 やはりアシステッド・リプロダクティブ・テクノロジー(生殖補助医療技術)の問題と いうのは、今、松田委員が言われたように医療の次元の問題だけではなく、非常に幅広 い家族とは何かとか、両親とは何かとか、性とは何かというような問題に連なってくる 訳ですし、これを医療側だけの問題として小さくしてしまうといろいろな後に悔いが残 るようになる訳で、実際に、例えばスカンジナビアの諸国などでは、ノルウェーとかス ウェーデンや、それからまたヨーロッパのオーストリアなどでは、エッグ・ドネーショ ン(卵子提供)を禁止している法律を持っている訳ですし、フランス、イギリス、アメ リカはOKということでいろいろ新聞に割合にポジティブに考えている方が多いようです けれども、非常に慎重に取り組んでいるスカンジナビアの諸国の例もございますので、 私達、特に日本の場合はこの問題は大変にいろいろな社会的な問題の広がりのある要素 が多くあると思いますので、特に国民がこれは知る必要があるし、知る権利があるとい うふうに思いますので、今迄いろいろな形で蓄積された情報を一番厚生省が持っている 訳ですので、また、ただ今部会長から御指摘がございましたように専門委員会などをつ くりまして、資料を十二分に検討の上、やはり素早い対応をしていただくということが 一番いいのではないか。7月ぐらいに本当はそういうものを開けるときがあればいいの ではないかというふうに考えております。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。是非皆様の日程を合わせてやりたいと考えておりま すので、よろしくお願いいたします。  この問題について、廣井委員がいらっしゃいますので、何かコメントを願えればと思 います。 ○廣井委員  私の考えは日本産科婦人科学会会長の佐藤日大教授の意見とほとんど同じで、今回の 場合は、やはり2つの問題があると思うのです。  1つは、学会で決めてきた会告を全く無視していると。それともう一つは、やはりこ ういうニーズがあるのだと、それについてどうするのだという問題です。  前回もお話ししましたけれども、精子提供と卵子提供というのは全然話が違うのです 同じ次元で、精子がよいなら卵子はどうだと言うのですけれども、卵子の提供の場合に は採卵のとき、例えば、排卵誘発剤を投与して、そして多数の卵子を採って、自然の場 合には毎月1回しか大卵胞が発育しませんので、ほとんどが排卵誘発剤をやるというこ とですから、それに提供者のリスクが加わるという点で大分話が違う訳です。  ですから、日本産科婦人科学会としては今までの会告を無視したというものに対して どのように対処するかという考え方と、しかしこれは前向きに当然検討していかなけれ ばならない問題との2つがあると思うので、今後我々日本産科婦人科学会としても更に 煮詰めていかなければならないと思っているところです。 ○高久部会長  日本産科婦人科学会として会告を変える可能性もあるのでしょうか。 ○廣井委員  これはまだはっきりしないのですけれども、いろいろな先生が新聞紙上で述べており ますように、15年ぐらい前でしょうか、会告が出来、当時は体外受精そのものがかなり 危険なものであると考えられ、それは社会的な認識が得られないということで、夫婦に 限るという形にしたのです。その後約1万人以上生まれているかもしれないということ になってきますと、もうこれは医療レベルになってきているので、安全性についてはか なり確立されてきたのではないかと考えられ、以前から体外受精に他人の精子を用いる こととか、卵子の提供は話題には出ているところなのです。  ですから、AIDをまず去年認めて、そして今後その問題について検討しようということ だと思いますが。 ○木村委員  関連質問なのですが、日本産科婦人科学会の方では、IVF(体外受精)などについて 夫婦の間での、特に女性の年齢制限とか、あるいは3年以上婚姻しているとか、子ども がないとか、医学的にこれは可能性があるとか、いろいろあると思うのですが、何かそ ういうものはございましたのでしょうか。 ○廣井委員  これはガイドラインに細かいことが出ているかどうか忘れましたけれども、当然やる 医師がいろいろと考えますから、例えば、もう月経がなくなったという人に対してやっ ても意味がないかもしれないし、そういう形で、当然ある面では年齢制限があるでしょ うし、夫の精子がなければ、今、睾丸から精子を採ってきてやろうということをやって いる訳ですけれども、それはまだ精子になる前の状態の円形精子細胞についてはいろい ろな奇形その他の安全性に問題があるので、それは学会としてしばらく自粛しようとい うことで日本不妊学会から倫理委員会報告を出している訳なのですけれども、そのよう なことで、ゆくゆくは安全性が確かめられてくれば次々と認めていくという方向に来て いるのではないかと思うのですけれども。 ○山崎委員  日本産科婦人科学会では人工授精の場合でも夫婦以外の精子は認めていないのですか そこが新聞を読んでいてよく分からないのですが。 ○廣井委員  人工授精というのと体外受精というのと間違えている方がいるのですが、人工授精と いうのは、一般には精子を採って子宮の中に入れてやるというのを言っているのです。 本当は膣の中に入れていい訳ですけれども、膣から子宮の中に上がるのに時間がかかる ものですから、子宮に入れてしまった方がいいだろうということで。それで夫婦間に対 する人工授精というのは配偶者間人工授精と言って、AIHと言っているのですけれども (artificial insemination with husbands semen)、片方では非配偶者間、他人からも らうのをAIDと言っているのですけれども、これはdonor's semen、提供された人の精子 を使うということです。ですから、提供された精子については、前回も話が出ていまし たように、昭和24年慶応大学で日本で初めてやって以来相当な数の子供が既に出生して います。それは日本産科婦人科学会としては、今まで認めないというか、野放しに近い 状態だったのですけれども、生まれた子どもの人権とかいろいろな問題が出てくるとい うことになってきて、去年に何回も議論した上、AIDは認めている訳です。ですから、 配偶者間の人工授精は前からやられていると。 ○山崎委員  そのときになぜ体外受精の場合は認めないというふうになったのかがよく分からない のです。 ○廣井委員  体外受精の方の夫婦間に限るというのは10年ぐらい前に出しているものですから、そ の時点では体外受精そのものがいろいろ問題があったということで夫婦だけにしようと まずそこでスタートしようということで安全性とか、生まれた子どもの問題とかと検討 してきた訳ですけれども、今度はそれが出来て、AIDが許可になって、だからこの次の 段階として当然議論しなければならない話題だった訳です。 ○高久部会長  先ほども事務局の方から説明がありましたが、今日の論点ということで生殖補助医療 技術についてとまとめられています。このまとめはよくまとまっていますので、先ほど からお話がありました拡大したセッションではこの論点が中心となった議論になると思 います。ここに書かれていること以外のことで何か議論しておくべきことがありました ら御意見をお伺いしたいと思います。利用目的、対象者、配偶者の死亡後の受精卵の利 用、あるいは提供の問題など、次の頁には提供を認めるとした場合の条件ということ、 その他いろいろな問題点が列記されておりますが、これについて、まだ問題点があるの ではないかということで何かおありでしょうか。  事務局にお聞きしますが、代理母のことは書いていましたか。 ○事務局  代理母についてはまだ書いてございません。用意は出来ます。 ○高久部会長  先ほどもお話がありましたので、代理母のことも論点としては入れておきましょう。 他に何かお気づきの点があるでしょうか。 ○柴田委員  質問の続きとして、私、新聞報道だけしか見ていないのでよく分からないのですけれ ども、学会がこの院長に事情を聞こうとしたところ、その院長が公開の席なら応じるけ れども公開でなければ嫌だと言ったというのが出ていまして、ちょっと私不思議な感じ がしたのです。この院長は、会告、いわゆるガイドラインを破った訳ですよね。ですか ら、普通でしたら会告がおかしいと思うならば、まず、それを変えるべきだという提言 を先にして、それが通らなかったからやったというならともかく、いきなりやったそう ですね。公開の席で議論することを心配する必要は日本産科婦人科学会の方にはないの ではないかと。  むしろ逆に公開を受けて立って、そういうことを問題にされればいいのではないのか なと思います。それなのに日本産科婦人科学会の方が公開なら嫌だと言い、じゃあしよ うがないとなったというような報道に接して、逆に意外感を持ったのですけれども、そ の点いかがですか。 ○廣井委員  御本人(根津院長)は日本不妊学会に去年の秋に入会しているのです。だからまだ1 年たっていない人なのですけれども。日本産科婦人科学会に対しても日本不妊学会に対 しても、こういうことをやってほしい、検討してほしいという提言は今まで1回もない のです。ですから会告を無視したということには変わりない訳です。 ○柴田委員  そうだとすれば、公開でもいいではないですか。公開を受けて、むしろそういうとこ ろをきちっと突かれればいいと思うのです。それが、学会の倫理委員会の方が降りてし まったというのが腑に落ちなかったのですけれども。 ○廣井委員  日本産科婦人科学会の方はよく分かりませんけれども、恐らくまず事情聴取という形 からスタートしようということだったのでしょうね。事実関係をはっきりして、彼自身 はマスコミに先に出してしまっている訳です。ですから、マスコミが自分に味方してい るということを表に受けてやっているのだろうと思うのですけれども、学会はどういう 形か知りませんが、一応事実関係をはっきりした上で、更にいろいろ検討しようという ことだろうと思うのです。まず第1回目という形だと思うのです。 ○寺田委員  一般的なことで、部会長とか、皆さんがおっしゃったことと同じなのですが、拡大の セッションというのは大変結構だと思うのです。ただその時に、松田委員から話があり ました、全部の生殖医療技術の問題を一緒にしてディスカッションをもしするとしたら 大変混乱を招くと思います。出生前診断とは分けてやったほうがよいと思います。  それから、言うまでもないことですけれども、クローン人間は禁止ということをこの 議論の中に入れておかないといけないと考えます。要するに、受精を外で行う訳ですか ら、その後続いていろいろな操作を加えることが出来ます。クローンまでいかなくても 卵子・精子・受精卵を使っての操作は禁止であるということはどこかに入れておいた方 がいいのではないかということであります。 ○森岡委員  先ほどからいろいろ議論がございますけれども、今までの先端医療の問題では、かな りの部分は患者の自己決定とかのインフォームド・コンセントの重視ということで進ん できたといえます。例えば、臓器移植でも移植を受けたいという人と、また臓器を提供 したいという人についてのインフォームド・コンセントがあればよいということですね 生殖の問題に関しても、これも1つの大きな要素なのですけれども、インフォームド・ コンセントだけでは解決しない部分が非常に多い。生命はどこから始まるのかとか、家 族の問題、そういういろいろな複雑なことが出てきて、総論的な原則を持って律し得な い問題が多いのだというふうに私は思うのです。  ですから問題は、個々の事例について議論しないとおさまらないような気がします。 高久部会長も言われますように出生前診断とか、体外受精に関する問題は別に切り離し て、議論をして、それをまた全体的な観点から批判して考える。そういう手法でやって いかないと収拾がつかないのではないかという気がいたします。 ○高久部会長  確かにおっしゃるとおりで、ですから、全体を視野に入れて、そして矛盾がないよう に基本的な考え方をしっかりして、個々の問題を討論していくというふうに是非したい と思っております。 ○木村委員  今の話の流れから見ますと、「生殖補助医療技術の利用目的・対象者について」とい うところから始まって、利用目的・対象者その他いろいろ書いてある訳ですが、根本の 問題として1つ挙げられるのは、利用目的とすぐ書かれてありますけれども、利用の是 非の問題があると思います。基本的にはそういうことがあっていろいろな問題が起きて いると思うのです。宗教にも右から左までいろいろある訳ですが、特定の宗教によりま すと、こういう生殖補助医療技術に対して真っ向から反対している伝統的な西欧の宗教 の非常に保守的なグループもある訳ですし、一番の生殖医療の問題点は、AIDがOKでなぜ 卵子の提供がだめだというのは、一般の人たちが恐らく抱いて、私たちも非常に関心を 持っている大きな社会的なイメージの変換が起こるということだと思うのです。  極めて簡単に言いますと、ジェネティック・マザー(遺伝子上の母)とバース・マ ザー(産みの母)と、ソーシャル・マザー(育てる母)というふうにして、かつての母 親のイメージがバラバラに分断されて、しかも人間が産むというより技術が産むような 時代になってくる。つまりお母さんがかかわりを持たないで、遺伝子を提供するお母さ ん、お腹を提供するお母さん、育てるお母さん、父親の方は最初から非常に簡単に父親 として精子を提供するだけであったのが、お母さんという一つに統合されたイメージが 大きく分断されて混乱が起きるということがありまして、果たしてこれを使うのがいい か、人口増加を抑えなければいけない時代の中でこういう生殖補助医療技術に、特に研 究に莫大なお金を投資して、無理矢理に産ませる必要があるのかどうかというようなこ とも社会的な問題としてあるものです。  したがって利用の是非の問題が基本的な哲学の問題として、バイオ・エシックス(生 命倫理)の問題としてはあるということです。  これは大きい問題なので、こういうセッションで討議してそこが済むかどうか。むし ろ技術の方に集中すれば話は簡単にいくと思うのですが、しかし、我々国民の考え方の 背景には大変な時代になってくるのではないか。オルダス・ハックスレイの『ブレイ ブ・ニュー・ワールド』みたいな、そういう時代になってくるのではないかという恐怖 感があるということは指摘しておく必要があると思うので、一言言わさせていただきま した。 ○金城委員  それから日本の場合には、キリスト教的な宗教観というのは余り関係ないのですけれ ども、私が考えます日本の場合に、親子というのは遺伝的な関係に基づく。そうでない 場合には親子ではないのだという考え方が非常に強いような気がするのです。日本産科 婦人科学会がAIDを公認した。それは一昨年ということで非常に遅い訳ですけれども、 その背景にはあるお医者さんがおっしゃっていたんですけれども、どこの馬の骨か分か らないような子どもが産まれたら困ると。それはやはり遺伝的関係のない子が産まれる そういう技術に対して国民も危惧を持っているし、日本人である産科婦人科のお医者さ んも非常に持っていらっしゃったという気がするのです。外国ではそれほどそういうこ とについては、育てることによって親子関係が出来るのだという考え方が非常に強いで すから、そういう点については余り疑問はなかったのです。一昨年公認したのも、商業 化が進みそうだと。精子売買の仲介業者が出てきた、これを押さえなければいけない。 それを押さえるためには一応AIDについて公認しなければいけないというようなことにな って、やむを得ずというところが私はあったのではないかなという気がしているのです  ですから、体外受精についてもこの提供を認めるか、提供した精子を使うか、論理的 にはAIDを認めた以上整合性ということから考えて、精子は認めるというふうにするべき でしたけれども、やはりそれについてはお医者さんの間で非常に反対があるのではない か。まして卵子ということになりますと、先ほど木村委員がおっしゃったようなことも 問題になる。そういうことで、親子とは遺伝なのか、それとも養育なのかが問題です。 しかし日本の場合には遺伝的関係がなければ円滑な親子関係が出来ない。したがって子 どもの福祉について問題が起こるのではないか。そういう考え方が非常に強いと思うの です。そういう意味では、親子とは何なのかというようなことも大いに議論していく必 要があるという気がいたします。 ○高久部会長  だんだん気が重くなりました。雑談になりますが、確かにアメリカ人は非常に簡単に 養子をもらう。私も何人も知っていますが、日本の場合はやはり特殊なのでしょうね。 勿論日本でも養子という制度があり、養母の方もたくさんいらっしゃると思うのですが 身近に余りいないものですからよく分かりません。 ○木村委員  今の金城委員のおっしゃられたことが2枚目の「仮に提供を認めるとした場合の条 件」の中に割に詳細に書かれて問題提起されていると思うのです。この問題はどうして も取り上げる必要が、日本の伝統とのかかわりの中で、どこの誰であるのか分からない から提供者を兄弟姉妹と近親者に限定すべきなどという意見があるいは出てくる可能性 があるということでここに入っているというのは大変に示唆的であると思うのです。  もう一つ、生殖補助医療は、ここに出てきていないように思うのですが、もう既に当 たり前だからここには出てこないのかどうか、顕微授精などというのは行われている訳 ですので、顕微授精の問題とか、あるいはもう少し幅広くなりますが、中絶胎児の卵の 使用の禁止の問題との絡みとか、それから卵巣の移植の禁止などというのは、欧米諸国 では、やっているケースもある訳で、受精卵の凍結の禁止も行われていますし、人のク ローニングは先ほどお話ございましたように絶対禁止ということになっている訳ですが そういう点も含めますと、問題点としては相当きちっといろいろ整理されて、この中に うまく入れられるような問題が幾つかあると思いました。今の点も含めてなお、お考え いただければというふうに思います。  それからもう一つ、先程高久部会長の方からお話がございましたように、仮に専門委 員会をつくるとしますと、これにポジティブな国と割合に世界的に見てネガティブな国 もまだいっぱいある訳です。ですからそういう国々の実際の資料、いろいろな国の立法 化している、例えばデンマーク、スウェーデンみたいに立法化している国、スウェーデ ンは立法化しているのですが、エシックスコミッティー(倫理委員会)では、特別な事 情に限り卵子の提供を認めてもいいではないかというリコメンデーション(勧告)を出 していたり、いろいろ状況がその国によって違うんですけれども、アメリカはつい最近 ですけれども、リプロダクティブ・テクノロジーに関する膨大な報告書を「ニューヨー ク州の生命と法に関するタスク・フォース」がございまして、そこで今年の4月に出し たのですが、そういうことも含めまして国際的な条件を踏まえた論議をしたいと思いま す。ここでも英国、仏国では限定というふうに書いていますが、その他の国々のケース もございますので、そういう点ももし資料が厚生省の方にございましたら、あるいはこ れからもし集まるとしたら小委員会その他で、出来るだけこの機会にきちっとした対応 をするということが日本の場合には特に必要になってくるのではないかと思います。国 民としてはもう二度と血液製剤のようなケースとか、そういう類似の誤ちが起こらない ような形での展開を、移植のケースもそうですけれども求めていると思いますので、そ ういう対応を是非お願い出来ればと思います。そのために我々の委員会が相当イニシア チブをとってやらなければいけないのではないかというふうに思っております。 ○高久部会長  外国の資料については前回の時に出していただきましたが、より一層新しいものとか いろいろな国の資料を是非集めていただきたいと思います。  先ほどから話題になっております小委員会、あるいは専門委員会では当然産婦人科の 方々、法律関係の方々、そういう人達が中心になると思うのですが、他に何かこういう 方を是非という方がいらっしゃいましたら。 ○金城委員  その際に、この技術は大体対象は女性の体なのです。これから子どもを育てていくと いうことになりますと、やはりお母さんとお父さんということなのです。ですから、委 員の人選をなさるときに、是非半分ぐらいは女性にしていただきたいと思います。 こ れはウォーノック・レポート以来そうなのですが、ほとんどの国で女性の委員が非常に 多いのです。ほとんど2分の1というようなことでやっている国が多いような気がします ので、その点御配慮いただきたいと思います。 ○木村委員  同感で、エイズの場合もそうだったのですが、可能でしたら、これは匿名でもいいの ですが、実際にその手術を受けてというか、実際にそれでもって喜びと豊かな生活を感 じていらっしゃる当事者の方々、日本ではなかなか出にくいかと思いますが、アメリカ などではIVFのときの公聴会、国会でやったのを私聞いておりましたが、実際に赤ちゃん が生まれたといって喜んで赤ちゃんを連れてきて、国会でみんなに見せたりしているの です。そういうところに中学生も高校生も来ているという、21世紀の中でこの辺ポジテ ィブなものは倫理的にクリアされれば積極的に使っていっていいのではないか、こうい うふうな喜びを持っているよというようなことを実際に我々も感ずることが出来るので す。そういう方々がこういうところにおいでいただいて、この間我々、これは違った角 度ですけれども、実際の障害者の方々にお出でいただいて、本当に切実なお話をしてい ただいて、我々も学んだことが多かった訳でございますけれども、そういう方々にまさ にこういうところでお話をお伺い出来る機会があれば大変にありがたいので、難しいこ とかと思いますが、部会長としてその点も御配慮いただければ大変ありがたいというふ うに思います。 ○高久部会長  小委員会、専門委員会でヒアリングなどもする機会があると思いますので、そういう ときにはいろいろな方の御意見をお伺いしたいと思います。今、金城委員がおっしゃっ たように、この問題はまさしく女性の問題ですから、女性の委員を積極的に考えたいと 思います。  法律と産婦人科関係の方と、あとはどういう方がいいか事務局の方とよく相談をして と思っていますが、それ以外の専門の方というと、ちょっと思い浮かばないのですが、 もしいらっしゃれば教えていただきたいと思います。女性の方で第三者的な御意見を言 っていただく方が良いのではないかと前のヒアリングのときに感じました。 ○木村委員  今日御配布いただきました資料5は、「からだと性の法律をつくる女の会」とかいろい ろ書いてございますね。この他に女性が子どもを産む産まないに関するフェミニストの グループとか、いろいろあるのですね。この方々はどちらかというと出生前診断にかか わりを持つ方々ではないかと思うのですが、子どもを産む、育てることに関する女性の 自己決定権を尊重しようというフェミニストのグループの会がまだまだいっぱいあると 思いますので、そういう方々の御連絡などは、恐らくこれは可能ですね。その次のペー ジにもあるのですね。  生殖補助医療に関する情報はインターネットで調べますと本当にたくさんございまし て、でも日本で調べれば何千件程度で、アメリカでインターネットでリプロダクティ ブ・テクノロジーを調べますと1,500万とか、そういう感じになるのですけれども、日本 でも間もなく一千万レベルの厚生省へのインターネットでのアクセスが今年は達成され そうな状況の中で、なるだけ幅広く国民の声を聞くような機会をつくるということが重 要なので、いま、金城委員の言われたことに全く賛成です。 ○入村委員  大変短いコメントなのですけれども、少しは皆さんより若いジェネレーションで学問 をやっている者の目から見ますと、生物学という学問といいますか技術も含めて、哲学 的な問題に随分影響を与えていくということがこれからどんどん増えていく。そしてそ ういうことの最初のケースではないかという気が非常にいたします。こればかりでなく てもっと倫理観だの何だのに直接影響を与えていくような問題がこれからものすごくた くさん出てくるのではないかというふうに思います。だから何という訳ではないのです けれども、すぐに生物学というものの全体を見ながらそういうことに意見を言う人がい なければいけないという訳ではないのですけれども、これからそういうことがどんどん 多くなってくるだろうと思います。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。それでは、アシステッド・リプロダクションについ ての議論はこれぐらいにいたしまして、次に、松田委員から「出生前診断の実態に関す る研究」の御報告をよろしくお願いいたします。 ○事務局  ただいま追加の資料をお配りしますので、少々お待ちいただきたいと存じます。 ○松田委員  それでは、私の報告に移らさせていただきます。お手元に差し上げた資料は2つあり ますが、1つの方は全くのメモでございまして、これから話をするのに多分必要になる のではないかと思って用意したものですので、この会が終わった後捨てていただいて結 構だと思います。  もう一つの方の資料は、資料2-3『「出生前診断の実態に関する研究(総括研究報 告)」に対する意見(虎の門病院産婦人科部長 佐藤孝道医師)(資料2-2)に対する回 答について(出生前診断の実態に関する研究班)』というものでございまして、資料2-2 に対する回答として用意したものでございます。これは私一人の回答ではなくて、私ど も研究班全体でつくった回答というふうにお考えいただいてよろしいかと思います。  私どもの研究班は2つに大きく分けることが出来まして、1つは、侵襲的診断につい ての実態調査ということになります。皆さんのところにこういう冊子が行っていると思 いますので、これに従って御説明いたします。  もう一つはトリプルマーカー、もしくは母体血清マーカーを用いた実態に関する調査 というものの2本立てになります。  最初のものはどういう趣旨で行われたかといいますと、1993年に一度厚生省の班会議 として侵襲的な出生前診断というのが行われています。それと比べて今回の検査で実際 に件数が増えたのだろうか、もしくは内容に変わったことがあるのだろうかというのが 論点の第1。  第2点は、前回なかった調査項目として、インフォームド・コンセントについてどのぐ らいそれが行われているかという2つの論点に絞られます。  第1番目の論点は、270のうち166の施設、61.3%から回答があり、81.9%からこれが得 られたというふうになっています。件数が5,748件です。1993年は3,539件でやや増えて いるように見えますが、前回施設は80施設です。今回の施設は136施設でございまして 前回は大学附属病院のみを対象にしましたが、今回はそれ以外の病院も対象にしていま す。したがって、病院の数、母集団は増えていますので、実際にはそれほど大きな増え 方はなかったというふうに言えるのではないかと思います。 内容につきましても、ページをあけていただきまして表2を見ていただきたいと思います 羊水診断、絨毛採取、臍帯採取などに分かれております。羊水穿刺というのが最も多い というのが前回同様でございます。臍帯穿刺数というのが今回は減っています。前回は 461なのが77に減っていますが、その理由として2ページ右側のカラムの下に記載してい ますが、臍帯穿刺件数の減少は今回の調査では妊娠22週未満の胎児を対象としたもので 通常行われている胎児管理を目的とした臍帯穿刺を除外したものであるというふうに書 いてありますので、この減少は調査の方法でもって差が出たというだけで大きな意味が ないと思います。  結論から申しますと、この間に件数が大幅に増えたということも言えないと思います し、内容についてもそれほど大きな差はない。前回と同じように対象になっているのは 90%、これは最初の要約の3行目に書いていますが、ほぼ90%以上が染色体異常を一義 的な目的としているということでございます。  したがって、遺伝子診断のような高度の技術を用いた出生前診断の数が増えるかのよ うに予想したのですが、実際はそうではなかったというふうに考えていただけたらいい と思います。実際には染色体の異常を調べるという診断数が実に90%で前とほとんど同 じだったというふうに考えていただいていいと思います。両親のいずれかが染色体異常 の保因者の場合、染色体異常の既往歴を胎児が、生まれた子どもが持っているという、 そういう既往歴を持っている御夫婦の場合、やはり一番多いのが高齢妊娠でございます 3,611件、5,557件のうちの実に79%が35歳以上の妊娠している方を対象とした出生前診 断ということになります。  インフォームド・コンセントの問題に移りますが、3ページの2のところに要約して ありますが、妊婦・配偶者・担当医のサイン入りのものが76.9%、サインのない事前説 明が19.2%、そのほかが3.9%。時間については10〜29分というのが最も多くて56.7% 次いでちょっと信じられないようなデータなのですが、10分未満というのが30%もあっ たこと。30分以上掛けている施設はむしろ少なかったという結果が出ています。  次のページにずっと書いているのは、染色体についての検査以外はどんなものがある かというと、それが4ページ目の上に移りますが、風疹の胎児感染、トリプレトリピート (酸塩基繰返し配列)でもって起きてくる優性遺伝性の疾患、例えば緊張性の筋ジスト ロフィー、それから福山型筋ジストロフィー、これは最近遺伝子が採られまして、トラ ンスポゾンの中に入っているということなのですが、これの福山型筋ジストロフィー、 それから表皮水泡症というのが含まれて、例とすれば大変少ない数になります。  その次に出生前診断後の家族の対応・妊婦の対応というのが4ページ目の右のカラム にあります。問題なのは、遺伝カウンセリングの専門家でない自設の産科医が52.9%携 わっているということです。自分の施設に産科医がいて、それで遺伝カウンセリングに 携わっているというのが33.6%ということでございます。  更に5ページの左の方になりますが、実際には検査で染色体の異常が見つけられたけ れども、産むというふうに決められた方が27例あったということで、そこにいろいろ書 いてあります。この中には表現型としては異常でない、正常という方が2例入っている ことは分かっておりまして、そのことについては佐藤先生の方からの指摘の中に入って います。  最終的な結論になりますが、実際には出生前診断というのは前回とほとんど同じよう に行われていることが分かったということと、前回と同じように62.8%が高齢の妊娠を 対象としたものであったということです。新しく分かったことでは、インフォームド・ コンセントの取り方についてはまだ問題が残っているのではないかというような印象を 私どもは持っています。  次の母体血清マーカーの方に移らせていただきます。6ページになります。  母体血清マーカーというのは、ここに書いてありますように、AFP、HCG、それから unconjugated estriol、uE3と呼んでおりますが、お手元に回しました9枚でとじられ たメモがありますが、それを御参考いただきたいと思います。  一番最初のページにシーラム・マーカーと書いてありまして、このAFPとHCGとuE3と いうのは一体科学的にどういうものであって、生体内ではどうなっているのかというこ とが短く書いてあります。それは要するに、あるものはタンパクであり、あるものはホ ルモンとして働いているということになります。問題は、いまだになぜこれらの値が増 えたり減ったりするということとダウン症などの対象疾患と関係があるのかということ が分かっていないと。結論からすると、経験的にこれらのデータと疾患との間に関係が 成り立っているということは分かっていますが、なぜこれが疾患の場合に値が動くのか ということのサイエンティフィックなベースははっきりしていません。  差し上げました方の2ページを見ていただきたいと思いますが、そこにAFP、HCG、uE3 と英語で書いてありまして、その下にコンディションとあります。ここに書いてありま すように、ダウンというのは21トリソミーですが、この場合にはAFPが下がる、母体の血 清ですね。HCGが上がる、uE3が下がるということがマーカーになります。それからトリ ソミー(染色体異数性異常の一つ)の場合はすべてが下がってまいります。AFPが非常に 高くなってくるというのは、このマーカーとしてだけ使われるのには無脳症とか、二分 脊椎、そういったものがあります。つまり、ここに書いていますように、この3つのも のをマーカーとしてお腹にいる赤ちゃんにリスクがあるかないか。つまりここに書いて あるような、ダウン症とか、トリソミー18(エドワーズ症)のリスクがあるかないかと いうことの判定をまずして、それで異常に高い、つまり陽性という言葉を使ってもいい と思いますし、ハイリスクと言ってもいいと思いますが、陽性の場合には出生前診断と して羊水審査を受けるという手順になる訳です。 差し上げましたパンフレットの一番最後の2ページを見てもらえれば分かりますが、先 ほどから話をしていますように、一番最後のページを見てください。妊婦が35歳以上の 場合のリスクというのは、ダウン症を妊娠するリスクが書いていますが、それが295分の 1ということになります。295人に対して1人の割合でダウン症が生まれてくるということ になる訳ですけれども、つまり、今まで日本人類遺伝学会や日本産科婦人科学会で決め たのは35歳以上の妊娠の場合にはリスクが高くなり、羊水診断を受ける適用として考え られますということがあるので、さっきお話したようにかなりの数の高齢妊婦が実際出 生前診断を受けている訳です。それが出生前診断の六十何%あった訳です。つまり、そ れと同じ状態かどうかを血清を使ってチェックするというのが母体のトリプルマーカー になります。それが8ページに書いてありまして、295分の1というところに線を引っ張 って、これよりも多いか少ないかという書き方をしています。つまり、35歳未満の妊娠 であっても、35歳以上の妊娠と同率もしくはそれ以上と言ってもいいかもしれませんが その程度のリスクがありますよというのを母体マーカーでチェックして、その場合には 羊水診断をした方がいいですよと、もしくはすることが出来ますよという発言をしてい くという考えです。それでもって実際に行われているというのが現実です。  そういう予備知識を頭に浮かべていただいて、私たちが調べた内容について行きたい と思いますが、実際には1,288の医療機関を対象としました。270施設というのは6ペー ジに書いてありますが、日本産科婦人科学会の周産期委員会の登録機関が270これは決ま っています。それから日本母性保護産婦人科医会所属機関、これは開業の先生も入って います。それが1,018。これは私どもが選んだのではなくて、日本母性保護産婦人科医会 にアトランダムに選んでいただいたということになります。更に、私たちはそのデータ をいただくに際しまして、ここに書いていますように、「アンケートの集計・報告にあ っては、病院、診療所などの固有名詞が出ることのないように配慮します。報告書から それら固有名詞が固定されることはありません。集計時にナンバーリングをしますので コンピュータにも入力されません」ということで、出来るだけ正確なデータをいただき たいと。その代わり将来個人の病院の名前が出ることはないということを確約しまして この調査を始めました。  その次から結果なのですが、一言で言うと、7ページの上の方を見ていただきたいので すが、332医療機関で1年間の総数は1万4,682件で、35歳未満が8,919件、35歳以上が 5,763件です。このうち年間100件を超える施設というのが実は29施設、8.7%ありました 別な言い方をすると、わずか9%の医療機関で全体の総数の74%を施行していることにな ります。つまり、トータルとして74%をわずか9%の施設がやっているということになり まして、ある意味で非常に集中的にある場所に偏って行われているということが分かり ました。  更には、多い件数のところをピックアップしてみますと、表1の301以上のところの数 字がそれを示す訳ですが、わずか産科医1人の施設で年間420件やっているというところ が出てきたり、2人のところで239件とか、3人のところで491件というふうにして、産科 医の数とこの件数との間には平行関係は成り立たないことが分かりました。ということ は別な言い方をすると、ある特定の医療機関ではたった一人のお医者さんがいるところ でかなりの数の件数が行われているというふうに考えてもらってもいいと思います。  その次は、7ページ右の方のカラムになりますが、トリプルマーカー、ダブルマーカー AFPのところに書いてあります。つまり、先ほど申しましたように3つのマーカーを使っ てやるのですが、実際にはこのうちの2つだけ使ってやるという方法もない訳ではあり ません。更にAFPというのは、最初はAFPだけで行われていましたので、アメリカの場合 も名前としてはどういうふうに言っているかというと、これは皆様に差し上げましたメ モ用紙の4ページになりますが、EXPANDED AFP SCREENING PROGRAMという言い方をし ています。つまり、トリプルマーカーという言い方をしませんで、AFPを更に広げたマー カーのという言い方をしています。  しかしながら当然のことながら、トリプルマーカーとAFPだけ使ったのでは診断率が格 段に違う訳です。どちらかというとAFPだけでは問題がある訳です。ところが、実際見て みますと、トリプルマーカーを使っているのは39.8%、ダブルマーカーは9.2%、50.1% 半分がAFP単独マーカーしか使っていなかったということになります。ということになる と、見る人が見ればこれは何を目的としたマーカーテストであったのかということに対 する疑問も出てこようかと思います。その点は佐藤先生が指摘しています。  しかし問題なのは、我々は病院を知っていませんし、ナンバーリングしかしてません ので、どういう事情でAFPしか選ばなかったのかとか、その辺のところの事情をもう一度 検査する訳にはいきません。ですので、我々はそれ以上の推論はしないというふうに考 えています。  次の検査結果ですが、当然のことながら先ほど申しましたように一応ハイリスク、も しくは陽性と診断された場合には出生前診断として羊水検査をしなければいけないので すが、何%ぐらい羊水審査を受けているのかということになりますと、はっきりした データを欲しかった訳ですが、必ずしもそれが得られなかったわけです。実はこの中の 20施設がトリプルマーカーテストを受けている件数よりも多い件数について羊水診断を しているという報告を出してきました。 ということはどういうことかというと、多分その施設は、羊水診断をするということと トリプルマーカーを検査するということを別々に考えていらして、つまりトリプルマー カーをやってから羊水診断というふうに我々はそういうフォローを考えたのですが、別 個に羊水診断だけやっている件数だけを書き込んできた可能性があるのです。したがっ て、その20件の件数を除きまして集計しました。そうすると、77.9%がトリプルマー カーの後羊水診断をした。これは8ページの右のカラムの上に書いています。大体その 程度がやっているだろうと。100%やるとは勿論思っていませんけれども。  問題はどういうことかというと、この場合には、このトリプルマーカー、もしくは母 体血清マーカーの陰性な人からも当然トリソミーの人が生まれてくる可能性がある訳で す。そうすると、実際に何例検査して、何例陽性であって、そのうち何例羊水診断やっ て、何例がトリソミーであったのか。それから、トリプルマーカー陰性の人のうちで何 例がそこからダウン症の子が生まれたのかという基礎的なデータは現時点では全く浮か んでこないのです。そのことをこの報告書の一番最後のところに参考として、日本人類 遺伝学会の倫理審議委員会の母体血清マーカーに関する見解というものを付けましたけ れども、34ページを見てください。34ページに書いているように、こういう計算方法を やって、真性の予測値、真陰性の予測値というものを出さなければいけないし、この データがないと実際はインフォームド・コンセントとして患者さんに説明出来ないはず なのに、そのデータなしに行われているということになります。  更に、メモの一番最後のところをもう一度見ていただきたいと思いますが、どういう ことが書いてあるかというと、これは実際に妊婦さんに渡されている書類なのです。見 てもらえれば分かりますが、8ページの少し上でありますけれども、「陰性の方たちのグ ループからはダウン症の赤ちゃんが生まれてくる確率は1000分の1以下です(米国の データでは2500分の1以下ですが日本人のデータはまだ出ていません)」と。つまり日本 人のデータはない訳です。それから9ページの一番下にも、(資料:米国データ)とあり ます。日本の国は検査会社が入っていますが、それには米国、イギリスも入っています イギリスの会社もイギリスのデータを基にして話をしているのであって、日本人のデー タはないと、現在存在していないというのが正しいだろうと思います。つまり、そうい う状況下である限られた医療機関がこれを行っているということに対して、私たちは大 変問題があるだろうというふうに考えておりました。  もう一つは、9ページのインフォームド・コンセントのところにありますが、ここで も実際にどうやっているかというと、インフォームド・コンセントを取っているという 機関が96.1%というふうに言われていますけれども、時間に関しましても余り長い時間 ではない。中には、ただパンフレットを渡すだけであるという機関もありました。10 ページを見ていただきますが、全体として54〜60%が10分以内ということでもってこの 検査を行っているということです。30分以上掛けているところは極めて少なくてわずか 数%にしかすぎませんでした。  更にいろいろ書いていますが、後で見ていただいてもいいと思いますけれども、話が 前後してすみませんが、私たちはこの調査をやる前に、業者の方に来ていただいてヒア リングをやりました。そのヒアリングの内容が31ページにあります。読ませてもらいま す。三種の、または二種の血清マーカーを用いて胎児をスクリーニングする手法が欧米 で開発されていて、例えば、米国ではカリフォルニアでは州単位で行われているという ことが知られています。日本の国でもコマーシャルベースで始まってきている。  カリフォルニアの場合には、産科医は最初の受診時に妊婦にこの検査について説明し 同意または拒否、インフォームド・コンセント・バー・レフューザルの回答を得ること を義務づけていますが、拒否の件に対する配慮などは十分に我が国ではまだ発達してい ないのではないかという危惧をここに書いてありますけれども、ただ、今、言ったよう にカリフォルニアはやっていますが、メモで見ていただきますように、かなりカリフォ ルニアの場合にもきちんとそれを受けるか受けないかをはっきりさせるということ、つ まり拒否出来るということ。更に、ここに表紙だけ出しましたけれども、EXPANDED  AFP SCREENING PROGRAMというかなり厚いハンドブックです。持ってきましたが、ペー ジ数にしてAFP以外でも約22ページの大変きれいなしっかりしたハンドブックが出されて います。そういったものは勿論日本では出されていませんし、今、言ったように基礎 データとしても十分なものは出されていない訳です。また、この学会のヒアリングのと きに遺伝の専門医を置いているというふうに回答しましたけれども、わずか1人を置い ているだけで、その人だけでもってすべてのこれだけの検査に対応出来るとは思えない のです。  3番目には、先ほど言いましたように、しっかりした検査の信頼性を評価する基礎デー タがないということが問題だろうというふうに考えました。  もう一つは、更に費用の問題ですが、はっきりしていないということを基にして行わ れているにもかかわらず、実際には検査をかなり費用を取って行っている訳です。ここ に書きましたが、染色体の検査まで含めると10万円ぐらいかかるのです。最初で1万〜2 万円ぐらいかかっていると思いますが、その費用を取っていくということ。  実際米国はどうなっているかといいますと、これもメモの6ページ目にありますが、 アメリカの場合は日本の国とは保険機構が違いますので日本とは比べられませんけれど もここに書いていますように、Genetic Counseling(遺伝カウンセリング)で110ドル Amniocentesis(羊水穿刺)でもって125ドル、Karyotype(染色体数)のチェックで385 ドルとかかりますけれども、実際には右端のようにゼロと書いています。つまり、アメ リカの場合には妊婦さんはお金を払っていないのです。つまり個人で頼めばこれだけか かるのだけれども、HMO(米国保健維持機構)で負担するからかからないという状況なの です。現時点では我々はどういうことを考えているかというと、こういうはっきりしな い状態で行うなら無料で行うべきであって、無料でしかもきちんとデータを積み上げた 上で更にその後適切なお金を取るというのなら分かるけれども、現時点でお金を取って やるということには問題があるのではないかというのが私ども委員の一致した意見でご ざいました。  もう少し話が飛びますが、日本人類遺伝学会の倫理審議委員会の方の32〜33ページに 移っていただきたいのですが、確かにアメリカではこのようにして幾つかの州で行われ ています。しかし反対して行っていない州も勿論ある訳です。ここで問題になってくる のは、アメリカの検査に対してどういう見解をとっているかということになるのですが ここに書きましたように、「Final report of the task force on genetic testing」と いうのがホルツマンによって1997年に出されています。それがこの文書ですけれども、 この文書が膨大なページ数で百五十何ページにわたって書かれていますが、このページ 数のところに書かれている、これに関連したところのコピーを取っておいてありますの で、皆さんに差し上げたコメントの中の7ページを見ていただきたいと思いますが、どう いうことを書いているか読ませていただきますと、「Interestingly,despite close scrutiny by the scientific genetics community,the AFP, estriol, and chorionicg onadotropin("triple )screens for Down syndrome have not been fully evaluated or regulated by the FDAです。つまり、まだアメリカでも十分にこれに対するエバリ ュエーションが進んでいる訳ではないというのが1997年にファイナル・タスク・フォー スとしてNIHのワーキング・グループから出されている訳です。こういう状況から考える と、やはり現在のトリプルマーカーの在り方にはかなり問題があるのではないかという ことが指摘されるだろうというふうに思います。  以上です。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。今、松田委員からの御報告を伺った訳ですが、いろ いろ御質問があると思います。どうぞ。 ○木村委員  大変に重要な日本での恐らく広範囲にわたる貴重な科学的な研究データかと思うので 詳細に御報告いただいて大変に教えられることが多かった訳です。  ただ、先ほど配布していただきました6ページの資料のところで、APPENDIXIIIの中で ジェネティック・カウンセリングが110ドルとかいろいろ書いてありまして、HMO(米国 保健維持機構)が払うので患者本人の負担はないということをはっきりと御指摘いただ いたのはいいのですが、しかし、HMOの方には各ファミリー単位、あるいは個人単位で 月々相当のお金を払っていますので、そういう意味でやはり患者は負担しているのであ って、ここでHMOが払っているから払わないということにはならない。例えば、カイザー パーマネントにしろ、グルークロス・ブルーシールドにしろ、医療保険の中で言わばHMO に払っているお金が個人的には結構多いのです。ですから入れない人がいるということ がアメリカの問題で、約4,000万人ぐらい健康保険をカバーされない人もいる訳ですので その点御指摘していただかないと何か誤解を招きかねないと思います。 ○松田委員  私が言いたかったことは、これを検査項目としてお金を払うというシステムではない ということです。つまりHMOの前提として払うけれども、その中にインクルードされてい ると。つまり、このことのために特別に患者さんがお金を払う訳ではない。日本の国の 場合にはあなた2万円払いなさいよとか、10万円になりますよということになりますから 個人が負担しなければいけないけれども、そういった意味での負担にはなっていないと いうことです。 ○木村委員  大変に貴重な御指摘で、何回かこの会でも申し上げましたが、特に高年齢出産の場合 何かそこで実際にこの検査を受けなければならないような一種の心理的な圧力が働くと いうようなこともある訳で、経費についてどのぐらいかかるのかということがきちんと この中に出てきたので、私なりにこれは大変いい報告結果が出たと思うのですが、実際 に10万〜15万円というのは、これよりも勿論高く払っている人もいる訳ですね。クリニ ックによってスタンダードがあるのですか。それとも健康保険でこれは払えるような形 に今後なった方がいいとか、なるべきだとかということになるのでしょうか。その点は どうでしょうか。 ○松田委員  私たちは一人一人のところに検査に行ってお金を幾ら払っていますかと聞いた訳では ありませんので、おたくの会社では幾ら取っておりますかということをある程度伺った だけで、実際には検査会社がもらっているお金とクリニックでお医者さんが患者さんか らもらっているお金との間にはギャップがあると思うのです。それは御指摘のお考えの とおりです。ただクリニックの人が幾ら妊婦の方からお金をもらっているかというとこ ろの把握は出来ません。早い話が、3万円もらって2万円だけ検査会社に払っているのか もしれませんし、2万円もらって1万円だけ払っているかもしれません。検査会社が幾ら 要求してその検査をしているということは分かりますけれども、幾ら取られているかと いうことは分かりません。これは自由診療ですので、そのところが決めていらっしゃる だろうと思います。  それから、今の御指摘の、これを健康保険で払うとなれば、これはやはり非常に大き な問題で、そういうことを推し進めるということ、これをプロモーションする方に働く 可能性があるので、そうなれば、皆さんが心配している優生思想の方につながるのでは ないかという批判をはね返すことは出来ないだろうと思います。したがって、私たちと してはただで行うのではなくて、適切な費用というのが望ましいだろうと。あくまでも ボランタリーにこれを受けるという方が望ましいだろうというふうに思っています。 ○高久部会長  議論の進め方ですが、出生前診断と、血清マーカーの2つに分けまして最初の報告に ついてまず御議論をお願いいたします。 ○山崎委員  出生前診断の実態についていろいろ勉強いたしました。ありがとうございました。1 つ知りたかったのは、今までのこの委員会の議論の中で、やはり出生前診断を子どもを 産むか産まないかの選別の基準にしてはならないという声が非常に多い訳ですよね。実 際にそういう子どもさんを持っている方の親。今の御報告を見ますと、異常者の10.9% の人しか妊娠を継続しなかった訳です。90%の方が子どもを産むことを拒否されたとい う意識調査というものが私は知りたい。例えば、それがほとんどその人の人生の選択の 自由なのか、あるいは経済的理由なのか、社会福祉施設の不備のためなのかというその 辺の分析は含まれなかったのでしょうか。 ○松田委員  それは第5回当部会において日本人類遺伝学会として私が報告いたしまして、それは この資料の中に入っていますけれども、繰り返しますと、これとは別な研究班でやった のですが、それはDuchenneの筋ジストロフィーの方たちを対象とした研究班だったので すけれども、まず一般の人千数百人からの意識調査を行いました。更に、Duchenneの方 たちの意識調査を行いました。80%以上ないし90%の方たちが出生前診断が存在すると いうことを知っていらっしゃいます。  第2番目にも、それが重篤の場合でも生むと答えるのは19%ぐらいいらっしゃいます  だから、今、山崎委員が御指摘したことが一般的な考えとすれば、それでいいのでは ないかというふうに思いますけれども、問題は、結果が結構ぶれるのです。どういうこ とかというと、実際にその場に当たった人でなければ非常に決定が難しいということに なろうかと思います。したがって、今まで何度もいろいろな人たちと話をしましたけれ ども、やはりその人たちが非常に胎児条項の設定を恐れていらっしゃる。というのは、 それが存在することによってそういう障害の子どもがいても産みたいという意欲を社会 的に抑え付けられるのではないかというふうな、不安、そういう考え方を持っていらっ しゃるということも言えると思います。 ○高久部会長  松田委員にお伺いしたいのですが、3ページの表3の中で、羊水検査の適用別分類云々 とありますね。この中でその他の中に母体血清マーカー506とありますから、この統計で は506人の人は血清マーカーが陽性だから受けたということですね。 ○松田委員  そういうことです。繰り返しますと、三百数施設の中であって、非常に大きな病院で すね、その中でわずかしか行われていないということになると思います。つまり、大学 病院と周辺の大きな病院でしか侵襲的出生前診断は行われていませんので、その対象の 病院です。かなりの数は開業の先生のレベルで母体血清マーカーが行われていると。も し比べればですね。 ○金城委員  私見落としているのかもしれないのですけれども、出生前侵襲的な方で費用はどのぐ らいなのでしょうか。 ○松田委員  それは調べていませんから分かりません。 ○金城委員  この間私伺ったのですけれども、ある病院では無料であるというお話を伺ったのです ね。 ○松田委員  それはちょっと信じられないですけれども。 ○金城委員  でもかなりかかるのではないかと思うのです。 ○松田委員  それはかかります。廣井委員。 ○廣井委員  この費用は特に染色体分析になりますと、この一人のために自分のところで染色体分 析をやるというのは実は大変なのです。ですから、どこかの会社にお願いせざるを得な いということになります。大体染色体分析では4〜5万円ぐらい取られるようです。採取 するというのはほとんど無料にしているかもしれない。例えば、かなり異常が考えられ る場合には、大学病院の場合には研究費といいますか、学用患者といいますか、そちら で出す場合もある訳です。お金を取らないという場合もない訳ではありません。 ○松田委員  おっしゃるとおりです。例えば、私は特別の酵素の出生前診断を依頼されてやってい ますが、これは実際には30万円かかります。遺伝子をアナリシス(分析)するときに30 万円かかります。それでもって最初はずっと私も全部ただでやっていましたので、ただ という表現は正しくないかもしれませんが研究費でやってきました。最近は研究費がそ ういうことでいただけなくなりましたので、これは遺伝子の解析の仕方をある検査会社 にお教えして、そこでやっていただいています。  現在一番各研究室が困っているのは羊水診断の中でも遺伝子診断をするグループです 特に、単一の遺伝子変異を調べることでかなりの病気を見つけられるというような、少 し話が難しくなりますけれども。そんな遺伝子変異で60〜70%発見出来る疾患もあれば 各患者さんがそれぞれ違うミューテーション(突然変異)を持っているのもあります。 私のやっているOTCというのは各患者さんはそれぞれ違う遺伝子のミューテーションを持 っていますので、どうしてもそれだけお金がかかるのです。だからお金を取らないとい うことの意味も非常にいろいろな意味にとらなければいけないと思います。 ○金城委員  ここで行われた人のうち5,557とありますよね。そのうち何%ぐらいが幾らぐらいとか そういうことは全く言えない、研究機関によって違うということですか。 ○松田委員  先ほど言ったように、遺伝子診断をやっているのはほんのわずかです。ほとんどが染 色体の検査です。染色体の検査の場合にはお話しいただいたように検査会社にお願いし ますので数万ぐらいだろうと思います。 ○森岡委員  1つ教えていただきたいのですけれども、さっきの妊娠を中絶した方ですけれども、 法律に従った人工妊娠中絶期間内で行っているのですか。 ○松田委員  よく聞こえませんでした。 ○森岡委員  羊水検査とかいろいろやりますね。異常が出ますね。それで人工妊娠中絶する訳です ね。この場合中絶する時期は法律で決まった期間内に限るわけですね。 ○松田委員  これは分かりませんので、廣井委員の方からお願いいたします。 ○廣井委員  羊水を穿刺するという形になりますと、胎児が羊水の中に浮いている訳です。大きく なると胎児が大きくなってしまって下手すると赤ちゃんに刺してしまう訳です。ですか ら、割合まだ胎児が羊水の中で浮いている時期というと20週前に採るのが多いのです。 大体染色体分析その他でも2週間ぐらいかかりますから、ほとんどが21週前に全部結果 がわかることになります。その結果を教えて、いわゆる中絶する場合には中絶の21週迄 でという範囲内でやられているというのが実情のようです。 ○森岡委員  その時期を超えている時でも適当に人工妊娠中絶やることがあるというような話を聞 くものですから。 ○松田委員  多分あるとしても極めて少ないと思います。もう一回見ていただきますと、3ページ目 左のカラムの下のところに週数書いていまして、妊娠週数15〜18週に行う羊水検査、そ れから、下の方に書いていますが、絨毛の検査は妊娠週数9〜11週であります。ですか ら、18週としても染色体検査にそれほど時間は掛かりませんので、それを超えるという ことは、今、先生がお考えのような懸念はかなり頻度としては少ないだろうと思います ○寺田委員  遺伝カウンセラーの必要性を言っておられますところで、遺伝カウンセリングの専門 家でない、あるいは専門家であるというふうな書き方をしておられますが、これはどこ で専門家であるかないかという線を引くか。 ○松田委員  これは、寺田委員のおっしゃるように本来ならばこれこれが遺伝カウンセラーの専門 であるというふうに位置づけるべきだったのでしょうけれども、ただ、このようにだけ 書きました。というのは、一応私たちの認識では、日本人類遺伝学会とか、日本臨床遺 伝学会でもって一応認定医というものをつくっていますので、一応それに相当する人と そういう考えで私はこれを読み込んでいますけれども、寺田委員のおっしゃるように何 が専門なのかと言われると、おっしゃるとおり大変難しいところだと思います。 ○高久部会長  それでは、血清マーカーのことについてどなたか御質問おありでしょうか。  松田委員、今アメリカの話をお伺いしたのですが、ほかの国ではどういう状況になっ ているのですか。 ○松田委員  スウェーデン、それからイギリスでもかなり進められていまして、非常に資料もたく さんあります。もっと大事だと思うのは、今後の方針のところに書いておきましたけれ ども、16ページのところですが、先ほど金城委員が女性とおっしゃいましたけれども、 それを受ける立場からのサーベイ、これは医療だけやっていますけれども、そういう サーベイについての論文もたくさんあります。この『ジャーナル・オブ・メディカル・ スクリーニング』という雑誌1冊全部トータルでもって253ページありますけれども、こ れすべてトリプルマーカーだけのためのレビューです。 ○高久部会長  それは特集号みたいなものですか。 ○松田委員  特集号かもしれませんけれども、要するにレギュラーのものです。ですからやはり、 行う側、受ける側、いろいろなシチュエーションを考えて相当長くデータを積み重ねた 上で初めてかなり広く行われるというふうに考えていいと思います。 ○金城委員  既にそういう状況で行われているのですか。 ○松田委員  イギリスもスウェーデンも行われています。勿論ボランタリーです。 ○金城委員  そういうことで、外国では非常に行われているということですけれども……。 ○松田委員  非常にというのはやめてください。外国では行われていると。 ○金城委員  行われているということですが、日本では今、御発表のように余りきちっとしたエバ リュエーションが行われていない。しかも、資料もない。アメリカの場合だったらそう だけれども、日本はどうかということについては分からない。にもかかわらずこんなふ うに行われるようになった、契機になったのは日本の場合は何なのでしょうか。お医者 さんですか、それとも製薬会社ですとか、そんな感じですか。 ○高久部会長  検査会社ですね。どこでやっているのですか。 ○松田委員  すべて検査会社です。 ○高久部会長  外国の資本の検査会社ですね。 ○松田委員  全部ではありませんけれども、かなり大きな資本の会社が入ってきています。金城委 員のおっしゃる意味は、そのとおりだと思います。つまり、コマーシャリズムが先行し たと。だからこそほんのわずかのお医者さんが多数の件数を行っていると。しかもAFP (血清中のα-fetoprotein)だけで行っていると。だから本当に愕然としたといいます か、逆な言い方をすると、ほんの僅かの方たちの心ない方法がこういった大きな問題に まで発展したというか、表現は難しいのですけれども、そういうふうに感じますね。 ○金城委員  それに対して医学界ではどういうふうに対処しようとお考えでしょうか。 ○松田委員  医学界というよりも、むしろこれは日本産科婦人科学会の問題なのですけれども、そ れから日本母性保護産婦人科医会の問題なのですけれども、日本母性保護産婦人科医会 及び日本産科婦人科学会では、私どものこの報告書を受けて、独自のガイドラインづく りに入ったというふうに伺っています。廣井委員何か御意見ございませんか。 ○廣井委員  まだ学会として研究班が出来ているかどうかという程度で、松田委員が言われました ように、コマーシャリズムが先に入って、どちらかというと大学ではない、民間病院の 方がどんどん入ってやってきているというのが実情ではないかと思います。これについ て更に学会として検討する予定になっていると思います。 ○松田委員  付け加えますと、ほんの僅かの施設がかなりの量をやっているということと、その施 設が実はAFPしかしていないと。トリプルマーカーなら分かるけれどもね。AFPというこ とは何かというと、実際は分からないということなのです。ダウン症の診断にはスク リーニングとして働かないということです。現時点では全くだめではないけれども、ト リプルマーカーの方がもっと精度がいい訳ですから。 ○森岡委員  出生前診断をやって、異常が出れば殆どの人は中絶してしまう訳ですね。ここが一番 問題で、結局異常があれば中絶するという考えに対して、障害者団体はみんな反対する 訳ですね。そこの考えについて、例えば学会なりどういうふうに考え方をまとめていけ ばいいか。私も非常に悩む訳ですけれども。 ○松田委員  私見でよろしゅうございますか。 ○森岡委員  はい。 ○松田委員  WHOガイドラインでもそう言っているのですけれども、結局妊娠中絶するかしないかと いうのは母親、女性の決定権によるべきだということですよね。これはいいと思うので す。つまり、障害の子どもがいても産むと、障害の子どもがいたら産まないという決定 はお母さんがするということになりますよね。そのときに結局問題になってくるのは、 そういうときに1つの理由として、お腹にいる赤ちゃんの障害が重篤な場合という話が 必ず出てきます。重篤な場合というのは重篤をだれが決めるかという問題があるのです そうするとWHOのグループは、重篤度を決めるのは母親だとはっきり書いてあるのです つまり、ある状態をそれを重篤と認識するかしないかはお母さんだと。だから、逆の意 味からすれば、認識しなければよい訳です。重篤と認識すれば中絶にすすむ訳です。だ からそこで問題になってくるのは、胎児条項としては子どもの状態を問題にするんだけ れども、実際には子どもの状態ではなくてお母さんがそれを認識するかどうかにかかっ ている訳です。だからお母さんの心理的な負担があるかないかということが決まる訳で す。  だから胎児条項は無理に設けなくても、お母さんが経済的な負担、お母さんの心理的 な負担が強い場合には中絶が許されるというふうに考えれば、そういうふうになれば胎 児条項はいらなくなる訳です。しかもお母さんに決定権がある訳です。そういう方法で しばらくの間はこの問題を置いておいて、そして、15ページのところに書いておきまし たけれども、現在厚生省の臓器移植に関する法律の運用に関する指針というものがあり ます。つまり厚生省の場合には臓器移植の法律がありますけれども、その運用の指針を 別に定めていますよね。その中でどう言っているかというと、この指針によれば、臓器 移植は脳死判定者と移植医は異なる医師でなければならないというふうに書いてある。 考えてみると、羊水診断をする人と実際にアボーション(中絶)する人が同一人である ところに問題があって、同一人だから結局してあげますよというふうになってしてしま うということになってくるのが非常に恐ろしいので、それを分けるということです。だ からここに書いているように、やはり指針みたいなものを設けて、そして基本的にはお 母さんの心理的な負担がある場合にはというふうに決めておいて、指針のところでもっ て出生前診断というものの意味を詳しく書き込むという方法しか現在ないのではないか と思うのです。これはあくまで私の考えです。 ○木村委員  特に重篤なということで遺伝的欠陥をめぐる論議になってきている訳ですが、現在の 方向としては日本の優生保護法を改正した母体保護法でも、人工妊娠中絶に関する規定 は一応メディカル・インディケーション(医療指示)ですよね。レイプ(強姦)である とか、ユニセスト(単身者)であるとか、母体への危険が迫っている場合とかですね。 ○高久部会長  経済的な理由も入っているのではないのですか。メディカルではなくてエコノミカル な。 ○金城委員  経済的理由ですけれども、やはり身体、健康に影響があるということです。 ○木村委員  単なる経済的な理由ではないですよね。 ○金城委員  はい。 ○木村委員  ですから、そういう発想が子どもを産む産まないについての決定権は女性にあるとい う発想で統一すれば、これはあえてそこで法律の運用に関する指針ガイドラインがなく てもこれは運用されるようになる訳で、そこでまた何かつくるということもいろいろな 問題が出てくる訳で、私は相当長期のレベルで、現在の日本の母体保護法が果たして本 当の意味で、病気であるとないとにかかわらず、女性が自らの自己決定に基づく、言わ ばリプロダクティブ・ライツの行使という方向に沿って全体の組替えがなされるならば これは女性の決定権の枠内ですので、今、松田委員がおっしゃったようなことに当然な ってくる訳で、メディカル・インディケーションでやっている国というのが世界的な方 向としては少なくなってきているいうことを踏まえた論議にしていかなければいけない のではないかというふうに私は思っているのです。 ○松田委員  佐藤先生に対する話の我々のコメントの2番にも書いておきましたけれども、出生前診 断をすべて妊婦の自己決定権に片づけることにも問題があると私は思うのです。 どう してかというと、やはりインフォームド・コンセントの内容が社会正義、各国で変わる 可能性があると書きましたけれども、生命倫理原則に反していれば認められない訳です 例えば、出生前診断で父親かどうかということを決めることも出来ますし、そうすると 何人かの男性と関係があって、一人の人の男性なら産むけれどもほかのは産みたくない から調べてくれとか、4人女の子がいたのに5人目を男の子にしたいからチェックしてく れとか、いろいろ出てくる訳です。  だから非常にその辺のところを女性の決定権だけに委ねるというのは結構まだ問題が あって、やはり決めた内容というのは、社会的にも、法的にも認められるものでなけれ ばいけないだろうと思うのです。今年になってWHOから出されましたガイドラインがあり ますが、この中にもそれはきちんと書いてあって、やはり非倫理的な内容の出生前診断 及びアボーションに関しては我々は反対するという意見がきちんと出ていますので、た だ、今のままの法律だけですべてが出来るということはないだろうと思います。 ○高久部会長  ヒアリングのときに、日本の社会情勢から考えて女性にすべての判断をまかせるのは 酷ではないかというような御意見もありましたね。そこのところは私も非常に難しいと 思います。  確かに、血清マーカーには非常に問題点がある。特に日本の場合にですね。ですけれ ど、ある年齢以上になって妊娠した、血清マーカーを調べてもらいたい、お金を出して でもという要望があることは事実でしょうね。 ○松田委員  あります。それは私どもの報告書にもありますので、そこのところ言いますと、2か 所触れましたけれども、15ページの右のカラムの下の方に書いていますが、「しかしな がら、様々な形で情報が伝えられるようになった現在、この検査を望んでいる妊婦がい ることも事実である。今後、この検査が広く行われることになるとすれば、科学的、及 び社会的批判に耐えるような方法論を確立する必要があろう」。つまり方法論として今 のところ間違っているのであるということを私たちは言っているのです。  それから、これは31ページの一番最後に書いていますが、「我々の認識では、現在、 この検査を望んでいる妊婦がいることも事実である」というふうに報告書には書きまし た。 ○木村委員  女性の自己決定をめぐる状況という、女性に決定させるのは酷であるというお話でし たが、それは女性の自己決定権の流れの方に国際的に来ている訳で、それは酷であると いう日本的な状況の考え方もあるかと思いますが、私は女性の自己決定権を尊重したい し、それについて現在むしろ問題であるのは、これは女性が決めることであるけれども そうやって男性が産む産まないについていろいろな形で社会的なプレッシャーも含めて 産む産まないについて社会的、あるいは父権的なシステムの中でのプレッシャーが多い というところが非常に問題があるのではないかというふうに私は思っているのです。 ○金城委員  それから、今、酷であるから社会がというような示唆のようなことがあったのですけ れども、やはり酷であるのをなくすためには、決して女性の自己決定権を奪うのではな くて、女性の自己決定権を行使するに対して酷なような状況を出来るだけなくしていく ような制度的仕組みをつくっていくべきだと思うのです。そういう意味では、全く独立 なカウンセラーなどをきちっと養成して、そういう人たちが自己決定権を女性が行使し ていくに対して出会うさまざまな困難について詳しく、大変だと思いますけれども、そ ういう援助をしていくような仕掛けをつくれば、これは酷であるという話は出てこない のではないかと思います。 ○高久部会長  おっしゃるとおりだと思います。 ○松田委員  多分高久部会長がおっしゃったのは、この部会の初めの頃、データの話をしたときの 話を覚えていらっしゃるのだと思うのですけれども、私自身が、ここに入っていますの で見ていただきたいと思いますが、メディカル、ノン・メディカルの人たち、更には患 者さんの家族についてのディスカッションを聞いたときに、女性の意見の中で、女性が 決めるべきであるという意見がアンケートでは少ないのです。この問題に関して女性が 決めるべきであるということについて女性の方がむしろ少ないのです。どういうことを 言っているかというと、これはペアで決めるべきものであるという意見の方が日本の国 は多いのです。そのことを受けて、今の現状でこれをすぐ女性に押し付けて、あなたが 決めなさいと言ってしまうのは酷ではないかということを私はディスカッションの中に 書いたのです。それをこの間この中に入っていますけれども、多分そのことを高久部会 長がおっしゃったのだと思います。  ですから、私が言っているのはアンケートの結果を言っている訳です。先生がおっし ゃっているのは将来どうすべきかということを言っている、これは間違いないと思うの ですけれども、現時点ではやはり多くの方たちが、むしろ男性が考えるよりも女性の方 がむしろそれに対してはためらっているというのが現実です。 ○伊藤審議官  トリプルマーカーテストの結果、例えばトリソミーの出現率は国によってかなり違い ますか。 ○松田委員  分かりません。つまり日本の国はデータがないのです。だから問題なのです。 ○伊藤審議官  日本のデータがないということは問題ですね。 ○松田委員  白人は同じだと思います。だと思いますとしか言えませんけれども。 ○伊藤審議官  ですから、結局基礎になるデータをいかにきちっと整備するかですね。 ○松田委員  私はそのことをヒアリングのときに指摘したのです。どうなのですかと聞いたら、 我々はイギリスのデータを基にしていると。日本の国にはないのですかと聞いたら、日 本の国はないと。ある程度は持っていると思います。ただし問題は、陰性だったと言わ れている人の中から何人出てきたというデータが多分ないのだと思うのです。 ○森岡委員  先ほども問題提起をしたのですけれども、母親の自己決定ということについては、私 もかなりそういう考えを尊重することでいいのだろうと思うのですけれども、そうなり ますと、やはり障害児の排除ということになるのです。そうなると、障害者の人たちの 立場ではある意味で自分たちの存在理由がなくなってしまう訳ですね。母親が産むか産 まないかを決める。そしてある場合には障害児を排除するという論理で障害者団体の人 を納得させられるのかということが難しい問題ですね。 ○松田委員  決めるというのは女性ですけれども、産むということも決められる訳ですから。お腹 の赤ちゃんが障害でも産むということも決められるし、アボーションも決められるし、 実際にはアボーションの方が多いと思いますけれども、両方とも決められる訳ですから 必ずしも森岡委員のおっしゃったような方向だけの解釈はあの障害者の人たちはしてい ないと思いますけれども。 ○森岡委員  そうですかね。やはり出生前診断によって障害児を診断することそのものに反対して いるのだと思いますけれども。 ○松田委員  そうかもしれないけれども……。 ○森岡委員  また、障害と言っても何が障害かということも難しい問題です。障害があってもある 程度のことだったら世の中に適応出来てやっていける。それでも、出生前診断によって 排除するという論理が通るのだとすれば、存在していること自身に割り切れなさを感じ てしまうことになると思いますが。 ○木村委員  ただ、私などもいろいろな障害者の方々といろいろなところでコンタクトがある訳で すけれども、アメリカの場合などはっきり言えるのは、今、松田委員言われたように出 生前診断というのは排除するためのものではないのです。その方々を産むことによって 自分はどこの州に行って住んだらそういう人たちを教育するところがあるかとか、居住 の自由も含めていろいろな選択をしているのです。ですから、自分の御家族に一番上の 長女がダウン症児であって、2番目に風疹で中絶を勧められたけれども、これが風疹で生 まれてしまって、3番目がまたダウン症児であるというようなケースで、選択して産んで いる人もやはりいるのです。ですから、特にダウン症児の場合には、知能その他の観点 から見て、銀行のルーティーンワーク、非常に単調な仕事ですけれども小切手などをチ ェックしているような生活をしている人も知っていますし、そういう意味では選択肢が 増えるということであって、排除にだけ使われているのではないということはあるので はないかと思うのです。  私もこの間実は、そのことについて出生前診断にかかわる技術に全面的に反対である という発言を私も森岡委員と同じように障害者の人たちに持ったものですからそういう 発言をしましたら、それは違うという私のところに厚生省を通しまして問い合わせがあ ったということがある訳でして、どうもあのお話を見てみますと、診断技術に対して全 面反対とは私たちは言っていないというふうにこの間言っていたようにお伺いしたので すが。 ○森岡委員  だけれども実際には9割の人が中絶しているのですね。そうすると今の木村委員の理 屈も一理あるのですが、何か少し弱い気がします。 ○高久部会長  ヒアリングのとき、グループによって違っていたと思いますが、出生前診断そのもの に強く反対するグループがいましたね。 ○松田委員  やはりプロライフ(生命尊重・妊娠人工中絶反対主義)といいますか、もともとそう いう人もいる。前にやった調査によりますと、一般の人の中にもいるのです。大体10% の人はプロライフです。つまり、どんな条件があっても出生前診断及びアボーションを すべきではないと。プロライフが大体10%ぐらいで、これは調べてみますとよその国も 大体同じだと思います。ヨーロッパも10%ぐらいいると思います。その方の意見だけが 強く出てくることがあったり、ほかの意見の系列が聞こえなくなったりいろいろあると 思いますけれども、10%の人たちはもともとそういう意見を持っていると。宗教的なバ ックグラウンドとか、いろいろあると思いますけれども、それは否めないと、そのとお りだと思います。 ○山崎委員  今の松田委員のお答えで意外に思ったのですけれども、10%ということは、この数値 も10%ですよね。異常が認められた場合の。 ○松田委員  私の言っている10%は、私のやったサーベイの中の10%の人が、どんな条件があろう とも中絶してはいけないと。 ○山崎委員  例えば、異常があっても中絶しない。 ○松田委員  そうです。 ○山崎委員  調査の結果もそうですね。社会が、そういう障害児を受け入れる設備や準備、心理的 なものも含めて非常に発達した国でも宗教的な影響が非常にある国でも10%ですか。 ○松田委員  大体そんなところでございます。最近読んでいました『トラブド・ヘリックス』とい う本があるのですけれども、その中で出てきたものを聞いても大体十何%ぐらいですね いわゆるプロライフというのは。 ○山崎委員  その出生前診断を認める、認めないというのは、医学的な検査技術のこともあるけれ ども、やはりそういう宗教観とか、社会の受け入れ方、受けられる段階にあるかどうか ということが、判断するときに大きく影響力を持つと思うのです。それが外国でも日本 でも同じだとすると、これはまた考え方を変えなければいけないと私は思ったのです。 ○松田委員  私の読んだ本ではそうだったけれども、それがすべてかどうかは分からないです。実 はちょっとアメリカの人に頼まれて日本の遺伝子サービスのレビューを書いたのですけ れども、その時に調べた範囲では、大体日本の国が10%ぐらいで、そんなにヨーロッパ やほかの国と変わっている訳ではないというふうに私は判断しました。 ○柴田委員  本当に難しいテーマで、障害者団体の話を聞いていても非常に困ってしまうのですけ れども、今話の出た10%の人ですか、出生前診断そのものを否定する考え方の人はその 先のガイドライン設定にはつながっていかないと思うのです。一方、障害者団体の一部 にはインフォームド・コンセントそのものを否定する考え方の人もいます。ただ、この インフォームド・コンセントを否定する人と出生前診断全てを否定するとはイコールで はないという気がするのです。  ですから、インフォームド・コンセントを否定をされる方の意見というのは考慮しな ければいけないと思います。結局インフォームド・コンセントが今のままの形では医師 の側に利用されるだけだという反対論なのだろうと想像すると、むしろガイドラインは 先ほどのお話にありました生むか生まないかを決める決定者はだれかというような問題 よりは、インフォームド・コンセントのインフォームドをどういうふうにするかという そこのところに一番大事な問題が起こってくるのかなという気がしているのです。まだ 私なりにそれをどういうふうに考えるか結論は出していませんが、先ほどの松田委員の お話のように、そういうインフォームの仕方について、例えば別の医師が行うことの必 要性とか、そういうようなところに1つの鍵があるのかなと考えております。  それからまた、障害児の生まれる可能性が1つの確率論である場合の、確率論という ものは、確かに伝え方によって受けとられ方は全く違う訳です。ですから、最終決定に 至るまでの間に情報がどういう形で説明されるのかということが、やはりガイドライン では一番大事なところではないかと思います。松田委員の調査によると、大半の病院で 説明は僅か10分以内というようなことを含めて、やはりインフォームド・コンセントが まだ日本の医療の中に十分に根づいていないというのが現実なのではないでしょうか。 まだ感想の段階で、いま、一生懸命悩んでいるところですけれども、私はそんな印象を 持っています。 ○高久部会長  遺伝カウンセラーを認める認めないは別として、実際にはそういう職業の人は非常に 少ない。特に生殖医療に関しては保険で支払われないという問題があります。そうする と、カウンセラーを雇うことは病院にとってはエキストラのお金がかかるということに なる。検査会社に払う時のマージンをカウンセラーのために使ってくれれば一番良いと 思います。別な目的に使うと困るのですが、ある程度マージンを取って、その差額をカ ウンセリングのお金に使えば、世の中の方に納得していただけるのではないかと思うの ですが、柴田委員がおっしゃるとおりの問題がたくさんあると思います。  松田委員、この報告と関係がないのですけれども、胎児診断を母体血でやるというの が話題になっていますね。あれはどの程度行われていて、どの程度信頼度があるのでし ょうか。 ○松田委員  今から4年ぐらい前に最初の国際ミーティングがワシントンで行われまして、私それに たまたまチャンスがあったので出席したのですけれども、それから今まで見ていまして も、確実性という意味ではまだそこまで進歩していないと思いますけれども、出来るこ とは、お母さんの血液の中にある胎児の、ほんの少ないですよね、抗体を使うとか、い ろいろな方法でもってより分けてきて、それでチェックをするということで、まず染色 体の段階だと思いますけれども、単一の遺伝子疾患に関してはまだ無理だと思います。 ○木村委員  アメリカなどですと非常にプロのマスターディグリー(修士号)を持っているジェネ ティック・カウンセラーが医学部にいるケースが非常に多いのです。実際にいろいろな カウンセリングやっている訳ですが、そういうところで常日ごろ自分の体についての情 報も取って、母体血ではなくて唾液を利用したジェネティック・キットの配布などとい うこともやっていまして、自分で綿でもって唾液といいますか、腔内をちょっとこすっ てそれをキットの中に入れて送るとそこでやるというような、そういうのは日本ではま だコマーシャルベースには行っていないのですか。 ○松田委員  コマーシャルベースで行っています。特に問題なのは、あなたのお子さんが本当かど うかが分かりますなどといういかがわしい表現で週刊誌などをご覧になれば書いていま す。その会社が最初は尿だったのですけれども最近は唾液になりまして、もう1年ぐら いコマーシャルでもってね。だから今、日本の国は非常に怖いのです。というのは、コ マーシャルがどんどん進んでしまって、それに我々がついていけないというのは現状で す。 ○入村委員  松田委員の御指摘なのですけれども、それから先ほどからのシーラムマーカーの件な のですけれども、問題なのは、きちんとしていない方法が大丈夫なように使われている のが問題なのであって、もっといいものであれば、むしろよいのだという考えでいてい いのだろうかというのが、多分ここにいらっしゃる皆さんも余りコンセンサスがないよ うな気がするのです。つまり、シーラムマーカーと言ったときも、これがいいかげんだ からまずいのか、それともそのこと自体がそもそも余りいいことではないということな のか。  松田委員のお立場というのは、今のところはいい加減なものが進んでしまったことが 問題なのであると。私もきちんとしていれば、先ほどの女性の選択権とか何とかと言っ たときに、そういうものを非常に助けるものになるはずのものだと思うのです。ですけ れども、多分先ほども10%の方はそういうことも許しがたいと思うのだと思うのです。 では、ここではどういう立場で物事をまとめればよいのかというのがいまひとつコンセ ンサスに達していないように思うのですけれども。 ○高久部会長  羊水穿刺、特に胎盤の穿刺は非常な侵襲を伴いますし妊婦の負担になります。松田委 員の御報告にあるように、血液を採るのは非常に負担が少ないですから、信頼度のある 方法で、しかもきっちりとその結果がフォローアップされるならば、そういう方法が導 入されるのはやむを得ないのではないか。松田委員が問題にされたのは、信頼度が低い ということと、日本でのデータが非常に少ないということだと思っています。 ○松田委員  お答えしますと、今、高久部会長におっしゃっていただいたように、我々は方法論に 問題があるということをディスカッションしたので、その先の問題は、今、入村委員が 言った基本的な問題は、その人の決定権に任せるより方法がないのです。  つまり、どういうことかというと、まず第一に、十分な情報を与えるということ。そ れはここに書いていますけれども、例えば、ダウン症児の親が聞いてもおかしくないと 思う情報。つまり、ポジティブ、ネガティブという書き方をしていますけれども、伝え る情報が、ダウン症とはこんなに困った病気なのだ、大変な病気なのだというふうに伝 えるか、いやそうではないと。こうやってきちんと大きくなっている人もいるし、何で もない人もいるのだという、そういう偏りのない情報をまず与えるということです。  その次には、こういう安全な方法をやるということ。更に、それが確実性のあるとい うこと。その方法だけを示して、後のチョイス、いいか悪いかどうかというチョイスは その本人一人に任せるというのが我々の立場なのです。だからやっていることがいいか 悪いかということの前に、方法論をしっかりしないとそこまで行けませんでしょう。だ からそこをディスカッションした訳です。 ○寺田委員  そういう意味で、こういう問題は必ず遺伝カウンセラーが必要です。何回もいろいろ な方が言っておられる、インフォームド・コンセントをとるのもお医者さんがするので はなくて、別個のきちっとした職業訓練を受けた遺伝カウンセラーを使わないといけな いと思います。これはどなたも賛成されると思います。  もう一つ、技術的なことに戻ります。4頁で胎児異常と診断を受けて妊娠を続けた方 は27例とあります。この場合偽陰性の数はどれ程あるか。データはありますか。要する に、クオリティー・コントロールはどこかでチェック出来ていますか。 ○松田委員  出来ていません。 ○寺田委員  例えばここで胎児異常の診断数が4ページの表6で248例あったとあります。その内の 27例が妊娠を継続したとあります。27例に関しては全部異常だった訳ですね。逆に正常 と判断して、異常の場合はどれ程出るかは分からない訳ですか。 ○松田委員  此処でお答えできません。そこまで調査していたかどうか。 ○寺田委員  そうすると見逃している可能性があると言うことですか。 ○松田委員  トリプルマーカーに関して言えば、全体的なクォリティー・コントロールということ に関する考え方がしっかりしていないのだと思うのです。やはり方法論的にまだ大きな 問題が残っていると。 ○木村委員  先ほどの松田委員の大体10%が中絶絶対反対であるというお話があって、このことに 関連して一言だけ申し上げますと、10年以上早稲田大学の臨床バイオエシックスとか、 関連の講義をやってきまして、移植是か非か、脳死是か非か、中絶是か非かというよう なグループをつくって討論させますと、日本の若い19〜23歳ぐらいの女性の間に絶対に 産むという方々がまずほとんどいない。ほとんどの場合条件付中絶賛成ということが多 いのです。どんな場合でも女性の決定権によって産む、産まないは女性が決めるという 話ではなくて、やはり何らかの条件を付けて女性が産むことが出来ると。絶対反対とい う人は今までほとんど出てこなくて、日本の若い女性の間にはそういう妊娠中絶につい ては比較的絶対反対が少ないのだなという印象を私は持ってきたので、10%は極めて多 い数で、例えば、カトリックの方々の多いヨーロッパ、ラテンアメリカ系の諸国では10 〜20%で、日本では反対している方々、水子とかいろいろな仏教的な伝統の中で極めて 少ないのではないかというのが私の10年間の教育を踏まえての印象なのです。絶対産む というのは1%ぐらいではないかと思っています。  中絶につきましては、データが我々若い人が中絶するのだろうと思っていますが、実 際上は既婚の女性の中で中絶が多いというデータが幾つも出ております状況があります ので、恐らく10%というのは相当大きい数で日本の状況を認識したのではないかという ふうに思いますが。 ○松田委員  木村委員のおっしゃるとおり、10%は我々が得られたデータから推測した値であって つまり、あなたは産みますかとか、産みませんかとか、そういうふうに言った値から推 測した値であって、確かに多過ぎるとおっしゃって否定は出来ないかもしれません。た だ、文脈から行くと、コンテクストから行くとやはりプロライフだろうというふうに推 定した値で、実際にお前はプロライフかというふうに聞いた訳ではありません。それが 第1点です。  第2点は、医学部の学生にやったことありますが、医学部の学生はやはり4〜5%い ます。絶対に産むと言います。特に女子学生にはいます。自分としては職業として医者 なので、多分養っていけるだろうというコメントを書いている人もいますけれども、だ から、やはりある程度いろいろな生活環境なり何なりが変わっていけば考え方が変わる のだろうと思います。でも、木村委員のお話を聞いて、私も読み過ぎだったのかなとい う気もしますけれども。 ○木村委員  今度逆に言いますと、中絶が割に容易なこととして行われている状況、これは現実に 情報が十分でないために、割に安易なこととして中絶を考える風潮になくはないという こともある一面である訳ですが、そういう点で日本の若い女性の間に条件付中絶が圧倒 的に多いということが議論の中でいつも感じていたことですので、一応コメント申し上 げました。 ○高久部会長  日本の場合とアメリカの場合とで違うのは、実は受精卵の体外診断のディスカッショ ンをしたことがあるのですが、その問題に詳しい女性の方は、そんな面倒くさいこと、 要するに自分の卵子を採り出して受精させて診断するよりは、妊娠して、羊水の検査を して、異常があればおろした方がよほど簡単だと言っていました。アメリカの場合とは 大分違うという印象を持ちました。これは雑談ですが。 ○金城委員  27例が継続したというのですが、その具体例は出ているのですね。私は医学はよく分 からないものですから、これは余りひどい人はいないと思うのですけれども。それほど 異常が出る場合ではない、異常という診断があるけれども、現実に生まれても問題ない よということで継続したということなのでしょうか。 ○松田委員  一番最後の疾患はかなり大変だと思いますけれども、Wernicke~Hoffmann病(小児脊髄 性筋萎縮症)というのはかなりシビアな、必ず死ぬし、そして治療法は全くないし大変 だと思いますけれども、しかしやはり、もしかしたら診断が間違っているのではないか と思って産んだのかもしれませんし、そこまでの調査は行っていないので分かりません けれども、それ以外のものはそれほど問題ないといえば、特に45,Xなどというのは普通 は我々としてもしないというか、ネガティブなインフォメーションよりもポジティブな インフォメーションを出すだろうと思います。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。それでは、残りの時間を使わせていただきまして、 事務局の方から遺伝子治療臨床研究実施計画等についての報告をしていただきます。よ ろしくお願いします。 ○事務局  前回御報告いたしておりましたけれども、この部会の下に設けられています遺伝子治 療に関する専門委員会の方で検討が重ねられておりました案件のうち、東京大学医科学 研究所附属病院において実施が希望されております腎がんに対する遺伝子治療臨床研究 計画についての検討がほぼまとめられております。最終的には寺田委員の方で報告書を まとめる段階になっておりますが、寺田委員の方から出ておりました宿題事項について の回答が出てまいりましたので、次回(7月22日)の当部会においてその御検討をお願い したいということで準備しております。  なお、この部会におきまして遺伝子治療臨床研究に関する審議については、従前の遺 伝子治療臨床研究中央評価会議の伝統を引き継ぎまして、議事を公開で実施いたしたい というふうに考えております。改めて各部会委員の御了解をとった上で議事公開の手続 きに入る予定でございますが、その点御承知いただければありがたいと思っております ○高久部会長  どうもありがとうございました。この点について御意見ございますか。 ○金城委員  お願いなのですけれども、いろいろ資料が当日配布されて、それについていろいろ御 説明があって議論ということになるのですけれども、難しい場合は仕方がないのですけ れども、出来れば事前に配布していただけたらよろしいと思います。 ○事務局  努力したいと思っておりますが、実は本日間際になって資料を駆け込みで提出される というようなケースもございまして、非常に申し訳なく思っている次第でございます。 なるべく事前に送付出来るように努力いたしたいと存じます。 ○高久部会長  いろいろあると思いますが、出来る範囲でよろしくお願いしたいと思います。  あと、事務局の方から今後の予定ということで出欠の確認の資料がありますので、も しお時間があればこの場でお書きくださってお帰りくださればと思います。 ○木村委員  次回は7月13日がなくなって22日がある訳ですね。ここら辺に緊急で間に合わせてや るというようなことが見込みなのでしょうか。部会長としてはここが何をやるのか。あ と8月21日ございますね。私、学会のことで出られないのですが、9月にあるということ なのですけれども、全体的な見通しとして早急に先ほどの非配偶者間体外受精の問題と いうことで御連絡いただける、まだ1か月先のことでございますけれども、ここら辺で 何かやれる予定があるのか。ここのところは何という予定なのか、もし部会長の方で何 かございましたらお教えいただきたいと思います。 ○事務局  7月22日は先ほど申し上げましたように遺伝子治療臨床研究の関係ということで、東京 大学医科学研究所のケースを公開で行うということでございまして、その後8月21日以降 の件でございますが、実は部会長とも再度相談をしなければいけないのですが、入れる べきものといたしまして、お手元にお配りしましてお持ち帰りいただくようにしており ますヒト組織の研究報告が7月3日に専門委員会の方で上がる予定ですから、それを部会 の方で御審議いただかなければいけないのが1つございます。  それから、今日の御議論でありますと、生殖補助医療技術のところにつきまして、小 委員会的なものを設けてはどうかということがございましたものですから、もしそうい うことであれば、それとの絡みで今後の進め方をどのように変えるのか。それから出生 前診断のところにつきましても、何らかのそういったものが要るのではないかという御 意見が出ましたので、全体的なそこのスケジュール調整といいますか、日程の組み方が 変わってくるのではなかろうかというふうに思っております。  とりあえず8月21日以降12月14日まで5回この部会を開けるように一応の日程をセット している訳でございますが、1回あるいは2回は専門委員会から上がってきますヒト組織 のことをやるといたしましても、それ以外の小委員会の設置等を含めて、再度部会長の 指示に従いまして相談をさせていただければというふうに思っております。 ○高久部会長  木村委員から御提案のあった、拡大委員会のような会も開く必要がある。その後、専 門の小委員会ということになる可能性があると思います。拡大委員会を早く開きたいの ですが、場合によっては9月17日にでも拡大委員会を開いて、その場で2つの小委員会を つくることを御議論いただければと思います。そして比較的短期間のうちに小委員会か ら報告書を出していただいて、またここで討論するというふうにしたいと思っています ので、よろしくお願いいたします。 ○木村委員  ヒト組織の専門委員会の方は当部会の方から委員として出させていただいて、大変に 黒川先生の下で精力的に議論を積み重ねてまいりまして、1日4〜5時間というときもあ った訳ですが、私、8月21日がどうしても出られませんので、このときもし御報告という ことであれば大変残念なのですが、ひとつよろしく事務当局の方にお願いしたいと思い ます。 ○高久部会長  私の都合で21日に変えさせていただいて非常に申し訳なく思っています。事務局に相 談してみます。 ○廣井委員  今後の見通しなのですけれども、中間報告を夏とか秋と言っていたのですけれども、 大幅に遅れそうですか。 ○高久部会長  さっき申し上げたように、拡大委員会を開いたり、小委員会の方で議論するとすれば 遅れる可能性があると思います。  今日は時間を30分延長させていただきまして、いろいろ御意見をいただきましてあり がとうございました。次は7月22日によろしくお願いいたします。  これをもちまして、閉会といたします。                                   以上 問い合わせ先 厚生省大臣官房厚生科学課 担 当 須田(康)(内線3804) 電 話 (代表)03-3503-1711 (直通)03-3595-2171