98/05/22 第5回 21世紀のたばこ対策検討会   第5回 21世紀のたばこ対策検討会 日時:平成10年5月22日(金)    10:00〜12:00 場所:厚生省別館共用第23会議室 出席委員(敬称略):  内山充  大河喜彦  川口順子  五島雄一郎 櫻井秀也 島尾忠男  富永祐民  松本恒雄  水野肇  矢崎義雄  柳田知司  山崎正和 (開会:10時0分) 島尾座長  それでは定刻となりましたので、ただいまから第5回の「21世紀のたばこ対策検討 会」を開催いたしたいと思います。  議題に入ります前に事務局から本日の委員の出欠状況、それに資料の確認をお願いい たします。 事務局(高原)  おはようございます。本日は委員総員17名中、出席12名というお返事をいただいてお りますが、まだ、遅れていらっしゃる方もいるようでございます。幸田委員、仲村委員 野中委員、坂東委員、ビルトッテン委員はご欠席というご連絡をいただいております。  本日の資料でございますが、1番といたしまして、審議メモ、2番といたしまして委 員からの資料、3番といたしまして参考資料の3点でございます。この他、委員の先生 方には第4回の議事録をお配りしております。第1回、第2回の議事録は先日、公開の 扱いとさせていただきました。第3回以降につきましても同様に順次、公開を予定して おります。以上でございます。 島尾座長  どうもありがとうございました。本日の資料の中で富永委員、それに五島委員から資 料をいただいておりますので、手短にご説明できれば。 富永委員  それでは私が先に資料2の1頁から数枚、手短に説明させていただきます。  前回、柳田委員より私と五島委員に対して喫煙開始年齢と健康リスクの関係について レビューするようにというようなサジェスチョンがございまして、それに応えようとし たものです。  資料2の1頁は前回の検討会に出したものと同じでございまして、喫煙開始年齢が若 い程、肺がんのリスクが高いことが示されています。上の図は米国男性の肺がんの死亡 率が高いということ。下の図は我が国で平山先生等が行われた計画調査の結果から見て やはり喫煙開始年齢が若い程、肺がんリスクが高いことを示しています。ここでは喫煙 本数別に比較しても20歳未満で喫煙を開始した方がリスクが高いという結果が出ており ます。 2枚目は少し古いのですが、1975年のWHOの報告書に含まれている表でございまし て、これは肺がんではなくて、全死因のリスクが喫煙開始年齢別に比較してあります。 やはり喫煙開始年齢が若い程、全死亡リスクが喫煙本数別に見ても高い傾向が伺われて います。 3頁目以降は1989年にアメリカの政府が公表しました喫煙の健康影響を低減 するための25年の進歩という膨大な報告書の中から2、3、抜粋したものでございます  4頁目は、3つ表がありますけれども、一番下の喫煙開始年齢と肺がんリスクの表を ご覧ください。このようにアメリカのデータでも大変綺麗に喫煙開始年齢が低い程、肺 がんリスクが高いという結果が出ています。  5頁目、これは喫煙開始年齢と特に関係がありませんで、喫煙本数と肺がんの関係。 下は喫煙後の年数と肺がんリスクの関係。これもよく知られていることです。  さて、我が国のデータでございますけれども、さきほどの平山先生の計画調査の結果 肺がんだけではなくていろいろながん、その他、がん以外の疾患について解析されてい ます。これは6頁、7頁に英語の表で示されています。ここでは20歳未満で喫煙開始を した者と20歳以上で喫煙開始した者の比較になっておりますが、ご覧のように、一定の 傾向は見られませんが、どちらかと言うとやはり19歳未満に開始した方がリスクが高く なっています。例えば、胃潰瘍等はその傾向があります。しかし、逆に、食道がんなど は20歳以降で開始した人の方がリスクが高いという結果も出ております。  女性の結果は7頁にございます。女性でも胃潰瘍は19歳未満で喫煙開始した者がリス クが高くなっています。一番上の行です。4行目、大動脈瘤、これも高い。あるいは口 腔、咽頭がんも高い。こういった結果も示されておりますけれども、よく解析されてい るのは肺がんだけでございまして、他のがんもそのような傾向が伺われるというぐらい で、それほどはっきりした傾向は見られておりません。  8頁、9頁はさきほどの英語の表を平山先生が棒グラフにして示されたものでござい まして、たくさんの組み合わせがありますが、一番左の2本の柱が喫煙開始年齢が19歳 未満と20歳以上の比較されされたものです。これを見ておわかりのとおり、喫煙開始年 齢が若いと高いもの、逆に低いものなど、いろいろございます。  それから、10頁から13頁までは厚生省がん研究助成金による研究班、「ヒトがんの環 境要因と固体特性に関する分子疫学的研究」という研究班の平成7、8年度の研究報告 の抜粋です。主任研究者は愛知がんセンター研究所疫学部長の田島先生でございます。 平山先生はこの研究班に7年度の途中まで参加されていましたが、平成7年の10月に亡 くなられました。11頁の研究班の構成ではご覧のように研究協力者として平山先生が入 っておられます。  この年に研究班の報告をされましたが、学会発表も当時、入院中でございましたので 田島先生が代理発表しています。スライドなど、原稿は全部できておりましたので、そ れらの班会議の資料が12、13頁の研究報告として示されております。  これは、平山先生は最後のお仕事になるのですけれども、喫煙開始年齢を20歳未満、 15歳未満としては粗すぎるので、非常に細かく1歳間隔でみようとされたのですけれど も、実際には症例が少なすぎて2歳刻みにしておられます。  その13頁の上の表に出ておりますように、15〜16歳、17〜18歳、19〜20歳、こういう ふうに2歳刻み、あるいはそれ以降ですと5歳刻みぐらいになっておりますが、こうい うふうにして見ますとやはり19歳未満の中でも、さらに15歳、16歳で喫煙した者では リスクが非常に高いというようなことを明らかにされています。  ここでは時間がありませんので詳しいこと申しませんけれども、喫煙開始年齢が早い ということは喫煙期間が長くなりますので、一生涯の喫煙量も増えます。だから、喫煙 開始年齢が若いというよりも喫煙期間、あるいは喫煙量が多いからではないかという議 論もあるのですが、喫煙の継続期間、あるいは喫煙量を考慮しても、なおかつ、喫煙開 始年齢が若いほど、リスクが高いということを示されております。  以上、私の手元にある資料で簡単にレビューしましたので完全なものではございませ んけれども、この種のレビューはまた別にワーキンググループを作りまして厚生省の通 称のたばこ白書、あれも数年間、古くなっておりますので、こういうデータも含めてき ちんとレビューすべきではないかと思っています。 島尾座長  どうもありがとうございました。五島委員。よろしくお願いします。 五島委員  14頁と15頁に渡りまして資料を出しておりますが、これは私どもの東海大学医学部の 第1内科、即ち私の教室でやりました兼本助教授にまとめてもらった成績でございます  これは既にもう数年前に発表したものでございますが、まず、喫煙が心臓に与える影 響。喫煙と虚血性心臓疾患、禁煙による虚血性心疾患の効果、受動喫煙と虚血性心疾患 の危険度。そういった内容になっています。  まず、14頁の中程にあります喫煙と虚血性心疾患との関係をまず申し上げますが、こ れは15頁の上段の左側に私どもの成績を示してございます。これは救命救急センターに 収容されました急性の心筋梗塞、これは初回発作でありますが、Yが若年者、30歳から 45歳、Mは中年者、中年群で46歳から65歳、Oが老年群、66歳以上。このように3群に 分けてみますと、まず、男子ではYというのが、つまり若年者では37名中33名がスモー カーであります。また、中年群では145 例中118 例がスモーカーであります。また、O は老年者では90例中58例、こういうことで若年者の心筋梗塞が圧倒的に喫煙者からの心 筋梗塞の発症が多いということを示している成績で、これはいずれも他の群に比べて有 意な差が出ています。女性ではやはり中年と老年者の間に有意差が出ていますが、男性 ほど、多くはありません。  全体的にはやはり黒く塗った線ですが、若年者が41例中35例、中年では179 例中128 例、老年者では167 例中67例。こういうことで若年者と中年、老年者の間に有意差が出 ており、特に若年発症の45歳未満の心筋梗塞においては9割以上にヘビースモーカーで ある。それが非常に大きなリスクになっているということが明らかになっております。  さらに、15頁の上の3という表でありますが、これは九州の久山町という、福岡市の 隣にある町でありますが、ここでは長年に亙って九州大学が久山町研究という疫学調査 を行っており、ほとんど亡くなった方を解剖して、死因と危険因子との関係を調べてい るところです。  そこで14頁の下の方にその説明をしていますが、喫煙と虚血性心疾患の、5行目です 国内(久山町)での20年間にわたる調査研究では、喫煙は心筋梗塞の大きな危険因子で あり、収縮期性高血圧と組み合わせると血圧が正常で喫煙10本/日未満の人に比べて19 倍の発症率となるということが、これが図の3です。  さらに、極めて多数の症例を追跡したMultiple Risk Factor Intervention Trial 、 これは通称MRFITと言っていますが、このMRFITの成績では男性、女性に関わ らず、喫煙者は非喫煙者に比較して喫煙歴に比例して虚血性心疾患の死亡の相対度が著 しく増加することが示されています。これが表の4で、男性35万、女性44万という非常 に多数の成績で、非喫煙と喫煙の量によって冠動脈疾患の発症頻度が出ています。  そして、単に、たしなむだけというふうに1本ないし9本の喫煙では年代に関わらず 約1.5 倍のリスクとなることが示されています。特に、40歳代の男性で1日40本以上の ヘビースモーカーは非喫煙者に比べて、実に、5.5 倍という相対危険度となっています  こういったもので禁煙による虚血性心疾患に対する効果ですが、これはFramingham Study、アメリカでもやはり18年以上にわたって行われておりますが、そのFramingham Studyによりますと禁煙によって虚血性心疾患の危険度を半減することが明らかにされて います。ただし、この恩恵を受けるのは65歳以下に限られるので、禁煙は若いうちに決 断すればするほど、効果があるということになります。  他にも心筋梗塞に対する禁煙の効果を調査した成績があります。死亡率が40、ないし 60%減少するということが、この表5に示されています。さらに受動喫煙と虚血性心疾 患の危険度について、肺がんの発症が明らかにされています。Steelandは1992年に環境 喫煙が生涯非喫煙者の心臓病死の危険性を増大させるか否かについて9論文を検討した 成績を発表しております。その研究が7論文は関係がある、1論文が関係なし、1論文 は女性のみに関係を認めております。  さらに、生涯非喫煙で全く環境喫煙のない女性が、生涯(平均79歳)にわたる虚血性 心疾患死の危険は4.4 %、環境喫煙に曝露されると4.9 %、喫煙者と生活すると6.1 % と上昇しております。同様に男性(30歳から74歳)では6.3 %、7.4 %、9.6 %という ふうに増加が認めているという結果が出ております。以上です。 島尾座長  どうもありがとうございました。前回の会議の最後のところで今までのいろいろご意 見をいただいたのを少し事務局の方で整理して提示していただくようにお願いしたので すが、防煙につきましては前回かなりいろいろご意見をいただいたのですが、分煙の進 め方、あるいは情報提供という問題、基本的な原則は一致していると思いますけれども 具体的にどう進めればいいかという問題について、まだご意見、十分伺っていないと思 いますので、今日はできればまず分煙の問題について具体的にどう進めればいいか、ど うやればそれを効果あるように実現できるかとういうような点についてご意見をいただ ければと思います。  本日の事務局の資料の1のところに分煙、そして情報提供の問題についてこんなとこ ろが問題になるのではないかというところを事務局からご提示いただいておりますが、 委員の皆様方、まず、分煙の問題についてこんな具合に進めたらいいだろうというよう なご意見があれば伺いたいと思いますが、いかがでございましょうか。 大河委員  ちょっといいですか。今日はこういう審議用メモにあるように分煙について、あるい は情報提供について十分審議するというご趣旨だと思いますけれども、今、たまたま喫 煙開始年齢による、特に未成年者等への影響についてのデータのご紹介がありましたの でちょっと質問させていただきたいのですが、五島先生のデータですけれども、さきほ ど虚血性心疾患と喫煙の関係の資料がございましたけれども、頁で言うと14頁ですね。 14頁、15頁だったと思いますけれども。  若年者の方が心筋梗塞の発症が非常に喫煙の影響が出やすいというご説明だったと思 いますが、一般に私ども、喫煙者率調査をやりますと20歳代、30歳代というのはかなり 喫煙者率がもともと高こうございまして、40代、50代、60代になるにつれてだんだん喫 煙者率が低下していきますので、これだけをもってすぐに若年者の場合が影響が出やす いというストレートな説明にはならないようには思いますけれども、喫煙が虚血性心疾 患の危険因子であるということは重要な点であるかと思います。 それで質問なのですが、さきほど富永先生の方でがん等の関係では喫煙開始年齢との 関係のご説明があったのですが、こういう虚血性心疾患の方で喫煙開始年齢、特に未成 年者から開始すると影響が出やすいとか、そういうデータはございますでしょうか。 五島委員  この成績は救命救急センターで収容された患者の喫煙の有無を調べたわけであります が、虚血性心疾患で発症年齢との関連は、これはさきほど富永先生がおっしゃった平山 先生の成績の中にこれは含まれております。そうですね。 富永委員  はい。入っています。 五島委員  ですから、これは例えば、平山先生の成績。 富永委員  6頁です。 五島委員  6頁のところでIschaemic heart disease というのが上から4番目のところに。 富永委員  女性は下から3行目。 五島委員  そういうところに19歳以下、20歳以上という年齢でもって、ここに男女の成績が出て います。これを見ても19歳以下でやはり男性では1.55から2.12、20歳以上で1.52から 1.90と。女性の場合には1.34から4.04、20歳以上では1.55から2.03。こういう成績が出 ておるわけです。  そういうことで一応、若いうちに喫煙を始めると20歳代、30歳代で心筋梗塞を起こし てくる例が、しかも、急性に発症してくる例が非常に多いということが救命救急セン ターの成績ではっきり言えると思います。以上です。 島尾座長  他に。はい。どうぞ。 山崎委員  この委員会で医学的なデータ、あるいは研究について徹底的な議論をするという状況 にはないと思うのですね。ですから、個々のデータの内容に立ち入って、特に、私のよ うな非医学専門家には伺う資格はないと思いますが、一般には私どもも社会科学、人文 科学という分野で実験のできない学問に従事していますと、統計を見るとかいうことは 当然、重要な要素になるのですが、その代わり、私どもの場合はあるひとつのファク ターと他の引き起こされる結果との関係を考える場合にはそのファクターを純粋化する と。つまり、他の要素と重なっていないということを確認するわけですけれども、平山 疫学、その他の調査ではそういうこと、注意はどういう方法で行われているのか伺いた い。  例えば、たばこの害というものは当然、たばこを吸う人にはストレスの高い人が多い だろうし、あるいはスポーツをしない、運動をしない人が多いような、これは単なる経 験的な感覚ですから不正確かもしれませんけれども、そういった運動不足だとか、スト レスだとか、住居環境とか、そういったものをどういうふうにして捨象されてたばこと 害の関係をお考えになるのか、そこを伺いたいと思います。 富永委員  私からお答えさせていただきます。たばこと肺がんの例を取りましても、肺がんはた ばこ以外にいろいろな因子が関与しております。また、たばこは肺がん以外、いろいろ な疾患と関係があります。  それで、特定の因子と特定の疾患の因果関係を議論するときには、それのみを見てい ては、山崎委員がご指摘になったように他の因子の影響かもしれない、見かけ上の関係 かもしれないということがございますので、疫学的に我々が常識的にやっているおりま すのは、一応、可能な因子、全部というわけにはいきませんけれども、10、あるいは 20、30ぐらい調べまして、その中で特に重要なものを数個以上選びだして多変量解析法 を使いまして、他の因子を統計学的にですけれども、全部、補正しまして、その因子と その疾患の関係がまだ残るかどうかを調べております。これが一般的に国際的に使われ ている方法です。 内山委員  今日は分煙と情報提供というテーマが出されておりますが、今のお話も一応、情報提 供の中の一部の議論になるのではないかと思います。情報提供というのはどういう情報 があるかということを、それを知らない人に伝えるということが目的になっておりまし て、その情報が確かかどうかということは、これは客観的な評価によって確かかどうか ということがわかる。客観的な評価と申しますのは、学会の発表であったり、あるいは ある専門家の判断であったりということになろうかと思います。  さきほどの五島先生の臨床のデータというのは、これは臨床で得られたデータを数値 化してお示しいただいたのであって、それをどういうふうに結論するかということをお っしゃっているのではなくて、そういうような数値の関係があるよということを五島先 生、おっしゃっていました。ですから、それを判断をするのは見た人が判断をするとい うことになります。それは情報を得た人がその情報をどう解釈するかということになろ うかと思います。  私が申し上げたいのは、臨床のデータというのはそういうようなところからスタート する。疫学はそうではありませんで、それは富永先生からもお話がありましたように、 きちんとしたできるだけの解析をして客観的な信頼性を高めていくというお話になると いうことだと思います。  そういう意味で、情報が出てきたときに、証明されていない情報は扱うべきではない というような雰囲気がややもするとここの会にあるような感じがするのですが、今の人 間のデータなどについての考えを伺っておりますと、例えば、多くの若年層をサンプル として選び、無理やりたばこを吸わせて、その人が将来、どういう病気になるかという ことを証明をしない限り情報提供もできないことになります。まるで動物実験のような 感覚でお話が進んでいるような感じもいたしますので、そういうことはできないのだと いう前提でお考えいただかなければならないのではないかという気がいたします。 島尾座長  心筋梗塞というと普通はだいたい40、50歳以上の方がなりそうな病気の印象を持って いるわけですけれども、それが非常に若年者に多いというのがひとつ臨床的に言えばか なり問題になってくる。それで因子が何だというのでお調べいただいたら、喫煙が関連 しているケースがかなりあるという臨床の経験、これを将来はどう疫学的なデータや何 かで裏付けるかということになってくると思うのですけれども、考え方はそういうこと だと思いますけれども。  少し分煙についてご意見、何かあれば伺いたいと思うのですが、分煙の進め方等につ いては何かご意見ございませんでしょうか。 内山委員  よろしいですか。私は特に、強調したい意見があるというわけではなくて、ご発言が ないものですから、1、2回のときに申し上げました分煙というのはある種の感覚的な 問題からスタートしてモラルの問題も含めて議論がされております。そういうものの方 がむしろわかやすいのかもしれません。ところが証明とか、根拠とかいうことになりま すと、そういうことはそれなりの根拠があるのかと言われると、それは今、申し上げた ように感覚側からスタートしておりますからなかなか根拠がないし、数値として指標と して出すというわけにもいかないと。  ですから、分煙というのはさきほど来、出ております受動喫煙のお話ありますね。こ ういうものはさきほどちょっと動物実験と申しましたが、動物実験のデータからスター トして、それは人間の影響を外挿するよりしょうがない問題だなという感じもいたしま す。ですから、そういったようなデータを集めるということは必要だと思います。当然 のことながら、データはあると思います。  それから、分煙と言いますのは、いったい煙の中のどういうものがどうやって拡がっ ていくのかと。例えば、このぐらいの広さのところで1時間に10本のたばこが消費され た場合には、その空気の中に測定できるものしかできませんけれども、何がどのぐらい あるのかといったようなデータ、これもあるわけです。データが。  したがいまして、分煙というのは、ただ、離れて吸っていればいいと、電車の中で吸 わなければいいというものでもなし、分煙という意味をきちんと分析レベルからはっき りわかるような分煙にまで持っていっていただきたいというのが私の希望であります。 島尾座長  どうぞ。富永委員。 富永委員  資料1のところに今回は分煙を中心にしていくつかの論点が書かれておりまして、既 存の指針のところはそれぞれの厚生省、あるいは労働省、人事院などが出している勧告 でございますので、これは尊重する必要があります。情報提供も非常に大事なことであ りまして、一般的には副流煙の方が主流煙よりもアンモニア、アクロレイン、あるいは アセトアルデヒドのような有害物質の濃度が高いということ、なおかつ、刺激も強いと いうことが知られています。 たばこ煙中の成分、割合などは、副流煙に限ることはな いと思います。できれば主流煙につきましてもいろいろな成分の濃度、全部の有害物質 の濃度と言いませんけれども、ニコチン、タールだけではなくて、包装紙に書かなくて も、一酸化炭素、その他、測定された成分全部を示してほしいと思います。タール、ニ コチンを低くしようとすると、逆に一酸化炭素の濃度が高くなってしまうことも十分考 えられますので、そういったデータも併せて開示、情報提供していただけないかと思い ます。  これは情報提供と言いましても、たばこを製造する側がデータを持っていると思いま すし、また、逆に、そういった研究もやれないことはないと思います。主流煙、副流煙 の有害成分、タール、ニコチンのみでなく、すべての有害成分のデータについて、情報 提供してほしいと思います。最近は環境ホルモンなども問題になっておりますけれども ひょっとして製造過程で何らかの環境ホルモンも含まれるようになるかも知れません。 これは、我々としては大変関心があるところです。 島尾座長  はい。大河委員。 大河委員  主流煙とか副流煙中のいろいろな成分のデータについて情報提供すべきであるという ことでございまして、それ自体、特に、反対することではないのですけれども、データ として内外のいろいろな測定データというのは公表されているものだけでもかなりある と思いますし、タール、ニコチンだけではない、いろいろな刺激性成分とか、ガス成分 の数値もあると思いますけれども。  今のちょっとおっしゃられた中で副流煙の方が主流煙よりもそういう、いわゆる有害 物質と言われているような成分の量が多いというご指摘でございましたが、単純に比較 するとご指摘のとおりだと思います。  これは測定法上の問題がございまして、例えば、主流煙を測定するときは国際的な標 準喫煙条件ということで、1分間に1回、1回2秒、1回35ml、吸殻の長さを30mmとい うふうに残して、それで粒子成分を捕捉して、あるいはガス成分を捕捉して、その中の 成分を測定するという形を取りますが、一方、副流煙は58秒間、1分間のうち、先端か ら立ちのぼるものをトータルでやはり30mmになるところまでで集めて取りますので、そ ういう取り方をする限りは副流煙の量、かなり多く出るわけで、ものによって数倍、高 いものでは10倍以上になると思います。  問題はその副流煙をそのまま直接、受動喫煙するかという問題がありまして、決して 実際はそういうことはありませんで、こういう環境中に実際、希釈拡散された形で、い わゆるEnvironmental Tobacco Smoke、ETSという形でノンスモーカーの方が吸われる ことが通常ですので、副流煙の量が多いので、即それは受動喫煙の健康影響があるとい うふうな情報提供は非常に問題があるのではないかというふうに思います。 島尾座長  今の点で分煙のところに書いてある分煙の目標を達成する客観的指標、何で測るのだ ということにも関連してくると思うのですが、今、普通は何を使っておられるのでしょ うか。環境の中のそういったたばこの問題を測定しようとする場合に。 富永委員  はい。全部知っているわけではありませんけれども、一番簡便な方法は浮遊粒子状物 質の測定。 島尾座長  粉塵量。 富永委員  そうです。それから、ニコチンの代謝産物のコチニンの測定。 内山委員  だいぶ古い話で大変あれなのですが、こういうのは環境問題として取り上げている ケースと、発がん因子として、がん研究班が取り上げるケースといろいろな取り上げ方 がありますのですね。  そして、私が知っている範囲では今、お話の一般に議論の中に出てくる、いわゆる誰 でもわかっているような有害物質ではなくて、多環芳香族であるとか、いろいろな他の 形のいろいろなものがたくさんありますけれども、それはたくさんあるということはも ちろんたばこをやっていらっしゃる方は十分、ご存じです。  それらについてさきほど申し上げたのです。というのは、どのぐらいの部屋で1日10 本吸った場合には昼間はこのぐらいになる。あるいは夜はこのぐらいになる。その存在 量というものは見当がついているデータもあります。  しかしながら、では、これはどうだ、あれはどうだと言われますと、それはなかなか 全部のデータが揃うわけではありませんから、私がお願いしたいのは、分煙というのを 今の常識での分煙の議論に留めないでいただきたいとさきほど申し上げたはずです。  実は、これは世の中がどんどん変わってきて、昔は特異体質だと言われていたものが アトピー性皮膚炎という名前できっちりした病気になって、それに対する研究もどんど ん進んでいるようなことであります。さきほど富永先生、ちょっと言われました環境ホ ルモンだって、これはもう昔は何の問題にもならなかったわけですから、これ大問題に なって、これは地球全体がこれに。ダイオキシンがそれのちょっと前に話題になりまし た。ただ、化学物質過敏症というのが今、出ておりまして、これはつかみどころがない わけです。つかみどころがないけれども、これも何とかしなければいけないという議論 になっています。  それに比べると口の中に入れる煙、煙だから食べ物と違うと言われるかもしれません が、体の中に入っていくものについてもう少し取り組みをきめ細かにやられた方がいい のではないかという感じがいたします。  私は最初から申し上げておりますように、吸う人自身に対して、それをよく知ってい る人に対してたばこをどうしろ、こうしろということを申し上げているつもりは全くあ りません。知らない人に対する分煙、及び情報提供というのが大事だということを申し 上げたわけであります。 島尾座長  分煙の機器あたりもかなり最近は進歩してきていると思うのですが、それを設備する となればコストの問題も出てくるのですが、そういうのを含めて何かご意見ございませ んでしょうか。山崎委員。どうぞ。 山崎委員  この場所で、あるいは世の中一般で誰もが同意できる一番いいポイントが分煙だろう と私は思います。  新聞の報道によりますと日本たばこ株式会社は元喫煙者から訴訟を受けるそうであり ますから、その訴訟の席ではおそらく医学論争ももっと徹底したことが行われるだろう と。この場所はそういうことをやるのに相応しい場所ではないだろうと。そうしますと 医学理論に基づこうと、あるいは例え感情論に基づこうと、たばこという嗜好品が嫌い だという人がいること、それも多数おられることは、これは確実な事実で、これについ て疑う人間は一人もいないわけです。そうしますと、民主主義社会において多様性を相 互に認めながら、しかし他人に不快感を与えないということについては全員が一致がで きるだろうと。  ただ、この問題についても少しご注意いただきたいのは、人間が何に不快感を覚える かというのは大変社会学的にも難しい問題で、ここからあるものが嫌いだ。したがって 社会的に禁止せよと、あるいは制限せよという議論が風潮として起こることは私は若干 懸念しております。  既に、そのことはあちこちに書いておりますから、敢えて繰り返しませんけれども、 アメリカのカリフォルニアでは既に香水に対する嫌香水運動と言いましょうか、これは もちろん単なる気分の問題としてではなくて、そこからストレスが起こって健康障害を 起こすという議論さえ進んでおります。こういう議論を拡げることについては私は一般 的に不安を覚えています。  それから、例えば、たばこというものについても、これは確かに嗜好品として特殊な ものでありまして、人にも臭いを、あるいは煙の感触を与える。コーヒーとか酒とかと いうものは、酔っぱらいが不快な行動を取るということを除けば、あるいはアルコール 臭いというようなことを除けば、直接的被害が少ないのに対して、たばこの場合にはは っきり臭いがすると。そういうようなこともかれこれ考え合わせると分煙ということを 進めるのは当然であろうと思います。  ただ、分煙を精神論でやっていても私はなかなか進まない。もしも、厚生省、ないし は国が分煙を進めるのであれば、当然、それに対する財政的な援助を行うべきである。 分煙の設備、施設については日進月歩のようでありますし、いろいろな機器、あるいは 施設というものも設けることはかなりできるようになっているそうでありますから、例 えば、そういうものを設置した場合に一定程度の補助金を与える。これは地方自治体を 通してであるということなると思いますが、技術的には。しかし、もとはこれは中央官 庁から予算が出るわけですから、そういう予算措置を講ぜられたい。  その財源をどうするのだと言われれば、私は現在、非常に巨大な額にのぼっているた ばこ税というものの一部をそれに還元すればいいのではないかと。ガソリン消費税、自 動車重量税、その他はすべて運転者に還元されています。あるいは自動車会社に間接的 に還元されている。  そういうことを考えれば、たばこ税のごく一部を分煙の施設のために振り向けるとい うことは私たちのこの委員会の提案としてかなり説得性もあるし、また、我々の与えら れた分に適合しているのではないかと、そういうふうに考えております。  前回も申し上げましたけれども、たばこのマナーの問題につきましも街頭で歩きなが らたばこを吸う、そしてポイ捨てをするという習慣。これは最近、むしろ増えているの でありまして、それは多分に吸うべき場所がなくなって外に出るほかないので吸ってい る。そういう状況であれば戸外に灰皿を設けて、その管理を誰がやるか、その管理者に 対してどういう費用負担をするかというようなことを我々が提案しておくというのは時 宜にかなっていないかというふうに思います。 内山委員  ここの議論もやはりいわゆる通常理論になっていくのが残念でございますが、何かあ ったらお上が金を出してくれなければやらないよという、要するに自分で何をしなけれ ばならないかということ以前に、何をしてもいいと。しかし、それで具合が悪いのなら 全部、国が費用と時間と場所を作らなければ駄目だというような感じの議論になってく るのは避けた方がいいのではないかという感じがいたします。  ポイ捨てのお話が出ておりましたが、ポイ捨てについても同じことが言えるのかもし れませんね。それは拾うのは国が拾えばいいではないかと。捨てるのは自由だという感 じの議論に聞こえてならないわけです。  ただ、それをやっておりますと、とてもとてもまとまらないし、それで税金の使い方 はこの委員会の権限外ですから、それはまた別として、ここではやはり分煙というのは どういう意味があって、分煙はどうやったら達成できるのかということを実はお話をい ただきたいと私は最初から申し上げています。分煙と言っても目で見た分煙ではありま せんよと。感情論を申し上げているのではなくて、目で見た分煙ではありません。測定 して分煙ができあがっているということを確かめてください。  そうやらないと分煙にはならないのですよということをたばこを吸っている人はご理 解いただきたいから、それなりの情報を作って情報提供するのがいいのではないかとい う感じがするわけです。これは分煙、完全にやっているのに何を言うかといったような 話に、そういうことに流れてしまうのを恐れるわけでございます。  したがって、分煙に関しましては、これは厚生省も今、国が費用を出せというお話が ありましたが、せっかく費用を出すなら今やられている分煙、これが完全だと思われて いるような状況の下で、果して健康に影響のある物質がきちんと分けられているかどう かということを調べていただくような研究班を作っていただきたい。1年ぐらいかかっ てもいいですから、それをやっていただきたいと思います。  香水のお話も出ましたけれども、私も非常にそういうことには興味がありますが、結 局、臭いの健康影響というところまでいかない限り、そんな問題は起こらないわけです したがって、香水が嫌いだということで問題が起こっているわけではなくて、健康影響 というものがあるのではないかという議論が起こっているので、これはあるかないかと いうことのやはり何らかの決着がつくまでは続くことだろうと思います。  悪臭防止法とか、騒音防止法とかいう防止法の法律もある。これはやはり健康にある 程度の間接的な影響があるということからスタートした法でありまして、単なる好き嫌 いということではありません。その辺をご理解いただきたいと思います。 富永委員  さきほど分煙対策のコストの負担のあり方について山崎委員がご意見を述べられまし たが、私も方針としては賛成です。たばこ消費税などをこれに充てるべきです。たばこ 税は大雑把に言って約1兆円が大蔵省に入りまして、また、別の1兆円が地方自治体へ 入っています。歳入として一度入ってしまうと目的がはっきりしなくなるのですね。こ れから分煙対策を進めるというためにはこのために使うのだということを明らかにした 上で、さらにたばこの税金を上げていいのではないかと思います。  本日は幸田委員がご出席でないのですが、幸田委員はたばこの価格のことを国際比較 されたり、防煙ということも考慮してたばこの価格を上げたらいいのではないかと言っ ておられました。単にたばこ価格を上げるというのではあまり意味がありませんので、 やはり分煙対策に使うのだということをはっきりした上で上げれば、実際に分煙対策が 大いに進むのではないかと思います。 内山委員  私もそれに賛成いたします。さきほどの入ったものの使い方をここで云々するのはい かがかと申しましたけれども、そうでなくて目的を明らかにしていくことには賛成です 大河委員  ちょっとよろしいですか。今、分煙対策のコスト負担のあり方についてのご意見が出 ていると思いますけれども、基本的には行政として分煙対策により積極的に取り組むと いうことは大変意味があるとは思います。  税の問題、ちょっと後でコメントしたいと思いますけれども、そういう面で、ではど ういうことができるかということで考えますと、ソフト面で、例えば、一昨年、厚生省 自らが「公共の場所における分煙のあり方検討会報告」を発表されていらっしゃいます けれども、実は、これ実際にはあまり実効性という点でちょっと問題がありまして、せ っかくいろいろな場所においていろいろな分煙の基準をなかで盛り込んでいるのですけ れども、これはそれぞれの場所でガイドラインのような形に実際、なっていないもので すから、実効性の点で問題があると思いますので、きちんとしたガイドライン化して、 その中にはさきほど出ていたような分煙機器の導入マニュアルみたいなものも含めたら いいのではないかなというふうに思います。  税の問題なのですけれども、前々回あたりでもちょっとご紹介をしたと思いますけれ ども、日本のこういうたばこの税制というのは他のいろいろな間接税であるとか、いろ いろな同じ嗜好品的な課税である酒類ですね。酒類はだいたい高いものでも税は40%ぐ らいでして、低いもので20%程度でございますが、あるいは10%ぐらいのものもありま すけれども、たばこはもう既に60%の担税物品でございますので、これ以上、たばこに 税負担を求めるというのはいかがかなというふうに思います。  ただ、行政としてどうやって具体的により積極的な分煙対策を進めるかというのは、 いろいろ知恵を出したらいいのではないかというふうに思っております。 川口委員  さきほど内山委員が目で見える分煙ときちんと測定をした上でのレベルでの分煙とい うふうに2つに分けておっしゃられて興味深く伺わせていただいたのですけれども、質 問がありまして、目で見える、目で見た分煙と測定した上での分煙という、その2つの 間の違いと言いますか、違いが何を意味するのかということをお伺いしたいという質問 です。  いただいた資料の3頁、公共の場における分煙指針というのがありまして、これは縦 軸、喫煙、分煙、A、B、C、Dというふうに分けてありますが、まず、これはまずは 目で見える分煙のところに入りますけれども、これらの場所でいったいどれぐらい実際 に分煙が今、行われているのかを、ひとつ教えていただきたい。それによってどれぐら い今後、分煙のための努力なり、費用負担が生ずるかということが出てくるのではない かと思うのです。  目で見える分煙というのは多分、測定して分煙しているかという話の手前にあるので はないかなという気がしまして、実際、現実に目で見る分煙のところがどれぐらいにな っているかということを踏まえた上で、それと測定した分煙というところの差がその次 に把握されないと、コスト負担とか、たばこ税とか、いろいろ議論出ていますけれども 実際にそこはよくわからないのではないかと思います。  それから、3番目に測定された分煙、渋谷の町なんかでSOXどれぐらい、NOXど れぐらいというのが電光掲示板で出ていますけれども、例えば、そういうふうにそもそ もきちんと、さきほどは2つぐらい指標があるというお話が富永委員からありましたけ れども、きちんとそういうことで把握できるような方法論なりが相当程度確立している と考えればよろしいのか。  あるいはそれをそもそもこれからやろうということなのか。それによってまた目で見 る分煙のところも結構、大事なのではないのかなという気もしますし、ちょっとその辺 が素人でわかりませんので、いろいろな方にお教えいただければ幸いでございます。以 上です。 内山委員  私がお答えできる範囲のところのことだけ、今のご質問の最初のところだと思います 目で見ると申しますか、五感で感じられる、五感というのは目とか臭いとか味も入りま すけれども、耳も入りますが、官能検査で、五感で判断した上での分煙というのが現在 言われている分煙です。  ところが分析レベルでの分煙というのは、本当にたばこの影響の恐れがないかどうか ということを確かめた分煙と言いますか、それが今、すぐできるとは思っておりません 私が言っております分煙というのは、今やっている分煙という五感で感じる分煙という のは実際、分煙ではないということを、本当の意味での分煙になっていないということ を申し上げたかったからなのです。  ここにいろいろありますけれども、例えば、皆さん、よくご存じの航空機の中の禁煙 席というのがあります。あれは喫煙席と禁煙席というのは分煙なのです。一種の。しか し、全く意味がない。なぜかと言えば、禁煙席に座っていて大変な迷惑を被ることがあ ります。ここにありますような、例えば、飲食店、店舗内がありますね。これだって今 申し上げました感覚的なレベルから言いましても形式的に分煙であるけれども、感覚的 には分煙でないというレベルがあると思います。  これは川口委員、十分、おわかりいただけると思います。形式的には分煙であると。 確かに吸う場所は違っている。しかし、感覚的には分煙でない。これは臭いがする。す ぐ頭痛くなるという感じですね。  ホテルなんていうのは前に泊まった人がたばこを吸ったということがとても我慢がで きないという人がたくさんいるわけです。これは我慢ができないというのはそんなこと 言うべきでないというご議論がおそらくあると思います。これは科学的なことでない。 こんなところで議論するべきでない。  確かにそうだと思いますが、これは私の言っている分煙のレベルというのには大事な ことでありまして、形式的な分煙というのは場所を変えるだけ。感覚的な分煙というの はその人が大変な迷惑を被る。これは何回も申し上げて恐縮ですけれども、物質過敏症 とか、あるいはアトピー性皮膚炎の例を挙げるまでもなく、きっとそのうちにわかる。 今のうちやっておかなければきっとそのうちにわかるという感じの感覚的にわかるとい う。  あるいは分析レベルというのは、本当にその分煙が効果的にできているかどうかとい うのを試すには測定をしなければならないのではないかということです。測定はタイオ キシンの測定よりははるかに楽です。しかしながら、自動的にどれぐらいの測定できる のか、今、よくわかりません。やろうと思えば、ある程度、あるレベルを検知するとい うことは、これはもうおそらく大河さんに伺った方がいいかもしれませんが、かなり有 効だと思います。 川口委員  質問の意味がちょっと。目で見る分煙は五感の分煙と測定レベルの分析レベルの分煙 との差の意味というふうに伺ったのは、今、ご説明いただいたということでわかるので すが、要するに、測定方法論の開発だけで済む話なのか、あるいはもっと他に何かする ために必要なことがいろいろあるのかという、要するに、そこからそこにいくまでの何 が問題なのかということだったのです。言い方悪くて。 内山委員  方法論というのが私、間違えました。分煙の方法論なのです。それは。これはもう測 定の方法論次第でどのようにも組み立てられていいはずだと思います。 大河委員  では、技術的な方法論の方でちょっとコメントさせていただきたいと思いますが、2 つあると思います。ひとつは、客観的な指標が適当なものであるか否かという点ですね もうひとつは、分煙の対策技術として確立されたものがあるか否かということだと思い ます。  最初の方の客観的な指標、内山先生のお話で分析レベルということだと思いますが、 これは私ども、実は、今の対策技術と非常にリンクしておりまして、例えば、JRとの 共同研究でグリーン車がひとつしかないような場合に喫煙席と禁煙席というのがうまく 吸わない方にたばこの煙の迷惑を与えないような形でできるかどうかということで共同 研究をやりまして、結果としては、例えば、一番最近では秋田新幹線「こまち」に入っ ておりますように、途中で喫煙席と禁煙席をセパレートしまして、それぞれの空調をコ ントロールしまして、喫煙席のたばこの煙が禁煙席の方に決していかない、そういう気 流の流れを作ると。それから、特別の脱臭フィルター等の入った空調設備にする等々で 技術的にできる場合があると。  これは一般のオフィスにおいてもそういう対策技術はまだ完全に確立したという状況 ではないと思いますけれども、いくつかいい技術が導入されつつあるという状況だと思 います。  それで問題となる客観的指標でございますが、さきほど富永先生もおっしゃいました けれども、今、ちょうど私ども、対策技術をチェックするときに客観的指標を何にする か非常に悩みまして、やはりある程度、簡便な指標でないといけないということで、い ろいろな成分の候補は考えられるわけですけれども、結果としてはやはり粉塵、これは 例えば、ビル管理法で0.15ミリグラム/立方メートルという基準がございますけれども 例えば、そういう粉塵のようなものですと比較的どこでも測定できるということで、こ れを当面のマーカーにしております。  一方、コチニンとかニコチンの場合、生体内に入ってきてニコチンは代謝されますか ら、尿とか血液とかというサンプルが必要になりますので、通常のところではちょっと なかなか客観指標として使用するのは難しいかなという感じでございます。  ところで粉塵はたばこ特異的な成分では必ずしもありませんので、より特異的な成分 でやったらどうかということで、研究レベルで行われているのはあると思いますけれど も、実際、フィールドでなかなかいい客観的指標として粉塵以外にあるかというと、な かなかこれは難しい点が今のところあるということで、トータルで考えると客観的指標 は確立しているという状況までには至ってないように思っております。  したがって、この面での調査研究はした方がいいのではないか。そうは言っても調査 研究の結果を待っているとさっきのような対策技術の方まで必ずしも進展しない可能性 がありますので、そういう場合は当面の簡便な指標としての粉塵を使用するということ はよろしいのではないかというふうに思います。 島尾座長  川口委員から実際、こういうのでどのぐらいやられているのだというようなお話がご ざいましたけれども、人事院が昨年の4月に「職場における喫煙対策に関する指針」と いうのを出して、ここから国家公務員の職場ということでいたしまして、今年の1月に 実施状況、どう変わったかという調査をやっておりまして、それを見ますと平成8年の 6月に比べて平成10年の1月には、例えば、事務室内一切禁煙にしているのは職場の割 合が平成8年6月には3.8 %であったのが、17.1%まで増えてきているというような、 一応、前に比べれば実施しているところは増えてきているというような実績はございま すけれども、しかし、今後の予定というのを考えると予定のないというような職場も 47.1%、半数に近いというような状況で、そう簡単にいく問題ではない。  そこでやはり引っ掛かっているのが大きな問題のひとつがやはり資金の問題。それを やる場合の予算措置。そういった問題が障害になっているようでございます。  柳田委員。どうぞ。 柳田委員  分煙につきまして基本的な考え方をまず確認したいのですが、自動車の排気ガスや何 かは大気に放出する前に処理をすることが望ましいとされていますが、たばこの煙の場 合はもし、禁煙場所に全く空気が流れていかないとすれば、大気への放出は無処理でや ってよろしいと。そういう基本的な考えかどうか。そこをまず第1点、確認したいと思 います。 2番目に分煙機器というのが空気の流れを、煙の流れをコントロールするた めの機器と、もうひとつ煙を除去するという意味の機器と、この2種類あるかと思うの ですが、最初の方の煙の流れをコントロールする機器というのは分煙にとって基本的な 極めて大事な機器だと思います。  そこに対して2番目の煙を除去するという機器は、これは適用を厳密にして本当に必 要な場所だけにして、もし、大気への放出が無処理でよろしいということであるならば いたずらに煙を除去する機器で高いお金をあまりかけるのは望ましくないのではないか と、そういうふうに思いますので、どなたか基本的なたばこの煙に対する大気放出への 考え方、ご存じでしたら教えていただきたいのですが。 大河委員  煙のコントロール技術というか、分煙との関連ということですけれども、もちろん単 純に気流をコントロールするだけですと問題となっている成分がそのままどこか他へ拡 散するということも考えられますので、両方入って、つまり、気流を調整しながら問題 成分を除去してしまうという両方入っている方が望ましいとは思います。実際に、そう いう機器も一般に導入されていると思います。  例えば、さきほど粉塵として取ってしまう方式では、フィルターで取ったり、電気集 塵で取ったりというようなことで行われていると思いますし、最近ではもっと新しいテ クノロジーを導入した除去装置もあると思います。  ただ、費用対効果、あるいは場所の制約の観点でそういう効果、除去装置のついた分 煙機器を導入できない場所も当然あると思いますので、そういう場合は簡便な方法とし てはパーティションでやる方法とかということもあると思います。これは気流を調節す る以前の単純なパーティションです。等々、非常に簡単なやり方からかなり経費のかか るところまでいろいろあると思います。そこはやはりメニューとしてもう少しきちんと まとめあげるというのが別の作業でいるのではないかと思いますけれども。 柳田委員  そうしますと分煙ということは、単に禁煙場所、吸わない人のところにたばこの煙が いくのを防ぐと、そういうことだけの目的ではなくて、たばこの煙成分を除去して大気 に放出するという、そっちの方の意味も分煙には含まれているのでしょうか。 島尾座長  多分、全体の量からいきますとどうなりますか。 大河委員  私、答えていいかどうかちょっとあれですけれども、別にそういう点では既に分煙機 器を導入したとかという場合には、当然、そういった問題成分を除去する機能の入った もので前提にしているところもかなりあると思いますから、そこが含まれているという 理解で一向に構わないと思いますけれども。  そういうものが必要十分条件であるかというと、決してそういうことではなくて、結 局、さきほど言いましたように、非常に簡便な方法でやらざるを得ない場所も当然ある と思いますので、いろいろなものを全部包含した概念であると広く捉えた方がよろしい のではないかと思いますけれども。 柳田委員  それからもう1点、グリーン車が1両しかないときの話のちょっとさっき伺いましけ れども、私、どこの国かで1車両の中にガラスドアで仕切ってあって、喫煙場所と禁煙 場所と分かれていて、1両の中で。そういうのをやはり物理的に仕切ってしまう方が一 番確実のような気もするのですが、この流体力学と言いますか、そっちの方で完全に空 気をさらっていけるというような技術があるなら、車両内の行き来には仕切りはない方 が便利かなと思います。 富永委員  今日は分煙対策を進めるにあたっての基本的なことを議論しているのですが、この論 点のところにひとつ、私が欠落していると思うのは、やはり分煙対策を推進するには分 煙のための設備、喫煙室を設けるとか、あるいは今、言った除去装置を云々、といった ことの他にやはり法律、条例など、きちんとした制度を作って、ここでは吸ってはいけ ないというようなことを定めないと進まないと思います。  一番いい例がその次の頁、2頁に公共の場における分煙指針というのがございまして 一番右側に道路上、人が密集するところとありまして、そこは禁煙になっているのです けれども、実態は、くわえたばこをしながら道路上を歩いている人が非常に多いのです この人たちに対してはどこか道路の周辺などに喫煙場所を設けるのもひとつの方法かも しれませんけれども、やはり道路は、公共の場の連続でございますから、マナーの向上 と併せて何らかの条例、あるいは法律などできちんと取り締まらないとうまくいかない のではないかと思います。そういった面も論点の中に含めるべきだと思います。 松本委員  内山先生のご説明との関係なのですが、私、分煙というのはむしろ五感でわかる次元 の話だというふうに最初は思っておりまして、日本では五感でわかるレベルでも分煙は かなりまだまだ不十分だという印象を持っておりまして、五感でわかるレベルの分煙で あれば、そんなにコストをかけなくても多分できるのではないだろうかと。パーティシ ョンで仕切るなり、あるいはレストランなんかで喫煙コーナーと禁煙コーナーを少なく とも分けるとかということをもっとしていけば、直接的な迷惑は少し減るだろうと。  そんなのはコストの問題ではなくて、むしろ情報提供の問題であって、喫煙のリスク 害等についての趣旨徹底がきちんと行われれば当然、例えば、お客の側からそういう要 望が出ればお客を大事にするレストランとしてはそれに対応した処置を取るようになる だろうと。そういう意味でユーザーの声が出れば業者は動くと。JRだって禁煙、昔、 なかったわけですよね。禁煙車ができたし、少しずつ増えているということですから、 これは啓発でかなりいくと。  だから、啓発のための費用をたばこ税からどんどん出すというのは構わないけれども 民間企業に対して助成金まで出す必要は多分ないだろうと思っていたのですが、そんな のはあまり意味がないのだと。つまり、表面的な喫煙場所と分けるだけでは意味がない ので、もっと物理的に遮蔽しないと駄目なのだということになりますと、確かにもっと もっとコストがかかってくるのですけれども、それでも客商売をやっている事業者であ れば、お客の声があれば少しコストをかけてでもそういう対応をするのではないかと思 うのですね。  問題は、そういうお客の声の影響を受けないところの公共施設と言いますか、マーケ ットで動かない部分なんかについてはやはり法律とか条例とかでルールをはっきりさせ るのが一番いいというふうに思います。  国によっては民間のレストラン等、あるいは飛行機等、いわゆる民間についても一定 の不特定の人が集まるところでは法律で禁止している国は確かにあるのですけれども、 そうした方がトータルとしてコストが安くなるということであれば、それもひとつかと 思いますが、そこまでしなくてもマーケットをうまく動かしていけば、あるいは事業者 の側のコスト負担でうまくそんなにかからずにやっていけるのであれば、むしろそちら の方がいいのではないかと思います。  先日、国際会議でサンフランシスコに行くときにJALに乗ったのですが、安売りチ ケットで、しかもチェックインが遅くなったからなのか、禁煙席はないと言われて、喫 煙席の、しかも一番後ろのトイレの前の隣が喫煙コーナーというとんでもない席に押し 込められまして、これはごねたらもうちょっとビジネスクラスに上げてくれたかもしれ ないのですけれども、ちょっとはしたないので我慢していたのですが、こういうのは JALの側でコンピューターを使って、もう少しお客の配置を考えれば何とでもなりそ うなものなのですが、この程度はコストかけなくてもいつでもできることだと思います 柳田委員  不勉強でよく知らないので大河委員か富永委員にお教えいただきたいのですが、受動 喫煙という健康の影響の問題から言うと、禁煙の場所におけるところのそれはコチニン あるいは一酸化炭素量はゼロというのは基準、指標なのか。それともある程度の許容量 おそらく一酸化炭素などというのは自然界にも微量は普通の空気にも混ざっていると思 うのですが、その辺の何か許容量の基準みたいなものはこれまでに設定されたことはご ざいますでしょうか。 大河委員  環境中のたばこの煙に着目した許容量という意味ではまだできてないと思うのですね したがいまして、例えば、さっきは粉塵の基準を申し上げましたけれども、例えば、 COですと、ビル管理法では10ppmという数字が決まっておりますように、そういう 他で、例えば、室内環境基準として定められているようなものを準用しながらやってい るというのが実態だと思います。  ちょっとひとつ申し上げたいのですけれども、さきほど富永先生からこういう分煙に 関連した条例化をもっと進めるべきではないかというお話ですが、そういう方法も選択 肢としてはないではないと思いますけれども、日本人というのはやはり非常に世界でも 割合と綺麗好きですし、知的水準が高い国民だとも言えますので、いきなりそういう条 例化ということを考える以前に、やはりもっと知恵を出すということを考えた方がいい のではないかと。  そういう意味では、今まではたばこを嫌いな方とたばこを吸われる方が非常に敵対す るような感じが今、20世紀末ですけれども、そういう状況があるのですけれども、やは り21世紀はもうちょっと、たかがたばこでそんなにいがみ合うということではなくて、 言わば吸う人、吸わない人が共生するというようなことを基本コンセプトに考えた方が いいのではないかと。  では、どうしたらいいかというと、やはり技術的な対応でできることと、さきほど来 出ているようなやはり節度ある喫煙というか、マナーのない喫煙者がいらっしゃるわけ ですので、やはりもうちょっとたしなみを持った喫煙というのが求められるのではない かと思っております。 富永委員  例えば、道路上でのくわえたばこのことをひとつ具体的な例に挙げますと、確かに今 大河委員がおっしゃるようにいい知恵を出して、あるいはマナーの向上を呼びかけて、 それが徹底して現実にうまくいけばそれでいいと思うのです。言わば、性善説がうまく 機能する場合ですけれども。これはちょっと考えられないですね。  日本は日本なりにという考えもありましょうけれども、やはり公共の場では禁煙とか 決められているよう、道路も公共の場ですから、禁煙対策を進めないとうまく行かない と思います。今、歩行者の多い交差点に行きますと、たくさんの吸殻が落ちているはず です。これが現実なのです。やはり性善説だけではうまくいかないと思います。私はそ のようなやり方で一定期間に効果が上がらない場合は早急に条例なり、法律で対応すべ きだと思います。 川口委員  コスト財政負担論から法律論までいろいろなお話が出ているわけですけれども、もう ちょっといろいろな手段を広く活用するということが可能なのではないかという気が私 はいたしております。  環境の話を例に取りますと、例えば、今、グリーン購入ということで事業所が、例え ば、再生紙を使いましょうとか、リサイクルされた発泡トレーを原料にしたボールペン を使いましょうとか、いろいろなことをやっていまして、それが相当に今、進捗を見つ つあるわけです。 それをやるにあたって、私の印象では環境庁がグリーン購入を推進するための組織を 作るのに非常にソフトに組織づくりをして、そこにメンバーを入れてそこで運動を続け ていっているということがあるわけでして、法律、条例、その他、いずれは必要になる かもしれませんけれども、多分、その前にやるべきことがたくさんあって、それをもう 少しやってもいいのではないだろうか。  やはり環境も状況によってはコストがだいぶ国全体としてかかっていく話ですけれど も、それはいろいろな主体がどういうふうに負担するかという議論がかなり積み重ねら れてだいたいに形ができてきているということでもあるかなという気がしますので、た ばこについてももっと環境のアナロジーで言えば、もうちょっと広くやることがあって その辺がやられてないのではないだろうかと。  法律、条例を否定しているわけではないのですけれども、もっとやることをまずやる ということが大事だろうということと、それ自体がまた教育効果を、あるいは啓蒙効果 を持つということだと思います。  それから、財政の負担の話が出ましたけれども、これも環境の例で恐縮ですが、四日 市、その他でNOX、SOXが問題になったときの話しですが、脱硫装置を発電所、あ るいは工場がつけるということが必要になったときに、その技術開発ができてなければ 実際にNOX、SOXを除去するということは、いくら法律を作っても直ちに可能では なかったわけでして、そのための研究開発、技術開発のコストをかなり財政的には、か なりと言っていいかわかりませんが、財政的に負担したという経緯はあると思います。  ですから、そういう研究開発なり技術開発なりが必要だということであれば、そうい うことには財政投入、資金の投入があってもいいのではないかなと。ただ、事務所など にそれを設置するところに財政資金を投入するということが必要かどうかというのは私 は議論する余地があるのではないかなと思います。以上です。 島尾座長  では、櫻井委員、あと矢崎委員。 櫻井委員  いくつか、皆さんの話を聞いていて、私なりの考えを指摘したいのですけれども、ひ とつ、結論的にと言うか、条例、法律などで決めて駄目にしろ、やめさせろというには 基本的に反対です。  もし、そういうことで解決するなら、未成年者の喫煙は法律があるのですから、もう 解決しているはずなのだけれども、解決してないわけですから、条例を作ってどうだ、 法律を作ってどうだという話とはちょっと問題が別だと思います。それから、ここで検 討すべきはたばこが健康に害があることを前提にすべきと思います。これは私もそう思 います。害でないという方も少しいらっしゃるわけですが、私は害だと思います。  ですから、それをどうやって皆さんに広めて、たばこをやめるように、あるいは分煙 をするようにするかを検討すべきです。一方、分煙するという意味はやはり基本的には 分煙が必要なのはまわりの人にも健康の害を与えるというところの範囲に留めておかな いと、臭うから困るのだというところまで、さっきおっしゃった前の人の泊まったホテ ルの臭いがするから、この部屋は嫌だからというのはそこまで健康に害がある部分には 入るのかどうか、疑問です。そこまで言いだしたら、話が拡がりすぎるし、人込みのと ころにたばこが捨てられているというのは健康の害とは関係ないはずで、その話まで拡 げて議論するのは、無理だろうという気がします。  また、何でも法律で決めろということになれば、禁煙法を作りませんかという話を、 根本からすればいいわけで、たばこは誰も吸えないように法律を作ってしまえばすべて の議論は解決してしまうわけだけれども、そうではないということを、前に申し上げた のですけれども、おそらく皆さんもそうではないだろうと思うのです。  だから、やはりたばこは健康に害があるということをいかに情報提供して、その上に 立って分煙も必要だということがどれだけ拡がるかが重要だと思います。  事実、相当広まってきているわけで、鉄道だって昔は皆、吸っていたわけですけれど も、今はほとんど吸わなくなってきましたよね。大変だけれども、そういったことをひ とつひとつ積み重ねていくこと、そのために行政なら行政に何ができるか、あるいは教 育の場で何ができるかということを考えるということが問題なのではないかと思います 矢崎委員  私は防煙の立場で、要するに、喫煙習慣を未成年者でつかないようにどうしたらいい かということをいつも考えているのです。この分煙の領域では公共の場で、しかも、道 路という開放的なところの分煙をいかにするかということと、それから、閉鎖空間での 分煙をどうするかという2つのポイントがあったと思います。  公共の道路上の喫煙は、私個人的にはやはり未成年者のときに安易に喫煙をしたため に、そのまま習慣性を持ってされていることが大きいと思います。それから、2番目は たばこの習慣性が極めて強いことによって起こるのではと思います。たばこと文化を論 じられるような方々はおそらくそういうことを理解されると思いますけれども、習慣性 が極めて強いというのは今月の最新の『ネイチャー』にやはりコカインとか麻薬と同じ ぐらいの習慣性がある。それはどういう基準で起こっているかというのを相当詳しく分 析した実験的なデータがあります。  いわゆるニコチン性アセチルコリン受容体の問題で、脳の要求域値の変化というのを 動物実験で明らかにして、ニコチンに対する習慣性というのは極めて高いということが 学問的に示されていますので、おそらくそういう習慣性と十分認識のないために道路上 で喫煙が行われるということだと思います。だから、私は防煙の立場でやっていけば公 共の場でもう少し効果があるのではないかと。  また、未成年者の法律で決まっているからいいのではないかということにはならない と思います。  それから、閉鎖空間における分煙は、これは極めて難しい問題で、今、空調が非常に 発達していますので、もう空気というのはそのまま大気に放出するのではなくてリサー キュラーと言いますか、飛行機なんかは完全に酸素を入れ、炭酸ガスを取るだけでほと んど同じ空気を使っているわけですね。  ですから、測定分析レベルからの分煙というのは、もう設備投資が非常にかかるので はないかと。それを完全にして、喫煙者がすぱすぱ吸っていつも新鮮な空気を吸うため にもの凄い設備投資をしていいかどうかというのも、またこれも問題だと思います。  それから、防煙がうまくいかないということはやはり情報提供が的確にいっていない のではないか。今、議論で害がある、害がないというお話がありましたけれども、これ は私、前からもう繰り返し申し上げているように、一次予防というのはなかなか座長、 あるいは内山先生がおっしゃられたように、実験的にどうこうするということができな いわけですね。  ところが二次予防、例えば、狭心症で虚血性心疾患になっている方でたばこをやめる こととやめないことによるプロスペックト・スタディというのをちゃんとアメリカであ りまして、冠状動脈撮影をして心臓にいっている動脈の病変の進展度、あるいは改善度 ということで数値的にでているわけです。これは言わば本当にエビデンスベースドメデ ィシンということで科学的に、はっきりしているわけであります。一次予防はさきほど 言われたように客観的にするには統計学的に詰めるよりないわけですけれども、二次予 防、病気が進展するかどうかということは明らかなデータがありますので、そういうこ とで少しいかにたばこの害があるかということを認識していただく必要があります。  特に、動脈硬化の病変というのは人の場合にはもう10歳未満から始まっているわけで すね。ですから、そういう意味でいかに害があるかという、その情報提供に基づいた防 煙をもう少ししっかりしていけば、公共の道路上のそういう喫煙習慣というものは何と か努力していけば終わるのではないか、改善できるのではないかというふうに思います  閉鎖空間についてはやはりこれは相当な費用が、測定分析レベルでの分煙となります と特に必要になります。それについてはやはり今後どうするか、具体的に対策はまた別 なところで行われるのではないかなと感じました。 島尾座長  今、矢崎委員からも情報提供の問題、出されておりますので、山崎委員のご意見を伺 った後で情報提供の問題に移っていきたいと思います。山崎委員、どうぞ。 山崎委員  基本的に私は今の櫻井委員のご意見に賛成であります。それはもう少しプラクティカ ルな気分もありまして、この委員会というのは当初から申し上げているように構成上に 難があります。たばこの医学的な害を確信され、かつ健康というものを他の人間の諸活 動の中で最も高いものだとお考えの方々、これ別に非難はいたしませんが、そういう 方々の場合、結論は全面的禁煙というのが最も論理的なことでありまして、かつてアメ リカがやったような禁酒法を作る。つまり禁煙法を作って製造者と使用者は監獄に放り 込むというのが理想でありましょう。  それに対して医学的な問題に疑いを差し挟み、あるいは差し挟まないにしても健康が 最高の価値ではないと考える人間もこの委員会にいるのでありまして、その中でどうい う結論を出すか。多数決でおやりになるということはないと、これは座長がおっしゃっ たわけですけれども、もし、そうするならこれは最初から第1日目に答えが出てしまっ ている。議論の必要は全くない。  そうしますと、そういう人間が集まって、これは私は必ずしも日本の現在の国民の禁 煙者と喫煙者の割合を代表しているとは思いませんけれども、この委員会が。しかし、 少なくとも意見の多様性を代表しているとすれば、そこで一致できるのは分煙だけであ る。しかも、それは極めて常識的なレベルで、技術的にどういうことが可能であるかと いうことを論じる他はないのだろうと。  もし、そういうことでは生ぬるいと。不愉快であるとおっしゃるならば、これはやむ を得ないので多数決でご議論をお出しになる。結論をお出しになってこの会を終わられ るのもいいのではないかというふうに思います。 水野委員  何も言わないと来た値打ちがないと思って言うわけではないのですけれども、私はず っと伺ったり、速記録を読んだりしていて思いますことのひとつは、どうしてたばこば かりが言われるのかと。私なんかたばこも問題だということはわかっていますし、僕も やめましたけれども、僕は例えば、選挙運動の騒音公害みたいなものは、これは本委員 会とは関係ないと言われれば全くそのとおりでしょうけれども、僕なんかはあれはもの 凄く迷惑ですね。  例えば、原稿を書いている。何々候補のどうとかいうのをやられたら、それは原稿書 けないですよ。これは明らかに生存権の侵害じゃないかと僕は思うのですが、これは誰 もあまり言われないです。それはバッチつけている人が偉いからかもしれませんけれど も、私はやはりそういう方法、外国に行ってあんなことやっている、選挙運動をやって いるところはないわけですね。  私は皆さんのご議論を聞いていて尤もだと思うこともたくさんあるわけですけれども その尤もだと思うことをやるためにはどうもたばこの問題だけをやられたのでは駄目な のではないかと。他にいろいろ日本は欠点はたくさんありますよという認識も私はいる のではないかと思うのですね。  そういう角度からいくと、まさに山崎先生のおっしゃったように、行き着く先はやは り常識的な分煙というのをどういうふうにやるかとか、未成年者の吸うなということに 法律でなっているのだから、また早くから吸い始めると悪いという、このデータが正し いとすればそうなのでしょうから、早くから吸い始めないようにやるにはどういう策が いいかというようなこと。  それで僕はどうももう1点、気になるのは、童話じゃありませんけれども、北風をび ゅんびゅん吹いてたばこを吸っているやつは全部やめろというやつなので、僕は太陽が 照ればマントを脱ぐという手ももうちょっとこのたばこの中にはあるのではないかと。  私の率直な感じを最後に言わせてもらいますと、僕は何でたばこをやめたかというの を振り返って考えてみると、たばこというのは俺がやめようと思わないとやめないです よ。いくら医師会の権威と言われる方がお前、たばこ吸ったら健康に悪いよと言われて あるいはJTが出しておられる袋の横に、あれもっとえげつないこと書いて、たばこを 吸えば死ぬ危険があるかもわかりませんと仮に書いたとしても、それは死ぬやつは死ぬ ので、俺は死なないと思うだけだと思うのです。だから、やはりなぜ、やめるというと ころにいくかというインセンティブですね。だから、それをちゃんと僕は徹底してやる べきなのではないかと思うのです。  やはり僕は厚生省にお願いしたいのは、たばこの問題なんかでも長期に渡った研究を おやりにならないと本当に説得力はないと思うのですね。私は知っている範囲では本当 の意味で長期に渡って喫煙と肺がんだけではありませんけれども、健康等をやっておら れるのは実は医師会長の坪井先生のところだけなのですね。あれはだいたい20年やって います。 だから、20年前からたばこを吸うと良くないからということを、あそこら辺 の郡山ですが、その近辺で徹底して講演をして歩いて、その当時は医師会長でなかった から暇もあったのだと思うのですけれども、今はやっておられないみたいだけれども、 だから、そういうことをやって、そしてそれがどうなったかというのを何十年も追いか けると。彼は息子が医者でして、これは結論が出るのは息子の代だと。それぐらいかけ ないと駄目だと。私はそうだと思うのですね。  たばこと言えばすぐ亡くなった平山さんの話がいつも出てくるわけだけれども、それ ではあの人が長期的にやられたのかと。研究は長期にやられたけれども。「長期計画問 題懇談会」というのが昔、ありまして、これは長期にやるというだけが特徴だった懇談 会でしたけれども、そういう傾向がないではないと僕等は思うわけです。  以上のことで私は他のことも、例えば、老人を席を譲らないとかというような問題も やはり僕はあるのだと思うのです。それから、法律を守るという遵法精神みたいなもの もやはりあるのではないかと。そういうことを多角的に考えていかないと、たばこを吸 ったら悪いのだということだけを言って皆がやめるかというと、僕はやめないのではな いかと。特に、未成年の場合。  私、この前も言いましたけれども、我々の頃はたばこ吸うぐらいしかいいことなかっ たわけです。おもしろそうなこと。だから、僕は割合早くから吸っていましたから、な るのならなると思っていますけれども。そういうことがやはり僕は何か若い人にインセ ンティブを与えるものはないかと。僕は女の人にたばこを吸う人は付き合わないと。た ばこを吸う男とは。というのをやれば一番僕は効果的だと私は思うのです。そうだけれ ども、それは女が吸っているのだからどうなのだということもございます。これはお笑 いですけれども。 矢崎委員  さきほど私が健康に害があるからたばこを撲滅したらいいという論者と誤解されると これは大きな間違いでありまして、これは私、申し上げたのは未成年の方がたばこを非 常に安易にたばこを吸うことによって習慣性が身についてしまうと。それが大きな問題 になっているのではないかと。  ある程度の分別のある方がたばこを吸われるということは、これは山崎委員が言われ たように自己責任で吸っているのだから放っておいてくれというのは、我々はある程度 の年齢の方はそれはそれで私は許容しています。  というのは、病院でも、第1回目のときにもお話しましたけれども、たばこの自動販 売機をちゃんと置いているのですよね。本当だったらそれを撤廃しろと言って撤廃する わけですけれども、ちゃんとたばこを吸っている方のアメニティを考えてたばこの自動 販売機を置いて。それがいいか悪いかの議論がありますけれども。  我々はともかく目の敵にして駄目だということではなくて、私が喫煙習慣の中止を勧 める場合は、例えば、狭心症とか、そういう疾患があって、あるいは動脈硬化で足の血 管が狭くて歩くと痛いとか、そういう方はもうたばこをやめなさいと。そうしますと水 野委員がおっしゃったように、皆さん、ぴたりとやめるのですね。40年も吸っていた方 が私は絶対、もうたばこが生き甲斐だと言ってもやはりそういう判断でおやめになると  ですから、自分でやめる必要があると思うとやめられると思います。おそらく山崎委 員も私に冠状動脈撮影をさせていただいて、冠状動脈に細い部分がありますよ。先生。 たばこはどうされますかと言うと山崎先生もおそらくぴたりとやめられると。  たばこをやめられなかったという経験はありません。というのは脅かすつもりではな いのですけれども、やはりこういうふうになってという情報が、そういう場合には自己 に対する情報のインフォームド・コンセントになりますから、皆さん、冷静に判断され てどちらが得かということを考えるとやはり禁煙しましょうかということになるのです ね。  ですから、ある程度の、私は来た患者さんにたばこを吸っていますかと言って、カル テに何歳から何本というふうに記載しますけれども、それだけでたばこは悪いからやめ なさいということは私は一度も言っていません。ですから、私が害があって、ぜひ、喫 煙を何とかしてくださいという、防煙という未成年者の喫煙習慣をつけるのを何とか防 止したい。  それでちょっと議論があったのは、自動販売機で買われるから、それをコントロール したらいいのではないかと言ったときに、そういう予防的なことをするのはいかがなも のかと、また山崎委員が怒られましたけれども、やはり何かそういうことで考えるのが そうしますとすればおそらく分煙の問題もやはりもっと進むのではないかなという気も します。 島尾座長  先にあれされたので松本委員。 松本委員  水野委員の考え方に半分強ぐらい賛成したいのですけれども、たばこ以外にもいっぱ い問題があるからたばこの議論をやってあまり意味がないという趣旨の部分はちょっと 別としまして、北風と太陽の、法律で禁止すればけりがつくという問題ではないという こと、それから、太陽の方法をもっと考えろというご説はまさに賛成で、この懇談会は 私はその一番いい方策を探るのが目的だと思います。  ただ、その前提としてたばこの有害性についての一定の共通の見解があって、たばこ はできたら吸わない方がいいのだと。吸い始めるのも時期が遅い方がいいし、なるべく 吸う量も少ない方がいいし、吸っている人もやめた方がなるべくいいのだと。しかし、 それは法律でもって刑罰等で禁止するやり方は馴染まないものであるのだと。まさにど ういうふうに自発的な意思を持ってやめてもらうかということになると思います。  強制的な吸ってはいけないというような法律規制、つまり未成年に喫煙防止をという のはまさにそれであって、私はあまり意味がないと前回も言いましたけれども、法律が あるからというだけでは誰も守らないだけで、なぜかというところとセットにした啓蒙 とか啓発がまずひとつ必要だろうし、さらに、広告のあり方等についての規制とか、あ るいはさきほど女性が男性に対してたばこを吸う人は嫌いだと言えばいいと。これは確 かにある程度当たっていると思うのですが、そのテレビ等で格好良くたばこを吸ってい る場面があると吸うという人もいるでしょうから、そういうテレビ等での喫煙場面のあ り方についての検討だとか、その他、ソフトな方法をもっと知恵を出して考えるのがい いのではないかと思います。 島尾座長  最近は未成年で吸うのが格好いいので、20歳になって吸っているのは格好悪いという のでやめる人もいるという話を聞いたことがあるので、年齢で受け取り方というのはい ろいろ微妙な問題があると思うのですけれども。山崎委員。どうぞ。 山崎委員  矢崎先生から大変ご親切に私の健康を気づかっていただきましてどうもすみません。 もちろん私も健康に対してたばこが一定の影響を持つということを全く否定しているわ けではない。当然、例えば、私は心臓が悪いよと。お前はたばこをやめなさいと言われ たらおっしゃるようにやめるかもしれません。それは胃潰瘍になったから君は硬いもの 食べるなと言われたらやはり私は硬いものを食べるのを避けるのと同じことだと思って います。  さきほど水野委員がおっしゃたように、なぜ、たばこだけを特定して、しかも国家の 政策としてこれを抑圧するのかというところが今、問題なので、前回、確か矢崎委員自 身がご指摘になったように塩であっても、これは本来の人間の生理から言えば、必ずし も食塩というものの摂取は必要でないと。これは嗜好品ですね。これが健康に悪いこと は明らかです。  そういうものを枚挙して議論をやりだしますと、この委員会の第1回目に戻ってしま うのです。もう散々言われたことで論理学で言う特定の誤謬なのです。要するに、たば こというものを取り上げて、さて、それが悪いかと言ったら必ず悪いに決まっている。 その他のものとどういうふうに具体的にこれを処理していくか。明らかにたばこが現在 健康状態に影響を及ぼしてくる患者に対して治療方針としてたばこを禁止される。これ は当然のことだと。そのことと社会風俗全体の規制をいかにして行うかということとは 別次元のお話だということだけご理解いただきたい。  ですから、私は前回、予防医学というものについてその思想の問題を指摘して、内山 委員から詭弁というご指摘をいただいたのですけれども、これは決して詭弁ではないの です。予防医学は非常に大切ですけれども、予防医学を社会政策として行ったときにい ろいろな問題が起こるということは、これは私どもの方の分野ではむしろ常識でありま して、それについては慎重であらねばならないということを申し上げます。 内山委員  お話しようと思う中身の前に、今、山崎先生のご発言ありましたから一言だけ申し上 げておきます。  医療というのがどういう目的で、しかもどういうふうな範囲に拡がっているかという のは、これまた今の医療の社会の常識でありまして、先だってのお話の中の医師は治療 だけしていればいいというご発言があったものですから、これはそういう理屈を作るた めにはいろいろな詭弁を使わなければ無理だというふうに申し上げたので、山崎先生の ご発言に一脈、採用すべきところがあると私はこのように思っておりますのですけれど も、少なくとも医療というのは治療だけで良い、予防というのは危険思想であるという ことだけは私ははっきり耳に残っており絶対に賛同できない。そのことについての善し 悪しというのは皆さんはご判断いただけるだろうと思います。  座長が情報提供の方にというお話なものですから、情報提供に関連した、今までお話 の中のいろいろな点をお話したいと思いますが、水野先生がおっしゃいました、これは 大事なことで、なぜ、たばこだけがとおっしゃいましたけれども、私に言わせればこれ だけ生活に密着して体の中にたくさん入っているのに、なぜ、たばこだけが議論されて いないのだという感じがするわけです。  環境問題、食品衛生問題ということを見ますと、食べ物についてはいかにもきめ細か く予防措置、あるいは未然防止の方策が取られているのに、なぜ、たばこはどこの所管 官庁もないような状況に放っておかれているのかなというのが非常に不思議でならない できることならばこの機会を捉えて、たばこに対する暴露から始まって影響もとことん 検討するような所管を厚生省の方にお決めいただければありがたいと思います。  この情報提供の中に入っておりますたばこに関する内容、質と量の情報というものの 中に、実は、私の前に勤めておりましたところの職員、あるいは現在、勤めております ところの職員がJTからいろいろな添加物のこととか、接着剤のこととか、材料のこと をご相談を受けている事実があります。ご相談を受けているというのはそれの安全性評 価についてのご相談を受けているわけです。  ということは、使うものについての検討というのはJTが随分たくさんやっていらっ しゃると思いますから、その辺の成分とかについての評価結果というのも、ぜひ、情報 として我々に教えていただけるとありがたい。火をつけたら何になるかというところま で含めまして非常にいろいろな情報があるはずだと思われます。  それから、私が分析レベルの分煙を申し上げましたが、これもやはり情報の範囲内に 入るのでありまして、分析レベルの分煙が今、すぐできるとは思っておりませんし、簡 単な費用でできるとも思っておりません。しかしながら、そういうのは最終的な目標と してそれを知っておかなければならないというふうにご理解いただきたいと思います。  許容量の問題ですが、さきほど柳田委員、そのまま放出してもいいのかどうかという ご質問がありましたけれども、これは柳田先生も十分答えをご存じのはずで、自動車の 排ガスと全く同じである。自動車の排ガスというのはそのまま放出してはいけないから ある程度、できるところで今、処置をしているわけです。それは事業者が、あるいは乗 る人がそれを理解して処理をしている。たばこも同じことであって、JTが一生懸命外 に出さないように努力していらっしゃる。むしろ外に出さない、外部に直接放出しない という点ではJTが一番進んだ感覚を持っていらっしゃるという感じがいたしました。 これはできるところからやるべきであるということであります。  健康問題を根拠として最終的な見解をまとめるのがこの委員会ですから、私もいろい ろなことを申し上げましたけれども、健康問題に関すること以外は、それこそ前の喫煙 者の泊まった部屋は嫌だといったようなことまでいろいろとここで見解をまとめろとか 結論を出せと言っているわけではありません。そういうこととここでやらなければなら ないことというものの区別は十分と理解しているつもりでございます。 富永委員  時間がなくなりましたので、最後に一言、申し上げます。この検討会では21世紀の喫 煙対策を検討しようということでスタートしているわけで、各論的に防煙、分煙を中心 に取り上げているわけです。  さらに、原点に振り返りますと、厚生省が以前、成人病と呼ばれていたがん、循環疾 患、脳卒中などを生活習慣病というふうに呼び変えています。ということはその後、い ろいろな研究の結果、生活習慣が大きくこれらの疾患に関わることがわかってきたから でありまして、生活習慣を健全な生活習慣にすることによってこのような病気がかなり 予防できるとわかったからであります。  生活習慣の中では食生活、喫煙、飲酒、運動などいろいろありますけれども、とりわ け食生活と喫煙の影響が大きいということがわかってきたわけです。食生活については また別の委員会なり、検討会で議論していると思いますけれども、喫煙というのはやは り大変重要な問題でありますから、このような検討会ができて厚生省としては人々の健 康を保持増進、あるいは生活習慣病を予防するがために喫煙対策を推進しようとしてい ると思います。  喫煙に対策につきましては、たばこ行動計画の報告が平成5年に出ておりますけれど も、その骨子は防煙と禁煙、節煙の支援、分煙の3つになっている思います。私はやは り分煙だけで十分とは到底思いません。法律でたばこを吸うことを全面的に禁止しろと いう人はいないと思いますが、たばこを吸っている人でも大部分の人はやめれることな らやめたいと思っているわけですから、やめたいと思っている人に対する支援、あるい はもっと節煙したいと思っている人に対する支援、そういったことも必要かと思います  それから、禁煙・節煙支援に加えて、分煙、今日は防煙の議論は、あまり出ませんで したけれども、最も根本的な解決はやはり防煙でございますので、この大事な点だけは どのような方法で、どのような具体的な方策を取るかは別にしても、根本的にはこの大 きな3つの柱は崩すべきではないと思います。 大河委員  あまり時間が残ってないですけれども、ちょっと2、3、コメントしたいと思うので すが、さっき依存性の話が出ましたけれども、やはり例えば、『ネイチャー』でニコチ ンがコカイン、モルヒネ並の非常に強い習慣性があるのだという報告が出たと、こうい うご紹介ありましたけれども、『ネイチャー』に載ると皆、何となくびっくりして非常 に権威があるというふうに思いがちだと思いますが、今までのいろいろなものでも依存 性薬物についての研究結果からして、ニコチンの依存性というのは、例えば、精神依存 性はある程度あると。禁断症状等の身体依存はほとんどない。精神毒性は全くないとい うことで、例えば、ここでは禁煙ですけれども、会議中にたばこを吸ったり、ちょうど 会議中にコーヒーを飲むのと同じような感じで日常生活に定着している、いわゆる嗜好 品でございまして、もう数百年、人類がたしなんでいるものであるわけでございますの で、やはり最近、導入されている新しい合成化学物質とは全く異なるわけでございます ので、まず、その点の基本認識は十分する必要があると思います。  だから、客観的情報の提供というのは私も非常に大切だと思いますけれども、まず、 客観的情報というのを本当に学問的にどの辺なのかというのを十分吟味していただく必 要があるのではないかと思います。  それから、添加物の話がちょっと出ましたけれども、基本的にはたばこは食品ではな いものですから、いわゆる食品衛生法で言うような食品添加物等の規格基準というよう な形で十分法律上の規制というのは今まで受けてなかったと思いますけれども、基本的 には食品で使っているような着香料が中心ですから問題はないと思っておりますけれど も、国際的にも実はこうしなければならないというのはガイドラインはできておりませ ん。  ただ、何もない中で、では放っておいていいのかということがあったものですから、 念には念を入れようということで、さきほどのような内山先生のよくご存じの先生にも 評価に加わっていただいているというのが実態でございます。  いずれにしましても情報提供の中身が非常に問題になると思いますので、もう少しど ういうことについて情報提供すればいいか、どういうものが問題の客観的情報かという のは十分、検討される必要があるのでないかと思います。 島尾座長  大河委員、外国の場合、ちょっと規制のうるさい国もあると思うのですが、その辺の 開示の程度というのはあまり日本国内と変わらないと考えていいのですか。 大河委員  諸外国で、例えば、そういうものがどのように規制条件にあるかとか、そういうもの はもちろん資料提出すべきだということであれば、今後、検討したいと思います。 島尾座長  できれば次回にそういった資料をいただければありがたいと思います。  本日、もう時間になりましたので、これで終わりたいと思いますが、情報提供、情報 開示の問題、どんな種類の情報をどんな格好ですべきかということについてやや時間が まだ十分議論しきれなかったと思いますので、次回、それを少し手掛けた上で防煙の問 題、分煙の問題についてはだいたい議論、出尽くしたような形になっているかと思いま すので、今までの議論を事務局の方にとりまとめて整理させていただくというような形 で、それを次回お諮りすると。その最初に少し情報提供の問題について討議させていた だくということで進めさせていただきたいと思います。  どうも本日はありがとうございました。  問い合わせ先   厚生省保健医療局地域保健・健康増進栄養課 望月,大石   電話:03-3503-1711 内(2397,2394)