98/05/21 第9回厚生科学審議会先端医療技術評価部会議事録 第9回厚生科学審議会先端医療技術評価部会議事録 1.日 時:平成10年5月21日(木) 14:00〜16:00 2.場 所:厚生省特別第1会議室 3.議 事:生殖医療問題について 4.出席委員:高久史麿部会長        (委員:五十音順:敬称略)  寺田雅昭 軽部征夫 木村利人 柴田鐵治 (専門委員:五十音順:敬称略)         入村達郎 加藤尚武 金城清子 廣井正彦 ○事務局 それでは、定刻になりましたので、ただ今から第9回厚生科学審議会先端医療技術評 価部会を開催いたします。 本日は、松田委員、森岡委員、山崎委員、曽野委員の4名の委員の方々が御欠席でご ざいます。また、若干の委員の方が交通事情等によりましてお遅れになられているよう でございます。 最初に、本日の配布資料につきまして事務局から御説明申し上げます。 本日は、配布資料といたしまして6種類用意いたしております。資料1「先端医療技 術評価部会の審議状況について」ということで、これまで6回にわたりヒアリングを行 ってまいりました各団体の意見一覧を用意いたしております。 資料2「生殖医療技術の法的規制状況等の各国比較に関する研究報告書(抄)」とい うことで、確か第2回だったかと思いますけれども、部会で各国の法規制等の状況につ きまして御報告申し上げました際に更に追加調査し、御報告をいたしますということで 私どもの方で用意をさせていただいたものでございます。 資料3「インターネットで寄せられた生殖医療に関する御意見」、これは前回提出し たもの以降に寄せられましたものにつきまして追加させていただいたものでございます 資料4、日本産科婦人科学会から「平成9年度診療・研究に関する倫理委員会報告」 ということで「着床前診断に関する検討経過報告と答申」という資料をいただいており ますので、団体の御意見として配布させていただいております。 資料5といたしまして後で御報告いたしますが、「遺伝子治療臨床研究関係」につい ての資料がございます。 資料6「厚生科学審議会先端医療技術評価部会の傍聴要望について」ということで、 各団体等から傍聴の要望が来ておりまして、それに対しまして私どもの方で部会長とも 御相談いたしまして回答しておりますので、それについても後で報告をさせていただき ます。 それから、更に資料番号は振ってございませんがもう一点、「厚生科学審議会先端医 療技術評価部会の今後の進め方について」ということで、別途資料を用意してございま す。 その他、お手元に前回、第8回の当部会の議事録を配布いたしております。 以上でございますが、何か資料等に欠ける点がございますれば事務局の方にお申し出 いただければ幸いでございます。 それでは部会長、よろしくお願いいたします。 ○高久部会長 それでは、本日の議題に入りたいと思います。まずこの部会の今後の審議の進め方に ついて御相談申し上げたいと思いますが、事務局の方から説明していただけますか。 ○事務局 お手元に「厚生科学審議会先端医療技術評価部会の今後の進め方について(案)」と いう資料を提出させていただいているところでございますが、若干御説明させていただ きます。 実は、これまで6回にわたりまして各団体等から御意見を頂戴いたしまして、それを ふまえて各団体等の間等において審議を進めさせてきていただいた訳でございますが、 今回からそれらをふまえまして委員間での御審議をいただくことになっている訳でござ います。 ただ、かなりの論点がございますのと、当初夏までに何とか中間的に取りまとめをと いうことを申し上げていた訳でございますが、非常に多岐の項目にわたるという関係も ございますので、日程的にちょっときついということもございます。そういったことも ございまして、まず1のところに書いてございますように、当面3回、9、10、11回の 予定が入ってございますが、これらにつきましては次のページに付けております論点項 目の大きな項目の1、2、3に沿いまして1項目ずつ委員の皆様方でフリートーキング なり審議をしていただき、その際に、4番目の国の関与やインフォームド・コンセント 等の関係につきましては、これは各1、2、3の項目に関係いたしますので、併わせて 御審議いただくということでどうであろうかと考えたものであります。 更に中間的な意見の集約、取りまとめに向かいまして8月後半以降、2、3回部会で の審議を追加いたしまして、中間的な意見の集約に向けて議論を煮詰めていってはいか がかというふうに考える次第でございます。 なお、この中間的な意見集約、取りまとめにつきましては、厚生科学審議会総会に部 会としての取りまとめということで報告をいただくとともに、公表いたしまして、更に これに対する意見の公募等を行う。それらをふまえて、今後更に部会で審議を進めると いうことでいかがかと考えている訳でございます。以上でございます。 ○高久部会長 今、事務局の方から説明がありましたように、生殖補助医療技術について今日は御議 論いただきまして、次回は出生前診断、その次に研究利用の在り方ということで御議論 を願いたいと思います。ですから、今日は生殖補助の医療技術について委員の皆様方の 御自由な御意見をお伺いしたいと思います。 公開の問題は、今ここで議論いたしますか。 ○事務局 後程でよろしいかと思いますが。 ○高久部会長 そうですか。 お手元の資料6にありますように13団体の連名で、これはいずれもほとんどがヒアリ ングで御意見を伺った団体でありますが傍聴の要望が出ていました。事務局の方と相談 をし、それから一部の委員の方の御意見をお伺いをしたのですが、以後の3回の討論で は委員の方の自由な御意見をお伺いをしたい。委員個人個人でお考えは違うと思うので すが、直接関係のある団体の方がおられると、少し言いにくい点があるという御意見な どもありましたので、今日の生殖補助医療技術についての議論は非公開にして、議事録 を速やかに公開をするという形をとらせていただきました。時間がありましたら次回以 降どうするかということについて、今日の議論を参考にして御議論を願いたいと思いま す。そういうことで今日は非公開にさせていただきましたので、その点よろしく御了承 をお願い致します。 それでは、最初に生殖補助医療技術ということで、次回の議論の出生前診断の問題な ども少し含まれておりますけれども、海外における生殖医療技術の規制等の状況につい て、お手元に島先生の報告書がございます。資料の2ですが、これについて島先生 に来ていただいてお話をお伺いしたかったのですが御都合がつきませんでしたので、事 務局の方から説明をしていただきます。よろしくお願いします。 ○事務局 それでは、島先生の研究資料につきまして御説明申し上げます。 各国の状況につきましては、10月3日のこの部会におきまして島先生をはじめとす る4人の先生方がおまとめになりました資料と、それから日本産科婦人科学会の会告を 基に事務局の方で作成した資料について御説明を申し上げたところでございます。その 資料につきましては、参考資料と書いておりますファイルの赤い紙の3枚目のところに 綴じてございますが、この御説明の際に委員の先生方から更に米国の状況、それから国 際機関等の状況についても調べるべき等との御指摘がございました。また、島先生の 資料が前回の御説明では1994年にまとめられた資料でございましたので、新しい情報を 確認していただきまして、新しい情報に差し替えていただいたものがこの研究報告書で ございます。研究につきましては、厚生科学研究で実施しているところでございます。 この1枚目の研究報告書の中にこの研究の概要が全部載っておりますが、研究方法に つきましてはイギリス、ドイツ、スイス、フランス、スウェーデン、アメリカ合衆国及 び国際機関における生殖関連技術に関する取り組みについて最新の動向を調査、分析し 比較するというものでございます。 考察をご覧いただきたいと思います。これらの調査をしていただいた結果、これらの 国の法規制の特徴はおよそ次の4つに分類できるということでございます。 まず、許される範囲が厳しく限られていて、禁止的規制と言える国がドイツ、オース トリア。次いで、実施項目はそれほど厳しく限られてはいないものの、実施施設の許可 制などと合わせ、制限的な側面の強い慎重な規制を敷く国がフランス及び北欧諸国。そ して、実施制限は最小限度にして一件ごとの審査と監査でコントロールを行おうとする リベラルな規制をとる国がイギリスでございます。最後に、当事者・関連医学界の自主 規制にゆだね、国家としては自由放任、レッセフェールを方針とする国がアメリカ合衆 国、それからヨーロッパではイタリアでございます。 規制の個々の内容でございますが、この中で、アメリカとイタリア以外の主要国間で 一致しておりますのは次の点であるということでございまして、第三者の精子提供はほ ぼ全ての国で認められている。非商業化の原則もすべての国で守られている。代理出産 契約もほとんどの国で、それからアメリカでも幾つかの州で無効とされている。更に、 ほとんどの国で実施施設の許可制が敷かれているということでございます。 主要国間で対応に違いがあるものにつきましては、生殖補助医療により生まれた子ど もに提供者などの情報へのアクセスを認めるかどうか。ドイツ、イギリスはこれを広く 認めるが、フランスは主治医を介した匿名の医療情報のみしか認めない。それから、受 精卵及び卵の提供を認めるかどうか。受精卵の実験利用をどこまで認めるかという点に つきましては、ヨーロッパ主要国の間ですらコンセンサスは得られそうにないというこ とでございました。 島先生の結論といたしましては、これらの状況を見ますと、フランスやイギリスの ような実施施設の許可制と活動報告、評価制による行政管理を主体にした規制が関連技 術の進展を不必要に妨げることなく、社会的なコントロールを可能にする最も適正な国 の関与の在り方だという考察で結ばれておりました。 次のページをご覧いただきたいと思います。次のページからが、このまとめの原本に なりました各国の状況でございます。 それでは、3ページをご覧いただきたいと思います。前回、10月3日に同様の御説明 を申し上げておりますので簡単に御説明申し上げたいと思います。 イギリスの状況でございますが、規制法規はこちらにあるとおりでございます。受療 対象者は夫婦間というようなことには特に規制をしておりません。ただし、依頼者への カウンセリングの機会の提供が義務づけられております。 それから、非配偶者間人工授精、それから体外受精につきましては許可された施設で 実施されるということでございます。 それから代理出産でございますけれども、違法ではないがあらゆる契約は法定では無 効、それから不妊治療の最終手段として使われるように指導をしているということでご ざいまして、この内容につきましては5ページのところに具体的に書いておりますが、 代理出産につきましては身体的にも妊娠が難しく、医学的に妊娠期間中子どもを胎内に とどめておくことが望めない人物に限定されているということでございます。 それから胚の保存でございますが、現在は10年でございます。ただし、がん治療中や 早期閉経の女性のために、55歳の誕生日まで胚を保存出来る規定も追加したというのが 新しい情報でございます。 それから、余剰胚の研究利用でございますが、凍結保存期間中は持ち主の書式での同 意を得て利用可ということで、書式での同意が明記されております。それから、保存期 間終了後の使用権については規定がされていないそうでございます。 それから、研究目的の胚作成でございますが、ここに受精後14日間まで可となってお りますけれども、実は次の4ページの第41条第1項のところに原始線条出現後の胚の保 存と使用ということは罰則が付けられておりますので、ここのところは受精後14日とい うよりも、原始線条出現以降については禁止というようなことのようでございます。前 回御説明させていただきました資料には、このような記載になっております。 それから実施施設の許可制でございますけれども、一度の申請で治療施設には最大5 年間、実施施設には3年間有効ということでございますが、定期的にHFEA(Human Fer-tilisation and Embryology Act;ヒトの受精と胚研究管理機関)による査察が入 るということでございます。 罰則規定は4ページにあるとおりでございまして、最も厳しい規定をされております のはヒト胚、またはヒト配偶子以外の生きた配偶子や胚を女性に移植することや、それ から原始線条出現後の胚の保存と使用、ヒト胚を動物に移植することなどに最も厳しい 罰則が付いてございます。 それから着床前診断でございますが、HFEA内の倫理委員会と保健省の遺伝子診断 諮問委員会がガイドライン作成に向けて審議中ということでございます。 また、多胎減数手術につきましては通常の中絶と同じ適用ということで、この欄外に ございますけれども、中絶法第1条で妊娠24週未満ということで規定されておりまして ここにあるような規定に基づいて多胎減数手術も同様の適用がされているということで ございます。 5ページから7ページはこの内容を詳しく説明しているものでございますので、8 ページのところをご覧いただきたいと思います。ドイツ、スイス、オーストリアの生殖 医療技術でございまして、これは前回御説明を申し上げたとおりでございます。 次のページから細かい事項が書かれております。9ページをごらんください。ドイツ につきましては、1995年に中絶に関する法規制が改正され、胎児条項が削除されたとい うことでございます。 また、着床前診断につきましては現在は禁じられておりまして、医学界も実施を控え ているということでございます。 スイスにつきましては、国民発案ということで女性の体外での生殖は禁じること、人 工生殖を目的として第三者の配偶子を用いることは禁じるというような発案があったそ うでございますが、連邦評議会がここの*印の付いたところにあるような提案をいたし まして、現在まだ審議中ということでございます。 次のページをお願いいたします。フランスの状況でございますが、こちらも前回御説 明したところから余り大きな変更はございません。受療対象者、それから非配偶者間の 人工授精等につきましてはこれらの条件によって認められているところでございます。 それから胚の保存は最高5年ということでございます。 それから、余剰胚の研究利用につきましては原則禁止でございますが、胚を傷付けな い研究のみに例外的に認めるということ等が規定されております。 それから、実施施設の許可制でございますが、生殖補助、出生前診断実施施設は保健 大臣の許可制ということになっております。 それから罰則も付いておりまして、これにつきましては次のページに規定がございま す。 それから、着床前診断でございますが、家族歴があって親になる人に事前に不治の重 篤な疾患につながる異常が特定されているなどの条件の下で例外的に許可ということで 遅れていた施行政令が1998年3月24日に出されまして、ようやく実施出来ることになっ たということで、これは新しい情報でございます。 多胎減数手術につきましては法規定がございません。行われているかどうか、実数も 不明だったということでございます。 12ページをお願いいたします。こちらの方はこの内容を詳しく説明したものでござい ますけれども、出生前診断につきまして施設関係でいろいろな条件が付いております。 それから、15ページをお願いいたします。スウェーデンの生殖技術規制でございます が、法律につきましてはここにあるとおりでございます。 また、受療対象者は結婚した夫婦か永続的な共同生活をしているカップルで、不妊で あることが条件になっております。 それから、非配偶者間の人工授精は可ということですが、精子提供者の書面による同 意が必要でございます。 体外受精につきましては、親になろうとするカップルの卵子、精子を用いる方法のみ 可でございますが、欄外のところに政府による体外受精法解説にはカウンセリングの義 務づけもうたわれているということでございます。 それから、精子、卵子、胚の提供は不可でございまして、1996年に国家倫理評議会が 卵提供を認めるよう提案しましたが、政府、議会は改正に応じていないということでご ざいます。 また、代理出産は禁止、それから胚の保存、余剰胚の研究利用等はここにあるとおり でございます。 それから、着床前診断は規定なし、それから多胎減数手術の状況につきましては調査 の結果、不明であったということでございます。 次のページをお願いいたします。アメリカの状況でございますが、規制法規につきま しては連邦レベルではないということでございまして、学会の自主規制及び各州法と判 例によるということでございます。ですから、禁止していることは大変少ない訳でござ いますけれども、非配偶者間の人工授精におきまして子の法的地位については統一親子 法による保護があるということでございます。 また、代理出産につきましては州によって取扱いが異なりますが、あっせんを禁止し ているところが何か所かございます。 余剰胚の研究利用につきましては、連邦助成研究では禁止しているということで民間 では可ということでございますが、別紙17ページのところに詳しい状況を記載しており ます。 それから、18ページをごらんいただきたいと思います。こちらが「国際機関による生 殖関連技術への対応・現況」ということでございまして、WHOでございますが、「人 の生殖における研究開発と研究訓練特別プログラム(HRP)」の中に科学・倫理審査 班が置かれており、人を対象にする実験研究及び動物実験の審査を行っていること、そ れから1992年に生殖補助技術の現状に関する報告書が出されているが、規制については 触れられていないということでございます。 ユネスコにつきましては、1993年9月に事務総長の諮問機関として国際生命倫理委員 会(IBC)が設けられました。IBCは当初、重点課題としてヒトゲノム、神経科学 胚研究の3つを挙げておりますが、このヒトゲノムの保護のための国際ルールづくりが 優先されているようでございます。「ヒトゲノムと人権に関する世界宣言」というもの が1997年の11月に採択されておりますが、この中には生殖技術関連の規定はなく、生殖 細胞系列への介入とヒトクローンづくりを禁止する条項があるだけということでござい ました。それから、今後生殖技術規制を取り上げる可能性は低いということでございま す。 ヨーロッパ連合、EUでございますが、EUレベルで生殖補助技術や出生前診断を規 制する法令はないということです。バイオテクノロジー倫理諮問班(GAEIB)が、 1996年2月に出生前診断の倫理面について意見を出しているということでございまして 診断はいかなる公的強制にもよらず、受ける女性とカップルのインフォームド・コンセ ントに基づくこと、診断前後のカウンセリングが必須であること、どの診断を認めてい いかについてはケース・バイ・ケースでの対応が望ましいこと、実施施設は公の承認を 得ること、検査結果を家族に伝えるには本人の同意が要ること、妊娠を継続する場合も 中絶する場合も排除や差別が起こらないよう、良い医療と社会的・心理的環境が保障さ れていることなどでございます。また、1998年夏に立法化される予定のバイオテクノロ ジー発明保護に関する指令案では、商業・産業目的での胚の利用、生殖系列細胞の改変 人クローン作りは公序良俗に反するとして特許申請できないと定めております。 ヨーロッパ評議会(Council of Europe)でございますが、1970年代末から生命科学・ 医学と社会の間に起こる問題について検討し、勧告を出してきたということでございま すが、生殖関連では人の受精卵や胎児の利用について、それから生殖補助技術について の勧告がございます。生殖技術と出生前診断に対する包括的な規定はないということで ございまして、伴性遺伝病を避ける以外の目的での性選択のための生殖補助技術の利用 と、研究目的での胚作成を認めない条項があるだけということです。 余剰胚の研究利用を中心にした生殖技術規制に関して、近い将来、付属議定書が作ら れる予定ということでございまして、なお、人クローン作りを禁じた条項を追加する付 属議定書が1997年11月に急遽採択されまして、98年1月から条約署名国の署名に開かれ たということでございます。以上でございます。 ○高久部会長 どうもありがとうございました。今、資料2の各国の比較研究の報告書をご説明いた だいた訳ですが、どなたか御質問はおありでしょうか。 ○木村委員 島さんの御見解ですから、これはこれでいいんですが、1ページの真中辺、考察の ところの真中辺のところで、「当事者・関連医学界の自主規制に委ね、国家としては 「自由放任、レッセフェール」を方針とする国。」としてアメリカ合衆国が掲がってい るんですが、これにつきましては島さん自身が17ページをご覧いただきますと分かり ますように、2段目ですけれども「連邦レベルでの規制は、胎児組織及び胚の研究利用 に対する連邦助成の禁止があるだけである。」となっているんですけれども、この禁止 の連邦レベルでの規制があるというのは全く自由放任でやっているという訳ではなくて これはいつも問題になっていることなんですが、アメリカ合衆国では大変にポリティカ ル(政治上)に強いライト・ツー・ライフ(Right to Life)という人工妊娠中絶反対の グループがございまして、そういうグループの言わばサポートを非常に強く受け止める 形で、エンブリオリサーチ(胚(妊娠3ヶ月以内)研究)に対する規制を非常に厳しく 置いている訳なんです。 それで、これが科学者の間に非常に不満が多いということで、確かに民間機関では行 われている訳ですけれども、そのためにエンブリオリサーチが非常にアメリカでは遅れ ているという強い不満が科学者の間にある訳ですが、れっきとした規制があるので、こ の点につきましてはいつか科学技術庁の審議会に御一緒したときに申し上げたんですが このベーシックリサーチ(基礎研究)につきましてもインファティリティー(不妊)に 関連したベーシックリサーチでなければいけないのか。それとも、先天性の異常とか、 小児がんとか、あるいは人セラピーとかに伴うフィータスルリサーチ(胎児(妊娠3ヶ 月以降)研究)、エンブリオリサーチでなくちゃいけないのか、いろいろな説がござい ますけれども、いずれにしましても連邦政府としては14日を期限にして一応規制をきち んと置いて連邦政府の助成をしない。それについては助成の禁止の項目があるというこ とがあるということは一応確認しておいた方がいいんじゃないかと思うんです。その点 につきまして、ちょっと確認のために御説明申し上げました。 ○高久部会長 どうもありがとうございました。他にどなたかございますか。 私から質問しますが、3ページの注(欄外)の(d)の「子どもが生まれた場合、重 篤な障害が残るような」というのは、これは母親ではなくて子どもに重篤な障害ですね それからもう一つ、5ページのイギリスの代理出産のところで、「医学的に妊娠期間 中子どもを胎内にとどめておくことが望めない人物」というのは女性、奥さんの場合で すね。        (事務局より「その通りです。」との返答あり。) どうもありがとうございました。他にどなたか御質問、御意見おありでしょうか。 それでは、一応この島先生の研究報告書についての説明は終わらせていただきます  最後に遺伝子治療の報告がありますので3時50分くらいには終わりたいと思いますの で、あと1時間20分ほど時間があります。本日は生殖補助技術についていろいろ御意見 をお伺いしたいと思います。主な項目につきましては、この机上配布資料の2ページ目 の生殖補助医療技術の6項目、これに限りませんが、主にこの6つの問題について委員 の方々から恐縮ですけれどもすべての方に御意見をお伺いしたいと思います。御自由な 御意見をお伺いしたいと思いますがいかがしましょうか。順番にお伺いするか、あるい はまずどなたでも最初に言っていただければ順次ということにして、どなたかまず口火 を切っていただけるでしょうか。 ○木村委員 一番最初に今、部会長が言われた中間的な取りまとめのことでちょっと事務局からお 話がございまして、これは部会長がそれなりの方針をお出しになった訳ですが、まとめ て総会に報告して公表してこれに対する意見の公募等を行うとともに部会において審議 を継続するという、これは現段階ではこれからまだ公聴会をやる可能性もある含みも残 っているんでしょうか。その点はいかがでしょうか。 ○高久部会長 そう思っております。 ○木村委員 それを確認したかったのと、それからインターネットで大変いろいろ興味深い資料を 拝見させていただきましたが、インプットが大分あるということなのでございますけれ ども、他の人の組織のところの会議でも問題になったんですが、マスコミ関係者の方々 にある程度ブリーフィングを継続的にしていかないと、時々ぱっとニュースをそのある 一局面だけ取って報道されるというようなことが誤解を招くということもあることなん ですが、そういうことも含めて何か今後その折々に報告するというようなこともお考え いただければ大変ありがたいと思うんですが、まとめのときだけ記者会見というのでは なくて、そういうようなことは考慮される余地があるんでしょうか。 ○高久部会長 事務局どうですか。 ○事務局 一応会議の開催につきましては厚生省広報室を通じまして事前に案内するとともに、 現在厚生省は2つの記者クラブがございますけれども、そちらの方から会議終了後、特 にそれが傍聴等による公開のものでない場合については事務局の方から概要の報告をと いうような求めが大体ありまして、本日につきましても会議終了後、事務局の方から本 日の概要の説明をしてくれという要望が出てきております。したがいまして、今後の会 合につきましても同じような形態で推移するのではないかと思っております。 ○高久部会長 それでは御意見をお伺いしたいと思います。いかがでしょうか。 では、どうぞ、廣井先生。廣井先生が言われると、後の方がフォローしにくいかもし れませんが、御自由にどうぞ。 ○廣井委員 それでは、全般的なことについてお聞きしたいんですけれども、以前日本産科婦人科 学会あるいは日本母性保護産婦人科医会からもヒアリングがありましたし、今回は出生 前診断に関する経過報告が日本産科婦人科学会から提出されていますけれども、例えば 日本でやっている、我々の日本産科婦人科学会の倫理委員会でいろいろ検討してきた、 そして会告その他を出して会員に周知徹底してきているというプロセスがある訳なんで すけれども、今回はやはり法律で規制しようという動きなんでしょうか。今までのアメ リカのように学会や個々の倫理委員会等の自主規制である程度任せていいんじゃないか という形なのか。いかがでございましょうか。 ○高久部会長 私の理解は、その事を含めて最終的に結論を出したいという事です。 ○木村委員 やはり今までのいろいろな報告をお伺いしますと、民間の営利機関が私たちの予想を 超える範囲で言わば暴走しているといいましょうか、特に当事者である女性の妊娠とい う喜び、あるいは不妊という悲しみ、そういう機会をとらえてこれを営利的に行う経過 があったというようなこともございまして、やはり何らかのきちんとしたものをつくり ませんと、私どもの報告の範囲内でも、当事者である女性の方々、あるいはどうしても お子さんが欲しいという弱味に付け込んだ、こういう表現はどうか分かりませんが、例 えばほとんど妊娠の可能性のないという方も含めて営利の対象にしてしまう可能性もあ る訳です。ですから、医学的にそれが非常にはっきりしている場合であっても、まあい いですよ、うちでやりましょうみたいなことになってくると、儲けの対象になるという ようなことも起こり得る訳なんです。 それで、これはアメリカでもそうなんですが、妊娠の対象になりそうもない人も利用 する場合と、それからそういう人を最初からスクリーニングして、今度は生めそうな人 だけともかくやってしまうという2つに大きく分かれている訳です。ですから、その辺 のところも含めまして、私どもとしてはやはりある程度の国としてのガイドラインか、 あるいはもう一歩踏み込んだ法的な規制をも含めたものをつくった方がいいというのが 私の考えです。 ○高久部会長 法律をつくるのがどの程度大変か分かりませんが、少なくとも国のガイドラインはつ くるべきだと思うし、せっかくつくっても守られないようでしたら法律にせざるを得な いのではないかなと思っています。日本産科婦人科学会の方でいろいろ検討されたこと を当然参考にさせていただきたいと思います。ガイドラインを作った場合、それがどの 程度現場で守られるかということが一番重要な問題だと思います。 ○金城委員 私も、やはり何らかのガイドラインか法的規制が必要だと考えます。それで、アメリ カと日本は非常に違うと思うんです。アメリカの場合には大変強力な消費者団体があっ て、各施設でどのようなことをしているのか、それが消費者にとってどういう意味を持 つのかというようなことについて、きちんとそういう相談に行くような団体が存在をし ている訳です。 それからもう一つは、アメリカでは非常に情報の公開が進んでおります。成功率など というのもほとんど公開をしなければいけないというようなことになっているんです。 ところが、日本の場合には各施設についての成功率は公開していない訳ですね。です から、個人がいろいろ判断をする情報も存在をしておりません。そういうふうに考える と、アメリカの自由放任というのはそういう日本とは違った土壌の中にあるのではない か。そういう意味で、何らかの国の関与が必要だというふうに思います。 ○高久部会長 他にどなたか。生殖補助医療技術について6項目が掲げられていますが、何でも結構 ですから御意見を自由に言っていただければと思います。 代理母については、イギリスの対応が比較的合理的だと思いますが、日本産科婦人科 学会では代理母はどんな状況下でも認めていないのですね。 ○廣井委員 これについても、これだけを取って議論をしたというのは余り私自身は聞いていない んですけれども、日本不妊学会では役員と患者からアンケートをとり、現時点では問題 が多く認めにくいと結論を出しています。 ○高久部会長 そういうことですね。それから、商業的利用も当然認めていない訳ですね。 ○廣井委員 それから、減数手術も当時の優生保護法との絡みで当初から認めていないという立場 をとっています。 ○高久部会長 でも、現実には行われているところに問題があるということですね。 ○廣井委員 そこは非常に難しい問題ですね。 ○高久部会長 どうぞ。 ○木村委員 これもいろいろな問題で、恐らく今回は特にこの点について報告された方はなかった んですが、臓器移植の場合にも海外に行かれる方を我々は押し止める訳にはいかなかっ た訳で、これは命に関わってきますので、不妊の場合もカリフォルニアとか、あるいは ハワイとかに行って実際に不妊治療といいますか、生んでいる方がいらっしゃる訳です ですからそういうことの利用について、国内では行われていないようですが、国外でや ることについては日本産科婦人科学会の方は廣井先生の知る範囲でそういうことについ てコメントを出したことはございませんでしょうか。 ○廣井委員 これについて記憶は定かではありませんが、特別に声明を出していないかもしれませ ん。 それから、精子の提供がインターネットに載ったことがありましたね。あれについて は日本不妊学会としてはコマーシャルベースにやるべきではないというようなことの表 明は出してあります。 ○高久部会長 木村委員がおっしゃったように、国内で禁じても外国に行ってしまうことは禁じられ ないですね。そうすると、臓器移植の場合と同じでまた国際的な批判を浴びる可能性が ありますね。 ○廣井委員 アメリカは少し高いけれども、韓国の方が安いから韓国へ行くなどというのもかなり 話は聞いています。 それで、一番問題なのは向こうで実子として届けを出してくるという可能性があるん です。そこにまた大きな問題があると思います。 ○高久部会長 向こうで生んで夫婦の実子として連れて帰ってくる。 どなたか御意見はおありでしょうか。どうぞ。 ○軽部委員 代理母ですが、人工胎盤の研究が御存じのように進んでいますけれども、現在は酸素 の供給が間に合わなくなって、あるところで止まってしまうんですが、これは技術的に は多分いずれは可能になるだろうというふうに我々は見ているんですね。そうしますと そういうところに受精卵を入れて子どもをある程度生ませるということは可能になって くると思うんです。 そうなってくると、また別の問題が生まれてくる訳です。そういういわゆる機械に子 どもを委ねるみたいな問題ですね。これはいずれは時間の問題で私は可能になるのでは ないかなということをある面では思っています。今のところは酸素供給が間に合わなく なってしまうんですね。膜なんですけれども、どうもその膜の性能が悪くて酸素が十分 血液に取り込まれなさ過ぎて、いわゆる胎児の方の酸素消費量が大きくて、それを賄う だけの膜がないということなんですが、そこら辺がブレイクスルーしますとある意味で は可能になるだろうということで、将来的にはそういう装置がどこかで完成しますと、 途端にまた別の問題が起こってくるのではないかなというようなことを考えておりまし て、ちょっとコメントさせていただきました。 ○高久部会長 医学的に母親が妊娠を継続出来ないということが明らかな場合には人工胎盤なども禁 止することは難しいと思います。代理母でもそうかもしれません。ただ商業的に利用す るのは非常に問題だと思います。子どもは欲しいけれども妊娠は嫌だという理由で代理 母や人工胎盤を利用されると非常に問題になりますね。そこら辺を本当にきっちりコン トロール出来るようになった場合には仕方がないかもしれないですね。 ○軽部委員 先生のおっしゃるのは、苦痛は味わいたくないけれども子どもは欲しいというところ の利用というのがかなり問題になってくる可能性はありますね。 ○高久部会長 木村先生、アメリカでもそうですね。仕事をしたいとか、あるいは子どもを10か月も 妊娠するのはかなわないけれども子どもは欲しいという事で代理母を利用する場合は問 題ですね。 ○木村委員 それはよく言われるんですが、しかしアメリカの場合にはやはり妹が生んだりとか、 お姉さんが生んだりとか、どうしても生めない方が自分の母親に子どもを生んでもらっ たなどというケースも出てきているぐらいですから。 それと、勿論コマーシャルベースで胎内の赤ちゃんに異常があった場合には人工妊娠 中絶することを条件に代理母になったりとか、契約時に幾ら、妊娠時に幾ら、出生時に 幾らというふうにして非常に契約社会で、しかも引き渡さない場合の損害賠償の値段ま で全部決めて、具体的にそういう代理母の会の連盟がある訳ですから、それは非常に母 親の生む権利を保障しようという考え、母親でなくても女性には生む権利がある。これ を社会的にサポートしようという、言わば消費者の声もある訳です。 ですから、それがやはり日本との違いで、消費者の方に非常に大きい関心があるとい う点は今の金城委員のおっしゃったように、何とかして我々が社会的にそれをシステム として得たい、きちんとしたい。そのためにいろいろ医者の側の協力を得る。医者の側 はどういう形であったにせよ、妊娠したという人を対象にするということについてプロ フェッションはこれを拒否しないというふうに明言していますので、それが代理母であ ろうと何であろうと、ともかく妊娠した女性を対象にするということで、あなたの場合 には代理母出産だから相手にしないということはないんですね。 ○金城委員 質問なんですけれども、今の人工胎盤というのは人工子宮とも言える訳ですよね。そ れで、これはちょっとあれなんですけれども、そうすると受精卵を使っての実験になる 訳ですね。 ○軽部委員 今はマウスでやっているんですけれども、2週間ぐらいは生きているんですね。 ○金城委員 分かりました。これはオーストラリアのビクトリア州の例ですけれども、人工子宮に ついての研究を人の受精卵を使ってやると、これは犯罪になるというようなことで、人 についての人工子宮の研究はかなり規制をしているところがあるように思います。 ○高久部会長 廣井先生にお伺いしたいのですが、今はIVF(体外受精)の施設を学会が指定をす るとか、そういうことはやっておられるのですか。 ○廣井委員 これは許可制にしているんです。 ○高久部会長 学会の許可ですか。 ○廣井委員 許可制というか、学会が改めて許可ということではないんですけれども、登録制です ね。 ○高久部会長 登録だから、手を挙げても学会がノーということはあるのですか。 ○廣井委員 ほとんどないはずなんです。 ただ、そのためにそれぞれの機関で倫理委員会を設けて、倫理委員会で通ったという ところの段階で登録をする事としています。 ○高久部会長 今はAID(非配偶者間人工授精)もそうですか。 ○廣井委員 AIDは昔は比較的野放しだったんです。それが最近父親を知る権利があるとか、例 えばエイズにかかっていないとか、いろいろな検査をしなきゃいけないとかとなってき たので、学会では今まで取り上げなかったんですけれども、平成9年5月に正式にAI Dを認めました。 もう御存じのとおり、AID児がおよそ3万人ぐらい日本にいるらしいんです。その うちの3分の1が慶應大学医学部附属病院を中心に行ったものらしいとのことですが、 それだけの数がいて、しかしAIDがまだ正式に認められていないのではおかしいとい うことになり学会で認めました。しかし、今度はいろいろな検査を行わなければならな いとか、或るいは、父親を知る権利があるなどということになってきたために、折角認 めても多くの施設では出来にくくなってしまいました。 ですから、これと直接関係ないんですけれども、是非人口も今、減っているものです から、精子バンクでも国でつくっていただきたいなという気はするのです。 ○高久部会長 精子バンクをつくるとなると、これまた話が大変ややこしくなりますね。どなたか御 意見おありでしょうか。 ○柴田委員 もう今から15、16年前でしょうか、日本で体外受精が始まるときに、私はちょうど新 聞の論説委員をしていて、それに対してどういう見解を出すべきかということで悩みに 悩んだことがあるんですけれども、そのときには日本ではまだそういうガイドラインも なければ、第1号だった東北大学には倫理委員会もなかった状況です。 その中で、徳島大学が倫理委員会をつくって体外受精のガイドラインという、なかな かすばらしいものをつくられて、それが一つの規範になっていって、その後各医療機関 特に大学や大きな病院などでは倫理委員会がつくられてこの問題が議論されていった。 その点では、大きな進歩というか、隔世の感があるんですけれども、今はそれがものす ごく広がって、一つ一つの体外受精でそういう倫理委員会のような、いわゆる第三者の 目がきちんと注がれているのかどうか、非常におかしくなってきていると思うんです。 その後、いろいろなガイドラインは出来てきたけれども、そのガイドラインが必ずし も守られていないのではないか。日本産科婦人科学会のガイドラインも守られていない 気がするんです。 それで、法律にするか、ガイドラインにとどめるかという問題で、そこは私自身もい まだに迷いに迷うんですけれども、どうもガイドラインではもう済まないところへ来て いるのかなという感じになっているんです。それに、先ほど各国の状況を聞くと、予想 以上に各国は厳しいという印象ですね。 ○高久部会長 ヨーロッパは特にそうですね。 ○柴田委員 今の日本の状況や今後のことを考えたときには、ある種の何かの規制がないと、それ もその規制が実効の上がる規制でないととどまらないんじゃないかという気がするんで す。特に商業的利用というんですか、代理母も含めてですけれども、こういうものへの 規制が難しい。言葉としては「不妊ということに対する治療の範囲に限るべきだ」と言 えると思うんですけれども、その言い方だけでは済まないところがあるんだろうと思う んです。恐らく治療の範囲というのはどんどん広がっていく。その治療の範囲にとどめ るべきだということの言葉の意味が違ってくるということもあるので、やはりもう少し 何かきちんとしていかなければいけない時期に来ているような印象を私は持っています これは考えれば考えるほど難しいテーマで、15年前に非常に悩んだことをまたもう一 回ここで悩むのも何かの縁だろうと思って、もっと真剣に考えてみたいと思うんですけ れども、皆さんの御意見もお聞きした上でですね。 とにかく、私は単なるガイドラインでは、これはかなりいろいろなものが出ている訳 ですけれども、それだけではちょっと済まないところへきているのかなというような感 じを持っています。 ○高久部会長 加藤委員、どうぞ。 ○加藤委員 不妊について、不妊は病気でないという意見もある訳ですね。それで、不妊について 子どもを生めない方は別の人に生んでもらうというのは治療ではなくて不妊の原因その ものを除去する訳ではないから、本来的な意味での治療とは言えない。だから、不妊に なっている人の悩みを救ってあげるという広い意味では治療かもしれないけれども、そ の不妊の原因を除去するという意味での治療ではない。だから、患者の側の医療を受け る権利というのは本来は狭い意味での治療については成り立つけれども、拡張された意 味での治療についてまで患者の権利が成り立つと考えていいのかどうかという点につい ては問題があると思います。 そして、長期的に見た場合に本来的な意味での治療ですね。それはほとんど不可能で 技術的に言わば展望がないので、したがって我々は本来的な意味での治療ではないけれ ども、便宜的な意味での補助手段をむしろ開発していかなければならないというふうに 考えなければならないのか。それとも、それは極めて一時的な手段であって、いずれ本 来的な意味での治療は発達するので、さほど数から言っても人口統計に影響を与えるほ ど大きな影響を持たないので、一時的な処置として認めた方がいいと考えたらいいのか その辺はどういうふうに判断したらいいのでしょうか。 ○高久部会長 廣井先生、いかがですか。 ○廣井委員 確かに不妊、例えばAIDもそうですが、体外受精、それに関連する一連のものは病 気じゃないんだという考えから言って、だから保険適用にならないということですから もう何十万と上がってきてしまう訳です。 ところが、結果的に原因を治す。例えば、卵管が詰まってしまって卵管を完全なもの にほかの、例えばプラスチックか何かで入れるかということでもしない限りはですね。 ところが、卵管というのはただ精子が上がったり卵子が通過するだけではない訳です その間にいろいろな分泌物を出しながら受精という現象は行われている訳ですから、そ れを完全に人工的なものに切り替えるということは不可能なんです。したがって、卵管 が分泌しているだろうという液を体外に、試験官の中に入れてその卵子を取って精子を 掛け合わせている。 ですから、本来の疾患というものを完全に治すということは出来ないけれども、その 補助的なものとして卵管が分泌していると思われるものをお腹の中と同じような環境で 外でやってやろうというのが今の方法で、例えば体外受精などはそういう方法ですから これが完全に疾患を治すのじゃないから治療じゃないんだということは必ずしも言えな いんじゃないかと思うんです。それに近いものを体外でつくっているということですか ら。 ○高久部会長 生殖補助医療技術の多くは自然の状態では子どもを生むことができないペアに対して 行われているというふうに解釈せざるを得ない。 不妊というのは病気でないというのが一般的な概念ですが、廣井先生、例えば卵管が 詰まっている場合、それを外科的に開ける場合には、それは治療になるのですね。 ○廣井委員 これは、特に詰まっている部分が非常に狭い場合にはその部分をカットして、そして つなぎ合わせることが出来ます。それは立派な治療になります。 ○高久部会長 保険適用になる訳ですね。 ○廣井委員 認められています。ところが、割合広範に卵管がやられていることが多いのです。特 に最近、性行為などが乱れているせいか、クラミジア感染症でも相当やられている場合 がある。それから、結婚年齢が遅くなっているために子宮内膜症という疾患にかかって いる。それがひどい場合には元に治すことは不可能です。ですから、大半は同じ卵管の 分泌しているような液を外でつくって、それを用いて体外で、試験管の中で培養・受精 を行っているというのが現状です。 ○高久部会長 事務局の方にお伺いしても良いのですが、イギリスの場合代理出産は母親が妊娠を継 続出来ないというときに限定しているという事ですが、そうすると原則として体外受精 をしてから代理母になることになるのですか。 ○廣井委員 代理母のほとんどは、夫婦の受精卵を子宮に入れて生む場合と、あるいは精子を妻以 外の人の子宮の中に入れて生んでやる場合と2通りあります。 ○高久部会長 他にどなたか御意見をどうぞ。 ○寺田委員 話が前にいったり後ろにいったりするんですが、生殖補助医療技術のガイドラインを つくるか、法律をつくるかという場合、全体として判断するのでなくて一つ一つの補助 技術についてどちらがいいのかという風に議論をしなくてはいけない話にどうもなりそ うだなという気がします。 いろいろな方の御意見を聞いておりまして、日本産科婦人科学会からもお聞きしまし たが、やはり学会では弱いという御意見を皆さんおっしゃったようですが、では国とし てやるのに法律がいいか、ガイドラインかと、そういうところに落ち着くものと思いま す。一般的には全部法律化するというのはなかなか難しいこともいろいろありますから 多分ほとんどのものはガイドラインで規制となると考えます。場合によっては商業利用 などに関しましてはその程度が相当厳しい規制のガイドラインとなると考えます。 確かに、ヨーロッパを見たら割合にきついですし、ドイツなどは歴史的なバックグラ ウンドもいろいろある故か、厳しくやっているんだろうなという気がします。どちらか というと全体的な見方からするとフランスとか、あの辺の規制の仕方が我が国にあって いるのではないかなという感じがしております。 雑駁な意見で、遺伝子治療みたいに全体をまとめてガイドラインを出すというよりも 生殖補助医療技術の中が非常にばらばらなものですから、生殖補助技術として一般的に 全部をどうするかというのはなかなか難しいのではないかという気がします。 ○高久部会長 遺伝子治療の場合には施設が非常に限られるものですからガイドラインでいいと思う のですが、生殖医療ではガイドラインで守られなかったときの罰則がないとなると、そ れこそ日本産科婦人科学会の会告と同じことになります。 ただ法律になると、今度はこれで産婦人科のお医者さんがどんどん捕まったら困らな いかなという声がない訳でもないですね。 ○加藤委員 捕まらなかったら法律をつくる意味はないということになりますね。 ○廣井委員 法律の専門の先生がおられるからお聞きしたいんですけれども、ヨーロッパなどはむ しろ法律が先に出たんですか。それとも学会でやっていって、その後法律が出たのでし ょうか。ウォーノックレポートなどを見ますとイギリスが国会で先に議論をされたよう な気もするのですが。 ○金城委員 イギリスの場合には、まずリポートが出るということで、そういう審議会みたいなと ころで議論をして、それでレポートが出ました。 でも、法律になるまではものすごく待っていたんです。それで、イギリスでは84年に ウォーノックレポートが出たんですけれども、その当時世論は非常にこのことに関して 反対が多かったんですね。ですから、議会にも出さなかった。それで、かなりそれが社 会的にも理解されてきて初めて議会にこの問題が出されて、そして法律になったんです ですから、最初に社会的に議論をして、もう大体コンセンサス(意見の一致)が出来 たという状況で法律はつくられたということです。 ○高久部会長 どこの国でも現実がまず実験的にせよ先行しないと、現実がないと議論にもなりませ んね。 ○木村委員 確かにおっしゃるとおりで、現実にイギリスでは、ロバート・エドワーズ(Dr.R.G. Edwards )とパトリック・ステプトー(Patrick Steptoe)の研究所で、例えばIVFな どをやっていました。(ロバート・エドワードとパトリック・ステプトーは1978年に共 同研究の結果、世界最初の体外受精(IVF)での出生に成功した。)もう現実にどんどん やっていたんですが、ただ、私が非常に感銘深く思ったのは1973年、ルイズ・ブラウン が生まれる5年前ですけれども、ロバート・エドワーズさんなどの医者が非常に積極的 に倫理問題を取り上げて、最初の体外受精児を成功させた専門家として教会関係の人と か、国際機関とか、倫理的、法的、社会的、国際的な動向まで非常に自らが関心を持っ て対応をしていました。それは、やはり日本と大分違う状況があるんじゃないかなとい うことを私は思った訳なんです。 それで、私はドクター・エドワーズにお会いしたのは1973年ですが、その時点でいろ いろな胚を使って実験を繰り返していたので、社会的にも研究の内容を知っている人た ちからはいろいろ批判が出てきはじめたんです。それで、いち早くそれに関連していろ いろな形で倫理的、宗教的、社会的な対応を医療側も一生懸命しようとして、それがウ ォーノックの中絶との絡み合いでのコミッション(委員会)のレポートになっていく訳 です。ですから、そういう意味で研究者自身にも非常に社会的な関心が多いというのが 恐らくヨーロッパの状況、またはアメリカの状況なので、日本の場合にはそこら辺が技 術先行ということが非常にあるのではないかということを常々感じています。 ○廣井委員 これはやはり我が国の後進性なもので、アメリカやヨーロッパに追い付けという格好 が多少あったんでしょうね。それで、やはりそちらの議論を踏まえないで、日本では、 倫理や法律などの問題の議論よりもむしろ技術的に追い付こうという形が強かったんじ ゃないでしょうか。 ○木村委員 日本では、第1号を結局徳島大学が行うか、東北大学かということであったのですが 結局東北大学が行いました。新聞発表のその当日に新聞にガイドラインを公表している んです。これは本当に公共政策としての倫理的関心への不充分さを示していると思いま す。徳島大学は少し後発になったけれども、それなりに公開の審議を行って私は招かれ て1980年に倫理委員会に出て、しかもあの時には非常に幅広く女性問題の専門家その他 を徳島まで招いて公開のセッションも何回も行って論議を積み重ねているんです。それ で、これはそこにいた担当の医師の方々が、カリフォルニアでそういう言わば臨床治験 の公開された委員会などを体験していたということをふまえてやったということの表れ ですし、東北大学の方はそういう生殖技術に関する公共政策としての倫理の発想を持っ ていなかったということで、非常に私はショックを受けた訳です。 ○柴田委員 そのことでちょっと思い出すのは、AIDですね。いわゆる人工授精の夫婦間外のも のです。私は社会のコンセンサスなしに密室でスタートして、そのまま何となくやって きたのではないかと最初は思っていたんですけれども、そうでないんですね。戦後間も なく慶應大学で始めるとき、安藤先生が社会に問い掛けているんですね。これは本当に 許されることなのか、それとも不妊の人への喜びを与えることとして許されるのか。そ れを呼び掛けてかなり議論もしていたようなんです。 その記録をちょっと見て、だから日本には全くそういう基盤がないということはない のだと思いました。戦後のまだそういうことへの関心が比較的薄い時ですけれども議論 はしているんですね。 それに比べるとさっき申し上げましたし、今、木村先生が言われたように、体外受精 のときの東北大学のやり方は私は納得出来ないんです。徳島大学は非常によくやったし それをきっかけに倫理委員会というものがほとんどのところに普及して、少なくともそ こに当事者じゃない人達の目が注がれるようになったというのは私はすばらしいことだ と思っているんです。ところが、今は倫理委員会のないところにまで広がったために日 本産科婦人科学会でも目が届いていないんじゃないか。第三者の目がきちんと届いてい れば、この問題についてはガイドラインでもいいんじゃないかと私は思うんです。言い 換えれば第三者の目がそこに注がれるようなシステムなり、制度なりをうまく作ること と、それを日本産科婦人科学会医の方が必ず守る、罰則がなくても守られるというよう なことが可能ならば、私はガイドラインでもいいのかなというふうに迷っているのです ○高久部会長 例えばAIDとIVFを実施する施設を決めて、それ以外の施設でやってはいけない という事になる可能性はあると思うのですが、そうした場合にその施設のチェックを日 本産科婦人科学会でできますか。 ○廣井委員 例えばAIDですね。AIDは極端に言えば精子提供があれば開業医でもどこでも出 来る訳です。ですから、そのチェックをどうやってやるかという問題です。IVFに関 してはかなりの施設で現実に行われていますから、その実績を報告することによってオ フィシャルに認めるということは可能です。ですから、どの点にどう絞っていくかとい うところがかなり難しいと思うんです。 ○高久部会長 実績によりますと、新規加入は不可能ということになりませんか。もし実績というこ とになると、新しい所で新しい技術を開発してその方法の方がより安全で有効かどうか 実証できないという事になる可能性がありますね。 御意見をどうぞ。 ○柴田委員 さっき登録制とおっしゃいましたね。その登録さえすれば、例えば施設なり何なりと いうことに対して一切審査的なことは行われない訳ですね。 ○廣井委員 今までは書類上で審査が行われていると思います。それで、顕微授精という精子を直 接卵子の中に入れるような施設は、普通の方法で体外受精で子どもが生まれているとい う実績がなければだめだということになっていますので、顕微授精の登録施設は数は少 ないだろうと思います。 ○柴田委員 それで登録で実際に実施したときに、それについての詳しい報告書を出しなさいとい うようなことはあるんですか。 ○廣井委員 登録された人は、毎年1回、学会の方から連絡が来ますので、去年ならば去年1年分 を今年の何月かには報告しなきゃいけないんです。それで、もし登録しても実際に1例 もやらなくても、やらなかったという報告は出さなければいけない。ですから、先ほど どなたかから御質問がありましたように、成功率は学会でみんなつかんでいます。ただ それを学会誌に施設毎の統計は出していないだけです。 ○高久部会長 学会には成功率を報告している訳ですか。 ○廣井委員 何例やって何例妊娠したという報告は全部しています。それで、その他にいわゆる今 インターナショナルでの統計が出ているんです。それはボランティアベースで登録を行 い、かなり詳細な個々の報告を出しています。 ○柴田委員 その報告は本当に漏れなくしているというふうに先生は思われますか。 ○廣井委員 ゼロ報告でもするということになっていますから、恐らく問い合わせたり何かしてで も9割以上の施設では報告していると思います。 ○柴田委員 やったことの報告をしないというようなケースはないでしょうか。 ○廣井委員 ほとんどやっているはずになっているんですけれども、私は具体的なことは調べてい ませんので分かりません。 ○高久部会長 他にどなたか御質問ございますか。 別な問題ですが、多胎減数手術を日本産科婦人科学会で禁止している主な理由は何で しょうか。 ○廣井委員 5つ子を実際に育てると言っても大変ですね。それで、それを双子ぐらいにするとい うことで可能であれば本人は生みたい訳です。体外受精その他でやっと出来た子どもを 全部堕ろすというのは法律的にOKなんです。ところが、一部堕ろすということについ てはだめだと問題がある訳です。 ところが、当時の終戦後間もなく出来た昔の優生保護法の時代には一部だけ堕ろすな どということは技術的にも出来なかった訳です。今は超音波下でいろいろなところを観 察しながら細かい操作が出来ますから、私個人としては減数手術を早く認めた方がいい んじゃないかなと思います。3つ子まではほとんど100%近く全員助かっています。です から、4つ子、5つ子ならば1人、2人堕ろすことは出来る。だけど、3つ子ならば要 らないので2人堕ろしちゃうとか、人によっては双子ならば要らないと言って双子の子 を1人堕ろしちゃう。せっかく生まれる可能性があるものも全部堕ろされて簡単に1人 っ子にさせられちゃうんじゃないかという懸念もあると思います。また技術的に安全か 現在の母体保護法での人工妊娠中絶に抵触しないかなどです。 そんなことで一応は日本産科婦人科学会としては認めていない立場になっているんで すけれども、実際では何例かやられているという話なので。 ○高久部会長 金城委員、どうぞ。 ○金城委員 先ほどの柴田委員の御質問ですけれども、これは日本産科婦人科学会からの報告に出 ています。(回答率は)90%以下ですね、87.64%。ですから、到底100%にはなってい ないということが言えます。 それから、今の多胎減数手術ですが、これは母体保護法を何らかの形で改正をしない と、日本産科婦人科学会の方でも減数手術はいいとは言えないと思うんです。そういう 意味で、母体保護法の「人工妊娠中絶というのは胎児を体外に排出して行う。」そこの ところを何らかの形で手直しをしなければいけないと思います。そして、技術が変化し てきている訳ですから、その当時は体外に排出してしか人工妊娠中絶は出来なかった訳 ですけれども、現在はそうではないですから、そこら辺はきちんと時代に合わせたもの にしていくという形で対応していく必要があると思います。 ○高久部会長 そういう意味では、イギリスの多胎減数手術に対する対応は合理的ですね。母体保護 法を変えて、それを適用するとすれば施設をある程度限定をする必要があるかもしれま せんね。当然IVFをやっている施設で行われるでしょうね。 ただ、あなたの施設はIVFをやってもいいけれども多胎減数手術はだめですよ、ほ かのところに行きなさいと言うのは難しいと思いますが、そんなに難しい技術ではない のですか。 ○廣井委員 我々は勿論やっていないんですけれども、技術的にはそんなに難しくないと思います 針を刺して吸引するか、或るいは胎児が比較的大きくなれば塩化カリウム等を注射する それで、先ほどの金城委員からの人工妊娠中絶なんですけれども、胎児及び胎児付属物 を母体外に排出するというのは人工妊娠中絶である。だから、法律を改正しなければ今 の形はできないということなんですけれども、ただ、これは排泄する時期を明記してい ないということで可能だという委員もいます。 いずれにしてもお産のときに全部出てしまう、あるいは小さいうちならば吸収されて しまうというので、そう厳密に言わなくてもいいんじゃないか。 それで、問題になるのがどの胎児を殺すんだということですけれども、やはり上から やるとか、下からやるとかによって一番近くにあるところに刺す訳ですから、そこには 選別の余地はないような気がします。 ○高久部会長 そうしないと、性による相違などというような問題が起きてくるから、ある程度の ルールを作る必要はあるでしょうね。 他に御意見がおありでしょうか。どの問題でも結構ですが、精子、卵子、受精卵の提 供についての議論が今までなかったのですが、3番目の問題については日本産科婦人科 学会はどういうふうな対応だったでしょうか。確認ですが。 ○廣井委員 精子と卵子は、極端に言うとそのもの自体が生命じゃないということですから、これ は実験に供してもいいのだろうというのが一般的ですね。 ○高久部会長 提供もいいということですね。 ○廣井委員 提供に関しては、精子の提供はいわゆるAIDとかで以前から用いられています。し かし、卵子の提供と受精卵の提供というのは学会としては認めていない格好をとってい ます。 ○加藤委員 卵子の提供を認めない理由というのは何ですか。 ○廣井委員 これもよく話に出るんですけれども、精子が提供していいのにどうして卵子を提供し ちゃ悪いんだということですが、精子は簡単に取れるけれども卵子は採取が大変なこと もあって用意に認めがたいのです。 ○高久部会長 加藤先生、卵子を採り出すのは大変みたいですね。ホルモン注射をして、理論的には 私も精子がよくて卵子がいけないのはおかしいと思いますが、現実には卵子の提供は大 変だと聞いています。 ○廣井委員 御存じのとおり、女性は月に1回排卵をします。大きく卵胞が発育して卵子が出てく るわけです。ですけれども、その採卵となると多少痛いものですから、結局排卵誘発剤 をやって多数の卵子を発育させて、そして取り出そうということですね。ですから、技 術的に難しいものですし、せいぜい10個、多くて20個ということですが、精子の1cc1 億というのと全然問題が違う訳です。 ○金城委員 卵子、それから精子の提供なんですけれども、精子の提供はAIDでは認めておりま すけれども体外受精では認めていないんです。そこもやはり整合性に欠けるだろうとい うことがひとつ言えるんじゃないかと思います。 それから、そういうことで認めるとした場合には更に2つのことが問題になってくる と思うんです。現にAIDでは精子の提供を認めていますので、これはちょっと技術に 法律が対応していないというところなんですけれども、こういうことが言えます。提供 された精子から生まれた子ども、それの父親はだれなのかということなんですね。それ で、日本の法律はかなり遺伝的な関係を重視しておりますので、今の法律では必ずしも 提供を受けた御夫婦の夫の方が父親になるということは明確になっていないんです。で すから、そういう意味では父子関係を確定をするために民法の改正が必要だと思います それから、子どもの遺伝的な親を知る権利、これはやはりAIDでも認める、認めな いはまた議論になると思うんですけれども、こういうことが言えると思うんです。やは りどの人の精子を提供したのかということについての記録はきちんと保存しておかなけ ればいけないということになります。そうでないと、将来認めると言っても20年たって そのぐらいから問題が出てくる訳ですから、そういうことを十分予想して今からきちん と記録をつくっておかなければいけないと思います。 それで、日本産科婦人科学会では一応記録は保存するということになっているんです が、そういう将来のことを予想しての記録の保存ではないんです。ですから、記録を保 存するとしても各お医者さんが独自にというのではなくて、やはり統一的に保存をして おかなければ、そういう遺伝的な親を知る権利というのは将来保障が出来ないというこ とになります。ですから、これを続けるのであれば、AIDに認可した状況では、やは り何らかの形で記録はきちんと中央で保管するというようなことが必要なんじゃないか と思います。 ○高久部会長 これは学会ででも保管しないと、病院だと潰れますしね。実際に凝固製剤が問題にな ったときに調査したら随分潰れた病院があったのですね。特に現在、医療環境が厳しい ですから。もしやるならば学会で保存しなければならないのではないかと思います。廣 井先生がおっしゃったように、日本の少子化防止の対策の一つとしてAIDを実施する ならば、法的な事を整備しないと、医療機関の方が躊躇するでしょうね。 ○廣井委員 それで今、精子を提供する人がほとんどいなくなっちゃったんです。学会で逆に認め たためにですね。その記録を保存するとか、いろいろなことで、だから我々もみんな慶 應大学に紹介しているような現状なんです。  ところが、精子の提供者についてはっきり分かりませんが、大体学生を使っているよ うですね。どの程度記録を保存して、あるいはその学生が遺伝的な病気になっていない のかということまでチェックすると、何十年後に父親が分かったとき大変な問題になる ○木村委員 これは国の記録保存機関みたいなものをちゃんとしようということで、それと同時に 立法上、生物学的な父親であっても財産の継承とか、そういうことについての明確な権 利がないということを規定した西ドイツとかスウェーデンのケースなどでは、やはりお っしゃったように精子の提供者ががたんと減ってしまったということもある訳です。諸 外国ではそういうケースがいっぱいある訳ですが、こういうことを含めて今後根本的な 問題は今度のヒアリングの中で繰り返し出てきたことの一つは、女性の自己決定を踏ま えた基本的な考え方の枠組みを生殖医療の討議の場所でも生かすような方向で展開して いかないといけないんじゃないか。 具体的にどういうことかというと、旧国民優生保護法、それから優生保護法、そして また母体保護法という流れの中での、言わば人工妊娠中絶を始めとする優生手術その他 の立法の枠組みの中で生殖医療の問題を考えていくと問題が後に残って、いろいろな規 定を入れれば入れるほど、例えばイギリスのように子どもが生まれた場合、重篤な障害 が残るような心身の異常に苦しむ場合、中絶は合法であるというような規定を入れれば 入れるほど、医療側はそれがいいと思っても国による新たな優生にまた積極的に関与す るというような形にどうしてもなるんです。 ですから、女性の自己決定を認めるような方向での枠組みの大転換をする。つまり、 そこまで我々が言えるのかどうかは分かりませんが、母体保護法の根本的な組替えも含 めて、この委員会として何か言うことが出来るのかどうか。例えば、イギリスなどでは 多胎減数手術を通常の中絶と同じ適用で1967年の中絶法の中に組み入れた訳です。それ で、我々が今日討議しているこの委員会の動向として、ガイドラインではなくてもしこ の生殖技術関連のものを母体保護法の中に入れるとすればそういうことが出来るのかど うか。そうすると、全体的な枠組みになると、これは国会の問題とか、相当大きな問題 になってきますので、そこら辺のところを踏まえた非常にテクニカルなガイドラインで したらこれは部会長名、または審議会会長名で出していくことは出来ると思うんですけ れども、厚生省を含めた法の改正の問題、あるいは法の新しいつくり方の問題になると 思います。しかし、そこまで含めた射程内で言わば方向性をはっきり、新しい時代にふ さわしい今、金城委員の言われた新しい技術の発達、それからまた女性の権利の確立、 そしてまた生殖医療の正しい在り方を目指した展開ということになりますと、これは相 当大きい問題になる訳で、一番最初に事務当局が言われたように、時間をある程度掛け た方がいいというのはそういうことも含まれていると思うんです。 こういった点について、これは部会長の御意見をお伺いしたいのですが、そういうこ とまで含めて討議してよろしいのでしょうか。 ○高久部会長 勿論そうだと思います。木村委員がおっしゃったように女性の自己決定権を基本に置 くべきだと思うのですが、これは次回の議論になると思うのですが、出生前診断の問題 のヒアリングでは、女性の自己決定を強調すると女性に負担が掛かり過ぎるという議論 がありましたね。 今日よりは次回の方がもっと難しい問題があると思います。審議官がいらっしゃるの で審議官の御意見もお伺いしたいと思いますが、法律をつくるというのはなかなか大変 だと思います。しかし、最終的にはそこまでいくかもしれないということを考えて議論 せざるを得ないと思っています。 ○伊藤審議官 ガイドラインでいくか、法律が必要かという問題につきましては、今日の御議論を聞 いておりましても、現段階で断定的なことはなかなか言いづらいんですけれども、仮に 厚生科学審議会の御意見なり、中間的なまとめの段階で、例えば複数の意見を出して国 民からまたいろいろ御意見を伺うというようなプロセスを経て、最終的に法律が必要だ となった場合、想定されることは国会での審議はこういう問題については時間が必要だ と思います。したがって、国会で議論している間は現状が続く訳ですから、そういう問 題もどのように考えるかなということで、しかし現時点でも学会のガイドラインでなか なか現場が徹底していないという問題を、ではいかに早くいい方向へ持っていくか。な かなか簡単には決められない問題だと思います。 ○高久部会長 この部会の上に厚生科学審議会があります。厚生科学審議会で当然議論されると思い ます。審議官がおっしゃったように、国会に行きますと恐らく何年とかかり、その間に この部会も存続しているかどうかは分からないというふうな状態になる可能性が十分に あります。本当はガイドラインがきっちり守れるような体制が出来ると一番即効性があ るというか、いいと思いますが、効果的な方法がなければやはり法律に迄いかざるを得 ないのかなと思っています。 他にどなたか、あと15分ぐらい時間がありますけれどもどうぞ。 ○寺田委員 今日の最初にガイドラインの方がいいのではないかと申し上げたのは今、審議官がお っしゃったような意味も含めて私は言っていたのです。ガイドラインにするにしても結 構ディスカッションは一つ一つに関して要ると思うんです。 例えば、この中でこのガイドラインは今の段階でつくった方がいいとか、項目につき まして、考えてみたらいかがかなと思っています。 ○高久部会長 問題についてはすべて日本産科婦人科学会で今迄討論してガイドラインが出来ていま すね。その中で多胎減数手術については私も廣井委員と同じ意見で、日本産科婦人科学 会で禁じているのは少しおかしいと思っているのですが、他のことについては日本産科 婦人科学会のガイドラインが参考になると思います。 ただ、問題はそのガイドラインをいかに医療の現場で守ってもらうか、あるいはどう いうチェックが出来るのか、そこが一番大きな問題だと思います。 ○廣井委員 ですから、1つのやり方としては、この委員会で日本産科婦人科学会に対し、例えば 多胎減数手術ですが、一部ではやられているが、学会では認めていない立場をとってい るが、それを早目に結論を出して、統一見解を出すように注文をするというやり方はあ るだろうと思います。 ○高久部会長 それで効果があれば結構なんですが。 分かりました。ほかにどなたか御意見ございますか。 ○軽部委員 ガイドラインというお話を先ほど伺っていたんですが、確かに日本産科婦人科学会で 十分に議論されて、学会としてのガイドラインはある訳ですね。そうしますと、先ほど みたいにいろいろ守る、守らないという話が出てくるので、遺伝子組換えのガイドライ ンみたいに所轄では文部省がガイドラインを規定していて、それ以外には科学技術庁が 民間等は規定していまして、そういう考えでいきますと、実は厚生省がある程度きちん としたガイドラインをつくって、それを日本産科婦人科学会に徹底してもらうというよ うな形が一番好ましいと思うんです。 それで、私が先ほどからちょっと疑問に思っているのは、今のところ日本産科婦人科 学会にすごくロード(重荷)を課してしまっているような感じがするんです。それで、 例えば先ほどの精子の提供者とか卵子の提供者のデータベースも日本産科婦人科学会が 保存している、あるいは慶應病院というある意味での私立の病院が保存しているという こと自身が非常にローカルだし、学会の役割をはるかに超えている問題だろうと思いま すし、また逆にこんなことは起こり得ることがあると思うんですが、プライバシーに係 る情報の流出ということが起こり得る訳ですね。 我々もいろいろな学会に所属しているんですけれども、学会組織というのはものすご くいいかげんでして、データは簡単に開示出来ますし、それが日本産科婦人科学会で本 当にきちんと出来るのかなというと、それはこちらが日本産科婦人科学会におんぶにだ っこしちゃっているんじゃないかという感じがしまして、この生殖医療の問題は全体を 含めてきちんとしたガイドラインをどこかでつくって、それを日本産科婦人科学会にお 願いしますみたいな形にしないと、データベースについても本来は国が全部登録すべき 問題ですよね。そこら辺をちょっと議論しないといけないんじゃないかなという気がし ているんです。 ○高久部会長 例えば、ワーキンググループをつくって日本産科婦人科学会のガイドラインを参考に しながらガイドラインを作る事はできますね。問題はそのガイドラインが守られている かどうかをチェックする機構をどうするか。正直なことを言うと日本産科婦人科学会で チェックする事はちょっと無理だと……。 学会という所は本来学問というか、研究を発表するというのが主な仕事である。社会 的な責任は勿論ありますけれども、チェックをする機構までは学会には無理かなと。そ うすると、何かつくらなければならない。法律になるとそれが検察になる訳です。ガイ ドラインを守っているか、守っていないかをチェックするのが一番大きな問題で、ガイ ドラインを作るのはそれほど難しくないと思います。 ○廣井委員 前回、日本産科婦人科学会会長が当部会のヒアリングに来まして、学会は親睦団体だ から罰則はなかなか難しい、なじめないというようなことを発言していましたね。最終 的にはそこになってしまうんでしょうね。 ○高久部会長 学会に対して文部省は刊行助成費を百万円の単位で出しているぐらいの補助しかして いないですから、大きな社会的責任まで負わすと学会としては背負い切れないかもしれ ないですね。 ○金城委員 実効性を担保するためにということで、ちょっとこれは思い付きなんですが、例えば いろいろな法律でやっているんですけれども、審査委員会みたいなものを置きますね。 そして、この病院はどうもおかしいというようなことが分かったら氏名を公表する。そ うすると、氏名を公表されればお客さんが減ることは確実ですよね。そんなふうな形で 一つの実効性を担保するというのも可能性としてはあると思います。それで、私は法的 規制と思うんですけれども、臓器移植についての法律も大変おかしなものになりました よね。ああいうことを繰り返す訳にはいかないしと思いますので、そういう意味では法 的規制でなくてもガイドラインで実効性を担保出来るような仕掛けを何とかつくる方法 はあるんじゃないかと思います。 ○木村委員 私はちょっと金城委員の意見と違いまして、やはりこれは国民の命に関わる問題です よね。そしてまた次の世代に関わる、これは人口の在り方を考える上でも21世紀の大問 題です。従って、これは国民的な議論を踏まえた、ある程度時間はかかっても法律でき ちんとするという方向の方が望ましい。 しかし、その実効性を担保するために2段構えにして、当面はガイドラインでいくよ うなことを具体的には考えるにしても、相当長期のレベルで具体的に立法をするという 方向を審議会としてはどうしても出していかなくちゃいけないんじゃないかというふう に思っているんです。 ですから、確かに時間はかかるし、いろいろな問題が残るかと思いますが、日本にお ける臓器移植法の論議も相当時間をかけたということで、ドイツの場合には専門家がや っていて去年ドイツも移植法が通った訳ですけれども、ある程度移植をしながらやって いった。日本はほとんど移植をしないでまた外国へ行ってやる人もかなりあった訳です が、それなりの公開の論議を積み重ねて、そして国会の中でともかくあそこまでこぎつ けて、現状では禁止法と言われるぐらい臓器移植の例が出ていないくらいに厳しいもの ですけれども、それなりに国民はある一定の評価をある時点ではしたと思うので、時間 はかかったけれども、しかしその中で論議は極めて幅広く行われたというふうに思われ ます。臓器移植法についての評価は、私と金城委員とは見解が違うような気がするんで す。 ○金城委員 では、私も一応考えておきますということで、私もその間を揺れ動いているんですね 最終的には、確かに国民的な議論を起こすという意味では法規制は大変望ましいのでは ないかと思います。結論は留保しておきたいと思います。 ○高久部会長 この問題について、どなたか御意見おありでしょうか。どうぞ。 ○加藤委員 ガイドラインの中身によりますよね。非常に出来損ないのガイドラインだったならば それはまた手直しということになるし、だれが見てもこれはなかなかいいガイドライン で、それが守れないようだったならば法律を作らなければならないとか、そういう段階 になると思うので、例えば島さんに調べてもらったものを見ても、イギリスなどは割 合納得のいくいい線を出しているんじゃないかという感じが私は印象としてするんです だから、まずガイドラインにするか、法律にするかという前に、大体この辺という線 を出してみるという必要があるんじゃないでしょうか。それで、法律にするとかえって 情報が隠されちゃってデータも改ざんされちゃうとか、そういう危険がない訳ではない と思いますので。 ○高久部会長 これは私の個人の見解ですが、ガイドラインをつくって、それをいかに有効に動かせ るかどうかという事が問題です。ガイドラインを作って、それでうまくいかなかった場 合には法律という方がいいような気がしています。 次回は出生前診断技術、着床前診断の問題などいろいろ難しい問題があると思います が、委員の先生方よろしく御議論の方をお願いしたいと思います。 どうぞ、柴田委員。 ○柴田委員 一つ質問だけさせてください。先ほどの議論で、精子提供はいいけれども卵子はだめ それから、AIDはいいけれども代理母はだめということについての一種の理論の整合 性みたいなものは日本産科婦人科学会ではどういうふうに出されているのかだけ教えて ください。 ○廣井委員 例えば卵子提供について私の記憶ではそれほど大きな議論をした訳ではない気がしま す。先ほど言いましたように精子は簡単に取れる訳です。卵子はその女性に対して負担 が大きいということから、恐らく卵子提供というのはかなり厳しいんじゃないかという 格好に話はいっているんだろうと思うんです。そういう技術的な問題であって、卵子使 用の倫理的な問題で特に反対しているのではない気がします。 先ほど言いましたように、精子も卵子もそれ自体は生命じゃないという考えからいき ますと、倫理的には大きな問題はないはずです。 ○柴田委員 特にAIDという場合、夫婦間でないということですよね。AIDは認めるけれども とさっきおっしゃいましたね。それを認めるというのは割に最近のことなんですか。 ○廣井委員 確か昨年5月だと思います。というのは、確か昭和24年ですか、慶應大学で初めての AID児が我が国で生まれましたね。それ以来、学会でこの問題について話が出ている のですが、本格的に議論をしていないのです。それで、やはり一定の基準を出さなけれ ばいけないということで数年前から検討し、昨年、学会で正式にAIDを認めようとい うことにしました。認めればどんどん普及していい訳ですけれども、かえって出来なく なってしまった。というのが、記録を保存するとか、子どもの父親を知る権利があると か何とかになってくると。 ○柴田委員 この問題については、論理性が非常に難しいですよね。 ○廣井委員 ですから、先ほど私が言いましたように、これほど出生数が減ってきていますから、 もし精子バンクを国でつくって自由に使えるような格好にすればかえっていいんじゃな いかと、初めにちょっと申し上げたのはその意味なんです。 ○高久部会長 それでは、最後になりましたけれども遺伝子治療臨床研究関係のことについて事務局 の方から簡単に御報告をよろしくお願いします。 ○事務局 お手元の資料の5番と書きました遺伝子治療臨床研究関係という資料をお開きいただ きたいと思いますが、3点ございます。 1点は、前回口頭でのみ御報告申し上げておりました北海道大学医学部附属病院にお いて行っておりますアデノシンデアミナーゼ欠損症に対する遺伝子治療臨床研究でござ いますが、当初の研究計画では本年3月末日をもって終了という実験計画期間になって おりましたが、御承知のとおり非常に良好な結果を得ているということで、引き続き予 後観察を実施しているところでございます。 これに伴いまして、お手元の資料の2ページを開いていただければよろしいかと思い ますが、2ページのところのカラムの2番、研究実施期間の項でございますけれども、 平成7年2月13日から平成10年3月31日までとなっておりますが、これを平成13年まで とりあえず3年ほど延長をさせていただきたい。これはあくまで予後観察ということで ございまして、患者さんに対する新たな侵襲等を予定しているものではございません。 こういう点がありまして、一応3月31日以降も引き続き予後観察を行っているという状 況でございます。 なお、この届出に併わせまして当該実施機関におきます関係者の異動等を踏まえて、 若干の研究にかかわる専門家の入替えがあり、これも併わせて届出が出ております。そ の資料が1ページから8ページまででございます。 それから、2点目は資料の9ページをお開きいただきたいと思います。我が国におき ます3件目、4件目の申請として、現在、本部会の下に設けられましたがん遺伝子治療 臨床研究作業委員会において検討中の案件についての御報告でございます。 これは、5月14日に文部省と合同で開催されまして、そこにありますような形で議事 をとり行ったところでございます。現在、岡山大学医学部附属病院、それから東京大学 医科学研究所附属病院におきまして計画中のものにつきまして論点整理を進めていただ きました。それで、その資料の9ページにありますような諸点につきまして、再度寺田 委員長のところにおいて確認をした上でこの部会に対して報告をいたしたいということ になっております。 これにつきましては現在、既に各実施計画者に対しまして、そこに掲げましたような 3点について委員長に対して報告を行うように、それから委員長の方で必要があれば関 係委員の意見を聞いた上で取りまとめるという準備を行っております。 これに伴いまして、実は作業委員会での論点整理が終わりますと、当部会に作業委員 会からの報告を行いまして、当部会において臨床研究計画そのもの、全体につきまして の御検討をお願いをするという手順になっております。したがいまして、先ほど冒頭御 説明を行いました6月、7月の予定の中にもしも間に合えば、例えば7月の際に整うよ うであれば、こちらで審議の再開をお願いをするということも考えられるかと思います それで、従来からこの審議におきましては厚生大臣が設けました私的な委員会として 遺伝子治療臨床研究中央評価会議がございまして、こちらでは非常に我が国ではまだ珍 しいといいますか、新しいものであるということで、計画全体の評価にあたりまして議 事録の公開のみならず、議事の公開を旨として実施してきたところでございます。現在 の厚生科学審議会におきましては当部会がそれに相当する事業を引き継いでいるという ことでございますので、各委員の方の御了解が得られれば同様に議事そのものの公開と いう形式でこの審議をお願いしたいと考えております。 ただし、7月に間に合うかどうかということもございますし、実施する際には十分な 事前の御了解を得てから実施いたしたいというふうに考えております。 また、この計画の最も中心となります各大学の総括責任者の方に、この審議の際には 来ていただきまして計画の説明あるいは部会委員からの質問に対して可能な限りお答え いただくというようなことも過去に実施しております。部会長と御相談の上、可能であ ればそのようなことも取り計らいたいと思っておりますので、あらかじめ御承知いただ ければありがたいと思っております。 それと第3点目でございますが、このがん研究に関連いたしまして資料の10ページで ございますが、現在そこに掲げますような専門家の先生方により論点整理を行っている ところでございますが、このうち国立感染症研究所を代表いたしまして御参加いただい ておりました山崎修道所長につきまして、実は同じ国立感染症研究所の吉倉副所長が、 従前東京大学の医学部教授ということで御参加いただいておりましたが、本年3月に当 研究所の副所長に就任されたということで、一応山崎委員につきましては部会の委員と して引き続きこちらでまた審議に参画されるということもありまして、国立感染症研究 所からの参加は吉倉副所長に集約したいということがありまして、そのような形の手続 を現在進めておるところでございます。 以上、3点御報告させていただくとともに、今後の部会の開催の可能性につきまして 御了承いただければありがたいと思っております。 ○高久部会長 どうもありがとうございました。 今の報告について、何か御意見あるいは御追加はおありでしょうか。寺田先生、よろ しいですか。 ○寺田委員 これは一応委員長預かりという段階までになっておりまして、あとは本当にテクニカ ルな問題があるだけでございます。近いうちに当部会に報告出来ると思います。 ○高久部会長 よろしくお願いします。 ○木村委員 がん遺伝子治療臨床研究作業委員会の公開ということについての御報告ですが、それ は委員の一人として全面的に賛成します。 ○高久部会長 これはいつになるかはまだ分かりません。 ○木村委員 もう一点だけですが、北海道大学のアデノシンデアミナーゼ欠損症の研究が13年まで 延びるということなんですが、平成7年から行われていまして、現在平成10年なんです が、その段階で論文その他の成果というか、何か出ているんでしょうか。それとも、現 在もまだで平成13年までいっているんでしょうか。どこかに書いてありましたでしょう か。 ○寺田委員 5ページのところに一応書いておきました。 ○高久部会長 アメリカン・ジャーナル・オブ・メディカルジェネティックスというのと、それから ブラッドと、一応インターナショナルなレビュージャーナルに報告されています。 ○木村委員 日本語では出ていないんですか。 ○高久部会長 日本語では、学会では随分報告されているのですが。日本遺伝子治療学会とか日本血 液学会とかいろいろな学会でです。 ○木村委員 我々はこれは本当に素人で分からないものですから、日本語でそういうものがあった ら読ませていただければと思ったものでちょっと今お伺いしました。 ○事務局 それでは、冒頭部会長から御説明がございました資料6でございますが、厚生科学審 議会先端医療技術評価部会の傍聴につきまして13団体から連名で要望書が出ている件で ございます。 要望書を1ページに付けてございまして、この部会の審議に対しまして傍聴の機会を 求め、直ちに意見を部会の審議に反映出来るように提出出来る機会を与えていただきた いということが主眼かと思いますが、そのために傍聴あるいは議事録をもっと早く公開 をして、きちんと次の部会までに意見が間に合うようにしていただきたいという申入れ を受けている訳でございます。 それにつきまして、2ページ以降のとおり、部会長とも相談させていただきまして、 事務局の方の責任で一応の回答をさせていただいております。その中身につきましては 部会の公開、このような問題でございますので審議の公開ということが極めて重要だと いう認識は事務局も全く同じでございまして、これまでそのようなことで公開のヒアリ ングなどを含めたいろいろな手段をとってきた訳でございますけれども、当面は部会長 から御説明がありましたとおり、委員間での議論を進めていく上で、より自由闊達な議 論をするという立場で当面、議事自体は公開はしないというような回答をいたしており ますが、やはり議事録等で努力出来る部分は十分ございます。それで予算面での制約や あるいは私どもの事務面でのいろいろな負担等がありまして、例えば今日のこの場の議 事録を明日公開という訳にはいかない訳でございますけれども、やはり早期に議事録を 公開いたしまして、もし御意見があるのであれば次の部会に間に合うように出していた だけるように最善の努力をするというのは重要だという観点から回答書にも書いてござ いますが、その点には努力してまいりたいということで広く今後も意見を求めますとい うことを申し上げている訳でございまして、そのような旨で回答をさせていただいてい るということにつきまして御報告させていただきたいと思います。以上でございます。 ○高久部会長 そういうことで、御了承をお願いしたいと思います。 それでは、ちょうど時間になりましたのでこれで今日の部会を終わらせていただきま す。委員会の皆様方には御多忙中、御出席いただきましてありがとうございました。 次回の日程について、事務局の方からよろしくお願いします。 ○事務局 次回は6月22日月曜日午後2時より、ここ厚生省特別第1会議室において開催する予 定でございます。 議題につきましては、今のところ出生前診断技術の関係につきまして自由な御発言を お願いしたいというふうに考えております。以上でございます。 ○高久部会長 どうもありがとうございました。 問い合わせ先 厚生省大臣官房厚生科学課 担 当 坂本(内線3804) 電 話 (代表)03-3503-1711 (直通)03-3595-2171