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今後の生協のあり方について

1 生協の現状

(1)生協事業の展開

○ 消費生活協同組合(以下「生協」という。)は、生活の安定と生活文化の向上 を図ることを目的とする国民の自発的な生活協同組織であり、供給事業に始まって、共済事業、医療・住宅などの利用事業や最近急速に拡大しつつある福祉事業など広範な事業を行っている。

○ 平成7年度末現在で、その規模は、組合数は1,191組合、組合員数で延べ4,517万人にのぼり、事業高も、供給事業で3兆541億円、利用事業で3,880億円、共済契約高では、898兆7,112億円に達している。

○ 地域購買生協への加入世帯の総世帯に占める割合は全国平均で約3割となっており、食品の総小売高に占める割合は約5%に達するなど、生協は国民生活の中で大きな位置を占めている。

○ 生協は第二次世界大戦後、生活物資(特に食料)の供給事業を中心として発展した。その後、昭和40年代に入り、公害問題や物価問題が深刻化する中で、消費者の安全・安価な商品等への要望が高まり、それが生協事業の特色である共同購入方式と相まって、組合員の生協への参加意識を高めるとともに、地域購買生協の急成長をもたらした。

○ 最近では、食材の小包化をはじめとした供給方法の見直しが進むとともに、個配が急速に広がり、高齢者向けの商品の開発などの取組も始まっている。

○ この間、一般企業が採算を考えて進出を見合わせていた低農薬野菜や食品添加物の問題等に対し積極的に取り組み、組合員の要望に応えるとともに、他の事業者を牽引してきたことは注目される。

○ 他方、供給事業に加えて、生活の安心を求める組合員の需要に対応した共済事業、社会参加やふれあいの場を求める組合員の要望を反映した文化・スポーツ活動、福祉活動に取り組む生協が増大している。

○ 特に最近では、高齢化の急速な進展、女性の社会進出等の環境の変化の中で、介護等の福祉需要が急速に増大し、その担い手のひとつとして生協への期待が高まっており、生協の福祉事業への本格的な取組も始まっている。

(2)生協に関わる諸問題の発生

○ このような組合員の要望の大きな変化に伴って事業分野が広がる一方、各生協の経営環境も大きく変化している。

○ 近年、地域社会における助け合いの意識が薄れ、人と人との関係が疎遠になる中、生協の中には、組合員の参加意識が薄れるとともに、生協自体の組合員に対する求心力が急速に低下しているものも見られる。そのため、相互扶助組織としての本質から乖離してしまい、一般の事業体となんら変わらないと思われるような生協も生じてきている。

○ また、中には、組合員による運営が形骸化し、一部役員の独断専行による不当な運営が行われた生協も生じてきている。

○ さらに、競争が激化する中で、経営力が伴わないまま、力量以上に店舗事業を展開したり事業の多角化を進めたことなどから、事業が行き詰まる生協も出てきている。

○ 不況の長期化により消費が冷え込み、流通業全体さらには日本経済全体が停滞している。くわえて、従来購買生協が先進的に取り組んできた低価格、安全・安心、環境への配慮という消費者の要望に対応した商品供給に他の事業主体も積極的に取り組むようになり、生協の供給品の優位性が低下してきている。また、多様化する消費者の要望に対して十分に対応しきれなくなってきており、生協の事業の大きな柱である共同購入も、女性の就業の増加等により低下傾向にある。

(3)転機を迎える生協

○ このように、厳しい社会・経済情勢の中、購買生協の独自性が薄れ、今まさに転機を迎えている。言い換えれば、生協の存在意義自体が厳しく問われていると言えよう。
○ こうした状況を背景に、国際協同組合同盟(ICA)の「協同組合の定義」として、「協同組合は、共同で所有し民主的に管理する事業体を通じ、共通の経済的・社会的・文化的ニーズと願いを満たすために自発的に手を結んだ人々の自治 的な組織である。」という点が新たに確認されたところである。

○ 折しも、本年は、消費生活協同組合法が昭和23年に制定されてから、50周年を迎える。この間、生協を取り巻く国民の要請や経営環境は大きく変化し、生協事業も大きく拡大し、生協に対する期待が高まる一方で、様々な課題も抱えるに至っている。そこで、50周年を機にあらためて原点に立ち返って生協の意義を見つめ直し、その役割と今後の生協運営の基本方向について検討することとした。


2 生協を取り巻く環境の変化

(1)社会環境の変化

(1)価値観の変化
○ 高度成長期を経て、国民の生活水準が向上するとともに、国民の求める豊かさも従来の物資の量的確保から、「安全・安心」といった質の高さや「ゆとり」や「心豊かな生活」など精神的充実感へと移るとともに、非常に多様化してきている。
○ そのような中で、消費者需要も、安価というだけでなく、食品の安全性や環境への配慮、生活上の様々な危険に対する安心、さらには、社会参加や人と人とのふれあいの場、文化・スポーツ活動、福祉活動への要望が高まってきている。

(2)生活基盤の変化
○ 少子高齢化、女性の社会進出、核家族化、単身世帯の増加等の生活基盤の変化は、家庭における育児や介護、さらには家事等の姿を大きく変化させ、社会的対応の必要性が急速に高まってきている。このような家庭における介護機能の低下による高齢者の介護需要の高まり等に対し、家事援助等の助け合い活動や給食サービスなどの福祉活動が急速に全国へと広まり、高齢者の社会参加や生きがいづくりの場としての期待も高まっている。

(3)環境問題の深刻化と科学技術の進展
○ 地球的規模での環境問題が深刻化し、持続可能な発展が叫ばれる中で、経済活動と地球生態系との調和が求められるようになっている。
○ そのような中で、各種低公害車の開発、リサイクルの生産過程への組込み、ゴミを出さない生産方式の開発等、民間事業者においても環境問題に真剣に取り組むようになってきている。
○ 科学技術の飛躍的な進歩に伴い、化学的合成物質が急激に増加し、バイオテクノロジーを応用した遺伝子組み換え食品なども登場するようになっている。このような高度技術は、様々な効用をもたらす反面、未知の危険性も完全には払拭されておらず、安全性への監視が消費者から求められている。また、高度の情報化の進展は、企業活動だけでなく、国民生活をも大きく変化させている。

(4)民間非営利部門の役割の増大
○ 特定非営利活動促進法(いわゆるNPO法)の成立にも示されるように、民間市場部門や公的部門に加えて、民間非営利部門の役割への期待が国の内外を問わず高まっている。
○ 今日の社会は、個人の自立と市場を通じた自由な経済活動を基礎に置きつつ(自助)、生活上の危険など国民共通の要望に対しては、公的制度で対応している(公助)。しかし、国民の生活上の不安や要望が多様化する中で、一人一人ですべての問題に対応することは不可能であり、かつ、公的制度や市場でも対応が困難であるため、同じ要望を抱える人々同士の相互扶助(共助)の仕組みが必要となる諸問題が増大している。

(2)経営環境の変化

○ 生協を取り巻く経営環境は、流通業や金融・保険業における規制緩和に伴う競 争の激化に加え、地球規模での国境を越えた市場経済化の進展により、今後価格と商品内容の両面における一層の競争の激化が予想される。同時に、事業運営に当たっては、情報開示の徹底など事業経営における透明性が強く求められている。

(1)製造業・流通業における状況の変化
○ 製造業の大規模化と流通業の物流、情報システム体制の整備により、全国あるいは地方単位の新しい形の大規模小売業が出現してきた。
○ さらに、第二次流通革命の中で、生産と販売が直結した従来とは異なる流通経路、情報化の進展による新たな販売方法、従来の事業区分の枠を取り払うような事業形態の出現など、劇的な変化が生じている。
○ くわえて、民間の製造業・流通業においても、従来生協が先駆的に取り組んでいた品質、食品の安全性や環境への配慮といった消費者の要望に応えた商品供給に積極的に取り組むようになり、従来になく激しい低価格競争、品質競争が繰り広げられるようになってきている。
○ こうした中で、大規模小売店舗の周辺における中小小売業者の事業活動機会の適正な確保を目的に需給調整規制を行ってきたいわゆる大店法が廃止され、大型店が周辺生活環境との調和を図ることを目的とした大規模小売店舗立地法が制定されたことに示されるように、市場における自由競争を目指した規制緩和が行われる一方で、より地域に密着した生活環境づくりへの配慮が求められるようになってきている。

(2)金融・保険業における状況の変化
○ 我が国の金融・保険業は、これまで、個別の商品内容や投資方法等に至るまで厳しい規制の下にあった。そのような状況も背景にあり、低掛金で標準的な商品を提供する生協の各種共済商品は、それが魅力となって組合員に広く受け入れられ、その契約高を大きく伸ばしてきている。
○ しかし、近年、様々な規制が徐々に緩和されてきており、平成10年4月から、いよいよ我が国においても、大幅な金融の規制緩和(いわゆる金融ビッグ・バン)が始まった。今後は、商品の多様化、弾力化が大きく進み、商品面での競争が激化し、資金の運用力をはじめ、経営の健全性や信用力などによって金融機関が選別される時代に入ろうとしている。


3 生協の意義と役割

(1)生協の意義

○ 生協は、生活の安定と生活文化の向上を図るため、組合員の相互扶助の精神に基づいて、協同して事業を行う非営利の組織である。

○ 今日の社会では、自助、公助に加え、相互扶助(共助)の役割がますます重要になっている。

○ 生活協同組合の事業活動は、こうした自発的な共助の仕組みそのものであり、戦後、必要な生活物資(特に食料)の供給事業に始まり、安価、安全な食料品の供給から、協同施設の利用、各種共済事業や、最近では、社会参加やふれあいの場を求める組合員の要望に対応して、文化・スポーツ活動、福祉活動、そしてさらに介護や育児等の福祉事業へと拡大している。

(2)生協の役割

(1)安心や安全の追求
○ 生協は今日まで、基本的には弱い立場に置かれている個々の消費者が組織化することにより、生活物資の安定的な確保や、安価、安全、良質の物資の確保等、消費者による生産者や流通業者への拮抗力の形成に大きな役割を果たしてきた。
○ 中でも購買生協においては、その供給する食品の原料、添加物、農薬の使用状況などの情報の開示やO−157等食品汚染要因への監視などの活動に対して、組合員から高い信頼を得ている。
○ くわえて、これまで低農薬野菜の提供やアレルギー対策など一般企業が採算を考えて進出を見合わせていた分野に積極的に取り組み、消費者の要望を反映した製品を提供するという意味で、他の事業者の牽引役としての役割を果たしてきたことも注目に値する。
○ 従来、生協が消費者保護の視点から、生産者や流通業者への拮抗力としての理念に掲げていた安価、安全、環境への配慮等については、他の民間企業も取り入れるようになっている。
 今後はそれらの理念の追求は勿論、常に将来を見据えて、消費者、生活者の要望を先取りするとともに、民間市場では提供されていない財・サービスに対しての積極的な事業展開に取り組んでいく必要があろう。
○ また、共済生協においては、生活上の各種危険に対応し、一般の人々に生活保障商品についての知識を広めつつ、経費を低く抑えた低廉な掛金による組合員の要望に応じた共済を提供し、生活の安定に寄与してきたことも見逃せない。
○ 今後は、火災、生命、自動車共済などのほか、高齢者の需要の多様化により、公的年金や介護保険を補完する給付として安心して利用できる共済など、各種の生活保障への需要も高まっている。

(2)環境問題への取組
○ 経済活動と地球生態系との調和を図り、持続可能な発展を実現するため、環境に配慮したくらしへの転換とそのための商品の開発・普及やリサイクル等への取組の一層の促進が重要である。今後はさらに、生産から消費・廃棄・再生までにわたる環境保全体系の確立に向けた総合的な環境問題への取組が期待される。

(3)コミュニティへの貢献
○ 組合員の要望を反映した文化・スポーツ活動の推進や、家事援助等のくらしの助け合いなどの福祉活動、さらには、共同購入方式などの地域に根ざした活動は、年々地域における人と人とのつながりが希薄になっていく中で、地域のコミュニティ形成に大きな役割を果たしている。そのような日頃の相互扶助活動が、先の阪神・淡路大震災においては、生活物資や役務の提供等の被災者に対する迅速な支援活動に大きな役割を果たした。
○ くわえて、住民組織のひとつとして、地方公共団体の審議会や各種取組に参加・協力することなどを通じて、地域社会づくりに積極的に貢献してきている。
○ 1995年の「協同組合のアイデンティティに関する国際協同組合同盟(ICA)声明」にコミュニティの持続可能な発展のために活動するという「コミュニティへの関与」に関する原則が新たに盛り込まれたように、生協においても、今後とも地域に根ざした様々なコミュニティ活動をより一層促進し、生協活動に対する地域住民の信頼をより確かなものとしていくことが重要であろう。

(4)生協の福祉事業に期待される役割
○ 高齢化や女性の社会進出、核家族化の進展等に伴い、家庭の介護機能は大幅に低下し、国民の介護需要が増大していることから、介護サービスの充実が緊急の課題となっている。
○ そのため、新・高齢者保健福祉推進十か年戦略(新ゴールドプラン)の推進や介護保険制度の創設が図られており、介護サービスの供給体制の充実が焦眉の急となっている。
○ そのような観点から、昨年発表された政府の「21世紀を切りひらく緊急経済対策」では、介護サービス等への民間事業者の参入のための規制緩和の推進がうたわれ、また、介護保険法の衆参両院の附帯決議において、在宅介護サービスに対する多種多様な提供主体のひとつとして生協の福祉事業への参入が求められるなど、生協への期待は大きく高まっている。
○ このような動きに先立って、生協活動においても、家事援助活動を中心としたくらしの助け合いなどの福祉活動が、全国の生協に広がっている。
○ また、近年では、老人居宅介護等(ホームヘルプ)事業や福祉用具の供給を行う生協が出始めており、さらに、福祉事業を主たる事業とする生協も誕生するに至っている。このような動きは、介護等の福祉需要がまさに国民、すなわち組合員にとっての切実な要望となっていることを如実に示しているといえる。
○ 福祉事業に本格的に取り組み、採算の採れる経営を行っていくことは、簡単なことではない。しかしながら、介護保険制度の導入等を背景として、福祉が組合員の切実な要望となり、くらしの助け合い等の福祉活動が活発化している今日では、事業として成り立っていく下地はできてきたと言えよう。また、福祉事業の実施に当たっては、そのサービスの質の確保や事業の継続性・安定性に十分配慮することが必要となる。
○ このような福祉事業・活動は、単に組合員の要望に対応する福祉サービスの提供ということだけでなく、生協の本来の立脚点である相互の助け合い意識や組合員の生協活動に対する参加意識、さらには、地域に根ざした活動としてコミュニティ意識を高めるという点でも大きな役割を果たしていることに注目する必要がある。
○ また、一部の共済生協において、介護保険等を補完する給付としての商品開発と同時にホームヘルパー養成研修の開催等、福祉活動への取組が始められているが、組合員の参加意識の高揚や生協に対する地域の信頼を高めるという意味でも、共済生協における地域に根ざした福祉事業・活動が展開されることが期待される。
○ 組合員の相互扶助組織であるという生協の本質にかんがみれば、このような福祉事業についても、組合員の利用が原則である。しかし、高齢者の在宅介護サービスについては、介護等のサービスをすべての人が利用できるようにすべきであるという社会的要請が極めて強いことから、組合員以外の利用を可能とすることが適当であろう。現に、これまで、老人居宅介護等(ホームヘルプ)事業、老人日帰り介護(デイサービス)事業、老人保健施設等の5事業については、そのような措置が講じられてきている。今後は、介護保険法の施行をにらみつつ、社会的要請の強い介護サービスについては、員外利用を可能とするための正当な理由がある場合として位置付けるなど、時代の変化に対応した適切な措置が講じられる必要がある。


4 生協運営の基本方向

○ 生協が相互扶助組織としての役割を将来にわたって的確に果たしていけるよう、次のような生協の原点に立ち返って、生協としての理念や目標を常に掲げていくことが求められている。

○ すなわち、
 第一に、常に組合員の切実な要望に合致した事業を追求すべきであるということ、
 第二に、そのためにも常に組合員の意思が反映される民主的な運営がなされること、
 第三に、事業として行われる以上、厳正な経営責任体制の下に健全な経営が行われるということ、である。

(1)組合員の意思が反映される運営の確保

(1)組合員の参加
○ 個々の組合員の意思をどこまで運営に反映させることができるかという問題は、生協らしさあるいは、協同組合の基本的価値にかかる重要な問題である。
○ 最近、ヨーロッパの生協の経営不振が目立ってきているが、その原因はまさに生協が消費者組合員の組織であるという重要な原点を忘れ、組合員による出資、利用、運営参加が全く形骸化してしまったことにあると言われている。
○ 一方、競争が激化する中で、生協の事業運営という観点からは、迅速な意思決定、責任体制の明確化など生協運営の効率性が求められている。
○ 組合員による民主的な運営は、消費者の要望を迅速かつ的確に把握できるという点で、生協にとっての大きな強みであるということを忘れてはならない。
○ したがって、生協におけるこの組合員の参加と生協運営の効率性という二つの要素は相反するものとみられがちであるが、二者択一の問題としてではなく、同時に満たしていくべき問題としてとらえる必要がある。
○ 組合員の参加を促進するに当たり、まず必要なのは、組合員の切実な要望を的確に把握することである。組合員の参加意識が希薄になっている背景には、生協が組合員の要望に応えきれていないことが挙げられよう。
○ また、多数の組合員が参加し、要望も多様化していくに伴い、生協自身が組合員の要望を把握しにくくなっている面もあるので、個々の組合員の意思を適切に反映できる組織のあり方について工夫を行う必要がある。

(2)情報の開示
○ 生協運営の民主性を確保するためには、組合員のプライバシーの確保に配慮しつつ、生協運営に関する基本的な情報が開示されることが重要である。
○ 生協法において情報開示の相手方として想定されているのは、もっぱら組合員及び組合の債権者であるが、生協が地域社会に開かれた社会的存在として、地域社会での活動を活発化させ、より一層の信頼を得るためには、生協の組織内に限らず、地域社会等広く組織外に向けての情報開示が必要である。
○ 経営体としての実績(事業報告書、貸借対照表、損益計算書等)、各種活動の状況、さらにはその活動の透明性を高めるために意思決定過程なども開示内容に含めるとともに、周知方法の充実も併せて図る必要がある。

(3)組合員の研修の充実強化
○ 生協活動は組合員一人一人の活動によって成り立つことから、組合員の研修は当初から重視されている。
○ 特に最近の情勢から見ても、今後一層、生協の目標や活動内容、関連情報に関する組合員の研修の充実強化が求められる。
(4)政治的中立の原則
○ 生協はあくまで経済的文化的団体であり、政治的団体ではない。生協に対する国民の信頼に応えるためにも、組織として選挙の際に特定の政党の候補者を応援する等、特定の政党のために活動すべきではない。

(2)経営体制の強化と責任体制の明確化

○ 生協が相互扶助組織として、組合員の要望に応えていくためには、その行う事業が健全かつ的確に運営されていることが前提となる。

○ そのためには、最近の競争激化の中で、経費節減等経営の効率化に努め、それによって生み出された利益を生協らしい商品としての付加価値や新たな商品、サービスその他の事業活動に充てていけるよう、より一層の経営体制の強化と責任体制の明確化が図られなければならない。

(1)経営・財務体質の強化
○ 組合員の要望に応えた事業を安全かつ継続的に展開していくためには、事業の収益性を確保していくことが不可欠であり、長期の経営戦略にのっとった経営・財務体質の強化が必要である。
○ 財政基盤の強化のためには、出資金の額や出資口数の見直し等組合員からの拠出資金の拡大に努める必要がある。このことは、組合員の組合活動に対する関心を促し、参加意識の向上促進にもつながるものと期待される。

(2)役職員の教育・研修体制の充実強化
○ 生協の理念への情熱を持ちつつ、事業に関する専門的技術と業務遂行能力をもった役職員を育てるための教育・研修の充実強化が重要である。
○ また、必要に応じて専門的な経営能力をもった人材の外部からの登用を図っていくことも必要であろう。

(3)事業者間の連携
○ 事業の種類によっては、規模の利益による効率化を図っていくことが求められている。そのような観点から、生協における事業連合による事業の連携は、今後ますます重要性を増していくものと考えられる。
○ 同時に、規制緩和の推進や情報の高度化、競争の激化等に伴い、今後同業種間だけでなく、異業種間を含めた様々な形の連携が急速に展開されていくものと想定されている。
○ 生協においても、消費者、組合員の要望に応えるという理念にかなう限り、他の生協との連携は言うに及ばず、他の協同組合とも連携を強めていくことが望まれる。

(4)地域コミュニティとの連携
○ 生協に対してはその規模や力量に応じた地域社会への貢献が強く求められており、地場産業との協力による商品開発や地域の中小小売業者との協力により地元商店街の活性化を図るなど地域における調和ある発展に努めていくことが期待される。
○ 生協としても、消費者団体や非営利組織(NPO)など市民組織との連携や、社会福祉協議会など地域における様々な関係団体の活動への参加を通じて、豊かなコミュニティの創造に貢献すべきである。

(5)国際的な協同組合間の連携の強化
○ 国際的な市場の統合が進む中で、協同組合間の国内での事業の連携に加え、地球的規模での環境問題への取組など、国際的な生協活動の連携の強化が要請されている。

(6)責任体制の確立
○ 生協運営の健全化のため、理事や理事会の責任と構成の明確化、監事の責任の明確化、内部牽制体制の強化、組合員の少数意見を可能な限り尊重する仕組み、一定規模以上の事業者に対する公認会計士等第三者による監査の導入等について、生協の自律性にも配慮しつつ、商法に準じて必要な法的措置を含めた検討を行っていくべきである。
○ また、生協の事業や活動についてその運営を含め総合的・客観的に評価する方法についても検討する必要がある。
○ 理事の責任に関しては、生協の理念を具現化するという側面は勿論であるが、同時に経営者としての責任を適正に求めていく必要がある。その意味で、個々の役員間の役割・責任も明確に区分される必要があろう。
○ これらの責任に関連し、厚生年金基金等における資金の運用に当たっては、近年の資金運用環境の劇的な変化とその一般国民に及ぼす影響の大きさから、確固とした資金運用体制の確立が求められており、運用担当理事等の責任は、一般的な善管注意義務に加え、専門家としての注意義務が課されるなど、より重い責任が課される方向にある。
○ このような状況にかんがみ、長期共済事業を行っている生協についても、これらと同様に、基本的運用方針を定める「資金運用委員会」の設置など、資金運用体制の確立と責任の明確化、専門家の養成・確保が緊急の課題である。このような運用体制の確立と運用能力の向上を踏まえつつ、時代の変化に対応した運用方法の弾力化等の措置も講じられていく必要がある。

(7)事業区域
○ 個々の生協の事業区域は、職域生協を除き、基本的には都道府県内とされている。この事業区域の制限については、他の事業主体のような規模の利益を発揮できないという理由や、同一の生活圏域でありながら県域内でないため組合員になれないという理由により、見直すべきだとの考え方がある。
○ また、最近の高度情報化や通信事業の発達により、インターネットを利用した取引の進展など、地理上の境界を越えた取引方法が急速に進む可能性が高まっている。
○ これらに対し、生協においても既に事業連合が認められており、これをうまく機能させれば、規模の利益を発揮しうるとの考え方もある。
○ したがって、生協の事業区域については、このような取引をめぐる環境の変化を注意深く見守りつつ、民主的な運営が図られ組合員の主体性が実質的に確保されるかどうかという観点を踏まえて検討すべきである。

(8)組合員利用の原則
○ 生協の組合員利用の原則は堅持されるべきである。
○ その上で、社会的に強く要請されている介護サービスについては、組合員以外の利用を可能とする適切な措置が講じられるべきである。
○ また、災害時における対応や環境問題への取組、組合員との合意の下での文化施設の利用など、地域住民からの社会的要請への対応にも配慮していく必要がある。


照会先
厚生省社会・援護局地域福祉課
担当:金子、櫻井(内線2854)
電話:[現在ご利用いただけません](代表)
   03−3591−9862(夜間直通)


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