98/05/15 第20回年金審議会全員懇談会議事録        第20回年金審議会全員懇談会議事録 日 時:平成10年5月15日(金)10:00〜12:20 場 所:厚生省特別第1会議室 議事次第 1 開会の辞 2 委員出席状況報告 3 議 事 ・保険料の引上げ計画について ・学生の保険料の在り方について ・障害年金について ・施設入所者への年金給付について ・「年金改革に関する有識者調査」の結果の概要について 4 閉会の辞 〔出席委員〕 京 極 会 長    八 木 委 員  砂子田 委 員  岡 崎 委 員  木 原 委 員    国 広 委 員  久保田 委 員  神 代 委 員  坂 巻 委 員 高 山 委 員  都 村 委 員  福 岡 委 員  桝 本 委 員    山 田 委 員  山 根 委 員  吉 原 委 員  若 杉 委 員 渡 邊 委 員  船 後 委 員 ○会長 ただいまから第20回年金審議会全員懇談会を開催いたします。委員の出席状況につい て事務局から報告をお願いします。 ○事務局 本日は貝塚委員、富田委員、目黒委員が御欠席でございます。福岡委員は出席の御予 定でございますが、遅れておられるようでございます。 また、矢野年金局長は3月に本審議会において答申をいただきましたドイツとの年金 通算協定の実施特例法の国会審議で衆議院厚生委員会出席のため、本日欠席をさせてい ただいております。 以上でございます。 ○会長 それでは、次期年金制度改正に向けての審議に入りたいと存じます。本日はまず保険 料の引上げ計画について審議をお願いします。 次に、学生の保険料の在り方、障害年金、施設入所者への年金給付について審議をお 願いします。 最後に、今年3月に実施いたしました年金改革に関する有識者調査の結果の概要がま とまっておりますので、事務局から報告を受けたいと存じます。 まず、保険料の引上げ計画について審議をお願いします。事務局から資料の説明をお 願いします。 ○事務局 お手元の資料1をごらんになっていただきたいと思います。「論点整理」と年金白書 の該当部分等という資料でございます。 検討項目といたしまして、(3)「保険料負担について」ということで、その右の方に考 え方がございますが、現在の保険料は動態平準保険料に比べ相当低い水準にあり、将来 世代の負担を軽減し、世代間の負担の公平を図るため、保険料引上げスケジュールを早 めることについてどう考えるかというふうに示されております。 現在の保険料は御存じのように17.35%でございますが、将来にわたり一定の保険料で 財政運営を行う場合の保険料水準であります動態平準保険料は30.4%ということになっ ております。白書の保険料引上げ計画のところにつきましては、保険料引上げスケジ ュールを早めることにより、最終保険料率はより低い水準にとどまることとなるといっ た記述がされております。 続いて、資料2をごらんになっていただきたいと思います。 1枚めくっていただきまして1ページでございますが、「公的年金における積立金につ いて」という資料でございます。1番のところにございますように、「積立金保有の意 義」ということでございますが、1つ目の○にありますように、積立金を保有すること により、その運用収入によって最終保険料負担を抑制することができる。もう一つの○ でございますが、少子高齢化の進行の中で将来に向けて負担の平準化を図り、世代間の 公平に資することができるという2つの意義がございます。 その下の2「現在の財政計画」ということでございますが、1つ目の○にありますが 厚生年金の現在の財政計画では、現在の現役世代と将来の現役世代の負担の公平を図る とともに、積立金の運用収入の活用を通じて、最終保険料負担を軽減するとの観点に立 って、保険料率の段階的な引上げを行うこととしております。 こういった財政計画の下で、将来、支出の3年分程度の積立金を保有することにより、 厚生年金の最終保険料率は平成37年度以降34.3%と見込まれております。もし積立金の 規模を縮小するという財政運営を行うものとすれば、当面の保険料は低く出来るものの 最終保険料率は高くなるという関係にございます。 3つ目の○ですが、仮に支出の1年分程度の積立金を保有する財政計画を立てることと して、5年ごとに2.5%ずつ引き上げていくという計画を立てまして、平成32年度以降保 険料率を29.5%に据え置いて、積立金が支出の1年分程度となるまで取り崩しを行うも のとすれば、平成55年度に保険料率を29.5%から38%程度に引き上げることが必要とな ります。この場合におきまして、保険料率を引き上げずに、更に積立金の取り崩しを続 けるものとしますと、平成59年度に積立金がゼロとなって賦課方式に移行し、保険料率 をその時点で29.5%から40%程度に引き上げることが必要となるといったことが見込ま れております。 次のページはその保険料の推移をグラフで表したものでございます。太線の保険料を 平成32年度に29.5%で据え置きますと、平成55年度に給付費の1年分程度の積立金をも つという財政計画にした場合には、平成55年度に保険料を38%程度に引き上げる必要が あるというふうに見込まれております。 次のページは同様に29.5%で据え置きました場合には、59年度で賦課方式に移行し、 40%程度の保険料の引上げになるということでございます。 続きまして次のページですが、年金数理部会第5次報告書要旨というものがございま す。 これは社会保障制度審議会年金数理部会で今年の3月に公的年金の財政運営の在り方に ついて報告を出したものでございます。簡単に紹介させていただきます。 1番のところにありますが、「公的年金制度の財政運営方法の沿革」ということで、 これまでの公的年金制度の沿革が書かれております。 それからその下の2番のところですが、「社会経済情勢の変化」ということで、1つ 目の○ですが、更に少子高齢化が進展することが見込まれる。 それから2つ目の○、後段の方に書いてありますが、保険料負担に世代間で極端な格 差が生ずることは年金制度の継続性、安定性の確保の面から避けなければらない。 3つ目の○が後段の方にありますが、将来高水準の保険料負担を求めることは、経済 成長が鈍化している状況の下では極めて困難と思われるというようなことが報告されて おります。 次のページですが、3「公的年金制度の財政の在り方」ということで、1つ目の○が 年金財政の安定性及び世代間の負担の公平性の観点からは、平準保険料であることが望 ましいと。しかしながら、現行の保険料と平準保険料との乖離が大きいため、次期再計 算では一挙に保険料を平準保険料まで引き上げることは困難であると。 2つ目の○でございますが、段階保険料方式による場合、少なくとも団塊の世代が65 歳に達し、本格的な高齢社会となる時点を目途に、以降一定の保険料率となるようにす ること。次のポツですが、新たな後代負担を回避するため、今後設定する保険料は原則 として標準保険料を下回らないものとするとともに、設定する段階保険料はこの標準保 険料を基準として、後代になるほど急激な保険料引上げとならないように設定すること。 この2つが必要であるというふうに書かれております。 ここで標準保険料といいますのは、新たに制度を設立したとして、将来期間に対応す る年金給付だけを対象として算定される保険料でございまして、標準保険料よりも低い 水準の保険料を設定する場合には、そのときの被保険者が新たな負担を後代に送ってい るという関係にある訳です。厚生年金の現在の給付水準で見ますと、標準保険料は23.4 %という水準になってございます。数理部会の5次報告の概要を紹介させていただきま した。 以上です。 ○会長 ありがとうございました。ただいま御説明のありました事柄につきまして、御質問、 御意見など、どなたからでも御自由にお願いします。 ○A委員 保険料の水準をどうするかということは、年金制度の在り方として最も重要な問題の 1つであると思います。それで、厚生年金の保険料は今年の予算ではトータルでは22兆 円が見込まれておりまして、決して小さな金額ではございません。所得税は当初予算で は20兆円、法人税は15兆円ですから、それよりも規模が大きいのです。年金の内枠だけ でこういう年金保険料をどうするかということを議論していいのかどうかということを やはりそろそろ問題にしなければいけない時期に入ったのではないかと思います。今ま で年金保険料というのはあくまでも年金の論理で、年金の内側だけの理屈でどうするか ということを議論してきたのですが、そうではなくて、むしろ日本経済全体との関係、 あるいは、今政府がやろうとしている政策全体との整合性、そういうものをにらみなが ら議論する必要が出てきたのではないかというふうに考える訳です。 御案内のように今は日本は不景気ですね。失業率3.9%でございます。昨年度の実績で 言いますと、現役サラリーマンの実質賃金は残念ながらマイナス成長でございまして、 実質的に目減りをした訳でございます。そうした中で、世代と世代の助け合いというこ とを基本にする年金の保険料を一挙にある程度また引き上げるということがどうかとい うことでありますが、それは現在の政府が進めようとしている景気対策にむしろ逆行す るのではないかということです。政府全体として何をやろうとしているかメッセージが 明確ではないということです。今、日本経済は不景気であり、それを何とかしのごうと している訳です。そのために16兆6,500億円に相当するような対策を打った訳でありまし て、減税を4兆3千億また追加すると言っている訳です。そうしたときに、年金保険料を 引き上げるということは実質増税と同じです。政府全体がどちらに向いているかという ことの整合性が問われる訳でありまして、今のような日本経済の状況から見ると、年金 保険料前倒しで早く引き上げるということはいかがなものかというふうに申し上げざる を得ません。 もう一つは、積立金がどういう機能を果たしているか。事務局から御説明ありました ように、最終保険料負担を低くする機能を持っている、あるいは世代間の負担の公平に 資するのだということでございますが、残念なことなのですけれども、現在積立金の運 用がうまくいっているというふうな判断はなかなかしがたい状況にございます。資金運 用部に預託した後、財投運用なり、福祉還元として年福事業団でいろいろなお金を使っ ている訳ですが、その運用の仕方に問題のあることは今日の基本テーマではないもので すから細かくは申しませんが、皆さん御案内のとおりだというふうに思います。 要するに、積立金がうまく使われている、将来の年金財政に本当に貢献するような形 で使われているのだったら、保険料を相対的に高めに設定する意味も確かにあると思う のですが、今その運用の仕方に問題があって、期待されているような効果が本当に上が るかどうかということがむしろ真剣に問われている訳であります。 保険料を早く引き上げるかどうか、あるいは今のような経済状況を見て、そういうこ とを必ずしもしないというような議論の分かれ目、選択の違いというのは結局既存の枠 組みの中でどこをどこまで変更するか、あるいは変更出来るかということに関する考え 方の違いに結局基づいているというのが私の意見でございます。 今回数理部会の意見というものが紹介されましたけれども、数理部会はこの報告書を まとめる過程では給付についてどうするかとか、国庫負担の在り方をどうするかという ことを議論したというふうにお聞きしております。ただ、報告書ベースでは、結果的に 私が読んだ限りで申し上げますと、年金の給付水準は今後とも維持する。それから国庫 負担率は現行どおりで変えないということを前提にした上で、では保険料というものを どうやって将来にわたって設計していくかという問題の中で1つの解を出したというふ うに理解しております。 いずれにしても、給付は変えない、国庫負担率を変えないという2つの縛りを与える と確かに保険料というものは今のような段階的な引上げのやり方に問題があるというこ とはそのとおりでありますけれども、仮に給付水準を変えないのではなくて変えると、 話は違ってくると思いますし、今回の年金審議会はどちらかというと給付水準を変える ことが大テーマのはずなのです。 もう一つは、国庫負担率について閣議決定があって縛りがきついのですけれども、こ の閣議決定も本当に国民的な議論に基づいてなされたのかよく分からない。たまたま経 済の実態に対する読み違えが背景にあって、法案が成立した後5か月たたないうちにも うその改正を議論せざるを得なくなったような状況にある訳です。いってみれば、ヤク ルトの野村監督をジャイアンツの長嶋監督と間違えるようなことを政府の当局者はやっ た訳です。 要するに経済の実態を見誤った訳です。 そういう中で財政構造改革法の一環として国庫負担問題の縛りが閣議決定として与え られている訳です。これは国民的な議論なしに閣議決定がなされている訳でありまして 年金審議会とか、その他もろもろの人が深く積極的に関与したとは思いません。この縛 りを仮に外すということを考えるとしたら、将来については全然また違った絵が描ける のではないかということです。 例えば基礎年金の、今3分の1しか国庫負担付いていないのですが、その残りの部分に ついて新たに消費税を財源とするというようなことを構想出来るということであれば、 何も慌てて保険料を引き上げていく必要はないということではないかというふうに思い ます。 それで給付水準を下げる。それから国庫負担率を変えるということを前提にすれば、従 来数理部会やいろいろなところで行われてきた議論の前提が全部崩れてしまう訳です。 そうするとなぜ保険料を前倒しで早く上げなければいけないのか。日本経済の今の実情 あるいは景気対策に逆行するような形でなぜそんなことをしなければいけないのかとい うことをもう一回考え直すということになるのではないかと思うのです。私は今の日本 の経済状況を考えますと、早期に前倒しで引き上げるということは適切でないというふ うに思っております。 以上です。 ○B委員 私も今のA委員の意見に事業主の立場から賛成なのですが、A委員おっしゃったよう に、給付水準が現行を前提にして、したがって負担がいずれ上がってくるのであればそ れを前倒しにする。この論理については論理性があるかと思いますけれども、負担をす る側の論理から考えると、現状の負担が17.35%から34.3%に上がること自身が非常に 問題なので、そういう意味でどのぐらいが負担可能かということを考える必要がある。 そういう中で給付が将来どうなるかという議論なしに前倒しということは、負担する側 からすると非常に大きなインパクトであります。 数字をもって御説明しますと、私ども従業員の中で給付をもらうというよりも負担す る側からの論理からいきますと、この5年間私どもの会社でいえば月例の賃金は5年間で 4,500円しか上がっておりません。私どもを取り巻く関連の産業等は5年間で3千円も上 がっていないところもかなりあります。そういう中で、今でも500円ごとというのを700 円にするということはいろいろ健康保険料やその他の負担が上がっている中で本当に従 業員の納得が得られるかという論理があります。 これは従業員の払う側の論理なのですが、それから事業主としてそもそも非常に問題 なのは、現在例えば私どもの会社で言いますと、厚生年金保険料の支払負担というのは 年間170億円払っております。もしもこれが34.3%であれば、人員が変わらなければ350 億払うと。これは論理的にだんだんというのはおかしいので、来年から350億払えと言わ れたら、これはとても納得出来ません。そういう意味で、負担と給付の問題をきちんと 議論した中で、それでどうだと。5つの選択肢からすれば私どもとしては当然17.35%に 近いD案ですね。20%程度ならばやむを得ないかなと。そういう中で、それであるなら ばこれをどういうふうに割り出す、そういう議論なら乗れますけれども、34.3%を前提 に前倒しと言われますと、払う側の従業員の立場と事業主の立場から到底納得が出来な いということをお分かりいただきたいと思います。 ○C委員 冒頭A委員の方から大変問題の全領域にわたって御説明をちょうだいしたのであえて 全体的な議論に付け加えるほどのことはないのですが、例えば、今、配っていただいた 数理部会の第5次報告の要旨でございますが、この1枚目の一番下のところのパラグラフ を見ても、「長期にわたり保険料を引き上げ、将来高水準の保険料負担を求めることは 経済成長が鈍化してきている状況の下では極めて困難」と。これはまさに今の足元の経 済情勢に引き付けて理解すべきパラグラフであるとすれば、A委員の御指摘を裏付ける ような叙述というふうにも理解出来るのではないかというふうに思うところです。 さて、今日の資料の先ほど事務局からの御説明があった1枚紙でございますが、特に 一番最後の○、こうすればこうなる、こうなればこうなるという後でグラフで付いてい るところです。まずここの前提になっているのは積立金の運用収益が将来の保険料負担 を抑制することにつながるということですけれども、これは少し確認をしておきたいの ですが、このページの一番上の○のその運用収入によって最終保険料負担を抑制するこ とが出来るという場合の運用収入がプラスに作用するというのは、賃金スライドを前提 にするとすれば、名目賃金上昇率を上回る運用収益が確保される場合だけですね。それ を下回るとすれば、これはむしろ積立金を持っていること自体がマイナスの要因になる そういうバランスだと理解していいはずですね。イエスかノーかだけで結構ですが。 ○事務局 ここでの前提は、利子率が賃金上昇率より高いという前提で保険料負担が軽減される ということですが、少子高齢化が非常に進んでいる中で、例えば1980年代、90年代は賃 金よりも利子率が高い訳ですが、そういったことの将来予測がなかなか難しい訳で、少 子高齢化が非常に急速に進む中では、保険料負担を将来抑制するという効果は、仮に賃 金上昇率よりも利子率が小さいとしても、程度は小さくなりますが、効果はないという ことはないと。 ○C委員 そうですかね。そこは非常に数理上の疑問がありますので置いておきますけれども、 私どもは利回り収入というのが実際の名目賃金上昇率を上回る分だけが将来の保険料負 担を抑制することに貢献する分だというふうにこの間の議論では理解をしてまいりまし た。 ところで、年金制度自体非常に長期にわたるもので、個人だけを考えてみても現役で の労働生活が40年とか、45年とか、その後の受給期間が15年とか、20年とかという長期 にわたって果たしてそういうものが安定的に保障されるのか。例えば今、計算されてい る前提は、将来利回り5.5%、名目賃金4.0%ということを前提にされているようですが そういった前提条件そのものが将来確保されるのかどうかについて我々は全く確信を持 った理解をすることが出来ません。 それから、先ほどの数理部会報告との兼ね合いで言えば、こういったことで今まとも な成長軌道に戻すことが必至の課題である、そして経済成長が逆に言えば社会保障の前 提になっているときに、それを押し下げるような効果を持つ政策的な選択というのはむ しろ将来にわたる年金財政そのものを危うくすることになるのではないだろうかという ことが非常に大きな疑問です。 もう一つ、A委員がお触れになった保険料負担の問題でございますが、例えば国庫負 担率をどうするのか。これは前回改正のときに現行の基礎年金給付の3分の1を2分の1に 引き上げるということが確認をされ、昨年の閣議決定まではそれが今回改正の1つの内 容になるはずであったと。これを審議会としてはどう判断するのか。これは私ども自身 に問われていることですが、少なくとも事務当局としては、これが2分の1になった場 合にはどうなるのかといったような試算例を最低出すことはデータとして当然の問題で はないのか。あるいは、全額税方式という意見もある訳で、その場合にはどうなるのか といったようなことも併せて、試算というのであれば出すべきであって、それがないま ま国庫負担率は現行のとおり、その他の条件も現行のとおりで、このままいけば将来保 険料率が40%にも上がってしまうぞ、お前たちそれでいいのかという叙述は極めて脅迫 的な内容だというふうに思わざるを得ませんし、またそのような脅迫的な言辞の下で正 常な審議が行われるとはとても思えない。 以上、感想でございます。 ○D委員 A委員、それから今のC委員の意見に関連してなのですけれども、経済企画庁が最近 年金改革の効果を具体的に試算しているのですけれども、それによりますと、年金給付 額の賃金スライドを物価スライドに置き換えて、サラリーマンの無業の妻から保険料を 徴収するなどの改革を行えば、2050年、高齢化のピーク時においても現行の保険料をや や上回る程度の水準に抑えることが出来るという試算結果を出している訳です。 それで3月の女性と年金のときにその後者の部分、3号被保険者に保険料を求めた場合 には、厚年の保険料率の1.35%を引き下げることが出来ると試算されましたが、引き下 げ率が割と少なかった訳ですね。その経企庁の推計によりますと、結構その規模が大き くて、そこの部分だけでも2050年に約20兆円の改善効果があると推計されています。政 策の組み合わせなのですけれども、そういうような推計を出しておりまして、かなり規 模が違うなという印象もありまして、他の機関の推計結果であると言えばそれまでです けれども、やはり官庁ですので、もしその部分についてチェックをされていましたら教 えていただきたいと思います。特にサラリーマンの無業の妻の保険料を取った場合の、 ある前提の下に推計をしているのだと思いますけれども、その推計方法について教えて いただければと思います。今でなくても結構ですけれども、是非資料を見せていただき たいと思います。 ○事務局 経企庁の試算でございますが、今、手元に資料がございませんが、年金白書とかそう いったことで厚生省が言っております、賃金スライドをやめて物価スライドというのは 裁定時までの賃金の再評価はして、年金を受給し始めてからは物価スライドだけをする という意味で使っている訳ですが、経済企画庁の賃金スライドをやめて物価スライドだ けにするというのは、年金を受給し始めるときの賃金の再評価もしないで、これからず っと物価スライドだけやっていきますと、当然ですけれども給付水準としてはかなり小 さなものになる訳です。給付水準と保険料はある意味ではセットの話ですので、保険料 が非常に少なくて済むということは、それだけ給付水準を抑制しているということで、 実際かなり長い間物価スライドだけで賃金の再評価をしないということで、実質的に給 付水準を非常に引き下げていくということであれば、今の保険料よりも少し上げるだけ の水準で出来るということは、そういう関係にありますけれども、ただ、そういったこ とが年金制度として現実的かどうかという問題はあると思います。 ○E委員 本件に関しましては、私も当時資料が出たときに見せていただきましたけれども、今 事務局がおっしゃるとおりだと思います。 ○事務局 2点補足させていただきたいと思います。 1つは、先ほどのC委員からの国庫負担率の扱いについてでございますが、正確に申 しますと、前回法律の付則で検討規定が入り、附帯決議で2分の1という1つの目途とし ては検討するというふうに議論をいただいておる。 それで今回この場で引き続き検討いただいている訳でありますが、例えば、昨年の10 月の場合にも23ページというところで試算をして、国庫負担率を2分の1にした場合、3 分の2にした場合、全額にした場合どうなるかという試算をお示しし、白書の221ページ でも実額を提示申し上げ、また前回は更に全額税方式で国庫負担にした場合に幾ら幾ら の税率になるかということも提示しながら御議論いただいておりますので、それについ ては御了解いただきたいと思います。 それから、女性の雇用の形にかかわり、いわゆる厚生年金の被保険者になれば財政的 にどういう影響があるかということについては、ここで女性の年金をやりましたときに も、その効果は女性の就業形態によるということで一律に厚生年金の被保険者になれば 必ずしも財政は好転するとは限らないというあたりの資料も出して説明したところであ りますけれども、これは今後じっくりいろいろなケースを置いて検討してみたいという ふうに考えております。 ○A委員 今の事務局の説明に対してお願いをしたいと思うのですが、確かに今までの審議会の 資料だとか、年金白書で国庫負担率を変えた場合の数字はお示しになっております。 ただしこれは国庫負担額がどうなるかということだけであって、厚生年金の最終保険料 がどうなるかという数字が一切示されていない訳です。C委員が先ほどおっしゃったの はその点なのです。要するに国庫負担率を変えたら国庫負担額は幾らになるかというの は我々は知っている訳です。それだけではなくて、実は国庫負担を変えた場合に最終保 険料がどうなっていくかとうことを是非お示ししていただきたいということだというふ うに考えておりまして、それはまだ全然我々は手にしていない資料なのです。そこをお 願いしたいということです。 ○F委員 私数理部会長の立場でもございますが、ここはやはり年金審議会の委員として発言い たしたいと思っております。 ただ、数理部会の立場というのは政策提言をするような立場にはない訳でございます したがいまして、給付水準についてはやはり現行水準というものを前提に置いて分析し 対策を考えていかねばならないという制約を受けていると我々了解し、委員各自におき ましては、それぞれの考え方もありましたし、先ほどA委員が少しおっしゃいましたよ うに、数理部会の中でもいろいろ議論はあった訳でございますが、給付水準の問題はす べて現行給付水準を前提にして分析その他を進めていくということで統一した訳でござ います。 ですから、我々は何も現行給付水準を維持しなければならないという主張は一切いた しておりません。その点だけはひとつ誤解のないように御了承いただきたいと思います もう一つ短期の問題と長期の問題でございまして、確かに最近急激に経済状況が変わ ってまいりまして、負担の引上げということが非常に困難な状況になってきたように思 います。ただし、現在政府がやっておりますように、アドホックの減税だけを何回繰り 返してもみんなたんすの引き出しの中に入れてしまうというようなことも言われておる ような次第でございまして、本当に先行き真っ暗な中で減税をしても余り効果はないの ではないか。 お先が真っ暗ではなくて、こういう見通しがあるということを示す必要があるだろう。 これは私の個人的な意見でございます。数理部会ではそんな意見はいたしておりません したがいまして、保険料の引上げが非常に難しい情勢にはなってきたけれども、だか らといって何もしないという訳にはまいらない。では何をするか。これはまさに厚生省 が年金白書で問われた5つの選択肢のどの方向で我々は年金改革を考えていくのかとい うことでおまとめ願えればいいのではないか。先ほど来の保険料の問題といい、あるい は国庫負担の問題といい、そういうことではないかと思っております。税方式と社会保 険方式というのは、「税方式か社会保険方式か」というような問い掛け方もありますけ れども、やはり「税方式と社会保険方式と」というような問い掛け方もあるはずでござ いますから、そういったこともひとつ御審議願えればいいのではないかと、かように思 っております。 以上でございます。 ○G委員 こういう専門的な議論が中心のときは難しいのですが、いつも言っていますとおり、 少子化が予想外に厳しくなったということだけで5つの選択肢のどれかを選ばなければ ならないという場面に入ってきたので、私の観点からすれば、今のところ一番問題な点 は、現役世代と年金受給世代との間のバランスが余り悪くならないようにするというこ とを考えざるを得ない。結論的に言うと、私は給付水準が高過ぎるのではないかという ふうに思って5つの選択肢の中からは少し、自分自身が年金生活者ですが、年金生活者 になる人に対して厳しいような先行きを見ざるを得ないようになってきた。これはだれ の責任でもないのですが、少子化が極端に進むようになったということがそのことを意 味していると思います。 ですから、負担が上がるか下がるか、負担を上げたくないという話、もう少し負担を 低くしたいというふうな話のほかに一番重要なことは、給付水準が高過ぎるのではない かということを考える必要があって、今回の時間には間に合わないと思いますが、どう も年金制度の在り方そのものが根本的に改革を必要とするので、高齢者が受け取る年金 額をその時々の経済状態並びに現役世代の状態と相対的にバランスがとれるように給付 水準を決めるということが必要であって、その給付水準の内容というのは、現役世代の 人が税金を払い、保険料を払い、更に子どもを育てるということまで差し引いた可処分 所得とイコールにするというふうなレベルを決めるのが必要だと思います。 先行き非常に見通しが悪いですから簡単には計算が出来ませんけれども、将来日本の 経済がそんなにうまく進まないということになったときには、やはりそういう経済の中 で現役の世代の生活レベルと高齢者の生活レベルとがそれほどかけ離れないようにする これは家族の中で老身を息子たちが扶養するという場合を考えてみれば非常に分かりや すいことなのですが、家全体の家計が厳しくなってくれば、昔のように年寄りにいいケ アをすることは出来ないというふうな考えを入れないとだめではないかと思います。そ の話をすると年金審議会としては時間が間に合わないと思いますが、私は基本的には人 口の少子化が極端に進んだということがすべての今回の議論の根底にあるというふうに 思います。 ○H委員 中座をしなければいけないので。A委員から大変重要な問題提起があって、幾つか確 かに検討を要する問題点が含まれていると思うのですが、それだけに幾つかA委員にお 尋ねをさせていただきたいのです。問題全体が非常に多元連立方程式ですから、どこか 1つだけ動かして議論が非常にしにくいことは御指摘のとおりだと思うのですが、もし A委員おっしゃるようなことで考えるとすると、アバウトかもしれないけれども、給付 水準をA委員自身はどこまで下げれば次期の保険料の引上げをしないで済むというふう に大体勘で、あるいは計算しているかもしれませんが、もしその辺までお考えだったら 教えていただきたいと思います。 2点目は、国庫負担率を引き上げれば確かに保険料を引き上げなくて済むのですけれ ども、逆にそれだけ消費税なり何なりで取らなければならない。その消費税を引き上げ た効果も去年やって大失敗をして、保険料の引上げも確かに景気を冷やす効果はあった かもしれぬけれども、消費税の引上げの効果が絶大であったことは明らかなので、積立 方式論の場合の28%ぐらいに一遍に上げろというのとは別かもしれぬけれども、相当消 費税を上げなければいかぬということであれば、景気へのマイナスの効果というのは同 じことではないかと。その辺をどういうふうに考えたらいいのかということですね。 それからA委員のインプリケーションの中には、今日資料として出された2つの図で 積立金を減らしていくとか、なくならせるとかという議論が絡んでいるのですが、A委 員の先ほどの御発言の中に積立金の運用のこともありましたけれども、積立金をなくす べきだという前提なのでしょうか。そこら辺私は御意見としてよく分からないので教え ていただけますか。 もう一つは、A委員御自身仮に今回の保険料の引上げを景気対策上見送るべきだとし ても、将来的に少子化の影響のために世代間の不公平が非常に大きくなっている問題を 否定されている訳ではないので、いずれは上げなければいかぬということは多分認めて いらっしゃるのだろうと思うのですが、そうなった場合に、結局最後に上げなければい かぬ負担は大きくなってくる。政策的な御提言としては、次期財政再計算で年金保険料 を引き上げるのはとにかく景気対策と矛盾するからやめろと。2005年のときに上げるの は、そのときまた考えろというように理解してよろしいのですか。 ○A委員 すべて大問題ですので手短に答えるのがなかなか容易でないのですが、一応私の考え 方をせっかくの御質問ですから申し上げたいと思います。 1番目は給付水準の引下げの目途ということなのですが、これはもう既に年金審議会 で検討してきたことであります。私自身は余り積極的な発言をしておりませんが、私は 1階部分の給付水準の引下げは非常に難しいという判断をしております。下げられるの は2階だけだという判断です。どこまで下げられるかということは、先ほどG委員がお っしゃったように、現役世代とOB世代の生活バランスで決まるということでありまして 例えば何割下げればいいとか、そういうような議論は今すぐには出来ません。これは将 来の年金保険料がどうなるかということ、あるいは租税負担がどうなるかということと 直接関係する訳です。現役世代の生活はどうなるかということはまさに保険料水準なり 租税負担なりがどうなるかということに大きく影響します。それとのバランスで決まる 訳でありまして、2割下げればいいとか、そういう単純な議論は出来ないというふうに 思っております。 2番目ですけれども、消費税を導入してその税率を引き上げていくことと、社会保険 料の料率を上げていくことで景気対策としては両方ともマイナスに作用し、同じではな いかと。だから保険料を引き上げなくてもいいという議論はもう少し慎重にした方がい いのではないかという主張だと思いますけれども、年金保険料は今、世界各国、少なく とも私は昨年1年近く欧米諸国をずっと回っていたのですが、あるいはOECDにおける年 金専門家会議にも出席する機会に恵まれまして、そこで私は実はサマリーコメントを150 人を前にやらされたのですけれども、そのときの締めくくりの中で私が申し上げたのは 今、欧米主要国で年金保険料を引き上げるなどということを考えている国はないという ことなのです。むしろ景気の状況だとか、失業率の高さの問題などがあって保険料を引 き下げている国が出始めた訳です。最初にやったのはポルトガルやスペインですが、つ いにドイツが決断をした訳です。今までドイツは日本のモデルでありまして、段階保険 料的に上げていくことをやっていた訳なのですが、そのドイツがむしろ保険料を下げる 方向に転じた訳です。 ここ将来20年間保険料を20%以上に上げないというふうに決めたのです。ほかの国を見 ましても、保険料を上げるなどということを言っている国はないのです。 しかし、年金給付をスリムにするのはどこの国もやっておりますが、それでも財源が 足りないということになった場合どうするかというときに、付加価値税ないしそれの代 替物を新たな財源として投入するという方向で調整が開始されているというのが私の理 解であります。日本だけ閣議決定でそこを縛ってしまっているのです。専ら保険料を上 げる。しかも前倒しで早く上げろという議論しかないというか、そこが目立っている訳 です。どうしてそういう議論に主要国がなっているかということなのですが、これはや はり経済に対する悪影響ですね。特に企業の事業展開、経営に直結する問題でありまし て、そこに非常にマイナスの影響が多いので、あるいは低成長が続いていく中で現役サ ラリーマンの月給が手取りでなかなか上がっていかない。企業いじめであり、現役泣か せだというのがむしろ一般の理解になりつつある訳です。今の日本の経済の状況はまさ にそのとおりなのです。 消費税はどうかというと、これは年金受給者を含めて広く浅く負担するものでありま すね。逆進性は確かにあります。ただし、国民年金の定額保険料に比べたら逆進性がま だ低いのです。広く浅く全ライフステージにわたって非常に広範に少しずつ負担してい くというのが消費税なり付加価値税の意味でありまして、そちらに各国とも財源を切り 替え始めて、現役のときだけに集中して負担させて、企業にも重い負担を掛けるのはも う今は適切でないという判断になったということです。ですから、そういうような形で ほとんど基本政策の変更が欧米主要国で行われつつあるということが私の発言の背景に あるというふうに理解をしていただきたいということであります。 積立金の問題は非常に悩ましい問題です。運用の妙が示されるのであれば私は積立金 の意義はそれなりに大きいと思っておりますが、今、日本経済において過去に必要だっ たような積立金の意味が非常に薄れてきております。とりあえず資金運用部なり年金会 計にお金がある。お金があるからその金をどう使おうかという話になっておりまして、 もともとやりたいことがあってお金が足りないから年金の金を借りましょうとか、郵貯 の金を利用しましょうという発想ではなくなっているのです。これは明らかに日本経済 の置かれている状況が変わった訳です。お金があるから使おうというから変な形で使っ てしまうというのが今の現実で、あるいは使おうとしてもなかなかうまい運用先がない というのが実態でありまして、年福事業団も非常に苦労されている訳です。あるいは今 後その運用の見直し体制を組むに当たっても、非常に悩ましい問題があることは事実な のです。 私は前々から申し上げておりますけれども、積立方式の運用を強化していくというこ とであれば、それをなぜ公的年金でやらなければいけないのか私はよく分かりません。 私は積立方式でやるのだったら民間の年金でやればいいというふうにもともと考えてお ります。 公的年金という器を借りてなぜ積み立ての要素を強めなければいけないか、なぜ公のと ころに金を強制的に徴収して、公が管理をしてその運用をしなければならないのかとい う問題提起をせざるを得ないということでありまして、要するに将来の年金負担を軽く する、あるいは年金財源に資するような形で積立金をうまく運用出来るのだったらこの 問題で意見を変える必要はないと思っているのですけれども、残念ながら今その積立金 の運用は非常に悩ましい問題があってうまくいっていないという現実認識でございます  それから、年金はいずれ負担増をしなければいけないと、これもおっしゃるとおりで ありますが、将来は今よりも2倍、あるいはそれ以上の負担にしなければいけないとい うのは、今の給付を前提にすればそうなっているのですけれども、先ほど事務局の方に もお願い申し上げましたけれども、仮に1階部分の財源に消費税を新たに導入するとい うことをやるとすれば、負担増は必要なのだけれども、それは消費税でやるのか、年金 保険料でやるのかということの問題になる訳です。これは先ほど2番目の論点で説明し ましたけれども、負担増はいずれにしても必要だというのは私の理解なのです。負担増 は長期的にいずれにしても必要だと。ただしそれを何でやるのか。年金保険料でやるの か、消費税でやるのかという問題なのだということでありまして、一方的に年金保険料 だけでやろうという考え方自体を是非再検討してほしいというふうにお願いしたい。そ れが私の立場でして、やや舌足らずですけれども、以上です。 ○H委員 大変ありがとうございます。今のお答えの中で、私自身もよく迷う問題がありますが ドイツとの比較のところは背景が非常に違うということをもう少し考えるべきではない かと思うのです。付加価値税を既に二けた台にしている国と、3を5にしてあっぷあっ ぷしている国ではおよそ国情、民情が違い過ぎる訳で、税制そのものの沿革も違うので しょうけれども、そういう日本の現実の政治情勢の中で御主張のような1階部分にして も、私も消費税にした方がいいと勿論思っているのですが、ただ、現実にそれがフィー ジブルかどうかということを切り離してこの議論は出来ない。あるいは、2%程度でも 引き上げたときの消費への大きなマイナスの影響が将来起こらないという保障はないの で、そこら辺のマクロ的な判断というものが何とも今、私自身はつかないので、少しリ ザーブをしたいと思うのです。 もう一つは、年金の成熟度が既に非常に高くなっている国とこれから急激に高くなる 国と、ドイツは引き下げにした方がいいくらい障害年金だってめちゃめちゃなことをや っている訳で、そういう国と同じ議論は出来ないのではないかと。御承知と思いますけ れども、特にドイツは外国人労働者を入れて保険料を払わせてやっている国で、日本の 財界の中にも、この委員会に出ている財界の方は余りおっしゃらないけれども、外国人 労働者を入れたら保険料など上げないでいいではないかという議論はたくさんある訳で す。ドイツはまさにそういうことをやっている訳で、そういう国と同じレベルで議論が 出来るのかということも少し検討すべきではないかと思うのです。大いに議論したいと 思います。 ○F委員 私もH委員がおっしゃいましたのと同じようなことを申し上げようと思っているので す。確かに年金制度は社会科学の分野では実験室の実験が利きませんから、他国の経験 というものが非常に参考になるのですけれども、ただ、今、H委員がおっしゃったよう に、それぞれの国にはそれぞれのバックグラウンドがある訳でして、ストレートに結論 だけを持ってくる訳にはいかないです。 それで、西欧の方が非常に少子高齢化の影響が及んでいることは確かに言えると思う のですけれども、その場合に制度はかなり成熟化している。そういう段階の西欧諸国と まだ日本のように成熟の途中にある国では事情が異なる。日本の年金というのは現在の 保険料はアメリカの保険料ぐらいなのです。したがってアメリカの給付水準ぐらいにし か上げられない訳です。 一方、34.4%とか言ったのはイタリー並みなのです。これは制度が破綻してしまった 一番有名なイタリー並みの負担になる訳です。そういうふうに日本というのは非常に西 欧諸国に比較出来ないような成熟化の途中にあって、少子高齢化の波に襲われたという 段階にある訳ですから、余り西欧の例をそのままストレートに持ってくるのは少し危険 ではないかなというふうに思います。 ただ、日本は成熟化だけは避けられない訳です。制度が成熟してきているから、幾ら 少子高齢化がいろいろな対策で少しは緩和されても、日本の制度というのはまだ30年と 少々ぐらいしかたっていない訳です。だからまだまだフルペンションが出切っていない という状況にあることはよく認識しておかなければならぬのではないかと思います。こ れが1点です。 もう一つは積立金なのですけれども、確かに積立金の運営をどうするかというのは非 常に大きな問題でございまして、そう簡単に積立金を持てば何%のリターンがあるなど ということは言えない訳です。外国などでもリターンを上げるために積立金を持つとい う主張はある訳です。現にアメリカでやっておる議論は大部分それが主なのです。国債 に運用しておったら2%にしか回らない。株で運用したら7%、両方とも実質ですよ。だ から株で運用すればうんと保険料が安くなる。 こういう理屈から積み立てを増やそうというような議論もあります。しかし日本の場 合はそうではなくて、やはり世代間公平という点を考えますと、どうしても後代世代に 高負担を押し付けるという訳にはいかない。やはり現在の世代もある程度の負担をしな ければならない。そうするとこれは成熟度がまだ日本の場合は低い訳ですから、正直い ってそんなに保険料は要らない訳です。だからどうしても積立金が余ってしまう。これ を有効に活用しよう。日本はそういう問題だろうと思うのです。 積立金で大いに儲けて保険料を安くしようというのは、それは望ましいことですけれ ども、なかなか難しいのではないかと思うのです。やはりどうしても世代間の公平を維 持するためには積立金が増えていくと。その積立金を効率的かつ安全に運用するにはど うすればいいか。ここらあたりから先ほどA委員がおっしゃいました民営化という問題 はそれだろうと思うのです。公的に一括して運営するというのは問題が多いから、民営 化ということで分散して運営をしようというのが民営化の1つの考え方だろうと思いま す。その議論はここでももう少ししていただいた方がいいのではないか。ただ民営化は 無理だとか、二重負担の問題があるから出来ないとか、そういう問題ではないと思うの です。一元的に、包括的に公的な積立金として運用することが非常に難しいから、やは り企業年金や個人年金という形で分散して運用しようという考え方があるはずですから その点の議論というのがどうもこの審議会では少し足りなかったのではないかというふ うに思います。 以上2点であります。 ○I委員 遅れてきて誠に申し訳ございません。かつまた議論をお聞きしないままの発言で申し 訳ないのですが、負担と給付の世代間のバランスの問題になる訳なのですが、常識的に 考えまして、20%以上の負担が出来るのかと。これはほかに医療保険の負担もあります 失業保険の負担もあります。そういういろいろな負担、税の負担もあります。そういう ことの中で常識で考えて本当に20%以上の負担が出来ますかというのが、これは負担の 側から言う1つの問題として明確な話だろうというふうに思います。 それからもう一つ、したがって、そうすると今度は逆に給付を受ける方の立場からい ってどうなのだという話になる訳です。先ほどお話が出ていますように、やはり負担と 給付のお互いの可能範囲といいますか、バランスの問題というのが非常に重要なので、 普通の国民が普通に考える常識の範囲が大切だと思います。 したがって、これはF委員に別に物申し上げる訳ではないのです。F委員はさっきお っしゃったように、1つの前提で計算なさったということなのですが、保険料が40%と いうようなものを国民が見たときにどういう反応を起こすかと。要するに、そういうこ とならばやめましょうという反応しか起こさない訳です。ただ、これは数理計算ですか ら、別に他意がある訳でも何でもないのですが、それは専門家の分かる話でありまして 国民から見るとこれはあるところで勝手な議論をしているなという印象しかないだろう というふうに1点思います。 もう一つ、これまた勝手なことを申し上げますけれども、先ほどH委員から消費税の 話が少し出ましたが、いかにも今の不景気が全部消費税のアップが原因だというような お話なのですが、私はそこのところは少し違うのではないかと思います。 最近日銀の局長の発言が割に正しいのではないかなと思っているのですけれども、一 番根本原因は何かといいますと、やはり金融の改革の後れだと思うのです。これは産構 審の基本問題小委員会でもはっきり申し上げましたけれども、日本は規制撤廃、当時は 自由化という言葉なのですけれども、要するに規制が撤廃された産業から順番に強くな りました。30年前に撤廃されたところ、20年前に撤廃されたところ、そういうところは 随分苦しんだ上で、今日では世界でも一流になっています。金融はつい昨日まで護送船 団方式で一々大蔵省のお伺いを立てながらやってきた。今度一遍に取り外す訳ですが、 これは多分大風邪引くだろうと思います。それでウインブルドンのテニスコートをつく って、そこでテニスをやるのだというけれども、第一ウインブルドンのテニスコートが どうして出来るのか。それからプレーヤーってだれがプレーヤーなのですかということ で、大変な問題なのです。確かに金融は強くなってもらわなければ困るのです。困るの ですが、いまだにこの金融の不良債権の氷山の大きさが分からない。 要するに、アメリカは御承知のように1,300人刑に服しましたが、しかし3年で全部を 片づけた訳です。ところがバブルがはじけて8年、いまだに氷山の大きさすら分からな いということになりますと、これは世界が不信感を持つのが当たり前の話でありまして だから問題は、それを99年度中に解決するとか何とかという話はよく出るのですが、解 決出来っこない。出来っこないのだけれども、氷山の大きさを示すことは出来る。 それからもう一つは、氷山の中もABCと分けますと、完全に評価出来るもの、それか らグレーであって、それは白になったり黒になったりするもの、それから黒、そういう ようなことを世界に向けてはっきり発信すれば、ファンダメンタルズが壊れている訳で はないですからまだ間に合う。そういうようなところが一番大きな原因と、それからイ ンドネシアで今、騒動が起こっていますが、アジアから来た金融不安。この2つが最大 の構造原因で今日でも問題が起こっている。 昨日の日銀の局長の発言が割かし当たっているのではないかと言ったのは、卸売物価 の下落に関して、要するに消費税を上げたことによって、これは消費者物価ですが、物 価が上昇した分がきれいに消えて、かつ更に消費者物価が下がるでしょうという発言を しております。多分そうなるだろうと思うのです。そういう意味で、1つの大きなきっ かけであったことは事実なのだし、それからもともと一番最初のときのアレルギーはあ りますから、いろいろな問題があったことは事実でしょうけれども、しかし、冷静に客 観的に見れば、持っている構造要因というものと、それからそれのもたらした1つの問 題点を仕分けて考えておく必要があるだろうというのが第2の問題として気がついた話 として申し上げておきたい。 第3の問題として最近いろいろ考えまして、一貫して私も産業構造審議会基本問題小 委員会の中で言ってきたことは、税金と社会保険、つまり社会福祉には税金を使っても 構わないし、社会保険でやる方法と両方ある。だけれども社会保険の場合と税金とは基 本的に違うのだというのが大前提ではないかと。社会保険というのはあくまで出した人 がもらう。 勿論それは再分配機能があるにしても、出した者がもらうという大前提がなければ社会 保険を払う人がいなくなってしまうということを申し上げてきたのですが、このところ のいろいろな施策の内容を聞いていくと、税金と社会保険、特に例えば基礎年金の1階 建ての部分などの論理をずっと考えていくと、突き詰めていくとどうも本当にこれは社 会保険なのかどうなのか私自身が率直に言って分からなくなってきたというのが今の実 相であります。だけれども、今とにかく国際競争力をどうしても強めなければならない とすれば、直接税は相当大胆に下げなければならぬという話があるとすれば、勢いこの 問題の行くところというのは、間接税という問題を真剣に考えなければならないのかな というような感触が出てきているように実は思いました。 したがいまして、勿論先ほどF委員がおっしゃったように、全部が全部世界を真似す るということではないのですが、ただ、アメリカ並みの負担でもってドイツ並みの給付 を受けているという重大な構造ミスというような問題についてそのままほうっておいて いいのですかと。アメリカ並みの負担ならばアメリカ並みの給付でいいではないですか というふうに物事を整理して考える。イタリア並みの負担ならイタリア並みの給付でい いのですが、そういうこともしっかり踏まえた上で、勿論どこかの真似をするという意 味ではなくて、十分消化した話にしなければいけない訳ですけれども、そういうことの 視点も持っておく必要があるのではないでしょうか。 思いつくままの話で、かつまた後で責任を取れと言われても取れない話も入っており ますが、今のいろいろな議論をしていただいている、かつまたそれに参加させていただ いているという立場で、このところ非常に強く感じていることを、間違ったかもしれま せんけれども申し上げておきたいというふうに思います。 ○J委員 いろいろな委員の方の御意見そのとおりだと思うのですが、私も今の時点でいきなり 保険料率の引上げ計画が出てくるというのはいささか理解に苦しむのです。1つは、介 護保険が導入されることが明らかになっていますし、医療保険などでも個人負担が非常 に増えてきている。そういう中でもって今、国の社会保障制度そのものに対する不信感 が非常に広がってきている訳です。そういうときにまた年金も将来の負担があるのだか らという計画をぽんと出せば、もう社会保障など当てにしないという形でもって確信的 な未加入者がどんどん増えるのではないかというふうに想像してしまう訳です。 保険料率にいたしましても、将来のいろいろな制度の見直しで随分変わってくるので はないかと思う訳ですけれども、例えば給付の年齢をどうするかとか、あるいは国庫負 担、先ほど社会保険ではないとおっしゃいましたが、まさに日本の社会保険ではないの でありまして、介護保険と言いながらも5割は税金が入る訳ですから、日本の社会保険 は純然たる保険の論理で動いている訳ではない訳です。そうしますと国庫負担をどうす るかとか、あるいは3号被保険者をどうするかとか、加入期間40年をどうしようかとか いうような制度の動きの中から負担の問題というのは当然出てくるのだろうと思う訳で すしたがって現行の水準を考えただけでもって表のような形で負担が増えますよという ようなことを出すのは余り意味がないことではないかなというふうに私は思う訳で、む しろ年金のいろいろな制度のいろいろな条件が決まったときに負担の問題というのを議 論すべきではないかというふうに感じる訳です。 それから世代間の公平ということがしきりに言われる訳ですけれども、純然と世代間 の公平が全くイコールになるというようなことは無理な話でありまして、もともと年金 というのは、高齢者を若い人が支えるという意識から出てくる訳ですから、世代間の年 金の給付と負担の数字だけでもって公平を論じるのはいさかか問題があるのではないか と思うのです。ほかの水準がいろいろ上がっている訳ですし、そういった恩恵も若い世 代受けている訳ですから、そういう意味でただ単に給付と負担の数字だけで平等を論じ るというのはいささか問題があるのではないかという感じをした訳です。 以上です。 ○A委員 H委員もうお帰りになってしまったのですが、消費税引上げというのでフィージビリ ティーがないのではないかという御趣旨だと理解しています。ただ、問題提起の仕方に よってフィージビリティーは変わるというのが私の理解です。要するに、いずれにして も将来年金負担は上げなければいけない。そのときに本当に年金保険料で上げていくの ですかと。一部の財源を消費税を上げるということでまかなうのはどうでしょうかとい う、その選択の問題として議論をしてもらうことが重要であって、消費税だけを上げる と言ったらみんな非常にアレルギーを起こしているということではないかと思います。 成熟度の問題は先ほど触れませんでしたけれども、確かにおっしゃるとおりなのです が、ただドイツやイタリアの話を聞いていても、今から数年前までは現行給付を維持す るとしたら負担を2倍にしなければいけないという議論をしていた訳です。それで可処 分所得スライドとかいろいろ入れて少し情勢が変わりつつあるのですが、そんなに日本 と成熟度が大きく違うとも思わないのです。違うことは確かなのですが、それが本当に 質的に大きく違うかというと、そこは若干私と理解が違っているなというふうに思いま す。 以上です。 ○会長 話は大変大切なところに入っておりますが、今日お願いしております議題には、学生 の保険料の在り方、障害年金の問題、施設入所者等への年金給付という別のグループの 議題もございます。ここで一応打ち切りにしまして、そちらに移ります。事務局から御 説明をお願いします。 ○事務局 時間が大分経過しておりますので、手短に御説明申し上げます。 資料1の1枚紙をもう一度ごらんいただきたいと思いますが、今日の残る項目は学生へ の適用、障害年金、施設入所者の年金給付と、この3つでございます。これにつきまし ては、資料2の中で一部また資料を準備しております。まず資料2の6ページをお開きい ただきたいと思いますが、これが「学生の国民年金保険料納付に関する問題・提言・課 題」ということのペーパーでございます。 現行の制度、これは平成元年の改正で学生につきましても国民年金に強制加入いただ くと。その目的としては、障害無年金を防止する、あるいは40年加入によって満額年金 を確保等々によって導入いたしまして、それなりにまた免除基準等を作成して、現実的 な対応をしてまいった訳であります。問題点の指摘というところで、現在実際に御負担 いただいている方々、あるいはその子どもの将来の年金を事実上親が負担をしているで はないかといったような御批判等もありまして、解決すべき問題があるのではないかと そこで右側で幾つか解決方策を考えてみた訳でありますけれども、真ん中の四角が縦 に4個並んでおりますが、まず一番上のものは、学生時代は申請によりまして納付を猶 予すると。卒業してから、会社に入って稼ぎ出して追納をすると。学生時代にその間障 害になったというケースについては、障害基礎年金を支給するという形であれば、現行 制度が当初持った問題意識を解決出来るのではないかと。ただ、それを行うに際しては 右の四角で、実務上、あるいは制度設計上まだまだ検討の項目ございますけれども、そ ういった大きな考え方が1つ。 それ以下の3つは、例えば、学生時代は強制加入にはしますけれども全員保険料免除 とか、あるいは障害年金保険料相当分だけの保険料を納めていただければいいのではな いかとか、あるいは任意加入にしますが、障害になった場合には基礎年金を支給する。 こういったような考え方もあると。この場合には、もう既に同世代で働いている勤労青 年等々とのバランス等についても十分な比較考量が必要ではないかということでござい ます。 それから資料1にお戻りいただきまして、学生への適用に関係しましては、2つ目の○ 論点整理でも御指摘いただいておりまして、こういった学生についても、例えば23歳に なって会社に入るということになると、60歳まで38年しかない。こういったようなこと もございまして、国民年金の被保険者の範囲が20歳〜60歳という今の制度についてもう 少しフレキシブルに出来ないかという御指摘もいただいておるところであります。これ については白書では若干の記述をしておりますけれども、いろいろまだ検討を続けてお りますけれども、今の学生に対する適用を今回いろいろ考えてみるということで、事実 上この問題についてある程度の対応が1つ前進するのではないか。 また、更なる問題としては、実際に制度全体の仕組み方の基本的な考え方、あるいは 実務においても非常にまだ困難な問題がございまして、更に検討の御時間をちょうだい いたしたいというふうに考えております。 次が障害年金の関係でございますが、これは資料をまた準備しております。今の資料 の7〜8ページであります。 7ページをごらんいただきますと、「無年金の障害者問題について」ということで、 指摘されている問題点はこのとおりでありますが、障害の状態にあるにもかかわらず、 何らかの理由で年金制度に加入していなかったために障害年金を受給出来ない。こうい った方々に対して所得保障が必要なのではないかと。この障害者の年金の問題につきま しては、昭和60年の改正時に相当大幅な給付拡大をした訳でありますが、それ以後も平 成6年までに可能な限りいろいろな無年金の障害者の方々についての対応をしてまいっ たところでありますけれども、次のページをごらんいただきますと、こういったような ケースの方々が、障害者ではありながら年金がないというケースでございます。左から 昭和57年1月の難民条約に関する措置をとったとき以前の障害の方、あるいは61年4月以 前にこれは海外におられる方については国民年金に加入出来なかった間障害になられた 方。次の2つは任意未加入時代、学生や主婦が任意加入の時代がありましたが、そのと きに加入しておられなかったというときに障害者になられた方々。そして次の2つは未 加入あるいは滞納しておって障害年金が受けられなかった、こういった方々であります 平成6年の法律改正のときにも、こういったことについて福祉的な措置も含めて検討 することという附帯決議を国会でもちょうだいいたしたところであります。これについ て2つの立場がございまして、左側の下の四角は、例えば、20歳前の障害の方は拠出し ないで、保険料を払わないでも年金が出ているではないかと。こういったことから見て も拠出していないから年金が出ないというのはおかしいという考え方。あるいは、障害 者は稼得能力が非常に乏しいということで無年金の方にも年金を出すべきだというお考 えをちょうだいしております。 一方で、また年金の立場から見ると、次に○を3つほど書いてありますが、上の2つ を申し上げますと、1つは、年金制度というのは、原則として一定の保険料納付要件を 満たした方が老齢とか、ここの場合には障害といった事故の発生で稼得能力が喪失して そして年金支給されるという形になっておりますので、所得がない人に一律に所得保障 を行うという年金制度になっておらないところでありますので、こういった方々に支給 すると、今度は納めた方と納めなかった方の均衡という、今度は保険の制度の中の問題 がまた生じるということで非常に難しいのではないか。 あるいは2つ目として、20歳前の障害の方を引き合いに出しますと、この方々は障害 発生が20歳前でありますから、障害が発生しなければ将来において年金に加入をいただ いたはずだという考え方に立ちまして、20歳時点で保険事故が発生したものとみなして 年金給付をしているということで、未加入、未納、滞納と同じかどうか、それについて は同列に論じるべきではないという考え方であります。 3つ目の○で書いておりますが、いずれにせよ障害者施策の必要性の観点から、所得 保障によるべきという考え方、あるいは就労支援、福祉サービスの充実ということによ るべきという考え方の中で検討を続けております。 最後になりますが、施設入所者の関係であります。これは今回資料は準備いたしてお りませんが、白書の関係部分におきまして記述しております。結局施設に入っておられ る方について、年金を蛇口でとめて調節するか、それとも年金は所得保障ということで お出しして負担のところで自己負担いただくかということで、その辺の考え方の整理を 各所で関係部分記述したところでございます。 以上でございます。よろしくお願いいたします。 ○C委員 会長にお願いでございますが、今3つ出されている問題それぞれ性質が違いますので 区分をして効率的に議論していただければと思います。 ○会長 それでは最初は学生の保険料関係の問題をお願いします。 ○K委員 大学が少子化の影響を受けて学生獲得に今すごく必死になっているところですけれど も、ですから大学に入る人は率から言えば増えると思うのです。学生時代は原則として 無収入だというふうに今、考えられる訳ですが、それによって親のコストというのが非 常に上がっていて、それが年金制度への不信感につながっている面があると思います。 一番最初のアイデアに私は賛成なのです。つまり、原則として20歳を超えたら払うべ きなのだけれども、でも申請によって納付を猶予し、後で追納するというのが今の状態 ではいいと思うのです。学生時代というのは、必ずしも2年、3年、5年で終わらないで長 くなったり、それから社会人入学というのがこのごろ大学はやりますね。そうするとそ の期間無収入になるということもありますので、そういう期間に関しても認めるという ように応用したらどうかなというふうに思います。 ○C委員 まず収入のない人に対して保険料を強制徴収することは出来ないということをはっき りと原則的に貫徹すべきだというふうに考えます。その上で学生時代については囲みの 下から2つ目にあるように、障害に対するリスクがいつもある訳で、これに対する限定 保険料を納入する。ただしそれは基本加入期間の40年ととれば、40年の中にはカウント しない。むしろ22歳で就職したらば22歳から40年、その後社会人入学でもって3年大学 院に行ったということがあれば、その3年は再び千円払って、更に先延ばしで3年間とい うので40年とカウントする。少なくとも20歳、60歳という前後の年齢をフィックスして いる現在の構造は完全に自由化すべきで、これは資料1の真ん中にあります2つ目の○、 20歳前あるいは60歳以上も被保険者とすることについてどう考えるか。これは積極的に 進める。特に高卒で就職する人が同世代人口の半分を占めていることを含めて、これは 旧国民年金の枠組みを被用者という立場に無理やりに当てはめるから生じた無理であっ て、これを完璧に旧国民年金型の枠組みからの脱却を図るべきだ、そういうふうに思い ます。 ○L委員 私も今お話しされたC委員、それからK委員と基本的な考え方は一緒でありまして、 学生から保険料を取るということについてはいろいろな問題が今、起こっている訳です から、この際きちっと整理をした方がいいのではないかというように思っています。 追納という話もありましたけれども、また右の示された資料のますの中にいきますと 追納だとか、天引きだとかいろいろ出てくる訳です。要するに私ども労使関係の仕事を してきた人間からみますと、経過措置などというものを設けると、将来経過措置をのけ るのに猛烈なエネルギーが要ることになります。この際すっきり、くっきりした方がい いのではないかということを重ねて申し上げておきたい。せめてやるならば、真ん中の ますの下から2番目の、今お話がありましたような障害年金保険料のみの給付と負担を いうことで1,100円云々ということが書いてありますが、あえてやるならその程度のこと かなというように思っています。 それからもう一つは、今もお話がありましたように、加入期間の問題についてもこれ だけ働き方も多様化しているし、個々人の価値観が多様化している中で、きちっと枠を はめて物を考えるというやり方ではなしに、基礎年金番号も導入されたことですし、い ろいろフレキシブルに対応出来るような施策をとっていくというのが在り方論ではない かなというように思っております。 A委員からいろいろな御意見あった件について、私も大変大事な意見だと思います。 税に関するお話もございましたけれども、前に戻って恐縮なのですけれども、私たち国 民には、税は「取られる」という発想があるように思うのです。けれども、これはどこ かで私たちが超えなければいけないハードルだと思います。今回の3%から5%になった 消費税のような発想ではなしに、1つの目的をはっきりさせて、そういう財源に投入し ていくという努力をこれからやっていかないといけないのではないか。 そしてこれ以上負担を掛けますと、私たち勤労者の立場からも、あるいは企業という レベルで考えてみても総体的に沈んでいきますし、企業は活性化が非常に損なわれるこ とになります。それは最終的には国の浮沈にかかわるような重大な状況をまねくのだと いう認識に立つと、やはり目的をはっきりさせて、方向性を国民に示して理解を求めて いくというやり方で、給付と負担の関係についての整備が出来るのではないかと思いま す。 前に戻って恐縮ですけれども、発言のチャンスがなかったものですから便乗して申し 上げました。 以上です。 ○M委員 学生の保険料負担の問題ですが、今までのお三方の御意見と基本的には同じである訳 ですが、学生2人を抱えていまして、ここ数年親として保険料を負担してきているその 立場から若干申し上げます。実感を申し上げますが、学生2人とも、息子2人ともですが 全く社会保険料を納めているという認識がない訳でありまして、私が負担しております が、その部分についての感謝も、ありがたみも全く感じていない訳です。 それで、もしも引き続き制度全体の整合性の観点からして保険料をやはり学生からも 納めなければいかぬのだという形をとるのであれば、私の考えでありますけれども、空 想的といったら空想的なのですが、保険料を取るか、ないしは12年4月からは介護保険 もスタートする訳でありますが、夏休みの期間中に何日間か介護等の社会的奉仕を行う というような形で、それを選択させると。親としてはそれをやらせるのはなかなか興味 があるのではないかというふうに思ったりしていまして、そういう案も考え得るのでは ないかと少し思ったりするものですから申し上げました。 ○会長 このあたりで障害年金の話に移ってよろしゅうございますか。 ○D委員 障害の方で御説明があったのですけれども、結局障害年金の受給要件を何らかの形で 満たしていないという場合に無年金になる訳ですけれども、御説明のなかった部分で重 要な問題があると思いますので、その点について申し上げます。 受給要件は加入要件と保険料納付要件と、それからもう一つ障害状態要件がある訳で す。法の別表に定める障害の状態に該当するかどうかというのがある訳ですけれども、 私はそこのところが結構重要で、身体障害の場合、視力とか、聴力とか、四肢の障害と かということははっきり分かりますので1級とか2級とか測定可能な訳です。ですけれど も、内部障害とか、難病とか、身体障害以外の精神障害とか、そういう場合には抽象的 な基準しか示されていないのです。1つは、日常生活に著しい制限を加えるというのと か、もう一つは、労働が著しい制限を受けるかという、そういう日常生活能力という概 念と労働能力という概念の2つ出している訳です。しかし、無年金状態との関連の場合 特に前者の方、日常生活能力という概念が難しくはっきりしない訳で、やはり明確な評 価基準が示されていない限り、内部障害とか精神障害の人たちが年金が受けられなくな るという可能性がありますので、その3つ目の要件がかなり重要な問題ではないかと思 います。 それからそれを認定する訳ですけれども、今、主として医師が認定している訳ですが その認定方法について介護保険のケアマネジメントと同じように、自立能力とか日常生 活に支障を来すかどうかということですから、医師だけではなくてもっとソーシャル ワーカーとか、保健婦さんとか、リハビリの従事者とか、そういう生活に関連ある人た ちが認定する機関に入って障害認定システムを少し変える必要があるのではないかと思 います。障害の状態の認定システムというところに問題があって障害年金が受けられな いという方がかなりありますので、加入要件と保険料納付要件だけではなくて、障害状 態要件の改善も重要なのではないかと思います。 ○C委員 障害年金の問題は、老齢年金、障害年金、遺族年金というふうに考えますと、ここで の議論はほとんど老齢年金のことばかりやってきたので、今日短期間で障害年金や遺族 年金のことを十分に議論することは勿論出来ない。 今日の問題提起そのものはあくまでも無年金者の問題ということですから、今日は無 年金者の問題に関しまして申しますと、8ページの中で今、無年金で残っている問題は 適用除外の在日外国人で57年1月以前の段階で障害の状態にあって、その後制度上適用 された人が依然として無年金。つまり保険事故の発生がそれ以前であったという扱いに なっている。これはやはり未成年者の場合と同じように、彼らが加入出来る状態になっ たところで保険事故が発生したものとみなして無年金者になることを防ぐと。ここの穴 をふさぐということがとりあえず無年金問題について重要なので、そこだけ確認をして そして今日の議論はそれ以上の問題については実は今D委員から御指摘たくさんありま したように、障害年金の問題は大変重要ですから、これは別にもう一度当審議会で是非 機会をとっていただくようにお願いしたい。 以上です。 ○事務局 先ほどD委員からの御指摘であります。手短にお答えいたします。 国民年金と厚生年金それぞれあったときに、一方は生活能力、一方は労働能力になっ ておりまして、これを61年に統合しまして、大体合わせるようにしておりますけれども まだそういう残滓が残っております。 また同時に、認定の事務の処理のルートも違っております。基本的には総合的にすべ て判断するということで出来るだけ問題がないようにしておりますけれども、どうして も外部障害から内部障害の移行の過程にあると思いますので、更に実務面においても検 討したいと思っております。 ○事務局 それから8ページにあります適用除外の在日外国人の件でございますが、これにつき ましては、難民条約の適用するところで、遡及適用を行わないという条件設定の中でこ ういった形になっておるということを御理解いただきたいと思います。 ○会長 駆け足で申し訳ありませんが、次の施設入所者の年金給付の問題につきまして、どな たからでも御発言をお願いします。 ○C委員 この問題は福祉関係者の世界で非常に重視されている議論でございまして、本当は福 祉関係者からの意見を別個聞いた方がいいと思うのですが、一部自己負担は別にして一 方で措置制度でもって税金で施設入所者のものが負担されていながら、当人の資産は全 くキープされている。年金は全部貯金されている。本人が死ぬまで全然面倒を見なかっ た家族が死んだと思ったら来て財産の分捕り合いを目の前で始める。こういう事態は福 祉行政の現場でやっている従業員や自治体の方々に対して非常に意欲をそいでいること は間違いないので、年金の給付制限というよりも、年金はきちんと支給した上で、これ はごく一部の個人負担だけではなくて、そもそも根っこからの費用負担が出来る場合に はきちんとしてもらう。例えば、土地や山林を持っていたら提供してもらう。あるいは 年金は優先的にそちらへ回す。これをはっきりさせるべきではないだろうか。これは持 てる人と持たない人との間の格差の問題もありますけれども、福祉行政の在り方の問題 として、単に年金の問題というよりもむしろそちらで考える、その上で議論すべきこと で、年金の方で給付制限することには反対ですが、そちらへ全面的にこれを使えるよう にする。これは是非とも必要だというふうに思います。 ○事務局 一々補足してすみません。これは福祉関係の方の立場でむしろ説明するべきなのでし ょうが、福祉施設の費用徴収につきましては、現在相当額の年金があれば上限24万円ま で徴収するという形になっていまして、資産は確かに完全なチェックは受けておりませ んが、年金からは相当額の自己負担が取られている。ある調査によりますと、むしろ入 る前に持っておられた預金通帳に相当の額があったというようなことも調べたことがあ ると聞いておりますが、福祉施設においてはかなりの費用徴収を既に行っているという 点だけ誤解なきように補足させていただきたいと思います。 以上です。 ○I委員 今の問題との関連で、これは非常に重要な問題で、私も全然分からないのですが、い わゆる家屋敷は広大なものを持っていて、だけれども現金収入は年金しかないと。 年金に関しては今のお話のように24万円まではみんな持っていくと、それは大いに結構 だと思うのです。だけれども、広大な屋敷はあるけれども現金フロー、つまりフローと ストックの問題なのですけれども、これまた問題提起が大き過ぎて私もためらうのです が、ストックのフロー化という問題があるのかないのか。これは介護も含め、だから年 金という閉じた世界の話では実はないのです。ストックのフロー化、要するに現金化し てしまう訳ですが、それはどういう仕掛けがいいのかよく分かりませんが、そういうこ とも含めてこれを考えていくべきなのかどうかもよく分からないのですけれども、そう いうことを含めて、何も年金審議会というのは年金から発していろいろな世界を全部取 り込んで議論しないと、年金だけで閉じることは絶対出来ない訳なので、しかし非専門 家でございますから全く分からない。分からないけれども何かその辺にあるのかなとい う感じも少ししますということだけ申し上げておきたいと思います。 ○会長 今のお話は、リバース・モーゲージのようなことです。ほかにどなたか今の問題につ きまして、ご発言ございませんか。施設入所者の年金の問題のなかでも、外で持ってい る別の財産の扱いの問題は非常に深刻な問題です。 それでは、大変お急がせして申し訳ありませんが、第三の議題に移ります。年金改革 に関する有識者調査がございました。その結果の概要について今日是非御承知いただき たいと存じます。事務局から報告をお願いします。 ○事務局 資料4をごらんいただきたいと思います。有識者調査の結果でございます。 1ページをお開きいただきたいと思います。各界の有識者2,000名を超える方に3月に 郵送による調査票を発送、回収させていただいたところでございます。御回答いただき ましたのは1,428名でございまして、回答率は65.7%でございました。前回の改正におき ます有識者調査では、これが71.5%でございましたので、若干数字としては下がってお るところでございます。 性別でございますが、ごらんいただきますように女性が3割という結果になっており ます。年齢別に見ますと、50歳代、60歳代という方々が中心になっているところでござ います。 2ページ以下あらましを付けさせていただいておりますので、後ほどごらんいただき たいと思います。 集計結果につきまして、11ページ以降で御説明させていただきます。 まず回答いただきました方々の属性を挙げておりますが、11ページの(3)分野別の有効 回答総数に対する割合でございます。 12ページに先ほど申し上げました1,428名の、経済界から学識者までの9つの分野で調 査を出させていただきました。そのそれぞれの分野におきます御回答いただいた人数を 記載しておるものでございまして、1〜8の分野につきましては、200名。9の分野につ いては400名を目標に調査をさせていただいたところでございまして、その結果はごらん いただくような数字でございます。 13ページ以下、有識者調査の各設問に対する回答の状況でございます。問1は高齢化 への対応でどういう分野が重要かというものを尋ねたものでございます。 問2。老後の生活設計につきまして、どのような形が望ましいかということでござい ます。公的年金を基本に自助努力を組み合わせるという回答が最も多い状況でございま す。 次に問3でございますが、公的年金の老後生活における守備範囲というものでござい ます。その前提といたしまして、高齢者の消費支出というものを数字として掲げておる ところでございますが、結果といたしましては、保健医療・交通通信までという御回答 が最も多かったところでございます。 次に問4。公的年金の給付と負担の均衡についてであります。その基本的な考え方に ついてどの考えに一番近いかということを尋ねたものでございまして、3.年金給付も 抑制し負担も高めるというものが最も多かったところでございます。 次に問5。厚生年金の給付と負担の組み合わせについて次のどれがよいかということ で尋ねたものでございまして、3の保険料年収20%、年金給付2割抑制というのが最も 多く次に2番のいわゆるB案でございました。 次に問6。厚生年金のモデル年金の水準につきまして尋ねたものでございまして、現 在の水準について適当とする方47.4%、やや高いというのが37.7%という数字でござい ました。 次に、こういう状況の中で将来の厚生年金の給付水準についてどう考えるかと尋ねた のが問7でございます。現行水準維持が32.5%でございまして、以下ごらんいただくよ うな数字でございまして、現行水準より低いのは合わせまして63%という数字になって おります。 問8。公的年金の民営化論、いわゆる2階建て部分につきましての考え方を尋ねたも のでございます。現行の仕組みを維持すべきというのが70.9%になっておるところでご ざいます。 次に問9でございますが、この民営化論につきまして、次期改正、あるいは将来民営 化に向けてと御回答いただいた方々にいわゆる二重の負担の問題についてどう対応する かというのも選択してもらったものでございまして、1〜3という順でございます。そ の他も多い訳でございまして、これは上の3つの組み合わせと給付削減合わせてという 御回答の方が多かったものでございます。 次に問10でございますが、厚生年金の給付水準について、最終保険料の負担を抑制す る場合、どういう考え方が一番近いかというものでございます。3の給付水準の抑制と 合わせてほかの手法、支給開始年齢の引上げやほかの手法と組み合わせて抑制するとい うのが54.6%で最も多かったようでございます。現行水準を維持してほかの手法でとい うのは、これに対しまして26.3%という数字になっておるところでございます。 以下、個別の負担を抑える場合の手法について聞いていったものでございまして、問 11が賃金スライドの取扱いについてでございます。2の物価スライドのみとすることも やむを得ないというのが73.4%でございました。 次に問12。老齢基礎年金の支給開始年齢を67歳に引き上げることについて。これにつ きましては、現行制度のままとすべきが49.5%、支給開始年齢の引上げを行うべきが 43.9%と意見が分かれております。 次に問13でございますが、厚生年金の定額部分の支給開始年齢の現在の引上げスケジ ュールにつきまして、これを前倒しすることについてどう考えるかということでござい ます。計画を改めるのは適当でないというのが55.7%でございました。 次に問14でございますが、60歳台前半に支給される厚生年金の報酬比例部分の年金に つきましても、一定期間をとって定額部分と同様に65歳まで支給開始年齢を引き上げる ことについてどう考えるかということでございますが、65歳まで段階的に引上げは65.3 %という数字でございました。 次に問15でございます。いわゆる高在老についてでございます。60歳台後半につきま しても、60歳台前半と同じように在老の仕組みを取り入れるということについてでござ います。同様の取扱いが適当というのは69.9%でございました。 問16は高額所得者への年金支給制限についてどう考えるかということで、年金支給を 制限すべきが57.7%。年金は支給し、課税で対応すべきが38.3%という数字でございま した。 問17は、これも年金支給制限をすると回答された方につきまして、その一定収入につ いて尋ねたものでございまして、年収1千万円以上とするのが最も多い数字でございま した。 問18、本日の議論でございますが、保険料引上げ計画についてでございます。保険料 引上げ計画の前倒しを行うというのは65.3%という数字でございました。 恐縮でございますが7ページにお戻りいただきたいと思います。今、申し上げました 問11からの将来の保険料負担を低く抑えるための手法の評価につきまして、1つの図で まとめたものでございます。ごらんいただきますような数字になっております。 次に32ページでございます。総報酬制の導入についてでございます。総報酬制の導入 について、保険料徴収の対象として総報酬を基準とすべきであるというのが76.5%とい う数字でございます。 問20。基礎年金の負担水準についてでございますが、将来2万円までとする方がもっ とも多くて40.8%という数字になっております。 次に問21。将来的に基礎年金の国庫負担についてどう考えるかということでございま す。 国庫負担割合を引き上げるが42.6%、現行割合を維持するが39.3%、税方式に切り替え るが14.6%という数字になっております。 次に問22、3号被保険者の問題でございます。3号被保険者につきまして現行制度を維 持すべきが20.2%、専業主婦からも保険料を徴収すべきが27.2%、将来は見直すべきだ が当面維持が43.8%でございました。したがいまして、1と3合わせまして、当面また は将来にわたり現行維持というのが64%という数字になっております。これにつきまし ては、男女別あるいは年齢別に非常に大きな違いがあるということが35〜36ページの表 からもうかがえるところでございます。 次に問23。少子化対策についてでございます。年金制度において少子化対策を講じる ことについてどう考えるかということでございます。年金制度の中で少子化対策に取り 組む必要なしという方が51%と多うございますが、取り組むべきというのも44.7%とい うことで意見が分かれております。 次に問24、本日の最後の議題でございます施設入所する人に対して年金を支給するこ とについてどう考えるかということでございます。全額支給し、適切な自己負担を求め るが84.3%という数字でございました。 以上が年金改革に関する有識者調査の結果でございました。 以上でございます。 ○会長 ありがとうございました。今御説明のありました有識者調査の結果に関しまして、御 質問などございましたらどなたからでも。 ○A委員 私の理解では、有識者調査の質問の設計とか、そういうところに年金審議会は何ら関 与していないのですけれども、それで今日の具体的なテーマである保険料引上げの前倒 し実施について、少なくとも今日の議論を私がお伺いしている限りでは、ここの有識者 調査の結果と大きく違っているのです。動態保険料にするとか、保険料引上げ計画の前 倒しを行うなど合わせて70%が有識者調査では賛成しています。年金審議会の7割に相 当する人がそれに賛成しているというような意見表明は今日なかった訳です。今後有識 者調査の扱いですけれども、こういう結果をどう扱っていくかということを議論すべき だと思います。年金審議会としていろいろ意見があって、また別に有識者調査の結果が ありますと。結果が同じであれば特に問題はないのですけれども、結論が大きく違う場 合どうするのかということなのです。 ○N委員 少し体調を崩しておりまして3回ほどこの委員会を欠席させていただいたのですが、 入院をしておりまして、その間の議論がどうあったのかなということで後で送っていた だきましたけれども、実は有識者調査を送っていただきまして、自分で丸を付けてみよ うということでやりまして、正直言って少し枠組みを、前提条件を付けた中で、果たし てこの選択肢ということになったら恐らくこの答えしか出ないだろうなという誘導的な 質問になっていないかという点は非常に心配しました。 この審議会でも、まず5つの選択肢が去年の末に出た段階でこれをどう取扱うのか、 それから年金審議会のこれまでの議論との関係をどう整理するのかではさまざまな議論 があったと思います。それから大阪での公聴会でもさまざまな土台の部分のいろいろな 選択肢を抜きに、給付と負担の水準ということは最後では非常に大事な議論だとは思い ますが、余りにそこの財政面だけに焦点を当ててさあどうだというやり方については余 りに強権的で、それこそ国民の今の将来への不安感やこういう制度に対する不信感を増 幅するのではないかというような意見も出たと思うのです。その一連の流れの中でこの 有識者調査があり、今お伺いすると、この設問設計自体の選択肢がもう少し違った形で あればもっと違った結果も出たのかもしれないというふうに私も想定するのですが、問 題は、これから以降のこの審議会での議論の方向づけと、その中で有識者調査をどうい う位置づけをもって我々として見たらいいのかということについて非常に、ある意味で は心配をする面もございますので、そういう印象を持っていることについて表明してお きたいというふうに思います。 ○事務局 有識者調査と年金審議会との関係についての御質問といいますか、御心配といいます か、結論からしますと、有識者調査はあくまでも有識者調査ということでございまして 年金審議会での自由な議論を一切拘束するものではないということであります。 それから有識者調査ですから、これが国民すべての意見反映ということではないと思 います。もう少し幅広な国民全体の意見集約というものを更に努力をしなければいけな いと思っております。 追加で言いますと、これほど精密な問題設定ではございませんけれども、別途3月に 総理府の世論調査が実施されております。これもおいおいまとまってくると思いますし それからこれとは別に、特に有識者ですと年齢が高いものですから、若い人たち、この 際便宜ということですが、とりあえず全国17の大学に御協力いただきまして、学生さん の意識調査というのも今やっているところです。そういうようないろいろなデータもこ れからまとまってくると思います。そういうようなものもまた1つの参考資料というこ とで、自由なお立場で年金審議会として議論していただければと思います。 それからN委員がそもそもこの有識者調査が誘導になっていないかという御心配をさ れましたけれども、私どもとしてもなかなかこういう問題設定は難しゅうございます。 裸にこういう質問をしますとなかなか答えられないということになると思います。年金 制度というのは大変専門的な要素が多いというのは御承知のとおりでございます。 したがいまして私どもとしては、出来るだけ制度なら制度の仕組み、あるいは置かれ ている状況、実態、そして課題、そしてそれに対する解決方策としての賛成論、反対論 というのを最大限に事前に、問いの前に説明をした上で御判断をいただくというような 形で努力したつもりでございます。大変難しい問題であると思いますけれども、その努 力だけはしたということを御理解いただきたい。 以上です。 ○E委員 この調査対象2,175名、これの1〜9までの数字というのは教えていただけるでしょう か。 ○事務局 ただいま手元にございませんので後ほど。 ○事務局 9つの分野の回答の実数ですか。 ○E委員 ここで回答があった数字は出ている訳ですから、回答の実数ではなくて、調査をされ た、送られたのが何人かということです。 ○事務局 それは今、手元にございませんので。 ○D委員 今、事務局からお話がありました、大学生の意識調査を一昨日私のところでも行った のですけれども、学生の年金に対する関心が非常に高くて、意識調査をしますという予 告を出しておきましたら、通常500名のところを700名も来てしまって、質問用紙が足り なくなってしまったのですけれども。 そのときいろいろ説明をして、意見を聞いたのですけれども、先ほど審議会としての 議論があって、割と意見としてはまとまっている訳ですけれども、学生の意見というの は結構多様で、卒業してから追納するとか、あるいは障害年金だけの保険料であれば軽 いからそれならばいいという学生ばかりかというと、必ずしもそこに集中しなくて、現 在、免除制度もあるのだし、現行制度のままでいいではないかということを言う学生も いる訳です。 やはり高齢社会はすごくコストが掛かるから、20歳ぐらいからそのコストを分担してい くのが当然ではないかということを、格好よく見せようということではなくて堂々と言 う学生もいるのです。少し驚いたのですけれども。かというと反対に、収入のない人か ら保険料を徴収するということで頭にくる、現行制度はとても不公平なシステムなので そこを変えてほしいという意見を言う学生もいるのです。結構ばらつきがあるのです。  今回の調査はかなり大規模に行われて、集計が出てくればどのようなことになるのか というのは興味があります。特に福祉を専攻しているという訳ではないのですけれども その学生たちにとってやはり年金保険に対する関心度合いというのは非常に高いなとい うふうに思ったのです。 ○C委員 この調査票のつくり方については審議会で議論していないという点については、A委 員の御指摘そのとおりだとは思うのですが、3月の段階で調査票の原案ではなくて、大 まかに挙げる項目で紙1枚か2枚のものが提出された。そのときにいわゆる年末の5つの 選択肢にかかわるところについては、給付と負担についての質問項目は別にある訳で、 この5つの選択肢の中のどれから選ぶかということは質問項目から外していただきたい ということを私の方からお願いしまして、事務局からはけんもほろろに拒絶されたとい う経緯でございました。 見てみれば、なるほど厚生省さんにとって極めて満足度の高い結果が並んでいる。こ ういう資料は1つの資料かもしれないけれども、そういう中身についてそもそも設計の 段階から審議会でまず5つの選択肢について年末の段階で多くの方々から疑義が提出さ れた経緯があり、それからそれを質問項目から外すのが適当ではないかという意見を申 し上げたことに対する拒絶も含めてなされたということについて言えば、かなり通常の 調査とは異質なものであるということを念頭に置いた扱いが必要かつ望ましいのではな いだろうかというように考えます。 なお、有識者ということでございますが、実は私のおります職場でも3人ばかり、送 ってきたけれどもどうやって回答しようかなと言ってきて、好きに書きなさいと言った のですけれども、とても彼らが有識者なのかなと。本人たちが私有識者ではないと言っ ているので。雑談でございます。失礼しました。 ○会長 ほかに何か御意見ございましょうか。 時間が参りまして、終わりの方で少しお急がせしましたが、予定の議事は以上で終わ りになります。 本日の資料はすべて今までと同様公開することとしたいと存じますが、よろしゅうご ざいましょうか。 (「異議なし」と声あり) ○会長 それでは、そのようにさせていただきます。 今後の日程について事務局の方から御確認をお願いします。 ○事務局 それでは、次回及び次々回につきまして、改めて文書によりまして御案内をさせてい ただきますが、とりあえず口頭で御案内させていただきます。 次回は5月29日金曜日に武蔵野社会保険事務所と高井戸の社会保険業務センターを御 視察いただくという予定でございます。したがいまして恐縮でございますが、JR中央線 の吉祥寺中央口、新宿寄りでございますが、中央口に13時15分にお集まりいただきたい と思います。恐縮でございます。また改めて文書で御案内させていただきます。 次々回でございますが、6月16日火曜日午後2時から大久保の中央社会保険健康センタ ーペアーレ新宿におきまして、東京におきます公聴会をお願いしたいと思っております JR山の手線の新大久保駅から歩いて10分ぐらいのところでございまして、恐縮でござい ますが、午後2時からの開始予定でございますので、10分ぐらい前までにお集まりをい ただければと思います。これも改めて文書で御案内をさせていただきますので、よろし くお願い申し上げます。 ○A委員 時間をちょうだいいたしましてすみません。1つだけ確認したいこととお願いなので すけれども、年金審の議論が月2回ペースで行われてきているのですが、私が参加して からの報道ぶりを見ますと、年金審でどういう議論が行われたかということの紹介が必 ずしもバランスがとれた形でなされていないのではないかという危惧を持っているので すこれは恐らく厚生省年金局の報道体制の問題なのかよく分かりませんが、マスコミに 対してどういう対応をとっているかという事実関係の確認をしたいのです。 普通の審議会というか、私はほかの審議会に関与していることもあるのですが、その 場合は、議論でどういうことが行われたかということは審議会の会長または代理が直接 マスコミの方に説明しているのです。年金審議会はそういうことをなさっているのかど うかということです。仮にそういうことをなさっていないということであれば、これか らは会長ないし会長代理の責任においてなさっていただきたいというふうにお願いした いと思います。 以上2点です。1つは事実確認です。2点目はお願いです。 ○事務局 現行の厚生記者クラブ、日比谷クラブにおきます状況について申し上げます。 基本的には、現在議事概要というものを私ども本日の議事を基本的に忠実にトレース する形で、例えば、本日の保険料引上げ計画につきましてはこういう御意見がございま した、一方こういう御意見もございましたという形で資料とともに御報告をさせていた だいているところでございまして、これまでほとんどの多くのテーマについて結論が出 ておりませんので、各委員からこういう意見の御表明があったということを基本的に忠 実にトレースする形でさせていただいているつもりでございます。 ○会長 そういうことですが、よろしゅうございますか。なお、会長としての私が、例えば今 日なら今日、この後残って記者クラブで説明することは、これまで一度もいたしており ません。出席委員のみなさまのご校閲を頂いた正確な議事要録をつくって後日配布する ことをしています。 ○A委員 そういう手続から言いますと、記者発表ないし記者が記事を書くとき、前回の議論が どういうふうになされたかということになるのが普通だと思うのです。ところが今まで の新聞発表を見ますと、だれかが何らかの形で情報提供をマスコミの方になさっている と思うのです。それが私の理解では著しくバランスを欠いているという、そういう理解 をしているのです。例えば今回いろいろな議論をやりましたけれども、これが恐らく明 日いろいろな形でニュース報道をされると思うのです。事務局の説明では実は次回の年 金審議会で議事概要をまとめて、それに基づいて説明するということだったのですが、 そうなるのでしょうか本当に。そこを私は心配している訳です。 ○事務局 私の説明は必ずしも適切でなかったかと思いますが、今日の議事概要につきましては 次回の審議会において確認して、配布させていただくということになっておりまして、 今日の審議会の状況につきましては、私が取りましたメモによりましてこういう意見が あった、こういう意見もございましたということで申し上げておるところでございます ○事務局 追加というか補足説明をさせていただきますが、例えば、本日の例でいきますと、こ の年金審議会が終わりましたら事務局が、厚生省には2つの記者クラブがありますが、 日刊紙、テレビが所属しております厚生記者会にまず行きまして、今、申しましたよう に、出来るだけ客観的に審議会の検討状況を報告いたします。そして、それに対して記 者のそれぞれのお立場からいろいろな質問がございます。それに対してそれぞれお答え をするという形にしております。したがいまして、事務局が説明をし、あるいは質疑を そこでなされるということについては各社全く共通の情報源であるというのがまず1つ です。 それが終わった後、専門紙グループの日比谷クラブというところに参りまして、同じよ うな形でやります。通常ですと大体厚生記者会だけで1時間ぐらいそういうことが行わ れるというこですから、かなり丁寧にやっているということです。ですから、そこでは 全く共通の情報が流れているということだと思います。 もう一つは、各社それぞれ正直申しまして、いろいろなテーマについて社としてのそ れぞれのスタンスというものがあります。審議会が終了した後のそういう記者クラブで の記者発表以外に独自のいろいろな取材というものをやられるということもございます これは年金審議会の中身というよりは、テーマ、テーマについてそれぞれ広範な取材網 を使って取材をして、社としての物の見方、考え方、課題というようなものを独自に発 表する。 そのときに、今のA委員おっしゃられたように、より正確であれば1週間後に例えば 概要ということで、それであれば文字で落ちている訳ですから一番正確ということにな る訳ですけれども、やはり報道というのは速報というのがどうしても求められる訳です から、1週間載せないでくれと言う訳にもいかないというようなことで、私どもとして は出来るだけ忠実客観に事実を公表するように努力してきたつもりですし、また、これ からもそういうふうにやりたいと思っております。御指摘の部分を十分踏まえてやって いきたいと思います。 ○会長 新聞、あるいは報道には取材と編集という両面がございます。報道機関で忠実に速報 するという表看板を掲げていないところはないと思います。しかし、編集という仕事が ございます。編集担当がこれはカットする、ここはカットするという仕事をします。 そして、一定面積の紙面につきまして、社内の各部門では、どれだけの記事を載せて もらえるか、という競争もございます。御出席の皆様方から見ると、厳密正確でないと いう印象を持たれる記事が多いことは、報道機関という特異なフィルターを通している 以上、やむを得ないと御了解いただければと思います。 ○C委員 以前に審議会の報道陣への公開ということが要請されて、私は聞かれて困るようなこ とを話したことは全然ないので、きちんと雑音さえ返ってこないのだったらどうぞとい うことで対応したという記憶がありますが、結果として年金局当局の御判断で現状のよ うな扱いにされて、これについては再度報道陣から、やはりそうはいってもきちんと公 開してくれとか、中に入れてくれとか、こういう声はないのでしょうか。 ○事務局 今年の2月ごろでしたでしょうか、一度そういう要請もありまして、検討もしていた だいた訳でございますが、先ほど事務局申しましたように、速報版を出すというような こと、そしてまたより丁寧に記者レクもするということで、その後クラブからの要請は ございません。今の形で了解されております。 ○J委員 7年前の元新聞記者ですので。公開は私も出来ればしてほしいと思いますが、ニーズ がなければ仕方がないのです。私の経験ですと、審議会などは大体会長なり会長代行が 同席されて発表されるというケースが非常に多かったのです。ですから、変に勘ぐる訳 ではありませんけれども厚生省だけが発表するというときに、受けとめ方が違う部分が 出てくる可能性もある訳ですので、出来ればどなたか毎回必ず委員が同席するようなシ ステム、会長なり会長代行なりが出来る限り同席していただいて、発表は厚生省の事務 局がやるとしても、同席される方が私はいいのではないかというふうに思いますけれど も。 ○会長 ほかに御意見ございませんでしょうか。 ほかにございませんでしたら、今日はこれで閉会したいと思いますがよろしゅうござ いましょうか。 (「異議なし」と声あり) ○会長 それではどうもありがとうございました。これをもちまして、閉会といたします。                              年金局 企画課                              須田(3316)