98/05/13 第4回精神保健福祉法に関する専門委員会議事録            公衆衛生審議会精神保健福祉部会          第4回精神保健福祉法に関する専門委員会                 議  事  録          厚生省大臣官房障害保健福祉部精神保健福祉課 議 事 次 第   日  時  平成10年5月13日(水)16:03〜19:23   場  所  厚生省特別第一会議室   会議次第    1.開 会    2.議 事     (1)保護者について     (2)その他    3.閉 会   出席委員  吉川座長         池原委員  伊藤委員  金子委員  後藤委員  佐伯委員         佐々木委員 佐藤委員  高柳委員  竹島委員  長尾委員         西山委員  乳井委員  守屋委員  山本委員 ○吉川座長  定刻を過ぎましたので、ただいまから第4回精神保健福祉法に関する専門委員会を開 きたいと思います。お忙しいところ各委員の先生方におかれましては、ご出席ありがと うございます。  今回の専門委員会は、今、申しましたように第4回でございます。全体で8回ぐらい を予定をしているちょうど半ばにかかりました。これから、まだ幾つか問題があります ので、今後ともよろしくお願いをしたいと思います。  それでは、最初に出欠の問題について、事務局からご報告ください。 ○杉中補佐  それでは出欠の確認をさせていただきます。本日は新保委員が欠席のご連絡をいただ いております。山本委員につきましては、講義が終わり次第、出席なさるということ で、おくれての参加となります。佐藤委員につきましては、出席のご返事をいただいて おりますので、来られると思います。以上でございます。 ○吉川座長  それでは、これから議論に入りたいと思いますけれども、本日の議事は保護者の問題 であります。  その1つ前に、第2回のときのいろんな議論をしていただいた中身について、資料と して少々いただいた意見を酌み入れたものをつくってございますので、それをちょっと ごらんいただきまして、きょうでなくて結構でございますので、これについて、それぞ れの先生方から、ご意見を精神保健福祉課の方にお返事をいただければと思っています ので、よろしくお願いいたします。 ○杉中補佐  意見をいただいた後、うちの方でまとめます。 ○吉川座長  それをまたまとめさせていただきますので、よろしくお願いします。 ○杉中補佐  それで、まとめたものにつきましては、外部から要求があれば、これを提出するとい うことにさせていただきたいと思います。 ○吉川座長  わかりました。この会そのものは議事録が原則的に公開でございますので、今のよう なことが話になるわけでございます。  それでは、本日の話に入りたいと思いますが、本日の議題に入る前に、きょうは前回 ご案内いたしましたように、保護者の方からまずお話を伺ってみようということでござ います。それで、三橋良子(みつはしよしこ)さんに本日はおいでいただきまして、保 護者の問題についてお話をいただくことになりました。よろしくお願いします。 ○三橋  ご紹介いただきました三橋です。本日は家族としての立場で発言させていただく機会 を得まして大変感謝いたしております。  私、先ほどレジュメを配付するようにお願いいたしましたが、実は本日30分お時間い ただけるかと思いまして用意しておりましたけれども、できれば15分で終わらせてほし いということですので、このレジュメどおりではなくて、かなりはしょってお話しさせ ていただこうと思います。  本日は保護者制度についての検討を行うというふうに聞いております。保護者の任務 は、大きく分けて身上監護の部分と同意権の部分とに分けられるのではないかと思いま す。私自身、今は単科民間精神病院のワーカーをやっておりますけれども、それ以前に 全家連の相談室に長く勤務しておりました。全国の家族会の作業所活動などを通して、 身上監護の部分はもはや家族だけに丸抱えさせてできるものではなく社会的なサービ ス、社会的な制度でサポートしていかなければならないというのは皆さん合意されてい らっしゃることと思います。そこで本日は保護者の任務のうち同意権の部分、つまり、 医療保護入院をめぐって保護者制度が端的に象徴されている搬送問題について中心にお 話しさせていただこうと思っております。  個人的な体験から申し上げますと、私の兄は、昭和36年にまず第1回目の精神病院へ の入院を行いました。兄はその後、精神分裂病であるという診断を受けまして、現在ま での約36年間の闘病生活を送っております。昭和36年から昭和42年までの6年間の間に 計7回の短期入院を繰り返しました。症状悪化時には家庭内暴力もありましたし、さま ざまな行動がありまして、隣家の方々にいろいろなご迷惑をおかけすることもあったわ けですけれども、それらはすべて家族の同意に基づく入院で、いわゆる同意入院です ね。当時、同意入院しかなかったと思いますが、そういう入院だったわけです。  結局、家族が病院に入院をお願いして、往診が行われて、病院の看護者の方たちが白 衣で何人かいらっしゃるというパターンが繰り返されていたわけですけれども、昭和42 年に8回目の入院をするときに、看護者の方を傷つけてしまいまして、結果的には措置 入院という形態で少し長期の入院をすることになりました。  この事柄は本当に私たち一家に大きな衝撃といいますか、問題提起をしたと思いま す。このことで両親も家族も、兄自身も本当に傷つきましたし、深くいろんな問題を考 えさせられたと思います。そして昭和46年に父親が定年退職をしたのを機に、家族で農 業を営んで兄を支えていこうというふうに一大発起いたしまして転居をし、また、兄の 病状もやや安定していたために退院をすることができまして、それ以後、いろいろなま た家族としての歴史が続いていくことになるわけです。  ただ、先ほど申し上げた、家族が病院に入院を依頼し、往診をしていただいて入院し ていくというその間は、兄は家族を恨み、こんなことは言い尽くされていることなんで すけれども、病識は育たず、兄は口ぐせのように、病院と家族が結託・野合して、自分 の人権を侵害しているというふうに訴えておりました。  本当に最悪の事態を迎えることになったわけですけれども、その措置入院後の、昭和 46年の転居後、兄はなぜか服薬を自己管理するようになったわけです。これも厳密に言 えば、幾つかのエピソードがあってのことなんですけれども、私の目から見れば、この 強制入院の後に、兄は何らかの形で少し病識を持つことが進んだというふうに感じ取れ ました。そして服薬を自己管理するようになった。その後は、2回の再発、再入院とい うものがありましたけれども、現在までのおよそ15年間は、入院もせずに在宅療養生活 を続けているという体験がございます。  さらに、「横浜兄弟姉妹の会」の活動から少しお話しさせていただきたいと思いま す。 横浜兄弟姉妹の会は約10年前から活動を展開しております。新入、退会者の動き があって、毎年20名程度で会員数が推移しております。首都圏にはこのほか、「東京兄 弟姉妹の会」「川崎兄弟姉妹の会」というものがございまして、相互交流を行って活動 しております。親子関係の場合、親だから本人の面倒を見て当たり前という意識から、 親自身がなかなか抜け出せないでいるという傾向が見受けられるかと思います。けれど も、兄弟会の場合は、親や兄弟とは生活圏や経済圏を異にして生活している者も多く入 会しておりまして、親よりももっと鮮明に社会で支える方向を強く望む声があるという ことを言っておきたいと思います。  さて、私の個人的な体験だけではいささか弱いと思いますので、そのほか二人の方の 体験例を少し紹介させていただきたいと思います。Aさんというのは、お兄さんと二人 暮らしで、病者のお兄さんを支えてきた方です。本当にこの方は並み並みならぬ努力を されたと私は思います。仕事につくのもお兄さんと二人でペアで雇用してもらうという ような苦労を再三やってこられたわけです。  ところが、お兄さんと本人との関係はなかなかスムーズにいかない。本当に残念なこ とですが、このAさんのお兄さんも症状が悪化して窃盗事件を起こして鑑定ルートに のったということがございます。それで、このAさんは非常にショックを受けたわけで すね。自分がこんなに努力しているんだけれども、こんなことになってしまったと ショックを受けてしまいました。  それでYさんは、当時を振り返って、頑張れば頑張るほど巻き込まれて、頑張れば頑 張るほどつらくなる、巻き込まれの生活であったというふうに後述しているわけです ね。Aさんはこの後、またすごいんですけれども、今度はもちまえのパワーで必死にお 兄さんの周りに第三者のサポート態勢をつくっていったわけです。これを事細かに言う と、見事なサポート態勢だと私感心いたしますけれども、そういうふうにサポート態勢 をつくっていき、自分とお兄さんとの距離をうんと離していきました。そのおかげで、 彼とお兄さんは、今、非常にいい関係といいましょうか、普通の兄弟姉妹の関係として 交流しており、お兄さんも安定して地域生活を送っております。  Bさんもまた弟という立場です。お兄さんが病者なんですけれども、そのお兄さん は、過去10年間、母親から水薬の投与を受けて在宅療養生活を送っておりました。 ところがやはり何らかの引き金があったのかもしれませんけれども、約5年前、お兄 さんの病状が悪化したわけです。それで家庭内でのトラブル、近隣へのいろんな迷惑な どが起こりまして、Bさんは保健所へ相談に出向いております。ところがなかなか保健 所が適切な支援をしてくれなかったというふうにBさんは不満を漏らしているわけです けれども、そんなこんなで、県の方に直接相談をして、結論的には、あるお兄さんの行 動化があらわれたとき、警察がお兄さんを保護して、そして保健所が病院の手配を 行って、警察がお兄さんを病院に搬送したことがございました。  Bさんの兄は、この短期入院の後は、自分で通院を継続し、服薬もきちんと行って 現在は安定した在宅生活を送っています。それで、Bさんは本当に苦しかったとき、 自分が本当に困って受診受療につなぎたいと思ったときに相談を持ちかけていった機関 から、適切な対応をしてもらえなかったというこころもとなさと、その現実への怒りか ら、兄弟姉妹会に参加するようになりました。  さて、先ほど東京、横浜、川崎の兄弟会が合同でいろいろ活動、相互交流を行ってい ると申し上げましたけれども、実は平成9年7月19日、皆様もご存じと思いますけれど も、朝日新聞に民間の警備保障会社が家族の依頼で強制的に患者を病院に搬送するとい う記事が出ました。家族会でも話題になったかと思いますけれども、兄弟会でもかなり 話題になりまして、合同ミーティングを持ちました。そこでは家族の怒りが噴出してし まいました。  本当に望ましいのはもちろん任意入院です。任意入院に持っていくように家族も必死 で説得はいたします。ただ、家庭内での説得だけではどうしても受診受療に至らないこ とがあるわけです。そのときに長期継続的になるかもしれませんが、家族や本人と歩調 を合わせて相談に乗ってくれるところがないではないか。そして、そのまま放置されて いる。要するに保護者の責任で病院に連れていきなさいよというふうに言われるわけで すが、強い保護者の意識変革を求めているつもりかもしれませんが、そういうふうに言 われても手だてがなくて、本人の病状は悪化するばかりで、そして、どうにもならなく なって、民間搬送会社に依頼したことがあるというような体験を持つ方が何人かいらっ しゃいました。結局やむにやまれぬところでこういうことを起こしているのだと。ぜひ とも搬送に関する法制度を整えてほしいという声がそこでは沸き起こったわけです。  さて、このような個人的な体験や兄弟会の体験を通しまして、私は家族として、以下 のようなことを申し上げたいと思います。  1.精神分裂病はその診断に当たって客観的な指標が乏しく、生活や思い出を共有す る家族にとっても病としての認識は持ちづらいものである。そのため家族は、現象的な 本人の不適応行動に疲れ果てたのち精神科への入院を依頼することになりがちである。  2.その場合しばしば入院契約が本人と治療者との間で結ばれることなく、本人の意 思に反して家族(保護者)と治療者(治療機関)で契約されることになる。その結果、 過去の同意入院や現在の医療保護入院では医学的判断が相当程度明示されないと、本人 と家族の間に対立葛藤関係が生じ、本人・家族双方に病気の認識も育ちにくくなる。  3.また努力にもかかわらず受診受療に至らぬまま無為に時間が経過し、病状悪化が 深刻化することもあり得る。  このような場合、実態的には自傷他害のおそれの要件がない限り、措置入院という強 制入院は成立せず、多くは医療保護入院の候補者にとどまったまま、長期に渡りひたす ら家族の手、家族の判断に委ねられている。  4.医療保護入院は家族に重い判断と責任を負わせる。本人の人権を侵害する可能性 を考慮すると、三親等以内の者が申請すれば、選任される現状の保護者制度はますます 法的根拠としては薄弱ではないか。  5.措置入院も医療保護入院も本人から見れば、本人の意思に反した強制入院であ る。それにもかかわらず警察官や鑑定医の登場など、第三者の登場、介入、明確な枠組 みによって実施された入院の場合、症状としての情報の過剰と混乱に苦しむ本人に重い 意味づけを与えて、後に治療や入院の必要性を納得させ、病識を育てることもある。ま た、家族にとっても、本人の自己決定を覆す判断を家族が行うのではないという重い責 任から開放されることもある。  6.精神病に対する社会的偏見、これは本人と家族自身の内なる偏見でもあるわけで すが、その偏見を助長する貧しい精神医療の実態、本人の病識の欠如などを考えると治 療を必要としながらも受診受療に至ることが困難な精神科疾患では、入口にあたる受診 受療援助をどう展開するかが究極の課題のひとつである。  7.確かな視点と技法を持ち、時間をかけた受診受療援助を行う専門機関と専門職が ぜひとも必要である。この機能がうまく働けば、通院治療への結びつけや任意入院の増 加が期待できる。  さて、私は現在民間精神病院にワーカーとして勤務しているわけですが、ここでの体 験をぜひとも少し紹介しておきたいと思います。  私は平成5年12月に全家連の相談室から川崎の単科民間精神病院に就職いたしまし た。川崎は皆様ご存じのとおり、Y裁判で日本P協会を大きく揺るがした地元でもあり ます。平成6年の4月に警備保障会社で来院したケースを皮切りに、平成8年11月まで の間に7件の民間搬送会社の搬送による受診・入院を体験いたしました。この7件のう ち当院から民間搬送会社の紹介や示唆をしたものはありません。また、直前の医療機関 が当院であったものもありません。そして、受診入院相談時にほとんど保健所や他病院 がかかわっております。このうち家族からダイレクトに受診入院相談が来たものは1件 でしかなかったかと思います。  さて、この利用の紹介もとですが、家族からの話によると保健所が5件。その5件の うち1件は警察があわせて紹介されたということです。それから、あとの2件は他病院 でした。  民間搬送会社の搬送は本当にいろいろなことを考えさせられます。受診日直前に利用 が判明する事が多く大変ためらうのですが、とにかく目の前に医療を必要とされる人が いることを前提として受け入れてきたのですけれども、平成8年11月にこういうエピ ソードがございました。この人は、過去に当院に入院歴のある方でかなりの情報量を私 どもは持っておりました。それで、この方の相談があったときに、いろいろ想定できる けれども、今まで、家族が説得して連れてきていますし、とにかく頑張って説得して連 れていらっしゃいと受診日時を設定いたしました。  ところが、受診日前に家族から、搬送会社で連れていきますという報告があったわけ です。そのことで私ども大変ためらいまして、どうしようというふうに悩みました。直 前の医療機関は他病院ですが当院にもある程度の情報量があるので良しとしようかとい うことで来ていただいたわけですね。受診を拒否する人を連れてくるときには警備保障 会社であろうと民間の搬送会社、いわゆる救急会社であろうと同じでかなり強引な搬送 をしているなということがしばしば伺われます。パジャマのままでいらっしゃったり、 靴もはかないでいらっしゃったり、いろんなことがございます。  それで、そのときに本人から「当院からの依頼で来院したというふうに業者の方が 本人に告げた」ということを聞きまして、おや、これは事実と違うぞ、と思って業者へ 確認いたしました。そうしましたところ業者は結局こういうふうに言うわけですね。受 診日が設定されていて、受診の後、入院の必要性があると判断されたときにベッドコン トロールの予定が立っている。つまり、それは入院が確保されているというふうに判断 しまして、それで出動がされるのだと。その段階で家族と業者との間の契約が成立する のだとそういうふうにおっしゃるわけです。これは結局医療保護入院を前提としている わけですね。しかし本当のことを言えばこの段階では医療保護入院は決定されておりま せん。当院の指定医は、搬送のゴーを出しておりませんし、本当に医療保護入院の必要 性があるだろうというのは診察してみなければわからないことなんですけれども、そう いうことが行われているということです。  こういう問題をいくつかの保健所の方に御報告いたしました。保健所の方々も苦悩し ていると思います。現場担当者は苦悩しています。法的な制度が整ってないために本当 に苦悩している。よくやろうと思えば思うほど苦悩していると思います。当院では、そ の後、ちょっとこれは問題が大き過ぎるので、幾つかの疑問点が解決されるまでは、民 間搬送会社の利用が判明した段階で、申しわけないけれども、すべてをキャンセルにさ せていただこうということで統一いたしました。  その旨を保健所の方に報告いたしましたところ、本当に沈痛な声で、「それでは家族 が簀巻きにして連れていけばよいのですか」というふうに問われました。おっしゃるこ とはごもっともだと思います。結局、搬送の問題。受診受療につなぐということが本当 に精神科の究極の課題であるにもかかわらず、医者の前に登場すれば、医療保護入院、 地域で問題を起こしているとき、家庭内で問題を起こしているときにどうやって連れて いくかという搬送の部分がすっぽり法制度からは抜け落ちている。恐らく精神病者監護 法の時代には、私宅監置の時代でございましたから、監護義務者の義務は病院へ搬送を どうするかなんていうのは意識されていなかったのではないかというふうに考えます。  民間搬送会社に対して考えられる問題点、これはY裁判の問題についてP協会が課題 の一般化としておこなった問題提起ですが、憲法第31条「何人も、法律の定める手続に よらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられない」と いう規定に違反するのではないかという点です。  また、行政法上、行動の制限ができるとすると、法律上、制限すべき行動について は、法律によって明記されていなければならないとされているけれども、民間搬送会社 の利用は法的根拠があるか否かという点もあげられます。唯一の抜け道として、そこに 医療保護入院というものが考えられているのだと思いますけれども、この保護者制度 は、精神保健福祉法において、さまざまな義務規定が明記されているわけですが、保護 者と業者の搬送契約が法律上の担保となりうるかどうかという問題があると思います。  さて、保護者選任がなされており、医療保護入院の必要性を指定医が直前に判断して いた場合はどうでしょう。例えば保健所は地域精神保健の第一線機関として位置づけら れておりますけれども、気長に継続的に受診受療援助を行った上で、なおかつ必要性が あるときに、例えば保健所の嘱託医などの指定医が往診して、本当に最後の判断とし て、搬送について、(これは民間とは限りません。いわゆる公的な救急体制のときもそ うかと思いますけれども、)そのときに治療のための搬送を要すると判断を下した場合 はどうであろうか。また、全くの初診で、あるいは何十年という医療中断の後に指定医 の判断もなく、搬送会社との契約者である家族が保護者選任を受けていない場合はこれ は一体どうなるのだろうか。いろいろなことが考えられます。  また、現在行われていることは、法的根拠がないために、結局、紹介もとの責任性は 発生しないだろうというふうに考えられているのだと思います。つまり保護者と民間搬 送会社の契約については、お上はどうこう言うことはしないということなんだろうと思 います。  今、全家連は保護者制度撤廃、医療保護入院撤廃と考えておりますけれども、結局、 保護者制度というのは、1900年の精神病者監護法に始まって、さまざまに法律上の名称 は変わってきましたけれども、結局は本人を家庭内か病院かへ保護・収容するための制 度でしかないというふうに私は考えております。その本質が、今述べさせていただきま した搬送問題に端的にあらわれているのではないかと思います。  福祉という言葉を幾らつけても、これでは本当に精神障害者の社会福祉など行われよ うはずはありませんし、ノーマライゼーションの理念に全く相反する制度が保護者制度 だというふうに考えております。  あとは、レジュメの方に幾つかの問題点を触れておきましたのでごらんください。な お、きょう午前中に、当院の近所の民間搬送会社・警備保障会社が営業にまいりまし た。2年間営業をやっていて 200件の申し込みがあり、 150件の移送を行ったというふ うにおっしゃっておりました。以上です。 ○吉川座長 ありがとうございました。これから先は、三橋さんご退場になりますので、その前に 委員の方々から、ご質問、ご意見がございましたら、いかがでございましょうか。 ○後藤委員 民間搬送の問題は、川崎の問題かなり最初から出ていたんですけれども、いわゆる東 京、川崎、神奈川、大阪、九州以外のところ、要するにどのあたりに集中していて、全 国的にどのくらいのレベルであるのか、把握されていますか。 ○三橋 いいえ。厚生省の方が把握されているんじゃないですか。 ○後藤委員 それは厚生省の方に聞きたいなと思います。 ○杉中補佐 今データがないんですけれども、昨年度の厚生科学研究で、保健所の受療促進という ことで搬送のテーマも扱っておりまして、まだ、その研究結果はまとまってないのです けれども、次々回ぐらいの専門委員会にはその資料等を出せるということで準備を進め ております。 ○吉川座長 ありがとうございました。ほかにどなたか。 ○高柳委員 家族会のお立場では、だれがどのように搬送すべきなのか、正解なのかとお考えなの か、それを教えてください。 ○三橋  家族会の立場というと、池原先生の方がよろしいかと思うんですけれども、私、個人 的な意見としましては、搬送については、当然その前に、任意入院、通院医療開始をす べく受診受療援助を展開すべきだとは思いますけれども、それでも、なお、かなり半強 制的な搬送が行われなければならないとしますと、私はこれは救急車が出動していただ きたいというふうに考えております。ただし、明らかに入院を拒否する、しかも拒否す るんだけれども、指定医が今治療を受ける必要性があると判断したときにコーディネー トする方が必ず必要だと思うんですね。救急隊員も明確にその搬送を拒否される方につ いて手だてがないことと思いますので、そのあたりについては、ぜひ保健所の機能を強 化していっていただきたいと私は考えております。 ○吉川座長 ありがとうございました。ほかに。 ○竹島委員 川崎の警備保障会社とおっしゃったのですが、その警備保障会社という形でとらえて いいのか、それともいわゆる警備とか運送とか一般の、何でもそういう頼まれたことを 引き受ける会社と考えていいのか。というのは、警備保障会社というと、どうも警察庁 とかそのあたりの管理を受ける業者になるような気がするんですけれども、そのあたり はどういう位置づけのところですか。 ○三橋 きょう午前中に来た人たちに、どういう根拠でお仕事なさっていますか、お聞きしま したら、公安委員会によって認定された警備保障会社である。という説明でした。だか ら総合警備を行う業者だと思います。 ○吉川座長 ほかにどなたかございますか。よろしいでしょうか。  それでは、私どもただいまの三橋さんのお話を承りながら、今後の保護者問題につい て考えをまた深めていきたいと思っています。できるだけ、こうした形で当事者の方々 や何かのお話を伺いながら、内容的なものを細かく検討していきたいと思っております ので、きょうは三橋さんに来ていただきました。どうもありがとうございました。 ○三橋 ありがとうございました。                (三橋良子氏退室) ○吉川座長  それでは、本日の議題に入りたいと思います。先ほど来、お話申し上げました本日の 大きなテーマは、保護者制度についてでございますので、事務局の方から、いつものと おり、資料等につきまして、ご説明いただきたいと思います。 ○杉中補佐  それでは説明させていただきます。資料の番号で、まず資料14、15というものを使っ て保護者の制度について説明をさせていただきたいと思います。よろしいでしょうか。  まず、現在の保護者の制度について説明をさせていただきます。資料14をごらんくだ さい。まず保護者になることができる人及びその順位についてでございますが、「精神 障害者については、次の者が保護者となり、次の順位によりその業務を行う」ことと なっています。順番といたしましては、最優先になる者については 1後見人、 2配偶 者、 3親権を行う者ということになっています。 4として、その他の扶養義務者のうち から家庭裁判所が選任した者ということで、その他の者については、家庭裁判所が選任 することになっております。ただ、「本人の保護のために特に必要があると認める場合 には、家庭裁判所は利害関係人の申し立てによりその順位を変更することができる」と いうことになっております。  また、その保護者となるべき者のうち、「行方の知れない者、当該精神病者に対して 訴訟をしている者並びにその配偶者及び直系血族、家庭裁判所で免ぜられた法定代理人 又は保佐人、破産者、禁治産者、未成年者のいずれかに該当する者は保護者となれな い」ということになっています。  また、「保護者がないとき又はこれらの保護者がその義務を行うことができないとき には、その精神障害者の居住地(又は現在地)の市町村長が保護者となる」ということ になっています。  保護者の義務と権利について引き続き説明させていただきます。  まず保護者の義務及び業務についてですが、最初に「精神障害者に治療を受けさせる こと」。  続いて、「精神障害者が自身を傷つけ又は他人に害を及ぼさないように監督するこ と」。いわゆる自傷他害防止監督義務です。  「精神障害者の財産上の利益を保護すること」。  「精神障害者の診断が正しく行われるよう医師に協力すること」。  「精神障害者に医療を受けさせるに当たって医師の指示に従うこと」。  「措置解除又は仮退院等による退院する者を引き取り、また、仮退院した者の保護に 当たって病院管理者の指示に従うこと」、いわゆる引き取り義務でございます。  以上が義務でございます。  続いて権利ですが、「通院医療費の公費負担の申請が本人に代わってできる」。  「医療保護入院に当たっての保護者の同意を行う」。  「退院及び処遇改善請求を行うこと」。  「法第41条による引き取りを行うに際して、精神病院の管理者又は当該病院と関連す る精神障害者社会復帰施設の長に相談し、及び必要な援助を求めること」。  以上のようになっております。  引き続き、保護者の変遷及び経緯について、資料15に従って説明をさせていただきた いと思います。  保護者制度の経緯についてですが、まず精神病者監護法というもので、現在の保護者 のいわゆる精神病者監護法時代のモデルがあると思うんですけれども、当時、精神病者 監護法という時代の「監護義務者」というふうに言われておりました。  したがって、明治33年に「精神病者監護法」というものができたわけですが、当時は 監護義務者が行政庁の許可を得て、精神障害者を私宅や病院に監置することになってお りますけれども、この私宅監置の目的は、もっぱら社会防衛的な色彩が強かったという ふうに考えております。  精神病者監護法を当時の貴族院に提出した際の提案理由説明というものがあります が、非常に読みにくいのですが、「精神病ニツイテ社会ニ患害ヲ流シマスノテ実ニ意想 外ニ大ナルモノテアリマス民法上ニオイテハ規定ハアリマスケレトモコレハ民法ニ規定 スルトコロハ重ニ財産上ノ保護テコサイマシテ此精神病者ト云ウモノニ付イテ社会ニ障 害ヲ及ス如キニ附イテノ規定テコサイマセヌ依リテコノ法律ヲ制定シテ右達ノ者ヲ能ク 保護シテ遂ニ社会ニ流ス患害ヲナキヨウニ致シタイト云フ目的テアル」という説明を 行っています。  基本的には、精神病者を私宅もしくは病院に監置して、社会防衛的な観点からの管理 を行うという側面がかなり強かったのではないかというふうに思われております。  昭和24年には「精神衛生法」ということでございまして、精神衛生法の精神病者監護 法との違いは、基本的には医療的な保護の側面が前面に出てきたということで、保護義 務者は、精神衛生法によって初めて制定されたわけですが、基本的には精神障害者に必 要な治療その他の保護を図るために設けられた制度であり、精神障害者の福祉、精神障 害者の利益のための制度であるということになっております。  しかしながら、精神衛生法の趣旨説明の中で、保護義務に関しては、精神病者監護法 の態度をそのまま踏襲するといった旨の言明がなされていることや、保護義務者が都道 府県知事の許可を得て、精神障害者を保護拘束できるという、監護法時代の私宅監置の 流れをくむような「保護拘束」の制度が設けられていることから精神衛生法による保護 義務者の性格は、監護義務者とは大きく異なっているということですけれども、引き続 き社会防衛的な側面が残っていたことは否定できないのではないかと考えられます。  保護者に関する見直しの経緯でございますけれども、その精神衛生法時代、大きく改 正されているのは、昭和40年と62年、平成5年、7年ですけれども、40年の精神衛生法 改正時には、ライシャワー事件というものもあって、保護者制度の義務違反の罰則強化 という形で保護者を監督しろといった論調があっても廃止や義務削減が強く主張される ことはございませんでした。  昭和62年の精神衛生法改正の議論の中で、初めて全家連などが保護者制度の廃止を訴 え、平成2年〜3年には、公衆衛生審議会において、保護義務者の撤廃、平成5年法改 正時には、関係諸団体からさまざまな保護者制度の改革案が出され、公衆衛生審議会で も議論が行われたところでございます。  具体的には、保護義務者の義務が訓辞的な意味しか持たないものとなっており、罰則 等の規定がないことに加え、家族からも「義務」という表現が過重な精神的負担を招い ているとの指摘を受けまして、平成5年改正時に「保護義務者」の名称を「保護者」に 改めたところでございます。  また、平成5年の改正時に、保護義務者の高齢化、低収入等から、一部の保護義務者 においては、生活上多くの困難を抱え、適切な役割が果たせない等との指摘があったこ とを受けまして、精神障害者の権利利益を擁護し、その社会復帰の促進を図るため、保 護者に対して、精神病院及び社会復帰施設等が必要な支援を行うよう努めるべきである という規定を設けたところでございます。  以上でございます。 ○吉川座長  ありがとうございました。それでは、恒例によりまして、皆様方からこの問題につい てご意見を承りたいと思います。いかがでございましょうか。なお、資料16は、新美先 生の前の論文でありまして、これらも資料としてつけてございますので、それらも目を 通されながらでも結構でございます。  いかがでございましょうか。今、論点というよりも全体の流れを杉中補佐からご説明 をいただいておりますけれども、こうしたまとめ方については特段なことはござません でしょうか。よろしゅうございますでしょうか。  もし、よろしゅうございましたらば、続いていきましょうか。 ○杉中補佐  わかりました。 ○吉川座長  それではお願いします。 ○杉中補佐  続きまして、先ほど言ったように、資料16、17は過去に行われた議論なので、それは 各自において見ていただくということで、今回の保護者で過去の改正と非常に異なって いるということは、同時に来年の通常国会を目指して民法の改正が予定されているとい うことで、いわゆる成年後見制度が、今、法務省の法制審議会で検討されているという 状況がありまして、保護者とも密接な関係を持っていますので、まず、その制度につい てご説明をさせていただきたいと考えております。  資料18をごらんいただきたいんですけれども、資料18は法制審議会において議論され ましたもので、それに基づいて要綱試案というものをつくりまして、今、各団体の方 に、これで意見照会をかけているところでございます。本専門委員会に出席していただ いている委員の先生方の団体の多くにも照会が行っているというふうに認識しておりま す。基本的にこの要綱試案について説明をさせていただきます。  まず、現行の制度では、いわゆる禁治産制度・準禁治産制度といわれるものについ て、禁治産制度について後見人、準禁治産制度について保佐人というものが付されると いう制度でございます。目的といたしましては、本人の保護及びそれ以外に取引の安全 といったものも目的としてこの制度が設けられているところでございます。  しかしながら後見、禁治産制度・準禁治産制度は、いわゆる後見人に付された者等に 対して一律に行為能力制限を行うということとあと禁治産制度・準禁治産制度という非 常にイメージが悪い中で硬直的な制度というふうに言われておりまして、なかなか有効 に使われていないのではないかと言われております。  そういう背景から「成年後見制度」というものが今検討されているわけですが、その 必要性の背景には、高齢化社会が進み、平成12年には介護保険ができる。また障害者の 福祉が制度の充実をしていく背景の中で、老人であるとか知的障害者、精神障害者と いった判断能力が不十分な成年者に対して何らかの支援を行えるといったものを柔軟か つ弾力的な利用しやすい制度としてつくっていただきたい、そういう支援がある中で検 討されていったものです。  改正に関する経緯でございますが、平成9年10月に「成年後見小委員会」というもの が、法務省の法制審議会民法部会の中でできて、そこで議論が行われています。その前 は、法務省の実は研究会という形で行われていたのですが、その後、半年近く議論をし て、ことし4月に要綱試案が公表されております。平成11年の通常国会を目指して、現 在、法務省が中心となって作業を進めているところでございます。  要綱試案の概要でございますけれども、まず基本的な理念として「自己決定の尊重」 と「本人の保護」といかに調和していくかという中で、柔軟かつ弾力的な利用しやすい 制度を設計しようということになっています。その中で「後見」「保佐」という二類型 に分かれているものをまず三類型という形にしようではないかと提案されています。  1の「補助」については、軽度の痴呆・知的障害・精神障害等の状態にあるものにつ いては、基本的には本人の判断能力を認めつつ、補助の必要な者については、全般的で はなくて特定の法律行為に関して補助人をつけて代理権・同意権を与えようとしていま す。取消権に関しては引き続き検討ということになっていますが、後見人のように全法 律行為について取消権が及ぼされるという感じはなくて、例えば遺産分割といった法律 行為に関して、何らかの補助をする必要があるといったような、特定の法律行為に関し て補助人を付すことができるという形にしようではないかと言われております。  補助類型につきましては、したがって、保佐と後見といった感じではなくて、裁判所 の鑑定なしに、いわゆる診断に基づいて略式的に選任するということについても今検討 しているところです。  続きまして「保佐人」ですが、これはいわゆる今の準禁治産制度を基本的には受け継 いでいるもので、対象を心神耗弱者を対象にしたものですが、ただ、その対象としまし ては、今の浪費者については補助という観点ではないということで、これを対象外にし ていこうという検討がなされております。その保佐人という者に一定の範囲内の代理 権・取消権を付与しようという形で検討されています。  「後見」につきましては、基本的には今の禁治産制度を受け継いでいる者で、後見人 に広範な代理権・取消権を付与していこうといったものです。  この三類型に分けるというものがまず1つ目のポイントです。  2つ目は、申立権者を拡充しようではないかということです。現在は基本的に親族と 検察官の申し立てによって後見人等が付されていたのですけれども、高齢化社会という 中で、家族等が十分な支援を行えないような場合がある。まだ単独で生活なさっている ような方にはなかなか申し立て等の機会が与えられないという中で、今、検討されてい るのは福祉的な行政機関、市町村であったり、福祉事務所であったり、場合によっては 保健所に対して申立権を与えて広く支援をしていく機会を与えようではないかといった ような検討がなされております。  また、戸籍への記載に代わる新しい登録制度、こういうものが付されることが戸籍に 残るということは非常に差別的だという話もありますので、新しい登録制度を設けよう といったことが検討されております。  また、あわせて各種法令の資格制限、被成年後見人いわゆる欠格事由が実は保護者自 身も被後見人にはなれないみたいなものがあるんですけれども、そういったものも一緒 に見直していこうではないかといったような議論がなされております。  また、「成年後見体制の充実」ということで、成年後見になれる者が、今は自然人で 単独でしかなれないことになっておりますが、福祉的な活動であれば、必ずしも自然人 ということではなくて法人といったようなものについても認めてはどうか。また複数の 成年後見人がいてはどうかというようなことが書かれております。  また、基本的に禁治産・準禁治産制度というのは、財産上の利益とか取引の保護が中 心だったわけですが、その取引の保護、財産上の保護が中心ではあっても、それに付随 するような形で本人の身上に配慮すべき義務を明文化しようといったようなことになっ ております。  また福祉関係者等の希望が多かったものとしては、「任意後見制度」。補助を受ける 人たちの自分の判断を優先しようということで、そういう補助を受ける人たちが契約に よって任意後見人制度を選任するという制度についても法制化を検討しております。  それにつきましては、いわゆる本人の判断能力が低下する前、例えば老人の場合は痴 呆が著しくない前に、本人が判断能力が低下した後にはこの人にお願いしたいというこ とをあらかじめ選任しておいて、それを公正証書ということで明記しておく。そういう 公正証書で書いてある事態が発生した場合に家庭裁判所が「任意後見監督人」という者 を選任するということで、いわゆる「任意後見契約」が始まるといったような「任意後 見制度」についても検討されております。  以上が簡単でございますけれども、成年後見制度の改正に関する要綱を概略的に説明 させていただいたものでございます。  資料19は、いわゆる保護者と新しい成年後見人の制度を、多少無理はあるのですが、 比較させていただいたものです。  対象者につきまして、保護者については精神障害者となっていますが、補助人は軽度 の痴呆・知的障害者・精神障害者を対象としており、補佐人、後見人についてはそれぞ れ心神耗弱者、心神喪失者を対象にしています。  就任可能な者ですが、保護者は先ほど言ったように、後見人、配偶者、親権を行う 者、扶養義務者、市町村長ということになっておりますが、新しい成年後見について は、特に制限がございません。  就任可能な人数については、保護者は1人。補助人等の成年後見人については複数可 となっております。開始の手続きですが、保護者が基本的には措置入院、医療保護入院 による入院を行ったときに開始されるということに対して、成年後見人については、本 人、配偶者、親族、検察官、福祉関係行政機関(これらについては検討中でございます けれども)等の申し立てによって始まります。  次に終期でございますが、保護者については特に終期の規定はございません。成年後 見人については基本的には支援をする原因が終わったといったときに、請求によって補 助なり保佐なりの開始決定を取り消しということで終期を定めております。  権利でございますが、保護者が医療保護入院の同意。通院公費負担の申請といったも のですが、補助人につきましては、基本的には本人の法律行為の同意権、取消権、代理 権等を有しております。  職務は、保護者につきましては、財産上の利益の保護。財産管理面では財産上の利益 の保護。補助人については財産を管理する権利。代理権等の範囲にもよりますが、基本 的には本人に代わって財産等を管理する権利。代わりに財産に関する法律行為を行うと いった権利。  職務ですが、身上監護に関するものにつきましては、成年後見人は、財産上に関する 法律行為の代理等の権限の行使に関して、本人の身上に配慮する義務があるのに関し て、保護者につきましては、本人の精神障害者に治療を受けさせる医師への協力。 自傷他害の防止といったような義務が規定されております。  基本的には保護者、成年後見人については障害者といった判断能力が不足する者に関 して支援を行うという点で共通しております。ただ、保護者に関しては、基本的に身上 監護的な、いわゆる本人に医療を受けさせるといったところが中心であるのに対して、 成年後見人につきましては、基本的には財産的な面での支援を行っていくといったよう な違いがあると思います。以上です。 ○吉川座長  ありがとうございました。いかがでございましょうか。一遍に成年後見制度そのもの を全部理解するのはなかなか難しいところかもしれません。とりあえず資料は前もって お配りしておきましたのでお目通しいただいたかもしれませんが、今、杉中補佐から概 略説明をさせていただきました。何かご質問等がございましたらば、ぜひいただきたい と思います。  一番最後に説明されました資料No19の一覧表は、さっきもちょっと杉中補佐が言われ ましたけれども、多少無理をしてといいますか、成年後見制度そのものをこういう形で あらわして、現在の精神保健福祉法が持っている保護者制度を並べてみるとこんなふう になると、いわば工夫をさせていただいたところです。 ○長尾委員  この補助人、保佐人、後見人は、いわゆる精神障害者の場合は、症状によってある程 度病状が変動しますね。その場合には補助人から保佐人とか後見人とか、相互に変更と いうか、それは自動的というか、状況によって自動的に変更されるのか。それとも何ら かの申し立て等があって、また、そういう変更が行われるのかということはどうなんで しょうか。 ○杉中補佐  基本的には申し立てを受けることになると思います。例えば補助人の範囲内で代理を していたけれども、それでは病状が進行してしまって、対応できないと判断する場合に は、周りの人が申し立てることもあります。補助人自身も申し立てて保佐人を付すと いったことも可能になるという検討をしております。  反対の後見人から改善された場合は、恐らくは一たん後見の開始決定を取り消して、 再び開始する形になると思います。いずれにしても新たに申し立てを行うということに なると思います。 ○吉川座長  よろしゅうございますか。ほかに何かどうでしょう。 ○金子委員  最初に1つ確認していただきたいことがあるのですが、それは今回の民法の改正と関 連して、精神保健福祉法上の保護者をどういうふうな形で持っていくのかということに 関しまして、保護者制度をまず存続させるのかどうか。「保護者」という名前は多分残 るとは思うのですが、現行の保護者制度を存続させた形で民法上の成年後見制度を一部 できるようにするのかどうか。それとも成年後見制度を主として保護者制度を確立して いくのかということなのではないかと思うのですが、そこの関係がよくわからないと、 我々の論議も、補助人、保佐人、後見人を主として考えていくのか。それとも家族を主 として考えていくのかということで大分違うのではないかと思うのですが、そこら辺は 厚生省では基本的なお考えはいかがですか。 ○杉中補佐  後ほど議論するところでございますが、非常にいろんな観点があって、なかなか検討 メモという形で明確に整理できなくて、基本的な考えは、任期等のところにも書いてお りますけれども、とりあえず医療ということが中心になってくると医療的な観点が必要 であり、この場合にも、ただ本人の判断能力が十分ないといった場合には何らかの支援 と補助が必要なんだろうと思います。ただ、民法の成年後見人がその辺の広範な身上監 護権まで持っていれば、保護者を完全にかえるということでいいのでしょうけれども、 残念ながら現在議論が行われているところでは、いわゆる成年後見人の配慮すべき身上 監護というのは、自分が基本的には財産に重点を置いて法律行為を行うのに当たって、 身上監護を配慮するといった義務の観点しかないので、現在の成年後見人で保護者をす べて置き換えることはできないのだろうと考えられます。したがって、何らかの形では 保護者は残さざるを得ないのかなといった感じです。ただ、保護者の役割は医療が重点 的に必要なときに限定していき、生活の支援ということであれば、基本的には財産上の 利益の保護みたいなものに重点を置いていいのではないかと思いますので、そういった 感じで両制度の棲み分けを図っていこうかという感じで、検討メモを書かせていただい ています。 ○吉川座長  ありがとうございました。金子委員からのお話は、いずれにしても後でまた論じられ ることでございますけれども、この成年後見制度でつくられる3つの新しい制度という か、三段階になるそのことと、現在の保護者制度とともかく並べてみて、本当に精神障 害者の保護にどれが一番当たるのか。先ほど病状の問題も出ましたけれども、トータル でどの制度が最もふさわしいのかということを考えていこうとして、全部一遍にここで 出させていただいた。保護者制度を残すか残さないかという議論ではないと私は考えて います。  どうでしょう、ほかに何か。この今のご説明そのものについて、ご質問等がありまし たら、どうぞ。 ○佐藤委員  成年後見制度における身上監護の内容なんですが、医療に関する代理権といいます か、それについては、今回の検討、民法の中に位置づけることは難しいということで、 精神保健福祉法の医療保護入院における保護者制度については検討はするけれども、一 般的に医療の延命治療や臓器移植であるとか、そういった医療における同意についての 代理権は身上監護の中に含めないというふうな議論がされているようですが、医療保護 入院において、入院に同意をすることは医療の同意ではないという解釈になるのでしょ うか。現に現行民法でも後見人というのが保護者の第一順位になっていて、入院に同意 をするという行為をその後見人がしているわけですが、それは医療についての同意では ないということでしょうか。 ○杉中補佐  ご質問が難しいのですが、基本的には、今の後見人の同意につきましても、医療保護 人院の同意をすることは精神保健福祉法上位置づけられて初めて可能になっているのだ と思います。その辺の身上監護の範囲がどこまでかというのが、我々も今の法務省の議 論では実はよくわからないところなんですけれども、現在の我々の認識といたしまして は、そういう医療的な行為につきましても、必要があれば、本人を代理して契約すると いった法律行為の代理はできるのだろうと思います。  ただし、その代理権は、本人を無視して、強制的に病院なり施設なりに入所させると か、いわゆる身体的な強制力というものまではそこには及ばないのだろう。だから、仮 に契約を締結しても強制権はないので、実際上は医療とか施設入所とかというところの 強制という感じでは意味を持ってこないと思います。ただ、身上監護の配慮義務は当然 そういう代理をしている中で、本人の身上についても配慮しなければならないので、本 人のぐあいが悪そうだということがあったら、できるだけ医療にかからせるような努 力、配慮をするような義務はかかってくるという程度の配慮義務しかないのではないか と考えております。 ○吉川座長  佐藤さん、いかがですか。 ○佐藤委員  そうしますと、前回、議論になっていました医療保護入院の妥当性といいますか、法 的な正当性といいますか、パターナリズムに基づく指定医の判断によって入院を強制す る、医療を強制することについて、それを本人に代わって保護者が同意をすることに よって医療保護入院が成り立つわけですが、そのときに保護者が医療保護入院に同意を するときに、治療を強制することまでを、保護者が成年後見制度でもって、同意をする 根拠になるのか、ならないのか。 ○杉中補佐  前回の説明と論理的には一貫していると思うんですが、前回の説明は、同意入院時代 には本人に代わって代理で契約することによって入院させることができるのだという説 明もあったのだけれども、そうではないということで明確に否定されたということで す。入院の必要性の判断は、いわゆる指定医という権限を与えられている者が行いま す。保護者については、その独自の観点で同意を行わないことによって、その指定医の 入院させるべきだという判断を拒否することはできる権限はあるのですけれども、それ は本人の代理でやっているわけではないという整理だと思います。  そのことは同じであって、いかに成年後見人が代理権を持っていても、本人に代わっ て代理をするといったようなことで、また同意をするといったことで、医療保護入院を させることはできないのだろうということで、前回の説明と今回の成年後見人の権限の 範囲は一貫しているというふうに認識しています。 ○佐伯委員  前回、欠席したので、もしかすると話が出たのかもしれないんですけれども、1つだ け、今の後見人の契約の代理の権限と保護者の同意の点についてちょっと質問したいの ですが、通常治療契約は医療保護入院の場合に結ばれているのでしょうか。 ○杉中補佐  契約による入院だと聞いておりますので結ばれているはずだと思います。 ○佐伯委員  強制入院ではあるけれども、しかし、契約は結ばれていると。だれと結ばれているん ですか。 ○杉中補佐  どうですか、高柳先生、現場では。 ○高柳委員  通常、私たちの解釈では保護者と病院管理者だと思いますが。 ○佐伯委員  保護者と病院管理者の間で契約が結ばれているんですか。 ○高柳委員  はい。 ○佐伯委員  医療費の支払い義務は、それに基づいて保護者に生じているということでしょうか。 それとも先ほど公費負担を請求する権限が保護者にあると言われましたが、一応契約上 の義務に基づいて、保護者が支払い義務を負うけれども、その費用について公費負担を 請求することができるということでしょうか。 ○杉中補佐  公費負担は医療保護入院にはございません。 ○佐伯委員  そうですか。 ○杉中補佐  措置入院のときには保護者が代わりにやることになります。 ○佐伯委員  医療保護入院の場合には、あくまで保護者が支払い義務を負うと。契約の当事者であ り、支払い義務者。 ○杉中補佐  ただ、保護者が必要な経費を扶養義務者に請求できるという規定もございますので、 法的には扶養義務を負うものが支払っているというふうに考えると思います。 ○佐伯委員  法律的に整理すると、強制的に医療を受けさせる権限は精神保健法からきている。し かし、財産的な契約関係は保護者と病院の間で結ばれていると理解していいんでしょう か。 ○杉中補佐  はい。 ○佐伯委員  どうもありがとうございました。 ○杉中補佐  医療保護入院についてはどう考えても整理がつかないという指摘を池原先生と山本先 生に実はいただいたところで、なかなか明確に医療保護入院というものの性格を整理す るのはちょっと難しいのかなという感じもしているんですけれども、指定医の判定と、 保護者の同意とのすべての条件が整ったときに入院させることができるという形で、精 神保健福祉法の中で書いているのだろうと思います。 ○吉川座長  ありがとうございました。 ○西山委員  今の点なんですが、東京地方裁判所の八王子支部の判決がございますね。あれは同意 入院時代のことですけれども、任意の契約と、もう一つは、本人が契約能力がない場合 があるでしょうから、契約の外形があればよろしいということですね。 ○杉中補佐  はい。 ○西山委員  ですから、ちゃんとした契約かどうかというのは怪しいですよね。同意入院の中で、 本人に能力がある場合は今任意入院になっているわけですね。本人に能力がない場合が 医療保護入院になっていますから、辛うじて言えるとすれば、契約の外形を保っている というぐらいしか医療保護入院については言えないのではないかと思うんですが、どう ですか。 ○杉中補佐  その外形というのは、恐らく本人についての入院であるのだけれども、病院側と保護 者と、もしくは親族の人が契約を結ぶということでその契約の外形が成り立っているの ではないかということと、病院側と保護者の契約自体を外形ということで示しているの だろうと解釈しております。 ○西山委員  ですから釈然としないのは、病院の管理者と家族といいますか、保護者とが契約して いるんですけれども、強制的入院をさせられるのは本人なんですよね。 ○杉中補佐  そういうことです。 ○西山委員  ということで、その辺はどうしても釈然としない。 ○杉中補佐  釈然としないんですけれども、ただ、親族として、また、保護者として、本人に代 わって身上を配慮する者が契約をしていることで、辛うじて契約の外形というものがあ るのではないかということが八王子裁判の基本的な考え方なのではないかと解釈しま す。確かに本人のことであれば、本当は本人が意思を持って契約しなければならないの ですけれども、そうではない。そういうことが許されるのは精神病の場合には、本人の 判断能力が不十分な場合があって、ただ、それを放置しておくと入院できなくなると、 かえって本人の不利益になることもあるので、そういった外形を持って認められること なのではないかと裁判所でも判断されたのではないかと思います。 ○西山委員  本当はまだあるんですけれども、また後ほどにします。 ○吉川座長  はい、わかりました。それでは、ほかにご質問、ご意見を。 ○乳井委員  質問ですけど、法律的なことなんですが、任意後見制度は、考え方自体、私もいい し、こういう方向にいくべきではないかなという気がするんですけれども、しかし、こ れは判断能力が低下した時点で、事前に指定したことが生きてくることになれば、判断 能力がある時点でもって指定ができるということであれば、今の民法の中でもそれはで きるのではないですか。どうなんですか、その辺の議論はあったのでしょうか。 ○杉中補佐  法務省の方で詳しくどういう議論がされたかは実はよくわからないのですが、今の民 法でも、イギリスなどは本人の判断能力がなくなれば、代理権は消滅するということな んですけれども、大陸法なり日本では代理していることであれば、本人の判断能力がな くなっても引き続き有効なのだということだとは思います。そこは個別の代理というこ とでなく広範な代理とか、そういう認識はされていなくてもなかなか有効に、必ずしも 世間で受け入れられているわけでもないので、そこは新しく制度をつくっておくことが 必要なのではないかという意見があったと聞いております。  もう一つは、今の代理であれば、判断能力がなくなった後に、代理をつけるものの監 視する制度がないので、当人としては心配だということもありますので、本人の判断能 力がなくなったときに、代理を受ける者を監督する制度がやはり何か必要なのではない かという議論がありまして、民法では、判断能力がなくなった時点で、家庭裁判所が判 断をして、任意後見監督人という者を付せることによって、任意監督制度を開始させる という制度を今検討事項の1つとして提案しているというところだと思います。 ○西山委員  これも前回議論されたかもしれませんが、資料3に関してですけれども、マルの2番 目、同意を行わない者に限定してということですが、精神保健福祉法では、現在のとこ ろでは同意能力を判定していませんよね。 ○杉中補佐  そうですね。 ○西山委員  ですから同意する能力があって同意する人と、同意する能力はないけれども、同意す る人が任意入院になる可能性がありますね、両方とも。それから、同意能力がなくて同 意しない人、これが医療保護入院の本来の対象になるだろうということで、真ん中にあ る同意能力はないけれども、同意する人が中にどうしても出てくるわけですね。 ○杉中補佐  前回議論があったところなんですけれども、要するに医療保護入院の受け持つべき範 囲は非常に不明確であることが原因となって問題が起こっていると。問題の中で1つ言 われているのは、まず同意する能力がないのに同意したといって入院させられている 例。逆に、そういう例は、去年起こった問題病院などではかなりあったわけですけれど も、そういったことによって、かえって本人の利益が守れなかったこともあるのではな いかと。  逆に同意能力があるにもかかわらず、医療保護入院させられている例もあるのではな いか。前回例で挙げましたけれども例えば本人が退院したいと言ったら非常に不自然な 形である日突然医療保護入院に変れられたケースがありました。場合によっては、家族 等の要望のみによって入院を継続させるために医療保護入院に変わっているといった例 もありました。このような問題事例を踏まえ、検討メモで言っている趣旨は、要するに 同意能力がない場合という形で医療保護入院を位置づけることによって、医療保護入院 と任意入院の守備範囲を明確にしようではないかといった形で、そこの同意能力がある のに医療保護入院になっているものとか、ないのに任意入院になっているものという、 クロスオーバーみたいなものが出てこないようにするべきではないかという意見です。  ただし、同意能力がないということについては、一般的な民法上の心神耗弱とか、そ ういったもので必ずしも判断できないような場合も、医療保護上の場合はあるのではな いかと考えられます。その辺は少し検討してみないとわからないんですけれども、総合 的に見れば判断能力があっても、病識のところだけ非常に欠如しているというような例 も可能性としてはありますので、そこはもう少し個別に検討する必要があるのであれ ば、もう少し個別の詳しい基準を設けるような形で、いわゆる判定基準を別に設けると いうことで、医療保護入院のあるべき姿をもう少し明確にしていったらどうかというの が資料3に書いてある2つ目と3つ目のマルの説明です。 ○吉川座長  とりあえず本日の成年後見制度を中心にして、そして保護者の問題を明らかにして、 また、一部は医療保護入院の問題に当然絡んできますので、そこへ話がいくと思ってい ます。  ちょっとこの辺のところでお休みをさせていただいて、後の方を整理しましょうか。 10分ほどちょっとお休みをさせていただきます。                 ──休 憩── ○吉川座長  それでは、10分ほど経過いたしましたので再開させていただきます。先ほどまでは、 保護者についてさまざまな整理をしていただきましたし、成年後見制度のご説明もいた だきました。まだ成年後見制度、法務省の方の検討が全面的に進んでいるというわけで もないのかもしれない。ここまで来てますから、恐らくこんな形でいくのだろうとは思 いますけれども、それをご説明いただいたわけで、これぐらいのところでもう一度、私 どもの中で整理しましたことを少し検討メモみたいな形で出しておりますので、杉中さ んの方にご説明いただきたいと思います。 ○杉中補佐  それでは、個別の検討メモにいく前にまず論点でございますけれども、もう一度確認 させていただきたいと思います。資料1をごらんください。保護者に関する論点及び各 団体の要望等でございますけれども、4点ほどございます。  まず3番と書いてある保護者の義務の軽減についてでございますけれども、保護者に 過度の負担をかけないよう自傷他害の防止責任義務や措置入院患者の引き取り義務等の 義務規定を廃止するとともに、保護者と行政の役割分担について検討を行う必要がある のではないか、といったような意見がなされております。  次に保護者の任期及び保護者の保護の対象の明確化でございますけれども、保護者に ついては、任期が現在定められておりませんので、一たん保護者として選定されます と、精神障害者が回復するか、または死亡するまでかなり長期間にわたって保護者であ り続けることになる。また保護の対象が明確にされていないといった問題がありますの で、これらの問題点について検討を行う必要があるのではないか。  続きまして、市町村長同意の見直し。これは番号を5番に直していただきたいんです けれども、市町村長の同意というのは、先ほど説明しましたように、保護者がいないと きには、市町村長が保護者となるということですが、市町村長による保護の制度が形骸 化しており、保護者としての機能がほとんど果たされていないため、必要な見直しを行 う必要があるのではないか。  また、保護者となるべき者の見直しについてということですが、保護者の高齢化の進 行等による保護者としての責務を十分に果たせないような者が出てきている。そういっ た場合に対応するため、成年後見制度も視野に入れつつ、保護者となることのできる者 の範囲を見直してはいかがかというような意見も出されております。  引き続きやっていいですか。 ○吉川座長  はい、どうぞ。 ○杉中補佐  それでは、引き続きまして、資料4を説明させていただきます。  「保護者の義務について」ですが、その中でも、特に意見の多い「自傷他害防止義 務」「引き取り義務」「財産上の利益を保護する義務」という3点に絞って議論をさせ ていただいております。まず、その3点の義務でございますけれども、「自傷他害防止 義務」についてですが、精神保健福祉法第22条第1項によって、保護者の義務として、 「精神障害者が自身を傷つけ又は他人に害を及ばさないように監督」する義務でござい ます。  自傷他害防止義務を設けている理由といたしましては、重度の精神障害者について は、自らの利益に反した行為をする恐れがあることから、その者の人権を擁護し、適切 な医療・保護の機会を提供するといったことに理由があると言われています。  次に「引き取り義務」ですが、 1措置診察を受けたが措置不要との判定がなされた 者、 2措置入院患者について措置解除がなされた場合。また仮退院という制度がござい ますが、 3仮退院を行う措置入院患者については、保護者が引き取らなければならない という義務でございます。  ここでいう引き取りというものですが、必ずしも現実に保護者の自宅に引き取らなけ ればならないというものではなく、例えば別の入院形態に移行して医療を受けさせると か、場合によっては福祉施設に入所させるといったような選択もあると判断されており ます。引き取り義務が設けられている理由といたしましては、措置症状の消滅した精神 障害者について、その者の医療及び保護が中断することがないように、その者の権利・ 利益を擁護する主体が行政から保護者に円滑に移行することを確保するために設けられ ているということでございます。  次に「財産上の利益を保護する義務」ですが、財産上の利益を保護する義務といいま しても、保護者は、先ほど言いましたように、必ずしも代理権を持っているわけではご ざいませんので、後見人のような形での財産上の保護ではなくて、例えば精神障害者の 身の回りの財産を散逸しないように看守するとか、入院した精神障害者の荷物をまとめ て保管するといった事実上の保護をいうと解釈されております。  それでは、これらの義務の問題点及び論点等について説明させていただきます。  まず「自傷他害防止義務」ですが、これについて非常に意見言われておりますのは、 そもそも精神障害者の自傷他害について予測することは専門の精神科医でも困難である と言われており、また、保護者といえども精神障害者を保護拘束することは禁じられて おりますので、保護者が同義務を果たすというのは何らかの怪しい兆候とか必要がある と判断した場合に医療を受けさせることしか現実上の手段はないと、これは各種の厚生 科学研究等でも言われております。  したがって、自傷他害防止義務は、「保護者は、精神障害者に治療を受けさせなけれ ばならない」とする義務と実質的には同じではないかと考えられます。言いかえれば、 精神症状を有し、入院治療を必要とするまでに至っている精神障害者に対して「治療を 受けさせる」といった保健医療的な観点からとらえたのが「治療を受けさせる義務」で して、治療を受けさせないことによって、自傷他害行為が起こるのを防止するという社 会的防衛的な観点からとらえたのが「自傷他害防止義務」と言えるのではないか。  しかしながら、自傷他害防止義務は、民法第 714条の監督義務者の責任といった問題 につながっております。従来は、精神障害者の起こした不法行為に関する保護者の監督 義務違反について、これを肯定する判例もかなり多くありました。例えば昭和47年の高 知地裁につきましては、前日不眠を訴えた後、外出して一晩帰宅せず、翌日殺人事件を 犯した精神分裂病患者に対して、賠償金の支払いを命ずるといったような判例もござい ます。  その後は、保護者の監督責任をかなり限定的に解釈するといったのが、最近の判例の 流れでございますけれども、その傾向を総合すると、保護者が監督責任を問われうるの は、専門家により精神障害の診断がなされていることを前提として、 1現在明らかに危 険が切迫した状態にあること、 2著しい病的状態が認められること、 3過去にも同様の 状態があった、のいずれかの状態があるにもかかわらず、実行可能な対応行動をとらな かった場合である、と言われております。この場合の実行可能な対応とは、医師との連 絡や相談、警察や保健所等への連絡をいうと言われております。  しかしながら、精神保健福祉法という医療・福祉的な法律の性格をいうと、精神障害 者に治療を受けさせるという保健医療的な機能で十分であり、異常な状態を察知して、 警察等に連絡することまで保護者に要求するのは過大な負担ではないかといったような 議論及び検討がかなり行われております。  次に「引き取り義務」でございますけれども、現在の保護者等の高齢化がかなり進行 しておりまして、これらの保護者については、実際に精神障害者を引き取って保護する ことは困難となってきております。先ほど言ったように、引き取り義務は必ずしも自宅 に引き取るということではないのですけれども、そういった保護を行う義務、能力をな かなか保護者自身の能力低下により、それらを行うことが困難になってきている。ま た、精神障害者については、家庭環境に問題がある場合もあるということなので、こう いった場合には、精神障害者をそういった人に任せるのが果たして適切なのかといった ような議論も一部にはございます。  次に、引き取り義務自体がいわゆる保護者の義務のうちでかなり嫌がられているとい うことで、特に扶養義務者等で、保護者の選任回避を起こす理由になっている場合が多 いのではないかと考えられます。特に扶養義務者が保護者に選任されるときには、精神 障害者が入院を行うときに全く別の環境で生活を営んでいることもかなり多いと思いま すので、そういった当該患者の入院期間中の財産保護ならともかく、将来、当該精神障 害者を自分が引き取ることについて心理的な抵抗が大きいと考えられます。  また、引き取り義務を課す根拠をどこに求めるかといったような疑問も残されており ます。保護者が法定後見人でもない限り、こういった者の後見を行うといった義務を課 すことが可能であるのか。特に扶養義務者につきましては、扶養義務の範囲で経済的な 負担を求めるのがせいぜいではないかといったような意見もなされております。 次に 「財産上の利益の保護について」ですが、保護者は代理権や取り消し権を有しておりま せんので、十分な財産保護を行うことはかなり難しいと考えられます。今回、精神障害 者を含め判断能力が不十分な者を支援する制度として、先ほど説明いたしました成年後 見制度が創設されますが、成年後見人は同意権、代理権、取り消し権等を有しておりま すので、財産上の利益の保護をより適切に行えるのではないかと考えられます。  引き続いて、「基本的な考え方」ですが、自傷他害防止義務は、基本的には努力義務 規定ですが、この条項を維持することにより、かえって保護者に余分な経済的負担をか けるおそれがあるため義務の軽減または廃止について検討してはどうか。  次に、引き取り義務が発生する場合の多くは、措置入院患者が医療保護入院に入院形 態を変更するときに必要な同意を行うことが実態上は一番多いのではないか。このよう なときに保護者の支援は確かに必要であることから、これを維持することについては必 要なのではないか。  また措置入院から直接地域に退院する者や仮退院を行うといった場合についても、そ ういったところまでの支援は必要なので、これについては引き続き維持することが望ま しいのではないか。  次に、財産上の利益の保護につきましては、入院中の精神障害者についても身の回り の財産等の保全が必要なので、あえて、この条項を削除する必要はないのではないかと 考えてます。しかし、地域で生活する精神障害者、いわゆる生活財産的な支援が必要な 者については、より本格的な財産管理の支援が必要であるので、また財産面の支援と いったことで、保護者と成年後見といった2つの制度が必ずしも重複してある必要はな いので、地域で生活する精神障害者に関する財産上の利益の保護なり支援は、成年後見 人によって基本的に行わせるという方向が望ましいのではないかと考えます。  以上です。 ○吉川座長  ありがとうございました。一応そこで切っていただきまして、ここまでの考え方につ いて、それぞれ委員の方々からいろんなご意見をいただければと思います。そのところ で最終的に基本的な考え方として、こちらからお出ししたものをご批判いただくなり、 あるいは訂正箇所いろいろなことがあると思いますが、それらについてもお話しいただ ければと思います。それではどうぞ。 ○池原委員  それぞれの点についても幾つか申し上げたいことがあるのですが、まず1つ、この義 務の中で、治療に協力する義務のところは、特に論点とされていないのですが、治療協 力義務を削除しろということまでは、今ここで申し上げるつもりはないんですけど、た だ、条文的に見ますと、治療を受けさせるというようになっている。それから、「診断 が正しく行われるように医師に協力しなければならない」。さらに「医師の指示に従わ なければならない」という記載のされ方になっていて、私自身の個人的な意見として は、「適切な医療が行われるように努めなければならない」という程度の表現であれば いいと思うんですけれども、「医師の指示に従う」という一定の方向性を余りにも示し た表現の仕方は、最近の自己決定権とかインフォームド・コンセントという観点からす ると、やや表現としては少し強過ぎないかというふうに思っておりまして、その辺もも しできたらご議論いただけないかなと思っております。 ○吉川座長  それについては、杉中さん何かありますか。 ○杉中補佐  とりあえず廃止ということで要望が大きいのが自傷他害防止義務と引き取り義務とい うことで、この2点を特に取り上げたわけですので、このほかについて、ご提案がある のであれば、議論していただいた方がいいと思います。 ○吉川座長  一応3つの点で、杉中さんの方から出させていただきましたけれども、それ以外でも もちろん構いません。今のお話のような問題でもよろしいかと思いますけれども、保護 者についてというところで、一応限定的に。 ○佐伯委員  先ほど池原先生から「努めなければならない」というふうな文言の方がよいのではな いかというご質問あったんですけれども、先ほどの資料4の「基本的な考え方」のとこ ろで、「自傷他害防止義務は、努力義務規定であるが」という書き方をされているんで すけれども、その意味はどういう意味なんでしょうか。もし、罰則がかかってないとい う意味であれば、どの義務も罰則はかかってないわけですので。 ○杉中補佐  どの義務も努力義務規定ということ。 ○佐伯委員  というふうに理解されているわけですか。 ○杉中補佐  はい。不適切であれば、確かにこの部分は直す必要があります。 ○佐伯委員  普通「しなければならない」というのは、法的な義務を定めたものだということに理 解されていると思うのですけれども。 ○吉川座長  言葉としてはどういう言葉を選んだ方が適切なんでしょうか、そういうときには。 ○佐伯委員  法的な義務ではなくて、「努めなければならない」だけであれば、普通一般に法律上 は「努めなければならない」というふうに書いて、法的義務を課す場合には「しなけれ ばならない」。ですから法文上は、法的義務であると、ただ、罰則がついてないだけだ ということかと思います。ですから池原先生がご提案のような書き方にすれば、さらに 弱くなるということになる。 ○吉川座長  ほかにいかがでございましょうか。高柳先生。 ○高柳委員  保護者の義務については非常に過重だという批判がかなりありまして、私たちもその 点については、そうだなという実感もあるのですが、その反面、そういった義務規定が なくなっちゃうとどうなるかということをおそれるんですね。ことに精神病院の場合に は、患者さんと直接、オーバーに言いますと、24時間、私たちケアできますので、それ ほど心配ないのですが、外来診療所の先生方が、実際だれをキーパーソンとして頼りに していいのかというふうな問題がどうも生じてくるようなので、その義務規定を外すと いうことに、日精診の先生方は非常に強い不安を訴えられました。そのことはちょっと 申し上げておかなければいけないと思います。  それともう一つは、例えば引き取り義務をなくするということは、これはこれで現実 的には引き取り義務を果たしている場合もないわけですが、そうしますと、厚生省がそ のかわり引き取ってもらえるのかどうか、そこら辺ですね。そういう受け皿がなくて、 こういうことを外していっていいのかどうなのかという問題になりますね。 ○吉川座長  高柳先生がおっしゃった日精診(日本精神科診療医会)というところで、そちらの方 で、いわば外来診療を中心にしてやっていらっしゃる方々のグループ、そこで心配が広 がっているというお話だと思います。 ○杉中補佐  基本的に任意入院で、例えば入院されたとか、初診で外来にかかられた方は、保護者 が必ずしもいませんので、そういったときには、患者当人と医療を受けさせる側の相対 の関係ということになると思います。そこについては後ほども触れますけど、そういっ た観点から言うと、いわゆる病状が改善していった場合は、医療保護入院と措置入院で 入った患者だけについて、その保護者だけが保護者の義務を背負って、任意入院で入院 された方とか、外来で通院されている方の家族は義務を負わないというのは、ちょっと バランス的に見ると、特定の人の家族なり保護者に過重の負担を負わせているかなとい う感じはやはり感じます。 ○高柳委員  法律の恐らく横並びすると、おっしゃるとおりだと思うんです。ところがそうではな くて、この法意の意味するところは、少なくとも保護者になれるような家族はこういう ふうな義務がございますよということを言外に述べているわけで、それを日精診の先生 方は頼りにしているわけですね。そこを申し上げたいのですが。 ○伊藤委員  私どもも患者さんを引き受けて、家族に相当お願いして協力してやる立場なわけです けれども、それでもやはり家族制度そのものが、入院した患者さんの支援、機能を失い つつあるときに、今は残すよりは外すべきだと、私は臨床の現場からもそう感じます。 そして、これを外すことによって、高柳先生おっしゃるように、家族と病院との関係が 薄れていって、社会復帰が進まないとか、そういう危惧もないわけではないのですが、 むしろ家族に頼らなくても社会復帰できるような制度を今後は我々はつくっていかなけ ればならないと思うんですね。いずれ家族のそういう扶養的な能力は減っていくわけで すから、ですから、そういう意味では、この時点で、私としては引き取り義務は外して よろしいのではないかと思っております。 ○金子委員  私も伊藤委員の意見に大賛成でございます。先ほどのご説明ですと、措置入院から、 例えばほかの入院形態に移行するようなときに、そのような医療援助が必要であるから 引き取り義務が必要だというご説明がございましたが、全事例から考えますと、そのよ うな割合は非常に少ないわけですね。そのような少数の事例のためにこのような義務と いう形で残すのであれば、余り必要がないのではないか。そのときには、何かしら別な 手だてを講じてもいいと思います。  先ほど高柳委員がおっしゃられたように、まさに家族に法文上ではなく、言外にそう いうふうな義務がございますよということを伝えているのだとすれば、なおさらではな いかと思いますし、また、長期入院が必要だったり、社会復帰が困難だったりするとい う患者さんの中には、先ほど伊藤委員が言われたように、いわゆる家族機能を失った方 が大勢いらっしゃるわけで、むしろ、そこに我々は着目して、その方を社会防衛機能で はなくて、社会保護機能といったらいいのでしょうか、患者さんが足りない部分を社会 が援助してあげるというシステムをつくることの方が必要だと思います。家族引き取り 義務はぜひこの際、外していただければよろしいのかなというふうに思います。 ○佐藤委員  同じような意見になるかとは思うんですが、援護寮などで経験をしておりまして、長 期在院の方が何とか社会で生活をしたいということで、家庭には帰れないけれども、援 護寮を経由して、何とか一人暮らしをしたいということでいらっしゃいます。私どもの ところで、1年間の入所による生活訓練ということで、アパートで一人暮らしができる ような援助をしてまいりますが、アパートを借りるという契約の段階で、家族の方が協 力をしてくださらない。これは引き取り義務があるからというようなことを楯にとって お話をしてもほとんど効果がありません。さんざんこれまで苦労してきて、さまざまな ご家族なりに努力をしてこられたと思うんですが、長い経過の中で疲れ果ててしまって いるといいますか、家族に義務だからということで、ご本人への援助を無理強いをして もかえって気持ちが離れていくというようなことがありまして、ですから義務によって 縛るのではなくて、さまざまな支援の方策をとる。 家族に対しても、あるいはその家族にできる範囲で本人の支援ができるように、家族の 支援が得られないところをほかの支援のメニューを使っていくというような形で展開を していきませんと、家族の引き取り義務だけで、実際の退院の促進はとても難しく、余 り実効性がないのではないかと思います。義務という形で、家族に過重な負担を課すこ とは好ましくないのではないかと思いまして、削除してもいいのではないかと考えま す。 ○長尾委員  今、伊藤先生初めおっしゃられることはごもっとものことだと思うんですが、今、確 かに家族制度がほとんど崩壊してきているのは事実だと思うんです。ただ、ほかに代わ る制度が実際は十分ではないわけですね。それができない時点で、これをすべて削除し てしまうのか。やはり家族が何らかのかかわりを持っていることは、まだ厳然とした事 実です。先にどんどんそういった社会復帰の制度であるとか、社会で支える制度が十分 できれば、それにこしたことはないんですが、まだそれが十分でない段階で、今これを 全面的に外すことはいかがなものかということを1つ感じるんですね。  ただ、自傷他害防止義務ということについては、これは私は削除してもいいのではな いかと思うんですが、確かに引き取り義務があるからといって、引き取ってもらえな い。こちらは入院よりも退院させる方がはるかにエネルギーが要るわけですね。それが なかなか実際できないんですけれども、ある程度の義務的なことを持っていただくこと も家族によってはやはり必要な場合もあるわけで、その辺はもう少し検討していただく 余地があるのではないか思います。 ○吉川座長  大きく分けて2つ出ましたですね。 ○後藤委員  長尾先生のご意見はごもっともだと思って聞いていたんですけど、前回の医療保護入 院の検討のときに、私の意見は医療保護入院が存続するのだと、やはり保護者の義務が 軽減すべきであるということ。それから、医療保護入院の要件をきちんと明記するとい うこと。監視機構を強化する。それを条件というふうに意見を言ったわけですけど、そ の観点からいきますと、保護者の義務の部分は、かなりの部分、行政なり公的な部分で 代替していくということが必要なのだと思います。今、大方の方は自傷他害の防止義務 はちょっと過剰であるというふうに同意されると思うので、私も22条の第1項はなくて もいいのではないかと思っています。  ただ、引き取り義務に関しては、これは精神保健福祉センターという地域と行政と病 院の間にいる立場からなんですが、措置入院の場合には、行政として、入院のときはか かわるんですね。ところが解除されて出た後のことに関しては、行政は全くかかわる部 分というか、責任性がない部分です。全面的に行政が責任を持つ必要は全然ないと思い ますけれども、家族が引き取りの部分がかなり弱くなっているとすれば、それを代わる べき行政的なシステムをつくることがどうしても必要ではないかと思うんです。ですか ら、ある意味で、実際にセンターとか保健所と協力して退院してくる人を地域の中で生 活を支援することをつくっていくことで、何例かうまくやれたケースもあるので、基本 的に引き取り義務をなしにして、その部分を代わりのシステムを、あるいはきちんと法 文上つくっていくと、そういうふうに考えていった方が生産的ではないか、そんなふう に思います。 ○竹島委員  引き取り義務についてなんですが、移行期であるということも重要なことであると思 います。この1枚目のところの説明に書かれてあります「行政から保護者に円滑に移行 することを確保するために設けられた」ということであるならば、これを少し前面に出 して、引き取り義務をある、なしにするというよりも、「円滑に移行することを確保す るための努力」という範囲で記載が残るぐらいが自然なのではないかというふうに思う んですが、いかがなものでしょうか。 ○吉川座長  1つの提案として、今出てきましたけれども、確かに2つに言葉としては割れている ような感じがします。今、後藤先生の方からも、少しその両方をつなげる意味でお話を いただいたところを、今、竹島先生から具体的な提案として用いられている言葉も使い ながら提案が出たわけですが、それについてもう少し考えたいと思います。 ○西山委員  引き取り義務というのをごくごく簡単に言ってしまいますと、1つは、要するに自宅 に引き取るという引き取り義務、これが1つの極端なところにあって、もう一つは、 そっちの方は保護者にそれを負担させるのは重いわけで、それは余り賛成できないけれ ども、医療保護入院の同意者がいないと困るわけですね、今のところは。もし医療保護 入院を存続させるとすれば。ですから引き取り義務というのは、消極的に解すると、要 するに同意してあげる義務というふうなことではないかと思うわけですね。  後者の方が 2で、これくらいは残したらどうかというふうに言ってあるのではないか と、私は推定して、やはりそうかなと思っているのですが、ですから、例えば自宅にま で引き取るような義務は、これはちょっとどうかと思うんですけれども、もし医療保護 入院というものを過渡的な手段であれ、残すとすれば、同意義務というのが引き取り義 務のほとんどを占めるということで、これは残さざるを得ないのではないかと思ってお ります。 ○吉川座長  ありがとうございました。具体的に言葉としてのご提案ではありませんでしたけれど も、やはり少し間が詰まってきたような気がしますけれども、いかがでしょうか、守屋 先生。 ○守屋委員  私も西山先生と基本的に同じ考え方で、引き取り義務というと、一般的にこれまでは やはり家に引き取るというふうにどうしても理解されていたような気がするんですね。 ただ、ここにお示しいただいているように、いわゆる医療保護入院に切りかえる時に、 保護者がそれに同意するという視点で見れば、引き取り義務を限定して残すことは必要 ではないかと思います。  もう一点、自傷他害防止のところなんですが、義務のところで、前回の法改正のとき に、この問題もやはり外すべきではないかという議論がかなりあったと思うんですけれ ども、そのときに、ここにお示しいただいている民法第 714条の監督義務者の問題が非 常にネックになったと聞いています。その議論の中で自傷他害防止義務は外せなかった と私は記憶しているのですが、このあたりは前回と大分考え方が変わってきていると理 解してよろしいですね。 ○吉川座長 どうですか、杉中さん。 ○杉中補佐 恐らく厚生省の門を出て、政府全体の提案になると、そういったような議論は出てく ると思うんですが、ここの問題は、また、これから検討することが必要だと思うんです けれども、実はきょう話をされた三橋さんの話とも関係すると思うんですけれども、い かに地域において医療が必要な状態で切迫している人たちをどういう形で医療につなげ ていくのか、究極的に推し進めるとそういう問題になってくると思うんですね。そう いったところで、保護者の監督義務を外したときに、どういった代わりの提案ができる のか、そういったところにかかってくると思うんです。 当然家族であれば、調子が悪ければ、医療につなげるという配慮は家族制度で期待で きるべきだと、自傷他害防止義務という形でなくもいいのではないかと思います。 またそういう問題事例については、今の自傷他害防止義務があっても、家族ではどうし ようもないという実態があって、それがかなり大きな問題になっているので、それに関 して、どういったことをすべきなのかということを検討する必要があるのではないか。 それにつきましては、今回ではないのですが、知恵を絞って何らかの考えをこの専門委 員会で示させていただきたいと考えております。次の任期のところの最後にも出てきま すので、また、そこで説明させていただきます。 ○佐伯委員 先ほど守屋先生がお話になられた、自傷他害防止義務に関する立法経緯は、私知らな くて意外だったんですけれども、むしろ民法 714条の監督義務と同視されてしまうか ら、過度の負担を負わすことになるので削除すべきだというのはよくわかるのですが、 民法 714条があるから外せないというのはどういう意味なのでしょうか。 ○守屋委員 前回の法改正のときに、自傷他害防止義務を外していくべきではないかという議論が あったんです。この民法 714条について学校を例にとりますと、学校の先生が生徒をつ れて遠足等に行ったときに事故が起こった場合、教師に監督義務が生じる場合がある。 こういうことも、ここでの監督義務とつながっているという気はするんです。 ○池原委員 引き取り義務のことを一言言いたいんですが、引き取り義務のことについて申し上げ ると、次の論点の任期のところとの関係で、もし任期のところも、またこれから議論す るので内容が変わるかもしれませんけれども、一応措置入院が開始されて、医療保護入 院が終わるまでの間は保護者がつくのだという前提でおおむね検討メモでは考えられて いるわけですね。 そうしますと、措置入院が開始して間もなく保護者の選任が行われて、措置入院が極 めて早期に解除されてしまうと間に合わない部分が出ますけれども、措置入院が解除さ れたときには保護者が要ることになって、そのときには、つまり必ずしも引き取り義務 という具体的な規定の仕方がなくても、一般的な治療に協力すべき義務というか、治療 に配慮すべき義務が保護者には総論的にあることになるので、その一環として当然同意 すべきかどうかという、措置入院がいよいよ終わるぞというときに、保護者をどうする かをそこで考えることになるので、必ずしも引き取り義務という具体的な規定がなくて も空白は起こらないだろうと思うんですね。 それが1つと、逆に引き取り義務という形にしますと、保護者はある意味では同意を せざるを得ない立場に置かれることになって、保護者の同意権が、一面では医療保護入 院についての消極的な要件として、医療機関とは別の立場で入院の必要性をチェックす るといったら言い過ぎかもしれませんけど、保護者に権利擁護者的な役割もあるのだと いうふうに考えるとすると、同意をせざるを得ないような同意権というのは、そもそも それは権限ではなくて義務になってしまうので、これもむしろ引き取り義務を置いてお いて、措置入院が解除されたら、自動的に同意をせざるを得ないのだという置き方も非 常に不自然というか、かえっておかしなものではないかと思うんです。 ですから、むしろ、そういう具体的な義務の形にしないで、保護者には一般的に適切 な治療が行われるように常に配慮しなければいけないんだという規定の置き方にして、 措置が解除されたときには、臨機応変の適切な、例えば医療保護入院の同意をするな り、あるいは地域の何か社会資源があれば、そこに帰すなり、また1つの具体的なこと としては、自宅で一時期引き取れるなら引き取るというような、そういう枠組みで考え た方がいいのではないかと、私はご議論を伺っていて思いました。 もう一つ、自傷他害防止の点について、私の理解では、一部の民法の不法行為の教科 書では、精神保健福祉法の自傷他害防止義務というのが、いわゆる法定の監督義務者 の、法律で定めた監督義務なのだというふうに説明をして、それを前提にして民法 714 条の保護者の損害賠償責任が成立するという説明のされ方がしているので、そういう意 味で言うと、この時点で起こっていると、非常に 714条が発動しやすいというか、そう いう傾向があるだろうと思うんですね。 ○佐伯委員 池原先生のおっしゃたことに、私も同感なんですが、ただ、その前提として、自傷他 害防止義務を法律から外したとしても、一般の作為義務は残りうる。これを外したから といって保護者が全く義務を負わなくなるわけではないという理解でいいんでしょう か。 私も自傷他害防止義務というのは、現行の判例が一般的に負わせている義務が適切か どうかという点については議論の余地があると思いますから、この法律の規定を外すこ とは検討に値すると思います。ただ、ここで説明されている自傷他害防止義務はすべて 治療を受けさせる義務に含まれてしまうというのにはちょっと疑問を持っていまして、 例えば漠然とした危険で何かしなければいけないというのは行き過ぎだと思いますけれ ども、まさに現に、例えば自殺しようとしているとか、あるいは他人を傷つけようとし ているとかという場合で、かつ、容易に防止できる場合、やはり防止義務が保護者に負 わされてもいいと思います。したがって、自傷他害防止義務は、すべて治療を受けさせ る義務に入るからなくていいのだという説明は適切ではないと思います。 むしろ、この規定を置いておくと、先ほど池原先生がご説明になったように、民法 714条の監督義務者と同視されて、あれは無過失責任に近いと一般に言われていますの で、適切でないという理解であれば、私も削除に賛成するのにやぶさかではありませ ん。  ただ、そういう理解を防ぐためだけであれば、最初に池原先生がご提案になった、あ るいは竹島先生がご提案になったように努力義務のような形で残すのも、可能性として はあるかなと思います。 ○杉中補佐 それは自傷他害防止義務に関してもということですか。 ○佐伯委員 そうですね。自傷他害というかどうかともかくとして、例えば利益を保護するように とか、治療を受けさせ、その利益を保護するように努めなければならないとか、治療だ けだとちょっと狭いように私には感じられます。 ○吉川座長 どうですか。ここで、今、保護者というのを、大体ご家族という頭で考えておられる から、今のことが出てくるのですが、保護者が家族とは限らない問題がありますね。で すから身近にいるとは限らない。そういうことまで考えた上で、今の議論が成り立つか どうか、ちょっと考えたいと思いますけれども。 ○佐伯委員 もちろん義務は、具体的な状況ごとに決まってきますので、現に見ていて防止しなけ ればいけない義務があるとしても、見に行って防止するところまでは義務としてはない ということもあると思います。ただ、そういうことを細かく法律に書くわけにはいきま せんので、その点、どういうふうにするかというのはちょっと難しいんですけれども。 吉川座長 ○ ありがとうございました。皆様方にお配りしてあります資料14のところ、現在、「保 護者の義務の主な内容」というのが、先ほど杉中補佐から読み上げていただいたものが ついていると思いますが、この中で、今、問題になりそうなところを3点をここで挙げ てあるわけで、その3点のうちの財産の問題に関しては、まだご意見は承っておりませ んので、それをちょっと先にやらせていただいて、その上で、また戻るなり何なりした いと思います。  「財産上の利益の保護について」という資料の一番最後のところをお目通しいただき まして、これについてはいかがでしょうか。 ○池原委員  財産上の利益保護の検討メモの結論で、あえて削除する必要はないのではないかと言 われてしまうと、確かにそうかなという気もするんですね、率直に。ただ、1つ、若干 理念的な部分で言うと、精神保健福祉法という法律の目的から考えたときに、財産上の 利益を守るということをわざわざ書く必要があるのかなというか、むしろ、それは民法 とかほかの法律の仕事であって、若干精神保健福祉法としては、純粋な要素ではないよ うには感じるんですね。  それから、現実に当然ご指摘になっていらっしゃるように、財産上の利益を保護する と言われても、事実上、看守するとか、そういう程度のものでしかなくて、場合による と、そういうものは規定がなくても、同居していた家族が事実上看守する状態は事務管 理とかということでも考えられるかもしれませんし、何かこれを無理やり消しなさいと いうほど強い要求もないけれども、精神保健福祉法を純化していくという意味で考える と、保護者の役割はあくまでも医療とか福祉のことなんだと。そして、この財産管理的 な側面は、むしろ成年後見制度に全部譲ってもいいのではないかというような気もいた します。 ○吉川座長  その辺はどうですか。 ○杉中補佐  感じとしては、大体似たような意見ではあるんですけれども、ただ、何となく病院中 の小遣い銭等の金銭管理的なことが必要であって、それを援助する人が、そういう人が 医療を受けるために必要なのは事実なので、そういうった感じで機能しているのであれ ば、わざわざ積極的にこれを削除するというところまで必要がないのではないかという 認識なんです。積極的にこれを削除しなければならないということで法律改正につなげ る要因にはなりえないのかなと、残しておいてもいいのではと、非常にあいまいなんで すが思います。法律改正のときには、大体削除するのであれば、普通は積極的な必要性 というものがあって変更するということなので、そこまでの要因足りえないのではない かといったような認識なんです。 ○吉川座長  それは成年後見制度が制度化されたという段階で再考するというふうにも考えていい ですか。 ○杉中補佐  必ずしも成年後見人による財産管理が必要な場合とは限らないですよね、入院生活を している人は。そこまで必要なくて、単純に入院加療中の必要なお金の管理ぐらいされ ていれば、足りるという人もいるわけですし、そういった程度の必要性に応える存在と しての保護者ということであれば、これを残しておいてもいいのではないかといった感 じでこれを書かせていただいたんです。 ○池原委員  余りうまく整理できないのですが、もし、次の論点の任期との関係で考えますと、保 護者がつく場合は、措置入院の場合と医療保護入院の場合という前提になりますので、 これはかなり成年後見人が選任される精神状態とオーバーラップしてくるわけです。そ のときは、かなり財産管理の保全の必要性があれば、成年後見人もあわせて選任可能性 があるという状態。  逆に任意入院のところは保護者はつかないわけですけれども、ここは逆にまた成年後 見人にも精神状態としてはつきにくい、多分選任されない程度の能力水準であると、ど ちらかというと考えられると思うんですね。そこのところは、むしろ今度逆に、すぽっ と財産上の利益を保護するというところが抜けてしまうような感じになって、非常にア ンバランスな感じだなと。だから、どうしろという建設的な意見ではないんですけど、 ちょっとそんなような気がするんです。 ○杉中補佐  任期の方で、若干説明しているんですけれども、相当な財産を持っていて入院してい る人とか、地域で生活している人たちが生活していくに当たって、財産を守らなければ ならない、例えば代わりに代理して運用しなければならないという必要があるのであれ ば、そこの部分は成年後見人に任せるべきではないかということです。成年後見制度の いわゆる三類型と入院形態というのが、どの辺が突合していくのかというのは、今の段 階ではわからなくて、今後の課題だとは思うんですが、後ろに書いてありますように、 恐らく補助類型といった形での支援は、任意入院患者とか地域で生活する人には、活用 される可能性はあるのかなというふうに考えておりますので、そういう必要性がある人 については、積極的に成年後見人といった代理権とかの活用をしていくための仕組みを つくる必要があるのではないかと思います。  それについては、行政なり専門団体なりも関与して、必要な人には申し立てをして、 そういった本格的な財産上の利益の保全をすることができる成年後見人制度を活用して いくということでいいのではないか。  ただ、言われたように、医療保護入院とか措置入院でもそういった場合もありますの で、そういった場合には後見人になっていただいて、後見人になれば、最優先度で保護 者になることになりますので、後見人になっている者であれば、この財産上の利益の保 全といった精神保健福祉法の条文に関係なく、みずからの後見人としての職務で財産保 全なりをやっていくことになるので、それはそれでいいのではないか。  今の保護者の財産上の利益の保全義務を残すというのは、いわゆるそこまでの必要が ない人でも、入院加療中で、判断能力が十分ない人であれば、代わって日々の生活の必 要なお金とか、そういったものを保全する人は要るのではないかと思いますので、そう いった機能として、保護者が引き続き機能するのであれば、あえてそれを削除すること はないのではないかといった感じで残させていただいています。 ○池原委員  これは私は実態を調べてないのでわかりませんけれども、例えば想定されるケースと して、障害年金かなんかを受けていて、それで保護者の人が障害年金を事実上管理する なんていうケースはあり得ると思うんですね。そういうときに、必ずしも保護者の方 は、財産管理面について適切なチェックを受けて選任されてきていないこととか、それ から、成年後見に比べると、少なくともそういうチェック機能は非常に弱いわけです ね。そういう点で、中には精神障害の人が取得すべき障害年金がむしろ保護者の方で日 常消費されてしまうとか、逆の意味で、それを変に誤解して、私には財産上の利益を保 護する任務というか、ある種の権限があるのでやっているんですよというような誤解を したり、言いわけをしたりするケースがないこともないのではないか。若干そういう弊 害的な側面もあるかもしれない、その辺は調べてみる必要があるかもしれないと思うん ですね。 ○佐藤委員  その点は病院の経験ではかなりあるところで、ただ、全体的な状況かどうかというの はわかりませんけれども、病院に医療費を払わない家族で、障害年金をもらっているは ずなのにと思って調べると家族が使ってしまっているというような、それが極端な例な のか割とあるケースなのか、実態はわかりませんけれども、また、保護者が財産保全と いっても、適切に入院中に小遣いの管理ができるぐらいの回数、皆さん来てくださるわ けでもないし、結局、病院で小遣い管理の代行をしなければいけないことがかなりあっ て、それが病院の職員1人分ぐらいの事務量になってしまったりとか、病院がお金をそ もそも預かって管理することがどういう根拠に基づいているのか、適正なのか、現場で はお金をめぐってさまざまな問題があるのですが、成年後見制度でどの程度、具体的な 財産の問題について、小遣い金の使い道というところまできめ細かにしてもらえるの か、その辺の財産管理の問題は、実態と照らしながら、かなり調べていかないと難しい なと思ってはいるのですが。 ○杉中補佐  今、池原先生が言われたような観点は、実は成年後見制度というものの必要性と言わ れているところの代表的な例でございまして、特に知的障害の方の施設とかで、家族が 代わりに老人とか、年金とかで、相当な財産があるものを、身近にいる者がそういう人 の財産を侵害しているとか、そういうことがありますので、現状で保護者がかなりの権 限を持っているのだという認識は恐らくなくて、そういうことをしている例があれば、 明確な財産侵害だという判断になると思いますので、そういう場合には、逆に重要なこ とは、この規定云々よりも、そういった財産を保全する場合には、必要に応じて、代わ りにきちんと財産を管理するものを置くという仕組みをつくっていくことなのではない かというふうに思います。  何かあって病院であれば病院、行政機関がそういう訴えを受けたのであれば行政機 関、何が適切に申し立てをして、成年後見人をつけて、その人の財産を管理してあげる といったことになる。  また、別の仕組みとして、何か必要があるのであれば、実は老人なり知的障害者な り、社協なり、福祉系のサービスなりとか、代わって社会福祉士なりが財産支援サービ スみたいなものを、今後やっていこうという検討をしていますので、精神障害者につい ては、もちろんそういった取り組みに協力することも必要ですが、場合によっては、自 分たちでも、そういったサービスについて考えていくことが必要なのかなというふうに 認識しております。 ○吉川座長  ありがとうございました。とりあえず、ちょっと出されました3つの問題について、 基本的な考え方として、まず第1の自傷他害の問題に関しましては、民法第 714条の問 題の解釈をめぐって、お二方それぞれ違ったご意見がありましたけれども、むしろ自傷 他害防止義務を法の中に書き入れることはもうないのではないかという議論が強かった ような気がいたします。  それから、引き取り義務に関しましてはかなり活発にご議論いただきまして、大きく 分けて2つの考え方があったと思いますが、それをだんだんと議論しているうちに隙間 が埋まってきたような気がしまして、ここで基本的な考え方としてまとめられたものだ けではなくて、法文の中にどういうふうにあらわすかは別にいたしましても、ともあれ 公的な機関などがそれをどこまでサポートするかということだったと思います。そんな ことで、引き取り義務の問題そのものは、このまま残さざるを得ないのではないか。そ のためには、そうしたサポートシステムをどうつくるかということだろう、こんなふう に議論が進んでいったような気がします。  それから、最後の財産上の問題に関しましては、これもまた活発にご議論いだたきま したけれども、成年後見制度がもちろん今議論になっているところでございますし、そ れはそれとして、あるところまではカバーがいくだろうし、また特に今も話が出ました ように、大きな財産問題が起これば、それはまた成年後見制度の方で見ていただくしか ない。ただ、問題は、生活の身の回り、特に入院中の生活の身の回りの問題をどうする かということに関して、まだ完全に結論をいただいているわけではございません。そこ で恐らく杉中補佐の方から、今読み上げていただいておりますように、あえて削除する 必要はないのではないかという、そのあえてというところが効いてくるのだろうと思い ますけれども、残しつつやはり成年後見制度の出方を見ていかなくてはいけないのでは ないか、こんなふうに思っております。大体こんなまとめ方でよろしいでしょうか。 ○池原委員  最初に申し上げた、医師の指示に従うというあたりの表現について、できたら、もう 少し、一般的な保護者の治療に、つまり判断能力が不十分な状態になった精神障害の人 をなるべく治療に結びつける役割として保護者を置くことはそれでよろしいんですが、 そういう観点から、かつ国連原則のインフォームド・コンセントあたりのことも配慮し て、少し表現を工夫する程度の検討は何か結論として出していただけないでしょうか。 吉川座長 ○ 私の方は3つ出された問題について整理をして、その上で、今の、池原先生が、最 初にお話になられたもの、それが資料14の2のトップのところにあるものでありますの で、それをせっかく出されましたので、少しご意見いただいた上で、ここを通過しよう と思っていましたので、どうぞ。 ○伊藤委員  引き取り義務の問題なんですが、今の座長のお話ですと、引き取り義務は残さざるを 得ないというふうに、ある面では……。 ○吉川座長  今の時点でということですね。 ○伊藤委員  ただ、用語の問題もあると思いますが、引き取り義務というのは、やはり意味してい る内容、なぜ、残さざるを得ないかという、実態に合った表現にしていただかないと、 このままではやはり問題が残ってしまいますので、一番最初に池原先生がおっしゃった ように、適切な医療を受けるために支援しなければならないんだというところにこれを 生かしていただいて、引き取り義務という表現は、この機会にとっていただくべきだと 思いますけれども。 ○吉川座長  いかがでございましょう。よろしゅうございますか。そんなふうに考えることも必要 かもしれませんが。杉中さんどうですか。「引き取り義務」という言葉ではないもの に、支援をするという内容を込めたものに表現を変える。 ○杉中補佐  そういったことで、委員会の合意があるのであれば、そういった形で文章をまとめさ せていただきます。 ○高柳委員  今の座長の最初のおまとめと少し印象が違うものですから一言念を押しておきたいの ですが、むしろ、保護義務者の義務を果たすようなサポートを行政がすべきなのであっ て、それをサポーターがないところに義務だけ外しちゃうというのは、私は本末転倒で あると最初から言っているわけで、だから、今、伊藤委員がおっしゃいましたけれど も、現状のままで引き取り義務を外されますと、これは大変な現場で混乱が起こると私 は思うので、それは少しないよというふうに言いたいんですね。もし、そうおっしゃる ならば、保護者がその義務を果たせるように、必要な支援を積極的にやっていくという 前提に立てば、むしろ話が通ると思うんですね。 ○吉川座長  私がさっきお話した2つに分かれながら、だんだんと接近していったというところは そこでございまして、ですから公的なサービスも含めてサポートシステムをつくるとい うことを法文の上ではどう書くかは別にしまして、そういうことの必要性ということは 言えるだろう。それで、今、伊藤先生からお話があって、そして、ただ、言葉として 「引き取り義務」というのではない、むしろ「支援」ということをメインにした言葉に 直していった方がいいのではないかというふうにご提案あったと私は認識していますけ れども、それでよろしゅうございますか。 ○高柳委員  どういう表現になるか、わかりませんが。 ○吉川座長  わかりました。 ○長尾委員  そこの、先ほど言われました公的な支援ということを、これをしっかりと制度として やはり入れ込むようにしていただかないと、言葉だけ入れても何もならないということ になりますので、ぜひとも、その辺をご検討いただきたい。 ○吉川座長  そこまでやる席ではございませんので、申しわけありません。私はできるだけレポー トの中にそういった趣旨を残したいと思って、今、そういうふうに申し上げました。  それでは、そこを通過いたしまして、「保護者の任期について」、以降、杉中補佐の 方からお話をいただきたいと思います。 ○杉中補佐  それでは説明させていただきます。「保護者の任期について」、資料5でございま す。まず現行の保護者制度でございますが、その任期と対象はかなり不明確になってお ります。この理由ですが、精神衛生法の制定当初は、法律上の主たる入院形態というの は、措置入院と同意入院しか基本的にはございませんでしたので、すべての精神障害者 がこのどちらかの入院形態をとることを想定していたために、すべての精神障害者に対 して、その治療が終了するまでの間、保護者を選任することを前提としていたというふ うに考えられるのではないか。  このため、保護については現行法においても特別の任期を定めておりません。した がって、措置又は医療保護入院によって、保護者が選任された場合には、その精神障害 者が回復するか又は死亡するまで保護者であり続けるということになるのではないか。  ただ、この事情が今変わっているので、昭和62年の改正によって、本人の同意による 入院形態である任意入院というものが制度化されたのですが、任意入院患者には保護者 が付されておりません。任意入院患者については、判断能力が備わっていると考えられ るため、特別に保護者を選任しなかったものだと考えられます。  しかしながら、62年改正のときには、その保護者の対象を限定するような改正はなさ れず、運用によって医療保護入院及び措置入院患者に対してのみ保護者を選任すること にしようということにされております。  こういった観点からの問題点ですが、1つは今言った一部の者だけに保護者が選任さ れる問題点ということで、医療保護入院、措置入院患者については保護者が付されるわ けですが、こういった患者について、病状が改善していくことであれば、任意入院に入 院形態が変更されていくだろう。しかし、現行制度ではこの場合でも保護義務は継続す る。一方で、任意入院患者で入院した者については選任されないというのは、バランス 的に考えればおかしいのではないか。  任意入院患者に対して保護者を選任していないことをかんがみますと、措置又は医療 保護入院で入院された方についても、精神障害者の判断能力が不十分で、保護者による 支援が必要であるという期間だけ保護者が付されればいいのであって、治療が済んで退 院したり任意入院患者に入院形態が変更になった場合には、保護者の任務はもう必要な いのではないかといったような意見がございます。  次に保護者の任期でございますけれども、今言ったようなこともありまして、また精 神障害者を主として財産管理面といった生活の観点から支援する成年後見制度が創設さ れる予定でして、また地域で生活する精神障害者に対する保護者の義務が不適切である と。またさっき言った財産面の支援からでは、保護者の権限は不十分であるといったよ うな意見を考えますと、地域で生活する精神障害者まで保護者が面倒を見て保護するこ とは不必要であるといったような意見もございます。  以上を踏まえた形での基本的な考え方ですが、任意入院患者につきましては、保護者 が設定されていない一方で、また措置入院患者は医療保護入院患者についても病状が軽 快し、入院患者の判断能力が回復した場合には、任意入院への形態に変更されることが 多くなっていることを考えると、措置入院患者、医療保護入院患者にだけの保護者にだ け一生保護義務が課されるのは妥当ではないのではないか。  したがって、措置入院患者や医療保護入院患者についても、その病状が軽快して、入 院患者の同意能力・判断能力が回復した場合には、その患者の本人の意思を尊重すべき であり、その場合にはもはや保護者による保護は必要ないのではないか。  地域で暮らす精神障害者につきましても、判断能力が不十分で生活面に着目した支援 が必要なものというのは確かに要ると思うのですが、そういった感じで地域で生活する 者に対する支援は、もはや精神障害といった特殊事情とは言えないのではないか。ま た、そういった場合には、入院医療のような緊急性を要しないものであるため、いわゆ る判断能力が不十分で支援が必要なものということで、老人や知的障害者同様に民法の 成年後見制度を活用していくべきではないか。  以上のことを考えますと、保護者による保護は、措置入院や医療保護入院という精神 障害者本人による判断能力が期待できない。同意が望めない入院を行った際に開始し、 当該患者が退院するか、又は病状が軽快し、任意入院に入院形態を変更するまでの間に 限定するといったことを検討すべきではないか。  また、地域で、先ほど言った生活する精神障害者を支援するための成年後見制度の活 用ということですが、そのポイントとしては、必要なものに対して、成年後見人が適切 に付される体制を整備することが重要であると考えます。したがって、例えば精神医学 ソーシャルワーカー協会等による又は精神保健福祉士等に期待して、そういったものに よる成年後見人の供給を行う体制を整備していくことが重要ではないかと考えます。  また、保護者の任期を限定することによって、心配点としてあるのは、地域で生活す る精神障害者が医療を受ける機会が失われるおそれが確かにあります。特に単独で生活 なさっている精神障害者に対して、医療を受ける機会が失われてしまうといったおそれ がございますので、そういった者に対しての医療を受けさせるといった点での保健所等 の役割についての検討を行うべきではないかといったことで、この問題については、先 ほど言いましたとおり、市町村、保健所、都道府県等の役割といった回がございますの で、その際に検討事項として提出させていただきたいと考えております。 簡単なイ メージ図をかなり混乱したので、後ろに矢印のついているものがありますが、措置入院 で入院なさって、医療保護入院、任意入院といった感じに病状が変更されている患者さ んをイメージして、こういった絵をかいてみたので、今の措置入院で入院なさった方 は、保護者が一たん選任されるとかなり長期間にわたり保護者の任務が続くと。それを 改正することによって任意入院形態に変わったところまでで、保護の任期は終了する。 その後は、生活面から見た必要性に応じて行政機関等による成年後見人を申し立てし て、そういう者をつけていってやるといった感じでイメージしております。以上でござ います。 ○吉川座長  ありがとうございました。今までの議論の中でも「任期」という言葉で話が出たこと もありましたし、そうではなくても保護者がどんな役割を持つかということで、医療の 管掌をする、あるいは自傷他害の問題であるとかということで、具体的に議論されてき ましたので、少しここのところは議論済みのことがあると思いますが、いかがでござい ましょうか。 ○長尾委員  1つ、基本的なことで教えていただきたいんですが、この保護者は選任した人のみを 保護者ということで考えるわけですね。その前の保護者の今までの義務で、診察を受け させる云々というときには、入院以外の分については、これは保護者としての体をなさ ないということで考えていいのですか。 ○杉中補佐  それ以外の、例えば医療保護入院とかで選任されない人の家族とか、そういうことで すか。 ○長尾委員  はい、そうです。 ○杉中補佐  解釈としてはそういうことになるだろうと思います。 ○長尾委員  例えば外来の場合とか、入院しない場合の診療を受けさせる云々ということについて は。 ○吉川座長  外来だけであれば、選任されることないですね。 ○長尾委員  選任ではないんですけれども、今までの段階で言えば、診療を受けさせる義務である とか、自傷他害の防止の義務であるとか、そういったことは。 ○杉中補佐  医療保護入院患者と措置入院患者で保護者がついた方については、外来とか、そう いった段階でも義務はあると思います。 ○長尾委員  それ以外の人は。 ○杉中補佐  それ以外の人はない。 ○吉川座長  それが任意入院との間に差があるのではないかということとか、かつて、措置入院や 医療保護入院で入院した人だけが保護者がつくのはおかしいのではないかといった議論 の出発点だと思います。 ○高柳委員  実務的なことをちょっとお伺いしたいのですが、これは一たん任期終わったら、また 選任をすると考えてよろしいですか。 ○杉中補佐  一たん選任された方は保護者として続きますので、新しくすることは恐らくそういう ことになると思います。 ○高柳委員  新しく、また選任するわけですね。 ○杉中補佐  はい。 ○高柳委員  問題は実務上、家庭裁判所がそれに耐えうるかどうかという問題が1つあると思いま すね。だから、その辺の読みはどうでしょうか。 ○杉中補佐  そこは家庭裁判所と相談していくことになると思います。例えば多くは後見人という 形でされるのであれば、一たん後見人の選任がなされていれば、再び必要ないわけです し、措置から医療保護に変わる場合は、名目上は再選任という形に今の案ではなるので しょうけれども、継続状態にあれば、要らないのではないかということを家庭裁判所も 規則で定めるなんていうことも考えられるのかなと。  ただ、一たん退院して、再入院したときは、細かいところまでは全然詰めていないん ですが、また前と同じ人が保護者になるのが本当にいいのかどうかというのは、例えば 10年たって扶養義務者がかつてされていたら、もう一回入院したら、その人がなるのが いいのかというのは必ずしもそうとは言えない場合もありますね。 ○高柳委員  そういう例外といいましょうか、割と少数部分で話をするのか、あるいは大部分が保 護者がきちんとなさっていて、5年、10年という間に何回かの入院について、保護者の 機能を果たしていただける方を前提にするのかという話になると思いますね。だから、 これをもし、今お考えの原案どおりやりますと、家族に相当過重な事務的な負担、精神 的苦痛を強いるのではないかと、私はむしろそれをおそれるんですけれども。 ○杉中補佐  そこは家庭裁判所から、そのような意見が出ることは十分考えられることだと思いま すけど、ただ、一番過重なのは、私も家庭裁判所に案を持っていって相談してみようと 思っているところなんですが、多分新規の選任というときが一番大変なんだろうと思い ます。保護者になる人を探し出す点で家庭裁判所は相当苦しんでいると思いますので、 一たん、保護者となって保護する方が選任されると、2回目以降は事務手続きだけで、 そこまで過重な負担にはならないのではないかと個人的には考えていたんですが、た だ、そこは実際事務をされる裁判所の話を聞いてみないとわからない。 ○吉川座長  ありがとうございました。 ○佐伯委員  保護者は選任された場合だけというのは、条文上の根拠はどこなんでしょうか。 ○杉中補佐  そこが明確でなくて、実際に運用がされているところでありますので、始期と終期と いう形で、今回明確にしてはどうかというような感じで、始期の方は十分書いてなかっ たんですけれども、ただ、実際にはすべての精神障害者に付されているといった形でも ともとの法文は書かれている。今の運用としては、医療保護のときに選任といった形 で、保護者の同意書の届け出とか保護者の届け出といったことを入院の手続きの一環と してやるといったことになりますので、そのときに事実上の選任がなされている。 ○佐伯委員  事実上の選任、例えば後見人が保護者になる場合には、家庭裁判所の選任はないわけ ですよね。 ○杉中補佐  家庭裁判所にはございません。ただ、入院上の手続きとしては、保護者がだれといっ たことをですね。 ○佐伯委員  そのときに保護者になるというのが厚生省の解釈ですか。 ○杉中補佐  そういうことです。というのは、代わって扶養義務者による入院等もございますの で、それは選任されるまでは違うといったこともありますので、そのときだけというこ となのかもしれないですけれども。 ○佐伯委員  しかし、条文上はどう読んでも、精神障害者については、その後見人が保護者となる としか20条には書いていませんし、家庭裁判所の選任は順位を変更する場合と、前2項 の者以外の扶養義務者のうちから選任する場合ですよね。 ○杉中補佐  そうです。 ○佐伯委員  ですから精神障害者になれば、自動的に保護者になるというのが、法律……。 ○杉中補佐  もともと衛生法の時代はそういうことだったと思います。 ○吉川座長  そのとおりです。 ○杉中補佐  今、現実の運用としては、任意入院患者で入院される方には別段保護者の選任という か、保護者の定め等は置いておりませんし、実態上、62年以降の運用として医療保護入 院と措置入院患者で入院された方。入院を契機として、それ以降についてのみだけ保護 者が付されています。 ○佐伯委員  わかりました。それが厚生省の解釈であるということであれば、それで結構かと思い ますが、そうだとすると、どうしても規定を設けて明文化する必要があるように思いま す。 ○吉川座長  はい。ありがとうございました。精神衛生法時代と違ってしまって、それをそのまま にしてきたことに問題があるのだろうと思いますが、それが今の任意入院制度に保護者 はつかなくなってしまったということであります。それはそれで、私は個人的にはいい と思ってはいますけれども、それだけに期限をどうするかということが問題になると思 います。 ○佐藤委員  すいません、確認なんですが、62年以降も問い合わせをしますと、任意入院であれ、 単に通院医療だけであっても保護者が必要だというふうに答えていたように。 ○吉川座長  それは恐らく厚生省側の意向ではないと思いますね。どうでしょうか。 各都道府県にお問い合わせであれば、そんなことがつながっているかもしれませんけれ ども、それは精神衛生法時代の法解釈であったのではないかと思います。 ○佐藤委員  ちょうだいしたこの本(「精神保健福祉法詳解」)にも一応書いてはあるんですが。 杉中補佐 ○ 過去の例では、任意入院のときでも、病状の変更に備えて、念のために保護者を用 意しておいたらといったことを言った時代もあったらしいんですけれども、調べてみた のですけれども、その辺はわからない。ただ、運用によって、置かないことにするとい うことは、62年の任意入院時代の法律的な整理をしたときのペーパーとして、内部の資 料ですが、考え方として残っておりますので、恐らくそれが正しいのかなというふうに 思いますけど、ただ、確かにうちの課としての解釈も、その辺非常に揺れていた時代が あって、それは1つには、任意入院をつくったときに、その考え方をきっちり整理しな かったところが原因としてあるのかなというふうに、私は考えております。 ○吉川座長  ほかに何か。 ○西山委員  問題点の 2「保護者の任期について」というところですが、「主として財産管理面か ら支援する成年後見制度」が、大体そう見られることが多いのですが、やはり民法の中 には身上監護もあるわけですし、その面をむしろ強調していかなくてはならない。なる べく保護者あるいは医療保護入院制度をだんだん縮小していきたいというふうなことか ら考えると、「主として財産管理面から」というだけではなくて、財産管理面と身上監 護というものをこれから考えていかなくてはならないというふうに、いかがでしょう、 変えていただく。もちろん考え方として。 ○杉中補佐  基本的な考え方としてはおっしゃるとおり、やはり精神障害の特殊性を考えて、そう いった配慮ができる人を成年後見人として付していくことが必要ではないかというふう に考えておりますので、そういった観点から、例えば供給体制として、精神医学ソー シャルワーカー等が中心になってというのは、必ずしもそういった後見人になる人は身 上監護の配慮義務はあるわけですから、そういった点が精神障害についての正しい知識 を持ってない方がついても、そういった後見人としての身上監護の配慮というものが行 われない可能性がありますので、そういった意識を持っておりますので、ここの「基本 的な考え方」の最後の2つ目に書いたようなところも提案させていただいているので す。 ○吉川座長  よろしゅうございますか。 ○西山委員  わかりました。それから、最後の図面ですが、下の改正(案)の図、任意入院以降に 必要に応じて成年後見人の申し立てということになっているのですが、これは任意入院 以降でなくても申し立てはいつでもできますね。 ○杉中補佐  できます。 ○高柳委員  今、西山先生がおっしゃった項目のソーシャルワーカー云々のところですが、これを 余り強調し過ぎますと、イギリスなどではそうなんですが、入院の判断をソーシャル ワーカーが実態的にやってしまうということが起こっているわけですね。だから、これ は非常にまずいと私は思いますので、この例示はやめていただきたいと思います。 ○杉中補佐  例示が問題なのではないかと思います。ただ、やはりソーシャルワーカーが基本的に は果たしていく職種の1つなのではないかといったような認識は持たれておりますし、 私も詳しくはないのですが、池原先生あたりに聞きたいんですが、ドイツなどは、基本 的にはソーシャルワーカーが公的な世話人になっているみたいな感じでよろしいんです か。 ○池原委員  それは多いようですね。ただ、もちろんほかの職種の人も、例えば必要に応じて弁護 士とかも入っています。 ○杉中補佐  もちろんそれはそうですね。基本的にはほかの職種を除外するものではないですけれ ども、基本的には生活の支援という点ではソーシャルワーカーがなっていく実態はある のかなと考えておりますので、そういった観点から精神障害者には精神障害のことを正 しく理解されている方を、そういった支援をする人につけていくのが望ましいのかなと いう観点から書かせていただいたので、入院の導入の判定とか、イギリスの精神衛生法 みたいな機能を持たせるという感じでは全然ないんです。 ○高柳委員  ドイツは家族も結構いるじゃないですか。 ○池原委員  どこの国でも実態としては6割ぐらいは家族がやっているという実態はあるようです が、選択肢が多いというところが日本とは違うということかもしれません。 ○佐伯委員  話を蒸し返すようなんですけれども、さっきの保護者の選任の問題なんですが、私は 厚生省の解釈がそうであれば、それでもいいというふうにさっき申し上げたのですが、 考えてみますと、任意入院ができる精神障害者の人であっても、治療を受けようとしな い場合に、治療を受けさせるように努めることは必要だと思いますし、援助する必要も ある。特に22条の保護者の義務を、きょうの話の流れですと、ある程度制限していくこ とがあるのであれば、やはりすべての精神障害者に保護者をつける、20条は素直に読め ば、そういうふうに読めますので、そちらの方が適切なのではないかという気がしてき たんですけれども。 ○杉中補佐  それは任意入院なり通院なりでも、やはりいない場合には選任が必要だということに なると思うんですけれども、実態としても違いますし、それを家庭裁判所に要求するの はかなり困難でございますし、本人の決定権と、あと家族の負担になっているという現 状を考えると、そこはやはり通院にまでそういう義務を広げていくと、たとえ努力義務 規定であっても、それは大変なのではなかろうかと個人的に思いますけれども、全家連 等も恐らくそういった解釈をすると、そういう反応で戻ってくるのではないかと思いま す。 ○佐伯委員  そうですか。今のように医療保護入院のみに結びつけるために、22条の治療を受けさ せる義務というのが、医療保護入院に同意をする義務のように解されてしまうおそれが ありますし、もっと一般的に、精神障害者を援助する、自己決定権を尊重しながら援助 するというような人を選ぶのが望ましいのではないでしょうか。ただ、家裁の選任が必 要だとするとなかなか大変なのはわかりましたが。 ○杉中補佐  成年後見制度が出てくるに従って、保護者の職務について成年後見人ができないこと はどういうことかというふうにも考えたんですけれども、基本的な医療の協力とかであ れば、後見人というものは身上監護の配慮義務がつくわけですから、それなりに配慮し なければならない義務はあると。ただ、保護すべき人が判断能力が低下して、しかも入 院による医療が必要だといった場合には、成年後見人の持っている職権では医療の強制 まではできないだろうといった観点から、特に判断能力が低下して、入院が必要な者に ついては、保護者を残さざるを得ないのかなという観点から、特に必要なところに限定 すればいいのではないかといった判断をさせていただいています。  基本的には、保護者そのものについては、従来からそれを撤廃すべきだという意見 が、特に家族なり当事者も含めてありますので、基本的にこれを拡大して、全般的につ くといった形には、今までの施策の中からしてもならないのかなというふうに思いま す。 ○高柳委員  私もさっきから気になっていたんですが、実は法意というのは、佐伯先生がおっしゃ るとおりだと思うんですね。長尾先生もおっしゃいましたけれど、恐らく精神障害者に はア・プリオリに保護者が本来はつくべきなのであって、しかし手続きとしては、とり あえず医療保護入院と措置入院につけましょうというふうな意味合いだろうと、大部分 の実務家はそう考えていると思うんですね。だから、必ずしも私は厚生省の精神保健課 がおっしゃることが皆さんに伝わってないと思うんですが。 ○吉川座長  そうでしょうかね。私はそうは余り思いませんね。どうぞ、後藤先生。 ○後藤委員  その辺はちょっと違うと思っているんですけど、この前の平成7年の改正で、疾患と 障害を分けたわけですよね。障害があって地域で生活している人にとっては、これは身 体障害者や知的障害者と同じであるという障害者のノーマライゼーションの考えで、そ れは自己決定権と改めて保護者は要らないというのが基本的な理念ではないかと。たま たま疾患が悪くなって、自己決定が難しいときには保護者が要るのであって、それが要 らなくなれば、速やかに保護者はとっていくべきだという方向ではないかと、そういう ふうに私は平成7年の改正を理解しているのですが、いかがでしょうか。 ○吉川座長  一般医療に近づけようという精神科の医療のこれまでの20年ぐらいの長い経過があり ますけれども、一般医療に近づけるということで言えば、先ほどからお話出ている自己 決定ということがかなり重要になってきますよね。その流れの中で考えると、保護者を つけることはよほど限定した条件でないとおかしいのではないかと私は思いますけれど も、座長でこんな意見を言うのは少し言い過ぎかもしれませんが、ここだけはちょっと 発言させていただきましたが。 ○山本委員  私も法文から言うと、佐伯先生のご意見に賛成なんですけれども、今のご意見だと自 己決定と後見というのは、エント・ベーター・オーダーだというのだけれども、そもそ も後見制度はそうではなくて、自己決定を患者が行うときに、それを保佐してやるとい うか、患者の利益のために、それを保佐してやるということもあり得るのだというふう に、エント・ベーター・オーダーではないという考え方もあると思うんですね。むしろ 保護者の制度というのは、そこから出発したのではないだろうかというふうに思うの で、自己決定できたら、すべて保護者要らないということには必ずしもならないのでは ないかと思います。 ○吉川座長  監護義務者の話からきょうはちゃんと説明していただきましたので、明治33年以来の ことでございますし、その流れの中で、当時の監護義務者がこんな形になってきたとい う歴史を見ますと、今の山本先生が言われるものではないのではないかという気はしま すね。 ○山本委員  私は患者の自己決定と後見というのは相互に援助し合うものであって、お互いに排除 し合う関係のものではない、択一的に割り切れるものではないのではないだろう、それ が法の趣旨なのではないかというふうに思っているんですが、ちょっと理解が違うので しょうか。 ○池原委員  座長のご意見に全く賛成ですので、特に意見はないんですけど、ただ、そうであると すると、保護義務の内容の規定の仕方はもっとニュートラルにすべきだと思うんです ね。今の保護義務の規定の仕方は、医師の指示に従うとか、治療を受けさせるという1 つの価値観に基づいた義務を負わされているので、そうであるとすれば、例えば保護義 務の内容を自己決定を尊重しつつ適切な医療が行われるように努めなければいけないと か、もっと自己決定要素を義務の中に、自己決定の支援者なのだという位置づけを置け ば、それはそれで1つの考え方だと思うんですけれども、今の保護義務規定は、どちら かというと、とにかく医療を受けさせるという、ある種の結論を先取りした規定の仕方 になっていて、そういう位置づけで保護者がついていくと、必ずしも自己決定の支援と いう形とはちょっと違ったバランスが出てきちゃうと思っておりますけれども。 ○吉川座長  いかがでございましょうか。一応この辺のところで、この問題について通過をさせて いただきますが、内容的にはご検討いただきましたとおりでございまして、保護者の任 期については、どれぐらいの期間がいいとかということではなくて、今、ここで提案さ れましたように、少なくとも措置入院あるいは医療保護入院のときには、保護者がつ く。しかし、それから先へ進んだ、よくなってきたときには、保護者を外すということ で、最終的に結論としてよろしゅうございますか。                (「はい」と声あり) ○吉川座長  では、そうさせていただきます。  きょうは最初にお話をいただきましたので、少し時間が押してしまいましたけれど も、それでは、ここで一応閉じさせていただきます。                (日 程 調 整) ○吉川座長  ありがとうございました。本日の議事はこれで終了させていただきます。第5回以降 のことに関しましては、課の方からご説明がありましたように、少し動かさせていただ いたりすることもあるかもしれませんが、よろしくお願いいたします。6月10日と25 日、ぜひご出席いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 問い合わせ先 厚生省大臣官房障害保健福祉部 精神保健福祉課医療第一係 高橋(内線3057)