98/06/17 第10回成人病難病対策部会臓器移植専門委員会議事録  第10回公衆衛生審議会成人病難病対策部会 臓器移植専門委員会議事録 平成10年6月17日(水) 13:00〜15:00         場所 全社協第3〜5会議室 出席者  (○:委員長 敬称略)   井形 昭弘   大久保 通方  大島 伸一  大塚 敏文   桐野 高明  ○黒川  清   小柳  仁   座間 幸子  野本 亀久雄  藤村 重文   町野  朔   眞鍋 禮三   森岡 恭彦  矢崎 義雄   山谷 えり子  1.開 会  2.議 題       (1)臓器移植の現状について       (2)臓器提供施設について       (3)その他  3.その他 ○事務局(成瀬補佐)   定刻になりましたので、ただいまより第10回公衆衛生審議会成人病難病対策部会臓 器移植専門委員会を開催させていただきます。  最初に、本日の委員の出欠でございますが、田中委員、谷川委員より欠席とのご連絡 をいただいておりますので、ご報告させていただきます。  では、会議を始める前に、資料の確認をさせていただきたいと思います。  最初に、第10回公衆衛生審議会の議事次第でございます。その次が委員の名簿になっ ております。その次が配置図でございます。次が資料一覧になっております。その後ろ が資料1−1「腎臓移植に関する提供件数と移植件数」。資料1−2「意思表示カード 配付状況」。資料1−3「意思表示カードによる情報」。資料2「臓器の移植に関する 法律の運用に関する指針(ガイドライン)(抜粋)」。資料3「臓器提供施設について の今後の対応方針(案)」でございます。  続きまして、参考資料1「ガイドライン上の4類型に該当する施設一覧」でございま す。参考資料2「厚生科学研究特別研究事業 臓器移植へ向けた医療施設の整備状況に 関する研究報告書(要旨)」。参考資料3−1「カテーテルの挿入図」。参考資料 3−2「脳死判定基準等に関する質問主意書(抄)」でございます。参考資料3−3 「参議院議員竹村泰子君提出脳死判定基準等に関する質問に対する答弁書(抄)」でご ざいます。参考資料4「関西医大腎臓移植訴訟判決に関する各紙記事」でございます。 平成10年5月21日付けの新聞でございます。 参考資料5「厚生科学研究 移植用腎臓保存のための準備措置について 報告書」でご ざいます。続きまして参考資料6「臓器の移植に関する法律」。参考資料7「(旧)角 膜及び腎臓の移植に関する法律」でございます。  何か途中不備等がございましたら事務局へお申しつけいただきたいと思います。 それでは、黒川委員長、よろしくお願いいたします。 ○黒川委員長 それでは、議題に入ります。お忙しいところありがとうございます。前回、先生方にい ろんな問題点を議論していただいたわけですが、それも引き続き議論させていただくと して、現在、臓器移植の現状について、その後の経過について事務局から報告していた だきたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○朝浦室長  それでは、座って説明させていただきます。  前回、この専門委員会を5月19日に開催させていただきました。その後の状況につい て若干ご説明をしたいと思います。資料1−1でございますけれども、腎臓移植に関す る提供件数と移植件数の表でございます。4月、5月の統計が出ております。4月は提 供件数が6件、移植件数が12件。5月が提供件数が5件、移植件数が9件でございます この2カ月間あわせますと提供件数が11件、移植件数が21件ということになっておりま す。昨年はこの時期、提供件数が13件、移植件数が24件ということで、昨年と比べます と若干数が少ないという状況でございます。  次のページ、意思表示カードの配付状況でございます。5月31日現在の厚生省あるい は臓器移植ネットワークを通じて配付をしたドナーカードの配付状況でございます。あ わせて937万4,400枚でございます。これ以外に地方公共団体あるいは関係団体のほうか らもドナーカードを配付していただいていると聞いておりまして、実際これよりも多く 配付されていると考えております。  ドナーカードに関しましては、前回、国民健康保険の被保険者証の切りかえのときに あわせてドナーカードを配付をしていただくように、国民健康保険担当部局にお願いを しているというご報告をさせていただいたわけですけれども、ドナーカードの配付につ きまして全国約2,500の市町村から要望がございまして、あわせて約900万枚のドナー カードの配付をお願いしたということでございます。現在、今後7月以降切りかえを行 う市町村に対して、必ずドナーカード、パンフレットが行き渡るように事務的に作業い たしまして、要望のあった市町村に対して配付をする予定でございます。  ドナーカードに関しましては、先日、厚生省で厚生白書が閣議で了解をされて、今週 初めぐらいから市販をされているわけですけれども、厚生白書の担当部局にお願いして ドナーカードも厚生白書の中に挟んでいただくということをしております。聞くところ によりますと、初版では約5万部販売されると聞いております。  次のページでございます。意思表示カードによる情報ということで、前回、同じよう な資料を提出させていただきました。日本臓器移植ネットワークに報告のあったケース を一覧にしたものでございます。意思表示カードをお持ちで亡くなった方の連絡が全部 で15件あったということでございます。これを経時的に見てまいりますと、11月が1件 12月が1件、1月が1件、2月が1件。11月から2月までは1件ずつであったわけです けれども、3月に3件、4月に3件、5月に4件。少しずつ増えているとも考えられる のではないかと思っています。  簡単ですけれども、以上でございます。 ○黒川委員長  どうもありがとうございました。資料1−1を見ていただけますように、いまのよう な状況で移植の提供の数がいまのところは腎臓にしてもかなり低調である。情報が少な いということもあると思いますが、実際過去3年に比べても低い。特に平成5年度の5 月は例の脳死の法案が通ったばかりでしたので、実際に3。去年を見ても奇数の月は3 3というふうに5月、7月は非常に少ないです。後半は盛り返して平成7年度、8年度 は同じぐらいとなっています。  にもかかわらず今年は非常に少ない。意思表示カードの配付状況はこのようになって 当局もネットワークも苦労しています。それなりに頑張っていただいているわけで、実 際に資料1−3を見ていただくと、確かにこのような意思表示カードを持っている方に ついての情報が出たうちで、このぐらいの方が持っておられるということから言うと、 この間もだいぶ議論していただいたわけですが、配付の状況からいうと実際にはかなり 出るなという感じでしょうか。 そういうのが現在だということであります。  これについて何かご質問、ご意見ございますでしょうか。  情報の件数、移植件数が今年は低調だということで、座間コーディネーターのほうか らありますか。 ○座間委員  数字のとおりで。 ○黒川委員長  特に情報そのものが少ないという感じですか。 ○座間委員  そんなには感じません。 ○黒川委員長  実際に成立しにくいようなケースがたくさんあるということですね。 ○座間委員  そうですね。 ○黒川委員長  そのほかどうでしょうか。何かありましたら、またお話を伺うことにいたしまして、 情報が出たときに意思表示カードを持っている方というのは、いま事務局が言われたよ うに1月、2月、3月、4月、5月と比較的多いという感じがしますか、現場におられ て。 ○座間委員  この表にありますように、ご家族からのご連絡が多いように感じます。結局、おうち に戻られてからという形での連絡ですので、原疾患そのものに既に提供の適用がないと いう状況ではありますけれども、もう少しご家族がカードを持っていらっしゃることを 早い時期に医療施設のほうで提示していただくということが必要になってくるのではな いかと思います。 ○黒川委員長  実際は、医療機関に行かれて、亡くなってから家族から連絡があるということなんで すか。実は持っていたんですけど、ということですか。 ○座間委員  はい。 ○黒川委員長  確かに4月、5月のうちはずっと家族からの情報が出ているというのが不思議と言え ば不思議な感じがしますね。 ○藤村委員  文字の間違いですけれども、資料1−3で12番の原発性肺梗塞は原発性肺高血圧症の 誤りだと思いますが、どうでしょうか。 ○黒川委員長  それはどうでしょうか。家族からそう言われているわけだから……。しかし15歳。 ○藤村委員  そういう方はいると思います。こういう疾患はあまりないですね。肺高血圧症だと思 いますが。 ○黒川委員長  そうですね。 ○藤村委員  これは後々まで残る書類でしょうから。 ○黒川委員長  括弧して肺移植希望者というわけだから、肺移植の適用になるような原疾患がある人 ですよね。先生がおっしゃるとおりかもしれません。  それはどうしましょう。チェックしていただけますか。  さて、それでは今日の議題の2に進みたいと思いますが、これについても何かご意見 サジェスチョンがありましたらぜひお願いいたします。議題2の臓器の提供施設でござ いますが、最初に先生方のご意見を伺いまして、ガイドライン上では最初の数例の脳死 体からの臓器移植をいただく施設としては、大学附属病院の本院と日本救急医学会の指 定医施設に限定するとさせていただいたわけで全部で90何施設ということですが、もち ろんそれぞれの施設が全ての準備状況が整っているとは限らないわけで、8割方が対応 できるというご回答をいただいているわけであります。 これについて、事務局から資料に従って説明していただきたいと思います。 ○朝浦室長  臓器提供施設の問題につきましては、前回この委員会において精力的なご議論をいた だいたところであります。その議論を踏まえて、その後事務局として関係医学会の先生 方にもご意見を伺いながら、事務局としての案をこの場に提出させていただいておりま すので、その案に沿いましてご説明をさせていただきたいと思います。  資料3でございます。臓器提供施設についての今後の対応方針(案)でございます。 先ほど現状のところでご説明をいたしましたが、臓器移植法施行後、死亡された方で臓 器提供意思表示カードを所持している方の事例が十数例報告されているということに鑑 みまして、法の基本理念である本人の意思の尊重という観点から、現在ガイドラインに おいて最初の数例の脳死した者の身体からの臓器提供について、大学病院の本院と日本 救急医学会の指導医施設に限定しているという取り扱いを変えまして、最初の数例の限 定を外すということで今後進めさせていただきたいと思っております。  具体的に申しますと、資料2に戻っていただきますと、これが現在のガイドラインの 書きぶりでございます。第3で、臓器提供施設に関する事項というところがございまし て、1番で当該施設全体について臓器摘出を行うことに関して合意が得られている、施 設内の倫理委員会等の委員会で承認が得られているというのが1つの条件。  2つ目が、適正な脳死判定を行う体制がある。  3番目の条件として、救急医学等の関連分野において高度の医療を行う次のいずれか の施設であること。既に4類型が定められているわけでございます。このうち大学病院 の本院と日本救急医学会の指導医指定施設について、最初の数例をこの2つの施設に限 るということを3のところで書いているわけでございます。  4で、最初の数例に関する判断については、厚生省において臓器移植ネットワーク、 関係学会と協議のうえ別途示すものとするといった書きぶりになっております。  今回、事務局の考え方として提示いたしましたのは、3のただし書き以降の2行を削 除するということと、4を削除するということでございます。したがいまして、最終的 には資料3に戻りますけれども、四角で囲んだ書きぶりになると考えております。  この結果、実質的にどうなるかをご説明いたしますと、大学病院につきましては、本 院だけではなくて分院まで含まれてくるということでございます。日本脳神経外科学会 の専門医訓練施設のA項、救急救命センターとして認定された施設にまで拡大されると いうことになります。  具体的に施設の一覧を次の参考資料の1でお付けしております。拡大いたしますそれ ぞれの類型の数は参考資料1の5ページ、脳神経外科のA項は283施設、救命救急セン ターが141施設になります。大学病院の分院につきましては、この表に個別に載せており ません。と申しますのは、大学病院の分院は、かなり本院に近い大規模な病院もありま すし、クリニック的な小さな診療所的なところもございますので、ここに全てを載せま すと誤解を招くということもございます。  したがいまして、大学病院の分院につきましては、本院と医療レベルなり医療内容に 遜色のないようなところを念頭において拡大をするというふうに理解をしております。  次の対応方針に戻っていただきますけれども、2の臓器提供施設の公表でございます 臓器提供施設につきましては、拡大をしたからといってそれが全て臓器提供施設になる わけではございません。ガイドラインで書いてありますように、施設全体の承認ですと か脳死判定の体制が揃っていないとできないし、あるいは、施設全体の意思決定がない となれませんので、その場合に、厚生省において臓器提供体制の整備状況について定期 的に把握をいたしまして、体制が整っている施設につきましては施設の同意を得て定期 的に施設名を厚生省から公表させていただくということで対応したいと思っております  3番目の見直しの時期でありますが、本委員会においてのご意見を踏まえまして、で きるだけ早い時期に、今月中ぐらいには臓器提供施設の見直しに関する局長通知を発出 して、通知日から施行するということで進めさせていただきたいと思います。  以上でございます。 ○黒川委員長  どうもありがとうございました。  これはこの間だいぶ議論していただいたわけですが、現在ガイドラインにある4つの カテゴリーの病院のうち、最初の数例に関しては最初の2つ、大学附属病院の本院と日 本救急医学会の指導医指定施設90いくつのうちの、上の要件を満たしているところでや らせていただくということを最初に決めさせていただいたわけであります。  しかし、10月16日の施行以後まだ1例もそれに近いケースも出ていないということで ありますし、もうひとつは、一方でドナーカードの配付の状況がかなり進んできている らしいというのが自治体として見えてきたということになります。  そこで、この間議論していただいたところは、この間、大塚先生を委員長としました 医療施設の整備状況に関する検討がされておりまして(参考資料2)、4つのカテゴ リーの病院の最初の上の2つと下の2つの整備状況がどうかというと、個々の施設によ って違うとは思いますが、両方の間に医療内容の相違は認められないということ。要件 を満たしていれば、どちらも違いがないだろうという調査研究の結果が出されておりま す。  もうひとつは、この間も議論されたと思いますが、ドナーカードの配付が広まってく るということと、いまの上の2つだけですと、そのうちの80%ですから70から80施設が いまの条件でできるといっているわけですけれども、1つの府県に結構大きな大学病院 がいくつか集まっているわけですし、東京だけで13となりますと、患者さんがある地域 に住んでおられて何かあったときに運ばれる先がその県に1つしかないというところも あるわけで、そんなところまでリアリスティックに行けるはずがないわけなので、むし ろ善意の方が増えれば増えるほど実際の地域的な理由からまったくそんなところには行 けないという体制ではまずいのではないかというご意見もあったわけであります。  そういうことを踏まえると、準備状況があればこの上の4つのカテゴリーにお願いし てもいいのではないかという見解はいかがなものかというのがこの趣旨だと思います。 これについて皆さんにご意見を伺ってみたいと思いますが、はじめに大塚先生のほうか ら、いかがでしょうか。 ○大塚委員  今委員長からお話がございましたように、この4つのカテゴリーはもともとこの4つ の施設からとっていいんですよということを言っておったわけでございまして、ただ、 最初の数例については2つのカテゴリーの中からということであったわけです。ですか ら、最初の数例のところだけが外されたというわけでございますので、本質的には提供 病院としては変わっていないわけです。  広がったといっても、最初の数例のところが広がっただけであって、いままでこの4 つのカテゴリーのみを認めましょうということは変わっていないわけです。私としては そういうことであるならばこれはいいと思うんですけれども、まだ1例も出ていない段 階で最初の数例もとってしまうのはいかがなものかという感じもしないでもありません けれども、私どもの行いました調査の結果でも、それぞれの施設が上の1、2、3を満 足していれば当然のことながら摘出施設として手を挙げていただいてよろしいのではな いかと思っております。 ○黒川委員長  ありがとうございました。そういうことからいうと、実際内容は違わないという研究 成果も出ていますが。  では、桐野委員、お願いします。 ○桐野委員  脳外科学会の意見を代表する立場にないのですが、北海道大学の阿部教授が会長で山 梨医科大学の貫井教授が脳死検討委員会の委員長ですのでお2人の意見を聞いてまいり ました。  もとより脳外科学会としては前向きに協力申し上げる方向でやるということについて はコンセンサスはできているとは思いますが、いま大塚先生がおっしゃったように脳神 経外科A項施設というものは既に記載がされていることであって、新たにA項指定の問 題が出てきたことではないということ。ドナーカードが普及してきて、本人意思の尊重 ということも言われている現状から考えて、脳外科学会としては賛成であるということ でありました。  ただし、実際に提供施設になるのは今度が初めての施設がかなりの数に上るので、厚 生省サイドからのご支援あるいはご指導をぜひお願いしたいということと、社会のサ ポートもぜひお願いしたいというのが会長及び脳死検討会委員長のご意見でした。  個人的なことを2つほど申し上げさせていただきますと、1つは、この際、臓器を移 植することのできる施設でありながら臓器は提供できないということがこれまでありま したので、今度の改正でそれも含まれるということになったので、その意味でも整合性 がついてよろしいのではないかと思います。  もうひとつは、提供施設のリストを見ていただきますと、A項単独というところもか なりの数になってまいります。A項病院というのはもう既にご存じかもしれませんが、 1997年度で大学病院が80、その他のA項病院が203、合計283病院あります。その中には 必ずしも救急医学を中心的にやっていない脳神経外科もございます。また、悪性腫瘍の 中で脳腫瘍の患者だけが多臓器の移植を認められているという事情を考えますと、第3 臓器提供施設に関する事項の3項、救急医学等の関連分野においてということで救急医 学等ではくくれない問題がありますので、そこには文言のご配慮をぜひお願いしたいと 思います。 ○黒川委員長  それについて事務局はいいですか。その対応はできますか。 ○朝浦室長  これから具体的な作業になるかと思いますので、ご相談をさせていただきます。 ○黒川委員長  確かに、最初の数例が出るまでは上の2つというのはかなり強いアーギュメントが一 時あったわけですが、実際に出ていないから広げるというわけではなくて、もともとこ の4つでいいと言っていたという話が1つ。  実際出なかったというのは、ドナーカードが普及するにつれて患者さんに万一のアク シデントが起きたときに、そういう病院にたどり着くのは至難の業ですし、そんなこと を配慮しながら救急をやっているわけではありませんから、むしろ善意の方がそういう ところにいくリアリスティックな可能性を増やしてあげたほうがいいのではないか。も との4つでいいのではないかという意見がこの間の背景にあるわけですが、その点では 移植学会の理事長としてこの立ち上がりのときから孤軍奮闘されていた全国行脚をされ ました野本先生のほうから、そのへんの感じはいかがでしょうか。 ○野本委員  いつもいろんな地域にお願いに行くときに、移植施設がない、これは別途の医療体制 で始めようというので限定されているというのは一般市民の方も割合納得してくれます ただ、意思表示カードを持ってくださいと語りかけたときに、うちの県だったらどこに 行くんですかと、大学病院が名乗りを上げていますけれどもお宅の県の病院は上げてい ませんねということになりますと、極めて私が恥ずかしい思いをして帰るようなリアク ションを一般市民から受けて動いています。  そういう意味で窓口が広がる、市民にとっては何らかの具体的接点がないと動こうと いう気持ちは起きないことですので、今回のこれは、そういう意味で市民に参画しても らう最大のチャンスになろうかと考えております。 ○黒川委員長  ほかに委員の先生方からご意見がございますか。 ○井形委員  このリストを拝見しまして、1つはミスプリで、326の宮崎県と書いてあるのは長崎県 のミスプリであります。  いわゆる施設として認定していく場合に、リストの中に脳神経外科と書いた施設が5 つぐらい列挙されていますが、こういう公的なことでありますから、できたら施設全体 の組織の長が納得して社会的責務を果たすということが望ましいので、各科単位の認定 でないほうがよろしいと思いますが、いかがでしょうか。 ○重藤補佐  提供施設に関する今後の対応方針案のところをご覧いただきたいと思いますけれども 波線の中の第3の1のところで「当該施設全体について、脳死した者の身体からの臓器 摘出を行うことに関して合意が得られていること」という条件が入ってございます。当 然そうした条件を、その施設としての倫理委員会とか、それに該当するような各担当部 長会議とかそういうところで施設として協力するという意思決定をしたうえでこういう 施設で臓器移植に協力いただくと いうことでございます。 この施設一覧は、そうした体制が整えば協力いただけるもの としてお願いをするリストでございまして、この施設のうちどこがやっていただけると いうのが今後この施設の中で施設として体制を整えていただいたところをお願いをする ということになります。  その施設のことについては、対応方針案の2のところの臓器提供施設の公表というと ころで、体制ができたかどうかというものを定期的に私たちのほうで把握させていただ いて、そうしたものを国民にわかりやすく情報提供していけたらという提案でございま す。 ○桐野委員  いまの脳神経外科の問題ですが、A項施設というのは全て脳神経外科をつけた……。 例えば、1番は旭川医科大学脳神経外科、2番は北大病院脳神経外科で、そこの施設長 が指導の責任者であるという形式をとっております。ですから、このリストは単に脳神 経外科を写されたというだけであって、脳神経外科は削除するべきだと思います。 ○黒川委員長  あくまでもこれらの施設が全部できるというわけではなくて、合意があって必要な体 制が確保されていて、倫理委員会等で承認されていて、しかも適正な脳死判定を行う体 制があるというところに限ってアプルーブするということで、それがなくなればまた承 認取り消しということになるわけで、あくまでも協力をいただけるかどうかということ と、その体制ができているかということが前提条件であるということでございます。 その他にいかがでしょうか。森岡委員、いかがでしょうか。 ○森岡委員  特に意見はありませんけれども、あまり細かいことを決めるとドナーはなかなか得ら れないと思いますので、このへんでよろしいのではないでしょうか。 ○黒川委員長  その他の委員の先生はどうでしょうか。町野委員。 ○町野委員  結構です。 ○黒川委員長  どうですか。座間委員はどうですか。 ○座間委員  結構です。 ○黒川委員長  あまり反対はない……。 ○野本委員  皆さんお認めいただいたような状況なので、対応のお話を少ししておきます。  政府が直接動くというよりも我々学会が行動すべきことだと思います。前回6つの学 会のリーダーの方々とお話をして相互乗り入れをして、どういう手順で臓器提供の仕組 みをつくるかきちっとやっていこうというお話をしました。これに関しては、大塚先生 が理事長をされている救急医学会はこれで終わっていいのですが、他の学会に関しては もう一度改めて参上してお話をするつもりです。  といいますのは、あの時点ではリーダーの方々は、野本の言っていることはわかるけ れども、しかし我々の学会は受け入れられていないのだから準備ができないと。技術的 準備はできているけれどもシステムとしての準備は認知されてからじゃないと動けない というのが多くの声でしたので、これで認知されるということになりますと改めてシス テムとしての準備をお願いしたいというのが、学会レベル、さらに地域社会レベルでお 願いをして回らなければいけないと考えております。 ○黒川委員長  ありがとうございます。 ○矢崎委員  この案にはまったく賛成です。前回も申し上げたかと思いますが、今日の報告をお聞 きしましても、脳死の情報が家族から来て必ずしも救急施設から情報が来たわけではな いということで、非常に熱心なところの腎臓の提供施設からの献腎の数が多いのです。 愛知県とか大島先生のいらっしゃるところの範囲とか、何か熱心な先生がいらっしゃる ところから出てくるので、もちろん施設の拡大は大賛成ですけれども、各施設の方に中 心となって活動していただけるような人をオルグして、その施設にお願いできるような 仕組みをつくるのがもうひとつの手ではないかと思います。見ていますと、情報の提供 の前途が厳しいのではないかという感じがしたのでよろしくお願いいたします。 ○藤村委員  この案には私もまったく賛成でございます。先ほどお話に出たように、理想的には学 会が中心になって働きかけることが大変理想的なことでございます。ただ、私ども地方 にいてリストアップされた病院を眺めてみますと、厚生省レベルとか先ほどお話に出た ような社会的な何らかのサポートがどうしても必要だと思います。積極的な国のサポー トが必要であるということです。 例えば、どなたかが実際に行かれてお話を聞いて、今後こうしたらいいということも お話ししていただける機会はございますでしょうか。 ○黒川委員長  事務局は何がお返事しますか。 ○朝浦室長  こういう形で施設の拡大が図られましても、実際に動かなければ絵に描いた餅という ことになりますので、厚生省としても臓器ネットワーク等普及啓発活動を担っている団 体、あるいは都道府県とも十分協力いたしまして施設と密接な連携をとりながら作業を 進めていきたいと考えております。 ○黒川委員長  確かに行政とネットワークの立場からいうと、第1段階はドナーカードの普及が一番 大事だったのではないかと思います。限られたマンパワーと予算でだいぶ苦労したわけ ですが、いまはだいたい900万枚で、実際にそれが持たれているか別にして、そのへんの 臓器移植のキャンペーンが大事だという話と、こういう病院の整理についてさらにやら なければいけないということはあります。  山谷委員、何かございますか。 ○山谷委員  いたずらに広げるということではなくて、きちんと調査なさって質的な確保が万全で あるということなら結構だと思います。 ○黒川委員長  その他の委員の先生、どうぞ。特にご指名はしませんが。  では、先生方のご意見とすると、臓器提供施設についての今後の対応策については、 最初の数例の限定を外して、体制が整っている施設という条件のもとでその施設に協力 していただくということで施設名を公表するということで、資料3に書いてある案でよ ろしいでしょうか。 (会場 全員同意) ○黒川委員長 それでは、そのようにお願いして、あとは行政的な対応の整合性だけきちんとしてい ただければと思います。 ○小林局長  大変適切なご意見をいただきましてありがとうございました。  先ほど室長が申し上げましたように、何とかできれば6月中にでも局長通知を出した いと思います。県内の施設がわかっていますので、その中には各都道府県知事に対して それらの施設の説明もつけて具体的な指導をこちらからさせていただこうと思います。  もちろん野本先生がおっしゃいましたように、学会は学会のベースで、また各救急医 学会等々ありますので、そちらはそちらで学問の世界でまたお願いをしたいと思います どうもありがとうございました。 ○黒川委員長  それでは、移植学会、それぞれの関連のある学会でいろいろお話をされまして、ぜひ 体制にご協力をお願いするというふうに進めていければ、先ほど矢崎委員がおっしゃっ たように確かに最初の情報が出るという医療の現場の対応、メンタリティーが非常に大 事ですが、前々から大塚先生もおっしゃっていますように、救急の現場は患者さんの救 命が一番ですからそこを一番にするのは当然でありまして、ですけれども、移植という ことも実際に日本ではあるという話がどこまで現場に浸透しているかということが非常 に大事だと思います。  そういうところでは確かに情報が数多く特定のところから出てくるというのは、そう いうメンタリティーが多分あるわけで、ネットワークをやっていますとそういうのが来 るのですけれども、少なくともコーディネーターが最初の対応ができるということは非 常にありがたいと思っております。 それでは、そのようによろしくお願いしたいと思 います。  それでは次の議題に入りたいと思いますが、その次の議題につきまして事務局から説 明をお願いします。 ○朝浦室長  それでは、次の議題に移らせていただきます。  5月19日の専門委員会が終わったあと5月20日に、心停止後の腎臓移植におけるカ テーテルの挿入に関しまして、大阪地裁のほうから判決が出まして、それについてかな り新聞報道でもいろんな議論が出てきているわけでございます。  参考資料4に各紙の新聞の切り抜きを付けてございます。経緯につきましては先生方 は十分ご承知のことだろうと思いますので、簡単にご説明をしたいと思います。  平成5年11月に関西医科大学におきまして、心停止後の方に対して角膜及び腎臓の移 植に関する法律に基づいて、移植に関する遺族の承諾をとって腎臓移植が行われたケー スでございます。これにつきましては争点はいくつかあるわけですけれども、特に心停 止前のカテーテルの挿入の違法性についての議論が論点になっているところでございま す。 本件におきまして地裁の判決によりますと、心停止前のカテーテル挿入につきまして は、当該患者に対する治療行為ではなく臓器移植のためにする行為であるため、本人の 確定的な承諾が必要である。これがなかった本件は違法であるということで、20万円の 民事の損害賠償の請求を認めたということでございまして、関西医大のほうが控訴をし なかったということで確定判決に至ったわけでございます。  これに関しましては、平成9年6月に厚生省で、この件に関してではなく一般的な質 問に対する答弁という形で政府見解を出しております。それが参考資料3−2と3−3 でございます。参議院議員の竹村泰子先生が提出された脳死判定基準等に関する質問に 関する答弁書でございます。資料3−3の冒頭に書いておりますので読み上げさせてい ただきます。  「腎臓移植を行う場合、心停止により血流が途絶すると腎臓の細胞の壊死が急速に進 行して、移植後の生着率に大きく影響することから、腎臓提供者の心臓死後できるだけ 速やかに灌流液を流すため、脳死と判定された後にカテーテルを挿入する措置を行うこ とは医療現場において一般に行われていると承知している。この処置は、カテーテルの 挿入自体は検査等を目的として一般の患者に対しても行われているように患者の身体へ の侵襲性が極めて軽微であり、腎臓移植を医学的に適正に実施する上で必要と認められ る処置であると考えているが、この処置を脳死と判定される前に行うことは不適切であ ると考えている」ということでございます。  政府見解としては、現時点におきましてもこの方針と変わらないと考えております。 この件につきまして移植法学会等から見解が出ておりますので、ぜひこの場においてご 議論賜れればということで議題として提案させていただいている次第でございます。よ ろしくお願いいたします。 ○黒川委員長  ありがとうございました。これについて先生方のご意見、ご理解のある範囲でのご説 明あるはコメントをいただければありがたいと思いますが、いかがでしょうか。  ここにいろいろ資料がありますが、実際民事でこうことが起こるのは何なのかわから ないところがありますが、町野先生どうでしょう。こういうプロシージャーが実際に行 われていると。いわゆる脳死での臓器提供ではない臨床的な脳死判定でもいいわけです が、心臓死からの腎臓の摘出は前どおりに行われる可能性があるわけで、この場合は従 来どおり、例えば意思表示カードがある、あるいは家族の承諾があるという場合には心 臓死を待って腎臓の提供をしていただけることもあるわけでございますが、そういうこ とも含めて町野委員のほうから。 ○町野委員  お手元にあります参考資料5に、前に研究いたしました結果が書いてございます。こ の時点では、角・腎法の時代の解釈の結論として、角・腎法による腎臓移植のための準 備的措置としてこれが認められるというのは、この法律の解釈から言えるだろうという ことだったわけです。もちろん問題はありまして、もし心臓死説をとるならば生体に対 して治療のためということではなくてメスを入れるわけですから、これが許されるかど うかというのは確かにいろんな議論があって、この大阪地裁のような判決もあり得るだ ろうと僕は一応考えております。  しかし、現在では臓器移植法ができて、そこでは脳死が完全に人の死とされたかどう かいろんな議論の余地はありますけれども、少なくとも脳死というものが認知されたと いう段階に到達しているわけで、大阪地方裁判所のように「生体に対する」とはっきり と判決の中で言っているわけですけれども、現在ではその理屈はそのまま妥当するもの ではないと言えるだろうと思います。  つまり、前にも生体の段階だとしてもこの程度のものが許されると考えるならば、ま してや現在の状態で脳死が人の死であるとするならば、ますますこれは許されると考え るのが理の当然ではないかと思います。  したがって、私などの解釈では、大阪地裁の判決が妥当かどうかということはさて置 くといたしまして、現在の法状態においては大阪地裁の考え方がそのまま妥当するもの ではないと私は理解しております。 ○黒川委員長  みんなすんなりご理解できたのかな……。 ○大島委員  移植学会の理事長が見えるので私が本来話すことではないと思いますが、移植学会の 見解をある部分中心になってまとめさせていただいた1人なものですから、移植学会側 からの経緯だけを少しお話ししておきたいと思います。  資料を持ってきたのですが、配らせていただいてよろしいでしょうか。 ○黒川委員長  どうぞ。 ○大島委員  いま室長からお話がありましたように、5月20日に判決が出まして5月21日の新聞報 道で、生前の本人の承諾のないカテーテル挿入は違法であるということが非常に大きな 見出しで日本中を駆けめぐったわけです。私ども法律の専門家ではありませんので、判 決文を読ませていただいて非常に難しい表現がありました。その表現をどう解釈してい いのか非常にわかりづらい。はっきり言ってある意味でどうともとれるのかなというふ うに思ったりしたのですけれども、しかし、本人承諾のないカテーテル挿入は違法であ るということが解釈の以前に出てしまっておりまして、現場で非常に大きな混乱が予測 されましたし、事実その後コーディネーターレベルではもうこれでだめだということが 広がりまして、いったいどうしたらいいんだという話に具体的になりました。  個別には法律家の先生に、その表現をどう理解していいのかというお話を伺ったので すが、法律家の先生方の解釈もなかなか難しいようでして、この判決文では家族の承諾 でOKとはとても言えないだろうと、そうとるのは無理であろうというのが私たちが理 解した大方の考え方でありました。  その考え方に立つと、いままで行ってきたことはいったい何だったのかということに なりまして、関西医大の懸案については5つの争点があったわけですけれども、他の4 つの争点については私どもが関与することではございませんので、心停止前のカテーテ ル挿入の1点のみに的を絞りまして、これについて移植学会としてどう考えるのかとい うことを5月22日の理事会で検討いたしました。結論を申しますと、全員一致で承服で きないということを決めました。  その理事会のすぐ後に記者会見を行いまして、移植学会としてはあの判決に関して承 服できないということを発表させていただきまして、後に文書でそれを考慮するという ことをその場で表明いたしました。そして5月28日に、きょうお手元にお渡ししました 日本移植学会の見解をまとめて公表させていただきました。  私たちがこういった行動に移った理由というのは、死体腎移植を行う場合に脳死下で 腎臓を摘出すればもちろん腎臓の機能は十分に確保されることが保証されるわけですけ れども、日本の場合にそれができないということで、何とか提供された臓器がよりよい 状況で移植される人の体内に入るためにどうするかということを随分古くから検討し研 究してきた結果、こういったやり方が何とか移植される腎臓の機能を保つために有効な 方法であるということを証明して、実際に医療の現場でも使われる状況にまでしてきた わけであります。  そして、これがいま世界的には日本流のやり方として承認されているというかアクセ プトされているような状況になっておりまして、これが医療の現場でもこの10年以上の 間、亡くなられた方から腎臓を摘出するスタンダードなあり方として認知され、国で認 知されたという理解になるのかどうかわかりませんけれども、いままでいろんな場面が ありましてそういったところの議論を踏まえて、いいんだという理解で私どもこれを行 ってきたわけでございます。  そして、ネットワークの具体的なガイドラインの中にもスタンダードの方法として記 されておりますし、そういったやり方でずっと10年来行ってきておりますし、いまも行 っているという状況にあります。  先ほど町野先生からもご説明になられましたけれども、厚生省の科学研究班でもこの 問題は十分に議論されていまして、その点でも私どもはある一定の条件下ではいいんだ と、クリアされているという理解をしてまいりました。もしこれが違法であるというこ とで認められないということになりますと、日本の腎臓移植医療は非常に大きな打撃を 受けることは間違いないという判断でありまして、かも解釈の仕方によっては、治療行 為というものを拡大して解釈いたしますと、他にも臓器を摘出するための一連の行為が あるわけですけれども、それらについての吟味も言いだすとどこまでこれが広がるかわ からない。したがってHLA検査のためのの採血だとか、感染症の検査をするための採 血の問題だとか、あるいはヘパリンを注入するといったような行為全てが問題になると いうことになり、しかもそれが違法であるという結論が出ますと、これは事実上移植医 療そのものが壊滅だという危機感を持ったわけであります。  そして、きょうお手元に配りましたような声明文を出させていただいたという経緯で あります。以上です。 ○黒川委員長  どうもありがとうございました。  確かになかなか理解しにくいところもあるわけですが、この裁判の関西医大のケース の判決の文書は何回読んでもよくわからないというところがあるかどうか知らないけれ ども、先生なんかが読むとみんな同じ解釈をするんですか。医療訴訟の主文は何回読ん でもまずわからないと思うんですけれども。 ○町野委員  要するに判決のポイントですね。何が理由かということで。大島先生たちが言われま すのは、絶対ダメということなのか、それとも家族の明示的なインフォームドコンセン トがあれば許されるけれども、本件ではそれがなかったから許されなかったという趣旨 なのか、それがはっきりしないということだと思うんですけれども、少なくとも我々法 律のほうの人から見ますと、あの判決の書き方ですと絶対ダメという趣旨に読まざるを 得ないわけです。それがまさに問題であっただろうと思います。 この報告書の中にありますとおり、とにかくカテーテル挿入等の措置については明示 的に別個に家族の承諾が必要だということは要件としてすべきだろうと言ったのですが その点だけをとらえて、それが満たされていないからということを言えばまだ救いはあ ったわけですけれども、逆転しているんですね。前段のほうで、およそ生体に対して治 療でないような侵襲というのは、本人の明示的な承諾が必要だからダメだと言っておい て、次に、仮に家族の承諾があれば違法性が阻却されるとしても、この場合承諾がなか ったからダメだという論理ですから、むしろポイントは前のほうにあると見ざるを得な いわけです。 ○黒川委員長  何かご意見どうぞ。  この脳死ではない前の角・腎法による腎臓の場合には、もちろん突発的な事故がいろ いろ起こってドナーになってくださる方がおられるわけで遺族の承諾ということですか ら、生前にそんな意思を出しているとはとても思えない状況がほとんどですから、家族 が承認されたときに全てのプロシージャーが救命や何かのことを全部やったとして、臨 床的な脳死になってきて心臓死になったらそういうことが起こるのかなという話から始 まって、承諾を得たら実際にはカテーテルを入れておかないと、実際の臓器をいただい ても役に立たないことが多いという話があるわけで、遺族は納得されていると思うんで すが、実際個々のケースがどうだったかというのはもちろんわかりません。 町野先生のおっしゃるとおりになると、そういう方式も難しいなということになるの かな。町野先生の研究班の答えとは違うということになるんですかね。 ○町野委員  旧角・腎法の解釈の問題としては、これは否定されたということだと思います。しか し、現在は違う解釈が可能であると。先ほど言いましたとおり、大阪地裁の考え方とい うのは、旧角・腎法のもとのあれですから脳死判定後もそれは生きている体だという前 提に立った上での議論なわけです。  現在では、脳死判定後は生きているとは言えないという考え方だろうと私は思います から、先ほどの理屈は妥当しないで、死体に対して摘出のための準備措置として死体に 対して侵襲を加えたということになるわけですから、考え方はだいぶ違ってくるだろう と思います。 ○黒川委員長  あれは脳死臓器の提供の生前の意思があって、いま言われている脳死の判定に従って という例の意思表示カードがある場合に限りということですね。 ○町野委員  いえ。 ○黒川委員長  なくてもいいんですか。 ○町野委員  と思いますけれども。 ○大久保委員  脳死というのは、今回の法律の中でいろいろと書面等で手続きがなければ脳死判定を しないというふうになっていますけれども、基本的には法の精神として、脳死は人の死 であるということが今回の法律の中に入っているということでございますか。  それでしたら非常にわかりやすくていいと思います。きょうこういう議論が出て、厚 生省のほうも以前の状況と同じようにカテーテル挿入に関しては行っていいという確認 が再度されたということは非常にいいことだと思います。これがないと恐らく日本の腎 移植はまったく進まないと思っていますので、きょうはこの委員会である程度きちっと した結論が合意として出されて、それを受けて厚生省も以前どおりに行うということを きちんと表明されれば、また日本の臓器移植、腎臓移植も以前と同じような形で進んで いくのではないかと思っています。  ここが雲に隠れたような状況で進みますと、恐らく提供施設のほうもコーディネー ターも含めて動きにくいと思いますので、きちっとお話をここでされることが一番いい ことだと思っています。 ○黒川委員長  皆さん、町野先生のあれで納得されましたか。今度の脳死の腎臓も肝臓も心臓も含め て、意思表示カードがあって脳死の判定のクライテリアに従って6時間後にもう一回し てという話があった場合にOKだと言っているわけですが、そういう条件に限って脳死 を人の死と認めていいのかなという話しだろうという気がするんですが、そうではなく て旧角・腎法の場合でも、例のプロトコールに従わない臨床的な脳死の判断というのが あると思うんですけれども、それから話があって遺族がうんと言ったときに、この関西 医大ケースとコンフリクトは起こさないか。  起こしてもまた民事の訴訟が起こるというだけの話になるのか、そのへんを教えてほ しい。そのへんを皆さんは納得されているのでしょうか。  要するに、ここでいろいろ議論しても法律の解釈というのは我々はプロではありませ んから、それで結構ですというわけにはそう簡単にはいかないと思うんですけれども。 ○野本委員  大島委員に文書を書いていただいたときには倒れておりましたが、ちゃんとチェック をしてこれでよろしかろうということで出していただいたので、移植学会の会長の見解 とお考えください。私自身それでいいと考えた理由は、心臓停止の直前にカテーテルを 入れるという行動に関してはもう20年もトライアルが続けられています。それが一般化 して10年以上。こうなりますと、極めて定着した形の慣習だと考えていいと思います。 基本的に我々は慣習で生きているので、社会に害毒を流さないかぎり慣習は受け入れら れていいと私は判断したわけです。  もうひとつは、いくら慣習でも国民が知っていないということは慣習とは言えないわ けですが、臓器移植法の審議の過程で国会でもこのことは議論されましたし、いろんな 内容がメディアを通して国民に広く告知されたのも事実だと思いますので、かなり定着 した形の慣習だと考えていいと思っていますから、そういうものをひとつの判例があっ たからといって、我々移植する側の移植学会が勝手に変えるということ自身が国民に対 する勝手な行動だと考えましたから、我々実行する側からしては従来どおりの行動をす ると判断をしたわけです。  それはいままでの長年の流れ、慣習として受け入れられてきたこと。特に国会の審議 などを通して広く国民に、心臓死の臓器提供のときにはカテーテルの挿入を心停止後の 直前にやるということを多くの人に知ってもらえたと思いますので、私はそういうもの を勝手に移植学会が変える権限はなしという判断をしたわけです。当然いままでの行動 をする。場合によるといろんな係争に巻き込まれることも覚悟で私は声明を出したつも りです。 ○町野委員  ひとつ、今後の問題と先ほど大久保委員の言われたことですが、この事件で判決は不 当だという考えもありますけれども、新聞報道などをお読みになればおわかりのとおり むしろ実際のポイントは遺族に対するインフォームドコンセントが不十分だったという ことが全てではなかったかと思います。ですから、この点について厳粛に受け止める必 要があると思います。  もうひとつは、新聞報道とか大阪弁護士会の要望書などで非難されていたのは、やは り手続きとかそこらのことに明確性を欠くということが非難されていたわけですから、 これを機会にいまのようなインフォームドコンセントの重大性を確認すると同時に、今 後このような手続きでやるということをある程度議論され、どういう格好でそれを出さ れるか別といたしましてそれをすることが必要だと思います。  それとの関係で、大急ぎでつくられたのだろうと思いますけれども、移植学会の声明 ですが、1ページの下から5行目のところで「カテーテル挿入などの臓器提供を目的と した一連の医療行為は、基本的には家族の臓器提供の承諾の中に含まれる」という書き 方がありまして、これは臓器提供の家族の承諾があればカテーテル挿入についても承諾 があったように読めるわけです。しかし、次のページを読みますとそうじゃないという ことがわかりますけれども、ここも整理されてはっきりされたほうがよかったのではな いかと思います。  もうひとつは、法律的なあれで非常にわかりづらかったのかもしれませんけれども、 確かに議論があるところでございまして、つまり、委員長が先ほどおっしゃられました ように、臓器移植の目的のときは脳死は人の死としていいと、しかも誰も拒絶しなけれ ばそれでいいと。だから、その意味で脳死というのは完全に死と認められたわけではな くて、この目的のため、そしてこの手続きがあるときだけ死と認められたという解釈も ありますし、恐らくつくられた当時は多くの人はそう考えただろうと思います。  しかし、これはどう考えてもおかしなあれだということですから、現在では少なくと も法律家の多くの人たちはそうではなくて、脳死は人の死というのは明らかなので、移 植のために必要なときだけ死んだことにしようなんてとんでもないということですから 脳死が人の死だから移植が初めてできるという論理が正しいのだろう。  ただ、脳死判定が嫌だという人がいるならそれを尊重しなければいけないだろう。移 植手術を行うときに死んでいるということを判定しなければいけないからそのときに脳 死判定をやるだけの話で、脳死というのは人の死なんだという前提で考えないと、この 法律自体が非常におかしな法律ということになるだろうということで、いまのような解 釈が出てくるということなわけです。  同時に、この間の検察庁の不起訴処分についても恐らくはこの考え方がベースにある のではないかと思います。現在の相対的な脳死概念をとるならば、過去の事件について ですが、あのときはそんな手続きも何もないわけです。そのときでもこれは脳死概念が 定着したとしてあれを不起訴処分にしているわけですから、恐らく法務省のほうも、は っきりは言いませんけれども、いまのような相対的脳死ではなく一元的脳死という考え 方をとったと理解するのが妥当ではないか。それで先ほどのような説明になったわけで す。 ○黒川委員長  その検察庁の云々というのは何ですか。 ○町野委員  私も新聞報道でしか知りませんけれども、とにかくいままで一連の脳死段階での臓器 の摘出を起訴した……。 ○黒川委員長  却下したということですね。  皆さん、いまのは納得されたのかしら。つまり、脳死法案の不自然さはあるにしても あの場合は脳死を前提として臓器を提供してもいいですよという本人の意思があって、 ドナーカードがある場合には脳死でというんだけれども、先生は、法律としてはおかし いと言われても一般にそれがおかしいんだといってみんな認めているのかなというのは あれは1年たってそんなに変わったのかしら。  ということがあるから、角・腎法でやる分にはいま先生がおっしゃたのがすごく大事 なポイントで、死体腎からの腎臓をいただけますかと遺族の方に伺って、提供するにあ たって実はこれこれこういうプロシージャーをしますという話も含めて承諾をもらって こなければいけないわけですね。うんと言ったからそれも入っているというわけにはい かないだろうと思います。実際そのときにはこういうことをしますけれどもという話は しておくとして、皆さん納得されました。  そういう意思表示も何もなくても脳死は脳死なんだからと先生に言われると、法律家 ではない人は必ずしもそうではないのかなと思うような気がするんだけど。だけど、法 律家の間ではそれはかなり当たり前になってきてしまったと言われると、世の中1年で そんなに変わったのかなと。 ○町野委員  かなり当たり前ということではないですけれども、そのような考えが強くなってきた ということです。 ○黒川委員長  強くなってきた……。局長もそう思っていますか。 ○小林局長  私はここで厚生省の局長としてものを言ってしまうともめますので。 ○黒川委員長  個人の考えで結構です。 ○小林局長  個人の考え方では、今回の法律ができたので脳死は人の死であるという考え方がはっ きりしたと思っています。だから、町野先生の意見とまったく同じ考え方を私個人はい たしております。 ○黒川委員長  小林個人の考えね。 ○小林局長 はい。 ○黒川委員長  皆さんもそうなんですか。違った意見があっても一向に差し支えないと思いますが。 ○森岡委員  こういった問題の裁判では医学的にはおかしいという判決も出るんですね。こういう 時はどう処理するんですか。最高裁の判決はけしからんから医師会として抗議しろとい ったことを言う人もいます。最高裁に抗議というのはあまり聞いたことがないんですけ れども、そういう場合どうしたらいいかという問題ですね。こういうときに厚生省も何 も言えないんですね。町野さん、何か良い方法はないんでしょうか。医学会がおかしい じゃないかという声明を出して世の中にアピールするより仕方ないんでしょうか。 ○町野委員  そうですね。 ○黒川委員長  そうすると、実際には従来の角・腎法に従って臨床的な脳死の判定があって、家族に 話をして心停止で腎臓の提供をいただくという話があって、実際の承諾についてはこう いうことをしますと具体的に説明して、OKとなった場合には多分問題はないだろうと 思うんです。こういう判例もあるんですけどという説明をさらに加えても恐らく問題は ないだろうと思うんですけれども、そのあとで誰かがまた別のところで訴えると。そう するとその判定はこれとは変わるかもしれませんね。違った判例はいくらでも出るだろ うという話は予測されると思うんですけれども。 ○山谷委員  途中で帰らせていただくので言いっぱなしになってしまうかもしれませんけれども。 私の父が亡くなりますときにカテーテルを挿入をされまして、いまだにそれが検査目的 だったのか延命治療のためだったのか腎移植のためだったのかよくわからなくて、お医 者様に聞いてもよくわかるような説明をしていただけなかったということがありました もう15年前の話です。  多くの人がそういうことをもしかしたら経験していて、今回の新聞を見ても解説の中 に、家族の感情に配慮しろとか、インフォームドコンセントをもっときちんとやれとか あるいは意思の疎通が不十分であったのではないかということがあります。お医者様か ら見れば医学的な問題とこういう情緒的なものをくっつけて記事にされても困るという ことだと思うんですけれども、ただ、人間というのは、命にかかわる、そして極めて専 門的なところにいくとパニックになりやすいというか非常にリアクションがエモーショ ナルになる部分があるわけです。原子力発電所とか環境ホルモンとか。ですから、リス クコミュニケーションという普通のレベルのコミュニケーションではないレベルのコミ ュニケーションのやり方というものをお医者様たちで少しもんで共通の認識をつくって いかないと、患者か離れるとますます脳死の臓器移植が難しくなってくると思うんです  ですから、移植学会のこのペーパーも大変よろしいのですけれども、それは専門家向 けであって、これを素人にわかってくれというと専門家から素人への啓蒙的説得みたい な雰囲気になって、コミュニケーションできないまま距離ができてしまうという感じが します。  考え方とか立場の違いを認めて、普通の人に理解しやすいようなコミュニケーション のあり方とか体制、システムをどうつくったらいいかということを、このペーパーをも とにしながらもんでみることも大事ではないかという気がいたします。 ○黒川委員長  大変貴重なご意見だと思います。そういうことから言うと、山谷委員のおっしゃった ことは本当で、しかもこういう状況というのは、例えばガンの告知をされてあと半年と いうふうに時間があるわけではなくて、突然起こっているイベントに患者さんの家族は それだけで気が動転しているわけですから、そこのところはおっしゃるとおりだと思い ます。  医療側はそういう現場を毎日見ているわけですから、それほどエモーションのセット ポイントはぜんぜん変わっていないのかもしれませんけれども、患者さんにしてみれば 一大イベントですからぜんぜん違った対応を期待されているんだろうと思いますが、現 場の話で座間委員のほうから。 ○座間委員  実際にカニュレーションの説明をさせていただくのはコーディネーターがやっている と思います。このときにひとつの選択肢として提示させていただくという形でやってい ます。実際にそういう方法があって、それをやることで移植の成績が上がっているとい う現状をお話しして、さらに傷がつくことですとか、カニュレーションをしますと入れ たほうの足は少し色が変わってきますのでそういう状況を全部お話しさせていただいて その中で選択していただくのがいまの状況です。  多くの場合は、せっかく提供するのであればいい状態で提供したいというご家族が大 半です。中に稀に、もうこれ以上傷つけないでくださいという意思表示をされる方もも ちろんいらっしゃいます。そういう場合はカニュレーションはしないという形で対応し ております。  ですから、関西医大のときにどのようなインフォームドコンセントがされていたのか というのは、先ほど町野先生がおっしゃっていたようにわからないんですが、どの程度 されていたのかということが疑問として残ります。 ○黒川委員長  そうですね。そうすると、カニュレーションはしないけど心臓死のあとで腎臓の摘出 はしてもよろしいですかという話と、嫌だという話があるのと両方あるということです ね。 ○座間委員  そうですね。 ○大島委員  非常に貴重なご意見ありがとうございました。私たちも、この問題でまとめるプロセ ス、後のいろんなところの反応を全部ひっくるめまして多くの議論はインフォームドコ ンセントの問題をどうするかということでした。恐らくいろんな方がみえるわけですか ら、どういうシチュエーションで何をやっても訴訟とかいろんなことが起こる可能性は 否定することはできないだろうと。しかし、この問題の解決があるとすれば、法的な解 釈というのはもちろん厳然としてあって法的な解釈のみで全てを割り切ろうとする考え 方ももちろんあるわけですけれども、それとは別に野本理事長がおっしゃったような、 世の中が何で動いているのかということは非常に重要なことだと我々は考えております し、多くの方はそういうことを考えていると思います。  そういう中で、この問題の鍵はインフォームドコンセントだろうということは、我々 の中でも最も多く議論をした部分だと思います。そういう意味で表現の仕方が、町野先 生のご指摘にもありましたが、1項目その部分だけ付けて出してもよかったのではない かといまは思っておりますけれども、それぐらい議論したことだということだけ一言言 っておきたいと思います。 ○小柳委員  町野先生がご指摘になりました一連の医療行為は、臓器提供の承諾の中に含まれてい るということは多少無理ではないかとおっしゃったわけです。それと一見似ているかも しれないことを1つこの場で検討したと思うんですけれども、一見治療行為あるいは臓 器移植の医療全体に含まれているのではないかと思われる行為で、臓器摘出の範囲が以 前話題になったことがありました。これは問題になった事例もございまして、これを整 理しようということになりました。  確かあのとき委員長からは、学会レベルでまとめておいてくだされば将来対抗力も生 じるでしょうというようなことで移植学会にふられましたので、ワーキングをつくりま して臓器摘出範囲を権威を集めまして2カ月ぐらいで作業いたしました。これは学会レ ベルで一応決まっておりますけれども、これを今回、厚生科学研究の寺岡班の臓器提供 の現場のプロトコールを決めました冊子に載せていただきました。  臓器移植の医療行為に含まれるものは全体として何なのかということを、このカテー テルなどについてもどこかに明記しておく、あるいは、されていてこれで十分だとおっ しゃるのかもしれませんが、あるいは、ここで再確認する必要があるのかないのか、そ こらへんが私にはちょっとわかりません。  告訴、告発がこれからも起きるかもしれないということになりますと、その都度、臓 器提供の機運は萎んでいく、また何カ月も何年もかかるということになりますので、で きれば何かそういうものが残っていることが必要な時期かもしれないと思います。 ○黒川委員長  ありがとうございます。  座間委員に伺いたいのですが、死体腎からもらうときにコーディネーターとして具体 的にプロシージャーがマニュアル化されているというのがありますね。それを説明して いただけますか。患者に説明するものです。 ○座間委員  具体的に提供に関しての説明の中では採血のことも含まれております。採血をさせて いただくこと、その中ではエイズも調べるということをお話しいたします。カニュレー ションについては、時期とかも含めて主治医のほうと相談しながら、本当に可能性がな い状況に血圧が下がりはじめたときに処置をさせていただくという説明をいたします。  これに伴って鼠蹊部に傷がつくこと、先ほど言いましたように足の色が少し変わって しまうということも説明いたします。提供にあたってはお腹に傷がつくことですとか、 角膜の場合ですと眼球そのままをいただかなければいけないということも含めて、手術 の実際の状況を説明させていただく形になります。ヘパリンに関しましては、心臓停止 前にヘパリン挿入という形での説明をいたします。  これはもう既に紙になったものがありまして、説明させていただいた後にその内容を まとめたものとしてご家族のほうにお渡ししております。 ○黒川委員長  そういう意味からいくと、マニュアル、インフォームドコンセント、説明をするプロ セスをコーディネーターが中心にやられるのがほとんどですけれども、とは言えコーデ ィネーターが人によって違うことを言っているのでは困るわけで、このネットワークで はコーディネーターのトレーニング、実際のマニュアルに従って言っていることが同じ 説明するポイントは整備してきていますので、恐らくそういう問題はこれから少なくな ってくると思いますが、山谷委員の言ったとおり家族の方々の状況はガンと宣告されて 6カ月というプロセスはぜんぜん経ないで突然起こっているわけですから、それは十分 にコーディネーターはそのへんも考えた上で対応していると思います。そういう意味で は対応の状況は非常に整備されてきているのではないかと思います。  先ほど言った心臓提供するときにはいったいどことどこがどうなんだということも摘 出チームがきちんとわかっていないと、チームによってまったく違ったことをしている のでは困るわけで、この委員会でもマニュアル作り、コーディネーターは実際に患者さ んがわかる説明は一体何なのかということもつくっていただいているわけなので、そう いう問題はこれから少なくなってくるのではないかと思います。  ただ、山谷委員が言われたように、インフォームドコンセントをやるときにアメリカ などもそうだけど、例えば採血をこうしますとか、2週間に1回切られて採血します、 何の目的のために何を測るので採血して、10cc採血しますと言うでしょ。アメリカに行 くとIRBでは10ccというのはインフォームドコンセントでダメと言われるんです。患 者さんが10ccと言われてわかるかということを必ず言われるので、患者さんにわかるよ うに書きなさいと。だからティスプーンの2杯分というふうに書かないとダメなんです  そのへんは書いているほうはわかっていると思って書いているからまずいわけで、患 者さんの遺族は人によって違うと思うので、10ccと書いて、何ですかそれと言われるよ うでは困る、相手がわからなければ意味がないというのはかなり言われていますから、 そのへん山谷委員のポイントも正しいので、ネットワークとしてもコーディネーターも 問題があれば考えてみましょう。  その他にありませんか。この判決を尊重すべきだという意見はあまりないみたいだな  ひとつ、先生方のご意見は小林局長のまったく個人的な見解と町野委員の法律家とし ての流れというのはあるにしても、脳死は死だと言ってしまうというのは……。 ○小林局長  私からお伺いしたいのは、脳死を経ていかれる方は脳死を人の死と認められているか らいいというのはわかるんですけれども、脳死を経ないで間もなく脳死になるような状 況で心臓が止まってしまうという場合には、脳死という段階を経ない事例がたくさんあ りますね。  町野先生の言われたのだと、脳死を経ないでそのとにカテーテルを入れるという話に なると、これは治療目的外のことをやったという話になりますね、生きていらっしゃる から。本人は意識がないとか何かで判断ができないときに、先ほど町野さんがおっしゃ ったようにインフォームドコンセントがきちっと家族にとられておれば許されるのかと いうことで、私は今回の臓器移植法は角・腎法をそのまま入れていくという精神で全体 をまとめられているから、私は従来の角・腎法で認められていたことは当然認められる と判断をしていいのではないかと思っています。ただし、インフォームドコンセントを きちっとするという条件は当然ですけれども。  ですから、先ほど町野さんの意見を了解というのは、今回の法改正で脳死は人の死だ という解釈ができるようになったというのはそのとおりですが、つながりのところは、 従来、角・腎法でやってこられたことで皆さん了承されてインフォームドコンセントも きちっとされたものについては従来も違法ではなかったとすれば、今後もそれも違法で はないのではないかという解釈はできませんのですかということです。もちろん脳死を 経る人はそれでいいんですけれども、脳死を経ない場合もそれが違法だという形になる と、それはちょっと困るのではないかと思うんですが。 ○黒川委員長  それは非常に貴重なコメントだと思いますが、現場では脳死ではなく腎臓の場合、ど のぐらいが脳死を経ないで心臓死になっているか。 ○座間委員  全国の状況となりますとつかみきれないんですが、関東の中で見ていきますと、6割 から7割ぐらいは脳死を経ての症例、それ以外は脳死を経ない症例という形で、カニュ レーションをしていないと思います。 ○黒川委員長  時間がないから。 ○座間委員  いえ、脳死ではないということで。 ○黒川委員長  脳死ではないので、話をして承諾はさせていただいて心臓死になってから取るわけ。 ○座間委員  脳死を経ないそれの場合は、カニュレーションについては状況に応じてになりますけ れどもお話をしないこともあります。ですから、まったくやらないという形で。心停止 後に開腹して開腹後にカニュレーションをするという形です。 ○黒川委員長  そういうことが起こるということは家族に承諾は得ているわけですね。 ○座間委員  そのカニュレーションは摘出手術の一部としてのとらえ方になると思います。 ○小林局長  実際上なければいいんです。 ○黒川委員長  いや、まだあるかもしれないから。ないわけではないでしょ。 ○座間委員  はい。これは関東甲信越の状況ですので。全国でいきますとどうかは今はつかんでい ません。 ○黒川委員長  つまり、脳死にはまだなっていないと思うんだけど、心臓死がある程度先が見えてい るという状況がありますよね。そのときどうするかというのは、町野先生、いかがかと ○町野委員  理屈の上では、先ほどの脳死が人の死ではないという前提であるなら理屈としてまっ たく同じだろうと思います。だから、完全に生体に対して死後の摘出のための準備的な 措置を行ったという点で、それが許されるかどうかという理屈はまったく同じだと思い ます。ですから、小林局長の言われますとおり、その等々を許さないとするかどうかと いうのは別問題だと思います。したがいまして、恐らくこれは基本的な問題というのは 脳死が本当に人の死かということがどうしても頭の最後のところに引っ掛かる問題であ るわけです。 ○黒川委員長  だけど、町野先生の結論の一番最後は「心臓死体からの腎臓摘出については、当分の 間、遺族の書面による承諾で許されているとしているから、装着の措置についてもその 承諾で足りる」というのは、あくまでも遺族に全部説明して納得しておられればよろし いわけですね。 ○町野委員  そうです。 ○黒川委員長  そういう事例は現場では比較的少ないということですね。 ○座間委員  そうですね。全国の状況はわかりません。 ○黒川委員長  あなたはかなり経験豊富だから。 ○大島委員  レスピレーターに載らずに亡くなられる方というのは3割もいるんですか。 ○座間委員  レスピレーターだけではなくて脳死判定をされていない方もいらっしゃいますので。 ○大島委員  判定をされていないということですね。 ○座間委員  はい。 ○大久保委員  脳死を経ないというのは判定をしていないということか。 ○大島委員  レスピレーターに載らずに亡くなられるということはまずないですよね。 ○座間委員  内科的な疾患での提供というのはあります。脳死判定ができない小児の症例ですとか はカニュレーションはしておりません。 ○大久保委員  地域によって違うんだ。 ○大島委員  随分違いますね。 ○黒川委員長  委員長としては、小林局長の個人的な見解はどうかわかりませんけれども……。 ○小林局長  両方とも個人的な見解です。 ○黒川委員長  公人的な見解としては、生前の意思表示とかドナーカードがなくても脳死は人の死だ という意味ですか。そうではないんですね。 ○小林局長  今回の法改正で脳死は人の死であるという考え方がはっきり出たというふうに解釈を いたしておりますと申し上げただけであります。だから、それが臓器摘出をするとかど うかということとは関係なく脳死は人の死でありますと。  今回、腎臓はそれで取っていいという根拠はそうなっていますけれども、取るにあた ってはいろんな条件があるということは事実のとおりであります。 ○黒川委員長  町野先生もそれでいいわけですね。 ○町野委員  はい。 ○黒川委員長  井形先生もそう。 ○井形委員  脳死臨調では脳死は人の死という答申を書きましたからね。ただ、法律上の手続きで そういうことになったわけで、私は概念的にはそれでいいと思っております。 ○黒川委員長  皆さんよろしいでしょうか。皆さんがいい悪いというものではないんだけど。そうい うふうに社会的通念というか、通念かどうか知らないけれども、町野先生なんかの解釈 ではそういうふうに扱ってよろしいという感じになってきたよということですか。この へんがよくわからないんですけれども。 ○町野委員  私もそんなに広い世界で生きている人間ではございませんが、いまのように申し上げ たのは、つい先だって刑法学会がありまして、こちらの玉川補佐もそちらにオブザー バーとして出席されましたけれども、そこでの議論というのはほぼそっちのほうに収れ んしてきた、それは我々の意見でもありますけれども、そうなってきたという感じで私 は受け止めていますということです。  もちろん前から相対的な解決の仕方というのは法律家の中にもあったわけで、一番最 初に唄 孝一という先生がそれに近いことを言われたことがあるんです。それがまた再 びここて息を吹き返したかなと見られる点もあるわけですけれども、やはりどう考えて もこれは不合理であろうということで、合理的に解釈するにはこれしかあり得ないだろ うということなわけです。 ○黒川委員長  そのほかに何かございますでしょうか。 ○大塚委員  町野先生にお伺いしたいのですが、現実問題で私は脳死は2通りあると見ているんで す。現実に臓器移植を前提とする脳死は人の死かもしれません。だけど、そうでない脳 死は、そのあと例えばそれから先の医療で消極的医療に変えたり、場合によっては生命 維持装置を止めてしまうことがあるわけです。そのときに訴えられたら、脳死は人の死 でないということで我々はやられてしまう可能性があるんじゃないでしょうか。 ○町野委員  そういうこともありまして先ほどのようになるわけですけれども。結局、人が生きて いるか死んでいるかというのは、その客体の性質によって決まることなんです。この目 的があるから生きている、この目的があるから死んでいるというのは理屈の上で非常に おかしなことだというわけです。 ○大塚委員  現場では2通りありまして、臓器移植を前提とする脳死は法律で守られている、しか しそうでない脳死はまったく無防備であるというふうに我々は解釈しているんですけれ ども。 ○黒川委員長  いまのところはそうだと思います。というのが医療の現場の人の感じなのではないか と思います。 ○町野委員  その感じはわかりますけれども、一番の問題というのは、何回も繰り返しになります が、脳死体の定義として脳死判定を受けた者という書き方をしているところが、恐らく 最初のところからボタンのかけ違いがあったのではないかと思います。つまり、あれは 竹内基準に従って脳死ではないように読めるわけですが、そのためにそういうことが起 こって、さらに移植のために脳死判定を受けたときにはどうのこうのと続くために、全 て竹内基準的な脳死判定に基づいたものでなければ脳死ではないと。そういうことが起 こるためにいまのようなことが起こったと。  将来、法改正をするかどうか別として、少なくとも理屈はそうではないということで す。 ○黒川委員長  これはまた別のレベルの議論になってしまうので、このへんでまた別の機会あるいは 個人的にお話をさせていただきたいと思います。  先生方のご意見を集約してみると、関西医大の件については、従来の角・腎法に従っ て、あるいは今回の意思表示がある場合もそうですけれども、家族に従前に十分に説明 があって了承を得ていれば従来どおりでいいのではないか。そのマニュアル作りという か、ある程度全国的にネットワークから出てきたコーディネーターが説明するときに、 常にある程度の基本線がきっちり一致しているということがすごく大事だと思います。 それについては十分整備していると思います。コーディネーターの経験が十分な人、十 分でない人がいますから質の向上ということがありますのでコーディネーターのトレー ニングをしていますので、医療の現場の先生方も十分に理解していただくことが必要だ と思います。  山谷委員はお帰りになりましたけれども、確かに家族側からいくと説明を受けたとい う話が、僕らとしては当たり前のことでわからないのということも十分あるかもしれま せんが、そのへんの配慮は十分にする必要があるのではないか。もちろんコーディネー ターはそういうことを十分にわかっていると思いますけれども、そういうことはこれか らはもっともっと少なくなるのではないかと思いますが、承諾を得て実際のプロシージ ャーについても説明した上で承諾を得ることが大事で、これまでどおりの問題ではない のではないかというのが大方の意見だと思いますか、いかがでしょうか。  そういうことで異議がないということであれば、このようにこの委員会としてはまと めさせていただきたいと思います。  その他に、事務局あるいは先生方のほうからご意見その他ございますでしょうか。も しございませんようでしたら、時間もまいりましたので、これで本日の委員会を終わら せていただきたいと思います。いろいろありがとうございました。                                     (了)  問い合わせ先   厚生省保健医療局エイズ疾病対策課臓器移植対策室    担 当:重藤(内2361)、眞鍋(内2364)    電 話:(代)03-3503-1711